労働時間の制限について思うこと(立法論)

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<8時間労働>

労働基準法には、次の規定があります。

 

(労働時間)

第三十二条 2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

8時間労働の考えは、1817年にイギリスのロバート・オーウェンという人が、「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」というスローガンを唱えたのが始まりのようです。労働者の健康を平等に保障しようとしたわけです。

 

複数の人々の間に共通する要素があって、その共通する要素に着目して、同じ扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、平等の考え方です。

労働者としての地位の確立と、労働条件の改善を求める労働運動を展開するには、同じ労働者として共通の基準である8時間労働を共有するのが、わかりやすかったのだと思います。

 

<働き方改革>

労働基準法ができて322項が8時間労働を定めたのは昭和22年(1947年)ですから、今から70年も前のことです。

今では、働き方改革が唱えられるようになっています。女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現しようという考え方です。

これは、平等ではなくて公平の原理に基づくものです。

 

複数の人々の間に相違する要素があって、その違いに着目し、違いに応じた扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、公平の考え方です。

労働から生じるストレスや健康障害は、業務の内容、人間関係、労働環境などの違いによって大きな個人差を生じます。

また、個人の生まれつきの資質、私生活、通勤など会社が改善できないものによっても影響を受けています。

現に、8時間も働きたくない、働けないという人もいますし、もっと働いて収入を増やしたいという人もいます。

こうしたニーズに対応するのが、公平の原理であり、働き方改革もこうした内容を含んでいると考えられます。

 

<あくまでも立法論として>

2019年から施行される予定で、残業時間に上限を設ける規制をする法改正の準備が進んでいます。罰則付きです。

これは、日本国憲法の次の規定の趣旨にも合致します。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

一方で、労働契約というのは、契約自由の原則により労働者と使用者の合意に基づいて自由に決められるべきものです。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

(労働契約の原則)

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

以上のことから、次のようにできないかと思っています。

・所定労働時間は労働者と使用者の合意により自由に定める。

・ただし、2019年施行予定の制限を超えることはできない。

・所定労働時間を超える労働については割増賃金を支払う。

 

今の労働基準法では、法定労働時間を超える労働について、時間外割増賃金を支払うルールですが、所定労働時間を基準にしたらどうかということです。

現在でも、所定労働時間を超える労働に対して割増賃金を支払っている企業があります。これを、すべての企業の統一ルールにできたならと思います。

 

この考えによれば、たくさん働きたい人は、110時間を所定労働時間とすることも許されるようになります。現行法では無理ですから、あくまでも立法論です。

これは、日本人は働き過ぎだという批判に逆行するようにも見えますが、平均値としての労働時間は減少させつつも、たくさん働きたい人のニーズを満たすのも働き方改革の内容に含めて良いのではないでしょうか。

 

今後、こうした議論が深まることを期待しています。

 

2017.10.31.解決社労士