2016年 7月

<介護休業給付金とは?>

雇用保険の一般被保険者が、要介護状態にある対象家族を介護するために介護休業をした場合に、条件を満たすと受給できる給付金です。

ここで「要介護状態」とは、ケガ、病気または身体上・精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。

また「対象家族」とは、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、配偶者の父母(養父母を含む)および同居かつ扶養している一般被保険者の祖父母、兄弟姉妹、孫をいいます。

なお、この給付金は非課税です。

 

<受給の条件>

介護休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数(時間給・日給の場合は各月の出勤日数、月給の場合は各月の暦日数)が11日以上ある完全月が12か月以上あることです。ここで「完全月」とは、雇用保険に入っている期間が丸々1か月ある月をいいます。

ただし介護休業期間中に、賃金が支払われる場合や出勤することがある場合には、別の条件が加わります。

 

<給付金の支給率の改定>

介護休業を開始した日から起算して1か月ごとの期間に受給できる金額は、次のとおりです。

・平成28年7月末日までに開始した介護休業

休業開始時賃金日額×支給日数×40%

・平成28年8月1日以降に開始した介護休業

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

休業開始時賃金日額とは原則として、介護休業開始前6か月間の賃金を180日で割った額です。ただし、次のとおり上限額があります。

・平成28年7月末日までに開始した介護休業

 30歳から44歳までの賃金日額の上限額(毎年8月1日に改定)

・平成28年8月1日以降に開始した介護休業

 45歳から59歳までの賃金日額の上限額(毎年8月1日に改定)

 

<手続き>

対象者を雇用している事業主が「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」を介護休業開始日の翌日から10日以内に、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

ただし、事業主が対象者に代わって「介護休業給付金支給申請書」を提出する場合は、その支給申請書と同時に提出することができます。この場合の提出期限は、原則として介護休業の終了日から3か月目の月末となります。

 

2016.07.31.

<懲戒処分の必要性>

社員を懲戒する第一の目的は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

ですから、能力はあるのに故意あるいは不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

社員を懲戒する第二の目的は、懲戒対象となった社員ではなく、他の社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することにあります。

「社長を怒らせたら懲戒処分」というのでは、社員はいつも不安です。何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

懲戒規定にない行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下するという実害が出ますので絶対に避けましょう。

 

<懲戒処分ができない会社>

まず、就業規則や労働契約書などに具体的な懲戒規定を置かなければ、懲戒処分を行っても労働審判や訴訟で無効とされてしまいます。

懲戒処分は、あらかじめその内容を具体的に予告しておくことによって、社員に警告を発しておくことができるのです。

「常識外れなことをして会社に迷惑をかけたから減給処分」などと、大雑把なことはできないのです。

どういう規定なら具体的といえるかの基準としては、ある社員が不都合な行為を行ったときに、それがその規定に定める行為にあたるかどうか、社内で意見が分かれないということが目安になります。

つぎに、懲戒処分をするにあたっての手続き・手順が決まっていなければ、物事が進みません。

とくに、懲戒対象の社員には弁明の機会を与えなければなりません。それ以前に、具体的な事実の確認も必要です。何をどういう手順でどうやって懲戒処分にたどりつくのか、ルールがなければなりません。

さらに、今まで社内でどのような不都合なことがあったか、会社はこれにどう対応したかの記録が残っていなければなりません。懲戒処分は平等かつ公平でなければなりませんので、過去の事例との比較も重要になるからです。

 

<懲戒処分ができない社長>

懲戒処分の決裁権を持っているのは原則として社長です。

しかし、この社長が臆病で懲戒権を発動できないと困ります。何をやっても許される会社になってしまい、モラルの低い社員しか残らなくなってしまいます。

社員が安心して働くためには、懲戒処分が必要なのです。

特に会社に対する貢献度の高い社員が独断で行動を起こし、会社に損害を与えてしまった場合には、社長としては大目に見ようと考えがちです。これでは、他の社員の腹の虫がおさまりません。

懲戒処分をためらう社長は、社員の表彰をしていないことが多いように見受けられます。

表彰もするが懲戒もするという信賞必罰の方針でいけば、会社に対する貢献度の高い社員に対しては、何回か表彰し、時には懲戒処分ということもやりやすいと思います。

さらに、社長が臆病ではないのに懲戒処分をためらうケースがあります。

それは就業規則などの懲戒規定のバランスが悪いケースです。たとえば、「セクハラをしたら懲戒解雇」という規定の会社では、ちょっと冗談を言っただけで解雇になりかねません。この場合には、就業規則などの見直しが必要です。

 

2016.07.30.

<受給できる事業主の基本条件>

雇用関係助成金を受給する事業主(事業主団体を含む)は、次の1~3の条件のすべてを満たすことが必要です。

1 雇用保険適用事業所の事業主であること

2 支給のための審査に協力すること

(1)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること

(2)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合にはこれに応じること

(3)管轄労働局等の実地調査を受け入れること など

3 申請期間内に申請を行うこと

 

<受給できない事業主>

ちなみに次のような事業主(事業主団体を含む)は、雇用関係助成金を受給することができません。

1 不正受給(偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受けまたは受けようとすること)をしてから3年以内に支給申請をした事業主、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした事業主

2 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付を行った事業主を除く)

3 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主

4 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主

5 暴力団関係事業主

6 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主

7 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主

 

<不正受給の場合の措置>

さらに、ちなみに雇用関係助成金について不正受給があった場合、次のように厳しく取り扱われます。

1 支給前の場合は不支給となります。

2 支給後に発覚した場合は、支給された助成金を返還しなければなりません。

3 支給前の場合であっても支給後であっても、不正受給の処分決定日から起算して3年間は、その事業所に対して雇用関係助成金は支給されません。

4 不正の内容によっては、不正に助成金を受給した事業主が告発されます。

(詐欺罪で懲役1年6月の判決を受けたケースもあります。)

5 不正受給が発覚した場合には、事業主名等の公表を行うことがあります。

これらのことにあらかじめ同意していない場合には、雇用関係助成金は支給されません。

 

2016.07.29.

