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2021/09/17|3,667文字

 

今から10年以上も前、平成192007)年1218日に、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」で、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。

改めて読み返してみると、政府が推進してきたことの意図、これからさらに強化していく政策が読み取れます。

政府の方針に逆らった経営は、どの企業にとっても得策ではありません。

今一度、この内容を確認してみてはいかがでしょうか。

 

 

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章

 

我が国の社会は、人々の働き方に関する意識や環境が社会経済構造の変化に必ずしも適応しきれず、仕事と生活が両立しにくい現実に直面している。

 

誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない。

 

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる。

 

そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する。

 

仕事は、暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらす。同時に、家事・育児、近隣との付き合いなどの生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ、人生の生きがい、喜びは倍増する。

 

しかし、現実の社会には、

•安定した仕事に就けず、経済的に自立することができない、

•仕事に追われ、心身の疲労から健康を害しかねない、

•仕事と子育てや老親の介護との両立に悩む

など仕事と生活の間で問題を抱える人が多く見られる。

 

その背景としては、国内外における企業間競争の激化、長期的な経済の低迷や産業構造の変化により、生活の不安を抱える正社員以外の労働者が大幅に増加する一方で、正社員の労働時間は高止まりしたままであることが挙げられる。他方、利益の低迷や生産性向上が困難などの理由から、働き方の見直しに取り組むことが難しい企業も存在する。

 

さらに、人々の生き方も変化している。かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般的であり、現在の働き方は、このような世帯の姿を前提としたものが多く残っている。

 

しかしながら、今日では、女性の社会参加等が進み、勤労者世帯の過半数が、共働き世帯になる等人々の生き方が多様化している一方で働き方や子育て支援などの社会的基盤は必ずしもこうした変化に対応したものとなっていない。また、職場や家庭、地域では、男女の固定的な役割分担意識が残っている。

 

このような社会では、結婚や子育てに関する人々の希望が実現しにくいものになるとともに、「家族との時間」や「地域で過ごす時間」を持つことも難しくなっている。こうした個人、家族、地域が抱える諸問題が少子化の大きな要因の1つであり、それが人口減少にも繋がっているといえる。

 

また、人口減少時代にあっては、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるが、働き方や生き方の選択肢が限られている現状では、多様な人材を活かすことができない。

 

一方で働く人々においても、様々な職業経験を通して積極的に自らの職業能力を向上させようとする人や、仕事と生活の双方を充実させようとする人、地域活動への参加等をより重視する人などもおり、多様な働き方が模索されている。

 

また、仕事と生活の調和に向けた取組を通じて、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の実現に取り組み、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められている。ディーセント・ワークの推進は、就業を促進し、自立支援につなげるという観点からも必要である。

 

加えて、労働者の健康を確保し、安心して働くことのできる職場環境を実現するために、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策等に取り組むことが重要である。

 

いま、我々に求められているのは、国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとする取組である。

 

働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度の改革に挑戦し、個々人の生き方や子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方の選択を可能とする仕事と生活の調和を実現しなければならない。

 

個人の持つ時間は有限である。仕事と生活の調和の実現は、個人の時間の価値を高め、安心と希望を実現できる社会づくりに寄与するものであり、「新しい公共」の活動等への参加機会の拡大などを通じて地域社会の活性化にもつながるものである。また、就業期から地域活動への参加など活動の場を広げることは、生涯を通じた人や地域とのつながりを得る機会となる。

 

(「新しい公共」とは、行政だけでなく、市民やNPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野で活躍することを表現するもの。)

 

仕事と生活の調和の実現に向けた取組は、人口減少時代において、企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものである。とりわけ現状でも人材確保が困難な中小企業において、その取組の利点は大きく、これを契機とした業務の見直し等により生産性向上につなげることも可能である。こうした取組は、企業にとって「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえるべきである。

 

以上のような共通認識のもと、仕事と生活の調和の実現に官民一体となって取り組んでいくこととする。

 

1 仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である。

具体的には、以下のような社会を目指すべきである。

 

1. 就労による経済的自立が可能な社会

 経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。

 

2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

 働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる。

 

3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会

 性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。

 

2 このような社会の実現のためには、まず労使を始め国民が積極的に取り組むことはもとより、国や地方公共団体が支援することが重要である。既に仕事と生活の調和の促進に積極的に取り組む企業もあり、今後はそうした企業における取組をさらに進め、社会全体の運動として広げていく必要がある。

 

そのための主な関係者の役割は以下のとおりである。また、各主体の具体的取組については別途、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で定めることとする。

 

取組を進めるに当たっては、女性の職域の固定化につながることのないように、仕事と生活の両立支援と男性の子育てや介護への関わりの促進・女性の能力発揮の促進とを併せて進めることが必要である。

 

(1)企業とそこで働く者は、協調して生産性の向上に努めつつ、職場の意識や職場風土の改革とあわせ働き方の改革に自主的に取り組む。

 

(2)国民の一人ひとりが自らの仕事と生活の調和の在り方を考え、家庭や地域の中で積極的な役割を果たす。また、消費者として、求めようとするサービスの背後にある働き方に配慮する。

 

(3)国民全体の仕事と生活の調和の実現は、我が国社会を持続可能で確かなものとする上で不可欠であることから、国は、国民運動を通じた気運の醸成、制度的枠組みの構築や環境整備などの促進・支援策に積極的に取り組む。

 

(4)仕事と生活の調和の現状や必要性は地域によって異なることから、その推進に際しては、地方公共団体が自らの創意工夫のもとに、地域の実情に応じた展開を図る。

2021/09/16|1,117文字

 

1時間単位の年次有給休暇https://youtu.be/NvhWqWPb2j8

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が50%前後と低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため労働基準法が改正され、平成31(2021)年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

<取得義務の例外>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

例えば、基準日前から次の基準日後まで、1年以上にわたって休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合には、使用者にとって義務の履行は不可能です。

こうした場合には、法違反を問われることはありません。

 

<取得義務の履行が困難なケース>

次の基準日までの日数が少ないタイミングで、休職や育児休業などから復帰した場合には、年次有給休暇を取得できる労働日が少ないので、取得義務を果たすのが難しくなります。

しかし、この場合でも、年5日の年次有給休暇を取得させうる労働日がある場合には、年次有給休暇を取得させる義務を免れることはできません。

半日単位の年次有給休暇を取得してもらうなど、工夫して義務を果たすことになります。

仕事の進捗に問題が発生するような場合には、年次有給休暇の取得義務を果たしつつ、休日出勤を命ずるという裏技を使うこともあるでしょう。

なお、次の基準日までの日数が極端に少なく、取得させるべき年次有給休暇の残日数が、次の基準日の前日までの労働日の日数を超える場合には、「年5日」を達成できなくても、その労働日のすべてを年次有給休暇に充てることで足ります。

 

<解決社労士の視点から>

上記のように、かなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

休職や育児休業などが見込まれた時点で、前もって年次有給休暇を取得しておいてもらったり、復帰後の年次有給休暇取得を勤務予定に組み込んだりと、年次有給休暇の取得義務を見据えた勤務計画を立てておく必要があるでしょう。

2021/09/15|1,064文字

 

<年次有給休暇取得権の保護>

使用者が、年次有給休暇の取得を妨害する措置をとっても構わないのであれば、労働者の権利は容易に侵害されてしまいます。

こうした事態を防ぐため、労働基準法には次の規定が置かれています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この規定の最後の「しないようにしなければならない」という言い回しが曲者(くせもの)です。

こうした言い回しは、使用者の「努力義務」を規定しているものとされます。

違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない程度の義務であって、一定の努力を示せば良いとされるものです。

ですから、正面から年次有給休暇の取得を妨害するような露骨な措置をとれば、この努力義務違反となりうるのですが、全く別の目的からとられた措置であって、年次有給休暇の取得を抑制する効果が小さければ、許されることもあるのです。

 

<「努力義務」違反の例>

年次有給休暇を取得した日について欠勤扱いとし、給与計算で欠勤控除とする措置は、労働基準法第136条に違反します。

給与計算のうえで、年次有給休暇を取得しても、欠勤した場合と同じ効果しか無いのであれば、年次有給休暇を労働者の権利とした意味がありません。

また、賞与の査定の際に、年次有給休暇の取得日数に応じたマイナス評価をして、取得日数分の給与に相当する金額を賞与から控除するような措置も、同様の理由から労働基準法第136条に違反します。

 

<「努力義務」違反にはならない例>

労働基準法第136条違反が争われた沼津交通事件では、最高裁判所が次のような判断を示しています。(平成5(1993)625日)

 

タクシー会社では、乗務員の出勤率が低下して自動車の実働率が下がることを防止する目的で、皆勤手当の制度を採用することがある。

この会社では、年次有給休暇と欠勤を合わせて1日であれば減額した皆勤手当てを支給し、2日以上であれば支給しないという運用をしていたが、皆勤手当の金額は最大でも給与の1.85%に過ぎなかった。

このように、この会社の皆勤手当は年次有給休暇の取得を抑制する目的を持たず、また、その金額からも年次有給休暇の取得を抑制する効果を持つものではないので、労働基準法第136条に違反しない。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得を抑制しうる措置の導入を考える場合には、その目的と効果を具体的に検証したうえで実施する必要があるということです。

2021/09/04|779文字

 

<法定雇用率の引き上げ>

民間企業における障害者の法定雇用率は、段階的に引き上げられ、令和3(2021)年3月1日からは2.3%となっています。

事業主ごとの障害者雇用率は、原則として、次のように計算されます。

障害者の実雇用率 = 障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数

 

<労働者の数>

障害者の実雇用率を計算するときの「労働者」は、常時雇用している労働者(常用労働者)をいいます。

常用労働者に当てはまるのは、1年以上継続して雇用されている人と、1年以上継続して雇用される見込みの人のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の人です。これには、障害者も含みます。

ただし、1週間の所定労働時間が30時間以上の人は、1人をそのまま1人と数えますが、20時間以上30時間未満の人は、1人を0.5人として数えます。

ここで、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を「短時間労働者」と呼びます。

このように、障害者の実雇用率を計算するときには、1年以上の継続雇用を前提として、1週間の所定労働時間で区分しますから、正社員、パート社員、アルバイトなどの区分をそのまま当てはめられないことになります。

 

<障害者である労働者の数>

障害者には、身体障害者だけでなく、知的障害者、精神障害者を含めて数えます。

身体障害者と知的障害者のうち重度の人を「重度障害者」と呼びます。

たとえば、身体障害者障害程度等級表の1~2級に該当、もしくは3級に該当する障害を2以上重複していることで2級とされる人は「重度身体障害者」です。

この重度障害者の場合には、短時間労働者なら1人をそのまま1人と数えます。短時間労働者でなければ、1人を2人と数えます。

また、重度障害者ではない障害者の場合には、短時間労働者なら1人を0.5人として数えます。短時間労働者でなければ、1人をそのまま1人と数えます。

2021/09/13|1,549文字

 

<DV被害者の生計同一認定要件>

配偶者からの暴力の被害者の場合、暴力を避けるために一時的な別居が必要になる場合があります。

こうした状況下で、加害配偶者が死亡した場合には、一般的な基準で遺族年金等の生計同一認定要件を判断したのでは、妥当性を欠くことになります。

そこで、具体的な事情を踏まえた判断基準が適用されることとなっています。

この判断基準は改定が重ねられていますが、令和3(2021)年10月1日からの新基準では、次のようになっています。

 

1.被保険者(加害配偶者)等の死亡時において、以下のAからEまでのいずれかに該当するために被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、遺族年金の受給権者に該当するかどうかを判断します。

 

A 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV被害者であること。

B 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されているDV被害者であること。

C DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所しているDV被害者であること。

D DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害者であること。

E 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、AからDまでの者に準ずると認められるDV被害者であること。

 

2. 1.のA、B、C及びEに該当するかどうかについては、裁判所が発行する保護命令に係る証明書、配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書(「配偶者からの暴力を受けた者に係る国民年金、厚生年金保険及び船員保険における秘密の保持の配慮について」(平成19 年2月21日庁保険発第 0221001 号)の別紙1をいう。)、住民基本台帳事務における支援措置申出書(相談機関等の意見等によってDV被害者であることが証明されているものに限る。)の写し又は公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書を通じて、確認を行う。なお、1.のDに該当する場合は、証明書を通じた確認は不要とする。

 

3. DV被害に関わり得る場合であっても、一時的な別居状態を超えて、消費生活上の家計を異にする状態(経済的な援助も、音信も訪問もない状態)が長期間(おおむね5年を超える期間)継続し固定化しているような場合については、原則として、平成23年通知3⑴①ウ(イ)に該当していないものとして取り扱う。ただし、長期間(おおむね5年を超える期間)となった別居期間において、経済的な援助又は音信や訪問が行われている状態に準ずる状態であると認められる場合には、この限りではない。

 

4. 1.から3.までの規定により生計同一認定要件の判断を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり、かつ、社会通念上妥当性を欠くこととなる場合にあっては、1.から3.までの規定にかかわらず、当該個別事案における個別の事情を総合的に考慮して、被保険者等の死亡の当時その者と生計を同じくしていたかどうかを個別に判断する。

 

<解決社労士の視点から>

家庭内暴力から逃れるために別居していても、公的機関などの支援を受けないと、DV被害者であることの証明ができません。

また、配偶者が死亡した場合にも、自動的に通知が届くわけではありませんから、定期的に確認する必要はあるわけです。

従業員や求人への応募者が、こうした状況にあるとの情報を得たら、これらの点についてアドバイスしておくべきでしょう。

2021/09/12|1,067文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に請求するということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

 

<恩恵としての年次有給休暇への振替>

例外的に、事後の申請により私傷病欠勤を年次有給休暇に振り替える規定を就業規則に置いている会社もあります。

これは、労働基準法の定めを上回る権利を労働者に認める規定ですから、このような規定を置く/置かないは会社の自由です。

そして、どのような手続によって振り替えを認めるか、また会社の承認を必要とするかしないかも、会社の判断で自由に定めることができます。

 

<申請だけで振替ができる規定の場合>

労働者が所定の用紙に必要事項を記入して会社に提出すれば、欠勤を年次有給休暇に振り替えることができるという規定ならば、花粉症であれ腹痛であれ、それなりの理由があれば振り替えることができてしまいます。

会社としては、無断で年次有給休暇を使われたという印象を受けるかもしれません。

しかし、就業規則の規定に従って年次有給休暇の振り替えを行った以上、会社がこれを否定したり、非難したり、マイナスに評価するということはできません。

 

<会社の承認を得て振り替えができる規定の場合>

私傷病欠勤が、やむを得ない欠勤であると認められる場合に限り、年次有給休暇に振り替えることができるという規定にしておけば、インフルエンザや急性胃腸炎を理由に上司の承認を得て振り替えが認められるし、花粉症や単なる腹痛であれば、勤務不能とまではいえない欠勤なので、年次有給休暇に振り替えることはできないという運用が可能です。

 

<解決社労士の視点から>

就業規則の規定に従って、労働者が無断で年次有給休暇を取得してしまったと嘆いたり批判したりではなく、就業規則の不備を反省すべきです。

就業規則の規定は、労働契約の内容となります。

会社が就業規則に定めたことは、会社の労働者に対する約束になります。

想定外の運用をされてしまったと嘆く前に、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けたうえで、就業規則の具体的な内容を決定してはいかがでしょうか。

2021/09/11|1,175文字

 

<年次有給休暇は事前の請求が原則>

労働者が年次有給休暇を取得するときには、休む日を指定します。

これが、労働者の時季指定権の行使です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

休む日を指定して取得するということは、事前に届け出るということになります。

そして、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は労働者に対して、休む日を変更するように請求できます。

つまり、会社は時季変更権を行使することができます。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者が会社の時季変更権を侵害しないようにするためにも、年次有給休暇の取得は事前請求が原則です。

しかし、会社側は時季指定権を持っていませんから、休む日を勝手に決めることはできません。

ただし労使の合意によって、次の「計画的付与制度」を使うことはできます。

 

<計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日分を除いた残りの日数については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。

この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が 高くなっているという統計もありますから、年次有給休暇が取りやすくなると考えられます。

 

<実際の対応>

給与明細書を見てみたら、勝手に年次有給休暇を取得した扱いになっていたという場合、労働者が異議を申し出なければ、事後的な合意で年次有給休暇が取得されたものと考えて良いでしょう。

しかし、年次有給休暇は別の機会に取得する予定であったとか、何か必要が発生したときのために残しておきたかったとか、労働者の意思に反する場合には、労働者から会社に対して「間違い」の是正を求めることができます。実際に、給与処理上のミスだったということもありえます。

この場合には、年次有給休暇の残日数が減らなかったことになり、年次有給休暇を取得した扱いによって過剰に計算された賃金は、労働者から会社に返金することになります。

 

<働き方改革との関係で>

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のためには、労働時間の削減や休日数の増加、年次有給休暇の取得など、従業員の健康と生活に配慮し、多様な働き方に対応したものへ改善することが重要です。

会社が労働者に対して一方的に年次有給休暇を取得させるというのは、年次有給休暇の取得促進にはなるものの、法的に認められることではありません。

また、何の予告も無く行われれば、労働者の会社に対する不信感も強まります。

なお、会社が年5日の年次有給休暇を取得させる義務を負う場合であっても、会社が時季を定めるに当たっては、労働者の意見を聴取することが必要であり、対象となる労働者の意見を尊重するよう努めなければなりません。

 

内容は同じであっても、労使で話し合って決めていけば、従業員満足度が高まり、定着率は上がるし、会社の評判も向上するでしょう。

2021/09/10|2,240文字

 

<令和4年度概算要求>

令和3年8月31日、厚生労働省は令和4年度厚生労働省所管予算概算要求の概要等を公表しました。

新型コロナウイルス感染症から国民の命・暮らし・雇用を守る万全の対応を引き続き行うとともに、感染症を克服し、ポストコロナの新たな仕組みの構築、少子化対策、デジタル化、力強い成長の推進を図ることにより、一人ひとりが豊かさを実感できる社会を実現するため、以下を柱に重点的な要求を行うものとしています。

●新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築

●ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現

●子どもを産み育てやすい社会の実現

●安心して暮らせる社会の構築

 

<新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築>

○新型コロナ克服の保健・医療等体制の確保 新型コロナから国民を守る医療等提供体制の確保

 PCR検査等の検査体制の確保

 保健所・検疫所等の機能強化

 ワクチン接種体制の構築

 医療用物資等の確保・備蓄等

 

○ワクチン・治療薬等の研究開発の推進等

 ワクチンの研究開発・生産体制の戦略的な強化

 治療薬の研究開発・実用化の支援

 

○地域包括ケアシステムの構築、データヘルス改革等

 地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革の推進

 自立支援・重度化防止、認知症施策の推進、介護の受け皿整備・介護⼈材の確保の推進

 予防・重症化予防・健康づくり、データヘルス改革の推進

 

ここで、「データヘルス改革」というのは、保健医療サービスを国民が効率的に受けられる環境の構築を目的として、ICTを活用した健康管理・診療サービスの提供や、健康・医療・介護領域のビッグデータを集約したプラットフォームを構築していく厚生労働省の戦略のことを指します。

 

<ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現>

○雇用維持・労働移動・人材育成 雇用の維持・在籍型出向の取組への支援

 女性・非正規雇用労働者へのマッチングやステップアップ支援、新規学卒者等への就職支援

 デジタル化の推進、人手不足分野への労働移動の推進

 

○多様な人材の活躍促進

 女性活躍・男性の育休取得促進

 就職氷河期世代の活躍支援

 高齢者の就労・社会参加の促進

 障害者の就労促進、外国⼈の支援

 

○働きやすい職場づくり

 良質なテレワークの導入促進

 最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進、同⼀労働同一賃金など公正な待遇の確保

 総合的なハラスメント対策の推進

 

「働きやすい職場づくり」の項目の中に「最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進」とあります。

つまり、生産性向上等により、企業に余力が発生したのを受けて、最低賃金・賃金の引上げが行われるという本来の姿が示されています。

現実には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、企業の体力が低下しているこの時期に、最低賃金の大幅アップが行われます。

これによって、業種によっては、雇用の維持・推進が困難になることが懸念されます。

 

<子どもを産み育てやすい社会の実現>

○子育て家庭や女性の包括支援体制 母子保健と児童福祉の⼀体的な支援体制の構築

 ヤングケアラー等への支援

 困難な問題を抱える女性への支援

 生涯にわたる女性の健康の包括的支援

 

○児童虐待防止・社会的養育の推進、ひとり親家庭等の自立支援

 地域における見守り体制の強化

 里親委託の推進や施設退所者等の自立支援

 ひとり親家庭等への就業支援を中心とした総合的支援

 

○不妊症・不育症の総合的支援

 不妊治療の保険適用

 不妊治療と仕事の両立支援

 

○総合的な子育て支援

 「新子育て安心プラン」等に基づく受け皿整備

 保育人材確保のための総合的な取組

 

「子育て家庭や女性の包括支援体制」の項目の中の「ヤングケアラー」は、法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを、日常的に行っている18歳未満の子どもとされています。

社会的養護が必要な子どもを、児童福祉法に基づき行政から委託を受けて、家庭に一時的に預かり育てるのが「里親」です。貧困や虐待、実親の病気など、実家庭で生活できない子どもは現在全国に5万人近くいます。

 

<安心して暮らせる社会の構築>

○地域共生社会の実現等 相談支援、参加支援、地域づくりの⼀体的実施による重層的支援

 生活困窮者自立支援、ひきこもり支援、自殺対策、孤独・孤立対策

 成年後見制度の利用促進

 

○障害児・者支援等

 医療的ケア児への支援の拡充

 依存症対策の推進

 

○水道、戦没者遺骨収集、年金、被災地支援等

 水道の基盤強化

 戦没者遺骨収集等の推進

 安心できる年金制度の確立

 被災地における心のケア支援、福祉・介護提供体制の確保

 

「医療的ケア児」は、医療的ケアを必要とする子どものことです。

医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引等の医療的ケアが日常的に必要な子どもの数は、全国で2万人を超えています。

 

<解決社労士の視点から>

4つの重点要求のうち、企業と最も関わりが深いのは少子化対策です。

令和4年4月と10月にも、育児休業に関する法改正が控えています。

コロナの影響もあって、少子化対策は、より強力に継続されることが想定されます。

今後、法改正や市場動向の変化に取り残されないよう注意する必要があります。

2021/09/09|1,060文字

 

懲戒処分 人事考課 人事異動 https://youtu.be/wc_ecA4cnCQ

 

<懲戒の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

これは、不都合な結果の発生を予見して回避する能力はあるのに、故意あるいは明らかな不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

しかし、能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

 

<懲戒の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。

一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。

これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

 

<懲戒の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

これは、罪刑法定主義の考え方です。

ある行為を処罰するためには、禁止される行為の内容と処罰の内容を具体的かつ明確に規定しておかなければならないとする原則です。

これは、日本国憲法第31条と第39条にもその趣旨が示されています。

対置される概念は罪刑専断主義です。

たとえば「社長を怒らせたら懲戒処分」という考え方です。

こんなことでは、社員はいつも不安です。

懲戒規定に定めの無い行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。

しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下します。

たとえば、ある社員が作業の問題点を指摘し、改善提案をしたとします。

これを不快に思った会社側が、不当に懲戒処分を行ったならば、その職場での改善は進まなくなってしまいます。

やはり、懲戒規定に具体的な定めのない行為を行っても、懲戒処分の対象とされることはないのだという安心感に基づいて、伸び伸びと勤務できる環境が会社の成長を促すのです。

2021/09/08|1,595文字

 

<配属部署が向いていない?>

入社にあたって会社に伝えた希望の部署とは違う部署に配属されることの方が多いのではないでしょうか。

どの部署が向いているかは、自分自身の判断、会社の判断、真の適性の3つが食い違うこともあります。

自分や会社が向いていると判断した部署が、実は向いていない部署の場合もあります。

また、会社の判断では希望通りの部署について適性を認めたものの、その前に今の部署の仕事を経験させておこうというキャリア設計があるかもしれません。

もしそうであれば、今の部署である程度の実績を上げなければ、希望の部署への異動は遠のいてしまいます。

それに、いきなり希望の部署に配属されて、思ったほど仕事が進められなければ、自分に失望してしまいます。

これは大きな挫折となりますから、希望の部署に配属されないのは一種のリスク回避でもあるのです。

 

<会社が向いていない?>

もう少し視野を広げて考えてみれば、配属された部署の仕事が向いていないのではなくて、その会社が向いていないのかも知れません。

経営方針に共鳴していたとしても、企業風土や職場の雰囲気が自分に合っていない可能性もあります。

そうだとすれば、たとえ別の部署に異動になっても、それが希望の部署であったとしても、会社が向いていないのであれば、これから先、自分の思い描いていた仕事はできないのかもしれません。

 

<会社勤めが向いていない?>

さらに視野を広げて考えてみると、会社が向いていないのではなくて、会社という組織の中で、会社に雇われて働くことが向いていないのかも知れません。

決められた日の決められた時刻に出勤して、最低限、決められた時刻までは働かなければなりません。

自分のやりたいように仕事を進められるわけではありません。

上司もいれば先輩もいますから、その指導やアドバイスも受け入れなければなりません。

理不尽と思える話でも、拒否するわけにはいきません。

新人のうちは、注意を受け、叱られることも多いでしょう。

それで、仕事のやり直しによる残業も発生します。

予定通りの時刻に帰宅できないことも当たり前になります。

こうした生活が向いていない、つまり、そもそも会社勤めが向いていないという可能性は、決して低くはないのです。

 

<働くことが向いていない?>

では、会社勤めが向いていないとして、どうやって生計を立てれば良いのでしょうか。

あるいは、再び親の扶養に入るのでしょうか。

自分で何とかしようと思うのであれば、個人で事業を立ち上げるとか、会社を設立するとか、雇われない形で働くことを考えることになります。

企業風土とか職場の雰囲気は、自分自身で作れば良いのですし、誰かの指示に従う必要もありません。

始めたいときに仕事を始め、終わりたいときに仕事を終了することも自由です。

こうしたことが「大変だなぁ」と感じるのであれば、そもそも働くことが向いていないのかも知れません。

 

<解決社労士の視点から>

働くことが向いていない、会社勤めが向いていないということであれば、転職しても上手くいくはずがありません。

大人として、社会人として、まともな生活をしようと思うのであれば、まずは自分に与えられた仕事を誠実にこなしていくことをお勧めします。

自分に合っていない仕事をこなしているうちに、自分自身が変わっていきます。

また、自分がきちんと仕事をこなすことで、その部署の雰囲気もルールも変わってきます。

こうして、最初は「自分に合っていない」と思っていても、やがて自分がその部署に近付き、その部署が自分に近付いてくるのです。

たとえ不本意な仕事であっても、誠意をもってこなすことは、これから先、今の会社で働くにせよ、転職するにせよ、独立するにせよ、決して無駄にはなりません。

今の環境から安易に飛び出すよりは、まず熱心に取り組んでみて、自分自身を成長させ変革させていくことを強くお勧めします。

2021/09/07|1,135文字

 

<事業者が実施義務を負っている主な健康診断>

事業者は労働者に対し、厚生労働省令の定めに従って、医師による健康診断を実施する義務を負っています。〔労働安全衛生法第66条第1項、第2項〕

その主なものは次の3つです。

・雇入時健康診断…常時使用する労働者を雇入れる直前または直後に実施。〔労働安全衛生規則第43条〕

・定期健康診断…常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第44条〕

・特定業務従事者健康診断…深夜業や重量物の取り扱い等の有害業務に常時従事する労働者に対して、6か月以内ごとに1回定期的に実施。〔労働安全衛生規則第45条第1項〕

 

