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2021/01/26|972文字

 

<通達の発出>

令和3(2021)年1月7日、厚生労働省労働基準局から都道府県労働局に宛てて「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」という通達が発出されました。

これまでも、労働基準局が所管する手続のうち、押印または署名を必要としていたものについては、「押印を求める手続きの見直し等のための厚生労働省関係政令の一部を改正する政令等の施行等について」「押印を求める手続きの見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令等の施行等について」「労働基準行政システムに係る機械処理事務手引(労災)の一部改定について」などの通達が発出されてきました。

今回の通達は、これらを補充・訂正する内容となっています。

社内での押印見直しを進めるにあたって、参考とすべき点が多いことから、以下にその概要を紹介します。

 

<押印等の見直し>

今回の見直しは、令和2(2020)年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」を踏まえ、国民や事業者等に対して、押印等を求めてきた手続について、押印等を不要とするために必要な改正を行うものです。

ですから、請求人等の押印等が無くても、記名等があれば受付けられることになります。

また、事業主、請求人等が請求書等を作成するにあたり押印等を行っている場合には、押印等が不要になった旨を説明することになっています。

労災保険の請求書等については、全ての手続で押印等を求めないことになりました。

ただし、記名等をすることについては、引き続き必要とされます。

押印欄のある改正前の様式も、当分の間は、そのままで使用できます。

押印等が不要なので、記載事項を訂正する場合にも訂正印は不要です。

なお、電子申請の電子署名については、今まで通りで変更はありません。

 

<その他>

今回の見直しは、国民等の側について押印等の見直しを行ったもので、行政機関から国民等に対して発出する文書の押印については、今まで通りで変更はありません。

令和2(2020)年12月25日の改正後の様式のうち、受付印欄と決裁印欄は、改正後も今まで通りで変更はありません。

令和2(2020)年12月25日の改正前に受け付けた請求書等のうち、押印等が漏れているものの取扱については、改正日以後は、その他の記載事項に不備が無ければ、不備を理由に返戻されることはありません。

 

解決社労士

2021/01/25|1,182文字

 

<違法な就業規則は存在する>

就業規則を作成した時には適法だったものの、法改正が繰り返されて違法だらけの就業規則になってしまうということはあります。

国際情勢、国内情勢、市場動向は変化していますし、政府が継続的に強化している少子高齢化対策や働き方改革に沿った法改正は、驚くほど頻繁に、そして大幅に進んでいますから、1年間放置した就業規則が適法性を保っていたら、運が良いと感じてしまいます。

 

<違法な就業規則の届出>

うっかり法令違反の就業規則を労働基準監督署長に届け出たとします。

何も指摘されないこともありますし、たまたま法令違反が見つかって指摘を受けることもあります。

違法な規定を含む就業規則であって、それが発見されたとしても「次回は直しておいてくださいね」ということで、そのまま受け付けてもらえるのが通常です。

このとき、きちんと控えを持って行けば、就業規則を届け出たことの証として、「受付」の印を押してもらえます。

あくまでも「受付」であって、「受理」や「承認」ではないのです。

提出したので受け付けましたというだけのことです。

 

<違法な規定の効力>

労働契約も契約の一種です。

契約は、当事者が話し合って自由に内容を決めることができるという原則があります。

契約自由の原則と言います。

ところが、労働契約の場合には、使用者の立場が強く労働者は弱者であるというふうに考えられています。

実のところはケースバイケースですが、それでも労働関係法令は労働者が弱いという前提に立って法体系ができています。

このことから、本来は自由であるはずの労働契約に法律が介入し、労働者を保護するという役割を担っています。

就業規則は、その会社の労働者に共通な労働条件を定めています。

就業規則には、いろいろ定められているのですが、労働者に共通な労働条件の規定は、必ず含まれているといえます。

そして、就業規則と個別の労働契約とを比べた場合に、違う部分があれば、労働者に有利な方が有効とされます。

さらに、その部分が法律より不利ならば、法律の規定が優先されます。

結局、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になるのです。

 

<違法な規定は効力が無い>

このように、就業規則が法律に違反していたり、個別の労働契約よりも労働者に不利であったりすれば、その規定は無視されるわけです。

このことが判っているので、労働基準監督署では就業規則の届出を受け付ける時に、法律違反が無いかじっくりとチェックしなくても問題無いことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このような事情から、「労働基準監督署に受け付けてもらったから安心」とはいえません。

知らないうちに、違法な就業規則を運用し適用しているというリスクがあるのです。

このようなリスクを回避するには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/24|1,014文字

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

労働時間に対しては賃金を支払わなければなりません。

 

<喫煙やおしゃべりの時間は労働時間なのか>

それでは、上の労働時間の定義からすると、喫煙やおしゃべりの時間は労働時間になるのでしょうか。

使用者の指揮命令から離れ、自由に喫煙やおしゃべりを許されている時間は、労働時間にはあたりません。

しかし、本当に使用者の指揮命令から離れていれば、労働者が喫煙のために離席してもおしゃべりしても、使用者側である管理職の皆さんは気付かないはずなのです。

管理職の皆さんが「なんだ、またタバコか」「いつまで、おしゃべりしているんだ」と不快に感じるのは、そうした労働者を指揮命令下に置いているからなのです。

ということは、使用者の指揮命令下にあって、労働時間であるにもかかわらず、使用者が喫煙やおしゃべりを黙認している時間ということになります。

したがって、喫煙やおしゃべりの時間を、労働時間から差し引くこと、給与計算のうえで欠勤控除することには無理があるといえるのです。

 

<管理職失格の証し>

「うちの部下は、何度もタバコを吸いに行ったり、おしゃべりしたりする。ああいう時間は、給料を払わなくてもいいのでは?」と言う管理職がいたら、その人は管理職として不適格です。

なぜなら、部下を指揮命令下に置く能力が不足しているからです。

現在は、テレワークが盛んです。

「部下を直接見ていないから指導できない」「その仕事を評価できない」という管理職は、その職責を果たせていないのです。

そういう人は、担当者として実績を上げたとしても、管理能力は無いのですから、専門職やプロフェッショナルとしての処遇をしてあげるべきなのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ある管理職から部下のサボりを相談されたら、人事部門は部下の方に目を向けます。

しかし、顧問の社労士であれば、そうした話を持ちかけた管理職に目を向けます。

会社を正しい方向に導くには、第三者である専門家の目が必要であることの一例です。

会社を強くしたい成長させたいと本気で考えるのであれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/23|1,891文字

 

<在宅勤務の経費負担>

在宅勤務の経費負担については、就業規則や個別の労働契約により定められます。

それが適正かどうかは、各企業の判断に任されていることになります。

令和3(2021)年1月15日、国税庁のホームページに、企業がテレワークを行う従業員に対して費用補助を行う場合の課税取扱いに関する「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係) 」が公表されました。

これは、在宅勤務の経費負担について、国の考えを示していることになりますから、自社の定めが適正であるかを確認する際の重要な資料になると考えられます。

以下項目ごとに、その内容をご紹介します。

 

<在宅勤務手当>

・実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・毎月定額で支給するなど、返還する必要がない金銭を支給した場合は、給与として課税する必要がある。

 

在宅勤務手当として支給する場合には課税対象となりますが、通常必要な費用を実費精算するに過ぎない場合には、課税対象とはならないわけです。

 

<事務用品等>

・企業が所有する事務用品等を従業員に貸与する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・企業が従業員に事務用品等を支給した場合(事務用品等の所有権が従業員に移転する場合)には、従業員に対する現物給与として課税する必要がある。

 

会社の事務用品を従業員が使用している場合、その種類によっては、貸与か支給かが不明確な物もあります。

ここは、貸与であることを再確認しておけば良いでしょう。

また、従業員が立替払で事務用品を購入した後、その購入費用を精算する場合には、事務用品の所有権は会社に帰属しますから、課税対象とはなりません。

 

<電話料金>

・通話明細書等により確認した業務使用分に係る料金を企業が従業員に支給する場合には、従業員に対する給与として課税する必要はない。

・業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については通話明細書等に代えて、FAQで示す算式(基本使用料・通信料等の月額×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを、業務使用分として差し支えない。

・基本使用料は、上記算式により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

業務で利用した通話料金が、通話明細書等により確認できるのであれば、その料金の実費精算については課税対象とはなりません。

また、業務のための通話を頻繁に行う業務に従事する従業員については、通話明細書等に代えて、基本使用料と通信料等の月額をベースに、その期間の在宅勤務日数割合を掛けたものの半額を、業務使用分として実費精算すれば課税対象とはなりません。

ここで、「業務のための通話を頻繁に行う業務」とは、営業担当や出張サポート担当など、顧客や取引先等と電話で連絡を取り合う機会が多い業務と認められるものをいいます。

 

<インターネットのデータ通信料等>

・基本使用料やデータ通信料などについては、FAQに示す算式(基本使用料・通信料等の月額×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

上記に示す算式によって算出した金額を実費として精算する場合には、課税対象とはならないということです。

業務で利用した通信料等が、明細書等により確認できるのであれば、その料金の実費精算をする場合も課税対象とはなりません。

 

<電気料金>

・基本使用料や電気使用料などについては、FAQに示す算式(基本料金・電気使用料の月額×業務使用床面積割合×その月の在宅勤務日数割合×1/2)により算出したものを企業が従業員に支給する場合には、給与として課税しなくて差し支えない。

 

ここで、「業務使用床面積割合」というのは、「業務のために使用した部屋の床面積」÷「自宅の床面積」をいいます。

電気料金については、実費精算をするのが困難ですが、上記の算式で算出したものを実費扱いできるわけです。

 

<レンタルオフィス代等>

・従業員がレンタルオフィス代等を立替払いし、かつ、領収書等を企業に提出して精算されているものについては、給与として課税する必要はない。

・従業員に金銭を仮払いし、レンタルオフィス代等に係る領収証等を企業に提出し精算した場合も同じ。

 

レンタルオフィスの利用料金については、実費精算を認めるに過ぎないと考えられます。

ただ、レンタルオフィスの利用については、会社の事前承認が原則となるでしょう。

 

解決社労士

2021/01/22|1,788文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社も賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社に生じた利益のすべてを従業員に分配しているわけではないのに、損害についてだけ従業員にすべてを負担させるのは不合理だというわけです。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。

厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、損害のすべてを回収することはできないでしょう。

むしろ、懲戒処分を受けることはそれ自体が苦痛ですから、懲戒処分を受けた従業員も、懲戒処分があったことを知った従業員も、会社に損害を加えないように一層注意深くなります。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課制度があって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当性のある結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

従業員が給与や賞与を意識して、会社に損害を加えないように注意深くなるのは明らかです。

 

<交通安全教育>

会社の従業員に対する交通安全教育も重要です。

報償責任や懲戒処分の有効性を考えたときには、会社が十分な教育を行っていたことが、損害賠償の請求や懲戒処分の正当性の根拠となります。

ここで注意したいのは、実質面だけでなく形式面にも配慮すべきだということです。

交通事故を減らすために交通安全教育を実施するわけですが、実施したことの証拠を残すことも重要です。

最終的に会社が負担する責任の範囲を狭めるためには、いつどこでどのような内容の教育を行ったのか、資料を残しておく必要があります。

そして、参加者名簿を作成し、参加者の署名を得ておくことをお勧めします。

参加・不参加も人事考課に反映させたいところです。

 

<過重労働の責任>

全く残業していない従業員の事故と、月80時間ペースで残業している従業員の事故とでは、会社と従業員との間の責任割合が変わってきます。

長時間労働であるほど、会社の責任が重くなります。

過重労働によって疲労が蓄積したり、注意力が低下したりで事故が発生しやすかったと評価されるからです。

人手が足りないのなら、新人を採用する工夫が必要です。

残業手当は25%以上の割増賃金が絡んできますから、長時間労働が発生しているのなら、新人の採用が経営上も有利になります。

ひとり一人の負担を減らすことで、事故の防止を図りたいところです。

 

<スケジュールの見直し>

忙しいとはいえ、そうでもない日もあるはずです。

繁閑の差が出ないようにシフトを工夫しましょう。

1か月何件というノルマがある場合でも、1日何件までという上限を設定して、過重労働を防止する工夫ができます。

会社がスケジュールの管理を強化することも考えられます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社会保険労務士というと、手続業務を思い浮かべることが多いようです。

手続型社労士が多いからでしょう。

しかし、社労士は労務管理の専門家ですから、年金、健康保険、雇用保険、労災保険の手続よりも、労務管理や労働安全衛生のこと、そして就業規則などのルール作りと運用管理が得意です。

また、労働トラブルへの対応や防止が得意な社労士もいます。コンサル型社労士です。

守備範囲は広範に及びますから、何か困ったら、とりあえず信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/21/1,135文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、会社も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社に生じた利益のすべてが従業員に分配されるわけではないのに、損害についてだけ従業員に負担させるのは不合理だというわけです。

 

<賠償金の給与天引き>

最初から違法な賠償額の予定があったわけではなく、客観的に適正な賠償額が確定したとします。

この場合でも、賠償金を給与から控除するには、また別の問題があります。

労働基準法には次の規定があるからです。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

原則として、賃金は全額を支払わなければなりません。

法令、労働協約、労使協定に定めがあるものは例外的に控除が許されます。

法令により控除が許されるのは、所得税、住民税、社会保険料、財形貯蓄などです。

賠償金は、控除の根拠が法令に規定されていません。

労働協約で組合費、労使協定で共済会費、社宅家賃の控除が定められていることは普通にあります。

賠償金も、労使協定などで定められていれば控除が可能です。

ただし、会社側からの強制で労使協定を交わしたのなら無効です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一に備えて、規定を整備しておくことは重要です。

三六協定と呼ばれる労使協定も、残業がありうるのなら交わして所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。

届出なしに残業が1分でもあれば違法です。

つまらないことで足元をすくわれることがないように、手続的なことはきちんと行いましょう。

ただ、やるべきことは会社によって違いますので、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/20|1,120文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、会社も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を会社も負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社は、儲かっても利益のすべてを従業員に分配しないのに、従業員の過失で会社に損害が発生したときに、その損害のすべてを従業員に負担させるのは、あまりにも不公平です。

 

<懲戒処分による減給>

就業規則に「過失によって会社に損害を加えた場合」の懲戒規定を置いておけば、減給処分も可能です。

厚生労働省のモデル就業規則にも、こうした規定例がありますので参考になります。

しかし、減給処分の金額は限られていて、労働基準法に次の規定があります。

 

(制裁規定の制限)

第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり、1か月の総支給額が30万円なら、1日分の1万円のさらに半分の5千円しか減給ができません。

複数の減給処分が重なった特殊な場合でも、3万円が限度となります。

この規定は、「1か月につき」ではなく「全部で」という意味です。

会社としては、わずかな損害しか回収できません。

 

<適正な人事考課による対応>

きちんとした人事考課の仕組みがあって、交通事故を起こしたことの責任を反映させるというのは正しい方法です。

給与について言えば、安全運転ができないという能力の面や、会社に損失を与えたという貢献度の面で適正な評価をすれば、他の従業員よりも昇給額が少ないというのは妥当な結果です。

また、賞与の支給率に反映され、支給額が少なくなるのも仕方のないことです。

これらは、あくまでも人事考課の仕組みがあって、適正に運用されることが前提となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

成果を出しても出さなくても、努力してもしなくても、昇給や賞与が全員同じならば、できる社員ほど退職しやすくなります。

「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則が働くのです。

小さな会社でも、評価制度は必要です。

生産性を高める適正な人事考課制度は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/19|1,140文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社が賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、会社もその損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社が儲かっても、利益のすべてを従業員に分配するわけではないのに、損害が発生したときに、その損失のすべてを従業員に負担させるのでは不合理だというわけです。

会社ができたばかりのときは、共同経営者だけで運営している場合があります。

この場合には、利益も損失も分かち合う関係にあるでしょう。

ところが、誰かを雇う場合には、その従業員に利益のすべてを給与として支払ってしまうわけではありません。

会社の取り分があります。

このように、利益が出れば会社が一部を得るのに、従業員の過失で損失が出たら、その従業員にすべての損失を押し付けるというのは、正義に反するということなのです。

会社としては、安全運転のできる注意深い人を採用できるし、従業員を教育できるし、保険にも入れるのだから、そのようにして損害を回避すれば良いのです。

 

<損害の何割までなら従業員に賠償を求められるか>

その従業員が故意に事故を起こしたような特殊なケースであれば、会社は損害のほとんどを従業員に賠償させることができそうにも思えます。

しかし、長時間労働で疲労が蓄積し注意力が低下していた、スケジュールがタイトで常に急がねばならない状況だった、不注意な人間であることを承知のうえで運転させていた、会社は交通安全についての教育に熱心ではなく安全運転について本人の自覚に任せていたなどの事情があれば、ある意味、事故を起こした従業員も被害者であって、会社が加害者の性質を帯びてしまいます。

こうした具体的な事情を踏まえて、どれほどの賠償を請求できるのか慎重に検討しなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

訴訟になれば、どの程度の賠償請求が妥当かを考えるのは、弁護士の仕事になるでしょう。

社労士が法廷に立つにしても、補助的な役割を担うに過ぎません。

むしろ、交通事故を予防すべきです。

そのための、長時間労働の解消、ノルマやスケジュール管理の適正化、安全運転のできる従業員の採用・教育、あるいは労災保険の手続について、信頼できる社労士にご相談いただきたいと思います。

 

解決社労士

2021/01/18|1,127文字

 

<労働問題解決の手順>

労働問題の解決は、1.事実の確認、2.問題の抽出、3.解決策の立案、4.解決策の実行 という4つのステップで行うのが基本です。

我々人間だけでなく、すべての生物は事実を頼りに判断しています。

ですから、最初に事実を確認すべきです。

これが不十分なまま、先に進むのは時間の無駄ですし、対応について悩んでしまうことになります。

次に、確認した事実の中から問題を抽出します。

ここでは、法令や判例などの法的知識と、人間関係に関する知識・経験がものをいいます。

知識・経験が不十分なまま問題を抽出しようとしても、やはり悩んでしまうことになります。

そして、解決策の立案では、a.目の前の問題を収束させる即効性のある解決策、b.長期的視点からの改善策、c.再発防止策 の3つを明確に分けて考える必要があります。

この3つのうちの1つでも欠けていると、問題が再燃し悩んでしまうことになります。

あとは、解決策を計画化して実行するだけです。

 

<1.事実の確認>

「おそらくこうだろう」という推測を排除して、客観的な事実の収集と、関係者からの聞き取りを行います。

関係者からの聞き取りでは、事実と感想・意見を明確に分け、あくまでも事実を中心に確認します。

社員に対して下手な聞き取り調査をしてしまうと、重要な証拠を消されてしまったり、人権侵害の問題が発生したりで、悩みの種が増えてしまいます。

慎重かつスピーディーに、効率良く行うことが求められます。

 

<2.問題の抽出>

確認した事実の中から問題を抽出するには、法的知識が必須ですから、人事部門が法務部門と連動して行うべきです。

これが難しいのであれば、労働問題の経験が豊富な弁護士や、特定社会保険労務士の力を借りるのが安全です。

こうした専門家は、法的な問題点を「争点」と呼んで数多く把握しています。

 

<3.解決策の立案>

解決策を考える場合、どうしても目の前の問題を収束させる方法だけに意識が集中してしまいます。

しかし、問題の発生には背景があるわけですから、その背景を改善しなければ、当事者だけの解決に終わってしまい、全社的な解決にはなりません。

同じ背景をベースとする別の問題が発生する危険、同じ問題が別の人に発生する危険を解消できないのです。

また、発生した問題について再発防止策を講じることも大事です。

抽出された問題の一つひとつについて、原因、原因の原因、そのまた原因を追究して、それを消滅させる必要があります。

 

<4.解決策の実行>

長期的視点からの改善策や再発防止策は、ついつい後回しになる傾向にあります。

これでは、いつまで経っても、労使トラブルが減少しません。

どの解決策も、計画を立て、スケジュール通りに実行しましょう。

 

解決社労士

2021/01/17|687文字

 

<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社が賠償責任を負うこともあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<ルール設定の必要性>

こうした事態に備えて、従業員の会社に対する損害賠償のルールを設定しておかないと、その都度、損害賠償の範囲を検討したり、事故を起こした従業員への説明と交渉で多大な労力と時間が必要になります。

明確かつ客観的な規定を就業規則に置いておけば、万一の場合に役立つに違いありません。

 

<就業規則の規定>

ところが、厚生労働省のモデル就業規則を見ても、このような規定は見当たりません。

交通事故に限らず、従業員の会社に対する損害賠償の規定が無いのです。

実は、予め賠償額や損失の負担割合のルールを決めておくことは、労働基準法違反となり、ルールを定めるだけで最高刑懲役6月の罰則があります。〔労働基準法第16条、第119条第1号〕

こうした規定は、労働者を不当に拘束するものとして禁止されているのです。

さらに進んで、「賠償金の支払いが完了するまでは退職を認めない」などということになれば、強制労働の禁止に違反し、これには最高刑懲役10年の罰則があります。〔労働基準法第5条、第117条〕

どちらも、労働基準法違反の犯罪になってしまうわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

あれば便利なルールでも、定めること自体が違法ということもあります。

就業規則の作成にあたっては、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/16|1,615文字

 

<労働基準法の規定>

労働基準法によると、解雇する場合には30日前に予告しなければならないのが原則です。

30日前に予告する代わりに、12日分の解雇予告手当を支払うとともに18日前に予告するなど、足して30日になるという方法も取れます。

30日分の解雇予告手当を支払うとともに即日解雇も可能です。

この場合には、「後日支払う」という約束ではなく、現実に支払っておくことが必要です。

そして、試用期間中の労働者に対しては、最初の14日間に限り、解雇予告も解雇予告手当も不要です。

労働基準法には、こうした規定しかありません。

ですから、入社から14日間は解雇の条件が緩いという誤解が生じます。

 

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

 

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

 

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

一   日日雇い入れられる者

二   二箇月以内の期間を定めて使用される者

三   季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者

四   試の使用期間中の者

 

<試用期間についての判例>

試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和44年12月12日三菱樹脂事件判決〕

しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、傍論として、ついでに語っただけです。

試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。

結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりはなく、両者の違いを明確に説明することはできません。

それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。

 

<解雇の制限>

試用期間の最初の14日間でも、解雇権濫用であれば不当解雇とされます。

不当解雇なら、使用者が解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。

一方、労働者は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。

しかしこれは、解雇権を濫用した使用者が悪いのです。

何か月か経ってから、労働者が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。

これを使用者側から見れば、知らない間に労働者に対する借金が増えていったということになります。

これは労働契約法に、次のように規定されています。

 

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一部の企業に端を発した法令の拡大解釈や、最高裁判所の判決に対する誤解が、いつの間にか「常識」となってしまうこともあるのです。

さらに、昨日まで正しかった常識も、法改正や判例変更によって、不適法になることがあります。

正しいことは、信頼できる社労士にご確認ください。

 

解決社労士

2021/01/15|797文字

 

<労働基準法の規定>

労働基準法は、その第5条で強制労働を禁止し、次の罰則規定を置いています。

 

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

<強制労働の意味>

「今どき強制労働なんて」と思われてしまうかもしれません。「強制労働」というと、ピラミッド建設に駆り出される奴隷のようなイメージを抱いてしまうのでしょう。

しかし、労働基準法の規定を見ると、次のように書かれています。

 

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

ここにいう不当に拘束する手段には、長期労働契約(第14条)、労働契約不履行に関する賠償予定(第16条)、前借金相殺(第17条)、強制貯金(第18条)などがあります。〔昭和63年3月14日基発第150号通達〕

ここで、カッコの中の「〇条」は、労働基準法の条文を示しています。

 

<辞めさせてくれない会社>

自分の勤務先がブラック企業であることに気づき、退職を申し出たけれども辞めさせてもらえないという労働相談が増えています。

辞めさせてもらえないというのは、具体的には「辞めるなら違約金を支払え」と本人や身元保証人に迫るようです。

これなどは、労働基準法第16条の「労働契約不履行に関する賠償予定」があることを示していて、「退職するな!働き続けろ!」というわけですから、強制労働の禁止に違反していると思われます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法律の世界は、法律のことを知っている人の味方です。

法律のことを良く知らない人は、良く知っている人を味方に付けて身を守りましょう。

労働関係法令についていえば、信頼できる社労士を味方に付けるのが安心です。

不安に思うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/14|1,500文字

 

<労働基準法の役割>

労働基準法は、労働者が人間らしく生きていけるようにするための、労働条件の最低基準を定めています。

このことは、労働基準法第1条に次のように定められています。

 

(労働条件の原則)

第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

労働基準法と聞くと、使用者側にいろいろと罰則をちらつかせて義務付けているイメージが強いと思います。

しかし、この条文では、「労働関係の当事者」つまり使用者と労働者の両方に、労働条件の維持向上を求めています。

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように規定されています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょう。

しかし、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

<労働条件の遵守>

続けて労働基準法第2条は第2項に次の規定を置いています。

 

2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 

ここでも「労働者及び使用者は」と規定し、労働条件を守ることについては、労働者も使用者も対等であることを示しています。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、労働条件が決まっていなければ守りようがありません。

また、文書化されていなくて、口頭で説明されているだけでは不明確です。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

このように労働条件の明示は、使用者だけに義務付けられています。

ここでいう「厚生労働省で定める方法」というのは基本は書面ですが、電子化された文書によることもできることされています。

いずれにせよ口頭ではダメです。

そして、明示された労働条件が実際と違っていたら、これを理由に労働者から使用者に対して退職を通知できます。

 

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

ブラック企業で退職を申し出たら、「退職させてもらえない」とか、「違約金の支払いを求められた」とか、不当なことを言われたという話を耳にします。

しかし大抵のばあいは、この労働基準法第15条第2項を根拠に退職を通知できるケースと考えられます。

 

このように、労働条件の正しい明示は使用者の義務ですから、口頭による説明しか無いのであれば、労働者としては「知りませんでした」「忘れました」という言い訳が許されることになってしまいます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「労働条件なんてよくわからないから決めない」「労働条件通知書を渡して違法性を指摘されたら困る」という経営者の方は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/13|895文字

 

<設立直後の会社>

できたばかりの会社では、創業者だけ、あるいは創業者の他は家族だけということもあります。

この場合は、労働条件通知書も就業規則も作られないことが多いでしょう。

すべてはお互いの信頼関係に基づいた口約束で足ります。

創業者に対する尊敬や恩義の気持から、大きな問題は発生しないものです。

 

<事業の拡大>

やがて知り合いを採用し、近隣の人たちをパートやアルバイトとして採用します。

法律上は、労災保険や雇用保険の手続だけでなく、労働条件通知書などの作成交付も必要です。

ところが、家族による事業の運営の延長線上で、これらの手続が行われないことがあります。

もちろん、労働基準法違反の犯罪ですから、罰則の適用もありえます。

違法だと分かっていて手続をしないよりは、よく分からないから放置することの方が多いようです。

また、労働保険や労務管理の専門家は社会保険労務士なのに、何でもかんでも税理士の先生に確認して済ませていると、違法な状態が解消されません。

 

