2021年 9月

2021/09/30|1,766文字

 

就業規則の必要性https://youtu.be/GfB5fcmlCgg

 

<就業規則の作成義務>

労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出義務を負わせています。

このことから9人までの会社は、就業規則が無くても違法ではないといえます。

たとえ所轄の労働基準監督署が監督(調査)に入ったとしても、就業規則のことで指摘を受けることはありません。

しかし、従業員の少ない会社で就業規則が無いと、明確な基準が無いために、知らず知らずのうちに不平等や不公平が発生し、従業員の中に不満が芽生えて転職のきっかけとなるリスクは高まってしまいます。

しかも、懲戒処分は就業規則に具体的な規定が無いと、不適法とされ無効とされる可能性が高まるなど、問題社員への適切な対応が困難になってしまいます。

 

<労働条件の通知義務>

就業規則を作成していない会社であっても、誰か1人でも採用すれば、採用した人に対して、労働時間、賃金、退職に関する事項などにつき、書面を交付する義務を負っています。〔労働基準法第15条第1項〕

そのため、雇用契約書を交わしたり、会社から労働条件通知書を渡したりしています。

これを怠ることは、もちろん労働基準法違反になるわけですが、待遇について具体的な内容を伝えていないと、残業や年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

中には「残業代は支払わない。有給休暇は取らせない。だから関係ない」という経営者もいるのですが、多くの場合、労働者の権利を主張してくるのは、在籍している従業員ではなくて、退職後の元従業員です。

しかも、弁護士や労働組合、議員などに相談したうえで請求してきますから、慰謝料を含め請求できるものはすべて請求してくる形となりやすいのです。

このときに、労働条件を示した書面が無いと、無いことそのものが会社側の落ち度ですから、元従業員の主張を認めざるを得なくなってしまいます。

裁判にでもなれば、会社に有利な証拠を見つけるのが困難になってしまいます。

 

<会社の義務は単に負担なのか>

法令が会社に対して何かを義務付けているとなると、会社の負担になることばかりが目についてしまいます。

しかし、労働基準法が義務づける就業規則や労働条件通知書というのは、会社にとっても助け船になると考えられます。

何かトラブルが発生した場合には、就業規則や労働条件通知書が、会社のことも、まじめに働く社員のことも、問題社員から守ってくれるからです。

雇用契約書に、セクハラの禁止、会社の物品の持ち出し禁止、パソコンの個人的使用の禁止など、記載しておけば、言った言わないの世界にはなりません。

どのような場合に懲戒解雇となるのか、きちんと文書化しておけば不当解雇の指摘も避けることが可能になります。

今や懲戒については、就業規則や雇用契約書に規定しておかないと、無効とされるのが当たり前です。

世間の実態としては、労働者側から不当解雇や懲戒処分の無効を主張して会社と争ったら、半分以上は勝っていると思われます。

 

<労働時間の認定でも>

会社に労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入った場合、雇用契約書や労働条件通知書に始業時刻・終業時刻が記載されていれば、これを基準に労働時間がチェックされます。

休憩時間についても同様です。

しかしこれが無ければ、労働基準監督署は、従業員が会社に来た時点から会社を出た時点までのすべてを労働時間と認定せざるを得ません。

従業員から「忙しくて休憩は取れませんでした」という声があれば、休憩時間ゼロと認定されることもありうるのです。

 

<解決社労士の視点から>

会社を守るには、きちんとした雇用契約書や労働条件通知書が役に立ちます。

もし、複数の従業員に共通する内容が多いのであれば、それらをまとめて就業規則を作っておいた方が楽です。

あれもこれも労働条件通知書に記載していたら、A4判で10ページでは足りないことでしょう。

しかし、そこまで充実した労働条件通知書は見たことがありません。

「本通知書に定めの無い事項については就業規則による」と書いておくのが現実的な運用となっています。

そして、従業員が9人までであれば、就業規則を作っても変更しても労働基準監督署長に届け出る義務は無いのです。

事務手続の負担が軽いうちに、就業規則を作成し備えておくことをお勧めします。

2021/09/29|2,136文字(長いなぁ)

 

<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、最長3か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法第32 条の3

あくまでも労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。

ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)にはフレックスタイム制の規定例が見当たらないのですが、労働基準監督署などで配布される「フレックスタイム制の適正な導入のために」というパンフレットには、次のような規定例があります。

 

 (適用労働者の範囲)

第○条 第○条の規定にかかわらず、企画部に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。

第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10 時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。

  ② 午前10 時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。  

 (清算期間及び総労働時間)

第○条 清算期間は1箇月間とし、毎月26 日を起算日とする。   

  ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154 時間とする。  

 (標準労働時間)

第○条 標準となる1日の労働時間は、7時間とする。  

 (その他)

第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。

 

あくまでも規定例ですから、これをそのまま使うのではなく、それぞれの職場に合わせて修正することが必要です。

その際、法令の制限を超えた修正をしてしまうと、その部分は無効になってしまいます。

不安があれば、運用を含め社会保険労務士にご相談ください。

 

<労使協定の規定>

労使協定には、次の各項目を定めます。

 

・対象となる労働者の範囲

 対象となる労働者の範囲は、全社員、特定の部署、特定の部署の一部の社員、あるいは個人ごとに指定することもできます。

 

・清算期間

清算期間とは、労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、清算期間の長さは、現在の法律では3か月以内に限ります。

1か月を超える期間とすると運用が複雑になりますから、賃金の計算期間に合わせて1か月とするのが一般的です。

 

・清算期間における起算日

 毎月1日から月末まで、16 日から翌月15日までなど、清算期間を明確にする必要があります。

 

・清算期間における総労働時間

清算期間における所定労働時間のことです。

 この時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が40 時間(特例措置対象事業場は44 時間)以内になるように定めなければなりません。

 ここで、特例措置対象事業場とは、常時10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

 一般には、40時間 ÷ 7日 × 暦の日数 で計算されます。

 暦の日数が30日の月なら、171.4時間となります。

 1か月単位でみて制限を上回ってはいけませんから、端数は切捨てで設定します。

 

・標準となる1日の労働時間

 フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、その日に標準となる1日の労働時間労働したものとして取扱うことが必要です。

 

・コアタイム

 コアタイムは、労働者が出勤日に必ず働かなければならない時間帯です。

設けないことも可能です。

なるべく短い方が、フレックスタイム制の効果は大きくなりますが、会社の労務管理の都合も考えて設定しましょう。

 特定の日や曜日だけコアタイムを変えたり、コアタイムを1日の中に複数設けることも可能です。

 

・フレキシブルタイム

 労働者が勤務できる時間帯に制限を設ける場合は、その開始時刻と終了時刻を定める必要があります。

 労働者の勤務時間を30分単位で区切り、その中から選ぶような仕組はできません。

 

<残業時間の計算>

「清算期間における総労働時間」を超えて勤務した時間が残業時間ですから、時間外割増賃金の支払対象となります。清算期間が1か月であれば、1日や1週単位での計算は不要です。

ここが、賃金計算上のメリットになります。

ただし、1週間丸々出勤した場合には、法定休日出勤の賃金を別に計算し、フレックスタイム制での労働時間には加えません。

また、精算期間内の残業時間を、次の精算期間の早帰りなどで相殺することはできません。

清算期間をまたいでしまっては、清算期間の意味がありません。

また、賃金の全額払いの原則〔労働基準法第24条第1項本文〕にも反します。

労働時間が「清算期間における総労働時間」に足りないときは、その時間分だけ欠勤控除をすることになりますが、年次有給休暇の取得によって総労働時間を補うことも多いでしょう。

2021/09/28|3,104文字(長いなぁ)

 

これって労働時間?https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<是正結果の概要>

厚生労働省は、労働基準監督署が監督指導を行った結果、令和2(2021)年度に不払となっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計100万円以上である事案を取りまとめ公表しました。

 

【監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)】

1.是正企業数1,062企業(前年度比549企業の減) うち、1,000 万円以上の割増賃金を支払ったのは、112企業(同49企業の減)

2.対象労働者数6万5,395人(同1万3,322人の減)

3.支払われた割増賃金合計額69億8,614万円(同28億5,454万円の減)

4.支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり658万円、労働者1人当たり11万円

 

<不正確な労働時間の把握の問題>

○立入調査(臨検監督)のきっかけ

「出勤の記録をせずに働いている者がいる。管理者である店長はこのことを黙認している。」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。

○指導の内容

ICカードを用いた勤怠システムで退社の記録を行った後も労働を行っている者が監視カメラに記録されていた映像から確認され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。

○企業の一次対応

労働者の正確な労働時間について把握すべく実態調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払。

○企業の改善策

・労働基準監督官を講師として、各店舗の管理者である店長を対象に労務管理に関する研修会を実施するとともに、店長以外の従業員に対しても会議等の機会を通じて法令遵守教育を行い、賃金不払残業を発生させない企業風土の醸成を図った。

・社内コンプライアンス組織の指導員を増員して、店舗巡回を行い、抜き打ち調査を行うことにより勤怠記録との乖離がないか確認することとした。

●ポイント

管理職としては、自部門の人件費が少なくなるという期待から、不正を見逃したくなる誘惑にかられます。

労務管理に関する研修会や法令遵守教育は、最低でも年1回、しつこく繰り返すことが必要です。

途中で手を緩めると、いつの間にか元に戻ってしまう可能性は驚くほど高いのです。

 

<労働時間記録との乖離の問題>

○立入調査(臨検監督)のきっかけ

「時間外労働が自発的学習とされ割増賃金が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。

○指導の内容

ICカードを用いた勤怠システムにより労働時間管理を行っていたが、ICカードで記録されていた時間と労働時間として認定している時間との間の乖離が大きい者や乖離の理由が「自発的な学習」とされている者が散見され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。

