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2020/09/29|812文字

 

<休憩室とは違う休養室>

休憩室は、従業員がリフレッシュするため日常的に使うスペースです。

しかし休養室は、従業員が急に体調をくずしたときに一時的に休ませ、場合によっては救急車が来るまで待たせておくための施設です。

 

<設置義務>

労働安全衛生法と労働安全衛生法施行令の規定に基づき、またこれらの規定を実施するため、労働安全衛生規則が定められています。

その第618条には、次のように規定されています。

「事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」

このように、設置義務を負うのは男女合わせて50人以上、または、女性だけで30人以上の従業員がいる事業場に限られています。

 

<注意ポイント>

が床(臥床)とは横たわることですから、座って休めればよいというものではありません。

ベッドや布団が必要になります。ソファーベッドが便利です。

また、男女兼用ではダメで、男性用と女性用に区別して設置する必要があります。

従業員が少しずつ増えていき、いつの間にか50人を超えた場合、衛生管理者、衛生委員会、産業医、健康診断結果報告などは思いつくものの、休養室は忘れがちです。

 

<規則に違反した場合>

労働安全衛生規則そのものには罰則がありません。

しかし、休養室が設置されていなかったり、条件を満たしていなかったりした状態で、急病人が発生し対応が遅れることがあれば、会社が責任を問われることになります。

そうでなくても、労働基準監督署の監督などがあった場合には、指摘を受けてしまいますので、きちんと対応すべきです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が10名以上になった場合、50名以上になった場合など、節目の人数で会社が対応に追われることは多々あります。

計画的に対応できるよう、予め信頼できる社労士に相談しておきましょう。

 

解決社労士

2020/09/28|790文字

 

<給与所得控除後の金額>

「給与所得控除後の金額」は、給与所得のことをいい、計算式で示すと次のようになります。

 

給与所得(給与所得控除後の金額)= 支払金額(年収)- 給与所得控除

 

給与所得控除というのは、サラリーマンの必要経費にあたるもので、収入に応じた一定額を課税の対象から控除するものです。

給与所得控除額は、支払金額(年収)に応じて計算されます。

給与所得控除額が多いほど、課税対象額が減少しますから、所得税も少なくなる計算になります。

この給与所得控除額の計算式が、税制改正により時々変わるため、年収などに変更がなくても、所得税額が増減することがあるわけです。

 

<給与所得控除額の変更>

令和2年分については、年末調整等のための給与所得控除額は、下の表の旧給与所得控除額から新給与所得控除額へと減額されます。

 

【給与所得控除額】

支払金額(年収)A

新給与所得控除額

旧給与所得控除額

162万5,000円以下

55万円

65万円

162万5,000円超180万円以下

A×40%- 10万円

A×40%

180万円超  360万円以下

A×30%+ 8万円

A×30%+ 18万円

360万円超  660万円以下

A×20%+ 44万円

A×20%+ 54万円

660万円超  850万円以下

A×10%+110万円

A×10%+120万円

850万円超 1,000万円以下

195万円(上限額)

A×10%+120万円

1,000万円超

195万円(上限額)

220万円(上限額)

 

支払金額(年収)の上限が、現行の1,000万円から850万円となります。

また、給与所得控除の上限額も現行の220万円から195万円へと変更されるため、年収850万円を超えると10万円を超える引き下げ額になります。

ただし実務上は、国税庁のホームページにある「令和2年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って決めています。

 

解決社労士

2020/09/27|578文字

 

<職場の空気の量や換気についての規制>

労働安全衛生法と労働安全衛生法施行令の規定に基づき、また、これらの規定を実施するため、労働安全衛生規則が定められています。

 

<空気の量についての規制>

労働者が室内で呼吸などに利用できる空気の量を気積(きせき)といいます。

その室内にキャビネットなどがあって、空間をふさいでいる部分の体積は、気積に含まれません。

また、天井が高く床面から4メートルを超える場合には、4メートルを超える高さにある空間も気積に含まれません。

こうして計算された気積は、労働者1人について10立方メートル(1万リットル)以上必要です。〔労働安全衛生規則第600条〕

 

<換気についての規制>

換気が十分に行われる設備が整っていれば問題ないのですが、窓を開けて換気している場合には、直接外気に触れる部分の面積が、床面積の20分の1(5%)以上であることが必要です。〔労働安全衛生規則第601条第1項〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が50名以上であれば、資格を持った衛生管理者や産業医のチェックが法定されています。

しかし小規模な事業場では、職場環境の最低基準を満たしていないケースも見られます。

一度、信頼できる社労士にチェックさせてはいかがでしょうか。

少数ですが、職場環境を専門にしている社労士の先生もいます。

ぜひ、ご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/26|612文字

 

<職場のトイレについての規制>

労働安全衛生法の規定に基づき、また規定の内容を実施するため、事務所衛生基準規則が定められています。

これは、厚生労働省令の一つで、トイレについては事務所衛生基準規則第17条に規定があります。

 

<男性用と女性用の区別>

職場のトイレは、男女共用ではいけません。

男性用と女性用をそれぞれ設置する必要があります。

そのうえで、障害者やLGBTなどの方々に配慮した専用のトイレを設置することが望まれています。

 

<男性用小便器の数>

男性労働者30人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

その職場に所属する人数ということではありません。

同時に就業する最大の人数が基準となります。

たとえば、同時に就業する最大の人数が65人であれば、65人 ÷ 30人 = 2.17 の端数切り上げで3つ必要です。

 

<個室の数>

同時に就業する最大の人数を基準として、男性用は60人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

女性用は20人以内ごとに1つ以上の割合で必要です。

 

<その他>

流水で手を洗うための設備が必要です。

事業者には、トイレを清潔に保つ義務があります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

事業場の従業員が50名以上であれば、資格を持った衛生管理者や産業医のチェックが法定されています。

しかし小規模な事業場では、職場環境の最低基準を満たしていないケースも見られます。

一度、信頼できる社労士にチェックさせてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/09/25|1,055文字

 

<通勤手当の性質>

労働基準法などに、使用者の通勤手当支払義務は規定されていません。

むしろ法律上、通勤費は労働者が労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担することになっています。〔民法第485条〕

ただし、就業規則や雇用契約などで通勤手当の支給基準が定められている場合には、賃金に該当するとされています。〔昭和22年9月13日発基第17号通達〕

さて、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、在宅勤務の機会が増大しました。

通勤しない在宅勤務が増えると、毎月の通勤手当を定額で支給している場合には、その妥当性に疑問が生じます。

 

<就業規則の解釈>

通勤手当について、厚生労働省のモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【通勤手当】

第34条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

 

こうした規定の場合、通勤しない在宅勤務の日数が多い場合には、「通勤に要する実費」の解釈が分かれます。

通勤定期代は、1か月、3か月、6か月で割引率が異なります。

1か月当たり17から20往復以上すれば、SuicaなどのICカードでの乗車より割安になります。

出勤日数が、これに達しない場合、3か月で5往復半以上であれば回数券がお得です。

ただし、回数券はICカードの利用を前提とせず、切符で片道10回乗車した場合の料金で11枚購入できるのが基本ですから注意が必要です。

出勤日数が極めて少ない場合に、切符代で計算するのか、ICカード利用で計算するのか、解釈が分かれるかもしれません。

こうした事情を踏まえて、就業規則に「通勤に要する実費」を規定するわけですが、最も経済的な運賃の選択が容易ではないケースもあり、多めの支給となることも良しとすべき場合があるでしょう。

 

<出勤日変更の場合>

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、突然、在宅勤務を命じられるケースも目立ちました。

こうした場合に、上記のような厳密な計算で「通勤に要した実費」を支給するのでは、従業員に不当な負担を強いることになります。

例えば、通勤定期券は1か月単位で解約できるのですが、在宅勤務がいつまで続くか分からない状況での解約は決断できません。

また、回数券の購入についても、判断がむずかしいでしょう。

結局、「通勤に要する実費」というのは、「通勤に要すると見込まれた実費」と解釈すべきだと考えられます。

今回のコロナ禍のような緊急事態では、あらゆる点で、従業員に有利な運用をするしかないと思われます。

 

解決社労士

2020/09/24|1,225文字

 

<客観的事実なら>

従業員が休日に事故にあった、取引先が火災に見舞われた、災害により原料の供給が途絶えたなど、会社が関与していない原因により発生した事実については、なるべく早く社内に伝達すべきです。

その事実に対し、会社として、個人として、どのように対応すべきかについて、なるべく早く検討を開始する必要があるからです。

事実の伝達が遅れれば、少なくとも情報が遅いことについて、会社側が非難されてしまいます。

 

<会社の判断が絡むことなら>

これに対して、会社側の判断によって、一部の店舗や営業所を廃止する、パート社員の雇用契約を更新しない、賞与の支給を見送るなどの場合には、単純にその事実を伝えただけでは、関係する従業員から反発を招き、不信感を抱かれます。

それだけではなく、社外の無関係な人々からも非難されることになります。

こうした場合には、その事実の理由や原因を突き詰めて説明する必要があるのです。

なぜそうするのかという通り一遍の説明ではなく、理由の理由、原因の原因まで遡った説明が求められています。

 

<一部の店舗を廃止する場合>

その店舗の売上が不振だから、経営の合理化が必要だからというように、直接の理由を示すだけでは不十分です。

到底、納得できるものではありません。

ある店舗の周辺で再開発が進むことによって、人の流れが変わってしまい、顧客の減少を食い止めることはできない。

会社には、その店舗の赤字経営を続ける余裕は無く、一度閉店して力を蓄え、集客の期待できる場所に改めて出店を考えることにしたなどと、納得のいく説明が必要なのです。

従業員にこうした説明をすることによって、その店舗をご愛顧いただいていたお客様にも納得のいく説明が伝わることでしょう。

 

<パート社員の契約打切りの場合>

会社の経営が不振だから、景気が悪くなったからというように、一般的な理由を示すだけでは不十分です。

「なぜ、あなたの契約が打切りになるのか」という具体的な説明が無ければ、到底、納得できるものではありません。

原材料の相場が上昇し、会社は仕入先と共に努力を重ねてきたが、それでもなお利益率が15%低下し、人件費を3割程度削減しなければならなくなった。

そこで、次のような基準を立てて一部のパート社員の契約を更新しないこととしたのだが、あなたはこの基準にかかってしまった。

このようなしっかりとした説明をすることによって、対象となるパート社員に理解を求めることができるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

そもそも会社のやろうとしていることが、違法であったり、従業員から賠償を求められるようなことであったりすれば、どんなに上手な説明も虚しいだけです。

特に人に絡むことについて決断する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

また、下手な伝え方、説得力の無い説明で無用なトラブルを誘発するのも、時間、労力、経費、精神力の無駄です。

これについても、経験豊かな社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/23|559文字

 

<一元適用事業>

労働保険(雇用保険と労災保険)の保険関係の適用や、保険料の申告・納付などの事務は、原則として、一つにまとめて処理することができます。

この原則が適用される事業を、労働保険の一元適用事業といいます。

 

<二元適用事業>

これに対して、建設業などでは、労働保険を一つにまとめて処理することがむずかしいので、保険関係の適用や保険料の申告・納付などの事務を、それぞれ別に行います。

建設業では、次の3つに分けて行います。

1.工事現場の労災保険は、工事現場の労働者の賃金総額を基に保険料を計算します。

2.本店、支店、事務所などの労災保険は、工事現場の労働者を除く賃金総額を基に保険料を計算します。

3.雇用保険は、会社全体の雇用保険の対象者の賃金総額を基に保険料を計算します。

特に建設業では、元請事業者がまとめて労災保険料を負担することになっています。

また、工事現場に複数の企業が関与していて、賃金総額を正しく把握するのが難しい場合には、元請としてその年度中に終了した工事の請負金額に労務費率を掛けて賃金総額を求めるという例外が認められています。

 

<二元適用事業に該当するもの>

•都道府県、市町村およびこれらに準ずるものの行う事業

•港湾労働法の適用される港湾における港湾運送の事業

•農林・畜産・養蚕・水産の事業

•建設の事業

 

解決社労士

2020/09/22|641文字

 

<運用変更の概要>

失業等給付のうち基本手当は、正当な理由なく自己都合により離職した場合、7日間の待期期間満了後3か月の給付制限期間は支給されませんでした。

今回の運用変更により、令和2(2020)年10月1日以降の離職者については、5年間のうち2回までの離職について、給付制限期間が2か月に短縮されました。

3回目以降の離職については、その離職から遡って5年以内に2回以上の自己都合による離職が無ければ、給付制限期間は2か月に短縮されます。

ただし、この場合、2回以上の自己都合による離職があれば、給付制限期間は3か月となります。

ここで、令和2(2020)年9月30日以前の自己都合による離職は、令和2(2020)年10月1日以降の離職についての給付制限期間に影響がありません。

 

<法改正ではない>

この変更は、雇用保険法など法令の改正によるものではなく、業務取扱要領の改定によるものです。

雇用保険法第33条は、正当な理由なく自己都合により離職した場合の給付制限期間について、「1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」と定めています。

この「公共職業安定所長の定める期間」が、業務取扱要領の改定によって運用が変更されたのです。

 

<変更のポイント>

取扱が変更となったのは、正当な理由なく自己都合により離職した場合に限られます。

ですから、懲戒解雇のような、「自己の責めに帰すべき重大な理由」による解雇によって離職した場合には、従来どおり給付制限期間は3か月のまま変更がありません。

 

解決社労士

2020/09/21|1,035文字

 

<違法残業の発生パターン>

次のような状況下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・三六協定の労働基準監督署長への届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出について会社が関与しているため三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

結局、違法残業というのは、有効な三六協定が届出されない状態で法定労働時間を超える勤務があった場合と、三六協定に違反する勤務があった場合を指すものだといえます。

 

<建設業の特殊性>

三六協定には、法定労働時間を上回って勤務させる場合の限度時間を定めます。

この限度時間についても、労働省(現厚生労働省)告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」により、その上限が定められています。

一般には、1か月で45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)、1年で360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は320時間)と規定されています。

ところが建設業では、この基準が適用除外となっています。工事の受注量は変動しやすいですし、作業は天候に左右されやすいですから、時間外労働に一定の上限を設けることはむずかしいからです。

こうしたことから、労働基準法上、建設業では残業が無制限にできてしまうことになります。

もっともこの例外が認められるのは、令和6(2024)年3月31日までです。

 

<残業時間の基準>

しかし、法的な制限が無いというだけで、長時間労働によって労働者に何があっても責任を負わないということではありません。

「法定労働時間を上回る残業時間が1か月で100時間を超えた場合、または、直近2~6か月の平均が80時間を超えた場合」という基準が、次のように多く用いられています。

・「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日付基発第1063号厚生労働省労働基準局長通達)

・「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日付基発1226第1号厚生労働省労働基準局長通達)

・ハローワークで雇用保険給付手続きをした場合に自己都合退職ではなく会社都合退職として特定受給資格者となる基準

このように、建設業の場合でも、健康管理措置上の上限があると考えられています。

つまり、労働基準法の罰則が適用されなくても、従業員や遺族から多額の賠償請求を受けるリスクはあるわけです。

 

解決社労士

2020/09/20|1,413文字

 

<憲法改正の手続>

「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」〔日本国憲法第96条第1項〕

つまり憲法改正案は、国会が特別多数決によって国民に提案し、改正は国民投票で決まるということです。

内閣が憲法を改正することはできませんし、国会の議決で憲法を変えることもできません。

決めるのは国民です。

ですから、「憲法9条改正反対!」などの集会は、政府や国会議員に向けられるのではなく、全国民に向けられるべきものでしょう。

安倍晋三前首相も、このことを良く理解したうえで発言してきました。

 

<基本的人権の保障>

日本国憲法は、基本的人権を保障するためにできました。

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。

私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法第25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法第26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法第27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法第28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法第29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法第30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法第25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、昭和22(1947)53日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人の偉い人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできるわけではありません。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。

ですから、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

繰り返しになりますが、日本国憲法は国家権力から私たちの人権を守るためにあります。

そして、憲法の改正を決定するのは、私たち国民です。

憲法記念日は、年に1回、このことを確認する日にしたいものです。

 

解決社労士

2020/09/19|1,472文字

 

<印鑑の盗用>

会社の中で、勝手に上司の印鑑や代表印を捺せば、問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、勝手に他人の印鑑を使って文書を作成すれば、犯罪となることもあります。

 

【刑法第159条第1項:私文書偽造等】

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

 

これは、印鑑に対する世間一般の信頼を保護するための規定です。

 

<署名の偽造>

同様に、会社の中で、勝手に上司や代表者の署名を偽造すれば、やはり問題とされ、懲戒処分を受けることもあります。

また、上に示した刑法の条文も、「印章」と「署名」を同等に扱っています。

こうしたことからすると、署名に対する世間一般の信頼も保護されており、必ずしも印鑑にこだわる必要はないといえます。

実際、国や地方公共団体から「押印廃止ガイドライン」「押印見直しガイドライン」などが相次いで出され、行政手続での押印省略が進んできました。

 

<押印原則の見直し>

最近では、令和2(2020)年8月27日に開催された第163回労働政策審議会労働条件分科会で、労働基準法に基づく届出等における押印原則の見直しが検討されています。

この中で、方針(案)として、次のものが示されています。

 

【押印原則の見直し】

36協定届を含め、押印を求めている法令様式等については、押印原則を見直し、使用者および労働者の押印欄の削除ならびに法令上、押印または署名を求めないこととする。

押印原則の見直しを踏まえ、電子申請における電子署名の添付も不要とする。

また、押印を求めている法令様式のうち、過半数代表者の記載のある法令様式については、36協定届も含め、様式上にチェックボックスを設けることとする。

 

「押印原則の見直し」とは言うものの、押印だけでなく署名も省略する内容となっています。そして、押印廃止後は、36協定の法令様式に、協定当事者が適格であることについてのチェックボックスを設け、使用者がチェックした上で、労働基準監督署長に届け出るという方針(案)となっています。

チェックボックスにチェックを入れれば、捺印や署名の代わりになるということです。

 

<新型コロナウイルス感染拡大の影響>

新型コロナウイルス感染拡大の中で、各企業は不要不急の出勤を自粛するよう求められました。

そうした中で、「書類に印鑑を貰わないと仕事が回らない」ということで、捺印する社員も、捺印される社員も出勤を余儀なくされるというのが、問題視されていました。

確かに、ハンコを貰うために、感染リスクを冒して出勤するというのは不合理です。

捺印や署名の電子化が進んだのも当然です。

 

<捺印・署名の廃止>

労働保険や社会保険の手続で、請求者の「記名・捺印または自筆の署名」で足りることになったにも関わらず、10年以上にわたって、民間側がついて行けない状態が続いていました。

たとえば、労災保険の請求書に被災者の自筆の署名があっても、病院の担当者から「本人の印鑑が無い」という理由で受け取りを拒否されることも、しばしばありました。

押印原則の見直しについては、行政の動きに民間がついて行けなかったわけです。

民間では、捺印や署名の電子化が進められているわけですが、行政では、捺印や署名の廃止が進められます。

社内での捺印や署名が、本当に必要なのか、一つひとつ検討してみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/09/18|889文字

 

<定年年齢の規制>

事業主が定年制を設ける場合には、定年を60歳以上とすることが義務化されています。〔高年齢者雇用安定法第8条〕

これにより、60歳未満の定年を定めた就業規則などの規定は無効とされます。

 

<定年後の継続雇用義務>

定年の定めをしている事業主に対して、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講ずべきことが定められています。〔高年齢者雇用安定法第9条〕

義務付けられる雇用確保措置のうち継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度とがあります。

勤務延長制度は、原則として役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わりません。

これに対し、再雇用制度は一度労働契約を終了させ、再び新しく労働契約を締結するものです。

つまり、定年の65歳への引上げが義務付けられるわけではありませんし、必ずしも勤務延長制度を選択しなければならないわけでもありません。

再雇用制度を選択し、新しい労働契約によって、役職・職務、仕事内容、賃金水準などが変わることもあるわけです。

 

<定年後の再雇用を拒める場合>

しかし、トラブルの多い問題社員が定年後の再雇用を求めてきた場合に、会社がこれを拒めないというのは不合理です。

そこで、就業規則に継続雇用の条件を定めておくことにより、それが労働契約の内容となるようにしておいて、問題社員の再雇用を回避できるようにしておく必要があります。

それでも、ただ定めておけば、どんな条件であっても有効というわけではなく、不合理な条件は無効とされてしまいます。

ここにも、次のような労働契約法の解雇権濫用法理の趣旨が及ぶわけです。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則の具体的な規定が、客観的に合理的か、社会通念上相当であるかという判断は、労働審判や裁判の事例を見ながら専門的な見地から判断することになります。

就業規則に関連規定を置いていても不安が残る場合や、これから対応しようと考えている場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/17|864文字

 

<受給資格期間の短縮>

年金機能強化法の改正があって、平成29(2017)81日より年金受給資格期間が25年から10年に短縮されました。

受給資格期間というのは、原則65歳から老齢基礎年金を受給するための条件となる期間で、次の3つの期間の合計です。

1.厚生年金保険や国民年金の保険料を納付した期間

2.国民年金の保険料の納付を免除された期間

3.合算対象期間(カラ期間)

 

<納付期間の勘違い>

国民年金(老齢基礎年金)は、国籍を問わず日本国内に住所があると、20歳から60歳になるまで強制的に加入することになります。

その間、保険料の滞納や免除期間がない限り、この満額を受け取ることになります。

満額は、令和2(2020)年度で781,700円(年額)です。

たしかに、年金受給資格期間は25年から10年に短縮されたのですが、10年間だけ年金保険料を納めれば、あとは納めなくても良いというわけではありません。

10年を超えて年金保険料を納めても、40年に到達するまでは、満額受給することはできず、納付期間に応じた年金しか受給できません。

十分な年金を受給するには、なるべく長期間、年金保険料を納付することが必要です。

 

<保険料の免除についての勘違い>

国民年金の保険料の免除には、法定免除、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予、学生納付特例があります。

免除されたら、納付したのと同じ効果があるというわけではありません。

平成21(2009)4月分以降について、法定免除、全額免除は、納付した場合の2分の1の効果、半額免除は、納付した場合の8分の6の効果をもたらすことになります。

学生納付特例では、後から年金保険料を納めなければ、年金額には反映されません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

年金について、個人の具体的なデータは、年金事務所や街角の年金相談センターで確認することができます。

ご自分で確認する時間的余裕が無かったり、年金事務所などで相談したけれども、今一つわからないときには、信頼できる社労士にご相談ください

 

解決社労士

2020/09/16|990文字

 

<産業雇用安定センターとは>

公益財団法人産業雇用安定センターは、企業間の出向や移籍を支援することにより「失業なき労働移動」を実現するため、昭和62(1987)年に国と事業主団体等が協力して設立された公益財団法人です。

設立以来、21万件以上の出向・移籍の成立実績があります。

 

<新型コロナウイルスの影響>

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、極端に人手不足となった業種と、雇用過剰となった業種が発生しました。

人手不足となった業種としては、宅配便などの運送業、スーパーマーケット、ホームセンターなどがあります。

人手不足が、長期にわたるのであれば、積極的に採用すれば良いのですが、新型コロナウイルス感染症が終息すれば、反対に雇用過剰となることが見込まれます。

ですから、思い切った大量採用はできません。

一方で、ホテル・旅館業、観光業、飲食業などでは、雇用過剰となりました。

こちらも、雇用過剰が長期にわたるのであれば、やむを得ず整理解雇を考えることになるのですが、新型コロナウイルス感染症が終息すれば、反対に人手不足となることが見込まれますし、一度解雇した従業員を再雇用するのは、かなりの困難を伴います。

ですから、ただでさえ法的に有効な解雇は難しいのに、コロナ禍を理由に解雇することは躊躇されます。

 

<産業雇用安定センターの活動>

産業雇用安定センターは、以前から出向・移籍を中核的業務としています。

今年に入り、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大していく中で、一時的に雇用過剰となっている企業から人手不足が生じている企業への異業種間の在籍型出向の支援についても取り組んでいるところです。

具体的には、センターの出向支援に関する情報が、各業界団体を通じて個々の企業に提供され、雇用過剰の企業(送出企業)と人手不足の企業(受入企業)の異業種における人材ニーズに関する情報がセンターに集約されます。

これを基に、センターが送出企業と受入企業間の在籍型出向のマッチングを行います。

今後とも、政府の雇用政策や各種方針に即応し、経済団体や労働組合などからの協力のもと、感染症下における雇用の維持と安定を図り「失業なき労働移動」の実現に向けた活動が継続されます。

こうしたサービスは、無料で行われていますので、新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた企業では、センターの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/09/15|1,281文字

 

<会社の不安>

健康診断の結果、社員に癌が見つかった。

あるいは、社員から会社に申し出があったとします。

こんなとき勤務を続けさせていて、万一のことがあったら、会社は何らかの責任を負わされるリスクがあります。

しかし、安易に労働契約を解除すれば、不当解雇として責任を追及されるかもしれません。

会社としては、放置できない悩ましい問題です。

 

<健康診断で癌が見つかった場合>

会社は健康診断の結果で、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師などの意見を聴かなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の4〕

そして意見を聴いた結果、必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設・設備の設置・整備、その他の適切な措置を講じなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の5〕

これは、健康診断で異常が見つかった場合の規定ですが、労働者に健康不良がある場合に会社がとるべき対応として参考になる内容です。

 

<具体的な対応方法>

まず、健康状態について事実を確認するため、経営者や人事部門の担当者が対象者と面談します。

このとき、健康診断の結果などを持参してもらうのが一般的ですが、健康診断の項目に無い病状であれば、これに代わる資料が必要です。

つぎに、ご本人の了解を得たうえで、医師などに相談します。

相談結果については、ご本人にも伝えます。

もちろん、会社の担当者とご本人とで、医師の意見を聴きに行くのも良いでしょう。

そして、会社としての対応策を検討し、その案をご本人に伝え、具体的な対応策を決めるようにします。

ここまでの流れの中で、ご本人から退職の意向が示されることも多いでしょう。

会社から退職勧奨となるような働きかけが無ければ、ご本人の自由な意思による退職の申し出ですから、労働契約は労働者からの解除となります。

 