<創業者の離脱>

事業がこれからという時に、創業者が病に倒れ、配偶者やお子さんたちが後を継ぐという事態は、常に想定しておかなければなりません。

相手のあることであれば、分からないことは相手に聞けば良いのですが、それですべてが分かるわけではありません。

特に、従業員の給料のこと、とりわけ残業代については、労働条件通知書や就業規則、そしてきちんとした給与明細書が無ければ、分からずじまいになってしまうことも多いのです。

創業者に対する尊敬や恩義の気持から長く働いていた従業員も、会社から心が離れ、何年分もの残業代を請求してくるかもしれません。

また、退職金を要求するかもしれません。

こうした法的紛争になったときに頼れるのは、人ではなくて、書類を中心とする物的証拠なのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働関係法令を知らずに他人を雇うリスクは大きなものです。

会社が大きくなったら、事業が軌道に乗ったらではなくて、創業の時から信頼できる社労士にご相談ください。

従業員がいないうちに、労働条件や会社のルールを決めておいた方が楽なのは明らかなのですから。

 

解決社労士

2021/01/12|1,057文字

 

<労働基準法第1条第1項>

法律の第1条というのは、注目されないものです。

しかし、その法律の目的や、大原則が規定されていますから、これを踏み外すとお話になりません。

労働基準法第1条第1項には、次のように規定されています。

「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」

この規定は、憲法(日本国憲法)第25条第1項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定に基づいています。

そもそも労働基準法ができたのは、主に憲法第27条第2項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という規定があるからです。

つまり、資本家は労働者から搾取するものであり、国は労働者を資本家から守る義務を負うというところから出発しています。

 

<労働基準法第1条第2項>

これもまた注目されていませんが、労働基準法第1条第2項には、次のように規定されています。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」

これを踏み外す危険も大きいと思います。

たとえば人手不足の折、会社の偉い人が「うちの会社は週休2日制だけど、労働基準法は1日でOKだと規定しているから、それでいいんじゃねぇの?」と言いかねません。

労働基準法第35条には、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定されています。

たしかに、新たに会社を設立した場合には、週休1日制でスタートしても違法ではありません。

しかし、週休2日制の会社が労働基準法第35条を根拠に週休1日に変更したら、労働基準法第1条第2項に違反します。

法律というのは、どれか1つの規定に違反していなくても、別の規定に違反すれば違法となることがありますから、木を見て森を見ずというのでは失敗します。

それぞれの法律の目的、あるいはそれを超えて、立法趣旨というものを捉えていないと、条文一つひとつを見て勘違いしてしまうことは避けられません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社労士は、数多くある労働関係法令一つひとつの立法趣旨を把握しています。

経営者が「いいこと考えた!」と思ったときは、落とし穴に落ちたときかも知れません。

他社に先駆けて何か工夫しようと思いついたときには、実行に移す前に信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/11|1,547文字

 

<労働契約法の規定>

労働契約法第8条に、「労働者と使用者との合意で労働契約の内容である労働条件を変更できる」と規定されています。

また、その第9条と第10条に、就業規則の変更によって労働者の不利益に労働条件を変更する場合のことが規定されています。

 

<缶コーヒーなら>

コンビニでいつもの缶コーヒーを買おうとしたら、レジの店員さんから「これは130円の缶コーヒーですが、今月はお店の売上が足りないので、店長から150円で売るように言われています。150円で買っていただけますでしょうか」と言われたとします。これに応じて150円で買う人は少数派でしょう。

「嫌です。130円で売ってください」と言ったり、別のコンビニに買いに行ったりという反応が想定されます。

こんなお店には、レジの店員さんに対して「これは130円の缶コーヒーだが、今月はお店の売上が足りないそうだから、120円にしてくれたら3本買おう」と言うお客様が来るかもしれません。

 

<給与だと>

給与明細書を見たら、支給額が大幅に減額されていたとします。

上司から「あなたの基本給は25万円だけれど、最近は会社の利益が減少傾向にあるので、社長から基本給は20万円で我慢するように言われています。今月も頑張って働いてくれるかな」と言われたとします。

「嫌です」と言えば、「それじゃクビだ!」と言われるかもしれません。

もちろん、不当解雇なら会社と争うこともできるでしょう。

しかし今日辞めて、明日から別の会社で働き始めるのは、予め準備していなければできることではありません。

反対に労働者の側から「基本給を5万円上げてくれないと、明日から出勤しません」というのも、余程の自信がない限り言えないことです。

 

<不利益変更禁止が強調される理由>

缶コーヒーの売買契約であれ、労働契約であれ、一方の当事者が自分に有利に契約内容を変更するのは自由ではありません。

それが許されるなら、そもそも契約が成立しません。

労働条件の不利益変更というのは、使用者から労働者に一方的に変更を申し出る場合を想定していますので、禁止されるのは当然のことと言えます。

ただ、コンビニでのお客様とお店との売買契約は1回きりのことです。

しかも、商品の引き渡しと代金の支払いが同時です。

後から問題になることが少ない性質を持っています。

ところが労働契約は、労働者と使用者との継続的な関係ですし、給与は後払いですから、何かとトラブルが発生しやすく長引きやすいのです。

そこで、労働者の保護という労働関係法令全体の趣旨を踏まえ、特に労働条件の不利益変更禁止の原則が強調されているわけです。

 

 

【参考】労働契約法

 

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

解決社労士

2021/01/10|1,222文字

 

<具体的なトラブル>

円満退社のパート社員が、退職にあたって会社に退職金の支払を請求する、あるいは、退職後に請求するということがあります。

もちろん、パート社員にも退職金を支払うルールなら問題ないですが、会社が支払わないつもりだったならトラブルになります。

 

<就業規則が1種類しか無い場合>

社員が10人以上になったときに会社の就業規則が作成され、そのときは正社員しかいなかったのに、やがてパート社員も働くようになっていたとします。

この場合には、将来パート社員も入社してくることを想定して、就業規則が作成されているとは限りません。

つまり、正社員用の就業規則しか無い状態になりうるのです。

あるいは、就業規則のひな形をそのまま引用して「パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する」という規定を置きながら、別に定める規則を作っていなければ、パート社員にも正社員用の就業規則が適用されます。

こうして法的には、パート社員にも正社員と共通の唯一の就業規則が適用され、会社に退職金の支払義務が発生するのです。

 

<社員の定義が無い場合>

就業規則に「正社員に退職金を支給する。パート社員には退職金を支給しない」という明確な規定があったとします。

それでも退職するパート社員から「私は残業もしたし、休日出勤もしました。この会社は賞与が出ないけど、誰ももらっていないから我慢しました。でも、退職金が出ないなんておかしいです。私は正社員として働いてきました」と主張されたら、会社は就業規則に示された正社員の定義とパート社員の定義を説明して切り抜けなければなりません。

しかし、就業規則に「正社員とは…」「パート社員とは…」という定義が定められていなければ、説明のしようがありません。

「何となくわかるでしょ」というレベルなら、労働者に有利な解釈がとられるのが労働法の世界です。

結局、会社が退職金の請求を拒むことは困難です。

 

<労働条件通知書に「退職金無し」と書かれている場合>

労働条件通知書、雇用契約書、労働契約書などの名称で、個人ごとに労働条件が通知されています。

ここに「退職金無し」と書かれている場合でも、労働契約法に次の規定があります。

 

(就業規則違反の労働契約)

第十二条  就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

 

つまり、就業規則には「退職金あり」と書いてあって、労働条件通知書などに「退職金無し」と書かれていたら、労働者に有利な「退職金あり」が有効になるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

退職金一つをとっても、法的に争われたら会社が負けてしまうことがあります。

就業規則にトラブルの火種を残さないよう万全を期すため、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/09|1,380文字

 

<休憩時間の自由な利用>

労働基準法は、休憩時間について次のように規定しています。

 

(休憩)

第三十四条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 

3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 

このように、労働基準法第34条第3項は、使用者に対し休憩時間を自由に利用させることを義務づけています。

 

<通達による休憩時間利用の制約>

労働基準法などの法律は、立法府である国会が制定しています。

そして、これを具体的に適用する基準として、行政府が次のような通達を発出しています。

 

事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない。〔昭和22年9月13日基発第17号通達〕

 

休憩時間中の外出について、所属長の許可を受けさせることも、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない。〔昭和23年10月30日基発第1575号通達〕

 

<休憩時間利用の制約についての裁判所の判断>

法律の適用について、その合法性(合憲性)が裁判で争われた場合、最終的には最高裁判所が判断を示します。

たとえば、目黒電報電話局事件について、最高裁判所は次のような判断を示しています。

 

一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。〔最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社内で、休憩時間の自由な利用に対する制約があった場合、それが法的に許されるかどうかを判断するには、法律の条文を読んで、自分なりに解釈するという方法では危険なのです。

数多くの通達を確認し、関連する裁判例をよく読んで、具体的な制約に当てはめたうえで、専門的に判断する必要があるのです。

顧問の社労士を置いておくことは、会社がつまらないことで足元をすくわれないようにするため、ぜひ必要なことだと思います。

 

解決社労士

2021/01/08|1,839文字

 

<コミュニケーション不足>

コミュニケーションというのは、人と人との間で行われる知覚・感情・思考の伝達です。

労働問題の原因の大半は、コミュニケーション不足にあると考えられます。

コミュニケーションの良い職場では、労働問題が少ないといえます。

しかし、「コミュニケーションを心がけましょう」と言ってみたところで、それは掛け声に終わってしまいます。

 

<コミュニケーションコスト>

コミュニケーションコストとは、知覚・感情・思考の伝達に必要な、時間・労力・精神的負担のことです。

短時間で手軽に気軽に伝われば、コミュニケーションコストが低いことになりますし、長時間にわたり苦労しないと伝わらないのは、コミュニケーションコストが高い状態です。

 

<伝え手のコミュニケーションコスト>

伝え手のコミュニケーションコストは、受け手に伝えるのに必要な時間・労力・精神的負担です。

主に受け手側に、忙しそう、嫌そうに見える、伝えると怒りそう、反論しそう、理解力が低いなどの問題があると、伝え手のコミュニケーションコストが高くなります。

受け手が、いつも機嫌良く、話しかけると嬉しそうに笑顔になって、反論せずに最後まで聞いて、「ああなるほど」と言ってくれる相手であれば、伝え手のコミュニケーションコストは極めて低くなります。

こういう受け手の所には、情報が集まります。

 

<受け手のコミュニケーションコスト>

受け手のコミュニケーションコストは、伝え手から知覚・感情・思考を受け取るのに必要な時間・労力・精神的負担です。

主に伝え手側に、遠慮している、自信が無い、感情的になっている、言語能力が不足している、論理的でない、話が脱線するなどの問題があると、受け手のコミュニケーションコストが高くなります。

伝え手が、自信を持って堂々と冷静に、分かりやすく論理的に手短に話してくれる人なら、受け手のコミュニケーションコストは極めて低くなります。

こういう伝え手には、協力者が集まります。

 

<職場のコミュニケーションコスト>

職場のコミュニケーションコストは、情報の共有と価値観の統一が進んでいて、メンバーが高い言語能力と理解力を備えていれば、全体に低くなります。

言語能力と理解力は、個人の資質と努力にかかっていますので、職場のコミュニケーションコストを下げるには、情報の共有と価値観の統一を図るのが合理的です。

価値観の統一を図るには話し合いが必要ですから、コミュニケーションコストが低い職場ほど、価値観の統一が進むことになります。

反対に、相手の立場に立って考えることが苦手なメンバーが多いと、価値観の統一を図るのは困難です。

 

<報連相の問題>

ある職場で、報連相不足が認識されたとします。

「報連相を心がけましょう」と言ってみたところで、それは掛け声に終わってしまいます。

もちろん、報連相をする部下の意識が低いだけであれば、こうした掛け声だけで改善されることもあるでしょう。

しかし、多くの場合には、部下のコミュニケーションコストが高くて、報連相がしにくいという実態があります。

つまり上司が、部下の前ではいつも忙しそうで機嫌が悪く、何か伝えても途中で反論しながら怒るというのでは、安心して報告も、連絡も、相談もできる筈がありません。

報連相不足が問題視される職場では、管理職が態度を改めることによって、改善が進みやすくなります。

 

<テレワークの問題>

テレワークでは一般に、コミュニケーションコストが高くなります。

リモート会議のツールを使っても、話し相手の反応にはラグ(遅延)が付き物ですから、コミュニケーションコストが高くなって当然です。

ましてやメールの場合には、相手の様子が分からないまま、文字だけで知覚・感情・思考を伝達するのですから、どうしてもコミュニケーションコストが高くなってしまいます。

当然のマナーともいえますが、メールを打ち終わっても、すぐに送信するのではなく、次のチェックを行いながら何度も推敲すべきです。

 

【メール送信前のチェック】

・可能な限り相手の立場に立って、分かりにくい点は無いか、誤解を招く点は無いか。

・論理矛盾は無いか。

・用件と無関係なことを書いていないか。

・相手がメールを読んで起こすべきアクションは明確か。

・誤字、脱字、誤変換、「てにをは」の誤りは無いか。

 

こうすることによって、コミュニケーションコストを低くすることができます。

もし、感情的になっていたら、一度冷静になってから上記のチェックを行うようお勧めします。

 

解決社労士

2021/01/07|602文字

 

<無報酬の経営者>

会社の設立直後は利益が出ず、代表者は無報酬で頑張るということがあります。

やがて利益が出たら、その利益に見合う報酬をもらうことにしようというわけです。

また、代表者の親族が名目的に役員に名を連ね、形式的に経営者扱いになっていることもあります。

そして、この場合にも無報酬のことがあります。

 

<保険料負担の建前>

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料は、その会社などで報酬を得て、その報酬の中から負担するというのが建前です。

ですから、無報酬なら保険料を負担することには無理があり、負担できないというのが常識的な判断になります。

 

<不都合の発生>

報酬が無かったり、低額だったりの場合には、健康保険料が国民健康保険料よりも安くて済みます。

また、出産手当金や傷病手当金といった給付を受けることもできます。

特に70歳以上であれば、厚生年金の加入義務がありませんから、保険料は健康保険料だけの負担となります。

こうしたことは、いかにも不公平で不合理に思われます。

 

<実際の運用>

無報酬の経営者は社会保険に加入しない、また、経営者が無報酬となった場合には社会保険の資格を失うというのが実際の取扱いです。

年金事務所でもこのように指導しています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

無理をして社会保険に加入して、損をしている経営者の方もいらっしゃいます。

具体的なことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/06|1,096文字

 

<賃金の支払義務>

健康診断を受ける時間が、労働基準法の労働時間にあたれば、賃金の支払義務があります。

 

<一般健康診断についての通達>

労働安全衛生法第66条第1項に定める一般健康診断について、次のような通達があります。

「健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については、労働者一般に対して行われるいわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと」(昭和47918日基発第602号通達)

結論として、たとえ一般健康診断を受診しなくても、業務に具体的な支障が生じるわけではないことから、実質的に受診義務が無いことになり、その受診に必要な時間の賃金を、使用者が負担する義務はないと考えているようです。

 

<例外的に労働時間となる場合>

業務命令により一般健康診断を受診させ、受診しない場合の懲戒処分を定めている場合には、賃金支払が必要な労働時間に該当すると考えられます。

 

<特殊健康診断についての通達>

労働安全衛生法第66条第2項に定める特殊健康診断について、次のような通達があります。

「特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので当該健康診断が時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること」(昭和47918日基発第602号通達)

結論として、特殊健康診断を受ける時間を労働基準法にいう労働時間と捉えているようです。

特殊健康診断は、一般健康診断とは異なり、事業の遂行との関連性が強く、受診しなければ業務に具体的な支障が生じうるため、受診義務があり受診に要する時間は労働時間と評価されるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

厳密に考えると、自宅や勤務地から受診会場に行き、受診会場から自宅や勤務地に戻る交通費の負担など、会社と労働者との負担区分には複雑なものがあります。

きちんとした区分を設定し、気持よく健康診断を受診できるようにするには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/05|1,450文字

 

<労働条件>

労働条件は、原則として労働契約の内容です。

ただし、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

法令には、労働基準法、最低賃金法、賃金支払確保法、男女雇用機会均等法などが含まれます。

労働協約は、労働組合法に従って締結された、労働組合と使用者(またはその団体)との取り決めをいいます。

 

<労働契約の原則>

労働契約法第3条は、労働契約の原則を次のように定めています。

 

【労働契約の原則】

1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

労働基準法は、使用者に多くの義務を課し違反に対して罰則を設けている一方で、労働者に対する罰則はありません。

これに対して、労働契約法は、労働者と使用者の両方に義務を課しているものの、罰則は設けられていません。

違反があった場合には、損害賠償等により民事的に解決されます。

 

<労働条件の決定と明示>

結局、労働条件は、労働契約の内容として労使の合意により決定されるのですが、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

労働契約は、口約束でも成立します。〔民法第623条〕

しかし、労働者にとっては生活がかかっていますし、使用者にとっては賃金その他の経費を含め合計数億円に達する大取引ですから、トラブル回避のためにも、使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。〔労働基準法第15条第1項〕

明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。〔労働基準法第15条第2項〕

労働条件通知書や労働契約書で、「残業なし」と明示されているのに残業を命じられたら、すぐに退職を申し出ることができるわけです。

 

<労働条件の変更>

労使の合意により、労働契約を変更することによって、労働条件を変更できます。〔労働契約法第3条第1項〕

変更についても、法令、労働協約、就業規則より不利な点は、これらによって修正されます。

労働基準法は、労働者を採用するときだけ、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示するよう求めていますが、労働条件を変更する場合にも、トラブル回避のためこれを行っておくべきです。

労働条件の変更のうち、労働者にとって不利益な変更を特に「不利益変更」と呼んでいます。

不利益変更の場合には、労働者の同意の有無が争点となりやすいものです。

しかも、この同意は労働者の「自由な意思による同意」であることが必要です。

使用者は、労働者の真意に基づく同意があったことを証明できるよう、「同意書」のような書面を証拠として残しておくべきです。

この書面には、労働条件の変更内容と同意した旨の他、具体的な変更理由を表示しておくことによって、労働者から「勘違いしていた」「だまされた」などの主張が出されても、納得のうえ同意したことを説明できるようにしておくべきでしょう。

 

解決社労士

2021/01/04|984文字

 

<残業時間の繰越>

建設業で働くある男性が、月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。

この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、適法な三六協定を交わし、かつ、所轄の労働基準監督署長への届出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は、たとえ1分間でも違法です。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえない可能性があります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。

所轄の労働基準監督署は就業規則の届を受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

今日までは何事も起こらなくても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/03|659文字

 

<一斉休憩の原則>

労働基準法の前身は工場法でした。

工場では、労働者に一斉に休憩を与えるのが効率的です。

現在、休憩時間は事業場ごとに一斉に与えなければならないというのが、工場だけではなく原則的なルールとなっています。〔労働基準法第34条第2項本文〕

つまり、労働者に対して交代で休憩時間を与えることは、原則として認められません。

 

<事業の種類による例外>

運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等では、労働基準法のこの規定の適用が除外されています。〔労働基準法第40条第1項、労働基準法施行規則第31条〕

つまり、これらの事業では、労働者に一斉に休憩を与える必要がありません。

 

<他の事業での例外>

上記の例外に含まれない事業でも、労使協定を締結すれば、休憩時間を一斉に与える必要はなくなり、交代で休憩時間を与えることもできるようになります。〔労働基準法第34条第2項但書〕

しかも、この労使協定は三六協定などと違って、労働基準監督署長への届出が不要です。

それでも、無ければ労働基準監督署の監督(調査)が入ったときには指摘されますから、一斉に休憩を取らせない事業場では、労使協定書を作成して保管しておきましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

三六協定書すら届出していない会社もありますが、必要な労使協定が無いのは違法ですから、一度、信頼できる社労士にご相談のうえ、作成して保管しておくことを強くお勧めします。

 

解決社労士

2021/01/02|1,112文字

 

<就業規則の有効性>

裁判所の判断によると、就業規則はその変更を含め、周知されていないと効力がありません。

これは、労働基準監督署長に届出をしていても同じです。

このことから明らかなように、届出が法令により義務づけられているものの、就業規則は届出で有効になるわけではなく、周知することによって有効になるのです。

知らないルールは守りようがありませんから、ある意味当然のことです。

 

<周知の意味>

「周知」という言葉は、本来、周(あまね)く=広く知らせるという意味です。

しかし、就業規則を有効にするために求められる周知は、一人ひとりの従業員がそれを読んて理解することではありません。

就業規則ができたこと、変更されたことだけ伝えておいて、あとは見ようと思えば見られる状態にしておけば良いのです。

たとえば、就業規則のファイルを休憩室やロッカー室に置いておくとか、パソコンやスマートフォンで見られるようにしておくのです。

ただし、アルバイトやパート社員などを含め、すべての従業員に見られるようにしておく必要があります。

 

<事業の拠点が複数ある場合>

本部の他に営業所や店舗など、会社の事業の拠点が複数ある場合には、すべての職場で就業規則を周知する必要があります。

周知されていない職場の従業員に対しては効力がありません。

そうした職場では、たとえば懲戒処分ができないことになります。

印刷した就業規則のファイルを置いておくのなら、本部だけでなく、すべての営業所や店舗などに置く必要があります。

そして、アルバイトでも気軽に見られるよう、休憩室などに置くのが普通です。

店長や所長の机の引き出しに入っていたのでは周知になりません。

就業規則をパソコンで見る形になっている場合には、アルバイトでも気軽に見られる状態にしておく必要があります。

正社員はパソコンを使えるけれども、アルバイトは触れないというのでは、アルバイトに対して周知になりません。

 

<会社目線の素人判断では>

「就業規則の変更は社員に知らせなくても労働基準監督署長に届け出れば有効」「まず届出をしてから社員に知らせるのが正しい」という誤解は生じやすいものです。

就業規則に限らず、「うちは昔からこれでやっている」ということで、毎回、間違いを繰り返していたり、法改正を知らずに違法な状態から抜け出せずにいたりということもあります。

顧問社労士は、社内に労働法違反の点が無いか、もし労働基準監督署の監督(調査)が入ったらどの部分の違法を指摘されるか、あるいはどのような改善を求められるかというチェックも行っているはずです。

少しでも不安に感じることがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/01/|1,382文字

 

<「やむを得ない」の意味>

「やむを得ない」の「やむ」は「やめる」、「得ない」は「できない」という意味ですから、「やむを得ない」の意味は、「そうするよりほかに方法がない。しかたがない」という意味になります。

「やむ負えない」「やむ終えない」「やむ追えない」などの誤った表記も見られますが、これらは「やむおえない」ですから、そもそも誤りです。

「やもおえない」「やもうえない」という誤りも、耳にすることがあります。

かつては、「已むを得ない」と表記されていましたが、当用漢字で「止むを得ない」が一般的になりました。

 

<労働基準法の「やむを得ない」>

労働基準法により、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することは、犯罪となり罰則の適用もありえます。

しかし、「やむを得ない」事由のために事業の継続が不可能となった場合には、犯罪にはなりません。

 

【解雇の予告:労働基準法第20条第1項】

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

 

条文には、「やむを得ない」事由の例として、天災事変が示されています。

簡単に「やむを得ない」と判断できないことは明白です。

実際、通達(昭和63年3月14日 基発150号、婦発47号)には、「やむを得ない」場合に該当する例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ない場合の例】

・事業主の故意や重大な過失に基づかず、事業場が火災により焼失した場合

・震災によって工場、事業場の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能となった場合

 

反対に、「やむを得ない」とはいえない場合の例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ないとはいえない場合の例】

・国税の滞納処分を受け事業廃止となった場合

・取引先が休業状態となり、これが原因で事業が金融難に陥った場合

 

<コロナ禍による場合>

コロナ禍による業績の落ち込みから、正社員の整理解雇や非正規社員の雇い止め等を検討している企業もあります。

事業の継続が不可能となった場合には、コロナ禍が「やむを得ない」事由に該当するといえるのかが問題となります。

しかし、現時点では、厚生労働省などから、コロナ禍により事業の継続が不可能となった場合について、何らかの発表は見られません。

むしろ、助成金・補助金の特例、融資の拡大、税制上の措置、社会保険料の特例軽減などの緊急対応策により、事業の継続を維持するように促している状態です。

少なくとも、これらの緊急対応策を利用し尽くしてもなお、事業主の責任を問われない原因で、事業の継続が不可能となった場合でなければ、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することが許される「やむを得ない」事由があったとは、認められないのではないでしょうか。

さらに、コロナ禍による業績の落ち込みを理由とする解雇は、整理解雇にあたります。

整理解雇が有効となるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

まずは、希望退職者の募集や退職勧奨など、労使の合意によって可能な対応を優先することをお勧めします。

 

解決社労士

2020/12/31|1,422文字

 

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの有効要件が含まれています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから、懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけです。

会社目線の素人判断ではいけません。社会目線の法的判断が必要です。

具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

解雇を検討する最初の段階でご相談いただければ、時間、労力、経費、人件費、精神力を大幅に削減できます。

 

解決社労士

2020/12/30|1,239文字

 

<かたり調査>

国の調査名をかたって不正に情報を収集する「かたり調査」にはご注意ください。

ネットであれこれ調べてみれば、ニセモノは判断がつきます。

心配なら、総務省に確認するのが確実です。

 

<回答の義務>

統計調査の案内文には、「協力してください」という書き方がしてあります。

しかし、統計法第13条では、国の重要な統計調査である基幹統計調査について、「個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる」と規定しています(報告義務)。

また、同法第61条では、「報告を拒み、又は虚偽の報告をした者」に対して、「50万円以下の罰金に処する」と規定しています。

これらの規定は、個人情報保護法に優先して適用されます。

罰則の規定はともかく、国の重要な統計調査ですから協力しましょう。

なお、基幹統計調査以外の統計調査はアンケートですから、原則として回答は任意です。

 

<調査対象事業所の選定方法>

すべての事業所を対象とする調査を除き、全国の縮図となるように一定の精度を保つ標本数を確保しつつ、無作為に事業所を選ぶ方法を採っています。

つまり、くじ引きに当たったようなものです。意図的に選ばれるわけではありません。

 

<秘密の保護>

調査対象となった人や法人には調査に回答する義務がある一方、安心して調査に回答できるよう、調査員を始めとする調査関係者に対しては、調査で知り得た内容について秘密を保護することが統計法第41条で規定されています。

