2016年 3月

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官には、事業場への臨検(立入調査)権限、帳簿・書類等の検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法101条、103条、労働安全衛生法91条、98条、最低賃金法32条など〕

これらの権限を行使して、工場や事業場等に監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、企画・設備等を検査します。

そして、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその是正を求めるほか、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止等の行政処分の実行を担っています。

なお、臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法120条、労働安全衛生法120条、最低賃金法41条など〕

さらに労働基準監督官には、警察官のような司法警察員としての職務権限があるため、重大なまたは悪質な法違反を犯した事業者等に対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法102条、労働安全衛生法92条、最低賃金法33条など〕

 

<その場で対応できない場合>

労働基準監督官は、事業場のありのままの現状を的確に把握することが重要であるため、原則予告することなく事業場の監督を行っています。

したがって監督時には、事業場で労働基準監督官に対応すべき職務を担っている社員も、通常の自分の仕事をしている状況にあると思われます。

しかし、労働基準監督官が法律上の権限を基に監督していることを踏まえれば、できる限り時間をとって、これに対応することが適切です。

ただし来客があるなどで、どうしても時間が取れない場合もあると考えられます。

このような場合には、労働基準監督官に事情を十分に説明し、監督時間の短縮や監督日時の延期を要望すればよいと考えられます。

 

<その後の指導>

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。もちろん、ウソの「是正勧告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど「改善した方がいいですよ」という指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、社会保険労務士が立ち会えば、労働基準監督署の監督官の方も、「話の通じる専門家がいる」ということで安心します。もちろん反対に、緊張されてしまうこともありますが。

社労士が立ち会えば「是正勧告書」「指導票」の内容も、厳しくならないものです。反対に、専門知識の無い方が、わかりにくい説明をしたために誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

 

<事前の予告がある場合>

立ち入り検査は、必ずしも予告なしに行われるとは限りません。

もし、事前に調査の予告が入ったなら、その調査の意図を見抜いて準備しておけば、その後の会社の負担は大いに軽減されます。

ぜひ、充分な準備をしておきましょう。

下手な対応や下手な報告書の提出は、会社にとって命取りになることもあります。その場の勢いではなく、長期的視点に立っての対応をしたいものです。

 

2016.03.31.

<罰金とは?>

駐車場の入口付近に「無断駐車は罰金2万円」などの表示を見かけることがあります。また「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方に、お話をうかがったこともあります。

しかし、罰金は死刑や懲役と同じく刑罰の一種です。国家権力ではない個人や会社が罰金を取るということは、相手が誰であれ許されません。

ですから、駐車場の「罰金」の表示も、社内の「罰金」のルールも無効です。本当に徴収したら、何らかの犯罪となるでしょう。こちらは、「罰金」では済まされず懲役刑が科されるかも知れません。

もし社内ルールで「罰金」ということばを使っていたら、みっともないのですぐにやめましょう。

 

<労働法上は?>

就業規則ではなく内規だとしても、「罰金」は違約金の定めや損害賠償の予定の禁止に反して無効になります。〔労働基準法16条〕

また、給与から天引きすることは、賃金の全額払いの原則に反することになります。〔労働基準法24条1項本文〕

結局、労働法上も実際に徴収することは認められません。

またたとえ、使用者が労働者の故意または過失によってこうむった損害を回収したい場合であっても、実際に被った損害額のすべてについて、労働者に請求できるわけではありません。

なぜなら、その損害の発生について、使用者に全く責任がないというのは稀ですし、労働者を使用することによって利益を得ている分、その損失についてもある程度は負担するのが公平だからです。

 

<使用者から労働者に請求できる賠償額は?>

まず、労働者に損害賠償義務があるかどうかは、労働者が通常求められる注意義務を尽くしたかどうかによります。

そして、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。

労働者の負担割合がどの程度となるかは、具体的な事情によります。

裁判になれば「事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は、労働者に対して賠償の請求ができる」という判断になります。

たとえば長時間労働が続いて疲れている労働者が、注意散漫になって事故を起こしたような場合には、長時間労働をさせた使用者に大きな落ち度があり、使用者側の負担割合が相当程度大きくなります。

 

<例の会社の社員>

ところで「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方は、次のような話をしていました。

 

「遅刻しそうになったら、近くの喫茶店で時間をつぶして、落ち着いてから、会社に電話をして具合が悪いと言って、有給休暇にしてもらうといい。たとえ有給休暇はダメだと言われて給料が欠勤控除になっても、罰金1万円よりは安くつく」と先輩からアドバイスを受けました。

 

使用者側が違法なことをしていると、労働者側もこれに対抗しておかしなことをするようです。

これでは、会社と社員が共に成長するというのも「夢のまた夢」でしょう。

 

2016.03.31.

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続きへの非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

 

2016.03.30.

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法5条、824条、859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法59条〕

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

結局、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や雇用の継続について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

 

2016.03.29.

