2016年 5月

<ブラック社員とは?>

ブラック社員は、自分/自分たちのやりたいようにしたいのです。他人からの干渉を徹底的に嫌います。キャッチフレーズは「ほっといてくれ!」です。かといって、自主的に仕事をこなすわけてもなく、改善提案をするわけでもなく、仕事に対して消極的で無気力です。

上司からの命令に返事はするのですが、期限を過ぎても完了報告がないということで、上司が確認すると、なんと命令を忘れていたりします。これは、他人からの指図は受けたくないという自己中心的な態度のあらわれです。

また、ブラック企業と同じく、正しくはどうなのか、どうあるべきなのかということに関心がありません。倫理観が欠けているのです。

結局、ブラック社員は会社の業績に貢献しませんし、その態度を見た他の社員に不快感と不満をもたらします。ときには、無気力が伝染してしまいます。

 

<評価を気にしないブラック社員>

ブラック社員は、自分がきちんと仕事をしていないことを自覚していますから、人事考課で低く評価されても当然のことと考えます。高い評価を得て出世しようとか、少しでも多額の賞与をもらおうなどとは考えません。

 

<ブラック社員への教育>

ブラック社員は、仕事ができないわけではありません。しかし、やる気がないのです。モチベーションアップのための教育をしても、本人も認めるように無駄なことです。

 

<ブラック社員は会社に何を求めているのか>

最低限の給与をもらい、クビにならなければ良いのです。そして、クビになるなら会社都合で解雇され、解雇予告手当をもらい、雇用保険でより早くより長く給付を受けられればラッキーなのです。

 

<なぜ会社はブラック社員をクビにしないのか>

縁故採用で解雇しにくいというケースもあります。

また、ブラック社員は自分を守るための努力はしますから、労働法に詳しい人が多いのです。そこで、会社の実態や就業規則の中に、労働法違反を見つけるのも得意です。

会社から解雇をほのめかすと、ブラック社員は労働基準監督署へ法令違反を相談するとか、一人でも労働組合に入れるとか、脅しのようなことを言い出します。ですから、会社としてはうっかり解雇にはできません。特別な退職金を出して辞めてもらうということもあります。

 

<ブラック応募者を採用しないためには>

このように、一度ブラック社員が会社に入ってきてしまうと、有効な対策というのは困難です。

やはり、会社に入って来ないようにすることが大事です。

ブラック応募者は、大きな会社での勤務経験があり「この部署はこういう役割を果たしていました」と説明することがあります。そこで「その中であなたは具体的にどのような職務をこなしていましたか?」と尋ねても、抽象的な答えしか返ってきません。

他にも「仕事の上で何かリーダーとして活動したことはありますか?」「あなたの改善提案で業績が向上したり生産性が上がった具体例を教えてください」などの質問には答えられません。

退職理由を尋ねると「退職を勧められた」「退職を迫られた」という回答になります。

それでも避けられないのは、縁故採用でしょう。どんなにサボってもそれなりの給料がもらえるとわかっていたら、下手に努力するよりもおとなしくしていた方が利口ですから。まさに、ブラック社員の温床だと思います。

 

<別の角度からの対処法>

会社に労働法上の問題がなければ良いのです。遵法経営の会社にブラック社員が入っても、会社はこれに正面から対応できます。これが、ブラック社員対策の王道です。

 

2016.05.31.

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法120条1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。つまり、生理なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるわけです。

 

<実態としては>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、業務に支障が出たり、女性の当然の権利だから別に遠慮は要らないのだという態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

さらに、偶発的なことではありますが、女性上司がお見舞いに行ったら不在で、翌日に確認したら「入院していた」と言っていたが、その事実はなく、遊びに行っていたことが判明したというケースでは、事前事後のウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<結論として>

生理休暇をとった事実で、昇格、昇給、賞与支給にあたっての評価を下げることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

こうしたことから、生理休暇の濫用ばかりにとらわれることなく、適正な評価制度の正しい運用こそ、望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2016.05.30.

<実例として>

ハローワークの求人票を見て、企業に面接の申し込みをして、面接を受けたとき「うちの条件はこれです」といって出された内容が、求人票の中身と違っていたというパターンです。

よくあるのは、正社員の募集に応募し、面接のときに出された雇用契約書には「期間3か月の契約社員。正社員登用の可能性あり」と書いてあったというものです。

 

<求人広告の性質>

労働契約も契約の一種ですから、「申込」と「承諾」の合致によって成立します。

もし、ハローワークの求人票や求人広告が「申込」であれば、求職中の人がこれに「承諾」すれば、それだけで労働契約成立です。しかし、そうではないですね。採用選考を経て採用が決まるわけです。

じつは、求人広告は「申込」ではなくて、「申込の誘因」なのです。求職者からの「申込」を誘っている広告にすぎません。この広告に魅かれて、求職者が応募すると、求人を出している企業が、その中から気に入った人を採用します。これで労働契約が成立します。

具体的な労働契約の内容は、求人広告ではなくて、雇用契約書、雇い入れ通知書、労働条件通知書など、企業が労働者に交付を義務づけられている書類の内容で確認されます。

 

<ブラック求人の恐怖>

ブラック企業では「求人広告は宣伝だからうまく応募者を集めるテクニックを使うのだ」という認識で、ウソだらけのブラック求人を出していることがあります。

ですから、広告は広告に過ぎないという認識で、採用面接のときに出された条件が、本当の労働条件なのだということを忘れず、きちんと確認しましょう。

そして、求人広告と実際の労働条件が違っていれば採用を辞退し、求人広告を出した広告会社や求人票を出したハローワークにクレームを言っておきましょう。

 

2016.05.29.

