新着記事

<法令の規定>

社会保険労務士は、依頼に応じる義務があると言われます。

その根拠となっているのは、主に次の社会保険労務士法の規定です。

 

【依頼に応ずる義務】

第二十条 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。

 

この条文は「開業社会保険労務士は、」から始まっています。

社会保険労務士として登録する場合、独立して開業する開業社会保険労務士の他に、企業などで勤務する勤務社会保険労務士などの形があります。

勤務社会保険労務士は、自分が働いている企業のために業務を行っているわけです。他の会社や個人から、社会保険労務士としての業務を受けることがありません。

 

また、カッコ書きで「紛争解決手続代理業務に関するものを除く」と書かれています。紛争解決手続代理業務を行えるのは、社会保険労務士の中でも研修を受け試験に合格して登録を受けた人だけです。この人たちは「特定社会保険労務士」などと呼ばれています。

「特定社会保険労務士」は、社会保険労務士の業務にプラスアルファで紛争解決手続代理業務も行うことができるわけです。決して、社会保険労務士の業務のうちの特定のものだけを行えるということではありません。

 

結局、依頼に応じる義務があるのは、開業社会保険労務士であって、その対象となる業務は、紛争解決手続代理業務に関するものを除くということになります。

 

<現実的な対応として>

開業社会保険労務士の業務は幅広いものです。

ですから、障害年金、企業の手続き業務、助成金の申請、給与計算、就業規則の作成・改定など、どれか1つ特定の分野に集中して専門的に行っている社会保険労務士事務所も多いのです。

また、業務経験を積んでいない新人の社会保険労務士もいます。

こうした所に、依頼があった場合に、依頼を拒めないとすると不都合があります。依頼された社会保険労務士も困りますし、依頼した企業や個人が適切なサービスを受けられないということになりかねません。

そこで、社会保険労務士が自ら依頼を受けられないと判断した場合には、その分野に明るい、その業務経験を積んでいる社会保険労務士を紹介するようにしています。

多くの国家資格がある中、特に社会保険労務士は仲間意識が強いのではないでしょうか。お互いにライバル視し足を引っ張り合うのではなく、強い協力関係が形成されていると感じられます。

こうしたことから、社会保険労務士への依頼を考えた場合には、どうぞお近くの社会保険労務士にお気軽にご連絡ください。

 

2018.10.18.解決社労士

<労働契約法の規定>

労働契約法には、安全配慮義務について次の規定があります。

 

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法は、最高裁判所の判決の理由中に示された判断を中心にまとめられた法律です。

 

<最高裁の判決>

上の規定の元となったのは、昭和50(1975)年2月25日の最高裁第三小法廷の判決です。

陸上自衛隊の隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両を整備していたところ、後退してきたトラックにひかれて死亡し、遺族が国に対して損害賠償を請求した事件です。

この判決は、「国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設、器具等の設置管理またはその遂行する公務の管理にあたって、国家公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきである」と述べています。

 

<安全配慮義務の根拠>

現在では、労働契約法が安全配慮義務の根拠となります。

しかし、労働契約法ができた平成19(2007)年よりも前から、安全配慮義務が認められてきました。

その根拠については、学者の間でも考えが分かれ定説というものがありませんでした。

それでも、簡単に説明すると次のようになるでしょう。

 

【安全配慮義務の説明】

労働契約の内容は、次のことが基本です。

・労働者は、労務の提供について債務者、賃金について債権者である。

・使用者は、労務の提供について債権者、賃金について債務者である。

債務者の立場から、それぞれ誠実に債務を履行するのは当然のことです。

 

これとは別に、信義則上、債権者は債務者がうまく債務を履行できるよう配慮する義務を負っています。

ここで、「信義則」というのは、民法1条2項に定められた「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。

 

こうして債権者には、債務者に対する次のような配慮が求められます。

・使用者は、安全配慮義務などを負う。

・労働者は、例えば銀行支店の統廃合により、給与振込口座に変更が生じたら、会社に届出る義務を負う。

 

債権者としての義務に違反したときに、債権者が被る不利益は自ら負担することになりますし、債務者に与えた不利益については賠償責任を負うことになります。

 

2018.10.17.解決社労士

<雇用継続給付>

雇用継続給付とは、職業生活の円滑な継続を援助、促進することを目的とし、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」、「介護休業給付」が支給されるものです。

・高年齢雇用継続給付 ― 60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の雇用保険加入者(正しくは被保険者)に支給されます。・育児休業給付 ― 育児休業を取得した被保険者に支給されます。

・介護休業給付 ― 介護休業を取得した被保険者に支給されます。

※支給には、それぞれ一定の条件があります。

 

<手続きの変更>

従来は、それぞれの申請書に雇用保険被保険者の署名・押印が必要でした。

平成30(2018)年10月1日に、雇用保険法施行規則の⼀部を改正する省令が施行され、その申請内容等を事業主等が被保険者に確認し、被保険者と合意のもと「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」を作成して保存することで、申請書への被保険者の署名・押印を省略することができるようになりました。なお、保存期間は手続き完結の日から4年間です。

この手続きが認められる要件は、事業主が被保険者に対して同意書を提出させて、これを事業主が保存していることです。原則として、ハローワークに同意書を提出する必要はありません。

申請書の申請者氏名(印)の欄や、賃金証明書の確認印又は自筆による署名の欄には、「申請について同意済」と記載してください。電子申請も同様です。

 

<手続き簡素化のメリット>

雇用継続給付は、2か月に1回の申請により継続的に給付を受けるものです。

そのため、手続きのたびに受給する被保険者の署名を求めることになります。

高年齢雇用継続給付受給者の署名を求めるのは、受給者が手続き担当者の近くで勤務していれば比較的簡単です。

しかし、遠方の店舗などで勤務している場合には、郵送でのやり取りになるなど、手間がかかる他、ハローワークへの提出期限に間に合うかの心配があります。

また育児休業給付は、休業中の受給者とのやり取りになりますので、やはり同様のことが言えます。

今回の手続きによって、このような不便が解消されたわけです。

ただし、被保険者が合意しなければ、従来の方法で手続きすることになります。

 

2018.10.16.解決社労士

 

中小企業でも任意特定適用事業所であれば、ここの従業員は大企業と同じ基準で社会保険に加入することになります。

 

<大企業での加入基準>

平成28(2016)年10月から、厚生年金保険と健康保険の適用対象者が拡大されました。

週20時間以上働く短時間労働者で、厚生年金保険の加入者(被保険者)数が常時501人以上の法人・個人・地方公共団体に属する適用事業所および国に属する全ての適用事業所で働く人も厚生年金保険等の適用対象となっています。

 

【平成28(2016)年10月から拡大された適用対象者】

勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満で、以下の①~⑤すべてに該当する人

① 週の所定労働時間が20時間以上あること

② 雇用期間が1年以上見込まれること

③ 賃金の月額が8.8万円以上であること

④ 学生でないこと

⑤ 被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること

⑤の企業を特定適用事業所といいます。

 

<中小企業への基準適用>

平成29(2017)年4月からは、被保険者数が常時500人以下の企業であっても、労使合意に基づき申出をした企業では、上記の基準が適用されます。

 

【平成29(2017)年4月から拡大された基準適用企業】

次の同意を得たことを証する書類(同意書)を添付して、本店または主たる事業所の事業主から所轄の年金事務所に「任意特定適用事業所該当/不該当申出書」を提出した企業

 

・従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合の同意

 

・こうした労働組合がないときはA、Bのいずれかの同意

A.従業員の過半数を代表する者の同意

B.従業員の2分の1以上の同意

このような手続きをした企業を任意特定適用事業所といいます。

 

企業が新人を採用する際には、社会保険の加入について十分な説明を行うはずです。

しかし、加入基準が複雑になってきていますので、採用される側としても、「前に働いていた会社と同じ条件で働くのだから、社会保険には入らないのだろう」という先入観をもたずに、きちんと確認する必要があります。

 

2018.10.15.解決社労士

<健康診断の対象者>

企業は、常時使用する労働者に対し、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定が無くても、この実施義務を免れることはできません。むしろ、健康診断に関する規定がもれているわけですから、就業規則への補充が必要です。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

 

【健康診断の対象者の基準】

・期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

・1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

 

1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満の労働者であっても、2分の1以上であれば、健康診断を実施することが望ましいとされています。努力義務です。

 

<実施義務のある健康診断>

実施しなければならない健康診断は次のとおりです。

1.常時使用する労働者に対しては、雇入れの際に行う健康診断、及び1年に1回定期に行う健康診断。

2.深夜業に常時従事する労働者に対しては、その業務への配置替えの際に行う健康診断、及び6か月に1回定期に行う健康診断。

3.一定の有害な業務に常時従事する労働者に対しては、採用、及びその業務への配置替えの際と、その後に定期で行う特別の項目についての健康診断。

4.その他必要な健康診断。

 

<深夜勤務と健康診断>

上記のうち、2.が深夜勤務についての健康診断です。

この中の「常時従事」については、法令に明確な基準が示されていません。

しかし、深夜勤務をしている労働者からの自発的健康診断の結果の提出〔労働安全衛生法66条の2〕について、厚生労働省令が「6か月を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した者」という基準を示しています。

ですから各企業は、過去6か月間で24回以上深夜勤務のあった労働者を対象として、年1回の定期健康診断の6か月後、この健康診断を実施しています。

実施しなければ、1人につき50万円以下の罰金という罰則も、常時50人以上の労働者を使用していれば、所轄の労働基準監督署に健康診断結果報告書を提出しなければならないのも一般の定期健康診断と同じです。

22:00~翌朝5:00の勤務回数を適正に把握して、健康診断の実施もれが発生しないように注意しましょう。

 

2018.10.14.解決社労士

<働き方改革とは>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ労働生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働の解消>

現在、大手企業を中心に最も進んでいる働き方改革といえば、残業時間を初めとする労働時間の削減でしょう。

労働時間の削減は、ひとつ一つの業務の必要性を見直すことが基本です。過去からの習慣で行っている業務、得られる成果が経営陣の自己満足だけのような業務は最初に切り捨てられます。

これはこれで正しいのですが、労働者側の声として「働き方改革の影響で収入が減った。転職を考えている」というのがあります。

残業時間の減った正社員は、その分だけ残業手当が減り給与が減少します。パート社員は時間給ですから、出勤日数や労働時間が減った分だけ収入が減ります。

会社側は、働き方改革で労働時間が減り、労働生産性が向上したということで喜んでいる一方、働き手の不満は膨らんでいるようです。

 

<正しい働き方改革>

「残業時間が減ったから残業手当も減った。バンザイ!」というのは、飽くまでも会社側の考えです。

収入が減れば、社員のモチベーションは低下します。生活レベルも低下して疲労回復も限定されてしまいます。会社への帰属感は低下します。「この会社が好きだけど、今の仕事が気に入っているけれど、転職しないと生活できない」という社員も増えてしまいます。

こうした状態では、労働生産性が低下します。やる気が無くなり、不安が先行しますから当たり前のことです。

社員は人間ですから、収入が減ればやる気が無くなります。

残業時間が減ったのなら、今までの残業分を定額残業代として支給してはいかがでしょうか。残業代を不当に削るための定額残業代ではなく、働き方改革が進んだことへの報奨としての定額残業代です。

パート社員についても時給のアップを考えましょう。採用難の中、ただでさえ人材確保のために時給を高めに設定する必要があります。「皆さんのご協力のおかげで働き方改革が進んでいます。これに報いるため時給の見直しを行います」というアナウンスをすると効果的です。

たしかに形式的には、会社の人件費は少しも削減されません。しかし、社員の疲労は軽減され、やる気は大幅にアップします。

これが正しい働き方改革の姿なのです。

 

2018.10.13.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

次の2つの場合について比較してみましょう。

A : 1つの会社で週40時間働いて約40万円の月給を得る場合

B : 2つの会社で、それぞれ週約20時間働いて、それぞれ約20万円の月給を得る場合

 

<年金保険>

Aの場合には、厚生年金に加入し、厚生年金保険料が給与から控除されます。扶養している配偶者について、保険料を負担せず国民年金に加入できます(第三号被保険者)。

Bの場合には、原則として厚生年金には加入せず、自分で手続きをして国民年金に加入します。扶養している配偶者も、国民年金に加入し保険料を負担します。

将来老齢年金を受け取る場合には、厚生年金の方が有利ですし、これは障害年金や遺族年金でも同様です。

 

例外的にBの場合で、片方の会社が特定適用事業所の場合には、その会社で厚生年金に入ります。特定適用事業所には、任意特定適用事業所が含まれます。

保険料は、その会社の給与や賞与が基準となり、将来受ける年金も保険料に見合ったものとなります。

 

さらに、Bの場合で、両方の会社が特定適用事業所の場合には、両方の会社で厚生年金に入ります。

この場合、「健康保険・厚生年金保険所属選択・二以上事業所勤務届」という書類をメインとなる会社の所轄年金事務所に提出します。

大雑把に言うと、両方の会社の給与を合算して保険料の総額を確定し、各会社の給与の額に応じて按分した金額が、それぞれの会社の保険料となります。

ですから、2つの会社が連動して手続きを行うことになります。

 

<健康保険>

健康保険への加入については、厚生年金への加入とほぼ同様のことがいえます。

Bの場合に、健康保険に入らなければ、たとえばプライベートの傷病で会社を長期間休業しても傷病手当金がもらえません。

片方の会社だけで健康保険に入った場合には、その会社の月給に見合った傷病手当金しかもらえません。

 

<雇用保険>

週20時間以上の勤務の場合に雇用保険に加入します。

しかし、Bの場合のように2つの会社で勤務し、どちらも週20時間以上の勤務であっても、メインの会社の方だけ雇用保険に入ります。

もし、その会社を辞めたら、もう片方の会社で雇用保険に入ります。片方の会社だけ辞めても失業の状態にはなりませんから、失業手当(求職者給付の基本手当)はもらえません。

 

<労災保険>

Bのように、2つの会社で勤務する場合には、どちらの会社での労働災害についても労災保険が適用されます。

ただし、労災事故が発生した側の会社についてのみ給付が行われます。

たとえば、休業した期間の賃金の補償については、その会社の給与のみが基準となります。

 

<結論として>

Bの方が、保険料の負担が少ない分だけ、手取りが増えるケースもあります。

しかし、万一の場合の補償や将来のことを考えると、Aの方が安心といえるでしょう。

 

2018.10.12.解決社労士

<遺族年金>

遺族年金は、一家の働き手や年金受給者などが亡くなったときに、残された家族に給付される年金です。

遺族年金を受け取るには、亡くなった人の年金保険料の納付状況に条件があります。また、亡くなった人の年金の加入状況などによって、受け取れる年金の種類が異なってきます。これは、年金をもらう人ではなく、亡くなった人についての条件です。

一方で、年金をもらう人にも、年齢や優先順位などの条件が設けられています。

ここでは、遺族厚生年金について説明します。

 

<亡くなった人の条件>

次のうち少なくとも1つの条件を満たす必要があります。

 

(1)厚生年金に加入している人が在職中に死亡した場合(2)在職中に初診日のある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した場合(3)障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給者が死亡した場合(4)受給資格期間が25年以上ある人が死亡した場合

 

このうち、(1)(2)(3)が短期要件で、(4)が長期要件です。

平成29(2017)年8月の法改正で、「10年年金」になりましたが、これは老齢年金の話であって、遺族年金には当てはまりません。ですから、(4)の条件は25年のままです。

また、(1)(2)の場合、死亡日前に国民年金の保険料を納めていなければならない期間があるときは、原則として保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。

ただし、2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。

 

<年金をもらう人の条件>

亡くなった人によって生計を維持されていた、妻、子、孫、55歳以上の夫、父母、祖父母

このうち、子と孫は18歳到達年度の年度末を経過していないか、20歳未満で障害年金の障害等級1・2級であることが必要です。

また、55歳以上の夫、父母、祖父母の支給開始は60歳からとなります。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できます。

さらに、子のない妻が30歳未満の場合には、5年間の有期給付となります。

なお、上記の条件を満たす子のある配偶者、子は、遺族基礎年金も併せて受けられます。

これらの条件を満たした人が全員年金をもらえるわけではなく、法定の優先順位に従って、実際に受給できる人が決まります。

 

<生計を維持されていたとは>

原則として次の要件を満たす場合をいいます。

 

(1)同居していたこと(別居していても、仕送りしていた、健康保険の扶養親族であった等の事情があれば認められます。)。(2)加給年金額等対象者について、前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。

 

<年金事務所で確認を>

年金の仕組みは複雑ですから、これらの事項には、細かな例外があります。

また、年金受給者が亡くなった場合には、年金が後払いの形で支給されることから、亡くなった人が受け取り切れなかった年金(未支給年金)を遺族が受け取ることになります。

年金受給者が亡くなったことそのものを届け出る必要がありますから、あわせて年金事務所で確認することをお勧めします。

 

2018.10.11.解決社労士

有期労働契約の打ち切り>

一般の正社員のように、契約期間を区切らず定年まで働く契約を無期労働契約といいます。

これに対して、パートやアルバイトなど契約期間を区切って更新を重ねていく契約を有期労働契約といいます。

有期労働契約で雇っている労働者を、期間満了時に契約の更新を行わずに終了させることを「雇い止め」といいます。

 

<法律の規定>

一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法19条〕

ここで、「客観的に合理的な理由を欠き」というのは、労働契約法1条に示された労働契約法の目的や全体の趣旨に反することをいうと考えられます。

 

労働契約法第1条(目的)

この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

また、「社会通念上相当である」というのは、裁判で認定された世間一般の常識に反していないことを指していると考えられます。

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「雇い止めに関する法理」という理論を条文にしたものです。

ですから、雇い止めがこの理論による有効要件を満たしていなければ、裁判では無効とされ、有期労働契約が自動的に更新されることになります。

 

<雇い止めに関する法理>

雇い止めは、次のような事情が多く認められるほど、有効と判断されやすくなります。

・業務内容や労働契約上の地位が臨時的なものであること。・契約更新を期待させる制度や上司などの言動が無かったこと。

・契約更新回数が少ないこと、また、通算勤続期間が短いこと。

・他の労働者も契約更新されていないこと。

・雇い止めに合理的な理由が認められること。

 

反対に、次のような事情があると、雇い止めが無効であり労働契約が継続していると判断されやすくなります。

業務内容や労働契約上の地位が継続的なものであること。正社員と同様の働き方をしていること。・就業規則に契約更新を期待させる内容や上司など一定の立場にある人から「長く働いて欲しい」「来年もよろしく」など契約更新を期待させる言葉があったこと。

・契約更新回数が多いこと、また、通算勤続期間が長いこと。

・同じ職場で、同様の契約をしている労働者の中に、契約を更新されている人がいること。

・雇い止めに客観的に合理的な理由が認められないこと(些細なことや上司の好き嫌いを理由に契約を更新しないなど)。

契約更新を期待させる事情があったり、契約を更新しない理由が不合理であったりする場合です。 

 

<注意ポイント>

契約期間の終了間際になってから雇い止めの話を切り出したり、事前に充分な説明が無かったりすれば、それだけで「社会通念上相当でない」と判断されます。

雇い止めをする事情が発生したときに、「あまり早く事情を説明したら勤務意欲を失うのではないか」と考えてためらってはいけません。

対象者は次の仕事を見つける必要がありますから、できるだけ早く納得のいく説明を聞きたいのです。

 

2018.10.10.解決社労士

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2018.10.09.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2018.10.08.解決社労士

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第4 中小事業主における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直し(新労基法第138条及び整備法附則第1条関係)

1 趣旨

 中小事業主において特に長時間労働者の比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を図りつつ、中小事業主に使用される労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月 60 時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第 37 条第1項ただし書の規定について、中小事業主にも適用することとしたものであること。

 

 2 猶予措置の廃止(新労基法第 138 条関係)

 上記1の趣旨に基づき、労働基準法第 138 条を削除し、中小事業主についても月 60 時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上としなければならないものとするものであること。

 なお、週休制の原則等を定める労働基準法第 35 条が必ずしも休日を特定すべきことを求めていないことに着目し、月 60 時間を超える時間外労働に対する5割以上の割増賃金率の適用を回避するために休日振替を行うことにより、休日労働の割増賃金率である3割5分以上の割増賃金率を適用することは、労働基準法の趣旨を潜脱するものであり、望ましくないことに留意 すること。

 

 3 施行期日(整備法附則第1条関係)  

 猶予措置の廃止に係る改正規定の施行期日は、平成 35 年4月1日である こと。

 

法改正により、月間60時間超の時間外労働に対する割増賃金率は、2割5分以上から5割以上に引き上げられています。

この法改正は、中小企業には猶予されていましたが、2023年4月1日から中小企業であっても大企業と同様に5割以上の割増率となります。

社内で月間60時間を超える残業をする人がいるのなら、2割5分の割増率であっても、もう一人雇った方が、会社の人件費は安くて済みます。

幸い2023年度に施行されるということですので、東京オリンピックが終わってから、チャンスを伺って新人を雇うのが得策でしょう。

 

2018.10.07.解決社労士

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第3 年次有給休暇(新労基法第39条及び新労基則第24条の5等関係)

1 趣旨

 年次有給休暇の取得率が低迷しており、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものであること。

 

2 年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(新労基法第 39 条第7項及び第 8項並びに新労基則第 24 条の5関係)  

 

⑴ 使用者による時季指定(新労基法第39条第7項及び第8項関係)

 使用者は、労働基準法第39条第1項から第3項までの規定により使用者が与えなければならない年次有給休暇(以下「年次有給休暇」という。)の日数が10労働日以上である労働者に係る年次有給休暇の日数のうち、5日については、基準日(継続勤務した期間を同条第2項に規定する6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期 間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下同じ。)から1年以 内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものであること。

 この場合の使用者による時季指定の方法としては、例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で年次有給休暇取得計画表を作成し、これに基づき年次有給休暇を付与すること等が考えられるものであること。

 ただし、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により年次有給休暇を与えた場合においては、当該与えた年次有給休暇の日数(当該日数 が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。すなわち、労働者が自ら時季指定して5日以上の年次有給休暇を取得した場合や、労働基準法第39条第6項に基づく計画的付与により5日以上の年次有給休暇を取得した場合には、使用者による時季指定は不要であること。 

 

 ⑵ 年次有給休暇を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則 第24条の5関係)

 

ア 10労働日以上の年次有給休暇を前倒しで付与する場合の取扱い(新労基則第24条の5第1項関係) 使用者は、年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から10労働日以上与えることとしたときは、当該年次有給休暇の日数のうち5日については、基準日より前の日であって、10 労働日以上の年次有給休暇を与えることとした日(以下「第一基準日」という。) から1年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならないものであること。  

 

イ 付与期間に重複が生じる場合の特例(新労基則第24条の5第2項関係)

上記アにかかわらず、使用者が10労働日以上の年次有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日(以下「第二基準日」という。)に新たに10 労働日以上の年次有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間をいう。)の月数を12で除した数に5を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えること ができること。

 

 ウ 第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合の取扱い(新労基則第24条の5第3項関係)

第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合においては、その経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして新労基法第39条第7項本文の規定を適用するものであること。

 

エ 年次有給休暇の一部を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則第24条の5第4項関係)

使用者が年次有給休暇のうち10労働日未満の日数について基準日以前の日(以下「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該10労働日未満の日数が合わせて10労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして新労基則第24条の5第1項から第3項までの規定を適用するものであること。この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により与えた年次有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。

 

 ⑶ 半日単位の年次有給休暇の取扱い

年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているが、この取扱いに変更はないものであること。 この現行の取扱いに沿って、半日単位の年次有給休暇を労働者が取得した場合については、新労基法第 39 条第8項の年次有給休暇を与えた場合として取り扱って差し支えないものであること。 また、新労基則第 24 条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた 際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が新労基法第 39 条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えないものであること。 これらの場合において、半日単位の年次有給休暇の日数は 0.5 日として 取り扱うものであること。

 

3 労働者からの意見聴取(新労基則第 24 条の6関係)

 使用者は、新労基法第 39 条第7項の規定により、労働者に年次有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならないものであること。 また、使用者は、年次有給休暇の時季を定めるに当たっては、できる限り 労働者の希望に沿った時季指定となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならないものであること。

 

4 年次有給休暇管理簿(新労基則第24条の7及び第55条の2関係)  

 使用者は、新労基法第 39 条第5項から第7項までの規定により年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(以下「年次有給休暇管理簿」と いう。)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後 3年間保存しなければならないこと。

 また、年次有給休暇管理簿については、労働者名簿又は賃金台帳とあわせて調製することができるものであること。  

 なお、年次有給休暇管理簿については、労働基準法第 109 条に規定する重要な書類には該当しないものであること。

 

5 罰則(新労基法第 120 条関係)

 新労基法第 39 条第7項に違反した使用者に対しては、新労基法第 120 条第1号の罰則の適用があること。

 

6 施行期日(整備法附則第1条関係)  

 年次有給休暇に係る改正規定の施行期日は、平成 31 年4月1日である こと。

 

7 経過措置(整備法附則第4条関係)  

 整備法の施行の際4月1日以外の日が基準日(年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとした場合はその日)である労働者に係る年次有給休暇については、整備法の施行の日後の最初の基準日の前日までの間は、新労基法第 39 条第7項の規定にかかわらず、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法第 39 条が適用されるものであること。

 

 

<時季指定義務>

年次有給休暇を取得するにあたって、労働者は時季を指定できます。この権利が時季指定権です。「○月○日に」と指定するわけですから、言葉としては「取得日指定権」でしょう。しかし欧米では、長期連休を取る習慣がありますから、労働基準法では、これに倣って「時季」という言葉が使われています。

さて、平成31(2019)年4月1日からは、労働基準法の規定により、年次有給休暇が10日以上付与される労働者については、実際に5日以上取得させる義務が使用者に課されます。年間で4日以下の労働者がいると、1人につき30万円の罰金が科されうるようになります。この5日間については、使用者側が時季指定義務を負うという形になります。

労働者が自主的に年次有給休暇を取得しないのなら、使用者はこれを放置しておいても良かったのが、法改正によって、労働者の意見を聞きながら積極的に年次有給休暇を取得させる義務が生じたわけです。

 

<中小企業では>

上記の通達の中の2(2)と(3)は、労働基準法の規定を超えて労働者の権利を拡大する場合の話ですから、中小企業ではあまり参考になりません。

むしろ、今まで年次有給休暇の取得に目が行かなかった会社では、4に示されている「年次有給休暇管理簿」は必須だと思われます。これが無ければ、うっかり年次有給休暇の取得が1日足りない労働者が出てしまうかもしれません。

 

<法改正への対応のためにやるべきこと>

業務を減らすしかありません。社内で知恵を絞り、取引先とも相談して、あるいは外部の専門家の力を借りて徹底的に行いましょう。

これができないと、人員を増やして対応せざるを得ませんが、どうしても人件費が増えてしまいます。

過去の習慣にとらわれず、思い切った改革が必要になると思われます。

 

2018.10.06.解決社労士

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第2 時間外労働の上限規制(新労基法第36条及び第139条から第142条まで、新労基則第16条等並びに指針関係)

1 趣旨 長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっている。これに対し、長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。

 こうしたことから、時間外労働の上限について、現行の労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成 10 年労働省告示第 154 号。以下「限度基準告示」という。)に基づく指導ではなく、これまで上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を法律に規定し、これを罰則により担保するものであること。

 

2 新労基法第 36 条第1項の協定の届出(新労基法第 36 条第1項並びに新労基則第 16 条及び第 70 条関係)

 新労基法第 36 条第1項の協定(以下「時間外・休日労働協定」という。)の届出様式を改めたものであること。具体的には、時間外・休日労働協定に特別条項(新労基法第 36 条第5項に規定する事項に関する定めをいう。以下同じ。)を設けない場合にあっては新労基則様式第9号により、特別条項を設ける場合にあっては新労基則様式第9号の2により、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

 併せて、新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務に対応した様式(新労基 則様式第9号の3)、新労基法第 139 条第2項、第 140 条第2項、第 141 条 第4項又は第 142 条の規定により読み替えて適用する新労基法第 36 条の規定に対応した様式(新労基則様式第9号の4から第9号の7まで)を整備したものであること。

 

3 時間外・休日労働協定における協定事項(新労基法第 36 条第2項及び新労基則第 17 条第1項関係)

 時間外・休日労働協定において、以下の⑴から⑸までの事項を定めることとしたものであること。

 ⑴ 新労基法第 36 条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲(新労基法第 36 条第2項第1 号関係)時間外・休日労働協定の対象となる「業務の種類」及び「労働者数」を協定するものであること。

⑵ 対象期間(新労基法第 36 条第2項第2号関係) 時間外・休日労働協定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、時間外・休日労働協定において、1年間の上限を適用する期間を協定するものであること。

 なお、事業が完了し、又は業務が終了するまでの期間が1年未満である場合においても、時間外・休日労働協定の対象期間は1年間とする必要があること。

⑶ 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合(新労基法 第 36 条第2項第3号関係)時間外労働又は休日労働をさせる必要のある具体的事由について協定するものであること。

