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<社会保険の加入基準の客観性>

健康保険と厚生年金の加入基準(資格取得基準)は、客観的に決まっています。

そして、手続をする/しないとは関係なく、基準を満たせば加入したことになります。

例えるなら、役所に出生届を提出する/しないに関係なく、赤ちゃんが生まれたという事実に変わりは無いのと同じです。

出生届を提出しないからといって、その赤ちゃんが消滅するわけではなく、人権が無視されるわけでもありません。

社会保険の加入手続(資格取得手続)をしなくても、それは手続が遅れているだけで、後から手続すれば、さかのぼって効力が認められ、保険料が徴収されるということです。

 

<保険料の負担>

健康保険も厚生年金も、第一に利益を受けるのは加入者(被保険者)です。

しかし、保険料は事業主と加入者とで折半します。

そこで、従業員が基準を満たしているのに、つまり社会保険に加入しているのに、手続をしないという不正が発生します。

もし、加入基準を満たしているのに、会社が手続をしてくれなかったら、年金事務所などに相談しましょう。

 

<従業員からの拒否>

従業員が基準を満たしていれば、会社は加入手続をする義務があります。

たとえ従業員が拒んでも同じです。

「本人の希望」は関係ないのです。

会社としては、そのような従業員に対して、社会保険加入のメリットを説明して、気持よく手続に応じるよう努めるでしょう。

もし、従業員が正しく理解していれば、社会保険への加入手続を拒むことは無いでしょう。

 

<社会保険に加入したくない場合>

所定労働時間や所得を抑えて、社会保険の加入基準以下で勤務できるよう、会社と相談してはいかがでしょうか。

また平成28(2016)10月から、それまでの社会保険加入者数が500人を超えるような大きな会社では、加入基準が引き下げられています。

そのため、大きな会社で勤務していて、基準変更によって新たに社会保険に入ることとなったのであれば、小さな会社に転職して加入しないようにすることも考えられます。

 

解決社労士

2020/01/28|1,473文字

 

<人事考課権の濫用>

人事考課権者が、不当に低い評価をすることがあります。

好き嫌いによって恣意的に、あるいは懲らしめるために意図的に、低い評価をするような場合が考えられます。

必要な業務に伴って、不必要な人権侵害を行うのがパワハラです。

人事考課そのものは必要なことですが、不当に低い評価を行うことによって、対象者の給与・賞与や昇進・昇格に不利益が及べば、それは財産権や名誉権などの侵害となりますから、パワハラとなることは明白です。

これが一次考課者によって行われた場合には、二次考課者や最終考課者などが修正することも多いでしょう。

しかし、最終考課者が行ったような場合には、過去の慣行に反して明らかに不当であるとか、根拠が示されていないなどを指摘できない限り、社員からパワハラを主張することは困難です。

この場合には、経営者によって不当な評価が行われる会社として、世間の批判にさらされ、会社そのものが淘汰されていく結果を招きかねません。

 

<過大な目標設定>

目標管理制度を利用している会社や、社員に何らかの目標を設定させている会社では、そもそも設定された目標が、社員の置かれている立場や役割に比べて過大であることもあります。

目標達成率に応じて評価が決定され、賞与の支給額に連動しているような場合であれば、特定の社員だけ不当に過大な目標を設定させ、達成率の低いことを理由に退職に追い込もうとする意図が見えることもあります。

また、人件費の削減を狙い、一様に過大な目標を設定させるということもあります。

目標の設定そのものは必要な業務ですが、不当に財産権や人格権を侵害するような場合には、やはりパワハラと言わざるを得ません。

こうした場合には、目標の達成率が評価される段階になると、その不当性を判断することが困難になりますから、社員としては目標設定の段階で異議を申し出るべきです。

反対に、目標の達成率が評価される段階で、社員から目標の不当性が主張された場合には、会社から社員に対して、その根拠の提出を求めるべきでしょう。

 

<評価結果のフィードバックでのパワハラ>

人事考課の結果は、社員一人ひとりにフィードバックし、十分に説明することによって、評価結果を理解させ、次に向けてどのように努力すべきかの指針を与えなければなりません。

このとき起こりがちなのは、評価の低い社員に対して、あるいは評価の低い項目について、上司から必要以上の精神的ダメージが加えられることです。

評価結果のフィードバック面談は必要な業務ですが、不当な屈辱を与えるのは人格権の侵害であり、パワハラとなってしまいます。

上司は、必要のない言葉を添えないように、十分注意して面談に臨む必要があります。

もっとも、低い評価にショックを受けて、社員が泣き出してしまうようなケースでも、必ずしもパワハラが行われたとは限りませんので、会社としては慎重な見極めが必要です。

 

<トラブル回避のために>

社員が納得できるところまではいかなくても、少なくとも理解できる説明をすることでトラブルは回避できます。

これには、評価や目標の根拠事実を数多く示すことが必要ですから、評価をする側がこれをなるべく多く集めておく努力が求められます。

また、客観的な評価基準が無く、上司の裁量で評価している場合や、評価基準はあっても具体的な内容が曖昧な場合には、人事考課制度の改善が必要となります。

さらに、人事考課権者の能力不足や理解不足でパワハラの問題が生じないようにするには、人事考課の実施時期の前に必ず考課者研修を行うことが望ましいといえます。

 

解決社労士

2020/01/27|613文字

 

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的事情により異なります。

しかし一般には、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていないことを前提として、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したものとされます。

始期付解約権留保付労働契約というのは、すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約のことをいいます。

 

<採用内定取消が許される場合>

採用内定取消は解雇にあたります。

ですから、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられています。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。つまり、世間一般の常識から客観的に判断して、やむを得ない事情があるといえる場合であることが必要です。

 

解決社労士

2020/01/26|750文字

 

外国人を雇う場合に守らなければならないルールがあります。これは、外国人が在留資格の範囲内で、その能力を十分に発揮しながら、適正に就労できるようにするためのものです。

 

<ハローワークへの届出>

外国人の雇入れと離職の際には、その氏名、在留資格などをハローワークに届け出ます。〔雇用対策法第28条〕

ハローワークでは、届出に基づき、雇用環境の改善に向けて、事業主への助言や指導、離職した外国人への再就職支援を行います。

届出にあたっては、事業主が雇い入れる外国人の在留資格などを確認する必要があります。

外国人労働者の在留カードまたは旅券(パスポート)などの提示を求め、届け出る事項を確認してください。

これは、不法就労の防止につながります。

 

<届出の対象となる外国人の範囲>

届出の対象となるのは、日本の国籍を持たない人で、在留資格が「外交」「公用」以外の人です。

「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人など)は、出入国管理及び難民認定法に定める在留資格の他、特別の法的地位が与えられているため、就職など在留活動に制限がありません。

このため、特別永住者は、外国人雇用状況の届出制度の対象外とされていますので、確認・届出の必要はありません。

 

<在留カードの番号の有効性を確認>

入国管理局ホームページで在留カードの番号の有効性を確認することができます。

「在留カード等番号失効情報照会」ページに在留カードの番号と有効期間を入力して確認します。

在留カードを偽変造したものなどが悪用されるケースも発生していますので、ご確認をお勧めします。

万一、偽変造が疑われる在留カードを発見した場合には、最寄りの地方入国管理局にお問い合わせください。

 

↓在留カード等番号失効情報照会ページ

https://lapse-immi.moj.go.jp/

 

解決社労士

2020/01/25|1,393文字

 

<営業ノルマの意味>

営業ノルマは、企業が部門ごと、あるいは個人ごとに設定する、売上や成約件数などの目標です。

目標を設定することで、モチベーションを維持することができ、管理もしやすくなります。

営業ノルマが、単なる目標値として掲げられているだけであれば、基本的には法的な問題を生じません。

しかし、企業が営業ノルマ達成に熱心なあまり、違法行為が発生してしまうことがあります。

 

<営業ノルマとパワハラ>

経営者や部門長から、各社員に向けて過剰な叱咤激励が行われ、個人の人格権が侵害されれば、パワハラとなってしまいます。

ましてや、ノルマを達成できない社員を叱りつけることは、行き過ぎた態様で行われやすく、パワハラとなる危険性が高まります。

民事上の不法行為に止まらず、犯罪が成立することもありますから、十分に注意が必要です。

 

<営業ノルマとサービス残業>

ノルマを達成したいがために、長時間労働に走る社員も出てきます。

営業部門では、残業手当に代えて、定額の営業手当が支給されていることもあります。

しかし、この場合でも、原則的な計算方法で算出した残業手当の金額が、営業手当を上回った場合には、毎月その過剰分を支給しなければ労働基準法違反となってしまいます。

ノルマ達成に向け、労働時間の延長ではなく、効率アップを図るように指導することが必要です。

 

<自爆営業>

社員に対し、ノルマ未達成部分の自腹購入をさせることは、そもそも労働契約の内容にはなりえませんので、一種の押し売りであり、労働基準法第16条の禁止する賠償予定の実行でもあって、違法行為であると解されます。

これはまた、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)にも違反し、懲戒権の濫用(労働契約法第15条)にもなってしまいます。

 

<未達成を理由とする解雇>

たとえば「ノルマ未達成が3か月続いたら解雇」などの基準を設定し運用することは、解雇権の濫用(労働契約法第16条)になりますから無効です。

社員教育を十分に行い、無理のないノルマが設定されている中で、特定の社員だけが明らかな努力不足で達成できないような、特殊なケースでのみ、解雇が有効となりうるのです。

 

<未達成を理由とする懲戒処分>

仕事をさぼって、故意にノルマを達成しないような、本人の責任が重い特殊な場合には、懲戒処分が有効とされることもあるでしょう。

しかし一般には、懲戒権の濫用となり懲戒処分は無効とされます。

そもそも懲戒処分は、本人に反省を求め、態度を改めさせることに意義があります。

ノルマ未達成に対して懲戒処分を行ったからといって、ノルマを達成できるようになることが期待できない以上、懲戒処分の対象とすべきではないのです。

 

<未達成を理由とする給与減額>

ノルマを達成できない場合に、給与を減額するというのも、自爆営業と同様に、労働基準法違反や労働契約法違反になってしまいます。

しかし欠勤した場合に、欠勤控除を超えて給与を減額することが懲戒処分にあたる一方で、

皆勤した場合に皆勤手当が支給されるのは違法ではありません。

これと同様に、ノルマを達成した場合には報奨金が支払われ、未達成の場合には支払われないというのは必ずしも違法ではありません。

報奨金の金額が、基本的な賃金との比較で適正であり、報奨金が支払われない場合でも最低賃金法違反とならないのであれば、上手に運用することを考えたいものです。

 

解決社労士

2020/01/24|495文字

 

<交通事故にも健康保険が使えます>

国民健康保険、公務員共済、船員保険などを含め健康保険は、加入者(被保険者)と扶養家族(被扶養者)の病気、ケガ、出産、死亡に関して、必要な保険給付を行うことを目的とする制度です。

ケガや死亡の原因が交通事故でも、日常生活上のケガや病気の場合と同じく、健康保険で医師の診療を受けることができます。〔昭和431012日保険発第106号通達〕

 

<社会一般の誤解>

古くから世間一般では、交通事故診療には健康保険が使用できないとの誤解が生じていました。

そのため現在でも、医療機関から「健康保険は使用できない」という説明を受ける場合があります。

しかし、健康保険を使用しての診療(保険診療)、使用しない診療(自由診療)のどちらで治療を受けるかは患者が選択できます。

 

<当然の例外>

ただし、業務または公務上の事故や、通勤中の事故など、労災保険法や公務員災害補償法の適用がある事故については、健康保険は使えません。〔健康保険法第55条、国家公務員共済組合法第60条、地方公務員等共済組合法第62条〕

この場合には、雇い主に申し出て、それぞれの保険手続きを進めることになります。

 

解決社労士

2020/01/23|601文字

 

<離職理由の食い違いが発生する場合>

雇用保険では、離職理由により失業手当(求職者給付の基本手当)の給付日数に差がつきます。

離職者としては、会社側に原因のある理由のほうが有利です。

一方、会社としては会社の恥になるような理由は認めたくないですし、理由によっては助成金の申請ができなくなる可能性もあります。

こうして会社と離職者とで、主張が食い違ってしまう場合もあります。

特に離職者が、パワハラやセクハラなどを主張した場合には、起こりやすい現象です。

ここで離職というのは、退職の他、所定労働時間が週20時間未満となって雇用保険の資格を喪失し、離職票が交付される場合をいいます。

 

<離職理由の判定>

離職理由の判定にあたっては、まず会社が主張する離職理由を、公共職業安定所(ハローワーク)が離職証明書により把握します。

ついで、離職者が主張する離職理由を把握します。

さらに、それぞれの主張を確認できる客観的な資料を集めることにより、事実関係を確認します。

最終的に、離職者の住所を管轄する公共職業安定所において慎重に判定することになっています。

会社の主張のみで判定することはありません。

会社または離職者が意地を張って、それぞれの離職理由を主張しているために、離職票作成・交付の手続きが遅れることがあります。

しかし、これは無意味なことで、それぞれ真実と思う理由を記入すれば良いのです。

判定するのは公共職業安定所ですから。

 

解決社労士

2020/01/22|717文字

 

<改正の内容>

令和3(2021)年1月1日から、育児・介護休業法施行規則等の改正により、子の看護休暇・介護休暇が1時間単位で取得できることとなります。

 

【現行の制度】

・半日単位での取得は可能

 

・1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できない

 

【改正後】

・1時間単位での取得が可能

 

・全ての労働者が取得できる

 

労働者からの申し出に応じ、労働者の希望する時間数で取得できるようになります。

 

<中抜けについて>

「中抜け」とは、就業時間の途中から1時間単位の休暇を取得し、就業時間の途中に再び戻ることを指します。

法令で求められているのは、「中抜け」なしの1時間単位休暇です。

しかし、法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇取得を認めることは問題ありません。すでに「中抜け」ありの休暇を導入している企業が、「中抜け」なしの休暇に変更することは、労働者にとって不利益な労働条件の変更になりますから、不利益変更禁止の原則に反しないよう配慮が必要になります。

 

<労使協定による例外的取扱い>

子の看護休暇や介護休暇を1時間単位で取得することが困難な業務がある場合には、労使協定を締結することにより、1時間単位の休暇制度の対象からその業務に従事する労働者を除外することができます。

この場合、困難な業務の範囲は、労使で十分に話し合い共通認識が得られてから労使協定を交わしましょう。

 

<両立支援等助成金>

子の看護休暇や介護休暇は、有給とすることが義務付けられているわけではありません。

しかし、1時間単位で利用できる有給の子の看護休暇制度や介護休暇制度を導入し、休暇を取得した労働者が生じたなど要件を満たした事業主は、両立支援等助成金の支給対象とされます。

 

解決社労士

2020/01/21|693文字

 

<業務災害についての法令の規定>

労働者が業務上負傷しまたは疾病にかかった場合、その傷病による療養のため労働できずに賃金を受けない日(休業日)の第4日目から休業補償給付が支給されます。〔労災保険法第14条〕

労災保険法の対象とはならない休業日の第1日目から第3日目(待期期間)までは、事業主が平均賃金の60%以上を補償することになっています。〔労働基準法第76条〕

そして、労働者の業務災害による負傷などについては、労働基準法により、事業主に補償義務が課せられています。

しかし、労災保険より給付された場合に、事業主は補償義務を免除されることになっています。〔労働基準法第84条〕

事業主は、このために労災保険に入らされているわけです。

 

<結論として>

労働基準法第76条の休業補償についても、休業第4日目以降について労災給付が行われた場合は、事業主はその補償義務を免除されることになります。

一方、休業補償給付が行われない第1日目から第3日目までについては、事業主が労働基準法に基づいて、その補償を行うことになります。

つまり、被災者は労災保険からは休業の最初の3日間(待期期間)の補償を受けられないのですが、その3日間分は事業主から補償を受けることになります。

 

<通勤災害についての法令の規定>

なお、通勤災害に対する保険給付は、労災保険法で独自に定められた制度です。

通勤災害における休業日の第1日目から第3日目までについては、事業主に補償義務は課せられていないのです。

これは、業務上の災害については事業主の責任が重いのに対して、通勤途上の災害については事業主に責任を問うことが適当ではないからです。

 

解決社労士

2020/01/20|1,213文字

 

<ハラスメントとは>

パワハラやマタハラの「ハラ」は、ハラスメントの略です。

これは日本語で「嫌がらせ」と言います。

職場での職権などのパワーを背景とした嫌がらせがパワハラであり、働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに受ける嫌がらせがマタハラです。

どちらも、精神的・肉体的な嫌がらせによって、幸福追求権〔第13条〕、平等権〔第14条〕、思想・良心の自由〔第19条〕、言論の自由〔第21条〕、職業選択の自由〔第22条〕、勤労の権利〔第27条〕など、憲法の保障する基本的人権を侵害するものです。

これによって被害を受けた人は、行為者と会社に対して民法などを根拠に損害賠償などを求めることができ、社長以下取締役に対しては会社法を根拠に損害賠償を求めることができます。

 

<パワハラとマタハラの違い>

パワハラでは、対象者の職務遂行能力、仕事の進め方、態度、礼儀、性格などが引き金になります。

上司や先輩は、対象者の職場での様子に常識を超える不信感を抱くのです。

して、その対象者の「存在」が負担だと感じます。

マタハラでは、対象者の職務遂行能力や仕事の進め方は、原因になりにくいものです。

場合によっては、態度、礼儀、性格も原因とされますが、ほとんど「言いがかり」です。

上司や先輩、さらには後輩も、対象者の職場での様子ではなく、妊娠、出産、育児によって、対象者が長い間職場を離れることで、自分たちの仕事の負担が増えることに不安と不満を感じるのです。

つまり、その対象者の「不存在」が負担だと感じます。

 

<パワハラの効果的な対策>

パワハラ行為者は、負担ばかりを感じ、何の利益も感じられないのが不満です。

もし、部下や後輩の指導を、人事考課基準に取り入れたらどうでしょう。

自分がダメ社員だと思う相手を育成すると、成長した分だけ自分が評価され、正当な見返りがあるということになります。

今、人事考課制度が無い会社は、なるべく早く導入すべきですし、個人の経験・能力が評価の中心となっている会社では、部下・後輩の育成を評価の対象とすることをお勧めします。

誰をどこまで成長させるという具体的内容を、個人目標の一つにしたいものです。

状況によっては部下・後輩に、上司・先輩の育成を個人目標として設定するケースも考えられます。

 

<マタハラの効果的な対策>

マタハラ行為者は、仕事の負担増が不安であり不満です。

女性社員が妊娠した場合、ミーティングなどで、その部署のメンバーに公表することが多いでしょう。

それと同時に、その女性社員が休んでいる間、派遣社員が来るとか、他部署からの応援が入るなどの対応を伝えたらどうでしょう。

産休・育休の間、会社は給与の支払義務がありません。

浮いた人件費で派遣社員を頼むことは可能でしょう。

他部署からの応援は、次善の策です。

なぜなら、応援に入る人が不安と不満を感じることもあるからです。

妊娠について公表するのは、人の手配がついてからにしたいものです。

 

解決社労士

2020/01/19|1,053文字

 

<本来は自由な身だしなみ>

髪型や服装などの自由については、憲法第13条が根拠とされます。

 

【日本国憲法】

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

「個人として尊重される」のですから、各個人の個性が尊重されるわけです。

また、個人的事柄について、公権力(国や学校など)から干渉されることなく、自ら決定することができる権利として自己決定権が認められています。

そして、髪型、髪の色、ひげ、アクセサリー、服装などを決定する自由も、個人的事柄について自ら決定することですから、自己決定権として保障されていることになります。

 

<雇用契約による制約>

ただ、こうした本来の自由も、会社と雇用契約を交わした従業員については、雇用契約に定められた義務を果たすために必要な範囲で、制約を受けることがあります。

会社側としては、男性の口ひげ、女性の明るい髪色、ネイルアートなど、職場にふさわしくないと思われるような身だしなみの従業員に対しては、これを規制したいと考えたくなります。

具体的には、就業規則、内規、運用ルール、通達などで、身だしなみについての基準を示し、規制をかけていくことになります。

 

<実害のある場合>

長い髪が機械に巻き込まれる恐れがある、高いヒールが転倒事故につながる恐れがあるなど、従業員自身の安全を確保する必要がある場合に、合理的な範囲内で規制することは許されます。

また、付け爪、ピアス、イヤリングなど、食品に混入する恐れがあるので、作業中は外しておくなどのルールにも合理性があります。

さらに、公共性が強い事業や、お客様の信用を第一に考えるべき業種・職種では、企業経営の必要性やお客様の心情などを踏まえ、一段上の規制が許されることもあります。

職業選択の自由(憲法第22条第1項)がある中で、従業員はその会社を選び、現在の業務に就きうることを包括的に承諾しているわけですから、合理的な範囲内で規制に服する義務を負っているわけです。

 

<定期的な見直し>

たとえば、お客様から特定の従業員の身だしなみについてクレームがあって、一定の身だしなみを禁止する規定を設けたとします。

その規定は、その時点では妥当であったとしても、その後も正当性を維持し続けるとは限りません。

就業規則一般にいえることですが、定期的にルールの妥当性をチェックし、社会の認識に沿った内容へと改善していくことが求められます。

 

解決社労士

2020/01/18|1,908文字

 

<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

 

<パワハラの定義の抽象性>

パワハラの定義は抽象的なものになりがちです。

ところが懲戒処分を有効に行うには、つまり懲戒処分を行ってそれが無効だと主張されないようにするには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。

パワハラについての懲戒規定が無かったり、たとえあっても抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなかったりすれば、加害者が有効に処分されることはありません。

懲戒処分の手続きを担当する従業員の常識に照らせばパワハラにあたることが明らかな行為であっても、加害者の常識に照らせば対象者を育成するのに必要不可欠な行為であり正当な行為だという場合もあります。

 

<懲戒処分の目的>

懲戒処分の目的には、不都合な行為を行った従業員に対して制裁を加えることにより、他の従業員が納得して安心して働けるようにすること、他の従業員が同様の行為を行わないよう再発を防止すること、そして何より行為者本人が深く反省し同じ過ちを繰り返さないようにすることなどがあります。

しかし、本人が自分の行為は懲戒処分の対象になるようなものではないと確信していては、たとえ懲戒処分を行っても、反省するどころか、会社に対する反発と不信感を生むだけです。

ですから、会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。

パワハラについての具体的な定義が無い職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。

 

<上司は部下を叱れないのか>

職場では、業務上の指示や指導の際に、やや厳しい言動が見られることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、企業の中で通常行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。

つまり、相手の感情を基準に違法性を判断するのではなく、周囲の人々が客観的に見たときに、業務上の必要性も無く、嫌がらせなどの不当な目的が明らかで、一般的に見て不安を感じさせるような対応だと言えるときに、違法性の存在が認められるのです。

また、その言動自体は業務の範囲と言えるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的が客観的に明らかであれば、違法なパワハラであることが認定できます。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。

このときも、言われた人がどう思ったかではなく、客観的に見て人格や尊厳を傷つけるか、世間一般の基準から客観的に許される範囲と言えるかが基準となります。

 

<パワハラと指導の境界線をどこに引くか>

こうして見て来ると、次の場合には、指導を超えたパワハラと言えるでしょう。

これらを踏まえて、パワハラについての懲戒規定を見直すようお勧めします。

・相手の成長を促すのとは別の不当な目的が客観的に認定できる場合。ここで、不当な目的とは、退職に追い込む、見せしめ、差別的、人格権の侵害などがあります。つまり、憲法で保障された人権の侵害や、刑罰法規に触れるような不当な目的です。

・客観的に見て犯罪行為にあたる場合。炎天下の人目につかない場所で、たった一人で力仕事をさせたり、暴力を振ったりというのは、目的がどうであれパワハラにあたります。

・客観的に見て、怒りをぶつけている場合。親が子供をしつける場合には、こうしたことが必要になるかもしれません。しかし、社会人を指導し育成するのに、怒りの感情を持ち込むことは、必要不可欠なことではありません。

 

就業規則の見直しなど、具体的にどうしたら良いのか迷ってしまう場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

また、感情に左右されることなく、冷静に対応できることから、第三者的な立場の社労士が、パワハラの相談窓口になることも有効な対策になります。

 

解決社労士

2020/01/17|1,456文字

 

<トラブルが生じやすい雇い止め>

パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態では、有期労働契約が多く見られます。

有期労働契約というのは、1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のことです。

有期労働契約である以上、契約期間満了により雇用が終了することが原則です。

しかし、契約更新の繰り返しにより長い間雇用を継続する場合もあります。

このような場合に、契約を更新せずに期間満了をもって退職させると、期待を裏切ることになります。

こうした「雇い止め」では、トラブルが生じやすいので、トラブル防止のためのルールが定められています。

 

<雇い止めの予告>

雇い止めの予告が義務となるのは、次のような場合に限られます。

・労働契約を3回以上更新している場合

・1年を超えて継続勤務している場合

・1年を超える労働契約の場合

これらの場合に事業主は、少なくとも期間満了の30日前までに、雇い止めの予告をしなければなりません。

ただし、雇用の約束をした時に、期間満了で必ず退職する約束だった場合には、期待を裏切る可能性は無いので対象外となります。

事業主としては、辞めてもらうことが決まっていても、あまり早く雇い止めの予告をしてしまうと、働く意欲が低下するのではないか、一緒に働いている人たちに不満を言うのではないかと心配になります。

しかし、早く伝えてあげないと、雇い止めの対象となった人は、次の仕事を見つけるための準備をする期間が短くなってしまいます。

このルールは、この点に配慮しているわけです。

 

<理由の明示>

雇い止めの予告をしたのに対応して、対象者から雇い止めの理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付しなければなりません。

退職後に請求された場合でも、会社には交付義務がありますが、あくまでも請求があった場合のみの義務となります。

雇い止めの理由の例としては、次のものが挙げられます。

・前回の契約更新時に本契約を更新しないことが明確に合意されていたため

・契約締結当初に定めた契約更新回数の上限に達したため

・閉店など事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと会社が判断したため

わかりやすく事実に沿った理由を示す必要があります。

誤解を生じる表現だと、これが元で訴訟に発展することもあります。

退職後は特にそうですが、「雇い止め理由書」を郵送して終わりにするのは危険です。

せめて電話で、できれば面談で説明したいものです。

 

<トラブルを防止するには>

雇い止めというのは、本当にトラブルを発生しやすいものです。

決まりきったルールを守るだけではなく、プラスアルファのトラブル防止策をお勧めします。

まず、雇い止めの予告にあたってのトラブルを防ぐには、最初の採用のときと、契約更新のときに、次の契約更新の条件を具体的に示しておくことが必要です。

対象者から反論されたり、疑問を出されたりするような条件では、具体性に欠けるということになります。

また、雇い止めの理由を示したことによって、新たなトラブルを発生させないようにするには、その理由が客観的に合理的なものであって、世間一般の常識からしても「やむをえない」といえるものであることが必要です。

