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<労働契約法ができた理由>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です。

平成19(2007)年12月5日公布、平成20(2008)年3月1日施行ですから、10年以上が経過し、だいぶ認知度が上がってきました。

この法律は、個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。

個別労働紛争というのは、労働組合が絡まない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。

そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を条文の形にまとめたのが労働契約法です。

個別労働紛争が発生したり発生しそうになったときに、読みにくい判決文を参照しなくても、労働契約法を読めば裁判になったときの結論が想定しやすくなったのです。

 

<労働法の一般的な特色>

労働法というのは、1つの法令の名称ではなく、労働関係や労働者の保護についての法令の総称です。

もともと民法の契約自由の原則が適用されていた労使関係について、労働者の生存権という法理念による修正をする法体系です。

使用者と労働者との関係を形式的に見れば、契約の当事者であり平等な立場ですから、労働契約も他の契約と同じように当事者の自由な話し合いに任せればよいということになります。これが契約自由の原則の考え方です。

ところが、現実の資本主義経済では労働者の立場が非常に弱く、憲法第25条の保障する生存権がおびやかされてしまいます。

そこで、法律が労働者を保護するようになりました。この労働者保護が労働法の基本理念になっています。

 

<労働契約法第1条>

「この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする」〔労働契約法第1条〕

これが労働契約法の目的ですが、「労働者と使用者の自主的な交渉」に任せていては「労働者の保護」が図れないことも多いでしょう。

 

<労働契約法の5原則>

労使対等の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第1項〕

均衡考慮の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第2項〕

仕事と生活の調和への配慮の原則 = 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。〔第3条第3項〕

信義誠実の原則 = 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。〔第3条第4項〕

権利濫用の禁止の原則 = 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。〔第3条第5項〕

 

<労働契約法の役割>

労働基準法には「使用者は、」で始まる条文が多く、使用者だけに罰則が適用されるのですが、労働契約法には「労働者及び使用者」ということばが多く、罰則規定はありません。

労働契約法は、民法の特別法としての性格を持つため、労働基準監督官による監督・指導は行われず、行政指導の対象ともなりません。

たとえば使用者に安全配慮義務〔労働契約法第5条〕の違反があって、労働者が労働基準監督署に相談しても、指導してもらうことはできないのです。

この法律は、あっせん、労働審判、訴訟での基準を示しているにすぎません。

結局、労働契約法が労働者を保護する役割は、範囲が限定されているといえます。

 

2019.06.19. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法での使用者の定義>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法第10条〕

ここに書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。

「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

<社外にもいる使用者>

「使用者」というと、会社の中にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法第10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

労働基準法の定義している「使用者」の範囲は、意外と広いのだということを覚えておきましょう。

 

2019.06.18. 解決社労士 柳田 恵一

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。

その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。

法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。

そのため、いくつもの解釈が成り立ちうることがあります。

これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そこで、行政通達を発することによって、行政機関が法令の解釈・運用・取扱の基準とすることができるようにしているのです。

 

<行政通達の効力>

行政通達は、あくまでも行政機関内部の指針です。

国民の権利・義務を直接に規律するものではありません。

しかし、たとえば労働基準監督署が企業の監督に入り指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。

ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

これを裏から言えば、企業が確信をもって裁判で争う気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2019.06.17. 解決社労士 柳田 恵一

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、昭和22(1947)年5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的に沿って規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人の偉い人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の保障です。〔憲法第25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法第26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法第27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法第28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法第29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法第30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法第25条〕

このように、憲法第25条から第30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法第27条第2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。

それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法第12条、労働契約法第3条第5項〕

 

2019.06.16. 解決社労士 柳田 恵一

<閣僚会議での方針決定>

令和元(2019)年6月4日、デジタル・ガバメント閣僚会議は、「 マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」を決定しました。

 

1.自治体ポイントの活用

2.マイナンバーカードの健康保険証利用

3.マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進等

4.マイナンバーカードの利便性、保有メリットの向上、利活用シーンの拡大

5.マイナンバーカードの安全性や利便性、身分証明書としての役割の拡大と広報等

6.マイナンバーの利活用の推進

 

以下に身近なものをピックアップします。

 

<デジタル・ハローワーク・サービスの推進>

 

