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<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<主体的な取り組み>

法改正によって義務付けられ、追われるように働き方改革に取り組むというのでは、主体性に欠けます。

これでは、長期的に見て会社の利益や生産性を向上させる働き方改革が思うように進みません。

働き方改革には、法令に規定されていなくても、企業の個性に応じて取り組めることが数多くあります。

ここでは、「偏りの解消」がキーワードとなる取り組みについて、いくつかご紹介させていただきます。

 

<年次有給休暇取得率の偏り解消>

年次有給休暇の取得率については、同じ部署の社員間でもバラツキがあるものです。

特に取得率の低い社員に着目して、本人や周囲の人から聞き取りを行い、原因を明らかにして偏りを解消しましょう。

本人の信念によるものであれば、頭を切り替えてもらいます。

周囲から仕事を押し付けられているのなら、役割分担を見直します。

効率の悪いやり方で業務をこなしている部分があれば、その業務が得意な社員の指導によって自己流を解消してもらいます。

これは、残業が特定の社員に偏っている場合にも当てはまります。

 

<評価基準の偏り解消>

賞与や昇給の査定では、会社に対する貢献度が高い、技能が優れているなどの理由で、高く評価される社員と、そうではないために低く評価される社員がいます。

そして評価の低い社員は、今後の昇給や昇進を期待できなくなり、意欲的に働けなくなることがあります。このような社員が多ければ、会社全体の生産性も低下してしまいます。

標準考課以下の社員の比率が高いのであれば、すぐにでも評価基準の見直しが必要です。

また、市場動向や取引環境、消費者のニーズなどは、絶えず変化していますから、評価基準も3年に1回は見直しが必要なはずです。

見直しの際には、社員からの聞き取り調査を行ってはいかがでしょうか。

「あなたは、会社にどこを評価して欲しいですか」という質問をぶつけます。

この投げかけだけでも、社員の意識が変わってくることでしょう。

また、人事考課基準で評価されない項目で会社に貢献し、能力を発揮した社員については、表彰制度の活用をお勧めします。表彰の対象者だけでなく、他の社員のモチベーションが上がるように運用するのがポイントです。

 

<経験や知識の偏り解消>

「この仕事は○○さんじゃないとできない」と言われることがあります。

「この仕事」のボリュームが大きくなれば、「○○さん」は長時間労働に陥ります。また、突発的に「この仕事」が発生すれば、「○○さん」は年次有給休暇の取得を取り消す場合もあるでしょう。

たしかに、芸術家が作品を制作する場合には、個性が求められます。

しかし、会社の中で個性が要求される仕事は、それほど多くはありません。

ですから経験や知識を共有し、業務を標準化・平準化することによって、「○○さん」の他に「この仕事」をこなせる社員を増やせば良いのです。

資格が無いとできない仕事もあります。この場合にも、多くの社員に資格を取得させる施策を行えば対応できます。

頼りになる「○○さん」も、永久に会社にいるわけではありません。いなくなる時のことを考えて早めに手を打ちましょう。

 

<働き方改革で得られる利益の偏り解消>

働き方改革は、長期的には会社に利益をもたらします。

しかし、たとえば残業時間を削減して残業代が減れば、会社の利益が増えて、社員の収入が減るといった事態も想定されます。

これでは、社員が働き方改革を推進する気にはなれません。

残業代が減って、売上が減らないのであれば、生産性が向上したわけですから、社員に「業務効率化手当」を支給するなどして、利益の偏りを解消する必要があります。

全社員一律ではなく、残業時間の削減が著しかった部署には、より多額の手当を支給してはいかがでしょうか。

 

2019.02.20.解決社労士

<医療ビッグデータ>

新薬や最先端医療など研究開発のために「医療ビッグデータ」が注目されています。

医療情報については、画像や数値など検査結果の活用が十分に進んでいない現状があります。

また医療情報は、医療機関ごとに保管されているだけで、医療情報を統一的に活用する仕組みがありませんでした。

こうした現状を打開すべく、「次世代医療基盤法」が2018年(平成30年)5月に施行されました。

 

私たちが病気やケガなどで医療機関を受診したとき、診療の流れの中で、患者一人ひとりについて、診察・検査・治療などの幅広い医療情報が記録されます。

日本全国の医療機関全体では、膨大な量の医療情報が蓄積されていることになります。

こうした情報を統合し、集約したものが「医療ビッグデータ」です。

 

IT技術が進化し、ビッグデータの解析性能が向上したことを背景に、新しい治療法や新薬の開発など医療分野の様々な研究開発に医療ビッグデータを活用し、医療の向上に役立てようとする取組が世界的に進められています。

 

日本では、患者の医療情報について、画像や数値など検査結果などの利活用が十分に進んでいません。また、受診した医療機関や加入している健康保険組合ごとに分散して保有されており、それらを集約した医療ビッグデータとして利活用する仕組みがありませんでした。

 

<次世代医療基盤法>

医療ビッグデータの土台となる患者一人ひとりの医療情報を、個々の医療機関から集め、医療分野の研究開発のために活用できるようにすることを目的として、次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)が平成29(2017)年5月12日に公布され、翌年5月11日に施行されました。

 

この法律では、「認定事業者」が、医療機関から患者の医療情報を収集します。

「認定事業者」とは、国が認定する信頼できる事業者です。

医療分野の研究開発や情報セキュリティ、医療情報の匿名加工などに精通しています。

 

「認定事業者」は、複数の施設から医療情報を収集し、暗号化して保管します。

そして、医療分野の研究開発の要望に応じて、必要な情報のみを研究機関や企業などに提供します。

患者の氏名や住所など特定の個人を識別することができる情報は提供されません。

 

このように私たち一人ひとりの情報が収集され活用されることで、効果のより高い治療法が分かったり、新薬がつくられたり、病気の早期発見や治療をサポートする機器が開発されたりするなど様々な成果につながり、私たちが将来より良い医療を受けられるようになることが期待されています

 

<医療ビッグデータの活用>

医療ビッグデータの活用は、私たちが将来受ける医療の向上につながると期待されています。例えば、次のような医療が実現できるようになると期待されています。

(1)患者一人ひとりに最適な医療を提供することが可能に

(2)異なる診療科の情報を統合することで治療成績の向上が可能に

(3)最先端の画像分析により病気の早期診断・早期治療を支援することが可能に

(4)医薬品などの安全対策の向上が可能に

 

<個人の医療情報の提供>

認定事業者に対する医療情報の提供に協力できる医療機関では、患者が情報提供を望まない場合を除き、診察・検査・治療などの医療情報は認定事業者に提供されます。

病院やクリニックなどの医療機関では、患者が最初に受診した時に、医師や看護師などから医療情報の提供について書面による通知が行われます。

患者が16歳未満の場合や本人が判断できない状態の場合は、本人に加えて、保護者等にも通知が行われます。

この通知を受けていない人の医療情報は提供されません。

 

医療情報の提供を望まない場合は、いつでも提供の停止を求めることができます。

医療機関から認定事業者に情報が提供されるのは、書面による通知が行われてから必要な期間が経過した後です。

情報が認定事業者に提供された後でも、患者は、情報の削除を求めることができます。

 

2019.02.19.解決社労士

<正社員への転換>

短時間・有期雇用労働者として働き始めると、なかなか正社員にはなれないという実態があり、正社員として働くことを希望していても、そのチャンスに恵まれず、やむを得ず短時間・有期雇用労働者として働いている人もいます。

このような状況は、労働者個人の働く意欲の維持、キャリア形成の観点からも問題ですし、会社にとっても社会にとっても損失となっていると考えられます。

しかし、短時間・有期雇用労働者の正社員への転換について、具体的にどうすべきなのかは、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、正社員への転換について確認したいと思います。

 

<事業主の義務>

この法律の第13条は、正社員(通常の労働者)への転換を推進する措置を事業主に義務付けています。

これは、同じ職場で正社員に転換することを前提としていて、子会社など別の職場に移るとともに正社員に転換するようなケースを想定していません。〔法第3条第1項〕

ただし、短時間・有期雇用労働者の正社員としてのキャリア形成を支援する等の観点から、他の職場で正社員への転換を推進する措置を併せて実施することは望ましいとされています。

また、例えば、短時間労働者から有期雇用フルタイム労働者への転換制度を設け、さらに有期雇用労働者には正社員への転換制度が設けられているような、複数の措置の組み合わせにより正社員への転換の道が確保されている場合も本条の義務の履行と考えられます。

さらに、勤務地、職務内容、勤務時間などが限定され、ライフスタイル等に応じた働き方が可能な「多様な正社員」への転換を推進するのも、本条の義務の履行と考えられます。

 

<具体的な措置>

具体的には次のような措置を講ずることが求められています。

 

【求められる措置】

イ 正社員の募集を行う場合に、業務の内容、賃金、労働時間その他の事項を、採用を予定している職場の短時間・有期雇用労働者に周知すること。

ロ 正社員の配置を新たに行う場合に、その職場の短時間・有期雇用労働者にも、その配置の希望を申し出る機会を与えること。

ハ 正社員への転換のための試験制度を設けること。

ニ この他、正社員として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行う等、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

イは、正社員を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても募集情報を周知することにより、正社員への応募の機会を付与するものです。もちろん、最終的に採用するかどうかは、公正な採用選考である限り事業主の判断に委ねられます。

また、他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を正社員として採用するような場合には、この措置の対象外となります。

ロは、企業外に正社員の募集を出す前に、企業内の短時間・有期雇用労働者に配置の希望を申し出る機会を与えるものです。つまり、優先的な応募機会の付与をいいます。「社内公募」制度のようなものも、これに該当します。もちろん、優先的な採用まで義務付けるものではありません。

ハは、短時間・有期雇用労働者を対象として、正社員への転換のための試験制度を事業所内に設けるものです。一定以上の勤続年数や、その職務に必要な特定の資格の保有を条件とすることも可能です。しかし、対象者がほとんど存在しないような厳しい条件を設定するのは、ハの措置を取ったとはいえません。

ニの「必要な援助」としては、自ら教育訓練プログラムを提供することのほか、他で提供される教育訓練プログラムの費用の経済的な援助や、参加するための時間的な配慮を行うことなどが考えられます。

 

<義務の履行にはならない措置>

この法律で事業主に義務付けられている措置は、制度として行われるものであることが求められています。

従って、次のような措置では義務の履行にはなりません。

 

【不適切な措置】

・合理的な理由なく、事業主の恣意により正社員の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合。

・転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに、事業主の気に入った人物を正社員に転換するような場合。

 

なお、長期間にわたって正社員に転換された実績がない場合には、転換を推進するための措置を講じたとはいえない可能性があり、周知のみで応募はしにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないかを検証しなければなりません。

 

2019.02.18.解決社労士

<失業の認定の意味>

失業の認定は、基本手当(昔の失業手当)などの受給資格者に働く意思と能力があって、しかも職業に就くことができないことの認定です。

ですから、受給資格者が自ら所定の失業の認定日に公共職業安定所に行くことになります。これが原則です。

しかし、次のようなやむを得ない理由により、公共職業安定所に行くことができないときは、特別な扱いを受けることができます。

つまり、証明書を提出することによって、所定の認定日に公共職業安定所に行かなくてもやむを得ない理由がやんだ後に行けば、失業の認定を受けることができることになっています。

嘘の理由で手続きすることはできませんし、証明書を提出できないときも手続きはできません。

また、やむを得ない理由があらかじめ分かっている場合は、事前に申し出るのが原則となっています。

 

<病気やケガで行けない期間が継続して15日未満の場合>

病気やケガが良くなって、公共職業安定所に行けるようになった最初の失業の認定日に、医師などの証明書と受給資格者証を提出します。

この手続きによって、病気やケガで公共職業安定所に行けなかった認定日の認定対象期間も含めて、失業の認定を受けることができます。

 

<病気やケガで行けない期間が継続して15日以上の場合>

雇用保険の基本手当に代えて同額の傷病手当が支給されます。

このとき、傷病手当の支給日数は、基本手当の所定給付日数からすでに支給された基本手当の日数を差し引いた残りの日数となります。

また、傷病手当を受けられる人が同じ原因で、(1)健康保険の傷病手当金、(2)労災保険の休業補償給付(業務災害)、(3)労災保険の休業給付(通勤災害)を受けられるときには、傷病手当は支給されません。

 

<採用面接や採用試験で行けなかった場合>

公共職業安定所の紹介に応じて、求人企業と面接したり、採用試験を受けたりするために行けなかったときに限ります。

求人企業と面接した後の最初の認定日に公共職業安定所に行き、求人企業の面接証明書と受給資格者証を提出することによって、失業の認定を受けることができます。

求人企業の行う採用試験を受けた場合にも、これと同様の取扱いにより失業の認定を受けることができます。

 

<職業訓練で行けなかった場合>

公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受講するために、公共職業安定所に行けなかったときに限ります。

所定の失業の認定日に、代理人(通常は公共職業訓練施設等の職員)から(1)公共職業訓練等を行う施設の長の公共職業訓練等受講証明書、(2)受給資格者証、(3)失業認定申告書、(4)委任状が提出されることにより失業の認定を受けることができます。

 

<天災などで行けなかった場合>

天災その他避けることができない事故(水害、火災、地震、暴風雨雪、暴動、交通事故など)のため公共職業安定所に行けなかった場合には、事故がやんだ後の最初の失業の認定日に公共職業安定所に行き、受給資格者証と市町村長や駅長等の証明書などを提出すれば、証明書に記載された期間内の認定日の認定対象期間も含めて、失業の認定を受けることができます。

 

2019.02.17.解決社労士

<やっぱり欲しい場合>

「離職票」は、雇用保険に入っていた人が離職した際に、事業主から提出される離職証明書に基づいて、ハローワーク(公共職業安定所)から交付されるものです。

離職した人が、転職先が決まっている、結婚して仕事をするつもりがない等の理由によって、離職票の交付を希望しない場合は、離職票は交付されません。

しかし、その後事情が変わるなどして、後日離職票が必要となり、交付を希望する場合は、離職票の交付を受けることは可能です。

離職票の交付を受けようとする場合には、前に勤めていた会社に対して「離職証明書」の交付を請求し、その離職証明書を公共職業安定所に提出することによって、離職票の交付を受けることができます。

たとえ、基本手当(昔の失業手当)などを受給できる期間を過ぎていても、本人が希望すれば、前の会社は手続きに応じなければなりません。

それでも、前の会社から離職証明書の交付を受けることができない場合は、自宅近くのハローワーク(公共職業安定所)に相談することになります。

 

<なくした場合、捨てた場合>

交付された離職票をなくした場合や、要らないと思って捨てた場合でも、ハローワーク(公共職業安定所)で再交付を受けることができます。

前の会社を経由して再発行を受けることもできますが、ちょっとカッコ悪いですね。

自分でハローワークに行って手続きした方が、再発行まで速やかに対応してもらえます。

ただこの場合、手続きを行うハローワークは前の会社を管轄するハローワークになります。

手続きには、「離職票再交付申請書(雇用保険被保険者離職票再交付申請書)」が必要です。

これは、ハローワークでもらうことも、ハローワークのサイトからダウンロードすることもできます。

また、手続きの際には、運転免許証やパスポートなど写真付きの本人確認書類が必要になります。

 

2019.02.16.解決社労士

<今年のGWは10連休>

皇太子さまが即位される2019年5月1日と、即位を公に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日を、今年に限って「国民の祝日扱い」とする法律(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律)が成立しました。

これによって、2019年のゴールデンウィークは4月27日から5月6日までの10連休となります。

祝日法(国民の祝日に関する法律)には、祝日に挟まれた平日は休日となるという規定があり、5月1日が祝日になったことで、4月30日と5月2日が「国民の休日」となります。

 

<銀行の対応>

みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行は、「連休中は支店窓口を休業、ATMとネットバンクは稼働」という方針を示しています。

連休直前の4月26日と連休明けの5月7日は、店頭の大混雑が予想されますので、経理部門は前倒しで必要な手続きを済ませておくことをお勧めします。

 

<休日が多すぎる?>

会社の休日について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【休日】

第20条  休日は、次のとおりとする。

① 土曜日及び日曜日

② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)

③ 年末年始(12月  日~1月  日)

④ 夏季休日(  月  日~  月  日)

⑤ その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

この規定によれば、4月30日と5月2日は「国民の休日」であって、「国民の祝日」ではありませんから、会社の休日にはなりません。

しかし、会社の就業規則の規定が「祝日法に定める休日」となっていれば、10連休となります。

これだけ休日が多いことで、業務が停滞する恐れがある場合に、上に示したモデル就業規則第20条第2項のような規定があれば、「休日を他の日と振り替えること」もできます。ただし、休日の総日数は変わりません。

休日の振替に関する規定があっても無くても、業務をこなすのに必要な勤務日数が不足するのであれば、計画的に休日出勤を命じておくことも考えなければなりません。

いずれにせよ、業務の進行具合や計画と会社の就業規則を再確認し、各従業員のゴールデンウィークの勤務予定を確定しておくことをお勧めします。

 

2019.02.15.解決社労士

<雇用保険の基本手当>

会社などで雇用されていた人が離職した場合、失業中の生活を心配しないで再就職活動ができるよう、一定の条件を満たせば、雇用保険の「基本手当」を受けることができます。

「基本手当」は、昔「失業手当」「失業給付」と呼ばれていたものです。

 

<基本手当をもらう原則の条件>

「基本手当」は、雇用保険の加入者(被保険者)が離職して、次の2つの条件を両方とも満たす場合に支給されます。

 

【基本手当の受給条件】

・ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること

・離職の日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あること

 

<基本手当をもらう例外の条件>

ただし、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でももらえます。

ここで、「特定受給資格者」というのは、解雇・倒産等により離職した人をいいます。

また、「特定理由離職者」というのは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した方等をいいます。

 

<離職の意味>

退職が「離職」に含まれるのは当然ですが、週所定労働時間が20時間未満になった場合も「離職」に含まれます。

勤務時間が少ないと、安定した雇用ではなく、転職先を考えながらの勤務が想定されるからです。

 

<基本手当の受給日数>

基本手当の支給を受けることができる日数(基本手当の所定給付日数)は、年齢、雇用保険の加入者(被保険者)であった期間や離職理由などによって、90日~360日の間で決定されます。

基本手当の1日当たりの額(基本手当日額)は、離職日の直前の6か月の賃金日額(賞与等は含みません)の50%~80%(60~64歳については45~80%)です(上限額あり)。

 

<受給のための手続き>

雇用保険の「基本手当」を受けるためには、ハローワークで所定の手続きをする必要があります。

特に、退職ではなく勤務時間の減少によって「離職」した人は、手続きを忘れていることがありますので注意しましょう。

 

2019.02.14.解決社労士

<労務不能が条件となる保険給付>

健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業(補償)給付は、ケガや病気で労務不能であることが受給の条件となります。

 

<傷病手当金の受給条件>

以下の条件をすべて満たすときは、「傷病手当金」を受けることができます。

保険加入者(被保険者)のみが対象ですから、扶養家族は対象外です。

 

・業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること。

健康保険の制度ですから、美容整形手術など健康保険の給付対象とならない治療のための療養は含まれません。

・療養のための労務不能であること。

・4日以上仕事を休んでいること。

療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給対象です。

・給与の支払いがないこと。

ただし、給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。

 

<休業(補償)給付の受給条件>

上記の傷病手当金の受給条件のうち、最初の「業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること」を、「業務中または通勤途上の病気やケガで療養中であること」に置き換えると、休業(補償)給付の受給条件になります。

業務による病気やケガで療養する場合には「休業補償給付」、通勤による病気やケガで療養する場合には「休業給付」が支給されます。

休業の初日から3日目までは労災保険からは支給されません。この間は業務災害の場合、事業主が休業補償(1日につき平均賃金の60%以上)を行うことになっています。

 

<労務不能の意味>

労務不能とは、保険加入者(被保険者)が今まで従事していた業務ができない状態のことで、労務不能であるか否かは、医師の意見、被保険者の業務内容、その他の諸条件を考慮して判断します。

「医師の意見」というのは、主に療養担当者つまり治療を担当する医師の意見です。対象者の仕事内容から考えて、病気やケガの程度や回復具合から、今まで従事していた業務ができるかどうかを判断するのです。

たとえば、外回り営業に従事していた人が脚にケガを負って、まだ回復が不十分であっても、経理の仕事ならできるということがあります。それでも、今まで従事していた業務ができるわけではありませんから、やはり労務不能と判断されるのが一般です。

 

<仕事内容がポイント>

労務不能の判断は、対象者の仕事内容と病気やケガの具合を比較して行われます。

治療を担当する医師は、病気やケガの具合を判断することは得意なのですが、対象者の仕事内容を具体的に知っているわけではありません。

ですから、対象者本人か会社の担当者が、医師に対象者の仕事内容をわかりやすく説明する必要があります。特に病気やケガとの関係で、仕事上の困難な部分をよく説明しておく必要があります。

また、傷病手当金の支給申請書や休業(補償)給付の支給請求書には、仕事内容を記入する欄があります。ここには「事務員」といった抽象的な表現ではなく、「経理担当事務」「自動車組立」「プログラマー」などある程度具体的に記入することが求められています。

 

2019.02.13.解決社労士

<通達の改正>

平成31(2019)年2月1日、厚生労働省年金局事業管理課長から「20 歳前障害基礎年金が遡及して請求された場合の所得証明書の取扱いについて」の通達を一部改正する通達が出されました。

 

<改正の目的>

20歳前に初診日がある障害基礎年金について、所得証明書の添付は、原則として遡及する期間の当初まで遡って請求者に求められますが、時効により権利が消滅している期間についてまで求めるのは不合理なので、これを是正するのが目的です。

 

<具体的な内容>

20歳前障害基礎年金の請求に当たっては、国民年金法施行規則により所得証明書(所得状況届及び所得の状況に関する所定の書類)を請求書に添えることとされています。

この所得証明書の添付は、原則として遡及する期間の当初まで遡って請求者に求められます。

しかし、市区町村で所得証明書が発行できる期間に限度があるため、発行できない期間の所得証明書については、国民年金法施行規則により「特別な事情がある場合において、特に必要があると認めるとき」に該当するものとして、所得証明書に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を添付することになっています。

この一方で、2か月に1回の年金支給額のそれぞれが時効消滅する期間については、所得が基準額を超えていた場合は所得制限により支給停止となり、所得が基準額以下であった場合は権利が時効消滅するため、いずれにしても年金は支給されません。

ですから、時効にかかってしまった期間についても、必ず所得証明書を添付しなければならないというのは不合理なわけです。

これを是正するため、権利が時効消滅する期間については、所得証明書の添付に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を20歳前障害基礎年金の請求書に添付することが認められるようになりました。

 

年金の受給権が時効消滅している期間については、市区町村で所得証明書が発行できるかできないかに関係なく、所得証明書の添付に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を添付すれば良いことになったわけです。

 

2019.02.12.解決社労士

<通達の改正>

平成31(2019)年2月1日、厚生労働省年金局事業管理課長から「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の通達を一部改正する通達が出されました。

 

<改正の目的>

20 歳前に初診日がある障害基礎年金について、裁定に必要な要件を確認しつつ、請求者の負担軽減を図るのが目的です。

 

<具体的な内容>

20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求で、障害認定日が20歳以前であることが確認できた場合の取扱いについて、次の内容が加わりました。

 

20歳前に初診日がある障害基礎年金については、障害認定日が20歳に達した日以前である場合は、障害の程度を認定する時期は一律に20歳となる。このため、2番目以降に受診した医療機関の受診した事実を証明する資料に記載された当該医療機関の受診日から、障害認定日が20歳以前であることを確認でき、かつ、その受診日前に厚生年金等の加入期間がない場合には、初診日の医証を追加で請求者に求めずとも、20歳前の期間で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

 

20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求では、証明資料の範囲が拡張されます。

 

旧通達 = 初診日を明らかにする書類から障害認定日(20歳以前)が認定できなければならない。

 

新通達 = 初診日以外の受診を明らかにする書類から、障害認定日が20歳以前であることを確認できれば良い。

 

2019.02.11.解決社労士

<法改正による対象者の拡張>

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」には次の規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

 

この法律は改正され、名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」となって、2020年4月1日に施行されます。

対象者が短時間労働者だけでなく、有期雇用労働者に拡張されます。

その施行に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

 

<差別的取扱いの禁止>

短時間・有期雇用労働者の職務の内容や「職務の内容及び配置」の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)といった就業の実態が、正社員など通常の労働者と同様であるにもかかわらず賃金などの取扱いが異なるなど、短時間・有期雇用労働者の待遇は就業の実態に見合った公正なものとなっていない場合があります。

しかし、就業の実態が通常の労働者と同じ短時間・有期雇用労働者については、全ての待遇について通常の労働者と同じ取扱いがなされるべきだとされます。

つまり、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないということです。

 

ただし、「職務の内容及び配置」の変更の範囲が、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、正社員など通常の労働者と同一であることが条件となっています。

これは、その事業所の慣行その他の事情からみて、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容・配置が、正社員など通常の労働者の職務の内容・配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるということです。

なぜなら、我が国における雇用管理が長期的な人材育成を前提になされていることが多いため、差別的取扱いの禁止の規定の適用に当たっては、ある一時点において短時間・有期雇用労働者と通常の労働者が従事する職務が同じかどうかだけでなく、長期的な人材活用の仕組み、運用等についてもその同一性を判断する必要があるからです。

 

<具体的な対応としては>

「正社員」「パート社員」「契約社員」などの用語は、法律用語ではありません。ですから、こうした言葉の意味内容は、それぞれの会社が自由に決めています。

実際のところ、「正社員」の求人広告に応募して採用されると正社員として扱われ、「契約社員」の求人広告に応募して採用されると契約社員として扱われています。

そして、勤務時間の違いこそあれ、仕事の中身が全く同じになってしまっていることは少なくありません。

仕事内容が同じなら、待遇も同じであるのが正常なのですが、本人が納得?しているだろうということで、待遇の差が退職まで残っているという不合理が見られます。

正社員などフルタイムの労働者よりも、勤務時間が短かったり、勤務日数が少なかったりする「短時間労働者」については、現在でも差別的取扱いが禁止されています。

これが、2020年4月1日になると、フルタイムの労働者ではあるものの、契約期間に区切りのある有期雇用労働者に対しても、この法律が適用されるようになるということです。

従業員の待遇を決定するに当たっては、職務の内容や「職務の内容及び配置」の変更の範囲を基準としなければならなくなったわけです。

 

2019.02.10.解決社労士

<待遇の相違の合理性>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が法定されています。

しかし、具体的なケースについて、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性をどのように判断すべきか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に「職務の内容及び配置の変更の範囲」が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」を考慮する理由>

現在の我が国の雇用システムでは、長期的な人材育成を前提として人事制度が構築されていることが多いといえます。

このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられます。

法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素または適用要件の一つとして位置付けています。

 

<「職務の内容及び配置の変更」の意味>

「職務の内容の変更」には、「配置の変更」によるものと、上司等からの業務命令によるものがあります。

また、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

こうして、「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、重複して生じることがあります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の意味>

これらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容や配置の広がりを指すものです。

そして、「範囲」の同一性を判断するにあたっては、一つ一つの職務の内容や配置の変更の態様が同様であることまでは求めません。

例えば、一部の部門に限って人事異動の可能性がある人と、全部門にわたって人事異動の可能性がある人とでは、「配置の変更の範囲」が異なることになるので、「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとはいえません。

ただし、これまで転勤等がなかったという人でも、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して判断することになります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性判断の手順>

「職務の内容」が同一であると判断された、正社員など通常の労働者と、短時間・有期雇用労働者を対象として行うことになります。

まず、①短時間・有期雇用労働者について、「配置の変更」に関して、正社員など通常の労働者と転勤の有無が同じかどうかを比較します。

次に、②転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。

さらに、③転勤が双方とも無い場合、または双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。

最後に、④ここまで同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、その異同を判断します。

上記①から④までのどの時点で異なっていても、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、人事異動の見込みが同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.09.解決社労士

<均等待遇と均衡待遇>

均等待遇は、職務内容等が同じなので同じ待遇にするという意味で、平等の理念に基づきます。

平等の理念は、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

また均衡待遇は、職務内容等の違いに応じて異なる待遇にするという意味で、公平の理念に基づきます。

公平の理念は、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

待遇の違いの大きさが、職務内容等の違いの大きさに比例して合理的に決定されること、つまりバランスが取れていることから、「均衡」待遇と呼ばれます。

働き方改革で、「同一労働同一賃金」が言われていますが、ガイドラインや指針などから明らかなように、均等待遇だけでなく均衡待遇もその内容に含まれています。

 