その基準は、労働法や裁判例を参考にすれば明らかになるものです。

もし社内に専門の担当者がいないなど、不安な状況があるのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

それぞれの会社と業務内容に応じた対策をとることによって、リスクを大幅に軽減し、経費を削減することができます。

 

解決社労士

2020/01/16|1,116文字

 

<スマホの私用と経費>

会社が支給し経費を負担しているスマホは、業務用なので業務のみに使用するのが原則です。

また、私物のスマホを、個人の負担で業務に使用することは、少なくとも経費の面では、会社の負担を軽減することになり、容認されやすい傾向にあります。

しかし、いずれの場合にも、スマホの私用は無駄な人件費が発生するので否定的に考えられています。

たとえ私物のスマホであっても、勤務時間中にプライベートな使用をすることは、その時間だけ仕事をしていないことになり、職務専念義務違反にもなりますし、人件費の無駄は明らかです。

 

<情報漏洩リスク>

スマホの私用は、会社の情報が漏洩するリスクを伴います。

アルバイトが、職場のふざけた様子をSNSにアップし、売上や顧客の減少をもたらす事件は無くなっていません。

場合によっては、閉店や廃業の結果をもたらすことさえあります。

行為者には、会社の情報を漏洩する意識が希薄です。

仲間内でのウケを狙って、ふざけた写真などを投稿するのですが、仲間の範囲を超えて流出し、世界中にばらまかれて、予想外の結果を生じてしまうわけです。

 

<就業規則による禁止>

就業規則に、勤務中のスマホ私用を禁止する規定と、これに対応する懲戒規定を置き、きちんと社員教育を行ったうえで、実際に懲戒処分を適正に運用していけば、会社のリスクは大幅に軽減されます。

また、人事考課制度が適正に運用されていれば、スマホの私用が目立つ社員の評価を、職務専念の点で引き下げることも可能です。

さらに、適性の面から、勤務中にスマホをいじれないような業務に異動することも不合理ではありません。

なお、就業規則に規定が無い場合であっても、上司が正当な業務命令として、スマホの使用を禁止することは可能です。

 

<禁止の限界>

会社は、原則として、プライベートな時間についてまで社員の行動を規制することができません。

このことから、スマホを勤務場所に持参することまでは禁止できません。

ただ、職場にスマホを持ち込まないよう、ロッカーに保管するなどのルールを設けることはできます。

また、休憩時間のスマホ私用を制限することも、正当な理由なく行うことはできません。

休憩時間は、休息のために労働から完全に解放されることを保障されている時間です。

通達も、休憩時間を労働者の自由に利用させなければならないとしています。〔昭和22年9月13日 発基17号〕

 

<社員のとるべき行動>

どうしても、スマホをプライベートなことに使いたい場合もあります。

この場合には、理由を示し上司の許可を得たうえで私用すれば問題ありません。

こうしたルールの徹底によって、ほとんどの問題が解消するのではないでしょうか。

 

解決社労士

2020/01/15|875文字

 

<最低賃金の発効日>

たとえば東京都の最低賃金時間額は、令和元年10月1日をもって、985円から1,013円に引き上げられました。

この日が発効日ですから、この日に勤務した分から1,013円を下回る時間給は違法になってしまいます。

日給でも月給でも年俸制でも、1時間あたりの賃金が1,013円を下回ってはいけません。

 

<「雇い入れ通知書」より「労働条件通知書」が便利>

労働者の採用にあたっては、書面の交付により労働条件を通知しなければなりません。

このとき、「雇い入れ通知書」という名称の書面を交付することもあります。

雇い入れにあたって交付する書面ですから、「雇い入れ通知書」という名称がしっくりきます。

しかし、契約期間が令和元年10月1日以降にまたがる「雇い入れ通知書」を交付していた場合で、その人の賃金時間額が1,013円を下回っている場合には、これ以上の賃金に改定した内容の労働条件を示さなければなりません。

このときは、「雇い入れ」ではありませんから、「労働条件通知書」という名称が正しいことになります。

最初から「労働条件通知書」という名称の書面を用意しておけば、採用にあたっても、その後の変更や契約更新でも、同じ書式が使えますので「労働条件通知書」がお勧めです。

 

<「労働条件通知書」のひな形>

「労働条件通知書」のひな形は、厚生労働省のホームページでダウンロードして利用できます。労働条件によって、次の中から適合するものを選んで使います。

【一般労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【短時間労働者用】常用、有期雇用型

【派遣労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【建設労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

【林業労働者用】常用、有期雇用型/日雇型

それぞれに詳しい【記載要領】が、本文と同じ位の分量で添付されていますので、よく読んで作成する必要があります。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更、同一労働同一賃金などで、労働条件の管理は少し複雑になってきています。

面倒に思えてきたら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/14|1,291文字

 

<月間所定労働日数の必要性>

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給 ÷(1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 )

で計算されます。

これが毎月変動すると、給与計算をする人は大変です。

いきおい、残業手当も欠勤控除も計算しなくなるのではないでしょうか。

残業手当を計算しないと、ブラック企業の代名詞であるサービス残業が発生します。

欠勤控除を計算しないと、遅刻しても叱られるだけで給料が減らないわけですから、なんとなく遅刻が増えてくるでしょう。

きちんと残業手当を支払っている会社では、頭の良い人が仕事をためておいて、残業単価の高い月にまとめて残業するということもあるでしょう。

これでは、わざと仕事を遅らせることになります。

やはり、毎月一定の月間所定労働日数を設定しておく必要があるでしょう。

 

<年間労働日数からの算出>

たとえば、土日・祝日と1229日~13日だけが休日だとします。

これなら年間の労働日数の計算は、単純なように見えます。

それでも、祝日は日曜日と重なると月曜日が振替休日になるのですが、土曜日と重なっても振替休日は生じません。

体育の日のように、日曜日と重ならない祝日もあります。

年末年始の1229日~13日も、カレンダーによって短かったり長かったりします。

こうして休日の数は、その年によって増えたり減ったりするのです。

これらすべてについて、確率を計算しながら平均値を求めるのは少し面倒です。

最近新設された山の日のように、祝日が増えることもあります。

むしろ、最近3年間の本来の出勤日を数えて平均値をとった方が楽な場合が多いでしょう。

そして、月間所定労働日数は年間労働日数を12で割れば計算できます。

1日未満の端数は、労働者に不利にならないように切り捨てるのが基本です。

 

<給与計算にあたって間違えやすいこと>

たとえば、月間所定労働日数を22日と決めたとします。

ある人が、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき「休日出勤手当が発生するのかな?」「欠勤になるのかな?」と迷うことがあるようです。

しかし、答えはどちらもノーです。

月給制の場合に、残業手当や欠勤控除の計算基準となる時間単価は、

月給 ÷(1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 )

で計算されます。

つまり、月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算しますので、ここに月間所定労働日数は出てこないのです。

遅刻・早退や残業も1日単位での計算が基本です。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の従業員はカレンダーを見ながら会社のルールに従って出勤していることになります。

 

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、従業員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

これを含め、給与計算について失敗が無いか、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/01/13|1,423文字

 

<労働者派遣法の改正>

2020年4月1日から、派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行されます。

改正点は次の3点です。

1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備

2.派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化

3.裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

 

<不合理な待遇差をなくすための規定の整備>

次の①または②の待遇決定方式により公正な待遇が確保されます。

①【派遣先均等・均衡方式】派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇

②【労使協定方式】一定の要件を満たす労使協定による待遇

2020年4月1日をまたぐ労働者派遣契約であっても、この日から適用されます。

 

【派遣先均等・均衡方式】

「均等待遇」は、職務内容と異動の範囲が同じであれば、差別的取扱いが禁止されるものです。「平等待遇」ともいえます。

「均衡待遇」は、職務内容、異動の範囲、その他の事情の違いを考慮して不合理な待遇差を禁止するものです。「公平待遇」ともいえます。

 

【労使協定方式】

労使協定に定めるのは、次のような事項です。

① 協定の対象となる派遣労働者の範囲

② 賃金決定方法(同種業務の一般労働者の平均的な賃金額以上、職務の内容等が向上した場合に改善)

③ 職務の内容などを公正に評価して賃金を決定すること

④ 賃金以外の待遇決定方法(派遣元の通常の労働者(派遣労働者除く)との間で不合理な相違がない)

⑤ 段階的・体系的な教育訓練を実施すること

⑥ 有効期間 など

 

次のような場合には、【労使協定方式】は適用されず、【派遣先均等・均衡方式】が適用されます。

・協定を書面で締結していない場合

・協定に必要な事項が定められていない場合

・協定で定めた事項を遵守していない場合

・過半数代表者が適切に選出されていない場合

 

<派遣先企業が講ずべき措置>

 

(1) 派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇等に関する情報提供

労働者派遣契約を締結する前に、派遣先から派遣元に対し、比較対象労働者の待遇などに関する情報を提供しなければなりません。

つまり、情報提供をせず、派遣元との間で労働者派遣契約を締結することはできません。

 

(2) 教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供

派遣元の求めに応じて、派遣労働者に対しても業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施するなどの義務があります。

食堂・休憩室・更衣室は、利用の機会を与える義務があります。物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設などの施設は、利用に関する便宜供与を講ずるよう配慮する義務があります。

派遣元の求めに応じて、派遣先の労働者に関する情報、派遣労働者の業務遂行状況などの情報を提供するなど必要な協力をするように配慮する義務があります。

 

<裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備>

派遣労働者と派遣先との間で、次の事項に関してトラブルとなった場合には、「都道府県労働局長による助言・指導・勧告」や「紛争調整委員会による調停」を求めることができます。この制度は無料で利用することができ、調停等の内容が公にされないため、プライバシーが保護されます。また、これらを求めたことを理由として、派遣先は派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこととされています。

① 業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施

② 食堂、休憩室、更衣室の利用の機会の付与

 

解決社労士

2020/01/12|1,665文字

 

<問題上司>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は部下」と思い込み、パワハラで気に入らない部下を追い出すような管理職です。

自部署の業績が向上すれば、自分の方針や部下への指導が優れていると感じますし、昇給・昇格・抜擢・栄転など期待はふくらみます。

部下の年次有給休暇取得率が低ければ、その部下が無能であり、仕事にメリハリが無いからだと感じます。

自分の業務配分のバランスの悪さや、指導不足は感じません。

社長や上司の機嫌は最大限尊重します。

コンプライアンスや、部下の権利との調整など思いつくことはありません。

自部署の業務の問題点を指摘されると、嫌いな部下のせいにします。

面と向かって「お前のせいでこんな結果になってしまった」と言います。

パワハラは毎日のように続きますから、その部下は異動や退職を申し出ます。

そして、その部下がいなくなれば、もう問題点は解決したと思い込みます。

しかし、追い出された部下は上司のパワハラや会社の管理責任を問う訴えを起こしてきます。

その部下自身はおとなしい性格なのですが、その両親や親戚に強い性格の人がいて「おとなしく引き下がっていないで訴えなさい」と迫るのです。

こうなって初めて、会社は問題上司の存在に気がつきます。

問題上司にも責任はありますが、管理職にしてしまった会社の責任の方が重いかもしれません。

 

<問題上司を作らない方法>

管理職選考の段階で見極めることが大事です。

今までの業務の中で、次のような傾向が強く見られれば、管理職登用を見送ることです。

・仕事でも私生活でも上手くいったことの原因は自分にあると主張する。

・仕事でも私生活でも上手くいかなかったことに自分の責任は無いと言う。

・昇進・昇格・栄転などに強い興味を示し、同期との比較をしたがる。

・会社や上司に対して「間違っている」と思うことを言わない。

これらは、人事考課のチェック項目に入れておくことができます。

きちんとした人事考課基準の確立と運用で、問題上司を作らない会社にしておくことです。

社長の好き嫌いや経験年数で管理職に登用してしまうと、かわいそうな部下を作ってしまうことになります。

具体的に人事考課をどうすれば良いか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<問題上司の教育>

問題上司に会社の方針を伝えたり、それを部下に浸透させたり、別の部署を担当させたりは、普通に行うことができます。

しかし、問題上司から優良上司に変えることはできません。

生まれてから今までに、私生活でも仕事でも多くの経験を積む中で、今の人間力を身に着けてきたのですから、他人がこれを変えることはできません。

問題上司の真逆の優良上司とは、良いことも悪いこともその原因を自分の能力や判断と部下に対する指導にあると理解し、自分の昇進を考える前に部下をしっかり育てることを考え、退職までにどれだけ多くの人材を育て会社を成長させられるか真剣に考えるような管理職です。

問題上司を優良上司に変えようと努力するよりは、他の社員を抜擢した方が近道です。

 

<うっかり問題上司を作ってしまったときのために>

会社オリジナルの就業規則が最大の武器になります。

パワハラの定義すら無い就業規則では、問題上司の暴走を止めることはできません。

どんなに優秀な社員であっても、不適切な言動はきちんと懲戒の対象とし、一度管理職になっても不適格と認められれば降格させることのできる規定を備えた就業規則を作り、磨き、周知することによって、被害を最小限に抑えることができます。

もちろん、優良上司がのびのびと働ける内容にしなければなりません。

もう一つ、会社にとって不都合な情報でも、社長や取締役あるいはこれに準ずる人たちにきちんと伝わる会社にしておくことです。

どれほど優れた判断力を備えた社長でも、必要な情報が入って来なかったり、ウソの報告が多かったりしたら、正しい経営判断はできません。

就業規則や人事制度についても、問題を感じるようになる前に、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/11|1,374文字

 

<問題社員>

「良いことの原因は自分、悪いことの原因は他人」と思い込み、権利を濫用して、退職後に会社を訴えるような従業員です。

会社の業績が向上すれば、誰よりも自分が一番貢献していると感じますし、昇給・昇格・臨時ボーナスなど期待はふくらみます。

年次有給休暇を取得できなければ、上司が無能であり、人事の方針が間違っていると感じます。

自分の生産性の低さや計画性の欠如は感じません。

労働者としての権利は最大限主張します。

会社側の権利や、他の従業員の権利との調整など思いつくことはありません。

問題社員であることが周囲にバレて、居心地が悪くなると突然会社を辞めます。

社長以下従業員一同がホッとしていると、会社を訴えてきます。

訴えの理由は、会社に辞めさせられたとか、仕事がキツくて病気になったとか、サービス残業代の請求だったりします。

会社としては、これに対応しなければなりませんから、退職してもなお迷惑をかけられるということになります。

 

<問題社員を入社させない方法>

採用選考の段階で見極めることが大事です。

履歴書や職務経歴書、採用面接中の発言などに、次のような傾向が強く見られれば、採用を見送ることです。

・仕事でも私生活でも上手くいったことの原因は自分にあると主張する。

・仕事でも私生活でも上手くいかなかったことに自分の責任は無いと言う。

・年次有給休暇の取得率、昇給や昇進の可能性などに強い興味を示す。

・会社や上司とのトラブルの経験と自分の正当性について話す。

これらは、あらかじめ採用選考時の面接で使用する「面接シート」にチェック項目を入れておくことができます。

具体的に採用選考をどうすれば良いか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<問題社員の教育>

問題社員に、会社の方針を具体的に落とし込んだり、新しい仕事を教えたりということについては、普通に行うことができます。

しかし、問題社員から優良社員に変えることはできません。

生まれてから今までに、私生活でも仕事でも多くの経験を積む中で、今の人間力を身に着けてきたのですから、他人がこれを変えることはできません。

問題社員の真逆の優良社員とは、良いことも悪いこともその原因を自分と他人の両方にあると理解し、労働者としての権利を主張する前に会社や他の従業員の都合を考え、退職までにどれだけ会社を改善し成長させられるか真剣に考えるような従業員です。

問題社員を優良社員に変えようと努力するよりは、優良社員を採用した方が近道です。

 

<問題社員を入社させてしまった場合に備えて>

会社オリジナルの就業規則が最大の武器になります。

権利の濫用を許さず、会社が不当に訴えられるスキを作らない就業規則を作り、磨き、周知することによって、被害を最小限に抑えることができます。

もちろん、優良社員がのびのびと働ける内容にしなければなりません。

もう一つ、きちんとした人事考課基準の確立と運用で、問題社員には居心地の良くない会社にしておくことです。

問題社員が人の上に立つようになってしまったら、部下はたまったものではありません。

能力が発揮できなくなるだけではなく、いたずらに退職者を増やすことになってしまいます。

就業規則や人事考課についても、問題を感じるようになる前に、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/10|1,145文字

 

<年々減少する参加者>

若者を中心に、会社の行事に参加したがらない社員が増えています。

社員旅行などは、かつて当たり前のように行われていたのですが、現在では行う会社がかなりの少数派になってしまいました。

せっかく社員間の親睦を図るために会社が用意しているのに残念なことです。

 

<自由参加の場合>

自由参加とした場合には、社員に参加義務がありませんから、不参加を理由に会社が何らかの対応を取ることは困難です。

就業中の協調性が欠けていることについては、本人への注意が必要ですし、人事考課で「協調性」の評価が低くなることは当然です。

しかし、自由参加の会社行事に欠席した事実については、原則として評価の対象外となります。

それでも、一定以上の役職の管理職で部下を持つ社員など、自ら積極的に会社の行事に参加すると共に、他の社員に対しても参加を呼び掛けるべき立場の者が、正当な理由なく欠席した場合には、「指導力」などの項目で、評価が低くなる原因とされるのは不当ではありません。

 

<業務命令の場合>

忘年会や新年会などの行事が、原則全員参加であるなど、会社の業務命令になっている場合には、正当な理由なく欠席することが業務命令違反となります。

会社は、参加しない社員に対しては、注意し改善を求めることになります、

また、懲戒処分を検討すべき場合もあります。

この場合、忘年会や新年会などの内容は、会社によってかなり異なりますので、参加命令が労働契約の範囲内であることの確認が必要です。

懲戒処分の内容は、初めての欠席であれば最小限に留めるべきでしょうし、注意し改善を求めても繰り返し欠席するような場合や、他の社員にも欠席するよう促している場合には、重い処分が必要になってきます。

 

<業務命令となる条件>

参加対象者は、明確であることが必要です。

全員参加であれば明らかですが、社員の側から見て、自分が参加対象者かどうか分からないようでは、業務命令が及ぶ範囲も不明確になってしまいます。

参加している時間は、賃金の支払い対象とされていることも必要です。勤務時間外の行事であれば、割増賃金も必要になってきます。

したがって、誰が参加し、誰が欠席しているかの確認も必要です。

 

<会社の行事一般について>

何の目的で参加しなければならないのか、参加しなくても構わないのではないかという疑問は、目的意識のはっきりした社員ほど強くなり、気持ちが不参加の方に動いてしまいます。

新年会といえばその趣旨はだいたい分かるだろうということではなく、日時・場所の他、その目的や内容、自由参加か強制参加かなど、具体的にイメージできる情報も提供しておくべきです。

そして、強制参加であれば、不参加の場合に理由を添えて事前に届け出るなどの手続も明確にしておきましょう。

 

解決社労士

2020/01/09|1,163文字

 

<法定の義務>

定期健康診断を実施したら、個人別結果表を各個人に配布して、会社の控えは5年間保管します。

また、労働者数が50人以上の事務所・店舗などでは、労働基準監督署長に定期健康診断結果報告書を提出します。

しかし、こうした法定の義務を果たして終わりでは勿体ないのです。

健診には多額の費用が発生しますし、従業員の負担も大きいものです。

特に、私のように健康診断が大嫌いな人も我慢して受けているわけですから、もっと結果の活用を考えていただきたいものです。

 

<特定保健指導>

協会けんぽなどの保険者に義務づけられているということで、特定健診は定期健診に併せて行われることが多いものです。

そして対象者がいれば、保険者から会社に特定保健指導の案内がきます。

この指導は「無料」とはいいますが、財源は保険料ですから利用しない手はないのです。

対象者は、メタボになりそうな人です。

既にメタボになってしまい、治療を受けている人は対象外です。

また、高血圧の治療を受けているなど一部の人も除外されています。

メタボとなると個人差はあるものの、会社側から見て生産性が低下していると感じられることがあるものです。

その予備軍への指導ですから、会社にとっては生産性を維持するための施策にもなります。

具体的には、保健師などが対象者に11で指導する形と、グループ研修の形があります。

どちらも一長一短ありますので、年度によって交互に実施しても良いでしょう。

 

<平均値との比較で>

厚生労働省が検査項目ごとに全国と都道府県別の有所見率のデータを発表しています。

また、所轄の労働基準監督署に電話で問い合わせれば、最新のデータを教えてもらえます。

これと自社のデータを比較することによって、健康上の問題点や留意点が見えてきます。

これをもとに、社員への健康増進知識の広報を行ったり、職場環境や食事内容などの見直しを行うことができます。

 

<年次推移の把握>

実は有所見率については、全国的に上昇傾向が見られます。

その中にあって、自社の有所見率の推移を把握することは、職場環境の改善や労働安全衛生の推進にとって重要です。

また、有所見率にとどまらず、生のデータの推移を把握することも大切です。

特定の店舗の従業員だけ、血圧が上昇傾向にあり、原因を探っていくと昼食・夕食の弁当の塩分濃度にたどりついたという例もあります。

 

健康診断に限らず、メンタルヘルスチェックなども、健診機関や医師などの立場からのアドバイスだけに頼らず、労働環境や労働条件など労務管理の観点からの分析とアドバイスを信頼できる社労士(社会保険労務士)に依頼してはいかがでしょうか。

医師からのアドバイスは家庭生活に、社労士からのアドバイスは職業生活に活かすことによって、従業員が元気に働けるよう会社がサポートすると安心ですね。

 

解決社労士

<実例として>

小さな飲食店では、アルバイトがシフト制で、始業時刻も終業時刻もその日によって違うということがあります。

休憩もあったり無かったり、休憩開始の時刻もその日によって臨機応変にというわけです。

シフトを組む段階で、お店の都合とアルバイトの都合とをすり合わせて何とかしのいでいるわけですから、あらかじめ決めておくというのが無理なようにも思えます。

ましてや当日のお客様の状態によって、当初の計画どおりにはいかないこともあります。

「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」をきちんとアルバイトに交付しなければ、労働基準法違反になってしまいます。

労働条件の明示義務違反については、1人につき30万円以下の罰金という罰則があります。〔労働基準法第120条第1号)〕

何とかしなければなりません。

 

<対処法>

労働条件が決まっていないと、年次有給休暇付与の有無や日数が決まらない、社会保険や雇用保険の加入対象かどうかがわからない、残業代の計算もできないなどなど、ブラック企業丸出しの状態になります。

これを避けるには、平均値から「標準」となるものを割り出して、「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」に示せば良いのです。

つまり、入社時は本人の実績が無いですから、同じような状態のアルバイトを参考に、「標準的な始業時刻」「標準的な終業時刻」を決めます。この通りに働くわけではなく、あくまでも年次有給休暇などの基準として使うわけです。

同じように、「標準的な休憩時間」「標準的な時間外労働」「標準的な休日出勤の日数」なども決めます。

これで「雇い入れ通知書」が作れます。

そして、ある程度勤務が続いて、実態が「雇い入れ通知書」と離れてしまったら、内容を修正して「労働条件通知書」に示せば良いのです。

 

「平均値と言われてもよくわからない」という場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

書類の作り方だけではなく、効率の良いシフトの組み方など、実質的な内容についての相談も可能です。

2019/01/07|1,057文字

 

<モデル就業規則>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、懲戒の事由を次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。(以下略)

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。(以下略)

 

ここでは、懲戒処分として、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇の4種が掲げられています。

 

<降格処分>

会社によっては、上記の4種の他、降格処分が規定されていることがあります。

降格処分には、役職の降格、資格等級の降格などがあります。

懲戒処分として降格を行うものです。

 

<人事権の行使としての降格>

これとは別に、会社の人事権の行使としての降格があります。

その役職や資格等級の立場を維持するのに、必要な能力や適性を欠いているために、会社の判断により降格を行うものです。

 

<2つの降格があることによる問題>

懲戒処分としての降格と、人事権の行使としての降格とは、理由付けが異なるだけで、行われる内容は同じです。

そして、人権保障の趣旨から、日本国憲法には次の規定が置かれています。

 

【一事不再理・二重処罰の禁止】

第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

懲戒処分についても、これと同じ考え方が妥当します。

つまり、懲戒処分が検討され対象外と判断された行為について、再び懲戒処分の対象とすることを検討することは禁止されます。

また、懲戒処分を受けた行為について、二重に懲戒処分を行うことも禁止されます。

もし、減給処分と人事権の行使としての降格が同時に行われたならば、その結果から、減給処分と降格処分が重ねて行われたと判断される余地があります。

これでは、二重処罰の禁止に触れるのではないかという問題を生じることになります。

こうした問題の発生を避けるためには、懲戒処分の種類に降格処分を入れないのが得策です。

 

<その他の留意点>

懲戒処分の種類に降格処分を入れなければ、問題が発生しないということではありません。

懲戒処分は、懲戒権の濫用となる場合には無効とされます。〔労働契約法第15条〕

これと同様に、人事権の行使としての降格が、人事権の濫用であれば無効とされる場合もあります。

こうした点にも、十分留意しましょう。

 

解決社労士

2020/01/06|896文字

 

<0時で区切るのか>

いつもは午前9時に出勤して、正午から午後1時まで昼食休憩をとり、午後6時までが定時で、しばしば残業している人がいるとします。

これはかなり一般的な例でしょう。

この人が仕事の都合で正午に出勤し、翌日の午前2時まで出勤した場合には、午後10時から翌日午前2時までが深夜労働となり、2割5分以上の割増賃金の対象となることは明らかです。

また、途中で午後6時から1時間の夕食休憩をとったとして、正午から翌日午前2時までのうち、勤務開始から実働8時間を超える午後9時以降の勤務時間について、残業手当が発生することも明らかです。

しかし、真夜中の0時で一度区切って、正午から真夜中の0時までの12時間から1時間の休憩時間を引いてこの日は11時間勤務として、真夜中の0時から2時間の勤務は翌日の勤務時間としてカウントして良いのでしょうか。

言い換えれば、ある日の勤務時間を集計するのに、真夜中の0時で区切って良いのでしょうか。

 

<法令の規定>

実は法令には規定がありません。

それでは困るので、通達が出されています。

法律は国会が作るのですが、あまり細かいところまでは規定し切れませんので、行政機関が解釈の基準を出しているのです。

日付をまたいで勤務した場合には、翌日の始業時刻までの労働が前日の勤務とされます。〔昭和63年1月1日基発第1号通達〕

こんなとき、ある人の始業時刻がきちんと決まっていなければ計算できません。

そこで労働基準法は、基本的な労働条件について、書面で労働者に通知するなどの義務を規定しているわけです。

それでも、わからないときは通常の始業時刻で計算するしかありません。

通常の始業時刻をまたいで長時間勤務した場合には、そこまでで一度集計して残業時間を確定して残業手当を支給することになります。

そして、通常の始業時刻から翌日分の勤務時間を計算すれば良いのです。

 

