2016年 4月

<懲戒処分の種類>

民間企業での懲戒処分の種類は、会社によって名称が違うものの、一般的には次のようなものです。

  • 懲戒解雇
  • 諭旨解雇 ― 自主的に退職を申し出てもらいます
  • 降格
  • 出勤停止
  • 減給
  • 譴責(けん責)― 始末書を提出してもらいます

 

<懲戒処分の制限>

就業規則や労働条件通知書に具体的な規定があることが大前提です。就業規則がなくて、新人に労働条件通知書も交付していない会社であれば、何も懲戒処分ができません。〔労働基準法89条〕

減給には、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。〔労働基準法91条〕

賞与から減額する場合も同じです。

たとえば月給の総支給額が平均30万円なら、平均賃金の1日分は約1万円ですから、1つの減給処分でできる減給は約5千円です。もし、いくつもの懲戒理由が重なって、いくつもの減給処分が重なっても、約3万円までとなります。これを超える減給は、会社が労働基準法違反となります。

 

<懲戒処分の比較>

懲戒解雇と諭旨解雇とでは、就業規則で退職金の支払い額に差を設けていることが多いので、退職金の支払いがゼロとなりうる懲戒解雇が最も重い処分ということになります。

降格という処分は微妙です。あえて懲戒処分にしなくても、人事考課で評価を下げるとか、昇進を停止するとか、左遷するなどによって、同様の効果が得られるのであえて懲戒処分とする必要性は疑わしいものです。ただし、人事考課を含めきちんとした人事制度がない会社では懲戒処分も必要でしょう。

減給については、労働基準法の制限が厳しいですから、出勤停止のほうが重い処分になります。たとえば、1週間の出勤停止であれば給与からそれだけの欠勤控除ができます。

譴責の効果は、対象者によって大きく異なります。普段から、事務職で文書作成を業務としている社員にとって、始末書の作成はあまり負担になりません。減給1,000円のほうが辛いでしょう。しかし、普段全く文書を作成しない社員にとって始末書の作成は大きな負担となります。減給1万円のほうが楽かもしれません。

 

<どの懲戒処分を選ぶか>

基本的には就業規則の定めに従うことになります。しかし「懲戒解雇とする。ただし、本人が深く反省しているなど情状酌量の余地があるときは、諭旨解雇または降格にとどめることがある」などと幅を持たせる規定も多く見られます。

こうした場合には「どうして一段下の懲戒処分ではダメなのか」ということをよく考えて決めることになります。対象者によっては、減給より譴責のほうが辛いということもあるのですから、よく考えて一段軽い処分を選択するのも効果的でしょう。

 

2016.04.30.

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、特に職務専念義務が重いのです。

ほとんどの場合、ダブルワーク禁止です。親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

会社では、会社が給与を支払っているのですから、社員が職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、すべて大目に見ることもできるわけです。

 

<なぜダブルワークしたいのか?>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと言うのです。

中には別の仕事もしてみたい人、家業を手伝っていたり引き継いで行っている人もいますが少数派です。

 

<なぜダブルワーク禁止なのか?>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

それでは就業規則でダブルワークを禁止したり、社員に「ダブルワークしません」という念書を出してもらったりした場合、有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力がないということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて定めたとしても、すべてが有効になるわけではありません。

実際に有効とされるためには次の2つの条件をクリアする必要があります。

  • 具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること
  • 懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

これらは、労働契約法15条と16条の規定によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、本来の目的と違うアルバイトなどの活動は制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2016.04.29.

<経歴詐称とは?>

学歴・職歴を偽ることです。通常は、履歴書の学歴・職歴欄にウソを書いて会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。これにならって、就業規則に採用取り消しや懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題は無いのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判の判断例を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、これを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。やはり、人事異動を考えるべきでしょう。

 

2016.04.28.

<繰り下げ受給を選んだ人の割合>

国民年金(老齢基礎年金)は、本来65歳から死亡するまで年金がもらえる制度です。

しかし、最大5年遅く70歳まで繰り下げて受給できます。

平成26年度で、年金受給者のうち繰り下げ受給の割合は1.3%です。

新たに受給を開始した人の中で、繰り下げ受給の割合は1.5%です。〔平成26年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平成27年12月厚生労働省年金局)〕

この割合は、あまり変化がありません。

 

<繰り下げ受給のメリット>

繰り下げ受給なら、受給額が増額されます。

65歳以上でもまだまだ元気に働いていて年金に頼る必要が無い、または、預貯金などの資産が充分にあるという方は、受給額の増額が大きなメリットとなります。

 