<均衡待遇の前提>

均衡待遇は、職務内容等が異なっていることを前提としています。

しかし、具体的に何がどう違っていれば、「職務内容等が異なる」と判断して良いか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に職務内容等が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<基本的な考え方>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が、法第8条に規定されています。

 

<職務の内容の同一性を判断する手順>

法に示された「職務の内容」とは、「業務の内容とその業務に伴う責任の程度」をいいます。

これは、労働者の就業の実態を表す要素の中で最も重要なものです。

そして「業務」とは、職業上継続して行う仕事であり、「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいいます。

 

「職務の内容」が同一といえるためには、まず業務の種類が同一でなければなりません。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」ということになります。

 

次に、比較対象となる通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務を、業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」をそれぞれ抽出します。「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核的なものを指します。

これは以下の基準に従って、総合的に判断されます。

 

【中核的業務】

① 与えられた職務に本質的または不可欠な要素である業務

② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務

③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務

 

こうして抽出された「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断され、明らかに異なっていれば「異なる」と判断されます。

 

最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかをチェックすることになります。

このチェックにあたっては、以下のような事項について比較します。

 

【責任の程度】

① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)

② 業務の成果について求められる役割

③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度

④ ノルマ等の成果への期待の程度

⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度

 

例えば管理する部下の数が一人でも違えば「責任の程度が異なる」と判断するのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見なければなりません。

なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要です。

 

以上の判断手順を経て、「業務の内容」と「責任の程度」の両方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」ということになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、職務の内容が同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、職務の内容の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.08.解決社労士

<半年で3人自殺の報道>(TBSニュース)

福岡県大牟田市の不動産会社に勤めていた男性社員3人が、半年ほどの間に相次いで自殺していたことが分かり、警察が背景を調べているそうです。

インターネットの掲示板には、「自殺した3人を含む複数の社員が経営者から日常的にパワハラを受けていた」と匿名の書き込みがあるということです。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など
・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、立場上必要な注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】


・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償を請求される対象ともなります。〔民法709条〕

これは、経営者でも一般の従業員でも同じです。

 

<会社の民事責任>

さらに、会社も不法行為責任を負います。〔民法44条1項〕

まともに働ける環境を提供していないといえる場合なら、債務不履行責任も負います。〔民法415条〕

「経営者=会社」ではありませんから、経営者がパワハラを行った場合には、会社も経営者も責任を負います。

 

<被害者が取るべき行動>

・パワハラ行為の記録や証拠を残す。

・同じ行為者からのパワハラ被害者がいれば協力する。

・労働相談情報センターなどに相談する。

社長がパワハラを行う人物である場合、その権限の強さから、被害者が複数である可能性は高いでしょう。一人では心細いですが、被害者が協力し合うことによって、解決しやすくなります。

また、パワハラの問題は、第一に社内で解決するのが原則です。しかし、パワハラの相談窓口や担当者は、被害者の味方に付いてくれないかもしれません。早めに社外の相談窓口に相談することをお勧めします。

 

<経営者がパワハラの防止を考えるなら>

本気でセクハラ、パワハラ、マタハラなどを防止したい会社なら、相談窓口は社外の専門家に委託して、社内でもみ消されないようにするのではないでしょうか。

ハラスメントに限らず、働いている人たちの相談窓口として、信頼できる社労士をご検討ください。

また、そもそもパワハラが何なのか良く分からない、萎縮して部下や後輩を指導できないのでは困るという声もあります。

こうした場合にも、社労士にセミナーの開催を委託するなど、社外の専門家を活用することを考えてはいかがでしょうか。

 

2019.02.07.解決社労士

<成年年齢の意味と変更>

民法の定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものです。

この民法が改正され、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わります。

18歳以上の若者が、自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備し、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するとされます。

成年年齢の見直しは、明治9年の太政官布告以来、約140年ぶりです。

以下、法務省の「民法(成年年齢関係)改正 Q&A」の一部を要約してご紹介します。

 

<成年年齢引き下げの背景>

わが国では、憲法改正国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳以上を大人として扱う政策が進められています。

世界的にも、成年年齢を18歳とするのが主流です。

成年年齢を18歳に引き下げることで、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を促すことになると考えられます。

 

<成年年齢に達する日>

2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の人は、この日に成年に達することになります。

生年月日でいうと、2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの人が対象です。法律上は、誕生日の前日に歳をとるので、こうした区分になります。

2004年4月2日生まれ以降の人は、18歳の誕生日の前日に成年に達することになります。

 

<18歳でできるようになること>

親の同意を得ずに、様々な契約をすることができるようになります。

例えば、携帯電話を購入する、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといったことができるようになります。

親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり、進学や就職などの進路決定についても、自分の意思で決めることができるようになります。

このほか、10年有効パスポートの取得や、公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと、性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳でできるようになります。

しかし、飲酒や喫煙、公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)の年齢制限は、20歳のまま維持されます。これらは、健康被害への懸念や、ギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとされています。

 

<成人式の時期>

成人式の時期や在り方に関しては、現在、法律による決まりはなく、各自治体の判断で実施されていますが、多くの自治体では、1月の成人の日前後に、20歳の人を対象に実施しています。

成年年齢の引き下げ後は、18歳の人を対象とするのか、高校3年生の1月という受験シーズンに実施するのか、2022年度は3学年分同時に実施するのかといった問題があると指摘されています。

政府としては、関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめた上で情報発信し、各自治体がその実情に応じた対応をすることができるよう取り組んでいくとしています。

 

2019.02.06.解決社労士

<一斉休業の実例>

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」は、2019年2月5日と6日の2日間、ほぼ全店に当たる約500店舗を一斉休業するそうです。

広報によると「お客さまや関係者への影響を最小限に抑えつつ、働きやすい環境づくりにつなげたいという思いで一斉休業の形をとることにした」そうです。

また、2019年の元日は、外食チェーンの他、百貨店や大手スーパーマーケットチェーンでも、一斉休業にする動きが目立ちました。

各企業とも、休業により店舗の売り上げは減少するものの、それ以上のメリットがあるといいます。

働き方改革を推進していること、従業員のためを思っていることをお客様にアピールできるというのです。

たしかに、こうした一斉休業は、お客様にも納得していただきやすいことでしょう。

 

<年次有給休暇の計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を設定することができます。これを年次有給休暇の計画的付与制度といいます。

この制度はもともと、企業・事業場を一斉に休みにできる、あるいは一斉に休みにした方が効率的な業態について、全従業員に対して同一の日に年次有給休暇を与えることを想定しています。

たとえば製造部門など、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場などで活用されてきました。

働き方改革の進む中で、この制度が、飲食業や小売業でも活用されるようになってきたようです。

 

<一歩進んだ特別休暇制度>

一斉休業を行うにあたって、年次有給休暇の計画的付与制度の活用を考えた場合に、入社したばかりで年次有給休暇が付与されていない従業員がいるときは、有給の特別休暇を与えるのが一般です。

一方で、すでに年次有給休暇を取得していて残日数が不足する従業員に、この特別休暇を与えるのは考えものです。ほとんど年次有給休暇を取得していない従業員は、特別休暇を与えられないわけですから、不公平が生じてしまいます。とはいえ、一斉休業の日を欠勤扱いにするわけにもいきません。

気前よく全従業員に特別休暇を与えるか、一斉休業の社内告知を1年以上前にしておくなどの対応が必要となります。

 

 

普段、年次有給休暇を取得できない従業員ほど、一斉休業は嬉しいものです。

大手企業で盛んになりつつある一斉休業ですが、中小企業で行った場合の効果はさらに大きいのではないでしょうか。

 

2019.02.05.解決社労士

<注意ポイント>

月間所定労働日数は、実際の勤務日数と比較して割増賃金や欠勤控除を行う基準となるものではありません。日数同士の比較をするのは不合理なのです。

月間所定労働日数は、残業や欠勤があった場合に、月給から時間単価を計算して、その金額を計算するために使っています。

2月はカレンダー上の日数が少ないですから、勤務日数が少なくなるのが自然です。毎年2月の給与が減ってしまうのでは、月給制にした意味がありません。

実際の勤務日数に応じて給与を計算するのであれば、日給制の労働契約にすべきです。

 

<具体例>

たとえば、月間所定労働日数が22日の場合に、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき2日分の休日出勤手当が発生したり、2日分の欠勤控除が発生したりでは、月給が毎月変動してしまいます。明らかに不合理です。

そもそも休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算します。ここに月間所定労働日数は出てきません。

月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の社員はカレンダーを見ながら会社のルールに従い出勤していれば、月給の変動は無いのが正常な姿です。

 

<一般的な所定労働日数>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数 ÷ 12 = 月間所定労働日数とするのが一般です。このとき、分かりやすくするために、1日未満の端数は切り捨てることが多いようです。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間単価を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間単価 × 1.25 などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間 ÷ 12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の時間単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、毎月同じ日数にするのが無難でしょう。

 

<所定労働日数が無いと>

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、社員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

時間単価の低い期間は仕事を先送りにして、時間単価の高い期間に残業して業務をこなせば、手取り額が増えるという現象も発生します。

また、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。ところが、週単位あるいは年単位での所定労働日数が決まっていなければ、年次有給休暇の付与日数が確定できません。

現時点で所定労働日数の決まっていない社員がいる会社では、遅くとも平成31(2019)年3月までには、社労士に相談するなどして確定しておきましょう。

 

2019.02.04.解決社労士

<届出による雇用状況の把握>

平成31(2019)年1月25日、厚生労働省が平成30(2018)年10月末現在の外国人雇用についての届出状況を取りまとめ公表しました。

外国人雇用状況の届出制度は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的とし、すべての事業主に外国人労働者の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。

届出の対象は、事業主に雇用される外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」・「公用」の者を除く)であり、数値は平成30年10月末時点で事業主から提出のあった届出件数を集計したものです。

 

【届出状況のポイント】

○ 外国人労働者数は1,460,463人で、前年同期比181,793人、14.2%の増加(平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新)

○ 外国人労働者を雇用する事業所数は216,348か所で、前年同期比21,753か所、11.2%の増加(平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新)

○ 国籍別では、中国が最も多く389,117人(外国人労働者数全体の26.6%)。次いでベトナム316,840人(同21.7%)、フィリピン164,006人(同11.2%)の順。対前年伸び率は、ベトナム(31.9%)、インドネシア(21.7%)、ネパール(18.0%)が高い。

○ 在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」の労働者数が276,770人で、前年同期比38,358人、16.1%の増加。また、永住者や日本人の配偶者など「身分に基づく在留資格」の労働者数は495,668人で、前年同期比36,536人、8.0%の増加などとなっている。

 

<外国人労働者が増加している要因>

厚生労働省では、外国人増加の要因として次の理由を挙げています。

〇 政府が推進している高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること

〇 雇用情勢の改善が着実に進み、「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分に基づく在留資格の人たちの就労が進んでいること

〇 技能実習制度の活用により技能実習生の受入れが進んでいること等

 

<統計の見方として>

毎月勤労統計調査のこともあり、厚生労働省の統計は信じられないという声もあります。

これはさておき、外国人雇用状況を客観的に把握しているというわけではなく、あくまで届出を集計しているに過ぎないということを認識しなければなりません。

これまで届出を怠っていた事業所が、ハローワークなどの指摘を受けて届出をするようになった場合には、実態とは関係なく外国人労働者数が増加したことになってしまいます。

かつて統計上、労災による死亡者数が減少傾向にあったとき、労働基準監督署になぜ減少したのかを問い合わせたところ、「医学の発達により被災者が死亡しにくくなった」という回答をもらって、愕然としたことがあります。

各種統計を見るときには、隠された事情の変化も読み取ることが必要です。

 

2019.02.03.解決社労士

<厚生労働省の発表>

平成31年1月24日、厚生労働省が雇用保険、労災保険等を現在受給中の人に対する再計算後の額による給付の実施について、次のように発表しました。

 

 毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことによる雇用保険、労災保険等の追加給付については、できる限り速やかに順次追加給付を開始することを予定していますが、今般、雇用保険、労災保険、船員保険等の追加給付に関し、まず、現に受給中の方については、今後新たに支給が行われる分について、3月から順次6月までに再計算した金額での支給を開始する予定といたしました。

 

<雇用保険関係>

雇用保険給付を現に受給中の人について、準備を整えた上で、3月中に、その日以後失業していた日について支給する際は、再計算した金額での支給を開始する予定としています。

労働施策総合推進法の就職促進手当を現に受給中の人について、3月中に、その日以後の支給決定については、再計算した金額での支給を開始する予定としています。

 

<労災保険関係>

労災保険の今後新たに支給が行われる分について、支給額の再計算の結果、支給額が多くなる人には、

- 労災年金については4・5月分から(6月支払)

- 休業(補償)給付については4月分の休業から

再計算した金額での支給を開始する予定としています。

労災年金について再計算した金額での支給が必要な人には、労働基準監督署に登録された連絡先に、4月に郵送で御連絡する予定です。

 

<船員保険関係>

現在職務上災害に係る障害年金や遺族年金を受給中の人について、支給額の再計算の結果、支給額が多くなる人には、支給額を改定する通知を送付した上で、4月中旬に、現在利用中の口座に追加給付を行う予定としています。

 

<事業主向け助成金>

雇用調整助成金について、現に支給期間中の事業主については3月中に、その日以後の支給決定については再計算した金額で支給を開始する予定としています。

 

2019.02.02.解決社労士

<NITEからの注意喚起>

平成31(2019)年1月24日、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)がリチウムイオンバッテリー搭載製品の事故について注意を呼びかけています。

以下、NITE(ナイト)による報道発表資料です。

 

【事故の被害状況】

モバイルバッテリーを筆頭に、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品で事故が発生しています。

2013年度から2017年度の5年間に通知された製品事故情報では、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品の事故は582件ありました。この582件のうち、402件(69%)が火災を伴っています。

 

【事故の原因】

事故の原因は、製品の不具合によるものが368件(71%)と最も多くなっています。368件のうち209件(36%)は、リコール対象製品によるものであり、回収や交換、情報の周知などが適切に行われていれば防げた事故も多いと考えられます。

 

【モバイルバッテリーの規制】

モバイルバッテリーの事故の多発を踏まえ、経済産業省は平成30(2018)年2月1日、通達「電気用品の範囲等の解釈について」を改正し、モバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象として取り扱うこととしました。

事業者における対応の準備期間として、施行日より1年間を経過措置期間とし、この間はこれまでの扱いによることもできるとしていましたが、平成31(2019)年2月1日以降は、基準に適合した製品でなければ販売できません。

 

<リコール情報の確認>

会社の業務でもプライベートでも、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品が使用されています。

会社が従業員に貸与している物品の中にも、リチウムイオンバッテリーが使われているものがあるでしょう。

こうした物品で事故が発生すると業務に支障が出ますから、リコール情報があった場合には、不具合が生じていなくても速やかに使用を中止し、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談する必要があります。

もっとも、連絡先が分からないのでは、相談することもできませんから、製造事業者、販売事業者や輸入事業者が確かな製品を購入することも大切です。

また、従業員がプライベートで使用する物による事故であっても、これによって欠勤が発生したり、通院などのために時間を割かれたりしますので、会社から従業員に対する情報の提供や教育により、可能な限り事故を防いでいかなければなりません。

 

<誤用による事故>

誤った使い方による事故も後を絶ちません。

しかし従業員の中には、取扱説明書をほとんど読まずに使用する人もいます。

取扱説明書には、「分解しない。無理な力や強い衝撃を与えない。発熱・発火の原因となる」といった説明があったにもかかわらず、かばんに入れたスマートフォンに、外から力が加わったため、内部ショートが生じて異常発熱し、焼損する事故も発生しています。

また、ズボンのお尻のポケットに、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品を入れたまま座ってしまい、発火するという事故も起きています。

こうしたことは、本来、個人の自己責任なのですが、従業員の啓蒙も十分に行っておくことが、会社にとって有益であるといえるでしょう。

 

2019.02.01.解決社労士

平成31(2019)年1月18日、厚生労働省と文部科学省が平成31年3月大学等卒業予定者の就職内定状況を共同で調査し、平成30年12月1日現在の状況を取りまとめ公表しました。

取りまとめの結果、大学生の就職内定率は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)となり、平成9年3月卒の調査開始以降、同時期で過去最高となりました。

 

【就職内定率の概要】

● 大学(学部)は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)

● 短期大学は75.6%(同0.2ポイント上昇)

● 大学等(大学、短期大学、高等専門学校)全体では87.2%(同1.6ポイント上昇)

● 大学等に専修学校(専門課程)を含めると86.1%(同2.2ポイント上昇)

 

【全体の概要】

○ 大学の就職内定率は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)。このうち国公立大学の就職内定率は、87.9%(同1.0ポイント上昇)、私立大学は、87.9%(同2.2ポイント上昇)。

○ 短期大学の就職内定率は、75.6%(前年同期比0.2ポイント上昇)。

○ 高等専門学校及び専修学校(専門課程)の就職内定率は、それぞれ97.2%(前年同期比0.4ポイント低下)、76.8%(同7.9ポイント上昇)。

○ 大学等(大学、短期大学、高等専門学校)を合わせた就職内定率は87.2%(前年同期 比1.6ポイント上昇)。専修学校(専門課程)を含めると86.1%(同2.2ポイント上昇)。

 

【男女別の概要】

○ 男女別では、男子大学生の就職内定率は87.5%(前年同期比2.3ポイント上昇)、女子は88.5%(同1.5ポイント上昇)。

また、国公立大学では、男子:86.6%、女子:89.4%、私立大学では、男子:87.8%、女子:88.2%となっている。

 

【文系・理系別の概要】※大学のみ

○ 文系・理系別では、文系の就職内定率は87.7%(前年同期比2.0ポイント上昇)、理系の就職内定率は89.0%(同1.8ポイント上昇)となっている。

 

【地域別の概要】※大学のみ

○ 地域別では、関東地区の就職内定率が最も高く、90.5%(前年同期比2.3ポイント上昇)となっている。

 

2019.01.31.解決社労士

<無料低額診療事業>

この制度は、経済的理由により適切な医療を受けることができない人々に対し、無料または低額で診療を行う事業です。

現在実施しているのは全国600以上の医療機関で、免除した医療費は医療機関が負担しています。

 

<減免を受けることができる人>

低所得者等で経済的理由により診療費の支払いが困難な人が対象となります。

医療保険への加入の有無や国籍を問わないケースもあります。

 

<減免額>

診療費の10%以上または全額が免除されます。

医療機関は、給与明細書や源泉徴収票などで所得などを確認し、医療費の全額を免除するか一部を免除するかを決めています。

そして、その基準は実施している医療機関によって異なります。

 

<申込方法>

医療機関によって異なりますので、まず医療機関に電話などで問い合わせてみる必要があります。

 

<問題点>

実施している医療機関は都市部に集中していて地域の偏りがあります。

また、こうした事業は本来行政が行うべきものであって、医療機関が負担することについては疑問視されています。

 

<高齢者向けの制度>

無料低額診療事業の他に、無料低額介護老人保健施設利用事業があります。

この制度は、介護老人保健施設の利用にあたり、経済的理由により費用の支払いが困難な人々に対し、費用の減免を行う制度です。

この制度の利用には、条件がありますので、居住地の市町村に問い合わせる必要があります。

 

2019.01.30.解決社労士

<無期転換の特例>

有期雇用の労働者は通算で5年を超えて働くと無期雇用に転換できますが、大学教員などに限っては5年より長い期間の研究プロジェクトに携わることもあるので、教員任期法などで10年超での転換が特例として定められています。

 

【労働契約法の原則】

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

 

【教員任期法(大学の教員等の任期に関する法律)による特例】

(労働契約法の特例)
第七条 第五条第一項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 

<東京大学で基準の変更>

東京大学も、これまでは教員任期法の特例を適用し、非常勤講師を無期雇用に切り替えるまでの期間を10年としてきました。

しかし東大教職員組合が、非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていないなどとして大学側に再考を要請し、大学側がこれを了承して、平成31(2019)年4月からは無期転換に必要な期間を5年とすることになったそうです。

この判断は、他の大学にも影響を与え、波及していくのではないでしょうか。

 

<立法事実という視点>

立法事実というのは、法令を制定する際の基礎となり、その法令の存在の合理性を支える事実です。

法令を制定する際には、規定に合理性(合憲性)を持たせるため、立法事実が確認されます。

これが不十分であると、後から「非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていない」など、規定の合理性を揺るがす立法事実を指摘されることがあります。

こうなると、法令の適用の合理性や、法令そのものの合理性が疑われるようになります。

また、法令が制定された当初は、その法令の合理性を裏付ける事実があったにもかかわらず、その後の社会的事実の変化により、法令が合理性を保てなくなる場合もあります。

 

<就業規則の見直し>

就業規則は法令ではありませんが、それぞれの規定には、裏付けとなる事実があります。

それが見込み違いであったり、時代とともに変化しているのであれば、規定を見直す必要があります。

この視点からも、御社の就業規則を見直すようお勧めします。

 

2019.01.29.解決社労士

<特別監察委員会の調査報告書>

毎月勤労統計調査の不適切な事務処理について、統計の専門家、弁護士等の外部有識者で構成される「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」で、事実関係と責任の所在の解明が行われ、厚生労働大臣に調査報告書が提出されました。

平成31(2019)年1月22日、厚生労働省がその内容を公表しています。

これは、延べ69名の職員・元職員に対するヒアリングや関係資料の精査等を踏まえ 、毎月勤労統計調査に関する様々な問題、指摘等について、事実関係とその経緯や背景を明らかにした上で、これ対する責任の所在ついて委員会として評価したものです。

 

<事実関係の概要>

次のような事実関係が確認されています。

・遅くとも平成8(1996)年以降、調査対象事業所数が公表よりも1割程度少なかった。

・東京都では、規模500人以上の事業所を全数調査とすべきところ、平成16(2004)年1月調査以降は抽出調査としていた。

・3分の1の事業所を抽出して調査した場合、データを3倍して平均値の誤差を減らすべきところ、この処理が行われなかった。

東京都の大規模事業所は、全国の中でも給与・賞与の水準が高いわけですが、3分の1しか集計に反映されていないわけですから、毎月勤労統計調査のデータが実際よりも少なく集計されてしまっていたことになります。

 

<関係職員の対応などについて>

関係職員の対応とその評価などについて、次のように報告されています。

・課長級職員を含む職員・元職員は、事実を知りながら漫然と「前回同様」の取扱いを続けてきた。

・課長級職員に法令遵守意識が欠如し、部局長級職員も決裁権者としての責任を免れない。

 

<調査結果の総括>

調査報告書では、次のような総括が示されています。

・常に正確性が求められ、国民生活に大きな影響を及ぼす公的統計で、統計法違反を含む不適切な取扱いが長年継続し、公表数値に影響を与えたことは言語道断。厚生労働省の行政機関としての信頼が失われた。

・統計の正確性や調査方法の開示の重要性など、担当者をはじめ厚生労働省の認識が甘く、専門的な領域として「閉じた」組織の中で、調査統計の変更や実施を担当者任せにする姿勢や安易な前例踏襲主義など、組織としてのガバナンスが欠如。

・統計に携わる職員の意識改革、統計部門の組織の改革とガバナンスの強化、幹部職員を含め、組織をあげて全省的に統計に取り組むための体制の整備等が必要。今後、引き続き具体的な再発防止策等を検討。

企業でも組織が大きくなると、担当者任せや前例踏襲主義が目立ってきます。これを防ぐには、担当者に仕事を任せるときに、その仕事の目的を具体的かつ明確に伝え、目的意識を持たせて「前回同様のやり方で良いのか」を考えさせることが大事です。

 

<関係者の処分>

今回の不適切な取扱いに関わった担当者や責任者は、1か月から6か月の減給処分(10分の1)、訓告、戒告といった処分を受けています。

 

<毎月勤労統計調査の目的>

賃金、労働時間、雇用の変動を明らかにすることが目的です。

統計法に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計調査として実施されています。

毎月勤労統計調査の結果は、経済指標の一つとして景気判断や、都道府県の各種政策決定に際しての指針とされるほか、雇用保険や労災保険の給付額を改定する際の資料として、また、民間企業等における給与改正や人件費の算定、人事院勧告の資料とされるなど、国民生活に深く関わっています。

さらに、日本の労働事情を表す資料として海外にも紹介されています。

 

<回答の義務>

毎月勤労統計調査など、国の重要な統計調査である基幹統計調査について、「個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる」と規定されています(報告義務)。〔統計法13条〕

また「報告を拒み、又は虚偽の報告をした者」に対して、「50万円以下の罰金に処する」と規定されています。〔統計法61条〕

「統計法」に基づき実施する基幹統計調査である毎月勤労統計調査の報告義務は「個人情報保護法」によっても免除されるものではありません。

たしかに、今回のような不適切な取扱いがあると、回答に手間のかかる調査に応じるのは、気の進まないこともあるでしょう。

しかし、回答を拒むのは統計法違反になります。正しい統計が作成されないと、多くの方々に迷惑が及ぶということが、改めて認識されるようになったのですから、なるべく正確な回答を心がけましょう。

 

2019.01.28.解決社労士

<共同通信社の報道>

競合他社に売り上げに関する営業秘密を漏らしたなどとして、警視庁生活経済課が不正競争防止法違反の疑いで、システム開発販売会社の元営業推進部担当部長を逮捕したそうです。

2017年12月16日、会社の「売上構成表」のデータを一部編集した上で私物のパソコンに複製し、同社と競合するソフトウエア開発会社にメールで送信するなどした疑いです。

容疑者は、「営業秘密とは思わなかった」と容疑を否認しているそうです。

 

<不正競争防止法>

不正競争防止法が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。

保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法2条6項〕

実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。

 

・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること

・情報に接する者が制限されていること

 

今回の事件で容疑者は、「営業秘密とは思わなかった」と供述しています。

しかし、不正競争防止法の規定は、本人が「営業秘密であると認識していること」を適用要件とはしていません。

あくまでも使用者側が、客観的に「営業秘密であると認識させている」という状況が認定されれば法が適用されます。

こうしたことから、会社は営業秘密にはその旨を表示しておき、誰でも一見してわかるようにしておくなどの対策が必要になります。

 

<情報の窃盗>

刑法には、電子的に記録された情報自体を盗む行為を処罰する規定がありません。

刑法の窃盗罪(235条)は「財物」を対象としていて、情報は「財物」に含まれないからです。

裁判の実例でも、情報そのものではなく、情報が入力されたDVDやUSBメモリ等の媒体物を盗んだ場合に窃盗罪の成立が認められています。

今回の事件では、私物のパソコンを持ち込んで、これに情報を複製していますので、この容疑者を窃盗罪に問うことができません。

 

<企業としての対応>

営業秘密が不正競争防止法の保護を受けられるよう、物理的な体制を整えておくべきは当然です。

そして就業規則には、営業秘密の持ち出しや漏えいの禁止規定と、これに対応する懲戒の規定も置いておく必要があります。

しかし、最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。入社時に、あるいは何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。

 

2019.01.27.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上 5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上 4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上 3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上 2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.01.26.解決社労士

<「バカですか」発言の町課長>

部下3人に暴言を浴びせたり、あいさつや業務の報告を無視したりするパワーハラスメントを繰り返したとして、埼玉県嵐山町が50歳代の男性課長を停職3か月の懲戒処分にしたことが報じられています(2019年1月21日)。

課長は「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」と弁明したそうです。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

この課長の「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」という弁明は、言い逃れではなく、思っていることを正直に話しているのかもしれません。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを、的確に判断できない場合もあるでしょう。

また、他の職員の行為に対して、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいかもしれません。

ましてや、暴行罪〔刑法208条〕や名誉毀損罪〔刑法230条〕の成立条件(構成要件該当性)などは、「物を投げつけても当たらなければ暴行罪は成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、職場でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

本気でパワハラを防止するには、職場の規則にきちんとした規定を設け、充実した教育を実施することが必要となります。

パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図らなければなりません。

この事件では、職員3人が人事担当などに相談し、副町長が数回、課長に注意したのに状況は改善されなかったと報道されています。

何がパワハラにあたるのか、基本的なことを知らない職員に対しては、上司から注意をしても、懲戒を加えても、反省を促すことはできません。

まずは、全職員に十分な教育をしていただけるよう願うばかりです。

 

