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2022/11/28|1,744文字

 

<モデル就業規則>

年次有給休暇について、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【年次有給休暇】

第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。 

勤続

期間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年

6か月

以上

付与

日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 

週所定

労働日数

1年間の

所定労働日数

勤    続    期    間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年6か月以上

4日

169日~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

(以下省略)

 

週所定労働日数が5日以上の従業員のみの職場では、上段の簡単な表だけが適用されます。

そして、週所定労働日数が4日以下の従業員がいる職場では、下段の複雑な表が必要になってきます。

 

<誤りやすいポイント>

モデル就業規則第22条第2項の「前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、」という規定が、分かりにくいのかも知れません。

原則として、上段の簡単な表が適用されます。

しかし例外的に、次の2つの条件の両方を満たしている従業員については、下段の複雑な表を適用します。

 

・週所定労働時間が30時間未満

・週所定労働日数が4日以下

 

裏を返せば、週所定労働日数が4日であっても、週所定労働時間が30時間以上であれば、上段の簡単な表が適用されるということです。

 

<運用の誤りと対処法>

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員に、下段の複雑な表を適用してしまっているパターンがあります。

これは運用上の誤りですから、すぐに運用を改める必要があります。

また、年次有給休暇の付与日数が誤っていた従業員には、付与日数が少なかったことのお詫びとともに正しい残日数を通知しなければなりません。

 

<規定の誤りと対処法>

もっと重症なのは、就業規則そのものに、「週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員には、上段の簡単な表が適用される」という規定が漏れているパターンです。

残念ながら、弁護士の先生や、同業の社労士の先生が作った就業規則にも、こうした誤りを発見することがあります。

これは、労働基準法第39条第3項に違反していますから、就業規則を変更し、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

しかも、変更届を見れば、これまでの運用が誤っていたことが明らかですから、運用の誤りを是正したうえで、変更届を提出するという手順にしなければなりません。

 

<複雑なルールは避けたい>

場合分けのある複雑なルールは、定着しにくいものです。

社内に独自のルールを定める場合には、なるべく単純なものをお勧めします。

労働基準法は、最低限の基準を定めて使用者に守らせ、労働者を保護する趣旨です。

逆に、基準を上回るルールを定めることは禁止されていません。

ですから、社内の混乱を避けるため「週所定労働日数が4日の従業員には、週所定労働時間にかかわらず、一律に上段の簡単な表を適用する」という規定にすることは許されます。

社内の実情に応じ、こうしたことも検討されてはいかがでしょうか。

実のところ、知らず知らずのうちに、こうした運用にしている会社も多いのです。

 

2022/11/27|1,305文字

 

<労災手続きを担当すると>

労災は突然に起こります。

担当者が忙しいときに限って起きやすいような気もします。

特に不慣れな場合には、労基署や病院に提出する書類の書式はどれを使ったらよいのか迷うことがあります。

なにしろ、書類の種類が多いうえに似たものが多過ぎます。

文字の色が薄いだいだい色とかやめてほしいです。

電子申請も運用が不安定で、便利だったり困りものだったり。

こんなときでも、とにかく正確に遅れないように書類の作成に集中しなければなりません。

一方、ベテランや社労士なら、必要な情報を迅速かつ正確にそろえてサッサと書類を完成させてしまいます。

しかし、これだけでは2つの重要な視点が欠けてしまいます。

 

<再発防止>

ヒヤリハット運動というのがあります。

事故の危険を感じて、ヒヤリとした経験ハッとした経験があったら、これをキッカケに事故防止の対策を打とうという運動です。

実際に労災が発生してしまったなら、より積極的に再発防止に取り組まなければなりません。

労災が発生すると、会社には一定のフォーマットが用意されていて、被災者や同僚・上司などがその各欄を埋める形で報告書を作成し、労災手続きを担当する部門に提出するということが多いでしょう。

しかし、そのフォーマットの中に「再発防止策」の欄はあるでしょうか。

簡単にできる対策であれば、「何月何日にこの対策を実施済み」と記入することになりますが、関連部門への要望という形になるかも知れません。

費用のかかることであれば、会社への要望となるでしょう。

もっとも最善の防止策は教育なのですが。

 

<被災者へのアプローチ>

その労災事故について、一番よくわかっているのは被災者本人です。

それなのに、書類のやり取りだけで、本人への聞き取りが無いのはもったいないです。

本人の率直な意見は、今後の労災防止に大いに役立ちます。

このとき、「まだ痛みますか?」「大変でしたね」と声をかければ、本音も引き出すことができるでしょう。

こうした言葉をかけることなく、サッサと用件だけ済ませようとすれば、被災者の心は凍りつきます。

なぜなら、被災者は周囲の人からは「お前の不注意だ」「会社にとって迷惑だ」などと言われてしまっていることもあるからです。

再発防止に効率よく取り組むには、被災者本人の要望を聴くのが一番です。

会社として、どうしていれば今回の事故が防げたかがわかるのです。

たとえば、器具の正しい使い方を指導されていなかったとか、このところ長時間残業が続いていて注意力が低下していたとか、家族が大変なときに仕事を休めず上の空で働いていてケガをするというケースもあります。

 

<手続きを委託している場合>

スピーディーに労災手続きを済ませるには、社労士や労働保険事務組合に委託するのが便利です。

しかし、これだと再発防止や被災者への適切なアプローチという2つの重要な視点が欠けてしまいます。

どうせ委託するのであれば、親身に被災者の声に耳を傾け、真剣に再発防止を考える社労士を顧問にするのがお勧めです。

ただし、手続き専門の社労士だと再発防止は考えないものです。

どうせなら、何でも相談できる社労士を選んでいただきたいです。

 

2022/11/26|1,726文字

 

<法令の規定>

労働者は事業者が行う健康診断を受けなければなりません。〔労働安全衛生法第66条第5項〕

しかし、この義務に違反しても罰則はありません。

こうしたこともあって、のらりくらりと健康診断から逃げようとする人もいます。

 

<逃げる人の言い分>

健康診断を嫌がる人に理由をたずねたら、次のような答えが返ってきました。

・血を採られたり、レントゲンを撮られたりが、何となくイヤ。

・バリウムを飲むのも、その後も苦しい。

・何か病気が見つかると怖いから受けたくない。

・健康体ではないことが会社にバレると上司から叱られる。

・かなり健康状態が悪いので、会社から退職を迫られるかもしれない。

 

<労働基準監督署に相談したら>

健康診断をサボる社員への対応について、労働基準監督署に相談したことがあります。

「きちんと健康診断が受けられる準備を整え、社員ひとり一人への案内もしていることを示す証拠をきちんと残しておけば、会社が責任を問われることはありません。もし、労基署が監督に入ったら、そうした書類などを提示できるようにしておいてください。」という回答でした。

会社が責任を負わされないように相談したのではなく、心から社員の健康が心配で相談したのですが…

 

<ペナルティーを科す>

総務や人事など健康診断の担当部門からではなく、サボる社員の上司から注意してもらう方法もあります。

小さな会社なら、社長から直々に注意してもらうのも効果があります。

また就業規則には、健康診断の受診義務を明記し、かかわる人の守秘義務や個人情報の保護についても規定しておきましょう。

これを前提として、始末書を書かせ反省を求める程度までなら、懲戒処分に必要な客観的合理的理由や社会通念上相当性はあると思います。

10人未満の会社では、就業規則の作成は義務づけられていません。

しかし、健康診断についてまで労働条件通知書(雇い入れ通知書)あるいは雇用契約書(労働契約書)といった労働者への交付義務がある書類に書いておくのは、細かすぎて面倒です。

やはり、就業規則を作ったほうが便利でしょう。

 

<教育の強化>

健康診断をサボる社員が1人や2人なら、ある程度の説得によって、しぶしぶでも受けるようになるでしょう。

しかし、対象者の1割以上が受けないようであれば、サボるにしても気が楽です。

サボっているのは自分だけでないですし目立ちませんから。

この状態は、会社から社員への健康診断の重要性や受診義務についての教育不足を反映しているといえるでしょう。

会社には健康状態の悪い人を悪化させないように注意する義務があります。

この義務を果たすには、社員全員が健康診断を受けることが前提となっています。

社員は、労働者として、これに協力する義務があるわけです。つまり、労働契約に付随する義務です。

 

<人事考課への反映>

健康診断の結果が悪いからといって賞与を減額したり、役職を外したりというのは不当です。

健康診断後の精密検査などを加味して、産業医の先生が異動を勧めたとか、本人から異動の希望が出されたとか、現に業務をこなせない状態であるとか、特別なことがない限り、健康診断の結果だけで本人に不利な扱いはいけません。

なぜなら、仕事のストレスや過労で健康を害しているケースも多く、この場合には会社にも大きな責任があるのですから。

ただ、健康診断をサボるという客観的な事実を理由に、マイナス評価することは程度の問題もありますが、ある程度許されることです。

たとえば、直近3回の健康診断を正当な理由なく受診していない場合には、課長昇格の候補者には入らないなどの基準を設けることは可能です。

健康管理に無関心で、会社に非協力的な社員を課長に昇格させるのも適切ではないでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

「サボるのは本人が悪い」と言うのは簡単です。

しかし、本人を責めるだけに終わらせず、会社にできることはきちんとしましょう。

会社にも責任があるのですから。

また、健康診断の結果が悪いというだけで解雇するというのは、ほとんどの場合に不当解雇となりますから、解雇の通告は無効となり、損害賠償の問題ともなります。

困ったときには、各分野の専門家に相談することをお勧めします。

 

2022/11/25|1,169文字

 

<昔のキャッチフレーズ>

その昔は、社会保険労務士事務所のホームページを見ると、「100%経営者の味方です」「いつでも労働者の味方です」ということばが当たり前のように掲げられていました。

ところが、「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」とされています。〔社会保険労務士法第1条の2〕

ですから柳田事務所では、たとえ社労士が会社の顧問となった場合でも、一方的に会社の味方となり労働者の敵となるのはおかしいということをネット上でも力説してきました。

権利が守られない労働者は、会社を去っていきますから、結局、会社が力を失います。

反対に労働者の権利濫用を許している会社は傾いていきます。

会社と労働者がWIN-WINの関係にならなければダメなのです。

 

<不適切な情報発信の禁止に関する会則改正>

「社員をうつ病に罹患させる方法」がブログに書かれるなど、他にも社労士の不適切な情報発信が社会問題となったことから、東京都社会保険労務士会の会則に不適切な情報発信の禁止規定が新設されました。

これによって、「会社側の味方」「労働者側の味方」という表現は、少なくとも東京都内の社労士事務所では使えなくなりましたし、業務にあたっては公正な立場でなければならないことが再確認されたといえます。

 

<弁護士と社労士のスタンスの違い>

東京都区内で労働裁判を扱う法律事務所では、「企業側」「労働者側」ということを明確にしています。

こうしないと専門性を疑われるようです。

しかし、同じ東京都内でも多摩地区では、どちら側の代理人も受任する法律事務所がたくさんあります。

それでも、弁護士と社労士とでは少しスタンスが違います。

たとえば、メンタルヘルス障害で休職している社員がいる場合、弁護士は「会社が責任を問われないように」ということを強く意識します。

これに対して社労士は、「休職している社員の生活や病気の治療」のことも十分に配慮します。

弁護士は、労働者から攻撃されても会社がきちんと防衛できることを考えるのに対して、社労士は、会社が労働者のことをきちんと考えることによって会社が労働者から攻撃されることを防ぐというスタンスです。

 

<柳田事務所の考え方>

代表の柳田は、会社の人事部門で勤務していて、同じ案件について労働者側からも経営者側からも同時に相談を受けていました。

当然のことながら、両方の立場を踏まえWIN-WINの結果を導き出す癖がついています。

これは今でも変わりません。

ですから、柳田事務所は会社からも労働者からも仕事を受けていますし、相手を打ち負かして一時的にスッキリするような結果は目指していません。

常に長期的視点に立って、WIN-WINの結果を目指しています。

 

2022/11/24|1,714文字

 

<法令の規定>

労働基準法は、使用者に賞与の支払を義務づけてはいません。

しかし、支給することがある場合には、重要な労働条件の一つとして明示することを義務づけています。〔労働基準法第15条第1項、労働基準法施行規則第5条〕

また、パートタイム労働者や有期雇用労働者を採用する場合で、正社員などフルタイムの無期雇用労働者とは異なる基準や計算方法で賞与を決定している場合には、その違いの内容と理由を説明しなければなりません。〔パートタイム・有期雇用労働法第14条第1項〕

「賞与の支給額は、会社の裁量で自由に決定できる」と言われることがあります。

しかし、これは不正確な表現であって、正確には「賞与支給の有無や、支給する場合の支給額の決定方法を自由に定めることができる」ということになります。

そして就業規則のある会社では、就業規則、賃金規程、賞与支給規程などに関連規定が置かれることになります。

 

<懲戒による減額>

懲戒による減給については、労働基準法に次の規定があります。

 

(制裁規定の制限)

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

この規定は、賞与にも適用されますので、懲戒処分としての減給の制裁が複数重なった場合には、賞与の10分の1までは減額が可能ではあります。

もっとも、減給の制裁がいくつも重ねて行われるのは、いかにも不自然ですから、懲戒権の濫用となり無効となるのが一般でしょう。〔労働契約法第15条〕

 

<裁量の余地がない規定>

賞与の支給額については、就業規則の範囲内で会社の裁量により自由に決定できるとはいえ、規定の内容が次のようなものであれば、裁量の余地がなく一義的に決定されてしまうことになります。

・基本給の〇か月分を支給

・売上高の〇%を支給

・粗利高の〇%を支給

 

<裁量の余地がある規定>

賞与に関する社内規定が、次のようなものであれば会社に一定の裁量権があります。

 

(賞与)

第〇条 賞与は、会社の業績等を勘案して毎年7月および12月に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

2 前項の賞与の額は、会社の業績及び労働者の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する。

 

この規定の第1項によれば、賞与支給の有無や支給時期について、「会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由」があれば、7月と12月に支給するという原則を変更できることになります。

また、この規定の第2項によれば、各人の賞与支給額を「会社の業績及び労働者の勤務成績など」を根拠に増減できることになります。

もっとも、「労働者の勤務成績など」の中にどこまでの事項が含まれるかは、必ずしも明確ではありません。

結婚したから10万円増額、阪神タイガースのファンだと表明したから3万円減額など、プライベートなことを理由とする増減が許されないのは当然だと考えられます。

 

<解決社労士の視点から>

たとえば、ある人の賞与が通常よりも大幅に減額されていて、その人が「これは年次有給休暇の取得日数が多いことに対する嫌がらせではないか」と疑って、会社に対して説明を求めたところ、会社側から十分な説明がなかったとします。

この場合、あるべき支給額と実際の支給額との差額が損害であるとして、会社に損害賠償請求訴訟を提起するかもしれません。

こうなれば、裁判所は会社に合理的な説明を求め、会社が説明に失敗すれば、会社に裁量権の濫用があった、または裁量権を逸脱していたということで、損害賠償の支払を命ずることがあります。

また、人事考課の結果に基づいて賞与支給額が決定される会社の場合でも、その評価が具体的な事実の認定に基づいて行われたことなど、評価が適正であったことを説明できるようにしておく必要があります。

こうしてみると、労働者が民事訴訟の提起に踏み切るほど、大幅な減額をするのは考えものですし、どうしても行いたい場合には、それ相当の根拠資料を準備したうえで行わなければならないでしょう。

 

2022/11/23|1,492文字

 

<懲戒処分の必要性>

社員を懲戒する第一の目的は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

ですから、能力はあるのに故意あるいは不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

社員を懲戒する第二の目的は、懲戒対象となった社員ではなく、他の社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することにあります。

「社長を怒らせたら懲戒処分」というのでは、社員はいつも不安です。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

懲戒規定にない行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。

しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下するという実害が出ますので絶対に避けましょう。

 

<懲戒処分の準備不足>

まず、就業規則や雇用契約書などに具体的な懲戒規定を置かなければ、懲戒処分を行っても労働審判や訴訟で無効とされてしまいます。

懲戒処分は、あらかじめその内容を具体的に予告しておくことによって、社員に警告を発しておくことができるのです。

「常識外れなことをして会社に迷惑をかけたから減給処分」などと、大雑把なことはできないのです。

どういう規定なら具体的といえるかの基準としては、ある社員が不都合な行為を行ったときに、それがその規定に定める行為にあたるかどうか、社内で意見が分かれないということが目安になります。

つぎに、懲戒処分をするにあたっての手続き・手順が決まっていなければ、物事が進みません。

とくに、懲戒対象の社員には弁明の機会を与えなければなりません。

それ以前に、具体的な事実の確認も必要です。

何をどういう手順でどうやって懲戒処分にたどりつくのか、具体的なルールがなければなりません。

さらに、今まで社内でどのような不都合なことがあったか、会社はこれにどう対応したかの記録が残っていなければなりません。

懲戒処分は平等かつ公平でなければなりませんので、過去の事例との比較も重要になるからです。

 

<懲戒処分ができない社長>

懲戒処分の決裁権を持っているのは原則として社長です。

しかし、この社長が臆病で懲戒権を発動できないと困ります。

何をやっても許される会社になってしまい、モラルの低い社員しか残らなくなってしまいます。

社員が安心して働くためには、懲戒処分が必要なのです。

特に会社に対する貢献度の高い社員が独断で行動を起こし、会社に損害を与えてしまった場合には、社長としては大目に見ようと考えがちです。

これでは、他の社員の腹の虫がおさまりません。

懲戒処分をためらう社長は、社員の表彰をしていないことが多いように見受けられます。

表彰もするが懲戒もするという信賞必罰の方針でいけば、会社に対する貢献度の高い社員に対しては、何回か表彰し、時には懲戒処分ということもやりやすいと思います。

さらに、社長が臆病ではないのに懲戒処分をためらうケースがあります。

それは就業規則などの懲戒規定のバランスが悪いケースです。

たとえば、「セクハラをしたら懲戒解雇」という規定の会社では、ちょっと冗談を言っただけで解雇になりかねません。

こうした場合には、就業規則とその運用を見直す必要があります。

 

2022/11/22|1,253文字

 

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

本採用にするとき、働きぶりに見合った月給に引き下げるというのは、不利益変更禁止の原則があってむずかしいので、どうしてもこのようになります。

試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法第12条第3項第5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示してあれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、明らかに最低賃金法違反となります。

これは犯罪です。

この場合の所定労働時間は、給与計算に使う基準です。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法ですから、これもまた犯罪ということになります。

計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、173.8時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×173.8時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が173.8時間であれば、

150,000円÷173.8時間=863.06円

ですから、現在、最低賃金がこれを上回る都道府県では違法となってしまいます。

 

<固定残業代がある場合> 

 最低賃金法施行規則第1条が「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」については最低賃金額に算入されないと定めています。

これにより、月給から固定残業代を差し引いた金額を所定労働時間で割って、最低賃金を下回れば明らかに違法ということになってしまいます。

 たとえば、月間所定労働時間が173.8時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、 

150,000円=P+P÷173.8時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、 

残業代抜きの基本給が131,137円、20時間分の残業代が18,863円となります。 

すると、この場合には131,137円が最低賃金の基準となり、 

131,137円÷173.8時間=754.53円

ですから、現在はどの都道府県でも最低賃金を下回ってしまい違法であることがわかります。

 

<試用期間の特例>

試用期間中の者については、特別な許可を得て、最低賃金を下回る月給にすることができる建前です。

最低賃金の減額の特例許可を受けたい場合、使用者は最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

もっとも、許可基準は厳しいですから、まず許可されることはありません。

 

2022/11/21|1,322文字

 

<法令や判例の動向>

能力不足や問題社員であることを理由に、社員の給与を減額することについては、労働基準法や労働契約法などの労働法に規定がありません。

また、どのような場合に、どの程度まで給与の減額が許されるかという基準を示した判例もありません。

ただ、会社側が行った給与減額が不当であるとして、社員側が会社側に損害賠償を請求する民事訴訟を提起した場合には、個別の事案に則した判決が下されることになります。

この場合には、客観的に合理的な根拠を欠く減額により実際に支給された給与額と、あるべき給与額との差額が損害額として認定され、社員への支払命令が会社に下されることとなります。

 

<社内の基準>

法令や判例が具体的な基準を示していない以上、会社が独自に基準を設定し、この基準の運用によって、給与の減額が行われることになります。

会社側の恣意的な減額であるとの批判を避けるには、適正な人事考課制度の運用、賃金テーブルのある給与規程の存在と適用が必須となります。

 

<適正な人事考課制度の運用>

「能力不足」とはいうものの、能力そのものを直接評価することは困難です。

実際には、能力不足を強く推認させる事実の蓄積によって、能力不足を認定することになります。

この場合、入社して配属されたばかりの時期や、昇進を含め異動して一定の期間を経過していない時期にパフォーマンスが低い場合など、一律の基準を適用したのでは不合理とみられることもあります。

「問題社員」についても、「問題社員」であることそのものを認定するのではありません。

問題行動や問題となる態度といった事実の蓄積によって、問題性の程度が認定されます。

たとえば、ある社員がたびたび上司に反抗的な態度をとっている場合、事実の蓄積によって安易に「問題社員」と断定することは妥当ではありません。

その部署の何人かが、同じ上司に反抗的な態度をとっているような場合には、上司の側に原因があることも多いでしょう。

また、部下の1人が同僚をそそのかして、上司に反抗的な態度をとらせていることもありえます。

結局、社員に問題行動が見られた場合には、どのような事情があってそうした行動をとったのかを確認し、注意・指導を行うとともに適正な事実認定を行う必要があります。

 

<賃金テーブルのある給与規程>

給与規程に基づいて給与の減額を行った場合であっても、減額された金額に具体的な根拠がなく、経営者のさじ加減によって減額幅が決定されたものと疑われたのでは、給与規程の適正な運用とはいえません。

給与規程に、どのような評価が、どれだけの期間続いたら、何段階減額するといった適正な規定があり、賃金テーブルによって具体的な金額が明らかとなっていることが必要です。

 

<給与減額を可能とすることの必要性>

会社への貢献度が高い社員に対しては、納得のいく昇給をしてあげたいものです。

しかし、低成長時代の今、限られた賃金原資の中でやりくりするには、能力不足社員・問題社員の給与減額を考えざるを得ないこともあります。

こうした場合に備えて、労働基準法の定める減給の制裁の制限(労働基準法第91条)を超える給与減額を適正にてきるよう、体制を整えておいてはいかがでしょうか。

 

2022/11/20|1,291文字

 

<通勤手当の性質>

労働基準法などに、使用者の通勤手当支払義務は規定されていません。

むしろ法律上、通勤費は労働者が労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担するのが原則となっています。〔民法第485条〕

とはいえ、就業規則や雇用契約などで通勤手当の支給基準が定められている場合には、賃金に該当するとされています。〔昭和22年9月13日発基第17号通達〕

 

<就業規則の在り方>

たとえば、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【通勤手当】

第34条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合でも、その実費が支給されるものと解されます。

しかし、会社には遠回りのルートで通勤していることにして高い通勤手当を申請し、実際には近道のルートで通勤し実費との差額を着服していれば、この規定には反していることになります。

この場合、会社は差額の返金を求めることができますし、故意に行っていれば、懲戒処分の対象ともなりうる行為です。

もっとも、通勤に「要する」実費というのを厳密に解釈し、遠回りのルートでの通勤にかかる費用は、必ずしも通勤に「必要な」実費ではないという解釈も成り立つでしょう。

この点をより明確にしたいのであれば、次のように規定することも考えられます。

 

【通勤手当】

第〇〇条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。ただし、利用交通機関は、最も経済的でかつ合理的な最短順路のものとする。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合には、その実費を支給する必要はありません。

会社に対して、遠回りの通勤ルートでの通勤を前提とした通勤手当の申請をしても、それは「最も経済的でかつ合理的な最短順路のもの」ではないとして却下されます。

むしろこうした規定を置いた場合には、会社の方で通勤手段やルートを確定して従業員に提示し、これに優る通勤方法が無ければ、これで通勤手当の申請をするように求めるというのが効率的です。

 

