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2019/12/13|1,272文字

 

<老齢年金受給者の願い>

働きながら老齢年金をもらう場合に、年金の一部がカットされるという話をよく耳にします。

しかし、必ずカットされるわけではなく、全額もらっている人もいます。

せっかくの年金ですから、基準を理解して1円たりとも削られずにもらいたいというのが、年金受給者の本音でしょう。

 

<社会保険に入らずに働く場合>

社会保険に入らなければ、基本的には給与などと年金との調整はありません。

つまり、社会保険に入る基準内で働いていれば、基本的に給与などと年金との調整がないのです。

そして、社会保険に入る原則の基準としては、今後1年間を見通して、正社員など正規職員の4分の375分)以上の勤務日数かつ勤務時間となることですから、これを下回れば社会保険には入りません。

平成28(2016)101日からは、次のすべての条件を満たしている場合にも、社会保険に入ることとなりました。

 

1.週の所定労働時間が20時間以上であること

2.賃金月額が月8.8万円以上(年約106万円以上)であること

3.1年以上使用されることが見込まれること

4.厚生年金の加入者(被保険者)数が501名以上の勤務先で働いていること

5.昼間学生ではないこと

 

さらに、平成29(2017)年4月1日からは、厚生年金の加入者(被保険者)数が500名以下の企業でも、「労使合意(従業員の2分の1以上と事業主との合意)に基づき申し出た事業所」「地方公共団体に属する事業所」であれば、501名以上の事業所と同じ基準が適用されることになりました。

 

具体的な加入基準は、その勤務先の正規職員の所定労働時間などによって左右されますので、求人広告に対して応募する際に、社会保険に入ることになるのか、入る基準を満たすのかは確認しておきましょう。

 

<社会保険に入って働く60歳以上65歳未満の場合>(2019年度)

1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

この「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が28万円以下であれば、年金は全額支給されます。

 

<この基準を満たしても高年齢雇用継続給付による調整に注意!>

高年齢雇用継続給付というのは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳から65歳になるまでの加入者(被保険者)に対して、給与が60歳になった時の75%4分の3)未満になった人を対象に、最高で給与の15%にあたる額が支払われるものです。

支給停止される年金額は、社会保険料の基準となる標準報酬月額の0.18%から6%にあたる額です。

 

<社会保険に入って働く65歳以上の場合>(2019年度)

1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が46万円以下であれば、年金は全額支給されます。

 

解決社労士

2019/12/12|1,021文字

 

<労働時間の把握義務>

使用者は、労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に則って、従業員の労働時間を適正に把握する義務を負っています。

そして、大半の企業では、タイムカードやICカードを用いた客観的な記録を基本に、自己申告による修正を加える形で、労働時間を把握しています。

このように、使用者が労働時間を把握する義務を負っていることと、労働者がこれに協力する義務を負っていることについて、企業は繰り返し教育を行う必要があります。

また、会社が把握している労働時間が、実態とかけ離れたものとなっていないか、定期的なチェックも怠ることができません。

 

<過少申告の問題>

従業員が労働時間を過少に申告する場合があります。

上司が、実情を踏まえることなく、残業時間を制限している場合には、サービス残業を余儀なくされることがあります。

ミスが多く、やり直しが多いことに引け目を感じて、自主的にサービス残業を行う従業員もいます。

喫煙やトイレの時間が長いと自覚している従業員、若い頃に比べて生産性が低下していると自覚している従業員などにも、過少申告が見られることがあります。

これらの場合、従業員が不正を行ったことによって、会社に損失がもたらされるわけではありません。

ですから、ほとんどの場合、不正を行った従業員への指導と教育が正しい対応であって、懲戒処分を行うことは見当違いとなります。

ただし、上司が部下に圧力をかけて、過少申告を促していたようなケースでは、この上司を懲戒処分の対象とする必要が出てきます。

 

<過大申告の問題>

従業員が労働時間を過大に申告する場合があります。

手口としては、複数の従業員で残業していたところ、最後の一人となり、これをいいことに私用を始め、適当なところでタイムカードを打刻して帰るというのが多いでしょう。

外出先から帰社するにあたって、交通渋滞などを理由に中抜けし、私用を果たしてから帰社するというのもあります。

たった一人で休日出勤した場合などは、やりたい放題になってしまうこともあります。

これらは、会社に損失をもたらすものであり、一種の詐欺でもありますから、指導や教育では足らず、懲戒処分が相当と考えられます。

いずれのパターンでも、過失ということはなく、故意に会社に損失をもたらす一方で、自分自身の不当な利益獲得を目指しているわけですから、情状酌量の余地はありません。

 

解決社労士

2019/12/11|1,414文字

 

<高額療養費制度>

健康保険で自己負担額が高額となった場合に、一定の自己負担限度額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

また、病院などの窓口での支払を、一定の限度額までにできるしくみもあります。

ただし、健康保険外の診療、食事代、差額ベッド代などは対象外です。

先進医療など健康保険が適用されない医療については、生命保険会社でこれらに対応できる保険に入ることをご検討ください。

 

<高額療養費制度の具体的な内容>

重い病気で病院に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。

そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。

保険加入者本人(被保険者)、扶養家族(被扶養者)ともに同一月内の医療費の自己負担限度額は、年齢および所得に応じて一定の計算式により算出されます。

また、高額療養費の自己負担限度額に達しない場合であっても、同一月内に同一世帯で21,000 円以上の自己負担が複数あるときは、これらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給されます(世帯合算)。

さらに、同一人が同一月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21,000 円以上ある場合も同様です(7074歳の方がいる世帯では算定方法が異なります)。

なお、同一世帯で1年間(診療月を含めた直近12か月)に3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目からは自己負担限度額が変わります(多数該当)。

 

<高額療養費の現物給付>

70歳未満であっても、従来の「入院される方」「外来で在宅時医学総合管理料、特定施設入居時等医学総合管理料及び在宅末期医療総合診療料を算定される方」に加え、「外来で療養を受ける方」の高額療養費を現物給付化し、一医療機関ごとの窓口での支払を自己負担限度額までにとどめることができるようになりました。

この制度を利用するには、事前に保険者(全国健康保険協会の各都道府県支部など)に「健康保険限度額適用認定申請書」に健康保険証のコピーを添付して提出し、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受け、医療機関の窓口に認定証と健康保険証を提出してください。

病気が徐々に悪化して、計画的に入院する場合には利用しやすい制度ですが、突然の入院の場合には利用がむずかしい場合もあります。

※保険者は健康保険証に記載されています。

 

<長期高額疾病についての負担軽減>

人工透析を実施している慢性腎不全の患者については、自己負担の限度額は 10,000 円となっています。

これを超える額は現物給付されるので、医療機関の窓口での負担は最大でも10,000 円で済みます。

ただし、診療のある月の標準報酬月額が53万円以上である70歳未満の保険加入者本人(被保険者)またはその扶養家族(被扶養者)については、自己負担限度額は20,000 円となります。

この他、血友病、抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群の人についても、自己負担の限度額は10,000 円となっています。

なお、人工透析患者などについては、医師の意見書等を添えて保険者に申請し、「健康保険特定疾病療養受療証」の交付を受け、医療機関の窓口にその受療証と健康保険証を提出してください。

 

解決社労士

2019/12/10|1,544文字

 

<パワハラ加害者の責任>

たとえば、パワハラによって相手にケガをさせれば傷害罪〔刑法第204条〕が成立します。

これは、最高刑が懲役15年という重い犯罪です。

また、これとは別に、被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されるでしょう。〔民法第709条、第710条〕

刑事責任と民事責任は別問題ですから、たとえ国家から罰金刑を科されたとしても、これとは無関係に損害賠償責任を負うわけです。

 

<懲戒処分の位置付け>

刑罰は国家との関係、損害賠償は被害者との関係で問題となります。

そして、懲戒処分は会社との労働契約にかかわる問題です。

ですから、有罪とされ損害賠償をすることとなっても、必ずしも懲戒処分が有効になるわけではありません。

あくまでも別問題として考える必要があります。

 

<懲戒処分の正当性>

パワハラで懲戒処分を受けたなら、パワハラについてきちんとした知識を身に着けつつ、気を取り直して業務に打ち込み、社内の信頼を回復するのが筋です。

しかし、どうにも納得がいかないという場合には、次の懲戒処分の有効要件を確認してみましょう。

・パワハラに対する懲戒が就業規則などに規定され周知されていること。

 →パワハラの定義と懲戒の規定があって社内に周知されていることです。

・今回の行為が具体的に懲戒規定にあてはまるといえること。

 →10人の社員に聞いてみて、意見が分かれるようではダメです。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

 →ちょっと厳しく叱ったら相手が泣いたので懲戒解雇ではやり過ぎです。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

 →問題視されたので会社があわてて規定を変えたというのはダメです。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

 →何度も始末書を書かせたけれど、効果がないので今回は過去の分も全部合わせて減給処分というやり方はできません。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

 →ここは大きなポイントです。本人の言い分を聞かずに懲戒処分はできません。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

 →元々手を焼いていたので、チャンスとばかりに懲戒処分はできません。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 →誰がやったかによって、処分が違うのは不当です。

これらの条件のほとんどは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論の具体的な内容を示したものです。

条件を満たしていなければ、懲戒処分は無効となります。〔労働契約法第15条〕

それどころか、会社は労働者から損害賠償の請求を受けることにもなります。

ただ、懲戒処分を受けた本人は感情的になっていますから、会社が懲戒権を濫用したのかどうか、弁護士や特定社労士に客観的な判断を求めることが必要でしょう。

 

<人事権との関係>

刑罰を科せられたとか、損害賠償を請求されたからといって、それを理由に降格処分というのは不合理です。

しかし、ひどいパワハラを行った人は、人の上に立つ資格がないと判断されても仕方ありません。

懲戒処分を受けるにあたって、本人には事情を説明するチャンスが与えられますから、このときに懲戒処分の有効性について、淡々と主張することはできます。

しかし、自分の行為に対する反省を示さず、正当性ばかりを主張すると、資質を疑われるのではないでしょうか。

刑事事件として不起訴とされ、民事事件で勝訴し損害賠償を免れ、会社側の手続きの落ち度で懲戒処分が無効になったとしても、これらを通じて人物を疑われれば、会社の中での将来は暗いものとなってしまいます。

是非とも、十分な反省を示したうえで、主張すべきは主張していただきたいものです。

 

解決社労士

2019/12/09|948文字

 

医療費の還付について、電話の案内によって、コンビニのATMの操作が必要になることはありえません。

 

全国健康保険協会や旧社会保険事務所等の職員を装った不審な訪問や電話によって詐欺を受け、数百万円単位のお金を振り込んでしまったケースも報告されています。

 

<不審な電話>

全国健康保険協会やその他の公的機関の職員と名乗る人物から、医療費をATMにて還付する等の話を持ちかけ、ATMへ行くよう指示する例があります。

 

市役所の保険課を名乗る者から電話があり、「5年前の過払い金37, ×××円を今から口座に振り込むので、ATMに行ってください。期限が切れているので、急いでください。ATMに着いたら、フリーダイヤル0120-×××-×××に電話をかけて、手続きの指示を受けてください。」と、言われるままに電話し、指示を受けるままに操作したら、数百万円が口座残高から減っていた。

 

社会保険事務局を名乗る者から電話があり、「高額療養費の還付があるので、今日中に手続きをしないといけない。至急、銀行にいくように。」と言われ、ATMから指示された携帯電話に電話し、指示されるままに操作したら、数百万円を振り込んでしまった。

 

「年金事務所(旧社会保険事務所)より5年分の医療費(32, ×××円)の返還があるので、ATMに行き、指定された0120よりはじまる電話番号にかけて指示に従うように」

「医療費の還付分が4万円あるが、通知を送っているが未だに申請がなく、時効が成立してしまうため、電話にて手続きをしたい」

「ご主人の高額療養費の返金(48, ×××円)がある」

 

 <不審な訪問>

「全国健康保険協会職員」と名乗る人物が訪問し、「委任状を取りにきた」と言い、委任状らしき用紙へ署名・捺印を求められた例もあります。

 

<考えてみれば>

医療費などの還付があるにせよ、これは相当多数の人に発生しているはずですから、公的機関から一人ひとりに具体的な手続の方法を指導する余裕はありません。

懇切丁寧であればこそ、疑わなければならないのですが、高齢者は感謝してしまいます。

ご家族の方から、繰り返し「こういう電話があったときは、大変だから私に連絡してね。代わりに手続するから、自分で頑張らないでね」という話をしておくようお勧めします。

 

解決社労士

2019/12/8|443文字

 

<失業手当と年金との調整>

65歳になるまでの老齢厚生年金は、ハローワークで求職の申し込みをしたときは、実際に失業手当(雇用保険の基本手当)を受けなくても、一定の期間は加給年金額を含め年金の全額が支給停止されます。

 

<調整の基本的なしくみ>

年金が支給停止される期間(調整対象期間)は、求職の申し込みをした月の翌月から失業手当の受給期間が経過した月まで、または、最後の支給認定日の月までです。

ただし、調整対象期間中に失業手当を受けなかった場合の、その月分の年金の支給や、失業手当の受給期間が経過したときの年金の支給開始は約3か月後となります。

 

<事後精算>

調整対象期間中に、失業手当を受けた日がある場合には、年金の全額が支給停止されます。

このため、失業手当を受けた日数の合計が同じでも、月をまたいで失業手当を受けたかどうかにより、支給停止される月数が違ってきます。

この場合、失業手当の受給期間が経過した日、または、所定給付日数を受け終わった日に調整が行われ、さかのぼって年金が支給されます。

 

解決社労士

2019/12/07|670文字

 

<労災保険適用の判断>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費は労災保険の適用により無料となります。

そして、労災にあたるかどうかは、所轄の労働基準監督署や労働局が判断します。

被災者が判断するのではなく、会社が判断するのでもありません。

労災が発生したときに「労災保険を使うべきか?」と会社が考えるのは、適法に処理しようか、それとも違法に処理しようかという選択をしていることになり、違法な労災隠しにつながります。

 

<労災病院や労災指定医療機関に支払う保証金>

労災で病院にかかった場合には、「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

なにしろ、患者が労災だと言っていても、必ずしも労災だとは限りません。

また、労災であっても会社がすぐに労災の手続き書類を提出してくれるとは限りません。

これに備えての自己防衛なのです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。

こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルの元です。

 

解決社労士

2019/12/06|829文字

 

<フレックスタイム制の場合>

職場にフレックスタイム制を導入していれば、労働者側が主体的な判断により、始業時刻や終業時刻を柔軟に設定することができます。

しかし、フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続きを省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

 

<始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ>

フレックスタイム制を導入していない職場でも、実働時間を変更せずに、始業時刻と終業時刻を同じ時間だけ繰上げ・繰下げすることができます。

この点については、労働基準法に特別な規制は無く、1日8時間、1週40時間の範囲内であれば、労働時間の規制にかかりませんし、基本的には割増賃金の支払も不要です。

もっとも、午後10時から翌日午前5時までの勤務が増えるような場合には、その分だけ深夜割増手当が増えるなどの注意は必要です。

 

<就業規則の定め>

始業・終業時刻は、就業規則の絶対的必要記載事項ですから、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げも就業規則に定めておく必要があります。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【労働時間及び休憩時間】

第19条  労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。

 

 2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、前日までに労働者に通知する。

 

会社によっては、より厳密に、すべての始業時刻・終業時刻の組合せを網羅した一覧表を掲げているところもあります。

上記のモデル就業規則では、会社から通常の始業・終業時刻の変更を命ずる場合のことを規定しています。

これとは別に、従業員の方から会社に対して変更の申し出を許す場合には、その手続や会社による許可の要否などについても、規定しておくことが必要となります。

 

解決社労士

2019/12/05|855文字

 

令和元(2019)年12月3日、厚生労働省は11月の「過重労働解消キャンペーン」の一環として10月27日(日)に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめ公表しました。

今回の無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」には、合計で269件の相談が寄せられました。相談内容としては、下記概要のとおり、「長時間労働・過重労働」に関するものが90件(33.4%)と一番多く、次いで「賃金不払残業」が69件(25.6%)、「休日・休暇」が31件(11.5%)、「パワーハラスメント」が29件(10.7%)となりました。

これらの相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められる事案については、相談者の希望を確認した上で労働基準監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行っています。

 

【相談結果の概要】

相談件数  合計269

■主な相談内容

(件数は相談内容ごとに計上。括弧内は相談件数269件に対する割合。

 なお、1件の相談に対して複数の相談内容が含まれることもあるため、

 総合計が100%になりません。)

   長時間労働・過重労働    90件(33.4%)

   賃金不払残業               69件(25.6%)

   休日・休暇                31件(11.5%)

■相談者の属性 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

   労働者         180件(66.9%)

   労働者の家族        53件(19.7%)

   その他         20件(7.4%)

■主な事業場の業種 (括弧内は相談件数269件に対する割合)

      商業                  32件(11.8%)

    保健衛生業            32件(11.8%)

    製造業                28件(10.4%)

 解決社労士

2019/12/04|1,236文字

 

<最低賃金の意味>

「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす」というのが法令の規定です。〔最低賃金法第4条第2項〕

最低賃金を下回る賃金しか支払わない場合、最低賃金との差額は、サービス残業と同様に未払い賃金となります。

ここで「最低賃金の適用を受ける労働者」の例外は、一定の条件を満たす人について、労働局長の許可を受けた場合のみです。〔最低賃金法第7条〕

最低賃金は時間額で示されていますが、日給や月給にも適用があります。

日給は、最低賃金時間額 × 1日の所定労働時間 を下回ってはいけません。

月給は、最低賃金時間額 × 1か月の所定労働時間 を下回ってはいけません。

そして、1日や1か月の所定労働時間は、書面で労働者に示さなければ違法です。〔労働基準法第15条第1項〕

この場合の書面とは、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で作成され、労働者に交付されているものです。

 

<最低賃金の発効>

最低賃金は都道府県ごとに決められますが、発効年月日も都道府県ごとにバラバラで、令和元(2019)年は10月1日から6日までの間に発効しています。

この発効年月日に勤務した分の賃金から、最低賃金を下回る賃金は強制的に最低賃金に引き上げられます。

たとえば青森県では、令和元(2019)年10月4日をもって最低賃金時間額が762円から790円に引き上げられました。

時間給762円で働いていた人も、たとえ雇用契約書の更新などが無くても、10月4日の勤務分からは強制的に790円に引き上げられたのです。

そして、賃金計算の締日が月末であれば、期間の途中での変更となり、計算が複雑となって手間がかかり、シフト変更などがあった場合には間違えやすくなります。

 

<結論としてお勧めなのは>

こうした不都合を避けるためには、改定された最低賃金時間額の発効日の直前の賃金計算締日までは従来の賃金、締日の翌日からは最低賃金時間額以上の賃金に改めて運用するということになります。

そしてこの期間の労働に対する賃金支払い日の給与から、変更が反映されることになります。

たとえば、令和元年10月の青森県の例でいえば、あらかじめ10月1日からの勤務は時間給790円などと決めておいて、1か月同じ時間給で計算できるようにします。

そして、10月勤務分の賃金支払い日から、支給額の元となる時間単価が変更となります。

こうした措置をとらずに、最低賃金時間額の発効日から新たな最低賃金に合わせて賃金が変わるとなると、働き手の皆さんは「自分は最低の賃金で働かされているのだ」という思いが強くなってしまいます。

さらに、モチベーションの低下や求人の困難を防ぐためには、最低賃金を1円でも上回るようにすべきですし、5円単位で切り上げる程度のことは考えたいものです。

 

解決社労士

2019/12/03|1,482文字

 

<同一労働同一賃金の法制化>

パートタイム・有期雇用労働法により、令和2(2020)年4月1日から、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、賞与、手当、休暇などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて、説明を求められた場合には、説明しなければなりません。

ただし中小企業には、令和3(2021)年4月1日から法律が適用されます。

 

<取組手順>

厚生労働省では、次の手順で取り組むことを推奨しています。

 

手順1 労働者の雇用形態を確認する。
手順2 待遇の状況を確認する。
手順3 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認する。
手順4 手順2と手順3で待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておく。
手順5 「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指す。
手順6 改善計画を立てて取り組む。

 

特に、手順4までは、早めの取り組みが求められます。

 

<手順1>

社内の労働者のうち、対応が求められる労働者の範囲を確認します。

正社員、契約社員、アルバイトなどの名称や定義は、会社独自のものであって、法令による区分ではありません。

フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者と、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者が対象です。

 

<手順2>

短時間労働者・有期雇用労働者のそれぞれの区分ごとに、賞与、手当、福利厚生などの待遇について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを確認します。

これは、項目ごとに一覧表の形でまとめると良いでしょう。

 

<手順3>

待遇の違いが、働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか確認します。

待遇の違いを設けている理由を文書化してみます。このとき、労働者に説明することを意識して、理解・納得できるものとします。

待遇の違いと働き方や役割などの違いとで、バランスが取れていることの説明ができている必要があります。

「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」など、主観的・抽象的な理由ではなく、客観的・具体的な理由であることが求められています。

 

<手順4>

短時間労働者・有期雇用労働者の契約形態別に、正社員との待遇に違いがある部分について、その違いが「不合理ではない」と説明できるように整理します。

これを元に、労働者から説明を求められた場合に使用する、「待遇の違いの内容と理由」の説明書を準備します。

 

<手順5>

以上の手順の中で、待遇の違いが「不合理ではない」と言い難い項目がある場合には、改善に向けた検討が必要となります。

改善が必要な部分については、会社側の意向だけで改善を進めるのではなく、労働者側の意見を聞くことも必要です。

また、手当等の改善をするための原資など、予め考慮・検討しておくこともあります。

 

<手順6>

改善内容が明確になったなら、これを計画化し、計画的に改善を進めます。

改善内容について、社員が情報を共有してからスタートすることが望ましいわけですから、早めに着手し、余裕をもったスケジュールで取り組めるようにしましょう。

 

<前提として>

ここまでの手順は、職務内容(業務内容と責任の程度)と人事異動の範囲が、正社員とは異なる短時間労働者・有期雇用労働者を前提としています。

職務内容と人事異動の範囲が同じであれば、すべての待遇について、正社員と同等にしなければ不合理な差別を生じうることになります。

この点についても、忘れないようにしましょう。

 

解決社労士

2019/12/02|638文字

 

<フレックスタイム制の前提>

「残業時間が8時間たまると1日休める」というような、労働者に不利な「名ばかりフレックス」も横行しています。

しかしここでは、きちんと労使協定を交わして適法に運用されているフレックスタイム制を前提として考えます。

 

<不足する労働時間を年休で埋める場合>

清算期間の労働時間が基準の総労働時間に達しない場合、このままでは欠勤控除が発生しうるので、これを防ぐために事後的に年次有給休暇の取得を認めるのは、よい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

また、つじつま合わせで、出勤日に年次有給休暇を重ねて、形式的に基準の総労働時間を超えるように計算するというのは、明らかに不合理な運用です。

仕事を休んだ日に年次有給休暇を取得する形にしましょう。

 

<残業時間が多すぎるので年休を取り消す場合>

清算期間の最初のほうで年次有給休暇を取得したところ、その後の期間で想定外の残業が発生したために、労働時間が基準の総労働時間を大きく上回ってしまうことがあります。

この場合に、労働者のほうから年休の取得を取り消して、別の機会に使うことを申し出た場合に、これを認めるのもよい運用だと思います。

ただし、就業規則や労使協定に運用ルールを定めておくことが必要でしょう。

しかし、「今回は残業時間が多いから取り消しなさい」という話を、使用者である上司のほうから言うのは、労働者の年次有給休暇取得権を侵害することになるのでダメです。

 

解決社労士

2019/12/01|1,228文字

 

<職場で求められる協調性>

職場では、上司、同僚、部下、他部門との関係で、次のような協調性が求められます。

上司との連携は円滑か、報・連・相は適切か、上司の指示に忠実か、上司のミスをカバーしたか、上司の話に傾聴しているか、上司を批判していないか、上司に感謝しているか、などが問われます。

同僚との連携は円滑か、同僚のことも考えて業務を推進しているか、同僚のミスをカバーしたか、などが問われます。

部下との連携は円滑か、部下の誰をどこまで育てたか、部下をほめているか、部下からの相談に対し親身に取り組んでいるか、部下から感謝されているか、などが問われます。

他部門の業務に干渉していないか、自部門・他部門の改善提案は正しいルートで行っているか、などが問われます。

 

<けん責処分>

本人から会社へ始末書を提出させ、反省させる処分です。

懲戒処分の中では軽いほうでしょう。

始末書には、不都合な事実の内容、そうした事実を生じたことに対する反省、再発防止策の提示、再発防止に向け努力することの約束を書きます。

お詫びだけを長々と書くのでは、始末書の体を成しません。

 

<けん責処分の正当性>

譴責処分を受けたなら、始末書で約束した努力を続けつつ、気を取り直して業務に打ち込み、社内の信頼を回復するのが筋です。

しかし、どうにも納得がいかないという場合には、次の懲戒処分の有効要件を確認してみましょう。

もちろん、就業規則や労働条件通知書などに具体的な規定があることは大前提です。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

これらの条件は、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論の具体的な内容を示したものです。

条件を満たしていなければ、懲戒処分は無効となります。〔労働契約法第15条〕

それどころか、会社は労働者から損害賠償の請求を受けることにもなります。

ただ、譴責処分を受けた本人は感情的になっていますから、会社が懲戒権を濫用したのかどうか、弁護士や特定社労士に客観的な判断を求めることが必要でしょう。

 

