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<内容についての法規制>

ハローワークの求人票や求人情報誌の求人広告には、求職者の知りたい情報が詳しく明確に記載されていることが重要です。

このため、求人の申込みや労働者の募集を行う際に書面や電子メールなどで明示すべき労働条件が、次のように定められています。〔職業安定法第5条の3〕

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

・労働契約の期間に関する事項

・就業の場所に関する事項

・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項

・賃金の額に関する事項

・健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項

なお、労働契約を締結する際に明示すべき労働条件と明示の方法についても法定されています。〔労働基準法第15条〕

また、労使当事者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています。〔労働契約法第4条〕

 

<委細面談>

ではなぜ、飲食店などの店頭に「アルバイト急募!委細(いさい)面談」というような、中身の全然わからないハリガミが貼ってあったりするのでしょうか?

実は、求人広告にいろいろな事項を明示する義務はあるものの、「できる限りやりましょう」という努力義務に過ぎないのです。

つまり、違反しても罰則はありません。

ですから倫理観を欠くブラック企業や、いちいち細かいことまで書くことを面倒に思う使用者は、書きたい範囲内で書いているというのが実態なのです。

ただ、採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

ということは、求職者としては求人広告は応募のキッカケに過ぎないのであって、採用面接の際に示された労働条件を詳細にチェックする必要があるということなのです。

 

2019.04.25. 解決社労士 柳田 恵一

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2019.04.24. 解決社労士 柳田 恵一

<周知>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法106条1項〕

労使協定というと三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が有名です。〔労働基準法36条〕

労働基準法には、他にも次のような労使協定があります。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、協定を交わして周知せずに実施すると違法ですから注意しましょう。

 

・貯蓄金管理に関する協定〔18条〕

・購買代金などの賃金控除に関する協定〔24条〕

・1か月単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の2〕

・フレックスタイム制に関する協定〔32条の3〕

・1年単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の4〕

・1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定〔32条の5〕

・一斉休憩の適用除外に関する協定〔34条〕

・月60時間超の時間外労働をさせた場合の代替休暇に関する協定〔37条3項〕

・事業場外労働に関する協定〔38条の2〕

・裁量労働に関する協定〔38条の3〕

・年次有給休暇の計画的付与に関する協定〔39条〕

・年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定〔39条〕

・時間単位の年次有給休暇に関する協定〔39条〕

・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容〔38条の4〕

 

<周知の方法>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

また、労働基準法の中には、3つの施策のうちのどれかを労使の協議で選ぶという規定もあります。ですから、「法定通り」と言ってみても、何も決まっていない恐れがあります。

 

<周知しない結果>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

2019.04.23. 解決社労士 柳田 恵一

<ストレスの連鎖>

殺人事件や傷害事件が発生すると、警察は加害と被害の内容、両者間の因果関係を解明し、その一環として加害の動機を明らかにします。

しかし、動機となった「ストレス発散」のストレスの原因までは追究しません。

ひょっとしたら、加害者もまた誰かにいじめられていて、そのストレスを発散するために事件が起きたのかもしれません。

しかし、加害者の負っていたストレスまでは配慮しません。

ストレスとその発散は連鎖します。どこかで連鎖を止めないと、最後には弱者に大きな被害が生じます。

あくまでも例え話ですが、次のようなストレスとその発散の連鎖があったとします。

金融機関→社長→部長→課長→一般社員(弱者)

(上の連鎖の)課長→妻→息子→息子の同級生(弱者)

ある会社の社長が、金融機関から大きなストレスを与えられることで、社内では、ストレスのはけ口が、弱い一般社員に及びます。これがパワハラです。

一方で、その会社の課長が、そのストレスを家庭に持ち込み、息子がそのストレスを学校に持ち込むとイジメの原因になります。

もしも、ここで部長がストレスに耐え、課長にぶつからなければ、ストレスの連鎖が止まることになります。

 

<ストレスチェックの目的>

ストレスチェックというのは、ストレスについての質問票に、労働者が選択肢の中から選ぶ形で回答を記入し、それを集計・分析することで、ストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

労働者が50 人以上の事業所では、2015 年12 月から毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられました。〔労働安全衛生法66条の10〕

定期健康診断と同様に、契約期間が1年未満の労働者や、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は法的義務の対象外です。

労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合には医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するのが目的です。

決して、ストレスに弱い労働者を発見して退職を勧奨したり、降格の根拠を見つけたりするためのものではありません。むしろ、こうしたことが無いように、充分な配慮が求められています。

結局、ストレスチェックの目的はストレスがたまりやすい職場を発見し、これを改善することにあると思います。

 

<ストレスがたまりにくい職場>

すべては、コミュニケーションによる解決が可能だと思います。

上の「→」で結ばれた間に、ストレスの原因となったことについて、具体的な情報の伝達があればストレスの連鎖は止まります。

なぜ怒っているのか、不安なのか、その原因についての説明が大事です。

会社の中で、ストレス発散と思われるパワハラなどを本気で防ぎたいのであれば、コミュニケーションの仕組みを見直すことが有効です。

「みんなで飲みに行って話し合えばわかりあえる」という昭和時代ではなくなりました。あくまでも勤務時間帯に使える仕組みを構築しましょう。

 

2019.04.22. 解決社労士 柳田 恵一

<在職老齢年金>

働きながら老齢年金を受けることができます。これを在職老齢年金といいます。

厚生年金保険の適用される会社で勤務する70歳未満の人は、年金を受けていても若い人と同じ条件で厚生年金に加入します。

毎日新聞の報道によると、政府・与党は「在職老齢年金制度」廃止の検討に入ったそうです。

在職老齢年金制度により、支給されるはずの厚生年金が減額され、高齢者の就労意欲をそいでいる恐れがあるからです。

 

<60歳以上65歳未満の支給停止>(平成31(2019)年度の場合)

年金額の一部または全部が、支給停止されることがあります。

まず、1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金と賞与の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

この「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が28万円以下であれば、年金は全額支給されます。

28万円を超えるときは、「基本月額」が28万円以下か超えるか、「総報酬月額相当額」が47万円以下か超えるかの区分に従い、4つの計算式のどれかによって支給停止額が計算されます。

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が47万円以下>

支給停止額

=(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-28万円)×6

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が47万円を超える>

支給停止額

=(「基本月額」+19万円)×6+(「総報酬月額相当額」-47万円)×12

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が47万円以下>

支給停止額

=「総報酬月額相当額」×6

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が47万円を超える>

支給停止額

=282万円+(「総報酬月額相当額」-47万円)×12

 

<高年齢雇用継続給付を受ける場合の支給停止>

60歳以上65歳未満の人は、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けることがあります。

この場合には、賃金額の0.18%~6%が支給停止されます。

 

<65歳以上の支給停止>(平成31(2019)年度の場合)

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が47万円以下であれば、年金は全額支給されます。

47万円を超えるときは、次の金額が支給停止となります。

(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-47万円)×6

 

<加給年金額が加算されている場合>

加給年金額を除く老齢厚生年金が、全額支給停止される場合には、加入年金額も全額支給停止となります。

この他の場合には、加給年金額は全額支給されます。

 

2019.04.21. 解決社労士 柳田 恵一

<傷病手当金支給申請書>

傷病手当金支給申請書の提出先は、健康保険証に書いてある保険者です。

そして申請書の形式は、保険者が決めています。

たとえば、協会けんぽの申請書であれば、1セット4枚で、次の内容になっています。

1,2枚目 = 申請者情報、申請内容

3枚目 = 事業主の証明 ※事業主とは会社などのことです。

4枚目 = 療養担当者の意見書 ※療養担当者とは医師などのことです。

 

<記入する人>

1,2枚目の申請者情報、申請内容は、仕事を休んだ健康保険加入者(被保険者)自身または、被保険者が亡くなった場合は相続人が記入します。

会社の担当者が、ほとんど代筆してくれることもあります。

3枚目の事業主の証明は、会社の担当者や顧問の社会保険労務士が記入します。

4枚目の療養担当者の意見書は、担当医師が記入します。

 

医師が傷病手当金の書類を書いてくれなくて困るというのは、療養担当者の意見書の部分を書いてくれないということになります。

1,2枚目の書き方がわからないのであれば、保険者に確認することになります。

 

<事実を確認できない場合>

たとえば、ケガをしてすぐ医師の診察を受けず、自然に治るのを待っていたとします。

そして、1か月経ってから我慢できずに医師の治療を受けたとします。

この場合、医師が確認できるのは、ケガから1か月経ったときの状態です。

1か月前にケガをしたとき、どのような状態であったのかは確認できません。

ケガをした時点で働けない状態だったのか、その時は働ける状態だったのに2週間後にケガの状態が悪化して働けなくなったのか、それとも3日前から働けなくなったのか、診察していないので何とも言えません。

ケガをして1か月の間のことについては、医師が意見書を書けないのです。

 

<労務不能とは見ない場合>

病気やケガで仕事を休んだとしても、それは本人が大事をとって休んだに過ぎず、決して働けない状態ではなかったということがあります。

医師としては「大げさだなぁ」と感じています。

この場合、医師は病気やケガの存在を認め治療はするのですが、労務不能の証明はできないことになります。

 

<労働災害の場合>

傷病手当金は私傷病、つまりプライベートのケガや病気について支給されます。

業務災害や通勤災害については、健康保険ではなく労災保険が適用されます。

したがって、患者の説明から労働災害であることが明らかであれば、医師は傷病手当金の書類に記入することができません。

 

<事実に反する場合>

患者が医師に対して、「自分の言うとおりに書け」あるいは「会社からこう書いてもらいなさいと言われている」などと言っても、医師は自分の診断結果に忠実に記入する義務を負っていますから、これに従うことはできません。

 

2019.04.20.解決社労士

<過去最多の「人手不足」関連倒産>

平成31(2019)年4月5日、株式会社東京商工リサーチが「人手不足」関連倒産の調査結果を公表しました。

これによると、平成30年度(2018年4月~2019年3月)の「人手不足」関連倒産は400件(前年度比28.6%増、前年度311件)で、2013年度の調査開始以来、最多となりました。

 

以下、枠内は株式会社東京商工リサーチの公表内容です。

 

【「求人難」型が2.6倍増】

 2018年度の「人手不足」関連倒産400件の内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が269件(前年度比7.6%増、前年度250件)で最多。

 次いで、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が76件(同162.0%増、同29件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が30件(同114.2%増、同14件)、中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が25件(同38.8%増、同18件)だった。事業承継が重要課題になるなか、「後継者難」型が全体の6割(構成比67.2%)を超え、さらに「求人難」型や「人件費高騰」型が押し上げた。

 

【産業別、サービス業他が最多105件】

 2018年度の産業別では、最多がサービス業他の105件(前年度比34.6%増、前年度78件)だった。内訳は、飲食業23件、老人福祉・介護事業12件、医療関係10件、人材派遣業9件、建築設計業などを含む土木建築サービス業7件など。

 このほか、建設業75件(同4.1%増、同72件)、製造業62件(同58.9%増、同39件)、卸売業59件(同43.9%増、同41件)、貨物自動車運送などの運輸業34件(同61.9%増、同21件)と続く。

 

 2018年度の地区別では、全国9地区のすべてで倒産が発生した。このうち、関東(125→173件)、九州(39→62件)、中部(34→43件)、近畿(33→39件)、東北(24→28件)、中国(18→19件)、北陸(3→5件)の7地区で前年度を上回った。一方、減少は北海道(21→18件)と四国(14→13件)の2地区だった。

 

 企業倒産が低水準をたどるなか、「人手不足」関連倒産の増勢ぶりが目を引く。特に、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型と人件費のコストアップから収益悪化を招いた「人件費高騰」型の増加が際立つ。人手不足の早急な解消が難しい現状では、今後の企業倒産を押し上げる複合的な要因にもなっており、景気動向と併せてその推移が注目される。

 

<人手不足回避の正攻法>

人手不足を回避するには、地道な努力が必要です。

・経営者が従業員を大切に育てること。

・客観的な人事考課制度により、従業員の努力や成果に報いること。

・退職していく従業員を暖かく見送り、機会があれば再入社してもらえるようにしておくこと。

・働き方改革関連法などの法改正に注意し、違法状態の発生によって会社の評判が落ちないように心がけること。

 

2019.04.19.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<70歳以上になると>

社会保険のうち、厚生年金保険は70歳で脱退(資格喪失)となります。

一方、健康保険と労働保険(雇用保険・労災保険)は変更ありません。

 

<厚生年金保険>

厚生年金保険に加入する従業員が70歳になる頃、年金事務所から会社宛に郵便物が届きます。

これは、「厚生年金保険被保険者資格喪失届70歳以上被用者該当届」の用紙と、その説明書です。

70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と異なる厚生年金加入者(被保険者)である場合には、70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内に届を提出することになります。

平成31(2019)年4月から、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である場合には、届出が不要となりました。

なお、70歳になっても老齢年金の受給資格期間を満たせないで在職中の人は、申し出てその期間を満たすまで任意加入することができます。保険料は全額本人が負担しますが、事業主が同意すれば労使折半にすることもできます。

 

<健康保険>

「老人保健法」が改正され、75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」が平成20(2008)年度に導入されました。

後期高齢者医療制度には、75歳の誕生日に加入します。

ただし、身体障害者手帳などで3級以上か4級の一部の障害に該当する場合には、65歳以上74歳以下でも各医療保険制度(国保、健保、共済等)の後期高齢者医療保険へ申請して加入することができます。

つまり一般には、70歳になっても、今までの健康保険にそのまま加入していることになります。

 

<雇用保険>

平成29(2018)年1月1日に雇用保険の適用が拡大され、年齢の上限が事実上撤廃されています。

70歳以降も、高年齢継続被保険者として雇用保険の加入が続くことになります。

なお、平成31(2019)年4月1日時点で満64歳以上にあたる従業員の雇用保険料は、令和2(2020)年3月の分まで免除されています。

 

<労災保険>

労災保険に年齢制限はありません。

ですから、一定の年齢に達したことによる手続きはありません。

 

2019.04.18.解決社労士

<平成31年度の雇用関係助成金>

4月1日付で改正雇用保険法施行規則が施行され、新年度の雇用関係助成金が公表されています。

これに加えて、不正受給対策が強化されています。〔通達 平成31年3月29日職発0329第2号・雇均発0329第6号・開発0329第開発0329第58号〕

 

<不支給期間の延長と対象の拡大>

(1) 偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対して雇用関係助成金を支給しない期間を、過去3年以内から過去5年以内に延長する。

(2) 過去5年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等(偽りその他不正の行為に関与した者に限る)が、事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等である場合は、当該事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、雇用関係助成金を支給しない。

(3) 過去5年以内に雇用調整助成金等の支給に関する手続きを代理して行う者(代理人等)または訓練を行った機関(訓練機関)が偽りの届出、報告、証明等を行い事業主または事業主団体もしくはその連合団体が雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとしたことがあり、当該代理人等または訓練機関が雇用関係助成金に関与している場合は、当該雇用関係助成金は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、支給しない。

 

<返還命令等>

(1) 偽りその他不正の行為により雇用調整助成金等の支給を受けた事業主または事業主団体もしくはその連合団体がある場合には、都道府県労働局長は、その者に対して、支給した雇用調整助成金等の全部または一部を返還することを命ずることができ、また、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた雇用関係助成金については、当該返還を命ずる額の2割に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

(2) (1)の場合において、代理人等または訓練機関が偽りの届出、報告、証明等をしたため雇用関係助成金が支給されたものであるときは、都道府県労働局長は、その代理人等または訓練機関に対し、その支給を受けた者と連帯して、雇用関係助成金の返還または納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。

 

<事業主名等の公表>

都道府県労働局長は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体が偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした場合等は、氏名並びに事業所の名称および所在地等を公表することができる。

 

<社会保険労務士が代理する場合>

『平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)』には、重ねて次の注意事項が記載されています。

社会保険労務士が事業主の申請を代わって行う場合、以下の事項に同意する必要があります。

このことから、不正受給が疑われる申請はお受けすることができません。

 

●支給のための審査に必要な事項の確認に協力すること

 ※ 不正受給に関与している疑いがある場合の事務所等への立ち入りを含みます

 

●不正受給に関与していた場合は、

①申請事業主が負担すべき一切の債務について、申請事業主と連帯し、請求があった場合、直ちに請求金を弁済すべき義務を負うこと

②事務所(又は法人)名等が公表されること

③不支給とした日又は支給を取り消した日から5年間(取り消した日から5年経過した場合であっても、請求金が納付されていない場合は、時効が完成している場合を除き、納付日まで)は、雇用関係助成金に係る社会保険労務士が行う提出代行、事務代理に基づく申請又は代理人が行う申請ができないこと

 

2019.04.17.解決社労士

<具体的な事例>

いままでパート・アルバイトに仕事の指示を出し指導をしてきた課長が部長に昇進し、その下で働いていた正社員が課長に昇進します。

ところが、課長に昇進した正社員は、勤務中、毎日のように居眠りする姿を見られていて、パート・アルバイトの失笑を買っていた人物でした。

自分たちと似たり寄ったりの仕事をしていたように見えた正社員が、居眠りをしていたのに自分たちの上に立つというのは、どうにも納得がいきません。

これを放置しておくと、パート・アルバイトが新課長を信頼できず、その指示・指導に素直に従わないことによって、生産性が大幅に低下してしまうかも知れません。

 

<立場による意識の違い>

時間給で働くパート・アルバイトは、どの時間を切り取っても一定の成果を上げるように意識して働いています。

ボーッとしていることは許されず、トイレに行くのにも遠慮して急いでいます。

ましてや、堂々と居眠りなどできません。

一方、月給制で働く正社員は、より長期的な視点で成果を出そうとします。改善を求められるのは主に正社員ですし、結果を残さなければ、賞与の支給額や将来の出世にも影響します。

パート・アルバイトが仕事を終え帰宅した後も、正社員は残って多岐にわたる仕事をこなしているために、疲れがたまって居眠りが出るということもあるでしょう。

こうした意識の違いから、不信感が生まれるというのは、ごく自然なことなのです。

 

<納得のいく説明>

会社の中での正社員とパート・アルバイトの職務や責任の違い、そしてこれらを理由とする待遇の違いについては、きちんとした説明が必要です。

「働き方改革関連法」により、令和2(2020)年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されることとなります。

(ただし、中小企業は令和3(2021)年4月から適用です)

この法律に対応し、「正規」と「非正規」の不合理な待遇差を埋めていくことはもちろん、社内で理解できる説明が行われる必要があります。

これらを怠らなければ、労働者の間には公正に評価されているとの納得感が生じますし、納得感は労働者が働くモチベーション向上につながります。

また、求職者からは魅力ある職場と評価され、離職率の低下とあいまって、人材の確保につながります。

 

<説明できない場合>

なかには、正社員と非正規社員との間の待遇差を合理的に説明できない職場もあります。

どのように説明の仕方を工夫してみても、うまい説明が見つからないとすれば、それは不合理な待遇差の存在が疑われます。

不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」の施行までは、まだ1年近くありますが、今から不合理な実態の解消を進めておく必要があります。

 

2019.04.16.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

平成31(2019)年4月12日、厚生労働省が、全国の市町村が運営する国民健康保険の財政状況と、後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況等を取りまとめ公表しました。

 

<国民健康保険の財政状況>

全国の市町村が運営する国民健康保険の財政状況(平成29年度分)は、次のように公表されました。

 

【主なポイント】

1.収支状況

① 単年度収入額 : 15 兆 3,559 億円(前年度比 2.2%(3,467 億円)減)

② 単年度支出額 : 15 兆 1,253 億円(前年度比 2.8%(4,289 億円)減)

③ 決算補填等目的の法定外一般会計繰入金を除いた場合の精算後単年度収支差引額

  450 億円の赤字(赤字額は前年度から 1,011 億円減少)

2.被保険者数 : 2,870 万人(前年度から 142 万人減)

3.国民健康保険料(税)収納率 : 92.45%(前年度から 0.53 ポイント上昇)

 

日本全体の人口減少を反映して、国民健康保険の加入者(被保険者)が減少しています。

これにより、収入額、支出額、赤字がいずれも減少しています。

病気は予防と早期の治療開始によって重症化を防ぐことができ、医療費の節減を図ることができます。

 

<後期高齢者医療制度の財政状況>

後期高齢者医療制度の実施主体である都道府県後期高齢者医療広域連合の平成29年度の財政状況等は、次のように公表されました。

 

【主なポイント】

・単年度収支(前年度国庫支出金等精算後)は180億円の黒字。

・前年度からの繰越金等を反映した収支は4,350億円の黒字。

・保険料収納率は、全国平均99.36%。

 

1.後期高齢者医療広域連合の財政状況

(1)収入・・・保険料収入(1兆1,917億円)は、被保険者数増等により対前年度比5.5%増となっている。また、国庫支出金、都道府県支出金、市町村負担金及び後期高齢者交付金は、保険給付費増により増加している。

(2)支出・・・保険給付費(14兆8,363億円)は、被保険者数増等により対前年度比4.1%増となっている。

(3)収支状況・・・単年度収入(経常収入)15兆1,891億円、単年度支出(経常支出)15兆2,248億円であり、単年度収支差引額(経常収支差)▲357億円、国庫支出金等精算後の単年度収支は180億円となっている。

単年度収支に前年度からの繰越金等を反映すると、収入合計15兆7,556億円、支出合計15兆3,206億円であり、収支差引合計は4,350億円となっている。

 

2.被保険者数等

(1)被保険者数は、平成29年度末現在1,722万人で、平成28年度末より2.6%(44万人)増となっている。

(2)保険料収納率は、平成29年度全国平均99.36%で、平成28年度より0.04%ポイント増となっている。

 

こちらは、日本全体の高齢化を反映して、後期高齢者医療保険の対象者が増加し、収入額、支出額も増加しています。

「黒字」という表示が見られますが、国庫からの支出(出所は税金)が無ければ、357億円の赤字だったことが示されています。

家族の見守りにより、早期の治療開始の他、投薬の管理をきちんとすること、ダブって薬をもらわないなどにより、医療費の節減を図ることができます。

 

2019.04.15.解決社労士

<変更点>

平成31(2019)年4月から、厚生年金保険の保険加入者(被保険者)が70歳に到達した際に提出する「厚生年金保険被保険者資格喪失届及び厚生年金保険70歳以上被用者該当届」の取扱いが一部変更となりました。

 

<要件に該当すれば届出が不要>

次の要件1と2の両方に該当する保険加入者(被保険者)について、事業主からの70歳到達届の提出が不要(届出省略)となります。

 

【届出省略の要件】

要件1:70歳到達日の前日以前から適用事業所に使用されていて、70歳到達日以降も引き続き同一の適用事業所に使用される被保険者

要件2:70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である被保険者

 

<70歳到達届の届出要否の確認例>

次の手順を参考に、標準報酬月額相当額を算出した上で、70歳到達届の届出要否をご確認ください。

 

○手順1:70歳到達日現在の報酬額に基づき、報酬月額を算出します。

  在職中に70歳に到達し、70歳到達以降も引き続き事業所に勤務する場合は、これまでの厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、新たに70歳以上被用者として取得(該当)することとなります。このため、70歳到達日時点の報酬に基づき、新たに報酬月額を算出します。

※報酬月額の算出方法は、被保険者の資格取得時における報酬月額の算出方法と同様です。

 

○手順2:報酬月額を「厚生年金保険料額表」に当てはめ、該当する標準報酬月額相当額を確認します。

例):報酬月額258,000円の場合「報酬月額250,000円以上~270,000円未満」欄に該当⇒標準報酬月額相当額「17等級260千円」

 

○手順3:70歳到達日の前日時点における標準報酬月額と比較し、70歳到達届の届出の要否を確認します。

手順2で確認した標準報酬月額相当額と、被保険者期間中に適用されていた直近の標準報酬月額が

・同額である場合⇒70歳到達届の提出は不要です(届出省略となります)。

・異なる金額である場合⇒報酬月額を記入した上で、70歳到達届を提出してください。

  

2019.04.14.解決社労士

 

<法の規定>

労働基準法は、年次有給休暇の取得日について、次のように定めています。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」は、長期の連休をイメージしますが、「取得日」という意味です。

「労働者の請求する時季」なのだから、これから先の日付でも、過去の日付でも良さそうに思えます。

しかし、この条文の但し書きは、一定の場合には、使用者が別の日に年次有給休暇を与えることができると言っています。

過去の日を取得日に指定したのでは、使用者が取得日を変更できなくなってしまいます。

このことから、論理的に考えて、年次有給休暇の取得日の指定は、翌日以降の日でなければならないことになります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、次のような規定が置かれることがあります。

 

【欠勤の年次有給休暇への振替】

私傷病による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。この申請は、所定の書式により上長に提出することによって行います。

 

私傷病など特定の原因による欠勤が発生した場合に、事後の申請で年次有給休暇に振り替えることを認めるわけです。

労働基準法は、労働者の権利について最低限の基準を定めているわけですから、労働者にとって労働基準法よりも有利な制度を設けることを禁止してはいませんから、こうした規定を置くことも可能です。

 

<フレックスタイム制での配慮>

フレックスタイム制を運用していると、仕事と生活の調整が容易ですから、年次有給休暇を取得するチャンスが捉えにくくなります。

なるべく残業時間が発生しないように勤務していたところ、清算期間の終了間際になってから、勤務の都合がつかず、清算期間の所定労働時間に満たない勤務しかできない期間が生じたら、事後的に年次有給休暇を取得できる仕組みにしてはいかがでしょうか。

反対に、業務が少ない時期だと思って、清算期間の途中にまとめて年次有給休暇を取得したところ、清算期間の終了間際になって、長時間の勤務が続くと、思わぬ残業が発生してしまいます。この場合、使用者の方から、年次有給休暇の取得を取り消させるわけにはいきません。しかし、労働者側から、これから先のために年次有給休暇を取っておきたいなどの希望で、年次有給休暇の取得を取り消せる仕組みも必要ではないでしょうか。

 

2019.04.13.解決社労士

平成31(2019)年4月09日、厚生労働省が民間企業における平成30(2018)年の「障害者雇用状況」集計結果を取りまとめ公表しました。

障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は2.2%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。

今回の集計結果は、同法に基づき、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものです。

 

【集計結果の主なポイント】

<民間企業>(法定雇用率2.2%)※法定雇用率は平成30年4月1日に改定

 ○雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。

  ・雇用障害者数は53万4,769.5人、対前年7.9%(3万8,974.5人)増加

  ・実雇用率2.05%、対前年比0.08ポイント上昇

 ○法定雇用率達成企業の割合は45.9%(対前縁比4.1ポイント減少)

