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<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

 

【法人の能力】

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

会社も法人です。

会社の中で働く人たちが相互に協力し合い、まるで1人の人間のように統一的に活動することによって、会社は目的を果たすことが可能となります。

このためには、社員間・部署間で報告・連絡・相談が適切に行われている必要があります。

 

<報連相が足りない社員>

報連相を密にして組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

ところが、報連相が滞ったり不足したりする社員がいます。

報告書の提出締切を守らなかったり、いい加減な報告書を提出して済ませたりしています。

 

<報連相不足に対する懲戒処分>

報連相に問題のある社員の多くは、業務の中で報連相の優先順位が低いのだと思われます。

上司が、本人に対して報連相を重視し優先順位を上げるように指導する必要があります。

最初は口頭による注意・指導を行い、それでも改善されない場合には、書面による注意を行います。

この書面には、就業規則の条文を示し、報連相を怠ることが就業規則違反であり、場合によっては懲戒処分の対象となりうることも記載しておくべきです。

 

<懲戒処分の対象とすべきではない報連相不足>

能力不足で報連相が上手くできない社員もいます。

他の業務はともかく、報告書の作成などが極端に苦手というタイプです。

この場合には、本人を戒めても効果が期待できません。

むしろ、技術的な側面もありますので、教育が大きな効果をもたらします。

しかし、安易に上司に指導を任せてしまうと、上司が「こんな報告書じゃダメだ」という拒絶の態度を示し、ともするとパワハラに及んでしまう恐れがあります。

人事部門が主体となって集合研修を行うのが効果的だと思います。

 

2019.08.25. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年8月21日、厚生労働省が「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」をとりまとめ公表しました。

その概要を以下にご紹介します。

 

<メンタルヘルス対策に関する事項>

過去1年間(平成29年11月1日から平成30年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%となっている。(受け入れている派遣労働者は含まれない。)

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は59.2%[平成29年調査58.4%]となっている。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」が62.9%[同64.3%]と最も多く、次いで「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」が56.3%[同40.6%]となっている。

労働者にストレスチェックを実施した事業所のうち、ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を実施した事業所の割合は73.3%[同58.3%]であり、このうち分析結果を活用した事業所の割合は80.3%[同72.6%]となっている。分析結果を活用した事業所のうち、結果の活用内容(複数回答)をみると、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が46.5%と最も多くなっている。

 

<長時間労働者に対する取組に関する事項>

平成30年7月1日が含まれる1か月間に45時間を超える時間外・休日労働をした労働者(受け入れている派遣労働者を除く。以下「長時間労働者」という。)がいる事業所の割合は、「45時間超80時間以下」が25.0%[平成29年調査26.7%]、「80時間超100時間以下」が5.6%[同5.9%]、「100時間超」が3.5%[同2.1%]となっている。また、長時間労働者に対する医師による面接指導の実施方法をみると、いずれの時間外・休日労働時間数階級においても「実施方法が決まっていない」が回答のあった事業所の中で最も多くなっている。

さらに、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間超の労働者に対する医師による面接指導を「実施しないこととしている」又は「実施方法が決まっていない」事業所について、その理由(複数回答)をみると「事業所として1か月間の時間外・休日労働時間数が100時間超となる働き方をしていないため」が76.3%と最も多くなっている。

 

<受動喫煙防止対策に関する事項>

受動喫煙防止対策に取り組んでいる事業所の割合は88.5%[平成29年調査85.4%]となっている。産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が98.5%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が96.6%となっている。禁煙・分煙の状況をみると、「事業所の建物内全体(執務室、会議室、食堂、休憩室、商談室等含む)を禁煙とし、屋外のみ喫煙可能としている」が38.8%[同35.0%]と最も多く、次いで「事業所の内部に空間的に隔離された喫煙場所(喫煙室)を設け、それ以外の場所は禁煙にしている」が19.3%[同18.1%]、「屋外を含めた事業所敷地内全体を禁煙にしている」が13.7%[同13.6%]となっている。

職場の受動喫煙を防止するための取組を進めるにあたり、問題があるとする事業所の割合は37.4%[同42.6%]となっている。問題があるとする事業所について、問題の内容(主なもの2つ以内)をみると、「顧客に喫煙をやめさせるのが困難である」が30.3%[同34.3%]と最も多く、次いで「喫煙室からのたばこ煙の漏洩を完全に防ぐことが困難である」が29.0%[同28.5%]となっている。

 

<産業保健に関する事項>

傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所の割合は55.8%[平成29年調査46.7%]となっている。治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が90.5%[同88.0%]と最も多く、次いで「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が28.0%[同31.6%]となっている。

治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所のうち、取組に関し困難なことや課題と感じていることがある事業所の割合は76.1%[同76.2%]となっている。困難なことや課題と感じていることがある事業所について、その内容(複数回答)をみると、「代替要員の確保」が74.8%[同75.5%]と最も多く、次いで「上司や同僚の負担」が49.3%[同48.6%]となっている。

 

<安全衛生管理体制に関する事項>

産業医を選任している事業所の割合は29.3%となっており、産業医の選任義務がある事業所規模50人以上でみると、84.6%となっている。産業医を選任している事業所について、産業医に提供している労働者に関する情報(複数回答)をみると、「健康診断等の結果を踏まえた就業上の措置の内容等」が74.6%と最も多く、次いで「労働者の業務に関する情報で、産業医が必要と認めるもの」が57.4%となっている。

現場における安全衛生管理の水準について、低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所の割合は11.7%となっている。低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所について、そう感じる理由(複数回答)をみると、「安全衛生管理を担っていたベテラン社員が退職し、ノウハウの継承がうまく進んでいない」が31.4%と最も多く、次いで「経営環境の悪化で、安全衛生に十分な人員・予算を割けない」が31.2%となっている。

 

2019.08.24. 解決社労士 柳田 恵一

<常識的な解決>

たとえば、会社で20年以上使われてきた電卓を、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法第709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形の無いものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が弁償した場合も含まれます。

特に、労働者が故意に基づいて会社に損害を与えたのであれば、その責任は重く、会社から損害額の全額を労働者に請求できる場合もあります。

もっとも、この場合であっても、中古品を破損した場合に新品の代金を請求するようなことはできません。

ましてや、故意によらず損害が発生した場合には、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

会社は労働者の働きによって利益をあげていて、その利益のすべてを労働者に分配し尽くしているわけではありません。

損害についてだけ、労働者がすべて負担するというのは、あまりにも不公平です。

また、会社には危機管理の義務もありますから、これを怠っておいて、労働者に損害を押し付けるのもおかしいのです。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<損害額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に損害額の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法第24条第1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法第16条〕

これは物品の破損などに限られず、「遅刻1回につき罰金3,000円」などのルールを設けることも違法です。

 

2019.08.23. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

実際の就業規則でも、普通解雇について、中途採用と新卒採用とで別の規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

 

<新卒採用の雇用契約>

新卒採用は、相当長期にわたって雇用が継続することを予定して行われます。

また、即戦力であることは期待されておらず、会社が一から教育を施して、必要な能力を身に着けさせることを予定しています。

この方が、会社の方針・風土に即した成長が期待できるので、会社にとっても都合が良いものです。

配属後の働きぶりを見て、適性の面で無理があるようならば、全く異なる部署への異動も検討すべきことになります。

 

<新卒採用の普通解雇>

このような雇用契約の性質から、会社が根気よく教育を行ったにもかかわらず、本人がどの部署でも能力を発揮できないような、極めて期待外れな場合でなければ普通解雇は困難です。

なぜなら、労働契約法第16条や就業規則の普通解雇の条件を満たすためには、会社側にかなりの努力が求められるからです。

 

<中途採用の雇用契約>

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことは無く、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<中途採用の普通解雇>

このように中途採用は、会社から新卒採用よりも高い期待を持たれています。

会社としては、会社に馴染むまである程度の期間はフォローするものの、予定した役割を果たしてくれなければ、期待外れになってしまい、普通解雇を検討せざるを得なくなります。

この点、新卒採用の場合よりも中途採用の方が、会社の解雇権は広く認められることになります。

 

<会社が心がけること>

このように中途採用と新卒採用とで普通解雇の有効要件が異なるのは、雇用契約の内容が異なるからです。

しかし、「常識的に」「暗黙の了解で」というのでは、雇用契約の内容があやふやになり、解雇を検討する際には、トラブルの発生が危惧されます。

特に中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

 

2019.08.22. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は、労働者に与えられた権利ですから、本来的にはその権利を使うかどうかは、労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても、取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。

しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。

 

<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>

年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。理由はさまざまです。

休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。

反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。

こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。

この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。

義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。

 

<年次有給休暇取得率70%に向けて>

内閣府が発表している「仕事と生活の調和推進のための行動指針」は、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしています。

これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。

年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。これらは、権利の侵害になるからです。

休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。

 

2019.08.21. 解決社労士 柳田 恵一

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

2019.08.20. 解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置については、労働安全衛生法に詳細に規定されています。

各事業場では、この法律などに従い、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことや、職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが求められています。

 

<安全衛生管理体制>

労働安全衛生法では、業種や労働者数によって、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が義務付けられています。〔第10条等〕

また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場でも、業種により安全衛生推進者や衛生推進者の選任が義務付けられています〔第12条の2〕

会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

就業規則には、このことも規定しておくことが望ましいでしょう。

 

<受動喫煙の防止>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

就業規則には、次のような規定を加えることになります。

 

・20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。

・受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。

 

事業場内では、喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知することが必要です。

また、思い切って、事業場の敷地内全体を禁煙対象とすることも考えられます。

この場合の就業規則の規定は、上の2つに代えて「喫煙は、敷地内では行わないこと。」となります。

 

2019.08.19. 解決社労士 柳田 恵一

<よくある誤解>

就業規則に「アルバイト社員には労災保険を適用しない」という規定のある会社もあるそうです。

また、会社に労災申請を希望したところ「あなたの業務は雇用というよりも請負に近いから、労災保険の適用対象ではない」と説明されたという話もあります。

こうした場合に、従業員は、「規則だから」「会社が認めてくれないから」と考えて諦めてしまうようです。

 

<労災認定の判断権者>

労災給付の請求があった場合に、これを認めるかどうかを判断するのは、会社を所轄する労働基準監督署の署長です。

決して会社ではありません。

ただ、貧血で倒れてケガをした場合のように、明らかに労災保険の適用対象外である場合に、会社の担当者から従業員に対してその旨の説明が行われるのは、不当なことではありません。

会社としては、具体的な事実を確認し、労災保険の適用関係に不安があれば、所轄の労働基準監督署の労災課などに問い合わせたうえで、手続きを進めるのが正しいことになります。

 

<事業主が記入しない場合>

労災の手続きに必要な書式は、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。

これには、労働者、事業主、医師などそれぞれの記入欄があります。

会社が事業主の欄に記入することを拒んでも、手続きを進めることができます。

従業員が労働者の記入欄に分かる範囲で記入し、治療を担当している医師に証明欄を記入してもらい、所轄の労働基準監督署の労災課などの窓口に行って「会社が書いてくれない」と申し添えて、書類を提出すれば良いのです。

 

<従業員が納得しない場合>

客観的に見て労災保険の適用対象ではない場合に、従業員が「会社を説得して労災扱いにしてもらおう」と考えることがあります。

こうした場合には、判断するのは会社ではなく労働基準監督署長であることを会社から従業員に説明し、所轄の労働基準監督署の労災課などの電話番号を案内するのが良いでしょう。

 

2019.08.18. 解決社労士 柳田 恵一

<個人的な残業禁止令>

日中ダラダラと効率の悪い仕事をしていながら、夕方になると調子が上がって業務に集中する人もいます。

これによって長時間の残業が発生しているのなら、生活リズムの個性を認めて午後からの出勤にするという方法もあるでしょう。

中には、残業手当が欲しくて時間外に頑張っている人もいます。

しかし、いわゆる生活残業になってしまっていると、適正な人事考課基準が運用されている会社では、生産性の低い社員であると評価され、昇進・昇格・昇給が遅れますから、長い目で見れば、収入が少なくなってしまいます。

上司が面談して、こうしたことを説明すべきですし、どうしても今の収入を増やしたい事情があるのなら、仕事を多めに割り振ることも考えられます。

お付き合い残業というのもあります。

同期社員間や同じ部署の社員間で、仕事の早い人が遅い人を待つ形で、一緒に帰るのが習慣になることもあります。

この場合には、全員が定時で帰れるようにする方向で、仕事の配分や役割を見直すべきです。

このように、それぞれの事情に応じた対応を取るべきなのですが、残業の発生に合理的な理由が見出せない社員に対しては、残業の禁止を命じなければならないこともあります。

 

<集団的な残業禁止令>

全社で、あるいは一部の部署で、残業禁止とされることもあります。

特定の曜日や給料日だけノー残業デーと決めることもあります。

働き方改革の一環で、残業時間の削減を試みてもなかなか進まないので、「残業禁止」という施策も増えてきました。

 

<残業禁止令の本質>

就業規則に残業の根拠規定が置かれます。

「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定です。

「労働させることがある」という表現から解かるように、「使用者側から労働者に対して、時間外労働や休日労働をさせることがある」という意味です。

具体的には、使用者から個別に残業命令が出た場合や、「クレームが発生した場合には、所定労働時間を超えても、一次対応と報告を完了するまでは勤務を継続すること」のような条件付きの残業命令がある場合に、そうした事態が発生すると残業が行われるということになります。

このことから残業禁止令の本質を考えると、「使用者側から残業命令は出さない。条件付きの残業命令はすべて撤回する」という内容になります。

 

<残業する権利>

残業禁止令が出されると、残業手当が減って収入が減る、あるいは業務が溜まっていくことによる不安が増大するなど、労働者側に不利益が発生します。

これは、労働者の残業する権利の侵害ではないかという疑問も湧いてきます。

しかし、残業が使用者側から労働者への命令によって行われる性質のものである以上、労働者から会社に残業を権利として主張することはできないでしょう。

判例では、労働者から使用者に対して就労請求権が認められることも稀です。つまり、会社が給与を支払いながら労働者の出勤停止を命じた場合に、労働者から会社に対して働かせるよう求めることは、特殊な事情が無ければ認められていません。

ましてや、労働者から会社に残業させるよう求める権利は認められないわけです。

 

<残業禁止令の弊害>

残業禁止となると、収入減少や持ち帰り仕事の発生などにより、社員のモチベーションは大いに低下します。

また、残業時間ではなく残業手当の削減という、目的をはき違えた方向に進んでしまうと、管理職へのシワ寄せが発生し、管理職が過重労働に陥り心身に障害を来すこともあります。

こうなると、一般社員がその会社で管理職に昇進することを敬遠し、将来の構図を描けなくなれば、転職者が多数出てしまいます。

残業禁止という最終手段に出る前に、業務や役割分担の見直しや機械化・IT化などの正攻法によって、残業の削減を目指していきましょう。

 

2019.08.17. 解決社労士 柳田 恵一

<基礎年金番号の形式>

基礎年金番号は、国民年金・厚生年金保険・共済組合といったすべての公的年金制度で共通して使用する「1人に1つの番号」です。

基礎年金番号は10ケタの数字で表示され、4ケタと6ケタの組み合わせとなっています。0000-000000という形式です。

 

<基礎年金番号の導入>

公的年金制度では、平成8(1996)年12月までは、年金制度ごとに異なる番号により年金加入記録を管理していました。

そのため、転職等により加入する制度を移り変わった場合、国民年金または厚生年金保険の「年金手帳の記号番号」、共済組合の組合員番号等、一人で複数の年金番号を持っていました。

このため、年金を請求する際には制度ごと番号ごとに照会が必要となり、調査のために時間を要していました。

この不都合を解消するために、平成9(1997)年1月から基礎年金番号が導入されました。

 

<基礎年金番号についての注意点>

正しく運用されていれば、基礎年金番号と同様に年金手帳も「1人1冊」です。

複数の年金手帳があったり、基礎年金番号が不明の場合には、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

これからは個人番号(マイナンバー)の活用が進み、基礎年金番号に取って代わる日が来るかもしれません。

そうなっても、基礎年金番号が重要な個人情報であることに変わりはありません。大事に扱いましょう。

 

2019.08.16. 解決社労士 柳田 恵一

<性別による差別>

募集・採用の際、次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。

・募集または採用で男女のどちらかを排除すること。

・募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。

・能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

・募集または採用で男女のどちらかを優先すること。

・求人の内容の説明など、募集または採用の情報提供で、男女で異なる取扱いをすること。

・合理的な理由なく、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別採用で転勤に応じることを条件とすること。

 

<年齢による差別>

募集・採用では、原則として年齢を不問としなければなりません。

年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合だけでなく、民間の職業紹介事業者や求人広告などを通じて募集・採用をする場合、雇い主が直接募集・採用する場合を含めて広く適用されます。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、正社員を募集・採用する場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。

例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者などに対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務付けられています。

 

<その他の差別>

このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。

また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することがあります。

 

2019.08.15. 解決社労士 柳田 恵一

<フリーランスの実態等に関する分析>

多様で柔軟な働き方として、特定の組織等に属さず、独立して様々なプロジェクトに関わり自らの専門性等のサービスを提供するフリーランスへの関心が高まっています。

令和元年7月24日、内閣府がフリーランスの規模や特徴などの実態に関する分析を公表しました。

これは、自営業主が長期的に減少傾向にある中、本業としてのフリーランス(特定の発注者に依存する自営業主=雇用的自営業等)は増加傾向にあり、またクラウドソーシングの拡大により雇用契約によらない働き方をする者が増えていることを受けて、まとめられたものです。

 

<フリーランスの特徴>

フリーランスで働く人の規模や特徴として、次のことがあげられています。

「職業別」については、建設業の一人親方などが含まれています。

 

就業者数:306~341万人

(副業としてのフリーランスを含む。全就業者数に占める割合は約5%)

 

平均年齢:54歳前後(本業としてのフリーランス)

※正規雇用:42.5歳、非正規雇用:47.5歳

 

産業別:①建設業(約20%)、②卸売・小売業(約10%)、③学術研究、専門・技術サービス業(約10%)

 

職業別:①専門的・技術的職業従事者(約37%)、②販売従事者(約14%)、③サービス職業従事者(約12%)

 

<競業避止義務>

円滑な労働移動を妨げるとされる競業避止義務(退職後・契約終了後に競合企業への転職、競合企業の立上げを制限・禁止する契約)の実態についても、把握が試みられています。

フリーランスについては、競業避止義務が「ある」4.4%、「あるかもしれない」4.2%というアンケート結果です。

 

今後も、経済社会環境の変化により、働き方が変わっていくことが想定されます。

 

2019.08.14. 解決社労士 柳田 恵一

<請負とは>

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第632条〕

請負では、注文者が請負人に細かな指示を出すことなく、すべてお任せして、完成した仕事を受け取るわけです。

彫刻家に芸術作品の制作を依頼するのは、この請負にあたります。

 

<雇用とは>

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第623条〕

雇用では、雇い主が労働者に業務上の指示を出し、労働者がこれに従って労働に従事します。

正社員、パート、アルバイトなどの労働が雇用にあたります。

 

<区別の基準>

請負では、仕事を受けるかどうかが自由です。しかし、雇用では正当な理由なく拒めません。

請負では、いつ、どこで作業するかが、基本的には自由です。しかし、雇用では、時間と場所を拘束されます。

請負では、作業に必要な車両、機械、器具などを請負人が負担します。しかし、雇用では、雇い主の貸与する物を使い、雇い主が経費を負担します。

他にも具体的な区別基準はあるのですが、決して契約書のタイトルが区別の基準になるわけではありません。

 

<名ばかり請負>

雇用では、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などの労働法により、労働者が保護されます。

ところが、請負では請負人がこれらによる保護を受けません。

また、雇用であれば、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。〔労働契約法第16条〕

ところが、請負では請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。〔民法第641条〕

反対の立場から見ると、何か仕事をしてもらう場合、雇用ではなくて請負にした方が、仕事をさせる側の負担が少ないことになります。

雇用契約の場合、労働者が保護されているというのは、使用者側から見ると、規制や負担が大きいということになるからです。

そこで、本当は雇用なのに、雇い主が請負だと言い張って、労働者に不利な扱いをしてしまう場合があります。これが、名ばかり請負(偽装請負)です。

あるいは、最初は請負契約だったのに、注文者から請負人に対して、あれこれ具体的な指示が出るようになって、途中から雇用契約になった場合に、それでも扱いは請負契約のままという場合もあります。これも、名ばかり請負です。

 

<ニセ働き方改革>

働き方改革というのは、労働者のニーズを踏まえた改革です。

しかし、たとえ労働者が望んだとしても、使用者側がこれに応ずることが労働者の不利になり、違法になることが多くあります。

たとえば、労働者から「手取り収入を増やしたいので社会保険には入りたくない」という要望があって、会社がこれに応じて健康保険や厚生年金の加入(資格取得)手続きを怠ったとします。

