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<障害者手帳>

障害者手帳には、身体障害者手帳、精神障害者福祉保健手帳、療育手帳の3つがあります。

こうした手帳を持っていることで、様々な福祉サービスを受けることができます。

また、仕事探しのときには、障害者雇用枠への応募が可能です。

障害者雇用率が段階的に引き上げられていることにより、企業も障害者の雇用には積極的にならざるを得ません。

 

<障害年金受給の基本3要件>

しかし、障害者手帳を持っているからといって、障害年金を受給する資格があるとは限らないのです。

障害年金を受けるには、基本的に初診日、保険料の納付、障害の状態についての3要件を満たしていることが必要です。

 

<初診日要件>

【初診日要件=初診日が被保険者期間等にあること】

障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの期間にあること① 国民年金または厚生年金に加入している期間(被保険者期間)

② 20 歳前または 60 歳以上 65 歳未満で国内に居住している期間

原則として、初診日が国民年金加入期間にあれば障害基礎年金、厚生年金加入期間にあれば障害厚生年金に振り分けられることになります。

初診日が不明であれば、この振り分けができないことになります。

 

<納付要件>

【納付要件=保険料の納付要件を満たしていること】

次の①または②を満たしていること① 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること

② 初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納期間がないこと(初診日が2026年4月1日前の場合の特例)

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

保険料を支払う経済的な余裕が無ければ、保険料の免除を受ければ良いわけです。何も手続きをしないうちに障害者になってしまうと、この納付要件を満たさないことがあります。

 

<障害要件>

【障害要件=一定の障害の状態にあること】

① 障害認定日に、障害の状態が法令で定める障害の程度(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級~3級)に該当すること② 障害認定日後に、障害の程度が増進し、65 歳になるまでに障害の状態が法令で定められた状態に該当すること

障害認定日は、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月をすぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。

症状が固定することを、治癒(ちゆ)と言うことがあります。

障害基礎年金では、3級の障害には年金が支給されません。

 

2019.10.11. 解決社労士 柳田恵一

<本来は労働者のための労災保険制度>

労災保険は、労働者の業務や通勤による災害に対して、保険給付を行う制度です。

しかし、労働者ではなくても、その実態から労働者に準じて保護すべきであると認められる人は、特別に任意で加入できることになっています。

これが、特別加入制度です。

中小企業の事業主・代表者は、一人で何役もこなしていて、その業務内容が一般の労働者と重なる部分が多いものです。

そこで、労働者に準じて保険に加入できるようになっているのです。

 

<中小事業主等の範囲>

つぎの表の労働者を常時使用する事業主・代表者、または、その事業に従事する家族従事者や代表者以外の役員などが対象です。

業種

企業全体の労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下

その他の業種

300人以下

 

<初めて特別加入をする場合の条件>

つぎの3つが加入の一般的条件となります。

・雇っている労働者について、労災保険が適用されていること。

・労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。

・所轄の都道府県労働局長の承認を受けること。

 

2019.10.14. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働省のモデル就業規則のねらい>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)には、次のような説明があります。

 

【モデル就業規則の活用に当たって】

このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、平成31年4月以降に施行される労基法等の規定を踏まえ就業規則の規程例を解説とともに示したものです。本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。

 

モデル就業規則の各規定の内容を十分検討して、各事業場の実態に合ったものとすれば、労基法などの規定に基づいた就業規則が完成します。

 

<年俸制とは>

プロ野球の選手のように、年1回、社員と会社とが交渉して、たとえば4月から翌年3月までの年俸を決めることは可能です。

会社の業績と社員の働きぶりを踏まえて、期待できる内容に見合った金額とするわけです。

このとき、年俸はすべて込みの報酬だと誤解されがちです。

決まった金額さえ支払えば、残業代などは発生しないというのは誤解なのです。

プロ野球の選手とは違い、サラリーマンには労基法などが100%適用されます。

当然ですが、年俸制にすれば労基法を無視できるということはありません。

残業手当、休日出勤手当、深夜手当の支払が必要である一方、欠勤すれば欠勤控除をすることも可能です。

「年俸制の社員が休日にケガをして長期入院してしまった。年俸を下げてはいけないのか?」という心配は無用です。

これらのことは、就業規則に定めておけばよいのです。

一定の時間・金額の残業代を年俸に含めるということも、正しいルールと運用で可能となります。

 

<結論として>

年俸制については「プロ野球の選手と同様」という勘違いがかなり多いのです。

また、具体的にルールを作ろうとすると、各事業場の実態に合ったものとすることが簡単ではありません。

こうしたことから、モデル就業規則の中に、年俸制についてのモデル例と解説を加えることは、かえって混乱を招くともいえます。

今現在、年俸制を導入している企業や、これから導入を検討している企業では、規定だけでなく運用についても、弁護士か社労士のチェックを考えていただきたいと思います。

 

2019.10.13. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 ①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても  日経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<退職承認後の退職日変更>

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、この時点で労働契約の合意解除が成立しています。

ところが、早く転職先に入社したい、早く失業手当(雇用保険の基本手当)をもらいたいなどの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したくなることもあります。

また、転職先から内定の取消を受けたり、思うように転職先が見つからなかったりすれば、退職願の退職日よりも遅く退職したくなることも、退職を撤回したくなることもあります。

こうして、従業員側から「退職日を早めたい」「退職日を遅らせたい」「退職を撤回したい」という要求が出たとしても、会社はこれに応じる義務がありません。労働契約の合意解除は既に成立しているからです。

しかし、会社がこれに応じることは自由ですし、退職願の退職日とも従業員の退職希望日とも異なる新たな退職日を合意して決定することもできます。

こうしたことは、一般には就業規則に規定されていないのですが、労働契約の合意解除も、合意による変更も、労働基準法などに規制する規定が無いので、契約自由の原則から当然に認められることなのです。

 

<民法と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。〔民法第627条第2項〕

実際の就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、退職希望者から民法の規定を持ち出されると反論できません。

「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

2019.10.12. 解決社労士 柳田 恵一

<資格喪失手続きを忘れる原因>

所定労働時間が週20時間以上であることが、雇用保険の資格を取得する条件となります。

ですから、週3日、1日6時間勤務のパート社員が、週4日勤務になれば、雇用保険に入ることになります。

このように、資格を取得するときの手続きを忘れることはあまりないでしょう。

しかし、雇用保険の資格喪失となると、雇用保険の離職=退職というイメージが強いので、退職したときだけ資格喪失を意識しがちです。

ところが、所定労働時間が週20時間未満となったときも、資格喪失手続きが要るのです。こちらは忘れやすいのです。

もう一つ、労働者と兼務していた役員が、100%役員になった場合にも、雇用保険の資格を喪失します。

今まで、給与と報酬の両方をもらっていた役員が、報酬だけになるときは要注意です。

雇用保険の資格喪失手続きを忘れられた本人にとっても、雇用保険料は社会保険料よりもはるかに安いので、給与明細書を見たときにピンと来ないと思います。

 

<本人について>

所轄のハローワークで、さかのぼって資格喪失手続きを行います。

このとき、「遅延理由書」という書類の添付を求められるかもしれませんので、事前に相談しておくことをお勧めします。

また、ご本人に給与から控除してしまった保険料の返金を行います。

念のため、計算書と領収証を作ったほうがよいでしょう。

 

<会社の負担した保険料について>

労働保険料の支払いは、毎年7月の年度更新で行います。

間に合うのなら、データを修正して余計な保険料を支払わないようにしましょう。

しかし、確定保険料を多く計算して年度更新を済ませてしまった場合には、手続きをやり直して返金してもらうのは、返金してもらう金額と必要な時間や労力を比較すると得策ではありません。

それよりは、再発防止のためにマニュアルを改善しておくことのほうを強くお勧めします。

 

2019.10.11. 解決社労士 柳田 恵一

<結論として>

勤務時間に見合った通常の給与を支払えば、休職者の意思に反して勤務させるのでない限り違法ではありません。

たしかに、ノーワーク・ノーペイの原則から、会社は休職中の給与を支払う義務がありません。

しかし、休職中に必要があって勤務した場合には、その勤務時間に見合った通常の給与を支払わなければなりません。

 

<休職者の合意の有無>

育休中の勤務のように、事前にある程度出勤の予定が立てられる場合には、会社と休職者とで話し合って、出勤日や時間を予定することができます。

この予定に従って勤務してもらう分には、休職者の事前の合意があるので、原則として問題がありません。

しかし、会社側が急な必要を感じて、休職者に出勤を要請する場合には、休職の趣旨から当然に休職者の合意が必要と考えられます。

 

<法の規定>

たとえば、雇用保険の育児休業給付金では、就業している日数が支給単位期間(1 か月ごとの期間)ごとに10 日(10 日を超える場合は就業していると認められる時間が80 時間)以下であることが、支給要件とされています。

つまり、育児休業中であっても、ある程度の勤務は想定の範囲内とされていることになります。

ただ、健康保険の傷病手当金や出産手当金などでは、報酬の一部を受けることができる場合の差額支給のルールが定められています。

この場合には、休職者に不利とならないように勤務してもらう配慮が必要でしょう。

 

2019.10.10. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法の規定>

年次有給休暇を付与した場合は、①平均賃金、②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金、③健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額(1の位は四捨五入)のいずれかの方法で支払わなければなりません。

ただし、③については労働者代表との書面による協定が必要です。

また、これらのうち、いずれの方法で支払うのかを就業規則等に定めなければなりません。〔労基法第39条第7項〕

この①~③の中で、最も多く用いられているのは②の方法で、就業規則に次のような規定が置かれているのを目にします。

 

【年次有給休暇の賃金】

第〇条  年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。

 

ここで「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

 

<通勤手当の問題>

「通常の賃金」の中に通勤手当は含まれるのでしょうか。

一般には、通常の出勤・勤務を想定した賃金ですから、通勤手当も含まれます。

特に、月給制で1か月定期代を前払いで支給しているような場合には、一部分だけ定期代の払い戻しを受けることができませんから、通勤手当を削るのは不合理です。

ある会社で、年次有給休暇を取得した場合に精皆勤手当を不支給とする就業規則について、裁判で争われました。

裁判所は、こうした就業規則は「労働者が現実に出勤して労働したことの故に支払われる実費補償的性格の手当でない限り、年休制度の趣旨に反する」と述べています(大瀬工業事件 横浜地判昭和51年3月4日)。

ということは、「実費補償的性格の手当」であれば、年次有給休暇取得日に不支給とすることも制度趣旨に反しないことになります。

たとえば、就業規則で通勤手当の支払いについて「実費を後払い」と規定しているような場合には、「実費補償的性格の手当」と考えられますので、実際の出勤日数に応じた通勤手当を支給することにも十分な合理性があります。

いずれにせよ、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の通勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<夜勤がある場合>

毎週特定の曜日に夜勤があって、夜勤手当が付いている場合、この日に年次有給休暇を取得すると、夜勤手当も支給されるのかという問題があります。

しかし、「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

やはり夜勤手当を付けて計算するのが、一般的には合理的でしょう。

ただ、当日誰か別の人が夜勤に入り、後日、その埋め合わせで、いつもと違う曜日に夜勤に入ったとすると、夜勤予定日に年次有給休暇を取得したとき1回多く夜勤手当をもらうことになります。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で個人ごとに夜勤が割り当てられるような場合には、話がもっと複雑になります。

こうした場合にも、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の夜勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<日によって労働時間が違う場合>

パート社員などでは、特定の曜日だけ所定労働時間が長い雇用契約の人もいます。

いつもその曜日に年次有給休暇を取得すれば、給与の支給額が増えてお得だということになります。

本人が特定の曜日ばかり時季指定をしても、これを不当として使用者が時季変更権を使うことはできません。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で月に何回か所定労働時間の長い日があるということになると、話がもっと複雑になります。

こうした場合には、所定労働時間の加重平均で年次有給休暇の賃金を計算することにも、それなりの合理性があると思われます。

法令に規定の無い、変則的な内容を就業規則に定める場合には、所轄の労働基準監督署と相談のうえ、内容を決定することをお勧めします。

 

<平均賃金という方法>

上記に現れた変則的なケースでは、「②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金」ではなく「①平均賃金」で計算することを、就業規則や労働条件通知書に規定しておいた方が妥当な場合もあります。

これによってトラブルは防げるのですが、残業手当が多い場合には、「①平均賃金」が「②通常の賃金」を大きく上回る恐れもあります。

また、過去3か月の平均値を計算する手間もかかりますから、給与計算を担当する人との話し合いも必要でしょう。

 

2019.10.09. 解決社労士 柳田 恵一

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。

こうして、新人の入社の時にあらゆる同意書を書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

このような不合理な結果を考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を保護することです。

労働者自身の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養から外れてしまうので受け取りを辞退します」という申し出があったとします。

店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。

しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら、権利が時効消滅していない限り拒めません。〔労働基準法第24条第1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。

それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら、権利が時効消滅していない限り会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、ある意味で会社に束縛されています。

しかし、退職すれば自由になります。

そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです

 

2019.10.08. 解決社労士 柳田 恵一

<労働経済白書>

厚生労働省は、令和元(2019)年9月27日の閣議で「令和元年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

「労働経済白書」は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書です。

今回の「労働経済白書」では、人手不足下における「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。

 

<白書の主なポイント>

厚生労働省は、白書の主なポイントを次のようにまとめています。

 

【白書の主なポイント】

・多くの企業が人手不足を緩和するために、求人条件の改善や採用活動の強化などの取り組みを強化している一方で、「働きやすさ」や「働きがい」を高めるような雇用管理の改善などについては、さらに取り組んでいく必要がある。

 

・「働きやすさ」の向上が定着率などを改善し、「働きがい」の向上が定着率に加え、労働生産性、仕事に対する自発性、顧客満足度などさまざまなアウトカムの向上につながる可能性がある。

 

・「働きがい」を高める取り組みとしては、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックやロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要である。

 

・質の高い「休み方」(リカバリー経験)が疲労やストレスからの回復を促進し、「働きがい」を高める可能性があり、仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)を高めていくことが重要である。

 

<第1のポイント 雇用管理の改善>

人手不足に対処するため、採用条件を良くしたり、募集採用活動に多額の経費をかけたりする企業は多いといえます。

「とにかく採用しなければ」という切実な思いの現われでしょう。

しかし、入社後の労働環境の改善、教育訓練の充実、キャリアアップの道筋の明確化、達成感を自覚できる人事考課制度の構築などには、手付かずということもあります。

せっかく苦労して採用した人材が、快適に働くことも、将来を見通すことも、充実感を得ることもできないのであれば、その心は会社から離れてしまいます。

採用することだけに重点を置くのではなく、採用後に定着してもらうための努力が求められているということです。

 

<第2のポイント 定着率と生産性の向上>

労働環境の改善により定着率は向上します。

これに加えて「働きがい」の向上は、モチベーションを向上させますから、意欲的な労働を誘発し、自分で考えて働くようになり、お客様にも喜ばれるという効果をもたらします。

自分で考えて行ったことの結果が評価されたり、お客様から感謝の言葉を戴いたりすれば、これがまたモチベーションを向上させて、らせん階段を駆け上がるような良い循環をもたらします。

 

<第3のポイント 働きがい向上の方法>

「働きがい」を高めるために、人間関係の円滑化や労働時間の短縮に取り組むべきだとしています。

会社の一方的な施策で、単純に労働時間を短縮すると、人間関係を良好に保つためのコミュニケーションの時間も減ってしまいます。

労働時間の短縮にあたっては、労使の話し合いや、労働者からの提案に基づいて行うことがポイントとなるでしょう。

上司からのフィードバックというのは、「上司から部下への指示 → 部下が業務を行う → 部下から上司に報告」までで止まってしまわず、「→ 上司から部下への評価・指導」という流れが続くことをいいます。

「ここは、自分で考えて行動できて良かった。ここは、こうすればもっと良くなった」という話が、上司から部下へのフィードバックとして行われていれば、部下の「働きがい」やモチベーションは向上します。

さらに、模範となる先輩社員を具体的に示せば、新人たちは自分が将来どうなっているべきかが分かり、将来のキャリア展望が明確になります。

実際には、模範となる先輩社員の自覚が高まり、最も成長するのではないでしょうか。

 

<第4のポイント 休み方改革>

完全に仕事から離れ、心身ともにリフレッシュできる時間を確保することによって、体力・気力・能力の高まった状態で仕事に取り組むことができます。

存分に能力を発揮できる状態での勤務は、とても気持ちの良いものであり、「働きがい」が感じられるものです。

これを可能にするためには、会社が従業員をきちんと休ませることが必要です。

年次有給休暇の取得促進の他、勤務間インターバル制度の活用もあります。

より具体的に、仕事の持ち帰りの禁止、プライベートの時間に仕事の連絡を取ることの禁止など、ルールを設定して、労使ともに遵守することが必要になってくるでしょう。

 

2019.10.07. 解決社労士 柳田 恵一

<労働法の実体>

「労働法」という名前の法律があるわけではありません。

労働に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。

その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければならないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、労働契約の内容を全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間労働など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

こうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法が存在するのです。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

法律というのは、不合理ですが、その法律を知っている人の役に立つのですが、知らない人の役には立ちません。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2019.10.06. 解決社労士 柳田 恵一

そもそも会社の中で、性的な言動は仕事に全く必要ないのです。そんなもの潤滑油の働きもしません。徹底的に排除すべきです。

 

<セクシュアルハラスメントとは>

相手に不快感を与える性的な言動は、その相手の性別に関係なく、また、直接的な身体接触によるものだけではなく、言葉によって行われるものも、セクシュアルハラスメントとなります。

「相手の性別に関係なく」というのは、男性同士でも女性同士てもダメなものはダメということです。

さらに、わいせつな行為を強要したり、相手の名誉や社会的信用を傷つけたりすれば、犯罪として刑法上の責任が問われることがあります。〔刑法第176条、第230条など〕

そして、被害者に対する損害賠償責任を発生させることにもなります。〔民法第709条〕

男女雇用機会均等法では、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しないよう、事業主が積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務付けています。

防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否したことなどを理由に、職場で不利益な取扱いをする「対価型」だけでなく、性的な言動などによって職場環境を悪くする「環境型」のセクシュアルハラスメントも含まれます。

 

<事業主の責任>

事業主は、このようなセクシュアルハラスメント行為に対して厳正に対処すること、被害を受けたときの相談窓口があることなどについて、あらかじめ管理職を含む労働者に知らせておき、もし被害の申出があったら、適切な調査と対応をすることが義務付けられています。

このように職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」では済まないものです。

適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局など)による助言・指導などが行われます。

 

<被害者の権利>

被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対しても、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義務違反として、損害賠償を請求することができます。〔民法第715条、第415条〕

セクシュアルハラスメントについては、事業主の責任を踏まえて、社内で解決することが望ましいといえます。

ですから、まずは社内の相談窓口や上司に相談することです。

もちろん、上司からの被害であれば、上司の上司に相談すべきです。

しかし、セクシュアルハラスメント問題について、会社が適切な対処をしてくれないときは、国の行政機関(東京労働局雇用均等室)や専門家(弁護士、社労士)などに相談してください。

特に、被害者が退職させられる異動させられるというのは不当な扱いなのですから、被害者を増やさないためにも無理のない範囲で行動していただけたらと思います。

 

2019.10.05. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

健康保険法には次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

 

厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

 

こうして社会保険料、つまり健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。

ただし、たとえば建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。それでも、厚生年金保険料は労使折半です。

 

<事業主の負担額>

こうした法律の規定にもかかわらず、福利厚生の一環で、社会保険料を会社が全額負担してはどうかという提案が出てくることもあります。

たとえば、本来の月給の総支給額が30万円の従業員が負担すべき社会保険料は、約4万5千円です。会社も同額を負担しています。

従業員が負担すべき保険料を会社が負担した場合、この約4万5千円は従業員の所得となります。

すると、この従業員の総支給額は約34万5千円に増額されますから、これに対する社会保険料は約5万1千円です。

こうして、この従業員の総支給額は約35万1千円に増額され、これに対する社会保険料は約5万4千円となって、最終的にこの従業員の総支給額は約35万4千円となります。

総支給額が約35万1千円と約35万4千円とは、社会保険料を決める保険料額表で同じ等級に含まれますから、総支給額は約35万4千円、社会保険料は約5万4千円となって、ここで計算が落ち着きます。

本来は労使折半の社会保険料を、会社が全額負担するということは、会社の負担が約4万5千円から約10万8千円に増額されることを意味します。

 

<税金の処理>

従業員の保険料相当額は、給与課税の対象となります。

給与が30万円から約35万円に大幅昇給したのですから、課税額も大幅に増額されます。

しかし約5万1千円は、社会保険料控除の対象として税額計算上控除されます。

社会保険料が増額されたことにより、社会保険料控除も増えるのです。

 

こうしてみると、社会保険料を全額会社負担にするというのも面倒なものです。

それでも、全額会社負担を考えたいのであれば、給与計算を担当する部署や、所轄の税務署などと十分打合せのうえ、実施に踏み切ることをお勧めします。

 

2019.10.04. 解決社労士 柳田 恵一

<パワーハラスメントについての法規制>

パワーハラスメントについて、現時点では、特別な法律があるわけではありません。

しかし、職場であっても他者に暴力を振るえば、暴行罪・傷害罪となって刑事上の責任が問われます。〔刑法第208条、第204条〕

また、皆で示し合わせて誰か一人を排除するようなことをすれば、脅迫罪となる可能性もあります。〔刑法第222条〕

さらに、そこまでに達しないような言動でも、常識的に許される範囲を超えて、相手の人格や尊厳を傷つけるものは、被害者への損害賠償責任を発生させます。〔民法第709条〕

 

<上司は部下を叱れないのか>

職場では、業務上の指示や指導の上で、やや厳しい言動が行われることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、通常の企業の中で行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。

部下や同僚に対し、業務上の必要性もなく、嫌がらせなどの不当な目的で叱責したり、不安を感じさせる対応をしたりすることは、常識的に許されないでしょう。

また、その言動自体は業務の範囲といえるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的で、業務上の権限を使うことも許されません。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。

 

<被害者の取るべき行動>

職場で違法なハラスメントを受けた被害者は、加害者本人に対する損害賠償請求ができます。

また、会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、加害者本人と同様の賠償責任を負います。〔民法第715条〕

