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2020/07/09|1,098文字

 

<建設会社と社長を書類送検>

青梅労働基準監督署は、建設会社とその代表取締役社長を、労働安全衛生法違反(労災隠し)の容疑で、東京地方検察庁立川支部に書類送検したことがあります。

この事件では、会社と社長の両方が書類送検されています。

こうした場合には、会社も社長個人も信用を失ってしまいます。

 

<逮捕・送検の理由>

労災事故は、JR五日市線熊川駅と東秋留駅間の多摩川に架かる橋梁下右岸河川敷(東京都あきる野市平沢)での立木伐採工事で起こりました。

このとき、建設会社の労働者Bが伐採した立木の幹が落下して、付近で作業を行っていた同社所属の労働者Aの頭部から背部に激突したのです。

その結果Aは、3か月の治療を要する怪我を負い、負傷の翌日から休業しました。

本来であれば、青梅労働基準監督署長に遅滞なく「労働者死傷病報告書」を提出しなければなりませんでした。

しかし、この建設会社は、災害発生からおよそ5か月が経過してから報告書を提出しました。

これが逮捕・送検の理由です。

労災事故のうち、被災者が3日を超える休業をした場合には、「労働者私傷病報告書」の提出が義務付けられています。

しかし、頻繁に提出が必要となる書類ではありませんから、提出義務すら認識されていないことがあります。

それでも、遅滞なく提出しなければ、意図的に提出しないものと見なされ、労災隠しと評価されうるのです。

 

<逮捕・送検の背景>

行政の立場からすると「労災隠し」が行われることは、災害原因究明、同種災害の防止対策の確立など、労働者の安全を確保する機会を失わせるほか、被災労働者が適正に労災補償を受ける権利を侵害することに繋がるということになります。

そこで、労働基準行政では「労災隠し」の排除を推進し、あらゆる機会を通じて事業者に「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しています。

もちろん、こうした行政の動きは、一般には分かりにくいものですが、行政が「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しているにもかかわらず、きちんと提出しなければ、それは労災かくしであると評価されやすいのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。

しかし、労働局や労働基準監督署がどのような手続について周知・啓発を強化しているかについてまでは、気が回らないかもしれません。

それでも、こうしたことに目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となっていることに気付きません。

会社を守るためにも、労災が発生したときには、必要な手続きについて、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/08|1,826文字

 

<違法残業の発生>

次のような条件下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・労働基準監督署長に三六協定の届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出方法が民主的ではないなどにより三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

さらに、労働基準法の改正により、新型の違法残業も登場しています。

 

<新型の違法残業>

これまでは、三六協定の適正な届出をしていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、違法になることはありませんでした。

これは、残業時間について、法律による上限が定められていなかったためです。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられました。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間) 

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。

これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

また、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

 

<パン製造販売業者を書類送検>

亀戸労働基準監督署は、労働基準法違反容疑で、パン製造販売業を営む会社の元東京工場エリアマネージャー(工場長)と元工場サンドイッチ部門チームリーダー(部門長)を東京地方検察庁に書類送検したことがあります。

これでわかることは、社長などの経営者ではなくても「使用者」の立場にある者は、長時間労働を行わせたことについて責任を負うということです。

また、サービス残業が発生した場合に、勤務時間の集計をごまかして残業代未払いの原因を作った工場長や部門長が責任を負うこともあるということです。

 

<逮捕・送検の理由>

逮捕・送検の具体的な理由は次の2つです。

東京工場サンドイッチ部門に所属するパートタイム労働者3名(1日の所定労働時間6時間)に対し、最長で月139時間に達する時間外労働を行わせ、三六協定の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていたこと。

また、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のうち3割程度の支払しかしていなかったこと。(1月当たり最大で約11万円の時間外手当の不払が発生)

これでわかることは、正社員だけでなくパート社員などについても、労働基準法の順守が求められるということです。

 

<逮捕・送検の背景>

厚生労働省では、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止対策の強化を喫緊の課題として、平成26(2014)9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減対策推進本部」が設置され、省をあげて取り組むようになりました。

各労働基準監督署でも、過重労働等の撲滅に向けた対策推進のため、著しい過重労働により労働基準法違反が認められるなど重大または悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正な対応を強化することとしています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。

しかし、改正が確実になってから対応したのでは、予算取りや人員配置の問題があり、遅れをとってしまうこともあります。

やはり、法改正情報の先取りはライバル企業に負けないためにも必要です。

また、国の政策転換にも目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となったことに気付かないものです。

会社を守るためにも、法改正や政策転換の情報に明るい社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/07|1,245文字

 

<労災保険の給付>

労災事故で、不幸にして従業員が亡くなった場合には、葬祭料(葬祭給付)の支給があります。

支給対象は、必ずしも遺族とは限りませんが、通常は葬祭を行うにふさわしい遺族が該当します。

葬祭を執り行う遺族がなく、社葬として、亡くなった従業員の会社で葬祭を行なった場合は、葬祭料(葬祭給付)はその会社に対して支給されることになります。

葬祭料(葬祭給付)の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額ですが、この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分が支給額となります。

ここで、「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。

そして、「平均賃金」とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3か月間にその従業員に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額のことです。

請求手続は、所轄の労働基準監督署長に、葬祭料請求書(様式第16号)又は葬祭給付請求書(様式第16号の10)を提出して行います。

死亡診断書、死体検案書、検視調書又はそれらの記載事項証明書など、従業員の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類の添付が必要です。

ただし、併せて遺族(補償)給付の請求書を提出する際に添付してある場合には、必要ありません。

 

<健康保険の給付>

業務外の原因で、健康保険の加入者(被保険者)が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。

亡くなった被保険者により生計を維持されていた人が、埋葬を行う場合に「埋葬料」として5万円が支給されます。

ここで、「生計を維持されていた人」とは、被保険者によって生計の全部又は一部を維持されていた人であって、民法上の親族や遺族であることは問われません。

また、被保険者が世帯主であるか、同一世帯であるかも問われません。

埋葬料を受けられる人がいない場合は、実際に埋葬を行った人に、埋葬料(5万円)の範囲内で実際に埋葬に要した費用が「埋葬費」として支給されます。

「実際に埋葬に要した費用」とは、霊柩車代、霊柩運搬代、霊前供物代、火葬料、僧侶の謝礼等が対象となります。

さらに、扶養家族(被扶養者)が亡くなったときは、被保険者に「家族埋葬料」として5万円が支給されます。

手続は、「健康保険埋葬料(費)支給申請書」を保険者に提出して行います。

 

<健康保険資格喪失後の給付>

被保険者がその資格喪失後に亡くなり、次のいずれかに該当する場合は、埋葬料または埋葬費が支給されます。

・被保険者だった人が、退職などで資格喪失後3か月以内に亡くなったとき

・被保険者だった人が、資格喪失後の傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている間に亡くなったとき、あるいは継続給付を受けなくなってから3か月以内に亡くなったとき

 

解決社労士

2020/07/06|935文字

 

<労災保険は適用されない>

パワハラによってケガをさせた場合、労災保険は適用されません。

パワハラでケガをさせるのは、本来の業務に含まれませんし、本来の業務に通常伴うものでもなく、また関連するものでもないからです。

 

<パワハラ加害者の責任>

暴力によって、相手にケガをさせれば傷害罪が成立します。

これは、最高刑が懲役15年という重い犯罪です。〔刑法第204条〕

また、これとは別に、被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されるでしょう。〔民法第709条、第710条〕

刑事責任と民事責任は別問題ですから、たとえ国家から罰金刑を科されたとしても、これとは無関係に損害賠償責任を負うわけです。

さらに、会社から懲戒処分も受けるでしょう。 

 

<会社の責任>

そして会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、使用者責任を負います。〔民法第715条〕

人を雇うというのは、大きなリスクを伴います。

会社は、それを承知で雇っているわけですし、採用選考を慎重にしたり、教育訓練を実施したり、問題の発生を未然に防ぐ手段を持ち合わせています。

さらに会社は、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法第415条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このように、パワハラによるケガの治療費は、被害者から加害者に対しても、また会社に対しても請求することができます。

会社は、被害が発生したら賠償請求に応ずれば良いということではなく、パワハラそのものが発生しないようにする義務を負っています。

具体的には、パワハラの定義を就業規則などで明確にして禁止し、従業員を教育してその発生防止に努め、発生した場合には懲戒処分が行えるように具体的な懲戒規定を置くことも必要です。さらに、パワハラを行う従業員に適正な評価をし、役職者から外せるような人事制度も必要ですし、問題が小さいうちに被害者が相談できる窓口の設置も必要です。

信頼できる社労士を相談窓口に指定し、具体的な施策の推進についても相談されてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/07/05|966文字

 

<曖昧さの残る懲戒規定>

どんなに良くできた懲戒規定でも、「平素の勤務態度その他情状によっては」「しばしば」「数回にわたって」「著しく」などあいまいな表現が残るものです。

これらの抽象的な表現は、それぞれの案件の具体的な事情に応じて、適切な結論を出すためには必要なものでもあります。

しかし、解釈に幅があるだけに、平等で公平な運用はむずかしいものです。

 

<懲戒対象者を納得させるのは難しい>

なにしろ、懲戒処分を検討しなければならない事件は、日常的に起こるものではありません。

むしろ、滅多に起こりません。

ですから、その場限りの判断を繰り返していると、懲戒処分を検討している対象者から「今まで遅刻で懲戒処分を受けた社員はいないのに、なぜ自分だけ懲戒処分を検討されるのか?」とたずねられても、明確な回答ができない恐れがあります。

また、出勤停止の懲戒処分があったときに、別の社員から「自分の時は始末書を書かされただけで済んだのに」という疑問が出されたら、上手に説明できないこともあります。

これでは、懲戒処分を受けた社員が納得できず、心から反省することもなくなってしまいそうです。

さらに、本人以外の社員が納得できないのでは、会社に対する不信感が高まってしまいます。

 

<徹底した記録の保管が必要>

こうしたマイナスの効果が発生しないように、懲戒処分があったときには、懲戒対象者、懲戒対象事実、懲戒処分の内容について、詳細な記録を残すことが必要です。

それだけでなく、懲戒処分には至らず検討されただけの案件についての記録も保管が必要です。

さらに、懲戒処分が労働局の斡旋の対象になったり、労働審判の対象になったりすれば、その経緯と結論の資料も一緒に保管する必要があります。

ここまでしないと、平等で公平な懲戒処分は実現しませんし、疑問が出されたときに納得のいく説明をすることができないのです。

せっかく、時間と労力、人件費をかけ、何より大変神経をすり減らして行う懲戒処分です。

効果の最大化を図るためには、資料保管の労を惜しんではなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/04|1,302文字

 

<賞与か給与か>

成績不良という場合、その立場に見合った成果が上げられなかったのであれば、一般には、人事考課を通じて賞与の金額に反映されます。

しかし、何期にもわたって成果が上がらない、教育しても成長しない、そもそも向上心が無いという場合、他の社員との公平から、給与の減額を検討せざるを得ないこともあります。

 

<個別の合意による場合>

対象となった社員本人から個別の合意があれば、原則として給与の減額は可能です。

 

【労働契約法第3条第1項:労働契約の原則】

労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

「対等の立場における合意」ということですから、多数の社員で取り囲んで合意を迫ったり、本人が明確に拒んでいるにも関わらず繰り返し合意を求めたり、誤解を招くような説明をして合意を得たとしても、錯誤・詐欺・強迫による意思表示であったとして、意思表示が取り消されることもありえます。〔民法第94条、第95条〕

ですから、本人に対して十分な説明を尽くし、納得してもらったうえで合意を得ることが必要です。

「合意しなければ解雇になる」というような説明は、錯誤・詐欺・強迫のいずれにも該当しうるので、避けなければなりません。

また、就業規則に、給与の減額を否定する規定があったり、給与の減額を想定する規定が全く無かったりすれば、労働者に不利な労働契約に優先して就業規則が適用されることとなり、給与減額の労働契約変更が無効とされることもありえます。

 

<就業規則の変更による場合>

制度と就業規則を変更して、就業規則の適用という形で、一定の基準に基づき該当する社員の給与を引き下げることも可能です。〔労働基準法第89条第2号〕

ただし、就業規則に定められた労働条件は、合理的なものであることが必要ですし、就業規則は周知されていなければなりません。〔労働契約法第7条〕

給与については、概要のみを就業規則に定めておき、詳細は内規・運用細則などに定めて非公開とすることも行われていますが、これでは周知されていることにはなりません。

そして、合理的といえるためには、どのような条件でいくらの減額となるのかが明確であり、その要件・効果が合理的であって、給与減額の手順も合理的である必要があります。

何パーセント以内の減額であれば合理的であるというような、客観的な基準はなく、具体的な事情を踏まえて判断することになります。

また、一度に減額するのではなく、激変を緩和するため数年間は調整給を支給し、段階的に調整給を減額するなども、合理性を確保するために有効な手段です。

本人としても、調整給のある間に昇給して、元の給与水準に戻れるよう目標が明確になります。

 

<実務的な視点から>

成績不良を理由に給与を減額する場合、人件費削減を意図しているのではないか、退職に追い込むための嫌がらせではないかなど疑われたのでは、訴訟トラブルに発展しかねません。

給与の減額については、就業規則に具体的な定めを置くとともに、対象となる社員から個別の同意を得ることによって、トラブル発生のリスクを最小限に抑えておきたいものです。

 

解決社労士

2020/07/03|748文字

 

<会社の利益の確保>

会社に損害が発生しないようにするには、社員にして欲しくないことを、懲戒規定にもれなく定めておかなければなりません。

しかし、想定外のことで会社に損害が発生することもあり、すべてを規定しておくことは困難です。

SNSやブログへの悪ふざけの投稿では、この問題がクローズアップされました。

 

<包括的な規定>

懲戒規定の中に「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」という条文を見ることがあります。

こうしておけば、すべてを網羅しているようにも見えます。

しかし、「悪いことをしたら処分します」という規定を置くようなもので、あまりに具体性を欠いていますから有効性は疑わしいです。

こうした規定を根拠に懲戒処分を行うことは、社員に対する人権侵害の恐れが大きいといえます。

それだけではなく、このような規定があることを知った社員は、委縮してしまい伸び伸びと活躍することができなくなってしまうでしょう。

 

<解釈が分かれる規定>

「会社の名誉を傷つけ、業務に悪影響を及ぼす行為」が懲戒処分の対象に規定されているとします。

この規定の中の「、」が曲者(くせもの)です。

なぜなら「、」は、「または」の意味にも「かつ」の意味にも解釈されてしまいます。

「または」と解釈すれば処分の対象は増え、「かつ」と解釈すれば処分の対象は減ります。

このようなあやふやな規定がある場合には、懲戒処分が検討されている対象社員に有利に解釈しなければなりません。

そうしないと、人権侵害となる恐れが大きいからです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/02|771文字

 

<懲戒規定を置く目的>

会社に懲戒規定を置く目的として、次のようなものが挙げられます。

・懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正する。

・懲戒が行われることで、他の社員は道義感が満たされ安心して働ける。

・懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できる。

・懲戒規定があることで、社員全員が不正行為を思いとどまる。

一般には、行為者を懲らしめる目的だけがクローズアップされがちですが、このように他の目的も重要です。

 

<相反する目的>

まず、懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正するには、起こしてしまった言動と懲戒とのバランスが大事です。

懲戒処分が軽すぎても反省しませんし、重すぎると会社に対する反感が生まれてしまいます。

つぎに、懲戒が行われることで他の社員の道義感が満たされること、良くないことをした社員がきちんと懲戒されることで、他の社員は同様の事態は発生しないと考え安心して働けるようになるという点では、懲戒処分がやや重い方がその目的が達成されやすいでしょう。

そして、懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できるようになるという点では、懲戒処分がやや軽い方がその目的が達成されやすいでしょう。

さらに、懲戒規定を置いて社員全員に不正行為を思いとどまらせるという目的では、処分が重ければ重いほど効果があると考えられます。

このように、懲戒処分をどの程度の重さにするかは、どの目的を重視するかによって判断が変わってきます。

もちろん、あまりに重い懲戒は不合理とされ有効性が疑われます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めている懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/01|1,233文字

 

<新型コロナウイルス感染症拡大の影響>

働き方改革の一環で、在宅勤務などテレワークの普及が、厚生労働省を中心に進められてきました。

これにより、大企業では在宅勤務の導入が進んできたところですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、中小企業でも在宅勤務を取り入れる企業が急速に増えました。

 

<厚生労働省のガイドライン>

厚生労働省は、早くも平成20(2008)年には、在宅勤務のためのガイドラインを策定し公表しています。

ガイドラインでは、「在宅勤務には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用される」と説明しています。

労働者災害補償保険法が適用されるわけですから、在宅勤務にも労災保険が適用されることになります。

 

<労災認定の事例>

厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」というパンフレットには、業務災害として認定されるものとして、次のような例が掲げられています。

 

【事例】

自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案。これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められる。

 

<業務上といえるための条件>

「業務上の事由による」と認定されるためには、「業務起因性」が無ければならず、業務起因性が成立するためには、その前提として「業務遂行性」が無ければならないとされています。

ここで、「業務遂行性」とは、労働者が労働契約等に基づいて事業主の支配下にある状態をいい、「業務起因性」とは、傷病が業務に起因して生じたことであり、業務と疾病との間に相当因果関係が存在することをいいます。

 

<業務上の負傷>

「業務上の負傷」といえるためには、業務に伴う危険が現実化して生ずる災害であることが必要とされます。

業務そのものの作業中に発生した災害であれば、原則として「業務上の負傷」といえます。

生理的行為(トイレ・水分補給など)や反射的行為は、本来業務上の行為ではありませんが、業務に付随する行為として、作業からの離脱は無かったとされます。

この他、業務の遂行上必要な行為、業務の担当者として合理的な行為、業務遂行中にありがちな些細な私的行為、作業の準備行為・後始末行為などの最中に発生した災害も、「業務上の負傷」とされます。

具体的な判断にあたっては、数多く発出されている通達の参照が必要となることも多いでしょう。

 

<実務での対応>

在宅勤務中の傷病が、業務災害とされ労災保険が適用されるのか、私的行為とされ健康保険が適用されるのか、その峻別ができないのでは、速やかな対応が困難となってしまいます。

具体的な労働時間の管理方法、作業場所の特定、業務報告の方法などを明確に定めておき、在宅勤務を行う労働者本人と労災手続を行う担当者に周知しておくことが不可欠となります。

 

解決社労士

2020/06/30|731文字

 

<損害の大きさに見合った処分>

社員の不都合な行為によって会社が被る損害としては、会社存続の危機、業務の妨害、取引の不正、欠勤・遅刻・早退、金銭・備品・設備の損失、取引関係の消滅、金融機関・取引先・顧客の信用毀損、社員の安全侵害(ハラスメントを含む)、情報の不足、誤った情報の伝達などなど、考えただけでも心配になるくらい多くの種類があります。

同じ種類の損害でも、その損害が大きければ、より重い懲戒処分が検討されることになります。

 

<会社により違う評価>

すべての損害が金銭に換算できるわけではありません。

ですから、「損害の大きさ」といっても、異なる種類の損害の間で大小を比べるのは困難です。

それだけではなく、会社の方針が「お客様第一」の場合と、「会社の利益第一」の場合とでは、同じ行為に対する評価が変わってきます。

またたとえば、社員がトイレに入り手を洗わずに出てきた様子をお客様に見られたとします。

その社員が飲食店の店員であった場合には、靴屋の店員の場合よりも会社のダメージが大きいことは明らかです。

つまり、損害の大きさに見合った処分を行うというときの「損害の大きさ」は、客観的に決まっているものではなく、その会社や職場ごとにある程度主観的に決めなければならないものです。

もともと就業規則というのは、ひな形をベースにしても、自社に合うように修正することが必要なのですが、特に懲戒規定についてはオーダーメイドの覚悟で大幅な修正が必要になるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/29|794文字

 

<目的による悪質性の違い>

同じく小学生を誘拐した場合でも、可愛いから連れて帰ったなら未成年者誘拐罪、身代金を要求する目的なら身代金目的誘拐罪です。

未成年者誘拐罪の法定刑が「3月以上7年以下の懲役」なのに対して、身代金目的が加わると「無期または3年以上の懲役」となります。〔刑法第224条、第225条の2

身代金を得る目的が加わると重く罰せられるのは、その危険性や行為に対する世間一般の非難のレベルが大きく異なるからです。

 

<懲戒規定でも>

自社で開発中の自動車について、故意に虚偽の性能検査報告書を作成し上司に提出したとします。

これだけでも、懲戒処分の対象となりうる行為であることは明らかです。

しかし、何を目的として行ったかによって、その悪質性には大きな違いが出てきます。

たとえば、次のような目的を想定することができます。

・上司をからかうつもりで、ほんの冗談で行った。

・上司を困らせる目的で行った。

・会社に損害を加える目的で行った。

・会社に損害を加えるとともにライバル会社から謝礼をもらう目的で行った。

会社の懲戒規定は、社内の刑法ともいうべきものですから、同じ故意による行為であっても、その目的によって処分の重さが異なってくるのが当然です。

ところが、「故意または重大な過失により会社に損害を与えたとき」というように、目的による区別をしていない規定も見られます。

たしかに、「平素の勤務態度その他情状によっては」一段低い処分にするという規定が置かれ、柔軟に対応できるようにしてある場合もありますが、これでは適切な懲戒処分を行いにくいので、場合を分けて規定すべきでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/28|1,717文字

 

<労働安全衛生法の努力義務>

受動喫煙の防止について、労働安全衛生法には次の規定が置かれています。

 

【受動喫煙の防止】

第六十八条の二 事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十八条第三号に規定する受動喫煙をいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

これは、事業者に対して、労働者の受動喫煙を防止するための措置を講ずるよう求めるものです。

しかし、文末が「努めるものとする」となっていることから分かるように、努力義務であって、これに違反しても罰則はありません。

 

<健康増進法の規制>

令和2年4月1日から、第二種施設(多数の者が利用する施設)では、屋内での喫煙が原則として禁止となりました。〔健康増進法第30条第1項〕

都道府県知事は、第二種施設の管理権原者等に対し、受動喫煙を防止するために必要な指導及び助言をすることができるとされています。〔同法第31条〕

また、第二種施設の管理権原者等が屋内での禁煙(同法第30条第1項)に違反して器具や設備を喫煙に使える状態で設置しているときは、都道府県知事が期限を定めて、器具や設備の撤去などを勧告することができます。

さらに、管理権原者等がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができますし、勧告に従った措置をとるよう命ずることもできます。

この命令に違反すれば、50万円以下の過料も規定されています。〔同法第76条第1項〕

会社の喫煙所が廃止された場合、それは会社の方針というよりも、これらの健康増進法の規制から止むを得ないことだと考えられます。

ただ、喫煙者の皆さんには、十分な説明が必要となります。

 

<労働時間の問題>

会社の喫煙所が廃止され、喫煙者が社外の喫煙所で喫煙するようになると、今までよりも離席時間が長くなります。

喫煙者は、上記の事情から「喫煙所を廃止した会社のせい」とは言えないでしょう。

非喫煙者からすると、喫煙者が離席中の賃金を減額されずにいるのは、不愉快に思えるかもしれません。

ところで、労働時間とは「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

「喫煙者が社外に出かけていき、そこで喫煙している」という事実に目を向けがちですが、何をしているかではなく、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価」されるかがポイントとなります。

喫煙していて会議の開始時刻に遅れて到着したり、電話番の最中に喫煙のため離席して顧客からの電話に対応できなかったりすれば、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」に職務を離脱していた、つまり、サボっていたということになります。

これらの場合には、欠勤控除や懲戒、人事考課での評価対象とすることなどが考えられます。

しかし、作業と作業との間に短時間の休憩がとれる状況で、喫煙のため離席し、何も支障が無かったのであれば、職務離脱とまではいえないでしょう。

 

<実務的な対応>

労働時間の定義からすると、自席にいなければ労働時間ではないとは言えませんし、自席にいれば労働時間だとも言えません。

「使用者の指揮命令下に置かれている」というのは、幅のある概念ですから、これを基本に会社のルールを定める必要があります。

1時間の休憩時間をどのように使うか、使用者と喫煙者とで話し合って決めている会社もあります。

たとえば、喫煙は休憩時間に行うこと、昼食休憩は40分、10分の喫煙休憩が2回といった約束にするのです。

この場合、休憩時間ですから、喫煙休憩中に呼び戻されることは無いルールとなります。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、テレワークが一気に進みました。

テレワーク中の喫煙についても考えなければなりません。

非喫煙者の意見も踏まえて、会社の実情に合ったルールを明確にしていくことが必要でしょう。

 

解決社労士

2020/06/27|1,132文字

 

<故意と過失>

同じく他人にケガを負わせた場合でも、意図的に殴りかかった結果なら傷害罪になりますし、人ごみで高齢者にうっかりぶつかって転倒させた結果なら過失傷害罪となりえます。

故意のある傷害罪は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」という重い法定刑なのに対して、過失傷害罪は「30万円以下の罰金または科料」で、しかも告訴がなければ公訴を提起されません。〔刑法第204条、第209条〕

同じ結果が発生した場合でも、わざと行ったのなら重く処罰され、うっかりなら軽く処罰されるのは、その危険性や行為に対する世間一般の非難のレベルが大きく異なるからです。

 

<懲戒規定>

会社の懲戒規定は、社内の刑法ともいうべきものですから、故意による行為は過失による行為よりも重い処分になるのが当然です。

ところが、「会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え(以下略)」というように、故意によるものと過失によるものを区別せず、1つの条文で定めていることがあります。