【ハローワーク・サービスのデジタル化】

本年度より、マイナンバーカード保持者の求職者給付の申請時の写真添付を不要とするとともに、教育訓練給付金について、マイナンバーカードによる認証で電子申請が可能であることを周知する。また、令和2(2020)年1月から、ハローワークインターネットサービスに「求職者マイページ」を新設し、ハローワークの職業紹介・職業訓練受講の履歴確認、マイナポータルとの連携などオンラインサービスを順次充実する。

 

【ハローワーク・サービスのデジタル化による長期のキャリア形成支援】

令和4(2022)年度以降順次、安全衛生関係各種免許、技能講習修了証明書、技能士台帳、ジョブ・カード等のデジタル化を進め、マイナポータルを通じてマイナンバーカードとの連携を図る。

 

<納税手続のデジタル化の推進>

 

【e-Tax等の自動入力情報の拡大】

令和2(2020)年10月より、年末調整・確定申告手続に必要な情報(保険料控除証明書、住宅ローン残高証明書、医療費情報、寄附金受領証明書、収入関係情報等)について、マイナポータルを通じて一括入手し、各種申告書へ自動入力できる仕組みを開始し、順次入力情報を拡大する。

 

【確定申告等に関するマイナポータルのお知らせ機能の積極的活用】

確定申告等に関する情報や各種説明会の開催案内等について、マイナポータルからの閲覧を可能とする。

 

【電子納税証明書の利用拡大】

電子納税証明書の交付手段の拡大を図るとともに、金融機関等における電子納税証明書の利用拡大に向け、引き続き、業界団体に対して協力要請等を実施する。

 

<建設キャリアアップシステムとの連携>

 

マイナンバーカードでも建設キャリアアップシステムを利用できるよう措置するとともに、登録情報の自動入力等、同システムとマイナポータルとの連携を推進する。また、建設キャリアアップシステム等を活用して、外国人建設労働者の適正就労等を推進する。

 

<各種カード、手帳等との一体化等によるデジタル化の推進>

 

健康保険証利用のほか、お薬手帳、ハローワークカード、ジョブ・カード、教員免許状等との一体化等により、デジタル化を推進するとともに、運転経歴証明書、障害者手帳等、各種カード、書類等についても、マイナンバーカードとの一体化等を検討する。

 

2019.06.15. 解決社労士 柳田 恵一

<試用期間の低賃金>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなど、試用期間だけ労働条件が異なるパターンは多いですね。

ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。

「月給 ÷ 所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

所定労働時間が決まっていないなど、法令を無視した条件を設定しないように注意したいものです。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。

解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。

しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

なお、14日以内なら無条件で解雇できるわけではなく、解雇の厳密な条件を満たしていなければ、不当解雇となって、会社が損害賠償責任を負うことは言うまでもありません。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、不当に人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。報告・連絡・相談を怠らないこと」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退する方もいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2019.06.14. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分の種類>

民間企業での懲戒処分の種類は、会社によって名称が違うものの、一般的には次のようなものです。

  • 懲戒解雇
  • 諭旨解雇 ― 自主的に退職を申し出てもらうよう促します
  • 降格
  • 出勤停止
  • 減給
  • 譴責(けんせき)― 始末書を提出して反省してもらいます

 

<懲戒処分の制限>

就業規則や労働条件通知書に具体的な規定があることが大前提です。

就業規則がなくて、新人に労働条件通知書も交付していない会社であれば、何も懲戒処分ができません。〔労働基準法第89条〕

こうしたルールが事前に表示されていないのに懲戒処分が行われたなら、使用者と労働者の関係ではなく、王様と奴隷の関係になってしまいますから当然のことです。

減給には、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、また、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。〔労働基準法第91条〕

賞与から減額する場合も同じです。

たとえば月給の総支給額が平均30万円なら、平均賃金の1日分は約1万円ですから、1つの減給処分でできる減給は約5千円です。もし、いくつもの懲戒理由が重なって、いくつもの減給処分が重なっても、約3万円までとなります。これを超える減給は、労働基準法違反となります。

 

<懲戒処分の比較>

懲戒解雇と諭旨解雇とでは、就業規則で退職金の支払い額に差を設けていることが多いので、退職金の支払いがゼロとなりうる懲戒解雇が最も重い処分ということになります。

降格という処分は微妙です。あえて懲戒処分にしなくても、人事考課で評価を下げるとか昇進を停止するとか左遷するなどによって同様の効果が得られるので、あえて懲戒処分とする必要性は疑わしいものです。ただし、人事考課を含めきちんとした人事制度がない会社では懲戒処分も必要でしょう。