<人事考課との関係>

人事考課と懲戒処分とでは目的が違います。

懲戒処分を受けたことを理由に、人事考課で一段低い評価を受けるというのは不合理です。

ただ、懲戒規定に協調性についての規定があり、人事考課の基準にも協調性の項目が入っていると、それぞれ効力が認められます。

懲戒処分を受けるにあたって、本人には事情を説明するチャンスが与えられますから、このときに人事考課との関係も確認できるかもしれません。

ただ、あまりこだわりを示すと心証を悪くしてしまいますので注意が必要です。

 

解決社労士

2011/11/30|1,097文字

 

<健康経営>

健康経営とは、「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、 健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とされています。

業績向上や企業価値向上のためには、企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組み、従業員の活力向上や生産性の向上等、組織の活性化をもたらすように努める必要があります。

 

<健康投資>

健康投資とは、健康経営の考え方に基づいた具体的な取組を言います。

Newsweek誌には、健康経営の投資額1ドルに対して、3ドルの投資リターンがあるという記事が掲載されたこともあります。

ここでの健康経営の投資額は、健康管理スタッフや事務部門の人件費、保健指導などの利用費やシステム開発・運用費、設備費から計算されています。

一方で、投資リターンの額は、欠勤率の低下やモチベーションの向上などによる生産性の向上、医療関連コストの減少、採用コストの減少、企業イメージのアップによる企業価値の向上から計算されています。

 

<健康経営優良法人認定制度>

経済産業省は、健康経営優良法人認定制度を設けていて、毎年2月に健康経営優良法人を発表しています。

大規模法人部門の認定には、たとえば、次の16項目のうち、12以上の項目で基準をクリアする必要があります。

 

・経営者がトップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること

・定期健診受診率(実質100%)

・受診勧奨の取り組み

・50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施

・健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定

※「健康経営優良法人2021」の認定基準では必須項目とする

・管理職又は従業員に対する教育機会の設定

※「従業員の健康保持・増進やメンタルヘルスに関する教育」については参加率(実施率)を測っていること

・適切な働き方実現に向けた取り組み

・コミュニケ-ションの促進に向けた取り組み

・病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み

・保健指導の実施及び特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み

※「生活習慣病予備群者への特定保健指導以外の保健指導」については参加率(実施率)を測っていること

・食生活の改善に向けた取り組み

・運動機会の増進に向けた取り組み

・女性の健康保持・増進に向けた取り組み

・従業員の感染症予防に向けた取り組み

・長時間労働者への対応に関する取り組み

・メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み

 

どの項目も、法的義務の内容ではなく、努力義務の範疇に属するものばかりです。

まずは、法令遵守を万全にしたうえで、これらの項目に少しずつ取り組んでいくことをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/29|1,154文字

 

<面接シートの利用>

採用面接を実施するときには、確認もれを防いだり、聞いてはいけないことを聞かないようにして、効率よく行うことが必要です。

効率の悪い面接をしてしまうと、面接に時間がかかり、面接を担当する社員の人件費が余計にかかったり、応募者の印象を悪くしたりと、何もよいことはありません。

また、聞いてはいけないことを聞いてしまい、応募者が労基署に相談するようなことは防ぎたいものです。

やはり面接には、質問事項を列挙し回答欄を設けた面接シートが不可欠です。

 

<採用側の思惑>

企業としては、社会的責任を果たすためにも、障害者の採用には積極的でありたいものです。

しかし、採用したならば平成28(2016)4月に改正された障害者雇用促進法の趣旨に沿い、責任をもって様々な配慮をしなければなりません。

特に常用労働者数が100人を超える企業では、障害者雇用納付金の制度が適用されるため、障害者雇用率2.2%の達成も必要となってきます。

それでも、きちんと対応しきれない障害者を雇用することは、かえって無責任なことになってしまいます。

 

<応募側の期待>

一方で、障害のある応募者の企業に対する期待は様々です。

障害を知られたくない応募者、すべてを明らかにして配慮を求めてくる応募者、どの程度の情報を示したら採用されやすくなるか探ってくる応募者、それぞれの思いがあるのです。

 

<応募側の権利>

基本的に、障害者であること、障害の内容・程度は、保護されるべき個人情報です。

ですから応募者に対して、これらの情報を明らかにすることを義務付けるわけにはいきません。

話の流れの中で、自然にこうした情報が示されるか、あるいは教えていただけるようにお願いすることになります。

 

<障害者採用時の面接シート>

応募者が予め障害者であることを告げてきて、了解のうえで採用面接をする場合には、専用の面接シートを作ることも考えられます。

しかし、こうしたケースは例外的ですし、人事関連の業務では場合分けを多くすればするほど、効率が低下しミスも増えてしまいます。

応募の段階では障害のあることを示さない応募者が大半であることを考えると、面接シートは1種類に統一したいものです。

面接シートの終わりのほうに、「働くにあたって必要な配慮」の欄を設け、すべての応募者に対して「たとえば毎月特定の日に病院に行くためのお休みが必要であるとか、一緒に働く仲間に知っておいてほしいことなどありませんか?」という自然な質問を投げかけて、情報を引き出すようにしてはいかがでしょうか。

もちろん、面接の途中でご本人から話があった場合には、この欄に情報を書きとめておきます。

採用面接にあたっては、採用側の配慮が応募者に悟られないよう、さりげなく行うという一段上の配慮を心がけたいものです。

 

解決社労士

2019/11/28|811文字

 

<国籍にかかわらず日本に住んでいれば>

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人は、国民年金の被保険者(加入者)となります。

20歳になれば、厚生年金保険加入者や共済組合加入者、またはその配偶者に扶養されている人を除き、国民年金第1号の加入手続きをすることが必要です。

手続きは、居住地の市区役所または町村役場で行います。

また、国民年金第1号被保険者は毎月、保険料を納めることが必要です。

保険料を納めることが難しいときは、納付猶予制度や免除制度などがあります。

この手続きをするとしないとでは、将来年金を受け取れるかどうか、また受給額に大きな差が出てきます。

「払えないから放置」ではなくて、「払えないなら相談」を強くお勧めします。

 

<まずは「国民年金被保険者資格取得届書」を提出>

20歳の誕生月の前月に日本年金機構から送られる「国民年金被保険者資格取得届書」に必要事項を明記し、市区役所や町村役場または年金事務所に提出します。

このとき、保険料の納付猶予制度や学生納付特例制度の申請書を同時に提出することもできます。

 

<「年金手帳」が届きます>

保険料納付の確認や将来年金を受け取る際に必要です。

大切に保管してください。

「年金手帳」は一人一冊を一生使います。

厚生年金保険の被保険者(加入者)だった人、共済組合に加入していた人、障害・遺族年金を受給している人には送られません。

※現在は、年金手帳の廃止が検討されています。

 

<「国民年金保険料納付書」が届きます>

納付書で保険料を納めてください。

ご自身の生年月日の前日が含まれる月の分からの保険料を納めることになります。

法律上は、誕生日の前日に1歳年をとるので、法律上20歳になった月の分からということです。

保険料は金融機関のほか、コンビニエンスストアでの納付、電子納付もできます。

また、口座振替やクレジット納付も可能です。

納付書は保険料の納付猶予などを申請した人にも送られています。

 

解決社労士

2019/11/27|758文字

 

<源泉徴収のあらまし>

国税庁ホームページに、「令和2年版 源泉徴収のあらまし」が公表されています。

この「源泉徴収のあらまし」は、令和元年8月1日現在の所得税法等関係法令(租税条約については発効予定条約を含みます)の規定に基づいて、源泉徴収の事務に携わっている人に、令和2年における源泉徴収の仕組みや、その内容を十分理解してもらうために作成しているものです。

 

<税法改正の影響>

平成31(2019)年3月29日付で公布された所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)による源泉所得税関係の改正により、源泉徴収および確定申告における配偶者に係る控除の適用の見直しが行われました。

給与等または公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととされました。

居住者の配偶者が、給与等や公的年金等の源泉徴収において源泉控除対象配偶者に係る控除の適用を受けている場合(その配偶者がその年分の所得税につき、年末調整をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合または確定申告書の提出をして配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等をく)には、その居住者は、その年分の所得税の確定申告において配偶者特別控除の適用を受けることができないこととする等の所要の措置が講じられました。

 

<税制改正の影響>

平成30(2018)年度税制改正により、令和2(2020)年1月1日以後適用される主なものは次のとおりです。

 

・給与所得控除の見直し 

・基礎控除の見直し

・所得金額調整控除の創設

・各種所得控除を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し(上記改正に伴うもの)

・生命保険料控除、地震保険料控除および住宅借入金等特別控除に係る年末調整関係書類の電磁的方法による提供

 解決社労士

2019/11/26|463文字

 

<必要な場合>

保険証や高齢受給者証を紛失したときだけでなく、印字が見にくくなったときも、「健康保険被保険者証再交付申請書」や「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を保険者に提出することで、新しく発行してもらえます。

ここで保険者とは、協会けんぽなど健康保険を運営している機関のことで、保険証に表示されています。

なお、外出時の紛失や盗難の場合は、保険証の再交付よりもまずは警察署へ届け出ることを強くお勧めします。

 

<会社など事業所で働く人とその家族の場合>

勤務先を通じて「健康保険被保険者証再交付申請書」「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を保険者に提出します。

この用紙には、被保険者(保険加入者)記入欄と事業所記入欄の両方があります。

再交付した保険証等は、勤務先に郵送されます。

 

<任意継続で加入の人とその家族の場合>

勤務先を退職後、任意継続で健康保険に入っている場合には、加入者から保険者へ直接、「健康保険被保険者証再交付申請書」「健康保険高齢受給者証再交付申請書」を郵送します。

その後、保険者から加入者に保険証が郵送されます。

 

解決社労士

 

2019/11/25|1,062文字

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。 

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

 2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

<会社の立場>

上記の定義によると、パワハラの加害者は「職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性」がある人です。

つまり、会社の上司が加害者となって部下を攻撃したり、先輩が後輩に苦痛を与えるというのが、パワハラの基本的な構造となります。

会社としては、上司と部下、先輩と後輩との間にトラブルが発生すれば、ついつい会社に対する貢献度や経験年数を考えて、上司や先輩にあたる加害者の肩を持つ傾向が強くなってしまいます。

しかし、世間のパワハラに対する目は、年々厳しくなってきています。

会社が加害者の味方を続ければ、マスコミやネット上の評判の低下から、定着率は低下し、そもそも求人広告に対する応募者が来なくなるでしょう。

会社としては、会社に対する貢献度や経験への評価はきちんとする一方で、加害者としての責任も追及する態度が求められます。

 

<パワハラの抽象性>

パワハラの定義は抽象的です。

一方で、加害者を処分するには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。

つまり、懲戒規定がなかったり、抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなければ、加害者が処分されることはありません。

それどころか、注意されることすらないのです。

会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。

パワハラについての具体的な定義がない職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。

 

<被害者のとるべき行動>

パワハラ対策は会社の責任です。

被害者としては、加害者が上司であれば、まず会社の担当部署に相談すべきです。

また、加害者が先輩であれば上司に相談すべきです。

基本的にパワハラの問題は、社内できちんと解決すべきだからです。

一足飛びに労基署などに相談すると、会社も対応に困ってしまいます。

とはいえ、会社がきちんと対応できない場合には、会社が責任を負えないわけですから、労基署の総合労働相談コーナー、労働委員会、法テラスなどの機関や、弁護士、社労士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/24|1,013文字

 

<企業の受動喫煙防止義務>

健康増進法は、望まない受動喫煙の防止を図るため、喫煙専用室など施設内の一定の場所を除き、喫煙が禁止されることとしています。

令和2(2020)年4月からは、事務所や飲食店等の場合、たばこの煙の流出を防止するための技術的基準を満たした喫煙専用室、加熱式たばこ専用喫煙室等以外の屋内の場所では、喫煙が禁止となります。

これに先駆けて、令和元(2019)年7月からは、学校、病院、児童福祉施設等の第一種施設では、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じた特定屋外喫煙場所を除き、敷地内禁煙となっています。

これ以降、施設の管理権原者等は、喫煙をすることができる場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないことになります。

労働者の受動喫煙を防止するため、実情に応じた措置を講ずる努力義務が事業者に対して課せられています。

 

<法規制を上回る施策の実施>

法規制を超えて、敷地内や建物内の全面禁煙に踏み切る企業も増えています。

これらの根拠は、労働法上の施設管理権です。企業が社内秩序を定立する権限の一つとして認められるものです。

これは、場所を限定しての規制であり、健康増進法が対象施設に応じた規制をするのと軌を一にしています。

 

<時間的な喫煙制限>

ところが、場所の限定に加え、企業独自の基準で喫煙時間を制限する動きも出てきました。

公務員以外は、あまり強く意識されることが無いのですが、労働者は本来的に職務専念義務を負っています。

勤務時間中は、職務に専念し私的活動を差し控える義務です。

これを根拠として、企業は勤務時間中の喫煙を禁止できるものと考えられます。

なぜなら、喫煙によって、主観的にはともかく、客観的には生産性が低下すると思われるからです。

 

<喫煙の自由>

喫煙の自由が最高裁で争われたこともあります。

昭和45年の大法廷判決では、たばこが生活必需品とまではいえず、普及率の高い嗜好品に過ぎないのだから、あらゆる時間、あらゆる場所で喫煙の自由が保障されるものではないという趣旨が述べられています。

本来は自由であるはずの喫煙も、他社に危害を与えうる危険との関係では、大幅に制限されうるということになります。

 

この手の話は、喫煙者と非喫煙者とで相容れない見解に立つものです。

私自身は、ひょんなことから24年前に禁煙しました。

どちらの立場もわかるつもりでいます。

やはり、喫煙者と非喫煙者とは分かり合えないと思っています。

 

解決社労士

2019/11/23|1,521文字

 

<労働条件の明示>

人を雇うときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。

労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法第15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

顧問社労士も使用者に含まれます。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法第4条第2項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法第16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。

これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法第17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法第18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。

ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法第16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。

採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する義務もあります。

 

解決社労士

2019/11/22|713文字

 

<職業病リスト>

労災保険制度は、労働者の業務上の理由によるケガ・病気、通勤に伴うケガ・病気に対して、必要な保険給付を行います。

ケガであれば業務によること通勤途上だったことが明確であるのに対して、病気となると業務や通勤によって発生したといえるかが判断しにくいものです。

そこで労災保険制度による補償の対象となる病気は「職業病リスト」にまとめられています。

この「職業病リスト」には、病気の範囲を明確にすることにより、被災者の労災補償請求を容易にし、事業主が災害補償義務を果たすようにする役割があります。

 

<職業病の選定基準>

業務と病気との間に客観的な因果関係が確立しているものが列挙されています。

これは、新しい医学的知見や病気の発生状況を踏まえ、定期的に見直しが行われています。

最新のものは、平成31410日施行です。

このときの改正で、新たにオルトートルイジンにさらされる業務 による膀胱(ぼうこう)がん が追加されています。

 

<労災補償の対象となる病気>

「職業病リスト」にある病気については、業務に起因することが明らかな病気とされます。

これによって、被災者は業務と病気との因果関係の証明の負担を軽減されるわけです。

「職業病リスト」にない病気については、被災者が困難な証明責任を負うことになります。

しかし、業務と病気との因果関係が証明できれば、労災補償の対象となります。

 

※現在の「職業病リスト」は、次をご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/syokugyoubyou/list.html

 

解決社労士

2019/11/21|1,118文字

 

<平均賃金>

平均賃金というのは、賃金の相場などという意味ではなく、労働基準法などで定められている手当や補償、減俸処分の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。

原則として事由の発生した日の前日までの3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。〔労働基準法第12条〕

賃金の締日がある場合には、事由の発生した日の直前の締日までの3か月について、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金などの控除をする前の額(賃金総額)の合計額を算出します。これを3か月の暦上の日数で割って、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てます。

例外として、賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合には、総額を労働日数で割った金額の6割に当たる額が高い場合にはその額を適用します(最低保障額)。

 

<平均賃金が使われるケース>

労働者を解雇する場合の解雇予告手当、使用者の都合により休業させる場合に支払う休業手当、年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金、減給制裁の制限額などで使われます。

解雇予告手当は、所定労働日数や出勤予定日とは無関係に、平均賃金の原則として30日分を支払います。〔労働基準法第20条第1項〕

休業手当は、たとえば使用者の都合で金曜日から月曜日までの4日間休業する場合、元々土日が休日の労働者に対しては、金曜日と月曜日の2日分について、平均賃金の6割以上を支払うことになります。〔労働基準法第26条〕

年次有給休暇を取得した日について、平均賃金で支払うこともできます。〔労基法第39条第7項〕

減給の制裁は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないとされています。〔労働基準法第91条〕

この他、労災保険の休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%ですが、この給付基礎日額の実体は平均賃金です。

 

<平均賃金とは違う計算方法>

失業手当(雇用保険の基本手当)が支給される1日当たりの金額のことを「基本手当日額」と言います。

この「基本手当日額」を求める計算式は、「離職する直前の6か月間に支払われた賃金の合計金額を、180で割った金額(賃金日額)の、およそ80%~45%」になります。

期間が6か月であることと、ざっくり180日で割ることが、平均賃金とは異なっています。

また、健康保険の傷病手当金や出産手当金の計算には、「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」が使われます。

1日あたりの支給額は、これを30日で割って、3分の2倍した金額となります。

賃金の実額ではなく、標準報酬月額を基準とする点で、平均賃金とは考え方が異なっています。

 

解決社労士

2019/11/20|1,333文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

従業員1人につき30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。

労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものです。

 

<就業規則>

労働者が10人以上になったら、労基署に届出が必要です。このことは、良く知られています。

しかし就業規則が無いと、どんなに細かいことでも労働条件通知書などに記載しておかなければ効力がありません。

労働者が知らないのに、これは会社のルールだと言っても通用しないのです。

口頭で説明しても「聞いていません」「忘れました」と言われればアウトです。

また、就業規則や労働条件通知書に書いていなくても「法律通り」にすればよいと思う経営者の方々も多いようです。

ところが、法令には「労使で協議して決める」とか、「3つの中から会社の実情に合わせて決める」という規定もあるのです。

ですから「法律通り」と言っても何も決まっていないことがあります。

特に懲戒処分については、何をやらかしたら、どんな懲戒処分になるかなどは、重要なのに法令には何も規定されていません。

こうしたことから、すべてを労働条件通知書などに書いておくことは、現実的ではありません。

やはり一人でも従業員を雇ったら、就業規則が必要でしょう。

 

<三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。

また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署に届け出た場合には、協定の定めに従って18時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

たとえば、ある会社の正社員の所定労働日数が週4日で、1日の所定労働時間が6時間ならば、1週間の所定労働時間は24時間です。

この場合、どの日も2時間以上の残業はありえず、どの週も16時間以上の残業はありえないというのなら、三六協定は不要です。

なぜなら、この協定は法定労働時間を超える場合に必要となるので、所定労働時間を超える場合でも法定労働時間以内なら必要がないということになるからです。

とはいえ、ほとんどの会社がそうであるように、18時間週5日勤務の社員がいる会社では、三六協定書の作成と労基署への届出は必須です。

 

解決社労士

2019/11/19|1,189文字

 

<事件として報道されるキッカケ>

飲食店の素直なアルバイトAくんが店長に呼ばれます。

店長「売り上げが落ちているのでキミには辞めてもらうことになった」

Aくん「はい、わかりました」

翌日、Aくんは親戚のおじさんに、アルバイトをクビになった話をします。

おじさん「解雇予告手当は?もらっていないなら労基署に相談だな」

Aくん「はい、わかりました」

Aくんが労基署の監督官に事情を話します。

監督官「時給は?1日と1週間の所定労働時間は?労働条件通知書という名前の書類をもらったでしょ」

Aくん「時給はたしか1,013円です。所定…とか、書類とかはありません」

こうして、労基署はアルバイト先の店舗に連絡し、さらに調査に入ります。

この飲食店がチェーン店だと、本社や各店舗に調査が入り、報道機関の知るところとなる可能性があります。

キッカケは、こんなものです。アルバイトのAくんが無知で素直でも、家族や親戚までがすべてそうだとは限りません。

 

<店長はどうしたら良かったのか>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

1人につき30万円の損失で済めばマシです。

マスコミやネットの書き込みの威力で、1店舗だけでなく会社全体が立ち直れなくなる可能性があります。

 

<なぜいけないのか>

所定労働時間が決まっていなければ、年次有給休暇を取得した場合の賃金計算ができません。

つまり、所定労働時間が決まっていないアルバイトについては、会社が有給休暇を与える気が無いのだということが、労基署にはバレバレなのです。

調査(臨検監督)に入るのは当然でしょう。

 

<正しい対応>

飲食店では、アルバイトが2時間勤務の日もあれば10時間勤務の日もあるというシフトのことがあります。

アルバイトやお店の都合で、1週間全く勤務しないことも週6日勤務することもあります。

このような場合には、固定した所定労働時間を決めることができません。

しかし、実態に合わせて平均値で規定しても、有給休暇の賃金の計算は可能となります。

たとえば、「9:00から21:00の間で実働平均5時間」「週平均3.5日勤務」としておき、実態と大きく離れたら、書面を作り直して交付すればよいのです。

これで、アルバイトの年次有給休暇の付与日数についても、迷うことはありません。

1週間の所定勤務日数と所定労働時間が決まっていないので、付与日数すらわからないという危険な状況は解消しておきたいものです。

A4判で両面印刷すれば、1人の労働者に交付する書面は、たったの1枚で済みます。これを怠るのは、そのリスクを考えると得策ではないでしょう。

 

解決社労士

2019/11/18|1,024文字

 

<女性活躍推進>

女性活躍推進の観点から、住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)等が改正され、令和元(2019)年11月5日より住民票、マイナンバーカード等への旧姓(旧氏)の記載が可能になっています。

これも、働き方改革推進の一環といえます。

 

<旧姓(旧氏)併記の方法>

旧姓(旧氏)は、その人が過去に称していた氏であって、その人の戸籍や除かれた戸籍に記載・記録されているものをいいます。

住民票、個人番号カード等に記載できる旧氏は、旧氏を初めて記載する際には、過去に称していたことのある任意の旧氏です。

一度記載した旧氏は、結婚(婚姻)等により氏が変更されてもそのまま記載が可能です。

また、他の市区町村に転入しても、引き続き記載が可能です。

しかし、記載されている氏が変更した場合には、それが直前に称していた旧氏である場合に限り、変更が可能です。

旧氏の削除も可能ですが、その後氏が変更した場合に限り、削除後に称していた旧氏のみが再記載可能です。

旧氏(1人1つ)の記載を希望する人は、住民登録のある市区町村に請求します。

請求にあたっては、記載を求める旧氏が、その人の旧氏であることを証明するため、旧氏の記載されている戸籍謄本等から現在の氏が記載されている戸籍に至るすべての戸籍謄本等とマイナンバーカード(通知カード)を持参しなければなりません。

 

<旧姓(旧氏)記載の場所>

住民票では、氏名欄の下に追加された「旧氏欄」に旧姓(旧氏)が記載されます。

マイナンバーカードでは、既に交付されている場合は追記欄に、新たに交付される場合は氏に併記するかたちで記載されます。

旧姓(旧氏)が記載されたマイナンバーカードは、各種契約や口座名義等に使用される場面で証明書として使うことができるほか、仕事の場面でも旧姓での本人確認書類として使うことができます。

 

<会社の対応>

職場で旧氏の使用を認めることは、あくまでも経営判断となりますが、働き方改革、女性活躍推進という政策の流れに逆らうのは得策ではありません。

旧氏使用が認められていない職場では、人事部門で給与や福利厚生の面で管理ができなくなる、あるいは管理の手間が増えることが理由とされているようです。

しかし、旧氏使用を当たり前のこととして認めている職場もありますから、人事部門が根拠としている管理の問題が、具体的にどの程度のものなのか再確認が必要でしょう。

旧氏の使用については、前向きに考えることをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/17|513文字

 

<受給資格が確認できた人には>

65歳から老齢基礎年金、老齢厚生年金(厚生年金保険などの加入期間がある人)の受給権(年金を受け取る権利)が発生する人に対して、60歳到達月の3か月前に、年金の受給資格がある旨および特別支給の老齢厚生年金の受給権について記載した「年金に関するお知らせ」というハガキが日本年金機構からご本人あてに郵送されます。

 

<受給資格が確認できない人には>

日本年金機構が基礎年金番号で管理する年金加入記録のみでは、老齢基礎年金の受給資格(期間要件)が確認できない人に対し、60歳到達月の3か月前に、年金加入期間の確認、年金請求の手続などをお知らせする「年金に関するお知らせ」というハガキが日本年金機構からご本人あてに郵送されます。

 

<ハガキが届かない場合には>

60歳になる人には、60歳に到達する3か月前に日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)」または「年金に関するお知らせ(ハガキ)」が郵送されます。

どちらも届かない場合、日本年金機構に登録されている住所地が現住所と異なるなどの理由から、届いていない可能性があります。

届かない場合には、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターにお問い合わせください。

 

解決社労士

2019/11/16|611文字

 

<退職後の健康保険>

職場で健康保険に入っていた人が退職すると、次のいずれかに加入する手続きが必要です。

1.任意継続健康保険

 加入していた健康保険の保険者(協会けんぽなど)が窓口です。

 ※保険者は保険証に記載されています。

2.国民健康保険 

 お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口で手続きします。

3.家族の健康保険の被扶養者(扶養家族)

 家族が加入する健康保険の保険者にお尋ねください。

 

<健康保険の任意継続>

退職や労働時間の短縮などによって、健康保険の加入資格(被保険者資格)を喪失したときに、一定条件のもとに個人の希望(意思)により、個人で継続して加入できる制度です。

