<雇用均等基本調査>
平成30(2018)年7月30日、厚生労働省が「平成29年度雇用均等基本調査」の結果(確報版)を取りまとめ公表しました。
「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に実施しています。平成29年度は、全国の企業と事業所を対象に、管理職に占める女性割合や、育児休業制度や介護休業制度の利用状況などについて、平成29年10月1日現在の状況を調査しました。
これによると、管理職に占める女性の割合は部長、課長、係長相当職で上昇しています。
【企業調査 結果のポイント】
■正社員・正職員の採用状況
平成29年春卒業の新規学卒者を採用した企業割合は21.7%。採用区分ごとに男女とも採用した企業についてみると、総合職では49.6%、限定総合職では29.4%、一般職では31.9%となっている
■女性管理職を有する企業割合
係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は10.6%、課長相当職ありの企業は17.7%、係長相当職ありの企業は19.4%となっている
■管理職に占める女性の割合
管理職に占める女性の割合は、部長相当職では6.6%、課長相当職では9.3%、係長相当職では15.2%となっている
【事業所調査 結果のポイント】
■育児休業制度の規定状況
育児休業制度の規定がある事業所の割合は75.0%。規定がある事業所について規模別にみると、500人以上で99.4%、100~499人で98.8%、30~99人で91.8%、5~29人で71.2%と、規模が大きくなるほど規定がある事業所割合は高くなっている
<憲法や法律の規定>
労働基準法には次の規定があります。
(男女同一賃金の原則)
第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
これは賃金についての差別が典型的に見られたことから、特に注意を喚起するために置かれた規定だと考えられます。
この規定だけでは、労働関係についての男女平等が徹底されませんから、男女雇用機会均等法など数多くの法令に、性別による差別の禁止が規定されています。
これらの規定の大元は憲法です。すべての法令は、憲法に違反してはならないのですが、日本国憲法には次の規定があります。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
ここには「性別」が明記されていますから、国会は差別的な法律を作れませんし、行政機関は差別的な運用ができません。裁判所も差別を許す判決を下すことはできません。
<働き方改革との関係で>
人手不足の折、法令の規定がどうあれ、女性を活用しなければ会社の業務が回りません。女性労働者についての働き方改革が必要です。
たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。
しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。
社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。
能力発揮の点で、女性が男性よりも不利な立場に置かれている職場は、まだまだ多いものと考えられます。
こうした男女間の格差を解消していくことによって生産性を向上させるのが、収益の拡大や企業の成長・発展への近道だといえるでしょう。
2018.08.07.解決社労士
東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属
大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。