○企業の一次対応

勤怠記録との乖離の理由が自発的な学習であったのか否かについて労働者からのヒアリングを基に実態調査を行った。

この結果、自発的な学習とは認められない時間について不払となっていた割増賃金を支払った。

○企業の改善策

・代表取締役が適切な労働時間管理を行っていくとの決意を表明し、管理職に対して時間外労働の適正な取扱いについて説明を行った。

・労働組合と協議を行い、今後、同様の賃金不払残業を発生させないために労使双方で協力して取組を行うこととした。

・事業場の責任者による定期的な職場巡視を行い、退勤処理をしたにもかかわらず勤務している者がいないかチェックする体制を構築した。

●ポイント

賃金支払義務の無い「自発的学習」と認定されるためには、参加/不参加が全くの自由であって、参加しなくても欠勤控除されず、評価の対象とされず、上司を含め社内で非難されることが無いものであることが必要です。

また、その学習が業務に必須のものであれば、参加せざるを得ないのですから、この場合も「自発的学習」とは言えません。

 

<自己申告制の不適切な運用の問題>

○立入調査(臨検監督)のきっかけ

「自己申告制が適正に運用されていないため賃金不払残業が発生している」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。

○指導の内容

生産部門は、ICカードを用いた勤怠システムにより客観的に労働時間を把握している一方、非生産部門は、労働者の自己申告による労働時間管理を行っていた。

非生産部門の労働者について、申告された時間外労働時間数の集計や、割増賃金の支払が一切行われておらず、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。

○企業の一次対応

非生産部門の労働者について、申告が行われていた記録を基に時間外労働時間数の集計を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。

○企業の改善策

・非生産部門もICカードを用いた勤怠システムで労働時間管理を行うとともに、時間外労働を行う際には、残業申請書を提出させ、残業申請書と勤怠記録との乖離があった場合には、実態調査を行うこととした。

・労務管理担当の役員から労働時間の管理者及び労働者に対して、労働時間管理が不適切な現状であったため改善する旨の説明を行い、客観的な記録を基礎として労働時間を把握することの重要性についての認識を共有した。

●ポイント

自己申告制も「やむを得ない」事情があるときには許されます。

しかし、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、対象労働者ひとり一人の教育、上司の教育、抜き打ちの実態調査、把握した労働時間と実際の労働時間の食い違いについての原因究明と改善など、非常にハードルが高いといえます。

真に「やむを得ない」事情がある場合を除き、自己申告制を運用することはお勧めできません。

 

<全社的な賃金不払残業が行われていたケース>

○立入調査(臨検監督)のきっかけ

「退勤処理を行った後に働いている者がいる」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。

○指導の内容

ICカードを用いた勤怠システムにより労働時間の管理を行っていたが、労働者からの聴き取り調査を実施したところ、退勤処理後に労働をすること、出勤処理を行わず休日労働をすることがある旨の申し立てがあり、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。

○企業の一次対応

労働者へのヒアリングやアンケートなどにより実態調査を行った結果、全社的に退勤処理後の労働が認められ、また、出勤処理を行わず休日労働を行っていることが判明したため、不払となっていた割増賃金を支払った。

○企業の改善策

・会社幹部が出席する会議において、代表取締役自ら賃金不払残業解消に関するメッセージ(労働時間の正しい記録、未払賃金の申告)を発信し、発信内容を社内のイントラネットに掲載するなどして、会社一丸となり賃金未払残業を解消することを周知した。

・36協定(時間外労働の協定届)の上限時間数を超えないために、時間外労働の適正な申請をためらうことが賃金不払残業の一因となっていた。このため、各店舗の勤務状況の実態調査を行い、人員不足や業務過多の店舗に対する人員確保や本社からの応援を行い、店舗の業務が過度に長くならないような措置を講じた。

●ポイント

賃金不払残業に限らず、パワハラやセクハラなど、代表者が「これを絶対に許さない」という決意を全社に表明することは、最初に行うべきことですし大きな効果が期待できます。

ただし、これもまた「労基署に言わされているのではないか」「本心は違うのではないか」と思われないように、繰り返し継続する必要があります。

代表者が「まともに残業代を支払って人件費が増えるのは嫌だ」「お気に入りの役職者のパワハラやセクハラは大目に見よう」と考えているのではないかと疑われるようでは、一歩も前に進めないのです。

2021/09/27|1,389文字

 

労働条件を確認しましょうhttps://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<就業規則の規定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、定年を満60歳とする場合の例として次のような規定が示されています。

 

[例3](定年等) 

第49条  労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。

 (以下略)

 

定年後の再雇用については、多くの企業で似たような規定を置いていると思われます。

 

<本人の希望>

「定年後も引き続き雇用されることを希望」の部分にトラブルの原因が隠れています。

定年退職後に、退職者から「再雇用を希望していたのに退職させられた。これは不当解雇である」と主張されることがあります。

具体的には、再雇用されていれば得られたはずの賃金と慰謝料の支払を、会社に対して求めてくるわけです。

このとき、会社が「離職票に署名してある」と主張しても、退職者は「ハローワークで手続できなくなると脅されて不本意ながら署名したに過ぎない」と反論するでしょう。

また、健康保険証の返却についても、退職者が「返却しなくても紛失扱いで手続すると言われたので不本意ながら返却した」と主張するかもしれません。

 

このような言った/言わないのトラブルを防ぐために、再雇用の希望を書面で提出するルールにしている会社もあります。

しかし、退職者が提出したと言い、会社側が提出を受けていないと言うのでは、結局トラブルになってしまいます。

 

こうしたトラブルを防ぐためには、「再雇用確認書」のような書式を準備しておき、定年の2か月前までに希望の有無を記入して提出してもらうなどの運用にする必要があります。

つまり、希望しても希望しなくても、定年を迎える社員から所定の書面を提出してもらい、再雇用の希望の有無がわかるようにしておくわけです。

 

<再雇用できない理由>

たとえ本人が希望しても、「解雇事由又は退職事由に該当」する労働者であれば、会社は再雇用を拒めるという部分にもトラブルの火種が隠れています。

そもそも、定年を迎える直前になって解雇事由が発生することは稀ですし、このタイミングで退職事由が発生するというのは、本人が再雇用されずに退職したいという希望を表明している場合ではないでしょうか。

 

実際には、定年の数年前から解雇事由があって、会社側がこれを放置しているというケースがあります。

「あと少しで定年を迎えるから」ということで我慢しているわけです。

たとえば、健康状態が不良でたびたび欠勤しているが治療を受けていない、ルール違反が多くて同じ部署のメンバーに迷惑をかけ続けている、新しい仕事を覚えられず会社が必要としている業務をこなせないといった事情を、会社側が我慢してしまうのです。

こうした場合に、定年と共に普通解雇や懲戒解雇を言い渡すというのは不合理です。

本人にしてみれば、今まで不問に付されていたのに、定年のタイミングで解雇されるというのは納得できません。

 

「あと少しで定年を迎える」社員も、若い社員と同じように、問題点があれば注意・指導し改善が見られなければ、普通解雇や懲戒解雇を検討すべきです。

少し厳しいようにも思われますが、再雇用トラブルを防ぐには必要なことなのです。

<対象となる人>

定時決定(算定基礎届)は原則として、その年の71日現在、社会保険の加入者(被保険者)である人全員が対象になります。

・531日までに加入(資格取得)した人で、71日現在も加入者(被保険者)である人

・71日かこれ以降に、退職や勤務時間の減少などにより脱退(資格喪失)する人(資格喪失日でいうと72日かこれ以降)

・休職中、育児休業中、介護休業中、欠勤中の人

・刑事施設や労役場などに拘禁中の人

なお、定時決定という手続のために提出する届を算定基礎届といいます。

 

<対象とならない人>

・61日かこれ以降に、加入(資格取得)した人

・630日かこれ以前に、退職や勤務時間の減少などにより脱退(資格喪失)した人(資格喪失日でいうと71日かこれ以前)

・7月~9月に月額変更届、産前産後休業終了時変更届、育児休業等終了時変更届を提出する予定の人

なお、随時改定という手続のために提出する届を月額変更届といいます。

 

<見込みや予定が変わった人>

・算定基礎届を提出する時点では、8月か9月に月額変更届を提出する見込みだったが、その後、残業代や通勤手当などの変動により、月額変更届を提出しないことになった場合には、遅れて算定基礎届を提出することになります。

・算定基礎届を提出する時点では、8月か9月に月額変更届を提出する見込みではなかったが、その後、残業代や通勤手当などの変動により、月額変更の条件を満たすことになった場合には、算定基礎届の提出とは別に月額変更届を提出することになります。

2021/09/25|1,735文字

 

最低賃金違反を主張できないhttps://youtu.be/1eoYYTCzCkM

 

<最低賃金の引上げ>

最低賃金が年々引き上げられ、事業規模に関わらず、賃金上昇圧力が高まっています。

令和2(2020)年10月は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえて、たとえば東京都では1,013円に据え置かれましたが、令和3(2021)年10月は1,041円へと引上げが再開されています。

コロナ禍が終息しない中での最低賃金引上げは、中小企業を中心に大きな打撃となりかねません。

 

<不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化>

公正取引委員会は、最低賃金の引上げにより、労務費等のコストが大幅に上昇した下請事業者から、単価の引上げを求められたにもかかわらず、親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注することは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)上の「買いたたき」に該当するおそれがあると解釈しています。

この点について公正取引委員会は、新しくQ&Aを作成しウェブサイトへの掲載による周知活動の強化などにより、事業者への周知徹底を図ります。

また、中小企業庁と共同して、毎年11月の「下請取引適正化推進月間」の開催に併せて、事業者団体等との連携拡大を通じて、全国津々浦々に不当なしわ寄せ防止に向けた取組の情報が行きわたるよう周知活動の拡充を行います。

また、下請法のより一層の普及啓発を図る観点から、下請法に関する考え方等を分かりやすく示した、最低賃金引上げによる不当なしわ寄せ防止に関する内容を含む新しい動画を作成し、WEB上で公開を行います。

 

<下請法等の執行強化>

公正取引委員会は、親事業者や親事業者と取引のある下請事業者を対象とした定期調査を実施しています。

令和3(2021)年度の下請事業者向けの定期調査では、最低賃金の引上げ等に伴い特に問題となることが想定される「買いたたき」の指導実績が多い業種や、コロナ禍により特に影響が出ているとされる業種向けの調査拡大、最低賃金の引上げを含む労務費や原材料価格の上昇の影響に関する質問追加等を行い、下請法違反被疑事実についての情報収集に関する取組強化を行います。