もちろんこれは違法ですが、この場合には、病気で長期入院した場合の補償も無いですし、将来受け取る年金額も減ってしまいます。

最近では、中小企業ばかりでなく、大企業でも「働き方改革」「労働者のニーズ」という言い訳で、名ばかり請負を進める動きが出てきています。

社長の権限が強大で、あるいはパワハラが強烈で、誰も違法性を指摘できないのでしょうか。

こうしたニセ働き方改革の出現によって、働き方改革そのものが悪者にされたり、働き方改革の弊害だとされることがあるのは非常に残念です。

 

2019.08.13. 解決社労士 柳田 恵一

 

<第3号被保険者とは>

第3号被保険者は、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)が対象です。

勤め人の配偶者ということで、夫が妻の扶養に入っている場合も対象となります。

夫婦のうち、扶養している側は、会社員など厚生年金等の加入者ですが、同時に国民年金の第2号被保険者でもあります。

しかし、第3号被保険者は、国民年金にのみ加入し、厚生年金等には加入しません。

 

<保険料の免除>

第3号被保険者である期間は、保険料をご自身で納付する必要はないのですが、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

 

<第3号被保険者になったときの届出>

配偶者に扶養されることになった場合には、第3号被保険者になりますので、第3号被保険者に該当する旨の届出を配偶者の勤務する会社(事業主)に提出してください。

 

<第3号被保険者でなくなったときの届出>

配偶者の扶養から外れた場合には、第1号被保険者になりますので、住所地の市区町村に第1号被保険者への種別変更届を提出してください。

60歳未満の場合、ご本人の年収見込みが130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます。所得税の扶養とは基準が異なりますので注意しましょう。

 

2019.08.12. 解決社労士 柳田 恵一

<ガイドラインの改定>

令和元(2019)年7月18日、厚生労働省が、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を公表しました(基発0712 第3号令和元年7月12 日)。

これによって、平成14(2002)年の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発第0405001号平成14年4月5日)は廃止されました。

元々は、ブラウン管型のモニター画面を見ながら長時間の作業をすることによって、本人に自覚のないまま疲労が蓄積し、健康障害をもたらす危険があるということで、ガイドラインが策定されたのが始まりです。

今では液晶画面に、タブレット端末やスマートフォンなども加わり、同様に健康障害の危険があることから、対象範囲が広げられています。

 

<新ガイドラインの特徴>

情報機器作業が多様化しているため、従来のように作業類型別に健康確保対策を示すことは困難です。

新ガイドラインでは、考え方の基本は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、事業場が個々の作業形態に応じて判断できるように、健康管理を行う作業区分が見直されています。

 

<対象作業>

対象となる作業は、企業内で行われるデスクトップパソコンやノートパソコンの他、タブレット端末やスマートフォン、ウェアラブル端末等を使用した、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業です。

新しい情報機器を使って行う作業が、新たに加わっています。

 

<社外での作業>

情報機器の発達により、社外でも情報機器作業を行う場面が増えています。

新ガイドラインでは、社外で行う情報機器作業、自営型テレワーカーが自宅等において行う情報機器作業等についても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう促しています。

 

2019.08.11. 解決社労士 柳田 恵一

<雇用保険の加入者(被保険者)>

次の要件を満たせば、会社や労働者の意思にかかわらず、雇用保険に入り被保険者となるのが原則です。

・1週間の所定労働時間が20 時間以上であること

・31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態とは関係なく同じ基準です。

これらの条件は、会社から労働者に交付が義務づけられている雇用契約書、雇い入れ通知書、労働条件通知書といった書面で確認できます。

 

<雇用保険の失業手当(基本手当)>

雇用保険の基本手当とは、雇用保険の被保険者が、倒産、定年、自己都合などにより離職(退職)し、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、再就職するために支給されるものです。

一定の要件を満たせば、給料の5割~8割程度の手当が支給されます。

また、支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異なり、90日~360日となっています。

 

<受給に必要な要件>

そして、雇用保険の被保険者が基本手当を受給するには、次の要件を満たす必要があります。

・ハローワークに行って求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。

・離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月以上あること。ただし、会社側の理由により離職した場合、会社側の都合またはやむを得ない理由で契約の更新がされなかった場合は、離職前1年間に11日以上働いた月が6か月以上あること。

 

<受給に必要な手続き>

失業給付の手続きは、勤めていた会社がすべてを行うものではなく、本人との共同作業となります。

会社は所轄のハローワークで、離職者の雇用保険の資格喪失手続きをします。

このとき離職証明書をハローワークに提出するのですが、これは3枚1セットで、1枚目が離職証明書(事業主控)、2枚目が離職証明書(安定所提出用)、3枚目が離職票-2となっています。

手続きをすると、ハローワークから会社に1枚目と3枚目が渡され、これとは別に離職票-1などが渡されます。

会社から離職者に離職票-1と-2を渡すのです。

離職者は、会社から渡された雇用保険被保険者証、離職票-1、-2などの必要書類を持って、本人の住所を管轄しているハローワークに行きます。

 

<加入もれの場合>

要件を満たしているのに、会社が雇用保険に加入させておらず、被保険者になっていなかったといったトラブルがしばしば起こっています。

このような場合、被保険者の要件を満たしている証拠があれば、遡って雇用保険が適用される制度があります。

具体的なことは、管轄のハローワークや社会保険労務士に相談してください。

 

2019.08.10. 解決社労士 柳田 恵一

<国民年金について>

日本国内に住んでいる20歳から60歳になるまでの人は、国籍にかかわりなく国民年金の対象者になっています。

国民年金は、老後の生活だけでなく、障害者になった場合の生活や、本人が死亡した後に残された家族の生活を保障するために、一定の生活費が支給される公的な制度です。

国民年金の保険料を納めていないと、自分の身にもしものことが起こっても、年金が支給されなかったり減額されたりします。

経済的な事情などで保険料を払えないときは、保険料の免除や減額、延納の制度もあります。

この手続きをしておけば、払っていない期間があっても、年金の減額などの不利益が小さくなります。

住んでいる場所の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口で申請をしてください。

 

<厚生年金について>

勤め人の場合、国民年金の上乗せ部分としてプラスアルファの保障を受けることができる厚生年金の制度があります。

厚生年金は、原則として1日または1週間の所定労働時間、および1か月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であれば、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態にかかわらず加入することになります。

会社や労働者の意思は関係ありません。

厚生年金に一定期間加入していると、国民年金だけの場合よりも有利な年金を受け取ることができます。

しかも、厚生年金の保険料は、給料(標準報酬月額と標準賞与額)の約18%を会社と労働者で半分ずつ負担します。

この保険料には、国民年金の保険料も含まれています。

 

<保険料負担額>

平成31(2019)年度の国民年金保険料は、月額16,410円です。

厚生年金保険料は、標準となる月給が165,000円以上175,000円未満なら、月額15,555円です(働いている人の負担額)。

ですから、月給が約17万円で賞与などが無ければ、働いている人の負担は国民年金よりも厚生年金のほうが少なくて、万一の場合の保障も手厚いということがいえます。

 

2019.08.09. 解決社労士 柳田 恵一

<特別障害給付金制度の概要>

国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者について、福祉的措置として「特別障害給付金制度」が設けられています。

 

<支給対象者>

支給の対象となるのは、次のうちのどちらかです。

 

1.平成3(1991)年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生 大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校の昼間部に在学していた学生です。

 昭和61(1986)年4月から平成3(1991)年3月までに限っては、専修学校、一部の各種学校が含まれます。ただし、定時制、夜間部、通信を除きます。

 

2.昭和61(1986)年3月以前に国民年金任意加入対象であった「勤め人(被用者等)の配偶者」であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある人

 ただし、65歳に達する日の前日までにその障害状態に該当した人に限られます。

 

「勤め人(被用者等)の配偶者」とは以下の場合です。

 (1) 被用者年金制度(厚生年金保険、共済組合等)の加入者の配偶者

 (2) 上記(1)の老齢給付受給権者及び受給資格期間満了者(通算老齢・通算退職年金を除く)の配偶者

 (3) 上記(1)の障害年金受給者の配偶者

 (4) 国会議員の配偶者

 (5) 地方議会議員の配偶者(昭和37(1962)年12月以降に限る)

 

なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などを受給することができる人は対象になりません。

また、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。

 

<支給額>

障害基礎年金1級相当に該当:平成31年度基本月額52,150円(2級の1.25倍)

障害基礎年金2級相当に該当:平成31年度基本月額41,720円

特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて毎年度自動的に見直されます。

また、ご本人の所得が一定の額以上であるときは、支給額の全額又は半額が停止される場合があります。

老齢年金、遺族年金、労災補償等を受給している場合には、その受給額分を差し引いた額が支給されます。

老齢年金等の額が特別障害給付金の額を上回る場合は、特別障害給付金は支給されません。

 

<請求手続の窓口等>

原則として、65歳に達する日の前日までに請求する必要があります。

請求の窓口は、住所地の市区役所・町村役場です。

特別障害給付金の審査・認定・支給についての事務は日本年金機構が行います。

必要な書類等をそろえた場合でも、審査の結果、支給の要件に該当しないとき、あるいは支給の要件の確認ができない場合は不支給となります。

なお、給付金の支給を受けた場合には、申請により国民年金保険料の免除を受けることができます。申請は毎年度必要となります。

 

2019.08.08. 解決社労士 柳田 恵一

<原則の法定労働時間>

使用者は労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはなりません。〔労働基準法第32条第1項〕

もちろん、三六協定を交わし所轄の労働基準監督署長に届け出れば、協定の範囲内での時間外労働は処罰の対象となりません。

ただし、法定労働時間を超える労働に対しては、時間外割増賃金の支払いが必要です。

ここで1週間というのは、就業規則などで取り決めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

 

<労働基準法施行規則による特例>

公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊な必要があるものについては、その必要かつ労働者の健康・福祉を害しない範囲で、厚生労働省令による例外を設けることができることとされています。〔労働基準法施行規則第25条の2第1項〕

こうして例外とされた特例措置対象事業場の法定労働時間は、平成13(2001)年4月1日から、1日8時間、1週44時間に改正されました。

これが、時間外割増賃金の基準となります。

 

次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場が対象です。

 商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 映画・演劇業 映画の映写、演劇、その他興業の事業
 保健衛生業 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 接客娯楽業 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

事業場の規模(人数)は、企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。

 

2019.08.07. 解決社労士 柳田 恵一

<国民年金の加入期間>

国民年金の加入期間は、原則として20歳から60歳になるまでの40年間です。

40年間、国民年金の保険料を納付していれば、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。

また、老齢基礎年金の受給資格期間である10年間以上、国民年金の保険料を納付していれば、納付期間に応じて老齢基礎年金を受給することができます。

平成29(2017)年8月1日に年金機能強化法が改正され、年金受給資格期間が25年から10年に短縮されました。

受給資格期間というのは、原則65歳から老齢基礎年金を受給するための条件となる期間で、次の3つの期間の合計です。

1.厚生年金保険や国民年金の保険料を納付した期間

2.国民年金の保険料の納付を免除された期間

3.合算対象期間(カラ期間)

 

<任意加入とは>

60歳になるまでに老齢基礎年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない場合や、40年間の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合であって、厚生年金・共済組合に加入していないときは、60歳以降(申出された月以降)でも国民年金に加入することができます。

ただし、さかのぼって加入することはできません。

これは、義務として加入するのではなく、希望すれば加入できるということで「任意加入」といいます。

 

<任意加入の期間>

・年金額を増やしたい人は65歳になるまでの間

・受給資格期間を満たしていない人は70歳になるまでの間

・外国に居住する日本人は20歳以上65歳未満の間

なお、平成20(2008)年4月1日から、外国に居住する日本人を除き、保険料の納付方法は口座振替が原則となりました。

日本国内に住んでいる人が、任意加入の申し込みをするための窓口は、お住まいの市区役所・町村役場です。

 

2019.08.06. 解決社労士 柳田 恵一

<50%以上の割増賃金>

月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

これは、労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、平成22(2010)年4月1日に労働基準法が改正され、1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率が5割以上に引き上げられたものです。

なお、深夜(22:00~5:00)の時間帯に1か月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合は、 深夜割増賃金率25%以上 + 時間外割増賃金率50%以上 = 75%以上となります。

1か月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。

 

【法定休日】

使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいものです。

 

<代替休暇>

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

 

【労使協定で定める事項】

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

 

この労使協定は、各事業場で代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。

個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の希望により決定されます。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

2019.08.05. 解決社労士 柳田 恵一

<辞めるのは権利か自由か>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。

退職した後のことまで、責任を負うことはありません。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法第5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法第117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法第220条、第223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法第222条、第249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2019.08.04. 解決社労士 柳田 恵一

<会社が保険料を納めないケース>

厚生年金保険の加入(資格取得)基準を満たしている従業員について、加入手続きを行わなければ、会社は従業員(被保険者)分と会社分の両方について、保険料を不正に免れることになります。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚し会社が是正を求められます。

また今後、マイナンバーの社会保険への導入が行われれば、手間のかかる調査をしなくても手軽に不正をあばけるようになります。

そうでなくても、加入基準を満たす従業員が、年金事務所に労働時間や労働日数などの資料を持参して相談すれば、勤務先の会社に調査が入ります。

 

<金額をごまかすケース>

従業員の給与から控除する保険料は正しい金額でも、その一部を会社が着服して、残りを納付するということがあります。

たとえば、従業員の月給が30万円で、これに応じた保険料を給与から控除しておきながら、日本年金機構に月給20万円で届を出しておけば、月給20万円を基準に計算した保険料の納付で済みます。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚して会社が是正を求められます。

また日本年金機構から、誕生月に厚生年金保険の加入者(被保険者)に、年金加入記録を確認してもらうため「ねんきん定期便」が郵送されています。

これを見れば、保険料の基準となっている給与や賞与が正しいか確認できます。

驚くことに、1部上場企業でも海外勤務者の保険料をごまかしていることがあります。

 

<もしもごまかされていたら>

労働時間、労働日数、給与、賞与、保険料として天引きされている金額などの資料をきちんと保管しましょう。

退職直後に、厚生労働省や総務省に調査してもらいましょう。

在職中に調査が入ると、会社から退職に追い込まれるリスクもあります。

また、会社の手続きに社会保険労務士が関与しているようでしたら、都道府県の社会保険労務士会にもご相談ください。

こちらも退職後がお勧めです。

 

2019.08.03. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

精勤手当について、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

(精勤手当)

第37条  精勤手当は、当該賃金計算期間における出勤成績により、次のとおり支給する。

① 無欠勤の場合       月額      

② 欠勤1日以内の場合    月額      

2 前項の精勤手当の計算においては、次のいずれかに該当するときは出勤したものとみなす。

① 年次有給休暇を取得したとき

② 業務上の負傷又は疾病により療養のため休業したとき

3 第1項の精勤手当の計算に当たっては、遅刻又は早退  回をもって、欠勤1日とみなす。

 

第2項で、年次有給休暇を取得した場合や、業務上の負傷疾病による休業の場合には、欠勤扱いにしないという配慮がなされています。〔労働基準法第136条など〕

 

<精勤手当の廃止>

工場などで急な欠勤があると、製造の流れに大きな支障をきたす場合があり、業務の連携上、無欠勤でなければ困るという事情があります。

このため、精勤手当(皆勤手当)が残っています。

しかし、「労働契約通りに勤務するのは当たり前」なので、「当たり前のことに手当を支給するのはおかしい」ということから、多くの企業で精勤手当が廃止されてきています。

もちろん、いきなり廃止では不利益変更の問題がありますから、基本給に組み入れたり、調整給として支払い、段階的に減額していったりなどの措置が取られています。

 

<欠勤控除を超えるペナルティー>

欠勤した割合に応じて給与を減額することは適法です。これは通常の欠勤控除です。

しかし、欠勤控除を超えて給与を減額する場合には懲戒となりますから、労働基準法の制限を受けます。

 

【労働基準法による制裁規定の制限】

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

たとえ欠勤した場合に想定されるダメージが、この制限を超えて発生する職場であっても、ダメージに対応した減給はできません。

 

<精勤手当があれば>

精勤手当が、平均賃金の1日分の半額を超えても構いませんし、毎月の支給額の1割を超えても構いません。

精勤手当が高めに設定されていても良いのです。

そして、欠勤すると精勤手当が減額され、あるいは支給されなくなるので、社員が欠勤しないよう生活をただし、態勢を整えて勤務に就くように心がけるというのは、全く正常なことです。

こうしてみると、精勤手当を残しておくことにも、十分な合理性があるといえます。

 

2019.08.02. 解決社労士 柳田 恵一

下記の「基本手当」というのは、法改正にもかかわらず世間では「失業手当」と呼ばれているものです。

 

 厚生労働省は、8月1日(木)から雇用保険の「基本手当日額」を変更します。

 雇用保険の基本手当は、労働者が離職した場合に、失業中の生活を心配することなく再就職活動できるよう支給するものです。「基本手当日額」は、離職前の賃金を基に算出した1日当たりの支給額をいい、給付日数は離職理由や年齢などに応じて決められています。

 今回の変更は、平成30年度の平均給与額が平成29年度と比べて約0.89%上昇したことに伴うものです。なお、平均給与額については、「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額(再集計値として公表されているもの)を用いています。具体的な変更内容は以下のとおりです。

 

【具体的な変更内容】

1 基本手当日額の最高額の引上げ

  基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。

  1. 60歳以上65歳未満

          7,087円 → 7,150円(+63円)

  2. 45歳以上60歳未満

          8,260円 → 8,335円(+75円)

  3. 30歳以上45歳未満

          7,505円 → 7,570円(+65円)

  4. 30歳未満

          6,755円 → 6,815円(+60円)

 2 基本手当日額の最低額の引上げ

          1,984円 → 2,000円(+16円)

 

2019.08.01. 解決社労士 柳田 恵一

<本来の申請期限>

雇用継続給付の支給申請期限は「ハローワークの通知する支給単位期間の初日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日」とされています。〔雇用保険法施行規則〕

かつては、この期限を過ぎてしまってからハローワークの窓口に書類を提出しても、受け付けてもらえませんでした。

これは、迅速な給付を行い受給者を保護する趣旨とされていましたが、実際の手続きは会社と受給者の共同作業となることが多く、どちらかがウッカリすると提出期限を過ぎてしまい、受給できなくなるという不都合がありました。

 

<施行規則改正後>

平成27(2015)年4月に、この施行規則が改正され、期限を過ぎた場合でも2年間の消滅時効期間が経過するまでは、申請できるようになりました。

また、社会保険や労働保険の手続きでは、本来の期限を過ぎて手続きをする場合には、手続きが遅れた理由を示す「遅延理由書」という書類の添付が求められることも多いのですが、消滅時効完成前の手続きには「遅延理由書」が不要とされるのが一般です。

 

<施行規則改正の影響範囲>

雇用保険の給付金は、2年間の消滅時効期間内であれば、支給申請が可能とされましたが、この扱いは多くの給付にあてはまります。

具体的には、雇用保険の各給付のうち、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、広域求職活動費、一般教育訓練に係る教育訓練給付金、専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金、教育訓練支援給付金、高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、育児休業給付金、介護休業給付金などです。

 

<心がけたいこと>

本来の期限を過ぎても、あきらめずに申請の可能性を確認することをお勧めします。

ただ、「2年以内なら大丈夫」と考えるのではなく、同じ金額なら1日でも早く給付を受けられたほうが嬉しいのですから、手続きは速やかに行いましょう。

 

2019.08.01. 解決社労士 柳田 恵一

<よくある計算方法>

就業規則のひな形によくあるパターンですが、中小企業では、退職時の基本給に勤続年数に応じた係数をかけて、退職金の金額を算出することが多いようです。

これだと若いころ、あるいは働き盛りのころの基本給は関係なく、退職間際になってから頭角をあらわし大きく昇給した人が有利です。

反対に、若いころに大変な努力をして出世し、基本給も役員並みになったあと、働きすぎて体を壊し基本給が大幅にダウンして退職していった社員は、報われないということになってしまいます。

 

<退職功労金>

退職金については、基本給 × 係数 で一律に支給し、これとは別に、個人の会社に対する功績の度合いに応じた退職功労金を支給するというのが、もっとも単純なやり方でしょう。

ただし、これだと金額を客観的に決めるのは難しいでしょうし、その時々の会社のふところ具合に大きく左右されそうです。

 

<ポイント制>

たとえば、毎年4月に支給する基本給1か月分の累計を、退職金の金額にすることも考えられます。しかし、物価の変動が大きいと不公平になる可能性もあります。

そこで、担当者は1ポイント、係長は2ポイント、課長は3ポイント、部長は5ポイントなどと、1か月間在籍すると累計されるポイントを決めておき、物価の変動を踏まえて、1ポイントいくらにするという方式もあります。

 

<退職金の性格>

退職金の性格として、退職後の生活保障的性格、賃金後払い的性格、功労報償的性格があげられます。

このうち、退職後の生活保障は在籍中に給与・賞与に応じた厚生年金保険料を支払っていて、老後の年金額に反映されると考えれば、重視しなくてもよいでしょう。

また、賃金後払い的性格については、終身雇用制の崩れた現在では、退職までプールしておかないでタイムリーに給与・賞与に反映してほしいという社員の本音があります。

こう考えると、退職金のメインの性格は、功労報償的性格でしょうから、退職金を会社に対する功績の度合いで決めるというのは、合理的であると考えられます。

 