<通勤手当の不正受給>

就業規則で「実費」を支給すると定めてあれば、電車通勤で申請しておいて、実際には徒歩や自転車による通勤をした場合には、通勤手当の全額が不正受給となりえます。

ただ、徒歩や自転車による通勤は健康増進の点で望ましいと考えるのであれば、「実費」の所を「一般的な経費」として定めておいて、支給してしまうことも可能です。

しかし、この場合には課税の問題が出てきます。

実際の不正受給で多いのは、勤務地の近くに転居したのに、会社への届出を怠っていて、従来の通勤手当を受給し続けるパターンです。

この場合には、もちろん差額の返金を求めることになりますが、通勤手当を着服する意図で会社への届出を怠っていた場合でも、直ちに返金した場合には、情状の点から懲戒処分を行うのは適当ではない場合が多いでしょう。

特に悪質であれば、譴責(けんせき)処分までは妥当な場合もあると考えられます。

 

2022/11/19|565文字

 

<雇用関係助成金支給のねらい>

厚生労働省は企業に対して、数万円~数百万円の多種多様な助成金を支給しています。

もともと厚生労働省などの行政機関というのは、立法機関である国会が作った法律を誠実に執行する義務を負っています。

しかし法律を執行するだけでは、なかなか思い通りの成果が現れないこともあります。

そこで雇用の分野を中心として、政府の政策に沿った努力をする企業に、助成金を支給することで、政策の推進を図ろうとしているのです。

たとえば、解雇しないで雇用し続ける努力、就職困難者を雇い入れる努力、職場環境を整える努力、社員の能力を向上させる努力などです。

 

<雇用関係助成金の財源>

助成金の財源は、雇用保険料です。

健康保険や厚生年金の保険料は、会社と労働者とで折半します。

しかし雇用保険では、会社の方が労働者より保険料が高いのです。

この高い分が、助成金の財源となっています。

ですから企業にとっては、「支給」というより「返金」ということになります。

 

<受給手続が面倒な理由>

厚生労働省がブラック企業に助成金を支給すれば問題視されますから、まず、会社の健全性がチェックされます。

そして助成金支給の基準に従った、政策の推進に役立つ活動があるかのチェックも行われます。

この二重のチェックのために、手続が簡単ではないのです。

 

2022/11/18|1,286文字

 

<労働者名簿の調査>

労働者名簿は、法定三帳簿の一つですから、労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入った場合には、当然に調査対象とされる機会は多いものです。

しかし、労働者名簿単独で調査対象とされることは少なく、むしろ他の目的があって、その手掛かりを探るために調査されることが多いのです。

労働者名簿単独でのチェックポイントとしては、法定の項目がきちんと書かれていて、労働者の入社から退職の3年後まで保管されているかという点になります。〔労働基準法第107条、労働基準法施行規則第53条〕

また、本籍やマイナンバーなど記入されていてはいけない項目もありますので、余計なものが入っていないかのチェックもありえます。

 

<未払い残業代の調査>

労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入った場合に、労働者名簿の中で全従業員に占める役職者の比率が高いと、役職を与えて管理監督者扱いにして残業代をカットしている可能性が疑われます。

この場合には、次に賃金台帳との照合が行われ、残業代支払い対象の役職者がピックアップされることになります。

そしてさらに、未払い残業代の計算という手順になります。

 

<社会保険未加入の調査>

年金事務所による調査では、労働者名簿の中の正社員比率と、社会保険の加入者数を比較して、正社員しか社会保険に加入させていないのではないかと疑われます。

この場合には、タイムカードや出勤簿で正社員以外の従業員の勤務実態が確認され、社会保険加入対象のパート社員などがピックアップされることになります。

そしてさらに、一人ひとりの加入日の特定や、未払い保険料の計算という手順になります。

 

<雇用保険関係の不正受給の調査>

ハローワークの調査では、雇用保険関係の給付を受けた人について、内定時期や入社日を確認するために、労働者名簿を調査することがあります。

この場合には、万一不正受給があったとしても、基本的には不正受給していた従業員が責められることになります。

そして、場合によっては、受給額の3倍が徴収されるということになります。

ただし、会社が従業員の不正受給に加担しうるケースでは、この点についての調査に発展する可能性もあります。

 

<労働安全衛生管理体制の調査>

労働基準監督署が労働安全衛生の面で監督に入った場合には、事務所や店舗ごとの人数から、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医の選任の要否がチェックされます。

同様に、安全委員会、衛生委員会の開催、健康診断結果報告の有無などがチェックされます。

この場合には、会社が法定の手続きなどをしているか、届出書類の控えの提示を求められることになります。

そしてさらに、委員会の議事録や健康診断個人別結果票の控えなどの確認という手順になります。

 

<必要な対応>

監督・調査について事前に予告があれば事前に、予告がなければ事後に社労士にご相談ください。

その場限りの対応をしてしまい、再調査が入ったときにガツンとやられるケースが多いようです。

やはり、ごまかすのではなく、長い目で見て会社が良くなるようにきちんとした対応をしたいものです。

 

2022/11/17|1,426文字

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことを欠勤控除といいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。

欠勤控除は、主に月給制の場合に問題となります。

ただし、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令に、欠勤控除を直接定めた規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働いてください。賃金を支払います」「働きます。賃金を支払ってください」という労使の合意によって成り立っているので、労働者が働かなければ賃金を支払わなくても良いという理論です。

こうして、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<時間単価の計算>

欠勤控除を考える場合、まず時間単価を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、時間単価となります。

このように、所定労働時間や所定労働日数は賃金の計算基準となるものですから、決めておかないと不都合を生じます。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

この不都合は、カレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を上回る場合に発生します。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設ける工夫が必要です。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない2月など、その月のカレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。

この場合には、減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料を賃金から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら賃金が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に細かく規定しておくことは稀でしょうから、会社と労働者とで話し合い決めればよいことです。

 

2022/11/16|1,395文字

 

<反社会的勢力との関わり>

平成19(2007)年6月19日、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団資金源等総合対策ワーキングチームでの検討を経て、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられました。

この指針にも支えられて、反社会的勢力の活動は下火となりつつあります。

また、お笑い芸人の反社会的勢力との関わりが発覚した事件を見ても、企業の所属メンバーが反社会的勢力と関わることによって、企業の信用低下を招くのは明らかです。

こうしたことから、各企業は、従業員が反社会的勢力との関わりを持たないよう予防策を講じる必要があります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、反社会的勢力との関わりを禁止する規定と、この禁止に違反した場合の懲戒規定をセットで置く必要があります。

 

禁止規定は、次の例のようになります。

 

【遵守事項】

第〇〇条  従業員は、以下の事項を守らなければならない。( 中 略 )

⑪暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

⑫反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

⑬その他当社従業員としてふさわしくない行為をしないこと。

 

また、懲戒規定は次の例のようになります。

 

【懲戒解雇】

第〇〇条 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇〇条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。( 中 略 )

⑨第〇〇条第11項、同条第12項に違反し、その情状が悪質と認められるとき。

⑩その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

<誓約書の提出>

就業規則を周知することによって、反社会的勢力との関わりを禁止することはできるのですが、すでに関わりをもった人物が新たに入社してくることを防止することはできません。

そこで、新人の入社にあたっては、次のような誓約書の提出を求めるようにします。

 

令和  年  月  日

〇〇〇〇 株式会社

代表取締役 〇〇 〇〇 殿

 

誓 約 書

 

貴社に採用されるにあたっては、下記の事項を遵守することを誓約いたします。

 

 

一、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

 

二、反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

 

以 上

 

氏名           印 

 

 

他にも誓約書の提出を求めている場合には、タイトルを「反社会的勢力の排除に関する誓約書」とすればよいでしょう。

 

<反社会的勢力と関わった従業員の解雇>

上記の就業規則や誓約書は、主に反社会的勢力との関わりを防止するための対策です。

実際に、従業員が反社会的勢力との関わりをもっていることが判明した場合には、安易に懲戒解雇などすることは危険を伴います。

地域の警察、暴力追放運動推進センター、弁護士会などに相談しながら、慎重に対応することをお勧めします。

 

2022/11/15|1,187文字

 

<雇用保険の求職者給付>

雇用保険では、労働者が失業した場合に必要な給付が行われます。

その代表は、「失業手当」と呼ばれることが多い求職者給付です。

一般にはあまり知られていませんが、この求職者給付は、仕事を辞めた時(離職時)の年齢により2種類に区分されています。

 

<65歳未満の基本手当>

離職時の年齢が65歳未満の一般の加入者(一般被保険者)は、離職時に一定の条件を満たしていれば、ハローワークで手続きすることによって、求職者給付を受けることができます。

これを基本手当といいます。

一定の条件というのは、離職日前2年間に雇用保険加入期間が12か月以上あることです(離職理由によっては1年間に6か月以上の例外あり)。

この場合、離職の理由、離職時の年齢、雇用保険の加入期間(算定基礎期間)によって、所定の給付日数(90日~360日)が決まり、1日につき何円という計算で、定期的に給付を受けます(原則として4週間ごと)。

 

<65歳以上の高年齢求職者給付金>

65歳以上の加入者(高年齢被保険者)が離職した場合には、この求職者給付が一時金で支給されます。

これを高年齢求職者給付金といいます。

これを受給する条件は、離職日前1年間に雇用保険加入期間が6か月以上あることです。

この場合、加入期間が1年未満なら30日、1年以上であれば50日の給付日数に相当する金額の給付金が、一括で支給されます。

しかも、年金との併給ができます。

 

<循環的離職者の問題>

循環的離職者とは、「過去3年以内に3回以上同一の事業所に連続して就職し、かつ、その間に1回でも求職者給付を受けたことがある者」をいいます。

循環的離職者が、同一の事業所に就職した場合には、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして、本人だけでなく事業主も共謀して不正受給したものとされる場合があります。

高年齢求職者給付金では、受給の条件が、「雇用保険加入期間が6か月」と比較的短期間であるため、こうしたことが発生しやすいといえます。

 

<法改正による問題の拡大>

雇用保険に加入している労働者は、65歳を迎えても雇用保険に加入したままです。

そして、65歳に達してから離職してしまうと、再就職しても雇用保険に加入しないというのが法改正前のルールでした。

ところが、平成29(2017)年1月1日に雇用保険法が改正され、65歳以上で再就職しても、一定の条件を満たせば雇用保険に加入するルールに変更されたのです。

これによって、以前は一生に1回しか受けられなかった高年齢求職者給付金を、何回も受けられるようになったのです。

こうして、一般の加入者に見られた循環的離職者の問題は、むしろ65歳以上の加入者について大きくなってしまいました。

 

受給資格や雇用保険への加入条件などについては、多数の例外があります。

詳細はお近くのハローワークでご確認ください。

 

2022/11/14|1,014文字

 

<ガイドラインができた理由>

障害基礎年金や障害厚生年金などの障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されています。

しかし、精神障害や知的障害の認定で、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。

こうしたことを踏まえ、精神障害や知的障害の認定が障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」で、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。

この専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害と知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が策定され、平成28(2016)年9月1日から実施されています。

 

<等級判定の標準的な考え方を示したガイドライン>

精神障害と知的障害の障害年金の認定に地域差による不公平が生じないよう、 障害の程度を診査する医師が等級判定する際に参考にする全国共通の尺度と して、以下を盛り込んだガイドラインが策定されました。

・診断書の記載事項を踏まえた「等級の目安」

・総合的に等級判定する際の「考慮すべき要素」の例示

今後は、障害認定基準とこのガイドラインに基づいて、等級判定を行います。

 

<診断書(精神の障害)の記載要領>

障害年金請求者や受給者の病状と日常生活状況を適切に診断書へ反映するために、診断書を作成する医師向けに、診断書の記載時に留意すべきポイントなどを示した記載要領が作成されました。

 

<請求者等の詳細な日常生活状況を把握するための照会文書>

障害の程度を診査する医師が、障害年金請求者や受給者の詳細な日常生活状況を把握するために、 請求者等へ照会する際に使用する文書(「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」)が作成されました。これによって、主な照会事項が整理されました。

 

<年金請求をする人が心がけること>

障害年金を請求しようとする場合には、医師が正確に判断できるよう、普段の生活ぶりなどについて、具体的な様子をていねいに伝える必要があります。

しかし、判断するのは医師の権限です。

ご自分で年金を請求する場合でも、社会保険労務士が代理して行う場合でも、このことは忘れないようにしましょう。

 

2022/11/13|1,916文字

 

<同一労働同一賃金の説明>

「同一労働同一賃金」という言葉を素直に読めば、「同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払う」という意味にとれます。

ところが、同一労働同一賃金について、厚生労働省は次のように説明しています。

 

【同一労働同一賃金とは】(厚生労働省ホームページより)

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 

「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、雇用形態間の不合理な待遇差を問題視しています。

 

<改正前の法律の規定>

また、同一労働同一賃金について以前から規定していた、労働契約法改正前の第20条は、次のように規定していました。

 

【期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止】

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

こちらにも、「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、有期契約と無期契約とで不合理な待遇差はいけないといっています。

 

厚生労働省の説明と労働契約法改正前の第20条を合わせると、契約形態や雇用期間の有無の違いによって、不合理な待遇差があってはならないといっているのです。

 

<働き方改革関連法>

「パートタイム労働法」は、法改正により「パートタイム・有期雇用労働法」となり、令和2(2020)年4月1日から施行(中小企業は令和3(2021)年4月1日から適用)されました。

これによって、短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。

そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わりました。

この中には、「同じ仕事をしている」場合についての規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

つまり、「同じ仕事をしている」のであれば、正社員、パート社員、契約社員という契約形態の違いにかかわらず、待遇を差別せず平等にしなさいとしています。

ここでやっと「同一労働同一賃金」という言葉に対応する規定が現れました。

一方で、労働契約法改正前の第20条に相当する規定も、そのまま残されています。

 

<同一労働同一賃金の意味>

こうして見ると、「同一労働同一賃金」という言葉には、次の2つの意味が含まれていることがわかります。

 

均等待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が同じであれば、同じ待遇にする。

均衡待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が違えば、その違いに応じてバランスの取れた待遇にする。

 

均等待遇は、同じ仕事なら同じ待遇にするという「平等」の考え方です。

均衡待遇は、違う仕事なら違いに応じた合理的なバランスを保った待遇にするという「公平」の考え方です。

「平等」と「公平」を両方含む概念は、「公正」でしょう。

だとすれば、「同一労働同一賃金」は「公正待遇」と呼んだ方がわかりやすいでしょう。

各企業は、不平等や不公平の無い「公正待遇」の実現を目指して変革を遂げるよう迫られているのです。

 

2022/11/12|879文字

 

<新人を大切にしたい思い>

せっかく正社員として採用した新人が、今一つ自主性が足りないとか、仕事の覚えが悪いとか、試用期間が終わっても本採用に踏み切れないときがあります。

こんなとき、本人と相談して、試用期間をあと1か月だけ延長して様子を見たらどうでしょう。

社員に優しい、新人を大切にする会社でしょうか。

 

<労働法の世界では>

求人広告に「試用期間3か月」と書いてあったのに、実際には1か月延長して4か月になったなら、その求人広告はブラック求人とされても反論できません。

就業規則に「3か月の試用期間の後、本採用とする」と書いてあったのに、4か月に延長したら、ブラック企業と言われるかもしれません。

試用期間延長の話のときには喜んで同意した人でも、試用期間を延長したあげく、本採用にならなかったら、家族や労基署に相談するかもしれません。

おそらく試用期間と本採用後では、給与などの処遇にも差があるでしょうから、試用期間の延長は、それだけを見ると労働者に不利益な扱いです。

こんなとき、労働法の世界では、「本人の同意」は原則として効力を否定されてしまいます。

 

<それでも延長したいなら>

就業規則には「試用期間経過後に本採用の条件を満たしていない場合には、会社から試用期間の延長を提案することができ、本人の同意のもと最大6か月間にまで延長できるものとする」という規定を置いておけば、このルールに基づく延長であると説明できます。

もっと大事なのは、「本採用の条件」を書面で明らかにしておくことです。

たとえば、一般事務であれば「次の条件を満たしていない場合には、本採用としない。1.他の社員との人間関係を悪くしないこと。2.合理的な理由のない遅刻・欠勤がないこと。3.電話応対が不適切でないこと。」といった内容を、説明のうえ新人に渡しておきます。

そして、1か月後、2か月後にできているかどうか、面談をして確認します。

ここまでして試用期間終了のかなり前に、「これができていないので、試用期間を延長したいがどうか」という提案をすれば、結果的に本採用に至らなくてもあきらめがつくでしょう。

 

2022/11/11|608文字

 

<実質的には短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法第21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法第20条〕

とはいえ、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とする/しないの判断が必要となります。

遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

2022/11/10|1,192文字

 

障害者手帳は都道府県単位で、障害年金は国の仕組みですから、相互に連動していません。

 

<障害者手帳>

障害者手帳には、身体障害者手帳、精神障害者福祉保健手帳、療育手帳の3つがあります。

こうした手帳を持っていることで、様々な福祉サービスを受けることができます。

また、仕事探しのときには、障害者雇用枠への応募が可能です。

障害者雇用率が段階的に引き上げられていることにより、企業も障害者の雇用には積極的にならざるを得ません。

 

<障害年金受給の基本3要件>

障害者を採用するにあたっては、障害年金の受給を前提に給与水準を考えてしまうこともあります。

しかし、障害者手帳を持っているからといって、障害年金を受給する資格があるとは限らないのです。

障害年金を受けるには、基本的に初診日、保険料の納付、障害の状態についての3要件を満たしていることが必要です。

 

【初診日要件=初診日が被保険者期間等にあること】

障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの期間にあること

① 国民年金または厚生年金に加入している期間(被保険者期間)

② 20 歳前または 60 歳以上 65 歳未満で国内に居住している期間

原則として、初診日が国民年金加入期間にあれば障害基礎年金、厚生年金加入期間にあれば障害厚生年金に振り分けられることになります。

初診日が不明であれば、この振り分けができないことになります。

 

【納付要件=保険料の納付要件を満たしていること】

次の①または②を満たしていること

① 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること

② 初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納期間がないこと(初診日が2026年4月1日前の場合の特例)

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

保険料を支払う経済的な余裕が無ければ、保険料の免除を受ければ良いわけです。何も手続きをしないうちに障害者になってしまうと、この納付要件を満たさないことがあります。

 

【障害要件=一定の障害の状態にあること】

① 障害認定日に、障害の状態が法令で定める障害の程度(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級~3級)に該当すること

② 障害認定日後に、障害の程度が増進し、65 歳になるまでに障害の状態が法令で定められた状態に該当すること

障害認定日は、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月をすぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。

症状が固定することを、治癒(ちゆ)と言うことがあります。

障害基礎年金では、3級の障害には年金が支給されません。

 

2022/11/09|461文字

 

<本来は労働者のための労災保険制度>

労災保険は、労働者の業務や通勤による災害に対して、保険給付を行う制度です。

しかし、労働者ではなくても、その実態から労働者に準じて保護すべきであると認められる人は、特別に任意で加入できることになっています。

これが、特別加入制度です。

中小企業の事業主・代表者は、一人で何役もこなしていて、その業務内容が一般の労働者と重なる部分が多いものです。

そこで、労働者に準じて保険に加入できるようになっているのです。

 

<中小事業主等の範囲>

つぎの表の労働者を常時使用する事業主・代表者、または、その事業に従事する家族従事者や代表者以外の役員などが対象です。

業種

企業全体の労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下

その他の業種

300人以下

 

<初めて特別加入をする場合の条件>

つぎの3つが加入の一般的条件となります。

・雇っている労働者について、労災保険が適用されていること。

・労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。

・所轄の都道府県労働局長の承認を受けること。

 

2022/11/08|961文字

 

<厚生労働省のモデル就業規則のねらい>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)には、次のような説明があります。

 

【モデル就業規則の活用に当たって】

このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、令和2年11月現在の関係法令等の規定を踏まえ就業規則の規程例を解説とともに示したものです。本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。

 

モデル就業規則の各規定の内容を十分検討して、各事業場の実態に合ったものとすれば、労基法などの規定に基づいた就業規則が完成します。

 

<年俸制とは>

プロ野球の選手のように、年1回、社員と会社とが交渉して、たとえば4月から翌年3月までの年俸を決めることは可能です。

会社の業績と社員の働きぶりを踏まえて、期待できる内容に見合った金額とするわけです。

このとき、年俸はすべて込みの報酬だと誤解されがちです。

決まった金額さえ支払えば、残業代などは発生しないというのは誤解なのです。

プロ野球の選手とは違い、サラリーマンには労基法などが100%適用されます。

当然ですが、年俸制にすれば労基法を無視できるということはありません。

残業手当、休日出勤手当、深夜手当の支払が必要である一方、欠勤すれば欠勤控除をすることも可能です。

「年俸制の社員が休日にケガをして長期入院してしまった。年俸を下げてはいけないのか?」という心配は無用です。

これらのことは、就業規則に定めておけばよいのです。

一定の時間・金額の残業代を年俸に含めるということも、正しいルールの設定と運用の下で可能となります。

 

<結論として>

年俸制については「プロ野球の選手と同様」という勘違いがかなり多いのです。

また、具体的にルールを作ろうとすると、各事業場の実態に合ったものとすることが簡単ではありません。

こうしたことから、モデル就業規則の中に、年俸制についてのモデル例と解説を加えることは、かえって混乱を招くともいえます。

今現在、年俸制を導入している企業や、これから導入を検討している企業では、規定だけでなく運用についても、弁護士か社労士のチェックを考えていただきたいと思います。

 

2022/11/07|837文字

 

<様式変更>

協会けんぽより、各種申請書類の新様式が公表されています。

令和5(2023)年1月以降に、旧様式で申請すると、事務処理等に時間がかかることがあるため、協会けんぽは注意を呼びかけています。

変更の理由は、より分かりやすくすること、より記入しやすくすること、より迅速に給付金を支払うこと等を目的としています。

文字の読み取り精度を高め、より迅速に事務処理を行うため、マス目化した記入欄が増えています。

わかりやすい記入方法とするため、一部の記入欄は、記述式から選択式になりました。

 

<傷病手当金支給申請書の例>

たとえば、よく使われる傷病手当金支給申請書では、マス目化や選択式への変更の他、「被保険者記入用」の傷病名・初診日に関する記入欄は、「療養担当者記入用」と同じ傷病での申請であるか否かのチェックを入れるのみとなっています。

同様に、「被保険者記入用」の傷病手当金申請期間に受けた報酬に関する記入欄は、「事業主記入用」に記入されている内容のとおりであるか否かのチェックを入れるのみとなっています。

さらに、受取代理人に関する記入欄、給与の種類や賃金計算、賃金計算方法(欠勤控除計算方法等)を記入する欄は削除されています。

 

<変更となる主な様式>

様式を変更する主な申請書(届出書)は次の通りです。

 

○健康保険給付関係

・傷病手当金支給申請書

・療養費支給申請書(立替払等)

・療養費支給申請書(治療用装具)

・限度額適用認定申請書

・限度額適用・標準負担額減額認定申請書

・高額療養費支給申請書

・出産手当金支給申請書

・出産育児一時金支給申請書

・出産育児一時金内払金支払依頼書

・埋葬料(費)支給申請書

・特定疾病療養受療証交付申請書

 

○任意継続関係

・任意継続被保険者資格取得申出書

・任意継続被保険者被扶養者(異動)届

・任意継続被保険者資格喪失申出書

・任意継続被保険者氏名 生年月日 性別 住所 電話番号変更(訂正)届

 

○被保険者証等再交付関係

・被保険者証再交付申請書

・高齢受給者証再交付申請書

 

2022/11/06|1,416文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(令和3(2022)年4月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  

前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。

ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても定められた日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<退職承認後の退職日変更>

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、この時点で労働契約の合意解除が成立しています。

ところが、早く転職先に入社したい、早く失業手当(雇用保険の基本手当)をもらいたいなどの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したくなることもあります。

また、転職先から内定の取消を受けたり、思うように転職先が見つからなかったりすれば、退職願の退職日よりも遅く退職したくなることも、退職を撤回したくなることもあります。