 

以下、詳細についても、厚生労働省の報道発表資料を引用しておきます。

 

【雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合】

・民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は534,769.5人で、前年より7.9%(38,974.5人)増加し、15年連続で過去最高となった。

・雇用者のうち、身体障害者は346,208.0人(対前年比3.8%増)、知的障害者は121,166.5人(同7.9%増)、精神障害者は67,395.0人(同34.7%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。

・実雇用率は、7年連続で過去最高の2.05%(前年は1.97%)、法定雇用率達成企業の割合は45.9%(同50.0%)であった。

 

【企業規模別の状況】

・企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45.5~50人未満規模企業で4,252.5人、50~100人未満規模企業で50,674.5人(前年は45,689.5人)、100~300人未満で106,521.5人(同99,028.0人)、300~500人未満で46,877.0人(同44,482.0人)、500~1,000人未満で62,408.0人(同58,912.0人)、1,000人以上で264,036.0人(同247,683.5人)と、全ての企業規模で前年より増加した。

・実雇用率は、45.5~50人未満規模企業で1.69%、50~100人未満で1.68%(前年は1.60%)、100~300人未満で1.91%(同1.81%)、300~500人未満で1.90%(同1.82%)、500~1,000人未満で2.05%(同1.97%)、1,000人以上で2.25%(同2.16%)となった。なお、民間企業全体の実雇用率2.05%(同1.97%)と比較すると、500~1,000人未満及び1,000人以上規模企業が実雇用率以上となっている。

・法定雇用率達成企業の割合は、45.5人~50人未満規模企業で34.0%、50~100人未満で45.4%(前年は46.5%)、100~300人未満で50.1%(同54.1%)、300~500人未満で40.1%(同45.8%)、500~1,000人未満で40.1%(同48.6%)、1,000人以上で47.8%(同62.0%)となり、全ての規模の区分で前年より減少した。

 

【産業別の状況】

・産業別にみると、雇用されている障害者の数は、全ての業種で前年よりも増加した。

・産業別の実雇用率では、「農、林、漁業」(2.40%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.23%)、「医療、福祉」(2.57%)が法定雇用率を上回っている。

 

【法定雇用率未達成企業の状況】

・平成30年の法定雇用率未達成企業は54,369社。そのうち、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、64.0.%と過半数を占めている。

・また、障害者を1人も雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)は31,439社であり、未達成企業に占める割合は、57.8%となっている。

 

【特例子会社の状況】

・平成30年6月1日現在で特例子会社の認定を受けている企業は486社(前年より22社増)で、雇用されている障害者の数は、32,518.0人であった。

・雇用者のうち、身体障害者は11,478.5人、知的障害者は16,211.0人、精神障害者は4,828.5人であった。

※特例子会社とは、親会社の実雇用率に算入できる、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社のことをいいます。

 

2019.04.12.解決社労士

<民法の適用>

労働契約も契約の一種ですから、原則として民法が適用されます。

この民法には、任意規定と強行規定が混在していて、その区分は条文に明記されていないことが多いので、最高裁の判例などで確認しなければなりません。判例が無ければ、学者の学説などを参考にして判断することになります。

任意規定というのは、法令に規定があっても当事者がそれに反する意思表示をすれば、法令の規定よりも当事者の意思表示が優先されるものをいいます。当事者が何も意思表示をしない場合でも、任意規定が適用されることによって、契約の内容が補充されます。

強行規定というのは、法令の規定のうちで,当事者の意思にかかわりなく適用される規定をいいます。当事者が強行規定とは別の意思表示をしても、それは無効とされ、自動的に強行規定の内容に修正されます。

結局優先順位は、任意規定 < 契約など当事者の合意 < 強行規定 となります。

つまり、従業員から承諾する旨の一筆をもらったとしても、強行規定に反する内容であれば、無効になってしまうということです。

 

<労働基準法の適用>

労働基準法には「労働者の保護」という確固たる目的があり、この目的を確実に果たすため、その規定は原則として強行規定です。

民法とダブって規定されている内容については、特別法である労働基準法が、一般法である民法に優先して適用されます。

ですから、労働基準法に反する内容について、労働者から一筆もらっても効力がありません。

 

<憲法の趣旨の適用>

憲法は国の最高法規です。〔日本国憲法第98条第1項〕

ですから、この憲法に反する法令などは効力がありません。

憲法は、基本的には国家に対する命令ですから、国民に直接適用されるわけではありませんが、その趣旨は、私人間の契約にも効果が及ぶものと解されています。

そのため、職業選択の自由〔日本国憲法第22条第1項〕を侵害するような契約は、その効力を否定されます。

たとえば、一定の期間退職を禁止する、退職にあたって違約金の支払いを必要とする、退職後にライバル企業に転職することを禁止するといったことは、職業選択の自由を侵害しますから、基本的には、たとえ労働者が合意しても、憲法の趣旨に反して無効となります。

会社としては、退職する従業員から念のため一筆もらっておいても、無効となることが大半なのです。

最高裁の判例でも、ライバル企業への転職の制限について、期間とエリアを限定し、しかも、十分な経済的代償措置を取った場合に限り、労働者の合意が有効だと判断しています。

 

<合意の有効性>

労使関係では、たとえ労働者が合意していても、その合意が無効となってしまうケースは意外と多いものです。

「本人が同意すれば大丈夫」というのは、ありがちな素人考えです。

社員から一筆もらう場合には、よくよくその効力を確認したうえで行いましょう。

 

2019.04.11.解決社労士

<不満発生の原因>

従業員から就業規則の変更に対して不満が出るのは、形式面と実質面の問題が想定されます。

 

<変更手続き>

就業規則変更の正しい手順は、次の順番になります。

 

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

 

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

こうした手続きを巡って、従業員から不満が出るのは、労働者の過半数を代表する者の選出手続きが民主的ではなかったために無効であるとか、就業規則が社内に周知される前に労働者の意見書が作成されたというような場合です。

労働者の過半数代表者の選出手続きが正しくなかった場合、その選出は無効となり、三六協定届の場合には、協定そのものが無効とされます。三六協定は届出が有効要件だからです。しかし、就業規則の場合には、その職場の従業員への周知が有効要件です。ですから、所轄の労働基準監督署長への届出のプロセスに不備があっても無効にはなりません。

会社が手続きの不備を指摘された場合には、「ご指摘ありがとうございます。次回から正しく行います」ということで済んでしまいます。

 

<不利益変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

ただ、この不利益は「平均値」や「総合計」ではなくて、個々の従業員にとって不利益かどうかの問題です。

「自分にとって不利益だ」という不満が出れば、会社はそうでないことを説明しなければなりません。説明できないのであれば、不利益解消のための対応が必要になります。

 

<不満発生の防止のためには>

就業規則を変更する場合には、事前に社内で説明することと、変更案を周知して、労働組合や労働者の過半数代表者以外からも広く意見を求めておくことです。

こうすることによって、思わぬ見落としに気付くこともありますし、周知を徹底しトラブルを未然に防止することもできるのです。

 

2019.04.10.解決社労士

<具体例>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

では、免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 

タクシーの運転手や医師が免許を剥奪されても、事務や営業の仕事ならできるでしょう。そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。これは、罰則をもって使用者に義務付けられていることです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが明確になります。

タクシーの運転手として雇う、医師として雇うということが、明確に示されて雇用されたのなら、免許を失ったときに解雇するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえます。

 

法的に正しい形式を整えるということは、常識的に正しいというのとは違います。

人を雇っていて、つまらないことで足元をすくわれないように、専門家である社会保険労務士にご相談いただけたらと思います。

 

2019.04.09.解決社労士

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2019.04.08.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.07.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

週あたり

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.06.解決社労士

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことに配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

10

11

12

14

16

18

20

4日

7日

8日

9日

10

12

13

15

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10

11

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

 

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。未確定ならば、必要に応じ専門家に相談して確定させてください。

 

2019.04.05.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

1.従業員の労働条件の共通部分

2.職場の規律

3.法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<1.従業員の労働条件の共通部分>

「生理日の就業が困難な女子社員が休暇を申請した場合は、無給休暇とします」という規定がある場合、これは女子社員に共通の労働条件です。有給にするか無給にするかは会社が決めて就業規則に規定します。もっとも、生理休暇そのものは、労働基準法に定められた権利です。

また、「休暇をとる場合は、事前に所定用紙で上長経由会社に届け出て、許可を受けなければなりません」という規定がある場合、これは全社員に共通の労働条件です。用紙で届け出るか、口頭か、ネットかなどは会社が決めます。直接人事部門に届け出るのか、上長に届け出るのかも会社が決めます。

こうした従業員の労働条件の共通部分は、法令に違反しない限り、会社が自由に決めています。

 

<3.法令に定められた労働者の権利・義務>

年次有給休暇や残業など所定外労働に対する割増賃金は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

ただ、労働基準法は最低限の基準を定めていますから、基準を上回る日数の年次有給休暇を付与し、基準を上回る割増率の残業手当を就業規則に定めることもできます。ここは法令通りではなくても良いわけです。

使用者は、法令等の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを就業規則とは別に周知するのは大変ですし、法令の基準を上回る運用をする場合もありますから、まとめて就業規則に示しておくのが便利なのです。

 

<社会保険や労災保険と就業規則>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の加入基準や運用は、法令に規定されています。会社がこれとは異なる内容を定めても無効です。

また、労災保険は法令により従業員の全員が加入しますから、「臨時アルバイトは加入しない」などの規定を置いても無効です。

ただ、法令の内容とは別に、会社がプラスアルファの給付をするような福利厚生の制度を定めることは自由です。

「アルバイトでも、就業規則に定めれば社会保険に入れますか?労災保険はどうですか?」といった疑問を目にすることがあります。しかし、就業規則の規定とは無関係に、法令の基準によって加入することになるわけです。

 

就業規則の各規定と労働基準法など法令との関係は、判別がむずかしいと思います。就業規則の作成、変更、解釈については、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

 

2019.04.03.解決社労士

<懲戒処分の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

ですから、本人が深く反省し二度と同じ過ちを犯すことはないと、他の社員全員が確信しているような例外的な場合には、この目的からの処分は不要だということになります。

 

<懲戒処分の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置しないという態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

このとき、行為者に対して徹底的な再教育を実施することによって、他の社員全員が納得するのであれば、必ずしも懲戒処分を行う必要は無いでしょう。

 

<懲戒処分の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対してやって良いこと悪いことの基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたら処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。会社は具体的な定めの無いことで懲戒処分をすることは許されません。

この目的に限定して考えると、規定があるからといって必ず処分しなければならないわけではありません。

 

<懲戒処分を行わないことによる悪影響>

不都合な行為を行った社員に対して、懲戒処分が行われなかった場合に、納得できない社員がいるのであれば、その社員は会社に対して不信感を持つことになります。

こうした社員が多ければ多いほど、生産性や定着率が低下したり、会社の評判が落ちたりの悪影響が発生します。

懲戒処分を行わないのが寛容で良い会社というわけではありません。

正しく懲戒処分を行えるのが良い会社だということになります。

 

2019.04.02.解決社労士

<内規の意味>

「内規」を小学館のデジタル大辞泉で調べると「組織の内部に適用されるきまり」とあります。

しかし、就業規則も「組織の内部に適用されるきまり」であることから、内規と就業規則との区別が難しくなっています。

また、就業規則については、労働基準法に詳細な規定があることから、その効力や性質が明確です。

一方で、一口に「内規」と言っても性質は一律ではないため、効力についても統一的に把握できません。

 

<就業規則の一部となる場合>

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「身だしなみは、常に整えておかなければなりません。詳細は別に定める内規によります」

勤務にあたって身だしなみを整えておくことは、全社統一の要請であるものの、具体的な基準は本社、営業所、店舗などによって異なるため、それぞれの拠点で内規を定めて運用するわけです。

このように就業規則で概略を定め、内規に詳細を定めることにしてあれば、内規は就業規則と一体のものとして、就業規則と同等の効力を持ちます。

従業員の立場からすると、「これは内規に過ぎないから」と言って遵守することを拒めません。

 

<労使慣行となる場合>

会社の中で、一定の事実や行為が相当長期間にわたり反復され、労使双方がこれに特段の異議を述べないことがあります。

これも内規と呼ばれますが、その性質は労使慣行です。

就業規則や労働協約などに文書化されていなくても、規範として確立しているのであれば、就業規則の変更を怠っているだけですから、就業規則と同等の効力を持つといえるでしょう。

ただ、「相当長期間」が何年なのかは、労使双方からどの程度強く認識され尊重されているかによるので明確ではありません。

 

<一時的な基準となる場合>

会社が労働組合に宛てて発した文書や、社内の決裁文書は、一種のルールに見えることもありますが、一般には一時的な基準に過ぎないので、就業規則と同等の効力を持ちません。

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「賞与の額は、会社の業績及び正社員の勤務成績などを考慮して、次の計算式により各人ごとに決定する。基本給×支給月数×考課係数」

この場合、ある賞与について、支給月数が2か月と決定されたとしても、この「2か月」がその後の賞与支給額の基準となるわけではありません。

たとえ数回連続で「2か月」と決定されたとしても、ある意味偶然であって、ルールになったわけではありません。

 

<内規が独り歩きしないように>

会社としては、一時的な基準としての内規を作ったつもりなのに、いつの間にか労使慣行となり、就業規則と同等の効力を持つことがあります。

これを防ぐには、一定の事実や行為が反復されたときには、これを文書化して「会社が決定する」ということを明示することです。

また、一時的な基準についての文書を作成した場合には、その適用対象や期間を明示して、反復継続を予定していないことを明示することです。

こうしたことは、労使紛争を予防する小さな工夫といえるでしょう。

 

2019.04.01.解決社労士

<基本の残業制限>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<従来からある違法残業>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

三六協定についての適正な手続きを怠ることによって、発生しやすくなる違法残業には次のようなものがあります。

 

1.三六協定の届出をせずに行う残業2.三六協定届に署名した労働者代表の選出手続きが不適切であった場合の残業

3.三六協定の有効期限が切れた後の残業

4.三六協定で定めた上限時間を超える残業

 

ここでいう「残業」は、すべて1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えての残業を意味します。

上に示した違法残業のうち、1.~3.は形式的な不備によって発生します。

これが、従来型の違法残業の特徴です。

 

<新しい違法残業>

これまでは、三六協定の適正な届出をしていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、法律による上限が定められていなかったため、違法になることはありませんでした。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられます。中小企業については、1年間の猶予が与えられ、令和2(2020)年4月1日からの適用となります。とはいえ、たった1年間の猶予ですから、今から急いで対応する必要があります。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

また、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

 

2019.03.31.解決社労士

<悩みの理由>

社内にパワハラの常習犯がいても、どう注意したら良いのか悩んでしまう。あるいは、注意しても加害者にパワハラの自覚が無い、加害者が納得しないということがあります。

これはその職場で、パワハラ防止対策が適正に行われていないことによって、発生する悩みです。注意しようとした人、あるいは注意した人の能力不足ではありません。

 

<パワハラ防止対策の基本>

パワハラの加害者に注意できる状態にするには、次のパワハラ防止対策が必要です。

 

① パワハラの定義を、その職場の全員が理解できることばで就業規則に示す。

② パワハラの禁止を、就業規則に定める。

③ パワハラに対する懲戒処分を、就業規則に定める。

④ 具体的事例を踏まえたパワハラ研修を定期的に実施する。

 

<① パワハラの定義を示す>

パワハラの定義が社内で明確になっていなければ、つまり、ある行為についてのパワハラ該当性が不明確であれば、「あなたの行為はパワハラだ」「いや違う」という意見の対立が生じてしまい、解決の糸口すら見えません。

たとえば、平成24(2012)年3月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が取りまとめた提言では、職場のパワーハラスメントの概念を以下のように整理しています。

 

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

 

こうした表現を、このまま使える職場もあるでしょう。

しかし、高校生のアルバイトや高齢者がいる職場では、すべての年齢層に理解できる表現で定義を示しておく必要があります。

 

<② パワハラを禁止する>

就業規則でパワハラを禁止することにより、従業員一人ひとりの労働契約の内容に、パワハラの禁止が盛り込まれることになります。

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これは、パワハラの定義と禁止を1つの条文にまとめた例です。これを参考にして、それぞれの職場に適した内容で定めると良いでしょう。

 

<③ 懲戒処分の定めなど>

就業規則では、禁止と懲戒とが対を成します。

禁止だけで懲戒処分が規定されていなければ、禁止の実効性が保たれません。

禁止されていないことが、懲戒処分の対象にされるのは不合理です。

就業規則で禁止したからには、これに対応した懲戒処分の規定を置かなければなりません。

また、部下を持たせた時からパワハラに走る社員には、部下を持たせることが危険ですから、部下を持たせないようにする必要があります。つまり、管理職に抜擢した社員がパワハラを行うようであれば、管理職として不適格なのですから、人事異動により管理職から外すなどの対応が必要です。

さらに、部下を持つ社員の人事考課基準には、パワハラをせずに部下を指導・育成しているか否かを含めておく必要もあります。

 

<④ パワハラ研修の定期的な実施>

就業規則の内容を含め、全社員にパワハラ研修を実施しなければなりません。

なぜなら、パワハラは上司から部下に対して行われるだけでなく、先輩から後輩に行われることもありますし、パワハラを受ける立場の従業員にも研修を実施しておかなければ、被害の申し出を躊躇することになるからです。

この研修は、最新事例を盛り込みながら、最低でも年1回は実施すべきでしょう。

 

<パワハラ防止の重要性>

パワハラによって利益を得る者はいません。

会社にとっては、生産性の低下、人材育成の遅れ、定着率の低下という損失が発生します。時には、被害者のメンタルヘルス不調などにより、労働力の喪失や損害賠償責任を生じることもあります。

加害者が無自覚でパワハラ行為に及んでいた場合には、会社との関係で、ある意味被害者の立場にあるといえるでしょう。そして、社内だけでなく、社会的な信頼を失うこともあります。何より辛いのは、家族からの信頼を失うことです。

「パワハラの加害者にどう注意したら良いのか」という疑問が出る職場では、経営者が中心となって、積極的にパワハラ防止対策に取り組まなければなりません。

 

2019.03.30.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<特定の従業員への手当支給>

たとえば、自由参加の社内行事でケガをした従業員が、公共の交通機関では通勤が困難で、家族が自家用車で送り迎えをするようになったとします。

このとき、会社が恩恵的に出勤1日につきいくらという手当を支給しても、就業規則には違反しません。

ただ、今後も時々発生しうることで、その会社の多数の従業員に共通する労働条件だと判断されるなら、就業規則に定めておくべきでしょう。

またたとえば、人事部門の従業員が社会保険労務士の資格をとって、業務に直接役立てている場合に、こうしたことがその会社にとって初めてのことであれば、就業規則にない資格手当を支給しても就業規則には違反しません。

もし、こうした資格手当の制度を新たに設けたのであれば、その会社にとって多数の従業員に共通する労働条件となりますから、就業規則に定めるべきこととなります。

 

<就業規則の権利保障機能>

就業規則に「従業員が結婚したときは、祝金3万円を支給する」と規定されているのに、特定の従業員だけ手続きをしても支給されないのは、就業規則違反となります。

これは、就業規則で定められた共通の労働条件のはずなのに、特定の従業員だけ対象外としているからです。

反対に、会社が特定の従業員に、就業規則には規定のないプラスアルファのことをしても、その従業員に対しては、就業規則違反が問題とはなりません。

就業規則は、それぞれの従業員に対して、最低限の権利を保障する機能を果たしているわけです。

 

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

たとえば、就業規則に通勤手当の規定が無い会社で、正社員だけに通勤手当が支給されている場合には、同一労働同一賃金に反する可能性が高いといえます。

なぜなら、通勤手当は通勤にかかる費用をまかなうのが目的ですから、正社員とその他の従業員とでその必要性に差が無いからです。

それにもかかわらず、正社員だけに支給するのは、不平等であり不合理なわけです。

これに対して、正社員だけに転居を伴う人事異動があり、転居による住宅費の負担を考慮して、正社員だけに住宅手当を支給するのは、公平であり合理的であって同一労働同一賃金の考え方に反していないことになります。

この場合、住宅手当が就業規則に規定されていないのであれば、正社員のみに支給されていることではなく、正社員の労働条件の共通部分であるにもかかわらず、就業規則に定めて所轄の労働基準監督署長に届出をしていないことが労働基準法違反となります。

 

<同じ雇用形態でも>

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇の公平・平等についての考え方です。

しかし、正規雇用労働者同士、非正規雇用労働者同士でも、一部の従業員だけに手当を支給すること、あるいは金額の異なる手当を支給することが、不公平・不平等となることもあります。

現に支給されている手当については、その手当支給の目的を再確認し、その目的に照らして不公平・不平等が発生していないかを確認し改善することが必要です。

この場合、不公平感・不平等感の有無について、従業員に聞き取り調査を行うことで、改善の方向性が見えてくると思います。

 

2019.03.29.解決社労士

<通勤手当の増額>

従業員が遠方に引っ越し通勤手当が増えると、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料にも反映されますから、会社の負担もかなり増えることがあります。

その引っ越しが、会社の業務都合ではなく個人的な事情によるものであれば、釈然としないこともあります。

しかし、遠方への引っ越しを理由に解雇を通告するのは、一般に不当解雇となってしまいます。〔労働契約法第16条〕

 

<課税の問題>

もし、通勤費込みで基本給を決めておくことができれば、社会保険料や労働保険料について、従業員の引っ越しにより、会社の負担が増減することはありません。

しかし税法上は、一部の例外を除き通勤手当には課税されませんが、通勤手当込みの基本給にすると全体に課税されてしまいます。

 

<純粋な手取り額の減少>

それでは、基本給が20万円で、通勤手当が1万円、だから本来の給与部分は19万円(20万円 - 1万円)と決めておくのはどうでしょう。

遠方に引っ越して通勤手当が2万円になった場合には、基本給は20万円のままで、本来の給与部分は18万円(20万円 - 2万円)となります。

本人が受け取る基本給に変更はありません。

しかし、通勤手当は一般に実費を基準に支給されるものですから、自由に使える金額は本来の基本給が減った分だけ減少してしまいます。

 

<労働基準法と通勤手当>

労働基準法やその他の労働法に、「通勤費は雇い主が負担する」のような規定はありません。

多くの企業が通勤手当を支給していますから、これが当たり前になっているだけです。

ただそれだけに、通勤手当を支給しない企業が求人広告を出しても、魅力が感じられないということはあります。

しかし、就業規則や労働条件通知書に「通勤費は支給しない」と規定しておくことは、法的には問題がないのです。

 

<現実的な対応>

通勤費込みの基本給としたり、通勤手当を支給しなかったりすることは、給与計算のうえで会社の手間が減少します。

しかし、遠方への引っ越しをきっかけとした退職者は出やすくなります。

それでも、「代わりの人」を簡単に採用できる職場であれば問題ないのかもしれません。

新人の採用や育成が難しい職場では、通勤手当に上限額を設けておき、会社の負担が予想外に増えることを防ぐというのが、現実的な対応ではないでしょうか。

 

2019.03.28.解決社労士

<法律の規定>

減給処分を行う場合の限度については、労働基準法に次の規定があります。

 

【制裁規定の制限】

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり労働基準法は、減給処分について一定の制限を設けたうえで認めているわけです。

また、労働契約法には懲戒処分の有効性について次の規定があります。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、懲戒処分が有効であるためには、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められることが必要だと言っています。

しかし、そもそも「使用者が労働者を懲戒することができる場合」とは、どのような場合なのかについて、具体的な規定は見当たりません。

 

<最高裁の判断>

平成15(2003)年10月10日のフジ興産事件判決では、懲戒処分の根拠について次のように述べられています。

 

使用者は企業秩序を定立し維持する権限(企業秩序定立権)を有し、労働者は労働契約を締結したことによって企業秩序遵守義務を負うことから、使用者は労働者の企業秩序違反行為に対して制裁罰として懲戒を行うことができる。

 

そして、懲戒処分を行う場合の条件については、次のように述べられています。

 

使用者が労働者を懲戒するには、予め就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておかなければならない。

使用者が懲戒できることを定めた就業規則が、法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容について、当該就業規則の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていなければならない。

 

労働契約法第15条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、この条件を満たす場合をいうのでしょう。

判例を確認しないと解釈できない条文というのは不親切ですから、やがて条文の中に判例の内容を盛り込む改正が行われるものと期待されます。

 

2019.03.27.解決社労士

<キャンペーンの実施>

厚生労働省では、昨年に引き続き全国の大学生等を対象に、特に多くの新入学生がアルバイトを始める4月から7月までの間、労働条件の確認を促すことなどを目的としたキャンペーンを実施します。

過去の調査結果等でも、労働基準法で規定されている労働条件の明示がなかったと回答した学生が多かったことなどを踏まえ、学生向けに身近に必要な知識を得るためのクイズ形式のリーフレットの配布等による周知・啓発などを行うとともに、大学等での出張相談を引き続き行います。

 

<キャンペーンでの呼びかけ>

重点的に呼びかけが行われる事項は次の通りです。

 

(1)労働条件の明示

(2)学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定

(3)労働時間の適正な把握

(4)商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

(5)労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

 

<アルバイトの性質>

アルバイトというのは、日常用語であって法律用語ではありません。

どのような雇用形態をアルバイトと考えるかは、各企業が独自の基準で自由に決めています。

アルバイトといえども、法律上は正社員と同じく労働者であり、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法など、すべての労働法が当然に適用されます。

また、外国人のアルバイトであっても、日本国内で働く限り、日本の法律が適用されます。

会社が自由に決められるのは、こうした法令による規制が無い部分や、規制の範囲内に限られることになります。

 

<キャンペーンなどの影響>

昭和時代には「アルバイトだから」と言われれば、「一般の労働者とは違うのだろう」とあきらめる学生も多かったものです。

しかし、国が広報に努めたせいか、学生がネットで情報を得るようになったせいか、学生であっても働く限りは、労働法上の権利があるのだということが常識として定着しつつあります。

 

<企業としての再確認>

雇い主としての企業は、学生アルバイトについて、最低限、次のことを再確認しておく必要があります。学生は、知らないふりをしていても、次のようなことを常識として認識しています。

 

・アルバイトを雇うときは、書面による労働条件の明示が必要です。

・学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう。

・アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります。

・アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。

・アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。

・アルバイトにも、業務中または通勤途上のケガについて労災保険が適用されます。

・週1日勤務のアルバイトでも、年次有給休暇が付与され、取得の権利が与えられています。

 