<対象者の範囲>

雇入時健康診断と定期健康診断は、正社員はもちろんですが、所定労働時間が正社員の4分の3以上の従業員は受けさせることが、法的に義務づけられています。ただし、1年未満の有期労働契約で、契約更新によっても1年以上働く見込みがない者は除きます。

特定業務従事者健康診断は、契約形態や所定労働時間に関係なく、定期、入社時、有害業務への配置転換時について実施義務があります。

 

<定期的な実施>

定期健康診断の「1年以内ごとに1回定期的に」、特定業務従事者健康診断の「6か月以内ごとに1回定期的に」というのは、時期がずれると「定期的」ではなくなってしまうので、それぞれの労働者にとって同じ月の実施となるのが通常です。

労働者が50人以上の事業場では、所轄の労働基準監督署長に定期健康診断結果報告書を提出するので、時期がずれれば、そのことが労働基準監督署に知れることにもなります。

 

<コロナの影響で予定通りできない場合の対応>

現実的な問題として、いつも同じ時期に同じ健診機関で健康診断を実施していたところ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、一時的に健康診断が行われないという事態が発生しています。

こうした場合の対応については、法令に規定が無いのですが、労働基準監督署は次のような対応を取るように指導しています。

・いつもと違う健診機関で、いつもと同じ時期に健康診断を実施できるよう努力する。

・これができない場合には、なるべく近い時期に健康診断を実施するよう努力する。

・健康診断の実施時期がずれた場合には、やむを得ずずれて実施した事情についての記録を残し保管する。

つまり、いつもの時期に実施できるよう努力することは求められるものの、どうしてもできなかった場合には、具体的な事情と対応について記録を残し保管して、所轄の労働基準監督署から照会があった場合には説明できるようにしておくということです。

結局、不可能を強いられることは無いのですが、きちんと理由を説明できる証拠は残さなければならないということです。

2021/09/06|1,302文字

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払い義務は無いのです。

もちろん、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

それでも、電車の遅れに対して、一般には使用者側に落ち度が無いので、やはり賃金の支払い義務は無いのです。

つまり、電車が遅れて勤務できなかった時間の賃金について、会社が欠勤控除をせず全額支払うというのは、法令によるものではなく会社の恩恵的な取扱いだということになります。

ただ、電車の遅れによる遅刻について欠勤控除をしない会社の比率は高いですから、欠勤控除をするルールの会社では社員の不満が生じやすいでしょう。

 

<証明を求める会社>

遅刻の報告書に遅延証明書を添えれば、証明された遅延時間の範囲内で、欠勤控除をしないというルールの会社が多数派でしょう。

遅延証明書は、多くの鉄道会社でネット交付のサービスがありますから、ずいぶんお手軽になってきました。

 

<証明を求めない会社>

遅延証明書が無くても、本人が申し出れば欠勤控除をしないというルールの会社もあります。

改札口で遅延証明書をもらうための列に並ぶよりは、1分でも早く業務を開始してもらった方が、会社にとって得かもしれません。

また電車遅延の情報は、ネットで容易に得られるようになりましたから、社員のひとり一人から遅延証明書をもらうよりも、人事部門で一括して情報を把握し処理した方が、人件費の節減になります。

 

<問題社員のケース>

欠勤控除をしない会社の場合、次のような不正行為がありえます。

本当は寝坊してタクシーで駆けつけたのに、ネットで検索して、たまたま電車の遅延情報を見つけたから、遅延証明書をダウンロードして使用するということはありえます。

大雪などで、早朝から電車の大幅遅延が見込まれているのに、いつも通りの時刻に自宅を出発し、遅延証明書の範囲で賃金が得られるなら良しとする社員もいます。

このあたりは、教育研修や人事考課の適正な運用で対応すべきことでしょう。

 

<鉄道会社の賠償義務>

さて、電車の遅れによって賃金が減ったら、社員は減った分の賃金を損害として鉄道会社に請求できるのでしょうか。

直感的に無理だというのはわかります。

鉄道会社と乗客との間には旅客運送契約があります。読んだことがなくても有効なのは、電気会社やガス会社などとの契約と同様です。

この旅客運送契約に関して、各鉄道会社は営業規則を定めていて、鉄道会社は運行不能や2時間以上の遅延の場合などに料金の払い戻しはするものの、それ以上の損害等について責任を負わないことになっています。

2021/09/05|873文字

 

<トップからの情報発信>

トップから、長時間労働の削減や休暇の取得促進など働き方改革の推進について、明確な情報発信を定期的に行う必要があります。

働き方改革は、管理職が中心となって推進しなければ進みません。

ところが、管理職の中に「労働時間の削減や休暇の増加で業務が滞るのではないか。その場合には、自分が責任を問われたり、負担が増えたりするのではないか」という疑念があったのでは、消極的にならざるを得ません。

トップが、会社の経営課題の一つとして働き方改革を掲げ、朝礼、社内報、電子掲示板など、あらゆるチャネルを活用して発信する必要があります。

また1回だけ発信しても、時間が経てば、社員の中に「まだトップはその気になっているのだろうか。気が変わっていないだろうか」と不安になります。

このことから、情報発信は繰り返し定期的に行わなければなりません。

 

<経営幹部からの情報発信>

トップが働き方改革の推進に向けたメッセージを繰り返し発信していても、役員など経営幹部の意識が変わらなければ社内に浸透しません。

経営幹部が、中期経営計画など全社の経営計画を策定する時に、トップからの情報発信を受けての内容を盛り込み、目標を数値化したうえで全社員に発信する必要があります。

トップの立場からすると、経営幹部にこうした情報発信をさせることで、自ら推進することに対する責任を負わせるということになります。

 

<社外に向けた情報発信>

所定外労働の削減や年次有給休暇の取得増加によって、お取引先やお客様など社外にも影響が出てきます。

こうした影響の原因が働き方改革の推進にあること、働き方改革にどのようなメリットを期待して推進するのかを社外にも示す必要があります。

お取引先に対しては、有能な人材の確保ということが最も説得力を帯びてくるでしょう。

また、お客様に対しては、社員の生活を大切にしたいという思いをアピールすることができます。

働き方改革は、多くの企業が同時に推進し、社会全体で盛り上げなければなりません。

社外に向けた情報発信は、企業の社会的責任を果たすうえでも必要なものです。

2021/09/04|1,914文字

 

<テレワークを導入しなかった理由>

新型コロナウイルス感染症の拡大前には、テレワークの実施に消極的な企業も多く、政府が働き方改革の一環で推奨していたにも関わらず、特に中小企業では導入が広がりませんでした。

これについては、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・業種や職種がテレワークに不向き

・コミュニケーションをとることが難しい

・人材教育やマネジメントが難しい

・情報セキュリティの不安がある

・各従業員の出退勤や休憩時間の把握が困難

・出社しなければできない業務がある

・社内規定が整備されていない

・環境整備のための予算が無い

・正社員以外の従業員が多い

・従業員に持ち運びできるPCが与えられていない

・同居家族の協力が得られない

・仕事とプライベートの区別がつきにくい

・労災への対応がよく分からない

・経営層の理解が無い

・管理職にIT苦手意識が強い

 

こうしてみると、テレワークの実施を諦める決定的な理由があるわけではなく、心理的なハードルが高いように思えます。

 

<テレワークを導入した理由>

従来から、テレワークが推奨される理由としては、主に生産性の向上が挙げられています。

この他にも、次のようなことが理由として掲げられています。

 

・従業員の移動時間の短縮

・従業員の通勤による疲労の軽減

・非常時の事業継続を可能にする

・上司などの目を気にせず業務に集中できる

・育児や介護との両立を可能にする

・遠方に転居しても勤務を続けられる

 

こうした理由に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、次のような理由も加わって、一気にテレワークの導入が進みました。

 

・社内でのクラスター発生の防止

・通勤による従業員の感染の防止

・勤務中の長距離移動による感染拡大の防止

・密な状態で食事をとることによる感染拡大の防止

・新型コロナウイルスの感染が拡大しても事業継続を可能にする

 

今まで、できない理由を並べてテレワークに消極的であった企業の多くが、一度はテレワークに取り組んでみるという動きが盛んになりました。

中には、オフィスの縮小や移転を行った企業も見られました。

これによって、大幅な経費の削減も可能となりました。

 

<テレワークをやめた理由>

積極的にテレワークに取組んでみた結果、当初認識していた「テレワークを導入しなかった理由」を改めて痛感することとなった企業が多かったようです。

また、ペーパーレス化の進んでいない企業では、書類を会社にしか保存していないから、稟議書に捺印が必要だから、といった紙の書類への対応で出勤せざるを得ない状況は、マスコミにも大きく取り上げられました。

このこともあって、政府は捺印省略を一気に進めたのですが、民間企業での対応は思うように進んでいません。

さらに、当初は新型コロナウイルスに対する恐怖から、テレワークを強く希望していた従業員も、いざ導入してみると、通信費、光熱費、消耗品費だけでなく、新しい机、椅子、パソコンなどの負担についてのルールが不明確で、経済的な負担が大きくなったり、残業代が減少したり、通勤手当が支給されなくなったりと、収入も減るなど不利益を痛感するようになりました。

すべての従業員がテレワークの対象となるわけではなく、一部の従業員に限られるため、不公平感を払拭できない、特に派遣社員についてはテレワークの実施が困難であるという問題も指摘されました。

 

<隠された理由>

テレワークをやめた理由として、企業に対するアンケートでクローズアップされないものとして、リモートワークハラスメント(リモハラ)があります。

これは、テレワークあるいはリモートワークでは、距離感を錯覚したりコミュニケーションの取り方が従来と異なったりすることにより、新たなハラスメントの発生や増強が起こるものです。

特に、1対1でのリモート対応では密室化するわけですから、ハラスメント発生の危険が高まります。

ハラスメントで怖いのは「慣れ」です。

マスコミで取り上げられるハラスメントは、かなり深刻な人権侵害であることが多いのですが、発生した組織内では、徐々にエスカレートし「慣れ」によって、何とも思わなくなっているという恐ろしさがあります。

テレワークで発生した「慣れ」は、出勤しても残りますので、従業員の感覚の変化には注意する必要があるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

新型コロナウイルス感染症拡大への対応で、企業がテレワークを拡大したのに対応して、政府は前倒しでオンライン化を進めました。

一度は諦めたテレワークであっても、態勢を整えて再チャレンジする価値があります。

また、テレワークだけでなく、業務のオンライン化を進めるチャンスでもあります。

2021/09/03|1,190文字

 

<転倒災害の現状>

労働災害のうち、休業4日以上の死傷災害の中で、最も件数が多いのは転倒災害です。

実に全体の4分の1を占めています。

 

<滑って転ぶ危険の解消>

床にこぼれた液体で滑って転倒する場合があります。

床に水や油などがこぼれていたらすぐに拭き取れる道具を常備しておき、実際にすぐに拭き取るルールにしておく必要があります。

また、どうしても水や油などのたまりやすい場所には、マットを敷くなどして危険の発生を未然に防ぎましょう。

もちろん、自分でこぼした水は自分で拭くなどは常識として徹底しましょう。

どうせ後で清掃業者が来るからと放置しておくと、危険が増してしまいます。

 

<つまずいて転ぶ危険の解消>

床の上に置いたものやコード類につまずく危険も大きいものです。

「仮に」「ちょっと」ということで、一時的に床の上に物品を置くことは危険です。

人事異動に伴う席替えの際は、ほんの短時間という気の緩みから、書籍やファイルを床の上に置いてしまうことがあります。

普段は無い物が床の上にあると、これにつまずいて転倒する危険は想定外に大きいものです。

また、コード類は通路を横断しないように配線するのが基本です。

レイアウトの変更に伴い配線を変えられるよう、コード類を床の下に置くフリーアクセスにしておけば安全です。

これができない場合には、モールというカバーをコードの上に設置するのがお勧めです。

ただ、このモールは蹴飛ばされているうちに外れたり破損したりしますから、予備の部材を置いておき、適宜補修することをお勧めします。

 

<階段で転ぶ危険の解消>

階段で足を踏み外して転ぶことがあります。

この場合、打撲や骨折、場合によっては死亡事故になることもあります。

予防には、物理的な対策と安全のためのルール順守が有効です。

・急勾配の階段は設置を避ける

・滑り止めを設ける

・手すりを設ける

・十分な照明を設置する

・昇降する際は手すりを使用する

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

 

<凍結した水たまりや雪で転ぶ危険の解消>

冬になると、凍結した路面での転倒が多発します。

時間帯は朝に集中します。

凍結する場所や雪が積もる通路は特定できますので、その部分に重点的に対策を施すのが効果的です。

・凍結しやすい路面に凍結防止用の砂を撒く

・凍結しやすい出入口には凍結防止のマット類を敷く

・滑りやすい靴の使用を避ける

・必ず片手は空けておく

・ポケットに手を入れない

・危険な場所を歩行する際は、小さな歩幅で、靴の裏全体を着け、急がずにゆっくりと歩行する

・万一に備えて手袋を着用する

 

<解決社労士の視点から> 

手ぶらで転倒しても、大怪我をすることがあります。

ましてや、荷物や高温の料理を運んでいるときに転倒すると、障害が残るような大怪我となることもあります。

ちょっとした経費と手間で、戦力ダウンを防ぎ、安心して働ける職場環境にしましょう。

2021/09/02|1,087文字

 

<犯罪による被害>

犯罪には侵害される「利益」があり、刑法などはその「利益」を守るために刑罰を規定しています。

この「利益」は、保護法益などと呼ばれています。

しかし、犯罪によって侵害される利益は、法令によって保護が予定されている利益にとどまりません。

たとえば、窃盗罪の被害者は財産上の利益を奪われるだけでなく、盗まれたものに対する愛着心や、被害に遭ったショックなどにより、精神的な被害も受けています。

 

<二次被害>

このように犯罪の被害者は、二次被害を受けています。

犯罪の被害者となったことによる精神的ショックや身体の不調、医療費の負担や失業による経済的損失、捜査協力や裁判に関わることによる精神面や時間の負担、うわさ話などによる精神的な被害など、その範囲は広範に及びます。

こうしたことにより、欠勤が発生したり、仕事の能率が低下することは、容易に想定されるのですが、こうした不利益から社員を守れるのは会社しかありません。

 

<犯罪被害者休暇の必要性>

犯罪被害者の方々が仕事を続けられるようにするため、被害回復のための休暇制度の導入が求められます。

年次有給休暇の取得だけでは日数が足りないかもしれませんし、入社後半年未満などで年次有給休暇が無い社員は欠勤になってしまいます。

実際に出勤できなくなる事情としては、警察への届出、事情聴取、証拠提出、病院での受診、弁護士との相談・打合せ、裁判への出廷・傍聴などがあります。

特に裁判となると、年に10回以上法廷が開かれるなど、被害者の負担は大きいものです。

なにより、本人に責任の無いことで、たまたま犯罪の被害者となり、勤務が困難となったことにより、会社が貴重な人材を失うというのは避けなければなりません。

会社に犯罪被害者休暇の制度を設けて、こうした事態を防ぎましょう。

 

<就業規則の規定例>

(犯罪被害者休暇)

第●条 会社は、犯罪の被害を受けた従業員の心身の回復を図り、早期に通常の業務に専念できるようにすることを目的として、  日を限度に有給の休暇を与える。

2 前項の休暇は、従業員が次の理由により止むを得ず勤務できない場合に、これを与えるものとする。

・犯罪の被害を受けたことによる心身の治療のための通院

・犯罪被害者としての警察からの事情聴取、裁判への出廷・傍聴

 

上記の例では「有給の休暇」としていますが、無給とする場合であっても、年次有給休暇を付与する場合の出勤率の計算にあたって出勤扱いにするとか、人事考課にあたって欠勤扱いにしないとか、退職金の計算にあたって勤続期間から控除されないなどの利益がありますから、決して無意味ではありません。

2021/09/01|931文字

 

<雇用保険法施行規則の一部改正>

雇用保険法施行規則の「育児休業給付金におけるみなし被保険者期間の算定方法の見直しに関する規定」が改正されました。

これにより、雇用保険の育児休業給付金の被保険者期間の要件が、9月1日から一部変更となりました。

これまで要件を満たさなかった場合でも、支給の対象となる可能性があります。

特に、勤務開始後1年程度で産休に入った従業員などは対象となる可能性があります。

 

<原則のみなし被保険者期間>

育児休業開始日を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上あることが原則の要件です。

これまでは、この要件を満たさないと育児休業給付金を受けられませんでした。

 

<不都合な点>

女性従業員が育児休業をする場合、育児休業前に産前産後休業を取得しているのが一般的です。

ですから、1年程度勤務した後、産前休業を開始したようなケースでは、出産日に応じて育児休業開始日が定まることから、そのタイミングによってはみなし被保険者期間の要件を満たさない場合がありました。

 

<新たに認められたみなし被保険者期間>

今回の規則の改正により、原則のみなし被保険者期間の要件を満たしていない場合でも、産前休業開始日等を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上ある完全月が12か月以上ある場合には、被保険者期間要件を満たすこととされました。

 

<留意点>

育児休業開始日が令和3年9月1日以降の雇用保険被保険者が対象です。

賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上の月が12か月無い場合でも、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として算定します。

産前休業を申し出なかったため、産前休業を開始する日前に子を出生した場合は「子を出生した日の翌日」、産前休業を開始する日前にその休業に先行する母性保護のための休業をした場合は「先行する休業を開始した日」を起算点とします。

 

<解決社労士の視点から>

従来のみなし被保険者期間では、育児休業給付金の受給要件を満たしていない場合でも、新たに認められたみなし被保険者期間で要件を満たしていないかを確認し、手続漏れが発生しないように注意しましょう。

2021/08/31|1,538文字

 

労働契約https://youtu.be/dcnpbjVePB0

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、労働者は生活がかかっているので、使用者に対する遠慮があります。

また、少子化によって労働者が不足している業種では、労働者側が優位に立つこともあるでしょう。

さらに、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法第89条第5号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

2021/08/30|1,256文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<パワハラの定義からすると>

職場のパワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものをいいます。〔労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項〕

この条文を見ると、「就業環境が害される」という実害の発生が、パワハラの成立条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これらのことからすると、直接被害者に向けられた行為でなくてもパワハラとなりうることが分かります。

 

<パワハラの構造からすると>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思って、パワハラを行っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

こうして見ると、ただ単に陰口を叩くような場合、業務上必要の無い雑談の中で悪口を言っているに過ぎない場合には、パワハラには該当しないといえそうです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

パワハラで問題となる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

これらの人権侵害行為は、業務と無関係に行われれば、パワハラの定義にはあてはまらなくても、国家により刑罰を科され、被害者から損害賠償を請求されることがあります。

 

<悪口を言うと成立しうる犯罪>

名誉毀損罪〔刑法第230条〕は、公然と事実を摘示(てきじ)して名誉を毀損することで成立します。

「摘示」というのは、あばくこと、示すことです。

示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。

しかし、「公然と摘示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を摘示した場合には成立しません。

また、「事実を摘示」しないで名誉を棄損すると侮辱罪〔刑法第231条〕となります。

結局、本人がいない所で悪口を言うのは、パワハラにならなくても犯罪になりうるということです。

2021/08/29|1,345文字

 

<雇用保険の離職理由>

雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)は、かなり大雑把に言うと、自己都合の離職よりも会社都合のほうが有利です。

しかし実際には、自己都合・会社都合という区分ではなく、労働契約期間の満了や自己都合退職といった一般的な離職の場合と、特定受給資格者や一部の特定理由離職者の場合とに区分されています。

これは、予め転職の準備や経済的な備えができる退職と、転職が困難で経済的な備えができない退職とに区分して、離職者の受給内容に差を設けているのです。

ですから、会社と離職者とで雇用保険の話をする場合には、自己都合・会社都合というのではなく、給付制限期間の有無と所定給付日数について話すのが現実的です。

 

<退職金制度>

退職金制度では、自己都合と会社都合とで、支給金額に差のあることが多いものです。

自己都合でも会社都合でもない場合は、想定されないのが殆どです。

たとえば、1店舗のみを経営する会社が、行政により店舗の立退きを命じられた場合、廃業することになるのは、会社都合ではなく「行政都合」のようにも見えます。

しかし、店舗を移転して営業を続けるという選択肢もありますから、廃業するのは会社の主体的な決定によるものとされ、一斉解雇の場合には会社都合となります。

 

<休職制度>

休職制度で、会社都合によるものについて規定を置くことは少なく、殆どの場合が自己都合によるものとなります。

そして、休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)とされることが多く、中には解雇とする規定も見られます。

会社都合での休職や、復職できる状態となったにも関わらず会社都合で復職させられない場合には、休職期間の満了をもって自己都合による自動退職することはできず、話合いのうえ会社都合での退職とする場合が多いでしょう。

特にセクハラ、パワハラ、長時間労働、退職強要などによる精神疾患を原因とする休職の場合には、休職期間の満了をもって退職とすることは、不当解雇となるのが一般ですから注意が必要です。

 

<感染症の自宅待機>

インフルエンザに罹患した従業員から、年次有給休暇を取得する旨の申し出があれば、会社はこれに従うことになります。

しかし本人から「比較的症状が軽いので出勤したい」「テレワークにしたい」という希望が出された場合には、会社から年次有給休暇の取得を強制することはできません。

会社が休業させたいと考えるのであれば、休業手当を支払うことになります。

また、家族が新型コロナウイルスに感染し、従業員が濃厚接触者とされ、保健所から自宅待機するよう指導があった場合には、自己都合でも会社都合でもなく「行政都合」です。

この場合には、会社が休業手当を支払う義務を負いませんが、ご本人が年次有給休暇を取得することはできます。

しかし従業員の中に、お子さんが新型コロナウイルスに感染して濃厚接触者となった母親がいて、保健所から自宅待機を指示され、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を受給しようとする場合に、会社は休業期間を証明してあげることになります。

この場合、会社が金銭的な負担をすることはなく、休業の事実を確認する書類の作成に協力するだけです。

「会社都合ではなく自己都合だから」と考えて、協力を拒まないように注意しましょう。

2021/08/28|1,853文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<会社のパワハラ対策>

会社は、就業規則にパワハラの禁止規定と懲戒規定を置き、パワハラ防止対策のための社員教育を行う義務を負っています。

これは、労働契約上の雇い主としての義務です。

こうした義務を果たさない会社で勤務する管理職は、パワハラの加害者とされ被害者や遺族から訴えられる危険にさらされています。

部下が「上司のパワハラに絶望しました」といった遺書を残して自殺を図るようなことがあれば、何がパワハラに該当するのか教育研修が行われていない会社では、事実の確認も無いままパワハラの責任を取らされることにもなりかねません。

不幸にしてこうした会社で働いている管理職は、自分の身を守るため、最低限、以下のことを頭に入れておきましょう。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではありません。

会社の意向を受けて行った叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などは、業務上必要な行為です。

行為者の意識としては、これらの行為を熱心に行った結果、パワハラ呼ばわりされたということになりがちです。

しかし、パワハラが問題なのは、必要の無い人権侵害を伴っているからです。

 

<パワハラで問題となる人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

<典型的な犯罪行為>

暴行罪〔刑法第208条〕の「暴行」とは、人の身体に向けられた有形力の行使をいいます。有形力とは物理的な力のことで、たとえば石を投げつければ当たらなくても暴行になります。服を引っ張る、近くで刀を振り回す、耳元で大きな音を立てるというのも暴行です。

傷害罪〔刑法第204条〕の「傷害」とは、ケガをさせることです。ケガをさせる意図が無く暴行を行った結果、ケガをさせてしまった場合でも傷害罪になります。頭を叩こうとしたところ、相手が避けようとして転び腰を傷めた場合にも、頭を叩くという暴行の故意があった以上、傷害罪になってしまいます。

脅迫罪〔刑法第222条〕は、相手や親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知して脅迫すると成立します。口頭でも、文書でも、メールでも、あるいは態度でも脅迫になりますし、相手が実際に怖がらなくても成立します。

名誉毀損罪〔刑法第230条〕は、公然と事実を摘示して名誉を毀損することで成立します。「摘示」というのは、あばくこと、示すことです。示した事実は、原則として、真実であっても嘘であってもかまいません。しかし、「公然と摘示」するのが条件ですから、他の人には知られないように、直接の相手だけに事実を摘示した場合には成立しません。また、「事実を摘示」しないで名誉を毀損すると侮辱罪〔刑法231条〕となります。

 

<典型的な不法行為>

上記のような犯罪行為に対しては、国家により刑罰として懲役刑や罰金刑が科されうるのですが、同時に不法行為でもありますから、被害者に対しては損害賠償の責任を負います。両者は別物ですから、どちらか片方だけで済むというものではありません。

暴言、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなどの程度が軽くて、名誉毀損罪などの犯罪が成立しない場合には、一般に不法行為のみが成立します。

不要なことや不可能なことの強制が強要罪や業務妨害罪にはあたらない程度の場合にも、一般に不法行為のみが成立します。

つまり、人権侵害行為ではあっても犯罪が成立しない場合には、不法行為のみが成立しうるということです。

 

<身を守るだけではない知識>

パワハラ行為とされ、犯罪者になったり損害賠償を求められたりするのはどのような行為なのか、正しい知識を身に着けることは、自分の身を守るのに必要なことです。

しかし、それだけではなく、自信をもって業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などを行えるようになるのですから、管理職としての指導力を最大限に発揮できるようになるというメリットもあります。

2021/08/27|608文字

 

<両者の定義>

「配置転換」と「人事異動」は、法令によって明確な定義付けがされていません。

そのため、「配置転換」「人事異動」の意味については、会社ごとに解釈が分かれています。

とはいえ、会社の就業規則に「配置転換」と「人事異動」の両方の用語があり、異同について疑義が発生した場合や、これから就業規則に規定を置くにあたって一般的な意味を確認しておきたい場合には、以下を参考にしてください。

 

<配置転換>

配置転換とは、従業員の担当職務や勤務地などを変更することを指します。

配置転換は大きく分けると、企業内の配置転換と企業間の配置転換の2つです。

企業内の配置転換には、昇進・昇格、職種変更、勤務地変更などがあります。

営業所・店舗など複数の事業所間にまたがる配置転換を特に転勤と呼びます。

狭義の配置転換は、この企業内の配置転換のみを指します。

一方、企業間の配置転換には、子会社や関連会社への転籍、出向などがあります。

広義の配置転換には、企業内の配置転換と企業間の配置転換の両方が含まれます。

 

<人事異動>

人事異動とは、従業員が企業の命令によって、配置・地位や勤務状態などが変更されること全般を指します。

人事異動は、配置転換よりも広い概念で、配置転換のすべてを含む意味に使われることが多い用語です。

 

<就業規則の規定>

このように解釈が分かれる用語については、就業規則の中に定義規定を置いて、トラブルの発生を予防することが必要です。

2021/08/26|1,245文字

 
これって労働時間?https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<長時間労働の基準>

所轄の労働基準監督署長に届出ている三六協定の範囲内で、時間外労働や休日労働が可能です。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、法定労働時間を基準として、以下を守らなければなりません。

・時間外労働が年720時間以内

・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

・時間外労働と休日労働の合計について、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均がすべて1か月あたり80時間以内

・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月まで

以上の基準をすべて守らなければ、労働基準法違反となり罰則の適用もありえます。

 

