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<出産手当金>

健康保険に入っている人が、出産のために仕事を休み普通に給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

まず、被保険者の出産であることが必要です。被保険者とは保険料を負担している人で、扶養家族は対象外となります。

また、妊娠85日以上での出産であることが必要です。流産や死産、人工妊娠中絶も含みます。

法律上は、4か月以上となっていますが、妊娠については1か月28日で計算しますし、3か月を1日でも超えれば4か月以上と考えますので、28 × 3 + 1 = 85 という計算により、実際の運用は妊娠85日以上で行われています。

さらに、給料の支払いが無いか、出産手当金の金額より少ないことが条件です。

 

<支給金額>

1日あたりの支給額は次の計算式で示されます。

1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

数年前に法改正があって、このように「標準報酬月額を平均した額」になりました。

平成28(2016)年3月31日までの支給金額は、もっと簡単で、次の計算式で求められました。

1日あたりの金額 =(休んだ日の標準報酬月額)÷ 30日 × 2/3

前産後休業中に標準報酬月額が変わると、出産手当金の金額も変わってしまったわけです。

 

<注意したいこと>

出産にあたってもらえる給付金には、「出産育児一時金」もあります。

こちらの方は、被保険者だけでなく扶養家族の出産にも支給されます。

扶養している妻だけでなく、扶養に入っている未婚の娘が出産した場合などにも支給されます。

少子化対策で、出産をめぐる健康保険の給付は法改正による充実が進んでいます。

「○○さんのときはこうだった」というのではなく、最新の情報を確認して手続きを進めたいものです。

 

2018.08.21.解決社労士

<傷病手当金と労災保険>

健康保険に入っている人が、プライベートの生活が原因の病気やケガで仕事ができず給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

業務や通勤などが原因の病気やケガであれば、労災保険が適用されますから健康保険の給付は対象外となります。

この場合、健康保険の適用は無いのですが、もっと有利な労災保険の給付があります。

ですから、労災保険が適用されるかどうか微妙なケースであれば、所轄の労働基準監督署に確認するなどしてみて、対象外であれば傷病手当金の手続きをするのが良いでしょう。

下手に確認してヤブヘビになることを恐れるのであれば、社会保険労務士などに確認してもらうことも検討しましょう。

 

<もらえる条件>

まず、業務外の病気やケガで仕事ができない期間について医師の証明が必要です。

仕事ができないわけではないけれど、大事をとってお休みするというのは対象外となります。

反対に、医師による労務不能の証明があるのに本人が無理して勤務してしまうと、傷病手当金は減額あるいは不支給となるのが一般です。

また、4日以上連続して仕事を休んでいることが必要です。最初の3日間を「待期期間」といって、ここに公休や有給休暇が含まれていてもかまいません。

さらに、給料の支払いが無いか、傷病手当金の金額より少ないことが条件です。

医師が証明した期間と、実際に仕事を休んだ期間とで、重なる日について支給されます。

 

<支給金額>

次の計算式によって算出された金額が支給されます。

1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

これは、平成28(2016)年4月1日から法改正によって変更になっています。

それまでは、次の計算式が使われていました。

1日あたりの金額=(休んだ日の標準報酬月額)÷30日×2/3

これだと、健康状態が悪くなって本来の仕事ができなくなり、たとえば正社員から賃金の安いパート社員になって、さらに病状が悪化して休業するようになったようなケースでは、低くなった標準報酬月額を基準とした傷病手当金が支給されることになります。

ケガの場合はともかく、徐々に病状が悪化して入院するような場合には、支払ってきた保険料に対して給付の金額が少なくなってしまいます。

こうした不都合も、法改正によって改善され解消されたといえます。

 

<注意したいこと>

たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。

「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。

文書料には健康保険が適用されませんし、文書料をいくらにするかは病院の判断に任されています。

交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。

労災保険の手続きをしないのは、「労災かくし」となり違法です。

しかし、健康保険の給付をうけるかどうかは本人(被保険者)の自由です。

手続きのための書類は、会社と本人と医師の3者が記入しますが、前提として本人の意思を確認して手続きを進めたいものです。

 

2018.08.20.解決社労士

<みなし労働時間制が使われるケース>

出張や外回りの営業のように事業場外で行われる業務は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難になる場合が発生します。

こうした場合に労働時間を適正に算定するため、みなし労働時間制が利用されてきました。

 みなし労働時間の算定方法は次の要領です。

労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定するのが困難なときには、所定労働時間だけ労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するため通常の場合、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項但書〕

この場合、業務の遂行に通常必要とされる時間は、会社と労働者代表などとの労使協定により定めることができます。〔労働基準法38条の2第2項〕

 

<制度利用の注意点>

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし労働時間が算定されます。

また、労働時間の算定が困難かどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより客観的に判断されます。現在では、携帯電話などで随時指示が出されるケースが多く、こうした場合には原則として適用対象となりません。

 

<ガイドラインの改定>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)120日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

ただ、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱いが、きわめて具体的になりました。

これは、社外での勤務が多いこと、営業手当や定額残業代を支給していることを理由に、適正な労働時間の把握を放棄している企業が目立ったからだと聞いています。

また、労働時間の適正な把握に関連するサービスの充実も背景にあると思われます。

ほんの一例ですが、SONYが提供しているクラウド型勤怠管理システムのAKASHIは、低コストでパソコン、iPad、スマートフォン、FeliCaカード、ネットワーク対応ICカードリーダーによる打刻ができますし、オフィスでも出先からでも打刻を行えます。スマートフォンのGPS機能を使うことで、位置情報も記録できます。

こうしたサービスを利用することで、会社は適正な労働時間の把握という法的義務を果たすことができますし、まじめに勤務する外回り担当者と、そうでもない担当者との不公平も解消することができるでしょう。

 

2018.08.19.解決社労士

<ブラックの意味>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で道義的に求められていることをせず自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)を指しているようです。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 ブラック企業は、企業と労働者が身を置く労使関係の中で、道義的に求められている労働法の順守、誠実な行動、常識的な対応ということに配慮せず、やりたいようにやってしまう企業です。

そもそも労働法の規定はどうなっているか、どうするのが誠実で常識的な行動なのか、これを積極的に知ろうとはしません。

必ずしも悪意をもっているとは限らず、面倒くさいから考えない、コンプライアンスなんて知らないという企業もあります。

 

<勘違いするポイント>

「自分の働いている会社はブラック企業ではないか?」と勘違いする人も少なくはありません。

その理由として、次のようなことが挙げられます。

・正社員とその他の従業員とで通勤費の計算方法が異なる

・支給される通勤費に上限額がもうけられている

・日曜日や祝日に出勤しても割増賃金が無い

・生理休暇をとった場合に無給となる

・父親の葬式で休んだら弔事休暇ではなく欠勤となった

・8時間勤務で休憩が50分

・退職金や賞与の支給が正社員に限定されている

・2年半勤務しても退職金が出なかった

・試用期間が3か月なのに10日間で解雇となった

どれもこれも就業規則に違反していない限り、必ずしも違法ではありません。

それでも、他の企業と比較して不利であったり、自分の中の常識に反していれば、「ブラック」と判断することもありうるのです。

 

<疑いを晴らすには>

法律の規定がどうなっていて、会社のルールがどうなっているのか、それはなぜなのか、ということについて社員教育が必要です。

会社が正しいことをしていても、会社を疑う社員がいるようでは、生産性が上がりませんし、社員も会社も成長しません。

そして、この教育は会社を疑っている社員に対しては、効果が期待できません。

少なくとも社外の講師による説明会など、客観性を確保した教育が必要となります。

それでも、社員の納得が得られない社内ルールがあったなら、それはその会社の社員の常識に反しているわけですから、見直しをお勧めします。

 

2018.08.18.解決社労士

<現代版の時差出勤>

東京都では、「時差Biz」と称して時差出勤を推奨しています。通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらすもので、働き方改革のひとつと考えられます。

たしかに働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

東京都の特に区部では、満員電車の混雑緩和が社会の生産性向上のための重要な課題のひとつとなっています。通勤時間をずらすことによって満員電車の混雑緩和を促進する「時差Biz」に、多くの会社で一斉に取り組めば、現在の満員電車での通勤による労働者の肉体的・精神的な負担が軽減され、生産性が向上することは明らかでしょう。

 

<労働者側のメリット>

生産性の向上というと、企業側のメリットばかりが強調されてしまいますが、空いた電車では満員電車とは違って、働き手にとっても時間の有効活用が可能です。

満員電車では、ただただ耐えるだけの時間となってしまいます。しかし、空いた電車の中では、スマホで個人の趣味に取り組んだり、ニュースをチェックしたり、資格試験の勉強をしたりと、通勤時間の有効活用が可能となります。

それに、朝早く出勤して夕方は早く帰宅というパターンなら夕方の時間をプライベートに使えますし、遅め出勤なら朝の時間に趣味や家族のコミュニケーションを充実させることも可能です。

 

<会社で必要な手続き>

時差出勤は、フレックスタイム制とは違って1日の労働時間(所定労働時間)の長さはそのままです。早く出勤して早く帰るか、遅く出勤して遅く帰るかということです。

しかし、これを導入するには、会社の就業規則に新たな規定を設ける必要があります。

始業時刻と終業時刻は、就業規則に必ず定める絶対的必要記載事項です。〔労働基準法89条〕

そのため、時差出勤の対象者や時差出勤での始業時刻と終業時刻のパターンは、就業規則に定めておく必要があります。

また、時差出勤の導入によって休憩時間も変更する必要があったり、一斉休憩の原則が維持できなくなるようであれば、就業規則にその旨を定めたり、一斉休憩の適用除外に関する労使協定の締結も必要となります。

 

2018.08.17.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<法定三帳簿>

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等は、会社に備えておかなければならない重要な書類として「法定三帳簿」と呼ばれます。

会社は、1人でも雇えば、これらの書類を作らなければなりません。

「出勤簿等」と言っているのは、始業時刻・終業時刻を記した出勤簿に代えてタイムカードなど別の記録でもか構わないからです。

これらには、法律に定められた事項を記入し、3年間保管しておくことが義務づけられています。〔労働基準法107~109条〕

なお、民法が改正され施行を待つばかりとなっていますが、民法の規定に合わせて労働基準法が改正されれば5年間の保管が義務付けられるようになります。

これを怠っている会社は、「適法ではない」ということになります。

 

<労働者名簿の項目>

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職・死亡年月日と理由・原因です。

人事異動があれば、ここに記録されます。

本籍やマイナンバーはこれらの項目に含まれていません。

 

<賃金台帳の項目>

労働者氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当の種類と額、控除項目と額です。

ここにもマイナンバーは含まれていません。

 

<出勤簿等の内容>

出勤簿やタイムカード、会社側で記録した始業・終業時刻の書類、残業命令書・報告書、労働者が記録した労働時間報告書などです。

残業は会社の命令によって行うものであり、労働者の勝手な判断で行うものではありません。労働者が勝手に残業しても、残業手当は発生しないのが正しいのです。これを明らかにしておくために、残業命令書が運用されている会社があります。

 

<この他に必要な書類>

法定三帳簿の他に、労働条件通知書、三六協定などの労使協定書、健康診断の結果など、労働法関連の書類だけでも、会社が作成や保管を義務づけられている書類は多数あります。特に健康診断の結果は、保管期間が5年間です。

労働条件通知書を作成・交付しないのは、明らかに違法なのですが、知らない経営者が多いのも事実です。

どうやって労働条件を決めたら良いのか迷うところかあるのなら、社会保険労務士に相談してでも決めなければなりません。

 

<マイナンバーは別管理で>

賃金台帳や労働者名簿などにマイナンバー(個人番号)を記載しておけば便利なように思われます。

しかし、マイナンバーは用途を具体的に限定して収集した個人情報ですから、他の目的で使用することがある帳簿に記載しておくことは、適正な管理とはいえません。別に管理することが求められています。

 

2018.08.16解決社労士

<平成30(2018)年度 地方最低賃金審議会の答申のポイント>

・改定額の全国加重平均額は874円(昨年度848円) 

・全国加重平均額26円の引上げは、最低賃金額が時給のみで示されるようになった平成14年度以降最大の引上げ 

・最高額(東京都985円)に対する最低額(鹿児島県761円)の比率は、77.3%(昨年度は76.9%。なお、この比率は4年連続の改善)、また、引上げ額の最高(27円)と最低(24円)の差が3円に縮小(昨年度は4円) 

・東北、中四国、九州などを中心に中央最低賃金審議会の目安額を超える引上げ額が23県(平成27年度以降最多。昨年度は4県)

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、101日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。

たとえば、105日に最低賃金が改定される場合には、105日勤務分の賃金から適用されます。給与計算が複雑にならないようにするためには、105日の直前の締日の翌日の勤務分から、新しい最低賃金を下回ることになる従業員の賃金を引き上げることが必要です。

 

<平成30年度地域別最低賃金時間額答申状況>

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000344180.pdf

 

たとえば、東京都と大阪府は101日から27円増で、東京都が985円、大阪府が936円です。

県境のコンビニなどでは、求人に対する応募者の集まり具合に差が出ます。賃金以外の待遇で差を埋めるなどの対応が行われています。

 

2018.08.15.解決社労士

<労働基準監督署の調査(監督指導)と改善>

平成30(2018)810日、厚生労働省が平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への調査(監督指導)を行った結果、平成294月から平成303月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

調査(監督指導)の対象となった企業では、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組が行われています。

厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、調査(監督指導)を徹底していくとのことです。

 

【平成29年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】

(1) 是正企業数                               1,870企業(前年度比 521企業の増)

      うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、

                                                         262企業(前年度比 78企業の増)

(2) 対象労働者数                               20万5,235人(同 107,257人の増)

(3) 支払われた割増賃金合計額   446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)

(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

※支払額が1企業で合計100万円以上となったケースだけの統計

 

<発覚例1

◆タイムカード打刻後に作業を行うよう指示されているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や労働者からのヒアリング調査などから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・かつては、労働基準監督署が立入調査(監督指導)を行う場合、タイムカードなどの資料を確認する他、経営者や人事部門の社員の話を聞く形で行われました。現在ではこれらに加えて、労働基準監督官が直接労働者に聞取り調査(ヒアリング調査)を行えるようになっているため、賃金不払残業の実態は明らかになりやすくなっています。

 

<発覚例2

◆インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者が始業・終業時刻をパソコンに入力)により労働時間を管理していたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録や入退室記録とのかい離が認められ、また、月末になると一定の時間を超えないよう残業を申告しない状況がうかがわれるなど、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

監視情報

厚生労働省は、平成27年度から委託事業により、インターネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視、収集する取組を実施している。労基署は、この情報に基づき必要な調査等を行うこととしている。

 

・自己申告による残業時間をもとに残業手当を支給すれば適法というわけではありません。あくまでも、勤務の実態に応じた支払でなければ賃金不払残業となります。

 

<発覚例3

◆違法な長時間労働が行われているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者がパソコン上の勤怠管理システムへ入力)による労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と入退室記録とのかい離、労働者からのヒアリング調査などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・パソコンの使用履歴や建物への出入りの記録は、労基署にとって基本的なチェック項目です。自己申告制の場合には、事実との違いを会社が定期的にチェックすることも義務づけられています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。

 

2018.08.14.解決社労士

<調査の概要>

平成30(2018)807日、厚生労働省が平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施した、労働基準監督署による調査(監督指導)の結果を取りまとめ公表しました。

この調査(監督指導)は、各種情報から時間外・休日労働数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等についての労災請求が行われた事業場を対象としています。

対象となった25,676事業場のうち、11,592事業場(45.1%)で違法な時間外労働が確認され、是正・改善に向けた指導が行われました。

なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、8,592事業場(違法な時間外労働があったものの74.1%)でした。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場

 このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

  ① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)

    うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)

        うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)

        うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)

        うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)

  ② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)

     うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        1,102事業場(59.0%)

  ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

 

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

  ① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)

         うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

                    月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)

  ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)

      うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

            月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

 

<労働基準監督署の監督指導>

日常用語としては「調査」なのですが、正しくは「監督指導」です。

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。もちろん、ウソの「是正勧告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど改善が望ましいという指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、専門知識のある人が立ち会えば、労働基準監督署の監督官も穏やかに指導します。

しかし、専門知識の無い人が調査に立会うと、わかりにくい説明をして誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

社内に専門家がいないのであれば、事前の準備から事後の対応まで、信頼できる国家資格者の社労士にご用命ください。

 

2018.08.13.解決社労士

<自主点検の対象>

平成30(2018)87日、厚生労働省が裁量労働制を採用している事業場で、制度が法令に従い適正に運用されているかどうかをチェックすることを目的として、2月から実施してきた自主点検の結果を公表しました。

自主点検の対象となった事業場数は、企画業務型2,917、専門業務型9,250の合わせて12,167事業場で、このうち報告書が提出された事業場数は企画業務型が2,789(96)で、専門業務型が8,004(87)でした。

 

<自主点検の結果>

自主点検の結果、改善が必要と考えられる事業場の状況は、企画業務型では、「対象労働者が従事している業務」で、「個別の営業活動など、対象業務以外の業務に就かせている」「対象労働者の業務に対象業務以外の業務が含まれている」とした事業場が74(2.7)あったほか、「日常的に上司が具体的な指示をしたり、業務遂行の手段について指示する場合がある」「始業・終業時刻を定めており、それを遵守させる場合がある」「業務量が過大であったり、期日の設定が不適切」とした事業場が71(2.5)ありました。

また、専門業務型では、「対象労働者が従事している業務」で、「対象業務以外の業務に就かせている」「対象労働者の業務に対象業務以外の業務が含まれている」とした事業場が211(2.6)あったほか、「労働時間の状況」で「最長の者の労働時間の状況が相当程度長いもの」と答えた事業場が354(4.4)にのぼり、「労使協定の周知状況」で「労使協定を周知していない」「対象労働者のみに周知」とした事業場が389(4.9)にのぼりました。

 

<裁量労働制>

国会で厚生労働省のデータ改ざんが問題となり、裁量労働制の拡大が働き方改革関連法案から外されました。これによって、裁量労働制の知名度が上がる一方で、悪い印象が広まってしまいました。

裁量労働制は、労働時間制度の1つで、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度です。

出退勤時間の制限が外れ、実労働時間に応じた残業代は発生しません。

労働基準法には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つが規定されていて、その導入にも運用にも厳格な制限や手続きが定められています。

労働基準法は労働者を守るのが使命ですから、裁量労働制も労働者が働きやすくなるための制度です。しかし、正しく導入し運用するには専門的な知識と技術が必要ですから、社会保険労務士などの専門家に相談しながら実施する必要があるでしょう。

 

2018.08.12.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<春季賃上げ集計>

平成30(2018)83日、厚生労働省が平成30年の民間主要企業の春季賃上げ要求・妥結状況を集計し公表しました。

集計対象は、妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業334社です。

集計結果は、平均妥結額が7,033円で、前年(6,570円)に比べ463円の増額となっています。

また、現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率は2.26%で、前年(2.11%)に比べ0.15ポイントの増額で、賃上げ率は3年ぶりに前年比プラスとなっています。

 

<賃上げの傾向変化>

かつては、こうした大企業の統計を見ても、中小企業の実態とはかけ離れていて、大企業だからこそこれだけの賃上げができるという見方が一般的でした。

ところが、人手不足が進行している現在、中小企業の賃上げ率が大企業を上回るという傾向が見られます。

しかし、企業の体力差を考えると、中小企業がいつまでも今のペースで賃上げを続けることには無理があります。

中小企業としては、各社の実態に合った魅力づくりを進めることで、新規採用の実現や定着率の向上を図っていく必要に迫られるでしょう。

 

<中小企業こそ働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

2018.08.11.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<明らかな減少傾向>

平成30(2018)83日、平成29年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数を、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

これによると、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数が3年連続で減少しました

平成29年度の申出等の件数は8,507件で、対前年度比8.5%減となり、平成27年度から3年連続で減少しました。

また、申出等を内容別に分類すると、「賃金に関すること」(27%)が最も多く、「就業時間に関すること」(21%)、「職種・仕事の内容に関すること」(15%)が続いています。

ハローワークでは、こうした相違に関する相談を受けた場合には、求人を受理したハローワークと連携して、迅速に事実確認を行っています。平成29年度の求人票の記載内容と実際の労働条件が異なっていたのは、3,362件でした。また、事実確認の結果、求人票の記載内容が実際の労働条件と異なっていた場合には、是正指導を行っています。

 

〔これまでの申出等の件数の推移〕

 

29年度

28年度

27年度

26年度

申出等件数

8,507件

9,299件

10,937件

12,252件

新規求人件数

6,468,438件

6,161,398件

5,835,295件

5,553,055件

 

<職業安定法の改正(平成3011日)>

上記のように、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違が減少しているなかで、職業安定法が改正され、当初明示した労働条件が変更される場合は、変更内容について明示義務が課されることとなりました。

 

<職業安定法に基づく指針等の主な内容>

・明示する労働条件は、虚偽や誇大な内容ではいけません。

・有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければなりません。

・試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。

・労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です。

・労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。

・明示する労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合には速やかに知らせるよう、配慮が必要です。

 

<当初明示した労働条件が変更される場合とは>

以下のように、労働条件を引き下げる場合だけでなく、引き上げる場合や、一定の幅をもって示していた条件を確定させる場合も、「労働条件が変更される場合」に該当するものとして扱われます。

・「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合

・「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合

・「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合

・「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合

 

<変更内容についての明示方法>

変更明示は、求職者が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。

当初の明示と変更された後の内容を対照表にした書面を交付する方法が適切ですが、当初予定した労働条件通知書と労働契約の内容に沿った労働条件通知書の両方を準備し、変更された事項にマーカーを引いて明示するなどの方法でもかまいません。

 

そもそも労働条件を明示しようにも、具体的な内容がうまく決められない場合には、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

 

2018.08.10.解決社労士

<労働争議統計調査>

平成30(2018)82日、厚生労働省が平成29(2017)年「労働争議統計調査」の結果を取りまとめ公表しました。

この調査は、国内の労働争議について、行為形態や参加人員、要求事項などを調査し、その実態を明らかにすることを目的としています。

 

【調査結果のポイント】(カッコ内は前年の数値)

 

1 総争議

平成29年の件数は358件(391件)で8年連続の減少となり、比較可能な昭和32年以降で最も少なかった。

 

2 争議行為を伴う争議

(1) 全体では前年と比べて件数、総参加人員及び行為参加人員が増加した。

件数68件(66件)

総参加人員 72,637人(52,415人)

行為参加人員 17,612人(15,833人)

(2) 半日以上の同盟罷業でも前年と比べて件数、行為参加人員及び労働損失日数が増加した。

件数38件(31件)

行為参加人員7,953人(2,383人)

労働損失日数14,741日(3,190日)

(3)半日未満の同盟罷業では、前年に比べて件数及び行為参加人員が減少した。

件数46件(47件)

行為参加人員9,917人(13,698人)

 

3 労働争議の主要要求事項

争議の際の主な要求事項(複数回答。主要要求事項を2つまで集計)は、「賃金」に関するもの181件(167件)が最も多く、次いで「経営・雇用・人事」に関するもの122件(160件)、「組合保障及び労働協約」に関するもの117件(99件)であった。

 

4 労働争議の解決状況

平成29年中に解決した労働争議(解決扱いを含む)は298件(328件)で、総争議件数の83.2%であった。そのうち「労使直接交渉による解決」は42件(46件)、「第三者関与による解決」は101件(115件)であった。

ここで「解決扱い」というのは、不当労働行為事件として労働委員会に救済申立てがなされた労働争議、労働争議の当事者である労使間では解決の方法がないような労働争議(支援スト、政治スト等)及び解決の事情が明らかでない労働争議等をいいます。

 

2018.08.09.解決社労士

平成30(2018)731日、全国の労働局や労働基準監督署が、平成29年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況について、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努め、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施するなど、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいくそうです。

また、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくとのことです。

なお、労働基準関係法令違反が認められたのは、監督指導実施事業場のうち84%にあたる4,564事業場に上ります。

 

【平成29年の監督指導・送検の概要】

 

■ 監督指導を実施した事業場は5,436事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、4,564事業場(84.0%)。また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)違反が認められたのは、3,516事業場(64.7%)。             

 

■ 主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(58.2%)、(2)割増賃金の支払(21.5%)、(3)休日(4.6%)。

  

■ 主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(49.1%)、(2)総拘束時間(44.0%)、(3)休息期間(34.0%)。

 

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは61件。

 

自動車を運転するのが仕事という方々は、本当に運転好きの方が多いですね。

 

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法や改善基準告示とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうにも思えます。

しかし、運転業務を続けたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意をしてしまうかもしれません。たとえ、同意書や誓約書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに書いてありません。その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法272項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

結論として、労働基準法や改善基準告示とは違う条件で働かせてしまうと、会社など使用者が違法行為を行ったことになってしまいます。たとえ自動車運転者が同意しても、望んでいたとしても、送検されることすらあるのです。

 

2018.08.08.解決社労士

<雇用均等基本調査>

平成30(2018)730日、厚生労働省が「平成29年度雇用均等基本調査」の結果(確報版)を取りまとめ公表しました。

「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に実施しています。平成29年度は、全国の企業と事業所を対象に、管理職に占める女性割合や、育児休業制度や介護休業制度の利用状況などについて、平成2910月1日現在の状況を調査しました。

これによると、管理職に占める女性の割合は部長、課長、係長相当職で上昇しています。

 

【企業調査 結果のポイント】

■正社員・正職員の採用状況

平成29年春卒業の新規学卒者を採用した企業割合は21.7%。採用区分ごとに男女とも採用した企業についてみると、総合職では49.6%、限定総合職では29.4%、一般職では31.9%となっている

■女性管理職を有する企業割合

係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は10.6%、課長相当職ありの企業は17.7%、係長相当職ありの企業は19.4%となっている

■管理職に占める女性の割合

管理職に占める女性の割合は、部長相当職では6.6%、課長相当職では9.3%、係長相当職では15.2%となっている

 

【事業所調査 結果のポイント】

■育児休業制度の規定状況

育児休業制度の規定がある事業所の割合は75.0%。規定がある事業所について規模別にみると、500人以上で99.4%、100~499人で98.8%、30~99人で91.8%、5~29人で71.2%と、規模が大きくなるほど規定がある事業所割合は高くなっている

 

<憲法や法律の規定>

労働基準法には次の規定があります。

 

(男女同一賃金の原則)

第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

これは賃金についての差別が典型的に見られたことから、特に注意を喚起するために置かれた規定だと考えられます。

この規定だけでは、労働関係についての男女平等が徹底されませんから、男女雇用機会均等法など数多くの法令に、性別による差別の禁止が規定されています。

 

これらの規定の大元は憲法です。すべての法令は、憲法に違反してはならないのですが、日本国憲法には次の規定があります。

 

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

ここには「性別」が明記されていますから、国会は差別的な法律を作れませんし、行政機関は差別的な運用ができません。裁判所も差別を許す判決を下すことはできません。

 

<働き方改革との関係で>

人手不足の折、法令の規定がどうあれ、女性を活用しなければ会社の業務が回りません。女性労働者についての働き方改革が必要です。

たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

能力発揮の点で、女性が男性よりも不利な立場に置かれている職場は、まだまだ多いものと考えられます。

こうした男女間の格差を解消していくことによって生産性を向上させるのが、収益の拡大や企業の成長・発展への近道だといえるでしょう。

 

2018.08.07.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<法人番号>

法人番号は、株式会社などの法人等に指定される13桁の番号です。

登記上の所在地に通知された後、原則としてインターネット(法人番号公表サイト)を通じて公表されます。

ですから、法人番号を秘密にする必要はありません。

法人番号は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現するためにできました。

まず、法人等に関する情報管理などの効率化を図り、行政コストを削減します。

また、行政機関同士での情報連携を図り、書類の削減や手続の簡素化で、企業側の事務負担を軽減します。

さらに、法人など団体に関する情報の共有により、社会保障制度、税制その他の行政分野で、給付と負担を公平かつ適切にします。

これを裏から見ると、不正受給、社会保険の不正な未加入、脱税などの摘発が容易になるわけです。

 

<個人番号との違い>

個人番号(マイナンバー)は重要な個人情報ですから、不正に取得してはなりませんし、ひとり一人が大切に管理しなければなりません。

たとえ個人番号が第三者に漏れてしまったとしても、個人番号の活用が進んでいない現在、今すぐに大きな被害が発生するとは考えられません。

しかし、10年後、20年後に個人番号が活用されるようになってから、その昔漏れてしまった個人番号が悪用されて被害が現実化するということも考えられるのです。

これと異なり、法人番号は原則として公表され誰でも自由に利用できます。

むしろ、利用範囲に制限がないことから、国が民間による利活用を促進することにより、国民に対しても役立つ企業情報が提供されるなど、新たな価値の創出が期待されているのです。

 

2018.08.06.解決社労士

<社会保険の資格取得>

社会保険に加入すること、正確には被保険者となることを「資格取得」といいます。

社会保険が適用される会社に入社すると、その日に被保険者となって、当日から健康保険で治療が受けられるのが原則です。

入社日に資格取得するということです。

たとえ試用期間であっても、試用期間の初日から社会保険に加入します。

これを避けるためには、試用期間だけ所定の勤務日数や労働時間を短縮して、社会保険の加入基準以下で勤務してもらうことも可能ではあります。

しかし、試用期間をこうした条件にしてしまったのでは、採用を決定しても入社を辞退される可能性が高いので得策ではありません。

 