アルバイトを上手くだまして安く使うなどもっての外です。

戦力化して将来正社員にすることを考えるのが得です。

経営者が昭和の考えを持ち続けている場合、学生はこれに反論せず上手に言い訳してひっそり退職していきます。

人材不足の中、平成の次の時代を見据えた経営が必要となっています。

 

2019.03.26.解決社労士

<人事処分だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、就業規則の懲戒規定に基づき人事処分だけを行っている会社もあります。

人事処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

・対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

・社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持すること

 

これらの目的が果たされれば十分と考えるわけです。

 

<人事異動だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、会社の裁量で人事異動だけを行っている会社もあります。

この場合の人事異動の目的は、適材適所によって会社全体の生産性を高めることにあります。

不都合な行為を行った社員を、責任が軽く重要度の低い仕事の担当に異動させ、その人の代わりに適任と思われる別の社員を任命します。

こうして、社内で業務が効率よく円滑に回るように調整するわけです。

 

<二重処罰の禁止>

憲法には、二重処罰の禁止について次の規定があります。

 

【日本国憲法第39条後段】

又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

人事処分も人事異動も、国家だけに権限のある刑罰とは違います。

しかし、その趣旨は、企業で行われる人事処分にも適用されるものと解され、二重処罰に当たる人事処分は、懲戒権の濫用とされ無効になることがあります。〔労働契約法第15条〕

 

<人事処分の種類>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)には、懲戒の種類として、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇があります。

しかし、第63条(懲戒の種類)の解説には、「懲戒処分の種類については、本条に掲げる処分の種類に限定されるものではありません。公序良俗に反しない範囲内で事業場ごと決めることも可能です」と書かれています。

実際に、職務級を下げる降格、役職を免ずる降職といった処分も行われています。これらは、日常用語では左遷と呼ばれ、人事異動の一種でもあります。

 

<人事異動と人事処分の併用>

左遷(降格・降職)は、人事異動でありながら、人事処分の性質も併せ持つことがあります。

このことからも明らかなように、人事異動と人事処分の両方を行うことは、1つの行為を2回処罰することにはならず、二重処罰の禁止の趣旨に反しません。

行為と処分とのバランスが取れていなければ、その有効性が争われることはありますが、人事異動と人事処分の両方を行うのが不当だというわけではありません。

 

<人事考課>

人事考課は、社員の能力や実績を評価し、待遇などに反映させる目的で行われます。

そして、人事異動と人事処分の理由となった行為が、評価の対象となることもあります。

つまり、人事異動、人事処分、人事考課での低評価の3つが重ねて行われることもあるわけです。

ただし、対象となった行為とこれらとのバランスが保たれるよう配慮する必要はあります。

 

2019.03.25.解決社労士

平成31(2019)年3月19日、製品評価技術基盤機構(NITE)が、自転車事故についての注意を呼びかけ、安全のために知っておきたいポイントを示しています。

以下、概要について紹介します。

 

<資料の概要>

春は進学や通勤など生活環境(又はライフスタイル)の変化で自転車に乗り始める方が増えます。

特に4月から5月にかけて、自転車に関する製品事故が一年のうち最も多く発生しています。

発生状況を年代別に分けると、10代の事故が最も多く、次いで30代の事故が多く見られます。

通学や通勤などで自転車を使用する機会が増えるにつれ、手軽で便利な自転車の思わぬ事故が発生しています。

安全に自転車を使用するには、点検や整備など使用上留意すべきポイントがあるため、自転車の使用に関わる注意喚起を行います。

2013年度から2017年度の5年間にNITE(ナイト)に通知された製品事故情報では、自転車の事故は346件ありました。自転車の事故は人的被害(重傷、軽傷)に至る場合が多く、346件中252件(73%)を占めています。

自転車は手軽で便利な乗り物ですが、油断や慣れによる誤った使い方は大きな事故につながります。乗車前の点検や購入してから1カ月での初期点検など、自転車の状況を常に確認し、使い方に注意して事故を未然に防ぎましょう。

リコール製品による事故も発生しているため、リコール情報を確認してください。

 

<事故を防ぐためのポイント>

・路上の木の枝やごみ袋などは車輪に巻き込まれるおそれがあるため、注意して走行する。

・ハンドルに買い物袋や傘などをぶら下げない。

・自転車に乗車する前に、チェーンのたるみ、車輪やペダルの取り付けなどを確認する。

・スポーツ車などは車輪を速やかに脱着してタイヤ交換を容易にする機構(クイックレリー

・お手持ちの製品がリコール対象製品かどうか確認する。

 

<安全のためのポイント>

・乗車前に自転車に不備がないか確認することを習慣にする。

・自転車技士又は自転車安全整備士のいる店舗において、購入後1カ月を目安にねじのがたつき・ワイヤーの伸びなどがないかの初期点検や、新車以外においても定期点検を受ける。

・電柱やフェンスなどに衝突するなど外から大きな衝撃を受けた場合は、そのまま乗車せず、自転車を購入した店舗などで異常がないか点検を受ける。

 

従業員に自転車通勤を認めている会社、従業員が自転車で通勤していることを知っていて黙認している会社は、事故が発生した場合に100%従業員の自己責任とすることはできません。

通勤以外で事故が発生した場合にも、会社は貴重な労働力を、少なくとも一時的に失うことになりかねません。

是非、社内での広報と、自転車利用者への教育に努めてください。

 

2019.03.24.解決社労士

東京都府中市も、平成31(2019)年4月1日にパートナーシップ宣誓制度を開始します。

府中市では、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催等を契機として、一人一人が互いに人権を尊重し、多様性を認め合う共生社会の実現を目指し、「パートナーシップ宣誓制度」を実施するものです。

以下、平成31(2019)年3月21日に府中市の広報誌『広報ふちゅう』で発表された内容です。

 

<パートナーシップ>

互いを人生のパートナーとし、相互の協力により、継続的な共同生活を行い、又は継続的な共同生活を行うことを約した、一方又は双方が性的マイノリティ(典型的とされていない性自認や性的指向を持つ者をいいます。)である2人の者の関係のことをいいます。

パートナーシップ宣誓制度は、一方又は双方が性的マイノリティである2人の関係について、パートナーの関係にあることを証明する制度です。

 

<宣誓できる人>

次の条件をすべて満たすことが必要です。

・パートナーシップの関係にあること。

・成年であること。

・住所について、次のいずれかに該当すること。

1.宣誓をしようとする者の双方が府中市( 以下「市内」という。) の同一所在地に住所を有しており、同一世帯であること。

2.宣誓をしようとする者の一方が市内に住所を有し、他方が当該住所を自らの住所とすることを予定していること。

3.宣誓をしようとする者の双方が市内の同一所在地に住所を有することを予定していること。

・配偶者がいないこと。

・宣誓をする相手方以外の者とのパートナーシップがないこと。

・直系血族又は三親等内の傍系血族もしくは直系姻族の関係にないこと。

 

 なお、「直系血族又は三親等内の傍系血族もしくは直系姻族の関係」とは、次のような関係をいいます。

直系血族…祖父母、父母、子、孫等

三親等内の傍系血族…兄弟姉妹、伯父伯母、叔父叔母、甥姪

直系姻族…子の配偶者、配偶者の父母・祖父母等

 

<宣誓に必要なもの>

〇世帯全員の住民票の写し

1人1通ずつお持ちください。(3ヶ月以内に発行されたもの)

本籍地及び世帯主との続柄の表示は不要

同一世帯になっている場合は、2人分の情報が記載されたもの1通で可

(転入を予定している方)その事実が確認できる書類(売買契約書や賃貸借契約書等)を提出してください。なお、転入後速やかに「世帯全員の住民票の写し」を提出して下さい。

 

〇配偶者がいないことを証明する書類(戸籍抄本・独身証明書等)

1人1通ずつお持ちください。(3ヶ月以内に発行されたもの)

独身証明書や戸籍抄本は、本籍地の市町村で取得できます。

外国籍の方の場合は、配偶者がいないことを確認できる書面に日本語の翻訳を添えて提出(婚姻要件具備証明書等)

 

〇本人確認書類

個人番号カード、運転免許証、一般旅券、在留カード、官公署が発行した免許証、許可証又は資格証明書等(宣誓をしようとする者本人の顔写真が貼付されたもの)

 

<宣誓の流れ>

(1)電話またはメールで事前予約

事前に政策総務部政策課へ、電話またはメールで手続希望日等をご連絡ください。

申請の日時・必要書類などを調整・確認します。(宣誓希望日の7日前まで)

TEL:042-335-4010      

電話受付:月曜日から金曜日 午前8時30分から午後5時(祝休日・年末年始は除く。)

メール:kikaku04@city.fuchu.tokyo.jp

 

(2)書類提出

予約した日時に、必ずお二人そろってお越しください。

必要書類をご持参ください。

宣誓の受付:月~金 午前8時30分~午後5時(祝休日・年末年始は除く。)

受付場所:市役所1階市民相談室

 

(3)内容確認

提出された書類について、パートナーシップ宣誓の要件を満たしているか確認します。

書類に不備や不足等がある場合等は、宣誓日を延期させていただくことがあります。

 

(4)宣誓書受領証の交付

宣誓書の写しを添えて「パートナーシップ宣誓書受領証」を2部交付します。

 

2019.03.23.解決社労士

<年次有給休暇の付与基準>

年次有給休暇の付与について定める労働基準法第39条第2項の末尾には、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と書かれています。

全労働日に対する出勤日の割合は、出勤率と呼ばれ、これが8割未満であれば年次有給休暇を付与しなくても良いということです。

 

<出勤率が基準に満たない社員の状況>

出勤率が8割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに2割の欠勤が発生している状態だと考えられます。

時々遊びに行きたくなって、繰り返し仕事を休んでいたら、欠勤が2割を超えてしまったなどということは、そうそうあるものではないでしょう。

学生なら学業の都合で、主婦なら家族の都合で、やむを得ず欠勤を重ねてしまったというケースが多いのではないでしょうか。

 

<正しい出勤率の計算>

年次有給休暇の付与基準に使われる出勤率の計算は、実際には複雑です。

単純に考えると、出勤日数 ÷ 全労働日 ということになりますが、これには、休業しても出勤したものと取り扱う例外と、全労働日から除かれる例外があります。

 

【出勤したものと取り扱う日数】

(1)業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日

(2)産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日

(3)育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日

(4)年次有給休暇を取得した日

 

【全労働日から除外される日数】

(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日

(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日

(3)休日労働させた日

(4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日

 

こうした例外をきちんと加味して出勤率を計算することは、意外と手間がかかるうえ間違えやすいものです。

 

<会社独自の制度として>

労働基準法は、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と規定しているのであって、「与えてはならない。」とは規定していません。

普通に出勤していれば、そうそう出勤率が8割を切ることはありません。

たまに見られるのは、週5日出勤で契約したアルバイトが、実際には週4日のシフトで働いていたような場合です。こうした場合には、勤務の実態が変更するたびに、雇用契約書を交わし直すのが確実なのですが、実際にはできていないことがあります。

いろいろと手間を考えてみると、出勤率はノーチェックで8割以上あるものとして、年次有給休暇を付与することにも十分な合理性があるといえるでしょう。

 

2019.03.22.解決社労士

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を原則として書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

1人につき30万円の損失で済むわけではなく、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も、取得した場合の給与計算の方法も不明です。月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。こうしたことから、労働条件を通知しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

平成31(2019)年4月からは、使用者に年次有給休暇を取得させる義務が課されます。これに全く対応できていない状態であれば、採用後に辞退されても仕方がないでしょう。

 

<通知義務のある法定事項>

通知義務のある事項は、次に示すように多岐にわたります。

 

【書面による通知義務がある事項】

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、現在でもパートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

【口頭による通知義務がある事項】

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

 

これらの事項は、労働条件通知書に漏れていても違法ではありません。

ただし、現在でもパートタイマー(短時間労働者)については、1.~3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<労働条件の事前公開>

応募者が採用面接後に辞退したくなる理由は、面接官の態度・対応への不満もありますが、主にシフトや仕事内容など労働条件が事前のイメージと違うというのが最も多いのです。

これは、求人広告の内容にすべてを盛り込むのが困難で、具体的なことよりも、良いイメージを抱かせようとする記述が多くなってしまうことが原因でしょう。

求人広告への応募を検討する場合、多くの求職者は、会社のホームページを参考にします。

求人広告に書ききれないことは、ここに詳しく具体的に示しておきましょう。

就業の場所は写真も添えることをお勧めします。

表彰制度があるのなら、表彰式の様子や表彰状も掲載しましょう。

「こんなものを載せたら応募者が減るのでは?」という心配は無用です。入社してから事実を知り、ショックを受けて突然退職されるよりは、応募前にすべてを知ったうえで採用面接を受けてもらう方が、会社の負担も減るというものです。

 

<教育の情報も忘れずに>

会社のホームページに求人情報を掲載するのであれば、「どの仕事を誰がどのように教えるのか」も具体的に明示しておきましょう。

応募者の過去の実務経験に頼ったり、自己啓発に任せたりというのでは、特に若者は応募してきません。

表示できる情報が無いのであれば、新たに仕組みを作ってでも掲載すべきです。

 

2019.03.21.解決社労士

<報道では>

家電量販店ノジマの社長が、子会社の社員の実名を挙げて「使い物にならない」などと責めた文書が子会社のイントラネットに昨年8月に掲載されたことが判明しました。

この社員は昨年末に退社しています。

ノジマは「社員教育の一環」としています。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<真実でも>

真実の指摘なら責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉棄損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、真実であろうとなかろうと名誉を毀損することは犯罪になるということです。

 

「仕事が遅い」「ミスが多い」「仕事をサボっている」という指摘を、人前で行ったなら、それは名誉棄損罪に該当するでしょう。

パワハラとして社内で懲戒の対象になるのはもちろん、刑事告訴の対象となりうるわけです。

 

この辺りのことが、就業規則で対応できていない会社もあります。

経営者に勘違いがあるのなら、社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

 

2019.03.20.解決社労士

<九州での導入>

国や地方自治体が進める公共工事の週休2日制が、平成31(2019)年度から九州全県で導入されることになりました。

導入が遅れていた福岡県で2月から、佐賀県で3月から導入されていて、熊本県でも4月から導入される予定です。

熊本県では、熊本地震からの復旧復興が優先されてきましたが、将来の担い手確保のためにも週休2日制の必要性が認識されたようです。

 

<工期長期化への対応>

国土交通省によれば、熊本県での試行が始まれば、全都道府県で週休2日工事が導入されることになります。

九州各県では、休日の増加で工期が長くなり、企業にとって現場事務所代などの経費増となることになります。

これに配慮し、4週間で6日以上の休日を確保して工事を終えた企業に対し、工事費の数%の増額補正などを行うそうです。

 

<建設業の特質>

悪天候の中では作業を進められないなどの理由から、休日を少なめに設定して工事の計画を立てることが常態化しています。

しかも、建設業の許認可の対象となる業種の大まかな分類でも、次の29種類があり、どれか1つの工程が滞ると、他の工程も遅れるという関係にあります。

 

1. 土木一式工事業

2. 建築一式工事業

3. 大工工事業

4. 左官工事業

5. とび・土工工事業

6. 石工事業

7. 屋根工事業

8. 電気工事業

9. 管工事業

10. タイル・レンガ工事業

11. 鋼構造物工事業

12. 鉄筋工事業

13. 舗装工事業

14. しゅんせつ工事業

15. 板金工事業

16. ガラス工事業

17. 塗装工事業

18. 防水工事業

19. 内装仕上工事業

20. 機械器具設置工事業

21. 熱絶縁工事業

22. 電気通信工事業

23. 造園工事業

24. さく井工事業

25. 建具工事業

26. 水道施設工事業

27. 消防施設工事業

28. 清掃施設工事業

29. 解体工事業 (平成28年6月1日新設)

 

こうしたことなどから、建設業の労働時間は全産業平均に比べて年間300時間以上長く、重大な労災事故も発生しやすく、人手不足も特に深刻化しています。

 

<建設業の働き方改革>

時間外労働時間の上限規制は、建設業の場合には5年間猶予されます。

だからといって、これから5年近くの間、長時間労働を放置してはなりません。

このことについては、働き方改革の推進を指導している厚生労働省も注意を呼びかけています。

建設業では、この5年間の猶予期間中に、労働時間削減の手を尽くさなければ、5年後に工事を受注できなくなる事態も予想されます。

将来を見据えての働き方改革には、真剣に取り組んでいただきたいものです。

 

2019.03.19.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<政省令公布>

平成31(2019)年3月15日、政府は特定技能の在留資格を創設し、外国人労働者受け入れを拡大する新制度の運用の詳細を定めた法務省令や政令を公布しました。

健康状態が良好であることを資格取得の要件とし、受け入れ先には日本人と同等以上の報酬とする雇用契約を結ばせることなどを定めました。

施行は新制度を盛り込んだ改正入管難民法と同じ4月1日となります。

これで外国人労働者の新制度に関する全ての法規定が整備された形となりました。

新制度は一定技能が必要な特定技能1号、熟練技能が必要な同2号の在留資格を創設しています。

1号は介護や農業など14業種、2号は建設と造船・舶用工業の2業種で受け入れることになっています。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

外国人であれば日本人よりも安い賃金で雇えそうだという期待とは裏腹に、法令の適用については日本人と同じですから、人件費の節減も思うようにはいきません。

それどころか、日本語が上手ではない外国人にも安全教育が必要ですし、就業規則などのルールも説明しなければなりません。危険個所には、日本語以外の注意書きを表示する必要があります。

こうしてみると、外国人を雇った場合、そのお世話をする日本人の人件費も馬鹿にならないように思えます。

そもそも国籍の違いを理由に待遇を差別したら、それだけで違法になってしまいます。〔労働基準法3条〕

 

<特定技能の在留資格の特例>

特定技能の在留資格では、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬とすることを義務づけています。

これまでも、外国人を最低賃金法の定める最低額を下回る賃金で働かせ、刑事告発を受ける企業がありました。

特定技能の在留資格では、「日本人と同等以上の報酬」で雇うことが義務付けられていますから、最低賃金法の定める最低賃金を上回るだけでは条件を満たしません。

「日本人と同等以上の報酬」であることが立証できるためには、客観的な評価基準と適正な人事考課の運用も必要となります。

有能な外国人を採用するには、それ相当の準備が必要であること、また、低賃金で働かせることはできないという、正しい認識が広がっていくことを期待します。

 

2019.03.18.解決社労士

<会社の損害>

何度も求人広告を出して何十万円もの経費をかけ、採用面接でもそれ相当の人件費がかかり、やっと採用し大事に育ててきた新人から、あっさり「辞める」と言われたら、経営者や採用担当者は「金返せ!」という気持ちになります。

 

さて、この場合の「会社の損害」とは何でしょうか。

 

まず、求人広告にどれだけの経費をかけるかは、会社の判断によるのであって、応募者と相談して決めるわけではありません。

これは、採用面接などについても同じことがいえます。

応募があった時に、「採用します!」と即決ならば、ほとんど経費がかかりません。もっとも、こんないい加減な採用はしないでしょう。

しかし、どれだけ手間暇をかけるかは、会社が判断します。

 

新人を育てるための経費も馬鹿になりません。場合によっては、会社の費用負担で研修に参加させたり、免許を取らせたりと、至れり尽くせりのこともあるでしょう。そうでなくても、上司や先輩が指導するのに人件費がかかったはずだと考えられます。

そうだとしても、これらは会社側の判断で行ったのであって、本人からたっての希望があって行ったというわけではないでしょう。

となれば、応募し採用された本人が認識できない損失についてまで、本人に費用を負担させることはできません。

 

制服も、会社のルールで使うことにしているわけですから、その経費を本人の負担にはできません。

 

こうしてみると、会社に何か特別な損害があったような場合でなければ、損害賠償の請求はできないだろうということは、しろうとにも判断のつくことです。

 

しかし、急に辞めたことにより、予定していた工事の人手が足りなくなり、工事ができなくなったとします。この場合には、発注者の信用を失うだけでなく、業界全体に悪評が流れてしまうかもしれません。こうなると、会社の損害は甚大です。

 

<労働基準法の規定>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

予定した仕事をしないというのは「労働契約の不履行」の一つですから、「入社から3年以内に退職すると300万円の罰金」などのルールは、労働基準法の禁止する賠償予定にあたるため違法となります。

しかし、「予定」するのではなく実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、退職した社員に損害賠償を請求することができます。

 

<損害賠償請求の裁判>

裁判で損害賠償を請求する場合には、訴えを起こした原告側が証明責任を負います。

当たり前です。

損害賠償を請求された被告が、損害を与えていない、あるいは、〇円以上の損害は与えていないという証明に成功しないと裁判で負けてしまうというのは常識外れです。

言いがかり的に訴訟を提起して、相手が証明できなければ勝てるというのでは、そうした行為が横行してしまいます。

 

新人が辞めたことによって、会社に甚大な被害が及ぶということは稀でしょう。

しかし、ある程度の経済的な損失は発生します。

その損害額がいくらなのか、あるいは少なくともいくら以上なのか、計算できない場合には損害賠償の請求訴訟を提起しても敗訴してしまいます。

 

確信をもって客観的な損害額を算定できるような例外を除き、退職していく社員に損害賠償の話を持ち出すのは、単なる言いがかりになってしまう可能性が高いと考えられます。

 

2019.03.17.解決社労士

<報道向け発表>

毎月勤労統計調査で本来は全数調査すべきところを、一部抽出調査で行っていたことによる雇用保険等の追加給付について、厚生労働省から工程表が公表されていました。

平成31(2019)年3月12日、この工程表に基づく支払い開始について、厚生労働省が報道関係者に宛てて、現在受給している人の3月18日以降を支給対象期間とする給付については、改定後の給付額で支払いを開始することにしたと発表しました。

 

<失業手当について>

失業手当(雇用保険の基本手当)の場合、各認定日に認定される期間については、前回の認定日から今回の認定日の前日までの支給となります。

3月18日に認定日を迎える場合は、今回の認定日(3月18日)から次回認定日の前日までの給付について、次の認定日から再計算された金額での支給となります。

 

<お知らせが届かない可能性>

次の1.~4.に該当する人は、今後の追加給付にあたり、必要なお知らせが届かない可能性があります。

 

1. 2010年10月4日以前に氏名変更があった人

2. 住民票記載の住所と異なる場所に、一時的に滞在している人

3. 海外転出届を市町村に提出していることにより、住民票が除票されている人

4. 家族が雇用保険等を受給中または受給終了後に亡くなられた場合のご遺族

 

これらの状況に該当する可能性がある人については、「追加給付に係る住所情報等登録フォーム」が厚生労働省ホームページに開設されているため、このフォームを活用し、住所などの情報をご登録するよう呼びかけています。

 

<詐欺に注意!>

この件に関して、都道府県労働局、ハローワーク(公共職業安定所)、労働基準監督署、全国健康保険協会または日本年金機構から直接電話をかけたり、訪問をしたりすることはありませんので、これらをかたる電話・訪問があった場合はご注意ください。

また、これらをかたる郵便物にもご注意ください。

 

2019.03.16.解決社労士

<「許される」の意味>

使用者側からも、労働者側からも、「遅刻は何回まで許されるか」という質問を受けます。

この質問では「許されない」とは何かを想定し、それぞれについて回答する必要があります。

 

【遅刻について「許されない」の意味】

① 給与の欠勤控除を受ける。

② 懲戒処分を受ける。

③ 損害賠償の請求を受ける。

 

1回でも遅刻すれば、上司や先輩から注意を受けるでしょうから、これすら無くて許されるということは想定できません。

すると、上記の3つについて考えることになります。

 

<① 給与の欠勤控除を受ける>

欠勤控除について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【欠勤等の扱い】

第43条  欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令には規定がありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

また、遅刻による欠勤の時間に相当する賃金を超えて欠勤控除をすることは、懲戒処分になりますから、懲戒処分としての適法性が問題となります。

 

<② 懲戒処分を受ける>

モデル就業規則の最新版で、遅刻についての懲戒処分の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第64条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

 

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

この規定によると、2つのパターンがあります。

・正当な理由なくしばしば遅刻をしたとき → けん責、減給、出勤停止

・正当な理由なく無断でしばしば遅刻し 回注意されても遅刻したとき → 懲戒解雇など

 

「無断で」「注意されても」なお遅刻すると、懲戒解雇もありうるということになります。

これは、別に次の規定があって、遅刻の事前申し出と承認を必要としているからです。

こうした規定により、事前申し出と承認を義務付けていなければ、「無断で」を理由に一層重い処分とすることはできません。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第18条  労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

さて、モデル就業規則第64条第1項第2号には、「しばしば」という言葉があります。

この意味は、会社ごとに運用で決めることになります。

すると「何回まで許されるか」については、「運用による」という回答になってしまいます。

 

また、ここの第2項第3号には「  回にわたって」という言葉があり、何回にするかは会社が決める形になっています。

こうした規定があれば、会社の無断遅刻が何回まで許されるかは、かなり具体的にわかります。

 

このように、懲戒処分を受けないという意味で「許される遅刻は何回までか」という質問に対しては、「会社の就業規則と運用による」という回答になります。

 

<③ 損害賠償の請求を受ける>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

ここで遅刻は「労働契約の不履行」になりますから、「遅刻すると1回につき3千円の罰金」などのルールは、賠償予定となって労働基準法に違反するため無効となります。

しかし、「予定」するのではなく、会社に実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、遅刻した社員に損害賠償を請求することができます。

朝一番で予定していた大事な商談に遅刻して、商談相手が怒って帰り、その後お詫びしても許してもらえず、大きな仕事をライバル会社に取られてしまったという場合には、ある程度具体的な損害額が算定できるでしょう。

つまり、損害賠償責任については、遅刻の回数は問題ではないことになります。

 

こうしてみると、懲戒処分についての規定の中の「しばしば遅刻」「  回にわたって注意を受けても」という部分は、会社に与えた損害額や不注意の程度を基準にすることも、十分に客観的な合理性があるといえます。

 

2019.03.15.解決社労士

<しろうとの意見>

職場で暴言を吐かれ、感情を抑えられずに相手に暴力を振るってしまった社員がいた場合には、他の社員たちから次のような意見が聞かれます。

・最初に暴言を吐いて仕掛けた方が悪い。暴言が無ければ、暴力も無かっただろう。

・あくまでも言葉のやり取りで済ませるべきで、最初に手を出した方が悪い。

・喧嘩両成敗ということもあり、どちらも同じように悪い。

あるいは、当事者の普段の様子を知っている社員からは、全く違った意見が出てくるかもしれません。

 