⑷ 対象期間における1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数(新労基法第 36 条第2項第4号関係)整備法による改正前の労働基準法における時間外・休日労働協定は、労働基準法施行規則第 16 条第1項において「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的協定事項とされているが、今般、新労基法第 36 条第4項において、1箇月について 45 時間及び1年につい て 360 時間(対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により 労働させる場合は1箇月について 42 時間及び1年について 320 時間)の 原則的上限が法定された趣旨を踏まえ、整備法の施行後の時間外・休日労働協定においては「一日」、「一箇月」及び「一年」のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数について定めるものとしたものであること。

⑸ 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項(新労基法第 36 条第2項第5号及び新 労基則第 17 条第1項関係) ア 時間外・休日労働協定の有効期間の定め(新労基則第 17 条第1項第 1号関係) 

 時間外・休日労働協定(労働協約による場合を除く。)において、当該時間外・休日労働協定の有効期間を定めるものであること。

イ 新労基法第 36 条第2項第4号の規定に基づき定める1年について労働時間を延長して労働させることができる時間の起算日(新労基則第 17 条第1項第2号関係)

 時間外・休日労働協定において定めた新労基法第 36 条第2項第4号 の1年について労働時間を延長して労働させることができる時間を適用する期間の起算日を明確にするものであること。

ウ 新労基法第36条第6項第2号及び第3号に定める要件を満たすこと。(新労基則第 17 条第1項第3号関係)

 時間外・休日労働協定で定めるところにより時間外・休日労働を行わせる場合であっても、新労基法第 36 条第6項第2号及び第3号に規定する時間を超えて労働させることはできないものであり、時間外・休日労働協定においても、この規定を遵守することを協定するものであること。

 これを受け、新労基則様式第9号及び第9号の2にチェックボックスを設け、当該チェックボックスにチェックがない場合には、当該時間外・ 休日労働協定は法定要件を欠くものとして無効となるものであること。

エ 限度時間を超えて労働させることができる場合(新労基則第 17 条第 1項第4号関係)

 時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、限度時間 (新労基法第 36 条第3項の限度時間をいう。以下同じ。)を超えて労働させることができる具体的事由について協定するものであること。

オ 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(新労基則第 17 条第1項第5号関係)

 過重労働による健康障害の防止を図る観点から、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間を超えて労働させる労 働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(以下「健康福祉確保 措置」という。)を協定することとしたものであること。なお、健康福祉 確保措置として講ずることが望ましい措置の内容については、指針第8 条に規定していること。

カ 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率(新労基則第 17 条第1項 第6号関係)

時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間 を超える時間外労働に係る割増賃金率を1箇月及び1年のそれぞれについて定めなければならないものであること。

 なお、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率については、労働基準法第 89 条第2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就 業規則に記載する必要があること。

キ 限度時間を超えて労働させる場合における手続(新労基則第 17 条第 1項第7号関係)

 限度基準告示第3条第1項に規定する手続と同様のものであり、時間外・休日労働協定の締結当事者間の手続として、時間外・休日労働協定を締結する使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者(以下「労使当事者」という。)が合意した協議、通告その他の手続(以下「所定の手続」という。)を定めなければならないものであること。

 また、「手続」は、1箇月ごとに限度時間を超えて労働させることができる具体的事由が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、限度時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となるものであること。

 なお、所定の手続がとられ、限度時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要が あること。

 

4 健康福祉確保措置の実施状況に関する記録の保存(新労基則第 17 条第2 項関係)

 使用者は、健康福祉確保措置の実施状況に関する記録を当該時間外・休日労働協定の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存しなければならないものであること。

 

5 限度時間(新労基法第 36 条第3項及び第4項関係)

 時間外・休日労働協定において新労基法第 36 条第2項第4号の労働時間を延長して労働させる時間を定めるに当たっては、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限るものとしたこと。 また、限度時間は、1箇月について45 時間及び1年について 360 時間( 対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は、1箇月について 42 時間及び1年について320時間)であること。

 

6 特別条項を設ける場合の延長時間等(新労基法第 36 条第5項関係)

 時間外・休日労働協定においては、上記3に掲げる事項のほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間を定めることができることとしたものであること。

 この場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間については、上記3⑷に関して協定した時間を含め 100 時間未満の範囲内としなければならず、1年について労働時間を延長して労働させることができる時間については、上記3⑷に関して協定した時間を含め 720 時間を超えない範囲内としなければならないも のであること。

 さらに、対象期間において労働時間を延長して労働させることができる時間が1箇月について 45 時間(対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は 42 時間)を超えることができる月数を1年について6箇月以内の範囲で定めなければならないものであること。

 

7 時間外・休日労働協定で定めるところにより労働させる場合の実労働時間数の上限(新労基法第 36 条第6項及び新労基則第 18 条関係)

 使用者は、時間外・休日労働協定で定めるところにより時間外・休日労働を行わせる場合であっても、以下の⑴から⑶までの要件を満たすものとしなければならないこと。また、以下の⑵及び⑶の要件を満たしている場合であっても、連続する月の月末・月初に集中して時間外労働を行わせるなど、短期間に長時間の時間外労働を行わせることは望ましくないものであること。

 なお、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合には、その使用者が当該労働者の他社での労働時間も適正に把握する責務を有しており、以下の⑴から⑶までの要件については、労働基準法第 38 条に基づき通算した労働時間により判断する必要があること。その際、労働基準法における労働時間等の規定の適用等については、平成 30 年1月 31 日付け基発 0131 第2号「「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の周知等について」の別添1「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考とすること。

 ⑴ 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、 1日における時間外労働時間数が2時間を超えないこと。(新労基法第 36 条第6項第1号及び新労基則第 18 条関係)

 整備法による改正前の労働基準法第 36 条第1項ただし書と同様の内容であること。

 ⑵ 1箇月における時間外・休日労働時間数が 100 時間未満であること。(新 労基法第 36 条第6項第2号関係)

 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働さ せた時間の合計時間が 100 時間未満であることを規定したものであること。

 ⑶ 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間の直前の1箇月、2 箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における 時間外・休日労働時間数が1箇月当たりの平均で80時間を超えないこと。(新労基法第 36 条第6項第3号関係)

 時間外・休日労働協定の対象期間におけるいずれの2箇月間ないし6 箇月間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間が 80 時間を超えないことを規定したものであること。

 

8 厚生労働大臣が定める指針(新労基法第 36 条第7項から第 10 項まで関係)

 厚生労働大臣は、時間外・休日労働協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができるものとし、今般、指針を定めたものであること。 労使当事者は、当該時間外・休日労働協定の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないものであること。 また、行政官庁は、指針に関し、労使当事者に必要な助言及び指導を行うことができるものとし、当該助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならないものであること。 指針の内容等については、下記 11 のとおりであること。

 

9 適用除外(新労基法第 36 条第 11 項関係)

 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務の特殊性が存在する。このため、限度時間(新労基法第 36 条 第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件 (新労基法第 36 条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及 び第3号)についての規定は、当該業務については適用しないものであるこ と。 なお、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいうものであること。

 

10 適用猶予(新労基法第 139 条から第 142 条まで並びに新労基則第 69 条 及び第 71 条関係)

 以下の⑴から⑷までに掲げる事業又は業務については、その性格から直ちに時間外労働の上限規制を適用することになじまないため、猶予措置を設けたものであること。

 ⑴ 工作物の建設等の事業(新労基法第 139 条及び新労基則第 69 条第1項 関係) 工作物の建設その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業(以下「工作物の建設等の事業」という。)については、平成 36 年3 月 31 日までの間、新労基法第 36 条第3項から第5項まで及び第6項(第 2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととし、同年 4月1日以降、当分の間、災害時における復旧及び復興の事業に限り、新労基法第 36 条第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととしたものであること。

 ア 猶予対象となる事業の範囲(新労基則第 69 条第1項関係) 新労基法第 139 条により時間外労働の上限規制の適用が猶予される 工作物の建設等の事業の範囲は、新労基則第 69 条第1項各号に掲げる事業をいうものであること。

 新労基則第 69 条第1項第2号に規定する事業とは、建設業に属する事業の本店、支店等であって、労働基準法別表第1第3号に該当しないものをいうものであること。

 また、新労基則第 69 条第1項第3号に規定する事業については、当該事業において交通誘導警備の業務を行う労働者に限るものであること。

 イ 平成 36 年3月 31 日までの新労基法第 36 条の適用(新労基法第 139 条第2項及び新労基則第 71 条関係) 平成 36 年3月 31 日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、 ①1日、②1日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、③ 1年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第 36 条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第 36 条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。

 また、新労基則第 17 条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。

 ウ 平成 36 年4月1日以降の新労基法第 36 条の適用(新労基法第 139条第1項関係)     

平成 36 年4月1日以降は、災害時における復旧及び復興の事業を除 き、工作物の建設等の事業に対して新労基法第 36 条の規定が全面的に 適用されるものであること。      災害時における復旧及び復興の事業については、平成 36 年4月1日 以降も、当分の間、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及 び第3号)についての規定は適用されず、特別条項において定める1箇 月の時間外・休日労働時間数は、労使当事者間において、事業場の実情に応じた時間数を協定するものであること。

 ⑵ 自動車の運転の業務(新労基法第 140 条及び新労基則第 69 条第2項関係)

 自動車の運転の業務については、平成 36 年3月 31 日までの間、新労基法第 36 条第3項から第5項まで及び第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととし、同年4月1日以降、当分の間、時間外労働の上限規制として1年について 960時間以内の規制を適用することとしたものであること。

 ア 猶予対象となる業務の範囲(新労基則第 69 条第2項関係)

 新労基法第 140 条により時間外労働の上限規制の適用が猶予される 自動車の運転の業務の範囲は、新労基則第 69 条第2項に規定する業務をいうものであり、自動者運転者の労働時間等の改善のための基準(平 成元年労働省告示第7号)の対象となる自動車運転者の業務と同義であること。

 イ 平成 36 年3月 31 日までの新労基法第 36 条の適用(新労基法第 140 条第2項及び新労基則第 71 条関係)

 平成 36 年3月 31 日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時 間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、 ①1日、②1日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、③ 1年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第 36 条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第 36 条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。

 また、新労基則第 17 条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。 

  ウ 平成 36 年4月1日以降の新労基法第 36 条の適用(新労基法第 140 条第1項関係)

 平成 36 年4月1日以降は、当分の間、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法 第 36 条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されず、特別条項において定める時間外・休日労働時間数は、労使当事者間において、1箇月については事業場の実情に応じた時間数を、1年については 960 時間を超えない範囲内の時間数をそれぞれ協定するものであること。

 ⑶ 医業に従事する医師(新労基法第 141 条関係)

 医業に従事する医師については、時間外労働の上限規制を適用するに当たって、医師法(昭和 23 年法律第 201 号)第 19 条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることから、平成 36 年4月 1日から時間外労働の上限規制を適用することとし、具体的な規制の在り方等については、現在、医療界の参加の下で有識者による検討を行っているものであること。

 ア 猶予対象となる医師の範囲(新労基法第 141 条第1項関係)

 新労基法第 141 条第1項に規定する医師の範囲については、有識者による検討結果等を踏まえながら、今後厚生労働省令で定めることとしているものであること。

 イ 平成 36 年3月 31 日までの新労基法第 36 条の適用(新労基法第 141 条第4項及び新労基則第 71 条関係)    

 平成 36 年3月 31 日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算 して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、 ①1日、②1日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、③ 1年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第 36 条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第 36 条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものである こと。

 また、新労基則第 17 条第1項第3号から第7号までの規定は適用 れないものであること。

 ウ 平成 36 年4月1日以降の新労基法第 36 条の適用(新労基法第 141 条第1項から第3項まで関係)

 平成 36 年4月1日以降は、当分の間、労働時間を延長して労働させ ることができる時間を協定するに当たっては、新労基法第 36 条第2項 第2号の対象期間における時間数を協定するものであり、1日、1箇月 及び1年の区分は設けないものであること。また、新労基法第 36 条第2項第3号に基づき協定する時間外労働の原則的上限については、別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

 また、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の協定事項や時 間外・休日労働時間数の上限については、新労基法第 36 条第5項によらず、別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

 さらに、時間外・休日労働協定で定めるところにより労働させる場合の実労働時間数の上限については、新労基法第 36 条第6項によらず、 別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

 ⑷ 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業(新労基法第 142 条及び新労基則第 71 条関係)

 鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業については、平成 36 年3月 31 日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労 働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過 する日)までの間、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の1箇月についての上限(新労基法第 36 条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第 36 条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。 また、新労基則第 17 条第1項第3号から第7号までの規定は適用され ないものであること。 平成 36 年4月1日以降は、新労基法第 36 条の規定が全面的に適用されるものであること。

 

11 労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の 労働について留意すべき事項等に関する指針関係

 ⑴ 目的(指針第1条関係)  

 指針は、時間外・休日労働協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項を定めることにより、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとすることを目的とするものであること。

 ⑵ 労使当事者の責務(指針第2条関係)

時間外・休日労働協定による労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることから、労使当事者は、これらに十分 留意した上で時間外・休日労働協定をするように努めなければならないものであること。 

 ⑶ 使用者の責務(指針第3条関係)

 使用者は、時間外・休日労働協定において定めた範囲内で時間外・休日労働を行わせた場合であっても、労働契約法(平成 19 年法律第 128 号) 第5条の規定に基づく安全配慮義務を負うことに留意しなければならないものであること。   

 また、使用者は、平成 13 年 12 月 12 日付け基発第 1063 号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」において、①1週間当たり 40 時間を超えて労働した時間が1箇月に おいておおむね 45 時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まると評価できるとされていること、②発症前1箇月間におおむね 100 時間又は発症前2箇月間から6箇月間までにおい て1箇月当たりおおむね 80 時間を超える場合には業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価できるとされていることに留意しなければならないものであること。

 ⑷ 業務区分の細分化(指針第4条関係)

労使当事者は、時間外・休日労働協定において労働時間を延長し、又は 休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、 業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならないものであること。   

 これは、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時 間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであり、労使当事者は、時間外・休日労働協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであること。 

 ⑸ 限度時間を超えて延長時間を定めるに当たっての留意事項(指針第5 条関係)     労使当事者は、時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむを得ない場合」など恒 常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないことに留意しなければならないものであること。   

 また、労使当事者は、特別条項において1箇月の時間外・休日労働時間 数及び1年の時間外労働時間数を協定するに当たっては、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、当該時間を限度時間にできる限り近づけるように努めなければならない ものであること。   

 さらに、労使当事者は、時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働時間を延長して労働させることができる時間に係る割増賃金の率を定めるに当たっては、当該割増賃金の率を、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成 6年政令第5号)で定める率(2割5分)を超える率とするように努めなければならないものであること。 

 ⑹ 1箇月に満たない期間において労働する労働者についての延長時間の 目安(指針第6条関係)   

 労使当事者は、期間の定めのある労働契約で労働する労働者その他の1箇月に満たない期間において労働する労働者について、時間外・休日労働協定において労働時間を延長して労働させることができる時間を定めるに当たっては、指針別表の上欄に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる目安時間を超えないものとするように努めなければならないものであること。

 

別表(第6条関係)

期  間

目 安 時 間

1週間

15 時間

2週間

27 時間

4週間

43 時間

備考 期間が次のいずれかに該当する場合は、目安時間は、当該期間の区分に応じ、それぞれに定める時間(その時間に1時間未満の端数があるときは、これを1時間に切り上げる。)とする。 一 1日を超え1週間未満の日数を単位とする期間 15 時間に当該日数を7で除して得た数を乗じて得た時間

 二 1週間を超え2週間未満の日数を単位とする期間 27 時間に当該日数を14 で除して得た数を乗じて得た時間

 三 2週間を超え4週間未満の日数を単位とする期間 43 時間に当該日数を28 で除して得た数を乗じて得た時間(その時間が 27 時間を下回るときは、27 時間)

 

 ⑺ 休日の労働を定めるに当たっての留意事項(指針第7条関係)

 労使当事者は、時間外・休日労働協定において休日の労働を定めるに当たっては労働させることができる休日の日数をできる限り少なくし、及び休日に労働させる時間をできる限り短くするように努めなければならないものであること。 

 ⑻ 健康福祉確保措置(指針第8条関係)

 労使当事者は、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、健康福祉確保措置を協定するに当たっては、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

 ① 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。

 ② 労働基準法第 37 条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。  

 ③ 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。 

 ④ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。  

 ⑤ 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。  

 ⑥ 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。 

 ⑦ 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。  

 ⑧ 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。  

 ⑨ 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。 

 ⑼ 適用除外等(指針第9条及び指針附則関係)

 ア 新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務(指針第9条関係)

 新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務については、指針第5条、第 6条及び第8条の規定は適用しないものであること。

 また、新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務に係る時間外・休日労働協定をする労使当事者は、延長時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

 さらに、新労基法第 36 条第 11 項に規定する業務に係る時間外・休日労働協定をする労使当事者は、限度時間に相当する時間を超えて労働時間を延長して労働させることができることとする場合においては、当該時間外・休日労働協定において当該時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならず、当該措置については、指針第8条各号に掲げるもののうちから定めることが望ましいことに留意しなければならないものであること。  

 イ 新労基法第 139 条第2項、第 140 条第2項、第 141 条第4項又は第 142 条の規定の適用を受ける時間外・休日労働協定(指針附則第3項関係)

  新労基法第 139 条第2項、第 140 条第2項、第 141 条第4項又は第 142 条の規定の適用を受ける時間外・休日労働協定についても、平成 36 年3月 31 日までの間、必要な読替えを行った上で、指針第9条第1項 及び第2項を適用するものであること。  

 ウ 限度基準告示の取扱い(指針附則第2項関係)

 限度基準告示は、廃止するものであること。

 

12 罰則(新労基法第 119 条関係)

 新労基法第 36 条第6項に違反した使用者に対しては、新労基法第 119 条 第1号の罰則の適用があること。

 

13 施行期日等(整備法附則第1条及び指針附則第1項関係) 時間外労働の上限規制に係る改正規定の施行期日及び指針の適用日は、平成 31 年4月1日であること。

 

 14 経過措置(整備法附則第2条及び第3条関係)

 ⑴ 時間外・休日労働協定に関する経過措置(整備法附則第2条関係)

  新労基法第 36 条の規定(新労基法第 139 条第2項、第 140 条第2項、 第 141 条第4項及び第 142 条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)は、平成 31 年4月1日以後の期間のみを定めている時間外・休日労 働協定について適用するものであること。 平成 31 年3月 31 日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法 第 36 条、労働基準法施行規則及び限度基準告示等が適用されるものであ ること。 

 ⑵ 中小事業主に関する経過措置(整備法附則第3条関係)

 中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が 300 人(小売業を主たる事業とする事業主について は50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100 人)以下である事業主をいう。以下同じ。)の事業に係る時間外・休日労 働協定(新労基法第 139 条第2項に規定する事業、第 140 条第2項に規定する業務、第 141 条第4項に規定する者及び第 142 条に規定する事業 に係るものを除く。)については、平成 32 年4月1日から新労基法第 36 条の規定を適用するものであること。

 平成 32 年3月 31 日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法 第 36 条、労働基準法施行規則及び限度基準告示等が適用されるものであること。   

 また、平成 32 年3月 31 日を含む期間を定める時間外・休日労働協定をする労使当事者は、当該協定をするに当たり、新労基法第 36 条第1項 から第5項までの規定により当該協定に定める労働時間を延長させ、又 は休日において労働させることができる時間数を勘案して協定をするように努めなければならないものとし、政府は、必要な情報の提供、助言その他の支援を行うものとしたこと。

 さらに、行政官庁は、当分の間、中小事業主に対し新労基法第 36 条第 9項の助言及び指導を行うに当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて行うよう配慮するものとしたこと。

 

ずいぶん長いですね。言いたいことのすべてを尽くしている感があります。

働き方改革関連法ということで注目を集めていますから、この機会にすべてを述べておきたいのでしょう。

特に、基準適用の先送りが行われた業種について、決して規制がかかるまで放置する意図ではないこと、一般の基準と業界や業種の実態とがあまりにもかけ離れているので、やむを得ず先送りしたことが丁寧に説明されています。

 

「労使が合意した場合であっても長時間労働は悪である」ということを忘れてはなりません。

家庭の事情から、過労に陥ることを覚悟のうえで長時間働いてより多くの収入を得ようとする人たちがいます。

しかし、健康を害したら、ましてや命を失ったら働けません。

本当は、適正な労働時間で十分な収入が得られることを望んでいるはずです。

今の仕事が好きだから、会社を気に入っているから、家族のために…こう思って働いている皆さんにどうやって報いることができるのか、これが社会全体の課題です。

 

2018.10.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

働き方改革関連法についての通達「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(平成30年9月7日基発0907第1号)」が公表されました。

 

第1 フレックスタイム制(新労基法第 32 条の3及び第 32 条の3の2並びに 新労基則第 12 条の3関係)

1 趣旨 フレックスタイム制は、一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者が仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとする制度である。 整備法においては、子育てや介護、自己啓発など様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、効率的な働き方を一層可能にするため、フレックスタイム制がより利用しやすい制度となるよう、清算期間の上限の延長等の見直しを行ったものであること。

なお、フレックスタイム制の運用に当たっては、使用者が各日の始業・終業時刻を画一的に特定することは認められないことに留意すること。

 

2 清算期間の上限の延長(新労基法第 32 条の3第1項関係)

 仕事と生活の調和を一層図りやすくするため、フレックスタイム制における清算期間の上限をこれまでの1箇月以内から3箇月以内に延長したものであること。  

 

3 清算期間が1箇月を超え3箇月以内である場合の過重労働防止(新労基法 第 32 条の3第2項関係) 

 清算期間を3箇月以内に延長することにより、清算期間内の働き方によっては、各月における労働時間の長短の幅が大きくなることが生じ得る。

 このため、対象労働者の過重労働を防止する観点から、清算期間が1箇月を超える場合には、当該清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が 50 時間を超えないこととしたものであること。

 また、フレックスタイム制の場合にも、使用者には各日の労働時間の把握を行う責務があるが、清算期間が1箇月を超える場合には、対象労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、使用者は、対象労働者の各月の労働時間数の実績を対象労働者に通知等することが望ましいこと。

 なお、整備省令による改正後の労働安全衛生規則(昭和 47 年労働省令第 32 号)第 52 条の2第3項に基づき、休憩時間を除き 1 週間当たり 40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が 1 月当たり80時間を超えた労働者に対しては、当該超えた時間に関する情報を通知しなければならないことに留意する必要があること。

 加えて、清算期間が1箇月を超える場合であっても、1週平均 50 時間を超える労働時間について月 60 時間を超える時間外労働に対して5割以上の 率で計算した割増賃金の支払が必要であることや、法定の要件に該当した労働者について労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)に基づき医師による面接指導を実施しなければならないことは従前と同様であり、使用者には、長時間労働の抑制に努めることが求められるものであること。

 

4 完全週休2日制の場合の清算期間における労働時間の限度(新労基法第 32 条の3第3項関係)

 完全週休2日制の下で働く労働者(1週間の所定労働日数が5日の労働者)についてフレックスタイム制を適用する場合においては、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも清算期間における法定労働時間の総枠を超え得るという課題を解消するため、完全週休2日制の事業場において、労使協定により、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を清算期間における法定労働時間の総枠とすることができるようにしたものであること。

 この場合において、次の式で計算した時間数を1週間当たりの労働時間の限度とすることができるものであること。

 

(8×清算期間における所定労働日数)÷(清算期間における暦日数 ÷ 7)

 

5 労使協定の締結及び届出(新労基法第 32 条の3第4項及び新労基則第 12 条の3関係)  

フレックスタイム制の導入に当たっては、新労基法第 32 条の3第1項の規定に基づき、就業規則等の定め及び労使協定の締結を要するものであるが、今回の改正により、清算期間が1箇月を超えるものである場合においては、 労使協定に有効期間の定めをするとともに、新労基則様式第3号の3により、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

 

6 清算期間が1箇月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者に係る賃金の取扱い(新労基法 第 32 条の3の2関係)  

清算期間が1箇月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者については、当該労働させた期間を平均して1週間当たり40 時間を超えて労働させた時間について、労働基準法第 37 条の規定の例により、割増賃金を支払わなければならないもの であること。

 

7 法定時間外労働となる時間

 フレックスタイム制を採用した場合に法定時間外労働となるのは、以下の ⑴及び⑵に示す労働時間であること。なお、上記4の特例に留意すること。

  ⑴ 清算期間が1箇月以内の場合    従前のとおり、清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が法定時間外労働となるものであること。具体的な計算方法は、次の式によること。

 

清算期間における実労働時間数 -(週の法定労働時間 × 清算期間における暦日数 ÷7)

 

 ⑵ 清算期間が1箇月を超え3箇月以内の場合

次のア及びイを合計した時間が法定時間外労働となるものであること。

ア 清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間 を生じたときには、当該期間)における実労働時間のうち、各期間を平均し1週間当たり 50 時間を超えて労働させた時間。具体的な計算方法は、次の式によること。

 

清算期間を1箇月ごとに区分した期間における実労働時間数 

-(50 × 清算期間を1箇月ごとに区分した期間における暦日数 ÷ 7)

 

  イ 清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間 の総枠を超えて労働させた時間(ただし、上記アで算定された時間外 労働時間を除く。)

 

8 罰則(新労基法第 120 条関係)

 新労基法第 32 条の3第4項に違反した使用者に対しては、新労基法第 120 条第1号の罰則の適用があること。

 

9 施行期日(整備法附則第1条関係)  

 フレックスタイム制に係る改正規定の施行期日は、平成 31 年4月1日 であること。

 

働き方改革関連法ということで注目を集めていますから、この機会に、従来のフレックスタイム制の注意点について再確認したという色合いが強いと思います。

清算期間を3か月にまで延長できるようにしたのは、労働時間を短縮しようとする制度の効果拡大を狙ってのものです。

 

次の点に注意していただきたいです。

・法定の手続きを踏まずに導入するのは違法であること。

・自己流の運用も、ほとんどの場合に違法となること。

・違法であれば、遡って賃金の計算をやり直し、差額の精算が必要となること。

・違法行為には罰則があること。

 

結果的に、残業手当が減額されたり、年次有給休暇を取得する必要性が低下したりということはあります。

しかし、これは結果論であって、フレックスタイム制というのは、あくまでも労働時間を短縮しようとする制度であることを忘れないようにしましょう。

 

2018.10.04.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

平成30(2018)年9月28日、厚生労働省が閣議で「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

この中で、雇用情勢の概況が次のように分析されています。

 

【雇用情勢の概況】

1. 2017年度の完全失業率は2.7%と1993年度以来24年ぶりの低水準となったことに加えて、有効求人倍率は1.54倍と1973年度以来44年ぶりの高水準となっており、雇用情勢は着実に改善している。

 

2. 雇用者数(15~54歳)の推移をみると、正規の職員・従業員は3年連続で増加しており、2017年では2,841万人(前年差36万人増)となった。

 

3. 他方、雇用人員判断D.I.により人手不足の状況をみると、人手不足感が高まっており、2018年3月調査では、全産業・製造業・非製造業のいずれもバブル期に次ぐ人手不足感となっている。

 

<雇用情勢の改善>

完全失業率が2.7%というのは、「完全雇用」の状態です。

すると、国は失業対策の手を緩め、次の段階である「労働者の健康の維持・増進」を強化することになります。

たしかに、失業して困っている人々も多いのですが、これだけ雇用情勢が改善されれば、国全体としては深刻な事態には至らないでしょう。

 

労働者の健康に関する法令というと、労働安全衛生法が有名です。もともと労働基準法に規定されていた労働者の安全・衛生・健康といった内容が、労働基準法から分家して独立したのが労働安全衛生法です。

ですから、もともと労働基準法には、労働者の健康に配慮した規定というのが少ないのですが、働き方改革の一環として、こうした規定が増えることになりました。

年次有給休暇を取得させる義務、残業時間の上限規制などは、労働者の健康に配慮した規定です。

 

これらの規定には罰則がありますから、企業は無視できません。罰金は1人当たり30万円ですから、摘発されたら支払えばよいと考える経営者もいるでしょうか。しかし、会社の評判は落ちますし、従業員は他社に逃げていきます。

正面から対応するには、まず、業務を減らすことが大事です。過去からの習慣で行っているだけの業務や、経営者の自己満足のための業務は、最初に切り捨てるべきです。

 

<正社員の増加>

働き方改革の中で、同一労働同一賃金ということが言われています。

仕事内容や異動の有無などに違いが無いのなら、同じ待遇(均等待遇)にしなさいということです。

また、正社員と短時間労働者や有期雇用労働者とで、仕事内容や異動の有無などに違いがあったとしても、その違いに応じた公平な待遇(均衡待遇)にしなさいということが、働き方改革関連法により強化されます。

こうなってくると「なぜあなたが正社員ではないのか」を説明するのが大変になってきます。

 

政府の方針に逆らっても、事業の継続にとっては損ですから、大手企業を中心に非正規社員の正社員化や正社員の積極採用の動きが見られます。

そもそも「正社員」というのは法律用語ではありませんし、それぞれの会社が独自に定義を決めていたり、定義を決めていなかったりしているのです。

政府は、将来的には正規と非正規の区別をなくす方針ですから、これを見越して、正社員を増やす傾向は今後も続くでしょう。

 

<人手不足感の高まり>

「労働経済白書」の中でも、少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が、持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠であり、そのためには、資本への投資に加えて、人への投資を促進していくことが重要だとしています。