2019.01.25.解決社労士

<ニセ社労士からの売り込み>

・「労務管理士」と名乗る人が社会保険労務士業務を行うと言ってくる。

・アウトソーシング会社が雇用保険や年度更新の手続を行うと言ってくる。

・経営コンサルティング会社が助成金の手続を行うと言ってくる。

これらは、ニセ社労士からの売り込みです。

 

<本物の社労士の確認方法>

国家資格者である社会保険労務士は、その身分を証明するため、連合会が発行する「社会保険労務士証票」と、所属する都道府県社会保険労務士会が発行する「社会保険労務士会会員証」を携帯しています。

 

<社労士の業務>

労働および社会保険諸法令に基づいて行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書その他の書類の作成および提出、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成を、他人の求めに応じ報酬を得て行えるのは、社会保険労務士法により、国家資格を付与された社会保険労務士だけです。〔社会保険労務士法第2条、第3条〕

社会保険労務士でない、労務管理士、アウトソーシング会社、経営コンサルティング会社等が社会保険労務士業務(雇用保険や年度更新の手続、助成金の手続、就業規則の作成等)を行うことは社会保険労務士法違反です。〔社会保険労務士法第27条〕

違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。〔社会保険労務士法第32条の2第1項第6号〕

 

社会保険労務士の業務には、申請書等の作成に代える場合の電磁的記録の作成を含みます。〔社会保険労務士法第2条第1項第1号および第2号かっこ書き〕

ですから、社会保険労務士でない無資格者が、給与計算システム等を使用し、給与計算に付随して労働社会保険諸法令に基づく申請書等および帳簿書類を作成することも同様に社会保険労務士法違反です。

 

<労務管理士という資格>

労務管理士は社会保険労務士とは全く関係ありません。

労務管理士は国家資格ではなく、民間団体が認定する民間資格です。

労務管理士が社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法に定める罰則が適用されます。

 

<ニセ社労士に委託することのリスク>

ニセ社労士は、法令に違反してコッソリと業務を行っています。ですから、法令違反が摘発されそうになれば、やりかけの業務を投げ出して逃げてしまうでしょう。

本物の社労士が、虚偽、不正、違反に関与すれば、懲戒処分を受けることとなります。また、

懲戒処分のあったことは、実名入りで官報に公告され、厚生労働省ホームページ等にも公表されます。しかも、公表の期間は懲戒の内容に応じて、1年から5年と長期にわたります。

ニセ社労士には、こうした懲戒処分がありませんから、一度摘発されても、手を変え品を変え別の地域で暗躍する恐れがあります。

 

2019.01.24.解決社労士

<雇用対策法の改正>

平成30(2018)年7月6日、雇用対策法が「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと改正されました。

この改正は、働き方改革を推進するために行われたものです。

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、ここは従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<旧法と新法の目的の違い>

旧法も新法も、その目的をそれぞれの第1条に示しています。

太字が変更部分です。

 

【旧法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

【新法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

<新法にあらわれた新しい目的>

新法にあらわれた新しい目的には、次の3つが示されています。

 

① 労働者の多様な事情に応じた雇用の安定

② 職業生活の充実

③ 労働生産性の向上を促進

 

①の「雇用の安定」は、雇用契約の継続として一応客観的に測定できるものの、それが「労働者の多様な事情に応じた」ものといえるかは、労働者の主観的な判断により評価が変わってきます。

また、②の「職業生活の充実」も労働者の主観次第ということになります。

ですから、企業が新法に対応するためには、まず労働者の意見を聴いたうえで、具体的な施策を策定する必要があります。

この法律に限らず、働き方改革では「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策」が求められていますから、労働者の不安や不満を把握するために、その意見を聴くことが前提となるのは当然のことです。

これに対して、③の「労働生産性」は客観的な指標ですから、定期的に確認して施策にフィードバックすれば足ります。

この労働生産性の算出式にはいくつかありますが、現在の働き方改革は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得を推進していますので、端的に次のものを基準にすると良いでしょう。

 

 労働生産性 = 付加価値額 / 実労働時間

 

つまり、1か月など一定の期間内の付加価値額を、その期間内の労働者全体の実労働時間で除したものを、労働生産性の指標に用いることになります。

 

2019.01.23.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<パートタイム・有期雇用労働法の施行>

平成31(2019)年1月16日、厚生労働省が「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」等を公表しました。

パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月1日から施行(中小企業は2021年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

 

<働き方改革との関係>

これはもちろん、働き方改革の一環です。

「働き方改革」という言葉は、よく目にするようになりましたが、その定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料、そして現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

有期雇用の労働者は、雇用契約の終了について不安がありますし、パートタイムと同様に正社員との待遇差に疑問や不満を抱えていることがあります。

これを解消すれば、長い目で見たときに企業の利益を向上させることになるのですが、目先のことだけを考えたり、自社が単独で行うことを考えたりすると、躊躇してしまいます。

そこで、法令によって一斉に変革を実施し、公正に労働者の不安と不満の解消を図ろうというのが働き方改革関連法の役割だと考えられます。

 

<同一労働同一賃金>

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体での正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内での正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

同一企業・団体での正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、どのような待遇差が不合理なものであり、どのような待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものとして、「同一労働同一賃金ガイドライン」が公表されています。

 

<取組手順書の役割>

「同一労働同一賃金ガイドライン」は考え方を示すものですから、各企業がどのように同一労働同一賃金に取り組み、パートタイム・有期雇用労働法に対応すべきかについては示されていません。

そのため、「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」が公表され、各企業がこれに沿って進めていけるようにしたものです。

この取組手順書に沿って社内の制度の点検を行い、自社の状況が法の内容に沿ったものかを把握し、点検の結果、制度の改定の必要があれば、法の施行までに改定の準備を進めることができます。

 

<パートタイム・有期雇用労働法の2つの柱>

この法律には、次の2つの大きなポイントがあります。取組手順書の活用にあたって、この2つの柱を外さないよう、常に注意しましょう。

 

【不合理な差別の禁止】

同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

 

【説明義務】

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければなりません。

 

2019.01.22.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<行動規範の根拠>

平成31(2019)年1月11日、厚生労働省が「労働基準監督官行動規範」を策定し公表しました。

この行動規範は、「労働施策基本方針」(平成30(2018)年12月28日)の、第2章 労働施策に関する基本的な事項 1 労働時間の短縮等の労働環境の整備 (1)長時間労働の是正 の中で示された次の一節に対応するものです。

 

労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。

 

この行動規範が策定されたのは、働き方改革を強力に推進するための基盤づくりが目的だと思われます。

以下にその内容を見ていきましょう。枠内は原文をそのまま引用しています。

 

<基本的使命>

私たち労働基準監督機関は、労働条件の最低基準を定める労働基準法や労働安全衛生法等の労働基準関係法令(以下、法令という。)に基づき、働く方の労働条件の確保・改善を図ることで、社会・経済を発展させ、国民の皆さまに貢献することを目指します。

 

働き方改革は、「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」だといえます。

この中の「多面的な施策」は、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)に示されています。

平成31(2019)年4月1日以降は、現行法の内容に加えて、あるいは現行法に代えて、新法や改正法の適用による労働条件の確保・改善が行われることになります。

この行動規範は、労働基準監督機関が法令に基づいて、労働条件の確保・改善を図るものであることを再確認しています。

 

<法令のわかりやすい説明>

労働基準監督官(以下、監督官という。)は、事業主の方や働く方に、法令の趣旨や内容を十分に理解していただけるよう、できる限りわかりやすい説明に努めます。

 

使用者は法令の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを助けるため、労働基準監督署などには、事業主向け、労働者向けのパンフレットなどが配置されていて、自由に持ち帰ることができるようになっています。

それでもなお、会社の実情に応じた具体的な理解まではむずかしいですから、労働基準監督官からできる限りわかりやすい説明をしていただけるということです。

 

<事業主の方による自主的改善の促進>

監督官は、法令違反があった場合は、違反の内容や是正の必要性を丁寧に説明することにより、事業主の方による自主的な改善を促します。また、法令違反の是正に取り組む事業主の方の希望に応じ、きめ細やかな情報提供や具体的な取組方法についてのアドバイスなどの支援に努めます。

 

労働基準監督官には、法令違反のあった使用者を逮捕し送検する権限が与えられています。〔労働基準法第102条〕

しかし、法令違反を発見した場合でも、すぐにこうした手続きに入るのではなく、まず事業主に自主的な改善を促します。

さらに、どうしたら違法状態を解消できるかについて、労働基準監督官が具体的なアドバイスをしてくれます。

 

<公平・公正かつ斉一的な対応>

監督官は、事業主の方や働く方の御事情を正確に把握し、かつ、これを的確に考慮しつつ、法令に基づく職務を公平・公正かつ斉一的に遂行します。

 

労働基準監督官の職務遂行には、公正であることが求められます。

法令に基づき、画一的な扱いをすべきところは、平等の理念に従い斉一的に行い、また、具体的な事情の違いに配慮すべきところは、公平の理念に従い妥当な結果を導けるように対応します。

 

<中小企業等の事情に配慮した対応>

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

 

中小企業等の事業主には、法令についての正しい知識や理解が不足しているために、悪意なく法令違反が発生していることもあります。

こうした事情を踏まえて、労働基準監督官は大企業の場合よりも手厚い指導を行います。

ただし「法令遵守では経営が成り立たない」など、働く人の労働条件の確保・改善を正面から否定するような考えに応じることはありません。あくまでも、法令遵守に向けた自主的な改善を促すのが、労働基準監督官の役割です。

 

2019.01.21.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

<対応の基本方針>

毎月勤労統計調査で、不適切な方法をとっていたために、平成16(2004)年以降の賃金額が低めに出ていたことから、雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した人の一部と雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付が必要となりました。これは、現在受給中の人も該当する場合があります。

反対に、本来の額よりも多くなっていた人に、返還を求めないことになっています。

 

<追加給付の対象となる可能性がある人>

 

(1)雇用保険関係

・「基本手当」、「再就職手当」、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」などの雇用保険給付を平成16年8月以降に受給した人

・雇用保険と同様または類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」(国家公務員退職手当法)、「就職促進手当」(労働施策総合推進法)

 

(2)労災保険関係

・「傷病(補償)年金」、「障害(補償)年金」、「遺族(補償)年金」、「休業(補償)給付」などの労災保険給付や特別支給金等を平成16年7月以降に受給した人

 

(3)船員保険関係

・船員保険制度の「障害年金」、「遺族年金」などの船員保険給付を平成16年8月以降に受給した人

 

(4)事業主向け助成金

・「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が平成16年8月から平成23年7月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主  等

 

<追加給付の概要>

 

(1)追加給付の計算

・追加給付の計算は、平成31年1月11日(金)に公表された「再集計値」と「給付のための推計値」を用いて行います。

 

(2)追加給付の一人当たり平均額、対象人数、給付額の現時点の見通し

・一人当たり平均額等の現時点の見通しは次のとおりです。

【雇用保険】一つの受給期間を通じて一人当たり平均約1,400円、延べ約1,900万人、給付費約280億円

【労災保険】

年金給付(特別支給金を含む):一人当たり平均約9万円、延べ約27万人、給付費約240億円

休業補償(休業特別支給金を含む):一人一ヶ月当たり平均約300 円、延べ約45万人、給付費約1.5億円

【船員保険】一人当たり平均約15万円、約1万人、給付費約16億円

【事業主向け助成金】雇用調整助成金等:対象件数延べ30万件、給付費約30億円

  ・ 以上については、お支払いに必要となる事務費を含め、引き続き精査します。

 

<書類の保管>

雇用保険の給付、労災保険の給付、船員保険の給付、政府職員失業者退職手当、就職促進手当または事業主向け助成金を平成16年以降に受給した人または事業主は、今後の手続に役立つ可能性がありますので、以下の書類を持っている場合には、捨てずに保管しておいてください。

【雇用保険】

  - 受給資格者証、被保険者証

【労災保険】

  - 支給決定通知・支払振込通知 、年金証書、変更決定通知書

【船員保険】

  - 支給決定通知・振込通知、年金証書、改定通知書

【政府職員失業者退職手当】

  - 失業者退職手当受給資格証等

【就職促進手当】

  - 就職促進手当支給決定通知書など支給の事実が確認できる書類

【事業主向け助成金】

  - 支給申請書類一式、支給決定通知書

 

<電話相談窓口>

平成31年1月11日(金)以降、以下のご相談窓口が設けられています。

★雇用保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-807

 (※事業主向け助成金の問い合わせも含む。)

★労災保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-824

★船員保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-843-547 または 0120-830-008

受付時間  平日8:30~20:00    土日祝8:30~17:15

 

2019.01.20.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

医師による面接指導について、主なものは次のような内容となっています。

 

<医師による面接指導の対象となる労働者の基準>

新安衛則第52 条の2第1項の規定では、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えた場合(かつ、当該労働者が疲労の蓄積の認められる者である場合)に面接指導の対象となります。所定労働時間が1週間当たり40 時間に満たない事業場では、この所定労働時間ではなく、1週間当たり40 時間の法定労働時間を基準として算定することになります。

 

<労働者への労働時間に関する情報の通知>

労働者に通知する「当該超えた時間に関する情報」とは、時間外・休日労働時間数を指し、通知対象は、その超えた時間が1月当たり80 時間を超えた労働者です。この通知は、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すものであり、「当該超えた時間に関する情報」のほか、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望ましいとされます。

事業者は、新安衛則第52 条の2第2項の規定により、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定を毎月1 回以上、一定の期日を定めて行う必要があり、その時間が1月当たり80 時間を超えた労働者に対して、その超えた時間を書面や電子メール等により通知する方法が適当とされます。ただし、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって「当該超えた時間に関する情報」の通知としても差し支えありません。なお、「当該超えた時間」の算定後、速やか(おおむね2週間以内)に通知する必要があります。

労働者が自らの労働時間に関する情報を把握し、健康管理を行う動機付けとする観点から、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開示を求められた場合には、これに応じることが望ましいとされます。

 

<労働時間の状況の把握>

新安衛法第66 条の8の3に規定する「労働時間の状況」の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものです。事業者が「労働時間の状況」を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から「労働時間の状況」を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければなりません。なお、「労働時間の状況の把握」は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第54条第1項第5号に掲げる賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができます。ただし、労基法第41 条各号に掲げる者(管理監督者等)並びに労基法第38条の2に規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用される労働者並びに労基法第38条の3第1項および第38条の4第1項に規定する業務に従事する労働者(裁量労働制の適用者)については、この限りではないものとされます。

面接指導の要否については、休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合の超えた時間(時間外・休日労働時間)により判断することとされていますが、個々の事業場の事情により、休憩時間や食事時間を含めた時間により、労働時間の状況を把握した場合には、その時間をもって、面接指導の要否を判断することとしてもかまいません。

なお、労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれます。

 

<やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合>

労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行または直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、その労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断します。

ただし、労働者が事業場外で行う業務に直行または直帰する場合でも、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行または直帰であることだけを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められません。

また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータがある場合や事業者の現認によりその労働者の労働時間を把握できるのに、自己申告だけで労働時間の状況を把握することは、認められません。

 

<労働時間の状況を自己申告により把握する場合>

労働時間の状況を自己申告により把握する場合には、その日の労働時間の状況を翌労働日までに自己申告させる方法が適当とされます。

なお、労働者が宿泊を伴う出張を行っているなど、労働時間の状況を労働日ごとに自己申告により把握することが困難な場合には、後日一括して、それぞれの日の労働時間の状況を自己申告させることとしても差し支えありません。

ただし、このような場合であっても、事業者は、新安衛則第52条の2第2項および第3項の規定により、時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があるので、これを遵守できるように、労働者が出張の途中であっても、その労働時間の状況について自己申告を求めなければならない場合があることには、留意する必要があります。

 

2019.01.19.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

産業医の役割強化について、主なものは次のような内容となっています。

 

<産業医の権限の具体化>

産業医が労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する方法としては、作業場等を巡視する際などに、対面により労働者から必要な情報を収集する方法のほか、事業者から提供された労働時間に関する情報、労働者の業務に関する情報等を踏まえて選定した労働者を対象に、職場や業務の状況に関するアンケート調査を実施するなど、文書により労働者から必要な情報を収集する方法等があります。

労働者が産業医に提供した情報の内容等がその労働者の同意なしに、事業者、人事担当者、上司等に伝達されることは、適正な情報の取扱い等が阻害されることとなります。そのため、産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を収集しようとする際には、その情報の収集対象となった労働者に人事上の評価・処遇等について、事業者が不利益を生じさせないようにしなければなりません。また、事業者は、産業医がその情報を収集する際の具体的な取扱い(対象労働者の選定方法、情報の収集方法、情報を取り扱う者の範囲、提供された情報の取扱い等)について、あらかじめ、衛生委員会または安全衛生委員会で審議し、決定しておくことが望ましいといえます。

「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合」とは、保護具等を使用せずに、有害な化学物質を取り扱うことにより、労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれます。

 

<産業医等に対する健康管理等に必要な情報の提供>

事業者が産業医等に提供する労働者の健康管理等を行うために必要な情報のうち、「休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(以下「時間外・休日労働時間」という。)が1月当たり80 時間を超えた労働者の氏名、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報」について、対象となる労働者がいない場合でも、「該当者がいない」という情報を産業医に情報提供する必要があります。

また、「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」には、①労働者の作業環境、②労働時間、③作業態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などのうち、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものが含まれます。なお、必要と認めるものについては、事業場ごとに、あらかじめ、事業者と産業医とで相談しておくことが望ましいとされます。さらに、健康管理との関連性が不明なものについて、産業医等から求めがあった場合には、産業医等に説明を求め、個別に確認することが望ましいとされます。

事業者が産業医等に情報を提供する方法としては、書面による交付のほか、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録して提供する方法や電子メールにより提供する方法等があります。産業医等に提供した情報については、記録・保存しておくことが望ましいとされます。

 

<労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等>

労働者が産業医等による健康相談を安心して受けられる体制を整備するために、事業者は産業医による健康相談の申出の方法(健康相談の日時・場所等を含む。)、産業医の業務の具体的な内容、事業場における労働者の心身の状態に関する情報の取扱方法を、労働者に周知させる必要があります。

また、労働者数50 人未満の事業場については、新安衛法第101 条第3項に基づき、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師または保健師(医師等)を選任した事業者は、労働者に周知させるように努めなければなりません。

周知方法としては、各作業場の見やすい場所に掲示等するほか、書面により労働者に通知すること、イントラネット等により労働者がその事項の内容に電子的にアクセスできるようにすることなどが適当です。

なお、保健指導、面接指導、健康相談等は、プライバシーを確保できる場所で実施できるように、配慮するとともに、その結果については、心身の状態の情報指針に基づき事業場ごとに策定された取扱規程により、適切に取り扱う必要があります。

 

2019.01.18.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

年5日以上の年次有給休暇の確実な取得について、主なものは次のような内容となっています。

 

<使用者による時季指定>

使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、その期間の途中に行うこともできます。

 

<使用者による時季指定の対象となる労働者>

「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者をいいます。

年次有給休暇の比例付与の対象者となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満の労働者については、前年度繰越分の年次有給休暇を合算して10労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」には含まれません。

 

<半日・時間単位での時季指定・取得>

労働者の意見として、半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合には、時季指定を半日単位で行ってもかまいません。

半日単位の時季指定も、労働者が半日単位で取得した年次有給休暇も、0.5日としてカウントされます。

しかし、時季指定を時間単位で行うことはできませんし、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得しても「年5日以上の年次有給休暇」にはカウントされません。

 

<前年度から繰り越された年次有給休暇>

「年5日以上の年次有給休暇」は、当年度の基準日に付与された年次有給休暇でも、前年度からの繰越分の年次有給休暇でもかまいません。

 

<時季変更の可否>

使用者が指定した時季を、労働者の意見を尊重することによって変更することはできます。

 

<年5日を超える時季指定>

労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

 

<時季指定後に労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合>

当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間で特別な取決めをしていない限り、当然に無効となるものではありません。

 

<就業規則の規定>

休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に定めておく必要があります。

 

2019.01.17.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

時間外労働の上限規制について、主なものは次のような内容となっています。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)の対象期間と有効期間>

「対象期間」とは、労働基準法36条の規定により労働時間を延長し、または休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限るものであり、三六協定でその起算日(期間の初日)を定めることによって特定されます。

「有効期間」とは、その協定が効力をもつ期間をいうもので、対象期間が1年間に限られることから、有効期間は最も短い場合でも原則として1年間になります。

なお、三六協定で1年間を超える有効期間を定めた場合の「対象期間」は、その「有効期間」の範囲内で、三六協定で定める「対象期間」の起算日(期間の初日)から1年ごとに区分した各期間となります。

 

<1日、1か月、1年以外の期間についての協定>

1日、1か月、1年以外の期間について延長時間を定めることもできますが、その期間について定めた延長時間を超えて労働させた場合には、労働基準法32条に違反することになってしまいます。

 

<限度時間を超える協定の効力>

法定の限度時間、法定の延長時間の上限、法定の月数の上限を超えている三六協定は、全体として無効になります。

 

<対象期間の途中での破棄・再締結>

対象期間の途中で三六協定を破棄・再締結し、対象期間の起算日を当初の三六協定から変更することは、原則として認められない。

やむを得ず行う場合には、新旧両協定を遵守しなければならない。

 

<限度時間を超えて労働させる必要がある場合>

「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期に、一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいいます。

そのうえで、具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業や業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があります。

 

2019.01.16.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

フレックスタイム制については、次のような内容となっています。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)と割増賃金との関係>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させたときには、時間外労働が発生するので、三六協定の締結と割増賃金の支払いが必要となります。

こうしたときには、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)の協定事項 >

フレックスタイム制で三六協定を締結する際、改正後の労働基準法でも、1日について延長できる時間を協定する必要は無く、1か月と1年について協定すればよい。

 

<月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の適用>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間については、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定されます。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

<改正労働基準法36条6項2号,3号の適用>

 

【改正労働基準法36条6項2号,3号】

6項 使用者は、第1項の協定(三六協定)で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、 次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。2項 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間

 100時間未満であること。

3項 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間

 80時間を超えないこと。

 

清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制では、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に対して、この規定が適用されます。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定され、この時間に対してこの規定が適用されます。

 

<留意事項>

フレックスタイム制は、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で始業と終業の時刻を選択し、仕事と生活の調和を図りながら働くための制度であり、長時間の時間外労働を行わせることは、フレックスタイム制の趣旨に合致しないことに留意しなければなりません。

 

2019.01.15.解決社労士

<総務省から厚生労働省への勧告>

平成30(2018)年12月25日、総務省は保険料納付率の向上や無年金者・低年金者の発生抑止等の観点から、国民年金の適用、国民年金保険料の収納その他の業務運営の状況を調査し、その結果を取りまとめ、必要な改善措置について勧告しその内容を公表しました。

主なポイントは、以下の通りです。

 

<国民年金保険料の的確な収納(納付率向上)>

【主な調査結果】

○ 20歳到達者の国⺠年⾦の資格取得に係る届出を促すための業務の効果が⼗分に上がっておらず、年⾦事務所の業務負担も⼤きい状況

○ 各種の収納対策はおおむね着実に実施され、納付率は上昇傾向。⼀⽅で、納付率の向上に有効な⼝座振替を促進する取組については、効果が⼗分に上がっていない。

 

【主な勧告】

■ 20歳到達者について現在の適⽤の仕組み等を早期に⾒直し

■ ⼝座振替の利⽤促進を図る取組の強化

 

<無年金者・低年金者の発生抑止

【主な調査結果】

○ ⾃治体から的確に情報を得られなかったことにより、保険料を免除されるべき者が承認されなかった例や、実施すべき免除勧奨・職権処理を実施できていない例あり

○ 追納は納付義務のない保険料を納める任意の制度であるとして、追納勧奨が積極的に⾏われておらず、中期⽬標等においても特段の⽬標等を明⽰していない。

 

【主な勧告】

■ 的確な情報に基づく免除審査等の実施

■ 追納制度の利⽤促進に係る⽬標の設定

 

<業務運営に対する国民の信頼性の確保>

【主な調査結果】

○ 事務処理誤り発⽣件数は全体として減少傾向。ただし、事務処理誤り発⽣後の処理に⻑期を要している例あり

○ 平成25年に全国の受給権者の⽣存確認等調査を実施して以来、同様の調査を実施していないなど、所在不明となった者を的確に把握できていない状況

○ ⼀度提出済みの書類の添付をその後も義務付けたり、納付順を誤った追納が⼀律に還付されているなど、国⺠の視点に⽴ったサービスとなっていない例あり

 

【主な勧告】

■ 事務処理誤り発⽣後の処理の迅速化

■ 所在不明となった者の的確な把握

■ 添付書類の⾒直し、追納処理の弾⼒化等

 

厚生労働省が、総務省の勧告に従って改善を進めるには、人材交流を図るのが近道ではないかと思われます。

 

2019.01.14.解決社労士

<趣旨>

2019年10月の消費税率10%への増税時の景気対策として、年金生活者支援給付金が低年金者に支給されます。

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入や所得額が一定基準額以下の、高齢者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給されるものです。

 

<対象者>

平成31(2019)年4月以降に65歳に到達する人、生年月日でいうと昭和29(1954)年4月2日以降生まれの人が、次の条件をすべて満たしている場合に対象者となります。

・65歳以上で老齢基礎年金を受けていること

・世帯全員の市町村民税が非課税であること

・前年の年金収入額と所得額の合計が879,300円以下であること

・日本国内に住所があること

 

<請求手続き>

対象者であっても、請求しないと支給されませんし通知も届きません。

 

【請求手続き】

① 請求書に記入

② 65歳の誕生日の前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所等に提出(添付書類は原則不要)

③ 審査の後、年金証書の後に通知書が到着(2019年10月以降)

④ 給付金が年金に上乗せされて支給

 

<給付金の支払い>

年金と同様に2か月分が翌々月の中旬に、年金と同じ口座に振り込まれます。

(たとえば、10月分と11月分が12月中旬に振り込まれます。)

2019年12月までに請求した場合には、制度が始まる2019年10月分からの支払いとなります。(振り込みは12月から)

請求が遅れ、2020年1月以降に請求した場合には、さかのぼっての支払いは行われません。請求した月の翌月分からの支払いとなります。

 

<給付額>

給付額は原則として、次の①と②の合計額となりますが、毎年物価スライドにより改定されます。

 

① 保険料納付済期間に基づく額(月額)

5,000円 × 保険料納付済期間 / 480月

 

② 保険料免除期間に基づく額(月額)

約10,800円 × 保険料免除期間 / 480月

保険料全額免除、3/4免除、1/2免除の期間は約10,800円ですが、保険料1/4免除の期間は約5,400円となります。

 

つまり、免除期間が多いと給付額が多くなります。

 

<詐欺に注意>

5年ほど前、「社会保険機構」を名乗る架空の組織から、日本年金機構のロゴマークを使用して「年金生活者支援給付金の支給に関する法律(年金生活者支援給付金法)」という文書が個人宛てに郵送されています。

問い合わせ先は、年金事務所です。うっかり詐欺グループの指定する連絡先には連絡しないようにご注意ください。

 

2019.01.13.解決社労士

<今年も賃上げ>

ステーキチェーン店「いきなり!ステーキ」などを経営するペッパーフードサービスは、正社員約700人を対象に1月から平均6%余りの賃上げをするそうです。

この会社は、昨年も1月から平均6%余りの賃上げをしています。

では、それだけ儲かっているのかというと、そうでもないようなのです。

 

<いきなり!ステーキのスタイル>

「いきなり!ステーキ」は、立ち食いそばのステーキ版のような形で、手頃な価格で食べたい量だけ注文できるスタイルのお店です。

立ち食い形式ですから、狭いお店でも高い回転率を武器に多くのお客様をこなすことができます。

これで売り上げを伸ばし、利益を確保して、高品質のステーキを低価格で提供することができるわけです。

回転率が命ですから、店内に空席が目立ったり、滞留時間が長くなったりすれば、予定通りの売り上げも利益も得られません。

 