<傷病手当金>

傷病手当金は、業務以外の原因による病気やケガでの休業中に、健康保険加入者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、健康保険加入者が病気やケガのために仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

その条件の一つに、「労務不能」があります。仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、健康保険加入者の仕事の内容を考慮して判断されます。

 

<労務不能の基準>

労務不能の期間は、主に療養担当者つまり治療を担当する医師の判断によります。対象者の仕事内容から考えて、病気やケガの回復具合から働けるかどうかを判断するのです。

医師は病気やケガの具合を判断することは得意なのですが、対象者の仕事内容を具体的に知っているわけではありませんから、労務不能の判断はこの点でむずかしいものがあります。

傷病手当金を受給する人は、担当する医師にご自分の仕事内容をわかりやすく説明する必要があります。特に病気との関係で、仕事上の困難な部分をよく説明しておきたいものです。

 

<実際に支給対象となる期間>

仕事を休んだ日と、労務不能と判断された日の重なった日が、支給対象の期間です。ただし、最初の3日間は待期期間といって、支給されない期間です。

労務不能とされない日に仕事を休んでも、ご本人の意思で大事をとって休んだにすぎないことになります。

また、労務不能とされた日に仕事をすれば、働いて給料がでている限り、傷病手当金は支給されません。

 

2016.05.28.

<法律の規定>

労災保険の適用される労働災害には、業務災害と通勤災害があります。このうち、通勤災害は通勤途上の災害です。通勤には典型的なものとして「住居と就業の場所との間の往復」があります。〔労働者災害補償保険法7条2項1号〕

 

<出勤のスタート地点>

出勤のスタート地点は住居ですが、一軒家と集合住宅とでは、厳密なスタート地点が違います。

これは、一般の人が自由に通行できるところで起こった災害が、通勤災害の対象となることによるものです。

一軒家の場合には、外に出る門を身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

集合住宅の場合には、玄関のドアを身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。ただし、玄関ドアの外側は、誰でも自由に通行できることが前提となります。

セキュリティーの厳しいマンションなどでは、外部の人の自由な立ち入りを許さないドアが基準となります。

 

<出勤のゴール地点>

出勤のゴール地点は就業の場所ですが、勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合と、その建物の一部にのみ及ぶ場合とでは、厳密なゴール地点が違います。

これは、事業主の支配管理権の及んでいる事業場施設での災害が、業務災害の対象であり、通勤災害の対象ではないからです。

業務災害で仕事を休んだ場合には、休業の最初の3日間について、事業主が平均賃金の60%以上の休業補償をします。〔労働基準法76条1項〕

通勤災害で仕事を休んだ場合には、この休業補償がありません。

また、労基署に労災保険の手続きで書類を提出するときに、業務災害と通勤災害とでは書式が違います。

勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合には、身体の半分が敷地に入る直前がゴール地点となります。

勤務先企業の管理が店舗など建物の一部にのみ及ぶ場合には、その部分に身体の半分が入る直前でゴール地点となります。

 

<よくある勘違い>

一軒家の玄関を出たところで転んでケガをして、会社に連絡をしても、通勤災害の手続きはできません。

団地の階段で転んでケガをしたら、通勤災害ですから、会社に届出をしなければなりません。

「出勤や帰宅にあたってケガをしたらとりあえず会社に連絡」というルールにしておけばモレがありません。これなら細かい点についてまで教育する必要がないので楽です。

 

2016.05.27.

<重ねての制裁>

ある社員が不都合な言動を理由に、懲戒処分を受けたとします。

この社員が、昇進・昇給や賞与の金額に影響する人事考課で、一段低い評価にされたとします。

しかも、さえない部署への左遷も行われたとしましょう。

このように、たった一つの不都合な言動を理由に、懲戒処分も人事考課も人事異動も重ねて行うことに問題はないのでしょうか。

 

<法律の規定は?>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法15条〕

しかし、人事考課や人事異動の有効性について規定する法令は見当たりません。基本的に会社の裁量に任されているからです。

 

<懲戒処分と人事考課>

人事考課には、会社ごとに独自の考課基準があります。

個人の業績、所属部門の業績、発揮能力、勤務態度、経営理念への共感度、行動指針の体現度、社内ルールの順守など、その内容は様々です。

たとえば、勤務先の近所の飲食店で酒に酔って店長をどなりつけたので、譴責(けんせき)処分を受けたとします。厳重注意を受け、始末書を提出したわけです。この場合、人事考課の基準の中に「会社と勤務地近隣での品行方正」のようなものがあれば、その部分について低い評価となるのは、もっともなことです。しかし、「譴責処分を受けたのだから全項目について一段低い評価」というのは不当です。

またもしも、勤務先の近所の飲食店が、勤務している会社が経営しているお店で、どなりつけた相手が元上司だったら、かなり事情が変わってきます。この場合でも、人事考課の基準の中に「部門を越えた社内での協調性」「会社のお客様に迷惑をかけない」といったものがあれば、その部分について低い評価となるのは、もっともなことです。それでも、考課者のその社員に対する印象が悪くなったので低い評価となるということは避けるべきです。

 

<懲戒処分と人事異動>

人事異動については、会社の裁量がかなり広いといえます。

懲戒処分の原因となった言動との関係で、現在の職務がふさわしくないと認められ、異動が行われるような場合には、不当とはいえない場合が多いでしょう。

たとえば、経理担当者が会社の金銭を500円横領した場合、重い懲戒処分の対象とはならないかもしれませんが、経理以外の部署に異動させるのが適切でしょう。

しかし、勤続年数が長く人件費の高い営業部長が、経費を500円ごまかしただけで、退職の申し出を狙って、役職を外すような異動をするのは明らかに不当でしょう。

 

<結論として>

懲戒処分、人事考課、人事異動、それぞれに目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課や人事異動の目的とは関係なく、当然のように制裁的な人事考課や人事異動が行われるのは不当です。

ただ、こうした会社の行為の不当性を証明し、社員から会社に損害賠償の請求をするのはむずかしいものです。

 

2016.05.26.