また、この法律では、第39条で調査票情報を適正に管理すること、第40条で調査票情報を統計調査の目的以外に使用してはならないことがそれぞれ規定されています。調査関係者に対しては、これらの規定を厳守するよう指導を徹底しています。

ですから、税金徴収の資料として流用されたり、労働基準監督署の監督に利用されたりすることもありません。

 

※次に示すものは、国の基幹統計調査です。

•国民経済計算

•国勢統計

•住宅・土地統計

•労働力統計

•小売物価統計

•家計統計

•個人企業経済統計

•科学技術研究統計

•地方公務員給与実態統計

•就業構造基本統計

•全国消費実態統計

•社会生活基本統計

•経済構造統計

•産業連関表

•人口推計

•法人企業統計

•民間給与実態統計

•学校基本統計

•学校保健統計

•学校教員統計

•社会教育統計

•人口動態統計

•毎月勤労統計

•薬事工業生産動態統計

•医療施設統計

•患者統計

•賃金構造基本統計

•国民生活基礎統計

•生命表

•社会保障費用統計

•農林業構造統計

•牛乳乳製品統計

•作物統計

•海面漁業生産統計

•漁業構造統計

•木材統計

•農業経営統計

•工業統計

•経済産業省生産動態統計

•商業統計

•ガス事業生産動態統計

•石油製品需給動態統計

•商業動態統計

•特定サービス産業実態統計

•経済産業省特定業種石油等消費統計

•経済産業省企業活動基本統計

•鉱工業指数

•港湾統計

•造船造機統計

•建築着工統計

•鉄道車両等生産動態統計

•建設工事統計

•船員労働統計

•自動車輸送統計

•内航船舶輸送統計

•法人土地・建物基本統計

 

解決社労士

2020/12/29|966文字

 

<基本的な資質不足>

仕事をサボるような人は、採用しないのが一番です。

採用面接の段階で、次のような傾向が見られる人は、サボり癖のあることが疑われますので、よく観察して怪しければ採用を見送るのが得策です。

・履歴書の文字が乱雑

・履歴書の文字が抜けている

・濁点や半濁点が付いていない

・カタカナのコとユ、シとツ、ナとメ、ソとリとンが書き分けられない

・身だしなみがルーズ

・態度が馴れ馴れしい

履歴書については、作成に制限時間は無いですし、何度でも再確認できるわけですから、ここで手を抜いている人は仕事でも手を抜きます。

 

<労働時間の把握>

労働時間の把握が大雑把な会社でサボるのは簡単です。

そうでなくても、たとえば労働基準法に従い、事業場外労働のみなし労働時間制が適用されている社員については、使用者の指揮監督が十分に及びません。

本当にみなし労働時間制が必要か、再検討の余地があります。

また、労働時間の適正な把握は、使用者に義務付けられています。

そして、この義務を果たすため、社員にも協力を求めることができます。

ですから、社員にも一定の義務を課しつつ、労働時間の把握をきちんとしましょう。

具体的には、電話やメールでの定時報告、日報の活用などが考えられます。

 

<適正な人事考課>

たとえサボっていても、十分な営業成績を維持していれば、勤務態度の悪さで他の社員に対する悪影響はあるものの、大目に見ることもできるでしょう。

しかし、サボりは営業成績の低下となって現れることが多いものです。

適正な人事考課を行い、給与や賞与などに反映させることができるように、仕組を整えましょう。

サボってもサボらなくても、成果を上げても上げなくても、給与や賞与に大きな差が出ないのなら、サボりたくなるのは当然です。

 

<人事異動との関係>

営業部門に異動となった時から、開放感や自由を感じてでしょうか、サボり出す社員もいます。

この場合には、再び内勤に戻すことを打診し、改善が見られなければ、実際に異動させるしかないでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

GPSを使うなど厳格な管理は、社員の反発を招き、士気が低下するかも知れません。

それぞれの職場に合った仕組みの導入・活用と社員教育については、信頼できる社労士にご相談ください。

サボりを無くして、生産性を向上させましょう。

 

解決社労士

2020/12/28|1,220文字

 

<育児休業中の勤務>

育児・介護休業法上の育児休業は、労働者が子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度です。

ですから、休業期間中に就労することは想定されていません。

しかし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主のもとで就労することはできます。

雇用保険の育児休業給付金を受給中の労働者の場合、就労が月10日以下であれば、育児休業給付金が支給されます。

また、10日を超えて就労する場合でも、月80時間以下であれば同様です。

一方で、恒常的・定期的に就労させる場合は、育児休業をしていることにはなりませんので、育児休業が終了したことになります。

 

<一時的・臨時的勤務の注意>

上記のような例外が認められる場合であっても、事業主の一方的な指示により就労させることはできません。

労働者が自ら事業主の求めに応じ、労使で合意することが必要です。

また、合意が得られず一時的・臨時的就労が行われなかった場合、育児休業中に就労しなかったことを理由として、事業主が不利益な取扱いをしてはなりません。

むしろ事業主は、上司や同僚からのハラスメントが起きないように、雇用管理上必要な措置を講ずる必要があります。

 

<一時的・臨時的勤務の例>

育児休業が終了しないような一時的・臨時的就労の例として、厚生労働省は、次のようなものを挙げています。

これらは例示ですから、他にも一時的・臨時的就労に該当する場合があります。

 

1.育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合 2.労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合

 

3.労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合

 

4.災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合

 

5.労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合

 

いずれも、他の人では代わりを務められない能力が求められるような業務について、客観的な必要性が認められる場合であると考えられます。

 

解決社労士

2020/12/27|1,276文字

 

<試用期間>

試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和441212日三菱樹脂事件判決〕

しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、ついでに語っただけです。

試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。

結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりは無く、両者の違いを明確に説明することはできません。

それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。

 

<社会保険の加入基準>

週所定労働時間が正社員(フルタイムで働く正規職員)の4分の3以上で、月間所定労働日数も4分の3以上であれば、社会保険の加入基準を満たします。(特定適用事業所を除きます)

会社によって、正社員の所定労働時間・日数は違いますから、この基準は会社ごとに違うわけです。

加入の手続を怠っていても、条件を満たすとともに加入したことになります。

そして、試用期間と本採用後とで加入基準の違いはありません。

基準を満たしている限り、試用期間の初日から社会保険に加入していることになります。

 

特定適用事業所とは、同一事業主(法人の場合はマイナンバー制度の法人番号が同一)の社会保険適用事業所の被保険者数(社会保険加入者数)が、1年で6か月以上500人を超えることが見込まれる法人・個人の事業所のことをいいます。 特定適用事業所は、平成28(2016)10月の健康保険・厚生年金保険の適用拡大により区分されました。

 

<年金事務所の指導>

算定基礎届提出時の調査の際には、試用期間中に社会保険の加入手続をせず、本採用時に手続をしている事業所に対して、試用期間の初日に遡って加入手続をするよう、年金事務所の職員の方から指導があります。

そして、判明している社員については、遡って手続をするための書類も作成して、代表印の捺印もさせています。

こうして不足する期間の保険料については、他の社員の保険料とまとめて支払うことになります。

「でも、試用期間は社会保険に入れたくないのですが」というお話に対して、年金事務所の職員の方は、「それでは、試用期間中は1日の勤務時間や1か月の勤務日数を少なくして、社会保険の加入基準を満たさないようにしてください。それしかありません」という明快な説明をしています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社会保険のルールは、基本的に全国統一でなければ不公平が発生してしまいます。

ですから、会社オリジナルのルールで運用できる範囲は、極めて限られているのです。

そして、会社オリジナルのルールで運用したことによって、不利益が発生したことに気付いた退職者から申し出があれば、その損失を補てんすることになりかねません。

自社で行っていることに不安を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/26|1,384文字

 

<算定基礎届提出時の調査>

6月中旬、会社宛に算定基礎届の用紙、総括表などが郵送で届きます。

このとき、提出日時を指定する内容のお手紙が同封されていることがあります。

一般には、算定基礎届関係の書類は事務センターに郵送するのですが、提出日時を指定された場合には、管轄の年金事務所に持参ということになっています。

提出にあたっては、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、源泉所得税領収証書などの書類や事業主印を持参するように案内されています。

そして、お手紙には「調査」という文字が入っていて、驚いてしまうかもしれません。

何か不正を疑われているのか、怪しいと思われているのか、なぜ自分の会社が対象となったのかについての説明はありません。

実は、3年から5年に1回の間隔で、すべての事業所が調査対象となっています。

無作為抽出ですから、年金事務所が何かの意図をもって選んでいるわけではありません。

 

<調査の趣旨>

お手紙には、調査の趣旨として「社会保険適用の適正化」とだけ書かれています。

具体的には、次のような点が調査の対象となっています。

・社会保険の加入条件を満たす人について加入の届出があるか

・社会保険の加入条件を満たしていない人が加入扱いになっていないか

・加入したときの報酬の届出の金額が正しいか

・算定基礎届の内容が正しいか

・報酬が大きく変動して一定の条件を満たした場合の届出があるか

これらの手続について、税理士などに頼んでしまっている会社もあります。

しかし、税理士は年度単位で集計するのに対し、算定基礎届以外の手続は日常的に発生します。

そもそも、税理士の仕事ではなくて、社会保険労務士でなければ業務として行えない手続なのです。〔社会保険労務士法第27条〕

ですから、こうした手続を顧問の税理士などが、きちんとできなくても仕方が無いですし、そもそも頼んではいけないのです。

 

<不備が見つかった場合>

手続の誤りや不足を指摘されると、さかのぼって正しい手続を行うことになります。

保険料についても、支払い過ぎは還付されますし、不足はまとめて徴収されます。

社会保険料は高いですから、まとめて徴収されるのは辛いです。

反対に還付されるのも、無利子で多額の金銭を貸し付けていたようなものですから喜べません。

社会保険というのは条件を満たせば自動的に加入しています。

手続をしていないのは、手続をサボっているだけで、加入手続をしなければ加入しないことになるわけではありません。

赤ちゃんが生まれた時、出生届を出さなければ戸籍が無いだけで、赤ちゃんの存在が否定されるわけではないのと似ています。

 

<書類の追加郵送>

調査に必要な書類が不足している場合には、後から管轄の年金事務所に郵送するよう求められます。

そもそも調査の具体的な趣旨が示されていませんので、どのような書類が必要なのか、本当のところはわからなかったわけですから仕方ありません。

もっとも、調査の趣旨を良くわかるようにして案内を出していたら、多くの会社は尻込みしてしまうでしょう。

調査の趣旨を具体的に示さないのは、それなりの意図があるのかもしれません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

算定基礎届の提出日時を指定されたら、相談相手は税理士ではなくて社労士です。

このことは、税理士に確認すればすぐにわかります。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/25|1,208文字

 

<小学校休業等対応助成金・支援金>

厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症に関連して、小学校等の臨時休業等により仕事を休まざるをえなくなった保護者を支援するため、正規雇用・非正規雇用を問わない助成金制度(新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金)、委託を受けて個人で仕事をする人向けの支援金制度(新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金)を創設し、令和2(2020)年2月27日以降に取得した休暇等について支援を行っています。

これまでも、助成金・支援金の上限額等の引き上げや、対象期間の延長が行われてきましたが、令和2(2020)年12月18日、厚生労働省は、上記助成金・支援金について、新たに対象期間の延長、申請期限等に関する情報を公表しました。

 

<新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金>

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、小学校等が臨時休業した場合等に、その小学校等に通う子の保護者である労働者の休職に伴う所得の減少に対応するため、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給の休暇(労働基準法の年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対する助成金です。

企業は、この助成金を活用し、有給の休暇制度を設け、年次有給休暇の有無にかかわらず利用できるようにすることで、保護者が希望に応じて休暇を取得できる環境を整えるよう努力することが求められています。

 

<助成金の額>

有給の休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額の全額が助成されます。

具体的には、対象労働者1人につき、対象労働者の日額換算賃金額×有給の休暇の日数で算出した合計額を支給します。

ここで、「日額換算賃金額」とは、各対象労働者の通常の賃金を日額換算したものをいいます。

これには上限があり、令和2(2020)年3月31日までの休暇については8,330円、これ以降は15,000円となっています。

なお、対象となる休暇取得の期間が延長され、令和2(2020)年2月27日から令和3(2021)年3月31日までの間に取得した休暇についても支援の対象となる予定です。

 

<助成金の申請期限>

令和2年2月27日から9月30日までの休暇分は、令和2年12月28日が申請期限です。

令和2年10月1日から12月31日までの休暇分は、令和3年3月31日が申請期限です。

令和3年1月1日から3月31日までの休暇分は、令和3年6月30日が申請期限です。

ただし、次のようなやむを得ない事情がある場合には、申請期限経過後に申請することが可能です。

Ⅰ.労働者からの労働局の特別相談窓口への「(企業に)この助成金を利用してもらいたい」等の相談に基づき、労働局が事業主への助成金活用の働きかけを行い、これを受けて事業主が申請を行う場合

Ⅱ.労働者が労働局の特別相談窓口へ相談し、労働局から助言等を受けて、労働者自らが事業主に働きかけ、事業主が申請を行う場合

 

解決社労士

2020/12/24|1,227文字

 

<解雇は無効になりやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。会社にとっては、恐ろしい事態です。

10年余り前に施行された労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

不当解雇で処罰されることは無いですし、解雇を通告された人が納得すれば問題ありません。

納得がいかなくて、会社に損害賠償の請求をしたときに、初めて問題が表面化するのです。

 

<「客観的に合理的な理由」とは>

「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

ソーシャルメディアに悪質な投稿をした社員の解雇に「客観的に合理的な理由」が認められるためには、次のような要件が必要です。

・投稿された映像の内容が悪質であること

・会社にソーシャルメディアの利用に関するガイドラインが存在すること

・社員にガイドラインを遵守する旨の誓約書を書かせていること

・ガイドラインの遵守義務が就業規則に規定されていること

・ガイドライン違反についての懲戒規定があること

・ガイドライン遵守の重要性について十分な教育研修を行っていること

・ソーシャルメディアの利用に関し管理職が部下に注意指導していること

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社員が何か不都合な行為を行った場合でも、懲戒処分を行うには、それなりの準備が必要だということです。

ましてや、懲戒解雇ともなれば用意周到である必要があります。

対象者から争われ、不当解雇とされた場合のダメージは、かなり大きいものがあります。

他のケースを含め、必要に応じて適正な懲戒処分が行えるようにしておくためには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

<余談>

パソコンのデータが消えた時のために、データのバックアップを取っておくことは、多くの会社で行われています。

しかし、パソコンが立ち上がらなくなった時のために、再セットアップディスクなどを作成しておくことは、意外とされていません。

面倒に思われても、予め準備しておくことは大事だと思います。

「備えあれば患いなし」というのは、懲戒処分と共通するものがあります。

 

解決社労士

2020/12/23|980文字

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決めたり、個人ごとに労働契約で決めたりできるのではなく、客観的に決められている定義です。

 

<直行直帰の場合の労働時間>

会社に立ち寄らず、直接工事現場などに行き、そこから直接帰宅する場合には、自宅から現場までの移動時間と現場から自宅までの移動時間が、使用者の指揮命令下に置かれない状態のことがあります。

この場合には、現場での勤務時間が労働時間ということになります。

ですから、なんとなく移動時間を労働時間に含めて賃金を計算しているのであれば、会社の人件費負担がその分だけ多めになっている可能性があります。

 

<労働時間となる場合>

直行直帰の移動時間でも、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価され、その時間に対する賃金の支払が必要な場合も多いものです。

たとえば、次のような場合には労働時間となります。

・使用者から自宅を何時に出発するかを指示されている場合

・一度会社に立ち寄ってから現場に向かう場合の会社から現場までの移動時間

・移動中に同僚と仕事の打合せをするように使用者から指示されている場合

・一緒に移動するメンバーの中に行動や時間の管理をする者がいる場合

・使用者から移動中に物品の監視をするように指示されている場合

 

<黙認で労働時間となるケース>

たとえば、使用者から移動中の打合せを指示していなくても、それがなんとなく自主的に行われていて、使用者側がこれを知りつつ見て見ぬふりをしていたら、黙示の指示があったものとみなされ、労働時間になってしまう場合もあります。

複数のメンバーで直行直帰する場合には、「仕事の話などせず趣味の話でもしながらくつろいで過ごしなさい」ということになっていれば、労働時間にはならないわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働時間に含まれるかどうかは、専門的で客観的な判断が必要になりますから、就業規則に定めるなどルール化する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

後になってから、未払賃金を請求されると、消滅時効の期間も2年間から3年間に延長されましたし、一度に予定外の出費が発生しますから注意したいところです。

 

解決社労士

2020/12/22|2,411文字

 

<働き方改革>

平成31(2019)年4月に、長時間労働是正を中心とする働き方改革関連法が施行されました。

また、令和2(2020)年4月には、パートタイム・有期雇用労働法が大企業に施行され、労働者の待遇の在り方の見直しが進められています。

しかし、令和2(2020)年2月頃からは、こうした法改正への対応よりも、新型コロナウイルス感染拡大を防止するための対策に追われるようになりました。

これによって、働き方に大きな変化が生じ、働き方改革が一気に進んだ部分もあります。

 

<時差通勤>

令和2(2020)年3月から 4月上旬にかけて時差通勤の取組が拡大されました。

感染拡大を防止するためには、ソーシャルディスタンスが必要とされます。

時差通勤は、満員電車の過密を避ける取組です。

LINEによる全国調査によると、時差通勤を実施した人は2月19日調査で5%だったのが、3月2日調査では19%と増加しました。

緊急事態宣言が発出された4月7日より後の4月16日の調査では、19%のまま維持されています。

また、3月に行われた東京商工会議所による会員企業調査でも、時差通勤の実施企業割合は56.5%と高い数字を示しています。

規模が大きい企業ほど、実施率が高い傾向にありますが、50人未満の企業でも実施率は43.9%を示しています。

4月の調査では、企業数では半数程度、従業員数では2割弱が時差通勤をしていることが示されました。

緊急事態宣言が解除された5月25日以降も、利用者数は増加したものの、8月中旬以降は横ばいの傾向にあります。

これは、時差通勤を利用していた人の一定数が、テレワークや自宅勤務に移行していることが推測されます。

 

<テレワークの拡大>

内閣府個人意識調査によると、テレワーク希望者は39.8%に上り、実際のテレワーク率の34.6%を上回っています。

これは、日常業務の中に、さらにテレワークを取り込みたいという意向が示されていることになります。

一方で、自分の仕事はテレワークに合わない職種だと回答した人が、就業者全体で58.7%いることも事実です。

ただ、テレワーク経験者では、テレワーク未経験者よりも、テレワークに合わないと回答している人の割合が低いので、実際にやってみれば対応可能なことが多いかもしれません。

テレワークの不便な点としては、「社内での気軽な相談・報告が困難」や「画面を通じた情報のみによるコミュニケーション不足やストレス」といった、技術の活用や業務上の工夫では解決が難しいものがある一方、「取引先等とのやり取りが困難(機器、環境の違い等)」や「セキュリティ面での不安」、「テレビ通話の質」など、技術的に改善する余地があるものも多く挙げられています。

また、テレワークの利用拡大が進むために必要なものとして、「社内の打合せや意思決定の仕方の改善」、「顧客や取引先との打合せや交渉の仕方の改善」、「社内外の押印文化の見直し」、「仕事の進捗状況の確認や共有の仕方の改善」といった社内外の慣行を見直すことが必要なものや、「社内システムへのアクセス改善」といった設備投資が必要なもの、「書類のやりとりを電子化、ペーパーレス化」といった両方の変革が必要なものが挙げられています。

 

<労働時間の減少による生活の変化>

働き方改革は、長時間労働の是正等を通じたワーク・ライフ・バランスの改善を目指しています。

令和2(2020)年の前半は、感染症の影響もあり労働時間と通勤時間の両方が減少しています。内閣府個人意識調査(新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査14)によると、労働時間と通勤時間の減少により、家族と過ごす時間が増える傾向にあることが示唆されています。

 

<同一労働同一賃金>

令和2(2020)年 4月より、大企業でパートタイム・有期雇用労働法が施行され、同一労働同一賃金の導入が開始されました。

同一労働同一賃金は、同一企業・団体での「正社員」(無期雇用フルタイム労働者)と「非正規雇用労働者」(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指しています。

厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、令和2(2020)年夏の特別給与(6-7月平均)は、一般労働者が-3.8%と減少し、204,388円となったものの、パートタイム労働者は前年比18.2%と増加し、6,333円となっています。

これは、パートタイム労働者に対しても、賞与が支払われるようになった事業所が増加したことを示唆しています。

しかし、所定内給与の格差是正は、明確な傾向が見られません。

 

※ここまでの参考文献:内閣府 令和2年度年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)

 

<コロナ対策と働き方改革>

新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、時差通勤やテレワークの導入が進み、通勤時間を含む労働時間が減少傾向にあります。

これは、必ずしも働き方改革の推進を意図したものではなく、コロナ対策によって、働き方改革の目指す結果が部分的に生じたものと考えられます。

一方で、同一労働同一賃金は、コロナ対策とは別に、意図して取り組まなければ進まない課題ですが、賞与(特別給与)について多少進んだことが示唆されています。

働き方改革の側面から眺める限り、コロナ対策が働き方改革の推進にとってプラスに働いたといえます。

しかし、その裏で、整理解雇、非正規雇用労働者の雇い止め、内定取消、正社員の待遇の不利益変更など、望ましくない動きも見られます。

少子高齢社会で労働力を確保するために、働き方改革の推進という政策が打ち出されたわけですから、雇用の確保を置き去りにして、表面的に働き方改革を追うのは本末転倒です。

助成金の活用や、期間限定の在籍出向を行うことで、雇用を確保しつつ、働き方改革を推進することが企業に求められています。

 

解決社労士

2020/12/21|1,289文字

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、解雇権の濫用となれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

施行されてから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<「客観的」の落とし穴>

客観的に合理的な理由を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。

しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。

会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。

また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。

ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。

あくまでも、客観的に合理的な理由が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。

 

<客観的に合理的な理由>

客観的に合理的な理由とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

解雇の客観的に合理的な理由となりうるものとしては、次のものが挙げられます。

まず、労働者の著しい能力不足や協調性不足です。

これは、会社側が十分な教育指導を行っていることが前提となります。

教育指導をせずに、会社が能力不足や協調性不足を主張することはできません。

つぎに、労働者が正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返していることです。

ただし、長時間労働や過重労働などで疲労が蓄積しているような場合には、会社に落ち度があるので客観的に合理的な理由にはなりません。

さらに、労働者の不法行為や反社会的行為は、客観的に合理的な理由となりえます。

しかしこれは通常、懲戒解雇でしょうから、就業規則に具体的な規定があることや、対象社員が十分な弁明の機会を与えられるなど、厳格な条件を満たし適切な手順を踏んでいる場合に限り可能です。

そして、会社が解散するような場合には、「客観的な合理性」が認められるのが原則です。

会社の経営不振による整理解雇であれば、対象者の選択基準の合理性が問題とされます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「客観的」というのがネックになり、社内で検討し結論を出すのはリスクを伴います。

解雇を検討する場合には、なるべく早く、客観的な第三者である社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/20|1,127文字

 

<常識的な判断>

社員が詐欺や傷害などの刑事事件を起こし、警察のお世話になって、テレビのニュースに出たような場合、「常識的」な判断からは、懲戒解雇が当然であり、解雇にならないのは非常識だと考える人もいるでしょう。

しかしこれは、会社目線の素人判断です。

「ごめんで済めば警察は要らない」のと同じように、「常識で済めば法律は要らない」のです。

そして労働者は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されていますから、たとえ犯罪に走った場合でも、簡単には解雇が認められないのです。

この場合、会社が解雇を通告しても、解雇は無効になります。

「不当解雇」とされるわけです。

 

<懲戒解雇が有効となる場合>

まず、社員の行為が懲戒事由にあたることが必要です。

懲戒事由にあたるといえるためには、就業規則に具体的な規定があるか、労働条件通知書や雇用契約書にその旨が定めてあることが必要です。

会社が法定の就業規則や労働条件通知書などの作成を怠っていれば、そもそも懲戒解雇ができないことになります。

またその懲戒が、労働者の行為の性質や態様その他の事情から、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることも必要です。〔労働契約法第15条〕

さらに、犯罪行為を行ったことの証拠も必要です。マスコミによって報道されても、犯罪の証拠があるとは限りませんから要注意です。

特に、本人が犯行を否認していて、本当に犯罪が行われたかどうかが明らかでない場合には、犯行があったことを前提として懲戒処分を行うことは危険です。

懲戒処分は、あくまでも確実な証拠から認定できる事実に基づいて行わなければなりません。

この他、犯罪が軽微なものであり、懲戒処分を行うにしても解雇は行き過ぎという場合もあります。

そして、勤務時間外の犯罪行為であれば、私生活上の行為を理由として懲戒処分を行うことになりますから、懲戒処分が正当化されるのは、会社の名誉や信用などの社会的評価を大きく侵害するような場合に限定されます。

 

<会社によっても違う>

懲戒解雇の有効性について裁判では、会社の事業の種類、態様、規模、経済界に占める地位、経営方針、対象社員の会社での地位や職種など、あらゆる事情から総合的に判断して、犯罪行為による会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価できるかどうかという観点から判断されています。

 本当に懲戒解雇にしても大丈夫なのか、懲戒解雇にできない場合にはどうするのか、退職金の支給はしなくても大丈夫なのか、後任はどうするのか、社内への説明はどうするのかなど、検討すべきことは多岐にわたります。

会社としての対応を検討する場合には、一刻も早く、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/19|1,133文字

 

<報告書作成の負担>

個人差はあるものの、報告書の作成には、それなりの時間と労力がかかります。

報告書の無駄を省けば、人件費の削減となり、生産性が向上し、一方で社員のストレスが軽減されます。

つまり、メンタルヘルス対策にもなるのです。

 

<報告書の種類>

日報、週報、月報という時間の区切りにより、報告書の内容が異なってきます。

日報は毎日作成するので、作成者の負担が重く人件費もかかります。

月報は作成者の負担が軽い一方で、情報の伝達が遅くなる可能性があります。

本当に毎日の報告が必要なのか、毎週の報告が必要なのか、項目ごとに見直しをかけてみましょう。

 

<報告書の内容>

そのタイミングで数字は必要か、翌日ではダメなのか、感想は必要か、事実だけではダメなのか、見直すポイントが最も多いのは報告書の内容です。

その内容が必要だとしても、その報告書の中に必要なのか、別の資料に移した方が良いのではないかを検討してみましょう。

 

<手書きかパソコンか>

パソコンを使って報告書を作成するのが、当たり前になっています。

しかし、手書きなら30分で作成できる報告書を、パソコンで3時間かけて作っていたら、おそらく無駄な残業時間が発生しています。

なにより、作成者のストレスが半端ではありません。

どうしてもパソコンが苦手な社員には、手書きで報告書を作成させましょう。

メールで送信する必要があるのなら、誰かがスキャンしてメールに添付すれば良いだけです。

 

