2016年 10月

<第三者の行為による傷病届>

もともと保険というのは、保険料を負担した人やその関係者に給付があるわけです。

健康保険では会社と従業員が保険料を折半して、従業員や扶養家族が治療を受けると健康保険から給付が行われて、治療費の3割を負担するだけで済みます。

ところが無関係な第三者からケガをさせられて、治療費に保険が使われると、ケガをさせた第三者は、治療費の負担が減ったり負担がなくなったりして、不当に利益を得てしまいます。

こうした不都合が起こらないように、保険者である協会けんぽなどが、加害者に費用の負担を求めるための手続きが加わるのです。

 

<病院に提出が必要な書類>

協会けんぽなどの保険者に次の書類を速やかに提出しましょう。傷病手当金の請求をしなくても、治療を受ける場合には必要です。

・第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届

・損害賠償金納付確約書→加害者が書きます。治療費支払いの約束です。

・念書→被害者の損害賠償請求権を健康保険の保険者に譲り渡す約束です。

・負傷原因報告書→いつ、どこで、どうしてケガをしたのかの報告書です。

 

<保険給付の制限>

ケンカや、酒を飲みすぎてケガした場合には、全く健康保険が使えない場合と一部だけ使える場合があります。〔健康保険法117条〕

 

勤務中のケンカによるケガなど、労災保険の手続きについても同様の書類が必要になります。急がないと関係者の記憶が薄れたり、情報が集まらなくなったりします。第三者がからむ保険の手続きは複雑ですから、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談することをお勧めします。

 

2016.10.31.

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、前もって取得する日を指定するのが通常です(時季指定権)。

指定された日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、この時季変更権を使う余地がありません。ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<遡ってでも年次有給休暇を取得させたい場合>

会社のために長い間貢献してくれた人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、気持よく送り出したいし、送別会も盛大にやりたいです。

今まで、ろくに休暇が取れていないのならば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいと思います。

しかし、退職までの間にきちんと引継ぎを終わらせて欲しいし、すべて取得させるのはむずかしい…。そして思いつくのは、遡っての取得です。

 

<遡っての年次有給休暇取得に問題は無いか>

会社が時季変更権を放棄するのでしょうから、基本的には遡っての取得に問題は無さそうです。

ただし、前年度に遡ると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。社会保険料の計算も、やり直しが必要になるかもしれません。

また、元々の休日に年次有給休暇を取得させることもできませんから、遡ることには限界があります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買い取りです。通常は、買い取りは許されないのですが、退職にあたって買い取ることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

いずれにせよ、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

ちょっとした裏技と思っていたことが、実は労働法違反ということは、よくある勘違いです。本当に大丈夫か迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。 

 

2016.10.30.

<休職とは>

休職とは、長く働く予定であった従業員が、個人的な事情により長期間勤務できない状況となり、本来ならば退職しなければならないところ、会社が必要を認めて退職させずに雇用を継続する制度です。

そして、長期間勤務できない理由ごとに一定の休職期間が設定され、復帰できる状態になれば職務に復帰し、期限までに復帰できなければ退職となります。

これが一般的な形です。しかし、育児休業や介護休業などを除き法定の制度ではありませんから、この制度を設けるかどうか、どのような制度にするかは基本的に会社の自由です。

 

<私的な病気やケガによる休職の例>

たとえば、次のような規定が考えられます。

 

第XX条(休職)

労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

(1)業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないときは、2年以内

(2)前号のほか特別な事情があり、休職させることが適当と認められるときは、必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

1項1号で、「業務外の傷病」と言っているのは、業務災害の場合には解雇が制限されているからです。〔労働基準法19条1項〕

 

<お勧めしたい表現の変更例>

主語を明確にして、トラブルを未然に防止するには、下線部を次のように変更することが考えられます。

 

第XX条(休職)

労働者が次のいずれかに該当するときは、会社が必要に応じて、所定の期間休職を命ずることがある。

(1)  業務外の傷病による欠勤が1か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないときは、2年以内

(2)  前号のほか特別な事情があり、会社が休職させることが適当と認めたときは、必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当と会社が判断した場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

このように表現を変更することによって、次のことが明確になります。

・会社は従業員に休職の権利を与えたわけではない。

・休職を判断するのは従業員ではなく会社である。

・会社は休職を命じても良いし、命じなくても良い。

・元の職務と違う職務に復帰させる必要性についても会社に判断権がある。

これによって休職は、会社にとって必要な人材を確保するための仕組みであることが明確になります。

こうしておけば、従業員から「3か月の世界一周旅行に行ってくる。これは1項2号の特別な事情にあたるから必要な期間休職させなさい」などと言われることも無いと思います。

 

就業規則は、言葉が足らなくても余計な言葉が付いていても、それがトラブルの元となります。

ぜひ一度、信頼できる社労士(社会保険労務士)のチェックを受けるよう強くお勧めします。

 

2016.10.29.

<介護保険制度>

介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みです。その費用は、公費(税金)や高齢者の介護保険料のほか、40歳から64歳までの健康保険の加入者(介護保険第2号被保険者)の介護保険料(労使折半)などによりまかなわれています。

 

<64歳までの介護保険料>

40歳から64歳までの健康保険の加入者は、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。

介護保険料は「満40歳に達したとき」より徴収が始まります。

ここで、「満40歳に達したとき」とは、40歳の誕生日の前日のことです。そして、その日が属する月から介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料が徴収されます。

法律上は、誕生日の前日に1歳年をとるので、このように定められています。特に1日生まれの人は、前月の末日に40歳になるので注意しましょう。

 

<65歳からの介護保険料>

健康保険に加入していても、介護保険料は「満65歳に達したとき」より、健康保険料と一緒には徴収されなくなります。

「満65歳に達したとき」とは、65歳の誕生日の前日のことであり、その日が属する月から介護保険の第2号被保険者ではなくなり、介護保険料が徴収されなくなります。

ただし、65歳以降は介護保険の第1号被保険者となり、お住まいの市区町村より介護保険料が徴収されることとなります。また、年金受給者の場合には、年金から介護保険料が差し引かれる形で徴収されることがあります。

こうして介護保険料は、亡くなるまで徴収が続くことになります。

 

2016.10.28.

「待期期間」と「給付制限」とが混同されやすいようです。

 

<待期期間>

ハローワーク(公共職業安定所)に離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間を「待期期間」といい、その期間が満了するまでは失業手当(雇用保険の基本手当)は支給されません。

これは、離職の理由にかかわらず、一律に適用されます。

 

<給付制限>

さらに待期期間の満了後、一定の期間、雇用保険の基本手当の支給が行われない場合もあり(給付制限)、主なものとして次の理由があります。

1.離職理由による「給付制限」

客観的に正当な理由なく自己都合により退職した場合、または、労働者自身に責任がある重大な理由によって解雇された場合は、待期期間終了後、さらに3か月間の「給付制限」があります。

2.紹介拒否などによる「給付制限」

失業手当を受給できる人(受給資格者)が、公共職業安定所からの職業の紹介や指示された公共職業訓練などを客観的に正当な理由なく拒んだ場合、その拒んだ日から起算して1か月間は雇用保険の基本手当が支給されません。

また、再就職を促進するために必要な職業指導を客観的に正当な理由なく拒んだ場合にも、同様の「給付制限」があります。

 

<実際の入金>

なお、実際に雇用保険の基本手当として初めて現金が振り込まれるのは、給付制限の無い場合でも、ハローワーク(公共職業安定所)で求職の申込みをしてから約1か月後(初回認定日の約1週間後)になります。 

 

2016.10.27.