<懲戒処分について法律の規定は?>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法15条〕

 

<裁判になったら>

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

ですから「使用者が労働者を懲戒できる場合」、つまり就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒処分が無効とされます。

 

<懲戒権濫用法理>

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分は無効とされ、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事が起きてから懲戒処分の取り決めができたのではないこと。

・過去に懲戒処分を受けた行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<嫌疑不十分で行った懲戒解雇は不当か>

さて、懲戒処分の理由となる事実が真実かどうか確認できないうちに、懲戒解雇をした場合には、それが不当とされ無効となるのでしょうか。

この場合には、最初に挙げた労働契約法15条の「客観的に合理的な理由」が問題となります。

ある店舗の従業員がお客様を強姦したというウワサが広まったとします。その従業員は否定しています。被害者は誰なのかわかりませんし、強姦罪は親告罪であって、警察の動きも見られません。この時点で、懲戒処分を行うのは不当です。なぜなら、ウワサは「客観的に合理的な理由」にはなりませんから。

社内に誰か嫌いな人がいたとき、その人について悪いウワサを流せば会社に処分してもらえるとしたら恐ろしい話です。ウワサは「客観的に合理的な理由」にはならないのです。

しかし、ウワサの主に会社が正式に話を聞いたら「酔っていて覚えていないがやったかもしれない」と話していたところ、警察の捜査が始まり、送検されたことが新聞に掲載されたという段階では、全体の事情から「客観的に合理的な理由」があるといえます。

この場合、あとになってから、ウワサの主の無実が証明されたとしても、会社は不当な処分をしたことにはならず、損害賠償を請求されることもないでしょう。ただ、快く職場に復帰させてあげてほしいですね。

 

2016.05.25.

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

月給制の従業員が入院したら、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これでは、会社の従業員に対する冷たさが見え見えです。そういう会社では働きたくないです。

また、不合理であり社会通念上も相当性がないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、一般の労働契約とは違うと思いますが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社があります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを作っておいたことが失敗なのです。

 

<ではどうしたらよいのか>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。残業手当、深夜手当、休日出勤手当も支払う必要があります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。実は法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているからです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。もちろん、就業規則がないのなら一から作る必要があります。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。この場合には、弁護士や社会保険労務士などの専門家と、所轄の労働基準監督署に相談しながら慎重に事を進める必要があります。

 

2016.05.24.

<著作権とは>

著作権は、言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、コンピューターのプログラムなど、思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利です。

「排他的に」というのは、権利者と権利者が許した人限定ということです。

著作権法では、著作物を勝手に使われないという財産的な権利を指しています。

 

<具体的な問題>

たとえば社労士に頼んで会社の就業規則を作ってもらったとします。その会社の社長が、友達に頼まれてこの就業規則のコピーをあげたとします。これは社労士の著作権を侵害したことになるのでしょうか。

 

<著作権の帰属>

もし、その就業規則の著作権が会社に帰属するなら、コピーを友達にあげるのは自由です。しかし、著作権が社労士に帰属するのなら、社長が社労士の著作権を侵害したことになります。

どちらであるかは、就業規則の作成にあたって交わされた契約の内容によって決まります。

この例一つをとっても、会社と社労士とで、きちんとした契約書を作成せずに口約束で業務を依頼し引き受けるのはトラブルのもとになることがわかります。

 

<柳田事務所の場合>

第15条 成果物の権利の帰属

 無体財産権(著作権法第21条から28条に定める権利のうち、第23条、第26条の3を除く)の権利は乙に帰属する。

これが柳田事務所の契約書に書いてある著作権についての規定です。

乙というのは、柳田事務所を指します。

わかりにくいので、契約するときには契約の内容を具体的に説明して、納得していただいたうえで契約書を交わしています。

結論として、柳田事務所では、顧問先などが第三者に貸与したり、ネット上に公開することを許しているという契約内容です。

 

(参考)著作権法の内容

21条から28条までは、著作権に含まれる権利の種類を定めています。 

21条【複製権】、22条【上演権及び演奏権】、22条の2【上映権】、23条【公衆送信権等)】、24条【口述権】、25条【展示権】26条【頒布権】、26条の2【譲渡権】、26条の3【貸与権】、27条【翻訳権、翻案権等】、28条【二次的著作物の利用に関する原著作者の権利】

 

2016.05.23.

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われる人がいるそうです。

本気で言っているとは思えません。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示して、いろいろ義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者の逮捕>

労働者が労働基準法違反の罪を犯すということ自体がないのですから、逮捕や起訴などもないのです。

ただし、就業規則に違反すれば、会社での評価は下がるかもしれませんし、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それを心配した上司が、部下に対してたとえ話をしたのでしょうか。

 

2016.05.22.