  <社会保険の資格喪失>

社会保険から脱退すること、正確には被保険者ではなくなることを「資格喪失」といいます。

会社を辞めるとき、退職当日まで使っていた保険証が翌日には使えません。

退職日の翌日に資格喪失するということです。

 

  <同日得喪>

社会保険の「資格喪失」の日に、同じ社会保険の「資格取得」が行われることを、「同日得喪」といいます。

定年退職後に同じ会社で再雇用された場合には、賃金が低下することもあります。同一労働同一賃金の考え方を厳密に解釈すると、これは許されないようにも思われますが、最高裁判所も平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件判決で、ある程度の賃金低下を容認しています。

この場合に、賃金の低下を反映して保険料が安くなるのは、一般の随時改定の仕組みによると4か月も先ということになります。

そこで、60歳から64歳までの老齢厚生年金受給権者が再雇用となった場合などには、退職の翌月分から保険料を安くできるよう、特別に「同月得喪」という手続きがあるのです。

このとき、基礎年金番号は変わりませんが、保険証の番号は変わります。

かかりつけの病院には、「保険証の番号が変わりました」と申し出る必要があります。

ここで注意したいのは、保険料が下がるということは、傷病手当金の金額も下がるということです。

定年を機に、持病の入院治療を考えているような場合には、同日得喪を利用しない手もあります。

手続きをするのは会社ですが、同日得喪をするかどうかは、このようなデメリットも本人に説明したうえで決めていただく必要があるでしょう。

 

2018.08.05.解決社労士

<労働時間の認定基準>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<着替えの時間は労働時間>

就業時間中に着用を義務づけられている制服や、特定の作業を行う場合に必ず着用することになっている作業服に着替える時間は労働時間です。

もちろん、出勤してきたときの元の私服に着替える時間も労働時間です。

しかし、着用が義務付けられているわけではなく、着用するかどうかが労働者個人の自由であれば、一般に着替えの時間は労働時間に含まれません。

さらに、自宅から制服を着て出勤し、制服のまま帰宅すれば、着替え時間の問題はなくなるわけですが、業務以外で制服の着用を許してしまうと、所得税法上非課税とされる制服等には当たらないものとされる恐れもあり、この場合には、給与等として源泉徴収をする必要が発生してしまいます。

 

<他に労働時間となるケース>

昼休み中の来客当番や電話番、参加が義務づけられている研修や行事、警報や電話への対応が義務づけられている仮眠時間も労働時間です。

 

<黙認で労働時間となってしまうケース>

残業というのは、労働者が使用者から命令されて行うものです。

労働者がやりたくてやるのでもなく、労働者の勝手な判断でやるのでもありません。

ですから、たった1回だけ、労働者の勝手な判断で残業していたら、使用者から「勝手な残業は許しません」と注意して終わります。

しかし、何度も繰り返されていて、使用者側が見て見ぬふりをしていたら、残業について黙示の承認があったと判断されることもあります。

すると、時間外割増賃金が発生します。

これを防ぐため、就業規則には「自己判断での残業は許されないこと」「業務終了後は職場に残ってはならないこと」を規定しておきましょう。

 

<労働時間とならないケース>

通勤時間と同様に、出張先への往復時間も労働時間とはなりません。

ただし、物品の運搬を目的とする業務の移動時間は労働時間に該当します。

しかし、これを徹底してしまうと、出張が多い労働者の勤務時間が少なく計算され、出張の無い労働者との間で大きな不公平が発生してしまいます。

単純に出張先への往復時間を労働時間として賃金計算を行うか、別途、出張手当などを支給することによって不公平を解消する必要があるでしょう。

 

2018.08.04.解決社労士

<加入逃れの実態>

本来は厚生年金の加入対象なのに、会社の法定福利費を不当に削減するため、あるいは、手続がよくわからないなどの理由で、会社が正しく手続をしないケースがあります。

このような理由で、やむなく国民年金に入っている従業員は、推計で約200万人に上るというのが平成27(2015)年末の実態でした。

これを受け、政府は厳しい対応が必要と判断しました。

 

<マイナンバー導入による実態解明>

マイナンバー制度の利用により、税関連情報と社会保険関連情報を照合すれば、不正な加入逃れの実態は解明されるといわれています。

国税庁による会社の税関連情報と、厚生年金の加入記録を突合した結果、厚生年金の加入対象となる可能性がある会社は、平成27(2015)年末の時点で全国に約79万あったそうです。

こうしたことから、全国の日本年金機構職員が中心となって、詳しく会社の実態が調査されています。

 

<刑事告発の準備>

厚生労働省と日本年金機構は、保険料を払いたくないなどの理由で厚生年金への加入を逃れている悪質な事業主について、刑事告発するかどうかを判断するための新たな客観的基準を策定しています。機構と警察庁とで基準確定のための協議もしています。

全国一律の基準を設けることで、迷うことなく逮捕や書類送検ができるようにしているわけです。

ここまで準備を進めてきて、刑事告発をためらうことは考えにくい情勢です。

 

2018.08.03.解決社労士

<高年齢雇用継続給付>

60歳から65歳になるまでの雇用保険加入者(被保険者)を対象とする、高年齢雇用継続給付という給付があります。

老齢基礎年金の支給が65歳からですので、期間限定の給付となっているわけです。

 60歳の時点と比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける高齢者に支給される給付です。

支給対象月ごとに、その月に支払われた賃金の低下率に応じて、最高で賃金の15%が支給されます。

高齢者の就業意欲を維持、喚起して、65歳までの雇用の継続を援助、促進することが目的とされています。

 

<給付を受ける条件>

雇用保険の加入者(被保険者)であって、60歳になったとき被保険者期間が5年以上であることが必要です。

ただし、失業手当(基本手当)を受給したことがある方は、受給後の期間だけで計算します。

また、60歳になったときに5年未満であっても、その後5年に達すれば、その時から対象者となります。

失業手当(基本手当)を受給した後、60歳以後に再就職した場合に給付を受けるには、再就職の前日までの期間で失業手当(基本手当)の支給残日数が100日以上あること、安定した職業に就くことによって雇用保険の被保険者となったことが必要です。

 

<受給手続き> 

会社と対象者とで、協力して書類を準備します。提出先は、会社所轄のハローワークです。

必要書類の中に、離職票によく似たものがあり、「60歳に達した日」の欄は誕生日の前日を記入します。〔年齢計算ニ関スル法律〕

この誕生日と1日ずれているのが曲者で、対象者の方が書類を記入する際に、修正のうえ訂正印を捺してくださるという失敗がありがちです。

あらかじめ、誕生日の前日に1歳増えるということを説明しておきましょう。

 

2018.08.02.解決社労士

<道義に反する仕事>

「モンスター社員をうつ病にして会社を辞めさせる」というブログ記事を書いた社会保険労務士が処分を受けたことがありました。

我々社会保険労務士の職業倫理が問われた事件でしたし、都道府県の社会保険労務士会や連合会が対策を強化するきっかけともなりました。

社会保険労務士としては、むしろ次のような仕事に取り組むべきです。

・モンスター社員を入社させない採用の仕組みづくり

・モンスター社員を発生させない仕組みづくり

・モンスター社員を教育して戦力化する仕組みづくり

採用したのは会社に責任があるわけですから、後からモンスター社員だと気付いて退職に追い込むというのは責任逃れです。

また、会社の中でモンスター社員になっていったのなら、会社の責任はもっと重いことになります。

 

<懲戒処分を受ける仕事>

・事実に反する内容を含む書類の作成・提出

・労働局でのあっせんなど、紛争解決手続代理で虚偽の主張をすること

・保険給付を不正に受給すること

・保険料を不正に免除してもらうこと

こうした仕事をすれば、社会保険労務士は業務の停止処分を受けます。

当然のことですが、このような仕事は受けることができません。

  

<その他お受けできない仕事>

会社にとって短期的な利益をもたらすだけで、継続的な成長を妨げる仕事も、社会保険労務士が受けるべきではないと考えています。

その場限りの一時しのぎでは、会社のためにも、まじめに働く社員のためにもなりません。

会社と社員が、共に成長できるよう取り組んでいきたいと思います。

この観点から、働き方改革に逆らうような人件費の削減、長時間労働の推進、休暇取得の妨害といったことはお受けできません。

まじめに売上を伸ばそうとする経営者のお手伝いをさせていただきたいと思います。

 

2018.08.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<雇用関係助成金の性質>

融資ではないので返済義務がありません。リスクを負うことなく資金を事業に活用できます。

では、その資金はどこから出ているのでしょうか?

雇用保険料は、企業が従業員よりも多く負担しています。

この多い分の保険料は、雇用安定事業と能力開発事業に充てられます。

助成金は雇用安定事業の一つですから、企業の負担する保険料が財源となっているのです。

つまり、雇用保険に加入する従業員のいる企業総てが、雇用保険料の一部として負担し、助成金を受ける企業にその資金が流れるという構造です。

こう考えると、利用しないのは損だと思えてきます。

 

<助成金が支給されるケース>

国が政策を推進するにあたって、新たに企業に何らかの義務を課す場合、いきなり罰則付きで義務付けるという乱暴なことはしにくいものです。

まず、政策を周知するために広報を強化し、法令に「努力義務」として規定し、積極的に推進する企業には助成金を支給するなどの方法をとります。

こうして、ある程度まで浸透してから罰則付きで義務付けるという手法がとられます。

結局、助成金支給の対象となるようなことは、将来的には法的に義務付けられるようになることが多いのです。

企業が経費をかけて、法的な義務とされる前に政府の政策に協力すれば、経費の一部を助成金として還付するというのが本来の形です。

ですから、企業が何もしなくても手続きさえすれば助成金がもらえるというのは、こうした理屈に逆らうものです。

最近では、社会保険労務士ではない者や会社が「雇用関係助成金がもらえます」という宣伝をしているのはそれ自体違法ですし、実際に助成金が支給されなくても責任を負わないので被害者が出てきています。

雇用関係助成金が支給されるのは、企業が次のような場合に一定の改善をしたケースです。

・従業員を新たに雇うとき

・職場環境を改善して働きやすくするとき

・業績悪化の際、解雇を回避するとき

・従業員に職業訓練を受けさせるとき

・子育てと仕事の両立を支援するとき

 

<助成金の隠れたメリット>

従業員の福利厚生を充実させたり、従業員の働きやすい環境を整備したりということで助成金が支給されます。

これによって、定着率のアップや人手不足の解消を狙えます。

助成金の受給を検討したり、手続を進める中で、会社の現状を分析し、遵法経営や労働環境の改善を図っていくことになり、生産性の向上や、会社の成長を促したりの効果が期待できます。

 前提として、法定の三大帳簿を調えておくことや、就業規則を整備しておくことなどが求められます。真面目に助成金を受給することを検討するのであれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2018.07.31.解決社労士

<休日出勤にはならない休日の労働>

日曜日や祝日は、カレンダーでは赤い数字で表示されます。

これらは、日常用語としての「休日」にあたります。

しかし、この「休日」に出勤したからといって、必ずしも休日出勤となり割増賃金が発生するというわけではありません。

スーパーマーケットやパチンコ店など店舗での接客業では、日曜日にお客様が多いため、時給が100円プラスされるということがあります。

これは、労働基準法などの規定によるものではなく、従業員の公平やシフトの組みやすさなどを考えて会社が独自に行っているものです。

ですから、時給が100円プラスの日に時間外労働が発生すれば、100円をプラスしたうえで割増賃金を計算しなければなりません。

 

<法定休日の労働>

会社は、社員に少なくとも週1日、または、4週で4日の休日を与えなければなりません。これが、法定休日です。〔労働基準法35条1項、2項〕

週1日の法定休日が与えられる社員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で出勤すれば、法定休日の労働時間について、35%以上の割増賃金が発生します。

これが「法定休日出勤手当」です。

この場合に、どの日が法定休日なのか予め就業規則などでルールを決めておかないと、給与を計算するときに困ってしまいます。

就業規則には、従業員が読んでわかりやすい表現で明確に定めておきましょう。

原則として、法定休日出勤手当は勤務時間分の手当を支給するのですが、1時間の勤務でも丸々 1日の所定労働時間分支給している会社もあります。

これは、労働基準法の基準を上回る支給ですから、全従業員一律の基準で支給していれば問題ありません。

 

<所定休日の労働>

週休2日制で、毎週日曜日が法定休日、木曜日がもう1日の休日という場合、この木曜日は「所定休日」になります。

この場合、仕事の都合で止むを得ず木曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

所定休日の労働は、8時間を超えなければ、必ずしも時間外割増賃金の対象とはなりません。

しかし、原則として週40時間を超える労働となった時間は、通常の残業同様に25%以上の割増賃金となります。

これが「所定休日出勤手当」です。

 

2018.07.30.解決社労士

<雇用調整助成金>

雇用調整助成金とは、事業主の方のための雇用関係助成金の一つです。

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業等(休業及び教育訓練)又は出向を行い労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。

 

<特例の対象となる事業主>

平成30(2018)7月豪雨による災害に伴う「経済上の理由」により休業等を余儀なくされた事業所の事業主が特例の対象となります。

被災地以外の事業所でも利用可能です。

この特例は、休業等の初日が平成30(2018)75日から平成31(2019)14日までの間にあることが条件となります。

「経済上の理由」には、次のようなものが含まれます。

・取引先の浸水被害等のため、原材料や商品等の取引ができない場合

・交通手段の途絶により、来客がない、従業員が出勤できない、物品の配送ができない場合

・電気・水道・ガス等の供給停止や通信の途絶により、営業ができない場合

・風評被害により、観光客が減少した場合

・事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や修理部品の調達が困難なため、

早期の修復が不可能であることによる事業活動の阻害

 

<既に実施されている特例>(平成30717日)

・生産指標の確認期間を3か月から1か月へ短縮する

・平成307月豪雨発生時に起業後1年未満の事業主についても助成対象とする

・最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする

 

<新たに追加される特例>(平成30725日)

・休業を実施した場合の助成率を引き上げる(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)

【中小企業:3分の2から5分の4へ】【大企業:2分の1から3分の2へ】

・支給限度日数を「1年間で100日」から「1年間で300日」に延長(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)

・新規学卒採用者など、雇用保険加入者(被保険者)として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助成対象とする

・過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主であっても、

ア・前回の支給対象期間の満了日から1年を経過していなくても助成対象とする

イ・受給可能日数の計算において、過去の受給日数にかかわらず、今回の特例の対象となった休業等について新たに起算する

 

2018.07.29.解決社労士

<外国人材の受入れ・共生に向けた関係閣僚会議>

政府は平成30(2018)724日に、外国人労働者の受け入れ拡大のための最初の関係閣僚会議を開きました。

この閣僚会議では、今後も在留外国人が増加していくと考えられるため、日本で働き、学び、生活する外国人の受入れ環境を整備し、外国人の人権を保護し、外国人が日本社会の一員として円滑に生活できるようにする必要があることを確認しました。

具体的には、法務省が中心となって、外国人の受入れ環境の整備に関する企画・立案・総合調整を行い、関係府省とも連携を強化し、地方公共団体と協力して、外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進めることを確認しました。

また、安倍首相が法務省に「組織体制の抜本的な見直し」を求め、同省は「入国管理庁」の設置などを検討しているそうです。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

外国人であれば日本人よりも安い賃金で雇えそうだという期待とは裏腹に、法令の適用については日本人と同じですから、人件費の節減も思うようにはいきません。

それどころか、日本語が上手ではない外国人にも安全教育が必要ですし、就業規則などのルールも説明しなければなりません。危険個所には、日本語以外の注意書きを表示する必要があります。

こうしてみると、外国人を雇った場合、そのお世話をする日本人の人件費も馬鹿にならないように思えます。

そもそも国籍の違いを理由に待遇を差別したら、それだけで違法になってしまいます。〔労働基準法3条〕

 

<ハローワークへの届出>

外国人の雇入れや離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出ることになっています。

届出に当たっては、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認する必要があるため、不法就労のチェックにもなります。

 

2018.07.28.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<大綱の概要>

政府が平成30(2018)724日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更を閣議決定しました。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、平成26(2014)年に成立した「過労死等防止対策推進法」に基づいて、平成27(2015)年7月に初めて策定されましたが、約3年を目途に見直すこととなっていました。

 

<新しい大綱のポイント>

1.新たに「過労死等防止対策の数値目標」を立てて、変更前の大綱に定められた「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」など3分野の数値目標を改めて掲げるとともに、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標など新たな3つの分野の数値目標を掲げた。

数値目標は次の通り。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

 

2.「国が取り組む重点対策」において、「労働行政機関等(都道府県労働局、労働基準監督署又は地方公共団体)における対策」を新たに項立てし、関係法令等に基づき重点的に取り組む対策として、下記3点などを明記した。

 (1) 長時間労働の削減に向けた取組みの徹底

 (2) 過重労働による健康障害の防止対策

 (3) メンタルヘルス対策・ハラスメント対策

 

3.調査研究における重点業種等(過労死等が多く発生している又は長時間労働者が多いとの指摘がある職種・業種)として、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療を引き続き対象とするとともに、近年の状況を踏まえ、建設業、メディア業界を追加した。また、上記重点業種等に加え、宿泊業等についての取組みも記載した。

 

4.勤務間インターバル制度を推進するための取組みや、若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取組みについて新たに記載した。

 

 

5.職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを包括的に「職場におけるハラスメント」として位置付け、その予防・解決のための取組みを記載した。

 

<勤務間インターバルとは>

インターバル(interval)とは、間隔、合間、休憩時間のことをいいます。

そして、勤務間インターバルとは、実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔をいいます。

たとえば、仕事を18:00に終えて帰宅し、翌日9:00に勤務を開始すれば、勤務間インターバルは15時間ということになります。

 

1日の区切りは真夜中の0時だということで、残業が深夜に及んだ場合に、23:50で一度終業とし翌日00:10を始業として、労働時間の計算を23:50までと、翌日00:10からに分けて計算している企業が、労働基準監督署の是正勧告を受けたという報道がありました。

このように労働時間を0時で区切って計算すると、実質的には継続して残業している場合でも、18時間の法定労働時間を超える時間が少なく計算され、割り増しの残業代も少なくなってしまうという不合理が発生します。

こうした不合理な事態の発生を防止するため、通達によって、1日の労働時間を計算する場合には、その人の労働契約上の始業時刻が区切りとされています。

つまり、就業規則や労働条件通知書などによって決まっている日々の始業時刻が、残業代を計算するうえでの1日の労働時間の区切りということになります。

ですから上記の例では、勤務間インターバルが20分ということではなく、23:50から00:10は単なる休憩時間という扱いになります。

 

早番・遅番のように、始業時刻が日々変わる制度を取っている場合には、シフトの組み方によって、極端に短い勤務間インターバルが発生するかもしれません。

こうした可能性がある職場では、働き手の健康維持のため、つまり生産性維持のため、就業規則などに勤務間インターバルの基準を設ける必要があるでしょう。

さらに、長時間の残業が常態化している職場では、過重労働や長時間労働を改善するとともに、勤務間インターバルの基準設定が必要となります。

 

この制度を上手く導入すれば、返済不要の助成金を受給できます。

気になる方は、社会保険労務士にお問い合わせください。

 

2018.07.27.解決社労士

<全国労働衛生週間>

厚生労働省は、平成30(2018)101()から7()まで、平成30年度「全国労働衛生週間」を実施します。

全国労働衛生週間は、昭和25(1950)年から毎年実施されているもので、今年で69回目となります。

労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどが目的とされています。

 

<今年のスローガン>

今年のスローガンは、「こころとからだの健康づくり みんなで進める働き方改革」です。

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

心身共に健康であれば生産性も高まります。そのためにできることは何かを考え、具体的に取り組む1週間としたいものです。

 

<具体的な取組み>

毎年91日から30日までを準備期間とし、101日から7日までを本週間、各職場で、職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、さまざまな取組みを展開する予定で、今年は主に以下のような項目が掲げられています。

 

1.全国労働衛生週間中に実施する事項

 ・事業者または総括安全衛生管理者による職場巡視

 ・労働衛生旗の掲揚およびスローガン等の掲示

 ・労働衛生に関する優良職場、功績者等の表彰

 ・有害物の漏えい事故、酸素欠乏症等による事故等緊急時の災害を想定した実地訓練等の実施

 

2.準備期間中に実施する事項

 下記の事項について、重点的に日常の労働衛生活動の総点検を行う。

 ・過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進

 ・労働者の心の健康の保持増進のための指針等に基づくメンタルヘルス対策の推進

 ・治療と仕事の両立支援対策の推進に関する事項

 ・化学物質による健康障害防止対策に関する事項

 ・石綿による健康障害防止対策に関する事項

 

2018.07.26.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<役員が雇用保険の対象者(被保険者)となる場合>

役員などが同時に部長、支店長、工場長など会社の従業員としての身分を兼ねている兼務役員の場合であって、就労実態や給料支払いなどの面からみて労働者としての性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合には、例外的に雇用保険の対象者(被保険者)となります。

この場合、ハローワークで雇用保険の対象者(被保険者)とするときの手続きには、就業規則、登記事項証明書、賃金台帳、などの提出が必要となります。

「働いている」という実態に変わりがなくても、一般の従業員から兼務役員になった場合には、ハローワークでの手続きが必要になります。

兼務役員は、従業員としての身分の部分についてのみ、雇用保険の対象者となります。そして保険料も、役員報酬の部分は含まれず、労働者としての賃金部分のみを基準に決定されます。

このことから、役員報酬と賃金とが明確に区別できる状態であることも必要です。

 

<雇用保険の対象者(被保険者)ではなくなる場合>

法人等の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員など)は、雇用保険の対象者(被保険者)とはなりません。

また、法人等の役員(取締役・執行役員・監査役など)についても、原則として雇用保険の対象者(被保険者)となりません。

これらの人と会社との関係は、雇用ではなく委任だからです。

従来、兼務役員として雇用保険の対象者(被保険者)であった方が、就労実態や給料支払いなどの面からみて労働者としての性格が弱くなり、雇用関係が存在しているとはいえなくなった場合には、雇用保険の資格を喪失することになります。

 

2018.07.25.解決社労士

<賞与にかかる社会保険料>

年3回以下支給される賞与についても、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。

会社が社会保険加入の社員へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届け出ます。

この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されます。

なお、年4回以上支給される賞与は、賞与支払届の対象とはならず、報酬月額に加算され標準報酬月額の計算基準に含まれます。

 

<賞与の社会保険料の計算方法>

算定基礎届や月額変更届で使われる標準報酬月額保険料額表は使いません。

実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)の1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とします。

その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額が、社会保険料となります。保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。

 

<賞与の社会保険料の上限額>

標準賞与額の上限は、健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年41日から翌日331日まで)です。

また、厚生年金保険は1か月150万円とされていますが、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます。

ここに示した上限額は、法改正により変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。

 

2018.07.24.解決社労士

<繰下げ受給とは>

年金の繰下げ受給というのは、受給権が発生してもすぐには受給を開始せず、年金の受給開始を先送りして受給することです。

老齢基礎年金は、65歳で請求せずに66歳以降70歳までの間で申し出た時から老齢年金を繰下げて請求できます。

繰下げには、老齢基礎年金の繰下げの他に、老齢厚生年金の繰下げがあります。

ただし、65歳よりも前に受給できる特別支給の老齢厚生年金は「繰下げ制度」がありません。受給権発生日以降は、速やかに請求してください。

 

<老齢基礎年金の繰下げ受給(昭和1642日以後生まれの場合)>

昭和1642日以後に生まれた人については、支給の繰下げを申し出た日の年齢に応じてではなく、月単位で年金額の増額が行われることになります。また、その増額率は一生変わりません。

年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、たとえば「60歳に達した日」とは、60歳の誕生日の前日になります。

 

繰下げできるのは、他の年金の権利が発生するまでの間です。

65歳に達した日から66歳に達した日までの間に、遺族基礎年金、障害基礎年金(老齢厚生年金の繰下げについては、障害基礎年金を除く)、厚生年金保険や共済組合など被用者年金各法による年金(老齢・退職給付を除く。昭和61年改正前の旧法による年金を含む)を受ける権利がある場合は、繰下げ請求をすることはできません。

 

他の年金の権利が発生したら、すみやかに年金の請求手続きを行ってください。

66歳に達した日より後に他の年金を受ける権利ができた場合は、その年金を受ける権利ができた時点で増額率が固定されます。この場合、65歳からの本来支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金をさかのぼって請求するか、増額された繰下げ支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の請求をするかを選択できます。ただし、平成17331日以前に他の年金を受ける権利がある場合は、老齢基礎年金の繰下げ請求はできません。

 

繰下げ請求は、老齢基礎年金の権利発生から1年以上待って行いましょう。

65歳に達した日以後に年金の受け取りに必要な加入期間を満たして老齢基礎年金を受ける権利ができた方で、繰下げ請求を予定している場合は、その受ける権利ができた日から1年を経過した日より後に繰下げ請求ができます。

 

老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。

昭和1742日以降生まれの方(平成1941日以降に老齢厚生年金を受ける権利ができた方を含む)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を別々の希望月で繰下げできます。

 

加算額は、繰下げしても増額されません。

振替加算額は、繰下げしても増額されません。また、繰下げ待機期間中は、振替加算部分のみを受けることはできません。

 

繰下げによる年金は、請求された月の翌月分からの支払いとなります。

70歳到達日以後の繰下げ請求は、請求時期にかかわらず70歳到達時点での増額率になり、70歳までさかのぼって決定され支払われます。ただし、平成2641日より前に70歳に到達している方が、平成2641日以降に遅れて請求した場合、平成265月分からしか年金が支払われませんのでご注意ください。

 

「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択できます。

繰下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給の年金を請求することもできます。70歳到達(誕生日の前日)月より後に65歳時にさかのぼった請求が行われると、時効により年金が支払われない部分が発生します。必ず70歳到達月までに請求してください。

 

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。

繰下げ待機中に亡くなられた場合で、遺族の方からの未支給請求が可能な場合は、65歳の本来請求で年金決定されたうえで未支給年金として支払われます。

 

なお、昭和1641日以前に生まれた方の場合には、希望すれば66歳以降から、繰下げて老齢基礎年金を受けることができます。繰下げ支給の請求をした時点の年齢に応じて年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。

 

<老齢厚生年金の繰下げ受給>(老齢基礎年金の繰下げ受給と同じ部分が多いため説明が重複します)

昭和1742日以後に生まれの方は、原則、66歳に達した日以後に、支給の繰下げの申出ができます。ただし、65歳に達した日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害厚生年金、遺族厚生年金などの年金を受ける権利を有したことがあるときは、申出はできません。

また、66歳に達した日以後に、障害厚生年金や遺族厚生年金などを受ける権利が発生した場合は、支給の繰下げの申出はできますが、この場合、他の年金が発生した月を基準として増額率が定められ、繰下げ加算額が計算されます。増額された老齢厚生年金は、実際に支給の繰下げの申出をした翌月から支給されることになりますので、ご留意ください。

昭和1741日以前生まれの方であって、平成1941日以後に老齢厚生年金を受けることができることとなった方も支給の繰下げの申出を行うことができます。

 

繰下げできるのは、他の年金の権利が発生するまでの間です。

65歳に達した日から66歳に達した日までの間に、遺族基礎年金もしくは厚生年金保険や共済組合など被用者年金各法による年金(老齢・退職給付を除く。昭和61年改正前の旧法による年金を含む)を受ける権利がある場合は、繰下げ請求をすることはできません。

 

他の年金の権利が発生したら、すみやかに年金の請求手続きを行ってください。

66歳に達した日より後に他の年金を受ける権利ができた場合は、その年金を受ける権利ができた時点で増額率が固定されます。この場合、65歳からの本来支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金をさかのぼって請求するか、増額された繰下げ支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の請求をするかを選択できます。ただし、平成17331日以前に他の年金を受ける権利がある場合は、老齢基礎年金の繰下げ請求はできません。

 

繰下げ請求は、老齢厚生年金の権利発生から1年以上待って行います。

65歳に達した日以後に年金の受け取りに必要な加入期間を満たして老齢厚生年金を受ける権利ができた方で、繰下げ請求を予定している場合は、その受ける権利ができた日から1年を経過した日より後に繰下げ請求ができます。

 

老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。

昭和1742日以降生まれの方(平成1941日以降に老齢厚生年金を受ける権利ができた方を含む)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を別々の希望月で繰下げできます。

 

加算額は、繰下げしても増額されません。

加給年金額(配偶者加給年金、子の加給年金)は、繰下げしても増額されません。また、繰下げ待機期間中は、加給年金部分のみを受けることはできません。

 

繰下げによる年金は、請求された月の翌月分からの支払いとなります。70歳到達日以後の繰下げ請求は、請求時期にかかわらず70歳到達時点での増額率になり、70歳までさかのぼって決定され支払われます。ただし、平成2641日より前に70歳に到達している方が、平成2641日以降に遅れて請求した場合、平成265月分からしか年金が支払われませんのでご注意ください。

 

「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択できます

繰下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給の年金を請求することもできます。70歳到達(誕生日の前日)月より後に65歳時にさかのぼった請求が行われると、時効により年金が支払われない部分が発生します。必ず70歳到達月までに請求してください。

 

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。

繰下げ待機中に亡くなられた場合で、遺族の方からの未支給請求が可能な場合は、65歳の本来請求で年金決定されたうえで未支給年金として支払われます。

 

在職中の方は、調整後の年金が増額の対象となります。

繰下げ待機中に厚生年金保険の被保険者となった場合は、65歳時の本来請求による老齢厚生年金額から在職支給停止額を差し引いた額が、繰下げによる増額の対象となります。

 