<懲戒権濫用法理>

就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒処分が無効とされます。

 

<第一関門は懲戒規定の具体性>

つまり、懲戒処分について具体的な取り決めがあることと、ある労働者が何か不都合な行為をしたときに、それがその取り決めに明らかにあてはまるということが、懲戒処分の有効要件となります。

 

<具体性に欠ける場合>

たとえば「正当な理由なく無断欠勤が続いた場合」という規定では、何日続いたら懲戒の対象になるのか不明確ですから、具体的な日数を示しておかなければなりません。

また、「故意に会社の施設や物品を損壊したときは懲戒処分を行う」という規定では、壊した物の価値に応じて懲戒の種類を決めるという意図があるにせよ、譴責(けんせき)なのか出勤停止なのか、具体的な懲戒の種類を示しておかなければ、具体的な取り決めとはいえません。

実際には、こうした形で具体性が問題になることは少ないようです。

 

<余計な形容詞が付いている場合>

むしろ、具体的な規定ということに捉われて、余計な形容詞を付けてしまい、使用者と労働者との間で解釈の争いが発生してしまうケースの方が多いのです。

たとえば「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」という規定では、使用者が「重要な経歴詐称」であることを証明しなければ、懲戒処分ができなくなってしまいます。

この場合「経歴を詐称して雇用されたとき」とだけ規定しておいて、使用者は「経歴の詐称」があったことだけを証明し、労働者の方から「懲戒処分に値するほどの重要な経歴詐称ではない」という証明をしなければ、懲戒処分を免れないようにしておいた方が現実的です。

特に懲戒規定については、余計な形容詞を付けないこと、争いになったときに証明責任を負うのは労使のどちらになるかということを意識して定める必要があるのです。

 

2016.03.28.

<明示の内容についての法規制>

ハローワークの求人票や求人情報誌の求人広告には、求職者の知りたい情報が詳しく明確に記載されていることが重要です。

このため、求人の申込みや労働者の募集を行う際に書面や電子メールなどで明示すべき労働条件が、次のように定められています。〔職業安定法5条の3〕

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

・労働契約の期間に関する事項

・就業の場所に関する事項

・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項

・賃金の額に関する事項

・健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項

なお、労働契約を締結する際に明示すべき労働条件と明示の方法についても法定されています。〔労働基準法15条〕

また、労使当事者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています。〔労働契約法4条〕

 

<委細面談>

ではなぜ、飲食店などの店頭に「アルバイト急募!委細(いさい)面談」というような、中身の全然わからないハリガミが貼ってあったりするのでしょうか?

実は、求人広告にいろいろな事項を明示する義務はあるものの、「できる限りやりましょう」という努力義務に過ぎないのです。

つまり、違反しても罰則はありません。

ですから倫理観を欠くブラック企業や、いちいち細かいことまで書くことを面倒に思う使用者は、書きたい範囲内で書いているというのが実態なのです。

ただ、採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法120条〕

ということは、求職者としては求人広告は応募のキッカケに過ぎないのであって、採用面接の際に示された労働条件を詳細にチェックする必要があるということなのです。

 

2016.03.27.

<所定労働日数とは?>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数÷12=月間所定労働日数とするのが一般です。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給×1.25などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間=1日の所定労働時間×月間所定労働日数で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間÷12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、同じ日数にするのが無難でしょう。

ここで勘違いしやすいのは、月間所定労働日数を超えて勤務したら残業が発生するのではないか、反対に下回ったら欠勤になるのではないかというものです。しかし、月間所定労働日数は月給から時間給を計算するために使っているので、直接に割増賃金や欠勤控除の基準となるものではありません。

 

<出勤率の計算>

労働基準法は、「全労働日の八割以上出勤」を年次有給休暇付与の条件としています。〔労働基準法39条1項〕

8割未満の出勤率なら、年次有給休暇を付与しなくてもかまいません。

ここで、「全労働日」とは所定労働日数を意味します。

つまり、所定労働日数が決まっていなければ、出勤率の計算ができませんから、年次有給休暇付与の可否が判断できません。「あの人は休みがちだから半分だけ付与しておこう」というアバウトなことはできないのです。

 

2016.03.26.

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2016.03.25.

<周知とは?>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<会社が周知義務を負っているのは?>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法106条1項〕

労使協定というと三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が有名です。〔労働基準法36条〕

労働基準法には、他にも次のような労使協定があります。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、協定を交わして周知せずに実施すると違法ですから注意しましょう。

 

・貯蓄金管理に関する協定〔18条〕

・購買代金などの賃金控除に関する協定〔24条〕

・1か月単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の2〕

・フレックスタイム制に関する協定〔32条の3〕

・1年単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の4〕

・1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定〔32条の5〕

・一斉休憩の適用除外に関する協定〔34条〕

・月60時間超の時間外労働をさせた場合の代替休暇に関する協定〔37条3項〕

・事業場外労働に関する協定〔38条の2〕

・裁量労働に関する協定〔38条の3〕

・年次有給休暇の計画的付与に関する協定〔39条〕

・年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定〔39条〕

・時間単位の年次有給休暇に関する協定〔39条〕

・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容〔38条の4〕

 

<周知の方法は?>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

 

<周知しないとどうなる?>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

2016.03.24.

<正しい計算の法的根拠は?>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するのか規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。〔昭和63年3月14日基発第150号〕

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、…違反としては取り扱わない。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力は?>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレに行ったら減給?>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則をしゃくし定規にとらえると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、この原則は労働契約の性質から導き出されています。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

 

2016.03.23.