<パワハラに該当するか>

職場での暴言や暴力は、パワハラであると判断されるのが一般です。

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

暴言の中には、指導や教育などの意図が含まれていることでしょう。

しかし、普通の話し方ではなく「暴言」という形で表現してしまうと、それは相手の人権を侵害する行為になり、パワハラとなってしまうのです。

場合によっては、脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(刑法223条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)に該当することもあります。

 

一方、暴言に対抗して暴力を振るうのは、その暴力の中に、業務上必要な要素が含まれていませんから、パワハラではなく単純に暴行罪(刑法第208条)が成立します。

相手にけがを負わせれば、傷害罪(刑法204条)となります。

 

<正当防衛になるのか>

それでは、暴言に対抗しての暴力は正当防衛になるでしょうか。

刑事上は犯罪となる行為が、多くの場合、民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

刑事上の正当防衛は、刑法第36条第1項に規定があります。

 

【刑事上の正当防衛】

第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

 

暴言によって侵害される名誉権や人格権を防衛するために、暴力は必要が無いですから、「やむを得ず」という条件を満たしません。

 

民事上の正当防衛は、民法第720条第1項本文に規定があります。

 

【民事上の正当防衛】

第七百二十条  他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。

 

こちらでも「やむを得ず」という条件がありますから、暴言を吐いた人でも、暴力を振るった人に対して、損害賠償の請求ができることになります。

 

<懲戒処分はどうするか>

会社の懲戒処分は刑罰ではありませんが、国法である刑法や民法の趣旨に反する懲戒は、客観的合理性や社会通念上の相当性が否定され、懲戒権の濫用となってしまうことがあります。〔労働契約法第15条〕

就業規則に具体的な懲戒規定があることを前提に、暴言を吐いた社員も、暴力を振るった社員も懲戒処分の対象とすべきです。

また、刑法上も暴力は暴言よりも重い罪ですから、一般には暴力の方が重い懲戒処分になります。

そして、懲戒規定には「情状酌量」についての定めが含まれているでしょう。

暴言を吐いた社員が、暴力を誘発する意図で行っていた場合や、何度も止めるように言われながら暴言を発し続けたような場合には、情状酌量の面から、暴言を吐いた社員は一段重い懲戒処分、暴力を振るった社員は一段軽い処分ということも考えられます。

懲戒処分とは別に、その立場でその仕事をこなすことに対する適性の判断から、人事異動も検討しなければなりませんし、人事考課への反映も忘れてはなりません。

 

懲戒処分については、刑法にも詳しい社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

 

2019.03.14.解決社労士

<残業代未払い>

企業には残業代を支払う義務があり、サービス残業(サビ残)をさせることは違法になります。

中小企業の経営者の中には、「残業代を支払っていては経営が成り立たない」という言い訳をする人もいます。

大企業の役職者の中には、部下の残業代を100%支払っていては、業績の前年割れが発生し責任問題になるという言い訳をする人もいます。

しかし、企業が残業代を適切に支払っていない場合には、訴訟になることもあり、また、労働基準監督署への申告で行政指導を受ける危険もあります。

 

<経済的な損失のリスク>

残業代の未払いがあった場合には、労働者から裁判を起こされる可能性があります。

タイミングとしては、退職してからしばらく経ってからということが多いものです。

本人はおとなしい性格で、とても裁判など起こしそうになかったのに、友人や親戚から「おかしい。訴えるべきだ」と強く主張されて、これに従うということがあります。

 

<付加金という制度>

未払い残業代だけ支払っても済まないことがあります。

裁判所は、本人から請求があり悪質性が認められる場合には、未払い残業代と同額の付加金の支払いを命じることがあります。

この制度によって、本来の残業代の2倍の金額を支払うことになります。

 

<不法行為責任>

残業代の未払いは、基本的に民法上の債務不履行責任の問題です。

しかし、労働時間の管理義務を怠ったことにより、残業代が支払われてこなかった場合には、民法上の不法行為責任が追及されることもあります。

未払い残業代請求権の消滅時効期間は2年間ですが、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は3年間です。

残業代の未払いが不法行為と認定された場合には、3年分の未払い残業代の支払いが命じられる可能性があります。

 

<証拠資料は労働者に有利>

会社を出た時刻を書いた手帳の記録、帰宅時刻を書いたノート、タイムカードに印字された時刻などが、出勤時刻・退出時刻の証拠として認められています。

手帳やノートの記録が裁判の証拠になるのは、少し不思議な気もします。しかし本来、使用者が労働時間を適正に把握し記録する義務を負っているわけですから、これを怠っていれば、基本的には労働者の言いなりになるしかないのです。

出勤してタイムカードを打刻した後、しばらく休憩して、定時から業務を始めるのはよくあることでしょう。

また、仕事を終えて、仲間同士で雑談してからタイムカードを打刻するということもあります。

タイムカードに記録された時刻と、実際の勤務時間とが違うということは当たり前に発生しています。

しかし、裁判になれば「あなたの会社では労働時間の管理・記録をどうしていますか?」「タイムカードです」「では、タイムカードの記録で労働時間を認定します」ということになります。

こうならないためには、就業規則の規定を工夫するなどの対策が必要です。

 

<労働基準監督署の監督(調査)>

労働基準監督署は、計画的に対象事業場を選定して調査を行います。これに当たるのは、ある意味、運が悪いともいえます。たとえ何か悪いことをしていなくても、経営者や担当者が調査に対応するわけですから、時間と労力の負担が発生します。

これとは別に、労働者からの申告をきっかけに行われる調査があります。申告監督といいます。労働基準法により、労働基準監督官は労働者の申告を受けることになっています。現在勤務している従業員だけでなく、退職者からの申告があった場合にも、その真偽や具体的な内容を確認するために調査が行われます。

 

不思議と強気な経営者や役職者は多いものです。そうでなければ務まらないのでしょうか。

こと残業代の未払いについては、あまりにもリスクが高すぎるように思います。

裁判は公開の法廷で行われますし、労働基準監督署が調査(監督)に入れば、残業代だけでなく、あらゆる角度から労働基準法違反の可能性を調査します。

コストを抑えて適法に経営することを考えるのが、結局のところは得だということを認識していただきたいです。

 

2019.03.13.解決社労士

中小企業庁が、「繁忙期対応」や「短納期対応」によって長時間労働に繋がる商慣行について、調査を行い結果を平成31(2019)年3月4日に公表しました。

 

<調査の背景・趣旨>

これまでに中小企業庁が実施した調査では、長時間労働に繋がる商慣行として「繁忙期対応」と「短納期対応」が挙げられてきたことから、今回その背景にある実態の把握を目的に調査が実施されました。

 

<結果概要>

【繁忙期、短納期受注の発生状況】

・繁忙期は約7割の企業で発生し、特に建設業、食料品製造業、紙・紙加工品産業、印刷産業、トラック運送業・倉庫業では8割超の企業で発生している。

・短納期受注は6割の企業で発生(直近1年間)し、特に紙・紙加工品産業、印刷産業、半導体・半導体製造装置産業、電気・情報通信機器産業では8割超の企業で発生している。

・繁忙期/短納期受注の主要取引先として最も回答が多い業種は、大半の業種で同業種であるとの回答が多い。一方、食料品製造業、紙・紙加工品産業、素形材産業、技術サービス産業、卸売業では、他業種が主要取引先として最も回答が多い。

 

【繁忙期、短納期受注の発生要因】

・繁忙期の発生理由は、約5割の企業が「季節的な要因」と回答。短納期受注については、約8割の企業が「取引先からの要望」と回答。

・繁忙期/短納期受注の発生要因について、取引上の問題としての課題を整理すると、「年末・年度末集中」や、「納期のしわ寄せ」、「多頻度配送・在庫負担・即日納入」といった問題のある受発注方法と、そうした「問題のある受発注方法が常態化」していることが、取引上の課題として挙げられている。

 

【残業時間への影響】

・繁忙期対応によって8割、短納期受注によって6割の企業が、従業員の平均残業時間が「増加する」と回答している。

 

2019.03.12.解決社労士

<残業時間の上限の法的規制>

所轄の労働基準監督署長に三六協定届さえ提出しておけば、あまり制限がなされていなかった時間外労働ですが、働き方改革関連法の施行によって上限が設定されます。

時間外労働時間の上限は、1か月では45時間、1年では360時間となっています。

また、三六協定に特別条項がある場合でも、上限が定められることになり、1か月では100時間、1年では720時間となります。

もっとも、上限規制が適用されない業種もあります。

自社についてはどうなのか、働き方改革関連法が施行される前にご確認ください。

 

<働き方改革関連法施行後の基準>

「特別条項」適用の有無にかかわらず、法定労働時間の上限が定められます。

適用されるのは大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月からです。

特別条項なしの場合、1か月では45時間、1年では360時間という基準が、法律で定められて法的拘束力を持つようになります。

さらに、この上限を超える労働をさせた使用者には、罰則を科すことで強制力を持たせます。

特別条項ありの場合、労使協定に特別条項がある場合にも適用される上限が法律で定められます。

時間外労働時間の限度は、1年では720時間、1か月では100時間となります。

ただし、1か月45時間を超えることができるのは、1年間に6か月までとなります。

これらの条件に加えて、次の条件を守ることが定められます。

過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月で平均した法定労働時間が、休日労働の時間を含め80時間以内であること。それぞれの月に、1か月で休日労働の時間を含め100 時間未満であること。

改正前の法律では、休日労働を含まずに計算していました。

改正後は、休日労働の時間を含めて計算します。

ただし、特別条項にあてはまらない労働時間の計算を行う場合には、休日労働の時間はこれまで通り含みません。

 

<上限規制の適用されない業種>

次の業務については、法改正後も当面の間、上限規制が適用されません。

新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務工作物の建設等の事業

自動車の運転業務

医師

厚生労働省の定める業務

 

2019.03.11.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<労使協定の締結>

フレックスタイム制の導入に当たっては、労使協定の締結が必要です。

従来通り、清算期間が1か月以内であれば、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要はありません。

しかし、2019年4月1日付の法改正に応じて、清算期間を1か月を超え3か月以内とする場合には、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

いずれの場合も、フレックスタイム制を導入するに当たっては、以下の事項を労使協定で定める必要があります。

①対象となる労働者の範囲 ②清算期間 ③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)④標準となる1日の労働時間 ⑤コアタイム(※任意) ⑥フレキシブルタイム(※任意)

 

<① 対象となる労働者の範囲>

対象となる労働者の範囲は、各人ごと、課ごと、グループごと等様々な範囲が考えられます。例えば「全従業員」、「企画部職員」としたり、「Aさん、Bさん、・・・」と することも構いません。労使で十分話し合い、協定で対象となる労働者の範囲を明確にしてください。

人事異動があることを想定すると、労働者の個人名で範囲を指定するよりは、役職などで指定した方が便利です。

 

<② 清算期間>

清算期間とは、フレックスタイム制で労働者が労働すべき時間を定める期間のことです。これまで上限は1か月でしたが、法改正によって上限が3か月となります。

清算期間を定めるに当たっては、その長さに加えて、清算期間の起算日を定めてください。起算日は、清算期間をカウントする場合の初日です。

 

法改正で清算期間の上限が最大3か月に延長されましたが、月ごとの繁閑差などの実態を踏まえ、対象者の範囲や清算期間を労使でよく話し合うことが重要です。

また、清算期間が1か月を超える場合でも、使用者は1か月ごとに実際に働いた労働時間を労働者に通知するなどの対応に努めてください。

フレックスタイム制の対象となる労働者は、自分でも労働時間の管理をしているはずですが、期間が長い場合には、期間を区切って集計した時間を、その労働者に通知してあげるのが親切です。

 

<③ 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)>

清算期間における総労働時間とは、所定労働時間のことです。つまり、労働契約上、労働者が清算期間に労働すべき時間として定められた時間です。

フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間を定めることとなります。

清算期間における総労働時間を定めるに当たっては、法定労働時間の総枠の範囲内としなければなりません。

つまり、清算期間における総労働時間が、次の時間の範囲内であることが必要です。

1週間の法定労働時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7日

 

なお、特例措置対象事業場については、清算期間が1か月以内の場合には週平均44時間までとすることが可能ですが、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて労働させる場合には、36協定の締結・届出と、割増賃金の支払が必要です。〔労働基準法施行規則第25条の2第4項〕

 

労使協定では、1か月160時間というように各清算期間を通じて一律の時間を定める方法のほか、清算期間における所定労働日を定め、所定労働日1日当たり〇時間といった定め方をすることもできます。

 

<④ 標準となる1日の労働時間>

標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間の長さを定めるものです。清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。

フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、その日について、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱う必要があります。

実働時間ではないということで、労働時間の計算から除いてしまうと、実質的に年次有給休暇の権利をはく奪することになるからです。

 

<⑤ コアタイム(※任意)>

コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

設けない場合には、朝礼の実施などで不都合を生じることがあります。

反対に、コアタイムが長すぎると、フレックスタイム制のメリットが無くなりますので、注意が必要です。

なお、コアタイムを設けずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合にも、所定休日は予め定めておく必要があります。

所定休日が無いと、休日出勤(手当)の設定ができません。

 

<⑥ フレキシブルタイム(※任意)>

フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯のことです。フレキシブルタイム中に勤務の中抜けをすることも可能です。

フレキシブルタイムも必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

 

2019.03.10.解決社労士

<よくある誤解>

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

この意味が誤解されていると思います。

従業員の一人ひとりが、「気が向いた時に出勤して、帰りたくなったら帰る」のであれば、仕事が回らなくなります。

こんな制度を、労働基準法が定めるはずがありません。

 

<フレックスタイム制の公式説明>

フレックスタイム制については、厚生労働省が次のように説明しています。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

この一方で、次のような説明もあります。

 

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をしなくてもよいわけではありません。 実労働時間を把握して、適切な労働時間管理や賃金清算を行う必要があります。

 

<労働者という言葉の意味>

まず「使用者」の意味ですが、これについては労働基準法第10条に規定があります。

 

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

「すべての者をいう」ですから、社長1人ではありません。

この条文の「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

一方で、「労働者」というのも、労働者一人ひとりを指しているのではなく、使用者に対置される意味での労働者です。つまり、社内の労働者全体であり、「労働者たち」という意味です。

 

この理解のもとで、ここまでに出てきた話の中の「労働者」を「労働者たち」に言い換えると、次のようになります。

 

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者たちが日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者たちが自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者たちの決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

「労働者」と「労働者たち」とで何が違うかというと、「労働者」ならば一人ひとりの自由な考えということになるのに対して、「労働者たち」ということになると、「労働者」がお互いに話し合って決めるということになります。

つまり、仕事の効率を考え、仕事に支障が出ないように、協議のうえ日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めるということです。

 

<働き方改革の面で>

使用者は、労働者一人ひとりに対して、出勤日や始業・終業時刻を指定することができません。しかし、当然のことですが、仕事の指示を出すことはできます。

労働者側は、使用者側から指示された仕事を効率よく成し遂げるために、労働者同士で協議して出勤日や始業・終業時刻を決めることになります。

こう考えると、フレックスタイム制は、仕事の効率が向上する制度であることがわかります。

 

働き方改革は、労働者の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

フレックスタイム制も、働き方改革の趣旨に適合した制度ですから、今回の法改正では、労働時間の調整を行うことのできる期間が延長されました。これによってより柔軟な働き方の選択が可能となったわけです。

 

2019.03.09.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

2019年2月26日、日本政策金融公庫総合研究所が「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果を発表しました。

これは、2018年10-12月期の特別調査の結果です。

以下、枠内は、この調査結果をそのまま引用しています。

 

【正社員の過不足感】

・2018年12月において、正社員が「不足」と回答した企業割合は、全業種計で60.8%となり、前年(58.0%)から2.8ポイント上昇した。「適正」は34.5%、「過剰」は4.7%となった。業種別にみると、運送業、建設業、情報通信業などで「不足」と回答した割合が高くなっている。

 

「正社員」というのは、法律用語ではありませんから法令には定義がありません。

各企業が独自の定義を定めていたり、あいまいにされていたり、定義が無かったりというのが実態です。

ですから、この調査の中の「正社員」には様々な雇用形態が含まれています。

「限定正社員」「多様な正社員」と呼ばれる人たちも含まれるでしょう。

とはいえ典型的なのは、フルタイム勤務で人事異動を受け入れ簡単には辞めない社員というイメージでしょうか。会社にとって都合よく働いてくれる人材です。

こうした人材が不足している場合に、社外から調達するよりは、社内で育てた方が安上がりで安全です。会社のニーズに合った育て方もできます。

非正規社員を育てて正社員に転換する動きは、働き方改革の推進というだけでなく、企業にとって合理的な行動なのです。

 

【正社員の増減】

・2018年12月に正社員数を前年から「増加」させた企業割合は32.1%、「減少」させた企業割合は19.5%となった。前年と比べると、「増加」は1.3ポイント上昇、「減少」は0.8ポイント上昇した。業種別にみると、情報通信業、運送業、製造業などで「増加」と回答した割合が高くなっている。

 

全体で正社員が増加していることになります。

社会全体で「正社員」が増加しなければ、「増加」させた企業割合が「減少」させた企業割合を大きく上回ることはありません。

やはり、非正規社員を育てて正社員に転換する動きが盛んなのでしょう。

 

【正社員の昇給】

・2018年12月に正社員の給与水準を前年から「上昇」させた企業割合は、57.4%となり、前年(54.5%)から2.9ポイント上昇した。賃上げ企業割合は、2年連続で上昇となった。上昇の背景をみると、「自社の業績が改善」(36.2%)の割合が最も高く、次いで「採用が困難」(25.4%)となっている。2019年についても51.8%の企業が「上昇」すると回答している。

 

大手企業を中心に推進されている働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

さて、「採用が困難」で昇給した場合には、一時的かもしれませんが企業の業績が悪化する恐れがあります。

やはり「自社の業績が改善」されたので、社員への還元として昇給を実施するというのが、望ましい形です。

やり方としては、会社の業績の推移を社員に説明し、生産性が上がってきたので昇給するのだということを念押ししておくのが良いでしょう。この説明をきちんとしておけば、社員はさらに発奮するでしょうし、危機感を失いません。

 

場合によっては、生産性の向上に期待して前倒しで昇給するという方法もあります。

たとえば、残業時間を減らしてもらう代わりに、基本給を上げて、収入が減らないようにするやり方です。

このとき、残業の減らない社員については、賞与支給の人事考課で低い評価が与えられ、賞与支給額が低額になることで調整されるでしょう。

 

2019.03.08.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<作成支援ツールの公開>

2019年4月1日施行の改正労働基準法に対応した「三六協定届」を作成するための支援ツールを、厚生労働省が公開しています。

これを使えば、パソコン画面上で、入力フォームから必要項目を入力し印刷して、労働基準監督署長に届け出る三六協定書が作成できます。

 

<スタートアップ労働条件>

事業者のための労務管理・安全衛生管理支援サイト「スタートアップ労働条件」のページから入って利用することができます。

 

↓こちらです。

https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/support.html

 

入力フォームから必要項目を入力・印刷することで、労働基準監督署に提出する次の4種類の書面を作成することができます。

〇時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定届)

〇1年単位の変形労働時間制に関する書面

協定届、労使協定書、労働日等を定めたカレンダー

 

<会員登録>

会員登録をしないで利用することもできますが、会員登録をしておけば、36協定届、1年単位の変形労働時間制に関する書面の入力データを保存し、過去に登録したデータを呼び出して書き換えることができます。

次回の届けを作成する手間が省けますし、今後新たなサービスが追加されるでしょうから、会員登録することをお勧めします。

 

<適用が猶予される企業にも>

中小企業のうち、2024年3月31日まで上限規制が適用猶予される事業場・労働者(建設業、鹿児島・沖縄の砂糖製造業、自動車運転者、医療に従事する医師)に向けたツールも用意されています。

 

2019.03.07.解決社労士

<セクハラとは>

セクハラに関する厚生労働省の説明は、次のようにむずかしいものです。

 

セクシュアルハラスメントの略で、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」をいいます。

 

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

ですから、「不利益を受ける恐れ」や「悪影響が生じる恐れ」があれば、セクハラの成立を認めるべきでしょう。

 

<教育不足>

このように、セクハラの説明がむずかしいと、行為者に対して「あなたのしたことはセクハラです」と言ったところで納得されません。

これでは、反省を求めることもできません。

行為者の言い分を聞いているうちに、「あるいは被害を訴えている人の思い違いではないか」とさえ感じかねません。

これは、行為者も対応する人も、何がセクハラに当たるのかについて理解が不足しているからです。

会社がセクハラの定義を定め、具体的な事例を示しながら繰り返し研修を実施しなければ、理解は進まないでしょう。

 

<懲戒処分>

会社としては、セクハラの訴えがあり、事実が確認されたなら、行為者に対する懲戒を考えざるを得ません。

まさか、被害者を移動させたり退職させたりというわけにはいきません。

そんなことをしたら、ネット社会の今、会社の評判は地に落ちてしまいます。

さて、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(セクシュアルハラスメントの禁止)

第13条 性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

もちろん、懲戒処分をするには、就業規則の懲戒規定が具体的に対象としている行為であることが条件となります。

就業規則に規定の無いことや、規定があっても理解されないことで懲戒処分をされたのでは、たまったものではありません。

こんなことをされた社員は、会社に対して慰謝料を含め損害賠償の請求をするのも当然です。

それだけに、就業規則の懲戒規定は、誰にでもわかるように具体的なものでなければなりません。

また、懲戒規定は禁止規定を前提にしています。

禁止規定の表現が抽象的であれば、別途、入社時と定期の研修会などが必要になります。

あるいは、従業員の誰が読んでも、どのような行為がセクハラになるのかが、わかる内容にしておかなければなりません。

 

<会社の義務>

結局のところ、会社としては次のことを怠っていれば、責任を果たしたことにはなりません。

 

・セクハラの定義を明らかにする。・具体例を示し全従業員にセクハラについての教育を定期的に繰り返す。

・就業規則にセクハラの禁止を規定する。

・就業規則にセクハラの懲戒処分を規定する。

 

<結局セクハラとは>

ある行為があって、その様子をビデオ撮影したとします。それを見た家族、恋人、友人が、性的な面で不快感を示すなら、それはセクハラです。

たとえ行為者が、自分自身の主観で納得できないとしても、その行為を見た第三者が不快に思うのであれば、セクハラの疑いは晴れないことになります。

我々が仕事をするうえで、人に接する場合、その人の家族や友人が見たら不快に思うことは無いのかということを、常に意識して行動しなければなりません。

 

2019.03.06.解決社労士

<現物支給>

現物支給とは、物品やサービスなど金銭以外の経済的利益で、賃金が支給されることをいいます。

賃金の一部を、会社の商品や割引券に換算して支給するような場合を指します。

通勤手当の代わりに、定期券を支給するのも現物支給です。

食事や栄養ドリンクも、賃金の代わりに支給されるのであれば、現物支給になります。

 

<賃金支払の5原則>

賃金の支払いについては、労働基準法第24条に規定があり、この中に賃金支払の5原則が含まれています。

通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上払いの原則、一定期日払いの原則の5つです。

このうち通貨払いの原則は、日本のお金で支払うという原則です。

 

<現物支給が許される場合>

法令や厚生労働省令によって、現物支給が許されている場合があります。

しかし、たとえば本人が希望して、退職金を銀行振出し小切手で受け取るような例外的なものに限られています。

この他、労働組合のある会社では、労働組合と会社とが現物支給についての労働協約を交わせば、その労働協約の適用を受ける労働者に限って、労働協約の範囲内での現物支給が許されます。

労働者の過半数を代表する者と会社との間で交わされる労使協定は、名称は似ていますが労働協約ではありません。労働組合が無ければ、労働協約は交わせません。

 

<プラスアルファなら>

ただ労働基準法は、「賃金の代わりに」物品やサービスなどで支払うことを禁止しているのであって、「賃金とは別に」物品やサービスなどの経済的利益を提供することは禁止していません。

たとえば、一定の時刻を超えて残業している社員に、賃金とは別に夜食と栄養ドリンクを支給するような場合には、労働基準法違反にはなりません。

また、就業規則などで定められた賞与とは別に、会社の商品やサービスを社員に与えて親しんでもらうなども、労働基準法違反になりません。

ただし、ケースによっては、所得税法上の「現物給与」とされ課税対象となりうるので、こちらの確認が必要です。

 

2019.03.05.解決社労士

<セブンイレブンの動き>

コンビニエンスストアの最大手セブンイレブン・ジャパンが、長年続いた24時間営業の見直しを検討しています。

人手不足で店員の確保が難しいなどを理由に、営業時間の短縮を希望するオーナーが増加していることなどに配慮してのことです。

 

<かつての営業時間>

その昔、セブンイレブンの営業時間は午前7時から午後11時までが基本で、まさにセブンイレブンでした。

しかし、実験的に一部の店舗を24時間営業にしたところ、昼間の売り上げも増えたなどの理由で、24時間営業が標準になっていきました。

 

<他のコンビニでは>

2007年にはローソンが、試験的に一部店舗で営業時間の短縮を行ったところ、昼間も含めて売り上げが減り、その店舗のオーナーから24時間営業へ戻すよう要望が出たそうです。

2017年には、ファミリーマートでも24時間営業の見直しが検討されました。

しかし、どちらの店舗も24時間営業が続いています。

 

<働き方改革の流れ>

現在では、働き方改革が推進されていて、2019年4月からは働き方改革関連法が施行されます。

たしかに、働き方改革の本質は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえます。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<ロイヤルホストの取組み>

深夜時間帯の仕事については、求人広告を出しても応募者が少ないのが現状です。

こうした中で、ロイヤルホストは2017年から24時間営業をやめて、客単価の増加に成功し、生産性が向上したそうです。

店員が少ないレストランでは、何かとお客様が待たされることになり、どうしてもサービスが低下してしまいます。十分なサービスが提供できない時間帯の営業を、思い切ってやめた方が、お店の評判も向上することでしょう。

ただ、ロイヤルホストの場合は、24時間営業をやめるとともに商品の品質を高める作戦で、高品質なパスタやステーキの提供を同時に開始しています。

 

<予想される展開>

今後は、一部の店舗で実験的に営業時間の変更をかけてみて、上手くいけば他店でも同様にするという動きが盛んになりそうです。

しかし、働き方改革は、働く人たちが、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革でもあります。深夜時間帯に働きたい、早朝でなければ働けないという人々がいる以上、このニーズを満たすため、深夜営業や24時間営業なども残しておく必要があるわけです。