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に基づいて決定され、保険料は原則2年間変わりません。また、被扶養者(扶養家族)の保険料はかかりません。

 

<国民健康保険の保険料(保険税)>

国民健康保険の世帯人員数や前年の所得などに応じて決定されます。また、保険料の減免制度があります。

市区町村によって保険料(保険税)の算定方法が異なります。

お住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。

 

<健康保険の任意継続の保険給付>

傷病手当金と出産手当金を除き、原則として在職中に受けられる保険給付と同様の給付を受けることができます。

※傷病手当金と出産手当金は、任意継続の加入とは関係なく、在職中からの継続給付の要件を満たす場合に限り給付対象となります。

 

解決社労士

2019/11/15|1,900文字

 

<解雇理由証明書>

会社が従業員に解雇を通告した場合には、それが懲戒解雇ではなく、普通解雇や整理解雇であったとしても、その従業員からの請求があれば、これに応じて解雇理由(事由)証明書を交付する義務があります。

このことは、労働基準法に次のように規定されています。

 

【退職時等の証明】

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

3 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

4 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

 

従業員が解雇に納得しているのなら、会社に対して解雇理由(事由)証明書の交付を求めることはないはずです。

これを求めるということは、解雇の正当性に疑念を抱き、会社の主張する解雇の理由についての証拠書類を得ておいて、納得がいかなければ、労働審判や訴訟に備えようとしていることは明白です。

労働審判や訴訟となれば、会社が解雇理由(事由)証明書に書かなかった理由を、後から追加して主張することは困難です。

ですから、会社としては、思いつく限りの正当な解雇理由を、漏らさず記載しておく必要があります。

ただし、当たり前ですが、言いがかり的な不当な解雇理由を記載してはいけません。

 

<弁明の機会>

裁判所が懲戒処分の有効性を判断するにあたっては、対象となる従業員に弁明の機会を与えていたか否かが重要なポイントとなります。

弁明の機会を全く与えていなければ、それだけで懲戒権の濫用とされ、懲戒処分は無効であるという判断に結びつきやすくなります。

労働契約法は、懲戒権の濫用による懲戒処分の無効について、次の規定を置いています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

従業員の言い分を聞くことなく、懲戒処分を行うというのでは、客観的に合理的な理由があったかどうかが疑わしいですし、世間一般の常識にも反しているでしょう。

大半の会社の就業規則には、労働組合との協議や本人の言い分を聞き取る手続が定められています。これによって、弁明の機会を与えていることになります。

このとき、懲戒処分の対象となる従業員の問題行動について、会社から話があり、これを受けて従業員が言い分を述べるわけですから、この時点で、懲戒処分の理由はある程度明らかになっています。

しかし、懲戒処分の理由が具体的に何なのか、弁明の機会を与えられただけでは、従業員が把握することはできません。

ですから、労働審判や訴訟の準備を考えていない従業員でも、懲戒処分を受ければその理由が気になって当然です。

 

<懲戒理由証明書>

法律上、懲戒処分を受けた従業員が、会社に対して懲戒理由(事由)証明書の交付を請求する権利はありません。

解雇の場合には、それが従業員を会社の外に放り出すことになり、重大なことなので、特別に証明書の交付請求権が認められているに過ぎないのです。

しかし、懲戒処分を行うからには、会社側が誠意をもって、その具体的な理由を従業員に説明すべきです。

対象者が納得できなくても、理解できるところまでは、説明する必要があります。

懲戒権は、会社が労働契約関係の中で、従業員に行使することができる権利です。

そして、権利を行使する場合には、信義に従い誠実に行わなければなりません。〔民法第1条第2項〕

会社が証明書を発行する義務は無いのですが、もし従業員から懲戒理由(事由)証明書の交付を求められるようなことがあれば、納得していない可能性が極めて高いわけですから、できるだけ丁寧に説明して疑念を晴らすようにしましょう。

 

解決社労士

2019/11/14|2,289文字

 

<労働法は労働者の味方>

労働基準法には労働者に対する罰則が無いことからも分かるように、労働基準法をはじめとする労働法は労働者の保護を徹底しています。

その解釈にあたっても、労働者に明らかな権利濫用があったとか、世間の反感を買うような不誠実な態度が見られたとか、特別な事情がない限りは「労働者は悪くない」という解釈になります。

 

<労働者が勝手に残業している場合>

残業というのは、使用者の命令に応える形で行われるものです。

このことは、労働基準法の次の条文にも示されています。

長い条文ですが、間を省略すると「使用者は、・・・労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」と規定しています。

 

【時間外及び休日の労働】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

 

労働者が勝手な判断で行った残業に対して、使用者が賃金の支払義務を負うというのでは、人件費のコントロールはむずかしくなります。

ところが、労働者が勝手に残業したのに対して、「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということを徹底的に指導しなければ、「会社が残業を黙認した」ということになり、残業代を支払わなければなりません。

これを防ぐには、就業規則に「自分の勝手な判断で残業してはならない」ということをきちんと規定し、違反した場合には、始末書をとって反省してもらう譴責(けんせき)処分などの懲戒規定が必要となることもあるでしょう。

あるいは、自分の勝手な判断で行った残業を、人事考課のマイナス材料とすることも考えられます。

前提として、どのような場合に残業が必要か、条件と具体的な内容を書面化して労働者に示し教育しておく必要があります。

たとえば、「閉店時刻にお客様が店内に留まっていて接客が必要なときには、その対応が終わり閉店作業を完了するまで残業しなさい」という内容になります。

これをしておかないと、上司の個別具体的な命令がなければ一切残業できないということになり不都合だからです。

 

<労働者がタイムカードの打刻を怠っているとき>

労基署はタイムカードなどの出勤退出の時刻を基準に、労働時間を正しく計算し直すよう求めてきます。

ですから、労働者がきちんと打刻していなければ、計算できません。

これは、労働者の自業自得であるようにも思えます。

ところが、きちんとタイムカードを打刻するように指導し、打刻もれがあれば、その都度正しい時刻を確認するのが、会社の責任だとされます。

そして、労働者から「この日は23時頃まで残業した」「先月の日曜日はいつも4時間程度休日出勤した」という申し出があれば、基本的にはこれを信じて計算しなければなりません。

こうしたことを防ぐには、定期的に正しい打刻についての指導を行い、就業規則に打刻義務を規定し、必要に応じて懲戒処分についても規定を置き、人事考課の対象とすることも考えられます。

一般に、残業手当をきちんと支払わない職場では打刻もれが目立ちます。

ですから、打刻もれが多いという点については、労基署の監督官も注目します。

これは大きな注意ポイントでしょう。

 

<労働者の不正打刻>

労働者が出勤直後にタイムカードを打刻せず、しばらく働いてから本来の出勤時刻に打刻するという不正があります。

また、タイムカードを打刻してから残業するという不正もあります。

場合によっては、ミスの多い社員や加齢によって生産性の低下した社員が、能力不足をカバーするために自主的に行っていることもあるでしょう。

ところが客観的に見ると、これは会社が得をして、労働者が損をする行為です。

そのため労基署の監督官は、会社が労働者に対して不正な打刻を強要しているのではないかと疑ってしまいます。

これを防ぐには、打刻を怠っている場合の対応に加えて、きちんとした評価基準の設定と、正しい人事考課が必要です。

生産性の低い労働者については、同期の社員よりも基本給や時給が低いのは当然なことなのです。

厳しい話ですが、これをきちんとしないと本人も苦しいですし、労基署からは違法行為を指摘されてしまいます。

 

<労働者に落ち度があって未払い賃金の支払が不要な場合>

残業が必要となる場合の基準を明確に示し、この内容を徹底的に教育して、労働者の個人的な判断による勝手な残業や休日出勤を禁止し、違反者に対する懲戒や人事考課の評価を落とすことも行っている会社で、教育されても注意されても懲戒処分を繰り返されても、身勝手な自主残業をやめない労働者に対しては、その部分の賃金支払い義務が発生しない場合もあるでしょう。

タイムカードを打刻しなかったり不正に打刻したりの場合にも、同様に考えてよいでしょう。

ただ、こうした社員を会社が放置しておくというのは、いかにも不自然です。

教育指導の甲斐なく、ルール違反を繰り返していれば、解雇の対象になると思われるからです。

こうしてみると、解雇されずに働いている社員について、労基署から賃金未払いを指摘されたら、支払わねばならないのは当然ともいえます。

 

解決社労士

2019/11/13|1,018文字

 

<健康保険より有利な労災保険>

労災保険では、労働者が業務または通勤が原因で負傷したり、病気にかかった場合に、労働者の請求に基づき治療費の給付などを行っています。

しかし、業務または通勤が原因と考えられるにもかかわらず、労災保険による請求を行わず、健康保険を使って治療を受けるケースがあります。

これは、労働者に不利です。

健康保険では、被災者が原則として治療費の3割を負担しますが、労災保険なら被災者の自己負担は原則としてありません。

また、負傷や病気で休んだ場合、健康保険の傷病手当金では賃金の約67%の補償となりますが、労災扱いならば賃金の80%が補償されます。

さらに、業務災害であれば、休業の3日目まで事業主が賃金の60%以上を補償します。

 

<労災保険に切り替え可能な場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできる場合には、次の手順によります。

・労災保険の様式第5号または様式第16号の3の請求書を受診した病院に提出する。

・病院の窓口で支払った金額の返還を受ける。

 

<労災保険への切り替えができない場合>

受診した病院の締め日などの関係で、健康保険から労災保険への切り替えが簡単にできない場合には、一度、医療費の全額を自己負担した上で、労災保険に請求することになります。

具体的には、次の手順によります。

・保険者(全国健康保険協会など)へ業務災害または通勤災害である旨を申し出る。

・「負傷原因報告書」の記入・提出(不要な場合もある)

・保険者(全国健康保険協会など)から医療費返納の通知と納付書が届く。

・近くの金融機関で返納金を支払う。

(健康保険が使えないのに使ってしまったため返金が必要となります)

・返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労災保険の様式第7号または第16号の5に記入のうえ、労働基準監督署へ医療費を請求します。

※保険者は健康保険証に記載されています。

 

<結論として>

間違った手続をやり直すのは、大変になってしまうことが多いものです。

最初から必要な手続きをきちんと確認しましょう。

また、事業主の都合で、労災なのに健康保険の手続きを進めようとすることがあります。

これ自体、保険金詐欺ですから犯罪です。

そして、ケガが悪化して長く入院するような場合には、労働者の負担がとても大きくなります。

困ったときは、早めに所轄の労働基準監督署か社労士などの専門家に相談しましょう。

 

解決社労士

2019/11/12|1,151文字

 

令和元(2019)年10月30日、厚生労働省の社会保障審議会年金部会で、年金手帳の廃止が採り上げられました。

 

<年金手帳の必要性の低下>

年金手帳は、保険料納付の領収の証明、基礎年金番号の本人通知という機能を果たしてきました。

しかし現在では、保険料の納付に年金手帳は使いません。

また、加入者(被保険者)情報がシステムで管理されていますし、マイナンバー(個人番号)の導入によって、手帳という形式をとる必要がなくなってきています。

かつては多くの手続で、年金手帳の添付が求められていましたが、現在では、行政手続の簡素化や利便性向上のため、「基礎年金番号を明らかにする書類」で手続を可能としています。

さらに、給与関連の事務でマイナンバー(個人番号)を確認している事業者では、基礎年金番号に代えて、マイナンバーの記載をして届出をした場合は、基礎年金番号を明らかにする書類の提出は不要とされています。

 

<法改正の方向性>

20歳になった人、20歳前に厚生年金加入者(被保険者)となった人など、新たに国民年金の加入者(被保険者)となった人に対しては、年金手帳を交付せず「資格取得のお知らせ」を通知することにする法改正が検討されています。

これによって、手帳の作成や交付コストの節減も図れますし、企業側の業務の簡素化や効率化を推進することができます。

なお、平成28(2016)年度実績では、年金手帳の発行が153万件、再発行が74.5万件で、その費用は2.7億円に及んでいます。

 

<基礎年金番号通知書>

新たな「基礎年金番号通知書(仮称)」については、すでにその仕様まで次のように検討されています。

1. 年金手帳の代替として年金制度の象徴となるようなシンボリックなもの(色つきの上質紙など)とすること

2. 手元に丁重に保管してもらうため、名称を「基礎年金番号通知書(仮称)」とし、大臣印の印影を入れること

3. 現在、共済年金加入者に送付している「基礎年金番号通知書」との統一を行うこと

 

<会社の対応の変更点>

現在は、新人の入社にあたって、年金手帳を提出してもらい基礎年金番号を確認していますが、法改正後は「基礎年金番号通知書(仮称)」しか保有しない人も出てきます。

ですから、いずれか片方の提出を求めることになります。

また、どちらも保有していない人について、マイナンバー(個人番号)の確認により手続きを進めても問題ありません。

さらに現在は、年金手帳を紛失した社員からの申し出に応じて、会社が年金手帳の再交付手続きをしていますが、法改正後は、年金手帳の交付も再交付も行われなくなりますから、この手続きはなくなります。

基礎年金番号が分からなくなった社員には、個人的に年金事務所や街角の年金相談センターで確認してもらうことになります。

 

解決社労士

2019/11/11|542文字

 

<特定保健指導>

特定保健指導とは、生活習慣病予防健診(健康保険加入者向け)や特定健康診査(扶養家族向け)の結果から、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクが高いと判断された40歳以上の人に、保健師などが生活習慣改善のアドバイスを行うものです。

あくまでもメタボ予備軍に対する指導です。

すでにメタボと認定された人には治療が必要です。

予備軍からメタボに転落しないように指導するわけです。

ですから、この指導を受けるのは恥ずかしいことではありません。

指導を受けずにメタボになってしまうことのほうが恥ずかしいのです。

 

<特定保健指導を受けるときの費用>

健康保険加入者(被保険者)は無料です。

扶養家族(被扶養者)については実施機関によって異なります。

費用については、協会けんぽ支部ホームページの「特定保健指導実施機関一覧(ご家族)」で確認できます。

 

<特定保健指導を受ける手続き>

健康保険加入者(被保険者)は、勤務先を通じて協会けんぽに申し込みます。

勤務先によって、マンツーマンの指導であったり、講義形式であったりします。

扶養家族(被扶養者)には、特定保健指導の対象となる場合に限り、自宅に「特定保健指導利用券」が郵送されます。

届いたら、近所の特定保健指導実施機関に申し込みましょう。

 

解決社労士

2019/11/10|1,373文字

 

<両者の優劣>

ノーワーク・ノーペイの原則は、法令には直接の根拠がないものの、労働契約の性質から当然のこととして認められています。

つまり、労働者が働かなければ雇う側に賃金の支払義務は発生しないということです。

労働契約法には次の規定があるのですが、この規定の裏返しがノーワーク・ノーペイの原則だといえます。

 

【労働契約の成立】

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

ところがこの原則をそのまま就業規則にとり入れず、たとえば生理休暇を有給にする、欠勤控除をしないルールとするというのは、労働者に有利となりますので労働基準法などに違反するものではありません。

そして就業規則に、法令の基準よりも労働者に有利な内容を定めた場合には、法令の基準を理由に労働条件を低下させることが許されなくなります。〔労働基準法第1条第2項〕

以上のことから、就業規則の規定が労働者に有利であれば、ノーワーク・ノーペイの原則よりも優先されるということになります。

 

<就業規則に定めた基準の引き下げ>

しかし、一度就業規則に定めたなら、その条件を引き上げることはできても、引き下げることは一切許されないというのは不都合を生じることもあります。

なぜなら、その規定が時代に合わなくなったり、運用が不合理になったりということは現実に起こりうるからです。

たとえば就業規則上、生理休暇を有給にして、その取得にあたっては事後の口頭による申し出でも良いというルールだったとします。

年々生理休暇の取得が増え、今では月平均1人あたり10日も使われているとしたらどうでしょう。

60代の女性でも、月5日程度なら普通に生理休暇が認められているとしたら、男性社員との間で不平等が生じているといえるでしょう。

この場合、休暇の取得にあたって業務に耐えないという医師の証明を必要とするとか、口頭ではなく申請書を提出するとか、合理的な範囲内での制約を検討する余地はあるでしょう。

同様にたとえば就業規則上、欠勤控除がない職場で遅刻・早退・欠勤が多かったらどうでしょう。

まじめに皆勤している社員は、士気が低下してしまうかもしれません。

こうした状況に陥るのを防ぐため、新たに欠勤控除の規定を設けることも検討する余地はあるでしょう。

 

<不利益変更禁止のルール>

とはいえ、会社の都合で自由に就業規則を変更できるわけではありません。

使用者は原則として、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできません。〔労働契約法第9条〕

たしかに、就業規則を労働者に不利益に変更するのであれば、ひとり一人にきちんと説明したうえで、合意を得るのが理想でしょう。

そうもいかない場合であれば、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが客観的に認められることが必要です。〔労働契約法第10条〕

この場合であっても、労働者にもれなく説明し、期間的な余裕をもって変更したいものです。

 

解決社労士

2019/11/09|810文字

 

<電子証明書からID・パスワードへ>

現在、電子申請するためには電子証明書が必要です。

しかし、令和2(2020)年4月以降、無料で取得可能なID・パスワード(GビズID)で電子申請が可能になります。

このID・パスワードは、4月まで待たなくても今すぐ取得可能です。

 

<GビズID>

GビズIDは、経済産業省により整備された事業者向けのサービスです。

1つのID・パスワードで、複数の行政サービスにアクセスできます。

このサービスによって、社会保険・労働保険の手続が電子申請で行うことができるようになります。

 

<GビズIDの取得>

次の手順で、GビズIDを取得します。利用者は、「法人代表者」または「個人事業主」に限られます。

1. GビズIDのホームページで「gBizIDプライム作成」のボタンをクリックします。

2. 申請書を作成します。

このとき、法人番号、代表者(氏名・生年月日)、利用者(氏名・生年月日・連絡先住所・電話番号・部署名・メールアドレス)などが必要です。

また、GビズID利用時の本人確認(ワンタイムパスワードの通知)に利用のため、SMS受信用電話番号の登録が必要です。

3. 申請書をダウンロードします。

4. 作成した申請書と印鑑証明書を「GビズID運用センター」に送付します。

5. 審査(2週間程度)を経て、メールが到着します。

6. メールに記載されたURLをクリックしてパスワードを設定します。

 

<GビズIDによる電子申請>

日本年金機構のホームページから「届書作成プログラム」を無料でダウンロードすることができます。

ただし、GビズIDに対応した「届書作成プログラム」は、令和2(2020)年4月1日に公開予定です。

現在、「届書作成プログラム」は公開されていますが、まだGビズIDには対応していません。

 

令和2(2020)年4月からの運用に先駆けて、予めGビズID(ID・パスワード)を取得しておくことをお勧めします。

 

解決社労士

2019/11/08|1,052文字

 

<契約更新可能性の明示義務>

使用者が期間を定めて新人を雇用する場合、つまり有期労働契約で採用する場合、その契約の更新可能性の有無を明示しなければなりません。

完全に期間限定で、延長することがあり得ないのであれば「契約更新の可能性なし」と明示します

しかし、契約期間を延長する可能性がある場合には「契約更新の可能性あり」と明示したうえで、契約を更新する場合またはしない場合の判断基準を明示しなければなりません。

 

<判断基準の明示>

厚生労働省は、明示すべき「判断の基準」の具体的な内容として、次の例を参考にするよう指導しています。

・契約期間満了時の業務量により判断する

・労働者の勤務成績、態度により判断する

・労働者の能力により判断する

・会社の経営状況により判断する

・従事している業務の進捗状況により判断する

 

<労働条件通知書の場合>

使用者は労働者の雇い入れにあたって、労働条件を書面で通知しなければなりません。

使用者が労働者に対して一方的に通知する書面として「労働条件通知書」があります。

厚生労働省から「モデル労働条件通知書」も公表されています。

これは、使用者から労働者に対する通知の形をとっていますから、契約更新の有無を判断する基準として、たとえば「労働者の能力により判断する」と明示してある場合には、労働者の能力を判断するのは、この文書を作成した使用者側であるといえます。

さらにトラブルを避けるなら、「会社が労働者の能力を評価して判断する」と明示すればよいでしょう。

 

<労働契約書(雇用契約書)の場合>

会社によっては、労働契約書を交わして労働条件を明示しています。

契約書は、当事者の意思表示の合致を書面にしたものです。

ですから、労働契約書の契約更新の条件のところに「労働者の能力により判断する」と書いてある場合には、契約書には使用者と労働者双方の名前が入っていて、この文書は共同で作成したという形式をとっているので、必ずしも使用者が単独で判断するのが当然ということにはならず、労働者の意見も反映されるべきではないかという疑問が出されうることになります。

特に労働者が契約更新を期待していたのに、会社が更新しなかった場合には、能力の評価について意見の対立が生じうることになります。

ですから、労働条件の明示に契約書の形式をとるのであれば、「会社が労働者の能力を評価して判断する」というように、判断者を明示することが必須となります。

ちょっとしたことですが、紛争の発生を予防するための大きなポイントといえるでしょう。

 

解決社労士

2019/11/07|1,081文字

 

<保険料の納付期限>

厚生年金保険料、健康保険料、船員保険料、児童手当拠出金は、翌月末が納付期限となっています。

企業は、口座振替または納入告知書により保険料を納付することになっています。

 

<納付期限までに納付されない場合>

厚生年金保険料などを納付期限までに納めない事業所に対しては、督促状を送付するとともに、電話などによる納付督励を行います。

督促状で指定した期限までに完納されない場合、滞納保険料などを回収するための滞納処分に入ります。

ただし、事業所の実情によっては、分割納付による完納を認め、早期に完納される場合は、指定した期限を過ぎても滞納処分は猶予されます。

納付督励によって完納の見込が立たない場合には、財産調査を行い、必要に応じ滞納処分(差押え・換価)を行います。

なお、滞納額が高額で悪質な滞納事業所については、国税庁に徴収を委任する仕組みがあります。

 

<滞納処分の流れ1  納付指導>

納付指導により作成する納付計画は、原則として毎月分の保険料の納付と、滞納している保険料の分割納付により、できるだけ早期に滞納が解消されるような計画とします。

分割の金額については、事業の経営状況などを踏まえ、適切と考えられる金額に設定するようにしています。

 

<滞納処分の流れ2  財産調査>

財産調査は、取引先金融機関に預金残高の確認を行うほか、必要に応じ取引先企業全般に対し売掛金などの債権の有無を調査します。

ここまでくると、取引先金融機関や取引先企業の信用を失う可能性があります。

また、滞納事業所の不動産など、財産全般についても調査を行います。

 

<滞納処分の流れ3  差押え・換価>

財産調査の結果把握した不動産、預金、売掛金債権などについて、必要に応じ差押えを行います。

預金や売掛などの債権類については速やかに取り立てて収納し、不動産などで換価が必要なものは、公売によって金銭化した後に保険料などとして収納します。

 

<滞納処分の流れ4  滞納整理の国税庁委任>

納付指導に従わないなど悪質な滞納事業所については、国税庁に保険料などの徴収を委任することができるようになっています。

 

<延滞金>

厚生年金保険料などを滞納し、督促状の指定期限日までに完納しないときは、納期限の翌日から完納の日の前日までの期間の日数に応じ、保険料額(保険料額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切捨て)に一定の割合を乗じて計算した延滞金が徴収されます。

平成31年1月1日から令和元年12月31日までの期間について、最初の3か月は年利2.6%、3か月超の期間は年利8.9%となっています。

 

解決社労士

2019/11/06|1,770文字

 

<故意・過失の意味>

犯罪には故意犯と過失犯があり、たとえば、故意による傷害罪は過失傷害罪よりも犯情が重く、それだけ重い刑罰が科されます。

就業規則の懲戒規定の中にも、故意・過失という言葉が見られます。

ここで「故意」というのは、「わざと行うこと」であり、法律上は「法的に守られた利益を侵害すると認識しながらそれを容認して行為すること」をいいます。

また「過失」というのは、「うっかり行うこと」であり、法律上は「違法な結果を認識・予見することができたにもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったこと」をいいます。

過失によって悪い結果が発生するのを防ぐには、まず、悪い結果が発生するかもしれないことを具体的に予期しなければなりません。この注意義務を結果予見義務といいます。

しかし、結果を予期したとしても、その予期した結果の発生を防がなければ、悪い結果が発生してしまいます。こうして、結果の発生を回避する義務を結果回避義務といいます。

結局、「過失」というのは、法律上、結果予見義務か結果回避義務を怠ったことをいいます。

 

<行為者の言い分による認定>

こうして見ると、「故意」も「過失」も行為者の心理状態ということになります。

ところが、行為者の心の中を直接のぞいて確認することはできません。

かといって、犯人が「うっかり火が着いて燃え広がりました」と言えば失火罪として軽く処罰され、「燃やすつもりで火を着けました」と言えば放火罪として重く処罰されるというのは不当です。

社内で懲戒を検討する場合にも、行為者本人の言い分だけを根拠に処分を決めてしまっては、不当な結果が発生しやすいことは明らかです。

 

<労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度>

ところで、労働者を1人でも雇っている事業主は、労災保険の加入手続を行わなければなりません。

労災保険は、任意保険ではなく強制保険だからです。

平成17(2005)年11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度が強化されました。

これにより、事業主が労災保険の加入手続を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料を徴収する他に、労災保険から給付を受けた金額の100%または40%を事業主から徴収することになります。

 

【故意の認定基準と費用徴収】

労災保険の加入手続について、行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、手続を行わない期間中に、業務災害や通勤災害が発生した場合には、「故意」が認定されます。

その災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収

 