<助成金の額>

・65歳への定年引上げ100万円

・66歳以上への定年引上げ/定年の定めの廃止120万円

・希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入

 66歳から69歳60万円

 70歳以上80万円

 

<受給できる事業主>

次の1から8までのいずれにもあてはまる事業主に対して支給されます。

ただし1事業主あたり(企業単位)1回限りです。

1  雇用保険適用事業所の事業主であること。

2  審査に必要な書類等を整備・保管している事業主であること。

3  審査に必要な書類等を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の求めに応じ提出または提示する、実地検査に協力する等、審査に協力する事業主であること。

4  労働協約または就業規則による、次のaからcまでのいずれかの新しい制度を平成28年10月19日以降に実施した事業主であること。

a  旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ

b  定年の定めの廃止

c  旧定年年齢/継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入

5  4に定める制度を規定した際に経費を要した事業主であること。

6  4に定める制度を規定した就業規則等を整備している事業主であること。

7  4に定める制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法8条または9条1項の規定に違反していないこと。

8  支給申請日の前日において、その事業主に1年以上継続して雇用されている者であって60歳以上の雇用保険加入者(被保険者)が1人以上いること。

 

<申請の手続き>

助成金の支給を受けようとする事業主は、支給申請書に必要書類を添えて、制度の実施日の翌日から起算して2か月以内に、都道府県の支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)に提出します。

 

<変更にご注意>

助成金の内容は変更になることがあります。また、助成金そのものが廃止されることもあります。

このページ右側の「お勧めします」の中から「雇用関係助成金」を選んでいただくと、現在の助成金の内容をご確認いただけます。

 

助成金の受給について、面倒に感じられたり迷うことがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.26.

<賞与と特別支給金>

労災保険には、給付の本体とは別に特別支給金があります。

賞与(3か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は、本体給付には反映されませんが、特別支給金の一部に反映されます。

賞与が反映されるのは、特別支給金のうち障害特別年金・障害特別一時金・遺族特別年金・遺族特別一時金・傷病特別年金です。

ただし、特別加入者には支給されません。

 

<賞与として扱われる範囲>

3か月を超える期間ごとに支払われる賃金が反映されます。

ボーナスのほか、半年ごとに支払われる勤勉手当や販売奨励金などがあてはまります。

ただし、通勤手当が3か月を超える期間ごとに一括で支給されても、特別支給金ではなく本体給付に反映されます。

なお、結婚手当、出産手当など臨時に支払われた賃金は、本体給付、特別支給金のどちらにも反映されません。

 

2016.10.25.

<過労自殺と労災保険の適用>

自殺は故意に自分の命を絶つ行為ですから、一般には労働と死の結果との間に相当因果関係が無く、原則として業務起因性が認められないので、労災保険が適用されません。つまり、労働によって死亡したとはいえないとされるのです。

ここで相当因果関係というのは、労働と災害との間に「その労働が無ければその災害は発生しなかった」というだけでなく、客観的科学的に見て「災害の有力な原因が労働だと考えるのが自然である」「その労働からその災害が発生するのは、偶然でもなく、異常なことでもない」という関係があることをいいます。

しかし、過重な労働によりうつ病になり、うつ病によって自殺したといえる場合には、労災保険が適用されます。この場合には、労働とうつ病との間に相当因果関係があり、うつ病と自殺との間にも相当因果関係が認められれば、労働と自殺との間にも相当因果関係が認められて、労災保険の給付対象となるということです。

 

<安全配慮義務と債務不履行責任>

労災保険とは別に、会社に安全配慮義務違反などが認められれば、従業員の遺族から会社に対し債務不履行を理由とする損害賠償請求がなされることもありえます。

安全配慮義務というのは、労働契約を交わせば当然に会社が負う義務です。これに違反するのは、会社の債務不履行になるのです。〔民法415条〕

労働契約は、会社の「賃金を支払いますから働いてください」という意思表示と、労働者の「働きますから賃金を支払ってください」という意思表示が合致して成立します。契約書や労働条件通知書など無くても、労働契約は口頭でも成立します。

そして労働者は、きちんと働けるようコンディションを整えて定時までに出勤しなければなりません。たとえ出勤しても、すぐにトイレに入って眠っていたのでは、労務を提供していることにはならず、労働契約について債務不履行となります。

一方、会社は労働者がきちんと働ける環境を整えなければなりません。危険な労働環境で働かせようとするのは、労働契約について債務不履行となります。ここで「危険な労働環境」というのは、身の危険だけではありません。「何やってんだコノ!」「ちゃんとしろグズ!」などと、部下の指導のフリをしてストレス発散をしている部門長のもとで働くのは、精神に差し迫った危険があります。そして長時間労働の常態化は、身体と精神の両方にとって危険です。

結局、会社は労働者が精神を病んでしまう環境で働いているのを放置しておいて、実際にうつ病などにかかれば、債務不履行責任を負うことがあるのです。そしてそのうつ病が原因で自殺すれば、自殺についても責任を問われるということです。

 

パワハラや長時間労働で迷うところがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.24.

<就業規則の有効性>

就業規則は所轄の労働基準監督署長に届出をしても、労働者に周知しなければ効力がありません。

この「周知」というのは、すべての労働者が見ようと思えば見られるようにしておくことをいいます。つまり、本当に中身を読んだかどうか、理解したかどうかまでは問われません。

もっとも、日本語がよくわからない外国人には、その母国語で書かれた就業規則を周知したり、内容を解説した文書を公開したり、別の工夫が必要となります。

 

<就業規則が使われるケース>

実際に就業規則の規定が活用されるのは、「就業規則にこう書いてあるのに守らなかった」「就業規則によればこういう結論になる」といったケースです。これらの場合には、「読めば誰でも具体的な内容を理解できる」というのが前提になっています。

ところが実際には、表現が古くさくて理解できなかったり、そもそも読めなかったりということがあります。就業規則を作った人にはわかる内容でも、会社に高校生のアルバイトがいて、その人にはわからないというのでは困ります。就業規則違反を問いただしても、「へぇーそれはそういう意味だったんですかぁ」と言われたら、反省を促すこともできません。

 

<実例として>

就業規則のひな形の中で、たとえば次のような用語は、書き換えたほうがわかりやすいと思います。

就業に関する → 仕事に関する

若しくは → もしくは

漏洩しない → もらさない

多胎妊娠 → 双子・三つ子などを妊娠

既往の → それまでの

顕著な → 特にすばらしい

それぞれ、法令の用語がそのまま就業規則のひな形に使われ、それが会社の就業規則に入ってしまったものと思われます。

上にあげた例もそうですが、ことばは使われる場所によっても意味が違ってきます。前後の文脈も考えたうえで、ことばを選ぶ必要があります。

 

<わかりやすい就業規則にするには>

社員数名で就業規則の読み合わせをしてはいかがでしょうか。「ここの意味がわからない」と気軽に申し出られるメンバーであることが必要です。そして、よりわかりやすい就業規則の修正案を作成していくのです。

もし、こうしたことが社内でできないのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.23.