<どれほど増額されるのか>

では、どれだけ増額されるのでしょうか。

老齢基礎年金の繰下げ請求は、月単位で行うこととされており、請求月の翌月分から年金が受け取れます。

増額率は、65歳到達月から繰下げ申出月の前月までの月数×0.7% で計算できます。1年につき8.4%の割合ですから、最大5年で42%ということになります。

しかも、この増額が一生続くのです。

 

<結論として>

とりあえず経済的に困っていない、そして、長生きの家系に属するなどの理由で長生きする可能性が高いというのであれば、繰り下げ受給が得になる可能性も高まります。

マイナス金利の世の中で、繰り下げ1年につき8.4%の増額というのは、かなり大きなメリットです。

しかし「明日の百より今日の五十」という諺(ことわざ)もあります。早く年金をもらっておいた方が、不安が少ないかも知れません。

こう考えると、自分自身の寿命をどのように想定するか、一種のギャンブルようにも思われます。

結局のところ、年金は一生もらい続けるものですから、長生きした者勝ちです。

 

2016.04.27.

<繰り上げ受給を選んだ人の割合>

国民年金(老齢基礎年金)は、本来65歳から死亡するまで年金がもらえる制度です。

しかし、最大5年早く60歳から繰り上げて受給できます。

平成26年度で、年金受給者のうち繰り上げ受給の割合は37.1%です。

新たに受給を開始した人の中で、繰り上げ受給の割合は12.4%です。これは3年前の半分以下で、年々減少傾向にあります。〔平成26年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(平成27年12月厚生労働省年金局)〕

ということは、繰り上げ受給は損だと考える人が増えているのでしょうか。

 

<繰り上げ受給を選んだ理由>

厚生労働省の平成24年の調査ですが、繰り上げ受給を選んだ理由ベスト3は、次のようになっています。

・年金を繰上げないと生活出来なかったため

・生活の足しにしたかったため

・減額されても、早く受給する方が得だと思ったため

理由を回答しない方も多かったのですが、年金制度全体に対する不安があったのでしょうか。厚生労働省に対して答えにくい理由だったようです。

 

<どれほど減額されるのか>

上記の理由のうち「年金を繰上げないと生活出来なかったため」「生活の足しにしたかったため」というのは、切羽詰まった感じを受けます。

しかし、「減額されても、早く受給する方が得だと思ったため」というのは、損得で考えて、繰り上げを選んだということでしょう。

では、どれだけ減額されるのでしょうか。

減額の割合は 0.5%×繰り上げた月数 で計算できます。1年につき6%の割合ですから、最大5年で30%ということになります。

しかも、この減額が一生続くのです。

 

<他にもある繰り上げ受給のデメリット>

繰り上げ受給をすると、年金の上では、65歳になったのと同じ扱いがされますので、次のようなデメリットもあります。

・障害基礎年金を請求することができない。

・寡婦年金が支給されない。既に寡婦年金を受給していても権利がなくなる。

・65歳になるまで遺族厚生年金が併給できない。

 

<結論として>

長生きする可能性を考えると、早くもらわないと生活できないという方、難病などで余命宣告されている方を除き、繰り上げ受給はお勧めできません。

マイナス金利の世の中で、繰り上げ1年につき6%の減額というのは、かなり大きなデメリットですから。

 

2016.04.26.

<性別による差別の禁止>

事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。〔男女雇用機会均等法5条〕

また、事業主は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけません。〔男女雇用機会均等法6条〕

労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています(男女同一賃金の原則)。〔労働基準法第4条〕

 

<間接差別の禁止>

事業主が以下の措置を行うことは、実質的に一方の性に不利益となって、性別を理由とする差別となるおそれがあるため、合理的な理由がない限り、間接差別として禁止されています。〔男女雇用機会均等法7条〕

・募集・採用にあたり身長、体重または体力を要件とすること

・コース別雇用管理における総合職の募集・採用にあたり転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること

 

<セクシュアルハラスメント対策>

セクシュアルハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否・抵抗などしたことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)」及び「性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」をいい、女性、男性ともに対策の対象となります。

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずる義務があります。〔男女雇用機会均等法11条〕

 

<ポジティブ・アクション>

過去の女性労働者に対する取り扱いなどが原因で、職場に生じている男女間格差を解消する目的で、女性のみを対象としたり、女性を有利に取扱う措置については法違反とはなりません。〔男女雇用機会均等法8条〕

また、このような格差の解消を目指して雇用管理の改善について企業が自主的かつ積極的に取り組みを行う場合、国が援助できる旨の規定が設けられています。〔男女雇用機会均等法14条〕

 

2016.04.25.