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法12条3項5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示していれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、最低賃金法違反となります。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、174時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×174時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が174時間であれば、

150,000円÷174時間=862円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る東京都と神奈川県では違法となってしまいます。

 

<さらに定額残業代を含む場合>

月給に定額残業代を含むのであれば、求人の段階からこれを明示する必要があります。

たとえば、月間所定労働時間が174時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、

150,000円=P+P÷174時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、

残業代抜きの基本給が131,155円、20時間分の残業代が18,845円となります。

すると、今度は131,155円が最低賃金の基準となりますから、

131,155円÷174時間=753.8円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

2016.07.28.

 

<助成金支給のねらい>

厚生労働省は企業に対して、数万円~数百万円の多種多様な助成金を支給しています。

もともと厚生労働省などの行政機関というのは、立法機関である国会が作った法律を誠実に執行する義務を負っています。

しかし法律を執行するだけでは、なかなか思い通りの成果が現れないこともあります。

そこで雇用の分野を中心として、政府の政策に沿った努力をする企業に、助成金を支給することで、政策の推進を図ろうとしているのです。

たとえば、解雇しないで雇用し続ける努力、就職困難者を雇い入れる努力、職場環境を整える努力、社員の能力を向上させる努力などです。

 

<助成金の財源>

助成金の財源は、雇用保険料です。

健康保険や厚生年金の保険料は、会社と労働者とで折半します。

しかし雇用保険では、会社の方が労働者より保険料が高いですね。

この高い分が、助成金の財源なのです。

ですから企業にとっては、「支給」というより「返金」のほうがしっくりきます。

 

<受給手続が面倒な理由>

厚生労働省がブラック企業に助成金を支給すれば問題視されますから、まず、会社の健全性がチェックされます。

そして助成金支給の基準に従った、政策の推進に役立つ活動があるかのチェックも行われます。

この二重のチェックのために、手続が簡単ではないのです。

 

2016.07.27.

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

<労働者名簿の調査>

労働者名簿は、法定三帳簿の一つですから、当然に調査対象とされる機会は多いものです。

しかし、労働者名簿単独で調査対象とされることは少なく、むしろ他の目的があって、その手掛かりを探るために調査されることが多いのです。

労働者名簿単独でのチェックポイントとしては、法定の項目がきちんと書かれていて、労働者の入社から退職の3年後まで保管されているかという点になります。〔労働基準法107条、労働基準法施行規則53条〕

また、本籍やマイナンバーなど記入されていてはいけない項目もありますので、余計なものが入っていないかのチェックもありえます。

 

<未払い残業代の調査>

労働者名簿の中で、役職者の比率が高いと、役職を与えて管理監督者扱いにして残業代をカットしている可能性が疑われます。

この場合には、次に賃金台帳との照合が行われ、残業代支払い対象の役職者がピックアップされることになります。

そしてさらに、未払い残業代の計算という手順になります。

 

<社会保険未加入の調査>

労働者名簿の中の正社員比率と、社会保険の加入者数を比較して、正社員しか社会保険に加入させていないのではないかと疑われます。

この場合には、タイムカードや出勤簿で正社員以外の従業員の勤務実態が確認され、社会保険加入対象のパート社員などがピックアップされることになります。

そしてさらに、一人ひとりの加入日の特定や、未払い保険料の計算という手順になります。

 

<雇用保険関係の不正受給の調査>

雇用保険関係の給付を受けた人について、内定時期や入社日を確認するために、労働者名簿を調査することがあります。

この場合には、万一不正受給があったとしても、基本的には不正受給していた従業員が責められることになります。そして、場合によっては、受給額の3倍が徴収されるということになります。

ただし、会社が従業員の不正受給に加担しうるケースでは、この点についての調査に発展する可能性もあります。

 

<労働安全衛生管理体制の調査>

事務所や店舗ごとの人数から、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医の選任の要否がチェックされます。

同様に、安全委員会、衛生委員会の開催、健康診断結果報告の有無などがチェックされます。

この場合には、会社が法定の手続きなどをしているか、届出書類の控えの提示を求められることになります。

そしてさらに、委員会の議事録や健康診断個人別結果票の控えなどの確認という手順になります。

 

<必要な対応>

調査について事前に予告があれば事前に、予告がなければ事後に社労士にご相談ください。

その場限りの対応をしてしまい、再調査が入ったときにガツンとやられるケースが多いようです。

やはり、ごまかすのではなく、長い目で見て会社が良くなるようにきちんとした対応をしたいものです。

 

2016.07.26.