<会社の責任>

癌にかかったからと言って、労働契約解除通知など出したら不当解雇になります。

ご本人にも生活がありますし、治療費を負担するためにも働き続けたいのです。

癌といえば、かつては、入院治療が当然の時代もありました。

しかし、今や医学の発達によって、通院治療が主流となっています。

つまり、通院の日には休んだり早退したりが必要になっても、普段の日は通常通り勤務できるということです。

ですから、ご本人と今後の勤務について良く話し合うことが大切です。

勤務の継続に無理が感じられるようでしたら、医師などと相談のうえ、再度、ご本人と話し合うことになります。

これと併行して、労働安全衛生法などの規定を参考に、会社として取るべき措置を実施することも大切です。

ここまでやって初めて、会社は責任を果たしたことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

健康保険により、長期休業した場合の賃金の補償や、医療費が高額になった場合の補助もあります。

具体的な事例に即して、何をどうすれば良いのか、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/14|716文字

 

<同じ日当でも>

出張に伴う日当は、就業規則などに規定が無ければ、本来、支払われなくても問題の無い手当です。

しかも、社会慣行として非課税とされているなど、その性質は不明確です。

これに対して、同じく日当と呼ばれることはあるものの、日給には多くの法的規制があります。

 

<最低賃金法の規制>

日給制とは、1日を単位として賃金が定められている制度をいいます。

また、これを前提として、毎日賃金を支払うことをいいます。

賃金を1月に1回支払う場合には、日給月給制と呼ばれます。

一方で、最低賃金法で定められている最低賃金は、1時間当たりの賃金で示されています。

これは、時間給だけではなく、月給制でも日給制でも適用があります。

ということは、1日いくらという日給制の場合、その1日とは何時間なのか明確にしておく必要があるということです。

日給 ÷ 所定労働時間 = 1時間当たりの賃金

これで計算した結果が、最低賃金を下回ると違法になります。

 

<時間外割増賃金の規制>

このように、1日いくらで決めれば計算が簡単なはずの日給ですが、所定労働時間は決めなければなりません。

そして、所定労働時間を超える労働に対しては、プラスアルファの賃金支払が必要となります。

さらに、法定労働時間を超えた場合には、割増賃金の支払も必要です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このように見てくると、せっかく明確な賃金制度として日給制を選んでも、そのメリットは疑わしくなってきます。

また、その日によって、所定労働時間がバラバラの場合には、どのように計算すれば良いのか迷うことになるでしょう。

日給制を合理的に、また合法的に運用するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/13|1,284文字

 

<代休制度>

労働基準法などに、代休についての規定はありません。

したがって、会社は労働者に代休を与える義務が無く、労働者には会社に代休を請求する権利が無いということになります。

つまり、会社が労働者に休日出勤をさせたとしても、後から代わりの休日を与えなくてもよいわけです。

 

<割増賃金の支払義務>

これだけで話が終わってしまうと、労働者は休日に働き損になってしまいます。

そうならないために、会社は労働者に対して割増賃金を支払う義務を負っています。〔労働基準法第37条第1項本文〕

たとえば、1日8時間労働で平日に5日勤務し、所定休日の土曜日に勤務した場合には、週40時間を超える土曜日の労働時間が、25%以上の割増賃金の対象となります。

法定休日の日曜日に勤務した場合には、35%以上の割増賃金の対象となります。

つまり、125%以上、135%以上の賃金支払が必要となります。

もちろん、所定休日や法定休日は、各企業の就業規則の定めに従います。

これらの割増賃金は、「代休を与えるから支払わなくてもよい」ということにはなりません。

支払わなければ、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。

 

<代休の運用>

休日労働に対する割増賃金の支払義務を果たしたうえで、会社が任意に代休付与を行うことは、法令により禁止されていませんので、就業規則に制度を定めることもできます。

しかし、休日労働を行った労働者に対して、恩恵的に代休を与えることは、実質的には賃金の二重払いになりますから、現実的ではありません。

これを避けるには、欠勤控除で対応することになりますが、一般には、労働者側が年次有給休暇の取得を申し出て、欠勤控除を避けるのではないでしょうか。

1日の休日労働に対し、半日に分け2回の代休を与えて欠勤控除を行うことも、労働者の了解を得れば問題ないと考えられます。

労使で話し合いのうえ、就業規則に定めるべきことです。

 

<代替休暇>

代休と混同されやすいものとして、代替休暇があります。

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、50%以上の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この労使協定の中で、代替休暇を与えることができる期間を定めるのですが、これは「法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内」とされています。

代休制度を設ける場合にも、代休取得日をこの範囲内にすべきでしょう。

また、代替休暇の制度を設けたとしても、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけることはできません。

代休の場合にも、個々の労働者が実際に代休を取得するか否かは、労働者の希望により決定するものとすべきでしょう。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

解決社労士

2020/09/12|1,046文字

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、行政通達などにより客観的に決められている定義です。

 

<持ち帰り仕事を命じられた場合>

使用者から命じられて、自宅や喫茶店などで業務をこなした場合、途中で進み具合のチェックが入ったり、完了の報告が求められたりすれば、労働時間の定義にあてはまるでしょう。

ところが、翌日出勤するまでチェックされない場合には、テレビを観たり飲食したりでダラダラやってもわかりません。

通常2時間で終わる仕事について、「5時間かかりました」という自己申告により、使用者が5時間分の残業手当を支払うのも不合理です。

この場合には、2時間分の賃金支払いが合理的です。

ここは、次の条文が参考になりますが、実際には、労使で合意しにくい内容でもあります。

「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」〔労働基準法第38条の2第1項〕

 

<労働者が自己判断で行った場合>

業務上の資料を、無許可で社外に持ち出すこと自体が問題です。

それはともかく、使用者が把握できないならば、指揮命令下に置くことも不可能ですから、労働時間とはなりません。

 

<持ち帰り仕事を黙認していた場合>

使用者が、自主的な持ち帰り仕事の存在を知っていて、これを禁止するなどの措置を取らなかった場合には、使用者から暗黙の命令があったものと考える余地があります。

ここはグレーゾーンで、具体的な事情によって結論が分かれるところです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

総務省がテレワーク(在宅勤務)を推進しています。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、不完全ながら取りあえずのテレワークに取り組んだ企業も多数に上っています。

あいまいな持ち帰り仕事を、ルールに従ったテレワークとして正式に認めれば、会社も労働者も納得することができます。

具体的にどうすべきか、迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/11|855文字

 

<対象事業場>

産業医については、労働基準法ではなく労働安全衛生法の第13条に義務規定が置かれています。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任し労働者の健康管理などを行わせることが義務付けられています。

事業場というのは、事務所、営業所、店舗などをいいますから、50人以上というのは会社全体の人数ではありません。

 

<産業医の資格>

産業医は、医師のうち次のいずれかの条件を満たす者から選任します。

(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者

(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者

(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者

(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者

 

<産業医の職務>

産業医は、次のような職務を行うこととされています。

(1)健康診断、面接指導等の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理等労働者の健康管理に関すること。

(2)健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。

(3)労働衛生教育に関すること。

(4)労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理などについて必要な勧告をすることができます。

また産業医は、原則として毎月1回作業場などを巡視し、作業方法や衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じることになっています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

産業医選任義務の有無の確認や労働基準監督署への届出、衛生委員会や事業場巡視での活用については、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/10|1,256文字

 

<完全月給制の定義>

「完全月給制」という言葉は、欠勤控除をしない月給制、つまり、「遅刻、早退、終日の欠勤があっても、減額せず一定の月給を支払う給与支払制度」の意味に使われるのが一般です。

しかしこれは、法律用語ではないため法令による定義はなく、会社ごとに就業規則などでその内容が定められています。

その内容が、会社ごとに定められているだけに、違法な運用が行われるリスクがあります。

 

<サービス残業の可能性>

欠勤控除が無いのは、労働者にとって有利ですから、この点については違法性がありません。

しかし、月給の定額支給ということが強調される余り、時間外労働などに対する賃金が支払われないとなると、違法なサービス残業が発生するリスクがあります。

このことから、完全月給制の対象者は、時間外労働、休日労働、深夜労働の無い労働者である場合が多いと考えられます。

法定時間外労働などに対する割増賃金が発生しない労働者としては、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」が挙げられます。〔労働基準法第41条第2号〕

その範囲は限定的に解釈されていますから、就業規則などで任意に定義することはできません。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇を取得すれば、その日のその時間帯の労働義務が免除され、欠勤控除は行われないことになります。

しかし、完全月給制であれば、年次有給休暇を取得しなくても欠勤控除はありません。

平成31(2019)年4月からは、企業に年次有給休暇の時季指定義務が課されました。

完全月給制の労働者についても、この義務は免除されていませんので、かなり形式的になってしまいますが対応せざるを得ません。

 

<傷病手当金など>

健康保険の加入者(被保険者)は、私傷病で3日を超えて欠勤し、通常の賃金の支払を受けなければ、傷病手当金を受給できます。

しかし、完全月給制の労働者は、通常通りの賃金を受けますから受給できません。

これによって、その労働者が経済的に困ることはないのですが、労使折半で支払っている保険料の一部が無駄になっていると考えられます。

労災による休業について、休業(補償)給付が支給されないのも、同様のことがいえます。

 

<休職制度>

休職制度が適用される場面では、年次有給休暇、傷病手当金、休業(補償)給付が意味を持ってくるでしょう。

一般に、欠勤期間が一定の基準に達することを条件として、休職制度が適用されます。

年次有給休暇を取得した日については、欠勤とはなりませんので、休職制度の適用が先送りされます。

また、休職制度が適用されている休職期間は、賃金の支払が無いのが一般ですから、傷病手当金や休業(補償)給付を受給できるようになります。

 

<実務的には>

労働者に有利な完全月給制ではありますが、合法的に運用されていたとしても、その合理性には疑問があります。

また、従業員の全員が完全月給制というのでなければ、同一労働同一賃金への対応も困難です。

会社の実情に応じて、見直しを検討されることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/09/09|1,395文字

 

<モデル就業規則>

厚生労働省のホームページに掲載されている「モデル就業規則」の最初のほうに、次のような規定があります。

「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」〔モデル就業規則第1条第2項〕

そして、この規定について、次のような説明があります。

「本規程例に労働者の就業に関するすべての事項が定められているわけではありません。本規程例に定めがない事項については、労基法等関係法令の規定によることになります」

このことは、すべての就業規則にあてはまることですから、念のための注意規定として、ほとんどすべての就業規則の最初のほうに置かれています。

ちなみに、「規定」というのは、第1条、第2条…という一つひとつの条文を指します。

そして、「規程」というのは、こうした条文が集まって「就業規則」「賃金規程」「退職金規程」のようにまとめられたものを言います。

 

<労働基準法の性質>

労働基準法の最初のほうに、次のような規定があります。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」〔労働基準法第1条第2項〕

つまり、労働基準法の基準は最低限のものだから、これを上回ることはかまわないが、下回ることは許さないと言っています。

 

<最低限の保障があること>

上記の2つのことから、まず言えることは、たとえば、就業規則に年次有給休暇の規定が無くても、労働基準法には規定があるので、労働基準法どおりの年次有給休暇が付与されるということです。

同じことは、産休、育休、介護休業、子の看護休暇、業務災害に対する補償など、あらゆることに当てはまります。

「うちの会社の就業規則には、産休の規定なんか無いから…」というときは、労働基準法の規定をチェックすれば良いのです。

 

<プラスアルファの保障>

もう一つ言えることは、たとえば、会社の就業規則に産休や育休の規定が無い場合には、その会社の従業員には、法令による最低限の権利しか保障されていないということです。

産休の期間を長く認めていたり、産休中に賃金の支払がある会社では、そのことについての規定が、就業規則の中に定められています。

つまり、規定が無ければ、プラスアルファの恩恵は無くて、最低限の保障となるわけです。

 

<就業規則の無い会社>

就業規則が無いということは、すべてのことについて「就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いているようなものですから、何か不明なことがあるときは、関連する法令の条文を確認して判断することになります。

実際、経営者が従業員から権利を主張され、何とか言いくるめようとして抵抗し、訴訟トラブルに発展するというのは、こうしたケースが多いのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

やはり、小さな会社でも就業規則は必要です。

むしろ、従業員が少ないうちのほうが、就業規則の作成は容易です。

「うちは、アルバイトに年次有給休暇だとか、産休だとか無理だから…」という会社にも、労働基準法や労働安全衛生法などが適用されます。

いきなり請求されても困らないように、運用基準を決めておいてはいかがでしょうか。

なるべく早期に信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/08|609文字

 

<法令の定め>

「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」〔労働安全衛生法第66条第1項〕

このことから、労働者は健康診断を受診することが義務づけられます。

会社に知られたくない重病を隠して働くというのは、かなりリスクが高いことですから人道的に許されません。

「ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない」〔労働安全衛生法第66条第5項但書〕

つまり、全く受けないわけにはいきませんが、会社の指定する病院とは別の病院で受診して、会社に健康診断結果を提出することは許されています。

 

<注意点>

ただし、健康診断項目は法定されていますので、すべての項目がそろっていなければなりません。

健康診断結果について、医師または歯科医師の意見が書かれていることも必要です。

 

<会社側の不都合>

健康診断について、画一的な処理ができないのでは効率が低下します。

たびたび健診機関が変わってしまうと、数年にわたる数値の変化などを管理するのがむずかしくなります。

しかし、法令が会社指定の病院とは別の病院での健診を認めていますし、LGBTなどの問題もありますから、希望があれば会社は対応しなければなりません。

 

解決社労士

2020/09/07|1,481文字

 

<同一労働同一賃金>

働き方改革関連法の一環で、令和2(2020)年4月から同一労働同一賃金への対応が求められています。〔パートタイム・有期雇用労働法〕

なお、中小企業では1年遅れの令和3(2021)年4月の施行となります。

同一労働同一賃金は、退職金もその対象となります。

パート社員にも、正社員と同様の退職金を支給しなければならないということではなく、各企業で退職金を支給する趣旨との関連から、パート社員にも正社員と同じ基準で支給しなければならない場合、異なる基準で支給すれば良い場合、支給しなくても良い場合に分かれます。

いずれの場合でも、パート社員から正社員との処遇の違いの理由を問われたなら、会社は明確に説明する義務を負っています。

説得力をもって、きちんと説明できない場合には、訴訟トラブルに発展するリスクがありますから、具体的なQ&Aを作成するなど、十分な準備が必要となります。

 

<退職金を支給する理由>

退職金を支給する企業は、全体の約8割といわれます。

企業が退職金を支給する一般的な理由としては、賃金の後払い、退職後の生活保障、企業責任、企業慣習、手切れ金、独立資金、功労報償、成果配分など様々なことが言われています。

しかし、就業規則や退職金規程に退職金を支給する具体的な理由が明示されているのは、むしろ少数派ではないでしょうか。

企業の説明義務との関連から、退職金を支給する理由については、就業規則や退職金規程に規定しないまでも、明確にしておく必要はあります。

 

<同じ基準で支給すべき場合>

退職金の支給理由を、退職後の生活保障、独立資金、成果配分などとした場合には、正社員も非正規社員も、同じ基準で支給しなければならないように思われます。

正社員だけに退職金を支給している場合や、正社員と非正規社員とで退職金の支給基準を異にする場合には、合理的な納得のいく説明をするのが、難しいかも知れません。

 

<異なる基準で支給しても良い場合>

退職金の支給理由を、賃金の後払い、企業習慣、功労報償などとした場合には、正社員と非正規社員とで、異なる基準で支給しても良いように思われます。

しかしこの場合でも、退職金の支給基準が適正であることの説明は、難しいかも知れません。

 

<支給しなくても良い場合>

たとえば、正社員だけ退職金積立金が給与や賞与から控除されている場合などが想定されるのですが、非正規社員が希望した場合にも、退職金積立金の制度が適用されないことの合理的な説明は難しいでしょう。

訴訟トラブルとなった場合に、制度の合理性を説明するのは、かなり困難だと思われます。

少額でも、退職一時金などを支給するのが無難だと考えられます。

非正規社員だけに退職金が全く支給されないのであれば、裁判所は不合理であると判断しやすくなります。

しかし、少額でも支給されている場合には、裁判所が支給基準や支給額の差を不合理であると判断しにくいものです。

なぜなら、支給額の差がどこまで縮まれば合理的といえるかは、非常に難しい判断となるからです。

 

<過去からの習慣との断絶>

「昔からこれでやっている」では済まされなくなりました。

退職金については、支給の趣旨から問われるようになりましたし、退職金を支給する理由が不明確であれば、他の制度との整合性を保ちつつ明確にする必要があります。

何となくではなく、納得のいく説明が求められるようになりました。

「あなたはパートだから」というあやふやな説明が許されなくなったのです。

正社員と非正規社員の処遇の差について、根本から考え直す必要があるということです。

 

解決社労士

2020/09/06|711文字

 

<新薬との違い>

医師の診断により、病院や調剤薬局などで処方される医療用医薬品は、新薬(先発医薬品)とジェネリック医薬品(後発医薬品)に分けられます。

新薬はその開発に多額の費用と時間がかかるため、特許権が与えられ、その新薬を独占的に製造・販売することができます。

しかし、この特許権には特許期間が設けられていて、その特許期間が過ぎると、他の医薬品メーカーでも同じ有効成分の薬を製造することが許されます。

こうして、特許権を持っていたメーカーとは別のメーカーが製造するようになった薬がジェネリック医薬品です。                 

 

<効き目の違い>

ジェネリック医薬品は、新薬と同一の有効成分を含み、効き目や安全性が同等であると厚生労働省が承認した薬です。

しかも、ジェネリック医薬品は、医薬品メーカーによって薬を飲みやすい形や大きさに変えるなどの工夫がされています。

 

<価格の違い>

新薬の開発には、10年~15年程度の長い期間がかかり、数百億円もの費用が必要とされています。

新薬の価格には、これが反映されています。

ところが、ジェネリック医薬品は、新薬の有効成分を利用して開発されるため、その分だけ、開発期間やコストを大幅に抑えることが可能となります。

そのため、ジェネリック医薬品の価格を安く設定することができます。

一般に、ジェネリック医薬品は、新薬に比べ、3割から5割程度安くなります。

 

<注意したい点>

新薬と同じ成分のジェネリック医薬品が、まだ無いこともあります。

ジェネリック医薬品は、新薬に比べて、やや供給が不安定なこともあります。

この点を確認のうえ、ジェネリック医薬品を希望すれば、医療費を節約することができます。

 

解決社労士

2020/09/05|444文字

 

<厚生年金基金からの支払>

厚生年金基金や企業年金連合会は、厚生年金基金の加入期間について、60代前半からの特別支給の老齢厚生年金の「報酬比例部分」と65歳からの老齢厚生年金のうち、報酬の再評価や物価スライドをしないで計算した部分の支払を国に代わって行っています。

また、国に代わって支払う部分に各基金の規約により基金独自の給付設計による加算を行い、国の給付水準を上回る支払を行っています。

 

<問い合わせ先>

このような各基金の規約による計算については、日本年金機構では把握できません。

つまり、年金事務所や街角の年金相談センターで、企業年金の支払額を確認することはできません。

そのため、厚生年金基金から支払われる額については、加入している(加入していた)厚生年金基金または企業年金連合会に問い合わせることになります。

 

企業年金連合会

電話0570-02-2666(PHS・IP電話は03-5777-2666)

受付時間:平日9時~17時(土・日・祝祭日および年末・年始を除く。)

 

解決社労士

2020/09/04|1,450文字

 

<障害年金と初診日>

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

このことから、障害年金を受け取ろうとする場合には、初診日を証明する必要があります。

障害年金は障害の程度により、障害基礎年金が1級と2級、障害厚生年金が1級から3級に区分されて支給されます。

 

<納付要件>

障害基礎年金を受けるためには、初診日の前日において、次のいずれかの要件を満たしていること(保険料納付要件)が必要です。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること

(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間について、保険料が納付または免除されていること(令和8年3月31日までに初診日がある場合)

 

<未納の意味>

20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合の障害基礎年金は、そもそも保険料の納付を予定していない期間に初診日があるので、納付要件は問われません。

しかし、保険料を納付すべき期間に、あまり保険料を納付していない人に年金が支給されるというのでは、年金制度の前提が崩れてしまいますので、一定期間の保険料納付が年金支給の条件とされているわけです。

ただし、事情により保険料の納付が困難と認められる人については、保険料の納付が免除されたり、猶予されたりという制度もあります。

結局、「未納」というのは、納付が無く、免除されていないこと、さらに、納付が猶予された場合には猶予期間内に納付が完了していないことを意味します。

 

<納付要件の意味>

納付要件は、一定期間内に「未納」の期間が無いこと、あるいは少ないことを意味します。

納付要件は、「初診日の前日において」判断されます。

これは、保険料を未納のまま放置していた人が、いよいよ具合が悪くなって医師の診療を受けた日(初診日)に、保険料を遡って収めた場合にも年金が受給できるとするのは、道義に反するからです。

「初診日のある月の前々月まで」の期間が判定の対象とされるのも、国民年金や厚生年金の保険料の納付期限が、翌月末日となっていることから、「年金をもらえそうだから保険料を納めておこう」と考えた人にも年金が支給されるのでは、やはり道義に反するからです。

 

<会社で心がけること>

年金保険料の納付状況については、個人情報ですから、電話で問い合わせても答えてもらうことができません。

年金事務所や街角の年金相談センターで、本人が確認するか、委任状を書いてもらって代理の人が確認することになります。

ですから、会社が従業員の納付状況を確認することまでは求められていません。

しかし、無職だった人が入社した場合には、その直前の期間、無収入であることを理由に保険料を納付せず、必要な手続もとっていないことがあります。

ですから、入社時研修の内容には納付要件の話も加えておくことをお勧めします。

また、健康状態が悪くなって勤務時間が減少し、社会保険を脱退(資格喪失)する従業員に対しても、念のため、納付要件の説明をしておくことをお勧めします。

 

解決社労士

2020/09/03|1,438文字

 

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。

新人なら、1回目は雇い入れ通知書で、2回目からは契約更新の時や、時給変更、出勤日変更の時から労働条件通知書というパターンもあります。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」〔労働基準法第15条〕

これが労働基準法の定めです。

「労働契約の締結に際し」という規定ですから、法的な義務があるのは入社した時の労働条件通知書だけです。

しかし、契約更新後の条件があやふやだと、訴訟トラブルの原因になりますから、更新の度に労働条件通知書を交付するのが通例です。

「三十万円以下の罰金に処する」という罰則もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

たまたま摘発されて30万円の罰金を科せられたとしても、日常的に面倒な書類を交付するよりは、30万円の罰金で済むならその方が楽という考え方をする経営者もいるでしょう。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」〔労働基準法第109条〕

そして、こちらにも罰則規定があります。

「三十万円以下の罰金に処する」〔労働基準法1201号〕

結局、労働条件通知書の交付をサボれば、3年間は摘発されやすいわけですし、1人につき30万円の罰金というのは大変な金額になることもあります。

 

<現実の問題として>

たとえば、同じお店で5人のアルバイトがいて、この人たちはベテランなので、時給が1,500円だったとします。

そして1人が辞め、代わりに新人が時給1,200円で入ります。

2年後、この新人が辞めて、辞めた時も時給が1,200円だったとします。

さて、この後、辞めたアルバイトが労働基準監督署に駆け込み「私は時給1,500円で雇われたのに、この2年間、時給1,200円で計算された給与しかもらっていません!」と言い張ったならどうでしょう。

お店側が、「いやいや時給1,200円の約束で雇っていました」と主張できる証拠はあるのでしょうか。

いくらベテランアルバイトたちが、「あの新人は時給1,200円でした」と言っても、お店側の味方をして、お店に有利な証言をしているに過ぎないと思われます。

「時給1,200円で計算した給与を異議なく受け取っていた」と主張しても、「それはクビになりたくなくて」と反論されればそれまでです。

 

<労働法上の形式的な義務>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パート・有期労働法などなど、経営者に課せられた義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務を果たすことは、経営者を護ることにもつながります。

人道的な義務や、人情で果たすべき義務の前に、この形式的な法定の義務を果たすことは、商売を続けるのに必要なことです。

経営者としての想いとは別に、法律上、守らなければ足元をすくわれることがあります。

不安を抱えないで、事業を継続するために、信頼できる社労士にご相談ください。

社労士は公務員ではありません。

親身になってご相談させていただきます。

 

解決社労士

2020/09/02|854文字

 

<法律による制約>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。〔労働契約法第16条〕

この条文を適用しても解雇が無効とされないケースは、かなり限られています。

つまり、簡単には解雇できないことになっています。

入社して間もなくの解雇は、「採用取消」などと呼ばれますが、実態は解雇ですから、解雇としての法的規制を受けます。

 

<詐欺のようなケース>

採用選考の段階で、労働者から会社に対して「業務に支障の出る病気は無い」「病気治療のための通院でしばしば欠勤するようなことは無い」と申し出ていたにもかかわらず、入社後の雇い入れ時健康診断で「要治療」の結果が出てしまい、仕事にも支障が出るし、通院のため毎週1回午後3時までに早退しなければならないことが発覚し、本人がこれを知っていて嘘をついていたというケースなら、解雇(採用取消)も正当なものと認められやすいでしょう。

もっとも、証拠を残しておくことを忘れていなければですが。

 

<業務の転換すらできないケース>

雇い入れ時健康診断であれ、定期健康診断であれ、その結果がかなり悪くて今の業務を続けさせることが困難であれば、会社は職務の転換をしてあげなければなりません。

しかし小規模な会社であれば、転換させようにも、適当な仕事が見つからないかもしれません。

会社は、新たに仕事を作るような義務までは負っていません。

このようなケースであれば、解雇も正当なものとして有効となることが多いでしょう。

ただし、会社に休職の制度があるのなら、それも検討したいところです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ただ単に健診結果が悪いだけで解雇を通告しても、不当解雇となり解雇は無効です。

具体的なケースで会社がどうすべきか、失敗しないためには、信頼できる社労士にご相談ください。

すでに、解雇があって不当解雇が疑われるケースでは、社労士の中でも、特定社労士の業務となりますので、特定社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/01|1,068文字