上司が部下を、先輩が後輩を育てる仕組みと、育てることが評価される仕組みを充実させましょう。これだけでも、一人ひとりの労働生産性が高まりますから、人手不足が解消に向かいます。

また、自分自身の成長は嬉しいものです。成長を実感できる会社では、社員の定着率も高まります。

 

2018.10.03.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

ぜひ、ご一緒に労働生産性の向上に取り組みましょう。

<傷病手当金とは>

傷病手当金は、休業中に健康保険の加入者(被保険者)とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

被保険者は、給与天引きなどにより保険料を支払っている人です。

国民健康保険の被保険者は対象外です。

 

<支給の条件>

傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。

・業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

 業務や通勤によるケガは労災保険で補償されますから対象外です。

・仕事に就くことができないこと

 医師の判断によります。大事をとって休業しても対象外です。

・連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

 最初の3日が、たまたま年次有給休暇でもOKです。

・休業した期間について給与の支払いがないこと

 給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

 

<支給される期間>

傷病手当金が支給される期間は、支給開始から最長1年6か月です。

医師が労務不能を認めた日と、実際に休業した日が重なっている期間に限ります。

 

<支給される金額>

傷病手当金は、1日につき健康保険加入者(被保険者)の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されます。

標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。

標準報酬月額は、原則として4月から6月までの給与の総支給額を基準に、その年9月以降の保険料の計算基準となる月給です。

ここでの標準報酬月額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を用います。法改正により、平成28(2016)年4月1日からこのようになりました。

 

<注意したいこと>

たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。

 

2018.10.02.解決社労士

 

平成30(2018)年9月28日、厚生労働省が閣議で「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

 

<労働経済白書の趣旨>

「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書で、今回で70回目の公表となります。

少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が、持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠です。

そのためには、資本への投資に加えて、人への投資を促進していくことが重要です。

平成30年版では、こうした認識のもと、働き方の多様化に対応した能力開発や雇用管理の在り方についてさまざまな視点から多面的に分析を行いました。

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

そのためか、働き方改革に関連した事項について誤った運用がなされると、そこばかりがクローズアップされて、悪いものであるかのように報道されてしまいます。

「副業・兼業の促進と言ってこれ以上働かせるのか。長時間労働の話はどうなったのか」

「働き方改革って、要は少ない賃金で働かせ放題にすることでしょ」

街頭インタビューでは、こんな発言が多くなってしまいました。

 

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ労働生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

労働生産性を向上させるには、より少ない労働時間で、より大きな成果を目指すことになります。また、この結果として、労働者にはより多くの報酬が与えられなければなりません。そうでなければ、らせん階段を駆け上がるような、良い循環は生まれないからです。

 

働くのは人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<人への投資>

かつて、「人財」という言葉が持てはやされました。

働き手が会社経営にとって財産であるという捉え方をして、「人材」ではなく「人財」だとされたのです。

企業の利益の源は「人財」である、企業は積極的に「人財」に投資すべきであると説かれました。

 

こうして一時的に、新人研修、○年目研修、幹部研修などが盛んに行われるようになったのですが、いつの間にか中小企業を中心に研修が少なくなってしまいました。

職場を離れての集合研修も重要なのに、働く現場でのOJTだけになっている企業も増えています。(OJTは、On-the-Job Training の略)

 

労働生産性の向上のためには、「人財教育」をはじめ、人への投資を促進していくことが不可欠となっています。

 

【白書の構成】

第Ⅰ部  労働経済の推移と特徴

第Ⅱ部

第1章  労働生産性や能力開発をめぐる状況と働き方の多様化の進展

第2章  働き方や企業を取り巻く環境変化に応じた人材育成の課題について

第3章  働き方の多様化に応じた「きめ細かな雇用管理」の推進に向けて

第4章  誰もが主体的にキャリア形成できる社会の実現に向けて

 

【白書の主なポイント】

・企業が能力開発に積極的に取り組むことが、翌年の売上高や労働生産性の向上、従業員の仕事に対するモチベーションの上昇などのプラスの影響を与える。

・多様な人材の十分な能力発揮に向けて、能力開発機会の充実や従業員間の不合理な待遇格差の解消など「きめ細かな雇用管理」を推進していくことが重要である。

・人生100年時代が見据えられる中、誰もが主体的なキャリア形成を行うことができる環境整備が重要であり、自己啓発の実施促進に向けては、金銭的な援助だけでなく、教育訓練機関等の情報提供やキャリアコンサルティングを実施することが、有効な取組となり得る。

 

2018.10.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

ぜひ、ご一緒に労働生産性の向上に取り組みましょう。

 

非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)について、以下の①~③が統一的に整備されます。

パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。

法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・ 有期雇用労働法)に変わります。

新しい法律は、中小企業については2021年4月1日施行ですが、大企業では2020年4月1日施行です。

 

<① 不合理な待遇差をなくすための規定の整備>

同一企業内で、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

平成28(2016)年12月に、「同一労働同一賃金 ガイドライン案」が策定され、どのような待遇差が不合理に当たるかが示されていますが、今後、確定版が策定され明確な基準が示される予定です。

 

均等待遇規定

 (差別的取扱い

の禁止)

下記2点が同じ場合、差別的取扱いを禁止します。

①職務内容(業務の内容+責任の程度)

②職務内容・配置の変更の範囲

均衡待遇規定

 (不合理な待遇差

の禁止)

下記3点の違いを考慮した上で、不合理な待遇差を禁止します。

①職務内容

②職務内容・配置の変更の範囲

③その他の事情

 

均等待遇規定は、平等の原理に基づくものです。

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

ここでは、①と②が同じである点に着目しています。

 

均衡待遇規定は、公平の原理に基づくものです。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

ここでは、①~③が異なっている点に着目しています。

 

なお、派遣労働者については、下記のいずれかを確保することが義務化されます。

 

 

(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇

(2)一定の要件を満たす労使協定による待遇

併せて、派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務が新設されます。

 

派遣元で、評価制度や昇給制度を含む、一定の要件を満たす労使協定が交わされていれば、派遣先は安心です。

しかし、労使協定が無い場合には、派遣先の労働者の給与や賞与などの待遇を、派遣元に提供しなければならないということです。

 

<② 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化>

非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について説明を求めることができるようになります。

事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。

具体的には、パートタイム労働者や有期雇用労働者から請求された場合には、賃金制度、賞与や退職金の有無などについて、正社員との違いを、それぞれの就業規則に基づき説明しなければなりません。

前提として、正社員と非正規雇用労働者それぞれの就業規則が存在し、周知されていて、その内容が不合理ではないことが必要です。

 

<③ 行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続の規定の整備>

事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きのことを行政ADRといいます。都道府県労働局で、無料・非公開の紛争解決手続きが行われています。

現在は対象外の「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

裁判よりもはるかに安い費用で、しかも短期間で解決に至りうる手続きです。

行政ADRの当事者(会社側・労働者側)に不安がある場合には、特定社労士などが代理人となって活動することもできます。

 

2018.09.30.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<職場情報総合サイトの公開>

厚生労働省が、平成30(2018)年9月28日(金)に「職場情報総合サイト」を一般公開しました。

職場情報総合サイトは、「若者雇用促進総合サイト」-「女性の活躍推進企業データベース」-「両立支援のひろば」の3サイトに掲載されている各企業の職場情報を収集し、転載しています。また、各企業の各種認定・表彰の取得等の情報も掲載しています。

このように、職場情報をワンストップで閲覧できるようにし、横断的に検索・比較できるようにすることで、企業と働き手のよりよいマッチングの実現が期待できます。

職場環境の維持向上に努めている企業にとっては、アピールの場が新たに増えたことになります。

 

職場情報総合サイト:https://shokuba.mhlw.go.jp/index.html

 

【「職場情報総合サイト」の特徴について】

1 主なコンテンツ・機能

  ・当サイトについて(掲載する職場情報、メリット、当サイト設立の背景)

  ・利用方法(使い方・ご利用の流れ、操作マニュアル)

  ・職場情報検索(企業名・条件からの検索機能、複数の企業の比較機能)

  ・CSV一括ダウンロード(職場情報の全件データのダウンロード機能)

 

2 掲載する主な職場情報

  ・採用状況に関する情報

  ・働き方に関する情報

  ・女性の活躍に関する情報

  ・育児・仕事の両立に関する情報

  ・能力開発に関する情報

  ・ハローワークインターネットサービスに掲載されている求人情報とのリンク

 

3 職場情報総合サイトの活用のメリット

  ■求職者

  ○ライフスタイルや希望条件にあった企業の選択

  ○事前に企業の就業実態を把握し、入社後のミスマッチを防止

  ■データ登録企業

  ○職場情報を開示することによる企業のPR

  ○職場改善への取組が評価されることによる優秀な人材の獲得

 

2018.09.29.解決社労士

<懲戒処分の時効>

懲戒処分について、消滅時効期間を定める法令はありません。

会社の就業規則にも「○年以上経過した事実に対する懲戒処分は行わない」などの規定は無いでしょう。

ただ、懲戒処分は労働契約に付随するものですから、次に示す民法の基本原則が適用されます。

 

(基本原則)第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

つまり、いくら会社に懲戒権があるからといって、ずいぶん前の事実について懲戒処分を行うことは、不誠実でもあり権利の濫用ともなりうるので許されません。

 

<懲戒と刑罰>

刑事訴訟法には、公訴時効についての規定があります。

犯罪が終わってから、一定期間を過ぎると検察官が公訴を提起できなくなります。

会社による懲戒処分は、国家権力による刑罰とは違いますが、その目的は共通しています。

 

【懲戒処分の目的】

・懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

 

何が許され何が許されないのか社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持するためには、就業規則の懲戒規定が具体的でわかりやすいことが必要です。

そうでなければ、懲戒対象者が処分に納得せず、会社を逆恨みすることもあります。これでは、懲戒処分の目的が果たされません。

社会保険労務士に報酬を支払ってでも、それぞれの会社にピッタリの就業規則を作る必要があることは、懲戒規定だけを考えても明らかです。

 

<実際の公訴時効期間>

セクハラについて見ると、現在の刑事訴訟法では次のように規定されています。

30年 ― 強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪

15年 ― 強制性交等罪

3年 ― 名誉毀損罪、暴行罪、過失致傷罪、脅迫罪

1年 ― 侮辱罪、軽犯罪法違反罪

しかも、一部の公訴時効期間は、平成16(2004)12月の刑事訴訟法改正により、延長されています(翌年1月1日施行)。

こうしてみると、被害者が亡くなったような重大なケースを除き、20年前のセクハラで懲戒処分を行うというのは、懲戒権の濫用となる可能性が高いでしょう。

 

<時代背景からすると>

日本でセクハラという言葉が使われるようになったのは1980年代半ばだとされています。

しかし、男女雇用機会均等法が改正され、性的嫌がらせへの会社の配慮についての規定が置かれたのが平成9(1997)年です。

20年前というと、行為者がセクハラについての社員教育を受けていなかった可能性が高く、また、就業規則にもセクハラに対する懲戒処分の規定が無かった可能性があります。

行為の当時、就業規則に規定が無かったのならば、後から新たに規定ができても、これを根拠に懲戒処分をすることはできません(不遡及の原則)。

 

2018.09.28.解決社労士

<加害者に対して>

パワハラというのは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

たしかに、被害者が退職した後も、加害者が嫌がらせを続ける場合があります。

しかし、この場合には、加害者が被害者に対して業務上必要な働きかけをするということがありませんので、人権侵害行為が単独で行われている状態です。

この人権侵害行為の多くは不法行為に当たり、被害者から加害者に対して損害賠償の請求が可能です。

さらに、この人権侵害行為が犯罪にあたる場合には、警察に被害を申し出て対応してもらうことになります。

ここで考えられる犯罪としては、刑法に規定されているものだけでも、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪、侮辱罪などが考えられます。

 

<加害者の勤務先に対して>

加害者の勤務先としても、社員が退職者に対して権利侵害行為を行っているという事実は重大な関心事です。

たとえ勤務と無関係に行われた行為であっても、社員が会社の利益や信用を低下させる行為を行った場合には、行為者に対して懲戒処分を行いうるのです。

警察沙汰になったり、裁判になったりすれば、会社にとって大きなダメージとなりますから、放置することはできません。

退職者としてではなく、一個人として会社に被害を受けていることの事実を伝えるのが良いでしょう。

このような場合に心細いのであれば、交渉事ではありませんので、社会保険労務士に付き添いを依頼することも可能です。

 

2018.09.27.解決社労士

 

厚生労働省が、「働き方改革関連法」の一環で、平成31(2019)年4月から施行される改正労働基準法に盛り込まれた新しい時間外労働の上限規制に基づく新36協定の内容・記載方法などのリーフレットを公表しました。

法改正後は、36(サブロク)協定で定める時間外労働に、罰則付きの上限が設けられます。

厚生労働省は、時間外労働と休日労働を適正なものとすることを目的として、新たに指針を策定しました。 

 

<36(サブロク)協定とは>

時間外労働(残業)をさせるためには、36協定が必要です。

労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といいます。

法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合には、協定書を所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。

この届出が無いまま残業させると、たとえ1分でも厳密には違法残業となります。

36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決めなければなりません。

 

<時間外労働の上限規制とは>

平成30(2018)年6月に労働基準法が改正され、36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられることとなりました。

この改正法は、平成31(2019)年4月施行ですが、中小企業への適用は2020年4月からとなります。

時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。

この「休日労働を含む」というのは、今回の法改正から取り入れられた基準です。

また、月45時間を超えることができるのは、年間6回(6か月)までです。

 

【36協定の締結にあたって留意すべき指針の内容】

① 時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめましょう。(指針第2条)

 

②使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負います。また、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する必要があります。(指針第3条)

36協定の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第5条の安全配慮義務を負うことに留意しましょう。

「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(平成13年12月12日付け基発第1063号厚生労働省労働 基準局長通達)で、

・1週間当たり40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされていること

・さらに、1週間当たり40時間を超える労働時間が月100時間または2~6か月平均で80時間を超える場合には、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いとされていること

に留意しなければなりません。

 

③時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確にしましょう。(指針第4条)

 

④臨時的な特別の事情がなければ、限度時間(月45時間・年360時間)を超えることはできません。限度時間を超えて労働させる必要がある場合は、できる限り具体的に定めなければなりません。この場合にも、時間外労働は、限度時間にできる限り近づけるように努めましょう。(指針第5条)

・限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければなりません。

「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。

・時間外労働は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、

(1)1か月の時間外労働と休日労働の時間、

(2)1年の時間外労働時間、

を限度時間にできる限り近づけるように努めましょう。

・限度時間を超える時間外労働については、25%を超える割増賃金率とするように努めなければなりません。

 

⑤1か月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、目安時間を超えないように努めましょう。(指針第6条)

ここで目安時間とは、1週間:15時間、2週間:27時間、4週間:43時間です。

 

⑥休日労働の日数及び時間数をできる限り少なくするように努めましょう。(指針第7条)

 

⑦限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保しましょう。(指針第8条)

・限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいことに留意しましょう。

(1)医師による面接指導

(2)深夜業の回数制限

(3)終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)

(4)代償休日・特別な休暇の付与

(5)健康診断

(6)連続休暇の取得

(7)心とからだの相談窓口の設置

(8)配置転換

(9)産業医等による助言・指導や保健指導

 

⑧限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務についても、限度時間を踏まえて、健康・福祉を確保するよう努めましょう。(指針第9条、附則第3項)

・限度時間が適用除外されている新技術・新商品の研究開発業務については、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しましょう。

また、月45時間・年360時間を超えて時間外労働を行う場合には、⑦の健康・福祉を確保するための措置を協定するよう努めなければなりません。

・限度時間が適用猶予されている事業・業務については、猶予期間において限度時間を勘案することが望ましいことに留意しましょう。 

 

<指針への対応>

こうした指針は、会社の実情を踏まえて、会社に都合の良い解釈がとられがちです。

36協定書を所轄の労働基準監督署長に届け出ることだけでなく、その運用についても、専門家の客観的な解釈に沿って考える必要があるでしょう。

 

2018.09.26.解決社労士

<調査の目的>

平成30(2018)年9月14日、厚生労働省が「平成28(2016)年社会保障を支える世代に関する意識調査」について調査結果を取りまとめ公表しました。

急速な少子高齢化の進行、経済情勢や雇用基盤の変化、就業形態の多様化の進展など、社会保障制度を取り巻く環境が大きく変化しています。

これらの変化に対応して、充実と重点化・効率化を同時に図ることで、誰もが安心できる持続可能な社会保障制度を確立していくことが求められています。

この調査は、こうした状況を背景として、社会保障を支える世代の就業状況や子育て、親への支援の状況の実態を把握するとともに、理想の働き方や社会保障に係る負担のあり方などについての意識を調査し、今後の厚生労働行政施策の企画・立案のための基礎資料を得ることを目的としています。

 

【調査結果のポイント】

(1) 子育ての状況について

・子育てと仕事の両立について、男女ともに「仕事が忙しくて、十分な子育てができない」が最も多く、男性は53.9%、女性は25.5%。次いで、男性では「苦もなくできている」が33.5%、女性では「そもそも仕事をしていない」が24.0%だった。

 

(2) 親への支援の状況について

・親への手助けや見守りで負担に感じることについて、男女ともに「ストレスや精神的負担が大きい」が最も高く、男性は33.0%、女性では44.7%だった。

 

(3) 就業状況について

・一番理想とする働き方や労働条件については、年齢層が上がると「残業が少なく、定時どおりに帰宅しやすい環境」や「有給休暇が取得しやすい環境」が低下し、「退職金や企業年金が充実」が上昇する傾向にある。女性の若年層においては、「育児休業が取得しやすいなど、子育てと両立しやすい環境」が比較的高くなっている。

 

(4) 社会保障制度に対する意識について

・今後、充実させる必要があると考える社会保障の分野について、男女ともに「老後の所得保障(年金)」が最も高く、次いで「高齢者医療や介護」、「子ども・子育て支援」となっている。

・社会保障の給付と負担の考え方については、男女ともに「社会保障の給付水準を維持し、少子高齢化による負担増はやむを得ない」が最も高く、男性は25.4%、女性は23.7%だった。

 

<子育て中の社員への対応>

子育ての状況については、男女間の意識差が感じられます。

また男女ともに、「仕事が忙しくて、十分な子育てができない」が最多数であるにもかかわらず、2番目に多いのが男性では「苦もなくできている」、女性では「そもそも仕事をしていない」という結果です。

これは、家庭ごとに事情が大きく異なることを示しています。

会社が子育て中の社員への対応を考える場合に、「平均値」的なものにとらわれず、各家庭の事情に応じて、対象者が会社の対応を選べるようにすることが必要でしょう。

育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が、会社の取るべき対応を1つに絞り込まず、複数の中から選択できる形をとっているのも、こうした事情を踏まえてのことだと考えられます。

 

<親を支援する社員への対応>

親を支援する世代の社員には管理職が多いと思われます。

最近では、働き方改革と称して、部下の仕事を残業手当の付かない管理職にシフトさせる動きが見られます。

ここには、働き方改革に対する誤解があるようです。

たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

社員は人間ですから、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

特に親を支援している管理職には業務を集中させず、メンタルヘルス不調を来さないように、十分な管理が必要となるでしょう。

 

2018.09.25.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

 

平成30(2018)年10月1日以降に日本年金機構で受け付ける「健康保険被扶養者(異動)届」について、添付書類の取扱いが変更になります。

 

<認定事務の変更>

厚生労働省から「日本国内に住んでいる家族を扶養家族(被扶養者)に認定する際の身分関係と生計維持関係の確認について、申立てのみによる認定は行わず、証明書類に基づく認定を行うこと」という事務の取扱いが示されました。

これを受けて、日本年金機構への届出に際して【添付書類一覧】の書類の添付が必要になりました。

なお、一定の要件を満たした場合には、書類の添付を省略することが可能となります。

 

<添付書類の変更>

扶養認定を受ける人の続柄や年間収入を確認するため、【添付書類一覧】のうち、扶養認定を受ける人が保険加入者(被保険者)と同居しているときは№1,2を、別居しているときは№1,2,3を添付します。

 

【添付書類一覧】

添 付 書 類

目的

添付の省略ができる場合

1

次のうちどれか1つ( 90 日以内に発行されたもの)

・戸籍謄本

・戸籍抄本

・住民票

保険加入者(被保険者)と扶養認定を受ける人が同居していて、保険加入者(被保険者)が世帯主である場合に限ります。

続柄の

確認

次の両方に該当するとき

・保険加入者(被保険者)と扶養認定を受ける人のどちらもマイナンバーが届書に記載されていること

・左記の書類により、扶養認定を受ける人の続柄が届書の記載と同じであることを確認した旨を、事業主が届書に記載していること

2

年間収入が「130 万円未満」であることを確認できる課税証明書等の書類

 

ただし、扶養認定を受ける人が次のどちらかに該当する場合は「180 万円未満」です(収入には公的年金も含まれます)。

・60 歳以上の人

・障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者

収入の

確認

次のどちらかに該当するとき

・16 歳未満のとき

・扶養認定を受ける人が、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養親族であることを確認した旨を、事業主が届書に記載しているとき(障害年金、遺族年金、傷病手当金、失業給付等非課税対象の収入がある場合は、受取金額の確認ができる通知書等のコピーの添付が必要です)。

3

仕送りの事実と仕送り額が確認できる書類

・振込の場合 … 預金通帳等の写し

・送金の場合 … 現金書留の控え(写し)

次のどちらかに該当するとき

・16 歳未満のとき

・16 歳以上の学生のとき

 

なお、保険加入者(被保険者)と扶養認定を受ける人との同居については、日本年金機構で確認を行うため、原則として、書類の添付は不要ですが、確認できない場合には、別途、住民票の提出を求められることがあります。

 

2018.09.24.解決社労士

<働く女性の実情>

平成30(2018)年9月18日、厚生労働省が「平成29年版 働く女性の実情」を取りまとめ公表しました。

「働く女性の実情」は、政府や研究機関などの各種統計調査を用いて、働く女性の状況などを分析した報告書で、昭和28(1953)年から毎年公表しています。

「平成29年版 働く女性の実情」は2部構成で、Ⅰ部第1章では、就業状況や労働条件など働く女性に関する状況について、第2章では「女性活躍推進法に基づく取組状況」について、また、Ⅱ部では、働く女性に関する厚生労働省の施策について取りまとめています。

 

我が国では、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、「女性活躍推進法」(「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)が平成27年8月に成立し、平成28年4月に全面施行されたところです。

これは、次の国内事情を踏まえてのことです。

(1)就業を希望していながら働いていない女性が約300万人に上っていること、また、出産・育児を理由に離職する女性は依然として多く、再就職にあたって非正規労働者となる場合が多いことなどから、女性雇用者の半数以上は非正規労働者として働いていること、さらに、管理職に占める女性の割合は、欧米、アジア諸国と比べても低い状況にあることから、働く場面において女性の力が十分に発揮できているとはいえない状況にある。

(2)急速な人口減少局面を迎え、労働力不足が懸念されている中で、国民のニーズの多様化やグローバル化等に対応するためにも、企業等における人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠となっており、女性の活躍の推進の重要性が高まっている。

 

このため、平成29年版Ⅰ部第2章では「女性活躍推進法に基づく取組状況」をテーマに、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(以下「行動計画」という。)や情報公表状況について、女性の活躍推進企業データベースのデータ等を用い、企業等における自社の女性の活躍推進に向けた課題の検討に資するものとなるよう分析を行っています。

 

「女性活躍推進法に基づく取組状況」のあらまし

■都道府県労働局雇用環境・均等部(室)への一般事業主行動計画策定届の届出状況

・女性活躍推進法において義務企業である301人以上の労働者を雇用する事業主は15,983社(届出率98.1%)、努力義務企業である300人以下の労働者を雇用する事業主は4,711社

 

■厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)

・女性の活躍推進に関する状況等が優良な企業として「えるぼし認定」を受けた企業は630社

 

■女性の活躍推進企業データベースにおける情報公表

  女性活躍推進法ではインターネットの利用などにより情報の公表を義務づけており(300人以下は努力義務)、厚生労働省では「女性の活躍推進企業データベース」を運営している。

 1 登録企業

  ・登録企業は13,306社

  ・規模別にみると、「301~500人」が3,239社と最も多く、「501~1,000人」2,768社、「1,001人~5,000人」2,182社、「5,001人以上」479社と続く。

  ・産業別にみると、「製造業」が2,972社と最も多く、「サービス業(他に分類されないもの)」2,022社、「卸売業、小売業」1,959社、「医療、福祉」1,323社、「建設業」1,238社と続く。

 2 情報公表の実態

    ・情報公表企業は9,276社

  (1)平均公表項目数は5.5項目

    規模別にみると、「5,000人以上」が7.8項目と最も多く、次いで「1,001~5,000人」が6.1項目、「10~100人」が5.7項目、「100人未満」が5.6項目となっている。

    産業別にみると、「鉱業、採石業、砂利採取業」が9.4項目と最も多く、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」が7.2項目、「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」が7.0項目となっている。

  (2)雇用者総数に占める女性の割合が高い産業と低い産業の公表項目

    総務省労働力調査において、雇用者総数に占める女性の割合が高い「医療、福祉」、「宿泊業、飲食サービス業」と低い「電気・ガス・熱供給業」、「建設業」についてみると、「医療、福祉」「宿泊業、飲食サービス業」では「採用した労働者に占める女性労働者」(それぞれ72.7%、70.1%)及び「管理職に占める女性労働者の割合」(それぞれ72.7%、61.4%)の公表割合が高い。一方、「電気・ガス・熱供給業」では「男女の平均勤続勤務年数の差異、又は男女別の採用10年前後の継続雇用割合」88.0%、「労働者に占める女性労働者」76.0%、「建設業」では「採用した労働者に占める女性労働者」67.2%、「労働者に占める女性労働者」62.6%と高くなっていることから、女性雇用者の多少により公表項目が異なっており、女性の割合が高い産業は低い産業と比べて「管理職に占める女性労働者の割合」の公表順位が高い。

  (3)女性の活躍状況(公表項目の平均値)

   ・採用した労働者に占める女性の割合

   平均値は39.8%

   企業規模別にみると、「101~300人」が44.0%と最も高く、次いで「301~500人」の41.2%、「501~1,000人」「5,001人以上」40.5%となっている。

   産業別にみると、「医療,福祉」が71.7%と最も高い。

   ・管理職に占める女性労働者の割合

   平均値は14.3%

   企業規模別にみると、「10人未満」16.5%、「10~100人」19.0%、「101~300人」17.2%、「301~500人」16.1%、「501~1,000人」13.0%、「1,001~5,000人」10.5%、「5,001人以上」9.3%となっており、企業規模が大きくなるほど女性の割合は低い。

 

2018.09.23.解決社労士

<最低賃金の発効日>

平成30年10月1日をもって、東京都の最低賃金時間額は958円から985円に引き上げられます。この日が発効日ですから、この日に勤務した分から985円を下回る時間給は違法になってしまいます。日給でも月給でも、1時間あたりの賃金が985円を下回ってはいけません。

 

<雇用契約書を変更する必要性>

契約期間が平成30年10月1日以降にまたがる雇用契約書(労働契約書)であれば、その人の賃金時間額が985円を下回っている場合に、これ以上の賃金に改定した内容で雇用契約書を交わしなおす必要があります。

賃金という重要項目でもありますし、いつの分からの変更か明らかにする意味でも、また、最低賃金改定の説明をするチャンスでもあることから、修正して訂正印ではなくて、きちんと作り直して説明のうえ交付することをお勧めします。

 

<雇用契約書が複数ある場合の効力>

古い雇用契約書には、まだ契約期間が残っていて、新しい雇用契約書と期間がダブることになります。

そして古い雇用契約書も、その期間の雇用契約を明らかにする重要な文書ですから、回収するわけにもいきません。

実は、雇用契約書を含め契約書には必ず作成年月日が記されています。これは、契約内容が変更され新しい契約書が作成された場合には、作成年月日の新しいものが優先的に効力を持つという約束事があるからです。

ですから期間の重なった複数の雇用契約書があっても、最新のものが適用されるということで安心なのです。ただし、雇用契約書の作成年月日を空欄にしたままではいけません。きちんと契約書を完成させた日の日付を入れておきましょう。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更などで、雇用契約の管理は少し複雑になってきています。面倒に思えてきたらお近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2018.09.22.解決社労士

<「被」という漢字の意味>

「被」という漢字には、受け身の意味があります。

ここで「受け身」というのは、行動の主体からの動作・作用を受ける人を主人公にして話す話し方です。

 

AさんがBさんをほめた。

この事実をBさんから見ると、

BさんがAさんからほめられた。

となります。

 

英語の授業では受動態として習いましたし、漢文の授業では「る」「らる」という受け身の助動詞として習いました。

 

<社会保険で「被」が付くことば>

「被保険者」は、保険について受け身の人のことをいいます。

保険者は、保険を運用する人のことをいいます。

健康保険の保険者は、保険証に書かれています。

協会けんぽであったり、健康保険組合であったり…

国民健康保険では、市町村が保険者です。

そして、保険が適用され給付を受ける人が「被保険者」ということになります。

日常用語では「保険加入者」ですね。

 