減給については、労働基準法の制限が厳しいですから、出勤停止のほうが重い処分になります。たとえば、1週間の出勤停止であれば給与からそれだけの欠勤控除ができます。

譴責の効果は、対象者によって大きく異なります。普段から、事務職で文書作成を業務としている社員にとって、始末書の作成はあまり負担になりません。減給1,000円のほうが辛いでしょう。しかし、普段全く文書を作成しない社員にとって始末書の作成は大きな負担となります。減給1万円のほうが楽かもしれません。

 

<どの懲戒処分を選ぶか>

基本的には就業規則の定めに従うことになります。しかし「懲戒解雇とする。ただし、本人が深く反省しているなど情状酌量の余地があるときは、諭旨解雇または降格にとどめることがある」などと幅を持たせる規定も多く見られます。

こうした場合には「どうして一段下の懲戒処分ではダメなのか」ということを、よく考えて決めることになります。対象者によっては、減給より譴責のほうが辛いということもあるのですから、よく考えて一段軽い処分を選択するのも効果的でしょう。

 

2019.06.13. 解決社労士 柳田 恵一

<法律の規定>

健康保険法には次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

 

厚生年金保険法にも次の規定があります。

 

【保険料の負担】

第八十二条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。

 

こうして社会保険料、つまり健康保険料と厚生年金保険料は、労働者と雇い主とで半分ずつ負担することになります。

ただし、建設業で土建組合に加入している企業の場合には、健康保険ではなく土建国保に加入することとなり、その企業の判断により、労使折半であったり全額が労働者の負担であったりします。それでも、厚生年金保険料は労使折半です。

 

<労働者の全額負担>

法律の規定にもかかわらず、「社会保険への加入を望むなら、保険料は全額自己負担」という違法なことをしている企業があります。

こうした企業では、経営者が自己の取り分を増やそうとして、このような違法を貫いているのでしょうか。

たしかに、労働者が社会保険に加入すれば、会社の負担も増えることになります。しかし、会社はこの負担も計算に入れたうえで、月給や時給を設定するのではないでしょうか。

15年前には、社会保険に入りたがらないフリーター(有期フルタイム労働者)が多くいて、採用面接をしていても社会保険加入の説明をすると辞退してしまうことがありました。とにかく手取り収入を増やしたいということだったのです。

今では、老後の生活に対する不安もあってか、社会保険に加入できないことがリスクだと考えられるようになっています。

「社会保険に入りたかったら、保険料は全額自己負担」という違法な取り決めも、昔は労働者のニーズに適合した部分があります。

しかし、今やブラック企業として敬遠されています。

求人広告には高めの時給を示しておきながら、社会保険料は全額自己負担というやり口は、いかにもブラック企業です。

会社が社会保険料の半分を負担していては、会社の経営が成り立たないのであれば、その会社は遵法経営ができないということであり、その会社が存在していることの社会的意義が問われてしまいます。

社会保険料を全額自己負担にしている経営者の方や、そうした会社で勤務している方々には、労使折半にできる工夫をしていただきたいです。どうしても、改善できないのであれば、その事業を継続することの意義を再確認していただきたいです。

 

2019.06.12. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒処分の目的>

懲戒処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

1.懲戒対象者への制裁

懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとする。

2.企業秩序の回復

会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにする。

3.再発防止と労働者の安心

社員一般に対してやって良いこと悪いことの具体的な基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持する。

 

1.の目的からすると、懲戒処分の対象事実や処分の内容を公表する必要はありません。

しかし、公表しなければ2.と3.の目的が果たされませんから、ある程度公表することは必要です。

 

東京地裁の判決で、「懲戒処分は、不都合な行為があった場合にこれを戒め、再発なきを期すものであることを考えると、そのような処分が行われたことを広く社内に知らしめ、注意を喚起することは、著しく不相当な方法によるのでない限り何ら不当なものとはいえないと解される」としています(東京地裁平成19年4月27日判決 X社事件)。

 

<名誉毀損の問題>

懲戒処分の対象となった事実や懲戒処分の内容を公表した場合に、それが真実であれば会社が責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉毀損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、真実であろうとなかろうと名誉を毀損することは犯罪になるということです。

こうして犯罪が成立しうるということは、損害賠償請求の対象ともなりうるということです。

 

