短期間での年次有給休暇取得義務

2021/09/16|1,117文字

 

1時間単位の年次有給休暇

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が50%前後と低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため労働基準法が改正され、平成31(2021)年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

<取得義務の例外>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

例えば、基準日前から次の基準日後まで、1年以上にわたって休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合には、使用者にとって義務の履行は不可能です。

こうした場合には、法違反を問われることはありません。

 

<取得義務の履行が困難なケース>

次の基準日までの日数が少ないタイミングで、休職や育児休業などから復帰した場合には、年次有給休暇を取得できる労働日が少ないので、取得義務を果たすのが難しくなります。

しかし、この場合でも、年5日の年次有給休暇を取得させうる労働日がある場合には、年次有給休暇を取得させる義務を免れることはできません。

半日単位の年次有給休暇を取得してもらうなど、工夫して義務を果たすことになります。

仕事の進捗に問題が発生するような場合には、年次有給休暇の取得義務を果たしつつ、休日出勤を命ずるという裏技を使うこともあるでしょう。

なお、次の基準日までの日数が極端に少なく、取得させるべき年次有給休暇の残日数が、次の基準日の前日までの労働日の日数を超える場合には、「年5日」を達成できなくても、その労働日のすべてを年次有給休暇に充てることで足ります。

 

<解決社労士の視点から>

上記のように、かなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

休職や育児休業などが見込まれた時点で、前もって年次有給休暇を取得しておいてもらったり、復帰後の年次有給休暇取得を勤務予定に組み込んだりと、年次有給休暇の取得義務を見据えた勤務計画を立てておく必要があるでしょう。

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