障害者差別解消法改正

2021/09/19|1,219文字

 

解決社労士のご紹介

 

<障害者差別解消法の改正>

国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25(2013)年6月、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が制定され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

そしてこの障害者差別解消法が、令和3(2021)年5月に改正され、同年6月4日に公布されました。

この日から起算して、3年を超えない日に施行されることになっています。

 

<改正による企業への影響>

改正前の障害者差別解消法でも、障害を理由とする不当な差別的取扱については、行政にも民間企業にも禁止していました。

しかし、障害者に対する合理的配慮については、行政に対して義務付けるものの、民間企業に対しては法的義務ではなく、「努めなければならない」という努力義務に留めていました。

今回の改正によって、民間企業にも法的義務として、合理的配慮の提供が求められることとなります。

 

<企業に求められる合理的配慮>

改正法が企業に求める合理的配慮の提供とは、障害者の機会や待遇を健常者と平等に確保し、支障となっている事情を改善・調整するための措置を講じることです。

障害者の採用や雇用での合理的配慮については、障害者雇用促進法で義務化されているわけですが、障害者差別解消法は雇用以外のすべての分野を対象にしています。

ですから企業は、障害のあるお客様が商品やサービスを利用するにあたって、合理的配慮の提供が義務付けられることになります。

障害を理由に入店やサービス提供の受付を拒否したり、障害者を無視して周囲の支援者や介助者のみに話しかけたりすることは差別にあたります。

また、企業側の負担が重すぎる場合には、できない理由の説明や代替案の提示により、障害者の理解を得るようにすることが必要です。

 

<企業の具体的な対応>

一口に障害者と言っても、車椅子使用者や白杖を持つ視覚障害者のように外見からすぐに分かるお客様ばかりではありません。

聴覚や発話の障害、知的障害や精神障害、感覚過敏のお客様など、外見からは分かりにくい障害のあるお客様もいます。

また、手話通訳者やヘルパーを伴ったお客様もいます。

改正法施行までには、時間的な余裕があるようにも思えますが、お客様と直接・間接のやり取りをする従業員には、障害ごとの具体的特性とこれに応じて求められる合理的配慮について、十分な理解と共通認識が必要です。

また、具体的シーンに応じた合理的配慮や説明についての実践トレーニングも必要です。

こうした研修の他、各職場に応じたマニュアルの整備やクレームへの対応など、準備しておくことは多岐にわたります。

早い段階で計画化し、実行に移すことをお勧めします。

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