 

<改正法の適用対象者>

労災保険法(労働者災害補償保険法)が改正され、令和2年9月1日付で施行されています。

施行日以降に、ケガをした労働者、病気になった労働者、亡くなった労働者の遺族に改正法が適用されます。

なお、今回の改正は、労災保険のメリット制に影響しません。

 

<複数事業労働者>

改正労災保険法は、その第1条で、ダブルワークの労働者を「事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者」と表現し、「複数事業労働者」と呼んでいます。

そして、「二以上の事業の業務を要因とする事由」による労災について、その対象とすることを明示しています。

さらに、ケガをしたとき、病気になったときに、1つの会社等でのみ雇用されている場合、または、すべての会社等を退職している場合であっても、そのケガや病気などの原因・要因となるものが、2つ以上の会社等で雇用されていた際に存在していたならば対象になるとしています。

また、一般の労働者だけでなく、特別加入者も今回の制度改正の対象としています。

 

<仕事の負荷の総合評価>

労働時間やストレスなど、脳・心臓疾患や精神疾患の原因となる負荷について、これまでは、2つ以上の会社等で雇用されている場合でも、それぞれの会社等の負荷について個別に評価し、労災認定の可能性を判断していました。

今回の法改正により、雇用されている会社等のうち1つの会社等での仕事の負荷を個別に評価しても労災認定できない場合は、雇用されているすべての会社等での仕事の負荷を総合的に評価して労災認定の可能性を判断することになりました。

こうして認定された労災のことを、改正法は「複数業務要因災害」と呼んでいます。

 

<保険給付額の基準>

労災保険給付のうち、労災で仕事を休んだときに給付される休業(補償)給付や、被災者が死亡したときに給付される遺族(補償)給付などは、働いている会社等から支払われる賃金額を基に保険給付額が決まります。

これまでは、ケガや病気などの主な原因となる事故や出来事があった会社等の賃金額を基に保険給付額が決まっていました。

2つ以上の会社等に雇用されていたとしても、1つの会社等の賃金額だけが基準となって、保険給付額が決まっていたのです。

今回の法改正により、2つ以上の会社等で雇用されている労働者への保険給付のうち、賃金額が基準となる保険給付については、雇用されているすべての会社等の賃金額の合算額を基に保険給付額が決まるようになりました。

対象となる給付は、休業(補償)給付、遺族(補償)給付、障害(補償)給付、傷病(補償)給付などです。

 

解決社労士

2020/08/31|863文字

 

<資格取得時決定>

従業員の所定労働日数や所定労働時間が増加して新たに社会保険に加入する場合や、事業所が従業員を新たに雇用した場合には、その従業員に新たな労働条件で報酬を支払った実績がないため、事業主は就業規則や労働契約などの内容に基づき、以下の「資格取得時の決定」の規定に則って加入者(被保険者)の報酬月額を届け出ることとなります。

 

<標準報酬月額の決定方法>

1.月、週その他一定期間によって報酬が定められる場合

被保険者の資格を取得した日現在の報酬額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額

2.日、時間、出来高または請負によって報酬が定められる場合

被保険者の資格を取得した月の前1か月間にその事業所で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額

3.上記1.または2.の方法では報酬の算定が困難である場合

被保険者の資格を取得した月の前1か月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額

4.上記1.から3.の複数に当たる報酬を受ける場合

各々の報酬について上記1.から3.によって算定した額の合算額

 

<標準報酬月額の適用期間>

決定された標準報酬月額は、被保険者の資格を取得した月からその年の8月までの各月に適用されます。

ただし、被保険者が6月1日から12月31日までの間に資格取得した場合は、資格取得した月から翌年の8月までの各月に適用されます。

 

<訂正が必要な場合>

事業主は、被保険者が資格を取得した日から5日以内に、被保険者資格取得届を日本年金機構(事務センター又は年金事務所)へ提出します。

提出した後で誤りが見つかった場合や、実際の報酬が見込みと大きく異なった場合には、届出の取消しと遡っての届出を同時に行う形で、修正を行うことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

具体的なことは、お近くの年金事務所や街角の年金相談センターでご確認いただけますが、尋ねにくかったり、どのように相談したらよいか迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/30|897文字

 

<セクハラは犯罪になることがある>

社内でセクハラを受けたなら、その行為は強制わいせつ罪にあたる可能性があります。〔刑法第176条〕

わいせつ行為には、普通の人であれば嫌がるような行為すべてが含まれます。

たとえば、相手が嫌がっているのにもかかわらず、服を脱がせたり、キスをしたり、身体に触る行為は、全てわいせつ行為にあたります。

社長が行為者であれば、自由な意思で同意しているとは認められにくい場合が多いでしょう。

拒んだらクビにされると思い、仕方なく耐えている状態は、暗黙の脅迫がある状態ともいえます。

一般の社員が行為に及んだ場合よりも、犯罪の成立が肯定されやすいことになります。

 

<行為者の民事責任>

被害者に対して不法行為責任を負います。〔民法第709条〕

つまり、損害賠償責任を負うのです。

ここは、セクハラ行為者が社長でも他の従業員でも同じです。

 

<会社の民事責任>

会社も不法行為責任を負います。〔民法第44条第1項〕

まともに働ける環境を提供していないといえる場合なら、債務不履行責任も負います。〔民法第415条〕

「社長=会社」ではありませんから、社長がセクハラを行った場合には、会社も社長も責任を負います。

 

<被害者が取るべき行動>

・セクハラ行為の記録や証拠を残す。

・同じ行為者からのセクハラ被害者がいれば協力し合う。

・労働相談情報センターなどに相談する。

社長がセクハラを行う人物である場合、その権限の強さから、被害者が複数である可能性は高いでしょう。

一人では心細いですが、被害者が協力し合うことによって、解決しやすくなります。

また、セクハラの問題は、第一に社内で解決するのが原則です。

しかし、セクハラの相談窓口や担当者は、被害者の味方に付いてくれないかもしれません。

早めに社外の相談窓口に相談することをお勧めします。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

本気でセクハラ、パワハラ、マタハラなどを防止したい会社なら、相談窓口は社外の専門家に委託して、社内でもみ消されないようにするのではないでしょうか。

ハラスメントに限らず、働いている人たちの相談窓口として、信頼できる社労士をご検討ください。

 

解決社労士

2020/08/29|755文字

 

<死亡一時金の受給者>

国民年金には、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人すべてが加入します。

このうち自営業者や学生などの加入者を「国民年金第1号被保険者」といいます。

死亡一時金は、国民年金第1号被保険者の保険料納付済期間が36月以上ある人が死亡した時に遺族が受け取れます。

4分の1納付期間は4分の1に相当する期間、半額納付期間は2分の1に相当する期間、4分の3納付期間は4分の3に相当する月数で計算します。

死亡一時金を受け取ることができる遺族は、死亡した時に死亡した人と生計を同一にしていた人で、死亡した人の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で第一順位の人です。

 

<死亡一時金の額>

保険料納付月数

金 額

36月以上180月未満

120,000円

180月以上240月未満

145,000円

240月以上300月未満

170,000円

300月以上360月未満

220,000円

360月以上420月未満

270,000円

420月以上

320,000円

死亡した月の前月までに付加保険料納付済期間が36月以上ある場合には、上の表の金額に8,500円が加算されます。

 

<請求できない場合>

亡くなった人が、障害基礎年金または老齢基礎年金を受けていたとき、または、遺族基礎年金を受けられる人がいる場合には、死亡一時金を請求することはできません。

死亡一時金は、死亡日の翌日から2年を経過した場合には請求できなくなります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

死亡一時金の請求書類の提出先は住所地の市区町村役場の窓口になります。

お近くの年金事務所または街角の年金相談センターでも手続できます。

請求できるかどうかの確認は、年金事務所などで行います。

もし、ご自分で手続できない場合や、迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/28|1,540文字

 

<申請の意味>

会社の中で「申請」というのは、労働者が自分の希望を申し出て、会社の許可を得ようとする行為です。

会社からの命令に応じて行う業務や、労働者としての権利の行使は、会社の許可を必要とするものではありませんから、申請の対象とはならない筈です。

 

<出張申請書>

自ら出張を希望して、出張申請書を起案し上司に提出するということもあるでしょう。

役職者であれば、出張の必要性を判断する権限を与えられていることもあるからです。

しかし、担当者であれば上司から出張命令を受けるのが一般です。

この場合でも、その担当者は出張申請書を起案します。

出張申請書を起案するのは、出張したいからではなく、出張の目的や業務内容、交通手段、経費などを明らかにして、会社の決裁を得るためです。

出張そのものは上司からの命令であっても、出張の具体的な内容については、上司を通じて会社の決裁を得る必要があるので出張申請書を起案するのです。

出張を終えて帰社すれば、出張申請書の内容との差異や、出張の効果を明らかにするために、出張報告書を提出するのが一般です。

 

<残業申請書>

残業というのは、本来、労働者が会社側からの命令に応じて行うものです。

だからこそ、時間外労働は労働基準法により規制され、違反に対しては使用者に罰則が適用されることもあるわけです。

労働者が、時間外労働の制限をオーバーしたからといって、罰則が適用されるようなことはありません。

それなのに、労働者側から残業を希望する「申請」というのは不合理です。

しかし管理職が、部下の業務内容や進行状況を、すべて具体的に把握できているわけではありません。

残業の必要性について、いつも上司が把握しているとは限らないのです。

このことから、部下は上司に対して、「これこれの業務で2時間の残業が必要と思われます」といった打診をして、上司からの残業命令を促す必要が生じます。

これを文書で行っているのが、残業申請書という名の「残業命令お伺い書」です。

万一、所轄の労働基準監督署の臨検監督が入り、残業申請書の運用が明らかになれば「残業申請書というのはおかしい。申請が却下されたら、サービス残業になるのですか」などという指摘を受けるかもしれません。

この場合には、「残業申請書という名称ですが、実態は残業命令を打診するための書類であって、決して申請書ではありません」という説明をすることになるでしょう。

ですから、申請書のタイトルを「残業申請書 兼 残業命令書」として、申請とこれに対する命令の形式を整えておくのが無難でしょう。

むしろ、出張の場合と同様に、事後の報告をする「残業報告書」を運用し、不必要と思われる残業を減らすよう指導していくのが得策ではないでしょうか。

 

<年休申請書>

出張や残業が、会社から労働者に対する命令であるのとは異なり、年次有給休暇の取得は労働者の権利です。

そして、年次有給休暇の取得は、労働者から会社に対して一方的に時季を指定することによって行います。

ですから、会社に許可を求める「申請」というのは、あり得ないことになります。

会社としては、年次有給休暇の取得日を指定する届が提出されれば、理由を問わずこれを受けなければなりません。

例外的に、会社の事前準備や努力によっても、その日に年次有給休暇を取得させることが、事業の正常な運営を妨げることになってしまう場合には、取得日を変更させることができるに過ぎません。〔労働基準法第39条第5項〕

「人手不足」「忙しい」というだけの理由で、取得日を変更できるわけではないのです。

こうして、年次有給休暇については、「年休申請書」ではなく「年休取得届」を運用するのが正しく、また、「理由欄」も設けてはならないということになります。

 

解決社労士

2020/08/27|790文字

 

<処罰できる場合とできない場合>

意図的に仕事をしない場合なら、就業規則に故意に仕事の手抜きをした場合の懲戒規定を置いて、その事実を証明し、本人の言い分を聴くなど適正な手続を踏んで懲戒処分をすることができます。

能力的に仕事ができない場合なら、適正な人事考課を通じて、その人の給与や賞与が調整されますから、きちんと仕事をしている人との間で不公平の問題は生じません。

そもそも能力不足に対する懲戒処分は意味が無いのです。

反省して心を入れ替えても、できないことはできないのですから。

むしろ、会社が教育研修に力を入れる必要があります。

しかし実際には、わざと仕事をしないのか、それとも能力不足でできないのかは見分けがつきません。

 

<貢献度が基準なら>

「能力による評価」といっても、真の能力は目に見えません。

どれほど手を抜いているのかは分からないのです。

100の能力を持った人が、手を抜いて50の能力しか発揮していない場合と、50の能力しか無い人が死に物狂いで50の能力を発揮した場合とで、会社に対する貢献度は同じです。

ですから、発揮された能力を会社に対する貢献と考えて、どちらも同じ評価をすることは不合理ではありません。

 

<姿勢を加味するなら>

しかし、死に物狂いの姿は他の社員に良い影響をもたらすと考えれば、50の能力しか無い人の方を高く評価することにも十分な理由があります。

反対に、会社の外でも自己研鑽の努力を続けていたものと考えれば、100の能力を持った人を高く評価するのも不当ではありません。

 

<社労士の立場から>

能力、会社に対する貢献度、仕事に対する取組姿勢など、多面的な評価基準を含んだ適正な人事考課と、その前提となる教育研修を行えば、仕事をきちんとしない社員を懲戒処分の対象とする必要は無くなります。

会社の実情に応じて具体的にどうすれば良いのかは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/26|893文字

 

<出勤日や勤務時間を決めておかないと>

出勤日や勤務時間は、雇い入れにあたって雇い主が労働者に明示しておくべき労働条件の一つです。

しかし、月や週ごとに、話し合いで出勤日や勤務時間を決めることも違法ではありません。

実際、シフトを組んで勤務予定を立てている場合、基準となる出勤日数が決まっていないことがあります。

さらに、労働者が主体となって、自分の都合に合わせで出勤日を決めるというのも、何ら法令違反にはなりません。

ただ、これでは暇なときに多くの人がシフトに入り、忙しいときに人手が足りないという不合理が発生してしまいます。

 

<出勤日数だけでも決まっていれば>

話し合いで出勤日数の基準が決められていれば、少なくともその日数分はシフトに入らなければ契約違反になります。

雇い主側の都合でシフトに入れる日数が少ないのであれば、法律上は休業手当を支払う義務を負います。

嫌がらせや差別でシフトに入れなかったのであれば、精神的損害に対する賠償を請求されることもあります。

 

<休業手当の支払>

労働基準法は、もともとの出勤日に会社側の責任で出勤させられなくなったら、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことを義務付けています。

会社側の判断で回避できる可能性があったのに、休業せざるを得なくなったときは、会社に責任があるとされています。

たとえば、経営不振で操業を減らす、資材や取引先の都合で操業できない、お客が少ないため営業を中止するという理由で休業することは、経営上の判断が招いた結果ですから、休業手当を支払う必要があります。

しかし、会社の判断では回避できない理由、たとえば天災や地震により操業が不可能になった、会社の行動とは関係ない理由で法令等に基づき休業を命じられたなどの理由による休業については、会社に責任はないとされています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

以上のことから、出勤日や勤務時間を決めておかなければ、会社が負わなくて済む責任もあるといえます。

しかし、効率の良い人員配置は出来なくなってしまいます。

どのように労働条件を決めるのが効率的か、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/25|1,662文字

 

<1分>

残業手当の計算をするにあたり、残業時間は1分単位で計算します。

「15分未満を切り捨て」などは、賃金全額払の原則に反します。〔労働基準法第24条〕

タイムレコーダーは、1分単位で労働時間を記録していますから当然といえば当然です。

現在の技術水準からすれば、秒単位での記録も可能でしょう。

しかし、そこまでは求められていません。

 

<45分・60分>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては最低45分、8時間を超える場合においては最低60分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。〔労働基準法第34条第1項〕

労働時間が6時間以下であれば、休憩時間が無くてもかまいません。

しかし、食事の時間帯を挟む場合には、食事を摂るのに必要なだけの休憩時間が与えられるルールとなっているのが一般です。

 

<8時間>

1日の法定労働時間は8時間です。〔労働基準法第32条第2項〕

変形労働時間制を取らない限り、これを超えて労働させれば違法です。

ただし、所轄の労働基準監督署長に三六協定の届出を行えば、その範囲内での時間外労働は罰せられません。〔労働基準法第36条第1項〕

 

<40時間>

1週間の法定労働時間は40時間です。〔労働基準法第32条第1項〕

(小規模な特例措置対象事業では44時間)

変形労働時間制を取らない限り、これを超えて労働させれば違法です。

ただし、所轄の労働基準監督署長に三六協定の届出を行えば、その範囲内での時間外労働は罰せられません。〔労働基準法第36条第1項〕

「1週間」というのは、日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

しかし、就業規則で、これとは別の7日間を1週間とすることもできます。

 

<42時間・45時間>

1年単位の変形労働時間制により労働する労働者について、三六協定を締結する場合、1か月の法定労働時間を超える労働時間の上限は42時間です。

これに該当しない労働者については、45時間が上限となります。

変形労働時間制というのは、勤務時間帯を柔軟にして、労働時間を削減する制度ですから、上限に差が設けられているのです。

これらは、特別条項が適用されない場合の上限です。〔労働基準法第36条第4項〕

 

<80時間>

法定時間外労働の上限は、法定休日労働の時間と合わせて、複数月平均80時間以内に制限されています。〔労働基準法第36条第6項第3号〕

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

実務的には、過去5か月の時間外労働の実績から、「今月は何時間までの残業が許されるか」を毎月計算して管理することになります。

 

<100時間>

法定時間外労働の上限は、法定休日労働の時間と合わせて、1か月100時間未満に制限されています。〔労働基準法第36条第6項第2号〕

100時間なら1発アウトということになります。

 

<320時間・360時間>

1年単位の変形労働時間制により労働する労働者について、三六協定を締結する場合、1年の法定労働時間を超える労働時間の上限は320時間です。

これに該当しない労働者については、360時間が上限となります。

変形労働時間制というのは、勤務時間帯を柔軟にして、労働時間を削減する制度ですから、上限に差が設けられているのです。

これらは、特別条項が適用されない場合の上限です。〔労働基準法第36条第4項〕

 

<720時間>

三六協定の特別条項によって、上記の年320時間または360時間を超えて労働させる1年の時間外労働の上限です。

 

<基準を守っても負う責任>

以上に掲げた基準のすべてについて、懲役や罰金の罰則が定められています。

労働者の承諾があったとしても、違法が適法に変わるということはありません。

しかも、これらの厳しい制限をしっかり守っていたとしても、労働契約法第5条の安全配慮義務を尽くしていることにはなりません。

民事責任を問われ、多額の賠償責任を負わされることもあるわけです。

人を雇うということは、それだけ責任が重いのです。

 

解決社労士

2020/08/24|1,417文字

 

<労働基準法を守っていたらつぶれるという会社>

ビューティークリニックの女性経営者が、労働基準法を順守していたら会社がつぶれるというような発言をして、マスコミを騒がせたことがありました。

法律は国会で審議・可決され成立するのですが、法律案の段階で多くの専門家が関わりますので、普通の人や普通の会社が順守できないような法律が施行されることは稀です。

たとえそのような法令が施行されたとしても、やがて実態に合わせて改正されていきます。

特に労働基準法などの労働法で、会社の負担が過大になるような規定ができてしまうと、会社の経営が苦しくなり、結局、労働者の処遇が低下したり、整理解雇が必要になったりして、労働者の保護にはなりません。

労働者の保護を目的とする労働法は、このバランスに配慮して作られています。

最近の労働基準法改正では、一度に大きく改正しないで、少しだけ改正して様子を見ることも行われています。

ですから、労働基準法を守るとつぶれてしまう会社というのは、経営者が本業以外に気を取られているとか、顧客のニーズに対応していないとか、今の時代には合っていないとか、根本的な問題を抱えているのでしょう。

労働基準法の中でも、労働時間や休日についての基本的な規定は、過重労働による過労死を防ぐのに役立ちます。

以下の規定が守られていない会社では、守れない原因の原因、そのまた原因を突き止めて、一つひとつ解消する努力が求められます。

 

<法定労働時間>

形式的な労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。

実質的な労働時間は、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間をいい、必ずしも実際に作業に従事していることは必要ありません。

何もしていなくても、その場を離れることができない手待ち時間は労働時間となります。

この実質的な労働時間は、客観的に決まるものですから、就業規則などにより違うルールにすることはできません。

労働時間の長さは、週40時間以内、18時間以内に制限されています。〔労働基準法第32条〕

 

<法定休日>

休日とは、労働契約で労働義務が無いとされている日のことをいいます。

使用者は労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。〔労働基準法第35条〕

カレンダーで色の違う日付が休日というわけではありません。

就業規則などにより、職場ごとに決められます。

1日のうちの一部でも仕事をさせれば、たとえ30分位の短時間であったとしても、その日は休日を与えたことにはなりません。

 

<法定時間外労働・法定休日労働>

法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や、法定休日に働かせる場合には、あらかじめ労働者の過半数代表者(過半数の労働者で組織される労働組合がある場合にはその労働組合)との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。〔労働基準法第36条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

従業員一人ひとりの労働条件が、文書で明示されていない職場もあります。

もちろん違法ですし、労働基準法に罰則もあります。

また、労働時間を客観的に記録し保管していない職場もあります。

これも違法ですし、罰則があります

こうした規制は、労働者を守るためですが、会社を守るためでもあります。

何をどうしたら良いのか迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/23|1,193文字

 

<就業規則の届出義務>

パートやアルバイトなどを含め、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出る義務を負っています。〔労働基準法第89条〕

ですから、従業員が9人以下の会社では、就業規則を作らなくても労働基準法違反にはなりません。

しかし義務ではないからといって、就業規則を作らずにいると、経営者は余計な苦労を背負い込んでしまいます。

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<労働条件の共通部分>

労働条件は、原則として書面により労働者に示されなければなりません。〔労働基準法第15条第1項〕

一部のブラック企業を除き、法定の項目が記載された「労働条件通知書」などが労働者に交付されています。

名称は、「雇用契約書」「雇い入れ通知書」などいろいろな書面があります。

就業規則が無い会社では、「詳細は、就業規則○○条参照」という表示ができないので、きちんとした書面を作れば、数十枚から百枚以上の分量になり、とても現実的ではありません。

 

<職場の規律>

就業規則が無い会社では、新人に職場の規律を説明し、また、朝礼やミーティングで「こうして欲しい」「こういうことは禁止します」という内容を説明することになります。

こうした具体的な説明が無ければ、ひとり一人の従業員が自己判断で良かれと思う行動をとりますから組織的には働けません。

せっかく複数の従業員がいるのに、その力を結集できないのです。

また、自己判断で行ったことについて注意を受けても、その根拠が文書化されていないと、なかなか納得してもらえません。

不満がふくらんで、退職にもつながります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これらについては、就業規則の内容に盛り込んでおけば、就業規則の周知によって会社の義務を果たしたことになります。

しかし、就業規則の無い会社では、法令や法改正の内容について、その都度、個別に説明が必要になります。

これは時間と労力の無駄ですし、現実的ではありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

それぞれの会社の実情に適合した就業規則の作成と改善は、社労士の最も得意とするところです。

きちんと会社の利益を確保し、会社が成長できる就業規則をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

また、助成金の受給などを目的として、大急ぎで作られた就業規則を放置すると危険です。

法改正や会社の状況変化に応じた改善を考えましょう。

 

解決社労士

2020/08/22|1,753文字

 

<残業制限と三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

この三六協定は、社内で人事の仕事に関わらない人にも知られている有名な労使協定です。

ところが、人事部門の担当者でも思わぬ勘違いをしていることがあります。

 

<時間外労働の意味>

時間外労働については、一般に考えられている「残業」と、法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。

一般に「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超えて労働した時間のことを指しています。

一方、法律上の「時間外労働」とは、上記の労働基準法第32条で定められた「法定労働時間」を超えて労働した時間のことをいいます。

三六協定にいう「時間外労働」も、法律上の「時間外労働」を指しています。

ですから、「所定労働時間」が「法定労働時間」よりも短い場合には、「所定労働時間」を超えて労働した「残業」の合計が、三六協定の上限を超えるように見えても、「法定労働時間」で計算すれば制限の範囲内ということがあります。

こうした勘違いが多いからでしょう、三六協定の新しい書式には「所定労働時間を超える時間数(任意)」という欄が設けられていて、注意を喚起しています。

 

<特別条項の適用対象>

臨時的な特別の事情の発生に備えて、三六協定に特別条項を設けることができます。

この場合、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を踏めば、限度時間を超えて労働させることができます。

しかし、これには年6回(6月)という回数制限があります。

この特別条項の適用や回数制限は、全社的にあるいは部署単位で行われることもありますが、本来的には個人ごとに行われるべきものです。

個人ごとの管理にすると、やや煩雑にはなりますが、時間外労働の幅が広がりますから、個人単位での管理をお勧めします。

 

<協定書と協定届の兼用>

就業規則であれば、これを所轄の労働基準監督署長に届け出る場合、就業規則とは別に「就業規則届」「意見書」が必要です。

しかし、三六協定の場合には「三六協定書」と「三六協定届」の両方を作成して手続を行うのではなく、「三六協定届」が「三六協定書」を兼ねています。

このことから、「三六協定届」では、協定の当事者である労働組合や労働者の過半数を代表する者の署名または記名・押印が必要とされるわけです。

 

<三六協定を守っていても>

かつては、三六協定の適正な届出をして、その内容を遵守していれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、違法になることはありませんでした。

これは、残業時間について、法律による上限が定められていなかったためです。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられました。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間) 

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

三六協定の遵守とは別に、この労働基準法の基準も超えないように注意しなければ違法となってしまいます。

労働時間の管理を失敗しないよう、細心の注意を払わなければなりません。

 

解決社労士

2020/08/21|865文字

 

<最低賃金法の罰則>

最低賃金法に示された都道府県別の最低賃金を、単なる指針や目安であると勘違いしている事業主の方もいらっしゃいます。

しかし違反に対しては、罰金や懲役刑といった罰則が規定されています。〔最低賃金法第39条、第40条、第41条〕

そして、実際に適用されることなど無いようにも思われがちですが、書類送検の事例は労働局のホームページなどに公開されています。

 

<居酒屋経営者を逮捕・送検>

労働基準監督署が、経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、検察庁にこの経営者を身柄と共に送検し、法人も書類送検したというニュースは時々目にします。

ここで分かることは、労働基準監督署によって、本当に逮捕・送検されてしまうということだけではありません。

罰則は、経営者と法人の両方に適用されるのです。〔最低賃金法第42条〕

 