<少し前までのキャッチフレーズ>

社会保険労務士事務所のホームページを見ると、キャッチフレーズとして「100%経営者の味方です」「いつでも労働者の味方です」ということばが当たり前のように掲げられていました。

ところが、「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」とされています。〔社会保険労務士法1条の2〕

ですから柳田事務所では、たとえ社労士が会社の顧問となった場合でも、一方的に会社の味方となり労働者の敵となるのはおかしいということをネット上でも力説してきました。

権利が守られない労働者は、会社を去っていきますから、結局、会社が力を失います。反対に労働者の権利濫用を許している会社は傾いていきます。会社と労働者がWIN-WINの関係にならなければダメなのです。

 

<不適切な情報発信の禁止に関する会則改正>

「社員をうつ病に罹患させる方法」がブログに書かれるなど、他にも社労士の不適切な情報発信が社会問題となったことから、東京都社会保険労務士会の会則に不適切な情報発信の禁止規定が新設されました。

これによって、「会社側の味方」「労働者側の味方」という表現は、少なくとも東京都内の社労士事務所では使えなくなりましたし、業務にあたっては公正な立場でなければならないことが再確認されたといえます。

 

<弁護士と社労士のスタンスの違い>

東京都区内で労働裁判を扱う法律事務所では、「企業側」「労働者側」ということを明確にしています。こうしないと専門性を疑われるようです。

しかし、同じ東京都内でも多摩地区では、どちら側の代理人も受任する法律事務所が多々あります。

それでも、弁護士と社労士とでは少しスタンスが違います。

たとえば、メンタルヘルス障害で休職している社員がいる場合、弁護士は「会社が責任を問われないように」ということを強く意識します。

これに対して社労士は、「休職している社員の生活や病気の治療」のことも十分に配慮します。

弁護士は、労働者から攻撃されても会社がきちんと防衛できることを考えるのに対して、社労士は、会社が労働者のことをきちんと考えることによって会社が労働者から攻撃されることを防ぐというスタンスです。

 

<柳田事務所の考え方>

代表の柳田は、会社の人事部門で勤務していて、同じ案件について労働者側からも経営者側からも同時に相談を受けていました。

当然のことながら、両方の立場を踏まえWIN-WINの結果を導き出す癖がついています。

これは今でも変わりません。

ですから、柳田事務所は会社からも労働者からも仕事を受けていますし、相手を打ち負かして一時的にスッキリするような結果を目指していません。常に長期的視点に立って、WIN-WINの結果を目指しています。

 

2016.07.25.

<欠勤控除とは?>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定は?>

労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<「時間給」の計算>

欠勤控除を考える場合、まず「時間給」を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設けるなどの工夫が必要です。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料を賃金から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら賃金が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に細かく規定しておくことは稀でしょうから、会社と労働者とで話し合い決めればよいことです。

 

2016.07.24.

<高年齢被保険者と退職したときの一時金>

平成29年1月1日からは、65歳以上で新たに雇用される人も、所定労働時間が週20時間以上であれば、雇用保険の高年齢被保険者となります。

しかし退職した場合には、従来どおり高年齢求職者給付金という一時金を受けることになっています。

この一時金は、現在のように65歳以上で新たに雇用されても雇用保険の対象外であれば、一生に一回しか受け取るチャンスがありません。

しかし来年からは、65歳以降に就職と退職を繰り返せば、何度も一時金を受け取れるということになってしまいそうです。

 

<循環的離職者>

過去3年以内に3回以上、同じ事業所に連続して就職し、1回でも基本手当(失業手当)を受けたことがある人は「循環的離職者」とされ、受給できなくなる可能性があります。

この場合には、ハローワークから退職者本人と事業所の両方に確認が入り、受給期間内に同じ事業所に就職すると不正受給扱いとなります。

おそらく、高年齢被保険者についても同様の措置がとられることになるでしょうから、「うまくやれば何度も一時金がもらえる」ということにはならないでしょう。

 

2016.07.23.

<ガイドラインができた理由>

障害基礎年金や障害厚生年金などの障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されています。

しかし、精神障害や知的障害の認定で、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。

こうしたことを踏まえ、精神障害や知的障害の認定が障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」で、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。

この専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害と知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が策定され、平成28年9月1日から実施されることになりました。

 

<等級判定の標準的な考え方を示したガイドライン>

精神障害と知的障害の障害年金の認定に地域差による不公平が生じないよう、 障害の程度を診査する医師が等級判定する際に参考にする全国共通の尺度と して、以下を盛り込んだガイドラインが策定されました。

・診断書の記載事項を踏まえた「等級の目安」

・総合的に等級判定する際の「考慮すべき要素」の例示

今後は、障害認定基準とこのガイドラインに基づいて、等級判定を行います。

 

<診断書(精神の障害)の記載要領>

障害年金請求者や受給者の病状と日常生活状況を適切に診断書へ反映するために、診断書を作成する医師向けに、診断書の記載時に留意すべきポイントなどを示した記載要領が作成されました。

 

<請求者等の詳細な日常生活状況を把握するための照会文書>

障害の程度を診査する医師が、障害年金請求者や受給者の詳細な日常生活状況を把握するために、 請求者等へ照会する際に使用する文書(「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」)が作成されました。これによって、主な照会事項が整理されました。

 

2016.07.22.