これでは適切な懲戒処分を行いにくいので、場合を分けて規定すべきでしょう。

 

<過失なら懲戒の対象外か>

大手鉄道会社が、大規模な事故を起こした運転手について、「過失なので懲戒処分を行わない」という発表をしたことがあります。

徹底的な再教育と適正な人事考課で対応するということでした。

なるほど、過失による行為は「悪いことをした」というよりも、適切な行動をとるための「注意力など能力が足りない」という評価のほうが正しいのかもしれません。

ミスを繰り返す社員に懲戒処分を繰り返しても効果は期待できません。

むしろ、教育研修が大事ですし、能力と貢献度に見合った処遇をするための人事考課制度が必要でしょう。

ただ、上場企業が「うちの会社は過失なら懲戒処分しません」と宣言してしまうのは、被害者が出た場合の本人・家族や世間一般の批判にさらされることになって危険だと思います。

 

<重過失>

普通の人ならありえないような極端な不注意で、わずかな注意で結果の発生を防げたハズの過失を、一般の過失と区別して「重過失」と呼ぶことがあります。

正常な人であれば、重過失を繰り返すということは考えにくいです。

また、重過失には故意と同程度の危険があり、非難の程度もハイレベルですから、懲戒処分によって反省と改善を求める必要性は高いのです。

このことから「故意または重過失により(以下略)」という規定も、多く見られますし妥当だと思います。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/26|1,090文字

 

<自宅待機は労働時間か>

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。

これは、就業規則などの社内ルールとは関係なく客観的に認定されるものです。

ところが、自宅待機は会社側の都合でとりあえず仕事が無く「もし仕事が入ったら出勤する約束で自宅にいてもらうこと」ですから、実際に仕事で呼び出されない限りは、労働者が自由に過ごして良いというのであれば、労働時間にはあたらず給与の支払い義務は発生しません。

たしかに、待機中は会社からの連絡に注意を払わなければならず、その前提として、すぐに連絡がつく場所にいなければならないのですが、使用者の指揮命令下に置かれているとはいえないのです。

 これは、懲戒処分の内容を検討するにあたって、調査している間、自宅待機命令を出しているのとは事情が違います。

 

<職場待機の場合には>

これに対し、労働者を職場で待機させ、仕事が発生したらすぐに業務に就くように命じてある場合には、その待機時間は、場所的な拘束があること、業務に備えた状態でいなければならないことから、使用者の直接の指揮命令が及んでいると評価され、労働時間にあたります。

したがって、職場待機の場合には給与の支払義務が発生します。

 

<待機手当の支給が望ましいケース>

その職場で、同じ職種のすべての社員が、当番制で平等に自宅待機を受け持つなら、自宅待機の負担込みで給与が設定されていると考えられます。

しかし、一部の社員だけが自宅待機の対象となったり、自宅待機の回数が個人ごとに片寄ったりしたのでは、不満が出てくるでしょう。

この場合には、待機手当の支給を考えたいものです。

 

<待機手当を設定するなら>

待機手当は給与の一部になりますから、就業規則などにその詳細を定める必要があります。

待機手当の金額は、定額あるいは基本給に対する一定割合などで定めます。

金額が少ないと、負担に見合っていないという不満が出ますし、金額が多すぎると、実際に勤務している場合とのバランスが悪くなってしまいます。

これについては、自宅待機することのある社員にヒアリングすると良いでしょう。

それだけではなく、自宅待機の時間帯、服装・髪・ヒゲなどの身だしなみ、外出や飲酒の制限など、待機手当を支払うからには、ある程度の基準を設定したいものです。

ただし、使用者の指揮命令下に置くことになる内容は含めることができません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一度、待機手当について定めてしまうと、後から労働者の不利益に変更するのは限定されてしまいます。

待機手当を導入する前に、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/25|801文字

 

<変則的な定時決定>

新型コロナウイルス感染症の影響などによって、従業員を一時的に休業(一時帰休)させていた場合の定時決定(算定基礎届)は、7月1日時点で一時帰休の状態が解消されているか、未だ解消されていないかによって、その扱いが異なっています。

なお、一時帰休による休業手当は、報酬に含めて計算します。

また、休業手当の対象となった日数は、支払基礎日数に含めてカウントします。

 

7月1日時点で一時帰休の状態が解消されている場合

一時帰休の状態が解消されているかどうかは、休業手当の支払が継続しているかどうかで決まります。

7月1日以降の分として、休業手当が支給されておらず、今後も支給される予定が無いのであれば、一時帰休の状態が解消されていると判断されます。

この場合には、休業手当を受けた月を除いて計算し、標準報酬月額を決定します。

たとえば、4月と5月の分として休業手当が支払われ、6月の分は休業手当が支払われなかった場合には、6月だけが通常の報酬となりますので、6月の1か月分だけで計算し、標準報酬月額を決定します。

ただし、4月、5月、6月のどの月も休業手当が支払われた場合には、これらの期間の報酬を計算対象とはせず、直近に改定された標準報酬月額をそのまま用います。

 

<7月1日時点で一時帰休の状態が解消されていない場合>

この場合には、休業手当が支払われた月を含めて計算し、標準報酬月額を決定します。

たとえば、4月は通常の報酬で、5月と6月に休業手当が支払われた場合には、4月から6月までの報酬の平均を計算して、標準報酬月額を決定します。

 

<従業員への説明>

いずれの場合も、変則的な定時決定となります。

算定基礎届の内容に誤りが無いか、念入りにチェックすることをお勧めします。

一方で、一時帰休があった場合の定時決定について、社内に広報するとともに、対象となった従業員には、個別の説明も行うようにしましょう。

 

解決社労士

2020/06/24|793文字

 

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法第5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫しながら精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になりえます。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、ニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/23|850文字

 

<違法解雇と呼べるもの>

労働基準法により違法とされ、罰則が規定されている解雇には次のものがあります。〔労働基準法第119条第1号〕

・業務災害を理由とする休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・産前産後休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・法定の解雇予告や解雇予告手当が無い解雇〔労働基準法第20条〕

これらの場合には、国家により使用者に刑罰が科されるという規定です。

この刑罰とは別に、労働者から使用者に対して、不法行為を理由とする損害賠償の請求がありえます。〔民法第709条〕

前者が刑事的な側面の話で、後者が民事的な側面の話です。

 

<不当解雇は無効>

一方で、不当解雇というのは、使用者が労働者を解雇したつもりになっていて、それが不当であるために無効とされる場合をいいます。

労働契約法に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されているのが不当解雇です。

罰則はありません。〔労働契約法第16条〕

解雇が有効になるのは、解雇を通告された本人が客観的に合理的な理由があると納得できる場合であって、しかも、世間一般の人々が「やむを得ない」と納得できる事情がある場合に限られるのです。

たとえば、毎日普通に勤務していた男性社員が、社長の好きなアイドルの歌を嫌いだと言ったがために、30日分の解雇予告手当を渡されると同時に解雇を通告された場合、違法解雇ではありませんが、不当解雇になります。

つまり、解雇予告手当を支払ったとしても、解雇が無効になるわけです。

こうした場合、使用者が罰せられることはないのですが、解雇が無効なのに退職扱いされた労働者は、使用者に対して慰謝料を含め損害の賠償を請求できます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

適法で有効な解雇は条件が厳しいものです。

無効とされない解雇を考える経営者も、不当解雇されたと感じる労働者も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/22|1,075文字

 

<整理解雇>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法律上の解雇制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。

 

<コロナショックによる収益悪化の特性>

新型コロナウイルスの感染者が出た店舗など、営業が制限された場合には、使用者が労働者の労務の提供を受けることができません。

しかし、多くの場合には、都道府県の要請を受けて営業を自粛した結果、収益の悪化が生じています。

現実の問題としては、休業せざるを得ない状況であったにも拘らず、法的には、使用者の判断で営業を自粛したのだから、必ずしも労務の提供を受けることが不可能であったとはいえなかったと評価されます。

この場合、整理解雇や雇い止めについては、多くの裁判を通じて確立された「整理解雇制限法理」が適用されます。

 

<整理解雇制限法理>

整理解雇制限法理というのは、次の4つの要素から、解雇の有効性を制限的に判断する考え方です。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく、総合的に判断されます。

1.経営上の人員削減の必要性

会社の財政状況に問題を抱え、新規採用などできない状態となったことです。

2.解雇回避努力の履行

配置転換や希望退職者の募集などを実施したことです。

3.解雇対象者の人選の合理性

差別的な人選は許されず、客観的な基準によらなければなりません。

4.手続の相当性

事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

 

<コロナショックの特殊性>

コロナショックの特殊性を理由に、整理解雇制限法理が特例的に緩和されるということはありません。

ただ、各要素について、整理解雇が有効と判断されやすい事情はありえます。

あらゆる助成や支援を受けても、なお財政状況に問題が残り、経営上の人員削減の必要性が高いと判断されるような場合や、配置転換しようがない場合が想定されます。

また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、ほぼ公知の事実となっていますので、この点について、詳細な説明は不要です。

ただ、会社の事業にどのような影響を与えたのか、具体的な内容の説明は必要になってくるでしょう。

 

解決社労士

2020/06/21|920文字

 

<偉い人はタイムカードが要らないか>

タイムカードは、出勤時刻、退出時刻、休日、休暇の記録を残し、労働時間を管理するために使われています。

会社によっては、休憩時間や外出時間もタイムカードに記録しています。

しかし、「労働時間を管理するのは何のためか?」と問われると、「残業手当の計算ができないと困るから」「サービス残業になるといけないから」という答えが返ってくることがあります。

タイムカードを使う目的を、残業手当の計算に絞ってしまうと、残業手当の付かない管理監督者にタイムカードは必要ないことになります。

そして、やがてはタイムカードの無いことが、役職者の一種のステータスになります。

 

<タイムカードが無い悲劇>

たとえば、部長が勤務中に心臓発作で倒れたとします。

過重労働による労災ではないかと疑われたとき、会社はこの部長が長時間労働ではなかったことをどのように証明するのでしょうか。

家族が「帰宅は毎日24:00を過ぎていました。土日も出勤していました」と話したら、これが事実とは違っていても、会社は責任を免れないように思われます。

またたとえば、部長が通勤経路で倒れたとします。

通勤災害かも知れません。

しかし、発見されたのが深夜で、仕事帰りなのかどうかすら分からなければ、労災保険の手続をしようにも情報が足りません。

こうしたことを想定すると、取締役など経営者を除き、誰でもきちんと労働時間を管理するのが正しいことがわかります。

 

<目的を見失うと>

結局、タイムカードを使う目的は、あくまでも労働時間の管理であって、残業手当の計算はその一部に過ぎないのです。

会社の中には多くのルールが存在します。

そして、思考の単純化のために、そのルールの存在理由を1つに絞って説明することも良く行われています。

しかし、これが危険なことは、上の例からも明らかでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則を見直す場合、規定を増やすだけでなく削ることもあります。

しかし、その規定を削って良いのか悪いのか、安易な判断は会社にとって大きなダメージにつながることもあります。

就業規則の改善や運用の見直しをお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/20|925文字

 

<労災保険の適用>

次のような通勤災害についても、通常の労災と同じ基準で労災保険が適用されます。

・会社への届出と違う経路での通勤途中のケガ

・会社への届出と違う交通手段による通勤途中でのケガ

・バイク通勤禁止の会社でバイクによる通勤中に転倒してのケガ

不合理な寄り道や遠回りは、通常の労災と同じく労災保険の対象外となります。

 

<労災保険適用の理由>

労災保険は、政府の制度ですから、会社のルールによって労災保険の適用範囲を制限したり広げたりはできません。

これを許すと、何のために国が統一的に労災保険の仕組みを作っているのか、分からなくなってしまいます。

また、保険は保険料と保険金の給付のバランスが細かく計算され設計されています。

それぞれの会社が、保険金の給付について独自のルールを作り、それが有効だとすると、保険料と保険金の給付のバランスが崩れてしまい、保険制度そのものが破たんする可能性すらあります。

 

<労災保険の勘違い>

アルバイトやパートに労災保険が適用されないという勘違いもあります。

しかし、たった1日だけの臨時アルバイトにも、労災保険は適用されますし、保険料の計算対象にもなっています。

また、労災保険を使うと保険料が高くなるという勘違いもあります。

たしかに、従業員が一定の人数を超える会社では、メリット制という保険料の割増・割引の制度がありますから、一定の限度を超えて保険給付を受けると、保険料が割増になることはあります。

しかし、すべての会社で保険料の割増が発生するわけではありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社が労災保険の手続に協力的でない場合には、被災者は所轄の労働基準監督署の労災課に相談できます。

もちろん、信頼できる社労士にご用命いただければ、手続の代行もいたします。

一方で会社としては、通勤手当をごまかしている従業員からは、払い過ぎの金額を徴収したいでしょう。

しかし、給与から勝手に控除することはできません。

また、禁止しているバイク通勤を行った従業員には、適正な懲戒処分が必要です。

「けしからんからクビ」というのでは不当解雇になります。

こうしたことに対応できる就業規則の改善と運用も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/19|1,725文字

 

<出入国在留管理庁の対応>

出入国在留管理庁は、新型コロナウイルス感染症の影響により解雇等され、実習が継続困難となった技能実習生、特定技能外国人等の国内での雇用を維持するため、関係省庁と連携し、特定産業分野(特定技能制度の14分野)における再就職の支援を行うとともに、一定の要件の下、在留資格「特定活動」を付与し、外国人に対する本邦での雇用を維持するための支援を行っています。

 

<対象者>

新型コロナウイルス感染症の影響により、受入れ機関または受入れ予定機関の経営状況の悪化(倒産、人員整理、雇止め、採用内定の取消し等)等により、自己に責任のない理由で、その機関での活動ができなくなり、現在の在留資格で日本に引き続き在留することが困難となった外国人が対象者です。

具体的には、現在の在留資格で活動できない次のような外国人が対象となります。

(1)技能実習生、特定技能外国人

(2)就労資格(「技術・人文知識・国際業務」、「技能」等)で就労していた外国人

(3)教育機関における所定の課程を修了した留学生

 

<在留資格変更許可申請の手続>

在留資格変更許可申請を行う前に、外国人と新たな受入れ機関との間で雇用契約を締結する必要があります。

出入国在留管理庁では、この雇用契約がスムーズに成立することを目的として、関係省庁と連携し、特定産業分野での再就職の支援として、雇用契約に関するマッチング支援を行っています。

外国人との雇用契約の成立後に、次の必要書類を添えて外国人の住居地を管轄する最寄りの地方出入国在留管理局(支局、出張所)に在留資格「特定活動」への在留資格変更許可申請を行います。

ただし、新たな受入れ機関は、特定技能制度の14分野に属するものに限られます。

 

【必要書類】

 ○在留資格変更許可申請書

 ○受入れ機関が作成した説明書

 ○雇用契約に関する書面(雇用契約書、労働条件通知書等の写し)

 ○受入れ機関が作成した賃金の支払に関する書面

 

<付与される在留資格・期間>

特定活動(就労可)・最大1年

 

<行うことができる活動>

受入れ機関で、特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付ける活動です。

 

<雇用契約の条件>

雇用契約の条件は、次のとおりです。

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例措置とはいえ、在留資格「特定活動」の趣旨を外れるものは認められません。

 

【雇用契約の条件】

ア 申請人が本特例措置により従事しようとする業務に係る報酬の額が、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること

イ 申請人が、受入れ機関において特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付けることを希望していること(希望する特定産業分野に係る技能試験等の合格が必要な者に限る。)

なお、製造業3分野(素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野)については、国内において、申請人が製造業各分野で対象となっている業務区分(職種)で勤務・実習中に解雇されたものに限られる。

ウ 受入れ機関が、申請人が特定技能外国人の業務に必要な技能を身に付ける希望があることを理解した上で、申請人の雇用を希望するものであること

エ 受入れ機関が、申請人を適正に受け入れることが見込まれること(在留外国人(就労資格に限られず、資格外活動許可を受けた者も含む。)を雇用した実績、出入国・労働関係法令の遵守等)

オ 受入れ機関が、申請人に対して特定技能に移行するために必要な技能等を身に付けることなどについて指導、助言等を行うことのほか、在留中の日常生活等に係る支援(関係行政機関の相談先を案内及び必要に応じて当該機関に同行することを含む。)を行う担当者を確保して適切に行うことが見込まれること

(注)支援については、例えば、受入れ機関が雇用する申請人が従前に所属していた監理団体や、特定技能へ移行する際に支援を委託する予定の登録支援機関において実施することも差し支えない。

カ 受入れ機関が、申請人を受け入れることが困難となった場合には地方出入国在留管理局に速やかに報告することとしていること

 

外国人の受け入れを検討中の企業では、今回の特例を活用して、トライアルを行ってみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/06/18|1,116文字

 

<服装の場合には>

男女兼用の服や、どの世代の人にも似合う服というのは、一時的に流行しても、その流行は長続きしません。

人は歳をとるものですし、体型も変わります。

ですから、高校時代に着ていた服を40代、50代になっても違和感なく着こなせるという人は、尊敬に値しますが稀な存在です。

たとえ身体にフィットしても、流行との関係で、恥ずかしくて外出時は着られず、もっぱら部屋着になる服もあります。

それでも、我慢して着ていると、流行が一巡して外出するのに困らなくなることもあったりします。

 

<会社にフィットした就業規則>

大企業と中小企業のどちらにもピッタリな就業規則や、小売業にも工場にも適合する就業規則というのは、ちょっと想定しがたいです。

公開されている就業規則のひな形の中には、中小企業向け、小売業向けなど親切なものもあります。

しかし、同じ小売業でも呉服店とコンビニが一緒の就業規則を使うというのは、無理があるでしょう。

やはり会社の規模や業種に応じた就業規則であることが望ましいのです。

 

<時代遅れの就業規則>

会社の設立以来30年間改定していない就業規則を見たことがあります。

もちろん法改正に対応していないので、違法なポイントが満載でした。

女性が結婚を理由に退職すると、男性の場合よりも多くの退職金が支給されるというのは、時代を反映していて興味深いものがありました。

もちろん、この就業規則は実際には機能していなくて、労働基準監督署の調査予告が入ってしまい、対応のご依頼を受けたのでした。

 

<流行と就業規則>

就業規則について、流行を追いかける必要は無く、また、流行を追っている会社も無いでしょう。

しかし、ブラック企業や過労自殺の話題に接したなら、自分の会社の就業規則が対応できているのかを確認して、必要な改定をしていくというのは正しい姿です。

もう少し想像力を働かせて、たとえば大雪のニュースを見たら「社員が大雪で出張や旅行から帰って来られない場合の給与支払いはどうなるのか」など考えてみると良いでしょう。

電車の事故で出勤が遅れても、遅刻扱いにしないというルールは、多くの会社で見られます。

その延長線上で考えてみるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働関係の法令も社会情勢も、1年間変わらないということが無い世の中ですから、就業規則を3年以上も改定しないというのは危険です。

この1年を振り返ってみて、会社が痛い思いをしたことがあったなら、就業規則と運用の改善、そして社員教育で再発を防げないか検討の余地があります。

ノービスクラスの就業規則を改善して、会社を守る武器にするためにも、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/17|1,122文字

 

<退職金の性質>

労働基準法などに、退職金の支払義務が規定されているわけではありません。

しかし、就業規則や労働条件通知書などに、計算方法、支払方法などの規定があれば、労働契約の内容となって会社に支払義務が生じます。

 

<退職金の減額・不支給が許されない場合>

懲戒解雇の場合に、退職金が減額されあるいは支給されない旨の規定が、就業規則や退職金規程の中に無ければ会社に全額支払の義務があります。

なぜなら、退職金を全額支払うことが、労働契約の内容となっているからです。

ちなみに、中退共(中小企業退職金共済)や建退共(建設業退職金共済)の退職金についても、懲戒解雇による退職金の減額などの規定はありませんので、全額支給されることになります。

 

<退職金の減額・不支給を規定する意味>

退職にあたって、退職者が会社に大きな損害を与えていることが発覚し、その穴埋めのために退職金の減額・不支給という手段を用いるということも考えられます。

しかし、むしろ退職金を減額されたり支給されなかったりということがないように、従業員に真面目で誠実な勤務を心がけてもらうための警告として規定していることが多いのです。

 

<退職金の減額が許される場合>

懲戒解雇の場合に、就業規則などに退職金が減額される旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労を大きく減殺するほどの信義に反する行為があった場合には、ある程度の減額が許されます。

信義に反する行為というのは、正義に反し信頼関係を破壊する行為のことです。

功労をどの程度減殺するかによって、減額が許される限度も変わってきます。

裁判になれば、会社が思い切った減額をした場合、裁判所は退職者の功労や過去の勤務態度を踏まえ、減額し過ぎを指摘し不足分を追加で支払うように命ずることがあります。

 

<退職金の不支給が許される場合>

就業規則などに、懲戒解雇の場合には退職金が不支給となる旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労がすべて抹消されるような信義に反する行為があった場合には許されます。

裁判になれば、会社に対する劣悪な裏切り(功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為)があった場合にのみ、退職金の不支給が許されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一の場合に、退職金の減額や不支給が可能となる就業規則を整えるのも社労士の仕事です。

また、実際に懲戒解雇を検討する場合、それが不当解雇とならないか、どの程度まで退職金を減額できるか意見を述べるのも社労士の仕事です。

しかし、懲戒解雇を出さないように職場環境を整えることこそ、社労士の大事な仕事です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/16|1,984文字

 

<年金制度改正法の成立>

令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。

この法律は、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためのものです。

企業実務にも大きな影響を与える内容となっています。

 

<被用者保険(厚生年金、健康保険)の適用範囲の拡大>

多様な就労を年金制度に反映するため、被用者保険の適用が拡大されます。

具体的には、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件(現行、従業員数500人超)が段階的に引き下げられ、令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模となります。

賃金要件(月額8.8万円以上)、労働時間要件(週労働時間20時間以上)、学生除外要件については現行のままとし、勤務期間要件(現行、1年以上)については実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイムの被保険者と同様の2か月超の要件を適用することとなります。

加えて、5人以上の個人事業所の適用業種に、弁護士、税理士、社会保険労務士の士業が追加されます。

 

<在職中の年金受給の在り方の見直し>

在職老齢年金制度は、就労し賃金と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組みです。

今回の改正で、60歳台前半の在職老齢年金制度(低在老)については、就労に与える影響が一定程度確認されている観点、60歳台前半の就労、特に令和12年度まで支給開始年齢の引上げが続く女性の就労を支援するという観点、制度をわかりやすくするという利点もあるという観点から制度の見直しが行われます。

具体的には、60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)について、年金の支給が停止される基準を現行の28万円から65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ47万円に合わせます。

この制度改正は、令和4年4月から適用されます。

また、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定する在職定時改定の制度が導入されます。

これまでは、退職等により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の額は改定されませんでした。

在職定時改定の導入により、就労を継続したことの効果が、退職を待たずに早期に年金額に反映されることで年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実が図られます。

この制度導入も、令和4年4月からとなります。

 

<受給開始時期の選択肢の拡大>

高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、繰下げ制度について、より柔軟で使いやすいものとするための見直しが行なわれます。

現行制度では、60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始時期について、その上限が75歳に引き上げられます。

繰下げ増額率は1月あたり、プラス0.7%(最大プラス84%)となります。

この制度改正は、令和4年4月から適用されます。

 

<確定拠出年金の加入可能要件の見直し>

確定拠出年金(DC)制度は、拠出された掛金とその運用収益との合計額をもとに、将来の給付額が決定する年金制度です。掛金を事業主が拠出する企業型DCと、加入者自身が拠出する個人型DC(iDeCo)があります。

公的年金制度改正にあわせて、高齢期の就労が拡大する中で長期化する高齢期の経済基盤を充実できるよう、また、中小企業を含むより多くの企業や個人が制度を活用して老後所得を確保することができるよう、次の改正が行われます。

〇2022年5月から、DCに加入できる年齢が引き上げられます。

〇2022年4月からDCの受給開始時期、確定給付企業年金(DB)の支給開始時期の選択肢が拡大されます。

〇(公布日から6か月を超えない範囲で)政令で定める日から中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲が拡大されます。

〇2022年10月から企業型DCに加入している人がiDeCoに加入しやすくなります(各企業の労使の合意が不要となります)。

 

<企業実務に与える影響>

被用者保険の適用範囲拡大は、企業の保険料負担が増額する方向で影響を及ぼします。

在職中の年金受給の在り方については、60歳以上の従業員の労働条件を考える場合、制度の見直しを踏まえた労使の話し合いが必要となります。

「給与をもらい過ぎても、年金が削られて損だから」という従来の理屈は、当てはまりにくくなります。

受給開始時期の選択肢の拡大は、「私が何歳まで働けるのか明示して欲しい」という要求につながってくるものと思われます。

 

解決社労士

2020/06/15|762文字

 

<パワハラは優位性による嫌がらせ>

パワーハラスメントとは、「職場において、職権などの力関係を利用して、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」とされています。

ハラスメント(嫌がらせ)は、被害を受けている従業員のメンタルヘルス不調に直結します。

 

<会社の正しい対応>

パワハラについての教育・研修も大切です。

しかし、パワハラを懲戒処分の対象とし、就業規則に懲戒規定を置くことや、人事考課の基準に取り入れることはもっと大事です。

そして、これらすべての前提として、パワハラについての明確な定義が就業規則などによって社内に示されていることが必要です。

パワハラの定義が無い会社には、必ずパワハラがあり被害者が存在すると言っても過言ではありません。

 