<事前の相談>

生活保護制度の利用を希望する場合には、まず、地域の福祉事務所の生活保護担当に相談します。

ここで、生活保護制度の説明を受けるとともに、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討することになります。

 

<保護申請後の調査>

生活保護の申請をすると、保護の決定のために次のような調査が行われます。

・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)

・預貯金、保険、不動産等の資産調査

・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査

・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査

・就労の可能性の調査

 

<保護費の支給>

基準となる最低生活費から収入(年金や就労収入等)を差し引いた額が、保護費として毎月支給されます。

したがって、生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告することになります。

また、世帯の実態に応じて、福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行います。

就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導が行われます。

しかし、生活保護世帯も高齢化が進み、就労が困難なケースが増えています。

 

<老齢年金の受給>

生活保護を受け始めてから、老齢年金の手続きをすれば受給できることがわかる場合があります。

この場合、一般には5年前の分までさかのぼり、まとめて受給することになります。

このときの受給額が多額の場合には、生活保護が一時ストップすることもありますし、その後の受給額が充分であれば保護廃止の決定が行われることもあります。

 

<年金相談は早めに>

「今はまだ大丈夫」ということで、年金をもらう手続を怠っている方も、かなりの数にのぼります。

しかし、面倒に思わず、年金事務所の窓口に行って、相談していただきたいものです。生活費に困り余裕の無い状態になってからでは、落ち着いて話を聞くこともできなくなりますので。

お客様相談室では、一般の職員の他、社会保険労務士が対応にあたっています。

いくらネットや本で調べてみても、個人の保険料納付記録が無ければ、確実なことはわかりません。

年金を受け取る権利には、時効期間もあります。もし、年金をもらえる状態で、長年放置していれば、権利は消えていってしまいます。そうならないためにも、是非一度、ご相談をしていただきたいです。

 

<障害年金の受給>

年金というと、まず老齢年金が思い浮かびます。

しかし、働けなくなって生活保護の申請をする方の中には、障害年金の受給対象となる方も含まれています。障害があるために働けないケースがあるからです。

ただし、この障害年金を受けるには、保険料納付要件、初診日の証明、障害の状態等いくつものハードルがあります。

生活費に困り余裕の無い状態になる前に、老齢年金と同じく年金事務所で相談することをお勧めします。

ただ、老齢年金よりも少々複雑な話となることが多いようです。不安がある場合や、年金事務所での相談に納得できない場合には、思い切って、社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

2016.03.22.

<ストレスの連鎖とは?>

殺人事件や傷害事件が発生すると、警察は加害と被害の内容、両者間の因果関係を解明し、その一環として加害の動機を明らかにします。

しかし、動機となった「ストレス発散」のストレスの原因までは追究しません。

ひょっとしたら、加害者もまた誰かにいじめられていて、そのストレスを発散するために事件が起きたのかもしれません。

ストレスとその発散は連鎖します。どこかで連鎖を止めないと、最後には弱者に大きな被害が生じます。

あくまでも例え話ですが、次のようなストレスとその発散の連鎖があったとします。

金融機関→社長→部長→課長→一般社員(弱者)

(上の連鎖の)課長→妻→息子→息子の同級生(弱者)

ある会社の社長が、金融機関から大きなストレスを与えられることで、社内では、ストレスのはけ口が、弱い一般社員に及びます。これがパワハラです。

一方で、その会社の課長が、そのストレスを家庭に持ち込み、息子がそのストレスを学校に持ち込むとイジメの原因になります。

もしも、ここで部長がストレスに耐え、課長にぶつからなければ、ストレスの連鎖が止まることになります。

 

<ストレスチェックの目的は?>

ストレスチェックというのは、ストレスについての質問票に、労働者が選択肢の中から選ぶ形で回答を記入し、それを集計・分析することで、ストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

労働者が50 人以上の事業所では、2015 年12 月から毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられました。〔労働安全衛生法66条の10〕

定期健康診断と同様に、契約期間が1年未満の労働者や、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は法的義務の対象外です。

労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合には医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するのが目的です。

決して、ストレスに弱い労働者を発見して退職を勧奨したり、降格の根拠を見つけたりするためのものではありません。むしろ、こうしたことが無いように、充分な配慮が求められています。

結局、ストレスチェックの目的はストレスがたまりやすい職場を発見し、これを改善することにあると思います。

 

<ストレスがたまりにくい職場とは?>

すべては、コミュニケーションによる解決が可能だと思います。

上の「→」で結ばれた間に、ストレスの原因となったことについて、具体的な情報の伝達があればストレスの連鎖は止まります。

なぜ怒っているのか、不安なのか、その原因についての説明が大事です。

会社の中で、ストレス発散と思われるパワハラなどを本気で防ぎたいのであれば、コミュニケーションの仕組みを見直すことが有効です。

「みんなで飲みに行って話し合えばわかりあえる」という時代ではなくなりました。あくまでも勤務時間帯に使える仕組みを構築しましょう。

 

2016.03.21.

<無期転換ルール>

労働契約法の改正により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えることとなったときに、労働者の申し込みによって、無期労働契約に転換されるルール が導入されています。これが「無期転換ルール」です。

有期労働契約で働く人の約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を繰り返し更新しているのが実態です。

無期転換ルールは、こうした状態で働いている労働者の雇止めに対する不安を解消するためにできました。

 

<まだ対応しなくても大丈夫?>

「無期転換ルール」を定めた改正労働契約法は、平成25年4月1日に施行されました。単純に5年後というと平成30年4月1日なので、それまでは無期転換が発生しないようにも思えます。

ところが、

平成25年4月1日から平成28年3月31日までの3年契約を更新して、

平成28年4月1日から平成31年3月31日までの3年契約を交わす場合、

平成30年4月1日には通算5年となります。

この場合、平成28年4月1日以降、労働者から会社に無期転換の申し込みができるのです。

こうした労働者がいる会社では、すでに就業規則や労働契約書などに規定があるはずです。

 

<法改正の趣旨に反する動き>

「無期転換ルール」の導入は、労働者の雇用の安定を図ろうとするものですが、このルールの導入に伴い、有期契約労働者が無期労働契約への転換前に雇止めとなる場合が増加するのではないかとの心配があります。

このため、雇用の安定がもたらす労働者の意欲や能力の向上、企業活動に必要な人材の確保に寄与することなど、無期転換がもたらすメリットについても十分に理解し、雇止めの判断に当たっては、その実際上の必要性を十分慎重に検討のうえ、対応しなければなりません。

 

<高年齢者等についての特例>

専門的知識等を持つ有期雇用労働者や、定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者については、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(有期雇用特別措置法)により特例が設けられています。

この特例の適用を受けるためには、専門的知識等を持つ有期雇用労働者や、定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者について、雇用管理に関する特別の措置に関する都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

この認定を受ける条件は、決して高いハードルではありませんが、認定を受けずに「無期転換ルール」の例外を設けることはできません。所轄の労働基準監督署を経由して申請することもできますので、早めの対応を心がけましょう。

 

2016.03.20.