<単なるブームだったのか>

マスコミでも「いきなり!ステーキ」はたびたび取り上げられました。

2017年は、新店が約70店も出ました。

2017年2月にはニューヨークに出店しています。

株式の話ですが、2017年5月にペッパーフードサービスが東証マザーズから東証2部へ市場の変更をしました。昇格です。さらに、2017年8月には東証1部に昇格しています。

 

<値上げも影響か>

「いきなり!ステーキ」は、食べたい量だけ注文できるスタイルですから、価格も1グラム当たりで設定されています。

ところが、仕入れが困難という理由で、たびたび値上げが行われています。

2018年の5月には、「国産牛サーロインステーキ」と「国産牛リブロースステーキ」が、1グラム当たり1円値上がりしました。これは、1割の値上げになります。

立ち食いそばでは、そこそこの分量を手頃な価格で食べられるのが利点ですが、この利点が「いきなり!ステーキ」では薄れてしまっています。

 

<会社の業績>

しかし、2018年1月~9月期の「いきなり!ステーキ」事業の売上高は、前年同期比の2倍と大幅な増収を達成しました。

その原因は、この9か月間で店舗が147店も増えたことにあります。

 

<賃上げの理由>

利益が出ているから社員に還元するのではなく、店舗数を増やしたことで、深刻な人手不足によるリスクが高まり、人材を採用し定着率を高めるため、賃上げせざるを得ないというのが本当のところだと考えられます。

順番としては、働き方改革を進めて賃金の水準を適正にしてから、新規店舗を増やすのが良かったのではないかと感じています。

 

2019.01.12.解決社労士

<働き方改革の目的>

働き方改革が目指しているのは、豊かでゆとりある生活の実現です。

社員も会社もイキイキ満足している状態です。

 

<働き方改革に取り組む会社>

長時間労働の抑制と年次有給休暇取得率の向上に取り組んでいる会社の社員は、疲れが残りませんから生産性が向上します。

お取引先やお客様から見ても、健康的でやる気があることは直感できます。

会社としても、優秀な人材の育成、確保、定着が容易になります。

こうしたことから、会社のイメージがアップするのは自然な流れです。

 

<労働時間等見直しガイドライン>

厚生労働省告示の労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)は、平成18(2006)年3月31日に制定され、6回の改正を経て、最新版の平成30(2018)年10月30日改正版は、平成31(2019)年4月1日から施行されます。

この基本的な考え方は、次のように示されています。

 

●仕事のしかたを見直して、労働時間を短縮しましょう

 労働者が健康で充実した生活を送れるよう、労働時間を短縮して生活時間を十分確保する。

(所定外労働時間の削減)(年次有給休暇の取得促進)

 

●働く意欲を高めるために、労働者一人ひとりの様々な事情へ対応しましょう

 労働時間等の設定の改善にあたって、労使による話し合いの体制を整備する。

 労働者一人ひとりの健康と生活に関する様々な事情を踏まえて、ここに対応する。

 

●社員全員のワーク・ライフ・バランスの実現のために、経営者が率先して取り組みましょう

 経営者は労働時間等について積極的に理解を深め、自らが主導して、職場の環境を変えるための意識改革や柔軟な働き方の実現に取り組む。

 

<NG社員>

社内に次のような社員がいたのでは、魅力の無い会社になっているかも知れません。

・毎日遅くまで仕事をして、心身ともに疲れている。

・休日に休めず、家族と過ごすことができない。

・仕事の予定が立てられなくなり、計画的に有休が取れない。

 

働き方改革に取り組めない会社はありません。

働き方改革に取り組まない会社は、規模にかかわらず、平成の次の時代を乗り越えるのが困難です。

なぜなら、働き手を確保できないからです。

今年(2019年)の4月に法律によって強制されるのではなく、自発的に働き方改革に取り組むことを強くお勧めします。

 

2019.01.11.解決社労士

<労働基準法の規定>

労働基準法の「第八章災害補償」には、業務災害について次のような規定があります。

 

【療養補償】

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

 

労働基準法には、他にも休業補償〔76条〕、障害補償〔77条〕、遺族補償〔79条〕などの規定があります。

 

<労災保険法の規定>

労災保険法(正式名称:労働者災害補償保険法)は、労災保険の目的を次のように規定しています。

 

【目的】

第一条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 

一見して、労災保険法の方が労働基準法よりも、労働者の保護に手厚いことが分かります。

特に注目したいのは、労働基準法が業務上の負傷等である業務災害のみを対象としているのに対し、労災保険法では通勤途上の負傷等である通勤災害も対象となっている点です。

業務による災害が業務災害、通勤による災害が通勤災害、両者を併せて労働災害と呼んでいます。

 

労働基準法にあるように、使用者は労働者の業務災害について責任を負っています。設備、機械、道具などの不備・不良や労働者の教育不足など、使用者が責任を負うべき原因で発生することが大半ですから当然のことです。

これに対して、通勤災害については、原則として使用者に責任がありません。駅の階段が滑りやすいことや、交通ルールを守らないドライバーが存在することまでは、使用者に責任を問えません。

こうした事情から、傷病について必要な療養の給付を受ける場合にも、業務災害であれば療養補償給付、通勤災害であれば療養給付と呼んで区別しています。使用者の補償義務の有無に応じたものです。

実際に保険給付を受ける場合の請求書等のフォーマットも、「療養補償給付たる療養の給付請求書」「療養給付たる療養の給付請求書」などと区別されています。通勤災害では、通勤経路や災害の発生場所を地図で示す必要がありますから当然でしょう。

 

<民法による損害賠償請求との違い>

まず、労災保険は過失相殺が無い点で被災者に有利です。被災者の過失割合を認定し、これに応じて給付するのではなく、過失は無いものとして給付します。もっとも、故意に事故を発生させたような場合には給付が受けられません。〔労災保険法12条の2の2〕

また、労災保険は損益相殺が無い点も被災者に有利です。被災者が休業し通勤できない場合であっても、通勤費を含む賃金を基準に休業(補償)給付を受けることができます。

ただ、労災保険では慰謝料の請求ができませんから、この点では被災者に不利です。

多くの業務災害では、被災者にも相当程度の不注意が認められ、労災保険の給付を受ければ救済されることが多いでしょう。しかし、使用者側の落ち度が重大で、保険給付だけでは被災者や遺族が救済されない場合には、使用者に民事訴訟を提起して不足分の損害賠償を求めることも行われています。

 

2019.01.10.解決社労士

<保険税と保険料>

国民健康保険税は、市区町村が国民健康保険の費用に充てるため、国民健康保険加入者(被保険者)の属する世帯の世帯主に対し課する税金です。〔地方税法703条の4〕

これに対して、市区町村が地方税法の規定によらず保険料を徴収する場合や、国民健康保険組合が保険料を徴収する場合は、国民健康保険料と呼びます。

 

<市町村による方式の選択>

国民健康保険の運営者である保険者(市区町村)は、保険料と保険税のどちらかを選ぶことができます。

国民健康保険法76条は、「国民健康保険に要する費用を世帯主から徴収しなければならない」と規定していますが、国民健康保険料と国民健康保険税のどちらの方式にするかは、保険者の裁量とされています。

つまり、同じ国保という名称であっても、地域によって保険料のところと保険税のところが存在します。

 

<市町村に有利な保険税方式>

国民健康保険法は、保険料方式を原則とし保険税方式を例外としています。しかし、実際には、大半の市区町村が保険税方式を採用しています。

これは保険税方式を採用した方が、徴収権の消滅時効期間が長くなることや、滞納処分の優先順位が高くなること、過去の滞納分に対して請求できる上限年数が長いなど、市区町村にとって有利な点があるからです。

ちなみに、保険料だと2年、保険税だと5年で、保険料・保険税の徴収権は時効により消滅します。

また、国保の保険料(税)は、加入(資格取得)の届出をした日からではなく、資格を取得した日から賦課されます。この届出が遅れると遡って賦課されることになります。このとき、過去の滞納分に対して請求できる上限年数が、保険料では最大2年ですが、保険税では最大3年となっています。

しかし、保険料方式でも保険税方式でも、受けられる医療に違いはありません。滞納したときに違いが出る可能性があるということです。

 

<世帯主が納付義務者>

国民健康保険税は世帯を単位とし、世帯主が納付義務者になります。国民健康保険では、勤務先を通じて加入する健康保険とは異なり、扶養家族(被扶養者)の仕組みがありませんので、ひとり一人が加入者(被保険者)となります。

また、世帯主が加入者(被保険者)ではなくても、世帯主が納付義務者となります。

国民健康保険税の計算方法は、市区町村によって異なります。他の市区町村に転居したときに、これを実感することになります。

 

2019.01.09.解決社労士

<社会保険の賞与支払届>

賞与についても、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。事業主が加入者(被保険者)や70歳以上被用者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します。

「5日以内」というのは、賞与の支給日当日は含まず、翌日から数えて5日目までにということです。

この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されるとともに、被保険者が受給する年金額の計算の基礎となるものです。

 

<70歳以上被用者>

70歳以上であって厚生年金保険の適用事業所に新たに使用される人、または加入者(被保険者)が70歳到達後も継続して使用される場合で、次の要件すべてに該当する人を指します。

 

【対象要件】

・70歳以上の人

・過去に厚生年金保険に加入していた人(被保険者期間を有する人)

・厚生年金保険法第27条に規定する適用事業所に使用される人であって、かつ、同法第12条各号に定める者に該当しない人

 

<提出もれが見つかるケース>

ある従業員が、自宅で少し古い「ねんきん定期便」を確認したところ、何年か前の賞与について「標準賞与額」の記載が抜けていたため会社に確認した。

これを受けて、会社が当時の「被保険者賞与支払届」を探したが見つからず、当時の賃金台帳等を調べたところ、他の従業員も含めて届の提出を忘れていたことが判明した。

こんな形で見つかります。

 

<年金事務所への相談>

事業主から、自主的に届出もれがあったことを申し出る場合は、「事業主からの自主的な申出にかかる「申出者リスト」(賞与支払届提出もれ用)」を作成し、当時の賃金台帳等の写しを添付のうえ、事業所を管轄する年金事務所の窓口で相談します。

 

<お知らせ文書の送付>

事業主から提出された「申出者リスト」に基づき、届出もれとなっている当時の従業員に、その人の住所地を管轄する年金事務所より「お知らせ文書」が送付されます。

そこには、年金事務所の窓口で記録を確認するように書かれています。

また、質問がある場合や、窓口が開いている時間帯に年金事務所に行けない場合の連絡先も書かれています。

 

こうした手続きでは、事務処理の負担だけでなく、退職者にも連絡を取り説明するなどの心理的な負担も大きいものです。

社内での対応が難しければ、社会保険労務士にご用命ください。

 

2019.01.08.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、一企業が取り組むには無理のある課題が次のように説明されています。

枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【商慣行の見直しや取引条件の適正化】

特に、中小企業等においては、発注者からの著しく短い期限の設定や発注内容の頻繁な変更に応えようとして長時間労働になる傾向にあることから、商慣行の見直しや取引条件の適正化を進めることが重要である。そのため、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)に基づき、著しく短い期限の設定及び発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮し、事業者の取引上必要な配慮が商慣行に浸透するよう、関係省庁が連携して必要な取組を推進する。加えて、国等が行う契約においても「平成30年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針」(平成30年9月7日閣議決定)に基づき、物件等の発注に当たっては、早期の発注等の取組により平準化を図り、適正な納期・工期を設定するよう配慮する。 また、労働基準関係法令違反の背景に、極端な短納期発注等に起因する下請代金 支払遅延等防止法(昭和31年法律第 120 号)等違反が疑われる事案について、厚生労働省から公正取引委員会や中小企業庁に通報する制度の強化を図る。

 

ここに掲げられている事項は、確かに国の力を借りなければ到底実現できないことでしょう。

しかし、たとえば取引先との間で、夜8時以降の電話やファックス送信はしないという取り決めをするだけでも、かなり時間外労働を削減することができます。「夜8時以降の電話やファックスはできない」と意識するだけでも、仕事の進め方が変わってくるでしょう。

また、土日の納品や工事は受けないという思い切った見直しも考えられます。納品を受ける側にも、工事の立会いをする側にも、休日出勤が発生するかも知れません。売り上げが減少するリスクもありますが、社員の定着率向上などの良い効果が期待できます。

 

【生産性向上による労働条件の改善】

労働条件の改善を実現するためには、生産性の向上が重要である。しかし、中小企業等は、大企業と比べ、資本が脆弱で効率化に向けた設備投資が困難である場合が多いことから、賃金引上げや経営力の向上につながるような、生産性向上に資する設備投資等に対する支援を行う。また、働き方改革推進支援センターにおいて、商工会、商工会議所、中小企業団体中央会等と連携して、好事例や支援策を提示するなど、丁寧な相談・支援に努める。

 

人海戦術あるいは労働集約と呼ばれる人手に頼るやり方は、昭和時代であれば美化されている業界も多かったと思います。

しかし、平成時代に入ってからは、こうした業界で働くことを若者が拒み、女性や高齢者がついて行けなくなって、極端な人手不足に苦しむようになってしまいました。

ここから脱却するためには、機械化、IT化などが必須となりますが、中小企業では初期投資が困難であるため、商工会議所などとの連携が必要となるわけです。

 

【働くことについての教育】

AI等の技術革新や働き方の変化も踏まえつつ、若者に働く意義や労働市場の実態の理解を促す等の教育は、適性・能力に応じた就職の実現の基盤であり、各個人・ 経済活動全体の生産性向上にも資する重要な意義を有するものである。このため、学校から職場への移行を円滑にするため、文部科学行政と厚生労働行政の連携強化を図り、学校段階において職場見学やセミナー、インターンシップ等による職業意識啓発等の取組を積極的に推進する。また、多様な就業形態が増加する中で、労働関係法令や各種ルールについて知ることは、労働関係の紛争や不利益な取扱いの未然の防止に役立つとともに、働き方を選択する上で重要であるため、 高校生などの若年者に対して、労働関係法令や社会保障制度に関する教育を推進する。

 

偏差値教育は昭和時代の末期にピークを迎え、その後はゆとり教育に移行したのですが、これもまた見直されています。

少子高齢化で労働力人口が減少しているうえに、働ける年齢層の人々がニートになってしまっては、働き手が不足するのは目に見えています。

こうした事態を防ぐため、学校教育の中でも、働くことについて積極的に学ばせることになっています。

 

2019.01.07.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、長時間労働の是正が次のように説明されています。

枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【長時間労働の実態】

我が国においては、年間総実労働時間数は減少傾向にあるが、いわゆる正社員等については、依然として長時間労働の実態がみられる。長時間労働を是正し、労働者が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進することが重要であるため、次の施策を実施する。

 

「長時間労働」の実態があると言われても、同業他社との比較で、自社が殊更に長時間労働であるとは認識できません。

あくまでも、諸外国との比較で労働時間が長過ぎるということが指摘されています。

しかも日本企業では、同じ成果を上げるのに、より長時間の労働を投入しなければならない、つまり労働生産性が低いことが指摘されています。

 

【長時間労働是正の方法】

まず、長時間労働を是正し、労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの実現を図るため、働き方改革関連法第1条による改正後の労働基準法(昭和22年法律 第49号)に新たに設けられた時間外労働の上限規制及び年次有給休暇の時季指定の仕組みや、働き方改革関連法第4条による改正後の労働安全衛生法(昭和47年法律 第57号)に新たに設けられた労働時間の状況把握及び産業医・産業保健機能の強化のための仕組み等について、労働基準法及び労働安全衛生法の趣旨の周知徹底及び履行確保に努めるとともに、時間外労働について可能な限り労働時間の延長を短くするよう、必要な助言及び指導を行う。また、年次有給休暇を円滑に取得できるよう、その環境整備に向けた取組を行う。さらに、勤務間インターバル制度の普及促進に向けた取組を推進する。具体的には、都道府県労働局から企業・団体への働きかけを行う等、全国的に長時間労働対策の推進及び年次有給休暇の取得促進に取り組むほか、労働基準監督機関においては、長時間労働の事業場への監督指導の徹底等の対応を行う。

 

長時間労働を是正する方法として、時間外労働の規制、この前提となる労働時間の適正な把握、年次有給休暇の取得促進、更には、長時間労働の弊害を防止するためにも勤務間インターバル制度、産業医の機能強化と活用が掲げられています。

一方で、この「労働施策基本方針」の中の「働き方改革の推進に向けた基本的な考え方」には、「こうした働き方改革に向けた労働施策の推進や各企業における働き方改革の実施においては、労使の十分なコミュニケーションをその基盤とするとともに、働く人の視点に立つことが重要である。」という基本中の基本が掲げられています。

こなし切れない仕事を抱えた社員に残業を禁止したり、長時間の残業をして残業手当を稼がなければ生活が成り立たない給与であったり、取得したくない日に年次有給休暇を強制したりということでは、働き方改革の目的は果たされません。

働き方改革は、「社員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。労働生産性を高めるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに社員満足度を低下させますから、働き方改革にはなりません。

長時間労働の是正にあたっても、労使の十分なコミュニケーションが基盤となることは言うまでもありません。

 

【労働基準監督制度】

また、労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。なお、 重ねて改善を促しても是正されないもの、違法な長時間労働により過労死等を生じさせたもの、違法な長時間労働により重大な結果を生じさせたものなど重大・悪質な場合は、書類送検を行うなど厳正に対処する。労働基準監督官が行う監督指導など労働基準監督署の運営に関する苦情について、 メールや郵便など多様な形で受け付けることができるようにするほか、監察官制度を活用し、問題があった場合には厳正に指導等を行うなどにより、監督指導の適正な実施及び公正かつ斉一的な権限行使を徹底する。

 

労働基準監督官は、人数が絶対的に不足していますし、企業の監督指導に必要な教育研修を行うのも大変だと思われます。

その一方で、監督指導を受けた企業が、「何かおかしい。釈然としない」という感触を持ったとしても、苦情を言うべき場合に該当するかしないかは社会保険労務士などの専門家に相談したうえでないと、苦情が単なる言い掛かりとなりかねません。

労働基準監督署の監督指導やその予告があった場合には、なるべく早く社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

 

2019.01.06.解決社労士

<労働施策基本方針>

平成30(2018)年12月28日、「労働施策基本方針」が閣議決定されました。

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」では、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な労働に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととされています。

これに基づき、厚生労働省では、労働政策審議会労働施策基本方針部会での議論を踏まえ、労働施策基本方針を取りまとめました。この方針には、働き方改革実行計画に規定されている施策を中心とし、労働施策に関する基本的な事項、その他重要事項などが盛り込まれています。

厚生労働省は、今後、この方針に基づき、誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会の実現に向けて取り組んでいくとしています。

 

この労働施策基本方針の中では、働き方改革が次のように説明されています。

 

【働き方改革の必要性】

誰もが生きがいを持ってその能力を最大限発揮することができる社会を創るためには、働く人の視点に立ち我が国の労働制度の改革を行い、企業文化や風土を変え、働く一人一人が、より良い将来の展望を持ち得るようにすることが必要である。

働き方改革の推進は、多様な働き方を可能とすることにより、自分の未来を自ら創っていくことができる社会を実現し、意欲ある人々に多様なチャンスを生み出すものであり、同時に企業の生産性や収益力の向上が図られるものである。人々が豊かに生きていく社会の実現のためには、働き方改革を着実に推進することが求められる。

 

【働き方改革の推進に向けた基本的な考え方】

我が国の労働制度と働き方においては、長時間労働や、非正規雇用労働者の待遇等に関する問題に加え、女性や高齢者等の労働参加に関する課題や、育児や介護等と仕事の両立に関する課題、中高年齢者等の転職・再就職に関する課題、中小企業等における人材確保等に関する課題など様々な課題が存在する。

働き方改革は、こうした問題や課題を解決することにより、労働参加率の向上に加え、労働者のモチベーションを高めるとともに、生産性の向上にもつながるものである。また、働き方改革によって生まれる生産性向上の成果を働く人に分配することにより、賃金の上昇と需要の拡大を通じた成長と分配の好循環を実現し、国民一人一人の生活の向上を目指すものである。

労働施策総合推進法は、国が、労働施策を総合的に講ずることにより、経済社会情勢の変化の中で、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにすることにより、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上を実現し、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的としている。

また、労働施策総合推進法の基本的理念として、職業生活の全期間を通じた、労働者の職業の安定への配慮に加え、労働者は、職務の内容及び職務に必要な能力、経験その他の職務遂行上必要な事項の内容が明らかにされ、並びにこれらに即した評価方法により能力等を公正に評価され、当該評価に基づく処遇を受けることその他の適切な処遇を確保するための措置が効果的に実施されることにより、その職業の安定が図られるように配慮されるものとすることを、新たに掲げたところである。

このような労働施策総合推進法の目的及び基本的理念を踏まえ、本方針に労働施策に関する基本的事項等を定めることにより、都道府県や市町村等の地方公共団体とも連携を図りつつ、働き方改革の実現に向けて労働施策を総合的に推進する。

こうした働き方改革に向けた労働施策の推進や各企業における働き方改革の実施においては、労使の十分なコミュニケーションをその基盤とするとともに、働く人の視点に立つことが重要である。

なお、公務員についても、働き方改革の実現に向けた取組の推進に努める。

 

【労働施策基本方針に基づく働き方改革の推進】

働き方改革の実現に向けて、本方針において示した基本的な考え方や中長期的な方向性に基づき、労働施策を総合的かつ継続的に推進する。

本方針に基づく施策の推進に当たっては、労働政策審議会に置く各分科会の意見を踏まえ、必要なKPI の設定を行い、PDCAサイクルを回すことにより、各施策の実効性を確保しつつ、実施するものである。

働き方改革の意義等を示すものとしての本方針の性格に照らし、経済及び雇用情勢に加え、実行計画のフォローアップの状況や本方針に定める諸施策の実施状況に応じて、変更の必要性があると判断した場合は、本方針を見直すものとする。

 

2019.01.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組>

厚生労働省が平成30(2018)年12月28日、国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組を調査報告書に取りまとめ公表しました。 

高齢化の進行に伴い、生活習慣病が増加し、中でも糖尿病は、初期段階では自覚症状が無いため、長年放置されると、糖尿病性腎症の重症化進行により人工透析による治療が必要となるリスクがあります。

この場合、患者本人だけでなく家族の苦痛は著しく、合併症などにより勤務が困難となるケースも少なくありません。

 

<メタボリックシンドローム>

会社は定期健康診断など、法定の健康診断を実施しています。血糖値の高い受診者に対しては、健診機関から生活上の注意に関するパンフレットが配布されることもあります。

たしかに、糖尿病の目安となるのは、第一に血糖値ですが、他にも血液検査のHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)やBMIも参考になります。

また、内臓脂肪の蓄積による肥満をもとに、軽い高血糖、高血圧、高脂血症などが重なって起こっている病態は、「メタボリックシンドローム」といわれ、心筋梗塞や脳梗塞が起こりやすいだけでなく、将来的に高い確率で糖尿病になることがわかっています。

 

<特定保健指導>

日本人の死亡原因の約6割を占める生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの人を対象に、メタボリックシンドロームに着目した特定健診が行われています。

この特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による生活習慣病の予防効果が多く期待できる人に対して、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポートをします。これが特定保健指導です。

あくまでもメタボ予備軍に対する指導です。すでにメタボと認定された人には治療が必要です。特定保健指導では、予備軍からメタボに転落しないように指導するわけです。

特定保健指導を受けてもメタボ予備軍から抜け出せない人には、医師の受診をお勧めすることになります。

 

2019.01.04.解決社労士

<労働安全衛生法の目的>

労働安全衛生法は、この法律の目的を次のように規定しています。

 

【目的】

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

 

この中の「自主的活動」が、誰のどのような活動を指しているのかは、労働安全衛生法の中に示されていません。しかし、主にリスクアセスメントを指していると考えられます。

 

<リスクアセスメント>

リスクアセスメントは、職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、これを除去・低減するための手法です。

労働安全衛生法が、全体として多くの職場に共通する労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化を目指しているのに対し、リスクアセスメントは、各職場の個性に応じて労働災害防止を目指すものです。

平成18(2006)年4月1日より、リスクアセスメントの実施が労働安全衛生法第28条の2により努力義務化されました。

 

【事業者の行うべき調査等】

第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

 

具体的な進め方については、厚生労働省より「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。〔労働安全衛生法第28条の2第2項〕

 

<リスクアセスメントの必要性>

かつての労働災害防止対策は、発生した労働災害の原因を調査し、類似災害の再発防止対策を確立し、各職場に徹底していくという手法が基本でした。

しかし、災害が発生していない職場であっても潜在的な危険性や有害性は存在しており、 これが放置されると、いつかは労働災害が発生する可能性がありました。

また、技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質等が生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきました。

こうしたことから、これからの安全衛生対策は、自主的に職場の潜在的な危険や有害性を見つけ出し、事前に的確な対策を講ずることが不可欠であり、これに応えたのが職場のリスクアセスメントです。

 

2019.01.03.解決社労士

<労働基準法第1条>

労働基準法第1条には、労働条件の原則が定められています。

法令の第1条には、その法令の目的が掲げられていることが多く、この条文も労働基準法全体の目的を示しているとみることができます。

 

【労働条件の原則】

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

この条文を素直に読めば、「人たるに値する生活を営むための必要」というのは、人間らしい生活をするのに必要な収入が得られることを意味しているでしょう。

また、「労働条件を低下させる」というのは、賃金の実質的な時間単価を低下させることを意味するものと考えられます。

このことからすると、時間外労働や休日労働は割増賃金となりますから、労働者が希望して積極的に残業や休日出勤を行い、より多くの賃金を獲得するのは労働基準法第1条と矛盾するものではないでしょう。

ところが、労働基準法は改正され、平成31(2019)年4月1日から一部の事業・業務と中小企業を除いて、残業時間の上限規制が行われます。

生活費を残業手当に頼っていた労働者にとって、この法改正は「労働条件を低下させる」ことにならないのか、「人たるに値する生活を営むための必要」を満たさなくなるのではないかという不安をもたらし兼ねないものです。

 

<憲法との関係>

労働基準法が制定されたのは、日本国憲法第27条第2項の規定を受けてのことです。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

また、労働基準法第1条が「人たるに値する生活」と言っているのは、日本国憲法第25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を受けてのことでしょう。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第二次世界大戦が終わったのが昭和20年、日本国憲法の公布が昭和21年、労働基準法の公布が昭和22年です。この当時、「人たるに値する生活」「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉の解釈として、経済的な側面が中心になったのは当然のことでしょう。

 

<働き方改革との関係>

過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調といった問題がクローズアップされ、過重労働や長時間労働の予防が急務となっています。

割増賃金さえきちんと支払えば、企業が労働者をどれだけ働かせても問題ないとは考えられない時代になりました。長時間労働は解消されなければなりません。

しかし残業手当が減って、労働者の賃金の時間単価が減ったのでは、労働基準法第1条第2項が労働関係の当事者に「労働条件を低下させてはならない」と命じていることに違反してしまいます。この条文は、労働関係の当事者である使用者と労働者の両方に、労働条件の向上を図るように努めなさいと言っているのですから、労使で話し合って、労働時間を減少させつつ売上や利益が減少しないように工夫することが求められています。

このように、労働基準法第1条の「人たるに値する生活」「労働条件」の意味合いは、経済的な側面だけでなく、社会的な側面や健康的な側面に拡大されてきたとみることができるでしょう。

 

2019.01.02.解決社労士

<就業規則の作成・届出義務>

就業規則の作成と届出については、労働基準法に次の規定があります。

 

【就業規則の作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

全体で常時10人以上の労働者を使用するようになれば、就業規則の作成・届出義務が発生します。

パートやアルバイトなど非正規社員が1人であっても、全体で10人以上であれば、その1人に適用するための就業規則が必要となり、作成・届出義務が発生します。もし作成しなければ、その非正規社員には正社員の就業規則が適用されることになってしまいます。

 

<意見書の添付>

就業規則の作成や変更を労働基準監督署長に届け出るには、「意見書」の添付が必要です。

これについては、労働基準法に次の規定があります。

 

【意見書の添付】

第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

 

労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合の、「労働者の過半数を代表する者」は、正社員の就業規則の手続きに使用する意見書であっても、非正規社員を含めた「労働者全体の過半数を代表する者」であることが必要です。

 

<短時間労働者の就業規則の意見書>

一方で、パートタイム労働法(正式名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、パートやアルバイトなど短時間労働者の就業規則の作成・変更について、次の規定を置いています。

 

【就業規則の作成の手続】

第七条 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。

 