共済組合等から支給される老齢厚生年金(退職共済年金)がある場合は、日本年金機構から支給される老齢厚生年金と同時に繰下げ請求を行う必要があります。

共済組合等から支給される老齢厚生年金(退職共済年金)を65歳から受給している場合は、日本年金機構から支給される老齢厚生年金の繰下げ請求はできません。また、繰下げ請求を行う場合は、共済組合等と日本年金機構のどちらか先に繰下げ申出を行った日で両方の老齢厚生年金を繰下げすることとなります。

 

厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受給されている方が、老齢厚生年金の支給の繰下げ請求を希望される場合は、基金等の年金も合わせて繰下げとなりますので、年金の支給先である基金等にご連絡ください。

 

<お勧めしたいこと>

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方または一方の繰下げを考えている場合でも、受給額が具体的にいくらになるのか、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

 

2018.07.23.解決社労士

<労働安全衛生法>

快適な職場環境の形成について、基本的なことを定めているのは労働安全衛生法です。略して安衛法と呼びます。

安衛法の目的について、第1条が次のように規定しています。

 

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

つまり、この法律は、次の2つのことを目的としています。

・労災を防止して労働者の安全と健康を確保する

・快適な職場環境の形成を促進する

 

<事業者の講ずる措置>

そして、快適な職場環境の形成を促進するために、会社など事業者に次のような義務を課しています。

 

第七十一条の二 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない

一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置

二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置

三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

 

この条文の「努めなければならない」というのは、努力義務であることを示しています。

努力義務というのは、法律の規定に違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない義務です。

結局、守られるか否かは当事者の任意の協力次第ですし、守られているか否かの判断も当事者の評価に委ねられることになります。

 

<快適職場指針>

会社など事業者が快適な職場環境の形成を促進する義務については、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」を定めています。

その中の「温熱条件」という項目には、次のように定められています。

 

屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと

 

<事務所衛生基準規則>

さらに、事務所内で事務作業に従事する労働者については、空気調和設備等による調整が可能である場合に限定して、事務所衛生基準規則に次の規定があります。

 

第五条 事業者は、空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。

3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない

 

これによると、事務所内は気温が17℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下というのが基準になります。

つまり、年間を通してこの範囲内にあれば、法令の基準を満たしていることになります。

それでもなお、「暑い」「寒い」という話が出てくるのであれば、話し合いによる調整が必要となります。

 

<働き方改革との関係で>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ひとり一人の労働者が「暑い」「寒い」ということで生産性が低下しているのであれば、温度環境を整えることで生産性が向上するのは目に見えています。

設備投資と電気代を人件費と比べるだけでなく、定着率の向上や採用の困難性を考えて、どこまでの対応が必要なのか、経営者としての判断は難しいのかもしれません。

それでも、蒸し暑い部屋で採用面接を行った場合と、快適な室内で採用面接を行った場合とでは、辞退者の人数に違いが出てくるのではないでしょうか。

 

2018.07.22.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<ハラスメント対策>

パワハラもセクハラもハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)です。そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

 

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない。」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

こうした実質面でのハラスメント対策とは別に、形式面でのハラスメント対策も必要です。

その目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない被害者・加害者>

ここまで述べたことは、被害者と加害者の両方が社員の場合を想定しています。

実際、多くのハラスメントは社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

 

しかし、お取引先の社員からのパワハラ・セクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

社員が被害者となった場合には、小さな会社であれば社長自ら、大企業であれば担当取締役がハラスメントの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

 

反対に、社員からお取引先に対するパワハラ・セクハラが行われたのではないかという疑いが生じたら速やかに事実を確認し、真実であったなら、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実について報告とお詫びをする必要があります。

 

<そもそもパワハラ・セクハラなのか>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、パワハラが次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

この中の「職場内」という言葉が端的に示しているように、パワハラは本来社内での発生が想定されています。

ですから、加害者・被害者が取引先など社外の人間である場合には、本来のパワハラやセクハラの定義には当てはまらないといえます。

 

しかし、加害者・被害者が社内に留まらなくても、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)であることに変わりはありません。

多くの場合、慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となりますし、内容によっては犯罪となり刑法で罰せられることもあります。

ですから、これを防止すべきこと、万一発生したら善処すべきことに違いはありません。

 

<取引先とのパワハラ・セクハラの定義>

上に掲げたモデル就業規則第12条をアレンジして、取引先との間で発生するパワハラを定義するならば、次のようになるでしょう。

 

「取引関係上の地位や人間関係など、取引関係上の優位性を背景にした、取引の適正な範囲を超える言動により、取引先の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなこと」

 

また、取引先との間で発生するセクハラを定義すると、次のようになるでしょう。

 

「性的言動により、取引先の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなこと」

 

これらをパワハラ・セクハラの定義に加えるかどうかは、見解の統一が見られませんが、念のため、就業規則に規定しておきたいところです。

また、社員を守るため、取引先からのパワハラ・セクハラが疑われる事実があれば、上司や社内の相談窓口に報告することも規定すべきです。

どちらも、社員と会社を守るための規定ですから、ぜひ就業規則に加えておくことをお勧めします。

 

2018.07.21.解決社労士

<法改正のポイント>

平成31(2019)41日からは、現行法で1か月が上限とされるフレックスタイム制の清算期間が3か月にまで延長できるようになります。

清算期間を2か月、3か月と延長する場合のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

・各月の曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和される。

・特定の繁忙月や労働者の都合への対応が容易になる。

・残業代の計算が、原則として2か月、3か月単位になる。

反対に、次のようにやや煩わしくなる点もあります。

・所轄労働基準監督署に労使協定の届出が必要となる。

・長時間労働が慢性化している場合には残業代の計算が複雑になる。

 

<曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和>

31日まである月の場合、特定の曜日が4回であったり5回であったりします( 31 ÷ 7 4あまり3 )。具体的には、4回の曜日が4つと、5回の曜日が3つです( 4 × 4 5 × 3 31 )。

基本的に水曜日と木曜日が休日である労働者が、1か月単位のフレックスタイム制を利用していると、同じ31日の月であっても、出勤日数が21日から23日まで幅があります。

するとたとえば、1か月の所定労働時間が177.7時間の月であっても、残業が多く発生したり、勤務時間が足りなくて年次有給休暇を取得したりということになります。

 

これが3か月単位のフレックスタイム制であれば、曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和されます。

7月から9月までの場合、ある特定の曜日が14回で、他の曜日はすべて13回です( 92 ÷ 7 13あまり1 → 14 13 × 6 92 )。

つまり、3か月単位のフレックスタイム制は、1か月単位よりも曜日による影響が少ないため、残業代が多くなったり、調整のための年次有給休暇取得が増えたりの不都合が解消されるわけです。

 

<特定の繁忙月や労働者の都合への対応が容易>

特定の繁忙月だけ残業代が増え、他の月には勤務時間が不足して調整のための年次有給休暇取得が増えるという不合理は、3か月単位のフレックスタイム制であれば緩和されます。

また、夏休みは子供の世話をしたいなどのニーズがある労働者にとって、3か月間で勤務時間を調整できるのは、ワークライフバランスの観点から望ましいものです。

 

<残業代の計算が原則として2か月、3か月単位>

長時間労働が慢性化している職場でなければ、残業代の計算が2か月、3か月に1回ですから、給与計算をする側も、給与を受ける側も確認が楽になります。

フレックスタイム制を導入することによって、1日単位、1週間単位での残業時間の計算が不要になることは大きなメリットです。2か月、3か月単位のフレックスタイム制であれば、このメリットがさらに大きくなるわけです。

 

<所轄労働基準監督署に労使協定の届出が必要>

現行法のフレックスタイム制でも、労使協定を交わすことは必要ですが、所轄の労働基準監督署長への届出は不要です。

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制では、労働基準監督署長への届出が義務付けられます。

ほとんどの事業場は、三六協定書を労働基準監督署長に届け出ているわけですし、郵送での届出もできるわけですから大きな手間にはなりません。

 

<残業代の計算が複雑になる場合もある>

働き方改革では、労働者の過重労働防止も視野に入れています。

たとえ清算期間が3か月の場合でも、1か月ごとに平均労働時間が1週あたり50時間を超える場合には、その月ごとに残業代を支払わなければなりません。

1週間の法定労働時間が40時間の場合であれば、1日あたりの残業時間が2時間を超える場合に、その月の残業代を支払うことになります。

このことから、長時間労働が当たり前になっている職場では、結局、毎月残業代を支払うことになりますから、2か月、3か月単位のフレックスタイム制を導入する効果は減ってしまいます。

 

参考:完全週休2日制の特例

フレックスタイム制の清算期間における所定労働時間は、法定労働時間が18時間、140時間であれば次の式で求められます。

40時間 ÷ 7日 × 清算期間の日数

しかし、毎週土日が休日のような完全週休2日制では、同じく法定労働時間が18時間、140時間の場合でも、次の式により所定労働時間を設定することができます。

8時間 ×( 清算期間の日数 - 清算期間の土日の日数 )

 

2018.07.20.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)41日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<改正の理由>

労働基準法に年次有給休暇が労働者の権利として規定されているにもかかわらず、実際の取得率は労働者全体で50%を下回っています。

そこで働き方改革の一環として、少なくとも年5日以上の取得については、使用者側で取得日を指定してでも、確実に取得させるという規定に改正されました。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことが考慮されています。

 

<使用者の義務>

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。企業によっては、この年次有給休暇を付与する基準日が前倒しされている場合もあります。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

2018.07.19.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<労災保険の適用>

労災認定にあたっては、被災者本人の過失は問題とされず、労災保険が適用されることになります。

仮に、被災者本人に過失があれば労災保険は適用されないのだとすると、労災保険は適用範囲が著しく制限されてしまいますから、制度そのものの存在意義が薄れてしまいます。

ところが現実には、被災者本人の不注意を反省させる意図があってか、上司から「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われることもあるようです。

 

<労災事故の発生原因>

労災事故の発生原因として、その責任の所在から考えると、次のようなパターンが考えられます。

・被災者本人に過失がない場合

・被災者本人にも使用者にも過失がある場合

・被災者本人だけに過失がある場合

・被災者本人が故意にケガをする場合

なお、通勤災害については、被災者本人の過失の他、道路の管理者、鉄道会社、バス会社などの落ち度が考えられます。使用者の過失というのは、ほとんど問題にされることがありません。

 

<被災者本人に過失がない場合>

まず、使用者側に責任がある場合として、滑りやすい床の上で作業するにあたって会社から支給された靴を履いていたが、その滑りやすさから会社に改善を求めていたが拒否され、実際に事故が発生してしまったなどのケースが想定されます。

あるいは、設備の安全点検が不十分で、天井からの落下物によりケガをするケースも考えられます。

また、酔ったお客様から理由なく突然に暴行を受けて転倒しケガをするような第三者行為災害もあります。

これらの場合には、「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明がなされることは稀でしょう。

 

<被災者本人にも使用者にも過失がある場合>

これが労災事故では最も多いでしょう。

たとえば、被災者本人の過失が認められるものの、適切な指導教育が不足していたり、危険個所に危険を知らせる表示が無かったりと、使用者側にも落ち度がある場合です。

使用者としては、被災者本人の過失のみに注目して「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われやすいケースです。

しかし、きちんと労災の再発防止を考えた場合には、使用者の行うべきことが数多く見つかりますので、被災者本人の過失に片寄って責任が追及されることは少なくなります。

 

<被災者本人だけに過失がある場合>

設備、機械、器具などに安全上の問題点はなく、被災者本人に対する指導教育も十分で、危険個所の表示も適切であって、本人の不注意以外に原因が見当たらないような場合もあります。

被災者本人がルールを無視して行動し被災してしまう場合や、椅子を傾けて座っていて椅子ごと倒れてしまう場合などが考えられます。

このような場合であっても、労災認定され労災保険が適用され給付が行われるのが一般です。

 

<被災者本人が故意にケガをする場合>

一般には、労災保険の適用対象外となります。

しかし、過重労働やパワハラなどによって、被災者本人が精神障害に陥り自傷行為に及んだような場合には、労災事故と認定されることがあります。

 

<労災の判断権者>

そもそも事故が起こってケガ人が出た場合に、それが労災となるかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署(労働局)が行います。

使用者や被災者本人の判断が、そのまま有効になるわけではありません。

労災認定について疑問がある場合には、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

2018.07.18.解決社労士

<必要性の高くない業務をやめる>

「昔からこの業務をやっているから」というのは、無駄な業務である可能性が高いといえます。なぜなら市場は変化し、これに対応する企業の業務も変化するわけですから、昔から行っている業務ほど、無駄な業務である可能性は高いのです。

「もし、この業務をやめてしまったら」と仮定してみて、特に支障が無いのであれば直ちにやめましょう。多少の不都合がある場合でも、それには目をつぶるとか、やり方を変えて時間を短縮できます。

ひとつの部門で無駄な業務を削減しようとしても、何が無駄なのか分からないことがあります。関連する複数の部門で意見交換すれば、「その資料はもう要らないよ」という話が出てくるでしょう。

 

<ダブって同じ業務をやらないようにする>

上司が部下の仕事の具体的な内容を把握できていないことがあります。これは上司が悪いのではなく、把握する仕組みが無いために起こる現象です。

上司が部下の仕事を具体的に把握できる仕組みがあれば、同じ仕事を複数の社員が行っているという無駄は省けます。

また、上司が部下の仕事内容を具体的に把握できている場合でも、別の部門とダブって同じ仕事を行っているケースは多いのです。

たとえば、総務、人事、経理で仕事内容の比較をすると、似通った業務があります。どこか一つの部署でまとめて行えば、全体の労働時間が減少します。

 

<業務に必要な情報を社内外で共有する>

名刺情報を社内で共有するシステムは一般化しています。

小さな会社でも、「取引先の〇〇さん、来週の火曜日お休み」という情報を共有すれば、その取引先に無駄な連絡を取ることが無くなります。また、その取引先にとっても煩わしさが軽減されます。

情報の共有は、パソコンのサーバーを活用するなどITの活用が中心となりますが、専門的な知識は不要です。ぜひ活用しましょう。

 

<会議・打合せの廃止・短縮>

定例の会議というのは、必要性が疑われます。

その会議によって得られる効果がどのようなものであるか、具体的に検討して、よく分からなければ一度やめてみたらどうでしょう。

それで不都合が無いのであれば、廃止するのが正しいのです。

たとえ必要な会議であっても、本来の勤務時間外にはみ出してしまうようなものは、開催時間帯の再検討が必要です。

また、会議の時間を2時間に設定していたところ、1時間で結論が出たので、あとの1時間は雑談や意見交換というのも見直したいです。

本当に必要な会議や打合せというのは、法定のものを除き、驚くほど少ないものです。

 

<その業務を行う日時の見直し>

たとえば、「業務日報はその日のうちに」というルールを設定すれば、当然に残業が発生するでしょう。

しかし、上司の自己満足ではないのかなど、これが本当に必要なのかを検討して、期限を延ばすとか、日報ではなく週報や月報にできないかなど、検討の余地が大いにあります。

 

<空き時間の活用>

手が空いてしまう時間があります。

こんなとき雑談したり仮眠を取ったりも良いのですが、「手が空いた時やることリスト」を作っておいて、これを行ってはいかがでしょうか。

書類のファイリング、不要書類の廃棄、徹底清掃、OJT、ロールプレイイングなど、「時間のある時にやろう」と思えることをリストアップしておいて、実際に行うということです。

 

<役割分担の見直し>

「全員が必ず」という仕事を、得意な人に集中して任せてしまうことが考えられます。

任された人は、その能力が高いのですから、給与が上がって当然です。その分、負担が減った社員に別の仕事を任せるとか、見合った待遇を考えるとか、調整することも必要になります。

 

<スキルの向上>

社員の能力が向上するというのは、本人にとっても嬉しいものです。

資格を取得して業務に活用している社員に資格手当を支給するというのが一般的ですか、資格取得に必要な経費を会社が負担するという形もあります。

客観的に認められる形で能力の向上が示されるのであれば、他の社員も納得できますし、社員にとっても、能力向上へのモチベーションが高まります。

いずれにせよ、会社が負担する経費以上に、その社員が会社の利益に貢献してくれるのなら生産性が向上します。

そして、業務内容が同じであれば、それに要する時間も短縮されています。

 

<新たなツールの導入、運用の改善>

マニュアル、チェックリスト、予定表、目標達成グラフなどを新たに導入することにより、効率が上がったり、モチベーションがアップしたりということがあります。

ミスの軽減になったり、情報共有による効率化を図れたり、いずれにせよ労働時間の短縮につながります。

また、今使っているツールについても、そのツールを導入した目的に立ち返り、より良い活用法を考え、場合によっては廃止することも考えましょう。

 

2018.07.17.解決社労士

 東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<平均賃金とは>

平均賃金は、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法等で定められている手当や補償、減俸処分の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法12条〕

法律の条文には、「算定すべき事由の発生した日以前三箇月間」と書いてありますが、「事由の発生した日」は、労災事故にあった日など丸々1日分の給料が支払われないことがあるので、実際の運用では前日までの期間で計算しています。

 

<平均賃金が使われる場合>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当=平均賃金の30日分以上〔労働基準法20条〕

使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当=1日につき平均賃金の6割以上〔労働基準法26条〕

年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金〔労働基準法39条〕

労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等〔労働基準法76条から82条、労災保険法〕

減給制裁の制限額 = 1つの理由で減給できるのは平均賃金の半額まで、複数の理由で制裁をする場合には月給など賃金総額の1割まで〔労働基準法91条〕

 

<具体的な計算方法>

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が、上の方法で計算した結果よりも高い場合にはその額を適用します。(最低保障額)

 

2018.07.16.解決社労士

<調査の概要>

平成30(2018)713日、厚生労働省が「ホームレスの実態に関する全国調査」の結果を公表しました。

この調査は、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」などに基づき、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定や実施に役立てるため、毎年1月に、各自治体の協力を得て行っているものです。

調査の対象となるホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」なので、調査方法は巡回による目視調査です。

なお、福島県の大熊町と双葉町は、震災の影響で調査の対象外となっています。

 

<ポイント>

同調査は、ポイントを次のように示しています。

 

1.ホームレスが確認された自治体は、300市区町村であり、前年度と比べて8市区町村(▲2.6%)減少している。

2. 確認されたホームレス数は、4,977人(男性4,607人、女性177人、不明193人)であり、前年度と比べて557人(▲10.1%)減少している。

3. ホームレス数が最も多かったのは東京都(1,242人)である。次いで多かったのは大阪府(1,110人)、神奈川県(934人)である。

なお、東京都23区及び指定都市で全国のホームレス数の約4分の3を占めている。

4. ホームレスが確認された場所の割合は、前年度から大きな変化は見られなかった。

(「都市公園」22.7%、「河川」31.0%、「道路」18.0%、「駅舎」4.9%、「その他施設」23.4%)

 

<ホームレス減少の原因>

この調査によると、少なくともこの4年間はホームレスが減少しています。

東京都が家の無い人(住所が無い人)の就労支援を強化したことや、人手不足の影響もあるでしょう。

中小企業でも、住所が無い人に積極的に住居を手配したうえで採用するという動きが見られます。

一億総活躍ですから、ホームレスがいない日本にしなければなりません。

今の環境は、それができる大きなチャンスと見ることもできるでしょう。

 

2018.07.15.解決社労士

<有期労働契約とは>

有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。

パート、アルバイト、契約社員、嘱託など会社での呼び名にかかわらず、契約期間の取り決めがあれば有期労働契約です。

正社員であっても、定年までという区切りはあるのですが、定年は契約期限とは考えられていません。

 

<最長期間の定め>

有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です。

ただし、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については上限が5年とされています。〔労働基準法14条1項〕

労働契約の期間が短ければ、労働者の立場が不安定になります。

ところが、あまり長くても、労働者をその契約に拘束してしまうことになります。

労働者が安定して働けることと、長期間の契約で縛られないこととは相反する要請です。

有期労働契約の最長期間は、この2つの利益のバランスを考えて法定されているのです。

 

<無期労働契約への転換>

有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者からの申し込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換できるというルールがあります。〔労働契約法18条〕

これには特例があり、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者については、会社が労働局長に申請することによって、一定の期間については、無期転換申込権が発生しないことになります。〔専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法〕

さらに特殊な例外ですが、研究開発能力の強化と教育研究の活性化等の観点から、大学等や研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間が原則10年となっています。〔研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律〕

 

労働法は、労働者を保護するのが目的です。しかし、労働契約の期間をどのように定めたら労働者の保護になるのかは、労働市場の情勢によって変化していきます。度重なる法改正や通達、判例の変化の動向には注意を払う必要があるのです。

 

2018.07.14.解決社労士

<就業規則と労働契約(雇用契約)との優先順位>

 

労働契約は、会社と各労働者との個別契約です。

一方、就業規則に定めてあることは、その就業規則が適用される労働者に共通するのが原則です。

そして、就業規則に定めきれない各労働者に特有のことは労働契約に定められます。

原則として、就業規則が労働契約に優先します。〔労働基準法93条、労働契約法12条〕

ところが、就業規則が優先という法律の規定は、労働契約が就業規則よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして就業規則に従うという内容になっています。

ですから、労働契約の中に就業規則よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結論として、就業規則と労働契約の規定のうち、その労働者にとって有利なものが有効となります。

 

<具体的な判断>

就業規則と労働契約を比べて、違いがある部分については労働者に有利な方が有効となるとはいえ、これが簡単ではないのです。

たとえば、午後1時から3時の間はお客様が少なくてお店が暇だとします。

就業規則には、休憩時間が1時間と書かれているけれども、店長がパートさんとの労働契約更新にあたって「これからは休憩を2時間にしましょう」と提案し、パートさんがこれに合意したらどうでしょう。

多くの方にとっては、拘束時間が変わらないのに収入が減るので不利になると考えられます。

ところが、自宅が職場の隣にあって「ラッキー!昼休みに洗濯が済ませられるわ」と喜ぶパートさんがいるかもしれません。

労働法全体の考え方からすると、休憩時間は長い方が労働者に有利と考えられています。

しかし、必ずしもそうではありませんから、ここは会社と労働者との話し合いで解決したいところです。

 

2018.07.13.解決社労士

ここでは、一般の事業(継続事業)について説明しています。建設業など(一括有期事業)は労災保険料の仕組みが違います。

 

<労働保険の保険料>

雇用保険と労災保険の保険料は、合わせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

労災保険料は、全額会社負担ですから従業員は負担しません。

雇用保険料は、会社の方が従業員よりも多く負担します。

 

<保険料の計算で間違えやすいポイント>

保険料の基準となる賃金は、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度中に賃金計算の締日があるものが対象となります。勤務の期間や支払日ではなく、締日が基準ということです。

最も間違えやすいのは、雇用保険の対象者、労災保険の対象者の確定です。

取締役は、どちらも対象外であることが多いのですが、労働者の立場を兼ね備えている場合には対象となるケースもあります。この場合に、保険料の計算基礎となるのは、役員報酬を除く労働者としての賃金部分に限られます。

別の会社から出向してきている人は、働いている会社で労災保険料だけを負担します。

学生の場合、定時制や通信制の学校であれば雇用保険の対象になります。

他にも、雇用保険の保険料が免除される人がいたり、労災保険料の割引があったりと複雑です。

 

<年度更新とは>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法15条・17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。〔労働保険徴収法19条〕

保険料の支払期限も7月10日です。この日までに納付しない場合には、会社あてに督促状が届きます。督促状には、発送日から10日後が最終支払期限として表示されています。この期限を過ぎてしまうと、7月10日にさかのぼって遅延利息が発生します。

また手続きが遅れますと、政府に保険料の額を決定され、さらに追徴金10%を課されることもあります。〔労働保険徴収法21条・25条〕

1年間の賃金が確定してから準備を始めると余裕が無くなりますので、最後の1か月の賃金を加えれば確定できるという状態にまで、先に準備しておくことをお勧めします。

 

2018.07.12.解決社労士

<誕生日の前日に1歳年をとる>

「年齢計算ニ関スル法律」という古い法律に次の規定があります。

 

年齢は出生の日より之を起算す

民法第143条の規定は年齢の計算に之を準用す

 

つまり、誕生日の前日の「午後12時」(2400秒)に年をとります。

「前日午後12時」と「当日午前0時」は、時刻としては同じですが日付は違うという理屈です。

学校でも、42日生まれから翌年41日生まれまでを1学年としています。41日から翌年331日までの間に○歳になる生徒の集団ということです。

おそらく「誕生日に年をとる」だと、229日生まれの人は、4年に1回しか年をとらないので不都合だからでしょう。

2月29日生まれの人は、前日の228日に年をとることにして、救済しているのだと思います。

 

<就業規則にある定年の規定>

会社の就業規則で、「65歳の誕生日が属する月の月末をもって定年とする」なら勘違いは無いのですが、「65歳に達した日の属する月の月末をもって定年とする」だと、毎月1日生まれの人の定年退職日を間違えてしまいやすいのです。

たとえば、41日生まれの人の場合、前者の規定なら4月末で定年、後者の規定なら3月末で定年です。

間違った運用を長く続けているのなら、就業規則の方を改定しましょう。

 

<保険年齢という考え方>

満年齢で計算したうえで、1年未満の端数については6か月以下のものは切り捨て6か月を超えるものは切り上げて計算する方式があります。端数についての「67入」です。

たとえば、299か月の保険加入者(被保険者)は30歳として取り扱われるわけです。

これは、保険年齢方式と呼ばれ、健康診断でも健診機関によっては個人の問診票にこの年齢が記載されます。

従業員から「私の年齢が1歳多い」というクレームが出ることもあります。

こうした場合には、健康診断のお知らせの中に保険年齢の説明を加えておくことをお勧めします。

 

2018.07.11.解決社労士

<滋賀県の取組み>

平成30(2018)628日、滋賀県は「県政eしんぶん」で「高校生の就職試験での不適正質問について」を公表しました。

不適正質問をした企業等は全体の3.6%にあたります。また、不適正質問の件数は33件だったそうです。

県、県教育委員会、滋賀労働局の連名で、公正な採用選考の実施に向けての要請を、引き続き企業等に行っていきます。

公共職業安定所(ハローワーク)は、企業等に対して冊子「採用にあたって」(滋賀県商工観光労働部労働雇用政策課)を配布し、基本的人権を尊重した公正な採用選考を求めています。今後も、面接選考の前に十分な打ち合わせを実施すること、あらかじめ面接評価基準を設定することなどの指導を行っていきます。

さらに、不適正質問をした企業等に対しては、滋賀県進路保障推進協議会とともに訪問するなど、改善に向けた指導をしていきます。

 

<労働局の指導>

面接担当官が、採用面接で聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労働基準監督署に相談した結果、その会社に労働局の指導が入るということがあります。

これは滋賀県に限らず、全国の労働基準監督署が窓口となっています。

労働局は、その都道府県の労働基準監督署の上位に位置しますから、軽く考えてはいけません。

 

<聞いてはいけない本人に責任のない事柄>

・あなたの本籍はどこですか。

・あなたの家族の職業を言ってください。

・兄弟(姉妹)は何人ですか。

・あなたの自宅付近の略図を書いてください。

・○○町の××はどのへんですか。

企業としては、応募者の家族の状況を聞きたいところです。しかしこれは、応募者の適性・能力にかかわりのない事柄を採否の判断基準に持ち込むことになり、個人の人権を尊重しない考え方です。

現住所の環境についていろいろと聞くことは、身元調査に利用する目的ではないかと考えられても弁明の余地はありません。

 

<聞いてはいけない個人の自由であるべき事項>

・あなたの信条としている言葉は。

・あなたはどんな本を愛読していますか。

・家の宗教は何ですか。

・尊敬する人物を言ってください。

思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、日本国憲法で保障されている個人の自由権に属する事柄です。これらのことを記述させ、また聞いたりして採用選考の場に持ち込むことは、応募者の基本的人権を侵すことになります。

 

<企業の採用の自由とその制限>

企業にも職業選択の自由と経済活動の自由、そして契約締結の自由が保障されています。これらが結びついて、企業には採用の自由が認められています。

したがって企業は、労働者の採用基準や採用条件について、原則として自由に決定することができます。

しかし、企業の採用の自由には、法律などによって一定の制限が課せられる場合があります。その代表的なものは以下のとおりです。

・募集採用での性別による差別の禁止〔男女雇用機会均等法5条〕

・労働者の身長、体重、体力を要件とすることの禁止

・転居を伴う転勤ができることを要件とすることの禁止〔男女雇用機会均等法7条〕

・年齢制限の禁止〔雇用対策法10条〕

・障害者差別の禁止〔改正障害者雇用促進法34条〕(平成284月施行)

 

<公正な採用選考の取組み>

企業が、学生・求職者らの応募者に対して、どのような採用手続で選考をするかについて法的な規制はありませんが、応募者である学生・求職者の基本的人権は尊重しなければなりません。

そこで、応募者の就職の機会均等が確保されるよう、公正な募集・採用選考が行われることが求められています。

つまり、本人が職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうかを採用基準とし、これと無関係な事項を採用基準としないことが必要です。

具体的には、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの個人の自由であるべき事項など、本人が職務を遂行できるかどうかに関係のない事項を採用基準とすることは許されません。

また、それらの事項を応募用紙や面接などによって把握することも、就職差別につながるおそれがあるため許されません。

 

