就業規則のひな形の使い方(昇給)

LINEで送る

<賃金カット>

会社の経営が思わしくなく、一時的に賃金カットを実施したくても、労働者の「自由な意思による同意」が無ければむずかしいのです。

社長が社員全員を集めて説明し、一人ひとり説得を試みたとしても、誰だって給料を減らされるのはイヤです。

ヘタをすると、どの会社でも通用する優秀な社員だけが退職していき、残ったメンバーでは…ということになりかねません。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる不都合なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(昇給)

第47条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年    日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

この条文は、次のことを言っています。

・毎年、定期昇給を行うが、特別な事情があれば行わないこともある。

・臨時昇給もありうる。

・昇給額については、個人ごとに決める。

結局、この規定は昇給についてのみ述べていて、賃下げについては述べていません。

 

<就業規則の変更による場合>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が、次のような事情に照らして合理的であることが必要です。〔労働契約法第10条〕

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

実際に、これらの条件が充分にそろっていることを証明するというのは、使用者にとって大変むずかしいでしょう。

賃金は少し下がるけれど、福利厚生が大幅に充実するなど、労働者が同意して当然と言えるような事情があれば、むずかしくないこともありますが。

 

<2つの方法>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、会社が経営不振に陥らないようにすることです。これは、当たり前のことですが、常にできることではありません。

もう1つは、就業規則の規定を「昇給」ではなくて、次のように「給与改定」としておくことです。

 

(給与改定)

第47条 給与改定は、毎年    日をもって行うものとする。

2 特別な事由が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず臨時の給与改定を行うことがある。

3 昇降給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

 

そして社員には、「会社の状況によっては賞与や給料が減ることもある。会社が儲かっている時は社員に還元するので、会社が苦しい時には耐えて欲しい」という説明をあらかじめしておくのです。

さらに、経営不振でもいきなり人件費削減ではなく、まずは役員報酬のカット、そして不採算部門の縮小、新人採用の停止など手を尽くしたうえで実施するという説明もしておけば、社員にはそれなりの覚悟ができますし、イザというとき納得も得られやすいものです。

社員には、こういう覚悟をもって仕事をしていただいた方が、生産性が向上するのではないでしょうか。

 

2019.05.14. 解決社労士 柳田 恵一