<報告書作成の時間帯>

営業社員などが帰社後に報告書を作成するパターンは多いものです。

しかし、翌日や翌々日に作成してはダメなのでしょうか。

帰社後に報告書を作成したら、その時間は丸々残業時間になります。

「営業手当」を支給しているから残業代を支払わないというのは、ブラック企業のやることです。

持ち帰って自宅で書かせるのも、残業時間となります。

その時間に対する割増賃金を支払わないのも、これまたブラック企業のやることです。

しかし、翌日の手空き時間や移動時間に書かせるのなら、残業時間とはなりにくいでしょう。

たしかに、仕事の密度が上がって辛いかもしれませんが、本人にとっても長時間労働の予防になりますし、会社にとっては人件費の削減になります。

 

<報告書作成のための教育>

短時間で優れた報告書を作成できるよう、社員教育も大事です。

教育にお金と時間をかければ、何倍にもなってかえってきます。

「飢えた人に魚を与えれば、一日の飢えから救うことができる。代わりに魚の釣り方を教えれば、一生の飢えから救うことができる」という名言があります。

どうしても社員教育が後回しになります。

しかし、これでは会社の成長が望めません。

働き方改革のためにも、一人ひとりの能力向上は重要です。

 

解決社労士

2020/12/18|1,300文字

 

<パワハラ教育の充実>

パワハラ防止のための社員教育が、中小企業でも進んできています。

そうした中で、昔のことについて「あの行為はパワハラだったのでは?」という疑問も出るようになってきています。

昔のパワハラ行為を、懲戒処分の対象とすることはできるのでしょうか。

 

<刑罰不遡及の原則>

今現在の就業規則に、問題とされるパワハラ行為について、具体的な懲戒規定があるとしても、昔の行為当時に規定が無かったならば、さかのぼって懲戒規定が適用されることはありません。

これは、刑罰不遡及の原則によるものです。〔日本国憲法第39条〕

 

<時効の問題>

労働基準法や民法は、賃金・退職金などの請求権について、消滅時効期間を定めています。

しかし、懲戒処分は請求権ではないので、消滅時効の適用はありません。

また刑事訴訟法には、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴が提起できなくなるという、公訴時効についての規定があります。

しかし、これは国家が刑罰を科す場合の規定ですから、民間企業の懲戒処分には適用されません。

今でも、遅刻すると罰金3,000円などブラックな話も聞かれますが、民間企業が従業員に罰金を科すということなど、あってはならないことです。

結局、懲戒処分に時効期間の規定は無いのです。

 

<民法の基本原則>

時効が無いのだから、どんなに昔のことでも懲戒処分の対象となりうるというのでは、安心して勤務できません。

労働契約も契約の一種ですから、民法の信義誠実の原則や権利濫用の禁止があてはまります。

「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」〔民法第1条第2項〕

「権利の濫用は、これを許さない」〔民法第1条第3項〕

ということで、あまりにも昔のことを持ち出して懲戒処分を行うのは、不誠実で懲戒権の濫用となり無効であるというのが結論となります。

 

<裁判では>

最高裁の裁判では、7年前の暴行を理由に懲戒解雇処分を行ったのは、懲戒権の濫用であり無効であるという判決があります。

1審では解雇無効、2審では解雇有効、そして最高裁で解雇無効という判断でした。

最高裁は、会社が警察の判断を待っていて懲戒処分のタイミングを見失ったという主張を退け、会社には懲戒処分を行うチャンスがあったのに怠っていたと判断したのです。

また、そこまでひどい暴行ではなく、解雇は行き過ぎだとも言っています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社に懲戒規定を置く目的として、次のようなものが挙げられます。

・懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正する。

・懲戒が行われることで、他の社員は道義感が満たされ安心して働ける。

・懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できる。

・懲戒規定があることで、社員全員が不正行為を思いとどまる。

一般には、行為者を懲らしめる目的だけがクローズアップされがちですが、他の目的も重要です。

こうした目的からすると、タイムリーな懲戒処分が必要なわけですが、会社としては懲戒権の濫用を指摘されないよう、慎重に行う必要もあります。

懲戒処分を検討するのでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/17|1,383文字

 

<不足している3つの力>

経営者が労務管理のプロであるか、人事部門に専門家がいるような会社ではない限り、社内で労働トラブルが発生すると必然的にこじれます。

それは、解決に必要な情報収集力、専門的判断力、情報伝達力の3つが不足しているからです。

 

<情報収集力>

われわれ人間を含め、生物が何か判断するためには情報が必要です。

どんなに優れた経営者でも、社員から正確な情報が得られなければ、経営についての重要な判断を誤ってしまいます。

そして、具体的な労働トラブルの解決に必要な情報が何であるかは、それぞれの内容に応じた専門性の高い判断力が備わっていなければ判らないことです。

やみくもに関係者から事情を聞いても、時間、労力、人件費、経費、精神力が消耗されるだけです。

なるべく早く信頼できる社会保険労務士(社労士)に相談して、社内で集める情報だけでなく、法令やその解釈、通達、裁判例など、必要な情報を確定し速やかに手分けして収集することが必要です。

その集め方も大きなポイントです。

社員に対して下手な聞き取り調査をしてしまうと、重要な証拠が消滅したり、人権侵害の問題が発生したりします。

これについても、社労士にノウハウを確認しておくべきですし、法令やその解釈、通達、裁判例などは、情報収集を社労士に任せておくべきです。

 

<専門的判断力>

社内で判明した事実を就業規則や法令に当てはめて、経営者や人事部門の責任者が、自分の中の常識に従い独自の解釈に基づく判断を示すことがあります。

多くの場合には、参照すべき条文が的外れですし、会社に都合の良い解釈をしているものです。

「こうも取れるからOKじゃないか」というのが最も危険です。

会社目線の素人判断では、労働トラブルがこじれて当然です。

判断基準は、あくまでも裁判官目線であることが必要ですから、専門知識のある弁護士や社労士に相談する必要があります。

 

<情報伝達力>

適切な情報収集と、適正な専門的判断によって、解決の指針が見えたとします。

しかし、これを会社側から労働者側に上手く伝えることができず、逆にこじれてしまうことがあります。

「会社で改めて事実を確認したところ、あなたを解雇したことに落ち度はありませんでした」ということを上手に伝えることができず、あっせん、労働審判、訴訟へと発展してしまうのです。

最終的には、会社側の正当性が認定されるにしても、やはり時間、労力、人件費、経費、精神力の消耗は大変なものです。

これには、会社側の情報伝達力不足よりも、労働者側の情報伝達力不足が大きく関わっています。

労働者から会社に何を伝えたいのか、そもそもどうして欲しいのか、何が不満なのか、どうだったら納得できたのか、この辺りが労働者自身で上手く表現できないのです。

自分自身の強い意志で会社に物申したのではなく、家族や友人の勧めで、思い切って会社に申し出をした場合には、特にこの傾向が強くなります。

こうした場合に、労働者側から何をどのように伝えてもらうべきか、会社をサポートすることによって、労働者側の情報伝達力不足を補うのも社労士の役割です。

 

<予防に優る解決なし>

ひとたび労働トラブルが発生すると、こじれずに解決を見るのは大変です。

保険の意味で顧問社労士を置いておき、トラブルを未然に防止するのが、結局は安上がりですし、会社成長のカギともなるでしょう。

 

解決社労士

2020/12/16|1,172文字

 

<空欄のある雇用契約書などの有効性>

雇用契約書や労働条件通知書などは、使用者から労働者に対して主要な労働条件を書面で通知するための書類です。

そして労働条件は、労働契約の中心的な内容となっています。

しかし労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、書面に不備があっても労働契約の効力には影響しません。〔民法第623条〕

たとえ雇用契約書や労働条件通知書が無くても、労働契約は有効に成立するのです。

 

<法定事項の通知義務>

労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。

1. 労働契約の期間(契約の更新の有無、更新がありうる場合の更新の条件)

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

さらに、パートタイマー(短時間労働者)や有期雇用労働者については、パート有期労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

つまり、これらの事項は労働条件通知書に漏れていても大丈夫です。

ただし、パートタイマー(短時間労働者)や有期雇用労働者については、パート有期労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<空欄があることによるトラブル>

労働条件通知書は、使用者の労働者に対する一方的な通知書ですから、1部だけ作成して労働者に交付すれば良い書面です。

この点が、雇用契約書とは違うところです。

しかし、もし空欄があった場合、交付を受けた労働者が勝手に空欄を補充すると、これがトラブルの元になります。

ですから、使用者もコピーを1部保存するのが良いでしょう。

また、労働条件通知書のひな形を使い、分からない項目は空欄にしておくというのも危険です。

決め方が分からないなど迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/15|1,065文字

 

<弁護士のアドバイス>

うつ病で休職していた社員が復職する場合、弁護士に相談すると、負担の軽い部署に配置転換して復職させるようアドバイスされる傾向にあるようです。

これは、会社として何かしらの対策を取らないまま、ただ単純に元の部署に同じ仕事で復職させたのでは、会社が責任を問われかねないと考えるからです。

休職していた社員に配慮し、何かアクションを起こすことによって、会社の責任は軽減されると考えるわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)のアドバイス>

ところが、同様のケースを社労士に相談すると、元の部署に復職させるようアドバイスされる傾向にあるようです。

これは、良く知った上司や同僚の中で慣れた仕事をする方が、別の仕事に移るよりも精神的な負担が軽いから、うつ病が再発しにくいと考えるからです。

うつ病が再発したり、悪化したりすれば、会社は責任を問われうるので、余計なアクションを起こさない方が、会社の責任は重くならないと考えるわけです。

 

<鳥取県米子市中学校教諭事件>(鳥取地裁平成16年3月30日判決)

うつ病で休職していた女性教諭が復職するに際して、中学校側が勤務の負担を軽減させる意図で、本校から分教室への配置転換を行いました。

この分教室は、県の設置する児童自立支援施設の中にあり、生徒数が少なく教諭2人で運営している小さな教室です。

この女性教諭は、「配置転換の当時、精神疾患、精神障害が完治しておらず、以前の勤務状況を続けるべきであったにもかかわらず、配転を受けた結果、精神的、肉体的苦痛を被ったもので、これは中学校長、米子市、鳥取県による不法行為であるから、損害賠償を請求する」として、鳥取地方裁判所に民事訴訟を提起しました。

その結果、「中学校長、米子市、鳥取県は各自33万円を女性教諭に支払うように」との判決が下されました。

 

<敗訴の原因>

この中学校長は、女性教諭本人と配置転換について相談していませんでした。

また、過去に分教室での生徒指導が負担となり、退職した女性講師がいたという事実を見落としていました。

さらに、専門医の意見を改めて確認することも怠っていました。

本当に女性教諭の事を考えるのであれば、第一に本人の考えを確認しておくべきでした。

ただ、職場の責任者が、うつ病で休職している人と会話することで、さらに病状を悪化させるリスクもありますから、できれば、専門医、弁護士、社労士などの第三者が間に入って話し合いを持つべきでした。

もし、職場にメンタルヘルス不調の従業員がいたら、なるべく早く信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/14|405文字

 

<戸籍の役割

戸籍は、人が、いつ誰の子として生まれ、いつ誰と結婚し、いつ亡くなったかなどの身分関係を登録し、その人が日本人であることを証明する唯一のものです。

戸籍が無いと、住民票やパスポートは、原則として作れません。

戸籍の証明ができないために、資格を取得できないこともあります。

親の遺産を相続する場合に、親子の証明ができないこともあります。

戸籍の無い人が子を産んだ場合に、その生れてきた子もまた無戸籍になってしまうことがあります。

 

<戸籍をつくるには>

戸籍の無い人が戸籍を作るには、まず、各都道府県の法務局の無戸籍相談窓口に電話します。

「無戸籍者の相談のことで」と言えばわかります。

電話せずに直接行っても大丈夫です。

戸籍の無い本人でなくても相談できます。

秘密は守られますから、気軽に相談できます。

そして、戸籍を作るために特別な手続が必要な場合には、そのための案内をしてもらえます。

こうして、戸籍がつくられます。

 

解決社労士

2020/12/13|1,939文字

 

<就業場所の法的規制>

労働基準法は、就業場所について直接には特別な規制をしていません。

しかし使用者は、労働契約の締結に際し、労働条件の1つとして就業場所を明示しなければなりません。〔労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条〕

また民法第484条第1項は、次のように規定しています。

 

【弁済の場所】

弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

 

弁済(べんさい)とは、債務者(または第三者)が債務の給付を実現することをいいます。

労務の提供は、特定物の引渡しではありませんから、労使で別段の合意が無ければ、使用者の事業所で労務を提供すべきことになります。

 

<就業場所の明示>

労働者の就業場所は、就業規則や労働条件通知書によって示されています。

就業場所を、原則として会社の施設としつつ、「会社は、必要に応じ在宅勤務を命じることがある」という規定がある場合には、会社がこれを根拠として、在宅勤務を命じたり、通常の就業場所に戻したりすることができます。

 

<在宅勤務の規定が無い場合>

在宅勤務の規定が無い会社で、コロナ禍をきっかけとして、労働者に在宅勤務を命じる場合には、労使で合意するか、就業規則に規定を設ける必要があります。

労働契約法第8条には、「労働者と使用者との合意で労働契約の内容である労働条件を変更できる」と規定されていますから、個々の労働者が同意すれば、在宅勤務を実施することが可能です。

在宅勤務であれば、出勤する場合に比べて、感染リスクも低いと考えられますから、労働者の同意を得るのは比較的容易だと思われます。

しかし、光熱費や通信費を個人負担とした場合などには、労働条件の不利益な変更となる場合もあり、在宅勤務に同意しない労働者がいるかもしれません。

この場合でも、一般には、就業規則の変更によって在宅勤務を実施に移すことができます。

就業規則の変更によって、労働条件を労働者の不利益に変更する場合には、労働契約法第9条と第10条に従って行うことになります。

 

【労働契約法:就業規則による労働契約の内容の変更】

第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

「第12条に該当する場合」というのは、就業規則違反となる場合を指します。

 

<就業規則の変更により在宅勤務を開始した場合>

変更後の就業規則に、在宅勤務の終了についての規定が用意されていれば、この規定に従って終了することに問題はありません。

しかし、在宅勤務の終了についての規定が無ければ、就業規則に在宅勤務終了についての規定を加えるか、個々の労働者の同意を得て終了させることになります。

 

<労使の合意により在宅勤務を開始した場合>

就業規則や労働条件通知書に規定を置かず、労使の合意によって在宅勤務を開始した会社もあります。

詳細な制度設計をしないまま安易に始めてしまった場合には、労働者側に経費負担の増加についての不満が発生し、会社側に労働者の働きぶりが見えないことへの不安が発生しやすいといえます。

また、労使共に生産性低下やコミュニケーション不足を感じることがあります。

こうした感覚は、人それぞれですから、在宅勤務をやめるという労働条件の変更について、労使の合意が得られないこともあります。

この場合には、就業規則の変更によって解決すべきこととなります。

「労働条件を元に戻すだけ」ですから、労働者の不利益は大きくないはずですが、せっかく始めた在宅勤務を終了させることについては、様々な不満が発生する場合もあり、トラブルとなりやすいものです。

新型コロナウイルスの感染リスク対応を十分に行い、これを労働者に分かりやすく具体的に説明し、理解を得られるようにする努力が会社に求められることになります。

 

解決社労士

2020/12/12|1,812文字

 

<事実の確認>

ある社員から、いじめられている、嫌がらせを受けているという申し出があった場合、あるいは、第三者からいじめの報告があった場合、安易に対応すると、いじめを行っているとされた社員の人権侵害となることもあります。

こうした人権侵害を回避しつつ、いじめを救済するためには、何よりもまず事実の確認が必要です。

速やかに、いじめを受けているとされる社員から、十分な聞き取りをすることです。

先入観を持たず、明かされた行為の評価はせず、淡々と事実の確認を行います。

つぎに、いじめをしているという社員からも、十分な聞き取りをします。

このとき、「Aさんから、あなたにいじめられているという申し出があった」と言うのではなく、「Aさんから、あなたの行為について相談があった」と言うべきです。

最初から加害者扱いしてはいけません。

熱心に仕事を教え、時には厳しい口調となってしまうこともあるというのが、判明する事実かもしれないのです。

それでも、本人に意図的ないじめの意識があったのであれば、途中でお詫びの言葉が出てくることでしょう。

さらに周囲の社員からも、十分な聞き取りを行います。

そうすることによって、より一層、客観的な事実が浮かび上がるものです。

 

<記録の作成>

事実の確認にあたっては、聞き流してはいけません。

きちんと記録を残す必要があります。

何月何日の何時に、どこでどういうことがあったのか、詳細に記録します。

こうすることで、聞き取り調査が正式なものであり、真剣に対応している姿を聞き取りの相手に示すことができます。

これによって、話し手もよく考えて、真剣に話してくれるものです。

また、法的な紛争となった場合にも、正式な証拠として役立てることができます。

 

<事実の評価>

得られた事実から、行為者の各行為について、人格権の侵害や就業規則違反が無かったか公平に評価します。

また、当事者に能力不足や適性の欠如が無いかも検討します。

 

<注意・指導>

この段階で、行為者がいじめを自覚していれば、すでに反省していることでしょう。

だからと言って、「許してあげよう」では被害者も周囲の社員も納得できませんし、安心して働けません。

正式に注意・指導し、その内容を書面にまとめ、上司とそのまた上司までは署名を得ておき、最後に行為者の署名を得て会社が保管します。

もし、行為を繰り返すようであれば、次回は書面による注意、そしてさらに重い処分へと進むことになります。

 

<配置転換>

ただ単に、問題となった社員同士の相性が悪いということであれば、その片方または両方を配置転換することも検討したいものです。

このとき、原則として加害者側の社員を異動させるべきです。

被害者側を異動させたり、退職に追い込んだりしたのでは、他の社員が安心して働けません。

 

<退職勧奨>

重大ないじめが発覚した場合、注意・指導をしても改まらない場合、配置転換をしてもなお追いかけていじめるような場合には、行為者に対して、自主的に退職してもらうよう働きかけることも考えられます。

もっとも,本人が反省しておらず、退職することに合意しない場合には、合意するよう強制することはできません。

 

<普通解雇>

いじめを行わずにはいられない性格であったり、いじめの自覚を持てなかったりすれば、業務上必要な協調性が欠けているわけですから、組織の一員として勤務することは困難です。

しかも、これを指導によって改善することは、個人の性格を変えるという話になってしまい、およそ無理なことです。

結局、改善できない能力不足であれば、普通解雇が妥当ということになります。

 

<懲戒解雇>

就業規則に具体的な規定があることが大前提ですが、いじめが激しいものでなければ、それが懲戒解雇の「客観的に合理的な理由」とはならないケースが多いでしょう。

軽い懲戒処分の対象とすることから始めて、どうしても改まらないために、懲戒解雇にまで行きついてしまったということは想定できます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

もし会社に顧問の社労士がいれば、事実の確認から対応できます。

社外の第三者としての立場から、客観的な事実を確認するには適任でしょう。

その後の対応についても、就業規則や労働法に照らして適切なアドバイスを行うことができます。

何かトラブルが発生してからではなく、保険のつもりで顧問社労士を置いておき、会社の実情を把握させておくのが得策でしょう。

 

解決社労士

2020/12/11|863文字

 

<長期の音信不通と解雇>

長期間にわたって無断欠勤が続いた場合には、普通解雇の理由になることが多いですし、ほとんどの就業規則で懲戒解雇の対象にしていることでしょう。

しかし、使用者による解雇の意思表示は、解雇の通知が対象者に到達しないと効力が発生しません。〔民法第97条第1項〕

その社員が自宅にいて、ただ単に出社しない状態であれば、社員の自宅に解雇の通知が届くことによって、解雇の意思表示が到達したことになります。

しかし、本人が不在で家族も居場所を知らないような場合には、自宅に解雇通知を届けても効力が発生しません。

ましてや、その社員がいつの間にか転居していたような場合には、解雇の通知の届け先すらわからないことがあります。

こうした場合には、解雇の通知ができずに、解雇できないことになってしまいます。

 

<メールによる解雇通知>

電子メールでの解雇通知は、本人からの返信が無ければ、通知を読める状態にあったとは言い難いので、やはり解雇の意思表示が到達したとはいえないでしょう。

もし、解雇を了解する内容の返信があれば、解雇の意思表示が到達したことになります。

しかし、この場合には、そもそも音信不通という判断が間違っていて、解雇権の濫用になってしまい、解雇が無効になる可能性が高まってしまいます。〔労働契約法第16条〕

 

<公示による解雇通知>

全く連絡の取れない社員に対して、解雇の通知をするには、簡易裁判所で公示による意思表示を行うこともできます。〔民法第98条〕

これによって、解雇の意思表示が行方不明の社員に到達したものとみなされ、解雇を有効とすることができるのです。

 

<就業規則の備え>

無断欠勤と音信不通が一定の期間続いた場合には、就労の意思が無いものとして、自然退職にするという規定を置いておくことをお勧めします。

多くの場合には、この規定により自然退職扱いにすれば問題が解決します。

こうした規定は、必ずしも就業規則のひな形に入っているものではありません。

会社の実情に応じた適法な就業規則にするには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/10|3,014文字

 

<雇用関係助成金>

従業員を休業させ、事業主が休業手当を支払った場合に、その一部が助成されるなどの雇用調整助成金について、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、大幅な例外措置が取られましたし、これが注目されて、支給申請件数が大幅に伸びました。

また、厚生労働省は、雇用関係を維持しながら他社に従業員を出向させる在籍型出向(雇用シェア)を推進するため、出向元と出向先双方の企業を対象とした「産業雇用安定助成金」を創設しました。

これらを含め、多くの雇用関係助成金は、事業主の負担する雇用保険料を財源とする雇用安定事業として行われています。

事業主の負担する雇用保険料が、助成金の受給に相応しくない事業主に流れたり、不正受給が行われたりすると、公平に反する結果となりますから、各雇用関係助成金に共通の受給要件等は、以下に示すように厳格です。

 

<受給できる事業主>

雇用関係助成金を受給する事業主(事業主団体を含む)は、次の1~3の要件のすべてを満たすことが必要です。

1 雇用保険適用事業所の事業主であること(雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること)

 

2 支給のための審査に協力すること

(1)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること

(2)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から求められた場合に応じること

(3)管轄労働局等の実地調査を受け入れること など

 

3 申請期間内に申請を行うこと

 

<受給できない事業主>

次の1~9のいずれかに該当する事業主(事業主団体を含む)は、雇用関係助成金を受給することができません。

特に、4の要件は厳しいように思われます。

1 平成31(2019)年4月1日以降に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けた場合、当該不支給決定日又は支給決定取消日から5年を経過していない事業主(平成31(2019)年3月31日以前に雇用関係助成金を申請し、不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けた場合、当該不支給決定日又は支給決定取消日から3年を経過していない事業主)。

なお、支給決定取消日から5年(上記括弧書きの場合は3年)を経過した場合であっても、不正受給による請求金を納付していない事業主は、時効が完成している場合を除き、納付日まで申請できません。

ここで、「不正受給」とは、偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受けまたは受けようとすることを指します。例えば、離職理由に虚偽がある場合(実際は事業主都合であるにもかかわらず自己都合であるなど)も不正受給に当たります。

また、「請求金」とは、不正受給により返還を求められた額、不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合で算定した延滞金、不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額(上記括弧書きの場合を除く。)の合計額です。

 

2 平成31(2019)年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について、申請事業主の役員等に他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる場合は、申請することができません。

この場合、他の事業主が不支給決定日又は支給決定取消日から5年を経過していない場合や支給決定取消日から5年を経過していても、不正受給に係る請求金を納付していない場合(時効が完成している場合を除く)は、申請できません。

 

3 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2か月以内に納付を行った事業主を除く)

 

4 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主

 

5 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら営業の一部を受託する営業を行う事業主

これらの営業を行っていても、接待業務等に従事しない労働者(事務、清掃、送迎運転、調理など)の雇い入れに係る助成金については、受給が認められる場合があります。また、雇い入れ以外の助成金についても、例えば旅館事業者などで、許可を得ているのみで接待営業が行われていない場合や、接待営業の規模が事業全体の一部である場合は、受給が認められます。なお、「雇用調整助成金」については、性風俗関連営業を除き、原則受給が認められます。

 

6 事業主又は事業主の役員等が、暴力団と関わりのある場合

 

7 事業主又は事業主の役員等が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れのある団体に属している場合

 

8 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主

 

9 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名及び役員名(不正に関与した役員に限る)等の公表について、あらかじめ承諾していない事業主

 

<不正受給の場合の措置>

雇用関係助成金について不正受給があった場合、次のように厳しく取り扱われます。

1 支給前の場合は不支給となります。

2 支給後に発覚した場合は、請求金の納付が必要です。

「請求金」とは、不正受給により返還を求められた額、不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合で算定した延滞金、不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額の合計額です。

3 支給前の場合であっても支給後であっても、不正受給による不支給決定日又は支給決定取消日から起算して5年間は、その不正受給に係る事業主に対して雇用関係助成金は支給されません。

4 不正の内容によっては、不正に助成金を受給した事業主が告発されます。

詐欺罪で懲役1年6か月の判決を受けたケースもあります。

5 不正受給が発覚した場合には、原則事業主名等が公表されます。

 

<代理人の責任>

社会保険労務士や弁護士などの代理人が、事業主の申請を代わって行う場合、以下の事項に承諾しておく必要があり、ハイリスクな業務となっています。

1 支給のための審査に必要な事項の確認に協力すること

社労士事務所や法律事務所等への立ち入りを含みます。

 

2 不正受給に関与していた場合は、

(1)申請事業主が負担すべき一切の債務について、申請事業主と連帯し、請求があった場合、直ちに請求金を弁済すべき義務を負うこと

(2)事務所(又は法人)名等が公表されること

(3)不支給とした日又は支給を取り消した日から5年間(取り消した日から5年経過した場合であっても、請求金が納付されていない場合は、時効が完成している場合を除き、納付日まで)は、雇用関係助成金に係る社会保険労務士が行う提出代行、事務代理に基づく申請又は代理人が行う申請ができないこと

 

<助成金受給の心がけ>

支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主が、雇用関係助成金を受給できないことは上に示した通りです。

「労働関係法令」には、労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、最低賃金法、育児・介護休業法、雇用保険法、労災保険法、高年齢者雇用安定法、職業安定法等々、数多くのものが含まれます。

助成金受給のチャンスを失わないためにも、普段からホワイト企業であり続ける努力が必要です。

また、申請を委託するのであれば、会社の状況をよく知っている顧問社労士に任せることをお勧めします。

 