東京地裁の判決で、懲戒解雇の事実や理由を公表することが適法とされるためには、公表行為が「その具体的状況のもと、社会的にみて相当と認められる場合、すなわち、公表する側にとって必要やむを得ない事情があり、必要最小限の表現を用いて事実をありのままに公表した場合に限られる」としました(東京地裁昭和52年12月19日判決 泉屋東京店事件)。

そもそも、懲戒処分が労働契約法第15条により無効とされた場合は、公表が名誉毀損等の不法行為に当たることが多いといえます。

 

<必要最小限の社内公表>

前掲の泉屋東京店事件判決の基準によると、公表する側にとって必要やむを得ない事情があり、必要最小限の表現を用いて事実をありのままに公表した場合に限り許されることになります。

まず、懲戒処分対象者の氏名そのものや、所属・性別・年代など個人を特定できる情報は、これを公表することによる名誉権侵害は著しいので、基本的には許されません。ただ、懲戒処分を行う目的を果たすために、個人の特定が必要不可欠であるような例外的な場合にのみ許されます。

つぎに、懲戒処分の内容を公表することも、懲戒処分の目的である企業秩序の回復、再発防止、労働者の安心を図るために一定の範囲内で必要性が認められます。しかし、懲戒処分の理由を具体的に記載することにより、個人の特定が可能となってしまう場合には、やはり名誉毀損となる恐れが強まります。

さらに、被害者がいる場合には、被害者の名誉に対する配慮も必要となります。セクシャルハラスメントの事案で、ある程度詳細な事実を公表することで、処分対象者と被害者両方が特定されてしまい、被害者の名誉権が侵害されることにもなります。

 

<会社が責められないために>

就業規則には、懲戒処分の社内公表に関する規定を設けておくことが必要です。規定さえあれば、許されるわけではないですが、こうした規定があることは、裁判でも公表が相当であるという判断に傾く一要素となりえます。

また、公表の内容としては、「就業規則第◯条第◯項の『○○○○』に該当したため、第◯条第◯項の手続きに従い、第〇条第〇項の処分が行われました」というものに留めるのが得策です。

さらに、公表の方法としては、社内のイントラネットなどで「社外秘」として、1週間程度に期間を限定して行うという配慮も必要です。

 

2019.06.11. 解決社労士 柳田 恵一

<出向の意味>

「出向」とは、他の企業の指揮監督下で労務を提供する形態の雇用契約です。

元々在籍している企業を「出向元(しゅっこうもと)」、実際に勤務している企業を「出向先(しゅっこうさき)」と言います。

出向元から見て、他の企業に出向することを「出出向(でしゅっこう)」と言います。

反対に、他の企業から受け入れている出向を「入出向(いりしゅっこう)」と言います。

また、籍を元の企業に置いたまま他の企業に出向する「在籍出向」と、元の企業の籍を失って他の企業に出向する「転籍出向」とがあります。

「在籍出向」では、出向元・出向先の両方との間で雇用契約が成立しています。2つの契約には矛盾が生じうるので、これを調整するため、一般には出向元と出向先の間で出向契約という契約が交わされます。

「転籍出向」では、出向元との雇用契約が解消され、出向先との雇用契約のみになります。元の企業に戻る可能性は、その企業のルールや慣行によります。

厄介なことに、これらすべてが一口に「出向」と呼ばれます。

しかも「出向」と言った場合に、どの「出向」を指しているかは企業によって異なります。

 

ここでは、最も一般的な在籍出向に限定して述べます。

 

<出向命令の根拠>

出向元が従業員に出向を命ずる根拠は、就業規則や労働条件通知書に記載されているのが一般です。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

【人事異動】

第8条  会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。

3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

 

こうした規定が無ければ、出向命令はできないのですが、会社と従業員とが新たに合意して出向契約を交わすことは可能です。

 

<出向拒否の根拠>

労働契約法は、懲戒や解雇と同様に、権利の濫用にあたる場合には無効であることを規定しています。

 

【出向】

第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

ここで、「その他の事情」には、出向後の労働条件の説明、不利益変更の有無、出向命令を受けた従業員の個人的な事情などが含まれます。

先ほどのモデル就業規則第8条第3項と併せて読むと、次のような事情があれば、出向拒否をする正当な理由があるということになります。

 