さらに、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法第415条〕

そして、常識的に許されない業務上のパワーハラスメントによって、健康被害が生じたと認定された場合は、業務災害として労災保険からの給付を受けられます。

社内でのハラスメント被害を止めるためには、抗議できるならば加害者に中止を求めるとともに、一人では対応が難しいようであれば、まずは上司や同僚など、社内の信頼できる方に相談してください。

ただし、上司からの加害について、加害者本人に相談するのは無意味ですから、上司の上司に相談することになります。

刑事責任が発生するようなケースでも、いきなり警察に相談するのではなくて、社内での解決を考えたいものです。

まず社内での解決を目指し、難しい時には、弁護士や社労士といった社外の専門家や警察に相談するのがよいでしょう。

 

2019.10.03. 解決社労士 柳田 恵一

<派遣労働者>

派遣労働者は、労働者派遣法で定められた正式名称です。

労働者派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結び、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣して、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものです。

特徴として、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法が派遣労働者のための細かいルールを定めています。

労働者派遣では、法律上の雇い主は人材派遣会社です。ですから、事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。

しかし、実際に指揮命令をしている派遣先が全く責任を負わないというのは不合理です。

そこで、労働者派遣法が派遣元と派遣先との責任分担について定めています。

 

<契約社員(有期労働契約)>

契約社員は、法律上の名称ではないので、その意味も会社によって違います。

正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。

このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。

ただし、労使の合意により、契約を更新することもあります。

1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。

 

<パートタイム労働者>

パートタイム労働者は、正式名称ではありません。

パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます。

パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者をいいます。

「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法の「短時間労働者」となります。

パートタイム労働者を雇用する使用者は、パートタイム労働法に基づき、公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務づけられています。

また、労働者を雇い入れる際、使用者は、労働条件を明示すること、特に重要な条件については文書を交付することが義務付けられていますが、パートタイム労働法では、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書の交付などによる明示を義務づけています。

なお、パートタイム労働法は2020年4月1日に改正され、パートタイム・有期雇用労働法となります。

ただし、中小企業への適用は、2021年4月1日からとなります。

 

<短時間正社員>

短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比べて、その所定労働時間(所定労働日数)が少ない正社員であって、次のどちらにもあてはまる労働者をいいます。

・期間の定めのない労働契約を結んでいる。

・1時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法などが同じ事業所に雇用される同種のフルタイムの正社員と同等である。

このような働き方を就業規則に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。

短時間正社員制度の導入には、優秀な人材の獲得や社員の定着率の向上、採用コストや教育訓練コストの削減、社員のモチベーションアップ、外部に対するイメージアップといったメリットがあります。

 

<業務委託(請負)契約を結んで働く人>

正社員や派遣労働者、契約社員、パートタイム労働者、短時間正社員などは、「労働者」として、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

ところが、「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。

ただし、「業務委託」や「請負」といった契約をしていても、その働き方の実態が、注文主の指揮命令を受けるなどによって「労働者」であると判断されれば、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

 

<家内労働者>

家内労働者とは、委託を受けて、物品の製造または加工などを個人で行う人をいいます。

家内労働者は「事業主」として扱われますが、委託者との関係が使用者と労働者の関係に似ていることから家内労働法が定められていて、委託者が家内労働者に仕事を委託する場合には、家内労働手帳の交付や最低工賃の順守など、家内労働法に基づいた対応が求められます。

 

<在宅ワーカー>

在宅ワーカー(在宅就業者)とは、委託を受けて、パソコンなどの情報通信機器を使用してホームページの作成などを個人で行う人をいいます。

在宅ワーカーも「事業主」として扱われますが、委託者に対して弱い立場に置かれやすいため、在宅ワーカーに仕事を委託する場合には、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を踏まえた対応が求められます。

 

2019.10.02. 解決社労士 柳田 恵一

<ジタハラとは>

仕事と生活のバランスが取れるようにし、生産性を向上させるため、働き方改革の一環として、労働時間の削減が推進されています。

ところが、会社によって労働時間が短縮されるのは、労働者にとって苦痛であり、嫌がらせであると感じている人たちがいます。

これが、労働時間短縮ハラスメント(ジタハラ)です。

 

<ジタハラの具体的な被害>

ジタハラを主張する人たちは、次のようなものを被害として挙げています。

正社員では残業手当が減少し、パート社員では労働時間や勤務日数が減少することによって収入が減少します。仕事を急いで全力でこなすことから、ストレスは増加し、人間関係やチームワークも悪化します。現場での指導も不十分になりますから、仕事の完成度も低下します。ケアレスミスも増えます。こうして、従業員のモチベーションが低下し、退職者が増加します。

こなし切れない仕事は、自宅に持ち帰って行うこともあります。自宅での仕事ぶりは見えませんから、評価の対象にはなりません。いきおい人事考課が機能しなくなり、適材適所が困難となる恐れもあります。

一部の企業では、未払残業が発生します。残業手当が支給されない管理職に業務が集中することもあります。毎日残業し、休日も出勤する管理職の姿は、憧れの対象にはなりませんから、昇進を目指して努力するということも減ってしまいます。

一番困るのは、労働時間の短縮がお客様に対するサービスの低下をもたらし、お客様が離れてしまい、業績が低迷することではないでしょうか。

他にも、取引先との商談が減ったり、夜間の連絡が取れなくなったりの不都合が発生します。

 

これほど多くの不都合があるのなら、労働時間の短縮をしてはいけないのでしょうか。

これらは、政府の主導する働き方改革の弊害なのでしょうか。

ジタハラの問題を解決するには、次のような対策が必要です。

 

<副業・兼業の奨励>

労働時間の短縮により収入が減る場合でも、これを補うための副業や兼業が奨励されているのであれば、あとは労働者側の努力次第という説明も可能です。

そもそも職業選択の自由がある以上、プライベートの時間に本業とは別の仕事をするのは労働者の勝手というのが原則です。

もちろん、本業に支障が出たり、企業秘密が漏えいされたり、会社に損害を与えるようなことは許されません。

副業・兼業を許可制にするのは行き過ぎで、せいぜい届出制に留めるべきだと思います。

次のモデル就業規則最新版(平成31(2019)年3月版)を参考に、社内規定を整備してはいかがでしょうか。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<労働者の主体性>

年次有給休暇について、会社が時季指定義務を果たすには、労働者の意向を汲んで行うことになっています。

ところが労働時間の短縮となると、殆どの場合に、その手段が会社からの押し付けになっていないでしょうか。

労働者に主体性を持たせ、創意・工夫による時間短縮を任せなければ、モチベーションが低下するのは当然です。

労働時間の短縮について労使の話し合いの場を持つ、キャンペーン的に労働者のアイデアを募って、成果の上がったアイデアは表彰するなど、労働者に主体性を持たせる方法はたくさんあります。

 

<お客様・お取引先への説明>

ただ単純に「閉店時間を早めます」「定休日を設けます」というのでは、不便になりますから、お客様の心は離れて当然です。

たとえば、スーパーマーケットのサミットは、今年から元日だけでなく1月2日も休業日としています。

その説明は、次のとおりです。

 

~働き方改革の一環として1月2日を休業いたします~

弊社の事業ビジョンとなる「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」の実現に向け、お客様やお取引先を大切にすることはもちろん、それを実現するために社員の働き方を見直します。直接お客様と接する店舗の社員が家族・親族と過ごせる時間を増やし、社員一人ひとりがリフレッシュすることで、1月3日から更にお客様にご満足いただける売場・商品・サービスを実現します。また、3日からの営業となることで、弊社のお取引先様の負担を少なくしていきます。

 

こうした説明を受けて「けしからん」と思う人などいないでしょう。

きちんと説明すれば、会社のファンを増やすきっかけにもなるのです。

お客様やお取引先が納得してしまえば、従業員も営業時間や労働時間の短縮を批判できないものです。

 

<正攻法の重視>

労働時間の短縮の手段としては、人員増、社員教育、システム化が王道です。

こうした正攻法を軽んじて、ノー残業デー、20時以降は消灯など、小手先の手段に走っていないでしょうか。

仕事と生活のバランスをとる、柔軟な働き方を選択できるようにするなど、働き方改革の本来の目的は労働者目線です。

いつの間にか、残業代削減など会社目線の施策が推進されていないでしょうか。

これはもはや、働き方改革ではなくなっています。

 

何のための働き方改革かという基本に立ち返って、労働時間の短縮に取り組むことが必要なのです。

 

2019.10.01. 解決社労士 柳田 恵一

<労災病院や労災指定医療機関>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費が無料となります。

実際には、病院などに「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。

こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとです。

 

<労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関>

基本的に、被災者が治療費を一時的に負担しておいて、被災者名義の指定口座に振り込み返金されます。

したがって、手続き書類には口座番号を書く欄があります。

ここが、労災病院用の手続き書類とは違うところです。

傷病が悪化して治療が長引くと、一時的にせよ負担額がバカになりません。

というのも、健康保険証を使えば3割負担なのですが、労災では保険証が使えませんから、全額が本人負担となるのです。

労災病院などの場合と同じように、会社が書類の作成と被災者への交付を急ぐことはもちろんですが、労災病院などに移ることも考えたいです。

 

<実際に労災が発生した時の注意点>

上記のことから、なるべく労災病院などでの治療が便利です。

しかし、被災者は痛い思いをしていますから、労災病院にこだわるのではなく、最寄りの病院などでなるべく早く治療を受けさせましょう。

たとえば、手をやけどした場合、流水で30分ほど冷やしている間に、病院を探し連絡を取っておいてから、被災者を連れていくというのがよいでしょう。

 

2019.09.30. 解決社労士 柳田 恵一

 

<補償が受けられるケース>

業務災害または通勤災害による傷病の治療のため働けず、賃金を受けられないときは、労災保険による補償が受けられます。

傷病の原因が、勤務中に発生する業務災害のときは休業補償給付、通勤中に発生する通勤災害のときは休業給付といいます。

業務災害の場合は、もともと労働基準法が事業主に補償を義務づけていたので、「補償」という言葉が入ります。

これに対して、通勤災害の場合には、事業主に通勤途上の事故にまで責任を負わせることに無理があります。

そのため、労働基準法は事業主に補償を義務づけていないので、「補償」ということばが入りません。

労災保険は、事業主の補償義務の範囲を超えて、補償の内容を拡大しているのです。

 

<保険給付の内容>

休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の60%が補償されます。

つまり、3日目までは労災保険で補償されません。

ただし、業務災害の場合だけ、事業主が直接補償する義務を負っています。〔労働基準法第67条第1項〕

この他、休業特別支給金という制度があって、休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の20%が支給されます。

結局、被災者は合計80%の補償を受けるわけです。

休業(補償)給付を受けるために、労働基準監督署長に提出する書類のタイトルには、休業特別支給金も兼ねていることが表示されていますので、1つの手続きで両方の請求ができます。

 

<健康保険より手厚い補償>

治療費は、健康保険だと自己負担が30%ですが、労災保険だと無料です。

休業補償も、健康保険の傷病手当金が67%なのに対して、労災だと合計80%になります。

これは、日本国憲法第27条第1項が、勤労を国民の義務としていることと深い関連があります。

つまり、国民としての義務を果たしていて被災したのだから、プライベートな原因の場合よりも手厚い補償が必要だとされているわけです。

 

2019.09.29. 解決社労士 柳田 恵一

<労災保険給付と損害賠償との関係>

労働災害のうち業務に起因する業務災害では、被災労働者(または遺族)は、労災保険給付を請求できると同時に、使用者に対しても損害賠償請求を行うことができます。

しかし、労災保険給付と損害賠償がカバーする損害の範囲は大きく重なりますから、労災保険給付を受けながら、これが無かったものとして、損害賠償を得られるというのでは、被災労働者(または遺族)の損害が二重に回復されることになり不公平です。

また使用者は、労災保険料を負担しているにもかかわらず、労災保険給付によって責任が軽減されないのでは、労災保険への加入を義務付けられていることとの関連で、納得がいくものではありません。

こうしたことから、労災保険給付と損害賠償との間では一定の調整が行われます。

 

<労災保険給付と損害賠償との調整>

労災保険法に基づく労災保険給付が被災労働者に行われた場合、使用者は労働基準法上の「災害補償責任」を免れます。〔労働基準法第84条第1項〕

使用者により災害補償がなされた場合、同一の事由については、その限度で使用者は損害賠償責任を免れます。〔労働基準法第84条第2項〕

労災保険給付が行われた場合にも、労働基準法第84条第2項が類推適用され、使用者は同様に保険給付の範囲で「損害賠償責任」を免れます。

労災保険の受給権者が、使用者に対する損害賠償請求権を失うのは、保険給付が損害の塡補の性質をもっているからです。そのため、政府が現実に保険金を給付して損害を塡補した場合に限り、損害賠償請求権が失われることになります。

このことから、将来支給予定の年金給付については、現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して給付されることが確定していても、基本的には損害賠償請求権が失われないとされています。

なお、労災保険給付は、被災労働者等の財産的損害を補償することを目的としているため、慰謝料等の請求関係には影響を与えません。被災労働者等は、保険給付との調整とは無関係に慰謝料等を請求できるとされています(東都観光バス事件 最高裁第三小法廷判決昭和58年4月19日)。

 

2019.09.28. 解決社労士 柳田 恵一

<雇い入れ時の安全衛生教育>

労働者を雇い入れたときは、労働者に対して、その従事する業務に関する安全・衛生のための教育を行うべきことが法定されています。〔労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条〕

ところが、所轄の労働基準監督署の安全衛生課が調査に入ると、安全衛生教育が実施されていないケースも多く、また、安全衛生教育に関する労働者からの相談も多く寄せられています。

 

<安全衛生教育の義務>

労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、次の事項について、教育を行うことになっています。

ただし、労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(その他の業種)の事業場の労働者については、1から4までの事項についての教育を省略することができます。

反対に、5から8までの事項についての教育は省略できません。

1 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること。

2 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること。

3 作業手順に関すること。

4 作業開始時の点検に関すること。

5 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること。

6 整理、整頓および清潔の保持に関すること。

7 事故時等における応急措置および退避に関すること。

8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項

 

<留意事項>

労働者から労基署への「安全衛生教育が実施されない」という相談は、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者からのものが多いようです。

契約形態にかかわらず、安全衛生教育は義務づけられていますので注意しましょう。

また、労基署が「安全衛生教育が実施されていない」と判断するのは、事実として行われているかどうかではなく、安全衛生教育の記録が職場に保管されているかどうかによって行います。

安全衛生教育について、日時、内容、実施者、参加者などの記録を残し、職場ごとにきちんと保管しておきましょう

 

2019.09.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年9月24日、厚生労働省が長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめ公表しました。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。

対象となった29,097事業場のうち、11,766事業場(40.4%)で違法な時間外労働を確認したため、是正・改善に向けた指導を行いました。なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、7,857事業場(違法な時間外労働があったもののうち66.8%)でした。

厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行います。

 

【平成30年4月から平成31年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:29,097事業場

   このうち、20,244事業場(全体の69.6%)で労働基準関係法令違反あり。

 

(2) 主な違反内容

[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

  ① 違法な時間外労働があったもの:11,766事業場(40.4%)

    うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        7,857事業場(66.8%)

       うち、月100時間を超えるもの:   5,210事業場(44.3%)

       うち、月150時間を超えるもの:   1,158事業場( 9.8%)

       うち、月200時間を超えるもの:    219事業場( 1.9%)

  ② 賃金不払残業があったもの:1,874事業場(6.4%)

  ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの

                                                                   :3,510事業場(12.1%)

 

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況

[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

  ① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの

                                                                  :20,526事業場(70.5%)

    うち、時間外・休日労働を月80時間※以内に削減するよう指導したもの

                                                                 : 11,632事業場(56.7%)

 ※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。

  ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,752事業場(16.3%)

 

これは、改正労働基準法をはじめ、働き方改革関連法施行前の法令に基づく監督指導結果です。

今年度は、改正法への対応の遅れから、違反を指摘されてしまう事業場の増加が懸念されます。

なお、賃金不払残業には、賃金不払早出や賃金不払休日出勤なども含まれます。

休日出勤の後、代休が取れずに放置されるような、隠れた賃金不払もありますから、「賃金不払残業」という言葉にとらわれないようにしましょう。

 

2019.09.26. 解決社労士 柳田 恵一

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

これによって、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

【雇用管理上の措置の具体的内容】

・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発

・苦情などに対する相談体制の整備

・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等

 

詳細は、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて検討される予定です。

仕組みが整えば、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。

 

<パワハラと犯罪>

刑法その他の刑罰法規にパワハラ罪の規定はありません。

しかし、パワハラが犯罪になることはあります。

ある人の行為が、パワハラになるか/ならないかと、犯罪になるか/ならないかとは、別次元の問題です。

以下、具体例を見てみましょう。

 

<パワハラであり犯罪である行為>

就業の場で、身体的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)などが成立します。

これらは、事実が警察に発覚すれば、社内で行われたことであっても、会社の方針とは関係なく捜査の対象となります。

また就業の場で、精神的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に脅迫罪(刑法第222条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)などが成立します。

これらのうち、名誉毀損罪と侮辱罪は、警察沙汰になると被害者の心の痛みが大きくなりうることを踏まえて、親告罪とされています。〔刑法第232条第1項〕

つまり、被害者の告訴がなければ公訴が提起できませんから、警察も動けません。

こうしたパワハラの被害者から、会社に対して被害の申告があった場合に、被害者の納得できる対応を取らないと、被害者が警察に駆け込み、会社の対応が格段に大変になるリスクをはらんでいます。

 

<パワハラだが犯罪ではない行為>

就業の場で、たとえば上司が返事をしない、仕事を与えない、本人が拒んでいるのに退職勧奨を続けるというのは、パワハラに該当します。

これらは犯罪ではありませんから、警察に助けを求めても取り合ってもらえません。

しかし、こうした行為を行う上司は、管理職が不適格であるとして役職を外されるかも知れませんし、被害者から損害賠償を請求されるかも知れません。

つまり、加害者が刑事責任を負うことは無いものの、民事責任を負ったり、不利益を被ったりするリスクをはらんでいます。

加害者が民事責任を負う場合、会社も使用者責任を負うことがあります。〔民法第715条〕

 

<パワハラではない犯罪行為>

社外で行われる犯罪のほとんどは、業務とは無関係ですから、パワハラにはあたりません。

しかし、出張先や移動中の車内など、社外ではあるけれども就業の場といえる場所で行われる行為は、パワハラとなりうるものです。

また、休日の電話など、業務に関連する会話が行われる場合には、パワハラとなりうることがあります。

さらに、社内でも社外でも、本人がいない所で悪口を言うのは、聞いた相手が言いふらすことを期待して言ったのであれば、名誉毀損罪が成立することもあります。

結局、就業の場ではない所で業務とは無関係に行われた犯罪行為は、パワハラにはならないということです。

 

<パワハラでも犯罪でもない行為

人事考課の結果を伝える面談で、上司が部下に「7項目がB、9項目がCで、総合評価がCでした」と伝えたところ、部下がショックを受け、泣きながら応接室を飛び出して行ったとします。

事情を知らない社員が、その姿を目にしたら、パワハラかセクハラがあったのではないかと疑いたくもなります。

しかし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動は存在しないのですから、パワハラにはならず、もちろん犯罪も成立しません。

ただ上司としては、疑われることがないように、「これから○○さんと、応接室で人事考課の結果を伝える面談をします」と周囲に声掛けをしてから席を立つなどの配慮が必要です。

また可能な限り、1対1での面談は避けることが望ましいといえるでしょう。

 

2019.09.25. 解決社労士 柳田 恵一

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法第35条第1項〕

これが法定休日です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

ですから、この7日間に1日も休みが無いというのは、労働基準法違反です。

ただし、労使で三六協定を交わし、所轄の労働基準監督署長に届けていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

毎週少なくとも1日の休日という法定休日のルールは、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外があります。〔労働基準法第35条第2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

これも法定休日です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。

起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。

これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのか分からないので運用できません。

 

「毎年4月1日を起算日とする」という就業規則の規定は誤りです。

365日 ÷ (7日 × 4週)= 13.035…というように端数が出ますから、3月末に半端な期間ができてしまいます。

ですから、「2019年4月1日を起算日とする」などのように、特定の日を起算日として動かないようにしなければなりません。

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは法定休日の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。

この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

1日6時間勤務であっても、1週間毎日出勤する週には42時間勤務となりますから、40時間を上回る2時間が割増賃金の対象となります。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

4週間に4日以上の休日を与える変形休日制を採る場合には、併せてフレックスタイム制などの変形労働時間制を採るのが合理的だといえるでしょう。

 

2019.09.24. 解決社労士 柳田 恵一

<1か月単位の変形労働時間制の狙い>

会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。

労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。

これは、働き方改革の流れにも沿った仕組みです。

 

<基本的な仕組み>

1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。

こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない仕組みです。〔労働基準法第32条の2〕

ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。

 

<必要な手続き>

労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署長に届け出ます。

常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。

これは簡単な手続きで済みます。

 

<定めることが必要な事項>

・対象労働者の範囲

法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。

・対象期間と起算日

対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。

・労働日と労働日ごとの労働時間

シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

・労使協定の場合にはその有効期間

労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間より長くなります。適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、3年以内にすることが望ましいでしょう。

 

<1か月単位の変形労働時間制が上手くいく条件>

メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。

実態として、毎日少なくとも8時間は勤務するというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。

スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。

制度導入の前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。

 

2019.09.23. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒権濫用法理>〔労働契約法第15条〕

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分が無効とされるばかりではなく、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<居眠りに対する懲戒処分>

まず、居眠りというのは故意にできることではなく過失による行為ですから、懲戒規定の中でも他の過失行為と同様に軽い処分とせざるを得ません。

また、今まである程度勤務中の居眠りが黙認されてきたのに、突然、懲戒規定を置いて処分の対象とする場合には、居眠りが許されない新たな職務の発生など、それ相当の強い根拠が必要となります。

さらに、居眠りの原因を考えた場合に、肥満や病気が関与している場合には、会社の健康管理の一環として、懲戒処分の前に生活面での指導が必要となります。

ましてや、過重労働や長時間労働の結果、居眠りが生じたような場合には、会社側に大きな責任がありますから、懲戒処分では何も解決しません。

結論として、居眠りの原因について会社側に落ち度がないかを確認し、本人に考えられる原因を挙げてもらい、まずは原因をつぶしていく努力をします。

それでもなお、本人の落ち度で居眠りが発生するのであれば、注意、厳重注意、始末書をとって反省を促す譴責(けんせき)あたりまでは、懲戒処分もありうると考えます。

 