<会社の不安>

健康診断の結果、非常に健康状態の悪い人が見つかった。あるいは、本人が同僚に重病であることを明かしている。

こんなとき勤務を続けさせていて、万一のことがあったら、会社は何らかの責任を負わされるリスクがあります。

しかし、安易に雇用契約を解除すれば、不当解雇として責任を追及されるかもしれません。

会社としては、放置できない悩ましい問題です。

 

<健康診断で異常が見つかった場合>

会社は健康診断の結果で、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師などの意見を聴かなければなりません。〔労働安全衛生法66条の4

そして意見を聴いた結果、必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設・設備の設置・整備、その他の適切な措置を講じなければなりません。〔労働安全衛生法66条の5

これは、健康診断で異常が見つかった場合の規定ですが、労働者に健康不良がある場合に会社がとるべき対応として参考になる内容です。

 

<具体的な対応方法>

まず、健康状態について事実を確認するため、経営者や人事部門の担当者が対象者と面談します。このとき、健康診断の結果などを持参してもらうのが一般的ですが、健康診断の項目に無い病状であれば、これに代わる資料が必要です。

つぎに、ご本人の了解を得たうえで、医師などに相談します。相談結果については、ご本人にも伝えます。もちろん、会社の担当者とご本人とで、医師の意見を聴きに行くのも良いでしょう。

そして、会社としての対応策を検討し、その案をご本人に伝え、具体的な対応策を決めるようにします。

ここまでの流れの中で、ご本人から退職の意向が示されることも多いでしょう。会社から退職勧奨となるような働きかけが無ければ、ご本人の自由な意思による退職の申し出ですから、雇用契約は労働者からの解除となります。

 

<結論として>

健康状態が悪いからと言って、雇用契約解除通知など出したら不当解雇になります。ご本人にも生活がありますし、治療費を負担するためにも働き続けたいのが本心でしょう。

何よりも、ご本人と今後の勤務について良く話し合うことが大切です。勤務の継続に無理が感じられるようでしたら、医師などと相談のうえ、再度、ご本人と話し合うことになります。

これと併行して、労働安全衛生法などの規定を参考に、会社として取るべき措置を実施することも大切です。

ここまでやって初めて、会社は責任を果たしたことになります。

具体的な事例に即して、何をどうすれば良いのか、迷うところがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.22.

<有期労働契約>

有期労働契約は、契約期間に限りのある労働契約をいいます。

正社員の場合には、労働契約の期間を区切らず、定年年齢まで契約が続くのに対して、正社員以外の場合には、期間を区切って契約するのが一般的です。

 

<休職制度>

長く働き続ける予定の労働者が、個人的な事情で働けなくなったとします。

働けない事情について、育児や介護など法令に定めがある場合には、育児休業や介護休業など、基本的には、その法令の定めに従い運用することになります。

しかし、法令に定めが無い休職について、これを認めるか認めないかは、会社の就業規則などの定めに従うことになります。

具体例としては、次のような流れになります。

 

ある人が休日のドライブで事故に遭い長期間働けない

→ 本来なら退職するしかない

→ 会社にとって貴重な人材なので何とかしたい

→ 会社から対象者に休職命令を発する

→ 定めた期間中に復帰できなければ退職

 

多くの場合、法令に定めの無い休職では、会社が命ずるのであって、労働者から権利を主張できるものではありません。

 

<結論として>

同じ有期労働契約であっても、契約期間以外の労働条件は、会社により、労働者によりバラバラです。

休職制度も、法定のものを除き、会社により、労働者によりバラバラです。

ですから、有期労働契約の従業員に休職制度が必要かどうかは、会社の実情と労働契約の内容から具体的に判断しなければなりません。

また、休職制度にこだわらないのであれば、労働契約の内容を変更することや、一度退職して、その後条件が調ったとき優先的に採用するという制度も考えられます。

会社の実情と目的をふまえ、どのような制度を導入したら最適かについて、迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.21.

<短時間労働者の労働時間延長(処遇改善コース)の拡充>

短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険に加入した場合に、1人あたり20万円(大企業は15万円)を支給します。

賃金規定などの改定とあわせて、新たに社会保険に加入した労働者の手取り収入が減少しないように、週所定労働時間を延長した場合には5時間未満でも、次の助成対象となります。

1時間以上 ― 1人あたり4万円(大企業は3万円)

2時間以上 ― 1人あたり8万円(大企業は6万円)

3時間以上 ― 1人あたり12万円(大企業は9万円)

4時間以上 ― 1人あたり16万円(大企業は12万円)

 

<変更にご注意>

キャリアアップ助成金は、今年に入ってから数回にわたり制度変更(改正)が実施されています。

このように、助成金の内容は変更になることがあります。また、助成金そのものが廃止されることもあります。

このページ右側の「お勧めします」の中から「雇用関係助成金」を選んでいただくと、現在の助成金の内容をご確認いただけます。

 

2016.10.20.

<周知義務について説明されていること>

「労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、各種労使協定等を労働者に周知しなければなりません。 周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。」

これは、労働基準法106条の説明として良く目にするものです。

 

<本当に知りたいのは>

しかし、周知する立場の経営者や人事担当者は、「法令の要旨」をどのようにまとめたら良いのかということを知りたいのです。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。しかも、労働基準法106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」と言っていますから、悩んでしまいます。

 

<お勧めなのは>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的には1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、上手い説明が見つからない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.19.

<社会保険の加入基準の客観性>

健康保険と厚生年金の加入基準(資格取得基準)は、客観的に決まっています。そして、手続きをする/しないとは関係なく、基準を満たせば加入したことになります。

例えるなら、役所に出生届を提出する/しないに関係なく、赤ちゃんが生まれたという事実に変わりは無いのと同じです。出生届を提出しないからといって、その赤ちゃんが消滅するわけではなく、人権を無視できるわけでもありません。

社会保険の加入手続き(資格取得手続き)をしなくても、それは手続きが遅れているだけで、後から手続きすれば、さかのぼって効力が認められ、保険料が徴収されるということです。

 

<保険料の負担>

健康保険も厚生年金も、第一に利益を受けるのは加入者(被保険者)です。しかし、保険料は事業主と加入者とで折半します。そこで、従業員が基準を満たしているのに、つまり社会保険に加入しているのに、手続きをしないという不正が発生します。

もし、加入基準を満たしているのに、会社が手続きをしてくれなかったら、年金事務所などに相談です。

 

<従業員からの拒否>

従業員が基準を満たしていれば、会社は加入手続きをする義務があります。たとえ従業員が拒んでも同じです。「本人の希望」は関係ないのです。

会社としては、そのような従業員に対して、社会保険加入のメリットを説明して、気持よく手続きに応じるよう努めるでしょう。

もし、従業員が正しく理解していれば、社会保険への加入手続きを拒むことは無いでしょう。

 

<社会保険に加入したくない場合>

所定労働時間や所得を抑えて、社会保険の加入基準以下で勤務できるよう、会社と相談してはいかがでしょうか。

また平成2810月から、それまでの社会保険加入者数が500人を超えるような大きな会社では、加入基準が引き下げられています。そのため、大きな会社で勤務していて、基準変更によって新たに社会保険に入ることとなったのであれば、小さな会社に転職して加入しないようにすることも考えられます。

 

2016.10.18.