【出向拒否の正当な理由】

1.業務上の必要が無い

2.他の不当な動機・目的をもって出向命令が行われた

3.出向後の労働条件の説明が無い

4.出向により賃金の減額など労働条件が不利益に変更される

5.個人や家庭の事情により出向に対応できない

 

<1.業務上の必要>

企業は、関連会社との人材交流、出向者の技術取得、現場経験、あるいは出向先での技術指導を行わせるなどの必要から、出向を命じます。

慣例として、ローテーションで出向命令が出されているようなケースでは、これに該当することが多いでしょう。

しかし、業務上の必要の判断は、一般には企業側に裁量権があります。

 

<2.他の不当な動機・目的>

社長の個人的な恨み、組合活動への報復、年次有給休暇の取得が多いなどの理由で出向命令が出された場合には、出向命令に正当な目的がありませんから、権利の濫用となり無効となります。

 

<3.4.出向後の労働条件>

出向後の労働条件について、対象者に個別あるいは説明会で具体的に説明する必要があります。

就業規則に詳細を定めてしまえば、対象者への説明はかなりの部分が省けます。

労働条件の不利益変更については、一般の場合と同様に、個別の同意を得るか就業規則の定めが必要となります。

ただし、著しい不利益変更であれば、本人の同意があっても、権利の濫用や公序良俗違反(民法第90条)とされ無効になることもあります。

 

<5.個人や家庭の事情>

たとえば、育児介護休業法には次の規定があります。

 

【労働者の配置に関する配慮】

第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

 

企業は、子の養育や家族の介護に大きな支障が出ないように配慮をすることが必要です。

そして、可能な措置を尽くしても、なお大きな支障が出るのであれば、出向を拒否されても仕方が無いことになります

この他、出向者本人の生活に大きな支障が出る場合、たとえば勤務そのものが困難であるとか、持病の治療が継続できなくなるなどの正当な理由があれば、出向を拒否することに正当な理由が認められます。

 

企業が出向命令を出すには根拠規定が必要なこと、出向者に対する説明と出向者からの聞き取りも必要なことを忘れないようにしましょう。

出向拒否があっても、就業規則の規定だけを見て懲戒や解雇を検討してはならないのです。

 

2019.06.10. 解決社労士 柳田 恵一

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、重い職務専念義務が課されています。

ですから、ほとんどの場合はダブルワーク禁止です。

親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

民間企業では、会社が給与を支払っています。

ですから、社員が自社の職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、厳しい態度を取る必然性はありません。

 

<ダブルワークの理由>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。

こうした人たちは、会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと考えています。

しかし中には、別の仕事もしてみたい、家業を手伝いたい、別の分野で自分の能力を高めたい、将来の独立に向けて準備したいなど考えている人もいます。

働き方改革の流れで、政府は副業・兼業を推奨していますから、ダブルワークを希望する人は今後も増えるでしょうし、企業も対応を迫られています。

 

<ダブルワーク禁止の理由>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。これを参考に、社内規定を調えてはいかがでしょうか。

 

【副業・兼業】

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

就業規則で「ダブルワーク禁止」としたり、社員に「ダブルワークしません」という念書を提出してもらったりした場合、これらは有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力が無いということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて有効になるというわけではありません。

実際に有効とされるためには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

 

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

 

これらの条件は、労働契約法第15条・第16条によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、アルバイトなどの活動は、本来の入国目的とは異なるということで制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2019.06.09. 解決社労士 柳田 恵一

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴を偽ることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。これにならって、就業規則に採用取り消しや懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題は無いのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。やはり、人事異動を考えるべきでしょう。

 

2019.06.08. 解決社労士 柳田 恵一

<社員紹介制度(リファラル採用)>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払いが行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度は、労働基準法に違反する場合があります。

 

【中間搾取の排除】

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

ここでいう法律とは、通達によると、職業安定法や船員職業安定法です。

また、業として利益を得るというのは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいうものと解されています。

いわゆるピンハネを禁止する規定です。

この規定に違反した場合の罰則は、労働基準法上2番目に重い、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。ともすると、人身売買につながり得るとの配慮から、こうした重い罰則となっています。

もっとも、社員紹介制度をそこまで大々的に展開することは稀でしょうから、一般の企業で、労働基準法違反は起こり難いと思われます。

 

しかし、注意しなければならない法的規制として、職業安定法の次の規定があります。

 

【報酬の供与の禁止】

第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

 

