パワハラ被害の思い込み

2021/05/20|1,018文字

 

<パワハラの勘違い>

職場で自分の意見が通らない、同僚から無視されている、自分だけが叱られている、したがって、「私はいじめられている」と感じる人がいます。

しかし、いつも見当外れの意見を言うので受け入れてもらえない、やがて同僚は相手にしなくなる、そして、上司は同じ注意を何度も繰り返すうちに声が大きくなるというように、本人に原因がありそうな事例もあります。

 

<東京地裁 平成22(2010)年9月14日判決>

訴えを起こした人は、一般事務を担当する正社員でした。

しかし、身体、精神の障害により業務に耐えられないなどとして解雇されてしまいました。

これに対して、解雇権の濫用であり不当解雇なので解雇は無効であること、社長や上司による集団的いじめや嫌がらせを受けて多大な精神的苦痛を被ったので慰謝料などを請求すると主張したのです。

 

裁判で認定されたその人の働きぶりは次の通りです。

 

書類をファイルする場所を間違えることが多かった。

電話対応に問題があり、たびたび助言を受けていた。

仕事に慣れるペースが遅かった。

勤務態度について、上司からかなり厳しい注意を受けていた。

教育指導的観点から少しでも業務遂行能力を身につけさせるために、日報の作成を命じた。

ところが、失敗に対する反省を書かないので、上司が業務の反省点や改善点も記入するように指導した。

それでも書き漏れが多かった。

顧客から電話応対について感じが悪いとクレームを受けたため、ミーティングを開くなどして、本人に改善を求めたが受け入れなかった。

 

この裁判の判決では、社長や上司たちには、いじめや嫌がらせの動機や目的が無いものとされ、訴えを起こした人の請求は退けられました。

 

<解決社労士の視点から>

上記の事例では、訴えを起こした人に対して、上司などが熱心に教育指導していることがわかります。

これはこれで大事なことです。

しかし、そもそもこのような人を採用しないことは、教育以上に大事だと思います。

採用した会社側にとっても負担が大きいですし、採用された側も自分の能力を超える要求をされて苦しいからです。

また、人事考課制度の適正な運用によって、働き手ひとり一人の能力や適性を明らかにしておくことも必要です。

ただ、こうした専門性の高いことについて、社内に専任の担当者を置くことがむずかしいかもしれません。

そのような会社では、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命いただくことをご検討ください。

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