また公正取引委員会は、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」を指定し、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を行っていますし、優越的地位の濫用規制及び下請法に関する実態調査を行っています。

令和3(2021)年度の荷主と物流事業者との取引に関する書面調査や、その他の優越的地位の濫用規制及び下請法に関する実態調査においても、最低賃金の引上げ等に伴う影響や取引先との価格交渉の状況に関する質問を追加するなど、情報を積極的に収集することとしています。

さらに、令和3(2021)年9月の「価格交渉促進月間」での中小企業庁をはじめとした関係省庁による取組の成果や上記情報収集の成果も踏まえつつ、下請法違反行為等に対して厳正に対処していきます。

親事業者に対して違反行為の改善を求める指導等を行う際に交付する注意喚起文書に、最低賃金の引上げを含む労務費や原材料価格の上昇に関連する注意事項を加え、不当なしわ寄せを行わないよう強く要請します。

 

<相談対応の強化>

最低賃金の引上げ等に伴い、取引先から不当なしわ寄せを受けやすい中小事業者等からの相談を受付ける「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」が設置されます。

また、中小事業者等のためのオンライン相談会が実施されます。

 

<解決社労士の視点から>

「そもそもコロナ禍での最低賃金引上げはおかしい」「企業の生産性向上に歩調を合わせるべき」などの意見も多く聞かれます。

最低賃金は、本来、労働者と家族が健康で文化的な最低限度の生活を営めるようにするための制度でした。

しかし、現在では働き方改革と軌を一にし、少子化対策の意味合いも濃くなっています。

つまり、低賃金の労働者であっても、安心して結婚し子を設けることができるようにするため、賃金水準を上げていくという意図が含まれています。

コロナ禍によって失業しあるいは収入が減少した労働者が急増している現状では、最低賃金の引上げもやむを得ないのかもしれません。

2021/09/24|715文字

 

社会保険料を減らす意味https://youtu.be/Yz-6Sg9b3UI

 

<定時決定(算定)での特例>

従来から業務の性質上、4月~6月の3か月間の報酬をもとに算出した標準報酬月額と、前年7月~当年6月までの1年間の報酬の月平均額によって算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差があり、この差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合には、申し立てにより、過去1年間の月平均報酬月額により標準報酬月額を算定することができるようになっています。

社会保険料の定時決定(算定)では、4月~6月の3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を算出するのが原則ですが、この3か月間だけ極端に残業代が多かったり少なかったりすると、著しく不当な標準報酬月額となるため、これを避けるために年平均の額で計算することができるわけです。

これは、事業主の申立書と本人の同意等を提出することによって行います。

 

<随時改定(月変)での特例>

こうした定時決定(算定)でのやり方が、通達により平成30(2018)年10月以降の随時改定(月変)にも適用されています。

これにより業務の性質上、繁忙期に残業代の増加が著しく、この時期に昇給したような場合で、通常の随時改定(月変)では著しく不当になる場合には、年間平均によることができます。

年間平均で随時改定(月変)を行うには、次の条件を満たす必要があります。

・現在(改定前)の標準報酬月額と、通常の随時改定による報酬月額に2等級以上の差がある。

・非固定的賃金を年間平均した場合の3か月の報酬月額の平均が、通常の随時改定による報酬月額と2等級以上差がある。

・現在の標準報酬月額と、年間平均した場合の報酬月額との差が1等級以上ある。

・繁忙期に残業が集中するなどの傾向が、業務の性質上、例年見込まれる。

2021/09/23|1,377文字

 

解決社労士のご紹介https://youtu.be/RQE2WwW80Sc

 

<障害者手帳>

障害のある人が取得できる手帳全体を障害者手帳と呼んでいます。

この手帳を取得することで、各種福祉サービスを受けることができます。

大まかに分類すると、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳に分かれます。

取得するには、市区町村への申請が必要であり、申請の方法が市区町村によって異なっていたり、手続が複雑であったりします。

そして、手帳の名称も全国で統一されているわけではありません。

このように、障害者手帳は全国統一の制度ではありません。

 

<障害年金>

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

このことから、障害年金を受け取ろうとする場合には、初診日を証明する必要があります。

初診日が分からなければ、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを受けるかが確定しないからです。

障害年金は障害の程度により、障害基礎年金が1級と2級、障害厚生年金が1級から3級に区分されて支給されます。

また、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。

さらに、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件(保険料納付要件)が設けられています。

このように障害年金には、初診日の証明や保険料納付要件がありますので、障害者手帳を取得できたとしても、障害年金を受給できないことがあるのです。

 

<障害基礎年金の保険料納付要件>

国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。

この障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 

<障害厚生年金の支給>

厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

また、障害の状態が2級に該当しない程度の軽い障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。

なお、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。

この障害厚生年金・障害手当金を受けるためには、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。

2021/09/22|1,293文字

 

労働時間https://youtu.be/E7e4EUCjBs8

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものですし、抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

会社の業務との関連性がある程度薄かったり、使用者の指揮命令関係から解放されていると断定できなかったりと、グレーゾーンにある時間帯が問題となります。

 

<業務の開始に必要な準備行為>

就業時間中に着用を義務づけられている制服や、特定の作業を行う場合に必ず着用することになっている作業服に着替える時間は労働時間です。

もちろん、出勤してきたときの元の私服に着替える時間も労働時間です。

これらは、明らかに使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間だからです。

これに対し、労働者が自分の好みで勤務中の私服を準備し、通勤中の私服から着替える時間は労働時間とはなりません。

会社が、業務の開始に必要と認めている行為ではなく、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価されないからです。

 

<待機時間>

仮眠室で待機するものとされ、警報や電話があれば、すぐさまこれに対応することが義務付けられている場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され労働時間とされます。

これに対し、仮眠時間が休憩時間として扱われ、労働からの解放が保障されている場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価されず労働時間とはされません。

ごくまれに、緊急対応することがあったとしても、業務として待機を命じられているのでなければ、労働時間とはされません。

タクシーの運転手が客待ちの待機をする時間、バスの乗務員が乗務開始まで待機する時間、建設労働者が前工程の完了を待って待機する時間、店員がお客様を待って待機する時間などは、労働時間に該当することになります。

 

<休憩時間>

休憩時間は、自由に利用できる時間であり、労働からの解放が保障されていれば労働時間とはなりません。

しかし、「午後2時から4時の間で、お客様のいない時に休憩する」というのは、待機時間に他なりませんから労働時間となります。

こうした誤った休憩の与え方で、労働基準法違反となっている職場も散見されます。〔労働基準法第34条第1項、第3項〕

 

<住込みのマンション管理員>

住民の期待もあって、時間外に宅配便を預かっておく、住民からの連絡で汚れたエレベーター内の清掃をする、早朝にゴミの整理をする、深夜に設備の故障に対応するというのが実態という、住込みのマンション管理員もいます。

管理会社からの包括的な指示があれば、これらはすべて労働時間となります。

また、管理会社が実態を知りつつ放置している場合には、黙示の指示があったものとされ労働時間となることが多いと考えられます。

2021/09/21|1,098文字

 

残業の削減方法https://youtu.be/4zoPGEeciCY

 

<残業の性質>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。

具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさい、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

ところが、社員がこの原則に違反して残業してしまった場合、タイムカードなどに出退勤の記録が残っている以上、会社は残業代を支払わざるを得ません。

 

<残業代を稼ぎたい社員の行動>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

つまり、生産性が低いわけですから、これを人事考課に反映させて評価を低くし、賞与の金額を下げたり昇給を抑えたりということは、人事考課制度本来の目的にかなっています。

 

<残業したがらない社員の行動>

早く会社を出て、家に帰りたい、飲みに行きたい、パチンコをしたいなど、個人的な欲求から残業したがらない社員もいます。

残業の本来の性質からすれば、周囲の雰囲気を察して自発的に残業を打診しないからといって評価を下げてしまうのは、人事考課制度の適切な運用ではありません。

しかし、上司から残業命令が出ても、これを無視して業務を離れてしまうのは、評価を下げる正当な理由となりますし、しばしば行われれば懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<残業と人事考課との関係>

このように、残業時間の多寡と評価との関係は単純ではありません。

残業が多い理由、あるいは、少ない理由を踏まえて評価を考えることが必要で

す。

単純に考えれば、自己都合の身勝手な残業と残業拒否は評価を下げるといえるでしょう。

 

<大前提として>

法定労働時間を超える残業は、所轄労働基準監督署長への三六協定書の届出が無ければ違法になってしまいます。

そもそも、就業規則に残業を命じる場合がある旨を規定しておかなければ、残業を命じる根拠がありません。

こうした手続き的なことは、残業の大前提となりますから、足元をすくわれないよう、しっかりと行っておきましょう。

2021/09/20|1,801文字

 

ミスが多い社員の解雇https://youtu.be/76BoK7FIawM

 

<本来は自由な退職勧奨>

「勧奨」は、勧めて励ますことです。

「勧告」は、ある事をするように説いて勧めることです。

「退職勧奨」の例としては、「あなたには、もっと能力があると思います。たまたま、この会社は向いていないようです。転職したら実力を発揮できるでしょう。退職について真剣に考えてみてください」といった内容になります。

「退職勧告」の例としては、「入社以来ミスが多いことは、あなた自身も残念に思っているでしょう。まわりの社員も、ずいぶん親切に丁寧な指導をしてきましたが、これ以上はむずかしいと思われます。退職を考えていただけますか」といった内容になります。

通常、「退職勧奨」と「退職勧告」は厳密に区別されず同視されています。

いずれにせよ退職勧奨は、会社側から社員に退職の申し出をするよう誘うことです。

これに応じて、社員が退職願を提出するなど退職の意思表示をして、会社側が了承すれば、労働契約(雇用契約)の解除となります。

もちろん、退職勧奨を受けた社員が、実際に退職の申し出をするかしないかは完全に自由です。

このように、退職勧奨は社員の意思を拘束するものではないので、会社が自由に行えるはずのものです。

しかし、社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効となりますし、会社に対して慰謝料の請求が行われたりします。

会社から社員に退職勧奨を行い、これに快く応じてもらって円満退職になったと思っていたところ、代理人弁護士から内容証明郵便が会社に届き、不当解雇を主張され損害賠償請求が行われるということは少なくありません。