こうして、従業員側から「退職日を早めたい」「退職日を遅らせたい」「退職を撤回したい」という要求が出たとしても、会社はこれに応じる義務がありません。

労働契約の合意解除は既に成立しているからです。

しかし、会社がこれに応じることは自由ですし、退職願の退職日とも従業員の退職希望日とも異なる新たな退職日を合意して決定することもできます。

こうしたことは、一般には就業規則に規定されていないのですが、労働契約の合意解除も、合意による変更も、労働基準法などに規制する規定が無いので、契約自由の原則から当然に認められることなのです。

 

<民法と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。

また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。〔民法第627条第2項〕

実際の就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもあります。

これは、退職日や最終出勤日、引き継ぎなどについて、労使で話し合って決める合意退職を想定した規定です。

ですから、より早く退職したい労働者から、民法の規定を持ち出されると反論できません。

民法の趣旨からすると「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないともいえるのです。

 

2022/11/05|776文字

 

<資格喪失手続きを忘れる原因>

所定労働時間が週20時間以上であることが、雇用保険の資格を取得する条件となります。

ですから、週3日、1日6時間勤務のパート社員が、週4日勤務になれば、雇用保険に入ることになります。

このように、資格を取得するときの手続きを忘れることはあまりないでしょう。

しかし、雇用保険の資格喪失となると、雇用保険の離職=退職というイメージが強いので、退職したときだけ資格喪失を意識しがちです。

ところが、所定労働時間が週20時間未満となったときも、資格喪失手続きが要るのです。

こちらは忘れやすいのです。

もう一つ、労働者と兼務していた役員が、100%役員になった場合にも、雇用保険の資格を喪失します。

今まで、給与と報酬の両方をもらっていた役員が、報酬だけになるときは要注意です。

雇用保険の資格喪失手続きを忘れられた本人にとっても、雇用保険料は社会保険料よりもはるかに安いので、給与明細書を見たときにピンと来ないと思います。

 

<本人について>

所轄のハローワークで、さかのぼって資格喪失手続きを行います。

このとき、「遅延理由書」という書類の添付を求められるかもしれませんので、事前に相談しておくことをお勧めします。

また、ご本人に給与から控除してしまった保険料の返金を行います。

念のため、計算書と領収証を作ったほうがよいでしょう。

 

<会社の負担した保険料について>

労働保険料の支払いは、毎年7月の年度更新で行います。

間に合うのなら、データを修正して余計な保険料を支払わないようにしましょう。

しかし、確定保険料を多く計算して年度更新を済ませてしまった場合には、手続きをやり直して返金してもらうのは、返金してもらう金額と必要な時間や労力を比較すると得策ではありません。

それよりは、再発防止のためにマニュアルを改善しておくことのほうを強くお勧めします。

 

2022/10/04|919文字

 

<マイジョブ・カード>

令和4(2022)年10月26日、厚生労働省が、ジョブ・カードのデジタル化に向けて、新たなウェブサイト「マイジョブ・カード」を公開しました。

ジョブ・カードは、個人のキャリアプランや職務経歴を記録し、求職活動や能力開発に役立てるもので、これまで、紙または電子媒体で作成・保存することができました。

今回公開されたウェブサイトでは、オンライン上でジョブ・カードを作成・管理ができるようになりました。

また、マイナポータルからシングルサインオンできるほか、ハローワークインターネットサービスやjob tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))と連携し、登録情報の活用や、職業情報やキャリア形成に役立つ情報取得ができるようになりました。

 

<採用強化・マッチング向上>

ジョブ・カードを応募書類として活用すると、職業能力や強みなどが決められた様式によって得ることができるため、ミスマッチ防止や採用後の定着につながります。

ただし、応募書類として活用されるジョブ・カードの情報は労働者本人の意思により提出されるものです。

本人の意思に反して提出を求めることはできません。

 

<人材育成・人事評価>

ジョブ・カードの活用やセルフ・キャリアドックの導入により、定期的なキャリア開発や職業能力開発が実現できます。

若手・中堅社員の研修制度が整備されていない企業でも、計画的な人材育成と能力評価が可能になります。

 

<社員のモチベーションアップ・定着促進>

キャリア研修やキャリアコンサルティングなど、キャリア形成支援を行うことで、今後のキャリアパスを見通し、今の仕事の意味や価値を理解することができます。

仕事や能力開発への意欲を高め、定着を促進する効果が期待できます。

 

<解決社労士の視点から>

ジョブ・カードは、採用から人材育成、人事評価、適正配置など、人事の様々な場面で活用でき、従業員ひとり一人の持てる力を最大限に発揮することができます。

ただし、ジョブ・カードを利用する/しないは個人の自由です。

企業としては、「ジョブ・カードを利用し情報を提供すれば、計画的な人材育成に活用します」というアピールをすることによって、利用を促すのが得策でしょう。

 

2022/11/03|596文字

 

<結論として>

勤務時間に見合った通常の給与を支払えば、休職者の意思に反して勤務させるのでない限り違法ではありません。

たしかに、ノーワーク・ノーペイの原則から、会社は休職中の給与を支払う義務がありません。

しかし、休職中に必要があって勤務した場合には、その勤務時間に見合った通常の給与を支払わなければなりません。

 

<休職者の合意の有無>

育休中の勤務のように、事前にある程度出勤の予定が立てられる場合には、会社と休職者とで話し合って、出勤日や時間を予定することができます。

この予定に従って勤務してもらう分には、休職者の事前の合意があるので、原則として問題がありません。

しかし、会社側が急な必要を感じて、休職者に出勤を要請する場合には、休職の趣旨から当然に休職者の合意が必要と考えられます。

 

<法の規定>

たとえば、雇用保険の育児休業給付金では、就業している日数が支給単位期間(1 か月ごとの期間)ごとに10 日(10 日を超える場合は就業していると認められる時間が80 時間)以下であることが、支給要件とされています。

つまり、育児休業中であっても、ある程度の勤務は想定の範囲内とされていることになります。

ただ、健康保険の傷病手当金や出産手当金などでは、報酬の一部を受けることができる場合の差額支給のルールが定められています。

この場合には、休職者に不利とならないように勤務してもらう配慮が必要でしょう。

 

2022/11/02|1,847文字

 

<労働基準法の規定>

年次有給休暇を付与した場合は、①平均賃金、②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金、③健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額(1の位は四捨五入)のいずれかの方法で支払わなければなりません。

ただし、③については労働者代表との書面による協定が必要です。

また、これらのうち、いずれの方法で支払うのかを就業規則等に定めなければなりません。〔労基法第39条第7項〕

この①~③の中で、最も多く用いられているのは②の方法で、就業規則に次のような規定が置かれているのを目にします。

 

【年次有給休暇の賃金】

第〇条  年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。

 

ここで「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

 

<通勤手当の問題>

「通常の賃金」の中に通勤手当は含まれるのでしょうか。

一般には、通常の出勤・勤務を想定した賃金ですから、通勤手当も含まれます。

特に、月給制で1か月定期代を前払いで支給しているような場合には、一部分だけ定期代の払い戻しを受けることができませんから、通勤手当を削るのは不合理です。

ある会社で、年次有給休暇を取得した場合に精皆勤手当を不支給とする就業規則について、裁判で争われました。

裁判所は、こうした就業規則は「労働者が現実に出勤して労働したことの故に支払われる実費補償的性格の手当でない限り、年休制度の趣旨に反する」と述べています(大瀬工業事件 横浜地判昭和51年3月4日)。

ということは、「実費補償的性格の手当」であれば、年次有給休暇取得日に不支給とすることも制度趣旨に反しないことになります。

たとえば、就業規則で通勤手当の支払いについて「実費を後払い」と規定しているような場合には、「実費補償的性格の手当」と考えられますので、実際の出勤日数に応じた通勤手当を支給することにも十分な合理性があります。

いずれにせよ、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の通勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<夜勤がある場合>

毎週特定の曜日に夜勤があって、夜勤手当が付いている場合、この日に年次有給休暇を取得すると、夜勤手当も支給されるのかという問題があります。

しかし、「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

やはり夜勤手当を付けて計算するのが、一般的には合理的でしょう。

ただ、当日誰か別の人が夜勤に入り、後日、その埋め合わせで、いつもと違う曜日に夜勤に入ったとすると、夜勤予定日に年次有給休暇を取得したとき1回多く夜勤手当をもらうことになります。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で個人ごとに夜勤が割り当てられるような場合には、話がもっと複雑になります。

こうした場合にも、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の夜勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<日によって労働時間が違う場合>

パート社員などでは、特定の曜日だけ所定労働時間が長い雇用契約の人もいます。

いつもその曜日に年次有給休暇を取得すれば、給与の支給額が増えて「お得」ということになります。

本人が特定の曜日ばかり時季指定をしても、これを不当として使用者が時季変更権を使うことはできません。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で月に何回か所定労働時間の長い日があるということになると、話がもっと複雑になります。

こうした場合には、所定労働時間の加重平均で年次有給休暇の賃金を計算することにも、それなりの合理性があると思われます。

法令に規定の無い、変則的な内容を就業規則に定める場合には、所轄の労働基準監督署と相談のうえ、内容を決定することをお勧めします。

 

<平均賃金という方法>

上記に現れた変則的なケースでは、「②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金」ではなく「①平均賃金」で計算することを、就業規則や労働条件通知書に規定しておいた方が妥当な場合もあります。

これによってトラブルは防げるのですが、残業手当が多い場合には、「①平均賃金」が「②通常の賃金」を大きく上回る恐れもあります。

また、過去3か月の平均値を計算する手間もかかりますから、給与計算を担当する人との話し合いも必要でしょう。

 

2022/11/01|1,152文字

 

<監督指導結果の公表>

東京労働局は、令和4(2022)年10月28日に、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめ公表しました。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等についての労災請求が行われた事業場を対象としています。

この中で、指導結果のポイントが次のように示されています。

 

【令和3年4月から令和4年3月までの監督指導結果のポイント】

一、監督指導の実施事業場: 3,458 事業場

二、主な違反内容

[一、のうち法令違反があり「是正勧告書」を交付した事業場]

1 違法な時間外労働があったもの: 1,325 事業場(38.3%)

 うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

  月 80 時間を超えるもの: 471 事業場(35.5%)

   うち、月 100 時間を超えるもの: 323 事業場(24.4%)

   うち、月 150 時間を超えるもの: 80 事業場( 6.0%)

   うち、月 200 時間を超えるもの: 28 事業場( 2.1%)

2 賃金不払残業があったもの: 358 事業場(10.4%)

3 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 840 事業場(24.3%)

三、 主な健康障害防止に関する指導の状況

[一、のうち健康障害防止のため「指導票」を交付した事業場]

1 過重労働による健康障害防止措置が

 不十分なため改善を指導したもの: 1,669 事業場(48.3%)

2 労働時間の把握が不適正なため指導したもの: 830 事業場(24.0%)

 

<「是正勧告書」の交付>

「是正勧告書」は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの罰則に触れていると思われる事実が見つかったときに、その是正と報告を求める文書です。

是正勧告は行政指導ですから、不服申立のようなことはできません。

本来であれば、是正勧告書を交付せず、いきなり逮捕・書類送検も可能なのです。

しかし、労働法の罰則に触れることが犯罪ではあっても、刑法犯とは異なり認知度が低いためにワンクッション置いて、是正の機会を与えているものと考えられます。

 

<「指導票」の交付>

「指導票」は、罰則には触れないと思われるものの、厚生労働省のガイドラインに沿っていないなど問題となる事実が見つかると、その改善と報告を求める文書です。

指導はまさに行政指導なのですが、是正勧告書で指摘された事項と異なり、指導票で指摘された事項は違法というわけではなく、直ちに是正が求められるという内容ではありません。

無理のない範囲で是正し、時間を要する項目については、改善計画を提出することになります。

 

2022/10/31|923文字

 

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。

こうして、新人の入社の時にあらゆる同意書を書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

このような不合理な結果を考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を保護することです。

労働者自身の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養から外れてしまうので受け取りを辞退します」という申し出があったとします。

店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。

しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら、権利が時効消滅していない限り拒めません。〔労働基準法第24条第1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。

それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら、権利が時効消滅していない限り会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、ある意味で会社に束縛されています。

しかし、退職すれば自由になります。

そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです

 

2022/10/30|773文字

 

<労働法の実体>

「労働法」という名前の法律があるわけではありません。

労働に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。

その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった労働条件も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければならないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、労働契約の内容を全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間労働など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

こうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法が存在するのです。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

法律というのは、不合理ですが、その法律を知っている人の役に立つのですが、知らない人の役には立ちません。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2022/10/29|1,255文字

 

<自殺総合対策大綱>

令和4(2022)年10月14日、政府は自殺対策の指針として新たな「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」を閣議決定しました。

自殺総合対策大綱は、平成18(2006)年に成立した自殺対策基本法に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として定めるものです。

この中で、これまでの取り組みの成果と、近年の傾向について、次のように述べられています。

平成18(2006)年と令和元(2019)年の自殺者数を比較すると、男性は38%、女性は35%減少しており、これまでの取り組みに一定の成果があったと考えられます。

一方で、依然として自殺者は年間2万人を超える水準で推移しており、コロナ禍で女性は2年連続の増加、小中高生は過去最多の水準になるなど、今後対応すべき新たな課題も顕在化してきました。

 

<新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえた対策の推進>

自殺総合対策大綱には、新型コロナウイルス感染症拡大と自殺との関係・対策について、次のように述べられています。

社会全体のつながりが希薄化している中で、新型コロナウイルス感染症拡大により人との接触機会が減り、それが長期化することで、人との関わり合いや雇用形態を始めとした様々な変化が生じている。その中で女性や子ども・若者の自殺が増加し、また、自殺につながりかねない問題が深刻化するなど、今後の影響も懸念される。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響は現在も継続しており、その影響について確定的なことは分かっていない。そこで引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の自殺への影響について情報収集・分析を行う必要がある。

また、今回のコロナ禍において、様々な分野でICTが活用される状況となった。今回の経験を生かし、今後、感染症の感染拡大が生じているか否かを問わず、国及び地域において必要な自殺対策を実施することができるよう、ICTの活用を推進する。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、特に、自殺者数の増加が続いている女性を含め、無業者、非正規雇用労働者、ひとり親や、フリーランスなど雇用関係によらない働き方の者に大きな影響を与えていると考えられることや、不規則な学校生活を強いられたり行事や部活動が中止や延期となったりすることなどによる児童生徒たちへの影響も踏まえて対策を講じる必要がある。

さらに、新型コロナウイルス感染症罹患後の実態把握を進める。

 

<解決社労士の視点から>

新型コロナウイルス感染症の影響について、確定的なことは分かっていません。

しかし、感染症拡大防止対策の影響により、メンタルヘルス不調者や自殺者が増加したのではないかという推測が言われています。

コロナ関連の直接・間接のストレスに、業務によるストレスが重なって、メンタルヘルス不調となる従業員が増加していることも、容易に推測できます。

会社としては、メンタルヘルスを含めた健康チェックと、過重労働などによるストレス増加の防止に努める他ありません。

 

2022/10/28|1,284文字

 

そもそも会社の中で、性的な言動は仕事に全く必要ないのです。そんなもの潤滑油の働きもしません。徹底的に排除すべきです。

 

<セクシュアルハラスメントとは>

相手に不快感を与える性的な言動は、その相手の性別に関係なく、また、直接的な身体接触によるものだけではなく、言葉によって行われるものも、セクシュアルハラスメントとなります。

「相手の性別に関係なく」というのは、男性同士でも女性同士てもダメなものはダメということです。

さらに、わいせつな行為を強要したり、相手の名誉や社会的信用を傷つけたりすれば、犯罪として刑法上の責任が問われることがあります。〔刑法第176条、第230条など〕

そして、被害者に対する損害賠償責任を発生させることにもなります。〔民法第709条〕

男女雇用機会均等法は、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しないよう、事業主が積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務付けています。

防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否したことなどを理由に、職場で不利益な取扱いをする「対価型」だけでなく、性的な言動などによって職場環境を悪くする「環境型」のセクシュアルハラスメントも含まれます。

「対価型」というのは、直接の被害者が加害者の喜ぶ対応をすれば利益を与え、加害者が不快に思う対応をすれば不利益を与えると考えれば理解しやすいでしょう。

また、「環境型」というのは、直接の被害者が働きにくくなり就業環境が侵害される他、加害者の行為を見聞きした間接的な被害者の就業環境も侵害されることがあるセクシュアルハラスメントです。

 

<事業主の責任>

事業主は、このようなセクシュアルハラスメント行為に対して厳正に対処すること、被害を受けたときの相談窓口があることなどについて、あらかじめ管理職を含む労働者に知らせておき、もし被害の申出があったら、適切な調査と対応をすることが義務付けられています。

このように職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」では済まないものです。

適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局など)による助言・指導などが行われます。

 

<被害者の権利>

被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対しても、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義務違反として、損害賠償を請求することができます。〔民法第715条、第415条〕

セクシュアルハラスメントについては、事業主の責任を踏まえて、社内で解決することが望ましいといえます。

ですから、まずは社内の相談窓口や上司に相談することです。

もちろん、上司からの被害であれば、上司の上司に相談すべきです。

しかし、セクシュアルハラスメント問題について、会社が適切な対処をしてくれないときは、国の行政機関(東京労働局雇用均等室)や専門家(弁護士、社労士)などに相談してください。

特に、被害者が退職させられる異動させられるというのは不当な扱いなのですから、被害者を増やさないためにも無理のない範囲で行動していただけたらと思います。

 

2022/10/27|976文字

 

<法律の規定>

健康保険法には次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

 

厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

 

こうして社会保険料、つまり健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。

ただし、たとえば建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。

それでも、厚生年金保険料は労使折半です。

 

<事業主の負担額>

こうした法律の規定にもかかわらず、福利厚生の一環で、社会保険料を会社が全額負担してはどうかという提案が出てくることもあります。

たとえば、本来の月給の総支給額が30万円の従業員が負担すべき社会保険料は、約4万5千円です。会社も同額を負担しています。

従業員が負担すべき保険料を会社が負担した場合、この約4万5千円は従業員の所得となります。

すると、この従業員の総支給額は約34万5千円に増額されますから、これに対する社会保険料は約5万1千円です。

こうして、この従業員の総支給額は約35万1千円に増額され、これに対する社会保険料は約5万4千円となって、最終的にこの従業員の総支給額は約35万4千円となります。

総支給額が約35万1千円と約35万4千円とは、社会保険料を決める保険料額表で同じ等級に含まれますから、総支給額は約35万4千円、社会保険料は約5万4千円となって、ここで計算が落ち着きます。

本来は労使折半の社会保険料を、会社が全額負担するということは、会社の負担が約4万5千円から約10万8千円に増額されることを意味します。

 

<税金の処理>

従業員の保険料相当額は、給与課税の対象となります。

給与が30万円から約35万円に大幅昇給したのですから、課税額も大幅に増額されます。

 

こうしてみると、社会保険料を全額会社負担にするというのも面倒なものです。

それでも、全額会社負担を考えたいのであれば、給与計算を担当する部署や、所轄の税務署などと十分打合せのうえ、実施に踏み切ることをお勧めします。

 

2022/10/26|2,266文字

 

<ジタハラとは>

仕事と生活のバランスが取れるようにし生産性を向上させるため、働き方改革の一環として労働時間の削減が推進されています。

ところが、会社によって労働時間が短縮されるのは、労働者にとって苦痛であり嫌がらせであると感じている人たちがいます。

これが、労働時間短縮ハラスメント(ジタハラ)です。

 

<ジタハラの具体的な被害>

ジタハラを主張する人たちは、次のようなものを被害として挙げています。

正社員では残業手当が減少し、パート社員では労働時間や勤務日数が減少することによって収入が減少します。

仕事を急いで全力でこなすことから、ストレスは増加し、人間関係やチームワークも悪化します。

現場での指導も不十分になりますから、仕事の完成度も低下します。

ケアレスミスも増えます。

こうして、従業員のモチベーションが低下し、退職者が増加します。

こなし切れない仕事は、自宅に持ち帰って行うこともあります。

自宅での仕事ぶりは見えませんし、評価の対象とはなりにくいものです。

いきおい人事考課が機能しなくなり、適材適所が困難となる恐れもあります。

一部の企業では、未払残業が発生します。

残業手当が支給されない管理職に業務が集中することもあります。

毎日残業し、休日も出勤する管理職の姿は、憧れの対象にはなりませんから、昇進を目指して努力するということも減ってしまいます。

一番困るのは、労働時間の短縮がお客様に対するサービスの低下をもたらし、お客様が離れてしまい、業績が低迷することではないでしょうか。

他にも、取引先との商談が減ったり、夜間の連絡が取れなくなったりの不都合が発生します。

 

これほど多くの不都合があるのなら、労働時間の短縮をしてはいけないのでしょうか。

これらは、政府の主導する働き方改革の弊害なのでしょうか。

ジタハラの問題を解決するには、次のような対策が必要です。

 

<副業・兼業の奨励>

労働時間の短縮により収入が減る場合でも、これを補うための副業や兼業が奨励されているのであれば、あとは労働者側の努力次第という説明も可能です。

そもそも職業選択の自由がある以上、プライベートの時間に本業とは別の仕事をするのは労働者の勝手というのが原則です。

もちろん、本業に支障が出たり、企業秘密が漏えいされたり、会社に損害を与えるようなことは許されません。

副業・兼業を許可制にするのは行き過ぎで、せいぜい届出制に留めるべきだと思います。

次のモデル就業規則最新版(令和3(2021)年4月版)の規定を参考に、社内規定を整備してはいかがでしょうか。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<労働者の主体性>

年次有給休暇について、会社が時季指定義務を果たすには、労働者の意向を汲んで行うことになっています。

ところが労働時間の短縮となると、殆どの場合に、その手段が会社からの押し付けになっていないでしょうか。

労働者に主体性を持たせ、創意・工夫による時間短縮を任せなければ、モチベーションが低下するのは当然です。

労働時間の短縮について労使の話し合いの場を持つ、キャンペーン的に労働者のアイデアを募って、成果の上がったアイデアは表彰するなど、労働者に主体性を持たせる方法はたくさんあります。

 

<お客様・お取引先への説明>

ただ単純に「閉店時間を早めます」「定休日を設けます」というのでは、不便になりますから、お客様の心は離れて当然です。

たとえば、スーパーマーケットのサミットは、元日だけでなく1月2日も休業日としています。

その説明は、次のとおりです。

 

~働き方改革の一環として1月2日を休業いたします~

弊社の事業ビジョンとなる「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」の実現に向け、お客様やお取引先を大切にすることはもちろん、それを実現するために社員の働き方を見直します。直接お客様と接する店舗の社員が家族・親族と過ごせる時間を増やし、社員一人ひとりがリフレッシュすることで、1月3日から更にお客様にご満足いただける売場・商品・サービスを実現します。また、3日からの営業となることで、弊社のお取引先様の負担を少なくしていきます。

 

こうした説明を受けて「けしからん」と思う人などいないでしょう。

きちんと説明すれば、会社のファンを増やすきっかけにもなるのです。

お客様やお取引先が納得してしまえば、従業員も営業時間や労働時間の短縮を批判できないものです。

 

<正攻法の重視>

一人ひとりの労働時間の短縮の手段としては、人員増、社員教育、システム化が王道です。

こうした正攻法を軽んじて、ノー残業デー、20時以降は消灯など、小手先の手段に走っていないでしょうか。

仕事と生活のバランスをとる、柔軟な働き方を選択できるようにするなど、働き方改革の本来の目的は労働者目線です。

いつの間にか、残業代削減など会社目線の施策が推進されていないでしょうか。

これはもはや、働き方改革ではなくなっています。

 

何のための働き方改革かという基本に立ち返って、労働時間の短縮に取り組むことが必要なのです。

 

<令和4年版 過労死等防止対策白書>

令和4(2022)年10月21日、政府が過労死等防止対策推進法に基づき、「令和3年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和4年版 過労死等防止対策白書)を閣議決定しました。

この中で、長時間労働を行っていた事業場の是正事例が、建設業と製造業で1件ずつ紹介されています。

参考のため、会社が実施した改善策について、引用させていただきます。

 