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は、事業者に、仕事が原因で労働者が事故に遭ったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法66条〕

また、最近では仕事上のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤が原因で病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を問われる裁判も増えています。〔会社法429条1項〕

 

2016.04.24.

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額が定められています。〔最低賃金法〕

外国人であっても、日本国内で働いている人は、この最低賃金以上であることが必要です。

最低賃金は、都道府県ごとに決まっていて、毎年のように改定されています。改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。最低賃金より低い賃金で契約したとしても、法律によって無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

一回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。〔労働基準法91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払い方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

したがって「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2016.04.23.

<遺族から退職金の請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第52条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第52条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が二人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2016.04.22.

<退職金倒産>

もう10年近く前のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第51条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2016.04.21.

<通常の場合>

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています。〔労働契約法17条1項〕

期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

 

<長期勤続の場合>

また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準1条〕

ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。

 

<証明書の交付>

さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

これは、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準2条〕

明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。

たとえば、以下のような理由です。

・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため

・担当していた業務が終了・中止したため

・事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

 

2016.04.20.

次の事項を理由に解雇することは、一部の例外を除き禁止されています。だからといって、別の理由をでっち上げて解雇しても無効です。

 

・労働者の国籍、信条、社会的身分〔労働基準法3条〕

・労働者の性別〔男女雇用機会均等法6条〕

・労働者が労働基準監督機関に申告したこと〔労働基準法104条〕

・女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと〔男女雇用機会均等法9条〕

・個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたこと〔個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条〕

・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたこと

・労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたこと〔育児・介護休業法〕

・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等〔労働組合法7条〕

・公益通報をしたこと〔公益通報者保護法3条〕

 

ちょっと耳慣れない法律もありますが、すべては労働者を保護するための規定です。

中には、会社にとって不都合なことや、会社に逆らっているかのような内容もあります。

しかし、うっかり解雇すれば、それは無効となるばかりではなく、慰謝料請求の対象ともなりますので、くれぐれもご注意ください。

 

2016.04.19.

<解雇の検討>

入社4年目の正社員が、ある時期から遅刻を繰り返すようになります。

上司が注意しても、ただただ謝るだけです。

定期健康診断の結果も正常ですし、同僚からの勧めもありメンタルクリニックで受診したのですが、正常の範囲内という診断でした。

それにしても全く仕事が手につかない様子です。

社長が直に面談してみたところ、個人的な悩みを抱えているとのことでしたが、具体的なことは何も話してもらえませんでした。

社長と上司が、就業規則を見ながら考え込んでしまいました。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(解雇)第49条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

①勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・働きぶりがあまりにもひどいこと

・普通に働けるようになるとは思えないこと

・社員としての役割を果たせないこと

この3つの条件を備えていたら、解雇もありうるということです。

ここでの解雇は、仕事での発揮能力の低下を理由とするものですから、懲戒解雇ではなくて普通解雇となります。

それにしても、「著しく」と言えるのか、「改善の見込みがない」のか、「職責を果たし得ない」のか、そのように断言できるのでしょうか。

 

<モデル就業規則の基本的な考え方>

実は、厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の権利を侵害することが無いように、また違法な行為が行われないように配慮されて作られています。

特に解雇というのは、会社が労働者の権利を一方的に奪うことになりますから、慎重な規定になっているわけです。

しかし、会社がこの規定を根拠に解雇しようとして、裁判にでもなったなら、会社は「勤務状況が著しく不良」「改善の見込みがない」という証明をしなければ、勝ち目が無いでしょう。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、就業規則を次のように定めることです。

 

(解雇)第49条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

①  勤務状況が不良で、労働者としての職責を果たしていないとき。

 

会社としては、遅刻・欠勤・早退の事実を証明し、きちんと勤務できていないということだけ証明すれば良いのです。

このように言うと、簡単に解雇できそうですが、実際には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法16条〕

会社としては、就業規則に最低限の条件だけを定めておき、余計な証明責任を負わないようにして、あとは実質的に見て、客観的で合理的な理由があるか、世間一般の感覚で考えてやむを得ないと言えるかを判断すれば良いのです。

むやみに解雇することはいけませんが、解雇のハードルを上げ過ぎないように注意したいものです。

 

2016.04.18.