 

<安全な退職勧奨>

会社側としては退職勧奨のつもりであったところ、退職してもらうという目的意識が強いあまり、ついつい「勧奨」の範囲を超えてしまい、法的解釈としては「解雇の通告」と同視されてしまうことがあります。

こうしたリスクは、退職勧奨には付き物です。

退職が無効とされたり、慰謝料が発生したりのリスクが無い退職勧奨とは、次のようなものです。

・1人の社員に対して2名以内で行う。ただし、男性が女性に1人で退職勧奨を行うのは、セクハラなどを主張される恐れがあるので避ける。

・パワハラ、セクハラなど、人格を傷つける発言はしない。

・大声を出したり、机をたたいたりしない。脅さない。だまさない。

・長時間行わない。何度も繰り返さない。

・きっぱりと断られたら、それ以上の退職勧奨は行わない。

・他人に話を聞かれる場所で行わない。明るく窓のある個室が望ましい。

・家族など本人以外の人に働きかけない。自宅を訪問しない。

結局、本人の自由な本心による退職の申し出が必要なので、後になってから本心ではなかったとか、脅された、だまされたなどの主張がありえない退職勧奨であることが必要となります。

 

<会社側の好ましい対応>

退職勧奨の前であっても、ミスの連発を責めるのではなく心配する態度を示しましょう。

「入社以来ミスが多いですね。採用面接でも履歴書の内容からしても、あなたがミスを繰り返すというのは想定外です。まわりの仲間たちも、あなたのことを心配しています。個人的な事情があるとか、働く上での不安があるとか、何なりと教えてください」という問いかけをしましょう。

この問いかけには、対象社員に対する思いやりも示されていますが、採用面接の対話でも履歴書の記述にも、注意力が乏しくミスを連発しやすい人物だと推定できるようなことは示されていなかったという主張が含まれています。

会社は採用にあたって、応募者から必要な情報を引き出しているわけですから、その時点で注意力散漫な人物であることを承知のうえで採用しておいて、採用後に「ミスが多いから解雇します」とは言い難いわけです。

多くの場合、セクハラ、パワハラ、プライベートを含めて環境に慣れていない、上司や同僚からの指導不足など、問題点が浮かびあがることでしょう。

これらへの対応は頭の痛いことですが、むやみに退職勧奨を行うことを防げただけでも儲けものです。

このような面談を、当事者である会社側の人間が冷静に客観的に行うというのはむずかしいものです。

顧問の社会保険労務士がいれば、任せてはいかがでしょうか。

こうした面談を経て、会社側には問題が無いということを確信できたなら、自信をもって退職勧奨を行えますし、さらに普通解雇を検討することもできるわけです。

2021/09/19|1,219文字

 

解決社労士のご紹介https://youtu.be/RQE2WwW80Sc

 

<障害者差別解消法の改正>

国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25(2013)年6月、障害者差別解消法(正式名称:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が制定され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

そしてこの障害者差別解消法が、令和3(2021)年5月に改正され、同年6月4日に公布されました。

この日から起算して、3年を超えない日に施行されることになっています。

 

<改正による企業への影響>

改正前の障害者差別解消法でも、障害を理由とする不当な差別的取扱については、行政にも民間企業にも禁止していました。

しかし、障害者に対する合理的配慮については、行政に対して義務付けるものの、民間企業に対しては法的義務ではなく、「努めなければならない」という努力義務に留めていました。

今回の改正によって、民間企業にも法的義務として、合理的配慮の提供が求められることとなります。

 

<企業に求められる合理的配慮>

改正法が企業に求める合理的配慮の提供とは、障害者の機会や待遇を健常者と平等に確保し、支障となっている事情を改善・調整するための措置を講じることです。

障害者の採用や雇用での合理的配慮については、障害者雇用促進法で義務化されているわけですが、障害者差別解消法は雇用以外のすべての分野を対象にしています。

ですから企業は、障害のあるお客様が商品やサービスを利用するにあたって、合理的配慮の提供が義務付けられることになります。

障害を理由に入店やサービス提供の受付を拒否したり、障害者を無視して周囲の支援者や介助者のみに話しかけたりすることは差別にあたります。

また、企業側の負担が重すぎる場合には、できない理由の説明や代替案の提示により、障害者の理解を得るようにすることが必要です。

 

<企業の具体的な対応>

一口に障害者と言っても、車椅子使用者や白杖を持つ視覚障害者のように外見からすぐに分かるお客様ばかりではありません。

聴覚や発話の障害、知的障害や精神障害、感覚過敏のお客様など、外見からは分かりにくい障害のあるお客様もいます。

また、手話通訳者やヘルパーを伴ったお客様もいます。

改正法施行までには、時間的な余裕があるようにも思えますが、お客様と直接・間接のやり取りをする従業員には、障害ごとの具体的特性とこれに応じて求められる合理的配慮について、十分な理解と共通認識が必要です。

また、具体的シーンに応じた合理的配慮や説明についての実践トレーニングも必要です。

こうした研修の他、各職場に応じたマニュアルの整備やクレームへの対応など、準備しておくことは多岐にわたります。

早い段階で計画化し、実行に移すことをお勧めします。

2021/09/18|1,262文字

 

雇止めの有効性https://youtu.be/CVFw3w5uRGA

 

<雇止め(やといどめ)とは>

会社がパートやアルバイトなど有期労働契約で雇っている労働者を、期間満了時に契約の更新を行わずに終了させることを「雇止め」といいます。

一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「雇止めに関する法理」という理論を条文にしたものです。ですから、雇止めがこの理論による有効要件を満たしていなければ、裁判では無効とされ、有期労働契約が自動的に更新されることになります。

 

<雇止めの有効性の判断要素>

雇止めは、次のような事情が多く認められるほど、有効と判断されやすくなります。

1.業務内容や労働契約上の地位が臨時的なものであること。

2.契約更新を期待させる制度や上司などの言動が無かったこと。

3.契約更新回数が少ないこと、また、通算勤続期間が短いこと。

4.他の労働者も契約更新されていないこと。

5.雇止めに合理的な理由が認められること。

 

<会社の義務>

契約期間の終了間際になってから雇止めの話を切り出したり、事前に充分な説明が無かったりすれば、それだけで「社会通念上相当でない」と判断されます。

ですから、雇止めをする事情が発生したら、対象者には早く説明してあげることが大切です。

上記1.については、労働条件通知書や就業規則の規定を示せば足りることが多いでしょう。

万一、就業規則が無く労働条件通知書の交付を忘れていたような場合には、説明のしようがありません。

口頭で伝えてあったとしても、労働条件を書面で労働者に通知することは法的義務なので、裁判になったら負けてしまいます。

上記2.については、有期契約労働者から契約更新の期待について話があれば、その範囲内で事実を確認すれば足ります。

上記3.4.については、事実を確認して有期契約労働者に示せば良いことです。

問題となるのは、上記5.の合理的な理由です。

ここでいう「合理的」とは、法令の趣旨や目的に適合するという意味だと考えられます。

法令の趣旨や目的は、法令の条文と裁判所の解釈が基準となります。

会社側の解釈も労働者側の解釈も基準とはなりません。

判断が分かれた場合には、早い段階で社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

会社は以上のような説明義務を負っていますが、有期契約労働者が納得することまでは求められていません。

そのため、説明文書を用意しこれを交付して説明するのが得策です。

説明義務を果たしたことの証拠となるからです。

 

<労働者が雇止めに納得できない場合>

会社側が上記のような説明をしない場合には、きちんと説明するよう求めましょう。

それでも説明が無い場合や、説明の内容がおかしいと感じたら、不当解雇を疑って、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2021/09/17|3,667文字

 

今から10年以上も前、平成192007)年1218日に、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」で、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。

改めて読み返してみると、政府が推進してきたことの意図、これからさらに強化していく政策が読み取れます。

政府の方針に逆らった経営は、どの企業にとっても得策ではありません。

今一度、この内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

 

我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

 

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

 

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。

 

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらす。同時に、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがい、喜びは倍増する。

 

しかし、現実の社会には、

•安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない、

•仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない、

•仕事と子育てや老親の介護との両立に悩む

など仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られる。

 

その背景としては、国内外における企業間競争の激化、長期的な経済の低迷や産業構造の変化により、生活の不安を抱える正社員以外の労働者が大幅に増加する一方で、正社員の労働時間は高止まりしたままであることが挙げられる。他方、利益の低迷や生産性向上が困難などの理由から、働き方の見直しに取り組むことが難しい企業も存在する。

 

さらに、人々の生き方も変化している。かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的であり、現在の働き方は、このような世帯の姿を前提としたものが多く残っている。

 

しかしながら、今日では、女性の社会参加等が進み、勤労者世帯の過半数が、共働き世帯になる等人々の生き方が多様化している一方で働き方や子育て支援などの社会的基盤は必ずしもこうした変化に対応したものとなっていない。また、職場や家庭、地域では、男女の固定的な役割分担意識が残っている。

 

このような社会では、結婚や子育てに関する人々の希望が実現しにくいものになるとともに、「家族との時間」や「地域で過ごす時間」を持つことも難しくなっている。こうした個人、家族、地域が抱える諸問題が少子化の大きな要因の1つであり、それが人口減少にも繋がっているといえる。

 

また、人口減少時代にあっては、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるが、働き方や生き方の選択肢が限られている現状では、多様な人材を活かすことができない。

 

一方で働く人々においても、様々な職業経験を通して積極的に自らの職業能力を向上させようとする人や、仕事と生活の双方を充実させようとする人、地域活動への参加等をより重視する人などもおり、多様な働き方が模索されている。

 

また、仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められている。ディーセント・ワークの推進は、就業を促進し、自立支援につなげるという観点からも必要である。

 

加えて、労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場環境を実現するために、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策等に取り組むことが重要である。

 

いま、我々に求められているのは、国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとする取組である。

 

働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度の改革に挑戦し、個々人の生き方や子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方の選択を可能とする仕事と生活の調和を実現しなければならない。

 