<長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果>

令和3(2021)年8月20日、労働基準局監督課過重労働特別対策室室長と中央過重労働特別監督監理官の連名で、長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果が公表されました。

これは、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめたものです。

 

【令和2年4月から令和3年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場: 24,042 事業場

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

 ① 違法な時間外労働があったもの: 8,904 事業場(37.0%)

  うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

  月 80 時間を超えるもの: 2,982 事業場(33.5%)

  うち、月 100 時間を超えるもの: 1,878 事業場(21.1%)

  うち、月 150 時間を超えるもの: 419 事業場( 4.7%)

  うち、月 200 時間を超えるもの: 93 事業場( 1.0%)

 ② 賃金不払残業があったもの: 1,551 事業場( 6.5%)

 ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 4,628 事業場(19.2%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

 ① 過重労働による健康障害防止措置が

  不十分なため改善を指導したもの: 9,676 事業場(40.2%)

 ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの: 4,301 事業場(17.9%)

 

<解決社労士の視点から>

時間外労働について、違法の基準が変わっていること、また、その基準が複雑であることから、違法とされる事業場が4割近くあります。

「平均」の管理については、手計算で行うことが難しく、システムに頼らざるを得ないでしょうし、給与計算の締日の中間点で警告が出るようにしておかないと、適法性を保つのは困難だと思われます。

また、かつてはブラック企業の特徴とされていた賃金不払残業が、6.5%にまで低下しています。

令和時代に入ってもなお、サービス残業がある会社では、人材の確保が難しく、また、各方面からの信頼も得られませんので、やがて事業の継続は困難となるでしょう。

2021/08/25|1,677文字

 

<就業規則の規定>

マタニティーハラスメント(マタハラ)とは「子を設け育てることに対する職場での支援拒否の態度」と表現できます。

また、特に経営者が行うものは「不利益な取扱い」と呼ばれ、マタハラとは別の概念とされています。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、マタハラが次のように規定されています。

 

(妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの禁止)

第14条  妊娠・出産等に関する言動及び妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用に関する言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

マタハラという用語が、比較的新しいものであるために、敢えて日本語で明確に示されているのでしょう。

ただ、就業規則にこのような規定を置いた場合でも、何が「妊娠・出産・育児・介護等に関する制度又は措置の利用」にあたるのかについて、別に社員教育が必要となります。

少子高齢化に対応して、ここに言う「制度又は措置」の内容も、法改正により充実してきていますので、研修などの内容もアップデートしながら繰り返さなければなりません。

また、小規模会社で就業規則が無い場合であっても、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する法令は適用されますから、マタハラへの対応を怠ることはできません。

 

<制度又は措置の利用への嫌がらせ>

次に掲げる制度や措置は、育児介護休業法が定めるもので、男女どちらにも適用されます。

上司や同僚の言動が、こうした制度や措置に関するもので、人権侵害となれば、就業環境を害することにもなり、制度等の利用への嫌がらせ型のマタハラとなります。

・育児休業

・子の看護休暇

・所定外労働(早出や残業)の制限

・深夜業の制限

・育児のための所定労働時間の短縮措置

・始業時刻変更等の措置

 

<マタハラとなる言動>

次のような言動が、マタハラの典型例です。

・制度や措置の利用請求などを理由に上司が不利益な取扱をほのめかす

・制度や措置の利用請求などを上司や同僚が邪魔する

・制度や措置を利用したことを理由に上司や同僚が嫌がらせをする

具体的には、次のような発言がマタハラになります。

「男のくせに育休を取るなんて」

「一人だけ残業しないで帰るなんてずるい」

「いつも社長出勤で偉そうね」

周囲の人たちは、自分の負担が増えるから、ついついこんな発言をしがちです。

 

<マタハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたる/あたらないを判断できない場合があります。

育児介護休業法などの内容についての具体的な知識が無ければ、判断することは不可能だからです。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはマタハラだから止めなさい」と注意することもできません。

セクハラやパワハラであれば、関連するニュースも多いですし、感覚的に理解できる点もあるのですが、マタハラについては、知識が無ければ対応のしようがありません。

こうしてみると、社内でマタハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

こうした事情があるにもかかわらず、就業規則にマタハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に懲戒処分が行われてしまうのは、加害者本人にとっても会社にとっても不幸です。

加害者は、マタハラの意識が無いままに加害者とされ、会社と共に損害賠償を求められる他、両当事者とも評判が落ちてしまいます。

会社が本気でマタハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、育児介護休業法の具体的な内容の理解が中心となります。

少しでも社員の記憶に残っていれば、何か疑問が生じたときに法令の内容を確認することによって、マタハラの被害を最小限に食い止めることができます。

一般に、社員教育は生産性を高めるものですが、マタハラについての社員教育は社員と会社を守るために必要なものだといえるでしょう。

2021/08/24|803文字

 

<年次有給休暇の取得促進>

労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るための年次有給休暇は、その取得率が50%前後の水準で推移しています。

こうした現状を踏まえ、有給休暇取得促進のため、1日単位にこだわらない取得が認められるようになっています。

 

<半日単位の取得>

労働者が希望し、会社が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を消化することが認められています。

ただし、「午前中で終わる用事のためなら、1日休まなくても半日有給でいいですね」と会社側から働きかけるような、1日単位での有給休暇の消化を阻害する行為は認められません。

 

<1時間単位の取得>

5日以内なら労使協定を交わすことによって、1時間単位の年次有給休暇取得も可能です。〔労働基準法第39条第4項〕

また、労使協定の定めによって、対象者の範囲を限定することもできます。

この場合には、異動などによって対象者から外れた場合の取り扱いについて、あらかじめ労使で取り決めておく必要があります。

 

<1時間単位なら不安も少ない>

年次有給休暇の取得を申し出るには、労働者の側に次のような不安があります。

・みんなに迷惑がかかるのではないか

・休み明けに忙しくなるのではないか

・職場が年次有給休暇を取得できる雰囲気ではない

・上司が嫌な顔をしそうだ

1時間単位で希望の時間だけ年次有給休暇を取得する場合には、こうした不安も軽減されるでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする/しないは、それぞれの会社の自由ですが、法的権利であると思い込んでいる労働者が多いのも事実です。

それほど労働者のニーズが高い一方で、この制度の導入は会社の負担が大きくありません。

働き方改革は、企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善だと考えられますから、1時間単位の年次有給休暇の導入は優先順位が高いといえるでしょう。

2021/08/23|813文字

 

<テレワーク対応>

令和3(2021)年8月13日、厚生労働省が、健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令(令和3年8月13日厚生労働省令第140号)を発出しました。

この省令は、事業主を経由して健康保険証(被保険者証)を交付する手続がテレワーク普及の妨げになっている等として政府の縦割り110番に寄せられた改正要望を受けたものです。

 

<保険証の直接交付>

保険者は、令和3(2021)年10月1日以降、健康保険加入者(被保険者)に直接交付することについて支障がないと認めるときは、被保険者証を被保険者に直接交付することができることになりました。

現在は事業主に郵送された被保険者証を被保険者に交付する流れとなっていますので、10月以降は交付までの日数が短縮されることになります。

 

<被保険者証の情報を訂正した場合の被保険者証の返付>

記載事項を訂正するため保険者に提出された被保険者証の返付についても、被保険者に直接返付することについて支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないことになります。

 

<再交付>

紛失や汚損等による被保険者証の再交付についても、支障がないと保険者が認めるとき、または災害その他やむを得ない事情により、事業主を経由して行うことが困難であると保険者が認めるときは、事業主を経由することを要しないことになります。

 

<返納>

被保険者が退職などにより資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、またはその扶養家族(被扶養者)が異動したときは、事業主は遅滞なく被保険者証を回収して保険者に返納しなければならないこととされています。

この場合に、事業主を介さず直接返納することは、今回の省令によっても認められていません。

 

<その他>

高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証等の交付方法等についても、上記の被保険者証に準じた改正が行われます。

2021/08/22|2,131文字

 

<能力不足によるパワハラ>

会社の就業規則にパワハラの具体的な定義を定め、これを禁止する規定や懲戒規定を置いて、パワハラに関する社員研修を行っていても、社員個人の能力不足によるパワハラが発生します。

ここで不足する能力は説明能力が中心です。

 

<就業規則の規定>

職場のパワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものをいいます。〔労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項〕

この条文を見ると、「就業環境が害される」という実害の発生が、パワハラの成立条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを判断できない場合もあるでしょう。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいでしょう。

ましてや、暴行罪〔刑法第208条〕や名誉毀損罪〔刑法第230条〕の成立要件、特に構成要件該当性などは、「物を投げつけても当たらなければ成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、社内でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識があっても行われるパワハラ>

しかし、高度な知識があるのに、ついついパワハラに走ってしまう社員がいます。

もちろん、怒りっぽい、キレやすい性格というのもあります。

そして、カッとなってパワハラ行為に出てしまう原因を見てみると、相手が自分の思い通りに動いてくれない、自分の言ったことを理解してくれないということにあります。

さらに、その原因を追究すると、要領を得ない説明で相手に趣旨が伝わらないということがあります。

1人か2人の相手に伝わらないというのであれば、相手の理解力に問題がありそうです。

しかし、「どいつもこいつも解かってくれない」という感想を持つようであれば、その人の説明能力に問題があるのでしょう。

こうして、部下に説明する → 伝わらない → ボーッと聞いている、とんちんかんな質問をしてくる、同じ過ちを繰り返す → 再度説明する → 伝わらない → 感情的になって怒鳴ったり机を叩いたりのパワハラに走る という構造が出来上がってしまいます。

 

<不足する説明能力とは>

一口に「説明能力」と言っても複雑です。

前提として、相手の性格・経験・理解力の把握、相互理解があります。

異動したての役職者には、この前提を欠いていることがあり、パワハラ発生の危険が高まります。

次に、相手が落ち着いて傾聴できる態度・環境・雰囲気作り、そして、本人の語彙力・表現力、相手の理解度を探る観察力なども必要です。

こうしてみると、本人の持つ雰囲気、語彙力・表現力、観察力など、会社の教育研修をもってしても容易には醸成できない項目を含んでいます。

これらは、その個人の資質に依存する能力です。

 

<解決社労士の視点から>

説明能力が不足する社員は、優位な立場に立たせないのが得策です。

会社に対する貢献度が高い社員に説明能力が不足していたら、説明能力を十分身に着けるまでは、部下を持たせるのではなく、専門職的な立場で会社に貢献してもらうようにしてはいかがでしょうか。

専門職制度など適性を踏まえた人事異動を可能にする仕組と、その前提となる人事考課制度の適正な運用が、パワハラから社員と会社を守ってくれます。

2021/08/21|1,443文字

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

セクハラ行為に拒否の態度を示したら不利益を受けたという形です。

環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

セクハラ行為があったため落ち着いて仕事ができず生産性が低下したという形です。

 

<労働者の意に反する性的言動>

セクハラの加害者は相手の受け取り方次第という言い逃れをしたがります。

たしかに、セクハラの定義の中の「労働者の意に反する性的言動」のうちの「意に反する」というのが、相手の主観だけを基準に認定されるのであれば、この主張は正しいことになります。

しかし、相手の感覚を基準にすれば、「声がセクハラだった」「目つきがセクハラだった」など、セクハラとなりうる行為の範囲が不当に広がってしまいます。

これでは、相手の目を見て話すこともむずかしく、業務に支障を来してしまいます。

そこで実際には、相手の被害者意識も参考としつつ、具体的な事情から、相手の性格は抜きにして、年齢や立場などが同じ人であれば、「意に反する性的言動」であったかどうかを考えます。

つまり、相手の主観と客観的な事情の両方を基礎として、セクハラの成否を判断するのです。

たとえば相手が、性的言動について極端に敏感であったり、鈍感であったりすれば、これを修正して平均的なところで判断します。

ただし、相手が敏感であることを知りつつ、あえて性的言動に及んだような場合には、「意に反する性的言動」であったと認定されます。

このように考えないと、被害者は救われませんし、加害者は故意に行っているわけですから言い訳できる立場にないからです。

このように、セクハラ行為の有無を認定するには、行為者とその相手との関係や、それぞれの性格も把握する必要があります。

結論として、セクハラは相手の受け取り方次第という言い逃れは許されないことになります。

 

<会社のセクハラ対応>

こうして見てくると、セクハラの成否を判断するのは簡単ではないことが分かります。

それにもかかわらず、就業規則にセクハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に、安易に懲戒処分まで行われてしまうのは、行為者本人にとっても会社にとっても不幸です。

反対に、セクハラ被害があったにもかかわらず、会社がきちんと対応しないのでは、社員からの信頼を失い退職者が増えたり、会社の評判が落ちたりします。

会社が本気でセクハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、セクハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図りましょう。

この他、人事考課制度の適正な運用や、適性を踏まえた人事異動が、セクハラから社員と会社を守ってくれます。

そして、具体的な事例が発生したとき、その対応に迷ったら、守秘義務を負った専門家である社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

2021/08/20|827文字

 

<特例改定の対象者>

今回の標準報酬月額の特例改定は、令和3(2021)年8月から12月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した人が対象です。

令和2(2020)年6月から令和3(2021)年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けた人であっても対象となります。

 

<対象者の具体的な条件>

次のすべての条件を満たす人が対象です。

・新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和3(2021)年8月から令和3(2021)年12月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じたこと

・著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと(固定的賃金の変動がない場合も対象)

・特例措置による改定内容に本人が書面により同意していること

 

<届出>

月額変更届(特例改定用)に申立書を添付して、所轄の年金事務所に原則として郵送で提出します。

令和3(2021)年9月1日から令和4(2022)年2月28日までの届出が対象となります。

※令和3年4月から7月までの間の特例の届出期間は、令和3年9月30日までとなっています。

※令和3年1月から3月までの間の特例の届出期間は、令和3年5月31日で終了しています。

 

<対象者の同意>

届出に当たっては、対象者(被保険者)本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要となります。

「保険料が安くなる」というメリットだけでなく、傷病手当金、出産手当金及び年金の額は、改定後の標準報酬月額に基づき算出されるので、こちらも減額されるというデメリットの理解が必須です。

 

<再度の改定手続>

上記の特例改定を受けた人は、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合、その翌月から標準報酬月額を改定することになりますので、月額変更届の提出が必要です。

2021/08/19|1,118文字

 

秘密漏洩と損害賠償https://youtu.be/9JS05-d2BIM

 

<守秘義務の認識>

社員は、在職中だけでなく退職後にも、労働契約に付随する義務として当然に守秘義務を負っています。

しかし、このことは必ずしも社員一人ひとりに認識されているとは限りません。

就業規則に具体的な規定を置くことはもちろん、守秘義務を負う社員からは、入社や異動の際に誓約書を取っておくことをお勧めします。

 

<賠償請求の困難性>

社員が営業秘密をもらしてしまった場合でも、損害賠償請求は困難ですし、その金額も限定されてしまいます。

賠償を請求する場合には、まず具体的な事実関係を確認する必要があります。

ところが、これは大変時間のかかることですから、対象社員から十分に事情を聞く前に退職されてしまうことがあります。

また、事実関係が明らかになったとしても、損害の発生や損害額を証明することが大変困難です。

こうした場合に備えて、会社と社員との間で損害賠償額を予め決めておければ楽なのですが、これは労働基準法で禁止されていて、たとえ決めておいても無効になってしまいます。〔労働基準法第16条〕

 

<不正競争防止法>

不正競争防止法には、損害賠償請求の規定があるのですが、この法律が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。

保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法第2条第6項〕

実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。

なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。

・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること

・情報に接する者が制限されていること

 

<刑事責任と民事責任>

企業機密を持ち出した社員が書類送検されたということは、国家権力による刑事責任の追及が始まったということです。

このことによって、企業の犯人に対する損害賠償の請求が可能になったわけではありません。

刑事責任と民事責任とは、必ずしも連動しないのです。

やはり、秘密がもれたかも知れないと気づいてから対応するのではなく、もれないようにするのが得策です。

そのために最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。

こうした研修は、社外の講師が行った方が効果的ですし、労働契約の性質、就業規則の意味、誓約書の効果といった深い話から順を追ってきちんと説明することが大事です。

2021/08/18|1,942文字

 

<計算上の不利益>

ある日2時間残業して、翌日2時間早退して、これで相殺したことにすると賃金の面で問題があります。

労働基準法第37条第1項には次の規定があって、法定労働時間を超える労働には25分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

 

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

ある日、法定労働時間を超えて2時間残業した場合、その2時間の賃金は、就業規則や労働条件通知書などに示された25分以上割増の賃金です。

2時間 × 1.25 2.5時間

ですから、2.5時間分以上の賃金支払が必要です。

これと、早退による2時間分の賃金のマイナス(欠勤控除)とで相殺すると、0.5時間分以上の賃金が消えてしまうのです。

 

これでは割増賃金を支払わないことになりますから、労働基準法第37条第1項に違反し、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」という罰則適用の対象になってしまいます。〔労働基準法第119条〕

 

<不利益が無い場合>

ある人の所定労働時間が毎日4時間であれば、2時間残業しても法定労働時間の範囲内ですから、割増賃金は発生しません。

翌日2時間早退して、これで相殺したことにしても、賃金計算上の不利益はありません。

また、割増賃金を就業規則や労働条件通知書などに25分と規定し、4時間の残業と5時間の早退とで相殺するという運用ならば、賃金計算上の不利益はありません。

4時間 × 1.25 5時間

こうした計算で、労働者に不利益が無いのなら違法ではないようにも思われます。

しかし、労働基準法により、残業代は残業代、早退による欠勤控除は欠勤控除として、それぞれ別項目で賃金台帳に示さなければなりません。

労働基準法第108条には次の規定があります。

 

(賃金台帳)

第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

 

そして、労働基準法施行規則第54条により、次の事項を記入することになります。

・氏名

・性別

・賃金計算期間

・労働日数

・労働時間数

・時間外労働、休日労働および深夜労働の時間数

・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

・労使協定により賃金の一部を控除した場合はその金額

 

こうしたことから、たとえ賃金計算上の不利益が無い場合でも、残業時間と早退時間はそれぞれ集計して賃金台帳に記入しなければなりません。

 

<フレックスタイム制の運用>

きちんと手続をして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。〔労働基準法第32条の3

これは、1か月間など労使協定で定められた清算期間内の総労働時間と、実際の勤務時間の合計との比較で、時間外労働や欠勤の時間を集計する仕組みだからです。

労働者が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

就業規則の規定や労使協定が無いのに、フレックスタイム制に似せた運用をしてしまわないように注意しましょう。

 

<月60時間を超える時間外労働>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払に代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法第37条第3項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払日を定めるべきとされています。

これは、残業時間と早退時間との相殺ではなくて、残業時間と休暇との相殺になります。

中小企業の場合はもちろん、大企業であっても労使協定の無いまま、「8時間残業したら1日休んでよし」といった乱暴な運用は違法ですから注意しましょう。

2021/08/17|1,028文字

 

<休職期間中の産前休業>

産前休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第1項:産前休業】

使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 

このように、産前休業は法定された休業ですが、妊娠中の女性からの請求を待って発生するものです。

ですから、何らかの事情により、本人から産前休業の請求が無いまま休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)となることもあるわけです。

しかし、一般には本人からの請求があって、休職期間中に産前休業が開始されることになります。

この場合には、法定の制度である産前休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

むしろ、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<休職期間中の産後休業>

産後休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第2項:産後休業】

使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 

このように、産後休業は産前休業と同様に法定された休業ですが、出産した女性からの請求を待たずに当然に発生するものです。

ですから、休職期間中に産後休業が開始された場合には、法定の制度である産後休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

やはり、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<解決社労士の視点から>

休職に優先して産休が適用されることによって、残っていた休職期間がどうなるのか、法令には規定がありません。

これについては、各企業の就業規則に任されていることになります。

産休や育休が終了してから、休職期間の残された期間が進行する、期間がリセットされ改めて休職期間がスタートするなど、就業規則に定めることになります。

休職期間が短縮されたり終了したりというのは、産休や育休の取得による不利益取扱ですから許されません。

休職中の産休はレアケースですが、産休を取得する社員が多い職場では、予め就業規則に規定しておいてはいかがでしょうか。

2021/08/16|1,334文字

 

労働者本人の同意https://youtu.be/TA8e1cofsFE

 

<本人が同意しているのなら>

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。

ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法の規定とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうに思えます。

しかし、採用されたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

<任意規定と強行規定>

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。

ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。

つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに明示されていません。

その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。

そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

<労働基準法の性質>

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

<解決社労士の視点から>

退職予定の正社員から「引継ぎ書と業務マニュアルを完成させたいので残業させてください。これは、私が納得のいくものを作成したいという我がままですから、残業代は要りません」という申し出を受けて、会社側がOKを出したとします。

この退職予定者が、毎日残業し休日出勤までして、見事な引継ぎ書と業務マニュアルを残して退職していったとします。

この場合でも、退職後に残業代の支払を求められたら会社は拒めません。

社員は、退職すれば心理的に自由になります。

そして、労働者としての権利を最大限に主張できるのです。

退職した時点では、残業代を放棄するつもりだったのに、その後経済的に困って会社に請求してくるというのは、典型的なパターンになっています。

円満退社の場合でも、決して油断はできないということです。

2021/08/15|1,438文字

 

<就業規則の規定>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。

これによると、「精神的・身体的苦痛を与えこと」あるいは「職場環境を悪化させる行為」という実害の発生が、パワハラ成立の条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)では、次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、就業規則を読んだだけでは、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを判断できない場合もあるでしょう。

また、他の社員の行為に対しても、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいでしょう。

ましてや、暴行罪〔刑法第208条〕や名誉毀損罪〔刑法第230条〕の成立要件、特に構成要件該当性などは、「物を投げつけても当たらなければ成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、社内でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<解決社労士の視点から>

こうした事情があるにもかかわらず、就業規則にパワハラの禁止規定があり懲戒規定があることを理由に懲戒解雇まで行われてしまうのは、行為者本人にとっても会社にとっても不幸です。

行為者と家族の人生は台無しになりますし、会社は損害賠償を求められる他、両当事者とも評判が落ちてしまいます。

会社が本気でパワハラを防止するには、就業規則にきちんとした規定を設け、充実した社員教育を実施することが必要となります。

社員教育では、パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図りましょう。

この他、人事考課制度の適正な運用や、適性を踏まえた人事異動が、パワハラから社員と会社を守ってくれます。

2021/08/14|1,732文字

 

<配転命令権の根拠>

企業に配置転換を命ずる権利が与えられているのは、適材適所により人材の効率的活用を図り、また、キャリアアップのため多様な能力と経験を積み上げられるようにするためです。

東亜ペイント事件最高裁判決などによると「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができ」、次の条件を満たす場合には、労働者の個別的な同意を得ずに配置転換を命ずることができます。

 

【同意なく配転命令ができる場合】

1.就業規則、個別労働契約等に、会社は業務上の必要から配置転換を命ずることができる旨の規定があること

2.これらの規定に従い、一定の頻度で実際に配置転換が行われていること

3.対象者について、勤務場所や職種等を限定する合意が無いこと

 

上記3つの条件のうち、1.と2.は客観的に認定できますが、3.の合意の有無については、しばしば労使で争われることがあります。

裁判では明示の合意があったと認められることが少ないものの、職種の限定について明示の合意が無い場合であっても、医師、看護師、薬剤師、弁護士などの専門職では、黙示の合意があると見るのが自然です。

勤務場所や職種等を限定する合意がある場合には、改めて本人の同意を得たうえで、配置転換を命ずることになります。

 

<権利濫用法理>

労働契約法には、出向、懲戒、解雇について、権利濫用法理の規定があります。〔労働契約法第14条、第15条、第16条〕

配置転換については、権利濫用法理の規定がありません。

しかし、一般法である民法には、第1条(基本原理)の第3項に「権利の濫用は、これを許さない」という規定があります。

配置転換も労働契約の中で行われる以上、権利の濫用が許されないことは明らかです。

 

<配転命令権の濫用>

上記【同意なく配転命令ができる場合】に該当していても、配転命令権の濫用となる場合には、配転命令が無効となります。

 

【配転命令権の濫用となる場合】

1.配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるものである場合

2.業務上の必要が認められない場合

3.不当な動機・目的によるものである場合

 

上記3つの条件のうち、2.と3.は会社側で把握しうるものですが、労働者から配置転換を拒む理由として主張されることがあります。

1.については、配置転換を内示した後になって、労働者から家庭の状況について説明を受けることが多く、また、配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるか否かの判断が分かれやすいため、紛争となりやすい内容です。

 

<1.配置転換により労働者の被る家庭生活上の不利益が、転勤に伴い通常甘受すべき程度を超えるものである場合>

労働者の被る家庭生活上の不利益のうち、育児介護休業法により事業主が配慮すべきとされている事項については、相当程度の配慮が行われ、労働者の不利益が軽減されている必要があります。

しかし、これ以外については、裁判で家庭生活上の不利益が転勤に伴い通常甘受すべき程度のものと認定されることが多いようです。

 

<2.業務上の必要が認められない場合>

業務上の必要は、基本的には会社の裁量権が大幅に認められます。

したがって、人材の効率的活用を図るでもなく、また、キャリアアップのためでもないことが明らかであるような場合を除き、業務上の必要が認められるでしょう。

 

<3.不当な動機・目的によるものである場合>

労働者を退職に追い込むための配置転換は、無効とされることが多いといえます。

パワハラでの、過大な要求、過小な要求、隔離に準ずるような配置転換、あるいは、資格・能力・経験を活かせない業務への配置転換は、人事考課やキャリア蓄積の面で不利であり昇格・昇給を遅らせる可能性が高いため、嫌がらせ配転であると解されることが多いといえます。

 

<解決社労士の視点から>

配転命令の正当性について、多角的に検討したうえで、内示するというのは不効率だと思われます。

むしろ配置転換を打診し、対象者が拒否的な態度を示したら、その言い分に耳を傾け、一度話を持ち帰り、問題が無いと判断したならば説明・説得にあたるのが得策だと考えます。

2021/08/13|1,586文字

 

<周知の意味>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

会社で「周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<就業規則についての義務>

労働基準法には、次のように規定されています。

 

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

つまり、従業員が10名以上の会社では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。

しかし、従業員が10名未満の会社が就業規則を作成し届け出るのは任意です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法第106条第1項〕

従業員が10名以上の会社で、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出たとしても、周知しなければ効力が発生しません。ここは重要なポイントです。

 

<労使協定の周知義務>

よくある勘違いに、「うちには労働組合が無いので労使協定は関係ない」というのがあります。

しかし、労働組合が無い会社では、「労働者の過半数を代表する者」が選出され、この過半数代表者との間で労使協定が交わされます。

労使協定というと、三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が特に有名です。〔労働基準法第36条〕

この協定書を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければ、法定労働時間を超える残業は1分たりともさせられません。

無届での残業は違法残業となってしまいます。

労働基準法には、他にも多くの労使協定が規定されています。

特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。

しかし、必要に応じて協定を交わし、周知することが会社に義務付けられています。

 

<周知の方法>

周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。

 

<労働基準法の要旨の周知>

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、会社が作成するのですから、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。

しかも、労働基準法第106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」としています。

 

<解決社労士の視点から>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。

パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的に1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、自社の従業員に合った上手い説明が見つからない場合には、国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/08/12|809文字

 

社会保険料の免除、健康保険の出産手当金や出産育児一時金の請求、会社からの出産祝金の支給、雇用保険の育児休業給付の請求などの手続的なことは、夫婦それぞれの勤務先に出産予定日と実際の出産日を伝えれば、滞りなく行われるはずです。