<突然の退職申し出>

入社2年目のエース社員から、社長に退職願が提出されました。

「今日は16日ですから、月末退職でOKですよね。」と何だかうれしそうです。聞けば大学の先輩を通じて、大手企業にスカウトされたとか。先月結婚したのも転職が決まったからだそうです。

社長としては、辞めてほしくないですし、せめてきちんと引き継ぎを終わらせてほしいです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職)

第48条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①  退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

よく見ると、退職を願い出て「会社が承認したとき」と書いてあります。では、会社が承認しなければ良いのでしょうか。

また、「14」には下線が引かれていますから、これを「100」に修正しても良いのでしょうか。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項及び第2項)。

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日が20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります(民法第627条第2項)。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

特にここでは、労働基準法などではなく、民法の規定がポイントとなります。

 

<引き継ぎはこうすればOK>

きちんと引き継ぎを完了させるには、次のようなことがポイントとなります。

・普段から退職や異動を想定して、短期間で引き継ぎを完了できるようにしておくこと

・退職にあたっては、引き継ぎを完了することが重要な業務であることを、就業規則にも明示しておくこと

・引き継ぎの拒否は、懲戒処分の対象となることを就業規則に規定すること

そして、年次有給休暇の取得を申し出たとしても、会社が時季変更権を行使できないような場合には、権利の濫用としてこれを拒否することが考えられます。ただ、円満に解決するには、年次有給休暇の買い取りも検討したいところです。

 

<突然辞められないためには>

これには地道な努力が求められます。つぎのようなことがポイントとなります。

・社員が自分の将来を思い描ける人事制度の構築

・経営理念の明確化と理解のための教育研修

・会社の魅力の抽出と社員へのアピール

・社員同士のコミュニケーションを密にし維持する仕組みづくり

 

2016.04.17.

<退職者から賞与の請求>

10年近く働いて円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第46条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

しかし、「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するという規定です。「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのか不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、当たり前のことですが、「賞与支給日に在職しない者には支給しない」と規定しておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

 

2016.04.16.

<説明が無い場合>

賞与の支給額を明細書で初めて知り、どうしてこの金額なのか分からないというのは小さな会社ほど多いようです。

そもそも賞与の金額は、社長が一人で思い悩んで決めたので、全員についてハッキリした説明などできないという場合もあります。

もらった社員は、前回に比べていくら増えた/減ったしか感じません。

会社の経費を、それも多額の経費を賞与に充てたのに、ちっとも感謝してもらえないなんて勿体ない話です。

 

<説明のある場合>

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の貢献度を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額=その人の基本給×支給月数×考課係数

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」とわかりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」とわかります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持ちになります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。

 

<具体的な計算方法>

「うちの会社は、そんなにキチンとやっていない」とあきらめる必要はないのです。

たとえ、社長が一人で考えて決めた支給額であっても、次の手順で計算できます。

 

賞与支給額の総額÷(支給対象者の基本給の合計額)=支給月数

こうして、平均的な人事考課の場合の支給月数がわかります。

 

個人の賞与支給額÷(その人の基本給×支給月数)=考課係数

これで、賞与から逆算したその人の考課係数がわかります。

 

結局、「あなたの今回の賞与は次の計算によって決まりました」と説明できるのです。

個人の賞与支給額=その人の基本給×支給月数×考課係数

 

社長や上司が各社員と面談して、この説明をして激励してはいかがでしょうか。

 

2016.04.15.

<賃金カット>

会社の経営が思わしくなく、一時的に賃金カットを実施したくても、労働者の「自由な意思による同意」が無ければむずかしいのです。

社長が社員全員を集めて説明し、一人ひとり説得を試みたとしても、誰だって給料を減らされるのはイヤです。

ヘタをすると、どの会社でも通用する優秀な社員だけが退職していき、残ったメンバーでは…ということになりかねません。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(昇給)

第45条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年  月  日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

この条文は、次のことを言っています。

・毎年、定期昇給を行うが、特別な事情があれば行わないこともある。

・臨時昇給もありうる。

・昇給額については、個人ごとに決める。

結局、この規定は昇給だけを想定していて、賃下げなど考えていません。

 

<個別の同意が無くても就業規則を変えればOKだが>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が、次のような事情に照らして合理的であることが必要です。〔労働契約法10条〕

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

実際に、これらの条件が充分にそろっていることを証明するというのは、使用者にとって大変むずかしいでしょう。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、会社が経営不振に陥らないようにすることです。これは、当たり前のことですが、常にできることではありません。

もう1つは、就業規則の規定を「昇給」ではなくて、

 

(給与改定)

