長時間労働の改善事例

<令和4年版 過労死等防止対策白書>

令和4(2022)年10月21日、政府が過労死等防止対策推進法に基づき、「令和3年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和4年版 過労死等防止対策白書)を閣議決定しました。

この中で、長時間労働を行っていた事業場の是正事例が、建設業と製造業で1件ずつ紹介されています。

参考のため、会社が実施した改善策について、引用させていただきます。

 

<建設業の事例>

1.労働時間管理方法の見直し

時間外・休日労働時間数について日々確認し、その時点での累計実績及び協定で定める上限に達するまでの残り時間数を所属長に通知し、企業全体として長時間労働の抑制を徹底する仕組みを構築。

2.デスクカーの導入

事務スペースのない工事現場にデスクカー(机・椅子が完備された車両)を導入し、現場においても事務作業を行える環境を整備し、持ち帰り残業を解消。

3.発注者への協力依頼

業務過多となりうる状況下での受注があった際、発注者に対して着工日、工期等の条件の交渉を行い、長時間労働の抑制に繋げる。

4.健康障害防止対策の見直し

1か月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えた労働者に対し、疲労度を自己診断するチェックリストの提出を求めるとともに、所属長との面談を実施。

これらの結果を踏まえ、産業医が面談の必要性を認めた場合は、対象労働者の面談希望の有無にかかわらず、産業医との面談を実施する仕組みを構築。

また、毎月、産業医による健康障害防止に関する講話の機会を設け、労使間での問題意識の共有及び防止の徹底を図る。

 

<製造業の事例>

1.人員の確保

新卒及び中途採用を積極的に実施し、27人を新規に採用。

2.定年後再雇用年齢の引き上げ

就業規則を変更し、定年後再雇用の年齢上限を65歳から68歳に引き上げ。

3.納期の調整

受注が重なることで作業量の増加が見込まれる場合には、早期に納期の調整を行い、業務の平準化を図った。

4.業務効率化のための設備投資

事務作業について新規にシステムを導入し、作業時間を削減。

これまで事務作業に従事していた労働者を繁忙部署に従事させ、業務の平準化を図った。

 

<実務の視点から>

建設業の事例では、健康障害防止対策に産業医を活用する仕組みの構築が含まれています。

製造業の事例では、27人を新規に採用しています。

これらのことからは、どちらも大規模事業場であることが窺われます。

デスクカーや新システムの導入のような設備投資は、大きな企業ならではの対応かもしれません。

しかし小さな企業であっても、建設業の事例での労働時間管理方法の見直しのように、多額の経費をかけずに実施できる取り組みもあります。

また、発注者への協力依頼や納期の調整は、取引先に対して労働基準監督署の是正勧告があった事情を明かしての依頼ではないでしょうか。

所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入って、法令違反を指摘され是正を求められたなら、これをきっかけとして、可能な範囲で積極的に改善に取り組みたいものです。

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