<パワハラ被害に気付いたら>

パワハラについて正しい対応ができていない会社で、部下や同僚の被害に気付いたら、プライバシーに配慮しつつ、熱心に話を聴くことが大切です。

ここでは安易に意見を述べたり、間違いを指摘してはいけません。

じっくりと話を聴いて、気持をくみ取るよう心がけます。

もし、メンタルヘルス不調の徴候に気付いたら、専門家に相談することを勧めましょう。

また、社内での解決が難しいケースでは、都道府県の相談窓口への相談も考えましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の正しい対応を進めるには、信頼できる社労士との連携が必要だと思います。

また、パワハラ対策が進んでいない会社では、従業員の相談窓口として社労士を指定しておくことをお勧めします。

相談窓口の無い会社では、従業員が突然、労働基準監督署や弁護士に相談するものです。

問題が小さなうちに対処できるよう、安全策を講じましょう。

 

解決社労士

2020/06/14|1,010文字

 

<ストレス軽減は企業の課題>

人手不足により一人ひとりの負担が大きくなる、新型コロナウイルスの影響で会社に責任の無いことで業績が左右されるなどの理由で、職場環境が厳しくなり、多くの人がストレスを強く感じるようになりました。

どんな時でも、ストレスを軽減するには、コミュニケーションを良好にして、快適な職場環境を整えることが大切です。

企業にとっても、従業員のストレスを軽減することは、生産性を向上させることにつながりますから、積極的に取り組む課題となっています。

 

<管理職の役割>

管理職の皆さんは、ストレスを抱えた部下を持つことによっても、ストレスを強く感じていることでしょう。

しかし管理職には、部下のプライバシーに配慮しながらも、部下の職務適性などを考慮して、ストレスを解消するための工夫と努力が求められています。

実際、快適な職場環境を作るのに管理職の果たす役割は大きいといえます。

 

<メンタルヘルス不調に気付くには>

部下のメンタルヘルス不調に気付くには、その人の「従来の行動様式からの小さな変化」に注目することが必要です。

余裕をもって出社していた部下が遅刻するようになった、朝の挨拶に元気がなくなった、身だしなみが乱れてきた、書類を探している姿が目立つようになった、一人ぼっちでいることが多くなったなどです。

この状態が続き、仕事の能率低下やミスが目立つようになったら、放置することはできません。

少しでも早く徴候に気付いて、ゆっくり話を聴くことが大切です。

 

<気持を聴く姿勢>

話を聴く場合、アドバイスするよりも、部下の気持を十分に聴くという姿勢が大事です。

話の中で、眠りにつけない、夜中に目覚める、食べられない、疲れが取れないなど体の不調を訴えたり、飲酒量や喫煙量が増えたという話が出てきたりしたら、心から心配していることを伝え、専門の医師や相談窓口への相談を勧めましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ストレスを抱えて悩んでいる人は、上司に言い出せないこともあります。

ましてや、ストレスの最大の原因が上司からのパワハラだと感じている人は、上司に相談できるわけがありません。

職場でのストレスの相談窓口に、信頼できる社労士を利用してはいかがでしょうか。

労働法の解釈や、会社の対応の誤解によって、ストレスをためこんでしまう従業員も多いものです。

こんなとき、社労士ならストレスが小さいうちに対応することができるでしょう。

 

解決社労士

2020/06/13|1,595文字

 

<年金制度改正法の成立>

令和2年5月29日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立しました。

この法律は、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るためのものです。

企業実務にも大きな影響を与える内容となっています。

 

<改正の趣旨と目的>

より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、今回の改正では、①被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)、③受給開始時期の選択肢の拡大、④確定拠出年金の加入可能要件の見直し等が行われます。

今後の社会・経済の変化を展望すると、人手不足が進行するとともに、健康寿命が延伸し、中長期的には現役世代の人口の急速な減少が見込まれる中で、特に高齢者や女性の就業が進み、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれます。こうした社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るのが目的です。

 

<改正の概要>

1.被用者保険の適用拡大 【厚生年金保険法、健康保険法、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一 部を改正する法律(平成24年改正法)、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法】

 ① 短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超→100人超→50人超)。

 ② 5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加する。

 ③ 厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用する。

2.在職中の年金受給の在り方の見直し 【厚生年金保険法】

 ① 高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定することとする。

 ② 60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止 が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(令和2年度額)に引き上げる。)。

3.受給開始時期の選択肢の拡大 【国民年金法、厚生年金保険法等】 現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する。

4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等 【確定拠出年金法、確定給付企業年金法、独立行政法人農業者年金基金法等】

 ① 確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げる(※)とともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する。 ※ 企業型DC:厚生年金被保険者のうち65歳未満→70歳未満 個人型DC (iDeCo):公的年金の被保険者のうち60歳未満→65歳未満

 ② 確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下→300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度 面・手続面の改善を図る。

5.その他 【国民年金法、厚生年金保険法、年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法等】

 ① 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え

 ② 未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加

 ③ 短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)

 ④ 年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し

 ⑤ 児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し 等

 

解決社労士

2020/06/12|741文字

 

<社会保険の加入基準>

大多数の会社では、法定の条件により、1週間の所定労働時間が30時間以上で、1か月の所定労働日数が17日以上の従業員は、原則として社会保険の加入基準を満たすことになります。

そして、一度この基準を満たし社会保険に入った後で、労働時間が減少し、この基準を下回った場合には、社会保険から抜けるのが原則となります。

ただし、基準を下回るのが12か月程度で、やがて元の状態に戻ることが見込まれるなら、社会保険に入ったままとなります。

 

<労働契約(雇用契約)の変更>

労働時間が減少し、その状態が長く続くと見込まれる場合には、労働契約を変更する必要があります。

労働契約の変更は口頭でも可能ですが、労働条件は使用者から労働者に書面で示されるのが原則ですから、労働契約書の内容を改定し、新しい労働契約書を交わすのが一般的です。

実態に合わせて労働契約書を変更しておかないと、年次有給休暇の付与日数が変更されているのに、これに気付かないなどの不都合があります。

たとえば週5日勤務の従業員が、週4日勤務になって1週間の所定労働日数が30時間を下回れば、付与日数は減少します。

ところが、労働契約をそのままにしておいて、週5日勤務の契約で週4日の出勤となると、出勤率が8割を下回り、年次有給休暇が付与されないことにもなりかねません。

やはり、労働契約書は勤務の実態に合わせて改定しておくことをお勧めします。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

顧問の社労士がいれば、従業員ひとり一人の勤務時間などの実態に合わせ、社会保険や雇用保険で必要な手続や、労働契約の変更について、タイムリーに対応することができます。

しかし、社内に対応できる社員がいなければ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/11|999文字

 

<事実の認定>

ある従業員が亡くなったとき、自殺、他殺、事故死、病死のどれなのか、ご本人に確認できれば簡単に判断できるのですが、ご本人が亡くなってしまった以上、客観的な事実の認定の積み重ねで判断するしかありません。

例は悪いですが、人を突き飛ばして死の結果が発生したとき、殺すつもりで突き飛ばしたら殺人、殺す気が無かったら傷害致死です。

このとき、犯人が「殺すつもりでした」と言えば殺人罪、「殺す気はありませんでした」と言えば傷害致死だとしたら、ほとんどの犯人は後者を選びます。

実際、殺人を犯した人の多くは「殺すつもりは無かった」と言います。

しかし、検察は本人の発言よりも、客観的な事実を認定して判断します。

その場の客観的な状況、目撃者の証言、犯人と被害者との関係、犯人の性格を示す事実など、多くの事実を把握して判断材料とするのです。

 

<過労によるうつ病>

うつ病の原因についても、仕事なのかプライベートなのか、これはご本人に聞いても不明なことすらあります。

仕事の状況とプライベートの状況について、客観的な事実を確認して、うつ病の原因を推定するわけです。

 

<うつ病による自殺>

うつ病にかかったら必ず自殺するということではなく、自殺の原因がうつ病に限られるわけでもありません。

やはり、自殺するほど重いうつ病だったのか、うつ病の他に自殺の原因が無かったか、客観的事実を確認した上で認定するのです。

 

<会社が注意すべきこと>

従業員が自殺するようなうつ病の原因を作らないことです。

原因となる客観的な事実を発生させないためには、次のような対策が必要です。

・孤独にしない

・人間関係を悪くしない

・パワハラ、セクハラ、マタハラなど嫌がらせの事実を発生させない

・仕事の指示は具体的で明確に出す

・困ったときの相談窓口を設け機能させる

・抱えるストレスをチェックし、分析し、職場環境を改善する

・長時間労働を許さない

・業務終了から次の業務開始までの時間を十分に空ける

・休日と休暇を取らせる

そして、個人の体質、性格、遺伝的要素を言い訳にしないことです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「人手不足だから」「本人にも落ち度はある」は言い訳になりませんし、パワハラの定義すら無い会社には必ずパワハラがあり被害者がいます。

もし、具体的に何をどうしたら良いのか不明な点があれば、迷わず信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/10|1,116文字

 

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。

この書面が、労働条件通知書です。

 

【労働基準法第15条第1項:労働条件の明示】

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

これが労働基準法の定めです。

そして、1件につき30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

最近の傾向として、非正規労働者に対しては、きちんとした労働条件通知書を交付しているものの、正社員に交付する労働条件通知書に必要な項目が漏れているケースが散見されます。

是非、再確認していただくことをお勧めします。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」〔労働基準法第109条〕

そして、こちらにも1件につき30万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法第120条第1号〕

 

<労働条件変更時の労働条件通知書>

時給が上がった、契約期間が更新されたなどの場合、就業規則や賃金規定に具体的な規定があって、その規定を見ればだいたいのことが分かるという状態であれば、労働者の包括的な合意があるともいえます。

こうしたことから、前掲の労働基準法第15条第1項の「労働契約の締結に際し」というのは、一般には、新たに雇い入れる場合のことを指していると解釈されます。

ですから、就業規則などの範囲内での労働条件変更であれば、新たに労働条件通知書を交付する法的義務は無いということになります。

それでも、多くの会社で、有期雇用の労働者に契約更新の都度、労働条件通知書を交付するのは、常に現状の労働条件を明示してトラブルを防止するためです。

正社員についても、昇給や人事異動があった場合には、トラブルを防止するため、労働条件通知書を交付することをお勧めします。

 

<労働法上の義務を超えて>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法から改正されたパートタイム・有期雇用労働法などなど、経営者に課せられた法的義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務だけ果たしていても、労働トラブルを防止することはできません。

法的義務を超え、トラブル発生の予防を図ることで、経営者自身を護ることにつなげましょう。

 

解決社労士

2020/06/07|895文字

 

<3つのパターン>

障害年金は、障害の状況や請求の時期によって、請求の方式が認定日請求、遡及請求、事後重症請求の3通りに分かれます。

 

<認定日請求>

障害年金請求の本来の形ですが、実際には少数派です。

この請求は、予め準備しておいて、タイムリーに行う必要があるからです。

認定日請求は、初診日から16か月経過後の障害認定日の時点で、障害が障害年金を受給できる程度である場合に行います。

障害認定日から1年以内に請求する必要があります。

障害認定日から3か月以内の症状で作成された診断書が必要です。

支給が決定されると、障害認定月の翌月から支給されます。

 

<遡及請求>

認定日請求のタイミングで請求しなかった場合に、障害認定日に遡って請求する形です。

各月の年金請求権の消滅時効期間は5年間ですから、5年前の分まで請求が可能です。

この間の年金は、第1回目に、まとめて支給されます。

診断書は、次の2枚が必要です。

・障害認定日から3か月以内の症状で作成された診断書

・請求時までの3か月以内に作成された診断書

支給が決定されると、障害認定月の翌月から支給されます。

 

<事後重症請求>

障害認定日の時点で、障害が障害年金を受給できる程度ではなかった人が、後から障害の程度が重くなって受給できる程度になった場合に行います。

ただし、65歳以降は請求できません。

請求時までの3か月以内に作成された診断書が必要です。

遡っての支給はありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

3つのパターンのうち、一番早く受給できるのは認定日請求です。

しかし、認定日請求は遡及請求や事後重症請求よりも件数が少ないのです。

その原因は、ご本人や主治医が年金の受給を考えなかったからというのが多いのです。

もし、身体や精神の障害が発生したなら、なるべく早く、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

受給の条件や時期、金額など、「もしも」の前提で相談するなら社労士がベストです。

特に、精神の障害であれば、ご本人か相談するのが困難なこともありますから、ご家族からの相談が良いと思います。

万一に備えて、頭の片隅に置いてくださればと思います。

 

解決社労士

2020/06/07|420文字

 

<年度更新の手続>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。

これが「年度更新」の手続です。

 

<間違いの訂正>

年度内の訂正であれば、所轄の労働基準監督署、場合によっては所轄の労働局に相談して修正申告ができます。

納めた保険料が不足していれば追納になりますし、多過ぎたのであれば還付を受けることになります。

 

<間違えた部分により>

前年度の確定保険料に間違いがあったのであれば、速やかに修正しましょう。

放置すると、誤りのまま金額が確定してしまいます。

しかし、今年度の概算保険料のみに間違いがあったのであれば差額を確認し、それほど大きな金額でなければ、次回の年度更新で自動的に精算されますので、必ずしも修正申告は必要ないと思います。

ただし、年度更新を指示した事業主や上司への報告は忘れずに。

 

解決社労士

2020/06/07|1,153文字

 

<解雇の有効性についての判断基準>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16 条〕

この規定は、裁判所が判断を下すのに使った理論が条文となったものですから、その趣旨は様々な形で解雇の有効性の判断基準にあらわれます。

しかも、「こうすれば大丈夫」という絶対的な基準ではありません。

 

<就業規則に解雇の理由が無ければ>

まず、解雇の理由(事由)は、就業規則に必ず記載する事項とされています。〔労働基準法第89条第3号〕

つまり、就業規則に規定の無い理由で解雇することはできません。

また労働者が、解雇の予告をされた日から退職する日までの間に、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。〔労働基準法第22 条第2 項〕

ですから、使用者が就業規則に規定の無い理由で労働者を解雇した場合には、労働者に有利な証拠書類を交付することになってしまいます。

 

<就業規則に解雇の理由があっても>

つぎに、裁判所はあいまいさの残る規定について、使用者に対して厳密な立証を求めます。

たとえば、営業成績が「著しく不良」という規定であれば、使用者はその程度が客観的かつ具体的に重大であることを証明しなければなりません。

また、将来の改善・回復の見込みが無いなどの「将来の予測」については、客観的な立証が必要とされます。

今日の判例は、使用者に困難な立証を求めることによって、「解雇は最後の手段であるべき」との態度を示しているのです。

 

<能力不足を理由とする解雇>

そして裁判では、労働者の能力が職場全体の中で相対的に低いというだけでは、能力不足による解雇が認められていません。

使用者は、解雇を検討する前に、配置転換や再教育による能力向上、あるいは降格処分など、解雇を回避するための措置を求められます。

 

<目標未達成を理由とする解雇>

結局、市場動向の変化や会社の業績に左右されない、客観的で合理的な目標が就業規則に規定されていて、その目標を達成できないことを理由に解雇する場合であって、教育研修を十分に行い、配置転換や降格処分も行ったのになお効果が無く、やむを得ず解雇を通告するのでなければ、その有効性は疑わしいということになってしまいます。

そもそも、条件付きの解雇通告というのは、それだけで労働者の立場を不安定にしますから、どんなに工夫を重ねても、有効性に疑いが残るものなのです。

こんなむずかしいことにチャレンジするよりは、信頼できる社労士(社会保険労務士)と相談して、充実した教育研修システムや、納得のいく人事考課制度を構築したほうが、会社も社員も成長するのではないでしょうか。

 

解決社労士

2020/06/06|761文字

 

<退職金の支払義務>

民間企業の従業員に対する退職金支給義務は、使用者に課されていません。

ですから民間企業では、必ずしも退職金を支給する必要はなく、実際に退職金制度の無い企業も少なくありません。

とはいうものの、退職金は日本の雇用慣行の中で、引退後の生活基盤の原資として重視されています。

その額は、給与や賞与に比べて多額なのが通常です。

 

<退職金と就業規則>

就業規則に「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を規定すべきことが定められています。〔労働基準法第89条〕

ここでいう退職手当とは、退職金よりは広い概念で、労働契約などによってあらかじめ支給条件が明確になっていて、その受給権が退職により在職中の労働全体に対する対償として具体化するものであれば良いとされています。

また、一時金だけでなく年金である場合も含みます。

あくまでも「定めをする場合においては」という話です。

 

<社外の退職金制度を利用する場合>

使用者が、中小企業退職金共済制度などの社外積み立て型の退職金制度を利用している場合も、ここにいう退職手当の制度に該当します。

ですから、この場合にも、就業規則に規定を設けなければなりません。

 

<危険なケース>

社外の制度を利用しているからという理由で、就業規則に退職金の規定を置かないのは、労働基準法違反になります。

それ以上に問題なのは、就業規則がひな形や他社の就業規則のマネを元に作られていて、実際には退職金を支給していないのに、あるいは支給する予定がないのに、規定だけが存在するという場合です。

これらの場合には、自己流で修正することがトラブルの原因となりかねません。

是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/05|1,409文字

 

<ビジネスメールのマナー>

ビジネスマナーの本には、ビジネスメールのマナーについても書かれています。

また、ビジネスで活用できるメールの雛形も紹介されています。

しかし、プライベートメールとの違いについては、なぜ、何が、どのように違うか説明が省略されていることもあります。

これは新人だけでなく、すべての社会人に必要な基本ですから、ここで再確認してみましょう。

 

<プライベートメール>

メールやSNSを利用してプライベートで情報を発信する場合、「何のために」情報を発信するかという、目的意識が希薄な場合が多いものです。

何となく、自慢したい、同情されたい、驚かせたい、広めたいという意図は感じられます。

しかし基本的には、送りたいから送っているというのが実態です。

情報の送り手は、自分が送りたい内容を、自分好みの表現方法で送ります。

文字だけのこともあり、写真や動画だけのこともあり、両方を組み合わせることもあります。

「これを伝えたい」という明確な意識もなく、ただ何となく発信しているだけのものも見られます。

送り手のこうした態度に対応して、受け手も読みたい物だけを読みますし、途中まで読んで中断してしまうことも少なくありません。

読みたい物の、読みたい部分だけを、つまみ食いしている状態です。

 

<ビジネスメール>

業務上の必要から情報を発信する場合には、通知、報連相、指導など、その目的が明確です。

メールの送り手は送りたいから送るのではなく、必要があって送るわけです。

通知であれば、ビジネスマナーに従い、挨拶文に始まり、必要十分な情報を送ることになります。

報連相であれば、相手の立場に立って、つまり相手の理解力やニーズを踏まえて、必要十分な情報を送ります。

データ、写真、動画なども必要に応じて添付することになります。

指導であれば、指導相手の立場に立って、理解しやすく、気持ちよく指導に従い改善に向える内容にしなければなりません。

情報の送り手が、自分の送りたい内容を、使いたい表現で送っていたのでは、目的が果たされません。

これでは、情報の受け手が送り手に電話をかけて、追加の説明を求めるなどの余計な手間がかかってしまいます。

メールの受け手は、読みたいメールの、読みたい部分だけを読むのではなく、すべてのメールの全文を読むのが基本となります。

そして、自分の期待されるアクションを考え、行動に移します。

回答したり、計画化したり、資料を準備したりと、何かしら期待される行動があるはずです。

 

<目的を果たすために>

プライベートメールであれば、送り手主体でかなり自由にメールを送ることができます。

しかし、ビジネスメールでは、受け手に期待するアクションを踏まえて、より効果的な内容・表現を選択して送る必要があります。

送り手が、メール送信そのものから得られる満足は、全く評価の対象外です。

受け手がどれだけ理解してくれたか、的確なアクションに繋げてくれたかが全てです。

ともすると、プライベートメールの癖を引きずったまま、ビジネスメールを送信してしまいがちです。

ビジネスシーンでのメール活用は、目的意識が要であることを忘れないようにしましょう。

 

プライベート

メール

ビジネス

希薄

目的意識

明確

送りたいことを自由な表現で

発信者

目的を果たせるよう受信者のことを考えて
読みたいものの読みたい部分だけを読む

受信者

すべてのメールの全文を読み、期待されたアクションを起こす

 

解決社労士

2020/06/04|984文字

 

<労災保険での失敗>

採用面接をしていて、応募者から次のような話を聞いたことがあります。

その応募者が働いていた会社では、就業規則に「労災保険はアルバイトに適用しない」という規定があって、アルバイトに労災事故が発生しても、実際に手続をしていなかったそうです。

ある日、アルバイトが出勤の途中でひき逃げされ、ご本人は意識を失い救急車で病院に運ばれて、ご家族が駆けつけました。

アルバイトの父親から、その会社に電話しました。

急な欠勤のお詫びと、労災手続を速やかにして欲しいとの依頼です。

ところが、その会社の社員から自信たっぷりに「うちの会社はアルバイトに労災保険を適用しません」という話をされます。

そこでこの父親が、所轄労働基準監督署の労災課に相談して、会社に調査が入り、労災保険料の不足と、今までの労災隠しが発覚しました。

そして、多額の出費と手続のやり直しの手間が発生し、会社に対する不信から退職者も多数出て、経営が危うくなったということです。

 

<社内の常識>

社内での長年の常識が、実は法令違反ということもあります。

所轄労働基準監督署に届けてあるのだから、その就業規則に規定されていることは、すべて合法であり問題無いと思ったら大間違いです。

労働基準監督署は、届け出のあった就業規則に違法な部分を見つければ、その是正を指導します。

しかし、私の経験からしても、就業規則の作成や変更を労働基準監督署の窓口に届け出たときに、1時間以上かけてじっくりとチェックされたのは、100回以上の中でたったの1回です。

通常は、ざっと見てくださって、気づいたところをコメントしてくださる程度です。

ですから届の控に「受付」のハンコを押してもらっても、内容が保証されたわけではないのです。

また、就業規則を届け出てから2~3年もすれば、法改正によっていつの間にか違法になってしまう規定が出てくるものです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

なぜ不適法な就業規則が作成されたのか、その経緯は不明です。

しかし、少なくとも専門家のチェックを経ないまま、所轄労働基準監督署に届け出が行われ、そのまま長年にわたって運用されてしまったのでしょう。

それでも、何かキッカケが無ければ発覚しないものです。

就業規則の作成、変更、運用については、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/06/03|964文字

 

<給与からの控除>

基本給の他に、通勤手当、残業手当、その他の手当があれば、それらを合計して給与の総支給額となります。

しかし、この総支給額がそのまま従業員に支給されるわけではありません。

総支給額を基準に、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料が決まり、これらが控除されます。

40歳以上なら、介護保険料も加わってきます。

また、総支給額から通勤手当を差し引いた金額を基準に、所得税と住民税の控除があります。

ただし、一定の基準を超えれば通勤手当にも課税されますし、住民税は入社の翌年の6月から控除することが多いのです。

こうして、いろいろ控除された残りが手取り額となります。

 

<入社にあたっての給与の決定>

小さな会社では、社長と応募者とで採用面接をして、給与については手取り額で合意することもあります。

たしかに、応募者の入社後の生活費を考えると、手取り額で約束しておけば安心です。

しかし、手取り額から基本給を逆算するのは容易ではありません。

所得税や住民税は、扶養家族の状況によっても変わるものです。

 

<深夜労働がある場合>

夜間に営業する飲食店などでは、午後10時から翌日午前5時の間に勤務時間が含まれるのが通常です。

そして、この時間帯は深夜手当として25%以上の割増賃金が発生します。

深夜手当の計算基礎は、基本給に一定の手当を加えた金額ですから、基本給とも総支給額とも違う金額になるのが通常です。

基本給を手取り額から逆算する場合には、この深夜手当も計算に入れる必要があります。

このとき、休憩時間をいつ取るかによっても計算が変わってきます。

 

<残業代込みの場合>

残業代込みで手取り額を設定する場合には、定額残業代についてきちんとしたルールを定め、正しく運用しなければ違法になってしまいます。

残業代の計算基礎は、深夜手当と同額になります。

 

<実務的には>

新人を採用する場合に、給与について手取り額で約束してしまうと後の計算が大変です。

基本給と各手当の金額で決定し、手取り額の目安を提示するのが得策です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

それでも手取り額で給与を決めたい、あるいは決めてしまったという場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

ご本人から必要な情報をうかがって、可能な限り正確な基本給を計算いたします。

 

解決社労士

2020/06/02|1,555文字

 

<令和2年5月29日付基発0529第1号通達>

厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。

この改正は、令和2年6月からパワーハラスメント防止対策が法制化されることなどを踏まえて取りまとめられた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告を受けたもので、「パワーハラスメント」の出来事を「心理的負荷評価表」に追加するなどの見直しを行いました。

厚生労働省では、今後、この基準に基づいて審査の迅速化を図り、業務により精神障害を発病した人に対して、一層迅速・適正な労災補償を行っていきます。

 

<改正の背景と目的>

厚生労働省(労働局、労働基準監督署)では、業務による心理的負荷を原因とする精神障害について、平成23(2011)年12月に策定した「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定を行っています。

この度、令和2年6月から施行されるパワーハラスメント防止対策の法制化に伴い、職場における「パワーハラスメント」の定義が法律上規定されたことなどを踏まえ、令和2年5月に取りまとめられた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を受けて、認定基準別表1「業務による心理的負荷評価表」の改正を行ったものです。