第45条 給与改定は、毎年  月  日をもって行うものとする。

2 特別な事由が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず臨時の給与改定を行うことがある。

3 昇降給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

 

というような規定にしておきます。

そして社員には、「会社の状況によっては賞与や給料が減ることもある。会社が儲かっている時は社員に還元するので、会社が苦しい時には耐えて欲しい」という説明をあらかじめしておくのです。

さらに、経営不振でもいきなり人件費削減ではなく、まずは役員報酬のカット、そして不採算部門の縮小、新人採用の停止など手を尽くしたうえで実施するという説明もしておけば、社員にはそれなりの覚悟ができますし、イザというとき納得も得られやすいものです。

社員には、こういう覚悟をもって仕事をしていただいた方が、生産性が向上するのではないでしょうか。

 

2016.04.14.

<解雇無効の主張>

入社したばかりのパート社員から、勤務先の店長あてに電話が入ります。

「すみません。また下の子が熱を出しちゃって…今日はお休みをいただきたいのですが。」

これに対して、店長の返事はとても冷たいものです。

「もうこれで、今月3回目でしょ。保育園に通っているお子さんが2人もいて、子供の病気で休んでばかりじゃ、あてにならないじゃないの。まだ入社して1か月だし、今月末まで試用期間だし、契約は更新しませんから、来月からは来なくていいですよ。」

というわけで、このパート社員は、あきらめて退職します。

そして、その半月後、パート社員の代理人から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。しかも、慰謝料まで請求されています。

店長としては、自分の中の常識に従ったのですが、その常識は法律とは違っていたのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(育児・介護休業、子の看護休暇等) 

第25条 労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児のための所定外労働の免除、育児・介護のための時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。

2 育児休業、介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・誰でも必要に応じ、育児休業、介護休業、子の看護休暇などを利用できる。

・育児休業などについての就業規則は別に作る。

結局、このひな形は「育児・介護休業等に関する規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「育児・介護休業等に関する規則」を作らなければ、問題が発生しても仕方がないのです。

では、面倒だからこの規定を全部カットしても良いかというと、育児・介護休業法があるので、カットできないのです。

育児休業や介護休業は、法律が労働者に与えた権利ですから「うちの会社にはありません」という話は、年次有給休暇と同様にナンセンスです。

 

<法律の規定では>

子の看護休暇とは、けがや病気の子の世話などを行う労働者に対し与えられる休暇です。会社には労働者に与える義務があります。〔育児・介護休業法16条の2、3〕

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度につき5日を限度として、子の看護休暇を取得することができます。対象となる子が2人以上の場合は10日です。

また、取得したことを理由とする不利益取り扱いは禁止されています。〔育児・介護休業法10条、16条の4〕

ということは、入社して1か月のパート社員が、小学校に入る前のお子さんが熱を出したことを理由に3回休んでも、契約の打ち切りなどできないというのが、労働法上の常識です。

ところが、店長は大事な法律の内容を知らずに、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、会社の現状に合った「育児・介護休業等に関する規則」を作ることです。ひな形は会社の現状を踏まえたものではありませんから、少し手直ししただけでは危険です。やはり専門家の力が必要でしょう。

もう1つは、店長やマネージャーたちに、人事労務関係の法令について、きちんと教育をしておくことです。自主的に本でも読んで学ぶというのではなく、定期的な集合研修が必要でしょう。

これらは費用のかかることですが、そうだとしてもリスクマネジメントの費用ですし、むしろ幹部社員に対する投資です。会社を護るための投資なのです。

 

2016.04.13.

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし、延長は無い。)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え。」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。明るく元気に挨拶すること。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと。」などです。試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。長引けば、その新人の転職のチャンスも遠くなります。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集選考・採用の精度は高めておかなければなりません。試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

何事も最初が肝心なのです。

 

2016.04.12.

<退職金の請求>

長年働いて円満退職したパート社員の代理人から、退職金請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の退職金請求も増えているようです。

「いや、うちの会社は契約更新のたびに、きちんと雇用契約書でパート社員には退職金の支給が無いことを確認しています」と言っている会社が、実際に退職金を支払う結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(適用範囲)

第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・「この就業規則」が原則としてすべての従業員に適用される。

・パート社員の就業規則は別に作る。

・パート社員の就業規則に書いていないことは、パート社員を含め、すべての従業員に「この就業規則」が適用される。

結局、この規定は「この就業規則」とは別に「パート社員就業規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「この就業規則」に退職金の規定を置いて、別に「パート社員就業規則」を作らなければ、パート社員にも退職金の規定が適用されます。