<出産育児一時金>

子どもが生まれたときは出産育児一時金が受けられます。昔は分娩費(ぶんべんひ)などと呼ばれていました。

出産育児一時金は、被保険者(健康保険に入って保険料を支払っている人)だけではなく、被扶養者(健康保険の扶養家族)が出産した時に、協会けんぽなどの保険者に申請すると1児につき42万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は40.4万円)

双子や三つ子なら人数分が支給されます。

 

<誰が出産した場合か>

平成1410月以前は、被保険者の他には配偶者のみに「配偶者出産育児一時金」が支給されていましたが、法改正により被保険者の被扶養者が出産したとき「家族出産育児一時金」が支給されるようになりました。

こうして、扶養に入っていれば未婚の娘でも妹でも、支給されるようになったのです。

そもそも結婚するかどうかは、当事者の自由です。〔日本国憲法24条〕

入籍していないと支給されないというのは平等権の侵害です。〔日本国憲法141項〕

少子化対策の流れの中で、やっと憲法の趣旨が届いた感じです。

 

2016.07.21.

<新人を大切にしたい思い>

せっかく正社員として採用した新人が、今一つ自主性が足りないとか、仕事の覚えが悪いとか、試用期間が終わっても本採用に踏み切れないときがあります。

こんなとき、本人と相談して、試用期間をあと1か月だけ延長して様子を見たらどうでしょう。

社員に優しい、新人を大切にする会社のイメージでしょうか。

 

<労働法の世界では>

求人広告に「試用期間3か月」と書いてあったのに、実際には1か月延長して4か月になったなら、その求人広告はブラック求人とされても反論できません。

就業規則に「3か月の試用期間の後、本採用とする」と書いてあったのに、4か月に延長したら、ブラック企業と言われるかもしれません。

試用期間延長の話のときには喜んで同意した人でも、試用期間を延長したあげく、本採用にならなかったら、家族や労基署に相談するかもしれません。

おそらく試用期間と本採用後では、給与などの処遇にも差があるでしょうから、試用期間の延長は、それだけを見ると労働者に不利益な扱いです。こんなとき、労働法の世界では、「本人の同意」は原則として効力を否定されてしまいます。

 

<それでも時には延長したいなら>

就業規則には「試用期間経過後に本採用の条件を満たしていない場合には、会社から試用期間の延長を提案することができ、本人の同意のもと最大6か月間にまで延長できるものとする」という規定を置いておけば、このルールに基づく延長であると説明できます。

もっと大事なのは、「本採用の条件」を書面で明らかにしておくことです。たとえば、一般事務であれば「次の条件を満たしていない場合には、本採用としない。1.他の社員と明るく元気にあいさつしていること。2.無遅刻無欠勤であること。3.電話応対が自部署の他の社員と同等にできること。」といった内容を、説明のうえ新人に渡しておきます。

そして、1か月後、2か月後にできているかどうか、面談をして確認します。

ここまでして試用期間終了のかなり前に、「これができていないので、試用期間を延長したいがどうか」という提案をすれば、結果的に本採用に至らなくてもあきらめがつくでしょう。

 

2016.07.20.

<実は短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法20条〕

しかし、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とするかしないかの判断が必要となります。遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。すると、退職日が10日遅れ、翌月10日が退職日になり、翌月分の社会保険料が発生するなど、ややこしいことになってしまいます。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

2016.07.19.

<本来は労働者のための労災保険制度>

労災保険は、労働者の業務や通勤による災害に対して、保険給付を行う制度です。

しかし、労働者ではなくても、その実態から労働者に準じて保護すべきであると認められる人は、特別に任意で加入できることになっています。これが、特別加入制度です。

中小企業の事業主・代表者は、一人で何役もこなしていて、その業務内容が一般の労働者と重なる部分が多いものです。そこで、労働者に準じて保険に加入できるようになっているのです。

 

<中小事業主等の範囲>

つぎの表の労働者を常時使用する事業主・代表者、または、その事業に従事する家族従事者や代表者以外の役員などが対象です。

業種

企業全体の労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下

その他の業種

300人以下

 

<初めて特別加入をする場合の条件>

つぎの3つが加入の一般的条件となります。

・雇っている労働者について、労災保険が適用されていること。

・労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。

・所轄の都道府県労働局長の承認を受けること。

 

2016.07.18.

<厚生労働省のモデル就業規則のねらい>

厚生労働省のモデル就業規則の最初のほうに「モデル就業規則の活用に当たって」という標題で、「このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、平成28年3月現在施行されている労基法等の規定に基づき就業規則の規程例を解説とともに示したものです。本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。」という説明があります。

モデル就業規則の各規定の内容を十分検討して、各事業場の実態に合ったものとすれば、労基法などの規定に基づいた就業規則が完成します。

 

<一方で年俸制とは>

プロ野球の選手のように、年1回、社員と会社とが交渉して、たとえば4月から翌年3月までの年俸を決めることは可能です。このときは、会社の業績と社員の働きぶりを踏まえて、期待できる内容に見合った金額とするわけです。

そして、年俸はすべて込みの報酬であり、決まった金額さえ支払えば残業代などは発生しないように誤解されがちです。

しかし、プロ野球の選手とは違いサラリーマンには、労基法などが100%適用されます。当然ですが年俸制にすれば、労基法を無視できるというわけではありません。

ということは、残業手当、休日出勤手当、深夜手当の支払対象ですし、欠勤すれば欠勤控除をすることも可能です。「年俸制の社員が休日にケガをして長期入院してしまった。年俸を下げてはいけないのか?」という心配は無用です。これらのことは、就業規則に定めておけばよいのです。

一定の時間・金額の残業代を年俸に含めるということも、正しいルールと運用で可能となります。

 

<結論として>

年俸制というと「プロ野球の選手のように」という勘違いはかなり多いのです。

また、具体的にルールを作ろうとすると、各事業場の実態に合ったものとすることが簡単ではありません。

こうしたことから、モデル就業規則の中に、年俸制についてのモデル例と解説を加えることは、かえって混乱を招くともいえます。

今現在、年俸制を導入している企業や、これから導入を検討している企業では、規定だけでなく運用についても、弁護士か社労士のチェックを考えていただきたいと思います。

 

2016.07.17.