<パワハラとは?>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、「精神的・身体的苦痛を与えこと」あるいは「職場環境を悪化させる行為」という実害の発生が、パワハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

 

<職場内での優位性とは?>

パワーハラスメントという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して使われる場合が多いですが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもあります。

「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、勤続年数や経験などの様々な優位性が含まれます。

 

<業務の適正な範囲とは?>

業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたりません。

たとえば、上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。

職場のパワーハラスメント対策は、そのような上司の適正な指導を妨げるものではなく、各職場で、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にする取組を行うことによって、適正な指導をサポートするものでなければなりません。

そうでなければ、上司は部下を適正に指導することに臆病になり躊躇してしまい、組織としての機能が損なわれて、企業全体の生産性が低下してしまいます。

 

<パワハラの具体的な判断基準は?>

具体的な事案が発生した場合に、それがパワーハラスメントであったかどうか判断をするには、行為が行われた状況など詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や裁判例も参考にしながら判断しましょう。これが厚生労働省の説明です。

しかし、パワハラかどうかの判断をするのに、裁判例を参考にするのはむずかしいと思います。就業規則を読めばわかるようにしておきたいものです。そして、就業規則にパワハラの定義を定めるときには、適正な指導との区別を具体的に明らかにする必要があります。

まず主観的には、相手の成長を思い親身になって接するのが指導です。これに対して、自分の感情を爆発させストレスを発散する言動がパワハラです。ですから、指導に単なる怒りの感情は伴いません。100%怒りの感情だけがあれば、それは間違いなくパワハラです。

そして客観的には、指導というのは、その対象者の親・家族が見ていて、「しっかり指導してくれてありがとう」と思える言動です。これに対して、パワハラというのは親・家族が見ていて「何てことを言うんだ!何てことをするんだ!」と怒り嘆く言動です。

なぜなら、指導というのは相手の成長を願って行うものであり、また、指導した者には指導に従った結果に対して責任を負うという覚悟があります。親が子に厳しくしても、この前提が崩れない限り指導であり躾(しつけ)です。

こうしたことを踏まえて、就業規則にパワハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、パワハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない。」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、具体的で明確な定義が必要なのです。

 

<なぜパワハラが発生するのか?>

そもそも部下や後輩などが、優位に立つ自分に対して従順で素直で協力的なのは、能力や意欲の差が明白だからではありません。立場上あるいは心理的に仕方なくてそうしているのです。決して実力の差が、仕事上の立場を超えて現れたわけではありません。ここを勘違いしている方が、パワハラに走っているように思います。

パワハラ防止のための教育研修の内容には、このパワハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

パワハラに限らず、セクハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないというトップのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社外の専門家を推奨しています。なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営トップがハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<対策が遅れると…>

被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない場合には、被害者は労働局に申請して紛争調整委員会に斡旋(あっせん)をしてもらうことができます。

反対に、企業がきちんと対応したのに、被害者が納得してくれない場合にも、企業から斡旋を求めることができます。

斡旋では、委員会が話し合いの場を設けます。双方の話し合いで解決すれば良いのですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。専門家の助力が必要であれば、弁護士か特定社労士にご相談ください。

 

2016.03.19.

<セクハラとは?>

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

 

<企業の責任は?>

法令により、企業にはセクハラ対策が義務付けられています。〔男女雇用機会均等法11条〕

従業員からセクハラ被害の申し出があれば、企業は誠実に対応しなければなりませんから、被害申し出のための窓口を設置する義務もあります。

就業規則にセクハラの禁止規定と、これに対応する懲戒規定も必要になります。

 

<就業規則に定義を!>

まず就業規則にセクハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、セクハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない。」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、「自分と相手との間柄を前提として、客観的に見て、相手や周囲の社員が性的な意味合いを感じ不快に思う言動」はセクハラに該当するというような具体的で明確な定義が必要なのです。

社内での相手に対する言動が、周囲の社員にとって、あるいは、相手の家族にとって、性的な意味合いで不快感を与えていれば、セクハラになると思います。

 

<なぜセクハラが発生するのか?>

そもそも部下や後輩が自分に対して従順で素直で協力的なのは、自分に好意を寄せているからではなくて、立場上、仕方が無いからです。決して、二人の間柄が、仕事上の立場を超えたわけではありません。ここを勘違いしている方が、セクハラに走っているように思います。

セクハラ防止のための教育研修の内容には、このセクハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

セクハラに限らず、パワハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないというトップのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社会保険労務士など社外の専門家を推奨しています。なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営トップがハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<対策が遅れると…>

法は、企業に対して自主的解決を求めています。〔男女雇用機会均等法15条〕

しかし、被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない、また、企業としてはきちんと対応したのに、被害者が納得してくれないという場合には、労働局に申請して紛争調整委員会に調停をしてもらうことができます。

調停では、委員会から具体的な事情を踏まえた和解案が提示されます。

双方がこれに従えば、一件落着ですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。専門家の助力が必要であれば、弁護士か特定社労士にご相談ください。

 

2016.03.18.