【重過失の認定基準と費用徴収】

労災保険の加入手続について、行政機関から指導等を受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合には、重過失が認定されます。

その災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収

 

月給30万円の従業員(賃金日額1万円)が、労災事故が原因で死亡し、遺族の方に対し労災保険から遺族補償一時金の支給が行われる場合、その金額は賃金日額の1,000日分ですから、1千万円となります。

事業主は、上記で故意が認定された場合には1千万円、重過失の場合にはこの4割の4百万円が、国から徴収されることになるわけです。

 

ここで、重過失(重大な過失)というのは、結果の予見が極めて容易なのに結果予見義務を果たさなかった場合や、結果の回避が極めて容易なのに結果回避義務を果たさなかった場合をいいます。

このように、労災保険に未加入の事業主に対する費用徴収制度では、事業主の言い分は全く考慮されることなく、客観的な事情によって、故意・過失が客観的に認定されていることがわかります。

 

<故意・過失の客観的な認定>

自白の偏重が否定されていますから、警察は犯人の行為の他、故意・過失についても、明らかにする客観的な証拠の発見・収集が求められています。

会社は警察ではありませんが、行為者本人の言い分に振り回されることなく、行為当時の客観的な状況、上司や同僚の証言など、きめ細かい事実を確認したうえで故意・過失を客観的に認定し、懲戒処分を決定することが大切です。

 

解決社労士

2019/11/05|685文字

 

<健康保険の現物給付>

健康保険では、保険医療機関の窓口に保険証を提示して診療を受ける現物給付が原則ですが、やむを得ない事情で現物給付を受けることができないときや、治療のために装具が必要になったときなどは、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで請求して療養費(被扶養者の場合は家族療養費)として、払い戻しを受けることができます。

保険証を提示して診療を受けると3割負担で済むというのが実感ですが、健康保険で7割は現物の診療が給付されたと考えます。

父親が母親の外出中に子供の発熱に気づき、あわてて病院に連れて行って保険証を忘れた場合、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで家族療養費を請求します。

腰痛のため医師が必要を認めてコルセットを使うことになった場合、コルセットを作り販売する業者に、直接には健康保険が適用されません。

この場合にも、かかった医療費の全額を一時立替払いし、あとで請求して療養費として、払い戻しを受けることができます。

 

<払い戻される療養費の範囲>

療養費は、必ずしも支払った医療費の全額が払い戻されるわけではありません。

保険加入者(被保険者)や扶養家族(被扶養者)が、保険医療機関で保険診療を受けた場合を基準に計算した額(実際に支払った額が保険診療基準の額より少ないときは、実際に支払った額)から一部負担金相当額を差し引いた額が払い戻されます。

また、健康保険で認められない費用は除外されます。

さらに、コルセットの予備を作った場合や、耐用年数が過ぎる前に新調した場合など、全額自己負担になることもありますので注意しましょう。

 

解決社労士

2019/11/04|1,193文字

 

<対象となるケース>

パワハラを受けて精神的に参ってしまい、まともに出勤できない状態にされ、退職を迫られてやむなく応じ、自己都合退職扱いにされるという場合の上手な闘い方です。

あってはならないケースですが、パワハラの定義すら就業規則に無い会社では、誰もパワハラを止めることができず犠牲者が後を絶ちません。

 

<最初に思いつくのは>

こんなとき、被害者が精神的に回復すると、あのパワハラ上司を訴えてやろうという気持ちになりがちです。

しかし、パワハラそのものを理由として損害賠償を請求しようとするならば、労働者の側でパワハラの存在や被った損害額を証明しなければなりません。

 

<証明責任(挙証責任)>

裁判で訴える側がAという事実の存在を主張し、訴えられた側がその存在を否定したとします。

裁判所は、どちらが真実か証明がつかないからといって、裁判を拒否できません。

そこで、あらかじめ法令やその解釈によって、Aという事実の証明について、訴える側と訴えられた側のどちらが責任を負うかが決まっています。

そして、その責任を負う人が証明に失敗すると、自分の主張が通らないという不利な扱いを受けるのです。

 

<パワハラを証明することの困難>

パワハラで損害賠償を請求するというのは、法律上は加害者に対する不法行為責任の追及ということになります。

そして、その証明責任は被害者である労働者にあるのです。

上司が人前で殴ったり蹴とばしたりすれば、証人がいるでしょう。

しかし目撃者が、退職した労働者のために証言してくれるとは限りません。

ましてや電話でのやり取りや、会議室で2人きりで話していてどなられたことなどは、とうてい証明できないでしょう。

 

<視点を変えれば>

このケースでは、パワハラの問題もあるのですが、不当解雇の側面もあります。

労働者が不当解雇を主張し、解雇は無効であって会社に行けなかった間の賃金の補償や慰謝料を会社に求めた場合には、少なくとも不当解雇ではなかったことについて、会社が証明責任を負います。

具体的には、解雇が客観的に合理的な理由を欠いていたり、社会通念上相当であると認められない場合には、会社がその権利を濫用したものとして、その解雇を無効とするという規定があります。〔労働契約法第16条〕

ですから、労働者が不当解雇を主張すれば、会社はその解雇に客観的に見て合理的な理由があったことを証明しなければなりません。

また、世間一般の常識から考えて、解雇したのもやむを得ないといえるケースだったことを証明しなければなりません。

会社は両方の証明に成功しなければ、裁判で負けてしまうのです。

 

<結論として>

訴えるにしても訴えられるにしても、やり方次第で損得が出てしまいます。

また、紛争解決の手段は訴訟だけではありません。

何を主張して、どう戦ったらよいのか、報酬を支払ってでも弁護士や社労士に相談する意味はここにあります。

 

解決社労士

2019/11/03|1,721文字

 

<モデル就業規則>

年次有給休暇について、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【年次有給休暇】

第22条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。 

勤続

期間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年

6か月

以上

付与

日数

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

 

2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表のとおり所定労働日数及び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。

 

週所定

労働日数

1年間の

所定労働日数

勤    続    期    間

6か月

1年

6か月

2年

6か月

3年

6か月

4年

6か月

5年

6か月

6年6か月以上

4日

169日~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

(以下省略)

 

週所定労働日数が5日以上の従業員のみの職場では、上段の簡単な表だけが適用されます。

そして、週所定労働日数が4日以下の従業員がいる職場では、下段の複雑な表が必要になってきます。

 

<誤りやすいポイント>

モデル就業規則第22条第2項の「前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、」という規定が、分かりにくいのかも知れません。

原則として、上段の簡単な表が適用されます。

しかし例外的に、次の2つの条件の両方を満たしている従業員については、下段の複雑な表を適用します。

 

・週所定労働時間が30時間未満・週所定労働日数が4日以下

 

裏を返せば、週所定労働日数が4日であっても、週所定労働時間が30時間以上であれば、上段の簡単な表が適用されるということです。

 

<運用の誤りと対処法>

週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員に、下段の複雑な表を適用してしまっているパターンがあります。

これは運用上の誤りですから、すぐに運用を改める必要があります。

また、年次有給休暇の付与日数が誤っていた従業員には、付与日数が少なかったことのお詫びとともに正しい残日数を通知しなければなりません。

 

<規定の誤りと対処法>

もっと重症なのは、就業規則そのものに、「週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上のパート社員には、上段の簡単な表が適用される」という規定が漏れているパターンです。

残念ながら、弁護士の先生や、同業の社労士の先生が作った就業規則にも、こうした誤りを発見することがあります。

これは、労働基準法第39条第3項に違反していますから、就業規則を変更し、就業規則変更届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。

しかも、変更届を見れば、これまでの運用が誤っていたことが明らかですから、運用の誤りを是正したうえで、変更届を提出するという手順にしなければなりません。

 

<複雑なルールは避けたい>

場合分けのある複雑なルールは、定着しにくいものです。

社内に独自のルールを定める場合には、なるべく単純なものをお勧めします。

労働基準法は、最低限の基準を定めて使用者に守らせ、労働者を保護する趣旨です。

逆に、基準を上回るルールを定めることは禁止されていません。

ですから、社内の混乱を避けるため「週所定労働日数が4日の従業員には、週所定労働時間にかかわらず、一律に上段の簡単な表を適用する」という規定にすることは許されます。

社内の実情に応じ、こうしたことも検討されてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2019/11/02|1,236文字

 

<労災手続きを担当すると>

労災は突然に起こります。

担当者が忙しいときに限って起きやすいような気もします。

特に不慣れな場合には、労基署や病院に提出する書類の書式はどれを使ったらよいのか迷うことがあります。

なにしろ、書類の種類が多いうえに、似たものが多過ぎます。

こんなときは、とにかく正確に遅れないように書類の作成に集中しなければなりません。

一方、ベテランや社労士なら、必要な情報を迅速かつ正確にそろえてサッサと書類を完成させてしまいます。

しかし、これだけでは2つの重要な視点が欠けてしまいます。

 

<再発防止>

ヒヤリハット運動というのがあります。

事故の危険を感じて、ヒヤリとした経験、ハッとした経験があったら、これをキッカケに事故防止の対策を打とうという運動です。

実際に労災が発生してしまったなら、より積極的に再発防止に取り組まなければなりません。

労災が発生すると、会社には一定のフォーマットが用意されていて、被災者や同僚・上司などがその各欄を埋める形で報告書を作成し、労災手続きを担当する部門に提出するということが多いでしょう。

しかし、そのフォーマットの中に「再発防止策」の欄はあるでしょうか。

簡単にできる対策であれば、「何月何日にこの対策を実施済み」と記入することになりますが、関連部門への要望という形になるかも知れません。

費用のかかることであれば、会社への要望となるでしょう。

 

<被災者へのアプローチ>

その労災事故について、一番よくわかっているのは被災者本人です。

それなのに、書類のやり取りだけで、本人への聞き取りが無いのはもったいないです。

本人の率直な意見は、今後の労災防止に大いに役立ちます。

このとき、「まだ痛みますか?」「大変でしたね」と声をかければ、本音も引き出すことができるでしょう。

こうした言葉をかけることなく、サッサと用件だけ済ませようとすれば、被災者の心は凍りつきます。

なぜなら、被災者は周囲の人からは「お前の不注意だ」「会社にとって迷惑だ」などと言われてしまっていることもあるからです。

再発防止に効率よく取り組むには、被災者本人の要望を聴くのが一番です。

会社として、どうしていれば今回の事故が防げたかがわかるのです。

たとえば、器具の正しい使い方を指導されていなかったとか、このところ長時間残業が続いていて注意力が低下していたとか、家族が大変なときに仕事を休めず上の空で働いていてケガをするというケースもあります。

 

<手続きを委託している場合>

スピーディーに労災手続きを済ませるには、社労士や労働保険事務組合に委託するのが便利です。

しかし、これだと再発防止や被災者への適切なアプローチという2つの重要な視点が欠けてしまいます。

どうせ委託するのであれば、親身に被災者の声に耳を傾け、真剣に再発防止を考える社労士を顧問にするのがお勧めです。

ただし、手続き専門の社労士だと再発防止は考えないものです。

どうせなら、何でも相談できる社労士を選んでいただきたいです。

 

解決社労士

2019/11/01|1,728文字

 

<法令の規定>

労働者は事業者が行う健康診断を受けなければなりません。〔労働安全衛生法第66条第5項〕

しかし、この義務に違反しても罰則はありません。

こうしたこともあって、のらりくらりと健康診断から逃げようとする人もいます。

 

<逃げる人の言い分>

健康診断を嫌がる人に理由をたずねたら、次のような答えが返ってきました。

・血を採られたり、レントゲンを撮られたりが、何となくイヤ。

・バリウムを飲むのも、その後も苦しい。

・何か病気が見つかると怖いから受けたくない。

・健康体ではないことが会社にバレると上司から叱られる。

・かなり健康状態が悪いので、会社から退職を迫られるかもしれない。

 

<労働基準監督署に相談したら>

健康診断をサボる社員への対応について、労働基準監督署に相談したことがあります。

「きちんと健康診断が受けられる準備を整え、社員ひとり一人への案内もしていることを示す証拠をきちんと残しておけば、会社が責任を問われることはありません。もし、労基署が監督に入ったら、そうした書類などを提示できるようにしておいてください。」という回答でした。

会社が責任を負わされないように相談したのではなく、心から社員の健康が心配で相談したのですが…

 

<ペナルティーを科す>

総務や人事など健康診断の担当部門からではなく、サボる社員の上司から注意してもらう方法もあります。

小さな会社なら、社長から直々に注意してもらうのも効果があります。

また就業規則には、健康診断の受診義務を明記し、かかわる人の守秘義務や個人情報の保護についても規定しておきましょう。

これを前提として、始末書を書かせ反省を求める譴責(けんせき)処分程度までなら、懲戒処分に必要な客観的合理性や社会的妥当性はあると思います。

10人未満の会社では、就業規則の作成は義務づけられていません。

しかし、健康診断についてまで労働条件通知書(雇い入れ通知書)あるいは雇用契約書(労働契約書)といった労働者への交付義務がある書類に書いておくのは、細かすぎて面倒です。

やはり、就業規則を作ったほうが便利でしょう。

 

<教育の強化>

健康診断をサボる社員が1人や2人なら、ある程度の説得によって、しぶしぶでも受けるようになるでしょう。

しかし、対象者の1割以上が受けないようであれば、サボるにしても気が楽です。

サボっているのは自分だけでないですし目立ちませんから。

この状態は、会社から社員への健康診断の重要性や受診義務についての教育不足を反映しているといえるでしょう。

会社には健康状態の悪い人を悪化させないように注意する義務があります。

この義務を果たすには、社員全員が健康診断を受けることが前提となっています。

社員は、労働者として、これに協力する義務があるわけです。つまり、労働契約に付随する義務です。

 

<人事考課への反映>

健康診断の結果が悪いから賞与の金額が少なくなるとか、役職を外されるというのは不当です。

健康診断後の精密検査などを加味して、産業医の先生が異動を勧めたとか、本人から異動の希望が出されたとか、現に業務をこなせない状態であるとか、特別なことがない限り、健康診断の結果だけで本人に不利な扱いはいけません。

なぜなら、仕事のストレスや過労で健康を害しているケースも多く、この場合には会社にも大きな責任があるのですから。

ただ、健康診断をサボるという客観的な事実を理由に、マイナス評価することは程度の問題もありますが、ある程度許されることです。

たとえば、直近3回の健康診断を正当な理由なく受診していない場合には、課長昇格の候補者には入らないなどの基準を設けることは可能です。

健康管理に無関心で、会社に非協力的な社員を課長に昇格させるのも適切ではないでしょう。

 

<結論として>

「サボるのは本人が悪い」と言うのは簡単です。

しかし、本人を責めるだけに終わらせず、会社にできることはきちんとしましょう。

会社にも責任があるのですから。

また、健康診断の結果が悪いというだけで解雇するというのは、ほとんどの場合に不当解雇となりますから、解雇の通告は無効となり、損害賠償の問題ともなります。

困ったときには、各分野の専門家に相談することをお勧めします。

 

解決社労士

2019/10/31|2,175文字

 

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

<事業主が講ずべき措置>

上記の内容だけでは、事業主が講ずべき措置の具体的内容等が不明確です。

そこで、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会が、パワハラ防止のために企業に求める措置に関する指針を検討し、令和元(2019)年10月21日に素案を示しています。

この指針は、パワハラにより労働者の就業環境が害されることの無いよう、雇用管理上講ずべき措置等について、事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたものです。

指針案では、事業主等の責務と行うことが望ましい取組みの内容が、次のように示されています。

 

【事業主等の責務】

1.パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

2.パワハラには厳正に対処する旨を就業規則等に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

3.相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

4.相談窓口の担当者が、相談に対し適切に対応できるようにすること。また、現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合等も広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること

5.パワハラに係る相談の申出があった場合、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること

6.パワハラの事実が確認された場合、被害者に対する配慮措置を適正に行うこと

7.パワハラの事実が確認された場合、行為者に対する措置を適正に行うこと

8.パワハラの事実が確認された場合、再発防止措置としてパワハラに関する方針を改めて周知・啓発する等を講じること

9.パワハラに係る事後対応にあたっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること

10.パワハラに関する相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いはされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

【行うことが望ましい取組みの内容】

1.相談窓口は、セクハラ・マタハラ等他のハラスメントに関するものと一体的なものとして設置し、一元的に相談に応じることができる体制を整備する

2.パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化や円滑化のための取組みを実施する

3.パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、適正な業務目標の設定等の職場環境改善のための取組みを実施する

4.自ら雇用する労働者以外の者(個人事業主、インターン、就活生等)に関する取組み

 

<パワハラの定義の問題>

客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

しかし、今回公表された指針案の中で、パワハラに該当しない例として、次のようなものが示されました。

 

【パワハラに該当しない例】

〇誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること

〇遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること

〇その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること

〇新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること

〇処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること

〇労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること

〇業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること

〇経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること

〇労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること

〇労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと

〇労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと

 

これらの例は、パワハラに該当しないことが明らかなものが中心となっています。

しかし、企業にとって必要なのは、パワハラ該当性について判断が困難な限界事例であると思われます。

指針の内容について、今後、一層充実したものとなることが期待されます。

 

解決社労士

2019/10/30|1,160文字

 

<昔のキャッチフレーズ>

その昔は、社会保険労務士事務所のホームページを見ると、「100%経営者の味方です」「いつでも労働者の味方です」ということばが当たり前のように掲げられていました。

ところが、「社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない」とされています。〔社会保険労務士法第1条の2〕

ですから柳田事務所では、たとえ社労士が会社の顧問となった場合でも、一方的に会社の味方となり労働者の敵となるのはおかしいということをネット上でも力説してきました。

権利が守られない労働者は、会社を去っていきますから、結局、会社が力を失います。

反対に労働者の権利濫用を許している会社は傾いていきます。

会社と労働者がWIN-WINの関係にならなければダメなのです。

 

<不適切な情報発信の禁止に関する会則改正>

「社員をうつ病に罹患させる方法」がブログに書かれるなど、他にも社労士の不適切な情報発信が社会問題となったことから、東京都社会保険労務士会の会則に不適切な情報発信の禁止規定が新設されました。

これによって、「会社側の味方」「労働者側の味方」という表現は、少なくとも東京都内の社労士事務所では使えなくなりましたし、業務にあたっては公正な立場でなければならないことが再確認されたといえます。

 

<弁護士と社労士のスタンスの違い>

東京都区内で労働裁判を扱う法律事務所では、「企業側」「労働者側」ということを明確にしています。

こうしないと専門性を疑われるようです。

しかし、同じ東京都内でも多摩地区では、どちら側の代理人も受任する法律事務所がたくさんあります。

それでも、弁護士と社労士とでは少しスタンスが違います。

たとえば、メンタルヘルス障害で休職している社員がいる場合、弁護士は「会社が責任を問われないように」ということを強く意識します。

これに対して社労士は、「休職している社員の生活や病気の治療」のことも十分に配慮します。

弁護士は、労働者から攻撃されても会社がきちんと防衛できることを考えるのに対して、社労士は、会社が労働者のことをきちんと考えることによって会社が労働者から攻撃されることを防ぐというスタンスです。

 

<柳田事務所の考え方>

代表の柳田は、会社の人事部門で勤務していて、同じ案件について労働者側からも経営者側からも同時に相談を受けていました。

当然のことながら、両方の立場を踏まえWIN-WINの結果を導き出す癖がついています。

これは今でも変わりません。

ですから、柳田事務所は会社からも労働者からも仕事を受けていますし、相手を打ち負かして一時的にスッキリするような結果は目指していません。

常に長期的視点に立って、WIN-WINの結果を目指しています。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/29|1,487文字

 

<懲戒処分の必要性>

社員を懲戒する第一の目的は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

懲戒処分を受けた社員に対しては、深く反省し二度と同じ過ちを犯さないように注意して働くことが期待されています。

ですから、能力はあるのに故意あるいは不注意によって、不都合な結果を発生させたことが前提となっています。

能力不足で不都合な結果が発生した場合には、反省しても結果を防止できません。

会社は、能力不足に対しては、懲戒処分ではなく教育研修で対応する必要があるのです。

社員を懲戒する第二の目的は、懲戒対象となった社員ではなく、他の社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することにあります。

「社長を怒らせたら懲戒処分」というのでは、社員はいつも不安です。

何をしたらどの程度の処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

懲戒規定にない行為について、懲戒処分をすることはそれ自体違法です。

しかし、それ以上に他の社員に対する悪影響が大きくて、会社全体の生産性が低下するという実害が出ますので絶対に避けましょう。

 

<懲戒処分の準備不足>

まず、就業規則や雇用契約書などに具体的な懲戒規定を置かなければ、懲戒処分を行っても労働審判や訴訟で無効とされてしまいます。

懲戒処分は、あらかじめその内容を具体的に予告しておくことによって、社員に警告を発しておくことができるのです。

「常識外れなことをして会社に迷惑をかけたから減給処分」などと、大雑把なことはできないのです。

どういう規定なら具体的といえるかの基準としては、ある社員が不都合な行為を行ったときに、それがその規定に定める行為にあたるかどうか、社内で意見が分かれないということが目安になります。

つぎに、懲戒処分をするにあたっての手続き・手順が決まっていなければ、物事が進みません。

とくに、懲戒対象の社員には弁明の機会を与えなければなりません。

それ以前に、具体的な事実の確認も必要です。

何をどういう手順でどうやって懲戒処分にたどりつくのか、具体的なルールがなければなりません。

さらに、今まで社内でどのような不都合なことがあったか、会社はこれにどう対応したかの記録が残っていなければなりません。

懲戒処分は平等かつ公平でなければなりませんので、過去の事例との比較も重要になるからです。

 

<懲戒処分ができない社長>

懲戒処分の決裁権を持っているのは原則として社長です。

しかし、この社長が臆病で懲戒権を発動できないと困ります。

何をやっても許される会社になってしまい、モラルの低い社員しか残らなくなってしまいます。

社員が安心して働くためには、懲戒処分が必要なのです。

特に会社に対する貢献度の高い社員が独断で行動を起こし、会社に損害を与えてしまった場合には、社長としては大目に見ようと考えがちです。

これでは、他の社員の腹の虫がおさまりません。

懲戒処分をためらう社長は、社員の表彰をしていないことが多いように見受けられます。

表彰もするが懲戒もするという信賞必罰の方針でいけば、会社に対する貢献度の高い社員に対しては、何回か表彰し、時には懲戒処分ということもやりやすいと思います。

さらに、社長が臆病ではないのに懲戒処分をためらうケースがあります。

それは就業規則などの懲戒規定のバランスが悪いケースです。

たとえば、「セクハラをしたら懲戒解雇」という規定の会社では、ちょっと冗談を言っただけで解雇になりかねません。

こうした場合には、就業規則などの見直しが必要です。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/28|1,293文字

 

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

本採用にするとき、働きぶりに見合った月給に引き下げるというのは、不利益変更禁止の原則があってむずかしいので、どうしてもこのようになります。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法第12条第3項第5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示してあれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、明らかに最低賃金法違反となります。

この場合の所定労働時間は、給与計算に使う基準です。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、173.8時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×173.8時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が173.8時間であれば、

150,000円÷173.8時間=863.06円

ですから、現在、最低賃金がこれを上回る埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

<固定残業代がある場合> 

 最低賃金法施行規則第1条が「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」については最低賃金額に算入されないと定めています。

これにより、月給から固定残業代を差し引いた金額を所定労働時間で割って、最低賃金を下回れば明らかに違法ということになってしまいます。

 たとえば、月間所定労働時間が173.8時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、 

150,000円=P+P÷173.8時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、 

残業代抜きの基本給が131,137円、20時間分の残業代が18,863円となります。 

すると、この場合には131,137円が最低賃金の基準となり、 

131,137円÷173.8時間=754.53円

ですから、現在はどの都道府県でも最低賃金を下回ってしまい違法であることがわかります。

 

<試用期間の特例>

試用期間中の者については、特別な許可を得て、最低賃金を下回る月給にすることができる建前です。

最低賃金の減額の特例許可を受けたい場合、使用者は最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

もっとも、許可基準は厳しいですから、まず許可されることはありません。

 

解決社労士 柳田 恵一

 

2019/10/27|1,274文字

 

<通勤手当の性質>

労働基準法などに、使用者の通勤手当支払義務は規定されていません。

むしろ法律上、通勤費は労働者が労務を提供するために必要な費用として、労働者が負担することになっています。〔民法第485条〕

とはいえ、就業規則や雇用契約などで通勤手当の支給基準が定められている場合には、賃金に該当するとされています。〔昭和22年9月13日発基第17号通達〕

 

<就業規則の在り方>

たとえば、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【通勤手当】

第34条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合でも、その実費が支給されるものと解されます。

しかし、会社には遠回りのルートで通勤していることにして高い通勤手当を申請し、実際には近道のルートで通勤し実費との差額を着服していれば、この規定には反していることになります。

この場合、会社は差額の返金を求めることができますし、故意に行っていれば、懲戒処分の対象ともなりうる行為です。

もっとも、通勤に「要する」実費というのを厳密に解釈し、遠回りのルートでの通勤にかかる費用は、必ずしも通勤に「必要な」実費ではないという解釈も成り立つでしょう。

この点をより明確にしたいのであれば、次のように規定することも考えられます。

 

【通勤手当】

第〇〇条  通勤手当は、月額    円までの範囲内において、通勤に要する実費に相当する額を支給する。ただし、利用交通機関は、最も経済的でかつ合理的な最短順路のものとする。

 