評価表をより明確化、具体化することで、請求の容易化・審査の迅速化を図るのが目的です。

 

<改正のポイント>

これまで、上司や同僚等から、嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた場合には、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の出来事で評価していましたが、「心理的負荷評価表」を次のように改正し、パワーハラスメントに関する事案を評価対象とする「具体的出来事」などを明確化したものです。

「具体的出来事」等に「パワーハラスメント」を追加 ・「出来事の類型」に、「パワーハラスメント」を追加

 ・「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を「具体的出来事」に追加

【強いストレスと評価される例】

 上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

 上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

 上司等による、人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない精神的攻撃が執拗に行われた場合

 心理的負荷としては「中」程度の精神的攻撃等を受け、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

評価対象のうち「パワーハラスメント」に当たらない暴行やいじめ等について文言修正

 ・「具体的出来事」の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の名称を

 「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」に修正

 ・ パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせ等を評価する項目として位置づける

 【強いストレスと評価される例】

 同僚等から、治療を要する程度の暴行等を受けた場合

 同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた場合

 

<実務への影響>

今回の改正の目的は、評価表をより明確化、具体化することで、請求の容易化・審査の迅速化を図ることです。

これを労働者側から見ると、パワハラによって精神障害が生じた、労災であるという主張がしやすくなったことになります。

会社としては、基準改正を踏まえたハラスメント教育の充実が求められるところです。

認定基準には、パワハラに該当しない同僚等からの嫌がらせの項目も含まれています。

管理職、役職者だけではなく、従業員全員を対象としてハラスメント教育を実施しなければならないことが示唆されています。

また、そうすることによって、従業員から会社に対する根拠のない請求も防止できることでしょう。

 

解決社労士

2020/06/01|1,042文字

 

<社会保険加入基準>

大企業など(任意)特定適用事業所の例外はありますが、原則として、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除いて、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が正社員の4分の3以上というのが社会保険加入基準です。

万一、週の所定労働時間が定まっていない場合には、次の計算によって算定します。

1年間の月数を「12」、週数を「52」として週単位の労働時間に換算するものです。

・1か月単位で定められている場合は、1か月の所定労働時間 × 12か月 ÷ 52週

・1年単位で定められている場合は、1年間の所定労働時間 ÷ 52週

・1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、その平均値

 

<正社員がいない場合>

この基準は、正社員の存在が前提になっています。

しかし、小規模の飲食店が1店舗のみの会社などでは、経営者の他にはパートとアルバイトだけで、正社員はいないという場合があります。

この場合には、もしその会社に正社員がいたとしたら、週何時間勤務で、月何日勤務になるかを想定して、その4分の3を基準とします。

一般には週40時間が法定労働時間ですが、従業員が10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業では、週44時間が法定労働時間となります。

ですから、この制限内で正社員の労働時間を想定することができます。

こうした会社で、週27時間勤務のパートがいた場合に、正社員の所定労働時間を週40時間と想定すれば、その4分の3にあたる30時間を下回るので、社会保険には入りません。

しかし、正社員の所定労働時間を週36時間と想定すれば、その4分の3は27時間ですから、社会保険に入ることになります。

こうして、正社員のいない会社では、正社員の所定労働時間と所定労働日数の想定の仕方によって、ある程度は加入基準を選ぶことができるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

何事にも原則と例外があって、労働関係では、その区分が必ずしも「常識」に従っていないことが多いのです。

従業員のうち誰が、社会保険、雇用保険、労災保険の対象なのか、信頼できる社労士(社会保険労務士)に確認させることをお勧めします。

社会保険などの加入基準は法定のものですから、「加入したい」「加入したくない」あるいは「加入させたい」「加入させたくない」ということで選択できるものではなく、「加入しなければならない」「加入できない」あるいは「加入させなければならない」「加入させられない」という客観的な区分になります。

会社に調査が入れば、会社の方針や言い分は役に立ちません。

法令の基準に従って正しく行いましょう。

 

解決社労士

2020/05/31|1,191文字

 

<進歩できないマニュアル>

マニュアルとは、ある物事に対応する方法を知らない初心者に対して示し、教えるために標準化・体系化して作られた文書だとされています。

家電品を買ったときに付属されるマニュアルには、危険を避け、その商品を活用するための情報がたっぷりと掲載されています。

たっぷり過ぎて、読まない方もいらっしゃるようですが。

会社の中で使われるマニュアルというと、新人教育のための冊子で、一人前になれば使わなくなるものだとされています。

いつまでもマニュアルに頼っていてはいけないとも言われます。

しかし、これは進歩できないマニュアルの話です。

 

<社員と共に成長するマニュアル>

進歩するマニュアルは、このような新人向けのものではありません。

まず、その仕事をもっとも良くわかっている社員がマニュアルを作成します。

このマニュアルを新人に持たせて、同じように業務をこなすことを求めるのは無理です。

そうではなくて、マニュアルを作成した社員自身が、その仕事を行うときにそのマニュアルを見ながら行います。

そうすると次のようなことを考えます。

・マニュアルにはこう書いたけれど、実際には、こうしているな。

・ここは、こうすればもう少し効率良くできそうだ。

・この手順はカットしても影響がなさそうだ。

・この部分は、私の仕事ではなくてお隣の部署の仕事だ。

・もしここが間違っていたらアウトだから、誰かにチェックしてもらうべきだ。

このように思いついたことは、赤文字で修正やコメントを入れていき、上司の了解を得ながら改訂していきます。

つまり、マニュアルの改善という手段によって、仕事そのものが改善されていくのです。

これは、新人や一人前ではない社員には無理な改善です。

マニュアルを見ながら作業したのでは仕事が遅くなるような気もします。

しかし、ベテランといえども月に1回、年に1回の仕事は思い出しながらやるものです。

マニュアルを見ながらのほうが早く終わるでしょう。

日常的な業務であれば、マニュアルの改善による業務改善の効果は、生産性向上となって大きな成果を示します。

ぜひ、社員と共に成長するマニュアルの活用をお勧めします。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

とはいうものの、最初のマニュアルをどうやって作ったら良いのか、具体的な方法や手順については、いろいろと迷うこともあるでしょう。

そんなときは、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

社員と共に成長するマニュアルを活用する目的は、生産性の向上にあります。

生産性の向上は、長時間労働の解消や定着率の向上とも深いかかわりを持っています。

さらに、この方法によるマニュアルの活用は、上司が部下の仕事内容や改善の進み具合を知るにはベストな手段ですから、人事制度や人事考課基準と連動させると絶大な効果を発揮します。

すべてまとめてご相談することをお勧めします。

 

解決社労士

2020/05/30|1,809文字

 

<パート有期労働法の施行>

働き方改革関連法の一つであるパートタイム・有期雇用労働法の施行により、2020年4月から正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との不合理な待遇差が禁止されることとなりました。(ただし、中小企業は2021年4月からの適用です)

同じ企業で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間に待遇の違いがある場合、あらゆる待遇について、個々の項目ごとに不合理な待遇差の解消が求められます。

待遇差があってはならないのではなく、待遇差の存在とその程度について、客観的に合理的な理由が存在しなければならないということです。

とはいえ、基本給については、それぞれの企業で様々な要素を踏まえて支払われており、各企業間で大きな金額の差があって、その合理性については判断がむずかしいものです。

 

<職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル>

同一労働同一賃金への対応のための参考資料として、厚生労働省から「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」が発行されています。

すでに基本給の見直し案を策定済の場合には点検ツールとして、これから基本給の見直しを検討する場合にはマニュアルとして、数多くの企業で活用されています。

このマニュアルが、不合理な待遇差を解消する一つの方法として紹介しているのは、職務評価の手法のうちの要素別点数法という方法です。

これは、職務(役割)の内容を、構成要素ごとに点数化し、この点数に従って基本給を決定していくものですから、客観性が示されることで納得が得られやすい方法です。

 

<人事考課との区別>

職務評価の要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の職務(役割)の大きさを比較する方法です。

評価というと、企業内では人事考課が一般的です。

しかし、正社員の考課基準は、将来への期待を含めた能力、会社への帰属感、会社での経験、会社への貢献度など、職務(役割)の大きさを測る指標としては不適切なものが含まれています。

一方、パートタイム労働者・有期雇用労働者の考課基準が不明確な企業もありますし、たとえ明確であっても、正社員とは異なる基準で評価していることが多いものです。

要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者を、同じ土俵で職務(役割)の大きさを比較する方法ですから、これまで用いてきた人事考課の基準を流用することはできません。

 

<評価項目のカスタマイズ>

「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」には、評価項目の例として、学習院大学が開発したGEMや国際労働機関(ILO)によるものが紹介されています。

しかし、これらはあくまでも例示です。

例示をそのまま流用してしまうと、自社の実情に合わないものとなる恐れがあります。

各企業には、元々基本給の決定にあたって考慮している要素があります。

これを分析し明確化することによって、基本的な評価項目の軸に据えましょう。

「マニュアル」に示された例は、項目の分類や表現の仕方についての、参考資料として活用できます。

 

<ウェイトのカスタマイズ>

要素別点数法による職務(役割)評価は、職務(役割)評価表を用いて職務(役割)評価ポイントを算出して行います。

職務(役割)評価表は、評価項目、ウェイト、スケールの3要素から構成されています。

このうちウェイトは、各企業の事業特性などに応じた構成要素の重要度を示します。

評価項目ごとのウェイトをどのように設定するかによって、職務(役割)評価ポイントは大きく異なってきます。

ある程度まとまった人数の正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者についてシミュレーションを行い、現在の給与実態と大きく異なるのであれば、評価項目ごとのウェイトを変えてみて、実態に合ったものにしましょう。

このとき、ウェイトのベースを1にすると、上手くいかないことがあります。

少しだけ重点を置きたい項目のウェイトを2にすると、影響度が2倍になってしまうからです。

この場合には、ウェイトのベースを2あるいは3にして調整することをお勧めします。

 

<実務上のポイント>

職務評価の基準を設定するにあたって、まずは、その結果が現状と大きく乖離しないものを作成します。

これをベースに、同一労働同一賃金の観点から、不合理な部分を手直しする形で最終案をまとめると、社内での混乱を招くことなく、納得の得られるものとなるでしょう。

 

解決社労士

2020/05/29|463文字

 

<原則>

個人事業の事業主と同居している親族は、事業主のもとで働いていても、原則として雇用保険に入りません。

これは、実質的に代表者の個人事業と同様と認められる法人の場合も同じです。

雇用関係にあるとは認定されないわけです。

 

<例外的に雇用保険に入る場合>

次のすべてに当てはまる場合には、雇用保険に入ることがあります。

雇用関係にあると認定されれば、雇用保険で保護する必要があるからです。

・事業主の指揮命令下で業務を行っていることが明確であること。

・その事業所の他の労働者と同じ就業実態で、賃金も他の労働者と同じ基準で支払われていること。たとえば、他の労働者と同じように、就業規則に従い勤務し管理されているような場合。

・取締役など事業主と利益を共にする地位に無いこと。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

何事にも原則と例外があって、労働関係では、その区分が必ずしも「常識」に従っていないことが多いのです。

従業員のうち誰が、社会保険、雇用保険、労災保険の対象なのか、信頼できる社労士(社会保険労務士)に確認させることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/05/28|408文字

 

<退職後の健康保険証>

退職後は健康保険の資格を失いますので、健康保険証は使用できません。

健康保険証さえあれば、保険診療が受けられるというわけではないのです。

退職後に、医療機関で健康保険証が使われた場合には、健康保険で支払われた医療費を、保険者である協会けんぽなどから資格を失った人に直接返還請求しています。

医療費が1万円の場合、本人負担は3千円ですが、保険者から残りの7千円が請求されることになります。

繰り返し請求しても、返還されない場合は、保険者は裁判所へ支払督促申立てや少額訴訟等の法的手続を経て、強制執行(給与、預貯金等の差押え)による回収を行っています。

実際、健康保険の資格を失った人が、健康保険証を返却せずに医療機関等で使用し、協会けんぽから返還請求を行っているケースは全国で発生しています。

うっかり健康保険証を使ってしまわないよう、資格を失ったら速やかに勤務先を通じで保険者に健康保険証を返却しましょう。

 

解決社労士

2020/05/27|1,321文字

 

<メタ認知>

報連相が足りない社員には、メタ認知の不足が目立ちます。

メタ認知とは、自己の認知の在り方を認知することです。

平たく言えば、自分の感情や思考のクセを把握することです。

これをするためには、自分自身を客観視することが必要です。

メタ認知によって、「月曜日の午前中は悲観的な判断をしがちだ」「金曜日の午後は冷静な判断ができない」「物事を説明する時、たとえ話をしたくなるが、かえって解りにくくしている」など、自分のクセが分かります。

 

<クセの補正>

会社組織で働くからには、自分自身を客観視して、クセを補正する必要があります。

社員の皆さんは、無意識のうちにこれを行っていると思います。

月曜日の午前中に悲観的な判断をしやすいのであれば、判断を午後に先送りするとか、一段楽観的な判断を下すようにして補正します。

金曜日の午後に冷静な判断ができないのであれば、午前中に結論を出しておくとか、他の社員と協議して結論を下すようにして補正します。

たとえ話が下手であれば、そもそも、たとえ話をしないように心がけます。

 

<プライベートとの違い>

自分としては、きちんと報連相を行っているのに、他の社員たちから「情報が足りない」という不満が出ているとします。

本人にとって、この不満は意味不明ですし大変不快です。

しかし、必要な情報の範囲は、情報の送り手が決めるものではありません。

情報の受け手が決めるものです。

たしかに、プライベートであれば、送り手が送りたい情報を送ることも、受け手が読みたい情報を読むことも、大幅に許されてしまうでしょう。

ところが、これが仕事となると、送り手は受け手が必要とする情報を送り、受け手は読み落としの無いように全てを読んで理解しなければなりません。

報連相が足りない社員は、プライベートとの違いが理解できていないのかも知れません。

 

<現実的な改善方法>

報連相が足りない社員に対して、上司や先輩社員は、報連相の内容について足りない項目や、報連相そのものが足りないことを指摘するでしょう。

しかし、具体的な報連相のタイミングや必要十分な項目の習得は、決して容易ではありません。

では、報連相の不足を指摘された社員は、どうしたら良いのでしょうか。

どうすれば、情報の受け手に必要な情報の範囲を決めてもらえるでしょうか。

そのためには、「今はまだ必要ない」と思っても可能な限り早く報連相を行うことです。

また、「ここまでは必要ない」と思うことでも、範囲を広げてすべてを報連相の対象とすることです。

何故かというと、報連相が足りない社員の想定する必要な情報の範囲は狭く、他の社員が想定する必要な情報の範囲の方が遥かに広いからです。

そして、受け手から「ここまでは要らない」と指摘されたら、次回から修正すれば良いのです。

ただし、これを実行するには、上司や先輩社員が不必要な情報発信に対して、否定的な態度を示さないことが前提となります。

 

<具体的な指導内容>

報連相が足りない社員に対して、上司や先輩社員が、報連相の不足を指摘するのは迂遠になってしまいます。

「報連相の対象となることが少しでもあれば、すぐにすべての報連相を行いなさい」というのが、実践的な指導内容となります。

 

解決社労士

2020/05/26|1,056文字

 

<慶弔休暇についての社内規定>

社員本人や社員のお子さんの結婚式については、慶弔休暇の規定があって休暇が認められる職場は多いでしょう。

しかし、兄弟姉妹や友人の結婚式となると、慶弔休暇が与えられる職場は少ないものです。

こんなときは、年次有給休暇を取得できるのでしょうか。

 

<年次有給休暇取得の理由>

年次有給休暇の取得にあたって、その理由づけに悩んでいる人は多いものです。

しかし、誰かが休暇を取ったとき、休暇を取った理由によって、会社の仕事が上手く回ったり停滞したりということはありません。

実際、年次有給休暇について「使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」というように、法律の条文には「理由」のことなど何も書かれていないのです。〔労働基準法第39条第5項〕

 

<調整が必要な場合>

このように、年次有給休暇の取得理由が基本的には問題にならないとはいえ、同じ部署で特定の日に休暇を取得する人が集中すると「事業の正常な運営を妨げる」ことになりますから、やはり調整が必要になります。

この場合には、誰が休暇を取得するかについて使用者が決めるのではなく、部署内のメンバーで話し合って決めるのが望ましいでしょう。

こんな時のためにも、職場内でのコミュニケーションは良好に保っておかなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

年次有給休暇について、労働基準法の規定をそっくりそのまま写したような就業規則では、同じ日に複数の社員が休暇を希望した時に対応できません。

とはいえ、使用者が休暇取得の理由を詮索すると、休暇取得の妨害が疑われて労働紛争の火種ともなりかねません。

やはり、それぞれの職場に合った年次有給休暇のルールは必要です。

困ったら、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<同一労働同一賃金の視点から>

大企業では令和2年4月1日から、その他の企業では令和3年4月1日から、同一労働同一賃金の法規制が入ります。

正社員には慶弔休暇があり、パート社員には無い、あるいは日数が違うというルールの場合、何故そうなのが合理的な説明ができないのであれば、統一する必要があります。

慶弔見舞金の金額に差がある場合についても同様です。

客観的に合理的な説明をすることは、かなり困難ではないでしょうか。

これについても、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/25|608文字

 

<労災保険法第1条>

「労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする」

 

<必要な保険給付>

治療費が無料になります。

また、仕事を休んでいる間の所得が補償され、障害が残った場合には一時金や年金が支給されます。

被災者が死亡した場合には残された遺族に対して補償が行われます。

 

<社会復帰の促進など>

被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために、義肢、義眼、補聴器など補装具の購入・修理費が支給されます。

被災労働者とその遺族の援護を図るために、お子さんの学資が援助され、介護施設が運営され、労災ケアサポーターによる訪問支援が行われます。

この他、メンタルヘルス対策、アスベスト対策、労災発生防止対策、賃金支払い確保のための事業が行われています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労災保険を会社に適用させる手続きが完了していなかったり、労災が発生しても給付を受けるための手続きが行われていなかったりというのは、もちろん違法なのですが、それ以前に大変もったいないことです。

迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/24|778文字

 

<児童扶養手当>

子供がいる世帯に支給される手当としては、児童手当が一般的です。

児童手当は、15歳の誕生日を迎えた日以降の最初の3月31日までにある子の人数に応じて支給されます。

これに対して、児童扶養手当は、父母が離婚した児童、片方の親が死亡した児童、父母が一定の障害状態にある児童など、何らかの事情で子の養育が困難な状態にある世帯の養育者に対して支給されます。

したがって、児童扶養手当を受給している人は、児童手当を受給している人よりも、かなり少ないことになります。

それでも、会社は児童扶養手当の受給資格の有無について、把握しているわけですから、手続に協力し、また、必要な手続を案内しなければならないでしょう。

 

<併給制限>

児童扶養手当は、公的年金等を受けることができるときは、手当額の全部または一部を受給できません。

「公的年金等」というのは、遺族年金、障害年金、老齢年金、労災年金、遺族補償などをいいます。

公的年金等の額が児童扶養手当額より低い場合は、その差額分を児童扶養手当として受給できます。

 

<市区町村での手続>

児童扶養手当の受給者が、公的年金等を新たに受給する場合には、速やかに市区町村に連絡し、児童扶養手当の窓口に次の書類を提出する必要があります。

・公的年金給付等受給状況届

・公的年金給付等受給証明書、年金証書、年金決定通知書のいずれか

 

<手当の返還>

公的年金等の請求手続が遅れたために、過去に遡って給付された場合や、公的年金等の受給を開始してから、市区町村への手続をするまでの期間が長かった場合には、過去に受給した児童扶養手当の返還が必要になる場合があります。

公的年金等の請求時期についても、殆どの場合、会社は把握していますから、対象者に速やかな手続を促し、過去に受給した児童扶養手当の返還義務が発生しないように、配慮してあげることが大事です。

 

解決社労士

2020/05/23|1,020文字

 

<引継ぎと目的意識>

人事異動や退職によって、仕事の引継ぎが発生します。

何も意識しないで引き継げば、慣れている前任者から不慣れな後任者に仕事が移るわけですから、明らかに戦力ダウンです。

しかし、一つひとつの仕事の目的を意識した引継ぎを行えば、仕事のレベルは向上し、社員は成長し、会社も成長するのです。

まさに、引継ぎは会社成長のチャンスなのです。

 

<後任者の気持>

引継ぎを受ける人は、早く一人前になりたいと思います。

1日も早く前任者と同じように仕事ができるようにと考えるわけです。

この気持は、前向きな気持ですから、それはそれで素晴らしいのですが、「前任者と同じように」ではなく「前任者以上に」を目指さなければ成長がありません。

そのためには、引き継ぐ仕事の一つひとつについて、それが何を目的としているのかを考える必要があります。

場合によっては、その仕事は既に必要が無いという結論が出ることもあります。

同じ目的を達成するのに、もっと手間のかからない方法があったり、同じ手間でより大きな成果を出す方法があったり、前任者と後任者で話し合いながら、改善しながら引継ぎを行うのが得策です。

 

<前任者の気持ち>

引き継がせる人には、仕事に対する愛着があります。

自分の中でベストと思うやり方で仕事をこなしてきたという自負もあります。

ですから、後任者に対しては「つべこべ言わずに私のやってきたようにやりなさい」と言いたくもなります。

しかし、その気持をグッとこらえて、よりよい仕事と成長を目指して、後任者と話し合いながら改善を試みるのが得策です。

 

<前任者と後任者の上司の気持ち>

上司としては、限られた時間の中で、スムーズにトラブルなく引継ぎが完了して欲しいという、保守的な気持になるのが普通です。

しかし、担当者が変わっても仕事の中身か変わらないのでは、成長がありません。

このことを強く意識して、前任者と後任者との間に考え方の違いがあることを前提に、調整役を買って出るのが得策です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このように、引継ぎは会社成長のチャンスですから、固定的な組織や役割分担にはせず、23年サイクルで人事異動や組織変更をお勧めします。

当然、就業規則も変わってくるわけです。

その就業規則も、会社の成長を促す引継ぎのルールがあると無いとでは大違いです。

社員と会社の成長を促す就業規則をご希望でしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/22|814文字

 

<規定が無い会社>

就業規則に産前産後休業の規定が無い会社では、従業員が希望しても産休を取ることはできず退職するしかないのでしょうか。

そもそも従業員が10人未満の会社では、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出義務がありませんから、就業規則が無いこともあります。

 

<労働契約を規制するもの>

労働契約は、労働者の「働きます」という意思表示と、使用者の「雇います」という意思表示が合致して成立します。

そして、契約自由の原則というものがあり、契約を締結するかしないか、誰と契約するか、どのような内容の契約をするかなどは、原則として自由だとされています。

しかし、この原則を制約する法令の規定として、強行規定があります。

強行規定は、それに反する契約当事者間の合意にかかわらず、強制的に適用される規定をいいます。

強行規定かどうかは、条文を見ただけでは区別できず、その趣旨が社会の秩序を維持するためであったり、弱者保護のためであったりすることによって、強行規定であると解釈されます。

労働基準法は、まさに弱者である労働者を保護するための基準を示した法律ですから、その条文は基本的に強行規定だといえます。

 

<結論として>

就業規則に規定が無くても、そもそも就業規則が無くても、産休を取る権利は労働基準法によって認められています。

使用者は、就業規則のことを理由に産休を否定することはできないのです。

これは、産休だけでなく、年次有給休暇、残業手当などにも当てはまります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働基準監督署で「うちでは臨時アルバイトに労災保険を適用しない」と主張する経営者、ハローワークで「パートまで雇用保険に入れる必要はない」と熱弁をふるう取締役の姿を見たことがあります。

会社独自のルールを設けて良いことと悪いことの区別がついていないわけです。

会社のルールがおかしくないか、少しでも疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/21|2,041文字

 

<労働契約>

会社と従業員との間には、労働契約が締結されています。

この労働契約は、口約束でも成立します。

 

【民法第623条:雇用】

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

労働条件通知書や雇用契約書等の書面を交付しなければならないのは、労働基準法が労働者を保護するために、使用者に対して労働条件の明示義務を課しているからです。

 

【労働基準法第15条第1項】

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

労働と賃金とは、対価関係にありますから、労働の提供が無ければ、賃金の支払も無いという、ノーワーク・ノーペイの原則が働きます。

従業員が働かなければ会社は賃金を支払わなくても良い、従業員が働いたら会社は賃金を支払わなければならないという、当たり前のことが大原則となります。

 

<100%の補償が必要な場合>

従業員が労働に従事しない場合でも、会社が賃金を100%支払わなければならない場合があります。

 

【民法第536条第2項:債務者の危険負担等】

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

これを労働契約に当てはめると、会社の落ち度で従業員が働けなくなったときには、会社は賃金の支払を拒めないということになります。

会社が従業員に解雇の通告をしたために、従業員が出勤できなくなったものの、不当解雇であって解雇が無効である場合には、賃金の支払義務を免れません。

この条文の中の「債権者の責めに帰すべき事由」というのは、故意、過失、信義則上故意や過失と同視すべきものとされています。

 

<60%以上の補償が必要な場合>

従業員が労働に従事しない場合でも、会社が賃金を60%以上支払わなければならない場合があります。

 

【労働基準法第26条:休業手当】

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

会社の主観的な判断により、不合理な理由で従業員の労働の提供を拒んだ場合には、会社が賃金の100%を支払う義務を負うのですが、客観的に合理的な理由で従業員の労働の提供を拒んだものの、会社に落ち度がある場合には、労働者を保護するため、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務を負います。