この規定にある「短時間労働者の過半数を代表すると認められるもの」というのは、労働基準法90条にならって、「当該事業場に、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、短時間労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては短時間労働者の過半数を代表する者」を指すものと考えられます。

また、意見聴取が努力義務とされている以上、短時間労働者の就業規則の作成・変更の届出に、短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの「意見書」を添付する必要は無いことになります。

 

2019.01.01.解決社労士

<就業規則が必要ということ>

懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に具体的な規定のあることが必要です。

しかし、これは規定が必要だということであって、規定さえあれば十分ということではありません。

架空の例ですが、ある会社の就業規則に次のような規定があったとします。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第●条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に会社に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。

 

【懲戒解雇】

第●条 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

○  1営業年度のうちに無断で100回遅刻したとき

 

1年間で100回も無断で遅刻したら、解雇されても仕方がないように思えます。

しかし、99回目まで誰も注意を与えず、遅刻してきた社員をニヤニヤして見ているだけだったのに、100回目の遅刻で突然「はい、就業規則の規定により、あなたは解雇となります」ということにはできないのです。

 

<懲戒処分の有効要件>

労働契約法は、懲戒処分が無効となる場合について、次のように規定しています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

裏を返せば、懲戒処分が有効となるためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。

・客観的に合理的な理由があること

・社会通念上相当であること

 

このことからすると、1回目の無断遅刻のときに、上司など会社側は最低でも次のアクションを起こすことが求められます。

・無断遅刻はいけないことであり、ルール違反であることの説明。

・無断遅刻について、本人の弁解を聞くようにすること。

 

無断遅刻について注意を与えなかったり、正当な理由の有無を確認しなかったりというのでは、2回目以降の無断遅刻が発生しても強く責めることはできません。

それにもかかわらず、懲戒処分を行うと「客観的に合理的な理由がある」ともいえませんし、「社会通念上相当」ともいえませんから、その懲戒処分は懲戒権の濫用となって無効になります。

 

こうしたことを踏まえて、厚生労働省のモデル就業規則の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第61条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第41条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

このように、懲戒処分の有効要件〔労働契約法15条〕に配慮した規定となっています。

 

<遅刻の再発を予防する労務管理>

遅刻の再発を予防するため、上司が取るべき行動には次のようなものがあります。

 

・出勤時刻になっても姿を現わさないので、連絡してみたが応答もなく、みんながとても心配していたことの説明。

・健康状態は大丈夫か、仕事や家庭の事情で疲労が蓄積していないか、夜はしっかり眠れているか、何か心配事があるのではないかの確認。

・やむを得ず遅刻する場合には、事前に会社に申し出て承認を受けるルールがあることと、その具体的な方法についての説明。

 

上司からこのようにされたら、本当は明け方まで友人と居酒屋にいて寝坊したのであっても、「二度と遅刻しないようにしよう」と考えるものです。

少なくとも、みんなの見ている前で机を叩きながら「遅刻するなバカヤロー」と怒鳴るパワハラ上司の100倍は尊敬されるでしょう。

部下にルール違反があった場合の対応についても、管理職の教育が重要だということです。

 

2018.12.31.解決社労士

<働き方改革の目指すもの>

「働き方改革」は、働く人たちが、個人的な事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人たちのニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

働く人の置かれた個人的な事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため、労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業で、法律上年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

2018.12.30.解決社労士

【導入時期】

 大企業: 2019 年4月  中小企業: 2020 年4月

 

<働き方改革の目指すもの>

「働き方改革」は、働く人たちが、個人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人たちのニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

働く人の置かれた個人的な事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

<時間外労働の上限規制>

長時間労働は、健康の確保を困難にするとともに、仕事と家庭生活の両立を困難にし、少子化の原因、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっています。

長時間労働を是正することによって、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり労働参加率の向上に結びつきます。

このため、働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。

 

<法改正のポイント>

時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、・時間外労働・・・年720時間以内・時間外労働+休日労働・・・月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする必要があります。

原則である月45時間を超えることができるのは、年6回(6か月)までです。

法違反の有無は「所定外労働時間」ではなく、「法定外労働時間」の超過時間で判断されます。

大企業への施行は2019年4月ですが、中小企業への適用は1年猶予され2020年4月となります。

 

2018.12.29.解決社労士

<事前の相談>

生活保護制度の利用を希望する場合には、まず地域の福祉事務所の生活保護担当に相談します。

ここで、生活保護制度の説明を受けるとともに、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討することになります。

その日1日を過ごすのも大変になってから相談に訪れる人もいますが、今後の見通しが立たなくなったら早めに相談するべきでしょう。

 

<保護申請後の調査>

生活保護の申請をすると、保護の決定のために次のような調査が行われます。

 

・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)

・預貯金、保険、不動産等の資産調査

・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査

・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査

・就労の可能性の調査

 

扶養義務者による扶養の可否の調査は、対象者のプライバシーなどのこともあり、どうしても形式的なものになりがちです。 

また、年金受給額などは保護開始後に詳しく調査されるものです。

 

<保護費の支給>

基準となる最低生活費から収入(年金や就労収入等)を差し引いた額が、保護費として毎月支給されます。

したがって、生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告することになります。

また、世帯の実態に応じて、福祉事務所のケースワーカーが年数回の訪問調査を行います。

就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導が行われます。

しかし、生活保護世帯も高齢化が進み、就労が困難なケースが増えています。

 

<老齢年金の受給>

生活保護を受け始めてから、老齢年金の手続きをすれば受給できることがわかる場合があります。

この場合、一般には5年前の分までさかのぼり、まとめて受給することになります。

このときの受給額が多額の場合には、生活保護が一時ストップすることもありますし、その後の受給額が充分であれば保護廃止の決定が行われることもあります。

 

<年金相談は早めに>

「今はまだ大丈夫」ということで、年金をもらう手続を怠っている方も、かなりの数にのぼります。

しかし、面倒に思わず、年金事務所の窓口に行って、相談していただきたいものです。生活費に困り余裕の無い状態になってからでは、落ち着いて話を聞くこともできなくなりますので。

お客様相談室では、一般の職員の他、社会保険労務士が対応にあたっています。

いくらネットや本で調べてみても、個人の保険料納付記録が無ければ、確実なことはわかりません。

年金を受け取る権利には、時効期間もあります。もし、年金をもらえる状態で、長年放置していれば、権利は消えていってしまいます。そうならないためにも、是非一度、ご相談をしていただきたいです。

 

<障害年金の受給>

年金というと、まず老齢年金が思い浮かびます。

しかし、働けなくなって生活保護の申請をする方の中には、障害年金の受給対象となる方も含まれています。障害があるために働けないケースがあるからです。

ただし、この障害年金を受けるには、保険料納付要件、初診日の証明、障害の状態等いくつものハードルがあります。

生活費に困り余裕の無い状態になる前に、老齢年金と同じく年金事務所で相談することをお勧めします。

ただ、老齢年金よりも少々複雑な話となることが多いようです。不安がある場合や、年金事務所での相談に納得できない場合には、思い切って、社会保険労務士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

2018.12.28.解決社労士

<正しい計算の法的根拠>

労働基準法には、残業手当を何分単位で計算するのかについて規定がありません。

しかし、規定が無いからといって、労働局や労働基準監督署が企業の残業代計算について、指導できないというのでは困ります。

そこで、法令の具体的な解釈が必要な場合には、行政通達が出されて、その内容が解釈の基準となります。

残業手当の計算についても、労働省労働局長通達が出されています。

531ページまである行政通達の220ページから221ページにかけて、次のような内容が記載されています。

 

【昭和63年3月14日付通達 基発第150号】

次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、・・・違反としては取り扱わない。

 

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の合計について、1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げること。

 

・1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数がある場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げること。

 

・時間外労働および休日労働、深夜労働の1か月単位の割増賃金の総額に1円未満の端数がある場合は、上記と同様に処理すること。

 

結局、この基準に沿った四捨五入は許されますし、たとえば常に切り上げるなど労働者に有利なルールで運用することも問題ありません。

 

<行政通達の効力>

この行政通達は、厚生労働省が労働局や労働基準監督署に、企業指導のための具体的な指針を示したものです。

ですから、労働基準法などの法律とは異なり、行政通達が直接企業を拘束するものではありません。

しかし、企業から「行政通達の内容が不合理だから従いません」と主張するためには、行政訴訟で指導の不当性を争い、裁判所に行政通達の違法性を確認してもらうしかないでしょう。

これは、立法機関が法律を作り、行政機関が執行し、司法機関がその違法性や違憲性を審査するという三権分立のあらわれです。

結局、現実的には、どの企業もこの行政通達に従うしかないでしょう。

 

<トイレの時間は勤務時間外か>

これも法令には規定が無いのですが、一般に「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。仕事をしなければ賃金を支払う必要がないということです。

この原則をしゃくし定規にとらえると、トイレに行っても、タバコを吸っても、居眠りをしても、1分単位で給料を減らして良いように思えます。

しかし、「ノーワーク・ノーペイの原則」は労働契約の性質から導き出されています。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することによって成立する契約です。〔労働契約法6条〕

つまり「働くなら払います」の裏返しで、「働かないなら払いません」ということを言っているに過ぎません。

そもそも、労働契約を締結する際には、いちいち確認しなくても、トイレに行くことぐらいは当然に了解済みです。タバコについては、その職場のルールが説明されるでしょう。そして、居眠りについては、ひどければ懲戒処分の対象としておけば済むことです。

結局、労働時間の中には、労働以外のことをする時間もある程度含まれているという了解のもとで、労働契約が成立し給与も決められているといえるのです。

 

2018.12.27.解決社労士

<パワハラ>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、「精神的・身体的苦痛を与えこと」あるいは「職場環境を悪化させる行為」という実害の発生が、パワハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

 

<職場内での優位性>

パワーハラスメントという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して使われる場合が多いですが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもあります。

「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、勤続年数や経験などの様々な優位性が含まれます。

 

<業務の適正な範囲>

業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたりません。

たとえば、上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。

職場のパワーハラスメント対策は、そのような上司の適正な指導を妨げるものではなく、各職場で、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にする取組を行うことによって、適正な指導をサポートするものでなければなりません。

そうでなければ、上司は部下を適正に指導することに臆病になり躊躇してしまい、組織としての機能が損なわれて、企業全体の生産性が低下してしまいます。

 

<パワハラの判断基準>

具体的な事案が発生した場合に、それがパワーハラスメントであったかどうか判断をするには、行為が行われた状況など詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や裁判例も参考にしながら判断しましょう。これが厚生労働省の説明です。

しかし、パワハラかどうかの判断をするのに、裁判例を参考にするのはむずかしいと思います。就業規則を読めばわかるようにしておきたいものです。そして、就業規則にパワハラの定義を定めるときには、適正な指導との区別を具体的に明らかにする必要があります。

まず主観的には、相手の成長を思い親身になって接するのが指導です。これに対して、自分の感情を爆発させストレスを発散する言動がパワハラです。ですから、指導に単なる怒りの感情は伴いません。100%怒りの感情だけがあれば、それは間違いなくパワハラです。

そして客観的には、指導というのは、その対象者の親・家族が見ていて、「しっかり指導してくれてありがとう」と思える言動です。これに対して、パワハラというのは親・家族が見ていて「何てことを言うんだ!何てことをするんだ!」と怒り嘆く言動です。

なぜなら、指導というのは相手の成長を願って行うものであり、また、指導した者には指導に従った結果に対して責任を負うという覚悟があります。親が子に厳しくしても、この前提が崩れない限り指導であり躾(しつけ)です。

こうしたことを踏まえて、就業規則にパワハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、パワハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない。」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、具体的で明確な定義が必要なのです。

 

<パワハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩などが、優位に立つ自分に対して従順で素直で協力的なのは、能力や意欲の差が明白だからではありません。立場上あるいは心理的に仕方なくてそうしているのです。決して実力の差が、仕事上の立場を超えて現れたわけではありません。ここを勘違いしている人が、パワハラに走っているように思います。

パワハラ防止のための教育研修の内容には、このパワハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

パワハラに限らず、セクハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者のメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社外の専門家を推奨しています。なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない場合には、被害者は労働局に申請して紛争調整委員会に斡旋(あっせん)をしてもらうことができます。

反対に、企業がきちんと対応したのに、被害者が納得してくれない場合にも、企業から斡旋を求めることができます。

斡旋では、委員会が話し合いの場を設けます。双方の話し合いで解決すれば良いのですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。専門家の助力が必要であれば、弁護士か特定社労士にご相談ください。

 

2018.12.26.解決社労士

<セクハラ>

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

 

<企業の責任>

法令により、企業にはセクハラ対策が義務付けられています。〔男女雇用機会均等法11条〕

従業員からセクハラ被害の申し出があれば、企業は誠実に対応しなければなりませんから、被害の申し出を受け付けるための窓口を設置する義務もあります。

就業規則にセクハラの禁止規定と、これに対応する懲戒規定も必要になります。

 

<就業規則にセクハラの定義>

まず就業規則にセクハラの定義を定めなければ、従業員には何が禁止されているのか不明確ですし、それらしき行為があっても確信が持てなければ、誰も注意することができないのですから被害者は救われません。

「自分の言動が、セクハラとなるかどうかわからない。要は、相手の受け取り方次第なので、ハッキリしない」というのが加害者側の理屈でしょう。

これを許さないためには、「自分と相手との間柄を前提として、客観的に見て、相手や周囲の社員が性的な意味合いを感じ不快に思う言動」はセクハラに該当するというような具体的で明確な定義が必要なのです。

社内での相手に対する言動が、周囲の社員にとって、あるいは、相手の家族にとって、性的な意味合いで不快感を与えていれば、セクハラになると思います。

 

<セクハラ発生のメカニズム>

そもそも部下や後輩が自分に対して従順で素直で協力的なのは、自分に好意を寄せているからではなくて、立場上、仕方が無いからです。決して、二人の間柄が、仕事上の立場を超えたわけではありません。ここを勘違いしている方が、セクハラに走っているように思います。

セクハラ防止のための教育研修の内容には、このセクハラ発生のメカニズムも加える必要があるでしょう。

 

<企業として必要な対策>

セクハラに限らず、パワハラでもマタハラでも、ハラスメント対策としては、次のことが必要です。

・ハラスメントは許さないという経営者からのメッセージ

・就業規則の懲戒処分に関連規定を置く

・実態を把握するための体制と仕組みの整備

・社員教育

・再発防止措置

・相談窓口の設置

この中で、相談窓口としては、厚生労働省が社会保険労務士など社外の専門家を推奨しています。なぜなら、社内の担当者や部門では、被害者が申し出をためらいますし、被害拡大やもみ消しの恐れもあるからです。

まずは、経営者がハラスメントの問題を重くとらえ理解し、社内に「許さない」というメッセージを発信するのが第一歩です。

 

<社外での解決>

法は、企業に対して自主的解決を求めています。〔男女雇用機会均等法15条〕

しかし、被害者の申し出にもかかわらず、企業が納得のいく対応をしてくれない、また、企業としてはきちんと対応したのに、被害者が納得してくれないという場合には、労働局に申請して紛争調整委員会に調停をしてもらうことができます。

調停では、委員会から具体的な事情を踏まえた和解案が提示されます。

双方がこれに従えば、一件落着ですが、そうでなければ訴訟に発展することもあります。

特定社会保険労務士は、この調停での一方当事者の代理人となる資格を持っています。

ハラスメントの防止策や社員教育から、万一紛争に発展した場合の解決まで、社内でまかなえない部分については専門家である社会保険労務士にご用命ください。

 

2018.12.25.解決社労士

<面接指導対象者の拡充>

平成31(2019)年4月1日付の働き方改革関連法の改正は、労働基準法だけでなく労働安全衛生法にも重要なものが含まれています。

 

【医師による面接指導の対象者】

一般労働者に対する医師による面接指導の対象を、現行の「1月当たり100時間超」から「1月当たり80時間超」へ見直し。〔労働安全衛生法66条の8 1項、労働安全衛生規則52条の2 1項〕

 

これは、労働基準法36条6項2号の改正により、労働時間を延長して労働させた時間と、休日に労働させた時間の合計が、1か月について100時間未満とされたことに呼応するものです。

もっとも、面接指導は労働者からの申し出により行われるものです。〔労働安全衛生規則52条〕

 

<対象者への情報提供>

 

【長時間労働者への通知】

長時間労働者(1月当たり80時間超)に対し、労働時間の状況に関する情報の通知を事業者に義務付け。〔労働安全衛生規則52条の2 3項〕

 

医師による面接指導の対象者であることを本人が認識していなければ、面接指導を希望し申し出るというのは困難ですから、事業者にこのような通知義務を負わせたものです。

もちろん、単純に労働時間の状況を通知しただけでは、これを受けた労働者が事業者の意図を誤解しかねませんから、医師による面接指導の対象者であることも併せて通知すべきです。

 

<研究開発業務従事者の例外>

 

【研究開発業務従事者の場合の面接指導対象者】

新技術、新商品等の研究開発業務に従事する労働者が、長時間労働(労働安全衛生規則により1月当たり100時間超時間外・休日労働)を行った場合、申出なしで医師による面接指導の実施を事業者に義務付け。〔労働安全衛生法66条の8の2〕

 

こちらは、労働者からの申出がない場合でも事業者に実施義務がありますし、50万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働安全衛生法120条〕

なお、高度プロフェッショナル制対象労働者については、「労働時間」が「健康管理時間」に読み替えられて適用されます。

 

<労働時間把握義務>

医師による面接指導の対象者は、労働時間によって抽出される仕組みですから、事業者による労働時間の把握が客観的で適切な方法によらなければなりません。

従来は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定され、各事業者はこれを参考に労働時間を把握するように努めるものとされてきました。

しかし、今回の労働安全衛生法の改正により、労働時間の適正な把握は法的な義務となりました。

 

【労働時間の把握】

・客観的な方法その他適切な方法により労働時間の状況を把握することを事業者に義務付け。〔労働安全衛生法66条の8の3〕

・労働時間の把握方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。〔労働安全衛生規則52条の7の3 1項〕

・把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。〔労働安全衛生規則52条の7の3 2項〕

 

この労働時間の把握義務ですが、その目的は労働者の健康管理にあります。

このことから、労働時間の把握が対象外とされてきた管理監督者についても、事業者は労働時間を適正に把握することが求められるようになりました。

 

2018.12.24.解決社労士

<法改正があった場合>

本来、法令の内容を広く国民に知らせるのは国家の役割だと思われるのですが、労働基準法には次の規定があって、労働基準法などの内容を労働者に周知させるのは使用者の義務ということになっています。

これには、30万円以下の罰金という罰則も規定されています。〔労働基準法120条1号〕

 

【法令等の周知義務】

第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第七項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び第五項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 

就業規則に、「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いておけば、法改正があっても法令と就業規則との矛盾が発生することは防げます。

しかし、こうした規定を置いたとしても、法改正の内容を労働者に周知する義務は果たしたことになりませんから、別途資料を配布して説明会を開催するなどが必要になってしまいます。

これではかえって大変ですから、法改正の内容を就業規則に反映させて、就業規則の一部として周知した方が簡単だということになります。

 

<労働条件の実態が就業規則に記載されている内容とズレている>

次のようなケースが考えられます。

・就業規則に出勤簿による勤務管理の規定があるが、実際にはタイムカードを使用している。

・就業規則には女子の制服についての規定があるが、数年前に制服が廃止されている。

・電車の遅れによる遅刻に、就業規則で必要とされている遅延証明書が不要とされている。

たしかに、古い規定が残っていても特別な不都合は無いのですが、会社側の就業規則に対する無関心な態度を示していることになりますから改めるべきでしょう。

 

<就業規則の予定していない非正社員がいる>

正社員と非正社員がいても、就業規則が1種類しか無ければ、その就業規則がすべての社員に適用されます。

そもそも、会社ごとに決めているはずの「正社員」の定義すら無いでしょうから、賞与、退職金、昇進、昇給、人事異動など、就業規則上は一律に扱うことになるわけです。

会社から非正社員に口頭で説明し、納得してもらっているつもりであったとしても、その人が退職後に経済的に困った場合には、会社に対して未支給の賞与や退職金の支払いを求めてくることもあります。

 

<「労使で話し合って」という規定が残っている>

社員のすべてが経営者の家族や親戚であれば、何でも話し合って円満に解決するのがベストでしょう。

しかし、会社が成長し従業員が増えてくると、赤の他人が会社に入ってきます。「労使で話し合って」では解決がむずかしくなります。

就業規則がトラブルの予防や解決に対応できる内容となっていないのであれば、早い段階で見直すことをお勧めします。

 

<会社の成長や労働環境の変化>

会社側からも従業員側からも、会社や社会の変化に応じて、労働条件の変更についての要望が出てくることがあります。

特に、今のように「働き方改革」について報道されない日が無いといった状況では、数多くの点について意見が出てきていることでしょう。

これはチャンスですから、よく話し合って就業規則の変更についての合意を形成したいところです。

 

<労働基準監督署から是正勧告や指導を受けた>

「是正勧告」は、法令違反を直ちに改めなさいという内容ですから、速やかに就業規則の内容と運用を改めなければなりません。

似たものに「指導票」というのがありますが、こちらは計画的に改善を進める姿勢を示すことが求められるものです。

素人判断で動いてしまうと、将来に向けて大きな影響が生じますから、特に労基署対応に慣れた社会保険労務士に相談することをお勧めします。

 

<不利益変更の留意点>

従業員の全員ではなくても、一部の従業員にとって不利益となる就業規則の変更は、その不利益を被る従業員から、変更の無効確認や損害賠償の請求などの形で問題が露見することがあります。

 

【問題となる不利益変更の例】

・定年制が無い会社で新たに定年制を設ける。

・すでに規定されている休職期間を短くする。

・賃金の一部をカットする。

・退職金の支給額を減らす。

・所定労働時間を延長する(時間単価が下がる)。

 

経営者の立場で考えて、「やむを得ない事情がある」としても、裁判になれば「経営努力の不足」として一蹴されてしまうこともあります。

反対に、不利益変更の実質的な理由がさほど強固ではなくても、段取りが適正であるために是認されるケースもあります。

社会保険労務士にご用命いただく場合には、不利益変更の内容や理由だけでなく、変更の手順についても具体的にご相談いただけたらと思います。

 

2018.12.23.解決社労士

<東京労働局の呼びかけ>

冬季は、積雪・凍結を原因とする、転倒災害、自転車及び車両運転中の交通労働災害、建物屋根等の除雪作業中の墜落・転落災害等の労働災害が懸念されます。

東京労働局管内でも、平成30(2018)年1月22日に平成26(2014)年豪雪以来4年ぶりの積雪23cmを記録し、積雪・凍結が原因と思われる転倒災害が大幅に増えましたが、こうした降雪によって、屋外のみならず、屋内でも水や氷によって滑るなどの転倒災害も多発しています。

都内では、労働者が積雪や凍結に不慣れであることに留意し、天候急変に対処できるよう情報収集や早めの準備等、転倒災害等防止に万全の取り組みを呼びかけています。

 

<転倒災害の発生状況>

冬季の転倒災害の発生状況は、天候による影響を大きく受け、積雪・凍結により多発します。平成30(2018)年1月22日の大雪の際も、雪の影響が考えられる1月下旬(1月21日から31日まで)の転倒災害は、積雪の無かった前年同期と比べ、214人増(3.7倍)と大幅に増えました。この期間の転倒災害のうち7割が屋外の積雪を原因とする滑りやつまずきであり、そのうち8割が徒歩での移動・作業中です。また、最も転倒災害が多かった時期は、降雪から2日後の雪が解け始めた日になっています。

雪が解け始めたら、路面凍結の可能性が高く、屋外の移動・作業は、特に注意が必要です。

 

<冬季における転倒防止対策>

冬季は、積雪や路面の凍結などにより転倒災害が多く発生する傾向があります。

次の4つに留意して転倒災害を防ぎましょう。

●天気予報に気を配る

寒波が予想される場合などには、労働者に周知し早めに対策をとりましょう。

●時間に余裕をもって歩行、作業を行う

悪天候による交通機関の遅れが見込まれる場合は、時間に余裕をもって出勤するようにし、落ち着いて作業をするように心がけましょう。屋外では、小さな歩幅で靴の裏全体を地面に付けて歩くようにしましょう。

●駐車場の除雪・融雪は万全に、出入口などにも注意する

駐車場内や駐車場から職場までの通路に、除雪や融雪剤の散布を行いましょう。また、出入口には転倒防止用マットを敷き、照明設備を設けて夜間の照度を確保しましょう。

●職場の危険マップ、適切な履物、歩行方法などの教育を行う

職場内で労働者が転倒の危険を感じた場所の情報を収集し、危険マップなどにより労働者に伝えるようにしましょう。また、作業に適した履物選びや、雪道や凍った路面上での歩き方を教育しましょう。

 

2018.12.22.解決社労士

<少子化対策>

次世代育成支援の観点から、国民年金第1号被保険者が出産を行った際には、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除される制度が平成31(2019)年4月から始まります。

 

<保険料が免除される期間>

出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(産前産後期間)の国民年金保険料が免除されます。

なお、双子や三つ子など多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除されます。

ここで出産とは、妊娠85日(4か月)以上の出産をいいます。死産、流産、早産を含みます。

妊娠については、1か月を28日で計算します。3か月で84日( 28 × 3 = 84)なのですが、これを1日超えて85日となれば、4か月以上と考えます。

 

<対象者>

「国民年金第1号被保険者」で出産日が平成31(2019)年2月1日以降の人。

「国民年金第1号被保険者」は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業者、学生および無職の人とその配偶者(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない人)。

また、第3号被保険者というのは、厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人。

ただし、65歳以上の老齢基礎年金などを受ける権利を有している人は、第2号被保険者からは除かれます。

 

<申請日>

出産予定日の6か月前から申請書類の提出が可能です。ただし、提出できるのは平成31(2019)年4月からです。

 

<申請先>

住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出します。

 

<申請書類>

申請書は、平成31(2019)年4月から年金事務所または市(区)役所・町村役場の国民年金の窓口に備え付けられます。

 

2018.12.21.解決社労士

<医師の睡眠確保>

「働き方改革実行計画」(平成29(2017)年3月28日働き方改革実現会議決定)を受けて、厚生労働省が設置している「医師の働き方改革に関する検討会」が、平成30(2018)年12月14日、医師の睡眠確保の重要性を踏まえ、医師の労働時間短縮に向けた取組の着実な実施を求める声明を取りまとめ公表しました。

この検討会は、医師に対する時間外労働規制の具体的な在り方、労働時間短縮策等について議論を重ね、今年の2月には「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」をとりまとめています。厚生労働省は、都道府県等を通じて緊急対策を周知し、医療機関に対し医師の労働時間短縮を行うよう求めてきました。

同検討会では更に議論を重ね、医師の健康確保について、睡眠の重要性をエビデンス(効果があることを示す証拠や検証結果・臨床結果)に基づき議論する中で、勤務医が一定の睡眠を確保できる労務管理の重要性が改めて確認されたことから、勤務医の睡眠確保のためにも、緊急対策に掲げた医師の労働時間短縮に向けた取組を確実に進めることを求めています。

医師の睡眠確保に有効と考えられる取組として、タスク・シフティング(業務の移管)の推進、産業保健の仕組みを活用した睡眠不足医師のスクリーニングと把握された睡眠不足医師への配慮、当直明け負担軽減や勤務間インターバル確保が示されています。

厚生労働省は、この内容を都道府県や病院団体等を通じて今年2月の緊急対策とあわせて各医療機関に周知するとともに、緊急対策の内容について、この内容も参考にしながら、各医療機関において、できるものから速やかに実行するよう改めて求めていくことにしています。

 

<産業医の機能拡大>

常用労働者が50人以上の事業場では、産業医の選任が義務付けられています。

この産業医の役割や権限は、労働安全衛生法などに根拠を置くわけですが、過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調などの問題がマスコミで大きく取り上げられてきたことを受けて、産業医の役割を拡大する方向でたびたび法改正が行われています。

特に平成29(2017)年6月には20年ぶりの大改正が行われました。

しかし、産業医が勤務医である場合には、産業医自身の過重労働も問題となります。産業医自身が過労やメンタルヘルス不調に陥っていたのでは、事業場の従業員の健康を確保するどころではなくなってしまいます。