こうした規定であれば、遠回りのルートで通勤していた場合には、その実費を支給する必要はありません。

会社に対して、遠回りの通勤ルートでの通勤を前提とした通勤手当の申請をしても、それは「最も経済的でかつ合理的な最短順路のもの」ではないとして却下されます。

むしろこうした規定を置いた場合には、会社の方で通勤手段やルートを確定して従業員に提示し、これに優る通勤方法が無ければ、これで通勤手当の申請をするように求めるというのが効率的です。

 

<通勤手当の不正受給>

就業規則で「実費」を支給すると定めてあれば、電車通勤で申請しておいて、実際には徒歩や自転車による通勤をした場合には、通勤手当の全額が不正受給となりえます。

ただ、徒歩や自転車による通勤は健康増進の点で望ましいと考えるのであれば、「実費」の所を「一般的な経費」として定めておいて、支給してしまうことも可能です。ただ、この場合には課税の問題が出てきます。

実際の不正受給で多いのは、勤務地の近くに転居したのに、会社への届出を怠っていて、従来の通勤手当を受給し続けるパターンです。

この場合には、もちろん差額の返金を求めることになりますが、通勤手当を着服する意図で会社への届出を怠っていた場合でも、直ちに返金した場合には、情状の点から懲戒処分を行うのは適当ではない場合が多いでしょう。

特に悪質であれば、始末書を提出させ反省を求める譴責(けんせき)処分までは、妥当な場合もあると考えられます。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/26|541文字

 

<雇用関係助成金支給のねらい>

厚生労働省は企業に対して、数万円~数百万円の多種多様な助成金を支給しています。

もともと厚生労働省などの行政機関というのは、立法機関である国会が作った法律を誠実に執行する義務を負っています。

しかし法律を執行するだけでは、なかなか思い通りの成果が現れないこともあります。

そこで雇用の分野を中心として、政府の政策に沿った努力をする企業に、助成金を支給することで、政策の推進を図ろうとしているのです。

たとえば、解雇しないで雇用し続ける努力、就職困難者を雇い入れる努力、職場環境を整える努力、社員の能力を向上させる努力などです。

 

<雇用関係助成金の財源>

助成金の財源は、雇用保険料です。

健康保険や厚生年金の保険料は、会社と労働者とで折半します。

しかし雇用保険では、会社の方が労働者より保険料が高いのです。

この高い分が、助成金の財源なのです。

ですから企業にとっては、「支給」というより「返金」ということになります。

 

<受給手続が面倒な理由>

厚生労働省がブラック企業に助成金を支給すれば問題視されますから、まず、会社の健全性がチェックされます。

そして助成金支給の基準に従った、政策の推進に役立つ活動があるかのチェックも行われます。

この二重のチェックのために、手続が簡単ではないのです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/25|1,266文字

 

<労働者名簿の調査>

労働者名簿は、法定三帳簿の一つですから、労働基準監督署の監督が入った場合には、当然に調査対象とされる機会は多いものです。

しかし、労働者名簿単独で調査対象とされることは少なく、むしろ他の目的があって、その手掛かりを探るために調査されることが多いのです。

労働者名簿単独でのチェックポイントとしては、法定の項目がきちんと書かれていて、労働者の入社から退職の3年後まで保管されているかという点になります。〔労働基準法第107条、労働基準法施行規則第53条〕

また、本籍やマイナンバーなど記入されていてはいけない項目もありますので、余計なものが入っていないかのチェックもありえます。

 

<未払い残業代の調査>

労働基準監督署の監督が入った場合に、労働者名簿の中で役職者の比率が高いと、役職を与えて管理監督者扱いにして残業代をカットしている可能性が疑われます。

この場合には、次に賃金台帳との照合が行われ、残業代支払い対象の役職者がピックアップされることになります。

そしてさらに、未払い残業代の計算という手順になります。

 

<社会保険未加入の調査>

年金事務所による調査では、労働者名簿の中の正社員比率と、社会保険の加入者数を比較して、正社員しか社会保険に加入させていないのではないかと疑われます。

この場合には、タイムカードや出勤簿で正社員以外の従業員の勤務実態が確認され、社会保険加入対象のパート社員などがピックアップされることになります。

そしてさらに、一人ひとりの加入日の特定や、未払い保険料の計算という手順になります。

 

<雇用保険関係の不正受給の調査>

ハローワークの調査では、雇用保険関係の給付を受けた人について、内定時期や入社日を確認するために、労働者名簿を調査することがあります。

この場合には、万一不正受給があったとしても、基本的には不正受給していた従業員が責められることになります。

そして、場合によっては、受給額の3倍が徴収されるということになります。

ただし、会社が従業員の不正受給に加担しうるケースでは、この点についての調査に発展する可能性もあります。

 

<労働安全衛生管理体制の調査>

労働基準監督署が労働安全衛生の面で監督に入った場合には、事務所や店舗ごとの人数から、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業医の選任の要否がチェックされます。

同様に、安全委員会、衛生委員会の開催、健康診断結果報告の有無などがチェックされます。

この場合には、会社が法定の手続きなどをしているか、届出書類の控えの提示を求められることになります。

そしてさらに、委員会の議事録や健康診断個人別結果票の控えなどの確認という手順になります。

 

<必要な対応>

監督・調査について事前に予告があれば事前に、予告がなければ事後に社労士にご相談ください。

その場限りの対応をしてしまい、再調査が入ったときにガツンとやられるケースが多いようです。

やはり、ごまかすのではなく、長い目で見て会社が良くなるようにきちんとした対応をしたいものです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/24|1,415文字

 

<モデル就業規則の改訂>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版は、平成31(2019)年3月版です。

しかし、これ以前、平成28(2016)年3月版から平成30(2018)年1月版に改定されたとき、家族手当の規定から配偶者手当が削除されています。〔第33条〕

モデル就業規則は、労働基準法など労働法の改正があったときには、法改正に対応して適法な内容となるように改訂されています。

ですから、モデル就業規則が改訂されたときには、各企業の就業規則も変更しなければ、違法な内容を含んだままになる可能性が高いことになります。

また、政府の方針に変更があった場合や、政府が新しい方針を打ち出した場合にも、これに沿った改訂が行われます。

家族手当の規定から配偶者手当が削除されたのは、政府が少子高齢化対策の継続的な推進をより強化していることに対応しています。

 

<家族手当の規定> 

モデル就業規則の最新版では、家族手当が次のように規定されています。

 

【家族手当】

第33条  家族手当は、次の家族を扶養している労働者に対し支給する。

 ① 18歳未満の子

    1人につき  月額     円

 ② 65歳以上の父母

    1人につき  月額     円

 

 昔ながらの就業規則とは、その内容が大きく異なっています。

 

<配偶者手当の在り方>

モデル就業規則の中で、家族手当の規定がこのようになっているのは、配偶者手当の在り方について、厚生労働省が次のように考えているからです。

 

【配偶者手当の在り方】

配偶者手当は、税制・社会保障制度とともに、就業調整(働く時間の抑制)の要因となっています。今後人口が減少していく中で、働く意欲のあるすべての人がその能力を十分に発揮できるようにするため、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整につながる収入要件がある配偶者手当については、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直しを進めることが望まれます。

 

この考え方は、働き方改革の推進にも沿った内容となっています。

 

<配偶者手当の見直しに当たっての留意点>

配偶者手当を減額するにせよ、廃止するにせよ、現在手当を受けている従業員にとっては、不利益変更となります。

そのため、厚生労働省は配偶者手当の見直しに当たっては、次の点に留意するよう注意を呼びかけています。

 

【配偶者手当の見直しに当たっての留意点】

配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要があります。

①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組

②労使の丁寧な話合い・合意

③賃金原資総額の維持

④減額になる方への必要な経過措置

⑤決定後の新制度についての丁寧な説明

 

就業規則の変更にあたって、従業員のニーズを把握すること(①)、労使の話し合い(②)は、常に必要なことですし、働き方改革の推進にあたっては不可欠な手順です。

また、賃金の総額が減少するような変更は、就業規則の改定に名を借りた人件費削減であることが疑われます(③)。

そして、賃金が減額となる従業員に必要な経過措置(④)、たとえば調整給の支給などは、不利益変更をカバーするための措置です。

最後に、就業規則の変更については、周知することでその効力は発生しますが、配偶者がいない、または扶養していない従業員が、配偶者を扶養するようになっても、かつてのように配偶者手当は支給されないということを、丁寧に説明しておかなければ期待を裏切ることになりますので、この点で特別な配慮が必要だということです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/23|1,254文字

 

<新聞の報道>

日本経済新聞は、令和元(2019)年10月22日朝刊の1面トップで、「セブン、時短店を容認 深夜休業に指針 来月まず8店 24時間モデルに転機」と伝えています。

株式会社セブン-イレブン・ジャパンが、営業時間を短縮した時短営業を本格的に実施すると発表したそうです。

コンビニは人手不足や最低賃金の上昇で24時間営業がしにくくなり、出店が減少し閉店が増加する傾向にあります。

今後は、効率化に向けた見直しを迫られます。

 

<昔と今>

セブン-イレブンが日本に誕生したとき、営業時間は午前7時から午後11まででした。だからこそ、セブン-イレブンという名称になったわけです。

お店は住宅地の近くにありましたし、スーパーマーケットの開店前や閉店後も便利に利用できました。

最近では、24時間営業の店舗がほとんどですし、住宅地に近い店舗が閉店し、駅に新しい店舗が誕生するという傾向が顕著でした。

 

<会社の立場>

会社としては、営業時間の短縮により売上が減少するのは困ります。

ライバル店にお客様を取られてしまうこともあるでしょう。

そのライバル店が、近くのセブン-イレブンであれば複雑な話になってしまいます。

会社としては、今後も24時間営業を原則とする方針です。

 

<店長の立場>

営業時間を短縮して売上が減少すれば、店長の収入も減少します。

しかし、店長は経営者の立場にあるとされ、労働基準法その他労働法の保護が及びません。

働き方改革も対象外ですから、家庭生活と仕事とのバランスを取るのも大変です。

何より、健康を害してしまっては元も子もありません。

こうして営業時間の短縮を強く希望する店長が現われるようになりました。

 

<店員の立場>

新人は、多くの場合、最低賃金に近い時給から働き始めます。

それでも、慢性的な人手不足により、採用のハードルは高くありません。

特に、午後10時から翌日午前5時までは、労働基準法の定める25%の深夜割増がありますから、とりあえず収入を得るには手軽なイメージがあります。

しかし、人手不足の深刻化によって、日中の仕事でも賃金の高い求人が出るようになりました。

やがて、思ったほど楽ではないと感じた店員は、別の職種に転職していきました。

 

<お客様の立場>

働き方改革によって、労働時間の短縮が進んでいることもあり、一般のサラリーマンがスーパーマーケットで買い物をして帰るのも自然なことです。

賃金の減少傾向による節約志向の拡大も進んでいますから、スーパーマーケットで少しでも安い商品を購入しようとするのも当たり前です。

 

<コンビニの転換期>

これまでの急成長を考えると、コンビニ各社が自らのスタンスを崩したくないのも分かります。

しかし、店長、店員、お客様は、確実に働き方改革の影響を受けています。

店長は、労働法の保護を受けられないことに不満と不安を感じています。

店員には、転職しやすい環境が整いつつあります。

お客様は、プライベートの時間が増えて、必ずしも便利さ(コンビニエンス)を追求しなくなってきています。

こうしたことから、コンビニ業界全体が転換期にあると考えられます。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/22

 

全国社会保険労務士会連合会では、令和元(2019)年4月から、国の委託事業である「働き方改革推進支援事業」を実施しています。

 

連合会が行っている事業は、都道府県ごとに設置されている「働き方改革推進支援センター」に申し込まれた相談案件に対して、社労士などの労務管理の専門家(派遣専門家)が個別企業を訪問して相談に応じる事業(出張相談)と中小企業団体や市区町村、労働局等が設置した相談窓口で相談に応じる事業(窓口相談派遣)です。

連合会が委嘱している派遣専門家は1,768名(うち社労士は1,615名)であり、全国津々浦々の企業や相談窓口で、毎日大勢の社労士等が相談事業に従事しています。〔9月24日現在〕

 

連合会の「働き方改革推進支援本部」(全国センター)では、職員15名体制(10月にさらに8名程度の増員を行う予定)で、連日、出張相談を希望する企業や相談窓口と派遣専門家との日程調整、派遣専門家への謝金、旅費等の支払い、厚労省など関係機関との調整などに当たっています。

 

企業からの出張相談の申込みも徐々に増加しており、派遣専門家の出番はさらに増加することが予想されます。

本事業は、今年度も来年度も厚生労働省の最重点事業に位置付けられています。

 

↓ 表をクリックすると別画面が開きます ↓

 

働き方改革推進支援センター

2019/10/22|1,374文字

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことを欠勤控除といいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。

欠勤控除は、主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令に、欠勤控除を直接定めた規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働いてください。賃金を支払います」「働きます。賃金を支払ってください」という労使の合意によって成り立っているので、労働者が働かなければ賃金を支払わなくても良いという理論です。

こうして、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<時間単価の計算>

欠勤控除を考える場合、まず時間単価を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、時間単価となります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

この不都合は、カレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を上回る場合に発生します。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設ける工夫が必要です。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない2月など、その月のカレンダーから割り出した現実の所定労働日数が、給与計算上定められた形式的な所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。

この場合には、減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料を賃金から控除することは、法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら賃金が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に細かく規定しておくことは稀でしょうから、会社と労働者とで話し合い決めればよいことです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/21|1,399文字

 

<反社会的勢力との関わり>

平成19(2007)年6月19日、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団資金源等総合対策ワーキングチームでの検討を経て、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられました。

この指針にも支えられて、反社会的勢力の活動は下火となりつつあります。

また、お笑い芸人の反社会的勢力との関わりが発覚した事件を見ても、企業の所属メンバーが反社会的勢力と関わることによって、企業の信用低下を招くのは明らかです。

こうしたことから、各企業は、従業員が反社会的勢力との関わりを持たないよう予防策を講じる必要があります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、反社会的勢力との関わりを禁止する規定と、この禁止に違反した場合の懲戒規定をセットで置く必要があります。

 

禁止規定は、次の例のようになります。

 

【遵守事項】

第〇〇条  従業員は、以下の事項を守らなければならない。( 中 略 )

⑪暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

⑫反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

⑬その他当社従業員としてふさわしくない行為をしないこと。

 

また、懲戒規定は次の例のようになります。

 

【懲戒解雇】

第〇〇条 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇〇条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。( 中 略 )

⑨第〇〇条第11項、同条第12項に違反し、その情状が悪質と認められるとき。

⑩その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

<誓約書の提出>

就業規則を周知することによって、反社会的勢力との関わりを禁止することはできるのですが、すでに関わりをもった人物が新たに入社してくることを防止することはできません。

そこで、新人の入社にあたっては、次のような誓約書の提出を求めるようにします。

 

令和  年  月  日

〇〇〇○ 株式会社

代表取締役 〇〇 〇〇 殿

 

誓 約 書

 

貴社に採用されるにあたっては、下記の事項を遵守することを誓約いたします。

 

 

一、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

 

二、反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

 

以 上

 

氏名           印 

 

 

他にも誓約書の提出を求めている場合には、タイトルを「反社会的勢力の排除に関する誓約書」とすればよいでしょう。

 

<反社会的勢力と関わった従業員の解雇>

上記の就業規則や誓約書は、主に反社会的勢力との関わりを防止するための対策です。

実際に、従業員が反社会的勢力との関わりをもっていることが判明した場合には、安易に懲戒解雇などすることは危険を伴います。

地域の警察、暴力追放運動推進センター、弁護士会などに相談しながら、慎重に対応することをお勧めします。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/20|1,191文字

 

<雇用保険の求職者給付>

雇用保険では、労働者が失業した場合に必要な給付が行われます。

その代表は、「失業手当」と呼ばれることが多い求職者給付です。

一般にはあまり知られていませんが、この求職者給付は、仕事を辞めた時(離職時)の年齢により2種類に区分されています。

 

<65歳未満の基本手当>

離職時の年齢が65歳未満の一般の加入者(一般被保険者)は、離職時に一定の条件を満たしていれば、ハローワークで手続きすることによって、求職者給付を受けることができます。これを基本手当といいます。

一定の条件というのは、離職日前2年間に雇用保険加入期間が12か月以上あることです(離職理由によっては1年間に6か月以上の例外あり)。

この場合、離職の理由、離職時の年齢、雇用保険の加入期間(算定基礎期間)によって、所定の給付日数(90日~360日)が決まり、1日につき何円という計算で、定期的に給付を受けます(原則として4週間ごと)。

 

<65歳以上の高年齢求職者給付金>

65歳以上の加入者(高年齢被保険者)が離職した場合には、この求職者給付が一時金で支給されます。これを高年齢求職者給付金といいます。

これを受給する条件は、離職日前1年間に雇用保険加入期間が6か月以上あることです。

この場合、加入期間が1年未満なら30日、1年以上であれば50日の給付日数に相当する金額の給付金が、一括で支給されます。しかも、年金との併給ができます。

 

<循環的離職者の問題>

循環的離職者とは、「過去3年以内に3回以上同一の事業所に連続して就職し、かつ、その間に1回でも求職者給付を受けたことがある者」をいいます。

循環的離職者が、同一の事業所に就職した場合には、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして、本人だけでなく事業主も共謀して不正受給したものとされる場合があります。

高年齢求職者給付金では、受給の条件が、「雇用保険加入期間が6か月」と比較的短期間であるため、こうしたことが発生しやすいといえます。

 

<法改正による問題の拡大>

雇用保険に加入している労働者は、65歳を迎えても雇用保険に加入したままです。

そして、65歳に達してから離職してしまうと、再就職しても雇用保険に加入しないというのが法改正前のルールでした。

ところが、平成29(2017)年1月1日に雇用保険法が改正され、65歳以上で再就職しても、一定の条件を満たせば雇用保険に加入するルールに変更されたのです。

これによって、以前は一生に1回しか受けられなかった高年齢求職者給付金を、何回も受けられるようになったのです。

こうして、一般の加入者に見られた循環的離職者の問題は、むしろ65歳以上の加入者について大きくなってしまいました。

 

受給資格や雇用保険への加入条件などについては、多数の例外があります。詳細はお近くのハローワークでご確認ください。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/19|1,018文字

 

<ガイドラインができた理由>

障害基礎年金や障害厚生年金などの障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されています。

しかし、精神障害や知的障害の認定で、地域によりその傾向に違いが生じていることが確認されました。

こうしたことを踏まえ、精神障害や知的障害の認定が障害認定基準に基づいて適正に行われ、地域差による不公平が生じないようにするため、厚生労働省に設置した「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」で、等級判定の標準的な考え方を示したガイドラインや適切な等級判定に必要な情報の充実を図るための方策について、議論がなされました。

この専門家検討会の議論を踏まえて、精神障害と知的障害の認定の地域差の改善に向けて対応するため、『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』が策定され、平成28(2016)年9月1日から実施されています。

 

<等級判定の標準的な考え方を示したガイドライン>

精神障害と知的障害の障害年金の認定に地域差による不公平が生じないよう、 障害の程度を診査する医師が等級判定する際に参考にする全国共通の尺度と して、以下を盛り込んだガイドラインが策定されました。

・診断書の記載事項を踏まえた「等級の目安」

・総合的に等級判定する際の「考慮すべき要素」の例示

今後は、障害認定基準とこのガイドラインに基づいて、等級判定を行います。

 

<診断書(精神の障害)の記載要領>

障害年金請求者や受給者の病状と日常生活状況を適切に診断書へ反映するために、診断書を作成する医師向けに、診断書の記載時に留意すべきポイントなどを示した記載要領が作成されました。

 

<請求者等の詳細な日常生活状況を把握するための照会文書>

障害の程度を診査する医師が、障害年金請求者や受給者の詳細な日常生活状況を把握するために、 請求者等へ照会する際に使用する文書(「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」)が作成されました。これによって、主な照会事項が整理されました。

 

<年金請求をする人が心がけること>

障害年金を請求しようとする場合には、医師が正確に判断できるよう、普段の生活ぶりなどについて、具体的な様子をていねいに伝える必要があります。

しかし、判断するのは医師の権限です。

ご自分で年金を請求する場合でも、社会保険労務士が代理して行う場合でも、このことは忘れないようにしましょう。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/18|1,870文字

 

<同一労働同一賃金の説明>

「同一労働同一賃金」という言葉を素直に読めば、「同じ仕事をしている人には同じ賃金を支払う」という意味に取れます。

ところが、同一労働同一賃金について、厚生労働省は次のように説明しています。

 

【同一労働同一賃金とは】(厚生労働省ホームページより)

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 

「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、雇用形態間の不合理な待遇差を問題視しています。

 

<法律の規定>

また、同一労働同一賃金に関わる労働契約法第20条は、次のように規定しています。

 

【期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止】

第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

こちらにも、「同じ仕事をしている」というキーワードは現れず、有期契約と無期契約とで不合理な待遇差はいけないと言っています。

 

厚生労働省の説明と労働契約法第20条を合わせると、契約形態や雇用期間の有無の違いによって、不合理な待遇差があってはならないと言っているのです。

 

<働き方改革関連法>

「パートタイム労働法」は、法改正により「パートタイム・有期雇用労働法」となり、令和2(2020)年4月1日から施行(中小企業は令和3(2021)年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

この中には、「同じ仕事をしている」場合についての規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

つまり、「同じ仕事をしている」のであれば、正社員、パート社員、契約社員という違いにかかわらず、待遇を差別せず平等にしなさいとしています。

ここでやっと「同一労働同一賃金」という言葉に対応する規定が現れました。

一方で、労働契約法第20条に相当する規定も、そのまま残されています。

 

<同一労働同一賃金の意味>

こうして見ると、「同一労働同一賃金」という言葉には、次の2つの意味が含まれていることがわかります。

 

均等待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が同じであれば、同じ待遇にする。

均衡待遇 = 職務、責任、異動の範囲、その他の事情が違えば、その違いに応じてバランスの取れた待遇にする。

 

均等待遇は、同じ仕事なら同じ待遇にするという「平等」の考え方です。

均衡待遇は、違う仕事なら違いに応じた合理的な待遇にするという「公平」の考え方です。

「平等」と「公平」を両方含む概念は、「公正」でしょう。

だとすれば、「同一労働同一賃金」は「公正待遇」と呼んだ方がわかりやすいでしょう。

各企業は、不平等や不公平の無い「公正待遇」の実現を目指して変革を遂げるよう迫られているのです。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/17|892文字

 

<新人を大切にしたい思い>

せっかく正社員として採用した新人が、今一つ自主性が足りないとか、仕事の覚えが悪いとか、試用期間が終わっても本採用に踏み切れないときがあります。

こんなとき、本人と相談して、試用期間をあと1か月だけ延長して様子を見たらどうでしょう。

社員に優しい、新人を大切にする会社のイメージでしょうか。

 

<労働法の世界では>

求人広告に「試用期間3か月」と書いてあったのに、実際には1か月延長して4か月になったなら、その求人広告はブラック求人とされても反論できません。

就業規則に「3か月の試用期間の後、本採用とする」と書いてあったのに、4か月に延長したら、ブラック企業と言われるかもしれません。

試用期間延長の話のときには喜んで同意した人でも、試用期間を延長したあげく、本採用にならなかったら、家族や労基署に相談するかもしれません。

おそらく試用期間と本採用後では、給与などの処遇にも差があるでしょうから、試用期間の延長は、それだけを見ると労働者に不利益な扱いです。

こんなとき、労働法の世界では、「本人の同意」は原則として効力を否定されてしまいます。

 

<それでも延長したいなら>

就業規則には「試用期間経過後に本採用の条件を満たしていない場合には、会社から試用期間の延長を提案することができ、本人の同意のもと最大6か月間にまで延長できるものとする」という規定を置いておけば、このルールに基づく延長であると説明できます。

もっと大事なのは、「本採用の条件」を書面で明らかにしておくことです。

たとえば、一般事務であれば「次の条件を満たしていない場合には、本採用としない。1.他の社員との人間関係を良好に保っていること。2.無遅刻無欠勤であること。3.電話応対が自部署の他の社員と同等にできること。」といった内容を、説明のうえ新人に渡しておきます。

そして、1か月後、2か月後にできているかどうか、面談をして確認します。

ここまでして試用期間終了のかなり前に、「これができていないので、試用期間を延長したいがどうか」という提案をすれば、結果的に本採用に至らなくてもあきらめがつくでしょう。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/16|674文字

 

<実質的には短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法第21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法第20条〕

とはいえ、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とするかしないかの判断が必要となります。

遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。

すると、退職日が10日遅れ、翌月10日が退職日になり、翌月分の社会保険料が発生するなど、ややこしいことになってしまいます。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

解決社労士 柳田 恵一

2019/10/15|1,148文字

 

<障害者手帳>

障害者手帳には、身体障害者手帳、精神障害者福祉保健手帳、療育手帳の3つがあります。

こうした手帳を持っていることで、様々な福祉サービスを受けることができます。

また、仕事探しのときには、障害者雇用枠への応募が可能です。

障害者雇用率が段階的に引き上げられていることにより、企業も障害者の雇用には積極的にならざるを得ません。

 

<障害年金受給の基本3要件>

障害者を採用するにあたっては、障害年金の受給を前提に給与水準を考えてしまうこともあります。

しかし、障害者手帳を持っているからといって、障害年金を受給する資格があるとは限らないのです。

障害年金を受けるには、基本的に初診日、保険料の納付、障害の状態についての3要件を満たしていることが必要です。

 

【初診日要件=初診日が被保険者期間等にあること】

障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの期間にあること

① 国民年金または厚生年金に加入している期間(被保険者期間)

② 20 歳前または 60 歳以上 65 歳未満で国内に居住している期間

原則として、初診日が国民年金加入期間にあれば障害基礎年金、厚生年金加入期間にあれば障害厚生年金に振り分けられることになります。

初診日が不明であれば、この振り分けができないことになります。

 