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

<労働基準監督官の任務>

労基署が立入調査(臨検)をする場合、通常その任務にあたるのは労働基準監督官です。

労働基準監督官の基本的任務は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者などを監督することにあります。

労働基準監督官は、監督を実施し法令違反が認められた場合には、事業主などに対し文書で指導し是正させるのです。

また、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止などの行政処分の実行も行っています。

 

<労働基準監督官の権限>

こうした任務を全うするため、労働基準監督官には労働法により臨検(立入調査)権限を始め、帳簿・書類などの検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法101条、103条、労働安全衛生法91条、98条、最低賃金法32条など〕

また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大・悪質な法令違反を犯した事業者などに対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法102条、労働安全衛生法92条、最低賃金法33条など〕

 

<立入調査>

労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。

例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談をきっかけとして、また、問題が懸念される事業場などをあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。

なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則として予告することなく事業場に監督を行っています。

臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法120条(30万円)、労働安全衛生法120条(50万円)、最低賃金法41条(30万円)など〕

 

<実際に立入調査を拒否したら>

たとえば、残業代の不払いが発覚することを恐れ、立入調査を拒否して、30万円の罰金を支払ったとしても、2年分の残業代を払わされるよりは安くて済む計算です。

もし、これで済むのなら、多くの企業が立入調査を拒否するでしょう。

しかし、それ相当の容疑が固まれば、労働基準監督官による捜索・差し押えなど強制捜査が行われるでしょうし、そこまでいかなくても聞き込みや張り込みは可能です。従業員が何時に職場に入り何時に出たかを確認したり、直接従業員に話を聞くことはできるのです。

それに、会社が労基署を追い返したとなれば、直接労基署に実情を訴えに行く従業員もいるでしょうし、多数の退職者が出るかもしれません。ネット上でも、あることないことウワサが広がることでしょう。

そもそも悪質なことをしていなければ、労基署の立入調査を拒否する必要などないのですから、拒否そのものがブラックです。

 

2016.05.21.

<法令などの社会保険加入基準>

会社で働く人は、一定の条件を満たした場合、社会保険(健康保険と厚生年金)に入らなければなりません。会社には、入らせる義務があります。

その一定の条件とは次の3つです。

・会社が社会保険に加入している事業所(適用事業所)であること

・正社員など正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数があること

・臨時、日雇い、季節的業務で働く人ではないこと

 

<実践的な社会保険加入基準>

雇い入れ通知書、労働条件通知書、労働契約、就業規則などから、今後1年間の勤務を予測して、正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数が見込まれるなら、社会保険に加入となります。

また、この基準で対象外とされても、現実に3か月連続で正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数の実績が発生すれば、年金事務所では社会保険への加入を指導します。

 

<社会保険に入る入らないの損得>

プライベートのケガや病気で働けないとき、健康保険なら傷病手当金によって給料の67%が保障されます。この傷病手当金は、国民健康保険にはありません。

年金は、国民年金よりも厚生年金のほうが、将来受け取る老齢年金も、万一の場合に受け取る障害年金も金額が多いのが一般です。

保険料の負担は、社会保険なら会社が半分負担で、国民年金や国民健康保険では全額自己負担です。それでも、給料から控除される社会保険の保険料は多額だと感じられます。会社にとっては、従業員が社会保険に入ると会社の保険料負担が発生しますから、入って欲しくないと考えるかもしれません。

結局、将来の生活や万一のことを考えると社会保険に入るのが得で、今の生活費を重視するならば入らないほうが楽といえそうです。

 

<シフト調整が正当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週28時間、週4日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険には入らないことになります。

労働契約上も、社会保険に入らないことになっているので、会社も従業員も入らない前提です。この場合に、この前提が崩れないように、労働契約の範囲内でシフト調整するのは正しいことです。

 

<シフト調整が不当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週35時間、週5日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険に入ることになります。

もし、社会保険料の負担を逃れるなどの目的があって、会社が社会保険に入る手続きを怠れば、それ自体違法ですし、シフト調整は単なる悪あがきにすぎません。

また、最初から雇い入れ通知書、労働条件通知書、労働契約がないのは、それ自体違法ですし、社会保険加入基準を満たさないようにシフト調整をするというのはおかしなことです。年金事務所の調査が入っても指摘を逃れるかもしれませんが、労働基準監督署の調査が入ればアウトです。

 

<結論として>

わざとシフト調整して社会保険に入れない企業があったとして、それが正しいのか、それともブラックなのかは、労働契約の内容次第だということになります。

 

2016.05.20.

<会計検査院とは?>

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査します。〔日本国憲法90条〕

そして、常時または臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができます。〔会計検査院法25条〕

 

<実地の検査とは?>

そこで、会計検査院は次のような実地の検査も行っています。

・労基署がきちんと労働保険料(雇用保険・労災保険)の指導をしているか。

・ハローワークが失業者の再就職後の不正受給を見逃していないか。

・年金事務所が対象者をきちんと厚生年金に加入させているか。

とはいえ、これらのことは、実際に対象となる企業に出向いて調べてみないことにはわかりません。

そこで、会計検査院は労基署、ハローワーク、年金事務所の方々と共に、企業に出向いて実地の検査をするということになります。

 

<会計検査院の調査の特徴は?>

とにかく厳しいです。

実際、労基署、ハローワーク、年金事務所が単独で調査に入った場合には、会社の現状を察してくださることもありますから、人情に訴えることも不可能ではありません。

しかし、会計検査院は「法律通り正しく行われているか」を調査しますので、会社の成長段階や体力に対する配慮はしてくれません。

視点が違います。

企業を指導するという考えではなくて、「企業を指導する労基署、ハローワーク、年金事務所」の指導ぶりを厳しくチェックするわけです。

労基署、ハローワーク、年金事務所の皆さんは、会計検査院を「鬼より怖い」といいます。

 

<具体例として>

たとえばある企業で、パート社員が社会保険加入を嫌うので資格取得手続きをしなかったとします。

これが年金事務所に発覚すると「すぐに手続きしてください」という指導が行われるでしょう。

ところが会計検査院だと、「保険料を2年前からの分すべて、会社負担分も本人負担分も、まとめて納付してください」ということになります。こうしないと、国の収入が法律通りにならないわけですから。

こうなると、対象となるパート社員から2年分の保険料を強制的に徴収する方法はないのですから、会社は大きな損失をこうむることになるわけです。場合によっては、そのパート社員が突然に来なくなることもあるのです。

やはり、正しく手続き、正しく納付が基本です。

 

2016.05.19.