法令に規定が無いとき、自社で基準を作ると、通達違反であったり、判例とは違っていたり、あるいは典型的な不合理を含むものであったりという失敗が起こりがちです。

迷ったら信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/05|914文字

 

<始末書の目的>

始末書とは、不都合な事実が発生した場合に、その事実を発生させた人が、事実の内容と原因・責任を明らかにし、再発防止を約束して、反省と謝罪の意思を示す文書です。

顛末(てんまつ)書は、事の顛末を示す文書ですから、事実の内容と原因を明らかにすれば良いのですが、会社によっては始末書と顛末書を混同しているケースも見られます。

 

<事実の内容>

ここは5W1Hを意識して客観的に書く部分です。

感情を入れたり、クドクドとお詫びの言葉を入れたり、長々と書いてしまうと、わかりにくくなって読む人がイライラします。

事実がわかるように簡潔に要領よく書きましょう。

 

<発生の原因>

ここも客観的に書く部分です。

不都合な事実の発生原因には、多くのものが思い浮かびますが、その中でも特に主要な原因をいくつか書きます。

ここも、感情を入れたり、クドクドとお詫びの言葉を入れたり、長々と書いてしまうのは禁物です。

 

<再発防止策の提示>

会社が始末書の提出によって得られる利益としては、不都合な事実の発生に最も深くかかわった本人から、再発防止策を示してもらうことにあるでしょう。

ですから、ここには具体的なことを書く必要があります。

「もっと注意すれば…」のような抽象的なことを書いても役に立ちません。

自分と同じ立場に立たされた人が、同様のことをしてしまわないためには、具体的にどうしたら良いのかを書きます。

 

<反省と謝罪>

ここは主観的にお詫びの言葉を書く部分です。

どれほど反省しているか、自分自身、再発防止策をどのように実行していくかという内容も必要です。

最後に、「寛大な措置をお願いいたします」「今後は規則に従います」「相応の処分を受ける覚悟でおります」など、結びの言葉を添えます。

 

始末書を提出すること自体、注意を受けることと併せて、譴責(けんせき)処分という懲戒処分になります。

これ自体に納得できなかったり、始末書提出後の会社の対応に不満があれば、信頼できる特定社労士(特定社会保険労務士)にご相談ください。

自分の思っていることが、客観的に正しいのかどうか、冷静に判断してもらえるでしょう。

そのうえで、今後どうすれば良いのか対策を立てることになります。

 

解決社労士

2020/01/04|1,257文字

 

<会社の対応>

社員が、違法薬物を自己使用したり、社内外で販売したりの事実が判明したら、会社はどのように対応すべきでしょうか。

社員の問題行為が発覚した場合、会社として取るべき対応としては、懲戒処分、人事異動、人事考課への反映、再教育などが考えられます。

しかし、違法薬物の取り扱いは犯罪行為ですから、基本的には懲戒処分が中心となります。

 

<懲戒解雇の検討>

違法薬物の自己使用や販売は、他人から発見されないように行われますので、勤務中の違法薬物使用・販売が発覚するのは稀であり、勤務外での行動が問題とされるのが一般です。

そして、社員は勤務中、会社に対して労務を提供する義務を負っていますが、勤務時間外の職場外での行動は基本的に自由です。

ですから、こうしたプライベートの時間の行為について、懲戒処分を行うというのは例外に当たります。

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、犯罪行為について次の懲戒規定を置いています。

 

【懲戒の事由】

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。 

 

会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。

 

社外での犯罪行為であれば、プライベートなものであり会社が関与しないとするのでしょう。

しかし、違法薬物の自己使用や販売は刑罰法規に触れる行為であり、発覚すれば会社の信用が低下しうる事実です。

社外での犯罪行為でも、会社に損害を与えうるのですから、自社の就業規則がモデル就業規則と同様に「会社内」と限定しているのであれば、「会社内外」への変更をお勧めします。

 

<その他の懲戒処分の検討>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)には、次のような規定も置かれています。

 

【懲戒の事由】

第66条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

 

③ 過失により会社に損害を与えたとき。

 

違法薬物の自己使用や販売は、会社の名誉や信用を侵害するなど損害を与える意図で行われるわけではありませんが、「過失により」という規定を適用して、懲戒処分を行うことは可能です。

特に、違法薬物を買い受けて使用した他の社員が中毒症状を示し、勤務できなくなったような場合には、会社の損害は明らかですから反論の余地はありません。

そうではなくても、企業秩序に不当な悪影響を与えた場合には、懲戒処分の対象となりえます。

 

<対応にあたり心がけること>

犯罪だから、違法薬物の使用は許されないからと、つい感情に走ってしまい、適正な手続きを経ずに懲戒解雇を通告してしまい、反対に不当解雇を主張されることもあります。

まずは、具体的な事実を確認し、会社への影響を見定め、適正な手続きを経て懲戒処分を行うように心がけましょう。

 

解決社労士

2020/01/03|998文字

 

<安易な運用>

上司から部下へ「昨日は2時間の残業ごくろうさん。今日は2時間早く上がっていいよ」という話があると、部下はトクした気分になるかもしれません。

しかし、給与の時間単価が2,000円だとすると、2時間の法定外労働では、

2,000円×2時間×1.25=5,000円

となって、会社は5,000円以上の賃金支払い義務を負います。

一方で、2時間の欠勤控除では、

2,000円×2時間=4,000円

となって、残業代と欠勤控除をそれぞれ正しく計算すると、

5,000円-4,000円=1,000円

となって、プラスマイナスゼロではなく、総支給額がプラス1,000円になるのが正しいということになります。

しかも、会社都合で2時間早退させたとしたら、休業手当も発生します。

2,000円×2時間×0.6=2,400円

これは、労働基準法第26条に規定があります。

法律上、労働者は7,400円だけ多くの賃金を受け取れる計算になります。

しかも、労働法ですから「本人が同意」しても結論は変わりません。

 

<相殺の例外1>

きちんと手続きをして、フレックスタイム制を正しく運用していれば、ある日2時間残業して、別の日に2時間早退すると、結果的に相殺されたのと同じ効果が発生します。

これは、使用者側の指示によらず、労働者側が仕事の都合と個人の都合をバランス良く考えて、自由に労働時間を設定できることによる例外です。

 

<相殺の例外2>

中小事業主は当分の間対象外ですが、月60時間を超える時間外労働の割増賃金(割増率5割以上)については、労働者の健康確保の観点から、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。〔労働基準法第37条第3項〕

代替休暇制度の導入には、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この協定では、a.代替休暇を与えることができる時間外労働の時間数の算定方法、b.代替休暇の単位、c.代替休暇を与えることができる期間、d.代替休暇の取得日の決定方法および割増賃金の支払い日を定めるべきとされています。

 

残業時間と早退時間の相殺を正しく行いたい場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

柳田事務所にご依頼いただければ、上手に運用するためのツールのご提供や、研修の実施など、よりスムーズに導入するためのサービスも行っております。

 

解決社労士

2020/01/02|1,103文字

 

<制裁の制限規定>

減給処分の制限として、次の規定があります。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」〔労働基準法第91条〕

就業規則に具体的に規定してあるなど、他の適法要件を備えていたとしても、何か一つの不都合な事実に対して、減給処分は平均賃金の1日分の半額が限度です。この平均賃金の計算方法は、法定されています。

たとえば、直近の給与の締日までの3か月で、カレンダー上の日数が91日のとき、この間の給与の総合計が91万円であれば、1日分は1万円、その半額は5千円です。これが減給処分の限度です。

また、いくつかの不都合な言動があって、まとめて減給処分をする場合に、給与計算後の月給の支給総額が20万円の人に対しては、10分の1の2万円が限度ということになります。

これは、労働者の生活を守るためです。

 

<分割払いの減給処分>

たとえば1回の遅刻につき、平均賃金の1日分の半額の減給処分が就業規則に規定されていて、適法に運用されているとします。

ある人が、9月に10回遅刻したとすると、

「平均賃金の1日分の半額」×10=「平均賃金の5日分」

の減給処分をしたいところ、それでは月給の10分の1を超えてしまいます。

これを10月から翌年2月までの5回に分けて、平均賃金の1日分ずつ減給できるでしょうか。

これは、できます。

なぜなら、分割払いにすれば労働者の生活を守るという法の趣旨に反しないからです。

一括だと大変な負担でも、法の制限内の金額での分割なら許されるのです。

 

<現実には>

5か月にわたって、特別な給与計算をするのは面倒です。

また、減給処分の対象者が途中で退職するかもしれません。

この場合にも、制限を超えてまとめて減給はできません。

そもそも月に10回も遅刻するというのは異常です。

原因を突き止めたうえで、他の懲戒処分、たとえば、出勤停止なり降格処分なりを考えるべきでしょう。

もっともこれは、あらかじめ就業規則に定めておく必要があります。

あるいは、人事異動や人事考課で対処するというのが、より現実的でしょう。

 

<結論として>

現在の就業規則の減給処分が、労働基準法違反ではないか、従業員の不都合な言動に対する懲戒処分の規定が適正か、あらためてチェックしておく必要があるでしょう。

甘すぎても、厳しすぎてもダメです。

それと、きちんとした人事考課の基準が無ければ、適正な対応ができないケースもあります。

総合的に内容をチェックするには、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/01/01|1,082文字

 

<慶弔休暇>

慶弔休暇とは、喜ばしいお祝い事である慶事、おくやみごとや御不幸などの弔事があった場合に取得できる特別な休暇のことをいいます。

慶弔休暇は、年次有給休暇や産前産後休暇のように、法令で定められた法定休暇ではありません。

企業が、任意に独自の内容で定めている法定外休暇です。

ですから、慶弔休暇の付与が無くても、それ自体は違法ではありません。

慶弔休暇が無い場合には、年次有給休暇の取得で対応したり、欠勤扱いになったりします。

 

<正社員のみの付与>

企業の中には、正社員のみに慶弔休暇を付与し、パート・アルバイトには付与しないというところもあります。

しかし、労働契約法第20条には次の規定があります。

 

【期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止】

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

正社員に慶弔休暇が付与される一方で、パートやアルバイトのように、有期労働契約を締結している労働者に、慶弔休暇が付与されない場合、こうした処遇の差が不合理であってはならないのです。

上の条文では、業務内容、責任の程度、人事異動の範囲、その他の事情により、労働条件の相違があり、処遇の差が不合理でなければ良しとしています。

しかし、慶弔休暇の必要性は、業務内容、責任の程度、人事異動の範囲によって異なることはありません。

「その他の事情」として考えられるのは、1週間の所定労働日数が少ないうえに、シフトの変更が容易であるような場合です。

週2日の勤務であって、しかも出勤日の変更がわりと自由であれば、慶事や弔事に当たる日を出勤日にしないことによって対応できるのが普通です。

例外的に、対応できない場合に限り、慶弔休暇を付与するものとしても、決して不合理ではありません。

 

<有給か無給か>

慶弔休暇は、法定休暇ではありませんから、有給にするか無給にするかは、企業の判断で制度を設計すれば良いことになります。

しかし、実際には、ほとんどの企業で有給とされ、しかも、お祝い金や弔慰金が支給されています。

違法でなければ問題ないということではなく、世間一般の動向を踏まえたうえで、自社のルールを決めることが必要でしょう。

 

解決社労士

2019/12/31|836文字

 

<出産手当金>

健康保険に入っている人(被保険者)が、出産のために会社を休み、その間に通常の給与が支給されないときに、申請によって支給される給付金です。

 

<受給の条件>

まず、被保険者の出産であることが必要です。

被保険者とは保険料を負担している人のことですから、扶養家族(被扶養者)は対象外となります。

また、妊娠85日以上での出産であることが必要です。

妊娠85日以上であれば、流産や死産、人工妊娠中絶も含みます。

法律上は、4か月以上となっていますが、妊娠については1か月28日で計算しますし、3か月を1日でも超えれば4か月以上と考えますので、28日×3か月+1日=85日という計算になり、実際の運用では妊娠85日以上が基準となっています。

さらに、給与の支給が無いか、あっても出産手当金の金額より少ないことが条件です。

 

<支給金額>

実際の支給金額は、次の計算式によって計算されます。

1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

 

<支給期間>

出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(双子や三つ子など多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

出産日は出産の日以前の期間に含まれます。

また、出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。

 

<資格喪失後の出産手当金>

会社を辞めたり、勤務時間が減少することによって、健康保険の資格を喪失した後の出産でも、出産手当金が支給されることがあります。

資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者の資格喪失の日の前日に、現に出産手当金の支給を受けているか、受けられる状態(出産日以前42日目が加入期間であること、かつ、退職日は出勤していないこと)であれば、資格喪失後も所定の期間の範囲内で引き続き支給を受けることができます。

解決社労士

2019/12/30|805文字

 

<労働基準監督官の任務>

労働基準監督官の基本的任務は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者などを監督することにあります。

労働基準監督官は、監督を実施し法令違反が認められた場合には、事業主などに対し文書で指導し是正させるのです。

また、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止などの行政処分の実行も行っています。

 

<労働基準監督官の権限>

こうした任務を全うするため、労働基準監督官には労働法により臨検(立入調査)権限を始め、帳簿・書類などの検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大・悪質な法令違反を犯した事業者などに対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<立入調査>

労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。

例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談をきっかけとして、また、問題が懸念される事業場などをあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。

なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則として予告することなく事業場に監督を行っています。

臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条、労働安全衛生法第120条、最低賃金法第41条など〕

 

解決社労士

2019/12/29|1,404文字

 

<就職氷河期世代>

就職氷河期世代は、2000年前後に大学を卒業した世代、あるいは、1990年代半ばから2000年代前半に社会に出た世代といわれます。

現在は、40歳前後が中心の、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、希望する就職ができず、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無職の状態にあるなど、様々な課題に直面している人たちがいます。

 

<就職氷河期世代支援プログラムの基本認識>

現在のプログラムは、令和元(2019)年6月21日の閣議決定に基づいています。

一億総活躍社会を目指す中で、取り残されがちなこの世代を支援するプログラムです。

希望する労働条件とのギャップ、実社会での経験不足等就職氷河期世代が抱える固有の課題や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、同世代の活躍の場をさらに広げられるよう、地域ごとに対象者を把握した上で、具体的な数値目標を立てて3年間で集中的に取り組むものです。

支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者、就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100万人程度が見込まれています。

3年間の取組により、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用者については、30万人増やすことを目指すものとされています。

 

<施策の方向性>

相談、教育訓練から就職まで、切れ目のない支援という施策の方向性が示されています。

 

【きめ細かな伴走支援型の就職相談体制の確立】

・支援対象者が相談窓口を利用する流れづくり

・ハローワークに専門窓口を設置、専門担当者のチーム制によるきめ細かな伴走型支援

・地方自治体の無料職業紹介事業を活用したマッチングの仕組みを横展開

 

【受けやすく、即効性のあるリカレント教育の確立】

・仕事や子育て等を続けながら受講でき、正規雇用化に有効な資格取得等に資するプログラム、短期間での資格取得と職場実習等を組み合わせた「出口一体型」のプログラム、人手不足業種等の企業等のニーズを踏まえた実践的な人材育成プログラム等の整備

・「出口一体型」のプログラムや民間ノウハウを活用した教育訓練

・職場実習を職業訓練受講給付金の給付対象とし、受講を支援

 

【採用企業側の受入機会の増加につながる環境整備】

・採用選考を兼ねた「社会人インターンシップ」の推進

・各種助成金の見直し等による企業のインセンティブ強化

・採用企業や活躍する個人、農業分野などにおける中間就労の場の提供等を行う中間支援の好事例の横展開

 

<民間ノウハウの活用>

就職相談、教育訓練・職場実習、採用・定着の全段階について、専門ノウハウを有する民間事業者に対し、成果連動型の業務委託を行い、ハローワーク等による取組と車の両輪で、必要な財源を確保し、取組を加速するものとしています。

 

<令和2年度概算要求>

就職氷河期世代支援プログラム関連予算について、令和2(2020)年度は、1,344億円の概算要求がされています。

しかし、このプログラム自体が、3年間の集中支援プログラムとされていて、長期にわたって継続することは予定されていません。

企業としては、このプログラムによる下支えがある期間中に、就職氷河期世代の採用と教育を強化することが得策です。

 

解決社労士

2019/12/28|1,564文字

 

<見直しの必要性>

就業規則の内容は、大きく分けると次の3つです。

・法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分

・自社の従業員にある程度共通する労働条件

・自社で独自に定めた職場のルール

このそれぞれについて、見直していく必要が発生します。

おそらく就業規則を1年間放っておくと実情に合わないものになるでしょう。

 

<法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分>

これには、法改正への対応を迫られるケースと、今までの対応では足りない新事情が発生するケースがあります。

法改正については、テレビニュースや新聞記事をキッカケに、ネットで情報を検索して、自社内で就業規則の関連部分を手直しすることも可能でしょう。

しかし、新事情への対応となると、その必要性に気づきにくく、イザというとき規定が足りないというケースが発生しやすいのです。

最近では、従業員の親の高齢化による介護休業制度の見直し、メンタルヘルス不調者の発生による休職制度や復職支援制度の見直しの必要性が、クローズアップされています。

今は、働き方改革関連の法改正が頻繁ですから、その動向からも目が離せません。

 

<自社の従業員にある程度共通する労働条件>

これは従業員の勤務の実態が変化して、対応を迫られるケースです。

事業が拡大して、遠方に支店や新営業所ができれば、転勤や単身赴任のしくみが必要となります。

場合によっては、全国エリア社員と勤務地限定社員を区分するしくみが必要となるでしょう。

また、従業員ひとり一人の負担も増えていますから、毎日のように居眠りする社員が疑問視され、賃金の欠勤控除を厳密に行う必要が発生することもあるでしょうし、新たな懲戒項目を設ける必要が感じられるようになることもあるでしょう。

 

<自社で独自に定めた職場のルール>

これには社内事情の変化への対応と、社会情勢の変化への対応があります。

社内事情の変化には、たとえば事務所の引っ越しがあります。

これによって、通勤手当の見直しや、出勤・退勤時のルールや休日出勤のルール見直しが必要になるでしょう。

社会情勢の変化には、たとえば社員が社内でふざけた写真をとりネットに掲示する事件などがあります。

この場合には、自社で発生を防止する一方、万一発生した場合の対応についても、ルールを決めておく必要があります。

 

<独特なむずかしさ>

就業規則の一部分だけを見直すことによって、関連する規定との間に矛盾が発生してしまい、これに気づかないという問題も多発します。

実際に発覚するのは、何か具体的な問題が発生して、就業規則を調べたときです。

こうしたときには、問題が解決できず本当に困ってしまいます。

これを防ぐには、就業規則というものの体系的な理解をしている専門家の関与が必要です。

「転ばぬ先の杖」ということで、3年に1回程度は、お近くの社労士(社会保険労務士)のチェックをお勧めします。

 

<柳田事務所にご依頼なら>

顧問契約をお勧めします。

就業規則見直しの必要性について、日常的に多角的にチェックしています。

そして、会社の実情に応じて、無理のない見直しをご提案します。そして社内に定着するまでのフォローをします。

経営者の方や社内のご担当者の方が主体となって就業規則の見直しを行い、柳田事務所が指導・サポートする形であれば、つまり改定案作成の丸投げでなければ、顧問料の範囲内で行うこともできます。

しかも、顧問契約(基本契約)の業務範囲は広く、就業規則関係だけでなく、人事制度、労災、雇用保険、健康保険、労働紛争、採用、懲戒、コンプライアンス、労働基準監督署・会計検査院の調査対応、教育など人事業務全般に及びます。

もし必要を感じましたら、まずはご一報ください。

このページ右上のお問合せフォームをご利用いただけます。

 

解決社労士

2019/12/27|1,280文字

 

<周知の大前提>

就業規則は、従業員に周知することで有効となります。

周知というのは「誰でも読もうと思えば読める状態に置くこと」です。

一部分だけ周知していればその部分だけ、一部の人だけに周知していればその一部の人だけに有効となります。

しかし、高校生が読んでもわからない就業規則では威力を発揮できません。

ですから、読んでわかる就業規則というのが大前提です。

 

<ひな形の活用>

就業規則を作るとなると、厚生労働省のモデル就業規則や、業界ごとに作られたものをネットで検索して利用することが多いでしょう。

厚生労働省のものは、法改正などに応じて内容が更新されています。

最終改定年月日も示されていますので安心して利用することができます。

他のひな形は、どこまで法改正に対応できているか確認するのが大変です。

また知り合いが、その昔専門家に作ってもらったという就業規則をコピーさせてもらっても、何度も行われてきた法改正や社会情勢の変化に対応できていないことが多いので注意しましょう。

 

<自社の個性への対応>

就業規則の内容は、大きく分けると次の3つです。

・法令の定める労働者の権利・義務のうち自社の従業員に関係する部分

・自社の従業員にある程度共通する労働条件

・自社で独自に定めた職場のルール

こうしてみると、自社の就業規則はひな形を丸写しにしてでき上るものではないことがわかります。

厚生労働省のモデル就業規則にも、その最初と各条文のところに、自社に合わせることの重要性と注意点がとても細かく書かれています。

ひな形の規定であっても、自社に無理なことをマネすると苦労します。

「お客様、お取引先、従業員など関係者には自分から進んで明るく元気にあいさつすること」が、社内では当たり前のルールになっていたとしても、これを就業規則に入れておかないと、従業員に対して「ルールを守りなさい」と注意したときに、「何を根拠に?」と反論されたり、反感を抱かれたりします。

こうしたことから、社内規定を十分に理解していない若手事務担当者に作成を任せるのは、不可能を押しつけることになってしまいます。

やはり、社内で就業規則を作成するのは、経営者やベテラン社員の仕事ということになります。

 

<柳田事務所にご依頼なら>

新しい会社であれば、経営者の方からご意向をうかがい、会社にマッチした就業規則案を作成し、これをベースに微調整という進め方になります。

設立後ある程度の年数を経過し、労働者数が10人以上になりそうなので就業規則を作成したいというケースもあります。

この場合には、従業員の方々にもお話をうかがい、完成形に近い就業規則案を作ってしまいます。

特長的なのは、就業規則の運用に必要な社内の申請書類やチェック表などの準備、さらには従業員の教育研修の実施なども、運用をスムーズにするために役立つことは、すべてご要望に応じてサポートしている点です。

もちろん、就業規則作成にあたって、一部分だけのお手伝いをすることもあります。

もし必要を感じましたら、まずはご一報ください。このページ右上のお問合せフォームをご利用いただけます。

 

解決社労士

2019/12/26|1,752文字

 

<令和元年度補正予算案>

令和元(2019)年12月13日、政府は令和元年度補正予算案を閣議決定しました。

これは、次の4つの経済対策のために編成されています。

 

1.災害からの復旧・復興(2兆3,086億円)

2.経済の下振れリスク対応(9,173億円)

3.東京2020後を見据えた景気活性化策(1兆771億円)

4.その他(392億円)

 

以下、経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援として、厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示しているものをご紹介します。

 

<厚生労働省関連(一部抜粋)>

 

【中小企業・小規模事業者の生産性向上の支援(14億円)】

最低賃金の引上げや被用者保険の適用拡大等を踏まえ、生産性向上に資する設備投資等に対する助成の拡充を行い、最低賃金引上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援するとともに、中小企業等において、被用者保険の適用に当たり、労働者への丁寧な説明等を行えるよう、事業者を対象とした説明会等による周知や専門家の活用支援等を行う。

 

【生活衛生関係営業者の生産性向上の支援(2.8億円)】

生活衛生関係営業者の生産性向上を支援するため、個別相談やセミナーを実施するとともに、経営改善に役立つ情報提供や経営診断ツール等により、経営力底上げを図る。

 

【介護事業所における生産性向上の推進(1.5億円)】

介護現場の生産性向上の推進に向けて、各自治体の先進的な取組を収集し、介護現場の生産性向上に関するモデル事例の全国への普及・展開を図る。

 

【就職氷河期世代への支援(18億円)】

就職氷河期世代を支援するため、ハローワークに専門窓口の設置を進め、就職から職場定着まで一貫した支援を実施するほか、トライアル雇用を行う事業主、正社員として雇い入れ定着させた事業主等への助成金の拡充等、技能修得期間における生活福祉資金の貸付を行う新しいメニューの創設等により、就職氷河期世代の正社員雇用や就労を支援する。また、市町村におけるひきこもり支援を強化するため、ひきこもり支援施策の前提となる調査研究に要する経費や広報経費について補助を行う。

 

<経済産業省関連(一部抜粋)>

 

【中小企業生産性革命推進事業(3,600億円)】

中小機構が複数年にわたり中小企業の生産性向上を継続的に支援する「生産性革命推進事業」(仮称)を創設。設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施。

よろず支援拠点等の支援体制を充実するほか、生産性及び省エネ性能の高い設備更新を支援。

 

【事業承継の円滑化(64億円)】

事業承継時に経営者保証の解除を促進するため、専門家による支援を実施。

事業承継ネットワークによるプッシュ型支援、事業承継補助金による後継者の経営革新等の支援等を実施。

 

【海外展開企業の事業円滑化(60億円)】

TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定等を踏まえ、地域の中堅・中小企業による海外需要の取り込み活動等を支援。

世界市場(グローバル)に地方の中堅・中小企業等(ローカル)が直接製品等を提供するグローカルな取組等を促進。

(情報提供・相談体制整備、新輸出大国コンソーシアムによる支援、越境ECの活用、コンテンツの海外展開支援等)

 

【イノベーションの担い手の輩出(75億円)】

大企業等からの人材開放も含め、スタートアップ立ち上げ活動等を支援。また、アジアの新興国企業と共創し、社会課題解決に資する新事業創出(アジアDX)を推進。

産総研のAIクラウドシステムを拡充。また、公設試・大学等による先端設備の導入、人材育成事業を支援。

 

<経済の下振れリスク対応>

厚生労働省と経済産業省が補正予算案に示している経済の下振れリスク対応は、その性質上、中小企業に限定されたものもあります。

生産性向上策や海外需要の取り込みの点で、中小企業だけが支援されることについては、大企業にとっての脅威だと捉えるべきでしょう。

今後は、大企業が生産性向上や海外需要の取り込みに、より積極的に取り組む必要があります。

また大企業は、就職氷河期世代の採用と教育にも社会的責任を負っています。

人材不足への対応と生産性向上のため、大企業には、就職氷河期世代の採用と職場定着のための教育に、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 

解決社労士

2019/12/25|1,679文字

 

<ストレスチェック制度が導入されて>

企業には健康診断の実施が義務付けられています。

しかし、従業員の皆さんは「健康診断さえ受けていれば安心」ではありません。

ひとり一人が健康に関心を持ち、それなりの対応をする必要があります。

同じことがストレスチェック制度にもいえます。

「労働安全衛生法」という法律が改正されて、労働者が50 人以上いる事業所では、平成27(2015)12 月から、毎年1回、この検査を実施することが義務付けられました。