解決社労士

<期限付きにする会社のメリット>

会社や店舗の業績に大きな波があって、その傾向が比較的わかりやすければ、必要な時期に限定して人手を増やすために、有期労働契約は便利です。

たとえば、春から秋にかけてはパチンコ店の店員をしていて、冬場だけスノーボードのインストラクターとして働くという例もあります。

 「何かあったときに」簡単に人員を調整して人件費を抑えるため、有期労働契約の従業員を採用しておくという会社もあります。

昔は労働契約法も無かったですし、労働法に対する人々の関心も薄かったですから、会社の思惑通りに事が運んでいました。

しかし、パートやアルバイトであればいつでも解雇できるという誤解は解消されつつあります。

むしろ、契約期間の途中で解雇するのは、定年の他に期間を定められていない正社員よりもむずかしいのです。

客観的に「やむを得ない」理由が無ければ、契約期間中に解雇することはできません。〔労働契約法第17条第1項、民法第28条〕

「やむを得ない」理由とは、期間を定めて雇用しているにもかかわらず、その約束を破って、期間満了前に雇用契約を終了しなければならないような特別重大な理由をいいます。

ですから、余程のことがない限り、契約期間の途中で解雇することはできません。

主観的な判断で安易に「やむを得ない」とはいえないのです。

 

<期間満了での解雇(雇い止め)>

この雇い止めについてのトラブルは非常に多いものです。

その原因は、期間満了と共に解雇するのであれば何の問題も無いハズという会社側の感覚と、契約更新に期待を寄せている従業員の感覚との食い違いです。

そして法律上、一定の場合には解雇が認められやすく、その他の場合には不当解雇となりやすいという複雑さがあります。

解雇したつもりになっていても、不当解雇であれば解雇は無効なのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

雇い止めのトラブルを無くすには、最初の契約内容をきちんとすることと、採用時、契約更新時に労働条件を書面で示すことが必要です。

正社員以外の従業員がいる場合には、トラブル防止のため、また同一労働同一賃金に対応するためにも、信頼できる社労士にご相談ください。

2020/12/08|1,197文字

 

<転勤命令の根拠の確認>

会社が労働者に転勤を命ずることができる根拠は、「業務の都合により転勤を命ずることがある」のような就業規則の規定です。

こうした規定は、就業規則のひな形には入っていないこともありますから、漏れていることも多いのです。

会社に転勤命令権が無かったら、必要な配置転換ができないのだから、規定が無ければ転勤命令が自由にできないというのは、「常識」で考えておかしいと考える経営者もいらっしゃるでしょう。

しかし、裁判などでは規定の存在が重視されます。

配置転換の多くは、同一事業場内での担当業務等の異動ですが、転勤は勤務地の変更を伴う所属部門の異動ですから、労働者の不安と負担が大きく、必ずしも会社の自由ではないのです。

常用労働者が10人未満の事業場では、就業規則が無くても違法ではありません。10人以上になったタイミングで、会社の営業拠点が1か所であれば転勤も想定していませんから、転勤の規定が無くても、何も問題は無かったはずです。

ところが、会社の規模が拡大し営業所ができたりすると、転勤の規定が必要になるのですが、気がつかなければそのままになっています。

結局、どこにも規定が見当たらない場合には、転勤命令の根拠が無いかもしれません。

 

<転勤命令が無効になる場合>

労働契約法には、転勤命令権の濫用による転勤命令の無効を定めた規定はありません。

しかし、出向、懲戒、解雇についての規定に示された基準は、裁判の積み重ねによってできた基準です。

ですから、実際の裁判では、同様の基準で転勤命令が権利の濫用として無効になる場合が判断されています。

たとえば、業務上の必要性を欠く場合、労働者に通常我慢すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合、不当な動機や目的がある場合には、権利の濫用として転勤命令が無効とされています。〔最高裁昭和61714日東亜ペイント事件判決〕

 

<説明しにくい転勤の理由>

今の担当業務では成果が出ていない、同僚との関係もうまく行っていないという場合には、会社が能力の発揮を期待して転勤させることもあります。

しかし、こうした場合に転勤させると、本人にしてみれば能力不足や協調性不足を疑われているのではないかと、落ち込んでしまう可能性もあります。

やはり、ストレートに転勤の理由を説明すべきでしょう。

元の職場でケンカしてしまった、セクハラやパワハラをしてしまったという理由での転勤の場合、これが公になっているのであれば、本人への説明は簡単でしょう。

しかし、これが確信の持てるものではなく、疑いに留まっているのであれば、転勤した後に、そうした疑いがかからなくなるのであれば、疑いが晴れることになります。

反対に、転勤先でも同じ問題が起こるのであれば、転勤前の職場でも問題があった可能性が高いといえます。

この話をして、転勤対象者に転勤を打診すれば、拒否する可能性は低くなるでしょう。

 

解決社労士

2020/12/07|877文字

 

<しわ寄せ>

働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)により改正された労働基準法に規定された、罰則付きの時間外労働の上限規制や年5日の年次有給休暇の確実な取得を始めとする施策が実施される中で、大企業・親事業者での「長時間労働の解消」などの取組が、下請等中小事業者に対する適正なコスト負担を伴わない短納期発注、急な仕様変更、人員派遣の要請、附帯作業の要請などの「しわ寄せ」を生じさせている場合があります。

大企業・親事業者では、社内の発注や調達部署の役員、責任者、担当者等に対して、適正な発注等が行われているか、定期的に確認する必要があります。

 

<振興基準>

平成30(2018)年12月に、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準が改正され、親事業者は、自らの取引に起因して下請事業者が労働基準関連法令に違反することのないよう配慮することや、やむを得ず、短納期または追加の発注、急な仕様変更などを行う場合には下請事業者が支払うこととなる増大コストを負担することなどが新たに盛り込まれました。

振興基準は、下請中小企業の振興を図るため、下請事業者および親事業者のよるべき一般的な基準として、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づき、経済産業省告示で具体的な内容が定められています。

振興基準は、親事業者と下請事業者の望ましい取引関係を定めており、下請法とは異なり、資本金が自己より小さい中小企業者に対して製造委託等を行う幅広い取引が対象となります。

また、振興基準は、主務大臣(下請事業者、親事業者の事業を所管する大臣)が必要に応じて下請事業者および親事業者に対して指導、助言を行う際に用いられています。

 

<労働時間等設定改善法>

働き方改革関連法により改正され、平成31(2019)年4月1日に施行された労働時間等設定改善法(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)では、他の事業主と取引する場合に、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮することが、事業主の努力義務となっています。

 

解決社労士

<サボりが発覚したら>

「勤務時間中に営業社員が仕事をサボっている」という情報が入ったら、まずは事実を確認しましょう。

その営業社員がサボっていた日時と時間帯、場所、行動、服装、一緒にいた人、手荷物など、人違いであるなどの言い逃れができないようにしましょう。

押さえられる証拠があれば、それも集めて保管しておきます。

 

<本人への事情聴取>

あくまでも、就業規則に具体的に違反するようなサボりであった場合や、欠勤控除をすべき長時間のサボりであったことが前提ですが、その営業社員と面談して事実確認をします。

本人が事実を認め反省していれば、口頭で注意し、注意の内容を文書にして、社長あるいは担当役員まで確認の署名をもらい、本人の署名も得ておきます。この文書を会社で保管します。

ちょっと面倒に思われますが、サボりを繰り返した場合には、懲戒処分をするにあたって必要な手順となります。

本人が事実を認めない場合には、営業日報の内容などを手掛かりに事実を確認します。

また、他の社員やお客様などからも情報を集めます。こうしてサボりの事実が確認できた場合には、本人の反省が無い分だけ、懲戒処分を検討する必要性が高まります。

反対に、人違いや勘違いなどが判明した場合には、丁重にお詫びし、情報収集の相手となった社員やお客様の誤解も解いてあげなければなりません。

 

<サボりを繰り返すなら>

サボりを繰り返すようなら、口頭注意から、文書による注意へと切り替えます。

それでも繰り返すなら、さらに重い懲戒処分、そして退職勧奨や懲戒解雇へと進むこともあるでしょう。

こうしたことを正しく行うのは、骨の折れることです。

失敗すると、本人が反省するどころか、会社に対して慰謝料を含め損害の賠償を求めてくることもあります。

最初にサボりが発見された時点で、信頼できる社労士にご相談ください。

2020/12/05|959文字

 

<入社日と初出勤>

入社日は労働契約の初日であり、勤務先に籍を置いた初日です。

そして、初出勤は初めて出勤した日です。

正社員であれ、パートやアルバイトであれ、必ずしも入社日に初出勤するわけではありません。

たとえば、平成29年の4月は1日が土曜日でしたから、新卒採用の入社日が41日で、初出勤が月曜日の43日というのが多数派でした。

 

<労務管理上の基準日>

健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの保険関係は、入社日に加入することになります。

かつては、試用期間が終わって本採用の時に加入するという誤った運用も見られましたが、基準を満たしている限り、試用期間の初日に加入するのが正しいわけです。

これを後から修正するには、保険料もまとめて納付しなければならず、大きな負担となりますから遅れずに手続しましょう。

年次有給休暇は、法定通りであれば入社日から6か月後に付与されます。

これも、試用期間があれば、試用期間の初日から6か月後に付与されることになります。

 

<入社日と初出勤が離れている場合>

入社日に社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入して、その月の保険料も発生します。

ところが、入社してから初出勤までの日が空いてしまうと、就業規則により、その間の欠勤控除が発生する場合があります。

その結果、社会保険料を給与から控除すると、マイナスになってしまうことがあります。

これは違法なことではありません。

別途支払ってもらうなど、予めルールを定めておくと良いでしょう。

年次有給休暇は法定通りであれば、入社日から6か月間の出勤率が8割以上の場合に付与されます。

入社してから初出勤までの日が空いてしまい、この間を欠勤扱いにしてしまうと、出勤率の点で不利になってしまいます。

会社側の都合でこうした現象が発生するのであれば、入社日から初出勤まで、出勤率の計算のうえでは出勤扱いにするなどのルールを設けておくと良いでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

入社して何年も経てば当り前の事でも、新人にとっては首をかしげるような事であったりします。

せっかく入社した新人が気持よくスタートを切れるよう、会社に合った仕組みづくりのアドバイスをして、適切に運用できるよう支えるのも、顧問社労士の重要な役割です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/04|1,582文字

 

<医師による面接指導>

事業者は、一定の要件を満たす長時間労働者に対して、医師による面接指導を実施しなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項、第66条の10第3項〕

法の規定に基づく面接指導は、情報通信機器を用いて行うことができます。

令和2(2020)年11月19日に、このことについての通達が一部改正されました(基発1119 第2号)。

ここで、通達の内容をご紹介します。

 

<基本的な考え方>

労働安全衛生法第66条の8第1項で、面接指導は「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」とされています。

つまり、医師が労働者と面接し、労働者とのやりとりやその様子(表情、しぐさ、話し方、声色等)から労働者の疲労の状況やストレスの状況その他の心身の状況を把握し、把握した情報を元に、必要な指導や就業上の措置に関する判断を行うものです。

このため面接指導は、労働者の様子を把握し、円滑にやりとりを行うことができる方法により行う必要があります。

面接指導を実施する医師が、必要と認めた場合には、直接対面によって行う必要があります。

急速なデジタル技術の進展に伴い、情報通信機器を用いて面接指導を行うことへのニーズが高まっています。

しかし、情報通信機器を使って面接指導を行う場合でも、労働者の心身の状況の確認や必要な指導が適切に行われるようにするため、以下の留意事項を踏まえて実施しなければなりません。

 

<医師への情報提供>

事業者は、面接指導を実施する医師に対し、面接指導を受ける労働者が業務に従事している事業場に関する事業概要、業務の内容、作業環境等に関する情報、対象労働者に関する業務の内容、労働時間等の勤務の状況、作業環境等に関する情報を提供しなければなりません。

 

<望ましい医師>

面接指導を実施する医師が、以下のいずれかの場合に該当することが望まれます。

・面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合。

・面接指導を実施する医師が、契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合。

・面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合。

・面接指導を実施する医師が、過去1年以内に、その労働者に指導等を実施したことがある場合。

 

<情報通信機器の要件>

面接指導に用いる情報通信機器は、以下の全ての要件を満たすことが必要です。

・面接指導を行う医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。

・情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること。

・労働者が面接指導を受ける際の情報通信機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること。

 

<実施方法の要件>

情報通信機器を用いた面接指導の実施方法等について、以下のいずれの要件も満たすことが必要です。

・情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行ったうえで、事前に労働者に周知していること。

・情報通信機器を用いて実施する場合は、面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮していること。

 

<緊急時対応体制の整備>

情報通信機器を用いた面接指導で、医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合に、労働者が面接指導を受けている事業場その他の場所の近隣の医師等と連携して対応したり、その事業場にいる産業保健スタッフが対応する等の緊急時対応体制が整備されていることも必要です。

 

解決社労士

2020/12/03|1,057文字

 

<就業規則の存否>

入社したばかりの新人やアルバイトにとって、そもそも会社に就業規則が有るのか無いのか不明なこともあります。

労働基準法では、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、…就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。…変更した場合においても、同様とする」となっているので、臨時で働く人を除き、従業員が10人未満の会社では、就業規則が存在しないこともあります。〔労働基準法第89条〕

こうした小さな会社で、就業規則の作成に社長が全く関わらないということは考えられませんので、社長なら確実に答えられるでしょう。

 

<保管場所について>

使用者は、就業規則を周知する義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

「周知」というのは、従業員が見ようと思えば見られる状態にしておくことです。

周知しておかなければ、たとえ所轄の労働基準監督署長に届け出た就業規則であっても、無効ということになってしまいます。

ですから、就業規則をどこでどうやって読んだら良いのかわからない従業員に対しては、会社は就業規則の効力を主張できません。

この場合でも、年次有給休暇、産休、育休など法定の権利については、就業規則の有無や内容に関係なく従業員に与えられています。

このように、周知は重要ですから、社内のどの従業員にたずねても、就業規則の保管場所はすぐに分かるはずです。

 

<どこを読んだら良いのか>

自分が疑問に思った点について、就業規則のどこを読んだら良いのか分からないことがあります。

この場合には、総務・人事の担当者に相談することになります。

ただ、就業規則が作られただけで、法改正や会社の状況に応じた変更が無い会社では、社内に詳しい人がいないという困った事態もありえます。

この場合でも、いい加減に作られた就業規則は、労働基準法などによって労働者に有利な方向に修正されて効力を発します。

 

<読んでも意味が分からないとき>

必要な部分を読んでみたものの、その意味が分からないということがあります。

従業員が読んでも分からない規定のある就業規則というのは、それ自体問題ですが、この場合にも、総務・人事の担当者に相談することになります。

それでも、なお分からないことがあります。

特に法令やひな形を丸写しにしただけの規定であれば、会社の実情に合っているかどうかのチェックもされていませんので、会社にとってどういう意味があるのか、誰にもわからないということも稀ではありません。

こんな就業規則はトラブルの元ですから、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/02|886文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は、法定の労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは労働基準法違反の犯罪であり、30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

この場合、1人あたり30万円の罰金を科されたうえに、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も、取得した場合の給与計算の方法も不明です。

月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。

労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と自白しているようなものです。

 

<契約の更新>

有期労働契約であれば、こうした書類に契約期間が明記されています。

契約期間の終了が迫っているのに、なかなか契約更新の話が無いのでは、雇われの身としては不安で仕方がありません。

契約期間が過ぎて、何の話も無ければ、このまま働いていて大丈夫なのか疑問に感じてしまいます。

こういう場合に備えて、民法には次の規定があります。

「雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する」〔民法第629条第1項本文〕

つまり、契約切れなのに勝手に働いているのだから、賃金支払義務は無いということではないのです。

(このほか労働契約法第19条にも一定の場合の契約更新が規定されています)

 

<契約更新期が近づいたら>

とはいえ、遅くとも契約期間満了の1か月前になったら、使用者からでも労働者からでも、気づいた方が契約更新の話をもちかけるべきです。

必ず前回と同じ内容で更新というわけではなく、出勤日や勤務時間の変更、賃金の改定など検討する余地があるかも知れません。

そして、「こういう変更をしても問題ないか?」という疑問があれば、信頼できる社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/01|1,144文字

 

<社会背景>

少子高齢化の傾向が継続しており、厚生労働省の定義する団塊世代(昭和22(1947)年~昭和24(1949)年生まれ)は70歳代に入りました。

介護保険の要支援・要介護認定者数も増加傾向にあります。

介護する側の人には、働き盛りで企業の中核を担う管理職や職責の重い人材が多く含まれています。

 

<育児との違い>

育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

)には、育児と介護の両方について規定が並んでいます。

しかし、育児が計画的に対応できるものであるのに対して、介護の必要は突発的に発生します。

また育児は、ある程度まで画一的にイメージすることもできますが、介護の場合には、その内容も期間も千差万別です。

このことから、行政や企業の対応も容易ではなく、仕事と介護の両立が困難となる可能性があります。

 

<育児介護休業法の対象>

要介護状態の家族の介護等をするために、育児介護休業法に基づく制度が利用できます。

ここで「要介護状態」とは、介護保険で要介護2以上である場合と、要介護認定を受けていない場合でも2週間以上の期間にわたり介護が必要な状態を指します。

また「家族」には、配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫が含まれます。

 

<介護休業>

対象家族を介護するため、対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して取得できます。

雇用保険から、介護休業給付金(賃金の67%)が支給されます。

最低限利用できる法定の制度ですから、勤務先の制度とは別に利用できます。

介護休業期間は、直接介護にあたるための期間ではなく、終了後に復職できるよう、介護の体制を整える期間と考えられます。

 

<介護休暇>

労働基準法の年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日まで、半日または1日単位で取得できます。

最低限利用できる法定の制度ですから、年次有給休暇とは別に利用できます。

なお、令和3(2021)年1月1日からは、1時間単位での取得が可能ですから、就業規則の改定も必要です。

 

<勤務時間短縮等>

次のいずれかの制度を利用できるよう、措置を講じることが、事業主に義務付けられています。

・短時間勤務

・フレックスタイム

・時差勤務

・介護費用の助成措置

 

<不利益取扱の禁止>

制度を利用する申出等に対して「不利益な取扱い」をすることは、禁止されています。

退職の強要や、正社員をパートにする等の不利益な取扱いはできません。

また会社には、制度を利用しようとする者に対し、上司・同僚などが嫌がらせ(ハラスメント)をしないよう防止措置を講じる義務があります。

万一嫌がらせが発生した場合のために、会社の相談窓口を明確にしておくことも求められます。

 

解決社労士

2020/11/30|684文字

 

<解決の困難さ>

精神疾患の原因が長時間労働やパワハラが原因であるとして、労働者から会社に損害賠償を求めてくることがあります。

そうではないことを会社側が証明するのは困難ですし、きっぱりと否定したのに対して訴訟を提起されても時間、労力、人件費、経費、精神力の無駄が発生します。

そもそも精神疾患を発症している労働者を相手に、あれこれ議論を重ねても有効な解決策は見つかりにくいでしょう。

 

<労災保険の利用>

客観的に見て、会社側に原因があるとは考えられないようなケースでは、その労働者と協力する形で、労災申請を検討してはいかがでしょうか。

会社に責任を追及してきた労働者と協力して、しかも労働基準監督署を通じてというのは、抵抗を感じるかもしれません。

しかし、当事者同士で議論しても解決は困難であり、労働基準監督署(労働局)の判断を仰いだ結果、労災として認定されなければ、責任を追及してきた労働者も、会社側に責任は無いものと納得するしかないでしょう。

反対に、労災として認定されれば、労働者に一定の給付がなされますから、会社はその価額の限度で民法上の損害賠償の責任を免れることになります。〔労働基準法第84条第2項類推〕

この場合、慰謝料など労災保険でまかなわれない損害についてのみ、賠償すれば良いことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社の人事担当者が、精神疾患の労働者と協力しながら、労働基準監督署や医師とも打ち合わせを行いつつ、労災申請手続を進めるのは困難かもしれません。

こんなときは、客観的な第三者である社労士に依頼した方が、スムーズに解決できることでしょう。

 

解決社労士

2020/11/29|1,053文字

 

<解雇の判断>

解雇には、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇があります。

解雇とは、雇い主が労働契約の解除を行うことです。

これは、労働者の同意なく、雇い主から労働者への一方的な通告によって成立します。

解雇を通告しても、有効要件を満たさない不当解雇であれば、解雇は無効となり、労働契約がそのまま続くことになります。

その有効要件を端的に示しているのが次の条文です。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

驚くほど抽象的な条文です。

具体的なことは、数多くの労働審判や裁判の例を確認して初めてわかることになります。

ですから、労働基準法だけでなく数多くの労働法の専門家でなければ、とても判断できるものではありません。

 

<懲戒解雇の場合>

懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇ですから、懲戒処分の有効要件と解雇の有効要件との両方を満たしていなければ無効になります。

懲戒処分が無効になる場合を示しているのが次の条文です。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」〔労働契約法第15条〕

ここで、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、労働者の行為が就業規則の懲戒規定に具体的に当てはまり、労働者の言い分を良く聞き、事実関係を客観的に明らかにするなどの適正な手順を踏んでいる場合をいいます。

こうした場合であって、行為と処分とのバランス、一事不再理、二重処罰の禁止、刑罰不遡及、手続保障、平等主義、不当な動機目的の不存在などの条件をクリアして初めて懲戒処分としての有効性が認められます。

 

<解雇通告の準備>

経営者や上司の目から見て、客観的に解雇は当然と思える場合であっても、安易に解雇を通告するのは避けるべきです。

なぜなら、本人が解雇されることに反論しない場合でも、親戚や友人に強く勧められて、法的手段に出ることがあるからです。

やはり、解雇する場合には、その正当性を裏付ける証拠をきちんとそろえ、そうした証拠をもって解雇するのだということを、対象者に説明したうえで解雇しないと危険なのです。

「解雇」「クビ」という言葉が頭をよぎったら、なるべく早く信頼できる社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/28|994文字

 

<モデル就業規則とは>

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。

就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

これを受けて、厚生労働省は就業規則のひな形を公表しています。

これが「モデル就業規則」です。

各企業は「モデル就業規則」の規定例や解説を参考に、各職場の実情に応じた就業規則の作成・変更を行うことができます。

就業規則は、職場の実情に合っていなければ、トラブルの元となってしまうことがあります。

「モデル就業規則」は、規定例だけでなく詳細な解説が施されていますので、これを手がかりにカスタマイズすることになります。

「モデル就業規則」は、法改正などに対応するため、不定期に改定されています。

従来の平成30年1月版の改定版が、令和2年11月に公表されました。

 

<副業・兼業の規定例>

副業・兼業については、令和2年9月1日付でガイドラインが改定され、通達が発出されており、これに対応して、第14章の副業・兼業の規定例と解説が改定されています。

モデル就業規則第68条第2項は、事前の届出による副業・兼業の把握を規定しています。

具体的には、労働基準法第38条等を踏まえ、事前に次のような事項を確認することが想定されています。

・ 他の使用者の事業場の事業内容

・ 他の使用者の事業場で労働者が従事する業務内容

また、労働時間通算の対象となるか否かの確認を行い、対象となる場合は、次の事項について確認し、それぞれの労使間で合意しておくことが想定されています。

・ 他の使用者との労働契約の締結日、期間

・ 他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻

・ 他の使用者の事業場での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数

・ 他の使用者の事業場における実労働時間等の報告の手続

・ これらの事項について確認を行う頻度

副業・兼業を行う場合の労働時間管理については、「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について」(令和2年9月1日付け基発0901第3号厚生労働省労働基準局長通知)に、労働時間の通算や簡便な労働時間管理の方法について、考え方が示されています。

この考え方に基づき、労働時間の通算を行うことになります。

 

解決社労士

2020/11/27|545文字

 

<経営者の理解>

企業が職場におけるハラスメント防止に取り組むにあたっては、経営者の理解が大前提となります。

これ無くしてハラスメント防止対策を行っても、すべては空回りしてしまうものです。

それほど経営者の意識や姿勢は、企業全体に大きく影響します。

経営者自らが理解を深めるために、セミナーなどに参加することをお勧めします。

 

<実態把握と意識把握>

職場環境の実態や従業員の意識を把握しましょう。

アンケートなどにより把握する場合には、単なる集計ではなく、防止対策のためであることを明確にして実施します。

プライバシーの保護には十分配慮することを明確にして実施しましょう。

 

<人材の活用>

ハラスメントの問題は、職場環境や従業員の位置づけなどの、企業風土に大きく左右されます。

ハラスメント防止のためには、偏りの無い人材の活用もポイントとなります。

これには、適正な人事考課制度の運用が必要となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

経営者がセミナーに出かけたがらないというのであれば、社労士が社内で研修を行うこともできます。

客観的な実態把握や意識把握がむずかしいというのであれば、これも社労士が承ります。

適正な人事考課制度の構築や運用も、社労士の得意分野です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/26|1,151文字

 

<出向の意味>

「出向」とは、他の企業の指揮監督下で労務を提供する形態の労働契約です。

元々在籍している企業を「出向元(しゅっこうもと)」、実際に勤務している企業を「出向先(しゅっこうさき)」と呼びます。

出向元から見て、他の企業に出向することを「出出向(でしゅっこう)」と呼び、他の企業から受け入れている出向を「入出向(いりしゅっこう)」と呼びます。

また、広義の「出向」には、籍を元の企業に置いたまま他の企業に出向する「在籍出向」と、元の企業の籍を失って他の企業に出向する「転籍出向」とがあります。

「在籍出向」では、出向元・出向先の両方との間で労働契約が成立しています。2つの契約には矛盾が生じうるので、これを調整するため、一般には出向元と出向先の間で出向契約という契約が交わされます。

「転籍出向」では、出向元との労働契約が解消され、出向先との労働契約のみになります。元の企業に戻る可能性は、その企業のルールや慣行によります。

ここでは、狭義の「出向」である在籍出向に限定して述べます。

 

<役割分担>

在籍出向では、出向元・出向先の両方との間で労働契約が成立していますが、労働契約に基づく指揮監督権の全部または一部が、出向元から出向先に移転するのが一般です。

ここで問題となるのは、出向労働者に対する懲戒権や解雇権が、出向元・出向先のどちらにあるかということです。

一般的には、懲戒権や解雇権は出向元に保留され、出向先で出向社員に不都合な事実が見られたときには、出向契約が解除されるとともに、あるいは解除された後に、出向元で懲戒や解雇が行われます。

具体的なことは、出向元と出向先の間で交わされる出向契約に従って決定されることになります。

労働基準法など労働法の適用関係についても、出向契約で定められた権限と責任に応じて、出向元の使用者と出向先の使用者とに振り分けられ、それぞれ責任を負うことになります。権利義務関係についても、それぞれの事案ごとに、出向契約での分配の取り決めに従って判断されます。