<居眠りに対する他の対応>

きちんとした評価基準があれば、勤務中の居眠りが評価を下げる原因となり、昇進、昇格、昇給、賞与に反映されます。

ですから、人事考課のシステムがない会社は、きちんと構築する必要があるでしょう。

また、1時間、2時間と長時間の居眠りを繰り返すようであれば、本人と責任者が面談して、欠勤控除の対象となることを説明すべきでしょう。

この欠勤控除は、労働契約の性質から導かれるノーワーク・ノーペイの原則から許されるものですが、計算方法については、就業規則に規定しなければなりません。

さらに、居眠りがひどくて仕事になっていないというケースでは、普通解雇を考えざるを得ないこともあります。

いずれにせよ、最初に懲戒処分を考えるのではなく、その前に検討すべき対応は数多くあるということです。

 

2019.09.22. 解決社労士 柳田 恵一

<転籍出向の場合>

出向とはいうものの、転籍し完全に所属が移っています。

給与の支払者は出向先ですから、雇用保険は出向先で入り、雇用保険料も出向先でカウントされます。

労働環境の管理も出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

 

<在籍出向の場合>

社籍が出向元に残ったまま、出向先で働く場合です。

給与の支払者は出向元ですから、雇用保険も出向元で入り、雇用保険料も出向元でカウントされます。

しかし、労働環境の管理は出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

この場合、雇用保険と労災保険とで、保険料の負担者が異なることになります。

 

<不明確な場合>

「転籍出向」「在籍出向」ということばを一般とは異なる意味で使っている会社や、どちらか明確ではない場合でも、給与の支払者が雇用保険料を負担し、労働環境の管理者が労災保険料を負担すると考えればよいのです。

 

2019.09.21. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働省の広報>

毎年10月は、年次有給休暇取得促進期間ですが、今年は9月18日に、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課から次のような広報が出されています。

 

~ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて年次有給休暇の取得を促進~

 厚生労働省では、年次有給休暇(以下「年休」)を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年休の計画的付与※について労使で話し合いを始める前の10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、集中的な広報活動を行っていきます。

 年休については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議で策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、2020年(令和2年)までに、その取得率を70%とすることが目標として掲げられています。しかし、2017年(平成29年)に51.1%と18年ぶりに5割を超えたものの、依然として政府が目標とする70%とは大きな乖離があります。

 このような中、労働基準法が改正され、今年4月から、使用者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日間、年休を確実に取得させることが必要となりました。年休の計画的付与制度を導入することは、年休の取得を推進するとともに、労働基準法を遵守する観点からも重要になります。

 厚生労働省では、この制度改正を契機に、計画的付与制度の一層の導入が図られるよう、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施などを行い、周知広報に努めていきます。

 

※「年次有給休暇の計画的付与制度」・・・年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば計画的に年次有給休暇の取得日を割り振れる制度。(労働基準法第39条第6項)

 

<年休取得5日についての勘違い>

使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

この対象者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者です。

しかし、法定の年休付与日数が10日未満であれば、取得させなくても良いということではありません。

また、取得義務の対象者について、年5日を超える年休は取得させなくて良いということにはなりません。

年休の残日数がある労働者からの時季指定があれば、会社は理由を問わず取得させるのが基本です。

これは、年次有給休暇が労働基準法によって労働者に与えられた権利だからです。

 

<取得率目標70%についての勘違い>

政府が令和2(2020)年までに、年休取得率を70%とすることを目標として掲げたからといって、このことが会社に義務付けられたわけではありません。

あくまでも努力目標です。

ましてや、労働者に年休の70%以上取得が義務付けられたわけではありません。

年休取得率70%を会社の方針として掲げるのは素晴らしいことですが、労働者に年5日を超えて取得を強制することはできません。

年次有給休暇は、労働者の権利であって義務ではないからです。

法定の5日間を超えて会社から一方的に年休の時季指定をしてしまうことは、労働者の時季指定権を侵害することになり許されないのです。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得があまりにも進まないため、使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

これは「権利を行使させる義務」という例外的なものですから、会社は慎重に対応する必要があるのです。

 

2019.09.20. 解決社労士 柳田 恵一

<保険者算定>

一般的な方法によって報酬月額が算定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者等(年金事務所など)が特別な算定方法により、報酬月額を決定することとしています。

この算定方法を「保険者算定」といいます。〔健康保険法第44条、厚生年金法第24条〕

算定対象月に減給処分があった場合は、まさにこの「保険者算定」をする場合にあたります。

ところが、このケースは特殊なので手引き類にも見当たりません。

ですから、直接、年金事務所や協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に問い合わせるということになります。

実際、健康保険組合によってルールが違うようですし、すべての年金事務所で同じ回答が得られる保証もありません。

ただ、随時改定については「減給処分は固定的賃金の変動にはあたらない」という運用基準がありますから、減給処分がなかったものとして修正平均額を算出するのが主流と思われます。

 

<別の視点から>

減給処分は、一つの懲戒処分では平均賃金の1日分の半額が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円 ÷ 30日 ÷ 2 = 5千円というのが限度額になります。

また、いくつもの懲戒処分が重なった場合でも、その総額は賃金1か月分の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円÷10=3万円というのが限度額になります。

そして、ある月に減給処分があっても算定対象月は3か月ありますから、その影響は1つの懲戒処分で1,667円、複数の懲戒処分が重なって1万円が限度ということになります。

もし、定時決定(算定基礎届)の担当者が、算定方法に悩むほどの減給であれば、労働基準法の限界を超える減給がされていないかをチェックする必要がありそうです。

 

2019.09.19. 解決社労士 柳田 恵一

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法第32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法第35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法第33条第1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

過去の大震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2019.09.18. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

多くの企業では、取引先から個人的な謝礼を受け取ることを禁止し、これに違反した場合には懲戒処分の対象となりうることを、就業規則に定めています。

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようというわけです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

⑪ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。

 

実際に、ある社員が取引先から個人的な謝礼を受け取ってしまった場合に、「不当な金品」といえるのか判断に迷うことでしょう。

懲戒処分に踏み切ることが困難かもしれません。

 

<線引きが困難>

そもそも懲戒処分の対象とすべきか、処分するにしても、どの程度重い処分とすべきか、考慮すべき要素は数多くあります。

 

・特定の行為に対する謝礼か、日頃お世話になっているという社交的なものか。

・現金ではなく、商品券、映画の無料鑑賞券、ハンカチならどうか。

・お中元やお歳暮としてなら、お付き合いの範囲として許されるのか。

・特定の部署や店舗が受け取る場合と比べてどうなのか。

・取引先との関係から、断り切れなかった場合には許されるのか。

 

特定の行為に対する謝礼であれば、会社よりも取引先の利益を優先し、不正な便宜を図った可能性は高いでしょう。

この場合には、背任罪(刑法第247条)が成立する可能性もあります。

しかし、その社員が「社交的なものとして受け取った」と言い、取引先も「日頃お世話になっているので」と説明したら、特定の行為に対する謝礼であることを認定するのが、困難になってしまう恐れがあります。

 

<会社が取るべき対応>

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようという目的から対応を考えます。

まず、次のルールを定め社内に周知します。

 

1.取引先から謝礼の申し込みがあったら、取引先には「会社の事前承認が要る」旨を説明する。

2.それでも断り切れない場合には、「お預かりする」という説明をする。

3.謝礼の申し込みがあったこと、または、お預かりしたことを上司に報告し、会社としての判断を仰ぐ。

4.上司は内容や金額に応じた決裁方法に従い、会社としての判断を対象社員に伝え、対応を指示する。

5.会社の判断と上司の指示に従い対応する。

 

こうしたルールの下では、「取引先から個人的な謝礼を受け取ること」が、懲戒処分の対象となることはありません。

「取引先から謝礼を受け取る場合のルールに違反すること」が懲戒処分の対象となります。

懲戒処分の対象とすべきかどうかの判断も、迷わず客観的に行うことができます。

なお、就業規則に規定する場合には、ルール違反に対する懲戒とは別に、会社の受けた損害を賠償させることがある旨も規定しておきましょう。

 

2019.09.17. 解決社労士 柳田 恵一

<入院中の食費負担>

入院患者は、食事の費用のうち標準負担額というものを支払います。

この標準負担額というのは、平均的な家計での食事を参考に、厚生労働大臣が定めた金額です。

平成18(2006)年4月1日からは、1日単位から1食単位の金額に変更されました。

これは、医療機関で提供される食事の内容が変わるわけではなく、食事の負担額について、食数にかかわらず1日単位で計算していたものを、1食単位の計算に変えたものです。

 

<標準負担額>

1食の標準負担額は、一般の世帯で平成30(2018)年4月からは460円です。

ただし、住民税非課税世帯などは負担が減額されます。

標準負担額の軽減措置を受ける場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」に被保険者証と低所得の証明書を添付して、全国健康保険協会の都道府県支部に提出します。

申請が認められると「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されますから、被保険者証と認定証を医療機関の窓口へ提出することで標準負担額の軽減措置が受けられます。

低所得の証明は、低所得者世帯(住民税の非課税世帯)の人については、住所地の市区役所または、町村役場等で証明を受けた住民税の非課税証明、所得が一定基準に満たない場合は非課税証明に給与や年金の源泉徴収票、生活保護法の要保護者については、福祉事務所長が行う標準負担額認定該当の証明が必要となります。

 

<一般の治療の自己負担額との関係>

多くの方は、原則として3割の自己負担で治療を受けることになりますが、入院期間中の食事については、あくまでも標準負担額が適用されます。

つまり、食事代は治療費とは別計算です。

どちらも健康保険の適用があるのですが、計算方法が違うわけです。

このことから、高額療養費についても、食事の費用は計算対象から外れます。

 

2019.09.16. 解決社労士 柳田 恵一

<手続きが必要となる理由>

国民年金や厚生年金などと同じように、失業保険(雇用保険の失業等給付)も、すでに経過した期間について給付が行われます。

つまり後払いですから、給付を受けていた方が亡くなると、もらえる給付を残したままになってしまいます。

これは、ご遺族の中の権利者が請求しなければもらえません。

 

<雇用保険法の規定>

失業等給付の支給を受けられる方が死亡した場合に、未支給分があるときは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、死亡当時に生計を同じくしていた方が、自分の名義で、その未支給分を請求できます。〔雇用保険法第10条の3〕

 

<法定相続人との違い>

まず、生計を同じくしていることが条件となります。

また、優先順位が、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっていて、優先順位の高い人が100%受け取ります。

法定相続分のように、誰が何分の1を受け取るという考え方ではありません。

そして、同順位の人が複数いる場合、たとえば父母が受け取る場合、どちらかが請求の手続きをすれば、全額について請求したことになります。

 

<請求の手続き>

未支給の失業等給付を請求する人は、本来の受給者が亡くなってから6か月以内に、「未支給失業等給付請求書」に「雇用保険受給資格者証」等を添えて、受給の手続きをしていたハローワーク(公共職業安定所長)に提出します。

 

2019.09.15. 解決社労士 柳田 恵一

<制限の理由>

傷病手当金は、健康保険により支給されます。

健康保険では、故意の犯罪行為など、制度の趣旨に反する恐れがあるときは、社会保険の公共性の見地から、給付の全部または一部について制限が行われます。

また、給付を行うことが事実上困難な場合や、他の制度から同様の給付が行われた場合の調整により、給付が制限される場合もあります。

 

<健康保険に共通の理由>

次のような場合には、健康保険に共通の制限または調整が行われます。

 

・故意の犯罪行為または故意に事故を起こしたとき

・喧嘩や酩酊など著しい不行跡により事故を起こしたとき

・正当な理由がなく医師の指導に従わないか保険者の指示による診断を拒んだとき

・詐欺その他不正な行為で保険給付を受けたとき、または受けようとしたとき

・正当な理由がないのに保険者の文書の提出命令や質問に応じないとき

・感染症予防法等他の法律によって、国または地方公共団体が負担する療養の給付等があったとき

 

<給与が支払われた場合>

傷病手当金は、働けず給与の支給が無い場合に、収入を補うための制度です。

ですから、休業期間中に給与の支払いがあった場合には、原則として、傷病手当金が支給されません。

ただし、休業中に支払われる給与の日額が、傷病手当金の日額よりも少ない場合には、その差額が支給されます。

 

<出産手当金と重なる場合>

女性が産前産後休業で出産手当金を受給している場合に、出産手当金と傷病手当金の給付を同時に受けることはできません。

ただし、傷病手当金の金額が出産手当金の金額を上回っている場合、その差額が支給されます。

出産手当金も傷病手当金も、1日当たりの金額は次のように計算されます。

 

支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3)

 

ただし、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、次のア・イのうち低い額となります。

ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

イ 標準報酬月額の平均額(現在は30万円)

 

計算式は同じなのですが、出産手当金と傷病手当金とで「支給開始日」が異なりますので、具体的な金額に差が生じることもあるのです。

 

<労災保険の給付と重なる場合>

労災保険から休業(補償)給付を受けている場合、これは業務(通勤)上の傷病によって働けない状態であることが前提となっています。

ところが、別の勤務先で健康保険に加入していて、私傷病で働けない状態となった場合には、傷病手当金の手続が行われることもあります。

こうした場合には、休業(補償)給付の日額が傷病手当金の日額を下回っている差額分だけが、傷病手当金として支給されます。

 

<障害厚生年金・障害手当金と重なる場合>

障害厚生年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

また、障害手当金が支給されている場合には、その金額に傷病手当金の合計額が達した日以降、傷病手当金が支給されるようになります。

 

<老齢年金と重なる場合>

健康保険の資格喪失後、傷病手当金の継続給付を受けている間に、老齢年金を受給することがあります。

この場合、老齢年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

 

2019.09.14. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官は、労働基準法違反を是正するだけではありません。

労働安全衛生法を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、作業環境測定を行い、または検査に必要な限度で無償で製品、原材料、器具を持ち去ることができます。〔労働安全衛生法第91条第1項〕

ここで、作業環境測定というのは、温度、湿度、騒音、照度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、塵(ちり)の密度など、職場の客観的な労働環境を測定する検査のことをいいます。

 

<法違反に対する使用停止命令>

都道府県労働局長または労働基準監督署長は、事業者の講ずべき措置など労働安全衛生法の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者または建築物貸与者に対し、作業の全部または一部の停止、建設物等の全部または一部の使用の停止または変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができます。〔労働安全衛生法第98条第1項〕

労働災害発生の差し迫った危険がある場合には、この他、必要な応急措置を講ずることを命ずることができます。〔労働安全衛生法第99条第1項〕

つまり、営業停止や労働者の職場への立ち入り禁止を命令できるのです。

 

<講習の指示>

都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合には、その再発を防止するため必要があると認めるときは、その事業者に対し、期間を定めて、その労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができます。〔労働安全衛生法第99条の2第1項〕

なにより労働災害の発生防止に努めることが大切です。

しかし、安全管理者や衛生管理者など法定の労働災害防止業務従事者をきちんと選任し、労働基準監督署長に選任報告書を提出しておくことも必要です。

つまり、労災防止の実質面と形式面の両方を備えることが求められているのです。

 

2019.09.13. 解決社労士 柳田 恵一

<ポータルサイトの開設>

令和元(2019)年9月6日、厚生労働省が「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」を開設しました。

ポータルサイト( portal site )とは、ウェブ上の様々なサービスや情報を集約して簡単にアクセスできるようにまとめたものです。

このポータルサイトは、貨物を運送するトラック運転者の長時間労働の現状や、その改善に向けた取組、施策などを、広く国民、荷主企業、トラック運送事業者に向けて知らせるために開設されたものです。

 

「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」のURL

 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/

 

 

 以下簡単にご紹介させていただきます。

 

<長時間労働解消に向けて>

トラック運転者は、他業種の労働者と比べて、長時間労働となっているのが実態です。

その背景には、荷主や配送先の都合により、長時間の荷待ち時間(貨物の積み込みや荷下ろしの順番を待つ時間)や、手荷役(手作業での貨物の積み込みや荷下ろし)が発生するなど、貨物運送における取引慣行などからトラック運送事業者の努力だけでは改善が困難な問題が存在しています。

このため、トラック運転者の長時間労働を改善していくためには、荷主企業とトラック運送事業者の双方が歩み寄り、そして協力しあって、取引環境の適正化に取り組むことが必要不可欠です。

 

<ホワイト物流推進運動との連携>

このポータルサイトでは、国土交通省が開設している「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」と連携しつつ、荷主企業とトラック運送事業者の双方に役立つ情報を提供していきます。

 

「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」のURL

https://white-logistics-movement.jp/

 

<主なコンテンツ(内容)>

ポータルサイトは以下の構成となっていて、コンテンツは順次公開されていきます。

 

(1)国民向け

トラック運転者の仕事を知るための情報や、トラック運転者の長時間労働改善のために「国民にできること」や「やって欲しいこと」に関する情報など。

また、トラック運転者の1日の仕事の様子を撮影した動画などを追加予定。

 

(2)企業向け

 荷主企業とトラック運送事業者の双方に向けたコンテンツを提供します。

ア 簡単自己診断

 荷主企業やトラック運送事業者が貨物運送の現状に関するチェックシートに回答することにより、トラック運転者の労働時間削減に向けて自社の取り組むべき課題を抽出できるウェブ診断ツールを提供します。この機能は今年12月頃にポータルサイトで公開する予定です。

 

イ サッと解決よろず相談

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間の改善を進める中で直面する悩み(改善策の進め方や改善策の発想法など)への対応策をQ&A形式で提供します。

 

ウ 情報いろいろ宝箱

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間改善を進める上で有用な好事例を紹介する動画のほか、ハンドブック・ガイドライン・手引きなどを提供します。

 

(3)セミナーの案内

厚生労働省では、今年10月から来年3月にかけて、トラック運転者の労働時間短縮の進め方のノウハウを広く荷主企業やトラック運送事業者に周知するセミナーを、全国47都道府県で全50回開催する予定です。

このポータルサイトではセミナーのご案内をしており、セミナーへのオンラインでの申し込みができます。

なお、セミナーの詳細については、会場が確定した段階で別途報道発表する予定です。

 

2019.09.12. 解決社労士 柳田 恵一

<就労請求権>

就労請求権とは、労働者が使用者に対し、実際に就労させることを請求する権利をいいます。

かつては、就労請求権を肯定する裁判例が見られました。

木南車輌製造事件(大阪地決昭23年12月14日)では、使用者は「労働契約関係が正当な状態においてある限り、労働者が適法に労務の提供したとき、これを受領する権利のみでなく、受領する義務あるものであり、正当な理由なくして恣意に受領を拒絶し、反対給付である賃金支払をなすことによって責を免れるものではない」とされました。

高北農機事件(津地裁上野支部決定昭和47年11月10日)では、「労働契約は継続的契約関係ゆえ当事者は信義則に従い給付実現に協力すべきこと、労働者は労働によって賃金を得るのみならず、それにより自信を高め人格的な成長を達成でき、不就労が長く続けば技能低下、職歴上および昇給・昇格等の待遇上の不利益、職業上の資格喪失のような結果を受けるなど」の理由から就労請求権が肯定されています。

しかし、この判例の理論は、就労請求権が一般に認められる根拠にはならず、特殊な技能を持つなど一定の条件を満たした場合のみに妥当します。

その後、労働は労働契約上の義務であって権利ではないので、就労請求権は認められないと判断される傾向が強まってきています(日本自動車振興会事件 東京地判平9年2月4日など)。

 

<就業規則に特別な定めがある場合>

就業規則に、労働者の就労請求権を認める具体的な規定があれば、労働者が給与を100%支給されつつ休業を命じられた場合であっても、使用者に対して実際に就労させることを請求できるのが原則となります。

また、大学の教員が学問研究を行うことは当然に予定されていることであり、就業規則全体の趣旨から、大学での学問研究を労働契約上の権利とする黙示の合意があるとされる場合には、就労請求権が認められる場合もあります(栴檀(せんだん)学園事件 仙台地判平9年7月15日)。

ただし研究について、大学施設を利用することが必要不可欠であるとまでは言えないケースでは、就労請求権が認められていません(四天王寺仏教大学解雇事件 大阪地裁決定昭和63年9月5日)。

 

<育児休業中の就労について>

雇用保険加入者(被保険者)に対して、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」があります。

この給付金は、就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)に10日以下であること、10日を超える場合には就業している時間が80時間以下であることが支給の条件となっています。

これは、使用者側の都合、業務上の必要から、育児休業中の労働者がわずかな日数、少ない時間就労したことによって、職場復帰したものとされ、受給資格を失ってしまうことを防止するための基準です。

その就労が、臨時・一時的であって、就労後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とはせず、支給要件を満たせば支給対象となります。

しかし、育児休業中の労働者に、1か月の支給単位期間に10日まで、あるいは80時間までの就労請求権が与えられているわけではありません。

あくまでも、業務上の必要に応じて、使用者側から育児休業中の労働者に臨時・一時的な出勤を要請することがあり、労働者がこれに応じて就労した場合にも、育児休業給付金を受ける資格を失わないという、雇用保険法上の配慮に基づくものです。

したがって、育児休業給付金を受給中の労働者から、使用者に対して就労させるよう請求した場合でも、使用者側は必要なければこれを断ることができるわけです。

 

2019.09.11. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金の支払義務>

労働基準法第24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」としています。

大雨や水害等で、①事業場の倒壊、②資金繰りの悪化、③金融機関の機能停止等が生じた場合でも、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の免除に関する規定はありません。

つまり、会社は事業活動ができなくなった場合でも、既に働いた分の賃金は、当然に支払われなければなりません。

なお、事業再開の見込みがなく、賃金の支払の見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払する「未払賃金立替払制度」を利用することができます。窓口は、労働基準監督署となっています。

 

<賃金の前払い>

労働基準法第25条は、「労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならない」と定めています。

ここでいう「災害」には、大雨や水害等が含まれます。また、「疾病」には大雨や水害等によるケガも含まれます。

ですから、賃金支払日前であっても、労働者から使用者に請求があれば、使用者は賃金を計算して支払わなければなりません。

 

この他、失業給付が受けられる場合がありますので、失業給付の具体的な手続方法等については、お近くのハローワークにご相談ください。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<休業手当の支払が不要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けて労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。

ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

ここで「不可抗力」とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、この2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。

ただ例外的に、ことさら不十分な施設・設備であった場合など、「使用者の責に帰すべき事由による休業」と判断すべき場合もあり得ます。

 

<休業手当の支払が必要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないものの、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられています。