<資格喪失手続きを忘れる原因>

所定労働時間が週20時間以上であることが、雇用保険の資格を取得する条件となります。ですから、週3日、1日6時間勤務のパート社員が、週4日勤務になれば、雇用保険に入ることになります。こうして資格を取得するのは、あまり忘れない手続きでしょう。

しかし、雇用保険の資格喪失となると、雇用保険の離職=退職というイメージが強いので、退職したときだけ資格喪失を意識しがちです。ところが、所定労働時間が週20時間未満となったときも、資格喪失手続きが要るのです。こちらは忘れやすいのです。

もう一つ、労働者と兼務していた役員が、100%役員になった場合にも、雇用保険の資格を喪失します。今まで、給与と報酬の両方をもらっていた役員が、報酬だけになるときは要注意です。

雇用保険の資格喪失手続きを忘れられた本人にとっても、雇用保険料は社会保険料よりもはるかに安いので、給与明細書を見たときにピンと来ないと思います。

 

<本人について>

所轄のハローワークで、さかのぼって資格喪失手続きを行います。このとき、「遅延理由書」という書類の添付を求められるかもしれませんので、事前に相談しておくことをお勧めします。

また、ご本人に給与から控除してしまった保険料の返金を行います。念のため、計算書と領収証を作ったほうがよいでしょう。

 

<会社の負担した保険料について>

労働保険料の支払いは、毎年7月の年度更新で行います。間に合うのなら、データを修正して余計な保険料を支払わないようにしましょう。

しかし、確定保険料を多く計算して年度更新を済ませてしまった場合には、手続きをやり直して返金してもらうのは、返金してもらう金額と必要な時間や労力を比較すると得策ではありません。それよりは、再発防止のためにマニュアルを改善しておくことのほうを強くおすすめします。

 

2016.07.16.

<結論として>

勤務時間に見合った通常の給与を支払えば、休職者の意思に反して勤務させるのでない限り違法ではありません。

ノーワーク・ノーペイの原則から、会社は休職中の給与を支払う義務がありません。しかし、休職中に必要があって勤務した場合には、その勤務時間に見合った通常の給与を支払わなければなりません。

 

<休職者の合意の有無>

育休中の勤務のように、事前にある程度出勤の予定が立てられる場合には、会社と休職者とで話し合って、出勤日や時間を予定することができます。この予定に従って勤務してもらう分には、休職者の事前の合意があるので、原則として問題がありません。

しかし、会社側が急な必要を感じて、休職者に出勤を要請する場合には、休職の趣旨から当然に休職者の合意が必要と考えられます。

 

<法の規定>

たとえば、雇用保険の育児休業給付金では、就業している日数が支給単位期間(1 か月ごとの期間)ごとに10 日(10 日を超える場合は就業していると認められる時間が80 時間)以下であることが、支給要件とされています。

つまり、育児休業中であっても、ある程度の勤務は想定の範囲内とされていることになります。

ただ、健康保険の傷病手当金や出産手当金などでは、報酬の一部を受けることができる場合の差額支給のルールが定められています。この場合には、休職者に不利とならないように勤務してもらう配慮が必要でしょう。

 

2016.07.15.

<「労働法」ということば>

「労働法」といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではありません。

労働問題に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

したがって、雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければいけないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

そうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法は定められています。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2016.07.14.

<セクシュアルハラスメントとは>

相手の気持ちに反して行われる性的な言動は、その相手の性別に関係なく、また、直接的な身体接触によるものだけではなく、言葉によって行われるものも、セクシュアルハラスメントとなります。

さらに、わいせつな行為を強要したり、相手の名誉や社会的信用を傷つけたりすれば、犯罪として刑法上の責任が問われることがあります。〔刑法176条、230条など〕

そして、被害者に対する損害賠償責任を発生させることにもなります。〔民法709条〕

男女雇用機会均等法では、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しないよう、事業主が積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務付けています。

防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否したことなどを理由に、職場で不利益な取扱いをする「対価型」だけでなく、性的な言動などによって職場環境を悪くする「環境型」のセクシュアルハラスメントも含まれます。

 

<事業主の責任>

事業主は、このようなセクシュアルハラスメント行為に対して厳正に対処すること、被害を受けたときの相談窓口があることなどについて、あらかじめ管理職を含む労働者に知らせておき、もし被害の申出があったら、適切な調査と対応をすることが義務付けられています。

このように職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」ではすまない問題です。

適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局など)による助言・指導などが行われます。

 

<被害者の権利>

被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対しても、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義務違反として、損害賠償を請求することができます。〔民法715条、415条〕

セクシュアルハラスメントについては、事業主の責任を踏まえて、社内で解決することが望ましいといえます。ですから、まずは社内の相談窓口や上司に相談することです。もちろん、上司からの被害であれば、上司の上司に相談すべきです。

しかし、セクシュアルハラスメント問題について、会社が適切な対処をしてくれないときは、国の行政機関(東京労働局雇用均等室)や専門家(弁護士、社労士)などに相談してください。

 

2016.07.13.

