DV被害者の生計同一認定要件

2021/09/13|1,549文字

 

<DV被害者の生計同一認定要件>

配偶者からの暴力の被害者の場合、暴力を避けるために一時的な別居が必要になる場合があります。

こうした状況下で、加害配偶者が死亡した場合には、一般的な基準で遺族年金等の生計同一認定要件を判断したのでは、妥当性を欠くことになります。

そこで、具体的な事情を踏まえた判断基準が適用されることとなっています。

この判断基準は改定が重ねられていますが、令和3(2021)年10月1日からの新基準では、次のようになっています。

 

1.被保険者(加害配偶者)等の死亡時において、以下のAからEまでのいずれかに該当するために被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、遺族年金の受給権者に該当するかどうかを判断します。

 

A 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV被害者であること。

B 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されているDV被害者であること。

C DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所しているDV被害者であること。

D DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害者であること。

E 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、AからDまでの者に準ずると認められるDV被害者であること。

 

2. 1.のA、B、C及びEに該当するかどうかについては、裁判所が発行する保護命令に係る証明書、配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(「配偶者からの暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険及び船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成19 年2月21日庁保険発第 0221001 号)の別紙1をいう。)、住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う。なお、1.のDに該当する場合は、証明書を通じた確認は不要とする。

 

3. DV被害に関わり得る場合であっても、一時的な別居状態を超えて、消費生活上の家計を異にする状態(経済的な援助も、音信も訪問もない状態)が長期間(おおむね5年を超える期間)継続し固定化しているような場合については、原則として、平成23年通知3⑴①ウ(イ)に該当していないものとして取り扱う。ただし、長期間(おおむね5年を超える期間)となった別居期間において、経済的な援助又は音信や訪問が行われている状態に準ずる状態であると認められる場合には、この限りではない。

 

4. 1.から3.までの規定により生計同一認定要件の判断を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合にあっては、1.から3.までの規定にかかわらず、当該個別事案における個別の事情を総合的に考慮して、被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていたかどうかを個別に判断する。

 

<解決社労士の視点から>

家庭内暴力から逃れるために別居していても、公的機関などの支援を受けないと、DV被害者であることの証明ができません。

また、配偶者が死亡した場合にも、自動的に通知が届くわけではありませんから、定期的に確認する必要はあるわけです。

従業員や求人への応募者が、こうした状況にあるとの情報を得たら、これらの点についてアドバイスしておくべきでしょう。

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