会社の人事部門は、自社の各事業場の産業医と面談を行い、産業医としての業務だけでなく、産業医の抱えている業務全般について許される範囲で内容を把握し、今後産業医としての業務をこなすことに無理が無いかについても検討し、配慮すべきは配慮するといった対応を求められてくるものと思われます。

「医師なのだから、自分の健康くらい自分で何とかするだろう」ではなくて、勤務医は自分の仕事を自由に制御できる立場にないことを前提とした対応が、会社側に求められるのです。

 

2018.12.20.解決社労士

<妊婦加算のスタート>

平成30(2018)年4月1日から、妊婦が健康保険を使って医師の診察を受けた場合に、産婦人科だけでなくすべての科で、初診料と再診料(外来診療料)に対して、時間内・時間外・休日・深夜それぞれに、通常の加算でなく「妊婦加算」という割増点数の加算が付けられることになりました。

妊婦加算は、初診時75点、再診時38点が算定されます。

妊婦については、診察時や薬の処方時に特別な配慮が必要であり、これを踏まえた診療報酬とすることになったのです。以前から、少々厄介な6歳未満児の診察などについて、「乳幼児加算」が付いていました。これと同じ考えのようです。

一般に、産婦人科では正常妊娠の有無の診療や妊婦健康診査では自費診療が原則です。加算は保険診療に対するものですから、自費診療の場合には妊婦加算がありません。

 

<妊婦であることの確認>

妊婦加算は、医師が診察の上、妊婦であると判断した場合に算定できることになっています。必ずしも妊娠反応検査の実施や母子健康手帳の確認は必要ありません(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

当日の診察で妊娠が確認された場合には、妊婦加算が算定できることになっています。

しかし、診察時には妊婦であることが不明で、後日妊娠していることが判明した場合には、 さかのぼって妊婦加算を算定することはできません(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

 

<妊婦加算の対象>

妊婦加算は、産婦人科だけでなく、どの診療科でも算定できます。

カゼなど妊娠に直接関連しない傷病について診察を行った場合にも算定できます。

夜間・早朝等加算と併せて算定できますが、産科・産婦人科特例加算と併せて算定できません。

 

<医師の手続き>

妊婦加算の算定に当たって、特別な届出は不要です。

しかし、カルテにはその患者が妊婦であると判断した旨の記載が必要ですし、レセプトの摘要欄にはその患者が妊婦である旨の記載が必要です(平成30年3月30日厚生労働省事務連絡)。

 

この妊婦加算は、病院独自の制度ではなく、妊婦が健康保険を使って医師の診察を受けた場合に共通の制度です。

 

<制度の凍結>

この制度について、厚生労働省は平成30(2018)年12月19日、中央社会保険医療協議会(中医協)に凍結の方針を諮問し了承されました。

来年1月1日から凍結され、上乗せ分の医療機関への支払いも、妊婦からの徴収も停止されます。

今年4月に始まったばかりの妊婦加算ですが、批判の高まりにより、わずか9か月で制度が破綻したことになります。

今後は、有識者会議が設置され、廃止に向けて制度の見直しが検討されることになっています。

 

 

2018.12.19.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<就業規則の必要性>

小規模な企業では、就業規則が無いこともあります。

しかし、明文化した規定がなく、労働条件が個人ごとに決められるようでは、事務処理が煩雑になるばかりでなく、労働者にも不信感を与えることになります。

これでは、トラブルとなる可能性が高まります。

会社の秩序を守り、統一的に事業を運営していくためには、労働条件や服務規律などを明らかにした就業規則を作成することが必要です。

 

労働基準法には、次の規定があります。

 

【就業規則作成及び届出の義務】

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項

六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項

七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項

八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項

九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

罰則があるわけですから、正社員、パート社員、嘱託社員、アルバイト社員など区分はどうあれ、臨時雇いではない従業員が10名以上なら、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 

<就業規則のメリット>

罰則のことはともかく、就業規則を作成するメリットとしては、次のことが挙げられます。

 

【使用者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律を統一的、画一的に定めることによって、合理的で効率的な労務管理を行うことができる。・ 労働者一人ひとりが職場ルールを良く理解することによって、職場の秩序を良好に保つことができるようになる。

・ 無用なトラブルを予防し、安定した労使関係をつくることができる。

 

【労働者側のメリット】

・ 労働条件や職場規律が明確になることによって労使関係が安定し、安心して働くことができるようになる。・ 明確にされた職場ルールを守ることによって、使用者からの恣意的な制裁を避けることができる。また、自分が知らない定めによる懲戒を受ける心配がなくなる。

・ 就業規則によって労働者の権利が守られるとともに、生活設計がたてやすくなる。

 

社会保険労務士という仕事をしていると、就業規則がちゃんとしていないために、余計なトラブルが多発する事態を目の当たりにしてしまいます。

「こんなトラブルは、こういう規定を置いておけば防げたのに」と思うことが多すぎます。

経営者も労働者も安心して事業を継続するために、その会社にマッチした就業規則は是非とも必要です。

 

なお、就業規則は生ものです。2年も放置していたら、害悪をもたらします。定期的な見直しをどうぞお忘れなく。

 

2018.12.18.解決社労士

<大企業病>

大企業病というのは、企業全体が非効率的になることを指しています。

社員が増え組織が大きくなることで、コミュニケーションが悪くなり、組織が活力を失った状態です。

 

<症状>

大企業は、大企業であり続けたいわけですから、どうしても現状維持的になります。社員も、現状維持を第一に考え、市場経済の変動や顧客ニーズに応じてチャレンジすることは考えにくくなります。

いつか世間の変化に追い越されて、業績が縮小していくのは目に見えています。

中小企業でも、急成長を遂げたり、世間の注目を集め一世を風靡した後に、この症状が現われやすくなります。

 

大企業は、不要な業務が増えすぎています。新人を採用する力は強いのですが、新人が入るたびに「やった方がいいかもしれない」「あると便利そうな」余計な仕事が増えていきます。その仕事が、会社の業績にどう結びつくのかという、厳しいチェックが入らなくなっています。

中小企業でも、ひょっとしたら業績向上に結びつく可能性を考えて、何となく仕事が増えていく現象が見られます。

 

大企業では、現状維持的になるわけですから、これを打破する優秀な社員の出現は大歓迎です。目標管理制度や業績主義の下、社員は自分の業績向上に集中します。同僚と協力し合ったり、後輩を指導したり、上司をフォローしたりということはお留守になってしまいます。優秀な社員が、こうした役割を担わなければ、企業の更なる成長は期待できません。

中小企業でも、大企業の評価制度を真似て、同じ症状に陥っているケースが見られます。

 

大企業では、意思決定が遅くなります。組織のピラミッドが高くなりすぎて、1つのことを決定するのにも多くの社員の判断が必要になっています。稟議制度を電子化しても、複雑な決裁ルートは改善されません。

中小企業でも、社長の即決で足りることを、何段階ものルートを経て決定するようになっていれば、同じ症状が現われています。

 

大企業では、社内的に良かれと思うことが行われていて、視点がお客様から離れていることがあります。

これは中小企業でも、業績向上ばかりに気を取られていると、お客様をライバル企業に持って行かれる現象と共通しています。

 

<対策>

今は事業や企業の業績が安定していても、10年後、30年後、あるいはもっと先のことを考えて、変化を遂げなければなりません。

日本だけでなく世界各国の人口構成、国民総生産、IT化、AI技術など、今後の予測に応じて会社が変わっていかなければなりません。

 

不要な業務は、過去からの習慣や、役に立たない上層部への報告が中心です。その仕事が、会社の業績にどれだけ結びついているのか、見栄を張らないで正直に判断して取捨選択が必要です。

 

ルールに縛られているのも問題です。能力のある社員が実力を発揮できるように、ルールを最小限にするとか、ルールの順守を人事考課で過大評価しないとか、力を開放する変革が必要です。

ルールに固執する社員は、会社の業績に貢献できない可能性が高いです。

 

<キーワードは目的意識>

何より目的意識が大事です。

「なぜするのか」という意識を持ち続けることが目的意識です。

ここから派生して「なぜこの時間にやるのか」「なぜここでやるのか」「なぜこの人がやるのか」「なぜこれがあるのか」「なぜこの方法でするのか」なども目的意識に含まれます。

裏を返せば、「これをしなかったらどうなるのか」という意識を持ち続けることも、一種の目的意識です。

ここから派生して「別の時間にやったらどうか」「別の場所でやったらどうか」「別の人がやったらどうか」「これが無かったらどうか」「他にどんな方法があるか」なども裏から見た目的意識です。

 

人事異動や退職によって、仕事の引継ぎが発生します。

何も意識しないで引き継げば、慣れている前任者から不慣れな後任者に仕事が移るわけですから、明らかに戦力ダウンです。

しかし、一つひとつの仕事の目的を意識した引継ぎを行えば、仕事のレベルは向上し、社員は成長し、会社も成長するのです。

まさに、引継ぎは会社成長のチャンスなのです。

 

大企業病を退ける特効薬は「目的意識」であると言っても過言ではありません。

 

2018.12.17.解決社労士

<同じ遅刻でも>

AさんとBさんが、どちらも今まで遅刻したことなど無かったのに、そろって同じ月に2回、30分の遅刻をしたとします。

そして、どちらも始業時刻の1時間前に会社に電話で「寝坊しました。遅刻します。申し訳ございません」という報告をしていたとしましょう。

 

【Aさん】

入社以来ずっと評価が高く、その人柄も周囲から信頼されている。仕事覚えが早く何でもテキパキと正確にこなすので、どうしても仕事が集まり残業が増えてしまった。会社としては、昇給や賞与の査定で報いている。

今回の遅刻では、「可哀想に。きっと仕事で疲れているんだ」と言われている。

 

【Bさん】

入社以来ずっと評価が低く、その人柄も周囲から疑われている。仕事覚えが悪く間違いが多いため、仕事のやり直しなどのために、残業が増えてしまった。会社は、Bさんの仕事を減らし、なるべく定時で帰ってもらうようにした。

今回の遅刻では、「たるんでいる。きっと深夜まで遊んでいるんだ」と言われている。

 

この場合でも、就業規則に「正当な理由なく、ひと月のうちに2回、10分以上の遅刻をした場合には、けん責処分とする」と規定してあったなら、この通りにしなければなりません。

会社はAさんとBさんの両方から、始末書を提出してもらわなければならないのです。

これはこれで平等であり正しいという考え方もあるのでしょうか。しかし、何か釈然としません。

 

<就業規則の規定>

最新版(平成30(2018)年1月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第64条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

① 正当な理由なく無断欠勤が 日以上に及ぶとき。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

(以下略)

 

この規定では、「情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする」となっていますから、同じ行為に対しても、情状に応じて異なる処分をすることができます。

 

<情状とは>

刑事手続では、訴追を行うかどうかの判断や刑の量定に影響を及ぼすべき一切の事情を情状と呼んでいます。

犯罪の動機や目的、犯人の年齢・経歴や犯行後の態度などがこれにあたります。〔刑事訴訟法248条、刑法66条〕

懲戒処分は会社の行う制裁であって、国が行うものではありませんが、行為者の年齢、社歴、事後の態度などは情状にあたります。

そして、この情状は懲戒処分を軽くする場合だけでなく、重くする場合にも作用します。

 

<公平の考え方>

同じ過ちをしたのに、異なる懲戒処分では不平等だという反論もありそうです。

しかし平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

一方で公平とは、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

さて、妥当な結論を導くには、どちらの考えに従うべきなのでしょうか。

 

【懲戒処分の目的】

・懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

・社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

懲戒処分の目的は、上記のようにまとめられると考えられますから、公平な処分というのが基本になるでしょう。

ただし、平等が無視されるわけではありません。AさんもBさんも普段の仕事ぶりや周囲からの信頼が同じであるなら、同じ懲戒処分となるのが妥当だということになります。

 

こうして、Aさんには上司からの厳重注意、Bさんにはけん責処分という差を設けることもできます。

ただし、これが可能なのは、就業規則の規定が「情状に応じた」扱いを許す内容になっている場合に限られます。

この視点から、もう一度、御社の就業規則を確認するようお勧めします。

 

2018.12.16.解決社労士

<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。これが厚生労働省による説明です。

ここで「同じ職場」というのは、1つの企業内ということではありません。取引先などを含めた複数の企業の従業員が「同じ職場」で働けば、そこにパワハラが発生しうるのです。

 

【厚生労働省によるパワハラの6類型】

身体的な攻撃

暴行、傷害、丸めた書類で頭を叩く

精神的な攻撃

脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言

人間関係からの切り離し

隔離、仲間外れにする、無視

過大な要求

業務上不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

過小な要求

能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない

個の侵害

私的なことに過度に立ち入る

 

<身体的な攻撃>

 殴ったり蹴ったりは暴行罪に当たります。物を投げつければ、当たらなくても暴行です。ケガをさせれば傷害罪です。刑法には、次のように規定されています。

 

【傷害罪】

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

【暴行罪】

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

「そんなことまで暴行罪になるとは知らなかった」などと言ってみても、刑法は許してくれません。

 

【故意】

第三十八条 3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。

 

故意犯のことを、日常用語では「確信犯」などと言います。

法律用語の「確信犯」は、「道徳的、宗教的または政治的信念に基づき、本人が悪いことではないと確信して行う犯罪」をいいます。つまり、刑罰に触れる行為ではあるけれど、悪いことではないと考えて行うのです。

 

職場で身体的な攻撃を行うのは、怒りの感情を抑え切れなかったり、「この場合には正しい行為である」という確信を持ったりした場合でしょう。

前者については、アンガーマネジメントが必要です。職場では、叱ることはあっても、怒る必要はありません。この区別ができるように自己鍛錬が必要です。怒る人ほど、自分の失敗には甘いものです。

他人の身体を侵害しても許される場合として、刑法には、法令又は正当な業務による行為〔35条〕、正当防衛〔36条〕、緊急避難〔37条〕、心神喪失者の行為〔39条〕、14歳に満たない者の行為〔41条〕といった規定があります。しかし、職場でカッとなって暴行を加えるのは、どれにも当てはまりません。

 

<精神的な攻撃>

脅迫というのは、害悪の告知です。これも刑法に規定のある犯罪です。

 

【脅迫】

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

脅迫は、証拠が残ったり、証人がいたりすれば、警察沙汰になることもあります。

 

名誉毀損、侮辱、ひどい暴言というのも、人前で行えば刑法に規定される犯罪です。

 

【名誉毀損】

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き 損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 

【侮辱】

 第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

 

同僚や部下の目の前で、「使えない奴だ!」と叱責するのは侮辱罪に当たりますし、「取引先との商談を忘れるなんてふざけた奴だ!」と叱責するのは名誉毀損罪に当たります。この場合には、証人もいますから言い逃れはできません。

 

会議室などにこもって、必要以上に長時間にわたり繰り返し執拗に叱るのは、監禁罪〔刑法220条〕に該当する場合があります。

 

こうして見ると、パワハラ罪というものは無いのですが、警察に知れれば刑法上の罪に問われるパワハラ行為は多いことがわかります。

 

もちろん、犯罪にはならなくても、業務上必要も無いのに精神的な攻撃を行うことは、パワハラ行為とされ慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となり得ますし、社内でも懲戒処分の対象とされることがあります。

 

<人間関係からの切り離し>

1人だけ別室に席を移す、強制的に自宅待機を命じる、送別会に出席させないなどの「村八分」もパワハラ行為です。

これは、犯罪とはならなくても、不法行為になりますから、慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となり得ます。

 

【民法の規定】

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)

第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

つまり、人間関係からの切り離しを行っても犯罪にはならないのですが、民事訴訟を提起されることはあるわけです。

 

<過大な要求、過小な要求>

やり方を教えることなく仕事をさせたり、何時間もかかる仕事で残業させ自分は帰ってしまうというのは、過大な要求になります。

運転手に営業所の草むしりだけを命じる、事務職に倉庫業務だけを命じるというのは、過小な要求になります。

これらも人の心を傷つける行為なので、必要の無いことはパワハラになります。

 

<個の侵害>

これは、プライバシーの侵害です。プライバシー権は、個人として尊重される権利であり、法律上保護される利益です。日本国憲法13条が根拠とされています。

社会保険や税法上の手続きで、家族の情報が必要な場合には、その必要の範囲内での取得が認められています。

しかし、適正な範囲を超えて、家族について具体的なことを尋ねたり、悪口を言ったりはプライバシーの侵害です。

交際相手について執拗に尋ねたり、休日の過ごし方を尋ねたりするのもプライバシーの侵害になりますし、内容によってはセクハラにもなります。

 

<パワハラの指摘を恐れるな>

以上のことから、次の条件を満たしている限り、業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛などは、萎縮せずに堂々と行うことが部下や後輩を育成するうえで大切です。

 

直接の相手や周囲の人々を個人として尊重しており、身体も心も傷つける恐れが無い。

 

その場の様子をビデオに収め、相手の家族や友人に見せても嫌な顔をされないなら、この条件は満たされているのではないでしょうか。

 

2018.12.15.解決社労士

<民法改正>

平成29(2017)526日に民法改正案が参議院を通過し、成立した改正民法は、62日に公布されました。これによって改正民法は、2020年41日に施行されることになります。

民法の改正は、労働関係には影響が無いように見えます。しかし、労働契約も契約の一種ですから、民法は労働契約に適用されます。

 

<無期契約労働者からの退職申し出>

民法627条の改正により、正社員など無期契約労働者からの退職申し出の効果に、次の変更が発生します。

期間により報酬を定めている場合、たとえば完全月給制で欠勤控除が無い場合などは、退職日についての規定があります。たとえば、完全月給制で末日締切り、翌月15日支払いの場合、月給の計算期間は1日から末日です。30日ある月に、1日から15日までの間に退職を申し出れば当月の月末で退職、16日から月末までの間であれば翌月末日で退職となります。これが法改正により、退職の申し出がいつであっても、その申し出から2週間で退職ということになります。

また、6か月以上の期間により報酬が定められた労働者については、3か月前までに退職の申し出が必要でした。ところが法改正により、2週間前でよいことになります。

 

<具体的な影響>

完全月給制の場合、退職申し出のタイミングにかかわらず、給与の締日に退職ということでした。

法改正により、退職日がバラバラになり、就業規則(給与規程)に欠勤控除について、明確な計算方法が無いと困ることになります。

業務の引継ぎについても、引継ぎ期間は最低でも2週間だったのが、原則として2週間になってしまいます。

 

<合意退職なら>

ここまで述べたことは、従業員が会社に対して一方的に退職の申出を押し通すような場面を想定しています。

 

現実には、お互いトラブルを避けるため、従業員から退職の申出があった場合には、会社側が従業員と話し合って退職の段取りを決めるのが一般的です。

 

これは、合意退職という形になりますから、民法の規定にこだわらず柔軟な対応を取ることが可能です。

 

しかし、会社では突然の退職にも対応できるよう、普段からマニュアルを利用した業務遂行と業務改善を当たり前にしておきたいところです。

また、退職時のルールや異動の場合を含めた引継ぎのルールも、具体的に定めて正しく運用することで、生産性の低下を防止したいところです。

具体的に何をすべきか迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2018.12.14.解決社労士

<健康保険の主な給付>

健康保険の主な給付には、次のようなものがあります。

給付の種類

給付される場合

療養費

就職直後で保険証がない等、やむを得ず全額自己負担で受診したときや、治療上の必要からコルセット等の治療用装具を装着したときなど

高額療養費

被保険者本人・被扶養者とも単独または、世帯合算で1ヵ月の窓口負担額が自己負担限度額を超えたとき

傷病手当金

被保険者が療養のために会社を休み、事業主から給料を受けられないとき

出産手当金

被保険者が出産のため会社を休み、事業主から給料を受けられないとき

出産育児一時金

被保険者(被扶養者)が出産したとき

埋葬料(費)

被保険者(被扶養者)が亡くなったとき

 

健康保険給付の申請期限>

健康保険給付を受ける権利は、受けることができるようになった日の翌日から2年で時効によって消滅します。

「翌日から」というのは、当日は24時間無いのが普通なのでカウントしないというルールによるものです(初日不算入)。〔民法140条〕

時効の期間を計算し始める第1日目(起算日)は以下のとおりです。

給付の種類

消滅時効の起算日

療養費

 療養に要した費用を支払った日の翌日

高額療養費

 診療月の翌月1日

(自己負担分を診療月の翌月以後に支払ったときは支払った日の翌日)

移送費

 移送に要した費用を支払った日の翌日

傷病手当金

 労務不能であった日ごとにその翌日

出産手当金

 出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日

出産育児一時金

 出産日の翌日

埋葬料(費)

 死亡した日の翌日

(ただし、埋葬費については埋葬を行った日の翌日)

 

<申請漏れをなくすために>

経営者や人事担当者が、保険給付の内容を良く知っておいて、何か給付の対象となる事実を把握したら、すみやかに対象者にご案内することが必要です。

これだけだと、給付対象となる事実を把握できないことによる申請漏れが発生します。

就業規則に規定しておくか、分かりやすいパンフレットを従業員に配布するなどして、申請漏れが発生しないようにしましょう。

会社も健康保険料を負担しているわけですから、申請しないのは勿体ないですし、会社に過失があれば、受けられたはずの給付額を賠償しなければなりません。

社内で対応できない場合には、社会保険労務士に委託することもできます。

 

2018.12.13.解決社労士

<会社が証明を必要とする場合>

雇用関係助成金の申請などのために、会社が特定の従業員の雇用契約について、期間の定めの無いものであることを証明する必要に迫られることがあります。

労働基準法により、従業員に対する労働条件の通知は会社に義務付けられていますから、これを怠っていたのなら、労働条件通知書や雇用契約書を作成することによって、証明書類とすることができます。

また、一定の範囲の従業員について労働条件が一律であれば、その共通部分について就業規則に規定しておくことにより、就業規則を証明書類とすることができます。

 

<退職したい従業員が証明を必要とする場合>

退職の申し出については、労働基準法ではなく民法の規定が適用されます。

 

【期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 

【やむを得ない事由による雇用の解除】

第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

つまり、期間の定めの無い雇用契約であれば、いつでも退職の申し出ができるのに対し、期間の定めがあると、「やむを得ない事由」が無ければ期間の終了前に退職の申し出ができません。

従業員が、自分自身の雇用契約について期限の有無がわからないというのは、労働条件通知書の交付を受けていないか紛失して忘れているかのどちらかでしょうから、使用者に確認するしかありません。

 

退職の申出は、従業員側から契約を解約する旨の意思表示であり、会社の承認までは必要ないのですが、退職には一定のルールがあり、就業規則などに従った手続をとる必要があります。

就業規則が無い場合には、上記の民法の規定に従うことになります。

 

もっとも、これらのことは、従業員が会社に対して一方的に退職の申出を押し通すような場面を想定しています。

現実には、お互いトラブルを避けるため、従業員から退職の申出があった場合には、会社側が従業員と話し合って退職の段取りを決めるのが一般的です。

これは、合意退職という形になりますから、民法の規定にこだわらず柔軟な対応を取ることが可能です。

この場合には、期間の定めの有無についての証明が要らないことになります。

 

<解雇を通告される従業員が証明を必要とする場合>

会社から解雇を通告された、あるいは、通告されそうだという場合に、期間の定めの無い雇用契約であることを証明できれば、解雇されにくくなるような気もします。

しかし、当初から契約終了日が決まっていて、契約の更新が無いことも明示されていたような場合を除けば、解雇は簡単に有効となるものではありません。

労働契約法には、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文を素直に読めば、解雇の通告さえすれば解雇が有効になるのが原則ということになります。例外として、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合に限り、雇い主側の権利の濫用となって解雇が無効になるものと読めます。

ところが、訴訟ともなると、労働基準法など労働関係の法令の趣旨に反して合理的ではないとか、裁判所の認定した世間の常識とは違うとか、様々な理由によって解雇の通告が無効とされることは多いのです。

ですから、期間の定めの無い雇用契約であることを証明できないと解雇が有効になってしまうというわけではないのです。

期間の定めの無い雇用契約であることの証明に力を注ぐのではなく、具体的な事実を整理して専門家に相談することをお勧めします。

 

2018.12.12.解決社労士

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから、欠勤控除は問題となりません。主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

<法律の規定>

労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供が無い場合には、使用者は賃金を支払う義務が無く、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

これは、労働契約が「働きますから賃金を支払ってください」「賃金を支払いますから働いてください」という労使の合意によって成立していることから当然に導かれます。

欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります。

 

<「時間給」の計算>

欠勤控除を考える場合、まず「時間給」を計算します。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけて、1か月の所定労働時間を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が、「時間給」となります。

所定労働日数や所定労働時間が決まっていなければ、こうした計算はできないことになります。

しかし、労働条件を書面で通知することは使用者の義務ですから、決まっていないということは想定外になります。

 

<減額方式>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じます。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から天引きしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

 

<加算方式>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の勤務シフト上の労働日数が所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。減額方式よりも明らかに不利になります。

 

<併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって欠点を解消することができます。

 

2018.12.11.解決社労士

<出勤簿の重要性>

会計検査院がハローワークを通じて会社の調査に入る場合には、この出勤簿の提出を求めてきます。

それだけ出勤簿は重要視されているということです。

 

<出勤簿の体裁>

たしかに出勤簿を使用している会社も数多くあります。

その内容は、出勤日、公休日、休暇、欠勤など1日単位で区分して記入し、1か月単位で集計したものがほとんどです。

これは、給与計算や年次有給休暇管理の補助簿として用いられています。

ところがハローワークに持参すると「これは出勤簿ではない」と言われてしまいます。

 

<法定帳簿としての出勤簿>

ハローワークの想定する出勤簿は、出勤日の始業時刻と終業時刻が明示されていて、1か月の勤務時間が集計されたものです。

パソコンやタイムカードなどで勤務時間を管理している会社であれば、それが出勤簿の代わりになりますから、別に作る必要はありません。

出勤簿を本当に必要とするのは、出勤簿によって勤怠管理をしている一部の会社だけということになります。

 

2018.12.10.解決社労士

<衛生委員会の設置義務>

事業者は業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生委員会を設置する義務を負っています。

これを規定するのが、労働安全衛生法の次の条文です。

 

【衛生委員会】

第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。

二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。

三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。

四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

 

事業場ごとですから、会社全体ではなく事務所や店舗ごとに設置します。

労働者が50人を上回ったり下回ったりの場合には、給与計算の締日ごとに集計して、過去1年間の7か月以上で50人以上なら「常時50人以上」と考えるのが行政解釈です。

 

<委員会のメンバー>

その事業場の責任者、衛生管理者、産業医、その事業場の労働者で労働衛生に関する経験を有する者で構成されます。

衛生管理者は試験に合格しなければなれませんし、産業医は医師に限定されますので、事業場の労働者数が50人に近づいたら、前もって準備しておくことが必要です。

 

<衛生委員会の役割>

毎月1回以上委員会を開催して、労働者の健康障害防止対策、労働者の健康保持増進対策、労働災害の原因と再発防止などについて、労働衛生の面から調査・審議し、重要なものについては議事録を作成して、その内容を社内に周知します。委員会の内容で「重要なもの」だけ議事録に残せば良いのですが、定期健康診断の結果についての話し合いは、これに含まれるというのが行政解釈です。

議事録は3年間の保管義務があります。ここは労働基準監督署のチェックポイントになりますから重要です。

せっかく毎月衛生委員会を開催していても、議事録を作成して保管しておかなければ、労働基準監督署には伝わりません。

形式を整えておくことも大事ですから、忘れないようにしましょう。

 

2018.12.09.解決社労士

<保険料控除の趣旨>

保険料控除は、所得控除の1つです。

支払った保険料に応じて、一定の金額が保険料負担者のその年の所得から差し引かれる制度です。

税率を掛ける前の所得が低くなることにより所得税、住民税の負担が軽減されます。

私たちに何か事故があって、本来であれば国が救済にあたるべき場合でも、私たちが自主的に保険に入っていれば、万一のときに国の負担が軽減されるため、その分、税金を優遇しようという趣旨です。

 

<会社での手続き>

従業員が控除対象となる生命保険、地震保険、社会保険に加入している場合、会社に「給与所得者の保険料控除申告書」を提出してその内容を伝えます。

平成29年度分まで使われた「保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」が、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」に分割されました。

