2017年 4月 7日

<覚書の効力>

新規採用のフリーターが、社会保険の加入基準を満たしているにもかかわらず、社会保険は親の扶養に入っていたいから、手取りが減るのは嫌だからといった理由で、加入を拒むことがあります。

こんなとき、「社会保険の未加入を希望します。御社にご迷惑をお掛けしません」という誓約書や覚書は効力がありません。

 

<ベニスの商人>

シェイクスピアのベニスの商人では、主人公が悪名高い金貸しに金を借りに行き、「指定された日付までに借りた金を返すことが出来なければ、身体の肉1ポンドを与えなければいけない」という契約書を交わします。

ところが主人公は借金を返せないので、金貸しは主人公を裁判に訴え、主人公の身体の肉1ポンドを要求します。

裁判では「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」とされたという話です。

社会保険の加入基準を満たしているのに加入しない、加入させないというのは違法です。違法な内容について、誓約書や覚書を作っても無効です。

そもそも加入基準を含め、社会保険についてのルールは国が定めていますから、国との間で合意するのではなく、会社と従業員とで勝手に合意することは無意味なのです。

 

<かつて流行った悪行>

10年余り前のことですが、次のような困ったことがフリーターの間に、クチコミで広まりました。

会社に採用されたフリーターが、社会保険への加入を拒みます。「加入するなら退職する」とまで言われ、会社はやむなくこれに応じます。

1~2年後、フリーターは退職を申し出て、退職後に社会保険事務所(現在の年金事務所)に給与明細書などを持って行き、「こんなに働いているのに社会保険に入っていませんでした」と申し出ます。

会社に指導が入りますから、やむなくさかのぼっての加入手続きをします。保険料の支払い義務は第一に会社が負っていますから、会社が保険料を支払って、この退職したフリーターに本人負担分を請求しますが、もちろん無視されます。

こうして、このフリーターは保険料を支払わずに社会保険に加入できるのです。

 

<ではどうするか>

社会保険に加入するか、それとも、社会保険の加入基準を下回る勤務日数、勤務時間の労働契約で働くか、二つに一つだということです。

人手不足なので悩ましいですが、うっかり応募者の口車に乗って、やってはいけないことに同意してしまうと、後から会社に損失をもたらしかねないのです。

 

2017.04.07.解決社労士