<パワーハラスメントについての法規制>

パワーハラスメントについては、特別な法律があるわけではありません。

しかし、職場であっても他者に暴力を振るえば、暴行罪・傷害罪となって刑事上の責任が問われます。〔刑法208条、204条〕

また、皆で示し合わせて誰か一人を排除するようなことをすれば、脅迫罪となる可能性もあります。〔刑法222条〕

さらに、そこまでに達しないような言動でも、常識的に許される範囲を超えて、相手の人格や尊厳を傷つけるものは、被害者への損害賠償責任を発生させます。〔民法709条〕

 

<上司は部下をしかれないのか>

職場では、業務上の指示や指導の上で、やや厳しい言動がされることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、通常の企業の中で行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。

部下や同僚に対し、業務上の必要性もなく、嫌がらせなどの不当な目的で叱責したり、不安を感じさせる対応をしたりすることは、常識的に許されないでしょう。

また、その言動自体は業務の範囲といえるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的で、業務上の権限を使うことも許されません。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。

 

<被害者の取るべき行動は?>

職場で違法なハラスメントを受けた被害者は、加害者本人に対する損害賠償請求ができます。

また、会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、加害者本人と同様の賠償責任を負います。〔民法715条〕

さらに、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法415条〕

そして、常識的に許されない業務上のパワーハラスメントによって、健康被害が生じたと認定された場合は、業務災害として労災保険からの給付を受けられます。

社内でのハラスメント被害を止めるためには、抗議できるならば加害者に中止を求めるとともに、一人では対応が難しいようであれば、まずは上司や同僚など、社内の信頼できる方に相談してください。

ただし、上司からの加害について、その上司に相談するのは無意味ですから、上司の上司に相談することになります。

刑事責任が発生するようなケースでも、いきなり警察に相談するのではなくて、社内での解決を考えたいものです。

まず社内での解決を目指し、難しい時には、弁護士や社労士といった社外の専門家や警察に相談するのがよいでしょう。

 

2016.07.12

<派遣労働者>

派遣労働者は、労働者派遣法で定められた正式名称です。

労働者派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結び、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣して、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものです。

特徴として、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法が派遣労働者のための細かいルールを定めています。

労働者派遣では、法律上の雇い主は人材派遣会社です。ですから、事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。しかし、実際に指揮命令をしている派遣先が全く責任を負わないというのは不合理です。そこで、労働者派遣法が派遣元と派遣先との責任分担について定めています。

 

<契約社員(有期労働契約)>

契約社員は、法律上の名称ではないので、その意味も会社によって違います。

正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。

 

<パートタイム労働者>

パートタイム労働者は、正式名称ではありません。パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます。

パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者をいいます。「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法の「短時間労働者」となります。

パートタイム労働者を雇用する使用者は、パートタイム労働法に基づき、公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務づけられています。

また、労働者を雇い入れる際、使用者は、労働条件を明示すること、特に重要な条件については文書を交付することが義務付けられていますが、パートタイム労働法では、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書の交付などによる明示を義務づけています。

 

<短時間正社員>

短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比べて、その所定労働時間(所定労働日数)が少ない正社員であって、次のどちらにもあてはまる労働者をいいます。

・期間の定めのない労働契約を結んでいる。

・1時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法などが同じ事業所に雇用される同種のフルタイムの正社員と同等である。

このような働き方を就業規則に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。

短時間正社員制度の導入には、優秀な人材の獲得や社員の定着率の向上、採用コストや教育訓練コストの削減、社員のモチベーションアップ、外部に対するイメージアップといったメリットがあります。

 

<業務委託(請負)契約を結んで働く人>

正社員や派遣労働者、契約社員、パートタイム労働者、短時間正社員などは、「労働者」として、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

ところが、「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。

ただし、「業務委託」や「請負」といった契約をしていても、その働き方の実態が、注文主の指揮命令を受けるなどによって「労働者」であると判断されれば、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

 

<家内労働者>

家内労働者とは、委託を受けて、物品の製造または加工などを個人で行う人をいいます。家内労働者は「事業主」として扱われますが、委託者との関係が使用者と労働者の関係に似ていることから家内労働法が定められていて、委託者が家内労働者に仕事を委託する場合には、家内労働手帳の交付や最低工賃の順守など、家内労働法に基づいた対応が求められます。

 

<在宅ワーカー>

在宅ワーカー(在宅就業者)とは、委託を受けて、パソコンなどの情報通信機器を使用してホームページの作成などを個人で行う人をいいます。在宅ワーカーも「事業主」として扱われますが、委託者に対して弱い立場に置かれやすいため、在宅ワーカーに仕事を委託する場合には、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を踏まえた対応が求められます。

 

2016.07.11.

<労災病院や労災指定医療機関>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費が無料となります。

とはいえ実際には、病院などに「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとですから。

 

<労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関>

基本的に、被災者が治療費を一時的に負担しておいて、被災者名義の指定口座に振り込み返金されます。

したがって、手続き書類には口座番号を書く欄があります。ここが、労災病院用の手続き書類とは違うところです。

傷病が悪化して治療が長引くと、一時的にせよ負担額がバカになりません。普段は健康保険証を使って3割負担なのですが、ここでは全額患者の負担となりますから。

労災病院などの場合と同じように、会社が書類の作成と被災者への交付を急ぐことはもちろんですが、労災病院などに移ることも考えたいです。

 

<実際に労災が発生した時の注意点>

上記のことから、なるべく労災病院などでの治療が便利です。しかし、被災者は痛い思いをしていますから、労災病院にこだわるのではなく、最寄りの病院などでなるべく早く治療を受けさせましょう。

たとえば、手をやけどした場合、流水で30分ほど冷やしている間に、病院を探し連絡を取っておいてから、被災者を連れていくというのがよいでしょう。

 

2016.07.10.

