残業代(時間外割増賃金)の不正受給

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<新聞の報道>

令和元(2019)年5月16日、北海道新聞が次のように報じました。

 

 函館市消防本部(近嵐(ちかあらし)伸幸消防長)の職員少なくとも数人が2017年度、深夜勤務中の出動では支払われない時間外手当を不正に受給していたことが15日、同本部への取材で分かった。深夜勤務中の時間外手当は本来、仮眠(休憩)中の職員が出動した場合に発生。同本部は職員約280人を対象に、関係書類が残っている15年度以降の深夜勤務の状況について調査を進めている。

 市に3月29日、「市内の消防署で18年3月まで、夜間勤務時間帯に時間外勤務手当の不正受給があった」という趣旨の匿名の手紙が届いたことで発覚。同本部が勤務関係書類などを調べたところ、17年度中に数人の不正受給があったことを確認した。同本部によると、本部や消防署などには、深夜の災害発生などに備えて職員が待機し、交代で仮眠を取っている。災害発生時に仮眠していた職員が出動すると、少なくとも1人1時間1200円の時間外手当が支給される。

 近嵐消防長は「職員が提出する勤務記録の確認が不足していた」と釈明。同本部は「不正受給分については返還を求める」(庶務課)方針で、まずは17年度分の調査結果について近く発表する。(藤山洸一郎)

 

<不当利得の返還>

意図して時間外手当を不正に受給した場合でも、受給した側に過失が無かった場合でも、本来の受給額を上回る部分は返金されなければなりません。

不当利得の返還です。〔民法第703条、第704条〕

 

<詐欺罪の成立>

時間外手当を不正に受給したのが故意によるものであったなら、詐欺罪が成立し、法定刑は10年以下の懲役です。〔刑法第246条第1項〕

「何年も前から皆がやっているのだから大丈夫」と思っていても、それは言い訳に過ぎず、むしろ常習犯ですから犯情が重くなってしまいます。

この場合には、職場での懲戒処分が行われる可能性も高いでしょう。

 

<不適切な労務管理の代償>

上の事例で、消防長は「職員が提出する勤務記録の確認が不足していた」と認めています。

勤務記録を十分に確認していれば、不正受給を防げたということでしょう。

意図せず不正受給をした職員でも、数年分の不正受給の返還を求められるのですから、経済的な負担は小さくありません。

また、不正受給を防ぐということは、詐欺罪の成立を防止することにもなります。

過去からの習慣や出来心で犯罪に走る職員が発生しないようにすることも、使用者に求められる役割です。

上の事例は、消防本部や消防署のものですが、一般企業であっても、労働時間の適正な把握、十分な労務管理、正しい給与計算が求められます。

このことが、会社だけでなく従業員を守ることになるのです。

 

2019.06.25. 解決社労士 柳田 恵一