<「面接シート」を使った採用面接の実施>

面接担当官が採用面接をするにあたっては、あらかじめ「面接シート」を準備しておくことをお勧めします。

「面接シート」には、面接で確認することをすべて網羅して記載しておき、応募者の回答も記入できるようにしておきます。

これを使いながら面接を進めることによって、聞き漏らしを防ぐことができ、効率よく進行することができますし、うっかり余計なことを聞いてしまうことも防げます。

裏面に面接担当官の評価やコメントを記入できるようにしておけば、記憶が新鮮なうちに情報をまとめることができます。

 

2018.07.10.解決社労士

<概要>

「過労死等」は、過労死等防止対策推進法2条で、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されています。

平成30(2018)76日、厚生労働省は平成29(2017)年度の「過労死等の労災補償状況」を取りまとめ公表しました。

これは、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や「業務上疾病」と認定し労災保険給付を決定した支給決定件数などを年1回取りまとめて公表しているものです。

今回は、過去4年分の裁量労働制対象者に関する決定件数などについても公表されています。

 

<ポイント>

労災というとケガを思い浮かべやすいのですが、今回の公表の対象となっているのは、過重労働による脳血管疾患、心臓疾患、精神障害やこれらが原因となった死亡です。

つまり、範囲は限定されているのですが、以下に引用するように多数に上っています。

なお、最後の裁量労働制の資料は、国会での働き方改革関連法案の審議の過程でクローズアップされたことから加えられたものと思われます。

 

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は840件で、前年度比15件の増となった。

(2) 支給決定件数は253件で前年度比7件の減となり、うち死亡件数は前年度比15件減の92件であった。

(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業,郵便業」188件、「卸売業,小売業」115件、「建設業」112件の順で多く、支給決定件数は「運輸業,郵便業」99件、「卸売業,小売業」35件、「宿泊業,飲食サービス業」28件の順に多い。

業種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」145件、85件が最多。

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「輸送・機械運転従事者」169件、「専門的・技術的職業従事者」と「販売従事者」98件の順で多く、支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」89件、「サービス職業従事者」36件、「販売従事者」29件の順に多い。

 職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」164件、89件が最多。

(5) 年齢別では、請求件数は「50~59歳」290件、「60歳以上」239件、「40~49歳」230件の順で多く、支給決定件数は「40~49歳」と「50~59歳」97件、「60歳以上」32件の順に多い。

(6) 時間外労働時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」42件が最も多い。また、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」96件が最も多い。

 

2 精神障害に関する事案の労災補償状況

 

(1) 請求件数は1,732件で前年度比146件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比23件増の221件であった。

(2) 支給決定件数は506件で前年度比8件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比14件増の98件であった。

(3) 業種別(大分類)では、請求件数は「医療,福祉」313件、「製造業」308件、「卸売業,小売業」232件の順に多く、支給決定件数は「製造業」87件、「医療,福祉」82件、「卸売業,小売業」65件の順に多い。

 業種別(中分類)では、請求件数は、業種別(大分類)の「医療,福祉」のうち「社会保険・社会福祉・介護事業」174件、支給決定件数は、業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」45件が最多。

(4) 職種別(大分類)では、請求件数は「専門的・技術的職業従事者」429件、「事務従事者」329件、「販売従事者」225件の順に多く、支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」130件、「サービス職業従事者」70件、「事務従事者」66件の順に多い。

 職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」222件、48件が最多。

(5) 年齢別では、請求件数は「40~49歳」522件、「30~39歳」446件、「20~29歳」363件、支給決定件数は「40~49歳」158件、「30~39歳」131件、「20~29歳」114件の順に多い。

(6) 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は、「20時間未満」が75件で最も多く、「160時間以上」が49件であった。

(7) 出来事別の支給決定件数は、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」88件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」64件の順に多い。

 

3 裁量労働制対象者に関する労災補償状況

 

平成29年度の裁量労働制対象者に関する脳・心臓疾患の支給決定件数は4件で、すべて専門業務型裁量労働制対象者に関する支給決定であった。また、精神障害の支給決定件数は10件で、うち専門業務型裁量労働制対象者に関する支給決定が8件、企画業務型裁量労働制対象者に関する支給決定が2件であった。

 

2018.07.09.解決社労士

<労働契約法の改正>

平成25(2013)年に改正労働契約法が施行され、第18条では、同じ事業主で契約更新が繰り返されて通算5年を超えた有期契約労働者は、本人の申し出によって無期雇用として働けるとされています。

これによって、平成30(2018)41日以降、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる権利を有する労働者が生じることになりました。

 

<連合の発表>

平成30(2018) 6 28 日、日本労働組合総連合会は、無期労働契約への転換が始まって以降の、有期契約労働者の改正労働契約法の認知状況や改正労働契約法についての考えや実態を把握するため、「有期契約労働者に関する調査2018」で1,000名の有効サンプルを集計しました。

この中で、改正労働契約法の認知状況は次のように示されています。

「無期労働契約への転換」の内容を知らない有期契約労働者が依然68%

「無期転換申込権対象者となっている」は有期契約労働者の約2

無期転換申込権対象者の4人に1人が「無期転換を申し込んだ」と回答

改正労働契約法の内容は、徐々に認知度が高まってきますし、経営者が知らないというのでは、大きな危険を抱えることになります。

 

以下、連合の発表内容です。

 

◆2013年4月施行の改正労働契約法の認知状況

・2013年4月施行の改正労働契約法

「無期労働契約への転換(第18条)」 内容の認知率は上昇も、内容を知らない有期契約労働者が依然68%

「不合理な労働条件の禁止(第20条)」の内容を知らない有期契約労働者は83%

・改正労働契約法の認知経路 「マスコミ」5割強、「勤務先からの説明」4割

契約社員では「勤務先からの説明」が昨年より14ポイント上昇

◆労働契約法第18条(無期労働契約への転換/5年ルール)に対する意識

・無期転換申込権の発生状況

「無期転換申込権対象者となっている」は有期契約労働者の約2割、

「無期転換申込権があるかないか、わからない」は4割半ば

・無期転換申込権対象者の4人に1人が「無期転換を申し込んだ」と回答

・「無期労働契約への転換(第18条)」に対する考え

「待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」 同意率は約6割

◆労働契約法第20条(不合理な労働条件の禁止)の施行状況

・労働条件や福利厚生、教育訓練で正社員との格差あり

「ボーナスの支給対象になっている」は3割半、「教育訓練の対象になっている」は約5割にとどまる

◆労働基準法第15条(労働条件の明示)などの認知状況・施行状況

・賃金、労働時間その他の労働条件の通知 「文書でも口頭でも伝えられていない」10%

契約更新の有無を「文書でも口頭でも伝えられていない」12%

・有期契約労働者でも一定の条件を満たせば取得可能な休暇・休業の認知率

「年次有給休暇」では8割強、しかし、「育児休業取得」では5割にとどまる

◆働き方・職場の満足度

・正社員になれず有期契約で働く“不本意有期契約労働者” 契約社員の4割半

・働き方の満足度 正社員になれず有期契約で働いている人の6割強が「不満」

・正社員になれず有期契約で働く人の4割強が仕事のやりがいを「感じない」、現在の職場に「不満」も4割強

・有期契約労働者が職場に対して抱える不満 1 位「給料が安い」2 位「給料が上がらない」

 

<実は恐ろしい労働契約法の規定>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

(労働契約の内容の理解の促進)

第四条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。

2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

 

労働契約法の内容は、労使対等な内容になっています。

しかし、法律というのは、知らない人が不利を被ります。

そこで、無期転換権など労働契約の内容については、労働者の不利にならないよう使用者に一定の義務を負わせています。

使用者側から「労働者が無期転換権を知らないのは自己責任」とは言えないのです。

 

労働基準法や労働契約法、その他労働に関する法令に改正があった場合には、使用者に説明義務があります。これを怠っていると、使用者は不利を被ってしまいます。

実態として、こうした専門性の高いことは、使用者が対応できないこともあります。不安があれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2018.07.08.解決社労士

<ニュース>

賃貸住宅建設の大東建託で、神奈川県内の支店が労使協定で定められた上限を超えて社員に時間外労働をさせたとして、6月上旬に労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かったそうです。

この是正勧告の前提となる監督(調査)の中で、過酷な労働実態や、残業時間の「過少申告」があったと複数の社員や元社員が証言しているそうです。

この元社員は、残業時間を実際より短く申告していたそうです。「残業を月70時間超つけると始末書を書かされ、残業時間も修正させられると上司から聞いた」からだそうです。

 

<残業の制限規定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<三六協定>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

 

<その手続き>

労働組合が無い場合には、その事業場ごとに労働者の過半数を代表する者を選出します。あくまでも労働者の代表ですから、会社からの指名ではなく従業員同志の話し合いを基本に民主的に選出します。

そして、労働時間の上限や休日出勤について、会社と代表とが書面で協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出ます。

協定書を届け出たときから協定が有効になりますので、手続きをしないで制限を超える残業があれば違法残業となります。

また、協定の期間は最長1年間ですから、毎年届け出が必要となります。

 

<協定書を届け出ても違法となる場合>

まず、協定に定めた残業の上限時間を超える残業が「違法残業」となります。

今回の大東建託の場合がこれに該当します。

つぎに、労働者の代表が民主的に選出されず、会社に指名されていた場合にも協定が無効ですから「違法残業」となります。

さらに、協定書の届け出前や期限が切れた後の残業も「違法残業」となります。

 

<問題の本質>

店長、支店長、営業所長は、より少ない人件費でより多くの営業利益を上げることがその使命です。

しかし、「三六協定を遵守したうえで」という前提が抜け落ちていることが多々あります。

社員研修でも、営業利益を上げるためのプラスの研修は盛んに行われ参加率も高いのに対して、足元をすくわれないためのマイナスの研修は少なめで参加率も低くなります。

今回のようにマスコミに報道されてしまうと、その支店だけではなく、全社的にダメージを受けてしまいます。

労働法遵守に向けられる努力が足りないと、全社的なダメージを受けることがあるのは、企業にとって恐ろしい事実です。

労働基準法や労働契約法など労働法については、アリの一穴となりうるのですから、対策を怠らないようにしましょう。

 

2018.07.07.解決社労士

<休日と休暇>

休日とは、雇用契約や就業規則の取り決めで労働義務を負わない日をいいます。

もともと決まっている休みですから、従業員の方から会社に申請しなくても当然に休みです。

週休2日制であれば、何か手続きをしなくても休日が1週間に2日あります。

休暇とは、本来は労働義務を負っている日について、従業員から会社への申し出によって労働義務が免除される日をいいます。

もともと休む権利が与えられていて、従業員の方から届け出をすると休むことができるわけです。

年次有給休暇が代表的ですが、会社の規則で慶弔休暇が定められていることも多いでしょう。

 

<休日と休暇は重なりません>

休日はもともと働かない日、休暇は出勤日に手続きをして休む日ということですから、休日に休暇をとることはできません。

たとえば、土曜日と日曜日が休日と決まっている従業員は、土曜日や日曜日に年次有給休暇を使うことができないのです。

このことから退職にあたって、たくさん余っているからといって、年次有給休暇をもともとの休日にあてはめて無理やり取得するということはできません。

こんなことをしては、年次有給休暇が実質的に消えてしまいますから許されません。

退職にあたっては、年次有給休暇を買い上げることも禁止されていませんので、状況によっては会社が買い上げることもあるわけです。

 

2018.07.06.解決社労士

<年次有給休暇の趣旨>

年次有給休暇とは、一定期間継続勤務した従業員に疲労回復を目的として会社が付与する有給の休暇です。

何か用事があるとか、具合が悪いからとか、必要があって休むというのではなく、休息のために休むわけです。

そして、休んでも欠勤控除によって給与が減る心配が無いので安心して休めるのです。

このことは、労働基準法などに規定があるわけではなく、厚生労働省などがこのような説明をしています。

疲労回復の必要性は、正社員に限らず、パート、アルバイト、嘱託社員、契約社員などあらゆる雇用形態の従業員に共通です。

年次有給休暇付与の条件さえ満たせば、労働基準法の規定により、誰でも年次有給休暇を取得できます。

会社がこれを拒めば罰せられます。1回拒むごとに30万円以下の罰金、悪質なら6箇月以下の懲役です。〔労働基準法119条〕  

 

<買い上げが禁止される理由>

時間給で働くアルバイトなどは、有給休暇をとると給料が増えるという感覚を持つでしょう。

しかし、有給休暇の趣旨は「給料が減らないので安心して休める」というところにあります。

「買い取るから休むのは我慢してください」という年次有給休暇買い上げは、休息を与えるという本来の趣旨に反してしまうので、原則として禁止されるのです。

 

  <例外的に許される買上げ>

年次有給休暇のうちでも、会社が法定の日数を上回って福利厚生的に与えている場合の法定を上回る日数、2年の消滅時効にかかってしまい消えた日数、退職によって使い切れなかった日数については買上げが許されます。

これらの場合、会社は法定の日数分の有給休暇を与えていますし、権利の消滅を救済する意味での買上げは制度の趣旨に反しないからです。

 

  <退職時の買上げ>

特に退職時の買上げは、安心して充分な引継ぎをすることに役立つでしょう。

有給休暇の消化期間だけ、退職日を後ろにずらすことも考えられますが、転職先の入社日よりも後に退職するのは不自然ですし、社会保険料が余計にかかったりしますのでお勧めできません。

退職するにあたって、「退職日までのすべての出勤日に年次有給休暇を取得します」という申し出があった場合、会社はこれを拒めません。

これでは、引継ぎなどできなくなってしまいます。

こんなとき、会社ができる工夫としては、本来の休日に休日出勤を命じて引き継ぎ書の作成や申し送りをさせることでしょうか。

普段から少しずつ年次有給休暇を取得させておけば、突然の退職にあたって会社側が困ることは避けられるのです。

 

 2018.07.05.解決社労士

<柳田事務所の場合>

基本契約書の中に次の条項があります。

 

第4条 契約の解除

 甲乙双方は、次の各号のいずれかに該当する場合、直ちに本契約を解除することができる。

⑻ 所期の目的が達成されたとき

 

つまり、顧問契約は交わしたけれど、必要が無くなったので契約を解除したいという場合には、いつでも解約できるという条項です。

企業が社会保険労務士と顧問契約を交わすのは、会社設立に際して手続きがわからない、算定基礎届や年度更新などの手続きがわからない、労働トラブルへの対応方法がわからないなどの事情があるときです。

しかし、社会保険労務士の指導のもと、必要なノウハウが顧問先に伝授されたなら、自社で何とかなるわけですから、顧問の社会保険労務士は要らなくなるはずです。

そこまで行かなくても、柳田事務所では顧問先が成長すると顧問料が減額していく仕組みを採用しています。

顧問先の手がかからない分、顧問料は安くなって当然だと思います。

 

<顧問契約の重要性>

会社が従業員を雇う場合には、労働条件通知書や雇用契約書によって、基本的な労働条件を書面で示すことが労働基準法によって義務づけられています。

ところが、社会保険労務士が企業の顧問となる場合には、契約書の作成が義務付けられているわけではありません。

顧問契約については、社会保険労務士から企業に対して説明する義務があります。これは法的な義務というよりも道義上の義務です。

顧問料でどこまでの業務を行うのか、どの業務は顧問料の範囲外になるのかということが書面で確認されないのはトラブルの元です。

顧問料の請求があった場合に、なぜその金額になるのか明確な基準が無ければ企業にとっても不安です。

今、顧問の社会保険労務士がいる場合には、顧問契約書の内容を再確認していただきたいですし、これから社会保険労務士と顧問契約を交わしたいと思っている企業様は、契約の内容について十分な説明を受けたうえで、契約締結に臨むよう強くお勧めします。

 

それと、お問い合わせはお気軽にどうぞ。特に人事担当の方が悩みを抱えているのは、本当に気の毒に思います。チョッとしたヒントで悩みを解消できることがあります。自分自身の経験からそう言えるのですから、どうぞご遠慮なく。契約書を交わす前までの業務については報酬をいただきません。ご安心を。

 

2018.07.04.解決社労士

<働き方改革関連法成立前の付帯決議>

平成30(2018)629日、働き方改革関連法案が参議院の本会議で自民・公明の両党と日本維新の会などの賛成多数により、可決・成立しました。

前日の厚生労働委員会では、働き方改革関連法案に対しての要望や監督指導の徹底などについての付帯決議が賛成多数で可決されました。

この付帯決議には、法案に反対した野党の国民民主党、立憲民主党も賛成に回りました。

与野党が激しく対立した高度プロフェッショナル制度(高プロ)に関するものは13項目で、制度の乱用を防ぐために野党側が求めた要望や対策が中心となっています。

 

<付帯決議の高度プロフェッショナル制度関連項目(一部抜粋)>

・導入する全事業場に労働基準監督署が臨検監督(立入り調査)を行い、適用の可否をきめ細かく確認する。

・省令で定める対象業務は、具体的かつ明確に限定列挙する。また、労使委員会による対象業務の決議を労働基準監督署が受け付ける際は、適用対象に該当するものであることを確認する。

・労使委員会の決議は、有効期間を定め、自動更新は認めないと省令で規定する。本人同意は短期の有期労働者は労働契約の更新ごと、無期労働者は1年ごとに更新するべきだと指針で規定する。

・3年をめどに適用対象者の健康管理時間の実態、労働者の意見、導入後の課題などについてとりまとめて国会に報告する。

・会社側が始業・終業時刻や深夜・休日労働など労働時間に関わる業務命令や指示をしてはいけないこと、働き方の裁量を奪うような成果や業務量を要求したり、期限や納期を設定したりしてはいけないことを省令で明確に規定する。

・本人が同意を撤回する手続きも明確に決議し、撤回を求めた労働者を不利益に取り扱ってはいけないと監督指導を徹底する。

 

<労働基準監督官の実態>

導入する全事業場に労働基準監督署が臨検監督(立入り調査)を行うことが決議されています。

実際に行うのは、労働基準監督官ということになります。

この決議によって、労働基準監督官の負担が増すことになるでしょう。

しかし労働基準監督官は、少し増員されてはいるものの人員が足りないそうです。

平成29(2017)年度は、労働基準監督官採用試験の合格者数が増えて478名となりました。合格率は13%弱です。(いずれも法文系と理工系との合計)

それでも予算がありますので、たとえば今年度の採用予定者数は280名だそうです。

これとは別に、ハローワークの求人情報を見ると、労働基準監督官の経験者などをパート労働者として雇っていることが分かります。

労働基準監督官不足で臨検監督(立入り調査)の実施が遅れ、その間に違法な制度運用が行われてしまうと、高度プロフェッショナル制度のもとで働く社員は不幸ですし、後になってから違法性を指摘された会社も不幸です。

 

<労働基準監督署の実態>

労働基準監督署では、労働基準監督官以外の人員が削減されていて、監督官が他の業務を手伝っている状態だそうです。

労使委員会による対象業務の決議などは、労働基準監督署が受付けるのですが、窓口業務を行っている方の多くがパート労働者ですから、監督官がフォローに入る機会が増えることでしょう。

こうなると、過重労働を取り締まる役目の労働基準監督官自身が、過重労働に陥ってしまうのではないか心配です。

 

2018.07.03.解決社労士

<禁止する必要性>

幹部社員や高度に専門性の高い社員が退職すると、会社に大きなダメージが生じます。

ましてや、その社員がライバル企業に転職したのでは、ダブルパンチを食らうことになります。

会社としては、こうした事態を阻止したいところです。

 

<職業選択の自由>

一方で、退職していく社員には職業選択の自由があります。〔憲法22条1項〕

どのような職業を選択するかの自由は、ライバル企業に転職する自由を含みます。

もっとも、この職業選択の自由に会社と社員との合意で制限を設けたなら、原則として合意による制約は有効です。

ただし、その合意の内容が合理性を欠き公序良俗に反するのであれば無効になります。〔民法90条〕

 

<競業避止義務を有効にするために必要なこと>

ライバル会社への転職を禁止した場合、その禁止が無制約に許されるわけではありません。

次のようなことを考慮要素として、公序良俗違反とならないことが必要です。

・就業規則や誓約書に内容が明示されていること

・その社員が営業秘密に関わっていたこと

・正当な目的によること

・「同業他社」の範囲など制限の対象が妥当であること

・地域・期間が妥当に限定されていること

・特別な手当の支給など、相当の代償が与えられること

 これらの考慮要素のうち、範囲の限定と相当の代償は大きなウエイトを占めるでしょう。

代償措置としては、給与の上乗せや退職金の上乗せが考えられます。

社員のメリットが無いのに、会社側から一方的にライバル企業への転職を制限したのでは、合理性を欠き公序良俗に反するものと認定されてしまいます。

 

<違反された企業の対応>

社員が退職して競業避止義務に違反した場合、競業行為の差止めが考えられます。

しかし、会社在籍中に十分な代償措置が取られていなければ、これを主張するのは困難です。

また、損害賠償を請求するには損害額の証明が必要となるのですが、これもかなり困難です。

こうしたことから、退職金の減額が現実的な措置となるのですが、退職し退職金を受け取ってからライバル会社に転職するケースには対応できません。

就業規則に規定する場合には、「退職後1年以内に別表のライバル会社に就職した場合には、退職金の半額を会社に返還するものとする」のような規定が必要でしょう。

 もっとも、会社が社員を大切にし、社員が会社に恩を感じるようになっていれば、社員は安易に会社を辞めないでしょうし、ライバル企業に転職することもありません。

これを目指すのが会社としてベストな対応でしょう。

 

2018.07.02.解決社労士

平成30(2018)年6月29日、「アート引越センター」で知られる「アートコーポレーション」が18歳未満のアルバイトを深夜に働かせたとして、会社と従業員4人が書類送検されました。

高校生アルバイトなど満18歳を迎えるまでは、労働条件について注意すべき法令の制限が多数あります。

たとえアルバイト本人やその親が承諾しても、違反することに対する承諾は無効です。罰則もあります。

 

<高校生の時給>

最低賃金法の制限があります。高校生でも同じ最低賃金です。

試用期間でも最低賃金を下回ることはできません。例外的に都道府県労働局長の許可を受けたときは、最大2割減額できるというのが最低賃金法に規定されています。〔最低賃金法7条〕

しかし、労働基準監督署に確認してみたところ「うちでは許可していません」という説明を受けました。

 

<17歳までの労働時間>

1日8時間を超える勤務はできません。平均ではなく、どの日も8時間までです。

1週間で40時間を超える勤務はできません。就業規則に定めがなければ、日曜日から土曜日までの7日間で計算します。

日曜日から土曜日まで7日間連続で勤務することはできません。

また、フレックスタイム制などの変形労働時間制は使えません。

 

<17歳までの勤務時間帯>

午後10時以降翌日午前5時までは勤務できません。

 

<17歳までの業務内容の制限>

重量物の取り扱いについては、次の表のとおりの制限があります。

年齢と性別

重量の制限

たまに持ち上げる場合

続けて持ち上げる場合

15歳まで

12キログラム未満

8キログラム未満

15キログラム未満

10キログラム未満

16・17歳

25キログラム未満

15キログラム未満

30キログラム未満

20キログラム未満

運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査・修繕をさせ、運転中の機械・動力伝導装置にベルト・ロープの取付け・取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせることはできません。

毒劇薬、毒劇物その他有害な原料・材料または爆発性、発火性、引火性の原料・材料を取り扱う業務、著しくじんあい・粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所または高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません。

坑内労働に就かせることはできません。

 

※以上の内容には特別な例外もあるのですが、成人と同じようには扱えないということです。

 

2018.07.01.解決社労士

<厚生労働省の公表>

平成30(2018)627日、厚生労働省が「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。

総合労働相談は10年連続で100万件を超えています。

内容は「いじめ・嫌がらせ」が6年連続でトップになっています。

 

<個別労働紛争解決制度>

個別労働紛争解決制度は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブル(個別労働紛争)を未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。

厚生労働省では、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとしています。

 

<総合労働相談>

都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所(平成3041日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応しています。

 

<助言・指導>

民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。

助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行うものであり、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すものです。

 

<あっせん(斡旋)>

都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。

社会保険労務士の中でも、「特定」の付記を受けた特定社会保険労務士は、あっせん当事者(使用者側・労働者側)の代理人となることができます。

 

<平成29年度の概要>

総合労働相談、あっせん申請の件数はいずれも前年度と比べ減少、助言・指導の申出件数は増加。総合労働相談件数は1104758件で、10年連続で100万件超え。

総合労働相談件数 1104,758(前年度比2.3%減)

 うち民事上の個別労働紛争相談件数 253,005(前年度比1.0%減)

助言・指導申出件数 9,185(前年度比2.3%増)

あっせん申請件数 5,021(前年度比2.0%減)

 

民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全てで、「いじめ・嫌がらせ」が引き続き最多。

民事上の個別労働紛争の相談件数では、72,067件(前年度比1.6%増)で6年連続最多。

助言・指導の申出では、2,249件(前年度比1.9%増)で5年連続最多。

あっせんの申請では、1,529件(前年度比6.9%減)で4年連続最多。

 

2018.06.30.解決社労士

<就業規則の作成義務>

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成・届出義務を負わせています。

このことから9人までの会社は、就業規則が無くても違法ではないといえます。

たとえ所轄の労働基準監督署が監督(調査)に入ったとしても、就業規則のことで指摘を受けることはありません。

しかし、従業員の少ない会社で就業規則が無いと、明確な基準が無いために、知らず知らずのうちに不平等や不公平が発生し、従業員の中に不満が芽生えて転職のきっかけとなるリスクは高まってしまいます。

しかも、懲戒処分は就業規則に具体的な規定が無いと、不適法とされ無効とされる可能性が高まるなど、問題社員への適切な対応が困難になってしまいます。

 

<労働条件の通知義務>

就業規則を作成していない会社であっても、誰か1人でも採用すれば、採用した人に対して、労働時間、賃金、退職に関する事項などにつき、書面を交付する義務を負っています。〔労働基準法15条1項〕

そのため、雇用契約書を交わしたり、会社から労働条件通知書(雇い入れ通知書)を渡したりしています。

これを怠ることは、もちろん労働基準法違反になるわけですが、待遇について具体的な内容を伝えていないと、残業や年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

中には「残業代は支払わない。有給休暇は取らせない。だから関係ない」という経営者もいるのですが、多くの場合、労働者の権利を主張してくるのは、在籍している従業員ではなくて、退職後の元従業員です。しかも、弁護士や社会保険労務士に相談したうえで請求してきますから、慰謝料を含め請求できるものはすべて請求してくる形となりやすいのです。

このときに、労働条件を示した書面が無いと、無いことそのものが会社側の落ち度ですから、元従業員の主張を認めざるを得なくなってしまいます。裁判にでもなれば、会社に有利な証拠を見つけるのが困難になってしまいます。

 

<会社の義務は単に負担なのか>

法令が会社に対して何かを義務付けているとなると、会社の負担になることばかりが目についてしまいます。

しかし、労働基準法が義務づける就業規則や労働条件通知書というのは、会社にとっても助け船になると考えられます。

何かトラブルが発生した場合には、就業規則や労働条件通知書が、会社のことも、まじめに働く社員のことも、問題社員から守ってくれるからです。

雇用契約書に、セクハラの禁止、会社の物品の持ち出し禁止、パソコンの個人的使用の禁止など、記載しておけば、言った言わないの世界にはなりません。

どのような場合に懲戒解雇となるのか、きちんと文書化しておけば不当解雇の指摘も避けることが可能になります。

今や懲戒については、就業規則や雇用契約書に規定しておかないと、無効とされるのが当たり前です。

世間の実態としては、労働者側から不当解雇や懲戒処分の無効を主張して会社と争ったら、半分以上は勝っていると思われます。

 

<労働時間の認定でも>

会社に労働基準監督署の監督(調査)が入った場合、雇用契約書や労働条件通知書に始業時刻・終業時刻が記載されていれば、これを基準に労働時間がチェックされます。休憩時間についても同様です。

しかしこれが無ければ、労働基準監督署は、従業員が会社に来た時点から会社を出た時点までのすべてを労働時間と認定せざるを得ません。

従業員から「忙しくて休憩は取れませんでした」という声があれば、休憩時間ゼロと認定されることもありうるのです。

 

<結論として>

会社を守るには、きちんとした雇用契約書や労働条件通知書が役に立ちます。

もし、複数の従業員に共通する内容が多いのであれば、それらをまとめて就業規則を作っておいた方が楽です。

あれもこれも労働条件通知書に記載していたら、A4判で10ページでは足りないことでしょう。しかし、そこまで充実した労働条件通知書は見たことがありません。

「本通知書に定めの無い事項については就業規則による」と書いておくのが現実的な運用となっています。

そして、従業員が9人までであれば、就業規則を作っても変更しても労働基準監督署長に届け出る義務は無いのです。

事務手続きの負担が軽いうちに、就業規則を作成し備えておくことをお勧めします。

 

2018.06.29.解決社労士

<条例の概要>

平成30(2018)627日、東京都の受動喫煙防止条例が可決・成立しました。

この条例は、面積にかかわらず、従業員を雇っている飲食店を原則屋内禁煙とし、喫煙専用室は設置できるとするのが特徴です。つまり、従業員を受動喫煙から守っているわけです。

この条例は年内から段階的に施行され、罰則(5万円以下の過料)は20204月の全面施行時から適用されることになります。

都内の飲食店の約84%にあたる約134,000軒が規制対象になる見込みです。

 

<東京都の負う責任>

・受動喫煙による都民の健康への影響を未然に防止するための環境の整備に関する総合的な施策を策定し実施すること

・喫煙と受動喫煙が健康に与える影響について、意識の啓発や教育を通じた正しい知識の普及により、都民の理解促進に努めること

・受動喫煙の防止に関するその他の必要な施策について、都民、区市町村、施設の管理権原者その他の関係者と連携し、協力して実施するよう努めること

 