こうしたこととは別に、夫には夫の役割があります。

どうぞ以下のことを参考にして準備を進めてください。

 

<出産前の準備>

・より多くの時間、妻に付き添えるよう、休暇取得などの準備を整えておきましょう。なかなか年次有給休暇を取得できない職場であっても、この時ばかりは何とかしてもらいたいものです。

・夫婦それぞれの実家など連絡先を確認し、事前の連絡をしておきます。

・生まれてくる赤ちゃんのことばかり気にかけていると、上の子が孤独を感じて不安になってしまいます。しっかりフォローしましょう。

・陣痛が起こったら、腰をさすったり、楽な姿勢をとらせたり配慮しましょう。

・水分を補給するための飲み物や、消化の良い食物も用意しておきましょう。

・妻がリラックスできるよう、環境を整えたり会話をしたりしましょう。

 

<赤ちゃんが生まれたら>

・妻には感謝とねぎらいの気持を伝えましょう。

・夫婦それぞれの実家など、必要な連絡先に知らせましょう。

・出産と同時に、注目の的が妻から赤ちゃんに移ります。妻が寂しい気持にならないよう、積極的に会話しましょう。欲しい物、して欲しいことなどは、できるだけ対応しましょう。

・上の子は、赤ちゃんばかりが可愛がられて焼きもちを焼くことがあります。しっかりフォローしましょう。

・妻と話し合って赤ちゃんの名前を決めます。そのためにも、できるだけ面会に行くようにしましょう。

 

<退院の準備>

・自宅の掃除など、赤ちゃんを迎える準備を整えておきます。

・退院時に入院費用の精算がありますので、その準備をします。

・退院時の荷物の整理は、妻の指示に従う形で行いましょう。

・荷物を持つことや、車の手配もお忘れなく。

2021/08/11|1,031文字

 

<顔出ししたくない人の言い分>

オンライン会議で顔出ししたくない人は、次のような主張をします。

オンライン会議に参加する前は、服装や髪型を整え、化粧をしたり、ひげを剃ったり、部屋を片付けたりと、準備に手間と時間がかかります。

参加中は、緊張した姿勢と表情を維持しなければならず、プライベートな空間を社内の人に見られます。

そもそも、会議を行うのに姿を見せる必要はなく、音声だけで話し合えるのではないかと考えます。

 

<顔出しさせたい人の言い分>

一方、オンライン会議で顔出しさせたい人は、次のような主張をします。

会社で会議を行う場合には、出社の時点で服装や髪型が整っているし、化粧やひげ剃りは済ませてあって当然だから、オンライン会議だからといって特別な負担はありません。

会議中に緊張を強いられるのも、オンライン会議に特有のことではありません。

姿を見せることによって、表情やジェスチャーによる一段高いコミュニケーションが可能となります。

そもそも、話し手が熱心に話している時、聞き手がちゃんと聞いているかどうか把握できないのでは困ります。

 

<背景の設定>

プライベートな空間を人目に晒すことが問題であれば、カメラをオフにするのではなく、背景を設定することも可能です。

ただし、テレビ番組や居酒屋の背景では不適切ですから、参加者全員で同じ背景にする、あるいは会社が作成した公式の背景を用いることも考えられます。

 

<リモートハラスメント(リモハラ)>

何とかして顔出しさせたいがために「おいこら!ちゃんと顔を見せろ!」などと暴言を吐くことや、顔出ししないメンバーの会議出席を拒否することは、リモハラとなりますので許されません。

また、他のメンバーが見聞きできる状態での叱責は、それ自体がパワハラとなります。

会議が終了してから、顔出ししなかった理由を確認し、これを踏まえて指導すべきです。

 

<解決社労士の視点から>

社員間で「常識」が対立する場合には、ルールを確定することによって解決します。

就業規則(テレワーク規程、オンライン会議規程)に、オンライン会議での顔出しについて規定を置きます。

顔出しが義務付けられているオンライン会議で、顔出しできない理由がある場合には、参加者から主催者に理由を明らかにして事前の許可を得るという規定も必要でしょう。

また、プライバシー保護の観点から、背景設定を禁止することは望ましくありません。

さらに、パワハラやセクハラについての注意規定を置くこともお勧めします。

2021/08/10|911文字

 

<法定の通院休暇>

妊婦自身やお腹の中の赤ちゃんの健康のため、妊婦は定期的に健康診査等を受ける必要があります。

そこで、妊婦や産後1年を経過していない妊産婦の労働者が、会社に申請すれば、母子健康法に定める保健指導または健康診査を受けるのに必要な「通院休暇」を取得できます。〔男女雇用機会均等法第12条〕

その回数は、原則として次の通りですが、医師等がこれと異なる指示をした場合には、指示された回数となります。

 妊娠23週まで  4週間に1回
 妊娠24週から35週まで  2週間に1回
 妊娠36週から出産まで  1週間に1回
 産後1年以内  医師等が指示する回数

 

<会社のルールとの関係>

通院休暇は法定の休暇です。

会社の就業規則に記載されていない場合、会社に就業規則が無い場合、前例が無い場合でも利用できます。

部下から通院休暇の利用について申し出があった場合に、上司が知識不足で断ってしまうと、会社の教育不足によるマタハラ(マタニティーハラスメント)になってしまいます。

また、社員に通院休暇の説明をする場合に、一定の年齢を超えた女性社員を対象外とすることは、セクハラになる恐れがあります。

 

<通院休暇の給与>

通院休暇を有給とするか無給とするかは、会社の規定によります。

就業規則が無かったり、就業規則に「労基法その他の法令の定めによる」という規定があるだけだったりすると、トラブルの元になりますから、予め就業規則に規定しておくことをお勧めします。

通院休暇は、勤務時間内に健康診断等受診のための時間を確保するという趣旨で設けられるものです。

事業主が一方的に年次有給休暇を通院休暇に充てるよう女性労働者に対して指示することは認められません。

ただし、通院休暇が無給とされる場合に、女性労働者が自ら希望して年次有給休暇を取得して通院することは問題ありません。

 

<通院休暇の申請>

申請は、原則として事前に行います。

出産予定日、次回通院日は決まり次第、事業主に知らせるのがマナーでしょう。

申請事項は、通院の日時、医療機関等の名称・所在地、妊娠週数などとなります。

事業主は、必要があればその女性労働者の了承を得て、診断書などの提出を求めることができます。

2021/08/09|723文字

 

<年金振込通知書>

年金振込通知書は、原則として年16月に郵送されます。

年度の最初となる4月分の年金は6月に支給されます。

6月が年度の最初の月分の振込月となることから、6月に年金振込通知書が郵送されるのです。

年金振込通知書は、2か月に1回の各支払期の年金振込額を知らせるものです。

2つ以上の年金を受けている人には、年金種類ごとの年金振込通知書が封書で届くこともあります。

振込額や振込口座に変更がなければ、6月から先の支払月には年金振込通知書は送付されません。

もちろん、年金振込通知書が送付されない月でも年金は支払われます。

なお、年金振込通知書に記載されている金額は、あくまでも予定額です。

各支払期に支払額の変更があれば、その都度、年金振込通知書が郵送されます。

 

<税金が急に高くなる場合>

年金振込通知書を見て、税金が急に高くなっていることを知り、驚いて年金事務所に問い合わせるというケースが見られます。

年金から差し引かれる税金(所得税および復興特別所得税)は、所得税法の規定により、支払う年金額から各種控除を行い、残りの額に税率を掛けた額となります。

年金から各種の控除を受けるためには、年金を受けている人に送られている扶養親族等申告書に必要事項を記入して、提出期限までに出すことになっています。

しかし、扶養親族等申告書が提出されない場合には、年金の支給額から25%に相当する公的年金等控除額を差し引いた額の10.21%が所得税および復興特別所得税となります。

昨年と比べて急に高額の税金が徴収されている場合、扶養親族等申告書の提出を忘れている可能性があります。

個別に原因を確認したい場合は、ねんきんダイヤルまたは年金事務所等にお問い合わせください。

2021/08/08|1,259文字

 

<自宅外勤務の発生>

会社が在宅勤務を命じたところ、社員の判断で自宅ではなく、友人宅、カフェ、ホテル、レンタルオフィスなどで業務を行っていたということがあります。

在宅勤務について、詳細な規程があれば、形式的にルール違反ということが多いでしょう。

しかし、大雑把なルールしか無いため、必ずしもルール違反とはいえず、迂闊に指導できないということもあります。

こうしたことでのトラブル発生を防ぐためのポイントを、検討したいと思います。

 

<在宅勤務の趣旨・目的>

在宅勤務を命じたのに、自宅で勤務しないからルール違反であり、指導や懲戒の対象となるというのは少し乱暴です。

やはり、在宅勤務を命じた趣旨・目的を軸に据えて考える必要があります。

まず、育児や介護との両立のために、本人からの希望もあって在宅勤務を命じた場合には、自宅よりも実家での勤務の方が現実的なこともあります。

自宅や実家以外での勤務であっても、配偶者の実家、兄弟の家、介護施設など、そこで業務をこなすことに合理性を見出しうる場合もあります。

つぎに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、通勤や社内での密を避けるために在宅勤務を導入したのであれば、電車やバスで遠くに出かけて業務を行うのは趣旨に反します。

密になりやすい場所での勤務も同様です。

しかし、近所のホテルやレンタルオフィスであれば、多くの場合には、感染拡大防止の趣旨には反しないことが多いでしょう。

さらに、業務効率化の目的で在宅勤務が行われているのであれば、本人が業務に集中しやすい環境で勤務することが趣旨に適います。

たとえば、学生時代からカフェでの勉強が効率的であったという社員であれば、カフェでの勤務も趣旨に適うわけです。

 

<勤務場所の届出>

会社としては、社員がどこで業務を行っていようとも、きちんと業務が遂行されていれば基本的には問題ありません。

勤務場所は就業規則の必要記載事項でもないですし、労働条件通知書でも、雇入れ直後のものを記載すれば足りますし、将来の就業場所を含め網羅的に明示することも許されています。

しかし、勤務場所により情報漏洩のリスクが高まる、労災発生のリスクが高まる、容易に連絡がつかないなど就業管理が困難になるなどは困りものです。

これらを総合的に考えると、会社が社員に在宅勤務を指示した時点で、社員が自宅以外の場所を勤務場所としたいのであれば申し出てもらう必要がありますし、勤務場所を途中で変更する場合にも申告が必要です。

そして、その勤務場所が実質的な不都合をもたらすものであれば、会社から社員に対して、勤務場所の適正化を求めることができるようにしておくことも必要です。

これらのことから、在宅勤務を命じた場合に、社員が自宅とは異なる就業場所を希望するのであれば、会社への届出を義務付け、その就業場所が実質的な不都合をもたらすのであれば、会社は就業場所の変更を求めることができるルールとし、届出とは異なる場所での業務遂行や届出の懈怠に対しては、懲戒を規定しておくのが合理的だといえるでしょう。

2021/08/07|988文字

 

生理休暇を取るなはパワハラか?https://youtu.be/HlJnw71_t0E

 

<セクハラの公式定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

「対価型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

「環境型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

 

<定義の修正>

上記の公式定義からは、実害のあったことがセクハラ成立の条件であるかのように思われます。

しかし、企業はセクハラ発生の防止に努めなければなりませんし、セクハラ行為を行った社員に対して懲戒処分を行いたいと思っても、会社が実害の発生を証明できなければ断念せざるを得ません。

このことから、私は「職場の人間関係や職場環境で性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為」という定義を推奨しています。

セクハラの加害者は「本人の受け取り方次第」という言い逃れをしたがりますが、この定義であれば、それはできない話です。

被害者の感情とは無関係に客観的に認定されますから。

 

<密室型セクハラの特殊性>

部屋の中に加害者と被害者だけがいる状態で行われたセクハラは、他のハラスメントと同様にその立証が極めて困難です。

セクハラがあったということが、真実であったとしても、これを客観的に認定するのは、ほとんど不可能ではないでしょうか。

反対に、セクハラをでっち上げることも簡単な状況であるといえます。

 

<企業の取るべき対応>

密室型セクハラを防止するためには、それが起こらないためのルールを設定し、社員に教育し、ルールの順守を求めることが必要です。

たとえば、男女1名ずつで会議室や応接室には入らない、自動車に乗車しないなどのルールです。

さらに、LGBTに配慮するのであれば、性別にかかわりなく密室に2名でこもることを禁止しなければなりません。

少し厳しいルールのような気もしますが、2名で密室に入る必要性は滅多に発生しません。

社員と会社を守るためには、必要なことではないでしょうか。

2021/08/06|830文字

 

社員が社内で、あるいは、お取引先やお客様からセクハラを受けたなら会社は毅然とした態度を示しましょう。

 

<ハラスメント対策>

セクハラはハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害です。

そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

<形式面でのハラスメント対策>

目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない加害者>

多くのセクハラは、社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

こうした場合には、社長自らお取引先に出向いてセクハラの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

このことは、お客様からのセクハラについても、全く同じことが言えます。

むしろ、これを放置することは、他のお客様が離れていく原因となるのではないでしょうか。

2021/08/05|1,066文字

 

労災保険の勘違い(労働者編)https://youtu.be/0OzMsCnHgFI

労災保険の勘違い(事業主編)https://youtu.be/lBEXjn2TbSA

 

<業務災害認定の原則>

業務災害と認定されるには、業務遂行性と業務起因性の2つが必要です。

業務遂行性とは、労働契約関係が認められたうえで発生した災害であることをいいます。

業務起因性とは、業務と病気や怪我との間に因果関係があることをいいます。

ですから、業務とは無関係な私傷病による事故は、業務災害とは認められません。

 

<業務災害の限界事例>

事務所に1人でいる時に意識を失い、後から入室してきた別の従業員に発見されて、救急搬送されたケースがありました。

こうした場合の殆どは、業務とは無関係な病気によるものです。

しかし病院の検査で、外傷性くも膜下出血と診断され、頭に大きなコブも発見されました。

この診断結果を受けて、事務所内を確認したところ、机の上にFAXで受信した書類が置いてあり、FAXのコードが抜けかけていたことが分かりました。

この時点で、FAXのコードに足を取られ、転んで頭を打ったことにより、外傷性くも膜下出血を発症したことが疑われました。

幸いにも意識を回復し、こうした事実が正しいことが確認されました。

結局、業務災害と認定されました。

 

<通勤災害認定の原則>

通勤災害と認定されるには、通勤によって被災したこと、つまり、通勤に潜む危険が現実化して被災したことが必要です。

通勤ではない移動中のケガや、通勤に伴う危険とは無関係に、私傷病が原因でケガをした場合には、通勤災害と認定されません。

 

<通勤災害の限界事例>

会社に向かうため、バスに乗ろうとしてステップに足を掛けたところで倒れ、頭を打ち意識を失って救急搬送されたケースがありました。

頭を打って意識を失った場合、身体の半分以上がバスに入っていた場合にはバス会社の責任が発生しうるのです。

バス会社に状況の説明を求めたのですが、運転手も他の乗客もよくみていなかったという回答でした。

後日、病院の診断結果が出ました。

たまたまバスに乗ろうとしたタイミングで、貧血を起こして意識を失い、そのまま倒れて頭を打ったということでした。

結局、通勤災害ではないと認定されました。

 

<就業規則との関係で>

就業規則によりバイク通勤が禁止されている会社の従業員が、バイクで出勤中に転倒してケガをした場合、会社に届けていた通勤経路とは別のルートで帰宅中にケガをした場合、これらは就業規則違反であり、懲戒の対象となることもあります。

しかし、これはあくまでも社内的な話です。

労災保険は国の制度ですから、原則として、各企業の就業規則の内容に左右されません。

就業規則違反の事実は捨象して、労災の成否を検討しましょう。

2021/08/04|2,124文字

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下します。

休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働抑制のための具体的施策リスト>

厚生労働省から「働き方・休み方改善指標」が公表されています。

この中から、長時間労働抑制に向けた働き方の改善を進めるための具体的な施策を抽出すると、次のようになります。

 

項目1:方針・目標の明確化

□経営トップによるメッセージの発信

□経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化

□全社・部署・個人等での労働時間、残業時間等に関する数値目標の設定

 

項目2:改善推進の体制づくり

□長時間労働の抑制に向けた社内体制の明確化

□労働時間に関する相談窓口の設置

□長時間労働の抑制に関する労使の話し合いの機会の設定

 

項目3:改善促進の制度化

□労働時間・就労場所を柔軟にする制度( フレックスタイム制、朝型の働き方、短時間勤務制度、テレワーク制度、在宅勤務制度等)の導入

□業務繁閑に応じて営業時間を設定

□ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定

□勤務間インターバル制度を導入

 

項目4:改善促進のルール化

□残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進

□部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む

□残業を行う際の手続を厳格化

 

項目5:意識改善

□長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施

□長時間労働抑制のための周知・啓発

□退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯

 

項目6:情報提供・相談

□労働時間・残業時間を社員各自に通知

□36協定による労働時間の制限を周知

□労働時間制度紹介のパンフレット等を配布

□定期健康診断以外での長時間労働やストレスに関するカウンセリング機会等を提供

 

項目7:仕事の進め方改善

□長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し

□業務計画、要員計画、業務内容の見直し

□長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し

 

項目8:実態把握・管理

□社員の働き方や労働時間に関する意識や意向の定期的な把握

□タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握

□管理職やみなし労働・裁量労働制等の適用者について労働時間を把握

 

これらは、あくまでもチェックリストですから、実際に施策を進めるにあたっては、この順番で進めるわけではありません。

会社の実情に応じて、順番を考えなければなりませんが、項目1:方針・目標の明確化は最優先でしょう。

次に行うべきは、多くの会社では、項目7:仕事の進め方改善だと思います。

仕事のムリ・ムダ・ムラを排除して、本当に必要な仕事だけを抽出する必要があります。

仕事は減らず、社員は減少しているのに、労働時間削減など無理な話です。

習慣的に行っている仕事の中で必要性の低い仕事をやめる、他部署とダブっている仕事はより得意な部署がまとめて行う、会議はやめて誰かに一任する、あるいは、23人の協議に委ねるなど、仕事の分量を減らす工夫も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

いきなり労働時間を減らすと言われても、社員ひとり一人の都合があります。

周囲の社員に気を遣って、やむなくダラダラ残業をして、終業時間を合わせていた社員なら、長時間労働抑制は大助かりです。

会社にとっても、人件費の削減となりますから利害が一致します。

それでも、残業代を稼いで生活の糧にしていた社員にとっては深刻です。

高級な外車を買うために残業代を稼いでいたのなら、諦めてもらうことは難しくないのかも知れません。

しかし、実家の親に仕送りをするためであれば、転職や副業を考えるほど深刻な話になりかねません。

また、自分の仕事の出来栄えにこだわりを持っている社員は、「残業代は要らないから、思う存分、残業させてくれ」と思っているかもしれません。

企画やデザインの仕事をしている人には多いパターンです。

そこまで考えて、労働時間の削減をするのはむずかしい、時間と手間をかけられないというのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/08/03|753文字

 

社長など法人の代表者が替わったからといって、雇用契約を交わし直して、労働条件通知書や雇用契約書を作り直す必要はありません。

 

<社長個人が雇う場合>

社長宅で働くお手伝いさんを、社長個人が雇うのであれば、雇用契約の当事者は社長個人とお手伝いさんということになります。

この社長が会長になったとしても、契約の当事者は会長個人とお手伝いさんのままです。

この場合、雇用契約書には社長や会長といった肩書を使わず、契約書は個人名で作成します。

 

<法人とは>

法人というのは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利や義務の主体となる能力を認められたものをいいます。

本来、権利や義務の主体となるのは個人です。

そして一定の条件を満たした組織だけが、法律によって特別に権利や義務の主体となることを認められます。

法律上、権利や義務の主体となることのできる資格を、法人格(法律上の人格)と呼びます。

法人格を持つのは、個人(自然人)と法人です。

 

<法人の活動>

法人は、生身の人間ではありませんから身体もありません。

その活動は代表者(代表機関)の行為によって行われます。

そして、代表者が法人の目的の範囲内で行った行為の効果は、直接法人に帰属します。

また、代表者が事業遂行上、他人に与えた損害については法人が賠償の義務を負います。

法人は解散によって法人格を失います。

 

<法人との契約>

こうして、個人が法人と契約する場合には、法人の代表者と契約を交わす形をとるのですが、その効果は直接法人に帰属します。

つまり、法人の代表者が動いて、法人に効果を帰属させるわけです。

ですから、雇用契約を交わした後で、社長などの代表者が交代した場合でも、法人そのものが変わってしまうわけでないので、雇用契約の効果は失われず、その性質も変わらないのです。

2021/08/02|962文字

 

<調査の趣旨>

申告申請の内容が適正であるかを確認するため、毎年度、一定数の事業主が抽出され訪問調査が行われます。

これには、納付金申告を行っていない事業主の申告義務の有無確認が含まれます。

すべての事業主を対象として、毎年調査することはできないため、数年に分けて行っています。

事業主から見れば、約3年に1回調査が入るということになります。

この調査は、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づくものです。〔障害者雇用促進法第52条〕

資料の提出拒否や虚偽の報告等は、罰せられることがありますのでご注意ください。〔障害者雇用促進法第86条〕

 

<事業所調査の概要>

原則として、申告申請年度を含む直近3か年の各月における常用雇用労働者数や雇用障害者の雇用を裏付ける資料を確認します。

●常用雇用労働者の総数確認

・常用雇用労働者の範囲

・法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数

●雇用障害者の確認

・障害の種類と程度

(障害者手帳等の写しは退職後も3年間は保管が必要です)

・雇用関係と労働時間数

 

<調査対象となる資料>

・全労働者の労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書等

(これらは労働基準法により罰則付きで義務付けられています)

・全労働者の勤務(就労)状況が確認できる出勤簿、タイムカード、勤怠表等

・その他、労働者の雇用に関する資料

 

<調査結果による対応>

調査の結果に基づき、次のような手続がとられます。

●申告した納付金の額が過少であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、納入の告知を行います。

この場合、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が加算されます。

●申告した納付金の額が過大であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、すでに納付した納付金の額のうち、過大となっている額がある場合には、未納の納付金に充当し、なお残余があるとき又は未納の納付金がないときは還付します。

●支給を受けた調整金等の額が過大であった場合

対象事業主は、最大過去10年に遡って支給額の全部または一部を返還することになります。

 

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)

2021/08/01|1,155文字

 

年金手帳の再発行https://youtu.be/VFkSxQxs0qo

 

<受給資格期間>

年金を受ける場合は、保険料を納めた期間や加入者であった期間等の合計が一定年数以上必要です。

この年金を受けるために必要な加入期間を受給資格期間といいます。

日本の公的年金では、すべての人に支給される老齢基礎年金の受給資格期間である10年間が基本になります。

国民年金だけでなく、厚生年金、共済組合の加入期間もすべて含まれます。

また、年金額には反映されない合算対象期間や保険料が免除された期間も、受給資格期間になります。

 

<受給権>

この受給資格期間を満たしていることを前提に、老齢年金を受給できるのは、加入していた国民年金・厚生年金などの区分や、性別・生年月日に応じて決められた支給開始年齢に達してからです。

このように受給開始年齢に達したときに、受給権を取得することになります。

 

<法律上は誕生日の前日に歳をとる>

私たちは日常の生活の中では、誕生日に1つ歳をとるものと考えています。

しかし法律上は、誕生日の前日の「午後12時」(2400秒)に歳をとります。

「前日午後12時」と「当日午前0時」は時刻としては同じですが、日付は違うという屁理屈です。

学校でも、42日生まれから翌年41日生まれまでを1学年としています。41日から翌年331日までの間に○歳になる生徒の集団ということです。

これはおそらく「誕生日に年をとる」だと、229日生まれの人は、4年に1回しか歳をとらないので不都合だからでしょう。

2月29日生まれの人は、前日の228日に歳をとることにして救済しているのだと思います。

 

<いつの分から>

たとえば65歳で受給権を取得する場合には、65歳になった月の翌月分から老齢年金をもらえます。

一般には、誕生月の翌月分からですが、各月の1日生まれの人は、前月の末日に65歳になりますから、例外的に65歳の誕生月の分から老齢年金をもらえます。

 

<いつもらえるか>

2月分・3月分は、415日に支給されます。

4月分・5月分は、615日に支給されます。

6月分・7月分は、815日に支給されます。

8月分・9月分は、1015日に支給されます。

10月分・11月分は、1215日に支給されます。

12月分・翌1月分は、215日に支給されます。

15日が金融機関の営業日でなければ、その直前の営業日に支給されます。

しかし、老齢年金をもらうには、年金事務所などで手続をする必要があります。

この手続が遅れれば、その分だけ年金を受け取るのが遅くなります。

また、年金を受け取る権利は、5年間で時効により消滅するのが原則です。

 

年金の受給を繰り上げたり繰り下げたりする制度もあります。

気になることは、お近くの年金事務所でご確認ください。

ただし、大変込み合いますから、事前に電話予約することを強くお勧めします。

2021/07/31|928文字

 

労働時間https://youtu.be/E7e4EUCjBs8

 

<通勤時間>

自宅から仕事の現場に直接向かった場合、これは通勤となり労働時間にはなりません。

同様に、仕事の現場から直接帰宅した場合、これも通勤となり労働時間にはなりません。

ただし、会社からの指示により、会社に寄ってから現場に向かう場合には、会社に寄るところまでが通勤時間であり、その後は労働時間となります。

同様に、会社からの指示により、現場での仕事を終えた後、会社に寄ってから帰宅する場合には、会社での勤務終了までが労働時間となります。

ですから、余計な労働時間が発生し、残業手当などが増えないようにするためには、直行直帰を徹底するのが合理的です。

 

<労働時間の適正な把握>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

しかし、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱が極めて具体的になりました。

これにより、現場に直行し直帰する従業員の労働時間を把握する場合にも、安易な自己申告が許されなくなっています。

 

最も確実なのは、使用者が自ら現認することにより、始業時刻、休憩時間、終業時刻を確認することです。

ここで「使用者」というのは、社長などの事業主に限定されてはいません。

このことについて、労働基準法は次のように規定しています。

 

第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

つまり、労働者であっても、事業主のために他の労働者を管理する者は、その限りにおいて使用者の立場にあるということです。

工事現場などで、会社から労働者の指揮監督を任されている職長は、まさにこの使用者にあたりますから、職長が各従業員の始業時刻、休憩時間、終業時刻を確認し記録すれば、労働時間の適正な把握が可能です。

ただ、会社が職長などに労働時間の管理を任せる場合には、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の内容を理解させ、必要な研修を行うことが前提になるものと考えられます。

2021/07/30|1,324文字

 

休職制度https://youtu.be/IqesySil664

 

<就業規則の定め>

休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、休職について次のように規定しています。

 

【休職】

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき                   年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

                           必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

このモデル就業規則には、休職期間の延長についての規定がありません。

規定が無いということは、原則として休職期間の延長も無いということになります。

例外中の例外として、休職期間の延長を認めた場合には、具体的な事情や延長した期間についての資料を保管しておいて、いつか同様の事情で休職期間の延長を検討する場合に備える必要があります。

これをしないと、行き当りばったりの運用となってしまい、不公平が生じるからです。

 

<休職期間延長の定め>

休職制度の設計は、基本的には企業に任されていますので、就業規則に休職期間の延長についての定めを置いて運用することも可能です。

「◯◯の場合は、事情により休職期間を延長することがあります」などと規定することになります。

こうした規定を運用する場合にも、やはり不公平が生じないように、具体的な事情や延長した期間についての資料を保管しておいて、いつか同様の事情で休職期間の延長を検討する場合に備える必要があります。