しかし、「施設・設備の直接的な被害」だけを基準に判断すべきことではありません。

具体的な事情として、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を考慮して、総合的に判断する必要があります。

 

<就業規則等に定めがある場合>

労働契約、労働協約、就業規則の定めにより、あるいは労使慣行によって、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業があります。

こうした企業が、「今回のケースでは支払わない」とすることは、労働条件の不利益変更に該当します。つまり、従来通りの賃金、手当等を支払わなければなりません。

将来的に支払わないことにするためには、労働者との合意など、労働契約、労働協約、就業規則等のそれぞれについて、適法な変更手続をとる必要があります。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<派遣会社の義務>

派遣会社は、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)に基づき、ある派遣先との間で労働者派遣契約が打ち切られたとしても、派遣先と協力しながら、派遣労働者の新たな就業先の確保を図り、それができない場合は解雇せず休業等を行って、雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当を支払うことになっています

 

<休業手当の支払>

使用者が新たな就業機会(仕事)を確保できず、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させる場合には、使用者(派遣会社)には休業手当を支払う義務があります。〔労働基準法第26条〕

ここで「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかどうかの判断は、派遣会社について行われます。

派遣先の事業場が、天災事変等の不可抗力によって操業できないため、派遣されている労働者をその派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないとは必ずしもいえず、派遣会社について、その労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかが判断されます。

 

<雇用調整助成金>

大雨の影響に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた派遣会社が、派遣労働者の雇用維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金を活用できることがあります。

 

<雇用保険の特例措置>

令和元(2019)年8月の大雨などにより、被災地内にある派遣先が直接的な被害を受けたことに伴い、派遣先が事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた人(雇用予約がある場合を含む)については、失業給付を受給できる特別措置の対象となります。

大雨の影響で、ハローワークに行けない、求職活動ができない、退職した会社と連絡が取れないなどの事情がある場合には、とりあえずハローワークに電話で相談することをお勧めします。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<行政指導>

行政指導の定義は、行政手続法第2条第6号に次のように規定されています。

 

【行政指導】

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 

役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように、または行わないように、具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導です。

特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすのは「処分」であって、行政指導ではありません。

役所の行為が、処分か行政指導かは、法令の規定を読んでも判別が困難なものもあります。

ただ、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか)を明確に示さなければならないことになっています。〔行政手続法第35条第1項〕

判断に迷うことがあれば、その行為を行っている各役所に確認するのが確実です。

 

<行政指導の効力>

行政指導には法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を求めるものです。

したがって、よく言われるように、行政指導を受けた者にについて、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。

また、行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。〔行政手続法第32条第2項〕

 

<行政指導の拒否>

たとえば、申請者の申請に対して、役所が自主的に申請を取り下げるよう、また、申請の内容を変更するようしつこく行政指導することもあります。

こうした場合、申請者がその行政指導に従わないことを明らかにしたときは、役所は、これに反して、行政指導を続け、その行政指導に従うまでは申請の審査を保留するなど、行政指導に従わざるを得ないようにさせることによって、申請者の権利の行使を妨げてはならないことになっています。〔行政手続法第33条〕

結局、行政指導を拒否して申請書を提出すれば、役所には審査を開始する義務が生じることになりますので、行政指導に従う意思がない場合には、それを役所に対して明確に示せば行政指導を免れることができます。

 

<労働基準監督署による行政指導>

労働基準監督署は、労働基準法などの法律に基づいて、定期的にあるいは従業員からの申告などにより、事業場(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。

その結果、法違反が認められた場合には、事業主などに対しその是正を指導します。

通常は、「是正勧告書」という文書による指導です。

これも行政指導ですから、事業主などの自主的な協力を求めていることになります。

もし、「是正勧告書」の内容が誤りであると判断したなら、事業主などは従わないこともできます。

しかし、事業場から是正・改善報告が提出されない場合には、労働基準監督署はこれを放置せず、再度の調査・確認と指導を行います。

こうして、重大・悪質な事案については、書類送検され罰則が適用される場合もあります。

同じ行政指導であっても、違法性を指摘する内容が含まれるものについては、専門家に相談したうえで慎重に対応することを強くお勧めします。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<時効消滅の制度>

賃金の請求権は2年間、退職金の請求権は5年間で時効消滅します。〔労働基準法第115条〕

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないのに、何ら指摘せず放置したまま2年間が経過して会社から時効だと言われれば、その給与は請求できなくなります。

これは、「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の制度の趣旨に沿ったものです。

この場合、支払義務のある側からすれば、一方的に得をすることになり道義的な違和感を生ずることもあります。

ですから、時効の利益を受ける者が、時効であることを主張することによってその効果が発生します。

この主張を時効の援用(えんよう)といいます。〔民法第145条〕

 

<時効の中断>

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないので社長に確認したとします。

そして、社長から「ごめん、少し待って」といわれて、しばらく待ってから催促することを繰り返していたら、いつの間にか2年たったので請求できなくなったというのは道義に反します。

そこで、社員の側から請求の意思が明確にされた場合や、会社の側から支払の意思が明確にされた場合には、時効期間の進行がリセットされます。

これを時効の中断といいます。

時効の中断には、請求(裁判上の請求、裁判外の請求)、差押え・仮差押え・仮処分、債務者の承認の3つがあります。〔民法第147条〕

もし給与の未払いがずっと続いて裁判になったとしたら「ときどき催促していました」といっても証拠がなければ負けてしまいます。

ですから、内容証明郵便などによる催促が必要になります。

しかも、催促というのは時効中断の効力が制限されていて、6か月以内に裁判で請求するなど一段突っ込んだアクションをしないと、効力を生じないことになっています。〔民法第153条〕

お勧めなのは「少しでもいいから支払ってください」と催促して、振り込んでもらうことです。

これも「債務者の承認」となって時効中断の効力があります。

 

2019.09.09. 解決社労士 柳田 恵一

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法第34条第1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。

また、8時間勤務で全く残業が無いのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間を削ってまで働きたいという人もいます。

しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で法定以下に短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。

実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。

ただ、そうした条件で採用を希望する人は稀でしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。

喫煙者が喫煙室で休憩を取る場合などは、この方が助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与え方はできません。

そこは常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の本来の趣旨に沿って考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法第34条第2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。

書類の作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはつまらないことです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法第34条第3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。待機時間は労働時間です。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できる限りは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2019.09.08. 解決社労士 柳田 恵一

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(相当因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<労災とはならないケガ>

・労働者が勤務時間帯に、仕事とは関係のないことを行ったり、仕事の範囲を超える勝手なことをしていて、それが原因でケガをした場合。

・労働者がわざとケガをした場合。

・労働者がプライベートな恨みなどを理由に第三者から暴行を受けてケガをした場合。

・大地震や台風など自然災害によってケガをした場合。ただし、落雷しやすい現場で作業していて落雷でやけどを負うなど、立地条件や作業環境などによっては労災と認められる場合があります。

・休憩時間や勤務の前後など、実際に業務に従事していない時間帯にケガをして、しかも事業場の施設・設備や管理状況に原因がない場合。ただし、トイレに行くなどの生理的行為については、事業主の支配下で業務に付随する行為として取り扱われますので、このときに生じたケガは労災となります。

 

2019.09.07. 解決社労士 柳田 恵一

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者自身の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<業務上の疾病>

業務との間に一般的な原因と結果の関係にある疾病(病気)は、労災保険給付の対象となります。

業務上疾病は、必ずしも労働者が事業主の支配下で発症することを条件とせず、事業主の支配下で有害な原因にさらされたことによって発症すれば認められます。

たとえば、ある労働者が勤務中に心臓病を発症しても、その労働者の業務の中に原因が見当たらなければ、業務と疾病との間に一般的な原因と結果の関係は成立しません。

反対に、勤務時間外に発症した場合でも、その労働者の業務の中に有害な原因があって発症したものであれば、業務上の疾病とされます。

 

<業務上の疾病とされる3つの条件>

・その労働者の業務の中に有害な原因があったこと。例として、化学物質、身体に過度の負担がかかる作業、病原体など。

・健康障害を起こすだけの原因にさらされたこと。つまり、有害な原因の強さ、量、回数、期間が健康障害を起こしうるものだったこと。

・発症の原因から健康障害の結果が発生するまでの経過が、医学的に見て不自然ではないこと。中には、労働者が有害な原因に接してから、相当な長期間を経過した後に健康障害が発生するパターンも認められます。

 

2019.09.06. 解決社労士 柳田 恵一

<基本はプライベート>

多額の借金を抱えた社員が会社で働いていると、それだけで上司や同僚、人事部門の社員たちは大きな不安を感じます。

それでも、借金というのは、会社からの借り入れでない限り、基本的にはプライベートなことです。

たしかに、プライベートなことであっても、会社の利益を害し信用を傷つける行為であれば、懲戒処分の対象となることはあります。

しかし、借金が多いことが発覚したからといって、それだけで解雇を検討するというようなことはできないのです。

以下、順を追って検討してみます。

 

<人事異動の検討>

多額の借金を抱えた社員が、お金を直接扱える業務に携わるのは好ましくありません。

人員配置の大原則である適材適所の観点から、経理、会計、財務、店舗のレジなどへの異動は避けなければなりません。

また、借金が発覚したときに、こうした業務に携わっていたならば、早期に別の業務に異動させることが望ましいといえます。

しかし、借金があることを理由に、降格、降職などを行うことは、人事権の濫用となり、その効果が否定される場合もあるでしょう。

 

<督促で会社に迷惑がかかっている場合>

借金の相手がサラ金業者などの場合には、会社にまで電話やファックスでの督促や嫌がらせがあったりもします。

時には、サラ金業者の従業員が直接、職場に押しかけてくるようなこともあります。

しかし、これは社員が借金したことの結果ではあっても、社員が違法・不当なことを行っているわけではありません。

むしろ、サラ金業者が貸金業法に違反する方法で督促を行い、嫌がらせまで行っているわけです。

こうしたことで戸惑って、懲戒処分や解雇を検討するのは的外れです。

明らかに、懲戒権や解雇権の濫用となってしまいます。〔労働契約法第15条、第16条〕

 

<給与の差押が発生した場合>

債権者が裁判所で手続きをして、裁判所から会社に給与債権差押の命令が届くこともあります。

会社は、この命令に素直に従わなければなりません。給与の一部を、指定された方法で支払うことになります。

このことによって、会社側に余計な事務手続きの手間は発生しますが、やはり、懲戒処分や解雇を検討するほどの大きな負担ではありません。

 

<破産した場合>

社員が破産しても、会社の業務に支障は出ません。

ちなみに、個人破産の場合、破産手続きをするのに十分な資力が無いなどの事情により、破産手続きの開始と共に終了する「同時廃止」となることが多いのです。〔破産法第216条第1項〕

この場合も、懲戒処分や解雇を検討すべきではありません。

 

<懲戒や解雇を考えるべき場合>

多額の借金を抱えた社員が、同僚や上司から借金をして具体的なトラブルに発展したような場合、あるいは会社の金品を横領したような場合には、当然に懲戒処分や解雇を検討しなければなりません。

しかし、これは借金を抱えた社員に限定されることではなく、すべての社員に共通することです。

 

<上司による指導>

多額の借金を抱えた社員が、その精神的な負担から、体調を崩して遅刻しがちになったり、業務に集中できなくなったりする恐れは大きいといえます。

上司としては、それをただ人事考課で評価すれば済むというのではなく、面談の機会を持ち、現在の生活ぶりや不安、借金を抱えるに至った事情など、本人から自発的に話してもらえるよう働きかけ、注意すべきところは注意する一方で、支えになってやる必要があるでしょう。

 

2019.09.05. 解決社労士 柳田 恵一

<年金生活者支援給付金>

年金生活者支援給付金は、公的年金等を含む収入の額が一定以下の人に対して支給されます。

給付金制度は10月1日の開始ですが、初回給付は12月中旬に振り込まれます。

10・11月分の年金支給と同時に行われるわけです。

給付金の支給を受けるには、年金の請求書とは別に、給付金の請求書を提出する必要があります。

対象者には、今月上旬から順次この請求書が届く予定です。

請求書を12月末日までに提出しなかった場合には、請求月の翌月分からの支給となります。

それより前の給付金については、権利が消えてしまいます。

年金とは異なり、遡って過去の分を受給することはできませんから注意が必要です。

 

<今年の4月1日までに老齢基礎年金を受給している人の手続>

① 給付金の請求書が送られてくる

② はがき形式の「年金生活者支援給付金請求書」を切り取り、提出年月日、氏名、電話番号を記入し、記入部分に目隠しシールを貼る

③ 切手を貼る

④ 郵便ポストに投函する

 

<今年の4月2日以降に老齢基礎年金を請求した人の手続>

① 誕生日の約3か月前に年金の請求書と給付金の請求書が併せて送られてくる

② 請求書に、マイナンバー、氏名、生年月日、住所等を記入する

③ 65歳になる誕生日の前日以降に、年金と給付金の請求書を一緒に年金事務所に提出する

④ 審査の後、給付金の通知書が送られてくる

 

2019.09.04. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法施行規則第32条>

休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法第34条第1項〕

その日の労働時間が6時間以下であれば、その日については休憩時間を与えないことができます。

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。

ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえません。

 

<法定の基準を上回る定め>

以上はすべて法定の基準ですから、就業規則や労働契約に法定の基準より多くの休憩を与える規定があれば、労働者に有利である限りその規定が優先されます。

たとえば、6時間勤務の労働者に昼休みを1時間与えるなどは、法定の基準を上回るものとなります。

ただし、「労働者に有利である限り」という部分は、慎重な判断が必要です。

たとえば、昼休みが4時間ある場合には、就業の場所のすぐ近くに自宅があって、帰宅してくつろげる労働者なら問題ありませんが、いたずらに拘束時間が増えるだけの労働者にとっては不利になることもあります。

こうしたときには、不利になる労働者についてのみ、規定の効力が認められないケースもありますので注意しましょう。

 

2019.09.03 解決社労士 柳田 恵一

<是正指導の結果>

令和元(2019)年8月8日、厚生労働省が、平成30(2018)年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果を取りまとめ公表しました。

全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成30(2018)年4月から平成31(2019)年3月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案のみを取りまとめたものです。

 

【平成30年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント】

(1) 是正企業数 1,768企業(前年度比 102企業の減)

  うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比 34企業の減)

(2) 対象労働者数 11万8,837人(同 89,398人の減)

(3) 支払われた割増賃金合計額 125億6,381万円(同 320億7,814万円の減)

(4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円

 

<サービス残業解消のための取組事例>

監督指導の対象となった企業では、タイムカードの打刻時刻やパソコンのログ記録と実働時間との隔たりがないか定期的に確認するなど、賃金不払残業の解消のために様々な取組が行われています。

具体的な内容についても、上記の是正結果と共に公表されています。

 

〇事例1:小売業

 

【賃金不払残業の状況】

◆残業をしている労働者がいるにもかかわらず、管理者が労働者全員のタイムカードを終業時刻に合わせて打刻しているとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、タイムカードにより労働時間を管理していたが、その記録と入退館記録との間にかい離が認められたことから、タイムカード打刻後も作業が行われており、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

【企業が実施した解消策】

◆会社は、入退館記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。

◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。

①タイムカードの代わりに、他人が記録できない生体認証による労働時間管理システムを導入した。

②同システムの記録と入退館記録との間にかい離があった場合は、部署の管理者に対し、書面により指導を行うこととした。

③労働時間の適切な管理方法について記載した社内向けのガイドラインを作成し、管理者を含む全労働者に配布し、周知した。

 

〇事例2:金融業

 

【賃金不払残業の状況】

◆割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められたことから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

【企業が実施した解消策】

◆会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。

◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。

①支店長会議において、経営陣から各支店長に対し、労働時間管理に関する不適切な現状及びコンプライアンスの重要性を説明し、労働時間管理の重要性について認識を共有した。

②労働時間の適正管理を徹底するため、自己申告による労働時間管理を見直し、ICカードの客観的な記録による管理とした。

③ICカードにより終業時刻の記録を行った後に業務に従事していないかを確認するため、本店による抜き打ち監査を定期的に実施することとした。

 

〇事例3:小売業

 

【賃金不払残業の状況】

◆過重労働解消相談ダイヤルに寄せられた違法な長時間労働が行われているとの労働者の家族からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(労働者が残業申請書を提出し、上司が承認)により労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録と警備システム記録とのかい離から、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

【企業が実施した解消策】

◆会社は、警備システム記録や労働者からのヒアリングなどを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。

◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。

①経営トップが賃金不払残業解消に取り組む方針を打ち出すとともに、全店舗の店長が出席する店長会議において、同方針の説明を行った。

②店長が定期的に、労働時間の記録と警備システム記録を照合してかい離がないかを確認し、かい離があった場合は、その理由を確認するとともに、本社の総務担当者がダブルチェックを行うこととした。

③全労働者に対し、残業申請書に正しい残業時間を記載した上で提出を行うことなどについて研修を行った

 

〇事例4:電気機械器具製造業

 

【賃金不払残業の状況】

◆残業時間の過少申告が常態化しているなど、労働時間管理について不適切な取扱いがあるとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。

◆会社は、自己申告(パソコン上で労働者が時間外労働申請を行い、上司が承認)により労働時間管理を行っていたが、自己申告の記録とパソコンのログ記録とのかい離などから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

 

【企業が実施した解消策】

◆会社は、パソコンのログ記録や労働者からのヒアリングなどを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。

◆賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。

①労働時間の自己申告方法を含む適切な労務管理について記載されたガイドブックを作成し、管理者を含め、全労働者に周知した。

②労働時間管理上の問題点などについて、労使で定期的に話合いの場をもち、必要な改善を行うこととした。

③自己申告の記録とパソコンのログ記録との間にかい離があった場合は、上司がその理由を確認する仕組みを導入した。

 

2019.09.02. 解決社労士 柳田 恵一

下の表に示した端数処理は、賃金計算の便宜上の取り扱いとして、労働基準法違反にならないとされています。〔昭和63年3月14日基発150号通達〕

これに反する社内ルールを定めて運用することはできません。

1か月の賃金支払い額 1か月の賃金支払い額に100円未満の端数が生じた場合 50円未満を切り捨てそれ以上を100円に切り上げる
1か月の賃金支払い額に1,000円未満の端数が生じた場合 翌月の賃金支払い日に繰り越す
1か月の労働時間数 時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間の合計に1時間未満の端数がある場合 30分未満の端数を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げる
1時間あたりの賃金額 1時間あたりの賃金額に1円未満の端数が生じた場合 50銭未満の端数を切り捨てそれ以上を1円に切り上げる
1時間あたりの割増賃金額 1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合
1か月の割増賃金総額 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額

 

<ケガをさせられた場合の追加の手続き>

通勤途上でひき逃げされたり、居酒屋でアルバイトをしていてお客様に殴られたり、休日に道を歩いていて自転車にぶつかられたりしてケガをすると、通常とは違う手続きが必要となります。

具体的には、労災では「第三者行為災害届」、私傷では「第三者行為による傷病届」という書類が必要になるのです。

 

<第三者行為>

保険には保険料の負担があって、負担した人やその関係者に給付があるわけです。

労災保険では会社が保険料を負担して、従業員が治療を受けると労災保険から給付が行われて、従業員は治療費を負担しなくても済みます。

健康保険では会社と従業員が保険料を折半して、従業員や扶養家族が治療を受けると健康保険から給付が行われて、治療費の3割を負担するだけで済みます。

ところが無関係な第三者からケガをさせられて、治療費に保険が使われると、ケガをさせた第三者は、治療費の負担が減ったり負担が無くなったりして得してしまうのです。

こうした不都合が起こらないように、保険者である政府や協会けんぽなどが、加害者に費用の負担を求めています。

 

<万一ケガをさせられたら>

可能な限りケガをさせた人に逃げられないようにしましょう。

周囲の人に助けを求めることもできます。

その場で示談してはいけません。

「大丈夫ですから、どうぞご心配なく」などと言ってしまうと、会社も手続きができなくて困ることになります。

大丈夫かどうかは、診察した医師の決めることです。

その場で治療など必要ないと感じても、冷静な判断が困難な状況であることを考えましょう。

相手の氏名と連絡先は確実に把握しなければなりません。

結果的に医師の診察を受ける必要すら無かったなら、その相手にその旨を連絡する必要があります。

また、なるべく正確な日時や場所、状況など記憶が新鮮なうちに記録を残しておきましょう。

そして、会社の労災保険や健康保険の手続き担当者に連絡して指示を仰ぎましょう。

 

<書類の内容>

交通事故の場合と、それ以外の場合とで内容が異なります。

しかし、共通する内容で主なものは、事故の発生状況を説明した書類、負傷原因の報告書、加害者と示談しませんという念書(万が一示談していたら示談書)、加害者からの損害賠償金の納付を確約する書類などです。

 

<書類作成ご担当のかたへ>

実際に書類を作成する会社の担当者は、被害者からの情報が頼りとなります。

すべての情報がそろっていても、慣れていないと書類の作成に数時間かかってしまいます。

必要な書式は、労働基準監督署や協会けんぽなどで入手できます。

このとき、ついでに必要な添付書類の確認をするとよいでしょう。

交通事故の場合には、警察に「交通事故証明書」の発行を依頼するのですが、手続きが遅れると人身事故でも物損扱いとなるなど不都合が起こります。

大変ですが落ち着いて急ぎましょう。

 

2019.08.31. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年8月9日、厚生労働省が「平成30年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」を取りまとめ公表しました。

 

<結果の概要>

平成30(2018)年度の申出等の件数は6,811件で、対前年度比20.0%減となり、平成27(2015)年度から4年連続で減少しました。

申出等を内容別に分類すると、「賃金に関すること」(30%)が最も多く、「就業時間に関すること」(23%)、「職種・仕事の内容に関すること」(17%)が続いています。

 

【申出等の件数の推移】

        

30年度

29年度

28年度

27年度

26年度

申出等の件数

6,811件

8,507件

9,299件

10,937件

12,252件

参考:
新規求人件数

6,600,951件

6,468,438件

6,161,398件

5,835,295件

5,553,055件

 

<是正指導>
ハローワークでは、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する相談を受けた場合には、求人を受理したハローワークと連携して、すぐに事実確認を行い、事実確認の結果、求人票の記載内容が実際の労働条件と異なっていた場合には、是正指導を行っています。