<逮捕・送検の理由>

たった1人でも、1か月でも、最低賃金を下回れば違法です。

これを労基署から指摘されたなら、素直に不足分の賃金を支払って、「今後は最低賃金法を順守します」と約束すれば良いのです。

ところが、実際に逮捕・送検されるような事例では、悪質な事情があります。

会社の退職者から、勤務した最後の月の給料が支払われないという申告があり、労基署が会社に対して賃金を支払うよう行政指導を行ったのに、これを無視してしまいます。

そこで労基署は、この会社の社長に対して出頭を要求します。

ところが、この社長は再三の出頭要求に応じず、証拠隠滅の恐れもあって、逮捕され送検されるというような事情です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

そもそも、賃金は後払いが基本です。〔民法第624条〕

「退職者に給料を支払う必要は無い」と勘違いし、退職後に支払われるはずの給料を支払わない社長もいます。

その中には「昔からこれでやっていて問題は無かった」と考えている人もいます。

労働法違反によって、会社や経営者がどのような不利益をこうむるのか、今まじめに働いている社員に対する影響はどうなのか、少しでも疑問を感じたら信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/20|906文字

 

<懲戒処分の有効性>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」〔労働契約法第15条〕

会社が従業員に対して懲戒処分を通告しても、客観的に合理的な理由を欠いている場合や、社会通念上相当であると認められない場合には、無効になってしまうということです。

「客観的に合理的な理由」は、社内で協議してOKとなれば良いのではありません。

懲戒処分の対象者が、処分の合理性を否定できないような客観的な理由の存在が必要です。

そして、その基準は多くの労働裁判や労働審判などに示されています。

「社会通念上相当」というのは、世間一般の人から見て「それだけのことをすれば、こうした懲戒処分もやむを得ない」と言われる状態をいいます。

社内の懲戒権者による主観的な判断は基準になりません。

 

<懲戒処分が無効なら>

懲戒処分が無効になると大変です。

まず、会社は懲戒処分を通告してしまった対象者に対して損害の賠償をします。

懲戒処分によって失われた経済的利益の他に、慰謝料の支払も必要です。

もし、諭旨解雇や懲戒解雇が無効になったなら、ご本人が希望する限り、暖かく元の職場に迎え入れることになります。

会社は悪者扱いした対象者に頭を下げ、不利益をすべて取り除かなければなりません。

これは会社の経営者にとって、かなり屈辱的なことになってしまいます。

 

<無効な懲戒処分を避けるには>

懲戒処分の対象となる事件が発生したら、信頼できる社労士にご相談ください。

最初から訴訟トラブルになりそうな大きな事件であれば、弁護士に依頼するのが普通でしょう。

しかし、そこまでの事件でなければ、弁護士と同じく守秘義務を負い、労働法や判例などの事例に精通した社労士が適任だと思います。

間違った懲戒処分をしないことは、懲戒処分の対象となるような事件の発生防止以上に必要なことです。

もし、会社にとって不都合な事件が発生したら、なるべく早く社労士にご相談されることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/08/19|1,751文字

 

<残業制限と三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

ところが、所轄の労働基準監督署長に三六協定書を届け出て、その控えを会社に保管し、社内に周知していても、労働基準法違反となってしまうことがあります。

 

<選出手続の失敗>

「労働者の過半数を代表する者」を選出するにあたっては、次のような条件があります。

うっかり、これらの条件に違反していると、三六協定の締結そのものが無効となり、法定労働時間を超える残業がすべて違法となってしまいます。

・管理監督者を除く一般の労働者から選出すること。

・「労働者の過半数を代表する者」の具体的な役割を説明したうえで選出すること。

・会社から適任者を打診するなどの関与をせず民主的に選出すること。

社員親睦会の代表者が、自動的に「労働者の過半数を代表する者」となるような、選出そのものが行われないのは、当然に無効となってしまいます。

 

<期限切れ>

三六協定の有効期間は、最長でも1年間です。

取引契約書のように、「甲乙いずれからも申出が無い場合には、従前と同一の内容をもって更新されるものとする」という自動更新の規定を置くことはできません。

所轄の労働基準監督署長への届出も、毎年行うことになります。

期限が過ぎてから届出を行っても、さかのぼって効力が認められることはありません。

うっかり、三六協定の更新を忘れると、違法残業が発生してしまいます。

 

<上限を超える残業>

三六協定では、法定労働時間を超える時間数として、1日、1か月、1年それぞれの上限を定めます。

1日単位のチェックは、従業員一人ひとりに説明しておいて、自己管理を求めるのが簡単です。

管理職も、自分の部下の残業時間について、管理を怠らないでしょう。

また、1か月単位の上限については、半月あるいは20日経過したところで、人事部門から各部門長や各従業員に対して「オーバーペースです」という警告が発せられる仕組ができている企業も多いと思われます。

しかし1年単位となると、従業員も部門長も、あまり意識していないため、年度末になってから、思いの外、残業が制限されてしまったり、あるいは、うっかり制限をオーバーしてしまったりということがありえます。

やはり、1年単位での時間外労働の集計も必須です。

 

<三六協定の対象者>

三六協定届には、労働者数の欄があり、カッコ書きで「満18歳以上の者」と書かれています。

これは、三六協定が満18歳未満の従業員には適用されないからです。

適用されないということは、満18歳未満の従業員は、三六協定が締結されても法定時間外労働が許されないことになります。

うっかり残業させてしまうことがないよう、十分に注意する必要があります。

 

<特別条項の回数制限>

臨時的な特別の事情の発生に備えて、三六協定に特別条項を設けることができます。

この場合、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を踏めば、限度時間を超えて労働させることができます。

しかし、これには年6回(6月)という回数制限があります。

年の前半で特別条項を5回使ってしまえば、後半では1回しか使えませんから、年度末の繁忙期に限度時間内の残業しかできずに困ることになります。

特に注意したいのは、年度の途中で人事異動がある場合です。

特別条項の回数制限は、個人ごとのカウントとなりますから、異動前に何度も限度時間を超えていると、異動後には限度時間を超えられない不都合を生じます。

これも、うっかり違反の大きなポイントですから注意しましょう。

 

解決社労士

2020/08/18|1,300文字

 

<更新の有無を伝える必要がある場合>

有期労働契約であれば、契約期間満了により雇用が終了するのが原則です。

ですから、もともと更新が無い契約であれば、あえて更新が無いことを伝える必要はありません。

反対に、必ず更新がある契約の場合にも、これを伝える必要はありません。

問題は、更新の「可能性」があるという契約にした場合です。

この場合には、なるべく早く更新の有無を決定して、対象者に伝えるのが望ましいわけです。

それでも、契約を更新する場合であれば、契約期間満了の直前に契約更新を伝えても大きな問題にはなりません。

しかし、契約の更新をせず打ち切る場合には、これを「雇い止め」と呼び、一定の場合には、その予告が義務づけられています。

 

<雇い止めの予告>

雇い止めの予告が義務となるのは、次のような場合です。

・労働契約を3回以上更新している場合

・1年を超えて継続勤務している場合

・1年を超える労働契約の場合

これらの場合に事業主は、少なくとも期間満了の30日前までに、雇い止めの予告をしなければなりません。

 

<理由の明示>

雇い止めの予告をしたのに対応して、対象者から雇い止めの理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付しなければなりません。

退職後に請求された場合でも、事業主には交付義務がありますが、あくまでも請求があった場合のみの義務となります。

雇い止めの理由の例としては、次のものが挙げられます。

・前回の契約更新時に本契約を更新しないことが明確に合意されていたため

・契約締結当初に定めた契約更新回数の上限に達したため

・閉店など事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと会社が判断したため

雇い止めの理由は、わかりやすく事実に沿った理由を示す必要があります。

誤解を生じる表現だと、これが元で訴訟トラブルに発展することもあります。

退職後は特にそうですが、「雇い止め理由書」を郵送して終わりにするのは危険です。

せめて電話で、できれば面談で説明したいものです。

 

<トラブルを防止するには>

雇い止めというのは、本当に訴訟トラブルを発生しやすいものです。

決まりきったルールを守るだけではなく、プラスアルファのトラブル防止策をお勧めします。

まず、雇い止めの予告にあたってのトラブルを防ぐには、最初の採用のときと、契約更新のときに、次回の契約更新の条件を具体的に示しておくことが必要です。

対象者から反論されたり、疑問を出されたりするような条件では、具体性に欠けるということになります。

また、雇い止めの理由を示したことによって、新たなトラブルを発生させないようにするには、その理由が客観的に合理的なものであって、世間一般の常識からしても「やむをえない」といえるものであることが必要です。

その基準は、労働法や裁判例を参考にすれば明らかになるものです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

もし社内に専門の担当者がいないのであれば、しろうとの「常識」で考えず、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

それぞれの会社と業務内容に応じた対策をとることによって、リスクを大幅に軽減し、経費を削減することができます。

 

解決社労士

2020/08/17|1,002文字

 

退職の翌月に、会社から社会保険料の本人負担分の請求が来ることもあり、来ないこともあります。

どのように場合分けされているのでしょうか。

 

<保険料徴収の仕組み>

社会保険料は、本人負担分を給与から控除し、会社がこれに会社負担分を足して納付します。

直接の納付義務は会社にあります。

そして、保険料の納付期限は翌月末です。

たとえば、4月分の保険料の納付期限は5月末です。

これが原則ですが、土建国保のように当月末が納付期限のものもあります。

 

<退職と保険料の発生>

退職者は原則として、退職日の翌日に社会保険の資格を失います。

そして、資格喪失日の前日が属する月までの社会保険料を負担します。

ですから、月末に退職した場合には、その月の保険料を負担します。

しかし、月末以外の日に退職した場合には、前月までの保険料を負担します。

4月30日に退職した場合には、4月分の保険料を負担するのですが、4月29日に退職した場合には負担しません。

 

<給与から控除される保険料>

たとえば、給与が毎月20日締切、当月25日支払だとすると、4月に支給される給与から控除される保険料は、通常の場合3月分です。

もし、4月末退職だとすると、5月に支給される給与から、4月分の保険料が控除されます。

5月に支給される給与は、4月21日から4月30日までの給与ですから、月給の3分の1程度でしょう。

またたとえば、給与が毎月25日締切、当月末日支払だとすると、4月に支給される給与から控除される保険料は、やはり通常の場合3月分です。

もし、4月末退職だとすると、5月に支給される給与から、4月分の保険料を控除したいところですが、5月に支給される給与は、4月26日から4月30日までの給与ですから、月給の6分の1程度でしょう。

この少ない給与から、住民税や所得税などと共に社会保険料を控除するのは、ちょっと無理かもしれません。

ですから、別途退職者に請求する場合があるのです。

退職日が予めわかっている場合には、最後の給与から2か月分の保険料を控除することもあるのですが、急な退職の場合などには間に合いませんから、退職後の請求になりやすいのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

具体的なケースについて迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

また、急な解雇は不当解雇となり、訴訟トラブルとなりやすいものです。

これについても、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/16|1,667文字

 

<チェックリストの公表>

厚生労働省は、令和2年8月7日、労使団体や業種別事業主団体などの経済団体に対し、改訂された「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」などを活用して職場における感染予防、健康管理の強化を図ることを、傘下団体などに向け周知するよう、再度協力を依頼しました。

令和2年4月17日、5月14日に引き続き3回目となる今回の協力依頼は、新型コロナウイルス感染症対策分科会での提案を踏まえたものです。

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は全国的に増加傾向にあり、一部地域では感染拡大のスピードが増しています。

このため、新型コロナウイルス感染症対策分科会では、新規感染者数を減少させるための迅速な対応として、事業者に対して、①集団感染(クラスター)の早期封じ込め、②基本的な感染予防の徹底が提案されました。

「チェックリスト」では、「感染予防のための体制」「配慮が必要な労働者への対応等」の2分野で新たな項目が追加されています。

 

<感染予防のための体制>

・事業場のトップが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に積極的に取り組むことを表明し、労働者に対して感染予防を推進することの重要性を伝えている。

・事業場の感染症予防の責任者および担当者を任命している(衛生管理者、衛生推進者など)。

・会社の取組みやルールについて、労働者全員に周知を行っている。

・労働者が感染予防の行動を取るように指導することを、管理監督者に教育している。

・安全衛生委員会、衛生委員会等の労使が集まる場において、新型コロナウイルス感染症の拡大防止をテーマとして取り上げ、事業場の実態を踏まえた、実現可能な対策を議論している。

・職場以外でも労働者が感染予防の行動を取るよう「新しい生活様式」の実践例について、労働者全員に周知を行っている。

・新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を周知し、インストールを労働者に勧奨している。

 

事業場トップは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止について、具体的な方針を示さなければなりません。

ただ「積極的に取り組む」とだけ表明したのでは、かえって現場の混乱をもたらすからです。

なお、衛生管理者は50人以上、衛生推進者は10人以上の職場で選任が義務付けられています。〔労働安全衛生法第12条、第12条の2〕

 

<配慮が必要な労働者への対応等>

・風邪症状等が出た場合は、「出勤しない・させない」の徹底を全員に求めている。

・社内での健康相談窓口の周知とともに、「新型コロナウイルス感染症についての相談の目安」や最寄りの「帰国者・接触者相談センター」を全員に周知している。

・高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、慢性呼吸器疾患、高血圧、がんなど)を有する者などの重症化リスク因子を持つ労働者および妊娠している労働者に対しては、本人の申出および産業医等の意見を踏まえ、感染予防のための就業上の配慮(テレワークや時差出勤等)を行っている。

・特に妊娠中の女性労働者が、医師又は助産師からの指導内容について「母健連絡カード」等で申し出た場合、産業医等の意見も勘案の上、作業の制限または出勤の制限(在宅勤務または休業をいう)の措置を行っている。

・テレワークを行う場合は、業務とプライベートの切分けに留意し、上司や同僚とのコミュニケーション方法を検討し、在宅勤務の特性も理解したうえで、運動不足や睡眠リズムの乱れやメンタルヘルスの問題が顕在化しやすいことを念頭において就業させている。

 

発熱については、当初、37.5℃が基準とされていました。

しかし、平熱は個人差が大きく、感染者の症状の現れ方にも差があることから、こうしたデジタルな基準は撤回されています。

また、感染症拡大の防止のためには、日常生活での対策も必要となりますが、テレワーク時に限らず、プライベートへの過干渉とならないように配慮が求められます。

 

職場での新型コロナウイルス感染症拡大防止では、明確な方針のもとでの、周知と教育の徹底がポイントとなります。

 

解決社労士

2020/08/15|1,537文字

 

個人差の大きな試験です。参考になりそうなところだけ参考にしてください。

 

<令和2年度の試験>

新型コロナウイルス感染症の影響により、予定されていた会場の一部が使用できなくなり人数制限等が生じています。

希望会場で受験できない人もいます。

受験票記載の会場が正しい受験会場ですから、間違えないようにしましょう。

当日は、検温など感染拡大防止策がとられていますから、会場にはかなり早めに到着することをお勧めします。

 

<目的意識>

なぜ受験するのか、なぜ合格したいのか、合格したらどうしたいのか、目的意識が薄れていると、勉強の効率が上がりません。

あれが嫌、これも嫌の消去法で受験を決意したのでは、勉強が手につかないでしょう。

直前期には、受験の目的を再確認しましょう。

 

<参考書より問題集>

受験勉強では、勉強がかなり進まないと問題集に手を出さないものですが、過去の問題を中心に勉強している人は、実力のつくスピードがすごいです。

参考書の理解を目指しているのではなく、本番の試験で高得点を取ることを目指しているのですから、早い段階で問題集に取り組むべきです。

ただし、最近の傾向とは異なる古い過去問を解くのは効率が悪くなります。

 

<問題集の使い方>

自分なりの答えが出るまで粘るのは時間の無駄です。

私は中学、高校と数学が得意でした。

問題集を解くときは、30秒ほど考えて解き方が分からなければ、解答と解説を読んで覚えました。

5分かかって答えにたどり着かなければ諦めました。

数学が不得意な人は、1問を解くのに長時間かけすぎていたと思います。

ましてやこの試験では、知識がものを言いますから、悩んでも仕方が無い問題が多いのです。

少し考えて正解を出せなければ、解答と解説を読んで覚えましょう。

 

<結局最後は丸暗記>

基本書を読むときは、最初の5~6回は理解することを心がけると良いです。

記憶は薄れていきますが、理解は薄れにくいです。

次の3~4回は、記憶することを心がけたいです。

どんなに理解しようと思っても、理屈に合わない部分が多いのがこの試験の特徴です。

最後の1~2回は、語呂合わせでも何でもいいですから、すべて覚えるつもりで臨みましょう。

 

<勉強時間の確保>

以上のように、やるべきことは多いです。

ですから、勉強時間の確保が最重要課題です。

早朝だったり、休日にまとめてだったり、細切れ時間の有効活用だったり、自分の個性に合わせて確保するしかないです。

週40時間の勉強を1年続けたら合格ラインだと思います。

しかし、週20時間の勉強を2年続けても、同じ水準には達しません。

なぜなら、法改正やデータの変化により、記憶の混乱が生じてくるからです。

 

<独学は苦しい>

資格取得のための学校に通って仲間ができるとモチベーションを維持できます。

精神的に楽だと思います。

また、ネット授業やビデオ授業でも、そこそこの効果が期待できます。

私の知り合いの飯田弘和先生は、行政書士試験も社労士試験も独学で合格しています。

しかし、社労士試験を独学で合格する人は、年に数人しかいないそうです。

特別に優秀な人を除き、独学で合格を目指すことはお勧めできません。

 

<諦めないこと>

私が受験した年は、試験当日、午前だけ受験して諦めて帰った人が多かったそうです。

泣いている人もいましたし、参考書に殴り書きをしている人もいました。

結果的には、合格率の高い年でしたから、合格発表のデータを見て、途中で帰って失敗だったと思った人は多かったようです。

 

<健康管理>

8月下旬は、風邪を引きやすい時期ではないと思うのですが、試験会場に行くと風邪引きが半分以上でしょうか。

試験当日に風邪を引いていないというだけで、かなり合格が近づきます。

やはり健康管理は大事です。

 

解決社労士

2020/08/14|604文字

 

<マクロ経済スライド>

年金の給付水準は、賃金や物価により変動します。

しかし、あまりに大きな変動は給付額が不安定になり好ましくありません。

マクロ経済スライドは、賃金や物価の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。

これによって、保険料等の収入と年金給付等の支出の均衡が保たれるようになりますし、子や孫など将来の現役世代の負担が過重なものとならないよう保険料の負担水準を定めることになります。

 

<具体的な仕組み>

賃金や物価による改定率から、加入者(被保険者)の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。

そして、賃金や物価がある程度上昇する場合にはそのまま適用しますが、賃金や物価の伸びが小さく、適用すると年金額が下がってしまう場合には、年金額の改定は行われません。

さらに、賃金や物価の伸びがマイナスの場合は調整を行わず、賃金や物価の下落分のみ年金額を下げることになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

個人の年金額に変更があった場合、その原因がすぐに分からないこともあります。

年金額そのものが変わったのではなく、天引き(控除)されている金額が変わっていることもあります。

お近くの年金事務所などで確認すれば良いのですが、時間が無かったり、一度説明を受けたけれども良く分からない場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/13|986文字

 

<厚生年金の対象者>

国民年金に上乗せされた保障を受けることができる厚生年金の制度は、いわゆる勤め人を対象としています。

したがって、学生や自営業者は国民年金のみに加入することになります。

 

<厚生年金の加入条件>

厚生年金の加入条件(資格取得要件)は健康保険と同じです。

以下の条件を満たした人は、自動的に加入(資格取得)します。

そして、会社は加入手続をとる義務があります。

労働者が加入を拒んだ場合でも、会社はこの義務を免除されません。

まず、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であれば、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態にかかわらず加入することになります。

また、この条件を満たす加入者(被保険者)が501人以上いる企業では、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、月収8万8000円(年間106万円)以上となったときに加入するのが原則です。

しかし、従業員5人以下の個人事業所で働く場合や、契約期間が2か月以下で更新しなかった場合など、一定の場合に加入できないこともあります。

なお、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数は、会社が労働者に書面で明示する義務を負っています。

ですから、予め決めておく必要があります。

 

<受けられる年金の種類>

厚生年金に一定の期間加入していることにより、つぎの年金を受けられます。

・老齢厚生年金(原則として65歳から)

・障害厚生年金(病気、事故によって障害が残った場合)

・遺族厚生年金(加入者が死亡したときに、扶養していた妻、18歳未満の子、一定範囲の親族に支給される)

これらは、支払った保険料に応じて支給されます。

また、国民年金は全国民に共通の基礎年金が支払われ、厚生年金は基礎年金に上乗せして年金が支払われる制度です。

この制度により支払われる、老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、同じ事由で支払われるため、1つの年金とみなされ併せて受けることができます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

国民年金や厚生年金の加入期間、保険料の納付状況、将来年金を受ける可能性については、お近くの年金事務所などで確認することができます。

お時間が無くてご自身で確認できない場合や、一度相談に行ってみて分かりにくかったときには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/12|755文字

 

<報連相は大事だが>

会社の物品が壊れた時に、すぐに報告せず遅れて報告したら、責任を問われ半額弁償するよう迫られたという相談がありました。

かなりメチャクチャな話であることは明らかです。

理論的に反論するなら、報告が遅れたことと会社の物品が壊れたこととの間に因果関係が無いので、物品の修理費用や新品の購入代金を基準に責任を負わされるのは不合理だということになります。

報告が遅れたから物品が壊れたわけではないのに、壊れたことに対して責任を負うのはおかしいのです。

 

<営業上の損害が発生する場合>

パン屋さんやピザ屋さんで、閉店間際にパンを焼くオーブンやピザを焼く窯(かま)が壊れたとします。

このときすぐ会社に報告して、修理の手配や代品の手配ができるようにしなかったため、翌日、臨時休業になったとします。

会社の損害は、その店舗の1日分の売上に基づく利益ということになります。

もし、会社に損害を加えようとして、わざと報告しなかったのであれば、不法行為としてこの損害を基準とする賠償を求められることもありえます。〔民法第709条〕

しかし、この場合でも、修理費用が賠償額の基準になるわけではありません。

また、その場にいる従業員だけで、何とか修理しようとして翌朝まで頑張ってしまい、会社に報告することなど思いもよらなかったというケースなら、故意はありません。

過失にしてはひどすぎますが、会社側の教育不足も原因だと考えられます。

就業規則の懲戒規定に従い、合理的な範囲内で懲戒処分を受けることになるでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

こんなとき報告を受ける側としては、ついカッとなってしまいます。

クビにしようか、全額弁償させようかと、極端な思考に走りがちです。

一呼吸おいて信頼できる社労士にご相談いただけたらと思います。

 

解決社労士

2020/08/11|1,177文字

 

<定額(固定・みなし)残業代>

1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

労働基準監督署では正しい運用を指導しています。

しかし、所轄の労働基準監督署に確認せず、誤った運用も多いことから、ハローワークでは求人票に載せることを嫌います。

 

<誤った運用その1>

対象となる従業員に、定額残業代の計算根拠について、何時間分だからいくらなど説明が無い。

あるいは、就業規則に残業代の計算方法について、具体的な規定が無い。

これは誤った運用です。

残業代について、具体的な計算方法が分からなければ、給与を支給されたときに、それが正しいのか誤っているのか分かりません。

対象者全員に、計算方法を理解させることは必須です。

 

<誤った運用その2>

残業時間が少ないと、定額残業代が減額される。

これも誤った運用です。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

「定額」ですから当然のことです。

定額残業代は、全く残業しなくても支給される最低保証額なのです。

 

<誤った運用その3>

残業時間がどんなに多くても、残業代は増えず、定額残業代だけが支給される。

これは誤った運用です。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめてということはできません。

そもそも定額残業代の基準時間が無いという悪質なものもあります。

 

<誤った運用その4>

定額残業代に、深夜労働や法定休日労働の割増賃金を含めている。

これは、技術的な困難を伴いますから、多くの場合に誤った運用となります。

深夜労働や法定休日労働の分も定額にすることは、理論的には可能です。

しかし、それぞれの基準時間と金額を明らかにする必要があって、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのであまり使われません。

 

<誤った運用その5>

1時間あたりの基本賃金が、最低賃金法の基準を下回っている。

これも誤った運用です。

残業の基準時間を長く設定してしまうと、時間単価が下がってしまうのです。

最低賃金は、年々上昇していますので、いつの間にか違法になってしまうケースもあります。

給与の設定が春だと、最低賃金の変更が秋なので、この時点で違法になることも多いのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

定額残業代(固定残業代・みなし残業代)を使うなら、適法に運用しなければなりません。

それだけではなく、適法に運用するとかえって人件費が割高になるという場合には、給与制度や人事制度を見直す必要があります。

それぞれの職場に合った制度をお考えでしたら、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

社労士であれば、社名を出すことなく、所轄の労働基準監督署で相談することも可能です。

 

解決社労士

2020/08/10|1,378文字

 

<年次有給休暇は労働者の権利>

年次有給休暇は、労働基準法に定められた労働者の権利です。〔労働基準法第39条第1項〕

週1日の勤務でも、法定の年次有給休暇を取得する権利があります。〔労働基準法第39条第3項〕

会社が法定以上の年次有給休暇を与えるのは構いませんが、一時的にせよ法定の基準を下回ることはできません。〔労働基準法第1条第2項〕

こうして与えられた年次有給休暇を、退職時にまとめて取得するのも労働者の権利です。〔労働基準法第39条第5項本文〕

会社は、一定の条件のもとで、年次有給休暇の取得日を変更できるのですが、退職日よりも後の日に変更することはできません。〔労働基準法第39条第5項但書〕

 