会社の経営判断で、従業員を休ませたところ、それには客観的に合理的な理由があって、しかし、従業員に落ち度はなく、厳しい目で見れば、どちらかというと会社側に落ち度がある場合に、この規定が適用されます。

国家機関による休業命令による場合は、休業命令を受けることについて会社に落ち度がありますから、この規定が適用されます。

仕入先から原材料が入らない場合には、その仕入先を選んだことについて会社に落ち度があるものと考え、この規定が適用されます。

なお、前掲の民法第536条第2項は任意規定とされ、当事者間で別の定めをすれば、その定めが優先されることになります。

ですから、会社の落ち度で従業員が働けなくなったときに、会社が労働基準法の制限ギリギリの60%だけ賃金を支払う旨の規定が就業規則にあれば、故意のある場合や、信義則に反する場合を除き、その規定が適用されることになります。

 

 

<補償が不要な場合>

民法に、次の規定があります。

 

【民法第536条第1項:債務者の危険負担等】

当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

 

公共交通機関の遅れの場合、本来であればノーワーク・ノーペイの原則により、遅れて勤務できなかった時間の賃金は支払われないことになります。

しかし、実際には多くの会社で、遅刻が無かったものとして扱う慣行がありますので、この慣行にしたがって支払うのが通常でしょう。

このように経営判断で、法律上義務の無い賃金を支払うのは問題視されません。

 

<新型コロナウイルスの影響による休業の場合>

従業員本人が、新型コロナウイルスに感染して休業した場合、会社の命令で休業させるわけではなく、また感染したことについて会社に落ち度が無いのであれば、会社は賃金の支払義務を負いません。

その従業員が健康保険に加入していれば、傷病手当金を請求することができますし、業務上感染したのであれば、労災保険が適用されます。

問題は、会社の判断で店舗などを休業した場合です。

都道府県からの一般的な要請により休業したのであれば、60%以上の補償が求められるケースが多いでしょうし、業種が特定されてほぼ名指しのような形で休業させられたのであれば、会社が補償義務を負わないケースもあるでしょう。

この辺の判断が微妙なために、雇用調整助成金に様々な特例を設けて、多くの企業が利用できるようにしたのだと考えられます。

 

解決社労士

2020/05/20|921文字

 

<労使協定>

労使協定とは、労働者と使用者との間で締結される書面による協定のことです。

法令に「労使協定」という用語があるわけではなく一種の通称です。

法令には「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定」と書かれています。

この表現からわかるように、使用者と労使協定を交わす主体は、2通りに分かれます。

・労働者の過半数で組織する労働組合があるとき ― その労働組合

・労働組合が無いとき、あるいは、労働組合があっても労働者の過半数で組織されていないとき ― 労働者の過半数を代表する者

労働者の過半数を代表する者は、その事業場で民主的に選出されます。

 

<三六(さぶろく)協定>

その事業場で、時間外労働(法定労働時間を超える早出、残業)や休日出勤(法定休日の出勤)が全くない事業場を除き、これらについての三六協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

労使協定の中には、所轄の労働基準監督署長に届け出を義務づけられたものがいくつかあります。

そして、ほとんどの労使協定は、届出をしなくても罰則を適用されるだけで、効力そのものは発生するのですが、この三六協定だけは届出をするまで無効です。

しかも、届出をした日からの時間外労働などについてのみ有効とされ、日付をさかのぼっての効力は認められません。

三六協定書を届け出た日の前日までの残業が違法になります。

 

<労働協約>

労使協定と混同されるものに労働協約があります。

労働協約は、労働組合法に定められた労働組合と使用者または使用者団体と結ばれた取り決めで、書面にされたものをいいます。

この労働協約は、労働組合が無ければ作成することができないわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

うっかり三六協定の届出を忘れたり、期限切れの三六協定を放置しておくと、たった1分の残業でも「違法残業」となります。

三六協定の有効期間は最長で1年間ですから、更新が必要です。

社労士は、正しい三六協定の届出と更新をタイムリーに行います。

うっかりすることがないように、信頼できる社労士にお任せください。

 

解決社労士

2020/05/19|968文字

 

<退職勧奨の法的性質>

新人を採用する場合には、会社が求人広告を出し、求職者が応募します。

そして、採用面接などを経て会社が採用を決めます。

この流れの中では、求職者の応募が労働契約の申し込みであり、会社の採用決定が労働契約の申し込みに対する承諾です。

こうして労働契約が成立します。

求人広告は、労働契約の申し込みを誘っている広告で、法的には「申し込みの誘因」とされます。

同じように、希望退職者を募って社内に告知し、退職希望者が退職の申し出をして、会社が承諾すれば、労働契約の合意解除による退職が成立します。

このとき、希望退職者募集の社内告知は、退職の申し出を誘っているので、法的には「申し込みの誘因」とされます。

この退職の申し出を誘う相手が多数の社員ではなく個人であれば、退職勧奨ということになります。

退職勧奨は、求人広告と同じように、相手が申し込むかどうかが完全に自由です。

 

<退職勧奨が問題となるケース>

このように退職勧奨は、本来、会社が自由に行えるはずのものですが、社会的に相当な範囲を逸脱した場合には違法とされます。

違法とされれば、退職が無効とされたり、会社から退職勧奨を受けた社員に対する慰謝料の支払い義務が発生したりします。

 

<安全な退職勧奨>

退職が無効とされたり、慰謝料が発生したりのリスクが無い退職勧奨とは、次のようなものです。

・1人の社員に対して2名で行う(1対1で退職勧奨を行うのは、セクハラなどを主張される恐れがあるので避けます)。

・パワハラ、セクハラなど、人格を傷つける発言はしない。

・大声を出したり、机をたたいたりしない。脅さない。だまさない。

・長時間行わない。何度も繰り返さない。

・きっぱりと断られたら、それ以上の退職勧奨は行わない。

・他人に話を聞かれる場所で行わない。明るく窓のある個室が望ましい。

・家族など本人以外の人に働きかけない。

結局、本人の自由な本心による退職の申し出が必要なので、後になってから本心ではなかったとか、脅された、だまされたなどの主張がありえない退職勧奨であることが必要となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社としては何とかして辞めてもらう必要を感じていて、退職勧奨にあたる社員も熱くなりがちです。

冷静さを求められる局面でこそ、信頼できる社労士にご相談いただきたいものです。

 

解決社労士

 

2020/05/18|1,433文字

 

<中途採用者を短期間で解雇したい場合>

同業他社で、長年の実務経験を積み、即戦力となることを期待した中途採用者が、全くの期待外れで解雇を検討したいということがあります。

この場合に、解雇が無効とならず、不当解雇とならない基準が曖昧なため、判断を先送りしていると、ますます解雇しづらくなってしまいます。

 

<解雇に関する法の規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用について、特別な規定が置かれているわけではなく、すべての採用に共通の規定があるだけです。

解雇権の濫用とはならず、解雇が有効になるためには、客観的に合理的な理由を備えていることと、社会通念上相当であることの2つが必要です。

この判断基準の具体的な中身が、新卒採用と中途採用とでは異なってきます。

10年の実務経験を積んで転職してきた人であれば、10年以上にわたって社会人としての経験を積んでいるわけですから、挨拶などのマナー、基本的な報連相、服務規律、社内ルールの遵守などは、常識として身につけていることが期待されます。

これらのことが全く身に付いていないのであれば、組織の一員として活躍できませんから、解雇するについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえるでしょう。

ただし、解雇を通告するには、基本的な常識不足を客観的に示す事実を、一覧表の形でまとめておいて提示するのが得策です。

これは、将来想定される訴訟の準備のためにも有効です。

 

<解雇に関する就業規則の規定>

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

会社の就業規則でも、普通解雇について、中途採用だけ特別な規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

しかし、判断基準の具体的な中身が、新卒採用と中途採用とでは異なってきます。

中途採用の場合、通常は職務と役割を特定して採用しますから、「業務能率」は経験者としての基準で評価することになりますし、「向上の見込み」「他の職務への転換」は配慮する余地が限られています。

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことは無く、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<実務上の配慮>

中途採用では、可能な限り、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を文書化し明示して、本人の理解を得ておくことが必要でしょう。

試用期間を設けるのであれば、本採用する/しないの具体的な基準を明示します。

試用期間を設けない場合でも、労働条件通知書に解雇の理由を可能な限り具体的に明示しておくことで、トラブルを未然に防止したいものです。

 

解決社労士

2020/05/17|843文字

 

<就業規則の機能>

就業規則は、労働条件や職場の規律を明らかにして、働きやすい職場づくりに役立ちます。

つまり、就業規則が文書化され明らかであれば、労働者は労働条件や守るべきルールが明らかなので、安心して働くことができます。

また、使用者も職場秩序を確立・維持し、多数の労働者の労働条件を統一的に管理することによって、事業運営の見通しを立て計画性を保つことができます。

さらに、労働者と使用者との間の権利義務関係を明らかにして、労働紛争を予防することができます。

なぜなら、労働紛争の多くは「あやふや」であることに起因するからです。

 

<就業規則に対する法規制>

就業規則は、労働基準法をはじめとする法律、命令、省令、労働協約に反してはなりません。

反している部分は無効となります。

これらに反する就業規則が作成された場合には、所轄労働基準監督署長が変更を命じることになります。

しかし、変更を指示される前でも無効です。

 

<就業規則の個性>

就業規則は、法令や労働協約により規制されるものの、その範囲内では職場の実情に応じたものを定めることができます。

つまり、就業規則にも個性があります。

そして、労働者の権利が最低限守られるだけの就業規則もあれば、労働者の権利を大幅に認めた就業規則もあります。

最低限の就業規則であれば、会社の負担は少ないのですが、労働者が不満を感じて労働意欲を失ったり、退職してしまったりでは元も子もありません。

反対に、福利厚生やその他の面で、労働者に最大限の権利や自由を認める就業規則であれば、労働者の利益になるようにも見えますが、会社の負担が大きすぎて経営が行き詰まるようでは、結局、労働者の雇用の安定が損なわれてしまいます。

実際に運用されている就業規則は、労働者と使用者との間の権利義務関係が、職場の実情に応じて微妙なバランスを保った内容であることが求められるわけです。

 

会社の実情を踏まえたバランスの良い就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/16|1,018文字

 

<就業規則の由来>

就業規則は、従業員の労働条件や職場の規律などを定めたものです。

多数の従業員を抱える企業では、営利追求の目的を達成するために、雇い入れた従業員を組織化し労働条件や職場の規律をある程度画一的に規制する必要があります。

多くの従業員が集まって生産活動に携わる場合には、予め決められている一定の秩序に従うことが効率的であり、安全も確保され、生産設備や施設の管理も適切に行えるため、就業規則の必要性が認識されて自然発生的に作られ、やがて慣行化されたものです。

このように就業規則は、労働基準法が作成を命じているから作られたというものではありません。

 

<就業規則の内容>

実際の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<法令で定められた労働者の権利・義務>

就業規則の由来からすると、その内容は労働条件の共通部分と職場の規律だけで十分なはずです。

しかし会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務、さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

<パート・アルバイトがいる場合の就業規則>

就業規則は、労働条件の共通部分についての規定を含みます。

そして、正社員とパート・アルバイトでは労働条件が違うのですから、それぞれ別の就業規則が必要となります。

正社員には退職金制度があり、パート社員には退職金を支払わないという暗黙のルールがあっても、正社員の就業規則しか無ければ、退職したパート社員から退職金の支払いを請求されても断り切れないのです。

さらに、同一労働同一賃金により、退職金支給の趣旨が明確化され、なぜ正社員とパート社員とで違うのかが合理的に説明できなければならなくなっています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法改正に追いつくだけではなく、それぞれの会社の実情に適合した就業規則を作り改善するのは、社労士の最も得意とするところです。

トラブル発生時に、きちんと機能する就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/15|2,230文字

 

<年金改革法>

令和2年5月12日、衆議院本会議で年金改革法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案)の審議が行われ、これに先立ち5月8日の厚生労働委員会で付された附帯決議を踏まえた修正案が可決されました。

この附帯決議には、今後の年金制度改革の方向性が示されており、大変重要な内容を含んでいます。

 

<短時間労働者の社会保険加入基準>

短時間労働者に対する被用者保険の適用については、被用者には被用者保険を適用するとの考え方に立ち、更なる適用拡大に向け、検討を促進すること。特に、当分の間の経過措置となっている企業規模要件については、できる限り早期の撤廃に向け、速やかに検討を開始すること。

現在は、元々の基準での被保険者数が501名以上の企業で、短時間労働者の社会保険加入基準が緩和されています。

この加入基準は、より規模の小さな企業にも、順次適用されていく方向で法改正が重ねられます。

附帯決議は、すべての企業で短時間労働者の社会保険加入基準が緩和されるよう、急ぐべきであると提言しています。

 

<中小企業の支援>

被用者保険の適用拡大により保険料負担が増加する中小企業に対しては、各種の支援措置の充実を検討すること。

社会保険料は、労使折半が基本ですから、小規模な企業にも社会保険加入基準の緩和が適用されれば、保険料負担が大きくなります。

これに対する助成金などの支援拡大を提言しています。

 

<年金制度の検討>

今後の年金制度の検討に当たっては、これまでの財政検証において、国民年金の調整期間の見通しが厚生年金保険の調整期間の見通しと比較して長期化し、モデル年金の所得代替率に占める基礎年金の額に相当する部分に係るものが減少していることが示されていることを十分に踏まえて行うこと。

年金制度の検討方法でも、検討結果でも、国民年金と厚生年金保険との間にアンバランスが見られるので、これを是正するように提言しています。

 

<国民年金の支給額引き上げ>

将来の所得代替率の低下が見込まれる基礎年金の給付水準の引上げ等を図るため、国民年金の加入期間を延長し、老齢基礎年金額の算定の基礎となる年数の上限を45年とすることについて、基礎年金国庫負担の増加分の財源確保策も含め、速やかに検討を進めること。

将来的には、国民年金(老齢基礎年金)の支給額が、老後の生活を支えるのに不十分となることが見込まれるため、国民年金保険料の納付期間を40年間から45年間に延長すべきではないかと提言しています。

 

<繰下げ受給>

年金の繰下げ受給については、年金額が増額される一方で、加給年金や振替加算が支給されない場合があること、社会保険料や所得税、住民税の負担が増加する場合があることについても、国民にわかりやすい形で周知徹底すること。

年金の繰下げ受給は、受給額が増額される点ばかりが強調されていますが、いくつかあるデメリットについても、国民に周知すべきことが提言しています。

 

<年金積立金の管理>

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)等が管理・運用する年金積立金については、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことから、市場の動向等を踏まえた適切なリスク管理を行うこと。また、会計検査院から開示を求められていたストレステスト等の中長期のリスク情報については、GPIFの業務概況書に記載するなど少なくとも年一回は公表すること。

年金積立金の適正なリスク管理は、常に求められているところですが、情報開示の改善が新たに提言しています。

 

<プラスアルファの年金>

国民が高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を行うに当たって、これに対する支援を公平に受けられるようにする等その充実を図る観点から、個人型確定拠出年金および国民年金基金の加入の要件、個人型確定拠出年金に係る拠出限度額および中小事業主掛金を拠出できる中小事業主の範囲等について、税制上の措置を含め全般的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

国民皆年金に相当する部分だけでは、老後の生活費が不足する懸念があるため、国民が自主的に努力するための必要な措置を講ずるよう提言しています。

 

<年金生活者支援給付金>

年金生活者支援給付金の額その他の事項については、低所得である高齢者等の生活状況、低所得者対策の実施状況および老齢基礎年金の額等を勘案し、総合的に検討すること。

年金生活者支援給付金は、消費税率引上げ分を活用し、年金を含めても所得が低い人の生活を支援するために、年金に上乗せして支給するものです。

これについても、総合的に検討すべきことを提言しています。

 

<産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度>

今後、社会保障の支え手である現役世代の負担増が見込まれる中、特に子育て世代の負担軽減を図るため、被用者保険には産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度が設けられていることを踏まえ、財政負担の在り方にも留意しつつ、国民年金の検討と併せて国民健康保険の保険料における配慮の必要性や在り方等についても検討すること。

産前産後・育児休業期間の保険料の免除制度は、順次拡大されてきています。

それでも、国民健康保険料については制度が無いため、免除制度の導入検討を提言しています。

 

社会保険の財源は、主に税金と保険料です。

しかし、企業の負担も大きくなっています。

今後も年金制度改革から目が離せません。

 

解決社労士

2020/05/14|1,038文字

 

<経営者の立場>

創業者であればもちろん、そうでなくても経営者であれば、今後の会社をどうすべきか、今抱えている課題をどのように解決したら良いのか、365日、24時間思いを巡らせ悩んでいるのは当たり前です。

その一方で従業員たちは、残業手当がどうだとか、休暇が取れないとか、賞与の金額が他社に比べて少ないとか、好き勝手なことを言っています。

経営者からすると、どうしてみんな自分と同レベルで頑張っていないのか、特に若い頃の自分と、若手社員の現実の姿の差にがく然としてしまいます。

 

<目的意識の差>

こうした態度の差をもたらしているのは、まさに目的意識の違いでしょう。

経営者は会社と従業員、その家族までを支えなければなりません。

ところが、従業員はともすると「給料分だけ働こう」という気持ちになってしまいます。

実際には、すべての社員が給料分しか働かなければ、会社の発展どころか存続すら危ういのですが。

 

<創業の精神>

創業の精神というのは、「なぜその事業を始めたのか」という事業開始の目的意識を言葉にしたものです。

どの会社でも、事業を始めるにあたっては、創業者が多大なリスクを冒し、大変な努力をしています。

そのときの思いを集約したのが、創業の精神なのです。

この創業の精神は、すべての社員に浸透させなければなりません。

そうしなければ、今なぜこの会社があるのか、その存在意義すらあやふやになってしまうからです。

 

<経営理念>

経営理念というのは、「どうやって利益を出すか」を言葉にしたものです。

どの会社にも、様々な方針があります。

明確に文書化されたものや、なんとなく共有されているものまで、相当な数に及びます。

その中でも、会社がどうやって営利を追求するかという態度を示したものが経営理念です。

この経営理念が、お客様やお取引先に受け入れられないような内容であれば、会社は社会性を失い存続できなくなります。

この経営理念も、すべての社員に浸透させなければなりません。

そうしなければ、今なぜこの仕事をしているのか、その目的すらあやふやになってしまうからです。

 

<創業の精神と経営理念の見える化>

創業の精神や経営理念の中であやふやになっている部分は、文書化して明確にしておくべきです。

会社は就業規則の周知を義務付けられていますが、実はそれ以上に、創業の精神と経営理念を周知する必要に迫られていると考えます。

就業規則ファイルには、創業の精神、経営理念、就業規則、労使協定の順に並んでいるのが望ましいと思います。

 

解決社労士

2020/05/13|798文字

 

<育児・介護休業法の目的>

〔育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第1条〕

この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。

このように、育児や介護の負担が原因となって働けなくなるケースを減らし、経済社会の成長力を維持するのがこの法律のねらいです。

 

<政策の推進>

少子高齢化が進む現在の日本で、政府は政策として、少子化対策と高齢化対策を強化していますから、育児・介護休業法も、度重なる改正によりその内容が充実されてきています。

さらに、労働者が妊娠したことを理由に不利益な扱いを受けるなど、事業主が育児・介護休業法に規定する義務に違反したことが原因で退職した場合には、雇用保険法により特定受給資格者とされ、会社都合で退職させられた人と同じように、失業手当(求職者給付の基本手当)の給付日数が多めに付与されるようになっています。

これは、育児・介護休業法の枠を越えて、政策が推進されている実例の一つです。

 

<会社が政府の政策に追いつくために>

法改正に合わせて、就業規則の改定を繰り返すという受け身の対応だけでなく、積極的に労働環境の改善を考える場合には、少子高齢化対策を軸に据えて計画を推進してはいかがでしょうか。

就業規則の改定や制度の導入すらままならないということであれば、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/12|620文字

 

<高年齢雇用継続給付>

60歳の定年を超えて働く場合、一定の条件を満たせば、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けることができます。

高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金があります。

 

<継続して働く場合>

60歳の定年後に同じ会社でそのまま働く場合、別の会社に転職して働く場合、どちらでも雇用保険に加入しながら働くのであれば、雇用保険の加入期間(被保険者期間)が5年以上ある人の場合には、高年齢雇用継続基本給付金を受給できます。

ただし、60歳を迎えた時と比べて、給与が75%未満である月に限られます。

この給付金は、65歳を迎えるまで受給できます。

 

<失業手当を受給して>

60歳の定年を迎えて退職し、ハローワークで手続すると、雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)が受給できます。

この手当をすべて受給するのではなく、100日以上の支給日数を残して再就職し雇用保険に加入すれば、高年齢再就職給付金を受給できます。

これも、60歳を迎えた時と比べて、給与が75%未満である月に限られます。

この給付金は、1年間受給できます。

さらに、200日以上の支給日数を残して再就職し雇用保険に加入した場合には、2年間受給できます。

 

<失業手当を受給せずに>

60歳の定年を迎えて退職し、雇用保険の失業手当(求職者給付の基本手当)を受給しないで、退職から1年以内に再就職し雇用保険に加入した場合には、高年齢雇用継続基本給付金が受給できます。

 

解決社労士

2020/05/11|782文字

 

<建前上の請求人>

労災保険法の規定では、被災した労働者本人が請求人です。

もちろん、労働者が死亡した場合には本人からの請求は無理ですから、その遺族が請求人となります。

この建前から、労災の請求をするかどうかは、被災した労働者本人や遺族が決めることになります。

しかし、労災保険の請求手続を、建前通りに労働者本人や遺族が行うことには無理があると感じられます。

 

<事業主の手助け>

「労働者本人がケガのため、自ら手続きができないときは、事業主は労災保険の請求手続きを手助けしなければならない」「労働者から労災保険の請求手続きに必要な証明を求められたときは、事業主は速やかに必要な証明をしなければならない」という規定があります。〔労災保険法施行規則第23条〕

このように会社について、労災保険の請求手続に関する証明義務と助力義務が規定されています。

 

<実務上は>

実務的には、会社が労災保険の請求手続を主導することになります。

多くの会社は、被災労働者に労災保険の手続について説明し、請求書の記入をその大半の部分で代行し、労働基準監督署に請求書を提出するなど、ほとんどの手続を行っています。

手続を本人任せにしていると、所轄の労働基準監督署の労災課から「きちんと手続を主導しなさい」という指導が入ることになります。

被災者本人の不注意もあって、被災者が遠慮がちな態度を取ることもあります。

「労災保険の給付を辞退します」などと明言することもあります。

しかし、治療が長引いたり、後遺症が出たりで、被災者の気が変わることも度々あります。

不正に健康保険での治療を続けておきながら、費用負担に耐えられず、会社に補償を求めることもあります。

こうなると会社の経費負担は、大変大きなものになってしまいます。

最初から被災者を説得し、会社が十分なフォローを行うことによって、トラブルを未然に防ぎたいものです。

 

解決社労士

2020/05/10|1,080文字

 

<目的意識とは>

「なぜするのか」という意識を持ち続けることが目的意識です。

ここから派生して「なぜこの時間にやるのか」「なぜここでやるのか」「なぜこの人がやるのか」「なぜこれがあるのか」「なぜこの方法でするのか」なども目的意識に含まれます。

 

<裏から見た目的意識>

裏を返せば、「これをしなかったらどうなるのか」という意識を持ち続けることも、一種の目的意識です。

ここから派生して「別の時間にやったらどうか」「別の場所でやったらどうか」「別の人がやったらどうか」「これが無かったらどうか」「他にどんな方法があるか」なども裏から見た目的意識です。

 

<生産性とは>

生産性とは、投入量と産出量の比率をいいます。

計算式であらわすと 生産性 = 産出量 ÷ 投入量 となります。

会社は営利を追求していますから、基本的には生産性を高めたいわけです。

働き方改革も生産性の向上を目指していると言われます。

しかし、我々働き方改革研究会のメンバーで話し合った結果、生産性向上はそれ自体を目指すべきではなく、結果として達成できるものであるという結論に達しました。

 

<生産性ゼロの仕事>

生産性ゼロの仕事として、次のようなものが想定されます。

10年以上にわたって、各部門から人事部門に月次データが送られています。

ある時、一人の人事担当者が別の部門に異動になり、月次データの作成を指示されました。

「ああ、このデータってシステムが変わったからもう使っていないんだよね」と言ったのです。

多大な人件費のムダと、人事部門の連絡ミスが明らかになりました。

実は、こうした事例は数多く見られます。

経営陣は生産性の停滞に悩んでいるのに、現場レベルでは要らない仕事が習慣的に続けられているという事例です。

たしかに人事部門が「このデータはもう要りません」としっかり伝えなかったのが敗因です。

しかし、ある部門の担当者が「このデータのここは省略してもいいのでは?」などと人事部門に問合せをしていれば、もっと早く無駄に気付いたことでしょう。

結局、人事部門だけが悪いのではなく、社員ひとり一人に目的意識が欠けていたことの結果です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

開業社労士は、部外者です。

岡目八目と言われるように、会社内部の問題点を見つけやすい立場にあります。

しかも労務管理の専門家ですから、適法の範囲内で、生産性向上についてのアドバイスや提案をすることができます。

最低賃金の上昇や、定着率の低下で、何としても生産性を向上させなければならない経営者の方は、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/09|790文字

 