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的事情により異なります。しかし一般には、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていないことを前提として、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したものとされます。

始期付解約権留保付労働契約というのは、すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約のことをいいます。

 

<採用内定取消が許される場合>

採用内定取消は解雇にあたります。ですから、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられています。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。つまり、世間一般の常識から客観的に判断して、やむを得ない事情があるといえる場合であることが必要です。

 

2016.10.17.

<年金手帳の再交付>

年金手帳の再交付は、お近くの年金事務所に申し出ることによって可能です。原則として、年金手帳は後日郵送となります。

 

<年金手帳の即時交付>

転職先にすぐ提出しなければならないなど、緊急性の高いものであれば、ご本人か次の代理人の申し出に限り可能です。

・社会保険労務士(社労士)

・法定代理人(法定代理人であることがわかる書類の持参が必要です)

・事業主、事業主の代理の事務員(事業主を通じて申請書を提出されたもの)

 

<年金手帳の再交付が必要ない場合>

既に年金を受給している人は、年金証書が手もとにあれば、年金証書で必要な情報が確認できますので、年金手帳は必要ありません。

 

社会保険労務士(社労士)の名札は、年金事務所の入口などに設置されています。電話番号も表示されていますので、年金手帳のことに限らず、お気軽にご連絡ください。

 

2016.10.16.

外国人を雇う場合に守らなければならないルールがあります。これは、外国人が在留資格の範囲内で、その能力を十分に発揮しながら、適正に就労できるようにするためのものです。

 

<ハローワークへの届出>

外国人の雇入れと離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出ます。〔雇用対策法28条〕

ハローワークでは、届出に基づき、雇用環境の改善に向けて、事業主への助言や指導、離職した外国人への再就職支援を行います。

届出にあたっては、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認する必要があります。外国人労働者の在留カードまたは旅券(パスポート)などの提示を求め、届け出る事項を確認してください。これは、不法就労の防止につながります。

 

<届出の対象となる外国人の範囲>

届出の対象となるのは、日本の国籍を持たない人で、在留資格が「外交」「公用」以外の人です。

「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人など)は、出入国管理及び難民認定法に定める在留資格の他、特別の法的地位が与えられているため、就職など在留活動に制限がありません。

このため、特別永住者は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認・届出の必要はありません。

 

<在留カードの番号の有効性を確認>

入国管理局ホームページで在留カードの番号の有効性を確認することができます。

「在留カード等番号失効情報照会」ページに在留カードの番号と有効期間を入力して確認します。

在留カードを偽変造したものなどが悪用されるケースも発生していますので、ご確認をお勧めします。

万一、偽変造が疑われる在留カードを発見した場合には、最寄りの地方入国管理局にお問い合わせください。

 

↓在留カード等番号失効情報照会ページ

https://lapse-immi.moj.go.jp/

 

2016.10.15.

<交通事故にも健康保険が使えます>

国民健康保険、公務員共済、船員保険などを含めて健康保険は、加入者(被保険者)と扶養家族(被扶養者)の病気、ケガ、出産、死亡に関して、必要な保険給付を行うことを目的とする制度です。

ケガや死亡の原因が交通事故でも、日常生活上のケガや病気の場合と同じく、健康保険で医師の診療を受けることができます。〔昭和431012日保険発第106号通達〕

 

<社会一般の誤解>

古くから世間一般で、交通事故診療には健康保険が使用できないとの誤解が生じていました。

そのため現在でも、医療機関から「健康保険は使用できない」という説明を受ける場合があります。

しかし、健康保険を使用しての診療(保険診療)、使用しない診療(自由診療)のどちらで治療を受けるかは患者が選択できます。

 

<当然の例外>

なお、業務または公務上の事故や、通勤中の事故など、労災保険法や公務員災害補償法の適用がある事故については、健康保険は使えません。〔健康保険法55条、国家公務員共済組合法60条、地方公務員等共済組合法62条〕

 

2016.10.14.

<離職理由の食い違いが発生する場合>

離職理由により給付日数に差がつきます。

離職者としては、会社側に原因のある理由のほうが有利です。

一方、会社としては会社の恥になるような理由は認めたくないですし、助成金の申請ができなくなる可能性もあります。

こうして会社と離職者とで、主張が食い違ってしまう場合もあります。

特に離職者が、パワハラやセクハラなどを主張した場合には、起こりやすい現象です。

ここで離職というのは、退職の他、所定労働時間が週20時間未満となって雇用保険の資格を喪失し、離職票が交付される場合をいいます。

 

<離職理由の判定>

離職理由の判定にあたっては、まず会社が主張する離職理由を、公共職業安定所(ハローワーク)が離職証明書により把握します。

ついで、離職者が主張する離職理由を把握します。

さらに、それぞれの主張を確認できる客観的な資料を集めることにより、事実関係を確認します。

最終的に、離職者の住所を管轄する公共職業安定所において慎重に判定することになっています。

会社の主張のみで判定することはありません。

会社または離職者が意地を張って、離職理由の主張をしているために、離職票の手続きが遅れることがあります。しかし、これは無意味なことで、それぞれ真実と思う理由を記入すれば良いのです。判定するのは公共職業安定所ですから。

 

2016.10.13.

<業務災害についての法令の規定>

労働者が業務上負傷しまたは疾病にかかった場合、その傷病による療養のため労働できずに賃金を受けない日(休業日)の第4日目から休業補償給付が支給されます。〔労災保険法14条〕

労災保険法の対象とはならない休業日の第1日目から第3日目(待期期間)までは、事業主が平均賃金の60%以上を補償することになっています。〔労働基準法76条〕

そして、労働者の業務災害による負傷などについては、労働基準法により、事業主に補償義務が課せられています。しかし、労災保険より給付された場合に、事業主は補償義務を免除されることになっています。〔労働基準法84条〕

事業主は、このために労災保険に入らされているわけです。

 

<結論として>

労働基準法76条の休業補償についても、休業第4日目以降について労災給付が行われた場合は、事業主はその補償義務を免除されることになります。

一方、休業補償給付が行われない第1日目から第3日目までについては、事業主が労働基準法に基づいて、その補償を行うことになります。

つまり、被災者は労災保険からは休業の最初の3日間(待期期間)の補償を受けられないのですが、その3日間分は事業主から補償を受けることになります。

 

<通勤災害についての法令の規定>

なお、通勤災害に対する保険給付は、労災保険法で独自に定められた制度です。通勤災害における休業日の第1日目から第3日目までについては、事業主に補償義務は課せられていないのです。

これは、業務上の災害については事業主の責任が重いのに対して、通勤途上の災害については事業主に責任を問うことが適当ではないからです。

 

2016.10.12.