<権利の濫用か>

会社は、労働者から退職の申出があるとともに、何日もの年次有給休暇取得を言われると、業務の引継について懸念が生じます。

そもそも、引継の相手となる人材がいなければ、新たに採用する必要も出てきます。

退職希望者から、何日もの年次有給休暇取得を言われた場合、会社はそれを権利の濫用として拒否できるのでしょうか。

客観的に見て、会社が対応不可能なのに、労働者が権利を主張してくるのは、権利濫用と言わざるを得ません。

しかし、会社は日常の業務についても、労働者にマニュアルの作成と改善を指示することができます。

これを元に、複数の労働者が業務を共有したり、計画的な人事異動を行ったりということも、会社の指揮命令によって行うことができます。

つまり、客観的に見て、会社が対応不可能とは言えません。

少し厳しい話ですが、労働基準法が労働者に年次有給休暇取得の権利を認めている以上、会社は様々な事態を想定して、予め対応しておく必要があります。

法律が、それを会社に求めているのです。

 

<就業規則による対処>

就業規則によって、会社に発生する不都合を減少させることもできます。

たとえば、次のような規定を設けてはどうでしょうか。

・退職にあたっては、後任者に対し、従来の任務を遂行するのに必要なマニュアルの引継を完了し、上長の確認を受けなければなりません。

・自己都合により退職する人は、退職予定日が決定次第、その理由を申し出て、少なくとも14日前に「退職願」を提出しなければなりません。

・最終出勤日は、退職の理由や引継の内容を考慮して、退職する人と会社とで協議のうえ決定します。

また、懲戒処分の対象に、「正当な理由なく、退職にあたって引継を放棄し、あるいは、引継に必要な出勤を拒んだとき」を加えておくことも考えたいです。

退職金減額の理由とすることも可能です。

 

<礼儀として>

十分な引継もできないほどの突発的な退職というのは、労働者が急死するなどの例外的な場合にしか発生しません。

退職する人は、きちんと引継を済ませたうえで、円満退社すべきです。

世間は狭いもので、知り合いの知り合いを通じて、悪いうわさが流れたりするものです。

ネット上に、あることないこと書かれることもありえます。

会社も、きちんと引継が済むように、年次有給休暇の一部を買上げて引継に必要な日数は出勤してもらえるように、丁寧に頼むなど礼儀を尽くすことが必要です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

急に誰かが退職を申し出ても困らない体制づくりは必要です。

具体的に何をどうすべきか、迷ったら信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/09|1,517文字

 

<社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン改訂の経緯と趣旨>

令和元(2019)年度の建設業法等の一部改正で、建設業許可基準の見直しが行われ、令和2(2020)年10月から、建設業者の社会保険の加入が建設業許可・更新の要件とされるなど、企業単位での社会保険の加入確認の厳格化が講じられました。

この法改正により、施工体制台帳に社会保険の加入状況等を記載することが必要となり、実質的に作業員名簿の作成が義務化されたことから、技能者単位での社会保険の加入確認の厳格化についても措置を講ずることが求められます。

国土交通省は、企業にとって効率的に加入確認が行えるよう、建設キャリアアップシステムの活用を図るなど、技能者の現場単位での社会保険の加入徹底に向けた取組みを推進することとしています。

一方で、元請企業に対しては、新たに以下のような取組を求めることとしています。

 

<下請企業選定について>

・建設キャリアアップシステムに登録している建設企業を選定することを推奨する。

・建設キャリアアップシステムを使用せず、社会保険の加入確認を行う場合、元請企業は選定の候補となる建設企業に保険料の領収済通知書等関係資料のコピーを提示させるなど、真正性の確保に向けた措置を講ずるよう徹底する。

・雇用保険については、厚生労働省の労働保険適用事業場検索サイト、厚生年金については、日本年金機構の厚生年金・健康保険適用事業所検索システムで適用状況を確認する。

・適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しない。

・建設業者たる元請企業は、再下請負通知書の「健康保険等の加入状況」欄により下請企業が社会保険に加入していることを確認する。

 

<作業員名簿の活用>

・令和元(2019)年度の建設業法等の一部改正により、実質的に作業員名簿の作成が義務化され、各作業員の加入している健康保険、厚生年金保険および雇用保険の加入状況に関する事項を記載することされている。これを受け、元請企業は、新規入場者の受入れに際して、各作業員(建設業に従事する者に限る)について作業員名簿の社会保険欄を確認する。

・確認の結果、全部または一部の保険について空欄となっている作業員等がある場合には、作業員名簿を作成した下請企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導する。

・確認を行う際には、建設キャリアアップシステムの登録情報を活用し、同システムの閲覧画面等において作業員名簿を確認して保険加入状況の確認を行うことを原則とする。

・建設キャリアアップシステムを使用せず、社会保険の加入確認を行う場合、元請企業は下請企業に対し、社会保険の標準報酬決定通知書等関係資料のコピー(保険加入状況の確認に必要な事項以外を黒塗りしたものでも構わない)を提示させる(電子データによる確認も含む)など、真正性の確保に向けた措置を徹底する。

・上記の方法により保険加入状況が確認できない場合は、当該作業員は適切な保険に加入していることを確認できないと判断されることから、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いを徹底すべきである。

 

<今後の見通し>

当面は、「指導による徹底」が図られることになります。

しかし、ある程度まで浸透したタイミングで、罰則付きの法的義務とされることが予想されます。

また、これに伴い発生する下請企業の経営難や、下請企業の労働者の生活難への支援も行われることでしょう。

さらに、実質的には雇用している労働者を、形式的に請負扱いしている場合には、関係法令に抵触するため、一人親方との請負契約についても、行政の指導が徹底されるようになると考えられます。

 

解決社労士

2020/08/08|880文字

 

<朝礼の時間の賃金支払義務>

朝礼は、業務上必要な連絡事項の伝達、心身の異常の有無の確認、勤務に就く態勢を整えさせるなどのために行われています。

業務に密接に関わる内容を含みますので、通常は出勤者全員の参加が義務付けられています。

確立した判例理論によると、労働時間の定義は「何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」です。

通常の場合、朝礼はこの定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

こうした朝礼については、会社の方針で賃金を支払わないことにはできません。

例外的に、その朝礼が自由参加であって、参加しなくても評価の低下などの不利益が全く無いのなら、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払は不要です。

もちろん、会社の方針で賃金を支払うことにするのは構いません。

 

<掃除当番の時間の賃金支払義務>

掃除当番は、会社が通常の業務にプラスアルファで行わせているのが一般的な形です。

これは、上記の労働時間の定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

こうした掃除当番の時間についても、会社の方針で賃金を支払わないことにはできません。

例外的に、従業員同志が話し合って、自主的に当番を決めてボランティアで行っている場合には、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払は不要です。

たとえば、長年にわたり社長が毎朝早く出社してトイレ掃除をしていたとします。

あるとき、一人の社員の提案で、社長に代わり自分たちで掃除することになって、掃除当番が始まったとします。

これが、社長に対する尊敬の念とボランティア精神から始まったことであれば、賃金の支払は不要なのです。

もちろん、会社の方針で賃金を支払うことにするのは構いません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「昔から朝礼や掃除当番の時間については無給です」というのは、その時間の賃金を支払わなくて良い理由にはなりません。

長く続いているルールが、労働法違反の慣行に過ぎないということもあるのです。

社内で行われている何となくのルールに疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/07|1,000文字

 

<業務災害>

労働者の業務上の負傷、疾病、障害、死亡を業務災害といいます。

「業務災害」として認定されるためには、業務に内在する危険有害性が現実化したと認められること(業務起因性)が必要で、その前提として、労働者が使用者の支配下にある状態(業務遂行性)にあると認められなければなりません。

 

<業務遂行性>

厳密には業務といえない行為であっても、労働者が使用者の支配下にある状態だといえるので、業務遂行性が認められる行為として次のものがあります。

・事業主の私用を手伝うなどの作業中

・生理的行為(用便、飲水等)による作業中断中

・作業に関連または附随する行為、作業の準備、後始末、待機中

・火災等緊急事態に際しての緊急行為中

・事業施設内での休憩中でその事業施設に欠陥があった場合

・出張中(住居と出張先の往復を含む)

 

<業務災害の特殊ケース>

次のような災害も、過去に業務災害として認められています。

・上司の指示により、無届欠勤者の事情を調査するため、通常より約30分早く自宅を出発し、自転車で欠勤者宅に向かう途中で電車にはねられ死亡した〔昭和24年12月15日基収第3001号通達〕

・勤務時間中に、作業に必要な私物の眼鏡を自宅に忘れた労働者が、上司の了解を得て、家族が届けてくれた眼鏡を工場の門まで自転車で受け取りに行く途中で運転を誤り負傷した〔昭和32年7月20日基収第3615号通達〕

・小型パイプが事業場の資材置場に乱雑に荷下しされていたため、それを整理していた際、材料が小型のため付近の草むらに投げ込まれていないかと草むらに探しに入ったところ、その草むらの中にいた毒蛇に足をかまれて負傷した〔昭和27年9月6日基災収第3026号通達〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

業務災害にあたらないものを、勘違いして労災保険の手続をしても、労働基準監督署でストップがかかります。

それでも、健康保険の手続に切り替えたり、被災者やご家族に説明して、お叱りを受けたりという負担が発生します。

恐いのは、業務災害として労災保険の補償が受けられるのに、業務災害ではないと勘違いして手続を進めないことです。

この場合には、時効により権利が失われる前でも、遅れたことにより手続を進めるのが困難なことがあります。

迷ったら、所轄労働基準監督署の労災課に確認すれば良いのですが、少し聞きづらいと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/06|1,543文字

 

<副業・兼業の推進>

平成29(2017)年3月に政府から「働き方改革実行計画」が示されました。

これを受けて、厚生労働省「柔軟な働き方に関する検討会」で雇用型テレワーク、自営型(非雇用型)テレワーク、副業・兼業に関する新たなガイドライン案、モデル就業規則改定案等が検討され、平成31(2019)年3月版のモデル就業規則は、次のように修正されています。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<実務的な対応>

企業が副業・兼業を禁止・制限する根拠は、就業規則に規定することになりますが、その内容が不明確だとトラブルの元になってしまいます。

また、定期的な研修などで繰り返し説明する必要があります。

問題は、モデル就業規則のような規定を設けたとしても、副業・兼業を禁止・制限する基準が必ずしも客観的・具体的に明確にならない点にあります。

令和2(2020)年7月30日、労働政策審議会労働条件分科会が開催され、副業・兼業の労働時間管理に関する検討が行われました。

この中で、就業規則に規定するなどして、明確にしておくべき事項として、以下のものが挙げられています。

 

<安全配慮義務の観点から>

・長時間労働等によって労務提供上の支障がある場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業の届出等の際に、副業・兼業の内容について、労働者の安全や健康に支障をもたらさないか確認すること。

・副業・兼業の開始後に、副業・兼業の状況について労働者からの報告等により把握し、労働者の健康状態に問題が認められた場合には適切な措置を講ずること。

 

<秘密保持のために>

・業務上の秘密が漏洩する場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業を行う労働者に対して、業務上の秘密の漏洩が生じないよう注意喚起すること。

 

<競業避止義務の観点から>

・競業により、自社の正当な利益を害する場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業を行う労働者に対して、自社の正当な利益を害することがないよう注意喚起すること。

・他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう確認や注意喚起を行うこと。

 

<誠実義務の観点から>

・自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合には、副業・兼業を禁止または制限することができることとしておくこと。

・副業・兼業の届出等の際に、それらのおそれがないか確認すること。

 

<原則と例外>

労働者には、職業選択の自由がありますから、原則として副業・兼業が自由にできます。

一方で、企業には営業の自由がありますから、原則として、営業に支障をきたす事情を排除する権利があります。

どちらも、日本国憲法第22条第1項で保障されている権利です。

両者が対立する局面では、2つの人権を調整しなければなりません。

こうして、労働者は本業に支障をきたさない範囲で、副業・兼業を自由に行うことができるという結論になるのです。

副業・兼業の制限は、あくまでも例外的なものであることを念頭に置いて、基準を考えていかなければなりません。

 

解決社労士

2020/08/05|947文字

 

<通勤災害>

労働者の通勤による負傷、疾病、障害、死亡をいいます。

ここで「通勤」とは、労働者が就業に関し合理的な経路および方法により移動、往復することをいい、業務の性質を有するものを除きます。

 

<これも「通勤」の一種>

転勤に伴い、やむを得ない事情により配偶者、子、要介護状態にある父母・親族等と別居することとなった場合に、帰省先への移動に反復性や継続性が認められれば、単身赴任先と帰省先との間の移動が通勤と認められうるとされます。〔平成18年3月31日基発0331042号通達〕

 

<「みちくさ」の例外>

通勤経路の途中で、通勤とは関係ない目的で、合理的な経路をそれた場合や、通勤とは関係のない行為を行った場合は、その時点で通勤とは認められなくなるのが原則です。

しかし、日常生活に必要な行為で厚生労働省令に定められているものである場合は、「みちくさ」をしても元の経路に戻った後からは、通勤災害として認められうるとされます。

「日常生活上必要な行為で厚生労働省令に定められているもの」とは、次の行為です。

・日用品の購入その他これに準ずる行為

・職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校で行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

・選挙権の行使その他これに準ずる行為

・病院または診療所で診察や治療を受けることその他これに準ずる行為

・要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、要介護状態にあり同居し扶養している孫、祖父母、兄弟姉妹の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

通勤災害にあたらないものを、勘違いして労災保険の手続をしても、労働基準監督署でストップがかかります。

この場合、健康保険の手続に切り替えたり、被災者やご家族に説明して、お叱りを受けたりという負担が発生します。

恐いのは、通勤災害として労災保険の補償が受けられるのに、通勤災害ではないと勘違いして手続を進めないことです。

この場合には、時効により権利が失われる前でも、遅れたことにより手続を進めるのが困難なことがあります。

迷ったら、所轄労働基準監督署の労災課に確認すれば良いのですが、少し聞きづらいと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/04|1,304文字

 

<空欄のある労働条件通知書の有効性>

労働条件通知書は、使用者から労働者に対して主要な労働条件を書面で通知するための書類です。

そして、労働条件は労働契約の中心的な内容となっています。

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、書面に不備があっても労働契約の効力には影響しません。〔民法第623条〕

たとえ労働契約書や労働条件通知書が無くても、労働契約は有効に成立するのです。

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし、労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パート・有期労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」などの明示が必要です。ここで、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」とは、事業主が短時間労働者 からの苦情を含めた相談を受け付ける際の受付先のことです。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

つまり、これらの事項は労働条件通知書から漏れていても大丈夫です。

ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.3.の事項がパート・有期労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<空欄があることによるトラブル>

労働条件通知書は、使用者の労働者に対する一方的な通知書ですから、1部だけ作成して労働者に交付すれば良い書面です。

この点が、労働契約書とは違うところです。

しかし、もし空欄があった場合、交付を受けた労働者が勝手に空欄を補充すると、これがトラブルの元になります。

ですから、使用者もコピーを1部保存するのが良いでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則が無い会社では、就業規則の代わりに労働条件通知書にかなり詳細な内容を記載する必要があります。

決まっていないからといって空欄のままにしておくことは、法定の要件を満たしていなかったり、トラブルの火種となったりします。

そうはいっても、決め方がわからないなど迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

また、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」は、社内に置くこともできますが、社会保険労務士とすることが推奨されています。

 

解決社労士

2020/08/03|913文字

 

<基本手当日額>

8月1日(土)から雇用保険の「基本手当日額」が変更されました。

これは、毎年8月1日に行われているものです。

雇用保険の基本手当(昔の失業手当)は、労働者が離職した場合に、失業中の生活を心配することなく再就職活動できるよう支給するものです。

「基本手当日額」は、離職前の賃金を基に算出した1日当たりの支給額をいい、給付日数は離職理由や年齢などに応じて決められています。

今回の変更は、令和元年度の平均給与額が平成30年度と比べて約0.49%上昇したこと及び最低賃金日額の適用に伴うものです。

なお、平均給与額については、「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額(再集計値として公表されているもの)を用いています。

毎月勤労統計調査のデータ提出を義務付けられた企業は負担もありますが、こうしたことで確実に役立っています。

 

<具体的な変更内容>

1 基本手当日額の最高額の引上げ

  基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。

 (1) 60歳以上65歳未満  7,150円 → 7,186円(+36円)

 (2) 45歳以上60歳未満  8,330円 → 8,370円(+40円)

 (3) 30歳以上45歳未満  7,570円 → 7,605円(+35円)

 (4) 30歳未満       6,815円 → 6,850円(+35円)

2 基本手当日額の最低額の引上げ

              2,000円 → 2,059円(+59円)

 

<計算の根拠>

基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の最高額、最低額等について、毎年度の平均給与額の変動に応じて変更していますが、これにより変更した最低額が、最低賃金日額(地域別最低賃金の全国加重平均額に20を乗じて7で除して得た額)を下回る場合は、最低賃金日額を最低額とすることとされています。〔雇用保険法第18条第3項〕

令和2年8月1日以降の基本手当日額の最低額については、最低賃金日額に、基本手当の給付率80%を乗じて計算しています。

 (計算式)

901円(令和2年4月1日時点での地域別最低賃金の全国加重平均額)×20÷7×0.8=2,059円

 

解決社労士

2020/08/02|943文字

 

<問題社員なのか>

問題社員なら、就業規則の抜け道や不合理な部分を見つけても、これを会社に言わないでしょう。むしろ悪用するチャンスをうかがうハズです。

就業規則を批判する社員は、会社の成長を願う真面目な社員だと受け取った方が良いでしょう。

 

<批判の対象>

就業規則には、労働法の概要、労働契約の共通部分、社内ルールの3つが含まれます。

ですから批判も、労働法に対する批判、労働契約に対する批判、社内ルールに対する批判に分類できます。

 

<労働法に対する批判>

法律を作るのは国会です。

ですから、会社に対する批判とはなりません。

ただ、こうした批判が出るということは、社員教育が不十分かもしれません。

会社は労働基準法について、周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

少なくとも、労働法の内容は会社の方針で決めたものではなく、批判されても対応できないということは理解してもらいましょう。

 

<労働契約に対する批判>

この部分で批判が出るということは、労働契約の内容に法令違反があるかもしれません。

批判の内容を良く聴いて、就業規則に法令違反が無いか専門家にチェックさせることをお勧めします。

労働法は、驚くほど頻繁に改正されていますから、労働契約の内容がいつの間にか違法になっていることもあるのです。

 

<社内ルールに対する批判>

もし、規定されている通りに実践されていないという批判なら、頼もしいことです。

その批判をした社員を含めたメンバーで、実践を推進すべきでしょう。

そうではなくて、規定の中身が悪いという批判であれば、これは経営者の考えが強く反映されている部分に対する批判ですから少し警戒したいところです。

一番多いのは、時代遅れであるとの指摘でしょう。

しかし、古くても良いことはたくさんあり、新しくてもダメなこともあります。

ライバル会社を中心に業界全体の動向を把握し、また他業界や世界の動きも見据えて、在るべき姿を再考するチャンスです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法的観点や業界動向を踏まえて、就業規則の適法性、妥当性を確認するのも、労働法の基本についてレクチャーするのも、社労士の得意分野です。

社内でまかない切れない部分については、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください

 

解決社労士

2020/08/01|1,187文字

 

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、次の通りです。

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

このうち5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。

変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。

ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<手順がおかしいと>

ところが実際には、5.意見書 → 6.届出 → 4.周知 の順番になってしまうことも多いようです。

法律上、就業規則が効力を発生するのは、従業員への周知の時なのですが、労働基準監督署への届出の時だという勘違いがあるのでしょう。

社内の一部の人や社労士が就業規則の変更案を作り、これが従業員一般に公開されないまま決定されて労働基準監督署に届出が行われるというのは良くないです。

「就業規則が変わりました。労働基準監督署にも届出済です。守ってください」では、唐突すぎて会社に対する不信感が生まれてしまいます。

たとえ従業員に有利な変更だったとしても、だまし討ちのように思われてしまいます。

やはり、正しい手順で行うことが大事です。

 

<一歩進んで>

就業規則の変更案を作る段階で、その変更により最も影響を受ける従業員から意見を聴き、それを参考にしたらどうでしょうか。

意見の内容はバラバラでしょうから、すべての意見を聞き入れることはできません。

それどころか会社の都合で、変更案に意見が全く反映されないこともあるでしょう。

それでも、一応、意見を聴いておけば、思わぬ勘違いを防げますし、より良い変更案のヒントが得られるかもしれません。

なにより、会社が従業員の意見を聴いたうえで、就業規則の変更を進めるというのは、民主的で良いことです。

このように、一手間加えることで、会社の態度を示すことができますし、従業員の皆さんも就業規則に関心を持ち、守ろうとする気持が高まることでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則が従業員に理解され守られるようにするのは、手間がかかることです。

たとえば、勤務先の店内でふざけた写真を撮りネットに掲示することが、就業規則の中の「会社の信用を傷付け・・・」にあたるとは思わない若者が多いのです。

新人が入ってきたら、就業規則について基本的なことは説明しなければなりません。

初めて役職者になった従業員に対しては、一段高いレベルの教育も必要です。

理想をいえば、毎年のように定期的な説明会を開きたいところです。

もし、社内でまかない切れない部分があれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/31|1,661文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

 ①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

この場合には、即日退職ということもあります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、会社が承認しなくても規定の日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<民法改正と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

これには、月給者の場合の例外がありました。

月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要がありました。〔改正前の民法第627条第2項〕

令和2年4月1日からは、民法改正により、このルールが使用者側だけに適用されることとなり、労働者側には適用されなくなりました。

 

【改正後の民法第627条第2項:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

つまり、従業員からの退職の申出について、月給者の場合の例外が無くなったことになります。

就業規則は古いままで、「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、民法が就業規則よりも労働者に有利な部分は、民法が優先されます。

結局、正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができ、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

この原則について、月給者の場合の例外が無くなったということです。

ですから、就業規則は「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、早めの退職願提出を「お願い」し、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

<実務への影響>

月給制の正社員の場合、退職申し出のタイミングにかかわらず、給与の締日に退職というのが一般的でした。

法改正により、退職日がバラバラになり、就業規則(給与規程)に欠勤控除についての明確な計算方法が無いと困ることになります。

業務の引継ぎについても、引継ぎ期間は「最低でも2週間」だったのが、「原則として2週間」になってしまいました。

突然の退職にも対応できるよう、普段からマニュアルを利用した業務遂行と業務改善を当たり前にしておきたいところです。

また、退職時のルールや異動の場合を含めた引継ぎのルールも、具体的に定めて正しく運用することで、生産性の低下を防止しましょう。

もっとも、従業員が「退職を願い出て会社が承認」という合意退職については、上記のような問題が発生しません。

労使の関係を良好に保ち、「退職」と言えば「合意退職」を意味するような状態にしておくのが理想でしょう。

 

解決社労士

2020/07/30|1,131文字

 

<就業規則の3つの柱>

就業規則には、次の3つの柱があります。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

<職場のルール>

会社と労働者が職場で守るべきルールです。

ここには経営者の想いが反映されます。

「自分から挨拶」「会議で積極的に発言」「書類を探すことがないように整理整頓」など、違法なことでなければ自由に規定できます。

会社として、従業員にどのように働いて欲しいのか、存分に規定しておくべきです。

当然のことですが、就業規則のひな形には、それぞれの経営者の想いが反映されていません。

社労士は、経営者の方から普段考えていることや心情をうかがって、それを就業規則にふさわしく解かりやすい表現にまとめていきます。

もちろん違法性が疑われる表現は排除します。

 

<労働契約の共通部分>

会社ごとに見ると、正社員は正社員の、パート社員はパート社員の共通部分があります。

この共通部分は会社ごと、職場ごとに異なります。

文字になっているものも、口頭で認識されているものもあります。

社労士は、労働契約の内容を法的観点から分析し、共通部分を抽出して、就業規則の規定にまとめます。

労働契約の内容や慣行が法令違反の場合もあります。

必要な手続が行われていないために違法な場合には、社労士が手続を指導しあるいは代行します。

実質的に違法な部分については、社労士が改善のお手伝いをします。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

法令はしばしば改正されていますから、子の看護休暇などのように、法定されていて会社に義務づけられていても、あまり知られていないものもあります。

社労士は、これらの内容をわかりやすく就業規則にまとめます。

年次有給休暇の制度や産休のしくみなど、必要に応じて説明会を開催することもしています。

 

<社労士(社会保険労務士)に就業規則の作成を依頼する意味>

ただ形ばかり規定を備えるのであれば、ネットで検索したひな形に少し手を加えればできてしまいます。

それなのに、社労士に報酬を支払ってまで就業規則の作成を依頼するのは、次のような効果が期待されるからです。

・問題社員から会社と真面目に働く従業員を守る。

・就業規則を通じて経営者の想いを従業員に伝える。

・会社で運用されるルールのうち問題のあるものを改善できる。

・法改正や労働市場動向に適合した内容にできる。

つまり、就業規則の作成を通じて、実は会社の強化と成長促進ができるわけです。

 

解決社労士

2020/07/29|980文字

 

<正当防衛>

刑法に正当防衛の規定があります。

「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」〔刑法第36条第1項〕

部下の攻撃が「いきなり、本気で首を絞めてきた」ということでしたら、首を絞められている最中に、部下を殴っても正当防衛になります。

公法である刑法が認めている行為を、パワハラ扱いすることはできないでしょう。

 

<過剰防衛>

刑法には、正当防衛にはならないものの、行き過ぎた防衛行為の場合には、過剰防衛と認定され、刑が軽くなりあるいは免除される場合があるという規定があります。

「防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」〔刑法第36条第2項〕

部下の攻撃が「突然、胸ぐらをつかんできた」ということでしたら、その瞬間に部下を殴っても過剰防衛となる可能性があります。

そうだとしても、殴る行為それ自体はパワハラです。

 

<どちらでもない場合>

部下がただ反論してきたに過ぎないのに、つまり暴言を吐いたに過ぎないのに、殴ってしまったなら、正当防衛どころか過剰防衛にもなりません。

暴行罪が成立しますし、ケガをさせてしまったら傷害罪の成立の他、治療費や慰謝料の賠償が問題になります。〔刑法第208条、第204条、民法第709条〕

この場合には、パワハラを通り越して明らかに犯罪です。

 

<攻撃の原因>

部下の攻撃の原因がパワハラであれば、たとえ殴ったのが正当防衛になっても、パワハラは正当化されません。

加害者と被害者が入れ替わっても、悪いことを帳消しにはできません。

たとえば、コンビニのA店とB店が並んでいて、A店の店長がB店で万引きしたとします。

さらに、これを知ったB店の店長がA店で万引きしても、お互い様にはなりません。

両方の店長に窃盗罪が成立します。〔刑法第235条〕

殴った行為がどのように評価されようとも、それ以前に行われたパワハラは正当化されません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