<ブラックとは?>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義します。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック企業とは?>

ブラック企業は、企業と労働者が身を置く労使関係の中で、道義的に求められている労働法の順守、誠実な行動、常識的な対応ということに配慮せず、やりたいようにやってしまう企業です。

そもそも労働法の規定はどうなっているか、どうするのが誠実で常識的な行動なのか、これを積極的に知ろうとはしません。

必ずしも悪意をもっているとは限らず、面倒くさいから考えない、コンプライアンスなんて知らないという企業も多いものです。

 

<ブラック企業の疑い>

「自分の働いている会社は、ブラック企業ではないか?」という疑問を抱く方が増えています。

その理由として、次のようなことが挙げられています。

・正社員とその他の従業員とで通勤費の計算方法が異なる

・支給される通勤費に上限額がもうけられている

・日曜日や祝日に出勤しても割増賃金が無い

・生理休暇をとった場合に無給となる

・父親の葬式で休んだら弔事休暇ではなく欠勤となった

・8時間勤務で休憩が50分

・退職金や賞与の支給が正社員に限定されている

・2年半勤務しても退職金が出なかった

・試用期間が3か月なのに10日間で解雇となった

どれもこれも就業規則に違反していない限り、必ずしも違法ではありません。

それでも「ブラック企業」と判断するということは、これらのことが常識に反するという考えなのでしょう。

 

<疑いを晴らすには?>

法律の規定がどうなっていて、会社のルールがどうなっているのか、それはなぜなのか、ということについて社員教育が必要です。

会社が正しいことをしていても、会社を疑う社員がいるようでは、生産性が上がりませんし、社員も会社も成長しません。

そして、この教育は会社を疑っている社員に対しては、効果が期待できません。少なくとも社外の講師による説明会など、客観性を確保した教育が必要となります。

それでも、社員の納得が得られない社内ルールがあったなら、それはその会社の社員の常識に反しているわけですから、見直しをお勧めします。

 

2016.03.17.

<ブラックとは?>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義します。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック求人の実態>

労働条件が実態と異なる求人広告を「ブラック求人」といいます。

働き手を募る広告は、募集企業と求職者との社会関係の中で、その内容が正しく実態を示していることが道義的に求められています。

ところが、ハローワークの求人票を含め、このブラック求人についての苦情や相談は一向に減少しません。

それどころか、ブラック求人を出している企業の間では、ブラック求人を採用のための必要なテクニックであるという、誤った共通認識が生じています。

 

<ブラック求人への制裁は?>

実は、求人広告にウソを書いて出しても、これといって制裁が無いのです。

厚生労働省としても、監視や取締りの強化、ペナルティを設けるなどの有効な対策をとることができていません。

ハローワークの求人票ですら、民間の求人広告会社と同じく、利用者からクレームがあれば、掲載の依頼をした企業に釘を刺すだけです。ですから、「ハローワークの出している求人だから」「○○新聞に載っている求人だから」ということで、そのまま信頼してはダメです。

たとえブラック求人であったとしても、労働契約の際に、正しい労働条件を示していればそれで良しというのが、当局の公式見解のようです。

 

<ブラック求人を信じて採用されるとどうなるか?>

採用にあたって示された労働条件が実際と違っていたらいつでも退職できる、そして、働くために引っ越した労働者は14日以内に帰郷する場合、その旅費を使用者に請求できるという規定があります。〔労働基準法15条〕

ですから、採用にあたって示された労働条件と、実際に働き始めてから判明した労働条件が違えば、退職を申し出る権利が労働者には保障されています。

ところが、求人広告と採用にあたって示された条件が違うことや、求人広告と実際に働き始めてから判明した労働条件が違うことは、労働基準法も想定していません。

結局こうした場合には、労働契約が有効ということになってしまいます。

 

<どうやって身を守るか?>

仕事を探している皆さんは、なかなか仕事が見つからないと、条件を落としてでも就職しようとします。

ですから、良い条件の求人広告を見れば「ここに入社したい」と思います。

それでも、求人広告はあくまでも「広告」なのだということを忘れずに、実際の労働条件は採用面接のときに確認しましょう。

そして、「広告」と違っていたら、採用を辞退しましょう。

「なんか求人広告と違う気がするけど、まぁいいか」と妥協するのは、自己責任ということになります。

 

<万一、引っかかってしまったら?>

ブラック求人を出すような企業は、他にもいろいろとブラックな面を持ち合わせていることが多いものです。

そういう企業で無理に働くようなことはせず、なるべく早く労働法に明るい弁護士や特定社会保険労務士にご相談いただくのが得策だと思います。

 

2016.03.16.

<契約書の似た規定>

契約書の最後の方に「本契約書に定めのない事項、または本契約の履行にあたり疑義を生じた事項は、甲乙協議の上円満に解決をはかるものとする」という規定を見ることがあります。

しかし、契約書というのは、当事者間に紛争が発生した時にこそ、その解決の拠り所とするために作成されるものです。なんでも話し合って円満に事が進むのならば、その当事者間に契約書は要りません。

 

<就業規則では>

就業規則の最初の方に「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」という規定を見ることがあります。

なるほど、こうすれば法改正があっても、就業規則を変更する必要が無くて便利なようにも見えます。

こちらは契約書と違って不都合が無いのでしょうか?