 

<休職期間満了による退職と再雇用>

モデル就業規則第9条の第3項にあるように、休職期間の満了時に休職の事由が解消していなければ自動退職(自然退職)となります。

休職期間満了の間際になって、このまま退職で良いのか、休職期間を延長すべきか、迷いが生ずることもあります。

特に会社に対する貢献度の高い社員については、こうした迷いが生じやすくなります。

この場合、考慮する要素としては退職金があります。

退職すれば、一度退職金が支給され、再雇用の場合には勤続年数がリセットされます。

また勤続年数は、年次有給休暇の付与日数に関わってきますが、再雇用の場合にはやはり勤続年数がリセットされます。

この他、会社の制度の中で、勤続年数と連動する永年勤続表彰のようなものがあれば、これにも影響します。

健康保険の傷病手当金や出産手当金は、一定の条件はあるものの退職後も継続となります。

雇用保険も加入期間(被保険者期間)に影響しますが、1年以内の再雇用であれば、期間は通算されます。

休職期間の延長は、あくまでも例外措置ですから、会社側の都合と本人の希望を良く吟味して決定することが必要です。

2021/07/29|1,623文字

 

<解雇は無効とされやすい>

社員が障害者になったら「ある程度面倒は見るけれど、今まで通り働けないのなら、退職を申し出て欲しい」というのが経営者の本音だと思います。

それでも、本人から退職の申し出が無ければ、説得して退職を申し出てもらうように働きかけるでしょう。

これに応じてもらえれば、退職勧奨に応じての退職ということで、その人は失業手当(雇用保険の基本手当)も有利に受給できます。

しかし、本人の愛社精神が強ければ、働きたいと思うはずです。

経営者としては、こうした本人の想いに応えたい反面、止むを得ず解雇を考えることでしょう。

ところが解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

裁判になれば、この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、経営者の考え方や世間の常識ではなく、裁判官の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。

実際に発生している具体的な事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

さらに、障害者については法令による保護が強化されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔第36条の2~第36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔第36条の5

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

<合理的配慮指針の基本的な考え方>

全ての事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

<中小企業での対応>

しかし、中小企業で社員が障害者となった場合に、上記のような対応を求められたのでは大変でしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔第36条の2、第36条の3

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、何が何でも障害者となった社員を解雇してはならないということではなく、ご本人と親身になって相談したうえで、会社ができる限りのことをしても限界があるのなら、解雇もやむを得ないということになります。

2021/07/28|1,262文字

 

基礎年金番号の役割https://youtu.be/5ZBM6hKJUPk

 

<遺族年金>

遺族年金は、一家の働き手や年金受給者などが亡くなったときに、残された家族に給付される年金です。

遺族年金を受取るには、亡くなった人の年金保険料の納付状況に条件があります。

また、亡くなった人の年金の加入状況などによって、受取れる年金の種類が異なってきます。

これは、年金をもらう人ではなく、亡くなった人についての条件です。

一方で、年金をもらう人にも、年齢や優先順位などの条件が設けられています。

ここでは、遺族厚生年金について説明します。

 

<亡くなった人の条件>

次のうち少なくとも1つの条件を満たす必要があります。

1.被保険者(厚生年金加入者)が亡くなったとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に亡くなったとき。

加えて、亡くなった人について、保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が国民年金加入期間の3分の2以上あること。

ただし、令和8(2026)41日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

2.老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が亡くなったとき。

3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる人が亡くなったとき。

これらの条件を満たしているかどうかは、年金事務所などで確認する必要があります。

ご自分で確認できない場合には、社会保険労務士に委託することもできます。

 

<年金をもらう人の条件>

亡くなった人によって生計を維持されていた、妻、子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母

このうち、子と孫は18歳到達年度の年度末を経過していないか、20歳未満で障害年金の障害等級12級であることが必要です。

また、55歳以上の夫、父母、祖父母の支給開始は60歳からとなります。

ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます。

さらに、子のない妻が30歳未満の場合には、5年間の有期給付となります。

なお、上記の条件を満たす子のある配偶者、子は、遺族基礎年金も併せて受けられます。

これらの条件を満たした人が全員年金をもらえるわけではなく、法定の優先順位に従って、実際に受給できる人が決まります。

 

<生計を維持されていたとは>

原則として次の要件を満たす場合をいいます。

1.同居していたこと(別居していても、仕送りしていた、健康保険の扶養親族であった等の事情があれば認められます。)。

2.加給年金額等対象者について、前年の収入が850万円未満であること。または所得が6555千円未満であること。

 

<年金事務所で確認を>

年金の仕組は複雑ですから、これらの事項には、細かな例外があります。

また、年金受給者が亡くなった場合には、年金が後払いの形で支給されることから、亡くなった人が受け取り切れなかった年金(未支給年金)を遺族が受け取ることになります。

年金受給者が亡くなったことそのものを届け出る必要がありますから、あわせて年金事務所で確認することをお勧めします。

2021/07/27|1,275文字

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔第36条の2~第36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔第36条の5

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

<合理的配慮指針の基本的な考え方>

全ての事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

この内容からすると、たとえば視覚障害者に対しては、募集や採用試験にあたって点字や音声等による実施が求められることになります。

また、たとえば精神障害者に対しては、業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成し使用することや、本人の状況を見ながら業務量等を調整することなどが求められます。

 

<中小企業での対応>

コロナ禍もあり、最低賃金の度重なる引き上げもあって、中小企業で障害者の雇用を考えた場合に、上記のような対応を求められたのでは、なかなか採用に踏み切れないでしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但書が添えられています。〔第36条の2、第36条の3

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、募集・採用にあたって経費のかかる配慮をしたり、勤務にあたって高額な設備を設けたりということではなく、相談相手を決めて親切に相談に応じるとか、チューター制度を設けてマンツーマンの指導を受けるようにするなどの配慮が求められるでしょう。

2021/07/26|1,372文字

 

正社員登用者の年次有給休暇https://youtu.be/UCBrjOY97Bw

 

<就業規則の定め>

休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、休職について次のように規定しています。

 

【休職】

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき                    年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

                           必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

<休職前の年次有給休暇取得>

就業規則には、一定の期間欠勤が続くと休職となり、あるいは休職を命じられるという規定が多いでしょう。

この場合、年次有給休暇を取得すれば欠勤にはなりませんから、休職となることを嫌って、ある程度の日数の年次有給休暇を取得してから、欠勤が発生するようになるのが通常です。

また、社会保険料や住民税の控除ができる程度の給与を確保するためにも、年次有給休暇の取得が有効です。

本人の考え方次第ですが、欠勤や休職をなるべく避けたいということで、年次有給休暇をすべて使い果たしてから欠勤が発生することもあります。

 

<休職中の年次有給休暇取得>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

 

<復帰後の年次有給休暇取得>

休職期間の満了とともに、あるいは期間満了前に休職事由が消滅して職務に復帰した場合には、年次有給休暇の残日数を限度に取得することができます。

特に私傷病を理由に休職となった場合には、治療の必要から通院のために年次有給休暇を取得する必要性は高いのですが、休職前にすべての年次有給休暇を取得し尽くしていると、この必要に応じることができません。

休職するにあたって、復帰の可能性が高いのであれば、通院のための年次有給休暇を残しておく必要性も高いといえます。

 

<解決社労士の視点から>

休職者が、復帰できるかできないかは結果論です。

企業の方から「年次有給休暇を◯日残しておいたほうが良い」といったアドバイスをするのは適切ではありません。

あくまでも、本人の意思で年次有給休暇の取得を申し出るようにしてもらうべきです。

また、病気休暇の制度があれば、業務外の傷病による休職の場合には、病気休暇の取得も併せて考えます。

年次有給休暇も病気休暇も本人の権利ですから、企業側から不確実な見込みでアドバイスすることは避けましょう。

2021/07/25|1,002文字

 

年金手帳の再発行https://youtu.be/VFkSxQxs0qo

 

<遺族年金>

遺族年金は、一家の働き手や年金受給者などが亡くなったときに、残された家族に給付される年金です。

遺族年金を受け取るには、亡くなった人の年金保険料の納付状況に条件があります。また、亡くなった人の年金の加入状況などによって、受け取れる年金の種類が異なってきます。

これは、年金をもらう人ではなく、亡くなった人についての条件です。

一方で、年金をもらう人にも、年齢などの条件が設けられています。

ここでは、遺族基礎年金について説明します。

 

<亡くなった人の条件>

被保険者(年金加入者)または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が死亡したことが条件となります。

そして、その死亡した人について、保険料納付済期間と保険料免除期間を合計して加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、令和8(2026)41日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

これらの条件を満たしているかどうかは、年金事務所などで確認できます。

ご自分で確認できない場合には、社会保険労務士に委託することもできます。

 

<年金をもらう人の条件>

亡くなった人によって生計を維持されていた (1)子のある配偶者 (2)子 が年金をもらえます。

ただし、「子」が次のどちらかの条件を満たす場合に限ります。

・18歳到達年度の末日(331)を経過していない子

・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子

例外的に、「子」に配偶者がいると対象外になります。

 

<生計を維持されていたとは>

原則として次の要件を満たす場合をいいます。

1.同居していたこと(別居していても、仕送りしていた、健康保険の扶養親族であった等の事情があれば認められます。)。

2.加給年金額等対象者について、前年の収入が850万円未満であること。または所得が6555千円未満であること。

 

<年金事務所で確認を>

年金の仕組みは複雑ですから、これらの事項には、細かな例外があります。

また、年金受給者が亡くなった場合には、年金が後払いの形で支給されることから、亡くなった人が受け取り切れなかった年金(未支給年金)を遺族が受け取ることになります。

年金受給者が亡くなったことそのものを届け出る必要がありますから、あわせて年金事務所で確認することをお勧めします。

2021/07/24|1,680文字

 

<休職の性質>

休職とは、業務外での病気やケガなど主に労働者側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労働基準法などに規定がありません。

つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。

 

<モデル就業規則の規定>

令和3(2021)年4月に厚生労働省から公表された最新のモデル就業規則には、休職について次のように規定されています。

 

(休職)

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

①業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  年以内

②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間

 

第1号が「業務外の傷病による欠勤」に限定しているのは、業務による傷病、つまり労災のうちの業務災害については、解雇制限があるからです。〔労働基準法第19条第1項本文〕

休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とするのですが、業務災害については療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇が禁止されているので、これに配慮した規定となっています。

 

モデル就業規則では、「業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」は、「所定の期間休職とする」という規定になっています。

休日にスポーツをして大ケガをした場合であっても、酒に酔って階段で転んで大ケガをした場合であっても、年次有給休暇を使い果たし、一定の期間欠勤が続けば自動的に休職となります。

また、会社としては何年でも復帰を待ちたい人材というわけではなく、長く職場を離れるのなら代わりの人を採用したいという本音があったとしても、やはり自動的に休職となります。

「あなたは勤務態度が今一つなので、この規定を適用しません」ということはできないのです。

 

<会社に主導権のある規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を命ずる場合がある

このような規定にしておけば、会社は具体的な事情に応じて休職を命ずるか、休職を命じないで長期欠勤を理由とする解雇をするかの選択が可能となります。

ただ、不公平な運用をすれば、その合理性を問われて解雇が無効となる余地はあります。

さらに、復帰して欲しい人材に休職を命じたところ、本人から退職の申し出があった場合には、引きとめることができません。

この場合、有能な人材が復帰を拒否したということで、他の社員に与える悪影響もあるでしょう。

 

<合意を前提とする規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を申し出ることができる。この場合、会社が承認したときは、会社の認めた期間休職を命ずる

つまり、労働者がそのまま退職するのではなく復帰を希望する場合に、会社が認めた範囲内で休職を命ずることができます。

休職について、会社に主導権がある一方で、労使の合意の元に休職制度を利用することになり、円満な運用を可能とします。

 

<規定を置かないという選択>

就業規則に休職の規定が無い場合、あるいは、そもそも就業規則が無い場合であっても、労働者に休職を命ずることができます。

休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。

つまり、ある程度、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に休職についての規定を置くという選択も可能です。

ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならず解雇された労働者から、解雇の無効を主張される可能性はあります。

 

休職制度ひとつを取っても、就業規則というのは、会社の個性に応じたものでなければならないことが痛感されます。

2021/07/23|1,139文字

 

<アウティング>

本人の了解を得ずに、性的マイノリティ(少数者)であることを暴露することをアウティングと呼ぶようになりました。

性的指向(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル)や性自認(トランスジェンダー)をカミングアウトして、自分を偽らずに生きたいと思っている人もいます。

しかし、他人から否定的な態度をとられ、人間関係が崩れてしまう恐れも大きく、なかなかカミングアウトしやすい環境は整っていません。

こうした中で、本人の意思によらず秘密を暴露されてしまうのは、大きな精神的ダメージとなり、精神疾患を発症する原因ともなります。

 

<個人の法的責任>

性的指向や性自認の個人情報は、病歴や健康状態と同じく非常にセンシティブな個人情報です。

アウティングを行った人は、アウティングされた人からプライバシー侵害等を理由として、不法行為による損害賠償を求められる可能性があります。

損害賠償の中身は、基本的には慰謝料です。

しかし、精神疾患を発症した場合には治療費も含まれますし、勤務できなくなれば失われた収入も含まれます。

万一自殺すれば、遺族から多額の賠償金を請求されることにもなります。

 

<企業の法的責任>

企業は、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。

この義務の中には、アウティングが行われないようにする義務が含まれます。

つまり、個人情報をその内容に応じて必要な範囲内の社員だけで共有する、性的マイノリティやプライバシーの保護について社員教育を定期的に行うなどの配慮が求められています。

また、アウティングが業務の中で行われたのであれば、企業が使用者責任を負うこともあります。

これらの場合にも、アウティングされた人や遺族からの損害賠償請求が行われうることになります。

 

<就業規則での対応>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

この中の「性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメント」には、アウティングが含まれると解釈すべきです。

より明確にするのであれば、次のように規定することも考えられます。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認の暴露やこれらに関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

2021/07/22|1,086文字

 

<該当する場合と手続内容>

適用事業所が、次のいずれかに該当した場合には、事業主が「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出します。

・適用事業所が、これまでの年金事務所が管轄する地域外へ住所変更する場合

・上記に併せて名称を変更する場合

 

管轄年金事務所の変更

同一都道府県内の場合…届出日の翌月1日より変更されます。

都道府県外の場合………届出日の翌月1日または翌々月1日より変更されます。

(届書受付日によって異なる場合があります)

 

健康保険料率の変更(協会けんぽ管掌の健康保険の場合)

他の都道府県に事業所が移転する場合、健康保険料率が変更になる場合があります。

この場合、届書に記載された「事業開始年月日」から変更後の健康保険料率が適用されることになり、既に徴収済みの健康保険料に過不足があるときは、年金事務所の管轄変更後に初めて納付する保険料で精算されます。

 

提出時期 事実発生から5日以内

提 出 先 変更前の事業所の所在地を管轄する年金事務所

提出方法 電子申請、郵送、窓口持参

 

<添付書類>

次の1.~3.の場合に応じて、添付書類が必要となります。

 

1.法人事業所の場合(所在地変更・名称変更共通)

法人(商業)登記簿謄本のコピー

 

2.個人事業所の場合(所在地変更)

事業主の住民票のコピー(個人番号の記載がないもの)

 

3.個人事業所の場合(名称変更)

公共料金の領収書のコピー等

 

法人(商業)登記簿謄本のコピー、事業主の住民票のコピー(個人番号の記載がないもの)は、発行から90日以内のものが必要です。

電子申請により提出する場合、添付書類は画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)による添付データとして提出することができます。

事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は「賃貸借契約書」のコピーなど事業所所在地の確認できるものを添付します。

 

<その他の留意事項>

この届出は、変更前の事業所の所在地を管轄する年金事務所へ行いますが、変更後の事業所の所在地を管轄する年金事務所へ引き継がれます。

改めて変更後の事業所の所在地を管轄する年金事務所へ届出する必要はありません。

 

協会けんぽ管掌の健康保険の場合で、他の都道府県へ事業所が移転する場合、または名称変更を伴う所在地移転をする場合は、全国健康保険協会(協会けんぽ)支部から新しい被保険者証が事業主あて交付されます。

事業主は、引き換えに従業員から回収した旧被保険者証を全国健康保険協会支部へ返送してください。

全国健康保険協会(協会けんぽ)では、同一都道府県内での事業所所在地の変更の場合は、被保険者証の差し替えは行われません。

2021/07/21|547文字

 

<該当する場合と手続内容>

同一の年金事務所管内で、次のいずれかに該当した場合には、事業主が「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出します。

・同一の年金事務所の管轄地域内で所在地を変更する場合

・会社など適用事業所の名称を変更する場合

・同一の年金事務所の管轄地域内で所在地及び名称を変更する場合

 

提出時期 事実発生から5日以内

提 出 先 郵送で事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)

提出方法 電子申請、郵送、窓口持参

 

<添付書類>

次の1.~3.の場合に応じて、添付書類が必要となります。

 

1.法人事業所の場合(所在地変更・名称変更共通)

法人(商業)登記簿謄本のコピー

 

2.個人事業所の場合(所在地変更)

事業主の住民票のコピー(個人番号の記載がないもの)

 

3.個人事業所の場合(名称変更)

公共料金の領収書のコピー等

 

法人(商業)登記簿謄本のコピー、事業主の住民票のコピー(個人番号の記載がないもの)は、発行から90日以内のものが必要です。

電子申請により提出する場合、添付書類は画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)による添付データとして提出することができます。

事業所の所在地が登記上の所在地等と異なる場合は「賃貸借契約書」のコピーなど事業所所在地の確認できるものを添付します。

2021/07/20|842文字

 

<法令等の周知義務>

就業規則の周知義務は広く知られていますが、労働基準法についても同様に周知義務が定められています。〔労働基準法第106条第1項〕

この他、労働安全衛生法第101条第1項、じん肺法第35条の2、最低賃金法第8条にも、それぞれの法令の周知義務が規定されています。

 

<育児休業の周知義務>

現行法では、事業主が労働者本人またはその配偶者の妊娠・出産を知ったときに、育児休業等に関する制度(法令や就業規則に基づく内容)を個別に周知することが努力義務とされています。〔育児介護休業法第21条第1項〕

これが、法改正によって、令和4(2022)年4月1日からは、育児休業等に関する制度を個別に周知することが法的義務となります。〔改正法第21条〕

さらに、育児休業等の取得の意向を確認するための面談等の措置を講じることも、事業主の法的義務となります。

法改正後は、出産する女性従業員だけでなく、配偶者が出産する男性従業員に対しても周知義務を負うことになります。

法改正を知らずに、育児休業の説明を受けた男性従業員は、不安を感じるかもしれません。

来年の4月からは、法改正によって男性従業員にも育児休業制度の説明が行われ、育児休業取得の打診が行われるようになる旨、全社に向けて予め説明しておく必要があるでしょう。

 

<雇用環境整備義務>

法改正によって、周知だけでなく、育児休業を取得しやすい雇用環境を整えるため、事業主には以下の措置のいずれかを講じることが義務付けられるようになります。

・育児休業に係る研修の実施

・育児休業に関する相談体制の整備

・その他省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置

 

<解決社労士の視点から>

直近では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、出生率の低下が顕著となる見込みです。

このこともあって、政府による強力な少子化対策は、これからも継続されることでしょう。

企業としては、就業規則の変更に留まらず、社内体制の整備、従業員への周知を積極的に推進する必要があるのです。

2021/07/19|738文字

 

<諭旨(ゆし)解雇の定義>

従業員が不祥事を起こし、諭旨解雇になったという報道に接することがあります。

しかし、その報道の中で、諭旨解雇の意味について説明されている例は、ほとんど見られません。

「諭旨解雇」というのは法律用語ではなく、公式な定義が無いことによるものと思われます。

諭旨解雇の取扱は各企業により異なるため、報道機関も安易に解説できないのです。

それでも、諭旨解雇の多くは、懲戒解雇の一種または退職勧奨による退職であると考えられます。

 

<懲戒解雇の一種>

就業規則や労働条件通知書などに定められた懲戒処分の一つで、解雇予告手当や退職金の全額または一部を支払ったうえで解雇するものです。

懲戒解雇も諭旨解雇も、就業規則などに具体的な定めが無ければできませんし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければ、解雇権の濫用となり無効です。

また、退職金の減額や不支給が就業規則に規定されている場合であっても、客観的に相当と認められる範囲に限り有効となります。

退職者が会社を訴え、退職金の不足分を請求すると、多くの場合に裁判所が会社に対して不足する退職金の支払を命ずる判決が下されています。

 

<退職勧奨による退職>

従業員の不祥事や非行があった時に、その行為を諭(さと)したうえで、従業員自身の意思により退職願を提出させるものです。

これは、退職を勧められたことにより、従業員自身の意思で退職を決めるので、解雇にはあたりません。

しかし、従業員の自由な意思による決定が前提となっていますので、精神的に追い込まれ、その真意に反して退職願を提出させられたような場合には、退職の申し出が無効となることもあります。

本人に十分反省させたうえで、自主的に退職させることが、その本質となります。

2021/07/18|1,441文字

 

<いじめが疑われる場合>

障害者に対する偏見などにより、同僚からいじめられていたり、上司からパワハラを受けていたりすることによって、本来の能力を発揮できないことがあります。

また、求められている能力を発揮して業務をこなしているにもかかわらず、周囲から仕事ぶりについて悪く言われていることもあります。

この場合には、会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、いじめの事実が無いか確認する必要があります。

そして、本人がいじめの事実を認めた場合でも、他に被害者がいないか、目撃者はいないかなどの調査を会社が始めると、告げ口したとされて、かえっていじめがエスカレートしてしまう危険があります。

会社が、いじめ、パワハラ、障害者について、きちんとした社内教育をしないうちに、障害者を迎え入れてしまうのは危険だということです。

それでも、法定の障害者雇用率の段階的な上昇により、障害者の雇用が難しくなりつつありますから、急ぐあまり、態勢が整わないうちに採用してしまうこともあります。

こうした場合には、すぐに犯人探しに走るのではなく、研修などの社内教育をする旨の全社告知をしたうえで、計画的に進めるのが得策です。

 

<メンタルヘルス不調が疑われる場合>

身体障害やいじめなどが原因で、精神疾患にかかっている場合もあります。

また、元々あった精神疾患が悪化している場合もあります。

これらの場合には、上司や同僚から不自然な言動についての情報が入ることもあります。

会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、受け答えや態度に疑問を抱くようであれば、専門医の受診を促すようにします。

程度によっては、ご家族、支援機関、主治医、産業医との連動も必要になります。

精神疾患により、正常に勤務できないのであれば、会社のルールに従い休職などの手続を取ることになります。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が無いために、障害者が能力を発揮できないのであれば、会社側に問題があることを素直に認め、合理的な配慮を実施しなければなりません。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔第36条の2~第36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔第36条の5

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

この指針を参考にして、会社としての取り組みを進めましょう。

 

<解雇の検討>

以上の問題をクリアしたうえで、尚、障害者が思うように働いてくれない場合には、普通解雇を検討することになります。

しかし、障害者の場合には、会社側の努力が求められている分だけ、能力不足を理由とする解雇が困難です。

採用にあたっては、何をどこまで期待するのかについて、具体的な人材要件を文書化し、本人に説明して交付しておくことをお勧めします。

できれば3か月程度の試用期間を置き、定期的に必要な人材要件と本人の働きぶりとを対照しつつ面談を行って、本採用に至らない場合でも納得が得られるようにしておくと良いでしょう。

2021/07/17|1,132文字

 

<アルコール依存症>

アルコール依存症とは、お酒の飲み方(飲む量、飲む間隔、飲む状況)を自分でコントロールできなくなった状態のことをいいます。

仕事、家庭、人間関係よりも、飲酒が優先となり治療が必要な状態です。

 

<コロナ禍でのアルコール依存症増加>

新型コロナウイルスの感染拡大により、アルコール依存症が増加していると言われています。

生活の制限や働き方の急変によってストレスが増大し、アルコールに頼る気持が強くなっています。

また、在宅時間が長くなったことから、自由にアルコール飲料を手にするチャンスも増えました。

こうして、長時間にわたり多量に飲酒できる環境下で、アルコール依存症となるリスクが増大しているのです。

 

<飲酒の自由>

しかし、成人であれば、プライベートの時間に飲酒するのは基本的に本人の自由です。

体質にもよりますが、度を越した飲酒は、肝臓、膵臓、心臓、脳、血管、神経などに障害をもたらします。

これによって、生産性の低下や欠勤などが発生すれば、会社は具体的なダメージを受けますから、定期健康診断などの結果を踏まえ、対象者に健康指導を行う必要があります。

場合によっては、節酒や禁酒を求めることもあるわけです。

これは、アルコール依存症への対応ではなく、飲酒による健康障害への対応、あるいは予防策の話です。

 

<アルコール依存症による職場の問題>

アルコール依存症となれば、内臓に大きな障害が発生していなくても、集中力・注意力の低下により、業務効率の低下、ミスの多発、労災やその危険の発生が見られるようになります。

生活習慣の乱れから、遅刻・早退・欠勤や年次有給休暇取得の急増もあるでしょう。

 

<治療に向けて>

飲酒はプライベートなこととはいえ、アルコール依存症の影響により発生した事実の中には、懲戒の対象となるものもあります。

会社は、これを軽視せず、就業規則に従って適正な懲戒を行う必要があります。

無断遅刻・無断欠勤、正当な理由の無い遅刻・早退・欠勤、不注意により会社に損害をもたらす、飲酒し酔った状態で勤務などは、発生しやすいものです。

懲戒を受けることによって、本人がアルコール依存症と正面から向き合うきっかけが生まれます。

またこれに先立ち、懲戒手続の中で本人に弁明の機会を与えることになりますから、ここで出てきた情報を元に、アルコール依存症の可能性を説明し受診を促すこともできます。

本人のことを考えれば、決して対応に遠慮があってはなりません。

 

<解決社労士の視点から>

在宅勤務が長期化している場合には、上司や人事担当者との定期的なオンライン面談も必要です。

話し方やしぐさの変化から、ストレスの蓄積具合や生活習慣の乱れが感じられたなら、適切なフォローが必要となってきます。

2021/07/16|918文字

 

簡単ではない懲戒処分https://youtu.be/eAmGzzbHbas

 

<情状とは>

刑事手続では、訴追を行うかどうかの判断や刑の量定に影響を及ぼすべき一切の事情をいいます。

犯罪の動機や目的、犯人の年齢・経歴や犯行後の態度などがこれにあたります。〔刑事訴訟法第248条、刑法第66条〕

しかし、懲戒処分は会社の行う制裁であって、国が行う刑事処分と全く同じということではありません。

それでも、故意に行った場合には、その動機や目的が情状にあたります。

また、行為者の年齢、社歴、事後の態度などは情状にあたります。

 

<酌量とは>

刑事裁判では、同情すべき犯罪の情状を汲み取って、裁判官の裁量により刑を減軽することをいいます。〔刑法第66条〕

懲戒処分の場合にも、事情を汲み取って処分に手心を加えるという意味で使われます。

 

<就業規則の規定>

最新版(令和3(2021)年4月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

この規定からも明らかなように、「平素の服務態度」つまり「日頃の勤務態度」は、情状酌量の対象となります。

ただし、これは客観的に認定されなければ、不平等や不公平の問題が発生しますから、勤怠だけでなく人事考課による適正な評価を基準とすべきです。

 