パワハラ被害の申し出は増加しています。

これは、パワハラそのものが増えたというよりも、パワハラについての知識が豊富になってきたこと、パワハラの定義が法定されて企業の義務も明確になったことが影響しているでしょう。

パワハラの予防や発生時の対応は簡単ではありません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/28|1,108文字

 

<雇用保険の基本手当>

会社などで雇用されていた人が離職した場合、失業中の生活を心配しないで再就職活動ができるよう、一定の条件を満たせば、雇用保険の「基本手当」を受けることができます。

「基本手当」は、昔「失業手当」「失業給付」と呼ばれていたものです。

 

<基本手当をもらう原則の条件>

「基本手当」は、雇用保険の加入者(被保険者)が離職して、次の2つの条件を両方とも満たす場合に支給されます。

 

【基本手当の受給条件】

・ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること・離職の日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あること

 

<基本手当をもらう例外の条件>

ただし、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合にもらえます。

ここで、「特定受給資格者」というのは、解雇・倒産等により離職した人をいいます。

また、「特定理由離職者」というのは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した人などをいいます。

 

<離職の意味>

退職が「離職」に含まれるのは当然ですが、週所定労働時間が20時間未満になった場合も「離職」に含まれます。

勤務時間が少ないと、安定した雇用ではなく、転職先を考えながらの勤務が想定されるからです。

 

<被保険者期間の算定方法の変更>

基本手当をもらう条件の1つである被保険者期間については、次の算定方法が取られています。

 

【改正前】

離職日からさかのぼって、1か月ごとに区切った期間に、賃金支払の基礎となった日が11日以上ある月を1か月として計算

 

この算定方法によると、出勤日や年次有給休暇取得日のみがカウントされ、労働時間が計算の対象外となってしまいます。

そこで、令和2年8月1日以降に離職する人については、次の算定方法が取られるようになります。

 

【改正後】

離職日からさかのぼって、1か月ごとに区切った期間に、賃金支払の基礎となった日が11日以上ある月、または、賃金支払の基礎となった時間が80時間以上ある月を1か月として計算

 

<実務への影響>

離職日が令和2年8月1日以降の人について作成する離職証明書では、「(9)賃金支払基礎日数」欄や「(11)基礎日数」欄に記載する賃金支払基礎日数が10日以下の期間の「(13)備考」欄に、賃金支払の基礎となった労働時間数を記載します。

対象者が限られているだけに、忘れることがないよう注意が必要です。

 

解決社労士

2020/07/27|861文字

 

<顧問社労士で何の得>

求人・採用から退職後まで、企業の中の人にかかわることは、お客様のご要望に応じスポットでも顧問でも承ります。

急な欠員や緊急事態に対応してスポットで、人材不足や人件費不足で専任者を置けないときには顧問としてご活用ください。

次に一部の例を示しますが、一般に思われているよりも幅広い業務で、企業をサポートしています。

 

<担当者業務>

求人票・求人広告の手配。入社・退職時の社会保険・雇用保険手続。社会保険の算定基礎届・月額変更届・賞与支払届。労災発生時の手続。産休、育休、介護休、私傷病休業、労災休業の手続。労働基準監督署への是正報告書などの提出。定期健康診断の手配・管理、個人別結果票の保管、実施報告書の提出。就業規則(変更)届。三六協定書など労使協定書の提出。給与計算業務。パート契約更新管理。助成金の申請。

 

<課長職業務>

効果的な求人票・求人広告の立案。労災発生時の被災者面談、再発防止策の立案。担当者業務改善提案。三大帳簿の調製・ファイリング。法改正に伴う就業規則変更の立案。人事異動に伴う引き継ぎ等管理。助成金申請の前提となる施策の推進。

 

<部長職業務>

採用面接等採用選考。退職時・定年後再雇用時の面談。労働基準監督署の是正勧告など行政指導への対応。人事関連書類・データの保管管理。給与体系・人事制度変更・これに伴う就業規則変更の立案。賞与・退職金制度の運用・制度変更の立案。懲戒処分・表彰の立案と運用。労働紛争の予防。ハラスメント相談対応。問題社員への対応。

 

<役員業務>

会社設立時の社会保険・労働保険・雇用保険手続き。労働基準監督署・年金事務所・会計検査院などの調査立会。社内ルール順守の管理。組織変更・人員配置の立案。労働紛争(斡旋・調停・労働審判・訴訟)への対応。

 

<社外専門職業務>

就業規則作成。新人・2年目・3年目研修。課長・部長・役員研修。ビジネスマナー研修。セクハラ・パワハラ研修。各種相談窓口の受託。

 

結局、人事関連で担当者から役員に至るまでの業務を社労士におまかせということです。

 

解決社労士

2020/07/26|1,402文字

 

<就業規則で時給の引き下げ>

労働者と使用者が労働契約を締結する場合に、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとなります。〔労働契約法第7条本文〕

では、就業規則に「従業員が社会保険の被保険者資格を取得したときは、取得日の属する月の翌月支給分の給与より、基本給を2割減額するものとする」などという規定があったら、これを根拠に時給を下げることができるでしょうか。

いいえ、できません。

なぜなら、「合理的な労働条件が定められている就業規則」とはいえないからです。

この「合理的」というのは、使用者が都合良く解釈した合理性ではなく、客観的な合理性が基準になります。

使用者側は、次のような解釈をするかも知れません。

・従業員の勤務時間が増えて、社会保険の加入基準に達すると、使用者は加入させる義務を負う。これは法定の義務である。

・厚生年金保険料と健康保険料は、使用者が半分負担するので、時給を下げないと使用者の負担が増えてしまう。

・従業員は勤務時間が増えているので、時給を下げても、総支給額はあまり変わらない。

しかし、客観的な立場で考えると、使用者が従業員を社会保険に加入させる義務を負う場合には、保険料の半分を負担するのも義務なので、負担が増えるのは当然です。

この負担を、従業員に押し付けるのは、社会保険料を折半する制度の趣旨から考えて不合理です。

また時間給の場合には、勤務時間が増えれば、それに比例する形で給与の総支給額が増えるはずです。

それなのに、月収が「あまり変わらないから良い」というのは不合理です。

 

<合意で時給の引き下げ>

就業規則があっても無くても、労働者と使用者が合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することはできます。〔労働契約法第8条〕

ただ、労働者は立場が弱いですから、労働者が精神的な圧迫を受けずに、自由な意思により同意したのでなければ、合意があったとは認められません。

「時給を引き下げることに異議なく同意します」という同意書や、下げた後の時給を基準に作った労働契約書に従業員が署名してあったとしても、それだけで合意があったことは証明できません。

法廷では、労働者がダマされたのではないか、署名しないとクビになると思ったのではないかということが疑われるからです。

ましてや、社会保険に加入するとともに、時給引き下げに同意するというのは、自由な意思によるものではないと疑われるでしょう。

 

<証拠が必要>

パート社員から店長に直筆の「お願い」が出され、そこに「私は長年このお店で働いてきました。今では、このお店で働くのが生きがいです。もっと長時間働きたいです。でも、そのことによって、お店の負担が増えるのでは申し訳ないと思います。ですから、時給を2割下げて、毎週もう1日シフトに入れていただけないでしょうか」と書いてあって、その人なりの「計算書」も添付されていたとします。

これを受けて、会社の会議で検討され、勤務日数の増加と時給の5%引き下げが決議され、その議事録も作成・保管されているとします。

この状況で、時給を5%下げた労働契約書が交わされたなら、「自由な意思による同意」の存在は証明できるでしょう。

しかし、実際にこのような「お願い」をもらった店長は、会社に対して、このパート社員の臨時昇給を提案するかもしれないですね。

 

解決社労士

2020/07/25|1,026文字

 

<メジャーな手続>

労災の手続では、治療費を無料にする手続と、3日を超えて休業したときの収入補償の手続がほとんどです。

実際には、医療機関で治療費の一部を「保証金」などの名目で立て替えておいて、保証金の預かり証と労災保険の書類を提出すると、返金してもらえるという仕組になっています。

もっとも、労災指定の医療機関でなければ、すべて口座振込ですが。

 

<社労士なら給付が早い>

被災者は、一日も早くお金が入ってくることを期待しています。

ところが、労災保険の書類を書くような事態は、社内でめったに発生しません。

むしろ、事務処理の担当者が書き慣れてしまうほど労災事故が多発していたら、その方が大きな問題です。

社労士は、いろいろな会社の事案で書類を書き慣れていますから、被災が業務に起因することなどポイントとなる説明を要領よく記入します。

慣れていないと、所轄の労働基準監督署で手続が止まってしまい、会社に説明を求める電話がかかってきたりします。

こうしたことにより、被災者が給付を受けるのが遅れるのは残念なことです。

社労士が書類を作成・提出すると給付がスムーズです。

このことから、「社労士って会社に有利になるように書いているのですか?」と聞かれます。

しかし、労働基準監督署や労働局のご担当の方に、良く分かるように心がけて書いているだけで、ウソを書いているわけではありません。

ウソを書いたら保険金詐欺になってしまいます。

 

<こんな効果も>

社労士が手続を行う場合には、目の前の手続だけでは終わりません。

まず、被災者が医療機関や薬局で、健康保険証を使っていないかの確認をします。

使っていれば、医療機関などに電話で説明し、労災保険の適用に切りかえてもらいます。

また、同じ労災事故であっても、業務災害であれば事業主は休業の最初の3日間について賃金の補償が必要ですから、その補償額の計算をすることもできます。

通勤災害の場合には、就業規則などに特別な規定がない限り、この補償が必要ないですから、念のためその確認もします。

そして、労災の再発防止策も具体的にご提案します。

多くの場合には、教育不足が原因となっているのですが、「本人の不注意だから」で済まされ、労災が再発してしまうのは残念です。

さらに、今後のことを考えて、労災手続をスムーズにするための「労災発生報告書」もご提案できます。

このように、社労士というのは、単なる手続屋ではないのです。

もっと社労士を活用していただきたいと思います。

 

解決社労士

2020/07/24|1,020文字

 

<労働紛争の損失>

退職者の代理人弁護士から、会社あてに内容証明郵便が届いて、アッ!と驚くことがあります。

「円満退職だと思っていたのになぜ?」「本人が悪いのになぜ?」「あんなにおとなしい人なのに」と頭の中はクエスチョンマークだらけになってしまいます。

労働審判や訴訟となれば、弁護士を代理人に立てて対応するのが当たり前です。

弁護士の先生は、会社が責任を負わないように、また、たとえ賠償金を支払うことになっても、なるべく少額で済むように力を尽くしてくれます。

また、訴訟などで解決した後になって、その退職者がウジウジとネットへの書き込みなどで反発してくるようであれば、今度は会社から退職者を相手取って訴えを起こすこともできます。

この点、社労士は訴訟の場合に弁護士である訴訟代理人とともに、補佐人として法廷に出頭し陳述できるだけです。〔社会保険労務士法第2条の2〕

社労士が当事者の代理人となれるのは、個々の労働者と事業主との間のトラブルについて労働局の斡旋(あっせん)などが行われる場合に限られています。

しかもこれは、すべての社労士ができるわけではなく、特定社労士に限られています。

 

<労働紛争になる前に>

たとえ社員が会社に不満を感じても、会社の中で解決できれば、社員も会社も負担が少なくて済みます。

金銭的なことはもちろん、時間も労力も精神的な負担も少ないうちに解決できた方が良いのは分かっていることです。

しかし、そうならないのは、社員が上司に相談したがダメだった、あるいは、それ以前に会社には話の分かる人がいないと感じてしまうからでしょう。

もし、顧問の社労士がいて、相談窓口になっていれば、法令の定めや判例の動向などを踏まえ客観的な説明が可能です。

勘違いが原因で退職し、労働基準監督署や弁護士に相談する事例が多いのは悲しい事実です。

平成27(2015)年4月のパートタイム労働法の改正によって、パート社員については、相談窓口を設置し労働条件通知書などに記載することが義務付けられていますが、こうした窓口の設置と告知は、正社員しかいない会社であっても必要でしょう。

顧問の社労士であれば、相談窓口となるだけではなく、会社の職場ごとの実情に応じたトラブル予防策を提案し推進します。

会社が責任を負わないようにする、徹底的に争うというのも一つの考えです。

しかし、人には感情があります。

社員と会社との信頼関係が保たれ、気持ちよく働ける会社を目指したいものです。

 

解決社労士

2020/07/23|1,074文字

 

<標準報酬月額>

厚生年金保険では、加入者(被保険者)が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を、一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を保険料の計算に用います。

令和2年8月31日までの標準報酬月額は、1等級(9万8千円)から30等級(62万円)までの30等級に分かれています。

そして、毎年9月に、4月から6月の報酬月額を基に、標準報酬月額の改定が行われます(定時決定)。

また、報酬月額に大幅な変動(標準報酬月額の2等級以上)があった場合には、標準報酬月額の改定が行われます(随時改定)。

 

<標準報酬月額の上限の改定>

厚生年金保険法の規定に基づき、令和2年9月1日から、厚生年金保険の標準報酬月額の上限が変更になります。

 

【厚生年金保険法第20条第2項:標準報酬月額の改定】

毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、健康保険法第40条第1項に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。

 

厚生年金保険法における従前の標準報酬月額の上限等級(31級・62万円)の上に1等級が追加され、上限が引き上げられます。

 

【第31級】

標準報酬月額 620,000円

報酬月額   605,000円以上635,000円未満

保険料    全額113,460円 被保険者負担分(折半)56,730円

 

【第32級】

標準報酬月額 650,000円

報酬月額   635,000円以上

保険料    全額118,950円 被保険者負担分(折半)59,475円

 

<改定通知書の送付>

厚生年金保険の標準報酬月額の上限改定に伴い、改定後の新等級に該当する被保険者がいる対象の事業主及び船舶所有者に対して、令和2年9月下旬以降に日本年金機構より「標準報酬改定通知書」が送付されます。

標準報酬月額の改定に際して、事業主及び船舶所有者からの届出は不要です。

 

<給与計算上の注意>

保険料が9月1日に改定された場合、通常、給与から差し引かれる(控除される)保険料が改定されるのは、10月に支給される給与からです。

しかし稀に、9月に支給される給与から変更となる会社もあります。

変更時期を誤ったり忘れたりすると、所得税の社会保険料控除にも影響が出ますので、事前に確認し正しく計算しましょう。

 

解決社労士

2020/07/22|1,754文字

 

<残業代を減らす方法>

残業代をカットするのは違法です。

安易に「残業代込み、休日出勤の賃金込み」のような約束は、残業代カットの典型例でしょう。

経営者としては、人件費の見込みが明確であれば、管理しやすいので助かるのですが、労働者は、たまったものではありません。

もちろん、居酒屋の店員が、すべて込みで月額200万円なら文句はないでしょう。

しかし、月額30万円程度で、開店前の仕込みや閉店後の作業の賃金がカットされたのでは、決して納得のいくものではありません。

残業代をきちんと支払わなければ、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法第37条、第119条〕

とはいえ、残業を全面的に禁止したのでは、仕事が回らなくなってしまいます。

そこで、ある程度まで残業を制限するという対策が取られます。

人件費が予算の範囲内に収まるよう、うまく調整するわけです。

これは役職者任せにするとうまくいきません。

取締役と管理監督者が働き放題となり、すぐに否定されることになります。

結局、本当に必要な残業だけを認めようということになります。

 

<残業代の多い社員>

残業代の多い社員には、大きく分けて3つのパターンがあります。自己都合で残業する社員と、会社都合で残業する社員、そして能力不足の社員です。

 

<自己都合で残業する社員への対策>

自己都合というのは、生活のために多額の残業代を必要とする、家に居場所が無いなどの個人的な理由で残業するパターンです。

本来の勤務時間帯には、おしゃべりをしたり席を外したりダラダラと過ごし、残業の時間帯には頑張っている姿が見られます。

上司が指導し、本来の勤務時間帯に職務に集中するようにさせること、プライバシーの侵害にならないよう気を付けながら、個人的な悩みについて相談に乗ることが対策となります。

 

<会社都合で残業する社員への対策>

会社都合というのは、仕事ができる優秀な社員なので仕事が集まってしまい、やむを得ず残業するパターンです。

こういう社員は、始業時間前から残業時間帯までテキパキと仕事をこなしています。

上司が役割分担を見直すこと、代わりにできる人を育てることが対策となります。

仕事ができる社員は、仕事を抱え込み他の社員に関与させたがらないことも多いのですが、マニュアルを作らせ他の社員に引き継がせることが必要となります。

 

<能力不足の社員への対策>

能力不足というと、何もできないように思われがちですが、ここでは担当業務が上手にできないことを言うものとします。

こうした能力不足の半分以上は、会社の教育不足によるものでしょう。

たとえば、事務仕事でエクセルを使う場合、コピーして貼り付ける操作でも、マウスの左クリックだけを使う方法、マウスの左右両方のクリックを使う方法、マウスは使わずにキーボードで行う方法、そしてこれらを組み合わせた方法があります。

どのような操作が効率的であるかは、具体的な作業内容によって異なります。

ところが、本人任せにしておくと1つの方法しか覚えません。これでは生産性が上がりません。

能力不足の社員は、頑張っているのですが、他の社員と同じ仕事を与えられても残業が発生してしまいます。

スピード感が無いですし、やり直しが多いのも特徴です。

しかし、上司の指導によって改善が期待できます。

 

<どのパターンかわからない場合には>

他部署に異動させてみると、どのパターンかが良くわかります。

自己都合の残業なら、異動の前後で残業時間が変化しません。

仕事内容とは関係なく残業しているからです。

会社都合の残業なら、異動直後に残業が減り、その後徐々に増えていきます。

異動先でも周囲での評価が高まり、任される仕事量が増えるからです。

能力不足の残業なら、異動直後の残業が多く、その後徐々に減っていきます。

異動先の仕事を覚えれば、少しずつ効率が上がるからです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

いつの間にか残業代込みの給与になってしまっているのであれば、正式に定額残業代のしくみを定めて適正に運用したいところです。

また、残業代だけでなく、能力や貢献度に応じた給与にするためには、人事考課制度が必要です。

どちらも、社労士の得意分野ですから、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/21|885文字

 

<制限の根拠1>

ダブルワークを制限する根拠として、労働契約の存在があります。

労働者は使用者との間に労働契約を交わしていますから、労務提供の義務を負っています。

しかも、疲れてため息をつきながらの勤務では不完全です。

使用者は労働者に対して、健康状態を保ちながらの勤務を求めることができます。

この根拠からすると、他の会社の非常勤取締役としてのわずかな活動や、休日に軽易な労働をしている場合には、こうした兼業を制限できないことになります。

反対に、出勤日に深夜トラックの運転や、深夜2時までバーでアルバイトするなどは、負担が大き過ぎますから制限することに合理性が認められます。

もっとも、公務員であれば、一段上の職務専念義務がありますから、ダブルワークの制限にも法的な根拠があります。

 

<制限の根拠2>

もう一つの根拠として、労働者の職業選択の自由と会社の事業活動の自由との調整があります。

誰にも、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由があります。

つまり、どのような仕事をするかは基本的に自由です。〔日本国憲法第22条第1項〕

一方で、会社にも営業の自由があって、その根拠も職業選択の自由にあります。

そして、両方の自由を調整する原理として「公共の福祉」があるのです。

どちらか片方の自由が優先されてはならず、お互いにバランス良く制限し合うということです。

このことからすると、ライバル会社で副業をすることや、お客様から信頼を求められる社員が性風俗産業でアルバイトをするなどは制限されます。

ましてや違法な副業をすることは許されません。

 

<就業規則の効力>

たとえダブルワークを一切禁止する定めが就業規則にあったとしても、具体的な副業が本業の妨げにならず、本業の会社に不利益を与えないのならば、それは禁止することができません。

禁止の合理的な根拠が無いからです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則に定めても無効なことや、有効性が制限されることもあります。

もちろん定め方次第ということもあります。

会社を守るためにも、一度、信頼できる社労士に就業規則をチェックさせてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/07/20|925文字

 

<使用者の義務>

労働時間の適正な把握は使用者の義務です。

この義務は、会社員だけでなく、美容師でも、医師でも、職人でも例外ではありません。

現在では、過重労働による労災の発生や長時間労働の問題がマスコミでも大きく取り上げられ、この義務が再認識されています。

 

<残業要否の判断>

こうした中でも、労働者の希望や申請により残業が認められている会社が多いというのは不思議な現象です。

そもそも、残業というのは使用者の命令によって行われるものです。

ですから、残業の要否を判断するのは、労働者ではなく使用者です。

そうでなければ、労働者の自由な判断で残業できることになり、好きなだけ残業代を稼げるということになってしまいます。

これでは会社が人件費をコントロールできません。

 

<残業命令のあり方>

だとしても、使用者がその都度、具体的な残業命令を出すことにしていたのでは大変です。

まず、包括的な残業命令を使用者から労働者に一覧表の形で示しておきましょう。

たとえば、小売店や飲食店であれば「その場でのクレーム対応が必要な時」「レジで違算が発生し再確認が必要な時」「店内にお客様が残っていて接客が必要な時」というように条件の形で示します。

そして、この一覧表に無いような突発的な理由で、残業の必要性が問題となったときには、労働者から使用者に残業命令を打診するのです。たとえば、地震によって商品や食器が店内に散乱して、ある程度まで片付けておく必要性が感じられる時などです。

使用者側が、ここまで残業の管理をしておけば、労働者の勝手な判断で残業しても、これに対する賃金の支払い義務は無いと主張しうることになります。

 

<やってはいけないこと>

残業命令をうやむやにして、労働者の残業管理を怠っておきながら、残業代をカットしてしまうのは、違法なサービス残業となってしまいます。

ダラダラ残業も、持ち帰り残業も、知っていて放置すると、使用者側が許したものと評価されてしまいます。

これらにも残業代を支払わなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

残業そのものを減らすにも、残業代の支払いを減らすにも、合法的で適正な方法を検討するのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/19|2,200文字

 

<新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の労災認定基準>

「医師、看護師、介護従事者等の医療従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合は、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象となる」という基準があります。

この基準は、「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱い」(令和2年4月 28 日基補発0428第1号通達)に示されているものです。

医療従事者が、新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が高いですから、こうした基準が適用されるわけです。

一方で、医療従事者以外の人が新型コロナウイルスに感染した場合には、一般に「業務上」である可能性が低いですから、同じ基準は適用されません。

医療従事者以外の人については、この通達で「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられています。

原則と例外が逆になっているわけです。

また、この通達では「感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が設けられていて、医療従事者以外であっても、感染リスクが高い環境下での業務については、中間的な基準が適用されることになっています。

 

<飲食店店員の事例>

厚生労働省から、次の事例が示されています。

 

飲食店店員のEさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

また、労働基準監督署における調査の結果、Eさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。

以上の経過から、Eさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

 

これは、医療従事者以外についての、「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が適用されたものです。

 

<建設作業員の事例>

厚生労働省から、次の事例が示されています。

 

建設作業員のFさんは、勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。Fさんはその後体調不良となり、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

また、労働基準監督署における調査の結果、Fさんについては当該同僚以外の感染者との接触は確認されなかった。

以上の経過から、Fさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。

 

これも、医療従事者以外についての、「感染源が業務に内在していることが明らかな場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が適用されたものです。

 

<小売店販売員の事例>

厚生労働省から、次の事例が示されています。

 

小売店販売員のGさんは、店頭での接客業務等に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。

労働基準監督署において調査したところ、Gさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人と接客し商品説明等を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。

一方、発症前14日間の私生活での外出は、日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。

医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、当該販売員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。

以上の経過から、G さんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

 

これは、医療従事者以外についての、「感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務(複数の感染者が確認された労働環境下での業務や顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務など)に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる」という基準が適用されたものです。

 

<実務の観点から>

上記3つの事例では、新型コロナウイルス感染症の労災認定に関する判断がむずかしいことから、いずれも労働基準監督署の調査を経て、労災であることが認定されています。

そもそも、労災認定を行うのは労働基準監督署(労働局)の権限ですから、会社側で安易に判断することは避けなければなりません。

万一、従業員の方が、新型コロナウイルスに感染した場合には、労災を疑って、所轄の労働基準監督署にご相談されることをお勧めします。

 

解決社労士

2020/07/18|792文字

 

<やる気そのものは見えない>

いかにも「やる気」が無さそうな社員は、他の社員に悪影響を及ぼします。

しかし、「やる気」というのは、心の中のことですから目に見えません。

それでも、「やる気」のないことが客観的に外部に現れていれば、それを理由とする解雇も可能です。

 

<法的規制>

「退職に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項です。

就業規則に必ず規定しなければなりません。〔労働基準法第89条第3号〕

ですから、就業規則に定めていない理由での解雇はできません。

しかし、就業規則に定めれば、どんな理由でも解雇できるというわけではありません。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています。〔労働契約法第16条〕

 

<具体的な規定例>

具体的な就業規則の規定例としては、次のようになります。

「労働者が次のいずれかに該当するときは解雇することがある。

1.勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

2.勤務成績または業務能率が著しく不良で向上の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど就業に適さないとき」

1.は「やる気」の無さが、遅刻、早退、欠勤などに形となって現れた場合、

2.は「やる気」の無さが、仕事の成果に形となって現れた場合の規定です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働法の改正が重ねられ、労働判例が集積されるにつれ、「不当解雇」のハードルが低くなっています。

つまり、「常識的に考えて解雇は当然」と思われる場合でも、法的には「不当解雇」であると判断されるケースが大半になっています。

解雇を検討する場合には、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

いや、それ以前に、そんな人物を採用してしまうのはおかしいのですから、採用についてのご相談をしていただきたいです。

 

解決社労士

2020/07/17|725文字

 

<解決法>

能力を理由に給与を引き下げることは、その個人についての不利益変更ですから、労働協約や就業規則の変更ではなく、会社と労働者との合意の形で行うことになります。〔労働契約法第8条〕