賃金については、直接的には出向先が支払い、最終的には出向元が負担する形にするのが一般です。

労働時間の管理、職場秩序維持に関する権限、安全配慮義務、使用者責任に基づく損害賠償責任など、出向先が直接の指揮命令権をもつ事項については、出向先に帰属するのが一般です。

なお、労災保険料については、職場の安全配慮義務を直接負っている出向先の負担となりますから、労働保険料の年度更新では注意が必要です。

雇用保険は、出向社員に賃金を支払っている事業所で適用され、その事業所で保険料を申告・納付します。

出向元と出向先の両方から賃金が支払われている場合には、より多く支払っている事業所の被保険者となり、その事業所で保険料を申告・納付します。

 

解決社労士

2020/11/25|720文字

 

<パート社員の試用期間>

たとえば、1年間の有期労働契約にして、最初の3か月間は試用期間とすることが行われます。

3か月間の働きぶりを確認して、とても勤まらないと判断すれば、そこで解雇しようという意図がうかがえます。

しかし、試用期間中であれ、試用期間終了時であれ、やむを得ない理由が無ければ解雇できません。

日常用語で「本採用拒否」などと言われますが、これは法的には解雇です。

このことは、きっちり雇用契約書を交わして本人の了解を得ていたとしても、結論に変わりはありません。

 

<正しい方法>

最初は3か月契約として、契約更新の条件に会社が意図する「本採用」の条件を定めておけば良いのです。

この「本採用」の条件は、正社員に対しても、入社時に文書で明示しておくと労働トラブルの防止に役立ちます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法令の規定とは違った「常識」や同業他社の「慣行」に頼った対応が、思わぬ結果をもたらしたり、意図した効果が得られなかったりで、労働トラブルとなることがあります。

特に、下記の条文中の「やむを得ない事由」を安易に認めてしまうことによるトラブルが跡を絶ちません。

会社の中で当たり前になっていることも、一度、信頼できる社労士にチェックさせることをお勧めします。

 

〔労働契約法第17条第1項〕

使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

 

〔民法第628条〕

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

 

解決社労士

2020/11/24|882文字

 

<週休を増やす>

会社の方針により、週休1日あるいは隔週週休2日から完全週休2日に変更したら、従業員の休日は増加しますから、年次有給休暇を多少減らしても良いのではないかという話です。

昔から週休1日あるいは隔週週休2日のルールだった会社が、採用難などを理由に、完全週休2日として応募者を増やそうとすることもあります。

また、事業の成長が見込めず、従業員も高齢化していることから、人員を削減するのではなく、休日を増やして対応することもあります。

要は、「休日も休暇も同じ休み」なので、合計の日数が増えるなら問題ないのではないかという考え方です。

 

<休日と休暇>

労働基準法の定義によると、休日は労働義務のない日、 休暇は労働義務のある日に労働が免除される日です。

休日は、従業員から会社に対して申請や届出をしなくても、最初から当然に休みです。

一方で、休暇は、従業員から会社に対し届出をして休みます。

そして労働基準法は、休日と休暇のそれぞれに基準を定めて、この基準を下回ることを許しません。

結局、休日を大幅に増やしても、年次有給休暇が基準を下回るのは違法です。

たとえ、年次有給休暇が法定の基準を上回っている会社であっても、これを減らすことは不利益変更となりますから、厳格な条件を満たした場合にのみ許されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

休日が増えれば、労働時間が減る可能性が高いでしょう。

この場合に、月給を減らすことに問題は無いのか、減らせるとしてどの程度まで可能かは、それぞれの具体的なケースに応じた判断が必要です。

これは、かなり専門的な話になります。

許される減給であっても、その手続や手順が誤っていると、月給の変更が無効となり、会社は変更前の月給を支払う義務を負うことになります。

一般に、人は変化を嫌います。

労働条件の改善であっても、上手に行わなければ従業員の反感を買い、退職者が出てしまいます。

良かれと思った変更で、労働基準法違反の犯罪が成立し、刑事罰の対象となることもあります。

労働条件や人事制度の変更は、その検討段階から、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/23|1,297文字

 

<社会的な必要性>

企業内で女性が働く環境は、必ずしも快適ではなく、女性の能力が十分に発揮されていないといわれます。

このことは、次のような統計上の数値にも現れています。

・就業を希望しながらも働いていない女性(就業希望者)は、231万人に上ります。

・女性労働者のうち56.0%が、非正規労働者です。

※以上総務省統計局「令和元年労働力調査」より

・第一子の出産を機に退職する女性は46.9%います。

※国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」より

国内では、生産年齢人口が長期的に減少傾向にありますので、人材確保の観点から、能力と意欲のある女性の力を活かす必要があります。

また、ニーズの多様化やグローバル化に対応するためにも、人材の多様性を確保するうえで、女性の活用が必須となっています。

 

<女性活躍推進法>

平成27(2015)年9月に女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が制定され、平成28(2016)年4月1日に施行されました。

令和元(2019)年6月には、改正法が公布されています。

この法律は、女性の職業生活における活躍を推進するため、基本原則と国、地方公共団体、一般事業主の責務を明らかにしています。

また、基本方針や一般事業主による行動計画の策定等に関する事項を定めています。

ここで「一般事業主」とは、常時雇用する労働者が301人以上の事業主をいいます。

 

<一般事業主の義務>

一般事業主は、次の1.から4.までを行う義務があります。

 

【一般事業主の義務】

1. 自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

2. 1.を踏まえた「一般事業主行動計画」の策定、社内周知、公表

3. 「一般事業主行動計画」を策定した旨の届出

4. 女性の活躍に関する情報の公表

 

一般事業主は、一般事業主行動計画策定にあたって、原則として、「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」及び「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分ごとに1つ以上数値目標を設定しなければなりません。(令和2(2020)年4月1日より)

一般事業主は、女性活躍に関する情報公表の強化が求められます。また、女性の活躍推進に関する状況等が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)が創設されました。(令和2(2020)年6月1日より)

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。(令和4(2022)年4月1日より)

 

<実務的観点から>

働き方改革との関連で、女性の活躍推進は今後も政策的に強化されていきます。

一般事業主の義務とされている内容は、多額の経費を必要とするものではありません。

企業としては、形式的に対応するのではなく、充実した内容を伴って対応すべきです。

これによって、せっかく戦力化してきた女性労働者の定着率が向上しますし、採用面でも優位に立つことができます。

なにより、お客様からの評価が上がりますから、優先順位を上げて取り組んでいただきたいと思います。

 

解決社労士

2020/11/22|505文字

 

<労災認定の条件>

パワハラ、セクハラ、マタハラなどのハラスメントが精神疾患の原因となった場合には、業務災害として認定されるか、労災保険の給付対象となるかが問題となります。

これを判断するのは、労働基準監督署長や労働局長です。

認定の条件としては、業務遂行性と業務起因性があります。

業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づいた事業主の支配下にあったことです。

業務起因性とは、業務と病気との間に因果関係が存在することです。

 

<精神疾患の労災認定>

精神疾患の労災認定の判断は、厚生労働省が平成23(2011)12月に「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を定め、これが運用されています。

その主なポイントは次のとおりです。

・認定基準の対象となる精神障害を発病していること

・認定基準の対象となる精神障害の発病前約半年の間に業務による強い心理的負荷が認められること

・業務以外の心理的負荷や個人的な要因により発病したとは認められないこと

 

<業務による強い心理的負荷>

業務による強い心理的負荷が認められるには、業務による具体的な出来事があって、その出来事とその後の状況が、労働者に強い心理的負荷を与えたといえることが必要です。

 

解決社労士

2020/11/21|1,324文字

 

<退職してもらう方法の選択>

大きなミスが多く、一定の期間、適正な注意・指導・教育を行っても改善が見られない場合には、仕方なく会社を辞めてもらうことになります。

その方法としては、退職勧奨や普通解雇があります。

解雇が有効となる条件がそろっているような場合には、会社から対象者に十分な説明のうえ退職を勧め(退職勧奨)、本人がこれに応じて合意退職が成立することも多いでしょう。

しかし、解雇が有効となる条件が欠けている場合、能力不足などにより転職がむずかしい社員の場合、実力に比べて高額な給与が支給されているような場合には、なかなか本人が退職勧奨に応じないものです。

また、能力不足そのものを理由とする懲戒解雇はできませんので、「このままだと懲戒解雇になる」などの説明をして退職願・退職届を提出させた場合でも、錯誤〔民法第95条〕、強迫〔民法第96条〕による退職の意思表示の無効が主張され、取り消されてしまう可能性があります。

さらに、反省を示す意図で退職願が出されたのに対し、会社側がその意図を知りうるのに退職手続を進めたような場合には、心裡留保〔民法第93条〕により退職の意思表示が無効となる可能性もあります。

 

<普通解雇による退職>

結局、能力不足によるミスの連発が見られる場合には、普通解雇を検討することになります。

普通解雇のつもりで解雇を通告しても、法的な条件を満たしていなければ解雇権の濫用とされ無効となります。

これが不当解雇です。

不当解雇の場合には、解雇したつもりになっていても、それは無効だということです。

解雇が有効となるためには、次の条件を満たしている必要があります。

・就業規則に普通解雇の具体的な理由が示されていること

・就業規則の普通解雇の具体的な理由に当てはまる事実があること

・解雇権の濫用〔労働契約法第16条〕ではないこと

・解雇予告義務〔労働基準法第20条〕が果たされていること

・解雇が法律上の制限に違反していないこと

 

<証拠固め>

退職勧奨に応じた社員や、普通解雇をした社員から、合意退職や解雇の無効を主張されることがあります。

これに備えて会社は証拠を保管しておく必要があります。

ところが実際には、会社側に証拠が残っていないことが多く、退職者の主張を覆せないことによるトラブルが後を絶ちません。

会社が「十分に注意・指導・教育しても改善の見込みが無かった」という証拠を持っていなければ、真実はそうであったとしても、裁判官はその事実を認定できません。

注意・指導・教育の日時と内容、そしてその後の対象社員の変化などを、文書に残しておく必要があります。

会社経営者、上司、同僚、部下、取引先などは、基本的に会社の味方ですから、その証言は信頼に値する証拠になりません。

また、そもそも業務上のミスが多いので辞めてもらいたいわけですから、いつどのようなミスがあったのか、会社はどう対処したのかという基礎的な証拠も必要なわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

解雇権の濫用とされる基準は、労働契約法第16条を読んだだけでは具体的なことが分かりません。

具体的な事案に即した専門的な判断が要求されるのです。

社員に退職してもらうことを検討する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

柳田 恵一

DX

2020/11/20|1,149文字

 

<DX(デジタルトランスフォーメーション)>

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術による業務やビジネスの変革です。

「トランスフォーメーション」は、「変換」という意味ですが、これが「X」と省略されています。

DXは、経済産業省によると、次のように定義されます。

 

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

 

<音楽のDX>

家庭で音楽を聴くというと、昔はレコードやカセットテープでした。

これらが、ある時期に、一気にCDやMDへと切り替わりました。

DXではなくデジタライゼーションなどと呼ばれる現象です。

さらにスマートフォンの普及で、音楽のダウンロード販売が行われるようになりました。

現在では、音楽のやり取りがデジタル化されています。

これがDXです。

 

<小売業のDX>

新型コロナウイルス禍で、人々の消費行動も変わっています。

これに対応するため、スーパーマーケットの西友も、実店舗での販売とネット販売とを融合する方向でDXを進めるそうです。

人工知能(AI)の需要予測に基づいて、在庫管理や価格設定を効率化し、スマートフォンを使う電子商取引(EC)を行う予定だそうです。

チラシではなく、個々の消費者に宛てた商品情報が提供されるなど、利便性が高まることは間違いありません。

 

<人事業務のDX>

従業員が結婚や退職を考えた場合、上司や人事部門に相談するのは、気が重いことも多いでしょう。

また、年次有給休暇の取得手続など、分からなくなった時に、同じことを何度も聞くのは気が引けます。

いきおい、報告が遅れてしまったり、手続の誤りが増えたりと、不都合なことが起こりがちです。

会社にとっても、こうしたことで上司や人事部門の従業員が対応するのは、人件費の無駄であるといえます。

現在では、従業員からの定型的な質問に、24時間365日自動で回答するシステムも開発されています。

従業員からの質問とそれに対応する回答をAIに学習させることで、AI自体が成長していきます。

DXによって、生産性が向上し、従業員のストレスが軽減され、人件費も削減されます。

 

<実務の視点から>

DXへの取組みにより、生産性の向上だけでなく、消費行動の変化への対応もスピーディーになり、競争力が向上します。

逆に、取組まない企業は、競争力を失っていくわけですから、ライバル企業に負けないために、なるべく早期から計画的に取組むことをお勧めします。

DXに取組みにくい会社では、人事業務を社会保険労務士に外注するなどして、生産性の向上を図る必要もあるでしょう。

 

解決社労士

2020/11/19|586文字

 

<加入基準>

雇用保険や社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入基準のうち、労働時間については、実労働時間ではなくて所定労働時間が基準となります。

つまり、シフトに多く入っていて実際の労働時間が多くなっていても、雇用契約書や労働条件通知書に書いてある所定労働時間が基準に達していなければ、保険に入れないということになります。

 

<所定労働時間の見直し>

とはいえ、所定労働時間と実労働時間との食い違いが続くというのは、正しい状態ではありません。

実際の勤務に合わせて、雇用契約書を作り直すなどの対応が必要です。

 

<不明確な所定労働時間>

出勤日や勤務時間は、雇い入れにあたって雇い主が労働者に明示しておくべき労働条件の一つです。

しかし、月や週ごとに、話し合いで出勤日や勤務時間を決めることも違法ではありません。

実際、シフトを組んで勤務予定を立てている場合、基準となる出勤日数が決まっていないことがあります。

さらに、労働者が主体となって、自分の都合に合わせで出勤日を決めるというのも、何ら法令違反にはなりません。

このように所定労働時間が明確に決まっていない場合に限っては、勤務の実態を踏まえて、雇用保険や社会保険の加入を判断せざるを得ません。

社会保険については年金事務所、雇用保険についてはハローワークが相談窓口となります。

まとめて相談するのであれば、信頼できる社労士にご連絡ください。

 

解決社労士

2020/11/18|622文字

 

<制度利用への嫌がらせ>

次に掲げる制度や措置は、育児介護休業法が定めるもので、男女どちらにも適用されます。

上司や同僚の言動が、こうした制度や措置に関するもので、人権侵害となれば、就業環境を害することにもなり、制度等の利用への嫌がらせ型のマタハラ(マタニティーハラスメント)となります。

会社の規模に関係なく、小さな会社でも、すべての労働者に適用されます。

・育児休業

・子の看護休暇

・所定外労働(早出や残業)の制限

・深夜業の制限

・育児のための所定労働時間の短縮措置

・始業時刻変更等の措置

 

<マタハラとなる言動>

次のような言動は、マタハラの典型例です。

・制度や措置の利用請求などを理由に上司が不利益な取扱いをほのめかす

・制度や措置の利用請求などを上司や同僚が邪魔する

・制度や措置を利用したことを理由に上司や同僚が嫌がらせをする

具体的には、次のような発言がマタハラになります。

「男のくせに育休を取るなんて」

「一人だけ残業しないで帰るなんてずるい」

「いつも社長出勤で偉そうね」

周囲の人たちは、自分の負担が増えるから、ついついこんな発言をしがちです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「うちの会社は産休や育休の希望者がいない」と言えるうちに、マタハラ対策をするのがお勧めです。

具体的な希望者が現れてからでは、冷静に判断することができなくなるものです。

労働者の出産前後のルールについて、権利ばかりではなく義務についても、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/17|879文字

 

<正社員>

「正社員」と言うと、企業と雇用契約を締結した者のうち、雇用期間の定めの無い者で、職務の内容や勤務地に制限が無く、基幹的業務に携わる者をイメージすることが多いでしょう。

しかし、「正社員」は法律用語ではなく、したがって法令の条文にも出てこない言葉です。

各企業は、労働基準法などの制約が許す限り、自由に「正社員」の定義を定めることができますし、明確な定義を定めていない企業もあります。

 

<限定正社員>

「限定正社員」は、その企業の一般「正社員」の労働条件の一部が限定されている社員です。

限定正社員のうち勤務地の限定が約55%、職務の限定が約50%、時間の限定が約40%とされています。

合計して100%にならないのは、複数の労働条件が重複して限定されている限定正社員がいるからです。

 

<職種限定の合意>

職種限定正社員であれば、本人と企業との間で、職種限定の労働条件について合意があるわけです。

ジョブ型雇用であれば、最初から職種の限定は明白ですが、そうではなくても、特殊な技術、技能、資格が必要な職種であれば、職種限定について明示・黙示の合意があったと認められやすいでしょう。

しかし、入社時の労働条件通知書に、具体的な業務の内容が記載されていたとしても、単に採用直後の業務内容を明示しているに過ぎないと考えられえます。

また、事実として、長期間にわたり同じ業務に従事していたからといって、職種限定の合意があるとは認めがたいと考えられます。

 

<配置転換>

職種限定の合意がある場合、本人の合意を得ずに、他の職種に配置転換を命ずることはできません。

しかし、企業の都合や市場動向の変化により、その企業に特定の職種が不要となった場合でも、単純にその職種に限定しての雇用であることを理由に整理解雇の対象とすることは、本人にとって著しく不利益です。

こうした場合には、雇用維持の観点から、他職種への配置転換を命ずることも許されると考えられます。

もちろん、企業側から事情を説明し、本人の同意を得て職種の変更を伴う配置転換を実施したほうが好ましいことは、言うまでもありません。

 

解決社労士

2020/11/16|743文字

 

<パートやアルバイトなどの定義>

正社員、パート、アルバイト、嘱託社員、契約社員などの言葉は、法律用語ではありません。

ですから、それぞれの企業で自由に定義を決めています。

そうした言葉をなんとなく使っているだけで、明確な定義を決めていない企業も数多くあります。

このように、パートなどが法律用語ではない以上、各企業が特定の従業員をどのような名称で区分しようとも、それを根拠に正社員と違った扱いを自由にできることにはならないのです。

 

<パートやアルバイトの解雇>

ところが、パートやアルバイトであれば、いつでも解雇できるものと誤解されていることがあります。

むしろ、契約期間の途中で解雇するのは、定年の他に期間を定められていない正社員よりもむずかしいのです。

客観的に「やむを得ない」理由が無ければ、契約期間中に解雇することはできません。〔労働契約法第17条第1項、民法第28条〕

「客観的に」ということは、経営者が「主観的に」判断してはならないことを意味します。

「やむを得ない」理由とは、期間を定めて雇用しているにもかかわらず、その約束を破って、期間満了前に雇用契約を終了しなければならないような特別重大な理由をいいます。

ですから、余程のことがない限り、契約期間の途中で解雇することはできません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

期間満了とともに解雇する場合にも、決して自由に行えるわけではありません。

解雇したつもりになっていても、不当解雇であれば解雇は無効なのです。

その人を採用するかどうかは、基本的に企業側の自由なのですが、採用したからには雇い続ける努力をしなさいというのが、労働法全体の趣旨となっています。

それでもなお、解雇を考えなければならないのなら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/15|1,325文字

 

<残業の性質>

残業は、会社が命じて社員に行わせるものです。

具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

そして、いつも上司がいるわけではありませんから、伝票の処理が終わらないときは残業しなさいとか、お客様のクレームがあったときは対応して報告書を作成するまでは残業しなさいという包括的な命令もありえます。

この場合には、ダラダラ残業の危険がありますから、上司は十分な事後チェックをしなければなりません。

 

<上司の怠慢>

ところが実際には、上司の命令が無いままに、部下が自己判断で残業することがあります。

上司は、これを発見し、注意し、禁止しなければなりません。

そうしなければ、際限なく残業代が発生しますから、人件費の垂れ流しになってしまいます。

このような管理能力を備えていない上司が、部下の残業を野放しにしておくと、上司による黙示の承認があったものとされ、会社は多額の残業代を支払うことになります。

支払わなければ、サービス残業とされ、未払い残業代の請求が発生します。

上司には、部下を管理する役目があって、その分給料が高いのですが、上司が給料分働かないうえに、部下の余計な残業代まで負担するのですから、会社はたまったものではありません。

上司の管理能力の有無は、きちんと人事考課によって評価されなければなりません。

管理能力の不足する上司が、適正に降格されなければ、会社全体の生産性が低下してしまいます。

 

<就業規則での対処>

業務が終了したら直ちに帰ることを規定しましょう。

残業代が発生しなくても、ただそこに社員が残っているだけで、余計な光熱費が発生しますし、雑談などしようものなら、残業している社員の邪魔になります。

それだけでなく、使用者の指揮命令下にあるものとされ、タイムカードを打刻した後の時間にも残業代が発生してしまいます。

残業は、上司の命令によって発生することを明記しましょう。

上司の命令に応じるのではなく、自己判断で残業することは禁止しましょう。

こうした規定に違反する社員は、人事考課で適正に評価されなければなりません。

場合によっては、懲戒の対象とする必要もあるでしょう。

 

<残業代を稼ぎたい社員の発見>

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間は、本当の労働時間ではありません。

こうした時間の総合計が長い一方で、残業が発生している社員は、上司が注意指導して仕事をさせなければなりません。

これもまた、適正な人事考課と必要に応じた懲戒の対象となります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

部下に対して「残業を減らしなさい」「残業は月20時間まで」などと言うのは、上司のあるいは会社側の責任放棄です。

これでは、仕事が回らなくなるか、生産性が低下するか、サービス残業が発生してブラック企業に転落するかでしょう。

社内でうまく残業を減らせないのなら、働き方改革に詳しい社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/14|1,907文字

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法第27条第2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。

それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に適用される多くの罰則を規定しています。

実際にこの罰則が適用されるのは、使用者が悪質な違反を行い、労働基準監督官が事件を送検し、刑事裁判で有罪になった場合です。

 

<罪刑法定主義>

労働基準法が、具体的で分かりやすい基準を設けているのは、使用者一般に対して基準を示し、安心して経済活動ができるようにすることを目的としています。

仮に「若い人を夜遅くまで働かせてはならない」という規定があったなら、使用者は大学生を夕方以降に働かせるにも躊躇してしまいます。

労働基準法第61条第1項本文は、「使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない」というように、具体的な年齢と、具体的な時間帯を示していますから、違法・合法の境界が明解です。

ある行為を処罰するためには、禁止される行為の内容と処罰の内容を、具体的かつ明確に規定しておかなければならないとする罪刑法定主義の考え方の現れです。

この罪刑法定主義は、日本国憲法第31条と第39条にもその趣旨が示されています。

 

<同一労働同一賃金の考え方>

民法の「契約自由の原則」の趣旨を踏まえて、労働契約の締結を自由に任せておいたところ、正規労働者と非正規労働者との間で、不合理と見られる待遇差が増えてしまったという不都合が生じました。

原因としては、非正規労働者が使用者との間で労働契約の内容を決定する場合に、かなり弱い立場にあって、自由な交渉が大きく制限されているという実態が浮かび上がります。

つまり、当事者の対等な立場での交渉を前提とする「契約自由の原則」は、非正規労働者には当てはまらないのに、当てはまるものとして放置されてきたことに対する反省から、この待遇差を是正するために「同一労働同一賃金」が法制化されました。

改正前の労働契約法第20条や、現行のパートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)第8条・第9条にその趣旨が示されています。

正規労働者・非正規労働者の区分がある以上、その間の格差は当然に存在するものであることは認め、不合理な差別とならないように均衡を求める趣旨となっています。

具体的には、担当する職務の内容(業務の内容と責任の程度)、職務内容と配置の変更の範囲(職種の変更、昇進、転勤など)、その他の事情(正社員登用制度の実績など)を総合的に比較したうえで、個別の賞与、退職金、手当、休暇などに不合理な差別が無いかを検討する形になります。

ここで、たとえば「非正規労働者の賞与と退職金は正規労働者の7割以上」などという具体的な数値で基準を示すことはできません。

そもそも賞与や退職金は、労働基準法で支給を義務付けられるものではありませんし、具体的な事情によって、支給の要否や妥当な支給金額は変わってきますので、法令で一律の基準を示すことなどできません。

基準が示せないのに罰則を設けるというのは、罪刑法定主義に反してしまいますから、同一労働同一賃金について罰則を設けることはできないのです。

 

<法的な解決方法>

同一労働同一賃金について、罰則が無いからといって、使用者が無視しても大丈夫ということにはなりません。

非正規労働者から、「私の労働条件は不合理な差別によるものであり無効です」「あるべき労働条件なら得られたはずの経済的利益と、実際に得られた経済的利益との差額を請求します」ということで、使用者に対して損害賠償が請求されうるのです。

大阪医科大学事件も、メトロコマース事件も、このような訴訟でした。

最終的に、最高裁判所で使用者側が勝訴したとしても、裁判に対応するための時間、労力、精神力、経費は大変なものです。

敗訴すれば、労働基準法に多く規定されている30万円の罰金よりも、遥かに多額の賠償金の支払を命ぜられるかもしれません。

同一労働同一賃金への対応を誤れば、会社の経済的なリスクが大きいことから、やはり慎重に取組む必要があるのです。

 

解決社労士

2020/11/13|505文字

 

<マタハラ(マタニティーハラスメント)>

マタハラとは、職場での上司や同僚からの、妊娠・出産したことに関する言動や、育児のための制度の利用に関する言動により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されること(気持ち良く働けなくなること)をいいます。

対象者は、女性に限られず、父親となった男性も含まれます。

 

<職場>

職場は、労働者が業務を遂行する場所ですから、事務所、店舗などに限られず、出張先や取引先、自動車の中なども含まれます。

また、勤務時間外であっても、職務との関連性や、参加義務などにより、実質的に勤務の延長であれば、職場と見なされる場合があります。

職場で起きた事であれば、企業の使用者責任が問われます。

 

<労働者>

正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員などを含むすべての労働者をいいます。

また、派遣労働者については、派遣元も派遣先も、直接雇用の労働者と同様に措置を講じる必要があります。

 

<マタハラにあたらない場合>

客観的に見て、業務上の必要に基づく言動は、マタハラにはなりません。

この点、セクハラには業務上の必要に基づくことがありえないのとは異なります。

 

解決社労士

2020/11/12|1,576文字

 

<基本的な態度として>

パワハラを指摘されたなら、それはそれで十分反省すべきです。

しかし、解雇というのが行き過ぎた対応ではないかと疑うことも必要です。

パワハラを理由に解雇を宣告されても、それが法的に有効となるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

会社に再考を促すべき場合もありますので、冷静に考えてみてください。

 

<懲戒の有効要件>

解雇までいかなくても、懲戒が有効とされるには、多くの条件を満たす必要があります。

条件を1つでも欠けば、無効を主張できるわけです。

法律上の制限としては、次の規定があります。

 