 

<たとえば労働基準法でも>

7条の公民権行使の保障について、たとえば投票に行っている時間の賃金が支払われるか否かは、通達により労使の取り決めによるとされています。決めておかないと、欠勤控除をする/しないでトラブルになるでしょう。これは68条の生理休暇も同様です。

41条は、「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。さて、適用されない人の休憩や休日はどうなるのでしょうか。ご本人が自由に決めるのでしょうか。

 

<たとえば他の労働法でも>

高年齢者雇用安定法が改正されたとき、会社は定年を引き上げるか、無くすか、あるいは継続雇用制度を導入するかの選択を迫られました。ですから「法令の定めるところによる」と言ってみても、何も決まっていないことになります。

これと同様に、育児・介護休業法には、会社の義務として、どちらか/どれか選んで措置を実施するという規定がいくつかあります。

 

<そもそも法令に規定が無いものも>

懲戒処分ができる場合とは、どのような場合なのか、法令には規定がありません。反対に、懲戒処分の限度や無効となる場合については、労働基準法や労働契約法に規定があります。ということは、就業規則に具体的な規定を置かなければ、懲戒処分が適正にできないことになります。

特に男女雇用機会均等法は、セクハラの禁止とセクハラ行為者に対する懲戒処分などの規定を企業に義務づけていますが、その具体的な内容は各企業の実情に応じて定めることになっています。

またたとえば、「正社員」ということばに、法令上の定義はありません。社内に正社員と正社員以外の従業員がいて、異なる処遇をしているのなら、それぞれの定義づけが必要です。もし「無期労働契約の従業員が正社員である」としていたら、労働契約法18条による有期労働契約の無期化により、正社員が増産されることになります。

 

<不都合を避けるためには>

何もせず放置したことによって「何もしていないのに」退職者から訴えられたり、労働基準監督署から是正を求められたりというのは、珍しいことではありません。

それぞれの会社にとって、必要不可欠な内容が、その会社の就業規則にきちんと規定されているか、法改正によって変えるべきところは変わっているか、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士のチェックが必要でしょう。

そして、会社の状況の変化や法改正のことも考えると、定期的なチェックが必要ということになります。

 

2016.03.15.

<在籍する従業員であれば>

会社は、個人番号関係事務を処理するために必要がある場合には、従業員だけでなくその家族に対しても、個人番号の提供を求めることができます。

しかし、家族であっても社会保障や税金の関係で扶養親族にあたらない人については、会社が個人番号関係事務を処理する必要は無いので、個人番号の提供を求めることはできません。

 

<内定者の立場は?>

内定者については、働き始める時期までに、どういう事情が発生したら会社が内定を取り消せるのか、採用内定の時にあらかじめ決まっているのが一般です。

そして、勤務開始時期が近づくに従って、内定取り消しの事情が発生する可能性も低下してきます。

 

<結論として>

内定者が正式に採用されたなら、会社は個人番号関係事務の処理が必要であることを前提として、会社から内定通知が出され、内定者から入社に関する誓約書が提出された場合のように、確実に雇用されることが見込まれた時点で、個人番号の提供を求めることができると解されます。

万一その後、内定の取り消しがあったとしても、会社は合理的な判断のもとに取得したのですから、内定取り消しと共に個人番号の廃棄をすれば問題ありません。

 

2016.03.14.

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法39条5項〕

 

<権利の濫用とは?>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。〔日本国憲法27条2項〕

そして憲法自身が、権利を「濫用してはならない。常に公共の福祉のために利用する責任を負う」と定めています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とは言えない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とは言えないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

 

2016.03.13.

<子の看護休暇とは?>

子の看護休暇とは、けがや病気の子の世話などを行う労働者に対し与えられる休暇です。

年次有給休暇と同じく法定の休暇ですから、会社には労働者に与える義務があります。〔育児・介護休業法16条の2、3〕

ただし、有給の休暇とする義務は無く、無給でもかまいません。

しかし、取得したことを理由とする不利益取り扱いは禁止されています。〔育児・介護休業法10条、16条の4〕

ですから、休みが多いことを理由に、解雇したり評価を下げたりすることは禁止されています。

 

<その趣旨は?>

子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として子の看護休暇が位置づけられています。

また、「疾病の予防を図るために必要な世話」も休暇の対象となります。これは、子に予防接種または健康診断を受けさせることをいい、予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

 

<対象者と日数は?>

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度につき5日を限度として、子の看護休暇を取得することができます。

ただし、対象となる子が2人以上の場合は10日を限度とします。

ここで「年度」とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。

ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。また労使協定によって、勤続6か月未満の労働者や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外とすることができます。

 

<口頭の申し出による取得>

就業規則などで、具体的な運用ルールを定める場合に、子の看護休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話など口頭の申し出でも取得を認め、書面の提出などを求める場合には事後となっても差し支えないこととすることが必要です。

 

<申し出にあたって必要な情報>

労働者からの子の看護休暇の申し出は、次の事項を事業主に明らかにすることによって行わなければなりません。

・労働者の氏名

・子の氏名および生年月日

・看護休暇を取得する年月日

・子が負傷し、あるいは病気にかかっている事実、または病気の予防を図るために必要な世話を行う旨

 

<事業主からの証明書類の請求>

事業主は、労働者に対して子が負傷し、あるいは病気にかかっている事実、または病気の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。〔育児・介護休業法施行規則30条2項〕

ただし、証明書類の提出を求める場合には、事後の提出を可能とするなどの配慮が必要とされています。

また、風邪による発熱など短期間で治る病気であっても、労働者が必要と考える場合には申し出ができます。

こうした場合には、必ずしも医師の診断書などが得られないときもありますので、購入した薬の領収書により確認するなど、柔軟な取扱いをすることが求められます。〔事業主が講ずべき措置に関する指針〕

 

2016.03.12.