<繰り下げ>

特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給できる人を除き、老齢年金の受給開始年齢は原則として65歳です。

この受給開始時期を遅らせることによって、老齢年金の受給額を増やすことができます。

この場合、年金受給開始年齢は上がることが多く、紛らわしいのですが、年金の「繰り下げ」と呼んでいます。

繰り下げ1か月につき0.7%の増額となります。

最長で5年間繰り下げることができますから、最大で42%増額できる計算です。

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受給できる場合に、両方を同時に繰り下げることもできますし、片方だけ繰り下げることもできます。

年金受給者に妻や子がいると加算される「加給年金」という仕組もあります。

老齢厚生年金を繰り下げている期間中は、加給年金を受給できませんので、老齢基礎年金だけを繰り下げるとお得なこともあります。

 

<70歳まで働く>

働いて厚生年金に加入し続けていれば、70歳までは、加入期間が延びることによって、退職後の年金額も増えます。

働いて収入がある期間だけ年金の繰り下げをするなどが考えられます。

 

<追納>

経済的な理由で、国民年金保険料の全部または一部の免除を受けた期間がある人は、その内容に応じて年金額が減額されます。

この場合、10年以内に追納すれば、追納した保険料が年金額に反映され受給額が増えることになります。

学生納付特例制度など、国民年金保険料の納付猶予制度を利用した人は、そのままでは年金額が減額されてしまいます。

この場合にも、10年以内に追納すれば、追納した保険料が年金額に反映され受給額が増えることになります。

 

<任意加入>

老齢基礎年金が満額でない場合など、60代前半で厚生年金に加入していなければ、国民年金に任意加入して、満額となるまで受給額を増額することができます。

 

上記の他にも、付加年金や国民年金基金制度を利用することもできます。

 

解決社労士

2020/05/08|949文字

 

<法律の第1条>

雇用保険法、労働安全衛生法、労災保険法、健康保険法、厚生年金保険法、男女雇用機会均等法、パートタイム労働法など、会社の労働に関わる法律の中には、第1条でその法律の目的を示しているものが多いものです。

これは、最初にその法律の目的を明らかにすることによって、1つの条文に複数の解釈が可能な場合には、目的に沿った解釈を選択できるようにするためです。

そして、法律の意図した解釈とは違う解釈がされないように、一種の道しるべの役割を果たしているといえます。

 

<社内規程の第1条>

会社の就業規則や、賃金規程、退職金規程などを見ても、第1条にその規則や規程の目的が示されていることは多いものです。

もし、社内規程の最初にその規程の目的が示されていないとすると、個々の規定を見たときに、一般社員は労働者側に有利な解釈をし、経営者や人事部門の責任者は使用者側に有利な解釈を示して、対立してしまうという事態が発生しやすくなります。

反対に、「第1条(目的)」の役割をこのように把握したうえで、規程全体の解釈が統一的なものになるよう、「第1条(目的)」の内容を充実させなければなりません。

 

<モデル就業規則の「第1条(目的)」>

厚生労働省のモデル就業規則も、第1条は「目的」です。そして、労働基準法第89条を基に規定していること、規定し切れないことについては法令の定めによるということが書かれています。

そこで、労働基準法第89条を見てみると、就業規則に必ず規定する項目、社内にルールがあれば規定を置く項目が並んでいます。

これによって、会社ごとに無ければならない項目が明らかとなります。

また、就業規則に規定が無いからと言って、その会社の従業員に適用されないということではなく、法令の内容が適用されるということを示しています。

たとえば、産休や介護休業について就業規則に規定が無くても、法令が適用されてちゃんと休業できるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

実際に就業規則を読んでみて、どう解釈して良いのかわからない規定があったり、そもそも意味不明な部分があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

それぞれの職場に適合した就業規則について、アドバイスや提案を受けることができます。

 

解決社労士

2020/05/07|948文字

 

<専門実践教育訓練給付金>

雇用保険に一定の期間入っている人、または、入っていた人が、自分で費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合、その教育訓練に支払った経費の一部を支給する雇用保険の給付制度です。

2014(平成26)10月から従来の仕組みが拡充され、専門実践教育訓練の教育訓練給付金が新設されました。

 

<2014(平成26)年10月1日以降の受給条件>

教育訓練講座の受講開始日現在で、雇用保険に入っていた期間(被保険者期間)が10年以上あることが条件です。ただし、初めて支給を受ける場合には、当分の間、2年以上あれば大丈夫です。

受講開始日時点で雇用保険に入っていない人(一般被保険者ではない人)でも、資格を失った日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であれば対象となります。

しかし、前に給付を受けたことがある場合には、前回の教育訓練給付金受給から、今回の受講開始日前までに10年以上の期間が必要です。 

 

<給付額>

教育訓練に支払った教育訓練経費の40%に相当する額となります。

ただし、その額が1年間で32万円を超える場合の支給額は32万円(訓練期間は最大で3年間となるため、最大で96万円が上限)とし、4千円を超えない場合は支給されません。

また、専門実践教育訓練の受講を修了した後、あらかじめ定められた資格等を取得し、受講修了日の翌日から1年以内に雇用保険に加入した人、または、加入している人(一般被保険者として雇用された人、または、すでに雇用されている人)に対しては、教育訓練経費の20%に相当する額を追加して支給します。

この場合、合計で60%に相当する額が支給されることとなりますが、その額が 144万円を超える場合の支給額は144万円(訓練期間が3年の場合、2年の場合は96万円、1年の場合は48万円が上限)とし、4千円を超えない場合は支給されません。

 

<教育訓練支援給付金>

専門実践教育訓練の教育訓練給付金を受給できる人のうち、受講開始時に45歳未満で離職しているなど、一定の条件を満たす場合には、訓練受講をさらに支援するため、「教育訓練支援給付金」が支給されていました。

この教育訓練支援給付金は、2018(平成30)年度までの暫定措置でした。

 

解決社労士

2020/05/06|502文字

 

<一般教育訓練給付金>

雇用保険に一定の期間入っている人、または、入っていた人が、自分で費用を負担して、厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し修了した場合、その教育訓練に支払った経費の一部を支給する雇用保険の給付制度です。

2014(平成26)10月から仕組が変わりましたが、一般教育訓練給付金は従来の枠組を引き継いだものです。

 

<2014(平成26)年10月1日以降の受給条件>

教育訓練講座の受講開始日現在で、雇用保険に入っていた期間(被保険者期間)が3年以上あることが条件です。

ただし、初めて支給を受ける場合には、当分の間、1年以上あれば大丈夫です。

受講開始日時点で雇用保険に入っていない人(一般被保険者ではない人)でも、資格を失った日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であれば対象となります。

しかし、前に給付を受けたことがある場合には、前回の教育訓練給付金受給から、今回の受講開始日前までに3年以上の期間が必要です。

 

<給付額>

教育訓練に支払った教育訓練経費の20%に相当する額が給付されます。

ただし、その額が10万円を超える場合は10万円とし、4千円を超えない場合は支給されません。

 

解決社労士

2020/05/05|1,149文字

 

<和製英語>

ポジティブ・アクション (positive action)は、肯定的差別(positive discrimination)と肯定的措置(affirmative action)を組み合わせた和製英語です。

このうち肯定的措置(affirmative action)というのは、弱者集団の不利な現状を把握し、歴史的経緯や社会環境を踏まえて是正するという改善措置を指します。

弱者集団については、民族、人種、出身などによる差別が問題となるのですが、日本では特に女性差別が問題とされ、厚生労働省が中心となって女性の活躍や男女格差解消を推進しています。

具体的な肯定的措置としては、就職や昇進での特別な採用枠の設置や試験点数の割り増しなどの直接的な優遇措置があります。

 

<企業での具体的な取組み>

固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性がほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めているなど、男女労働者の間に具体的な差が生じている場合、この差を解消しようと個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組みをいいます。

社内制度には男女差別的取扱は無いのに「女性の職域が広がらない」「なかなか女性の管理職が増えない」そのために女性の能力が十分に活かされていないといった場合に、このような課題を解決し、実質的な男女均等を実現するために必要となるものです。

たとえば、勤続年数が長い女性労働者が多数勤務しているにもかかわらず、 管理職になっている女性が男性と比べて極めて少数であるというような場合、「3年間で女性管理職20%増加」などという具体的な数値目標を掲げ、女性の管理職候補者を対象とする研修の実施、女性に対する昇進・昇格試験受験の奨励、昇進・昇格基準の明確化等の取組を行っていくことが考えられます。

 

<男女雇用機会均等法との関係>

男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、「この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする」としています。〔第1条〕

つまり単純な男女平等ではなく、女性労働者に対する一定の配慮もその目的としていることになります。

さらに、この法律は男女差別を禁止する一方で、「事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない」と規定しています。〔第8条〕

これは、ポジティブ・アクションが男女平等に反する措置ではないことを、積極的に認める趣旨です。

 

解決社労士

2020/05/04|1,038文字

 

<概要>

新型コロナウイルス感染症拡大の影響による減収を理由とする国民年金保険料の特例免除申請の受付が開始されました(令和2年5月1日)。

令和2年4月30日、日本年金機構が令和2年2月分以降の国民年金保険料を対象として、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による減収等のため、国民年金保険料の納付が困難となった場合の臨時の特例免除申請の受付手続を明らかにしました。

特例免除の申請にあたっては、申請書のほかに所得の申立書の提出が必須とされています。

これらの書式も、日本年金機構ホームページでダウンロードすることができます。

当然ですが、感染症拡大防止の観点から、できる限り郵送によることが求められています。

 

<申請の種類>

・臨時特例による国民年金保険料の免除・猶予

・臨時特例による学生納付特例申請

 

<対象者>

次の条件を両方とも満たした人が対象になります。

・令和2年2月以降に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により収入が減少したこと

・令和2年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得の見込みが、現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれること

 

<承認基準>

 

臨時特例による国民年金保険料の免除・猶予

①全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

②4分の3免除:78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

③半額免除:118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

④4分の1免除:158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※地方税法に定める障害者および寡婦の場合、基準額が変わります。

 

臨時特例による学生納付特例申請

118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

 

<必要書類>

 

臨時特例による国民年金保険料の免除・猶予

・国民年金保険料免除・納付猶予申請書

・所得の申立書(簡易な所得見込み額の申立書(臨時特例用))

※マイナンバーにより郵送で申請する場合には、マイナンバーカードの写しなどの本人確認書類の添付が必要です。

 

臨時特例による学生納付特例申請

・国民年金保険料学生納付特例申請書

・所得の申立書

・学生証のコピー

※新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、学生証等の発行が遅延し手元にない場合は、申請書の備考欄に「学生証発行遅延のため後日送付」と記入したうえで申請書を提出し、学生証等が手元に届いたら、コピーを速やかに提出します。

※マイナンバーにより郵送で申請する場合には、マイナンバーカードの写しなどの本人確認書類を添付が必要です。

 

解決社労士

2020/05/03|1,326文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で1人につき1回30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

30万円単位の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

 

<労働条件明示の理由>

労働条件の明示が労働基準法に規定されているのはなぜでしょうか。

労働契約は、使用者の「働いてください。給料を支払います」という意思表示と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思表示が合致することによって成立します。

しかし、具体的な労働条件が決まっていなければ、使用者からアルバイトに「明日は私の自宅のトイレと浴室の掃除をしてもらいます」ということも、絶対に無いとは言えません。

こうなると、労働者ではなくて奴隷扱いになりかねません。

もちろん、これは極端なたとえ話ですが、労働基準法が明示を義務付ける労働条件は、すべて限定されないと労働者が困る事項ばかりです。

 

<労働条件が不明確だと下がる定着率>

労働条件が不明確であれば、労働者は不安を感じ、退職しやすい理由となります。

定着率の低い会社は、労働条件があやふやになっていることが多いものです。

不安の内容としては、次のようなものが挙げられます。

●契約期間、契約更新の有無

これが不明確だと、次の仕事を探す必要性も、探し始めて大丈夫かどうかもわかりません。

契約期間の終了が近づくと、労働者は不安ですし、中には次の仕事を見つけて自分から退職する人も出てきます。

●就業の場所

これが不明確だと、どこで働くのか、勤務地が変わることがあるのか、不安になります。

例外的に転勤する人が出た場合、転勤を恐れて退職する人も出てきます。

●業務内容

これが不明確だと、仕事の範囲がわかりません。

「こんな仕事までする約束ではなかった」と感じた人は退職を考えます。

●出勤日と始業終業時刻

ただ単に「シフト制」とするなど、不明確になっていると私生活との調整がむずかしくなります。

また、どれだけ働いて、どれだけの収入が得られるのかもわからないのでは、勤務時間の安定した仕事を求めて退職するのは仕方のないことです。

この状態だと、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

つまり、「うちは有給休暇を取らせないよ」と自白していることにもなります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

実際、その日によって勤務時間帯が変わるなど、労働条件をどのように明示すれば良いのか迷うケースもあります。

労働条件が良くわからないために、新人が定着しないのでは、経費、時間、労力、精神力のムダです。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

今は、新型コロナウイルス感染症関連で、助成金が話題となっています。

元々の労働条件が書面で明確化されていないのに、「従業員を休ませた」という証明はできません。

労働条件の明示は、助成金の受給にも大きな役割を果たすのです。

 

解決社労士

2020/05/02|1,040文字

 

<定年年齢の規制>

事業主が定年制を設ける場合には、定年を60歳以上とすることが義務化されています。〔高年齢者雇用安定法第8条〕

これにより、60歳未満の定年を定めた就業規則等の規定は無効とされます。

法令違反とならないように、法改正に先駆けて就業規則を変更し続けるのが正しいのです。

 

<定年後の継続雇用の規制>

定年の定めをしている事業主に対して、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講ずべきことが定められています。〔高年齢者雇用安定法第9条〕

義務付けられる雇用確保措置のうち継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度とがあります。

勤務延長制度は、原則として役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わりません。

これに対し、再雇用制度は一度労働契約を終了させた後に、再び新しく労働契約を締結するものです。

つまり、定年の65歳への引上げが義務付けられるわけではありませんし、必ずしも勤務延長制度を選択しなければならないわけでもありません。

再雇用制度を選択し、新しい労働契約によって、役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わることもあるわけです。

 

<再雇用制度を選択する場合の規制>

再雇用制度を選択した場合であっても、再雇用にあたって、事業主が極端に労働条件を下げた労働契約を提案した場合には、実質的に再雇用拒否と見られますから、解雇権の濫用と同視され、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講ずべき義務に反します。

つまり、高年齢者雇用安定法第9条に違反することになります。

では、どの程度条件を下げても再雇用拒否と見なされないかというと、まだ裁判例の集積も通達も不十分ですから明確な基準は見当たりません。

結局、具体的な事例に即して、社会通念に照らして相当かどうかで判断することになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

勤務延長制度であれば、トラブルは少ないと思います。

しかし、再雇用制度の場合には、労働条件の低下を伴うことが通常で、労使の話し合いが決裂してしまい、トラブルになることが多いものです。

同じ労働条件の低下であっても、ただ「この条件になります」と言うのと、なぜそのような条件を提示することになるのかについて、具体的な説明を尽くした場合とでは、事業主から示される誠意に大きな差が出てきます。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)が間に入り、社労士が事業主から説明を受け、定年を迎える人にわかりやすく具体的な説明をするというのが、トラブルを未然に防ぐための良い方法でしょう。

 

解決社労士

2020/05/01|457文字

 

<コンサルタント>

コンサルタントは、問題解決や組織変革など特定のテーマの実現を推進します。

そして、設定したテーマが実現されれば、業務は終了することになります。

一応、専門家ではありますが、資格が無ければコンサルタントができないというわけではありません。

誰でもコンサルタントを名乗ることができます。

 

<社労士(社会保険労務士)>

社労士がコンサルタント業務を行う場合には、主に顧問社労士として、中長期的な視点から、会社を継続的に改善し成長させるためのアドバイスを続けます。

その分野は、採用、教育、労務管理、人事制度、就業規則、労使協定など人に関すること全体に及びます。

ですから特定のテーマが実現しても、また別のテーマの実現を目指して活動しますし、同時に複数のテーマに取り組むことも多いものです。

社労士は国家資格ですので、無資格で業務を行うことはできません。

社労士に業務を依頼する場合には、社会保険労務士証票と都道府県社会保険労務士会会員証で、資格の保有者であることを確認し、きちんと契約書を交わしたうえで依頼しましょう。

 

解決社労士

<早く給付を受けるために>

労災が発生して、労災保険の給付を受けるには、労働基準監督署長に所定の書類を提出します。

多いのは、治療費を無料にするための書類と賃金の一部を補償してもらうための書類ですが、これらの書き方にはコツがあります。

表現を工夫しないと、労基署から問い合わせの電話が入ったり、訂正を求められたり、書き直しが必要になったります。

被災者は一日も早く給付(お金)をもらいたいのですから、スムーズな手続きが望ましいのです。

 

<ポイントとなる記入欄>

これらの書類で一番のポイントは「災害の原因及び発生状況」の欄です。

この欄には、「(あ)どのような場所で (い)どのような作業をしているときに(う)どのような物又は環境に(え)どのような不安全な又は有害な状態があって(お)どのような災害が発生したかを詳細に記入すること」という注意書きがあります。

しかし、必ずしもこれらの項目をきちんと分け、すべて記入しなければならないわけではありません。

労災保険の給付対象であることが説明できていれば良いのです。

そして、勤務中の災害である業務災害の場合には、業務遂行性と業務起因性を示す必要があります。

 

<業務遂行性>

業務遂行性というのは、労働者が使用者の支配・管理下にある状況のことをいいます。

たとえば、「昼食のお弁当を買いに外出していて事故にあった」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断するでしょう。

しかし、「昼食のお弁当を買いに行く当番だったので休憩時間前に外出していて事故にあった」と書いてあれば、業務遂行性が認められ労災保険が適用されうるのです。

 

<業務起因性>

また、業務起因性というのは、業務にひそんでいる危険が現実化したと認められることをいいます。

たとえば、「空の段ボール箱を持って立ち上がったら腰を傷めた」と書いてあれば、労基署の担当者は「労災ではない」と判断する可能性が高いといえます。

しかし、「空の段ボール箱(縦80cm×横100cm×高さ120cm)を持って立ち上がる途中で、お客様から声を掛けられ振り返ったときに、腰をひねって傷めた」と書いてあれば、客観的に見て腰を傷めうる作業であること、お客様に対応したのだから業務であることが明らかになります。

 

<心がけとして>

提出された書類をチェックするのは、労基署の担当者です。

社内の人なら読んでわかる内容であっても、労基署の担当者が読んで業務遂行性と業務起因性が確認できなければ、手続きが滞ってしまうのです。

たとえば、パチンコ店の店員がケガをした状況について「災害の原因及び発生状況」の欄に記入したとします。

それが、社内の人やパチンコ店の常連客にわかる内容でも、パチンコ店に入ったことのない人が読んだらわからない内容では不十分なのです。

ですから、労働基準監督署長に提出する書類は、現場を見たことがない人でもわかるように、表現を工夫して作成しましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

書類が下手で受けられるはすの給付が受けられないというのは、労災に限らず、年金でも、健康保険でも、雇用保険でも、実際に起きてしまっていることです。

ポイントは、書き手が読んでわかる書類ではなく、提出された側の素人が読んでわかる書類になっていることです。

不安な点があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/29|1,485文字

 

<憲法と就業規則>

それぞれの国の実情に応じて、それぞれの憲法があり法律があるように、それぞれの企業の実情に応じて、それぞれの就業規則が必要です。

なにしろ就業規則は、その企業の憲法であり法律ですから。

今の日本国憲法は、国民の人権を国家権力から守る構造になっています。

しかし、前の大日本帝国憲法は国家権力を守る構造になっていました。

就業規則の中にも、企業を守る要素が強いものと、労働者の権利を守る要素が強いものとがあります。

 

<理想を言えば>

ですから、経営者が自分の会社を守り自分の理想に近づけようとするなら、これを実現するための武器として自分で作った就業規則を持つべきです。

ただそのためには、少なくとも憲法、民法、そして労働基準法などの労働法、さらには刑法などについて、体系的な理解と知識が必要ですから、もともとそうした勉強をしてきた経営者でなければ手がつけられないかも知れません。

また、就業規則には「何をどう規定したらどうなるか」という独特な専門知識と事例経験も必要です。

これを習得するためには、さらに2~3年集中して学ばなければなりません。

 

<お手軽な方法>

知り合いの会社の就業規則を真似して…というのは最悪です。

よその会社の就業規則を真似してもメリットがありません。

経営者の考え方も違いますし、毎年のように改定されているのでなければ、法改正に追いついていなくて違法となってしまった部分も含まれているでしょう。

やはり、厚生労働省のモデル就業規則をベースに作るのが安全です。

これは、法改正に対応していて、適法であることが保証されているようなものですから。

あとはこれに経営者の思いや、会社の個性、実情、成長段階などを反映させれば出来あがりです。

とはいえ、解説の部分を丁寧に読まないと、きちんとした就業規則は作れません。

必要な部分と、必ずしも必要ではない部分の区別もつきません。

最低限、必要な法律知識は身につけておく必要はあります。

 

<詳しい人に任せる方法>

経営者が自分自身で就業規則を作り改定しなくても、社内に詳しい人がいたり、人事部門の責任者や担当者がいたりすれば、その人に任せるのも良いでしょう。

ただし、これには「お手盛り」の落とし穴があります。

企業で「お手盛り」というと、取締役が自分の報酬を自分で決めると多めの金額になるということを指すでしょう。

しかし、このことは就業規則にもあてはまります。

就業規則の作成・改定を任されたのが取締役ならばともかく、労働者であれば労働者に有利な規定になるのは当たり前です。

たとえば、人事課長に給与規程を作らせれば、自分に有利な給与体系を作るのは、たとえ悪意が無くても、無意識のうちにそうしてしまうのは仕方のないことです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

より短期間で強力な就業規則にするには、信頼できる社労士(社会保険労務士)と経営者とで打ち合わせを重ね、作り上げていくのが賢い方法です。

たしかに報酬などの経費が発生します。

この報酬は、社労士が会社の実情に応じた就業規則を作成できる能力を身につけるために、多大な労力、時間、費用をかけたことによる正当なものです。

それでも、退職者から不当解雇を主張され、3か月から1年分の賃金プラス慰謝料を請求されることを1回でも防止できれば、すぐに元が取れる程度のものです。

社労士事務所によっては、顧問契約の範囲内で、少しずつ就業規則を改善していくサービスも行っています。

これは、就業規則を社内に定着させる点でも優れていると思います。

ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/28|843文字

 

<障害年金の更新期間>

社内にも、障害年金を受けながら勤務している従業員がいると思います。

障害年金の更新期間は1~5年の間で設定されており、更新期間満了(誕生月末日)までに診断書を提出し、障害等級に該当していることが確認されれば、障害年金の受給が継続される仕組みです。

会社としては、この更新手続が円滑に進むよう、更新のための受診日に年次有給休暇を確実に取得できるようにするなど、配慮する必要があります。

ただし、症状が「永久固定」の場合には、診断書の提出が不要です。

 

<提出期限延長の概要>

この度、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、障害状態確認届(診断書)の提出期限が1年間延長されることとなりました。

具体的には、令和2年2月末から令和3年2月末までに提出期限を迎える障害年金受給者について、提出期限がそれぞれ1年間延長されます。

これに伴い、令和2年2月から令和2年6月の間に提出期限を迎える受給者は、現時点で、診断書を作成・提出する必要がありません。

また、令和2年7月から令和3年2月までの間に提出期限を迎える受給者に、今回は日本年金機構から障害状態確認届(診断書)が送付されません。

障害状態確認届(診断書)は、来年以降、改めて送付されます。

※特別障害給付金の受給資格者も対象となります。

 

<対象者>

対象者は、全国および海外に居住する受給権者等です。

延長後の提出期限前に症状が悪化した場合は、増額改定の請求を行うことができます。

ただし、障害等級3級で65歳以上の人は請求できない場合があります。

 

<診断書を提出済みの人への配慮>

対象者のうち、既に診断書を提出した人については、診断書を審査した上で、不利益にならないよう、以下の取扱いが行われます。

 

・障害等級継続または増額改定と判定された場合は、延長前の提出期限の翌月から、判定結果を反映します。

・減額改定・支給停止と判定された場合は、現状の支給を継続し、延長後の提出期限時に、再度、診断書を提出してもらい、審査・判定を行います。

 

解決社労士 

2020/04/27|1,601文字

 

<日本語では>

英語のハラスメント(harassment)は、日本語の「いやがらせ」にあたります。

「いやがらせ」は、相手に対して、わざと不快感や損害を与える行為で、道徳に反するものを言います。

「いたずら」も近い意味を持ちます。

しかし、「いたずら」は第三者が見たときに笑えることもあるのですが、「いやがらせ」は道徳に反するので笑えません。

 

<セクシャルハラスメント>

これは「セクハラ」と略されることが多い「性的なことについてのいやがらせ」です。

職場に限らず、性的なことに対する興味が特に強い人がいます。

こうした人が、「いたずら」のつもりで「いやがらせ」をするとセクハラになるのですが、本人は道徳に反しないと思っているので、反省することなく繰り返します。

また職場では、部下が上司に対して愛想よく、従順で素直です。

これは立場上当然なのですが、上司が勘違いして部下から好かれていると思い込むことがあります。

上司は、部下が自分に魅力を感じ恋愛感情を抱いていると勘違いすることによって、その部下に対して、ある程度は性的な言動をすることも許されるだろうと思い込んでしまいます。