ですから、過重労働につながるという短絡的な判断で、24時間営業が消えることはないでしょう。

 

2019.03.04.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<休日>

労働基準法には、休日について次の規定があります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

つまり、日曜日から土曜日までの1週間で1日の休日を与えるか、4週間ごとに4日の休日を与えればよいということになります。

正社員、パート、アルバイトなどの区分にかかわらず、週6日勤務は違法ではありません。

 

<労働時間>

一方で、労働基準法には、労働時間について次の規定があります。

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

つまり、労働時間には上限があって、日曜日から土曜日までの1週間で40時間、1日について8時間が限界ということになります。

 

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

週6日勤務の場合でも、1日6時間の勤務であれば、週36時間の勤務になりますから適法です。1日6時間40分であれば、6日間でちょうど40時間です。

また、週のうち5日は7時間勤務、1日は5時間勤務とすれば、週40時間の勤務になりますから、これも適法ということになります。

 

<特例事業場の例外>

事業場の規模が10人未満の、次の業種は、1週 44 時間、1日 8 時間となります。〔労働基準法第40条〕

この事業場を「特例事業場」といいます。

 

【特例事業場】

商業(卸小売業、理美容業など)

映画演劇業(映画の製作の事業を除く)

保健衛生業(診療所、歯科医院、社会福祉施設など)

接客娯楽業(旅館、飲食店など)

 

<職種による例外>

次の職種は、労働時間のほか、休憩、休日に関する労働基準法の規定は適用されません。

 

農業、畜産業、水産業従事者

管理監督者(イメージとしては取締役に近い仕事をしています)

機密の事務を取り扱う者(秘書など)

監視断続的労働、宿日直勤務を行う者で、労働基準監督署長の許可を受けた者

 

<三六(さぶろく)協定による例外>

労使の合意に基づく手続きによって、週40(44)時間を超える勤務を可能にしたり、例外的に週7日勤務する場合があるという取り決めをしたりすることができます。

労働基準法第36条第1項に規定があるので、三六協定と呼ばれます。

 

【労働基準法第36条第1項】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 

この法定の手続きを取らずに残業させると、「違法残業」となります。

三六協定には最長でも1年間の有効期限があります。

期限切れの状態で残業が発生しても「違法残業」です。

もちろん、三六協定の上限を超える残業も違法です。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇の付与日数は、1週間の所定労働日数、1週間の所定労働時間、勤続年数によって決まります。

これを示す表には、週6日の欄が書かれていないこともありますが、週6日勤務の労働者には、週5日の欄が適用されます。

 

<就業規則にも注意>

パートやアルバイトに適用される就業規則に、「週5日までの勤務」という規定がある場合には、これによる制限を受けますから週6日勤務はできません。

会社として必要ならば、法定の手続きを経て、就業規則を変更する必要があります。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

会社からの強制で週6日勤務にすることは、働き方改革とは逆の方向に進むことになります。

しかし、労働者側の都合で週6日勤務を希望し、会社がこれを認める形ならば働き方改革の推進になります。

子育て中で朝遅めの出勤、夕方早めの退勤の方が、都合が良いという人もいます。

家が近くて出勤が苦にならないとか、満員電車を避けて通勤したいとか、1日の勤務時間が短いパート・アルバイトなので勤務日数を増やしたいとか、様々なニーズに応えるのは働き方改革の流れに沿ったものとなります。

 

2019.03.03.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

働き方改革関連法により、1か月の時間外労働についての基準やチェックポイントが複雑になります。

基本的なものを、以下にまとめましたので参考にしてください。

 

<45時間>(1年単位の変形労働時間制では42時間)

□三六協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に該当しない時間外労働をしそうな社員はいないか。

□三六協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる月数」を超えて時間外労働をしそうな社員はいないか。

□三六協定に定めた健康確保措置の必要は発生しそうか。

 

<60時間>

□60時間以上の時間外労働に5割以上の割増賃金を支払っているか(中小企業は2023年4月から)。

 

<80時間>

□時間外労働と休日労働の時間を合計して、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月それぞれの平均が80時間を超えそうな社員はいないか。

□時間外労働が80時間を超えた場合に、その社員と産業医に速やかに知らせているか。

 

<100時間>

□時間外労働と休日労働の時間を合計して100時間を超えそうな社員はいないか。

 

人事部門ではなく、現場でチェックしないと間に合わない項目もあります。

罰則の適用対象とならないように、現場に周知徹底することが必要です。

 

2019.03.02.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<ポイント還元を巡る問題>

2019年2月26日、公正取引委員会が、ネット通販大手のアマゾンジャパンを調査する方針を固めたそうです。

アマゾンジャパンでは、5月23日に1%ポイント還元を導入する予定ですが、これはポイント還元の費用を出品者の負担とするものです。

アマゾンジャパンが、出品者に対する優越的地位を濫用して、出品者との契約を一方的に変更するのであれば、独占禁止法に触れる可能性があります。

出品者の負担で、アマゾンジャパンが利益を得るというのは、弱い者いじめになるのではないかということです。

もちろん、アマゾンジャパンが自分の負担でポイント還元を行うのであれば、こうした問題は発生しません。

 

<残業削減を巡る問題>

働き方改革の一環で、残業削減が進んでいます。

会社が一方的に、全社員に命じて残業時間を減らさせた場合には、残業手当も減ります。

これで業務の停滞が無く、売上が低下しないのであれば、会社の社員に対する優越的地位を濫用して、社員の負担で会社が利益を得る形になります。

アマゾンジャパンの出品者であれば、商品の価格をわずかに上げて対応できるのかもしれません。

しかし、社員は自分の基本給を少し上げて対応することなどできません。

 

<働き方改革の本質>

そもそも働き方改革とは何なのか、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<現実的な対応>

社員が逃げ出さないようにするための現実的な対応としては、次のようなものがあります。

 

・残業削減の指示とともに基本給を一律増額する。

・残業代が削減された実績を踏まえて賞与に生産性向上手当を上乗せする。

 

こうしたことは、中小企業でも現に行われています。

働き方改革が進まない会社から、働き方改革が正しく進んでいる会社へと、労働者の移動が盛んになっているように思われます。

実際、働き方改革が正しく進んでいる会社では、「人手不足」という言葉がピンと来ません。

求人広告を出せば、すぐに多くの応募者が連絡してきます。

すでに「人手不足」が発生している会社では、働き方改革への取組みを急いだほうが良いと思います。

 

2019.03.01.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<通達の重要性>

平成31(2019)年2月19日、厚生労働省大臣官房審議官(労災、建設・自動車運送分野担当)から都道府県労働局長に宛てて通達が出されました。

「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」というタイトルの通達です。

通達というのは、上級行政機関から下級行政機関への指示ですから、直接、企業を拘束するものではありません。

しかし、行政機関が企業を指導する場合の基準になりますから、企業に対する影響は大きいのです。

この通達は、都道府県労働局長に宛てられた通達ですから、各労働基準監督署の指針となります。

 

 <意気込みの表明>

通達は、「この問題については、この基準で対応しなさい」というのが多いように思われます。

この通達では、冒頭で次のように述べられています。

平成31年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。

「平成30年度までとは違う」という意気込みが感じられます。

 

<現状認識>

厚生労働省からすると、現状は次のように認識されています。

労災補償行政を巡る状況をみると、過労死等に係る労災請求件数は2,500件以上に上り、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,100件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にある。

つまり、現状は過去に例を見ないほど深刻であるということが述べられています。

 

<過労死の問題>

過労死というのは、たとえ本人が望んで働いていたとしても、あってはならないことです。仕事をするのは、生活のためであり、自己実現のためであり、家族を養うためであり、将来の夢に向かっているためです。

今現在の必要や、将来を見据えての頑張りが、生命を失うことによって、すべてムダになってしまいます。

通達は、次のように述べています。

過労死等を巡る国民の関心は高く、とりわけ過労死等の発生を防止するための取組強化に対する社会的要請が強まっており、長時間労働の是正を大きな柱として、政府を挙げて推進する「働き方改革」に労働基準行政として実施することが求められている中、労災補償行政においては、過労死等の労災請求事案に引き続き適切に対応していくことが肝要である。

働き方改革の定義は、明確に示されてはいません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<外国人労働者>

外国人労働者の受入れ拡大については、次のように述べられています。

「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、本年4月から施行されることに伴い、今後外国人労働者の増加が見込まれることから、これまで以上に外国人労働者に対する労災保険制度の周知、請求勧奨等の取組について的確に実施する必要がある。

しかし、労働基準法などの労働法が、日本人に適用されるものではなく、日本で働く人に適用されるのだということの理解が不十分であるように思われます。

 

<重点項目>

平成31年度は、特に次の事項を重点的に推進することになっています。

1.過労死等事案などの的確な労災認定

2.迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底

3.労災補償業務の効率化と人材育成

 

こうしてみると、国は体制を整えるので、企業はこれに応えなさいという気持ちが読み取れます。

たとえ中小企業であっても、国の想いを受け取れない企業は、平成の次の時代に生き残ることはできないという警告のように感じられます。

 

2019.02.28.解決社労士

<叱られ方研修>

大正大学(東京都豊島区西巣鴨)で、就職内定者を対象に叱られ方研修が行われ、ネットでも話題になりました。

研修当日にNHKの取材があり、その様子は「首都圏ネットワーク」や「おはよう日本」でも紹介されています。

 

<研修の内容>

研修の内容は、大正大学のホームページで次のように紹介されています。

 

 本学では入社を間近に控えた4年生向けに、卒業直前特別プログラム「内定者研修」を2月14日に開催しました。それは、4月からスムーズな社会人生活を送るため身に着けておきたいビジネスマナーやタイムマネジメントに加え、新人社員が上司やお客様と接する社会人生活の中で起こりうるケースを想定した「叱られ方」を考えるロールプレイングを行いました。

 この内定者研修を受けたことにより、同期生の中でも1歩リードしたスタートを切り、今後の社会人生活で大いに活躍してくれることを期待しています。

 

上司から叱られるというとパワハラ、お客様から叱られるというとカスハラ(カスタマーハラスメント)が想起されます。

こうしたことから、叱られ方研修というのは、ハラスメントに耐えるための研修であるかのように誤解されがちです。

しかし、大学がハラスメントを助長するような研修を実施するはずがありません。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、立場上必要な注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償を請求される対象ともなります。〔民法709条〕

これは、行為者が経営者でも一般の従業員でも同じです。

 

<カスハラの構造>

カスハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【カスハラの2要素】

・顧客の店員などに対する正当な請求・要求(不良品の交換請求、交換できないときの返金請求、適正な接客要求など)

・顧客としての正当な範囲を超える請求・要求による人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

顧客としては、正当な主張をしているつもりが、客観的には店員などの人権侵害になっているわけです。

顧客として正当な主張と同時に行われる「人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、恐喝、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、過度の要求、不可能なことの強制、私的なことに過度に立ち入るなど

 

ネットには、コンビニの店員が顧客から土下座を要求され(強要罪)、たばこ1カートンをサービスさせる(恐喝罪)などの動画が流れることもあります。

 

<不思議なご相談>

柳田事務所にも、パワハラのご相談が数多く寄せられます。

パワハラにより勤務できなくなるなど、深刻なご相談が多いのは事実です。

しかし、パワハラやセクハラという言葉が一般化するにしたがって、ハラスメントに当たらないことについてのご相談が増加しています。

たとえば、「店長が突然お店の方針を変更した」「マネージャーからお店にスマホを持ち込まないように言われた」「商品を陳列するときは日付の新しいものを奥に詰めるよう注意された」などです。

状況を聞くと、どなられたわけでもなく、人権侵害になるようなことは行われていません。

ただ、ご本人としては、突然のことであったり、「そこまでしなくても」という不満があったりと、感情を害する行為があったと感じるわけです。

 

<入社後の研修も大切>

学生が入社する前に、上司やお客様にきちんと向き合えるように、叱られ方研修を受けるのは良いことだと思います。

ただ入社後に、社内研修でパワハラやカスハラの構造が説明され、何がハラスメントに当たるのかを理解させるのでなければ、ただハラスメントに屈するだけの社員になってしまうかもしれません。

あるいは、上司やお客様に対して、パワハラやカスハラの言いがかりをつけてしまう恐れもあります。

大学での研修だけに頼らず、企業の立場で行うべき研修はきちんと実施することが大切です。

 

2019.02.27.解決社労士

<女性騎手恒久2kg減制度>

2019年3月1日から、JRAではルールが変更されて、女性騎手は負担重量が2kg減となります。

これによって、フェブラリーSでJRA女性騎手として初のG1騎乗を果たした藤田菜七子騎手(21)の場合、平場のレースは通算100勝までの間3kg減での騎乗となります。

2017年3月に、このルールが導入されたフランスでは、女性騎手の戦績が大幅にアップしていますから、藤田騎手の大活躍が期待されます。

 

<ポジティブ・アクション>

雇用の分野では、男女均等の一方でポジティブ・アクションも求められています。

ポジティブ・アクション (positive action)は、肯定的差別(positive discrimination)と肯定的措置(affirmative action)を組み合わせた和製英語です。

このうち肯定的措置(affirmative action)というのは、弱者集団の不利な現状を把握し、歴史的経緯や社会環境を踏まえて是正するという改善措置を指します。

弱者集団については、民族、人種、出身などによる差別が問題となるのですが、日本では特に女性差別が問題とされ、厚生労働省が中心となって女性の活躍や男女格差解消を推進しています。

具体的な肯定的措置としては、就職や昇進での特別な採用枠の設置や試験点数の割り増しなどの直接的な優遇措置があります。

 

<企業での具体的な取組み>

固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性がほとんどいない、課長以上の管理職は男性が大半を占めているなど、男女労働者の間に具体的な差が生じている場合、この差を解消しようと個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組みをいいます。

社内制度には男女差別的取扱いはないのに「女性の職域が広がらない」「なかなか女性の管理職が増えない」そのために女性の能力が十分に活かされていないといった場合に、このような課題を解決し実質的な男女均等取扱いを実現するために必要となるものです。

たとえば、勤続年数が長い女性労働者が多数勤務しているにもかかわらず、 管理職になっている女性が男性と比べて極めて少数であるというような場合、「3年間で女性管理職20%増加」などという具体的な数値目標を掲げ、女性の管理職候補者を対象とする研修の実施、女性に対する昇進・昇格試験受験の奨励、昇進・昇格基準の明確化等の取組を行っていくことが考えられます。

 

<男女雇用機会均等法との関係>

男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)は、「この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする」としています。〔1条〕

つまり単純な男女平等ではなく、女性労働者に対する一定の配慮もその目的としていることになります。

さらに、この法律は男女差別を禁止する一方で、「事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない」と規定しています。〔8条〕

これは、ポジティブ・アクションが男女平等に反する措置ではないことを、積極的に認める趣旨です。

 

さて、新ルールの下で女性騎手が活躍すれば、中央競馬の人気も回復するのでしょうか。

 

2019.02.26.解決社労士

<新制度導入の背景>

新たな外国人材の受け入れ制度が2019年4月に開始されます。

法務省は、この背景として、次の点を指摘しています。

・有効求人倍率が、1970年代以来44年ぶりの高さである。

・全都道府県で有効求人倍率が1を超える状態が続いている。

・失業率が25年ぶりの水準まで低下している。

・企業の人手不足感が、バブル期以来の水準にまで上昇している。

・2017年10月末現在、国内の外国人労働者数は約127万人で、過去最高を更新している。

 

<変更点>

専門的技術的分野での在留資格は、高度専門職、教授、技術・人文知識・国際業務、介護、技能等に限定されていました。

新たに創設される在留資格として、特定技能1号、特定技能2号が加わります。

 

○ 特定技能1号

特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

○ 特定技能2号

特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

ここで、「特定産業分野」とは、介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14分野をいいます。

ただし、特定技能2号は、建設、造船・舶用工業の2分野のみで受け入れが可能とされます。

 

【特定技能1号のポイント】

○ 在留期間:1年、6か月または4か月ごとの更新、通算で上限5年まで

○ 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した 外国人は試験等免除)

○ 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)

○ 家族の帯同:基本的に認めない

○ 受入れ機関または登録支援機関による支援の対象

 

【特定技能2号のポイント】

○ 在留期間:3年、1年または6か月ごとの更新

○ 技能水準:試験等で確認

○ 日本語能力水準: 試験等での確認は不要

○ 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)

○ 受入れ機関または登録支援機関による支援の対象外

 

<注意点>

中小企業では、「外国人は安く使える」という誤解も残っているようです。

しかし、国内で働く外国人には、日本人と同様に、原則として労働基準法、最低賃金法などの法令が適用されます。

外国人を差別できませんし、最低賃金を下回る賃金では働いてもらえません。

たとえ、本人が同意したとしても違法となります。

 

2019.02.25.解決社労士

失業により雇用保険の給付を受けていても、配偶者など健康保険加入者の扶養家族になれる場合があります。

 

<考え方の基本>

健康保険加入者(被保険者)の扶養家族(被扶養者)に認定されるには、主として、被保険者の収入によって生計を維持していることが必要です。

これは原則として、被扶養者になろうとする人(認定対象者)の生活費の半分以上を、被保険者の収入によってまかなっている状態をいいます。

この認定は、次の基準により保険者が行います。保険者名は、健康保険証に印字されています。

 

<被扶養者の範囲>

1.被保険者と同居している必要がない者

・配偶者

・子、孫および兄弟姉妹

・父母、祖父母などの直系尊属

2.被保険者と同居していることが必要な者

・上記1.以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)

・内縁関係の配偶者の父母および子(その配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

※平成28(2016)年10月1日から、法改正により兄姉も弟妹と同じ扱いになりました。

 

<収入要件の原則>

年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ

同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満

別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

ここで「年間収入」とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に当てはまる時点および認定された日以降の年間の収入額の見込みで考えます。

(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。

また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。

 

<収入要件の例外>

収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときは、保険者がその世帯の生計の状況を総合的に判断して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

 

2019.02.24.解決社労士

<生活保護>

「生活保護制度」は、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、併せてその自立を助長する制度です。

保護の種類は、次の8種類であり、要保護者の必要に応じて支給されます。医療扶助と介護扶助を除き、金銭給付を原則としています。

 

生活扶助: 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの

教育扶助: 義務教育に伴って必要な教科書、その他の学用品等

住宅扶助: 住居の提供、家屋の補修費

医療扶助: 診察、薬剤又は治療材料、医学的処置、手術その他の治療等

介護扶助: 高齢者に対する居宅介護、福祉用具、住宅改修、施設介護等

出産扶助: 出産に必要な経費

生業扶助: 生業に必要な資金、器具、技能の修得費等

葬祭扶助: 葬祭に必要な経費

 

<生活保護を受ける条件>

生活保護を受けるためには、生活に困窮している人が、利用できる資産、働いて収入を得る能力、その他あらゆるものを活用することが前提となります。ですから、資産調査などが行われます。

また、民法の定める扶養義務者の扶養が生活保護に優先されます。それでもなお、最低限度の生活が維持できない場合に、保護を受けることができます。

具体的には、収入が厚生労働大臣の定める基準によって測定された最低生活費に満たないときに、その不足分について、保護を受けることとなります。

保護が必要な状態になった理由は、限定されていません。

なお、保護費の支給、その前提となる収入の認定、最低生活費の計算等は、世帯単位で行われます。

 

<保護の申請>

実際に生活保護を受けようとする場合には、保護の申請が必要となりますので、まずは最寄りの福祉事務所に相談します。

福祉事務所は、市・区部では市・区が、郡部では都道府県が設置しています。郡部では、町村役場を経由して申請を行うこともできます。

 

<保護の要否の決定>

福祉事務所での相談を経て保護の申請をすると、保護が必要かどうかの判定のため、福祉事務所による資産調査や検診命令などが行われます。

その結果、保護が必要であると認められれば、福祉事務所長によって保護開始の決定がなされます。

なお、保護の要否の決定は、申請のあった日から原則として14日以内、遅くとも30日以内に行われます。

 

<受給者の義務>

生活保護を受給すると、生計状況を福祉事務所長に報告する義務などが生じ、福祉事務所長の指導や指示に従わなかったときは、保護が停止されたり、廃止されたりすることがあります。

また、資力がありながら生活保護を受給していた場合には、保護費の全部または一部を返還させられることがあります。

 

2019.02.23.解決社労士

<支援措置と条件>

雇用されていた人が退職などで離職した場合、雇用保険に加入していて一定の条件を満たせば、就職活動期間中に基本手当(昔の失業手当)を受けることができます。

しかし、雇用保険に加入していなかった場合、受給の条件を満たさない場合、雇用保険の受給が終わっても就職先が決まらない場合などでも、就職活動期間中の生活費を支援する制度があります。

具体的には、次のような支援措置がありますが、これらはすべて就労の意思・能力がある人が対象で、ハローワーク(公共職業安定所)に求職登録を行うことが必要となります。

 

<職業訓練受講給付金>

雇用保険を受給できない人に対し、ハローワークが無料の職業訓練を支援指示し、積極的に就職支援をする制度です。

このうち、一定の条件を満たす人には、職業訓練を受講している間、「職業訓練受講手当(月額10万円)」と「通所手当(通所経路に応じた所定の金額)」の2つの手当が職業訓練受講給付金として支給されます。

ただし、月ごとに支給申請を行って、支給要件を満たす必要があります。

また、この給付金に加えて、希望により「求職者支援資金融資」(労働金庫の融資制度)を利用することができます。

貸付の上限額は、同居または生計を一にする別居の配偶者等がいる人は月10万円、それ以外の人は月5万円です。融資に当たっては、労働金庫の審査があります。

 

<住居確保給付金>

住居を失っている人、またはその恐れのある人は、一定の条件を満たせば、原則3か月間、賃貸住宅の家賃のための「住居確保給付金」の支給を受けることができます。

一定の条件を満たすことにより、最長9か月までの延長が可能です。

 

<総合支援資金の貸付>

失業等により日常生活全般に困難を抱えている人は、一定の条件を満たせば、生活福祉資金貸付制度の「総合支援資金」として、生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費の貸付を受けることができます。

 

<臨時特例つなぎ資金の貸付>

住居の無い人が、離職者を支援するための公的な給付・貸付制度を申請していて、その給付・貸付までの生活に困窮している場合に、一定の条件を満たせば、「臨時特例つなぎ資金貸付」として、上限10万円の貸付を受けることができます。

 

2019.02.22.解決社労士

<受給期間>

雇用保険の基本手当(昔の失業手当)を受けられる期間は、原則として退職などで離職した日の翌日から1年間です。

これを「受給期間」といいます。

基本手当は、受給期間中の失業している日について、所定給付日数を限度として支給されます。

例えば、雇用保険に入っていた勤続年数が、1年以上10年未満の自己都合退職者の所定給付日数は90日です。

原則として、1年間の受給期間中に90日分の基本手当が支給されることとなります。

このため、退職した後、ハローワークでの手続きが遅れた場合、所定給付日数分の基本手当がもらえなくなることがあります。

 

<期間の延長>

受給期間は、原則として1年間なのですが、出産や親族の介護、病気などにより退職し、すぐに転職できない状況で1年経った場合に、全く受給できないというのでは不合理です。

このため、本人の病気やケガ、妊娠、出産・育児、親族等の看護・介護等のために退職後引き続き30日以上職業に就くことができない状態の場合には、受給期間の満了日を最大3年間延長することができます。

 

<延長の方法>

延長の手続は、ハローワーク(公共職業安定所)で行います。

引き続き30日以上継続して職業に就くことができなくなった日の翌日以降、なるべく早く手続きをします。

遅れた場合でも、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請は可能です。しかし、申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性があります。

手続きは「受給期間延長申請書」に「離職票」または「受給資格者証」を添付して、ハローワーク(公共職業安定所)に提出します。

ハローワークに行けない場合には、郵送や社会保険労務士に代行させて申請することもできます。

 

<定年退職者の特例>

60歳以上の定年等による退職者については、離職日の翌日から2か月以内に就職を希望しない期間(1年が限度)を申し出ることにより、その期間分が受給期間の1年に加算され、受給期間が延長されます。

この手続きは「受給期間延長申請書」と「離職票」を、ハローワークに提出することによって行います。

 

2019.02.21.解決社労士

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<主体的な取り組み>

法改正によって義務付けられ、追われるように働き方改革に取り組むというのでは、主体性に欠けます。

これでは、長期的に見て会社の利益や生産性を向上させる働き方改革が思うように進みません。

働き方改革には、法令に規定されていなくても、企業の個性に応じて取り組めることが数多くあります。

ここでは、「偏りの解消」がキーワードとなる取り組みについて、いくつかご紹介させていただきます。

 

<年次有給休暇取得率の偏り解消>

年次有給休暇の取得率については、同じ部署の社員間でもバラツキがあるものです。

特に取得率の低い社員に着目して、本人や周囲の人から聞き取りを行い、原因を明らかにして偏りを解消しましょう。

本人の信念によるものであれば、頭を切り替えてもらいます。

周囲から仕事を押し付けられているのなら、役割分担を見直します。

効率の悪いやり方で業務をこなしている部分があれば、その業務が得意な社員の指導によって自己流を解消してもらいます。

これは、残業が特定の社員に偏っている場合にも当てはまります。

 

<評価基準の偏り解消>

賞与や昇給の査定では、会社に対する貢献度が高い、技能が優れているなどの理由で、高く評価される社員と、そうではないために低く評価される社員がいます。

そして評価の低い社員は、今後の昇給や昇進を期待できなくなり、意欲的に働けなくなることがあります。このような社員が多ければ、会社全体の生産性も低下してしまいます。

標準考課以下の社員の比率が高いのであれば、すぐにでも評価基準の見直しが必要です。

また、市場動向や取引環境、消費者のニーズなどは、絶えず変化していますから、評価基準も3年に1回は見直しが必要なはずです。

見直しの際には、社員からの聞き取り調査を行ってはいかがでしょうか。

「あなたは、会社にどこを評価して欲しいですか」という質問をぶつけます。

この投げかけだけでも、社員の意識が変わってくることでしょう。

また、人事考課基準で評価されない項目で会社に貢献し、能力を発揮した社員については、表彰制度の活用をお勧めします。表彰の対象者だけでなく、他の社員のモチベーションが上がるように運用するのがポイントです。

 

<経験や知識の偏り解消>

「この仕事は○○さんじゃないとできない」と言われることがあります。

「この仕事」のボリュームが大きくなれば、「○○さん」は長時間労働に陥ります。また、突発的に「この仕事」が発生すれば、「○○さん」は年次有給休暇の取得を取り消す場合もあるでしょう。