<情状酌量の効果>

モデル就業規則には、他にも「情状に応じ」〔第65条本文、第66条第1項本文〕、「その情状が悪質と認められるとき」〔第66条第2項第9号〕という言葉が出てきます。

つまり、情状酌量が懲戒処分を軽くする方向に向かう場合だけでなく、懲戒処分を重くする方向に向かう場合にも作用するということになります。

 

懲戒処分を行うこと自体、懲戒権の濫用となり無効となることがあります。〔労働契約法第15条〕

この場合には、不本意ながら、懲戒処分を通知した従業員から慰謝料など損害賠償を求められることもあります。

結局、安易な懲戒処分は会社にとって危険ですから、情状酌量をも踏まえて、どの程度の懲戒処分が可能なのかは、刑法に明るい社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/07/15|890文字

 

×失業保険○雇用保険https://youtu.be/y9JHiGhCtmQ

 

<特掲事業>

雇用保険では、失業等給付の負担の均衡化を図るために、短期雇用特例被保険者が多く雇用される事業については、雇用保険の保険料の料率を一般の事業と比べて高くしています。

これらの事業を特掲事業といい、次の4つの事業が該当します

(1) 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(園芸サービスの事業は除く。)

(2) 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業(牛馬の育成、養鶏、酪農又は養豚の事業及び内水面養殖の事業は除く。)

(3) 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(通常「建設の事業」といっている。)

(4) 清酒の製造の事業

 

<失業等給付>

雇用保険で、労働者の生活及び雇用の安定、求職活動の促進のために支給される給付金をまとめて失業等給付といいます。

失業等給付には、1.求職者給付、2.就職促進給付、3.教育訓練給付、4.雇用継続給付の4種類があり、昔「失業手当」と呼んでいたものは、求職者給付の基本手当に相当します。

 

<短期雇用特例被保険者と特例一時金>

季節的に雇用されている者等は、短期雇用特例被保険者として一般の雇用保険加入者(被保険者)と区別されます。

短期雇用特例被保険者は、一定の期間ごとに就職と離職を繰り返すため、一般の被保険者への求職者給付よりも一時金制度とすることのほうが、その生活実態に適合しているといえます。

そのため短期雇用特例被保険者には、一般の被保険者と区別して、特例一時金が給付される仕組がとられています。

 

<不公平の是正>

特掲事業には、短期雇用特例被保険者の割合が高く、特例一時金の給付も多いのです。

そして、給付と保険料とのバランスを考えたときに、特例一時金は失業等給付の中でも、特に保険料に対する給付の比率が高いものとなっています。

そのため、すべての事業で雇用保険率を一律にしてしまうと不公平が発生してしまいます。

特掲事業を定め、これらの事業だけ雇用保険率を高くすることによって、この不公平を是正しているわけです。

2021/07/14|1,903文字

 

労働基準監督官の行動規範https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<労働基準監督署への申告>

労働基準監督署への申告については、労働基準法に次の規定があります。

 

【監督機関に対する申告】

第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 

申告事案は、最低労働基準を定めた労働基準法などに違反するとして、労働者が労働基準監督署に救済を求めるものですから、労働基準監督署では、労働者が置かれた状況に配慮し、懇切・丁寧な対応に留意しつつ、迅速・的確に処理を行っています。

 

<令和2(2020)年の申告>

申告受理件数は3,965件で、前年と比べ159件(3.9%)減少しました。

直近10年間の申告受理件数の推移をみると、平成23(2011)年の6,460件をピークとして、その後減少が続いていましたが、平成29(2017)年に増加に転じ、平成30(2018)年も引き続き増加していたところ、平成31年(令和元年)以降再び減少に転じています。

申告を内容別にみると、賃金不払が 3,075 件(前年比 6.1%減)で最も多く、業種別では、接客娯楽業(22.3%)、商業(16.1%)、保健衛生業(11.8%)の順となっています。

次いで、解雇が 622 件(前年比 11.7%増)となっており、業種別では、同じく接客娯楽業(27.5%)、商業(15.4%)、保健衛生業(10.3%)の順となっています。

具体的な申告事例としては、次のようなものが公表されています。

 

<賃金不払>

退職した労働者から、退職月の賃金が一部支払われていないとの申告を受け、調査したところ、退職月の賃金額が約定した金額を下回る東京都最低賃金の金額まで減額されていたことが判明した。(その他の事業)

 

労働者が、会社側と感情的に対立したまま退職し、会社側が賃金の一部を支払わないということがあります。

しかし、賃金の全額を支払わないことは、労働基準法違反の犯罪となりますから、会社側がこうした手段に出ることは避けなければなりません。

 

<休業手当不払>

パート労働者から、会社から休業を命じられて休業しているにもかかわらず、休業手当が支給されないとの申告を受け、調査したところ、正社員以外には休業手当を支給していないことが判明した。(接客娯楽業)

 

労働基準法に規定されている労働者の権利には、正社員限定とされているものがありません。

非正規社員には、同一労働同一賃金についての認識も強まっていますので、不公平な格差は是正されなければなりません。

 

<割増賃金不払>

退職した労働者から、在職中の割増賃金が支払われていなかったとの申告を受け、調査したところ、1か月単位の変形労働時間制を採用していないにもかかわらず、1か月単位の変形労働時間制を採用したものとして時間外労働として計算していたことが判明した。(教育・研究業)

 

1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制など、変形労働時間制は法定の手続を踏み、それぞれの制度に特有の正しい賃金計算が必要です。

なんとなく、それらしき制度を運用し、誤った賃金計算を行えば、当然に労働基準法違反となってしまいます。

 

<解雇>

解雇された労働者から、即時解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われていないとの申告を受け、調査したところ、解雇予告手当の支払いを行わないまま即時解雇したことが判明した。(接客娯楽業)

 

解雇予告手当の支払が不要なのは、労働基準法に示された例外に該当する場合だけです。

会社側の裁量で支払わないことは許されません。

即時解雇であれば、特殊なケースを除き、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。

 

<労働時間>

労働者から、違法な時間外労働を行っているとの申告を受け、調査したところ、36協定の上限時間を超えて、月100時間を超える時間外労働、または2か月平均で80時間を超える時間外労働を行わせていたことが判明した。(その他の事業)

 

36協定違反や労働基準法の上限を超える時間外労働は違法です。

こうしたことが発生する恐れがある場合には、緊急避難的に会社全体の業務量を削減する必要があるかもしれません。

また、採用の強化や定着率の向上も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

そもそも業界の常識が、労働基準法違反ということも多々あります。

常識を疑い、法令などの情報源に遡って確認することが、経営者に求められています。

2021/07/13|1,302文字

 

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<同じ失言でも>

大臣が失言で罷免されたというニュースは、たびたび報道されています。

場合によっては、大臣をクビになるだけでなく、国会議員としても辞職に追い込まれるケースがあります。

しかし、民間企業での社員の失言はほとんど報道されず、じわじわとその影響が現れてくることが多いものです。

 

<会社での失言>

上司が部下に対して「○○くんって彼女はいるのかな?」という失言をしたとします。

これが失言だとピンとくる人は、正しい知識を持っていて実践できているので、問題となる失言はしないでしょう。

 職場の優位者が劣位者に対して、仕事上接する際に、必要以上に人権を侵害しうる行為をパワハラといいます。

上司が部下を「○○くん」と呼ぶ必要はありません。

このように呼ぶのは、客観的に見れば上から目線の態度ですから、パワハラになりうるのです。

職場の人間関係や職場環境で、性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為をセクハラといいます。

彼女かいるかどうかは、聞かれるだけでドキドキします。

ですからセクハラになるのです。

ましてや、言われた男性が同性愛者であれば、同性愛者であることがバレたのかと、大いに困惑することもあるでしょう。

LGBTQへの対応は、すべての企業に必須の取組み課題なのです。

 

<失言で表面化する労働問題>

この例で、言われた部下がパワハラやセクハラを問題にすることは少ないでしょう。

ハラスメントについての社員教育が不足していれば尚更です。

しかし、彼女のいない○○くんは「彼女がいないのは出会いが無いからだ。毎日残業続きだし、休日出勤もあるし、有給休暇も取れないからだ」と思ってしまうかも知れません。

また、彼女がいる○○くんは「今の年収では結婚もできないし、子供を設けるなんてとても無理だ。それに、家族と過ごす時間も確保できやしない」と考えるキッカケとなります。

上司の失言により「会社のため、自分のため」と頑張ってきた○○くんは、考えを変えてしまう可能性があるのです。

何気ない一言が、人間関係や職場関係を悪化させ労働問題が表面化します。

この例では、パワハラ、セクハラ、長時間労働、サービス残業、年次有給休暇の取得率、低賃金の問題について、法的に正当な主張を公式の場で展開する可能性が高まります。

 

<解決社労士の視点から>

特に中小企業では、社員教育が最善の対策です。

すべての点で、労働法に従った遵法経営というのは困難です。

有名な大企業であっても、しばしば労働法違反の報道がされています。

あらゆる点で法律上の努力義務まで尽くしているという企業は稀です。

だからといって、法令を無視することはできません。

日本は法治国家です。

会社は、法律によって法人としてその存続が認められでいるのですから、アウトローでは生きていけません。

罰則が適用されるようなことは慎まなければなりません。それは犯罪なのです。

結局、会社として対応すべきは対応して、社員とのコミュニケーションを密にして、適正な社員教育をすることです。

少なくとも、部下を持つ社員には失言させない教育が必要ですし、すべての社員にブラック企業の疑いを発生させないための教育が必要です。

2021/07/12|2,011文字

 

解雇予告の効力https://youtu.be/oB35mJkVccQ

 

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの条件が加わっています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が不十分であれば、解雇を通告しても、労働契約法第16条にいう解雇権の濫用とされ、解雇が無効となる可能性が高くなります。

ましてや、知的障害者や精神障害者の懲戒解雇となれば、そのハードルは更に高くなります。

懲戒処分の対象となる行為の原因が、知的障害や精神障害である可能性もあり、これに対して、戒めて反省を求めるための懲戒処分が無意味なケースもあるからです。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ(第36条の2~第36条の4)、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています(第36条の5)。

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています(平成27(2015)325日)。

この指針を参考にして、会社が十分な取組を行ってきたのでなければ、解雇を有効に行うことはむずかしいのです。

 

<解決社労士の視点から>

結論としては、会社が一方的に普通解雇や懲戒解雇をするのではなく、障害者本人、家族、主治医、産業医などとよく話し合い、会社が対応しきれないことを説明して、合意による退職を目指すのが現実的です。

会社が誠実に説明すれば、家族が本人の説得に回ってくれることもあります。

それでも合意できない場合には、病状により休職を命じることも考えます。

客観的に見て、懲戒解雇の検討対象となるような行動が現れたのなら、医師から病状が重いと判断されることが多いでしょう。

「あの対応で本当に良かったのだろうか」という疑問を残さないよう、慎重に対応しましょう。

2021/07/11|934文字

 

労災保険は自動加入https://youtu.be/LHPgv8RJ0RI

 

<送検状況の公表>

令和3(2021)年6月29日、東京労働局管内での令和2年度の送検状況が公表されました。

労働基準法や労働安全衛生法などには罰則があり、この罰則に触れる行為は犯罪ですから、刑法犯同様に送検されることがあるわけです。

公表内容から、東京労働局と管下の労働基準監督署が、どのような事件を送検しているのか、実態を把握することができます。

 

<送検状況の概要>

令和2(2020)年4月から令和3(2021)年3月までの1年間に、管下の労働基準監督署(支署)では、70件(前年度に比べ30件増加)の司法事件が東京地方検察庁に送検されました。

その内容を見ると、危険防止措置に関する違反が19件となっているなど、労働安全衛生法違反の事案が大幅に増加しています。

また、賃金・退職金不払に関する違反(16件)、割増賃金不払に関する違反(8件)も多く見られます。

業種別で見ると、建設業(19件)が最も多く、次いで商業及び清掃・と畜業が11件となっています。

 

<違反事項の内容>

労働基準法・最低賃金法違反により送検されたのは34件で、主な送検事項は、賃金・退職金不払に関する違反が16件、割増賃金不払に関する違反が8件、労働時間・休日に関する違反が5件でした。

労働安全衛生法違反により送検されたのは36件で、主な送検事項は、危険防止措置に関する違反が19件(このうち、墜落・転落災害に関する違反が14件)、労災隠しが4件でした。

 

<今後の対応>

東京労働局及び管下の労働基準監督署(支署)では、法違反を原因として重大な労働災害を発生させたものや、同種の法違反を繰り返し、遵法状況に悪影響を及ぼすもの等、重大・悪質な事案に対しては、引き続き、送検も含め厳正に対処していくとしています。

 

<解決社労士の視点から>

最近になって、全国的に労災事故が増加傾向にあります。

こうした中で、法違反が原因での重大な労災事故は、1発アウトで送検されることもあります。

また、労基署の立入検査(臨検監督)を受け、交付された是正勧告書に応じて改善報告書を提出したにもかかわらず、再び同じ違法行為を行ってしまえば、悪質と認定される可能性は極めて高くなります。

こうしたことに留意して、遵法経営を目指しましょう。

2021/07/10|579文字

 

<「ねんきん定期便」の海外送付>

日本年金機構に申込むことによって、「ねんきん定期便」を海外の住所に送ってもらうことができます。

パソコンまたはスマートフォンから、「ねんきん定期便お申込みページ」にアクセスして、必要事項を入力して送信するだけです。

https://www.nenkin.go.jp/do/reg_service/

 

申込に際しては、基礎年金番号の入力が必要になります。

不明の場合には、転居前にお近くの年金事務所などで基礎年金番号を確認しておく必要があります。

 

<サービスの利用にあたって>

このサービスを使って、日本国内の住所への送付を申し込むことはできません。

1回申し込むことによって、定期的に郵送されるサービスではなく、1回の手続きで1回限りの送付となります。

申し込んでから「ねんきん定期便」が届くまで、約3か月かかります。

また、年金記録の状況や各国の郵便事情などにより、それ以上の期間を要する場合があります。

「ねんきん定期便お申込みページ」には、メールアドレスの入力欄がありますが、メールの返信サービスは行われていません。

「ねんきん定期便お申込みページ」の入力内容に不備があった場合など「ねんきん定期便」を送付できないときは、その旨を記載した「エアメール」が送付されます。

この場合には、再度申し込むことによって、送付を受けられるようになります。

2021/07/09|1,694文字

 

簡単ではない懲戒処分https://youtu.be/eAmGzzbHbas

 

<解雇は無効とされやすい>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、それぞれの会社の方針や世間一般の常識ではなく、裁判官の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。

実際に発生している事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<懲戒解雇の手順>

懲戒解雇が無効とされないためには、一般に次の手順を踏むことが必要になります。

 

1.口頭注意

何か不都合な行為を行った社員に対しては、口頭で注意を行います。

そして、注意の内容を文書化し本人に確認させます。

本人に署名してもらい、注意をした社員の上司の確認を得ます。

原本を会社が保管し、コピーを本人に渡します。

 

2.文書による注意

本人が口頭注意に従わない場合、反省していない場合には、文書による注意を行います。

この文書も口頭注意の場合と同じ手順を踏みます。

 

3.懲戒処分

文書による注意を行っても、本人がこれに従わず、あるいは反省していない場合には、懲戒解雇には至らない軽い懲戒処分を行います。

これを行うには、就業規則や労働条件通知書に解雇の具体的な定めがあることや、本人に弁解の機会を与えるなどの適正な手続が必要です。

 

4.懲戒解雇

上記の手順を踏んでも、本人が態度を改めず、会社に籍を置いておくことが会社にとって害悪をもたらす場合には、やむを得ず懲戒解雇に踏み切ることになります。

 

<証拠の品質>

上記の1.から4.までについて、きちんと証拠を残しておくことが、会社を守るためには大事なことです。

しかし、ただ証拠を残せば会社が裁判で勝てるというわけではありません。

証拠の品質が問題となります。

 

懲戒解雇の有効性を争う裁判には、民事訴訟法の次の条文が適用されます。

 

(自由心証主義)

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

このことから、証拠の内容は具体的で、確かにそうした事実があったのだということを裁判官に納得させるものでなければなりません。

 

そして、懲戒解雇の有効性が争われた場合、その証拠からうかがわれる会社の態度も裁判官から見透かされてしまいます。

懲戒解雇の有効性を否定される会社の態度としては、次のようなものがあります。

・口頭注意や文書による注意の段階から、問題社員のレッテルを貼り懲戒解雇を決めていた。

・会社が親身になり本人の改善に協力的な態度を示しているとは認められない。

・本人が迷ったとき、相談したり指導を仰いだりする具体的な担当者を決めていなかった。

 

 

<円満解決>

たしかに、会社が問題社員に対して親身になって指導し、成長させ改善させるというのは現実には厳しい話です。

それでも、本当の問題社員であれば、そこまでされたら退職願を提出することでしょう。

なぜなら問題社員は、きちんと仕事をしようとか、成長して会社に貢献しようなどとは思っていませんから、会社側からこれを求められるのが一番つらいからです。

懲戒解雇の有効性を争われた場合と、退職願が提出された場合とでは、社員全体にもたらす影響に雲泥の差が生じます。

もちろん、クチコミによる社外への影響も無視できません。

経営者や人事担当者は、目の前の問題社員の態度に熱くなってはいけません。

どのような解決が会社にとってベストなのかを、冷静に見極めることが求められているのです。

 

<解決社労士の視点から>

社内で問題行動が発生した時点で、将来の懲戒解雇を見据えた証拠集めが必要となります。

また、注意・指導の内容が不適切な場合には、パワハラや不当解雇の証拠が蓄積されてしまいます。

問題の火種が小さなうちに専門家に相談することをお勧めします。

2021/07/08|767文字

 

コロナハラスメントhttps://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

説明会の開催>

令和3(2021)年6月25日、内閣官房のコロナワクチン接種証明担当によるワクチン接種証明書の発行手続に関する自治体向け説明会が開催されました。

これによると、コロナワクチン接種証明書について、7月中に書面での交付が可能となるように準備が進められています。

 

<接種証明書>

市区町村で実施された新型コロナウイルスワクチンの接種記録等を、接種者からの申請に基づき交付するものです。

国際的な人的往来で利用する際、予防接種を受けた本人に対して接種事実を証明する接種済証では、英語の表記、記載事項の不足、偽造防止対策といった課題があるため、接種済証とは別にワクチン接種証明書が発行されることになりました。

発行主体は、予防接種を実施し個人の接種記録を管理する市区町村です。

 

<証明内容>

新型コロナウイルスワクチンの接種記録(ワクチンの種類、接種年月日など)と接種者に関する事項(氏名、生年月日、旅券番号など)が接種証明書に記載されます。

証明内容の詳細については、今後、諸外国の動向等を踏まえて決定される予定です。

 

<手続の概要>

1.窓口または郵送で申請を受理

2.ワクチン接種記録システム(VRS)を使用して審査・入力

3.窓口または郵送で証明書を交付

 

<申請に必要な書類>

・申請書

・旅券

・接種券

・接種済証か接種記録書、またはその双方

・(旅券に旧姓・別姓・別名(英字)の記載がある場合)旧姓・別姓・別名が確認できる本人確認書類

・(代理人による請求の場合)委任状

・(郵送の場合)返信用封筒(申請者が切手貼付、返送先住所を記載し提出)と住所の記載された本人確認書類

 

<その他>

将来的には電子申請、証明書の電子化を目指すとともに、当面は用途を国外利用に限定し、交付請求時には旅券の提示を必須とし、真に必要な場合のみ取得することとするそうです。

2021/07/07|1,816文字

 

<運営方針>

日本年金機構のホームページには、次の運営方針が掲げられています。

最終更新は、平成25年(2013年)1128日となっています。

 

1.組織ガバナンスの確立

1.お客様である国民の信頼を得られる組織の実現を目指し、組織改革・意識改革・業務改革を断行する。

2.理事長の強いリーダーシップの下、職員一人ひとりが意欲と使命感をもって自ら変わる、自ら機構をつくり上げていくという意識で改革に取り組み、組織改革を断行する。

3.組織内の対話とコミュニケーションを通じて、目標の共有化を図るとともに、働きやすい職場環境作り、風通しの良い組織作りを進める。

4.リスクの未然防止に重点を置いた厳格な内部統制の仕組みを構築する。

5.理事長に直結した内部監査部門による効果的な内部監査を通じて、機構自らがPDCAサイクルの中で不断の改善努力を行うとともに、外部監査の活用を図ることにより、内部統制の有効性を検証するための体制を整備する。

6.職員に対しコンプライアンス意識を徹底するとともに、コンプライアンス・リスク管理担当部門や外部通報窓口の設置などの体制を整備する。

7.システム開発・管理・運用に係る権限と責任の明確化、CIO(システム担当理事)やPJMO(本部のシステム部門)の設置、システム人材の確保・育成などにより、ITガバナンスの構築を含むIT体制を確立する。

8.お客様本位の立場に立った健全な労使関係を確立する。

 

2.新たな人事方針の確立

組織の一体感を醸成するとともに能力・成果の適正な評価、計画的な人材育成等を実行するための人事方針を確立し、別途定める。

 

3.親切・迅速・正確で効率的なサービスの提供

1.職員全員が年金記録管理や個人情報管理の重要性を再認識するとともに、お客様である国民の信任を受けて年金記録を正確に管理し、正しく年金をお支払いするという使命感と責任感をもって業務にあたる。

2.お客様に対する十分な説明、信頼される対応を旨とし、お客様の立場に立った懇切丁寧なサービスの提供を行う。

3.適用・徴収・給付等の各業務について、法令や業務処理マニュアルに従った迅速・適正な処理を推進する。

4.現行業務についての徹底した見直しを行い合理化・効率化を図るとともに、できる限りの標準化を進める。

5.業務効率化やコスト削減、お客様サービスの向上に資するため、積極的に業務の外部委託を進めるとともに、委託業務の品質の維持・向上のために委託者としての管理責任を果たす。

6.契約の競争性・透明性の確保を図るとともに、公正な契約を担保するための厳格なチェックを実行する。

 

4.国民の意見の反映等

1.広報については、分かりやすく親切な情報提供を効果的に行うとともに、機構の業務目標や成果などについて、年次報告書等により情報公開に向けた取組をより一層充実する。

2.国民のニーズを的確に把握し、業務運営に反映する。このための仕組みとして、充実した機能を有する運営評議会を設置する。

3.被保険者、事業主、受給者、地方公共団体等の協力の下に、事業を適正に運営するとともに、年金事業に対する国民一般の理解を高めるよう努力する。

メンタルヘルス対策(自殺予防対策を含みます)、過重労働対策は、事業者の社会的責任であり、活力ある職場づくりへの第一歩です。

 

<年金事務所の現状>

年金加入者(被保険者)や年金受給者の相談窓口として、年金事務所や街角の年金相談センターなどが設置されています。

かつては社会保険庁の傘下に、社会保険事務所が設置されていましたが、民営化により年金事務所となり、その機能もほぼ年金に特化されています。

上記の運営方針の中で、「コスト削減」は人員削減によって成果が数値にあらわれます。

しかし、「お客様サービスの向上」は数値化が容易ではありません。

人員削減によりサービスが低下したのではないかと不安を感じています。

年金相談は、原則予約制ですし、その予約は1週間以上先になってしまうことも多いのです。

予約なしに相談することも可能ですが、2時間以上待ちが一般的です。

新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたら、もっと混雑するかもしれません。

何か不安や疑問があれば、今のうちに相談しておくことをお勧めします。

また、どちらかというと街角の年金相談センターの方が空いているようです。

最寄りの年金事務所にこだわらず、空いている所を狙ってはいかがでしょうか。

2021/07/06|1,077文字

 

<シンガー・ソーイング・メシーン事件判決>

シンガー・ソーイング・メシーン事件は、退職金放棄の有効性について争われたものです。

この判決は、「賃金に当る退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である」と述べています。(最高裁第二小法廷 昭和48年1月19日判決)

そして、この判決の趣旨は、有期雇用契約を更新しないという、使用者と労働者との合意について、その有効性を判断する基準としても参考になるものです。

つまり、「雇用契約の不更新についての労使間の合意は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である」と考えられます。

 

<「合理的な理由が客観的に存在」とは>

この基準の中の「合理的」というのは、「有期契約労働者を保護するという労働契約法などの趣旨や目的に適合する」という意味だと考えられます。

また、「客観的」というのは、「裁判官の判断」を指していると考えられます。

そして、裁判官が判断するには、有期契約労働者の生活が不安定にならないように、労働契約法などの趣旨を踏まえて、会社がどれだけ誠意ある態度を示しているかが重要な要素となります。

 

「合理的」の意味https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<労働者の自由な意思>

合意書に労働者の署名捺印があったとしても、それが「労働者の自由な意思」によるものでなければ、有効ではないのです。

そして、「労働者の自由な意思」によるものだと認められるためには、すべての具体的な事情から、強制の要素が無く、労働者が合意するのも自然だと認定される必要があります。

 

<会社の誠意ある態度>

会社の誠意ある態度は、次のような事実から認定されます。

・入社してから不更新の合意までの期間が短いこと

・説明会や面談での説明回数が多いこと

・退職金や慰労金など金銭の支払があること

いずれも、有期契約労働者が契約打ち切り後の生活について、十分な準備ができるようにするための配慮です。

 

<具体的な判断方法>

こうすれば確実に契約の不更新が許されるというような、明確な基準はありません。

ここでは、シンガー・ソーイング・メシーン事件で示された最高裁の判断を頼りに一応の基準を示しました。

しかし、無期転換と不更新合意について、現時点では、最高裁の判例が存在しません。

ですから、過去の裁判例のうち、具体的なケースに関連したものを抽出して、論理的に結論を推定するしかないのです。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

2021/07/05|949文字

 

<精皆勤手当の趣旨・目的>

精勤手当・皆勤手当は、1か月の給与支給対象期間の出勤予定日に欠勤しないことについて、給与の一部として支給される手当です。

1か月の欠勤が1日か2日の場合にも、減額され支給される場合があります。

なお、年次有給休暇の取得をもって欠勤とする扱いは、不利益な扱いとなり労働基準法に反します。〔労働基準法第136条〕

自動車運輸業では、ドライバーが欠勤した場合に代替要員の補充が困難なため、精皆勤手当を支給して欠勤しないことを奨励することが広く行われます。

建設業でも、工期の遅れを避けるため、精皆勤手当を支給して欠勤しないことを奨励することが広く行われます。

他にも、飲食業や製造業などで精皆勤手当を支給する企業は多く存在します。

 

<精皆勤手当導入拡大の動き>

平成2(1990)年前後に見られるように、新卒採用が困難な時期が周期的に訪れます。

大企業であれば、基本給の増額や休日・休暇の増加によって、学生を集めることができます。

しかし、中小企業では人材不足と採用難で、簡単に休日・休暇を増やすことはできませんし、基本給の増額によって賞与が増額されることなどを嫌いますので、新たな手当を設けることにより対処する傾向が見られました。

こうして新たに導入する手当としては、精皆勤手当も手頃だったため、導入が進んだという経緯があります。

 