<建設業の事例>

1.労働時間管理方法の見直し

時間外・休日労働時間数について日々確認し、その時点での累計実績及び協定で定める上限に達するまでの残り時間数を所属長に通知し、企業全体として長時間労働の抑制を徹底する仕組みを構築。

2.デスクカーの導入

事務スペースのない工事現場にデスクカー(机・椅子が完備された車両)を導入し、現場においても事務作業を行える環境を整備し、持ち帰り残業を解消。

3.発注者への協力依頼

業務過多となりうる状況下での受注があった際、発注者に対して着工日、工期等の条件の交渉を行い、長時間労働の抑制に繋げる。

4.健康障害防止対策の見直し

1か月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えた労働者に対し、疲労度を自己診断するチェックリストの提出を求めるとともに、所属長との面談を実施。

これらの結果を踏まえ、産業医が面談の必要性を認めた場合は、対象労働者の面談希望の有無にかかわらず、産業医との面談を実施する仕組みを構築。

また、毎月、産業医による健康障害防止に関する講話の機会を設け、労使間での問題意識の共有及び防止の徹底を図る。

 

<製造業の事例>

1.人員の確保

新卒及び中途採用を積極的に実施し、27人を新規に採用。

2.定年後再雇用年齢の引き上げ

就業規則を変更し、定年後再雇用の年齢上限を65歳から68歳に引き上げ。

3.納期の調整

受注が重なることで作業量の増加が見込まれる場合には、早期に納期の調整を行い、業務の平準化を図った。

4.業務効率化のための設備投資

事務作業について新規にシステムを導入し、作業時間を削減。

これまで事務作業に従事していた労働者を繁忙部署に従事させ、業務の平準化を図った。

 

<実務の視点から>

建設業の事例では、健康障害防止対策に産業医を活用する仕組みの構築が含まれています。

製造業の事例では、27人を新規に採用しています。

これらのことからは、どちらも大規模事業場であることが窺われます。

デスクカーや新システムの導入のような設備投資は、大きな企業ならではの対応かもしれません。

しかし小さな企業であっても、建設業の事例での労働時間管理方法の見直しのように、多額の経費をかけずに実施できる取り組みもあります。

また、発注者への協力依頼や納期の調整は、取引先に対して労働基準監督署の是正勧告があった事情を明かしての依頼ではないでしょうか。

所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入って、法令違反を指摘され是正を求められたなら、これをきっかけとして、可能な範囲で積極的に改善に取り組みたいものです。

2022/10/24|860文字

 

<労災病院や労災指定医療機関>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費が無料となります。

実際には、病院などに「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。

こうしないと、「保証金」を会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとです。

 

<労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関>

基本的に、被災者が治療費を一時的に負担しておいて、被災者名義の指定口座に振り込み返金されます。

したがって、手続き書類には口座番号を書く欄があります。

ここが、労災病院用の手続き書類とは違うところです。

傷病が悪化して治療が長引くと、一時的にせよ負担額がバカになりません。

というのも、健康保険証を使えば3割負担なのですが、労災では保険証が使えませんから、全額が本人負担となるのです。

労災病院などの場合と同じように、会社が書類の作成と被災者への交付を急ぐことはもちろんですが、労災病院などに移ることも考えたいです。

 

<実際に労災が発生した時の注意点>

上記のことから、なるべく労災病院などでの治療が便利です。

しかし、被災者は痛い思いをしているでしょうから、労災病院にこだわるのではなく、最寄りの病院などでなるべく早く治療を受けさせましょう。

たとえば、手をやけどした場合、流水で30分ほど冷やしている間に、病院を探し連絡を取っておいてから、被災者を連れていくというのがよいでしょう。

 

2022/10/23|788文字

 

<補償が受けられるケース>

業務災害または通勤災害による傷病の治療のため働けず、賃金を受けられないときは、労災保険による補償が受けられます。

傷病の原因が、勤務中に発生する業務災害のときは休業補償給付、通勤中に発生する通勤災害のときは休業給付といいます。

業務災害の場合は、もともと労働基準法が事業主に補償を義務づけていたので、「補償」という言葉が入ります。

これに対して、通勤災害の場合には、事業主に通勤途上の事故にまで責任を負わせることに無理があります。

そのため、労働基準法は事業主に補償を義務づけていないので、「補償」ということばが入りません。

労災保険は、事業主の補償義務の範囲を超えて、補償の内容を拡大しているのです。

 

<保険給付の内容>

休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の60%が補償されます。

つまり、3日目までは労災保険で補償されません。

ただし、業務災害の場合だけ、事業主が直接補償する義務を負っています。〔労働基準法第67条第1項〕

この他、休業特別支給金という制度があって、休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の20%が支給されます。

結局、被災者は合計80%の補償を受けるわけです。

休業(補償)給付を受けるために、労働基準監督署長に提出する書類のタイトルには、休業特別支給金も兼ねていることが表示されていますので、1つの手続きで両方の請求ができます。

 

<健康保険より手厚い補償>

治療費は、健康保険だと自己負担が30%ですが、労災保険だとほぼ無料です。

休業補償も、健康保険の傷病手当金が67%なのに対して、労災だと合計80%になります。

これは、日本国憲法第27条第1項が、勤労を国民の義務としていることと深い関連があります。

つまり、国民としての義務を果たしていて被災したのだから、プライベートな原因の場合よりも手厚い補償が必要だとされているわけです。

 

2022/10/22|881文字

 

<労災保険給付と損害賠償との関係>

労働災害のうち業務に起因する業務災害では、被災労働者(または遺族)は、労災保険給付を請求できると同時に、使用者に対しても損害賠償請求を行うことができます。

しかし、労災保険給付と損害賠償がカバーする損害の範囲は大きく重なりますから、労災保険給付を受けながら、これが無かったものとして、損害賠償を得られるというのでは、被災労働者(または遺族)の損害が二重に回復されることになり不公平です。

また使用者は、労災保険料を負担しているにもかかわらず、労災保険給付によって責任が軽減されないのでは、労災保険への加入を義務付けられていることとの関連で、納得がいくものではありません。

こうしたことから、労災保険給付と損害賠償との間では一定の調整が行われます。

 

<労災保険給付と損害賠償との調整>

労災保険法に基づく労災保険給付が被災労働者に行われた場合、使用者は労働基準法上の「災害補償責任」を免れます。〔労働基準法第84条第1項〕

使用者により災害補償がなされた場合、同一の事由については、その限度で使用者は損害賠償責任を免れます。〔労働基準法第84条第2項〕

労災保険給付が行われた場合にも、労働基準法第84条第2項が類推適用され、使用者は同様に保険給付の範囲で「損害賠償責任」を免れます。

労災保険の受給権者が、使用者に対する損害賠償請求権を失うのは、保険給付が損害の塡補の性質をもっているからです。

そのため、政府が現実に保険金を給付して損害を塡補した場合に限り、損害賠償請求権が失われることになります。

このことから、将来支給予定の年金給付については、現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して給付されることが確定していても、基本的には損害賠償請求権が失われないとされています。

なお、労災保険給付は、被災労働者等の財産的損害を補償することを目的としているため、慰謝料等の請求関係には影響を与えません。

被災労働者等は、保険給付との調整とは無関係に慰謝料等を請求できるとされています(東都観光バス事件 最高裁第三小法廷判決昭和58年4月19日)。

 

2022/10/21|836文字

 

<雇い入れ時の安全衛生教育>

労働者を雇い入れたときは、労働者に対して、その従事する業務に関する安全・衛生のための教育を行うべきことが法定されています。〔労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条〕

ところが、所轄の労働基準監督署の安全衛生課が調査に入ると、安全衛生教育が実施されていないケースも多く、また、安全衛生教育に関する労働者からの相談も多く寄せられています。

 

<安全衛生教育の義務>

労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、次の事項について、教育を行うことになっています。

ただし、労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(その他の業種)の事業場の労働者については、1から4までの事項についての教育を省略することができます。

反対に、5から8までの事項についての教育は省略できません。

1 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること。

2 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること。

3 作業手順に関すること。

4 作業開始時の点検に関すること。

5 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること。

6 整理、整頓および清潔の保持に関すること。

7 事故時等における応急措置および退避に関すること。

8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項

 

<留意事項>

労働者から労基署への「安全衛生教育が実施されない」という相談は、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者からのものが多いようです。

契約形態にかかわらず、安全衛生教育は義務づけられていますので注意しましょう。

また、労基署が「安全衛生教育が実施されていない」と判断するのは、事実として行われているかどうかではなく、安全衛生教育の記録が職場に保管されているかどうかによって行います。

安全衛生教育について、日時、内容、実施者、参加者などの記録を残し、職場ごとにきちんと保管しておきましょう        

 

2022/10/20|1,681文字

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。

 

<パワハラと犯罪>

刑法その他の刑罰法規に「パワハラ罪」の規定はありません。

しかし、パワハラが犯罪になることはあります。

ある人の行為が、パワハラになるか/ならないかと、犯罪になるか/ならないかとは、別次元の問題です。

以下、具体例を見てみましょう。

 

<パワハラであり犯罪である行為>

就業の場で、身体的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)などが成立します。

これらは、事実が警察に発覚すれば、社内で行われたことであっても、会社の方針とは関係なく捜査の対象となります。

また就業の場で、精神的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に脅迫罪(刑法第222条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)などが成立します。

これらのうち、名誉毀損罪と侮辱罪は、警察沙汰になると被害者の心の痛みが大きくなりうることを踏まえて、親告罪とされています。〔刑法第232条第1項〕

つまり、被害者の告訴がなければ公訴が提起できませんから、警察も動けません。

こうしたパワハラの被害者から、会社に対して被害の申告があった場合に、被害者の納得できる対応を取らないと、被害者が警察に駆け込み、会社の対応が格段に大変になるリスクをはらんでいます。

 

<パワハラだが犯罪ではない行為>

就業の場で、たとえば上司が返事をしない、仕事を与えない、本人が拒んでいるのに退職勧奨を続けるというのは、パワハラに該当します。

これらは犯罪ではありませんから、警察に助けを求めても取り合ってもらえません。

しかし、こうした行為を行う上司は、管理職が不適格であるとして役職を外されるかも知れませんし、被害者から損害賠償を請求されるかも知れません。

つまり、加害者が刑事責任を負うことは無いものの、民事責任を負ったり、不利益を被ったりするリスクをはらんでいます。

加害者が民事責任を負う場合、会社も使用者責任を負うことがあります。〔民法第715条〕

 

<パワハラではない犯罪行為>

社外で行われる犯罪のほとんどは、業務とは無関係ですから、パワハラにはあたりません。

しかし、出張先や移動中の車内など、社外ではあるけれども就業の場といえる場所で行われる行為は、パワハラとなりうるものです。

また、休日の電話など、業務に関連する会話が行われる場合には、パワハラとなりうることがあります。

さらに、社内でも社外でも、本人がいない所で悪口を言うのは、聞いた相手が言いふらすことを期待して言ったのであれば、名誉毀損罪が成立することもあります。

結局、就業の場ではない所で業務とは無関係に行われた犯罪行為は、パワハラにはならないということです。

 

<パワハラでも犯罪でもない行為

人事考課の結果を伝える面談で、上司が部下に「7項目がB、9項目がCで、総合評価がCでした」と伝えたところ、部下がショックを受け、泣きながら応接室を飛び出して行ったとします。

事情を知らない社員が、その姿を目にしたら、パワハラかセクハラがあったのではないかと疑いたくもなります。

しかし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動は存在しないのですから、パワハラにはならず、もちろん犯罪も成立しません。

ただ上司としては、疑われることがないように、「これから○○さんと、応接室で人事考課の結果を伝える面談をします」と周囲に声掛けをしてから席を立つなどの配慮が必要です。

また可能な限り、1対1での面談は避けることが望ましいといえるでしょう。

 

2022/10/19|1,008文字

 

<解雇予告の効果>

労働基準法は、解雇の予告について、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と規定しています。〔労働基準法第20条第1項本文〕

つまり、使用者は労働者に対して、解雇の30日以上前に予告をしておけば、解雇予告手当を支払わなくても済むということです。

たとえば労働者に対して「12月末日をもってあなたを解雇します」と11月20日に使用者が予告した場合には、解雇の効力が発生し労働契約が終了するのは、11月20日ではなく12月末日です。

 

<解雇予告の誤解>

ところが日常用語では、解雇の予告をしたことを「解雇した」と表現したり、解雇の予告を受けたことを「解雇された」と表現したりすることがあります。

このためか労働者側が、解雇の予告を受けたことをもって、解雇の効力が発生したものと認識してしまうことがあります。

そして、解雇の予告を受けた後、無断欠勤が続くということがあります。

これは「解雇されたのだから出勤しなくてもよい」という誤解によるものです。

また、早々に退職を申し出て、転職先探しに専念する労働者もいます。

この場合には、解雇の効力が生ずる前に、自己都合で退職したことになるのですが、離職票の離職理由が「解雇」になっていないということで、使用者に対して異議を唱える労働者もいます。

 

<誤解の防止方法>

解雇予告通知書には、通常「就業規則第◯条第◯項の規定に基づき◯◯年◯◯月◯◯日をもって貴殿を解雇いたします」とだけ書かれています。

これに次のような説明を加えたり、口頭で説明したりすることによって、誤解を避けることができます。

・解雇の効力が発生するのは◯◯年◯◯月◯◯日ですから、この日が退職予定日となります。

・退職予定日の30日以上前の解雇予告ですから、解雇予告手当の支払いはありません。

・退職予定日までは通常の勤務を続けてください。

・退職予定日前の日をもって退職する旨の退職願を提出した場合には、自己都合退職となります。

 

<解決社労士の視点から>

会社側としては、ついつい「勘違いする従業員が悪い」と思いたくなるものです。

しかし、説明不足については会社の責任が問われますし、従業員の誤解によって会社側にも不都合が生じます。

勘違いが生じないような十分な説明が必要なのです。

 

2022/10/18|981文字

 

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法第35条第1項〕

これが法定休日です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

ですから、この7日間に1日も休みが無いというのは、労働基準法違反です。

ただし、労使で三六協定を交わし、所轄の労働基準監督署長に届けていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

毎週少なくとも1日の休日という法定休日のルールは、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外があります。〔労働基準法第35条第2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

これも法定休日です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。

起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。

これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのか分からないので運用できません。

 

「毎年4月1日を起算日とする」という就業規則の規定は不都合です。

365日 ÷ (7日 × 4週)= 13.035…というように端数が出ます。

(7日 × 4週)× 13 = 364 ですから、3月末に1日だけ半端な期間ができてしまいます。

ですから、「2022年4月1日を起算日とする」などのように、特定の日を起算日として動かないようにしなければなりません。

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは法定休日の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。

この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

1日6時間勤務であっても、1週間毎日出勤する週には42時間勤務となりますから、40時間を上回る2時間が割増賃金の対象となります。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

4週間に4日以上の休日を与える変形休日制を採る場合には、併せてフレックスタイム制などの変形労働時間制を採るのが合理的だといえるでしょう。

 

2022/10/17|1,295文字

 

<1か月単位の変形労働時間制の狙い>

会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。

労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。

これは、働き方改革の流れにも沿った仕組みです。

 

<基本的な仕組み>

1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。

こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない仕組みです。〔労働基準法第32条の2〕

ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。

 

<必要な手続き>

労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署長に届け出ます。

常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。

これは簡単な手続きで済みます。

 

<定めることが必要な事項>

・対象労働者の範囲

法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。

・対象期間と起算日

対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。

・労働日と労働日ごとの労働時間

シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

・労使協定の場合にはその有効期間

労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間以上の長さとなります。

一般的に、労使協定は有効期間を1年以内とすることが望まれます。

適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、長くとも3年以内にしましょう。

 

<1か月単位の変形労働時間制が上手くいく条件>

メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。

実態として、毎日少なくとも8時間は勤務するというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。

スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。

制度導入の前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。

 

2022/10/16|786文字

 

<保険証交付前の受診>

転職などにより、新たに健康保険に加入したとき、保険証が交付される前に医療機関で受診したいことがあります。

こうした場合には、被保険者本人だけでなく扶養家族(被扶養者)についても、「健康保険被保険者資格証明書」の交付を受けて、保険証の代わりに医療機関に提示することによって保険診療を受けることができます。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合については、日本年金機構のホームページに次のような説明があります。

 

<手続きの方法>

事業主または被保険者本人が「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を事業所の所在地を管轄する年金事務所の窓口に提出します。

事業所の事務担当者など、事業主または被保険者本人以外の人が、窓口に提出する場合には、「健康保険被保険者資格証明書」の受領について、事業主または被保険者本人の委任を受けていることが分かる「委任状」の持参が必要です。

「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」は、被保険者本人または被扶養者の「被保険者資格取得届」「被扶養者(異動)届」と一緒に、年金事務所へ紙媒体で提出します。

「被保険者資格取得届」「被扶養者(異動)届」は、「健康保険被保険者資格証明書」の交付を申請する人の分を、それ以外の交付を申請しない人の分とは分けて提出します。

年金事務所の窓口に書類を提出する人は、個人番号カードや運転免許証等の「身分証明書」(本人確認書類)を持参します。

 

<健康保険被保険者資格証明書の交付>

「健康保険被保険者資格証明書」は、原則として当日中に交付されます。

ただし、一度に多数の交付申請があった場合や、受付窓口が混雑している場合などは、状況により、当日中の交付ができないことがあります。

この場合には、交付申請受付時に交付予定日についての説明があります。

「健康保険被保険者資格証明書」の有効期間は、証明日から20日以内です。

 

2022/10/15|1,069文字

 

<懲戒権濫用法理>〔労働契約法第15条〕

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分が無効とされるばかりではなく、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<居眠りに対する懲戒処分>

まず、居眠りというのは故意にできることではなく過失による行為ですから、懲戒規定の中でも他の過失行為と同様に軽い処分とせざるを得ません。

また、今まである程度勤務中の居眠りが黙認されてきたのに、突然、懲戒規定を置いて処分の対象とする場合には、居眠りが許されない新たな職務の発生など、それ相当の強い根拠が必要となります。

さらに、居眠りの原因を考えた場合に、肥満や病気が関与している場合には、会社の健康管理の一環として、懲戒処分の前に生活面での指導が必要となります。

ましてや、過重労働や長時間労働の結果、居眠りが生じたような場合には、会社側に大きな責任がありますから、懲戒処分では何も解決しません。

結論として、居眠りの原因について会社側に落ち度がないかを確認し、本人に考えられる原因を挙げてもらい、まずは原因をつぶしていく努力をします。

それでもなお、本人の落ち度で居眠りが発生するのであれば、注意、厳重注意、譴責(けんせき)あたりまでは、懲戒処分もありうると考えます。

 

<居眠りに対する他の対応>

きちんとした評価基準があれば、勤務中の居眠りが評価を下げる原因となり、昇進、昇格、昇給、賞与に反映されます。

ですから、人事考課のシステムがない会社は、きちんと構築する必要があるでしょう。

また、1時間、2時間と長時間の居眠りを繰り返すようであれば、本人と責任者が面談して、欠勤控除の対象となることを説明すべきでしょう。

この欠勤控除は、労働契約の性質から導かれるノーワーク・ノーペイの原則から許されるものですが、計算方法については、就業規則に規定しなければなりません。

さらに、居眠りがひどくて仕事になっていないというケースでは、普通解雇を考えざるを得ないこともあります。

いずれにせよ、最初に懲戒処分を考えるのではなく、その前に検討すべき対応は数多くあるということです。

 

2022/10/14|406文字

 

<転籍出向の場合>

出向とはいうものの、転籍し完全に所属が移っています。

給与の支払者は出向先ですから、雇用保険は出向先で入り、雇用保険料も出向先でカウントされます。

労働環境の管理も出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

 

<在籍出向の場合>

社籍が出向元に残ったまま、出向先で働く場合です。

給与の支払者は出向元ですから、雇用保険も出向元で入り、雇用保険料も出向元でカウントされます。

しかし、労働環境の管理は出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

この場合、雇用保険と労災保険とで、保険料の負担者が異なることになります。

 

<不明確な場合>

「転籍出向」「在籍出向」ということばを一般とは異なる意味で使っている会社や、どちらか明確ではない場合でも、給与の支払者が雇用保険料を負担し、労働環境の管理者が労災保険料を負担すると考えればよいのです。

 

2022/10/13|811文字

 

<保険者算定>

一般的な方法によって報酬月額が算定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者等(年金事務所など)が特別な算定方法により、報酬月額を決定することとしています。

この算定方法を「保険者算定」といいます。〔健康保険法第44条、厚生年金法第24条〕

算定対象月に減給処分があった場合は、まさにこの「保険者算定」をする場合にあたります。

ところが、このケースは特殊なので手引き類にも見当たりません。

ですから、直接、年金事務所や協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に問い合わせるということになります。

実際、健康保険組合によってルールが違うようですし、すべての年金事務所で同じ回答が得られる保証もありません。

ただ、随時改定については「減給処分は固定的賃金の変動にはあたらない」という運用基準がありますから、減給処分がなかったものとして修正平均額を算出するのが主流と思われます。

 

<別の視点から>

減給処分は、一つの懲戒処分では平均賃金の1日分の半額が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円 ÷ 30日 ÷ 2 = 5千円というのが限度額になります。

また、いくつもの懲戒処分が重なった場合でも、その総額は賃金1か月分の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円÷10=3万円というのが限度額になります。

そして、ある月に減給処分があっても算定対象月は3か月ありますから、その影響は1つの懲戒処分で1,667円、複数の懲戒処分が重なって1万円が限度ということになります。

もし、定時決定(算定基礎届)の担当者が、算定方法に悩むほどの減給であれば、労働基準法の限界を超える減給がされていないかをチェックする必要がありそうです。

つまり、減給処分により定時決定をどうするかという問題ではなく、そもそもその減給処分が適法なのかといういう問題があるということです。

 

2022/10/12|829文字

 

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法第32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法第35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法第33条第1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

過去の大震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2022/10/11|1,197文字

 

<住所の不正>

従業員は、入社にあたって、会社に住所を届け出ます。

この時点で、実際の住所と住民票上の住所が異なっていることがあります。

この場合、速やかに住民票を移して、正しい住所を届け出れば良いのですが、住民票を移さずに、住民票上の住所を現住所として届け出ることがあります。

また、入社時に届け出た住所から転居しても、住民票を移さずに、住所変更の届け出を怠ることもあります。

これらの場合には、住所が不正ですから、多くの場合、通勤手当の不正受給が発生します。

それだけでなく、健康保険や厚生年金保険の住所も不正となりますし、住民税の支払いや選挙権の行使についても不正が発生してしまいます。

 

<通勤手当の不正受給>

たとえば、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【通勤手当】

第34条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

 

実際の住所が、会社に届け出ている住所よりも会社に近ければ、会社には遠距離のルートで通勤していることにして高い通勤手当を申請し、実際には近距離のルートで通勤し実費との差額を着服していることもありえます。

住所の届け出が正しい場合でも、通勤ルートを偽っていれば、実際にかかっている通勤の費用よりも高い通勤手当を受給していることもあります。

これらの場合、会社は差額の返金を求めることができますし、故意に行っていれば、懲戒処分の対象ともなりうる行為です。

また、就業規則で「実費」を支給すると定めてあれば、電車通勤で申請しておいて、実際には徒歩や自転車による通勤をした場合には、通勤手当の全額が不正受給となりえます。

ただ、徒歩や自転車による通勤は健康増進の点で望ましいと考えるのであれば、「実費」の所を「一般的な経費」として定めておいて、支給してしまうことも可能です。

それでも、この場合には課税の問題が出てきます。

さらに稀ですが、電車の運賃が値下げされることもあります。

この場合には、本人の届け出を待たず、会社の方で通勤手当を変更し、本人に通知するルールにしておくことが考えられます。

 

<通勤災害の手続き>

次のような通勤災害についても、通常の労災と同じ基準で労災保険が適用されます。

・会社への申請と異なる経路で通勤していた時のケガ

・会社への申請と異なる交通機関を利用して通勤していた時のケガ

・会社がバイク通勤を禁止しているのにバイクで通勤し転倒した時のケガ

ただし、不合理な寄り道や遠回りは、通常の労災と同じく労災保険の適用対象外となります。

たしかに、住所や通勤について偽っていたこと自体は咎められることです。

しかし、労災保険は政府が管掌する制度ですから、会社のルールによって労災保険の適用範囲を制限したり広げたりはできません。

これらの場合には、正しい住所を基準として手続きを行うことになります。

 