<就業規則の中身は?>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

3つのうちのどれにあたるかによって、就業規則変更の可能性と必要性は異なります。

 

<職場のルール>

明らかに不合理とならない限り、会社の実情に合わせて自由に変えられるのが原則です。

たとえば、「従業員は、従業員同志およびお客様・お取引先に対して明るく元気に挨拶すること」という規定を新たに就業規則に定めるような場合です。

そして変更の必要性については、会社の判断に委ねられています。

 

<労働契約の共通部分>

労働者に不利な変更は「不利益変更」となり厳格な要件のもとで許されます。

しかし、不利とならない変更や有利となる変更は原則として自由です。

たとえば、深夜労働の賃金の割増率を25%から30%に引き上げるような変更です。

これも、変更の必要性は会社の判断に委ねられます。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

労働基準法などの労働法に改正があれば、少なくとも会社に影響のある範囲内で、就業規則を変更しなければなりません。

そして就業規則の変更は、労働基準監督署への届け出が義務付けられていますから、法改正の情報が出たら早めの対応が必要となります。

 

2016.03.11.

<就業規則の中身は?>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<職場のルール>

「就業規則」という名前の通り、働くにあたって労働者が職場で守るべきルールです。

 学校の校則は、学校で生徒が守るべきルールをまとめたものですが、これの会社版です。

ですから、会社ごとに会社の実情に合わせた内容となっています。

 

<労働契約の共通部分>

同じ会社の中でも、勤務地、業務内容、給与・時給などは、労働者ごとにバラバラです。

しかし、会社ごとに見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。

たとえば、出張したときの旅費や手当ての定めは、これに当たります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

2016.03.10.

<配偶者控除と配偶者特別控除>

配偶者に年間38万円を超える所得があると、配偶者控除の適用は受けられません。

しかし、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられる場合があります。これを配偶者特別控除といいます。

なお、配偶者特別控除は夫婦の間で互いに受けることはできません。

 

<配偶者特別控除を受ける条件>

まず、控除を受ける人のその年の合計所得金額が1千万円以下であること。

そして、控除を受ける人の配偶者が、次の6つのすべてに当てはまること。

・法律上の配偶者であること(内縁関係を含みません)。

・控除を受ける人と生計を一にしていること。

・その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと。

・白色申告者の事業専従者でないこと。

・控除を受ける人とは別の人の扶養親族となっていないこと。

・年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。

 

<具体的な控除額は?>

配偶者の合計所得金額に応じて控除額は、次の表のようになります。

配偶者の合計所得金額

配偶者特別控除の控除額

38万円を超え40万円未満

38万円

40万円以上45万円未満

36万円

45万円以上50万円未満

31万円

50万円以上55万円未満

26万円

55万円以上60万円未満

21万円

60万円以上65万円未満

16万円

65万円以上70万円未満

11万円

70万円以上75万円未満

6万円

75万円以上76万円未満

3万円

76万円以上

0円

 

<配偶者特別控除を受けるための手続きは?>

給与所得者の場合、配偶者特別控除は年末調整で受けることができますので、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を勤務先に提出してください。

なお、平成28年分より、日本国内に居住していない配偶者について配偶者特別控除を受ける際には、以下の書類を提出または提示しなければなりません。

・控除を受ける人の配偶者であることが確認できる書類(戸籍の附票の写しその他の国または地方公共団体が発行した書類およびその国外居住配偶者の旅券の写し等)

・控除を受ける人が配偶者の生活費等に充てるための支払いを行ったことが確認できる書類(送金依頼書、クレジットカード利用明細書等)

 

2016.03.09.

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

<割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25%+25%=50%以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35%+25%=60%以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば30%+25%=55%以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50%+25%=75%以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

猶予期間を終了させる労働基準法改正案が発表されています。

これが可決され成立すると、中小企業でも、平成31年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

 

2016.03.08.

<特別条項付き三六協定>

原則として、三六協定の範囲内で時間外労働や休日出勤が許されるわけですが、どうしても臨時的に「限度時間」を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き三六協定」を結ぶことにより、「限度時間」を超える時間を延長時間とすることができます。

ここで「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

 

<特別条項に定める内容>

「特別条項付き三六協定」では、次の項目について定める必要があります。

・原則としての延長時間(限度時間以内の時間)

・限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない「特別の事情」

・一定期間途中で「特別の事情」が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続

・限度時間を超える一定の時間

・限度時間を超えることができる回数

 

<特別条項を定めるときの注意点>

「特別の事情」はできるだけ具体的に定めます。また、臨時的なものに限られ、一時的または突発的であること、全体として1年の半分を超えないことが見込まれることが必要です。

さらに、長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者が申し出た場合には、医師の面接指導を受けさせる義務が会社に発生します。〔労働安全衛生法66条の8、66条の9、104条〕

このことから、特別条項付き三六協定によっても、1か月の延長時間は80時間までと考えられます。

 

2016.03.07.

<欠勤控除とは?>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことを言います。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定は?>

労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<「時間給」の計算>

欠勤控除を考える場合、まず「時間給」を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

2016.03.06.