これとは別に、ひとり一人が心の健康に関心を持ち、ストレスをためない暮らしかたを心がける必要があります。

 

<ストレスをためない暮らし方>

ストレスと上手につきあうには、まず毎日の生活習慣を整えることが大切です。

バランスの取れた食事や良質な睡眠、適度な運動の習慣を維持することが、健康の基礎固めになります。

「7時間眠らなければダメ」など、自分を追い込むような考え方はやめましょう。

睡眠は、その日の過ごし方などによって、深い日もあれば、浅い日もあります。

たとえ眠れない夜があっても、そのことにこだわらなければ大丈夫です。

翌日にはその分だけ眠りが深くなるものです。

1日単位ではなく、1週間、1か月単位で良質な睡眠を心がけましょう。

食事についても、食べ過ぎた後は量を少し控え目にするとか、普段食べないものを食べてみるなどは自然に行えるものです。

また、週に1回激しい運動をするよりも、毎日やや急ぎ足で散歩したほうが効果を期待できます。

 

<ストレスが少したまったら>

ストレスが少したまったときの対策として、日常生活の中にリラックスできる時間をもつことも大切でしょう。

ぼんやりと景色を眺める、ゆったりお風呂に入る、軽くストレッチする、好きな音楽を聴くなど、気軽にできることをやってみましょう。

お酒を飲んでつらさを紛らわせようとするのは、睡眠の質を低下させ、こころの病気を引き寄せます。

実際、ストレスがたまるとお酒の量が増えるということがあります。

お酒以外の方法でストレスを和らげるようにして、お酒の量を元に戻したいものです。

 

<柔軟に考える>

「7時間眠らなければダメ」など、自分をしばるような考え方をしていると、うまくいかなかったときに強いストレスを感じてしまいます。

困ったことに、私たちはストレスを感じているときほど、物事を固定的に考えて、さらにストレスを発生させてしまっていることがあります。

こうしたことから抜け出すためには、「できたこと」に注意を向けるのがお勧めです。「7時間睡眠」を心がけて、6時間だったら「まずまずの達成率!」と思うことです。

また、何かを失ったストレスから抜け出すには、「残されたもの」に注意を向けることです。

大切なものを失うストレスは大きいものです。

しかし、それと引き換えに、思い出や教訓、自由な時間など、残されたものは決して少なくないはずです。

 

<さらにストレスがたまったら>

誰かに相談してみましょう。

これは、特に男性にお勧めです。

女性は、誰かにグチを言ったり話を聴いてもらったりということが上手です。

これに対して、男性は他人に弱みを見せるのがイヤで、話さないことが多いようです。

しかし、誰かに話すことで問題点が整理され、自分の中で解決策が見つかることもあります。

相談に乗ってもらえたという安心感も、気持ちを落ち着かせるでしょう。

友人、家族、同僚、地域や趣味の仲間など、日頃から気軽に話せる人を増やしておきたいものです。

 

<専門家への相談>

何らかの症状が続くときは、早めに専門家に相談しましょう。

医師やカウンセラーなどの専門家や、地域の精神保健福祉センター、保健所、自治体の相談所など、相談できる専門家はたくさんいます。

もし会社の中に、症状が重くて仕事をするのも大変な人がいたら、医師だけでなく労務管理の専門家である社労士(社会保険労務士)にもご相談ください。

気になる症状をもった社員がいたら、異動、休職、復帰、あるいは退職についても、早めの検討が必要になるでしょう。

そんなとき、信頼できる社労士がお役に立ちます。

 

解決社労士

2019/12/24|1,176文字

 

<労災事故防止の目的>

ケガをした本人は反省しているのに、何かと周囲の人から責められたり、勤務のたびにイヤな記憶がよみがえったりして、残念ながら退職していくケースが散見されます。

これは、会社にとって戦力の喪失です。

たとえ辞めなくても、しばらくの間は100%の力を発揮できないでしょう。

また、大ケガであれば休業することもあります。

これは、会社にとって戦力の低下です。

さらに、労働基準監督署の監督(調査)が入って、労災防止の指導があると、今までやってこなかったことを義務付けられるなど、そちらに戦力を奪われることになります。

労災事故を防止する大きな目的は、戦力を確保して生産性を維持することにあると思います。

 

<実質面での対策>

ケガ人を出さないための対策です。

従業員の注意力を向上させるというのは、まず無理でしょう。

たとえ注意力が低下していても、事故が発生しないようにする工夫が必要です。

これには教育が最も有効です。

機械・器具の扱い方や、滑りやすい転びやすいポイント、危険な作業について、部門別の朝礼のときに再確認していくのが効果的です。

進行係が一方的に説明するだけでなく、参加者に質問して答えをもらってから正解を解説すると、記憶に定着しやすくなります。

 

<形式面での対策>

労災防止策を実施していることの証拠を残して、労働基準監督署の監督(調査)が入っても、説明できるようにしておくことです。

当然ですが監督に入った方は、目に見えるものしかチェックできません。

「毎朝朝礼で教育しています」と言っても、それが真実かどうかは見えません。

ですから、朝礼で指導した内容は、ノートなどへの記録が必要です。

他にも研修を実施すれば、その案内書やレジュメなどの他、参加者名簿を(できれば参加者の署名をしてもらって)保管するなど、目に見える記録の保管が必要です。

職場に注意喚起のためのポスターやハリガミも必要です。

たしかに、掲示物で本当に労災防止の効果があるかどうかは疑問です。

しかし、形式面での対策としては欠かせないものです。

 

<心がけとして>

他にも設備の更新など、お金をかければできる対策はたくさんあります。

しかし、生産性の維持という観点からは一歩後退にもなりえます。

実質面と形式面の両方での対策をするにあたって、手間のかかることをしてしまっては、生産性が低下してしまいます。

より簡単に、より日常的に、そして経費のかからない方法をとっていくことが大事です。

 

それでも具体的に何をどこまでやればいいのか迷ったら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

「岡目八目」ということばがあります。

当事者よりも、第三者のほうが情勢や利害得失などを正しく判断できることをいいます。

会社の状況に慣れてしまった従業員よりも、客観的に見ることのできる専門家の意見は貴重だと思います。

 

解決社労士

2019/12/23|1,563文字

 

<認証マーク>

2020年4月より、全国社会保険労務士会連合会が、労務コンプライアンスや働き方改革に取組む企業を支援するため、認証マークを発行する事業を始めます。

認証マークには、次の3つがあります。

 

【職場環境改善宣言企業】

社会保険労務士と共に、「職場環境改善宣言企業」確認シートの項目を確認し、職場環境改善に一層力を入れることを宣言すれば、全国社会保険労務士会連合会よりマークを付与され、認証企業となります。

認証企業となれば、連合会が運営する「経営労務診断のひろば」サイト(2020 年4 月正式スタート) へ、企業情報とともに宣言企業であることが掲載されます。

3つの認証マークの基本となるものです。

 

【経営労務診断実施企業】

「職場環境改善宣言」を行ったうえで、「経営労務診断基準」に基づき所定の項目について社会保険労務士の確認を受けた企業には、全国社会保険労務士会連合会よりマークが付与され、企業情報サイトにマーク情報が掲載されます。

 

【経営労務診断適合企業】

「職場環境改善宣言」を行ったうえで、所定の項目について社会保険労務士の確認を受け、「経営労務診断基準」に基づき必須項目のすべてが適正と認められた企業に、全国社会保険労務士会連合会よりマークが付与され、企業情報サイトにマーク情報と各項目の調査結果が掲載されます。

3つの認証マークの最上級のものです。

 

これは、労働社会保険諸法令の遵守や職場環境の改善に積極的に取り組み、企業経営の健全化を進める企業を社会保険労務士が診断・認証する事業です。

安心企業の情報や信頼性を高める情報がワンストップで掲載され、企業PRや求職者の企業選びに活用される制度となる予定です。

 

<職場環境改善宣言>

この宣言は、「職場環境改善宣言企業」確認シートの各項目について、企業と社会保険労務士が一緒に確認することによって行うものです。

内容は、基本的な労働関連諸法令の遵守状況と、働き方改革への取り組みの進捗状況の現状確認です。

企業が進めている職場環境改善がどの程度進んでいるのかを確認し、今後の取り組み課題を明らかにすることができます。

そして、確認結果にかかわらず、連合会から「職場環境改善宣言企業」のマークが付与され、連合会が運営する「経営労務診断のひろば」サイト(2020 年4 月正式スタート) へ、企業情報とともに宣言企業であることが掲載されます。

企業が自社のサイトや関連サイト、従業員の名刺や各種印刷物にこの宣言マークを表示することができ、企業の職場環境改善への取り組み姿勢を広く社内外へ広報・周知できます。

 

<経営労務診断>

「経営労務診断」は、企業の労働・社会保険諸法令の遵守状況を、連合会作成の「経営労務診断基準」に基づき社会保険労務士が診断し、改善への助言をするものです。

働きやすい職場環境の形成とともに、労働・社会保険諸法令遵守の状況、労務管理に関する数値の確認をすることで、企業の労務管理に関する課題を明確化することができます。

経営労務診断は、年1回行われるもので、企業の健康診断ともいうべきものです。

診断を実施した企業は、連合会が運営する「社労士診断認証制度」に関するサイト「経営労務診断のひろば」(2020 年4 月正式スタート) へ診断実施済であることが掲載されます。

「労務管理に関する調査事項」がすべて「適正」となった場合には、法人番号と診断実施回数が入った「経営労務診断適合企業」のマークが付与されます。

同時に、上記サイトの企業情報には、診断結果が「労務管理等に関する数値情報」と併せて公表されます。

この「労務管理等に関する数値情報」は、女性活躍推進法で公表を義務づけられた項目を含んでいますので、このサイトで公表することで、法律の公表義務を充足することができます。

 

解決社労士

22019/12/22|562文字

 

<週の労働時間が20時間未満となった場合の原則>

週20時間未満となったことにより、雇用保険の資格を喪失し離職票が発行されます。

これは、週20時間未満の仕事の場合、安定的な就業にはあたらず働きながら求職活動をすることが想定されるからです。

この場合には、失業手当(雇用保険の基本手当)を受けることができます。

ただし、受給中に働いて収入を得た場合には、ハローワークに申告して手当との調整を受けることになります。

 

<週の労働時間が20時間未満となった場合の例外>

1週間の所定労働時間が20時間以上に戻ることを前提として、臨時的一時的に1 週間の所定労働時間が20時間未満となった場合には、雇用保険の資格を喪失させません。

ただ、臨時的一時的の基準は不明確ですから、例外にあたる可能性がある場合には、所轄のハローワークでの確認が必要です。

 

 

<週の労働時間が20時間未満となった場合の例外の例外>

臨時的一時的であると思っていた労働時間の減少が安定し、臨時的一時的ではなくなったとき、または、その見込みが生じたときは、雇用保険の資格を喪失し離職票が発行されます。

 

労働時間が短縮した場合の、社会保険や雇用保険の資格喪失手続きもれは、多く聞かれます。

失敗が無いようにするには、顧問の社労士(社会保険労務士)に管理させることをお勧めします。

 

解決社労士

2019/12/21|555文字

 

<内定者の立場>

内定者については、働き始める時期までに、どういう事情が発生したら会社が内定を取り消せるのか、採用内定の時にあらかじめ決まっているのが一般です。

まだ正式に採用していないから自由に取り消せるというものではありません。

そしてまだ決定していない配属先で、業務上自動車の運転をする可能性があり、内定取消理由の一覧に運転免許取消が掲げられている場合には、多くの場合、運転免許取消を理由とする内定取消に合理性が認められます。

 

<内定取消の理由として明示されていない場合>

一般には、運転免許取消が内定取消の合理的な理由になるとは限りません。

運転免許を保有していなくても、その会社で勤務している人はいるでしょう。

ただし、運送会社で配送の仕事に就くことを予定して、あるいはタクシー乗務員として勤務する予定で、採用が内定しているという場合、内定の取消理由として明確に示されていなくても、内定取消に合理性が認められます。

この場合には、採用されてもすぐには勤務できないことになりますから、信義則上、内定取消が認められないと不都合だからです。

つまり、内定者は自動車を運転する仕事に就くにあたって、安全運転を心がけ、万が一にも運転免許の取消など受けることのないよう、最大限の注意を払う道義的な責任を負っているということです。

 

解決社労士

2019/12/20|369文字

 

【女性活躍推進法】

・女性活躍に関する情報(女性採用率等)公表の強化

・勧告違反の企業名公表

・プラチナえるぼし認定制度の創設

・労働局による報告徴収等の対象拡大

 

【労働施策総合推進法】

・国、事業主および労働者の責務

・事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止

・雇用管理上の措置義務の新設(中小企業は2022年3月31日までは努力義務)

・紛争解決・調停・措置義務等の履行確保(中小企業は2022年3月31日までは努力義務)

 

【男女雇用機会均等法】

・国、事業主および労働者の責務

・事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止

・調停の意見聴取の対象拡大

・他社のセクハラ対策措置義務実施への協力(努力義務)

・男女雇用機会均等推進者の選任(努力義務)

 

【育児介護休業法】

・国、事業主および労働者の責務

・事業主への相談等を理由とした不利益取扱いの禁止

 

解決社労士

2019/12/19|965文字

 

<過労死認定のむずかしさ>

過労死の可能性が疑われる場合でも、次のような疑問が湧いてきます。

・本当に過労が原因で亡くなったのだろうか

・仕事ではなくプライベートに疲労の原因があったのではないか

・平均的な人ならば耐えられる労働なのに弱かったのではないか

ですから、過労死が疑われる労働時間の基準が全くないのでは、企業は対策に悩んでしまいます。

また、亡くなった人の遺族も過労死を主張できるか迷ってしまいます。

 

<残業時間の基準>

「1か月の残業時間が100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均残業時間が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられてきました。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

 

<労働時間の基準>

ここで「残業時間」というのは、法定労働時間である1日8時間、1週40時間を基準としています。

ですから、1か月30日で計算すると、

30日 ÷ 7日 = 4.28週

40時間 × 4.28週 = 171時間

これを超える時間が「残業時間」となります。

ということは、1か月271時間の労働時間(171時間+100時間)が過労死ラインとなります。

また、直近2~6か月で平均251時間の労働時間(171時間+80時間)も過労死ラインとなります。

 

<現在の時間外労働の上限規制>

上記の過労死ラインが基準として定着していたところ、母子家庭の母親が休日の出勤を繰り返すことにより過労死するという、痛ましい事件が発生したことをきっかけに、「1か月の残業時間が100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均残業時間が80時間を超えた場合」という基準の「残業時間」に「休日出勤」が加えられて、現在の時間外労働の上限規制の基準となっています。

一見して分かりにくい時間外労働の上限規制基準は、医学的な見地からの基準に、裁判での基準が加味されたことによって、定められたものなのです。

 

解決社労士

2019/12/18|1,374文字

 

<就業規則違反>

厚生労働省が公表するモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

※分量が多いので一部の抜粋です。

 

【解雇】

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

 

⑥第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。

 

【懲戒の事由】

第66条  2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

 

②正当な理由なく無断欠勤が  日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

⑦素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。

⑧数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。

⑭その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

このように、就業規則違反の程度が重ければ、懲戒解雇もありうることが規定されています。

 

<懲戒処分の制限>

ただし、懲戒処分は次の制限を受けます。

 

労働契約法第15条【懲戒】

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

就業規則の懲戒規定には、明示されていないことも多いのですが、故意や重大な過失の存在が前提となっています。

故意や重大な過失が無い場合には、その行為を懲戒処分とすることについての「客観的に合理的な理由」は認めがたいですし、「社会通念上相当」であるともいえません。

病気によって、就業規則に定められたルールを守れない場合、一般には故意も過失も認められないでしょう。

懲戒解雇の対象とすることには無理があると考えられます。

 

<普通解雇>

このように、懲戒解雇とすることが認められないとしても、普通解雇を検討する余地があります。

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

「病気で就業規則を守れない」というのは、多くの場合「労働契約を守れない」ということになり、労働契約違反となりますから、普通解雇の対象にはなりえます。

 

<解雇の制限>

そして、解雇もまた次の制限を受けます。

 

労働契約法第16条【解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

すべての解雇は、この制限を受けることになります。

「病気で就業規則を守れない」という場合には、「病気が治れば守れるようになる」可能性が含まれています。

就業規則に休職の規定を置いている会社であれば、その規定に従い一定の期間、回復を待つことになります。

また、就業規則に休職の規定を持たない会社であっても、一定の期間、回復を待たずに解雇するのは、解雇権の濫用として無効となる可能性が高いといえるでしょう。

 

解決社労士

2019/12/17|943文字

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

たとえば勤務時間中に、スマホを片手にモンスター探しの旅に出ていたら、その時間の賃金はもらえなくて当然です。

働いていなければ賃金は発生しないというノーワーク・ノーペイの原則は、労働契約の性質から当然に導かれます。

つまり、使用者の「働いてください。賃金を支払います」と労働者の「働きます。賃金をください」という意思表示が合致して労働契約が成立したのですから、働かなければ賃金が発生しないのは当然なのです。〔労働契約法第6条〕

ただし、欠勤控除をするかしないか、どのように計算するかは、就業規則に定めておくべき事項です。

定めておかないと、実際に勤務時間帯に働かなかった場合に、賃金から差し引かれる金額をめぐってトラブルが発生します。

仕事をサボって、後から遡って欠勤控除を受けたというのであれば、労働契約の債務不履行による損害賠償請求〔民法第415条〕というより、不当利得の返還〔民法第704条〕ということになるでしょう。

 

<拡大損害の場合>

しかし仕事をサボったために、重要なお取引先への納期が守れず、取引を解消されてしまったので、会社の売り上げが安定して2割減少したとか、機械の点検会社の社員が点検を何回かサボったために、機械の故障による死亡事故が発生したという場合には、賃金を削られるだけでは済むはずがありません。

これらは、労働契約上の義務を果たすにあたって発生した拡大損害です。

たとえば、運送屋さんがソファーを個人の家に届ける際、玄関に飾ってあった時価1億円の花瓶を落として割ってしまったという場合、「すみません。配送料をタダにします」と言われても、「はいそうですか」とは言えません。

(これは、大学の法学部の講義でよく出てくる例です。個人的には、「花瓶をしまっておきましょうよ」と思う次第です。)

これも、契約関係から拡大して発生する損害なので、債務不履行による損害賠償のケースだとされます。

もし、こうした拡大損害を発生させてしまったのなら、サボりと損害との因果関係(原因と結果の関係)が認められる範囲内で、損害賠償を請求されることは十分にありえます。

 

いずれの場合でもなく、納得がいかない場合には、信頼できる特定社労士(特定社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2019/12/16|977文字

 

<就業規則に発生する矛盾>

会社が初めて就業規則を作成し、労働基準監督署長に届出る場合には、大変慎重になりますから、厚生労働省のひな形を参考にしたり、社労士(社会保険労務士)に依頼したりで、矛盾のないものを作成しようとします。

ところが、法改正や社会情勢により、あるいは社内の運用が変わって、就業規則を変更する場合には、1か所ばかりに気を取られて、関連する部分のすべてを改定できずに終わってしまうということがありがちです。

こうして、就業規則の中に矛盾が生じてしまいます。

 

<事務的に直してよい矛盾>

部署名や役職名など、変更されたにもかかわらず、一部の表記が古いままという場合には、これを事務的に修正しても問題ありません。

また、矛盾する2つの規定のうち、どちらか片方に統一しても、あらゆるケースを想定した場合に、適用される労働者の誰にも不利益をもたらさない場合には、きちんと就業規則変更の手続きを踏む限り、特に問題はありません。

 

<解消に手間のかかる矛盾>

ある条文によれば会社側に有利、別の条文によれば労働者側に有利という形での矛盾がある場合、これを解消するには慎重になるべきです。

多くの場合、社労士(社会保険労務士)など慣れた専門家が見れば、解釈の問題で解決できる場合が多いものです。

この場合には、解釈が分かれないように条文の表現を工夫すればよいだけのことです。

もちろん、就業規則変更の手続きは必要です。

困るのは、正しく解釈しても矛盾を含んでいる場合です。

この場合には、基本的には労働者側に有利なほうに統一することになります。

ただし、時代に合わないとか、運用が困難であるなどの理由があって、会社側に有利なほうに統一するのが合理的といえる場合には、例外的にそうします。

このときにも、就業規則変更の手続きが必要です。

このことは労働契約法第10条本文に次のように規定されています。

「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」

 

解決社労士

2019/12/15|1,096文字

 

<副業がある場合の労働時間>

複数の事業場で労働した場合の労働時間については、労働基準法第38条第1項に次の規定があります。

 

【時間計算】

第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

つまり、複数の事業場で労働した場合の労働時間は、通算するということです。

そして、同じ会社の異なる事業場だけでなく、異なる会社で労働する場合にも、異なる事業場で働くことになるので、この規定が適用されるという通達があります。〔昭和23年5月14日基発769号〕

こうして、副業している労働者については、自社と他社とで労働時間を通算(合算)し、総労働時間を管理しなければなりません。

 

<副業がある場合の時間外割増賃金>

副業している労働者について、自社と他社とで労働時間を通算(合算)し、総労働時間で見たときに法定労働時間を上回れば、時間外割増賃金が発生することになります。

ただ、この場合に、自社と他社のどちらが時間外割増賃金を支払うことになるのか、労働基準法には規定がありません。

この点については、後から雇い入れた会社が時間外割増賃金を支払うものと解釈されています。

なぜなら、雇い入れにあたって、その労働者が別の会社で勤務していないか、確認したうえで採用すべきだと考えられているからです。

例外的に、2つの会社での所定労働時間の合計が、法定労働時間を超えない場合には、雇い入れの前後にかかわらず、一方の会社で法定時間外労働をさせることになれば、その会社が割増賃金を負担するものとされています。

しかし採用面接で、副業について確認することが義務付けられているわけではありません。

確認したところ、応募者が副業しているのに「していません」と嘘をついて採用された場合でも、この嘘だけを理由に解雇することは、解雇権の濫用となり無効となることが多いと思われます。

 

<副業先の労働時間の把握>

副業先は、副業している労働者の労働時間を他社に申告する義務を負っていません。

ですから、副業先から労働時間の情報をもらうことは、個人情報でもあり困難です。

結局、副業している労働者から、副業先の労働時間の情報を得るしかありません。

しかし、従業員から「他社に申告する必要があるので、私の労働時間に関する情報をください」という申し出があっても、会社はこれに応じる義務がありません。

やはり、副業先の労働時間については、労働者から自己申告してもらう他ありません。

そして、虚偽の申告があった場合でも、虚偽であることを確認するのは極めて困難ですから、会社が確認不足を責められることもないと考えられます。

 

解決社労士

2019/12/14|537文字

 

人材不足の折、まだまだこれからの活躍が期待される女性の活用は、企業にとって死活問題です。

しかし、いざ着手しようとすると、他社の状況が気になるものです。

厚生労働省では、女性の活躍推進状況に関する情報を一元化した「女性の活躍推進企業データベース」というサイトを開設しています。

 

1.採用した労働者に占める女性労働者の割合

2.採用における男女別の競争倍率、または採用における競争倍率の男女比(男性の倍率を1としたときの女性の倍率)

3.労働者に占める女性労働者の割合

4.男女の平均継続勤務年数の差異または男女別の採用10年前後の継続雇用割合

5.男女別の育児休業取得率

6.1月当たりの労働者の平均残業時間

7.雇用管理区分ごとの1月当たりの労働者の平均残業時間

8.年次有給休暇の取得率

9.係長級にある者に占める女性労働者の割合

10.管理職に占める女性労働者の割合

11.役員に占める女性の割合

12.男女別の職種または雇用形態の転換実績

13.男女別の再雇用または中途採用の実績

14.データの対象

15.データ更新時点

16.備考欄

17.自由記述欄

18.公共調達資格情報

 

↓女性の活躍推進企業データベース

https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

 

 解決社労士

2019/12/13|1,272文字

 

<老齢年金受給者の願い>

働きながら老齢年金をもらう場合に、年金の一部がカットされるという話をよく耳にします。

しかし、必ずカットされるわけではなく、全額もらっている人もいます。

せっかくの年金ですから、基準を理解して1円たりとも削られずにもらいたいというのが、年金受給者の本音でしょう。

 

<社会保険に入らずに働く場合>

社会保険に入らなければ、基本的には給与などと年金との調整はありません。

つまり、社会保険に入る基準内で働いていれば、基本的に給与などと年金との調整がないのです。

そして、社会保険に入る原則の基準としては、今後1年間を見通して、正社員など正規職員の4分の375分)以上の勤務日数かつ勤務時間となることですから、これを下回れば社会保険には入りません。

平成28(2016)101日からは、次のすべての条件を満たしている場合にも、社会保険に入ることとなりました。

 

1.週の所定労働時間が20時間以上であること

2.賃金月額が月8.8万円以上(年約106万円以上)であること

3.1年以上使用されることが見込まれること

4.厚生年金の加入者(被保険者)数が501名以上の勤務先で働いていること

5.昼間学生ではないこと

 

さらに、平成29(2017)年4月1日からは、厚生年金の加入者(被保険者)数が500名以下の企業でも、「労使合意(従業員の2分の1以上と事業主との合意)に基づき申し出た事業所」「地方公共団体に属する事業所」であれば、501名以上の事業所と同じ基準が適用されることになりました。

 

具体的な加入基準は、その勤務先の正規職員の所定労働時間などによって左右されますので、求人広告に対して応募する際に、社会保険に入ることになるのか、入る基準を満たすのかは確認しておきましょう。

 

<社会保険に入って働く60歳以上65歳未満の場合>(2019年度)

1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

この「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が28万円以下であれば、年金は全額支給されます。

 

<この基準を満たしても高年齢雇用継続給付による調整に注意!>

高年齢雇用継続給付というのは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳から65歳になるまでの加入者(被保険者)に対して、給与が60歳になった時の75%4分の3)未満になった人を対象に、最高で給与の15%にあたる額が支払われるものです。

支給停止される年金額は、社会保険料の基準となる標準報酬月額の0.18%から6%にあたる額です。

 

<社会保険に入って働く65歳以上の場合>(2019年度)

1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が46万円以下であれば、年金は全額支給されます。

 

解決社労士

2019/12/12|1,021文字

 

<労働時間の把握義務>

使用者は、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に則って、従業員の労働時間を適正に把握する義務を負っています。

そして、大半の企業では、タイムカードやICカードを用いた客観的な記録を基本に、自己申告による修正を加える形で、労働時間を把握しています。

このように、使用者が労働時間を把握する義務を負っていることと、労働者がこれに協力する義務を負っていることについて、企業は繰り返し教育を行う必要があります。

また、会社が把握している労働時間が、実態とかけ離れたものとなっていないか、定期的なチェックも怠ることができません。

 