平成30(2018)年度の求人票の記載内容と実際の労働条件が異なっていたのは、2,967件でした。
 

<ハローワークの方針>
ハローワークでは、引き続きこうした事実確認と是正指導などの対応を徹底することで、求人票の記載内容が適切なものとなるように努め、求職者の期待と信頼に応えられる職業紹介などを行っていく方針です。

今後も、求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する申出等については、最寄りのハローワーク、または「ハローワーク求人ホットライン」に連絡するよう協力を求めています。
 

【ハローワーク求人ホットライン(求職者・就業者専用)】
・電話番号 03 ( 6858 ) 8609(ハ ローワーク)
・受付時間 8時30分~17時15分(年末年始を除く)

 

2019.08.30. 解決社労士 柳田 恵一

<不当解雇>

解雇権の濫用となる場合には、会社側から労働者に解雇を通告しても、解雇が無効となり、その結果、労働契約は解消されず、賃金や賞与の支払い義務は継続しますし、労働者に精神的な損害を与えていれば、慰謝料請求の問題ともなります。

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<不当辞職>

労働者から会社に辞職(退職)を申し出たとしても、すぐに退職の効果が発生するとは限りません。

すぐに退職の効果が発生する場合として、労働基準法には、明示された労働条件が事実と相違する場合の規定があります。〔第15条第2項〕

 

【労働条件の明示】

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

○2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

しかし、これは例外的な場合であって、一般には、労働者から辞職の意思を表明しても、すぐには退職の効果が発生せず、実際に退職の効果が発生するまでは、労働者は働く義務を免れません。

それにもかかわらず、職場を放棄してしまっては、債務不履行となりますし、場合によっては不法行為となることもありえます。

こうした状態を、ここでは「不当辞職」と呼びたいと思います。

 

<急な退職でも通常は損害賠償の対象ではない>

労働者が急に退職したからといって、これを理由に、会社から労働者に対して損害賠償を請求できるわけではありません。

退職そのものは、違法でも不法でもないからです。

一般に、退職者が発生した場合でも、会社が代替要員を手配して支障が出ないようにします。損害が発生することは稀なのです。

また、採用後すぐに退職した場合であっても、採用にかかった費用を、会社の損害と見ることはできません。採用後すぐの退職でも、勤続20年の社員が退職する場合でも、その人を採用するのにかかる費用に大きな違いはありません。そして、どれだけの費用をかけるかは会社の判断に任されていますから、労働者の意思が反映されてはいません。

勤続20年の社員が退職するにあたって、会社から採用時の費用を請求することが無いのと同様に、採用後すぐ退職した社員に対しても費用を請求することはできません。

法的には、退職と採用の費用との間に、相当な因果関係が無いと表現されます。

これらの事情は、退職者の後任を採用する場合の費用についても同じです。

 

<不当辞職となりうるケース>

不当辞職が発生しうるのは、労働者が辞めたつもりで、労働契約が解消していない場合です。

まず、無期雇用の労働者が会社に辞職を申し出た場合、その後、2週間は労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

また、月給制の場合には、賃金の締日の2週間以上前に辞職を申し出て、賃金の締日まで労働契約が継続することになります。もし、賃金の締日まで2週間を切っているときに辞職を申し出たなら、さらに次の賃金の締日まで労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 

さらに、有期労働契約の場合には、やむを得ない事由が無いのに辞職を申し出ても、本来の契約期間の間は労働契約が継続します。〔民法第628条〕

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

こうして、労働者が会社に対して辞職の意思を表明した後、労働契約が継続している間に出勤しなければ、労働者の債務不履行が発生しますから、「不当辞職」となるわけです。

 

<債務不履行による損害の発生>

特殊技能をもった労働者を採用し、手作り商品の注文を受けていたのに、不当辞職により必要な数量の商品が製造できなくなった場合には、少なくとも欠勤した間に製造出来たはずの商品が製造できなかったことによる損害は、明らかに発生しています。

この場合に、同様の特殊技能をもった労働者を容易に補充することは困難でしょうから、簡単に会社が代替要員を手配することはできないのです。

 

<不法行為による損害の発生>

結婚式場にウエディングケーキを運搬中の労働者が、突然行方をくらまし、会社に辞職の意思を伝えたような場合には、単なる債務不履行を超えて、不法行為が発生しています。

労働者の故意または過失によって、結婚式の新郎新婦他、多くの人々に損害を与えていますし、会社の信用を喪失させています。

こうした場合には、懲戒解雇の対象ともなりうるわけですが、不法行為を理由として会社から労働者に損害賠償を求めることになるでしょう。

 

<損害額が算定しがたい場合>

不当辞職によって損害が発生した場合に、不当辞職と損害発生との因果関係が明らかであっても、会社が損害額を立証することが困難なケースは多いものです。

しかし民事訴訟法には、損害額の認定について次の規定がありますので、訴訟という手段を利用してでも賠償請求を行うべきだと考えます。

 

【損害額の認定】

第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 

2019.08.29. 解決社労士 柳田 恵一

 

雇用保険と労災保険の保険料は、あわせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

ただし、建設の事業で賃金総額を正確に算定することが困難な場合には、請負金額に労務比率を掛けて保険料を算定します。

 

<年度更新>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕

したがって事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。これが「年度更新」の手続きです。

また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付することとなっています。

 

<労働保険対象者の範囲>

労働保険の対象者ということは、労災保険の適用対象者と雇用保険の適用対象者ということになります。その範囲は重なりますが、同じではありません。

労災保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・正社員、嘱託、契約社員、パート、アルバイト、日雇い、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、賃金を受けるすべての人が対象となります。

・代表権・業務執行権のある役員は対象外です。賃金ではなく報酬を受けています。

・事業主と同居している親族でも就労の実態が他の労働者と同じなら対象となります。就業規則が普通に適用されているなら対象となります。

雇用保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば原則として対象者です。雇い入れ通知書、労働条件通知書、雇用契約書などが基準となります。これらの書類が1つも無いのは、それ自体違法ですから注意しましょう。

・昼間に通学する学生は対象外です。

・65歳以上で新たに雇われた人は、法改正により対象者になりました。

複数の会社などで同時には雇用保険に入れません。主な賃金を受けているところで対象者となります。

両方の保険に共通の注意点としては、次のものがあります。

・代表権も業務執行権も無く、役員報酬と賃金の両方を受け取っている役員は、賃金についてのみ計算対象となります。

・派遣社員は派遣元で保険に入ります。派遣先での手続きはありません。

・出向社員は賃金を支払っている会社などで雇用保険に入り、実際に勤務している会社などで労災保険に入って、そこでの料率が適用されます。出向先の会社は、年度更新のために出向元から賃金などのデータをもらう必要があります。

 

2019.08.28. 解決社労士 柳田 恵一

<年金関係法令の規定>

この法律において、「配偶者」、「夫」および「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。〔国民年金法第5条第7項、厚生年金保険法第3条第2項〕

つまり事実上夫婦であれば、国民年金・厚生年金のどちらでも、夫婦と同様に扱われるということです。

 

<事実婚(内縁)>

事実上の夫婦と認められるためには、婚姻届を出していないだけで実態は夫婦であるという事情が必要です。

まず形式的に、婚姻届を出そうと思えば出せること、つまり原則として、事実上の夫婦のどちらにも戸籍上の配偶者がいないことが必要です。

法律上の正式な配偶者がいれば、重ねて結婚することはできないからです。

また実質的に、お互いに結婚する意思をもって、夫婦としての共同生活を営み、生計を同じくしているという事実が必要です。

 

<実際の手続き>

法律上の夫婦とは異なり、住民票の写しなどで夫婦であることは確認できません。

それぞれに法律上の配偶者がいないことを示す書類と、同居の事実を示す書類を添付して、年金関係の手続きを行うことになります。

また、事実婚状態にありながら別居しているような場合には、たとえば遺族年金や加給年金では「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」という書式があって、これに記入のうえ第三者による証明を書いてもらう必要があります。

さらに事実婚状態にあって、勤め人である内縁の夫が、内縁の妻を扶養している場合には、会社を通じて国民年金の第3号被保険者とすることができ、保険料の免除を受けることもできるのですが、事実婚をどうしても会社に知られたくないために手続きできずにいるということもあります。

 

2019.08.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年8月21日、出入国在留管理庁が「平成30年の「在留資格取消件数」について」をとりまとめ公表しました。

平成30(2018)年の取消件数は832件で、29年の385件、28年の294件を大幅に上回る件数です。

これは、偽装滞在者の罰則の整備、在留資格取消制度の強化を行った平成28(2016)年改正入管法による、不法滞在者対策が影響しているものと分析されています。

 

【在留資格別取消数】

留学 412件(49.5%)

技能実習 153件(18.4%)

日本人の配偶者等 80件(9.6%)

 

【国籍・地域別】

ベトナム 416件(50.0%)

中国 152件(18.3%)

ネパール 62件(7.5%)

 

【在留資格での活動を行わないことによる取消例】

留学生が学校を除籍された後3か月以上在留

技能実習生が実習先から失踪し、親戚宅に身を寄せ3か月以上在留

在留資格「家族滞在」で在留している者が、離婚後3か月以上在留

 

【在留資格とは異なる活動をしていることによる取消例】

留学生が学校を除籍された後、アルバイトとして生活

技能実習生が実習先から失踪後し他の会社で勤務

在留資格「技術・人文知識・国際業務」で在留している者が別の業務で勤務

 

【不正の手段により許可等を受けていたことによる取消例】

勤務先と職務内容を偽って許可を受けた

実態の無い会社、虚偽の所在地で許可を受けた

日本人との結婚を偽装して在留期間更新許可を受けた

 

2019.08.26. 解決社労士 柳田 恵一

<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

 

【法人の能力】

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

会社も法人です。

会社の中で働く人たちが相互に協力し合い、まるで1人の人間のように統一的に活動することによって、会社は目的を果たすことが可能となります。

このためには、社員間・部署間で報告・連絡・相談が適切に行われている必要があります。

 

<報連相が足りない社員>

報連相を密にして組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

ところが、報連相が滞ったり不足したりする社員がいます。

報告書の提出締切を守らなかったり、いい加減な報告書を提出して済ませたりしています。

 

<報連相不足に対する懲戒処分>

報連相に問題のある社員の多くは、業務の中で報連相の優先順位が低いのだと思われます。

上司が、本人に対して報連相を重視し優先順位を上げるように指導する必要があります。

最初は口頭による注意・指導を行い、それでも改善されない場合には、書面による注意を行います。

この書面には、就業規則の条文を示し、報連相を怠ることが就業規則違反であり、場合によっては懲戒処分の対象となりうることも記載しておくべきです。

 

<懲戒処分の対象とすべきではない報連相不足>

能力不足で報連相が上手くできない社員もいます。

他の業務はともかく、報告書の作成などが極端に苦手というタイプです。

この場合には、本人を戒めても効果が期待できません。

むしろ、技術的な側面もありますので、教育が大きな効果をもたらします。

しかし、安易に上司に指導を任せてしまうと、上司が「こんな報告書じゃダメだ」という拒絶の態度を示し、ともするとパワハラに及んでしまう恐れがあります。

人事部門が主体となって集合研修を行うのが効果的だと思います。

 

2019.08.25. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年8月21日、厚生労働省が「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」をとりまとめ公表しました。

その概要を以下にご紹介します。

 

<メンタルヘルス対策に関する事項>

過去1年間(平成29年11月1日から平成30年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%となっている。(受け入れている派遣労働者は含まれない。)

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は59.2%[平成29年調査58.4%]となっている。メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「労働者のストレスの状況などについて調査票を用いて調査(ストレスチェック)」が62.9%[同64.3%]と最も多く、次いで「メンタルヘルス対策に関する労働者への教育研修・情報提供」が56.3%[同40.6%]となっている。

労働者にストレスチェックを実施した事業所のうち、ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を実施した事業所の割合は73.3%[同58.3%]であり、このうち分析結果を活用した事業所の割合は80.3%[同72.6%]となっている。分析結果を活用した事業所のうち、結果の活用内容(複数回答)をみると、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」が46.5%と最も多くなっている。

 

<長時間労働者に対する取組に関する事項>

平成30年7月1日が含まれる1か月間に45時間を超える時間外・休日労働をした労働者(受け入れている派遣労働者を除く。以下「長時間労働者」という。)がいる事業所の割合は、「45時間超80時間以下」が25.0%[平成29年調査26.7%]、「80時間超100時間以下」が5.6%[同5.9%]、「100時間超」が3.5%[同2.1%]となっている。また、長時間労働者に対する医師による面接指導の実施方法をみると、いずれの時間外・休日労働時間数階級においても「実施方法が決まっていない」が回答のあった事業所の中で最も多くなっている。

さらに、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間超の労働者に対する医師による面接指導を「実施しないこととしている」又は「実施方法が決まっていない」事業所について、その理由(複数回答)をみると「事業所として1か月間の時間外・休日労働時間数が100時間超となる働き方をしていないため」が76.3%と最も多くなっている。

 

<受動喫煙防止対策に関する事項>

受動喫煙防止対策に取り組んでいる事業所の割合は88.5%[平成29年調査85.4%]となっている。産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」が98.5%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が96.6%となっている。禁煙・分煙の状況をみると、「事業所の建物内全体(執務室、会議室、食堂、休憩室、商談室等含む)を禁煙とし、屋外のみ喫煙可能としている」が38.8%[同35.0%]と最も多く、次いで「事業所の内部に空間的に隔離された喫煙場所(喫煙室)を設け、それ以外の場所は禁煙にしている」が19.3%[同18.1%]、「屋外を含めた事業所敷地内全体を禁煙にしている」が13.7%[同13.6%]となっている。

職場の受動喫煙を防止するための取組を進めるにあたり、問題があるとする事業所の割合は37.4%[同42.6%]となっている。問題があるとする事業所について、問題の内容(主なもの2つ以内)をみると、「顧客に喫煙をやめさせるのが困難である」が30.3%[同34.3%]と最も多く、次いで「喫煙室からのたばこ煙の漏洩を完全に防ぐことが困難である」が29.0%[同28.5%]となっている。

 

<産業保健に関する事項>

傷病(がん、糖尿病等の私傷病)を抱えた何らかの配慮を必要とする労働者に対して、治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所の割合は55.8%[平成29年調査46.7%]となっている。治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所について、取組内容(複数回答)をみると、「通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討(柔軟な労働時間の設定、仕事内容の調整等)」が90.5%[同88.0%]と最も多く、次いで「両立支援に関する制度の整備(年次有給休暇以外の休暇制度、勤務制度等)」が28.0%[同31.6%]となっている。

治療と仕事を両立できるような取組を行っている事業所のうち、取組に関し困難なことや課題と感じていることがある事業所の割合は76.1%[同76.2%]となっている。困難なことや課題と感じていることがある事業所について、その内容(複数回答)をみると、「代替要員の確保」が74.8%[同75.5%]と最も多く、次いで「上司や同僚の負担」が49.3%[同48.6%]となっている。

 

<安全衛生管理体制に関する事項>

産業医を選任している事業所の割合は29.3%となっており、産業医の選任義務がある事業所規模50人以上でみると、84.6%となっている。産業医を選任している事業所について、産業医に提供している労働者に関する情報(複数回答)をみると、「健康診断等の結果を踏まえた就業上の措置の内容等」が74.6%と最も多く、次いで「労働者の業務に関する情報で、産業医が必要と認めるもの」が57.4%となっている。

現場における安全衛生管理の水準について、低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所の割合は11.7%となっている。低下している又は低下するおそれがあると感じている事業所について、そう感じる理由(複数回答)をみると、「安全衛生管理を担っていたベテラン社員が退職し、ノウハウの継承がうまく進んでいない」が31.4%と最も多く、次いで「経営環境の悪化で、安全衛生に十分な人員・予算を割けない」が31.2%となっている。

 

2019.08.24. 解決社労士 柳田 恵一

<常識的な解決>

たとえば、会社で20年以上使われてきた電卓を、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法第709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形の無いものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が弁償した場合も含まれます。

特に、労働者が故意に基づいて会社に損害を与えたのであれば、その責任は重く、会社から損害額の全額を労働者に請求できる場合もあります。

もっとも、この場合であっても、中古品を破損した場合に新品の代金を請求するようなことはできません。

ましてや、故意によらず損害が発生した場合には、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

会社は労働者の働きによって利益をあげていて、その利益のすべてを労働者に分配し尽くしているわけではありません。

損害についてだけ、労働者がすべて負担するというのは、あまりにも不公平です。

また、会社には危機管理の義務もありますから、これを怠っておいて、労働者に損害を押し付けるのもおかしいのです。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<損害額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に損害額の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法第24条第1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法第16条〕

これは物品の破損などに限られず、「遅刻1回につき罰金3,000円」などのルールを設けることも違法です。

 

2019.08.23. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

実際の就業規則でも、普通解雇について、中途採用と新卒採用とで別の規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

 

<新卒採用の雇用契約>

新卒採用は、相当長期にわたって雇用が継続することを予定して行われます。

また、即戦力であることは期待されておらず、会社が一から教育を施して、必要な能力を身に着けさせることを予定しています。

この方が、会社の方針・風土に即した成長が期待できるので、会社にとっても都合が良いものです。

配属後の働きぶりを見て、適性の面で無理があるようならば、全く異なる部署への異動も検討すべきことになります。

 

<新卒採用の普通解雇>

このような雇用契約の性質から、会社が根気よく教育を行ったにもかかわらず、本人がどの部署でも能力を発揮できないような、極めて期待外れな場合でなければ普通解雇は困難です。

なぜなら、労働契約法第16条や就業規則の普通解雇の条件を満たすためには、会社側にかなりの努力が求められるからです。

 

<中途採用の雇用契約>

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことは無く、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<中途採用の普通解雇>

このように中途採用は、会社から新卒採用よりも高い期待を持たれています。

会社としては、会社に馴染むまである程度の期間はフォローするものの、予定した役割を果たしてくれなければ、期待外れになってしまい、普通解雇を検討せざるを得なくなります。

この点、新卒採用の場合よりも中途採用の方が、会社の解雇権は広く認められることになります。

 

<会社が心がけること>

このように中途採用と新卒採用とで普通解雇の有効要件が異なるのは、雇用契約の内容が異なるからです。

しかし、「常識的に」「暗黙の了解で」というのでは、雇用契約の内容があやふやになり、解雇を検討する際には、トラブルの発生が危惧されます。

特に中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

 

2019.08.22. 解決社労士 柳田 恵一

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は、労働者に与えられた権利ですから、本来的にはその権利を使うかどうかは、労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても、取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。

しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。

 

<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>

年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。理由はさまざまです。

休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。

反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。

こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。

この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。

義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。

 

<年次有給休暇取得率70%に向けて>

内閣府が発表している「仕事と生活の調和推進のための行動指針」は、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしています。

これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。

年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。これらは、権利の侵害になるからです。

休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。

 

2019.08.21. 解決社労士 柳田 恵一

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

2019.08.20. 解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置については、労働安全衛生法に詳細に規定されています。

各事業場では、この法律などに従い、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことや、職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが求められています。

 

<安全衛生管理体制>

労働安全衛生法では、業種や労働者数によって、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が義務付けられています。〔第10条等〕

また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場でも、業種により安全衛生推進者や衛生推進者の選任が義務付けられています〔第12条の2〕

会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

就業規則には、このことも規定しておくことが望ましいでしょう。

 

<受動喫煙の防止>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

就業規則には、次のような規定を加えることになります。

 

・20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。

・受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。

 

事業場内では、喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知することが必要です。

また、思い切って、事業場の敷地内全体を禁煙対象とすることも考えられます。

この場合の就業規則の規定は、上の2つに代えて「喫煙は、敷地内では行わないこと。」となります。

 

2019.08.19. 解決社労士 柳田 恵一

<よくある誤解>

就業規則に「アルバイト社員には労災保険を適用しない」という規定のある会社もあるそうです。

また、会社に労災申請を希望したところ「あなたの業務は雇用というよりも請負に近いから、労災保険の適用対象ではない」と説明されたという話もあります。

こうした場合に、従業員は、「規則だから」「会社が認めてくれないから」と考えて諦めてしまうようです。

 

<労災認定の判断権者>

労災給付の請求があった場合に、これを認めるかどうかを判断するのは、会社を所轄する労働基準監督署の署長です。

決して会社ではありません。

ただ、貧血で倒れてケガをした場合のように、明らかに労災保険の適用対象外である場合に、会社の担当者から従業員に対してその旨の説明が行われるのは、不当なことではありません。

会社としては、具体的な事実を確認し、労災保険の適用関係に不安があれば、所轄の労働基準監督署の労災課などに問い合わせたうえで、手続きを進めるのが正しいことになります。

 

<事業主が記入しない場合>

労災の手続きに必要な書式は、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。

これには、労働者、事業主、医師などそれぞれの記入欄があります。

会社が事業主の欄に記入することを拒んでも、手続きを進めることができます。

従業員が労働者の記入欄に分かる範囲で記入し、治療を担当している医師に証明欄を記入してもらい、所轄の労働基準監督署の労災課などの窓口に行って「会社が書いてくれない」と申し添えて、書類を提出すれば良いのです。

 

<従業員が納得しない場合>

客観的に見て労災保険の適用対象ではない場合に、従業員が「会社を説得して労災扱いにしてもらおう」と考えることがあります。

こうした場合には、判断するのは会社ではなく労働基準監督署長であることを会社から従業員に説明し、所轄の労働基準監督署の労災課などの電話番号を案内するのが良いでしょう。

 

2019.08.18. 解決社労士 柳田 恵一

<個人的な残業禁止令>

日中ダラダラと効率の悪い仕事をしていながら、夕方になると調子が上がって業務に集中する人もいます。

これによって長時間の残業が発生しているのなら、生活リズムの個性を認めて午後からの出勤にするという方法もあるでしょう。

中には、残業手当が欲しくて時間外に頑張っている人もいます。

しかし、いわゆる生活残業になってしまっていると、適正な人事考課基準が運用されている会社では、生産性の低い社員であると評価され、昇進・昇格・昇給が遅れますから、長い目で見れば、収入が少なくなってしまいます。

上司が面談して、こうしたことを説明すべきですし、どうしても今の収入を増やしたい事情があるのなら、仕事を多めに割り振ることも考えられます。

お付き合い残業というのもあります。

同期社員間や同じ部署の社員間で、仕事の早い人が遅い人を待つ形で、一緒に帰るのが習慣になることもあります。

この場合には、全員が定時で帰れるようにする方向で、仕事の配分や役割を見直すべきです。

このように、それぞれの事情に応じた対応を取るべきなのですが、残業の発生に合理的な理由が見出せない社員に対しては、残業の禁止を命じなければならないこともあります。

 