<補償されるケース>

業務災害または通勤災害による傷病の治療のため働けず、賃金を受けられないときに補償されます。

勤務中に発生する業務災害のときは休業補償給付、通勤中に発生する通勤災害のときは休業給付といいます。

業務災害の場合は、もともと労働基準法で事業主に補償を義務づけていたので、「補償」ということばが入ります。

これに対して、通勤災害の場合には、事業主に通勤途上の事故にまで責任を負わせることに無理があります。そのため、労働基準法は事業主に補償を義務づけていないので、「補償」ということばが入りません。

労災保険は、事業主の補償義務を拡張して補償の内容に含めているのです。

 

<保険給付の内容>

休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の60%が基本です。

では、3日目まではどうかというと、業務災害の場合だけ事業主が補償します。〔労働基準法67条1項〕

ただ、休業特別支給金という制度があって、休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の20%が支給されます。

結局、被災者は合計80%の補償を受けるわけです。

この給付を受けるために、労働基準監督署長に提出する書類のタイトルには、休業特別支給金も兼ねていることが表示されていますので、1つの手続きで両方の請求ができるわけです。

 

<健康保険より手厚い補償>

治療費は、健康保険だと自己負担が30%ですが、労災保険だと無料です。

休業補償も、健康保険の傷病手当金が67%なのに対して、労災だと合計80%になります。

これは、憲法27条1項が、勤労を国民の義務としていることと深い関連があります。つまり、国民としての義務を果たしていて被災したのだから、プライベートな原因の場合よりも手厚い補償が必要だとされているわけです。

 

2016.07.09.

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。そして、新人の入社の時に書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

こう考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法27条2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養を外れてしまうので辞退します」という申し出があったとします。店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら拒めません。〔労働基準法24条1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、会社に束縛されています。しかし、退職すれば自由になります。そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです。

 

2016.07.08

<雇い入れ時の安全衛生教育>

労働者を雇い入れたときは、労働者に対してその従事する業務に関する安全・衛生のための教育を行うことが定められています。〔労働安全衛生法59条、労働安全衛生規則35条〕

ところが、所轄の労働基準監督署の安全衛生課が調査に入ると、安全衛生教育が実施されていないケースも多く、また、安全衛生教育に関する労働者からの相談も多く寄せられています。

 

<安全衛生教育の義務>

労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、次の事項について、教育を行なわなければならないことになっています。

ただし、労働安全衛生法施行令2条3号に掲げる業種(その他の業種)の事業場の労働者については、1から4までの事項についての教育を省略することができます。

反対に、5から8までの事項についての教育は省略できません。

1 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること。

2 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること。

3 作業手順に関すること。

4 作業開始時の点検に関すること。

5 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること。

6 整理、整頓および清潔の保持に関すること。

7 事故時等における応急措置および退避に関すること。

8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項

 

<留意事項>

労働者から労基署への「安全衛生教育が実施されない」という相談は、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者からのものが多いようです。契約形態にかかわらず、安全衛生教育は義務づけられていますので注意しましょう。

また、労基署が「安全衛生教育が実施されていない」と判断するのは、事実として行われているかどうかではなく、安全衛生教育の記録が職場に保管されているかどうかです。

安全衛生教育について、日時、内容、実施者、参加者などの記録を残し、職場ごとにきちんと保管しておきましょう。

 

2016.07.07.

<懲戒権濫用法理>〔労働契約法15条〕

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分が無効とされるばかりではなく、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<居眠りに対する懲戒処分>

まず、居眠りというのは故意にできることではなく、過失による行為ですから、懲戒規定の中でも、他の過失行為と同様に軽い処分とせざるを得ません。

また、今まである程度勤務中の居眠りが黙認されてきたのに、突然、懲戒規定を置いて処分の対象とする場合には、居眠りが許されない新たな職務の発生など、それ相当の強い根拠が必要となります。

さらに、居眠りの原因を考えた場合に、肥満や病気が関与している場合には、会社の健康管理の一環として、懲戒処分の前に生活面での指導が必要となります。ましてや、過重労働や長時間労働の結果、居眠りが生じたような場合には、会社側に大きな責任がありますから、懲戒処分では何も解決しません。

結論として、居眠りの原因について会社側に落ち度がないかを確認し、本人に考えられる原因を挙げてもらい、まずは原因をつぶしていく努力をします。それでもなお、本人の落ち度で居眠りが発生するのであれば、注意、厳重注意、始末書をとって反省を促す譴責(けんせき)あたりまでは、懲戒処分もありうると考えます。

 

<居眠りに対する他の対応>

きちんとした評価基準があれば、勤務中の居眠りが評価を下げる原因となり、昇進、昇格、昇給、賞与に反映されます。ですから、人事考課のシステムがない会社は、きちんと構築する必要があるでしょう。

また、1時間、2時間と長時間の居眠りを繰り返すようであれば、本人と責任者が面談して、欠勤控除の対象となることを説明すべきでしょう。この欠勤控除は、ノーワーク・ノーペイの原則から許されるものですが、計算方法については、就業規則に規定しなければなりません。

さらに、居眠りがひどくて仕事になっていないというケースでは、普通解雇を考えざるを得ないこともあります。

いずれにせよ、最初に懲戒処分を考えるのではなく、その前に検討すべき対応は数多くあるということです。

 

2016.07.06.