<出勤簿の重要性>

会計検査院がハローワークを通じて会社の調査に入る場合には、この出勤簿の提出を求めてきます。

それだけ出勤簿は重要視されているということです。

 

<使用されている出勤簿>

たしかに出勤簿を使用している会社も数多くあります。

その内容は、出勤日、公休日、休暇、欠勤など1日単位で区分して記入し、1か月単位で集計したものがほとんどです。

これは、給与計算や年次有給休暇管理の補助簿として用いられています。

ところがハローワークに持参すると「これは出勤簿ではない」と言われてしまいます。

 

<法定帳簿としての出勤簿>

ハローワークの想定する出勤簿は、出勤日の始業時刻と終業時刻が明示されていて、1か月の勤務時間が集計されたものです。

パソコンやタイムカードなどで勤務時間を管理している会社であれば、それが出勤簿の代わりになりますから、別に作る必要はありません。

ですから、出勤簿を本当に必要とするのは、出勤簿によって勤怠管理をしている一部の会社だけということになります。

 

2016.03.05.

<衛生委員会の設置義務>

事業者は業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生委員会を設置する義務を負っています。〔労働安全衛生法19条、施行令9条〕

事業場ごとですから、会社全体ではなく事務所や店舗ごとに設置します。

労働者が50人を上回ったり下回ったりの場合には、給与計算の締日ごとに集計して、年6か月以上で50人以上なら「常時50人以上」と考えるのが行政解釈です。

 

<委員会のメンバーは?>

その事業場の責任者、衛生管理者、産業医、その事業場の労働者で労働衛生に関する経験を有する者で構成されます。

衛生管理者は試験に合格しなければなれませんし、産業医は医師に限定されますので、事業場の労働者数が50人に近づいたら、前もって準備しておくことが必要です。

 

<その役割は?>

毎月1回以上委員会を開催して、労働者の健康障害防止対策、労働者の健康保持増進対策、労働災害の原因と再発防止などについて、労働衛生の面から調査・審議し、重要なものについては議事録を作成して、その内容を社内に周知します。委員会の内容で「重要なもの」だけ議事録に残せば良いのですが、定期健康診断の結果についての話し合いは、これに含まれるというのが行政解釈です。

議事録は3年間の保管義務があります。ここは労働基準監督署のチェックポイントですから重要です。

 

2016.03.04.

<保険料控除の趣旨>

保険料控除は、所得控除の1つです。支払った保険料に応じて、一定の金額が保険料負担者のその年の所得から差し引かれる制度です。税率を掛ける前の所得が低くなることにより所得税、住民税の負担が軽減されます。

私たちに何か事故があって、本来であれば国が救済にあたるべき場合でも、私たちが自主的に保険に入っていれば、万一のときに国の負担が軽減されるため、その分、税金を優遇しようという趣旨です。

 

<会社での手続き>

従業員が控除対象となる生命保険、地震保険、社会保険に加入している場合、会社に「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」を提出してその内容を伝えます。

この申告書の左側2/3が生命保険と地震保険の記入欄、右下1/4が社会保険料控除と小規模企業共済等掛金控除の記入欄です。

生命保険料控除には、介護保険料控除や個人年金保険料控除を含みます。

地震保険料控除には、旧長期損害保険料控除に関する経過措置を含みます。

社会保険料は、主に扶養家族の国民年金保険料と国民健康保険料です。

保険料控除には、原則として控除証明書の添付が必要です。

たとえば、生命保険料控除証明書は10月中旬から11月頃にかけて、保険会社から従業員の自宅に送られてきます。あらかじめ従業員に告知しておくことも必要でしょう。

 

2016.03.03.

<厚生年金保険料の給与天引き>

会社は、厚生年金加入者(=被保険者)の給与から厚生年金保険料を控除します。

控除する金額は、その被保険者の標準報酬月額に保険料率を乗じた額の半額となります。保険料は会社と被保険者が折半するからです。

控除する金額=その被保険者の標準報酬月額×保険料率÷2

1円未満の端数が生じるときは、四捨五入して円単位にします。

 

<標準報酬月額とは?>

厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を、一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を保険料の計算に用います。

現在の標準報酬月額は、1等級(9万8千円)から30等級(62万円)までの30等級に分かれています。

 

<定時決定と随時改定>

毎年9月に、4月から6月の報酬月額を基に、標準報酬月額の改定が行われます(定時決定)。

また、報酬月額に大幅な変動(標準報酬月額の2等級以上)があった場合には、標準報酬月額の改定が行われます(随時改定)。

 

<注意ポイント>

随時改定のしくみは、実際にはかなり複雑です。

社会保険労務士であれば、よく理解しているのですが、他の士業の方の中には、定時決定しか知らない方も多いのが実態です。

手続きを外注している場合には、一度社労士のチェックを受けることをお勧めします。

 

2016.03.02.

<休業手当とは?>

使用者側に責任のある理由で、労働者が仕事を休むことになった場合、使用者には休業期間中の手当として、平均賃金の6割以上をその労働者に支払う義務が生じます。〔労働基準法26条〕

これが休業手当です。

ここでいう休業には、一日の労働時間の一部についての休業も含まれます。

たとえば、悪天候による来店客の減少などにより、人手が余ってしまった場合に「今日は暇だから帰ってもいいですよ」と言って帰らせた従業員には、その後の予定労働時間の分だけ休業手当を支払わなければなりません。

 

<別の法律にも規定が…>

使用者に故意・過失があって、労働者が働けない場合には、賃金全額を支払うという規定があります。〔民法536条2項〕

これは、お店の設備の欠陥によって営業できない場合のように、使用者に明らかな故意・過失がある場合の規定です。

しかし、就業規則に「会社側の故意・過失により従業員を休業させた場合には、休業1日につき平均賃金の60%を休業手当として支給する。従業員がこの支給を受けた場合には、会社に対してこれを上回る休業手当を請求できない」などの規定を置けば、民法に優先して適用されます。

 

2016.03.01.