【納付要件=保険料の納付要件を満たしていること】

次の①または②を満たしていること

① 初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上あること

② 初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に保険料の未納期間がないこと(初診日が2026年4月1日前の場合の特例)

ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

保険料を支払う経済的な余裕が無ければ、保険料の免除を受ければ良いわけです。何も手続きをしないうちに障害者になってしまうと、この納付要件を満たさないことがあります。

 

【障害要件=一定の障害の状態にあること】

① 障害認定日に、障害の状態が法令で定める障害の程度(障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級~3級)に該当すること

② 障害認定日後に、障害の程度が増進し、65 歳になるまでに障害の状態が法令で定められた状態に該当すること

障害認定日は、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月をすぎた日、または1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。

症状が固定することを、治癒(ちゆ)と言うことがあります。

障害基礎年金では、3級の障害には年金が支給されません。

 

解決社労士 柳田 恵一

<本来は労働者のための労災保険制度>

労災保険は、労働者の業務や通勤による災害に対して、保険給付を行う制度です。

しかし、労働者ではなくても、その実態から労働者に準じて保護すべきであると認められる人は、特別に任意で加入できることになっています。

これが、特別加入制度です。

中小企業の事業主・代表者は、一人で何役もこなしていて、その業務内容が一般の労働者と重なる部分が多いものです。

そこで、労働者に準じて保険に加入できるようになっているのです。

 

<中小事業主等の範囲>

つぎの表の労働者を常時使用する事業主・代表者、または、その事業に従事する家族従事者や代表者以外の役員などが対象です。

業種

企業全体の労働者数

金融業

保険業

不動産業

小売業

50人以下

卸売業

サービス業

100人以下

その他の業種

300人以下

 

<初めて特別加入をする場合の条件>

つぎの3つが加入の一般的条件となります。

・雇っている労働者について、労災保険が適用されていること。

・労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること。

・所轄の都道府県労働局長の承認を受けること。

 

2019.10.14. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働省のモデル就業規則のねらい>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)には、次のような説明があります。

 

【モデル就業規則の活用に当たって】

このモデル就業規則(以下「本規則」といいます。)は、平成31年4月以降に施行される労基法等の規定を踏まえ就業規則の規程例を解説とともに示したものです。本規則はあくまでモデル例であり、就業規則の内容は事業場の実態に合ったものとしなければなりません。したがって、就業規則の作成に当たっては、各事業場で労働時間、賃金などの内容を十分検討するようにしてください。

 

モデル就業規則の各規定の内容を十分検討して、各事業場の実態に合ったものとすれば、労基法などの規定に基づいた就業規則が完成します。

 

<年俸制とは>

プロ野球の選手のように、年1回、社員と会社とが交渉して、たとえば4月から翌年3月までの年俸を決めることは可能です。

会社の業績と社員の働きぶりを踏まえて、期待できる内容に見合った金額とするわけです。

このとき、年俸はすべて込みの報酬だと誤解されがちです。

決まった金額さえ支払えば、残業代などは発生しないというのは誤解なのです。

プロ野球の選手とは違い、サラリーマンには労基法などが100%適用されます。

当然ですが、年俸制にすれば労基法を無視できるということはありません。

残業手当、休日出勤手当、深夜手当の支払が必要である一方、欠勤すれば欠勤控除をすることも可能です。

「年俸制の社員が休日にケガをして長期入院してしまった。年俸を下げてはいけないのか?」という心配は無用です。

これらのことは、就業規則に定めておけばよいのです。

一定の時間・金額の残業代を年俸に含めるということも、正しいルールと運用で可能となります。

 

<結論として>

年俸制については「プロ野球の選手と同様」という勘違いがかなり多いのです。

また、具体的にルールを作ろうとすると、各事業場の実態に合ったものとすることが簡単ではありません。

こうしたことから、モデル就業規則の中に、年俸制についてのモデル例と解説を加えることは、かえって混乱を招くともいえます。

今現在、年俸制を導入している企業や、これから導入を検討している企業では、規定だけでなく運用についても、弁護士か社労士のチェックを考えていただきたいと思います。

 

2019.10.13. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 ①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、承認しなくても  日経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<退職承認後の退職日変更>

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、この時点で労働契約の合意解除が成立しています。

ところが、早く転職先に入社したい、早く失業手当(雇用保険の基本手当)をもらいたいなどの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したくなることもあります。

また、転職先から内定の取消を受けたり、思うように転職先が見つからなかったりすれば、退職願の退職日よりも遅く退職したくなることも、退職を撤回したくなることもあります。

こうして、従業員側から「退職日を早めたい」「退職日を遅らせたい」「退職を撤回したい」という要求が出たとしても、会社はこれに応じる義務がありません。労働契約の合意解除は既に成立しているからです。

しかし、会社がこれに応じることは自由ですし、退職願の退職日とも従業員の退職希望日とも異なる新たな退職日を合意して決定することもできます。

こうしたことは、一般には就業規則に規定されていないのですが、労働契約の合意解除も、合意による変更も、労働基準法などに規制する規定が無いので、契約自由の原則から当然に認められることなのです。

 

<民法と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります。〔民法第627条第2項〕

実際の就業規則には「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、退職希望者から民法の規定を持ち出されると反論できません。

「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

2019.10.12. 解決社労士 柳田 恵一

<資格喪失手続きを忘れる原因>

所定労働時間が週20時間以上であることが、雇用保険の資格を取得する条件となります。

ですから、週3日、1日6時間勤務のパート社員が、週4日勤務になれば、雇用保険に入ることになります。

このように、資格を取得するときの手続きを忘れることはあまりないでしょう。

しかし、雇用保険の資格喪失となると、雇用保険の離職=退職というイメージが強いので、退職したときだけ資格喪失を意識しがちです。

ところが、所定労働時間が週20時間未満となったときも、資格喪失手続きが要るのです。こちらは忘れやすいのです。

もう一つ、労働者と兼務していた役員が、100%役員になった場合にも、雇用保険の資格を喪失します。

今まで、給与と報酬の両方をもらっていた役員が、報酬だけになるときは要注意です。

雇用保険の資格喪失手続きを忘れられた本人にとっても、雇用保険料は社会保険料よりもはるかに安いので、給与明細書を見たときにピンと来ないと思います。

 

<本人について>

所轄のハローワークで、さかのぼって資格喪失手続きを行います。

このとき、「遅延理由書」という書類の添付を求められるかもしれませんので、事前に相談しておくことをお勧めします。

また、ご本人に給与から控除してしまった保険料の返金を行います。

念のため、計算書と領収証を作ったほうがよいでしょう。

 

<会社の負担した保険料について>

労働保険料の支払いは、毎年7月の年度更新で行います。

間に合うのなら、データを修正して余計な保険料を支払わないようにしましょう。

しかし、確定保険料を多く計算して年度更新を済ませてしまった場合には、手続きをやり直して返金してもらうのは、返金してもらう金額と必要な時間や労力を比較すると得策ではありません。

それよりは、再発防止のためにマニュアルを改善しておくことのほうを強くお勧めします。

 

2019.10.11. 解決社労士 柳田 恵一

<結論として>

勤務時間に見合った通常の給与を支払えば、休職者の意思に反して勤務させるのでない限り違法ではありません。

たしかに、ノーワーク・ノーペイの原則から、会社は休職中の給与を支払う義務がありません。

しかし、休職中に必要があって勤務した場合には、その勤務時間に見合った通常の給与を支払わなければなりません。

 

<休職者の合意の有無>

育休中の勤務のように、事前にある程度出勤の予定が立てられる場合には、会社と休職者とで話し合って、出勤日や時間を予定することができます。

この予定に従って勤務してもらう分には、休職者の事前の合意があるので、原則として問題がありません。

しかし、会社側が急な必要を感じて、休職者に出勤を要請する場合には、休職の趣旨から当然に休職者の合意が必要と考えられます。

 

<法の規定>

たとえば、雇用保険の育児休業給付金では、就業している日数が支給単位期間(1 か月ごとの期間)ごとに10 日(10 日を超える場合は就業していると認められる時間が80 時間)以下であることが、支給要件とされています。

つまり、育児休業中であっても、ある程度の勤務は想定の範囲内とされていることになります。

ただ、健康保険の傷病手当金や出産手当金などでは、報酬の一部を受けることができる場合の差額支給のルールが定められています。

この場合には、休職者に不利とならないように勤務してもらう配慮が必要でしょう。

 

2019.10.10. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法の規定>

年次有給休暇を付与した場合は、①平均賃金、②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金、③健康保険法第40条第1項に定める標準報酬月額の30分の1に相当する額(1の位は四捨五入)のいずれかの方法で支払わなければなりません。

ただし、③については労働者代表との書面による協定が必要です。

また、これらのうち、いずれの方法で支払うのかを就業規則等に定めなければなりません。〔労基法第39条第7項〕

この①~③の中で、最も多く用いられているのは②の方法で、就業規則に次のような規定が置かれているのを目にします。

 

【年次有給休暇の賃金】

第〇条  年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支払う。

 

ここで「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

 

<通勤手当の問題>

「通常の賃金」の中に通勤手当は含まれるのでしょうか。

一般には、通常の出勤・勤務を想定した賃金ですから、通勤手当も含まれます。

特に、月給制で1か月定期代を前払いで支給しているような場合には、一部分だけ定期代の払い戻しを受けることができませんから、通勤手当を削るのは不合理です。

ある会社で、年次有給休暇を取得した場合に精皆勤手当を不支給とする就業規則について、裁判で争われました。

裁判所は、こうした就業規則は「労働者が現実に出勤して労働したことの故に支払われる実費補償的性格の手当でない限り、年休制度の趣旨に反する」と述べています(大瀬工業事件 横浜地判昭和51年3月4日)。

ということは、「実費補償的性格の手当」であれば、年次有給休暇取得日に不支給とすることも制度趣旨に反しないことになります。

たとえば、就業規則で通勤手当の支払いについて「実費を後払い」と規定しているような場合には、「実費補償的性格の手当」と考えられますので、実際の出勤日数に応じた通勤手当を支給することにも十分な合理性があります。

いずれにせよ、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の通勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<夜勤がある場合>

毎週特定の曜日に夜勤があって、夜勤手当が付いている場合、この日に年次有給休暇を取得すると、夜勤手当も支給されるのかという問題があります。

しかし、「通常の賃金」とは、通常の出勤をして、その日の所定労働時間だけ労働した場合に支払われる賃金です。

やはり夜勤手当を付けて計算するのが、一般的には合理的でしょう。

ただ、当日誰か別の人が夜勤に入り、後日、その埋め合わせで、いつもと違う曜日に夜勤に入ったとすると、夜勤予定日に年次有給休暇を取得したとき1回多く夜勤手当をもらうことになります。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で個人ごとに夜勤が割り当てられるような場合には、話がもっと複雑になります。

こうした場合にも、他の規定との整合性を踏まえつつ、労使の話し合いのもとに、年次有給休暇取得日の夜勤手当について、就業規則に定めておくことがトラブル予防のためには必要です。

 

<日によって労働時間が違う場合>

パート社員などでは、特定の曜日だけ所定労働時間が長い雇用契約の人もいます。

いつもその曜日に年次有給休暇を取得すれば、給与の支給額が増えてお得だということになります。

本人が特定の曜日ばかり時季指定をしても、これを不当として使用者が時季変更権を使うことはできません。

これが特定の曜日ではなく、シフト制で月に何回か所定労働時間の長い日があるということになると、話がもっと複雑になります。

こうした場合には、所定労働時間の加重平均で年次有給休暇の賃金を計算することにも、それなりの合理性があると思われます。

法令に規定の無い、変則的な内容を就業規則に定める場合には、所轄の労働基準監督署と相談のうえ、内容を決定することをお勧めします。

 

<平均賃金という方法>

上記に現れた変則的なケースでは、「②所定労働時間働いたときに支払われる通常の賃金」ではなく「①平均賃金」で計算することを、就業規則や労働条件通知書に規定しておいた方が妥当な場合もあります。

これによってトラブルは防げるのですが、残業手当が多い場合には、「①平均賃金」が「②通常の賃金」を大きく上回る恐れもあります。

また、過去3か月の平均値を計算する手間もかかりますから、給与計算を担当する人との話し合いも必要でしょう。

 

2019.10.09. 解決社労士 柳田 恵一

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。

こうして、新人の入社の時にあらゆる同意書を書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

このような不合理な結果を考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を保護することです。

労働者自身の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養から外れてしまうので受け取りを辞退します」という申し出があったとします。

店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。

しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら、権利が時効消滅していない限り拒めません。〔労働基準法第24条第1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。

それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら、権利が時効消滅していない限り会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、ある意味で会社に束縛されています。

しかし、退職すれば自由になります。

そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです

 

2019.10.08. 解決社労士 柳田 恵一

<労働経済白書>

厚生労働省は、令和元(2019)年9月27日の閣議で「令和元年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を報告し公表しました。

「労働経済白書」は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書です。

今回の「労働経済白書」では、人手不足下における「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。

 

<白書の主なポイント>

厚生労働省は、白書の主なポイントを次のようにまとめています。

 

【白書の主なポイント】

・多くの企業が人手不足を緩和するために、求人条件の改善や採用活動の強化などの取り組みを強化している一方で、「働きやすさ」や「働きがい」を高めるような雇用管理の改善などについては、さらに取り組んでいく必要がある。

 

・「働きやすさ」の向上が定着率などを改善し、「働きがい」の向上が定着率に加え、労働生産性、仕事に対する自発性、顧客満足度などさまざまなアウトカムの向上につながる可能性がある。

 

・「働きがい」を高める取り組みとしては、職場の人間関係の円滑化や労働時間の短縮などに加えて、上司からの適切なフィードバックやロールモデルとなる先輩社員の存在を通じて、将来のキャリア展望を明確化することが重要である。

 

・質の高い「休み方」(リカバリー経験)が疲労やストレスからの回復を促進し、「働きがい」を高める可能性があり、仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)を高めていくことが重要である。

 

<第1のポイント 雇用管理の改善>

人手不足に対処するため、採用条件を良くしたり、募集採用活動に多額の経費をかけたりする企業は多いといえます。

「とにかく採用しなければ」という切実な思いの現われでしょう。

しかし、入社後の労働環境の改善、教育訓練の充実、キャリアアップの道筋の明確化、達成感を自覚できる人事考課制度の構築などには、手付かずということもあります。

せっかく苦労して採用した人材が、快適に働くことも、将来を見通すことも、充実感を得ることもできないのであれば、その心は会社から離れてしまいます。

採用することだけに重点を置くのではなく、採用後に定着してもらうための努力が求められているということです。

 

<第2のポイント 定着率と生産性の向上>

労働環境の改善により定着率は向上します。

これに加えて「働きがい」の向上は、モチベーションを向上させますから、意欲的な労働を誘発し、自分で考えて働くようになり、お客様にも喜ばれるという効果をもたらします。

自分で考えて行ったことの結果が評価されたり、お客様から感謝の言葉を戴いたりすれば、これがまたモチベーションを向上させて、らせん階段を駆け上がるような良い循環をもたらします。

 

<第3のポイント 働きがい向上の方法>

「働きがい」を高めるために、人間関係の円滑化や労働時間の短縮に取り組むべきだとしています。

会社の一方的な施策で、単純に労働時間を短縮すると、人間関係を良好に保つためのコミュニケーションの時間も減ってしまいます。

労働時間の短縮にあたっては、労使の話し合いや、労働者からの提案に基づいて行うことがポイントとなるでしょう。

上司からのフィードバックというのは、「上司から部下への指示 → 部下が業務を行う → 部下から上司に報告」までで止まってしまわず、「→ 上司から部下への評価・指導」という流れが続くことをいいます。

「ここは、自分で考えて行動できて良かった。ここは、こうすればもっと良くなった」という話が、上司から部下へのフィードバックとして行われていれば、部下の「働きがい」やモチベーションは向上します。

さらに、模範となる先輩社員を具体的に示せば、新人たちは自分が将来どうなっているべきかが分かり、将来のキャリア展望が明確になります。

実際には、模範となる先輩社員の自覚が高まり、最も成長するのではないでしょうか。

 

<第4のポイント 休み方改革>

完全に仕事から離れ、心身ともにリフレッシュできる時間を確保することによって、体力・気力・能力の高まった状態で仕事に取り組むことができます。

存分に能力を発揮できる状態での勤務は、とても気持ちの良いものであり、「働きがい」が感じられるものです。

これを可能にするためには、会社が従業員をきちんと休ませることが必要です。

年次有給休暇の取得促進の他、勤務間インターバル制度の活用もあります。

より具体的に、仕事の持ち帰りの禁止、プライベートの時間に仕事の連絡を取ることの禁止など、ルールを設定して、労使ともに遵守することが必要になってくるでしょう。

 

2019.10.07. 解決社労士 柳田 恵一

<労働法の実体>

「労働法」という名前の法律があるわけではありません。

労働に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。

その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければならないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、労働契約の内容を全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間労働など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

こうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法が存在するのです。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

法律というのは、不合理ですが、その法律を知っている人の役に立つのですが、知らない人の役には立ちません。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2019.10.06. 解決社労士 柳田 恵一

そもそも会社の中で、性的な言動は仕事に全く必要ないのです。そんなもの潤滑油の働きもしません。徹底的に排除すべきです。

 

<セクシュアルハラスメントとは>

相手に不快感を与える性的な言動は、その相手の性別に関係なく、また、直接的な身体接触によるものだけではなく、言葉によって行われるものも、セクシュアルハラスメントとなります。

「相手の性別に関係なく」というのは、男性同士でも女性同士てもダメなものはダメということです。

さらに、わいせつな行為を強要したり、相手の名誉や社会的信用を傷つけたりすれば、犯罪として刑法上の責任が問われることがあります。〔刑法第176条、第230条など〕

そして、被害者に対する損害賠償責任を発生させることにもなります。〔民法第709条〕

男女雇用機会均等法では、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しないよう、事業主が積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務付けています。

防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否したことなどを理由に、職場で不利益な取扱いをする「対価型」だけでなく、性的な言動などによって職場環境を悪くする「環境型」のセクシュアルハラスメントも含まれます。

 

<事業主の責任>

事業主は、このようなセクシュアルハラスメント行為に対して厳正に対処すること、被害を受けたときの相談窓口があることなどについて、あらかじめ管理職を含む労働者に知らせておき、もし被害の申出があったら、適切な調査と対応をすることが義務付けられています。

このように職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」では済まないものです。

適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局など)による助言・指導などが行われます。

 

<被害者の権利>

被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対しても、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義務違反として、損害賠償を請求することができます。〔民法第715条、第415条〕

セクシュアルハラスメントについては、事業主の責任を踏まえて、社内で解決することが望ましいといえます。

ですから、まずは社内の相談窓口や上司に相談することです。

もちろん、上司からの被害であれば、上司の上司に相談すべきです。

しかし、セクシュアルハラスメント問題について、会社が適切な対処をしてくれないときは、国の行政機関(東京労働局雇用均等室)や専門家(弁護士、社労士)などに相談してください。

特に、被害者が退職させられる異動させられるというのは不当な扱いなのですから、被害者を増やさないためにも無理のない範囲で行動していただけたらと思います。

 

2019.10.05. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

健康保険法には次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

 

厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

 

こうして社会保険料、つまり健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。

ただし、たとえば建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。それでも、厚生年金保険料は労使折半です。

 

<事業主の負担額>

こうした法律の規定にもかかわらず、福利厚生の一環で、社会保険料を会社が全額負担してはどうかという提案が出てくることもあります。

たとえば、本来の月給の総支給額が30万円の従業員が負担すべき社会保険料は、約4万5千円です。会社も同額を負担しています。

従業員が負担すべき保険料を会社が負担した場合、この約4万5千円は従業員の所得となります。

すると、この従業員の総支給額は約34万5千円に増額されますから、これに対する社会保険料は約5万1千円です。

こうして、この従業員の総支給額は約35万1千円に増額され、これに対する社会保険料は約5万4千円となって、最終的にこの従業員の総支給額は約35万4千円となります。

総支給額が約35万1千円と約35万4千円とは、社会保険料を決める保険料額表で同じ等級に含まれますから、総支給額は約35万4千円、社会保険料は約5万4千円となって、ここで計算が落ち着きます。

本来は労使折半の社会保険料を、会社が全額負担するということは、会社の負担が約4万5千円から約10万8千円に増額されることを意味します。

 

<税金の処理>

従業員の保険料相当額は、給与課税の対象となります。

給与が30万円から約35万円に大幅昇給したのですから、課税額も大幅に増額されます。

しかし約5万1千円は、社会保険料控除の対象として税額計算上控除されます。

社会保険料が増額されたことにより、社会保険料控除も増えるのです。

 

こうしてみると、社会保険料を全額会社負担にするというのも面倒なものです。

それでも、全額会社負担を考えたいのであれば、給与計算を担当する部署や、所轄の税務署などと十分打合せのうえ、実施に踏み切ることをお勧めします。

 

2019.10.04. 解決社労士 柳田 恵一

<パワーハラスメントについての法規制>

パワーハラスメントについて、現時点では、特別な法律があるわけではありません。

しかし、職場であっても他者に暴力を振るえば、暴行罪・傷害罪となって刑事上の責任が問われます。〔刑法第208条、第204条〕

また、皆で示し合わせて誰か一人を排除するようなことをすれば、脅迫罪となる可能性もあります。〔刑法第222条〕

さらに、そこまでに達しないような言動でも、常識的に許される範囲を超えて、相手の人格や尊厳を傷つけるものは、被害者への損害賠償責任を発生させます。〔民法第709条〕

 

<上司は部下を叱れないのか>

職場では、業務上の指示や指導の上で、やや厳しい言動が行われることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、通常の企業の中で行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。

部下や同僚に対し、業務上の必要性もなく、嫌がらせなどの不当な目的で叱責したり、不安を感じさせる対応をしたりすることは、常識的に許されないでしょう。

また、その言動自体は業務の範囲といえるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的で、業務上の権限を使うことも許されません。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。

 

<被害者の取るべき行動>

職場で違法なハラスメントを受けた被害者は、加害者本人に対する損害賠償請求ができます。

また、会社は、職場で行われた加害について、加害者の使用者として、加害者本人と同様の賠償責任を負います。〔民法第715条〕

さらに、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする労働契約上の責任もありますから、加害行為があることを知りながら適切な対処をしなかったときは、この義務違反による損害賠償責任が発生します。〔民法第415条〕

そして、常識的に許されない業務上のパワーハラスメントによって、健康被害が生じたと認定された場合は、業務災害として労災保険からの給付を受けられます。

社内でのハラスメント被害を止めるためには、抗議できるならば加害者に中止を求めるとともに、一人では対応が難しいようであれば、まずは上司や同僚など、社内の信頼できる方に相談してください。

ただし、上司からの加害について、加害者本人に相談するのは無意味ですから、上司の上司に相談することになります。

刑事責任が発生するようなケースでも、いきなり警察に相談するのではなくて、社内での解決を考えたいものです。

まず社内での解決を目指し、難しい時には、弁護士や社労士といった社外の専門家や警察に相談するのがよいでしょう。

 

2019.10.03. 解決社労士 柳田 恵一

<派遣労働者>

派遣労働者は、労働者派遣法で定められた正式名称です。

労働者派遣とは、労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結び、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣して、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働くというものです。

特徴として、労働者に賃金を支払う会社と指揮命令をする会社が異なるという複雑な労働形態となっていることから、労働者派遣法が派遣労働者のための細かいルールを定めています。

労働者派遣では、法律上の雇い主は人材派遣会社です。ですから、事故やトラブルが起きた際は、まず人材派遣会社が責任をもって対処しなければなりません。

しかし、実際に指揮命令をしている派遣先が全く責任を負わないというのは不合理です。

そこで、労働者派遣法が派遣元と派遣先との責任分担について定めています。

 

<契約社員(有期労働契約)>

契約社員は、法律上の名称ではないので、その意味も会社によって違います。

正社員と違って、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。

このような期間の定めのある労働契約は、労働者と使用者の合意により契約期間を定めたものであり、契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。

ただし、労使の合意により、契約を更新することもあります。

1回当たりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年です。

 

<パートタイム労働者>

パートタイム労働者は、正式名称ではありません。

パートタイム労働法では、「短時間労働者」といいます。

パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者をいいます。

「パートタイマー」や「アルバイト」など、呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法の「短時間労働者」となります。

パートタイム労働者を雇用する使用者は、パートタイム労働法に基づき、公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務づけられています。

また、労働者を雇い入れる際、使用者は、労働条件を明示すること、特に重要な条件については文書を交付することが義務付けられていますが、パートタイム労働法では、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書の交付などによる明示を義務づけています。

なお、パートタイム労働法は2020年4月1日に改正され、パートタイム・有期雇用労働法となります。

ただし、中小企業への適用は、2021年4月1日からとなります。

 

<短時間正社員>

短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比べて、その所定労働時間(所定労働日数)が少ない正社員であって、次のどちらにもあてはまる労働者をいいます。

・期間の定めのない労働契約を結んでいる。

・1時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法などが同じ事業所に雇用される同種のフルタイムの正社員と同等である。

このような働き方を就業規則に制度化することを指して、「短時間正社員制度」と呼んでいます。

短時間正社員制度の導入には、優秀な人材の獲得や社員の定着率の向上、採用コストや教育訓練コストの削減、社員のモチベーションアップ、外部に対するイメージアップといったメリットがあります。

 

<業務委託(請負)契約を結んで働く人>

正社員や派遣労働者、契約社員、パートタイム労働者、短時間正社員などは、「労働者」として、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