2019.07.31. 解決社労士 柳田 恵一

障害年金受給者が提出する障害状態確認届(診断書)などの手続きについて、一部変更がありましたので以下にご紹介します。

 

<障害状態確認届(診断書)の作成期間>

〔変更前〕

提出期限前1か月以内

〔変更後〕

提出期限前3か月以内

〔影 響〕

これまで誕生月の前月末頃に日本年金機構から送付されていた障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元(2019)年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

<障害給付額改定請求書に添付する診断書の作成期間>

〔変更前〕

提出日前1か月以内

〔変更後〕

提出日前3か月以内

〔影 響〕

令和元(2019)年8月以降に請求する分から変更となります。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金受給者の所得状況届>

日本年金機構に提出していた所得状況届(ハガキ)は、日本年金機構が市区町村から情報提供を受けることになり提出不要となります。

ただし、例外的に日本年金機構が市区町村から情報提供を受けられない場合には、今までどおり提出が必要となりますので、届出に関する案内が対象者に送付されます。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金の障害状態確認届(診断書)の提出時期>

〔変更前〕

7月末までに提出

〔変更後〕

誕生月の末日までに提出

〔影 響〕

障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

2019.07.30. 解決社労士 柳田 恵一

<合意分割制度>

平成19(2007)年4月1日以後に離婚等をした人が、結婚期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を元夫婦間で分割することができる制度です。

 

<分割の効果>

この分割制度により、厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割した場合は、当事者それぞれの老齢厚生年金等の年金額は、分割後の記録に基づき計算されます。

 

<分割の条件>

次の3つです。

・結婚期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。

・元夫婦双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと。

※合意がまとまらない場合は、元夫婦の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。

・原則として離婚等から2年以内の請求期限を経過していないこと。

※裁判、審判、調停があった場合など請求期限の例外もあります。

ここで、按分割合(あんぶんわりあい)というのは、分割対象となる結婚期間中の元夫婦双方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)合計額のうち、分割を受けることによって増額される側の、分割後の持ち分割合をいいます。

 

<情報提供の請求>

按分割合を定めるためには、分割の対象となる期間や、その期間の元夫婦それぞれの標準報酬月額・標準賞与額、また、按分割合を定めることができる範囲などの情報を、正確に把握する必要があります。

このため、元夫婦双方または一方からの請求により、日本年金機構(年金事務所)が合意分割を行うために必要な情報を提供しています。

この請求は、合意分割の請求期限内に行う必要があります。

 

<合意分割と3号分割が同時に行われる場合>

合意分割の請求が行われた場合、結婚期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったものとみなされます。

したがって、3号分割の対象となる期間は、3号分割による標準報酬の分割に加え、合意分割による標準報酬の分割も行われます。

 

2019.07.29. 解決社労士 柳田 恵一

<3号分割制度>

平成20(2008)年5月1日以後に離婚等をした人で、離婚前に「国民年金の第3号被保険者」であった人からの請求により行われます。

正確には「離婚時の第3号被保険者期間の厚生年金の分割制度」といいます。

ここで、「国民年金の第3号被保険者」というのは、配偶者が会社などの勤務先で厚生年金に加入していて、その配偶者の扶養に入っていたために、年金保険料を支払わずに国民年金の加入者となっている人をいいます。

 

<分割の効果>

この制度によって、平成20(2008)年4月1日以後の「国民年金の第3号被保険者」期間の元配偶者の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、元夫婦間で分割することができます。

元夫婦それぞれの老齢厚生年金等の年金額は,分割後の記録に基づき計算されます。年金額が分割されるということではありません。

離婚せずに夫婦であり続けた場合の年金額は、離婚してそれぞれが受け取る年金額よりも多いのが一般です。

 

<分割の条件>

次の2つです。

・夫婦だった期間中に、平成20(2008)年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。

・原則として離婚等から2年以内に請求すること。

 

<注意事項>

・年金分割の効果は、厚生年金の報酬比例部分(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む)に限られ、国民年金の老齢基礎年金等には影響はありません。

・現に老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割の請求をした月の翌月から年金額が変更されます。

・元配偶者を扶養していた人が、障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、「3号分割」請求は認められません。

・分割の対象となるのは、夫婦だった期間中の記録のみです。

・老齢基礎年金を受給するための支給要件は、その人自身の年金記録によって判断されます。

・離婚後、同じ相手と再婚した場合、請求期限は、それぞれの夫婦だった期間ごとに判断されます。

・裁判、審判、調停があった場合など、請求期限が離婚等から2年以内ではないこともあります。

 

2019.07.28. 解決社労士 柳田 恵一

<ブラック社員>

ブラック社員は、自分/自分たちのやりたいようにしたいのです。

他人からの干渉を徹底的に嫌います。

キャッチフレーズは「ほっといてくれ!」です。

かといって、自主的に仕事をこなすわけてもなく、改善提案をするわけでもなく、仕事に対して消極的で無気力です。

上司からの命令に返事はするのですが、期限を過ぎても完了報告がないということで、上司が確認すると、なんと命令を忘れていたりします。

これは、他人からの指図は受けたくないという自己中心的な態度のあらわれです。

また、ブラック企業と同じく、正しくはどうなのか、どうあるべきなのかということに関心がありません。

職業倫理が欠けているのです。

結局、ブラック社員は会社の業績に貢献しませんし、その態度を見た他の社員に不快感と不満をもたらします。

ときには、無気力が他の社員に伝染してしまいます。

 

<評価を気にしないブラック社員>

ブラック社員は、自分がきちんと仕事をしていないことを自覚していますから、人事考課で低く評価されても当然のことと考えます。

高い評価を得て出世しようとか、少しでも多額の賞与をもらおうなどとは考えません。

 

<ブラック社員への教育>

ブラック社員は、仕事ができないわけではありません。

しかし、やる気がないのです。

モチベーションアップのための教育をしても、本人も認めていますが無駄なことです。

 

<ブラック社員が会社に求めるもの>

最低限の給与をもらい、クビにならなければ良いのです。

そして、クビになるなら会社都合で解雇され、解雇予告手当をもらい、雇用保険でより早くより長く給付を受けられればラッキーなのです。

時には、不当解雇を主張し、会社に慰謝料を含め損害賠償を請求してくることがあります。

 

<なぜ会社はクビにしないのか>

縁故採用や他の社員の紹介による採用で、解雇しにくいというケースもあります。

また、ブラック社員は自分を守るための努力はしますから、労働法に詳しい人が多いのです。

会社の実態や就業規則の中に、労働法違反を見つけるのも得意です。

会社から解雇をほのめかすと、ブラック社員は労働基準監督署へ法令違反を相談するとか、一人でも労働組合に入れるとか、脅しのようなことを言い出します。

ですから、会社としてはうっかり解雇にはできません。

特別な退職金を出して辞めてもらうこともあります。

 

<ブラック応募者を採用しないためには>

このように、一度ブラック社員が会社に入って来てしまうと、有効な対策を打つことは困難です。

やはり、会社に入って来ないようにすることが大事です。

ブラック応募者は、大きな会社での勤務経験があり「この部署はこういう役割を果たしていました」と説明することがあります。

こんな時「その中であなたは具体的にどのような職務をこなしていましたか?」と尋ねても、抽象的な答えしか返ってきません。

他にも「仕事の上で何かリーダーとして活動したことはありますか?」「あなたの改善提案で業績が向上したり生産性が上がった具体例を教えてください」などの質問には答えられません。

退職理由を尋ねると「退職を勧められた」「退職を迫られた」という回答になります。

それでも避けられないのは、縁故採用でしょう。

どんなにサボってもそれなりの給料がもらえるとわかっていたら、下手に努力するよりもおとなしくしていた方が利口ですから。

まさに、ブラック社員の温床です。

 

<別の角度からの対処法>

会社に労働法上の問題が無ければ良いのです。

遵法経営の会社にブラック社員が入っても、会社はこれに正面から対応できます。

これが、ブラック社員対策の王道です。

 

2019.07.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年7月23日、内閣府が経済財政白書を取りまとめ公表しました。

この中で、多様な人材の活躍について、分かりやすくまとめられています。

 

<多様な人材の意味>

多様な人材(ダイバーシティ)とは、広義では、性別や国籍、雇用形態など統計的に表されるものだけではなく、個々人の価値観など統計では表されない深層的なものも含まれます。

狭義では、基本的には前者の統計等で表される多様性、つまり性別、国籍(外国人労働者)、年齢(65歳以上の雇用者等)、働き方(限定正社員等)、キャリア(中途・経験者採用)、障害者といった属性について対象とします。

 

<多様性の状況>

多様性を見る尺度としては、企業などでの従業員や役員に占める「多様な構成員」の割合や人数の変化を用います。

平成30(2018)年に、こうした多様な人材がどの程度の規模で労働市場に存在しているかというと、雇用者全体としては5,936万人であり、その内訳としては、役員330万人、生産年齢人口(15~64歳)の男性正社員2,275万人、女性正社員1,099万人、男性非正社員480万人、女性非正社員1,283万人、65歳以上の雇用者469万人となっています。

また、男性管理職111万人・女性管理職18万人、転職者315万人、外国人労働者146万人、障害者48万人となっています。

 

<多様な人材の活躍>

多様な人材の活躍については、人数や割合等だけで判断することには限界があることにも注意しなければなりません。

それは、ダイバーシティが存在すること(一定割合の多様性が存在すること)と、その多様な人材がそれぞれの能力を活かして活躍できている状態(インクルージョン)とは必ずしも一致しないためです。

例えば、女性割合が50%である企業でも、男女が平等に扱われていない企業や、適材適所になっていない人事配置を行っている企業などでは、多様な人材が活躍しているとはいえません。

 

ここまで、経済財政白書からの抜粋です。

 

<インクルージョン>

インクルージョンは「包括」「包含」「一体性」というのが本来の意味です。

「組織内の誰にでもビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれに特有の経験やスキル、考え方が認められ、活用されていること」などと説明されています。

インクルージョンは、ダイバーシティをより発展させた新しい人材開発のあり方であるという説明も良く目にします。

様々な違いのある人々(ダイバーシティ)を、同じ職場に平等に受け入れた後は、一緒に働くのであっても、一人ひとりの個性が活かされ独自能力を最大限に発揮できるよう、個性に応じて公平に扱うことを、インクルージョンと言うのでしょう。

 

<平等と公平>

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

同じ人間として平等な採用をし、それぞれの個性に応じた公平な処遇をすることによって、一人ひとりが能力を最大限に発揮し企業と共に成長しようというのが、多様な人材の活躍の目的だといえるでしょう。

 

2019.07.26. 解決社労士 柳田 恵一

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法第68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法第12条〕

これを受けて、労働契約法も「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」としています。〔労働契約法第3条第5項〕

憲法12条にある「公共の福祉」という言葉は分かりにくいですが、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

自分の権利を主張するあまり、他人の権利を侵害するようなことがあってはならないということです。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。

つまり、生理中なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるということです。

このように運用しなければ、会社の業務に支障を来たし、他の従業員に迷惑がかかる恐れがあるからです。

 

<生理休暇の実態>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、「たとえ業務に支障が出たとしても、当然の権利だから別に遠慮は要らない」という態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

もっとも、就業規則で有給とされていた規定を無給に変更することは、不利益変更になりますから安易に行うことはできません。

さらに、生理休暇を申し出た人がスキーに行っていたことが判明したようなケースでは、ウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<会社の対応>

生理休暇を取ったことを理由に、人事考課の評価を下げ、昇格、昇給、賞与支給で不利な扱いをすることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

生理休暇の濫用を問題視するのではなく、適正な評価制度の正しい運用こそが望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2019.07.25. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

労災保険の適用される労働災害には、業務災害と通勤災害があります。

このうち、通勤災害は通勤途上の災害です。

通勤には典型的なものとして「住居と就業の場所との間の往復」があります。〔労働者災害補償保険法第7条第2項第1号〕

 

<出勤のスタート地点>

出勤のスタート地点は住居ですが、一軒家と集合住宅とでは、微妙にスタート地点が違います。

これは、一般の人が自由に通行できるところで起こった災害が、通勤災害の対象となることによるものです。

一軒家の場合には、外に出る門を身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

集合住宅の場合には、玄関のドアを身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

ただし、玄関ドアの外側は、誰でも自由に通行できることが前提となります。

セキュリティーの厳しいマンションなどでは、外部の人の自由な立ち入りを許さないドアが基準となります。

 

<出勤のゴール地点>

出勤のゴール地点は就業の場所ですが、勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合と、その建物の一部にのみ及ぶ場合とでは、微妙にゴール地点が違います。

事業主の支配管理権の及んでいる事業場施設での災害は、業務災害の対象であり通勤災害の対象ではないからです。

業務災害で仕事を休んだ場合には、休業の最初の3日間について、事業主が平均賃金の60%以上の休業補償をします。〔労働基準法第76条第1項〕

通勤災害で仕事を休んだ場合には、この休業補償がありません。

また、労基署に労災保険の手続きで書類を提出するときに、業務災害と通勤災害とでは様式が違います。

勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合には、身体の半分が敷地に入る直前がゴール地点となります。

勤務先企業の管理が店舗など建物の一部にのみ及ぶ場合には、その部分に身体の半分が入る直前がゴール地点となります。

 

こうした細かい区別を全従業員に周知しておくことは困難ですから、通勤中にケガをしたり事故に遭ったりした場合には、必ず会社に連絡するというルールにしておくのが現実的でしょう。

 

2019.07.24. 解決社労士 柳田 恵一

 

<処罰しないで>

セクハラやパワハラの直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があった場合には、どのように対応したら良いのでしょうか。

被害を受けたその瞬間には大きなショックを受けたものの、後で冷静になってから、自分にも落ち度があったのではないか、ハラスメントとは言い切れないのではないかなどと考えが変わり、自分のせいで相手が懲戒処分を受けたら申し訳ないという気持ちになることもあるのです。

 

<ハラスメントの被害者>

さて、セクハラやパワハラの被害者とは誰でしょうか。

セクハラは、職場で性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

パワハラは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいいます。

こうしてみると、職場環境が悪化し不快なものとなることによって、直接行為を受けた人だけでなく、その行為を見聞きした人も被害者になるということが分かります。

たとえば、店長が店員を殴り、その場に他の店員がいたのなら、その場に居合わせた店員全員がパワハラの被害者です。

 

<被害者の同意>

被害者の同意があったから許されるというのは、セクハラやパワハラが密室で行われ、加害者と被害者だけが事実を知っていて、他の人は見聞きしていないという状況が前提となるでしょう。

多くの人が事実を見聞きしていながら、全員がセクハラやパワハラに同意しているというのは、容易には考えられないことです。しかし、事後の承諾であれば、ありえないことではありません。

 

<懲戒処分の目的>

そもそも懲戒処分の主な目的としては、次の3つが挙げられます。

 

【懲戒処分の主な目的】

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

 

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

 

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

こうしてみると、被害者から「処罰しないで」という申し出があり、ある程度被害者からの事後承諾があったとしても、懲戒処分の必要がなくなるわけではありません。

それでも、懲戒対象者への制裁の必要性は低くなりますし、企業秩序の侵害や労働者の不安は少なかったと評価できるでしょう。

ただ、再発防止の観点からはセクハラやパワハラを見逃すことができません。いつも被害者の事後承諾が得られるとは限らないからです。

 

<企業の取るべき対応>

最新版(平成31(2019)年3月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第64条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があったことは、この規定の中の「その他情状」に該当する事実です。

ですから、直接の被害者の申し出があったからといって、不問に付するというのではなく、情状の一つとして考慮し、場合によってはより軽い懲戒にすることもあるというのが、企業の取るべき対応だと考えられます。

 

2019.07.23. 解決社労士 柳田 恵一

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われた人がいます。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示し、様々なことを義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

労働基準法は、労働者を守るための法律ですから当然でしょう。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

これによって、逃亡や証拠の湮滅(いんめつ)を防止するわけです。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者への制裁>

労働基準法には労働者に対する罰則が無いのですから、労働者が労働基準法違反の罪を犯すということもありません。

したがって、逮捕や起訴などもないのです。

しかし、就業規則に定められたルールに違反すれば、会社での評価は下がるかもしれません。

そうなると、賞与の支給額や昇給にも影響が出るでしょう。

また、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それでも、たとえば定期健康診断をサボり続けた場合に、厳重注意や譴責(けんせき)が限界でしょう。

労働基準法が罰則を定めていない趣旨からすると、減給や出勤停止などは重すぎるからです。

 

2019.07.22. 解決社労士 柳田 恵一

<定額残業代の導入>

割増賃金の基礎となる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、最低賃金を下回らないことが必要です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定されています。〔労働基準法第37条第5項〕

これらの手当は、労働の量とは無関係に福利的に支給されるものとして、除外することが認められているのです。ですから、これらに該当するかどうかは、手当の名称ではなく、その性質に基づいて判断されます。

この割増賃金の基礎となる賃金から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、定額残業代を含めた総額を基準として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるのが一般です。

残業代の二重払いが発生しますから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<働き方改革と定額残業代>

働き方改革の推進によって残業時間が減少し、自分の時間が増えたものの、手取り収入が減ってしまったという不満が聞かれます。

この点、定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の手順を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

こうした自己啓発や自己研鑽が期待できない場合であっても、仕事による疲労の蓄積が無い分だけ、生産性が上がると考えられます。

 

<上手に活用しましょう>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われていました。

今でも、ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2019.07.21. 解決社労士 柳田 恵一

<重ねての制裁>

ある社員が不都合な言動を理由に、懲戒処分を受けたとします。

この社員が、昇進・昇給や賞与の金額に影響する人事考課で、一段低い評価にされたとします。

しかも、さえない部署への左遷も行われたとしましょう。

このように、たった1つの不都合な言動を理由に、懲戒処分も人事考課も人事異動も重ねて行うことに問題はないのでしょうか。

 

<法律の規定>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第15条〕

しかし、人事考課や人事異動の有効性について規定する法令は見当たりません。

これらは、基本的に会社の裁量に任されていて、裁判所がその不当性や違法性を判断することは困難だからです。

 

<懲戒処分と人事考課>

人事考課には、会社ごとに独自の考課基準があります。

個人の業績、所属部門の業績、発揮能力、勤務態度、経営理念への共感度、行動指針の体現度、社内ルールの順守など、その内容は様々です。

たとえば、勤務先の近所の飲食店で酒に酔って店長をどなりつけたので、譴責(けんせき)処分を受けたとします。厳重注意を受け、始末書を提出したわけです。

この場合、人事考課の基準の中に「勤務地近隣との関係を良好に保つこと」といったものがあれば、その部分について低い評価となるでしょう。

しかし、「譴責処分を受けたのだから全項目について一段低い評価」というのは不当です。

またたとえば、勤務先の会社が経営しているお店で、酒に酔って店長をどなりつけたのなら、かなり事情が変わってきます。

人事考課基準の中に「社内での協調性」「他部門への協力」「顧客からの信頼」といったものは、一般的に含まれているでしょうから、評価が低くなる可能性は高いでしょう。

それでも、考課者のその社員に対する印象が悪くなったので低い評価になるということは避けるべきです。

 

<懲戒処分と人事異動>

人事異動については、会社の裁量がかなり広いといえます。適材適所により、会社全体の生産性を上げる必要があるからです。

ですから、懲戒処分の原因となった言動との関係で現在の職務がふさわしくないと認められ異動が行われるような場合には、不当とはいえない場合が多いものです。

たとえば、経理担当者が会社の金銭を500円横領した場合、重い懲戒処分の対象とはならないかもしれませんが、経理以外の部署に異動させるのが適切といえます。

しかし、勤続年数が長く会社に貢献している営業部長が、経費を500円ごまかしただけで役職を外されるような異動は明らかに不当でしょう。

 

<目的との関係で>

懲戒処分、人事考課、人事異動、それぞれに目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課や人事異動の目的とは関係なく、当然のように制裁的な人事考課や人事異動が行われるのは不当です。

ただ、こうした会社の行為の不当性を証明し、社員から会社に損害賠償の請求をするのは、証拠集めが困難なためむずかしいことも事実です。

 

2019.07.20. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分についての法律>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第15条〕

つまり、就業規則に具体的な規定があるなど、懲戒処分を行うための他の条件がすべて満たされていたとしても、「客観的に合理的な理由がある」「社会通念上相当である」という2つの条件を満たしていない場合には、懲戒権の濫用となり、その懲戒は無効だということです。

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

  

<懲戒権濫用法理>

労働契約法第15条には2つの条件のみが示されています。

しかし裁判では、次のような条件すべてを満たしていないと、懲戒権の濫用とされ、懲戒処分が無効となって、会社が懲戒対象者に対して損害賠償の責任を負うことがあります。

・懲戒対象者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・不都合な事実が発生した後で懲戒処分の取り決めができたのではないこと。

・過去に懲戒処分を受けた行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・懲戒対象者に事情を説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<証拠不十分で行った懲戒解雇>