<都民の負う責任>

・喫煙と受動喫煙が健康に与える影響について理解を深め、他人に受動喫煙をさせることのないよう努めること

・東京都が実施する受動喫煙の防止に関する施策に協力するよう努めること

 

<保護者の負う責任>

・いかなる場所であれ、監督保護する未成年者の健康に受動喫煙による影響が及ぶことを未然に防止するよう努めること

 

<喫煙の際の配慮義務>

・多数の者が利用する施設で喫煙する際、受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない

・施設の管理権原者は、喫煙をすることができる場所を定めようとするときは、受動喫煙を生じさせることがない場所とするよう配慮しなければならない

 

<多数の者が利用する施設等における喫煙の禁止>

・学校、病院、児童福祉施設等、行政機関、旅客運送事業自動車・航空機では禁煙(屋外喫煙場所設置可)

ただし、幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校等の施設は屋外喫煙場所設置不可(努力義務)

・上記以外で多数の者が利用する施設や旅客運送事業船舶・鉄道でも原則屋内禁煙(喫煙専用室内のみで喫煙可)

ただし、一定の条件を満たした喫煙を主目的とする施設(いわゆるシガーバーやたばこの販売店等)については、別の類型を設け、喫煙禁止場所としない

・原則屋内禁煙の施設であっても、従業員がいない飲食店については、屋内の全部または一部の場所を喫煙をすることができる場所として定めることができる

 

<各企業での対応>

東京都内で対象とならない事業場でも、東京都にない事業場であっても、定着率を向上させ応募者を増やすためにも、自主的な取組みをお勧めします。

 

2018.06.28.解決社労士

<従業員の時季指定権>

会社は、従業員が請求する「時季」に、年次有給休暇を取得させなければなりません。請求する「時季」というのは、請求する日という意味です。海外では、長期休暇をとる場合が多いので、日本の法律でも「時季」という言葉が使われます。

とはいうものの、「来月の最初の日曜日は、全員でバーベキュー大会だ!」ということで、店長を除く全員が同じ日に有給休暇を使おうとしたのでは、お店の営業ができません。これでは、権利の濫用になってしまいます。

 

<使用者の時季変更権>

そこで、請求された日に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合には、会社から従業員に対して「有給休暇は、別の日にしなさい。」と言えることになっています。

「時季変更権」とはいいますが、「では、明日にしなさい。」というように指定するのではなくて、従業員から別の日を指定してもらうことになります。

 しかし、「人手不足で有給休暇なんてとても」という状況であったとしても、従業員から年次有給休暇を使いたいという申し出があったとき、慢性的な人手不足を理由に拒むことはできないというのが法律の建前です。

これが許されるのであれば、会社側は有給休暇を全く使えないようなギリギリの人員で運営すれば、従業員の権利を正当に否定できることになってしまいます。

こうして会社には、年次有給休暇の取得率100%を前提とした人員確保が、義務付けられているわけです。

 

<法改正の動き>

現状では、従業員が年次有給休暇を使おうとしない限り、会社の方から積極的に使わせる義務はありませんでした。

ところが年5日については、従業員に年次有給休暇を取得させる義務が会社に課される方向で法案が準備されています。

これは、国の政策ですから逆らっても仕方がありません。

法改正の動きとは別に、「退職するにあたっては、残りの年次有給休暇をまとめて取得する権利がある」という情報が、労働者の共通認識となりつつあります。

今まで年次有給休暇の取得がむずかしかった職場でも、少しずつ年次有給休暇を消化できる体制を整えていく必要があるでしょう。

これも働き方改革の一つだと考えられます。

 

2018.06.27.解決社労士

<IT人材の不足>

経済産業省は、平成30(2018)610日、国内IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を発表しました。

これによるとIT人材は、現在17万人超が不足していて、人口減少に伴い深刻化すると予測しています。

日本では、管理職クラスの割合が低く、理系出身者が少ない傾向が見られるそうです。

 

<受刑者へのIT教育>

こうした中、法務省は平成30(2018)622日、官民協働で運営する刑事施設「美祢社会復帰促進センター」で、美祢市、株式会社小学館集英社プロダクション、ヤフー株式会社と連携し、ネットストアの開設・運営についての職業訓練と地産外商を推進する地方創生支援事業を実施することを発表しました。

職業訓練では、実践的なカリキュラムを通じてeコマースを学ぶことで、専門知識とネットストアを運用するスキルの習得を目指します。

また地方創生支援事業では、職業訓練のカリキュラムの中で制作した美祢市の産品等を販売するストアサイトを美祢市道の駅「おふく」のサイトとして運営することにより、美祢市の地産外商の取組を支援する地方創生への貢献も期待されます。

 

<販路拡大のための人材確保>

売上の9割以上がネット販売という青果店なども増えています。

販路を拡大したいけれども、ネット販売など自社ではとても無理とあきらめないで、IT教育を受けた出所者を積極的に採用することによって、企業の成長をめざす余地はあるでしょう。

再就職が困難な出所者の積極的な採用は、生産性の向上につながります。

これもまた働き方改革の一つとして注目すべきだと考えられます。

 

2018.06.26.解決社労士

<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法32 条の3

労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)にはフレックスタイム制の規定例が見当たらないのですが、労働基準監督署などで配布される「フレックスタイム制の適正な導入のために」というパンフレットには、次のような規定例があります。

 

 (適用労働者の範囲)

第○条 第○条の規定にかかわらず、企画部に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。

第○条 フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10 時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。

  ② 午前10 時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。  

 (清算期間及び総労働時間)

第○条 清算期間は1箇月間とし、毎月26 日を起算日とする。   

  ② 清算期間中に労働すべき総労働時間は、154 時間とする。  

 (標準労働時間)

第○条 標準となる1日の労働時間は、7時間とする。  

 (その他)

第○条 前条に掲げる事項以外については労使で協議する。

 

あくまでも規定例ですから、これをそのまま使うのではなく、それぞれの職場に合わせて修正することが必要です。

その際、法令の制限を超えた修正をしてしまうと、その部分は無効になってしまいます。不安があれば、運用を含め社会保険労務士にご相談ください。

 

<労使協定の規定>

労使協定には、次の各項目を定めます。

 

・対象となる労働者の範囲

 対象となる労働者の範囲は、全社員、特定の部署、特定の部署の一部の社員、あるいは個人ごとに指定することもできます。

 

・清算期間

清算期間とは、労働者が労働すべき時間を定める期間のことで、清算期間の長さは、現在の法律では1箇月以内に限ります。そして、賃金の計算期間に合わせて1箇月とすることが一般的です。

 

・清算期間における起算日

 毎月1日から月末まで、16 日から翌月15日までなど、清算期間を明確にする必要があります。

 

・清算期間における総労働時間

清算期間における所定労働時間のことです。

 この時間は、清算期間を平均し、1週間の労働時間が40 時間(特例措置対象事業場は44 時間)以内になるように定めなければなりません。

 ここで、特例措置対象事業場とは、常時10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のことです。

 一般には、40時間 ÷ 7日 × 暦の日数 で計算されます。

 暦の日数が30日の月なら、171.4時間となります。

 1か月単位でみて制限を上回ってはいけませんから、端数は切捨てで設定します。

 

・標準となる1日の労働時間

 フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、

その日に標準となる1日の労働時間労働したものとして取扱うことが必要です。

 

・コアタイム

 コアタイムは、労働者が出勤日に必ず働かなければならない時間帯です。

設けないことも可能です。

なるべく短い方が、フレックスタイム制の効果は大きくなりますが、会社の労務管理の都合も考えて設定しましょう。

 特定の日や曜日だけコアタイムを変えたり、コアタイムを1日の中に複数設けることも可能です。

 

・フレキシブルタイム

 労働者が勤務できる時間帯に制限を設ける場合は、その開始時刻と終了時刻を定める必要があります。

 労働者の勤務時間を30分単位で区切り、その中から選ぶような仕組みはできません。

 

<残業時間の計算>

「清算期間における総労働時間」を超えて勤務した時間が残業時間ですから、時間外割増賃金の支払い対象となります。清算期間が1箇月であれば、1日や1週単位での計算は不要です。ここが、賃金計算上のメリットになります。

ただし、1週間丸々出勤した場合には、法定休日出勤の賃金を別に計算し、フレックスタイム制での労働時間には加えません。

また、精算期間内の残業時間を、次の精算期間の早帰りなどで相殺することはできません。清算期間をまたいでしまっては、清算期間の意味がありません。また、賃金の全額払いの原則〔労働基準法241項本文〕にも反します。

労働時間が「清算期間における総労働時間」に足りないときは、その時間分だけ欠勤控除をすることになりますが、年次有給休暇の取得によって総労働時間を補うことも多いでしょう。

 

2018.06.25.解決社労士

<フレックスタイム制>

フレックスタイム制は、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、1箇月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決め、その生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことができる制度です。〔労働基準法32 条の3

労働基準法の範囲内で認められる特例ですし、導入するには就業規則と労使協定での規定が必要です。ここを省略して運用すると違法ですし無効になります。

 

<コアタイムとフレックスタイム>

一般的なフレックスタイム制は、1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けています。

コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんから、全部をフレキシブルタイムとすることもできます。

コアタイムがほとんどでフレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる1日の労働時間がほぼ一致している場合、始業時刻、終業時刻のうちどちらか一方だけを労働者の決定にゆだねている場合、始業時刻、終業時刻は労働者の決定にゆだねるとしながら、始業から必ず8時間は労働しなければならない旨義務付けている場合などは、フレックスタイム制ではないとされることがありますのでご注意ください。

そもそも、これらの場合にはフレックスタイム制のメリットがありません。

 

<出勤日や労働時間の決定>

たとえば、コアタイム以外の時間帯に、使用者側が会議を設定し労働者の出席を求めることは、フレックスタイム制の趣旨に反します。

ただ、使用者側が全く口出しできないというわけではなく、労働者と話し合って合意することは許されます。

仕事の内容を踏まえつつ、労働者同士で話し合って出勤日や労働時間を決めることも可能です。むしろ、そうすべきです。

使用者側からの一方的な押し付けであってはならないということです。

 

<フレックスタイム制のメリット>

労働者にとっては、生活と仕事のバランスを図ることができます(ワークライフバランス)。

また、使用者にとっても、効率的な労働力の提供を受けることにより、生産性の向上を図ることができます。

疲れた状態で業務に取り組むことを避ける一方で、必要がある場合には業務の完成までやり遂げるという運用が可能ですから、生産性が上がります。ただし、出勤日や勤務時間帯の選択は労働者にゆだねられますから、労働者がフレックスタイム制の意味を理解し正しく活用しなければなりません。

一般には、ある日に2時間残業して別の日に2時間早帰りして相殺するということはできません。なぜなら、割り増し賃金の分だけ労働者が損するからです。しかし、フレックスタイム制を正しく導入・運用すれば、この相殺も可能です。

 

<制度活用のために>

労働者の一人ひとりが、自分の好きなときに勤務しても良いということを勘違いすると、昨日も朝寝坊、今日も朝寝坊、いつ出勤するのか分からないことになりそうです。

そして、さっきまでいた人が、いつの間にか帰ってしまい困ったということもありえます。

実際に、こうしたことが原因で、せっかく導入したフレックスタイム制を使わなくなってしまう職場が多いのも事実です。

労働者が、始業終業の時間を自由に決められるというのは、使用者側から強制されないという意味なのです。一人ひとりが、その日の気分で変えられるという意味ではありません。

出勤日と勤務時間帯は、職場内での仕事の連動をよく考えて、みんなで話し合って決めましょう。この話し合いによるコミュニケーションの強化も、隠れた効果の一つです。無駄な仕事やダブりの仕事が見つかって、長時間労働の改善につながることもあります。

そして決めた結果は、自分の部署だけでなく他部署にも広く知らせておくようにしましょう。ホワイトボードとネットで共有したスケジュール表があれば万全です。

そして変更があれば、ただちに修正します。

ここのところが、フレックスタイム制活用の最大のポイントだと考えられます。

 

2018.06.24.解決社労士

<外国人労働者問題啓発月間>

厚生労働省では、毎年6月を「外国人労働者問題啓発月間」と定めています。

今年は「外国人雇用はルールを守って適正に~外国人が能力を発揮できる適切な人事管理と就労環境を!~」を標語に、事業主団体などの協力のもと、労働条件などルールに則った外国人雇用や高度外国人材の就職促進について、事業主や国民を対象とした集中的な周知・啓発活動が行われています。

こうした周知・啓蒙活動を前提として、全国の労働局や労働基準監督署により監督指導(調査)が行われますので、労働基準関係法令違反が指摘された場合には、「知らなかった」では済まされないことになります。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

外国人であれば日本人よりも安い賃金で雇えそうだという期待とは裏腹に、法令の適用については日本人と同じですから、人件費の節減も思うようにはいきません。

それどころか、日本語が上手ではない外国人にも安全教育が必要ですし、就業規則などのルールも説明しなければなりません。危険個所には、日本語以外の注意書きを表示する必要があります。

こうしてみると、外国人を雇った場合、そのお世話をする日本人の人件費も馬鹿にならないように思えます。

そもそも国籍の違いを理由に待遇を差別したら、それだけで違法になってしまいます。〔労働基準法3条〕

 

<ハローワークへの届出>

外国人の雇入れや離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出ることになっています。

届出に当たっては、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認する必要があるため、不法就労のチェックにもなります。

 

<外国人指針>

以上を踏まえて、外国人の雇用を行う場合には、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)を参考にしましょう。

 

外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針

 

第一 趣旨

この指針は、雇用対策法第八条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、事業主が講ずべき必要な措置について定めたものである。

 

第二 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して必要な措置を講ずるに当たっての基本的考え方

事業主は、外国人労働者について、雇用対策法、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)等の労働関係法令及び社会保険関係法令(以下「労働・社会保険関係法令」という。)を遵守するとともに、外国人労働者が適正な労働条件及び安全衛生を確保しながら、在留資格の範囲内でその有する能力を有効に発揮しつつ就労できる環境が確保されるよう、この指針で定める事項について、適切な措置を講ずるべきである。

 

第三 外国人労働者の定義

この指針において「外国人」とは、日本国籍を有しない者をいい、特別永住者並びに在留資格が「外交」及び「公用」の者を除くものとする。また、「外国人労働者」とは、外国人の労働者をいうものとする。

 

なお、「外国人労働者」には、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)第二条第一項に規定する技能実習生(以下「技能実習生」という。)も含まれるものである。

 

第四 外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずべき必要な措置

一 外国人労働者の募集及び採用の適正化

1 募集

事業主は、外国人労働者を募集するに当たっては、募集に応じ労働者になろうとする外国人に対し、当該外国人が採用後に従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間、就業の場所、労働契約の期間、労働・社会保険関係法令の適用に関する事項(以下1において「明示事項」という。)について、その内容を明らかにした書面の交付又は当該外国人が希望する場合における電子メールの送信のいずれかの方法(以下1において「明示方法」という。)により、明示すること。特に、募集に応じ労働者になろうとする外国人が国外に居住している場合にあっては、来日後に、募集条件に係る相互の理解の齟齬等から労使間のトラブル等が生じることのないよう、事業主による渡航費用の負担、住居の確保等の募集条件の詳細について、あらかじめ明確にするよう努めること。

 

また、事業主は、国外に居住する外国人労働者のあっせんを受ける場合には、職業安定法の定めるところにより、無料の職業紹介事業を行う地方公共団体又は職業紹介事業の許可を受けている者若しくは届出を行っている者(以下1において「職業紹介事業者等」という。)から受けるものとし、職業安定法又は労働者派遣法に違反する者からは外国人労働者のあっせんを受けないこと。その際、事業主は、求人の申込みに当たり、職業紹介事業者等に対し、明示事項を明示方法により、明示すること。なお、職業紹介事業者等が職業紹介を行うに当たり、国籍を理由とした差別的取扱いをすることは、職業安定法上禁止されているところであるが、事業主においても、職業紹介事業者等に対し求人の申込みを行うに当たり、国籍による条件を付すなど差別的取扱いをしないよう十分留意すること。

 

2 採用

事業主は、外国人労働者を採用するに当たっては、第五に定める方法等を通じ、あらかじめ、当該外国人が、採用後に従事すべき業務について、在留資格上、従事することが認められる者であることを確認することとし、従事することが認められない者については、採用してはならないこと。

 

事業主は、外国人労働者について、在留資格の範囲内で、外国人労働者がその有する能力を有効に発揮できるよう、公平な採用選考に努めること。特に、永住者、定住者等その身分に基づき在留する外国人に関しては、その活動内容に制限がないことに留意すること。

 

また、新規学卒者等を採用する際、留学生であることを理由として、その対象から除外することのないようにするとともに、異なる教育、文化等を背景とした発想が期待できる留学生の採用により、企業の活性化・国際化を図るためには、留学生向けの募集・採用を行うことも効果的であることに留意すること。

 

二 適正な労働条件の確保

1 均等待遇

事業主は、労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならないこと。

 

2 労働条件の明示

イ 書面の交付

 

事業主は、外国人労働者との労働契約の締結に際し、賃金、労働時間等主要な労働条件について、当該外国人労働者が理解できるようその内容を明らかにした書面を交付すること。

 

ロ 賃金に関する説明

 

事業主は、賃金について明示する際には、賃金の決定、計算及び支払の方法等はもとより、これに関連する事項として税金、労働・社会保険料、労使協定に基づく賃金の一部控除の取扱いについても外国人労働者が理解できるよう説明し、当該外国人労働者に実際に支給する額が明らかとなるよう努めること。

 

3 適正な労働時間の管理

事業主は、法定労働時間の遵守、週休日の確保をはじめ適正な労働時間管理を行うこと。

 

4 労働基準法等関係法令の周知

事業主は、労働基準法等関係法令の定めるところによりその内容について周知を行うこと。その際には、分かりやすい説明書を用いる等外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。

 

5 労働者名簿等の調製

事業主は、労働基準法の定めるところにより労働者名簿及び賃金台帳を調製すること。その際には、外国人労働者について、家族の住所その他の緊急時における連絡先を把握しておくよう努めること。

 

6 金品の返還等

事業主は、外国人労働者の旅券等を保管しないようにすること。また、外国人労働者が退職する際には、労働基準法の定めるところにより当該外国人労働者の権利に属する金品を返還すること。また、返還の請求から七日以内に外国人労働者が出国する場合には、出国前に返還すること。

 

三 安全衛生の確保

1 安全衛生教育の実施

事業主は、外国人労働者に対し安全衛生教育を実施するに当たっては、当該外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うこと。特に、外国人労働者に使用させる機械設備、安全装置又は保護具の使用方法等が確実に理解されるよう留意すること。

 

2 労働災害防止のための日本語教育等の実施

事業主は、外国人労働者が労働災害防止のための指示等を理解することができるようにするため、必要な日本語及び基本的な合図等を習得させるよう努めること。

 

3 労働災害防止に関する標識、掲示等

事業主は、事業場内における労働災害防止に関する標識、掲示等について、図解等の方法を用いる等、外国人労働者がその内容を理解できる方法により行うよう努めること。

 

4 健康診断の実施等

事業主は、労働安全衛生法等の定めるところにより外国人労働者に対して健康診断を実施すること。その実施に当たっては、健康診断の目的・内容を当該外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。また、外国人労働者に対し健康診断の結果に基づく事後措置を実施するときは、健康診断の結果並びに事後措置の必要性及び内容を当該外国人労働者が理解できる方法により説明するよう努めること。

 

5 健康指導及び健康相談の実施

事業主は、産業医、衛生管理者等を活用して外国人労働者に対して健康指導及び健康相談を行うよう努めること。

 

6 労働安全衛生法等関係法令の周知

事業主は、労働安全衛生法等関係法令の定めるところによりその内容についてその周知を行うこと。その際には、分かりやすい説明書を用いる等外国人労働者の理解を促進するため必要な配慮をするよう努めること。

 

四 雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金保険の適用

1 制度の周知及び必要な手続の履行

事業主は、外国人労働者に対し、雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金保険(以下「労働・社会保険」という。)に係る法令の内容及び保険給付に係る請求手続等について、雇入れ時に外国人労働者が理解できるよう説明を行うこと等により周知に努めること。また、労働・社会保険に係る法令の定めるところに従い、被保険者に該当する外国人労働者に係る適用手続等必要な手続をとること。

 

2 保険給付の請求等についての援助

事業主は、外国人労働者が離職する場合には、外国人労働者本人への雇用保険被保険者離職票の交付等、必要な手続を行うとともに、失業等給付の受給に係る公共職業安定所の窓口の教示その他必要な援助を行うように努めること。

 

また、外国人労働者に係る労働災害等が発生した場合には、労災保険給付の請求その他の手続に関し、外国人労働者からの相談に応ずること、当該手続を代行することその他必要な援助を行うように努めること。

 

さらに、厚生年金保険については、その加入期間が六月以上の外国人労働者が帰国する場合、帰国後、加入期間等に応じた脱退一時金の支給を請求し得る旨帰国前に説明するとともに、年金事務所等の関係機関の窓口を教示するよう努めること。

 

五 適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等

1 適切な人事管理

事業主は、その雇用する外国人労働者が円滑に職場に適応し、当該職場での評価や処遇に納得しつつ就労することができるよう、職場で求められる資質、能力等の社員像の明確化、職場における円滑なコミュニケーションの前提となる条件の整備、評価・賃金決定、配置等の人事管理に関する運用の透明化等、多様な人材が能力発揮しやすい環境の整備に努めること。その際、公共職業安定所の行う雇用管理に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

 

2 生活指導等

事業主は、外国人労働者の日本社会への対応の円滑化を図るため、外国人労働者に対して日本語教育及び日本の生活習慣、文化、風習、雇用慣行等について理解を深めるための指導を行うとともに、外国人労働者からの生活上又は職業上の相談に応じるように努めること。

 

3 教育訓練の実施等

事業主は、外国人労働者が、在留資格の範囲内でその能力を有効に発揮しつつ就労することが可能となるよう、教育訓練の実施その他必要な措置を講ずるように努めるとともに、苦情・相談体制の整備、母国語での導入研修の実施等働きやすい職場環境の整備に努めること。

 

4 福利厚生施設

事業主は、外国人労働者について適切な宿泊の施設を確保するように努めるとともに、給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用について、外国人労働者にも十分な機会が保障されるように努めること。

 

5 帰国及び在留資格の変更等の援助

イ 事業主は、その雇用する外国人労働者の在留期間が満了する場合には、当該外国人労働者の雇用関係を終了し、帰国のための諸手続の相談その他必要な援助を行うように努めること。

 

ロ 事業主は、外国人労働者が在留資格を変更しようとするとき又は在留期間の更新を受けようとするときは、その手続を行うに当たっての勤務時間の配慮その他必要な援助を行うように努めること。

 

6 労働者派遣又は請負を行う事業主に係る留意事項

労働者派遣の形態で外国人労働者を就業させる事業主にあっては、当該外国人労働者が従事する業務の内容、就業の場所、当該外国人労働者を直接指揮命令する者に関する事項等、当該外国人労働者の派遣就業の具体的内容を当該外国人労働者に明示する、派遣先に対し派遣する外国人労働者の氏名、労働・社会保険の加入の有無を通知する等、労働者派遣法の定めるところに従い、適正な事業運営を行うこと。また、派遣先は、労働者派遣事業の許可を受けていない者又は届出を行っていない者からは外国人労働者に係る労働者派遣を受けないこと。

 

請負を行う事業主にあっては、請負契約の名目で実質的に労働者供給事業又は労働者派遣事業を行うことのないよう、職業安定法及び労働者派遣法を遵守すること。

 

また、請負を行う事業主は、自ら雇用する外国人労働者の就業場所が注文主である他の事業主の事業所内である場合に、当該事業所内で、第六で選任する雇用労務責任者等に人事管理、生活指導等の職務を行わせること。

 

六 解雇の予防及び再就職の援助

事業主は、事業規模の縮小等を行おうとするときは、外国人労働者に対して安易な解雇等を行わないようにするとともに、やむを得ず解雇等を行う場合は、その対象となる外国人労働者で再就職を希望する者に対して、関連企業等へのあっせん、教育訓練等の実施・受講あっせん、求人情報の提供等当該外国人労働者の在留資格に応じた再就職が可能となるよう、必要な援助を行うように努めること。その際、公共職業安定所と密接に連携するとともに、公共職業安定所の行う再就職援助に係る助言・指導を踏まえ、適切に対応すること。

 

第五 外国人労働者の雇用状況の届出

事業主は、雇用対策法第二十八条第一項及び附則第二条第一項の規定に基づき、新たに外国人労働者を雇い入れた場合若しくはその雇用する外国人労働者が離職した場合又は平成十九年十月一日の時点で現に外国人労働者を雇い入れている場合には、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等の一に掲げる事項について、二に掲げる方法により確認し、三に掲げる方法及び期限に従って、当該事項を当該事業主の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に届け出ること。なお、確認に当たっての留意事項は、四のとおりとすること。

 

一 確認し、届け出るべき事項

イ 雇用保険被保険者資格を有する外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について

氏名、在留資格(資格外活動の許可を受けて就労する者を雇い入れる場合にあっては当該許可の有無を含む。ロにおいて同じ。)、在留期間、生年月日、性別、国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号ロに規定する地域(以下「国籍・地域」という。)のほか、職種、賃金、住所等の雇用保険被保険者資格取得届又は雇用保険被保険者資格喪失届に記載すべき当該外国人の雇用状況等に関する事項

 

ロ 雇用保険被保険者資格を有さない外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について

氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域

 

ハ 平成十九年十月一日の時点で現に雇い入れている外国人労働者について

氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域

 

二 確認の方法

イ ロに該当する者以外の外国人労働者について

当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者のうち、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令(平成二十四年厚生労働省令第九十七号。以下「整備省令」という。)附則第二条第一項の規定により外国人登録証明書が在留カードとみなされる者にあっては外国人登録証明書とし、その他の者にあっては旅券又は在留資格証明書とする。)の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

 

ロ 資格外活動の許可を受けて就労する外国人労働者について

当該外国人労働者の在留カード(在留カードを所持しない者のうち、整備省令附則第二条第一項の規定により外国人登録証明書が在留カードとみなされる者にあっては外国人登録証明書及び旅券、在留資格証明書、資格外活動許可書又は就労資格証明書とし、その他の者にあっては旅券又は在留資格証明書(当該外国人労働者が資格外活動の許可を受けている旨が記載されていない場合には、資格外活動許可書又は就労資格証明書を含む。)とする。)の提示を求め、届け出るべき事項を確認する方法

 

三 届出の方法・期限

イ 雇用保険被保険者資格を有する外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について

雇入れに係る届出にあっては雇い入れた日の属する月の翌月十日までに、雇用保険被保険者資格取得届と併せて、必要事項を届け出ることとし、離職に係る届出にあっては離職した日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届と併せて、必要事項を届け出ること。

 

ロ 雇用保険被保険者資格を有さない外国人労働者(ハに該当する者を除く。)について

雇入れに係る届出、離職に係る届出ともに、雇入れ又は離職した日の属する月の翌月の末日までに、雇用対策法施行規則(昭和四十一年労働省令第二十三号)様式第3号(以下「様式第3号」という。)に必要事項を記載の上、届け出ること。

 

ハ 平成十九年十月一日時点で現に雇い入れている外国人労働者について

平成二十年十月一日までの間に、様式第3号に必要事項を記載の上、届け出ること。ただし、当該者が離職した場合にあっては、イ又はロの方法・期限に従い届け出ること。

 

四 確認に当たっての留意事項

事業主は、雇い入れようとする者(平成十九年十月一日時点で現に雇い入れている者を含む。)について、通常の注意力をもって当該者が外国人であると判断できる場合に、当該者に係る一の事項を確認すること。ここで通常の注意力をもって当該者が外国人であると判断できる場合とは、特別な調査等を伴うものではなく、氏名や言語などから、当該者が外国人であることが一般的に明らかである場合をいうこと。このため、例えば、通称として日本名を用いており、かつ、日本語の堪能な者など、通常の注意力をもっては、当該者が外国人であると判断できない場合にまで、確認を求めるものではないこと。なお、一に掲げる事項以外の事項の確認・届出は必要のないものであり、外国人労働者のプライバシーの保護の観点からも、この点に十分留意すること。

 

第六 外国人労働者の雇用労務責任者の選任

事業主は、外国人労働者を常時十人以上雇用するときは、この指針の第四に定める事項等を管理させるため、人事課長等を雇用労務責任者(外国人労働者の雇用管理に関する責任者をいう。)として選任すること。

 

第七 技能実習生に関する事項

技能実習生については、外国人労働者に含まれるものであることから、第四から第六までに掲げるところによるものとするほか、事業主は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針(平成二十九年法務省・厚生労働省告示第一号)に規定する技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るための施策に関する事項等の内容に留意し、技能実習生に対し実効ある技術、技能等の修得が図られるように取り組むこと。

 

第八 職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の援助と協力

事業主は、職業安定機関、労働基準監督機関その他関係行政機関の必要な援助と協力を得て、この指針に定められた事項を実施すること。

 

2018.06.23.解決社労士

<労基法違反が7割!>

平成30(2018)620日、厚生労働省から外国人技能実習生の実習実施者に対する平成29年の監督指導・送検等の状況が公表されました。

外国人技能実習生を迎え入れる企業は、雇っているという感覚に陥ることがあります。しかし、技能実習生を迎え入れるというのは、あくまでも技能実習をさせるわけですから、雇い主ではなくて実習実施者という立場に立たされます。

