2021/11/09|1,308文字
<傷病手当金と労災保険>
傷病手当金は、健康保険に入っている人が、プライベートの生活が原因の病気やケガで仕事ができず給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。
業務や通勤などが原因の病気やケガであれば、労災保険が適用されますから健康保険の給付は対象外となります。
この場合、健康保険の適用は無いのですが、もっと有利な労災保険の給付があります。
ですから、労災保険が適用されるかどうか微妙なケースであれば、所轄の労働基準監督署に確認するなどしてみて、対象外であれば傷病手当金の手続をするのが良いでしょう。
会社から下手に確認してヤブヘビになることを恐れるのであれば、社会保険労務士などに代わって確認してもらうことも考えましょう。
<もらえる条件>
まず、業務外の病気やケガで仕事ができない期間について医師の証明が必要です。
仕事ができないわけではないけれど、大事をとってお休みするというのは対象外となります。
反対に、医師による労務不能の証明があるのに本人が無理して勤務してしまうと、傷病手当金は減額あるいは不支給となるのが一般です。
また、4日以上連続して仕事を休んでいることが必要です。
最初の3日間を「待期期間」といって、ここに公休や有給休暇が含まれていてもかまいません。
さらに、給料の支払が無いか、傷病手当金の金額より少ないことが条件です。
医師が証明した期間と、実際に仕事を休んだ期間とで、重なる日について支給されます。
<支給金額>
次の計算式によって算出された金額が支給されます。
1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3
これは、平成28(2016)年4月1日から法改正によって変更になっています。
それまでは、次の計算式が使われていました。
1日あたりの金額=(休んだ日の標準報酬月額)÷30日×2/3
これだと、健康状態が悪くなって本来の仕事ができなくなり、たとえば正社員から賃金の安いパート社員になって、さらに病状が悪化して休業するようになったようなケースでは、低くなった標準報酬月額を基準とした傷病手当金が支給されることになります。
ケガの場合はともかく、徐々に病状が悪化して入院するような場合には、支払ってきた保険料に対して給付の金額が少なくなってしまいます。
無理をせず早めに入院したほうが、傷病手当金の金額が下がらずに済むというケースも考えられます。
<注意したいこと>
たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。
「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。
文書料には健康保険が適用されませんし、文書料をいくらにするかは病院の判断に任されています。
交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。
労災保険の手続きをしないのは、「労災かくし」となり違法となることもありますが、健康保険の給付を受けるかどうかは本人(被保険者)の自由です。
手続のための書類は、会社と本人と医師の3者が記入しますが、前提として本人の意思を確認して手続を進めたいものです。