懲戒処分の理由となる事実が真実かどうか確認できないうちに、懲戒解雇とした場合には、それが不当とされ無効となるのでしょうか。

この場合には、最初に示した労働契約法第15条の「客観的に合理的な理由」が問題となります。

「ある店舗の従業員がお客様に暴力を振るった」というウワサが広まったとします。被害者が誰なのかわかりませんし、警察が捜査する動きも見られません。この時点で、懲戒処分を行うのは不当です。

社内に嫌いな人がいたとき、その人について悪いウワサを流せば会社に処分してもらえるとしたら恐ろしい話です。ウワサは「客観的に合理的な理由」にはならないのです。

しかし、警察の捜査が始まり、送検されたことが新聞に掲載されたという段階では、全体の事情から「客観的に合理的な理由」があるといえます。

この場合、後で無実が証明されたとしても、会社は不当な処分をしたことにはならず、損害賠償を請求されることもないでしょう。

犯罪行為が疑われる場合の懲戒処分について、就業規則に定める場合には、その条件を明確に示しておきたいものです。

 

2019.07.19. 解決社労士 柳田 恵一

<障害者数の不適切な計上>

障害者雇用率制度に関連して、多くの行政機関で、障害者である職員の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状況が長年にわたって継続していた事実が報道され、国民の関心を集めました。

国が働き方改革を推進し、一億総活躍社会の実現を目指している中での報道ですから、かなりのインパクトがありました。

しかし、障害者雇用・就業の促進は、最近始まったことではなく長い歴史があります。

以下は、その概要です。

 

<身体障害者雇用促進法の制定>

諸外国で障害者の雇用法が制定されていたこと、ILO(国際労働機関)で職業更生勧告が採択されていたことなどを踏まえ、昭和35(1960)年、「身体障害者雇用促進法」が制定されました。

主に職業紹介、適応訓練、雇用率制度について定められ、雇用率制度については、公的機関は法的義務、民間企業は努力義務とされました。

 

<法定雇用率の法的義務化>

身体障害者の雇用が不十分なため、昭和51(1976)年、全ての企業に法定雇用率を義務付け、雇用納付金制度を創設しました。

このときの法定雇用率は1.5%でした。

 

<障害者の雇用の促進等に関する法律>

昭和56(1981)年の国際障害者年をきっかけに、法律の制定時から課題となっていた知的障害者に対する雇用率の適用に向けた動きが盛んになりました。

また、障害者の離職率の高まりについても対策が求められました。

そこで、昭和62(1987)年、法律の名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」とし、対象範囲を身体障害者から知的障害者や精神障害者を含む全ての障害者に拡大しました。

これによって、職業指導、職業訓練、職業紹介などの職業リハビリテーションの推進に必要な改正や、知的障害者を身体障害者と同様に実雇用率の計算に加える改正が行われました。

 

<知的障害者の雇用の義務化>

知的障害者の雇用が進展し、身体障害者の雇用の促進にも影響を及ぼすようになっていたことから、平成9(1997)年、知的障害者が雇用義務の対象とされ、障害者雇用率の算定基礎に加えられました。

 

<精神障害者の雇用対策の強化>

精神障害者の就業や在宅就業障害者が増加してきたため、平成17(2005)年には、精神障害者(手帳所持者)を実雇用率に算定できるようにしました。

また、在宅で就業する障害者に対して仕事を発注する事業主に、特例調整金などを支給するなどの改正が行われました。

 

<短時間労働者への適用拡大>

中小企業では障害者の雇用が低調に推移し、一方で短時間労働に対する障害者のニーズが高まったため、平成20(2008)年、障害者雇用納付金制度の適用対象が常用雇用労働者が300人以下の企業に拡大されました。

また、障害者の雇用義務の基礎となる労働者と雇用障害者に、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者が追加されました。

 

<障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務>

「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

①雇用の分野での障害者差別の禁止

②雇用の分野での合理的配慮の提供義務

③相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となりました。

対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となりました。

 

<精神障害者の雇用義務化>

平成30(2018)年4月1日から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。

法定雇用率が引き上げられ、精神障害者である短時間労働者の算定方法が変わりました。

 

2019.07.18. 解決社労士 柳田 恵一

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

「年俸制の従業員が長期にわたって入院したら年俸を下げることはできるのか」というご質問を受けたことがあります。

月給制の従業員が長期間入院した場合に、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これは、明らかに不合理であり社会通念上も相当ではないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期間入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、球団との間で一般的な労働契約を交わしているわけではありません。

ところが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社もあります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。

年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。

そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

また、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)にも、年俸制を想定した規定はありません。

ですから、予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを、会社が独自に作っておいたのが失敗なのです。

 

<年俸制にするのなら>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。

毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。

残業手当、深夜手当、休日出勤手当など割増賃金を支払う必要もあります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。

法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているだけです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという前例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。

この場合には、社会保険労務士などの専門家に相談しながら、慎重に事を進める必要があるでしょう。

 

2019.07.17. 解決社労士 柳田 恵一

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

 

<パワーハラスメント対策の法制化>

職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

【雇用管理上の措置の具体的内容】

・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発・苦情などに対する相談体制の整備・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等

 

今後、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて検討される予定です。

 

パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。

 

<職場の範囲>

「職場」とは業務を遂行する場所を指しますが、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含めることが指針で示される予定です。

(「労働政策審議会建議」では、このようにするのが適当とされています。)

 

<優越的な関係>

「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書」では、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることを指しています。

例えば、以下の場合も含むとされています。

・職務上の地位が上位の者による行為

・同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの

部下が上司に何度もパソコンの使い方を教えているのに、上司が同じところでつまずき、部下が上司を馬鹿にするようなことがあれば、職場のパワーハラスメントに該当しうることになります。

 

2019.07.16. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働白書>

令和元年7月09日、厚生労働省は、当日の閣議で「平成30年版厚生労働白書」(平成29年度厚生労働行政年次報告)を報告し、これを一般に公表しました。

「厚生労働白書」は、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどについて、広く国民に伝えることを目的にとりまとめられたもので、平成30年版は、平成13年(2001年)の「厚生労働白書」発刊から数えて18冊目となります。

平成30年版厚生労働白書は2部構成となっています。

例年異なるテーマでまとめている第1部では「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」と題し、誰もが地域で役割を発揮し居場所を持ち、「包摂(ほうせつ)」される社会を実現するための視点を提示しています。

 

<今回の白書の概要>

 

【第1部】

テーマ「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」

障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。そのうえで、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しています。

 

【第2部】

テーマ「現下の政策課題への対応」

子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめています。

 

<一億総活躍社会>

少子高齢化と人口減少という、これまでに経験したことのない危機に対処するため、政府は、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月閣議決定)において、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが包摂され活躍できる「一億総活躍社会」を目指すこととした。

一億総活躍社会、すなわち、全ての人が包摂される社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。

また、多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出が図られることを通じて、経済成長が加速することが期待される。

この一億総活躍社会を実現するためには、障害者、難病患者、がん患者等が、希望や能力、障害や疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境を整備することが必要である。

病気や障害などを有していても、自己の能力を最大限に発揮し、個性を活かして生きていけるようにすることは、本人の人生の充実という観点から大切である。

そして、働くことを始めとする社会参加の意欲のある人誰もが、その能力を発揮できるような環境づくりを行うことは、社会保障の支え手を増やす観点からも、我が国の経済活力の維持にとっても重要である。

人生において病気や障害などを有する可能性は誰にでもある中で、様々な選択肢が用意され、それを支える仕組みがあることが、多様な人々が「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合い、多様性を尊重し包摂する社会、誰もが安心して暮らせる社会の実現につながる。

 

少子高齢化と人口減少により、このままでは日本経済も社会そのものも、先細りになってしまう恐れがあります。

政府あるいは政治の力だけでは、どうすることもできません。

国民の一人ひとりが経済活動や社会活動に積極的に参加し、日本全体を盛り上げていく必要があります。

また、こうしたことを通じて、一人ひとりが生きがいを感じ、活き活きと暮らしていくことにつながります。

 

2019.07.15. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準監督官の任務>

労基署が立入調査(臨検監督)をする場合、通常その任務にあたるのは労働基準監督官です。

労働基準監督官の基本的任務は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者などを監督することにあります。

労働基準監督官は、監督を実施し法令違反が認められた場合には、事業主などに対し文書で指導し是正させるのです。

また、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止などの行政処分の実行も行っています。

 

<労働基準監督官の権限>

こうした任務を全うするため、労働基準監督官には労働法により臨検(立入調査)権限を始め、帳簿・書類などの検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大・悪質な法令違反を犯した事業者などに対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<立入調査(臨検監督)>

労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。

例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談をきっかけとして、また、問題が懸念される事業場などをあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。

なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則として予告することなく事業場に監督を行っています。

立入調査(臨検監督)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条(30万円)、労働安全衛生法第120条(50万円)、最低賃金法第41条(30万円)など〕

 

<実際に立入調査を拒否したら>

たとえば、残業代の不払いが発覚することを恐れ、立入調査を拒否して、30万円の罰金を支払ったとしても、2年分の残業代を払うよりは安くて済む計算です。

ここの「2年分」というのは改正民法に合わせて、労働基準法も「5年分」に改正されそうです。

来春からは、5年前に遡って未払い賃金を支払うよう労働者から請求されるようになるでしょう。

ますます30万円なら安いようにも思えます。

もし、これで済むのなら、多くの企業が立入調査を拒否してしまうかもしれません。

しかし、それ相当の容疑が固まれば、労働基準監督官による捜索・差し押えなど強制捜査が行われるでしょうし、そこまでいかなくても聞き込みや張り込みは可能です。従業員が何時に職場に入り何時に出たかを確認したり、直接従業員に話を聞くことはできるのです。

それに、会社が労働基準監督官を追い返したとなれば、直接労基署に実情を訴えに行く従業員も出てくるでしょうし、多数の退職者が出るかもしれません。

ネット上でも、あることないことウワサが広がることでしょう。

そもそも悪質なことをしていなければ、立入調査を拒否する必要などないのですから、拒否そのものがアウトです。

 

2019.07.14. 解決社労士 柳田 恵一

<一般の社会保険加入基準>

会社で働く人は、一定の条件を満たした場合、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に入らなければなりません。会社には、入らせる義務があります。

その一定の条件とは次の3つです。

・会社が社会保険に加入している事業所(適用事業所)であること

・正社員など正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数があること

・臨時、日雇い、季節的業務で働く人ではないこと

 

<大企業での加入基準>

平成28(2016)年10月から、社会保険の適用対象者が拡大されました。

週20時間以上働く短時間労働者で、厚生年金保険の加入者(被保険者)数が常時501人以上の法人・個人・地方公共団体に属する適用事業所および国に属する全ての適用事業所で働く人も、厚生年金保険等の適用対象となっています。

 

【平成28(2016)年10月から拡大された適用対象者】

勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満で、以下の①~⑤すべてに該当する人

① 週の所定労働時間が20時間以上あること

② 雇用期間が1年以上見込まれること

③ 賃金の月額が8.8万円以上であること

④ 学生でないこと

⑤ 被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること

⑤の企業を特定適用事業所といいます。

 

<中小企業への基準適用>

平成29(2017)年4月からは、加入者(被保険者)数が常時500人以下の企業であっても、労使合意に基づき申出をした企業では、上記の基準が適用されます。

 

【平成29(2017)年4月から拡大された基準適用企業】

次の同意を得たことを証する書類(同意書)を添付して、本店または主たる事業所の事業主から所轄の年金事務所に「任意特定適用事業所該当/不該当申出書」を提出した企業

 

・従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合の同意

 

・こうした労働組合がないときはA、Bのいずれかの同意

A.従業員の過半数を代表する者の同意

B.従業員の2分の1以上の同意

このような手続きをした企業を任意特定適用事業所といいます。

 

企業が新人を採用する際には、社会保険の加入について十分な説明を行うはずです。

しかし、加入基準が複雑になってきていますので、採用される側としても、「前に働いていた会社と同じ条件で働くのだから、社会保険には入らないのだろう」という先入観をもたずに、きちんと確認する必要があります。

 

<実践的な社会保険加入基準>

一般の社会保険加入基準が適用される場合、雇い入れ通知書、労働条件通知書、労働契約、就業規則などから、今後1年間の勤務を予測して、正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数が見込まれるなら、社会保険に加入となります。

また、この基準で対象外とされても、現実に3か月連続で正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数の実績が発生すれば、年金事務所では社会保険への加入を指導します。

 

<社会保険に入る入らないの損得>

プライベートのケガや病気で働けないとき、健康保険なら傷病手当金によって賃金の67%が保障されます。この傷病手当金は、国民健康保険にはありません。

年金は、国民年金よりも厚生年金のほうが、将来受け取る老齢年金も、万一の場合に受け取る障害年金も金額が多いのが一般です。

保険料の負担は、社会保険なら会社が半分負担で、国民年金や国民健康保険では全額自己負担です。それでも、給料から控除される社会保険の保険料は多額だと感じられます。会社にとっては、従業員が社会保険に入ると会社の保険料負担が発生しますから、入って欲しくないと考えるかもしれません。

結局、将来の生活や万一のことを考えると社会保険に入るのが得で、今の生活費を重視するならば入らないほうが楽といえそうです。

 

<シフト調整が正当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週28時間、週4日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険には入らないことになります。

労働契約上も、社会保険に入らないことになっているので、会社も従業員も入らない前提です。この場合に、前提が崩れないように、労働契約の範囲内でシフト調整するのは正しいことです。

 

<シフト調整が不当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週35時間、週5日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険に入ることになります。

もし、社会保険料の負担を逃れるなどの目的があって、会社が社会保険に入る手続きを怠れば、それ自体違法ですし、シフト調整は単なる悪あがきにすぎません。

また、最初から労働条件通知書(雇い入れ通知書、雇用契約書)を従業員に交付しないのは、それ自体違法ですし、社会保険加入基準を満たさないようにシフト調整をするというのはおかしなことです。年金事務所や会計検査院の調査が入っても指摘を逃れるかもしれませんが、労働基準監督署の調査(監督)が入ればアウトです。

 

<結論として>

シフト調整して社会保険に入れないことがあったとして、それが正しいのか、それとも不当なのかは、労働契約の内容次第だということになります。

 

2019.07.13. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

かつては、実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無かったのです。

 

ところが、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

つまり、年次有給休暇が新たに付与される日数が10日以上の労働者に対しては、年次有給休暇のうち5日以上について、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

結局、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<就業規則に必要な規定>

年次有給休暇など法定の休暇だけでなく、会社で設けている休暇については就業規則に必ず定めることが必要です。

年次有給休暇については、新たに取得日を指定してでも取得させる義務が発生したわけですから、これも就業規則に定めなければなりません。

その職場の就業規則により、また前後関係から、表現の違いはあるものの内容的には次のようになります。

 

【新たに規定する内容】

年次有給休暇が新たに10日以上与えられた従業員に対しては、従業員があらかじめ請求する時季だけでなく、付与日から1年以内に、その従業員の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。

ただし、従業員があらかじめ請求する時季に年次有給休暇を取得した場合、および労使協定を結んで計画的に休暇取得日を決定した場合には、その取得した日数分を5日から控除する。

 

<働き方改革との関係>

年次有給休暇の取得率は、平均50%前後で伸び悩んできました。

こうした事態を解消するために、働き方改革の一環で、使用者に年次有給休暇の取得日を指定させてでも、取得率を向上させようということです。

働き方改革というのは、働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な改革ですから、会社が従業員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で進めることが必要です。

残業が減った分だけ給料が減り、残業手当の付かない役職者に仕事が集中するのは、働き方改革の弊害だと言われますが、進め方を誤った結果にすぎません。

年次有給休暇の取得についても、働き方改革の本質から外れない運用を心がけましょう。

 

2019.07.12. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法の規定>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

会社は、従業員が指定した日に、年次有給休暇を与える義務があるということです。

上司の許可が必要であったり、会社の決裁が必要であったりするルールは無効です。

「有給休暇申請書」というのは誤りであって、「有給休暇届」が正しいことになります。

 

もっとも、但し書きにあるように、従業員が請求した日に年次有給休暇を与えると、事業の正常な運営を妨げることになる場合は、従業員が指定した日を会社側から変更することが認められています。

たとえば、従業員の半数以上が同じ日に年次有給休暇を取得したら、「事業の正常な運営を妨げる」ことになりますから、一部の従業員について変更を求めることができます。

 

とはいえ、特定の部署や店舗で多数の従業員が同じ日に年次有給休暇を取得しようとした場合に、会社は他部署や他店舗、あるいは本部の応援をもってしても対応できない場合に限り、変更を求めることができるにすぎません。

ましてや、「今は忙しいから」「人手が足りないから」ということで、安易に変更できるものではありません。こうした事情は、特殊な場合を除き、会社が年次有給休暇の取得を前提とした対応をしていない、努力不足であると判断されてしまいます。

 

<許可制の就業規則>

年次有給休暇の許可制を定めた就業規則であっても、その届が所轄の労働基準監督署に提出され、受付印が捺されることもあります。

この場合でも、労働基準法の規定が優先的な効力を持ちますから、許可制の規定は無効です。

それどころか、こうした規定が見つかった場合には悪質と判断されますので、法令違反の規定を置かないよう十分に注意する必要があります。

 

<年次有給休暇取得日の変更>

労働基準法には、従業員側の時季変更権について規定がありません。

しかし取得日の変更が、会社に実害をもたらすような特別な場合に限り、許可制にすることが許されると考えられます。

根拠としては、次の規定が挙げられます。

 

【労働契約法】

(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

<計画的付与>

年次有給休暇のうち、5日を超える部分については、労使協定を結んで計画的に休暇取得日を割り振ることができる計画的付与の制度があります。

これは、個々の従業員の許可を得ることなく、会社と労働組合や労働者の代表との間で労使協定を交わすことによって、年次有給休暇を取得させるものです。

それだけに、一部の従業員からは不満が出やすい制度ではあります。

しかし、年次有給休暇の取得を促進する制度ですから、従業員への十分な説明を行ったうえで有効に活用したいものです。

 

<時季指定義務>

平成31(2019)年4月から、全ての使用者に対して「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられています。

多くの企業では就業規則を変更し、会社が時季指定する規定を置くなどして対応しています。

これはもちろん働き方改革の一環で行われていることです。

働き方改革は、働き手の不安を解消し満足度を高める施策ですから、従業員の許可なく年次有給休暇の取得を強制するという運用は許されません。

個々の従業員の意向を踏まえつつ、年次有給休暇を取得させることが求められていることを忘れないようにしましょう。

 

2019.07.11. 解決社労士 柳田 恵一

<労働時間該当性の基準の明確化>

令和元(2019)年7月1日、厚生労働省労働基準局長が都道府県労働局長に、医師の研鑽に係る労働時間に関する考え方についての通達を発しました。

業務の傍ら、医師の自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究等「研鑽」については、労働時間に該当しない場合と該当する場合があります。

医師の的確な労働時間管理の確保等の観点から、医師の研鑽について、労働時間該当性の判断の基本的な考え方、明確化のための手続、環境整備について示されています。

 

<所定労働時間内の研鑽の取扱い>

所定労働時間内に、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)で研鑽を行う場合については、その研鑽に係る時間は、当然に労働時間となります。

 

<所定労働時間外の研鑽の取扱い>

所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等の本来業務と直接の関連性なく、かつ、業務の遂行を指揮命令する職務上の地位にある上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しません。

一方、その研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働時間外に行われるものであっても、または診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっても、一般的に労働時間に該当します。

所定労働時間外に、医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明示・黙示の指示によらずに、自発的に行われるものもあります。この場合の労働時間該当性の判断基準は、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方が示されています。

 

⑴ 一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習

ア 研鑽の具体的内容

例えば、診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、診療の準備又は診療に伴う後処理として不可欠なものは、労働時間に該当する。

 

⑵ 博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成

ア 研鑽の具体的内容

例えば、学会や外部の勉強会への参加・発表準備、院内勉強会への参加・発表準備、本来業務とは区別された臨床研究に係る診療データの整理・症例報告の作成・論文執筆、大学院の受験勉強、専門医の取得や更新に係る症例報告作成・講習会受講等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

上司や先輩である医師から論文作成等を奨励されている等の事情があっても、業務上必須ではない行為を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、研鑽の不実施について就業規則上の制裁等の不利益が課されているため、その実施を余儀なくされている場合や、研鑽が業務上必須である場合、業務上必須でなくとも上司が明示・黙示の指示をして行わせる場合は、当該研鑽が行われる時間については労働時間に該当する。

上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき研鑽が行われていると考えられる例としては、次のようなものが考えられる。

・ 勤務先の医療機関が主催する勉強会であるが、自由参加である

・ 学会等への参加・発表や論文投稿が勤務先の医療機関に割り当てられているが、医師個人への割当はない

・ 研究を本来業務とはしない医師が、院内の臨床データ等を利用し、院内で研究活動を行っているが、当該研究活動は、上司に命じられておらず、自主的に行っている

 

⑶ 手技を向上させるための手術の見学

ア 研鑽の具体的内容

例えば、手術・処置等の見学の機会の確保や症例経験を蓄積するために、所定労働時間外に、見学(見学の延長上で診療(診療の補助を含む。下記イにおいて同じ。)を行う場合を含む。)を行うこと等が考えられる。