たしかに、芸術家が作品を制作する場合には、個性が求められます。

しかし、会社の中で個性が要求される仕事は、それほど多くはありません。

ですから経験や知識を共有し、業務を標準化・平準化することによって、「○○さん」の他に「この仕事」をこなせる社員を増やせば良いのです。

資格が無いとできない仕事もあります。この場合にも、多くの社員に資格を取得させる施策を行えば対応できます。

頼りになる「○○さん」も、永久に会社にいるわけではありません。いなくなる時のことを考えて早めに手を打ちましょう。

 

<働き方改革で得られる利益の偏り解消>

働き方改革は、長期的には会社に利益をもたらします。

しかし、たとえば残業時間を削減して残業代が減れば、会社の利益が増えて、社員の収入が減るといった事態も想定されます。

これでは、社員が働き方改革を推進する気にはなれません。

残業代が減って、売上が減らないのであれば、生産性が向上したわけですから、社員に「業務効率化手当」を支給するなどして、利益の偏りを解消する必要があります。

全社員一律ではなく、残業時間の削減が著しかった部署には、より多額の手当を支給してはいかがでしょうか。

 

2019.02.20.解決社労士

<医療ビッグデータ>

新薬や最先端医療など研究開発のために「医療ビッグデータ」が注目されています。

医療情報については、画像や数値など検査結果の活用が十分に進んでいない現状があります。

また医療情報は、医療機関ごとに保管されているだけで、医療情報を統一的に活用する仕組みがありませんでした。

こうした現状を打開すべく、「次世代医療基盤法」が2018年(平成30年)5月に施行されました。

 

私たちが病気やケガなどで医療機関を受診したとき、診療の流れの中で、患者一人ひとりについて、診察・検査・治療などの幅広い医療情報が記録されます。

日本全国の医療機関全体では、膨大な量の医療情報が蓄積されていることになります。

こうした情報を統合し、集約したものが「医療ビッグデータ」です。

 

IT技術が進化し、ビッグデータの解析性能が向上したことを背景に、新しい治療法や新薬の開発など医療分野の様々な研究開発に医療ビッグデータを活用し、医療の向上に役立てようとする取組が世界的に進められています。

 

日本では、患者の医療情報について、画像や数値など検査結果などの利活用が十分に進んでいません。また、受診した医療機関や加入している健康保険組合ごとに分散して保有されており、それらを集約した医療ビッグデータとして利活用する仕組みがありませんでした。

 

<次世代医療基盤法>

医療ビッグデータの土台となる患者一人ひとりの医療情報を、個々の医療機関から集め、医療分野の研究開発のために活用できるようにすることを目的として、次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)が平成29(2017)年5月12日に公布され、翌年5月11日に施行されました。

 

この法律では、「認定事業者」が、医療機関から患者の医療情報を収集します。

「認定事業者」とは、国が認定する信頼できる事業者です。

医療分野の研究開発や情報セキュリティ、医療情報の匿名加工などに精通しています。

 

「認定事業者」は、複数の施設から医療情報を収集し、暗号化して保管します。

そして、医療分野の研究開発の要望に応じて、必要な情報のみを研究機関や企業などに提供します。

患者の氏名や住所など特定の個人を識別することができる情報は提供されません。

 

このように私たち一人ひとりの情報が収集され活用されることで、効果のより高い治療法が分かったり、新薬がつくられたり、病気の早期発見や治療をサポートする機器が開発されたりするなど様々な成果につながり、私たちが将来より良い医療を受けられるようになることが期待されています

 

<医療ビッグデータの活用>

医療ビッグデータの活用は、私たちが将来受ける医療の向上につながると期待されています。例えば、次のような医療が実現できるようになると期待されています。

(1)患者一人ひとりに最適な医療を提供することが可能に

(2)異なる診療科の情報を統合することで治療成績の向上が可能に

(3)最先端の画像分析により病気の早期診断・早期治療を支援することが可能に

(4)医薬品などの安全対策の向上が可能に

 

<個人の医療情報の提供>

認定事業者に対する医療情報の提供に協力できる医療機関では、患者が情報提供を望まない場合を除き、診察・検査・治療などの医療情報は認定事業者に提供されます。

病院やクリニックなどの医療機関では、患者が最初に受診した時に、医師や看護師などから医療情報の提供について書面による通知が行われます。

患者が16歳未満の場合や本人が判断できない状態の場合は、本人に加えて、保護者等にも通知が行われます。

この通知を受けていない人の医療情報は提供されません。

 

医療情報の提供を望まない場合は、いつでも提供の停止を求めることができます。

医療機関から認定事業者に情報が提供されるのは、書面による通知が行われてから必要な期間が経過した後です。

情報が認定事業者に提供された後でも、患者は、情報の削除を求めることができます。

 

2019.02.19.解決社労士

<正社員への転換>

短時間・有期雇用労働者として働き始めると、なかなか正社員にはなれないという実態があり、正社員として働くことを希望していても、そのチャンスに恵まれず、やむを得ず短時間・有期雇用労働者として働いている人もいます。

このような状況は、労働者個人の働く意欲の維持、キャリア形成の観点からも問題ですし、会社にとっても社会にとっても損失となっていると考えられます。

しかし、短時間・有期雇用労働者の正社員への転換について、具体的にどうすべきなのかは、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、正社員への転換について確認したいと思います。

 

<事業主の義務>

この法律の第13条は、正社員(通常の労働者)への転換を推進する措置を事業主に義務付けています。

これは、同じ職場で正社員に転換することを前提としていて、子会社など別の職場に移るとともに正社員に転換するようなケースを想定していません。〔法第3条第1項〕

ただし、短時間・有期雇用労働者の正社員としてのキャリア形成を支援する等の観点から、他の職場で正社員への転換を推進する措置を併せて実施することは望ましいとされています。

また、例えば、短時間労働者から有期雇用フルタイム労働者への転換制度を設け、さらに有期雇用労働者には正社員への転換制度が設けられているような、複数の措置の組み合わせにより正社員への転換の道が確保されている場合も本条の義務の履行と考えられます。

さらに、勤務地、職務内容、勤務時間などが限定され、ライフスタイル等に応じた働き方が可能な「多様な正社員」への転換を推進するのも、本条の義務の履行と考えられます。

 

<具体的な措置>

具体的には次のような措置を講ずることが求められています。

 

【求められる措置】

イ 正社員の募集を行う場合に、業務の内容、賃金、労働時間その他の事項を、採用を予定している職場の短時間・有期雇用労働者に周知すること。

ロ 正社員の配置を新たに行う場合に、その職場の短時間・有期雇用労働者にも、その配置の希望を申し出る機会を与えること。

ハ 正社員への転換のための試験制度を設けること。

ニ この他、正社員として必要な能力を取得するための教育訓練を受ける機会を確保するための必要な援助を行う等、通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。

 

イは、正社員を募集しようとするときに、企業外からの募集と併せて、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても募集情報を周知することにより、正社員への応募の機会を付与するものです。もちろん、最終的に採用するかどうかは、公正な採用選考である限り事業主の判断に委ねられます。

また、他の企業で実績を有する者等をヘッドハンティングする場合など、個人的資質に着目して特定の個人を正社員として採用するような場合には、この措置の対象外となります。

ロは、企業外に正社員の募集を出す前に、企業内の短時間・有期雇用労働者に配置の希望を申し出る機会を与えるものです。つまり、優先的な応募機会の付与をいいます。「社内公募」制度のようなものも、これに該当します。もちろん、優先的な採用まで義務付けるものではありません。

ハは、短時間・有期雇用労働者を対象として、正社員への転換のための試験制度を事業所内に設けるものです。一定以上の勤続年数や、その職務に必要な特定の資格の保有を条件とすることも可能です。しかし、対象者がほとんど存在しないような厳しい条件を設定するのは、ハの措置を取ったとはいえません。

ニの「必要な援助」としては、自ら教育訓練プログラムを提供することのほか、他で提供される教育訓練プログラムの費用の経済的な援助や、参加するための時間的な配慮を行うことなどが考えられます。

 

<義務の履行にはならない措置>

この法律で事業主に義務付けられている措置は、制度として行われるものであることが求められています。

従って、次のような措置では義務の履行にはなりません。

 

【不適切な措置】

・合理的な理由なく、事業主の恣意により正社員の募集情報を周知するときとしないときがあるような場合。

・転換制度を規程にするなど客観的な制度とはせずに、事業主の気に入った人物を正社員に転換するような場合。

 

なお、長期間にわたって正社員に転換された実績がない場合には、転換を推進するための措置を講じたとはいえない可能性があり、周知のみで応募はしにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないかを検証しなければなりません。

 

2019.02.18.解決社労士

<失業の認定の意味>

失業の認定は、基本手当(昔の失業手当)などの受給資格者に働く意思と能力があって、しかも職業に就くことができないことの認定です。

ですから、受給資格者が自ら所定の失業の認定日に公共職業安定所に行くことになります。これが原則です。

しかし、次のようなやむを得ない理由により、公共職業安定所に行くことができないときは、特別な扱いを受けることができます。

つまり、証明書を提出することによって、所定の認定日に公共職業安定所に行かなくてもやむを得ない理由がやんだ後に行けば、失業の認定を受けることができることになっています。

嘘の理由で手続きすることはできませんし、証明書を提出できないときも手続きはできません。

また、やむを得ない理由があらかじめ分かっている場合は、事前に申し出るのが原則となっています。

 

<病気やケガで行けない期間が継続して15日未満の場合>

病気やケガが良くなって、公共職業安定所に行けるようになった最初の失業の認定日に、医師などの証明書と受給資格者証を提出します。

この手続きによって、病気やケガで公共職業安定所に行けなかった認定日の認定対象期間も含めて、失業の認定を受けることができます。

 

<病気やケガで行けない期間が継続して15日以上の場合>

雇用保険の基本手当に代えて同額の傷病手当が支給されます。

このとき、傷病手当の支給日数は、基本手当の所定給付日数からすでに支給された基本手当の日数を差し引いた残りの日数となります。

また、傷病手当を受けられる人が同じ原因で、(1)健康保険の傷病手当金、(2)労災保険の休業補償給付(業務災害)、(3)労災保険の休業給付(通勤災害)を受けられるときには、傷病手当は支給されません。

 

<採用面接や採用試験で行けなかった場合>

公共職業安定所の紹介に応じて、求人企業と面接したり、採用試験を受けたりするために行けなかったときに限ります。

求人企業と面接した後の最初の認定日に公共職業安定所に行き、求人企業の面接証明書と受給資格者証を提出することによって、失業の認定を受けることができます。

求人企業の行う採用試験を受けた場合にも、これと同様の取扱いにより失業の認定を受けることができます。

 

<職業訓練で行けなかった場合>

公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受講するために、公共職業安定所に行けなかったときに限ります。

所定の失業の認定日に、代理人(通常は公共職業訓練施設等の職員)から(1)公共職業訓練等を行う施設の長の公共職業訓練等受講証明書、(2)受給資格者証、(3)失業認定申告書、(4)委任状が提出されることにより失業の認定を受けることができます。

 

<天災などで行けなかった場合>

天災その他避けることができない事故(水害、火災、地震、暴風雨雪、暴動、交通事故など)のため公共職業安定所に行けなかった場合には、事故がやんだ後の最初の失業の認定日に公共職業安定所に行き、受給資格者証と市町村長や駅長等の証明書などを提出すれば、証明書に記載された期間内の認定日の認定対象期間も含めて、失業の認定を受けることができます。

 

2019.02.17.解決社労士

<やっぱり欲しい場合>

「離職票」は、雇用保険に入っていた人が離職した際に、事業主から提出される離職証明書に基づいて、ハローワーク(公共職業安定所)から交付されるものです。

離職した人が、転職先が決まっている、結婚して仕事をするつもりがない等の理由によって、離職票の交付を希望しない場合は、離職票は交付されません。

しかし、その後事情が変わるなどして、後日離職票が必要となり、交付を希望する場合は、離職票の交付を受けることは可能です。

離職票の交付を受けようとする場合には、前に勤めていた会社に対して「離職証明書」の交付を請求し、その離職証明書を公共職業安定所に提出することによって、離職票の交付を受けることができます。

たとえ、基本手当(昔の失業手当)などを受給できる期間を過ぎていても、本人が希望すれば、前の会社は手続きに応じなければなりません。

それでも、前の会社から離職証明書の交付を受けることができない場合は、自宅近くのハローワーク(公共職業安定所)に相談することになります。

 

<なくした場合、捨てた場合>

交付された離職票をなくした場合や、要らないと思って捨てた場合でも、ハローワーク(公共職業安定所)で再交付を受けることができます。

前の会社を経由して再発行を受けることもできますが、ちょっとカッコ悪いですね。

自分でハローワークに行って手続きした方が、再発行まで速やかに対応してもらえます。

ただこの場合、手続きを行うハローワークは前の会社を管轄するハローワークになります。

手続きには、「離職票再交付申請書(雇用保険被保険者離職票再交付申請書)」が必要です。

これは、ハローワークでもらうことも、ハローワークのサイトからダウンロードすることもできます。

また、手続きの際には、運転免許証やパスポートなど写真付きの本人確認書類が必要になります。

 

2019.02.16.解決社労士

<今年のGWは10連休>

皇太子さまが即位される2019年5月1日と、即位を公に宣言する「即位礼正殿の儀」が行われる2019年10月22日を、今年に限って「国民の祝日扱い」とする法律(天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律)が成立しました。

これによって、2019年のゴールデンウィークは4月27日から5月6日までの10連休となります。

祝日法(国民の祝日に関する法律)には、祝日に挟まれた平日は休日となるという規定があり、5月1日が祝日になったことで、4月30日と5月2日が「国民の休日」となります。

 

<銀行の対応>

みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行は、「連休中は支店窓口を休業、ATMとネットバンクは稼働」という方針を示しています。

連休直前の4月26日と連休明けの5月7日は、店頭の大混雑が予想されますので、経理部門は前倒しで必要な手続きを済ませておくことをお勧めします。

 

<休日が多すぎる?>

会社の休日について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【休日】

第20条  休日は、次のとおりとする。

① 土曜日及び日曜日

② 国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)

③ 年末年始(12月  日~1月  日)

④ 夏季休日(  月  日~  月  日)

⑤ その他会社が指定する日

2 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

この規定によれば、4月30日と5月2日は「国民の休日」であって、「国民の祝日」ではありませんから、会社の休日にはなりません。

しかし、会社の就業規則の規定が「祝日法に定める休日」となっていれば、10連休となります。

これだけ休日が多いことで、業務が停滞する恐れがある場合に、上に示したモデル就業規則第20条第2項のような規定があれば、「休日を他の日と振り替えること」もできます。ただし、休日の総日数は変わりません。

休日の振替に関する規定があっても無くても、業務をこなすのに必要な勤務日数が不足するのであれば、計画的に休日出勤を命じておくことも考えなければなりません。

いずれにせよ、業務の進行具合や計画と会社の就業規則を再確認し、各従業員のゴールデンウィークの勤務予定を確定しておくことをお勧めします。

 

2019.02.15.解決社労士

<雇用保険の基本手当>

会社などで雇用されていた人が離職した場合、失業中の生活を心配しないで再就職活動ができるよう、一定の条件を満たせば、雇用保険の「基本手当」を受けることができます。

「基本手当」は、昔「失業手当」「失業給付」と呼ばれていたものです。

 

<基本手当をもらう原則の条件>

「基本手当」は、雇用保険の加入者(被保険者)が離職して、次の2つの条件を両方とも満たす場合に支給されます。

 

【基本手当の受給条件】

・ハローワークで求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること

・離職の日以前2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上あること

 

<基本手当をもらう例外の条件>

ただし、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でももらえます。

ここで、「特定受給資格者」というのは、解雇・倒産等により離職した人をいいます。

また、「特定理由離職者」というのは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した方等をいいます。

 

<離職の意味>

退職が「離職」に含まれるのは当然ですが、週所定労働時間が20時間未満になった場合も「離職」に含まれます。

勤務時間が少ないと、安定した雇用ではなく、転職先を考えながらの勤務が想定されるからです。

 

<基本手当の受給日数>

基本手当の支給を受けることができる日数(基本手当の所定給付日数)は、年齢、雇用保険の加入者(被保険者)であった期間や離職理由などによって、90日~360日の間で決定されます。

基本手当の1日当たりの額(基本手当日額)は、離職日の直前の6か月の賃金日額(賞与等は含みません)の50%~80%(60~64歳については45~80%)です(上限額あり)。

 

<受給のための手続き>

雇用保険の「基本手当」を受けるためには、ハローワークで所定の手続きをする必要があります。

特に、退職ではなく勤務時間の減少によって「離職」した人は、手続きを忘れていることがありますので注意しましょう。

 

2019.02.14.解決社労士

<労務不能が条件となる保険給付>

健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業(補償)給付は、ケガや病気で労務不能であることが受給の条件となります。

 

<傷病手当金の受給条件>

以下の条件をすべて満たすときは、「傷病手当金」を受けることができます。

保険加入者(被保険者)のみが対象ですから、扶養家族は対象外です。

 

・業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること。

健康保険の制度ですから、美容整形手術など健康保険の給付対象とならない治療のための療養は含まれません。

・療養のための労務不能であること。

・4日以上仕事を休んでいること。

療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給対象です。

・給与の支払いがないこと。

ただし、給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。

 

<休業(補償)給付の受給条件>

上記の傷病手当金の受給条件のうち、最初の「業務外かつ通勤途上外の病気やケガで療養中であること」を、「業務中または通勤途上の病気やケガで療養中であること」に置き換えると、休業(補償)給付の受給条件になります。

業務による病気やケガで療養する場合には「休業補償給付」、通勤による病気やケガで療養する場合には「休業給付」が支給されます。

休業の初日から3日目までは労災保険からは支給されません。この間は業務災害の場合、事業主が休業補償(1日につき平均賃金の60%以上)を行うことになっています。

 

<労務不能の意味>

労務不能とは、保険加入者(被保険者)が今まで従事していた業務ができない状態のことで、労務不能であるか否かは、医師の意見、被保険者の業務内容、その他の諸条件を考慮して判断します。

「医師の意見」というのは、主に療養担当者つまり治療を担当する医師の意見です。対象者の仕事内容から考えて、病気やケガの程度や回復具合から、今まで従事していた業務ができるかどうかを判断するのです。

たとえば、外回り営業に従事していた人が脚にケガを負って、まだ回復が不十分であっても、経理の仕事ならできるということがあります。それでも、今まで従事していた業務ができるわけではありませんから、やはり労務不能と判断されるのが一般です。

 

<仕事内容がポイント>

労務不能の判断は、対象者の仕事内容と病気やケガの具合を比較して行われます。

治療を担当する医師は、病気やケガの具合を判断することは得意なのですが、対象者の仕事内容を具体的に知っているわけではありません。

ですから、対象者本人か会社の担当者が、医師に対象者の仕事内容をわかりやすく説明する必要があります。特に病気やケガとの関係で、仕事上の困難な部分をよく説明しておく必要があります。

また、傷病手当金の支給申請書や休業(補償)給付の支給請求書には、仕事内容を記入する欄があります。ここには「事務員」といった抽象的な表現ではなく、「経理担当事務」「自動車組立」「プログラマー」などある程度具体的に記入することが求められています。

 

2019.02.13.解決社労士

<通達の改正>

平成31(2019)年2月1日、厚生労働省年金局事業管理課長から「20 歳前障害基礎年金が遡及して請求された場合の所得証明書の取扱いについて」の通達を一部改正する通達が出されました。

 

<改正の目的>

20歳前に初診日がある障害基礎年金について、所得証明書の添付は、原則として遡及する期間の当初まで遡って請求者に求められますが、時効により権利が消滅している期間についてまで求めるのは不合理なので、これを是正するのが目的です。

 

<具体的な内容>

20歳前障害基礎年金の請求に当たっては、国民年金法施行規則により所得証明書(所得状況届及び所得の状況に関する所定の書類)を請求書に添えることとされています。

この所得証明書の添付は、原則として遡及する期間の当初まで遡って請求者に求められます。

しかし、市区町村で所得証明書が発行できる期間に限度があるため、発行できない期間の所得証明書については、国民年金法施行規則により「特別な事情がある場合において、特に必要があると認めるとき」に該当するものとして、所得証明書に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を添付することになっています。

この一方で、2か月に1回の年金支給額のそれぞれが時効消滅する期間については、所得が基準額を超えていた場合は所得制限により支給停止となり、所得が基準額以下であった場合は権利が時効消滅するため、いずれにしても年金は支給されません。

ですから、時効にかかってしまった期間についても、必ず所得証明書を添付しなければならないというのは不合理なわけです。

これを是正するため、権利が時効消滅する期間については、所得証明書の添付に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を20歳前障害基礎年金の請求書に添付することが認められるようになりました。

 

年金の受給権が時効消滅している期間については、市区町村で所得証明書が発行できるかできないかに関係なく、所得証明書の添付に代えて「所得状況に関する本人の申立書」を添付すれば良いことになったわけです。

 

2019.02.12.解決社労士

<通達の改正>

平成31(2019)年2月1日、厚生労働省年金局事業管理課長から「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」の通達を一部改正する通達が出されました。

 

<改正の目的>

20 歳前に初診日がある障害基礎年金について、裁定に必要な要件を確認しつつ、請求者の負担軽減を図るのが目的です。

 

<具体的な内容>

20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求で、障害認定日が20歳以前であることが確認できた場合の取扱いについて、次の内容が加わりました。

 

20歳前に初診日がある障害基礎年金については、障害認定日が20歳に達した日以前である場合は、障害の程度を認定する時期は一律に20歳となる。このため、2番目以降に受診した医療機関の受診した事実を証明する資料に記載された当該医療機関の受診日から、障害認定日が20歳以前であることを確認でき、かつ、その受診日前に厚生年金等の加入期間がない場合には、初診日の医証を追加で請求者に求めずとも、20歳前の期間で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。

 

20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求では、証明資料の範囲が拡張されます。

 

旧通達 = 初診日を明らかにする書類から障害認定日(20歳以前)が認定できなければならない。

 

新通達 = 初診日以外の受診を明らかにする書類から、障害認定日が20歳以前であることを確認できれば良い。

 

2019.02.11.解決社労士

<法改正による対象者の拡張>

「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」には次の規定があります。

 

【通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止】

第九条 事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

 

この法律は改正され、名称が「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」となって、2020年4月1日に施行されます。

対象者が短時間労働者だけでなく、有期雇用労働者に拡張されます。

その施行に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

 

<差別的取扱いの禁止>

短時間・有期雇用労働者の職務の内容や「職務の内容及び配置」の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)といった就業の実態が、正社員など通常の労働者と同様であるにもかかわらず賃金などの取扱いが異なるなど、短時間・有期雇用労働者の待遇は就業の実態に見合った公正なものとなっていない場合があります。

しかし、就業の実態が通常の労働者と同じ短時間・有期雇用労働者については、全ての待遇について通常の労働者と同じ取扱いがなされるべきだとされます。

つまり、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないということです。

 

ただし、「職務の内容及び配置」の変更の範囲が、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、正社員など通常の労働者と同一であることが条件となっています。

これは、その事業所の慣行その他の事情からみて、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容・配置が、正社員など通常の労働者の職務の内容・配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるということです。

なぜなら、我が国における雇用管理が長期的な人材育成を前提になされていることが多いため、差別的取扱いの禁止の規定の適用に当たっては、ある一時点において短時間・有期雇用労働者と通常の労働者が従事する職務が同じかどうかだけでなく、長期的な人材活用の仕組み、運用等についてもその同一性を判断する必要があるからです。

 

<具体的な対応としては>

「正社員」「パート社員」「契約社員」などの用語は、法律用語ではありません。ですから、こうした言葉の意味内容は、それぞれの会社が自由に決めています。

実際のところ、「正社員」の求人広告に応募して採用されると正社員として扱われ、「契約社員」の求人広告に応募して採用されると契約社員として扱われています。

そして、勤務時間の違いこそあれ、仕事の中身が全く同じになってしまっていることは少なくありません。

仕事内容が同じなら、待遇も同じであるのが正常なのですが、本人が納得?しているだろうということで、待遇の差が退職まで残っているという不合理が見られます。

正社員などフルタイムの労働者よりも、勤務時間が短かったり、勤務日数が少なかったりする「短時間労働者」については、現在でも差別的取扱いが禁止されています。

これが、2020年4月1日になると、フルタイムの労働者ではあるものの、契約期間に区切りのある有期雇用労働者に対しても、この法律が適用されるようになるということです。

従業員の待遇を決定するに当たっては、職務の内容や「職務の内容及び配置」の変更の範囲を基準としなければならなくなったわけです。

 

2019.02.10.解決社労士

<待遇の相違の合理性>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が法定されています。

しかし、具体的なケースについて、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性をどのように判断すべきか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に「職務の内容及び配置の変更の範囲」が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」を考慮する理由>

現在の我が国の雇用システムでは、長期的な人材育成を前提として人事制度が構築されていることが多いといえます。

このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられます。

法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素または適用要件の一つとして位置付けています。

 

<「職務の内容及び配置の変更」の意味>

「職務の内容の変更」には、「配置の変更」によるものと、上司等からの業務命令によるものがあります。

また、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。

こうして、「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、重複して生じることがあります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の意味>

これらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容や配置の広がりを指すものです。

そして、「範囲」の同一性を判断するにあたっては、一つ一つの職務の内容や配置の変更の態様が同様であることまでは求めません。

例えば、一部の部門に限って人事異動の可能性がある人と、全部門にわたって人事異動の可能性がある人とでは、「配置の変更の範囲」が異なることになるので、「職務の内容及び配置の変更の範囲」(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとはいえません。

ただし、これまで転勤等がなかったという人でも、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して判断することになります。

 

<「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性判断の手順>

「職務の内容」が同一であると判断された、正社員など通常の労働者と、短時間・有期雇用労働者を対象として行うことになります。

まず、①短時間・有期雇用労働者について、「配置の変更」に関して、正社員など通常の労働者と転勤の有無が同じかどうかを比較します。

次に、②転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。

さらに、③転勤が双方とも無い場合、または双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。

最後に、④ここまで同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、その異同を判断します。

上記①から④までのどの時点で異なっていても、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、人事異動の見込みが同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、「職務の内容及び配置の変更の範囲」の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.09.解決社労士