「使用者が労働者を懲戒できる場合に、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」〔労働契約法第15条〕

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

ですから「使用者が労働者を懲戒できる場合」、つまり就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒が無効とされます。

また、そもそも就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒の具体的な取り決めが無ければ、懲戒そのものができないことになります。

 

懲戒権の濫用ではないといえるためには、次の条件を満たす必要があります。

・労働者の行為と懲戒とのバランスが取れていること。

・パワハラの問題が起きてから懲戒の取り決めができたのではないこと。

・過去に懲戒を受けた行為を、再度懲戒の対象にしていないこと。

・その労働者に説明や弁解をするチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<懲戒規定の明確さ>

実際にパワハラとされた行為が、懲戒の対象であることが明確でなければ、従業員としては、何が処分の対象かわからないまま処分されてしまうことになります。

これは、やはり懲戒権の濫用となり、懲戒は無効となります。

同じパワハラでも、暴行、傷害、名誉毀損など、刑法上の罪に問われる行為であって、懲戒規定に「会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったときは懲戒解雇とする」という規定があれば、他の条件を満たす限り懲戒解雇も有効になります。

しかし、こうした規定が無かったり、パワハラとされた行為が刑罰法規に違反する行為ではないという場合には、パワハラの定義の明確性が問題となります。

 

<パワハラの定義>

パワハラの定義は、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)で明らかにされました。

大企業については、令和2(2020)年6月1日に施行されていますが、中小企業では令和4(2022)年4月1日施行予定となっています。

この法令の施行により、企業は「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者に周知し啓発を行うことが義務づけられています。

社内で何が禁止されているか分からないのに、「あれはパワハラだったから処分します」という不合理なことは、明らかな犯罪行為にあたるような場合を除き許されないのです。

ですから、パワハラを指摘され反省してみたものの、本当にパワハラと言えるのか良く分からないならば、社内でパワハラの定義が不明確である可能性が高いのです。

 

パワハラで解雇されそうな場合、自分の行為が本当にパワハラだったのか、パワハラと認識できる状態だったのか、パワハラだったとして解雇されるほどのことだったのか、あくまでも謙虚に冷静に再検討してみる必要があります。

 

解決社労士

2020/11/11|1,436文字

 

<大阪医科大学事件>

大阪医科大学事件(令和2年10月13日最高裁判決)では、アルバイト職員が、「正職員と同じ仕事をしていながら、不合理な差別を受けた」として大学側を訴えました。

賞与が支給されないなど、不合理な差別を受けたので、経済的な損害を被っていたとして賠償金を請求したのです。

 

<アルバイト職員の目線>

しかし、正職員の業務のうち難度の高いものについては、アルバイト職員の目に触れない所で行われていた可能性があります。

正職員の業務の中でも難度の高いものは、経営に関わるもの、人事秘に属するものなど、機密性の高い情報を扱う業務が多いため、意図的にアルバイト職員の目を避けて行われていたのではないでしょうか。

 

<小売業では>

他の業種でも、例えば小売業で、売場での正社員の業務は、商品の補充、在庫チェック、発注、お客様のご案内、レジ打ち、ゴミの整理、清掃など、非正規社員とほぼ同じ内容だと思われます。

しかし、売場を離れて、売上や利益を確認しつつ、売場の変更を考え、店舗や部門の方針を策定し、人員配置を協議し、また、他店舗との連携や他店舗への応援など、非正規社員には見えていない業務について責任を負っています。

非正規社員からすると、正社員が売場を離れて働いている時間は、何の仕事をしているか分からない時間、あるいは、働いていない時間と受け取られかねません。

契約社員が、「正社員と同じ仕事をしていながら、退職金が支給されないなど、不合理な差別を受けた」として会社側を訴えたメトロコマース事件(令和2年10月13日最高裁判決)でも、同じような事情があったと考えられます。

 

<説明不足>

大阪医科大学事件では賞与が、メトロコマース事件では退職金が、非正規社員に支払われないことが不合理ではないと判断されました。

もちろん、これらの法人が賞与や退職金を支給することの目的や趣旨も、最高裁の判断の理由となっています。

しかしこれは、職務の内容(業務の内容と責任の程度)、職務内容と配置の変更の範囲、その他の事情に違いがあることを前提とした判断です。

日頃から、あるいは定期的に、会社や上司から正社員の職務内容について、非正規社員に説明していたならば、訴訟そのものが提起されなかったのではないでしょうか。

 

<説明の内容>

上司からの説明で、正社員には非正規社員とは異なる業務があって、それは難度がより高く、責任がより重いものであるということが伝わる必要があります。

次に、売場の仕事を離れるときの、声掛けの具体例を示します。

 

【小売業の場合】

伝わらない例

伝わる例

事務室にいます。 事務室で、販促計画を立てています。

事務室で、新しい棚割りを考えてきます。

応接室にいます。 応接室で、評価の面談をしています。

応接室で、採用面接をしています。

応接室で、業者との商談をしています。

マネージャー会議に行ってきます。 マネージャー会議で、部門売上・利益の進捗確認と改善策の検討をしてきます。
明日はお店に来ません。 明日は、終日○○店の応援です。

明日は本社で、終日アンガーマネジメント研修を受けています。

 

また、会社からの説明は、パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の内容を踏まえ、正社員だけが担当する職務の内容(業務の内容と責任の程度)、正社員の職務内容と配置の変更の範囲(職種の変更、昇進、転勤など)、その他の事情(正社員登用制度の実績など)が主な内容となります。

 

解決社労士

2020/11/10|1,018文字

 

<定額残業代の失敗による打撃>

残業が少なくても定額残業代が保障されているのですから、労働者は早く仕事を終わらせてプライベートを充実させようとします。

そのためには、自主的に学んだり、仕事の仕方を工夫したり、会社に言われるまでもなく努力します。

これによって生産性が向上するのは、会社にとっても大きなメリットです。

もし、こうした結果が得られていないのならば、制度の導入や運用に誤りがあると思われます。

そして、制度の導入や運用に誤りがある場合には、定額残業代の有効性が否定されます。

否定されると、基本給など残業代を計算するときのベースとなるはずだった賃金に、定額残業代を加えた金額をベースとして残業代を計算し、定額残業代とは別に支給しなければならなくなります。

これは、複利計算の形で残業代の二重払いが発生することになります。

ですから、会社にとっては思わぬ打撃となります。

 

<正しい導入にはひと手間かかる>

基本給にあたる賃金から、一定の時間(基準時間)に相当する定額残業代を算出します。

このとき、割増率が法定の基準を下回らないことと、基本給が最低賃金を下回らないことが必要です。

この基本給から定額残業代を算出した計算方法について、労働者ひとり一人に実額で説明します。

文書をもって説明し、制度の導入について同意を得ておくのが基本です。

こうした導入ができていないと、定額残業代は無効となりますから、労働者から別途残業代を請求されたら支払わなければなりません。

 

<正しい運用も手間がかかる>

定額残業代を導入しても、労働時間は適正に把握する必要があります。

なぜなら、基準時間を上回る時間の残業手当や、計算に含まれない法定休日出勤手当、深夜手当は、毎月計算して支給しなければならないからです。

もちろん、残業が基準時間を下回っても、その分定額残業代を減額することはできません。

そんなことをしては「定額」残業代ではなくなってしまいます。

誤った運用をしてしまった場合のリスクは、誤った導入をした場合と同じです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

定額残業代は、ブラックな制度のように思われがちです。

しかし、正しい制度であれば、会社にも労働者にもメリットが多いはずです。

その反面、誤った制度にしてしまうと、会社は何らかの形で労働者から残業代の二重払いを請求されます。

定額残業代を正しく活用し、そのメリットを最大限に活かすには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/09|1,257文字

 

<普通解雇>

懲戒解雇は、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などに具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇は、これらに規定が無い場合でも民法が適用されるので、一定の条件を満たせば可能です。

 

〔民法第627条第1項〕

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 

〔民法第627条第2項〕赤文字は令和2年4月1日の改正で追加)

期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

通常、給与計算には締切日がありますので、給与支給が月1回であれば第2項の方が適用されます。

 

<解雇の意味>

雇い主から「これこれの条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

具体的には、雇用契約書、労働条件通知書などです。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により会社が必要な教育研修を行っても労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

労働者の労働契約違反があった場合でも、雇い主はある程度まで労働契約の維持に向けた努力を示さなければ、解雇権の濫用とされ、解雇を通告しても無効になってしまいます。

能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合でも、雇い主は業務に必要な指導教育を十分に行っていなければ解雇できません。

労働者が業務上必要な指示に従わない場合でも、労働者に指示内容の重要性を説明し、指示に従うよう指導したうえでないと解雇できません。

雇い主は、その労働者を雇わないという選択もできたわけです。

それでも雇ったからには、雇ったことに対する責任があるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけですから、具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/08|1,867文字

 

<厚生労働省の公表>

厚生労働省は、監督指導による賃金不払残業の是正結果のデータとともに、賃金不払残業の解消のための取組事例を公表しています(平成31年度・令和元年度)。

無作為抽出によって行われた立入調査の事例が1件と、労基署への情報提供によって行われた立入調査の事例が3件示されています。

無作為抽出による立入調査は、特定の業種や重点項目など目的をもって行われるものですから、その企業に監督が入るのは偶然性が高いものです。

これに対して、労基署に情報が入ったために行われる立入調査は、情報の真否を含め実態を確認し、是正を求める目的ですから偶然ではありません。

情報源としては、従業員が疑われやすいのですが、実際には、退職者、取引先、ライバル企業など広い範囲に渡っています。

 

<タイムカード打刻後の労働>

賃金不払残業の防止を目的として、労基署が立入調査を実施しました。

検査部門の労働者に対し、所定終業時刻にタイムカードを打刻させた後、部品の検査を行わせており、検査した個数に応じて「手当」を支払っていたが、作業に要した時間を確認した結果、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導しました。

タイムカードを打刻させた後で働かせているので、終業時刻の正しい把握・記録ができていません。

社内独自のルールで、残業代に代えて「手当」を支給しているので、正しい時間外割増賃金が計算・支給されていません。

 

<始業前残業と労働時間の切り捨て>

「タイムカード打刻前の朝礼と車両点検に対して割増賃金が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施しました。

産業廃棄物の収集車の運転者に対し、始業前の朝礼への出席と車両点検を義務づけていたほか、労働時間の算定の際に、1日ごとに30分単位で切り捨て計算を行っており、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導しました。

朝礼への出席や車両点検が、会社から義務づけられていることで、これに必要な時間が労働時間の計算から漏れていて、労働時間の適正な把握・記録ができていません。

賃金の計算にあたって、労働時間の算定は1分単位で行うべきであり、「切り捨て計算」によって賃金不払残業が発生しています。

 

<自己申告制の不適切な運用>

「残業代が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施しました。

労働者がパソコンに入力する出退勤時刻により労働時間管理を行っていたが、店舗への入退場を管理する静脈認証システムの記録との間にかい離が認められ、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導しました。

労働者が、自己申告制でパソコンに入力していた始業終業の時刻と、店舗に入った時刻、店舗から出た時刻との間に、大きな食い違いがあったため、賃金不払残業が発生していました。

「労働時間適正把握ガイドライン」によれば、労働時間の管理に自己申告制を用いる場合には、使用者が定期的にその正しさを検証しなければなりません。

 

<固定残業代制度の不適切な運用>

「労働時間が全く把握されておらず、残業代が一切支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施しました。

労働者に対し、月10時間から42時間相当の残業手当を定額で支払っていたが、実際の労働時間を全く把握しておらず、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導しました。

固定残業代制度の下でも、基準となる時間を超えた労働時間に対しては残業代を計算・支給しなければなりません。

実際の労働時間の把握・記録の義務は、免除されませんので注意が必要です。

 

<労基署の立入調査>

労働者からの聞取り調査を含め、一部の実態調査を行います。

ここで、賃金不払残業の疑いがあると、会社に対して、全体の実態調査を行い報告書を提出するよう求めます。

この報告書に基づき、会社に対して、未払の残業代を支払うよう指導があります。

また、支払った内容についても、労基署への報告が求められます。

労働基準法などの理解が不十分なために、賃金不払残業が発生したのなら、労基署は正しい理解を説明し指導して、会社がこれに従えば良しとします。

しかし、労基署の指導に従わないことで、故意に賃金の不払が行われていたという悪質性が認められます。

ですから、会社が実態調査を行わない、虚偽の報告書を提出する、未払の残業代を支払わないなどの場合には、書類送検の手続がとられることもあるわけです。

労基署の立入調査は、会社を改善するきっかけと捉え、教えを請う態度で望むのが得策といえます。

 

解決社労士

2020/11/07|726文字

 

<法改正の動向>

少子高齢化対策は国が継続的に力を入れている政策ですから、関連する法令の改正が急速に進んでいます。

ついこの間まで大丈夫だったことが、いつの間にか法令違反となっています。

もともと、妊娠、出産、育児、介護などを理由として、事業主が解雇、雇い止め、降格、不当な配置転換その他の不利益な扱いをすることは、男女雇用機会均等法と育児介護休業法で禁止されてきました。

平成29(2017)年1月からは、職場で妊娠などについての上司や同僚の言動で、労働者の就業環境が害されるのを防止する措置をとることが、事業主に義務付けられるようになっています。

 

<不利益取扱の理由>

妊娠中または産後の女性労働者が、妊娠した、出産した、妊婦健診のため仕事を休んだ、つわりや切迫流産で仕事を休んだ、産休をとったなどを理由に、事業主が不利益な取扱いをすることは禁止されています。

また、性別に関係なく労働者が、育休や介護休業を取った、子どもの看護休暇を取った、育児介護のため残業や夜勤の免除を申し出たという場合にも、こうしたことを理由に事業主が不利益な取扱いをすることは禁止されています。

ここに示した不利益な取扱いの理由が消滅しても、消滅から1年以内に、何か労働者に不利なことが行われた場合には、妊娠などを契機としていると判断されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

少子高齢化対策という国の政策による法規制については、昭和の「常識」が通用しません。

事業主の無知を悪用して、労働者の側から法令違反を誘導しておいて、退職後に多額の賠償金を獲得する問題社員もいます。

妊娠した労働者や配偶者が妊娠した労働者がいる場合には、なるべく早い段階で、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/06|986文字

 

<遅刻の連絡先と連絡手段>

寝坊の場合だけではなく、家族の急病や自宅の水漏れ対応など、個人的な事情で遅刻する場合には、なるべく早く会社に連絡するのが常識です。

上司が休日や休暇のこともありますから、念のため、もう一つ連絡先を設定しておくと安心です。

ところが、連絡手段となると、従業員の個人的な判断に任されていることが多いようです。

これがトラブルの火種となります。

 

<就業規則の規定>

たとえば、厚生労働省のモデル就業規則には次のような規定があります。

 

(遅刻、早退、欠勤等)

第16条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

このように、連絡先の定めがあるだけで、連絡手段は定められていません。

常識的な連絡手段としては電話でしょう。

ついで、メールでしょうか。

職場によってはLINEが使われています。

社長の自宅の固定電話に留守電を入れておいたが社長の外出後であった、あるいは、上司にSMS(ショートメール)で連絡を入れておいたところ上司は受信拒否の設定にしてあったなどという場合には、遅刻の事実が伝わりません。

これらが正当な連絡手段といえるのか、従業員個人の常識と会社の判断とで食い違いがあれば、つまらないことで労働トラブルが発生しかねないのです。

優秀な従業員であれば、自分の中の常識を疑い、万一の遅刻に備えて会社への連絡手段を予め確認しておくでしょう。

しかし、これをすべての従業員に期待することはできません。

特に、無断で遅刻することが、懲戒処分の理由となりうる職場であれば、こうしたトラブルの原因は無くしておかなければなりません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

価値観の多様化している時代ですから、個人の「常識」に頼っていては、労働トラブルを未然に防止することはできません。

就業規則のある会社も無い会社も、会社の統一見解としての「常識」を文書化し、従業員全員に共有させておく必要があります。

それぞれの職場の個性に応じて、どのような「常識」をルール化するのが良いのかは、専門的な判断に従う必要があります。

迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/05|1,279文字

 

<メンバーシップ型雇用>

メンバーシップ型雇用というのは、職種を限定せずに総合職として採用し、総合的なスキルを求める方式です。

「この仕事をしてもらう」のではなく、「この会社の社員になってもらう」という雇用です。

日本では、新卒一括採用がこれに当たります。

会社は、社員の職種や仕事内容を変えながら適性を見極め、会社に長く貢献する人材を育てていきます。

この過程で、社員自身も自分に合った仕事を見出すチャンスを与えられます。

メンバーシップ型雇用で入社した社員には、長く勤める者が多く、仕事も広範囲に及ぶため、社歴の差が物を言います。

途中で退職しないように、勤続していれば昇給し、退職金の支給額も累進的に増額するような、年功序列的な雇用ですから、社員にとっては転職する場合のリスクが高く、優秀な人材でも転職しにくい環境にあります。

こうしたメンバーシップ型雇用は、定着率が高いことと、異動が容易であることから、人材の確保には適していますが、専門職の人材が育ちにくい欠点があり、市場環境の変化が著しい現代の日本には適合しなくなってきています。

 

<ジョブ型雇用>

メンバーシップ型雇用に対置されるジョブ型雇用は、特定の職種に限定して採用し、専門的なスキルを求める方式です。

「この会社の社員になってもらう」のではなく、「この仕事をしてもらう」という雇用です。

専門職の社員が急に辞めたとき、資格・経験・能力を備えた人材を中途採用するような場合が、これに当たります。

専門的な仕事ができるのであれば、年齢や学歴は重視されません。

メンバーシップ型雇用では、主に会社の責任で教育研修を行うのに対して、ジョブ型雇用では、予定した業務をこなすのに必要な経験・能力を備えている前提で雇用されたのですから、不足するものがあれば、基本的には社員自身の自己研鑽が求められます。

ジョブ型雇用の社員は、その会社で予定した仕事が無くなったら、異動して雇用を維持するということが難しいですし、多くの場合には本人も望みません。

むしろ、「その会社」での勤務を続けるのではなく、転職することにより、「その仕事」での勤務を続ける選択をするでしょう。

 

<新型コロナウイルスの影響>

新型コロナウイルスの感染拡大を避けるため、大企業だけでなく中小企業でも、在宅勤務を中心とするテレワークが広がりを見せました。

その中で、人事考課や採用方法の見直しが進んでいます。

評価をする上司は、評価される部下の働きぶりではなく、仕事の結果や成果物を評価対象とせざるを得ません。

勤務態度や潜在能力を考慮しないのであれば、メンバーシップ型雇用よりも、ジョブ型雇用の方が適合します。

こうして、テレワークには、ジョブ型雇用が向いていると言われます。

さらに、そもそも雇用ではなく、専門家やフリーランスへの業務委託で足りるとまで言われるようになってきています。

たとえば、勤務時間や休暇の管理、社員情報の管理なども、社内に担当者を置くよりは、外部のサービスを利用したほうが、正確で経済的でもあります。

ジョブ型雇用の、一歩先を考えてみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/11/04|1,104文字(偶然の一致)

 

<解雇を希望する従業員>

従業員のほうから解雇を希望するというのは、それ自体が不自然な話です。

解雇という言葉の意味からして、会社から従業員に対して労働契約の解除を申し出るのが解雇ですから。

それでも、全く本人の自由な意思で退職を希望する場合や、会社から退職勧奨があった場合に、「解雇にしてください」という申し出は実際にあるのです。

本人の説明によると、失業手当(雇用保険の求職者給付の基本手当)をもらうのに有利だからと言うのです。

退職勧奨の場合には、すでに労働者に有利になっているので、解雇扱いでさらに有利になることは無いのですが、自己都合退職から解雇への理由変更なら有利になりますし、助成金を受給しないのなら会社に不利益なことはなさそうにも思えます。

しかし、絶対に応じてはいけません。

 

<見えなかった下心>

雇用保険の手続にあたっては、本当の退職理由を記入しなければ違法になります。

会社が退職理由を偽ること自体、コンプライアンスの点で問題があります。

しかし、こんな単純な話ではありません。

今や簡単には解雇が認められず、退職者からの不当解雇の主張が通ってしまうという現実があります。

ということは、本人が希望したにもかかわらず、後から会社に対して不当解雇の主張をして、多額の金銭を要求するというリスクがあるのです。

 

<退職者からの要求>

まず、平均賃金の30日分の解雇予告手当の請求があります。

つぎに、不当解雇であり解雇が無効であったことによる賃金支払の要求があります。

不当解雇というのは、会社が解雇を通告し、解雇したつもりになっていて、実は解雇が無効なわけですから、裁判などで争いが長引けば、その間の賃金支払義務は消えないということになります。

ついでに、未払残業代や慰謝料の請求まで加わることもあります。

 

<会社の対抗措置>

会社としては、解雇を撤回し「今まで通り勤務してください」と申し出るという作戦をとることも可能です。

もちろん、解雇扱いになっていた期間の賃金支払義務は消えません。

しかし、本当のところは本人が希望して退職しているわけですから、いまさら仕事に復帰する可能性は低いでしょう。

ただし、最初から弁護士と相談して行動していた場合や、労働組合に支援してもらっている場合には、仕事への復帰も想定されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

普通とは違った話が従業員から出てきたときに、経営者は自分の中の常識に従って判断しがちです。

そして、これが会社にとって大きな打撃となることもあります。

優れた経営者は、いつも自分の中の常識を疑っているものです。

少しでもおかしいと思ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/03|1,218文字

 

<被害者への悪影響>

被害者はパワハラを受けたことにより、その職場にいられなくなることがあります。

そこまでいかなくても、個人の能力の発揮が妨げられます。

我慢していると、うつ病や対人恐怖症など心理的後遺症が残り、長期にわたって回復しないこともあります。

この場合、再就職が困難になります。

企業としては、最終的には金銭解決を図るしかないのですが、被害者の一生を補償できるわけではありません。

 

<周囲への悪影響>

パワハラの被害は、直接パワハラ行為を受けている相手だけでなく、その同僚、後輩、部下など広範囲に及びます。

パワハラ行為を受けている直接の相手だけでなく、それを見聞きした人も被害者です。

上司が被害者の席の所まで来て怒鳴りつけているような場合には、その近くにいる従業員全員が被害者です。

こうして従業員の勤労意欲低下と、職場秩序の乱れが生じます。

 

<企業への悪影響>

被害者の退職による戦力ダウンだけでなく、職場全体の生産性低下につながります。

組織力が適正に活かされなくなり、効率的な運営ができなくなります。

企業イメージの低下により、顧客も取引先も離れていきますし、金融機関からの評価も下がります。

もちろん被害者への損害賠償による金銭的損失も発生します。

 

<加害者への悪影響>

加害者の信用の失墜は職場に留まりません。

顧客や取引先に対する信用も失われます。

何より、家族からの信頼が失われるのが大きな打撃です。

被害者に取り返しのつかない傷を負わせたことが、被害者にとっても一生の傷となります。

加害者が会社から十分な教育を受けていなかったため、熱心な親身の指導をしているつもりで行為に及んでしまったというケースもあります。

こうなると、パワハラの加害者も会社との関係では被害者でもあります。

 

<パワハラの性質>

意図的にパワハラ行為をしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導の中に、パワハラとなる部分が含まれているということが多いのです。

業務上必要な注意指導とパワハラ行為との明確な区分が微妙だというのが、パワハラの特徴です。

この点、業務上必要なセクハラ行為というものが無いのとは対照的です。

パワハラになることを恐れて、業務上必要な注意指導ができなくなってしまうのも困りものです。

 

<パワハラの予防>

まず就業規則などに、その職場に応じたパワハラの客観的な定義を明示することです。

これと併行して、パワハラについての社員教育をきちんとすることです。

特に、必要な注意指導との区別についての教育は重要です。

また、パワハラの相談窓口を設けることです。

この相談窓口は、外部の第三者的な立場であることが望ましいのです。

うでなければ、被害者も加害者も相談しにくいですし、社内の人が担当では客観的に対応できない必然性があります。

就業規則も社員教育も、そして相談窓口も、まとめて信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談してはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/11/02|1,222文字

 

<コンピテンシーとは>

コンピテンシー(competency)は、英語で「適格性」を意味しますが、企業の人材活用の場面で用いられる場合には、「職務で一貫して高い業績を出す人の行動特性」をいいます。

コンピテンシーが注目されるようになった理由は2つあります。

ひとつは、企業が年功序列主義を見直し、能力を客観的に評価する基準が必要になったという事情があります。

もうひとつは、企業が国際競争にさらされ、生き残りをかけて組織や企業全体の生産性を高めることが急務となったことです。

両者が相まって、企業が従業員に能力向上の分かりやすい指標を示すのに、コンピテンシーが有効だったわけです。

 

<人事考課での利用>

社内で高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、その行動特性を職種別にモデル化し、どれだけ近い行動特性を備えているかを評価基準とします。

従来の日本型の人事考課では、「協調性」「積極性」「規律性」「責任性」など、評価基準が能力で構成されていました。

しかし、こうした評価基準で高評価を与えられた従業員が、必ずしも会社に対して高い貢献度を示しているわけではありません。

そこで、会社への貢献度に直接リンクする評価基準として、コンピテンシーが用いられるようになりました。

ただ、どれほどコンピテンシーモデルに近い行動をとっているかの判断は、考課権者である上司の主観に負うところもあり、必ずしも評価される従業員に納得されない部分があります。そこで、部署や事業所ごとにコンピテンシーモデルを提示し、その内容を個人レベルの目標に落とし込む形で、目標設定に利用することが行われます。

この方法によれば、十分な結果が出なかった場合でも、コンピテンシーの側面から取組み姿勢を評価することができます。

 

<採用での利用>

コンピテンシーを採用面接に取り入れることで、企業の求める人物、企業の業績に貢献してくれそうな人物か否かを見極めようとする試みもあります。

この場合には、応募者に対する質問内容を、コンピテンシーモデルを軸に据えたものとします。

架空の事例を提示して「あなたならどうしますか」という問いを投げかけるなどして、会社に貢献する人物か否かを客観的に判断するための材料をより多く引き出すようにします。

コンピテンシー採用は、面接官に高いスキルが求められますし、応募者が事実に反して、望ましい行動パターンを想定して回答してしまうと評価を誤る恐れがあります。

このため、コンピテンシーを採用に利用するのは、かなりの困難を伴います。

 

<将来のコンピテンシー活用>

将来的には、サイバー空間にビッグデータの一部として、コンピテンシーの膨大な情報が集積されます。

このビッグデータを人間の能力を超えた人工知能(AI)が解析し、その解析結果が様々な形でフィードバックされるでしょう。

企業が求める人材を発掘するのも、求職者が適職を見つけるのも、近い将来、困難なことではなくなっているかもしれません。

 

解決社労士

2020/11/01|1,043文字

 