この場合に、「賃金減額に合意しなければ解雇します」などの強迫をしてしまうと、労働者から賃金減額に対する合意が取り消されることもあります。〔民法第96条第1項〕

ですから会社としては、強く迫るのではなく丁寧な説明をする必要があります。

 

<予防法>

とはいえ、「能力が期待外れなので賃金を減額します」と言われて、素直に納得する人は少ないでしょう。

こうしたことが起こらないようにするには、採用に至る前の段階で、求人広告に詳細な人材要件を明示すること、面接などの採用選考で能力を見極めることが必要です。

また採用決定後も、試用期間を設けて、雇い入れ通知書に会社の期待する能力を詳細に記述し、業務に必要な能力が欠けている場合には本採用しないことを明らかにしておきたいところです。

 

<本当に必要な人材か>

そもそも、期待した能力を発揮しない労働者を、社員として雇用しておくことは必要なのでしょうか。

人手不足だから、せっかく採用したのだから、かわいそうだからといった理由で、労働条件を引き下げて雇い続けることは、会社にとっても計画の挫折ですし、本人も意欲的に勤務できないでしょう。

会社としては、別の人材獲得を考えるのが得策ではないでしょうか。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

せっかく雇った新人について、賃金の減額を検討したくなるのは、採用と採用後のフォローが失敗しているからです。

必要な人材の確保に必要な求人、採用選考、試用期間制度の運用は、ぜひ信頼できる社労士にお任せください。

 

解決社労士

2020/07/16|891文字

 

<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

パワーを背景とした嫌がらせがパワハラであり、これによって被害を受けた人は、行為者と会社に対して民法などを根拠に損害賠償などを求めることができ、社長以下取締役に対しては会社法を根拠に損害賠償を求めることができます。

 

<目立たないパワハラ>

パワハラというと、暴力を振るったり怒鳴ったりの激しいものを考えがちです。

こうした行為であれば、誰かが気付き注意しやすいでしょう。

しかし、次のような目立たないパワハラもあるのです。

・過大な要求型パワハラ ― 能力や経験を超える無理な指示はパワハラにあたります。終業間際に過大な仕事を押し付けるのがその例です。

・過小な要求型パワハラ ― 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことはパワハラにあたります。与える仕事の件数を他の社員よりも著しく少なくするのがその例です。

・個の侵害型パワハラ ― 私的なことに関わる不適切な発言や私的なことに立ち入る管理などはパワハラにあたります。休みの理由を根掘り葉掘りしつこく聞いたり、スマホをのぞき込んだりするのがその例です。年次有給休暇の取得理由を尋ねるなどもこれにあたります。

こうしたパワハラは、一般に思われているパワハラと違い、物静かでおとなしい役職者でも行いうるものです。

そして、気付かれないうちに被害が拡大しがちです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

パワハラの定義が無い会社には、必ずパワハラがあり被害者がいると思います。

就業規則の規定が「法令による」では、具体的な内容が分かりません。

目立たないパワハラも就業規則に規定し、禁止し、教育したうえで懲戒処分も行わなければ、被害者の発生は防げません。

また、第三者的な相談窓口の設置によって、被害を最小限にとどめる必要があります。

これらをトータルに任せるのであれば、ぜひ、信頼できる社労士にご依頼ください。

 

解決社労士

2020/07/15|670文字

 

<申請に必要な書類>

次のものを厚生労働省ホームページからダウンロードし、印刷して使えます。

ハローワークでも配布されています。

●労働者本人が申請する場合

 ・休業支援金・給付金支給申請書(労働者申請用・初回)

 ・休業支援金・給付金支給要件確認書

 ・(代理人等が提出する場合)同意書・委任状ひな形

●事業主経由で提出する場合

 ・休業支援金・給付金支給申請書(事業主提出用・初回)

 ・休業支援金・給付金支給申請書 続紙(事業主提出用・初回)

 ・休業支援金・給付金支給要件確認書

 

<添付書類>

・運転免許証等の本人確認書類の写し

・振込先口座(口座番号と名義)を確認できるキャッシュカードや通帳のコピー

・給与明細書など休業前と休業中の賃金額が確認できる書類のコピー

新規採用者で、1日も勤務しないまま休業に入った場合には、予定されていた給与額での算定となり、雇用契約書・労働条件通知書等の賃金額がわかる書類を添付します。

 

<締切>

休業した期間ごとに、次のように定められています。

令和2年4月~6月:令和2年9月30日(水)

令和2年7月:令和2年10月31日(土)

令和2年8月:令和2年11月30日(月)

令和2年9月:令和2年12月31日(木)

 

<郵送受付先>

600-8799

日本郵便株式会社 京都中央郵便局留置

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金担当

 

<問合せ先>

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター

電話番号:0120-221-276

受付時間:月~金 8:30~20:00 土日祝 8:30~17:15

 

解決社労士

2020/07/14|725文字

 

<強制加入>

社会保険は強制加入です。

この点が、民間の生命保険などとは大きく異なります。

1か月の所定労働日数、1週間の所定労働時間などの加入基準を満たせば、手続をしてもしなくても、法的には社会保険に加入していることになります。

ですから、正確には「加入を拒否」ではなくて、「加入手続への協力拒否」ということになります。

 

<会社のとるべき行動>

本来は国の広報が果たすべき役割なのですが、加入手続に非協力的な従業員に対しては、会社が教育しなければなりません。

会社は、従業員が拒んでも加入手続が法的に強制されているので、協力してもらわないと困るのだということを説明します。

「本人が嫌がるなら、手続しなくても自己責任だろう。会社としても経費が減って助かる」などとは言ってはいられません。

ただ強制加入とはいえ、給与の手取り額が減ることも事実です。社会保険料の支払に見合うメリットがあることを教える必要もあります。

 

<社会保険のメリット>

厚生年金は、保険料の半分を会社が負担し、国民年金よりも多額の老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金が支給されます。

平成29(2017)8月には、保険料の納付が10年以上あれば、老齢年金の受給資格が得られるようになりました。

健康保険も、保険料の半分を会社が負担し、プライベートのケガや病気で、長期間仕事ができない場合に、賃金の約66%が補償される傷病手当金などがあります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社会保険、労働保険、労務管理などについての教育も、社労士の専門分野です。

保険料の仕組みや給付などについて、きちんと理解すれば、むしろ加入を希望するはずの公的保険制度です。

困ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/13|2,729文字

 

令和2年7月8日、政府は規制改革推進会議を開催し、経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)(原案)を公表しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえた内容となっています。

 

<雇用の維持と生活の下支え>

・事業主に対しては、雇用調整助成金についてのオンライン申請の確実な稼働など手続きの簡素化等によるできる限り迅速な支給に加え、休業手当が支払われない中小企業の労働者に対しては、休業前賃金額の一部を休業実績に応じて直接支給する休業支援金の円滑な実行を通じ、雇用の維持に全力を尽くす。

・ニーズの高い職種、成長分野へのマッチングを進めるとともに、優良な職業紹介事業者の明確化等により、医療介護福祉保育等の人材を円滑に確保する。

コロナショックでダメージを受けた事業主・労働者への支援と、医療関係などの人材充実を目指しています。

 

<マイナンバー制度の抜本的改善>

・国民にとって使い勝手の良いものに作り変えるため、抜本的な対策を講ずる。

・2021年に必要な法制上の対応を行い、2022年を目途に、マイナンバーカードを活用して、生まれてから職場等、生涯にわたる健康データを一覧性をもって提供できるよう取り組むとともに、当該データの医療研究等への活用の在り方について検討する。

・マイナンバーカードの公的個人認証の活用により障害者割引適用の際に障害者手帳の提示が不要とできるよう、デジタル対応を推進する。

・在留カードとマイナンバーカードとの一体化について検討を進め、2021年中に結論を得る。

・運転免許証について、海外の事例を踏まえつつ、発行手続やシステム連携の在り方等を含めた検討を開始する。あわせて、自動車検査証および自動車検査登録手続についても、マイナンバーカードを活用した手続の一層のデジタル化の推進に向けて、検討を開始する。

・国税還付、年金給付、各種給付金(国民向け現金給付等)、緊急小口資金、被災者生活再建支援金、各種奨学金等の公金の受取手続の簡素化・迅速化に向け、マイナポータル等を活用し、公金振込口座設定のための環境整備を進める。様々な災害等の緊急時や相続時にデジタル化のメリットを享受できる仕組みを構築するとともに、公平な全世代型社会保障を実現していくため、公金振込口座の設定を含め預貯金口座へのマイナンバー付番の在り方について検討を進め、本年中に結論を得る。

マイナンバー関連のサービス充実による利便性の向上という、従来の方向性が維持されています。

「預貯金口座へのマイナンバー付番」など、賛否の別れる施策については、検討のうえ結論を出すことにしています。

マイナンバーカードに対する不信感や無関心への対応は示されていません。

 

<国・地方を通じたデジタル基盤の標準化の加速>

・行政手続のオンライン化、ワンストップ・ワンスオンリー化を抜本的に進める。

・原則として対面や押印の不要化、申請書類の可能な限りの縮減、法人データ連携基盤(Gビズコネクト)による情報連携等を加速する。特に、雇用調整助成金、運転免許証に係る運転可能期間の延長等について、電子申請等による手続の簡素化・迅速化の一層の促進に取り組む。

・建設業許可の電子申請化など関係手続のリモート化を進める。

密閉、密集、密接を避けて行政手続を行えるよう、急いで体制を整える方針です。

 

<働き方改革>

・労働時間の管理方法のルール整備を通じた兼業・副業の促進など複線的な働き方や、育児や介護など一人一人の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を労働者が自由に選択できるような環境を整備し、RPAの活用を含むさらなる生産性向上に向けた好循環を作り出す。あわせて、不本意非正規雇用の解消を図る。

・事業場外みなし労働時間制度の適用要件に関する通知内容の明確化や関係ガイドラインの見直しなど、実態を踏まえた就業ルールの整備に取り組む。

・ジョブ型正社員のさらなる普及・促進に向けた格好の機会と捉え、必要な雇用ルールの明確化や各種支援に取り組む。

・労働者が職務の範囲内で裁量的・自律的に業務を遂行でき、企業側においても、こうした働き方に即した、成果型の弾力的な労働時間管理や処遇ができるよう、裁量労働制について、実態を調査したうえで、制度の在り方について検討を行う。

・フリーランスの適正な拡大を図るため、保護ルールの整備を行う。

働き方改革は、労働力不足を踏まえて、同一労働同一賃金、年次有給休暇の取得促進、長時間労働の抑制、残業の制限などに取り組むものでした。

上記の内容は、新型コロナウイルス感染拡大を防止しつつ労働力を確保できる施策、雇用維持のための施策が中心となっており、大きく様変わりしています。

 

<書面・押印・対面主義からの脱却等>

・すべての行政手続を対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す。

・押印についての法的な考え方の整理などを通じて、民民間の商慣行等についても、官民一体となって改革を推進する。

行政手続と民間取引の両方について、対面を不要とすべく、押印の必要性見直しなどが進められます。

 

<最低賃金の引上げ>

・より早期に全国加重平均1,000円になることを目指すとの方針を堅持する。

・今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題であることを踏まえ、今年度の最低賃金については、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める。

年々急速に最低賃金が上がっています。

コロナ禍の中、今年の最低賃金は引き上げるべきではないという意見もありますが、全国加重平均1,000円を目指す方針が維持されました。

ただ、雇用の維持の観点から、例年よりは引き上げ幅が縮小される見込みです。

 

<社会的連帯や支え合いの醸成>

・特定技能外国人の受入分野追加は、分野を所管する行政機関が人手不足状況が深刻であること等を具体的に示し、法務省を中心に適切な検討を行う。

・あわせて、技能実習制度について、運用の適正化を行う。

・これらを含めて、施行2年後の制度の在り方に関する見直しの検討を行う。

外国人の受け入れについては、大幅に修正せざるを得ません。

 

<本年度の特徴>

「経済財政運営と改革の基本方針2020」は、本来は年度方針ですから、1年間にわたって取り組むべき内容が示されるはずのものです。

しかし、現在の情勢下では、政府として新型コロナウイルス感染症への対応が喫緊の課題であることから、記載内容を絞り込み、今後の政策対応の大きな方向性に重点を置いたものとなっています。

よく言われるように、新型コロナウイルス感染症拡大が、世界を大きく変えるきっかけとなったことは間違いありません。

 

解決社労士

2020/07/12|987文字

 

<懲戒規定と表彰規定>

どの会社の就業規則にも、懲戒規定と表彰規定があると思います。

懲戒既定しか無い就業規則というのは、それだけでブラックな印象を与えてしまいますから。

厚生労働省のモデル就業規則にも、両方の規定があります。

しかし、懲戒既定は50行もあるのに、表彰規定は7行しかありません。

懲戒規定の方が、表彰規定よりも分量が多いというのは、やはり多くの会社で同様だと思います。

これだけでも、懲戒は表彰よりも目につきやすいですし、実際に懲戒処分は行われても、表彰は行われたことがないという会社も少なくないでしょう。

 

<懲戒処分の目的>

社員を懲戒する目的の一つに、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正することがあります。

懲戒処分を受けた社員が深く反省し、二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

しかし、これと併せて、「会社が懲戒対象となった行為が悪であると評価している」ということを公にして、懲戒対象とならなかった社員に対して注意を促すことも、懲戒処分に期待される効果であり目的となっています。

 

<同じ目的を達成するのなら>

たとえば遅刻を繰り返す社員に懲戒処分を行ったとします。

これによって、「遅刻は悪いことです。皆さん気をつけましょう」という会社の意思を表明することができます。

しかし、同じ目的を達成することは、長年にわたり無遅刻無欠勤の社員を表彰することによっても可能です。

「遅刻しないのは良いことです。皆さんも見ならいましょう」という会社の意思を表明することができるのです。

同じ目的を達成できるのであれば、懲戒処分よりも表彰の方が気持ち良いに決まっています。

 

<懲戒と表彰のバランス>

懲戒処分が連続したのでは、社員の気持ちが暗くなってしまいます。

同じ目的を達成できるのであれば、表彰も同じくらいの回数、実施したいものです。

とはいえ、人命救助など限られたことだけを対象としていたのでは、表彰の機会は生まれません。

積極的に社内キャンペーンなどを行い、表彰の回数を増やしてはいかがでしょうか。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

懲戒事案が発生した時だけ、社労士に相談が来るというのは悲しい事実です。

懲戒処分が発生しないような教育研修の実施、労働環境の確保、納得のいく人事制度などと併せて、表彰についてもご相談いただけたらと思います。

 

解決社労士

2020/07/11|969文字

 

<パチンコ店で背後から>

パチンコ店内で、遊戯中のお客様の接客が終わった直後、店員がお客様の背中に向かって深々とおじぎする姿を見ます。

お客様の顔が見えるわけでもなく、店員の姿が見えるわけでも…いや、見えています。

お客様には、パチンコ台のガラスに映った店員の姿が見えるのです。

ですから、店員がいい加減なおじぎをして、さっさとその場を離れれば、そのお客様にはバレてしまいます。

しかし実際には、お客様は遊戯に夢中でガラスに映った店員の姿など目に入りません。

 

<デパートで背後から>

デパートで、ちょっと高価な商品を購入し精算すると、店員さんがカウンターからわざわざ出てきて商品を手渡ししてくれます。

そして、その場を離れるお客様の背中に向かって深々とおじぎをします。

そのお客様には、おじぎをする店員の姿が見えません。

 

<高級ブランドショップで背後から>

買物を終えたお客様が、お店の外に出て行った後、店員がお店の外に出てきて、お客様の背中に深々とおじぎをします。

これはなぜなのでしょう。

お客様は、店員がお店の外に出てきて見送っていることに、気付かないことすらあるのです。

 

<接客の目的>

もし、接客の目的が、目の前のお客様に喜んでいただくためならば、背後からのおじぎは意味がありません。

しかし、接客の目的が、「お客様を増やす」ことだったらどうでしょう。

店員でもなくお客様でもない全くの第三者が、お客様の背中に深々とおじぎをする店員の姿を見たとき、「バカな店員だ」と思うでしょうか。

いいえ、「自分があそこで買物したら同じように深々とおじぎをされるだろう」と思います。

これによって「いつか自分もあそこで買物したい」と思うようになるのです。

 

<目的意識>

どんな仕事であれ、一つひとつに目的があります。

その目的を正しく把握していなければ、十分な成果を上げることはできません。

生産性が上がらないのです。

従業員に対して、「考えろ」「自主的に動け」というよりも、最初から目的を教えた方が簡単です。

目的を自分で考える、目的意識を高めるというのは、次の段階です。

おじぎ一つをとっても、目的意識の大切さ、教育の必要性を考える良い材料となるのです。

そうは言っても、具体的にどう教育して良いのか迷ってしまうということであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/10|983文字

 

<スーパーマーケットと経営者を逮捕・送検>

江戸川労働基準監督署長は、スーパーマーケット経営会社とその代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、東京地方検察庁に書類送検したことがあります。

 

<逮捕・送検の理由>

このスーパーマーケット経営会社の代表取締役は、東京都江戸川区内の2店舖で勤務する従業員に残業代を支払いませんでした。

そこで、江戸川労働基準監督署労働基準監督官が、割増賃金の不払につき是正指導し、その是正措置結果について報告をするよう求めました。

ところが、この代表取締役は、部長A、課長Bと共謀し、労働基準監督官に対し、実際には支払をしていないのに、過去の賃金不払残業に対する割増賃金を遡及して支払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出しました。

このウソの報告書提出が逮捕・送検の理由です。

 

<捜査が入ったキッカケ>

この会社に対しては、二度にわたり、江戸川労働基準監督署が、割増賃金の不払について是正するよう監督指導を行ってきました。

ところが、その指導にもかかわらず、違反行為を続けてきたので捜査に着手したのです。

そしてこの会社は、是正指導に対して是正報告を行っていたのですが、本社などを家宅捜索したところ、実際には遡及支払を行っていないことがわかり、ウソの報告であったことが判明したのです。

 

<サービス残業に対する指導>

各労働基準監督署では、事業者に対して適正な労働時間管理の徹底を図り、賃金不払残業を起こさせないことを重点とした監督指導を実施しています。

また、是正指導にも関わらず改善の意欲が認められず、賃金不払残業を繰り返し、または労働基準監督署に対し虚偽の報告を行うなど重大悪質な事業者に対しては、書類送検を含めて厳正に対処しています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働基準監督署は、退職者などからの申告に基づき、会社に抜き打ちの調査をすることがあります。

また、事前に調査内容や調査日時を通知したうえで調査に入ることもあります。

通知があった場合には、ぜひ信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

調査への立会や、その後の報告書作成・提出を含め、会社の負担を最小限にして速やかな対応をすることができます。

また、顧問の社労士がいれば、抜き打ち調査への対応も安心です。

 

※労基署による監督をわかりやすく調査と表示したところがあります。

 

解決社労士

2020/07/09|1,098文字

 

<建設会社と社長を書類送検>

青梅労働基準監督署は、建設会社とその代表取締役社長を、労働安全衛生法違反(労災隠し)の容疑で、東京地方検察庁立川支部に書類送検したことがあります。

この事件では、会社と社長の両方が書類送検されています。

こうした場合には、会社も社長個人も信用を失ってしまいます。

 

<逮捕・送検の理由>

労災事故は、JR五日市線熊川駅と東秋留駅間の多摩川に架かる橋梁下右岸河川敷(東京都あきる野市平沢)での立木伐採工事で起こりました。

このとき、建設会社の労働者Bが伐採した立木の幹が落下して、付近で作業を行っていた同社所属の労働者Aの頭部から背部に激突したのです。

その結果Aは、3か月の治療を要する怪我を負い、負傷の翌日から休業しました。

本来であれば、青梅労働基準監督署長に遅滞なく「労働者死傷病報告書」を提出しなければなりませんでした。

しかし、この建設会社は、災害発生からおよそ5か月が経過してから報告書を提出しました。

これが逮捕・送検の理由です。

労災事故のうち、被災者が3日を超える休業をした場合には、「労働者私傷病報告書」の提出が義務付けられています。

しかし、頻繁に提出が必要となる書類ではありませんから、提出義務すら認識されていないことがあります。

それでも、遅滞なく提出しなければ、意図的に提出しないものと見なされ、労災隠しと評価されうるのです。

 

<逮捕・送検の背景>

行政の立場からすると「労災隠し」が行われることは、災害原因究明、同種災害の防止対策の確立など、労働者の安全を確保する機会を失わせるほか、被災労働者が適正に労災補償を受ける権利を侵害することに繋がるということになります。

そこで、労働基準行政では「労災隠し」の排除を推進し、あらゆる機会を通じて事業者に「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しています。

もちろん、こうした行政の動きは、一般には分かりにくいものですが、行政が「労働者死傷病報告」の提出を周知・啓発しているにもかかわらず、きちんと提出しなければ、それは労災かくしであると評価されやすいのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。

しかし、労働局や労働基準監督署がどのような手続について周知・啓発を強化しているかについてまでは、気が回らないかもしれません。

それでも、こうしたことに目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となっていることに気付きません。

会社を守るためにも、労災が発生したときには、必要な手続きについて、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/08|1,826文字

 

<違法残業の発生>

次のような条件下で、法定労働時間を超える勤務をさせると違法残業となります。

・労働基準監督署長に三六協定の届出をしていない

・三六協定の有効期限が切れたままになっている(有効期間は最長1年)

・労働者代表の選出方法が民主的ではないなどにより三六協定が無効

また、三六協定の限度を超える勤務をさせた場合にも違法残業となります。

さらに、労働基準法の改正により、新型の違法残業も登場しています。

 

<新型の違法残業>

これまでは、三六協定の適正な届出をしていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、違法になることはありませんでした。

これは、残業時間について、法律による上限が定められていなかったためです。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられました。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間) 

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。

これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

また、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

 

<パン製造販売業者を書類送検>

亀戸労働基準監督署は、労働基準法違反容疑で、パン製造販売業を営む会社の元東京工場エリアマネージャー(工場長)と元工場サンドイッチ部門チームリーダー(部門長)を東京地方検察庁に書類送検したことがあります。

これでわかることは、社長などの経営者ではなくても「使用者」の立場にある者は、長時間労働を行わせたことについて責任を負うということです。

また、サービス残業が発生した場合に、勤務時間の集計をごまかして残業代未払いの原因を作った工場長や部門長が責任を負うこともあるということです。

 

<逮捕・送検の理由>

逮捕・送検の具体的な理由は次の2つです。

東京工場サンドイッチ部門に所属するパートタイム労働者3名(1日の所定労働時間6時間)に対し、最長で月139時間に達する時間外労働を行わせ、三六協定の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていたこと。

また、本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のうち3割程度の支払しかしていなかったこと。(1月当たり最大で約11万円の時間外手当の不払が発生)

これでわかることは、正社員だけでなくパート社員などについても、労働基準法の順守が求められるということです。

 

<逮捕・送検の背景>

厚生労働省では、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止対策の強化を喫緊の課題として、平成26(2014)9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減対策推進本部」が設置され、省をあげて取り組むようになりました。

各労働基準監督署でも、過重労働等の撲滅に向けた対策推進のため、著しい過重労働により労働基準法違反が認められるなど重大または悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正な対応を強化することとしています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の人事担当者は、労働法を中心とする法改正には敏感だと思います。

しかし、改正が確実になってから対応したのでは、予算取りや人員配置の問題があり、遅れをとってしまうこともあります。

やはり、法改正情報の先取りはライバル企業に負けないためにも必要です。

また、国の政策転換にも目を光らせていないと、今まで大丈夫だったことが逮捕・送検の対象となったことに気付かないものです。

会社を守るためにも、法改正や政策転換の情報に明るい社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/07|1,245文字

 

<労災保険の給付>

労災事故で、不幸にして従業員が亡くなった場合には、葬祭料(葬祭給付)の支給があります。

支給対象は、必ずしも遺族とは限りませんが、通常は葬祭を行うにふさわしい遺族が該当します。

葬祭を執り行う遺族がなく、社葬として、亡くなった従業員の会社で葬祭を行なった場合は、葬祭料(葬祭給付)はその会社に対して支給されることになります。

葬祭料(葬祭給付)の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額ですが、この額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は給付基礎日額の60日分が支給額となります。

ここで、「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいいます。

そして、「平均賃金」とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3か月間にその従業員に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額のことです。

請求手続は、所轄の労働基準監督署長に、葬祭料請求書(様式第16号)又は葬祭給付請求書(様式第16号の10)を提出して行います。

死亡診断書、死体検案書、検視調書又はそれらの記載事項証明書など、従業員の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類の添付が必要です。

ただし、併せて遺族(補償)給付の請求書を提出する際に添付してある場合には、必要ありません。

 

<健康保険の給付>

業務外の原因で、健康保険の加入者(被保険者)が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。

亡くなった被保険者により生計を維持されていた人が、埋葬を行う場合に「埋葬料」として5万円が支給されます。

ここで、「生計を維持されていた人」とは、被保険者によって生計の全部又は一部を維持されていた人であって、民法上の親族や遺族であることは問われません。

また、被保険者が世帯主であるか、同一世帯であるかも問われません。

埋葬料を受けられる人がいない場合は、実際に埋葬を行った人に、埋葬料(5万円)の範囲内で実際に埋葬に要した費用が「埋葬費」として支給されます。

「実際に埋葬に要した費用」とは、霊柩車代、霊柩運搬代、霊前供物代、火葬料、僧侶の謝礼等が対象となります。

さらに、扶養家族(被扶養者)が亡くなったときは、被保険者に「家族埋葬料」として5万円が支給されます。

手続は、「健康保険埋葬料(費)支給申請書」を保険者に提出して行います。

 

<健康保険資格喪失後の給付>

被保険者がその資格喪失後に亡くなり、次のいずれかに該当する場合は、埋葬料または埋葬費が支給されます。

・被保険者だった人が、退職などで資格喪失後3か月以内に亡くなったとき

・被保険者だった人が、資格喪失後の傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている間に亡くなったとき、あるいは継続給付を受けなくなってから3か月以内に亡くなったとき

 

解決社労士

2020/07/06|935文字

 