<均等待遇と均衡待遇>

均等待遇は、職務内容等が同じなので同じ待遇にするという意味で、平等の理念に基づきます。

平等の理念は、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

また均衡待遇は、職務内容等の違いに応じて異なる待遇にするという意味で、公平の理念に基づきます。

公平の理念は、人々の異なった属性に着目して違った扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

待遇の違いの大きさが、職務内容等の違いの大きさに比例して合理的に決定されること、つまりバランスが取れていることから、「均衡」待遇と呼ばれます。

働き方改革で、「同一労働同一賃金」が言われていますが、ガイドラインや指針などから明らかなように、均等待遇だけでなく均衡待遇もその内容に含まれています。

 

<均衡待遇の前提>

均衡待遇は、職務内容等が異なっていることを前提としています。

しかし、具体的に何がどう違っていれば、「職務内容等が異なる」と判断して良いか、必ずしも明確ではありませんでした。

これを明確にするため、2020年4月1日に施行される改正「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に先立ち、2019年1月30日に詳細な通達が出されています。

ここでは、この通達に沿って、どのような場合に職務内容等が違うといえるのか、その判断基準について確認したいと思います。

 

<基本的な考え方>

短時間・有期雇用労働者について、正社員など通常の労働者と全く同じ、または一部同じであっても、所定労働時間が短いから、あるいは期間の定めがある労働契約を締結しているからというだけで、待遇が低く抑えられているのは不合理です。

そして、待遇の相違の合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、「その他の事情」が、法第8条に規定されています。

 

<職務の内容の同一性を判断する手順>

法に示された「職務の内容」とは、「業務の内容とその業務に伴う責任の程度」をいいます。

これは、労働者の就業の実態を表す要素の中で最も重要なものです。

そして「業務」とは、職業上継続して行う仕事であり、「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいいます。

 

「職務の内容」が同一といえるためには、まず業務の種類が同一でなければなりません。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」ということになります。

 

次に、比較対象となる通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務を、業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」をそれぞれ抽出します。「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核的なものを指します。

これは以下の基準に従って、総合的に判断されます。

 

【中核的業務】

① 与えられた職務に本質的または不可欠な要素である業務

② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務

③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務

 

こうして抽出された「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断され、明らかに異なっていれば「異なる」と判断されます。

 

最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかをチェックすることになります。

このチェックにあたっては、以下のような事項について比較します。

 

【責任の程度】

① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)

② 業務の成果について求められる役割

③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度

④ ノルマ等の成果への期待の程度

⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度

 

例えば管理する部下の数が一人でも違えば「責任の程度が異なる」と判断するのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見なければなりません。

なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要です。

 

以上の判断手順を経て、「業務の内容」と「責任の程度」の両方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」ということになります。

 

<説明資料として>

短時間・有期雇用労働者から「同一労働同一賃金に反するのではないか」という疑問を提示された場合には、職務の内容が同一ではないことなどを会社が説明しなければなりません。

上記の判断手順に従って、職務の内容の同一性を確認しておくことは、こうした場合の説明資料を準備しておくことにもなります。

 

2019.02.08.解決社労士

<半年で3人自殺の報道>(TBSニュース)

福岡県大牟田市の不動産会社に勤めていた男性社員3人が、半年ほどの間に相次いで自殺していたことが分かり、警察が背景を調べているそうです。

インターネットの掲示板には、「自殺した3人を含む複数の社員が経営者から日常的にパワハラを受けていた」と匿名の書き込みがあるということです。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など
・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、立場上必要な注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】


・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償を請求される対象ともなります。〔民法709条〕

これは、経営者でも一般の従業員でも同じです。

 

<会社の民事責任>

さらに、会社も不法行為責任を負います。〔民法44条1項〕

まともに働ける環境を提供していないといえる場合なら、債務不履行責任も負います。〔民法415条〕

「経営者=会社」ではありませんから、経営者がパワハラを行った場合には、会社も経営者も責任を負います。

 

<被害者が取るべき行動>

・パワハラ行為の記録や証拠を残す。

・同じ行為者からのパワハラ被害者がいれば協力する。

・労働相談情報センターなどに相談する。

社長がパワハラを行う人物である場合、その権限の強さから、被害者が複数である可能性は高いでしょう。一人では心細いですが、被害者が協力し合うことによって、解決しやすくなります。

また、パワハラの問題は、第一に社内で解決するのが原則です。しかし、パワハラの相談窓口や担当者は、被害者の味方に付いてくれないかもしれません。早めに社外の相談窓口に相談することをお勧めします。

 

<経営者がパワハラの防止を考えるなら>

本気でセクハラ、パワハラ、マタハラなどを防止したい会社なら、相談窓口は社外の専門家に委託して、社内でもみ消されないようにするのではないでしょうか。

ハラスメントに限らず、働いている人たちの相談窓口として、信頼できる社労士をご検討ください。

また、そもそもパワハラが何なのか良く分からない、萎縮して部下や後輩を指導できないのでは困るという声もあります。

こうした場合にも、社労士にセミナーの開催を委託するなど、社外の専門家を活用することを考えてはいかがでしょうか。

 

2019.02.07.解決社労士

<成年年齢の意味と変更>

民法の定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものです。

この民法が改正され、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に変わります。

18歳以上の若者が、自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備し、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義を有するとされます。

成年年齢の見直しは、明治9年の太政官布告以来、約140年ぶりです。

以下、法務省の「民法(成年年齢関係)改正 Q&A」の一部を要約してご紹介します。

 

<成年年齢引き下げの背景>

わが国では、憲法改正国民投票の投票権年齢や、公職選挙法の選挙権年齢などが18歳と定められ、国政上の重要な事項の判断に関して、18歳以上を大人として扱う政策が進められています。

世界的にも、成年年齢を18歳とするのが主流です。

成年年齢を18歳に引き下げることで、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重し、積極的な社会参加を促すことになると考えられます。

 

<成年年齢に達する日>

2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の人は、この日に成年に達することになります。

生年月日でいうと、2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの人が対象です。法律上は、誕生日の前日に歳をとるので、こうした区分になります。

2004年4月2日生まれ以降の人は、18歳の誕生日の前日に成年に達することになります。

 

<18歳でできるようになること>

親の同意を得ずに、様々な契約をすることができるようになります。

例えば、携帯電話を購入する、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するといったことができるようになります。

親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり、進学や就職などの進路決定についても、自分の意思で決めることができるようになります。

このほか、10年有効パスポートの取得や、公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと、性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても、18歳でできるようになります。

しかし、飲酒や喫煙、公営競技(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)の年齢制限は、20歳のまま維持されます。これらは、健康被害への懸念や、ギャンブル依存症対策などの観点から、従来の年齢を維持することとされています。

 

<成人式の時期>

成人式の時期や在り方に関しては、現在、法律による決まりはなく、各自治体の判断で実施されていますが、多くの自治体では、1月の成人の日前後に、20歳の人を対象に実施しています。

成年年齢の引き下げ後は、18歳の人を対象とするのか、高校3年生の1月という受験シーズンに実施するのか、2022年度は3学年分同時に実施するのかといった問題があると指摘されています。

政府としては、関係者の意見や各自治体の検討状況を取りまとめた上で情報発信し、各自治体がその実情に応じた対応をすることができるよう取り組んでいくとしています。

 

2019.02.06.解決社労士

<一斉休業の実例>

回転ずし最大手の「あきんどスシロー」は、2019年2月5日と6日の2日間、ほぼ全店に当たる約500店舗を一斉休業するそうです。

広報によると「お客さまや関係者への影響を最小限に抑えつつ、働きやすい環境づくりにつなげたいという思いで一斉休業の形をとることにした」そうです。

また、2019年の元日は、外食チェーンの他、百貨店や大手スーパーマーケットチェーンでも、一斉休業にする動きが目立ちました。

各企業とも、休業により店舗の売り上げは減少するものの、それ以上のメリットがあるといいます。

働き方改革を推進していること、従業員のためを思っていることをお客様にアピールできるというのです。

たしかに、こうした一斉休業は、お客様にも納得していただきやすいことでしょう。

 

<年次有給休暇の計画的付与制度>

年次有給休暇の付与日数のうち、5日を除いた残りの分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を設定することができます。これを年次有給休暇の計画的付与制度といいます。

この制度はもともと、企業・事業場を一斉に休みにできる、あるいは一斉に休みにした方が効率的な業態について、全従業員に対して同一の日に年次有給休暇を与えることを想定しています。

たとえば製造部門など、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場などで活用されてきました。

働き方改革の進む中で、この制度が、飲食業や小売業でも活用されるようになってきたようです。

 

<一歩進んだ特別休暇制度>

一斉休業を行うにあたって、年次有給休暇の計画的付与制度の活用を考えた場合に、入社したばかりで年次有給休暇が付与されていない従業員がいるときは、有給の特別休暇を与えるのが一般です。

一方で、すでに年次有給休暇を取得していて残日数が不足する従業員に、この特別休暇を与えるのは考えものです。ほとんど年次有給休暇を取得していない従業員は、特別休暇を与えられないわけですから、不公平が生じてしまいます。とはいえ、一斉休業の日を欠勤扱いにするわけにもいきません。

気前よく全従業員に特別休暇を与えるか、一斉休業の社内告知を1年以上前にしておくなどの対応が必要となります。

 

 

普段、年次有給休暇を取得できない従業員ほど、一斉休業は嬉しいものです。

大手企業で盛んになりつつある一斉休業ですが、中小企業で行った場合の効果はさらに大きいのではないでしょうか。

 

2019.02.05.解決社労士

<注意ポイント>

月間所定労働日数は、実際の勤務日数と比較して割増賃金や欠勤控除を行う基準となるものではありません。日数同士の比較をするのは不合理なのです。

月間所定労働日数は、残業や欠勤があった場合に、月給から時間単価を計算して、その金額を計算するために使っています。

2月はカレンダー上の日数が少ないですから、勤務日数が少なくなるのが自然です。毎年2月の給与が減ってしまうのでは、月給制にした意味がありません。

実際の勤務日数に応じて給与を計算するのであれば、日給制の労働契約にすべきです。

 

<具体例>

たとえば、月間所定労働日数が22日の場合に、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき2日分の休日出勤手当が発生したり、2日分の欠勤控除が発生したりでは、月給が毎月変動してしまいます。明らかに不合理です。

そもそも休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算します。ここに月間所定労働日数は出てきません。

月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の社員はカレンダーを見ながら会社のルールに従い出勤していれば、月給の変動は無いのが正常な姿です。

 

<一般的な所定労働日数>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数 ÷ 12 = 月間所定労働日数とするのが一般です。このとき、分かりやすくするために、1日未満の端数は切り捨てることが多いようです。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間単価を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間単価 × 1.25 などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間 ÷ 12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の時間単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、毎月同じ日数にするのが無難でしょう。

 

<所定労働日数が無いと>

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、社員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

時間単価の低い期間は仕事を先送りにして、時間単価の高い期間に残業して業務をこなせば、手取り額が増えるという現象も発生します。

また、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。ところが、週単位あるいは年単位での所定労働日数が決まっていなければ、年次有給休暇の付与日数が確定できません。

現時点で所定労働日数の決まっていない社員がいる会社では、遅くとも平成31(2019)年3月までには、社労士に相談するなどして確定しておきましょう。

 

2019.02.04.解決社労士

<届出による雇用状況の把握>

平成31(2019)年1月25日、厚生労働省が平成30(2018)年10月末現在の外国人雇用についての届出状況を取りまとめ公表しました。

外国人雇用状況の届出制度は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」に基づき、外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的とし、すべての事業主に外国人労働者の雇入れ・離職時に、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。

届出の対象は、事業主に雇用される外国人労働者(特別永住者、在留資格「外交」・「公用」の者を除く)であり、数値は平成30年10月末時点で事業主から提出のあった届出件数を集計したものです。

 

【届出状況のポイント】

○ 外国人労働者数は1,460,463人で、前年同期比181,793人、14.2%の増加(平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新)

○ 外国人労働者を雇用する事業所数は216,348か所で、前年同期比21,753か所、11.2%の増加(平成19年に届出が義務化されて以降、過去最高を更新)

○ 国籍別では、中国が最も多く389,117人(外国人労働者数全体の26.6%)。次いでベトナム316,840人(同21.7%)、フィリピン164,006人(同11.2%)の順。対前年伸び率は、ベトナム(31.9%)、インドネシア(21.7%)、ネパール(18.0%)が高い。

○ 在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」の労働者数が276,770人で、前年同期比38,358人、16.1%の増加。また、永住者や日本人の配偶者など「身分に基づく在留資格」の労働者数は495,668人で、前年同期比36,536人、8.0%の増加などとなっている。

 

<外国人労働者が増加している要因>

厚生労働省では、外国人増加の要因として次の理由を挙げています。

〇 政府が推進している高度外国人材や留学生の受入れが進んでいること

〇 雇用情勢の改善が着実に進み、「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分に基づく在留資格の人たちの就労が進んでいること

〇 技能実習制度の活用により技能実習生の受入れが進んでいること等

 

<統計の見方として>

毎月勤労統計調査のこともあり、厚生労働省の統計は信じられないという声もあります。

これはさておき、外国人雇用状況を客観的に把握しているというわけではなく、あくまで届出を集計しているに過ぎないということを認識しなければなりません。

これまで届出を怠っていた事業所が、ハローワークなどの指摘を受けて届出をするようになった場合には、実態とは関係なく外国人労働者数が増加したことになってしまいます。

かつて統計上、労災による死亡者数が減少傾向にあったとき、労働基準監督署になぜ減少したのかを問い合わせたところ、「医学の発達により被災者が死亡しにくくなった」という回答をもらって、愕然としたことがあります。

各種統計を見るときには、隠された事情の変化も読み取ることが必要です。

 

2019.02.03.解決社労士

<厚生労働省の発表>

平成31年1月24日、厚生労働省が雇用保険、労災保険等を現在受給中の人に対する再計算後の額による給付の実施について、次のように発表しました。

 

 毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことによる雇用保険、労災保険等の追加給付については、できる限り速やかに順次追加給付を開始することを予定していますが、今般、雇用保険、労災保険、船員保険等の追加給付に関し、まず、現に受給中の方については、今後新たに支給が行われる分について、3月から順次6月までに再計算した金額での支給を開始する予定といたしました。

 

<雇用保険関係>

雇用保険給付を現に受給中の人について、準備を整えた上で、3月中に、その日以後失業していた日について支給する際は、再計算した金額での支給を開始する予定としています。

労働施策総合推進法の就職促進手当を現に受給中の人について、3月中に、その日以後の支給決定については、再計算した金額での支給を開始する予定としています。

 

<労災保険関係>

労災保険の今後新たに支給が行われる分について、支給額の再計算の結果、支給額が多くなる人には、

- 労災年金については4・5月分から(6月支払)

- 休業(補償)給付については4月分の休業から

再計算した金額での支給を開始する予定としています。

労災年金について再計算した金額での支給が必要な人には、労働基準監督署に登録された連絡先に、4月に郵送で御連絡する予定です。

 

<船員保険関係>

現在職務上災害に係る障害年金や遺族年金を受給中の人について、支給額の再計算の結果、支給額が多くなる人には、支給額を改定する通知を送付した上で、4月中旬に、現在利用中の口座に追加給付を行う予定としています。

 

<事業主向け助成金>

雇用調整助成金について、現に支給期間中の事業主については3月中に、その日以後の支給決定については再計算した金額で支給を開始する予定としています。

 

2019.02.02.解決社労士

<NITEからの注意喚起>

平成31(2019)年1月24日、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)がリチウムイオンバッテリー搭載製品の事故について注意を呼びかけています。

以下、NITE(ナイト)による報道発表資料です。

 

【事故の被害状況】

モバイルバッテリーを筆頭に、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品で事故が発生しています。

2013年度から2017年度の5年間に通知された製品事故情報では、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品の事故は582件ありました。この582件のうち、402件(69%)が火災を伴っています。

 

【事故の原因】

事故の原因は、製品の不具合によるものが368件(71%)と最も多くなっています。368件のうち209件(36%)は、リコール対象製品によるものであり、回収や交換、情報の周知などが適切に行われていれば防げた事故も多いと考えられます。

 

【モバイルバッテリーの規制】

モバイルバッテリーの事故の多発を踏まえ、経済産業省は平成30(2018)年2月1日、通達「電気用品の範囲等の解釈について」を改正し、モバイルバッテリーを電気用品安全法の規制対象として取り扱うこととしました。

事業者における対応の準備期間として、施行日より1年間を経過措置期間とし、この間はこれまでの扱いによることもできるとしていましたが、平成31(2019)年2月1日以降は、基準に適合した製品でなければ販売できません。

 

<リコール情報の確認>

会社の業務でもプライベートでも、リチウムイオンバッテリーを搭載した様々な製品が使用されています。

会社が従業員に貸与している物品の中にも、リチウムイオンバッテリーが使われているものがあるでしょう。

こうした物品で事故が発生すると業務に支障が出ますから、リコール情報があった場合には、不具合が生じていなくても速やかに使用を中止し、購入した販売店や製造・輸入事業者に相談する必要があります。

もっとも、連絡先が分からないのでは、相談することもできませんから、製造事業者、販売事業者や輸入事業者が確かな製品を購入することも大切です。

また、従業員がプライベートで使用する物による事故であっても、これによって欠勤が発生したり、通院などのために時間を割かれたりしますので、会社から従業員に対する情報の提供や教育により、可能な限り事故を防いでいかなければなりません。

 

<誤用による事故>

誤った使い方による事故も後を絶ちません。

しかし従業員の中には、取扱説明書をほとんど読まずに使用する人もいます。

取扱説明書には、「分解しない。無理な力や強い衝撃を与えない。発熱・発火の原因となる」といった説明があったにもかかわらず、かばんに入れたスマートフォンに、外から力が加わったため、内部ショートが生じて異常発熱し、焼損する事故も発生しています。

また、ズボンのお尻のポケットに、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品を入れたまま座ってしまい、発火するという事故も起きています。

こうしたことは、本来、個人の自己責任なのですが、従業員の啓蒙も十分に行っておくことが、会社にとって有益であるといえるでしょう。

 

2019.02.01.解決社労士

平成31(2019)年1月18日、厚生労働省と文部科学省が平成31年3月大学等卒業予定者の就職内定状況を共同で調査し、平成30年12月1日現在の状況を取りまとめ公表しました。

取りまとめの結果、大学生の就職内定率は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)となり、平成9年3月卒の調査開始以降、同時期で過去最高となりました。

 

【就職内定率の概要】

● 大学(学部)は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)

● 短期大学は75.6%(同0.2ポイント上昇)

● 大学等(大学、短期大学、高等専門学校)全体では87.2%(同1.6ポイント上昇)

● 大学等に専修学校(専門課程)を含めると86.1%(同2.2ポイント上昇)

 

【全体の概要】

○ 大学の就職内定率は87.9%(前年同期比1.9ポイント上昇)。このうち国公立大学の就職内定率は、87.9%(同1.0ポイント上昇)、私立大学は、87.9%(同2.2ポイント上昇)。

○ 短期大学の就職内定率は、75.6%(前年同期比0.2ポイント上昇)。

○ 高等専門学校及び専修学校(専門課程)の就職内定率は、それぞれ97.2%(前年同期比0.4ポイント低下)、76.8%(同7.9ポイント上昇)。

○ 大学等(大学、短期大学、高等専門学校)を合わせた就職内定率は87.2%(前年同期 比1.6ポイント上昇)。専修学校(専門課程)を含めると86.1%(同2.2ポイント上昇)。

 

【男女別の概要】

○ 男女別では、男子大学生の就職内定率は87.5%(前年同期比2.3ポイント上昇)、女子は88.5%(同1.5ポイント上昇)。

また、国公立大学では、男子:86.6%、女子:89.4%、私立大学では、男子:87.8%、女子:88.2%となっている。

 

【文系・理系別の概要】※大学のみ

○ 文系・理系別では、文系の就職内定率は87.7%(前年同期比2.0ポイント上昇)、理系の就職内定率は89.0%(同1.8ポイント上昇)となっている。

 

【地域別の概要】※大学のみ

○ 地域別では、関東地区の就職内定率が最も高く、90.5%(前年同期比2.3ポイント上昇)となっている。

 

2019.01.31.解決社労士

<無料低額診療事業>

この制度は、経済的理由により適切な医療を受けることができない人々に対し、無料または低額で診療を行う事業です。

現在実施しているのは全国600以上の医療機関で、免除した医療費は医療機関が負担しています。

 

<減免を受けることができる人>

低所得者等で経済的理由により診療費の支払いが困難な人が対象となります。

医療保険への加入の有無や国籍を問わないケースもあります。

 

<減免額>

診療費の10%以上または全額が免除されます。

医療機関は、給与明細書や源泉徴収票などで所得などを確認し、医療費の全額を免除するか一部を免除するかを決めています。

そして、その基準は実施している医療機関によって異なります。

 

<申込方法>

医療機関によって異なりますので、まず医療機関に電話などで問い合わせてみる必要があります。

 

<問題点>

実施している医療機関は都市部に集中していて地域の偏りがあります。

また、こうした事業は本来行政が行うべきものであって、医療機関が負担することについては疑問視されています。

 

<高齢者向けの制度>

無料低額診療事業の他に、無料低額介護老人保健施設利用事業があります。

この制度は、介護老人保健施設の利用にあたり、経済的理由により費用の支払いが困難な人々に対し、費用の減免を行う制度です。

この制度の利用には、条件がありますので、居住地の市町村に問い合わせる必要があります。

 

2019.01.30.解決社労士

<無期転換の特例>

有期雇用の労働者は通算で5年を超えて働くと無期雇用に転換できますが、大学教員などに限っては5年より長い期間の研究プロジェクトに携わることもあるので、教員任期法などで10年超での転換が特例として定められています。

 

【労働契約法の原則】

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。

 

【教員任期法(大学の教員等の任期に関する法律)による特例】

(労働契約法の特例)
第七条 第五条第一項(前条において準用する場合を含む。)の規定による任期の定めがある労働契約を締結した教員等の当該労働契約に係る労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)第十八条第一項の規定の適用については、同項中「五年」とあるのは、「十年」とする。

 

<東京大学で基準の変更>

東京大学も、これまでは教員任期法の特例を適用し、非常勤講師を無期雇用に切り替えるまでの期間を10年としてきました。

しかし東大教職員組合が、非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていないなどとして大学側に再考を要請し、大学側がこれを了承して、平成31(2019)年4月からは無期転換に必要な期間を5年とすることになったそうです。

この判断は、他の大学にも影響を与え、波及していくのではないでしょうか。

 

<立法事実という視点>

立法事実というのは、法令を制定する際の基礎となり、その法令の存在の合理性を支える事実です。

法令を制定する際には、規定に合理性(合憲性)を持たせるため、立法事実が確認されます。

これが不十分であると、後から「非常勤講師の大半が長期プロジェクトに関わっていない」など、規定の合理性を揺るがす立法事実を指摘されることがあります。

こうなると、法令の適用の合理性や、法令そのものの合理性が疑われるようになります。

また、法令が制定された当初は、その法令の合理性を裏付ける事実があったにもかかわらず、その後の社会的事実の変化により、法令が合理性を保てなくなる場合もあります。

 

<就業規則の見直し>

就業規則は法令ではありませんが、それぞれの規定には、裏付けとなる事実があります。

それが見込み違いであったり、時代とともに変化しているのであれば、規定を見直す必要があります。

この視点からも、御社の就業規則を見直すようお勧めします。

 

2019.01.29.解決社労士

<特別監察委員会の調査報告書>

毎月勤労統計調査の不適切な事務処理について、統計の専門家、弁護士等の外部有識者で構成される「毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会」で、事実関係と責任の所在の解明が行われ、厚生労働大臣に調査報告書が提出されました。

平成31(2019)年1月22日、厚生労働省がその内容を公表しています。

これは、延べ69名の職員・元職員に対するヒアリングや関係資料の精査等を踏まえ 、毎月勤労統計調査に関する様々な問題、指摘等について、事実関係とその経緯や背景を明らかにした上で、これ対する責任の所在ついて委員会として評価したものです。

 

<事実関係の概要>

次のような事実関係が確認されています。

・遅くとも平成8(1996)年以降、調査対象事業所数が公表よりも1割程度少なかった。

・東京都では、規模500人以上の事業所を全数調査とすべきところ、平成16(2004)年1月調査以降は抽出調査としていた。

・3分の1の事業所を抽出して調査した場合、データを3倍して平均値の誤差を減らすべきところ、この処理が行われなかった。

東京都の大規模事業所は、全国の中でも給与・賞与の水準が高いわけですが、3分の1しか集計に反映されていないわけですから、毎月勤労統計調査のデータが実際よりも少なく集計されてしまっていたことになります。

 

<関係職員の対応などについて>

関係職員の対応とその評価などについて、次のように報告されています。

・課長級職員を含む職員・元職員は、事実を知りながら漫然と「前回同様」の取扱いを続けてきた。

・課長級職員に法令遵守意識が欠如し、部局長級職員も決裁権者としての責任を免れない。

 

<調査結果の総括>

調査報告書では、次のような総括が示されています。

・常に正確性が求められ、国民生活に大きな影響を及ぼす公的統計で、統計法違反を含む不適切な取扱いが長年継続し、公表数値に影響を与えたことは言語道断。厚生労働省の行政機関としての信頼が失われた。

・統計の正確性や調査方法の開示の重要性など、担当者をはじめ厚生労働省の認識が甘く、専門的な領域として「閉じた」組織の中で、調査統計の変更や実施を担当者任せにする姿勢や安易な前例踏襲主義など、組織としてのガバナンスが欠如。

・統計に携わる職員の意識改革、統計部門の組織の改革とガバナンスの強化、幹部職員を含め、組織をあげて全省的に統計に取り組むための体制の整備等が必要。今後、引き続き具体的な再発防止策等を検討。

企業でも組織が大きくなると、担当者任せや前例踏襲主義が目立ってきます。これを防ぐには、担当者に仕事を任せるときに、その仕事の目的を具体的かつ明確に伝え、目的意識を持たせて「前回同様のやり方で良いのか」を考えさせることが大事です。

 

<関係者の処分>

今回の不適切な取扱いに関わった担当者や責任者は、1か月から6か月の減給処分(10分の1)、訓告、戒告といった処分を受けています。

 

<毎月勤労統計調査の目的>

賃金、労働時間、雇用の変動を明らかにすることが目的です。

統計法に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計調査として実施されています。

毎月勤労統計調査の結果は、経済指標の一つとして景気判断や、都道府県の各種政策決定に際しての指針とされるほか、雇用保険や労災保険の給付額を改定する際の資料として、また、民間企業等における給与改正や人件費の算定、人事院勧告の資料とされるなど、国民生活に深く関わっています。