「被扶養者」は、扶養について受け身の人のことをいいます。

扶養する人を、わざわざ「扶養者」ということは少ないでしょう。

誰かに扶養されている人のことを「被扶養者」といいます。

日常用語では「扶養家族」ですね。

特に被扶養者のうち配偶者を「被扶養配偶者」といいます。

国民年金では勤め人が第二号被保険者、その被扶養配偶者が第三号被保険者ということになっています。

 

<労働保険で「被」が付くことば>

雇用保険や労災保険でも、保険を適用される人が「被保険者」ということになります。

労災保険では、保険事故に遭った人のことを「被災者」といいます。

業務災害や通勤災害という災害に遭った人ということです。

 

<その他「被」が付くことば>

「被相続人」というのは亡くなった人です。

「相続人」は、相続する人、相続を受ける人のことですから、相続をされる側の人は亡くなった人ということになります。

 

「被害者」は害を受ける人です。相手は「加害者」です。

 

「被告人」は、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された人です。「告訴された人」が語源ですが、その意味は「起訴された人」です。

告訴は、犯罪の被害者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めることですから、起訴とは意味が違っています。

なお「被告」は、民事裁判で訴えを提起された人のことを指しますから、犯罪者というわけではありません。

日常用語では、「被告人」と「被告」が混同されています。テレビニュースでも、正しく区別して表現されないことがあります。

 

2018.09.21.解決社労士

<社会保険の加入基準>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上というのが原則の基準です。

ただし、大企業などで特定適用事業所となっている場合には、1週間の所定労働時間が20時間以上でも加入となりえます。

「勤務日数が少なくなった」というのが、一般の企業で1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3を下回ったという意味であれば、社会保険から脱退(資格喪失)することになります。

特定適用事業所の場合には、1週間の所定労働時間が20時間を下回ったのであれば、同様に社会保険から脱退(資格喪失)することになります。

 

<所定労働時間・日数>

「所定」とは「あらかじめ決められている」という意味です。

そして、所定労働時間や所定労働日数は、使用者と労働者との労働契約での合意によって決まります。

企業は「就業規則」か、個人ごとに交付する「労働条件通知書」などの書面で、労働者に所定労働時間や所定労働日数を示します。これを示さないのは労働基準法違反ということになります。

 

<事実か契約か>

社会保険の加入基準は、事実としての勤務日数ではなく、所定労働日数が原則です。

ですから、病気や家庭の事情により、一時的に勤務日数が少なくなったに過ぎない場合には、所定労働日数は変更が無いと考えられます。

なぜなら、一時的な事情が解消すれば、元どおりの勤務をするようになると考えられるからです。

もし、長期にわたって勤務日数が少ないままであることが見込まれるのであれば、使用者と労働者とで話し合い、所定労働日数を変更する必要があります。

これをしないと、社会保険の加入だけでなく、年次有給休暇の付与日数や出勤率の計算が実態に合わなくなってしまいます。

 

ところで、所定労働日数が原則だというのは例外があるからです。

使用者が労働者の社会保険加入を不当に避けるため、実際には加入基準を満たす勤務実態であるのに、所定労働時間を短く、所定労働日数を少なくして、労働条件通知書も嘘の内容にして交付しているような場合があります。

こうした場合には、勤務の実態に即して社会保険に加入(資格取得)することになっています。

 

2018.09.20.解決社労士

<加害者への責任追及>

パワハラについて社内に相談窓口があれば、その相談窓口に事実を伝えます。

もし相談窓口が無ければ、加害者の直属上司に事実を伝えます。

これによって期待される会社の対応は、加害者から被害者への謝罪を促すこと、就業規則の規定に沿った懲戒処分、加害者の人事異動などです。

しかし、会社の対応が無い場合や、不適切・不十分と感じられる場合には、加害者に対する損害賠償の請求が考えられます。

 

〔民法709条〕

(不法行為による損害賠償)故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

少なくとも、精神的な損害を受けているでしょうから慰謝料の請求ができます。この他、治療費や勤務できなかったことによる賃金の損失などが考えられます。

 

<会社への責任追及>

会社は従業員に対し、パワハラに走らないように指導すること、従業員がパワハラを受けずに勤務できる環境を整えることについて責任を負っています。

法的には、使用者責任と安全配慮義務です。

 

〔民法715条〕

(使用者等の責任)ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

〔労働契約法5条〕

(労働者の安全への配慮)使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法には、損害賠償のことが書かれていませんが、労働契約法5条違反で従業員の権利が侵害されると、先に出てきた民法709条によって損害賠償を請求できることになります。

 

<加害者への制裁>

ここまでの内容は、パワハラについて責任を負う人たちに損害賠償を請求するという民事上の話です。

これとは別に、法令によって加害者に制裁が加えられる場合があります。

 

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

この人権侵害行為が犯罪にあたる場合には、警察に被害を申し出て対応してもらうことになります。

パワハラに伴う犯罪としては、刑法に規定されているものだけでも、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪、侮辱罪などが考えられます。

 

加害者に制裁する権限は、国家権力に独占されています。

たとえパワハラで辛い思いをしても、加害者に直接仕返しするようなことは許されません。それ自体が犯罪となることもあります。

 

2018.09.19.解決社労士

<年齢制限は原則禁止>

労働者の募集と採用の際には、原則として年齢を不問としなければなりません。

これは、形式的に求人票や求人広告で「年齢不問」とすれば良いということではありません。

年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に不採用としたりすることは違法です。

また、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。

 

【違法な求人条件の例】

・ハードな重労働について40歳以下で募集

・若者向けの洋服の販売スタッフについて30歳以下で募集

・PC操作や夜間業務の多い職種について若い人限定で募集

・一定の経験が必要な指導業務について50歳以上で募集

 

<認められている例外>

合理的な理由により、例外的に年齢制限が許される場合があります。

例外的に年齢制限を行う場合は、法定の例外事由に該当する必要があります。

また、年齢の上限を定める場合には、求職者、職業紹介事業者等に対して、その理由を書面や電子媒体により提示することが義務づけられています。

ただし、年齢制限が65歳以上の場合には、対象外となっています。

〔高年齢者雇用安定法20条1項〕

 

例外となる場合(雇用対策法施行規則1条の3 1項)

例外事由 1号 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 2号 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
例外事由 3号 イ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ロ 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ハ 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
例外事由 3号 ニ 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合

 

これらの例外事由は、厳密に解釈されていますので、安易な拡張解釈は許されません。

しかし、年齢制限の必要を感じる理由を分析してみれば、例外事由に該当する場合も多いのではないでしょうか。

 

2018.09.18.解決社労士

ガイドライン案の内容は↓こちらをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000190750.pdf

 

<示している内容>

このガイドライン案は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差がある場合に、次の2つを区別するための基準を示しています。

 

・不合理な待遇差

・不合理ではない待遇差

 

しかし、次の2つは示されていません。

 

・不合理な待遇差を含む就業規則の例(これは許されない)

・不合理ではない待遇差を含む就業規則の例(ここまでは許される)

 

なぜなら、1つの規定だけを見て、それが不合理な待遇差であるか否かは判断できないからです。

実際には、2組の規定の組合せを見て判断することになります。

 

・職務内容、責任、異動の範囲、人事考課による不利益の有無などの規定

・待遇または待遇の基準についての規定

 

<比較される2つのグループ>

このガイドライン案は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消することを目的としています。

単純に正社員とパート社員のような比較ではなく、2つのグループ間での比較になります。

 

正規雇用労働者 =「無期雇用」かつ「フルタイム」

雇用期間に区切りが無く定年まで働く予定であることと、1日8時間、週5日のようにフルタイムで働くこととの両方が条件となります。

「パートさん」「契約社員」と呼ばれていても、契約期間の定めが無くて、フルタイムで働いていれば、ここに言う正規雇用労働者です。

「正社員」と呼ばれていても、フルタイムで働いていない人は正規雇用労働者に含まれません。ただし、普段はフルタイムで、育児などの理由により一定の期間だけフルタイムで働かないという人は、正規雇用労働者に含まれます。

 

非正規雇用労働者 = 正規雇用労働者の条件を満たさない人

雇用期間に区切りのある有期雇用の人、フルタイムの人よりも短時間勤務の人、フルタイムの人よりも勤務日数が少ない人は、すべて正規雇用労働者の条件を満たしませんから非正規雇用労働者です。

「正社員」の中にも稀に有期雇用の人がいますが、この人は非正規雇用労働者に含まれます。

 

このガイドライン案が対象としているのは、正規雇用労働者のグループに含まれる人と、非正規雇用労働者のグループに含まれる人との比較です。

同じグループに含まれる正社員同士や、パートとアルバイトとの比較は対象外となります。

 

結局、就業規則の規定が、このガイドライン案によって不合理とされるか否かの判断のためには、次の2つの比較が必要となります。

 

正規雇用労働者についての次の2つの規定の組合せ

・職務内容、責任、異動の範囲、人事考課による不利益の有無などの規定

・待遇または待遇の基準についての規定

 

非正規雇用労働者についての次の2つの規定の組合せ

・職務内容、責任、異動の範囲、人事考課による不利益の有無などの規定

・待遇または待遇の基準についての規定

 

不合理だと判断されるのは、非正規雇用労働者の待遇または待遇の基準についての規定の内容です。

 

<比較される対象者の範囲>

このガイドライン案は、同一の企業・団体における不合理な待遇差の是正を目的としています。

世界的に見ると、労働組合が全企業にまたがって職種ごとに組織されてきた国が多いようです。こうした国々では、同一労働同一賃金も全企業にまたがって考えられています。

しかし、日本では企業ごとに労働組合が組織されてきた歴史があり、同じ仕事をしていても、企業によって待遇差が大きいという実態があります。

こうした実態を踏まえて、このガイドライン案は同一の企業・団体の内部での比較を考えています。

 

2018.09.17.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<理論上許される場合>

「女性社員だけ昇給しない」と決めて昇給しないのであれば、一般には労働基準法違反です。

ただし、男女平等の人事考課により、合理的な昇給制度を適用した結果、偶然、女性社員だけが昇給しなかったというのは、適法ということになるでしょう。

また、社内で男性社員の賃金水準が女性社員に比べて低い場合に、格差を是正するための措置であれば、許される場合もあります。

理論上は、この通りです。

しかし、会社側が適法性を証明するのは容易ではありません。

また、例外的に適法性を証明できたとしても、その正当性は支持されないでしょう。

 

<法令の規定>

憲法の平等規定を受けて、労働基準法に男女同一賃金の原則規定があります。

 

 日本国憲法14条1項

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

 労働基準法4条

使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

<裁判所の判断>

日本シェーリング事件(平成元年12月14日 最高裁判決)では、「賃上げは稼働率80%以上のものとする」旨の賃上げ協定の中の条項に関し、生理休暇、産休、育児時間による欠務を欠勤として算入するとの取扱いがなされたことに対し、右欠務のため賃上げを得られず、また、旧賃金を基礎とした一時金の支給しか受けられなかったXらが、Y社に対し、賃金差額、債務不履行ないし不法行為により受けた損害の賠償を求め勝訴しています。

この判決は、賃上げ協定の中の条項が公序に反することを理由としています。公序というのは、公の秩序です。男女平等という公の秩序に反する条項は無効だということです。

 

民法90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

<政府の方針>

平成22(2010)年8月31日には、厚生労働省が「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」を作成し公表しています。

ガイドラインの趣旨を、次のように説明しています。

 

男女雇用機会均等法などの法整備が進み、企業でも女性の活躍の場が広がっていますが、男女間賃金格差は先進諸外国と比べると依然、大きい状況にあります。また、多くの企業が男女間賃金格差を計算したこともないとの実態もあります。

今回作成したガイドラインは、賃金や雇用管理の在り方を見直すための視点や、社員の活躍を促すための実態調査票といった支援ツールを盛り込んでいます。現実的な対応方策を示すことで、労使による自主的な見直しの取組を支援していきます。

 

ガイドラインのポイント

1.男女間格差の「見える化」を推進

 男女での取扱いや賃金の差異が企業にあっても、それが見えていない場合もあると考えられる。男女間格差の実態把握をし、取組が必要との認識を促すため、実態調査票などの支援ツールを盛り込んだ。

 

2.賃金・雇用管理の見直しのための3つの視点

 

(1)賃金・雇用管理の制度面の見直し

 <具体的方策>

 ・ 賃金表の整備

 ・ 賃金決定、昇給・昇格の基準の公正性、明確性、透明性の確保

 ・ どのような属性の労働者にも不公平の生じないような生活手当の見直し

 ・ 人事評価基準の公正性、明確性、透明性の確保、評価結果のフィードバック

 ・ 出産・育児がハンデにならない評価制度の検討

 

(2)賃金・雇用管理の運用面の見直し

 <具体的方策>

 ・ 配置や職務の難易度、能力開発機会の与え方、評価で、男女で異なる取扱いをしていないかを現場レベルでチェック

 ・ コース別雇用管理の設定が合理的なものとなっているかを精査

 ・ コースごとの採用や配置は、先入観やこれまでの実績にとらわれず均等に実施

 

(3)ポジティブ・アクションの推進

 <具体的方策>

 ・ 女性に対する社内訓練・研修の積極的実施や、基準を満たす労働者のうち女性を優先して配置、昇進させる等のポジティブ・アクションの実施

 

現在は、働き方改革の中で、同一労働同一賃金が求められています。

家庭の中で女性の果たす役割を固定的に捉え、これを前提として賃金を決定するというのは、同一労働同一賃金の考え方に反します。

すでに男女同一賃金は「当たり前のこと」として、次の段階に入っています。

 

「女性社員だけ昇給しない」という事実は、それ自体が適法な場合であっても、社会の大きな流れには逆らっているわけですから、お客様を含めて世間から支持されるものではありません。

 

2018.09.16.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことに配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン 

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。未確定ならば、必要に応じ専門家に相談するなどして確定させてください。

 

2018.09.15.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

<国民健康・栄養調査>

平成30(2018)年9月11日、厚生労働省は平成29(2017)年11月に実施した「国民健康・栄養調査」の結果を取りまとめ公表しました。

平成29年調査は、毎年実施している基本項目に加え、高齢者の健康・生活習慣の状況を重点項目とし、高齢者の筋肉量や生活の様子について初めて把握しました。

高齢者の健康づくりには、食事、身体活動に加えて、生活状況も踏まえた視点が重要だということです。

 

【調査結果のポイント】

高齢者の栄養状態は、食事、身体活動、外出状況等と関係・65歳以上の低栄養傾向の者(BMI≦20 kg/m2)の割合は、男性12.5%、女性19.6%。・四肢の筋肉量は、男女ともたんぱく質摂取量が多く、肉体労働の時間が長い者ほど有意に増加。

・外出していない男性の低栄養傾向の者の割合は、外出している者と比べて約20ポイント高い。

・「何でもかんで食べることができる」者の割合や、20歯以上歯を有する者の割合は、60歳代から大きく減少。

 

女性は20~50歳代でもやせが課題

・20~50歳代の女性のやせの者(BMI<18.5 kg/m2)の割合は、いずれの年齢階級も10%超であり、特に20歳代では21.7%。

※「健康日本21(第二次)」では、若年女性のやせは骨量減少、低出生体重児出産のリスク等との関連があることが示されている。

 

40歳代で睡眠の状況に課題

・1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男女とも40歳代で最も高く、それぞれ48.5%、52.4%。

・睡眠で休養が十分にとれていない者の割合は20.2%であり、平成21年からの推移でみると有意に増加し、年齢階級別にみると40歳代で最も高く30.9%。

 

受動喫煙の機会は「飲食店」が最も高く4割超

・受動喫煙の機会を有する者の割合について場所別にみると、「飲食店」では42.4%と最も高く、次いで「遊技場」では37.3%、「路上」では31.7%。

 

 

<個人的な解説>

BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算します。たとえば、64kgで1.75m(175㎝)なら、64÷1.75÷1.75でBMIは20.9です。体形は無視して体重と身長だけで計算します。

歯については、8020運動というのがあります。「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。ちなみに、私の歯は31本あります。虫歯で親知らずを1本抜いてもらいました。今は、京王線府中駅前の太田歯科医院で定期検査を受けるだけで良好に保たれています。太田歯科医院の太田先生は、小学校と中学校の同級生です。昔から潔癖症でとても器用ですから信頼しています。

女性はダイエットを意識する割には、やせ過ぎの人が多いということです。ダイエットが必要なのに本気で取り組まない人と、必要が無いのに無理なダイエットをする人は不健康になってしまいます。見た目だけでなく、健康美を目指していただけたらと思います。

睡眠時間だけでなく、睡眠の質も大事です。今は、スマートフォンのアプリで睡眠の質をチェックすることもできますが、あまり気にすると反対に眠れなくなりますから注意しましょう。

 

2018.09.14.解決社労士

<給与から控除(天引)できるもの>

給与から控除できるものとしては、次のものが挙げられます。

・法令に別段の定めがある場合(所得税法による所得税等の源泉徴収、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険徴収法による保険料の控除)

・労使協定(労働組合または労働者の過半数を代表する者と使用者との協定)によるもの

・欠勤控除(休んだ分を差し引く)

・減給処分(これは厳密には控除ではなく給与そのものの減少)

このうち欠勤控除だけで、給与の総支給額がマイナスになってしまう場合には、給与計算の方法が不合理だと考えられるので改める必要があるでしょう。

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

<欠勤控除の単価>

欠勤控除を算出する場合、まず単価である「時間給」を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけるなどして、1か月の所定労働時間を計算します。

1か月の所定労働時間が計算できないのは、労働条件通知書の必須項目が決まっていないという状態ですから違法ですし、トラブル防止のためにも決めなければなりません。

 

<減額方式の場合>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じることがあります。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から控除したりしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設けるなどの工夫が必要です。

 

<加算方式の場合>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<合理的な併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<月間所定労働時間の変動>

なお、1か月の所定労働時間が、毎月の出勤日数や暦上の日数によって変動する会社もあるようです。この場合には、欠勤控除の不合理が発生しにくくなります。

しかし、月給の時間単価が変動するというのでは、給与計算が複雑になりますし、同じ時間の残業手当が月によって変動するのなら、単価の安い月には仕事を溜めておいて、単価の高い月に集中して残業するという困った現象も起こりかねません。

平成31(2019)年4月には、年次有給休暇の取得が義務化されますが、これも有利な月に集中しそうです。

毎月変動するのでは名ばかり「所定労働時間」になってしまいます。

やはり、1か月の所定労働時間は一定にすべきでしょう。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料など法定の項目を給与から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら給与が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に規定しておくことは稀でしょうから、マイナス分をどのように支払ってもらうかなど細かいことは、会社と労働者とで話し合って決めればよいでしょう。

 

2018.09.13.解決社労士

<リスク回避のため>

パワハラに走る人には特徴があります。

こうした特徴の現れている人に、会社が部下や後輩を与えると、パワハラを誘発することになります。

リスク回避のためには、これらの特徴が消えるまで教育研修などを行い、人事異動を慎重にするなどの配慮が必要でしょう。

 

<善悪判断の自信過剰>

「自分は正しい」という思い込みが強いという特徴があります。

ニュースに接したとき、「誰が正しい、誰が悪い」ということを口にします。

自分の社内での手柄について、繰り返し話題にします。

グループ研修などを通じて、「常に自分が正しいわけではない」ことを理解させましょう。

 

<主体的な制裁意識>

「悪いことをした人に対しては、自分が制裁を加えるべきだ」と考える特徴があります。

社内で不都合なことをした人に対しては、直属上司が指導すべきですし、社内規定に従った懲戒が行われるべきです。

しかし、他部署の人に注意したり、街中で赤の他人に怒ったりするのは、この特徴の現われです。

組織論や懲戒が行われる場合の段取りについて、理解させる必要があります。

 

<原因の誤判断>

自分の行為から生じた不都合な結果について、他人の行為が原因であると考える特徴があります。

自分が会議室で花瓶を倒して割った場合には、「こんな所に花瓶を置いた人が悪い」と考えます。

他人が会議室で花瓶を倒して割った場合には、「不注意で花瓶を割った人が悪い」と考えます。

こうした考え方の矛盾と問題点について、本人に自覚させなければなりません。

 

<器が小さい>

人格的に未成熟で心に余裕が無いという特徴です。

他人の成功を喜べない、他人をほめることができない、人の好き嫌いが激しい、自分と家族を優先して考える、自分に利益が無いことには消極的、お金に細かい、他人を批判するが自分への批判は気にする、好意的なアドバイスを受け入れないなどの傾向が見られます。

これでは、部下や後輩がついてきませんから、イライラしてパワハラに走るのも当然でしょう。

この特徴は、家庭内の「しつけ」の現われでもあり、社内での教育研修で改善するのは大変かもしれません。

人事考課の評価項目に入れておき、自覚を促して、自ら改善していただくことも考えましょう。

 

2018.09.12.解決社労士

<再雇用後の賃金>

会社と労働者とで定年後も働き続けることの合意がなされる場合に、労働条件については、どうしても賃金ばかりが重視されがちです。

再雇用の実績が多い会社では、定年前の賃金のおよそ何パーセントという相場の形成があるでしょうから、賃金についての合意の形成は比較的容易かもしれません。

年金については、性別と生年月日によって支給開始の時期が異なりますし、60代前半と65歳以降とでは支給額が大きく異なります。また、配偶者の生年月日によって、加給年金額や振替加算についても違いが出てきます。

これらを踏まえて、期間ごとの賃金変動まで合意しておくこともあります。

 

<年次有給休暇>

定年前は、毎年20日の年次有給休暇が付与される一方で、2年前に付与された年次有給休暇は時効消滅するという実態があると思われます。

しかしこれは、週5日勤務を前提としているわけです。

定年後の再雇用で、所定労働日数や所定労働時間が変われば、年次有給休暇の付与日数は変わるかもしれません。

変わるのであれば、これについても再雇用対象者に確認しておく必要があります。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

「勤続期間」は定年前と定年後を通算します。定年後の再雇用だからといって、定年前の年次有給休暇が自動的に消滅するわけではありません。

 

さて、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。これは労働基準法の改正によるものです。

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、基準日から1年以内の期間に、年次有給休暇のうち5日については、その取得を確実にしなければなりません。

「年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者」という限定がありますので、この部分についても再雇用対象者にあらかじめ説明が必要でしょう。

 

<社会保険>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上というのが原則の基準です。

ただし、大企業などで特定適用事業所となっている場合には、1週間の所定労働時間が20時間以上で加入となります。

 

この基準により社会保険に加入しない場合には、扶養家族(被扶養者)を含めて国民健康保険の保険料を支払うことになりますし、扶養している配偶者は国民年金保険料を支払うことになります。

定年前の健康保険であれば、扶養家族の分の保険料は発生しなかったのに、国民健康保険に切り替わると、扶養家族扱いにはならず保険料が高くなることも多いでしょう。

また国民年金に切り替わると、扶養している配偶者についても「第三号被保険者」ではなくなりますので国民年金保険料がかかることになります。

 

社会保険料は高額ですから、社会保険の加入基準との関係で、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数を決める必要があります。

 

<雇用保険>

雇用保険の加入基準は、会社の規模にかかわらず1週間の所定労働時間が20時間以上となっています。

20時間を下回ると、安定した雇用関係に無いということで、雇用保険では「離職」という扱いになります。

なお、現在は毎年4月1日時点で満64歳以上の労働者の雇用保険料は免除されています。しかし、この免除制度は2020年4月1日をもって廃止されます。

 

人手不足を背景として、定年後の再雇用が盛んになっています。これに伴うトラブルも増加しています。会社に長年貢献してきた従業員とのトラブルは、会社にとって大きな打撃となってしまいます。十分な話し合いをもって労働条件を決定するようお願いいたします。

 

2018.09.11.解決社労士

<みなし規定の効果>

法令の中に「みなす」「推定する」という言葉が使われています。

日常会話の中では厳密に区別されませんが、条文の解釈としては大きな違いが出てきます。

「みなす」という表現が使われている規定は、「みなし規定」と呼ばれます。

ある事実があった場合に、一定の法的効果を認めるという規定です。

その事実さえあれば、自動的に法的効果が発生します。

「例外的な事情があって法的効果を否定したい」と考えて証拠を集めても、法的効果を否定することができません。

「推定する」という表現が使われている「推定規定」であれば、実際はその推定が不合理であることを証明して、法的効果の発生を阻止することができるのですが、「みなし規定」では覆すことができないのです。

 

<労働法とみなし規定>

労働法では、主に労働者を保護するために「みなし規定」が置かれています。

たとえば、労働基準法38条2項には次の規定があります。

 

坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。

 

つまり、賃金を計算するときには、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までのすべての時間を労働時間として計算しなければなりません。

たとえ、1日2時間の休憩時間を設けていたとしても、休憩が無かったものとして計算します。

日当を設定する場合には、1時間あたりの最低賃金に、このルールで計算した労働時間をかけ合わせて、最低賃金法違反にならないかチェックする必要があります。

 

また、年次有給休暇の付与基準である出勤率について、労働基準法39条8項は次の規定を置いています。

 

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

つまり、法律によって休業することが認められた日については、すべて出勤したものとみなして出勤率を計算することになります。

 

労働契約法にも、有期労働契約の無期転換(18条1項)と更新(19条)に「みなす」という規定があります。

 

「常識的に見て」「実際には」などの理由で法的効果を否定できないところに、みなし規定の怖さがあります。

 

2018.09.10.解決社労士

<毎月の源泉徴収>

会社など給与の支払者は、役員または使用人に対して給与を支払うたびに、所得税と復興特別所得税の見込み額を天引き(控除)しています。

これを源泉徴収といいます。

源泉徴収した税金は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。

こうして国は税金の徴収漏れを防げますし、分割払いになることで、一度に多額の税金を納付することも防げます。

 

<1年間の税額の確定>

ところが、その年1年間に給与から源泉徴収した税金の見込み額の合計は、必ずしもその人が1年間に納めるべき税額とはなりません。

そこで、その年の1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与の合計額に応じ、一覧表により給与所得控除後の給与の額を求めます。

ここから、扶養控除などの所得控除を差し引き、所得税の税率を当てはめて税額を求めます。

 

<年末調整>

源泉徴収をした税金の見込み額の合計と、1年間に納めるべき実際の税額には差額が発生します。

この差額をその年最後の給与で精算するのが年末調整です。

一般には、源泉徴収をした金額の方が多いため、徴収しすぎた税額を返金します。これを「年調還付」などと呼んでいます。

反対に、1年間に納めるべき税金の方が多い場合には、追加で差額の税額を徴収します。これを「年調不足」などと呼んでいます。

年末調整の対象となる人は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人です。

ただし、2,000万円を超える給与の支払を受ける人は、年末調整の対象になりません。

 

<年の途中で年末調整の対象となる人>

次のいずれかに当てはまる人は、年の中途で「年末調整」の対象となります。

・海外支店等に転勤したことにより日本の非居住者となった人

・死亡によって退職した人

・著しい心身の障害のために退職した人(再就職して給与を受け取る見込みの人を除く)

・12月に支給される給与等の支払を受けた後に退職した人

・パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、年内に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後、年内に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人を除く)

 

2018.09.09.解決社労士

<定額(固定)残業代>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

会社にとっても、人件費が安定するので人件費の予算や計画が立てやすくなります。

 

<適法性>

かつては違法な運用が横行していたために、定額(固定)残業代そのものが悪であるかのように言われていました。

しかし、適法に運用する会社が増えてきており、必ずしも悪いものとは見られなくなりました。

ハローワークの求人票でも、正しく内容を明示すれば問題ないものとして扱われています。

適法な導入と運用の概要は次のとおりです。

まず、残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめて支給することはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給する方式をお勧めします。

たしかに、深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。

しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

この点は、労働基準監督署でも、このように指導されているはずです。

 

<具体的な計算方法>

定額(固定)残業代の設定に必要な計算はやや複雑ですから、Excelなど表計算ソフトを活用した方が良いと思います。

ここでは、1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=25万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

25万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=25万円

基本給=25万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、206,089円となります。

定額残業手当は、25万円-206,089円=43,911円です。

206,089円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(206,089円÷176時間)×30時間×1.25=43,911円で計算の正しいことが確認できます。

※ただし実際の給与計算では、円未満の端数処理のルールがありますから、上記のとおりにいかない部分もあります。

 

<その他の注意点>

このとき注意したいのは、最低賃金です。

計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

上記の例では、206,089円÷176時間=1,170円ですから、1時間あたりの賃金が1,170円となり、現在どの都道府県でも最低賃金を上回ります。

しかし、基本給+定額残業手当=20万円の場合を想定すると、1時間あたりの賃金が936円となり、東京都や神奈川県では最低賃金を下回ってしまいます。

これでは最低賃金法違反となってしまいます。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのかを対象者に明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。

何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになってしまいます。

これでは、想定外に人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

 

2018.09.08.解決社労士

<公正な採用選考の基本>

採用選考に当たっては、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力のみを基準として行うことが基本です。

この基本から外れた採用面接を行ってしまうと、応募者からの口コミで会社の評判が落ちてしまうこともあります。

しかし、質問したわけではないのに、応募者の方から自発的に話したことを聞き取るのは問題ありません。

 

