コロナの影響で定期健診を延期

2021/09/07|1,135文字

 

<事業者が実施義務を負っている主な健康診断>

事業者は労働者に対し、厚生労働省令の定めに従って、医師による健康診断を実施する義務を負っています。〔労働安全衛生法第66条第1項、第2項〕

その主なものは次の3つです。

・雇入時健康診断…常時使用する労働者を雇入れる直前または直後に実施。〔労働安全衛生規則第43条〕

・定期健康診断…常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第44条〕

・特定業務従事者健康診断…深夜業や重量物の取り扱い等の有害業務に常時従事する労働者に対して、6か月以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第45条第1項〕

 

<対象者の範囲>

雇入時健康診断と定期健康診断は、正社員はもちろんですが、所定労働時間が正社員の4分の3以上の従業員は受けさせることが、法的に義務づけられています。ただし、1年未満の有期労働契約で、契約更新によっても1年以上働く見込みがない者は除きます。

特定業務従事者健康診断は、契約形態や所定労働時間に関係なく、定期、入社時、有害業務への配置転換時について実施義務があります。

 

<定期的な実施>

定期健康診断の「1年以内ごとに1回定期的に」、特定業務従事者健康診断の「6か月以内ごとに1回定期的に」というのは、時期がずれると「定期的」ではなくなってしまうので、それぞれの労働者にとって同じ月の実施となるのが通常です。

労働者が50人以上の事業場では、所轄の労働基準監督署長に定期健康診断結果報告書を提出するので、時期がずれれば、そのことが労働基準監督署に知れることにもなります。

 

<コロナの影響で予定通りできない場合の対応>

現実的な問題として、いつも同じ時期に同じ健診機関で健康診断を実施していたところ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、一時的に健康診断が行われないという事態が発生しています。

こうした場合の対応については、法令に規定が無いのですが、労働基準監督署は次のような対応を取るように指導しています。

・いつもと違う健診機関で、いつもと同じ時期に健康診断を実施できるよう努力する。

・これができない場合には、なるべく近い時期に健康診断を実施するよう努力する。

・健康診断の実施時期がずれた場合には、やむを得ずずれて実施した事情についての記録を残し保管する。

つまり、いつもの時期に実施できるよう努力することは求められるものの、どうしてもできなかった場合には、具体的な事情と対応について記録を残し保管して、所轄の労働基準監督署から照会があった場合には説明できるようにしておくということです。

結局、不可能を強いられることは無いのですが、きちんと理由を説明できる証拠は残さなければならないということです。

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