人事異動の見込みと同一労働同一賃金

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<待遇の相違の合理性>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が法定されています。

しかし、具体的なケースについて、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性をどのように判断すべきか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に「職務の内容及び配置の変更の範囲」が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」を考慮する理由>

現在の我が国の雇用システムでは、長期的な人材育成を前提として人事制度が構築されていることが多いといえます。

このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられます。

法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素または適用要件の一つとして位置付けています。

 

<「職務の内容及び配置の変更」の意味>

「職務の内容の変更」には、「配置の変更」によるものと、上司等からの業務命令によるものがあります。

また、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

こうして、「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、重複して生じることがあります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の意味>

これらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容や配置の広がりを指すものです。

そして、「範囲」の同一性を判断するにあたっては、一つ一つの職務の内容や配置の変更の態様が同様であることまでは求めません。

例えば、一部の部門に限って人事異動の可能性がある人と、全部門にわたって人事異動の可能性がある人とでは、「配置の変更の範囲」が異なることになるので、「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとはいえません。

ただし、これまで転勤等がなかったという人でも、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して判断することになります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性判断の手順>

「職務の内容」が同一であると判断された、正社員など通常の労働者と、短時間・有期雇用労働者を対象として行うことになります。

まず、①短時間・有期雇用労働者について、「配置の変更」に関して、正社員など通常の労働者と転勤の有無が同じかどうかを比較します。

次に、②転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。

さらに、③転勤が双方とも無い場合、または双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。

最後に、④ここまで同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、その異同を判断します。

上記①から④までのどの時点で異なっていても、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、人事異動の見込みが同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.09.解決社労士