<直接の被害者への悪影響>

直接の被害者はセクハラを受けたことにより、その職場にいられなくなり退職することになったり、再就職が困難になったりします。

対人恐怖症など心理的後遺症が残り、長期にわたって回復しないこともあります。

企業としては、最終的には金銭解決を図るしかないのですが、被害者の一生を補償できるわけではありません。

 

<他の従業員への悪影響>

セクハラ行為を直接受けた従業員だけでなく、セクハラ行為を見聞きした従業員も被害者です。

ですから、直接の被害者が加害者を許したとしても、他の従業員に対する関係で、決して許されるわけではないのです。

従業員の勤労意欲低下と、職場秩序の乱れが生じます。

 

<企業全体への悪影響>

直接・間接の被害者の退職による戦力ダウンだけでなく、職場全体の生産性低下につながります。

組織力が適正に活かされなくなり、効率的な運営ができなくなります。

企業イメージの低下により、顧客も取引先も離れていきますし、金融機関からの評価も下がります。

もちろん被害者への損害賠償による金銭的損失も発生します。

 

<加害者への悪影響>

信用の失墜は職場に留まりません。

顧客や取引先に対する信用も失われます。

何より、家族からの信頼が失われるのが大きな打撃です。

被害者に取り返しのつかない傷を負わせたことが、被害者にとっても一生の傷となります。

加害者が会社から十分な教育を受けていなかったため、軽い気持で行為に及んでしまったというケースもあります。

こうなると、セクハラの加害者も会社との関係では被害者でもあります。

 

<セクハラの性質>

業務上必要なセクハラ行為というものはありません。

この点、会社の意向を受けて行った注意指導が、パワハラになってしまうことがあるのとは、全く事情が違っています。

仕事をするうえで、全く必要性が認められず、百害あって一利なしというのがセクハラの性質です。

何としても、阻止しなければなりません。

 

<セクハラの予防>

まず、就業規則などにセクハラの客観的な定義を明示することです。

これと併行して、セクハラについての社員教育をきちんとすることです。

また、セクハラの相談窓口を設けることです。

この相談窓口は、外部の第三者的な立場であることが望ましいのです。

そうでなければ、被害者も加害者も相談しにくいですし、社内の人が担当では客観的に対応できない必然性があります。

就業規則も社員教育も、そして相談窓口も、まとめて信頼できる社労士(社会保険労務士)に依頼してはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/10/31|1,043文字

 

<一般的な規定>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

解雇を通告し、解雇したつもりになっていても、それが不当解雇であって無効なら、従業員の立場は失われないということですから、働いていなくても賃金の支払が必要になるなど大変なことになります。

不当解雇というのは、解雇したつもりで、実は解雇できていない状態ですから危険です。

 

<個別的な規定>

解雇を制限する規定としては、次のようなものがあります。

・国籍、信条、社会的身分による差別的取扱の禁止〔労働基準法第3条〕

・公民権行使を理由とする解雇の禁止〔労働基準法第7条〕

・業務上の負傷・疾病の休業期間等、産前産後休業期間等の解雇制限〔労働基準法第19条〕

・性別を理由とする差別的取扱の禁止〔男女雇用機会均等法第6条第4号〕

・婚姻、妊娠、出産、産前産後休業を理由とする不利益取扱の禁止〔男女雇用機会均等法第9条〕

・育児休業、介護休業、子の看護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔育児介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第16条の9、第18条の2、第20条の2、第23条の2〕

・短時間・有期雇用労働者が、事業主に対して、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由などについて、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔パート・有期労働法第14条第3項〕

・都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと、あっせんを申請したことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔個別労働関係紛争解決促進法第4条第3項、第5条第2項〕

・法違反を監督官庁(労基署等)に申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔労働基準法第104条第2項、最低賃金法第34条第2項、労働安全衛生法第97条第2項、賃金確保法第14条第2項〕

・公益通報したことを理由とする解雇の無効〔公益通報者保護法第3条〕

・不当労働行為の禁止〔労働組合法第7条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「常識」に従った解雇は、法的には不当解雇であることが多いものです。

解雇を検討するなら、一度、信頼できる社労士にご相談ください。

何の落ち度もない従業員を退職に追い込むようなことはできませんが、納得して退職していただくためのお手伝いはさせていただきます。

 

解決社労士

2020/10/30|1,375文字

 

<アナログな方法による資格確認>

退職や転職などにより、受診者の保険証(健康保険の保険者)に変更があった場合、このことが医療機関に正しく伝わらないと、医療機関は診療報酬のうちの健康保険適用部分を正しく受け取ることができません。

この場合、電話や文書で受診者などに確認をして、正しい保険者に再申請する等の、医療機関での業務負担が発生しています。

保険者の食い違いが発生するのは、受診者が会社を退職して健康保険の資格を失ったのに、保険証を会社に返却することを怠り、無効な保険証を医療機関に提示した場合などが考えられます。

医療機関が気付かずに、その保険証を有効なものとして手続してしまうと、医療機関も受診者も、手続のやり直しを求められることになってしまいます。

保険証が無効であることを知りながら、あえて不正使用をする受診者がいると、医療機関の収入は、保険証の不正使用者から「自己負担分」として受け取った金額だけになってしまい、本来は不正使用者が全額負担するはずであった金額との差額だけ、損失が発生してしまうことになります。

また、月の途中で保険者が変わる等の異動があった場合、窓口での資格確認にタイムラグが生じる可能性があります。

 

<資格確認オンライン化>

こうした不都合を解消するため、令和3(2021)年3月から、オンラインによる加入者(被保険者)資格と扶養家族(被扶養者)資格の確認が行われるようになる予定です。

オンライン資格確認が開始されると、被保険者や被扶養者が医療機関で受診した際に、その場で最新の資格情報を確認できるようになります。

月の途中で保険者が変わった場合にも、審査支払機関でのオンライン資格確認システムでの資格確認により、レセプトを分割してその保険者に送付する等が行えるようになります。

 

<保険証の記載事項追加>

オンライン資格確認の開始にあたっては、資格の確認を個人単位で行えるようにするため、被保険者記号・番号の個人単位化が必要になります。

このため、令和2(2020)年10月19日以降、協会けんぽで新たに発行される保険証には、記号・番号の右隣に2桁の枝番が印字されるようになっています。

この変更に伴い、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」が設けられています。

なお、この変更により令和2(2020)年10月18日以前に発行された保険証の差替えは、不要です。

 

<マイナンバーカードの保険証利用>

マイナンバーカードによる資格確認も、令和元(2019)年5月成立の改正健康保険法で規定され、令和3(2021)年3月に導入される予定です。

これは、マイナンバーカードのICチップの電子証明書を用いて行うもので、マイナンバーは使いません。

保険医療機関・薬局でのシステム導入の支援のため、「医療情報化支援基金」が創設され、令和5(2023)年3月末までに、概ね全ての医療機関・薬局での導入を目指すものとされています。

転職した場合にも、新しい保険証の発行を待たずに、マイナンバーカードで受診ができるなど便利になります。

医療機関は、マイナンバーカードの顔写真を確認し、窓口では預からないという運用が予定されています。

顔認証付き端末で確認する運用も検討されています。

 

解決社労士

2020/10/29|861文字

 

<解雇の意味>

雇い主から「これこれの条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

労働者の労働契約違反があった場合でも、雇い主はある程度まで労働契約の維持に向けた努力を示さなければ、解雇権の濫用とされ、解雇を通告しても無効になってしまいます。

能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合でも、雇い主は業務に必要な指導教育を十分に行っていなければ解雇できません。

労働者が業務上必要な指示に従わない場合でも、労働者に指示内容の重要性を説明し、指示に従うよう指導したうえでないと解雇できません。

雇い主は、その労働者を雇わないという選択もできたわけです。

それでも雇ったからには、雇ったことに対する責任があるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけですから、具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/28|961文字

 

<社会保険への加入拒否>

社会保険への加入基準を満たす労働契約を会社と交わしたら、自動的に社会保険に加入します。

契約書が作成されなくても、口約束でも同様です。

これは、赤ちゃんが生まれたときに、出生届を提出しなくても、生まれなかったことにはならないのと同じです。

一定以上の週所定労働時間、月間所定労働日数の約束で働き始めておきながら、社会保険への加入を拒否するというのは、法的には意味がありません。

会社は、本人が拒否していても、法令により社会保険加入手続が義務づけられていますから、その義務に従って加入手続を行うのが、法的には正しいことになります。

 

<会社が一方的にシフトを減らす行為>

会社は、本人が社会保険への加入手続に反発したのに対抗して、加入基準を下回る一定未満の週所定労働時間、月間所定労働日数でシフトを組むことがあります。

しかし、本人の了解を得ることなく、このようなことをしても無効です。

会社は、社会保険への加入基準を満たす労働契約を交わしたのですから、これに拘束されます。

本人との合意なしに労働契約の内容を変えることはできません。

 

<正しい対応>

会社は、求人広告で所定労働時間や所定労働日数を示し、社会保険への加入も表示していたことでしょう。

そうでなくても、採用にあたって労働条件を再確認しています。

それにも拘わらず、本人が社会保険への加入を拒否するのであれば、社会保険の加入基準は客観的なものであり、本人の意思とは無関係であることを説明したうえで、一定の期限を設けて次のうちから1つを選択してもらうようにします。

・入社を取りやめる

・会社の社会保険加入手続に協力する

・加入基準を下回る労働契約に変更して勤務する

期限内に回答が無ければ、原則通り社会保険の加入手続をとることとしておきます。

また、「加入基準を下回る労働契約に変更して勤務する」という選択肢は、会社の自由な意思によりサービスで設けるものですから、無くてもかまいません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

上記の対応をしていれば、法令違反も不法行為も発生しません。

労働法に明るくない人が、「社会保険への加入を拒否したらシフトを減らされたのは違法ではないか」と問われたら戸惑ってしまいます。

何かおかしいと感じた時は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/27|1,429文字

 

<Society5.0>

Society(ソサエティー)5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)をいいます。

第1段階の狩猟社会(Society1.0)、第2段階の農耕社会(Society2.0)、第3段階の工業社会(Society3.0)、第4段階の情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

内閣府は、Society5.0の社会を次のように想定しています。

 

<新たな社会>

Society5.0で実現する社会では、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、知識や情報が共有され、今までに無い新たな価値を生み出すことで、多くの課題や困難が克服されるでしょう。

また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されるでしょう。

 

<Society5.0のしくみ>

Society5.0では、フィジカル空間のセンサーからの膨大な情報が、ビッグデータとしてサイバー空間に集積されます。

このビッグデータを人間の能力を超えた人工知能(AI)が解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされることで、これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになります。

 

<人間中心の社会へ>

Society5.0では、ビッグデータを踏まえたAIやロボットが、今まで人間が行っていた作業や調整を代行・支援するため、日々の煩雑で不得手な作業などから解放され、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができるようになるでしょう。

これは、ひとり一人の人間が中心となる社会であり、決してAIやロボットに支配され、監視されるような未来ではありません。

先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、イノベーションから新たな価値が創造されることにより、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会が実現されると考えられます。

 

<これから求められる人材>

厚生労働省の、「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」でも、その報告書の中で、新型コロナウイルス感染症の存在を前提とした職業訓練の構築とともに、Society5.0の実現に向けた社会実装や第4次産業革命(IoT、AI、ビッグデータ等)に伴う技術革新の進展等に対応したデジタル利活用人材の育成が進み、国際競争力の維持・向上を実現している社会を目指すべきだとされています。

また、人生100年時代の到来による職業人生の長期化を見据え、労働者が在職中・離職中を問わず、若年のうちから主体的に自らの職業能力開発を継続的に行い、自身のライフステージに応じて、希望する職場で活躍し続けることができる社会になるべきだとしています。

つまり、Society4.0からSociety5.0への変革の中で、求められる職業能力が大きく変容するため、労働者自身が継続的に能力開発をする必要があり、国家も企業もその手助けをしなければならないということです。

これは、企業での教育訓練を優先課題とすべき時期が到来したことを意味します。

 

解決社労士

2020/10/26|992文字

 

<会社が転勤を命ずる権利>

会社の就業規則には、人事異動について、次のような規定が置かれます。

「会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

…労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。」〔厚生労働省のモデル就業規則第8条〕

たとえこのような規定が無くても、会社と社員との間で転勤を想定した労働契約が成立していれば、会社が労働契約に基づいて社員の働く職種や場所を決定できるとされています。

一般的に、会社は正社員に対して、人事権の一つとして配転命令権を持っています。

ただし、近頃増えている「多様な正社員」のうちの勤務地限定正社員のような労働契約が成立している場合には、その契約の性質上、会社は遠方への転勤を命ずる権利を持っていないことになります。

 

<権利の濫用となる場合>

会社に配転命令権がある場合でも、次のような事情がある場合には、権利の濫用となり配転命令が無効となります。

ほとんど嫌がらせと思われる場合です。

・業務上の必要が無い場合

・配転命令が不当な動機や目的によるものである場合

・社員の不利益が通常の程度を著しく超える場合

 

<権利の濫用だと言われたら>

「会社には配転命令権があり、社員には従う義務がある」という態度を取り続けたのでは、まさに権利の濫用になってしまいます。

会社の取るべき態度について、参考になる条文としては育児介護休業法第26条があります。

「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない」という規定です。

これは、育児介護休業についてのものですが、その趣旨は、すべての配転命令権に共通する原理です。

つまり、配置転換や転勤について、社員が難色を示した場合には、会社側が具体的な事情を聴き、抱えている問題の解消法を共に考え、どのように対応すべきかを真剣に協議しなければならないということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

具体的なケースについて、社員の我がままとして片付けて良いのか、権利の濫用として転勤命令が無効となるのか、判断に迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/25|778文字

 

<従業員から>

従業員からの申し出により労働問題とされやすいのは、パワハラ、セクハラ、労働条件の不利益変更です。

これらは、従業員からの申し出があったとき、経営者が判断に困り、適切な対応ができないでいるうちに、社内で解決しきれない労働問題に発展することがあります。

会社に落ち度が無いという自信があれば、所轄の労働基準監督署に確認して、従業員に説明すれば良いでしょう。

そうでなければ、何かアクションを起こす前に、なるべく早く信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<訴訟や労働審判への発展>

退職者からの、残業代請求、不当解雇、退職に伴う請求がメインです。

どう考えても円満退職だった退職者の代理人弁護士から、内容証明郵便が届いてビックリというパターンです。

在職中は会社に遠慮して言えなかった不平不満が、退職後に爆発するのですから意外性があります。

退職者ご本人にその気が無くても、ご家族やお知り合いの中には労働法に詳しい方がいらっしゃいます。

そして、この方が労働者の権利を強く主張すると、退職者が同調して会社に請求することもあります。

 

<複合的な形になるもの>

退職者から未払残業代の請求がある場合、パワハラによる慰謝料請求が加わったりします。

セクハラの被害者が退職させられ、加害者が会社に残り、これを不満とした退職者からの慰謝料請求に、未払残業代の請求が加わったりします。

パワハラの加害者として退職させられた人から、不当解雇を主張され、賃金、賞与、慰謝料を請求されることもあります。

権利の侵害を感じた退職者が弁護士に依頼すると、弁護士は依頼人に事実を確認し、これを法的に構成し、できる請求をすべてすることになります。

依頼人と弁護士との契約は、委任契約ですから、医師が治療にベストを尽くすのと同じように、弁護士も依頼人の権利実現にベストを尽くすわけです。

 

解決社労士

2020/10/24|1,340文字

 

<付加金の規定>

付加金は、労働基準法に規定されています。

 

【労働基準法第114条:付加金の支払】

第百十四条 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

 

このような形で規定されていますから、ついつい具体的な内容を確認せず、見逃してしまいがちです。

第二十条(解雇予告手当)、第二十六条(休業手当)、三十七条(割増賃金)、第三十九条第九項(年次有給休暇の賃金)と書いてあれば、大変わかりやすいと思います。

解雇予告手当、残業代などの割増賃金、年次有給休暇の賃金は、退職者から会社に対して請求されることがあったのに加えて、最近では新型コロナウイルスの影響による休業の影響で、休業手当の請求が増えてきています。

特に休業手当は、支払実績がほとんど無いことから、会社側が計算方法を誤ってしまい、退職者から不足分を請求される恐れがあります。

 

<支払義務の発生>

条文の本文が「裁判所は」から始まり、「命ずることができる」で終わっています。

このことから、付加金が登場するのは、訴訟となったときに限定されることが分かります。

また、必ず付加金の支払が命ぜられるわけではなく、命ずる場合があるという規定になっています。

さらに、「労働者の請求により」という規定ですから、労働者が請求しなければ、裁判所は付加金の支払を命ずることができません。

 

<付加金の性質>

付加金は「使用者が支払わなければならない金額についての未払金」について発生しますから、全く支払われない場合だけでなく、金額が不足する場合にも支払が命ぜられます。

そして、その金額は未払金と「同一額」です。

労働基準法によって、労働者の権利が100%守られるというレベルを超えて、会社側に支払義務が生じてしまうことから、付加金は会社に課せられた義務の違背に対する制裁であると解されます。

 

<支払わずに済ませる方法>

裁判の口頭弁論が終結する前に、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

また、第1審の判決を不服として、会社が控訴した場合には、控訴審の口頭弁論終結時までに、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、やはり裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

ただし、この場合には、遅延損害金が増額しますから、第1審が確定した場合よりも、訴訟費用や人件費などと合わせて、会社の負担が増えてしまうことがあります。

 

<実務的には>

付加金の制度は、「付加金を支払うくらいなら、残業手当や休業手当をきちんと支払ったほうが得だ」と思わせるために存在すると考えられます。

退職者が身勝手な態度をとることもあります。

会社の経営が苦しいこともあります。

それでも、付加金の趣旨を思い出して、正しく支払っていただきたいものです。

 

解決社労士

2020/10/23|971文字

 

<「基準」の意味>

労働基準法の「基準」は、「最高」の水準を意味するものではありません。

そして、「標準」や「目安」を示しているわけでもないのです。

労働基準法の「基準」とは、この一線を踏み越えると違法になるというギリギリの「最低」水準や「限度」、「禁止事項」のことを言っています。

ですから、会社独自の判断で労働基準法に示された「基準」よりも労働者に有利なことをするのはかまいません。

たとえば、入社とともに年次有給休暇を14日付与するなどがその例です。

 

<「基準」の個別性>

労働基準法の「基準」は項目ごとに定められています。

「うちの会社は残業手当を多めに支給しているから、年次有給休暇は取らせなくてもいいだろう」など、全体のバランスで調整することはできません。

 

<違約金・賠償額の予定禁止>

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」〔労働基準法第16条〕

かつては、中途で退職したり、会社に損害を与えたりした場合は、労働者だけでなくその家族も違約金を払う、損害賠償を行なうなどの契約が見られました。

しかし、これは労働者の退職の自由を奪うことになるので、労働基準法が罰則付きで明確に禁止したのです。

 

<「罰金」のあるブラック企業>

ところが実際には、遅刻したら罰金3千円、お皿を割ったら1枚につき千円など、気軽に労働基準法違反を犯している会社もあります。

そもそも「罰金」というのは、国家権力が科すものですから、民間企業が従業員から罰金を取るというのは明らかにブラックなわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社内での「常識」に従って昔から行われていることが、実は労働基準法違反ということがあります。

不幸にして、客観的な第三者からの指摘が無いままに、違反を繰り返している状態です。

仕事ができる人は、常に自分の中の常識を疑っています。

経営者が、自分の中の常識を疑わなくなれば、会社は社会の変化についていけません。

労働基準監督署への三六協定書の届出など形式的な面だけでなく、社内で行われていること全体について適法性が確保されているのか、労働条件審査を受けてみてはいかがでしょうか。

経営者や人事部が問題を感じていなくても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/22|1,140文字

 

<自己中心的と主体的>

採用面接も1,000人以上を経験し、その後の勤務態度や勤続年数を見てくると、応募の段階で人物像が見えるようになってくるものです。

それでも、不慣れな頃は採用面接で自己中心的な人物を見抜くことができず、配属先にご迷惑をお掛けすることもありました。

自己中心的な方は、自分の利益だけを考えて行動しますから、組織の中で働くのには向いていないでしょう。

これに対して主体的な方は、お客様、上司・同僚・後輩、会社全体のことを考えて自発的に行動するので大いに貢献してくれます。

ところが、短時間の採用面接では、自己中心的な応募者を主体的な人だと勘違いしてしまうこともあります。

そこで、採用面接での自己中心派の特徴をまとめてみました。

 

<わかりやすい自己中心派>

「私は」「私が」を多用するのは、自己中心派のわかりやすい特徴です。

また、自己中心的であることを隠そうとした場合には、「私も」「うちも」という言葉が増えます。

「私も」「うちも」と聞くと、協調性があるように思えますが、本当に協調性があれば「そうですね」と言ってうなずきます。

 

<わかりにくい自己中心派>

「割と」「思ったよりも」「意外に」「けっこう」を多用するのも、自己中心派の特徴です。

これらの言葉は、話し相手に対して客観的な内容を伝えるのではなくて、「自分が」どう思うかを伝えています。

「割と大変でしたが、けっこう頑張りました」という話をされたときに、具体的な内容を尋ねると黙り込んでしまうので、ただアピールしたいだけなのがバレてしまいます。

 

<応募の動機>

自己中心派は、応募の動機について、自分にとっての直接的なメリットしか言いません。

給料が高い、通勤が便利、勤務先の近くに〇〇があって便利というのは、よく聞く言葉です。

さらに、誰にでもできる仕事、自分の都合でシフトに入れる、好きな仕事をさせてもらえそうという話が出てくるなど、自分に都合の良い思い込みも多いものです。

 

<前職を辞めた理由>

自分の落ち度は、退職した理由に出てきません。

自分だけ叱られた、周りの人たちに協調性が無かった、上司がバカだったなど、そのほとんどが露骨な悪口です。

こういう人たちを採用してしまうと、いつか退職していったあと会社の悪口を言われそうで採用する気にはなれません。

 

<不思議な共通点>

自己中心的な応募者は面接担当者をほめます。

どうでもいいことで、面接担当者を過剰にほめるのです。

応募者にとっては、採用されることが目的ですから、面接担当者から悪く思われたくないのは当然です。

しかし、極端にほめられた面接担当者は単純には喜べません。

「変わった人だ」「気味が悪い」と感じてしまいます。

自己中心的な人は相手の気持ちを考えるのが不得意なのでしょう。

 

解決社労士

2020/10/21|1,379文字

 

<標準報酬月額の特例措置>

新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した人のため、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例措置がとられています。

この特例措置は、一定の条件を満たす人に限定されています。

また、報酬が著しく下がった期間によって、特例の内容が異なっています。

 

<対象者の条件>

令和2(2020)年8月から12月までの間に、新たに休業により報酬が著しく下がった人と、4月または5月に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている人とでは、条件が異なっています。

それぞれ、下記に掲げる条件のすべてを満たした人が対象となります。

 

【令和2(2020)年8月から12月までの間に新たに休業により報酬が著しく下がった人】

・新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和2年8月から12月までの間に、報酬が著しく下がった月が生じたこと

・著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと

・特例措置による改定内容に本人が書面により同意していること

 

ただし、休業のあった月とその前2か月のいずれか1月でも支払基礎日数が17日未満(特定適用事業所等の短時間労働者は11日未満)の場合、対象とはなりません。

 

【4月または5月に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている人】

・新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和2年4月または5月に報酬が著しく下がり、5月または6月に特例改定を受けたこと

・8月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がったこと

・特例措置による改定内容に本人が書面により同意していること

 

この特例は、次のすべてに該当する方を対象としています。

 

<一般の随時改定と異なる点>

固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合でも、特例改定の対象となります。

また、報酬が支払われていない場合でも、特例改定の対象となります。

この場合は、最低の標準報酬月額(健康保険は5.8万円、厚生年金保険は8.8万円)として改定・決定されます。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を受ける場合でも、特例改定の対象となり、休業支援金は給与支給額に含まれません。

新型コロナウイルス感染症の影響で事業主から休業命令や自宅待機指示などによって休業となった場合は、休業した日に報酬が支払われなくても、給与計算の基礎日数として取り扱われます。

 

<留意点>

届出にあたって、傷病手当金、出産手当金、年金への影響など、加入者(被保険者)本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要です。

一度特例改定の届出をした人が、重ねて複数回届出を行うことや、届出後に取下げ・変更を行うことはできません。

なお、特例改定を受けた人は、休業から回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合には、その翌月から標準報酬月額を改定することになります。

この場合には、通常の月額変更届の提出が必要です。

 

<手続の方法>

特例用の月額変更届に申立書を添付し、所轄の年金事務所へ郵送または窓口に直接提出します。

届出期限は、令和3(2021)年2月末です。

 

解決社労士

2020/10/20|1,061文字

 

<ブラックな経営方針>

「うちの会社はブラックでいこう!」という経営者など、いないと信じたいものです。

少なくとも、ブラック企業では長続きできないことは分かります。

 

<ありがちな事例>

新しく入ったパート社員から会社に「うちの子が熱を出したのでお休みをいただけませんか?」という電話があったとします。

このとき、会社の責任者はどのように応対するでしょうか。

もし、この電話が入社1か月のパート社員からのもので、同様の電話が3回目だったらどうでしょうか。

 

<子の看護休暇>

小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護などのために、休暇を取得することができます。

対象となる子が2人以上なら、1年に10日まで休暇を取得できます。〔育児・介護休業法第16条の2、第16条の3〕

申出は口頭でも、また当日でも認められます。

事業主は、業務の繁忙等を理由に、子の看護休暇の申出を拒むことはできません。

ただし、勤続6か月未満の労働者や週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。

この他の労働者を対象外とすることはできません。

所定労働日数があやふやであったり、一部の労働者を除外する労使協定が未締結であれば、対象外とはできません。

子の看護休暇は、法によって労働者の権利とされているものですから、残業手当の支払や年次有給休暇と同じで、「うちの会社はムリだから無し」ということはできないのです。

 

<いつの間にかブラック企業となる危険>

上の事例で、電話を受けた会社の責任者は、子の看護休暇のことを知らなければいけませんし、勤続6か月未満の労働者や週の所定労働日数が2日以下の労働者について、労使協定の締結により対象外としているのであれば、そのことも知らなければいけません。

「そんなに休んでばかりじゃ採用取り消しだ」などと言ってしまったら、ブラック企業だと言われても反論できません。

労働基準法その他の労働法は、たびたび改正されます。

特に少子高齢化対策に関連する法令の改正は頻繁です。

数年前に完全に適法にしたハズの就業規則とその運用が、いつの間にかブラックになっていても不思議ではありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

自覚症状の無いままにブラック企業となってしまわないためには、社内に専任の担当者を置いて、常に最新の教育を施して任に当たらせる必要があります。

これがむずかしいのであれば、会社に合った方法について、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

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