2022/10/10|1,325文字

 

<就業規則の規定>

多くの企業では、取引先から個人的な謝礼を受け取ることを禁止し、これに違反した場合には懲戒処分の対象となりうることを、就業規則に定めています。

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようというわけです。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

⑪ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。

 

実際に、ある社員が取引先から個人的な謝礼を受け取ってしまった場合に、「不当な金品」といえるのか判断に迷うことでしょう。

懲戒処分に踏み切ることが困難かもしれません。

 

<線引きが困難>

そもそも懲戒処分の対象とすべきか、処分するにしても、どの程度重い処分とすべきか、考慮すべき要素は数多くあります。

 

・特定の行為に対する謝礼か、日頃お世話になっているという社交的なものか。

・現金ではなく、商品券、映画の無料鑑賞券、ハンカチならどうか。

・お中元やお歳暮としてなら、お付き合いの範囲として許されるのか。

・特定の部署や店舗が受け取る場合と比べてどうなのか。

・取引先との関係から、断り切れなかった場合には許されるのか。

 

特定の行為に対する謝礼であれば、会社よりも取引先の利益を優先し、不正な便宜を図った可能性は高いでしょう。

この場合には、背任罪(刑法第247条)が成立する可能性もあります。

しかし、その社員が「社交的なものとして受け取った」と言い、取引先も「日頃お世話になっているので」と説明したら、特定の行為に対する謝礼であることを認定するのが、困難になってしまう恐れがあります。

 

<会社が取るべき対応>

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようという目的から対応を考えます。

まず、次のルールを定め社内に周知します。

 

1.取引先から謝礼の申し込みがあったら、取引先には「会社の事前承認が要る」旨を説明する。

2.それでも断り切れない場合には、「お預かりする」という説明をする。

3.謝礼の申し込みがあったこと、または、お預かりしたことを上司に報告し、会社としての判断を仰ぐ。

4.上司は内容や金額に応じた決裁方法に従い、会社としての判断を対象社員に伝え、対応を指示する。

5.会社の判断と上司の指示に従い対応する。

 

こうしたルールの下では、「取引先から個人的な謝礼を受け取ること」が、懲戒処分の対象となることはありません。

「取引先から謝礼を受け取る場合のルールに違反すること」が懲戒処分の対象となります。

懲戒処分の対象とすべきかどうかの判断も、迷わず客観的に行うことができます。

なお、就業規則に規定する場合には、ルール違反に対する懲戒とは別に、会社の受けた損害を賠償させることがある旨も規定しておきましょう。

 

2022/10/09|759文字

 

<入院中の食費負担>

入院患者は、食事の費用のうち標準負担額というものを支払います。

この標準負担額というのは、平均的な家計での食事を参考に、厚生労働大臣が定めた金額です。

平成18(2006)年4月1日からは、1日単位から1食単位の金額に変更されました。

これは、医療機関で提供される食事の内容が変わるわけではなく、食事の負担額について、食数にかかわらず1日単位で計算していたものを、1食単位の計算に変えたものです。

 

<標準負担額>

1食の標準負担額は、一般の世帯で平成30(2018)年4月からは460円です。

ただし、住民税非課税世帯などは負担が減額されます。

標準負担額の軽減措置を受ける場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」に被保険者証と低所得の証明書を添付して、全国健康保険協会の都道府県支部に提出します。

申請が認められると「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されますから、被保険者証と認定証を医療機関の窓口へ提出することで標準負担額の軽減措置が受けられます。

低所得の証明は、低所得者世帯(住民税の非課税世帯)の人については、住所地の市区役所または、町村役場等で証明を受けた住民税の非課税証明、所得が一定基準に満たない場合は非課税証明に給与や年金の源泉徴収票、生活保護法の要保護者については、福祉事務所長が行う標準負担額認定該当の証明が必要となります。

 

<一般の治療の自己負担額との関係>

多くの方は、原則として3割の自己負担で治療を受けることになりますが、入院期間中の食事については、あくまでも標準負担額が適用されます。

つまり、食事代は治療費とは別計算です。

どちらも健康保険の適用があるのですが、計算方法が違うわけです。

このことから、高額療養費についても、食事の費用は計算対象から外れます。

 

2022/10/08|1,698文字

 

<ガイドラインの改定>

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されています。

その中で、副業・兼業の促進について、次のように述べられています。

 

人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業などの多様な働き方への期待が高まっています。

副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーション、起業の手段や第2の人生の準備として有効とされており、「働き方改革実行計画」において、副業・兼業の普及を図るという方向性が示されています。

一方、同計画においては、副業・兼業の普及が長時間労働を招いては本末転倒であることも示されており、副業・兼業を行うことで、長時間労働になり労働者の健康が阻害されないよう、過重労働を防止することや健康確保を図ることが重要です。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等について示したものですので、企業も働く方も安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業を進めるにあたって本パンフレットをご活用ください。

 

<政府による副業・兼業の促進>

それにしても、政府が副業・兼業を促進するのは何故なのでしょうか。

副業・兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生準備として有効とされています。

また、人生100年時代を迎え、若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業などの多様な働き方への期待が高まっています。

こうしたことから、副業・兼業が促進されています。

 

<企業は副業・兼業を認めないといけないのか>

副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされています。

労働者は奴隷ではありませんから、労働時間以外の時間は基本的に自由です。

裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当です。

副業・兼業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業・兼業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業・兼業を行える環境を整備しましょう。

なお、労働者の多様なキャリア形成を促進する観点から、職業選択に資するよう、副業・兼業を許容していること、また条件付許容の場合はその条件について、自社のホームページなどで公表することによってリクルート上もアピールできます。

 

<副業・兼業を認める場合の企業の対応>

就業規則などの見直しにより、副業・兼業を認める環境が整ったら、次に注意しないといけないのは、「労働時間の通算管理」です。

労働者が雇用される形で副業・兼業を行う場合、原則として、自社と副業・兼業先の労働時間を通算して管理する必要があります。

労働時間を通算して管理するために、まずは労働者が行う副業・兼業の内容を確認する必要があります。

副業・兼業開始前に、労働者からの申告などにより、必要な情報を確認しましょう。

副業・兼業の内容を確認したら、次は労働時間の通算です。

労働時間の通算方法は2通りで、原則的な方法と簡便な方法(管理モデル)があります。

労働時間を通算して管理するにあたって自社で取り入れやすい方法を採用し、自社と副業・兼業先の労働時間を確実に通算するようにしましょう。

副業・兼業を進める上では、長時間労働になり労働者の健康が阻害されないよう、過重労働を防止することや健康確保を図ることが重要です。

労使でコミュニケーションを図り、労働者の健康確保に必要な措置を講じるようにしましょう。

 

<解決社労士の視点から>

従業員が副業・兼業をすれば、体力・気力などの面で、自社の業務に支障が出るのではないかと考えるのは当然のことです。

一方で、従業員の側から見れば、就業時間外では職業選択の自由があり、別の仕事をするのは自由だと考えるのも、これまた当然のことです。

若者を中心に副業・兼業のニーズは高まっています。

企業として、どこまで副業・兼業を許容するかが重大な経営判断となっています。

 

2022/10/07|574文字

 

<手続きが必要となる理由>

国民年金や厚生年金などと同じように、失業保険(雇用保険の失業等給付)も、すでに経過した期間について給付が行われます。

つまり後払いですから、給付を受けていた方が亡くなると、もらえる給付を残したままになってしまいます。

これは、ご遺族の中の権利者が請求しなければもらえません。

 

<雇用保険法の規定>

失業等給付の支給を受けられる方が死亡した場合に、未支給分があるときは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、死亡当時に生計を同じくしていた方が、自分の名義で、その未支給分を請求できます。〔雇用保険法第10条の3〕

 

<法定相続人との違い>

まず、生計を同じくしていることが条件となります。

また、優先順位が、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっていて、優先順位の高い人が100%受け取ります。

法定相続分のように、誰が何分の1を受け取るという考え方ではありません。

そして、同順位の人が複数いる場合、たとえば父母が受け取る場合、どちらかが請求の手続きをすれば、全額について請求したことになります。

 

<請求の手続き>

未支給の失業等給付を請求する人は、本来の受給者が亡くなってから6か月以内に、「未支給失業等給付請求書」に「雇用保険受給資格者証」等を添えて、受給の手続きをしていたハローワーク(公共職業安定所長)に提出します。

 

2022/10/06|1,369文字

 

<制限の理由>

傷病手当金は、健康保険により支給されます。

健康保険では、故意の犯罪行為など、制度の趣旨に反する恐れがあるときは、社会保険の公共性の見地から、給付の全部または一部について制限が行われます。

また、給付を行うことが事実上困難な場合や、他の制度から同様の給付が行われた場合の調整により、給付が制限される場合もあります。

 

<健康保険に共通の理由>

次のような場合には、健康保険に共通の制限または調整が行われます。

 

・故意の犯罪行為または故意に事故を起こしたとき

・喧嘩や酩酊など著しい不行跡により事故を起こしたとき

・正当な理由がなく医師の指導に従わないか保険者の指示による診断を拒んだとき

・詐欺その他不正な行為で保険給付を受けたとき、または受けようとしたとき

・正当な理由がないのに保険者の文書の提出命令や質問に応じないとき

・感染症予防法等他の法律によって、国または地方公共団体が負担する療養の給付等があったとき

 

<給与が支払われた場合>

傷病手当金は、働けず給与の支給が無い場合に、収入を補うための制度です。

ですから、休業期間中に給与の支払いがあった場合には、原則として、傷病手当金が支給されません。

ただし、休業中に支払われる給与の日額が、傷病手当金の日額よりも少ない場合には、その差額が支給されます。

 

<出産手当金と重なる場合>

女性が産前産後休業で出産手当金を受給している場合に、出産手当金と傷病手当金の給付を同時に受けることはできません。

ただし、傷病手当金の金額が出産手当金の金額を上回っている場合、その差額が支給されます。

出産手当金も傷病手当金も、1日当たりの金額は次のように計算されます。

 

支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3) 

ただし、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、次のア・イのうち低い額となります。

ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

イ 標準報酬月額の平均額(現在は30万円)

 

計算式は同じなのですが、出産手当金と傷病手当金とで「支給開始日」が異なりますので、具体的な金額に差が生じることもあるのです。

 

<労災保険の給付と重なる場合>

労災保険から休業(補償)給付を受けている場合、これは業務(通勤)上の傷病によって働けない状態であることが前提となっています。

ところが、別の勤務先で健康保険に加入していて、私傷病で働けない状態となった場合には、傷病手当金の手続が行われることもあります。

こうした場合には、休業(補償)給付の日額が傷病手当金の日額を下回っている差額分だけが、傷病手当金として支給されます。

 

<障害厚生年金・障害手当金と重なる場合>

障害厚生年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

また、障害手当金が支給されている場合には、その金額に傷病手当金の合計額が達した日以降、傷病手当金が支給されるようになります。

 

<老齢年金と重なる場合>

健康保険の資格喪失後、傷病手当金の継続給付を受けている間に、老齢年金を受給することがあります。

この場合、老齢年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

 

2022/10/05|867文字

 

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官は、労働基準法違反を是正するだけではありません。

労働安全衛生法を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、作業環境測定を行い、または検査に必要な限度で無償で製品、原材料、器具を持ち去ることができます。〔労働安全衛生法第91条第1項〕

ここで、作業環境測定というのは、温度、湿度、騒音、照度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、塵(ちり)の密度など、職場の客観的な労働環境を測定する検査のことをいいます。

 

<法違反に対する使用停止命令>

都道府県労働局長または労働基準監督署長は、事業者の講ずべき措置など労働安全衛生法の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者または建築物貸与者に対し、作業の全部または一部の停止、建設物等の全部または一部の使用の停止または変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができます。〔労働安全衛生法第98条第1項〕

労働災害発生の差し迫った危険がある場合には、この他、必要な応急措置を講ずることを命ずることができます。〔労働安全衛生法第99条第1項〕

つまり、営業停止や労働者の職場への立ち入り禁止を命令できるのです。

 

<講習の指示>

都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合には、その再発を防止するため必要があると認めるときは、その事業者に対し、期間を定めて、その労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができます。〔労働安全衛生法第99条の2第1項〕

なにより労働災害の発生防止に努めることが大切です。

しかし、安全管理者や衛生管理者など法定の労働災害防止業務従事者をきちんと選任し、労働基準監督署長に選任報告書を提出しておくことも必要です。

つまり、労災防止の実質面と形式面の両方を備えることが求められているのです。

 

2022/10/04|1,486文字

 

<法令の規定>

入社から14日以内であれば、解雇予告期間も解雇予告手当の支払いもなく、解雇することができます。〔労働基準法第21条第4号〕

しかし、その解雇に客観的に合理的な理由がなかったり、社会通念上相当といえなかったりした場合には、解雇権の濫用となり解雇が無効とされるのは、入社後15日以上経過してからの解雇と同様です。〔労働契約法第16条〕

 

<人材要件の確認が不十分な場合>

求人広告や求人票などに、採用条件として「パソコンが使える方」と書いてあったとします。

採用面接でも、「パソコンは使えますか?」「はい、毎日使っています」というやり取りがあったとします。

ところが、入社後にパソコンを使っての基本的な事務作業を指示したところ、「自分はマウスを使って、web上の情報を閲覧できるだけで、キーボードの操作はできない」と断られてしまったらどうでしょう。

本人は嘘をついていたつもりなどなく、採用側の確認ミスであれば、この人を解雇するのは不当解雇となりかねません。

基本的には、必要なパソコン操作を丁寧に教えるのが筋ということになります。

 

<労働者による労働契約の即時解除権>

さて、労働者は入社後の労働条件が事前の説明と異なっていたら、すぐに退職する権利があります。〔労働基準法第15条第2項〕

これは労働者を保護する趣旨ですから、採用にあたって、採用側が虚偽の労働条件を提示していた場合に限られず、提示された労働条件の具体性が不十分で思い違いを生じていた場合を含むと考えられます。

 

<入社14日以内の解雇が有効になるパターン>

求人広告や求人票などに、採用条件として「パソコンの基本操作(Excel、Word、PowerPoint)」と書いてあったとします。

採用面接でも、次のようなやり取りがあったとします。

「Excelでマクロを含め関数を組んで使用する業務を行っていましたか?」「はい」

「Wordを使って社内外に宛てた文書を作成していましたか?」「はい」

「PowerPointを使ってプレゼンなどしていましたか?」「はい、人事制度の改善案についての資料をPowerPointで作成し、プレゼンするなどしていました」

ところが、入社後にパソコンを使っての基本的な事務作業を指示したところ、「パソコンの操作があまりできないと採用してもらえないので、採用面接ではできるふりをして、入社までの1週間で急いで覚えればよいと思いましたが、間に合いませんでした」と白状した場合にはどうでしょう。

この場合には、ミスマッチの責任が応募者にあって、採用側にはありません。

必要な人材要件を欠いていることを理由に解雇しても、決して解雇権の濫用とはなりません。

 

<ミスマッチを防ぐために>

上記のようなケースで、14日以内の解雇が有効になるとしても、採用に関わった社員の人件費や、適正な人材を採用できなかったことによる空白期間の発生など、大きな不都合が発生してしまいます。

ましてや、解雇の通告が解雇権の濫用となり、不当解雇となってしまうような場合には、会社の損失が大変大きなものになってしまいます。

こうした事態を防ぐには、求人広告や求人票などの求人情報に、可能な限り具体的な人材要件を示しておくことが大前提となります。

そして、採用面接ではより詳細な人材要件について、漏らさず聞き取りができるよう、予め質問事項を網羅した「採用面接シート」を準備しておき、これに沿って、採用面接を進めることが必要です。

ここまでしても、応募者の嘘をすべて見抜くことは困難ですが、不要な労働力を抱え続けるリスクは軽減することができます。

 

2022/10/03|543文字

 

<賃金の支払義務>

労働基準法第24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」としています。

大雨や水害等で、①事業場の倒壊、②資金繰りの悪化、③金融機関の機能停止等が生じた場合でも、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の免除に関する規定はありません。

つまり、会社は事業活動ができなくなった場合でも、既に働いた分の賃金は、当然に支払われなければなりません。

なお、事業再開の見込みがなく、賃金の支払の見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払する「未払賃金立替払制度」を利用することができます。

窓口は、労働基準監督署となっています。

 

<賃金の前払い>

労働基準法第25条は、「労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならない」と定めています。

ここでいう「災害」には、大雨や水害等が含まれます。また、「疾病」には大雨や水害等によるケガも含まれます。

ですから、賃金支払日前であっても、労働者から使用者に請求があれば、使用者は賃金を計算して支払わなければなりません。

 

2022/10/02|1,470文字

 

<就労請求権>

就労請求権とは、労働者が使用者に対し、実際に就労させることを請求する権利をいいます。

かつては、就労請求権を肯定する裁判例が見られました。

木南車輌製造事件(大阪地決昭和23年12月14日)では、使用者は「労働契約関係が正当な状態においてある限り、労働者が適法に労務の提供したとき、これを受領する権利のみでなく、受領する義務あるものであり、正当な理由なくして恣意に受領を拒絶し、反対給付である賃金支払をなすことによって責を免れるものではない」とされました。

高北農機事件(津地裁上野支部決定昭和47年11月10日)では、「労働契約は継続的契約関係ゆえ当事者は信義則に従い給付実現に協力すべきこと、労働者は労働によって賃金を得るのみならず、それにより自信を高め人格的な成長を達成でき、不就労が長く続けば技能低下、職歴上および昇給・昇格等の待遇上の不利益、職業上の資格喪失のような結果を受けるなど」の理由から就労請求権が肯定されています。

しかし、この判例の理論は、就労請求権が一般に認められる根拠にはならず、特殊な技能を持つなど一定の条件を満たした場合のみに妥当します。

その後、労働は労働契約上の義務であって権利ではないので、就労請求権は認められないと判断される傾向が強まってきています(日本自動車振興会事件 東京地判平成9年2月4日など)。

 

<就業規則に特別な定めがある場合>

就業規則に、労働者の就労請求権を認める具体的な規定があれば、労働者が給与を100%支給されつつ休業を命じられた場合であっても、使用者に対して実際に就労させることを請求できるのが原則となります。

また、大学の教員が学問研究を行うことは当然に予定されていることであり、就業規則全体の趣旨から、大学での学問研究を労働契約上の権利とする黙示の合意があるとされる場合には、就労請求権が認められる場合もあります(栴檀(せんだん)学園事件 仙台地判平成9年7月15日)。

ただし研究について、大学施設を利用することが必要不可欠であるとまでは言えないケースでは、就労請求権が認められていません(四天王寺仏教大学解雇事件 大阪地裁決定昭和63年9月5日)。

 

<育児休業中の就労について>

雇用保険加入者(被保険者)に対して、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」があります。

この給付金は、就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)に10日以下であること、10日を超える場合には就業している時間が80時間以下であることが支給の条件となっています。

これは、使用者側の都合、業務上の必要から、育児休業中の労働者がわずかな日数、少ない時間就労したことによって、職場復帰したものとされ、受給資格を失ってしまうことを防止するための基準です。

その就労が、臨時・一時的であって、就労後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とはせず、支給要件を満たせば支給対象となります。

しかし、育児休業中の労働者に、1か月の支給単位期間に10日まで、あるいは80時間までの就労請求権が与えられているわけではありません。

あくまでも、業務上の必要に応じて、使用者側から育児休業中の労働者に臨時・一時的な出勤を要請することがあり、労働者がこれに応じて就労した場合にも、育児休業給付金を受ける資格を失わないという、雇用保険法上の配慮に基づくものです。

したがって、育児休業給付金を受給中の労働者から、使用者に対して就労させるよう請求した場合でも、使用者側は必要なければこれを断ることができるわけです。

 

2022/10/01|1,155文字

 

<休業手当の支払が不要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けて労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。

ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

ここで「不可抗力」とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、この2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。

ただ例外的に、ことさら不十分な施設・設備であった場合など、「使用者の責に帰すべき事由による休業」と判断すべき場合もあり得ます。

 

<休業手当の支払が必要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないものの、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられています。

しかし、「施設・設備の直接的な被害」だけを基準に判断すべきことではありません。

具体的な事情として、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を考慮して、総合的に判断する必要があります。

 

<就業規則等に定めがある場合>

労働契約、労働協約、就業規則の定めにより、あるいは労使慣行によって、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業があります。

こうした企業が、「今回のケースでは支払わない」とすることは、労働条件の不利益変更に該当します。

つまり、従来通りの賃金、手当等を支払わなければなりません。

将来的に支払わないことにするためには、労働者との合意など、労働契約、労働協約、就業規則等のそれぞれについて、適法な変更手続をとる必要があります。

 

2022/09/30|794文字

 

<派遣会社の義務>

派遣会社は、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)に基づき、ある派遣先との間で労働者派遣契約が打ち切られたとしても、派遣先と協力しながら、派遣労働者の新たな就業先の確保を図り、それができない場合は解雇せず休業等を行って、雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当を支払うことになっています

 

<休業手当の支払>

使用者が新たな就業機会(仕事)を確保できず、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させる場合には、使用者(派遣会社)には休業手当を支払う義務があります。〔労働基準法第26条〕

ここで「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかどうかの判断は、派遣会社について行われます。

派遣先の事業場が、天災事変等の不可抗力によって操業できないため、派遣されている労働者をその派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないとは必ずしもいえず、派遣会社について、その労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかが判断されます。

 

<雇用調整助成金>

大雨の影響に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた派遣会社が、派遣労働者の雇用維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金を活用できることがあります。

 

<雇用保険の特例措置>

大雨などにより、被災地内にある派遣先が直接的な被害を受けたことに伴い、派遣先が事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた人(雇用予約がある場合を含む)については、失業給付を受給できる特別措置の対象となることがあります。

大雨の影響で、ハローワークに行けない、求職活動ができない、退職した会社と連絡が取れないなどの事情がある場合には、とりあえずハローワークに電話で相談することをお勧めします。

 

2022/09/29|1,445文字

 

<行政指導>

行政指導の定義は、行政手続法第2条第6号に次のように規定されています。

 

【行政指導】

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 

役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように、または行わないように、具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導です。

特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすのは「処分」であって、行政指導ではありません。

役所の行為が、処分か行政指導かは、法令の規定を読んでも判別が困難なものもあります。

ただ、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか)を明確に示さなければならないことになっています。〔行政手続法第35条第1項〕

判断に迷うことがあれば、その行為を行っている各役所に確認するのが確実です。

 

<行政指導の効力>

行政指導には法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を求めるものです。

したがって、よく言われるように、行政指導を受けた者について、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。

また、行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。〔行政手続法第32条第2項〕

 

<行政指導の拒否>

たとえば、申請者の申請に対して、役所が自主的に申請を取り下げるよう、また、申請の内容を変更するようしつこく行政指導することもあります。

こうした場合、申請者がその行政指導に従わないことを明らかにしたときは、役所は、これに反して、行政指導を続け、その行政指導に従うまでは申請の審査を保留するなど、行政指導に従わざるを得ないようにさせることによって、申請者の権利の行使を妨げてはならないことになっています。〔行政手続法第33条〕

結局、行政指導を拒否して申請書を提出すれば、役所には審査を開始する義務が生じることになりますので、行政指導に従う意思がない場合には、それを役所に対して明確に示せば行政指導を免れることができます。

 

<労働基準監督署による行政指導>

労働基準監督署は、労働基準法などの法律に基づいて、定期的にあるいは従業員からの申告などにより、事業場(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。

その結果、法違反が認められた場合には、事業主などに対しその是正を指導します。

通常は、「是正勧告書」という文書による指導です。

これも行政指導ですから、事業主などの自主的な協力を求めていることになります。

もし、「是正勧告書」の内容が誤りであると判断したなら、事業主などは従わないこともできます。

しかし、事業場から是正・改善報告が提出されない場合には、労働基準監督署はこれを放置せず、再度の調査・確認と指導を行います。

こうして、重大・悪質な事案については、書類送検され罰則が適用される場合もあります。

同じ行政指導であっても、違法性を指摘する内容が含まれるものについては、専門家に相談したうえで慎重に対応することを強くお勧めします。

 

