2022/10/13|811文字
<保険者算定>
一般的な方法によって報酬月額が算定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者等(年金事務所など)が特別な算定方法により、報酬月額を決定することとしています。
この算定方法を「保険者算定」といいます。〔健康保険法第44条、厚生年金法第24条〕
算定対象月に減給処分があった場合は、まさにこの「保険者算定」をする場合にあたります。
ところが、このケースは特殊なので手引き類にも見当たりません。
ですから、直接、年金事務所や協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に問い合わせるということになります。
実際、健康保険組合によってルールが違うようですし、すべての年金事務所で同じ回答が得られる保証もありません。
ただ、随時改定については「減給処分は固定的賃金の変動にはあたらない」という運用基準がありますから、減給処分がなかったものとして修正平均額を算出するのが主流と思われます。
<別の視点から>
減給処分は、一つの懲戒処分では平均賃金の1日分の半額が限度です。〔労働基準法第91条〕
これは、月給が30万円だと、30万円 ÷ 30日 ÷ 2 = 5千円というのが限度額になります。
また、いくつもの懲戒処分が重なった場合でも、その総額は賃金1か月分の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕
これは、月給が30万円だと、30万円÷10=3万円というのが限度額になります。
そして、ある月に減給処分があっても算定対象月は3か月ありますから、その影響は1つの懲戒処分で1,667円、複数の懲戒処分が重なって1万円が限度ということになります。
もし、定時決定(算定基礎届)の担当者が、算定方法に悩むほどの減給であれば、労働基準法の限界を超える減給がされていないかをチェックする必要がありそうです。
つまり、減給処分により定時決定をどうするかという問題ではなく、そもそもその減給処分が適法なのかといういう問題があるということです。