<過少申告の問題>

従業員が労働時間を過少に申告する場合があります。

上司が、実情を踏まえることなく、残業時間を制限している場合には、サービス残業を余儀なくされることがあります。

ミスが多く、やり直しが多いことに引け目を感じて、自主的にサービス残業を行う従業員もいます。

喫煙やトイレの時間が長いと自覚している従業員、若い頃に比べて生産性が低下していると自覚している従業員などにも、過少申告が見られることがあります。

これらの場合、従業員が不正を行ったことによって、会社に損失がもたらされるわけではありません。

ですから、ほとんどの場合、不正を行った従業員への指導と教育が正しい対応であって、懲戒処分を行うことは見当違いとなります。

ただし、上司が部下に圧力をかけて、過少申告を促していたようなケースでは、この上司を懲戒処分の対象とする必要が出てきます。

 

<過大申告の問題>

従業員が労働時間を過大に申告する場合があります。

手口としては、複数の従業員で残業していたところ、最後の一人となり、これをいいことに私用を始め、適当なところでタイムカードを打刻して帰るというのが多いでしょう。

外出先から帰社するにあたって、交通渋滞などを理由に中抜けし、私用を果たしてから帰社するというのもあります。

たった一人で休日出勤した場合などは、やりたい放題になってしまうこともあります。

これらは、会社に損失をもたらすものであり、一種の詐欺でもありますから、指導や教育では足らず、懲戒処分が相当と考えられます。

いずれのパターンでも、過失ということはなく、故意に会社に損失をもたらす一方で、自分自身の不当な利益獲得を目指しているわけですから、情状酌量の余地はありません。

 

解決社労士

2019/12/11|1,414文字

 

<高額療養費制度>

健康保険で自己負担額が高額となった場合に、一定の自己負担限度額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

また、病院などの窓口での支払を、一定の限度額までにできるしくみもあります。

ただし、健康保険外の診療、食事代、差額ベッド代などは対象外です。

先進医療など健康保険が適用されない医療については、生命保険会社でこれらに対応できる保険に入ることをご検討ください。

 

<高額療養費制度の具体的な内容>

重い病気で病院に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。

そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。

保険加入者本人(被保険者)、扶養家族(被扶養者)ともに同一月内の医療費の自己負担限度額は、年齢および所得に応じて一定の計算式により算出されます。

また、高額療養費の自己負担限度額に達しない場合であっても、同一月内に同一世帯で21,000 円以上の自己負担が複数あるときは、これらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます(世帯合算)。

さらに、同一人が同一月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も同様です(7074歳の方がいる世帯では算定方法が異なります)。

なお、同一世帯で1年間(診療月を含めた直近12か月)に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目からは自己負担限度額が変わります(多数該当)。

 

<高額療養費の現物給付>

70歳未満であっても、従来の「入院される方」「外来で在宅時医学総合管理料、特定施設入居時等医学総合管理料及び在宅末期医療総合診療料を算定される方」に加え、「外来で療養を受ける方」の高額療養費を現物給付化し、一医療機関ごとの窓口での支払を自己負担限度額までにとどめることができるようになりました。

この制度を利用するには、事前に保険者(全国健康保険協会の各都道府県支部など)に「健康保険限度額適用認定申請書」に健康保険証のコピーを添付して提出し、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に認定証と健康保険証を提出してください。

病気が徐々に悪化して、計画的に入院する場合には利用しやすい制度ですが、突然の入院の場合には利用がむずかしい場合もあります。

※保険者は健康保険証に記載されています。

 

<長期高額疾病についての負担軽減>

人工透析を実施している慢性腎不全の患者については、自己負担の限度額は 10,000 円となっています。

これを超える額は現物給付されるので、医療機関の窓口での負担は最大でも10,000 円で済みます。

ただし、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の保険加入者本人(被保険者)またはその扶養家族(被扶養者)については、自己負担限度額は20,000 円となります。

この他、血友病、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群の人についても、自己負担の限度額は10,000 円となっています。

なお、人工透析患者などについては、医師の意見書等を添えて保険者に申請し、「健康保険特定疾病療養受療証」の交付を受け、医療機関の窓口にその受療証と健康保険証を提出してください。

 

解決社労士

2019/12/10|1,544文字

 

<パワハラ加害者の責任>

たとえば、パワハラによって相手にケガをさせれば傷害罪〔刑法第204条〕が成立します。

これは、最高刑が懲役15年という重い犯罪です。

また、これとは別に、被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されるでしょう。〔民法第709条、第710条〕

刑事責任と民事責任は別問題ですから、たとえ国家から罰金刑を科されたとしても、これとは無関係に損害賠償責任を負うわけです。

 

<懲戒処分の位置付け>

刑罰は国家との関係、損害賠償は被害者との関係で問題となります。

そして、懲戒処分は会社との労働契約にかかわる問題です。

ですから、有罪とされ損害賠償をすることとなっても、必ずしも懲戒処分が有効になるわけではありません。

あくまでも別問題として考える必要があります。

 

<懲戒処分の正当性>

パワハラで懲戒処分を受けたなら、パワハラについてきちんとした知識を身に着けつつ、気を取り直して業務に打ち込み、社内の信頼を回復するのが筋です。

しかし、どうにも納得がいかないという場合には、次の懲戒処分の有効要件を確認してみましょう。

・パワハラに対する懲戒が就業規則などに規定され周知されていること。

 →パワハラの定義と懲戒の規定があって社内に周知されていることです。

・今回の行為が具体的に懲戒規定にあてはまるといえること。

 →10人の社員に聞いてみて、意見が分かれるようではダメです。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

 →ちょっと厳しく叱ったら相手が泣いたので懲戒解雇ではやり過ぎです。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

 →問題視されたので会社があわてて規定を変えたというのはダメです。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

 →何度も始末書を書かせたけれど、効果がないので今回は過去の分も全部合わせて減給処分というやり方はできません。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

 →ここは大きなポイントです。本人の言い分を聞かずに懲戒処分はできません。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

 →元々手を焼いていたので、チャンスとばかりに懲戒処分はできません。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 →誰がやったかによって、処分が違うのは不当です。

これらの条件のほとんどは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論の具体的な内容を示したものです。

条件を満たしていなければ、懲戒処分は無効となります。〔労働契約法第15条〕

それどころか、会社は労働者から損害賠償の請求を受けることにもなります。

ただ、懲戒処分を受けた本人は感情的になっていますから、会社が懲戒権を濫用したのかどうか、弁護士や特定社労士に客観的な判断を求めることが必要でしょう。

 

<人事権との関係>

刑罰を科せられたとか、損害賠償を請求されたからといって、それを理由に降格処分というのは不合理です。

しかし、ひどいパワハラを行った人は、人の上に立つ資格がないと判断されても仕方ありません。

懲戒処分を受けるにあたって、本人には事情を説明するチャンスが与えられますから、このときに懲戒処分の有効性について、淡々と主張することはできます。

しかし、自分の行為に対する反省を示さず、正当性ばかりを主張すると、資質を疑われるのではないでしょうか。

刑事事件として不起訴とされ、民事事件で勝訴し損害賠償を免れ、会社側の手続きの落ち度で懲戒処分が無効になったとしても、これらを通じて人物を疑われれば、会社の中での将来は暗いものとなってしまいます。

是非とも、十分な反省を示したうえで、主張すべきは主張していただきたいものです。

 

解決社労士

2019/12/09|948文字

 

医療費の還付について、電話の案内によって、コンビニのATMの操作が必要になることはありえません。

 

全国健康保険協会や旧社会保険事務所等の職員を装った不審な訪問や電話によって詐欺を受け、数百万円単位のお金を振り込んでしまったケースも報告されています。

 

<不審な電話>

全国健康保険協会やその他の公的機関の職員と名乗る人物から、医療費をATMにて還付する等の話を持ちかけ、ATMへ行くよう指示する例があります。

 

市役所の保険課を名乗る者から電話があり、「5年前の過払い金37, ×××円を今から口座に振り込むので、ATMに行ってください。期限が切れているので、急いでください。ATMに着いたら、フリーダイヤル0120-×××-×××に電話をかけて、手続きの指示を受けてください。」と、言われるままに電話し、指示を受けるままに操作したら、数百万円が口座残高から減っていた。

 

社会保険事務局を名乗る者から電話があり、「高額療養費の還付があるので、今日中に手続きをしないといけない。至急、銀行にいくように。」と言われ、ATMから指示された携帯電話に電話し、指示されるままに操作したら、数百万円を振り込んでしまった。

 

「年金事務所(旧社会保険事務所)より5年分の医療費(32, ×××円)の返還があるので、ATMに行き、指定された0120よりはじまる電話番号にかけて指示に従うように」

「医療費の還付分が4万円あるが、通知を送っているが未だに申請がなく、時効が成立してしまうため、電話にて手続きをしたい」

「ご主人の高額療養費の返金(48, ×××円)がある」

 

 <不審な訪問>

「全国健康保険協会職員」と名乗る人物が訪問し、「委任状を取りにきた」と言い、委任状らしき用紙へ署名・捺印を求められた例もあります。

 

<考えてみれば>

医療費などの還付があるにせよ、これは相当多数の人に発生しているはずですから、公的機関から一人ひとりに具体的な手続の方法を指導する余裕はありません。

懇切丁寧であればこそ、疑わなければならないのですが、高齢者は感謝してしまいます。

ご家族の方から、繰り返し「こういう電話があったときは、大変だから私に連絡してね。代わりに手続するから、自分で頑張らないでね」という話をしておくようお勧めします。

 

解決社労士

2019/12/8|443文字

 

<失業手当と年金との調整>

65歳になるまでの老齢厚生年金は、ハローワークで求職の申し込みをしたときは、実際に失業手当(雇用保険の基本手当)を受けなくても、一定の期間は加給年金額を含め年金の全額が支給停止されます。

 

<調整の基本的なしくみ>

年金が支給停止される期間(調整対象期間)は、求職の申し込みをした月の翌月から失業手当の受給期間が経過した月まで、または、最後の支給認定日の月までです。

ただし、調整対象期間中に失業手当を受けなかった場合の、その月分の年金の支給や、失業手当の受給期間が経過したときの年金の支給開始は約3か月後となります。

 

<事後精算>

調整対象期間中に、失業手当を受けた日がある場合には、年金の全額が支給停止されます。

このため、失業手当を受けた日数の合計が同じでも、月をまたいで失業手当を受けたかどうかにより、支給停止される月数が違ってきます。

この場合、失業手当の受給期間が経過した日、または、所定給付日数を受け終わった日に調整が行われ、さかのぼって年金が支給されます。

 

解決社労士

2019/12/07|670文字

 

<労災保険適用の判断>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費は労災保険の適用により無料となります。

そして、労災にあたるかどうかは、所轄の労働基準監督署や労働局が判断します。

被災者が判断するのではなく、会社が判断するのでもありません。

労災が発生したときに「労災保険を使うべきか?」と会社が考えるのは、適法に処理しようか、それとも違法に処理しようかという選択をしていることになり、違法な労災隠しにつながります。

 

<労災病院や労災指定医療機関に支払う保証金>

労災で病院にかかった場合には、「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

なにしろ、患者が労災だと言っていても、必ずしも労災だとは限りません。

また、労災であっても会社がすぐに労災の手続き書類を提出してくれるとは限りません。

これに備えての自己防衛なのです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。

こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルの元です。

 

解決社労士

2019/12/06|829文字

 

<フレックスタイム制の場合>

職場にフレックスタイム制を導入していれば、労働者側が主体的な判断により、始業時刻や終業時刻を柔軟に設定することができます。

しかし、フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

 

<始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ>

フレックスタイム制を導入していない職場でも、実働時間を変更せずに、始業時刻と終業時刻を同じ時間だけ繰上げ・繰下げすることができます。

この点については、労働基準法に特別な規制は無く、1日8時間、1週40時間の範囲内であれば、労働時間の規制にかかりませんし、基本的には割増賃金の支払も不要です。

もっとも、午後10時から翌日午前5時までの勤務が増えるような場合には、その分だけ深夜割増手当が増えるなどの注意は必要です。

 

<就業規則の定め>

始業・終業時刻は、就業規則の絶対的必要記載事項ですから、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げも就業規則に定めておく必要があります。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【労働時間及び休憩時間】

第19条  労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。

 

 2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、前日までに労働者に通知する。

 

会社によっては、より厳密に、すべての始業時刻・終業時刻の組合せを網羅した一覧表を掲げているところもあります。

上記のモデル就業規則では、会社から通常の始業・終業時刻の変更を命ずる場合のことを規定しています。

これとは別に、従業員の方から会社に対して変更の申し出を許す場合には、その手続や会社による許可の要否などについても、規定しておくことが必要となります。

 

解決社労士

2019/12/05|855文字

 

令和元(2019)年12月3日、厚生労働省は11月の「過重労働解消キャンペーン」の一環として10月27日(日)に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめ公表しました。

今回の無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」には、合計で269件の相談が寄せられました。相談内容としては、下記概要のとおり、「長時間労働・過重労働」に関するものが90件(33.4%)と一番多く、次いで「賃金不払残業」が69件(25.6%)、「休日・休暇」が31件(11.5%)、「パワーハラスメント」が29件(10.7%)となりました。

これらの相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められる事案については、相談者の希望を確認した上で労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行っています。

 

【相談結果の概要】

相談件数  合計269

■主な相談内容

(件数は相談内容ごとに計上。括弧内は相談件数269件に対する割合。

 なお、1件の相談に対して複数の相談内容が含まれることもあるため、

 総合計が100%になりません。)

   長時間労働・過重労働    90件(33.4%)

   賃金不払残業               69件(25.6%)

   休日・休暇                31件(11.5%)

■相談者の属性 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

   労働者         180件(66.9%)

   労働者の家族        53件(19.7%)

   その他         20件(7.4%)

■主な事業場の業種 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

      商業                  32件(11.8%)

    保健衛生業            32件(11.8%)

    製造業                28件(10.4%)

 解決社労士

2019/12/04|1,236文字

 

<最低賃金の意味>

「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす」というのが法令の規定です。〔最低賃金法第4条第2項〕

最低賃金を下回る賃金しか支払わない場合、最低賃金との差額は、サービス残業と同様に未払い賃金となります。

ここで「最低賃金の適用を受ける労働者」の例外は、一定の条件を満たす人について、労働局長の許可を受けた場合のみです。〔最低賃金法第7条〕

最低賃金は時間額で示されていますが、日給や月給にも適用があります。

日給は、最低賃金時間額 × 1日の所定労働時間 を下回ってはいけません。

月給は、最低賃金時間額 × 1か月の所定労働時間 を下回ってはいけません。

そして、1日や1か月の所定労働時間は、書面で労働者に示さなければ違法です。〔労働基準法第15条第1項〕

この場合の書面とは、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で作成され、労働者に交付されているものです。

 

<最低賃金の発効>

最低賃金は都道府県ごとに決められますが、発効年月日も都道府県ごとにバラバラで、令和元(2019)年は10月1日から6日までの間に発効しています。

この発効年月日に勤務した分の賃金から、最低賃金を下回る賃金は強制的に最低賃金に引き上げられます。

たとえば青森県では、令和元(2019)年10月4日をもって最低賃金時間額が762円から790円に引き上げられました。

時間給762円で働いていた人も、たとえ雇用契約書の更新などが無くても、10月4日の勤務分からは強制的に790円に引き上げられたのです。

そして、賃金計算の締日が月末であれば、期間の途中での変更となり、計算が複雑となって手間がかかり、シフト変更などがあった場合には間違えやすくなります。

 

<結論としてお勧めなのは>

こうした不都合を避けるためには、改定された最低賃金時間額の発効日の直前の賃金計算締日までは従来の賃金、締日の翌日からは最低賃金時間額以上の賃金に改めて運用するということになります。

そしてこの期間の労働に対する賃金支払い日の給与から、変更が反映されることになります。

たとえば、令和元年10月の青森県の例でいえば、あらかじめ10月1日からの勤務は時間給790円などと決めておいて、1か月同じ時間給で計算できるようにします。

そして、10月勤務分の賃金支払い日から、支給額の元となる時間単価が変更となります。

こうした措置をとらずに、最低賃金時間額の発効日から新たな最低賃金に合わせて賃金が変わるとなると、働き手の皆さんは「自分は最低の賃金で働かされているのだ」という思いが強くなってしまいます。

さらに、モチベーションの低下や求人の困難を防ぐためには、最低賃金を1円でも上回るようにすべきですし、5円単位で切り上げる程度のことは考えたいものです。

 

解決社労士

2019/12/03|1,482文字

 

<同一労働同一賃金の法制化>

パートタイム・有期雇用労働法により、令和2(2020)年4月1日から、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、賞与、手当、休暇などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて、説明を求められた場合には、説明しなければなりません。

ただし中小企業には、令和3(2021)年4月1日から法律が適用されます。

 

<取組手順>

厚生労働省では、次の手順で取り組むことを推奨しています。

 

手順1 労働者の雇用形態を確認する。
手順2 待遇の状況を確認する。
手順3 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認する。
手順4 手順2と手順3で待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておく。
手順5 「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指す。
手順6 改善計画を立てて取り組む。

 

特に、手順4までは、早めの取り組みが求められます。

 

<手順1>

社内の労働者のうち、対応が求められる労働者の範囲を確認します。

正社員、契約社員、アルバイトなどの名称や定義は、会社独自のものであって、法令による区分ではありません。

フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者と、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者が対象です。

 

<手順2>

短時間労働者・有期雇用労働者のそれぞれの区分ごとに、賞与、手当、福利厚生などの待遇について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを確認します。

これは、項目ごとに一覧表の形でまとめると良いでしょう。

 

<手順3>

待遇の違いが、働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか確認します。

待遇の違いを設けている理由を文書化してみます。このとき、労働者に説明することを意識して、理解・納得できるものとします。

待遇の違いと働き方や役割などの違いとで、バランスが取れていることの説明ができている必要があります。

「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」など、主観的・抽象的な理由ではなく、客観的・具体的な理由であることが求められています。

 

<手順4>

短時間労働者・有期雇用労働者の契約形態別に、正社員との待遇に違いがある部分について、その違いが「不合理ではない」と説明できるように整理します。

これを元に、労働者から説明を求められた場合に使用する、「待遇の違いの内容と理由」の説明書を準備します。

 

<手順5>

以上の手順の中で、待遇の違いが「不合理ではない」と言い難い項目がある場合には、改善に向けた検討が必要となります。

改善が必要な部分については、会社側の意向だけで改善を進めるのではなく、労働者側の意見を聞くことも必要です。

また、手当等の改善をするための原資など、予め考慮・検討しておくこともあります。

 

<手順6>

改善内容が明確になったなら、これを計画化し、計画的に改善を進めます。

改善内容について、社員が情報を共有してからスタートすることが望ましいわけですから、早めに着手し、余裕をもったスケジュールで取り組めるようにしましょう。

 

<前提として>

ここまでの手順は、職務内容(業務内容と責任の程度)と人事異動の範囲が、正社員とは異なる短時間労働者・有期雇用労働者を前提としています。

職務内容と人事異動の範囲が同じであれば、すべての待遇について、正社員と同等にしなければ不合理な差別を生じうることになります。

この点についても、忘れないようにしましょう。

 

解決社労士

2019/12/02|638文字

 

<フレックスタイム制の前提>

「残業時間が8時間たまると1日休める」というような、労働者に不利な「名ばかりフレックス」も横行しています。

しかしここでは、きちんと労使協定を交わして適法に運用されているフレックスタイム制を前提として考えます。

 

<不足する労働時間を年休で埋める場合>

清算期間の労働時間が基準の総労働時間に達しない場合、このままでは欠勤控除が発生しうるので、これを防ぐために事後的に年次有給休暇の取得を認めるのは、よい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

また、つじつま合わせで、出勤日に年次有給休暇を重ねて、形式的に基準の総労働時間を超えるように計算するというのは、明らかに不合理な運用です。

仕事を休んだ日に年次有給休暇を取得する形にしましょう。

 

<残業時間が多すぎるので年休を取り消す場合>

清算期間の最初のほうで年次有給休暇を取得したところ、その後の期間で想定外の残業が発生したために、労働時間が基準の総労働時間を大きく上回ってしまうことがあります。

この場合に、労働者のほうから年休の取得を取り消して、別の機会に使うことを申し出た場合に、これを認めるのもよい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

しかし、「今回は残業時間が多いから取り消しなさい」という話を、使用者である上司のほうから言うのは、労働者の年次有給休暇取得権を侵害することになるのでダメです。

 

解決社労士

2019/12/01|1,228文字

 

<職場で求められる協調性>

職場では、上司、同僚、部下、他部門との関係で、次のような協調性が求められます。

上司との連携は円滑か、報・連・相は適切か、上司の指示に忠実か、上司のミスをカバーしたか、上司の話に傾聴しているか、上司を批判していないか、上司に感謝しているか、などが問われます。

同僚との連携は円滑か、同僚のことも考えて業務を推進しているか、同僚のミスをカバーしたか、などが問われます。

部下との連携は円滑か、部下の誰をどこまで育てたか、部下をほめているか、部下からの相談に対し親身に取り組んでいるか、部下から感謝されているか、などが問われます。

他部門の業務に干渉していないか、自部門・他部門の改善提案は正しいルートで行っているか、などが問われます。

 

<けん責処分>

本人から会社へ始末書を提出させ、反省させる処分です。

懲戒処分の中では軽いほうでしょう。

始末書には、不都合な事実の内容、そうした事実を生じたことに対する反省、再発防止策の提示、再発防止に向け努力することの約束を書きます。

お詫びだけを長々と書くのでは、始末書の体を成しません。

 

<けん責処分の正当性>

譴責処分を受けたなら、始末書で約束した努力を続けつつ、気を取り直して業務に打ち込み、社内の信頼を回復するのが筋です。

しかし、どうにも納得がいかないという場合には、次の懲戒処分の有効要件を確認してみましょう。

もちろん、就業規則や労働条件通知書などに具体的な規定があることは大前提です。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

これらの条件は、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論の具体的な内容を示したものです。

条件を満たしていなければ、懲戒処分は無効となります。〔労働契約法第15条〕

それどころか、会社は労働者から損害賠償の請求を受けることにもなります。

ただ、譴責処分を受けた本人は感情的になっていますから、会社が懲戒権を濫用したのかどうか、弁護士や特定社労士に客観的な判断を求めることが必要でしょう。

 

<人事考課との関係>

人事考課と懲戒処分とでは目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課で一段低い評価を受けるというのは不合理です。

ただ、懲戒規定に協調性についての規定があり、人事考課の基準にも協調性の項目が入っていると、それぞれ効力が認められます。

懲戒処分を受けるにあたって、本人には事情を説明するチャンスが与えられますから、このときに人事考課との関係も確認できるかもしれません。

ただ、あまりこだわりを示すと心証を悪くしてしまいますので注意が必要です。

 

解決社労士

2011/11/30|1,097文字

 

<健康経営>

健康経営とは、「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、 健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とされています。

業績向上や企業価値向上のためには、企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組み、従業員の活力向上や生産性の向上等、組織の活性化をもたらすように努める必要があります。

 

<健康投資>

健康投資とは、健康経営の考え方に基づいた具体的な取組を言います。

Newsweek誌には、健康経営の投資額1ドルに対して、3ドルの投資リターンがあるという記事が掲載されたこともあります。

ここでの健康経営の投資額は、健康管理スタッフや事務部門の人件費、保健指導などの利用費やシステム開発・運用費、設備費から計算されています。

一方で、投資リターンの額は、欠勤率の低下やモチベーションの向上などによる生産性の向上、医療関連コストの減少、採用コストの減少、企業イメージのアップによる企業価値の向上から計算されています。

 

<健康経営優良法人認定制度>

経済産業省は、健康経営優良法人認定制度を設けていて、毎年2月に健康経営優良法人を発表しています。

大規模法人部門の認定には、たとえば、次の16項目のうち、12以上の項目で基準をクリアする必要があります。

 

・経営者がトップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること

・定期健診受診率(実質100%)

・受診勧奨の取り組み

・50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施

・健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定

※「健康経営優良法人2021」の認定基準では必須項目とする

・管理職又は従業員に対する教育機会の設定

※「従業員の健康保持・増進やメンタルヘルスに関する教育」については参加率(実施率)を測っていること

・適切な働き方実現に向けた取り組み

・コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み

・病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み

・保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み

※「生活習慣病予備群者への特定保健指導以外の保健指導」については参加率(実施率)を測っていること

・食生活の改善に向けた取り組み

・運動機会の増進に向けた取り組み

・女性の健康保持・増進に向けた取り組み

・従業員の感染症予防に向けた取り組み

・長時間労働者への対応に関する取り組み

・メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み

 

どの項目も、法的義務の内容ではなく、努力義務の範疇に属するものばかりです。

まずは、法令遵守を万全にしたうえで、これらの項目に少しずつ取り組んでいくことをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/29|1,154文字

 

<面接シートの利用>

採用面接を実施するときには、確認もれを防いだり、聞いてはいけないことを聞かないようにして、効率よく行うことが必要です。

効率の悪い面接をしてしまうと、面接に時間がかかり、面接を担当する社員の人件費が余計にかかったり、応募者の印象を悪くしたりと、何もよいことはありません。

また、聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労基署に相談するようなことは防ぎたいものです。

やはり面接には、質問事項を列挙し回答欄を設けた面接シートが不可欠です。

 

<採用側の思惑>

企業としては、社会的責任を果たすためにも、障害者の採用には積極的でありたいものです。

しかし、採用したならば平成28(2016)4月に改正された障害者雇用促進法の趣旨に沿い、責任をもって様々な配慮をしなければなりません。

特に常用労働者数が100人を超える企業では、障害者雇用納付金の制度が適用されるため、障害者雇用率2.2%の達成も必要となってきます。

それでも、きちんと対応しきれない障害者を雇用することは、かえって無責任なことになってしまいます。

 

<応募側の期待>

一方で、障害のある応募者の企業に対する期待は様々です。

障害を知られたくない応募者、すべてを明らかにして配慮を求めてくる応募者、どの程度の情報を示したら採用されやすくなるか探ってくる応募者、それぞれの思いがあるのです。

 

<応募側の権利>

基本的に、障害者であること、障害の内容・程度は、保護されるべき個人情報です。

ですから応募者に対して、これらの情報を明らかにすることを義務付けるわけにはいきません。

話の流れの中で、自然にこうした情報が示されるか、あるいは教えていただけるようにお願いすることになります。

 