<ハラスメントとは>

パワハラやマタハラの「ハラ」は、ハラスメントの略です。これは日本語で「嫌がらせ」と言います。

職場での職権などのパワーを背景とした嫌がらせがパワハラであり、働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに受ける嫌がらせがマタハラです。

どちらも、精神的・肉体的な嫌がらせによって、幸福追求権〔13条〕、平等権〔14条〕、思想・良心の自由〔19条〕、言論の自由〔21条〕、職業選択の自由〔22条〕、勤労の権利〔27条〕など、憲法の保障する基本的人権を侵害するものです。

これによって被害を受けた人は、行為者と会社に対して民法などを根拠に損害賠償などを求めることができ、社長以下取締役に対しては会社法を根拠に損害賠償を求めることができます。

 

<パワハラとマタハラの違い>

パワハラでは、対象者の職務遂行能力、仕事の進め方、態度、礼儀、性格などが引き金になります。上司や先輩は、対象者の職場での様子に常識を超える不信感を抱くのです。そして、その対象者の「存在」が負担だと感じます。

マタハラでは、対象者の職務遂行能力や仕事の進め方は、原因になりにくいものです。場合によっては、態度、礼儀、性格も原因とされますが、ほとんど「いいがかり」です。上司や先輩、さらには後輩も、対象者の職場での様子ではなく、妊娠、出産、育児によって、対象者が長い間職場を離れることで、自分たちの仕事の負担が増えることに不安と不満を感じるのです。つまり、その対象者の「不存在」が負担だと感じます。

 

<パワハラの効果的な対策>

パワハラ行為者は、負担ばかりを感じ、何の利益も感じられないのが不満です。

もし、部下や後輩の指導を、人事考課基準に取り入れたらどうでしょう。自分がダメ社員だと思う相手を育成すると、成長した分だけ自分が評価され、正当な見返りがあるということになります。

今、人事考課制度が無い会社は、なるべく早く導入すべきですし、個人の経験・能力が評価の中心となっている会社では、部下・後輩の育成を評価の対象とすることをお勧めします。誰をどこまで成長させるという具体的内容を、個人目標の一つにしたいものです。

状況によっては部下・後輩に、上司・先輩の育成を個人目標として設定するケースも考えられます。

 

<マタハラの効果的な対策>

マタハラ行為者は、仕事の負担増が不安であり不満です。

女性社員が妊娠した場合、ミーティングなどで、その部署のメンバーに公表することが多いでしょう。それと同時に、その女性社員が休んでいる間、派遣社員が来るとか、他部署からの応援が入るなどの対応を伝えたらどうでしょう。

産休・育休の間、会社は給与の支払義務がありません。浮いた人件費で派遣社員を頼むことは可能でしょう。他部署からの応援は、次善の策です。なぜなら、応援に入る人が不安と不満を感じることもあるからです。

妊娠について公表するのは、人の手配がついてからにしたいものです。

 

たしかに就業規則などによる対応も、法令で義務づけられています。しかし、法律を守っていても、問題が発生しないわけではありません。

柳田事務所にご依頼いただければ、就業規則や人事考課制度はもちろん、会社の状況に応じた実質的な対策をご提案させていただきます。

 

2016.10.11.

<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

 

<パワハラの定義の抽象性>

パワハラの定義は抽象的なものになりがちです。

ところが懲戒処分を有効に行うには、つまり懲戒処分を行ってそれが無効だと主張されないようにするには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。パワハラについての懲戒規定が無かったり、たとえあっても抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなかったりすれば、加害者が有効に処分されることはありません。

懲戒処分の手続きを担当する従業員の常識に照らせばパワハラにあたることが明らかな行為であっても、加害者の常識に照らせば対象者を育成するのに必要不可欠な行為であり正当な行為だという場合もあります。

 

<懲戒処分の目的>

懲戒処分の目的には、不都合な行為を行った従業員に対して制裁を加えることにより、他の従業員が納得して安心して働けるようにすること、他の従業員が同様の行為を行わないよう再発を防止すること、そして何より行為者本人が深く反省し同じ過ちを繰り返さないようにすることなどがあります。しかし、本人が自分の行為は懲戒処分の対象になるようなものではないと確信していては、たとえ懲戒処分を行っても、反省するどころか、会社に対する反発と不信感を生むだけです。

ですから、会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。パワハラについての具体的な定義が無い職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。

 

<上司は部下をしかれないのか>

職場では、業務上の指示や指導の際に、やや厳しい言動が見られることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、企業の中で通常行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。つまり、相手の感情を基準に違法性を判断するのではなく、周囲の人々が客観的に見たときに、業務上の必要性も無く、嫌がらせなどの不当な目的が明らかで、一般的に見て不安を感じさせるような対応だと言えるときに、違法性の存在が認められるのです。

また、その言動自体は業務の範囲と言えるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的が客観的に明らかであれば、違法なパワハラであることが認定できます。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。このときも、言われた人がどう思ったかではなく、客観的に見て人格や尊厳を傷つけるか、世間一般の基準から客観的に許される範囲と言えるかが基準となります。

 

<パワハラと指導の境界線をどこに引くか>

こうして見て来ると、次の場合には、指導を超えたパワハラと言えるでしょう。これらを踏まえて、パワハラについての懲戒規定を見直すようお勧めします。

・相手の成長を促すのとは別の不当な目的が客観的に認定できる場合。ここで、不当な目的とは、退職に追い込む、見せしめ、差別的、人格権の侵害などがあります。つまり、憲法で保障された人権の侵害や、刑罰法規に触れるような不当な目的です。

・客観的に見て犯罪行為にあたる場合。炎天下の人目につかない場所で、たった一人で力仕事をさせたり、暴力を振ったりというのは、目的がどうであれパワハラにあたります。

・客観的に見て、怒りをぶつけている場合。親が子供をしつける場合には、こうしたことが必要になるかもしれません。しかし、社会人を指導し育成するのに、怒りの感情を持ち込むことは、必要不可欠なことではありません。

 

就業規則の見直しなど、具体的にどうしたら良いのか迷ってしまう場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

また、感情に左右されることなく、冷静に対応できることから、第三者的な立場の社労士が、パワハラの相談窓口になることも有効な対策になります。

 

2016.10.10.