全国の労働局や労働基準監督署により監督指導(調査)が行われた実習実施者のうち、労働基準関係法令違反が認められたのは実に70.8%に達しています。

 

<外国人技能実習制度>

外国人技能実習制度は、外国人が企業などでの実習を通して技術を習得し、母国の経済発展を担う人材となるよう育成することを目的としています。しかし、実習実施者では、労使協定を超えた残業、割増賃金の不払い、危険や健康障害を防止する措置の未実施などの労働基準関係法令に違反する事例が依然として存在しています。

外国人であっても、日本国内で働く人には、原則として日本の労働基準法などが適用されるのですが、適用されないという勘違いも多いようです。

 

<外国人技能実習生の保護>

全国の労働局や労働基準監督署は、実習実施者に対し、監督指導などを実施することで、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に取り組んでいます。

■ 労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した5,966事業場(実習実施者)のうち4,226事業場(70.8%)。

■ 主な違反事項は、(1)労働時間(26.2%)、(2)使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(19.7%)、(3)割増賃金の支払(15.8%)の順に多かった。

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは34件。

全国の労働局や労働基準監督署は、監理団体や実習実施者に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めるとともに、労働基準関係法令違反の疑いがある実習実施者に対しては監督指導を実施するなど、引き続き、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組んでいくということです。

なお、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくそうです。

 

2018.06.22.解決社労士

<最近の傾向>

厚生労働省は、月々の労災発生状況(速報値)を翌月の20日前後に発表しています。

その中でも、特に転倒災害の増加が心配です。

平成30(2018)年3月分 6,988人(前年同期比 +1,621人、30.2%増加)

平成30(2018)年4月分 9,255人(前年同期比 +1,828人、24.6%増加)

平成30(2018)年5月分 11,653人(前年同期比 +2,186人、23.1%増加)

1か月だけの統計であれば、偶然多かったということもありますが、前年同期比で20%以上の増加が見られるということは、傾向が明らかだといえるでしょう。

厚生労働省が「STOP!転倒災害プロジェクト」を実施してきたにもかかわらず、こうした結果が出ているのです。

 

<転倒災害を防ぐには>

人手不足の折、転んで休業したり業務内容が制限されたりの社員が増えたのでは困ります。

厚生労働省では、次のような項目のチェックを呼びかけていますので参考にしてください。

□ 通路、階段、出⼝に物を放置していませんか

□ 床の水たまりや氷、油、粉類などは放置せず、その都度取り除いていますか

□ 安全に移動できるように⼗分な明るさ(照度)が確保されていますか

□ 転倒を予防するための教育を⾏っていますか

□ 作業靴は、作業現場に合った耐滑性があり、かつちょうど良いサイズのものを選んでいますか

□ ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成し、周知していますか

□ 段差のある箇所や滑りやすい場所などに注意を促す標識をつけていますか

□ ポケットに手を入れたまま歩くことを禁止していますか

□ ストレッチ体操や転倒予防のための運動を取り入れていますか

 

2018.06.21.解決社労士

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

欧米で普及している同一労働同一賃金の考え方を日本に普及させるにあたっては、日本の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇の不均衡に焦点が当てられています。

平成28(2016)12月には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差がどのような場合に不合理とされるかを事例等で示す「 同一労働同一賃金ガイドライン案 」が「 働き方改革実現会議 」に提示されました。

 

<同一労働同一福利厚生>

同一労働同一賃金という名称からすると、賃金の同一が対象であって、福利厚生のことまでは求められていないかのように思われます。

しかし、上記の説明のとおり、同一が求められているのは待遇であって賃金に限られません。

賃金が待遇の代表的な要素であるために、わかりやすく同一賃金と表現しているに過ぎないのです。

実際、「 同一労働同一賃金ガイドライン案 」は福利厚生についても基準を示しています。

 

<福利厚生施設>

無期雇用フルタイム労働者と同一の事業場で働く有期雇用労働者またはパートタイム労働者には、食堂、休憩室、更衣室などについて、同一の利用を認めなければなりません。

同一の利用」というのは、「同一の福利厚生施設」という意味ではありません。

問題とされる事例としては、無期雇用フルタイム労働者だけに専用のロッカーが用意されている、正午から午後1時までに食堂を利用できるのは無期雇用フルタイム労働者に限られているなどです。

 

<転勤者用社宅>

無期雇用フルタイム労働者と同一の支給要件(転勤の有無、扶養家族の有無、住宅の賃貸、収入の額など)を満たす有期雇用労働者またはパートタイム労働者には、同一の利用を認めなければなりません。

ここでも「同一の利用」ですから、自己負担額に不当な格差を設けることはできません。

しかし、転勤が無期雇用フルタイム労働者に限られているのであれば、有期雇用労働者またはパートタイム労働者に転勤者用社宅の利用を認める必要はありません。

 

<勤務免除・有給保障>

慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障などは、有期雇用労働者またはパートタイム労働者にも、無期雇用フルタイム労働者と同一の付与をしなければなりません。

しかし、「同一の付与」を前提として、所定労働日数が相当程度少ないパートタイム労働者に対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合にだけ慶弔休暇を付与するという運用も考えられます。

 

<病気休職>

病気休職を付与する場合、無期雇用パートタイム労働者には、無期雇用フルタイム労働者と同一の付与をしなければなりません。

また、有期雇用労働者にも、労働契約の残存期間を踏まえて、付与しなければなりません。ただし、病気休職の期間を契約期間の終了日までとすることは問題ありません。

 

以上のように、福利厚生については形式的な均衡だけでなく、実質的な均衡が求められています。現在の自社の福利厚生が、同一労働同一賃金の考え方に反していないかの分析は、社会保険労務士などの専門家を交えて行うことをお勧めします。

 

2018.06.20.解決社労士

<大阪北部の地震で>

平成30(2018)618日午前8時前に、大阪府の北部で震度6弱の地震が発生しました。

「京セラドーム大阪の屋根に亀裂」「京阪電車が脱線」「シマウマが脱走」「箕面市全域で断水」などのデマが流れ、住民の不安をあおりました。

地域の住民にとっては大変な迷惑なのですが、これを取り締まるのは困難ですし、犯罪として立件するのも至難の業です。

一方、これが特定の会社の中で起こった場合には、犯人捜しは割と楽かも知れません。

会社の中で社員についての噂を流し、これが社内に広まった場合には、たとえその噂が真実であったとしても、刑法には次のように規定されていて、名誉棄損罪が成立しうるので注意したいものです。

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」〔刑法2301項〕

 

<誰も傷付かない噂>

特定の店舗や営業所に、就業規則の運用について間違った噂が流れることがあります。

これ自体、誰の名誉も傷付けることは無いのですが、会社全体で考えたときは不公平が生じますし、内容によっては労働法違反となることもあります。

社長も人事部門の社員も知らないうちに、会社の一部門で違法なことが行われていても、なかなか気づかないものです。

実際、次のような噂は立ちやすいものです。

・入社して14日目までは自由に解雇できる。

・試用期間中は社会保険に入らなくてもよい。

・予め本人の承諾があればセクハラやパワハラは問題にならない。

・仕事のやり直しによる残業は本人に責任があるので残業代は出ない。

・残業を8時間貯めると1日休める。

・本人の不注意による労災は、自己責任なので労災保険の対象外となる。

・過失で会社の物品を壊したら全額弁償しなければならない。

どれもこれも職場の責任者に都合の良い嘘ですが、真に受けると罰則が適用されうる危険な作り話です。

 

<就業規則は有効であっても>

就業規則は、社内に周知すれば有効です。この場合の周知というのは、読もうと思えば社員の誰でも読める状態にしておくことです。

しかし、社員が就業規則のルールに従って行動できるようにするためには、定期的な教育研修が必要です。特に部門長以上に対しては、会社のルールをきちんと理解させ記憶させておかなければ、いつの間にか自分に都合のよいルールを作りかねません。

店長などの部門長が、何か困り事があって人事部門に相談したところ、「これは例外に当たるので…」という説明を受けても、それが店長にとって都合のよい話であれば、すべてに類推解釈や拡張解釈して運用することもあるのです。

 

会社を守るため、就業規則を含め会社のルールについては、定期的な研修会の実施を怠りたくないものです。

 

2018.06.19.解決社労士

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

欧米で普及している同一労働同一賃金の考え方を日本に普及させるにあたっては、日本の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇の不均衡に焦点が当てられています。

平成28(2016)12月には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差がどのような場合に不合理とされるかを事例等で示す「 同一労働同一賃金ガイドライン案 」が「 働き方改革実現会議 」に提示されました。

 

<手当の性質を踏まえて>

同一労働同一賃金の考え方からすると、それぞれの手当ごとに支給の趣旨、支給の理由が、就業規則などで明らかになっている必要があります。

本音のところで、「正社員の賃金を非正規社員より高くするため」適当な名目の手当を設定したとしても、こうした説明では明らかにアウトです。正社員の賃金を高く設定しようとしたのには必ず理由があり、その理由をもとに手当の支給の趣旨と理由を明確にすれば良いのです。

同じ名称の手当であっても、支給の趣旨や理由は企業によって異なります。最高裁判所が、「皆勤手当を契約社員に支給しないのはダメ。住宅手当を支給しないのはOK」という判決を出したからといって、「皆勤手当に住宅手当という名前を付けて支給すれば良い」ということにはなりません。

やはり手当の名称ではなくて、それぞれの企業でそれぞれの手当の趣旨と支給理由が明らかにされなければなりません。これが不明確な企業では、労働者から「同一労働同一賃金に反する」と主張された場合に、反論の手がかりすらありません。

説明不足が原因で、企業への貢献度が高い労働者が転職を考えるようになってしまうのは残念なことです。

 

<役職手当の性質をもつ手当>

役職の内容、責任の範囲・程度に応じて支給する手当です。

非正規社員は役職に就かないというルールであれば、非正規社員にこの手当を支給しないのは当然のことでもあります。

しかし、役職に就くことがあるのなら支給しなければなりませんし、役職の内容、責任の範囲・程度に一定の違いがある場合には、その相違に応じた支給をしなければなりません。

 

<日曜出勤手当・深夜勤務手当などの性質をもつ手当>

特殊勤務手当のように、出勤日や勤務時間帯など勤務形態に応じて支給される手当は、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も同じ基準で支給されなければなりません。

日曜日や深夜に勤務できる人材はなかなか採用できないので、少し手当を上乗せして採用しやすくすることは問題ありません。

カレンダー上の休日が、必ずしも労働契約上の休日ではありませんから、日曜出勤手当と労働基準法の割増賃金とは別の話です。

一方、午後10時から翌日午前5時までの勤務には、労働基準法に定められた割増賃金が発生しますので、この割増賃金と深夜出勤手当との関係についても明確にしなければなりません。

 

<精皆勤手当の性質をもつ手当>

基本的には、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も同じ基準で支給されなければなりません。

ただ、週5日出勤の契約で勤務する労働者には皆勤手当を支給するものの、欠勤に対しては欠勤控除に加えてマイナス査定があり、週4日以下出勤の労働条件で働く非正規雇用労働者には皆勤手当を支給しないが、欠勤に対してマイナス査定も無いという運用は、均衡が取れているので許されると考えられます。

 

<その他その性質上同様に支給されるべき手当>

特殊作業手当のように、業務の危険度や作業環境に応じて支給される手当は、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も同じ基準で支給されなければなりません。

通勤手当、出張旅費手当、食事手当、単身赴任手当、地域手当の性質をもつ手当なども、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も同じ基準で支給されなければなりません。ただし、採用圏を近隣に限定しているパートタイム労働者が、採用圏外に転居した場合に、採用圏内の交通費を基準に通勤手当を支給しても問題とはなりません。

時間外、深夜、休日の割増賃金を、労働基準法の最低基準を上回る割増率で支給する場合には、正規雇用労働者も非正規雇用労働者も同じ割増率で支給されなければなりません。

 

現在の自社の各手当は、何を基準に決められているのか、それは同一労働同一賃金の考え方に反していないのかという分析は、社会保険労務士などの専門家を交えて行うことをお勧めします。

 

2018.06.18.解決社労士

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

欧米で普及している同一労働同一賃金の考え方を日本に普及させるにあたっては、日本の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要であり、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇の不均衡に焦点が当てられています。

平成28(2016)12月には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差がどのような場合に不合理とされるかを事例等で示す「 同一労働同一賃金ガイドライン案 」が「 働き方改革実現会議 」に提示されました。

 

<基本給の性質>

現実の基本給は、複合的な性質を備えているものですし、企業によっても異なっています。また、特に基本給の性質ということを考えることなく、世間相場から設定しているに過ぎない企業もあります。

しかし、何を基準に基本給を設定しているのか不明確な企業では、労働者から「同一労働同一賃金に反する」と主張された場合に、反論の手がかりすらありません。昇給についても同様で、世間相場を参考に昇給を考えていたのでは、企業への貢献度が高い労働者は転職を考えやすくなってしまいます。

主な基本給の考え方としては、次のようなものがあります。

・労働者の職業経験・能力に応じて支給

・労働者の業績・成果に応じて支給

・労働者の勤続年数に応じて支給

 

<職業経験・能力に応じて支給する場合>

企業の実施する教育研修について、すべての従業員が本人の希望により自由に参加できる機会を与えられ、習得が認定された能力に応じて基本給が設定されるならば問題がありません。しかし、参加者が正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)に限定されているのであれば、同一労働同一賃金の考え方に反する恐れがあります。

また、同一労働同一賃金の考え方からすると、基本給の基準となる職業経験や能力は、現在の業務について判断することになります。たとえば配置転換によって、経験の浅い業務に移ってしまうと、理屈の上では基本給も下がることになりますから、本人の同意のもとに行う必要があります。

 

<業績・成果に応じて支給する場合>

単純に考えると、業績・成果が5割多い人の基本給は、他の人よりも5割多いということになります。ここで業績・成果を計る場合に、全員一律の目標を設定してその達成率に応じた基本給にすると、出勤日数が少ない、あるいは、1日の労働時間が短い労働者は、達成率が低く計算されるため同一労働同一賃金の考え方に反してしまいます。目標を設定する場合には、月間労働時間に比例した内容にするなどの工夫が必要となります。

また、店長が店舗の業績に責任を負っていて、店舗の業績・成果が低いとマイナス評価されるような場合には、この責任を加味した適度に高い基本給設定は問題ありません。

 

<勤続年数に応じて支給する場合>

契約の更新がある有期雇用労働者の勤続年数は、最初の雇用契約開始時から通算して計算することになります。

その時点の雇用契約の期間のみを勤続年数として計算すると、同一労働同一賃金の考え方に反してしまいます。

 

<基本給の複合的な性質を踏まえて>

実際には、上の3つの考え方のうち、どれか1つだけを基準に基本給が設定されることは稀です。いくつかの基準が複合的に絡み合って設定されているものです。その場合でも、それぞれの基準についての考え方を応用することになります。

ただ、基本給の性質をどのように設定しようとも、「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者またはパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という抽象的な話では説明不足になり、同一労働同一賃金の考え方に反するという主張に対して、反論のしようがありません。

主観的・抽象的説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの違いについて、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして不合理なものであってはならないのですから、基本給を設定した側だけが理解できて、労働者が理解できない説明では困ります。

 

現在の自社の基本給は、何を基準に決められているのか、それは同一労働同一賃金の考え方に反していないのかという分析は、社会保険労務士などの専門家を交えて行うことをお勧めします。

 

2018.06.17.解決社労士

<契約自由の原則>

契約自由の原則は、契約を当事者の自由にまかせ、国家はこれに干渉してはならないとする近代法の原則です。

これには、契約をする/しない自由、契約の相手方選択の自由、契約内容決定の自由、口頭か書面によるのかなど方式の自由、契約内容変更・契約解消の自由が含まれます。

契約に関する基本事項を規定している民法に、契約自由の原則を直接規定する条文は無いのですが、90条(公序良俗違反の法律行為の無効)や91条(任意規定と異なる意思表示)などにその趣旨があらわれています。

 

<労働契約法の規定>

労働契約も契約の一種であり、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立します。〔労働契約法6条〕

つまり、労働者の「働きますから賃金をください」という意思表示と、雇い主の「賃金を支払いますから働いてください」という意思表示が合致することによって、労働契約が成立します。

そもそも、労働契約法が制定された目的は、労働者および使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、または変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定または変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することにあります。〔労働契約法1条〕

このことからすると、どのような労働契約にするかは当事者の自由であって、複数の労働者が同じ価値の労働を提供する場合に、一人ひとり異なる賃金にしてもかまわないということになります。

 

<同一労働同一賃金の趣旨>

ところが現在、同一労働同一賃金という考え方が主張され、ガイドライン案が作成されたり、この考え方に関わる最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)が下されたりということで、話題に上ることが多くなっています。

これは、契約自由の原則の趣旨を踏まえて、労働契約の締結を自由に任せておいたところ、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、不合理と見られる待遇差が増えてしまったという不都合が問題視されているためです。

原因としては、非正規雇用労働者が雇い主との間で労働契約の内容を決定する場合に、かなり弱い立場にあって、自由な交渉が大きく制限されているという実態が浮かび上がります。

つまり、当事者の対等な立場での交渉を前提とする契約自由の原則は、非正規雇用労働者には当てはまらないのに、当てはまるものとして放置されてきたことに対する反省があります。

ただ、日本国内で言われている同一労働同一賃金は、同一企業内での話に留まっていますし、完全に同一や均等までは求められていません。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者との区分がある以上、その間の格差は当然に存在するものであることは認め、不合理な差別とならないように均衡を求める趣旨となっています。

労働契約法20条も、次のように規定しています。

 

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

 

この条文の解釈については、平成30(2018)61日の2つの最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)にも示されています。

 

<企業のとるべき対応>

基本給、手当、退職金、休暇などについて、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な格差があるのであれば、均衡するように改める必要があります。

また、不合理な内容ではなくても、両者で異なる取扱いをしている場合には、就業規則に具体的な趣旨や合理性を説明しておくことが必要です。

たとえば、正社員だけに住宅手当を支給しているのであれば、「契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得るから」という理由の明示が必要となるのです。

 

2018.06.16.解決社労士

<障害者手帳>

障害のある人が取得できる手帳全体を障害者手帳と呼んでいます。

この手帳を取得することで、各種福祉サービスを受けることができます。

大まかに分類すると、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳に分かれます。

取得するには、市区町村への申請が必要であり、申請の方法が市区町村によって異なっていたり、手続きが複雑であったりします。

そして、手帳の名称も全国で統一されているわけではありません。

 

<障害年金>

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

このことから、障害年金を受け取ろうとする場合には、初診日を証明する必要があります。

障害年金は障害の程度により、障害基礎年金が1級と2級、障害厚生年金が1級から3級に区分されて支給されます。

また、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。

さらに、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件(保険料納付要件)が設けられています。

このように障害年金には、初診日の証明や保険料納付要件がありますので、障害者手帳を取得できたとしても、障害年金を受給できないことがあるのです。

 

<障害基礎年金の保険料納付要件>

国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。

この障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

 

<障害厚生年金の支給>

厚生年金に加入している間に初診日のある病気やケガで障害基礎年金の1級または2級に該当する障害の状態になったときは、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

また、障害の状態が2級に該当しない程度の軽い障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。

なお、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金を受けるよりも軽い障害が残ったときには障害手当金(一時金)が支給されます。

この障害厚生年金・障害手当金を受けるためには、障害基礎年金の保険料納付要件を満たしていることが必要です。

 

2018.06.15.解決社労士

<加入者と事業主の取組が料率に反映>

協会けんぽでは、平成30(2018)年度からインセンティブ(報奨金)制度が導入されています。ただし、保険料率への反映は平成32(2020)年度からとなっています。

この制度は、協会けんぽの各都道府県支部の加入者と事業主の取組に応じて、インセンティブ(報奨金)を付与し、それを健康保険料率に反映させるものです。

 

<反映のさせ方>

まず、制度の財源となる保険料率として、新たに全支部の保険料率の中に段階的に一定の割合を盛り込みます。

 

平成30年度(平成32年度保険料率):0.004%

平成31年度(平成33年度保険料率):0.007%

平成32年度(平成34年度保険料率):0.01%

 

そして、特定健診・保健指導の実施率やジェネリック医薬品の使用割合などの評価指標に基づき、全支部をランクづけし、ランキングで上位過半数に該当した支部については、支部ごとの得点数に応じた報奨金によって保険料率を引き下げます。

 

<具体的な評価指標>

1.生活習慣病予防検診や特定健診の受診率

2.特定保健指導の実施率

3.特定保健指導対象者の減少率

4.医療機関への受診勧奨を受けた要治療者の医療機関受診率

5.後発(ジェネリック)医薬品の使用割合

これらに取り組むと、医療費の削減が期待されるわけですから、その努力に応じて都道府県支部単位で保険料率を下げるという、公平をはかる制度だと考えられます。

 

2018.06.14.解決社労士

<残業の性質>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさい、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

ところが、社員がこの原則に違反して残業してしまった場合、タイムカードなどに出退勤の記録が残っている以上、会社は残業代を支払わざるを得ません。

 

<残業代を稼ぎたい社員の行動>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

つまり、生産性が低いわけですから、これを人事考課に反映させて評価を低くし、賞与の金額を下げたり昇給を抑えたりということは、人事考課制度本来の目的にかなっています。

 

<残業したがらない社員の行動>

早く会社を出て、家に帰りたい、飲みに行きたい、パチンコをしたいなど、個人的な欲求から残業したがらない社員もいます。

残業の本来の性質からすれば、周囲の雰囲気を察して自発的に残業を打診しないからといって評価を下げてしまうのは、人事考課制度の適切な運用ではありません。

しかし、上司から残業命令が出ても、これを無視して業務を離れてしまうのは、評価を下げる正当な理由となりますし、しばしば行われれば懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<残業と人事考課との関係>

このように、残業時間の多寡と評価との関係は単純ではありません。

残業が多い理由、あるいは、少ない理由を踏まえて評価を考えることが必要で

す。

単純に考えれば、自己都合の身勝手な残業と残業拒否は評価を下げるといえるでしょう。

 

<大前提として>

法定労働時間を超える残業は、所轄労働基準監督署長への三六協定書の届出が無ければ違法になってしまいます。

そもそも、就業規則に残業を命じる場合がある旨を規定しておかなければ、残業を命じる根拠がありません。

こうした手続き的なことは、残業の大前提となりますから、足元をすくわれないよう、しっかりと行っておきましょう。

 

2018.06.13.解決社労士

<注目の最高裁判決>

平成30(2018)61日、最高裁判所第二小法廷でハマキョウレックス事件判決と長澤運輸事件判決が下されました。

労働契約法20条が禁じる不合理な格差について、最高裁判所が初めて判断を示したものとして注目されました。

裁判長・裁判官はどちらの判決も同じで、裁判官全員一致の意見となっています。

 

<労働契約法20条とは>

労働契約法20条は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止について次のように定めています。

 

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

対象者は、雇用期間に期限のある有期契約労働者です。

同じ企業の中で、この有期契約労働者の待遇が、無期契約労働者(主に正社員)の待遇と均衡していなければならないということを定めています。

手当など待遇に差異がある場合には、次のような正当な理由が求められます。

・業務内容の違い

・責任の程度の違い

・職務の内容の違い

・配置転換の有無やその範囲の違い

・その他の事情の違い

これらの理由は、相当程度、具体的なものであることが必要です。

 

<最高裁の判断>

最高裁判所は2つの判決で、無期契約労働者(主に正社員)に支給されている手当が、有期契約労働者に支給されず、または減額されている場合について、正当な理由の有無を検討しています。

まず、手当ごとに支給の趣旨を確認し、つぎに、その趣旨からすると差異を設けていることが不合理ではないかということを検討し、結論を下すという手法です。

この2つの判決で示されたのは、このような手法により労働契約法20条違反の有無を判断するということです。

 

<企業に求められる対応>

有期契約労働者の待遇が、無期契約労働者(主に正社員)の待遇とは異なることを前提として、その待遇が均衡していることが求められます。

手当に差があるのであれば、各手当について支給の趣旨を就業規則などに具体的に規定しておく必要があります。

手当の趣旨が抽象的であれば、有期契約労働者や有期契約労働者であった退職者から、労働契約法20条違反を主張され、一定の金銭を請求されるリスクが発生します。

 

<今後予想される展開>

労働者の働きぶりに応じて、処遇に差異を設けようとすると、いきおい手当の種類が増えてきます。

また企業の多くは、賞与を算定する場合に、基本給の何か月分という形をとっています。賞与の金額を抑えるために、基本給に含まれない手当が増える傾向も見られます。

今回の最高裁判決では、手当に含まれる問題点がクローズアップされました。

そこでリスク低減のため、手当の種類を減らし、なるべく基本給に一本化していく動きが出てくるものと予想されます。

しかし、これは安易な手法であり、「逃げ」の態度を示すことに他なりません。

企業の経営者の皆さんには、有期契約労働者の待遇が、無期契約労働者(主に正社員)の待遇と均衡するよう、制度の改善を期待したいところです。

 

2018.06.12.解決社労士

<年次有給休暇取得権の保護>

使用者が、年次有給休暇の取得を妨害する措置をとっても構わないのであれば、労働者の権利は容易に侵害されてしまいます。

こうした事態を防ぐため、労働基準法には次の規定が置かれています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この規定の最後の「しないようにしなければならない」という言い回しが曲者(くせもの)です。

こうした言い回しは、使用者の「努力義務」を規定しているものとされます。違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない程度の義務であって、一定の努力を示せば良いとされるものです。

ですから、正面から年次有給休暇の取得を妨害するような露骨な措置をとれば、この努力義務違反となりうるのですが、全く別の目的からとられた措置であって、年次有給休暇の取得を抑制する効果が小さければ、許されることもあるのです。

 

<「努力義務」違反の例>

年次有給休暇を取得した日について欠勤扱いとし、給与計算で欠勤控除とする措置は、労働基準法136条に違反します。給与計算のうえで、年次有給休暇を取得しても、欠勤した場合と同じ効果しか無いのであれば、年次有給休暇を労働者の権利とした意味がありません。

また、賞与の査定の際に、年次有給休暇の取得日数に応じたマイナス評価をして、取得日数分の給与に相当する金額を賞与から控除するような措置も、同様の理由から労働基準法136条に違反します。

 

<「努力義務」違反にはならない例>

労働基準法136条違反が争われた沼津交通事件では、最高裁判所が次のような判断を示しています。(平成5625日)

 

タクシー会社では、乗務員の出勤率が低下して自動車の実働率が下がることを防止する目的で、皆勤手当の制度を採用することがある。

この会社では、年次有給休暇と欠勤を合わせて1日であれば減額した皆勤手当てを支給し、2日以上であれば支給しないという運用をしていたが、皆勤手当の金額は最大でも給与の1.85%に過ぎなかった。

このように、この会社の皆勤手当は年次有給休暇の取得を抑制する目的を持たず、また、その金額からも年次有給休暇の取得を抑制する効果を持つものではないので、労働基準法136条に違反しない。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得を抑制しうる措置の導入を考える場合には、その目的と効果を具体的に検証したうえで実施する必要があるということです。

 

2018.06.11.解決社労士

<70歳以上被用者の算定基礎届>

70歳以上の被用者の標準報酬月額相当額は、4月~6月に受けた報酬の平均月額に合わせて毎年改定されます。

事業主は、「算定基礎届」に各被用者の報酬を記入し、69歳以下の算定基礎届と共に提出します。

昨年までは、70歳以上の被用者だけ別の用紙で届出を行っていましたが、今年からは69歳以下の算定基礎届の用紙を使います。

この場合、備考欄の「1.70歳以上被用者算定」に○を付け、マイナンバー(個人番号)を記入します。ただし、マイナンバーは健康保険組合への届出には不要です。

 

<70歳以上被用者とは>

70歳以上の被用者は、70歳以上であって厚生年金保険の適用事業所に新たに雇用された人、または被保険者が70歳到達後も継続して使用される場合で、次のすべてに該当する人をいいます。

 

・70歳以上であること

・過去に厚生年金保険の被保険者期間があること

・厚生年金保険適用事業所に使用される人、または法人事業所の事業主であって、週の所定労働時間と月の所定労働日数が社会保険加入の条件を満たしていること

 

<老齢厚生年金の支給調整>

平成19(2007)4月から、適用事業所に就労して稼得能力のある70歳以上の年金受給者については、60歳台後半の在職老齢年金と同様の仕組みが適用されています。

このため、70歳以上の人が、厚生年金保険の適用事業所に使用される場合、事業主は、70歳以上の従業員(被用者)の雇用、退職、報酬額についての届出が必要となります。

70歳以上の被用者は、70歳になると厚生年金保険の資格を喪失するため、在職中であっても、厚生年金保険の保険料を納付する必要はありません。

しかし、届出により、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止となる場合があります。

具体的には、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が46万円以下の場合は、年金の全額が支給されますが、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が46万円を超える場合は、超えた額の2分の1が支給停止されます。

さらに支給停止額が基本月額を超えるときは、加給年金額も停止されます。

ここで「停止」というのは、一時的に支給が止まり後から支払われるという意味ではなく、支払われないという意味です。

 

2018.06.10.解決社労士

<対象となる人>

定時決定(算定基礎届)は原則として、その年の71日現在、社会保険の加入者(被保険者)である人全員が対象になります。

・531日までに加入(資格取得)した人で、71日現在も加入者(被保険者)である人

・71日かこれ以降に、退職や勤務時間の減少などにより脱退(資格喪失)する人(資格喪失日でいうと72日かこれ以降)