<試用期間と社会保険>

社会保険は試用期間の初日から加入します。

たしかに、2か月以内の期間を定めて使用される人は社会保険に加入しません。結果的に契約期間を延長することになったら、加入することになるだけです。

しかし、「試用期間」という場合、試用期間が2か月なら2か月で契約終了というわけではなく、その後本契約に移行するわけですから、「2か月以内の期間を定めて使用される」という場合にはあてはまりません。

 

<試用期間に加入基準を満たさない場合>

平成28年10月に法改正される前の話ですが、たとえば正社員が1日8時間、週5日勤務の会社で、試用期間の契約社員は1日5.5時間、週5日勤務という契約にすれば、試用期間は加入基準を満たしませんので、社会保険には加入しないということになります。

これは、違法でも脱法でもありません。

とはいえ、このような条件で入社することを希望する応募者がどれだけ集まるかは疑問です。

 

2016.07.05.

<転籍出向の場合>

これは、転籍とはいうものの、完全に所属が移っています。

給与の支払者は出向先ですから、雇用保険は出向先で入り、雇用保険料も出向先でカウントされます。

労働環境の管理も出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

 

<在籍出向の場合>

これは、社籍が出向元に残ったまま、出向先で働く場合です。

給与の支払者は出向元ですから、雇用保険も出向元で入り、雇用保険料も出向元でカウントされます。

しかし、労働環境の管理は出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

この場合、雇用保険と労災保険とで、保険料の負担者が異なることになります。

 

<その他の場合>

「転籍出向」「在籍出向」ということばを一般とは異なる意味で使っている会社や、どちらか明確ではない場合でも、給与の支払者が雇用保険料を負担し、労働環境の管理者が労災保険料を負担すると考えればよいのです。

 

2016.07.04.

<保険者算定>

一般的な方法によって報酬月額が算定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者等(年金事務所または健康保険組合)が特別な算定方法により、報酬月額を決定することとしています。

この算定方法を「保険者算定」といいます。〔健康保険法44条、厚生年金法24条〕

算定対象月に減給処分があった場合は、まさにこの「保険者算定」をする場合にあたります。

ところが、このケースは特殊なので、手引き類にも見当たりません。ですから、直接、年金事務所や協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に問い合わせるということになります。

実際、健康保険組合によってルールが違うようですし、すべての年金事務所で同じ回答が得られる保証もありません。

ただ、随時改定については「減給処分は固定的賃金の変動にはあたらない」という運用基準がありますから、減給処分がなかったものとして修正平均額を算出するのが主流と思われます。

 

<もう一つの留意点>

減給処分は、一つの懲戒処分では平均賃金の1日分の半額が限度です。〔労働基準法91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円÷30日÷2=5千円というのが限度額になります。

また、いくつもの懲戒処分が重なった場合でも、その総額は賃金1か月分の10分の1が限度です。〔労働基準法91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円÷10=3万円というのが限度額になります。

そして、ある月に減給処分があっても、算定対象月は3か月ありますから、その影響は、1つの懲戒処分で1,667円、複数の懲戒処分が重なって1万円が限度ということになります。

もし、定時決定(算定基礎届)の担当者が、算定方法に悩むほどの減給であれば、労働基準法の限界を超える減給がされていないかチェックする必要がありそうです。

 

2016.07.03.

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法33条1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法33条1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

熊本の震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は、条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2016.07.02.

<入院期間中の食事の費用負担>

入院患者は、食事の費用のうち標準負担額というものを支払います。

この標準負担額というのは、平均的な家計での食事を参考に、厚生労働大臣が定めた金額です。

平成18年4月1日からは、1日単位から1食単位の金額に変更されました。

これは、医療機関で提供される食事の内容が変わるわけではなく、食事の負担額について、食数にかかわらず1日単位で計算していたものを、1食単位の計算に変えたものです。

 

<標準負担額>

1食の標準負担額は、一般の世帯で平成28、29年度は360円、平成30年度は460円です。

ただし、住民税非課税世帯などは負担が減額されます。

標準負担額の軽減措置を受ける場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」に被保険者証と低所得の証明書を添付して、全国健康保険協会の都道府県支部に提出します。申請が認められると「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されますから、被保険者証と認定証を医療機関の窓口へ提出することで標準負担額の軽減措置がうけられます。

低所得の証明は、低所得者世帯(住民税の非課税世帯)の人については、住所地の市区役所または、町村役場等で証明を受けた住民税の非課税証明、所得が一定基準に満たない場合は非課税証明に給与や年金の源泉徴収票、生活保護法の要保護者については、福祉事務所長が行う標準負担額認定該当の証明が必要となります。

 

<一般の治療の自己負担額との関係>

多くの方は、原則として3割の自己負担で治療を受けることになりますが、入院期間中の食事については、あくまでも標準負担額が適用されます。

つまり、食事代は治療費とは別計算です。どちらも健康保険の適用があるのですが、計算方法が違うわけです。

このことから、高額療養費についても、食事の費用は計算対象から外れます。

 

2016.07.01.