たとえ、雇用契約書や雇い入れ通知書、労働条件通知書に「退職金は支給しません」とはっきり書いてあっても、労働者に有利なことは就業規則が優先的に適用されるのです。〔労働契約法12条〕

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

なお、パートタイム労働者等について、規程の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、パートタイム労働者等に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

〔厚生労働省のモデル就業規則〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうすればOK>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、正社員用の就業規則とは別に「パート社員就業規則」を作ることです。しかし、これは就業規則を2つ作るのですから、骨の折れる作業です。

もう1つは、就業規則の中で、正社員とパート社員とで違う取り扱いをする部分に、そのことをきちんと書いておくことです。

たとえば「退職金は正社員のみに支給し、パート社員には支給しない。パート社員に退職金を支給しないことは、雇用契約書(雇い入れ通知書、労働条件通知書)にその旨明示する」という規定を、就業規則の退職金の規定のところに加えておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

 

2016.04.11.

<個別労働紛争と解決>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会によるあっせん

 

<紛争調整委員会によるあっせんの特徴>

上記の制度のうち、紛争調整委員会によるあっせんには、次のような特長があります。

・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便

・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当

・あっせんを受けるのは無料

・紛争当事者間であっせん案に合意した場合は民法上の和解契約の効力

・非公開で紛争当事者のプライバシーは保護

・労働者のあっせん申請を理由に事業主が不利益取扱いをすることは禁止

 

<あっせんの対象となる紛争>

労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象となります。

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争 など

 

<あっせんの対象とならない紛争>

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判中または判決が出ているなど他の制度において取り扱われている紛争

・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争 など

 

2016.04.10.

<利子の下限利率>

社内預金の利率については、法定の最低限度(下限利率)が利率省令によって定められています。

そして、この下限利率は変動し得るものですから、下限利率が変動した場合の対応が必要となる場合があります。

下限利率が引き上げられた結果、社内預金の利率が下限利率を下回ってしまうときは、下限利率を定めた利率省令の施行日までに、少なくともその下限利率と同率以上に引き上げる必要があるのです。

反対に下限利率が引き下げられた場合に、社内預金の利率を引き下げるときには、原則として、改めて労使協定を締結し届出る必要があります。

なお、労使協定で社内預金の利率を下限利率によると定めている場合には、下限利率の引き下げに連動して社内預金の利率が変更されることとなりますが、この場合も、改めて労使協議の上、実勢を踏まえた適切な利率が設定されることが望ましいとされています。〔昭和52年1月7日基発4〕

 

<利子の計算方法>

利子の計算方法としては、利子は預け入れの月から付けること、10円未満の預金の端数には利子を付けなくてもよいこと、利子の計算で円未満の端数は切り捨ててよいことなどが定められています。〔利率省令6条〕

したがって、年の途中から預け入れられたものについても、預け入れの月から年利に換算して利子を付けなければなりません。

ただし、月の16日以降に預け入れられた金額については、その月の利子を付けなくてもかまいませんし、払い戻しをした月については、その払い戻した金額についてその月の利子を付けなくてもかまいません。

 

2016.04.09.

<社内預金の趣旨>

労働契約に付随して、強制的に貯蓄金を管理する契約を行うことは禁止されています。

しかし、労働者が任意に貯蓄金の管理を使用者に委託する場合には、労使協定の締結・届出、貯蓄金管理規程の作成、利子をつけることなど一定の条件を満たすことにより、預金を受け入れる社内預金を行うことが認められています。〔労働基準法18条〕

社内預金は福利厚生の一環とされますが、預金された資金は事業の運転資金として活用することができます。

ただし、原資はあくまでも労働者の賃金です。

したがって、預金の安全性の確保が最も重要な課題であり、保全措置を講ずること、利子は利率の最低限度である下限利率以上とすること、預金者一人当たりの預金額の限度を定めることなどが義務付けられています。

 

<預金の保全>

預金の保全については、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて一定の保全措置を講ずることとされています〔賃金の支払の確保等に関する法律3条〕

その具体的内容は、賃確法施行規則2条で以下のように定められ、労使協定でどの方法によるのかを明確にする必要があります。ただし、複数を併用することも差し支えありません。

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約を締結すること

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務の額に相当する額につき、預金を行う労働者を受益者とする信託契約を信託会社または信託業務を営む金融機関と締結すること

・労働者の事業主に対する預金の払戻しに係る債権を被担保債権とする質権または抵当権を設定すること

・預金保全委員会を設置し、かつ、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理することその他適当な措置を講ずること