<集団的な残業禁止令>

全社で、あるいは一部の部署で、残業禁止とされることもあります。

特定の曜日や給料日だけノー残業デーと決めることもあります。

働き方改革の一環で、残業時間の削減を試みてもなかなか進まないので、「残業禁止」という施策も増えてきました。

 

<残業禁止令の本質>

就業規則に残業の根拠規定が置かれます。

「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定です。

「労働させることがある」という表現から解かるように、「使用者側から労働者に対して、時間外労働や休日労働をさせることがある」という意味です。

具体的には、使用者から個別に残業命令が出た場合や、「クレームが発生した場合には、所定労働時間を超えても、一次対応と報告を完了するまでは勤務を継続すること」のような条件付きの残業命令がある場合に、そうした事態が発生すると残業が行われるということになります。

このことから残業禁止令の本質を考えると、「使用者側から残業命令は出さない。条件付きの残業命令はすべて撤回する」という内容になります。

 

<残業する権利>

残業禁止令が出されると、残業手当が減って収入が減る、あるいは業務が溜まっていくことによる不安が増大するなど、労働者側に不利益が発生します。

これは、労働者の残業する権利の侵害ではないかという疑問も湧いてきます。

しかし、残業が使用者側から労働者への命令によって行われる性質のものである以上、労働者から会社に残業を権利として主張することはできないでしょう。

判例では、労働者から使用者に対して就労請求権が認められることも稀です。つまり、会社が給与を支払いながら労働者の出勤停止を命じた場合に、労働者から会社に対して働かせるよう求めることは、特殊な事情が無ければ認められていません。

ましてや、労働者から会社に残業させるよう求める権利は認められないわけです。

 

<残業禁止令の弊害>

残業禁止となると、収入減少や持ち帰り仕事の発生などにより、社員のモチベーションは大いに低下します。

また、残業時間ではなく残業手当の削減という、目的をはき違えた方向に進んでしまうと、管理職へのシワ寄せが発生し、管理職が過重労働に陥り心身に障害を来すこともあります。

こうなると、一般社員がその会社で管理職に昇進することを敬遠し、将来の構図を描けなくなれば、転職者が多数出てしまいます。

残業禁止という最終手段に出る前に、業務や役割分担の見直しや機械化・IT化などの正攻法によって、残業の削減を目指していきましょう。

 

2019.08.17. 解決社労士 柳田 恵一

<基礎年金番号の形式>

基礎年金番号は、国民年金・厚生年金保険・共済組合といったすべての公的年金制度で共通して使用する「1人に1つの番号」です。

基礎年金番号は10ケタの数字で表示され、4ケタと6ケタの組み合わせとなっています。0000-000000という形式です。

 

<基礎年金番号の導入>

公的年金制度では、平成8(1996)年12月までは、年金制度ごとに異なる番号により年金加入記録を管理していました。

そのため、転職等により加入する制度を移り変わった場合、国民年金または厚生年金保険の「年金手帳の記号番号」、共済組合の組合員番号等、一人で複数の年金番号を持っていました。

このため、年金を請求する際には制度ごと番号ごとに照会が必要となり、調査のために時間を要していました。

この不都合を解消するために、平成9(1997)年1月から基礎年金番号が導入されました。

 

<基礎年金番号についての注意点>

正しく運用されていれば、基礎年金番号と同様に年金手帳も「1人1冊」です。

複数の年金手帳があったり、基礎年金番号が不明の場合には、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

これからは個人番号(マイナンバー)の活用が進み、基礎年金番号に取って代わる日が来るかもしれません。

そうなっても、基礎年金番号が重要な個人情報であることに変わりはありません。大事に扱いましょう。

 

2019.08.16. 解決社労士 柳田 恵一

<性別による差別>

募集・採用の際、次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。

・募集または採用で男女のどちらかを排除すること。

・募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。

・能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

・募集または採用で男女のどちらかを優先すること。

・求人の内容の説明など、募集または採用の情報提供で、男女で異なる取扱いをすること。

・合理的な理由なく、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別採用で転勤に応じることを条件とすること。

 

<年齢による差別>

募集・採用では、原則として年齢を不問としなければなりません。

年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合だけでなく、民間の職業紹介事業者や求人広告などを通じて募集・採用をする場合、雇い主が直接募集・採用する場合を含めて広く適用されます。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、正社員を募集・採用する場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。

例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者などに対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務付けられています。

 

<その他の差別>

このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。

また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することがあります。

 

2019.08.15. 解決社労士 柳田 恵一

<フリーランスの実態等に関する分析>

多様で柔軟な働き方として、特定の組織等に属さず、独立して様々なプロジェクトに関わり自らの専門性等のサービスを提供するフリーランスへの関心が高まっています。

令和元年7月24日、内閣府がフリーランスの規模や特徴などの実態に関する分析を公表しました。

これは、自営業主が長期的に減少傾向にある中、本業としてのフリーランス(特定の発注者に依存する自営業主=雇用的自営業等)は増加傾向にあり、またクラウドソーシングの拡大により雇用契約によらない働き方をする者が増えていることを受けて、まとめられたものです。

 

<フリーランスの特徴>

フリーランスで働く人の規模や特徴として、次のことがあげられています。

「職業別」については、建設業の一人親方などが含まれています。

 

就業者数:306~341万人

(副業としてのフリーランスを含む。全就業者数に占める割合は約5%)

 

平均年齢:54歳前後(本業としてのフリーランス)

※正規雇用:42.5歳、非正規雇用:47.5歳

 

産業別:①建設業(約20%)、②卸売・小売業(約10%)、③学術研究、専門・技術サービス業(約10%)

 

職業別:①専門的・技術的職業従事者(約37%)、②販売従事者(約14%)、③サービス職業従事者(約12%)

 

<競業避止義務>

円滑な労働移動を妨げるとされる競業避止義務(退職後・契約終了後に競合企業への転職、競合企業の立上げを制限・禁止する契約)の実態についても、把握が試みられています。

フリーランスについては、競業避止義務が「ある」4.4%、「あるかもしれない」4.2%というアンケート結果です。

 

今後も、経済社会環境の変化により、働き方が変わっていくことが想定されます。

 

2019.08.14. 解決社労士 柳田 恵一

<請負とは>

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第632条〕

請負では、注文者が請負人に細かな指示を出すことなく、すべてお任せして、完成した仕事を受け取るわけです。

彫刻家に芸術作品の制作を依頼するのは、この請負にあたります。

 

<雇用とは>

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第623条〕

雇用では、雇い主が労働者に業務上の指示を出し、労働者がこれに従って労働に従事します。

正社員、パート、アルバイトなどの労働が雇用にあたります。

 

<区別の基準>

請負では、仕事を受けるかどうかが自由です。しかし、雇用では正当な理由なく拒めません。

請負では、いつ、どこで作業するかが、基本的には自由です。しかし、雇用では、時間と場所を拘束されます。

請負では、作業に必要な車両、機械、器具などを請負人が負担します。しかし、雇用では、雇い主の貸与する物を使い、雇い主が経費を負担します。

他にも具体的な区別基準はあるのですが、決して契約書のタイトルが区別の基準になるわけではありません。

 

<名ばかり請負>

雇用では、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などの労働法により、労働者が保護されます。

ところが、請負では請負人がこれらによる保護を受けません。

また、雇用であれば、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。〔労働契約法第16条〕

ところが、請負では請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。〔民法第641条〕

反対の立場から見ると、何か仕事をしてもらう場合、雇用ではなくて請負にした方が、仕事をさせる側の負担が少ないことになります。

雇用契約の場合、労働者が保護されているというのは、使用者側から見ると、規制や負担が大きいということになるからです。

そこで、本当は雇用なのに、雇い主が請負だと言い張って、労働者に不利な扱いをしてしまう場合があります。これが、名ばかり請負(偽装請負)です。

あるいは、最初は請負契約だったのに、注文者から請負人に対して、あれこれ具体的な指示が出るようになって、途中から雇用契約になった場合に、それでも扱いは請負契約のままという場合もあります。これも、名ばかり請負です。

 

<ニセ働き方改革>

働き方改革というのは、労働者のニーズを踏まえた改革です。

しかし、たとえ労働者が望んだとしても、使用者側がこれに応ずることが労働者の不利になり、違法になることが多くあります。

たとえば、労働者から「手取り収入を増やしたいので社会保険には入りたくない」という要望があって、会社がこれに応じて健康保険や厚生年金の加入(資格取得)手続きを怠ったとします。

もちろんこれは違法ですが、この場合には、病気で長期入院した場合の補償も無いですし、将来受け取る年金額も減ってしまいます。

最近では、中小企業ばかりでなく、大企業でも「働き方改革」「労働者のニーズ」という言い訳で、名ばかり請負を進める動きが出てきています。

社長の権限が強大で、あるいはパワハラが強烈で、誰も違法性を指摘できないのでしょうか。

こうしたニセ働き方改革の出現によって、働き方改革そのものが悪者にされたり、働き方改革の弊害だとされることがあるのは非常に残念です。

 

2019.08.13. 解決社労士 柳田 恵一

 

<第3号被保険者とは>

第3号被保険者は、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)が対象です。

勤め人の配偶者ということで、夫が妻の扶養に入っている場合も対象となります。

夫婦のうち、扶養している側は、会社員など厚生年金等の加入者ですが、同時に国民年金の第2号被保険者でもあります。

しかし、第3号被保険者は、国民年金にのみ加入し、厚生年金等には加入しません。

 

<保険料の免除>

第3号被保険者である期間は、保険料をご自身で納付する必要はないのですが、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

 

<第3号被保険者になったときの届出>

配偶者に扶養されることになった場合には、第3号被保険者になりますので、第3号被保険者に該当する旨の届出を配偶者の勤務する会社(事業主)に提出してください。

 

<第3号被保険者でなくなったときの届出>

配偶者の扶養から外れた場合には、第1号被保険者になりますので、住所地の市区町村に第1号被保険者への種別変更届を提出してください。

60歳未満の場合、ご本人の年収見込みが130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます。所得税の扶養とは基準が異なりますので注意しましょう。

 

2019.08.12. 解決社労士 柳田 恵一

<ガイドラインの改定>

令和元(2019)年7月18日、厚生労働省が、「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を公表しました(基発0712 第3号令和元年7月12 日)。

これによって、平成14(2002)年の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発第0405001号平成14年4月5日)は廃止されました。

元々は、ブラウン管型のモニター画面を見ながら長時間の作業をすることによって、本人に自覚のないまま疲労が蓄積し、健康障害をもたらす危険があるということで、ガイドラインが策定されたのが始まりです。

今では液晶画面に、タブレット端末やスマートフォンなども加わり、同様に健康障害の危険があることから、対象範囲が広げられています。

 

<新ガイドラインの特徴>

情報機器作業が多様化しているため、従来のように作業類型別に健康確保対策を示すことは困難です。

新ガイドラインでは、考え方の基本は維持しつつ、多様な作業形態に対応するため、事業場が個々の作業形態に応じて判断できるように、健康管理を行う作業区分が見直されています。

 

<対象作業>

対象となる作業は、企業内で行われるデスクトップパソコンやノートパソコンの他、タブレット端末やスマートフォン、ウェアラブル端末等を使用した、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業です。

新しい情報機器を使って行う作業が、新たに加わっています。

 

<社外での作業>

情報機器の発達により、社外でも情報機器作業を行う場面が増えています。

新ガイドラインでは、社外で行う情報機器作業、自営型テレワーカーが自宅等において行う情報機器作業等についても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう促しています。

 

2019.08.11. 解決社労士 柳田 恵一

<雇用保険の加入者(被保険者)>

次の要件を満たせば、会社や労働者の意思にかかわらず、雇用保険に入り被保険者となるのが原則です。

・1週間の所定労働時間が20 時間以上であること

・31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態とは関係なく同じ基準です。

これらの条件は、会社から労働者に交付が義務づけられている雇用契約書、雇い入れ通知書、労働条件通知書といった書面で確認できます。

 

<雇用保険の失業手当(基本手当)>

雇用保険の基本手当とは、雇用保険の被保険者が、倒産、定年、自己都合などにより離職(退職)し、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、再就職するために支給されるものです。

一定の要件を満たせば、給料の5割~8割程度の手当が支給されます。

また、支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異なり、90日~360日となっています。

 

<受給に必要な要件>

そして、雇用保険の被保険者が基本手当を受給するには、次の要件を満たす必要があります。

・ハローワークに行って求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。

・離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月以上あること。ただし、会社側の理由により離職した場合、会社側の都合またはやむを得ない理由で契約の更新がされなかった場合は、離職前1年間に11日以上働いた月が6か月以上あること。

 

<受給に必要な手続き>

失業給付の手続きは、勤めていた会社がすべてを行うものではなく、本人との共同作業となります。

会社は所轄のハローワークで、離職者の雇用保険の資格喪失手続きをします。

このとき離職証明書をハローワークに提出するのですが、これは3枚1セットで、1枚目が離職証明書(事業主控)、2枚目が離職証明書(安定所提出用)、3枚目が離職票-2となっています。

手続きをすると、ハローワークから会社に1枚目と3枚目が渡され、これとは別に離職票-1などが渡されます。

会社から離職者に離職票-1と-2を渡すのです。

離職者は、会社から渡された雇用保険被保険者証、離職票-1、-2などの必要書類を持って、本人の住所を管轄しているハローワークに行きます。

 

<加入もれの場合>

要件を満たしているのに、会社が雇用保険に加入させておらず、被保険者になっていなかったといったトラブルがしばしば起こっています。

このような場合、被保険者の要件を満たしている証拠があれば、遡って雇用保険が適用される制度があります。

具体的なことは、管轄のハローワークや社会保険労務士に相談してください。

 

2019.08.10. 解決社労士 柳田 恵一

<国民年金について>

日本国内に住んでいる20歳から60歳になるまでの人は、国籍にかかわりなく国民年金の対象者になっています。

国民年金は、老後の生活だけでなく、障害者になった場合の生活や、本人が死亡した後に残された家族の生活を保障するために、一定の生活費が支給される公的な制度です。

国民年金の保険料を納めていないと、自分の身にもしものことが起こっても、年金が支給されなかったり減額されたりします。

経済的な事情などで保険料を払えないときは、保険料の免除や減額、延納の制度もあります。

この手続きをしておけば、払っていない期間があっても、年金の減額などの不利益が小さくなります。

住んでいる場所の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口で申請をしてください。

 

<厚生年金について>

勤め人の場合、国民年金の上乗せ部分としてプラスアルファの保障を受けることができる厚生年金の制度があります。

厚生年金は、原則として1日または1週間の所定労働時間、および1か月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であれば、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態にかかわらず加入することになります。

会社や労働者の意思は関係ありません。

厚生年金に一定期間加入していると、国民年金だけの場合よりも有利な年金を受け取ることができます。

しかも、厚生年金の保険料は、給料(標準報酬月額と標準賞与額)の約18%を会社と労働者で半分ずつ負担します。

この保険料には、国民年金の保険料も含まれています。

 

<保険料負担額>

平成31(2019)年度の国民年金保険料は、月額16,410円です。

厚生年金保険料は、標準となる月給が165,000円以上175,000円未満なら、月額15,555円です(働いている人の負担額)。

ですから、月給が約17万円で賞与などが無ければ、働いている人の負担は国民年金よりも厚生年金のほうが少なくて、万一の場合の保障も手厚いということがいえます。

 

2019.08.09. 解決社労士 柳田 恵一

<特別障害給付金制度の概要>

国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者について、福祉的措置として「特別障害給付金制度」が設けられています。

 

<支給対象者>

支給の対象となるのは、次のうちのどちらかです。

 

1.平成3(1991)年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生 大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校の昼間部に在学していた学生です。

 昭和61(1986)年4月から平成3(1991)年3月までに限っては、専修学校、一部の各種学校が含まれます。ただし、定時制、夜間部、通信を除きます。

 

2.昭和61(1986)年3月以前に国民年金任意加入対象であった「勤め人(被用者等)の配偶者」であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある人

 ただし、65歳に達する日の前日までにその障害状態に該当した人に限られます。

 

「勤め人(被用者等)の配偶者」とは以下の場合です。

 (1) 被用者年金制度(厚生年金保険、共済組合等)の加入者の配偶者

 (2) 上記(1)の老齢給付受給権者及び受給資格期間満了者(通算老齢・通算退職年金を除く)の配偶者

 (3) 上記(1)の障害年金受給者の配偶者

 (4) 国会議員の配偶者

 (5) 地方議会議員の配偶者(昭和37(1962)年12月以降に限る)

 

なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などを受給することができる人は対象になりません。

また、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。

 

<支給額>

障害基礎年金1級相当に該当:平成31年度基本月額52,150円(2級の1.25倍)

障害基礎年金2級相当に該当:平成31年度基本月額41,720円

特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて毎年度自動的に見直されます。

また、ご本人の所得が一定の額以上であるときは、支給額の全額又は半額が停止される場合があります。

老齢年金、遺族年金、労災補償等を受給している場合には、その受給額分を差し引いた額が支給されます。

老齢年金等の額が特別障害給付金の額を上回る場合は、特別障害給付金は支給されません。

 

<請求手続の窓口等>

原則として、65歳に達する日の前日までに請求する必要があります。

請求の窓口は、住所地の市区役所・町村役場です。

特別障害給付金の審査・認定・支給についての事務は日本年金機構が行います。

必要な書類等をそろえた場合でも、審査の結果、支給の要件に該当しないとき、あるいは支給の要件の確認ができない場合は不支給となります。

なお、給付金の支給を受けた場合には、申請により国民年金保険料の免除を受けることができます。申請は毎年度必要となります。

 

2019.08.08. 解決社労士 柳田 恵一

<原則の法定労働時間>

使用者は労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはなりません。〔労働基準法第32条第1項〕

もちろん、三六協定を交わし所轄の労働基準監督署長に届け出れば、協定の範囲内での時間外労働は処罰の対象となりません。

ただし、法定労働時間を超える労働に対しては、時間外割増賃金の支払いが必要です。

ここで1週間というのは、就業規則などで取り決めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

 

<労働基準法施行規則による特例>

公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊な必要があるものについては、その必要かつ労働者の健康・福祉を害しない範囲で、厚生労働省令による例外を設けることができることとされています。〔労働基準法施行規則第25条の2第1項〕

こうして例外とされた特例措置対象事業場の法定労働時間は、平成13(2001)年4月1日から、1日8時間、1週44時間に改正されました。

これが、時間外割増賃金の基準となります。

 

次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場が対象です。

 商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 映画・演劇業 映画の映写、演劇、その他興業の事業
 保健衛生業 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 接客娯楽業 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

事業場の規模(人数)は、企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。

 

2019.08.07. 解決社労士 柳田 恵一

<国民年金の加入期間>

国民年金の加入期間は、原則として20歳から60歳になるまでの40年間です。

40年間、国民年金の保険料を納付していれば、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。

また、老齢基礎年金の受給資格期間である10年間以上、国民年金の保険料を納付していれば、納付期間に応じて老齢基礎年金を受給することができます。

平成29(2017)年8月1日に年金機能強化法が改正され、年金受給資格期間が25年から10年に短縮されました。

受給資格期間というのは、原則65歳から老齢基礎年金を受給するための条件となる期間で、次の3つの期間の合計です。

1.厚生年金保険や国民年金の保険料を納付した期間

2.国民年金の保険料の納付を免除された期間

3.合算対象期間(カラ期間)

 

<任意加入とは>

60歳になるまでに老齢基礎年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない場合や、40年間の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合であって、厚生年金・共済組合に加入していないときは、60歳以降(申出された月以降)でも国民年金に加入することができます。

ただし、さかのぼって加入することはできません。

これは、義務として加入するのではなく、希望すれば加入できるということで「任意加入」といいます。

 

<任意加入の期間>

・年金額を増やしたい人は65歳になるまでの間

・受給資格期間を満たしていない人は70歳になるまでの間

・外国に居住する日本人は20歳以上65歳未満の間

なお、平成20(2008)年4月1日から、外国に居住する日本人を除き、保険料の納付方法は口座振替が原則となりました。

日本国内に住んでいる人が、任意加入の申し込みをするための窓口は、お住まいの市区役所・町村役場です。

 

2019.08.06. 解決社労士 柳田 恵一

<50%以上の割増賃金>

月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

これは、労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、平成22(2010)年4月1日に労働基準法が改正され、1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率が5割以上に引き上げられたものです。

なお、深夜(22:00~5:00)の時間帯に1か月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合は、 深夜割増賃金率25%以上 + 時間外割増賃金率50%以上 = 75%以上となります。

1か月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。

 

【法定休日】

使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければなりません。これを「法定休日」といいます。法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいものです。

 

<代替休暇>

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

 

【労使協定で定める事項】

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

 

この労使協定は、各事業場で代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。

個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の希望により決定されます。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

2019.08.05. 解決社労士 柳田 恵一

<辞めるのは権利か自由か>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。

退職した後のことまで、責任を負うことはありません。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法第5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法第117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法第220条、第223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法第222条、第249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2019.08.04. 解決社労士 柳田 恵一

<会社が保険料を納めないケース>

厚生年金保険の加入(資格取得)基準を満たしている従業員について、加入手続きを行わなければ、会社は従業員(被保険者)分と会社分の両方について、保険料を不正に免れることになります。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚し会社が是正を求められます。

また今後、マイナンバーの社会保険への導入が行われれば、手間のかかる調査をしなくても手軽に不正をあばけるようになります。

そうでなくても、加入基準を満たす従業員が、年金事務所に労働時間や労働日数などの資料を持参して相談すれば、勤務先の会社に調査が入ります。

 

<金額をごまかすケース>

従業員の給与から控除する保険料は正しい金額でも、その一部を会社が着服して、残りを納付するということがあります。

たとえば、従業員の月給が30万円で、これに応じた保険料を給与から控除しておきながら、日本年金機構に月給20万円で届を出しておけば、月給20万円を基準に計算した保険料の納付で済みます。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚して会社が是正を求められます。

また日本年金機構から、誕生月に厚生年金保険の加入者(被保険者)に、年金加入記録を確認してもらうため「ねんきん定期便」が郵送されています。

これを見れば、保険料の基準となっている給与や賞与が正しいか確認できます。

驚くことに、1部上場企業でも海外勤務者の保険料をごまかしていることがあります。

 