<トラブルが生じやすい雇い止め>

パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態では、有期労働契約が多く見られます。有期労働契約というのは、1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のことです。

有期労働契約である以上、契約期間満了により雇用が終了することが原則です。しかし、契約更新の繰り返しにより長い間雇用を継続する場合もあります。

このような場合に、契約を更新せずに期間満了をもって退職させると、期待を裏切ることになります。こうした「雇い止め」では、トラブルが生じやすいので、トラブル防止のためのルールが定められています。

 

<雇い止めの予告>

雇い止めの予告が義務となるのは、次のような場合に限られます。

・労働契約を3回以上更新している場合

・1年を超えて継続勤務している場合

・1年を超える労働契約の場合

これらの場合に事業主は、少なくとも期間満了の30日前までに、雇い止めの予告をしなければなりません。

ただし、雇用の約束をした時に、期間満了で必ず退職する約束だった場合には、期待を裏切る可能性は無いので対象外となります。

事業主としては、辞めてもらうことが決まっていても、あまり早く雇い止めの予告をしてしまうと、働く意欲が低下するのではないか、一緒に働いている人たちに不満を言うのではないかと心配になります。しかし、早く伝えてあげないと、雇い止めの対象となった人は、次の仕事を見つけるための準備をする期間が短くなってしまいます。このルールは、この点に配慮しているわけです。

 

<理由の明示>

雇い止めの予告をしたのに対応して、対象者から雇い止めの理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付しなければなりません。退職後に請求された場合でも、会社には交付義務がありますが、あくまでも請求があった場合のみの義務となります。

雇い止めの理由の例としては、次のものが挙げられます。

・前回の契約更新時に本契約を更新しないことが明確に合意されていたため

・契約締結当初に定めた契約更新回数の上限に達したため

・閉店など事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと会社が判断したため

わかりやすく事実に沿った理由を示す必要があります。誤解を生じる表現だと、これが元で訴訟に発展することもあります。退職後は特にそうですが、「雇い止め理由書」を郵送して終わりにするのは危険です。せめて電話で、できれば面談で説明したいものです。

 

<本当にトラブルを防止するには>

雇い止めというのは、本当にトラブルを発生しやすいものです。決まりきったルールを守るだけではなく、プラスアルファのトラブル防止策をお勧めします。

まず、雇い止めの予告にあたってのトラブルを防ぐには、最初の採用のときと、契約更新のときに、次の契約更新の条件を具体的に示しておくことが必要です。対象者から反論されたり、疑問を出されたりするような条件では、具体性に欠けるということになります。

また、雇い止めの理由を示したことによって、新たなトラブルを発生させないようにするには、その理由が客観的に合理的なものであって、世間一般の常識からしても「やむをえない」といえるものであることが必要です。その基準は、労働法や裁判例を参考にすれば明らかになるものです。

もし社内に専門の担当者がいないなど、不安な状況があるのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。それぞれの会社と業務内容に応じた対策をとることによって、リスクを大幅に軽減し、経費を削減することができます。

 

2016.10.09.

<最低賃金の発効日>

たとえば東京都の最低賃金時間額は、平成28年10月1日をもって、907円から932円に引き上げられました。この日が発効日ですから、この日に勤務した分から932円を下回る時間給は違法になってしまいます。日給でも月給でも年俸制でも、1時間あたりの賃金が932円を下回ってはいけません。

 

<「雇い入れ通知書」より「労働条件通知書」が便利>

労働者の採用にあたっては、書面の交付により労働条件を通知しなければなりません。このとき、「雇い入れ通知書」という名称の書面を交付することもあります。雇い入れにあたって交付する書面ですから、「雇い入れ通知書」という名称がしっくりきます。

しかし、契約期間が平成28年10月1日以降にまたがる「雇い入れ通知書」を交付していた場合で、その人の賃金時間額が932円を下回っている場合には、これ以上の賃金に改定した内容の労働条件を示さなければなりません。

このときは、「雇い入れ」ではありませんから、「労働条件通知書」という名称が正しいことになります。

最初から「労働条件通知書」という名称の書面を用意しておけば、採用にあたっても、その後の変更や契約更新でも、同じ書式が使えますので「労働条件通知書」がお勧めです。

 

<「労働条件通知書」のひな形>

「労働条件通知書」のひな形は、厚生労働省のホームページでダウンロードして利用できます。労働条件によって、次の中から適合するものを選んで使います。

【一般労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【短時間労働者用】常用、有期雇用型

【派遣労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【建設労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【林業労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

それぞれに詳しい【記載要領】が、本文と同じ位の分量で添付されていますので、よく読んで作成する必要があります。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更などで、労働条件の管理は少し複雑になってきています。面倒に思えてきたら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.08.

<月間所定労働日数の必要性>

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給÷(1日の所定労働時間×月間所定労働日数)

で計算されます。

これが毎月変動すると、給与計算をする人は大変です。いきおい、残業手当も欠勤控除も計算しなくなるのではないでしょうか。

残業手当を計算しないと、ブラック企業の代名詞であるサービス残業が発生します。

欠勤控除を計算しないと、遅刻しても叱られるだけで、給料が減らないわけですから、なんとなく遅刻が増えてくるでしょう。

きちんと残業手当を支払っている会社では、頭の良い人が仕事をためておいて、残業単価の高いときにまとめて残業するということもあるでしょう。これでは、わざと仕事を遅らせることになります。

やはり、毎月一定の月間所定労働日数を設定しておく必要があるでしょう。

 

<年間労働日数からの算出>

たとえば、土日・祝日と1229日~13日だけが休日だとします。

これなら年間の労働日数の計算は、単純なように見えます。それでも、祝日は日曜日と重なると月曜日が振替休日になるのですが、土曜日と重なっても振替休日は生じません。体育の日のように、日曜日と重ならない祝日もあります。

年末年始の1229日~13日も、カレンダーによって短かったり長かったりします。こうして休日の数は、その年によって増えたり減ったりするのです。

これらすべてについて、確率を計算しながら平均値を求めるのは少し面倒です。

最近新設された山の日のように、祝日が増えることもあります。

むしろ、最近3年間の本来の出勤日を数えて平均値をとった方が楽な場合が多いでしょう。

そして、月間所定労働日数は年間労働日数を12で割れば計算できます。1日未満の端数は、労働者に不利にならないように切り捨てるのが基本です。

 

<給与計算にあたって間違えやすいこと>

たとえば、月間所定労働日数を22日と決めたとします。

ある人が、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき「休日出勤手当が発生するのかな?」「欠勤になるのかな?」と迷うことがあるようです。

しかし、答えはどちらもノーです。

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給÷(1日の所定労働時間×月間所定労働日数)

で計算されます。

つまり、月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算しますので、ここに月間所定労働日数は出てこないのです。遅刻・早退や残業も1日単位での計算が基本です。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の従業員はカレンダーを見ながら会社のルールに従って出勤していることになります。

 

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、従業員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

これを含め、給与計算について失敗が無いか、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。

 

2016.10.07.