そして、対象となった部下は、立場上、その気が無いことをハッキリと言い出せずに、限界を超えるところまで従い耐えることになります。

セクハラは、業務上、全く必要の無い行為です。

加害者は、「コミュニケーションのために必要」などという勘違い発言をすることもありますが、これは社内教育の不足を示しています。

 

<パワーハラスメント>

これは「パワハラ」と略されることが多い「力関係に基づくいやがらせ」です。

年齢、経験年数、能力、地位、権限、人気などのパワーを持った人が、自分から見てある側面で「劣る」と思える相手に対して、主に指導の名目で「いやがらせ」をします。

多少不快感や損害を与えたとしても、指導に伴うものはある程度仕方がないという勘違いがあります。

職場では、上司と部下、先輩と後輩の関係で多く見られます。

社長対その他の社員という形で、社員が結託して社長にパワハラを行うこともあります。

怖いことに、セクハラを伴うパワハラも見られます。

それでも、行為者は自分の行為を許されていると思い込んでいます。

1つの行為の中に、必要な側面と、許されない側面が含まれているので、許されない側面に問題があるという理解が必要です。

 

<会社など使用者の責任>

職場で、セクハラ、パワハラ、マタハラ、その他のハラスメントが起きないよう、使用者がしっかり管理しなければなりません。

働いている人たちは、労働契約によって働いています。

雇い主の「働いてください。給料を支払います」という意思と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思の合致によって、労働契約が成り立っています。

ですから、会社側は労働者がきちんと働ける環境を整える義務を負っています。

また、労働者もきちんと働ける環境を侵害しない義務を負っています。

つまり、労働者がハラスメントをしない義務を負っているのと同じく、会社側もハラスメントを防止する義務を負っています。

万一、ハラスメントが発生すれば、その行為者と会社の両方が責任を負います。

ここでのポイントは、見つけ次第対応することだけが会社の義務ではなく、発生しないように、十分な教育を繰り返すことも会社の義務だということです。

この義務は特別なことではなく、労働契約の性質から当然のことなのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ハラスメントをなくすには、まず経営者の「許さない」という意志の表明が大切です。

これが無くては、何も始まりません。

そして教育と、相談窓口の設置が必須となります。

教育についても、相談窓口についても、社内で間に合わせるよりは社外の専門家に委託したほうが、はるかに効果的です。

ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/26|857文字

 

<委任状が必要です>

全国の年金事務所や街角の年金相談センターで、ご本人の代わりに誰か別の人が年金相談を受ける場合には、たとえ家族であっても委任状が必要です。

「家族だからいいだろう」と思って委任状を用意していなかったり、反対に「委任状を持っているから代理で相談を受ける人の身分証明は要らないだろう」と思って身分の証明になるものを持っていなかったりで、相談を受けられないというケースは意外と多いものです。

 

<委任状の様式>

委任状に法定の様式はありませんが、日本年金機構のホームページでダウンロードして使うのが便利です。

委任状を作成した年月日、本人の年金手帳や年金証書などに記載されている基礎年金番号と年金コード、氏名、住所、生年月日、委任する内容と代理人の氏名、住所、本人との関係を記入し、本人が署名のうえ印鑑を押したものであれば有効です。

本人の署名があっても印鑑が必要です。

 

<相談窓口に持参するもの>

・委任状(本人の署名・押印があるもの)

・代理人の本人確認ができる書類(運転免許証など)

・本人の印鑑(証明書等の(再)交付を受けるときなど)

 

<委任状の注意点>

委任状の内容に不備がある場合、希望する相談を受けられない場合がありますので、記入漏れがないように注意しましょう。

また、委任する内容については、できる限り具体的に記入することになっています。

 

<相談は電話予約を>

個人のデータを踏まえた年金相談となると、やはり年金事務所で受けることになります。

ただ、大変混雑が予想されますので、電話で予約したうえで相談を受けることをお勧めします。予約の際には、基礎年金番号を聞かれますので準備が必要です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「そもそも何をどう相談して良いのかわからない」「説明を受けてもわかる気がしない」ということであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

ご本人に代わって年金相談を社労士に任せることもできます。

そうすれば、ご本人が納得できるように社労士から説明を受けることができます。

 

解決社労士

2020/04/25|1,298文字

 

<健康保険法の規定>

健康保険法は、退職後であっても一定の条件を満たせば、傷病手当金を受給できるとしています。

 

【健康保険法第104条】

被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。

 

<1年以上の被保険者期間>

健康保険加入者(被保険者)の資格を喪失した日の前日までに、被保険者期間が1年以上あることが必要です。

退職によって資格を喪失する場合、健康保険は退職日まで有効で、翌日に資格を喪失することになります。

ただし、被保険者期間には、任意継続被保険者の期間や、共済組合の組合員の期間は含まれません。

勤務先や保険者が変わっても被保険者期間は通算されますが、途中に空白期間が1日でもあると通算されません。

 

<労務不能の状態>

療養のために労務不能である状態は、医学的見地からの判断となりますが、従事する業務に耐えられるかは、社会通念に基づいて判断されます。

実際に、時短勤務を行っている場合や、多少軽度な業務に切り替えて勤務している場合には、療養のために労務不能とはされません。

途中で職場に復帰しても、同一の傷病で再び労務不能となり休業した場合には、傷病手当金を受給できます。

ただし、支給開始日から1年6か月が限度となります。〔健康保険法第99条第4項〕

しかし、退職後に傷病手当金を受給していたところ、再就職して傷病手当金が不支給となった後は、同一の傷病で再び労務不能となり休業した場合でも、傷病手当金の受給を再開することはできません。

 

<休業の継続>

健康保険法第99条第1項は、「被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する」と定めています。

退職日が、療養のために労務不能の期間の3日目であった場合には、連続3日の待期期間を経過してから権利が発生するため、傷病手当金は受給することができません。

結局、退職日が労務不能の期間の4日目以降であることが必要となります。

また、退職日に出勤してしまうと、それが引き継ぎなどのための短時間の勤務であったとしても、退職日に療養のために労務不能という条件を満たすことができなくなります。

ただし、労務不能の期間に年次有給休暇を取得しても、受給の条件を満たすことができます。

 

<実務への影響>

私傷病で休業を継続する被保険者が、きちんと傷病手当金を受給できるよう、会社としても配慮すべき点があるわけです。

また、休業する被保険者が勘違いしないよう、会社から適切な情報を提供することも大事です。

 

解決社労士

2020/04/24|442文字

 

<健康保険の考え方>

健康保険の「療養の給付」は、病気やケガをしたときの治療を対象として行われます。

このため、日常生活に何ら支障がないのに受ける診療(美容整形など)に健康保険は使えません。

妊娠・出産も病気ではないため、正常な状態での妊娠・出産は健康保険の適用から除外されています。

また、健康保険の目的からはずれるような病気やケガをしたときは給付が制限されることがあります。

 

<健康保険が使えないケース>

•美容を目的とする整形手術

•近視の手術など

•研究中の先進医療

•予防注射

•健康診断、人間ドック

•正常な妊娠・出産

•経済的理由による人工妊娠中絶

 

<例外的に健康保険が使えるケース>

•斜視等で労務に支障をきたす場合、生まれつきの口唇裂の手術、ケガの処置のための整形手術、他人に著しい不快感を与えるワキガの手術など 

•大学病院などで厚生労働大臣の定める診療を受ける場合  

•妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などによる異常分娩の場合

•母体に危険が迫った場合に母体を保護するための人工妊娠中絶

 

解決社労士

2020/04/23|664文字

 

<雇用保険の対象者(被保険者)とならない取締役>

法人等の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員など)は、雇用保険の対象者(被保険者)とはなりません。

また、法人等の役員(取締役・執行役員・監査役など)についても、原則として雇用保険の対象者(被保険者)となりません。

これらの人と会社との関係は、雇用契約ではなく委任契約だからです。

 

<例外的に雇用保険の対象者(被保険者)となる場合>

役員などが同時に部長、支店長、工場長など会社の従業員としての身分を兼ねている兼務役員の場合であって、就労実態や給料支払いなどの面からみて労働者としての性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合には、例外的に雇用保険の対象者(被保険者)となります。

この場合、ハローワークで雇用保険の対象者(被保険者)であることを反映させる手続には、就業規則、登記事項証明書、賃金台帳、などの写しの提出が必要となります。

「働いている」という実態に変わりがなくても、一般の従業員から兼務役員になった場合には、ハローワークでの手続が必要になります。

兼務役員は、従業員としての身分の部分についてのみ、雇用保険の対象者となります。

そして保険料も、役員報酬の部分は含まれず、労働者としての賃金部分のみを基準に決定されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

新たに取締役に就任した方がいらっしゃる場合の雇用保険の手続や、その年度の労働保険(労災保険と雇用保険)の保険料の計算は間違えやすいポイントです。

信頼できる社労士(社会保険労務士)のチェックを受けることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/04/22|856文字

 

<必要な手続>

労働者が労働災害により負傷した場合などには、休業補償給付などの労災保険給付の請求を所轄の労働基準監督署長あてに行います。

具体的には、厚生労働省の「労災保険給付関係請求書等ダウンロード」のページで、手続に適合した書式をダウンロードし、会社、被災者、診断した医師の記入欄を記入し、労働基準監督署に提出します。

なお、休業3日までの労働災害については、労災保険によってではなく、使用者が労働者に対し、休業補償を行わなければならないことになっています。

平均賃金の60%以上の補償が必要です。

就業規則に明示しましょう。

 

<療養補償給付>

治療費の補償が行われます。

治療した医療機関が労災保険指定医療機関の場合には、「療養補償給付たる療養の給付請求書」をその医療機関に提出します。

請求書は医療機関を経由して労働基準監督署長に提出されます。

このとき、本来は療養費を支払う必要が無いのですが、医療機関の立場からすると必ずしも労災の手続きが行われるとは限りませんので、「保証金」の名目で被災者から一定の現金を受け取り、「預かり証」を発行するのが通例です。

治療した医療機関が労災保険指定医療機関でない場合には、一旦治療費を立て替えて支払います。

その後「療養補償給付たる療養の費用請求書」を、直接、労働基準監督署長に提出すると、その費用が口座振込で支払われます。

 

<休業補償給付>

労働災害により休業した場合には、第4日目から休業補償給付が支給されます。

「休業補償給付支給請求書」を労働基準監督署長に提出します。

 

<その他の保険給付>

他にも障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付などの保険給付があります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場>

被災者は1日でも早く補償を受け現金を手にしたいところです。

ところが、手続に慣れていないと、受けられる補償の内容もわからず、数多くある労災関係手続書類の中から正しいものを選択することも困難です。

こんな時は、迷わず信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/21|1,027文字

 

<プライバシー権>

プライバシー権とは、個人の私的領域につき他人から干渉を受けない権利をいいます。

この権利は、日本国憲法第13条の幸福追求権に含まれるものとされています。

幸福実現ではなく、幸福追求とされているのは、常に一段上の幸福を追求し続ける権利だからです。

これは基本的人権の一つです。

その内容には、個人情報を自らコントロールすることや、私生活上の事項について他人から干渉されないことなどが含まれます。

つまり、個人情報の保護は憲法で保障された基本的人権だということです。

 

<個人情報の保護のための行動指針>

事業者は、労働者のプライバシー権に含まれる個人情報を守らなければなりません。

労働者の個人情報をみだりに開示した場合などは、損害賠償責任が発生しうるのです。

労働省(現在の厚生労働省)により発表された「労働者の個人情報に関する行動指針」(平成12年12月20日)が、個人情報の処理は労働者の雇用に直接関連する範囲内において適法かつ公正に行われるべきこと、業務上知り得た個人情報をみだりに第三者に知らせ、または不当な目的に使用してはならないことなどの基本原則を明らかにしています。

さらに厚生労働省は、個人情報保護法の施行を受けて「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を定めました(平成16年7月1日厚労告259号)。

この指針は、収集する従業員の個人情報の利用目的を具体的に特定すべきこと、個人データ管理者を事業所ごとに設置すべきこと、個人データの処理を外部に委託する場合の注意事項などについて定めています。

 

<改正個人情報保護法>

平成29年5月30日から、個人情報を取り扱うすべての事業者に個人情報保護法が適用されました。

全面施行です。

事業者が守るべきルールの概略は次の通りです。

1.個人情報を取得・利用する時のルール

→個人情報を取得した場合は、その利用目的を本人に通知、または公表すること(あらかじめ利用目的を公表している場合を除く。)

2.個人情報を保管する時のルール

→情報の漏えい等が生じないように安全に管理すること

3.個人情報を他人に渡す時のルール

→個人情報を本人以外の第三者に渡すときは、原則として、あらかじめ本人の同意を得ること

4.個人情報を外国にいる第三者に渡す時のルール

5.本人から個人情報の開示を求められた時のルール

→本人からの請求に応じて、個人情報を開示、訂正、利用停止等すること

 

解決社労士

2020/04/20|1,689文字

 

<使用者責任の求償>

従業員が、勤務中に第三者に損害を与えることがあります。

たとえば、従業員が勤務中に会社の車を運転していて交通事故を起こし、第三者に怪我をさせたような場合です。

この場合に、事故を起こし怪我をさせた従業員は、第三者に対して損害賠償責任を負います。不法行為責任です。〔民法第709条〕

それだけでなく、会社も、相当の注意をしていたなど一定の条件を満たした場合を除き、使用者責任を負うことになります。〔民法第715条第1項〕

会社が使用者責任に基づき、損害賠償を行った場合には、従業員に対してその責任の程度に応じて賠償額の一部を負担させることができます。

求償権の行使です。〔民法第715条第3項〕

これらのことについて、民法は次のように規定しています。

 

【使用者等の責任】

第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

会社の従業員に対する求償権は、相当程度制限されるのが一般的です。

なぜなら、求償権の行使は、従業員の責任の程度に応じたものでなければならないからです。

 

<使用者責任の逆求償>

会社よりも先に、従業員が第三者に損害賠償を行った場合に、従業員が自分の責任の程度を超えて賠償金を支払った場合には、会社の本来の負担分を請求できるのではないかが問題となります。

いわゆる「逆求償」の問題です。

これまで、これに関する最高裁の判例は無かったのですが、最高裁第二小法廷令和2年2月28日判決がこれを認めました。

 

<最高裁の判決>

最高裁は、次のように判断しました。

 

民法第715条第1項が規定する使用者責任は、使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることとしたものである。このような使用者責任の趣旨からすれば、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。また、使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対して求償することができると解すべきところ、上記の場合と被用者が第三者の被った損害を賠償した場合とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。以上によれば、被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。

 

<判決の意味するところ>

民法の不法行為制度は、社会の中で必然的に発生する損害について、その損失を当事者間で公平に分担するための制度です。

民法には、会社から従業員に対する求償のみが規定されていて、従業員から会社への求償(逆求償)は規定されていません。

しかし、不法行為制度の趣旨からすると、逆求償が認められて当然だという判断が示されました。

つまり、会社と従業員のどちらが先に賠償金を支払っても、自分の責任を超える額については、他方に求償できるという、常識的な判断を示したことになります。

 

解決社労士

2020/04/19|979文字

 

<健康診断の受診義務>

労働安全衛生法は事業者に対して、雇入れ時および年1回の定期健康診断の実施を義務付けています。

ただし、深夜業や坑内労働などの特定業務従事者は年2回です。

また、法定の有害業務に従事する労働者については、特殊健康診断も実施しなければなりません。

これを受けて、労働者の受診義務も定められています。〔労働安全衛生法第66条第5項〕

しかし、健康診断を受けなかった場合の罰則規定はありません。

やはり、就業規則に健康診断の受診義務を明確に規定しておくべきです。

 

<誓約書の効力>

会社と労働者との関係で、法令や就業規則、労働契約などで労働者の義務とされている事項があります。

これについて、労働者に誓約書を書かせて確認することは違法ではありません。

しかし、誓約書によって初めて義務が生じるのではなく、ただ単に改めて確認するだけですから、法的な効力が強まるわけではありません。

結局、誓約書を書かせることによって、労働者に心理的にプレッシャーをかけているだけのことです。

しかし多くの会社では、この心理的効果に期待して誓約書を書かせています。

 

<会社の立場からは>

そもそも労働者に健康診断を受けさせただけでは、会社の労働者に対する健康配慮義務が尽くされたとはいえません。

しかし反対に、労働者が健康診断の受診を拒否していたとしても、会社が労働者に対する健康配慮義務を免れるわけでもありません。

それでも、会社が労働安全衛生法で義務付けられた健康診断を、一部の労働者が受診しないというのでは、会社が法定の義務を果たせないことになってしまいます。

 

<より良い方法>

就業規則に健康診断の受診義務を規定するのに対応して、義務違反に対する懲戒規定を置くべきです。

また、昇格・昇進の条件に、就業規則で定められた健康診断を受診していることを含めるなど、ある程度、人事考課の基準とすることにも合理性があります。

健康診断に限らず、就業規則に規定された義務を果たすことは、会社のルールを守るということですから、評価の対象にできることは当然です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

健康診断の受診対象者や健診項目についての法令順守、実施後の記録の保管、個人情報保護、労基署への報告、結果の分析と対応なども社労士の守備範囲です。

ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/18|980文字

 

「まいきん」というのは、毎月勤労統計調査の略称です。

 

<調査の目的>

賃金、労働時間、雇用の変動を明らかにすることを目的に厚生労働省が実施する調査です。

統計法に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計調査として実施されています。

毎月勤労統計調査の結果は、経済指標の一つとして景気判断や、都道府県の各種政策決定に際しての指針とされるほか、雇用保険や労災保険の給付額を改定する際の資料として、また、民間企業等における給与改正や人件費の算定、人事院勧告の資料とされるなど、国民生活に深く関わっています。

さらに、日本の労働事情を表す資料として海外にも紹介されています。

 

<回答の義務>

毎月勤労統計調査など、国の重要な統計調査である基幹統計調査について、「個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる」と規定されています(報告義務)。〔統計法第13条〕

また「報告を拒み、又は虚偽の報告をした者」に対して、「50万円以下の罰金に処する」と規定されています。〔統計法第61条〕

「統計法」に基づき実施する基幹統計調査である毎月勤労統計調査の報告義務は「個人情報保護法」によって免除されるものではありません。

調査対象の事業場は、無作為に抽出されます。

これはクジに当たるようなものです。

当たったら、面倒でも協力しましょう。

 

<調査の秘密>

調査対象となった人や法人には調査に回答する義務がある一方、安心して調査に回答できるよう、調査員を始めとする調査関係者に対しては、調査で知り得た内容について秘密を保護することが定められています。〔統計法第41条〕

また、調査票情報を適正に管理すること、調査票情報を統計調査の目的以外に使用してはならないことも規定されています。〔統計法第39条、第40条〕

調査関係者に対しては、これらの規定を厳守するよう指導が徹底されます。

「毎月勤労統計調査」の調査票は外部の人の目に触れないよう厳重に管理され、またそれらは集計して調査結果を得るためだけに使われ、税金徴収の資料や労働局の調査などに使われることは絶対にありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

詐欺の準備のための情報集めを目的として、まぎらわしい名称でインチキな調査回答依頼が届くこともあります。

怪しいと思ったり迷ったりしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/17|1,316文字

 

<年金制度改革の方向性>

「労働者として働く人には社会保険を適用する」というのが、今後の年金制度改革の基本的な方向性として示されています。

かつては、フルタイム労働者か、これに近い労働条件で働いている人だけが社会保険に入るものとされていました。

この基準が見直されて、より多くの労働者が社会保険の加入者(被保険者)になっていくように、法改正が重ねられていくことになります。

 

<現在の特定適用事業所の基準>

平成28(2016)年10月から、従来の基準での社会保険加入者(被保険者)が500人を超える企業は、特定適用事業所とされました。

ここで、加入者(被保険者)の数は、法人の場合、同じ法人番号の全事業所についてカウントします。

特定適用事業所では、週所定労働時間が20時間以上で、雇用期間が1年以上と見込まれる労働者は、賃金の月額が8万8千円以上であり、学生でなければ、社会保険の加入者(被保険者)となります。

また、平成29(2017)年4月から、社会保険の加入者(被保険者)が500人以下の企業であっても、労使の合意によって、特定適用事業所の扱いを受けるようにすることができるようになりました(任意特定適用事業所)。

 

<法改正による特定適用事業所の基準の引き下げ>

上記にある「500人」という基準は、法律上、当分の間の経過措置とされています。

そしてこの基準が、令和4(2022)年10月から100人、令和6(2024)年10月から50人と変更されていきます。

もっとも、この「100人」「50人」は、現在の「500人」と同様に、週所定労働時間がフルタイムの通常の労働者の4分の3以上の人数を基準とします。

また、毎月この人数が変動する場合には、給与の締日などに月ごとの人数のカウントをして、直近12か月のうち6か月で基準を上回ったら、特定適用事業所となります。

そして、一度適用事業所となったら、人数が減少して基準を下回っても、加入者(被保険者)の4分の3以上の同意を得て手続をしない限り、適用対象外となることはありません。

 

<法改正による勤務期間条件の短縮>

現在、特定適用事業所の短時間労働者が社会保険の加入者(被保険者)となるには、雇用期間が1年以上と見込まれることが必要です。

令和4年(2022)10月1日からは、この基準が見直され、雇用期間が「2か月を超える」と見込まれる労働者になります。

これは、現在のフルタイム労働者の基準に合わせての短縮となります。

 

<実務への影響>

特定適用事業所となることが想定される企業、任意特定適用事業所となる予定の企業では、社会保険料の企業負担がどの程度増加するかをシミュレーションしておく必要があります。

この一方で、労働者側の社会保険の適用対象に「なりたい」「なりたくない」という意向を探っておく必要もあります。

一人ひとりの社会保険料の負担額を算出しておき、社会保険に加入(資格取得)することの、メリットとデメリットを説明しつつ、個人面談を行うことになります。

これを通じて、労働条件に見直しをかけることになります。

10月といえば、最低賃金見直しの時期にも重なりますので、合わせて検討することになるでしょう。

 

解決社労士

2020/04/16|1,383文字

 

<労働契約>

ある人が、ある会社に「会社の指示で働きます」と約束して、会社がその人に「それなら給料を払います」と約束すれば、これが労働契約です。

契約の中には、特別な方式を必要とするものもありますが、労働契約は口約束でも成立します。

しかし労働契約は、人の自由や生活を大きく左右する重要な契約です。

ですから、働く人を保護するためにも、雇う側は「どういう条件で働くのか」を書面の交付などによって示す義務があります。

中には、この義務を果たさない会社もあって、さまざまなトラブルを生じています。

 

<契約の成立>

誰かと取引するときには、どんな条件で取引するのかという約束をします。

この約束が「契約」です。

契約書を作らずに、こうしよう、ああしようと口約束をしただけでも、契約は成立します。

自動販売機で缶コーヒーを買うのは売買契約です。

このときには、口約束すらありません。

そして、契約が成立すれば、お互いにその内容を守らなければなりません。

もし、相手が契約に違反したら、きちんと守るように求めたり、違反によって発生した損害賠償を請求したりすることができます。

逆に、自分が違反すれば、相手から契約を守るよう求められたり、損害賠償を請求されたりします。

ですから、契約で何が決まっていたかということは、自分が相手に対して何を要求できるか、あるいは自分が何をしなければならないのかを決めるための、大事な基準となるのです。

自動販売機で缶コーヒーを買ったのに出てこなかったら、そして投入したお金も戻ってこなかったら、当然に返金を請求できるわけです。

このことは、自動販売機にお金を投入する前から決まっていたわけです。

 

<労働者の保護>

労働契約を結ぶと、労働者として法律による特別な保護を受けることができるようになります。

ここが「業務請負契約」や「業務委託契約」などとは違うところです。

もちろん、契約書のタイトルが「業務請負契約書」や「業務委託契約書」であっても、実質的な内容が労働契約であれば、労働契約としての効力を持ちます。

そして労働契約が成立したら、その内容を勝手に変えることはできません。

労働契約で、給料の額や出勤日・出勤時間、担当する仕事、働く期間などの労働条件が決まっていれば、労働者も雇い主も、その条件を一方的に変えることはできないのが原則です。

もし、労働契約で決められている労働条件を変更したければ、相手にお願いして、契約内容を変更することに同意してもらわなければなりません。

同意が無ければ、今まで通りの労働条件で仕事をすることになります。

ですから働き始めた後で、労働条件について、労働者と雇い主で意見の違いやトラブルが発生したときには、労働契約でどう決まっていたかということが、とても重要になるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

労働条件をどのように定めたら、働く人と雇い主にとって都合が良いのか、またトラブルを未然に防げるのか、さらに違法や不当の問題を避けられるのかについては、信頼できる社労士にご相談ください。

万一、トラブルになってしまった場合でも頼りになります。

当事者の主張内容を法的観点から整理し、その正当性、反論可能性を明らかにしたうえで、実体と証明の両面からのご対応をご提案いたします。

人の感情に配慮して、お互いに怨みを残さない解決を目指すのが社労士の使命です。

 

解決社労士

2020/04/15|467文字

 

<昼間学生ではない場合>

学生・生徒のうち、昼間授業を受ける従業員は、原則として雇用保険の対象者にはなりません。

これらの従業員は、働いていても小遣い稼ぎであり、失業が大きな痛手にならないと推定されるからです。

これに対して、通信制の学校や夜間・定時制の学校に在籍する従業員は雇用保険に入ります。

これらの従業員は、働きながら学んでいるので、失業した場合などの給付が必要になると考えられるからです。

もちろん定時制高校の生徒すべてが、働くことを考えて入学したわけではありません。

しかし、個人的な事情を細かく分析するのは現実的ではありませんから、上記のように形式的に区分されています。

 