イ 研鑽の労働時間該当性

上司や先輩である医師から奨励されている等の事情があったとしても、業務上必須ではない見学を、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合、当該見学やそのための待機時間については、在院して行う場合であっても、一般的に労働時間に該当しないと考えられる。

ただし、見学中に診療を行った場合については、当該診療を行った時間は、労働時間に該当すると考えられ、また、見学中に診療を行うことが慣習化、常態化している場合については、見学の時間全てが労働時間に該当する。

 

<労働時間該当性を明確化するための手続及び環境整備>

研鑽の労働時間該当性についての基本的な考え方は、上記に示されているとおりですが、各事業場での研鑽の労働時間該当性を明確化するためには、一定の手続とその適切な運用、環境が確保されなければなりません。

そこで通達は、次に掲げる事項に取り組むよう医療機関等に周知することを求めています。

 

⑴ 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続

医師の研鑽については、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化する手続を講ずること。

例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司に申し出ることとし、当該申出を受けた上司は、当該申出をした医師との間において、当該申出のあった研鑽に関し、

・ 本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと

・ 当該研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと

・ 上司として当該研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、当該研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいこと

について確認を行うことが考えられる。

 

⑵ 医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための環境の整備

上記⑴の手続について、その適切な運用を確保するため、次の措置を講ずることが望ましいものであること。

ア 労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れることを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当しない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこととすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずることが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所

や服装が限定されるためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていないことについて明確化しておくこと。

イ 医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。

ウ 上記イで書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対してもその内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。

また、診療体制に含めない取扱いを担保するため、医師のみではなく、当該医療機関における他の職種も含めて、当該取扱い等を周知すること。

エ 上記⑴の手続をとった場合には、医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法第109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考として定めること。

 

医師に限らず、担当業務をこなすのに必要な学習が、勤務先の指導・教育・研修では足りない場合には、自学自習しなければならないこともあります。

この自学自習の時間が、本来の労働時間ではない場合でも、過労死の原因を判断するにあたっては、労働時間に含めて計算されることがあります。

会社が労働者の自己研鑽・自己啓発に頼りすぎると、万一の事故があった場合には、責任が重いということを意味します。

 

2019.07.10. 解決社労士 柳田 恵一

 

<新通達による基準変更>

令和元(2019)年7月1日、厚生労働省労働基準局長より都道府県労働局長に新たな通達が出されました。

医師等の宿日直の特性を踏まえ、許可基準の細目を定めたものです。

これをもって、昭和24(1949)年3月22日付基発第352号「医師、看護婦等の宿直勤務について」は廃止されました。

医療法第16条には「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と規定されていますが、その宿直中の勤務の実態が次に該当すると認められるものについてのみ、労働基準法施行規則第23条の許可が与えられるようになりました。

 

労働基準法施行規則第23条

(宿直又は日直勤務)

 

第二十三条 使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。

 

労働基準法第32条

(労働時間)

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

<新基準の内容>

医師等の宿日直勤務については、次に掲げる条件の全てを満たし、かつ、宿直の場合は夜間に十分な睡眠がとり得るものである場合には、労働基準法施行規則第23条の許可を与えるよう取り扱います。

 

⑴ 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。

 

⑵ 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば、次に掲げる業務等をいう。

・ 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

・ 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

・ 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと

・ 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師への報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと

 

⑶ 上記⑴、⑵以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること。

 

<割増賃金が発生する場合>

宿日直中に従事する業務には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限られ、通常の勤務時間と同態様の業務は含まれません。

例外的に、通常の勤務時間と同態様の業務に従事することがあった場合には、その時間について労働基準法第37条の割増賃金が支払われることになります。

 

<宿日直の許可ができないケース>

宿日直に対応する医師等の数について、宿日直の際に担当する患者数との関係やその病院等に夜間・休日に来院する急病患者の発生率との関係等からみて、通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては、宿日直の許可を与えることができません。

 

人の生命を預かる医師等が、過重労働によって、自らの生命や健康を脅かされることのないように、働き方改革が進められつつあります。

 

2019.07.09. 解決社労士 柳田 恵一

<効力の優先順位>

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」〔労働基準法第13条〕

これが労働基準法の規定です。

「達しない」というのがキーワードです。

労働契約で法律よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして法律に従うという意味です。

逆に、労働契約の中に法律よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結局、法律と労働契約を比べて、違いがある部分については、労働者に有利な方が有効となります。

この場合、労働契約は個別の労働者との契約ですから、有利・不利の判断は個人別に行われます。

 

<具体例>

たとえば、試用期間が終わり本採用となってから6か月後に年次有給休暇が付与されるという労働契約は法律よりも不利です。

本人が同意していても、その同意は無効であって、法律の基準により試用期間の初日から6か月後に付与されます。

またたとえば、1日7時間勤務の会社で、7時間を超えて勤務したら時間外割増賃金として25%を加えるという労働契約は法律より有利です。

なぜなら労働基準法は、8時間の法定労働時間を超える残業に割増賃金を義務づけているからです。この場合には、労働契約が優先されます。

 

<労働契約が無い?>

働いている限り、労働契約が無いということはありません。口頭であっても、労働契約は有効です。〔民法第623条〕

ですから、正確には「労働契約書」が無い場合ということになります。

契約書ではなくても、労働条件を会社から一方的に通知する「労働条件通知書」でもよいのですが、何も無ければ労働基準法に定める条件が適用されることになります。

ただ、何時から何時まで、どこで、どのような仕事をするのか、休憩時間はどうなのかということは、法律に規定がありません。

これでは働く人があまりにも不安定ですから、会社には労働条件を書面で交付するなどの法的義務があります。

違反に対しては、30万円以下の罰金という罰則もあるのです。

交付されていない場合には、労働者から会社に確認してみる必要があるでしょう。うっかり忘れているだけかも知れません。

それでも交付されない場合には、早めに転職先を見つけるようお勧めします。

 

2019.07.08. 解決社労士 柳田 恵一

 

基本的には、健康保険証があれば3割の費用負担で医療サービスを受けることができます。

しかし、健康保険の財源は保険料と税金です。

不誠実な人に無駄づかいを許してしまうのは道義に反します。

そこで、次のようなルールが設けられています。

 

<わざとケガをした場合>

故意に受傷した場合や、自分の故意の犯罪行為で病気にかかり受傷したときは、健康保険が使えません。〔健康保険法第116条〕

ただし、自殺による死亡については埋葬料が支給されます。

 

<ケンカ・飲酒>

ケンカや酒を飲みすぎて受傷した場合には、全く健康保険が使えない場合と一部だけ使える場合があります。〔健康保険法第117条〕

 

<少年院・刑事施設に入ったとき>

少年院などに収容されたとき、刑事施設、労役場、これらに準ずる施設に収容されたときは、病気・ケガ・出産について健康保険が使えません。〔健康保険法第118条〕

 

<療養に関する指示に従わないとき>

正当な理由なく療養に関する指示に従わないときは、健康保険が一部使えなくなることがあります。〔健康保険法第119条〕

 

<不正行為をしたとき>

不正行為によって、健康保険を使った者については、6か月以内の期間を決めて、傷病手当金や出産手当金の全部または一部を支給しないことにできます。〔健康保険法第120条〕

 

2019.07.07. 解決社労士 柳田 恵一

<傷病手当金>

傷病手当金は、業務以外の原因による病気やケガでの休業中に、健康保険加入者(被保険者)とその家族(被扶養者)の生活を保障するために設けられた制度です。

健康保険加入者が病気やケガのために仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

その条件の一つに、「労務不能」があります。仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、健康保険加入者の仕事の内容を考慮して判断されます。

 

<労務不能の基準>

労務不能の期間は、主に療養担当者つまり治療を担当する医師の判断によります。

対象者の仕事内容から考えて、病気やケガの回復具合から働けるかどうかを判断します。

医師は病気やケガの具合を判断することは得意なのですが、対象者の仕事内容を具体的に知っているわけではありませんから、労務不能の判断はこの点でむずかしいものがあります。

傷病手当金を受給する人は、担当する医師にご自分の仕事内容をわかりやすく説明する必要があります。

特に病気やケガとの関係で、仕事上の困難な部分をよく説明しておきたいものです。

また、医師は自ら診察していない期間については、証明することができません。

仕事に差し障るような病気やケガであれば、ためらわず早めに医師の診察を受けておくことが大事です。

 

<申請期間>

仕事を休んだ日と、労務不能と判断された日とで重なった日が、支給対象の期間(申請期間)です。

ただし、最初の3日間は待期期間といって、支給されない期間です。

労務不能とされない日に仕事を休んでも、ご本人の意思で大事をとって休んだにすぎないことになります。

また、労務不能とされた日であっても、働いて通常通りの給料が出ていれば、傷病手当金は支給されません。

 

2019.07.06. 解決社労士 柳田 恵一

<会計検査院による実地検査>

国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査します。〔日本国憲法第90条〕

そして、常時または臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができます。〔会計検査院法第25条〕

 

会計検査院が行う実地の検査には、次のような内容も含まれます。

・労基署がきちんと労働保険料(雇用保険・労災保険)の指導をしているか。

・ハローワークが失業者の再就職後の不正受給を見逃していないか。

・助成金の不正受給がないか。

・年金事務所が対象企業や対象従業員をきちんと厚生年金に加入させているか。

とはいえ、これらのことは、実際に対象となる企業に出向いて調べてみないことにはわかりません。

そこで、会計検査院は労基署、ハローワーク、年金事務所の方々と共に、企業に出向いて実地の検査をするということになります。

 

<会計検査院の調査の特徴>

一言でいうと、とにかく厳しいです。

実際、労基署、ハローワーク、年金事務所が単独で調査に入った場合には、会社の現状を察してくださることもありますから、人情に訴えることも不可能ではありません。

しかし、会計検査院は「法律通り正しく行われているか」を調査しますので、会社の成長段階や体力に対する配慮はしてくれません。

視点が違います。

企業を指導するという考えではなくて、「企業を指導する労基署、ハローワーク、年金事務所」の指導ぶりを厳しくチェックするわけです。

労基署、ハローワーク、年金事務所の皆さんは、会計検査院を「鬼より怖い」といいます。

 

<一例として>

たとえばある企業で、パート社員が社会保険加入を嫌うので資格取得手続きをしなかったとします。

これが年金事務所に発覚すると「すぐに手続きしてください」という指導が行われるでしょう。

ところが会計検査院だと、「保険料を2年前からの分すべて、会社負担分も本人負担分も、まとめて納付してください」ということになります。

こうしないと、国の収入が法律通りにならないわけですから。

こうなると、対象となるパート社員から2年分の保険料を強制的に徴収する方法はないのですから、会社は大きな損失をこうむることになるわけです。

場合によっては、そのパート社員が突然に来なくなることもあるのです。

やはり、正しい手続き、正しい納付が基本です。

 

2019.07.05. 解決社労士 柳田 恵一

<労基署の是正勧告>

労基署の調査(監督)が入ると、法令違反の部分について改善を求める「是正勧告書」という文書が交付されます。

労基署から電話連絡が入り、労基署まで印鑑を持参して取りに行く形です。

これに対して会社は、改善の内容を「是正報告書」という文書にまとめて労基署に提出します。

こうした対応を誠実に行っても、再度の調査が入るということはあるのでしょうか。

 

<労働基準監督署による調査(監督)の種類>

一般には4つに分類されています。

定期監督 = 各年度の監督計画により、労基署が管轄する企業の中から調査対象を選択し、法令全般について一般的に調査

災害時監督 = 業務災害が発生したあとに、原因究明や再発防止の指導を行うために調査

申告監督 = 労働者からの申告があった場合に、その申告内容について確認するために調査

再監督 = 是正勧告により指摘した法令違反が是正されたかを確認するための調査

※是正勧告を受けて期限までに是正報告書を提出しなかった場合にも行われる。

 

<再調査(再監督)>

上記のように、企業側がきちんと対応しても、再度の調査(再監督)が行われる場合があります。

最初の調査の時や、その後の企業側の態度が悪いと、再度の調査を予告されることもあります。

「態度が悪い」と言っても、反抗的な態度を示す場合だけでなく、指導の内容に対する理解が見れらないような場合も含まれます。

いたずらに労基署を敵視するのではなく、自ら改善するのだという態度で臨みたいものです。

できれば、なるべく早い段階から、労基署対応に詳しい社会保険労務士に依頼することをお勧めします。

 

2019.07.04. 解決社労士 柳田 恵一

<個別労働紛争解決制度>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会によるあっせん

このうち「あっせん」については、社会保険労務士のうち、特定社会保険労務士(「特定」の付記を受けた社会保険労務士)が代理人となることができます。

 

<平成30(2018)年度の状況>

令和元(2019)年6月26日、厚生労働省は「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をとりまとめ公表しました。

これによると、「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が過去最高となっています。「民事上」というのは、金銭解決や社員としての地位確認などのことを指しています。「刑事上」であれば、犯罪としての側面についての相談ですから、主に警察が対応することになります。

「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度ですが、厚生労働省は、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとしています。

 

【平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況のポイント】

1. 総合労働相談件数、助言・指導の申出件数、あっせん申請の件数いずれも前年度より増加。

 総合労働相談件数は111万7,983件で、11年連続で100万件を超え、高止まり

 ・総合労働相談件数111万7,983件(前年度比1.2% 増)

 →うち民事上の個別労働紛争相談件数26万6,535件(同 5.3% 増)

 ・助言・指導申出件数9,835件(同7.1% 増)  

 ・あっせん申請件数5,201件(同 3.6% 増)

2. 民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の全てで、「いじめ・嫌がらせ」が過去最高

 ・民事上の個別労働紛争の相談件数では、82,797件(同14.9%増)

 ・助言・指導の申出では、2,599件(同15.6%増)

 ・あっせんの申請では、1,808件(同18.2%増)

 ※いずれも過去最高の件数

 

<相談件数増加の意味>

いじめ・嫌がらせの相談が増えたということは、必ずしも実際にいじめ・嫌がらせの件数が増えたということを意味するものではありません。

むしろ、次のような原因が考えられるでしょう。

 

・相談件数の増加により、心理的に相談しやすくなってきた。

・パワハラ、セクハラなど個別のハラスメントについて、その内容が明確になってきた。

・ハラスメントについての知識が普及してきた。

・ハラスメント対策について、企業間の格差が大きくなってきた。

 

企業間の格差が大きくなってきたというのは、自分と同様のハラスメントを受けている人が、よその会社では適切に対応されているのに、自分の会社では対応してもらえないという形で実感されます。

企業によるハラスメント対策の情報は、ネットで簡単に入手できるようになってきています。

 

<企業にとって最低限の対策>

就業規則の中に、各ハラスメントの分かりやすい定義があって、全従業員が理解しているという前提が無ければ、その職場には確実にハラスメントが存在することでしょう。

なぜなら、被害者は会社に被害を申し出ることができませんし、ハラスメント行為者に対して、自信をもって注意できる人もいないからです。

また、ハラスメントの禁止規定と行為に対する懲戒規定が無ければ、注意されてもやめないのは仕方のないことです。問題社員にとって居心地の悪い会社にしなければ、問題社員は増えていってしまいます。

さらに、ハラスメントを受けたと思っている従業員の相談窓口が無ければ、いよいよ耐えられなくなった従業員は退職を申し出て、ハラスメント行為者と会社、場合によっては取締役を訴えることもあります。個人情報の保護や、被害の申し出を容易にする観点から、できれば社外の専門家を相談窓口にすることをお勧めします。

 

2019.07.03. 解決社労士 柳田 恵一

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。

主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<欠勤控除のルール>

欠勤控除について、労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則や賃金規程に明記しておく必要はあります。

就業規則などが無い会社では、労働条件通知書や雇用契約書に明記しなければなりません。

 

<基本給の欠勤控除>

基本給については、欠勤した日数・時間に比例して減額するのが一般です。

ただし、この減算方式によると、定められた計算式によっては、マイナスになってしまうことがあります。

基本給がマイナスというのは明らかに不合理ですから、欠勤が多い場合には、出勤した日数・時間に比例して基本給を加算する方法をとるのが一般です。

 

<手当の欠勤控除>

手当の欠勤控除についても、就業規則などに規定しておき、これに従って計算することになります。

客観的に見て不合理でなければ、各企業でルールを定めておけば良いのです。

ただし、たとえば年次有給休暇を取得すると不利益になるルールは、公序良俗に反するという理由で無効になる場合もあります。〔労働基準法第136条、民法第90条〕

考え方としては、その手当の性質や支給の趣旨に応じて、欠勤控除の計算方法を定めるのが良いでしょう。

 

<住宅手当の場合>

住宅手当を住宅費用の支出に対して支援する趣旨で支給している会社であれば、勤務日数・時間にかかわらず住宅費用は一定であると考えられますから、基本的には欠勤控除しないのが理論的です。

しかし、通勤の便を考えて、そこに居を構えていることに対する費用の一部を負担する趣旨で支給している会社であれば、出勤回数に応じて支給するのが理論的です。

どちらの趣旨も含んでいる会社であれば、間を取って、欠勤日数に応じて減額するというのも合理的です。

 

<役職手当の場合>

その立場にあることや重い責任の負担に対して、役職手当を支給する趣旨であれば、勤務日数・時間にかかわらず負担は一定であるとも考えられますから、欠勤控除しないのも合理的です。

しかし、勤務を通じて役職に応じた役割を果たすことの対価として、役職手当を支給しているのであれば、勤務時間に応じて支給するのが理論的です。

どちらの趣旨も含んでいる会社であれば、間を取って、欠勤日数に応じて減額するというのも合理的です。

 

<手当の見直し>

手当支給の趣旨を突き詰めていったら、現在の社会情勢からは合理性が疑われ、手当を廃止して基本給に合算することになったというのは珍しくありません。

この場合、単純に手当を廃止するのは、不利益変更禁止の原則に反しますから、少なくとも調整給を設けるなどの措置が必要となります。

実際に、住宅手当や家族手当は廃止する企業も増えています。

この機会に、手当支給の趣旨を再確認するとともに、手当の新設・廃止も検討することをお勧めします。

 

2019.07.02. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年6月25日、厚生労働省と国土交通省が、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律の荷主関連部分について、7月1日から施行することを発表しました。

貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律には、トラックドライバーの働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるよう、荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定が新設されています。

 

<法改正の背景>

トラック運送事業ではドライバー不足が深刻化しており、ドライバーの長時間労働の是正等の働き方改革を進め、コンプライアンスが確保できるようにする必要があります。

こうした状況を踏まえ、昨年、①規制の適正化、②事業者が遵守できる事項の明確化、③荷主対策の深度化、④標準的な運賃の公示制度の導入を内容とする貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)の改正が行われました。

今般、このうち、③の荷主関連部分について施行し、荷主の理解・協力のもとで働き方改革・法令遵守を進めることができるようにするための取組を一層推進します。

 

<荷主関連部分の概要>

改正貨物自動車運送事業法のうち、令和元(2019)年7月1日より施行される③の荷主関連部分の概要は次の通りです。

 

(1)荷主の配慮義務の新設

 荷主は、トラック運送事業者が法令を遵守して事業を遂行できるよう、必要な配慮をしなければならないこととする責務規定を新設。

(2)荷主への勧告制度の拡充

 荷主勧告制度の対象に、貨物軽自動車運送事業者が追加されるとともに、荷主に対して勧告を行った場合には、その旨を公表することを法律に明記。

(3)違反原因行為をしている疑いがある荷主に対する国土交通大臣による働きかけ等の規定の新設(令和5年度末までの時限措置)

①国土交通大臣は、「違反原因行為」(トラック運送事業者の法令違反の原因となるおそれのある行為)をしている疑いのある荷主に対して、荷主所管省庁等と連携して、トラック運送事業者のコンプライアンス確保には荷主の配慮が重要であることについて理解を求める「働きかけ」を行う。

②荷主が違反原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由がある場合等には、「要請」や「勧告・公表」を行う。

③トラック運送事業者に対する荷主の行為が独占禁止法違反の疑いがある場合には、「公正取引委員会に通知」する。

 

違反原因行為の例:荷待ち時間の恒常的な発生、非合理な到着時刻の設定、重量違反等となるような依頼等

 

↓こちらのパンフレットもご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000520823.pdf

 

2019.07.01. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の改定>

従業員の一人ひとりに就業規則の冊子が配付されている会社で、いつの間にか内容が改定され、改定後の就業規則は配付されないということがあります。

その会社の責任者が一念発起して就業規則の冊子を作って配ったものの、その後は経費の関係で、あるいは人手不足の影響で、改定版までは作らなかったというパターンです。

この場合に、改定後の就業規則は有効なのでしょうか。

 

<就業規則の変更手続き>

就業規則を変更する場合の手順は次のようになります。

・変更内容の社内決裁

・変更後の就業規則の作成

・変更した就業規則の周知(しゅうち)

・労働者代表などによる意見書の作成

・就業規則変更届の作成

・所轄労働基準監督署長への届出

そして、就業規則の変更内容が有効になるのは、 所轄労働基準監督署長への届出の時点ではなく、社内に周知した時点です。

 