<問題上司>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は部下」と思い込み、パワハラで気に入らない部下を追い出すような管理職です。

自部署の業績が向上すれば、自分の方針や部下への指導が優れていると感じますし、昇給・昇格・抜擢・栄転など期待はふくらみます。

部下の年次有給休暇取得率が低ければ、その部下が無能であり、仕事にメリハリが無いからだと感じます。自分の業務配分のバランスの悪さや、指導不足は感じません。

社長や上司の機嫌は最大限尊重します。コンプライアンスや、部下の権利との調整など思いつくことはありません。

自部署の業務の問題点を指摘されると、嫌いな部下のせいにします。面と向かって「お前のせいでこんな結果になってしまった」と言います。パワハラは毎日のように続きますから、その部下は異動や退職を申し出ます。そして、その部下がいなくなれば、もう問題点は解決したと思い込みます。

しかし、追い出された部下は上司のパワハラや会社の管理責任を問う訴えを起こしてきます。その部下自身はおとなしい性格なのですが、その両親や親戚に強い性格の人がいて「おとなしく引き下がっていないで訴えなさい」と迫るのです。

こうなって初めて会社は、問題上司の存在に気がつきます。問題上司にも責任はありますが、管理職にしてしまった会社の責任の方が重いかもしれません。

 

<問題上司を作らない方法>

管理職選考の段階で見極めることが大事です。今までの業務の中で、次のような傾向が強く見られれば、管理職登用を見送ることです。

・仕事でも私生活でも上手くいったことの原因は自分にあると主張する。

・仕事でも私生活でも上手くいかなかったことに自分の責任は無いと言う。

・昇進・昇格・栄転などに強い興味を示し、同期との比較をしたがる。

・会社や上司に対して「間違っている」と思うことを言わない。

これらは、人事考課のチェック項目に入れておくことができます。きちんとした人事考課基準の確立と運用で、問題上司を作らない会社にしておくことです。

社長の好き嫌いや経験年数で管理職に登用してしまうと、かわいそうな部下を作ってしまうことになります。

具体的に人事考課をどうすれば良いか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<問題上司の教育>

問題上司に会社の方針を伝えたり、それを部下に浸透させたり、別の部署を担当させたりは、普通に行うことができます。

しかし、問題上司から優良上司に変えることはできません。生まれてから今までに、私生活でも仕事でも多くの経験を積む中で、今の人間力を身に着けてきたのですから、他人がこれを変えることはできません。

問題上司の真逆の優良上司とは、良いことも悪いこともその原因を自分の能力や判断と部下に対する指導にあると理解し、自分の昇進を考える前に部下をしっかり育てることを考え、退職までにどれだけ多くの人材を育て会社を成長させられるか真剣に考えるような管理職です。

問題上司を優良上司に変えようと努力するよりは、他の社員を抜擢した方が近道です。

 

<うっかり問題上司を作ってしまったときのために>

会社オリジナルの就業規則が最大の武器になります。

パワハラの定義すら無い就業規則では、問題上司の暴走を止めることはできません。どんなに優秀な社員であっても、不適切な言動はきちんと懲戒の対象とし、一度管理職になっても不適格と認められれば降格させることのできる規定を備えた就業規則を作り、磨き、周知することによって、被害を最小限に抑えることができます。

もちろん、優良上司がのびのびと働ける内容にしなければなりません。

もう一つ、会社にとって不都合な情報でも、社長や取締役あるいはこれに準ずる人たちにきちんと伝わる会社にしておくことです。

どれほど優れた判断力を備えた社長でも、必要な情報が入って来なかったり、ウソの報告が多かったりしたら、正しい経営判断はできません。

就業規則や人事制度についても、問題を感じるようになる前に、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.06.

<問題社員>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、権利を濫用して、退職後に会社を訴えるような従業員です。

会社の業績が向上すれば、誰よりも自分が一番貢献していると感じますし、昇給・昇格・臨時ボーナスなど期待はふくらみます。

年次有給休暇を取得できなければ、上司が無能であり、人事の方針が間違っていると感じます。自分の生産性の低さや計画性の欠如は感じません。

労働者としての権利は最大限主張します。会社側の権利や、他の従業員の権利との調整など思いつくことはありません。

問題社員であることが周囲にバレて、居心地が悪くなると突然会社を辞めます。社長以下従業員一同がホッとしていると、会社を訴えてきます。訴えの理由は、会社に辞めさせられたとか、仕事がキツくて病気になったとか、サービス残業代の請求だったりします。会社としては、これに対応しなければなりませんから、退職してもなお迷惑をかけられるということになります。

 

<問題社員を入社させない方法>

採用選考の段階で見極めることが大事です。履歴書や職務経歴書、採用面接中の発言などに、次のような傾向が強く見られれば、採用を見送ることです。

・仕事でも私生活でも上手くいったことの原因は自分にあると主張する。

・仕事でも私生活でも上手くいかなかったことに自分の責任は無いと言う。

・年次有給休暇の取得率、昇給や昇進の可能性などに強い興味を示す。

・会社や上司とのトラブルの経験と自分の正当性について話す。

これらは、あらかじめ「面接シート」にチェック項目を入れておくことができます。

具体的に採用選考をどうすれば良いか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<問題社員の教育>

問題社員に、会社の方針を具体的に落とし込んだり、新しい仕事を教えたりということについては、普通に行うことができます。

しかし、問題社員から優良社員に変えることはできません。生まれてから今までに、私生活でも仕事でも多くの経験を積む中で、今の人間力を身に着けてきたのですから、他人がこれを変えることはできません。

問題社員の真逆の優良社員とは、良いことも悪いこともその原因を自分と他人の両方にあると理解し、労働者としての権利を主張する前に会社や他の従業員の都合を考え、退職までにどれだけ会社を改善し成長させられるか真剣に考えるような従業員です。

問題社員を優良社員に変えようと努力するよりは、優良社員を採用した方が近道です。

 

<うっかり問題社員を入社させてしまったときのために>

会社オリジナルの就業規則が最大の武器になります。

権利の濫用を許さず、会社が不当に訴えられるスキを作らない就業規則を作り、磨き、周知することによって、被害を最小限に抑えることができます。

もちろん、優良社員がのびのびと働ける内容にしなければなりません。

もう一つ、きちんとした人事考課基準の確立と運用で、問題社員にとって居心地の良くない会社にしておくことです。

問題社員が人の上に立つようになってしまったら、部下はたまったものではありません。能力が発揮できなくなるだけではなく、いたずらに退職者を増やすことになってしまいます。

就業規則や人事考課についても、問題を感じるようになる前に、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.05.