生命保険料控除の欄には、一般の生命保険料の他、介護医療保険料や個人年金保険料が含まれます。

地震保険料控除には、旧長期損害保険料控除に関する経過措置を含みます。

社会保険料は、主に扶養家族の国民年金保険料と国民健康保険料です。

保険料控除には、原則として控除証明書の添付が必要です。

たとえば、生命保険料控除証明書は10月中旬から11月頃にかけて、保険会社から従業員の自宅に送られてきます。あらかじめ従業員に告知しておくことも必要でしょう。

 

2018.12.08.解決社労士

<自転車通勤>

就業規則で自転車通勤を認めている会社は多いですし、自転車通勤に対して通勤手当を支給している会社もあります。さらに、就業規則に規定は無いものの、自転車通勤を黙認している会社もあります。

特に都市部では、満員電車を避け運動不足の解消にもなるので、自転車通勤は増加傾向にあるようです。

 

<従業員がケガをした場合>

従業員が自転車通勤中にケガをした場合には、ほとんどのケースで通勤災害として労災保険が適用されます。

この場合には、会社の人事担当者や顧問の社会保険労務士が手続きをすることになります。

単独事故ではなく相手がいる場合、第三者行為災害となります。すると、通常の労災保険の手続きで作成する書類の他に、何種類か別の書類を作成する必要があります。ケガをした本人から話を聞きながら書く部分が多く、事故の発生状況を示す図も添付します。

相手が自動車やバイクであれば、警察に報告して「交通事故証明書」の交付も受けておかなければなりません。

慣れていないと、全部で5~8時間かかるでしょう。

 

<従業員が加害者になった場合>

さらに大変なのは、従業員が加害者になってしまった場合です。

会社は事故の発生には関与していません。しかし、民法715条の使用者責任が認められた場合には、事故を起こした従業員が負う損害賠償債務を会社が負担しなければなりません。

民法715条は、使用者が従業員を使用して利益を上げている以上、その使用によって生じたリスクも負担しなければならないという報償責任や、従業員を雇えば一定のリスクが発生することは覚悟しておいて対策をとっておかなければならないという危険責任等の趣旨に基づいています。

自転車通勤を認めている会社も黙認している会社も、こうした法的責任を問われることがあるので、従業員に対する安全教育は不可欠です。

最近になって、道路交通法が改正され、自転車利用のルールも厳しくなっていますので、ほんの一部を以下にご紹介します。

 

<逆走の禁止>

自転車は、道路(車道)の中央から左側部分の左端に寄って通行しなければなりません。〔道路交通法17条〕

当たり前のように歩道を走行する自転車も多いのですが、自転車は車両の一種ですから、歩道と車道の区別がある道路では、車道を通行するのが原則です。〔道路交通法17条〕

車道の右側を走行している自転車が、多数の自動車からクラクションを鳴らされても、自分に対するものだとは気づかないことも多いようです。

 

<歩行者の優先>

自転車が例外的に歩道を走行できる場合については、道路交通法で次のように規定されています。

 

【普通自転車の歩道通行】

第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。

二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。

三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき

2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

(罰則 第二項については第百二十一条第一項第五号)

 

ここの罰則は、自転車が徐行しない場合や、歩行者の通行を妨げないようにする一時停止を怠った場合に適用されます。2万円以下の罰金または科料です。

 

ベルを鳴らして歩行者にどいてもらうというのも法律違反です。自転車は一種の車両ですから、歩行者を優先しなければなりません。

自転車に乗った高齢者から歩道で後ろからベルを鳴らされて、やれやれと思うこともあります。しかも歩行者である私を追い抜けません。少し気の毒な気がします。

 

2018.12.07.解決社労士

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<意見書の内容>

所轄の労働基準監督署長に就業規則の変更届を提出するには、上記5.の意見書を添付しなければなりません。これが無いと、受け付けてもらえません。

ところが、「この変更は納得できません。私たちにとって不利になる変更です」「この変更は、労働基準法違反です」などの意見が書かれていても、問題なく受け付けてもらえます。

提出したときに押されるゴム印には、「受付」の文字があります。「承認」「確認」ではなくて「受付」です。

これは、内容の審査までは行わず、形式を満たしているので受け付けましたということです。

つまり、意見書に労働者の切実な訴えが書かれていたとしても、これは全く考慮されないのです。

 

<従業員に不利な変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

<法令違反の変更>

労働契約法13条の定めにより、法令で定める基準に達しない労働条件を定める就業規則は、その部分については無効となります。

不思議ですが、法令違反の就業規則でも、労働基準監督署に持って行けば受け付けてもらえます。

労働基準監督署にしてみれば、たとえ法令違反の規定が含まれていたとしても、そこは無効になって法令の内容に修正されるわけですから、安心して受け付けることができるわけです。

こうして、実際に所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)や訴訟などがなければ、就業規則の法令違反は指摘されないのが実情です。

 

<結論として>

このように、会社に都合よく就業規則を変更することは、かなり自由にできてしまうことは事実です。

明らかに不合理な不利益変更であるとか、法令違反であるとか、確信が持てる場合であれば、従業員や退職者から訴訟が提起されることもあるでしょう。

しかし、確信が持てない場合には、信頼できる社会保険労務士に相談してみることも考えましょう。

ちなみに、「就業規則を見せてもらえない」ということであれば、その就業規則は無効です。

この場合には、すべて法令通りということになりますし、法令に規定の無いことは何もルールが無いということになります。

 

2018.12.06.解決社労士

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

 

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<姑息(こそく)な手段>

従業員に年次有給休暇を取得させていなかった企業は対応に困ります。

これまで、お盆休みや年末年始休みとしていた日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇を取得させようかなどと考えます。

元々の休みである「休日」に「休暇」を取らせることはできないので、こんなことを思いつくわけです。

これは、対象となる従業員の合意があれば、合意した従業員についてのみ可能です。

また、就業規則がある企業なら、一定の条件の下、就業規則の変更により可能です。

ただし、「本心による合意ではなかった」「不合理な変更だった」などと民事訴訟を提起される恐れはあります。

こうしたことは、後掲の労働契約法8条から10条に定められています。

 

<働き方改革の趣旨>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「従業員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。

働き方改革の手段は、従業員の満足度を高めるものであることが必要です。

 

<趣旨に反する対応の結果>

「来年度から、各企業には年次有給休暇を取得させる義務が課される」

このことは、ニュースや口コミで多くの従業員が知っています。

この期待に反して、元々の休日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇をあてるような対応をすれば、従業員は「うちの会社らしい対応だ」「あの社長ならやると思った」など不満たらたらです。

労働意欲や会社への帰属意識は低下し、労働生産性が下がることは目に見えています。

これは、働き方改革の目的に反する結果が生じることになるわけです。

やはり真面目に働き方改革に取り組むべきでしょう。

 

【参考】労働契約法

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

2018.12.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<ブラックとは何か>

ブラックとは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義できるでしょう。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック求人の実態>

労働条件が実態と異なる求人広告を「ブラック求人」といいます。

働き手を募る広告は、募集企業と求職者との社会関係の中で、その内容が正しく実態を示していることが道義的に求められています。

ところが、ハローワークの求人票を含め、このブラック求人についての苦情や相談は一向に減少しません。

それどころか、ブラック求人を出している企業の間では、ブラック求人を採用のための必要なテクニックであるという、誤った共通認識が生じています。

 

<ブラック求人への制裁>

実は、求人広告にウソを書いて出しても、これといって制裁が無いのです。

厚生労働省としても、監視や取締りの強化、ペナルティを設けるなどの有効な対策をとることができていません。

ハローワークの求人票ですら、民間の求人広告会社と同じく、利用者からクレームがあれば、掲載の依頼をした企業に釘を刺すだけです。ですから、「ハローワークの出している求人だから」「○○新聞に載っている求人だから」ということで、そのまま信頼してはダメです。

たとえブラック求人であったとしても、労働契約の際に、正しい労働条件を示していればそれで良しというのが、当局の公式見解のようです。

ただ最近になって、悪質なものはハローワークが求人票を出さない仕組みになっています。

 

<ブラック求人を信じて採用された場合>

採用にあたって示された労働条件が実際と違っていたらいつでも退職できる、そして、働くために引っ越した労働者は14日以内に帰郷する場合、その旅費を使用者に請求できるという規定があります。〔労働基準法15条〕

ですから、採用にあたって示された労働条件と、実際に働き始めてから判明した労働条件が違えば、退職を申し出る権利が労働者には保障されています。

ところが、求人広告と採用にあたって示された条件が違うことや、求人広告と実際に働き始めてから判明した労働条件が違うことは、労働基準法も想定していません。

結局こうした場合には、労働契約が有効ということになってしまいます。

 

<身を守るには>

仕事を探している皆さんは、なかなか仕事が見つからないと、条件を落としてでも就職しようとします。

ですから、良い条件の求人広告を見れば「ここに入社したい」と思います。

それでも、求人広告はあくまでも「広告」なのだということを忘れずに、実際の労働条件は採用面接のときに確認しましょう。

そして、「広告」と違っていたら、採用を辞退しましょう。

「なんか求人広告と違う気がするけど、まぁいいか」と妥協するのは、自己責任ということになります。

 

<もし採用されてしまったら>

ブラック求人を出すような企業は、他にもいろいろとブラックな面を持ち合わせていることが多いものです。

そういう企業で無理に働くようなことはせず、なるべく早く労働法に明るい弁護士や特定社会保険労務士にご相談いただくのが得策だと思います。

社内だけに目を向けて、「みんな頑張っているのに私が辞めてしまったら」とは考えずに、視野を広げて考えていただきたいです。

 

2018.12.04.解決社労士

<契約書には似た規定が>

契約書の最後の方に「本契約書に定めのない事項、または本契約の履行にあたり疑義を生じた事項は、甲乙協議の上円満に解決をはかるものとする」という規定を見ることが多いですね。

しかし、契約書というのは、当事者間に紛争が発生した時にこそ、その解決の拠り所とするために作成されるものです。

なんでも話し合って円満に事が進むのならば、その当事者間に契約書は要りません。

それなのに、何か疑問に思うことがあれば話し合って解決しましょうという条文は矛盾しています。

 

<就業規則では>

就業規則の最初の方に「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」という規定を見ることも多いです。

なるほど、こうすれば法改正があっても、就業規則を変更する必要が無くて便利なようにも見えます。

しかし、こうしておけば不都合が無いといえるのでしょうか?

 

<たとえば労働基準法で>

労働基準法第7条の公民権行使の保障について、たとえば投票に行っている時間の賃金が支払われるか否かは、通達により労使の取り決めによるとされています。

ということは、賃金の支払いについて決めておかないとトラブルになるでしょう。

これは労働基準法第68条の生理休暇も同様です。休んだ日の賃金が支払われるのか支払われないのかは大問題です。

労働基準法第41条は、「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。さて、適用されない人の休憩や休日はどうなるのでしょうか。ご本人が自由に決めるのでしょうか。取締役に近い従業員についての話ですから事は重大です。

 

<他の労働法でも>

高年齢者雇用安定法が改正されたとき、会社は定年を引き上げるか、定年をなくすか、あるいは継続雇用制度を導入するかの選択を迫られました。

これと同様に、育児・介護休業法には、会社の義務として、どちらか/どれか選んで措置を実施するという規定がいくつかあります。

こうした場合には「法令の定めるところによる」と言ってみても、何も決まっていないことになります。

会社がどうすべきかについて、選択肢を与えられる条文というのは、最近になってから出現しています。

昔は「法令の定めるところによる」としておけば問題なかったのですが、最近の法令では「会社が従業員と話し合って選んでください」という内容が出てきましたので、対応しきれなくなっているというわけです。

 

<そもそも法令に規定が無い場合>

懲戒処分ができる場合とは、どのような場合なのか、法令には規定がありません。反対に、懲戒処分の限度や無効となる場合については、労働基準法や労働契約法に規定があります。ということは、就業規則に具体的な規定を置かなければ、懲戒処分が適正にできないことになります。

特に男女雇用機会均等法は、セクハラの禁止とセクハラ行為者に対する懲戒処分などの規定を企業に義務づけていますが、その具体的な内容は各企業の実情に応じて定めることになっています。セクハラの定義は法令にありませんから、「法令の定めるところによる」という規定ではセクハラが野放しになってしまいます。各企業ごとにきちんと定義を規定しなければなりません。

またたとえば、「正社員」ということばに、法令上の定義はありません。社内に正社員と正社員以外の従業員がいて、異なる処遇をしているのなら、それぞれの定義づけが必要です。もし「無期労働契約の従業員が正社員である」としていたら、労働契約法18条による有期労働契約の無期化により、正社員が増産されることになります。

 

<不都合を避けるためには>

何もせず放置したことによって「何もしていないのに」退職者から訴えられたり、労働基準監督署から是正を求められたりというのは、珍しいことではありません。

それぞれの会社にとって、必要不可欠な内容が、その会社の就業規則にきちんと規定されているか、法改正によって変えるべきところは変わっているか、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士のチェックが必要でしょう。

そして、会社の状況の変化や法改正のことも考えると、定期的なチェックが必要ということになります。

 

2018.12.03.解決社労士

平成30(2018)年11月27日に開催された、労働政策審議会の職業安定分科会 雇用・環境均等分科会 同一労働同一賃金部会で、厚生労働省が諮問した働き方改革関連法の同一労働同一賃金に関する省令案要綱・指針案が了承されました。

 

<働き方改革推進法に伴う厚生労働省令案>

【短時間・有期雇用労働法施行規則】

 〇 短時間・有期雇用労働者の雇い入れ時に事業主が行う労働条件明示の方法 等

 

【労働者派遣法施行規則】

 〇 協定締結に関し、過半数代表者の選出方法、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額、周知方法、行政への報告

 〇 派遣先から派遣元への待遇情報の提供に関し、比較対象労働者の選定、提供すべき情報の内容

 〇 派遣労働者の雇い入れ時・派遣時に、派遣元事業主が説明する事項やその説明の方法 等

 

これらについては、具体的な方法が不明確であったことから、省令で具体的な内容を示すことになっていたものです。

働き方改革の影響もあり、法改正のスピードが速く、また多岐にわたっています。こうした状態に、中小企業がそろって対応できるとは思えません。

行政からの広報を強化するだけでなく、行政協力という形で社会保険労務士が精力的に動く必要があるでしょう。

 

<短時間・有期雇用労働指針>

事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針の一部を改正する件案が了承されています。

 

【短時間・有期雇用労働指針】

〇 通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由の説明に関し、事業主が説明すべき内容や説明の方法 等

 

こちらは、上記の【短時間・有期雇用労働法施行規則】とは異なり、雇い入れ時だけでなく、すでに働いている短時間労働者と有期雇用労働者に対しても、事業者が負う説明義務についてのものです。

 

<派遣元指針・派遣先指針>

派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件案(派遣元指針)と派遣先が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件案(派遣先指針)も了承されました。

 

【派遣元指針】

〇 比較対象労働者との待遇の相違の内容及び理由等に関し、派遣元事業主が説明すべき内容や説明の方法 等

 

【派遣先指針】

〇 派遣料金の額に関する配慮は、労働者派遣契約の締結又は更新がなされた後にも求められること 等

 

労働者派遣法違反の告発が、しばしば報道発表資料として公表されています。

最近では、平成30年11月29日に千葉労働局が行っています。

 

【労働者派遣法違反「無許可派遣」の疑いで刑事告発】

 千葉労働局(局長 高橋秀誠)は、平成30年7月20日に、下記の者を労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)違反の疑いで、刑事訴訟法第239条第2項の規定に基づき、千葉県行徳警察署に告発していたところ、本日、被告発人が逮捕されたことを受け、これを公表する。(以下省略)

 

これは、労働者派遣法による厚生労働大臣の許可を受けずに、自己の雇用する労働者を他社に派遣し、その指揮命令の下で労働に従事させる「労働者派遣事業」を行った疑いで逮捕されたケースが、企業名の公表とともに行われているものです。

派遣社員を利用する場合には、派遣会社がルールを守っている企業であることを確認するだけでなく、利用する企業も厳格なルールを守ることが求められています。

守るべきルールは、年々高度化していることを忘れないようにしましょう。

 

<同一労働同一賃金ガイドライン>

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針案です。

 

【同一労働同一賃金ガイドライン】

〇 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間に待遇の相違が存在する場合に、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものか否か等の原則となる考え方及び具体例を待遇ごとに示すもの。下記の内容も規定。

 ・不合理な待遇の相違の解消等を行うに当たって、基本的に、労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げることは望ましい対応とはいえないこと 等

 

すでに「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」というものが策定されていました。

その後の最高裁判所の判決や法改正などを踏まえて、「(案)」の取れた確定版が出来ることになります。

これは、各企業が自社の就業規則や給与規程、給与や賞与支給の実態を見直すのに重要な資料となるもので、決して無視できないものとなるでしょう。

 

2018.12.02.解決社労士

<毎月勤労統計調査>

平成30(2018)年11月22日、厚生労働省が「毎月勤労統計調査」の平成30年9月分結果確報を公表しました。

 

【前年同月との比較】

・現金給与総額は、一般労働者が346,970円(1.2%増)、パートタイム労働者が97,339円(0.6%増)、パートタイム労働者比率が30.98%(0.20ポイント上昇)、就業形態計では269,656円(0.8%増)となった。なお、一般労働者の所定内給与は311,152円(1.0%増)、パートタイム労働者の時間当たり給与は1,141円(2.5%増)となった。

・就業形態計の所定外労働時間は10.5時間(3.6%減)となった。

 

つまり、現金給与総額は増加傾向にあり、所定外労働時間は減少しています。

明らかに時間単価が上昇しています。

 

<賃金引上げの実態調査>

平成30(2018)年11月27日、厚生労働省が「平成30 年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」をとりまとめ公表しました。

これによると、定期昇給やベアによる1人平均の賃上げ額は月額5,675円で、比較可能な1999年以降で過去最高を2年連続で更新しました。賃上げ率は2.0%と前年比横ばいでした。

 

【ポイント】

1 賃金の改定・平成30年中に「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業割合は89.7%(前年87.8%)で、前年より上昇した。

・平成30 年の1人平均賃金の改定額(予定を含む。)は5,675円(前年5,627 円)で、前年より増加、改定率は2.0%(同2.0%)で、前年と同水準となった。

 

2 定期昇給等の実施

・平成30年中の賃金改定が未定以外の企業(賃金の改定を実施しまたは予定している企業および賃金の改定を実施しない企業)のうち、定期昇給を「行った・行う」企業割合は、管理職69.7%(前年69.0%)、一般職80.1%(同 77.5%)で、管理職、一般職ともに前年より上昇した。

・定期昇給制度がある企業のうち、平成30年中にベースアップを「行った・行う」企業割合は、管理職24.2%(前年22.9%)、一般職29.8%(同 26.8%)で、管理職、一般職ともに前年より上昇した。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料、そして現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

ここで、労働生産性を高めるために人件費を削減、あるいは従業員の手取り額を減らすことは、明らかに社員満足度を低下させますから、働き方改革にはなりません。

 

テレビで新橋のサラリーマンがインタビューに答えているのを観ていると、「働き方改革のせいで残業代が減り手取りが減った」「働き方改革のせいで妻の勤務時間が減り収入が減った」という声が多数聞かれます。

しかし、統計調査を見る限り、残業は減って給与は増えたということになっています。

これは飽くまでも平均値です。

中には働き方改革にかこつけて、賃金を削っている企業もあるのでしょう。

こうした間違った「働き方改革」を行っている企業には人が集まりません。むしろ、離れていく人が増えてしまいます。

 

働き方改革への向き合い方で、企業が淘汰される時代に入るのでしょう。

 

2018.12.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

<権利の濫用>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。

 

【勤労条件の基準】

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

そして憲法自身が、権利を濫用してはならないと定めています。

 

【権利濫用の禁止】

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とは言えない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とはいえないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定の用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

 

2018.11.30.解決社労士

<子の看護休暇>

子の看護休暇とは、けがや病気の子の世話などを行う労働者に対し与えられる休暇です。

年次有給休暇と同じく法定の休暇ですから、会社には労働者に与える義務があります。

これは、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律に規定されています。

 

【子の看護休暇の申出】

第十六条の二 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇(以下「子の看護休暇」という。)を取得することができる。

2 子の看護休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる。

3 第一項の規定による申出は、厚生労働省令で定めるところにより、子の看護休暇を取得する日(前項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得するときは子の看護休暇の開始及び終了の日時)を明らかにして、しなければならない。

4 第一項の年度は、事業主が別段の定めをする場合を除き、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

 

子の看護休暇の申し出があったなら、会社はきちんと対応しなければなりません。

 

【子の看護休暇の申出があった場合における事業主の義務等】

第十六条の三 事業主は、労働者からの前条第一項の規定による申出があったときは、当該申出を拒むことができない。

 

ただし、有給の休暇とする義務は無く、無給でもかまいません。

しかし、取得したことを理由とする不利益取り扱いは禁止されています。

ですから、休みが多いことを理由に、解雇したり評価を下げたりすることは禁止されています。

典型的なパターンとしては、入社したばかりのパート社員が、お子さんの健康状態を理由に何回も休んだので解雇を通告するというケースです。

 

<法の趣旨>

子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として子の看護休暇が位置づけられています。

また、「疾病の予防を図るために必要な世話」も休暇の対象となります。これは、子に予防接種または健康診断を受けさせることをいい、予防接種には、予防接種法に定める定期の予防接種以外のもの(インフルエンザ予防接種など)も含まれます。

 

<対象者と日数>

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度につき5日を限度として、子の看護休暇を取得することができます。

ただし、対象となる子が2人以上の場合は10日を限度とします。

ここで「年度」とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります。

ただし、日々雇い入れられる者は除かれます。また労使協定によって、勤続6か月未満の労働者や1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外とすることができます。

 

<口頭の申し出による取得>

就業規則などで、具体的な運用ルールを定める場合に、子の看護休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話など口頭の申し出でも取得を認め、書面の提出などを求める場合には事後となっても差し支えないこととすることが必要です。

 

<申し出にあたって必要な情報>

労働者からの「子の看護休暇」の申し出は、次の事項を事業主に明らかにすることによって行わなければなりません。

・労働者の氏名

・子の氏名および生年月日

・看護休暇を取得する年月日

・子が負傷し、あるいは病気にかかっている事実、または病気の予防を図るために必要な世話を行う旨

 

<事業主からの証明書類の請求>

事業主は、労働者に対して子が負傷し、あるいは病気にかかっている事実、または病気の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。〔育児・介護休業法施行規則30条2項〕

ただし、証明書類の提出を求める場合には、事後の提出を可能とするなどの配慮が必要とされています。

また、風邪による発熱など短期間で治る病気であっても、労働者が必要と考える場合には申し出ができます。

こうした場合には、必ずしも医師の診断書などが得られないときもありますので、購入した薬の領収書により確認するなど、柔軟な取扱いをすることが求められます。〔事業主が講ずべき措置に関する指針〕

 

2018.11.29.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

3つのうちのどれにあたるかによって、就業規則変更の可能性と必要性は異なります。

 

<職場のルール>

明らかに不合理とならない限り、会社の実情に合わせて自由に変えられるのが原則です。

たとえば、「従業員は、従業員同志およびお客様・お取引先に対して明るく元気に挨拶すること」という規定を新たに就業規則に定めるような場合です。

そして変更の必要性については、会社の判断に委ねられています。

ここは、会社の創業の精神や経営理念を反映した内容が十分に盛り込まれるところです。

 

<労働契約の共通部分>

労働者に不利な変更は「不利益変更」となり厳格な要件のもとで許されます。

しかし、不利とならない変更や有利となる変更は原則として自由です。

たとえば、深夜労働の賃金の割増率を25%から30%に引き上げるような変更です。

これも、変更の必要性は会社の判断に委ねられます。

人手不足や働き方改革で、従業員の処遇改善が必要になっており、各社とも対応が迫られている部分です。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

労働基準法などの労働法に改正があれば、少なくとも会社に影響のある範囲内で、就業規則を変更しなければなりません。

そして就業規則の変更は、労働基準監督署への届け出が義務付けられていますから、法改正の情報が出たら早めの対応が必要となります。

ここの部分を変更していなくても、法律の規定が優先されますので、就業規則に古い部分が残っていれば、ただみっともないだけの物になってしまいます。

 

2018.11.28.解決社労士

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<職場のルール>

「就業規則」という名前の通り、働くにあたって労働者が職場で守るべきルールです。

 学校の校則は、学校で生徒が守るべきルールをまとめたものですが、これの会社版です。

ですから、会社ごとに会社の実情に合わせた内容となっています。

 

<労働契約の共通部分>

同じ会社の中でも、勤務地、業務内容、給与・時給などは、労働者ごとにバラバラです。

しかし、会社ごとに見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。

たとえば、出張したときの旅費や手当ての定めは、これに当たります。

「正社員」というのは、法律用語ではありません。

ですから、「正社員」の定義も会社ごとに就業規則の中で定めておく必要があります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

 

2018.11.27.解決社労士

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

(特例対象事業場では、1週44時間が基準となります)

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

 <割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25% + 25% = 50% 以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35% + 25% = 60% 以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

この割増賃金ですが、働き方改革の推進により残業手当が減ってしまう不都合を緩和するために、割増率を法定の率よりも高く設定する動きが見られます。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば 30% + 25% = 55% 以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50% + 25% = 75% 以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

 

働き方改革関連法により、中小企業でも2023年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

 

2018.11.26.解決社労士

<特別条項付き三六協定>

原則として、三六協定の範囲内で時間外労働や休日出勤が許されるわけですが、どうしても臨時的に「限度時間」を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、「特別条項付き三六協定」を結ぶことにより、「限度時間」を超える時間を延長時間とすることができます。

ここで「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

 

<特別条項に定める内容>

「特別条項付き三六協定」では、次の項目について定める必要があります。

・原則としての延長時間(限度時間以内の時間)

・限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない具体的な「特別の事情」

・一定期間途中で「特別の事情」が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続

・限度時間を超える一定の時間

・限度時間を超えることができる回数

 

<特別条項を定めるときの注意点>

「特別の事情」はできるだけ具体的に定めます。また、臨時的なものに限られ、一時的または突発的であること、全体として1年の半分を超えないことが見込まれることが必要です。

さらに、長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者が申し出た場合には、医師の面接指導を受けさせる義務が会社に発生します。〔労働安全衛生法66条の8、66条の9、104条〕

特別条項付き三六協定によっても、1か月の延長時間は80時間までと考えるのが、現在でも常識的な上限となっています。

働き方改革関連法により、このことが罰則付きで法定されましたので、特に注意が必要です。

 

2018.11.25.解決社労士

<労働政策審議会>

平成30(2018)年11月19日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会(旧雇用均等分科会)で、女性の活躍の推進のための対策及びパワーハラスメント防止対策等についての審議が行われ、配布資料も公開されています。

労働政策審議会は、労働政策について審議を行う委員会です。厚生労働省に置かれている審議会のひとつで、厚生労働大臣の諮問機関ですから、ここでの審議が労働関係法令の改正案に反映されます。労働政策審議会に関する情報を把握することにより、今後の政府の動きや企業の取り組むべき課題を先取りすることができます。

 

<セクハラ防止対策の実効性向上>

これについては、4項目に分けて総論が述べられています。枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【セクハラ対策の必要性】

セクシュアルハラスメントは許されない行為であり、あってはならないもの。セクシュアルハラスメントを受けた労働者が相談を行い易くするとともに、二次被害を防止するため、労働者がセクシュアルハラスメントに関する相談を行ったことを理由として不利益取扱いが行われないよう徹底することが必要。

 

セクシュアルハラスメントは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

ましてや、セクハラ被害者が会社の窓口に相談したところ、情報が社内に漏れてしまい、被害が拡大するという二次被害の発生は確実に防止しなければなりません。二次被害が一度でも発生すれば、怖くて会社の窓口に相談できなくなりますから、セクハラ被害が更に拡大する恐れが生じてしまいます。できれば、社会保険労務士のような社外の専門家を相談窓口にすることをお勧めします。

 

【社外からのセクハラ、社外へのセクハラ】

社外の労働者からセクシュアルハラスメントを受けた場合や、社外の者に対してセクシュアルハラスメントを行った場合の対応をより一層明確化し、取組を徹底することが必要。

 

多くのセクハラ対策は、被害者と加害者の両方が社員の場合を想定しています。

実際、多くのハラスメントは社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

 

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

社員が被害者となった場合には、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

 