ところが、「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。

ただし、「業務委託」や「請負」といった契約をしていても、その働き方の実態が、注文主の指揮命令を受けるなどによって「労働者」であると判断されれば、労働基準法など労働法の保護を受けることができます。

 

<家内労働者>

家内労働者とは、委託を受けて、物品の製造または加工などを個人で行う人をいいます。

家内労働者は「事業主」として扱われますが、委託者との関係が使用者と労働者の関係に似ていることから家内労働法が定められていて、委託者が家内労働者に仕事を委託する場合には、家内労働手帳の交付や最低工賃の順守など、家内労働法に基づいた対応が求められます。

 

<在宅ワーカー>

在宅ワーカー(在宅就業者)とは、委託を受けて、パソコンなどの情報通信機器を使用してホームページの作成などを個人で行う人をいいます。

在宅ワーカーも「事業主」として扱われますが、委託者に対して弱い立場に置かれやすいため、在宅ワーカーに仕事を委託する場合には、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を踏まえた対応が求められます。

 

2019.10.02. 解決社労士 柳田 恵一

<ジタハラとは>

仕事と生活のバランスが取れるようにし、生産性を向上させるため、働き方改革の一環として、労働時間の削減が推進されています。

ところが、会社によって労働時間が短縮されるのは、労働者にとって苦痛であり、嫌がらせであると感じている人たちがいます。

これが、労働時間短縮ハラスメント(ジタハラ)です。

 

<ジタハラの具体的な被害>

ジタハラを主張する人たちは、次のようなものを被害として挙げています。

正社員では残業手当が減少し、パート社員では労働時間や勤務日数が減少することによって収入が減少します。仕事を急いで全力でこなすことから、ストレスは増加し、人間関係やチームワークも悪化します。現場での指導も不十分になりますから、仕事の完成度も低下します。ケアレスミスも増えます。こうして、従業員のモチベーションが低下し、退職者が増加します。

こなし切れない仕事は、自宅に持ち帰って行うこともあります。自宅での仕事ぶりは見えませんから、評価の対象にはなりません。いきおい人事考課が機能しなくなり、適材適所が困難となる恐れもあります。

一部の企業では、未払残業が発生します。残業手当が支給されない管理職に業務が集中することもあります。毎日残業し、休日も出勤する管理職の姿は、憧れの対象にはなりませんから、昇進を目指して努力するということも減ってしまいます。

一番困るのは、労働時間の短縮がお客様に対するサービスの低下をもたらし、お客様が離れてしまい、業績が低迷することではないでしょうか。

他にも、取引先との商談が減ったり、夜間の連絡が取れなくなったりの不都合が発生します。

 

これほど多くの不都合があるのなら、労働時間の短縮をしてはいけないのでしょうか。

これらは、政府の主導する働き方改革の弊害なのでしょうか。

ジタハラの問題を解決するには、次のような対策が必要です。

 

<副業・兼業の奨励>

労働時間の短縮により収入が減る場合でも、これを補うための副業や兼業が奨励されているのであれば、あとは労働者側の努力次第という説明も可能です。

そもそも職業選択の自由がある以上、プライベートの時間に本業とは別の仕事をするのは労働者の勝手というのが原則です。

もちろん、本業に支障が出たり、企業秘密が漏えいされたり、会社に損害を与えるようなことは許されません。

副業・兼業を許可制にするのは行き過ぎで、せいぜい届出制に留めるべきだと思います。

次のモデル就業規則最新版(平成31(2019)年3月版)を参考に、社内規定を整備してはいかがでしょうか。

 

(副業・兼業)

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<労働者の主体性>

年次有給休暇について、会社が時季指定義務を果たすには、労働者の意向を汲んで行うことになっています。

ところが労働時間の短縮となると、殆どの場合に、その手段が会社からの押し付けになっていないでしょうか。

労働者に主体性を持たせ、創意・工夫による時間短縮を任せなければ、モチベーションが低下するのは当然です。

労働時間の短縮について労使の話し合いの場を持つ、キャンペーン的に労働者のアイデアを募って、成果の上がったアイデアは表彰するなど、労働者に主体性を持たせる方法はたくさんあります。

 

<お客様・お取引先への説明>

ただ単純に「閉店時間を早めます」「定休日を設けます」というのでは、不便になりますから、お客様の心は離れて当然です。

たとえば、スーパーマーケットのサミットは、今年から元日だけでなく1月2日も休業日としています。

その説明は、次のとおりです。

 

~働き方改革の一環として1月2日を休業いたします~

弊社の事業ビジョンとなる「サミットが日本のスーパーマーケットを楽しくする」の実現に向け、お客様やお取引先を大切にすることはもちろん、それを実現するために社員の働き方を見直します。直接お客様と接する店舗の社員が家族・親族と過ごせる時間を増やし、社員一人ひとりがリフレッシュすることで、1月3日から更にお客様にご満足いただける売場・商品・サービスを実現します。また、3日からの営業となることで、弊社のお取引先様の負担を少なくしていきます。

 

こうした説明を受けて「けしからん」と思う人などいないでしょう。

きちんと説明すれば、会社のファンを増やすきっかけにもなるのです。

お客様やお取引先が納得してしまえば、従業員も営業時間や労働時間の短縮を批判できないものです。

 

<正攻法の重視>

労働時間の短縮の手段としては、人員増、社員教育、システム化が王道です。

こうした正攻法を軽んじて、ノー残業デー、20時以降は消灯など、小手先の手段に走っていないでしょうか。

仕事と生活のバランスをとる、柔軟な働き方を選択できるようにするなど、働き方改革の本来の目的は労働者目線です。

いつの間にか、残業代削減など会社目線の施策が推進されていないでしょうか。

これはもはや、働き方改革ではなくなっています。

 

何のための働き方改革かという基本に立ち返って、労働時間の短縮に取り組むことが必要なのです。

 

2019.10.01. 解決社労士 柳田 恵一

<労災病院や労災指定医療機関>

基本的に、業務災害や通勤災害による傷病の治療費が無料となります。

実際には、病院などに「保証金」のようなものを仮に支払っておいて、「保証金の預かり証」と労災の手続き書類を提出したときに返金されるのが通常です。

この「保証金」は、万一、病院などに労災の手続き書類が提出されなかった場合に、病院が治療費を受け取れなくなることを防ぐために支払いを求めてくるものですから、その金額は病院などによって、1,000円だったり20,000円だったりとバラバラです。

いずれにせよ、この「保証金」は、なるべく早く被災者に返金されることが望ましいので、会社は書類の作成と被災者への交付を急ぎたいものです。

また、会社が「保証金」を負担した場合には、「保証金の預かり証」も会社が受領しておくとよいでしょう。

こうしないと、会社が負担して被災者に返金されるケースもありトラブルのもとです。

 

<労災病院ではない病院や労災指定ではない医療機関>

基本的に、被災者が治療費を一時的に負担しておいて、被災者名義の指定口座に振り込み返金されます。

したがって、手続き書類には口座番号を書く欄があります。

ここが、労災病院用の手続き書類とは違うところです。

傷病が悪化して治療が長引くと、一時的にせよ負担額がバカになりません。

というのも、健康保険証を使えば3割負担なのですが、労災では保険証が使えませんから、全額が本人負担となるのです。

労災病院などの場合と同じように、会社が書類の作成と被災者への交付を急ぐことはもちろんですが、労災病院などに移ることも考えたいです。

 

<実際に労災が発生した時の注意点>

上記のことから、なるべく労災病院などでの治療が便利です。

しかし、被災者は痛い思いをしていますから、労災病院にこだわるのではなく、最寄りの病院などでなるべく早く治療を受けさせましょう。

たとえば、手をやけどした場合、流水で30分ほど冷やしている間に、病院を探し連絡を取っておいてから、被災者を連れていくというのがよいでしょう。

 

2019.09.30. 解決社労士 柳田 恵一

 

<補償が受けられるケース>

業務災害または通勤災害による傷病の治療のため働けず、賃金を受けられないときは、労災保険による補償が受けられます。

傷病の原因が、勤務中に発生する業務災害のときは休業補償給付、通勤中に発生する通勤災害のときは休業給付といいます。

業務災害の場合は、もともと労働基準法が事業主に補償を義務づけていたので、「補償」という言葉が入ります。

これに対して、通勤災害の場合には、事業主に通勤途上の事故にまで責任を負わせることに無理があります。

そのため、労働基準法は事業主に補償を義務づけていないので、「補償」ということばが入りません。

労災保険は、事業主の補償義務の範囲を超えて、補償の内容を拡大しているのです。

 

<保険給付の内容>

休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の60%が補償されます。

つまり、3日目までは労災保険で補償されません。

ただし、業務災害の場合だけ、事業主が直接補償する義務を負っています。〔労働基準法第67条第1項〕

この他、休業特別支給金という制度があって、休業4日目から、休業1日につき被災者の平均賃金の20%が支給されます。

結局、被災者は合計80%の補償を受けるわけです。

休業(補償)給付を受けるために、労働基準監督署長に提出する書類のタイトルには、休業特別支給金も兼ねていることが表示されていますので、1つの手続きで両方の請求ができます。

 

<健康保険より手厚い補償>

治療費は、健康保険だと自己負担が30%ですが、労災保険だと無料です。

休業補償も、健康保険の傷病手当金が67%なのに対して、労災だと合計80%になります。

これは、日本国憲法第27条第1項が、勤労を国民の義務としていることと深い関連があります。

つまり、国民としての義務を果たしていて被災したのだから、プライベートな原因の場合よりも手厚い補償が必要だとされているわけです。

 

2019.09.29. 解決社労士 柳田 恵一

<労災保険給付と損害賠償との関係>

労働災害のうち業務に起因する業務災害では、被災労働者(または遺族)は、労災保険給付を請求できると同時に、使用者に対しても損害賠償請求を行うことができます。

しかし、労災保険給付と損害賠償がカバーする損害の範囲は大きく重なりますから、労災保険給付を受けながら、これが無かったものとして、損害賠償を得られるというのでは、被災労働者(または遺族)の損害が二重に回復されることになり不公平です。

また使用者は、労災保険料を負担しているにもかかわらず、労災保険給付によって責任が軽減されないのでは、労災保険への加入を義務付けられていることとの関連で、納得がいくものではありません。

こうしたことから、労災保険給付と損害賠償との間では一定の調整が行われます。

 

<労災保険給付と損害賠償との調整>

労災保険法に基づく労災保険給付が被災労働者に行われた場合、使用者は労働基準法上の「災害補償責任」を免れます。〔労働基準法第84条第1項〕

使用者により災害補償がなされた場合、同一の事由については、その限度で使用者は損害賠償責任を免れます。〔労働基準法第84条第2項〕

労災保険給付が行われた場合にも、労働基準法第84条第2項が類推適用され、使用者は同様に保険給付の範囲で「損害賠償責任」を免れます。

労災保険の受給権者が、使用者に対する損害賠償請求権を失うのは、保険給付が損害の塡補の性質をもっているからです。そのため、政府が現実に保険金を給付して損害を塡補した場合に限り、損害賠償請求権が失われることになります。

このことから、将来支給予定の年金給付については、現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して給付されることが確定していても、基本的には損害賠償請求権が失われないとされています。

なお、労災保険給付は、被災労働者等の財産的損害を補償することを目的としているため、慰謝料等の請求関係には影響を与えません。被災労働者等は、保険給付との調整とは無関係に慰謝料等を請求できるとされています(東都観光バス事件 最高裁第三小法廷判決昭和58年4月19日)。

 

2019.09.28. 解決社労士 柳田 恵一

<雇い入れ時の安全衛生教育>

労働者を雇い入れたときは、労働者に対して、その従事する業務に関する安全・衛生のための教育を行うべきことが法定されています。〔労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条〕

ところが、所轄の労働基準監督署の安全衛生課が調査に入ると、安全衛生教育が実施されていないケースも多く、また、安全衛生教育に関する労働者からの相談も多く寄せられています。

 

<安全衛生教育の義務>

労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、次の事項について、教育を行うことになっています。

ただし、労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(その他の業種)の事業場の労働者については、1から4までの事項についての教育を省略することができます。

反対に、5から8までの事項についての教育は省略できません。

1 機械等、原材料等の危険性または有害性およびこれらの取扱い方法に関すること。

2 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能およびこれらの取扱い方法に関すること。

3 作業手順に関すること。

4 作業開始時の点検に関すること。

5 業務に関して発生するおそれのある疾病の原因および予防に関すること。

6 整理、整頓および清潔の保持に関すること。

7 事故時等における応急措置および退避に関すること。

8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全または衛生のために必要な事項

 

<留意事項>

労働者から労基署への「安全衛生教育が実施されない」という相談は、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者からのものが多いようです。

契約形態にかかわらず、安全衛生教育は義務づけられていますので注意しましょう。

また、労基署が「安全衛生教育が実施されていない」と判断するのは、事実として行われているかどうかではなく、安全衛生教育の記録が職場に保管されているかどうかによって行います。

安全衛生教育について、日時、内容、実施者、参加者などの記録を残し、職場ごとにきちんと保管しておきましょう

 

2019.09.27. 解決社労士 柳田 恵一

令和元(2019)年9月24日、厚生労働省が長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめ公表しました。

この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。

対象となった29,097事業場のうち、11,766事業場(40.4%)で違法な時間外労働を確認したため、是正・改善に向けた指導を行いました。なお、このうち実際に1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は、7,857事業場(違法な時間外労働があったもののうち66.8%)でした。

厚生労働省では、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行います。

 

【平成30年4月から平成31年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場:29,097事業場

   このうち、20,244事業場(全体の69.6%)で労働基準関係法令違反あり。

 

(2) 主な違反内容

[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

  ① 違法な時間外労働があったもの:11,766事業場(40.4%)

    うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

       月80時間を超えるもの:        7,857事業場(66.8%)

       うち、月100時間を超えるもの:   5,210事業場(44.3%)

       うち、月150時間を超えるもの:   1,158事業場( 9.8%)

       うち、月200時間を超えるもの:    219事業場( 1.9%)

  ② 賃金不払残業があったもの:1,874事業場(6.4%)

  ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの

                                                                   :3,510事業場(12.1%)

 

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況

[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

  ① 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの

                                                                  :20,526事業場(70.5%)

    うち、時間外・休日労働を月80時間※以内に削減するよう指導したもの

                                                                 : 11,632事業場(56.7%)

 ※ 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があるため。

  ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:4,752事業場(16.3%)

 

これは、改正労働基準法をはじめ、働き方改革関連法施行前の法令に基づく監督指導結果です。

今年度は、改正法への対応の遅れから、違反を指摘されてしまう事業場の増加が懸念されます。

なお、賃金不払残業には、賃金不払早出や賃金不払休日出勤なども含まれます。

休日出勤の後、代休が取れずに放置されるような、隠れた賃金不払もありますから、「賃金不払残業」という言葉にとらわれないようにしましょう。

 

2019.09.26. 解決社労士 柳田 恵一

<法改正>

令和元(2019)年5月29日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が通常国会で可決・成立し、令和元(2019)年6月5日に公布されました。

施行日は、公布後1年以内の政令で定める日となっています。

これによって、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

そして、適切な措置を講じていない場合には、所轄労働基準監督署などによる是正指導の対象となります。

ただし中小企業は、公布後3年以内の政令で定める日までの間は、努力義務となります。

 

【雇用管理上の措置の具体的内容】

・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発

・苦情などに対する相談体制の整備

・被害を受けた労働者へのケアや再発防止等

 

詳細は、現行のセクハラ防止の措置義務の内容を踏まえて検討される予定です。

仕組みが整えば、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができるようになります。

 

<職場におけるパワーハラスメント>

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

 

【パワハラの3要素】

1.優越的な関係を背景とした

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

3.就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

2.から分かるように、適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラに当たりません。

 

職場のパワーハラスメントのより具体的な定義や事業主が講ずべき措置の具体的内容等については、今後公表される指針で示される予定です。

 

<パワハラと犯罪>

刑法その他の刑罰法規にパワハラ罪の規定はありません。

しかし、パワハラが犯罪になることはあります。

ある人の行為が、パワハラになるか/ならないかと、犯罪になるか/ならないかとは、別次元の問題です。

以下、具体例を見てみましょう。

 

<パワハラであり犯罪である行為>

就業の場で、身体的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)などが成立します。

これらは、事実が警察に発覚すれば、社内で行われたことであっても、会社の方針とは関係なく捜査の対象となります。

また就業の場で、精神的な攻撃を伴うパワハラが行われれば、同時に脅迫罪(刑法第222条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)などが成立します。

これらのうち、名誉毀損罪と侮辱罪は、警察沙汰になると被害者の心の痛みが大きくなりうることを踏まえて、親告罪とされています。〔刑法第232条第1項〕

つまり、被害者の告訴がなければ公訴が提起できませんから、警察も動けません。

こうしたパワハラの被害者から、会社に対して被害の申告があった場合に、被害者の納得できる対応を取らないと、被害者が警察に駆け込み、会社の対応が格段に大変になるリスクをはらんでいます。

 

<パワハラだが犯罪ではない行為>

就業の場で、たとえば上司が返事をしない、仕事を与えない、本人が拒んでいるのに退職勧奨を続けるというのは、パワハラに該当します。

これらは犯罪ではありませんから、警察に助けを求めても取り合ってもらえません。

しかし、こうした行為を行う上司は、管理職が不適格であるとして役職を外されるかも知れませんし、被害者から損害賠償を請求されるかも知れません。

つまり、加害者が刑事責任を負うことは無いものの、民事責任を負ったり、不利益を被ったりするリスクをはらんでいます。

加害者が民事責任を負う場合、会社も使用者責任を負うことがあります。〔民法第715条〕

 

<パワハラではない犯罪行為>

社外で行われる犯罪のほとんどは、業務とは無関係ですから、パワハラにはあたりません。

しかし、出張先や移動中の車内など、社外ではあるけれども就業の場といえる場所で行われる行為は、パワハラとなりうるものです。

また、休日の電話など、業務に関連する会話が行われる場合には、パワハラとなりうることがあります。

さらに、社内でも社外でも、本人がいない所で悪口を言うのは、聞いた相手が言いふらすことを期待して言ったのであれば、名誉毀損罪が成立することもあります。

結局、就業の場ではない所で業務とは無関係に行われた犯罪行為は、パワハラにはならないということです。

 

<パワハラでも犯罪でもない行為

人事考課の結果を伝える面談で、上司が部下に「7項目がB、9項目がCで、総合評価がCでした」と伝えたところ、部下がショックを受け、泣きながら応接室を飛び出して行ったとします。

事情を知らない社員が、その姿を目にしたら、パワハラかセクハラがあったのではないかと疑いたくもなります。

しかし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動は存在しないのですから、パワハラにはならず、もちろん犯罪も成立しません。

ただ上司としては、疑われることがないように、「これから○○さんと、応接室で人事考課の結果を伝える面談をします」と周囲に声掛けをしてから席を立つなどの配慮が必要です。

また可能な限り、1対1での面談は避けることが望ましいといえるでしょう。

 

2019.09.25. 解決社労士 柳田 恵一

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法第35条第1項〕

これが法定休日です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

ですから、この7日間に1日も休みが無いというのは、労働基準法違反です。

ただし、労使で三六協定を交わし、所轄の労働基準監督署長に届けていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

毎週少なくとも1日の休日という法定休日のルールは、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外があります。〔労働基準法第35条第2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

これも法定休日です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。

起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。

これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのか分からないので運用できません。

 

「毎年4月1日を起算日とする」という就業規則の規定は誤りです。

365日 ÷ (7日 × 4週)= 13.035…というように端数が出ますから、3月末に半端な期間ができてしまいます。

ですから、「2019年4月1日を起算日とする」などのように、特定の日を起算日として動かないようにしなければなりません。

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは法定休日の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。

この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

1日6時間勤務であっても、1週間毎日出勤する週には42時間勤務となりますから、40時間を上回る2時間が割増賃金の対象となります。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

4週間に4日以上の休日を与える変形休日制を採る場合には、併せてフレックスタイム制などの変形労働時間制を採るのが合理的だといえるでしょう。

 

2019.09.24. 解決社労士 柳田 恵一

<1か月単位の変形労働時間制の狙い>

会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。

労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。

これは、働き方改革の流れにも沿った仕組みです。

 

<基本的な仕組み>

1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。

こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない仕組みです。〔労働基準法第32条の2〕

ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。

 

<必要な手続き>

労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署長に届け出ます。

常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。

これは簡単な手続きで済みます。

 

<定めることが必要な事項>

・対象労働者の範囲

法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。

・対象期間と起算日

対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。

・労働日と労働日ごとの労働時間

シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

・労使協定の場合にはその有効期間

労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間より長くなります。適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、3年以内にすることが望ましいでしょう。

 

<1か月単位の変形労働時間制が上手くいく条件>

メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。

実態として、毎日少なくとも8時間は勤務するというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。

スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。

制度導入の前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。

 

2019.09.23. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒権濫用法理>〔労働契約法第15条〕

「使用者が労働者を懲戒できる場合」であることを前提に、次のような条件すべてを満たしていないと、その懲戒処分が無効とされるばかりではなく、会社は損害賠償の責任を負うことになります。

・労働者の行為と懲戒処分とのバランスが取れていること。

・事件が起きてから懲戒処分の規定ができたのではないこと。

・過去に懲戒処分の対象とした行為を、再度懲戒処分の対象にしていないこと。

・その労働者に説明するチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<居眠りに対する懲戒処分>

まず、居眠りというのは故意にできることではなく過失による行為ですから、懲戒規定の中でも他の過失行為と同様に軽い処分とせざるを得ません。

また、今まである程度勤務中の居眠りが黙認されてきたのに、突然、懲戒規定を置いて処分の対象とする場合には、居眠りが許されない新たな職務の発生など、それ相当の強い根拠が必要となります。

さらに、居眠りの原因を考えた場合に、肥満や病気が関与している場合には、会社の健康管理の一環として、懲戒処分の前に生活面での指導が必要となります。

ましてや、過重労働や長時間労働の結果、居眠りが生じたような場合には、会社側に大きな責任がありますから、懲戒処分では何も解決しません。

結論として、居眠りの原因について会社側に落ち度がないかを確認し、本人に考えられる原因を挙げてもらい、まずは原因をつぶしていく努力をします。

それでもなお、本人の落ち度で居眠りが発生するのであれば、注意、厳重注意、始末書をとって反省を促す譴責(けんせき)あたりまでは、懲戒処分もありうると考えます。

 

<居眠りに対する他の対応>

きちんとした評価基準があれば、勤務中の居眠りが評価を下げる原因となり、昇進、昇格、昇給、賞与に反映されます。

ですから、人事考課のシステムがない会社は、きちんと構築する必要があるでしょう。

また、1時間、2時間と長時間の居眠りを繰り返すようであれば、本人と責任者が面談して、欠勤控除の対象となることを説明すべきでしょう。

この欠勤控除は、労働契約の性質から導かれるノーワーク・ノーペイの原則から許されるものですが、計算方法については、就業規則に規定しなければなりません。

さらに、居眠りがひどくて仕事になっていないというケースでは、普通解雇を考えざるを得ないこともあります。

いずれにせよ、最初に懲戒処分を考えるのではなく、その前に検討すべき対応は数多くあるということです。

 

2019.09.22. 解決社労士 柳田 恵一

<転籍出向の場合>

出向とはいうものの、転籍し完全に所属が移っています。

給与の支払者は出向先ですから、雇用保険は出向先で入り、雇用保険料も出向先でカウントされます。

労働環境の管理も出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

 

<在籍出向の場合>

社籍が出向元に残ったまま、出向先で働く場合です。

給与の支払者は出向元ですから、雇用保険も出向元で入り、雇用保険料も出向元でカウントされます。

しかし、労働環境の管理は出向先ですから、労災保険も出向先で適用され、労災保険料は出向先の負担となります。

この場合、雇用保険と労災保険とで、保険料の負担者が異なることになります。

 

<不明確な場合>

「転籍出向」「在籍出向」ということばを一般とは異なる意味で使っている会社や、どちらか明確ではない場合でも、給与の支払者が雇用保険料を負担し、労働環境の管理者が労災保険料を負担すると考えればよいのです。

 

2019.09.21. 解決社労士 柳田 恵一

<厚生労働省の広報>

毎年10月は、年次有給休暇取得促進期間ですが、今年は9月18日に、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課から次のような広報が出されています。

 

~ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて年次有給休暇の取得を促進~

 厚生労働省では、年次有給休暇(以下「年休」)を取得しやすい環境整備を推進するため、次年度の年休の計画的付与※について労使で話し合いを始める前の10月を「年次有給休暇取得促進期間」として、集中的な広報活動を行っていきます。

 年休については、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議で策定された「仕事と生活の調和推進のための行動指針」において、2020年(令和2年)までに、その取得率を70%とすることが目標として掲げられています。しかし、2017年(平成29年)に51.1%と18年ぶりに5割を超えたものの、依然として政府が目標とする70%とは大きな乖離があります。

 このような中、労働基準法が改正され、今年4月から、使用者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、毎年5日間、年休を確実に取得させることが必要となりました。年休の計画的付与制度を導入することは、年休の取得を推進するとともに、労働基準法を遵守する観点からも重要になります。

 厚生労働省では、この制度改正を契機に、計画的付与制度の一層の導入が図られるよう、全国の労使団体に対する周知依頼、ポスターの掲示、インターネット広告の実施などを行い、周知広報に努めていきます。

 

※「年次有給休暇の計画的付与制度」・・・年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば計画的に年次有給休暇の取得日を割り振れる制度。(労働基準法第39条第6項)

 