この中の第36条第2項は、従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとする場合をいいますから、従業員を対象とする社員紹介制度は含まれません。

「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」と言っていますから、商品券など物品の進呈はいけません。

従業員が紹介により得られる報酬は、賃金として支払われる制度にすることが必要です。

 

<就業規則の規定>

紹介者には賃金が支払われるのですから、給与や賞与にプラスして支給される内容を就業規則に規定する必要があります。

基本給や本来の賞与額に比べて相当に高額であると、「業として利益を得る」ことになり、労働基準法第6条に違反する恐れが出てきます。1回の紹介に対する謝礼の他、1人の従業員が紹介できる人数に制限を設ける必要もあるでしょう。特定の従業員の知り合いが多数集まると、派閥形成のリスクもあります。

また、支給の時期については、紹介があったとき、紹介された人が採用されたとき、採用されて6か月など一定の期間定着したときなどが考えられます。各時点で異なる金額を支給する制度も可能です。

 

2019.06.07. 解決社労士 柳田 恵一

<休職中の社会保険料>

休職中で賃金の支払いが無くても、通常通り社会保険料を納付しなければならず、会社と社会保険加入者(被保険者)とで折半します。

雇用保険の場合には、月々の賃金に対する一定割合として計算されますから、賃金の支払いが無ければ保険料も発生しません。

しかし社会保険料は、標準報酬月額という基準額に対する一定割合として計算されますから、賃金が発生しなくても保険料が発生するのです。

 

<9月分からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、原則として、毎年4月から6月までの賃金支払い実績から計算されます。

その年の4月から6月までの賃金支払い実績が、その時の標準報酬月額の水準より高ければ、9月分の保険料は高くなった新しい標準報酬月額を基準に計算されます。

そして、9月分の社会保険料は、一般には10月支給分の賃金から控除されます。この時から、社会保険料が増えることになります。

ですから、7月以降に休職が始まった場合には、「休んでいるのに10月から社会保険料が増えた」という現象が生じます。

人手不足で残業代が増える一方、長時間労働で疲労が蓄積して病に倒れ入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

<昇給して5か月目からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、「標準報酬月額保険料額表」という表に定める基準で、2ランク以上アップすることになると、昇給の5か月目から社会保険料が増額されます。

たとえば、11月に支給された賃金から増えたとすると、11月から翌年1月までの賃金支払い実績をもとに、2月からの新しい標準報酬月額が決定されます。2月分の保険料は、3月に徴集されるのが一般ですから、11月から数えて5か月目に保険料が増額されることになります。

3月に休職が始まった場合には、3月に徴集される保険料から増額されますから「休職したら保険料が増えた」という感覚に陥ります。

昇進して忙しくなり責任も重くなって、体調を崩し入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

2019.06.06. 解決社労士 柳田 恵一

<労働時間・休憩時間の定義>

労働基準法には、休憩について次の規定があります。

 

【休憩】

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

労働基準法の中に「労働時間」「休憩時間」の定義はありません。

このため、会社が独自の解釈で労務管理や賃金計算を行っている場合があります。

たとえば、業務で着用が決められている制服に着替える時間を労働時間から除いていたり、お弁当を食べながらの電話番を休憩時間として扱っていたりという違法な運用も見られます。

その結果、労働基準監督署の調査(臨検監督)が入れば、その違法性を指摘され、すぐに是正するよう求められます。

 

<通達の役割>

労働基準監督署が企業を指導するにあたって、「労働時間」「休憩時間」の定義があやふやであれば、企業側が納得できません。

そのため、法令解釈の基準として次のような通達が示されています。

 

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。〔平29.1.20 基発第3号〕 

 

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱う。〔昭22.09.13発基第17号〕

 

これらの通達は公表されていますから、ネットで調べるなり、所轄の労働基準監督署に問い合わせるなりすれば、比較的容易に内容を知ることができます。

 

<判例の役割>

上の通達によっても、従業員が社外で市場調査の業務を行い、そのまま帰宅した場合には、どこまでが「使用者の指揮命令下にある時間」といえるのかが不明確です。

また、昼休みであっても、業務上の必要に応じて電話で呼び出せる状態では、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とはいえないのかという疑問も生じます。