<昼間学生の例外>

昼間学生であっても次のような従業員は、一定の条件のもと雇用保険に加入します。

・卒業前に新卒として就職し卒業後も継続勤務する予定の従業員

・休学中の従業員(休学証明書が必要)

・従業員の身分のまま事業主了解のもと大学院などに在籍する者

勉強よりも働くことのウエイトが高く、失業が大きな痛手になると考えられる従業員が、形式的な基準で例外とされています。

 

解決社労士

2020/04/14|1,024文字

 

<働き方改革の本来の方向性>

少子高齢化(生産労働力人口の減少)による実質的な労働力の不足を補うため、働き方改革によって、労働者の健康回復・増進、仕事と家庭の両立、労働力の掘り起こし、労働力提供期間の延長、労働力提供方法の多様化、非正規のモチベーションアップ、女性活躍などの推進を目指してきました。

 

<新型コロナウイルスによって起きている現象>

ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済活動の縮小によって、幅広い業界で労働力の過剰が発生し、使用者からの採用取りやめ、内定取消、派遣切り、雇い止め、解雇、シフト減少、休業命令などが発生しています。

このため、雇用維持、待遇維持、生活維持が新たな課題となっています。

 

<長期的視点での働き方改革>

もともと、働き方改革は短期決戦のキャンペーン的な施策ではありません。

将来を見据えて、あるべき姿を追求し続ける必要があります。

新型コロナウイルス感染症収束後の人手不足発生時には、冷たい態度を示していた企業に労働者が集まらないでしょうから、大企業はこれを避けようとしています。

中には、労働者のことを第一に考え、雇用保険を頼って、苦渋の決断で一斉解雇に踏み切るタクシー会社などもあります。

一方、体力の無い会社は目先のことに精一杯で、労働法違反の行為に走っていることもあります。

これらの動きは、それぞれの企業の将来に大きな影響を与えることでしょう。

長期的な視点に立って、働き方改革の推進を継続する必要があります。

 

<短期的視点での働き方改革>

この状況下で、多くの企業にとって取組みやすい施策としては、労働時間の削減、年次有給休暇の取得率向上、テレワーク、フレックスタイム制などがあります。

この機会に仕組を作っておき、長期的に運用を継続したいものです。

逆に、取組みにくい項目として、非正規社員の待遇を引き上げる形での同一労働同一賃金などがあります。

ここは、企業が取組むにあたって、行政の強力なバックアップが必要だと思います。

 

<新型コロナウイルス感染症の収束>

我々の期待している新型コロナウイルス感染症の収束とは、どういう状態を言うのでしょうか。

はしか、水ぼうそう、インフルエンザ等のように、ワクチンと治療薬によって、大事に至らず免疫が得られるようになる状態なのでしょうか。

素人考えですが、15日サイクルで変異するウイルスのワクチンが開発できるのか、風邪の特効薬が無いのに今回のウイルスの治療薬を開発できるのかという疑問は残ります。

 

解決社労士

2020/04/13|892文字

 

<労働法に関する行政監督制度>

労働基準法などの実効性を高めるため、行政監督制度が設けられています。

厚生労働大臣のもとに、国に1つの厚生労働省労働基準局、各都道府県に1つの労働局、都道府県をいくつかのエリアに分けて設置される労働基準監督署があります。

たとえば、東京都立川市にある立川労働基準監督署は、立川市、昭島市、府中市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、武蔵村山市、東大和市の10市を管轄しています。

 

<労働基準監督官と署長>

労働基準監督官は、労働基準法など労働法の施行のための行政取締や刑事処分にかかわり、事業場を臨検し、帳簿や書類の提出を求め、必要な尋問を行う権限や、労働基準法違反の罪に対する捜査権、逮捕権など司法警察員としての権限をもっています。

労働基準監督署長も、労働基準法のもとで臨検、尋問、許可、認定など様々な権限をもっています。

この他、労働基準監督署長や労働基準監督官は、必要があると認めるときには使用者や労働者に報告や出頭を命じることができます。

 

<労働基準監督署の機能の限界>

労働基準監督署は、強力な権限をもっていますが、それは労働基準法や労働安全衛生法などに根拠のある場合に限られています。

たとえば、解雇権濫用の有無の判断など、労働者や企業にとって切実な問題であっても、監督権限を行使することはできません。

残念ながら、これらの機関は直接の紛争解決権限をもっているわけではないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場>

直接訪問した場合でも、電話による問い合わせの場合でも、社労士であることを名乗ると、労働局や労働基準監督署の皆さんはとても親切です。

本当に頼りになります。

会社の人事部門で働いていた時に比べて、一段上の対応をしてくださっているように思われます。

おそらく話の通じる専門家として見てくださっているのでしょう。

年金事務所や協会けんぽでも同様のことを感じます。

もし、行政の相談窓口などに問い合わせても、今一つ納得できない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

社労士から改めて問い合わせると、深い回答が得られるものです。

 

解決社労士

2020/04/12|653文字

 

<具体的な例>

総務課や経理課のメンバーが、新規開店の店舗の応援に行き、慣れない仕事をしてケガをしてしまったという場合、普段と違う仕事内容でも、会社の業務として行ったなら労災になります。

この場合、社内の誰が責任を負うのかが問題となります。

 

<一般的な基準>

応援メンバーが、所属部門の上司から相当に具体的な指示を受けたうえで、応援に入ったのなら、その指示をした上司にも責任があります。

ただ「応援要請があったので頼む」という抽象的な指示しか無かったのであれば、応援先の責任者がほぼ全面的に責任を問われることになります。

しかし実際には、所属部門の上司からの指示が具体的と言えるかどうか、応援先の責任者の指導は的確だったのかなど水掛け論になりがちです。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

他部署の応援がありうる職場の就業規則には、次のような規定を置いて責任の所在を明らかにしておくべきです。

 

第○条 従業員には会社の都合により、他部署の応援を求めることがあります。

2. 従業員は、正当な理由なくこれを拒んではなりません。

3. 従業員はこの場合、直属上司から応援先責任者の指定を受け、応援先責任者の指揮命令に従うものとします。

 

たしかに、他部署の応援がありえない職場では、全く必要のない規定です。

しかし、応援のある職場には必要不可欠な規定でしょう。

社労士が就業規則の作成・改善を依頼された場合には、その職場に適合するものにします。

もし、現在の就業規則に不安があれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/11|791文字

 

<本コースの目的>

令和2年4月1日から、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されています。

このコースは、生産性を向上させ、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援します。

 

<成果目標>

次のうち、1つ以上の目標を設定します。

・すべての対象事業場で、月60時間超の36協定の時間外労働時間数を縮減させる。

・すべての対象事業場で、所定休日を1日から4日以上増加させる。

・交付要綱で規定する特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)のいずれか1つ以上をすべての対象事業場に新たに導入する。

・時間単位年休を、すべての対象事業場に新たに導入する。

 

<支給対象>

次のうち、1つ以上の取組を実施します。

・労務管理担当者に対する研修

・労働者に対する研修、周知・啓発

・外部専門家によるコンサルティング

・就業規則・労使協定等の作成・変更

・人材確保に向けた取組み

・労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新

・テレワーク用通信機器の導入・更新

・労働能率の増進に資する設備・機器などの導入・更新

※原則として、パソコン、タブレット、スマートフォンの費用は対象となりません。

 

<支給額>

成果目標の達成状況に応じて、支給対象となる取組みの実施に要した経費の一部が支給されます。

 

<受給手続>

1.令和2年11月30日までに、「交付申請書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)に提出

2.交付決定後、提出した計画に沿って取組みを実施(令和3年1月29 日まで)

3.令和3年2月12日までに、労働局に支給申請

 

<助成金の連動>

働き方改革に取組むうえで、人材の確保が必要な中小企業事業主を支援する「人材確保等支援助成金」(働き方改革支援コース)が創設されています。

こちらの助成金は、本コースの支給を受けた事業主が、助成の対象事業主となります。

 

解決社労士

2020/04/10|731文字

 

<制度の趣旨>

社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、会社などで働く「勤め人」が、収入に応じて保険料を出し合い、いざというときの生活の安定を図る目的で作られた制度です。

勤め人個人や事業主が希望して契約・加入する保険ではなく、法律により加入が強制され手続することが義務づけられています。

一定の条件を満たせば加入することになり、事業主に加入手続が義務づけられています。

手続を怠っていても加入していることになり、事業主に保険料の納付義務も発生しています。

これは、赤ちゃんが生まれれば出生届を出さなくても生まれた事実は消えず、親はその子をきちんと育て学校にも通わせなければならないのと似ています。

 

<強制加入の事業所>

健康保険と厚生年金保険は、事業所を単位として適用されます。

常時5人以上の従業員を使用している事業所(事務所、工場、店舗など)は、強制的に加入させられる「適用事業所」です。

また、法人事業所は従業員が5人未満でも「適用事業所」です。

つまり、法人の場合には、事業主1人だけの事業所であっても強制加入となります。

なお、5人未満の個人事業所と、5人以上であってもサービス業の一部や農業・漁業などの個人事業所は、強制加入とはなりません。

 

<任意加入の事業所>

従業員が5人未満の個人事業所などでも、条件を満たせば厚生労働大臣の認可を受けて、適用事業所となることができます。

この認可の権限は、厚生労働大臣から日本年金機構理事長に委任されています。

認可を受けるには、その事業所の従業員の2分の1以上の同意を得て行います。

この場合には、同意せず加入を希望しない従業員を含めて加入することになります。

具体的な手続については、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/09|823文字

 

<取得単位の変更>

「子の看護休暇」と「介護休暇」の取得単位は1日単位から半日単位に変更となっています。

以前は、1日単位での取得のみを認めれば合法でした。

半日単位の休暇を認めるかどうかは、会社の方針に任されていたのです。

しかし平成29年1月1日からは、従業員から半日だけ取得したいという申し出があった場合には、会社がこれに応じなければなりません。

 

<「半日」の原則>

「半日」とは、1日の所定労働時間の半分です。

ただし、1日の所定労働時間に1時間未満の端数がある場合には、1時間未満を1時間に切り上げて、その時間の半分となります。

たとえば、所定労働時間が7時間45分であれば、1時間未満を切り上げた8時間の半分で、4時間ということになります。

 

<「半日」の例外>

上記の原則とは違う運用をしたい場合には、労使協定を交わすことによって可能となります。

たとえば、夕方が忙しい会社などで、午後3時までの5時間と、午後3時からの3時間を半日とすることもできます。

 

<給与計算の注意>

半休を取ったことによって欠勤控除をする場合には、1日の賃金の半分ではなくて、実際に欠勤した時間分の賃金しか控除できません。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

「子の看護休暇」について、社内で知られていないという会社もあるでしょう。

「来月の25日は息子の健康診断で午前中は休みます。子の看護休暇です。」と言われた上司が、制度を知らずに「そんなの認めない!」と言ってしまうとトラブルになります。

こうした制度については、第一に厚生労働省など行政が広報に努めるわけですが、会社ごとに必要な内容は違いますから、信頼できる社労士に相談して必要なレクチャーを依頼したり、会社に合った制度の運用を構築したりが必要でしょう。

労働法が頻繫に改正されるなか、就業規則の改善と併せて、信頼できる社労士へのご相談をお勧めします。

 

※令和3年1月1日からは、子の看護休暇と介護休暇が1時間単位となります。

 

解決社労士

2020/04/08|1,457文字

 

令和2年3月30日、厚生労働省が、勤務間インターバル制度導入の参考資料として、「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル(全業種版・IT業種版)」を作成し公表しました。

これに沿って、勤務間インターバル制度とその効果の概要を示します。

 

<勤務間インターバル制度>

勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上のインターバル時間(休息時間)を確保する仕組で、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するうえで有効な制度です。

インターバル時間は、業務から離れて自由に過ごせる点で、休憩時間と同じ性質を持っていますが、業務の合間の休憩時間と区別するため、インターバル時間という用語が用いられます。

平成31(2019)年4月1日より、労働時間等設定改善法により、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。

働き方改革の一環で労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が導入されました。

しかし、この規制は、1か月間、1年間という長期間の労働時間の合計についてのものであり、特定の日に長時間労働となり十分なインターバル時間が取れないという問題を解消できません。ここに、勤務間インターバル制度の導入が求められる理由があります。

 

<制度導入の効果>

勤務間インターバル制度の導入により得られる効果として、従業員の健康の維持・向上、従業員の確保・定着、生産性の向上などが挙げられます。

インターバル時間と健康についての調査結果では、インターバル時間が短くなるにつれてストレス反応が高くなること、インターバル時間が12時間を下回ると起床時に疲労感が残ることが示されており、十分なインターバル時間の確保が、従業員の健康の維持・向上につながることが示唆されています。

日々のインターバル時間を確保することは、自分のためにつかう時間、家族や友人等と過ごす時間等が増えることにつながり、仕事と家庭の両立を容易にします。これは従業員にとって、働きやすく魅力的な職場の実現となりますから、企業にとって、人材の確保・定着に大きく資するものと考えられます。

勤務間インターバル制度の導入により、従業員は「仕事に集中する時間」と「プライベートに集中する時間」のメリハリをつけることができるようになります。従業員の仕事への集中度が高まれば、製品・サービスの品質が向上し、生産性の向上にもつながります。

 

<従業員の意識変化>

勤務間インターバル制度の導入により、従業員の意識にも変化が現れていることが紹介されています。

「予定が入ってしまっているから仕方ない」という考えから、「インターバル時間を意識しながらスケジュールの重要度や優先度を考えて調整する」という受け止め方に変わり、インターバル時間に重なる時間帯に会議等への参加が求められる場合には、スケジュール見直しの交渉が行われるようになった。

従業員の中に「勤務時間が終わったら、帰って休む」という意識が生まれ、職場全体の雰囲気が変化し、シフト勤務終了時刻には従業員間で「もう帰る時間だよ」という声掛けが行われるとともに、次のシフトの従業員が残った業務を引き継ぐ体制が整えられつつある。

 

勤務間インターバル制度の導入によって、従業員が自主的に改善に取組むようになる傾向は、このマニュアルの他にも多くの事例で見られます。

休暇の取得や労働時間の削減は、ともすると会社からの押し付けになりがちですが、自主的に取組みやすい制度としても、勤務間インターバル制度はお勧めできると思います。

 

解決社労士

2020/04/07|531文字

 

<賠償予定の禁止>

会社の就業規則で、研修の費用を労働者の負担とし、一定期間勤続せずに退職した場合には、返還するものと定めていることがあります。

しかし労働契約を結ぶ際に、契約違反があったときの賠償額を決めておくことは、人身拘束につながるとして禁止されています。〔労働基準法第16条〕

通常の業務のために行われる教育訓練や、通常の新人研修や社内研修として実施される教育訓練について、退職時の費用返還を定めておくことは、この規定に違反する可能性があります。

 

<返還請求が認められる場合>

ところが裁判の中には、返還請求が認められた例もあります。

たとえば通常の業務と直接の関係がない研修であって、もともと本人が支出すべき内容の研修費用を、会社が一時的に立て替えたに過ぎない場合です。

希望者を募って海外の大学院へ留学させた例で、費用を会社が貸し付けた形をとり、一定の年数の勤続によって返済を免除するという事例で、退職者への返還請求を認めた裁判例があります。

実際に返還請求が認められるためには、返済金額や返済方法などから客観的に見て退職の自由を奪うものではないこと、返還について事前に十分な説明が尽くされていて合意があったことなど、厳格な条件を満たしていることが必要になります。

 

解決社労士

2020/04/06|724文字

 

<派遣元と派遣先に求められる配慮>

派遣元は、派遣労働者に対して、計画的に教育訓練やキャリア・コンサルティングなどのキャリアアップのための措置を実施することが求められています。

また、派遣先の社員との均衡がとれた待遇になるよう配慮しなければなりません。

派遣先も、派遣元への情報提供などの協力をするほか、派遣労働者に必要な教育訓練や福利厚生設備の利用などについて、できるだけ配慮するよう求められています。

 

<安定した雇用継続のための措置>

派遣労働では、期間を定めて派遣元に雇用されているときは、その期間が終了することで雇用は終了します。

しかし派遣元は、1年以上の派遣が見込まれるときには、その派遣労働者について、できるだけ、次のような措置を実施することが求められています。

・派遣先に直接雇用を依頼する

・新しい派遣先を提供する

・派遣元が無期契約で雇用する

・安定した雇用の継続を図るために必要な措置

また3年間の派遣が見込まれるときには、これらを必ず実施しなければなりません。

 

<直接雇用への転換>

派遣先も、1年以上派遣を受けた後、その業務のために人を雇おうとするときは、現に派遣されている社員が希望したときに、できるだけその人を雇うよう努力するほか、1年以上派遣労働者として受け入れている人に対して、自社の新規採用情報を提供することが求められています。

さらに、派遣先が、法律の定める届出や受入の上限などに違反していることを知りながら労働者派遣を受け入れていたときは、その派遣労働者が希望すれば、直接雇用された扱いとなることもあります。

これらは必ずしも正社員となることを保障するものではありませんが、法律は、できるだけ均衡のとれた処遇にすることを求めています。

 

解決社労士

2020/04/05|1,038文字

 

令和2年4月1日付で、民法の債権に関する規定が改正されたことに対応して、労働基準法も改正されました。

 

<賃金請求権の消滅時効期間>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

改正前の民法では、賃金請求権の消滅時効期間が1年間でした。

これでは、労働者の権利保護が不十分だということで、労働基準法によって2年間に修正されていました。

ところが、改正民法では消滅時効期間が原則5年間とされたため、労働基準法との間で逆転が生じてしまうことになりました。

このままだと、労働基準法の労働者保護の趣旨に反してしまうので、段階的に消滅時効期間を延長し、民法の原則に合わせることとなりました。

実際の改正民法では、債権の消滅時効が次のように規定されています。

 

【債権等の消滅時効】

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 

労働基準法では10年の基準は使わず、5年の客観的な基準のみを使うことになりました。

 

<記録の保存>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

たとえば、未払賃金の消滅時効期間も3年間→5年間と延長されましたので、会社が賃金台帳や労働者名簿を保管する期間も、これに合わせて延長されていきます。

 

<付加金>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

未払賃金の請求訴訟では、本来の賃金とこれに対する利息の他に、本来の賃金と同額の付加金を請求することができます。

未払賃金の消滅時効期間が3年間→5年間と延長されましたので、これに上乗せされる付加金も消滅時効期間が延長されます。

 

<年次有給休暇請求権、災害補償請求権、帰郷旅費、退職時の証明、金品の返還の請求権の消滅時効期間>

「2年間のままとする」

年次有給休暇については、消滅時効期間を延長すると、「すぐに取得しなくても消滅しない」という理由から、取得が抑制される恐れがあるという理由で、変更なしとなりました。

他のものについては、延長する必要がないという判断です。

 

<退職手当の請求権の消滅時効期間>

「5年間のままとする」

退職手当は、退職金のことですが、これも延長する必要がないという判断です。

 

<適用開始>

改正法施行日(令和2年4月1日)以後に賃金支払日が到来する賃金請求権について、新たな消滅時効期間が適用されます。

付加金の請求期間についても同様の取扱となります。

 

解決社労士

2020/04/04|1,244文字

 

<労働契約の重要性>

職位・職種を定めて採用した年俸制社員が、期待しただけの働きをしないときは、解雇を検討する場合もあります。

ここでの解雇は、懲戒解雇ではなく普通解雇です。

普通解雇は、労働者の契約違反に対して、使用者が債務不履行を理由に労働契約を解除するものです。

ですから、どのような場合に解雇できるかは、原則として、労働契約の内容によるということになります。

労働契約は口頭でも成立しますが、基本的な労働条件については会社から労働者に書面を交付して確認することが法定されています。

ところが書面が作成されていなかったり、そもそも基本的なことを決めていなかったりすれば、トラブルが発生するのは当たり前です。

 

<年俸制の考え方>

厚生労働省のモデル就業規則に年俸制の規定が無いことからも明らかですが、プロ野球の制度を真似してサラリーマンに年俸制を当てはめるのは無理があります。

取締役であれば委任契約ですから、年俸制がしっくりきます。

実際にサラリーマンに年俸制を適用する場合、今後の活躍ぶりを期待してあらかじめ年俸を決める場合と、過去の実績から年俸を決める場合があります。

過去の実績から決める場合は良いのですが、これからの活躍を期待して年俸を決めたのに、期待を裏切ったら減俸できるのか、さらには普通解雇できるのかという問題になります。

こうしたことは、労働契約の内容が不合理でなければ、労働契約の内容に従うということです。

ところが口頭でも決めていなければ、解決の手掛かりがありません。

結局、会社と年俸制社員の話し合いで決めるしかありません。

 

<あらかじめ職位・職種を定めた社員の解雇>

年俸制ではない場合でも、あらかじめ経理部長、店長など職位や職種を定めて中途採用することがあります。

労働契約で「何をどのレベルで」ということが明確になっていれば、普通解雇も困難ではないでしょう。

しかし、「当社の経理部長にふさわしい働きぶり」とか、「当社の店長として標準的な業務」では、裁判などで客観的に認定できないですから、紛争になるのは目に見えてます。

ところが口頭でも決めていなければ、解決の手掛かりがありません。

結局、会社とその社員の話し合いで決めるしかありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

社労士は手続を代行するだけではありません。

労働と社会保険に関する法律と人事・労務管理の専門家として、企業経営の3要素(ヒト・モノ・カネ)のうち、採用から退職までのヒトに関するエキスパートです。

顧問先の企業でトラブルが発生しないように予防策を講じることで、経費、労力、時間、精神力の負担を軽減します。

万一トラブルが発生した場合には、両当事者の主張内容を法的観点から整理し、その正当性、反論可能性を明らかにしたうえで、実体と証明の両面からのご対応をご提案いたします。

人の感情に配慮して、お互いに怨みを残さない解決を目指します。

これは、顧問先でなくてもスポットでも対応いたします。

是非、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/04/03|1,005文字

 

<健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書>

産前産後休業期間(産前42日(双子・三つ子など多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申し出により、産休中の従業員(被保険者)分と事業主分のどちらも徴収されません。

「事業主の申し出により」ですから、会社が事実を知っていて、年金事務所などへの書類提出を忘れていると、産休中の従業員の保険料も免除されません。

この場合には、会社に落ち度があるわけですから、免除されずに従業員が負担した保険料は、原則として会社が補償するのが一般です。

かつては、育児休業中の保険料だけ免除されていましたが、平成26(2014)年4月30日以降は、産休中の保険料も免除されています。

 

<厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書>

次世代育成支援の拡充を目的として、子どもが3歳までの間、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みが設けられています。

対象となる従業員(被保険者)の申出に基づき、より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算します。

養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないようにするための措置です。

 

<注意事項>

産前産後休業取得者申出書は、産前産後休業期間中に提出します。

ここで出産とは、妊娠85日以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶をいいます。

対象者(被保険者)が産前産後休業期間を変更したとき、または産前産後休業終了予定日の前日までに産前産後休業を終了したときは、速やかに「産前産後休業取得者変更(終了)届」を年金事務所などへ提出します。

なお、育児休業の保険料免除期間と産前産後休業の保険料免除期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が優先されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

顧問の社労士がいれば、当然のこととして手続の必要なことが説明されます。

顧問契約の内容となっていれば、手続の代行も行います。

顧問の社労士がいない会社でも、信頼できる社労士にご相談いただければ、手続の代行だけでなく、出産前から育児休業後の職場復帰後まで、労務管理全体をトータルにサポートいたします。

 

解決社労士

2020/04/02|894文字

 

<実質残業代ゼロ>

東京の大手タクシー国際自動車(kmタクシー)では、残業代が増えるほど、それに合わせて歩合給が引かれ、結局同じ額の給与となる仕組が取られていました。

ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていましたが、歩合給を計算するときに、残業代相当額などが差し引かれて、「実質残業代ゼロ」の状態になっていたのです。

この制度の導入にあたっては、ドライバーの約95%が加入する最大組合も了承していました。

ところが、別の少数組合のドライバーが、こうした制度は未払残業代を発生させるものであり違法だとして提訴しました。

 

<東京高裁の判断>

高等裁判所では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が支給されていることなどから、制度を合法と解釈していました。

手続面を含め、手当の名称や算定方法などから、形式的な判断が行われていたわけです。

 

<最高裁の判断>

最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は令和2年3月30日、残業代の支払いについて定めた労働基準法第37条の趣旨に反するなどとして、規則を違法とする判決を言い渡しました。

ドライバー側が敗訴した高裁判決が破棄され、未払い残業代の金額を算定するため、審理が東京高裁に差し戻されることになりました。

最高裁判決では、労働者に対する補償や労働基準法第37条の時間外労働抑止の趣旨を踏まえ、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきだとして、実質的な判断が行われました。

 

<タクシー業界の動向>

「通常の労働時間の賃金」と「時間外割増賃金(残業代)」とは、明確に区別されていなければなりません。

これは、固定(定額)残業代については周知されつつあります。

しかし、残業代の中に歩合給が含まれるという運送業界特有の制度については、明確に否定されてはきませんでした。

国際自動車は、訴訟を提起されてから、既に従来の仕組を見直したそうです。

一方で、他のタクシー会社や運送会社では、同じような規則を設けている会社があります。

これらの会社でも、早急に見直しが行われるでしょう。

 

解決社労士