2020年 11月 21日

2020/11/21|1,324文字

 

<退職してもらう方法の選択>

大きなミスが多く、一定の期間、適正な注意・指導・教育を行っても改善が見られない場合には、仕方なく会社を辞めてもらうことになります。

その方法としては、退職勧奨や普通解雇があります。

解雇が有効となる条件がそろっているような場合には、会社から対象者に十分な説明のうえ退職を勧め(退職勧奨)、本人がこれに応じて合意退職が成立することも多いでしょう。

しかし、解雇が有効となる条件が欠けている場合、能力不足などにより転職がむずかしい社員の場合、実力に比べて高額な給与が支給されているような場合には、なかなか本人が退職勧奨に応じないものです。

また、能力不足そのものを理由とする懲戒解雇はできませんので、「このままだと懲戒解雇になる」などの説明をして退職願・退職届を提出させた場合でも、錯誤〔民法第95条〕、強迫〔民法第96条〕による退職の意思表示の無効が主張され、取り消されてしまう可能性があります。

さらに、反省を示す意図で退職願が出されたのに対し、会社側がその意図を知りうるのに退職手続を進めたような場合には、心裡留保〔民法第93条〕により退職の意思表示が無効となる可能性もあります。

 

<普通解雇による退職>

結局、能力不足によるミスの連発が見られる場合には、普通解雇を検討することになります。

普通解雇のつもりで解雇を通告しても、法的な条件を満たしていなければ解雇権の濫用とされ無効となります。

これが不当解雇です。

不当解雇の場合には、解雇したつもりになっていても、それは無効だということです。

解雇が有効となるためには、次の条件を満たしている必要があります。

・就業規則に普通解雇の具体的な理由が示されていること

・就業規則の普通解雇の具体的な理由に当てはまる事実があること

・解雇権の濫用〔労働契約法第16条〕ではないこと

・解雇予告義務〔労働基準法第20条〕が果たされていること

・解雇が法律上の制限に違反していないこと

 

<証拠固め>

退職勧奨に応じた社員や、普通解雇をした社員から、合意退職や解雇の無効を主張されることがあります。

これに備えて会社は証拠を保管しておく必要があります。

ところが実際には、会社側に証拠が残っていないことが多く、退職者の主張を覆せないことによるトラブルが後を絶ちません。

会社が「十分に注意・指導・教育しても改善の見込みが無かった」という証拠を持っていなければ、真実はそうであったとしても、裁判官はその事実を認定できません。

注意・指導・教育の日時と内容、そしてその後の対象社員の変化などを、文書に残しておく必要があります。

会社経営者、上司、同僚、部下、取引先などは、基本的に会社の味方ですから、その証言は信頼に値する証拠になりません。

また、そもそも業務上のミスが多いので辞めてもらいたいわけですから、いつどのようなミスがあったのか、会社はどう対処したのかという基礎的な証拠も必要なわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

解雇権の濫用とされる基準は、労働契約法第16条を読んだだけでは具体的なことが分かりません。

具体的な事案に即した専門的な判断が要求されるのです。

社員に退職してもらうことを検討する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

柳田 恵一

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