<もしもごまかされていたら>

労働時間、労働日数、給与、賞与、保険料として天引きされている金額などの資料をきちんと保管しましょう。

退職直後に、厚生労働省や総務省に調査してもらいましょう。

在職中に調査が入ると、会社から退職に追い込まれるリスクもあります。

また、会社の手続きに社会保険労務士が関与しているようでしたら、都道府県の社会保険労務士会にもご相談ください。

こちらも退職後がお勧めです。

 

2019.08.03. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

精勤手当について、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

(精勤手当)

第37条  精勤手当は、当該賃金計算期間における出勤成績により、次のとおり支給する。

① 無欠勤の場合       月額      

② 欠勤1日以内の場合    月額      

2 前項の精勤手当の計算においては、次のいずれかに該当するときは出勤したものとみなす。

① 年次有給休暇を取得したとき

② 業務上の負傷又は疾病により療養のため休業したとき

3 第1項の精勤手当の計算に当たっては、遅刻又は早退  回をもって、欠勤1日とみなす。

 

第2項で、年次有給休暇を取得した場合や、業務上の負傷疾病による休業の場合には、欠勤扱いにしないという配慮がなされています。〔労働基準法第136条など〕

 

<精勤手当の廃止>

工場などで急な欠勤があると、製造の流れに大きな支障をきたす場合があり、業務の連携上、無欠勤でなければ困るという事情があります。

このため、精勤手当(皆勤手当)が残っています。

しかし、「労働契約通りに勤務するのは当たり前」なので、「当たり前のことに手当を支給するのはおかしい」ということから、多くの企業で精勤手当が廃止されてきています。

もちろん、いきなり廃止では不利益変更の問題がありますから、基本給に組み入れたり、調整給として支払い、段階的に減額していったりなどの措置が取られています。

 

<欠勤控除を超えるペナルティー>

欠勤した割合に応じて給与を減額することは適法です。これは通常の欠勤控除です。

しかし、欠勤控除を超えて給与を減額する場合には懲戒となりますから、労働基準法の制限を受けます。

 

【労働基準法による制裁規定の制限】

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

たとえ欠勤した場合に想定されるダメージが、この制限を超えて発生する職場であっても、ダメージに対応した減給はできません。

 

<精勤手当があれば>

精勤手当が、平均賃金の1日分の半額を超えても構いませんし、毎月の支給額の1割を超えても構いません。

精勤手当が高めに設定されていても良いのです。

そして、欠勤すると精勤手当が減額され、あるいは支給されなくなるので、社員が欠勤しないよう生活をただし、態勢を整えて勤務に就くように心がけるというのは、全く正常なことです。

こうしてみると、精勤手当を残しておくことにも、十分な合理性があるといえます。

 

2019.08.02. 解決社労士 柳田 恵一

下記の「基本手当」というのは、法改正にもかかわらず世間では「失業手当」と呼ばれているものです。

 

 厚生労働省は、8月1日(木)から雇用保険の「基本手当日額」を変更します。

 雇用保険の基本手当は、労働者が離職した場合に、失業中の生活を心配することなく再就職活動できるよう支給するものです。「基本手当日額」は、離職前の賃金を基に算出した1日当たりの支給額をいい、給付日数は離職理由や年齢などに応じて決められています。

 今回の変更は、平成30年度の平均給与額が平成29年度と比べて約0.89%上昇したことに伴うものです。なお、平均給与額については、「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額(再集計値として公表されているもの)を用いています。具体的な変更内容は以下のとおりです。

 

【具体的な変更内容】

1 基本手当日額の最高額の引上げ

  基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。

  1. 60歳以上65歳未満

          7,087円 → 7,150円(+63円)

  2. 45歳以上60歳未満

          8,260円 → 8,335円(+75円)

  3. 30歳以上45歳未満

          7,505円 → 7,570円(+65円)

  4. 30歳未満

          6,755円 → 6,815円(+60円)

 2 基本手当日額の最低額の引上げ

          1,984円 → 2,000円(+16円)

 

2019.08.01. 解決社労士 柳田 恵一

<本来の申請期限>

雇用継続給付の支給申請期限は「ハローワークの通知する支給単位期間の初日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日」とされています。〔雇用保険法施行規則〕

かつては、この期限を過ぎてしまってからハローワークの窓口に書類を提出しても、受け付けてもらえませんでした。

これは、迅速な給付を行い受給者を保護する趣旨とされていましたが、実際の手続きは会社と受給者の共同作業となることが多く、どちらかがウッカリすると提出期限を過ぎてしまい、受給できなくなるという不都合がありました。

 

<施行規則改正後>

平成27(2015)年4月に、この施行規則が改正され、期限を過ぎた場合でも2年間の消滅時効期間が経過するまでは、申請できるようになりました。

また、社会保険や労働保険の手続きでは、本来の期限を過ぎて手続きをする場合には、手続きが遅れた理由を示す「遅延理由書」という書類の添付が求められることも多いのですが、消滅時効完成前の手続きには「遅延理由書」が不要とされるのが一般です。

 

<施行規則改正の影響範囲>

雇用保険の給付金は、2年間の消滅時効期間内であれば、支給申請が可能とされましたが、この扱いは多くの給付にあてはまります。

具体的には、雇用保険の各給付のうち、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当、移転費、広域求職活動費、一般教育訓練に係る教育訓練給付金、専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金、教育訓練支援給付金、高年齢雇用継続基本給付金、高年齢再就職給付金、育児休業給付金、介護休業給付金などです。

 

<心がけたいこと>

本来の期限を過ぎても、あきらめずに申請の可能性を確認することをお勧めします。

ただ、「2年以内なら大丈夫」と考えるのではなく、同じ金額なら1日でも早く給付を受けられたほうが嬉しいのですから、手続きは速やかに行いましょう。

 

2019.08.01. 解決社労士 柳田 恵一

<よくある計算方法>

就業規則のひな形によくあるパターンですが、中小企業では、退職時の基本給に勤続年数に応じた係数をかけて、退職金の金額を算出することが多いようです。

これだと若いころ、あるいは働き盛りのころの基本給は関係なく、退職間際になってから頭角をあらわし大きく昇給した人が有利です。

反対に、若いころに大変な努力をして出世し、基本給も役員並みになったあと、働きすぎて体を壊し基本給が大幅にダウンして退職していった社員は、報われないということになってしまいます。

 

<退職功労金>

退職金については、基本給 × 係数 で一律に支給し、これとは別に、個人の会社に対する功績の度合いに応じた退職功労金を支給するというのが、もっとも単純なやり方でしょう。

ただし、これだと金額を客観的に決めるのは難しいでしょうし、その時々の会社のふところ具合に大きく左右されそうです。

 

<ポイント制>

たとえば、毎年4月に支給する基本給1か月分の累計を、退職金の金額にすることも考えられます。しかし、物価の変動が大きいと不公平になる可能性もあります。

そこで、担当者は1ポイント、係長は2ポイント、課長は3ポイント、部長は5ポイントなどと、1か月間在籍すると累計されるポイントを決めておき、物価の変動を踏まえて、1ポイントいくらにするという方式もあります。

 

<退職金の性格>

退職金の性格として、退職後の生活保障的性格、賃金後払い的性格、功労報償的性格があげられます。

このうち、退職後の生活保障は在籍中に給与・賞与に応じた厚生年金保険料を支払っていて、老後の年金額に反映されると考えれば、重視しなくてもよいでしょう。

また、賃金後払い的性格については、終身雇用制の崩れた現在では、退職までプールしておかないでタイムリーに給与・賞与に反映してほしいという社員の本音があります。

こう考えると、退職金のメインの性格は、功労報償的性格でしょうから、退職金を会社に対する功績の度合いで決めるというのは、合理的であると考えられます。

 

2019.07.31. 解決社労士 柳田 恵一

障害年金受給者が提出する障害状態確認届(診断書)などの手続きについて、一部変更がありましたので以下にご紹介します。

 

<障害状態確認届(診断書)の作成期間>

〔変更前〕

提出期限前1か月以内

〔変更後〕

提出期限前3か月以内

〔影 響〕

これまで誕生月の前月末頃に日本年金機構から送付されていた障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元(2019)年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

<障害給付額改定請求書に添付する診断書の作成期間>

〔変更前〕

提出日前1か月以内

〔変更後〕

提出日前3か月以内

〔影 響〕

令和元(2019)年8月以降に請求する分から変更となります。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金受給者の所得状況届>

日本年金機構に提出していた所得状況届(ハガキ)は、日本年金機構が市区町村から情報提供を受けることになり提出不要となります。

ただし、例外的に日本年金機構が市区町村から情報提供を受けられない場合には、今までどおり提出が必要となりますので、届出に関する案内が対象者に送付されます。

 

<20歳前傷病による障害基礎年金の障害状態確認届(診断書)の提出時期>

〔変更前〕

7月末までに提出

〔変更後〕

誕生月の末日までに提出

〔影 響〕

障害状態確認届(診断書)の用紙は、提出期限が令和元年8月以降となる対象者から、誕生月の3か月前の月末に送付されるようになります。

 

2019.07.30. 解決社労士 柳田 恵一

<合意分割制度>

平成19(2007)年4月1日以後に離婚等をした人が、結婚期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を元夫婦間で分割することができる制度です。

 

<分割の効果>

この分割制度により、厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割した場合は、当事者それぞれの老齢厚生年金等の年金額は、分割後の記録に基づき計算されます。

 

<分割の条件>

次の3つです。

・結婚期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。

・元夫婦双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと。

※合意がまとまらない場合は、元夫婦の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。

・原則として離婚等から2年以内の請求期限を経過していないこと。

※裁判、審判、調停があった場合など請求期限の例外もあります。

ここで、按分割合(あんぶんわりあい)というのは、分割対象となる結婚期間中の元夫婦双方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)合計額のうち、分割を受けることによって増額される側の、分割後の持ち分割合をいいます。

 

<情報提供の請求>

按分割合を定めるためには、分割の対象となる期間や、その期間の元夫婦それぞれの標準報酬月額・標準賞与額、また、按分割合を定めることができる範囲などの情報を、正確に把握する必要があります。

このため、元夫婦双方または一方からの請求により、日本年金機構(年金事務所)が合意分割を行うために必要な情報を提供しています。

この請求は、合意分割の請求期限内に行う必要があります。

 

<合意分割と3号分割が同時に行われる場合>

合意分割の請求が行われた場合、結婚期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったものとみなされます。

したがって、3号分割の対象となる期間は、3号分割による標準報酬の分割に加え、合意分割による標準報酬の分割も行われます。

 

2019.07.29. 解決社労士 柳田 恵一

<3号分割制度>

平成20(2008)年5月1日以後に離婚等をした人で、離婚前に「国民年金の第3号被保険者」であった人からの請求により行われます。

正確には「離婚時の第3号被保険者期間の厚生年金の分割制度」といいます。

ここで、「国民年金の第3号被保険者」というのは、配偶者が会社などの勤務先で厚生年金に加入していて、その配偶者の扶養に入っていたために、年金保険料を支払わずに国民年金の加入者となっている人をいいます。

 

<分割の効果>

この制度によって、平成20(2008)年4月1日以後の「国民年金の第3号被保険者」期間の元配偶者の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、元夫婦間で分割することができます。

元夫婦それぞれの老齢厚生年金等の年金額は,分割後の記録に基づき計算されます。年金額が分割されるということではありません。

離婚せずに夫婦であり続けた場合の年金額は、離婚してそれぞれが受け取る年金額よりも多いのが一般です。

 

<分割の条件>

次の2つです。

・夫婦だった期間中に、平成20(2008)年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。

・原則として離婚等から2年以内に請求すること。

 

<注意事項>

・年金分割の効果は、厚生年金の報酬比例部分(厚生年金基金が国に代行して支給する部分を含む)に限られ、国民年金の老齢基礎年金等には影響はありません。

・現に老齢厚生年金を受けている場合は、年金分割の請求をした月の翌月から年金額が変更されます。

・元配偶者を扶養していた人が、障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、「3号分割」請求は認められません。

・分割の対象となるのは、夫婦だった期間中の記録のみです。

・老齢基礎年金を受給するための支給要件は、その人自身の年金記録によって判断されます。

・離婚後、同じ相手と再婚した場合、請求期限は、それぞれの夫婦だった期間ごとに判断されます。

・裁判、審判、調停があった場合など、請求期限が離婚等から2年以内ではないこともあります。

 

2019.07.28. 解決社労士 柳田 恵一

<ブラック社員>

ブラック社員は、自分/自分たちのやりたいようにしたいのです。

他人からの干渉を徹底的に嫌います。

キャッチフレーズは「ほっといてくれ!」です。

かといって、自主的に仕事をこなすわけてもなく、改善提案をするわけでもなく、仕事に対して消極的で無気力です。

上司からの命令に返事はするのですが、期限を過ぎても完了報告がないということで、上司が確認すると、なんと命令を忘れていたりします。

これは、他人からの指図は受けたくないという自己中心的な態度のあらわれです。

また、ブラック企業と同じく、正しくはどうなのか、どうあるべきなのかということに関心がありません。

職業倫理が欠けているのです。

結局、ブラック社員は会社の業績に貢献しませんし、その態度を見た他の社員に不快感と不満をもたらします。

ときには、無気力が他の社員に伝染してしまいます。

 

<評価を気にしないブラック社員>

ブラック社員は、自分がきちんと仕事をしていないことを自覚していますから、人事考課で低く評価されても当然のことと考えます。

高い評価を得て出世しようとか、少しでも多額の賞与をもらおうなどとは考えません。

 

<ブラック社員への教育>

ブラック社員は、仕事ができないわけではありません。

しかし、やる気がないのです。

モチベーションアップのための教育をしても、本人も認めていますが無駄なことです。

 

<ブラック社員が会社に求めるもの>

最低限の給与をもらい、クビにならなければ良いのです。

そして、クビになるなら会社都合で解雇され、解雇予告手当をもらい、雇用保険でより早くより長く給付を受けられればラッキーなのです。

時には、不当解雇を主張し、会社に慰謝料を含め損害賠償を請求してくることがあります。

 

<なぜ会社はクビにしないのか>

縁故採用や他の社員の紹介による採用で、解雇しにくいというケースもあります。

また、ブラック社員は自分を守るための努力はしますから、労働法に詳しい人が多いのです。

会社の実態や就業規則の中に、労働法違反を見つけるのも得意です。

会社から解雇をほのめかすと、ブラック社員は労働基準監督署へ法令違反を相談するとか、一人でも労働組合に入れるとか、脅しのようなことを言い出します。

ですから、会社としてはうっかり解雇にはできません。

特別な退職金を出して辞めてもらうこともあります。

 

<ブラック応募者を採用しないためには>

このように、一度ブラック社員が会社に入って来てしまうと、有効な対策を打つことは困難です。

やはり、会社に入って来ないようにすることが大事です。

ブラック応募者は、大きな会社での勤務経験があり「この部署はこういう役割を果たしていました」と説明することがあります。

こんな時「その中であなたは具体的にどのような職務をこなしていましたか?」と尋ねても、抽象的な答えしか返ってきません。

他にも「仕事の上で何かリーダーとして活動したことはありますか?」「あなたの改善提案で業績が向上したり生産性が上がった具体例を教えてください」などの質問には答えられません。

退職理由を尋ねると「退職を勧められた」「退職を迫られた」という回答になります。

それでも避けられないのは、縁故採用でしょう。

どんなにサボってもそれなりの給料がもらえるとわかっていたら、下手に努力するよりもおとなしくしていた方が利口ですから。

まさに、ブラック社員の温床です。

 

<別の角度からの対処法>

会社に労働法上の問題が無ければ良いのです。

遵法経営の会社にブラック社員が入っても、会社はこれに正面から対応できます。

これが、ブラック社員対策の王道です。

 

2019.07.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年7月23日、内閣府が経済財政白書を取りまとめ公表しました。

この中で、多様な人材の活躍について、分かりやすくまとめられています。

 

<多様な人材の意味>

多様な人材(ダイバーシティ)とは、広義では、性別や国籍、雇用形態など統計的に表されるものだけではなく、個々人の価値観など統計では表されない深層的なものも含まれます。

狭義では、基本的には前者の統計等で表される多様性、つまり性別、国籍(外国人労働者)、年齢(65歳以上の雇用者等)、働き方(限定正社員等)、キャリア(中途・経験者採用)、障害者といった属性について対象とします。

 

<多様性の状況>

多様性を見る尺度としては、企業などでの従業員や役員に占める「多様な構成員」の割合や人数の変化を用います。

平成30(2018)年に、こうした多様な人材がどの程度の規模で労働市場に存在しているかというと、雇用者全体としては5,936万人であり、その内訳としては、役員330万人、生産年齢人口(15~64歳)の男性正社員2,275万人、女性正社員1,099万人、男性非正社員480万人、女性非正社員1,283万人、65歳以上の雇用者469万人となっています。

また、男性管理職111万人・女性管理職18万人、転職者315万人、外国人労働者146万人、障害者48万人となっています。

 

<多様な人材の活躍>

多様な人材の活躍については、人数や割合等だけで判断することには限界があることにも注意しなければなりません。

それは、ダイバーシティが存在すること(一定割合の多様性が存在すること)と、その多様な人材がそれぞれの能力を活かして活躍できている状態(インクルージョン)とは必ずしも一致しないためです。

例えば、女性割合が50%である企業でも、男女が平等に扱われていない企業や、適材適所になっていない人事配置を行っている企業などでは、多様な人材が活躍しているとはいえません。

 

ここまで、経済財政白書からの抜粋です。

 

<インクルージョン>

インクルージョンは「包括」「包含」「一体性」というのが本来の意味です。

「組織内の誰にでもビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれに特有の経験やスキル、考え方が認められ、活用されていること」などと説明されています。

インクルージョンは、ダイバーシティをより発展させた新しい人材開発のあり方であるという説明も良く目にします。

様々な違いのある人々(ダイバーシティ)を、同じ職場に平等に受け入れた後は、一緒に働くのであっても、一人ひとりの個性が活かされ独自能力を最大限に発揮できるよう、個性に応じて公平に扱うことを、インクルージョンと言うのでしょう。

 

<平等と公平>

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

同じ人間として平等な採用をし、それぞれの個性に応じた公平な処遇をすることによって、一人ひとりが能力を最大限に発揮し企業と共に成長しようというのが、多様な人材の活躍の目的だといえるでしょう。

 

2019.07.26. 解決社労士 柳田 恵一

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法第68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法第12条〕

これを受けて、労働契約法も「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」としています。〔労働契約法第3条第5項〕

憲法12条にある「公共の福祉」という言葉は分かりにくいですが、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

自分の権利を主張するあまり、他人の権利を侵害するようなことがあってはならないということです。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。

つまり、生理中なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるということです。

このように運用しなければ、会社の業務に支障を来たし、他の従業員に迷惑がかかる恐れがあるからです。

 

<生理休暇の実態>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、「たとえ業務に支障が出たとしても、当然の権利だから別に遠慮は要らない」という態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

もっとも、就業規則で有給とされていた規定を無給に変更することは、不利益変更になりますから安易に行うことはできません。

さらに、生理休暇を申し出た人がスキーに行っていたことが判明したようなケースでは、ウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<会社の対応>

生理休暇を取ったことを理由に、人事考課の評価を下げ、昇格、昇給、賞与支給で不利な扱いをすることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

生理休暇の濫用を問題視するのではなく、適正な評価制度の正しい運用こそが望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2019.07.25. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

労災保険の適用される労働災害には、業務災害と通勤災害があります。

このうち、通勤災害は通勤途上の災害です。

通勤には典型的なものとして「住居と就業の場所との間の往復」があります。〔労働者災害補償保険法第7条第2項第1号〕

 

<出勤のスタート地点>

出勤のスタート地点は住居ですが、一軒家と集合住宅とでは、微妙にスタート地点が違います。

これは、一般の人が自由に通行できるところで起こった災害が、通勤災害の対象となることによるものです。

一軒家の場合には、外に出る門を身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

集合住宅の場合には、玄関のドアを身体の半分以上が通過したところがスタート地点です。

ただし、玄関ドアの外側は、誰でも自由に通行できることが前提となります。

セキュリティーの厳しいマンションなどでは、外部の人の自由な立ち入りを許さないドアが基準となります。

 

<出勤のゴール地点>

出勤のゴール地点は就業の場所ですが、勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合と、その建物の一部にのみ及ぶ場合とでは、微妙にゴール地点が違います。

事業主の支配管理権の及んでいる事業場施設での災害は、業務災害の対象であり通勤災害の対象ではないからです。

業務災害で仕事を休んだ場合には、休業の最初の3日間について、事業主が平均賃金の60%以上の休業補償をします。〔労働基準法第76条第1項〕

通勤災害で仕事を休んだ場合には、この休業補償がありません。

また、労基署に労災保険の手続きで書類を提出するときに、業務災害と通勤災害とでは様式が違います。

勤務先企業の管理が敷地と建物全体に及ぶ場合には、身体の半分が敷地に入る直前がゴール地点となります。

勤務先企業の管理が店舗など建物の一部にのみ及ぶ場合には、その部分に身体の半分が入る直前がゴール地点となります。

 

こうした細かい区別を全従業員に周知しておくことは困難ですから、通勤中にケガをしたり事故に遭ったりした場合には、必ず会社に連絡するというルールにしておくのが現実的でしょう。

 

2019.07.24. 解決社労士 柳田 恵一

 

<処罰しないで>

セクハラやパワハラの直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があった場合には、どのように対応したら良いのでしょうか。

被害を受けたその瞬間には大きなショックを受けたものの、後で冷静になってから、自分にも落ち度があったのではないか、ハラスメントとは言い切れないのではないかなどと考えが変わり、自分のせいで相手が懲戒処分を受けたら申し訳ないという気持ちになることもあるのです。

 

<ハラスメントの被害者>

さて、セクハラやパワハラの被害者とは誰でしょうか。

セクハラは、職場で性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

パワハラは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられる行為をいいます。

こうしてみると、職場環境が悪化し不快なものとなることによって、直接行為を受けた人だけでなく、その行為を見聞きした人も被害者になるということが分かります。

たとえば、店長が店員を殴り、その場に他の店員がいたのなら、その場に居合わせた店員全員がパワハラの被害者です。

 

<被害者の同意>

被害者の同意があったから許されるというのは、セクハラやパワハラが密室で行われ、加害者と被害者だけが事実を知っていて、他の人は見聞きしていないという状況が前提となるでしょう。