個人の持つ時間は有限である。仕事と生活の調和の実現は、個人の時間の価値を高め、安心と希望を実現できる社会づくりに寄与するものであり、「新しい公共」の活動等への参加機会の拡大などを通じて地域社会の活性化にもつながるものである。また、就業期から地域活動への参加など活動の場を広げることは、生涯を通じた人や地域とのつながりを得る機会となる。

 

(「新しい公共」とは、行政だけでなく、市民やNPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野で活躍することを表現するもの。)

 

仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、人口減少時代において、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものである。とりわけ現状でも人材確保が困難な中小企業において、その取組の利点は大きく、これを契機とした業務の見直し等により生産性向上につなげることも可能である。こうした取組は、企業にとって「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえるべきである。

 

以上のような共通認識のもと、仕事と生活の調和の実現に官民一体となって取り組んでいくこととする。

 

1 仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。

具体的には、以下のような社会を目指すべきである。

 

1. 就労による経済的自立が可能な社会

 経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

 

2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

 働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

 

3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

 性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

 

2 このような社会の実現のためには、まず労使を始め国民が積極的に取り組むことはもとより、国や地方公共団体が支援することが重要である。既に仕事と生活の調和の促進に積極的に取り組む企業もあり、今後はそうした企業における取組をさらに進め、社会全体の運動として広げていく必要がある。

 

そのための主な関係者の役割は以下のとおりである。また、各主体の具体的取組については別途、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で定めることとする。

 

取組を進めるに当たっては、女性の職域の固定化につながることのないように、仕事と生活の両立支援と男性の子育てや介護への関わりの促進・女性の能力発揮の促進とを併せて進めることが必要である。

 

(1)企業とそこで働く者は、協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革とあわせ働き方の改革に自主的に取り組む。

 

(2)国民の一人ひとりが自らの仕事と生活の調和の在り方を考え、家庭や地域の中で積極的な役割を果たす。また、消費者として、求めようとするサービスの背後にある働き方に配慮する。

 

(3)国民全体の仕事と生活の調和の実現は、我が国社会を持続可能で確かなものとする上で不可欠であることから、国は、国民運動を通じた気運の醸成、制度的枠組みの構築や環境整備などの促進・支援策に積極的に取り組む。

 

(4)仕事と生活の調和の現状や必要性は地域によって異なることから、その推進に際しては、地方公共団体が自らの創意工夫のもとに、地域の実情に応じた展開を図る。

2021/09/16|1,117文字

 

1時間単位の年次有給休暇https://youtu.be/NvhWqWPb2j8

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が50%前後と低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため労働基準法が改正され、平成31(2021)年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

<取得義務の例外>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

例えば、基準日前から次の基準日後まで、1年以上にわたって休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合には、使用者にとって義務の履行は不可能です。

こうした場合には、法違反を問われることはありません。

 

<取得義務の履行が困難なケース>

次の基準日までの日数が少ないタイミングで、休職や育児休業などから復帰した場合には、年次有給休暇を取得できる労働日が少ないので、取得義務を果たすのが難しくなります。

しかし、この場合でも、年5日の年次有給休暇を取得させうる労働日がある場合には、年次有給休暇を取得させる義務を免れることはできません。

半日単位の年次有給休暇を取得してもらうなど、工夫して義務を果たすことになります。

仕事の進捗に問題が発生するような場合には、年次有給休暇の取得義務を果たしつつ、休日出勤を命ずるという裏技を使うこともあるでしょう。

なお、次の基準日までの日数が極端に少なく、取得させるべき年次有給休暇の残日数が、次の基準日の前日までの労働日の日数を超える場合には、「年5日」を達成できなくても、その労働日のすべてを年次有給休暇に充てることで足ります。

 

<解決社労士の視点から>

上記のように、かなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

休職や育児休業などが見込まれた時点で、前もって年次有給休暇を取得しておいてもらったり、復帰後の年次有給休暇取得を勤務予定に組み込んだりと、年次有給休暇の取得義務を見据えた勤務計画を立てておく必要があるでしょう。

2021/09/15|1,064文字

 

<年次有給休暇取得権の保護>

使用者が、年次有給休暇の取得を妨害する措置をとっても構わないのであれば、労働者の権利は容易に侵害されてしまいます。

こうした事態を防ぐため、労働基準法には次の規定が置かれています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この規定の最後の「しないようにしなければならない」という言い回しが曲者(くせもの)です。

こうした言い回しは、使用者の「努力義務」を規定しているものとされます。

違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない程度の義務であって、一定の努力を示せば良いとされるものです。

ですから、正面から年次有給休暇の取得を妨害するような露骨な措置をとれば、この努力義務違反となりうるのですが、全く別の目的からとられた措置であって、年次有給休暇の取得を抑制する効果が小さければ、許されることもあるのです。

 

<「努力義務」違反の例>

年次有給休暇を取得した日について欠勤扱いとし、給与計算で欠勤控除とする措置は、労働基準法第136条に違反します。

給与計算のうえで、年次有給休暇を取得しても、欠勤した場合と同じ効果しか無いのであれば、年次有給休暇を労働者の権利とした意味がありません。

また、賞与の査定の際に、年次有給休暇の取得日数に応じたマイナス評価をして、取得日数分の給与に相当する金額を賞与から控除するような措置も、同様の理由から労働基準法第136条に違反します。

 

<「努力義務」違反にはならない例>

労働基準法第136条違反が争われた沼津交通事件では、最高裁判所が次のような判断を示しています。(平成5(1993)625日)

 

タクシー会社では、乗務員の出勤率が低下して自動車の実働率が下がることを防止する目的で、皆勤手当の制度を採用することがある。

この会社では、年次有給休暇と欠勤を合わせて1日であれば減額した皆勤手当てを支給し、2日以上であれば支給しないという運用をしていたが、皆勤手当の金額は最大でも給与の1.85%に過ぎなかった。

このように、この会社の皆勤手当は年次有給休暇の取得を抑制する目的を持たず、また、その金額からも年次有給休暇の取得を抑制する効果を持つものではないので、労働基準法第136条に違反しない。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得を抑制しうる措置の導入を考える場合には、その目的と効果を具体的に検証したうえで実施する必要があるということです。

2021/09/04|779文字

 

<法定雇用率の引き上げ>

民間企業における障害者の法定雇用率は、段階的に引き上げられ、令和3(2021)年3月1日からは2.3%となっています。

事業主ごとの障害者雇用率は、原則として、次のように計算されます。

障害者の実雇用率 = 障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数

 

<労働者の数>

障害者の実雇用率を計算するときの「労働者」は、常時雇用している労働者(常用労働者)をいいます。

常用労働者に当てはまるのは、1年以上継続して雇用されている人と、1年以上継続して雇用される見込みの人のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の人です。これには、障害者も含みます。

ただし、1週間の所定労働時間が30時間以上の人は、1人をそのまま1人と数えますが、20時間以上30時間未満の人は、1人を0.5人として数えます。

ここで、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を「短時間労働者」と呼びます。

このように、障害者の実雇用率を計算するときには、1年以上の継続雇用を前提として、1週間の所定労働時間で区分しますから、正社員、パート社員、アルバイトなどの区分をそのまま当てはめられないことになります。

 

<障害者である労働者の数>

障害者には、身体障害者だけでなく、知的障害者、精神障害者を含めて数えます。

身体障害者と知的障害者のうち重度の人を「重度障害者」と呼びます。

たとえば、身体障害者障害程度等級表の1~2級に該当、もしくは3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は「重度身体障害者」です。

この重度障害者の場合には、短時間労働者なら1人をそのまま1人と数えます。短時間労働者でなければ、1人を2人と数えます。

また、重度障害者ではない障害者の場合には、短時間労働者なら1人を0.5人として数えます。短時間労働者でなければ、1人をそのまま1人と数えます。

2021/09/13|1,549文字

 

<DV被害者の生計同一認定要件>

配偶者からの暴力の被害者の場合、暴力を避けるために一時的な別居が必要になる場合があります。

こうした状況下で、加害配偶者が死亡した場合には、一般的な基準で遺族年金等の生計同一認定要件を判断したのでは、妥当性を欠くことになります。

そこで、具体的な事情を踏まえた判断基準が適用されることとなっています。

この判断基準は改定が重ねられていますが、令和3(2021)年10月1日からの新基準では、次のようになっています。

 

1.被保険者(加害配偶者)等の死亡時において、以下のAからEまでのいずれかに該当するために被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、遺族年金の受給権者に該当するかどうかを判断します。

 

A 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV被害者であること。

B 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されているDV被害者であること。

C DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所しているDV被害者であること。

D DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害者であること。

E 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、AからDまでの者に準ずると認められるDV被害者であること。

 

2. 1.のA、B、C及びEに該当するかどうかについては、裁判所が発行する保護命令に係る証明書、配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(「配偶者からの暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険及び船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成19 年2月21日庁保険発第 0221001 号)の別紙1をいう。)、住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う。なお、1.のDに該当する場合は、証明書を通じた確認は不要とする。

 

3. DV被害に関わり得る場合であっても、一時的な別居状態を超えて、消費生活上の家計を異にする状態(経済的な援助も、音信も訪問もない状態)が長期間(おおむね5年を超える期間)継続し固定化しているような場合については、原則として、平成23年通知3⑴①ウ(イ)に該当していないものとして取り扱う。ただし、長期間(おおむね5年を超える期間)となった別居期間において、経済的な援助又は音信や訪問が行われている状態に準ずる状態であると認められる場合には、この限りではない。

 

4. 1.から3.までの規定により生計同一認定要件の判断を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合にあっては、1.から3.までの規定にかかわらず、当該個別事案における個別の事情を総合的に考慮して、被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていたかどうかを個別に判断する。

 

<解決社労士の視点から>

家庭内暴力から逃れるために別居していても、公的機関などの支援を受けないと、DV被害者であることの証明ができません。

また、配偶者が死亡した場合にも、自動的に通知が届くわけではありませんから、定期的に確認する必要はあるわけです。

従業員や求人への応募者が、こうした状況にあるとの情報を得たら、これらの点についてアドバイスしておくべきでしょう。

2021/09/12|1,067文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に請求するということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

 

