長時間労働の是正(労働施策基本方針)

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<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、長時間労働の是正が次のように説明されています。

枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【長時間労働の実態】

我が国においては、年間総実労働時間数は減少傾向にあるが、いわゆる正社員等については、依然として長時間労働の実態がみられる。長時間労働を是正し、労働者が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進することが重要であるため、次の施策を実施する。

 

「長時間労働」の実態があると言われても、同業他社との比較で、自社が殊更に長時間労働であるとは認識できません。

あくまでも、諸外国との比較で労働時間が長過ぎるということが指摘されています。

しかも日本企業では、同じ成果を上げるのに、より長時間の労働を投入しなければならない、つまり労働生産性が低いことが指摘されています。

 

【長時間労働是正の方法】

まず、長時間労働を是正し、労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの実現を図るため、働き方改革関連法第1条による改正後の労働基準法(昭和22年法律 第49号)に新たに設けられた時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定の仕組みや、働き方改革関連法第4条による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律 第57号)に新たに設けられた労働時間の状況把握及び産業医・産業保健機能の強化のための仕組み等について、労働基準法及び労働安全衛生法の趣旨の周知徹底及び履行確保に努めるとともに、時間外労働について可能な限り労働時間の延長を短くするよう、必要な助言及び指導を行う。また、年次有給休暇を円滑に取得できるよう、その環境整備に向けた取組を行う。さらに、勤務間インターバル制度の普及促進に向けた取組を推進する。具体的には、都道府県労働局から企業・団体への働きかけを行う等、全国的に長時間労働対策の推進及び年次有給休暇の取得促進に取り組むほか、労働基準監督機関においては、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行う。

 

長時間労働を是正する方法として、時間外労働の規制、この前提となる労働時間の適正な把握、年次有給休暇の取得促進、更には、長時間労働の弊害を防止するためにも勤務間インターバル制度、産業医の機能強化と活用が掲げられています。

一方で、この「労働施策基本方針」の中の「働き方改革の推進に向けた基本的な考え方」には、「こうした働き方改革に向けた労働施策の推進や各企業における働き方改革の実施においては、労使の十分なコミュニケーションをその基盤とするとともに、働く人の視点に立つことが重要である。」という基本中の基本が掲げられています。

こなし切れない仕事を抱えた社員に残業を禁止したり、長時間の残業をして残業手当を稼がなければ生活が成り立たない給与であったり、取得したくない日に年次有給休暇を強制したりということでは、働き方改革の目的は果たされません。

働き方改革は、「社員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。労働生産性を高めるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに社員満足度を低下させますから、働き方改革にはなりません。

長時間労働の是正にあたっても、労使の十分なコミュニケーションが基盤となることは言うまでもありません。

 

【労働基準監督制度】

また、労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。なお、 重ねて改善を促しても是正されないもの、違法な長時間労働により過労死等を生じさせたもの、違法な長時間労働により重大な結果を生じさせたものなど重大・悪質な場合は、書類送検を行うなど厳正に対処する。労働基準監督官が行う監督指導など労働基準監督署の運営に関する苦情について、 メールや郵便など多様な形で受け付けることができるようにするほか、監察官制度を活用し、問題があった場合には厳正に指導等を行うなどにより、監督指導の適正な実施及び公正かつ斉一的な権限行使を徹底する。

 

労働基準監督官は、人数が絶対的に不足していますし、企業の監督指導に必要な教育研修を行うのも大変だと思われます。

その一方で、監督指導を受けた企業が、「何かおかしい。釈然としない」という感触を持ったとしても、苦情を言うべき場合に該当するかしないかは社会保険労務士などの専門家に相談したうえでないと、苦情が単なる言い掛かりとなりかねません。

労働基準監督署の監督指導やその予告があった場合には、なるべく早く社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

 

2019.01.06.解決社労士