2022/09/28|883文字

 

<時効消滅の制度>

賃金や退職金の請求権は5年間で時効消滅します。〔労働基準法第115条〕

ただし、現在は経過措置により、賃金の請求権が3年間で時効消滅することになっています。〔労働基準法第115条の2〕

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないのに、何ら指摘せず放置したまま3年間が経過して会社から時効だと言われれば、その給与は請求できなくなります。

これは、「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」という消滅時効の制度の趣旨に沿ったものです。

この場合、支払義務のある側からすれば、一方的に得をすることになり道義的な違和感を生ずることもあります。

ですから、時効の利益を受ける者が、時効であることを主張することによってその効果が発生します。

この主張を時効の援用(えんよう)といいます。〔民法第145条〕

 

<時効の中断>

たとえば、給与支給日に指定口座への入金がないので社長に確認したとします。

そして、社長から「ごめん、少し待って」といわれて、しばらく待ってから催促することを繰り返していたら、いつの間にか3年過ぎたので請求できなくなったというのは道義に反します。

そこで、社員の側から請求の意思が明確にされた場合や、会社の側から支払の意思が明確にされた場合には、時効期間の進行がリセットされます。

これを時効の中断といいます。

時効の中断には、請求(裁判上の請求、裁判外の請求)、差押え・仮差押え・仮処分、債務者の承認の3つがあります。〔民法第147条〕

もし給与の未払いがずっと続いて裁判になったとしたら「ときどき催促していました」といっても証拠がなければ負けてしまいます。

ですから、内容証明郵便などによる催促が必要になります。

しかも、催促というのは時効中断の効力が制限されていて、6か月以内に裁判で請求するなど一段突っ込んだアクションをしないと、効力を生じないことになっています。〔民法第153条〕

お勧めなのは「少しでもいいから支払ってください」と催促して、振り込んでもらうことです。

これも「債務者の承認」となって時効中断の効力があります。

 

2022/09/27|1,269文字

 

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法第34条第1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。

また、8時間勤務で全く残業が無いのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間を削ってまで働きたいという人もいます。

しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で法定以下に短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。

実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。

ただ、そうした条件で採用を希望する人は稀でしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。

喫煙者が喫煙室で休憩を取る場合などは、この方が助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与え方はできません。

そこは世間一般の常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の本来の趣旨に沿って考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法第34条第2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。

書類の作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはつまらないことです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法第34条第3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。

待機時間は労働時間です。

また、「お客様の少ない時間帯に様子を見て60分の休憩をとる」というルールは無効です。

休憩が取れなくなる可能性がありますし、実質的に見て待機時間が発生してしまうでしょう。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できる限りは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2022/09/26|628文字

 

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(相当因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<労災とはならないケガ>

・労働者が勤務時間帯に、仕事とは関係のないことを行ったり、仕事の範囲を超える勝手なことをしていて、それが原因でケガをした場合。

・労働者がわざとケガをした場合。

・労働者がプライベートな恨みなどを理由に第三者から暴行を受けてケガをした場合。

・大地震や台風など自然災害によってケガをした場合。ただし、落雷しやすい現場で作業していて落雷でやけどを負うなど、立地条件や作業環境などによっては労災と認められる場合があります。

・休憩時間や勤務の前後など、実際に業務に従事していない時間帯にケガをして、しかも事業場の施設・設備や管理状況に原因がない場合。ただし、トイレに行くなどの生理的行為については、事業主の支配下で業務に付随する行為として取り扱われますので、このときに生じたケガは労災となります。

 

2022/09/25|775文字

 

<業務災害>

業務災害とは、労働者の負傷、疾病(しっぺい)、死亡のうち、業務が原因となったものをいいます。

労働者自身の業務としての行為が原因となる場合の他に、事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものがあります。

「業務上」という用語は、業務と傷病などとの間に、一般的な原因と結果の関係(因果関係)があることをいいます。

業務災害に対する保険給付は、労働者が事業場で雇われて、事業主の支配下にあるときに、業務が原因となって発生した災害に対して行われます。

ただし、労働者が労災保険の適用されない事業場に雇われていた場合は対象外となります。

 

<業務上の疾病>

業務との間に一般的な原因と結果の関係にある疾病(病気)は、労災保険給付の対象となります。

業務上疾病は、必ずしも労働者が事業主の支配下で発症することを条件とせず、事業主の支配下で有害な原因にさらされたことによって発症すれば認められます。

たとえば、ある労働者が勤務中に心臓病を発症しても、その労働者の業務の中に原因が見当たらなければ、業務と疾病との間に一般的な原因と結果の関係は成立しません。

反対に、勤務時間外に発症した場合でも、その労働者の業務の中に有害な原因があって発症したものであれば、業務上の疾病とされます。

 

<業務上の疾病とされる3つの条件>

・その労働者の業務の中に有害な原因があったこと。例として、化学物質、身体に過度の負担がかかる作業、病原体など。

・健康障害を起こすだけの原因にさらされたこと。つまり、有害な原因の強さ、量、回数、期間が健康障害を起こしうるものだったこと。

・発症の原因から健康障害の結果が発生するまでの経過が、医学的に見て不自然ではないこと。中には、労働者が有害な原因に接してから、相当な長期間を経過した後に健康障害が発生するパターンも認められます。

 

2022/09/24|1,406文字

 

<基本はプライベート>

多額の借金を抱えた社員が会社で働いていると、それだけで上司や同僚、人事部門の社員たちは大きな不安を覚えます。

それでも、借金というのは、会社からの借り入れでない限り、基本的にはプライベートなことです。

たしかに、プライベートなことであっても、会社の利益を害し信用を傷つける行為であれば、懲戒処分の対象となることはあります。

しかし、借金が多いことが発覚したからといって、それだけで解雇を検討するというようなことはできないのです。

以下、順を追って検討してみます。

 

<人事異動の検討>

多額の借金を抱えた社員が、お金を直接扱える業務に携わるのは好ましくありません。

人員配置の大原則である適材適所の観点から、経理、会計、財務、店舗のレジなどへの異動は避けなければなりません。

また、借金が発覚したときに、こうした業務に携わっていたならば、早期に別の業務に異動させることが望ましいといえます。

しかし、借金があることを理由に、降格、降職などを行うことは、人事権の濫用となり、その効果が否定される場合もあるでしょう。

 

<督促で会社に迷惑がかかっている場合>

借金の相手がサラ金業者などの場合には、会社にまで電話やファックスでの督促や嫌がらせがあったりもします。

時には、サラ金業者の従業員が直接、職場に押しかけてくるようなこともあります。

しかし、これは社員が借金したことの結果ではあっても、社員が違法・不当なことを行っているわけではありません。

むしろ、サラ金業者が貸金業法に違反する方法で督促を行い、嫌がらせまで行っているのです。

こうしたことで戸惑って、懲戒処分や解雇を検討するのは的外れです。

明らかに、懲戒権や解雇権の濫用となってしまいます。〔労働契約法第15条、第16条〕

 

<給与の差押が発生した場合>

債権者が裁判所で手続きをして、裁判所から会社に給与債権差押の命令が届くこともあります。

会社は、この命令に素直に従わなければなりません。

給与の一部を、指定された方法で支払うことになります。

このことによって、会社側に余計な事務手続きの手間は発生しますが、やはり、懲戒処分や解雇を検討するほどの大きな負担ではありません。

 

<破産した場合>

社員が破産しても、会社の業務に支障は出ません。

ちなみに、個人破産の場合、破産手続きをするのに十分な資力が無いなどの事情により、破産手続きの開始と共に終了する「同時廃止」となることが多いのです。〔破産法第216条第1項〕

この場合も、懲戒処分や解雇を検討すべきではありません。

 

<懲戒や解雇を考えるべき場合>

多額の借金を抱えた社員が、同僚や上司から借金をして具体的なトラブルに発展したような場合、あるいは会社の金品を横領したような場合には、当然に懲戒処分や解雇を検討しなければなりません。

しかし、これは借金を抱えた社員に限定されることではなく、すべての社員に共通することです。

 

<上司による指導>

多額の借金を抱えた社員が、その精神的な負担から、体調を崩して遅刻しがちになったり、業務に集中できなくなったりする恐れは大きいといえます。

上司としては、それをただ人事考課で評価すれば済むというのではなく、面談の機会を持ち、現在の生活ぶりや不安、借金を抱えるに至った事情など、本人から自発的に話してもらえるよう働きかけ、注意すべきところは注意する一方で、支えになってやる必要があるでしょう。

 

2022/09/23|1,566文字

 

<学習性無力感>

「学習性無力感」というのは、もともと心理学で「抵抗したり回避したりすることができないストレス下に置かれているうちに、そのストレスから逃れようとする行動を起こさなくなってしまう現象のこと」を言っていました。

今では、「自分の行動から期待する結果が得られないことを、何度も経験するうちに、何をしても無意味だと思うようになってしまい、たとえ結果が期待できる場面でも積極的に行動を起こさなくなってしまった状態」のことについても言われます。

 

<個人の学習性無力感>

職場で、ある従業員のやる気が見られない、向上心が感じられないということがあります。

職場では、たびたびストレスに直面しても、精神的に充実しているうちは、このストレスを乗り越えようと抵抗を示します。

しかし、ストレスに抵抗してみても、乗り越えることができなければ、さらに大きなストレスを感じることになります。

こうした体験を何度も繰り返していると、「結局、何をやっても無駄だ」と思うようになり、抵抗することをやめてしまいます。

この状態が学習性無力感です。

学習性無力感に陥った社員は、誰かに細かい指示を出してもらわないと、自発的に行動できなくなり、パフォーマンスが低下します。

これはまさに典型的な「指示待ち人間」の状態です。

 

<組織の学習性無力感>

新たに入社してきた従業員は、やる気に満ち、新鮮な目で物事をとらえ、さまざまなアイデアや意見を出すものです。

しかし、学習性無力感に陥ると、アイデアや意見を出さなくなります。

これは、自分が口出ししたところで、状況は変わらないと感じるようになったことによるものです。

組織内で発言する機会が減ると、その組織の改善や向上は期待できなくなります。

こうして発生した個人の学習性無力感は、組織のメンバーにも伝染します。

ある従業員が学習性無力感に陥ることで、その人のパフォーマンスが低下し、周囲の従業員がその穴を埋めることになります。

しかし、学習性無力感に陥る社員が一人ではなく、人数が増えてしまうと、フォローが必要となる業務が増えて、組織全体のパフォーマンスも低下します。

組織の全員が、「自分がいくら頑張ってみても、組織が今の状態から抜け出すことはできない」と感じ、組織の学習性無力感が発生します。

 

<全社的な学習性無力感>

職場では、ひとり一人のネガティブな言動が、周囲の社員にも悪影響を与えます。

たとえば先輩から「この会社では、いくら頑張っても評価されない」という話を聞かされた新人や後輩は、やる気をそがれることになります。

さらに、管理職の中に「頑張っても無駄」という共通認識が生じると、全社に学習性無力感が蔓延することになります。

 

<学習性無力感の発生原因>

学習性無力感の中心には「何をやってもムダ」という固定観念があります。

この固定観念は、周囲の人、特に影響力の強い上司や先輩から、次のような態度を取られることによって、植え付けられてしまいます。

・能力や言動の否定

・向上心、努力、意欲、責任感の否定

・小さなミスに対する叱責や軽蔑

・報連相に対する拒否的態度

これらは、パワハラと重なる部分も多いのですが、必ずしもパワハラ行為に限られません。

 

<学習性無力感の打開策>

当然ですが、全従業員にパワハラ教育を実施し、社内からパワハラを排除しなければなりません。

また、部下や後輩の人格を尊重する風土の醸成も必要です。

一方で、「失敗した従業員」「結果を出せなかった従業員」には、同じタスクを「成功させた従業員」「結果を出した従業員」の指導を受けさせます。

この中で、成功のポイントは、努力と能力の向上であることに気づいてもらわなければなりません。

さらに、管理職が「努力が報われない」と思わないように、適正な人事考課制度の運用も必要です。

 

2022/09/22|1,075文字

 

<労働基準法施行規則第32条>

休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法第34条第1項〕

その日の労働時間が6時間以下であれば、その日については休憩時間を与えないことができます。

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。

ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえません。

 

<法定の基準を上回る定め>

以上はすべて法定の基準ですから、就業規則や労働契約に法定の基準より多くの休憩を与える規定があれば、労働者に有利である限りその規定が優先されます。

たとえば、6時間勤務の労働者に昼休みを1時間与えるなどは、法定の基準を上回るものとなります。

ただし、「労働者に有利である限り」という部分は、慎重な判断が必要です。

たとえば、昼休みが4時間ある場合には、就業の場所のすぐ近くに自宅があって、帰宅してくつろげる労働者なら問題ありませんが、いたずらに拘束時間が増えるだけの労働者にとっては不利になることもあります。

こうしたときには、不利になる労働者についてのみ、規定の効力が認められないケースもありますので注意しましょう。

 

2022/09/21|482文字

 

下の表に示した端数処理は、賃金計算の便宜上の取り扱いとして、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則違反にならないとされています。〔昭和63年3月14日基発150号通達〕

これに反する社内ルールを定めて運用することはできません。

1か月の賃金支払い額 1か月の賃金支払い額に100円未満の端数が生じた場合 50円未満を切り捨てそれ以上を100円に切り上げる
1か月の賃金支払い額に1,000円未満の端数が生じた場合 翌月の賃金支払い日に繰り越す
1か月の労働時間数 時間外労働、休日労働、深夜業の各々の時間の合計に1時間未満の端数がある場合 30分未満の端数を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げる
1時間あたりの賃金額 1時間あたりの賃金額に1円未満の端数が生じた場合 50銭未満の端数を切り捨てそれ以上を1円に切り上げる
1時間あたりの割増賃金額 1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合
1か月の割増賃金総額 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額

日々の残業時間集計は、1分単位で行うのが正しいのであって、5分未満切り捨てなどは違法ということになります。

 

2022/09/20|1,177文字

 

<ケガをさせられた場合の追加の手続き>

通勤途上でひき逃げされたり、居酒屋でアルバイトをしていてお客様に殴られたり、休日に道を歩いていて自転車にぶつかられたりしてケガをすると、通常とは違う手続きが必要となります。

具体的には、労災では「第三者行為災害届」、私傷では「第三者行為による傷病届」という書類が必要になります。

 

<第三者行為>

保険には保険料の負担があって、負担した人やその関係者に給付があるわけです。

労災保険では会社が保険料を負担して、従業員が治療を受けると労災保険から給付が行われて、従業員は治療費を負担しなくても済みます。

健康保険では会社と従業員が保険料を折半して、従業員や扶養家族が治療を受けると健康保険から給付が行われて、治療費の3割を負担するだけで済みます。

ところが無関係な第三者からケガをさせられて、治療費に保険が使われると、ケガをさせた第三者は、治療費の負担が減ったり負担が無くなったりして得してしまうのです。

こうした不都合が起こらないように、保険者である政府や協会けんぽなどが、加害者に費用を負担させています。

 

<万一ケガをさせられたら>

可能な限りケガをさせた人に逃げられないようにしましょう。

周囲の人に助けを求めることもできます。

その場で示談してはいけません。

「大丈夫ですから、どうぞご心配なく」などと言ってしまうと、会社も手続きができなくて困ることになります。

大丈夫かどうかは、診察した医師の決めることです。

その場で治療など必要ないと感じても、冷静な判断が困難な状況であることを考えましょう。

相手の氏名と連絡先は確実に把握しなければなりません。

結果的に医師の診察を受ける必要すら無かったなら、その相手にその旨を連絡する必要があります。

また、なるべく正確な日時や場所、状況など記憶が新鮮なうちにメモを残しておきましょう。

そして、会社の労災保険や健康保険の手続き担当者に連絡して指示を仰ぎましょう。

 

<書類の内容>

交通事故の場合と、それ以外の場合とで内容が異なります。

しかし、共通する内容で主なものは、事故の発生状況を説明した書類、負傷原因の報告書、加害者と示談しませんという念書(万が一示談していたら示談書)、加害者からの損害賠償金の納付を確約する書類などです。

 

<書類作成ご担当のかたへ>

実際に書類を作成する会社の担当者は、被害者からの情報が頼りとなります。

すべての情報がそろっていても、慣れていないと書類の作成に数時間かかってしまいます。

必要な書式は、労働基準監督署や協会けんぽなどで入手できます。

このとき、ついでに必要な添付書類の確認をするとよいでしょう。

交通事故の場合には、警察に「交通事故証明書」の発行を依頼するのですが、手続きが遅れると人身事故でも物損扱いとなるなど不都合が起こります。

大変ですが落ち着いて急ぎましょう。

 

2022/09/19|2,447文字

 

<不当解雇>

解雇権の濫用となる場合には、会社側から労働者に解雇を通告しても、解雇が無効となり、その結果、労働契約は解消されず、賃金や賞与の支払い義務は継続しますし、労働者に精神的な損害を与えていれば、慰謝料請求の問題ともなります。

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<不当退職>

労働者から会社に退職(辞職)を申し出たとしても、すぐに退職の効果が発生するとは限りません。

すぐに退職の効果が発生する場合として、労働基準法には、明示された労働条件が事実と相違する場合の規定があります。〔第15条第2項〕

 

【労働条件の明示】

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

2 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

しかし、これがわざわざ規定されているということは、あくまでも例外であって、一般には、労働者から退職の意思を表明しても、すぐには退職の効果が発生せず、実際に退職の効果が発生するまでは、労働者は働く義務を免れないということです。

それにもかかわらず、職場を放棄してしまっては、債務不履行となりますし、場合によっては不法行為となることもありえます。

こうした状態を、ここでは「不当退職」と呼びたいと思います。

 

<急な退職でも通常は損害賠償の対象ではない>

労働者が急に退職したからといって、これを理由に、会社から労働者に対して損害賠償を請求できるわけではありません。

退職そのものは、違法でも不法でもないからです。

一般に、退職者が発生した場合でも、会社が代替要員を手配して支障が出ないようにします。

損害が発生することは稀なのです。

また、採用後すぐに退職した場合であっても、採用にかかった費用を、会社の損害と見ることはできません。

どれだけの費用をかけるかは会社の判断に任されていますから、労働者の意思が反映されてはいません。

勤続20年の社員が退職するにあたって、会社から採用時の費用を請求することが無いのと同様に、採用後すぐ退職した社員に対しても費用を請求することはできません。

法的には、退職と採用の費用との間に、相当な因果関係が無いと表現されます。

これらの事情は、退職者の後任を採用する場合の費用についても同じです。

 

<不当退職となりうるケース>

不当退職が発生しうるのは、労働者が辞めたつもりで、労働契約が解消していない場合です。

まず、無期雇用の労働者が会社に退職を申し出た場合、その後、2週間は労働契約が継続します。〔民法第627条第1項〕

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 

さらに、有期労働契約の場合には、やむを得ない事由が無いのに辞職を申し出ても、本来の契約期間の間は労働契約が継続します。〔民法第628条〕

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

こうして、労働者が会社に対して辞職の意思を表明した後、労働契約が継続している間に出勤しなければ、労働者の債務不履行が発生しますから、「不当退職」となるわけです。

 

<債務不履行による損害の発生>

特殊技能をもった労働者を採用し、手作り商品の注文を受けていたのに、不当退職により必要な数量の商品が製造できなくなった場合には、少なくとも欠勤した間に製造出来たはずの商品が製造できなかったことによる損害は、明らかに発生しています。

この場合に、同様の特殊技能をもった労働者を容易に補充することは困難でしょうから、簡単に会社が代替要員を手配することはできないのです。

 

<不法行為による損害の発生>

結婚式場にウエディングケーキを運搬中の労働者が、突然行方をくらまし、会社に退職の意思を伝えたような場合には、単なる債務不履行を超えて、不法行為が発生しています。

労働者の故意または過失によって、結婚式の新郎新婦他、多くの人々に損害を与えていますし、会社の信用を喪失させています。

こうした場合には、懲戒解雇の対象ともなりうるわけですが、不法行為を理由として会社から労働者に損害賠償を求めることになるでしょう。

 

<損害額が算定しがたい場合>

不当退職によって損害が発生した場合に、不当退職と損害発生との間の因果関係が明らかであっても、会社が損害額を立証することが困難なケースは多いものです。

しかし民事訴訟法には、損害額の認定について次の規定がありますので、訴訟という手段を利用してでも賠償請求を行うべきだと考えます。

 

【損害額の認定】

第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。

 

2022/09/18|972文字

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

<優越的な関係の意味>

上記の1.で「優越的な関係」というのは、必ずしも直属の上司である、役職が上であるといったことに限りません。

正社員がパート社員に対して優越的な関係に立つのは、契約形態の違いによる権限と責任の違いが根拠となっています。

ベテランのパート社員が、新人の正社員に対して優越的な関係に立つのは、業務経験の豊富さによるものです。

この他、専門知識の多寡、パソコンスキルの巧拙、職場での人気なども「優越的な関係」の根拠となりえます。

また、社長一人に対して、多数の社員が詰め寄る場合のように、人数の優位性から優越的な関係に立つ場合もあります。

 

<パワハラを行う部下の事情>

パワハラ行為に走る部下の中には「パワハラというのは、上司から部下に対して行われるものであり、部下から上司に対してパワハラが成立することはない」と誤解している人がいます。

パワハラの成立要件(3要素)についての理解が不十分なわけです。

こうした従業員がいる職場では、パワハラ防止のための教育が不十分であるといえます。

管理職のみを対象としてパワハラ防止教育を行っただけでは、部下から上司へのパワハラを防止できないだけでなく、一般社員がパワハラではない行為をパワハラとして問題視してしまうことも多発しかねません。

 

<パワハラを受ける上司の事情>

たとえ社内にパワハラ相談窓口が設置されていたとしても、部下からのパワハラについて相談する人は稀でしょう。

なにしろ、その部下を指導する立場にあるのですから、部下に対してパワハラ行為がいけないことを認識させ、止めるよう指導できる建前です。

こうしたことから、管理職としての能力が不足していると思われるのが嫌で、相談できずにいることが多いのです。

 

<解決社労士の視点から>

年功序列的な昇進昇格や、360度評価を行っている職場では、部下から上司に対するパワハラが起こりやすいともいえます。

こうした職場では、全社員を対象とするパワハラ防止教育が必須となるでしょう。

 

2022/09/17|1,232文字

 

雇用保険と労災保険の保険料は、あわせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

ただし、建設の事業で賃金総額を正確に算定することが困難な場合には、請負金額に労務比率を掛けて保険料を算定します。

 

<年度更新>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕

したがって事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きを同時に行うことになります。

これが「年度更新」の手続きです。

また、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金も、年度更新の際に労働保険料とあわせて申告・納付することとなっています。

 

<労働保険対象者の範囲>

労働保険の対象者ということは、労災保険の適用対象者と雇用保険の適用対象者ということになります。

その範囲は重なりますが、同じではありません。

労災保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・正社員、嘱託、契約社員、パート、アルバイト、日雇い、派遣など、名称や雇用形態にかかわらず、賃金を受けるすべての人が対象となります。

・代表権・業務執行権のある役員は対象外です。賃金ではなく報酬を受けています。

・事業主と同居している親族でも就労の実態が他の労働者と同じなら対象となります。就業規則が普通に適用されているなら対象となります。

雇用保険の対象者については次の点に注意しましょう。

・1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば原則として対象者です。雇い入れ通知書、労働条件通知書、雇用契約書などが基準となります。これらの書類が1つも無いのは、それ自体違法ですから注意しましょう。