<恩恵としての年次有給休暇への振替>

例外的に、事後の申請により私傷病欠勤を年次有給休暇に振り替える規定を就業規則に置いている会社もあります。

これは、労働基準法の定めを上回る権利を労働者に認める規定ですから、このような規定を置く/置かないは会社の自由です。

そして、どのような手続によって振り替えを認めるか、また会社の承認を必要とするかしないかも、会社の判断で自由に定めることができます。

 

<申請だけで振替ができる規定の場合>

労働者が所定の用紙に必要事項を記入して会社に提出すれば、欠勤を年次有給休暇に振り替えることができるという規定ならば、花粉症であれ腹痛であれ、それなりの理由があれば振り替えることができてしまいます。

会社としては、無断で年次有給休暇を使われたという印象を受けるかもしれません。

しかし、就業規則の規定に従って年次有給休暇の振り替えを行った以上、会社がこれを否定したり、非難したり、マイナスに評価するということはできません。

 

<会社の承認を得て振り替えができる規定の場合>

私傷病欠勤が、やむを得ない欠勤であると認められる場合に限り、年次有給休暇に振り替えることができるという規定にしておけば、インフルエンザや急性胃腸炎を理由に上司の承認を得て振り替えが認められるし、花粉症や単なる腹痛であれば、勤務不能とまではいえない欠勤なので、年次有給休暇に振り替えることはできないという運用が可能です。

 

<解決社労士の視点から>

就業規則の規定に従って、労働者が無断で年次有給休暇を取得してしまったと嘆いたり批判したりではなく、就業規則の不備を反省すべきです。

就業規則の規定は、労働契約の内容となります。

会社が就業規則に定めたことは、会社の労働者に対する約束になります。

想定外の運用をされてしまったと嘆く前に、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けたうえで、就業規則の具体的な内容を決定してはいかがでしょうか。

2021/09/11|1,175文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に届け出るということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

しかし、会社側は時季指定権を持っていませんから、休む日を勝手に決めることはできません。

ただし労使の合意によって、次の「計画的付与制度」を使うことはできます。

 

<計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日分を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。

この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が 高くなっているという統計もありますから、年次有給休暇が取りやすくなると考えられます。

 

<実際の対応>

給与明細書を見てみたら、勝手に年次有給休暇を取得した扱いになっていたという場合、労働者が異議を申し出なければ、事後的な合意で年次有給休暇が取得されたものと考えて良いでしょう。

しかし、年次有給休暇は別の機会に取得する予定であったとか、何か必要が発生したときのために残しておきたかったとか、労働者の意思に反する場合には、労働者から会社に対して「間違い」の是正を求めることができます。実際に、給与処理上のミスだったということもありえます。

この場合には、年次有給休暇の残日数が減らなかったことになり、年次有給休暇を取得した扱いによって過剰に計算された賃金は、労働者から会社に返金することになります。

 

<働き方改革との関係で>

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のためには、労働時間の削減や休日数の増加、年次有給休暇の取得など、従業員の健康と生活に配慮し、多様な働き方に対応したものへ改善することが重要です。

会社が労働者に対して一方的に年次有給休暇を取得させるというのは、年次有給休暇の取得促進にはなるものの、法的に認められることではありません。

また、何の予告も無く行われれば、労働者の会社に対する不信感も強まります。

なお、会社が年5日の年次有給休暇を取得させる義務を負う場合であっても、会社が時季を定めるに当たっては、労働者の意見を聴取することが必要であり、対象となる労働者の意見を尊重するよう努めなければなりません。

 

内容は同じであっても、労使で話し合って決めていけば、従業員満足度が高まり、定着率は上がるし、会社の評判も向上するでしょう。

2021/09/10|2,240文字

 

<令和4年度概算要求>

令和3年8月31日、厚生労働省は令和4年度厚生労働省所管予算概算要求の概要等を公表しました。

新型コロナウイルス感染症から国民の命・暮らし・雇用を守る万全の対応を引き続き行うとともに、感染症を克服し、ポストコロナの新たな仕組みの構築、少子化対策、デジタル化、力強い成長の推進を図ることにより、一人ひとりが豊かさを実感できる社会を実現するため、以下を柱に重点的な要求を行うものとしています。

●新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築

●ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現

●子どもを産み育てやすい社会の実現

●安心して暮らせる社会の構築

 

<新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築>

○新型コロナ克服の保健・医療等体制の確保 新型コロナから国民を守る医療等提供体制の確保

 PCR検査等の検査体制の確保

 保健所・検疫所等の機能強化

 ワクチン接種体制の構築

 医療用物資等の確保・備蓄等

 

○ワクチン・治療薬等の研究開発の推進等

 ワクチンの研究開発・生産体制の戦略的な強化

 治療薬の研究開発・実用化の支援

 

○地域包括ケアシステムの構築、データヘルス改革等

 地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革の推進

 自立支援・重度化防止、認知症施策の推進、介護の受け皿整備・介護⼈材の確保の推進

 予防・重症化予防・健康づくり、データヘルス改革の推進

 

ここで、「データヘルス改革」というのは、保健医療サービスを国民が効率的に受けられる環境の構築を目的として、ICTを活用した健康管理・診療サービスの提供や、健康・医療・介護領域のビッグデータを集約したプラットフォームを構築していく厚生労働省の戦略のことを指します。

 

<ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現>

○雇用維持・労働移動・人材育成 雇用の維持・在籍型出向の取組への支援

 女性・非正規雇用労働者へのマッチングやステップアップ支援、新規学卒者等への就職支援

 デジタル化の推進、人手不足分野への労働移動の推進

 

○多様な人材の活躍促進

 女性活躍・男性の育休取得促進

 就職氷河期世代の活躍支援

 高齢者の就労・社会参加の促進

 障害者の就労促進、外国⼈の支援

 

○働きやすい職場づくり

 良質なテレワークの導入促進

 最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進、同⼀労働同一賃金など公正な待遇の確保

 総合的なハラスメント対策の推進

 

「働きやすい職場づくり」の項目の中に「最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進」とあります。

つまり、生産性向上等により、企業に余力が発生したのを受けて、最低賃金・賃金の引上げが行われるという本来の姿が示されています。

現実には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、企業の体力が低下しているこの時期に、最低賃金の大幅アップが行われます。

これによって、業種によっては、雇用の維持・推進が困難になることが懸念されます。

 

<子どもを産み育てやすい社会の実現>

○子育て家庭や女性の包括支援体制 母子保健と児童福祉の⼀体的な支援体制の構築

 ヤングケアラー等への支援

 困難な問題を抱える女性への支援

 生涯にわたる女性の健康の包括的支援

 

○児童虐待防止・社会的養育の推進、ひとり親家庭等の自立支援

 地域における見守り体制の強化

 里親委託の推進や施設退所者等の自立支援

 ひとり親家庭等への就業支援を中心とした総合的支援

 

○不妊症・不育症の総合的支援

 不妊治療の保険適用

 不妊治療と仕事の両立支援

 

○総合的な子育て支援

 「新子育て安心プラン」等に基づく受け皿整備

 保育人材確保のための総合的な取組

 

「子育て家庭や女性の包括支援体制」の項目の中の「ヤングケアラー」は、法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを、日常的に行っている18歳未満の子どもとされています。

社会的養護が必要な子どもを、児童福祉法に基づき行政から委託を受けて、家庭に一時的に預かり育てるのが「里親」です。貧困や虐待、実親の病気など、実家庭で生活できない子どもは現在全国に5万人近くいます。

 

<安心して暮らせる社会の構築>

○地域共生社会の実現等 相談支援、参加支援、地域づくりの⼀体的実施による重層的支援

 生活困窮者自立支援、ひきこもり支援、自殺対策、孤独・孤立対策

 成年後見制度の利用促進

 

○障害児・者支援等

 医療的ケア児への支援の拡充

 依存症対策の推進

 

○水道、戦没者遺骨収集、年金、被災地支援等

 水道の基盤強化

 戦没者遺骨収集等の推進

 安心できる年金制度の確立

 被災地における心のケア支援、福祉・介護提供体制の確保

 

「医療的ケア児」は、医療的ケアを必要とする子どものことです。

医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもの数は、全国で2万人を超えています。

 

<解決社労士の視点から>

4つの重点要求のうち、企業と最も関わりが深いのは少子化対策です。

令和4年4月と10月にも、育児休業に関する法改正が控えています。

コロナの影響もあって、少子化対策は、より強力に継続されることが想定されます。

今後、法改正や市場動向の変化に取り残されないよう注意する必要があります。

2021/09/09|1,060文字

 

懲戒処分 人事考課 人事異動 https://youtu.be/wc_ecA4cnCQ

 

<懲戒の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

これは、不都合な結果の発生を予見して回避する能力はあるのに、故意あるいは明らかな不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

しかし、能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

 

<懲戒の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。

一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。

これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

 

<懲戒の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

これは、罪刑法定主義の考え方です。

ある行為を処罰するためには、禁止される行為の内容と処罰の内容を具体的かつ明確に規定しておかなければならないとする原則です。

これは、日本国憲法第31条と第39条にもその趣旨が示されています。

対置される概念は罪刑専断主義です。

たとえば「社長を怒らせたら懲戒処分」という考え方です。

こんなことでは、社員はいつも不安です。

懲戒規定に定めの無い行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。

しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下します。

たとえば、ある社員が作業の問題点を指摘し、改善提案をしたとします。

これを不快に思った会社側が、不当に懲戒処分を行ったならば、その職場での改善は進まなくなってしまいます。

やはり、懲戒規定に具体的な定めのない行為を行っても、懲戒処分の対象とされることはないのだという安心感に基づいて、伸び伸びと勤務できる環境が会社の成長を促すのです。

2021/09/08|1,595文字

 

<配属部署が向いていない?>

入社にあたって会社に伝えた希望の部署とは違う部署に配属されることの方が多いのではないでしょうか。

どの部署が向いているかは、自分自身の判断、会社の判断、真の適性の3つが食い違うこともあります。

自分や会社が向いていると判断した部署が、実は向いていない部署の場合もあります。

また、会社の判断では希望通りの部署について適性を認めたものの、その前に今の部署の仕事を経験させておこうというキャリア設計があるかもしれません。

もしそうであれば、今の部署である程度の実績を上げなければ、希望の部署への異動は遠のいてしまいます。

それに、いきなり希望の部署に配属されて、思ったほど仕事が進められなければ、自分に失望してしまいます。

これは大きな挫折となりますから、希望の部署に配属されないのは一種のリスク回避でもあるのです。

 

