自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(平成29年)

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平成30(2018)731日、全国の労働局や労働基準監督署が、平成29年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況について、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努め、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施するなど、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいくそうです。

また、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくとのことです。

なお、労働基準関係法令違反が認められたのは、監督指導実施事業場のうち84%にあたる4,564事業場に上ります。

 

【平成29年の監督指導・送検の概要】

 

■ 監督指導を実施した事業場は5,436事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、4,564事業場(84.0%)。また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)違反が認められたのは、3,516事業場(64.7%)。             

 

■ 主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(58.2%)、(2)割増賃金の支払(21.5%)、(3)休日(4.6%)。

  

■ 主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(49.1%)、(2)総拘束時間(44.0%)、(3)休息期間(34.0%)。

 

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは61件。

 

自動車を運転するのが仕事という方々は、本当に運転好きの方が多いですね。

 

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法や改善基準告示とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうにも思えます。

しかし、運転業務を続けたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意をしてしまうかもしれません。たとえ、同意書や誓約書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに書いてありません。その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法272項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

結論として、労働基準法や改善基準告示とは違う条件で働かせてしまうと、会社など使用者が違法行為を行ったことになってしまいます。たとえ自動車運転者が同意しても、望んでいたとしても、送検されることすらあるのです。

 

2018.08.08.解決社労士