 

<預金保全委員会>

預金保全委員会の構成員の半数については、その事業主に使用されている労働者であって、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の推薦を受けたものとすることが必要です。

預金保全委員会には次に定める事項を行わせます。

・事業主から労働者の預金の管理に関する状況について報告を受け、必要に応じ、事業主に対して当該預金の管理につき意見を述べること

・労働者の預金の管理に関する苦情を処理すること

事業主は、3か月以内ごとに1回定期に、また預金保全委員会からの要求の都度、労働者の預金の管理に関する状況について預金保全委員会に対して書面により報告を行わなければなりません。

また事業主は、預金保全委員会の開催の都度遅滞なく、その議事の概要および預金保全委員会に報告した労働者の預金の管理に関する状況の概要を各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法によつて労働者に周知させることが義務づけられています。

さらに、預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存することが必要です。

 

<保全措置を講じていない場合>

保全措置を講じていない事業主に対しては、労働基準監督署長が文書により保全措置を講ずべき旨の命令を出すことができます。〔賃確法4条、施行規則3条〕

また、保全措置が講じられていない事業場が倒産した場合の貯蓄金については、株式会社で会社更生法が適用される場合は、更生手続開始前6か月間の給料の総額に相当する額、またはその預り金の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権として優先的に扱われます。〔会社更生法130条〕

しかし、破産や民事再生の手続きを採った場合には、優先度の低い債権として扱われることになります。

 

2016.04.08.

<年俸制なら残業代は支払わなくてよい?>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払いはありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が原則必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としていません。

この割増賃金の支払いを使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

また、たとえ三六協定の無い、あるいは協定の限度を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<なぜ年俸制では割増賃金が割高なのか?>

年俸制における代表的な賃金の支払い方法には、次の二つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払い方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面をもって合意をすれば合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい。」

 

2016.04.07.

<業績給とは?>

従業員の従事した仕事の業績で基本給を決める賃金制度です。

 

<業績給の長所>

・仕事の成果と基本給が連動し企業の業績が向上

・業績の範囲内で基本給を決められる

・従業員の勤労意欲が高まる

 

<業績給の短所>

・複雑な共同作業には対応できない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・従業員の過重労働に繋がる

・勤労意欲や業績の向上は短期的なものである

 

<最近では>

個人だけでなく、所属部署や企業全体の業績を、基本給や賞与に反映させる動きがあります。

 

2016.04.06.

<職務給とは?>

従業員の従事する職務で基本給を決める賃金制度です。

 

<職務給の長所>

・仕事内容と基本給が一致

・必要な人材を仕事に見合った給与で募集できる

・新しい職務を作り古い職務を廃止することで社内外の変化に対応できる

・職業能力向上のためのコストが生じない

 

<職務給の短所>

・企業内での職掌や職種を超えた人事異動が困難

・能力開発の動機付け(多能工化)ができない

・基本給が一定額以上上昇せず長期勤続を促す効果がない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・制度の設計と維持にコストが掛かる

 

<最近では>

職務の細分化をやめ、職務範囲を拡大することによって、短所を補う動きがあります。

 

2016.04.05.

<職能給とは?>

従業員の職務遂行能力で基本給を決める賃金制度です。

 

<職能給の長所>

・仕事と基本給が一致せず職掌・職種を超えた人事異動が容易

・従業員の能力開発を促し企業の長期的な発展に寄与

・保有能力が低下しない限り基本給は下がらず長期勤続を促す効果がある

・昇進と昇格を分離することによりポストが不足しても昇格が可能

 

<職能給の短所>

・仕事と基本給が一致しないことによる不満の発生

・ポストがなくても昇格できるので人件費が上昇

・既存の能力の陳腐化には対応できない

・職務遂行能力の定義次第ではその運用が年功的になる

 

<最近では>

これまでの能力の概念である「保有能力」を仕事で発揮されている「発揮能力」に改める動きが盛んです。

また、会社の業績に著しく貢献している従業員の「行動特性」が分析され、各人の「行動特性」との類似性を評価指標に取り入れる動きもあります。

 

2016.04.04.