<周知の重要性>

ここで、周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

ところが、ここでの「周知」には、具体的内容について従業員全員に教えておくというほどの強い意味はありません。

周知の方法としては、従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、所轄の労働基準監督署長に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

<周知を怠ると>

会社が改定後の就業規則を周知したのに、たまたま気づかない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しても有効です。

しかし、会社が改定後の就業規則を周知しなかったので、これを知らない従業員がいたという場合には、改定後の就業規則は、その従業員に対しては無効です。

たとえ、労働基準監督署への届出が済んでいても、その従業員に対しては無効なのです。

働き方改革の一環で、平成31(2019)年4月1日から一定の労働者に対して、年5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が労働基準法に規定されました。

このこととの関連で、就業規則を改定し年次有給休暇の取得日を会社が指定する仕組みを定めた会社も多数あります。

普段から年次有給休暇の取得率が低い会社では、こうした改定は必須でしょう。

また、年次有給休暇を一斉に付与する労使協定を交わした会社も多いでしょう。

こうした労使協定も、就業規則と同様に周知しなければならないことを忘れないようにしましょう。

 

2019.06.30. 解決社労士 柳田 恵一

<脱退一時金とは>

国民年金も厚生年金も、日本国内に住所があれば国籍に関係なく加入します。

しかし、滞在期間の短い外国人の多くは、老齢年金をもらうために必要な期間(受給資格期間)を満たすことができません。

平成29(2017)年8月1日、受給資格期間は25年から10年に短縮されました。それでも、10年以上の滞在というのは、かなりの長期滞在です。

そこで、保険料が掛け捨てになるのを防ぐために、外国人が国民年金や厚生年金を抜けて日本を出国した場合には、日本に住所がなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。

 

<国民年金の脱退一時金>

支給の条件は、原則として、国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)期間が6月以上あることです。

ただし、障害基礎年金などの年金を受けたことがあるときは請求できません。

脱退一時金の額は、最後に保険料を納付した月が属する年度と、保険料納付済月数に応じて決められています。

 

<厚生年金の脱退一時金>

支給の条件は原則として、厚生年金の加入期間が6月以上あることです。

ただし、障害厚生年金などの年金を受けたことがあるときは請求できません。

脱退一時金の額は、次の式で計算されます。

加入期間の平均標準報酬額 × 支給率

 

もし、年金に加入していて帰国する外国人の方に知り合いがいれば、ぜひ教えてさしあげてください。

 

2019.06.29. 解決社労士 柳田 恵一

<健康保険法の規定>

保険料の負担と納付義務について、健康保険法に次の規定があります。

 

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。

2 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

3 任意継続被保険者は、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

4 被保険者が同時に二以上の事業所に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令で定めるところによる。

 

これによると、事業主と健康保険加入者(被保険者)が保険料を半分ずつ負担することになっています。

しかし、納付義務を負っているのは事業主です。

健康保険加入者が突然退職すると、事業主が健康保険加入者の負担分を給与から控除できないケースもあります。

この場合、事業主は保険料を一度は全額負担してでも保険料を納付し、退職した健康保険加入者に本人の負担分を請求することになります。

 

<厚生年金保険法の規定>

保険料の負担と納付義務について、厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

2 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。

3 被保険者が同時に二以上の事業所又は船舶に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令の定めるところによる。

4 第二号厚生年金被保険者についての第一項の規定の適用については、同項中「事業主は」とあるのは、「事業主(国家公務員共済組合法第九十九条第六項に規定する職員団体その他政令で定める者を含む。)は、政令で定めるところにより」とする。

5 第三号厚生年金被保険者についての第一項の規定の適用については、同項中「事業主は」とあるのは、「事業主(市町村立学校職員給与負担法(昭和二十三年法律第百三十五号)第一条又は第二条の規定により給与を負担する都道府県その他政令で定める者を含む。)は、政令で定めるところにより」とする。

 

健康保険法とよく似た規定です。

 

<事業主が保険料の半分を負担する理由>

事業主が保険料を半分負担する理由は、公式に明示されてはいませんが、次のようなものが考えられています。

 

・健康保険や被用者年金について、法令が制定される前から、事業主によって独自の福利厚生が行われることがあった。つまり、事業主負担の実態がある程度は存在していた。

・社会保険によって、労働者のモチベーションが高まり生産性が向上する。また、健康保険による医療給付は労働者の職場復帰を早める。このように、社会保険は事業主にも利益をもたらす。

・私的な傷病や私的な原因による障害についても、労働による疲労やプライベートな時間の減少が遠因となることもあり、事業主も一部の責任を負担することが公平に適う。

・事業主の保険料負担は、事業主に対して、労働者の生活援助を法的に強制するものであり、社会連帯原理が社会保険に現れたものである。

 

ただ、なぜ事業主の負担割合が5割とされたのかは理由が曖昧です。

 

2019.06.28. 解決社労士 柳田 恵一

<失業保険から雇用保険へ>

昭和22(1947)年5月3日に日本国憲法が施行され、第27条で勤労権が保障されました。これによって、国家が国民に雇用の場を提供する責務を負ったことになります。

これを受けて、同年の12月1日に失業保険法が制定されました。この法律は、失業保険の対象者が失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図ることを目的としていました。

さらに、勤労権保障の充実のため昭和50(1975)年4月1日失業保険法が廃止され、代わって雇用保険法が施行されました。

 

<雇用保険の目的>

雇用保険法の第1条に、この法律の目的が掲げられています。

「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。」

 

<雇用保険で行われる給付と事業>

雇用保険法の目的に沿って、現在では次のような給付と事業が行われています。

 

求職者給付 基本手当、技能習得手当など
就職促進給付 就業手当、再就職手当など
教育訓練給付 教育訓練給付金
雇用継続給付 高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付
雇用安定事業 助成金の支給
能力開発事業 職業訓練など

 

この中の基本手当が、昔の失業保険金(失業手当)に相当します。

いまだに「基本手当」と言うよりは、「失業手当」と言った方が通じやすい状態です。

このうち給付の保険料は、労働者と使用者が折半します。そして、事業の保険料は使用者が負担します。また、保険料の他に費用の一部を国庫が負担します。

 

2019.06.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和2(2019)年6月23日、朝日新聞が次のように報じています。

 

 サッカーJ2水戸ホーリーホックの沼田邦郎社長は23日、少なくとも自身が社長となった2008年4月以降の11年間、社員への残業代をいっさい支払っていなかったことを明らかにした。沼田氏は「クラブ存続の危機が続き、社員もわかってくれていると思った。甘えがあった」と釈明した。

 記者会見した沼田氏によると、今年4月まで、退職した社員を含む20~40代の計20人の残業代が未払いで、残業時間も把握していなかった。一般に1日8時間、週40時間超の残業や休日の労働については、労使協定(三六協定)を結べば可能だが、クラブは今年4月まで未締結だった。未払い分支払いは労使間で交渉中という。

 一方、沼田氏は昨年4月ごろ、40代男性幹部が20代男性社員に、大声で怒鳴るパワーハラスメントがあったことも明らかにした。社員は退職済みで、クラブが設けた第三者委員会はパワハラと認定。幹部と沼田氏の処分を検討している。

 クラブは現在J2の上位で、J1昇格に必要なJ1クラブライセンスを今後申請する予定だが、認められるかどうかについて沼田氏は「Jリーグが判断すること」としている。

 

ファンとしては、大変ガッカリな内容です。

 

上記の中で「1日8時間、週40時間超の残業」というのは、「1日8時間、週40時間の法定労働時間を超える労働」という意味です。

1日8時間まで、週40時間までの残業なら、労使協定(三六協定)を結ばなくても可能ということではありません。

 

また、「休日の労働」というのは、カレンダーの数字が赤い日という意味ではなく、週1日の「法定休日の労働」という意味です。

 

さらに、「労使協定(三六協定)を結べば可能」というのは、「労使協定を交わして所轄の労働基準監督署長に届け出れば罰則が適用されない」という意味です。

 

なお、社員がわかってくれていても、同意してくれていても、残業代を支払わないのは違法です。

「ビルの屋上から突き落としてもかまいません」と言う人を本当に突き落としたら、犯罪が成立し刑罰が科せられるのと同じです。

 

報道は伝えるのが使命です。わかりやすさを優先します。

何が適法で何が違法かという専門的なことは、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

 

2019.06.26. 解決社労士 柳田 恵一

<新聞の報道>

令和元(2019)年5月16日、北海道新聞が次のように報じました。

 

 函館市消防本部(近嵐(ちかあらし)伸幸消防長)の職員少なくとも数人が2017年度、深夜勤務中の出動では支払われない時間外手当を不正に受給していたことが15日、同本部への取材で分かった。深夜勤務中の時間外手当は本来、仮眠(休憩)中の職員が出動した場合に発生。同本部は職員約280人を対象に、関係書類が残っている15年度以降の深夜勤務の状況について調査を進めている。

 市に3月29日、「市内の消防署で18年3月まで、夜間勤務時間帯に時間外勤務手当の不正受給があった」という趣旨の匿名の手紙が届いたことで発覚。同本部が勤務関係書類などを調べたところ、17年度中に数人の不正受給があったことを確認した。同本部によると、本部や消防署などには、深夜の災害発生などに備えて職員が待機し、交代で仮眠を取っている。災害発生時に仮眠していた職員が出動すると、少なくとも1人1時間1200円の時間外手当が支給される。

 近嵐消防長は「職員が提出する勤務記録の確認が不足していた」と釈明。同本部は「不正受給分については返還を求める」(庶務課)方針で、まずは17年度分の調査結果について近く発表する。(藤山洸一郎)

 

<不当利得の返還>

意図して時間外手当を不正に受給した場合でも、受給した側に過失が無かった場合でも、本来の受給額を上回る部分は返金されなければなりません。

不当利得の返還です。〔民法第703条、第704条〕

 

<詐欺罪の成立>

時間外手当を不正に受給したのが故意によるものであったなら、詐欺罪が成立し、法定刑は10年以下の懲役です。〔刑法第246条第1項〕

「何年も前から皆がやっているのだから大丈夫」と思っていても、それは言い訳に過ぎず、むしろ常習犯ですから犯情が重くなってしまいます。

この場合には、職場での懲戒処分が行われる可能性も高いでしょう。

 

<不適切な労務管理の代償>

上の事例で、消防長は「職員が提出する勤務記録の確認が不足していた」と認めています。

勤務記録を十分に確認していれば、不正受給を防げたということでしょう。

意図せず不正受給をした職員でも、数年分の不正受給の返還を求められるのですから、経済的な負担は小さくありません。

また、不正受給を防ぐということは、詐欺罪の成立を防止することにもなります。

過去からの習慣や出来心で犯罪に走る職員が発生しないようにすることも、使用者に求められる役割です。

上の事例は、消防本部や消防署のものですが、一般企業であっても、労働時間の適正な把握、十分な労務管理、正しい給与計算が求められます。

このことが、会社だけでなく従業員を守ることになるのです。

 

2019.06.25. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年5月29日、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が成立し、6月5日に公布されました。

 

<女性活躍推進法の内容>

女性活躍推進法に基づき、国・地方公共団体、301人以上の大企業は、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、(3)自社の女性の活躍に関する情報の公表を行わなければなりません(300人以下の中小企業は努力義務)。

また、行動計画の届出を行い、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。

 

<優良企業の認定(「えるぼし」認定)>

行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

認定の申請は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で受け付けています。

認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マークを商品などに付することができます。この認定マークを活用することにより、女性の活躍が進んでいる企業として、企業イメージの向上や優秀な人材の確保につながるなどといったメリットがあります。

 

<女性活躍推進法の改正内容>

1 一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

 一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます(施行:公布後3年以内の政令で定める日)。

2 女性活躍に関する情報公表の強化

 常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、

  (1)職業生活に関する機会の提供に関する実績

  (2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

 の各区分から1項目以上公表する必要があります(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

3 特例認定制度(プラチナえるぼし(仮称))の創設

 女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い「プラチナえるぼし(仮称)」認定を創設します(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

 

<両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)>

女性活躍推進法の施行に先駆けて取り組む事業主は、助成金の受給をご検討ください。

女性活躍推進法に沿って、一般事業主行動計画の策定・公表等を行った上で、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、数値目標を達成した事業主に助成金が支給されます。

行動計画等の公表は「女性の活躍推進企業データベース」上で行う必要があります。

 

【助成金の種類と支給金額】

●加速化Aコース
行動計画に盛り込んだ取組内容を2つ以上実施(=「取組目標」を達成)した場合に支給
支給額:38万円〈48万円〉(1事業主1回限り)
対象事業主:常時雇用する労働者が300人以下の事業主

●加速化Nコース
行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、行動計画に盛り込んだ数値目標を達成した場合に支給
支給額:28.5 万円〈36万円〉(1事業主1回限り)
47.5万円〈60万円〉(女性管理職比率が15%以上に上昇した場合のみ)
対象事業主:常時雇用する労働者が300人以下の事業主

※〈〉内は、生産性要件を満たした場合の支給額。

 

2019.06.24. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金の立て替え払いとは>

事業主が破産手続き開始の決定を受けたとき、労働者の請求に基づいて、政府が未払い賃金の立て替え払いをすることがあります。

このことは、「賃金の支払いの確保等に関する法律」の第7条に規定されています。

聞きなれない法律ですが、オイルショック直後に、不況による企業倒産や賃金未払いの増加が著しかったために、その対策として制定されました。

 

<必要な条件>

次の2つの条件があります。

・1年以上労災保険の適用事業であったこと

・最初の破産手続き開始の決定を受けた日などの半年前から1年半後までの2年間に、その事業を退職した者について未払い賃金があったこと

つまり、退職してから半年以内に破産手続きが開始すれば可能性があります。

 

<立て替え払いの対象額>

未払い賃金総額の80%が対象となりますが、退職日の年齢に応じて未払い賃金総額には上限があります。

 

退職日の年齢

未払い賃金総額の上限

 30歳未満

110万円

 30歳以上45歳未満

220万円

 45歳以上

370万円

 

この制度の窓口は、労働基準監督署です。

 

2019.06.23. 解決社労士 柳田 恵一

<労災保険の保険証>

労災保険が適用される労働者は、適用事業に使用される労働者です。

雇用形態に関係なく、賃金を支払われている人はすべてが対象者です。

契約社員、嘱託社員、アルバイト、パート、日雇い労働者も対象となります。

不法就労を含む外国人労働者も対象者です。

派遣社員は、派遣元で対象者になります。

雇用保険や健康保険では個人に保険証(被保険者証)が交付されますが、労災保険では交付されません。

保険料は全額事業主が負担します。

この結果、保険証は持っていないし、給与から保険料は控除されていないけれども、労災保険には入っているという状態になります。

 

<適用事業>

労災保険法が「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定しています。〔第3条第1項〕

個人事業主であっても労働者を雇えば、労災保険の適用対象となります。

ただし、公務員、農林水産業従事者の一部は対象外です。

 

<適用されることの意味>

赤ちゃんが生まれれば、その子について出生届が提出されなくても、一人の人間としての人権を保有することになります。

出生届を提出しなければ、生まれなかったことになり、その子は人権が無いなどということにはなりません。

これと同じように、事業主が所轄の労働基準監督署長に「労働保険関係成立届」を提出しなくても労災保険は適用されます。

たとえ事業主が、保険料の納付を逃れ、労働基準監督署や労働局の監督を逃れる意図で届出をしなくても、そこで働く人々には労災保険が適用されるのです。

 

<届出しないリスク>

事業主が届出を怠っていて、これが発覚したときには大きな不都合が発生します。

何も労災事故が発生しないうちに発覚したのであれば、遡って手続きをして、遡って保険料を納めるだけで済みます。

しかし、たとえば従業員が自転車に乗って出勤する途中で転倒し、意識を失ったまま病院に運ばれれば、通常は労災保険が適用されるでしょう。

なぜなら、家族や友人が駆けつけて、通勤途上の事故だと話すからです。

この場合には、事業主が治療費を負担させられ、賃金の補償もさせられます。

労災事故には健康保険が適用されませんから、3割負担ではありません。

事業主の負担も高額になりますから、場合によっては、事業の運営ができなくなります。

さらに、マイナンバー制度は今後も利用範囲が拡大されていきます。

法人番号と個人番号から、届出をしていない事業主が一斉に摘発される日も近いことでしょう。

 

2019.06.22. 解決社労士 柳田 恵一

<社内規程の必要性>

個人のスマホからのネット投稿が原因で、会社の信用が低下したり、閉店したりというニュースが続いたこともありました。

今でも、こうした事件が後を絶ちません。

仲間同士での内輪受けを狙って気軽に送信したものが、仲間の1人からネットに公開されてしまい、全世界に広まるというパターンです。

会社が仕事のために従業員に使わせているパソコンやスマホは、本来的に業務外の使用が認められない会社の所有物です。

私物の使用を規制するのは困難でも、会社の物品なら合理的な範囲での規制が許されます。

会社を守るためにも、また安易な私用で従業員が非難されないためにも、就業規則に使用規程を加えることが必要でしょう。

 

<企業秘密の漏えい防止>

インターネットの私的利用によって、ウイルスに感染する可能性が高まります。

ウイルスに感染した端末から企業秘密が漏れることもあります。

就業規則には、私的利用の禁止を明確に定めましょう。

これと連動して、懲戒規定にもこれに対応する定めが必要となることもあります。

また内容的には重複するのですが、パソコンやスマホの貸与をする場合には、私的利用をしない旨の誓約書を提出してもらうのが有効です。

 

<モニタリング規定>

労働時間中は、労働者は使用者の指揮命令下に置かれています。

これを使用者の側から見れば、労働者の業務を監視するという関係にあります。

ですから、本来、会社は端末内のデータを確認する権限をもっているわけです。

とはいえ、会社が端末内のデータを確認するとまでは思っていない労働者が、端末内にプライベートなデータを残すかもしれません。

この場合に、会社には権限があるということで、プライバシーをあばいてしまったら、会社の方が非難されるかもしれません。

そうならないように、就業規則には、会社が端末内のデータを閲覧できる旨を規定し、きちんと周知しておきましょう。

 

<従業員教育>

就業規則に定めただけでは安心できません。全従業員に周知しなければ、周知されない人に対しては効力が認められません。

また、教育も重要です。いや、教育の方が重要です。

仲間同士での内輪受けを狙って気軽に送信したものが、仲間の1人からネットに公開され、全世界に広まってしまい、会社の信用が低下したり、店舗が閉店に追い込まれたりの被害が発生しうる。その結果、気軽に送信した人やその親が、多額の損害賠償を請求されることもある。

こうした具体的な説明が必要です。

規程の作成と従業員教育をセットで任せるなら、国家資格を保有する専門家の社会保険労務士がお勧めです。

 

2019.06.21. 解決社労士 柳田 恵一

<障害者の職業紹介状況>

令和元(2019)年6月18日に、厚生労働省が平成30(2018)年度の障害者の職業紹介状況を取りまとめ公表しました。

ハローワークを通じた障害者の就職件数は102,318件で、対前年度比4.6%の増となりました。また、就職率については48.4%で、前年度と同じ水準となりました。

 

<公表内容のポイント>

〇 新規求職申込件数は211,271件で、対前年度比4.5%の増となり、また、就職件数は102,318件で、対前年度比4.6%の増となった。このうち、精神障害者の新規求職申込件数は101,333件で、対前年度比8.1%の増となり、また、就職件数は48,040件で、対前年度比6.6%の増となった。

〇 就職率(就職件数/新規求職申込件数)は48.4%で、対前年度差0.0ポイントとほぼ前年並みとなった。

 

        就職件数   (対前年度差、比)   就職率(対前年度差)

身体障害者   26,841件   (85件増、0.3%増)  43.8%(0.4ポイント減)

知的障害者   22,234件 (1,247件増、5.9%増)  62.1%(3.4ポイント増)

精神障害者   48,040件 (2,976件増、6.6%増)  47.4%(0.7ポイント減)

その他の障害者 5,203件  (196件増、3.9%増)  40.4%(0.8ポイント減)

合計     102,318件 (4,504件増、4.6%増)  48.4%(0.0ポイント増)

 

○産業別の就職件数は、多い順に、「医療,福祉」(35,541件、構成比34.7%)、「製造業」(14,510件、同14.2%)、「卸売業,小売業」(12,607件、同12.3%)、「サービス業」(10,868件、同10.6%)などとなった。

○ 障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)第81条第1項の規定により、ハローワークに届出のあった障害者の解雇者数は、1,980人であった(平成29年度は2,272人)。

 

<障害者雇用率を達成するために>

障害者雇用を斡旋する専門業者もあります。

しかし、こうしてみるとハローワークも捨てたものではありません。

現在従業員がこなしている業務から、障害者が担当する業務を切り分けて、うまく役割分担ができたならダイバーシティ(適材適所)を叶えることができます。

ハローワークだけでなく、社会保険労務士も力になります。

 