さらに、日本の労働事情を表す資料として海外にも紹介されています。

 

<回答の義務>

毎月勤労統計調査など、国の重要な統計調査である基幹統計調査について、「個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる」と規定されています(報告義務)。〔統計法13条〕

また「報告を拒み、又は虚偽の報告をした者」に対して、「50万円以下の罰金に処する」と規定されています。〔統計法61条〕

「統計法」に基づき実施する基幹統計調査である毎月勤労統計調査の報告義務は「個人情報保護法」によっても免除されるものではありません。

たしかに、今回のような不適切な取扱いがあると、回答に手間のかかる調査に応じるのは、気の進まないこともあるでしょう。

しかし、回答を拒むのは統計法違反になります。正しい統計が作成されないと、多くの方々に迷惑が及ぶということが、改めて認識されるようになったのですから、なるべく正確な回答を心がけましょう。

 

2019.01.28.解決社労士

<共同通信社の報道>

競合他社に売り上げに関する営業秘密を漏らしたなどとして、警視庁生活経済課が不正競争防止法違反の疑いで、システム開発販売会社の元営業推進部担当部長を逮捕したそうです。

2017年12月16日、会社の「売上構成表」のデータを一部編集した上で私物のパソコンに複製し、同社と競合するソフトウエア開発会社にメールで送信するなどした疑いです。

容疑者は、「営業秘密とは思わなかった」と容疑を否認しているそうです。

 

<不正競争防止法>

不正競争防止法が保護の対象としている営業秘密は、範囲が限定されているため簡単には適用されません。

保護されるのは「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」とされています。〔不正競争防止法2条6項〕

実際には、秘密管理性の要件に欠けるとして、この法律の保護が受けられないことが多いのです。なぜなら、秘密管理性の要件を満たすには、次のことが行われている必要があるからです。

 

・情報に接した者にその情報が営業秘密であると認識させていること

・情報に接する者が制限されていること

 

今回の事件で容疑者は、「営業秘密とは思わなかった」と供述しています。

しかし、不正競争防止法の規定は、本人が「営業秘密であると認識していること」を適用要件とはしていません。

あくまでも使用者側が、客観的に「営業秘密であると認識させている」という状況が認定されれば法が適用されます。

こうしたことから、会社は営業秘密にはその旨を表示しておき、誰でも一見してわかるようにしておくなどの対策が必要になります。

 

<情報の窃盗>

刑法には、電子的に記録された情報自体を盗む行為を処罰する規定がありません。

刑法の窃盗罪(235条)は「財物」を対象としていて、情報は「財物」に含まれないからです。

裁判の実例でも、情報そのものではなく、情報が入力されたDVDやUSBメモリ等の媒体物を盗んだ場合に窃盗罪の成立が認められています。

今回の事件では、私物のパソコンを持ち込んで、これに情報を複製していますので、この容疑者を窃盗罪に問うことができません。

 

<企業としての対応>

営業秘密が不正競争防止法の保護を受けられるよう、物理的な体制を整えておくべきは当然です。

そして就業規則には、営業秘密の持ち出しや漏えいの禁止規定と、これに対応する懲戒の規定も置いておく必要があります。

しかし、最も効果的なのは、定期的に社員研修を繰り返すことです。入社時に、あるいは何か問題が発生してから1回だけ研修を行い、その後長く実施しなければ、会社の態度が見透かされてしまいます。ですから、少なくとも年1回は実施したいものです。

 

2019.01.27.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上 5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上 4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上 3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上 2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.01.26.解決社労士

<「バカですか」発言の町課長>

部下3人に暴言を浴びせたり、あいさつや業務の報告を無視したりするパワーハラスメントを繰り返したとして、埼玉県嵐山町が50歳代の男性課長を停職3か月の懲戒処分にしたことが報じられています(2019年1月21日)。

課長は「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」と弁明したそうです。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

この課長の「(暴言や侮辱など)そういう認識での発言ではない」という弁明は、言い逃れではなく、思っていることを正直に話しているのかもしれません。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<パワハラ防止に必要な知識>

さて、自分の行為がパワハラにあたるのかどうかを、的確に判断できない場合もあるでしょう。

また、他の職員の行為に対して、自信を持って「それはパワハラだから止めなさい」と注意するのはむずかしいかもしれません。

ましてや、暴行罪〔刑法208条〕や名誉毀損罪〔刑法230条〕の成立条件(構成要件該当性)などは、「物を投げつけても当たらなければ暴行罪は成立しない」「真実を言ったのなら名誉毀損にはならない」などの誤解があるものです。

こうしてみると、職場でパワハラを防止するのに必要な知識のレベルというのは、かなり高度なものであることがわかります。

 

<知識不足によるパワハラの防止には>

本気でパワハラを防止するには、職場の規則にきちんとした規定を設け、充実した教育を実施することが必要となります。

パワハラの定義・構造の理解、具体例を踏まえた理解の深化を図らなければなりません。

この事件では、職員3人が人事担当などに相談し、副町長が数回、課長に注意したのに状況は改善されなかったと報道されています。

何がパワハラにあたるのか、基本的なことを知らない職員に対しては、上司から注意をしても、懲戒を加えても、反省を促すことはできません。

まずは、全職員に十分な教育をしていただけるよう願うばかりです。

 

2019.01.25.解決社労士

<ニセ社労士からの売り込み>

・「労務管理士」と名乗る人が社会保険労務士業務を行うと言ってくる。

・アウトソーシング会社が雇用保険や年度更新の手続を行うと言ってくる。

・経営コンサルティング会社が助成金の手続を行うと言ってくる。

これらは、ニセ社労士からの売り込みです。

 

<本物の社労士の確認方法>

国家資格者である社会保険労務士は、その身分を証明するため、連合会が発行する「社会保険労務士証票」と、所属する都道府県社会保険労務士会が発行する「社会保険労務士会会員証」を携帯しています。

 

<社労士の業務>

労働および社会保険諸法令に基づいて行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書その他の書類の作成および提出、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成を、他人の求めに応じ報酬を得て行えるのは、社会保険労務士法により、国家資格を付与された社会保険労務士だけです。〔社会保険労務士法第2条、第3条〕

社会保険労務士でない、労務管理士、アウトソーシング会社、経営コンサルティング会社等が社会保険労務士業務(雇用保険や年度更新の手続、助成金の手続、就業規則の作成等)を行うことは社会保険労務士法違反です。〔社会保険労務士法第27条〕

違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。〔社会保険労務士法第32条の2第1項第6号〕

 

社会保険労務士の業務には、申請書等の作成に代える場合の電磁的記録の作成を含みます。〔社会保険労務士法第2条第1項第1号および第2号かっこ書き〕

ですから、社会保険労務士でない無資格者が、給与計算システム等を使用し、給与計算に付随して労働社会保険諸法令に基づく申請書等および帳簿書類を作成することも同様に社会保険労務士法違反です。

 

<労務管理士という資格>

労務管理士は社会保険労務士とは全く関係ありません。

労務管理士は国家資格ではなく、民間団体が認定する民間資格です。

労務管理士が社会保険労務士業務を行えば、社会保険労務士法に定める罰則が適用されます。

 

<ニセ社労士に委託することのリスク>

ニセ社労士は、法令に違反してコッソリと業務を行っています。ですから、法令違反が摘発されそうになれば、やりかけの業務を投げ出して逃げてしまうでしょう。

本物の社労士が、虚偽、不正、違反に関与すれば、懲戒処分を受けることとなります。また、

懲戒処分のあったことは、実名入りで官報に公告され、厚生労働省ホームページ等にも公表されます。しかも、公表の期間は懲戒の内容に応じて、1年から5年と長期にわたります。

ニセ社労士には、こうした懲戒処分がありませんから、一度摘発されても、手を変え品を変え別の地域で暗躍する恐れがあります。

 

2019.01.24.解決社労士

<雇用対策法の改正>

平成30(2018)年7月6日、雇用対策法が「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」へと改正されました。

この改正は、働き方改革を推進するために行われたものです。

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

長期的に見れば企業の安定と成長を促す施策ばかりですが、目先にとらわれると企業の負担が強く意識されますので、関係法律の整備により政府が推進する形がとられています。

中小企業であっても、ここは従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

<旧法と新法の目的の違い>

旧法も新法も、その目的をそれぞれの第1条に示しています。

太字が変更部分です。

 

【旧法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

【新法の目的】

第一条 この法律は、国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。

 

<新法にあらわれた新しい目的>

新法にあらわれた新しい目的には、次の3つが示されています。

 

① 労働者の多様な事情に応じた雇用の安定

② 職業生活の充実

③ 労働生産性の向上を促進

 

①の「雇用の安定」は、雇用契約の継続として一応客観的に測定できるものの、それが「労働者の多様な事情に応じた」ものといえるかは、労働者の主観的な判断により評価が変わってきます。

また、②の「職業生活の充実」も労働者の主観次第ということになります。

ですから、企業が新法に対応するためには、まず労働者の意見を聴いたうえで、具体的な施策を策定する必要があります。

この法律に限らず、働き方改革では「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策」が求められていますから、労働者の不安や不満を把握するために、その意見を聴くことが前提となるのは当然のことです。

これに対して、③の「労働生産性」は客観的な指標ですから、定期的に確認して施策にフィードバックすれば足ります。

この労働生産性の算出式にはいくつかありますが、現在の働き方改革は、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得を推進していますので、端的に次のものを基準にすると良いでしょう。

 

 労働生産性 = 付加価値額 / 実労働時間

 

つまり、1か月など一定の期間内の付加価値額を、その期間内の労働者全体の実労働時間で除したものを、労働生産性の指標に用いることになります。

 

2019.01.23.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<パートタイム・有期雇用労働法の施行>

平成31(2019)年1月16日、厚生労働省が「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」等を公表しました。

パートタイム・有期雇用労働法は、2020年4月1日から施行(中小企業は2021年4月1日から適用)されます。

短時間労働者だけでなく、フルタイム有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。そのため、法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略称「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

 

<働き方改革との関係>

これはもちろん、働き方改革の一環です。

「働き方改革」という言葉は、よく目にするようになりましたが、その定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料、そして現在までの動向をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

有期雇用の労働者は、雇用契約の終了について不安がありますし、パートタイムと同様に正社員との待遇差に疑問や不満を抱えていることがあります。

これを解消すれば、長い目で見たときに企業の利益を向上させることになるのですが、目先のことだけを考えたり、自社が単独で行うことを考えたりすると、躊躇してしまいます。

そこで、法令によって一斉に変革を実施し、公正に労働者の不安と不満の解消を図ろうというのが働き方改革関連法の役割だと考えられます。

 

<同一労働同一賃金>

同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体での正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一企業内での正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

同一企業・団体での正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、どのような待遇差が不合理なものであり、どのような待遇差は不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を示したものとして、「同一労働同一賃金ガイドライン」が公表されています。

 

<取組手順書の役割>

「同一労働同一賃金ガイドライン」は考え方を示すものですから、各企業がどのように同一労働同一賃金に取り組み、パートタイム・有期雇用労働法に対応すべきかについては示されていません。

そのため、「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」が公表され、各企業がこれに沿って進めていけるようにしたものです。

この取組手順書に沿って社内の制度の点検を行い、自社の状況が法の内容に沿ったものかを把握し、点検の結果、制度の改定の必要があれば、法の施行までに改定の準備を進めることができます。

 

<パートタイム・有期雇用労働法の2つの柱>

この法律には、次の2つの大きなポイントがあります。取組手順書の活用にあたって、この2つの柱を外さないよう、常に注意しましょう。

 

【不合理な差別の禁止】

同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されます。

 

【説明義務】

事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければなりません。

 

2019.01.22.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<行動規範の根拠>

平成31(2019)年1月11日、厚生労働省が「労働基準監督官行動規範」を策定し公表しました。

この行動規範は、「労働施策基本方針」(平成30(2018)年12月28日)の、第2章 労働施策に関する基本的な事項 1 労働時間の短縮等の労働環境の整備 (1)長時間労働の是正 の中で示された次の一節に対応するものです。

 

労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。

 

この行動規範が策定されたのは、働き方改革を強力に推進するための基盤づくりが目的だと思われます。

以下にその内容を見ていきましょう。枠内は原文をそのまま引用しています。

 

<基本的使命>

私たち労働基準監督機関は、労働条件の最低基準を定める労働基準法や労働安全衛生法等の労働基準関係法令(以下、法令という。)に基づき、働く方の労働条件の確保・改善を図ることで、社会・経済を発展させ、国民の皆さまに貢献することを目指します。

 

働き方改革は、「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」だといえます。

この中の「多面的な施策」は、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)に示されています。

平成31(2019)年4月1日以降は、現行法の内容に加えて、あるいは現行法に代えて、新法や改正法の適用による労働条件の確保・改善が行われることになります。

この行動規範は、労働基準監督機関が法令に基づいて、労働条件の確保・改善を図るものであることを再確認しています。

 

<法令のわかりやすい説明>

労働基準監督官(以下、監督官という。)は、事業主の方や働く方に、法令の趣旨や内容を十分に理解していただけるよう、できる限りわかりやすい説明に努めます。

 

使用者は法令の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを助けるため、労働基準監督署などには、事業主向け、労働者向けのパンフレットなどが配置されていて、自由に持ち帰ることができるようになっています。

それでもなお、会社の実情に応じた具体的な理解まではむずかしいですから、労働基準監督官からできる限りわかりやすい説明をしていただけるということです。

 

<事業主の方による自主的改善の促進>

監督官は、法令違反があった場合は、違反の内容や是正の必要性を丁寧に説明することにより、事業主の方による自主的な改善を促します。また、法令違反の是正に取り組む事業主の方の希望に応じ、きめ細やかな情報提供や具体的な取組方法についてのアドバイスなどの支援に努めます。

 

労働基準監督官には、法令違反のあった使用者を逮捕し送検する権限が与えられています。〔労働基準法第102条〕

しかし、法令違反を発見した場合でも、すぐにこうした手続きに入るのではなく、まず事業主に自主的な改善を促します。

さらに、どうしたら違法状態を解消できるかについて、労働基準監督官が具体的なアドバイスをしてくれます。

 

<公平・公正かつ斉一的な対応>

監督官は、事業主の方や働く方の御事情を正確に把握し、かつ、これを的確に考慮しつつ、法令に基づく職務を公平・公正かつ斉一的に遂行します。

 

労働基準監督官の職務遂行には、公正であることが求められます。

法令に基づき、画一的な扱いをすべきところは、平等の理念に従い斉一的に行い、また、具体的な事情の違いに配慮すべきところは、公平の理念に従い妥当な結果を導けるように対応します。

 

<中小企業等の事情に配慮した対応>

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

 

中小企業等の事業主には、法令についての正しい知識や理解が不足しているために、悪意なく法令違反が発生していることもあります。

こうした事情を踏まえて、労働基準監督官は大企業の場合よりも手厚い指導を行います。

ただし「法令遵守では経営が成り立たない」など、働く人の労働条件の確保・改善を正面から否定するような考えに応じることはありません。あくまでも、法令遵守に向けた自主的な改善を促すのが、労働基準監督官の役割です。

 

2019.01.21.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

<対応の基本方針>

毎月勤労統計調査で、不適切な方法をとっていたために、平成16(2004)年以降の賃金額が低めに出ていたことから、雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した人の一部と雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付が必要となりました。これは、現在受給中の人も該当する場合があります。

反対に、本来の額よりも多くなっていた人に、返還を求めないことになっています。

 

<追加給付の対象となる可能性がある人>

 

(1)雇用保険関係

・「基本手当」、「再就職手当」、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」などの雇用保険給付を平成16年8月以降に受給した人

・雇用保険と同様または類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」(国家公務員退職手当法)、「就職促進手当」(労働施策総合推進法)

 

(2)労災保険関係

・「傷病(補償)年金」、「障害(補償)年金」、「遺族(補償)年金」、「休業(補償)給付」などの労災保険給付や特別支給金等を平成16年7月以降に受給した人

 

(3)船員保険関係

・船員保険制度の「障害年金」、「遺族年金」などの船員保険給付を平成16年8月以降に受給した人

 

(4)事業主向け助成金

・「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が平成16年8月から平成23年7月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主  等

 

<追加給付の概要>

 

(1)追加給付の計算

・追加給付の計算は、平成31年1月11日(金)に公表された「再集計値」と「給付のための推計値」を用いて行います。

 

(2)追加給付の一人当たり平均額、対象人数、給付額の現時点の見通し

・一人当たり平均額等の現時点の見通しは次のとおりです。

【雇用保険】一つの受給期間を通じて一人当たり平均約1,400円、延べ約1,900万人、給付費約280億円

【労災保険】

年金給付(特別支給金を含む):一人当たり平均約9万円、延べ約27万人、給付費約240億円

休業補償(休業特別支給金を含む):一人一ヶ月当たり平均約300 円、延べ約45万人、給付費約1.5億円

【船員保険】一人当たり平均約15万円、約1万人、給付費約16億円

【事業主向け助成金】雇用調整助成金等:対象件数延べ30万件、給付費約30億円

  ・ 以上については、お支払いに必要となる事務費を含め、引き続き精査します。

 

<書類の保管>

雇用保険の給付、労災保険の給付、船員保険の給付、政府職員失業者退職手当、就職促進手当または事業主向け助成金を平成16年以降に受給した人または事業主は、今後の手続に役立つ可能性がありますので、以下の書類を持っている場合には、捨てずに保管しておいてください。

【雇用保険】

  - 受給資格者証、被保険者証

【労災保険】

  - 支給決定通知・支払振込通知 、年金証書、変更決定通知書

【船員保険】

  - 支給決定通知・振込通知、年金証書、改定通知書

【政府職員失業者退職手当】

  - 失業者退職手当受給資格証等

【就職促進手当】

  - 就職促進手当支給決定通知書など支給の事実が確認できる書類

【事業主向け助成金】

  - 支給申請書類一式、支給決定通知書

 

<電話相談窓口>

平成31年1月11日(金)以降、以下のご相談窓口が設けられています。

★雇用保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-807

 (※事業主向け助成金の問い合わせも含む。)

★労災保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-952-824

★船員保険追加給付問い合わせ専用ダイヤル 0120-843-547 または 0120-830-008

受付時間  平日8:30~20:00    土日祝8:30~17:15

 

2019.01.20.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

医師による面接指導について、主なものは次のような内容となっています。

 

<医師による面接指導の対象となる労働者の基準>

新安衛則第52 条の2第1項の規定では、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えた場合(かつ、当該労働者が疲労の蓄積の認められる者である場合)に面接指導の対象となります。所定労働時間が1週間当たり40 時間に満たない事業場では、この所定労働時間ではなく、1週間当たり40 時間の法定労働時間を基準として算定することになります。

 

<労働者への労働時間に関する情報の通知>

労働者に通知する「当該超えた時間に関する情報」とは、時間外・休日労働時間数を指し、通知対象は、その超えた時間が1月当たり80 時間を超えた労働者です。この通知は、疲労の蓄積が認められる労働者の面接指導の申出を促すものであり、「当該超えた時間に関する情報」のほか、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望ましいとされます。

事業者は、新安衛則第52 条の2第2項の規定により、1月当たりの時間外・休日労働時間の算定を毎月1 回以上、一定の期日を定めて行う必要があり、その時間が1月当たり80 時間を超えた労働者に対して、その超えた時間を書面や電子メール等により通知する方法が適当とされます。ただし、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって「当該超えた時間に関する情報」の通知としても差し支えありません。なお、「当該超えた時間」の算定後、速やか(おおむね2週間以内)に通知する必要があります。

労働者が自らの労働時間に関する情報を把握し、健康管理を行う動機付けとする観点から、時間外・休日労働時間が1月当たり80 時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開示を求められた場合には、これに応じることが望ましいとされます。

 

<労働時間の状況の把握>

新安衛法第66 条の8の3に規定する「労働時間の状況」の把握とは、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から、労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握するものです。事業者が「労働時間の状況」を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から「労働時間の状況」を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければなりません。なお、「労働時間の状況の把握」は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第54条第1項第5号に掲げる賃金台帳に記入した労働時間数をもって、それに代えることができます。ただし、労基法第41 条各号に掲げる者(管理監督者等)並びに労基法第38条の2に規定する事業場外労働のみなし労働時間制が適用される労働者並びに労基法第38条の3第1項および第38条の4第1項に規定する業務に従事する労働者(裁量労働制の適用者)については、この限りではないものとされます。

面接指導の要否については、休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合の超えた時間(時間外・休日労働時間)により判断することとされていますが、個々の事業場の事情により、休憩時間や食事時間を含めた時間により、労働時間の状況を把握した場合には、その時間をもって、面接指導の要否を判断することとしてもかまいません。

なお、労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれます。

 

<やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合>

労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行または直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、その労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断します。

ただし、労働者が事業場外で行う業務に直行または直帰する場合でも、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行または直帰であることだけを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められません。

また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータがある場合や事業者の現認によりその労働者の労働時間を把握できるのに、自己申告だけで労働時間の状況を把握することは、認められません。

 

<労働時間の状況を自己申告により把握する場合>

労働時間の状況を自己申告により把握する場合には、その日の労働時間の状況を翌労働日までに自己申告させる方法が適当とされます。

なお、労働者が宿泊を伴う出張を行っているなど、労働時間の状況を労働日ごとに自己申告により把握することが困難な場合には、後日一括して、それぞれの日の労働時間の状況を自己申告させることとしても差し支えありません。

ただし、このような場合であっても、事業者は、新安衛則第52条の2第2項および第3項の規定により、時間外・休日労働時間の算定を毎月1回以上、一定の期日を定めて行う必要があるので、これを遵守できるように、労働者が出張の途中であっても、その労働時間の状況について自己申告を求めなければならない場合があることには、留意する必要があります。

 

2019.01.19.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

産業医の役割強化について、主なものは次のような内容となっています。

 

<産業医の権限の具体化>

産業医が労働者の健康管理等を行うために必要な情報を労働者から収集する方法としては、作業場等を巡視する際などに、対面により労働者から必要な情報を収集する方法のほか、事業者から提供された労働時間に関する情報、労働者の業務に関する情報等を踏まえて選定した労働者を対象に、職場や業務の状況に関するアンケート調査を実施するなど、文書により労働者から必要な情報を収集する方法等があります。

労働者が産業医に提供した情報の内容等がその労働者の同意なしに、事業者、人事担当者、上司等に伝達されることは、適正な情報の取扱い等が阻害されることとなります。そのため、産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な情報を収集しようとする際には、その情報の収集対象となった労働者に人事上の評価・処遇等について、事業者が不利益を生じさせないようにしなければなりません。また、事業者は、産業医がその情報を収集する際の具体的な取扱い(対象労働者の選定方法、情報の収集方法、情報を取り扱う者の範囲、提供された情報の取扱い等)について、あらかじめ、衛生委員会または安全衛生委員会で審議し、決定しておくことが望ましいといえます。

「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合」とは、保護具等を使用せずに、有害な化学物質を取り扱うことにより、労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれます。

 

<産業医等に対する健康管理等に必要な情報の提供>

事業者が産業医等に提供する労働者の健康管理等を行うために必要な情報のうち、「休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(以下「時間外・休日労働時間」という。)が1月当たり80 時間を超えた労働者の氏名、当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報」について、対象となる労働者がいない場合でも、「該当者がいない」という情報を産業医に情報提供する必要があります。

また、「労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの」には、①労働者の作業環境、②労働時間、③作業態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などのうち、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものが含まれます。なお、必要と認めるものについては、事業場ごとに、あらかじめ、事業者と産業医とで相談しておくことが望ましいとされます。さらに、健康管理との関連性が不明なものについて、産業医等から求めがあった場合には、産業医等に説明を求め、個別に確認することが望ましいとされます。

事業者が産業医等に情報を提供する方法としては、書面による交付のほか、磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録して提供する方法や電子メールにより提供する方法等があります。産業医等に提供した情報については、記録・保存しておくことが望ましいとされます。

 

<労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等>

労働者が産業医等による健康相談を安心して受けられる体制を整備するために、事業者は産業医による健康相談の申出の方法(健康相談の日時・場所等を含む。)、産業医の業務の具体的な内容、事業場における労働者の心身の状態に関する情報の取扱方法を、労働者に周知させる必要があります。

また、労働者数50 人未満の事業場については、新安衛法第101 条第3項に基づき、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師または保健師(医師等)を選任した事業者は、労働者に周知させるように努めなければなりません。

周知方法としては、各作業場の見やすい場所に掲示等するほか、書面により労働者に通知すること、イントラネット等により労働者がその事項の内容に電子的にアクセスできるようにすることなどが適当です。

なお、保健指導、面接指導、健康相談等は、プライバシーを確保できる場所で実施できるように、配慮するとともに、その結果については、心身の状態の情報指針に基づき事業場ごとに策定された取扱規程により、適切に取り扱う必要があります。

 

2019.01.18.解決社労士

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

年5日以上の年次有給休暇の確実な取得について、主なものは次のような内容となっています。

 

<使用者による時季指定>

使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、その期間の途中に行うこともできます。

 

<使用者による時季指定の対象となる労働者>

「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」は、基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者をいいます。

年次有給休暇の比例付与の対象者となる労働者であって、今年度の基準日に付与される年次有給休暇の日数が10労働日未満の労働者については、前年度繰越分の年次有給休暇を合算して10労働日以上となったとしても、「有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」には含まれません。

 

<半日・時間単位での時季指定・取得>

労働者の意見として、半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合には、時季指定を半日単位で行ってもかまいません。

半日単位の時季指定も、労働者が半日単位で取得した年次有給休暇も、0.5日としてカウントされます。

しかし、時季指定を時間単位で行うことはできませんし、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得しても「年5日以上の年次有給休暇」にはカウントされません。

 

<前年度から繰り越された年次有給休暇>

「年5日以上の年次有給休暇」は、当年度の基準日に付与された年次有給休暇でも、前年度からの繰越分の年次有給休暇でもかまいません。

 

<時季変更の可否>

使用者が指定した時季を、労働者の意見を尊重することによって変更することはできます。

 

<年5日を超える時季指定>

労働者の時季指定権を確保するため、5日を超える日数を指定することはできません。

 

<時季指定後に労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合>

当初使用者が行った時季指定は、使用者と労働者との間で特別な取決めをしていない限り、当然に無効となるものではありません。

 

<就業規則の規定>

休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に定めておく必要があります。

 

2019.01.17.解決社労士