知識不足によるパワハラは本人と上司の責任か

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<「バカですか」発言の町課長>

部下3人に暴言を浴びせたり、あいさつや業務の報告を無視したりするパワーハラスメントを繰り返したとして、埼玉県嵐山町が50歳代の男性課長を停職3か月の懲戒処分にしたことが報じられています(2019年1月21日)。

課長は「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」と弁明したそうです。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

この課長の「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」という弁明は、言い逃れではなく、思っていることを正直に話しているのかもしれません。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを、的確に判断できない場合もあるでしょう。

また、他の職員の行為に対して、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいかもしれません。

ましてや、暴行罪〔刑法208条〕や名誉毀損罪〔刑法230条〕の成立条件(構成要件該当性)などは、「物を投げつけても当たらなければ暴行罪は成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、職場でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

本気でパワハラを防止するには、職場の規則にきちんとした規定を設け、充実した教育を実施することが必要となります。

パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図らなければなりません。

この事件では、職員3人が人事担当などに相談し、副町長が数回、課長に注意したのに状況は改善されなかったと報道されています。

何がパワハラにあたるのか、基本的なことを知らない職員に対しては、上司から注意をしても、懲戒を加えても、反省を促すことはできません。

まずは、全職員に十分な教育をしていただけるよう願うばかりです。

 

2019.01.25.解決社労士