<障害者採用時の面接シート>

応募者が予め障害者であることを告げてきて、了解のうえで採用面接をする場合には、専用の面接シートを作ることも考えられます。

しかし、こうしたケースは例外的ですし、人事関連の業務では場合分けを多くすればするほど、効率が低下しミスも増えてしまいます。

応募の段階では障害のあることを示さない応募者が大半であることを考えると、面接シートは1種類に統一したいものです。

面接シートの終わりのほうに、「働くにあたって必要な配慮」の欄を設け、すべての応募者に対して「たとえば毎月特定の日に病院に行くためのお休みが必要であるとか、一緒に働く仲間に知っておいてほしいことなどありませんか?」という自然な質問を投げかけて、情報を引き出すようにしてはいかがでしょうか。

もちろん、面接の途中でご本人から話があった場合には、この欄に情報を書きとめておきます。

採用面接にあたっては、採用側の配慮が応募者に悟られないよう、さりげなく行うという一段上の配慮を心がけたいものです。

 

解決社労士

2019/11/28|811文字

 

<国籍にかかわらず日本に住んでいれば>

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人は、国民年金の被保険者(加入者)となります。

20歳になれば、厚生年金保険加入者や共済組合加入者、またはその配偶者に扶養されている人を除き、国民年金第1号の加入手続きをすることが必要です。

手続きは、居住地の市区役所または町村役場で行います。

また、国民年金第1号被保険者は毎月、保険料を納めることが必要です。

保険料を納めることが難しいときは、納付猶予制度や免除制度などがあります。

この手続きをするとしないとでは、将来年金を受け取れるかどうか、また受給額に大きな差が出てきます。

「払えないから放置」ではなくて、「払えないなら相談」を強くお勧めします。

 

<まずは「国民年金被保険者資格取得届書」を提出>

20歳の誕生月の前月に日本年金機構から送られる「国民年金被保険者資格取得届書」に必要事項を明記し、市区役所や町村役場または年金事務所に提出します。

このとき、保険料の納付猶予制度や学生納付特例制度の申請書を同時に提出することもできます。

 

<「年金手帳」が届きます>

保険料納付の確認や将来年金を受け取る際に必要です。

大切に保管してください。

「年金手帳」は一人一冊を一生使います。

厚生年金保険の被保険者(加入者)だった人、共済組合に加入していた人、障害・遺族年金を受給している人には送られません。

※現在は、年金手帳の廃止が検討されています。

 

<「国民年金保険料納付書」が届きます>

納付書で保険料を納めてください。

ご自身の生年月日の前日が含まれる月の分からの保険料を納めることになります。

法律上は、誕生日の前日に1歳年をとるので、法律上20歳になった月の分からということです。

保険料は金融機関のほか、コンビニエンスストアでの納付、電子納付もできます。

また、口座振替やクレジット納付も可能です。

納付書は保険料の納付猶予などを申請した人にも送られています。

 

解決社労士

2019/11/27|758文字

 

<源泉徴収のあらまし>

国税庁ホームページに、「令和2年版 源泉徴収のあらまし」が公表されています。

この「源泉徴収のあらまし」は、令和元年8月1日現在の所得税法等関係法令(租税条約については発効予定条約を含みます)の規定に基づいて、源泉徴収の事務に携わっている人に、令和2年における源泉徴収の仕組みや、その内容を十分理解してもらうために作成しているものです。

 

<税法改正の影響>

平成31(2019)年3月29日付で公布された所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)による源泉所得税関係の改正により、源泉徴収および確定申告における配偶者に係る控除の適用の見直しが行われました。

給与等または公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととされました。

居住者の配偶者が、給与等や公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者に係る控除の適用を受けている場合(その配偶者がその年分の所得税につき、年末調整をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合または確定申告書の提出をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等をく)には、その居住者は、その年分の所得税の確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることができないこととする等の所要の措置が講じられました。

 

<税制改正の影響>

平成30(2018)年度税制改正により、令和2(2020)年1月1日以後適用される主なものは次のとおりです。

 

・給与所得控除の見直し 

・基礎控除の見直し

・所得金額調整控除の創設

・各種所得控除を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し(上記改正に伴うもの)

・生命保険料控除、地震保険料控除および住宅借入金等特別控除に係る年末調整関係書類の電磁的方法による提供

 解決社労士

2019/11/26|463文字

 

<必要な場合>

保険証や高齢受給者証を紛失したときだけでなく、印字が見にくくなったときも、「健康保険被保険者証再交付申請書」や「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を保険者に提出することで、新しく発行してもらえます。

ここで保険者とは、協会けんぽなど健康保険を運営している機関のことで、保険証に表示されています。

なお、外出時の紛失や盗難の場合は、保険証の再交付よりもまずは警察署へ届け出ることを強くお勧めします。

 

<会社など事業所で働く人とその家族の場合>

勤務先を通じて「健康保険被保険者証再交付申請書」「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を保険者に提出します。

この用紙には、被保険者(保険加入者)記入欄と事業所記入欄の両方があります。

再交付した保険証等は、勤務先に郵送されます。

 

<任意継続で加入の人とその家族の場合>

勤務先を退職後、任意継続で健康保険に入っている場合には、加入者から保険者へ直接、「健康保険被保険者証再交付申請書」「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を郵送します。

その後、保険者から加入者に保険証が郵送されます。

 

解決社労士

 

2019/11/25|1,062文字

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。 

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

 2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

<会社の立場>

上記の定義によると、パワハラの加害者は「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性」がある人です。

つまり、会社の上司が加害者となって部下を攻撃したり、先輩が後輩に苦痛を与えるというのが、パワハラの基本的な構造となります。

会社としては、上司と部下、先輩と後輩との間にトラブルが発生すれば、ついつい会社に対する貢献度や経験年数を考えて、上司や先輩にあたる加害者の肩を持つ傾向が強くなってしまいます。

しかし、世間のパワハラに対する目は、年々厳しくなってきています。

会社が加害者の味方を続ければ、マスコミやネット上の評判の低下から、定着率は低下し、そもそも求人広告に対する応募者が来なくなるでしょう。

会社としては、会社に対する貢献度や経験への評価はきちんとする一方で、加害者としての責任も追及する態度が求められます。

 

<パワハラの抽象性>

パワハラの定義は抽象的です。

一方で、加害者を処分するには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。

つまり、懲戒規定がなかったり、抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなければ、加害者が処分されることはありません。

それどころか、注意されることすらないのです。

会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。

パワハラについての具体的な定義がない職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。

 

<被害者のとるべき行動>

パワハラ対策は会社の責任です。

被害者としては、加害者が上司であれば、まず会社の担当部署に相談すべきです。

また、加害者が先輩であれば上司に相談すべきです。

基本的にパワハラの問題は、社内できちんと解決すべきだからです。

一足飛びに労基署などに相談すると、会社も対応に困ってしまいます。

とはいえ、会社がきちんと対応できない場合には、会社が責任を負えないわけですから、労基署の総合労働相談コーナー、労働委員会、法テラスなどの機関や、弁護士、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/24|1,013文字

 

<企業の受動喫煙防止義務>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

 

<法規制を上回る施策の実施>

法規制を超えて、敷地内や建物内の全面禁煙に踏み切る企業も増えています。

これらの根拠は、労働法上の施設管理権です。企業が社内秩序を定立する権限の一つとして認められるものです。

これは、場所を限定しての規制であり、健康増進法が対象施設に応じた規制をするのと軌を一にしています。

 

<時間的な喫煙制限>

ところが、場所の限定に加え、企業独自の基準で喫煙時間を制限する動きも出てきました。

公務員以外は、あまり強く意識されることが無いのですが、労働者は本来的に職務専念義務を負っています。

勤務時間中は、職務に専念し私的活動を差し控える義務です。

これを根拠として、企業は勤務時間中の喫煙を禁止できるものと考えられます。

なぜなら、喫煙によって、主観的にはともかく、客観的には生産性が低下すると思われるからです。

 

<喫煙の自由>

喫煙の自由が最高裁で争われたこともあります。

昭和45年の大法廷判決では、たばこが生活必需品とまではいえず、普及率の高い嗜好品に過ぎないのだから、あらゆる時間、あらゆる場所で喫煙の自由が保障されるものではないという趣旨が述べられています。

本来は自由であるはずの喫煙も、他社に危害を与えうる危険との関係では、大幅に制限されうるということになります。

 

この手の話は、喫煙者と非喫煙者とで相容れない見解に立つものです。

私自身は、ひょんなことから24年前に禁煙しました。

どちらの立場もわかるつもりでいます。

やはり、喫煙者と非喫煙者とは分かり合えないと思っています。

 

解決社労士

2019/11/23|1,521文字

 

<労働条件の明示>

人を雇うときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。

労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法第15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

顧問社労士も使用者に含まれます。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法第4条第2項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法第16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。

これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法第17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法第18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。

ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法第16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。

採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する義務もあります。

 

解決社労士

2019/11/22|713文字

 

<職業病リスト>

労災保険制度は、労働者の業務上の理由によるケガ・病気、通勤に伴うケガ・病気に対して、必要な保険給付を行います。

ケガであれば業務によること通勤途上だったことが明確であるのに対して、病気となると業務や通勤によって発生したといえるかが判断しにくいものです。

そこで労災保険制度による補償の対象となる病気は「職業病リスト」にまとめられています。

この「職業病リスト」には、病気の範囲を明確にすることにより、被災者の労災補償請求を容易にし、事業主が災害補償義務を果たすようにする役割があります。

 

<職業病の選定基準>

業務と病気との間に客観的な因果関係が確立しているものが列挙されています。

これは、新しい医学的知見や病気の発生状況を踏まえ、定期的に見直しが行われています。

最新のものは、平成31410日施行です。

このときの改正で、新たにオルトートルイジンにさらされる業務 による膀胱(ぼうこう)がん が追加されています。

 

<労災補償の対象となる病気>

「職業病リスト」にある病気については、業務に起因することが明らかな病気とされます。

これによって、被災者は業務と病気との因果関係の証明の負担を軽減されるわけです。

「職業病リスト」にない病気については、被災者が困難な証明責任を負うことになります。

しかし、業務と病気との因果関係が証明できれば、労災補償の対象となります。

 

※現在の「職業病リスト」は、次をご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/syokugyoubyou/list.html

 

解決社労士

2019/11/21|1,118文字

 

<平均賃金>

平均賃金というのは、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法などで定められている手当や補償、減俸処分の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法第12条〕

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が高い場合にはその額を適用します(最低保障額)。

 

<平均賃金が使われるケース>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当、使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当、年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金、減給制裁の制限額などで使われます。

解雇予告手当は、所定労働日数や出勤予定日とは無関係に、平均賃金の原則として30日分を支払います。〔労働基準法第20条第1項〕

休業手当は、たとえば使用者の都合で金曜日から月曜日までの4日間休業する場合、元々土日が休日の労働者に対しては、金曜日と月曜日の2日分について、平均賃金の6割以上を支払うことになります。〔労働基準法第26条〕

年次有給休暇を取得した日について、平均賃金で支払うこともできます。〔労基法第39条第7項〕

減給の制裁は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないとされています。〔労働基準法第91条〕

この他、労災保険の休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%ですが、この給付基礎日額の実体は平均賃金です。

 

<平均賃金とは違う計算方法>

失業手当(雇用保険の基本手当)が支給される1日当たりの金額のことを「基本手当日額」と言います。

この「基本手当日額」を求める計算式は、「離職する直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額を、180で割った金額(賃金日額)の、およそ80%~45%」になります。

期間が6か月であることと、ざっくり180日で割ることが、平均賃金とは異なっています。

また、健康保険の傷病手当金や出産手当金の計算には、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」が使われます。

1日あたりの支給額は、これを30日で割って、3分の2倍した金額となります。

賃金の実額ではなく、標準報酬月額を基準とする点で、平均賃金とは考え方が異なっています。

 

解決社労士

2019/11/20|1,333文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

従業員1人につき30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。

労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものです。

 

<就業規則>

労働者が10人以上になったら、労基署に届出が必要です。このことは、良く知られています。

しかし就業規則が無いと、どんなに細かいことでも労働条件通知書などに記載しておかなければ効力がありません。

労働者が知らないのに、これは会社のルールだと言っても通用しないのです。

口頭で説明しても「聞いていません」「忘れました」と言われればアウトです。

また、就業規則や労働条件通知書に書いていなくても「法律通り」にすればよいと思う経営者の方々も多いようです。

ところが、法令には「労使で協議して決める」とか、「3つの中から会社の実情に合わせて決める」という規定もあるのです。

ですから「法律通り」と言っても何も決まっていないことがあります。

特に懲戒処分については、何をやらかしたら、どんな懲戒処分になるかなどは、重要なのに法令には何も規定されていません。

こうしたことから、すべてを労働条件通知書などに書いておくことは、現実的ではありません。

やはり一人でも従業員を雇ったら、就業規則が必要でしょう。

 

<三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。

また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

たとえば、ある会社の正社員の所定労働日数が週4日で、1日の所定労働時間が6時間ならば、1週間の所定労働時間は24時間です。

この場合、どの日も2時間以上の残業はありえず、どの週も16時間以上の残業はありえないというのなら、三六協定は不要です。

なぜなら、この協定は法定労働時間を超える場合に必要となるので、所定労働時間を超える場合でも法定労働時間以内なら必要がないということになるからです。

とはいえ、ほとんどの会社がそうであるように、18時間週5日勤務の社員がいる会社では、三六協定書の作成と労基署への届出は必須です。

 

解決社労士

2019/11/19|1,189文字

 

<事件として報道されるキッカケ>

飲食店の素直なアルバイトAくんが店長に呼ばれます。

店長「売り上げが落ちているのでキミには辞めてもらうことになった」

Aくん「はい、わかりました」

翌日、Aくんは親戚のおじさんに、アルバイトをクビになった話をします。

おじさん「解雇予告手当は?もらっていないなら労基署に相談だな」

Aくん「はい、わかりました」

Aくんが労基署の監督官に事情を話します。

監督官「時給は?1日と1週間の所定労働時間は?労働条件通知書という名前の書類をもらったでしょ」

Aくん「時給はたしか1,013円です。所定…とか、書類とかはありません」

こうして、労基署はアルバイト先の店舗に連絡し、さらに調査に入ります。

この飲食店がチェーン店だと、本社や各店舗に調査が入り、報道機関の知るところとなる可能性があります。

キッカケは、こんなものです。アルバイトのAくんが無知で素直でも、家族や親戚までがすべてそうだとは限りません。

 

<店長はどうしたら良かったのか>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

1人につき30万円の損失で済めばマシです。

マスコミやネットの書き込みの威力で、1店舗だけでなく会社全体が立ち直れなくなる可能性があります。

 

<なぜいけないのか>

所定労働時間が決まっていなければ、年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

つまり、所定労働時間が決まっていないアルバイトについては、会社が有給休暇を与える気が無いのだということが、労基署にはバレバレなのです。

調査(臨検監督)に入るのは当然でしょう。

 

<正しい対応>

飲食店では、アルバイトが2時間勤務の日もあれば10時間勤務の日もあるというシフトのことがあります。

アルバイトやお店の都合で、1週間全く勤務しないことも週6日勤務することもあります。

このような場合には、固定した所定労働時間を決めることができません。

しかし、実態に合わせて平均値で規定しても、有給休暇の賃金の計算は可能となります。

たとえば、「9:00から21:00の間で実働平均5時間」「週平均3.5日勤務」としておき、実態と大きく離れたら、書面を作り直して交付すればよいのです。

これで、アルバイトの年次有給休暇の付与日数についても、迷うことはありません。

1週間の所定勤務日数と所定労働時間が決まっていないので、付与日数すらわからないという危険な状況は解消しておきたいものです。

A4判で両面印刷すれば、1人の労働者に交付する書面は、たったの1枚で済みます。これを怠るのは、そのリスクを考えると得策ではないでしょう。

 

解決社労士

2019/11/18|1,024文字

 

<女性活躍推進>

女性活躍推進の観点から、住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)等が改正され、令和元(2019)年11月5日より住民票、マイナンバーカード等への旧姓(旧氏)の記載が可能になっています。

これも、働き方改革推進の一環といえます。

 

<旧姓(旧氏)併記の方法>

旧姓(旧氏)は、その人が過去に称していた氏であって、その人の戸籍や除かれた戸籍に記載・記録されているものをいいます。

住民票、個人番号カード等に記載できる旧氏は、旧氏を初めて記載する際には、過去に称していたことのある任意の旧氏です。

一度記載した旧氏は、結婚(婚姻)等により氏が変更されてもそのまま記載が可能です。

また、他の市区町村に転入しても、引き続き記載が可能です。

しかし、記載されている氏が変更した場合には、それが直前に称していた旧氏である場合に限り、変更が可能です。

旧氏の削除も可能ですが、その後氏が変更した場合に限り、削除後に称していた旧氏のみが再記載可能です。

旧氏(1人1つ)の記載を希望する人は、住民登録のある市区町村に請求します。

請求にあたっては、記載を求める旧氏が、その人の旧氏であることを証明するため、旧氏の記載されている戸籍謄本等から現在の氏が記載されている戸籍に至るすべての戸籍謄本等とマイナンバーカード(通知カード)を持参しなければなりません。

 

<旧姓(旧氏)記載の場所>

住民票では、氏名欄の下に追加された「旧氏欄」に旧姓(旧氏)が記載されます。

マイナンバーカードでは、既に交付されている場合は追記欄に、新たに交付される場合は氏に併記するかたちで記載されます。

旧姓(旧氏)が記載されたマイナンバーカードは、各種契約や口座名義等に使用される場面で証明書として使うことができるほか、仕事の場面でも旧姓での本人確認書類として使うことができます。

 

<会社の対応>

職場で旧氏の使用を認めることは、あくまでも経営判断となりますが、働き方改革、女性活躍推進という政策の流れに逆らうのは得策ではありません。

旧氏使用が認められていない職場では、人事部門で給与や福利厚生の面で管理ができなくなる、あるいは管理の手間が増えることが理由とされているようです。

しかし、旧氏使用を当たり前のこととして認めている職場もありますから、人事部門が根拠としている管理の問題が、具体的にどの程度のものなのか再確認が必要でしょう。

旧氏の使用については、前向きに考えることをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/17|513文字

 

<受給資格が確認できた人には>

65歳から老齢基礎年金、老齢厚生年金(厚生年金保険などの加入期間がある人)の受給権(年金を受け取る権利)が発生する人に対して、60歳到達月の3か月前に、年金の受給資格がある旨および特別支給の老齢厚生年金の受給権について記載した「年金に関するお知らせ」というハガキが日本年金機構からご本人あてに郵送されます。

 

<受給資格が確認できない人には>

日本年金機構が基礎年金番号で管理する年金加入記録のみでは、老齢基礎年金の受給資格(期間要件)が確認できない人に対し、60歳到達月の3か月前に、年金加入期間の確認、年金請求の手続などをお知らせする「年金に関するお知らせ」というハガキが日本年金機構からご本人あてに郵送されます。

 

<ハガキが届かない場合には>

60歳になる人には、60歳に到達する3か月前に日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」または「年金に関するお知らせ(ハガキ)」が郵送されます。

どちらも届かない場合、日本年金機構に登録されている住所地が現住所と異なるなどの理由から、届いていない可能性があります。

届かない場合には、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターにお問い合わせください。

 

解決社労士

2019/11/16|611文字

 

<退職後の健康保険>

職場で健康保険に入っていた人が退職すると、次のいずれかに加入する手続きが必要です。

1.任意継続健康保険

 加入していた健康保険の保険者(協会けんぽなど)が窓口です。

 ※保険者は保険証に記載されています。

2.国民健康保険 

 お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口で手続きします。

3.家族の健康保険の被扶養者(扶養家族)

 家族が加入する健康保険の保険者にお尋ねください。

 

<健康保険の任意継続>

退職や労働時間の短縮などによって、健康保険の加入資格(被保険者資格)を喪失したときに、一定条件のもとに個人の希望(意思)により、個人で継続して加入できる制度です。

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に基づいて決定され、保険料は原則2年間変わりません。また、被扶養者(扶養家族)の保険料はかかりません。

 

<国民健康保険の保険料(保険税)>

国民健康保険の世帯人員数や前年の所得などに応じて決定されます。また、保険料の減免制度があります。

市区町村によって保険料(保険税)の算定方法が異なります。

お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。

 

<健康保険の任意継続の保険給付>

傷病手当金と出産手当金を除き、原則として在職中に受けられる保険給付と同様の給付を受けることができます。

※傷病手当金と出産手当金は、任意継続の加入とは関係なく、在職中からの継続給付の要件を満たす場合に限り給付対象となります。

 

解決社労士

2019/11/15|1,900文字

 

<解雇理由証明書>

会社が従業員に解雇を通告した場合には、それが懲戒解雇ではなく、普通解雇や整理解雇であったとしても、その従業員からの請求があれば、これに応じて解雇理由(事由)証明書を交付する義務があります。

このことは、労働基準法に次のように規定されています。

 

【退職時等の証明】

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

3 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

4 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 

従業員が解雇に納得しているのなら、会社に対して解雇理由(事由)証明書の交付を求めることはないはずです。

これを求めるということは、解雇の正当性に疑念を抱き、会社の主張する解雇の理由についての証拠書類を得ておいて、納得がいかなければ、労働審判や訴訟に備えようとしていることは明白です。

労働審判や訴訟となれば、会社が解雇理由(事由)証明書に書かなかった理由を、後から追加して主張することは困難です。

ですから、会社としては、思いつく限りの正当な解雇理由を、漏らさず記載しておく必要があります。

ただし、当たり前ですが、言いがかり的な不当な解雇理由を記載してはいけません。

 

<弁明の機会>

裁判所が懲戒処分の有効性を判断するにあたっては、対象となる従業員に弁明の機会を与えていたか否かが重要なポイントとなります。

弁明の機会を全く与えていなければ、それだけで懲戒権の濫用とされ、懲戒処分は無効であるという判断に結びつきやすくなります。

労働契約法は、懲戒権の濫用による懲戒処分の無効について、次の規定を置いています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

従業員の言い分を聞くことなく、懲戒処分を行うというのでは、客観的に合理的な理由があったかどうかが疑わしいですし、世間一般の常識にも反しているでしょう。

大半の会社の就業規則には、労働組合との協議や本人の言い分を聞き取る手続が定められています。これによって、弁明の機会を与えていることになります。

このとき、懲戒処分の対象となる従業員の問題行動について、会社から話があり、これを受けて従業員が言い分を述べるわけですから、この時点で、懲戒処分の理由はある程度明らかになっています。

しかし、懲戒処分の理由が具体的に何なのか、弁明の機会を与えられただけでは、従業員が把握することはできません。

ですから、労働審判や訴訟の準備を考えていない従業員でも、懲戒処分を受ければその理由が気になって当然です。

 

<懲戒理由証明書>

法律上、懲戒処分を受けた従業員が、会社に対して懲戒理由(事由)証明書の交付を請求する権利はありません。

解雇の場合には、それが従業員を会社の外に放り出すことになり、重大なことなので、特別に証明書の交付請求権が認められているに過ぎないのです。

しかし、懲戒処分を行うからには、会社側が誠意をもって、その具体的な理由を従業員に説明すべきです。

対象者が納得できなくても、理解できるところまでは、説明する必要があります。

懲戒権は、会社が労働契約関係の中で、従業員に行使することができる権利です。

そして、権利を行使する場合には、信義に従い誠実に行わなければなりません。〔民法第1条第2項〕

会社が証明書を発行する義務は無いのですが、もし従業員から懲戒理由(事由)証明書の交付を求められるようなことがあれば、納得していない可能性が極めて高いわけですから、できるだけ丁寧に説明して疑念を晴らすようにしましょう。

 

解決社労士

2019/11/14|2,289文字

 

<労働法は労働者の味方>

労働基準法には労働者に対する罰則が無いことからも分かるように、労働基準法をはじめとする労働法は労働者の保護を徹底しています。

その解釈にあたっても、労働者に明らかな権利濫用があったとか、世間の反感を買うような不誠実な態度が見られたとか、特別な事情がない限りは「労働者は悪くない」という解釈になります。

 

<労働者が勝手に残業している場合>

残業というのは、使用者の命令に応える形で行われるものです。

このことは、労働基準法の次の条文にも示されています。

長い条文ですが、間を省略すると「使用者は、・・・労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」と規定しています。

 

【時間外及び休日の労働】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

 

労働者が勝手な判断で行った残業に対して、使用者が賃金の支払義務を負うというのでは、人件費のコントロールはむずかしくなります。

ところが、労働者が勝手に残業したのに対して、「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということを徹底的に指導しなければ、「会社が残業を黙認した」ということになり、残業代を支払わなければなりません。

これを防ぐには、就業規則に「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということをきちんと規定し、違反した場合には、始末書をとって反省してもらう譴責(けんせき)処分などの懲戒規定が必要となることもあるでしょう。

あるいは、自分の勝手な判断で行った残業を、人事考課のマイナス材料とすることも考えられます。

前提として、どのような場合に残業が必要か、条件と具体的な内容を書面化して労働者に示し教育しておく必要があります。

たとえば、「閉店時刻にお客様が店内に留まっていて接客が必要なときには、その対応が終わり閉店作業を完了するまで残業しなさい」という内容になります。

これをしておかないと、上司の個別具体的な命令がなければ一切残業できないということになり不都合だからです。

 

<労働者がタイムカードの打刻を怠っているとき>

労基署はタイムカードなどの出勤退出の時刻を基準に、労働時間を正しく計算し直すよう求めてきます。

ですから、労働者がきちんと打刻していなければ、計算できません。

これは、労働者の自業自得であるようにも思えます。

ところが、きちんとタイムカードを打刻するように指導し、打刻もれがあれば、その都度正しい時刻を確認するのが、会社の責任だとされます。

そして、労働者から「この日は23時頃まで残業した」「先月の日曜日はいつも4時間程度休日出勤した」という申し出があれば、基本的にはこれを信じて計算しなければなりません。

こうしたことを防ぐには、定期的に正しい打刻についての指導を行い、就業規則に打刻義務を規定し、必要に応じて懲戒処分についても規定を置き、人事考課の対象とすることも考えられます。

一般に、残業手当をきちんと支払わない職場では打刻もれが目立ちます。

ですから、打刻もれが多いという点については、労基署の監督官も注目します。

これは大きな注意ポイントでしょう。

 

<労働者の不正打刻>

労働者が出勤直後にタイムカードを打刻せず、しばらく働いてから本来の出勤時刻に打刻するという不正があります。

また、タイムカードを打刻してから残業するという不正もあります。

場合によっては、ミスの多い社員や加齢によって生産性の低下した社員が、能力不足をカバーするために自主的に行っていることもあるでしょう。

ところが客観的に見ると、これは会社が得をして、労働者が損をする行為です。

そのため労基署の監督官は、会社が労働者に対して不正な打刻を強要しているのではないかと疑ってしまいます。

これを防ぐには、打刻を怠っている場合の対応に加えて、きちんとした評価基準の設定と、正しい人事考課が必要です。

生産性の低い労働者については、同期の社員よりも基本給や時給が低いのは当然なことなのです。

厳しい話ですが、これをきちんとしないと本人も苦しいですし、労基署からは違法行為を指摘されてしまいます。

 

