知識不足によるパワハラは誰の責任か

2022/03/18|981文字

 

パワハラと指導との境界線

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に、あるいは前後して行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

パワハラ行為者の「業務上の必要があってやった」という弁明は、言い逃れではなく、思っていることを正直に話しているのかもしれません。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に、あるいは前後して行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

自分の行為がパワハラにあたる/あたらないを、的確に判断できない場合もあるでしょう。

また、他の職員の行為に対して、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいかもしれません。

ましてや、暴行罪〔刑法第208条〕や名誉毀損罪〔刑法第230条〕の成立条件(構成要件該当性)などは、「物を投げつけても当たらなければ暴行罪は成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、職場でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

本気でパワハラを防止するには、職場の規則にきちんとした規定を設け、充実した教育を実施することが必要となります。

パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図らなければなりません。

パワハラ防止対策は、すべての企業にとって法的義務となっているわけですが、知識不足でパワハラ加害者になってしまう人が生じないよう、全従業員に十分な教育をすることが最優先でしょう。

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