<年齢給とは?>

従業員の年齢、最終学歴の卒業年次、勤続年数といった属人的要素で基本給を決める賃金制度です。

 

<年齢給の長所>

・年齢という万人共通の基準は明確

・基本給の計算と管理が容易

・従業員のライフステージごとの最低生計費が保障される

・従業員に安心感を与え長期勤続を促進する効果がある

・仕事と賃金額が一致しなくても良いので配置転換が容易

 

<年齢給の短所>

・同じ仕事をしていても賃金が異なる

・従業員の働き振りや職業能力の向上と基本給は一致しない

・企業の業績と無関係に賃金コストが変動

・平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結

・若手従業員には不平不満が生じる

・日本独自の賃金制度であり国際性がない

 

<最近では>

縮小・廃止の傾向にあり、年齢給を維持する会社では、若者の採用がむずかしくなっています。

また、非正規労働者を含めた労働者の生計費の確保のため、政府による最低賃金の引上げが毎年行われており、年齢給では賃金コストの上昇が著しくなっています。

 

2016.04.03.

<賃金制度の決定>

賃金制度について、労働基準法による規制はありません。

賃金制度のあり方は、労使が対等の立場で話し合って決定するたてまえです。

 

<年功序列型賃金>

年功序列型賃金の統一的な定義はありません。しかし一般的には、企業での勤続年数や従業員の年齢の上昇に従って、賃金(基本給)も上昇する仕組みです。

従業員の全員が新卒採用で、定年まで働き続けるという職場であれば、今もなお一定の合理性を保った制度だといえます。

 

<非年功序列型賃金>

勤続年数や年齢に関係なく、担当している仕事の難易度や仕事上発揮した能力による成果を重視した賃金の決定の仕組みが、多く採用されるようになっています。

こうした賃金制度は、経費節減となり、従業員の意欲を刺激することを期待して採用されています。しかし、その具体的な内容は、企業の経営戦略や人事政策により異なることになります。

 

<賃金制度の種類>

賃金制度には、従業員の属人的要素(例えば、年齢、勤続年数など)で基本給を決める「年齢給」、従業員の能力で基本給を決める「職能給」、従業員が従事している仕事で基本給を決める「職務給」、従業員が行った仕事の「成果・業績」で基本給を決める業績給などがあります。

どの賃金制度にも長所と短所がありますし、社会の価値観の変化や市場環境に応じた変更は、すべての従業員にチャンスを与える意味でも必要不可欠です。

社内外の事情を具体的に把握・分析したうえで、採用する賃金制度を検討されるとよいでしょう。

 

2016.04.02.

<労働局の指導>

面接担当官が、採用面接で聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労働基準監督署に相談した結果、その会社に労働局の指導が入るということがあります。

労働局は、その都道府県の労働基準監督署の上位に位置しますから、軽く考えてはいけません。

 

<企業の採用の自由>

企業にも職業選択の自由と経済活動の自由、そして契約締結の自由が保障されています。これらが結びついて、企業には採用の自由が認められています。

したがって企業は、労働者の採用基準や採用条件について、原則として自由に決定することができます。

 

<採用の自由の制限>

企業の採用の自由には、法律などによって一定の制限が課せられる場合があります。その代表的なものは以下のとおりです。

・募集採用での性別による差別の禁止〔男女雇用機会均等法5条〕

・労働者の身長、体重、体力を要件とすることの禁止

・転居を伴う転勤ができることを要件とすることの禁止〔男女雇用機会均等法7条〕

・年齢制限の禁止〔雇用対策法10条〕

・障害者差別の禁止〔改正障害者雇用促進法34条〕(平成28年4月施行)

 

<公正な採用選考の取組み>

企業が、学生・求職者らの応募者に対して、どのような採用手続で選考をするかについて法的な規制はありませんが、応募者である学生・求職者の基本的人権は尊重しなければなりません。

そこで、応募者の就職の機会均等が確保されるよう、公正な募集・採用選考が行われることが求められています。

つまり、本人が職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかを採用基準とし、これと無関係な事項を採用基準としないことが必要です。

具体的には、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの個人の自由であるべき事項など、本人が職務を遂行できるかどうかに関係のない事項を採用基準とすることは許されません。

また、それらの事項を応募用紙や面接などによって把握することも、就職差別につながるおそれがあるため許されません。

 

<「面接シート」を使った採用面接の実施>

面接担当官が採用面接をするにあたっては、あらかじめ「面接シート」を準備しておくことをお勧めします。

「面接シート」には、面接で確認することをすべて網羅して記載しておき、応募者の回答も記入できるようにしておきます。

これを使いながら面接を進めることによって、聞き漏らしを防ぐことができ、効率よく進行することができますし、うっかり余計なことを聞いてしまうことも防げます。

裏面に面接担当官の評価やコメントを記入できるようにしておけば、記憶が新鮮なうちに情報をまとめることもできます。

 

2016.04.01.