<高齢者の保険料免除>

雇用保険では、年度の初日の4月1日の時点で64歳以上の人の保険料が免除されます。4月1日の時点で64歳以上が免除ですから、よく「65歳以上は免除」といわれています。

「私はそろそろ65歳になるけど、いつから免除になりますか?」「その時、何か手続きが必要ですか?」という問い合わせが人事部門に寄せられます。

また「雇用保険の保険料が給料から引かれなくなったけど、対象者じゃなくなったのですか?」という質問も出てきます。

 

<保険料計算のしくみ>

健康保険と厚生年金は、一人ひとりについて保険料の計算がされて、原則として毎月の給与から一定額が控除されます。

ところが、雇用保険の場合には、毎月の給与を基準に一定率で計算した保険料が控除されます。給与が変動すれば、保険料も細かく変動するのです。

また、会社は健康保険と厚生年金の保険料を毎月納めるのですが、雇用保険の保険料は1年分まとめて支払います。このとき、雇用保険に入っている人の人件費総額を基準に雇用保険料を計算するのですが、年度の初めに64歳以上の人の人件費は差し引いて計算します。

 

<結論として>

雇用保険に入った会社で働き続けて年度の初めに64歳になった人は、その年の4月分の保険料から免除されます。通常は、翌月より給与からの控除がストップします。だからといって、雇用保険の対象から外れるわけではありません。週20時間未満の労働契約とならなければ対象者のままです。

給与計算の担当者は、保険料の給与からの控除をストップすることを忘れてはいけません。また、このような事情を対象者のかたに説明しなければいけませんね。

 

2016.05.18.

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

<労基署の是正勧告とは>

労基署の調査が入ると、法令違反の部分について改善を求める「是正勧告書」という文書を交付されます。というより、労基署まで取りに行かされることが多いです。

これに対して会社は、改善の内容を「是正報告書」という文書にまとめて労基署に提出します。

こうした対応を誠実に行っても、再度の調査が入るということはあるのでしょうか。

 

<労働基準監督署による調査の種類>

一般には4つに分類されています。

定期監督 = 各年度の監督計画により、労基署が管轄する企業の中から調査対象を選択し、法令全般について一般的に調査

災害時監督 = 業務災害が発生したあとに、原因究明や再発防止の指導を行うため調査

申告監督 = 労働者からの申告があった場合に、その申告内容について確認するため調査

再監督 = 是正勧告により指摘した法令違反が是正されたかを確認するための調査

是正勧告を受けて期限までに是正報告書を提出しなかった場合にも行われる。

 

<結論として>

上記のように、きちんと対応しても、再度の調査(再監督)が行われる場合があります。

最初の調査の時や、その後の会社側の態度が悪いと、再度の調査を予告されることもあります。

いたずらに労基署を敵視するのではなく、会社を改善するのだという態度で臨みたいものです。

 

2016.05.17.

<就業規則の改定>

従業員の一人ひとりに就業規則の冊子が配付されている会社で、いつの間にか内容が改定されていて、改定後の就業規則は配付されなかったということがあります。

その会社の責任者が一念発起して就業規則の冊子を作って配ったものの、その後は経費の関係で改定版までは作らなかったのです。

この場合に、改定後の就業規則は有効なのでしょうか。

 

<就業規則の変更手続き>

就業規則を変更する場合の手順は次のようになります。

・変更内容の社内決裁

・変更後の就業規則の作成

・変更した就業規則の周知(しゅうち)

・労働者代表などによる意見書の作成

・就業規則変更届の作成

・所轄労働基準監督署への届出

 

<周知とは?>

ここで、周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

ところが、ここでの「周知」には、具体的内容について従業員全員に教えておくというほどの強い意味はありません。

 

<周知の方法は?>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

 

<周知しないとどうなる?>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

<結論として>

会社が改定後の就業規則を周知したのに、たまたま気づかない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しても有効です。

しかし、会社が改定後の就業規則を周知しなかったので、これを知らない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しては無効です。たとえ、労働基準監督署への届出が済んでいても、その従業員に対しては無効なのです。

 

2016.05.16.

<脱退一時金とは>

国民年金も厚生年金も、日本国内に住所があれば国籍に関係なく加入します。しかし、滞在期間の短い外国人の多くは、老齢年金の受給資格期間を満たすことができません。

そこで、保険料が掛け捨てになるのを防ぐために、外国人が国民年金や厚生年金を抜けて日本を出国した場合には、日本に住所がなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。

 

<国民年金の脱退一時金>

支給の条件は原則として、国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)期間が6月以上あることです。

ただし、障害基礎年金などの年金を受けたことがあるときは請求できません。

脱退一時金の額は、最後に保険料を納付した月が属する年度と、保険料納付済月数に応じて決められています。

 

<厚生年金の脱退一時金>

支給の条件は原則として、厚生年金の加入期間が6月以上あることです。

ただし、障害厚生年金などの年金を受けたことがあるときは請求できません。

脱退一時金の額は、次の式で計算されます。

加入期間の平均標準報酬額 × 支給率

 

もし、帰国した外国人のかたに心当たりがあれば、ぜひ教えてさしあげてください。

 

2016.05.15.

