会社に義務付けられている社内預金の保全

LINEで送る

<社内預金の趣旨>

労働契約に付随して、強制的に貯蓄金を管理する契約を行うことは禁止されています。

しかし、労働者が任意に貯蓄金の管理を使用者に委託する場合には、労使協定の締結・届出、貯蓄金管理規程の作成、利子をつけることなど一定の条件を満たすことにより、預金を受け入れる社内預金を行うことが認められています。〔労働基準法第18条〕

 社内預金は福利厚生の一環とされますが、預金された資金は事業の運転資金として活用することができます。 ただし、原資はあくまでも労働者の賃金です。

したがって、預金の安全性の確保が最も重要な課題であり、保全措置を講ずること、利子は利率の最低限度である下限利率以上とすること、預金者一人当たりの預金額の限度を定めることなどが義務付けられています。 

 

<預金の保全>

預金の保全については、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて一定の保全措置を講ずることとされています〔賃金の支払の確保等に関する法律第3条〕

その具体的内容は、賃確法施行規則第2条で以下のように定められ、労使協定でどの方法によるのかを明確にする必要があります。ただし、複数を併用することも差し支えありません。

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約を締結すること

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務の額に相当する額につき、預金を行う労働者を受益者とする信託契約を信託会社または信託業務を営む金融機関と締結すること

・労働者の事業主に対する預金の払戻しに係る債権を被担保債権とする質権または抵当権を設定すること

・預金保全委員会を設置し、かつ、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理することその他適当な措置を講ずること 

 

<預金保全委員会>

預金保全委員会の構成員の半数については、その事業主に使用されている労働者であって、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の推薦を受けたものとすることが必要です。

預金保全委員会には次に定める事項を行わせます。

・事業主から労働者の預金の管理に関する状況について報告を受け、必要に応じ、事業主に対して当該預金の管理につき意見を述べること

・労働者の預金の管理に関する苦情を処理すること

事業主は、3か月以内ごとに1回定期に、また預金保全委員会からの要求の都度、労働者の預金の管理に関する状況について預金保全委員会に対して書面により報告を行わなければなりません。

また事業主は、預金保全委員会の開催の都度遅滞なく、その議事の概要および預金保全委員会に報告した労働者の預金の管理に関する状況の概要を各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法によつて労働者に周知させることが義務づけられています。

さらに、預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存することが必要です。 

 

<保全措置を講じていない場合>

保全措置を講じていない事業主に対しては、労働基準監督署長が文書により保全措置を講ずべき旨の命令を出すことができます。〔賃確法第4条、施行規則第3条〕

また、保全措置が講じられていない事業場が倒産した場合の貯蓄金については、株式会社で会社更生法が適用される場合は、更生手続開始前6か月間の給料の総額に相当する額、またはその預り金の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権として優先的に扱われます。〔会社更生法第130条〕

しかし、破産や民事再生の手続きを採った場合には、優先度の低い債権として扱われることになります。

 

2019.05.07. 解決社労士 柳田 恵一