反対に、社員からお取引先に対するセクハラの疑いが生じたら速やかに事実を確認し、真実であったなら、社長自らお取引先に出向いてハラスメントの事実について報告とお詫びをする必要があります。

 

加害者・被害者が社内に留まらなくても、客観的に見れば人権侵害(嫌がらせ)であることに変わりはありません。

多くの場合、慰謝料を含めた損害賠償請求の対象となりますし、内容によっては犯罪となり刑法で罰せられることもあります。

ですから、これを防止すべきこと、万一発生したら善処すべきことに差異はありません。

 

取引先との間で発生するセクハラを定義すると、次のようになるでしょう。

「性的言動により、取引先の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなこと」

念のため、就業規則に規定しておきたいところです。

また、社員を守るため、取引先からのセクハラが疑われる事実があれば、上司や社内の相談窓口に報告する義務も規定すべきです。

どちらも、社員と会社を守るための規定ですから、ぜひ就業規則に加えておくことをお勧めします。

 

【企業の取組】

セクシュアルハラスメント防止対策の実効性向上に加え、男女雇用機会均等法に沿った雇用管理の実現やポジティブ・アクションの推進に向けて、企業の実効性ある取組を促すことが必要。

 

今後、労働政策審議会では、各企業での男女雇用機会均等法に沿った雇用管理の実現やポジティブ・アクションの推進に関する実効性ある取組を促すため、社内でその業務を担当する労働者(男女雇用機会均等推進者)について、選任するよう努めることを法律に規定してはどうか、その推進者の役割に、女性活躍推進法に基づく行動計画策定や情報公表の取組の推進も加えてはどうかということが議論される予定です。

 

ポジティブ・アクション (positive action)は、肯定的差別(positive discrimination)と肯定的措置(affirmative action)を組み合わせた和製英語です。

このうち肯定的措置(affirmative action)というのは、弱者集団の不利な現状を把握し、歴史的経緯や社会環境を踏まえて是正するという改善措置を指します。

弱者集団については、民族、人種、出身などによる差別が問題となるのですが、日本では特に女性差別が問題とされ、厚生労働省が中心となって女性の活躍や男女格差解消を推進しています。

具体的な肯定的措置としては、就職や昇進での特別な採用枠の設置や試験点数の割り増しなどの直接的な優遇措置があります。

 

【法律による対応】

セクシュアルハラスメントは許されない行為であるという趣旨を明確にする観点から、法律でセクシュアルハラスメントを禁止すべきという意見がある一方、そうした規定を設けることについては、民法等他の法令との関係の整理や違法となる行為の要件の明確化等の課題があることから中長期的に検討することが必要との意見がある中で、どのように考えるか。

 

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

しかしセクハラは、業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)が単独で行われるケースが多く、行為者が会社の意向を受けて行うこともありません。

会社にとって有益な部分は無いのですから、セクハラは徹底的に排除すべきです。むしろ、セクハラの徹底排除が会社にとって有益です。

 

セクハラ行為は、刑法上の犯罪であって刑事事件とされたり、民法上の不法行為であって損害賠償の請求対象となったりします。

また、セクハラに耐えられず退職の申し出をした場合には、民事上その意思表示の有効性が問題となります。

ですから、刑法にセクハラ罪というものを新設したり、民法にセクハラ関係の規定を加えたりしなくても、現状の法令で十分対応できるのです。

ただ、こうしたことを分かりやすくするのが難しいのです。

今のところは、専門家に具体的な事情を明らかにして相談するのが現実的な対応だと思われます。

 

2018.11.24.解決社労士

<労働政策審議会>

平成30(2018)年11月19日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会(旧雇用均等分科会)で、女性の活躍の推進のための対策及びパワーハラスメント防止対策等についての審議が行われ、配布資料も公開されています。

労働政策審議会は、労働政策について審議を行う委員会です。厚生労働省に置かれている審議会のひとつで、厚生労働大臣の諮問機関ですから、ここでの審議が労働関係法令の改正案に反映されます。労働政策審議会に関する情報を把握することにより、今後の政府の動きや企業の取り組むべき課題を先取りすることができます。

 

<パワハラ防止対策の強化>

これについては、4項目に分けて総論が述べられています。枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【パワハラ対策の必要性】

パワーハラスメントは相手の尊厳や人格を傷つける許されない行為であり、あってはならないもの。企業にとっても経営上の損失に繋がる。都道府県労働局における職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数や、嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数が増加傾向となっている。職場のパワーハラスメント防止は喫緊の課題であり、現在、法的規制がない中で、対策を抜本的に強化することが社会的に求められている。

 

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など「職場内での優位性」を背景に、「業務の適正な範囲」を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または、職場環境を悪化させる行為をいいます。これが厚生労働省による説明です。

これによると、「精神的・身体的苦痛を与えこと」あるいは「職場環境を悪化させる行為」という実害の発生が、パワハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはパワハラを未然に防止したいところです。

ですから、就業規則にパワハラの定義を定めるときは、「精神的・身体的苦痛を与えうる言動」「職場環境を悪化させうる言動」という表現が良いでしょう。

 

【企業の講ずべき措置】

職場のパワーハラスメントの防止のためには、企業の現場において確実に予防・解決に向けた措置を講じることが必要。その際、現場の労使が対応しやすくなるよう、職場のパワーハラスメントの定義や考え方、企業が講ずべき措置の具体的内容を明確化していくことが必要。

 

就業規則の中に、パワハラの分かりやすい定義があって、全従業員が理解しているという前提が無ければ、その職場には確実にパワハラが存在することでしょう。なぜなら、パワハラ行為に対して、自信をもって注意できる人がいないからです。

また、パワハラを行った人に対する懲戒の規定が無ければ、注意されてもやめないのは仕方のないことです。問題社員にとって居心地の悪い会社にしなければ、パワハラをするような問題社員は増えていってしまいます。

さらに、パワハラを受けたと思っている従業員の相談窓口が無ければ、いよいよ耐えられなくなった従業員は退職を申し出て、パワハラ行為者と会社を訴えることもあります。ここまでくると、被害者は転職することも困難かもしれません。その場合には、会社が一生面倒を見ることになるのでしょうか。できれば、社会保険労務士のような社外の専門家を相談窓口にすることをお勧めします。

 

【中小企業の特性】

中小企業については、パワーハラスメントの防止に関するノウハウや専門知識が乏しいこと等から、その負担軽減に十分配慮し、支援を強化することが必要。

 

中小企業では、経営者が昭和時代の考え方を引きずっていると、パワハラ対策が困難になってしまいます。まずは、経営者がパワハラなどハラスメントについての理解を深め、社内に向けて「パワハラは絶対に許さない」という宣言をすることが第一歩です。

 

【法律による対応】

なお、法律でパワーハラスメントを禁止することについては、民法等他の法令との関係の整理や、違法となる行為の要件の明確化等の課題があることから、今回の見直しにおける状況の変化を踏まえつつ、その必要性も含めて中長期的に検討することが必要ではないか。

 

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

パワハラ行為から業務上必要な部分を引き算した残りが、刑法上の犯罪であって刑事事件とされたり、民法上の不法行為であって損害賠償の請求対象となったりします。

また、パワハラに耐えられず退職の申し出をした場合には、民事上その意思表示の有効性が問題となります。

ですから、刑法にパワハラ罪というものを新設したり、民法にパワハラ関係の規定を加えたりしなくても、現状の法令で十分対応できるのです。

ただ、こうしたことを分かりやすくするのが難しいのです。

今のところ、専門家に具体的な事情を明らかにして相談するのが現実的な対応だと思われます。

 

2018.11.23.解決社労士

<労働政策審議会>

平成30(2018)年11月19日、労働政策審議会雇用環境・均等分科会(旧雇用均等分科会)で、女性の活躍の推進のための対策及びパワーハラスメント防止対策等についての審議が行われ、配布資料も公開されています。

労働政策審議会は、労働政策について審議を行う委員会です。厚生労働省に置かれている審議会のひとつで、厚生労働大臣の諮問機関ですから、ここでの審議が労働関係法令の改正案に反映されます。労働政策審議会に関する情報を把握することにより、今後の政府の動きや企業の取り組むべき課題を先取りすることができます。

 

<女性活躍推進法の施行後3年の見直し>

これについては、3項目に分けて総論が述べられています。枠内は原文をそのまま引用したものです。

 

【女性活躍の取組】

女性活躍推進法が施行されて以降、民間企業における同法に基づく女性活躍の取組は着実に進展。行動計画の策定が義務付けられた常時雇用する労働者が301人以上の企業については、平成30 年9月末時点で99.1%が行動計画を届出。また、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」では、約1万2千社が行動計画を掲載し、約1万社が同法に基づく情報を公表。

 

対象となる企業は、行動計画の策定と提出が義務付けられていますから、提出率が高いのは当然でしょう。

企業が形式的に策定・提出しているだけでなく、熱心に取り組んでいるのかは見えません。

ただ、熱心に取り組んだ企業は女性の定着率が向上しているでしょうし、その成果を公表することによって女性の採用に役立っているでしょう。

 

【女性活躍を一層推進するために】

今後、社会全体で女性活躍を一層推進するためには、計画的なPDCA サイクルを促す行動計画の策定や、求職者の職業選択に資する情報公表等に、より多くの企業が取り組むことが必要。現在、300 人以下の企業については女性活躍推進法に基づく取組が努力義務とされているが、既に多くの企業が何らかの取組を進めている一方、取組を進める企業においても課題を感じていることを踏まえれば、これらの企業においても、負担軽減に配慮しつつ、確実な取組を求めることが必要。

 

残念ながら、男尊女卑のような昭和の考え方から抜け出せない企業も残っています。

そのため審議会では、101人以上300人以下の企業にも、行動計画策定を義務付けるべきではないか、情報公表を義務付けるべきではないかということが議論されています。

 

【インセンティブの充実】

行動計画策定や情報公表等の取組の内容については、女性活躍推進法の基本原則を踏まえ、「職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活の両立」に資するものとなるよう制度を見直すとともに、企業に対するインセンティブを充実させることが必要。

 

インセンティブと言っても、報奨金のようなものが給付されるわけではなく、一定の認定基準をクリアした企業については、行動計画の策定義務を免除するといったことが議論されています。

一方で、求職者の職業選択に影響を与える情報公表義務違反や虚偽の情報公表に関して勧告に従わない企業については、企業名を公表できることとしてはどうかという議論もあります。

 

2018.11.22.解決社労士

<高年齢者の雇用状況>

平成30(2018)年11月16日、厚生労働省が高年齢者を65歳まで雇用するための「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などを集計した、平成30年「高年齢者の雇用状況」を取りまとめ公表しました。

高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現に向け、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」は、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じることと、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を義務づけています。

今回の集計結果は、この雇用状況を報告した従業員31人以上の企業156,989社の状況がまとめられたものです。

なお、この集計では、従業員31人~300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています。 

今後は、生涯現役で働くことのできる社会の実現に向けたさらなる取組が行われ、雇用確保措置を実施していない企業に対して、都道府県労働局、ハローワークによる計画的かつ重点的な個別指導が実施される予定です。

 

【集計結果の主なポイント】

 Ⅰ 65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況

 1 高年齢者雇用確保措置の実施状況

   65歳までの雇用確保措置のある企業は計156,607社、99.8%[0.1ポイント増加]

 2 65歳定年企業の状況

   65歳定年企業は25,217社[1,382社増加]、16.1%[0.8ポイント増加]

  ・中小企業では23,685社[1,229社増加]、16.8%[0.7ポイント増加]、

  ・大企業では1,532社[153社増加]、9.4%[0.9ポイント増加]

 

Ⅱ 66歳以上働ける企業の状況

 1 66歳以上働ける制度のある企業の状況

   66歳以上働ける制度のある企業は43,259社、割合は27.6%

   ・中小企業では39,699社、28.2%、

   ・大企業では3,560社、21.8%

 2 70歳以上働ける制度のある企業の状況

   70歳以上働ける制度のある企業は40,515社[5,239社増加]、割合は25.8%[3.2ポイント増加]

   ・中小企業では37,232社[4,453社増加]、26.5%[3.1ポイント増加]

   ・大企業では3,283社[786社増加]、20.1%[4.7ポイント増加]

 3 定年制廃止企業の状況

   定年制の廃止企業は4,113社[49社増加]、割合は2.6%[変動なし]

   ・中小企業では4,032社[49社増加]、2.9%[0.1ポイント増加]

 ・大企業では81社[変動なし]、0.5%[変動なし]

 

<集計対象>

○ 全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業156,989社

(報告書用紙送付事業所数165,763事業所)

 ・中小企業(31~300人規模):140,628社

(うち31~50人規模:54,088社、51~300人規模:86,540社)

 ・大企業 (301人以上規模): 16,361社

 

2018.11.21.解決社労士

<厚生年金保険料の給与天引き>

会社は、厚生年金加入者(被保険者)の給与から厚生年金保険料を控除します。

控除する金額は、その被保険者の標準報酬月額に保険料率を乗じた額の半額となります。保険料は会社と被保険者が折半するからです。

控除する金額=その被保険者の標準報酬月額×保険料率÷2

1円未満の端数が生じるときは、四捨五入して円単位にします。

 

<標準報酬月額>

厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を、一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を保険料の計算に用います。

平成30年現在の標準報酬月額は、1等級(8万8千円)から31等級(62万円)までの30等級に分かれています。

 

<定時決定と随時改定>

毎年9月に、4月から6月の報酬月額を基に、標準報酬月額の改定が行われます(定時決定)。

また、報酬月額に大幅な変動(標準報酬月額の2等級以上)があって、一定の条件を満たした場合には、標準報酬月額の改定が行われます(随時改定)。

 

<注意ポイント>

随時改定のしくみは、実際にはかなり複雑です。

社会保険労務士であれば、よく理解しているのですが、他の士業の方の中には、定時決定しか知らない方も多いのが実態です。

手続きを外注している場合には、一度社労士のチェックを受けることをお勧めします。

 

2018.11.20.解決社労士

<繰り越しか消滅か>

退職金の請求権は5年間、その他の請求権は2年間で時効消滅します。

民法の規定によると消滅時効の期間が短いので、労働基準法が労働者を守るために期間を延長しています。

 

【労働基準法の時効の定め】

第百十五条 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

 

パート社員などを正社員にした場合、前から持っている年次有給休暇も、発生してから2年間で消滅します。正社員になると共に消滅することはありません。

会社によっては、正社員になると共に年次有給休暇が10日間付与されます。この場合には、未消化の年次有給休暇が40日を超えることもあります。

また、付与日数の計算基準となる勤続年数も通算されます。

正社員にならなかった場合よりも、不利にならぬよう注意が必要です。

 

<所定労働日数が変化した場合>

正社員登用前は週3日勤務、登用後は週5日勤務という場合、年次有給休暇付与の条件としての出勤率は、次回の年次有給休暇付与の日からさかのぼって1年間で計算します。

登用前が4か月、登用後が8か月であれば、登用前の出勤率の4倍と登用後の出勤率の8倍を合計して、12で割って求めます。これが8割以上なら付与されることになります。

また付与日数は、週5日勤務が基準となります。

ただし就業規則などに、労働者にとってより有利なルールがあれば、それに従います。

 

<給与計算システムとの整合性>

正社員と正社員以外とで、給与計算に異なるシステムを使用している会社もあります。

データを単純に移動してしまうと、年次有給休暇の勤続年数がリセットされてしまい、せっかく正社員に登用されたのに不利になってしまうことがあります。

これは労働基準法違反にもなりますので、対応できないシステムの場合には、一部手作業で対応することになるでしょう。

特に勤続6年半以上のパートさんなどが、正社員に登用された場合には注意が必要です。

 

2011.11.19.解決社労士

<解雇予告の規定>

労働基準法第20条に次の規定があります。

 

【解雇の予告】

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

<解雇予告手当>

会社が従業員を解雇しようとする場合に、少なくとも30日前には解雇する旨を通知しなくてはならないというものです(第1項)。

もし30日以上前に解雇予告をしなかった場合には、使用者は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務が生じます(第1項)。

 

<予告と手当の組み合わせ>

予告期間と解雇予告手当を組み合わせることもできます(第2項)。

たとえば、17日前に予告して平均賃金の13日分の解雇予告手当を支払うこともできます。併せて30日になれば良いのです。

ただし、解雇予告の当日は24時間ありませんので、1日としてカウントできません。今月30日をもって解雇という場合には、13日に予告すれば17日前の予告となります。

 

<解雇予告手当の支払い時期>

解雇予告手当は解雇の通知とともに支払います。

この手当は、給与ではなく支払うことによって効力が発生する特殊な手当なので、「次の給与と一緒に支払います」ということはできません。

もし給与と一緒に支払ったなら、支払ったその日に予告したものとして予告期間が計算されてしまいます。

解雇予告手当を給与振込口座に振り込んでから、解雇の通知をすれば良いでしょう。

 

<注意すること>

解雇予告を正しく行うということは、手続きを正しく行うということです。

これによって、不当解雇が正当化されるわけではありません。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

解雇予告手当を支払い解雇を通告して安心していると、解雇の無効を主張され、働いていないのに賃金を請求されるということもありますから注意しましょう。

 

2018.11.18.解決社労士

<LGBTの定義>

LGBTは、4つの性的少数者の頭文字をとったものです。

 

【LGBT】

L

レズビアン(Lesbian)

恋愛の対象が女性である女性
G ゲイ(Gay) 恋愛の対象が男性である男性
B バイセクシュアル(Bisexual) 恋愛の対象が男性・女性の両方である人
T トランスジェンダー(Transgender) 生まれた時の体に基づいて判別された性別と、本人が心の中で認識している性別とが異なる人

トランスジェンダーの中でも、出生上の性に分類されることに持続的な不快感を持ち、精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態にある人を、医学的に「性同一性障害」と呼んでいます。

 

すべての企業に、LGBTへの理解と具体的な取り組みが求められています。

 

<特別ではないLGBT>

電通総研が、平成27(2015)年に約7万人を対象に実施した調査で、7.6%がLGBTに該当すると回答したそうです。これは、約13人に1人の割合です。

しかし、「あなたはLGBTのどれかに当てはまりますか?」と尋ねられて、素直に「はい」と答える人は限られているでしょう。実際には、より多くの人がLGBTに該当するのかもしれません。

LGBTは特別な存在ではないのです。

 

つまり、お客様、従業員、お取引先にも、LGBTの方がいらっしゃる可能性は高いのです。

 

企業は、性別や年齢によって、採用、教育、異動、待遇などの差別をしないように求められています。

これは、LGBTについても全く同じことが当てはまります。

 

<採用内定にあたって>

企業としては、LGBTであるか否かに関わらず、優秀な人材を採用したいと考えているでしょう。

しかし、内定を受けた学生からLGBTに該当することを明かされた企業が、戸惑いからか内定を取り消してしまうという事態も見られます。

こうした内定取消の多くは、不当なものであり無効とされるべきものですが、LGBTの立場は弱く、学生側が諦めやすいものです。

また、内定を出してくれた企業を信じてLGBTに該当することを打ち明けたのに、内定を取り消されたのですから一層ショックが大きいのです。

LGBTに該当する人について、本当に内定を取り消さなければならない特殊な業種などであれば、内定取消事由として「学校を卒業できなかった場合」「重大な罪を犯した場合」などに加えて、「LGBTに該当する場合」を書面で明示しておかなければなりません。

 

<従業員について>

性的少数者である従業員の多くは、誰にも相談できずに悩んでいます。

一方、周囲の従業員や上司は、それと知らずに接しています。

同性同士の雑談に傷つき体調を崩して休んでしまい、退職してしまうことすらあります。企業は、LGBTに該当する従業員がいることを想定して、誰でも自分らしく働ける環境を作らなければ、優秀な人材の確保がむずかしくなってしまいます。

トイレや健康診断、セクハラの定義など、企業に求められることは意外な項目にも及びます。

しかし、最初に取り組むべきことは、LGBTに対する理解を深めるための社員研修だと思います。もちろん、経営トップをはじめ、幹部社員は特に深い理解を求められます。

特定非営利活動法人「虹色ダイバーシティ」等の団体に講師の派遣を依頼できる場合もありますので、必要に応じて相談すると良いでしょう。

 

<就業規則の整備>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

上記のうち「第12条から前条まで」というのは、パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラなどを指します。

いずれにせよ、「性的指向・性自認に関する言動」という言葉が入っています。LGBTのうち、LGBは性的指向ですし、Tは性自認に関することです。

就業規則には、こうした規定が必須のものとなっていますし、LGBTについて従業員の全員に理解できる内容となっている必要があります。

 

大企業の従業員であれば、同性パートナーへの福利厚生の適用も期待が高まっていることでしょう。

結婚した時に支給される結婚祝い金や結婚休暇等を、同性間のパートナーについても適用する旨の規定が、就業規則に欲しいところです。

もちろん、お祝い事だけでなく、育児、介護等の特別休暇や結婚以外の慶弔見舞金の対象にすることも考えられます。

これらを運用するには、同性間の事実婚や同性パートナーとの同居を届け出る「パートナー届」のような制度も必要となります。

 

<企業のメリット>

LGBT該当者の中からも優秀な人材を採用できるようになりますし、定着率も向上します。

また、LGBT該当者向けの商品やサービスの開発にも有利です。

何より、企業のイメージアップにつながります。

 

2018.11.17.解決社労士

<中小企業庁の決定>

平成30(2018)年10月24日に中小企業庁で開かれた「第5回中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ」で、下請事業者の長時間労働是正に向けた通報制度の強化策が示されました。

運用開始は平成30(2018)年11月からとされています。

 

<通報制度の強化>

これまでは、労働基準監督署や労働局の立入検査(臨検監督)で、公正取引委員会や経済産業省(中小企業庁・経済産業局等)に通報が行われるのは、次の3つの条件を満たした場合でした。

 

【臨検監督による通報の条件】

①労働基準法第24条、第32条違反等労働基準関係法令違反が認められること

 

②その違反の背景に親事業者による下請法違反行為や特定荷主による物流特殊指定違反行為の存在が疑われること

③下請事業者・特定物流事業者が通報を希望した場合

 

今回の決定で、上記のうち「③下請事業者・特定物流事業者が通報を希望した場合」の条件が外されることになりました。

立場の弱い下請事業者などは、取引関係を気にして通報を希望しないケースが想定されるため、この条件が外されたのです。

通報を受けた公正取引委員会や経済産業省は、立入検査によって法違反が認められた場合、下請法や独占禁止法の下での指導を行います。

※ 建設業でも、国土交通大臣許可の親事業者に対しては、同様の対応がとられます。

 

<社会保険労務士への情報提供>

労働基準監督署で把握している短納期発注による長時間労働について特徴的な事例(下請法違反の疑いがあるもの)を追加収集し、取引関係の所管官庁の相談窓口とともに、全国社会保険労務士会連合会等に情報提供が行われる予定です。

社会保険労務士は公務員ではありませんから、与えられた情報を元に企業の調査や指導に入るということはありません。

顧問先の企業などに違反行為が無いことを確認し、違反があれば企業とともに改善していくことになります。

 

2018.11.16.解決社労士

<ガイドライン>

平成30(2018)年11月6日、厚生労働省、国土交通省、全日本トラック協会がガイドラインを公表しました。

これは、トラック事業者と荷主が連携して実施した、トラック運送事業における荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化など長時間労働の抑制を図るためのパイロット事業の成果を取りまとめたものです。

 

<改善のステップ>

取引環境と長時間労働の改善に向けた取組みの手順が、7つのステップで示されています。

 

【ステップ1】荷主企業と運送事業者の双方で、ドライバーの労働条件改善の問題意識を共有し、検討の場を設ける

● 荷主とトラック運送事業者が意見交換できる場(可能であれば 関係者が同席する会議体)を設置する

● 問題意識の共有のため、定期的な意見交換を実施する

 

【ステップ2】労働時間、特に荷待ち時間の実態を把握する

● 労働時間、特に荷待ち時間や荷役時間を正確に把握する方法を 検討する

● 時間管理のためのツールの導入を検討する

 

【ステップ3】荷待ち時間の発生等、長時間労働になっている原因を検討、把握する

● 発荷主の生産・出荷スケジュールや附帯作業などを検証する

● トラック運送事業者の運行計画、配車計画などを検証する

● 着荷主の受け入れ体制や附帯作業などを検証する

 

【ステップ4】荷主企業、運送事業者の双方で、業務内容を見直し改善に取り組む

● 把握、検証した長時間労働の原因について関係者間で協議する

● 荷主、トラック運送事業者それぞれができることを検討する

 

【ステップ5】荷主、トラック運送事業者間での応分の費用負担を検討する

● 作業効率化のために必要な機器やソフトウェアの導入、作業手 順の見直し等を検討する

● 関係者間で応分の費用負担を検討する

 

【ステップ6】改善の成果を測定するための指標を設定する

● 改善効果を測るための数値目標を設定する

● 問題点と改善に向けた意識を関係者間で共有する

 

【ステップ7】指標の達成状況を確認、評価することでさらなる改善に取り組む

● 設定した数値目標を定期的にモニタリングする

● 数値目標の達成度合いについて関係者間で共有する

 

<改善に向けた対応>

次の項目について、改善に向けた具体的な対応の内容が示されています。

 

 1 予約受付システムの導入
 2 パレット等の活用
 3 発荷主からの入出荷情報等の事前提供
 4 幹線輸送部分と集荷配送部分の分離
 5 集荷先や配送先の集約
 6 運転以外の作業部分の分離
 7 出荷に合わせた生産・荷造り等
 8 荷主側の施設面の改善
 9 十分なリードタイムの確保による安定した輸送の確保
10 高速道路の利用
11 混雑時を避けた配送
12 発注量の平準化
13 モーダルシフト(フェリーなどの内航海運や鉄道の利用への切替え)

 

荷主さんの協力が無ければ改善は進みません。このガイドラインは、自社の改善目標を提示し、荷主さんに協力を依頼する内容を明らかにするために役立つでしょう。

 

2018.11.15.解決社労士

<自殺の原因>

厚生労働省が公表した「平成30年版過労死等防止対策白書」の中に、警察庁の自殺統計原票データに基づく内容が次のようにまとめられています。

 

我が国の自殺者数は、平成10(1998)年以降14 年間連続して3万人を超えていたが、平成22(2010)年以降減少が続き、平成29(2017)年は21,321 人となっている。また、自殺者数総数に対する、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の割合は増加傾向にあり、平成29 年は9.3%となっている。

職業別にみると、被雇用者・勤め人(有職者から自営業・家族従業者を除いたもの。会社役員等を含む)の自殺者数は、近年、総数が減少傾向にある中でおおむね減少傾向にあったが、平成29 年は前年比108 人増加の6,432 人となっている。

原因・動機別(遺書等の自殺を裏付ける資料により明らかに推定できる原因・動機)にみると、勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数は、平成19(2007)年から平成23(2011)年までにかけて、自殺者総数が横ばいから減少傾向にある中で増加したが、その後減少し、平成28 年は1,978 人となった。

しかし、平成29 年は前年比13 人増の1,991 人となっている。

勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を原因・動機の詳細別にみると、勤務問題のうち「仕事疲れ」が約3割を占め、次いで、「職場の人間関係」が2割強、「仕事の失敗」が2割弱、「職場環境の変化」が1割強となっている。

 

<自殺の防止>

上記の内容を簡単にまとめると、「自殺者の総数は減っているが、勤務問題を原因とする自殺は増えている。具体的な動機としては、仕事疲れ、人間関係、仕事の失敗、環境の変化が多い」となります。

従業員の自殺は明らかな戦力ダウンですし、会社の対策が不足していれば、親族からの賠償請求や顧客離れ、会社の評判の低下などにより、一部の大企業を除けば会社の存続が危うくなるのは目に見えています。

働き方改革が推進される中で、過労自殺がクローズアップされています。その防止法は明確で過重労働の解消です。

「職場の人間関係」の具体的内容としては、セクハラやパワハラが想像されますし、パワハラは「仕事の失敗」による苦痛を倍加させます。

「職場環境の変化」について行けないというのは、個人の資質に原因もありますが、会社は十分な教育をしたかを問われます。教育の不足は「仕事の失敗」にもつながります。

労働時間の削減に加え、ハラスメント対策と社員教育の強化が、従業員の自殺防止に効果的であることは明らかではないでしょうか。

迷ったら、信頼できる社会保険労務士にご相談ください。

 

2018.11.14.解決社労士