基本的には、健康保険証があれば3割の費用負担で医療サービスを受けることができます。しかし、健康保険の財源は保険料と税金です。不誠実な人に無駄づかいを許してしまうのは道義に反します。そこで、次のようなルールが設けられています。

 

<わざとケガした場合>

わざとケガした場合や、自分の故意の犯罪行為で病気になったりケガをしたときは、健康保険が使えません。〔健康保険法116条〕

ただし、自殺による死亡については埋葬料が支給されます。

 

<ケンカなど>

ケンカや、酒を飲みすぎてケガした場合には、全く健康保険が使えない場合と一部だけ使える場合があります。〔健康保険法117条〕

 

<少年院・刑事施設に入ったとき>

少年院などに収容されたとき、刑事施設、労役場、これらに準ずる施設に収容されたときは、病気・ケガ・出産について健康保険が使えません。〔健康保険法118条〕

 

<療養に関する指示に従わないとき>

正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、健康保険が一部使えなくなることがあります。〔健康保険法119条〕

 

<不正行為をしたとき>

不正行為によって、健康保険を使った者については、6か月以内の期間を決めて、傷病手当金や出産手当金の全部または一部を支給しないことにできます。〔健康保険法120条〕

 

2016.05.14.

<賃金の立て替え払いとは>

政府は、事業主が破産手続き開始の決定を受けたとき、労働者の請求に基づいて未払い賃金の立て替え払いをすることがあります。

このことは、「賃金の支払いの確保等に関する法律」の7条に規定されています。

聞きなれない法律ですが、オイルショック直後に、不況による企業倒産や賃金未払いの増加が著しかったために、その対策として制定されました。

 

<その条件は?>

次の2つの条件があります。

・1年以上労災保険の適用事業であったこと

・最初の破産手続き開始の決定を受けた日などの半年前から1年半後までの2年間に、その事業を退職した者について未払い賃金があったこと

つまり、退職してから半年以内に破産手続きが開始すれば可能性があります。

 

<立て替え払いの対象額>

未払い賃金総額の80%が対象となりますが、退職日の年齢に応じて未払い賃金総額には上限があります。

退職日の年齢

未払い賃金総額の上限

 30歳未満

110万円

 30歳以上45歳未満

220万円

 45歳以上

370万円

 

この制度の窓口は、労働基準監督署です。

 

2016.05.12.

<失業保険から雇用保険へ>

1947年(昭和22年)5月3日に日本国憲法が施行され、27条で勤労権が保障されました。これによって、国家が国民に雇用の場を提供する責務を負ったことになります。

これを受けて、同年の12月1日に失業保険法が制定されました。この法律は、失業保険の対象者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的としていました。

さらに、勤労権保障の充実のため1975年(昭和50年)4月1日失業保険法が廃止され、代わって雇用保険法が施行されました。

 

<雇用保険の目的>

雇用保険法の1条に、この法律の目的が掲げられています。

「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。」

 

<雇用保険で行われる給付と事業>

雇用保険法の目的に沿って、現在では次のような給付と事業が行われています。

求職者給付 ― 基本手当=昔の失業保険金(失業手当)、技能習得手当など

就職促進給付 ― 就業手当、再就職手当など

教育訓練給付 ― 教育訓練給付金

雇用継続給付 ― 高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付

雇用安定事業 ― 助成金の支給

能力開発事業 ― 職業訓練など

このうち給付の保険料は、労働者と使用者が折半します。そして、事業の保険料は使用者が負担します。また、保険料の他に費用の一部を国庫が負担します。

 

2016.05.11.

<保険証はどこにある?>

労災保険が適用される労働者は、適用事業に使用される労働者です。雇用形態に関係なく賃金を支払われている人は対象者です。アルバイト、パート、日雇い労働者も対象となります。また、不法就労を含む外国人労働者も対象者です。派遣社員は、派遣元で対象者になります。

雇用保険や健康保険では個人に被保険者証(保険証)が発行されますが、労災保険は業務執行権のある取締役などを除き、全員が対象となるので保険証は発行されません。保険料は全額事業主が負担します。

 

<適用事業とは>

労災保険法が「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」と規定しています。〔3条1項〕

ただし、公務員、農林水産業従事者の一部は対象外です。

ということは、個人事業主でも労働者を一人でも雇えば、労災保険の適用対象となるわけです。

 

<適用されることの意味>

赤ちゃんが生まれれば、その子について出生届が出されなくても、一人の人間としての人権を保有することになります。これと同じように、事業主が労基署に「労働保険関係成立届」を提出しなくても労災保険は適用されるのです。もし事業主が、保険料の納付を逃れ労基署の監督を逃れる意図で届出をしなくても、そこで働く人々には労災保険が適用されます。

 

<届出しないとマズいのか>

ただ、事業主が届出を怠っていれば、バレたとき大きな不都合が発生します。場合によっては、事業の運営ができなくなります。

ではバレるのかというと、たとえば従業員が自転車に乗って出勤する途中で転倒し、意識を失ったまま病院に運ばれれば、通常は労災保険が適用されるでしょう。なぜなら家族や友人が駆けつけて、通勤途上の事故だと話すからです。治療費が高いほど、事業主の負担も高額になります。

最近導入されたマイナンバー制度は、今後も充実してきます。法人番号と個人番号から、届出をしていない事業主が一斉に摘発される日も近いことでしょう。

 

2016.05.10.

<就業規則の必要性>

個人のスマフォからのネット投稿が原因で、会社の信用が低下したり、閉店したりというニュースが続いたこともありました。

会社が仕事のために従業員に使わせているパソコンやスマートフォンは、本来業務外の使用が認められない会社の物品です。私物の使用を規制するのは困難でも、会社の物品なら合理的な範囲での規制が許されます。会社を守るためにも、また安易な私用で従業員が非難されないためにも、就業規則に使用規程を加えることが必要でしょう。

 

<企業秘密の漏えい防止>

インターネットの私的利用によって、ウイルスに感染する可能性が高まります。ウイルスに感染した端末から企業秘密が漏れることもあります。

就業規則には、私的利用の禁止を明確に定めましょう。これと連動して、懲戒規定にも修正が必要となることがあります。

また内容的には重複するのですが、パソコンやスマートフォンの貸与をする場合には、私的利用をしない旨の誓約書を提出してもらうのが有効です。

 

<モニタリング規定>

労働時間中は、労働者は使用者の指揮命令下に置かれています。これを使用者の側から見れば、労働者の業務を監視するという関係にあります。ですから、本来、会社は端末内のデータを確認する権限をもっているわけです。

とはいえ、会社が端末内のデータを確認するとまでは思っていない労働者が、端末内にプライベートなデータを残すかもしれません。この場合に、会社には権限があるということで、プライバシーをあばいてしまったら、会社の方が非難されるかもしれません。

そうならないように、就業規則には、会社が端末内のデータを閲覧できる旨を規定し、きちんと周知しておきましょう。

 

2016.05.09.