<ハラスメント発言は厳禁>

パワハラ、セクハラ、マタハラなどの発言は、確実に避けなければなりません。

もちろん、まだ労使関係にない応募者と会社との間で、厳密な意味でのハラスメントは生じないでしょう。

しかし、応募者に対してハラスメント発言をしてしまえば、セクハラなどが横行する会社であるという印象を与えることになります。

それでも、面接担当者が自分の子供のことについて世間話をしたのに対して、応募者が興味を示して自分の子供について話したのなら、自発的に話したものとして聞き取っても良いでしょう。

 

<思想信条にかかわる事項>

宗教、支持政党、人生観、生活信条、尊敬する人物、購読新聞・雑誌・愛読書などに関することは、面接で聞いてはいけません。

しかし、「何か趣味はお持ちでしょうか」と世間話をするのは問題ありません。

「読書です」という回答に対して、「どんな本を読みますか?」と尋ねるのは不適切です。

それでも、「私はマンガばかり読んでいますよ」という世間話に対して、「夏目漱石の作品が好きです」という回答を得るのは問題ありません。

 

<応募者に責任のない事項>

応募者の努力で改善できないことを尋ねるのは人権侵害にあたります。

たとえば、本籍・出生地に関すること、家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)、生活環境・家庭環境などに関することも、面接で聞いてはいけません。

採用が決まってから、社会保険の手続きなどに必要な範囲内で申告させるようにしましょう。

それでも、面接担当者自身のことや他の従業員のことについて世間話をすると、質問したわけではないのに応募者が自分自身の話をしてくることがあります。

採用選考に当たっては、応募者の適性・能力のみを基準として行うことが基本ですが、その参考資料として応募者の自発的な発言を活用することも可能でしょう。

 

2018.09.07.解決社労士

<整理解雇とは>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法律上の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。

会社が解雇を通告し、その通告を受け入れた退職者が、退職後数か月経過してから専門家に相談したところ「不当解雇であり解雇は無効だった可能性がある」と言われて、会社に異議を申し立てるということもあります。

退職の時点では、「早く転職先を見つけよう」など前向きな気持ちになっていたところ、なかなか仕事が見つからず経済的な不安も大きくなって、「あの解雇はおかしいのではないか」という疑問も膨らむようです。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇の具体的な有効要件は、次の4つの要素が最高裁判決の中で示されています。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく総合的に判断されます。

まず、経営上の人員削減の必要性です。会社の財政状況に問題を抱えていて、新規採用などできない状態であることです。

これは法的な判断というよりは、経営上の判断ですから、一応の必要性が認められればクリアできる基準です。

次に、解雇回避努力の履行です。配置転換や希望退職者の募集などの実施です。

これはかなり大きなウエイトを占めています。解雇に踏み切らなくても事業が継続できるのであれば、解雇は回避しなければなりません。

さらに、解雇対象者の人選の合理性です。差別的な人選は許されません。

ここは、人選基準を具体的に示して労働者全体に説明しなければならないところです。

最後に、手続の相当性です。事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

説明や協議は、回数が多く期間が長ければ誠実さも認められやすくなります。

 

2018.09.06.解決社労士

<従業員が拒むケース>

労災保険の手続きをすれば、被災者は無料で治療を受けたり、賃金の一部が補償されたりします。

ところが、「自分の不注意でケガをしたのだから会社に迷惑をかけたくない」あるいは「面倒くさい」などの理由で、手続きに必要な書類の作成に協力しない従業員もいます。

 

<被災者の権利ではあるものの>

労災保険による補償を受けるのは被災した従業員の権利です。

権利というのは、原則として行使するかしないかが権利者の選択に任されています。

この原則からすると、被災者が権利を放棄している以上、何ら問題は無いようにも思われます。

しかし、使用者は労働者を労務に従事させることにより事業を営んでいるので、労働者の業務上のケガや病気については、本来、使用者が補償する責任を負っています。〔労働基準法75条以降〕

ただ、労災保険による補償がある場合には、その範囲で責任が免除されます。〔労働基準法84条1項〕

ですから、被災者本人か労災手続きを拒んでいる場合に手続きを進めなければ、使用者には労働基準法上の補償責任が残ってしまいます。

ただし、これは業務上のケガや病気についての補償の場合であって、通勤災害については労働基準法上も使用者が責任を負いませんので当てはまりません。

 

<被災者を説得するために>

まず、手続きを速やかに進めないと、労災隠しを疑われるなど会社が迷惑するという説明が必要でしょう。

また、労災手続きをすることによって治療費がかからなくなること、手続きをしない場合、健康保険が適用されないので、3割ではなく治療費の全額が自己負担となること、労災なのに健康保険証を呈示して治療を受ければ一種の保険詐欺になることも説明しましょう。

さらに休業補償がある場合には、1日あたりの具体的な金額を示して説明することも有効です。

 

2018.09.05.解決社労士

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

<生産性の低下>

ここでいう生産性とは、労働生産性のことです。これを式であらわすと次のようになります。

 

労働生産性 = 労働による成果 ÷ 労働投入量

 

より少ない労働で、より大きな成果が得られれば、労働生産性が高いということになります。

ところが、この式の中の「労働投入量」が「人件費」にすり替えられてしまうことがあります。

その結果、担当者の残業代カットや管理監督者ではない単なる管理職に残業代を支給しないという違法な現象が発生します。

 

これによって、労働生産性は低下します。

なぜなら、労働投入量は変わらず、労働による成果が減少するからです。

 

残業代をカットされる会社の従業員は、残業代をカットされない会社の従業員よりも勤労意欲が低下しますから、長時間職場にいても実質的な労働による成果が減少します。

長時間労働であれば、精神的肉体的疲労によって、さらに労働による成果が減少します。

転職のことを考えながら将来に対する不安を抱えて働いても、会社に貢献できるはずがありません。

 

労働基準法41条2号に規定されている管理監督者は、管理職や役職者の中のほんの一部なのですが、誤った解釈によって残業代が支給されていないことがあります。

こうした職場で、部下の残業を禁止して、こなし切れない仕事は上司が行うことにすれば、人件費は減少します。

しかしこの上司は、疲労の蓄積とマネジメントに必要な時間の減少によって、適切な判断や部下への指示がむずかしくなります。

上司だけでなく、部下の労働による成果も減少します。

 

こうして会社の業績が悪化すれば、さらに人件費を切り詰めようとするのでしょうか。

管理職の残業が増えている現象が見られたら、間違った方向に進んでいないか確認をお勧めします。

 

<生産性の向上>

従業員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

疲労が蓄積しなければ、1時間あたりの労働による成果が増すからです。

 

従業員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての労働生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

また、従業員ひとり一人の能力を向上させることも大事です。

 

これらを実現するために、まず取りかかることは業務を減らすことです。

次のような視点から、過去にとらわれることなく、大胆に業務をカットしてはいかがでしょうか。

・なぜこの業務を行っているのか。目的は何か、本当に必要か。

・この業務をこの時間帯に行うのはなぜか。締め切りは適切か。

・この業務をこの場所で行うのはなぜか。別の場所で行った方が良くないか。

・なぜこの業務をこの部署のこの従業員が担当しているのか。

・このやり方で良いのか。もっと良い方法はないのか。

・この業務から具体的な成果は得られているか。経営者の自己満足ではないか。

 

2018.09.04.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

 

<ダイバーシティ(Diversity)>

ダイバーシティは「人々の間の違い」「多様性」というのが本来の意味です。

日経連の定義は「異なる属性(性別、年齢、国籍など)や従来から企業内や日本社会において主流をなしてきたものと異なる発想や価値を認め、それらを活かすことで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し利益の拡大につなげようとする経営戦略。また、そのために、異なる属性、異なる発想や価値の活用をはかる人事システムの構築に向けて連続的かつ積極的に企業が取り組むこと。」となっています。

私の理解では「色々な違いのある人々であっても、同じ職場に平等に受け入れ、一緒に働くからには組織の一員として平等に扱う」ということを、ダイバーシティと言っていると感じます。平等の原理のあらわれであるという理解です。

 

<インクルージョン(Inclusion)>

インクルージョンは「包括」「包含」「一体性」というのが本来の意味です。

「組織内の誰にでもビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれに特有の経験やスキル、考え方が認められ、活用されていること」などと説明されています。

インクルージョンは、ダイバーシティをより発展させた新しい人材開発のあり方であるという説明も良く目にします。

私の理解では「色々な違いのある人々を、同じ職場に平等に受け入れた後は、一緒に働くのであっても、一人ひとりの個性が活かされ独自能力を最大限に発揮できるよう、個性に応じて公平に扱う」ということを、インクルージョンと言っていると感じます。公平の原理のあらわれであるという理解です。

 

<平等と公平>

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

平等な採用をして、公平な処遇をすることによって、一人ひとりが能力を最大限に発揮し企業と共に成長するのは、すばらしいことだと思います。

平等と公平は、共通する属性に着目するのか、異なる属性に着目するのかという点で、大きな違いがあります。

両者の調和を目指すのが公正です。

採用前から退職後まで、人事の仕事は公正であることが求められます。

 

2018.09.03.解決社労士

<働きながらもらう老齢年金>

働きながら老齢年金を受けることができます。これを在職老齢年金といいます。

厚生年金保険の適用される会社で勤務する70歳未満の方は、年金を受けていても若い方と同じ条件で厚生年金に加入します。

しかし、年金額の一部または全部が支給停止されることがあります。

まず、1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金と賞与の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

60歳以上65歳未満の方の場合、この「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が28万円以下であれば、年金は全額支給されます。

28万円を超えるときは、「基本月額」が28万円以下か超えるか、「総報酬月額相当額」が46万円以下か超えるかの区分に従い、4つの計算式のどれかによって支給停止額が計算されます。

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が46万円以下>

支給停止額

=(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-28万円)×6

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が46万円を超える>

支給停止額

=(「基本月額」+19万円)×6+(「総報酬月額相当額」-46万円)×12

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が46万円以下>

支給停止額

=「総報酬月額相当額」×6

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が46万円を超える>

支給停止額

=276万円+(「総報酬月額相当額」-46万円)×12

 

<高年齢雇用継続給付を受ける場合の支給停止>

60歳以上65歳未満の方は、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けることがあります。

この場合には、賃金額の0.18%~6%が支給停止されます。

 

<65歳以上の方の支給停止>

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が46万円以下であれば、年金は全額支給されます。

46万円を超えるときは、次の金額が支給停止となります。

(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-46万円)×6

なお、平成27年10月以降は、70歳以上の方、議員、共済組合加入者も在職支給停止の対象者となっています。

 

<加給年金額が加算されている場合>

加給年金額を除く老齢厚生年金が、全額支給停止される場合には、加入年金額も全額支給停止となります。

この他の場合には、加給年金額は全額支給されます。

 

2018.09.02.解決社労士

<裁量労働制の安易な導入>

裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、一定の時間働いたものとして賃金が支払われる仕組みで、仕事の時間配分などの裁量を労働者に委ねる制度です。

適正な運用により、生産性が向上するわけですが、誤った運用をすれば長時間労働が発生します。

最近、本来認められない業務に不正に適用した求人がインターネットの求人サイトで相次いでいることから、厚生労働省はサイトの運営者に対してチェックの強化を求めたそうです。

働き方改革関連法案の審議を巡り、裁量労働制についての報道が増えたことから素人判断での導入が増えたようですが、適法な導入と適正な運用はむずかしいものです。

 

<2つの裁量労働制>

現行法上、裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つがあり、どちらもみなし労働時間制の一つです。

適法に運用するための条件は複雑ですから、安易に適用することは避けなければなりません。

 

<専門業務型裁量労働制>

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量に任せる必要がある業務として厚生労働省令と厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間だけ働いたものとみなす制度です。

みなし労働時間制にすれば、労働時間の算定が楽になりますが、法定の要件と手続きが厳格ですし、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されない点に注意が必要です。

 

<専門業務型裁量労働制の対象業務>

 「専門業務型裁量労働制」は、専門的な19業務に限り、事業場の過半数労働組合または過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することができます。

対象業務の例としては、新商品の研究開発、デザイナー、コピーライター、弁護士、税理士などがあり、かなり専門性の高い業務に限定されています。

 

<専門業務型裁量労働制の導入手続>

原則として、対象業務、みなす時間、健康確保措置、対象労働者からの苦情処理方法などの基本事項を労使協定により定めたうえで、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

この労使協定には、対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分などに関して労働者に具体的な指示をしないことが含まれています。あくまでも、自律的な専門職として働かせる仕組みなのです。

 

<企画業務型裁量労働制>

事業活動の中枢にある労働者を対象として、創造的な能力を十分に発揮できる環境を実現するため、企業の本社などで企画、立案、調査、分析を行う労働者のために設けられました。

みなし労働時間制にすれば、労働時間の算定が楽になりますが、法定の要件と手続きが厳格ですし、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されない点に注意が必要です。

 

<企画業務型裁量労働制を導入できる事業場>

対象業務が存在する事業場に限定されています。具体的には、本社・本店である事業場の他、次の事業場が該当します。

・企業の事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場

・その事業場の事業計画や営業計画の決定を独自に行っている支社・支店

 

<企画業務型裁量労働制の導入手続>

事前・事後のものを含め次の手続きが必要です。

・労使委員会の設置と決議、運営方法の決定

・労働基準監督署長への届出と6か月以内ごとに1回の定期報告

 

<対象労働者の同意>

この制度の適用については、労働者本人の同意を得なければなりません。また、不同意の労働者に対して不利益な取扱いをしてはなりません。

同意は個別でなければならず、就業規則での包括的な同意では足りません。

 

2018.09.01.解決社労士

<勤続期間が短い場合>

最初から半年以内の契約期間で働く約束であったり、長く勤めてもらう予定だったとしても入社から半年以内に退職すると、法定の年次有給休暇は取得できません。〔労働基準法39条1項〕

ただし、雇用期間を半年にして契約した場合でも、契約が更新されて半年を超えて働き続ければ、原則として、法定の年次有給休暇が取得できるようになります。

さらに、会社の就業規則で入社と共に年次有給休暇を付与するような規定を置いていれば、半年を待たずに年次有給休暇を取得できます。

 

<休みがちだった場合>

就業規則や雇用契約で決まっている全労働日の8割以上出勤しなければ、法定の年次有給休暇は付与されません。〔同上〕

ただし、業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日、育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日、年次有給休暇を取得した日については、出勤したものとして計算します。

 

<出勤回数が少ない場合>

隔週1日の出勤というように、所定労働日数が年48日未満の雇用契約で働く場合にも、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法39条3項、厚生労働省令〕

あくまでも、所定労働日数が基準です。1日の勤務時間が短くても、所定労働日数が多ければ年次有給休暇が付与されます。

 

<就業規則による修正>

会社の就業規則に、労働者に有利な規定があれば法律に優先して適用されます。

反対に、年次有給休暇についての規定が無かったり、法定の基準を下回る規定があったとしても、最低限、法定の年次有給休暇が付与されます。

 

<やってはならないこと>

勤続期間は、試用期間を設けた場合であっても、試用期間の初日から計算しなければなりません。本採用になってから半年後に、年次有給休暇を付与するのでは違法です。

また、年次有給休暇を減らしたり付与しなかったりする懲戒処分は無効ですし、違法でもありますから、損害賠償と罰則の適用の両方が問題となります。

 

2018.08.31.解決社労士

<スタートは法定手続きから>

フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

そのポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<無効だとどうなるのか>

上記の法定手続きをせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというようなインチキな運用をしても無効です。

無効ということは、フレックスタイム制が無いものとして賃金の計算をしなければなりません。

間違って、フレックスタイム制のルールで賃金を計算して支払ってしまった場合には、不足する差額分を追加で支払わなければなりません。

たとえば、法定労働時間を超える8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払いが必要です。

( 8時間 × 1.25 = 10時間 )

しかも、消滅時効の関係で、最大2年分遡って精算することになります。

 

<違法だとどうなるのか>

正しい手続でフレックスタイム制を導入した場合を含め、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

違法だと、労働基準法の罰則に触れるため罰せられることがあります。

 

2018.08.30.解決社労士

<延滞金>

保険料を「納期限」(督促による指定期限)までに完納しないと、保険料とは別に「延滞金」を納付しなければなりません。

「延滞金」は、法定納期限の翌日から納付されるまでの日数に応じて、保険料額に年8.9%(最初の3か月間は軽減措置が設けられ2.6%)で計算します。

※「延滞金」は、税務申告上の経費になりません。

 

<滞納処分>

「滞納処分」とは、保険料を期限内に納付した事業主と納付しなかった事業主との負担の公平を図ることを目的に、保険料滞納事業主が自主的に納付しない場合、法的手続きにより滞納事業主の財産から強制的に保険料を徴収する「強制処分」です。

納付についての相談がない、納付の約束が守られないなど、納付の意思が認められない場合には、金融機関、取引先、法務局、市町村等に対して「財産調査」を行います。

この調査によって、金融機関や取引先が経営状態についての不安を感じることがあります。

 

<費用徴収>

事業主が労災保険料を滞納している期間中に業務災害や通勤災害が生じ、被災労働者等に労災保険給付を行った場合、事業主からその保険給付に要した費用の一部(最大40%)を保険料とは別に徴収することになっています。

通勤途上で従業員が事故に遭い、意識不明で病院に運ばれたようなケースで事実が明らかになるようです。

 

<助成金の不支給>

雇用に関する「各種助成金」は、労働保険の「雇用保険料」を財源として支給されます。

労働保険料が納付されていない事業主については、助成金の支給対象になりません。

 

<納入証明書>

「納入証明」は「保険料の未納がないことの証明」です。

労働保険料が完納されていないと、「入札参加資格」や「経営事項審査」等に必要な「労災・雇用保険料納入証明書」が交付されません。

 

<納付できないなら>

納期限までに納付できない事情がある場合は、早めに相談しましょう。

災害等により保険料が一時的に納付できない事業主のために、納付猶予制度があります。

都道府県労働局労働保険徴収室または最寄りの労働基準監督署に相談してください。

 

2018.08.29.解決社労士

 <上司による管理>

上司は部下の仕事ぶりを管理しています。しかし、部下が全員帰るまで、上司が会社に残っているというのも不合理です。

ある程度育った部下のことは信頼して、ひとりで残業させるというのも許されるでしょう。

しかし、部下だけで残業させておいてノーチェックというのも、上司としての職責を果たしていないことになります。

残業代が欲しくてただ残っているだけの部下に気付かないのではお話になりません。

 

<勝手に残業したのなら>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

それなのに、部下が自己判断で勝手に会社に残って働いたのなら、上司が指導しなければなりません。

しかし、この場合でも最初の1回は残業代を支払わなければなりません。なぜなら、会社側である上司の教育指導不足が原因だからです。

 

<残業命令があったとしても>

たしかに「明日の会議の資料を完成させてから上がるように」とは言ったものの、残業時間の長さの割に完成度が低いのであれば、上司から部下に具体的な事情を聴かなければなりません。

解らなかったり迷ったりで時間がかかったのであれば、上司も一緒に残業すべきだったのかもしれません。

能力不足が原因であれば、少なくとも会議資料の作成については、ひとりで残業させないようにする必要があるでしょう。

 

<ひとり残業を発生させない工夫を>

ひとりで残業するというのはモチベーションが下がりますし、たった一人のために光熱費をかけるというのも不合理です。

たとえ部下が残業の必要性を主張したとしても、ひとり残業になるのなら、上司はその部下を帰らせる勇気を持つべきです。

残業の必要性を申し出るタイミングが遅いのなら、仕事の進め方やスケジューリングについての指導が必要です。

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間の総合計が長い一方で残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

このような部下に対しては、上司の徹底的な指導が必要でしょう。

 

2018.08.28.解決社労士

<採用時の健康診断>

企業は、常時使用する労働者を採用するときには、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定がなくても、この実施義務は免れることができません。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

・期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

・1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

健康診断を行わなかった事業者に対する罰則は、1人1回罰金50万円ですが、健康診断をサボる労働者に対する罰則はありません。

そして、健康診断の実施義務は、事業規模に関係なく定められていますから、小さな会社が免除されることはないのです。

 

<法定されていることの恐ろしさ>

企業が健康診断の実施をサボったとしても、必ずしも罰則が適用されるわけではありません。

しかし、健康配慮義務違反ということになってしまいます。

他人にケガをさせた場合には、傷害罪や過失致死罪など刑法が適用されることがあります。これとは別に、加害者は被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されてしまいます。

企業が健康診断をせずにいたところ、労働者の一人が勤務中に病死したとします。この場合に罰金を取られなかったとしても、遺族からは多額の損害賠償を請求されるでしょう。企業としてやるべきことをやっていなかったのですから、責任は免れません。しかも、健康診断の実施義務を果たしていなかったことは、簡単に証明されてしまいます。

 

<健康診断は企業にとっても安心材料>

労働者から「仕事が忙しくて血圧が上がった」「仕事のストレスで肝機能がおかしくなった」などの主張があっても、採用時の健康診断を正しく行っておけば、入社の時点から多少の異常は見られたことが容易に判明します。仕事が原因で健康を害したわけではないという証明もしやすくなります。

採用を決めてから、健康診断の結果が悪いことを理由に採用を取り消すのは、安易にできないことです。むしろ、健康に配慮しながら働かせることになります。この場合にも、健康診断の結果を踏まえて適正な対応をとったという主張をするには、結果を保管しておくことが役に立ちます。

なお、健康診断の個人別結果は、法定の保管期間が5年間と長いので注意しましょう。

 

2018.08.27.解決社労士

<厚生労働省の発表>

平成30年8月22日、厚生労働省が「平成29年度使用者による障害者虐待の状況等」を取りまとめ公表しました。

労働基準監督署の上位の行政機関である都道府県労働局は、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」)に基づき、都道府県などの地方公共団体と連携し、障害者を雇用する事業主や職場の上司など、「使用者」による障害者への虐待の防止や、虐待が行われた場合の関係法令に基づく是正指導などに取り組んでいます。

厚生労働省では、今回の取りまとめ結果を受けて、引き続き、地方公共団体との緊密な連携を図りながら、使用者による障害者虐待の防止のために取り組んでいくとのことです。

 

【ポイント】

 

1 通報・届出のあった事業所数、通報・届出の対象となった障害者数はいずれも前年度と比べ増加。

・通報・届出のあった事業所数    1,483事業所 (前年度比 12.7%増)

・通報・届出の対象となった障害者数    2,454人  ( 同 44.6%増)

 

2 虐待が認められた事業所数、虐待が認められた障害者数はいずれも前年度と比べ増加。

・虐待が認められた事業所数              597事業所 (前年度比 2.8%増)

・虐待が認められた障害者数               1,308人  (   同  34.6%増)

 

3 受けた虐待の種別は、経済的虐待が1,162人(83.5%)と最も多く、次いで心理的虐待が116人(8.3%)、身体的虐待が80人(5.7%)となっている。

 

 

<使用者とは>

使用者とは、法律の定義によると次のとおりです。

 

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法10条〕

 

ここでいう「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

「使用者」というと、会社にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社会保険労務士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社会保険労務士は労働基準法10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

結局、労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社会保険労務士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

さて、障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔36条の2~36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔36条の5〕

また、平成28(2016)年4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)年3月25日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

この指針は、全ての事業主が障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

この内容からすると、たとえば視覚障害者に対しては、募集や採用試験にあたって点字や音声等による実施が求められることになります。

また、たとえば精神障害者に対しては、業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成し使用することや、本人の状況を見ながら業務量等を調整することなどが求められます。

 

人手不足の折、中小企業で障害者雇用の採用を考えた場合に、上記のような対応を求められたのでは、なかなか採用に踏み切れないでしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔36条の2、36条の3〕

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、募集・採用にあたって経費のかかる配慮をしたり、勤務にあたって高額な設備を設けたりということではなく、相談相手を決めて親切に相談に応じるとか、チューター制度を設けてマンツーマンの指導を受けるようにするなどの配慮が求められています。

 

<経営者の責務>

法令や通達・指針によって、経営者には障害者に対する一定の配慮が求められているわけですから、使用者が隠れて障害者を虐待しないように監視する責務を負っています。

使用者が経営者から受けるストレスを、障害者にぶつけて解消するという現象も見られます。

経営者は、使用者のストレスも適切にチェックしていかなければなりません。

 

2018.08.26.解決社労士

<ビジログとは>

平成30(2018)年8月20日、中小企業庁が、中小企業で働く従業員等を、将来、社内の中核的な人材に成長できるよう育成するため、社会人基礎力や「人手不足解消術」「生産性向上術」を始めとした専門知識などのカリキュラムを、いつでも、どこでも学ぶことができ、かつ学習履歴や成果を可視化できる人材育成のプラットフォーム『ビジログ』を構築し、公開しました。

 

<ビジログの趣旨>

中小企業が、第四次産業革命等の急激な環境変化や人口減少という構造的問題に対応しながら、成長・発展を続けるためには、経営者を支える中核人材の育成が急務です。

こうした問題意識から、中小企業庁では、中小企業等で働く従業員を、将来、社内の中核的な人材に育成するためのプラットフォーム『ビジログ』を構築し、ホームページ上に公開しました。

※ビジログ=ビジネススキル+記録(ログ)

 

<事業コンセプト>

1.中小企業等で働く従業員に必要な社会人基礎力や「人手不足解消術」「生産性向上術」「人づくり術」などの専門知識等を身につけることができるカリキュラムを用意します。

2.EdTechを活用し、時間や場所にとらわれない多様な学びのスタイル(ウェブ型、双方向ライブ型、ワークショップ型)を提供します。

3.受講履歴等を一元管理し、受講者の理解度・進捗を可視化することで、成果や成長を実感しながら、学びを継続することができます。

 

↓受講料無料のビジログはこちら

https://busilog.go.jp/

 

2018.08.25.解決社労士

<今年は台風の当たり年>

今年の6月から8月にかけて、例年よりも台風の発生が多くなっています。

赤道の北側に「熱帯収束帯」というのがあります。

ここに赤道の北と南から風が集まり、行き場のなくなった風が上空に上昇気流として上がっていくと、海水温が高く水蒸気が多いので、多量の積乱雲が発生します。

こうして台風の卵ができます。

今年は、熱帯収束帯の海水温が例年より1℃高いので台風が多いようです。

 

<原因の原因>

では、なぜ熱帯収束帯の海水温が高いのかというと、二酸化炭素の増加による地球全体の温暖化、太陽活動の変化、森林の縮小などが原因ではないかとされています。

しかし、自然現象ですから確実なことは解かりません。

ましてやその先の、なぜ二酸化炭素が増えるのか、太陽活動がどのように変化するのか、森林はなぜ縮小するのかを解明しようとしても、さらに困難になります。

 

<労働問題の原因>

たとえば、残業が減らないのも、年次有給休暇の取得率が低いのも、男性が育児休業を取らないのも、「仕事が忙しいから」で終わらせてしまうと改善策が出てきません。

同様に、パワハラやセクハラは「それを行う人の常識が無い」、求人への応募者が少なくて退職者が多いのは「会社に魅力が無い」、新人が入社して数年で意欲を失うのは「仕事にやりがいが無い」というだけの原因解明では、対応の糸口すら見えてきません。

 

<突っ込んだ原因解明>

たとえば、パワハラの原因が「それを行う人の常識が無い」ことにあるとすれば、そのまた原因は会社の教育不足が考えられます。

・経営者がパワハラを許さないことについて明確な意思を表明していない

・就業規則に具体的で明確なパワハラの定義がない

・定義があっても、就業規則について定期的な研修が繰り返されていない

またたとえば、非常識でパワハラを行う社員がいるのではなく、パワハラが放置されていることが原因で横行しているのであれば、その原因は次のことが考えられます。

・パワハラの相談窓口がない

・パワハラ被害者から申し出があっても会社が対応していない

・就業規則に具体的で明確な懲戒処分の規定がない

・規定があっても、就業規則について定期的な研修が繰り返されていない

自分の会社が、どうしてこのような状態なのか、その原因まで解明できれば、やるべきことは全て見えてくるでしょう。

 

自社内での分析と対応がむずかしければ、会社の改善に取り組んでいる社会保険労務士にご用命ください。

 

2018.08.24.解決社労士

<報道の内容>

ジャパンビバレッジの支店長が部下に、「クイズに正解しなければ有給休暇を取得させない」というメールを送ったことが報道されています。

この支店長は平成28(2016)年に複数の部下に対して「正解で有給チャンス」など、メールでクイズを出題していたそうです。

不正解の部下には、実際に年次有給休暇の取得を認めなかったとのことです。

 

ジャパンビバレッジは、自動販売機専業オペレーターとして国内No.1の大企業です。

 

<しろうと目線では>

なかなか年次有給休暇を取得できない職場で、「少しでも有給休暇を消化させよう」と考え、上司が部下全員にくじ引きやクイズで働きかけて、取得を促進するのは、働き方改革の観点からも良い工夫であるかのようにも見えます。

たとえ経営者や人事部門から「もっと有給休暇を取りなさい」と言われても、全社的にあるいは一部の部門で、なかなか取得できない雰囲気があるかも知れません。

こんなとき「当たりくじを引いたから」「クイズに正解したから」という理由で、堂々と年次有給休暇を取得できたなら、その社員は救われた気持ちになることでしょう。

 

<法的観点からは>

しかし年次有給休暇は、労働基準法39条に定められた労働者の権利です。

権利というのは、行使するかしないかが権利者の自由に任されています。

もし「当たりくじを引いたら」「クイズに正解したら」賞品として必ず年次有給休暇を取得するというルールなら、強制的に権利を行使させられることになり、権利者の自由ではなくなってしまいます。