・昼間に通学する学生は対象外です。

・65歳以上で新たに雇われた人は、法改正により対象者になりました。

複数の会社などで同時には雇用保険に入れません。主な賃金を受けているところで対象者となります。これには、65歳以上の特例による例外があります。

両方の保険に共通の注意点としては、次のものがあります。

・代表権も業務執行権も無く、役員報酬と賃金の両方を受け取っている役員は、賃金についてのみ計算対象となります。

・派遣社員は派遣元で保険に入ります。派遣先での手続きはありません。

・出向社員は賃金を支払っている会社などで雇用保険に入り、実際に勤務している会社などで労災保険に入って、そこでの料率が適用されます。出向先の会社は、年度更新のために出向元から賃金などのデータをもらう必要があります。

 

加入漏れがあると、その人の離職時に大変困ったことになります。

労働保険の対象者を間違えないようにしましょう。

 

2022/09/16|708文字

 

<年金関係法令の規定>

この法律において、「配偶者」、「夫」および「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。〔国民年金法第5条第7項、厚生年金保険法第3条第2項〕

つまり事実上夫婦であれば、国民年金・厚生年金のどちらでも、夫婦と同様に扱われるということです。

 

<事実婚(内縁)>

事実上の夫婦と認められるためには、婚姻届を出していないだけで実態は夫婦であるという事情が必要です。

まず形式的に、婚姻届を出そうと思えば出せること、つまり原則として、事実上の夫婦のどちらにも戸籍上の配偶者がいないことが必要です。

法律上の正式な配偶者がいれば、重ねて結婚することはできないからです。

また実質的に、お互いに結婚する意思をもって、夫婦としての共同生活を営み、生計を同じくしているという事実が必要です。

 

<実際の手続き>

法律上の夫婦とは異なり、住民票の写しなどで夫婦であることは確認できません。

それぞれに法律上の配偶者がいないことを示す書類と、同居の事実を示す書類を添付して、年金関係の手続きを行うことになります。

また、事実婚状態にありながら別居しているような場合には、たとえば遺族年金や加給年金では「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」という書式があって、これに記入のうえ第三者による証明を書いてもらう必要があります。

さらに事実婚状態にあって、勤め人である内縁の夫が、内縁の妻を扶養している場合には、会社を通じて国民年金の第3号被保険者とすることができ、保険料の免除を受けることもできるのですが、事実婚をどうしても会社に知られたくないために手続きできずにいるということもあります。

 

2022/09/15|972文字

 

<報連相が必要な理由>

本来、権利や義務の主体となるのは生身の人間です。

民法は、このことを次のように規定しています。

 

【権利能力】

第三条 私権の享有は、出生に始まる。

2 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。

 

しかし、個人の力で成し遂げられることには限りがありますから、民法は法人の設立を認めて、目的の範囲内で権利や義務の主体となることを規定しています。

 

【法人の能力】

第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

会社も法人です。

会社の中で働く人たちが相互に協力し合い、まるで1人の人間のように統一的に活動することによって、会社は目的を果たすことが可能となります。

このためには、社員間・部署間で報告・連絡・相談が適切に行われている必要があります。

 

<報連相が足りない社員>

報連相を密にして組織的に動いた方が、生産性が向上しリスクが回避できるのは明らかです。

ところが、報連相が滞ったり不足したりする社員がいます。

報告書の提出締切を守らなかったり、いい加減な報告書を提出して済ませたりしています。

 

<報連相不足に対する懲戒処分>

報連相に問題のある社員の多くは、業務の中で報連相の優先順位が低いのだと思われます。

上司が、本人に対して報連相を重視し優先順位を上げるように指導する必要があります。

最初は口頭による注意・指導を行い、それでも改善されない場合には、書面による注意を行います。

この書面には、就業規則の条文を示し、報連相を怠ることが就業規則違反であり、場合によっては懲戒処分の対象となりうることも記載しておくべきです。

前提として、就業規則を調えておく必要はあります。

 

<懲戒処分の対象とすべきではない報連相不足>

能力不足で報連相が上手くできない社員もいます。

他の業務はともかく、報告書の作成などが極端に苦手というタイプです。

この場合には、本人を戒めても効果が期待できません。

むしろ、技術的な側面もありますので、教育が大きな効果をもたらします。

しかし、安易に上司に指導を任せてしまうと、上司が「こんな報告書じゃダメだ」という拒絶の態度を示し、ともするとパワハラに及んでしまう恐れがあります。

人事部門が主体となって集合研修を行うのが効果的です。

 

2022/09/14|999文字

 

<常識的な解決>

たとえば、会社で20年以上使われてきた電卓を、たまたま自分が使っていたら壊れたとします。

こんなとき、乱暴に扱ったわけでもないのに「あなたが使っていて壊れたのだから、自分のお金で新しいのを買ってきなさい」と言われたら、決して納得できません。

法律上も、こうした常識に反する解決にはなりません。

 

<労働者の会社に対する損害賠償責任>

労働者が故意や過失によって、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任が発生します。〔民法第709条〕

物を壊すなど財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形の無いものに対する損害や、お客様に損害を与えたために会社が弁償した場合も含まれます。

特に、労働者が故意に基づいて会社に損害を与えたのであれば、その責任は重く、会社から損害額の全額を労働者に請求できる場合もあります。

もっとも、この場合であっても、中古品を破損した場合に新品の代金を請求するようなことはできません。

ましてや、故意によらず過失によって損害が発生した場合には、リスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。

会社は労働者の働きによって利益をあげていて、その利益のすべてを労働者に分配し尽くしているわけではありません。

損害についてだけ、労働者がすべて負担するというのは、あまりにも不公平です。

また、会社には危機管理の義務もありますから、これを怠っておいて、労働者に損害を押し付けるのもおかしいのです。

そこで裁判になれば、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはできないとされています。

具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険で損害を防止しているかなどの事情を考慮して、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。

 

<損害額の給与天引き>

労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社が一方的に損害額の分を差し引いて給与を支給することは禁止されています。〔労働基準法第24条第1項〕

したがって、会社は給与を全額支払い、そのうえで労働者に損害賠償を請求する必要があります。

また、労働契約を結ぶ際に「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」など、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めておくこともできません。〔労働基準法第16条〕

これは物品の破損などに限られず、「遅刻1回につき罰金3,000円」などのルールを設けることも違法です。

 

2022/29/13|1,309文字

 

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

実際の就業規則でも、普通解雇について、中途採用と新卒採用とで別の規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

 

<新卒採用の雇用契約>

新卒採用は、相当長期にわたって雇用が継続することを予定して行われます。

また多くの場合、即戦力であることは期待されておらず、会社が一から教育を施して、必要な能力を身に着けさせることを予定しています。

この方が、会社の方針・風土に即した成長が期待できるので、会社にとっても都合が良いものです。

配属後の働きぶりを見て、適性の面で無理があるようならば、全く異なる部署への異動も検討すべきことになります。

 

<新卒採用の普通解雇>

このような雇用契約の性質から、会社が根気よく教育を行ったにもかかわらず、本人がどの部署でも能力を発揮できないような、極めて期待外れな場合でなければ普通解雇は困難です。

なぜなら、労働契約法第16条や就業規則の普通解雇の条件を満たすためには、会社側にかなりの努力が求められるからです。

 

<中途採用の雇用契約>

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことはなく、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<中途採用の普通解雇>

このように中途採用は、会社から新卒採用よりも高い期待を持たれています。

会社としては、会社に馴染むまである程度の期間はフォローするものの、予定した役割を果たしてくれなければ、期待外れになってしまい、普通解雇を検討せざるを得なくなります。

この点、新卒採用の場合よりも中途採用の方が、会社の解雇権は広く認められることになります。

 

<会社が心がけること>

このように中途採用と新卒採用とで普通解雇の有効要件が異なるのは、雇用契約の内容が異なるからです。

しかし、「常識的に」「暗黙の了解で」というのでは、雇用契約の内容があやふやになり、解雇を検討する際にはトラブルの発生が危惧されます。

特に中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

 

<年次有給休暇の確実な取得>

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については毎年時季を指定してでも与えなければなりません。

年次有給休暇は労働者に与えられた権利ですから、本来はその権利を使うかどうかが労働者の自由に任されています。

しかし、年次有給休暇の取得を促進しても取得率が50%前後で伸び悩んだことから、働き方改革の一環で労働基準法が改正され企業に時季指定を義務付けることになったのです。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と労使協定によって計画的付与がされた日数は年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

本来は、労働者の権利である年次有給休暇の取得について、労働基準法が使用者を通じて間接的に義務付けたことになります。

しかし、労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

労働基準法が年5日と法定している以上、会社の方針で年10日以上など5日を超える日数を基準に時季指定することはできないのです。

 

<年次有給休暇の取得を嫌う労働者>

年次有給休暇の取得を嫌がる人もいます。

この理由はさまざまです。

休んでいる間に仕事が溜まることを、極端に恐れるというのが多いようです。

反対に、仕事が溜まらないように同僚や上司が業務を代行した場合に、普段の仕事ぶりが明らかになってしまうことへの不安もあります。

こうした労働者についても、使用者は法定の範囲内で年次有給休暇を取得させなければならないわけですから、労働者から見たら「年次有給休暇を取得させられる」ということになります。

この関係は、定期健康診断の実施義務にも似ています。

義務を果たさない場合について、使用者側には罰則が適用されうるのですが、労働者側に罰則はありません。

 

<年次有給休暇取得率70%に向けて>

内閣府は「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で、2020年までに年次有給休暇取得率70%を目指すとしていました。

これを受けて、年次有給休暇取得率70%以上を目標に掲げる企業もあります。

年次有給休暇は労働者の権利ですから、取得を強制する、取得しないと人事考課で評価が下がるなどの運用は許されません。

これらは、権利の侵害になるからです。

休んでも仕事が溜まらない仕組み、各社員の普段の仕事ぶりの見える化など、年次有給休暇を安心して取得できる環境を整えることによって、目標を達成したいものです。

2022/09/11|1,195文字

 

<フリーランスの定義>

フリーランス(freelance)のフリー(free)は自由を意味し、ランス(lance)は槍を意味します。

中世のイタリアやフランスの傭兵部隊のシステムがイングランドに伝わり、傭兵がフリーランス(自由な槍)と呼ばれるようになったとされています。

特定の君主に仕えるのではなく、戦う理由と報酬に納得できれば、戦いに望む立場の人たちがフリーランスの語源です。

現代の日本でも、フリーランスという言葉が使われています。

しかし、これは法令上の用語ではないので、明確な定義がありません。

令和3(2021)年3月26日、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が合同で「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を策定し公表しています。

この中で、「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととされています。

 

<労働基準法における「労働者性」の判断基準>

上記ガイドラインでも紹介されていますが、労働基準法第9条では、「労働者」を「事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と規定しています。

そして労働者性は、使用従属性の有無で判断されます。

・労働が他人の指揮監督下において行われているか、つまり、他人に従属して労務を提供しているか。

・報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか。

さらに使用従属性は、請負契約や委任契約といった形式的な契約形式にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から、個別の事案ごとに総合的に判断されます。

 

<労働者性が認められるタイプのフリーランス>

以上のことから、次のような特性を備えたフリーランスは労働者に該当し、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法などの労働法が適用されますので、労働者としての権利が保障されていることについて注意が必要となります。

・発注者等から具体的な仕事の依頼や、業務に従事するよう指示があった場合などに、それを受けるか受けないかを受注者が自分で決めることができない。

・業務の内容や遂行方法について、発注者等から具体的な指揮命令を受けている。

・発注者等から、勤務場所と勤務時間が指定され、管理されている。

・受注者本人に代わって他の人が労務を提供することが認められていない。

・受注者が自分の判断によって補助者を使うことが認められていない。

・支払われる報酬の性格が、発注者等の指揮監督の下で一定時間労務を提供していることに対する対価と認められる。

・仕事に必要な機械、器具等を、発注者等が負担している。

・受注者の受け取る報酬の額が、発注者等に雇用されて同じような仕事をしている労働者と比較して著しく高額であるとはいえない。

・特定の発注者等への専属性が高いと認められる。

 

2022/09/10|1,636文字

 

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

2022/09/09|940文字

 

<労働安全衛生法>

労働災害を防止するために事業者が講じなければならない措置については、労働安全衛生法に詳細に規定されています。

各事業場では、この法律などに従い、労働災害の防止と快適な職場環境の形成に積極的に取り組むことや、職場の安全衛生管理体制を確立しておくことが求められています。

 

<安全衛生管理体制>

労働安全衛生法では、業種や労働者数によって、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が義務付けられています。〔第10条等〕

また、常時使用する労働者数が10人以上50人未満の事業場でも、業種により安全衛生推進者や衛生推進者の選任が義務付けられています〔第12条の2〕

会社は、これらの者に、事業場の安全衛生に関する事項を管理させなければなりません。

就業規則には、このことも規定しておくことが望ましいでしょう。

 

<受動喫煙の防止>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となりました。

これに先駆けて、すでに令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになっています。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

就業規則には、次のような規定を加えることになります。

 

・20歳未満の者は、喫煙可能な場所には立ち入らないこと。

・受動喫煙を望まない者を喫煙可能な場所に連れて行かないこと。

 

事業場内では、喫煙専用室等の指定された場所以外は禁煙とし、周知することが必要です。

また、思い切って、事業場の敷地内全体を禁煙対象とすることも考えられます。

この場合の就業規則の規定は、上の2つに代えて「喫煙は、敷地内では行わないこと。」となります。

 

2022/09/08|793文字

 

<よくある誤解>

就業規則に「アルバイト社員には労災保険を適用しない」という規定のある会社もあるそうです。

また、会社に労災申請を希望したところ「あなたの業務は雇用というよりも請負に近いから、労災保険の適用対象ではない」と説明されたという話もあります。

こうした場合に、従業員は、「規則だから」「会社が認めてくれないから」と考えて諦めてしまうようです。

 

<労災認定の判断権者>

労災給付の請求があった場合に、これを認めるかどうかを判断するのは、会社を所轄する労働基準監督署の署長です。

決して会社ではありません。

ただ、貧血で倒れてケガをした場合のように、明らかに労災保険の適用対象外である場合に、会社の担当者から従業員に対してその旨の説明が行われるのは、不当なことではありません。

会社としては、具体的な事実を確認し、労災保険の適用関係に不安があれば、所轄の労働基準監督署の労災課などに問い合わせたうえで、手続きを進めるのが正しいことになります。

 

<事業主が記入しない場合>

労災の手続きに必要な書式は、厚生労働省のホームページでダウンロードできます。

これには、労働者、事業主、医師などそれぞれの記入欄があります。

会社が事業主の欄に記入することを拒んでも、手続きを進めることができます。

従業員が労働者の記入欄に分かる範囲で記入し、治療を担当している医師に証明欄を記入してもらい、所轄の労働基準監督署の労災課などの窓口に行って「会社が書いてくれない」と申し添えて、書類を提出すれば良いのです。

 

<従業員が納得しない場合>

客観的に見て労災保険の適用対象ではない場合に、従業員が「会社を説得して労災扱いにしてもらおう」と考えることがあります。

こうした場合には、判断するのは会社ではなく労働基準監督署長であることを会社から従業員に説明し、所轄の労働基準監督署の労災課などの電話番号を案内するのが良いでしょう。

 

2022/09/07|1,568文字

 

<個人的な残業禁止令>

日中ダラダラと効率の悪い仕事をしていながら、夕方になると調子が上がって業務に集中する人もいます。

これによって長時間の残業が発生しているのなら、生活リズムの個性を認めて午後からの出勤にするという方法もあるでしょう。

中には、残業手当が欲しくて時間外に頑張っている人もいます。

しかし、いわゆる生活残業になってしまっていると、適正な人事考課基準が運用されている会社では、生産性の低い社員であると評価され、昇進・昇格・昇給が遅れますから、長い目で見れば、収入が少なくなってしまいます。

上司が面談して、こうしたことを説明すべきですし、どうしても今の収入を増やしたい事情があるのなら、仕事を多めに割り振ることも考えられます。

また、お付き合い残業というのもあります。

同期社員間や同じ部署の社員間で、仕事の早い人が遅い人を待つ形で、一緒に帰るのが習慣になることもあります。

この場合には、全員が定時で帰れるようにする方向で、仕事の配分や役割を見直すべきです。

このように、それぞれの事情に応じた対応を取るべきなのですが、残業の発生に合理的な理由が見出せない社員に対しては、残業の禁止を命じなければならないこともあります。

 

<集団的な残業禁止令>

全社で、あるいは一部の部署で、残業禁止とされることもあります。

特定の曜日や給料日だけノー残業デーと決めることもあります。

働き方改革の一環で、残業時間の削減を試みてもなかなか進まないので、「残業禁止」という施策も増えてきました。

 

<残業禁止令の本質>

就業規則に残業の根拠規定が置かれます。

「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」といった規定です。

「労働させることがある」という表現から解かるように、「使用者側から労働者に対して、時間外労働や休日労働をさせることがある」という意味です。

具体的には、使用者から個別に残業命令が出た場合や、「クレームが発生した場合には、所定労働時間を超えても、一次対応と報告を完了するまでは勤務を継続すること」のような条件付きの残業命令がある場合に、そうした事態が発生すると残業が行われるということになります。

このことから残業禁止令の本質を考えると、「使用者側から残業命令は出さない。条件付きの残業命令はすべて撤回する」という内容になります。

 

<残業する権利>

残業禁止令が出されると、残業手当が減って収入が減る、あるいは業務が溜まっていくことによる不安が増大するなど、労働者側に不利益が発生します。

これは、労働者の残業する権利の侵害ではないかという疑問も湧いてきます。

しかし、残業が使用者側から労働者への命令によって行われる性質のものである以上、労働者から会社に残業を権利として主張することはできません。

判例では、労働者から使用者に対して就労請求権が認められることも稀です。

つまり、会社が給与を支払いながら労働者の出勤停止を命じた場合に、労働者から会社に対して働かせるよう求めることは、特殊な事情が無ければ認められていません。

ましてや、労働者から会社に残業させるよう求める権利は認められないわけです。

 

<残業禁止令の弊害>

残業禁止となると、収入減少や持ち帰り仕事の発生などにより、社員のモチベーションは大いに低下します。

また、残業時間ではなく残業手当の削減という、目的をはき違えた方向に進んでしまうと、管理職へのシワ寄せが発生し、管理職が過重労働に陥り心身に障害を来すこともあります。

こうなると、一般社員がその会社で管理職に昇進することを敬遠し、将来の構図を描けなくなれば、転職者が多数出てしまいます。

残業禁止という最終手段に出る前に、業務や役割分担の見直しや機械化・IT化などの正攻法によって、残業の削減を目指していきましょう。

 

2022/09/06|705文字

 

<基礎年金番号の形式>

基礎年金番号は、国民年金・厚生年金保険・共済組合といったすべての公的年金制度で共通して使用する「1人に1つの番号」です。

基礎年金番号は10ケタの数字で表示され、4ケタと6ケタの組み合わせとなっています。0000-000000という形式です。

 

<基礎年金番号の導入>

公的年金制度では、平成8(1996)年12月までは、年金制度ごとに異なる番号により年金加入記録を管理していました。

そのため、転職等により加入する制度を移り変わった場合、国民年金または厚生年金保険の「年金手帳の記号番号」、共済組合の組合員番号など、一人で複数の年金番号を持っていました。

このため、年金を請求する際には制度ごと番号ごとに照会が必要となり、調査のために時間を要していました。

この不都合を解消するために、平成9(1997)年1月から基礎年金番号が導入されました。

 

<基礎年金番号についての注意点>

正しく運用されていれば、基礎年金番号と同様に年金手帳も「1人1冊」です。

複数の年金手帳があったり、基礎年金番号が不明の場合には、お近くの年金事務所などで確認しておくことをお勧めします。

年金手帳の発行は終了していますので、新規加入者への交付も、紛失した場合の再交付もありません。

基礎年金番号さえあれば、不都合はなくなっているからです。

現在は、基礎年金番号が不明でも個人番号(マイナンバー)があれば、問題なく行える年金手続の種類も増えています。

これからマイナンバーの活用が進み、基礎年金番号に取って代わる日が来るかもしれません。

そうなっても、基礎年金番号が重要な個人情報であることに変わりはありませんから大事に扱いましょう。

 

2022/09/05|667文字

 

<性別による差別>

募集・採用の際、次のような差別的取扱いは、男女雇用機会均等法違反となります。

・募集または採用で男女のどちらかを排除すること。

・募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。

・能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

・募集または採用で男女のどちらかを優先すること。

・求人の内容の説明など、募集または採用の情報提供で、男女で異なる取扱いをすること。

・合理的な理由なく、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別採用で転勤に応じることを条件とすること。

 

<年齢による差別>

募集・採用では、原則として年齢を不問としなければなりません。

年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合だけでなく、民間の職業紹介事業者や求人広告などを通じて募集・採用をする場合、雇い主が直接募集・採用する場合を含めて広く適用されます。

ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、正社員を募集・採用する場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。

例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者などに対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務付けられています。

 

<その他の差別>

このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。

また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することがあります。

 

2022/09/04|1,016文字

 

<レジリエンスという言葉>

物理学で、ストレス(stress)は「外力による歪み」を意味し、レジリエンス(resilience)は「外力による歪み」を「跳ね返す力」を意味します。

どちらも心理学の世界に入ってきて、レジリエンスは「極度に不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」などと定義されています。

単純に考えれば、ストレスを跳ね返す力ということになります。

 

<レジリエンスの個人差>

レジリエンスには個人差があり、レジリエンスが高い人、低い人には、次のような特徴が見られます。

 

【レジリエンスが高い人の特徴】

特徴1:自分を信じ、未来や将来に対して肯定的・前向きに考えることができる

特徴2:感情に溺れて一喜一憂することはなく、自分の気持ちや感情をコントロールすることができる

特徴3:困難に立ち向かう意欲があり、挑戦を諦めない

特徴4:失敗を受け止め、反省して今後に活かそうと考える

特徴5:他人を信じ、信頼関係を築ける

 

【レジリエンスが低い人の特徴】

特徴1:自己不信感が強く、未来や将来に対して否定的で前向きに考えることができない

特徴2:感情に溺れ一喜一憂し、自分の気持ちや感情をコントロールすることができない

特徴3:困難を避けようとし、諦めが早い

特徴4:失敗を受け止められず、落ち込んだ状態が長く続く

特徴5:他人を信じられず、信頼関係を築けない

 

<レジリエンスが低い人の問題点>

レジリエンスが高い人と低い人とを比べれば、高い人の方が職場での活躍を期待できそうです。

レジリエンスが低い人は、成長が遅いでしょうし、それだけ戦力化されるまでの期間が長くなってしまいます。

また、極端にレジリエンスが低い人は、少し注意されただけでパワハラだと感じ、その場で泣き出してしまうかもしれませんし、翌日から長期欠勤に入った挙げ句、精神疾患の診断書を提出して業務災害を主張し、労災保険の手続をとるよう求めてきたりすることもあります。

 

<採用の段階で>

レジリエンスが低い人は、採用面接で謙虚に見えますし、従順で協調性があるように見えるかもしれません。

上記に示したレジリエンスが低い人の特性を踏まえ、過去の失敗から何を学んだか、あるいは仮想の事例で、失敗した場合のリカバリーの方法などを尋ねてみれば、ある程度まで見抜くことが可能でしょう。

どうせなら、レジリエンスが高い応募者を優先的に採用し、レジリエンスが低い人の入社は避けたいものです。

 

2022/09/03|1,485文字

 

<請負とは>

「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第632条〕

請負では、注文者が請負人に細かな指示を出すことなく、すべてお任せして、完成した仕事を受け取るわけです。

彫刻家に芸術作品の制作を依頼するのは、この請負にあたります。

 

<雇用とは>

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」〔民法第623条〕

雇用では、雇い主が労働者に業務上の指示を出し、労働者がこれに従って労働に従事します。

正社員、パート、アルバイトなどの労働が雇用にあたります。

 

<区別の基準>

請負では、依頼された仕事を受ける/受けないが自由です。

しかし、雇用では正当な理由なく拒めません。

請負では、いつ、どこで作業するかが、基本的には自由です。

しかし、雇用では、勤務時間と勤務場所を拘束されます。

請負では、作業に必要な車両、機械、器具などを請負人が負担します。

しかし、雇用では、雇い主の貸与する物を使い、雇い主が経費を負担します。

他にも具体的な区別基準はあるのですが、決して契約書のタイトルが区別の基準になるわけではありません。

 

