身元保証契約の効力は失われやすい

2022/05/31|1,189文字

 

<身元保証とは>

身元保証というのは、労働者が企業に損害を与えた場合に、労働者本人以外の第三者にも賠償金支払の責任を負わせる契約です。

企業に大きな損害を与えやすい労働者といえば、権限の広い正社員が思い浮かびますから、多くの企業は正社員限定で身元保証を求めています。

しかし必要に応じて、契約社員、パート、アルバイトなど非正規社員に身元保証を求める企業もあります。

 

<身元保証人の適格性>

身元保証は、企業が損害の賠償を得られるようにするための契約ですから、安易に同居の親族を身元保証人にするのではなく、賠償責任を果たせるだけの資力・財産を備えた人物を選ばなければなりません。

一方で、身元保証人になることを依頼された場合には、親類だから、知り合いだからと安易に引き受けるのではなく、慎重に判断する必要があります。

 

<身元保証書の提出義務>

入社にあたって身元保証書の提出を求めることは、長年にわたって広く行われてきた企業一般の習慣です。

就業規則や労働条件通知書などに規定を置いて、身元保証書の提出を採用条件としたり、採用後に身元保証書を提出しないことを理由に採用取消としたりすることは、採用の時点でそのルールが知らされていれば違法ではありません。

しかし、採用の時点では説明が無かったにもかかわらず、採用後に身元保証書の提出を求められた場合であれば、提出しないことを理由に解雇を通告するのは不当解雇になると解されます。

 

<身元保証の法規制>

身元保証契約は連帯保証となっていることが多いため、身元保証人が多額の賠償金支払い義務を負ってしまうことがあります。

これを制限するため、身元保証契約が連帯保証となっている場合には、違約金および損害賠償の額についての限度額(極度額)を設けておかなければ、契約の効力が認められません。〔民法第465条の2第2項〕

 

<身元保証ニ関スル法律>

さらに、身元保証人の責任が予想外に過大にならないよう、「身元保証ニ関スル法律」によって、その責任が次のように軽減されています。

・期間を定めなければ3年間、期間を定めても最長5年間で終了

・契約は更新できるが最長5年間で終了

・労働者に業務上の不適任や不誠実な行動が見られて、身元保証人の責任が発生する恐れがあったときは、企業から身元保証人に対して直ちにその事実を通知しなければならない

・労働者の業務内容や勤務地の変更によって、身元保証人の責任が重くなる場合や労働者の監督が難しくなる場合は、企業から身元保証人に対して直ちにその事実を通知しなければならない

・身元保証人はこれらの通知を受けて、解約を解除できる

つまり、有効な身元保証契約が締結されても、いつの間にか効力を失っているということもあるわけです。

企業としては、身元保証契約を締結しても安心できるわけではなく、その有効性をチェックし続けなければならないことになります。
 

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