2019.06.20. 解決社労士 柳田 恵一

<労働契約法ができた理由>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です。

平成19(2007)年12月5日公布、平成20(2008)年3月1日施行ですから、10年以上が経過し、だいぶ認知度が上がってきました。

この法律は、個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。

個別労働紛争というのは、労働組合が絡まない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。

そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を条文の形にまとめたのが労働契約法です。

個別労働紛争が発生したり発生しそうになったときに、読みにくい判決文を参照しなくても、労働契約法を読めば裁判になったときの結論が想定しやすくなったのです。

 

<労働法の一般的な特色>

労働法というのは、1つの法令の名称ではなく、労働関係や労働者の保護についての法令の総称です。

もともと民法の契約自由の原則が適用されていた労使関係について、労働者の生存権という法理念による修正をする法体系です。

使用者と労働者との関係を形式的に見れば、契約の当事者であり平等な立場ですから、労働契約も他の契約と同じように当事者の自由な話し合いに任せればよいということになります。これが契約自由の原則の考え方です。

ところが、現実の資本主義経済では労働者の立場が非常に弱く、憲法第25条の保障する生存権がおびやかされてしまいます。

そこで、法律が労働者を保護するようになりました。この労働者保護が労働法の基本理念になっています。

 

<労働契約法第1条>

「この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする」〔労働契約法第1条〕

これが労働契約法の目的ですが、「労働者と使用者の自主的な交渉」に任せていては「労働者の保護」が図れないことも多いでしょう。

 

<労働契約法の5原則>

労使対等の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第1項〕

均衡考慮の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第2項〕

仕事と生活の調和への配慮の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第3項〕

信義誠実の原則 = 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。〔第3条第4項〕

権利濫用の禁止の原則 = 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。〔第3条第5項〕

 

<労働契約法の役割>

労働基準法には「使用者は、」で始まる条文が多く、使用者だけに罰則が適用されるのですが、労働契約法には「労働者及び使用者」ということばが多く、罰則規定はありません。

労働契約法は、民法の特別法としての性格を持つため、労働基準監督官による監督・指導は行われず、行政指導の対象ともなりません。

たとえば使用者に安全配慮義務〔労働契約法第5条〕の違反があって、労働者が労働基準監督署に相談しても、指導してもらうことはできないのです。

この法律は、あっせん、労働審判、訴訟での基準を示しているにすぎません。

結局、労働契約法が労働者を保護する役割は、範囲が限定されているといえます。

 

2019.06.19. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法での使用者の定義>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法第10条〕

ここに書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。

「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

<社外にもいる使用者>

「使用者」というと、会社の中にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法第10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

労働基準法の定義している「使用者」の範囲は、意外と広いのだということを覚えておきましょう。

 

2019.06.18. 解決社労士 柳田 恵一

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。

その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。

法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。

そのため、いくつもの解釈が成り立ちうることがあります。

これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そこで、行政通達を発することによって、行政機関が法令の解釈・運用・取扱の基準とすることができるようにしているのです。

 

<行政通達の効力>

行政通達は、あくまでも行政機関内部の指針です。

国民の権利・義務を直接に規律するものではありません。

しかし、たとえば労働基準監督署が企業の監督に入り指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。

ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

これを裏から言えば、企業が確信をもって裁判で争う気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2019.06.17. 解決社労士 柳田 恵一

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、昭和22(1947)年5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的に沿って規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人の偉い人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の保障です。〔憲法第25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法第26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法第27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法第28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法第29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法第30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法第25条〕

このように、憲法第25条から第30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法第27条第2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。

それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法第12条、労働契約法第3条第5項〕

 

2019.06.16. 解決社労士 柳田 恵一

<閣僚会議での方針決定>

令和元(2019)年6月4日、デジタル・ガバメント閣僚会議は、「 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」を決定しました。

 

1.自治体ポイントの活用

2.マイナンバーカードの健康保険証利用

3.マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進等

4.マイナンバーカードの利便性、保有メリットの向上、利活用シーンの拡大

5.マイナンバーカードの安全性や利便性、身分証明書としての役割の拡大と広報等

6.マイナンバーの利活用の推進

 

以下に身近なものをピックアップします。

 

<デジタル・ハローワーク・サービスの推進>

 

【ハローワーク・サービスのデジタル化】

本年度より、マイナンバーカード保持者の求職者給付の申請時の写真添付を不要とするとともに、教育訓練給付金について、マイナンバーカードによる認証で電子申請が可能であることを周知する。また、令和2(2020)年1月から、ハローワークインターネットサービスに「求職者マイページ」を新設し、ハローワークの職業紹介・職業訓練受講の履歴確認、マイナポータルとの連携などオンラインサービスを順次充実する。

 

【ハローワーク・サービスのデジタル化による長期のキャリア形成支援】

令和4(2022)年度以降順次、安全衛生関係各種免許、技能講習修了証明書、技能士台帳、ジョブ・カード等のデジタル化を進め、マイナポータルを通じてマイナンバーカードとの連携を図る。

 

<納税手続のデジタル化の推進>

 

【e-Tax等の自動入力情報の拡大】

令和2(2020)年10月より、年末調整・確定申告手続に必要な情報(保険料控除証明書、住宅ローン残高証明書、医療費情報、寄附金受領証明書、収入関係情報等)について、マイナポータルを通じて一括入手し、各種申告書へ自動入力できる仕組みを開始し、順次入力情報を拡大する。

 

【確定申告等に関するマイナポータルのお知らせ機能の積極的活用】

確定申告等に関する情報や各種説明会の開催案内等について、マイナポータルからの閲覧を可能とする。

 

【電子納税証明書の利用拡大】

電子納税証明書の交付手段の拡大を図るとともに、金融機関等における電子納税証明書の利用拡大に向け、引き続き、業界団体に対して協力要請等を実施する。

 

<建設キャリアアップシステムとの連携>

 

マイナンバーカードでも建設キャリアアップシステムを利用できるよう措置するとともに、登録情報の自動入力等、同システムとマイナポータルとの連携を推進する。また、建設キャリアアップシステム等を活用して、外国人建設労働者の適正就労等を推進する。

 

<各種カード、手帳等との一体化等によるデジタル化の推進>

 

健康保険証利用のほか、お薬手帳、ハローワークカード、ジョブ・カード、教員免許状等との一体化等により、デジタル化を推進するとともに、運転経歴証明書、障害者手帳等、各種カード、書類等についても、マイナンバーカードとの一体化等を検討する。

 

2019.06.15. 解決社労士 柳田 恵一

<試用期間の低賃金>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなど、試用期間だけ労働条件が異なるパターンは多いですね。

ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。

「月給 ÷ 所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

所定労働時間が決まっていないなど、法令を無視した条件を設定しないように注意したいものです。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。

解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。

しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

なお、14日以内なら無条件で解雇できるわけではなく、解雇の厳密な条件を満たしていなければ、不当解雇となって、会社が損害賠償責任を負うことは言うまでもありません。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、不当に人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。報告・連絡・相談を怠らないこと」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退する方もいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2019.06.14. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分の種類>

民間企業での懲戒処分の種類は、会社によって名称が違うものの、一般的には次のようなものです。

  • 懲戒解雇
  • 諭旨解雇 ― 自主的に退職を申し出てもらうよう促します
  • 降格
  • 出勤停止
  • 減給
  • 譴責(けんせき)― 始末書を提出して反省してもらいます

 

<懲戒処分の制限>

就業規則や労働条件通知書に具体的な規定があることが大前提です。

就業規則がなくて、新人に労働条件通知書も交付していない会社であれば、何も懲戒処分ができません。〔労働基準法第89条〕

こうしたルールが事前に表示されていないのに懲戒処分が行われたなら、使用者と労働者の関係ではなく、王様と奴隷の関係になってしまいますから当然のことです。

減給には、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。〔労働基準法第91条〕

賞与から減額する場合も同じです。

たとえば月給の総支給額が平均30万円なら、平均賃金の1日分は約1万円ですから、1つの減給処分でできる減給は約5千円です。もし、いくつもの懲戒理由が重なって、いくつもの減給処分が重なっても、約3万円までとなります。これを超える減給は、労働基準法違反となります。

 

<懲戒処分の比較>

懲戒解雇と諭旨解雇とでは、就業規則で退職金の支払い額に差を設けていることが多いので、退職金の支払いがゼロとなりうる懲戒解雇が最も重い処分ということになります。

降格という処分は微妙です。あえて懲戒処分にしなくても、人事考課で評価を下げるとか昇進を停止するとか左遷するなどによって同様の効果が得られるので、あえて懲戒処分とする必要性は疑わしいものです。ただし、人事考課を含めきちんとした人事制度がない会社では懲戒処分も必要でしょう。

減給については、労働基準法の制限が厳しいですから、出勤停止のほうが重い処分になります。たとえば、1週間の出勤停止であれば給与からそれだけの欠勤控除ができます。

譴責の効果は、対象者によって大きく異なります。普段から、事務職で文書作成を業務としている社員にとって、始末書の作成はあまり負担になりません。減給1,000円のほうが辛いでしょう。しかし、普段全く文書を作成しない社員にとって始末書の作成は大きな負担となります。減給1万円のほうが楽かもしれません。

 

<どの懲戒処分を選ぶか>

基本的には就業規則の定めに従うことになります。しかし「懲戒解雇とする。ただし、本人が深く反省しているなど情状酌量の余地があるときは、諭旨解雇または降格にとどめることがある」などと幅を持たせる規定も多く見られます。

こうした場合には「どうして一段下の懲戒処分ではダメなのか」ということを、よく考えて決めることになります。対象者によっては、減給より譴責のほうが辛いということもあるのですから、よく考えて一段軽い処分を選択するのも効果的でしょう。

 

2019.06.13. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

健康保険法には次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

 

厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

 

こうして社会保険料、つまり健康保険料と厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。

ただし、建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。それでも、厚生年金保険料は労使折半です。

 

<労働者の全額負担>

法律の規定にもかかわらず、「社会保険への加入を望むなら、保険料は全額自己負担」という違法なことをしている企業があります。

こうした企業では、経営者が自己の取り分を増やそうとして、このような違法を貫いているのでしょうか。

たしかに、労働者が社会保険に加入すれば、会社の負担も増えることになります。しかし、会社はこの負担も計算に入れたうえで、月給や時給を設定するのではないでしょうか。

15年前には、社会保険に入りたがらないフリーター(有期フルタイム労働者)が多くいて、採用面接をしていても社会保険加入の説明をすると辞退してしまうことがありました。とにかく手取り収入を増やしたいということだったのです。

今では、老後の生活に対する不安もあってか、社会保険に加入できないことがリスクだと考えられるようになっています。

「社会保険に入りたかったら、保険料は全額自己負担」という違法な取り決めも、昔は労働者のニーズに適合した部分があります。

しかし、今やブラック企業として敬遠されています。

求人広告には高めの時給を示しておきながら、社会保険料は全額自己負担というやり口は、いかにもブラック企業です。

会社が社会保険料の半分を負担していては、会社の経営が成り立たないのであれば、その会社は遵法経営ができないということであり、その会社が存在していることの社会的意義が問われてしまいます。

社会保険料を全額自己負担にしている経営者の方や、そうした会社で勤務している方々には、労使折半にできる工夫をしていただきたいです。どうしても、改善できないのであれば、その事業を継続することの意義を再確認していただきたいです。

 

2019.06.12. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分の目的>

懲戒処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

1.の目的からすると、懲戒処分の対象事実や処分の内容を公表する必要はありません。

しかし、公表しなければ2.と3.の目的が果たされませんから、ある程度公表することは必要です。

 

東京地裁の判決で、「懲戒処分は、不都合な行為があった場合にこれを戒め、再発なきを期すものであることを考えると、そのような処分が行われたことを広く社内に知らしめ、注意を喚起することは、著しく不相当な方法によるのでない限り何ら不当なものとはいえないと解される」としています(東京地裁平成19年4月27日判決 X社事件)。

 

<名誉毀損の問題>

懲戒処分の対象となった事実や懲戒処分の内容を公表した場合に、それが真実であれば会社が責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉毀損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、真実であろうとなかろうと名誉を毀損することは犯罪になるということです。

こうして犯罪が成立しうるということは、損害賠償請求の対象ともなりうるということです。

 

東京地裁の判決で、懲戒解雇の事実や理由を公表することが適法とされるためには、公表行為が「その具体的状況のもと、社会的にみて相当と認められる場合、すなわち、公表する側にとって必要やむを得ない事情があり、必要最小限の表現を用いて事実をありのままに公表した場合に限られる」としました(東京地裁昭和52年12月19日判決 泉屋東京店事件)。

そもそも、懲戒処分が労働契約法第15条により無効とされた場合は、公表が名誉毀損等の不法行為に当たることが多いといえます。

 

<必要最小限の社内公表>

前掲の泉屋東京店事件判決の基準によると、公表する側にとって必要やむを得ない事情があり、必要最小限の表現を用いて事実をありのままに公表した場合に限り許されることになります。

まず、懲戒処分対象者の氏名そのものや、所属・性別・年代など個人を特定できる情報は、これを公表することによる名誉権侵害は著しいので、基本的には許されません。ただ、懲戒処分を行う目的を果たすために、個人の特定が必要不可欠であるような例外的な場合にのみ許されます。

つぎに、懲戒処分の内容を公表することも、懲戒処分の目的である企業秩序の回復、再発防止、労働者の安心を図るために一定の範囲内で必要性が認められます。しかし、懲戒処分の理由を具体的に記載することにより、個人の特定が可能となってしまう場合には、やはり名誉毀損となる恐れが強まります。

さらに、被害者がいる場合には、被害者の名誉に対する配慮も必要となります。セクシャルハラスメントの事案で、ある程度詳細な事実を公表することで、処分対象者と被害者両方が特定されてしまい、被害者の名誉権が侵害されることにもなります。

 

<会社が責められないために>

就業規則には、懲戒処分の社内公表に関する規定を設けておくことが必要です。規定さえあれば、許されるわけではないですが、こうした規定があることは、裁判でも公表が相当であるという判断に傾く一要素となりえます。

また、公表の内容としては、「就業規則第◯条第◯項の『○○○○』に該当したため、第◯条第◯項の手続きに従い、第〇条第〇項の処分が行われました」というものに留めるのが得策です。

さらに、公表の方法としては、社内のイントラネットなどで「社外秘」として、1週間程度に期間を限定して行うという配慮も必要です。

 

2019.06.11. 解決社労士 柳田 恵一

<出向の意味>

「出向」とは、他の企業の指揮監督下で労務を提供する形態の雇用契約です。

元々在籍している企業を「出向元(しゅっこうもと)」、実際に勤務している企業を「出向先(しゅっこうさき)」と言います。

出向元から見て、他の企業に出向することを「出出向(でしゅっこう)」と言います。

反対に、他の企業から受け入れている出向を「入出向(いりしゅっこう)」と言います。

また、籍を元の企業に置いたまま他の企業に出向する「在籍出向」と、元の企業の籍を失って他の企業に出向する「転籍出向」とがあります。

「在籍出向」では、出向元・出向先の両方との間で雇用契約が成立しています。2つの契約には矛盾が生じうるので、これを調整するため、一般には出向元と出向先の間で出向契約という契約が交わされます。

「転籍出向」では、出向元との雇用契約が解消され、出向先との雇用契約のみになります。元の企業に戻る可能性は、その企業のルールや慣行によります。

厄介なことに、これらすべてが一口に「出向」と呼ばれます。

しかも「出向」と言った場合に、どの「出向」を指しているかは企業によって異なります。

 

ここでは、最も一般的な在籍出向に限定して述べます。

 

<出向命令の根拠>

出向元が従業員に出向を命ずる根拠は、就業規則や労働条件通知書に記載されているのが一般です。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【人事異動】

第8条  会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。

3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

 

こうした規定が無ければ、出向命令はできないのですが、会社と従業員とが新たに合意して出向契約を交わすことは可能です。

 

<出向拒否の根拠>

労働契約法は、懲戒や解雇と同様に、権利の濫用にあたる場合には無効であることを規定しています。

 

【出向】

第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

ここで、「その他の事情」には、出向後の労働条件の説明、不利益変更の有無、出向命令を受けた従業員の個人的な事情などが含まれます。

先ほどのモデル就業規則第8条第3項と併せて読むと、次のような事情があれば、出向拒否をする正当な理由があるということになります。

 

【出向拒否の正当な理由】

1.業務上の必要が無い

2.他の不当な動機・目的をもって出向命令が行われた

3.出向後の労働条件の説明が無い

4.出向により賃金の減額など労働条件が不利益に変更される

5.個人や家庭の事情により出向に対応できない

 

<1.業務上の必要>

企業は、関連会社との人材交流、出向者の技術取得、現場経験、あるいは出向先での技術指導を行わせるなどの必要から、出向を命じます。

慣例として、ローテーションで出向命令が出されているようなケースでは、これに該当することが多いでしょう。

しかし、業務上の必要の判断は、一般には企業側に裁量権があります。

 

<2.他の不当な動機・目的>

社長の個人的な恨み、組合活動への報復、年次有給休暇の取得が多いなどの理由で出向命令が出された場合には、出向命令に正当な目的がありませんから、権利の濫用となり無効となります。

 

<3.4.出向後の労働条件>

出向後の労働条件について、対象者に個別あるいは説明会で具体的に説明する必要があります。

就業規則に詳細を定めてしまえば、対象者への説明はかなりの部分が省けます。

労働条件の不利益変更については、一般の場合と同様に、個別の同意を得るか就業規則の定めが必要となります。

ただし、著しい不利益変更であれば、本人の同意があっても、権利の濫用や公序良俗違反(民法第90条)とされ無効になることもあります。

 

<5.個人や家庭の事情>

たとえば、育児介護休業法には次の規定があります。

 

【労働者の配置に関する配慮】

第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

 

企業は、子の養育や家族の介護に大きな支障が出ないように配慮をすることが必要です。

そして、可能な措置を尽くしても、なお大きな支障が出るのであれば、出向を拒否されても仕方が無いことになります

この他、出向者本人の生活に大きな支障が出る場合、たとえば勤務そのものが困難であるとか、持病の治療が継続できなくなるなどの正当な理由があれば、出向を拒否することに正当な理由が認められます。

 

企業が出向命令を出すには根拠規定が必要なこと、出向者に対する説明と出向者からの聞き取りも必要なことを忘れないようにしましょう。

出向拒否があっても、就業規則の規定だけを見て懲戒や解雇を検討してはならないのです。

 

2019.06.10. 解決社労士 柳田 恵一

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、重い職務専念義務が課されています。

ですから、ほとんどの場合はダブルワーク禁止です。

親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

民間企業では、会社が給与を支払っています。

ですから、社員が自社の職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、厳しい態度を取る必然性はありません。

 

<ダブルワークの理由>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。

こうした人たちは、会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと考えています。

しかし中には、別の仕事もしてみたい、家業を手伝いたい、別の分野で自分の能力を高めたい、将来の独立に向けて準備したいなど考えている人もいます。

働き方改革の流れで、政府は副業・兼業を推奨していますから、ダブルワークを希望する人は今後も増えるでしょうし、企業も対応を迫られています。

 

<ダブルワーク禁止の理由>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。これを参考に、社内規定を調えてはいかがでしょうか。

 

【副業・兼業】

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

就業規則で「ダブルワーク禁止」としたり、社員に「ダブルワークしません」という念書を提出してもらったりした場合、これらは有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力が無いということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて有効になるというわけではありません。

実際に有効とされるためには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

 

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

 

これらの条件は、労働契約法第15条・第16条によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、アルバイトなどの活動は、本来の入国目的とは異なるということで制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2019.06.09. 解決社労士 柳田 恵一

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴を偽ることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。これにならって、就業規則に採用取り消しや懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題は無いのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。やはり、人事異動を考えるべきでしょう。

 

2019.06.08. 解決社労士 柳田 恵一

<社員紹介制度(リファラル採用)>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払いが行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度は、労働基準法に違反する場合があります。

 

【中間搾取の排除】

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

ここでいう法律とは、通達によると、職業安定法や船員職業安定法です。

また、業として利益を得るというのは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいうものと解されています。

いわゆるピンハネを禁止する規定です。

この規定に違反した場合の罰則は、労働基準法上2番目に重い、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。ともすると、人身売買につながり得るとの配慮から、こうした重い罰則となっています。

もっとも、社員紹介制度をそこまで大々的に展開することは稀でしょうから、一般の企業で、労働基準法違反は起こり難いと思われます。

 

しかし、注意しなければならない法的規制として、職業安定法の次の規定があります。

 

【報酬の供与の禁止】

第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

 

この中の第36条第2項は、従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとする場合をいいますから、従業員を対象とする社員紹介制度は含まれません。

「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」と言っていますから、商品券など物品の進呈はいけません。

従業員が紹介により得られる報酬は、賃金として支払われる制度にすることが必要です。

 

<就業規則の規定>

紹介者には賃金が支払われるのですから、給与や賞与にプラスして支給される内容を就業規則に規定する必要があります。

基本給や本来の賞与額に比べて相当に高額であると、「業として利益を得る」ことになり、労働基準法第6条に違反する恐れが出てきます。1回の紹介に対する謝礼の他、1人の従業員が紹介できる人数に制限を設ける必要もあるでしょう。特定の従業員の知り合いが多数集まると、派閥形成のリスクもあります。