また「外れくじを引いたら」「クイズに不正解なら」年次有給休暇を取得できないというルールなら、会社の許可なく自由に取得できるはずの年次有給休暇が不当に制限されてしまいます。

年次有給休暇の取得促進という目的が正しくても、手段が正しくなければ、法的観点からは違法なこととして否定されることがあるのです。

 

<労働基準法の改正に注意>

平成31(2019)41日からは、法改正により、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

具体的には、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

2018.08.23.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<報道されていることの意味>

企業だけでなく行政機関でも、一定の割合で障害者を雇うことが法律で義務づけられています。

しかし今月に入り、国交省など複数の中央省庁や山形県が、障害者雇用者数を水増ししていたことが指摘されています。

企業が基準を上回る割合で障害者を雇用しなければ、経済的な負担を強いられます。

こうした中で、行政機関が障害者雇用者数を水増しするというのは、たとえ過失でもあってはならないことです。

以下に、障害者雇用納付金制度の概要を再確認したいと思います。

 

<障害者雇用納付金制度>

障害者の雇用には、事業主の経済的負担が伴います。

障害者を多数雇用している事業主と、障害者をほとんど雇用していない、あるいは、全く雇用していない事業主との経済的負担の格差の調整を図るために、障害者雇用納付金制度が設けられています。

具体的には、法定雇用率未達成の事業主から障害者雇用納付金を徴収し、それを財源とした障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金、各種助成金を支給する制度です。

 

<障害者雇用納付金>

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主で、法定雇用障害者数を下回っている事業主は、不足1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付します。

ただし、常用雇用労働者の総数が200人以下の事業主は、平成32(2020)3月までの分について、40,000円に減額されています(減額特例)。

 

<障害者雇用調整金>

常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主で、雇用障害者数が法定雇用障害者数を超えている場合は、超過1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

 

<報奨金の支給>

常用雇用労働者の総数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度合計数が一定数を超える場合、超える障害者1人につき月額21,000円の報奨金が支給されます。

ここで一定数とは、常用雇用労働者数の4%、または、各月6人(年間72人)のどちらか多い方をいいます。

 

<在宅就業障害者支援制度・助成金>

在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する特例調整金・特例報奨金の制度があります。

障害者を雇い入れるための施設の設置、介助者の配置等に支給される助成金があります。

 

このように、障害者雇用に向けた努力が法定されているのに、行政機関が雇用している障害者の数を水増しするのは許されないということです。

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

http://www.jeed.or.jp/disability/koyounoufu/

 

2018.08.22.解決社労士

<出産手当金>

健康保険に入っている人が、出産のために仕事を休み普通に給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

まず、被保険者の出産であることが必要です。被保険者とは保険料を負担している人で、扶養家族は対象外となります。

また、妊娠85日以上での出産であることが必要です。流産や死産、人工妊娠中絶も含みます。

法律上は、4か月以上となっていますが、妊娠については1か月28日で計算しますし、3か月を1日でも超えれば4か月以上と考えますので、28 × 3 + 1 = 85 という計算により、実際の運用は妊娠85日以上で行われています。

さらに、給料の支払いが無いか、出産手当金の金額より少ないことが条件です。

 

<支給金額>

1日あたりの支給額は次の計算式で示されます。

1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

数年前に法改正があって、このように「標準報酬月額を平均した額」になりました。

平成28(2016)年3月31日までの支給金額は、もっと簡単で、次の計算式で求められました。

1日あたりの金額 =(休んだ日の標準報酬月額)÷ 30日 × 2/3

前産後休業中に標準報酬月額が変わると、出産手当金の金額も変わってしまったわけです。

 

<注意したいこと>

出産にあたってもらえる給付金には、「出産育児一時金」もあります。

こちらの方は、被保険者だけでなく扶養家族の出産にも支給されます。

扶養している妻だけでなく、扶養に入っている未婚の娘が出産した場合などにも支給されます。

少子化対策で、出産をめぐる健康保険の給付は法改正による充実が進んでいます。

「○○さんのときはこうだった」というのではなく、最新の情報を確認して手続きを進めたいものです。

 

2018.08.21.解決社労士

<傷病手当金と労災保険>

傷病手当金は、健康保険に入っている人が、プライベートの生活が原因の病気やケガで仕事ができず給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

業務や通勤などが原因の病気やケガであれば、労災保険が適用されますから健康保険の給付は対象外となります。

この場合、健康保険の適用は無いのですが、もっと有利な労災保険の給付があります。

ですから、労災保険が適用されるかどうか微妙なケースであれば、所轄の労働基準監督署に確認するなどしてみて、対象外であれば傷病手当金の手続きをするのが良いでしょう。

下手に確認してヤブヘビになることを恐れるのであれば、社会保険労務士などに代わって確認してもらうことも考えましょう。

 

<もらえる条件>

まず、業務外の病気やケガで仕事ができない期間について医師の証明が必要です。

仕事ができないわけではないけれど、大事をとってお休みするというのは対象外となります。

反対に、医師による労務不能の証明があるのに本人が無理して勤務してしまうと、傷病手当金は減額あるいは不支給となるのが一般です。

また、4日以上連続して仕事を休んでいることが必要です。最初の3日間を「待期期間」といって、ここに公休や有給休暇が含まれていてもかまいません。

さらに、給料の支払いが無いか、傷病手当金の金額より少ないことが条件です。

医師が証明した期間と、実際に仕事を休んだ期間とで、重なる日について支給されます。

 

<支給金額>

次の計算式によって算出された金額が支給されます。

1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

これは、平成28(2016)年4月1日から法改正によって変更になっています。

それまでは、次の計算式が使われていました。

1日あたりの金額=(休んだ日の標準報酬月額)÷30日×2/3

これだと、健康状態が悪くなって本来の仕事ができなくなり、たとえば正社員から賃金の安いパート社員になって、さらに病状が悪化して休業するようになったようなケースでは、低くなった標準報酬月額を基準とした傷病手当金が支給されることになります。

ケガの場合はともかく、徐々に病状が悪化して入院するような場合には、支払ってきた保険料に対して給付の金額が少なくなってしまいます。

無理をせず早めに入院したほうが、傷病手当金の金額が下がらずに済むというケースも考えられます。

 

<注意したいこと>

たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。

「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。

文書料には健康保険が適用されませんし、文書料をいくらにするかは病院の判断に任されています。

交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。

労災保険の手続きをしないのは、「労災かくし」となり違法となることもありますが、健康保険の給付を受けるかどうかは本人(被保険者)の自由です。

手続きのための書類は、会社と本人と医師の3者が記入しますが、前提として本人の意思を確認して手続きを進めたいものです。

 

2018.08.20.解決社労士

<みなし労働時間制が使われるケース>

出張や外回りの営業のように事業場外で行われる業務は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難になる場合が発生します。

こうした場合に労働時間を適正に算定するため、みなし労働時間制が利用されてきました。

 みなし労働時間の算定方法は次の要領です。

労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定するのが困難なときには、所定労働時間だけ労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するため通常の場合、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。〔労働基準法38条の2第1項但書〕

この場合、業務の遂行に通常必要とされる時間は、会社と労働者代表などとの労使協定により定めることができます。〔労働基準法38条の2第2項〕

 

<制度利用の注意点>

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし労働時間が算定されます。

また、労働時間の算定が困難かどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより客観的に判断されます。現在では、携帯電話などで随時指示が出されるケースが多く、こうした場合には原則として適用対象となりません。

 

<ガイドラインの改定>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)120日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

ただ、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱いが、きわめて具体的になりました。

これは、社外での勤務が多いこと、営業手当や定額残業代を支給していることを理由に、適正な労働時間の把握を放棄している企業が目立ったからだと聞いています。

また、労働時間の適正な把握に関連するサービスの充実も背景にあると思われます。

ほんの一例ですが、SONYが提供しているクラウド型勤怠管理システムのAKASHIは、低コストでパソコン、iPad、スマートフォン、FeliCaカード、ネットワーク対応ICカードリーダーによる打刻ができますし、オフィスでも出先からでも打刻を行えます。スマートフォンのGPS機能を使うことで、位置情報も記録できます。

こうしたサービスを利用することで、会社は適正な労働時間の把握という法的義務を果たすことができますし、まじめに勤務する外回り担当者と、そうでもない担当者との不公平も解消することができるでしょう。

 

2018.08.19.解決社労士

<ブラックの意味>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で道義的に求められていることをせず自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)を指しているようです。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 ブラック企業は、企業と労働者が身を置く労使関係の中で、道義的に求められている労働法の順守、誠実な行動、常識的な対応ということに配慮せず、やりたいようにやってしまう企業です。

そもそも労働法の規定はどうなっているか、どうするのが誠実で常識的な行動なのか、これを積極的に知ろうとはしません。

必ずしも悪意をもっているとは限らず、面倒くさいから考えない、コンプライアンスなんて知らないという企業もあります。

 

<勘違いするポイント>

「自分の働いている会社はブラック企業ではないか?」と勘違いする人も少なくはありません。

その理由として、次のようなことが挙げられます。

・正社員とその他の従業員とで通勤費の計算方法が異なる

・支給される通勤費に上限額がもうけられている

・日曜日や祝日に出勤しても割増賃金が無い

・生理休暇をとった場合に無給となる

・父親の葬式で休んだら弔事休暇ではなく欠勤となった

・8時間勤務で休憩が50分

・退職金や賞与の支給が正社員に限定されている

・2年半勤務しても退職金が出なかった

・試用期間が3か月なのに10日間で解雇となった

どれもこれも就業規則に違反していない限り、必ずしも違法ではありません。

それでも、他の企業と比較して不利であったり、自分の中の常識に反していれば、「ブラック」と判断することもありうるのです。

 

<疑いを晴らすには>

法律の規定がどうなっていて、会社のルールがどうなっているのか、それはなぜなのか、ということについて社員教育が必要です。

会社が正しいことをしていても、会社を疑う社員がいるようでは、生産性が上がりませんし、社員も会社も成長しません。

そして、この教育は会社を疑っている社員に対しては、効果が期待できません。

少なくとも社外の講師による説明会など、客観性を確保した教育が必要となります。

それでも、社員の納得が得られない社内ルールがあったなら、それはその会社の社員の常識に反しているわけですから、見直しをお勧めします。

 

2018.08.18.解決社労士

<現代版の時差出勤>

東京都では、「時差Biz」と称して時差出勤を推奨しています。通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらすもので、働き方改革のひとつと考えられます。

たしかに働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

東京都の特に区部では、満員電車の混雑緩和が社会の生産性向上のための重要な課題のひとつとなっています。通勤時間をずらすことによって満員電車の混雑緩和を促進する「時差Biz」に、多くの会社で一斉に取り組めば、現在の満員電車での通勤による労働者の肉体的・精神的な負担が軽減され、生産性が向上することは明らかでしょう。

 

<労働者側のメリット>

生産性の向上というと、企業側のメリットばかりが強調されてしまいますが、空いた電車では満員電車とは違って、働き手にとっても時間の有効活用が可能です。

満員電車では、ただただ耐えるだけの時間となってしまいます。しかし、空いた電車の中では、スマホで個人の趣味に取り組んだり、ニュースをチェックしたり、資格試験の勉強をしたりと、通勤時間の有効活用が可能となります。

それに、朝早く出勤して夕方は早く帰宅というパターンなら夕方の時間をプライベートに使えますし、遅め出勤なら朝の時間に趣味や家族のコミュニケーションを充実させることも可能です。

 

<会社で必要な手続き>

時差出勤は、フレックスタイム制とは違って1日の労働時間(所定労働時間)の長さはそのままです。早く出勤して早く帰るか、遅く出勤して遅く帰るかということです。

しかし、これを導入するには、会社の就業規則に新たな規定を設ける必要があります。

始業時刻と終業時刻は、就業規則に必ず定める絶対的必要記載事項です。〔労働基準法89条〕

そのため、時差出勤の対象者や時差出勤での始業時刻と終業時刻のパターンは、就業規則に定めておく必要があります。

また、時差出勤の導入によって休憩時間も変更する必要があったり、一斉休憩の原則が維持できなくなるようであれば、就業規則にその旨を定めたり、一斉休憩の適用除外に関する労使協定の締結も必要となります。

 

2018.08.17.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<法定三帳簿>

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等は、会社に備えておかなければならない重要な書類として「法定三帳簿」と呼ばれます。

会社は、1人でも雇えば、これらの書類を作らなければなりません。

「出勤簿等」と言っているのは、始業時刻・終業時刻を記した出勤簿に代えてタイムカードなど別の記録でもか構わないからです。

これらには、法律に定められた事項を記入し、3年間保管しておくことが義務づけられています。〔労働基準法107~109条〕

なお、民法が改正され施行を待つばかりとなっていますが、民法の規定に合わせて労働基準法が改正されれば5年間の保管が義務付けられるようになります。

これを怠っている会社は、「適法ではない」ということになります。

 

<労働者名簿の項目>

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職・死亡年月日と理由・原因です。

人事異動があれば、ここに記録されます。

本籍やマイナンバーはこれらの項目に含まれていません。

 

<賃金台帳の項目>

労働者氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当の種類と額、控除項目と額です。

ここにもマイナンバーは含まれていません。

 

<出勤簿等の内容>

出勤簿やタイムカード、会社側で記録した始業・終業時刻の書類、残業命令書・報告書、労働者が記録した労働時間報告書などです。

残業は会社の命令によって行うものであり、労働者の勝手な判断で行うものではありません。労働者が勝手に残業しても、残業手当は発生しないのが正しいのです。これを明らかにしておくために、残業命令書が運用されている会社があります。

 

<この他に必要な書類>

法定三帳簿の他に、労働条件通知書、三六協定などの労使協定書、健康診断の結果など、労働法関連の書類だけでも、会社が作成や保管を義務づけられている書類は多数あります。特に健康診断の結果は、保管期間が5年間です。

労働条件通知書を作成・交付しないのは、明らかに違法なのですが、知らない経営者が多いのも事実です。

どうやって労働条件を決めたら良いのか迷うところかあるのなら、社会保険労務士に相談してでも決めなければなりません。

 

<マイナンバーは別管理で>

賃金台帳や労働者名簿などにマイナンバー(個人番号)を記載しておけば便利なように思われます。

しかし、マイナンバーは用途を具体的に限定して収集した個人情報ですから、他の目的で使用することがある帳簿に記載しておくことは、適正な管理とはいえません。別に管理することが求められています。

 

2018.08.16解決社労士

<平成30(2018)年度 地方最低賃金審議会の答申のポイント>

・改定額の全国加重平均額は874円(昨年度848円) 

・全国加重平均額26円の引上げは、最低賃金額が時給のみで示されるようになった平成14年度以降最大の引上げ 

・最高額(東京都985円)に対する最低額(鹿児島県761円)の比率は、77.3%(昨年度は76.9%。なお、この比率は4年連続の改善)、また、引上げ額の最高(27円)と最低(24円)の差が3円に縮小(昨年度は4円) 

・東北、中四国、九州などを中心に中央最低賃金審議会の目安額を超える引上げ額が23県(平成27年度以降最多。昨年度は4県)

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、101日から10月中旬までの間に順次発効される予定です。

たとえば、105日に最低賃金が改定される場合には、105日勤務分の賃金から適用されます。給与計算が複雑にならないようにするためには、105日の直前の締日の翌日の勤務分から、新しい最低賃金を下回ることになる従業員の賃金を引き上げることが必要です。

 

<平成30年度地域別最低賃金時間額答申状況>

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000344180.pdf

 

たとえば、東京都と大阪府は101日から27円増で、東京都が985円、大阪府が936円です。

県境のコンビニなどでは、求人に対する応募者の集まり具合に差が出ます。賃金以外の待遇で差を埋めるなどの対応が行われています。

 

2018.08.15.解決社労士

<労働基準監督署の調査(監督指導)と改善>

平成30(2018)810日、厚生労働省が平成29年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

これは、全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への調査(監督指導)を行った結果、平成294月から平成303月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものです。

調査(監督指導)の対象となった企業では、定期的にタイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか確認するなど、賃金不払残業の解消のためにさまざまな取組が行われています。

厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、調査(監督指導)を徹底していくとのことです。

 

【平成29年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】

(1) 是正企業数                               1,870企業(前年度比 521企業の増)

      うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、

                                                         262企業(前年度比 78企業の増)

(2) 対象労働者数                               20万5,235人(同 107,257人の増)

(3) 支払われた割増賃金合計額   446億4,195万円(同 319億1,868万円の増)

(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり2,387万円、労働者1人当たり22万円

※支払額が1企業で合計100万円以上となったケースだけの統計

 

<発覚例1

◆タイムカード打刻後に作業を行うよう指示されているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆タイムカードの記録とメールの送信記録とのかい離や労働者からのヒアリング調査などから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・かつては、労働基準監督署が立入調査(監督指導)を行う場合、タイムカードなどの資料を確認する他、経営者や人事部門の社員の話を聞く形で行われました。現在ではこれらに加えて、労働基準監督官が直接労働者に聞取り調査(ヒアリング調査)を行えるようになっているため、賃金不払残業の実態は明らかになりやすくなっています。

 

<発覚例2

◆インターネット上の求人情報等の監視情報を受けて、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者が始業・終業時刻をパソコンに入力)により労働時間を管理していたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録や入退室記録とのかい離が認められ、また、月末になると一定の時間を超えないよう残業を申告しない状況がうかがわれるなど、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

監視情報

厚生労働省は、平成27年度から委託事業により、インターネット上の賃金不払残業などの書き込み等の情報を監視、収集する取組を実施している。労基署は、この情報に基づき必要な調査等を行うこととしている。

 

・自己申告による残業時間をもとに残業手当を支給すれば適法というわけではありません。あくまでも、勤務の実態に応じた支払でなければ賃金不払残業となります。

 

<発覚例3

◆違法な長時間労働が行われているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者がパソコン上の勤怠管理システムへ入力)による労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と入退室記録とのかい離、労働者からのヒアリング調査などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

・パソコンの使用履歴や建物への出入りの記録は、労基署にとって基本的なチェック項目です。自己申告制の場合には、事実との違いを会社が定期的にチェックすることも義務づけられています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。

 

2018.08.14.解決社労士

<調査の概要>

平成30(2018)807日、厚生労働省が平成29年度に、長時間労働が疑われる25,676事業場に対して実施した、労働基準監督署による調査(監督指導)の結果を取りまとめ公表しました。

この調査(監督指導)は、各種情報から時間外・休日労働数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等についての労災請求が行われた事業場を対象としています。

対象となった25,676事業場のうち、11,592事業場(45.1%)で違法な時間外労働が確認され、是正・改善に向けた指導が行われました。

なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、8,592事業場(違法な時間外労働があったものの74.1%)でした。

 

【平成29年4月から平成30年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:25,676事業場

 このうち、18,061事業場(全体の70.3%)で労働基準関係法令違反あり。

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

  ① 違法な時間外労働があったもの:11,592事業場(45.1%)

    うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        8,592事業場(74.1%)

        うち、月100時間を超えるもの:     5,960事業場(51.4%)

        うち、月150時間を超えるもの:       1,355事業場(11.7%)

        うち、月200時間を超えるもの:     264事業場( 2.3%)

  ② 賃金不払残業があったもの:1,868事業場(7.3%)

     うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        1,102事業場(59.0%)

  ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの:2,773事業場(10.8%)

 

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

  ① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:20,986事業場(81.7%)

         うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

                    月80時間を超えるもの:      13,658事業場(65.1%)

  ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,499事業場(17.5%)

      うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

            月80時間を超えるもの:       1,878事業場(41.7%)

 

<労働基準監督署の監督指導>

日常用語としては「調査」なのですが、正しくは「監督指導」です。

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。もちろん、ウソの「是正勧告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど改善が望ましいという指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、専門知識のある人が立ち会えば、労働基準監督署の監督官も穏やかに指導します。

しかし、専門知識の無い人が調査に立会うと、わかりにくい説明をして誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

社内に専門家がいないのであれば、事前の準備から事後の対応まで、信頼できる国家資格者の社労士にご用命ください。

 

2018.08.13.解決社労士

<自主点検の対象>

平成30(2018)87日、厚生労働省が裁量労働制を採用している事業場で、制度が法令に従い適正に運用されているかどうかをチェックすることを目的として、2月から実施してきた自主点検の結果を公表しました。

自主点検の対象となった事業場数は、企画業務型2,917、専門業務型9,250の合わせて12,167事業場で、このうち報告書が提出された事業場数は企画業務型が2,789(96)で、専門業務型が8,004(87)でした。

 

<自主点検の結果>

自主点検の結果、改善が必要と考えられる事業場の状況は、企画業務型では、「対象労働者が従事している業務」で、「個別の営業活動など、対象業務以外の業務に就かせている」「対象労働者の業務に対象業務以外の業務が含まれている」とした事業場が74(2.7)あったほか、「日常的に上司が具体的な指示をしたり、業務遂行の手段について指示する場合がある」「始業・終業時刻を定めており、それを遵守させる場合がある」「業務量が過大であったり、期日の設定が不適切」とした事業場が71(2.5)ありました。

また、専門業務型では、「対象労働者が従事している業務」で、「対象業務以外の業務に就かせている」「対象労働者の業務に対象業務以外の業務が含まれている」とした事業場が211(2.6)あったほか、「労働時間の状況」で「最長の者の労働時間の状況が相当程度長いもの」と答えた事業場が354(4.4)にのぼり、「労使協定の周知状況」で「労使協定を周知していない」「対象労働者のみに周知」とした事業場が389(4.9)にのぼりました。

 

<裁量労働制>

国会で厚生労働省のデータ改ざんが問題となり、裁量労働制の拡大が働き方改革関連法案から外されました。これによって、裁量労働制の知名度が上がる一方で、悪い印象が広まってしまいました。

裁量労働制は、労働時間制度の1つで、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度です。

出退勤時間の制限が外れ、実労働時間に応じた残業代は発生しません。

労働基準法には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つが規定されていて、その導入にも運用にも厳格な制限や手続きが定められています。

労働基準法は労働者を守るのが使命ですから、裁量労働制も労働者が働きやすくなるための制度です。しかし、正しく導入し運用するには専門的な知識と技術が必要ですから、社会保険労務士などの専門家に相談しながら実施する必要があるでしょう。

 

2018.08.12.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<春季賃上げ集計>

平成30(2018)83日、厚生労働省が平成30年の民間主要企業の春季賃上げ要求・妥結状況を集計し公表しました。

集計対象は、妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業334社です。

集計結果は、平均妥結額が7,033円で、前年(6,570円)に比べ463円の増額となっています。

また、現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率は2.26%で、前年(2.11%)に比べ0.15ポイントの増額で、賃上げ率は3年ぶりに前年比プラスとなっています。

 

<賃上げの傾向変化>

かつては、こうした大企業の統計を見ても、中小企業の実態とはかけ離れていて、大企業だからこそこれだけの賃上げができるという見方が一般的でした。

ところが、人手不足が進行している現在、中小企業の賃上げ率が大企業を上回るという傾向が見られます。

しかし、企業の体力差を考えると、中小企業がいつまでも今のペースで賃上げを続けることには無理があります。

中小企業としては、各社の実態に合った魅力づくりを進めることで、新規採用の実現や定着率の向上を図っていく必要に迫られるでしょう。

 

<中小企業こそ働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

2018.08.11.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<明らかな減少傾向>

平成30(2018)83日、平成29年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数を、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

これによると、ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数が3年連続で減少しました

平成29年度の申出等の件数は8,507件で、対前年度比8.5%減となり、平成27年度から3年連続で減少しました。

また、申出等を内容別に分類すると、「賃金に関すること」(27%)が最も多く、「就業時間に関すること」(21%)、「職種・仕事の内容に関すること」(15%)が続いています。

ハローワークでは、こうした相違に関する相談を受けた場合には、求人を受理したハローワークと連携して、迅速に事実確認を行っています。平成29年度の求人票の記載内容と実際の労働条件が異なっていたのは、3,362件でした。また、事実確認の結果、求人票の記載内容が実際の労働条件と異なっていた場合には、是正指導を行っています。

 

〔これまでの申出等の件数の推移〕

 

29年度

28年度

27年度

26年度

申出等件数

8,507件

9,299件

10,937件

12,252件

新規求人件数

6,468,438件

6,161,398件

5,835,295件

5,553,055件

 

<職業安定法の改正(平成3011日)>

上記のように、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違が減少しているなかで、職業安定法が改正され、当初明示した労働条件が変更される場合は、変更内容について明示義務が課されることとなりました。

 

<職業安定法に基づく指針等の主な内容>

・明示する労働条件は、虚偽や誇大な内容ではいけません。

・有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければなりません。

・試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。

・労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です。

・労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。

・明示する労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合には速やかに知らせるよう、配慮が必要です。

 

<当初明示した労働条件が変更される場合とは>

以下のように、労働条件を引き下げる場合だけでなく、引き上げる場合や、一定の幅をもって示していた条件を確定させる場合も、「労働条件が変更される場合」に該当するものとして扱われます。

・「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合

・「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合

・「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合

・「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合

 

<変更内容についての明示方法>

変更明示は、求職者が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。

当初の明示と変更された後の内容を対照表にした書面を交付する方法が適切ですが、当初予定した労働条件通知書と労働契約の内容に沿った労働条件通知書の両方を準備し、変更された事項にマーカーを引いて明示するなどの方法でもかまいません。

 

そもそも労働条件を明示しようにも、具体的な内容がうまく決められない場合には、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

 

2018.08.10.解決社労士

<労働争議統計調査>

平成30(2018)82日、厚生労働省が平成29(2017)年「労働争議統計調査」の結果を取りまとめ公表しました。

この調査は、国内の労働争議について、行為形態や参加人員、要求事項などを調査し、その実態を明らかにすることを目的としています。

 

【調査結果のポイント】(カッコ内は前年の数値)

 

1 総争議

平成29年の件数は358件(391件)で8年連続の減少となり、比較可能な昭和32年以降で最も少なかった。

 

2 争議行為を伴う争議

(1) 全体では前年と比べて件数、総参加人員及び行為参加人員が増加した。

件数68件(66件)

総参加人員 72,637人(52,415人)

行為参加人員 17,612人(15,833人)

(2) 半日以上の同盟罷業でも前年と比べて件数、行為参加人員及び労働損失日数が増加した。

件数38件(31件)

行為参加人員7,953人(2,383人)

労働損失日数14,741日(3,190日)

(3)半日未満の同盟罷業では、前年に比べて件数及び行為参加人員が減少した。

件数46件(47件)

行為参加人員9,917人(13,698人)

 

3 労働争議の主要要求事項

争議の際の主な要求事項(複数回答。主要要求事項を2つまで集計)は、「賃金」に関するもの181件(167件)が最も多く、次いで「経営・雇用・人事」に関するもの122件(160件)、「組合保障及び労働協約」に関するもの117件(99件)であった。

 

4 労働争議の解決状況

平成29年中に解決した労働争議(解決扱いを含む)は298件(328件)で、総争議件数の83.2%であった。そのうち「労使直接交渉による解決」は42件(46件)、「第三者関与による解決」は101件(115件)であった。

ここで「解決扱い」というのは、不当労働行為事件として労働委員会に救済申立てがなされた労働争議、労働争議の当事者である労使間では解決の方法がないような労働争議(支援スト、政治スト等)及び解決の事情が明らかでない労働争議等をいいます。

 

2018.08.09.解決社労士

平成30(2018)731日、全国の労働局や労働基準監督署が、平成29年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況について、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努め、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施するなど、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいくそうです。

また、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくとのことです。

なお、労働基準関係法令違反が認められたのは、監督指導実施事業場のうち84%にあたる4,564事業場に上ります。

 

【平成29年の監督指導・送検の概要】

 

■ 監督指導を実施した事業場は5,436事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、4,564事業場(84.0%)。また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)違反が認められたのは、3,516事業場(64.7%)。             

 

■ 主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(58.2%)、(2)割増賃金の支払(21.5%)、(3)休日(4.6%)。

  

■ 主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(49.1%)、(2)総拘束時間(44.0%)、(3)休息期間(34.0%)。

 

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは61件。

 

自動車を運転するのが仕事という方々は、本当に運転好きの方が多いですね。

 

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法や改善基準告示とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうにも思えます。

しかし、運転業務を続けたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意をしてしまうかもしれません。たとえ、同意書や誓約書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに書いてありません。その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法272項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

結論として、労働基準法や改善基準告示とは違う条件で働かせてしまうと、会社など使用者が違法行為を行ったことになってしまいます。たとえ自動車運転者が同意しても、望んでいたとしても、送検されることすらあるのです。

 

2018.08.08.解決社労士

<雇用均等基本調査>

平成30(2018)730日、厚生労働省が「平成29年度雇用均等基本調査」の結果(確報版)を取りまとめ公表しました。

「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に実施しています。平成29年度は、全国の企業と事業所を対象に、管理職に占める女性割合や、育児休業制度や介護休業制度の利用状況などについて、平成2910月1日現在の状況を調査しました。

これによると、管理職に占める女性の割合は部長、課長、係長相当職で上昇しています。

 

