労働条件通知、就業規則、三六協定はすべて必要か

2022/12/13|1,331文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、故意に交付しないのは犯罪となり、30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

従業員1人につき30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。

労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものです。

 

<就業規則>

労働者が10人以上になったら、労基署に届出が必要です。

このことは、良く知られています。

しかし就業規則が無いと、どんなに細かいことでも労働条件通知書などに記載しておかなければ効力がありません。

労働者が知らないのに、これは会社のルールだと言っても通用しないのです。

口頭で説明しても「聞いてないよ」と言われればアウトです。

また、就業規則や労働条件通知書に書いていなくても「法律通り」にすればよいと思う経営者の方々も多いようです。

ところが、法令には「労使で協議して決める」とか、「3つの中から会社の実情に合わせて決める」という規定もあるのです。

ですから「法律通り」と言っても何も決まっていないことがあります。

特に懲戒処分については、何をやらかしたら、どんな懲戒処分になるかなどは、重要なのに法令には何も規定されていません。

こうしたことから、すべてを労働条件通知書などに書いておくことは、現実的ではありません。

やはり一人でも従業員を雇ったら、就業規則が必要でしょう。

 

<三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。

また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

たとえば、ある会社の正社員の所定労働日数が週4日で、1日の所定労働時間が6時間ならば、1週間の所定労働時間は24時間です。

この場合、どの日も2時間以上の残業はありえず、どの週も16時間以上の残業はありえないというのなら、三六協定は不要です。

なぜなら、この協定は法定労働時間を超える場合に必要となるので、所定労働時間を超える場合でも法定労働時間以内なら必要がないということになるからです。

とはいえ、ほとんどの会社がそうであるように、18時間週5日勤務の社員がいる会社では、三六協定書の作成と労基署への届出は必須です。

 

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