<労災保険は適用されない>

パワハラによってケガをさせた場合、労災保険は適用されません。

パワハラでケガをさせるのは、本来の業務に含まれませんし、本来の業務に通常伴うものでもなく、また関連するものでもないからです。

 

<パワハラ加害者の責任>

暴力によって、相手にケガをさせれば傷害罪が成立します。

これは、最高刑が懲役15年という重い犯罪です。〔刑法第204条〕

また、これとは別に、被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されるでしょう。〔民法第709条、第710条〕

刑事責任と民事責任は別問題ですから、たとえ国家から罰金刑を科されたとしても、これとは無関係に損害賠償責任を負うわけです。

さらに、会社から懲戒処分も受けるでしょう。 

 

<会社の責任>

そして会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、使用者責任を負います。〔民法第715条〕

人を雇うというのは、大きなリスクを伴います。

会社は、それを承知で雇っているわけですし、採用選考を慎重にしたり、教育訓練を実施したり、問題の発生を未然に防ぐ手段を持ち合わせています。

さらに会社は、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法第415条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このように、パワハラによるケガの治療費は、被害者から加害者に対しても、また会社に対しても請求することができます。

会社は、被害が発生したら賠償請求に応ずれば良いということではなく、パワハラそのものが発生しないようにする義務を負っています。

具体的には、パワハラの定義を就業規則などで明確にして禁止し、従業員を教育してその発生防止に努め、発生した場合には懲戒処分が行えるように具体的な懲戒規定を置くことも必要です。さらに、パワハラを行う従業員に適正な評価をし、役職者から外せるような人事制度も必要ですし、問題が小さいうちに被害者が相談できる窓口の設置も必要です。

信頼できる社労士を相談窓口に指定し、具体的な施策の推進についても相談されてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/07/05|966文字

 

<曖昧さの残る懲戒規定>

どんなに良くできた懲戒規定でも、「平素の勤務態度その他情状によっては」「しばしば」「数回にわたって」「著しく」などあいまいな表現が残るものです。

これらの抽象的な表現は、それぞれの案件の具体的な事情に応じて、適切な結論を出すためには必要なものでもあります。

しかし、解釈に幅があるだけに、平等で公平な運用はむずかしいものです。

 

<懲戒対象者を納得させるのは難しい>

なにしろ、懲戒処分を検討しなければならない事件は、日常的に起こるものではありません。

むしろ、滅多に起こりません。

ですから、その場限りの判断を繰り返していると、懲戒処分を検討している対象者から「今まで遅刻で懲戒処分を受けた社員はいないのに、なぜ自分だけ懲戒処分を検討されるのか?」とたずねられても、明確な回答ができない恐れがあります。

また、出勤停止の懲戒処分があったときに、別の社員から「自分の時は始末書を書かされただけで済んだのに」という疑問が出されたら、上手に説明できないこともあります。

これでは、懲戒処分を受けた社員が納得できず、心から反省することもなくなってしまいそうです。

さらに、本人以外の社員が納得できないのでは、会社に対する不信感が高まってしまいます。

 

<徹底した記録の保管が必要>

こうしたマイナスの効果が発生しないように、懲戒処分があったときには、懲戒対象者、懲戒対象事実、懲戒処分の内容について、詳細な記録を残すことが必要です。

それだけでなく、懲戒処分には至らず検討されただけの案件についての記録も保管が必要です。

さらに、懲戒処分が労働局の斡旋の対象になったり、労働審判の対象になったりすれば、その経緯と結論の資料も一緒に保管する必要があります。

ここまでしないと、平等で公平な懲戒処分は実現しませんし、疑問が出されたときに納得のいく説明をすることができないのです。

せっかく、時間と労力、人件費をかけ、何より大変神経をすり減らして行う懲戒処分です。

効果の最大化を図るためには、資料保管の労を惜しんではなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/04|1,302文字

 

<賞与か給与か>

成績不良という場合、その立場に見合った成果が上げられなかったのであれば、一般には、人事考課を通じて賞与の金額に反映されます。

しかし、何期にもわたって成果が上がらない、教育しても成長しない、そもそも向上心が無いという場合、他の社員との公平から、給与の減額を検討せざるを得ないこともあります。

 

<個別の合意による場合>

対象となった社員本人から個別の合意があれば、原則として給与の減額は可能です。

 

【労働契約法第3条第1項:労働契約の原則】

労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

「対等の立場における合意」ということですから、多数の社員で取り囲んで合意を迫ったり、本人が明確に拒んでいるにも関わらず繰り返し合意を求めたり、誤解を招くような説明をして合意を得たとしても、錯誤・詐欺・強迫による意思表示であったとして、意思表示が取り消されることもありえます。〔民法第94条、第95条〕

ですから、本人に対して十分な説明を尽くし、納得してもらったうえで合意を得ることが必要です。

「合意しなければ解雇になる」というような説明は、錯誤・詐欺・強迫のいずれにも該当しうるので、避けなければなりません。

また、就業規則に、給与の減額を否定する規定があったり、給与の減額を想定する規定が全く無かったりすれば、労働者に不利な労働契約に優先して就業規則が適用されることとなり、給与減額の労働契約変更が無効とされることもありえます。

 

<就業規則の変更による場合>

制度と就業規則を変更して、就業規則の適用という形で、一定の基準に基づき該当する社員の給与を引き下げることも可能です。〔労働基準法第89条第2号〕

ただし、就業規則に定められた労働条件は、合理的なものであることが必要ですし、就業規則は周知されていなければなりません。〔労働契約法第7条〕

給与については、概要のみを就業規則に定めておき、詳細は内規・運用細則などに定めて非公開とすることも行われていますが、これでは周知されていることにはなりません。

そして、合理的といえるためには、どのような条件でいくらの減額となるのかが明確であり、その要件・効果が合理的であって、給与減額の手順も合理的である必要があります。

何パーセント以内の減額であれば合理的であるというような、客観的な基準はなく、具体的な事情を踏まえて判断することになります。

また、一度に減額するのではなく、激変を緩和するため数年間は調整給を支給し、段階的に調整給を減額するなども、合理性を確保するために有効な手段です。

本人としても、調整給のある間に昇給して、元の給与水準に戻れるよう目標が明確になります。

 

<実務的な視点から>

成績不良を理由に給与を減額する場合、人件費削減を意図しているのではないか、退職に追い込むための嫌がらせではないかなど疑われたのでは、訴訟トラブルに発展しかねません。

給与の減額については、就業規則に具体的な定めを置くとともに、対象となる社員から個別の同意を得ることによって、トラブル発生のリスクを最小限に抑えておきたいものです。

 

解決社労士

2020/07/03|748文字

 

<会社の利益の確保>

会社に損害が発生しないようにするには、社員にして欲しくないことを、懲戒規定にもれなく定めておかなければなりません。

しかし、想定外のことで会社に損害が発生することもあり、すべてを規定しておくことは困難です。

SNSやブログへの悪ふざけの投稿では、この問題がクローズアップされました。

 

<包括的な規定>

懲戒規定の中に「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」という条文を見ることがあります。

こうしておけば、すべてを網羅しているようにも見えます。

しかし、「悪いことをしたら処分します」という規定を置くようなもので、あまりに具体性を欠いていますから有効性は疑わしいです。

こうした規定を根拠に懲戒処分を行うことは、社員に対する人権侵害の恐れが大きいといえます。

それだけではなく、このような規定があることを知った社員は、委縮してしまい伸び伸びと活躍することができなくなってしまうでしょう。

 

<解釈が分かれる規定>

「会社の名誉を傷つけ、業務に悪影響を及ぼす行為」が懲戒処分の対象に規定されているとします。

この規定の中の「、」が曲者(くせもの)です。

なぜなら「、」は、「または」の意味にも「かつ」の意味にも解釈されてしまいます。

「または」と解釈すれば処分の対象は増え、「かつ」と解釈すれば処分の対象は減ります。

このようなあやふやな規定がある場合には、懲戒処分が検討されている対象社員に有利に解釈しなければなりません。

そうしないと、人権侵害となる恐れが大きいからです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/02|771文字

 

<懲戒規定を置く目的>

会社に懲戒規定を置く目的として、次のようなものが挙げられます。

・懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正する。

・懲戒が行われることで、他の社員は道義感が満たされ安心して働ける。

・懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できる。

・懲戒規定があることで、社員全員が不正行為を思いとどまる。

一般には、行為者を懲らしめる目的だけがクローズアップされがちですが、このように他の目的も重要です。

 

<相反する目的>

まず、懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正するには、起こしてしまった言動と懲戒とのバランスが大事です。

懲戒処分が軽すぎても反省しませんし、重すぎると会社に対する反感が生まれてしまいます。

つぎに、懲戒が行われることで他の社員の道義感が満たされること、良くないことをした社員がきちんと懲戒されることで、他の社員は同様の事態は発生しないと考え安心して働けるようになるという点では、懲戒処分がやや重い方がその目的が達成されやすいでしょう。

そして、懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できるようになるという点では、懲戒処分がやや軽い方がその目的が達成されやすいでしょう。

さらに、懲戒規定を置いて社員全員に不正行為を思いとどまらせるという目的では、処分が重ければ重いほど効果があると考えられます。

このように、懲戒処分をどの程度の重さにするかは、どの目的を重視するかによって判断が変わってきます。

もちろん、あまりに重い懲戒は不合理とされ有効性が疑われます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めている懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/01|1,233文字

 

<新型コロナウイルス感染症拡大の影響>

働き方改革の一環で、在宅勤務などテレワークの普及が、厚生労働省を中心に進められてきました。

これにより、大企業では在宅勤務の導入が進んできたところですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、中小企業でも在宅勤務を取り入れる企業が急速に増えました。

 

<厚生労働省のガイドライン>

厚生労働省は、早くも平成20(2008)年には、在宅勤務のためのガイドラインを策定し公表しています。

ガイドラインでは、「在宅勤務には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用される」と説明しています。

労働者災害補償保険法が適用されるわけですから、在宅勤務にも労災保険が適用されることになります。

 

<労災認定の事例>

厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」というパンフレットには、業務災害として認定されるものとして、次のような例が掲げられています。

 

【事例】

自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案。これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められる。

 

<業務上といえるための条件>

「業務上の事由による」と認定されるためには、「業務起因性」が無ければならず、業務起因性が成立するためには、その前提として「業務遂行性」が無ければならないとされています。

ここで、「業務遂行性」とは、労働者が労働契約等に基づいて事業主の支配下にある状態をいい、「業務起因性」とは、傷病が業務に起因して生じたことであり、業務と疾病との間に相当因果関係が存在することをいいます。

 

<業務上の負傷>

「業務上の負傷」といえるためには、業務に伴う危険が現実化して生ずる災害であることが必要とされます。

業務そのものの作業中に発生した災害であれば、原則として「業務上の負傷」といえます。

生理的行為(トイレ・水分補給など)や反射的行為は、本来業務上の行為ではありませんが、業務に付随する行為として、作業からの離脱は無かったとされます。

この他、業務の遂行上必要な行為、業務の担当者として合理的な行為、業務遂行中にありがちな些細な私的行為、作業の準備行為・後始末行為などの最中に発生した災害も、「業務上の負傷」とされます。

具体的な判断にあたっては、数多く発出されている通達の参照が必要となることも多いでしょう。

 

<実務での対応>

在宅勤務中の傷病が、業務災害とされ労災保険が適用されるのか、私的行為とされ健康保険が適用されるのか、その峻別ができないのでは、速やかな対応が困難となってしまいます。

具体的な労働時間の管理方法、作業場所の特定、業務報告の方法などを明確に定めておき、在宅勤務を行う労働者本人と労災手続を行う担当者に周知しておくことが不可欠となります。

 

解決社労士

2020/06/30|731文字

 

<損害の大きさに見合った処分>

社員の不都合な行為によって会社が被る損害としては、会社存続の危機、業務の妨害、取引の不正、欠勤・遅刻・早退、金銭・備品・設備の損失、取引関係の消滅、金融機関・取引先・顧客の信用毀損、社員の安全侵害(ハラスメントを含む)、情報の不足、誤った情報の伝達などなど、考えただけでも心配になるくらい多くの種類があります。

同じ種類の損害でも、その損害が大きければ、より重い懲戒処分が検討されることになります。

 

<会社により違う評価>

すべての損害が金銭に換算できるわけではありません。

ですから、「損害の大きさ」といっても、異なる種類の損害の間で大小を比べるのは困難です。

それだけではなく、会社の方針が「お客様第一」の場合と、「会社の利益第一」の場合とでは、同じ行為に対する評価が変わってきます。

またたとえば、社員がトイレに入り手を洗わずに出てきた様子をお客様に見られたとします。

その社員が飲食店の店員であった場合には、靴屋の店員の場合よりも会社のダメージが大きいことは明らかです。

つまり、損害の大きさに見合った処分を行うというときの「損害の大きさ」は、客観的に決まっているものではなく、その会社や職場ごとにある程度主観的に決めなければならないものです。

もともと就業規則というのは、ひな形をベースにしても、自社に合うように修正することが必要なのですが、特に懲戒規定についてはオーダーメイドの覚悟で大幅な修正が必要になるのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/29|794文字

 

<目的による悪質性の違い>

同じく小学生を誘拐した場合でも、可愛いから連れて帰ったなら未成年者誘拐罪、身代金を要求する目的なら身代金目的誘拐罪です。

未成年者誘拐罪の法定刑が「3月以上7年以下の懲役」なのに対して、身代金目的が加わると「無期または3年以上の懲役」となります。〔刑法第224条、第225条の2

身代金を得る目的が加わると重く罰せられるのは、その危険性や行為に対する世間一般の非難のレベルが大きく異なるからです。

 

<懲戒規定でも>

自社で開発中の自動車について、故意に虚偽の性能検査報告書を作成し上司に提出したとします。

これだけでも、懲戒処分の対象となりうる行為であることは明らかです。

しかし、何を目的として行ったかによって、その悪質性には大きな違いが出てきます。

たとえば、次のような目的を想定することができます。

・上司をからかうつもりで、ほんの冗談で行った。

・上司を困らせる目的で行った。

・会社に損害を加える目的で行った。

・会社に損害を加えるとともにライバル会社から謝礼をもらう目的で行った。

会社の懲戒規定は、社内の刑法ともいうべきものですから、同じ故意による行為であっても、その目的によって処分の重さが異なってくるのが当然です。

ところが、「故意または重大な過失により会社に損害を与えたとき」というように、目的による区別をしていない規定も見られます。

たしかに、「平素の勤務態度その他情状によっては」一段低い処分にするという規定が置かれ、柔軟に対応できるようにしてある場合もありますが、これでは適切な懲戒処分を行いにくいので、場合を分けて規定すべきでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/28|1,717文字

 

<労働安全衛生法の努力義務>

受動喫煙の防止について、労働安全衛生法には次の規定が置かれています。

 

【受動喫煙の防止】

第六十八条の二 事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十八条第三号に規定する受動喫煙をいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

これは、事業者に対して、労働者の受動喫煙を防止するための措置を講ずるよう求めるものです。

しかし、文末が「努めるものとする」となっていることから分かるように、努力義務であって、これに違反しても罰則はありません。

 

<健康増進法の規制>

令和2年4月1日から、第二種施設(多数の者が利用する施設)では、屋内での喫煙が原則として禁止となりました。〔健康増進法第30条第1項〕

都道府県知事は、第二種施設の管理権原者等に対し、受動喫煙を防止するために必要な指導及び助言をすることができるとされています。〔同法第31条〕

また、第二種施設の管理権原者等が屋内での禁煙(同法第30条第1項)に違反して器具や設備を喫煙に使える状態で設置しているときは、都道府県知事が期限を定めて、器具や設備の撤去などを勧告することができます。

さらに、管理権原者等がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができますし、勧告に従った措置をとるよう命ずることもできます。

この命令に違反すれば、50万円以下の過料も規定されています。〔同法第76条第1項〕

会社の喫煙所が廃止された場合、それは会社の方針というよりも、これらの健康増進法の規制から止むを得ないことだと考えられます。

ただ、喫煙者の皆さんには、十分な説明が必要となります。

 

<労働時間の問題>

会社の喫煙所が廃止され、喫煙者が社外の喫煙所で喫煙するようになると、今までよりも離席時間が長くなります。

喫煙者は、上記の事情から「喫煙所を廃止した会社のせい」とは言えないでしょう。

非喫煙者からすると、喫煙者が離席中の賃金を減額されずにいるのは、不愉快に思えるかもしれません。

ところで、労働時間とは「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

「喫煙者が社外に出かけていき、そこで喫煙している」という事実に目を向けがちですが、何をしているかではなく、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価」されるかがポイントとなります。

喫煙していて会議の開始時刻に遅れて到着したり、電話番の最中に喫煙のため離席して顧客からの電話に対応できなかったりすれば、「使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」に職務を離脱していた、つまり、サボっていたということになります。

これらの場合には、欠勤控除や懲戒、人事考課での評価対象とすることなどが考えられます。

しかし、作業と作業との間に短時間の休憩がとれる状況で、喫煙のため離席し、何も支障が無かったのであれば、職務離脱とまではいえないでしょう。

 

<実務的な対応>

労働時間の定義からすると、自席にいなければ労働時間ではないとは言えませんし、自席にいれば労働時間だとも言えません。

「使用者の指揮命令下に置かれている」というのは、幅のある概念ですから、これを基本に会社のルールを定める必要があります。

1時間の休憩時間をどのように使うか、使用者と喫煙者とで話し合って決めている会社もあります。

たとえば、喫煙は休憩時間に行うこと、昼食休憩は40分、10分の喫煙休憩が2回といった約束にするのです。

この場合、休憩時間ですから、喫煙休憩中に呼び戻されることは無いルールとなります。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、テレワークが一気に進みました。

テレワーク中の喫煙についても考えなければなりません。

非喫煙者の意見も踏まえて、会社の実情に合ったルールを明確にしていくことが必要でしょう。

 

解決社労士

2020/06/27|1,132文字

 

<故意と過失>

同じく他人にケガを負わせた場合でも、意図的に殴りかかった結果なら傷害罪になりますし、人ごみで高齢者にうっかりぶつかって転倒させた結果なら過失傷害罪となりえます。

故意のある傷害罪は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」という重い法定刑なのに対して、過失傷害罪は「30万円以下の罰金または科料」で、しかも告訴がなければ公訴を提起されません。〔刑法第204条、第209条〕

同じ結果が発生した場合でも、わざと行ったのなら重く処罰され、うっかりなら軽く処罰されるのは、その危険性や行為に対する世間一般の非難のレベルが大きく異なるからです。

 

<懲戒規定>

会社の懲戒規定は、社内の刑法ともいうべきものですから、故意による行為は過失による行為よりも重い処分になるのが当然です。

ところが、「会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え(以下略)」というように、故意によるものと過失によるものを区別せず、1つの条文で定めていることがあります。

これでは適切な懲戒処分を行いにくいので、場合を分けて規定すべきでしょう。

 

<過失なら懲戒の対象外か>

大手鉄道会社が、大規模な事故を起こした運転手について、「過失なので懲戒処分を行わない」という発表をしたことがあります。

徹底的な再教育と適正な人事考課で対応するということでした。

なるほど、過失による行為は「悪いことをした」というよりも、適切な行動をとるための「注意力など能力が足りない」という評価のほうが正しいのかもしれません。

ミスを繰り返す社員に懲戒処分を繰り返しても効果は期待できません。

むしろ、教育研修が大事ですし、能力と貢献度に見合った処遇をするための人事考課制度が必要でしょう。

ただ、上場企業が「うちの会社は過失なら懲戒処分しません」と宣言してしまうのは、被害者が出た場合の本人・家族や世間一般の批判にさらされることになって危険だと思います。

 

<重過失>

普通の人ならありえないような極端な不注意で、わずかな注意で結果の発生を防げたハズの過失を、一般の過失と区別して「重過失」と呼ぶことがあります。

正常な人であれば、重過失を繰り返すということは考えにくいです。

また、重過失には故意と同程度の危険があり、非難の程度もハイレベルですから、懲戒処分によって反省と改善を求める必要性は高いのです。

このことから「故意または重過失により(以下略)」という規定も、多く見られますし妥当だと思います。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の就業規則に定めてある懲戒規定がおかしいので改善したい、あるいは、いざ懲戒処分を行おうとしたら迷いが生じたということであれば、ぜひ、刑法が得意な信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/26|1,090文字

 

<自宅待機は労働時間か>

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことをいいます。

これは、就業規則などの社内ルールとは関係なく客観的に認定されるものです。

ところが、自宅待機は会社側の都合でとりあえず仕事が無く「もし仕事が入ったら出勤する約束で自宅にいてもらうこと」ですから、実際に仕事で呼び出されない限りは、労働者が自由に過ごして良いというのであれば、労働時間にはあたらず給与の支払い義務は発生しません。

たしかに、待機中は会社からの連絡に注意を払わなければならず、その前提として、すぐに連絡がつく場所にいなければならないのですが、使用者の指揮命令下に置かれているとはいえないのです。

 これは、懲戒処分の内容を検討するにあたって、調査している間、自宅待機命令を出しているのとは事情が違います。

 

<職場待機の場合には>

これに対し、労働者を職場で待機させ、仕事が発生したらすぐに業務に就くように命じてある場合には、その待機時間は、場所的な拘束があること、業務に備えた状態でいなければならないことから、使用者の直接の指揮命令が及んでいると評価され、労働時間にあたります。

したがって、職場待機の場合には給与の支払義務が発生します。

 

<待機手当の支給が望ましいケース>

その職場で、同じ職種のすべての社員が、当番制で平等に自宅待機を受け持つなら、自宅待機の負担込みで給与が設定されていると考えられます。

しかし、一部の社員だけが自宅待機の対象となったり、自宅待機の回数が個人ごとに片寄ったりしたのでは、不満が出てくるでしょう。

この場合には、待機手当の支給を考えたいものです。

 

<待機手当を設定するなら>

待機手当は給与の一部になりますから、就業規則などにその詳細を定める必要があります。

待機手当の金額は、定額あるいは基本給に対する一定割合などで定めます。

金額が少ないと、負担に見合っていないという不満が出ますし、金額が多すぎると、実際に勤務している場合とのバランスが悪くなってしまいます。

これについては、自宅待機することのある社員にヒアリングすると良いでしょう。

それだけではなく、自宅待機の時間帯、服装・髪・ヒゲなどの身だしなみ、外出や飲酒の制限など、待機手当を支払うからには、ある程度の基準を設定したいものです。

ただし、使用者の指揮命令下に置くことになる内容は含めることができません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一度、待機手当について定めてしまうと、後から労働者の不利益に変更するのは限定されてしまいます。

待機手当を導入する前に、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/25|801文字

 

<変則的な定時決定>

新型コロナウイルス感染症の影響などによって、従業員を一時的に休業(一時帰休)させていた場合の定時決定(算定基礎届)は、7月1日時点で一時帰休の状態が解消されているか、未だ解消されていないかによって、その扱いが異なっています。

なお、一時帰休による休業手当は、報酬に含めて計算します。

また、休業手当の対象となった日数は、支払基礎日数に含めてカウントします。

 

7月1日時点で一時帰休の状態が解消されている場合

一時帰休の状態が解消されているかどうかは、休業手当の支払が継続しているかどうかで決まります。

7月1日以降の分として、休業手当が支給されておらず、今後も支給される予定が無いのであれば、一時帰休の状態が解消されていると判断されます。

この場合には、休業手当を受けた月を除いて計算し、標準報酬月額を決定します。

たとえば、4月と5月の分として休業手当が支払われ、6月の分は休業手当が支払われなかった場合には、6月だけが通常の報酬となりますので、6月の1か月分だけで計算し、標準報酬月額を決定します。

ただし、4月、5月、6月のどの月も休業手当が支払われた場合には、これらの期間の報酬を計算対象とはせず、直近に改定された標準報酬月額をそのまま用います。

 

<7月1日時点で一時帰休の状態が解消されていない場合>

この場合には、休業手当が支払われた月を含めて計算し、標準報酬月額を決定します。

たとえば、4月は通常の報酬で、5月と6月に休業手当が支払われた場合には、4月から6月までの報酬の平均を計算して、標準報酬月額を決定します。

 

<従業員への説明>

いずれの場合も、変則的な定時決定となります。

算定基礎届の内容に誤りが無いか、念入りにチェックすることをお勧めします。

一方で、一時帰休があった場合の定時決定について、社内に広報するとともに、対象となった従業員には、個別の説明も行うようにしましょう。

 

解決社労士

2020/06/24|793文字

 

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法第5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫しながら精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になりえます。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、ニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/23|850文字

 

<違法解雇と呼べるもの>

労働基準法により違法とされ、罰則が規定されている解雇には次のものがあります。〔労働基準法第119条第1号〕

・業務災害を理由とする休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・産前産後休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・法定の解雇予告や解雇予告手当が無い解雇〔労働基準法第20条〕

これらの場合には、国家により使用者に刑罰が科されるという規定です。

この刑罰とは別に、労働者から使用者に対して、不法行為を理由とする損害賠償の請求がありえます。〔民法第709条〕

前者が刑事的な側面の話で、後者が民事的な側面の話です。

 

<不当解雇は無効>

一方で、不当解雇というのは、使用者が労働者を解雇したつもりになっていて、それが不当であるために無効とされる場合をいいます。

労働契約法に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されているのが不当解雇です。

罰則はありません。〔労働契約法第16条〕

解雇が有効になるのは、解雇を通告された本人が客観的に合理的な理由があると納得できる場合であって、しかも、世間一般の人々が「やむを得ない」と納得できる事情がある場合に限られるのです。

たとえば、毎日普通に勤務していた男性社員が、社長の好きなアイドルの歌を嫌いだと言ったがために、30日分の解雇予告手当を渡されると同時に解雇を通告された場合、違法解雇ではありませんが、不当解雇になります。

つまり、解雇予告手当を支払ったとしても、解雇が無効になるわけです。

こうした場合、使用者が罰せられることはないのですが、解雇が無効なのに退職扱いされた労働者は、使用者に対して慰謝料を含め損害の賠償を請求できます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

適法で有効な解雇は条件が厳しいものです。

無効とされない解雇を考える経営者も、不当解雇されたと感じる労働者も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士