<法定の義務>

定期健康診断を実施したら、個人別結果表を各個人に配布して、会社の控えは5年間保管します。

また、労働者数が50人以上の事務所・店舗などでは、労働基準監督署長に定期健康診断結果報告書を提出します。

しかし、こうした法定の義務を果たして終わりでは勿体ないのです。健診には多額の費用が発生しますし、従業員の負担も大きいものです。特に私のように健康診断が大嫌いな人も我慢して受けているわけですから、もっと結果の活用を考えていただきたいものです。

 

<特定保健指導>

協会けんぽなどの保険者に義務づけられているということで、特定健診は定期健診に併せて行われることが多いものです。

そして対象者がいれば、保険者から会社に特定保健指導の案内がきます。この指導は「無料」とはいいますが、財源は保険料ですから利用しない手はないのです。

対象者は、メタボになりそうな人です。既にメタボになってしまい、治療を受けている人は対象外です。また、高血圧の治療を受けているなど一部の人も除外されています。

メタボとなると個人差はあるものの、会社側から見て生産性が低下していると感じられることがあるものです。その予備軍への指導ですから、会社にとっては生産性を維持するための施策にもなります。

具体的には、保健師などが対象者に11で指導する形と、グループ研修の形があります。どちらも一長一短ありますので、年度によって交互に実施しても良いでしょう。

 

<平均値との比較で>

厚生労働省が検査項目ごとに全国と都道府県別の有所見率のデータを発表しています。また、所轄の労働基準監督署に電話で問い合わせれば、最新のデータを教えてもらえます。

これと自社のデータを比較することによって、健康上の問題点や留意点が見えてきます。これをもとに、社員への健康増進知識の広報を行ったり、職場環境や食事内容などの見直しを行うことができます。

 

<年次推移の把握>

実は有所見率については、全国的に上昇傾向が見られます。

その中にあって、自社の有所見率の推移を把握することは、職場環境の改善や労働安全衛生の推進にとって重要です。

また、有所見率にとどまらず、生のデータの推移を把握することも大切です。特定の店舗の従業員だけ、血圧が上昇傾向にあり、原因を探っていくと昼食・夕食の弁当にたどりついたという例もあります。

 

健康診断に限らず、メンタルヘルスチェックなども、健診機関や医師などの立場からのアドバイスだけに頼らず、労働環境や労働条件など労務管理の観点からの分析とアドバイスを信頼できる社労士(社会保険労務士)に依頼してはいかがでしょうか。

医師からのアドバイスは家庭生活に、社労士からのアドバイスは職業生活に活かすことによって、従業員が元気に働けるよう会社がサポートすると安心ですね。

 

2016.10.04.

<短時間労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大>

1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が通常の労働者(正社員など)の4分の3未満であっても、次の5つの条件を全て満たす場合には、社会保険が適用されます。

・週の所定労働時間が20時間以上

・勤務期間が1年以上見込まれること

・月額賃金が8.8万円以上

・学生以外

・社会保険の加入者が501人以上の企業に勤務していること

 

<厚生年金保険の保険料>

次の2点が変更になりました。

・標準報酬月額の下限が98,000円から88,000円に引き下げ

・保険料率が9月分から0.354%引上げ

(~8月分17.828%、9月分~18.182%、労使折半)

 

<最低賃金額の改定>

都道府県ごとに定められている地域別最低賃金が改定され、すべての都道府県で、時間額21円から25円の引上げとなりました。

たとえば東京都では、101日勤務分の給与から1時間あたり932円以上の賃金支払いが義務づけられます。日給、月給、年俸も同じ基準額です。

 

<健康サポート薬局の届出と表示の開始>

基準に適合する薬局は、届出をすることにより、健康サポート薬局である旨の表示・公表を行えるようになりました。

なお、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、地域住民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する機能を備えた「健康サポート薬局」の基準が、平成2841日に設けられています。

 

<B型肝炎の予防接種>

B型肝炎が定期予防接種の対象となりました。

対象者は、平成2841日以降に生まれた人で、1歳になるまでの間に接種を受けます。

 

<特別給付金の支給>

平成28101日における戦没者等の妻等に対し、特別給付金が支給されます。

請求期間は、平成28101日~平成31930日です。

 

2016.10.03.

<実例として>

小さな飲食店では、アルバイトがシフト制で、始業時刻も終業時刻もその日によって違うということがあります。休憩もあったり無かったり、休憩開始の時刻もその日によって臨機応変にというわけです。

シフトを組む段階で、お店の都合とアルバイトの都合とをすり合わせて何とかしのいでいるわけですから、あらかじめ決めておくというのが無理なようにも思えます。

ましてや当日のお客様の状態によって、当初の計画どおりにはいかないこともあります。

「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」をきちんとアルバイトに交付しなければ、労働基準法違反とは言われるけれど、決めようがなければ許してもらえるのでしょうか。

いえ、ダメです。労働条件の明示義務違反については、30万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法120条1号)〕

何とかしなければなりません。

 

<ではどうするか>

労働条件が決まっていないと、年次有給休暇付与の有無や日数が決まらない、社会保険や雇用保険の加入対象かどうかがわからない、残業代の計算もできないなどなど、ブラック企業丸出しの状態になります。

これを避けるには、平均値から「標準」となるものを割り出して、「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」に示せば良いのです。

つまり、入社時は本人の実績が無いですから、同じような状態のアルバイトを参考に、「標準的な始業時刻」「標準的な終業時刻」を決めます。この通りに働くわけではなく、あくまでも年次有給休暇などの基準として使うわけです。

同じように、「標準的な休憩時間」「標準的な時間外労働」「標準的な休日出勤の日数」なども決めます。

これで「雇い入れ通知書」が作れます。

そして、ある程度勤務が続いて、実態が「雇い入れ通知書」と離れてしまったら、内容を修正して「労働条件通知書」に示せば良いのです。

 

「平均値と言われてもよくわからない」という場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。書類の作り方だけではなく、効率の良いシフトの組み方など、実質的な内容についての相談も可能です。

 

2016.10.02.

<実例として>

いつもは午前9時に出勤して、正午から午後1時まで昼食休憩をとり、午後6時までが定時で、しばしば残業している人がいるとします。これはかなり一般的な例でしょう。

この人が仕事の都合で正午に出勤し、翌日の午前2時まで出勤した場合には、午後10時から翌日午前2時までが深夜労働となり、2割5分以上の割増賃金の対象となることは明らかです。

また、途中で午後6時から1時間の夕食休憩をとったとして、正午から翌日午前2時までのうち、勤務開始から実働8時間を超える午後9時以降の勤務時間について、残業手当が発生することも明らかです。

しかし、真夜中の0時で一度区切って、正午から真夜中の0時までの12時間から1時間の休憩時間を引いてこの日は11時間勤務として、真夜中の0時から2時間の勤務は翌日の勤務時間としてカウントして良いのでしょうか。

言い換えれば、ある日の勤務時間を集計するのに、真夜中の0時で区切って良いのでしょうか。

 

<法令の規定>

実は法令には規定がありません。

それでは困るので、通達が出されています。法律は国会が作るのですが、あまり細かいところまでは規定し切れませんので、行政機関が解釈の基準を出しているのです。

日付をまたいで勤務した場合には、翌日の始業時刻までの労働が前日の勤務とされます。〔昭和63年1月1日基発第1号通達〕

こんなとき、ある人の始業時刻がきちんと決まっていなければ計算できません。そこで、労働基準法は基本的な労働条件について書面で労働者に通知するなどの義務を規定しているわけです。それでも、わからないときは通常の始業時刻で計算するしかありません。

通常の始業時刻をまたいで長時間勤務した場合には、そこまでで一度集計して残業時間を確定して残業手当を支給することになります。そして、通常の始業時刻から翌日分の勤務時間を計算すれば良いのです。

 

法令に規定が無いとき、自社で基準を作ると、通達違反であったり、判例とは違っていたり、あるいは典型的な不合理を含むものであったりという失敗が起こりがちです。迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.01.