<会社が向いていない?>

もう少し視野を広げて考えてみれば、配属された部署の仕事が向いていないのではなくて、その会社が向いていないのかも知れません。

経営方針に共鳴していたとしても、企業風土や職場の雰囲気が自分に合っていない可能性もあります。

そうだとすれば、たとえ別の部署に異動になっても、それが希望の部署であったとしても、会社が向いていないのであれば、これから先、自分の思い描いていた仕事はできないのかもしれません。

 

<会社勤めが向いていない?>

さらに視野を広げて考えてみると、会社が向いていないのではなくて、会社という組織の中で、会社に雇われて働くことが向いていないのかも知れません。

決められた日の決められた時刻に出勤して、最低限、決められた時刻までは働かなければなりません。

自分のやりたいように仕事を進められるわけではありません。

上司もいれば先輩もいますから、その指導やアドバイスも受け入れなければなりません。

理不尽と思える話でも、拒否するわけにはいきません。

新人のうちは、注意を受け、叱られることも多いでしょう。

それで、仕事のやり直しによる残業も発生します。

予定通りの時刻に帰宅できないことも当たり前になります。

こうした生活が向いていない、つまり、そもそも会社勤めが向いていないという可能性は、決して低くはないのです。

 

<働くことが向いていない?>

では、会社勤めが向いていないとして、どうやって生計を立てれば良いのでしょうか。

あるいは、再び親の扶養に入るのでしょうか。

自分で何とかしようと思うのであれば、個人で事業を立ち上げるとか、会社を設立するとか、雇われない形で働くことを考えることになります。

企業風土とか職場の雰囲気は、自分自身で作れば良いのですし、誰かの指示に従う必要もありません。

始めたいときに仕事を始め、終わりたいときに仕事を終了することも自由です。

こうしたことが「大変だなぁ」と感じるのであれば、そもそも働くことが向いていないのかも知れません。

 

<解決社労士の視点から>

働くことが向いていない、会社勤めが向いていないということであれば、転職しても上手くいくはずがありません。

大人として、社会人として、まともな生活をしようと思うのであれば、まずは自分に与えられた仕事を誠実にこなしていくことをお勧めします。

自分に合っていない仕事をこなしているうちに、自分自身が変わっていきます。

また、自分がきちんと仕事をこなすことで、その部署の雰囲気もルールも変わってきます。

こうして、最初は「自分に合っていない」と思っていても、やがて自分がその部署に近付き、その部署が自分に近付いてくるのです。

たとえ不本意な仕事であっても、誠意をもってこなすことは、これから先、今の会社で働くにせよ、転職するにせよ、独立するにせよ、決して無駄にはなりません。

今の環境から安易に飛び出すよりは、まず熱心に取り組んでみて、自分自身を成長させ変革させていくことを強くお勧めします。

2021/09/07|1,135文字

 

<事業者が実施義務を負っている主な健康診断>

事業者は労働者に対し、厚生労働省令の定めに従って、医師による健康診断を実施する義務を負っています。〔労働安全衛生法第66条第1項、第2項〕

その主なものは次の3つです。

・雇入時健康診断…常時使用する労働者を雇入れる直前または直後に実施。〔労働安全衛生規則第43条〕

・定期健康診断…常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第44条〕

・特定業務従事者健康診断…深夜業や重量物の取り扱い等の有害業務に常時従事する労働者に対して、6か月以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第45条第1項〕

 

<対象者の範囲>

雇入時健康診断と定期健康診断は、正社員はもちろんですが、所定労働時間が正社員の4分の3以上の従業員は受けさせることが、法的に義務づけられています。ただし、1年未満の有期労働契約で、契約更新によっても1年以上働く見込みがない者は除きます。

特定業務従事者健康診断は、契約形態や所定労働時間に関係なく、定期、入社時、有害業務への配置転換時について実施義務があります。

 

<定期的な実施>

定期健康診断の「1年以内ごとに1回定期的に」、特定業務従事者健康診断の「6か月以内ごとに1回定期的に」というのは、時期がずれると「定期的」ではなくなってしまうので、それぞれの労働者にとって同じ月の実施となるのが通常です。

労働者が50人以上の事業場では、所轄の労働基準監督署長に定期健康診断結果報告書を提出するので、時期がずれれば、そのことが労働基準監督署に知れることにもなります。

 

<コロナの影響で予定通りできない場合の対応>

現実的な問題として、いつも同じ時期に同じ健診機関で健康診断を実施していたところ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、一時的に健康診断が行われないという事態が発生しています。

こうした場合の対応については、法令に規定が無いのですが、労働基準監督署は次のような対応を取るように指導しています。

・いつもと違う健診機関で、いつもと同じ時期に健康診断を実施できるよう努力する。

・これができない場合には、なるべく近い時期に健康診断を実施するよう努力する。

・健康診断の実施時期がずれた場合には、やむを得ずずれて実施した事情についての記録を残し保管する。

つまり、いつもの時期に実施できるよう努力することは求められるものの、どうしてもできなかった場合には、具体的な事情と対応について記録を残し保管して、所轄の労働基準監督署から照会があった場合には説明できるようにしておくということです。

結局、不可能を強いられることは無いのですが、きちんと理由を説明できる証拠は残さなければならないということです。

2021/09/06|1,302文字

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのです。

もちろん、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

それでも、電車の遅れに対して、一般には使用者側に落ち度が無いので、やはり賃金の支払い義務は無いのです。

つまり、電車が遅れて勤務できなかった時間の賃金について、会社が欠勤控除をせず全額支払うというのは、法令によるものではなく会社の恩恵的な取扱いだということになります。

ただ、電車の遅れによる遅刻について欠勤控除をしない会社の比率は高いですから、欠勤控除をするルールの会社では社員の不満が生じやすいでしょう。

 

<証明を求める会社>

遅刻の報告書に遅延証明書を添えれば、証明された遅延時間の範囲内で、欠勤控除をしないというルールの会社が多数派でしょう。

遅延証明書は、多くの鉄道会社でネット交付のサービスがありますから、ずいぶんお手軽になってきました。

 

<証明を求めない会社>

遅延証明書が無くても、本人が申し出れば欠勤控除をしないというルールの会社もあります。

改札口で遅延証明書をもらうための列に並ぶよりは、1分でも早く業務を開始してもらった方が、会社にとって得かもしれません。

また電車遅延の情報は、ネットで容易に得られるようになりましたから、社員のひとり一人から遅延証明書をもらうよりも、人事部門で一括して情報を把握し処理した方が、人件費の節減になります。

 

<問題社員のケース>

欠勤控除をしない会社の場合、次のような不正行為がありえます。

本当は寝坊してタクシーで駆けつけたのに、ネットで検索して、たまたま電車の遅延情報を見つけたから、遅延証明書をダウンロードして使用するということはありえます。

大雪などで、早朝から電車の大幅遅延が見込まれているのに、いつも通りの時刻に自宅を出発し、遅延証明書の範囲で賃金が得られるなら良しとする社員もいます。

このあたりは、教育研修や人事考課の適正な運用で対応すべきことでしょう。

 

<鉄道会社の賠償義務>

さて、電車の遅れによって賃金が減ったら、社員は減った分の賃金を損害として鉄道会社に請求できるのでしょうか。

直感的に無理だというのはわかります。

鉄道会社と乗客との間には旅客運送契約があります。読んだことがなくても有効なのは、電気会社やガス会社などとの契約と同様です。

この旅客運送契約に関して、各鉄道会社は営業規則を定めていて、鉄道会社は運行不能や2時間以上の遅延の場合などに料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。

2021/09/05|873文字

 

<トップからの情報発信>

トップから、長時間労働の削減や休暇の取得促進など働き方改革の推進について、明確な情報発信を定期的に行う必要があります。

働き方改革は、管理職が中心となって推進しなければ進みません。

ところが、管理職の中に「労働時間の削減や休暇の増加で業務が滞るのではないか。その場合には、自分が責任を問われたり、負担が増えたりするのではないか」という疑念があったのでは、消極的にならざるを得ません。

トップが、会社の経営課題の一つとして働き方改革を掲げ、朝礼、社内報、電子掲示板など、あらゆるチャネルを活用して発信する必要があります。

また1回だけ発信しても、時間が経てば、社員の中に「まだトップはその気になっているのだろうか。気が変わっていないだろうか」と不安になります。

このことから、情報発信は繰り返し定期的に行わなければなりません。

 

<経営幹部からの情報発信>

トップが働き方改革の推進に向けたメッセージを繰り返し発信していても、役員など経営幹部の意識が変わらなければ社内に浸透しません。

経営幹部が、中期経営計画など全社の経営計画を策定する時に、トップからの情報発信を受けての内容を盛り込み、目標を数値化したうえで全社員に発信する必要があります。

トップの立場からすると、経営幹部にこうした情報発信をさせることで、自ら推進することに対する責任を負わせるということになります。

 

<社外に向けた情報発信>

所定外労働の削減や年次有給休暇の取得増加によって、お取引先やお客様など社外にも影響が出てきます。

こうした影響の原因が働き方改革の推進にあること、働き方改革にどのようなメリットを期待して推進するのかを社外にも示す必要があります。

お取引先に対しては、有能な人材の確保ということが最も説得力を帯びてくるでしょう。

また、お客様に対しては、社員の生活を大切にしたいという思いをアピールすることができます。

働き方改革は、多くの企業が同時に推進し、社会全体で盛り上げなければなりません。

社外に向けた情報発信は、企業の社会的責任を果たすうえでも必要なものです。

2021/09/04|1,914文字

 

<テレワークを導入しなかった理由>

新型コロナウイルス感染症の拡大前には、テレワークの実施に消極的な企業も多く、政府が働き方改革の一環で推奨していたにも関わらず、特に中小企業では導入が広がりませんでした。