このため、会社が休憩時間として扱った時間を、従業員や退職者が労働時間であると判断し、会社を相手に未払い賃金の請求訴訟を提起するということが起こります。

会社は、訴訟代理人の弁護士を選任するでしょう。そして、依頼された弁護士は、事実関係、使える証拠、条文、通達、過去の裁判例などを確認します。

過去の判決などは、最高裁判所のホームページで参照することができます。

しかし、今回の事例にどの判例があてはまるのか、この判例の射程はどうなのか、会社が準備できる証拠によって主張できるのはどこまでかなど、難しい判断を迫られます。

 

<企業としての対応>

欲を言えば、社内に専門部署を置いて、法改正、新たな通達、新判例の情報を随時吸収し、社内の問題点を改善していきたいものです。

新たな判例が、いままでの判例や通達を覆すということもありますから、判例の研究には重点を置かなければなりません。

しかし、こうした体制が取れない場合には、労働問題に詳しい社会保険労務士を顧問に置いて、トラブルの発生を未然に防止する。万一トラブルが発生したら、労働事件に対応できる弁護士と連携させるというのが現実的でしょう。

社会保険労務士の中には、手続きを専門として活動している先生もいます。弁護士の中には、労働事件を扱わない先生もいます。その先生の専門をよく確認したうえで選ぶと良いでしょう。

 

2019.06.05. 解決社労士 柳田 恵一

<始末書を提出させる意味>

始末書の目的は、事実の報告、発生の原因分析、謝罪、具体的な再発防止策の提示です。

この中に謝罪が含まれないものは、単なる報告書あるいは顛末書ですから、上司の判断で部下に提出を求めることができます。

しかし、謝罪が含まれるものは始末書ですから、懲戒処分として提出を求めることになります。これは上司の判断で行えるわけではなく、就業規則に譴責(けんせき)処分などの具体的な規定があって、懲戒処分の適正な手続きに従い、会社の代表者が提出を命じることになります。

上司だけの判断で部下に始末書の提出を求めることは、職場での優越的な関係を背景として業務上必要相当な範囲を超えたことを行わせることになり、パワハラに該当するのが一般です。

 

<「いかなる処分もお受けします」の法的効力>

(懲戒)処分は、就業規則に具体的な規定があって、適正な手続きに従い行われるものです。

どのような行為が対象となるのかが不明確な状態で懲戒処分が行われれば、客観的に合理的な理由を欠いているので、懲戒権の濫用となり無効となります。

このことは、労働契約法第15条に規定されています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、始末書に「いかなる処分もお受けします」と書いたところで、就業規則の規定を超える処分は無効となってしまうのですから、この記載も無効ということになります。

また、「相応の処分を受ける覚悟でおります」などの記載は、当たり前のことを書いたに過ぎませんから、書いても書かなくても効力に違いはありません。

 

<裁判での効果>

従業員が何度も就業規則違反を行い、何度も始末書を書かされ、ついには懲戒解雇となったとします。

これを不服として、解雇された人が訴訟を提起した場合には、会社から不当解雇ではないことの証拠資料を提出することになります。

実際には、会社が不当解雇ではないことの証拠を揃えておくことは大変で、顧問の社会保険労務士などと相談して、解雇の相当前から準備しておかなければなりません。

会社は証拠資料として、裁判所に始末書も提出することになります。

そこに「いかなる処分もお受けします」と書かれていたら、裁判官は会社に対して良い印象を持ちません。懲戒権の濫用があるのではないかと疑ってしまいます。

そして、民事訴訟法には次の規定があります。

 

【自由心証主義】

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

日本の民事訴訟では、何が証拠となるかについて法令に網羅されているわけではなく、裁判所の自由な心証に委ねられているのです。

この自由心証主義によって、会社側から証拠として提出した始末書が、解雇された側に有利に働くことがあるわけです。

つまり法的効力の無い「いかなる処分もお受けします」の記載が、会社にとってマイナスとなりうるのですから、こうした言葉の入った始末書が提出されたら、再提出を求めるべきです。

 

<始末書は必要か>

さて、始末書は本当に必要でしょうか。

会社にとって役立つのは、事実の報告、発生の原因分析、具体的な再発防止策です。特に再発防止に向けた具体的な取組みは、大いに役立つでしょう。

謝罪の部分は、会社側つまり経営者、人事部門、上司の気が済む程度の効果しかありません。しかも、そこに本心が書かれているとは限りません。本人の反省の程度とは無関係です。

