今日の明日年次有給休暇を申し出ても良いのか

2022/03/29|1,336文字

 

年次有給休暇はさかのぼって取得できるのか

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則には、従業員が年次有給休暇を取得する場合の社内手続についての規定がありません。

しかし、一般には「14日前までに上長に年次有給休暇取得届を提出」などの規定が置かれます。

ある従業員が年次有給休暇を取得することによって、他の従業員のシフト調整が必要になることもありますし、同じ部署で複数の従業員が同じ日に年次有給休暇を指定すると、全員の希望を叶えられない場合もあるため、ある程度の期間は前もって取得日を指定してもらう必要があるからです。

したがって、こうした必要の範囲を超えて、たとえば「3か月前までに申出」といった規定を置くことは、従業員の年次有給休暇の取得を妨げることになり、労働基準法の趣旨に反してしまいます。

 

<法的な権利>

従業員には年次有給休暇の時季指定権がある一方で、会社側には時季変更権があります。

ですから、従業員が年次有給休暇の取得を申し出るにあたって、時季変更権の行使ができないような、たとえば当日の申出などは原則としてできません。

もっとも、この場合でも、一定の場合に会社側が時季変更権の行使を放棄するルールであれば、当日の申出も、日付を遡っての申出も可能ではあります。

結局、就業規則に「14日前までに上長に年次有給休暇取得届を提出」などの規定が置かれていても、労働者の権利としては、前日までに申し出れば良いということにはなります。

ただし、こうした場合には、会社側が時季変更権を行使するケースも多いと思われます。

 

<誠実な権利の行使>

年次有給休暇は、いうまでもなく労働基準法に規定された労働者の権利です。

だからといって、会社側の都合を無視して年次有給休暇を取得できるということではありません。

労働契約法第3条には次の規定があります。

 

【労働契約法第3条:労働契約の原則】

第4項 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

第5項 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

労働者が年次有給休暇を取得するにあたっても、会社側が年次有給休暇を取得させるにあたっても、信義に従い誠実に行うことが必要です。

また、労働者が年次有給休暇の権利を濫用するのもいけません。

権利を濫用し、信義に従い誠実に義務を履行しないのは、典型的な問題社員の態度です。

こうした態度を見せる従業員には、上記の労働契約法の趣旨を説明することをお勧めします。

 

<解決社労士の視点から>

やむを得ない事情があって、直前になってから年次有給休暇の取得を申し出ることもあるでしょう。

こうした場合には、できれば事前に「急に休むことでご迷惑をおかけします」といった挨拶を、上司や同僚にしておくことが社会人としてのマナーでしょう。

また、事前にお詫びしたからそれで良いということではなく、事後に「急なお休みをいただきご迷惑をおかけしました」といった挨拶も必要です。

職場の協調性を保つためには、これらのことが当然に求められるわけですが、中にはピンと来ない従業員もいるかもしれません。

そうした人には、上司から丁寧な説明をしておくことをお勧めします。

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