・休職中、育児休業中、介護休業中、欠勤中の人

・刑事施設や労役場などに拘禁中の人

なお、定時決定という手続きのために提出する届を算定基礎届といいます。

 

<対象とならない人>

・61日かこれ以降に、加入(資格取得)した人

・630日かこれ以前に、退職や勤務時間の減少などにより脱退(資格喪失)した人(資格喪失日でいうと71日かこれ以前)

・7月~9月に月額変更届、産前産後休業終了時変更届、育児休業等終了時変更届を提出する予定の人

なお、随時改定という手続きのために提出する届を月額変更届といいます。

 

<見込みや予定が変わった人>

・算定基礎届を提出する時点では、8月か9月に月額変更届を提出する見込みだったが、その後、残業代や通勤手当などの変動により、月額変更届を提出しないことになった場合には、遅れて算定基礎届を提出することになります。

・算定基礎届を提出する時点では、8月か9月に月額変更届を提出する見込みではなかったが、その後、残業代や通勤手当などの変動により、月額変更の条件を満たすことになった場合には、算定基礎届の提出とは別に算定基礎届を提出することになります。

 

2018.06.09.解決社労士

<定時決定(算定)での特例>

従来から業務の性質上、4月~6月の3か月間の報酬をもとに算出した標準報酬月額と、前年7月~当年6月までの1年間の報酬の月平均額によって算出した標準報酬月額との間に2等級以上の差があり、この差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合には、申し立てにより、過去1年間の月平均報酬月額により標準報酬月額を算定することができるようになっています。

社会保険料の定時決定(算定)では、4月~6月の3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を算出するのが原則ですが、この3か月間だけ極端に残業代が多かったり少なかったりすると、著しく不当な標準報酬月額となるため、これを避けるために年平均の額で計算することができるわけです。

これは、事業主の申立書と本人の同意等を提出することによって行います。

 

<随時改定(月変)での特例>

こうした定時決定(算定)でのやり方が、通達により平成30(2018)年10月以降の随時改定(月変)にも適用されることとなりました。

これにより業務の性質上、繁忙期に残業代の増加が著しく、この時期に昇給したような場合で、通常の随時改定(月変)では著しく不当になる場合には、年間平均によることができるようになります。

年間平均で随時改定(月変)を行うには、次の条件を満たす必要があります。

・現在(改定前)の標準報酬月額と、通常の随時改定による報酬月額に2等級以上の差がある。

・非固定的賃金を年間平均した場合の3か月の報酬月額の平均が、通常の随時改定による報酬月額と2等級以上差がある。

・現在の標準報酬月額と、年間平均した場合の報酬月額との差が1等級以上ある。

・繁忙期に残業が集中するなどの傾向が、業務の性質上、例年見込まれる。

 

2018.06.08.解決社労士

<熱中症とは>

熱中症とは、高温多湿な環境下で、体内の水分と塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりなどにより発症する障害の総称です。

具体的な症状としては、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣(けいれん)・手足の運動障害、高体温などが見られます。

 

<昨年の熱中症>

厚生労働省によると、平成29(2017)年の職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は544人と、平成28(2016)年よりも82人増加し、うち死亡者は14人と、前年より2人増加しました。

熱中症による死傷者は、平成23(2011)年以降、毎年400500人台で高止まりの状態にあります。平成29(2017)年の業種別の死亡者をみると、建設業が全体の約6割(8人)と、最も多く発生しています。

また、熱中症で死亡した14人の状況をみると、WBGT値(暑さ指数)の測定を行っていなかった(13人)、計画的な熱への順化期間が設定されていなかった(13人)、事業者が水分や塩分の準備をしていなかった(4人)、健康診断を行っていなかった(5人)など、基本的な対策が取られていなかったことが分かります。

WBGT値というのは、気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数です。

 

<クールワークキャンペーン>

厚生労働省では、職場における熱中症予防対策として、平成30(2018)51日から930日まで「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。

キャンペーンでは、個々の労働者に水分・塩分の摂取を呼び掛けるだけでなく、事業場として、予防管理者の選任など管理体制の確立を含めた対策の徹底を図るため、労働災害防止団体などとの連携や、関係業界団体などへの関連情報の周知・提供、協賛団体による支援などの取組を重点的に推進しています。

また、WBGT値による作業管理などを中心とした「職場での熱中症予防に関する講習会」を、6月~7月に全国7か所で実施します。

 

WBGT値の測定には、JIS規格「JIS B 7922」に適合した暑さ指数計を準備しましょう。

 

2018.06.07.解決社労士

<労災事故の増加>

平成30(2018)530日、厚生労働省が平成29(2017)年の労働災害発生状況を取りまとめ、公表しました。

平成29(2017)年については、死亡災害、休業4日以上の死傷災害の発生件数はともに前年を上回り、それぞれ978人(5.4%増)、120,460人(2.2%増)となりました。死亡災害は3年ぶり、死傷災害は2年連続で増加しました。

医学の発達とともに、死亡事故は減少の傾向を示してきていますが、ここに来て増加に転じてしまいました。

 

<業種別の労災発生状況>

建設業では、依然として「墜落・転落」が占める割合が大きく、死亡災害で「交通事故(道路)」や「はさまれ・巻き込まれ」が増加し、死亡災害、死傷災害ともに前年を上回りました。

陸上貨物運送事業では、死亡災害で、依然として「交通事故(道路)」が占める割合が大きく、「はさまれ・巻き込まれ」や「墜落・転落」が大幅に増加し、死亡災害、死傷災害ともに前年を大きく上回りました。

第三次産業では、引き続き「転倒」と腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が増加傾向にあり、死傷災害が前年を上回りました。

厚生労働省の発表したデータは次の通りです。

 

【平成29(2017)年の労働災害発生状況の概要】

※通勤災害(通勤中に発生した災害)は含まれていません。

 

1 死亡災害発生状況

 

労働災害による死亡者数は978人で、平成28年の928人に比べ50人(5.4%)の増加となり、3年ぶりに増加となった。死亡者数が多い業種は、建設業が323人(前年比29人・9.9%増)、製造業が160人(同17人・9.6%減)、陸上貨物運送事業が137人(同38人・38.4%増)となった。

 

2 死傷災害発生状況

 

労働災害による死傷者数(死亡・休業4日以上)は120,460 人で、平成28年の117,910人に比べ2,550人(2.2%)の増加となった。

死傷者数が多い業種は、製造業が26,674 人(前年比220人・0.8%増)、建設業が15,129人(同71 人・0.5%増)、陸上貨物運送事業が14,706人(同729人・5.2%増)、小売業13,881人(同437人・3.3%増)となった。

 

3 事故の型別による死亡災害・死傷災害発生状況 (P.2)

 

⑴    死亡災害

 

高所からの「墜落・転落」が258人(前年比26人・11.2%増)、「交通事故(道路)」が202人(同16人・7.3%減)、機械などによる「はさまれ・巻き込まれ」が140人(同8人・6.1%増)となった。

 

⑵   死傷災害

 

つまずきなどによる「転倒」が28,310人(前年比1,158人・4.3%増)、高所からの「墜落・転落」が20,374人(同280人・1.4%増)、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が16,177人(同1,096人・7.3%増)となった。

 

2018.06.06.解決社労士

<配属部署が向いていない?>

入社にあたって会社に伝えた希望の部署とは違う部署に配属されることの方が多いのではないでしょうか。

どの部署が向いているかは、自分自身の判断、会社の判断、真の適性の3つが食い違うこともあります。

自分や会社が向いていると判断した部署が、実は向いていない部署の場合もあります。

また、会社の判断では希望通りの部署について適性を認めたものの、その前に今の部署の仕事を経験させておこうというキャリア設計があるかもしれません。もしそうであれば、今の部署である程度の実績を上げなければ、希望の部署への異動は遠のいてしまいます。

それに、いきなり希望の部署に配属されて、思ったほど仕事が進められなければ、自分に失望してしまいます。これは大きな挫折となりますから、希望の部署に配属されないのは一種のリスク回避でもあるのです。

 

<会社が向いていない?>

もう少し視野を広げて考えてみれば、配属された部署の仕事が向いていないのではなくて、その会社が向いていないのかも知れません。

経営方針に共鳴していたとしても、企業風土や職場の雰囲気が自分に合っていない可能性もあります。

そうだとすれば、たとえ別の部署に異動になっても、それが希望の部署であったとしても、会社が向いていないのであれば、これから先、自分の思い描いていた仕事はできないのかもしれません。

 

<サラリーマンが向いていない?>

さらに視野を広げて考えてみると、会社が向いていないのではなくて、会社という組織の中で、会社に雇われて働くことが向いていないのかも知れません。

決められた日の決められた時刻に出勤して、最低限、決められた時刻までは働かなければなりません。

自分のやりたいように仕事を進められるわけではありません。

上司もいれば先輩もいますから、その指導やアドバイスも受け入れなければなりません。理不尽と思える話でも、拒否するわけにはいきません。

新人のうちは、注意を受け、叱られることも多いでしょう。

それで、仕事のやり直しによる残業も発生します。予定通りの時刻に帰宅できないことも当たり前になります。

こうした生活が向いていない、つまり、そもそもサラリーマンが向いていないという可能性は、決して低くはないのです。

 

<働くことが向いていない?>

では、会社勤めが向いていないとして、どうやって生計を立てれば良いのでしょうか。あるいは、再び親の扶養に入るのでしょうか。

自分で何とかしようと思うのであれば、個人で事業を立ち上げるとか、会社を設立するとか、雇われない形で働くことを考えることになります。

企業風土とか職場の雰囲気は、自分自身で作れば良いのですし、誰かの指示に従う必要もありません。始めたいときに仕事を始め、終わりたいときに仕事を終了することも自由です。

こうしたことが「大変だなぁ」と感じるのであれば、そもそも働くことが向いていないのかも知れません。

 

<どうしたら良いのか?>

働くことが向いていない、サラリーマンが向いていないということであれば、転職しても上手くいくはずがありません。

大人として、社会人として、まともな生活をしようと思うのであれば、まずは自分に与えられた仕事を誠実にこなしていくことをお勧めします。

自分に合っていない仕事をこなしているうちに、自分自身が変わっていきます。また、自分がきちんと仕事をこなすことで、その部署の雰囲気もルールも変わってきます。

こうして、最初は「自分に合っていない」と思っていても、やがて自分がその部署に近付き、その部署が自分に近付いてくるのです。

たとえ不本意な仕事であっても、誠意をもってこなすことは、これから先、今の会社で働くにせよ、転職するにせよ、独立するにせよ、決して無駄にはなりません。

今の環境から安易に飛び出すよりは、まず熱心に取り組んでみて、自分自身を成長させ変革させていくことを強くお勧めします。

 

2018.06.05.解決社労士

<就業規則の規定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例として、次のような規定が示されています。

 

(定年等) 

第49条  労働者の定年は、満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。

2 前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者については、満65歳までこれを継続雇用する。

 

定年後の再雇用については、多くの企業で似たような規定を置いていると思われます。

 

<本人の希望>

「定年後も引き続き雇用されることを希望」の部分にトラブルの原因が隠れています。

定年退職後に、退職者から「再雇用を希望していたのに退職させられた。これは不当解雇である」と主張されることがあります。

具体的には、再雇用されていれば得られたはずの賃金と慰謝料の支払いを、会社に対して求めてくるわけです。

このとき、会社が「離職票に署名してある」と主張しても、退職者は「ハローワークで手続きできなくなると脅されて不本意ながら署名したに過ぎない」と反論するでしょう。

また、健康保険証の返却についても、退職者が「返却しなくても紛失扱いで手続きすると言われたので不本意ながら返却した」と主張するかもしれません。

 

このような言った/言わないのトラブルを防ぐために、再雇用の希望を書面で提出するルールにしている会社もあります。

しかし、退職者が提出したと言い、会社側が提出を受けていないと言うのでは、結局トラブルになってしまいます。

 

こうしたトラブルを防ぐためには、「再雇用確認書」のような書式を準備しておき、定年の2か月前までに希望の有無を記入して提出してもらうなどの運用にする必要があります。つまり、希望しても希望しなくても、定年を迎える社員から所定の書面を提出してもらい、再雇用の希望の有無がわかるようにしておくわけです。

 

<再雇用できない理由>

たとえ本人が希望しても、「解雇事由又は退職事由に該当」する労働者であれば、会社は再雇用を拒めるという部分にも、トラブルの火種が隠れています。

そもそも、定年を迎える直前になって解雇事由が発生することは稀ですし、このタイミングで退職事由が発生するというのは、本人が再雇用されずに退職したいという希望を表明している場合ではないでしょうか。

 

実際には、定年の数年前から解雇事由があって、会社側がこれを放置しているというケースがあります。「あと少しで定年を迎えるから」ということで我慢しているわけです。

たとえば、健康状態が不良でたびたび欠勤しているが治療を受けていない、ルール違反が多くて同じ部署のメンバーに迷惑をかけ続けている、新しい仕事を覚えられず会社が必要としている業務をこなせないといった事情を、会社側が我慢してしまうのです。

こうした場合に、定年と共に普通解雇や懲戒解雇を言い渡すというのは不合理です。本人にしてみれば、今まで不問に付されていたのに、定年のタイミングで解雇されるというのは納得できません。

 

「あと少しで定年を迎える」社員も、若い社員と同じように、問題点があれば注意・指導し改善が見られなければ、普通解雇や懲戒解雇を検討すべきです。

少し厳しいようにも思われますが、再雇用トラブルを防ぐには必要なことなのです。

 

2018.06.04.解決社労士

<一般的な説明>

就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、その事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。〔労働基準法89条〕

 

【絶対的必要記載事項】

① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項

② 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

 

【相対的必要記載事項】

① 退職手当に関する事項

② 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

③ 食費、作業用品などの負担に関する事項

④ 安全衛生に関する事項

⑤ 職業訓練に関する事項

⑥ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

⑦ 表彰、制裁に関する事項

⑧ その他全労働者に適用される事項

 

<絶対的必要記載事項>

重要な労働条件なので、必ず決めなければなりません。

就業規則が無い会社であっても、労働条件通知書で必ず示さなければならない事項です。

ですから、決まっていない会社では、きちんと決めたうえで記載しなければならない事項です。

 

<相対的必要記載事項>

特にルールが無ければ、無理して決める必要が無い事項です。

ただし、ルールが決まっていたならば、就業規則に記載しなければなりません。

たとえば、①の「退職手当」というのは退職金のことですが、ルールが無ければ書きようが無いので、就業規則に書かなくても良いのです。

⑦の「制裁に関する事項」というのは、懲戒処分のことですが、特にルールが無ければ就業規則に記載しなくてもかまいません。ただし、就業規則に具体的な記載が無い懲戒処分を行っても無効になります。それだけでなく、対象者から慰謝料など損害賠償を請求されるかも知れません。

 

相対的記載事項は、「記載してもしなくても良い事項」と解釈されがちですが、その意味を勘違いしないように注意しましょう。

 

2018.06.03.解決社労士

<ものづくり白書>

政府は、平成30(2018)529日、「平成29年度ものづくり基盤技術の振興施策」(「ものづくり白書」)を閣議決定し国会に報告しました。

「ものづくり白書」は、「ものづくり基盤技術振興基本法」第8条に基づき国会に毎年報告する年次報告書で、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策を取りまとめたものです。

 

<ものづくり人材の育成>

2部構成の「ものづくり白書」の第1部は、「第1章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」、「第2章 ものづくり人材の確保と育成 」、「第3章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発」の3章立てとなっています。

厚生労働省が担当の第2章では、労働生産性の向上に向けた人材育成の取組と課題を分析し、ものづくり人材の育成に関する厚生労働省の施策について記述しています。

 

【第1部「第2章 ものづくり人材の確保と育成」に関する取組と課題のポイント】(厚生労働省ホームページより抜粋)

 

第1節 労働生産性の向上に向けた人材育成の取組と課題

 

1 人材育成の取組の成果と労働生産性

 

・企業の意識調査では、ほとんどのものづくり企業が何らかの人材育成の取組を行っている。一方、人材育成の取組の成果があがっている企業(「成果あり企業」)と成果があがっていない企業(「成果なし企業」)は、ほぼ二分化しており、半数の企業が人材育成の「成果があがっていない」と考えている。3年前と比べて「生産性が向上した」、他社と比べて「生産性が高い」と回答した企業では、人材育成の「成果があがっている」と回答した企業の割合が高い。

 

人材育成の具体的な成果として、労働者個人の理解・知識の高まりや、作業スピードの向上といった「技術や技能の向上」だけでなく、社員同士の教え合いやチームワークの改善などの「組織力の向上」もみられる。「生産性が向上した」、「生産性が高い」とする企業においては、人材育成の成果が、社員一人ひとりや、組織全体としての生産性の向上により多くつながっているものと考えられる。

 

2 人材育成で成果があがっていると回答した企業の傾向

 

・ものづくり人材の特徴は「熟練技能者集団に近い」割合が高く、過去5年間の人材の定着率が「よくなった」の割合が高い。

 

・中長期的な視野を持ち計画的・段階的に人材育成を進めており、その方針が社内に浸透している割合が高い。

 

・人材育成の取組については、「現場の課題について解決策を検討させる」、「個々の従業員の教育訓練の計画の作成」、「身につけるべき知識や技能を示す」、「研修などのOFF-JTの実施」、「資格や技能検定等の取得奨励」、「技能伝承のための仕組み整備」といった取組を挙げる割合がより高い。

 

・自己啓発支援については、「受講料等の金銭的支援」、「資格等を取得した際の手当等の支給」の実施割合が高い。

 

・IT人材過不足状況については、人材育成の成果の有無による違いはみられないが、「成果あり企業」は自社でIT人材を育成する割合が高く、IT人材の育成の取組は「会社の指示による社外機関での研修・講習会への参加」の実施割合が高い。

 

3 人材育成における課題

 

・「若年ものづくり人材を十分に確保できない」が最も高いが、「成果なし企業」の方が、「指導する側の能力や意欲が不足している」、「育成ノウハウがない」、「指導する側の人材が不足している」を挙げる割合が高い。

 

 

2018.06.02.解決社労士

<外国人労働者問題啓発月間>

厚生労働省では、毎年6月を「外国人労働者問題啓発月間」と定めています。

今年は「外国人雇用はルールを守って適正に~外国人が能力を発揮できる適切な人事管理と就労環境を!~」を標語に、事業主団体などの協力のもと、労働条件などルールに則った外国人雇用や高度外国人材の就職促進について、事業主や国民を対象とした集中的な周知・啓発活動を行います。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

 

「外国人労働者問題啓発月間」概要 (厚生労働省ホームページより)

 

1 実施期間

   平成30年6月1日(金)から6月30日(土)までの1か月間

 

2 主な内容

 

(1)ポスター・パンフレット の作成・配布

 

厚生労働省が作成した「外国人労働者問題啓発月間」についてのポスターを、ハローワークなどに掲示します。また、パンフレットなどを関係機関や事業主団体を通じて事業主などへ配布します。

 

(2)事業主団体などを通じた周知・啓発、協力要請

 

厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワークは、事業主団体などに対し、外国人労働者問題に関する積極的な周知・啓発を行うよう協力要請を行います。特に、外国人の雇入れと離職の際にすべての事業主に義務付けている「外国人雇用状況」の届出がより徹底されるよう、事業主への周知に努めます。

 

(3)個々の事業主などに対する周知・啓発、指導

 

都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワークは、事業主などに対し、あらゆる機会を利用して外国人の雇用・労働条件に関する取扱いの基本ルールについて情報提供や積極的な周知・啓発、指導を行います。

特にハローワークでは、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づき、事業所を訪問して雇用管理の改善指導を集中的に実施します。

 

(4) 技能実習生受入れ事業主などへの周知・啓発、指導

 

都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワークは、技能実習制度に基づいて技能実習生を受け入れている事業主、事業主団体または監理団体に対し、技能実習生についても、外国人雇用の基本ルールの遵守が求められることや、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令 が適用されること について、外国人技能実習機構をはじめとする関係機関と連携を図りつつ、あらゆる機会を通じて周知・啓発、指導を行います 。

 

なお、法務省入国管理局作成の不法就労防止に関するリーフレットの配布を通じ、実習先から失踪した技能実習生が実習先以外で就労する場合を含め、入国管理局から認められた範囲を超えて就労するなどの不法就労活動をさせた事業主は、「出入国管理及び難民認定法」に違反することについても周知、啓発を行います。

 

また、不適切な解雇などの予防に関する周知・啓発および指導を行うほか、ハローワークでは、関係機関の協力などにより、適切な雇用管理を行っていない事例を把握した場合には、厳格に指導を行います。

 

さらに、労働基準監督署では、労働基準関係法令違反が疑われる技能実習生受入れ事業主に対して監督指導を実施するとともに、悪質な事業主に対しては、送検を行うなど厳正に対応します。また、 労働基準監督機関が出入国管理機関及び外国人技能実習機構との間にそれぞれ設けた相互通報制度の適切な運用に努める。特に、人権侵害が疑われる事案については、出入国管理機関及び外国人技能実習機構との合同監督・調査を行い、労働基準関係法令違反が認められ、かつ、悪質性が認められるものなどについては、積極的に送検を行います。

 

(5)各種会合における事業主などに対する周知・啓発などの実施

 

都道府県労働局、ハローワークは、この月間中に開催される外国人雇用管理セミナー、学卒の求人説明会など、事業主が集まる会合で外国人雇用対策に関する資料を配布し、周知・啓発に努めます。

 

(6)留学生をはじめとする「専門的・技術的分野」の外国人の就職支援の実施

 

東京・愛知・大阪に設置している「外国人雇用サービスセンター」と、北海道・宮城・埼玉・千葉・東京・神奈川・石川・愛知・三重・京都・大阪・兵庫・岡山・広島・福岡・長崎の「新卒応援ハローワーク」内に設置している留学生コーナーにおいて、それぞれの専門性をいかして留学生の就職支援を行っていることについて、周知します。

 

(7)労働条件等の相談窓口の周知

 

外国人労働者の方からの相談に的確に対応するため、「外国人労働者向け相談ダイヤル」などにおいて、6言語(英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語)により、労働条件等の相談を受け付けていることについて周知します。

 

2018.06.01.解決社労士

<障害者の職業紹介状況の概要>

平成30(2018)525日、厚生労働省から平成29(2017)年度の障害者の職業紹介状況が公表されました。

ハローワークを通じた障害者の就職件数は97,814件で、対前年度比4.9%の増となりました。

また、対前年比の就職件数では身体障害者が減少し、知的障害者・精神障害者は増加していますが、就職率は低下しています。

 

<数値データ>

・新規求職申込件数は202,143件で、対前年度比5.4%の増となり、また、就職件数は97,814件で、対前年度比4.9%の増となりました。

このうち、精神障害者の新規求職申込件数は93,701件で、対前年度比9.0%の増となり、また、就職件数は45,064 件で、対前年度比8.9%の増となりました。

・就職率(就職件数/新規求職申込件数)は48.4%で、対前年度差0.2 ポイントの減となりました。

・産業別の就職件数は、多い順に、「医療,福祉」(35,566 件、構成比36.4%)、「製造業」(13,595件、同13.9%)、「卸売業,小売業」(12,412件、同12.7%)、「サービス業」(10,288件、同10.5%)などとなりました。

・障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第81条第1項の規定により、ハローワークに届出のあった障害者の解雇者数は、2,272人であった(平成28年度は1,335人)。

 

障害者雇用について、ハローワークの機能も強化されてきているようです。

障害者雇用をサポートする会社も多数ありますが、ハローワークの活用を忘れないようにしたいものです。

 

2018.05.31.解決社労士

<協定の発効>

平成30(2018)年525日に「社会保障に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定(日・フィリピン社会保障協定)」(平成27(2015)1119日署名)の効力発生のための外交上の公文の交換が、マニラで行われました。

これにより、この協定は、平成30(2018)81日に効力が生じることになります。

 

<問題の解決>

現在、日本とフィリピン両国の企業等からそれぞれ相手国に一時的に派遣される従業員(被用者)等(企業駐在員など)には、日本とフィリピン両国で年金制度への加入が義務付けられているため、社会保険料の二重払いの問題が生じています。

この協定は、このような問題を解決することを目的としていて、この協定の規定により、派遣期間が5年以内の一時派遣被用者等は、原則として、派遣元国の年金制度にのみ加入することになります。

また、両国での保険期間を通算して、それぞれの国で年金受給権を得られることになります。

 

<交流の促進>

この協定が発効することにより、企業、駐在員等の負担が軽減され、日本とフィリピン両国の経済交流及び人的交流が一層促進されることが期待されます。

平成28(2016)10月現在、フィリピンで暮らす日本人は、永住者を除き11,770名です。このうち、民間企業関係者は6,253 名です。

 

<年金加入年齢>

フィリピンの年金制度では、強制加入が60歳未満の全ての被用者及び自営業者とされていいますが、フィリピン社会保障機構によれば、60歳以降も被用者又は自営業者として就労を継続する場合、その就労を終えるまで又は65歳までは保険料を支払うことが義務づけられています。

任意加入ではありませんので注意が必要です。

 

2018.05.30.解決社労士

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのです。

もちろん、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

それでも、電車の遅れに対して、一般には使用者側に落ち度が無いので、やはり賃金の支払い義務は無いのです。

つまり、電車が遅れて勤務できなかった時間の賃金について、会社が欠勤控除をせず、全額支払うというのは、法令によるものではなく、会社の恩恵的な取扱いだということになります。

ただ、電車の遅れによる遅刻について欠勤控除をしない会社の比率は高いですから、欠勤控除をするルールの会社では社員の不満が生じやすいでしょう。

 

<証明を求める会社>

遅刻の報告書に遅延証明書を添えれば、証明された遅延時間の範囲内で、欠勤控除をしないというルールの会社が多数派でしょう。

遅延証明書は、多くの鉄道会社でネット交付のサービスがありますから、ずいぶんお手軽になってきました。

 

<証明を求めない会社>

遅延証明書が無くても、本人が申し出れば欠勤控除をしないというルールの会社もあります。

改札口で遅延証明書をもらうための列に並ぶよりは、1分でも早く業務を開始してもらった方が、会社にとって得かもしれません。

また電車遅延の情報は、ネットで容易に得られるようになりましたから、社員のひとり一人から遅延証明書をもらうよりも、人事部門で一括して情報を把握し処理した方が、人件費の節減になります。

 

<問題社員のケース>

欠勤控除をしない会社の場合、次のような不正行為がありえます。

本当は寝坊してタクシーで駆けつけたのに、ネットで検索して、たまたま電車の遅延情報を見つけたから、遅延証明書をダウンロードして使用するということはありえます。

大雪などで、早朝から電車の大幅遅延が見込まれているのに、いつも通りの時刻に自宅を出発し、遅延証明書の範囲で賃金が得られるなら良しとする社員もいます。

このあたりは、教育研修や人事考課の適正な運用で対応すべきことでしょう。

 

<鉄道会社の賠償義務>

さて、電車の遅れによって賃金が減ったら、社員は減った分の賃金を損害として鉄道会社に請求できるのでしょうか。

直感的に無理だというのはわかります。

鉄道会社と乗客との間には旅客運送契約があります。読んだことがなくても有効なのは、電気会社やガス会社などとの契約と同様です。

この旅客運送契約に関して、各鉄道会社は営業規則を定めていて、鉄道会社は運行不能や2時間以上の遅延の場合などに料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。

 

2018.05.29.解決社労士

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法21項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法895号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

 

2018.05.28.解決社労士

<パワハラの定義からすると>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、パワハラを行う者が、直接被害者に働きかけることは条件に含まれていません。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これらのことからすると、直接被害者に向けられた行為でなくてもパワハラとなりうることが分かります。

 

<パワハラの構造からすると>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

こうして見ると、ただ単に陰口を叩くような場合、業務上必要の無い雑談の中で悪口を言っているに過ぎない場合には、パワハラには該当しないといえそうです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

パワハラで問題となる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉棄損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

これらの人権侵害行為は、業務と無関係に行われれば、パワハラの定義にはあてはまらなくても、国家により刑罰を科され、被害者から損害賠償を請求されることがあります。

 

<悪口を言うと成立しうる犯罪>

名誉棄損罪〔刑法230条〕は、公然と事実を摘示して名誉を毀損することで成立します。「適示」というのは、あばくこと、示すことです。示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。しかし、「公然と適示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を適示した場合には成立しません。また、「事実を適示」しないで名誉を棄損すると侮辱罪〔刑法231条〕となります。

結局、本人がいない所で悪口を言うのは、パワハラにならなくても犯罪になりうるということです。

 

2018.05.27.解決社労士

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法395項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に請求するということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法395項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

しかし、会社側は時季指定権を持っていませんから、休む日を勝手に決めることはできません。ただし労使の合意によって、次の「計画的付与制度」を使うことはできます。

 

<計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日分を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。

この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が7.5% 高くなっているという統計もあります。(「就労条件総合調査」による平成27年の統計)

この制度を導入することによって年次有給休暇が取りやすくなると考えられます。

 

<実際の対応>

給与明細書を見てみたら、勝手に年次有給休暇を取得した扱いになっていたという場合、労働者が異議を申し出なければ、事後的な合意で年次有給休暇が取得されたものと考えて良いでしょう。

しかし、年次有給休暇は別の機会に取得する予定であったとか、何か必要が発生したときのために残しておきたかったとか、労働者の意思に反する場合には、労働者から会社に対して「間違い」の是正を求めることができます。実際に、給与処理上のミスだったということもありえます。

この場合には、年次有給休暇の残日数が減らなかったことになり、年次有給休暇を取得した扱いによって過剰に計算された賃金は、労働者から会社に返金することになります。

 