【企業調査 結果のポイント】

■正社員・正職員の採用状況

平成29年春卒業の新規学卒者を採用した企業割合は21.7%。採用区分ごとに男女とも採用した企業についてみると、総合職では49.6%、限定総合職では29.4%、一般職では31.9%となっている

■女性管理職を有する企業割合

係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は10.6%、課長相当職ありの企業は17.7%、係長相当職ありの企業は19.4%となっている

■管理職に占める女性の割合

管理職に占める女性の割合は、部長相当職では6.6%、課長相当職では9.3%、係長相当職では15.2%となっている

 

【事業所調査 結果のポイント】

■育児休業制度の規定状況

育児休業制度の規定がある事業所の割合は75.0%。規定がある事業所について規模別にみると、500人以上で99.4%、100~499人で98.8%、30~99人で91.8%、5~29人で71.2%と、規模が大きくなるほど規定がある事業所割合は高くなっている

 

<憲法や法律の規定>

労働基準法には次の規定があります。

 

(男女同一賃金の原則)

第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

これは賃金についての差別が典型的に見られたことから、特に注意を喚起するために置かれた規定だと考えられます。

この規定だけでは、労働関係についての男女平等が徹底されませんから、男女雇用機会均等法など数多くの法令に、性別による差別の禁止が規定されています。

 

これらの規定の大元は憲法です。すべての法令は、憲法に違反してはならないのですが、日本国憲法には次の規定があります。

 

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

ここには「性別」が明記されていますから、国会は差別的な法律を作れませんし、行政機関は差別的な運用ができません。裁判所も差別を許す判決を下すことはできません。

 

<働き方改革との関係で>

人手不足の折、法令の規定がどうあれ、女性を活用しなければ会社の業務が回りません。女性労働者についての働き方改革が必要です。

たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

能力発揮の点で、女性が男性よりも不利な立場に置かれている職場は、まだまだ多いものと考えられます。

こうした男女間の格差を解消していくことによって生産性を向上させるのが、収益の拡大や企業の成長・発展への近道だといえるでしょう。

 

2018.08.07.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件や専門性の高い業務は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<法人番号>

法人番号は、株式会社などの法人等に指定される13桁の番号です。

登記上の所在地に通知された後、原則としてインターネット(法人番号公表サイト)を通じて公表されます。

ですから、法人番号を秘密にする必要はありません。

法人番号は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現するためにできました。

まず、法人等に関する情報管理などの効率化を図り、行政コストを削減します。

また、行政機関同士での情報連携を図り、書類の削減や手続の簡素化で、企業側の事務負担を軽減します。

さらに、法人など団体に関する情報の共有により、社会保障制度、税制その他の行政分野で、給付と負担を公平かつ適切にします。

これを裏から見ると、不正受給、社会保険の不正な未加入、脱税などの摘発が容易になるわけです。

 

<個人番号との違い>

個人番号(マイナンバー)は重要な個人情報ですから、不正に取得してはなりませんし、ひとり一人が大切に管理しなければなりません。

たとえ個人番号が第三者に漏れてしまったとしても、個人番号の活用が進んでいない現在、今すぐに大きな被害が発生するとは考えられません。

しかし、10年後、20年後に個人番号が活用されるようになってから、その昔漏れてしまった個人番号が悪用されて被害が現実化するということも考えられるのです。

これと異なり、法人番号は原則として公表され誰でも自由に利用できます。

むしろ、利用範囲に制限がないことから、国が民間による利活用を促進することにより、国民に対しても役立つ企業情報が提供されるなど、新たな価値の創出が期待されているのです。

 

2018.08.06.解決社労士

<社会保険の資格取得>

社会保険に加入すること、正確には被保険者となることを「資格取得」といいます。

社会保険が適用される会社に入社すると、その日に被保険者となって、当日から健康保険で治療が受けられるのが原則です。

入社日に資格取得するということです。

たとえ試用期間であっても、試用期間の初日から社会保険に加入します。

これを避けるためには、試用期間だけ所定の勤務日数や労働時間を短縮して、社会保険の加入基準以下で勤務してもらうことも可能ではあります。

しかし、試用期間をこうした条件にしてしまったのでは、採用を決定しても入社を辞退される可能性が高いので得策ではありません。

 

  <社会保険の資格喪失>

社会保険から脱退すること、正確には被保険者ではなくなることを「資格喪失」といいます。

会社を辞めるとき、退職当日まで使っていた保険証が翌日には使えません。

退職日の翌日に資格喪失するということです。

 

  <同日得喪>

社会保険の「資格喪失」の日に、同じ社会保険の「資格取得」が行われることを、「同日得喪」といいます。

定年退職後に同じ会社で再雇用された場合には、賃金が低下することもあります。同一労働同一賃金の考え方を厳密に解釈すると、これは許されないようにも思われますが、最高裁判所も平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件判決で、ある程度の賃金低下を容認しています。

この場合に、賃金の低下を反映して保険料が安くなるのは、一般の随時改定の仕組みによると4か月も先ということになります。

そこで、60歳から64歳までの老齢厚生年金受給権者が再雇用となった場合などには、退職の翌月分から保険料を安くできるよう、特別に「同月得喪」という手続きがあるのです。

このとき、基礎年金番号は変わりませんが、保険証の番号は変わります。

かかりつけの病院には、「保険証の番号が変わりました」と申し出る必要があります。

ここで注意したいのは、保険料が下がるということは、傷病手当金の金額も下がるということです。

定年を機に、持病の入院治療を考えているような場合には、同日得喪を利用しない手もあります。

手続きをするのは会社ですが、同日得喪をするかどうかは、このようなデメリットも本人に説明したうえで決めていただく必要があるでしょう。

 

2018.08.05.解決社労士

<労働時間の認定基準>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<着替えの時間は労働時間>

就業時間中に着用を義務づけられている制服や、特定の作業を行う場合に必ず着用することになっている作業服に着替える時間は労働時間です。

もちろん、出勤してきたときの元の私服に着替える時間も労働時間です。

しかし、着用が義務付けられているわけではなく、着用するかどうかが労働者個人の自由であれば、一般に着替えの時間は労働時間に含まれません。

さらに、自宅から制服を着て出勤し、制服のまま帰宅すれば、着替え時間の問題はなくなるわけですが、業務以外で制服の着用を許してしまうと、所得税法上非課税とされる制服等には当たらないものとされる恐れもあり、この場合には、給与等として源泉徴収をする必要が発生してしまいます。

 

<他に労働時間となるケース>

昼休み中の来客当番や電話番、参加が義務づけられている研修や行事、警報や電話への対応が義務づけられている仮眠時間も労働時間です。

 

<黙認で労働時間となってしまうケース>

残業というのは、労働者が使用者から命令されて行うものです。

労働者がやりたくてやるのでもなく、労働者の勝手な判断でやるのでもありません。

ですから、たった1回だけ、労働者の勝手な判断で残業していたら、使用者から「勝手な残業は許しません」と注意して終わります。

しかし、何度も繰り返されていて、使用者側が見て見ぬふりをしていたら、残業について黙示の承認があったと判断されることもあります。

すると、時間外割増賃金が発生します。

これを防ぐため、就業規則には「自己判断での残業は許されないこと」「業務終了後は職場に残ってはならないこと」を規定しておきましょう。

 

<労働時間とならないケース>

通勤時間と同様に、出張先への往復時間も労働時間とはなりません。

ただし、物品の運搬を目的とする業務の移動時間は労働時間に該当します。

しかし、これを徹底してしまうと、出張が多い労働者の勤務時間が少なく計算され、出張の無い労働者との間で大きな不公平が発生してしまいます。

単純に出張先への往復時間を労働時間として賃金計算を行うか、別途、出張手当などを支給することによって不公平を解消する必要があるでしょう。

 

2018.08.04.解決社労士

<加入逃れの実態>

本来は厚生年金の加入対象なのに、会社の法定福利費を不当に削減するため、あるいは、手続がよくわからないなどの理由で、会社が正しく手続をしないケースがあります。

このような理由で、やむなく国民年金に入っている従業員は、推計で約200万人に上るというのが平成27(2015)年末の実態でした。

これを受け、政府は厳しい対応が必要と判断しました。

 

<マイナンバー導入による実態解明>

マイナンバー制度の利用により、税関連情報と社会保険関連情報を照合すれば、不正な加入逃れの実態は解明されるといわれています。

国税庁による会社の税関連情報と、厚生年金の加入記録を突合した結果、厚生年金の加入対象となる可能性がある会社は、平成27(2015)年末の時点で全国に約79万あったそうです。

こうしたことから、全国の日本年金機構職員が中心となって、詳しく会社の実態が調査されています。

 

<刑事告発の準備>

厚生労働省と日本年金機構は、保険料を払いたくないなどの理由で厚生年金への加入を逃れている悪質な事業主について、刑事告発するかどうかを判断するための新たな客観的基準を策定しています。機構と警察庁とで基準確定のための協議もしています。

全国一律の基準を設けることで、迷うことなく逮捕や書類送検ができるようにしているわけです。

ここまで準備を進めてきて、刑事告発をためらうことは考えにくい情勢です。

 

2018.08.03.解決社労士

<高年齢雇用継続給付>

60歳から65歳になるまでの雇用保険加入者(被保険者)を対象とする、高年齢雇用継続給付という給付があります。

老齢基礎年金の支給が65歳からですので、期間限定の給付となっているわけです。

 60歳の時点と比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける高齢者に支給される給付です。

支給対象月ごとに、その月に支払われた賃金の低下率に応じて、最高で賃金の15%が支給されます。

高齢者の就業意欲を維持、喚起して、65歳までの雇用の継続を援助、促進することが目的とされています。

 

<給付を受ける条件>

雇用保険の加入者(被保険者)であって、60歳になったとき被保険者期間が5年以上であることが必要です。

ただし、失業手当(基本手当)を受給したことがある方は、受給後の期間だけで計算します。

また、60歳になったときに5年未満であっても、その後5年に達すれば、その時から対象者となります。

失業手当(基本手当)を受給した後、60歳以後に再就職した場合に給付を受けるには、再就職の前日までの期間で失業手当(基本手当)の支給残日数が100日以上あること、安定した職業に就くことによって雇用保険の被保険者となったことが必要です。

 

<受給手続き> 

会社と対象者とで、協力して書類を準備します。提出先は、会社所轄のハローワークです。

必要書類の中に、離職票によく似たものがあり、「60歳に達した日」の欄は誕生日の前日を記入します。〔年齢計算ニ関スル法律〕

この誕生日と1日ずれているのが曲者で、対象者の方が書類を記入する際に、修正のうえ訂正印を捺してくださるという失敗がありがちです。

あらかじめ、誕生日の前日に1歳増えるということを説明しておきましょう。

 

2018.08.02.解決社労士

<道義に反する仕事>

「モンスター社員をうつ病にして会社を辞めさせる」というブログ記事を書いた社会保険労務士が処分を受けたことがありました。

我々社会保険労務士の職業倫理が問われた事件でしたし、都道府県の社会保険労務士会や連合会が対策を強化するきっかけともなりました。

社会保険労務士としては、むしろ次のような仕事に取り組むべきです。

・モンスター社員を入社させない採用の仕組みづくり

・モンスター社員を発生させない仕組みづくり

・モンスター社員を教育して戦力化する仕組みづくり

採用したのは会社に責任があるわけですから、後からモンスター社員だと気付いて退職に追い込むというのは責任逃れです。

また、会社の中でモンスター社員になっていったのなら、会社の責任はもっと重いことになります。

 

<懲戒処分を受ける仕事>

・事実に反する内容を含む書類の作成・提出

・労働局でのあっせんなど、紛争解決手続代理で虚偽の主張をすること

・保険給付を不正に受給すること

・保険料を不正に免除してもらうこと

こうした仕事をすれば、社会保険労務士は業務の停止処分を受けます。

当然のことですが、このような仕事は受けることができません。

  

<その他お受けできない仕事>

会社にとって短期的な利益をもたらすだけで、継続的な成長を妨げる仕事も、社会保険労務士が受けるべきではないと考えています。

その場限りの一時しのぎでは、会社のためにも、まじめに働く社員のためにもなりません。

会社と社員が、共に成長できるよう取り組んでいきたいと思います。

この観点から、働き方改革に逆らうような人件費の削減、長時間労働の推進、休暇取得の妨害といったことはお受けできません。

まじめに売上を伸ばそうとする経営者のお手伝いをさせていただきたいと思います。

 

2018.08.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<雇用関係助成金の性質>

融資ではないので返済義務がありません。リスクを負うことなく資金を事業に活用できます。

では、その資金はどこから出ているのでしょうか?

雇用保険料は、企業が従業員よりも多く負担しています。

この多い分の保険料は、雇用安定事業と能力開発事業に充てられます。

助成金は雇用安定事業の一つですから、企業の負担する保険料が財源となっているのです。

つまり、雇用保険に加入する従業員のいる企業総てが、雇用保険料の一部として負担し、助成金を受ける企業にその資金が流れるという構造です。

こう考えると、利用しないのは損だと思えてきます。

 

<助成金が支給されるケース>

国が政策を推進するにあたって、新たに企業に何らかの義務を課す場合、いきなり罰則付きで義務付けるという乱暴なことはしにくいものです。

まず、政策を周知するために広報を強化し、法令に「努力義務」として規定し、積極的に推進する企業には助成金を支給するなどの方法をとります。

こうして、ある程度まで浸透してから罰則付きで義務付けるという手法がとられます。

結局、助成金支給の対象となるようなことは、将来的には法的に義務付けられるようになることが多いのです。

企業が経費をかけて、法的な義務とされる前に政府の政策に協力すれば、経費の一部を助成金として還付するというのが本来の形です。

ですから、企業が何もしなくても手続きさえすれば助成金がもらえるというのは、こうした理屈に逆らうものです。

最近では、社会保険労務士ではない者や会社が「雇用関係助成金がもらえます」という宣伝をしているのはそれ自体違法ですし、実際に助成金が支給されなくても責任を負わないので被害者が出てきています。

雇用関係助成金が支給されるのは、企業が次のような場合に一定の改善をしたケースです。

・従業員を新たに雇うとき

・職場環境を改善して働きやすくするとき

・業績悪化の際、解雇を回避するとき

・従業員に職業訓練を受けさせるとき

・子育てと仕事の両立を支援するとき

 

<助成金の隠れたメリット>

従業員の福利厚生を充実させたり、従業員の働きやすい環境を整備したりということで助成金が支給されます。

これによって、定着率のアップや人手不足の解消を狙えます。

助成金の受給を検討したり、手続を進める中で、会社の現状を分析し、遵法経営や労働環境の改善を図っていくことになり、生産性の向上や、会社の成長を促したりの効果が期待できます。

 前提として、法定の三大帳簿を調えておくことや、就業規則を整備しておくことなどが求められます。真面目に助成金を受給することを検討するのであれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

2018.07.31.解決社労士

<休日出勤にはならない休日の労働>

日曜日や祝日は、カレンダーでは赤い数字で表示されます。

これらは、日常用語としての「休日」にあたります。

しかし、この「休日」に出勤したからといって、必ずしも休日出勤となり割増賃金が発生するというわけではありません。

スーパーマーケットやパチンコ店など店舗での接客業では、日曜日にお客様が多いため、時給が100円プラスされるということがあります。

これは、労働基準法などの規定によるものではなく、従業員の公平やシフトの組みやすさなどを考えて会社が独自に行っているものです。

ですから、時給が100円プラスの日に時間外労働が発生すれば、100円をプラスしたうえで割増賃金を計算しなければなりません。

 

<法定休日の労働>

会社は、社員に少なくとも週1日、または、4週で4日の休日を与えなければなりません。これが、法定休日です。〔労働基準法35条1項、2項〕

週1日の法定休日が与えられる社員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で出勤すれば、法定休日の労働時間について、35%以上の割増賃金が発生します。

これが「法定休日出勤手当」です。

この場合に、どの日が法定休日なのか予め就業規則などでルールを決めておかないと、給与を計算するときに困ってしまいます。

就業規則には、従業員が読んでわかりやすい表現で明確に定めておきましょう。

原則として、法定休日出勤手当は勤務時間分の手当を支給するのですが、1時間の勤務でも丸々 1日の所定労働時間分支給している会社もあります。

これは、労働基準法の基準を上回る支給ですから、全従業員一律の基準で支給していれば問題ありません。

 

<所定休日の労働>

週休2日制で、毎週日曜日が法定休日、木曜日がもう1日の休日という場合、この木曜日は「所定休日」になります。

この場合、仕事の都合で止むを得ず木曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

所定休日の労働は、8時間を超えなければ、必ずしも時間外割増賃金の対象とはなりません。

しかし、原則として週40時間を超える労働となった時間は、通常の残業同様に25%以上の割増賃金となります。

これが「所定休日出勤手当」です。

 

2018.07.30.解決社労士

<雇用調整助成金>

雇用調整助成金とは、事業主の方のための雇用関係助成金の一つです。

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業等(休業及び教育訓練)又は出向を行い労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものです。

 

<特例の対象となる事業主>

平成30(2018)7月豪雨による災害に伴う「経済上の理由」により休業等を余儀なくされた事業所の事業主が特例の対象となります。

被災地以外の事業所でも利用可能です。

この特例は、休業等の初日が平成30(2018)75日から平成31(2019)14日までの間にあることが条件となります。

「経済上の理由」には、次のようなものが含まれます。

・取引先の浸水被害等のため、原材料や商品等の取引ができない場合

・交通手段の途絶により、来客がない、従業員が出勤できない、物品の配送ができない場合

・電気・水道・ガス等の供給停止や通信の途絶により、営業ができない場合

・風評被害により、観光客が減少した場合

・事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や修理部品の調達が困難なため、

早期の修復が不可能であることによる事業活動の阻害

 

<既に実施されている特例>(平成30717日)

・生産指標の確認期間を3か月から1か月へ短縮する

・平成307月豪雨発生時に起業後1年未満の事業主についても助成対象とする

・最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする

 

<新たに追加される特例>(平成30725日)

・休業を実施した場合の助成率を引き上げる(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)

【中小企業:3分の2から5分の4へ】【大企業:2分の1から3分の2へ】

・支給限度日数を「1年間で100日」から「1年間で300日」に延長(※岐阜、京都、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡の各府県内の事業所に限る)

・新規学卒採用者など、雇用保険加入者(被保険者)として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助成対象とする

・過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主であっても、

ア・前回の支給対象期間の満了日から1年を経過していなくても助成対象とする

イ・受給可能日数の計算において、過去の受給日数にかかわらず、今回の特例の対象となった休業等について新たに起算する

 

2018.07.29.解決社労士

<外国人材の受入れ・共生に向けた関係閣僚会議>

政府は平成30(2018)724日に、外国人労働者の受け入れ拡大のための最初の関係閣僚会議を開きました。

この閣僚会議では、今後も在留外国人が増加していくと考えられるため、日本で働き、学び、生活する外国人の受入れ環境を整備し、外国人の人権を保護し、外国人が日本社会の一員として円滑に生活できるようにする必要があることを確認しました。

具体的には、法務省が中心となって、外国人の受入れ環境の整備に関する企画・立案・総合調整を行い、関係府省とも連携を強化し、地方公共団体と協力して、外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進めることを確認しました。

また、安倍首相が法務省に「組織体制の抜本的な見直し」を求め、同省は「入国管理庁」の設置などを検討しているそうです。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

外国人であれば日本人よりも安い賃金で雇えそうだという期待とは裏腹に、法令の適用については日本人と同じですから、人件費の節減も思うようにはいきません。

それどころか、日本語が上手ではない外国人にも安全教育が必要ですし、就業規則などのルールも説明しなければなりません。危険個所には、日本語以外の注意書きを表示する必要があります。

こうしてみると、外国人を雇った場合、そのお世話をする日本人の人件費も馬鹿にならないように思えます。

そもそも国籍の違いを理由に待遇を差別したら、それだけで違法になってしまいます。〔労働基準法3条〕

 

<ハローワークへの届出>

外国人の雇入れや離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出ることになっています。

届出に当たっては、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認する必要があるため、不法就労のチェックにもなります。

 

2018.07.28.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<大綱の概要>

政府が平成30(2018)724日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更を閣議決定しました。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」は、平成26(2014)年に成立した「過労死等防止対策推進法」に基づいて、平成27(2015)年7月に初めて策定されましたが、約3年を目途に見直すこととなっていました。

 

<新しい大綱のポイント>

1.新たに「過労死等防止対策の数値目標」を立てて、変更前の大綱に定められた「週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」など3分野の数値目標を改めて掲げるとともに、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標など新たな3つの分野の数値目標を掲げた。

数値目標は次の通り。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満とする。

・2020年までに、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とする。

 

2.「国が取り組む重点対策」において、「労働行政機関等(都道府県労働局、労働基準監督署又は地方公共団体)における対策」を新たに項立てし、関係法令等に基づき重点的に取り組む対策として、下記3点などを明記した。

 (1) 長時間労働の削減に向けた取組みの徹底

 (2) 過重労働による健康障害の防止対策

 (3) メンタルヘルス対策・ハラスメント対策

 

3.調査研究における重点業種等(過労死等が多く発生している又は長時間労働者が多いとの指摘がある職種・業種)として、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療を引き続き対象とするとともに、近年の状況を踏まえ、建設業、メディア業界を追加した。また、上記重点業種等に加え、宿泊業等についての取組みも記載した。

 

4.勤務間インターバル制度を推進するための取組みや、若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取組みについて新たに記載した。

 

 

5.職場のパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメントを包括的に「職場におけるハラスメント」として位置付け、その予防・解決のための取組みを記載した。

 

<勤務間インターバルとは>

インターバル(interval)とは、間隔、合間、休憩時間のことをいいます。

そして、勤務間インターバルとは、実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔をいいます。

たとえば、仕事を18:00に終えて帰宅し、翌日9:00に勤務を開始すれば、勤務間インターバルは15時間ということになります。

 

1日の区切りは真夜中の0時だということで、残業が深夜に及んだ場合に、23:50で一度終業とし翌日00:10を始業として、労働時間の計算を23:50までと、翌日00:10からに分けて計算している企業が、労働基準監督署の是正勧告を受けたという報道がありました。

このように労働時間を0時で区切って計算すると、実質的には継続して残業している場合でも、18時間の法定労働時間を超える時間が少なく計算され、割り増しの残業代も少なくなってしまうという不合理が発生します。

こうした不合理な事態の発生を防止するため、通達によって、1日の労働時間を計算する場合には、その人の労働契約上の始業時刻が区切りとされています。

つまり、就業規則や労働条件通知書などによって決まっている日々の始業時刻が、残業代を計算するうえでの1日の労働時間の区切りということになります。

ですから上記の例では、勤務間インターバルが20分ということではなく、23:50から00:10は単なる休憩時間という扱いになります。

 

早番・遅番のように、始業時刻が日々変わる制度を取っている場合には、シフトの組み方によって、極端に短い勤務間インターバルが発生するかもしれません。

こうした可能性がある職場では、働き手の健康維持のため、つまり生産性維持のため、就業規則などに勤務間インターバルの基準を設ける必要があるでしょう。

さらに、長時間の残業が常態化している職場では、過重労働や長時間労働を改善するとともに、勤務間インターバルの基準設定が必要となります。

 

この制度を上手く導入すれば、返済不要の助成金を受給できます。

気になる方は、社会保険労務士にお問い合わせください。

 

2018.07.27.解決社労士

<全国労働衛生週間>

厚生労働省は、平成30(2018)101()から7()まで、平成30年度「全国労働衛生週間」を実施します。

全国労働衛生週間は、昭和25(1950)年から毎年実施されているもので、今年で69回目となります。

労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高めるとともに、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどが目的とされています。

 

<今年のスローガン>

今年のスローガンは、「こころとからだの健康づくり みんなで進める働き方改革」です。

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

心身共に健康であれば生産性も高まります。そのためにできることは何かを考え、具体的に取り組む1週間としたいものです。

 

<具体的な取組み>

毎年91日から30日までを準備期間とし、101日から7日までを本週間、各職場で、職場巡視やスローガン掲示、労働衛生に関する講習会・見学会の開催など、さまざまな取組みを展開する予定で、今年は主に以下のような項目が掲げられています。

 

1.全国労働衛生週間中に実施する事項

 ・事業者または総括安全衛生管理者による職場巡視

 ・労働衛生旗の掲揚およびスローガン等の掲示

 ・労働衛生に関する優良職場、功績者等の表彰

 ・有害物の漏えい事故、酸素欠乏症等による事故等緊急時の災害を想定した実地訓練等の実施

 

2.準備期間中に実施する事項

 下記の事項について、重点的に日常の労働衛生活動の総点検を行う。

 ・過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進

 ・労働者の心の健康の保持増進のための指針等に基づくメンタルヘルス対策の推進

 ・治療と仕事の両立支援対策の推進に関する事項

 ・化学物質による健康障害防止対策に関する事項

 ・石綿による健康障害防止対策に関する事項

 

2018.07.26.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会の選抜チームで承っております。

<役員が雇用保険の対象者(被保険者)となる場合>

役員などが同時に部長、支店長、工場長など会社の従業員としての身分を兼ねている兼務役員の場合であって、就労実態や給料支払いなどの面からみて労働者としての性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合には、例外的に雇用保険の対象者(被保険者)となります。

この場合、ハローワークで雇用保険の対象者(被保険者)とするときの手続きには、就業規則、登記事項証明書、賃金台帳、などの提出が必要となります。

「働いている」という実態に変わりがなくても、一般の従業員から兼務役員になった場合には、ハローワークでの手続きが必要になります。

兼務役員は、従業員としての身分の部分についてのみ、雇用保険の対象者となります。そして保険料も、役員報酬の部分は含まれず、労働者としての賃金部分のみを基準に決定されます。

このことから、役員報酬と賃金とが明確に区別できる状態であることも必要です。

 

<雇用保険の対象者(被保険者)ではなくなる場合>

法人等の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員など)は、雇用保険の対象者(被保険者)とはなりません。

また、法人等の役員(取締役・執行役員・監査役など)についても、原則として雇用保険の対象者(被保険者)となりません。

これらの人と会社との関係は、雇用ではなく委任だからです。

従来、兼務役員として雇用保険の対象者(被保険者)であった方が、就労実態や給料支払いなどの面からみて労働者としての性格が弱くなり、雇用関係が存在しているとはいえなくなった場合には、雇用保険の資格を喪失することになります。

 

2018.07.25.解決社労士

<賞与にかかる社会保険料>

年3回以下支給される賞与についても、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。

会社が社会保険加入の社員へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届け出ます。

この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されます。

なお、年4回以上支給される賞与は、賞与支払届の対象とはならず、報酬月額に加算され標準報酬月額の計算基準に含まれます。

 

<賞与の社会保険料の計算方法>

算定基礎届や月額変更届で使われる標準報酬月額保険料額表は使いません。

実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)の1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とします。

その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額が、社会保険料となります。保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。

 

<賞与の社会保険料の上限額>

標準賞与額の上限は、健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年41日から翌日331日まで)です。

また、厚生年金保険は1か月150万円とされていますが、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます。

ここに示した上限額は、法改正により変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。

 

2018.07.24.解決社労士

<繰下げ受給とは>

年金の繰下げ受給というのは、受給権が発生してもすぐには受給を開始せず、年金の受給開始を先送りして受給することです。

老齢基礎年金は、65歳で請求せずに66歳以降70歳までの間で申し出た時から老齢年金を繰下げて請求できます。

繰下げには、老齢基礎年金の繰下げの他に、老齢厚生年金の繰下げがあります。

ただし、65歳よりも前に受給できる特別支給の老齢厚生年金は「繰下げ制度」がありません。受給権発生日以降は、速やかに請求してください。

 

<老齢基礎年金の繰下げ受給(昭和1642日以後生まれの場合)>

昭和1642日以後に生まれた人については、支給の繰下げを申し出た日の年齢に応じてではなく、月単位で年金額の増額が行われることになります。また、その増額率は一生変わりません。

年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、たとえば「60歳に達した日」とは、60歳の誕生日の前日になります。

 

繰下げできるのは、他の年金の権利が発生するまでの間です。

65歳に達した日から66歳に達した日までの間に、遺族基礎年金、障害基礎年金(老齢厚生年金の繰下げについては、障害基礎年金を除く)、厚生年金保険や共済組合など被用者年金各法による年金(老齢・退職給付を除く。昭和61年改正前の旧法による年金を含む)を受ける権利がある場合は、繰下げ請求をすることはできません。

 

他の年金の権利が発生したら、すみやかに年金の請求手続きを行ってください。

66歳に達した日より後に他の年金を受ける権利ができた場合は、その年金を受ける権利ができた時点で増額率が固定されます。この場合、65歳からの本来支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金をさかのぼって請求するか、増額された繰下げ支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の請求をするかを選択できます。ただし、平成17331日以前に他の年金を受ける権利がある場合は、老齢基礎年金の繰下げ請求はできません。

 

繰下げ請求は、老齢基礎年金の権利発生から1年以上待って行いましょう。

65歳に達した日以後に年金の受け取りに必要な加入期間を満たして老齢基礎年金を受ける権利ができた方で、繰下げ請求を予定している場合は、その受ける権利ができた日から1年を経過した日より後に繰下げ請求ができます。

 

老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。

昭和1742日以降生まれの方(平成1941日以降に老齢厚生年金を受ける権利ができた方を含む)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を別々の希望月で繰下げできます。

