2021/12/30|1,075文字
社会保険労務士の顧問契約
<法令の規定>
社会保険労務士は、依頼に応じる義務があると言われます。
その根拠となっているのは、主に次の社会保険労務士法の規定です。
【依頼に応ずる義務】
第二十条 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。 |
この条文は「開業社会保険労務士は、」から始まっています。
社会保険労務士として登録する場合、独立して開業する開業社会保険労務士の他に、企業などで勤務する勤務社会保険労務士などの形があります。
勤務社会保険労務士は、自分が働いている企業のために業務を行っているわけです。
他の会社や個人から、社会保険労務士としての業務を受けることがありません。
また、カッコ書きで「紛争解決手続代理業務に関するものを除く」と書かれています。
紛争解決手続代理業務を行えるのは、社会保険労務士の中でも研修を受け試験に合格して登録を受けた人だけです。
この人たちは「特定社会保険労務士」などと呼ばれています。
「特定社会保険労務士」は、社会保険労務士の業務にプラスアルファで紛争解決手続代理業務も行うことができるわけです。
決して、社会保険労務士の業務のうちの特定のものだけを行えるということではありません。
結局、依頼に応じる義務があるのは、開業社会保険労務士であって、その対象となる業務は、紛争解決手続代理業務に関するものを除くということになります。
<現実的な対応として>
開業社会保険労務士の業務は幅広いものです。
ですから、障害年金、企業の手続業務、助成金の申請、給与計算、就業規則の作成・改定、労使紛争の予防解決、教育・研修など、どれか1つ特定の分野に集中して専門的に行っている社会保険労務士事務所も多いのです。
また、業務経験を積んでいない新人の社会保険労務士もいます。
こうした所に、依頼があった場合に、依頼を拒めないとすると不都合があります。
依頼された社会保険労務士も困りますし、依頼した企業や個人が適切なサービスを受けられないということになりかねません。
そこで、社会保険労務士が自ら依頼を受けられないと判断した場合には、その分野に明るい、その業務経験を積んでいる社会保険労務士を紹介するようにしています。
多くの国家資格がある中、特に社会保険労務士は仲間意識が強いのではないでしょうか。
お互いにライバル視し足を引っ張り合うのではなく、強い協力関係が形成されていると感じられます。
こうしたことから、社会保険労務士への依頼を考えた場合には、どうぞお近くの社会保険労務士にお気軽にご連絡ください。