<年休取得5日についての勘違い>

使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

この対象者は、法定の年休付与日数が10日以上の全ての労働者です。

しかし、法定の年休付与日数が10日未満であれば、取得させなくても良いということではありません。

また、取得義務の対象者について、年5日を超える年休は取得させなくて良いということにはなりません。

年休の残日数がある労働者からの時季指定があれば、会社は理由を問わず取得させるのが基本です。

これは、年次有給休暇が労働基準法によって労働者に与えられた権利だからです。

 

<取得率目標70%についての勘違い>

政府が令和2(2020)年までに、年休取得率を70%とすることを目標として掲げたからといって、このことが会社に義務付けられたわけではありません。

あくまでも努力目標です。

ましてや、労働者に年休の70%以上取得が義務付けられたわけではありません。

年休取得率70%を会社の方針として掲げるのは素晴らしいことですが、労働者に年5日を超えて取得を強制することはできません。

年次有給休暇は、労働者の権利であって義務ではないからです。

法定の5日間を超えて会社から一方的に年休の時季指定をしてしまうことは、労働者の時季指定権を侵害することになり許されないのです。

 

労働者の権利である年次有給休暇の取得があまりにも進まないため、使用者は、時季指定をしてでも、年最低5日間は年次有給休暇を取得させる義務を負うこととなりました。

これは「権利を行使させる義務」という例外的なものですから、会社は慎重に対応する必要があるのです。

 

2019.09.20. 解決社労士 柳田 恵一

<保険者算定>

一般的な方法によって報酬月額が算定できない場合や、算定結果が著しく不当になる場合は、保険者等(年金事務所など)が特別な算定方法により、報酬月額を決定することとしています。

この算定方法を「保険者算定」といいます。〔健康保険法第44条、厚生年金法第24条〕

算定対象月に減給処分があった場合は、まさにこの「保険者算定」をする場合にあたります。

ところが、このケースは特殊なので手引き類にも見当たりません。

ですから、直接、年金事務所や協会けんぽの支部、あるいは健康保険組合に問い合わせるということになります。

実際、健康保険組合によってルールが違うようですし、すべての年金事務所で同じ回答が得られる保証もありません。

ただ、随時改定については「減給処分は固定的賃金の変動にはあたらない」という運用基準がありますから、減給処分がなかったものとして修正平均額を算出するのが主流と思われます。

 

<別の視点から>

減給処分は、一つの懲戒処分では平均賃金の1日分の半額が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円 ÷ 30日 ÷ 2 = 5千円というのが限度額になります。

また、いくつもの懲戒処分が重なった場合でも、その総額は賃金1か月分の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

これは、月給が30万円だと、30万円÷10=3万円というのが限度額になります。

そして、ある月に減給処分があっても算定対象月は3か月ありますから、その影響は1つの懲戒処分で1,667円、複数の懲戒処分が重なって1万円が限度ということになります。

もし、定時決定(算定基礎届)の担当者が、算定方法に悩むほどの減給であれば、労働基準法の限界を超える減給がされていないかをチェックする必要がありそうです。

 

2019.09.19. 解決社労士 柳田 恵一

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法第32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法第35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法第33条第1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

過去の大震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2019.09.18. 解決社労士 柳田 恵一

<就業規則の規定>

多くの企業では、取引先から個人的な謝礼を受け取ることを禁止し、これに違反した場合には懲戒処分の対象となりうることを、就業規則に定めています。

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようというわけです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【懲戒の事由】

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

⑪ 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。

 

実際に、ある社員が取引先から個人的な謝礼を受け取ってしまった場合に、「不当な金品」といえるのか判断に迷うことでしょう。

懲戒処分に踏み切ることが困難かもしれません。

 

<線引きが困難>

そもそも懲戒処分の対象とすべきか、処分するにしても、どの程度重い処分とすべきか、考慮すべき要素は数多くあります。

 

・特定の行為に対する謝礼か、日頃お世話になっているという社交的なものか。

・現金ではなく、商品券、映画の無料鑑賞券、ハンカチならどうか。

・お中元やお歳暮としてなら、お付き合いの範囲として許されるのか。

・特定の部署や店舗が受け取る場合と比べてどうなのか。

・取引先との関係から、断り切れなかった場合には許されるのか。

 

特定の行為に対する謝礼であれば、会社よりも取引先の利益を優先し、不正な便宜を図った可能性は高いでしょう。

この場合には、背任罪(刑法第247条)が成立する可能性もあります。

しかし、その社員が「社交的なものとして受け取った」と言い、取引先も「日頃お世話になっているので」と説明したら、特定の行為に対する謝礼であることを認定するのが、困難になってしまう恐れがあります。

 

<会社が取るべき対応>

本来は会社に帰属するはずの利益を、特定の個人が受領するというのは、不正行為となる場合も少なくないので、これを防止しようという目的から対応を考えます。

まず、次のルールを定め社内に周知します。

 

1.取引先から謝礼の申し込みがあったら、取引先には「会社の事前承認が要る」旨を説明する。

2.それでも断り切れない場合には、「お預かりする」という説明をする。

3.謝礼の申し込みがあったこと、または、お預かりしたことを上司に報告し、会社としての判断を仰ぐ。

4.上司は内容や金額に応じた決裁方法に従い、会社としての判断を対象社員に伝え、対応を指示する。

5.会社の判断と上司の指示に従い対応する。

 

こうしたルールの下では、「取引先から個人的な謝礼を受け取ること」が、懲戒処分の対象となることはありません。

「取引先から謝礼を受け取る場合のルールに違反すること」が懲戒処分の対象となります。

懲戒処分の対象とすべきかどうかの判断も、迷わず客観的に行うことができます。

なお、就業規則に規定する場合には、ルール違反に対する懲戒とは別に、会社の受けた損害を賠償させることがある旨も規定しておきましょう。

 

2019.09.17. 解決社労士 柳田 恵一

<入院中の食費負担>

入院患者は、食事の費用のうち標準負担額というものを支払います。

この標準負担額というのは、平均的な家計での食事を参考に、厚生労働大臣が定めた金額です。

平成18(2006)年4月1日からは、1日単位から1食単位の金額に変更されました。

これは、医療機関で提供される食事の内容が変わるわけではなく、食事の負担額について、食数にかかわらず1日単位で計算していたものを、1食単位の計算に変えたものです。

 

<標準負担額>

1食の標準負担額は、一般の世帯で平成30(2018)年4月からは460円です。

ただし、住民税非課税世帯などは負担が減額されます。

標準負担額の軽減措置を受ける場合は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書」に被保険者証と低所得の証明書を添付して、全国健康保険協会の都道府県支部に提出します。

申請が認められると「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が交付されますから、被保険者証と認定証を医療機関の窓口へ提出することで標準負担額の軽減措置が受けられます。

低所得の証明は、低所得者世帯(住民税の非課税世帯)の人については、住所地の市区役所または、町村役場等で証明を受けた住民税の非課税証明、所得が一定基準に満たない場合は非課税証明に給与や年金の源泉徴収票、生活保護法の要保護者については、福祉事務所長が行う標準負担額認定該当の証明が必要となります。

 

<一般の治療の自己負担額との関係>

多くの方は、原則として3割の自己負担で治療を受けることになりますが、入院期間中の食事については、あくまでも標準負担額が適用されます。

つまり、食事代は治療費とは別計算です。

どちらも健康保険の適用があるのですが、計算方法が違うわけです。

このことから、高額療養費についても、食事の費用は計算対象から外れます。

 

2019.09.16. 解決社労士 柳田 恵一

<手続きが必要となる理由>

国民年金や厚生年金などと同じように、失業保険(雇用保険の失業等給付)も、すでに経過した期間について給付が行われます。

つまり後払いですから、給付を受けていた方が亡くなると、もらえる給付を残したままになってしまいます。

これは、ご遺族の中の権利者が請求しなければもらえません。

 

<雇用保険法の規定>

失業等給付の支給を受けられる方が死亡した場合に、未支給分があるときは、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、死亡当時に生計を同じくしていた方が、自分の名義で、その未支給分を請求できます。〔雇用保険法第10条の3〕

 

<法定相続人との違い>

まず、生計を同じくしていることが条件となります。

また、優先順位が、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっていて、優先順位の高い人が100%受け取ります。

法定相続分のように、誰が何分の1を受け取るという考え方ではありません。

そして、同順位の人が複数いる場合、たとえば父母が受け取る場合、どちらかが請求の手続きをすれば、全額について請求したことになります。

 

<請求の手続き>

未支給の失業等給付を請求する人は、本来の受給者が亡くなってから6か月以内に、「未支給失業等給付請求書」に「雇用保険受給資格者証」等を添えて、受給の手続きをしていたハローワーク(公共職業安定所長)に提出します。

 

2019.09.15. 解決社労士 柳田 恵一

<制限の理由>

傷病手当金は、健康保険により支給されます。

健康保険では、故意の犯罪行為など、制度の趣旨に反する恐れがあるときは、社会保険の公共性の見地から、給付の全部または一部について制限が行われます。

また、給付を行うことが事実上困難な場合や、他の制度から同様の給付が行われた場合の調整により、給付が制限される場合もあります。

 

<健康保険に共通の理由>

次のような場合には、健康保険に共通の制限または調整が行われます。

 

・故意の犯罪行為または故意に事故を起こしたとき

・喧嘩や酩酊など著しい不行跡により事故を起こしたとき

・正当な理由がなく医師の指導に従わないか保険者の指示による診断を拒んだとき

・詐欺その他不正な行為で保険給付を受けたとき、または受けようとしたとき

・正当な理由がないのに保険者の文書の提出命令や質問に応じないとき

・感染症予防法等他の法律によって、国または地方公共団体が負担する療養の給付等があったとき

 

<給与が支払われた場合>

傷病手当金は、働けず給与の支給が無い場合に、収入を補うための制度です。

ですから、休業期間中に給与の支払いがあった場合には、原則として、傷病手当金が支給されません。

ただし、休業中に支払われる給与の日額が、傷病手当金の日額よりも少ない場合には、その差額が支給されます。

 

<出産手当金と重なる場合>

女性が産前産後休業で出産手当金を受給している場合に、出産手当金と傷病手当金の給付を同時に受けることはできません。

ただし、傷病手当金の金額が出産手当金の金額を上回っている場合、その差額が支給されます。

出産手当金も傷病手当金も、1日当たりの金額は次のように計算されます。

 

支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × (2/3)

 

ただし、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、次のア・イのうち低い額となります。

ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

イ 標準報酬月額の平均額(現在は30万円)

 

計算式は同じなのですが、出産手当金と傷病手当金とで「支給開始日」が異なりますので、具体的な金額に差が生じることもあるのです。

 

<労災保険の給付と重なる場合>

労災保険から休業(補償)給付を受けている場合、これは業務(通勤)上の傷病によって働けない状態であることが前提となっています。

ところが、別の勤務先で健康保険に加入していて、私傷病で働けない状態となった場合には、傷病手当金の手続が行われることもあります。

こうした場合には、休業(補償)給付の日額が傷病手当金の日額を下回っている差額分だけが、傷病手当金として支給されます。

 

<障害厚生年金・障害手当金と重なる場合>

障害厚生年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

また、障害手当金が支給されている場合には、その金額に傷病手当金の合計額が達した日以降、傷病手当金が支給されるようになります。

 

<老齢年金と重なる場合>

健康保険の資格喪失後、傷病手当金の継続給付を受けている間に、老齢年金を受給することがあります。

この場合、老齢年金(年額)の360分の1の金額が傷病手当金の日額を下回っている場合には、その差額分が傷病手当金として支給されます。

 

2019.09.14. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官は、労働基準法違反を是正するだけではありません。

労働安全衛生法を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、作業環境測定を行い、または検査に必要な限度で無償で製品、原材料、器具を持ち去ることができます。〔労働安全衛生法第91条第1項〕

ここで、作業環境測定というのは、温度、湿度、騒音、照度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、塵(ちり)の密度など、職場の客観的な労働環境を測定する検査のことをいいます。

 

<法違反に対する使用停止命令>

都道府県労働局長または労働基準監督署長は、事業者の講ずべき措置など労働安全衛生法の規定に違反する事実があるときは、その違反した事業者、注文者、機械等貸与者または建築物貸与者に対し、作業の全部または一部の停止、建設物等の全部または一部の使用の停止または変更その他労働災害を防止するため必要な事項を命ずることができます。〔労働安全衛生法第98条第1項〕

労働災害発生の差し迫った危険がある場合には、この他、必要な応急措置を講ずることを命ずることができます。〔労働安全衛生法第99条第1項〕

つまり、営業停止や労働者の職場への立ち入り禁止を命令できるのです。

 

<講習の指示>

都道府県労働局長は、労働災害が発生した場合には、その再発を防止するため必要があると認めるときは、その事業者に対し、期間を定めて、その労働災害が発生した事業場の総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、統括安全衛生責任者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に都道府県労働局長の指定する者が行う講習を受けさせるよう指示することができます。〔労働安全衛生法第99条の2第1項〕

なにより労働災害の発生防止に努めることが大切です。

しかし、安全管理者や衛生管理者など法定の労働災害防止業務従事者をきちんと選任し、労働基準監督署長に選任報告書を提出しておくことも必要です。

つまり、労災防止の実質面と形式面の両方を備えることが求められているのです。

 

2019.09.13. 解決社労士 柳田 恵一

<ポータルサイトの開設>

令和元(2019)年9月6日、厚生労働省が「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」を開設しました。

ポータルサイト( portal site )とは、ウェブ上の様々なサービスや情報を集約して簡単にアクセスできるようにまとめたものです。

このポータルサイトは、貨物を運送するトラック運転者の長時間労働の現状や、その改善に向けた取組、施策などを、広く国民、荷主企業、トラック運送事業者に向けて知らせるために開設されたものです。

 

「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」のURL

 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/

 

 

 以下簡単にご紹介させていただきます。

 

<長時間労働解消に向けて>

トラック運転者は、他業種の労働者と比べて、長時間労働となっているのが実態です。

その背景には、荷主や配送先の都合により、長時間の荷待ち時間(貨物の積み込みや荷下ろしの順番を待つ時間)や、手荷役(手作業での貨物の積み込みや荷下ろし)が発生するなど、貨物運送における取引慣行などからトラック運送事業者の努力だけでは改善が困難な問題が存在しています。

このため、トラック運転者の長時間労働を改善していくためには、荷主企業とトラック運送事業者の双方が歩み寄り、そして協力しあって、取引環境の適正化に取り組むことが必要不可欠です。

 

<ホワイト物流推進運動との連携>

このポータルサイトでは、国土交通省が開設している「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」と連携しつつ、荷主企業とトラック運送事業者の双方に役立つ情報を提供していきます。

 

「『ホワイト物流』推進運動ポータルサイト」のURL

https://white-logistics-movement.jp/

 

<主なコンテンツ(内容)>

ポータルサイトは以下の構成となっていて、コンテンツは順次公開されていきます。

 

(1)国民向け

トラック運転者の仕事を知るための情報や、トラック運転者の長時間労働改善のために「国民にできること」や「やって欲しいこと」に関する情報など。

また、トラック運転者の1日の仕事の様子を撮影した動画などを追加予定。

 

(2)企業向け

 荷主企業とトラック運送事業者の双方に向けたコンテンツを提供します。

ア 簡単自己診断

 荷主企業やトラック運送事業者が貨物運送の現状に関するチェックシートに回答することにより、トラック運転者の労働時間削減に向けて自社の取り組むべき課題を抽出できるウェブ診断ツールを提供します。この機能は今年12月頃にポータルサイトで公開する予定です。

 

イ サッと解決よろず相談

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間の改善を進める中で直面する悩み(改善策の進め方や改善策の発想法など)への対応策をQ&A形式で提供します。

 

ウ 情報いろいろ宝箱

 荷主企業やトラック運送事業者がトラック運転者の労働時間改善を進める上で有用な好事例を紹介する動画のほか、ハンドブック・ガイドライン・手引きなどを提供します。

 

(3)セミナーの案内

厚生労働省では、今年10月から来年3月にかけて、トラック運転者の労働時間短縮の進め方のノウハウを広く荷主企業やトラック運送事業者に周知するセミナーを、全国47都道府県で全50回開催する予定です。

このポータルサイトではセミナーのご案内をしており、セミナーへのオンラインでの申し込みができます。

なお、セミナーの詳細については、会場が確定した段階で別途報道発表する予定です。

 

2019.09.12. 解決社労士 柳田 恵一

<就労請求権>

就労請求権とは、労働者が使用者に対し、実際に就労させることを請求する権利をいいます。

かつては、就労請求権を肯定する裁判例が見られました。

木南車輌製造事件(大阪地決昭23年12月14日)では、使用者は「労働契約関係が正当な状態においてある限り、労働者が適法に労務の提供したとき、これを受領する権利のみでなく、受領する義務あるものであり、正当な理由なくして恣意に受領を拒絶し、反対給付である賃金支払をなすことによって責を免れるものではない」とされました。

高北農機事件(津地裁上野支部決定昭和47年11月10日)では、「労働契約は継続的契約関係ゆえ当事者は信義則に従い給付実現に協力すべきこと、労働者は労働によって賃金を得るのみならず、それにより自信を高め人格的な成長を達成でき、不就労が長く続けば技能低下、職歴上および昇給・昇格等の待遇上の不利益、職業上の資格喪失のような結果を受けるなど」の理由から就労請求権が肯定されています。

しかし、この判例の理論は、就労請求権が一般に認められる根拠にはならず、特殊な技能を持つなど一定の条件を満たした場合のみに妥当します。

その後、労働は労働契約上の義務であって権利ではないので、就労請求権は認められないと判断される傾向が強まってきています(日本自動車振興会事件 東京地判平9年2月4日など)。

 

<就業規則に特別な定めがある場合>

就業規則に、労働者の就労請求権を認める具体的な規定があれば、労働者が給与を100%支給されつつ休業を命じられた場合であっても、使用者に対して実際に就労させることを請求できるのが原則となります。

また、大学の教員が学問研究を行うことは当然に予定されていることであり、就業規則全体の趣旨から、大学での学問研究を労働契約上の権利とする黙示の合意があるとされる場合には、就労請求権が認められる場合もあります(栴檀(せんだん)学園事件 仙台地判平9年7月15日)。

ただし研究について、大学施設を利用することが必要不可欠であるとまでは言えないケースでは、就労請求権が認められていません(四天王寺仏教大学解雇事件 大阪地裁決定昭和63年9月5日)。

 

<育児休業中の就労について>

雇用保険加入者(被保険者)に対して、育児休業期間中に支給される「育児休業給付金」があります。

この給付金は、就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)に10日以下であること、10日を超える場合には就業している時間が80時間以下であることが支給の条件となっています。

これは、使用者側の都合、業務上の必要から、育児休業中の労働者がわずかな日数、少ない時間就労したことによって、職場復帰したものとされ、受給資格を失ってしまうことを防止するための基準です。

その就労が、臨時・一時的であって、就労後も育児休業をすることが明らかであれば、職場復帰とはせず、支給要件を満たせば支給対象となります。

しかし、育児休業中の労働者に、1か月の支給単位期間に10日まで、あるいは80時間までの就労請求権が与えられているわけではありません。

あくまでも、業務上の必要に応じて、使用者側から育児休業中の労働者に臨時・一時的な出勤を要請することがあり、労働者がこれに応じて就労した場合にも、育児休業給付金を受ける資格を失わないという、雇用保険法上の配慮に基づくものです。

したがって、育児休業給付金を受給中の労働者から、使用者に対して就労させるよう請求した場合でも、使用者側は必要なければこれを断ることができるわけです。

 

2019.09.11. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金の支払義務>

労働基準法第24条は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」としています。

大雨や水害等で、①事業場の倒壊、②資金繰りの悪化、③金融機関の機能停止等が生じた場合でも、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の免除に関する規定はありません。

つまり、会社は事業活動ができなくなった場合でも、既に働いた分の賃金は、当然に支払われなければなりません。

なお、事業再開の見込みがなく、賃金の支払の見込みがないなど、一定の要件を満たす場合には、国が事業主に代わって未払賃金を立替払する「未払賃金立替払制度」を利用することができます。窓口は、労働基準監督署となっています。

 

<賃金の前払い>

労働基準法第25条は、「労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならない」と定めています。

ここでいう「災害」には、大雨や水害等が含まれます。また、「疾病」には大雨や水害等によるケガも含まれます。

ですから、賃金支払日前であっても、労働者から使用者に請求があれば、使用者は賃金を計算して支払わなければなりません。

 

この他、失業給付が受けられる場合がありますので、失業給付の具体的な手続方法等については、お近くのハローワークにご相談ください。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<休業手当の支払が不要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けて労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。

ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

ここで「不可抗力」とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、この2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。

ただ例外的に、ことさら不十分な施設・設備であった場合など、「使用者の責に帰すべき事由による休業」と判断すべき場合もあり得ます。

 

<休業手当の支払が必要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないものの、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられています。

しかし、「施設・設備の直接的な被害」だけを基準に判断すべきことではありません。

具体的な事情として、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を考慮して、総合的に判断する必要があります。

 

<就業規則等に定めがある場合>

労働契約、労働協約、就業規則の定めにより、あるいは労使慣行によって、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業があります。

こうした企業が、「今回のケースでは支払わない」とすることは、労働条件の不利益変更に該当します。つまり、従来通りの賃金、手当等を支払わなければなりません。

将来的に支払わないことにするためには、労働者との合意など、労働契約、労働協約、就業規則等のそれぞれについて、適法な変更手続をとる必要があります。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<派遣会社の義務>

派遣会社は、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」第2の2の(3)に基づき、ある派遣先との間で労働者派遣契約が打ち切られたとしても、派遣先と協力しながら、派遣労働者の新たな就業先の確保を図り、それができない場合は解雇せず休業等を行って、雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当を支払うことになっています

 

<休業手当の支払>

使用者が新たな就業機会(仕事)を確保できず、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させる場合には、使用者(派遣会社)には休業手当を支払う義務があります。〔労働基準法第26条〕

ここで「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかどうかの判断は、派遣会社について行われます。

派遣先の事業場が、天災事変等の不可抗力によって操業できないため、派遣されている労働者をその派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないとは必ずしもいえず、派遣会社について、その労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するかどうかが判断されます。

 

<雇用調整助成金>

大雨の影響に伴う経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた派遣会社が、派遣労働者の雇用維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金を活用できることがあります。

 

<雇用保険の特例措置>

令和元(2019)年8月の大雨などにより、被災地内にある派遣先が直接的な被害を受けたことに伴い、派遣先が事業を休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた人(雇用予約がある場合を含む)については、失業給付を受給できる特別措置の対象となります。

大雨の影響で、ハローワークに行けない、求職活動ができない、退職した会社と連絡が取れないなどの事情がある場合には、とりあえずハローワークに電話で相談することをお勧めします。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<行政指導>

行政指導の定義は、行政手続法第2条第6号に次のように規定されています。

 

【行政指導】

行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

 

役所が、特定の人や事業者などに対して、ある行為を行うように、または行わないように、具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導です。

特定の人や事業者の権利や義務に直接具体的な影響を及ぼすのは「処分」であって、行政指導ではありません。

役所の行為が、処分か行政指導かは、法令の規定を読んでも判別が困難なものもあります。

ただ、行政指導であれば、行政指導をする者は、行政指導をしようとする相手方に対して、その行政指導の「趣旨及び内容」(その行政指導はどのような目的でどのようなことを求めているのか)と「責任者」(その行政指導をすることは役所のどのレベルの判断によって行われているか)を明確に示さなければならないことになっています。〔行政手続法第35条第1項〕

判断に迷うことがあれば、その行為を行っている各役所に確認するのが確実です。

 

<行政指導の効力>

行政指導には法律上の拘束力はなく、相手方の自主的な協力を求めるものです。

したがって、よく言われるように、行政指導を受けた者にについて、その行政指導に必ず従わなければならない義務が生じるものではありません。

また、行政指導の相手方がその指導に従わないからといって、役所が嫌がらせをするなどの差別的、制裁的な取扱いをすることは禁止されています。〔行政手続法第32条第2項〕

 

<行政指導の拒否>

たとえば、申請者の申請に対して、役所が自主的に申請を取り下げるよう、また、申請の内容を変更するようしつこく行政指導することもあります。

こうした場合、申請者がその行政指導に従わないことを明らかにしたときは、役所は、これに反して、行政指導を続け、その行政指導に従うまでは申請の審査を保留するなど、行政指導に従わざるを得ないようにさせることによって、申請者の権利の行使を妨げてはならないことになっています。〔行政手続法第33条〕

結局、行政指導を拒否して申請書を提出すれば、役所には審査を開始する義務が生じることになりますので、行政指導に従う意思がない場合には、それを役所に対して明確に示せば行政指導を免れることができます。

 

<労働基準監督署による行政指導>

労働基準監督署は、労働基準法などの法律に基づいて、定期的にあるいは従業員からの申告などにより、事業場(工場や事務所など)に立ち入り、機械・設備や帳簿などを調査して関係労働者の労働条件について確認を行います。

その結果、法違反が認められた場合には、事業主などに対しその是正を指導します。

通常は、「是正勧告書」という文書による指導です。

これも行政指導ですから、事業主などの自主的な協力を求めていることになります。

もし、「是正勧告書」の内容が誤りであると判断したなら、事業主などは従わないこともできます。

しかし、事業場から是正・改善報告が提出されない場合には、労働基準監督署はこれを放置せず、再度の調査・確認と指導を行います。

こうして、重大・悪質な事案については、書類送検され罰則が適用される場合もあります。

同じ行政指導であっても、違法性を指摘する内容が含まれるものについては、専門家に相談したうえで慎重に対応することを強くお勧めします。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一