<労働者に落ち度があって未払い賃金の支払が不要な場合>

残業が必要となる場合の基準を明確に示し、この内容を徹底的に教育して、労働者の個人的な判断による勝手な残業や休日出勤を禁止し、違反者に対する懲戒や人事考課の評価を落とすことも行っている会社で、教育されても注意されても懲戒処分を繰り返されても、身勝手な自主残業をやめない労働者に対しては、その部分の賃金支払い義務が発生しない場合もあるでしょう。

タイムカードを打刻しなかったり不正に打刻したりの場合にも、同様に考えてよいでしょう。

ただ、こうした社員を会社が放置しておくというのは、いかにも不自然です。

教育指導の甲斐なく、ルール違反を繰り返していれば、解雇の対象になると思われるからです。

こうしてみると、解雇されずに働いている社員について、労基署から賃金未払いを指摘されたら、支払わねばならないのは当然ともいえます。

 

解決社労士

2019/11/13|1,018文字

 

<健康保険より有利な労災保険>

労災保険では、労働者が業務または通勤が原因で負傷したり、病気にかかった場合に、労働者の請求に基づき治療費の給付などを行っています。

しかし、業務または通勤が原因と考えられるにもかかわらず、労災保険による請求を行わず、健康保険を使って治療を受けるケースがあります。

これは、労働者に不利です。

健康保険では、被災者が原則として治療費の3割を負担しますが、労災保険なら被災者の自己負担は原則としてありません。

また、負傷や病気で休んだ場合、健康保険の傷病手当金では賃金の約67%の補償となりますが、労災扱いならば賃金の80%が補償されます。

さらに、業務災害であれば、休業の3日目まで事業主が賃金の60%以上を補償します。

 

<労災保険に切り替え可能な場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできる場合には、次の手順によります。

・労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を受診した病院に提出する。

・病院の窓口で支払った金額の返還を受ける。

 

<労災保険への切り替えができない場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできない場合には、一度、医療費の全額を自己負担した上で、労災保険に請求することになります。

具体的には、次の手順によります。

・保険者(全国健康保険協会など)へ業務災害または通勤災害である旨を申し出る。

・「負傷原因報告書」の記入・提出(不要な場合もある)

・保険者(全国健康保険協会など)から医療費返納の通知と納付書が届く。

・近くの金融機関で返納金を支払う。

(健康保険が使えないのに使ってしまったため返金が必要となります)

・返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労災保険の様式第7号または第16号の5に記入のうえ、労働基準監督署へ医療費を請求します。

※保険者は健康保険証に記載されています。

 

<結論として>

間違った手続をやり直すのは、大変になってしまうことが多いものです。

最初から必要な手続きをきちんと確認しましょう。

また、事業主の都合で、労災なのに健康保険の手続きを進めようとすることがあります。

これ自体、保険金詐欺ですから犯罪です。

そして、ケガが悪化して長く入院するような場合には、労働者の負担がとても大きくなります。

困ったときは、早めに所轄の労働基準監督署か社労士などの専門家に相談しましょう。

 

解決社労士

2019/11/12|1,151文字

 

令和元(2019)年10月30日、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で、年金手帳の廃止が採り上げられました。

 

<年金手帳の必要性の低下>

年金手帳は、保険料納付の領収の証明、基礎年金番号の本人通知という機能を果たしてきました。

しかし現在では、保険料の納付に年金手帳は使いません。

また、加入者(被保険者)情報がシステムで管理されていますし、マイナンバー(個人番号)の導入によって、手帳という形式をとる必要がなくなってきています。

かつては多くの手続で、年金手帳の添付が求められていましたが、現在では、行政手続の簡素化や利便性向上のため、「基礎年金番号を明らかにする書類」で手続を可能としています。

さらに、給与関連の事務でマイナンバー(個人番号)を確認している事業者では、基礎年金番号に代えて、マイナンバーの記載をして届出をした場合は、基礎年金番号を明らかにする書類の提出は不要とされています。

 

<法改正の方向性>

20歳になった人、20歳前に厚生年金加入者(被保険者)となった人など、新たに国民年金の加入者(被保険者)となった人に対しては、年金手帳を交付せず「資格取得のお知らせ」を通知することにする法改正が検討されています。

これによって、手帳の作成や交付コストの節減も図れますし、企業側の業務の簡素化や効率化を推進することができます。

なお、平成28(2016)年度実績では、年金手帳の発行が153万件、再発行が74.5万件で、その費用は2.7億円に及んでいます。

 

<基礎年金番号通知書>

新たな「基礎年金番号通知書(仮称)」については、すでにその仕様まで次のように検討されています。

1. 年金手帳の代替として年金制度の象徴となるようなシンボリックなもの(色つきの上質紙など)とすること

2. 手元に丁重に保管してもらうため、名称を「基礎年金番号通知書(仮称)」とし、大臣印の印影を入れること

3. 現在、共済年金加入者に送付している「基礎年金番号通知書」との統一を行うこと

 

<会社の対応の変更点>

現在は、新人の入社にあたって、年金手帳を提出してもらい基礎年金番号を確認していますが、法改正後は「基礎年金番号通知書(仮称)」しか保有しない人も出てきます。

ですから、いずれか片方の提出を求めることになります。

また、どちらも保有していない人について、マイナンバー(個人番号)の確認により手続きを進めても問題ありません。

さらに現在は、年金手帳を紛失した社員からの申し出に応じて、会社が年金手帳の再交付手続きをしていますが、法改正後は、年金手帳の交付も再交付も行われなくなりますから、この手続きはなくなります。

基礎年金番号が分からなくなった社員には、個人的に年金事務所や街角の年金相談センターで確認してもらうことになります。

 

解決社労士

2019/11/11|542文字

 

<特定保健指導>

特定保健指導とは、生活習慣病予防健診(健康保険加入者向け)や特定健康診査(扶養家族向け)の結果から、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクが高いと判断された40歳以上の人に、保健師などが生活習慣改善のアドバイスを行うものです。

あくまでもメタボ予備軍に対する指導です。

すでにメタボと認定された人には治療が必要です。

予備軍からメタボに転落しないように指導するわけです。

ですから、この指導を受けるのは恥ずかしいことではありません。

指導を受けずにメタボになってしまうことのほうが恥ずかしいのです。

 

<特定保健指導を受けるときの費用>

健康保険加入者(被保険者)は無料です。

扶養家族(被扶養者)については実施機関によって異なります。

費用については、協会けんぽ支部ホームページの「特定保健指導実施機関一覧(ご家族)」で確認できます。

 

<特定保健指導を受ける手続き>

健康保険加入者(被保険者)は、勤務先を通じて協会けんぽに申し込みます。

勤務先によって、マンツーマンの指導であったり、講義形式であったりします。

扶養家族(被扶養者)には、特定保健指導の対象となる場合に限り、自宅に「特定保健指導利用券」が郵送されます。

届いたら、近所の特定保健指導実施機関に申し込みましょう。

 

解決社労士

2019/11/10|1,373文字

 

<両者の優劣>

ノーワーク・ノーペイの原則は、法令には直接の根拠がないものの、労働契約の性質から当然のこととして認められています。

つまり、労働者が働かなければ雇う側に賃金の支払義務は発生しないということです。

労働契約法には次の規定があるのですが、この規定の裏返しがノーワーク・ノーペイの原則だといえます。

 

【労働契約の成立】

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

ところがこの原則をそのまま就業規則にとり入れず、たとえば生理休暇を有給にする、欠勤控除をしないルールとするというのは、労働者に有利となりますので労働基準法などに違反するものではありません。

そして就業規則に、法令の基準よりも労働者に有利な内容を定めた場合には、法令の基準を理由に労働条件を低下させることが許されなくなります。〔労働基準法第1条第2項〕

以上のことから、就業規則の規定が労働者に有利であれば、ノーワーク・ノーペイの原則よりも優先されるということになります。

 

<就業規則に定めた基準の引き下げ>

しかし、一度就業規則に定めたなら、その条件を引き上げることはできても、引き下げることは一切許されないというのは不都合を生じることもあります。

なぜなら、その規定が時代に合わなくなったり、運用が不合理になったりということは現実に起こりうるからです。

たとえば就業規則上、生理休暇を有給にして、その取得にあたっては事後の口頭による申し出でも良いというルールだったとします。

年々生理休暇の取得が増え、今では月平均1人あたり10日も使われているとしたらどうでしょう。

60代の女性でも、月5日程度なら普通に生理休暇が認められているとしたら、男性社員との間で不平等が生じているといえるでしょう。

この場合、休暇の取得にあたって業務に耐えないという医師の証明を必要とするとか、口頭ではなく申請書を提出するとか、合理的な範囲内での制約を検討する余地はあるでしょう。

同様にたとえば就業規則上、欠勤控除がない職場で遅刻・早退・欠勤が多かったらどうでしょう。

まじめに皆勤している社員は、士気が低下してしまうかもしれません。

こうした状況に陥るのを防ぐため、新たに欠勤控除の規定を設けることも検討する余地はあるでしょう。

 

<不利益変更禁止のルール>

とはいえ、会社の都合で自由に就業規則を変更できるわけではありません。

使用者は原則として、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。〔労働契約法第9条〕

たしかに、就業規則を労働者に不利益に変更するのであれば、ひとり一人にきちんと説明したうえで、合意を得るのが理想でしょう。

そうもいかない場合であれば、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが客観的に認められることが必要です。〔労働契約法第10条〕

この場合であっても、労働者にもれなく説明し、期間的な余裕をもって変更したいものです。

 

解決社労士

2019/11/09|810文字

 

<電子証明書からID・パスワードへ>

現在、電子申請するためには電子証明書が必要です。

しかし、令和2(2020)年4月以降、無料で取得可能なID・パスワード(GビズID)で電子申請が可能になります。

このID・パスワードは、4月まで待たなくても今すぐ取得可能です。

 

<GビズID>

GビズIDは、経済産業省により整備された事業者向けのサービスです。

1つのID・パスワードで、複数の行政サービスにアクセスできます。

このサービスによって、社会保険・労働保険の手続が電子申請で行うことができるようになります。

 

<GビズIDの取得>

次の手順で、GビズIDを取得します。利用者は、「法人代表者」または「個人事業主」に限られます。

1. GビズIDのホームページで「gBizIDプライム作成」のボタンをクリックします。

2. 申請書を作成します。

このとき、法人番号、代表者(氏名・生年月日)、利用者(氏名・生年月日・連絡先住所・電話番号・部署名・メールアドレス)などが必要です。

また、GビズID利用時の本人確認(ワンタイムパスワードの通知)に利用のため、SMS受信用電話番号の登録が必要です。

3. 申請書をダウンロードします。

4. 作成した申請書と印鑑証明書を「GビズID運用センター」に送付します。

5. 審査(2週間程度)を経て、メールが到着します。

6. メールに記載されたURLをクリックしてパスワードを設定します。

 

<GビズIDによる電子申請>

日本年金機構のホームページから「届書作成プログラム」を無料でダウンロードすることができます。

ただし、GビズIDに対応した「届書作成プログラム」は、令和2(2020)年4月1日に公開予定です。

現在、「届書作成プログラム」は公開されていますが、まだGビズIDには対応していません。

 

令和2(2020)年4月からの運用に先駆けて、予めGビズID(ID・パスワード)を取得しておくことをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/08|1,052文字

 

<契約更新可能性の明示義務>

使用者が期間を定めて新人を雇用する場合、つまり有期労働契約で採用する場合、その契約の更新可能性の有無を明示しなければなりません。

完全に期間限定で、延長することがあり得ないのであれば「契約更新の可能性なし」と明示します

しかし、契約期間を延長する可能性がある場合には「契約更新の可能性あり」と明示したうえで、契約を更新する場合またはしない場合の判断基準を明示しなければなりません。

 

<判断基準の明示>

厚生労働省は、明示すべき「判断の基準」の具体的な内容として、次の例を参考にするよう指導しています。

・契約期間満了時の業務量により判断する

・労働者の勤務成績、態度により判断する

・労働者の能力により判断する

・会社の経営状況により判断する

・従事している業務の進捗状況により判断する

 

<労働条件通知書の場合>

使用者は労働者の雇い入れにあたって、労働条件を書面で通知しなければなりません。

使用者が労働者に対して一方的に通知する書面として「労働条件通知書」があります。

厚生労働省から「モデル労働条件通知書」も公表されています。

これは、使用者から労働者に対する通知の形をとっていますから、契約更新の有無を判断する基準として、たとえば「労働者の能力により判断する」と明示してある場合には、労働者の能力を判断するのは、この文書を作成した使用者側であるといえます。

さらにトラブルを避けるなら、「会社が労働者の能力を評価して判断する」と明示すればよいでしょう。

 

<労働契約書(雇用契約書)の場合>

会社によっては、労働契約書を交わして労働条件を明示しています。

契約書は、当事者の意思表示の合致を書面にしたものです。

ですから、労働契約書の契約更新の条件のところに「労働者の能力により判断する」と書いてある場合には、契約書には使用者と労働者双方の名前が入っていて、この文書は共同で作成したという形式をとっているので、必ずしも使用者が単独で判断するのが当然ということにはならず、労働者の意見も反映されるべきではないかという疑問が出されうることになります。

特に労働者が契約更新を期待していたのに、会社が更新しなかった場合には、能力の評価について意見の対立が生じうることになります。

ですから、労働条件の明示に契約書の形式をとるのであれば、「会社が労働者の能力を評価して判断する」というように、判断者を明示することが必須となります。

ちょっとしたことですが、紛争の発生を予防するための大きなポイントといえるでしょう。

 

解決社労士

2019/11/07|1,081文字

 

<保険料の納付期限>

厚生年金保険料、健康保険料、船員保険料、児童手当拠出金は、翌月末が納付期限となっています。

企業は、口座振替または納入告知書により保険料を納付することになっています。

 

<納付期限までに納付されない場合>

厚生年金保険料などを納付期限までに納めない事業所に対しては、督促状を送付するとともに、電話などによる納付督励を行います。

督促状で指定した期限までに完納されない場合、滞納保険料などを回収するための滞納処分に入ります。

ただし、事業所の実情によっては、分割納付による完納を認め、早期に完納される場合は、指定した期限を過ぎても滞納処分は猶予されます。

納付督励によって完納の見込が立たない場合には、財産調査を行い、必要に応じ滞納処分(差押え・換価)を行います。

なお、滞納額が高額で悪質な滞納事業所については、国税庁に徴収を委任する仕組みがあります。

 

<滞納処分の流れ1  納付指導>

納付指導により作成する納付計画は、原則として毎月分の保険料の納付と、滞納している保険料の分割納付により、できるだけ早期に滞納が解消されるような計画とします。

分割の金額については、事業の経営状況などを踏まえ、適切と考えられる金額に設定するようにしています。

 

<滞納処分の流れ2  財産調査>

財産調査は、取引先金融機関に預金残高の確認を行うほか、必要に応じ取引先企業全般に対し売掛金などの債権の有無を調査します。

ここまでくると、取引先金融機関や取引先企業の信用を失う可能性があります。

また、滞納事業所の不動産など、財産全般についても調査を行います。

 

<滞納処分の流れ3  差押え・換価>

財産調査の結果把握した不動産、預金、売掛金債権などについて、必要に応じ差押えを行います。

預金や売掛などの債権類については速やかに取り立てて収納し、不動産などで換価が必要なものは、公売によって金銭化した後に保険料などとして収納します。

 

<滞納処分の流れ4  滞納整理の国税庁委任>

納付指導に従わないなど悪質な滞納事業所については、国税庁に保険料などの徴収を委任することができるようになっています。

 

<延滞金>

厚生年金保険料などを滞納し、督促状の指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、保険料額(保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切捨て)に一定の割合を乗じて計算した延滞金が徴収されます。

平成31年1月1日から令和元年12月31日までの期間について、最初の3か月は年利2.6%、3か月超の期間は年利8.9%となっています。

 

解決社労士

2019/11/06|1,770文字

 

<故意・過失の意味>

犯罪には故意犯と過失犯があり、たとえば、故意による傷害罪は過失傷害罪よりも犯情が重く、それだけ重い刑罰が科されます。

就業規則の懲戒規定の中にも、故意・過失という言葉が見られます。

ここで「故意」というのは、「わざと行うこと」であり、法律上は「法的に守られた利益を侵害すると認識しながらそれを容認して行為すること」をいいます。

また「過失」というのは、「うっかり行うこと」であり、法律上は「違法な結果を認識・予見することができたにもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったこと」をいいます。

過失によって悪い結果が発生するのを防ぐには、まず、悪い結果が発生するかもしれないことを具体的に予期しなければなりません。この注意義務を結果予見義務といいます。

しかし、結果を予期したとしても、その予期した結果の発生を防がなければ、悪い結果が発生してしまいます。こうして、結果の発生を回避する義務を結果回避義務といいます。

結局、「過失」というのは、法律上、結果予見義務か結果回避義務を怠ったことをいいます。

 

<行為者の言い分による認定>

こうして見ると、「故意」も「過失」も行為者の心理状態ということになります。

ところが、行為者の心の中を直接のぞいて確認することはできません。

かといって、犯人が「うっかり火が着いて燃え広がりました」と言えば失火罪として軽く処罰され、「燃やすつもりで火を着けました」と言えば放火罪として重く処罰されるというのは不当です。

社内で懲戒を検討する場合にも、行為者本人の言い分だけを根拠に処分を決めてしまっては、不当な結果が発生しやすいことは明らかです。

 

<労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度>

ところで、労働者を1人でも雇っている事業主は、労災保険の加入手続を行わなければなりません。

労災保険は、任意保険ではなく強制保険だからです。

平成17(2005)年11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されました。

これにより、事業主が労災保険の加入手続を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料を徴収する他に、労災保険から給付を受けた金額の100%または40%を事業主から徴収することになります。

 

【故意の認定基準と費用徴収】

労災保険の加入手続について、行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、手続を行わない期間中に、業務災害や通勤災害が発生した場合には、「故意」が認定されます。

その災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収

 

【重過失の認定基準と費用徴収】

労災保険の加入手続について、行政機関から指導等を受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合には、重過失が認定されます。

その災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収

 

月給30万円の従業員(賃金日額1万円)が、労災事故が原因で死亡し、遺族の方に対し労災保険から遺族補償一時金の支給が行われる場合、その金額は賃金日額の1,000日分ですから、1千万円となります。

事業主は、上記で故意が認定された場合には1千万円、重過失の場合にはこの4割の4百万円が、国から徴収されることになるわけです。

 

ここで、重過失(重大な過失)というのは、結果の予見が極めて容易なのに結果予見義務を果たさなかった場合や、結果の回避が極めて容易なのに結果回避義務を果たさなかった場合をいいます。

このように、労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度では、事業主の言い分は全く考慮されることなく、客観的な事情によって、故意・過失が客観的に認定されていることがわかります。

 

<故意・過失の客観的な認定>

自白の偏重が否定されていますから、警察は犯人の行為の他、故意・過失についても、明らかにする客観的な証拠の発見・収集が求められています。

会社は警察ではありませんが、行為者本人の言い分に振り回されることなく、行為当時の客観的な状況、上司や同僚の証言など、きめ細かい事実を確認したうえで故意・過失を客観的に認定し、懲戒処分を決定することが大切です。

 

解決社労士

2019/11/05|685文字

 

<健康保険の現物給付>

健康保険では、保険医療機関の窓口に保険証を提示して診療を受ける現物給付が原則ですが、やむを得ない事情で現物給付を受けることができないときや、治療のために装具が必要になったときなどは、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで請求して療養費(被扶養者の場合は家族療養費)として、払い戻しを受けることができます。

保険証を提示して診療を受けると3割負担で済むというのが実感ですが、健康保険で7割は現物の診療が給付されたと考えます。

父親が母親の外出中に子供の発熱に気づき、あわてて病院に連れて行って保険証を忘れた場合、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで家族療養費を請求します。

腰痛のため医師が必要を認めてコルセットを使うことになった場合、コルセットを作り販売する業者に、直接には健康保険が適用されません。

この場合にも、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで請求して療養費として、払い戻しを受けることができます。

 

<払い戻される療養費の範囲>

療養費は、必ずしも支払った医療費の全額が払い戻されるわけではありません。

保険加入者(被保険者)や扶養家族(被扶養者)が、保険医療機関で保険診療を受けた場合を基準に計算した額(実際に支払った額が保険診療基準の額より少ないときは、実際に支払った額)から一部負担金相当額を差し引いた額が払い戻されます。

また、健康保険で認められない費用は除外されます。

さらに、コルセットの予備を作った場合や、耐用年数が過ぎる前に新調した場合など、全額自己負担になることもありますので注意しましょう。

 

解決社労士

2019/11/04|1,193文字

 

<対象となるケース>

パワハラを受けて精神的に参ってしまい、まともに出勤できない状態にされ、退職を迫られてやむなく応じ、自己都合退職扱いにされるという場合の上手な闘い方です。

あってはならないケースですが、パワハラの定義すら就業規則に無い会社では、誰もパワハラを止めることができず犠牲者が後を絶ちません。

 

<最初に思いつくのは>

こんなとき、被害者が精神的に回復すると、あのパワハラ上司を訴えてやろうという気持ちになりがちです。

しかし、パワハラそのものを理由として損害賠償を請求しようとするならば、労働者の側でパワハラの存在や被った損害額を証明しなければなりません。

 

<証明責任(挙証責任)>

裁判で訴える側がAという事実の存在を主張し、訴えられた側がその存在を否定したとします。

裁判所は、どちらが真実か証明がつかないからといって、裁判を拒否できません。

そこで、あらかじめ法令やその解釈によって、Aという事実の証明について、訴える側と訴えられた側のどちらが責任を負うかが決まっています。

そして、その責任を負う人が証明に失敗すると、自分の主張が通らないという不利な扱いを受けるのです。

 

<パワハラを証明することの困難>

パワハラで損害賠償を請求するというのは、法律上は加害者に対する不法行為責任の追及ということになります。

そして、その証明責任は被害者である労働者にあるのです。

上司が人前で殴ったり蹴とばしたりすれば、証人がいるでしょう。

しかし目撃者が、退職した労働者のために証言してくれるとは限りません。

ましてや電話でのやり取りや、会議室で2人きりで話していてどなられたことなどは、とうてい証明できないでしょう。

 

<視点を変えれば>

このケースでは、パワハラの問題もあるのですが、不当解雇の側面もあります。

労働者が不当解雇を主張し、解雇は無効であって会社に行けなかった間の賃金の補償や慰謝料を会社に求めた場合には、少なくとも不当解雇ではなかったことについて、会社が証明責任を負います。

具体的には、解雇が客観的に合理的な理由を欠いていたり、社会通念上相当であると認められない場合には、会社がその権利を濫用したものとして、その解雇を無効とするという規定があります。〔労働契約法第16条〕

ですから、労働者が不当解雇を主張すれば、会社はその解雇に客観的に見て合理的な理由があったことを証明しなければなりません。

また、世間一般の常識から考えて、解雇したのもやむを得ないといえるケースだったことを証明しなければなりません。

会社は両方の証明に成功しなければ、裁判で負けてしまうのです。

 

<結論として>

訴えるにしても訴えられるにしても、やり方次第で損得が出てしまいます。

また、紛争解決の手段は訴訟だけではありません。

何を主張して、どう戦ったらよいのか、報酬を支払ってでも弁護士や社労士に相談する意味はここにあります。

 

解決社労士

2019/11/03|1,721文字

 

<モデル就業規則>

年次有給休暇について、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【年次有給休暇】

第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。 

勤続

期間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年

6か月

以上

付与

日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 

週所定

労働日数

1年間の

所定労働日数

勤    続    期    間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年6か月以上

4日

169日~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

(以下省略)

 

週所定労働日数が5日以上の従業員のみの職場では、上段の簡単な表だけが適用されます。

そして、週所定労働日数が4日以下の従業員がいる職場では、下段の複雑な表が必要になってきます。

 

<誤りやすいポイント>

モデル就業規則第22条第2項の「前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、」という規定が、分かりにくいのかも知れません。

原則として、上段の簡単な表が適用されます。

しかし例外的に、次の2つの条件の両方を満たしている従業員については、下段の複雑な表を適用します。

 

・週所定労働時間が30時間未満・週所定労働日数が4日以下

 

裏を返せば、週所定労働日数が4日であっても、週所定労働時間が30時間以上であれば、上段の簡単な表が適用されるということです。

 

<運用の誤りと対処法>

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員に、下段の複雑な表を適用してしまっているパターンがあります。

これは運用上の誤りですから、すぐに運用を改める必要があります。

また、年次有給休暇の付与日数が誤っていた従業員には、付与日数が少なかったことのお詫びとともに正しい残日数を通知しなければなりません。

 

<規定の誤りと対処法>

もっと重症なのは、就業規則そのものに、「週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員には、上段の簡単な表が適用される」という規定が漏れているパターンです。

残念ながら、弁護士の先生や、同業の社労士の先生が作った就業規則にも、こうした誤りを発見することがあります。

これは、労働基準法第39条第3項に違反していますから、就業規則を変更し、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

しかも、変更届を見れば、これまでの運用が誤っていたことが明らかですから、運用の誤りを是正したうえで、変更届を提出するという手順にしなければなりません。

 

<複雑なルールは避けたい>

場合分けのある複雑なルールは、定着しにくいものです。

社内に独自のルールを定める場合には、なるべく単純なものをお勧めします。

労働基準法は、最低限の基準を定めて使用者に守らせ、労働者を保護する趣旨です。

逆に、基準を上回るルールを定めることは禁止されていません。

ですから、社内の混乱を避けるため「週所定労働日数が4日の従業員には、週所定労働時間にかかわらず、一律に上段の簡単な表を適用する」という規定にすることは許されます。

社内の実情に応じ、こうしたことも検討されてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2019/11/02|1,236文字

 

<労災手続きを担当すると>

労災は突然に起こります。

担当者が忙しいときに限って起きやすいような気もします。

特に不慣れな場合には、労基署や病院に提出する書類の書式はどれを使ったらよいのか迷うことがあります。

なにしろ、書類の種類が多いうえに、似たものが多過ぎます。

こんなときは、とにかく正確に遅れないように書類の作成に集中しなければなりません。

一方、ベテランや社労士なら、必要な情報を迅速かつ正確にそろえてサッサと書類を完成させてしまいます。

しかし、これだけでは2つの重要な視点が欠けてしまいます。

 

<再発防止>

ヒヤリハット運動というのがあります。

事故の危険を感じて、ヒヤリとした経験、ハッとした経験があったら、これをキッカケに事故防止の対策を打とうという運動です。

実際に労災が発生してしまったなら、より積極的に再発防止に取り組まなければなりません。

労災が発生すると、会社には一定のフォーマットが用意されていて、被災者や同僚・上司などがその各欄を埋める形で報告書を作成し、労災手続きを担当する部門に提出するということが多いでしょう。

