従業員が9人以下の会社にも就業規則を

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<就業規則の作成義務>

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出義務を負わせています。

このことから9人までの会社は、就業規則が無くても違法ではないといえます。

たとえ所轄の労働基準監督署が監督(調査)に入ったとしても、就業規則のことで指摘を受けることはありません。

しかし、従業員の少ない会社で就業規則が無いと、明確な基準が無いために、知らず知らずのうちに不平等や不公平が発生し、従業員の中に不満が芽生えて転職のきっかけとなるリスクは高まってしまいます。

しかも、懲戒処分は就業規則に具体的な規定が無いと、不適法とされ無効とされる可能性が高まるなど、問題社員への適切な対応が困難になってしまいます。

 

<労働条件の通知義務>

就業規則を作成していない会社であっても、誰か1人でも採用すれば、採用した人に対して、労働時間、賃金、退職に関する事項などにつき、書面を交付する義務を負っています。〔労働基準法15条1項〕

そのため、雇用契約書を交わしたり、会社から労働条件通知書(雇い入れ通知書)を渡したりしています。

これを怠ることは、もちろん労働基準法違反になるわけですが、待遇について具体的な内容を伝えていないと、残業や年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

中には「残業代は支払わない。有給休暇は取らせない。だから関係ない」という経営者もいるのですが、多くの場合、労働者の権利を主張してくるのは、在籍している従業員ではなくて、退職後の元従業員です。しかも、弁護士や社会保険労務士に相談したうえで請求してきますから、慰謝料を含め請求できるものはすべて請求してくる形となりやすいのです。

このときに、労働条件を示した書面が無いと、無いことそのものが会社側の落ち度ですから、元従業員の主張を認めざるを得なくなってしまいます。裁判にでもなれば、会社に有利な証拠を見つけるのが困難になってしまいます。

 

<会社の義務は単に負担なのか>

法令が会社に対して何かを義務付けているとなると、会社の負担になることばかりが目についてしまいます。

しかし、労働基準法が義務づける就業規則や労働条件通知書というのは、会社にとっても助け船になると考えられます。

何かトラブルが発生した場合には、就業規則や労働条件通知書が、会社のことも、まじめに働く社員のことも、問題社員から守ってくれるからです。

雇用契約書に、セクハラの禁止、会社の物品の持ち出し禁止、パソコンの個人的使用の禁止など、記載しておけば、言った言わないの世界にはなりません。

どのような場合に懲戒解雇となるのか、きちんと文書化しておけば不当解雇の指摘も避けることが可能になります。

今や懲戒については、就業規則や雇用契約書に規定しておかないと、無効とされるのが当たり前です。

世間の実態としては、労働者側から不当解雇や懲戒処分の無効を主張して会社と争ったら、半分以上は勝っていると思われます。

 

<労働時間の認定でも>

会社に労働基準監督署の監督(調査)が入った場合、雇用契約書や労働条件通知書に始業時刻・終業時刻が記載されていれば、これを基準に労働時間がチェックされます。休憩時間についても同様です。

しかしこれが無ければ、労働基準監督署は、従業員が会社に来た時点から会社を出た時点までのすべてを労働時間と認定せざるを得ません。

従業員から「忙しくて休憩は取れませんでした」という声があれば、休憩時間ゼロと認定されることもありうるのです。

 

<結論として>

会社を守るには、きちんとした雇用契約書や労働条件通知書が役に立ちます。

もし、複数の従業員に共通する内容が多いのであれば、それらをまとめて就業規則を作っておいた方が楽です。

あれもこれも労働条件通知書に記載していたら、A4判で10ページでは足りないことでしょう。しかし、そこまで充実した労働条件通知書は見たことがありません。

「本通知書に定めの無い事項については就業規則による」と書いておくのが現実的な運用となっています。

そして、従業員が9人までであれば、就業規則を作っても変更しても労働基準監督署長に届け出る義務は無いのです。

事務手続きの負担が軽いうちに、就業規則を作成し備えておくことをお勧めします。

 

2018.06.29.解決社労士