また、支給の時期については、紹介があったとき、紹介された人が採用されたとき、採用されて6か月など一定の期間定着したときなどが考えられます。各時点で異なる金額を支給する制度も可能です。

 

2019.06.07. 解決社労士 柳田 恵一

<休職中の社会保険料>

休職中で賃金の支払いが無くても、通常通り社会保険料を納付しなければならず、会社と社会保険加入者(被保険者)とで折半します。

雇用保険の場合には、月々の賃金に対する一定割合として計算されますから、賃金の支払いが無ければ保険料も発生しません。

しかし社会保険料は、標準報酬月額という基準額に対する一定割合として計算されますから、賃金が発生しなくても保険料が発生するのです。

 

<9月分からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、原則として、毎年4月から6月までの賃金支払い実績から計算されます。

その年の4月から6月までの賃金支払い実績が、その時の標準報酬月額の水準より高ければ、9月分の保険料は高くなった新しい標準報酬月額を基準に計算されます。

そして、9月分の社会保険料は、一般には10月支給分の賃金から控除されます。この時から、社会保険料が増えることになります。

ですから、7月以降に休職が始まった場合には、「休んでいるのに10月から社会保険料が増えた」という現象が生じます。

人手不足で残業代が増える一方、長時間労働で疲労が蓄積して病に倒れ入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

<昇給して5か月目からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、「標準報酬月額保険料額表」という表に定める基準で、2ランク以上アップすることになると、昇給の5か月目から社会保険料が増額されます。

たとえば、11月に支給された賃金から増えたとすると、11月から翌年1月までの賃金支払い実績をもとに、2月からの新しい標準報酬月額が決定されます。2月分の保険料は、3月に徴集されるのが一般ですから、11月から数えて5か月目に保険料が増額されることになります。

3月に休職が始まった場合には、3月に徴集される保険料から増額されますから「休職したら保険料が増えた」という感覚に陥ります。

昇進して忙しくなり責任も重くなって、体調を崩し入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

2019.06.06. 解決社労士 柳田 恵一

<労働時間・休憩時間の定義>

労働基準法には、休憩について次の規定があります。

 

【休憩】

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

労働基準法の中に「労働時間」「休憩時間」の定義はありません。

このため、会社が独自の解釈で労務管理や賃金計算を行っている場合があります。

たとえば、業務で着用が決められている制服に着替える時間を労働時間から除いていたり、お弁当を食べながらの電話番を休憩時間として扱っていたりという違法な運用も見られます。

その結果、労働基準監督署の調査(臨検監督)が入れば、その違法性を指摘され、すぐに是正するよう求められます。

 

<通達の役割>

労働基準監督署が企業を指導するにあたって、「労働時間」「休憩時間」の定義があやふやであれば、企業側が納得できません。

そのため、法令解釈の基準として次のような通達が示されています。

 

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。〔平29.1.20 基発第3号〕 

 

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱う。〔昭22.09.13発基第17号〕

 

これらの通達は公表されていますから、ネットで調べるなり、所轄の労働基準監督署に問い合わせるなりすれば、比較的容易に内容を知ることができます。

 

<判例の役割>

上の通達によっても、従業員が社外で市場調査の業務を行い、そのまま帰宅した場合には、どこまでが「使用者の指揮命令下にある時間」といえるのかが不明確です。

また、昼休みであっても、業務上の必要に応じて電話で呼び出せる状態では、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とはいえないのかという疑問も生じます。

このため、会社が休憩時間として扱った時間を、従業員や退職者が労働時間であると判断し、会社を相手に未払い賃金の請求訴訟を提起するということが起こります。

会社は、訴訟代理人の弁護士を選任するでしょう。そして、依頼された弁護士は、事実関係、使える証拠、条文、通達、過去の裁判例などを確認します。

過去の判決などは、最高裁判所のホームページで参照することができます。

しかし、今回の事例にどの判例があてはまるのか、この判例の射程はどうなのか、会社が準備できる証拠によって主張できるのはどこまでかなど、難しい判断を迫られます。

 

<企業としての対応>

欲を言えば、社内に専門部署を置いて、法改正、新たな通達、新判例の情報を随時吸収し、社内の問題点を改善していきたいものです。

新たな判例が、いままでの判例や通達を覆すということもありますから、判例の研究には重点を置かなければなりません。

しかし、こうした体制が取れない場合には、労働問題に詳しい社会保険労務士を顧問に置いて、トラブルの発生を未然に防止する。万一トラブルが発生したら、労働事件に対応できる弁護士と連携させるというのが現実的でしょう。

社会保険労務士の中には、手続きを専門として活動している先生もいます。弁護士の中には、労働事件を扱わない先生もいます。その先生の専門をよく確認したうえで選ぶと良いでしょう。

 

2019.06.05. 解決社労士 柳田 恵一

<始末書を提出させる意味>

始末書の目的は、事実の報告、発生の原因分析、謝罪、具体的な再発防止策の提示です。

この中に謝罪が含まれないものは、単なる報告書あるいは顛末書ですから、上司の判断で部下に提出を求めることができます。

しかし、謝罪が含まれるものは始末書ですから、懲戒処分として提出を求めることになります。これは上司の判断で行えるわけではなく、就業規則に譴責(けんせき)処分などの具体的な規定があって、懲戒処分の適正な手続きに従い、会社の代表者が提出を命じることになります。

上司だけの判断で部下に始末書の提出を求めることは、職場での優越的な関係を背景として業務上必要相当な範囲を超えたことを行わせることになり、パワハラに該当するのが一般です。

 

<「いかなる処分もお受けします」の法的効力>

(懲戒)処分は、就業規則に具体的な規定があって、適正な手続きに従い行われるものです。

どのような行為が対象となるのかが不明確な状態で懲戒処分が行われれば、客観的に合理的な理由を欠いているので、懲戒権の濫用となり無効となります。

このことは、労働契約法第15条に規定されています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、始末書に「いかなる処分もお受けします」と書いたところで、就業規則の規定を超える処分は無効となってしまうのですから、この記載も無効ということになります。

また、「相応の処分を受ける覚悟でおります」などの記載は、当たり前のことを書いたに過ぎませんから、書いても書かなくても効力に違いはありません。

 

<裁判での効果>

従業員が何度も就業規則違反を行い、何度も始末書を書かされ、ついには懲戒解雇となったとします。

これを不服として、解雇された人が訴訟を提起した場合には、会社から不当解雇ではないことの証拠資料を提出することになります。

実際には、会社が不当解雇ではないことの証拠を揃えておくことは大変で、顧問の社会保険労務士などと相談して、解雇の相当前から準備しておかなければなりません。

会社は証拠資料として、裁判所に始末書も提出することになります。

そこに「いかなる処分もお受けします」と書かれていたら、裁判官は会社に対して良い印象を持ちません。懲戒権の濫用があるのではないかと疑ってしまいます。

そして、民事訴訟法には次の規定があります。

 

【自由心証主義】

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

日本の民事訴訟では、何が証拠となるかについて法令に網羅されているわけではなく、裁判所の自由な心証に委ねられているのです。

この自由心証主義によって、会社側から証拠として提出した始末書が、解雇された側に有利に働くことがあるわけです。

つまり法的効力の無い「いかなる処分もお受けします」の記載が、会社にとってマイナスとなりうるのですから、こうした言葉の入った始末書が提出されたら、再提出を求めるべきです。

 

<始末書は必要か>

さて、始末書は本当に必要でしょうか。

会社にとって役立つのは、事実の報告、発生の原因分析、具体的な再発防止策です。特に再発防止に向けた具体的な取組みは、大いに役立つでしょう。

謝罪の部分は、会社側つまり経営者、人事部門、上司の気が済む程度の効果しかありません。しかも、そこに本心が書かれているとは限りません。本人の反省の程度とは無関係です。

こうしてみると、上司から報告書の提出を求めた方が現実的ではないでしょうか。

裁判になっても、この報告書からルール違反の事実は認定できますし、裁判所の心証を害することもありません。

就業規則に始末書に関する規定があるのなら、その必要性を再検討することをお勧めします。

 

2019.06.04. 解決社労士 柳田 恵一

<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

 

【委任】

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

ここで、当事者の一方は会社であり、相手方は役員です。

つまり、会社が役員に法律行為を委託し、役員が会社に承諾して効力が発生します。

「法律行為」というのは、権利の発生・変更・消滅を望む意思で行うことにより、その通りの効果を生じさせるものをいいます。

 

<兼務役員の立場>

役員として、会社との間で委任契約を締結したからといって、雇用契約を重ねて契約できなくなるわけではありません。

雇用契約についての基本的な規定は、民法にあります。

 

【雇用】

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

会社との間で役員として契約し、同時に労働者としても契約している人のことを、兼務役員といいます。

会社からは、役員報酬と給与の両方が支給されます。

労働者としての立場では労働基準法などの保護を受ける一方で、役員としての立場では労働基準法などの保護が受けられず、会社法などに定められた重責を負うことになります。

兼務役員の行動が、役員としてのものか労働者としてのものか、明確に区分することが困難な場合も多々ありますが、会社は労働者として勤務している部分について、労働時間の適正な把握が義務付けられています。

つまり、この部分については、出勤簿が必要ということになります。

 

<名ばかり役員の立場>

役員として登記されているにもかかわらず、それに相応しい権限を与えられず、取締役会に出席することもないという「名ばかり役員」がいます。

こうした人は、100%労働者ですから、労働基準法などが適用されます。

つまり、出勤簿が必要です。

 

<健康保険と労働保険>

傷病手当金など健康保険の給付は、純然たる役員にも、兼務役員にも、名ばかり役員にも権利があります。

出勤簿が無い場合でも、別の資料から役員として、あるいは労働者としての活動があった日、休業した日は判りますから、手続きをするのに困らないはずです。

純然たる役員には、労災保険も雇用保険も適用がありません。

兼務役員には、労働者の部分について、労災保険・雇用保険が適用されます。兼務役員になったときは、ハローワークで手続きが必要です。給付が受けられるのは、労働者としての立場に基づく部分に限られます。

名ばかり役員は、労災保険も雇用保険も適用されます。

ただ困ったことに、会社は労働基準法や労働保険などの適用を排除し、不当に会社の負担を減らそうとしていることが多いものです。

名ばかり役員の立場を1日も早く解消するため、専門家へのご相談をお勧めします。

 

2019.06.03. 解決社労士 柳田 恵一

<性別による差別の禁止>

事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。〔男女雇用機会均等法第5条〕

また、事業主は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけません。〔男女雇用機会均等法第6条〕

労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています(男女同一賃金の原則)。〔労働基準法第4条〕

 

<間接差別の禁止>

事業主が以下の措置を行うことは、実質的に一方の性に不利益となって、性別を理由とする差別となるおそれがあるため、合理的な理由がない限り、間接差別として禁止されています。〔男女雇用機会均等法第7条〕

・募集・採用にあたり身長、体重または体力を要件とすること

・コース別雇用管理における総合職の募集・採用にあたり転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること

 

<セクシュアルハラスメント対策>

セクシュアルハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否・抵抗などしたことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)」及び「性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」をいい、女性、男性ともに対策の対象となります。

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずる義務があります。〔男女雇用機会均等法第11条〕

LGBTについての認識も高まっていますから、同性しかいない場所や同性間でのセクハラにも対応する必要があります。

 

<ポジティブ・アクション>

過去の女性労働者に対する取り扱いなどが原因で、職場に生じている男女間格差を解消する目的で、女性のみを対象としたり、女性を有利に取扱う措置については法違反とはなりません。〔男女雇用機会均等法第8条〕

また、このような格差の解消を目指して雇用管理の改善について企業が自主的かつ積極的に取り組みを行う場合、国が援助できる旨の規定が設けられています。〔男女雇用機会均等法第14条〕

 

2019.06.02.  解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は、事業者に、仕事が原因で労働者が事故にあったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。

ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法第66条〕

また最近では、仕事のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤によって病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

社会保険や雇用保険は、従業員一人ひとりについて、個人ごとに手続きをしないと保険に加入しません。

しかし、労災保険は雇われると同時に保険に加入しますので、個人ごとの手続きは要りませんし、保険料は雇い主側の全額負担となります。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法第715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を追及される裁判も増えています。〔会社法第429条1項〕

 

2019.06.01. 解決社労士 柳田 恵一

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低額が、時間単価で定められています。〔最低賃金法〕

これは原則として都道府県単位で定められていて、政府は全国平均が1,000円以上となるように引き上げる方針です。

最低賃金は、毎年のように改定されています。改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

外国人であっても、日本国内で働いている労働者は、ごく一部の例外を除き、この最低賃金を守ることが必要です。

たとえ労働者が同意しても、基準より低い賃金は認められません。

法律によって、使用者は最低基準額で計算した賃金支払義務を負うことになります。

最低賃金法違反で書類送検された使用者のニュースは、ときどき報道されていますので、現に最低賃金に満たない賃金が支払われることもあるわけです。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

平均賃金は、世間相場とは関係なく、対象者の過去の賃金を基準として法令に従って計算されます。

また、複数回規律違反をしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払い方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法第24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。

これ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

また、年次有給休暇を取得すると賃金が減少する、残業代の一部がカットされる、残業代に上限が設けられるなども、全額払いの原則に違反します。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2019.05.31. 解決社労士 柳田 恵一

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2019.05.30. 解決社労士 柳田 恵一

<揺れ動く判断基準>

従業員が不都合な行動に出た場合、それが就業規則に定められた禁止行為であったり、義務違反であったりして、個々の具体的な懲戒規定に当てはまるものであれば、懲戒処分を検討することになります。

しかし、人手不足の今、たとえ従業員の落ち度であっても、けん責処分、減給処分、出勤停止などすれば、気を悪くして退職してしまい、会社に大きな痛手となるかもしれません。

こうして、人手が余っているときには懲戒処分が多発し、人手不足の場合には多少のことに目をつぶるという企業の態度が見られることもあります。

一方で、従業員の方も、人手が余っているときには品行方正を保ち、人手不足のときには強い態度に出るということがあります。

 

<情状酌量の考え方>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

(懲戒の事由)

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

本来は懲戒解雇に該当するような行為があっても、平素の服務態度その他の情状によっては、減給や出勤停止にとどめることがあると規定しています。

ここでの「情状」は、あくまでも懲戒対象者個人の情状です。

また、重大な過失により会社に重大な損害を与えたが、ミスがあってはならない仕事を1人の従業員に任せていて、チェック体制が整っていなかったというような事情があった場合には、会社側にも落ち度があって、従業員だけに責任を負わせるわけにはいかないので、こうした事情を斟酌して情状酌量するということがあります。

 

<懲戒処分の有効性>

懲戒処分の有効性については、労働契約法に次の規定があります。

 

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

無効とされれば、懲戒処分から生じた従業員の損害は、慰謝料を含め会社に請求されることとなります。

裁判にでもなれば、従業員の会社に対する信頼や、世間からの評判は大いに低下することでしょう。

人手不足のときに懲戒処分の対象とせず見逃していた行為を、人手が足りているときに懲戒処分の対象としたなら、これは会社側の都合でそのようにしたわけであって、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」であることは否定されてしまいます。

人手不足のときに軽い懲戒処分、人手が足りているときに重い懲戒処分というのも同様です。

どちらも、その懲戒処分は無効になってしまいます。

 

<ご都合主義の排除>

その時々の社内事情により、懲戒処分の判断基準を変えてしまうことは危険です。

なぜなら、過去に許されていた行為が許されないと判断されたり、過去に軽い処分で済んでいた行為が重く処分されたりというのは、労働契約法第15条により無効になってしまうからです。

会社が「人手不足だから多少のことは大目に見る」という態度を取っていれば、従業員は足元を見てしまい、会社の規律は保たれなくなります。これでは労働生産性が低下してしまいます。

人手不足だからこそ、懲戒規定の運用は厳格にしなければなりません。

 

2019.05.29. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<慶弔休暇の性質>

慶弔休暇は、自分自身や近親者の慶事(結婚・出産)、近親者の弔事(葬式)の際に取得できる休暇のことです。これについては、労働基準法などに規定がありません。法定外の特別な休暇です。

そのため、慶弔休暇の内容については、各企業で自由に定められてきました。

しかし、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由について説明を求められうることになったわけです。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

 

<慶弔休暇に差を設ける合理的な理由>

会社に全く慶弔休暇の制度が無いとしても、これは違法ではありません。

あくまでも、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由に合理性があるかという形で問題とされるのです。

これは、働き方改革の一内容である同一労働同一賃金の視点からの規制です。

慶弔休暇の必要性については、所定労働日数が正社員など一般の労働者と同じであれば、パート・有期労働者であっても否定のしようがありません。

また、勤続年数や1日の所定労働時間、役職などによって、その必要性に違いが生ずることもほとんどありません。

ですから、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して、一律に一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

 

<企業の取るべき対応>

週所定労働日数が2~3日であれば、結婚式や葬式などが出勤日と重なる可能性は低いでしょう。それだけ、慶弔休暇を与える必要性も低くなります。

慶弔による休みが必要になった場合には、勤務日の振替で対応することを原則とし、対応し切れないときに慶弔休暇を与える制度にすることは、決して不合理ではありません。

これは、有期雇用・無期雇用による差別でもなく、1日の所定労働時間による差別でもありません。同一労働同一賃金の趣旨に反してはいないのです。

しかし、これを理由に、一部の従業員の慶弔休暇が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実態を把握するために従業員への聞き取り調査を行い、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.28. 解決社労士 柳田 恵一

<事業主の義務>

高年齢者雇用安定法第9条は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、事業主の高年齢者雇用確保措置について、次のように定めています。

 

第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ

二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三 当該定年の定めの廃止

 

<定年年齢の変更>

定年年齢を65歳未満としている事業主が、高年齢者雇用確保措置として、定年年齢の変更を選択する場合には、定年年齢を65歳以上に引き上げるか、定年を廃止しなければなりません。

手続き的には、労働条件通知書の改定や、就業規則の変更、従業員への周知、所轄の労働基準監督署長への届出などが必要となります。

 

<継続雇用制度の導入>

現に雇用している高年齢者を、本人の希望によって、定年後も引き続き雇用する制度で、次のようなものがあります。

・再雇用制度 = 定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ制度

 一般には、労働条件の大幅な変更を伴います。

・勤務延長制度 = 定年で退職とせず、引き続き雇用する制度

 一般には、労働条件の大幅な変更を伴いません。

具体的な内容は、それぞれの会社の就業規則で定められますが、どちらの場合にも、退職金は定年年齢で支給されるのが普通です。

 

継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を対象とすることが必要です。希望者全員とは、定年後も引き続き働きたいと希望する人全員です。

とはいえ、就業規則に定める解雇・退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことについては客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられます。〔高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24 年厚生労働省告示第560号)〕

 

2019.05.27. 解決社労士 柳田 恵一

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

しかし、「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するという規定です。「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

 

<注意書きにも注意>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

面倒であれば、就業規則のプロフェッショナルである社会保険労務士にご用命ください。

 

2019.05.26. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。

一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.25. 解決社労士 柳田 恵一

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続きへの非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

2019.05.24. 解決社労士 柳田 恵一

<通常の場合>

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています。〔労働契約法第17条第1項〕

期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

 

<長期勤続の場合>

また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条〕

ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。

 

<証明書の交付>

さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

これは、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条〕

明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。

たとえば、以下のような理由です。

・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため

・担当していた業務が終了・中止したため

・事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

 

2019.05.23. 解決社労士 柳田 恵一

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<賞与支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに賞与を支給しているのであれば、賞与支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、賞与支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【賞与支払の一般的な理由】

会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待

 

これらの理由で賞与を支払っているのなら、正社員など通常の労働者に限定して賞与を支払っているのは不合理ですから、改めなければなりません。

なぜなら、会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待は、全従業員に共通ですから、一部の従業員に限定して賞与を支払うことは、客観的に合理的な説明がつかないのです。

もっとも、正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、「長期雇用への期待」という理由も合理性が認められます。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに賞与が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに賞与が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者だけが、半期に一度上司と面接して目標を設定し、この目標の達成度に応じて賞与が支給される。ただし、達成度が基準に達しないほど低ければ、職能等級が低下するなどによって、基本給も下がってしまうという待遇上の不利益が発生する。そして、新法対象者であるパート・有期労働者は、こうした仕組みの対象外であるから、時給が下がるようなことはない。

 

<企業の取るべき対応>

すでに賞与支給の理由が明確となっていて、一部の従業員だけに支給されているのであれば、その合理性を検討します。

客観的な合理性が無いのであれば、全従業員に同じ基準で賞与を支給することになります。

しかし、賞与の原資には限りがありますから、一部の従業員の賞与が減るのであれば不利益変更となります。個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実際には、賞与支給の趣旨があやふやなことも多いものです。

この場合には、顧問の社会保険労務士などと相談してうまく対応しましょう。

 

2019.05.22. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金倒産>

少し昔のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第53条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして活用>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2019.05.21. 解決社労士 柳田 恵一

<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、わかりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

2019.05.20. 解決社労士 柳田 恵一