 

加算額は、繰下げしても増額されません。

振替加算額は、繰下げしても増額されません。また、繰下げ待機期間中は、振替加算部分のみを受けることはできません。

 

繰下げによる年金は、請求された月の翌月分からの支払いとなります。

70歳到達日以後の繰下げ請求は、請求時期にかかわらず70歳到達時点での増額率になり、70歳までさかのぼって決定され支払われます。ただし、平成2641日より前に70歳に到達している方が、平成2641日以降に遅れて請求した場合、平成265月分からしか年金が支払われませんのでご注意ください。

 

「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択できます。

繰下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給の年金を請求することもできます。70歳到達(誕生日の前日)月より後に65歳時にさかのぼった請求が行われると、時効により年金が支払われない部分が発生します。必ず70歳到達月までに請求してください。

 

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。

繰下げ待機中に亡くなられた場合で、遺族の方からの未支給請求が可能な場合は、65歳の本来請求で年金決定されたうえで未支給年金として支払われます。

 

なお、昭和1641日以前に生まれた方の場合には、希望すれば66歳以降から、繰下げて老齢基礎年金を受けることができます。繰下げ支給の請求をした時点の年齢に応じて年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。

 

<老齢厚生年金の繰下げ受給>(老齢基礎年金の繰下げ受給と同じ部分が多いため説明が重複します)

昭和1742日以後に生まれの方は、原則、66歳に達した日以後に、支給の繰下げの申出ができます。ただし、65歳に達した日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害厚生年金、遺族厚生年金などの年金を受ける権利を有したことがあるときは、申出はできません。

また、66歳に達した日以後に、障害厚生年金や遺族厚生年金などを受ける権利が発生した場合は、支給の繰下げの申出はできますが、この場合、他の年金が発生した月を基準として増額率が定められ、繰下げ加算額が計算されます。増額された老齢厚生年金は、実際に支給の繰下げの申出をした翌月から支給されることになりますので、ご留意ください。

昭和1741日以前生まれの方であって、平成1941日以後に老齢厚生年金を受けることができることとなった方も支給の繰下げの申出を行うことができます。

 

繰下げできるのは、他の年金の権利が発生するまでの間です。

65歳に達した日から66歳に達した日までの間に、遺族基礎年金もしくは厚生年金保険や共済組合など被用者年金各法による年金(老齢・退職給付を除く。昭和61年改正前の旧法による年金を含む)を受ける権利がある場合は、繰下げ請求をすることはできません。

 

他の年金の権利が発生したら、すみやかに年金の請求手続きを行ってください。

66歳に達した日より後に他の年金を受ける権利ができた場合は、その年金を受ける権利ができた時点で増額率が固定されます。この場合、65歳からの本来支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金をさかのぼって請求するか、増額された繰下げ支給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金の請求をするかを選択できます。ただし、平成17331日以前に他の年金を受ける権利がある場合は、老齢基礎年金の繰下げ請求はできません。

 

繰下げ請求は、老齢厚生年金の権利発生から1年以上待って行います。

65歳に達した日以後に年金の受け取りに必要な加入期間を満たして老齢厚生年金を受ける権利ができた方で、繰下げ請求を予定している場合は、その受ける権利ができた日から1年を経過した日より後に繰下げ請求ができます。

 

老齢厚生年金と老齢基礎年金をそれぞれに繰下げ時期を選択できます。

昭和1742日以降生まれの方(平成1941日以降に老齢厚生年金を受ける権利ができた方を含む)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を別々の希望月で繰下げできます。

 

加算額は、繰下げしても増額されません。

加給年金額(配偶者加給年金、子の加給年金)は、繰下げしても増額されません。また、繰下げ待機期間中は、加給年金部分のみを受けることはできません。

 

繰下げによる年金は、請求された月の翌月分からの支払いとなります。70歳到達日以後の繰下げ請求は、請求時期にかかわらず70歳到達時点での増額率になり、70歳までさかのぼって決定され支払われます。ただし、平成2641日より前に70歳に到達している方が、平成2641日以降に遅れて請求した場合、平成265月分からしか年金が支払われませんのでご注意ください。

 

「繰下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択できます

繰下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給の年金を請求することもできます。70歳到達(誕生日の前日)月より後に65歳時にさかのぼった請求が行われると、時効により年金が支払われない部分が発生します。必ず70歳到達月までに請求してください。

 

繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできません。

繰下げ待機中に亡くなられた場合で、遺族の方からの未支給請求が可能な場合は、65歳の本来請求で年金決定されたうえで未支給年金として支払われます。

 

在職中の方は、調整後の年金が増額の対象となります。

繰下げ待機中に厚生年金保険の被保険者となった場合は、65歳時の本来請求による老齢厚生年金額から在職支給停止額を差し引いた額が、繰下げによる増額の対象となります。

 

共済組合等から支給される老齢厚生年金(退職共済年金)がある場合は、日本年金機構から支給される老齢厚生年金と同時に繰下げ請求を行う必要があります。

共済組合等から支給される老齢厚生年金(退職共済年金)を65歳から受給している場合は、日本年金機構から支給される老齢厚生年金の繰下げ請求はできません。また、繰下げ請求を行う場合は、共済組合等と日本年金機構のどちらか先に繰下げ申出を行った日で両方の老齢厚生年金を繰下げすることとなります。

 

厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受給されている方が、老齢厚生年金の支給の繰下げ請求を希望される場合は、基金等の年金も合わせて繰下げとなりますので、年金の支給先である基金等にご連絡ください。

 

<お勧めしたいこと>

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方または一方の繰下げを考えている場合でも、受給額が具体的にいくらになるのか、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

 

2018.07.23.解決社労士

<労働安全衛生法>

快適な職場環境の形成について、基本的なことを定めているのは労働安全衛生法です。略して安衛法と呼びます。

安衛法の目的について、第1条が次のように規定しています。

 

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

つまり、この法律は、次の2つのことを目的としています。

・労災を防止して労働者の安全と健康を確保する

・快適な職場環境の形成を促進する

 

<事業者の講ずる措置>

そして、快適な職場環境の形成を促進するために、会社など事業者に次のような義務を課しています。

 

第七十一条の二 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない

一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置

二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置

三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備

四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

 

この条文の「努めなければならない」というのは、努力義務であることを示しています。

努力義務というのは、法律の規定に違反しても、刑事罰や過料等の法的制裁を受けない義務です。

結局、守られるか否かは当事者の任意の協力次第ですし、守られているか否かの判断も当事者の評価に委ねられることになります。

 

<快適職場指針>

会社など事業者が快適な職場環境の形成を促進する義務については、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」を定めています。

その中の「温熱条件」という項目には、次のように定められています。

 

屋内作業場においては、作業の態様、季節等に応じて温度、湿度等の温熱条件を適切な状態に保つこと。また、屋外作業場については、夏季及び冬季における外気温等の影響を緩和するための措置を講ずることが望ましいこと

 

<事務所衛生基準規則>

さらに、事務所内で事務作業に従事する労働者については、空気調和設備等による調整が可能である場合に限定して、事務所衛生基準規則に次の規定があります。

 

第五条 事業者は、空気調和設備又は機械換気設備を設けている場合は、室に供給される空気が、次の各号に適合するように、当該設備を調整しなければならない。

3 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない

 

これによると、事務所内は気温が17℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下というのが基準になります。

つまり、年間を通してこの範囲内にあれば、法令の基準を満たしていることになります。

それでもなお、「暑い」「寒い」という話が出てくるのであれば、話し合いによる調整が必要となります。

 

<働き方改革との関係で>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

ひとり一人の労働者が「暑い」「寒い」ということで生産性が低下しているのであれば、温度環境を整えることで生産性が向上するのは目に見えています。

設備投資と電気代を人件費と比べるだけでなく、定着率の向上や採用の困難性を考えて、どこまでの対応が必要なのか、経営者としての判断は難しいのかもしれません。

それでも、蒸し暑い部屋で採用面接を行った場合と、快適な室内で採用面接を行った場合とでは、辞退者の人数に違いが出てくるのではないでしょうか。

 

2018.07.22.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<ハラスメント対策>

パワハラもセクハラもハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)です。そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

 

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない。」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

こうした実質面でのハラスメント対策とは別に、形式面でのハラスメント対策も必要です。

その目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない被害者・加害者>

ここまで述べたことは、被害者と加害者の両方が社員の場合を想定しています。

実際、多くのハラスメントは社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

 

しかし、お取引先の社員からのパワハラ・セクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

社員が被害者となった場合には、小さな会社であれば社長自ら、大企業であれば担当取締役がハラスメントの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

 

反対に、社員からお取引先に対するパワハラ・セクハラが行われたのではないかという疑いが生じたら速やかに事実を確認し、真実であったなら、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実について報告とお詫びをする必要があります。

 

<そもそもパワハラ・セクハラなのか>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)では、パワハラが次のように規定されています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

この中の「職場内」という言葉が端的に示しているように、パワハラは本来社内での発生が想定されています。

ですから、加害者・被害者が取引先など社外の人間である場合には、本来のパワハラやセクハラの定義には当てはまらないといえます。

 

しかし、加害者・被害者が社内に留まらなくても、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)であることに変わりはありません。

多くの場合、慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となりますし、内容によっては犯罪となり刑法で罰せられることもあります。

ですから、これを防止すべきこと、万一発生したら善処すべきことに違いはありません。

 

<取引先とのパワハラ・セクハラの定義>

上に掲げたモデル就業規則第12条をアレンジして、取引先との間で発生するパワハラを定義するならば、次のようになるでしょう。

 

「取引関係上の地位や人間関係など、取引関係上の優位性を背景にした、取引の適正な範囲を超える言動により、取引先の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなこと」

 

また、取引先との間で発生するセクハラを定義すると、次のようになるでしょう。

 

「性的言動により、取引先の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなこと」

 

これらをパワハラ・セクハラの定義に加えるかどうかは、見解の統一が見られませんが、念のため、就業規則に規定しておきたいところです。

また、社員を守るため、取引先からのパワハラ・セクハラが疑われる事実があれば、上司や社内の相談窓口に報告することも規定すべきです。

どちらも、社員と会社を守るための規定ですから、ぜひ就業規則に加えておくことをお勧めします。

 

2018.07.21.解決社労士

<法改正のポイント>

平成31(2019)41日からは、現行法で1か月が上限とされるフレックスタイム制の清算期間が3か月にまで延長できるようになります。

清算期間を2か月、3か月と延長する場合のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

・各月の曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和される。

・特定の繁忙月や労働者の都合への対応が容易になる。

・残業代の計算が、原則として2か月、3か月単位になる。

反対に、次のようにやや煩わしくなる点もあります。

・所轄労働基準監督署に労使協定の届出が必要となる。

・長時間労働が慢性化している場合には残業代の計算が複雑になる。

 

<曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和>

31日まである月の場合、特定の曜日が4回であったり5回であったりします( 31 ÷ 7 4あまり3 )。具体的には、4回の曜日が4つと、5回の曜日が3つです( 4 × 4 5 × 3 31 )。

基本的に水曜日と木曜日が休日である労働者が、1か月単位のフレックスタイム制を利用していると、同じ31日の月であっても、出勤日数が21日から23日まで幅があります。

するとたとえば、1か月の所定労働時間が177.7時間の月であっても、残業が多く発生したり、勤務時間が足りなくて年次有給休暇を取得したりということになります。

 

これが3か月単位のフレックスタイム制であれば、曜日ごとの日数の違いによる不都合が緩和されます。

7月から9月までの場合、ある特定の曜日が14回で、他の曜日はすべて13回です( 92 ÷ 7 13あまり1 → 14 13 × 6 92 )。

つまり、3か月単位のフレックスタイム制は、1か月単位よりも曜日による影響が少ないため、残業代が多くなったり、調整のための年次有給休暇取得が増えたりの不都合が解消されるわけです。

 

<特定の繁忙月や労働者の都合への対応が容易>

特定の繁忙月だけ残業代が増え、他の月には勤務時間が不足して調整のための年次有給休暇取得が増えるという不合理は、3か月単位のフレックスタイム制であれば緩和されます。

また、夏休みは子供の世話をしたいなどのニーズがある労働者にとって、3か月間で勤務時間を調整できるのは、ワークライフバランスの観点から望ましいものです。

 

<残業代の計算が原則として2か月、3か月単位>

長時間労働が慢性化している職場でなければ、残業代の計算が2か月、3か月に1回ですから、給与計算をする側も、給与を受ける側も確認が楽になります。

フレックスタイム制を導入することによって、1日単位、1週間単位での残業時間の計算が不要になることは大きなメリットです。2か月、3か月単位のフレックスタイム制であれば、このメリットがさらに大きくなるわけです。

 

<所轄労働基準監督署に労使協定の届出が必要>

現行法のフレックスタイム制でも、労使協定を交わすことは必要ですが、所轄の労働基準監督署長への届出は不要です。

清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制では、労働基準監督署長への届出が義務付けられます。

ほとんどの事業場は、三六協定書を労働基準監督署長に届け出ているわけですし、郵送での届出もできるわけですから大きな手間にはなりません。

 

<残業代の計算が複雑になる場合もある>

働き方改革では、労働者の過重労働防止も視野に入れています。

たとえ清算期間が3か月の場合でも、1か月ごとに平均労働時間が1週あたり50時間を超える場合には、その月ごとに残業代を支払わなければなりません。

1週間の法定労働時間が40時間の場合であれば、1日あたりの残業時間が2時間を超える場合に、その月の残業代を支払うことになります。

このことから、長時間労働が当たり前になっている職場では、結局、毎月残業代を支払うことになりますから、2か月、3か月単位のフレックスタイム制を導入する効果は減ってしまいます。

 

参考:完全週休2日制の特例

フレックスタイム制の清算期間における所定労働時間は、法定労働時間が18時間、140時間であれば次の式で求められます。

40時間 ÷ 7日 × 清算期間の日数

しかし、毎週土日が休日のような完全週休2日制では、同じく法定労働時間が18時間、140時間の場合でも、次の式により所定労働時間を設定することができます。

8時間 ×( 清算期間の日数 - 清算期間の土日の日数 )

 

2018.07.20.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)41日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<改正の理由>

労働基準法に年次有給休暇が労働者の権利として規定されているにもかかわらず、実際の取得率は労働者全体で50%を下回っています。

そこで働き方改革の一環として、少なくとも年5日以上の取得については、使用者側で取得日を指定してでも、確実に取得させるという規定に改正されました。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことが考慮されています。

 

<使用者の義務>

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。企業によっては、この年次有給休暇を付与する基準日が前倒しされている場合もあります。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

2018.07.19.解決社労士

 

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<労災保険の適用>

労災認定にあたっては、被災者本人の過失は問題とされず、労災保険が適用されることになります。

仮に、被災者本人に過失があれば労災保険は適用されないのだとすると、労災保険は適用範囲が著しく制限されてしまいますから、制度そのものの存在意義が薄れてしまいます。

ところが現実には、被災者本人の不注意を反省させる意図があってか、上司から「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われることもあるようです。

 

<労災事故の発生原因>

労災事故の発生原因として、その責任の所在から考えると、次のようなパターンが考えられます。

・被災者本人に過失がない場合

・被災者本人にも使用者にも過失がある場合

・被災者本人だけに過失がある場合

・被災者本人が故意にケガをする場合

なお、通勤災害については、被災者本人の過失の他、道路の管理者、鉄道会社、バス会社などの落ち度が考えられます。使用者の過失というのは、ほとんど問題にされることがありません。

 

<被災者本人に過失がない場合>

まず、使用者側に責任がある場合として、滑りやすい床の上で作業するにあたって会社から支給された靴を履いていたが、その滑りやすさから会社に改善を求めていたが拒否され、実際に事故が発生してしまったなどのケースが想定されます。

あるいは、設備の安全点検が不十分で、天井からの落下物によりケガをするケースも考えられます。

また、酔ったお客様から理由なく突然に暴行を受けて転倒しケガをするような第三者行為災害もあります。

これらの場合には、「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明がなされることは稀でしょう。

 

<被災者本人にも使用者にも過失がある場合>

これが労災事故では最も多いでしょう。

たとえば、被災者本人の過失が認められるものの、適切な指導教育が不足していたり、危険個所に危険を知らせる表示が無かったりと、使用者側にも落ち度がある場合です。

使用者としては、被災者本人の過失のみに注目して「自分の過失だから労災にはならない」という誤った説明が行われやすいケースです。

しかし、きちんと労災の再発防止を考えた場合には、使用者の行うべきことが数多く見つかりますので、被災者本人の過失に片寄って責任が追及されることは少なくなります。

 

<被災者本人だけに過失がある場合>

設備、機械、器具などに安全上の問題点はなく、被災者本人に対する指導教育も十分で、危険個所の表示も適切であって、本人の不注意以外に原因が見当たらないような場合もあります。

被災者本人がルールを無視して行動し被災してしまう場合や、椅子を傾けて座っていて椅子ごと倒れてしまう場合などが考えられます。

このような場合であっても、労災認定され労災保険が適用され給付が行われるのが一般です。

 

<被災者本人が故意にケガをする場合>

一般には、労災保険の適用対象外となります。

しかし、過重労働やパワハラなどによって、被災者本人が精神障害に陥り自傷行為に及んだような場合には、労災事故と認定されることがあります。

 

<労災の判断権者>

そもそも事故が起こってケガ人が出た場合に、それが労災となるかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署(労働局)が行います。

使用者や被災者本人の判断が、そのまま有効になるわけではありません。

労災認定について疑問がある場合には、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

2018.07.18.解決社労士

<必要性の高くない業務をやめる>

「昔からこの業務をやっているから」というのは、無駄な業務である可能性が高いといえます。なぜなら市場は変化し、これに対応する企業の業務も変化するわけですから、昔から行っている業務ほど、無駄な業務である可能性は高いのです。

「もし、この業務をやめてしまったら」と仮定してみて、特に支障が無いのであれば直ちにやめましょう。多少の不都合がある場合でも、それには目をつぶるとか、やり方を変えて時間を短縮できます。

ひとつの部門で無駄な業務を削減しようとしても、何が無駄なのか分からないことがあります。関連する複数の部門で意見交換すれば、「その資料はもう要らないよ」という話が出てくるでしょう。

 

<ダブって同じ業務をやらないようにする>

上司が部下の仕事の具体的な内容を把握できていないことがあります。これは上司が悪いのではなく、把握する仕組みが無いために起こる現象です。

上司が部下の仕事を具体的に把握できる仕組みがあれば、同じ仕事を複数の社員が行っているという無駄は省けます。

また、上司が部下の仕事内容を具体的に把握できている場合でも、別の部門とダブって同じ仕事を行っているケースは多いのです。

たとえば、総務、人事、経理で仕事内容の比較をすると、似通った業務があります。どこか一つの部署でまとめて行えば、全体の労働時間が減少します。

 

<業務に必要な情報を社内外で共有する>

名刺情報を社内で共有するシステムは一般化しています。

小さな会社でも、「取引先の〇〇さん、来週の火曜日お休み」という情報を共有すれば、その取引先に無駄な連絡を取ることが無くなります。また、その取引先にとっても煩わしさが軽減されます。

情報の共有は、パソコンのサーバーを活用するなどITの活用が中心となりますが、専門的な知識は不要です。ぜひ活用しましょう。

 

<会議・打合せの廃止・短縮>

定例の会議というのは、必要性が疑われます。

その会議によって得られる効果がどのようなものであるか、具体的に検討して、よく分からなければ一度やめてみたらどうでしょう。

それで不都合が無いのであれば、廃止するのが正しいのです。

たとえ必要な会議であっても、本来の勤務時間外にはみ出してしまうようなものは、開催時間帯の再検討が必要です。

また、会議の時間を2時間に設定していたところ、1時間で結論が出たので、あとの1時間は雑談や意見交換というのも見直したいです。

本当に必要な会議や打合せというのは、法定のものを除き、驚くほど少ないものです。

 

<その業務を行う日時の見直し>

たとえば、「業務日報はその日のうちに」というルールを設定すれば、当然に残業が発生するでしょう。

しかし、上司の自己満足ではないのかなど、これが本当に必要なのかを検討して、期限を延ばすとか、日報ではなく週報や月報にできないかなど、検討の余地が大いにあります。

 

<空き時間の活用>

手が空いてしまう時間があります。

こんなとき雑談したり仮眠を取ったりも良いのですが、「手が空いた時やることリスト」を作っておいて、これを行ってはいかがでしょうか。

書類のファイリング、不要書類の廃棄、徹底清掃、OJT、ロールプレイイングなど、「時間のある時にやろう」と思えることをリストアップしておいて、実際に行うということです。

 

<役割分担の見直し>

「全員が必ず」という仕事を、得意な人に集中して任せてしまうことが考えられます。

任された人は、その能力が高いのですから、給与が上がって当然です。その分、負担が減った社員に別の仕事を任せるとか、見合った待遇を考えるとか、調整することも必要になります。

 

<スキルの向上>

社員の能力が向上するというのは、本人にとっても嬉しいものです。

資格を取得して業務に活用している社員に資格手当を支給するというのが一般的ですか、資格取得に必要な経費を会社が負担するという形もあります。

客観的に認められる形で能力の向上が示されるのであれば、他の社員も納得できますし、社員にとっても、能力向上へのモチベーションが高まります。

いずれにせよ、会社が負担する経費以上に、その社員が会社の利益に貢献してくれるのなら生産性が向上します。

そして、業務内容が同じであれば、それに要する時間も短縮されています。

 

<新たなツールの導入、運用の改善>

マニュアル、チェックリスト、予定表、目標達成グラフなどを新たに導入することにより、効率が上がったり、モチベーションがアップしたりということがあります。

ミスの軽減になったり、情報共有による効率化を図れたり、いずれにせよ労働時間の短縮につながります。

また、今使っているツールについても、そのツールを導入した目的に立ち返り、より良い活用法を考え、場合によっては廃止することも考えましょう。

 

2018.07.17.解決社労士

 東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 所属

大きな案件は、働き方改革研究会でチームとして承っております。

<平均賃金とは>

平均賃金は、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法等で定められている手当や補償、減俸処分の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法12条〕

法律の条文には、「算定すべき事由の発生した日以前三箇月間」と書いてありますが、「事由の発生した日」は、労災事故にあった日など丸々1日分の給料が支払われないことがあるので、実際の運用では前日までの期間で計算しています。

 

<平均賃金が使われる場合>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当=平均賃金の30日分以上〔労働基準法20条〕

使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当=1日につき平均賃金の6割以上〔労働基準法26条〕

年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金〔労働基準法39条〕

労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等〔労働基準法76条から82条、労災保険法〕

減給制裁の制限額 = 1つの理由で減給できるのは平均賃金の半額まで、複数の理由で制裁をする場合には月給など賃金総額の1割まで〔労働基準法91条〕

 

<具体的な計算方法>

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が、上の方法で計算した結果よりも高い場合にはその額を適用します。(最低保障額)

 

2018.07.16.解決社労士

<調査の概要>

平成30(2018)713日、厚生労働省が「ホームレスの実態に関する全国調査」の結果を公表しました。

この調査は、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」などに基づき、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定や実施に役立てるため、毎年1月に、各自治体の協力を得て行っているものです。

調査の対象となるホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」なので、調査方法は巡回による目視調査です。

なお、福島県の大熊町と双葉町は、震災の影響で調査の対象外となっています。

 

<ポイント>

同調査は、ポイントを次のように示しています。

 

1.ホームレスが確認された自治体は、300市区町村であり、前年度と比べて8市区町村(▲2.6%)減少している。

2. 確認されたホームレス数は、4,977人(男性4,607人、女性177人、不明193人)であり、前年度と比べて557人(▲10.1%)減少している。

3. ホームレス数が最も多かったのは東京都(1,242人)である。次いで多かったのは大阪府(1,110人)、神奈川県(934人)である。

なお、東京都23区及び指定都市で全国のホームレス数の約4分の3を占めている。

4. ホームレスが確認された場所の割合は、前年度から大きな変化は見られなかった。

(「都市公園」22.7%、「河川」31.0%、「道路」18.0%、「駅舎」4.9%、「その他施設」23.4%)

 

<ホームレス減少の原因>

この調査によると、少なくともこの4年間はホームレスが減少しています。

東京都が家の無い人(住所が無い人)の就労支援を強化したことや、人手不足の影響もあるでしょう。

中小企業でも、住所が無い人に積極的に住居を手配したうえで採用するという動きが見られます。

一億総活躍ですから、ホームレスがいない日本にしなければなりません。

今の環境は、それができる大きなチャンスと見ることもできるでしょう。

 

2018.07.15.解決社労士

<有期労働契約とは>

有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。

パート、アルバイト、契約社員、嘱託など会社での呼び名にかかわらず、契約期間の取り決めがあれば有期労働契約です。

正社員であっても、定年までという区切りはあるのですが、定年は契約期限とは考えられていません。

 

<最長期間の定め>

有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です。

ただし、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については上限が5年とされています。〔労働基準法14条1項〕

労働契約の期間が短ければ、労働者の立場が不安定になります。

ところが、あまり長くても、労働者をその契約に拘束してしまうことになります。

労働者が安定して働けることと、長期間の契約で縛られないこととは相反する要請です。

有期労働契約の最長期間は、この2つの利益のバランスを考えて法定されているのです。

 

<無期労働契約への転換>

有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者からの申し込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換できるというルールがあります。〔労働契約法18条〕

これには特例があり、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者については、会社が労働局長に申請することによって、一定の期間については、無期転換申込権が発生しないことになります。〔専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法〕

さらに特殊な例外ですが、研究開発能力の強化と教育研究の活性化等の観点から、大学等や研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間が原則10年となっています。〔研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律〕

 

労働法は、労働者を保護するのが目的です。しかし、労働契約の期間をどのように定めたら労働者の保護になるのかは、労働市場の情勢によって変化していきます。度重なる法改正や通達、判例の変化の動向には注意を払う必要があるのです。

 

2018.07.14.解決社労士

<就業規則と労働契約(雇用契約)との優先順位>

 

労働契約は、会社と各労働者との個別契約です。

一方、就業規則に定めてあることは、その就業規則が適用される労働者に共通するのが原則です。

そして、就業規則に定めきれない各労働者に特有のことは労働契約に定められます。

原則として、就業規則が労働契約に優先します。〔労働基準法93条、労働契約法12条〕

ところが、就業規則が優先という法律の規定は、労働契約が就業規則よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして就業規則に従うという内容になっています。

ですから、労働契約の中に就業規則よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結論として、就業規則と労働契約の規定のうち、その労働者にとって有利なものが有効となります。

 

<具体的な判断>

就業規則と労働契約を比べて、違いがある部分については労働者に有利な方が有効となるとはいえ、これが簡単ではないのです。

たとえば、午後1時から3時の間はお客様が少なくてお店が暇だとします。

就業規則には、休憩時間が1時間と書かれているけれども、店長がパートさんとの労働契約更新にあたって「これからは休憩を2時間にしましょう」と提案し、パートさんがこれに合意したらどうでしょう。

多くの方にとっては、拘束時間が変わらないのに収入が減るので不利になると考えられます。

ところが、自宅が職場の隣にあって「ラッキー!昼休みに洗濯が済ませられるわ」と喜ぶパートさんがいるかもしれません。

労働法全体の考え方からすると、休憩時間は長い方が労働者に有利と考えられています。

しかし、必ずしもそうではありませんから、ここは会社と労働者との話し合いで解決したいところです。

 

2018.07.13.解決社労士

ここでは、一般の事業(継続事業)について説明しています。建設業など(一括有期事業)は労災保険料の仕組みが違います。

 

<労働保険の保険料>

雇用保険と労災保険の保険料は、合わせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

労災保険料は、全額会社負担ですから従業員は負担しません。

雇用保険料は、会社の方が従業員よりも多く負担します。

 

<保険料の計算で間違えやすいポイント>

保険料の基準となる賃金は、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度中に賃金計算の締日があるものが対象となります。勤務の期間や支払日ではなく、締日が基準ということです。

最も間違えやすいのは、雇用保険の対象者、労災保険の対象者の確定です。

取締役は、どちらも対象外であることが多いのですが、労働者の立場を兼ね備えている場合には対象となるケースもあります。この場合に、保険料の計算基礎となるのは、役員報酬を除く労働者としての賃金部分に限られます。

別の会社から出向してきている人は、働いている会社で労災保険料だけを負担します。

学生の場合、定時制や通信制の学校であれば雇用保険の対象になります。

他にも、雇用保険の保険料が免除される人がいたり、労災保険料の割引があったりと複雑です。

 

<年度更新とは>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法15条・17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。〔労働保険徴収法19条〕

保険料の支払期限も7月10日です。この日までに納付しない場合には、会社あてに督促状が届きます。督促状には、発送日から10日後が最終支払期限として表示されています。この期限を過ぎてしまうと、7月10日にさかのぼって遅延利息が発生します。

また手続きが遅れますと、政府に保険料の額を決定され、さらに追徴金10%を課されることもあります。〔労働保険徴収法21条・25条〕

1年間の賃金が確定してから準備を始めると余裕が無くなりますので、最後の1か月の賃金を加えれば確定できるという状態にまで、先に準備しておくことをお勧めします。

 

2018.07.12.解決社労士