<働き方改革との関係で>

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のためには、労働時間の削減や休日数の増加、年次有給休暇の取得など、従業員の健康と生活に配慮し、多様な働き方に対応したものへ改善することが重要です。

会社が労働者に対して一方的に年次有給休暇を取得させるというのは、年次有給休暇の取得促進にはなるものの、法的に認められることではありません。

また、何の予告も無く行われれば、労働者の会社に対する不信感も強まります。

内容は同じであっても、労使で話し合って決めていけば、従業員満足度が高まり、定着率は上がるし、会社の評判も向上するでしょう。

 

2018.05.26.解決社労士

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法395項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に請求するということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法395項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

 

<恩恵としての年次有給休暇への振り替え>

例外的に、事後の申請により私傷病欠勤を年次有給休暇に振り替える規定を就業規則に置いている会社もあります。

これは、労働基準法の定めを上回る権利を労働者に認める規定ですから、このような規定を置く/置かないは会社の自由です。

そして、どのような手続きによって振り替えを認めるか、また会社の承認を必要とするかしないかも、会社の判断で自由に定めることができます。

 

<申請だけで振り替えができる規定の場合>

労働者が所定の用紙に必要事項を記入して会社に提出すれば、欠勤を年次有給休暇に振り替えることができるという規定ならば、花粉症であれ腹痛であれ、それなりの理由があれば振り替えることができてしまいます。

会社としては、無断で年次有給休暇を使われたという印象を受けるかもしれません。

しかし、就業規則の規定に従って年次有給休暇の振り替えを行った以上、会社がこれを否定したり、非難したり、マイナスに評価するということはできません。

 

<会社の承認を得て振り替えができる規定の場合>

私傷病欠勤が、やむを得ない欠勤であると認められる場合に限り、年次有給休暇に振り替えることができるという規定にしておけば、インフルエンザや急性胃腸炎を理由に上司の承認を得て振り替えが認められるし、花粉症や単なる腹痛であれば、勤務不能とまではいえない欠勤なので、年次有給休暇に振り替えることはできないという運用が可能です。

 

<嘆いたり批判するのではなく>

就業規則の規定に従って、労働者が無断で年次有給休暇を取得してしまったと嘆いたり批判したりではなく、就業規則の不備を反省すべきです。

就業規則の規定は、労働契約の内容となります。

会社が就業規則に定めたことは、会社の労働者に対する約束になります。

想定外の運用をされてしまったと嘆く前に、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けたうえで、就業規則の具体的な内容を決定してはいかがでしょうか。

 

2018.05.25.解決社労士

<転倒災害の現状>

労働災害のうち、休業4日以上の死傷災害の中で最も件数が多いのは転倒災害です。実に全体の4分の1を占めています。

 

<滑って転ぶ危険の解消>

床にこぼれた液体で滑って転倒する場合があります。

床に水や油などがこぼれていたらすぐに拭き取れる道具を常備しておき、実際にすぐに拭き取るルールにしておく必要があります。

また、どうしても水や油などのたまりやすい場所には、マットを敷くなどして危険の発生を未然に防ぎましょう。

もちろん、自分でこぼした水は自分で拭くなどは常識として徹底しましょう。どうせ後で清掃業者が来るからと放置しておくと、危険が増してしまいます。

 

<つまずいて転ぶ危険の解消>

床の上に置いたものやコード類につまずく危険も大きいものです。

一時的にせよ、床の上に物品を置くことは危険です。人事異動に伴う席替えの際は、ほんの短時間という気の緩みから、書籍やファイルを床の上に置いてしまうことがあります。普段は無い物が床の上にあると、これにつまずいて転倒する危険は想定外に大きいものです。

また、コード類は通路を横断しないように配線するのが基本です。

レイアウトの変更に伴い配線を変えられるよう、コード類を床の下に置くフリーアクセスにしておけば安全です。

これができない場合には、モールというカバーをコードの上に設置することがお勧めです。

ただ、このモールは蹴飛ばされているうちに外れたり破損したりしますから、予備の部材を置いておき、適宜補修することをお勧めします。

 

<階段で転ぶ危険の解消>

階段で足を踏み外して転ぶことがあります。

この場合、打撲や骨折、場合によっては死亡事故になることもあります。

予防には、物理的な対策と安全のためのルール順守が有効です。

・急勾配の階段は設置を避ける

・滑り止めを設ける

・手すりを設ける

・十分な照明を設置する

・昇降する際は手すりを使用する

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

 

<凍結した水たまりや雪で転ぶ危険の解消>

冬になると、凍結した路面での転倒が多発します。時間帯は朝に集中します。

凍結する場所や雪が積もる通路は特定できますので、その部分に重点的に対策を施すのが効果的です。

・凍結しやすい路面に凍結防止用の砂を撒く

・凍結しやすい出入口には凍結防止のマット類を敷く

・滑りやすい靴の使用を避ける

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

・危険な場所を歩行する際は、小さな歩幅で、靴の裏全体を着け、急がずにゆっくりと歩行する

・万一に備えて手袋を着用する

 

ちょっとした経費と手間で、戦力ダウンを防ぎ、安心して働ける職場環境にしましょう。

 

2018.05.24.解決社労士

<犯罪による被害>

犯罪には侵害される「利益」があり、刑法などはその「利益」を守るために刑罰を規定しています。この「利益」は、保護法益などと呼ばれています。

しかし、犯罪によって侵害される利益は、法令によって保護が予定されている利益にとどまりません。

たとえば、窃盗罪の被害者は財産上の利益を奪われるだけでなく、盗まれたものに対する愛着心や、被害に遭ったショックなどにより、精神的な被害も受けています。

 

<二次被害>

このように犯罪の被害者は、二次被害を受けています。

犯罪の被害者となったことによる精神的ショックや身体の不調、医療費の負担や失業による経済的損失、捜査協力や裁判に関わることによる精神面や時間の負担、うわさ話などによる精神的な被害など、その範囲は広範に及びます。

こうしたことにより、欠勤が発生したり、仕事の能率が低下することは、容易に想定されるのですが、こうした不利益から社員を守れるのは会社しかありません。

 

<犯罪被害者休暇の必要性>

犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

 

<就業規則の規定例>

(犯罪被害者休暇)

第●条 会社は、犯罪の被害を受けた従業員の心身の回復を図り、早期に通常の業務に専念できるようにすることを目的として、  日を限度に有給の休暇を与える。

2 前項の休暇は、従業員が次の理由により止むを得ず勤務できない場合に、これを与えるものとする。

・犯罪の被害を受けたことによる心身の治療のための通院

・犯罪被害者としての警察からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴

 

上記の例では「有給の休暇」としていますが、無給とする場合であっても、年次有給休暇を付与する場合の出勤率の計算にあたって出勤扱いにするとか、人事考課にあたって欠勤扱いにしないとか、退職金の計算にあたって勤続期間から控除されないなどの利益がありますから、決して無意味ではありません。

 

2018.05.23.解決社労士

<会社のパワハラ対策>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。

会社は、就業規則にパワハラの禁止規定と懲戒規定を置き、パワハラ防止対策のための社員教育を行う義務を負っています。これは、労働契約上の雇い主としての義務です。

こうした義務を果たさない会社で勤務する管理職は、パワハラの加害者とされ被害者や遺族から訴えられる危険にさらされています。

部下が「上司のパワハラに絶望しました」といった遺書を残して自殺を図るようなことがあれば、何がパワハラに該当するのか教育研修が行われていない会社では、事実の確認も無いままパワハラの責任を取らされることになりかねません。

不幸にしてこうした会社で働いている管理職は、自分の身を守るため、最低限、以下のことを頭に入れておきましょう。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではありません。

会社の意向を受けて行った叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などは、業務上必要な行為です。行為者の意識としては、これらの行為を熱心に行った結果、パワハラ呼ばわりされたということになりがちです。

しかし、パワハラが問題なのは、必要の無い人権侵害を伴っているからです。

 

<パワハラで問題となる人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉棄損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

<典型的な犯罪行為>

暴行罪〔刑法208条〕の「暴行」とは、人の身体に向けられた有形力の行使をいいます。有形力とは物理的な力のことで、たとえば石を投げつければ当たらなくても暴行になります。服を引っ張る、近くで刀を振り回す、耳元で大きな音を立てるというのも暴行です。

傷害罪〔刑法204条〕の「傷害」とは、ケガをさせることです。ケガをさせる意図が無く暴行を行った結果、ケガをさせてしまった場合でも傷害罪になります。頭を叩こうとしたところ、相手が避けようとして転び腰を傷めた場合にも、頭を叩くという暴行の故意があった以上、傷害罪になってしまいます。

脅迫罪〔刑法222条〕は、相手や親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫すると成立します。口頭でも、文書でも、メールでも、あるいは態度でも脅迫になりますし、相手が実際に怖がらなくても成立します。

名誉棄損罪〔刑法230条〕は、公然と事実を摘示して名誉を毀損することで成立します。「適示」というのは、あばくこと、示すことです。示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。しかし、「公然と適示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を適示した場合には成立しません。また、「事実を適示」しないで名誉を棄損すると侮辱罪〔刑法231条〕となります。

 

<典型的な不法行為>

上記のような犯罪行為に対しては、国家により刑罰として懲役刑や罰金刑が科されうるのですが、同時に不法行為でもありますから、被害者に対しては損害賠償の責任を負います。両者は別物ですから、どちらか片方だけで済むというものではありません。

暴言、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなどの程度が軽くて、名誉棄損罪などの犯罪が成立しない場合には、一般に不法行為のみが成立します。

不要なことや不可能なことの強制が強要罪や業務妨害罪にはあたらない程度の場合にも、一般に不法行為のみが成立します。

つまり、人権侵害行為ではあっても犯罪が成立しない場合には、不法行為のみが成立しうるということです。

 

<身を守るだけではない知識>

パワハラ行為とされ、犯罪者になったり損害賠償を求められたりするのはどのような行為なのか、正しい知識を身に着けることは、自分の身を守るのに必要なことです。

しかし、それだけではなく、自信をもって業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などを行えるようになるのですから、管理職としての指導力を最大限に発揮できるようになるというメリットもあります。

 

2018.05.22.解決社労士

<トップからの情報発信>

トップから、長時間労働の削減や休暇の取得促進など働き方改革の推進について、明確な情報発信を定期的に行う必要があります。

働き方改革は、管理職が中心となって推進しなければ進みません。ところが、管理職の中に「労働時間の削減や休暇の増加で業務が滞るのではないか。その場合には、自分が責任を問われたり、負担が増えたりするのではないか」という疑念があったのでは、消極的にならざるを得ません。

トップが、会社の経営課題の一つとして働き方改革を掲げ、朝礼、社内報、電子掲示板など、あらゆるチャネルを活用して発信する必要があります。

また1回だけ発信しても、時間が経てば、社員の中に「まだトップはその気になっているのだろうか。気が変わっていないだろうか」と不安になります。

このことから、情報発信は繰り返し定期的に行わなければなりません。

 

<経営幹部からの情報発信>

トップが働き方改革の推進に向けたメッセージを繰り返し発信していても、役員など経営幹部の意識が変わらなければ、社内に浸透しません。

経営幹部が、中期経営計画など全社の経営計画を策定する時に、トップからの情報発信を受けての内容を盛り込み、目標を数値化したうえで全社員に発信する必要があります。

トップの立場からすると、経営幹部にこうした情報発信をさせることで、自ら推進することに対する責任を負わせるということになります。

 

<社外に向けた情報発信>

所定外労働の削減や年次有給休暇の取得増加によって、お取引先やお客様など社外にも影響が出てきます。

こうした影響の原因が働き方改革の推進にあること、働き方改革にどのようなメリットを期待して推進するのかを社外にも示す必要があります。

お取引先に対しては、人手不足・採用難が続いている環境下にありますから、有能な人材の確保ということが、最も説得力を帯びてくるでしょう。

また、お客様に対しては、社員の生活を大切にしたいという思いをアピールすることができます。

働き方改革は、多くの企業が同時に推進し、社会全体で盛り上げなければなりません。

社外に向けた情報発信は、企業の社会的責任を果たすうえでも必要なものです。

 

2018.05.21.解決社労士

<発覚するということは>

飲み会のお誘いメールが送られた事実は、受信した相手なら確実に知ることができます。この社員が第三者に話し、上司や人事部門などに伝われば問題視されることもあるでしょう。

これとは別に、ネット管理者など権限のある社員がチェックしたことにより発覚した場合には、プライバシーの侵害となるのではないかが問題となります。

会社のパソコンがどのように使用されているかを、会社側が把握することは、完全に会社の自由というわけではありません。

特に、メールの内容については、就業規則の規定・周知、監視の必要性、手段の相当性が調っていないと、プライバシーの侵害とされることがあります。

 

<モニタリング規定>

勤務時間中は、労働者は使用者の指揮命令下に置かれています。これを使用者の側から見れば、労働者の業務を監視するという関係にあります。ですから、本来、会社は使用者を通じて、端末内のデータを確認する権限をもっているわけです。

とはいえ、会社が端末内のデータを確認するとまでは思っていない労働者が、端末内にプライベートなデータを残すかもしれません。この場合に、会社に権限があるということで、プライバシーをあばいてしまったら、会社の方が責任を問われることがあります。

そうならないように、就業規則には、会社が端末内のデータを閲覧できる旨を規定し、きちんと周知しておきましょう。

ここでの周知は、就業規則の有効要件としての周知ではなくて、その内容の説明までしておくことが必要と考えられます。

 

<監視の必要性>

監視の必要性では、例えば、メールの私的利用の防止、個人情報や機密情報漏洩の防止、漏洩原因の追及、ウイルス調査などは許されます。

また、これとは別に懲戒処分の対象となりうる行為の証拠が、メールなどに残っている可能性が高い場合には、調査の対象となりえます。

しかし、権限を持っている社員が個人的な好奇心で監視を行えば、この要件は満たされません。

 

<手段の相当性>

手段の相当性では、事前に社員の電子メールを監督等することがあり得るということが周知されていたかということや、件名や送信先を確認すれば足りるのに本文まで閲覧していないかということ、上司やネットワーク管理者などではない無関係な人が閲覧をしていないか、というようなことが問題になります。

 

<懲戒処分の対象とするか>

たとえ懲戒処分の条件をすべて満たしたとしても、会社に与えた損害は軽微ですし、その程度は厳重注意まででしょう。

懲戒処分をするため、これに関わる社員たちの人件費や精神的な負担を考えれば、懲戒ではなく上司からの注意で済ませた方が良さそうです。

また、プライベートなメールを送るのに必要な時間もわずかですから、欠勤控除をするというのも現実的ではありません。

 

<防止策は?>

会社の貸与するパソコンは、会社の所有物であり業務のみに使うものであるという、当たり前のことを繰り返し教育しましょう。

これだけの研修を行うというのではなく、就業規則についての研修会を実施してはいかがでしょうか。

また、会社の備品を私的なことに使ったり、業務効率が低下している点については、人事考課制度の適正な運用によって防止することができます。

懲戒を考える前に、まず教育と人事考課の適正化を考えましょう。

 

2018.05.20.解決社労士

<両者の定義>

「配置転換」と「人事異動」は、法令によって明確な定義付けがされていません。

そのため、「配置転換」「人事異動」の意味については、会社ごとに解釈が分かれています。

とはいえ、会社の就業規則に「配置転換」と「人事異動」の両方の用語があり、異同について疑義が発生した場合や、これから就業規則に規定を置くにあたって一般的な意味を確認しておきたい場合には、以下を参考にしてください。

 

<配置転換>

配置転換とは、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを指します。

配置転換は大きく分けると、企業内の配置転換と企業間の配置転換の2つです。

企業内の配置転換には、昇進・昇格、職種変更、勤務地変更などがあります。営業所・店舗など複数の事業所間にまたがる配置転換を特に転勤と呼びます。

狭義の配置転換は、この企業内の配置転換のみを指します。

一方、企業間の配置転換には、子会社や関連会社への転籍、出向などがあります。

広義の配置転換には、企業内の配置転換と企業間の配置転換の両方が含まれます。

 

<人事異動>

人事異動とは、従業員が企業の命令によって、配置・地位や勤務状態などが変更されること全般を指します。

人事異動は、配置転換よりも広い概念で、配置転換のすべてを含む意味に使われることが多い用語です。

 

<就業規則の規定>

このように解釈が分かれる用語については、就業規則の中に定義規定を置いて、トラブルの発生を予防することが必要です。

 

2018.05.19.解決社労士

今から10年以上も前、平成192007)年1218日に、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」で、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。

改めて読み返してみると、政府が推進してきたことの意図、これからさらに強化していく政策が読み取れます。

政府の方針に逆らった経営は、どの企業にとっても得策ではありません。

今一度、この内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

 

我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

 

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

 

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。

 

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらす。同時に、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがい、喜びは倍増する。

 

しかし、現実の社会には、

•安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない、

•仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない、

•仕事と子育てや老親の介護との両立に悩む

など仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られる。

 

その背景としては、国内外における企業間競争の激化、長期的な経済の低迷や産業構造の変化により、生活の不安を抱える正社員以外の労働者が大幅に増加する一方で、正社員の労働時間は高止まりしたままであることが挙げられる。他方、利益の低迷や生産性向上が困難などの理由から、働き方の見直しに取り組むことが難しい企業も存在する。

 

さらに、人々の生き方も変化している。かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的であり、現在の働き方は、このような世帯の姿を前提としたものが多く残っている。

 

しかしながら、今日では、女性の社会参加等が進み、勤労者世帯の過半数が、共働き世帯になる等人々の生き方が多様化している一方で働き方や子育て支援などの社会的基盤は必ずしもこうした変化に対応したものとなっていない。また、職場や家庭、地域では、男女の固定的な役割分担意識が残っている。

 

このような社会では、結婚や子育てに関する人々の希望が実現しにくいものになるとともに、「家族との時間」や「地域で過ごす時間」を持つことも難しくなっている。こうした個人、家族、地域が抱える諸問題が少子化の大きな要因の1つであり、それが人口減少にも繋がっているといえる。

 

また、人口減少時代にあっては、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるが、働き方や生き方の選択肢が限られている現状では、多様な人材を活かすことができない。

 

一方で働く人々においても、様々な職業経験を通して積極的に自らの職業能力を向上させようとする人や、仕事と生活の双方を充実させようとする人、地域活動への参加等をより重視する人などもおり、多様な働き方が模索されている。

 

また、仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められている。ディーセント・ワークの推進は、就業を促進し、自立支援につなげるという観点からも必要である。

 

加えて、労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場環境を実現するために、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策等に取り組むことが重要である。

 

いま、我々に求められているのは、国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとする取組である。

 

働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度の改革に挑戦し、個々人の生き方や子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方の選択を可能とする仕事と生活の調和を実現しなければならない。

 

個人の持つ時間は有限である。仕事と生活の調和の実現は、個人の時間の価値を高め、安心と希望を実現できる社会づくりに寄与するものであり、「新しい公共」の活動等への参加機会の拡大などを通じて地域社会の活性化にもつながるものである。また、就業期から地域活動への参加など活動の場を広げることは、生涯を通じた人や地域とのつながりを得る機会となる。

 

(「新しい公共」とは、行政だけでなく、市民やNPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野で活躍することを表現するもの。)

 

仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、人口減少時代において、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものである。とりわけ現状でも人材確保が困難な中小企業において、その取組の利点は大きく、これを契機とした業務の見直し等により生産性向上につなげることも可能である。こうした取組は、企業にとって「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえるべきである。

 

以上のような共通認識のもと、仕事と生活の調和の実現に官民一体となって取り組んでいくこととする。

 

1 仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。

具体的には、以下のような社会を目指すべきである。

 

1. 就労による経済的自立が可能な社会

 経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

 

2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

 働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

 

3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

 性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

 

2 このような社会の実現のためには、まず労使を始め国民が積極的に取り組むことはもとより、国や地方公共団体が支援することが重要である。既に仕事と生活の調和の促進に積極的に取り組む企業もあり、今後はそうした企業における取組をさらに進め、社会全体の運動として広げていく必要がある。

 

そのための主な関係者の役割は以下のとおりである。また、各主体の具体的取組については別途、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で定めることとする。

 

取組を進めるに当たっては、女性の職域の固定化につながることのないように、仕事と生活の両立支援と男性の子育てや介護への関わりの促進・女性の能力発揮の促進とを併せて進めることが必要である。

 

(1)企業とそこで働く者は、協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革とあわせ働き方の改革に自主的に取り組む。

 

(2)国民の一人ひとりが自らの仕事と生活の調和の在り方を考え、家庭や地域の中で積極的な役割を果たす。また、消費者として、求めようとするサービスの背後にある働き方に配慮する。

 

(3)国民全体の仕事と生活の調和の実現は、我が国社会を持続可能で確かなものとする上で不可欠であることから、国は、国民運動を通じた気運の醸成、制度的枠組みの構築や環境整備などの促進・支援策に積極的に取り組む。

 

(4)仕事と生活の調和の現状や必要性は地域によって異なることから、その推進に際しては、地方公共団体が自らの創意工夫のもとに、地域の実情に応じた展開を図る。

 

 

2018.05.18.解決社労士

ハローワークは、刑務所出所者等に職業相談や職業紹介等を行う「刑務所出所者等就労支援事業」を行っています。

厚生労働省は、平成30(2018)515日に報告書を取りまとめ公表しました。

 

<支援の理由>

現実的な問題として、無職の出所者が再び罪を犯しやすい、つまり再犯率が高いということがあります。

このことからハローワークでは、出所者の就労を通じた生活の基盤づくりを進めるとともに、安心して暮らせる社会の実現に取り組んでいます。

 

<ハローワークの主な取組例>

・出所直後から就労と住居を確保できる寮のある事業所を紹介

・刑務所入所歴を開示し、更生の意欲を伝え対象者と事業所の信頼関係を構築

・就職面接会の実施、内定通知書の発出で出所へのモチベーションを向上

・公共職業訓練や農林漁業就職支援を活用した就職を実現

 

<事業所における雇用の取組例>

・採用に際して「更生への思い」や「戦力になる人材」であることを重視

・「出所者等就労奨励金」、「身元保証制度」などの各制度を利用し負担を軽減

・所持金が少ない出所直後は給料を日払いで対応

・雇用主として対象者の就労を通じ、更生に寄り添うとともに再犯防止を支援

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

刑務所出所者の働き手としての必要と欲求は、一般の労働者よりも明確な点が多々あります。

採用難の中、人材不足に悩む企業にとって、働き方改革の一環としても、刑務所出所者の採用は一考に値するといえるでしょう。

 

2018.05.17.解決社労士

<モデル就業規則の改定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則は、かつて副業・兼業に消極的な態度を示していました。

ところが、「働き方改革実行計画」(平成29(2017)328日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、厚生労働省が副業・兼業の普及促進を図るようになりました。

これを受けて、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(副業・兼業)

第67条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<届出制か許可制か>

第2項は、会社への事前届出制を規定しています。

一方で、第3項が禁止・制限を規定しています。

届出さえすれば自由に副業・兼業できるとしておきながら、後から禁止・制限すると混乱を生じますから、事前許可制として、一定の条件を満たす場合にだけ許可する方が労働者にとっても会社にとっても安心でしょう。

第2項に事前許可制を定めても、第3項に禁止・制限の規定を置くことは必要です。許可の当時明らかではなかった事実や事後に発生した事実に対応するためです。

 

<労務提供上の支障がある場合(第1号)>

本業の方の労務提供に支障が生ずるため、会社が制限し、場合によっては禁止しなければならないことがあります。

たとえば、次のような場合です。

・副業・兼業の日時によって、本業の残業や休日出勤に対応できない場合

・副業・兼業の身体的・精神的負担が大き過ぎて、本業の方で生産性が低下してしまう場合

 

<企業秘密が漏洩する場合(第2号)>

本業の方で、その労働者が企業秘密を扱う立場にないのであれば、この規定は適用されることがありません。

また、単純に「企業秘密が漏洩する場合」という規定であれば、「漏洩の恐れ」を理由に副業・兼業を禁止・制限できません。

会社の業種に応じて、「企業秘密が漏洩する恐れが大きな場合」「企業秘密が漏洩する恐れがある場合」といった規定も考えられます。

 

<会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合(第3号)>

副業・兼業は、勤務時間外に行うものですから、本来的には労働者が自由に行えるものです。

一方で、たとえ完全に私的な行為であっても、会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為は、就業規則によって禁止され懲戒対象とされることについては、十分な合理性があります。

このことから、法的にあるいは倫理的に問題のある副業・兼業は、禁止・制限について合理性が認められます。

 

<競業により、企業の利益を害する場合(第4項)>

お客様を取ってしまい、会社の売り上げを減少させる場合には、明らかに当てはまるでしょう。

また、その恐れがある場合でも、第3号の「信頼関係を破壊する行為」になりえます。

ただ、多少競合する副業・兼業であっても、そこから得られたノウハウを本業に活かせるのであれば良しとする考えも成り立ちます。

 

<自社の就業規則をどうするか>

このように会社のリスクを減らそうとすると、どうしても副業・兼業を制限する方向に向かってしまうのは仕方がないことかも知れません。

そもそも、副業・兼業は本業で手一杯の労働者に強制するものではありません。厚生労働省が副業・兼業の普及促進をするというのは、本業の業務に余裕があって副業・兼業を希望する労働者を支えるものだと考えるのが合理的です。

自社の就業規則にある副業・兼業の規定を改定する場合には、社内の実態と従業員の必要や欲求を把握したうえで検討したいものです。

 

2018.05.16.解決社労士

<本来は自由な退職勧奨>

「勧奨」は、勧めて励ますことです。「勧告」は、ある事をするように説いて勧めることです。

「退職勧奨」の例としては、「あなたには、もっと能力があると思います。たまたま、この会社は向いていないようです。転職したら実力を発揮できるでしょう。退職について真剣に考えてみてください」といった内容になります。

「退職勧告」の例としては、「入社以来ミスが多いことは、あなた自身も残念に思っているでしょう。まわりの社員も、ずいぶん親切に丁寧な指導をしてきましたが、これ以上はむずかしいと思われます。退職を考えていただけますか」といった内容になります。

通常、「退職勧奨」と「退職勧告」は厳密に区別されず同視されています。

いずれにせよ退職勧奨は、会社側から社員に退職の申し出をするよう誘うことです。これに応じて、社員が退職願を提出するなど退職の意思表示をして、会社側が了承すれば、労働契約(雇用契約)の解除となります。

もちろん、退職勧奨を受けた社員が、実際に退職の申し出をするかしないかは完全に自由です。

このように、退職勧奨は社員の意思を拘束するものではないので、会社が自由に行えるはずのものです。しかし、社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。違法とされれば、退職が無効となりますし、会社に対して慰謝料の支払い請求が行われたりします。

会社から社員に退職勧奨を行い、これに快く応じてもらって円満退職になったと思っていたところ、代理人弁護士から内容証明郵便が会社に届き、不当解雇を主張され損害賠償請求が行われるということは少なくありません。

 

<安全な退職勧奨>

会社側としては退職勧奨のつもりであったところ、退職してもらうという目的意識が強いあまり、ついつい「勧奨」の範囲を超えてしまい、法的解釈としては「解雇の通告」と同視されてしまうことがあります。

こうしたリスクは、退職勧奨には付き物です。

退職が無効とされたり、慰謝料が発生したりのリスクが無い退職勧奨とは、次のようなものです。

・1人の社員に対して2名以内で行う。ただし、男性が女性に1人で退職勧奨を行うのは、セクハラなどを主張される恐れがあるので避ける。

・パワハラ、セクハラなど、人格を傷つける発言はしない。

・大声を出したり、机をたたいたりしない。脅さない。だまさない。

・長時間行わない。何度も繰り返さない。

・きっぱりと断られたら、それ以上の退職勧奨は行わない。

・他人に話を聞かれる場所で行わない。明るく窓のある個室が望ましい。

・家族など本人以外の人に働きかけない。

結局、本人の自由な本心による退職の申し出が必要なので、後になってから本心ではなかったとか、脅された、だまされたなどの主張がありえない退職勧奨であることが必要となります。

 

<会社側の好ましい対応>

退職勧奨の前であっても、ミスの連発を責めるのではなく、心配する態度を示しましょう。

「入社以来ミスが多いですね。採用面接でも履歴書の内容からしても、あなたがミスを繰り返すというのは想定外です。まわりの仲間たちも、あなたのことを心配しています。個人的な事情があるとか、働く上での不安があるとか、何なりと教えてください」という問いかけをしましょう。

この問いかけには、対象社員に対する思いやりも示されていますが、採用面接の対話でも履歴書の記述にも、注意力が乏しくミスを連発しやすい人物だと推定できるようなことは示されていなかったという主張が含まれています。

会社は採用にあたって、応募者から必要な情報を引き出しているわけですから、その時点で注意力散漫な人物であることを承知のうえで採用しておいて、採用後に「ミスが多いから解雇します」とは言い難いわけです。

多くの場合、セクハラ、パワハラ、プライベートを含めて環境に慣れていない、上司や同僚からの指導不足など、問題点が浮かびあがることでしょう。これらへの対応は頭の痛いことですが、むやみに退職勧奨を行うことを防げただけでも儲けものです。

このような面談を、当事者である会社側の人間が冷静に客観的に行うというのはむずかしいものです。顧問の社会保険労務士がいれば、任せてしまえば良いのですか…

こうした面談を経て、会社側には問題が無いということを確信できたなら、自信をもって退職勧奨を行えますし、さらに普通解雇を検討することもできるわけです。

 

2018.05.15.解決社労士