管理監督者の規定は必要か(立法論)

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<管理監督者の特例>

労働基準法412号に、管理監督者には残業手当の支払いが不要である旨の規定があります。

 

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

<深夜割増賃金の支払い>

管理監督者に対しても、深夜割増賃金(深夜手当)は支払う必要があるというのが判例です。〔最二小判平成211218日〕

また、この最高裁の判決は、管理監督者の賃金が就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、深夜手当を支払う必要がない場合もあると判示しています。

十分多額であれば、深夜割増賃金込みの給与にしても良いということです。

 

<管理監督者の条件>

管理監督者と認められるためには、ただ役職者だというだけではダメです。

タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を有していない場合には、管理監督者とは認められません。〔ほるぷ事件 東京地裁判決 平成981日 など〕

 

一方、タイムカードに打刻すべき義務を負っているものの、それはせいぜい拘束時間の長さを示すだけにとどまり、その間の実際の労働時間は自由裁量に任せられ、労働時間そのものについては必ずしも厳格な制限を受けていないというのなら管理監督者の条件を満たしうるとされています。〔医療法人徳州会事件  大阪地裁判決 昭和62331日〕

 

結局、厳密な労働時間の管理を受けている労働者は、管理監督者として扱うことができないわけです。

厚生労働省や労働局のパンフレット類やホームページなどでも、このことが詳しく説明されています。

 

<計算不能な深夜手当>

管理監督者の深夜手当を計算するには、午後10時から翌朝5時までの深夜時間帯の勤務時間を集計しなければなりません。

しかし、勤務時間を厳格に管理されている労働者は、管理監督者の条件を満たしていません。

つまり、管理監督者ならきちんと深夜手当を計算できないし、きちんと深夜手当を計算できる労働者は管理監督者ではないということになります。

 

そもそも、深夜時間帯の勤務時間を厳密に把握されているようでは、経営者と一体的な立場で仕事をしているとはいえません。

 

<誤った運用の実態>

役職名を付ければ残業代を支払わなくて良いという誤解に基づき、実際に一定以上の役職者に残業代を支払わないという運用が横行していました。

しかし、「名ばかり店長」という言葉で有名になった日本マクドナルド割増賃金請求事件判決(東京地方裁判所平成20128日判決)以降は、企業に対する「名ばかり管理職」からの未払い賃金請求訴訟が増え、労働者側が勝訴していく中で、企業側の認識と運用が改善されつつあります。

 

マスコミのいう「名ばかり店長」「名ばかり管理職」というのは、労働基準法の用語でいえば、「名ばかり管理監督者」ということになるでしょう。

その実態としては、それらしい肩書と責任が与えられ、権限と残業代は与えられないというものです。

 

厚生労働省や労働局のパンフレット類やホームページなどには、管理監督者の条件が詳しく説明されているのですが、その理解はむずかしく、具体的な事例に当てはめて判断するには、社会保険労務士(社労士)などへの相談が不可欠でしょう。

 

<管理監督者の規定は不要ではないか>

労働基準法の管理監督者の規定を削除しても不都合はないと考えられます。

一般の労働者として扱い、深夜手当だけでなく、残業手当や休日出勤手当を支給することにしても問題はないでしょう。

 

経営者と一体的な立場で仕事をしているのなら、会社と労働契約を交わす労働者ではなく、会社と委任契約で結ばれた取締役などの地位にあるのが自然です。

取締役ならば、労働者と兼務の立場にない限り、労働基準法の適用はありません。深夜手当、残業手当、休日出勤手当などの支払いもありません。

 

私個人の見解に過ぎませんが、「管理監督者」というのは、企業と労働者との関係を規律する労働基準法に取締役が割り込んでいるような印象を受けます。

 

2017.11.04.解決社労士