<効力の優先順位は?>

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」〔労働基準法13条〕

これが労働基準法の規定です。

「達しない」ということばがポイントです。

労働契約で法律よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして法律に従うという意味です。

逆に、労働契約の中に法律よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結局、法律と労働契約を比べて、違いがある部分については、労働者に有利な方が有効となります。

 

<具体例>

たとえば、試用期間が終わり本採用となってから6か月後に年次有給休暇が付与されるという労働契約は法律よりも不利です。たとえ本人が同意していても、法律の基準により試用期間の初日から6か月後に付与されます。

またたとえば、1日7時間勤務の会社で、7時間を超えて勤務したら時間外割増賃金として25%を加えるという労働契約は法律より有利です。なぜなら労働基準法は、8時間の法定労働時間を超える残業に割増賃金を義務づけているからです。この場合には、労働契約が優先されます。

 

<労働契約が無い場合>

働いている限り、労働契約が無いということはありません。口頭であっても、それなりの約束はあるはずです。

ですから、正確には「労働契約書」が無い場合ということになります。たとえ契約書ではなくても、労働条件を会社から一方的に通知する「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」でもよいのですが、何も無ければ労働基準法に定める条件が適用されることになります。

ただ、何時から何時まで、どこで、どのような仕事をするのか、休憩時間はどうなのかということは、法律に規定がありません。これでは働く人があまりにも不安定ですから、会社には労働条件を書面で交付するなどの義務があります。30万円以下の罰金という罰則もあるのです。

それでも交付していない会社は、無意識のうちにブラック企業になっていますので働かないのが無難です。

 

2016.05.08.

満18歳に満たない人の労働条件には、法令の制限が多数あります。

たとえ本人や親がOKと言っても、違反は違反です。罰則もあります。

 

<高校生の時給>

最低賃金法の制限があります。高校生でも同じ最低賃金です。

試用期間でも最低賃金を下回ることはできません。例外的に都道府県労働局長の許可を受けたときは、最大2割減額できるというのが最低賃金法に規定されています。〔最低賃金法7条〕

しかし、実際に相談してみたところ、「許可していません」と言われてしまいましたので無理なのでしょう。

 

<17歳までの労働時間>

1日8時間を超える勤務はできません。平均ではなく、どの日も8時間までです。

1週間で40時間を超える勤務はできません。1週間とは、就業規則に定めがなければ、日曜日から土曜日までの7日間で計算します。

日曜日から土曜日まで7日間連続で勤務することはできません。

フレックスタイム制などの変形労働時間制は使えません。

 

<17歳までの勤務時間帯>

午後10時以降翌日午前5時までは、勤務できません。

 

<17歳までの業務内容の制限>

重量物の取り扱いについては、次の表のとおりの制限があります。

年齢と性別

重量の制限

たまに持ち上げる場合

続けて持ち上げる場合

15歳まで

12キログラム未満

8キログラム未満

15キログラム未満

10キログラム未満

16・17歳

25キログラム未満

15キログラム未満

30キログラム未満

20キログラム未満

運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査・修繕をさせ、運転中の機械・動力伝導装置にベルト・ロープの取付け・取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせることはできません。

毒劇薬、毒劇物その他有害な原料・材料または爆発性、発火性、引火性の原料・材料を取り扱う業務、著しくじんあい・粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所または高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません。

坑内労働に就かせることはできません。

 

※以上の内容には例外もあるのですが、成人と同じようには扱えないということです。

 

2016.05.07.

<労働契約法ができた理由>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です。平成19年12月5日公布、平成20年3月1日施行ですから新しい法律です。

個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。個別労働紛争というのは、労働組合がからまない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を条文の形にまとめたのが労働契約法です。

個別労働紛争が発生したり、発生しそうになったときに、読みにくい判決文を参照しなくても、労働契約法を読めば裁判になったときの結論が想定しやすくなるのです。

 

<労働法の特色>

労働法というのは、労働関係や労働者の保護についての法令の総称です。もともと民法の契約自由の原則が適用されていた労使関係について、労働者の生存権という法理念による修正をする法体系です。

使用者と労働者との関係を形式的に見れば、契約の当事者であり平等な立場ですから、労働契約も他の契約と同じように当事者の自由な話し合いに任せればよいということになります。これが契約自由の原則の考え方です。

ところが現実の資本主義経済では、労働者の立場が非常に弱く憲法25条の保障する生存権がおびやかされてしまいます。そこで、法律が労働者を保護するようになりました。この労働者保護が労働法の基本理念になっています。

 

<労働契約法の目的>

この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。〔労働契約法1条〕

これが労働契約法の目的ですが、「労働者と使用者の自主的な交渉」に任せていては「労働者の保護」は図れないようにも思われます。

 

<労働契約法の5原則>

労使対等の原則=労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。〔3条1項〕

均衡考慮の原則=労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔3条2項〕

仕事と生活の調和への配慮の原則=労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔3条3項〕

信義誠実の原則=労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。〔3条4項〕

権利濫用の禁止の原則=労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。〔3条5項〕

 

<労働契約法の役割>

労働基準法には「使用者は、」で始まる条文が多く、使用者だけに罰則が適用されるのですが、労働契約法には「労働者及び使用者」ということばが多く、罰則規定はありません。

労働契約法は、民法の特別法としての性格を持つため、労働基準監督官による監督・指導は行われず、行政指導の対象ともなりません。

たとえば使用者に安全配慮義務〔5条〕の違反があって、労働者が労働基準監督署に相談しても、指導してもらうことはできないのです。

この法律は、あっせん、労働審判、訴訟での基準を示しているにすぎません。

結局、労働契約法が労働者を保護する役割は、かなり限定されていると考えられます。

 

2016.05.06.

