最近の過労死の実態

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<過労死の労災認定基準>

仕事が主な原因で発症した心筋梗塞などの「心疾患」、脳梗塞などの「脳血管疾患」、また、仕事によるストレスが関係した精神障害については、「業務上疾病」として認められます。

そして、これらの認定に当たっての基準が以下のとおり通達で定められています。

 

〈労働者についての労災認定基準〉

① 脳血管疾患・心疾患について

 平成13 年12 月12 日付け基発第1063 号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」

② 精神障害について

 平成23 年12 月26 日付け基発1226 第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」

 

〈国家公務員についての公務災害認定基準〉

① 脳血管疾患・心疾患について

 平成13 年12 月12 日付け勤補―323「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害の認定について」

② 精神障害について

 平成20 年4月1日付け職補―114「精神疾患等の公務上災害の認定について」

 

〈地方公務員についての公務災害認定基準〉

① 平成13 年12 月12 日付け地基補第239 号「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害の認定について」

② 平成13 年12 月12 日付け地基補第240 号「「心・血管疾患及び脳血管疾患の公務上災害の認定について」の実施及び公務起因性判断のための調査事項について」

③ 平成24 年3月16 日付け地基補第61 号「精神疾患等の公務災害の認定について」

④ 平成24 年3月16 日付け地基補第62 号「「精神疾患等の公務災害の認定について」の実施について」

 

これらは、行政が作成した基準ですから、統計資料の作成など行政の内部で使われるのは当然ですが、裁判所もこれらを尊重しますから、訴訟の場面でも基準となっています。

 

<脳・心臓疾患の労災補償状況>

厚生労働省が公表した「平成30年版過労死等防止対策白書」の中には、次のようにまとめられています。

業務における過重な負荷により脳血管疾患又は虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)を発症したとする労災請求件数は、過去10 年余りの間、700 件台後半から900 件台前半の間で推移している。

労災支給決定(認定)件数は、平成14(2002)年度に300 件を超えて以降、平成18(2006)年度から平成20(2008)年度に300 件台後半となったが、それ以降は200 件台後半から300 件台前半の間で推移しており、そのうちの死亡件数は、平成14 年度に160 件に至ったが、ここ数年間は90 件台から100 件台前半で推移している。

平成29(2017)年度における脳・心臓疾患の労災請求件数は840 件で、前年度比15 件の増加となり、労災支給決定(認定)件数は253 件(うち死亡92 件)で、前年度比7件の減少となっている。

 

簡単に言うと、「過労死が疑われる事実の発生件数も、労災と認定された件数も、明らかな増加または減少の傾向は見られない」ということです。

 

<労働時間との関係>

労働時間との関係は、次のようにまとめられています。

なお、ここでの「時間外労働時間」は法定労働時間が基準となっています。

 

時間外労働時間別の労災支給決定(認定)件数をみると、まず評価期間が1か月の場合、「100 時間以上~120 時間未満」42 件、「160 時間以上」17 件、「120 時間以上~140 時間未満」14 件の順に多くなっている。

次に評価期間が2~6か月における1か月平均の場合、「80 時間以上~100 時間未満」96 件、「100 時間以上~120 時間未満」34 件、「60 時間以上~80 時間未満」11 件の順に多くなっている。

 

<過労死ライン>

過労死認定基準として「法定労働時間を上回る残業時間が1か月で100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均が80時間を超えた場合」という基準が有名です。

今回の労働基準法の改正でも、残業時間の規制に、過労死ラインが取り入れられています。

しかし、この基準さえ守れば、会社は従業員の過労死について責任を負わずに済むという絶対の基準はありません。

ましてや、基準を守っているかのような数字を作ることによって、会社の責任が消えるハズはありません。

特定の従業員に負担が集中しているのなら、たとえ本人が望んでいる場合であっても、万一の事態を想定して負担を分散しなければなりません。

また、全社的に従業員の負担が大きいのであれば、事業の存続について行政に協力を求めるべきです。

そして、それも無理なら思い切って事業の継続を見直すことも必要です。

会社の存続を人命に優先させてはなりません。

 

2018.11.11.解決社労士