民法改正の未払い残業代請求への影響

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<民法改正>

平成29年5月26日に民法改正案が参議院を通過し、成立した改正民法は、6月2日に公布されました。これによって改正民法は、平成32年6月1日までに施行されることになります。

民法の改正は、労働関係には影響が無いように見えます。しかし、労働契約も契約の一種ですから、民法は労働契約に適用されます。

 

<未払い残業代請求権の消滅時効は2年>

民法167条1項は、債権の消滅時効期間を原則10年と規定しています。しかしこの例外として、民法174条1号が一般的な給与の消滅時効期間を1年と定めています。これでは、未払い賃金がある場合に、一定の手続きを取らなければ、労働者は1年で請求権を失ってしまうことになります。

これを救済するために、労働基準法115条は、賃金などの消滅時効期間を2年と定めています。労働基準法は民法の特別法ですから、矛盾する規定があれば、労働基準法が優先されるというルールです。

こうして、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在2年となっています。実際、労働基準監督署が企業に監督に入った場合でも、未払い残業代の支払いについては、最大2年間まで遡っての指導となっていて、それ以上前の支払いまでは指導していません。

 

<民法改正による矛盾の発生>

改正民法は、債権の消滅時効期間を、権利者が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できるときから10年としました。

これは労働基準法の定める2年よりも長いのです。「労働基準法は民法の特別法だから、矛盾する規定があれば労働基準法が優先される」というルールを当てはめてしまうと、労働者が未払い賃金を請求する権利は、一般の債権よりも短期間で時効消滅してしまうことになります。

これでは労働者を保護するための労働基準法は、その役割を十分に果たせません。

 

<矛盾解消のための労働基準法改正?>

あくまでも個人的な予測ですが、労働基準法115条は削除されると思います。

 

労働基準法115条 賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

 

退職手当というのは退職金のことで、この請求権は現在の消滅時効期間が5年です。

この条文が削除されれば、労働基準法と民法との矛盾は発生しませんし、未払い残業代の請求権についての消滅時効期間は、現在の2年から5年に延長されて労働者の保護も強化されます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

もちろんブラックな話ですが、「未払い残業代が摘発されたら過去2年分を支払えばいい」と考えている経営者の方もいらっしゃるでしょうか。

しかし、この「2年分」が「5年分」に変更されたら、会社は耐えられないかもしれません。

そもそも、未払い残業のある会社では、ごまかすために労働時間の管理がいい加減になっているものです。これが、社員のサボりや手抜きを助長していたり、働き以上の賃金を支給する原因となっていたりもします。

残業代込みの賃金という約束ならば、それを合法的に制度化し正しく運用すれば良いのです。

突然の法改正で困らないためにも、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.20.解決社労士