労働時間になるならないの境界線

2021/09/22|1,293文字

 

労働時間

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものですし、抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

会社の業務との関連性がある程度薄かったり、使用者の指揮命令関係から解放されていると断定できなかったりと、グレーゾーンにある時間帯が問題となります。

 

<業務の開始に必要な準備行為>

就業時間中に着用を義務づけられている制服や、特定の作業を行う場合に必ず着用することになっている作業服に着替える時間は労働時間です。

もちろん、出勤してきたときの元の私服に着替える時間も労働時間です。

これらは、明らかに使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間だからです。

これに対し、労働者が自分の好みで勤務中の私服を準備し、通勤中の私服から着替える時間は労働時間とはなりません。

会社が、業務の開始に必要と認めている行為ではなく、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価されないからです。

 

<待機時間>

仮眠室で待機するものとされ、警報や電話があれば、すぐさまこれに対応することが義務付けられている場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され労働時間とされます。

これに対し、仮眠時間が休憩時間として扱われ、労働からの解放が保障されている場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価されず労働時間とはされません。

ごくまれに、緊急対応することがあったとしても、業務として待機を命じられているのでなければ、労働時間とはされません。

タクシーの運転手が客待ちの待機をする時間、バスの乗務員が乗務開始まで待機する時間、建設労働者が前工程の完了を待って待機する時間、店員がお客様を待って待機する時間などは、労働時間に該当することになります。

 

<休憩時間>

休憩時間は、自由に利用できる時間であり、労働からの解放が保障されていれば労働時間とはなりません。

しかし、「午後2時から4時の間で、お客様のいない時に休憩する」というのは、待機時間に他なりませんから労働時間となります。

こうした誤った休憩の与え方で、労働基準法違反となっている職場も散見されます。〔労働基準法第34条第1項、第3項〕

 

<住込みのマンション管理員>

住民の期待もあって、時間外に宅配便を預かっておく、住民からの連絡で汚れたエレベーター内の清掃をする、早朝にゴミの整理をする、深夜に設備の故障に対応するというのが実態という、住込みのマンション管理員もいます。

管理会社からの包括的な指示があれば、これらはすべて労働時間となります。

また、管理会社が実態を知りつつ放置している場合には、黙示の指示があったものとされ労働時間となることが多いと考えられます。

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