<同一労働同一賃金の検討の中で>

令和3(2021)年4月には、中小企業にも同一労働同一賃金が義務付けられることとなりました。

これによって、正社員と非正規社員とで、手当の有無や支給額の差異について、合理的な説明がつくかが問われるようになりました。

そこで、各企業は自社の手当ひとつ一つについて、その趣旨目的を再確認することとなったのです。

このとき、欠勤しないことは労働契約上の義務であり当然のことであって、当然のことに対して手当を支給するのは不合理ではないかという疑問が出てきました。

この流れから、精皆勤手当が廃止され、基本給に組み入れられたり、別の手当に振り替えられたり、あるいは賞与の支給額に反映されたりの動きが盛んとなったのです

しかしこれからも、欠勤しないことが強く要請される職種では、会社の態度を示す意味でも精皆勤手当の支給が続くのではないかと考えられます。

2021/07/04|1,474文字

 

<人件費を考えると>

たとえば、月給20万円の社員を3人雇って、月45時間の残業をさせるよりは、4人雇って残業ゼロにした方が、同じ人件費でも生産性が上がります。 

月給20万円の社員が、月に45時間残業しているとします。

月間所定労働時間が174時間(8時間勤務で週休2日)だとすると、時間単価は、 

20万円 ÷ 174時間 = 1,150円(円未満切り上げ)

法定外残業の割増賃金は、 

1,150円 × 1.25 1,438円(円未満切り上げ)

毎月45時間残業しているとすると、その残業代は、

1,438円 × 45時間 = 64,710

これが3人だと、

64,710円 × 3人 = 194,130

これは、ほぼ1人分の月給に相当します。

つまり、ある会社に、あるいは、ある部署に3人いて、毎月45時間残業しているのなら、もう一人雇って残業しないことにすれば、同じ人件費で生産性が上がるということです。 

なぜなら、3人が残業した時間は、

45時間 × 3人 = 135時間

これは、月間所定労働時間の174時間を大きく下回るわけですから、4人で今までより多くの仕事をこなせますし、疲労も軽減されるので生産性が上がるということになります。

もちろん、残業代を不当にカットしていれば、この計算は狂ってきます。

しかし、日本は法治国家です。

「残業代をキッチリ支払っていてはやっていけない」などという会社はやがて消えます。

ですから、上の計算は長期的に見れば正しいと思います。

ただ現実には、最低賃金は上回るものの、ある程度の残業代が出ないと生活できない、そもそも一定の残業を前提として基本給や手当が決定されているという中小企業も多いのは事実です。

ですから当面は、長時間労働の解消と生活費の確保のバランスを考える必要が大きいのです。

 

<人間関係を考えると>

社長を含め4人の会社が1人増員して5人にすると、人間関係が66%も複雑になりますから、報連相やコミュニケーションが弱い会社ではギクシャクしてしまいます。

紙の上に4つの点を打って、そのうちの2つの点を結ぶ線を引くと、全部で6本の線を引くことができます。

これは、4人いる場合に人間関係が6通りできることを意味します。

紙の上に5つの点を打って、そのうちの2つの点を結ぶ線を引くと、全部で10本の線を引くことができます。

これは、5人いる場合に人間関係が10通りできることを意味します。

ちなみに、社員がn人の場合の人間関係は、n(n-1)÷2 通りとなります。

こうして、4人から5人に1人増えただけで、人間関係は6通りから10通りに66%も増えてしまうことになります。

退職理由の第1位は人間関係とも言われますので、せっかく1人採用しても、退職者が出やすいことになってしまいます。

 

<増員するにあたっては>

物理的な対応も必要です。

机やロッカー、制服など、什器・備品も増やさなければなりません。

社内のルール作りも急がれます。

従業員が10名になれば、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届出を行う必要がありますし、安全衛生推進者の選任なども必要になってきます。

こうしてみると、社員を増やすのも気が重いものです。

しかし、事業拡大のためには、人員の増加はやむを得ません。

ルール作り、労務管理、労働安全衛生といったことについては、ネットで検索できる一般論で済ませるわけにはいきません。

各企業へのカスタマイズを専門に行っている国家資格者の社会保険労務士(社労士)がいるわけですから、悩んでいないで委託することをお勧めします。

きっと社内で専門職を育てるよりは、遥かに短期間で格安に体制を整えることができるでしょう。

 

社会保険労務士の顧問契約https://youtu.be/XcBLsc-tOiQ

2021/07/03|740文字

 

<基礎年金番号の導入>

かつて年金記録は、国民年金、厚生年金、船員保険それぞれの制度ごとに設定された年金手帳記号番号により管理されていました。

しかし、平成9(1997)年1月からすべての記録を一つの基礎年金番号で管理する制度に切り替えられました。

 

<宙に浮いた年金記録>

これによって、従来の年金手帳記号番号の記録は、順次基礎年金番号に結びつけられてきました。

ところが、平成18(2006)年6月末時点でもなお、基礎年金番号に統合されていない年金記録が約5,095万件存在することが明らかになり、問題視されました。

このように基礎年金番号に統合されていない未統合記録は、持ち主が不明の記録であり、宙に浮いた年金記録となってしまいます。

 

<未統合記録の解消>

宙に浮いた年金記録の問題を解消するため、平成19(2007)年12月以降、「ねんきん特別便」をはじめとする各種のお知らせが送付され、自分の年金記録の確認をするよう促されてきましたが、いまだに持ち主が確認できない記録が残っています。

このような未統合記録は、本人しか知りえない当時の状況が原因で持ち主が判明しない可能性があるため、年金記録を回復するには本人から心当たりの事柄について申し出る必要があります。

近所の年金事務所に行けば、自分の基礎年金番号に結びつけられた年金記録の他に、「ひょっとしたら自分のものかもしれない年金記録」についての確認をすることができます。

ある期間について、どこの何という名前の会社でどんな仕事をしていたか、覚えていることを話すことによって、確かに自分の年金記録であると認定される場合があります。

これによって、年金の受取額が増えることも多いので、心当たりがあっても無くても、一度は確認することをお勧めします。

2021/07/02|1,398文字

 

<法定の権利という性質>

年次有給休暇は、労働基準法によって法定された労働者の権利です。

労働基準法は、労働者を守るため基準を定めて使用者に遵守を求めます。

違反については、罰則が定められ、刑事事件として書類送検されることもあります。

 

<年次有給休暇取得届>

労働基準法は「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」と規定していて、会社側の承諾については何も規定していません。〔労働基準法第39条第5項本文〕

ところが「申請」「承認」という運用をしている企業もあります。

これは、日付さえ指定して請求すれば簡単に取得できるはずの年次有給休暇に、会社側の承諾という条件を加えているわけですから、労働基準法よりも一段高い基準を設けて年次有給休暇の取得を不当に制限していることになります。

また慶弔休暇など、企業独自の法定外の休暇と同じフォーマットに「申請」「承認」の欄が設けられている場合もあります。

法定外の休暇については、就業規則で独自の取得ルールを設けても構わないのですが、年次有給休暇にも同じ「申請書」などを使ってしまうことにより、誤った運用をしているのでしょう。

年次有給休暇は、時季指定の「届」が正しい形となります。

 

<届出の期限>

労働基準法は、年次有給休暇の取得について「何日前までに届出」といった制限をしていません。

しかし、年次有給休暇の届出期限を「原則前日まで」としている企業がある一方で、「1週間前まで」とする企業もあります。

労働者が指定した取得日では、事業の正常な運営を妨げることになる場合には、企業側が労働者に取得日の変更を求めることができます(時季変更権)。〔労働基準法第39条第5項但書〕

労働者から年次有給休暇の取得届が提出されると、会社側は他の従業員の勤務調整を行う必要があるかも知れません。

このために時間を要し、結局調整が困難な場合には時季変更権の発動ということになります。

ですから、何日前までに年次有給休暇取得届を提出するルールとするかは、その企業や職場によって異なってくるでしょう。

もちろん、前日の届出でも認めることが、労働基準法の趣旨に適うことは言うまでもありません。

また、各個人から年次有給休暇の年間予定表を提出してもらうなど、事業の正常な運営を妨げる可能性について、予め検討しておける制度を運用することも考えられます。

 

会社による年次有給休暇の取得日変更https://youtu.be/NtEUlordpKU

 

<取得の理由>

殆どの場合、年次有給休暇を取得する理由はプライベートなものです。

年次有給休暇の本来の趣旨は、仕事による疲労の蓄積を解消しリフレッシュすることにありますが、実際には、病院で診察を受ける、役所で手続する、子供の学校の行事に参加するなど、疲労回復とは異なる理由のことが多いものです。

労働者から年次有給休暇の届出があった場合に、企業はこれを拒否できません。

事業の正常な運営を妨げることになる場合に、企業側が労働者に取得日の変更を求めることができるに過ぎません。

年次有給休暇取得の理由を申告させ、理由次第で取得を拒否したり、取得日の変更を求めたりはできないのです。

ということは、年次有給休暇の取得理由を申告させることは、不当なプライバシーの侵害になります。

年次有給休暇取得届に理由欄を設けたり、上司が部下の取得の理由を詮索したりは、人権侵害になります。

無用なプライバシー侵害が発生しないよう十分に注意しましょう。

<対比誤差>

「この人はあの人と比べてどうか」と評価対象者同士の比較により評価するのは、その会社の人事考課が相対評価であれば当然のことです。

しかし、人事考課制度の主流を占める絶対評価では、評価対象者同士の比較はしません。

どちらの場合でも、考課者が無意識に自分と対比して評価してしまう危険はあります。

この危険を対比誤差といいます。

 

基準を考課者自身に置いてしまえば、経験や実績を積んだ自分と部下とを比べて低く評価することになります。

特に、自分の得意分野の仕事については、「なぜこんなこともできないのか」という気持を抱きやすくなりますから、厳しい評価になってしまいます。

反対に、考課者の不得意な知識や技能を持っている部下の評価が、不当に高い評価となってしまうこともあります。

自分のできないことを行っている部下は、なんとなく優秀に見えてしまうのです。

こうして、自分の得意分野には厳しく、不得意な分野については甘く評価する危険があるのです。

 

<役職者の能力不足と対策>

役職者には、部下の一人ひとりを育てる役目があります。

そのためには、部下の具体的な業務内容をしっかり把握する必要があります。

これを怠ってしまうと、特に自分の不得意な知識や技能を持っている部下の業務内容を把握できないことになります。

こうして、自分の得意な仕事を担当している部下の指導は手厚くて、自分がよく解らない仕事を担当している部下のことは指導できないというのでは、部下の成長にも差がついてしまいます。

 

こうした不公平が起こらないように、役職者は、自分の不得意な仕事を抱えている部下に対して、積極的にコミュニケーションを試み、具体的な仕事内容を把握し、その仕事について勉強する必要があります。

役職者個人の努力に期待するだけでなく、会社が実施する役職者を対象とする研修の内容に、部下の仕事を学ぶノウハウなどが含まれていなければなりません。

そして、教育・研修を受けても、部下の仕事を学ぼうとしない人、学べない人は、役職者の適性を欠いているわけですから、異動を検討することになります。

2021/06/30|1,904文字

 

<法律の規定>

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料を、従業員の給与から控除(天引き)する形で徴収することについては、健康保険法と厚生年金保険法に次のような規定があります。

 

健康保険法(保険料の源泉控除)

第百六十七条 事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

2 事業主は、被保険者に対して通貨をもって賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。

3 事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

厚生年金保険法(保険料の源泉控除)

第八十四条 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。

2 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。

3 事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

どちらも、ほぼ同じ内容です。

 

これらの法律によると、今月支給される給与から、前月分の社会保険料を控除することになります。

そして会社は、従業員から徴収した保険料に会社負担分を加えて、今月末までに前月分の社会保険料を納めることになります。

「いつ勤務した分の給与か」は問題にしません。あくまでも、「いつ支給された給与か」だけを考えます。

 

<新規に入社した従業員の場合>

社会保険は、その月の1日に加入(資格取得)しても、月末に加入しても、その月の分の保険料が徴収されます。

入社月に給与が支給されるのであれば、その前月は社会保険に加入していませんから、その給与から社会保険料は控除しません。

入社月の翌月に初めて給与が支給されるのであれば、その前月は社会保険に加入していますから、その給与から社会保険料を控除します。

 

入社月の翌月に初めて給与が支給されるのであれば、社会保険料の控除の都合を考えて、入社日についてのルールを設定しておくことをお勧めします。

たとえば、給与の支給について、月末締切り翌月10日支払いのルールだとすると、28日に入社した場合、最初の給与が少なくて社会保険料を控除できないことも多いでしょう。

この場合には、社会保険料を別に支払ってもらうことになりますが、入社早々の出費は厳しいものがあります。

そこで、「毎月21日以降は入社日としない」などの運用ルールがお勧めなのです。

 

入社月に給与が支給される会社で、最初の給与から社会保険料を控除している場合もあります。

これは、健康保険法や厚生年金保険法の規定とは違うことをしているのですが、労使協定を交わして、そのように運用している限り問題ありません。〔労働基準法第24条第1項但書〕

しかし、労使協定を交わさずに行うのは良くありません。

健康保険法や厚生年金保険法には、これについての罰則が無いのですが、賃金を全額支払う義務に違反してしまいます。〔労働基準法第24条第1項本文〕

これには、三十万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法第120条〕

 

労使協定の役割https://youtu.be/Nkt306ptvUg

 

<退職する従業員の場合>

社会保険の脱退(資格喪失)の場合には、月末に脱退する場合に限り、その月の分の保険料が徴収されます。

月末以外の脱退なら、その月の保険料は徴収されません。

 

退職月に最後の給与が支給される場合、退職日によっては、欠勤控除によって給与が少額となり、社会保険料を控除できないこともあります。

こうした事態を想定して、健康保険法と厚生年金保険法には、退職の場合には例外的に前月と当月の2か月分の保険料を控除できるという規定になっているわけです。

この場合、退職月の給与が少額になる見込みであれば、退職月の前月の給与から2か月分の保険料を控除することになります。

 

退職月の翌月に最後の給与が支給される場合、月末退職を除いては、社会保険料を控除しないのが正しいのですが、うっかり控除してしまった場合には、すぐに返金しましょう。

2021/06/29|1,385文字

 

<祝日の移動>

令和3(2021)年のカレンダーの大半は、前年の11月に作成され祝日が誤ったまま出荷されています。

祝日の変更が、令和2(2020)年11月27日の臨時国会で決定され、令和3(2021)年に限り、海の日が東京五輪の開会式前日に当たる7月22日に、スポーツの日が開会式当日の7月23日に、山の日が閉会式当日の8月8日に移動したためです。

この影響で、8月9日が振替休日となり、例年の海の日(7月第3月曜日)、スポーツの日(10月第2月曜日)、山の日(8月11日)が平日になりました。

祝日移動の目的は、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、東京五輪開催に伴う交通混雑の緩和にあります。

 

<給与支給日への影響>

たとえば、令和3(2021)年7月20日は火曜日ですが、木曜日の22日が海の日、金曜日の23日がスポーツの日ですから、22日から25日までが連休です。

毎月20日締切、当月25日支払としている企業で、就業規則が「支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う」と規定していれば、給与支給日は締日の翌日の7月21日ということになります。

 

<労働基準法の規制>

賃金は毎月一定の期日を定めて、定期的に支払わなければならないという、賃金の一定期日払の原則があります。〔労働基準法第24条〕

賃金の支払日が毎月変動すると、労働者の生活が不安定になるからです。

それでも、その日が休日で賃金の振込みができないこともあります。

この場合に、民法の規定によればその支払日は繰下げとなります。〔民法第142条〕

しかし、就業規則で繰上げるものとすることも可能で、実際に多くの企業が繰上げとしています。

いずれにせよ、賃金の支払日は就業規則の絶対的必要記載事項です。

 

<債務不履行による損害賠償>

給与の支払が遅れたことによる損害賠償については、民法第415条に規定があります。

 

【債務不履行による損害賠償】

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

給与については、会社が債務者、従業員が債権者ということになります。

現在の法定利率が年3%ですから、月給30万円の場合の損害額は約25円となります。

( 300,000円 × 3% ÷ 365日 = 24.7円 )

もっとも、急な祝日の変更によって、給与の支払が遅れるのは「取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるもの」と言えるでしょう。

そうであれば、そもそも会社の損害賠償責任は無いことになります。

 

<解決社労士の視点から>

給与の支払が遅れるというのは、本来はあってはならないことで、厳密には一定期日払の原則(労働基準法第24条)に反しています。

これには30万円以下の罰金も規定されています。〔労働基準法第120条第1項〕

しかし今回の祝日移動は、コロナ下のオリンピック対応のため、国により急遽行われた臨時のものです。

就業規則の規定通りに給与を支給できず1日遅れになったとしても、企業の刑事責任・民事責任を問えないケースが多いのではないでしょうか。

2021/06/28|766文字

 

人事考課制度の弊害https://youtu.be/ekxvgzcbfbo

 

<論理誤差>

考課者が自己流の推論で評価対象者の人格を決めつけ、各評価項目の評価をしてしまうことがあります。

 

・時々遅刻するのはルーズな性格だからだ。

・営業成績が優れているのは押しが強いからだ。

これらは、仕事に関わる事実のほんの一部を手がかりとした推論に過ぎません。

 

・お金持ちの家に育ち甘やかされて育ったので忍耐力が無い。

・小学生の頃から日記を書き続けているので根気強い。

これらは一つの事実、しかも仕事とは無関係な事実から評価を推論しています。

 

論理誤差とは、数多くの事実に基づき客観的に評価せず、主観的な推論で評価してしまうことをいいます。

 

<考課者としての対策>

この論理誤差による弊害を防ぐには、評価項目ごとになるべく多くの事実に基づいた評価をすることが必要です。

つまり考課者は、日々の業務の中で、評価対象者の仕事ぶりに関する事実を数多く拾って記録しておく必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えるというのは、実際にはむずかしいものです。どうしても、サボりがちです。

しかし、考課者が事実に基づかず単なる印象で評価してしまうのでは、適正な人事考課制度の運用はできません。

考課者に対しては、定期的な考課者研修を実施すること、考課表には評価の根拠となる事実を数多く記入する欄を設けることが必要です。

手間のかかることではありますが、評価される側からすると、考課者個人の勝手な印象で評価を決められたのではたまりません。

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、社員の出入りが激しくなり、ますます人事考課制度が重要になっています。

人事考課制度の導入や改善、考課者研修など、まとめて委託するのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

2021/06/27|1,901文字

 

<休暇の通勤手当>

通勤手当は、労働基準法などにより、企業に支払が義務付けられているものではありませんが、支払われる場合には、通勤に必要な経費や負担を基準にその金額が決められているのが一般です。

休暇の場合には、出勤しないわけですから、年次有給休暇を取得した場合の賃金に通勤手当が含まれるというのは、矛盾があるようにも思われます。

  

<労働基準法の定め>

「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない」〔労働基準法第39条第7項本文〕

つまり、解雇予告手当などを計算する場合に用いられる法定の平均賃金、または、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金が原則となります。

ただし、労使協定を交わせば、健康保険法第40条第1項の標準報酬月額の30分の1を、1日分の年次有給休暇の賃金として支給することもできます。

また、この金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これに従います。〔労働基準法第39条第7項但書〕

 

<労働基準法施行規則>

労働基準法の規定だけでは明確にならない場合は、次の規定が適用されます。

 

労働基準法施行規則

第二十五条 法第三十九条第七項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次の各号に定める方法によつて算定した金額とする。

一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額

二 日によつて定められた賃金については、その金額

三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額

四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額

五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額

六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額

七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

2 法第三十九条第七項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金若しくは前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。

3 法第三十九条第七項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇の賃金の計算方法には、次の3つがあるということです。

1.労働基準法第12条で定める「平均賃金」

2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

3.健康保険法第99条で定める「標準報酬日額」

 

このうち、1.3.に通勤手当が含まれていることは明らかです。

しかし、2.に通勤手当が含まれるか否かは不明確です。

これについては、次の規定があります。

 

「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」〔労働基準法附則第136条〕

 

この条文について、通勤手当を支給しないことが「賃金の減額」にあたると解釈すれば、通勤手当を支給しなければなりません。

 

さて基本に戻って、通勤手当は労働基準法などにより企業に支払が義務付けられているものではありません。

ですから、就業規則に「通勤手当は実際に出勤した日についてのみ支給する」という規定があれば、年次有給休暇の賃金についても、通勤手当を計算に含めなくて良いことになります。

反対に、こうした規定が無ければ、不明確なことは労働者の有利に解釈するのが労働法全体の趣旨ですから、通勤手当を計算に含める必要があるでしょう。

2021/06/26|1,029文字

 

ブラック就業規則https://youtu.be/fUVYZrve4OU

 

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、労働者から取得する日を指定するのが原則です(時季指定権)。

一方、労働者が指定した日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、会社は時季変更権を使う余地がありません。

ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<円満退職の場合>

転職先が決まっている、家族と共に転居するなど、労働者の都合により、退職日が決まっていて変更できない場合があります。

この場合、退職日より後の日に年次有給休暇を取得することはできませんから、一般には退職日までの間の出勤予定日に取得することになります。

しかし、会社に長い間貢献した人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいところです。

この場合、残った年次有給休暇の日数が多ければ、日付を遡って取得させることもありえます。

ただし、前年度にさかのぼると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。

場合によっては、社会保険料の計算もやり直しとなります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買上げです。

通常は、買上げは許されないのですが、退職にあたって買上げることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

それでも、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですから、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

<円満ではない退職の場合>

会社と感情的に対立していて、退職にあたって様々な要求をしてくる労働者がいます。

年次有給休暇については、「普段あまり取得できなかったので、退職にあたっては、残さずすべてを取得させてほしい」「残った年次有給休暇を買い取ってほしい」という話が出てきます。

年次有給休暇をすべて取得し尽くすというのは、退職日との関係で日程的に

無理が無ければ可能な話ですし、労働者としての正当な権利を行使するに過ぎません。

しかし、年次有給休暇の買上げは、「会社が残日数の一部または全部の買上げを行うことができる」に過ぎず、労働者の側から権利として主張することはできません。

ただ、引継ぎをきちんと終わらせない恐れがある、あるいは未払残業代やパワハラを理由とする慰謝料を請求してくる可能性が高いなどの事情があれば、経営判断で年次有給休暇の買上げをすることも考えられます。

2021/06/25|552文字

 

被保険者 被扶養者「被」とは?https://youtu.be/TLTo2eFOMfU

 

<健康保険の対象となる場合>

急性などの外傷性の打撲・捻挫・および挫傷(肉離れなど)・骨折・脱臼には健康保険が適用されます。

ただし、骨折・脱臼については、応急処置を除き医師の同意が必要です。

 

<健康保険の対象とならない場合>

次のような場合には、「健康保険が使える」と説明を受けていても、全額または一部が自己負担となり、接骨院から請求されるか、「協会けんぽ」などの保険者から請求されることがあります。

・単なる肩こり、筋肉疲労

・慰安目的のあん摩・マッサージ代わりの利用

・病気(神経痛・リウマチ・五十肩・関節炎・ヘルニアなど)からくる痛み・こり

・脳疾患後遺症などの慢性病

・過去の交通事故等による後遺症

・症状の改善の見られない長期の治療

・医師の同意のない骨折や脱臼の治療(応急処置を除く)

・仕事中や通勤途上におきた負傷(労災保険が適用される可能性があります)

 

<柔道整復師(整骨院・接骨院)にかかる場合の注意事項>

負傷原因、治療年月日、治療内容などについて、「協会けんぽ」などの保険者から問い合わせが入ることもありますので、次の点に注意しましょう。

・負傷の原因を正しく伝える

・「療養費支給申請書」は内容をよく確認し自分で署名または捺印する

・領収証をもらう

・治療が長引く場合は医師の診断を受ける

2021/06/24|1,313文字

 

社会保険労務士の顧問契約https://youtu.be/XcBLsc-tOiQ

 

<社会保険労務士とは>

社会保険労務士制度は、社会保険労務士法に基づく制度です。

 

社会保険労務士とは、社会保険労務士試験の合格者等社会保険労務士となる資格を有する者で、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録された者をいいます。

 

また、平成15(2003)年4月1日から、社会保険労務士法に基づき、社会保険労務士が共同して社会保険労務士法人を設立することが可能となりました。社会保険労務士法人は、社員を社会保険労務士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人であり、対外的な社員の責任については、連帯無限責任とされています。

 

社会保険労務士及び社会保険労務士法人の業務は次のとおりです。

 

(1) 労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成

 

(2) 申請書等の提出代行

 

(3) 申請等についての事務代理

 

(4) 個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせん手続の代理

 

(5) 個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせん手続の代理

 

(6) 男女雇用機会均等法並びにパート労働法に基づき都道府県労働局が行う調停手続の代理

 

(7) 個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理(紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)

 

(8) 労務管理その他労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導

 

このうち、(1)~(3)の業務については、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、業として行ってはならないこととされています。

 

また、社会保険労務士法人は、上記(1)~(3)及び(8)のほか、定款で定めるところにより、賃金の計算に関する事務及び社会保険労務士法人の使用人を派遣の対象とし、かつ、派遣先を開業社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人とする労働者派遣事業を行うことができます。

 

(4)~(7)の業務については、紛争解決手続代理業務試験に合格し、社会保険労務士名簿にその旨の付記を受けた特定社会保険労務士又は特定社会保険労務士が所属する社会保険労務士法人以外の者は、他人の求めに応じ報酬を得て、業として行ってはならないこととされています。

 

<社会保険労務士になるためには>

社会保険労務士になるためには、社会保険労務士試験に合格し、労働社会保険諸法令に関する厚生労働省令で定める事務に2年以上従事した者が、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録を受けることが必要です。社会保険労務士試験の合格者のうち実務経験のない者には、全国社会保険労務士会連合会が行う講習を受けて、社会保険労務士となる資格を得る途も開かれています。

 

社会保険労務士の国家試験は、毎年1回、行われています。

 

受験資格等社会保険労務士試験についての詳細は、社会保険労務士試験の試験事務を行っている全国社会保険労務士会連合会社会保険労務士試験センターのホームページhttp://www.sharosi-siken.or.jpをご覧ください。

 

(厚生労働省ホームページより ※法改正により一部修正)

2021/06/23|1,479文字

 

労働条件を確認しましょうhttps://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<労働条件通知書>

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。〔労働基準法第15条第1項〕

そして、厚生労働省令で定める事項について、使用者が漏れなく明示できるよう、厚生労働省は労働条件通知書の様式をWordとPDFで公表しています。

常に最新の様式をダウンロードして利用していれば、法令の改正にも対応できます。

「労働条件通知書」という文書名からも、「明示」が目的であることからも、使用者から労働者への一方的な通知であることは明らかです。

労働者の氏名は、宛名として表示されていますが、署名・捺印欄はありません。

使用者は、これを1部だけ作成して労働者に交付すれば足りるわけです。

この通知書に記載された内容について、労働者が疑問を抱けば、使用者に説明を求めることになります。

 

<雇用契約書>

労働契約(雇用契約)は口頭でも成立しますから、契約書の作成は義務ではありません。

ただ、使用者が労働者に労働条件通知書を交付しても、紛失されたり、知らないと言われたりしたら困るので、契約書を作成したほうが安心とも言われます。

契約書は2部作成し、労使双方が署名(記名)・捺印して、1部ずつ保管するのが通常です。

雇用契約書には、労使双方の意思表示が合致した内容が記載されています。

ですから、契約書が交わされた後、記載内容について疑問が生じるのは困るのですが、この場合には、労使双方が誠意をもって協議し内容を確定することになります。

 

<労働条件通知書兼雇用契約書>

労働条件通知書と雇用契約書の両方を作成するのは面倒ですから、法令によって明示が義務付けられている項目をすべて含む形で雇用契約書を作成し、労働条件通知書を兼ねるということも行われます。