<労働基準法での定義は?>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法10条〕

これではよくわかりません。

 

<確実に「使用者」といえるのは?>

労働基準法10条に書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。他にもここに含まれる人はいるのでしょうか。

 

<社内の人に限られない?>

「使用者」というと、会社にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

 

2016.05.05.

<行政通達とは>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。そのため、いくつもの解釈ができてしまうことがあります。これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そのため、行政機関が法令の解釈・運用・取扱基準を示すことがあります。これは「行政通達」の形をとることが多いのです。

 

<行政通達の効力>

あくまでも行政機関内部の指針です。国民の権利・義務を直接に規制するものではありません。しかし、たとえば労働基準監督署が企業を指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

 

<行政通達に逆らえるのか>

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

反対にいえば、企業はそこまでする気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2016.05.04.

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、1947年(昭和22年)5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人のえらい人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法12条〕

 

2016.05.03.

<不退職の念書とは?>

「退職しません」という念書を従業員に書いてもらうことがあります。

これに効力はあるのでしょうか?

 

<優秀な社員に対して>

たとえば、優秀な社員をプロジェクトのリーダーに抜擢したものの、その社員にはたびたびヘッドハンティングの話が来ているようなので、プロジェクトが終わるまでは辞めないという念書を書いてもらって安心したいというケースです。

たとえ本人が同意のうえでも、こうした念書を書かせることは、憲法で保障されている職業選択の自由の侵害ですから、明らかに無効でしょう。

しかし、退職を禁止する期間を限定して、その間は特別手当を支給するという場合はどうでしょう。「○年○月末までの間、御社から月額5万円の特別手当を給与の一部として受領します。この間は、御社の業務に精励し退職いたしません」という念書です。見返りがあることから、よさそうにも見えます。

「途中で退職したら、それまでの特別手当は返金する」という内容だとグレーでしょうか。

 

<給与の過払いの場合>

たとえば、社員が会社の近くに転居したとき、本人は上司に「住所変更届」を出したのにもかかわらず、その上司がこの届を机の引き出しに保管して忘れていたので、長い間、高額な通勤手当をもらい続けていたというケースです。

あるいは、正社員と同姓同名のアルバイトに誤って賞与を振り込んでしまい、本人がバイクのローン返済に全額使ってしまったというケースです。

どちらも、本人が気づかないはずはないものの、会社側にも落ち度があります。

全額一度に返済してもらうことは無理なので、ご本人の希望により、毎月給与から1万円控除することにして、この間は退職しないという念書も考えられます。

正社員の通勤費であれば、金額にもよりますが、あまり負担なく返済できるでしょう。しかし、アルバイトが3年がかりで返済するという場合には、学校卒業後も退職しないという約束となってしまうこともあります。

 

<その効力は?>

「退職しません」という念書は、本人が同意していても、職業選択の自由の侵害、労働契約への不当な拘束になって、法的効力はありません。

それでも、心理的な拘束力はあるでしょう。ややグレーな話ですが、会社としてはこの心理的な拘束力に期待して念書を書いてもらうことがあるといえます。

もちろん従業員には、この念書に同意する義務はありません。

念書を使うときは、会社側も従業員側もよく考えてからにしましょう。

労働法の世界では、会社と従業員が心から同意していたとしても、客観的に見て労働者に不利益を生じうる念書は無効なのです。「年次有給休暇は取得しません」「残業手当はいただきません」という念書が有効だとしたら、労働基準法も骨抜きになってしまうのですから当然です。

 

<ではどうしたらよいのか?>

優秀な社員に退職して欲しくないケースでは、高額な特別手当や、臨時昇給などで、転職を検討されないようにするというのが王道でしょう。

給与の過払いのケースでは、あらかじめ就業規則に定めておくことができるのですから、従業員が負担にならない形での返金について定めておきたいです。

また、住所が変わったら通勤手当がいつからどうなるのかをきちんと教育しておけば、誤った支払いがあったとき本人が気づくでしょう。これは、アルバイトに賞与が支給されないということについても同じです。

 

2016.05.03.

<保険を使えるのはどんなとき>

整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれの施術を受けた場合に保険の対象になります。

ただし、骨折と脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。

また、病院や診療所などの保険医療機関で同じケガの治療中は、施術を受けても保険の対象になりません。

 

<もともと保険を使えない施術>

単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。

このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります。

 

<費用の精算についての特例>

本来は、患者が費用の全額を支払った後、自ら協会けんぽなどの保険者へ請求をおこない支給を受ける「償還払い」が原則です。

しかし、柔道整復については、例外的な取扱いとして、患者が自己負担分を柔道整復師に支払い、柔道整復師が患者に代わって残りの費用を保険者に請求する「受領委任」という方法が認められています。

このため、多くの整骨院・接骨院等の窓口では、病院・診療所にかかったときと同じように自己負担分のみ支払うことにより、施術を受けることができます。

なお、柔道整復師が患者に代わって保険請求を行うため、施術を受けるときには、必要書類に患者がサインをすることになります。

 

2016.05.02.

<よくあるパターン>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなどのパターンは多いですね。ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。「月給÷所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して、安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入は?>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退するかたもいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2016.05.01.