これについては、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・業種や職種がテレワークに不向き

・コミュニケーションをとることが難しい

・人材教育やマネジメントが難しい

・情報セキュリティの不安がある

・各従業員の出退勤や休憩時間の把握が困難

・出社しなければできない業務がある

・社内規定が整備されていない

・環境整備のための予算が無い

・正社員以外の従業員が多い

・従業員に持ち運びできるPCが与えられていない

・同居家族の協力が得られない

・仕事とプライベートの区別がつきにくい

・労災への対応がよく分からない

・経営層の理解が無い

・管理職にIT苦手意識が強い

 

こうしてみると、テレワークの実施を諦める決定的な理由があるわけではなく、心理的なハードルが高いように思えます。

 

<テレワークを導入した理由>

従来から、テレワークが推奨される理由としては、主に生産性の向上が挙げられています。

この他にも、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・従業員の移動時間の短縮

・従業員の通勤による疲労の軽減

・非常時の事業継続を可能にする

・上司などの目を気にせず業務に集中できる

・育児や介護との両立を可能にする

・遠方に転居しても勤務を続けられる

 

こうした理由に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、次のような理由も加わって、一気にテレワークの導入が進みました。

 

・社内でのクラスター発生の防止

・通勤による従業員の感染の防止

・勤務中の長距離移動による感染拡大の防止

・密な状態で食事をとることによる感染拡大の防止

・新型コロナウイルスの感染が拡大しても事業継続を可能にする

 

今まで、できない理由を並べてテレワークに消極的であった企業の多くが、一度はテレワークに取り組んでみるという動きが盛んになりました。

中には、オフィスの縮小や移転を行った企業も見られました。

これによって、大幅な経費の削減も可能となりました。

 

<テレワークをやめた理由>

積極的にテレワークに取組んでみた結果、当初認識していた「テレワークを導入しなかった理由」を改めて痛感することとなった企業が多かったようです。

また、ペーパーレス化の進んでいない企業では、書類を会社にしか保存していないから、稟議書に捺印が必要だから、といった紙の書類への対応で出勤せざるを得ない状況は、マスコミにも大きく取り上げられました。

このこともあって、政府は捺印省略を一気に進めたのですが、民間企業での対応は思うように進んでいません。

さらに、当初は新型コロナウイルスに対する恐怖から、テレワークを強く希望していた従業員も、いざ導入してみると、通信費、光熱費、消耗品費だけでなく、新しい机、椅子、パソコンなどの負担についてのルールが不明確で、経済的な負担が大きくなったり、残業代が減少したり、通勤手当が支給されなくなったりと、収入も減るなど不利益を痛感するようになりました。

すべての従業員がテレワークの対象となるわけではなく、一部の従業員に限られるため、不公平感を払拭できない、特に派遣社員についてはテレワークの実施が困難であるという問題も指摘されました。

 

<隠された理由>

テレワークをやめた理由として、企業に対するアンケートでクローズアップされないものとして、リモートワークハラスメント(リモハラ)があります。

これは、テレワークあるいはリモートワークでは、距離感を錯覚したりコミュニケーションの取り方が従来と異なったりすることにより、新たなハラスメントの発生や増強が起こるものです。

特に、1対1でのリモート対応では密室化するわけですから、ハラスメント発生の危険が高まります。

ハラスメントで怖いのは「慣れ」です。

マスコミで取り上げられるハラスメントは、かなり深刻な人権侵害であることが多いのですが、発生した組織内では、徐々にエスカレートし「慣れ」によって、何とも思わなくなっているという恐ろしさがあります。

テレワークで発生した「慣れ」は、出勤しても残りますので、従業員の感覚の変化には注意する必要があるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

新型コロナウイルス感染症拡大への対応で、企業がテレワークを拡大したのに対応して、政府は前倒しでオンライン化を進めました。

一度は諦めたテレワークであっても、態勢を整えて再チャレンジする価値があります。

また、テレワークだけでなく、業務のオンライン化を進めるチャンスでもあります。

2021/09/03|1,190文字

 

<転倒災害の現状>

労働災害のうち、休業4日以上の死傷災害の中で、最も件数が多いのは転倒災害です。

実に全体の4分の1を占めています。

 

<滑って転ぶ危険の解消>

床にこぼれた液体で滑って転倒する場合があります。

床に水や油などがこぼれていたらすぐに拭き取れる道具を常備しておき、実際にすぐに拭き取るルールにしておく必要があります。

また、どうしても水や油などのたまりやすい場所には、マットを敷くなどして危険の発生を未然に防ぎましょう。

もちろん、自分でこぼした水は自分で拭くなどは常識として徹底しましょう。

どうせ後で清掃業者が来るからと放置しておくと、危険が増してしまいます。

 

<つまずいて転ぶ危険の解消>

床の上に置いたものやコード類につまずく危険も大きいものです。

「仮に」「ちょっと」ということで、一時的に床の上に物品を置くことは危険です。

人事異動に伴う席替えの際は、ほんの短時間という気の緩みから、書籍やファイルを床の上に置いてしまうことがあります。

普段は無い物が床の上にあると、これにつまずいて転倒する危険は想定外に大きいものです。

また、コード類は通路を横断しないように配線するのが基本です。

レイアウトの変更に伴い配線を変えられるよう、コード類を床の下に置くフリーアクセスにしておけば安全です。

これができない場合には、モールというカバーをコードの上に設置するのがお勧めです。

ただ、このモールは蹴飛ばされているうちに外れたり破損したりしますから、予備の部材を置いておき、適宜補修することをお勧めします。

 

<階段で転ぶ危険の解消>

階段で足を踏み外して転ぶことがあります。

この場合、打撲や骨折、場合によっては死亡事故になることもあります。

予防には、物理的な対策と安全のためのルール順守が有効です。

・急勾配の階段は設置を避ける

・滑り止めを設ける

・手すりを設ける

・十分な照明を設置する

・昇降する際は手すりを使用する

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

 

<凍結した水たまりや雪で転ぶ危険の解消>

冬になると、凍結した路面での転倒が多発します。

時間帯は朝に集中します。

凍結する場所や雪が積もる通路は特定できますので、その部分に重点的に対策を施すのが効果的です。

・凍結しやすい路面に凍結防止用の砂を撒く

・凍結しやすい出入口には凍結防止のマット類を敷く

・滑りやすい靴の使用を避ける

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

・危険な場所を歩行する際は、小さな歩幅で、靴の裏全体を着け、急がずにゆっくりと歩行する

・万一に備えて手袋を着用する

 

<解決社労士の視点から> 

手ぶらで転倒しても、大怪我をすることがあります。

ましてや、荷物や高温の料理を運んでいるときに転倒すると、障害が残るような大怪我となることもあります。

ちょっとした経費と手間で、戦力ダウンを防ぎ、安心して働ける職場環境にしましょう。

2021/09/02|1,087文字

 

<犯罪による被害>

犯罪には侵害される「利益」があり、刑法などはその「利益」を守るために刑罰を規定しています。

この「利益」は、保護法益などと呼ばれています。

しかし、犯罪によって侵害される利益は、法令によって保護が予定されている利益にとどまりません。

たとえば、窃盗罪の被害者は財産上の利益を奪われるだけでなく、盗まれたものに対する愛着心や、被害に遭ったショックなどにより、精神的な被害も受けています。

 

<二次被害>

このように犯罪の被害者は、二次被害を受けています。

犯罪の被害者となったことによる精神的ショックや身体の不調、医療費の負担や失業による経済的損失、捜査協力や裁判に関わることによる精神面や時間の負担、うわさ話などによる精神的な被害など、その範囲は広範に及びます。

こうしたことにより、欠勤が発生したり、仕事の能率が低下することは、容易に想定されるのですが、こうした不利益から社員を守れるのは会社しかありません。

 

<犯罪被害者休暇の必要性>

犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。

特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

 

<就業規則の規定例>

(犯罪被害者休暇)

第●条 会社は、犯罪の被害を受けた従業員の心身の回復を図り、早期に通常の業務に専念できるようにすることを目的として、  日を限度に有給の休暇を与える。

2 前項の休暇は、従業員が次の理由により止むを得ず勤務できない場合に、これを与えるものとする。

・犯罪の被害を受けたことによる心身の治療のための通院

・犯罪被害者としての警察からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴

 

上記の例では「有給の休暇」としていますが、無給とする場合であっても、年次有給休暇を付与する場合の出勤率の計算にあたって出勤扱いにするとか、人事考課にあたって欠勤扱いにしないとか、退職金の計算にあたって勤続期間から控除されないなどの利益がありますから、決して無意味ではありません。

2021/09/01|931文字

 

<雇用保険法施行規則の一部改正>

雇用保険法施行規則の「育児休業給付金におけるみなし被保険者期間の算定方法の見直しに関する規定」が改正されました。

これにより、雇用保険の育児休業給付金の被保険者期間の要件が、9月1日から一部変更となりました。

これまで要件を満たさなかった場合でも、支給の対象となる可能性があります。

特に、勤務開始後1年程度で産休に入った従業員などは対象となる可能性があります。

 

<原則のみなし被保険者期間>

育児休業開始日を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上あることが原則の要件です。

これまでは、この要件を満たさないと育児休業給付金を受けられませんでした。

 

<不都合な点>

女性従業員が育児休業をする場合、育児休業前に産前産後休業を取得しているのが一般的です。

ですから、1年程度勤務した後、産前休業を開始したようなケースでは、出産日に応じて育児休業開始日が定まることから、そのタイミングによってはみなし被保険者期間の要件を満たさない場合がありました。

 

<新たに認められたみなし被保険者期間>

今回の規則の改正により、原則のみなし被保険者期間の要件を満たしていない場合でも、産前休業開始日等を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上ある場合には、被保険者期間要件を満たすこととされました。

 

<留意点>

育児休業開始日が令和3年9月1日以降の雇用保険被保険者が対象です。

賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上の月が12か月無い場合でも、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として算定します。

産前休業を申し出なかったため、産前休業を開始する日前に子を出生した場合は「子を出生した日の翌日」、産前休業を開始する日前にその休業に先行する母性保護のための休業をした場合は「先行する休業を開始した日」を起算点とします。

 

<解決社労士の視点から>

従来のみなし被保険者期間では、育児休業給付金の受給要件を満たしていない場合でも、新たに認められたみなし被保険者期間で要件を満たしていないかを確認し、手続漏れが発生しないように注意しましょう。

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