しかし、一方的な通知と合意の内容を1つにまとめるというのは、論理的な矛盾をはらみます。

書類の内容について疑問が発生した場合には、使用者側が説明すれば足りるのか、労使で協議が必要なのかは不明確です。

ここに紛争の火種を抱えることになりそうです。

 

<労働条件通知書を用いる場合の不都合解消>

労働条件通知書には、労働者の署名欄は無いのですが、これを設けたら無効になるというわけではありません。

末尾に「上記について理解しました。疑義があれば本日より2週間以内に申し出ます」という欄を設け、日付、住所、氏名を自署してもらうこともできます。

そしてコピーを会社の控えとする旨を説明し、原本をご本人に渡せば、後から「知らない。忘れた」という話も出てこなくなるでしょう。

ついでに、就業規則のある場所も明示しておくこともお勧めします。

 

<雇用契約書を用いる場合の不都合解消>

この場合の不都合としては、契約書内の記載について疑問が発生した場合には、労使が相談して内容を確定することになるという煩わしさです。

このことが紛争の火種ともなってしまいます。

ですから、判断が必要な項目については、「会社の判断により」という言葉を加えておく必要があるでしょう。

たとえば、試用期間中に「しばしば遅刻・欠勤があった場合には本採用しない」という内容があれば、「しばしば」に判断の幅が発生してしまいます。

ここは「しばしば遅刻・欠勤があったと会社が判断した場合には本採用しない」といった文言にしておき、不合理な解釈でない限りは、本採用の基準を会社のイニシアティブで決定できるようにしておくのです。

 

労働条件通知書を使用するにせよ、雇用契約書を使用するにせよ、紛争の火種を抱えないよう、ひな形に一手間加えることをお勧めします。

<就業規則による労働条件の変更>

年功序列を疑われるような給与制度を改め、成果主義の給与とすることは、有能な若者を採用し定着させるのに必要なことでしょう。

しかし、給与が減ることになる人もいるでしょうし、給与が大きく変動すれば年収が不安定になります。

こうした不都合があっても、成果主義給与制度を導入できる基準とはどんなものでしょうか。

 

労働契約法に、次の規定があります。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更によって、給与などの労働条件を変えた場合には、それが合理的であればその通りの効力が認められるということです。

反対に、合理的でなければ、たとえ就業規則を変えても、それによって一人ひとりの労働条件は変わらないということです。

この中の「合理的」というのは、「労働契約法の趣旨や目的に適合する」という意味だと考えられます。

それでも、この条文を読んだだけでは良く分かりません。

 

「合理的」の意味https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<最高裁判所の判例>

労働契約法という法律は、10年余り前に判例法理がまとめられて作られました。

判例法理というのは、それぞれの判決を下すのに必要な理論で、判決理由中の判断に含まれているものです。

そして、最高裁は次のように述べています。

 

合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである」(最高裁判所昭和43年12月25日大法廷判決)

 

<変更を有効だとした裁判例>

会社が赤字のときには、賃金の増額を期待できないし、8割程度の従業員は賃金が増額しているので、不利益の程度はさほど大きくない。

収益改善のための措置を必要としていたこと、労働組合と合意には至らなかったものの、実施までに制度の説明も含めて8回、その後の交渉を含めれば十数回に及ぶ団体交渉を行っており、労働組合に属しない従業員はいずれも新賃金規程を受け入れていることから、新給与規定への変更は合理性がある。

(ハクスイテック事件 大阪高裁平成13年8月30日判決)

 

<変更を有効だとした裁判例>

主力商品の競争が激化した経営状況の中で、従業員の労働生産性を高めて競争力を強化する高度の必要性があった。

新賃金制度は、従業員に対して支給する賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものであって、どの従業員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格し、昇給することができるという平等な機会を保障している。

人事評価制度についても、最低限度必要とされる程度の合理性を肯定し得るものであることからすれば、上記の必要性に見合ったものとして相当である。

会社があらかじめ従業員に変更内容の概要を通知して周知に努め、一部の従業員の所属する労働組合との団体交渉を通じて、労使間の合意により円滑に賃金制度の変更を行おうと努めていたという労使の交渉の経緯や、それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られたことなど諸事情を総合考慮するならば、上記のとおり不利益性があり、現実に採られた経過措置が2年間に限って賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであっていささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとはいえない点を考慮しても、なお、上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の、高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるといわざるを得ない。

(ノイズ研究所事件 東京高裁平成18年6月22日判決)

 

<解決社労士の視点から>

このように、具体的な事情によって、裁判所の判断は分かれます。

変更を有効だとしたノイズ研究所事件の判決も、具体的な事情を踏まえたギリギリの判断であったことが伺えます。

結論として、就業規則の変更により成果主義の給与とするには、新しい給与制度そのものの合理性も必要ですし、説明会などの段取りも大事です。

どこまでやれば良いかは、数多くの労働判例を見比べて考えなければなりません。

こうした専門性の高いことは、素人判断で進めてしまわず、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

以上は、就業規則がある会社についての話です。

就業規則が無い会社では、労働契約法の次の規定が適用され、一人ひとりの労働者の同意が必要になりますのでご注意ください。

 

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

2021/06/21|651文字

 

人事考課制度の弊害https://youtu.be/ekxvgzcbfbo

 

<寛大化傾向>

寛大化傾向というのは、評価への批判や反発を恐れ、あるいは評価対象者への気遣いから、評価がついつい甘くなる傾向です。

部下に「嫌われたくない」「よく思われたい」という感情に支配されてしまうとこうした傾向が見られます。

評価に差が出ないため人事考課の目的を果たせないこと、評価対象者が甘えてしまい成長しなくなることが問題となります。

 

<役職者としての能力不足>

役職者には、コミュニケーション能力が必要です。

人脈を広げる努力も求められます。

また、部下を客観的に評価するためには、世間一般の同業で働く人たちや同一職種の人たちの働きぶりを把握していることが必要です。

「井の中の蛙 大海を知らず」というのでは、部下を広い目で客観的に評価できません。

そもそも、部下をどう育てるかの指針や目標を立てることも困難です。

 

<寛大化傾向を示す役職者への対応>

人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。

そして、寛大化傾向を示す役職者には、人事考課の目的の再確認、コミュニケーション能力の強化について、重点的な教育研修が必要でしょう。

一方で会社から、人脈を広げやすくするためのサポートもしてあげたいところです。

それでもなお、きちんとした人事評価ができないのであれば、適性を欠くものとして考課者から外すことも考えなければなりません。

そもそも、こうした人物が役職者になってしまうこと自体、適正な人事考課制度の運用ができていなかったり、人事政策が失敗していたりの可能性があります。

2021/06/20|1,545文字

 

<育児・介護休業法の改正>

育児・介護休業法が改正されました。

令和4(2022)年4月1日から段階的に施行されます。

「えっ?また?!」という反応は正常たと思います。

知ってる。知ってる」と思っていたら、過去の法改正だったなんていうことが多いのです。

しかもこの手の法改正は、会社の規模には関係ありません。

知らないうちに会社がブラック化していく要因の筆頭に数えられると思います。

 

<男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設>(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

改正法施行後は、現行の制度に加えて、新制度による育児休業の取得が可能となります。

 

 

新制度(現行制度とは別に取得可能)

対象期間と取得可能日数 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
申出期限 原則休業の2週間前まで
分割取得 分割して2回取得可能
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能

 

申出期限は、原則として休業の2週間前までとなっていますが、職場環境の整備などについて、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取組の実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができます。

休業中の就業について、労使協定を交わす場合の具体的な手続の流れは、次の1.~3.のとおりです。

1.労働者が就業してもよい場合は事業主にその条件を申出

2.事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示

3.労働者が同意した範囲で就業

なお、就業可能日等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)を厚生労働省令で定める予定です。

 

<育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け>(施行日:令和4年4月1日)

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)の具体的内容については、複数の選択肢からいずれかを選択して措置することになる予定ですので、就業規則に「法令の定めによる」などと規定されている場合には、内容を確定する規定を置く必要があります。

妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置についても、省令によって、面談での制度説明、書面による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択して措置することになる予定ですので、同様のことが言えます。

なお、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する休業取得意向の確認は、事業主が労働者に対し、育児休業の取得を控えさせるような形での実施を認めない予定です。

 

<育児休業の分割取得>(施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日)

育児休業(新制度除く)を分割して2回まで取得可能となります。

また、保育所に入所できない等の理由により1歳以降に延長する場合には、開始日を柔軟化することで、各期間途中でも夫婦交代が可能(途中から取得可能)となります。

 

<有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和>(施行日:令和4年4月1日)

「引続き雇用された期間が1年以上」の要件が廃止され、「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」という要件のみになります。

ただし、引続き雇用された期間が1年未満の労働者は、労使協定の締結により除外することが可能です。

 

<育児休業の取得の状況の公表の義務付け>(施行日:令和5年4月1日)

従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、出生数の一時的な落ち込みが確実です。

今後とも、少子化対策が強力かつ継続的に行われることでしょう。

2021/06/19|1,010文字

 

解雇予告の効力https://youtu.be/oB35mJkVccQ

 

<整理解雇>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法令の規定>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この規定は抽象的ですから、素人判断で解雇の有効・無効を決めつけるのは危険です。

 

<整理解雇の有効要件>

実務的には、判例で示された次の4つの要素から、解雇の有効性を判断することになります。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく、総合的な判断となります。

まず、経営上の人員削減の必要性です。会社の財政状況に問題を抱えていて、新規採用などできない状態であることです。

次に、解雇回避努力の履行です。配置転換や希望退職者の募集などの実施です。

さらに、解雇対象者の人選の合理性です。差別的な人選は許されません。

最後に、手続の相当性です。事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

 

<地域限定社員の場合>

「そもそも勤務地を限定されていたのだから」という理由だけで、閉店や事業所の閉鎖によって、そこで勤務する地域限定社員を解雇することはできません。

これは、整理解雇の4つの要素のうち、解雇回避努力の履行にかかわることです。

採用の時点で勤務地限定を望んでいた社員であっても、その後事情が変わっている場合もありますし、解雇されるよりは転勤に応じた方が有利ということもあります。

解雇回避努力が求められるということは「なるべく解雇しないように努力したけれども、どうしてもダメでした」という事情がなければ、簡単に解雇はできないということです。

結局、地域限定社員と話し合って、本人がどうしても別の店舗や営業所などでは勤務できないというのであれば、他の社員に優先して解雇を考えざるを得ないということになります。

 

 <解決社労士の視点から>

整理解雇を含め、解雇の多くは不当解雇となり無効となる危険をはらんでいます。

そして不当解雇は企業に思わぬ損失をもたらします。

「解雇」ということを思いついてしまったなら、迷わず信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

2021/06/18|1,035文字

 

<無期転換の影響>

平成30(2018)4月から、有期労働契約で働いている人が無期転換の申込権を使うと、会社側の意思とは無関係に無期労働契約に変更されます。〔労働契約法第18条〕

無期労働契約になってからの労働条件は、就業規則や労使の話し合いで決まることになりますから、必ずしも正社員になるわけではありません。

しかし、就業規則の正社員の定義が「期間の定めなく雇用されている従業員」などとなっていれば、無期転換の申し込みをした有期契約労働者は、自動的に正社員になってしまいます。

 

<定義の重要性>

「正社員」というのは、法律用語ではありませんから法令には定義がありません。

各企業が独自の定義を定めていたり、あいまいにされていたり、定義が無かったりというのが実態です。

もし、正社員だけに賞与や退職金を支給している会社で、退職予定のパートさんから「退職金はいくらですか?今までもらえなかった賞与は、まとめてもらえますか?」という質問が出ても、「就業規則の定義により正社員とされていないあなたには支給されません」と説明できます。

しかし、「正社員」の定義がしっかりしていないため、会社が訴えられて、裁判所から過去の賞与や退職金の支給を命じられることもあります。

誰か1人がこれに成功すれば、他の退職者からも請求されることになるでしょう。

退職金請求権の消滅時効期間は5年間ですから、5年近く前の退職者からも訴えられる可能性があります。〔労働基準法第115条〕

 

<定義規定の例>

就業規則には、「正社員として採用された従業員、および、正社員以外から正社員に登用された従業員」のような表現で定めておくのが楽だと思います。

こうしておけば、今後、何らかの法改正があったとしても、それによる影響は受けないでしょう。

ただし、就業規則の規定だけだと、「正社員として採用された」かどうかの証拠が残りません。

労働条件通知書の「雇用形態」「社員区分」などの欄に「正社員」「正社員以外」「パート社員」「嘱託社員」のように明示しておくことが必要になります。

労働条件通知書は、入社時と賃金など労働条件の変更時に、従業員に交付される書類ですから、ここで「正社員であること」あるいは「正社員ではないこと」を正式に確認できます。

なお、厚生労働省のホームページでダウンロードできる労働条件通知書には、「雇用形態」「社員区分」などの欄がありませんから、Word形式でダウンロードしたものに手を加えて使用することをお勧めします。

2021/06/17|1,170文字

 

バラバラに取る昼休みhttps://youtu.be/ngjJ_i4-1JE

 

<政府の感染症対策方針にも>

令和3(2021)年5月28日、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策本部は「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の一部を変更し、職場における感染防止のための取組として、事業者に対して昼休みの交代制などを促すこととしました。

休憩室や食堂などでの密を避けるため、交代制の昼休みは手軽で有効な手段ではありますが、一定の配慮と手続が必要となります。

 

<一斉付与の原則>

【労働基準法第34条第2項本文:休憩の一斉付与】

前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。

この根拠としては、一斉でなければ心理的に休憩を取りづらいとか、会社が管理しにくいとか、労働基準法の前身である工場法の名残であるとか言われています。

しかし、一斉付与でなくてもよい業種が、労働基準法施行規則第31条に定められています。

運輸交通業、商業、金融保険業、興業の事業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業がこれに該当し、一斉に休憩を取ったのでは、お客様にご迷惑をお掛けするということのようです。

ですから、これらの業種に該当する企業では、昼休みの時差取得をするのに特別な手続は不要です。

 

<労使協定の締結>

【労働基準法第34条第2項但書:一斉付与の免除】

ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

このように、休憩の一斉付与を免除されていない業種であっても、労使協定の締結によって、一斉付与の義務を免れることができます。

この労使協定は、所轄の労働基準監督署長に届け出なくてもよいものです。

 

<同一労働同一賃金への配慮>

食堂や休憩室の利用について、正社員は午前11時から午後2時、非正規社員はこれ以外の時間帯などと定めるのは、こうすることに合理的な理由がなければ、同一労働同一賃金の観点から問題ありです。

「同一労働同一賃金」は、「賃金」という文字が入っているものの、休暇や福利厚生にも及ぶ原理ですから、昼休みの時差取得にあたっては、同一労働同一賃金の趣旨に反しないように配慮する必要があります。

 

<公平性の確保や業務への配慮>

結局、部署毎に交代で休憩を取得することになると思われますが、休憩時間が固定では部署間の不公平が発生してしまいます。

そこで、毎月のローテーションで休憩時間が変更になる仕組を考えることになります。

しかし、あまり早い時間帯、あるいは遅い時間帯に昼休みを取ったのでは、業務に支障が出る部署もあり、この辺の調整が難しいかもしれません。

昼休みの交代制について仕組を考える部署は、各部署からの聞き取りを行い、よく考えてローテーションを組む必要があるでしょう。

2021/06/16|888文字

 

✕失業保険⚪雇用保険https://youtu.be/y9JHiGhCtmQ

 

<離職票の交付を希望しないとき>

※離職は退職に限られず、週所定労働時間が20時間未満となった場合等を含みます。

・提出書類・・・・・・「雇用保険被保険者資格喪失届」

※被保険者というのは保険の対象者のことです。脱退は、被保険者の資格を失うことなので、資格喪失といいます。

・提出期限・・・・・・被保険者でなくなった日の翌日から10 日以内

※被保険者が転職した場合に、資格喪失が遅れると、転職先での手続がそれだけ遅れてしまいます。期限にかかわらず、なるべく早く手続しましょう。

・提出先・・・・・・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

・持参するもの・・労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、雇用契約書など

 

<離職票の交付を希望するとき>

※59歳以上の離職者は本人が希望しなくても必ず離職票の交付が必要です。

・提出書類・・・・・・「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」

※「雇用保険被保険者離職証明書」は31組ですが、1枚ずつ名前(書類のタイトル)が違います。

・提出期日・・・・・・被保険者でなくなった日の翌日から10 日以内

※被保険者でなくなった人が給付を受けるのは、本人がハローワークで手続をするのが早ければ、それだけ早くなります。手続には、離職票が必要ですから1日も早く手続して、離職票を渡しましょう。

・提出先・・・・・・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

・持参するもの・・労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、辞令及び他の社会保険の届出(控)、離職理由の確認できる書類(就業規則、役員会議事録など)。

 

<退職以外のとき>

「資格喪失届」は、次のような場合でも提出が必要です。

・被保険者資格の要件を満たさなくなったとき(週所定労働時間が20時間未満となった場合等)

・被保険者が法人の役員に就任したとき(ハローワークから兼務役員として労働者性が認められた場合を除く)

・被保険者として取り扱われた兼務役員が、従業員としての身分を失ったとき。

・他の事業所へ出向し、出向先から受ける賃金が、出向元の賃金を上回ったとき。

・被保険者が死亡したとき。

 

所定労働時間と予定労働時間https://youtu.be/aCypDM4IvvA

2021/06/15|685文字

 

人事考課制度の弊害https://youtu.be/ekxvgzcbfbo

 

<中央化傾向(中心化傾向)>

中央化傾向というのは、極端な評価を避けようとして、評価を真中に集めてしまう傾向があることを意味します。

たとえば、5段階評価で3ばかりつけてしまうのは中央化傾向の典型例です。

平均値で評価しておけば、評価対象者からクレームをつけられないだろうという臆病な考え方をしたり、普段の仕事ぶりをきちんと把握していないために判断できなかったりすると、このような傾向が見られます。

 

<役職者としての能力不足>

部下の意見や提案を聞きながら業務を進めるのは、部下を育てるためにも、モチベーションを維持するためにも、役職者にとって必要なことです。

しかし、部下の考えを吸い上げないまま、あれこれ想像して、部下の批判を恐れているようでは、役職者として能力不足です。

また、部下の具体的な働きぶりを把握していなければ、指導することは困難ですから、やはり役職者に必要な能力を欠いているということになります。

 

<中央化傾向を示す役職者への対応>

人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。

そして、中央化傾向を示す役職者には、重点的な教育研修が必要でしょう。

それでもなお、きちんとした人事評価ができないのであれば、適性を欠くものとして考課者から外すことも考えなければなりません。

そもそも、こうした人物が役職者になってしまうこと自体、適正な人事考課制度の運用ができていなかったり、人事政策が失敗していたりの可能性があります。

たとえば、「縁故採用」までは良いとしても、役職者への「縁故登用」をしてしまうと、こうした役職者が増えてしまいます。

2021/06/14|1,092文字

 

<役員が労働保険の対象外とされる理由>

雇用保険は、労働者の雇用を守るのが主な目的です。

労災保険は、労働者を労災事故から保護するのが主な目的です。

会社と役員との関係は、委任契約であって雇用契約ではないため、役員は労働者ではないということで、雇用保険も労災保険も適用されないというのが原則です。

 

<労働者か否かの判断基準>

「役員」という肩書が付いたり、商業登記簿に取締役として表示されたりは、形式上、役員であることの基準になります。

しかし、法律関係では形式ではなく実質で判断されることが多く、労働保険の適用についても役員が実質的に労働者であるか否かが基準となります。

 

<雇用保険の労働者>

雇用保険の適用対象となる「労働者」とは、雇用保険の適用事業に雇用される労働者で、1週間の所定労働時間が20時間未満であるなどの適用除外に該当しない者をいいます。

この「適用除外」の中に役員は含まれていません。

役員であっても、実質的に会社に雇われ、賃金を受けていれば、その限度で雇用保険の対象者となるわけです。

 

<労災保険の労働者>

労災保険の適用対象となる「労働者」とは、職業の種類にかかわらず事業に使用される者で、労働の対価として賃金が支払われる者をいいます。

正社員、契約社員、パート、アルバイト、日雇、臨時などすべての労働者が、労災保険の対象となります。

役員であっても、労働の対価として賃金が支払われている部分があれば、その限度で労災保険の対象者となりうるわけです。

 

労災保険の勘違い(事業主編)https://youtu.be/lBEXjn2TbSA

 

<兼務役員>

役員でありながら労働者でもあるという、労働保険の対象となる役員の典型です。

取締役工場長、常務取締役本店営業本部長など、取締役かつ労働者という立場の人は、役員報酬と賃金の両方を受け取っています。

雇用保険では、ハローワークに兼務役員である旨を届出ておく必要があります。

雇用保険料は、賃金だけをベースに計算され徴収されることになりますし、失業手当(求職者給付の基本手当)も賃金だけをベースに計算され支給されます。

労災保険も、賃金をベースとした保険料・休業(補償)給付となります。

 

<執行役員>

名称に「役員」の文字が入っているものの、実際には従業員(労働者)であることも多いです。

雇用契約に基づいて企業に雇われ、取締役会などの決定に基づいて業務を執行し、役員報酬ではなく給与として賃金が支払われているなどの事情があれば、労働者と判断され、雇用保険と労災保険が適用されることになります。

常務執行役員、専務執行役員という名称でも、実質的には労働者ということもあります。

あくまでも、実質的な権限や役割を踏まえて判断することが必要です。

2021/06/13|777文字

 

人事考課制度の弊害https://youtu.be/ekxvgzcbfbo

 

<期末誤差>

就業規則で昇給時期や賞与支給時期が決まっているのが一般です。

給与の決定には1年間の、賞与の決定には半年程度の人事考課期間が設定されていることでしょう。

考課者にとっては、評価期間の最初の方よりも、評価期間の最後の方が印象が強いため、評価決定に近い時期の働きぶりを重視しすぎてしまう傾向が見られることもあります。

これを期末誤差といいます。

評価される社員の中には、このことを期待して、評価の実施時期が近づくと張り切る人もいます。

中には、出勤するなり「今日も1日頑張るぞ!」と気合を入れ、勤務終了時に「今日も1日頑張ったなぁ!」と言うような口先だけの人もいます。

そして、この時期だけ残業する人がいるのではないでしょうか。

 

<考課者としての対策>

期末誤差を防ぐには、考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えておくこと、評価対象者と定期的に話をして常に働きぶりを見ていることを伝えておくことが必要です。

 

<会社としての対策>

考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えるというのは、実際にはむずかしいものです。

どうしても、後回しにしがちです。

考課者に対しては、毎月、評価対象者の評価を会社に提出させるなど、明確な義務を負わせるのが確実です。

また、人事考課については、定期的な考課者研修が必須ですが、評価される側の一般社員に対しても、人事考課制度についての説明会が必要だと思われます。

評価が適正に行われるようにするためにも、会社は全社員に人事考課制度を理解させなければなりません。

 

新型コロナウイルスの影響で、社員の出入りが激しくなり、ますます人事考課制度が重要になっています。

人事考課制度の導入や改善、考課者研修など、まとめて委託するのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

2021/06/12|1,028文字

 

人事考課制度の弊害https://youtu.be/ekxvgzcbfbo

 

<ハロー効果>

ハロー効果とは、ある際立った特徴を持っている場合に、それが全体の評価に影響してしまうことです。

英語のハロー(halo)は、日本語では後光(ごこう)といいます。

仏やキリストなどの体から発するとされる光です。

仏像の背中に放射状の光として表現されています。

この光がまぶしくて、真の姿が見えなくなってしまうのでしょう。

 

<プラス評価の場合>

たとえば、次のように思い込んでしまう例があげられます。

・〇〇大学を卒業している → 学力だけでなく人格も優れている

・将棋の有段者である → 頭が良くて勝負勘がある

・国体の出場経験がある → 目標を達成する意欲が高い

これらの例では、矢印の左側が根拠となる事実であり、右側が結論なのですが、そもそも仕事に関わる事実ではないものが根拠となっています。

 

<マイナス評価の場合>

たとえば、次のように思い込んでしまう例があげられます。

・太っている → 健康状態が悪い、自己管理能力が低い

・高校を中退している → 忍耐力が乏しい、社会性が欠如している

こちらも仕事に関わる事実ではないものが根拠となっています。

 

<評価項目間の影響>

特定の評価項目の評価が際立っているために、他の評価項目の評価にまで影響してしまうことがあります。

・積極性が高い → 応用力が高い

・責任性が高い → 規律性が高い

 

<実際のハロー効果と対処法>

実際の人事考課では、ある人について「優れている」というレッテルを貼り、あらゆる評価項目について評価が甘くなってしまうことがあります。

「あばたもえくぼ」です。

「あばた」というのは、天然痘が治った後に皮膚に残るくぼみのことです。

大好きな人の顔にある「あばた」が「えくぼ」に見えてしまうのです。

 

反対に、「劣っている」というレッテルを貼り、あらゆる評価項目について評価が厳しくなってしまうことがあります。

「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」です。

袈裟というのは、仏教の僧侶が身に着ける衣装のことです。

坊主を憎んでしまうと、その坊主が着ている衣装まで憎く思われるということです。

 

人事考課では、人物を評価するのではなく、評価項目ごとに客観的な評価をする必要があります。

先入観を捨てる必要があるのです。

人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。

制度の導入や改善、考課者研修など、まとめて委託するのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

2021/06/11|990文字

 

<規制改革>

政府の規制改革推進会議では、次のような項目について、規制改革の具体的な計画が策定されています。

・行政手続の書面・押印・対面の見直し

・オンライン利用の促進

・キャッシュレス化の促進

・地方税等の収納の効率化・電子化

・民間の書面・押印・対面の見直し

・会社設立時の定款認証に係る公証人手数料の引下げ

・雇用保険給付金申請の添付書類の見直し

・居住地以外のハローワークでの給付金手続

 

<雇用・教育の変化>

働き方改革関連でも、次のステップへの方向性が示されています。

現役の労働者の戦力化だけでなく、次世代の労働力の担い手である学生に対する教育改革も策定されています。

 

<オンライン授業・リカレント教育>

・オンライン授業の普及や今後期待されるリカレント教育の実施に向けた観点から、校舎等の施設の在り方・面積等を定めている設置基準について、大学の独自性を考慮した上で、柔軟な対応ができるよう見直しを実施する。(令和3年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)

カレント(current)は英語で「現在通用している」、リカレント(recurrent)は「再発する」「周期的に起こる」という意味です。

リカレント教育は、就業後に必要に応じて行う「社会人の学び直し」で、新しい知識を身に付けることにより、キャリアアップや転職の武器にすることができます。

 

<大学の卒業要件見直し>

・学生が海外大学院等へ進学しやすくできるよう、必要単位を取得した場合には、4年未満であっても卒業できるよう、大学の卒業要件を見直す。(令和3年度検討・結論、結論を得次第速やかに措置)

日本の学校の入学・卒業時期が海外とは異なるため、これに配慮した措置です。

 

<教師の登用>

・多様な外部人材を教師として登用する際の「特別免許状」の発行件数は、いまだ年間200件程度にとどまる。利用促進のため、手続面・要件の見直しを行う。

 

<キャリア形成の促進>

・正社員にとどまらない多様な働き手の自律的・主体的なキャリア形成の促進を主眼に置き、働き手・企業が取り組む事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」の策定を行う。

キャリア形成が正社員中心となり、非正規社員が置き去りとなる傾向がありました。

同一労働同一賃金の流れもあり、改めて多様な働き手を視野に入れた「リカレントガイドライン」の策定が提言されています。

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