多くの人が事実を見聞きしていながら、全員がセクハラやパワハラに同意しているというのは、容易には考えられないことです。しかし、事後の承諾であれば、ありえないことではありません。

 

<懲戒処分の目的>

そもそも懲戒処分の主な目的としては、次の3つが挙げられます。

 

【懲戒処分の主な目的】

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

 

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

 

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

こうしてみると、被害者から「処罰しないで」という申し出があり、ある程度被害者からの事後承諾があったとしても、懲戒処分の必要がなくなるわけではありません。

それでも、懲戒対象者への制裁の必要性は低くなりますし、企業秩序の侵害や労働者の不安は少なかったと評価できるでしょう。

ただ、再発防止の観点からはセクハラやパワハラを見逃すことができません。いつも被害者の事後承諾が得られるとは限らないからです。

 

<企業の取るべき対応>

最新版(平成31(2019)年3月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第64条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

直接の被害者から「加害者を処罰しないでほしい」という申し出があったことは、この規定の中の「その他情状」に該当する事実です。

ですから、直接の被害者の申し出があったからといって、不問に付するというのではなく、情状の一つとして考慮し、場合によってはより軽い懲戒にすることもあるというのが、企業の取るべき対応だと考えられます。

 

2019.07.23. 解決社労士 柳田 恵一

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われた人がいます。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示し、様々なことを義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

労働基準法は、労働者を守るための法律ですから当然でしょう。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

これによって、逃亡や証拠の湮滅(いんめつ)を防止するわけです。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者への制裁>

労働基準法には労働者に対する罰則が無いのですから、労働者が労働基準法違反の罪を犯すということもありません。

したがって、逮捕や起訴などもないのです。

しかし、就業規則に定められたルールに違反すれば、会社での評価は下がるかもしれません。

そうなると、賞与の支給額や昇給にも影響が出るでしょう。

また、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それでも、たとえば定期健康診断をサボり続けた場合に、厳重注意や譴責(けんせき)が限界でしょう。

労働基準法が罰則を定めていない趣旨からすると、減給や出勤停止などは重すぎるからです。

 

2019.07.22. 解決社労士 柳田 恵一

<定額残業代の導入>

割増賃金の基礎となる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、最低賃金を下回らないことが必要です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに限定されています。〔労働基準法第37条第5項〕

これらの手当は、労働の量とは無関係に福利的に支給されるものとして、除外することが認められているのです。ですから、これらに該当するかどうかは、手当の名称ではなく、その性質に基づいて判断されます。

この割増賃金の基礎となる賃金から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

定額残業代の計算が誤っていたり、割増率が法定の基準を下回っていたり、最低賃金法違反があったり、労働者への説明が不十分であったりすると、制度そのものが無効とされます。

この場合、労働基準監督署の監督が入ったり、労働審判が行われたりすると、定額残業代を含めた総額を基準として残業代を計算し、さかのぼって支払うことになるのが一般です。

残業代の二重払いが発生しますから、会社にとって予定外の出費となります。このように、導入の失敗は大きなリスクとなります。

 

<定額残業代の運用>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<働き方改革と定額残業代>

働き方改革の推進によって残業時間が減少し、自分の時間が増えたものの、手取り収入が減ってしまったという不満が聞かれます。

この点、定額残業代は良い仕組みです。

労働者にとっては、残業が少なくても定額残業代が保障されていますし、会社にとっては人件費が安定します。

しかし、それだけではありません。

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。そのためには、自主的に学んだり、仕事の手順を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

こうした自己啓発や自己研鑽が期待できない場合であっても、仕事による疲労の蓄積が無い分だけ、生産性が上がると考えられます。

 

<上手に活用しましょう>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われていました。

今でも、ハローワークで求人票に定額残業代の表示をすることについては、窓口で慎重すぎる態度を示されてしまいます。

これは、誤った制度導入や運用があまりにも多いため、悪い印象を持たれてしまっているからでしょう。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2019.07.21. 解決社労士 柳田 恵一

<重ねての制裁>

ある社員が不都合な言動を理由に、懲戒処分を受けたとします。

この社員が、昇進・昇給や賞与の金額に影響する人事考課で、一段低い評価にされたとします。

しかも、さえない部署への左遷も行われたとしましょう。

このように、たった1つの不都合な言動を理由に、懲戒処分も人事考課も人事異動も重ねて行うことに問題はないのでしょうか。

 

<法律の規定>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第15条〕

しかし、人事考課や人事異動の有効性について規定する法令は見当たりません。

これらは、基本的に会社の裁量に任されていて、裁判所がその不当性や違法性を判断することは困難だからです。

 

<懲戒処分と人事考課>

人事考課には、会社ごとに独自の考課基準があります。

個人の業績、所属部門の業績、発揮能力、勤務態度、経営理念への共感度、行動指針の体現度、社内ルールの順守など、その内容は様々です。

たとえば、勤務先の近所の飲食店で酒に酔って店長をどなりつけたので、譴責(けんせき)処分を受けたとします。厳重注意を受け、始末書を提出したわけです。

この場合、人事考課の基準の中に「勤務地近隣との関係を良好に保つこと」といったものがあれば、その部分について低い評価となるでしょう。

しかし、「譴責処分を受けたのだから全項目について一段低い評価」というのは不当です。

またたとえば、勤務先の会社が経営しているお店で、酒に酔って店長をどなりつけたのなら、かなり事情が変わってきます。

人事考課基準の中に「社内での協調性」「他部門への協力」「顧客からの信頼」といったものは、一般的に含まれているでしょうから、評価が低くなる可能性は高いでしょう。

それでも、考課者のその社員に対する印象が悪くなったので低い評価になるということは避けるべきです。

 

<懲戒処分と人事異動>

人事異動については、会社の裁量がかなり広いといえます。適材適所により、会社全体の生産性を上げる必要があるからです。

ですから、懲戒処分の原因となった言動との関係で現在の職務がふさわしくないと認められ異動が行われるような場合には、不当とはいえない場合が多いものです。

たとえば、経理担当者が会社の金銭を500円横領した場合、重い懲戒処分の対象とはならないかもしれませんが、経理以外の部署に異動させるのが適切といえます。

しかし、勤続年数が長く会社に貢献している営業部長が、経費を500円ごまかしただけで役職を外されるような異動は明らかに不当でしょう。

 

<目的との関係で>

懲戒処分、人事考課、人事異動、それぞれに目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課や人事異動の目的とは関係なく、当然のように制裁的な人事考課や人事異動が行われるのは不当です。

ただ、こうした会社の行為の不当性を証明し、社員から会社に損害賠償の請求をするのは、証拠集めが困難なためむずかしいことも事実です。

 

2019.07.20. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分についての法律>

使用者が労働者を懲戒できる場合でも、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第15条〕

つまり、就業規則に具体的な規定があるなど、懲戒処分を行うための他の条件がすべて満たされていたとしても、「客観的に合理的な理由がある」「社会通念上相当である」という2つの条件を満たしていない場合には、懲戒権の濫用となり、その懲戒は無効だということです。

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

  

<懲戒権濫用法理>

労働契約法第15条には2つの条件のみが示されています。

しかし裁判では、次のような条件すべてを満たしていないと、懲戒権の濫用とされ、懲戒処分が無効となって、会社が懲戒対象者に対して損害賠償の責任を負うことがあります。

・懲戒対象者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・不都合な事実が発生した後で懲戒処分の取り決めができたのではないこと。

・過去に懲戒処分を受けた行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・懲戒対象者に事情を説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<証拠不十分で行った懲戒解雇>

懲戒処分の理由となる事実が真実かどうか確認できないうちに、懲戒解雇とした場合には、それが不当とされ無効となるのでしょうか。

この場合には、最初に示した労働契約法第15条の「客観的に合理的な理由」が問題となります。

「ある店舗の従業員がお客様に暴力を振るった」というウワサが広まったとします。被害者が誰なのかわかりませんし、警察が捜査する動きも見られません。この時点で、懲戒処分を行うのは不当です。

社内に嫌いな人がいたとき、その人について悪いウワサを流せば会社に処分してもらえるとしたら恐ろしい話です。ウワサは「客観的に合理的な理由」にはならないのです。

しかし、警察の捜査が始まり、送検されたことが新聞に掲載されたという段階では、全体の事情から「客観的に合理的な理由」があるといえます。

この場合、後で無実が証明されたとしても、会社は不当な処分をしたことにはならず、損害賠償を請求されることもないでしょう。

犯罪行為が疑われる場合の懲戒処分について、就業規則に定める場合には、その条件を明確に示しておきたいものです。

 

2019.07.19. 解決社労士 柳田 恵一

<障害者数の不適切な計上>

障害者雇用率制度に関連して、多くの行政機関で、障害者である職員の不適切な計上があり、法定雇用率を達成していない状況が長年にわたって継続していた事実が報道され、国民の関心を集めました。

国が働き方改革を推進し、一億総活躍社会の実現を目指している中での報道ですから、かなりのインパクトがありました。

しかし、障害者雇用・就業の促進は、最近始まったことではなく長い歴史があります。

以下は、その概要です。

 

<身体障害者雇用促進法の制定>

諸外国で障害者の雇用法が制定されていたこと、ILO(国際労働機関)で職業更生勧告が採択されていたことなどを踏まえ、昭和35(1960)年、「身体障害者雇用促進法」が制定されました。

主に職業紹介、適応訓練、雇用率制度について定められ、雇用率制度については、公的機関は法的義務、民間企業は努力義務とされました。

 

<法定雇用率の法的義務化>

身体障害者の雇用が不十分なため、昭和51(1976)年、全ての企業に法定雇用率を義務付け、雇用納付金制度を創設しました。

このときの法定雇用率は1.5%でした。

 

<障害者の雇用の促進等に関する法律>

昭和56(1981)年の国際障害者年をきっかけに、法律の制定時から課題となっていた知的障害者に対する雇用率の適用に向けた動きが盛んになりました。

また、障害者の離職率の高まりについても対策が求められました。

そこで、昭和62(1987)年、法律の名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」とし、対象範囲を身体障害者から知的障害者や精神障害者を含む全ての障害者に拡大しました。

これによって、職業指導、職業訓練、職業紹介などの職業リハビリテーションの推進に必要な改正や、知的障害者を身体障害者と同様に実雇用率の計算に加える改正が行われました。

 

<知的障害者の雇用の義務化>

知的障害者の雇用が進展し、身体障害者の雇用の促進にも影響を及ぼすようになっていたことから、平成9(1997)年、知的障害者が雇用義務の対象とされ、障害者雇用率の算定基礎に加えられました。

 

<精神障害者の雇用対策の強化>

精神障害者の就業や在宅就業障害者が増加してきたため、平成17(2005)年には、精神障害者(手帳所持者)を実雇用率に算定できるようにしました。

また、在宅で就業する障害者に対して仕事を発注する事業主に、特例調整金などを支給するなどの改正が行われました。

 

<短時間労働者への適用拡大>

中小企業では障害者の雇用が低調に推移し、一方で短時間労働に対する障害者のニーズが高まったため、平成20(2008)年、障害者雇用納付金制度の適用対象が常用雇用労働者が300人以下の企業に拡大されました。

また、障害者の雇用義務の基礎となる労働者と雇用障害者に、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者が追加されました。

 

<障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務>

「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

①雇用の分野での障害者差別の禁止

②雇用の分野での合理的配慮の提供義務

③相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となりました。

対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となりました。

 

<精神障害者の雇用義務化>

平成30(2018)年4月1日から、障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わりました。

法定雇用率が引き上げられ、精神障害者である短時間労働者の算定方法が変わりました。

 

2019.07.18. 解決社労士 柳田 恵一

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

「年俸制の従業員が長期にわたって入院したら年俸を下げることはできるのか」というご質問を受けたことがあります。

月給制の従業員が長期間入院した場合に、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これは、明らかに不合理であり社会通念上も相当ではないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期間入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、球団との間で一般的な労働契約を交わしているわけではありません。

ところが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社もあります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。

年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。

そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

また、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)にも、年俸制を想定した規定はありません。

ですから、予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを、会社が独自に作っておいたのが失敗なのです。

 

<年俸制にするのなら>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。

毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。

残業手当、深夜手当、休日出勤手当など割増賃金を支払う必要もあります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。

法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているだけです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという前例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。

この場合には、社会保険労務士などの専門家に相談しながら、慎重に事を進める必要があるでしょう。

 

2019.07.17. 解決社労士 柳田 恵一

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

 

<パワーハラスメント対策の法制化>

職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

【雇用管理上の措置の具体的内容】

・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発・苦情などに対する相談体制の整備・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等

 

今後、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて検討される予定です。

 

パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。

 

<職場の範囲>

「職場」とは業務を遂行する場所を指しますが、通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含めることが指針で示される予定です。

(「労働政策審議会建議」では、このようにするのが適当とされています。)

 

<優越的な関係>

「職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書」では、パワハラを受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われることを指しています。

例えば、以下の場合も含むとされています。

・職務上の地位が上位の者による行為

・同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの

部下が上司に何度もパソコンの使い方を教えているのに、上司が同じところでつまずき、部下が上司を馬鹿にするようなことがあれば、職場のパワーハラスメントに該当しうることになります。

 

2019.07.16. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働白書>

令和元年7月09日、厚生労働省は、当日の閣議で「平成30年版厚生労働白書」(平成29年度厚生労働行政年次報告)を報告し、これを一般に公表しました。

「厚生労働白書」は、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどについて、広く国民に伝えることを目的にとりまとめられたもので、平成30年版は、平成13年(2001年)の「厚生労働白書」発刊から数えて18冊目となります。

平成30年版厚生労働白書は2部構成となっています。

例年異なるテーマでまとめている第1部では「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」と題し、誰もが地域で役割を発揮し居場所を持ち、「包摂(ほうせつ)」される社会を実現するための視点を提示しています。

 

<今回の白書の概要>

 

【第1部】

テーマ「障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に」

障害や病気を有する方などに焦点を当て、障害の特性や病状などの事情に応じ、就労や社会参加を通じて自分らしく生きることができる社会の実現に向け、現状や国民の意識、事例の分析を整理しています。そのうえで、全ての人が活躍できる社会の実現に向けた方向性を示しています。

 

【第2部】

テーマ「現下の政策課題への対応」

子育て、雇用、年金、医療・介護など、厚生労働行政の各分野について、最近の施策の動きをまとめています。

 

<一億総活躍社会>

少子高齢化と人口減少という、これまでに経験したことのない危機に対処するため、政府は、「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月閣議決定)において、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、障害や難病のある方も、家庭で、職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが包摂され活躍できる「一億総活躍社会」を目指すこととした。

一億総活躍社会、すなわち、全ての人が包摂される社会が実現できれば、安心感が醸成され、将来の見通しが確かになり、消費の底上げ、投資の拡大にもつながる。

また、多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出が図られることを通じて、経済成長が加速することが期待される。

この一億総活躍社会を実現するためには、障害者、難病患者、がん患者等が、希望や能力、障害や疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境を整備することが必要である。

病気や障害などを有していても、自己の能力を最大限に発揮し、個性を活かして生きていけるようにすることは、本人の人生の充実という観点から大切である。

そして、働くことを始めとする社会参加の意欲のある人誰もが、その能力を発揮できるような環境づくりを行うことは、社会保障の支え手を増やす観点からも、我が国の経済活力の維持にとっても重要である。

人生において病気や障害などを有する可能性は誰にでもある中で、様々な選択肢が用意され、それを支える仕組みがあることが、多様な人々が「支え手」「受け手」という関係を超えて支え合い、多様性を尊重し包摂する社会、誰もが安心して暮らせる社会の実現につながる。

 

少子高齢化と人口減少により、このままでは日本経済も社会そのものも、先細りになってしまう恐れがあります。

政府あるいは政治の力だけでは、どうすることもできません。

国民の一人ひとりが経済活動や社会活動に積極的に参加し、日本全体を盛り上げていく必要があります。

また、こうしたことを通じて、一人ひとりが生きがいを感じ、活き活きと暮らしていくことにつながります。

 

2019.07.15. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準監督官の任務>

労基署が立入調査(臨検監督)をする場合、通常その任務にあたるのは労働基準監督官です。

労働基準監督官の基本的任務は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者などを監督することにあります。

労働基準監督官は、監督を実施し法令違反が認められた場合には、事業主などに対し文書で指導し是正させるのです。

また、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止などの行政処分の実行も行っています。

 

<労働基準監督官の権限>

こうした任務を全うするため、労働基準監督官には労働法により臨検(立入調査)権限を始め、帳簿・書類などの検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大・悪質な法令違反を犯した事業者などに対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<立入調査(臨検監督)>

労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。

例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談をきっかけとして、また、問題が懸念される事業場などをあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。

なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則として予告することなく事業場に監督を行っています。

立入調査(臨検監督)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条(30万円)、労働安全衛生法第120条(50万円)、最低賃金法第41条(30万円)など〕

 

<実際に立入調査を拒否したら>

たとえば、残業代の不払いが発覚することを恐れ、立入調査を拒否して、30万円の罰金を支払ったとしても、2年分の残業代を払うよりは安くて済む計算です。

ここの「2年分」というのは改正民法に合わせて、労働基準法も「5年分」に改正されそうです。

来春からは、5年前に遡って未払い賃金を支払うよう労働者から請求されるようになるでしょう。

ますます30万円なら安いようにも思えます。

もし、これで済むのなら、多くの企業が立入調査を拒否してしまうかもしれません。

しかし、それ相当の容疑が固まれば、労働基準監督官による捜索・差し押えなど強制捜査が行われるでしょうし、そこまでいかなくても聞き込みや張り込みは可能です。従業員が何時に職場に入り何時に出たかを確認したり、直接従業員に話を聞くことはできるのです。

それに、会社が労働基準監督官を追い返したとなれば、直接労基署に実情を訴えに行く従業員も出てくるでしょうし、多数の退職者が出るかもしれません。

ネット上でも、あることないことウワサが広がることでしょう。

そもそも悪質なことをしていなければ、立入調査を拒否する必要などないのですから、拒否そのものがアウトです。

 

2019.07.14. 解決社労士 柳田 恵一

<一般の社会保険加入基準>

会社で働く人は、一定の条件を満たした場合、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に入らなければなりません。会社には、入らせる義務があります。

その一定の条件とは次の3つです。

・会社が社会保険に加入している事業所(適用事業所)であること

・正社員など正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数があること

・臨時、日雇い、季節的業務で働く人ではないこと

 

<大企業での加入基準>

平成28(2016)年10月から、社会保険の適用対象者が拡大されました。

週20時間以上働く短時間労働者で、厚生年金保険の加入者(被保険者)数が常時501人以上の法人・個人・地方公共団体に属する適用事業所および国に属する全ての適用事業所で働く人も、厚生年金保険等の適用対象となっています。

 

【平成28(2016)年10月から拡大された適用対象者】

勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満で、以下の①~⑤すべてに該当する人

① 週の所定労働時間が20時間以上あること

② 雇用期間が1年以上見込まれること

③ 賃金の月額が8.8万円以上であること

④ 学生でないこと

⑤ 被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること

⑤の企業を特定適用事業所といいます。

 

<中小企業への基準適用>

平成29(2017)年4月からは、加入者(被保険者)数が常時500人以下の企業であっても、労使合意に基づき申出をした企業では、上記の基準が適用されます。

 

【平成29(2017)年4月から拡大された基準適用企業】

次の同意を得たことを証する書類(同意書)を添付して、本店または主たる事業所の事業主から所轄の年金事務所に「任意特定適用事業所該当/不該当申出書」を提出した企業

 

・従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合の同意

 

・こうした労働組合がないときはA、Bのいずれかの同意

A.従業員の過半数を代表する者の同意

B.従業員の2分の1以上の同意

このような手続きをした企業を任意特定適用事業所といいます。

 

企業が新人を採用する際には、社会保険の加入について十分な説明を行うはずです。

しかし、加入基準が複雑になってきていますので、採用される側としても、「前に働いていた会社と同じ条件で働くのだから、社会保険には入らないのだろう」という先入観をもたずに、きちんと確認する必要があります。

 

<実践的な社会保険加入基準>

一般の社会保険加入基準が適用される場合、雇い入れ通知書、労働条件通知書、労働契約、就業規則などから、今後1年間の勤務を予測して、正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数が見込まれるなら、社会保険に加入となります。

また、この基準で対象外とされても、現実に3か月連続で正規職員の4分の3以上の労働時間と労働日数の実績が発生すれば、年金事務所では社会保険への加入を指導します。

 

<社会保険に入る入らないの損得>

プライベートのケガや病気で働けないとき、健康保険なら傷病手当金によって賃金の67%が保障されます。この傷病手当金は、国民健康保険にはありません。

年金は、国民年金よりも厚生年金のほうが、将来受け取る老齢年金も、万一の場合に受け取る障害年金も金額が多いのが一般です。

保険料の負担は、社会保険なら会社が半分負担で、国民年金や国民健康保険では全額自己負担です。それでも、給料から控除される社会保険の保険料は多額だと感じられます。会社にとっては、従業員が社会保険に入ると会社の保険料負担が発生しますから、入って欲しくないと考えるかもしれません。

結局、将来の生活や万一のことを考えると社会保険に入るのが得で、今の生活費を重視するならば入らないほうが楽といえそうです。

 

<シフト調整が正当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週28時間、週4日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険には入らないことになります。

労働契約上も、社会保険に入らないことになっているので、会社も従業員も入らない前提です。この場合に、前提が崩れないように、労働契約の範囲内でシフト調整するのは正しいことです。

 

<シフト調整が不当な場合>

たとえば、正社員の所定労働時間が1日8時間、1週40時間の場合に、労働契約で所定労働時間が1日7時間、1週35時間、週5日勤務のシフト制で働く従業員は、社会保険に入ることになります。

もし、社会保険料の負担を逃れるなどの目的があって、会社が社会保険に入る手続きを怠れば、それ自体違法ですし、シフト調整は単なる悪あがきにすぎません。

また、最初から労働条件通知書(雇い入れ通知書、雇用契約書)を従業員に交付しないのは、それ自体違法ですし、社会保険加入基準を満たさないようにシフト調整をするというのはおかしなことです。年金事務所や会計検査院の調査が入っても指摘を逃れるかもしれませんが、労働基準監督署の調査(監督)が入ればアウトです。

 

<結論として>

シフト調整して社会保険に入れないことがあったとして、それが正しいのか、それとも不当なのかは、労働契約の内容次第だということになります。

 

2019.07.13. 解決社労士 柳田 恵一