しかし、そのフォーマットの中に「再発防止策」の欄はあるでしょうか。

簡単にできる対策であれば、「何月何日にこの対策を実施済み」と記入することになりますが、関連部門への要望という形になるかも知れません。

費用のかかることであれば、会社への要望となるでしょう。

 

<被災者へのアプローチ>

その労災事故について、一番よくわかっているのは被災者本人です。

それなのに、書類のやり取りだけで、本人への聞き取りが無いのはもったいないです。

本人の率直な意見は、今後の労災防止に大いに役立ちます。

このとき、「まだ痛みますか?」「大変でしたね」と声をかければ、本音も引き出すことができるでしょう。

こうした言葉をかけることなく、サッサと用件だけ済ませようとすれば、被災者の心は凍りつきます。

なぜなら、被災者は周囲の人からは「お前の不注意だ」「会社にとって迷惑だ」などと言われてしまっていることもあるからです。

再発防止に効率よく取り組むには、被災者本人の要望を聴くのが一番です。

会社として、どうしていれば今回の事故が防げたかがわかるのです。

たとえば、器具の正しい使い方を指導されていなかったとか、このところ長時間残業が続いていて注意力が低下していたとか、家族が大変なときに仕事を休めず上の空で働いていてケガをするというケースもあります。

 

<手続きを委託している場合>

スピーディーに労災手続きを済ませるには、社労士や労働保険事務組合に委託するのが便利です。

しかし、これだと再発防止や被災者への適切なアプローチという2つの重要な視点が欠けてしまいます。

どうせ委託するのであれば、親身に被災者の声に耳を傾け、真剣に再発防止を考える社労士を顧問にするのがお勧めです。

ただし、手続き専門の社労士だと再発防止は考えないものです。

どうせなら、何でも相談できる社労士を選んでいただきたいです。

 

解決社労士

2019/11/01|1,728文字

 

<法令の規定>

労働者は事業者が行う健康診断を受けなければなりません。〔労働安全衛生法第66条第5項〕

しかし、この義務に違反しても罰則はありません。

こうしたこともあって、のらりくらりと健康診断から逃げようとする人もいます。

 

<逃げる人の言い分>

健康診断を嫌がる人に理由をたずねたら、次のような答えが返ってきました。

・血を採られたり、レントゲンを撮られたりが、何となくイヤ。

・バリウムを飲むのも、その後も苦しい。

・何か病気が見つかると怖いから受けたくない。

・健康体ではないことが会社にバレると上司から叱られる。

・かなり健康状態が悪いので、会社から退職を迫られるかもしれない。

 

<労働基準監督署に相談したら>

健康診断をサボる社員への対応について、労働基準監督署に相談したことがあります。

「きちんと健康診断が受けられる準備を整え、社員ひとり一人への案内もしていることを示す証拠をきちんと残しておけば、会社が責任を問われることはありません。もし、労基署が監督に入ったら、そうした書類などを提示できるようにしておいてください。」という回答でした。

会社が責任を負わされないように相談したのではなく、心から社員の健康が心配で相談したのですが…

 

<ペナルティーを科す>

総務や人事など健康診断の担当部門からではなく、サボる社員の上司から注意してもらう方法もあります。

小さな会社なら、社長から直々に注意してもらうのも効果があります。

また就業規則には、健康診断の受診義務を明記し、かかわる人の守秘義務や個人情報の保護についても規定しておきましょう。

これを前提として、始末書を書かせ反省を求める譴責(けんせき)処分程度までなら、懲戒処分に必要な客観的合理性や社会的妥当性はあると思います。

10人未満の会社では、就業規則の作成は義務づけられていません。

しかし、健康診断についてまで労働条件通知書(雇い入れ通知書)あるいは雇用契約書(労働契約書)といった労働者への交付義務がある書類に書いておくのは、細かすぎて面倒です。

やはり、就業規則を作ったほうが便利でしょう。

 

<教育の強化>

健康診断をサボる社員が1人や2人なら、ある程度の説得によって、しぶしぶでも受けるようになるでしょう。

しかし、対象者の1割以上が受けないようであれば、サボるにしても気が楽です。

サボっているのは自分だけでないですし目立ちませんから。

この状態は、会社から社員への健康診断の重要性や受診義務についての教育不足を反映しているといえるでしょう。

会社には健康状態の悪い人を悪化させないように注意する義務があります。

この義務を果たすには、社員全員が健康診断を受けることが前提となっています。

社員は、労働者として、これに協力する義務があるわけです。つまり、労働契約に付随する義務です。

 

<人事考課への反映>

健康診断の結果が悪いから賞与の金額が少なくなるとか、役職を外されるというのは不当です。

健康診断後の精密検査などを加味して、産業医の先生が異動を勧めたとか、本人から異動の希望が出されたとか、現に業務をこなせない状態であるとか、特別なことがない限り、健康診断の結果だけで本人に不利な扱いはいけません。

なぜなら、仕事のストレスや過労で健康を害しているケースも多く、この場合には会社にも大きな責任があるのですから。

ただ、健康診断をサボるという客観的な事実を理由に、マイナス評価することは程度の問題もありますが、ある程度許されることです。

たとえば、直近3回の健康診断を正当な理由なく受診していない場合には、課長昇格の候補者には入らないなどの基準を設けることは可能です。

健康管理に無関心で、会社に非協力的な社員を課長に昇格させるのも適切ではないでしょう。

 

<結論として>

「サボるのは本人が悪い」と言うのは簡単です。

しかし、本人を責めるだけに終わらせず、会社にできることはきちんとしましょう。

会社にも責任があるのですから。

また、健康診断の結果が悪いというだけで解雇するというのは、ほとんどの場合に不当解雇となりますから、解雇の通告は無効となり、損害賠償の問題ともなります。

困ったときには、各分野の専門家に相談することをお勧めします。

 

解決社労士

2019/10/31|2,175文字

 

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

<事業主が講ずべき措置>

上記の内容だけでは、事業主が講ずべき措置の具体的内容等が不明確です。

そこで、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会が、パワハラ防止のために企業に求める措置に関する指針を検討し、令和元(2019)年10月21日に素案を示しています。

この指針は、パワハラにより労働者の就業環境が害されることの無いよう、雇用管理上講ずべき措置等について、事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたものです。

指針案では、事業主等の責務と行うことが望ましい取組みの内容が、次のように示されています。

 

【事業主等の責務】

1.パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

2.パワハラには厳正に対処する旨を就業規則等に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

3.相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

4.相談窓口の担当者が、相談に対し適切に対応できるようにすること。また、現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合等も広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること

5.パワハラに係る相談の申出があった場合、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること

6.パワハラの事実が確認された場合、被害者に対する配慮措置を適正に行うこと

7.パワハラの事実が確認された場合、行為者に対する措置を適正に行うこと

8.パワハラの事実が確認された場合、再発防止措置としてパワハラに関する方針を改めて周知・啓発する等を講じること

9.パワハラに係る事後対応にあたっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること

10.パワハラに関する相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いはされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

【行うことが望ましい取組みの内容】

1.相談窓口は、セクハラ・マタハラ等他のハラスメントに関するものと一体的なものとして設置し、一元的に相談に応じることができる体制を整備する

2.パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化や円滑化のための取組みを実施する

3.パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、適正な業務目標の設定等の職場環境改善のための取組みを実施する

4.自ら雇用する労働者以外の者(個人事業主、インターン、就活生等)に関する取組み

 

<パワハラの定義の問題>

客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

しかし、今回公表された指針案の中で、パワハラに該当しない例として、次のようなものが示されました。

 

【パワハラに該当しない例】

〇誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること

〇遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること

〇その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること

〇新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること

〇処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること

〇労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること

〇業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること

〇経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること

〇労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること

〇労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと

〇労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと

 

これらの例は、パワハラに該当しないことが明らかなものが中心となっています。

しかし、企業にとって必要なのは、パワハラ該当性について判断が困難な限界事例であると思われます。

指針の内容について、今後、一層充実したものとなることが期待されます。

 

解決社労士

2019/10/30|1,160文字

 

<昔のキャッチフレーズ>

その昔は、社会保険労務士事務所のホームページを見ると、「100%経営者の味方です」「いつでも労働者の味方です」ということばが当たり前のように掲げられていました。

ところが、「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」とされています。〔社会保険労務士法第1条の2〕

ですから柳田事務所では、たとえ社労士が会社の顧問となった場合でも、一方的に会社の味方となり労働者の敵となるのはおかしいということをネット上でも力説してきました。

権利が守られない労働者は、会社を去っていきますから、結局、会社が力を失います。

反対に労働者の権利濫用を許している会社は傾いていきます。

会社と労働者がWIN-WINの関係にならなければダメなのです。

 

<不適切な情報発信の禁止に関する会則改正>

「社員をうつ病に罹患させる方法」がブログに書かれるなど、他にも社労士の不適切な情報発信が社会問題となったことから、東京都社会保険労務士会の会則に不適切な情報発信の禁止規定が新設されました。

これによって、「会社側の味方」「労働者側の味方」という表現は、少なくとも東京都内の社労士事務所では使えなくなりましたし、業務にあたっては公正な立場でなければならないことが再確認されたといえます。

 

<弁護士と社労士のスタンスの違い>

東京都区内で労働裁判を扱う法律事務所では、「企業側」「労働者側」ということを明確にしています。

こうしないと専門性を疑われるようです。

しかし、同じ東京都内でも多摩地区では、どちら側の代理人も受任する法律事務所がたくさんあります。

それでも、弁護士と社労士とでは少しスタンスが違います。

たとえば、メンタルヘルス障害で休職している社員がいる場合、弁護士は「会社が責任を問われないように」ということを強く意識します。

これに対して社労士は、「休職している社員の生活や病気の治療」のことも十分に配慮します。

弁護士は、労働者から攻撃されても会社がきちんと防衛できることを考えるのに対して、社労士は、会社が労働者のことをきちんと考えることによって会社が労働者から攻撃されることを防ぐというスタンスです。

 

<柳田事務所の考え方>

代表の柳田は、会社の人事部門で勤務していて、同じ案件について労働者側からも経営者側からも同時に相談を受けていました。

当然のことながら、両方の立場を踏まえWIN-WINの結果を導き出す癖がついています。

これは今でも変わりません。

ですから、柳田事務所は会社からも労働者からも仕事を受けていますし、相手を打ち負かして一時的にスッキリするような結果は目指していません。

常に長期的視点に立って、WIN-WINの結果を目指しています。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/29|1,487文字

 

<懲戒処分の必要性>

社員を懲戒する第一の目的は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

ですから、能力はあるのに故意あるいは不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

社員を懲戒する第二の目的は、懲戒対象となった社員ではなく、他の社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することにあります。

「社長を怒らせたら懲戒処分」というのでは、社員はいつも不安です。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

懲戒規定にない行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。

しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下するという実害が出ますので絶対に避けましょう。

 

<懲戒処分の準備不足>

まず、就業規則や雇用契約書などに具体的な懲戒規定を置かなければ、懲戒処分を行っても労働審判や訴訟で無効とされてしまいます。

懲戒処分は、あらかじめその内容を具体的に予告しておくことによって、社員に警告を発しておくことができるのです。

「常識外れなことをして会社に迷惑をかけたから減給処分」などと、大雑把なことはできないのです。

どういう規定なら具体的といえるかの基準としては、ある社員が不都合な行為を行ったときに、それがその規定に定める行為にあたるかどうか、社内で意見が分かれないということが目安になります。

つぎに、懲戒処分をするにあたっての手続き・手順が決まっていなければ、物事が進みません。

とくに、懲戒対象の社員には弁明の機会を与えなければなりません。

それ以前に、具体的な事実の確認も必要です。

何をどういう手順でどうやって懲戒処分にたどりつくのか、具体的なルールがなければなりません。

さらに、今まで社内でどのような不都合なことがあったか、会社はこれにどう対応したかの記録が残っていなければなりません。

懲戒処分は平等かつ公平でなければなりませんので、過去の事例との比較も重要になるからです。

 

<懲戒処分ができない社長>

懲戒処分の決裁権を持っているのは原則として社長です。

しかし、この社長が臆病で懲戒権を発動できないと困ります。

何をやっても許される会社になってしまい、モラルの低い社員しか残らなくなってしまいます。

社員が安心して働くためには、懲戒処分が必要なのです。

特に会社に対する貢献度の高い社員が独断で行動を起こし、会社に損害を与えてしまった場合には、社長としては大目に見ようと考えがちです。

これでは、他の社員の腹の虫がおさまりません。

懲戒処分をためらう社長は、社員の表彰をしていないことが多いように見受けられます。

表彰もするが懲戒もするという信賞必罰の方針でいけば、会社に対する貢献度の高い社員に対しては、何回か表彰し、時には懲戒処分ということもやりやすいと思います。

さらに、社長が臆病ではないのに懲戒処分をためらうケースがあります。

それは就業規則などの懲戒規定のバランスが悪いケースです。

たとえば、「セクハラをしたら懲戒解雇」という規定の会社では、ちょっと冗談を言っただけで解雇になりかねません。

こうした場合には、就業規則などの見直しが必要です。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/28|1,293文字

 

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

本採用にするとき、働きぶりに見合った月給に引き下げるというのは、不利益変更禁止の原則があってむずかしいので、どうしてもこのようになります。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法第12条第3項第5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示してあれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、明らかに最低賃金法違反となります。

この場合の所定労働時間は、給与計算に使う基準です。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、173.8時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×173.8時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が173.8時間であれば、

150,000円÷173.8時間=863.06円

ですから、現在、最低賃金がこれを上回る埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

<固定残業代がある場合> 

 最低賃金法施行規則第1条が「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」については最低賃金額に算入されないと定めています。

これにより、月給から固定残業代を差し引いた金額を所定労働時間で割って、最低賃金を下回れば明らかに違法ということになってしまいます。

 たとえば、月間所定労働時間が173.8時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、 

150,000円=P+P÷173.8時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、 

残業代抜きの基本給が131,137円、20時間分の残業代が18,863円となります。 

すると、この場合には131,137円が最低賃金の基準となり、 

131,137円÷173.8時間=754.53円

ですから、現在はどの都道府県でも最低賃金を下回ってしまい違法であることがわかります。

 

<試用期間の特例>

試用期間中の者については、特別な許可を得て、最低賃金を下回る月給にすることができる建前です。

最低賃金の減額の特例許可を受けたい場合、使用者は最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

もっとも、許可基準は厳しいですから、まず許可されることはありません。

 

解決社労士 柳田 恵一

 

2019/10/27|1,274文字

 

<通勤手当の性質>

労働基準法などに、使用者の通勤手当支払義務は規定されていません。

むしろ法律上、通勤費は労働者が労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担することになっています。〔民法第485条〕

とはいえ、就業規則や雇用契約などで通勤手当の支給基準が定められている場合には、賃金に該当するとされています。〔昭和22年9月13日発基第17号通達〕

 

<就業規則の在り方>

たとえば、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【通勤手当】

第34条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合でも、その実費が支給されるものと解されます。

しかし、会社には遠回りのルートで通勤していることにして高い通勤手当を申請し、実際には近道のルートで通勤し実費との差額を着服していれば、この規定には反していることになります。

この場合、会社は差額の返金を求めることができますし、故意に行っていれば、懲戒処分の対象ともなりうる行為です。

もっとも、通勤に「要する」実費というのを厳密に解釈し、遠回りのルートでの通勤にかかる費用は、必ずしも通勤に「必要な」実費ではないという解釈も成り立つでしょう。

この点をより明確にしたいのであれば、次のように規定することも考えられます。

 

【通勤手当】

第〇〇条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。ただし、利用交通機関は、最も経済的でかつ合理的な最短順路のものとする。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合には、その実費を支給する必要はありません。

会社に対して、遠回りの通勤ルートでの通勤を前提とした通勤手当の申請をしても、それは「最も経済的でかつ合理的な最短順路のもの」ではないとして却下されます。

むしろこうした規定を置いた場合には、会社の方で通勤手段やルートを確定して従業員に提示し、これに優る通勤方法が無ければ、これで通勤手当の申請をするように求めるというのが効率的です。

 

<通勤手当の不正受給>

就業規則で「実費」を支給すると定めてあれば、電車通勤で申請しておいて、実際には徒歩や自転車による通勤をした場合には、通勤手当の全額が不正受給となりえます。

ただ、徒歩や自転車による通勤は健康増進の点で望ましいと考えるのであれば、「実費」の所を「一般的な経費」として定めておいて、支給してしまうことも可能です。ただ、この場合には課税の問題が出てきます。

実際の不正受給で多いのは、勤務地の近くに転居したのに、会社への届出を怠っていて、従来の通勤手当を受給し続けるパターンです。

この場合には、もちろん差額の返金を求めることになりますが、通勤手当を着服する意図で会社への届出を怠っていた場合でも、直ちに返金した場合には、情状の点から懲戒処分を行うのは適当ではない場合が多いでしょう。

特に悪質であれば、始末書を提出させ反省を求める譴責(けんせき)処分までは、妥当な場合もあると考えられます。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/26|541文字

 

<雇用関係助成金支給のねらい>

厚生労働省は企業に対して、数万円~数百万円の多種多様な助成金を支給しています。

もともと厚生労働省などの行政機関というのは、立法機関である国会が作った法律を誠実に執行する義務を負っています。

しかし法律を執行するだけでは、なかなか思い通りの成果が現れないこともあります。

そこで雇用の分野を中心として、政府の政策に沿った努力をする企業に、助成金を支給することで、政策の推進を図ろうとしているのです。

たとえば、解雇しないで雇用し続ける努力、就職困難者を雇い入れる努力、職場環境を整える努力、社員の能力を向上させる努力などです。

 

<雇用関係助成金の財源>

助成金の財源は、雇用保険料です。

健康保険や厚生年金の保険料は、会社と労働者とで折半します。

しかし雇用保険では、会社の方が労働者より保険料が高いのです。

この高い分が、助成金の財源なのです。

ですから企業にとっては、「支給」というより「返金」ということになります。

 

<受給手続が面倒な理由>

厚生労働省がブラック企業に助成金を支給すれば問題視されますから、まず、会社の健全性がチェックされます。

そして助成金支給の基準に従った、政策の推進に役立つ活動があるかのチェックも行われます。

この二重のチェックのために、手続が簡単ではないのです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/25|1,266文字

 

<労働者名簿の調査>

労働者名簿は、法定三帳簿の一つですから、労働基準監督署の監督が入った場合には、当然に調査対象とされる機会は多いものです。

しかし、労働者名簿単独で調査対象とされることは少なく、むしろ他の目的があって、その手掛かりを探るために調査されることが多いのです。

労働者名簿単独でのチェックポイントとしては、法定の項目がきちんと書かれていて、労働者の入社から退職の3年後まで保管されているかという点になります。〔労働基準法第107条、労働基準法施行規則第53条〕

また、本籍やマイナンバーなど記入されていてはいけない項目もありますので、余計なものが入っていないかのチェックもありえます。

 

<未払い残業代の調査>

労働基準監督署の監督が入った場合に、労働者名簿の中で役職者の比率が高いと、役職を与えて管理監督者扱いにして残業代をカットしている可能性が疑われます。

この場合には、次に賃金台帳との照合が行われ、残業代支払い対象の役職者がピックアップされることになります。

そしてさらに、未払い残業代の計算という手順になります。

 

<社会保険未加入の調査>

年金事務所による調査では、労働者名簿の中の正社員比率と、社会保険の加入者数を比較して、正社員しか社会保険に加入させていないのではないかと疑われます。

この場合には、タイムカードや出勤簿で正社員以外の従業員の勤務実態が確認され、社会保険加入対象のパート社員などがピックアップされることになります。

そしてさらに、一人ひとりの加入日の特定や、未払い保険料の計算という手順になります。

 

<雇用保険関係の不正受給の調査>

ハローワークの調査では、雇用保険関係の給付を受けた人について、内定時期や入社日を確認するために、労働者名簿を調査することがあります。

この場合には、万一不正受給があったとしても、基本的には不正受給していた従業員が責められることになります。

そして、場合によっては、受給額の3倍が徴収されるということになります。

ただし、会社が従業員の不正受給に加担しうるケースでは、この点についての調査に発展する可能性もあります。

 

<労働安全衛生管理体制の調査>

労働基準監督署が労働安全衛生の面で監督に入った場合には、事務所や店舗ごとの人数から、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医の選任の要否がチェックされます。

同様に、安全委員会、衛生委員会の開催、健康診断結果報告の有無などがチェックされます。

この場合には、会社が法定の手続きなどをしているか、届出書類の控えの提示を求められることになります。

そしてさらに、委員会の議事録や健康診断個人別結果票の控えなどの確認という手順になります。

 

<必要な対応>

監督・調査について事前に予告があれば事前に、予告がなければ事後に社労士にご相談ください。

その場限りの対応をしてしまい、再調査が入ったときにガツンとやられるケースが多いようです。

やはり、ごまかすのではなく、長い目で見て会社が良くなるようにきちんとした対応をしたいものです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/24|1,415文字

 

<モデル就業規則の改訂>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版は、平成31(2019)年3月版です。

しかし、これ以前、平成28(2016)年3月版から平成30(2018)年1月版に改定されたとき、家族手当の規定から配偶者手当が削除されています。〔第33条〕

モデル就業規則は、労働基準法など労働法の改正があったときには、法改正に対応して適法な内容となるように改訂されています。

ですから、モデル就業規則が改訂されたときには、各企業の就業規則も変更しなければ、違法な内容を含んだままになる可能性が高いことになります。

また、政府の方針に変更があった場合や、政府が新しい方針を打ち出した場合にも、これに沿った改訂が行われます。

家族手当の規定から配偶者手当が削除されたのは、政府が少子高齢化対策の継続的な推進をより強化していることに対応しています。

 

<家族手当の規定> 

モデル就業規則の最新版では、家族手当が次のように規定されています。

 

【家族手当】

第33条  家族手当は、次の家族を扶養している労働者に対し支給する。

 ① 18歳未満の子

    1人につき  月額     円

 ② 65歳以上の父母

    1人につき  月額     円

 

 昔ながらの就業規則とは、その内容が大きく異なっています。

 

<配偶者手当の在り方>

モデル就業規則の中で、家族手当の規定がこのようになっているのは、配偶者手当の在り方について、厚生労働省が次のように考えているからです。

 

【配偶者手当の在り方】

配偶者手当は、税制・社会保障制度とともに、就業調整(働く時間の抑制)の要因となっています。今後人口が減少していく中で、働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できるようにするため、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる収入要件がある配偶者手当については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれます。

 

この考え方は、働き方改革の推進にも沿った内容となっています。

 

<配偶者手当の見直しに当たっての留意点>

配偶者手当を減額するにせよ、廃止するにせよ、現在手当を受けている従業員にとっては、不利益変更となります。

そのため、厚生労働省は配偶者手当の見直しに当たっては、次の点に留意するよう注意を呼びかけています。

 

【配偶者手当の見直しに当たっての留意点】

配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要があります。

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組

②労使の丁寧な話合い・合意

③賃金原資総額の維持

④減額になる方への必要な経過措置

⑤決定後の新制度についての丁寧な説明

 

就業規則の変更にあたって、従業員のニーズを把握すること(①)、労使の話し合い(②)は、常に必要なことですし、働き方改革の推進にあたっては不可欠な手順です。

また、賃金の総額が減少するような変更は、就業規則の改定に名を借りた人件費削減であることが疑われます(③)。

そして、賃金が減額となる従業員に必要な経過措置(④)、たとえば調整給の支給などは、不利益変更をカバーするための措置です。

最後に、就業規則の変更については、周知することでその効力は発生しますが、配偶者がいない、または扶養していない従業員が、配偶者を扶養するようになっても、かつてのように配偶者手当は支給されないということを、丁寧に説明しておかなければ期待を裏切ることになりますので、この点で特別な配慮が必要だということです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/23|1,254文字

 

<新聞の報道>

日本経済新聞は、令和元(2019)年10月22日朝刊の1面トップで、「セブン、時短店を容認 深夜休業に指針 来月まず8店 24時間モデルに転機」と伝えています。

株式会社セブン-イレブン・ジャパンが、営業時間を短縮した時短営業を本格的に実施すると発表したそうです。

コンビニは人手不足や最低賃金の上昇で24時間営業がしにくくなり、出店が減少し閉店が増加する傾向にあります。

今後は、効率化に向けた見直しを迫られます。

 

<昔と今>

セブン-イレブンが日本に誕生したとき、営業時間は午前7時から午後11まででした。だからこそ、セブン-イレブンという名称になったわけです。

お店は住宅地の近くにありましたし、スーパーマーケットの開店前や閉店後も便利に利用できました。

最近では、24時間営業の店舗がほとんどですし、住宅地に近い店舗が閉店し、駅に新しい店舗が誕生するという傾向が顕著でした。

 

<会社の立場>

会社としては、営業時間の短縮により売上が減少するのは困ります。

ライバル店にお客様を取られてしまうこともあるでしょう。

そのライバル店が、近くのセブン-イレブンであれば複雑な話になってしまいます。

会社としては、今後も24時間営業を原則とする方針です。

 

<店長の立場>

営業時間を短縮して売上が減少すれば、店長の収入も減少します。

しかし、店長は経営者の立場にあるとされ、労働基準法その他労働法の保護が及びません。

働き方改革も対象外ですから、家庭生活と仕事とのバランスを取るのも大変です。

何より、健康を害してしまっては元も子もありません。

こうして営業時間の短縮を強く希望する店長が現われるようになりました。

 

<店員の立場>

新人は、多くの場合、最低賃金に近い時給から働き始めます。

それでも、慢性的な人手不足により、採用のハードルは高くありません。

特に、午後10時から翌日午前5時までは、労働基準法の定める25%の深夜割増がありますから、とりあえず収入を得るには手軽なイメージがあります。

しかし、人手不足の深刻化によって、日中の仕事でも賃金の高い求人が出るようになりました。

やがて、思ったほど楽ではないと感じた店員は、別の職種に転職していきました。

 

<お客様の立場>

働き方改革によって、労働時間の短縮が進んでいることもあり、一般のサラリーマンがスーパーマーケットで買い物をして帰るのも自然なことです。

賃金の減少傾向による節約志向の拡大も進んでいますから、スーパーマーケットで少しでも安い商品を購入しようとするのも当たり前です。

 

<コンビニの転換期>

これまでの急成長を考えると、コンビニ各社が自らのスタンスを崩したくないのも分かります。

しかし、店長、店員、お客様は、確実に働き方改革の影響を受けています。

店長は、労働法の保護を受けられないことに不満と不安を感じています。

店員には、転職しやすい環境が整いつつあります。

お客様は、プライベートの時間が増えて、必ずしも便利さ(コンビニエンス)を追求しなくなってきています。

こうしたことから、コンビニ業界全体が転換期にあると考えられます。

 

解決社労士 柳田 恵一