最近の労働時間の実態

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<1人当たりの労働時間>

厚生労働省が公表した「平成30年版過労死等防止対策白書」では、労働者1人当たりの労働時間について次のようにまとめられています。

 

我が国の労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少している。

平成29(2017)年は前年比3時間の減少となっており、5年連続で減少している。

総実労働時間を所定内労働時間、所定外労働時間の別にみると、所定内労働時間は長期的に減少傾向が続いている一方、所定外労働時間は、平成 21(2009)年以降、増加傾向にあり、平成 28(2016)年にわずかに減少したものの、平成 29 年は前年比2時間増加の 131時間となっている。

 

ここで「所定内労働時間」とは、事業所の就業規則や労働契約で定められた、正規の始業時刻と終業時刻との間の実労働時間数のことで、休憩時間は差し引かれています。

また、「所定外労働時間」とは、早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間数のことです。

「総実労働時間」は、「所定内労働時間」と「所定外労働時間」の合計です。

 

働き方改革の影響が出る前から、総実労働時間に減少傾向が見られたことになります。

 

<労働時間減少の原因>

1人当たりの労働時間が減少傾向にある原因は、次のように説明されています。

 

一般労働者とパートタイム労働者の別にみると、一般労働者の総実労働時間は平成 21 年

を除き、2,000 時間を超えているが、パートタイム労働者の総実労働時間は横ばいから微減で推移している。

一方、パートタイム労働者の割合は、近年、増加傾向にあることから、近年の労働者1人当たりの年間総実労働時間の減少は、パートタイム労働者の割合の増加によるものと考えられる。

 

ここで「一般労働者」とは、「常用労働者」のうち「パートタイム労働者」を除いた労働者のことをいいます。原則として、正社員のように1日の所定労働時間が最も長く、1週の所定労働日数が最も多い者のことです。職場により基準が異なります。

「パートタイム労働者」は、「常用労働者」のうち次のいずれかに該当する労働者のことをいいます。やはり、職場により基準が異なります。

(1) 1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者。

(2) 1日の所定労働時間が一般の労働者と同じで1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者。

なお、1か月未満の期間を定めて雇われている者は、「常用労働者」ではないので、「一般労働者」にも「パートタイム労働者」にも含まれません。

 

いずれにせよ、手品の種明かしのような説明で、実態としては正社員の労働時間が減少していないことが分かります。

特に、「運輸業,郵便業」、「建設業」、「製造業」、「情報通信業」では、全産業平均よりも労働時間が長くなっているそうです。

 

<長時間労働の実態>

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成 30 年7月 24 日閣議決定)では、2020 年までに週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合を5%以下とすることを目標としています。

 

総務省「労働力調査」で雇用者(非農林業)の月末1週間の就業時間別の雇用者の割合の推移をみると、1週間の就業時間が 60 時間以上である者の割合は、最近では平成 15(2003)、16(2004)年の 12.2%をピークとして減少傾向にある。

平成 21 年に大きく減少した後、平成 22(2010)年に一時増加した。

平成 22 年以降は緩やかな減少を続けていたものの、平成 29 年は前年比同率の 7.7%となっており、月末 1 週間の就業時間が 60 時間以上である雇用者数は前年比で約3万人増加し、432 万人となっている。

 

結論として、長時間労働が安定して減少傾向にあるとは言えないわけです。

 

<長時間労働の担い手>

「平成30年版過労死等防止対策白書」から抽出すると、次の傾向が見られます。

 

・30 歳代、40 歳代で月末の1週間に 60 時間以上就業している者の割合が高い。

・平成 27(2015)年以降、30 代男性より 40 代男性の方が割合が高くなっている。

・女性では、他の年齢層に比べ、40 代、50 代で週 60 時間以上就業している者の割合が低い。

・企業の従業者規模によりそれほど大きな差異はない。ただ平成 29 年は、規模が小さくなるに従って、その割合が高くなっている。

・業種別に見ると、平成 29 年は、「運輸業,郵便業」、「教育,学習支援業」、「建設業」で割合が高く、「医療,福祉」、「電気 ・ ガス ・ 熱供給 ・ 水道業」で割合が低い。

 

2018.11.08.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。