<名ばかり請負>

雇用では、労働基準法、最低賃金法、労災保険法などの労働法により、労働者が保護されます。

ところが、請負では請負人がこれらによる保護を受けません。

また、雇用であれば、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とされます。〔労働契約法第16条〕

ところが、請負では請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます。〔民法第641条〕

反対の立場から見ると、何か仕事をしてもらう場合、雇用ではなくて請負にした方が、仕事をさせる側の負担が少ないことになります。

雇用契約の場合、労働者が保護されているというのは、使用者側から見ると、規制や負担が大きいということになるからです。

そこで、本当は雇用なのに、雇い主が請負だと言い張って、労働者に不利な扱いをしてしまう場合があります。

これが、名ばかり請負(偽装請負)です。

あるいは、最初は請負契約だったのに、注文者から請負人に対して、あれこれ具体的な指示が出るようになって、途中から雇用契約になった場合に、それでも扱いは請負契約のままという場合もあります。

これも、名ばかり請負です。

 

<ニセ働き方改革>

働き方改革というのは、労働者のニーズを踏まえた改革です。

しかし、たとえ労働者が望んだとしても、使用者側がこれに応ずることが労働者の不利になり、違法になることが多くあります。

たとえば、労働者から「手取り収入を増やしたいので社会保険には入りたくない」という要望があって、会社がこれに応じて健康保険や厚生年金の加入(資格取得)手続きを怠ったとします。

もちろんこれは違法ですが、この場合には、病気で長期入院した場合の補償も無いですし、将来受け取る年金額も減ってしまいます。

最近では、中小企業ばかりでなく、大企業でも「働き方改革」「労働者のニーズ」という言い訳で、名ばかり請負を進める動きが出てきています。

社長の権限が強大で、あるいはパワハラが強烈で、誰も違法性を指摘できないのでしょうか。

こうしたニセ働き方改革の出現によって、働き方改革そのものが悪者にされたり、働き方改革の弊害だとされることがあるのは非常に残念です。

 

2022/09/02|521文字

 

<第3号被保険者とは>

第3号被保険者は、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)が対象です。

勤め人の配偶者ということで、夫が妻の扶養に入っている場合も対象となります。

夫婦のうち、扶養している側は、会社員など厚生年金等の加入者ですが、同時に国民年金の第2号被保険者でもあります。

しかし、第3号被保険者は、国民年金にのみ加入し、厚生年金等には加入しません。

 

<保険料の免除>

第3号被保険者である期間は、保険料をご自身で納付する必要はないのですが、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。

 

<第3号被保険者になったときの届出>

配偶者に扶養されることになった場合には、第3号被保険者になりますので、第3号被保険者に該当する旨の届出を配偶者の勤務する会社(事業主)に提出してください。

 

<第3号被保険者でなくなったときの届出>

配偶者の扶養から外れた場合には、第1号被保険者になりますので、住所地の市区町村に第1号被保険者への種別変更届を提出してください。

60歳未満の場合、ご本人の年収見込みが130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます。

所得税の扶養とは基準が異なりますので注意しましょう。

 

2022/09/01|2,027文字

 

<理由による対応の違い>

遅刻の理由を確認することなく叱責したり、懲戒を検討したりは以ての外です。

ましてや、解雇を通告すれば不当解雇となります。

家庭内のプライベートな事情や、交通機関の遅れなど、本人に責任を問えない理由で遅刻した場合には、責めることができません。

反対に、深夜まで深酒したり、オンラインゲームに熱中したりで、明け方から眠りについて寝坊したのが遅刻の理由であれば、言い逃れができません。

現実には、このような極端なケースではなく、本人の帰責性について判断に迷う理由も多いものです。

プライバシーの侵害とならない範囲で、なるべく具体的な理由を確認し、本人の責任の程度と再発防止策検討の資料とします。

もちろん嘘はいけませんから、言い訳に多くの矛盾があったり、後日、虚偽が発覚したりの場合には、それ自体が叱責や懲戒の対象となりえます。

就業規則の遅刻を禁止する規定に、「正当な理由なく」という文言が入っていなければ、これを加えておくべきです。

 

<事前連絡による対応の違い>

同じ遅刻でも、かなり早く会社に連絡があれば、遅刻を予定した対応を取ることが可能です。

ところが、何の連絡もなしに遅刻した社員がいれば、上司や同僚の心配もさることながら、仕事の計画が狂い、しかも計画の立て直しも困難になってしまいます。

こうした観点からは、無断遅刻は最も許しがたく、反対に、数日前からの予告のもとに遅刻するのは咎められないといえるでしょう。

就業規則にも、「やむを得ず遅刻する場合には、なるべく早く上長に連絡し、その承認を得ること」などの規定を置いておくことが望ましいでしょう。

 

<適切な注意指導>

遅刻は、それ自体が労働契約違反ですから、非難の対象となります。

まじめに本来の始業時刻から業務を開始している社員から不満も出ますし、会社が遅刻に対して厳正な態度を取らなければ、社員全体の士気が低下してしまいます。

このことから、遅刻の理由、事前連絡の状況、遅刻の頻度などを踏まえ、遅刻した社員には上司からの具体的な注意指導が必須となります。

注意指導は、本人の反省を促し改善の機会を与えるとともに、懲戒や解雇の前提となるものです。

実際に、懲戒や解雇へと進み、その有効性が問われた場合には、注意指導の証拠資料が威力を発揮しますので、その内容を文書化して保管し、できれば対象者の確認を得ておくことが望ましいものです。

ただし、注意指導の内容や態様がパワハラに該当してしまうと、それ自体が問題となりますから注意が必要です。

 

<懲戒処分の検討>

遅刻を懲戒の対象とするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要です。

たとえば、「正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき」という規定であれば、1回か2回の遅刻で懲戒の対象とすることは、「しばしば」という言葉の意味に反しますから、客観的に合理的な理由による懲戒とはなりません。

しかし、たとえ1回の遅刻であっても、お得意様への重要な対応などを予定していながら遅刻し、そのお得意様が立腹してライバル会社に乗り換えてしまったような場合に、「過失により会社に損害を与えたとき」のような規定があれば、こちらの規定が適用できるでしょう。

このように懲戒規定全体を見渡して、具体的事実に適合する規定を根拠とする懲戒とする必要があります。

遅刻が、基本的に過失による行為であることを考えると、遅刻を繰り返し、注意指導によっても改善されないとしても、懲戒解雇というのは行き過ぎであり、不当解雇となる可能性が極めて高いといえます。

 

<配置転換の検討>

遅刻の許容度というか、遅刻が許されない職場・職種もあれば、そこまで厳密に考える必要のない職場・職種も想定されます。

この違いから、遅刻の許されない社員が遅刻する場合には、他部署への配置転換も検討の対象となります。

 

<退職勧奨>

注意指導を繰り返しても、遅刻が改善されない場合で、配置転換を考える余地がないときには、退職勧奨を行うことも考えられます。

ここまで来ると、二度と遅刻しないように最大限の努力を行うか、自ら退職を申し出るかの選択に迫られることになります。

 

<普通解雇>

遅刻は、労働契約上の始業時刻に、業務を開始していないのですから労働契約違反です。

つまり、労務提供についての債務不履行ということになります。

そして、債務不履行が重大であれば、普通解雇の理由ともなります。

しかし、労働契約上の所定労働時間の殆どについては、債務不履行がないと考えれば、遅刻を理由として普通解雇を通告するのは行き過ぎでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

人事考課制度が適正に運用され、一定期間ごとに、遅刻の回数、時間、影響などが正しく評価されていれば、自ずと待遇に差が生じてきます。

これによって、遅刻を繰り返してきた本人から退職を申し出ることもあるでしょうし、また過去から現在に至るまでの評価結果を根拠に、説得力のある退職勧奨も可能となります。

 

2022/08/31|1,148文字

 

<雇用保険の加入者(被保険者)>

次の要件を満たせば、会社や労働者の意思にかかわらず、雇用保険に入り被保険者となるのが原則です。

・1週間の所定労働時間が20 時間以上であること

・31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

パート、アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態とは関係なく同じ基準です。

これらの条件は、会社から労働者に交付が義務づけられている雇用契約書、雇い入れ通知書、労働条件通知書といった書面で確認できます。

 

<雇用保険の失業手当(基本手当)>

雇用保険の基本手当とは、雇用保険の被保険者が、倒産、定年、自己都合などにより離職(退職)し、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、再就職するために支給されるものです。

一定の要件を満たせば、給料の5割~8割程度の手当が支給されます。

また、支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異なり、90日~360日となっています。

 

<受給に必要な要件>

そして、雇用保険の被保険者が基本手当を受給するには、次の要件を満たす必要があります。

・ハローワークに行って求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。

・離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月以上あること。ただし、会社側の理由により離職した場合、会社側の都合またはやむを得ない理由で契約の更新がされなかった場合は、離職前1年間に11日以上働いた月が6か月以上あること。

 

<受給に必要な手続き>

失業給付の手続きは、勤めていた会社がすべてを行うものではなく、本人との共同作業となります。

会社は所轄のハローワークで、離職者の雇用保険の資格喪失手続きをします。

このとき離職証明書をハローワークに提出するのですが、これは3枚1セットで、1枚目が離職証明書(事業主控)、2枚目が離職証明書(安定所提出用)、3枚目が離職票-2となっています。

手続きをすると、ハローワークから会社に1枚目と3枚目が渡され、これとは別に離職票-1などが渡されます。

会社から離職者に離職票-1と-2を渡すのです。

離職者は、会社から渡された雇用保険被保険者証、離職票-1、-2などの必要書類を持って、本人の住所を管轄しているハローワークに行きます。

 

<加入もれの場合>

要件を満たしているのに、会社が雇用保険に加入させておらず、被保険者になっていなかったといったトラブルがしばしば起こっています。

このような場合、被保険者の要件を満たしている証拠があれば、遡って雇用保険が適用される制度があります。

具体的なことは、管轄のハローワークや社会保険労務士に相談してください。

 

2022/08/30|866文字

 

<国民年金について>

日本国内に住んでいる20歳から60歳になるまでの人は、国籍にかかわりなく国民年金の対象者になっています。

国民年金は、老後の生活だけでなく、障害者になった場合の生活や、本人が死亡した後に残された家族の生活を保障するために、一定の生活費が支給される公的な制度です。

国民年金の保険料を納めていないと、自分の身にもしものことが起こっても、年金が支給されなかったり減額されたりします。

経済的な事情などで保険料を払えないときは、保険料の免除や減額、延納の制度もあります。

この手続きをしておけば、払っていない期間があっても、年金の減額などの不利益が小さくなります。

住んでいる場所の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口で申請をしてください。

 

<厚生年金について>

勤め人の場合、国民年金の上乗せ部分としてプラスアルファの保障を受けることができる厚生年金の制度があります。

厚生年金は、原則として1日または1週間の所定労働時間、および1か月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上であれば、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態にかかわらず加入することになります。

ただし、一定規模以上の企業では、週所定労働時間が20時間以上など、加入者の範囲は広くなっています。

会社や労働者の意思は関係ありません。

厚生年金に一定期間加入していると、国民年金だけの場合よりも有利な年金を受け取ることができます。

しかも、厚生年金の保険料は、給料(標準報酬月額と標準賞与額)の約18%を会社と労働者で半分ずつ負担します。

この保険料には、国民年金の保険料も含まれています。

 

<保険料負担額>

令和4(2022)年度の国民年金保険料は、月額16,590円です。

厚生年金保険料は、標準となる月給が165,000円以上175,000円未満なら、月額15,555円です(働いている人の負担額)。

ですから、月給が約17万円で賞与などが無ければ、働いている人の負担は国民年金よりも厚生年金のほうが少なくて、万一の場合の保障も手厚いということがいえます。

 

2022/08/29|1,156文字

 

<特別障害給付金制度の概要>

国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者について、福祉的措置として「特別障害給付金制度」が設けられています。

 

<支給対象者>

支給の対象となるのは、次のうちのどちらかです。

 

1.平成3(1991)年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生

 大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校の昼間部に在学していた学生です。

 昭和61(1986)年4月から平成3(1991)年3月までに限っては、専修学校、一部の各種学校が含まれます。ただし、定時制、夜間部、通信を除きます。

 

2.昭和61(1986)年3月以前に国民年金任意加入対象であった「勤め人(被用者等)の配偶者」であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある人

 ただし、65歳に達する日の前日までにその障害状態に該当した人に限られます。

 

「勤め人(被用者等)の配偶者」とは以下の場合です。

 (1) 被用者年金制度(厚生年金保険、共済組合等)の加入者の配偶者

 (2) 上記(1)の老齢給付受給権者及び受給資格期間満了者(通算老齢・通算退職年金を除く)の配偶者

 (3) 上記(1)の障害年金受給者の配偶者

 (4) 国会議員の配偶者

 (5) 地方議会議員の配偶者(昭和37(1962)年12月以降に限る)

 

なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などを受給することができる人は対象になりません。

また、給付金を受けるためには、厚生労働大臣の認定が必要になります。

 

<支給額>

障害基礎年金1級相当に該当:令和4年度基本月額52,300円(2級の1.25倍)

障害基礎年金2級相当に該当:令和4年度基本月額41,840円

特別障害給付金の月額は、前年の消費者物価指数の上昇下降に合わせて毎年度自動的に見直されます。

また、ご本人の所得が一定の額以上であるときは、支給額の全額又は半額が停止される場合があります。

老齢年金、遺族年金、労災補償等を受給している場合には、その受給額分を差し引いた額が支給されます。

老齢年金等の額が特別障害給付金の額を上回る場合は、特別障害給付金は支給されません。

 

<請求手続の窓口等>

原則として、65歳に達する日の前日までに請求する必要があります。

請求の窓口は、住所地の市区役所・町村役場です。

特別障害給付金の審査・認定・支給についての事務は日本年金機構が行います。

必要な書類等をそろえた場合でも、審査の結果、支給の要件に該当しないとき、あるいは支給の要件の確認ができない場合は不支給となります。

なお、給付金の支給を受けた場合には、申請により国民年金保険料の免除を受けることができます。申請は毎年度必要となります。

 

2022/08/28|647文字

 

<原則の法定労働時間>

使用者は労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはなりません。〔労働基準法第32条第1項〕

もちろん、三六協定を交わし所轄の労働基準監督署長に届け出れば、協定の範囲内での時間外労働は処罰の対象となりません。

ただし、法定労働時間を超える労働に対しては、時間外割増賃金の支払が必要です。

ここで1週間というのは、就業規則などで取り決めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

 

<労働基準法施行規則による特例>

公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊な必要があるものについては、その必要かつ労働者の健康・福祉を害しない範囲で、厚生労働省令による例外を設けることができることとされています。〔労働基準法施行規則第25条の2第1項〕

こうして例外とされた特例措置対象事業場の法定労働時間は、平成13(2001)年4月1日から、1日8時間、1週44時間に改正されました。

これが、時間外割増賃金の基準となります。

 

次に掲げる業種に該当する常時10人未満の労働者を使用する事業場が対象です。

 商業 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
 映画・演劇業 映画の映写、演劇、その他興業の事業
 保健衛生業 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
 接客娯楽業 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

ここで事業場の規模(人数)は、企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。

 

2022/08/27|732文字

 

<国民年金の加入期間>

国民年金の加入期間は、原則として20歳から60歳になるまでの40年間です。

40年間、国民年金の保険料を納付していれば、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。

また、老齢基礎年金の受給資格期間である10年間以上、国民年金の保険料を納付していれば、納付期間に応じて老齢基礎年金を受給することができます。

平成29(2017)年8月1日に年金機能強化法が改正され、年金受給資格期間が25年から10年に短縮されました。

受給資格期間というのは、原則65歳から老齢基礎年金を受給するための条件となる期間で、次の3つの期間の合計です。

1.厚生年金保険や国民年金の保険料を納付した期間

2.国民年金の保険料の納付を免除された期間

3.合算対象期間(カラ期間)

 

<任意加入とは>

60歳になるまでに老齢基礎年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない場合や、40年間の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合であって、厚生年金・共済組合に加入していないときは、60歳以降(申出された月以降)でも国民年金に加入することができます。

ただし、さかのぼって加入することはできません。

これは、義務として加入するのではなく、希望すれば加入できるということで「任意加入」といいます。

 

<任意加入の期間>

・年金額を増やしたい人は65歳になるまでの間

・受給資格期間を満たしていない人は70歳になるまでの間

・外国に居住する日本人は20歳以上65歳未満の間

なお、平成20(2008)年4月1日から、外国に居住する日本人を除き、保険料の納付方法は口座振替が原則となりました。

日本国内に住んでいる人が、任意加入の申し込みをするための窓口は、お住まいの市区役所・町村役場です。

 

2022/08/26|1,007文字

 

<50%以上の割増賃金>

月60時間を超える法定時間外労働に対して、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

これは、労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、平成22(2010)年4月1日に労働基準法が改正され、1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率が5割以上に引き上げられたものです。

なお、深夜(22:00~5:00)の時間帯に1か月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合は、 深夜割増賃金率25%以上 + 時間外割増賃金率50%以上 = 75%以上となります。

1か月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日(例えば日曜日)に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日(例えば土曜日)に行った法定時間外労働は含まれます。

 

【法定休日】

使用者は1週間に1日または4週間に4回の休日を与えなければなりません。

これを「法定休日」といいます。

法定休日に労働させた場合は35%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

なお、労働条件を明示する観点や割増賃金の計算を簡便にする観点から、法定休日とそれ以外の休日を明確に分けておくことが望ましいものです。

 

<代替休暇>

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

 

【労使協定で定める事項】

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

 

この労使協定は、各事業場で代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。

個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、労働者の希望により決定されます。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

2022/08/25|855文字

 

<辞める権利や自由はないのか>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。

退職した後のことまで、責任を負うことはありません。

会社が決めた賠償額を支払う必要はありません。

予め賠償額を決めておくことは労働基準法違反ですし、あくまでも実際に会社が失った利益が賠償額の基準となります。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法第5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法第117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法第220条、第223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法第222条、第249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2022/08/24|1,549文字

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇であれ、懲戒解雇であれ、すべての解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの条件が示されています。

懲戒処分は、この多くの制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは「懲戒かつ解雇」ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけを満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について就業規則などに具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合でも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<予備的普通解雇>

民事訴訟では、Aという請求をしつつ、これが認められないのならBという請求をするという「予備的請求」というものが認められます。

また、Aという請求をしたところ、Aの条件は満たしていないが、Bという請求としては効力が認められるという、無効行為の転換ということが行われます。

おそらく2000年以降ですが、懲戒解雇を通告し、予備的に普通解雇を通告しておいた会社に対し、懲戒解雇は無効だが普通解雇としては有効だという判決が見られるようになりました。

会社としては、心情的には懲戒解雇の通告をしたいところ、普通解雇の方が確実に条件を満たし有効性が認められやすいことに配慮し、次のような「懲戒解雇と予備的普通解雇を同時に通告する」方法をとることが可能です。

 

就業規則〇〇条に基づき、貴殿を〇月〇日付で懲戒解雇とします。

併せて、就業規則〇〇条に基づき、予備的に貴殿を〇月〇日付で普通解雇とします。

 

この場合、会社としては暫定的に懲戒解雇として手続を進めておき、万一労働者から訴えられた場合には、懲戒解雇がダメでも普通解雇は有効となるようにしておくということです。

法改正があったわけではないのですが、こうした裁判の動向からも、企業の選択肢が増えることもあるのです。

 

2022/08/23|1,345文字

 

<不当解雇の一般的な基準>

労働契約法には、解雇が無効となる一般的な基準が次のように示されています。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

この条文自体は、表現が簡潔で抽象的なため、これだけを読むと解釈の幅が広いものとなります。

しかし、労働契約法は判例法理をまとめたものです。

ですから、実務的には、数多くの判例や裁判例を参照して、具体的な事例に当てはめて、解雇権の濫用となるのか、不当解雇となるのかを判断することになります。

それでも、使用者側が「不当解雇ではない」ことを証明するのは、困難であることが多いのが実態です。

 

<裁判所の判断基準>

裁判所は基本的に、解雇は従業員を会社の外に放り出す最終手段であると捉えています。

ですから、注意指導、教育研修、配置転換など解雇以外の方法によって、問題を解決できる可能性があるにもかかわらず、これらを試みずに解雇に踏み切るのは解雇権の濫用であり不当解雇になると判断しています。

 

<注意指導>

注意指導は、抽象的なものでは足りません。

「ちゃんとしてください」「気をつけましょう」という抽象的な言葉の投げかけだけでは、相手の人格を傷つけ萎縮させるだけですから、場合によってはパワハラになることすらあります。

その人の言動のどこにどんな不足や問題があって、業務の正常な遂行を妨げているのかを具体的に説明する必要があります。

そのうえで、どのように変えれば問題なく業務を遂行できるのか、能力に応じた丁寧な指導でなければ役に立ちません。

これは実質面ですが、将来トラブルとなりうることを踏まえ、記録を残すという形式面も大事です。

いつ、どこで、誰が誰に、何をどのように指導したのか、また、本人の態度や改善内容について、指導者と対象者との双方が確認したことが分かる記録を残します。

 

<教育研修>

教育研修は、新人に対する集合研修だけでは足りません。

各従業員の個性に応じたOff-JTも必要です。

これについても、注意指導と同様に記録を残します。

 

<配置転換>

注意指導や教育研修によっても、当初予定した業務をこなせないのであれば、配置転換を検討する場合もあります。

ただし、たとえば小規模な会社で、経営者の配偶者が事務仕事を一手にこなしていて、従業員は画一的に現場の仕事を行っているような場合には、配置転換のしようがありません。

こうした場合には、配置転換を検討しないことをもって、不当解雇の理由とされることはありません。

これに対して、一定以上の規模の企業で、多くの部門・部署があり、多種多様な担当業務が存在する場合には、配置転換の検討が必須となってきます。

 

<解雇の種類>

業務上、ミスを連発しても、それは能力不足に起因するものであって、懲戒により注意を促して改善を求めるのは意味がありません。

ほとんどの場合、普通解雇としては有効であっても、懲戒解雇とすることは懲戒権と解雇権の濫用となり、無効となってしまいます。

ですから、能力不足の従業員に注意指導、教育研修、配置転換の検討と、手を尽くしても改善できなければ、懲戒解雇ではなく、普通解雇の対象とすることを検討しなければなりません。

 

2022/08/22|811文字

 

<会社が保険料を納めないケース>

厚生年金保険の加入(資格取得)基準を満たしている従業員について、加入手続きを行わなければ、会社は従業員(被保険者)分と会社分の両方について、保険料を不正に免れることになります。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚し会社が是正を求められます。

また今後、マイナンバーの社会保険への導入が進めば、手間のかかる調査をしなくても手軽に不正をあばけるようになります。

そうでなくても、加入基準を満たす従業員が、年金事務所に労働時間や労働日数などの資料を持参して相談すれば、勤務先の会社に調査が入ります。

 

<金額をごまかすケース>

従業員の給与から控除する保険料は正しい金額でも、その一部を会社が着服して、残りを納付するということがあります。

たとえば、従業員の月給が30万円で、これに応じた保険料を給与から控除しておきながら、日本年金機構に月給20万円で届を出しておけば、月給20万円を基準に計算した保険料の納付で済みます。

この場合、年金事務所や会計検査院の調査が入れば、不正が発覚して会社が是正を求められます。

また日本年金機構から、節目の年齢に厚生年金保険の加入者(被保険者)に、年金加入記録を確認してもらうため「ねんきん定期便」が郵送されています。

これを見れば、保険料の基準となっている給与や賞与が正しいか確認できます。

驚くことに、上場企業でも海外勤務者の保険料をごまかしていることがあります。

 

<もしもごまかされていたら>

労働時間、労働日数、給与、賞与、保険料として天引きされている金額などの資料をきちんと保管しましょう。

退職直後に、厚生労働省や総務省に調査してもらいましょう。

在職中に調査が入ると、会社から退職に追い込まれるリスクもあります。

また、会社の手続きに社会保険労務士が関与しているようでしたら、都道府県の社会保険労務士会にもご相談ください。

こちらも退職後がお勧めです。

 

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