こうしてみると、上司から報告書の提出を求めた方が現実的ではないでしょうか。

裁判になっても、この報告書からルール違反の事実は認定できますし、裁判所の心証を害することもありません。

就業規則に始末書に関する規定があるのなら、その必要性を再検討することをお勧めします。

 

2019.06.04. 解決社労士 柳田 恵一

<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

 

【委任】

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

ここで、当事者の一方は会社であり、相手方は役員です。

つまり、会社が役員に法律行為を委託し、役員が会社に承諾して効力が発生します。

「法律行為」というのは、権利の発生・変更・消滅を望む意思で行うことにより、その通りの効果を生じさせるものをいいます。

 

<兼務役員の立場>

役員として、会社との間で委任契約を締結したからといって、雇用契約を重ねて契約できなくなるわけではありません。

雇用契約についての基本的な規定は、民法にあります。

 

【雇用】

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

会社との間で役員として契約し、同時に労働者としても契約している人のことを、兼務役員といいます。

会社からは、役員報酬と給与の両方が支給されます。

労働者としての立場では労働基準法などの保護を受ける一方で、役員としての立場では労働基準法などの保護が受けられず、会社法などに定められた重責を負うことになります。

兼務役員の行動が、役員としてのものか労働者としてのものか、明確に区分することが困難な場合も多々ありますが、会社は労働者として勤務している部分について、労働時間の適正な把握が義務付けられています。

つまり、この部分については、出勤簿が必要ということになります。

 

<名ばかり役員の立場>

役員として登記されているにもかかわらず、それに相応しい権限を与えられず、取締役会に出席することもないという「名ばかり役員」がいます。

こうした人は、100%労働者ですから、労働基準法などが適用されます。

つまり、出勤簿が必要です。

 

<健康保険と労働保険>

傷病手当金など健康保険の給付は、純然たる役員にも、兼務役員にも、名ばかり役員にも権利があります。

出勤簿が無い場合でも、別の資料から役員として、あるいは労働者としての活動があった日、休業した日は判りますから、手続きをするのに困らないはずです。

純然たる役員には、労災保険も雇用保険も適用がありません。

兼務役員には、労働者の部分について、労災保険・雇用保険が適用されます。兼務役員になったときは、ハローワークで手続きが必要です。給付が受けられるのは、労働者としての立場に基づく部分に限られます。

名ばかり役員は、労災保険も雇用保険も適用されます。

ただ困ったことに、会社は労働基準法や労働保険などの適用を排除し、不当に会社の負担を減らそうとしていることが多いものです。

名ばかり役員の立場を1日も早く解消するため、専門家へのご相談をお勧めします。

 

2019.06.03. 解決社労士 柳田 恵一

<性別による差別の禁止>

事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。〔男女雇用機会均等法第5条〕

また、事業主は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけません。〔男女雇用機会均等法第6条〕

労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています(男女同一賃金の原則)。〔労働基準法第4条〕

 

<間接差別の禁止>

事業主が以下の措置を行うことは、実質的に一方の性に不利益となって、性別を理由とする差別となるおそれがあるため、合理的な理由がない限り、間接差別として禁止されています。〔男女雇用機会均等法第7条〕

・募集・採用にあたり身長、体重または体力を要件とすること

・コース別雇用管理における総合職の募集・採用にあたり転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること

 

<セクシュアルハラスメント対策>

セクシュアルハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否・抵抗などしたことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)」及び「性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」をいい、女性、男性ともに対策の対象となります。

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずる義務があります。〔男女雇用機会均等法第11条〕

LGBTについての認識も高まっていますから、同性しかいない場所や同性間でのセクハラにも対応する必要があります。

 

<ポジティブ・アクション>

過去の女性労働者に対する取り扱いなどが原因で、職場に生じている男女間格差を解消する目的で、女性のみを対象としたり、女性を有利に取扱う措置については法違反とはなりません。〔男女雇用機会均等法第8条〕

また、このような格差の解消を目指して雇用管理の改善について企業が自主的かつ積極的に取り組みを行う場合、国が援助できる旨の規定が設けられています。〔男女雇用機会均等法第14条〕

 

2019.06.02.  解決社労士 柳田 恵一

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は、事業者に、仕事が原因で労働者が事故にあったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。

ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法第66条〕

また最近では、仕事のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤によって病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

社会保険や雇用保険は、従業員一人ひとりについて、個人ごとに手続きをしないと保険に加入しません。

しかし、労災保険は雇われると同時に保険に加入しますので、個人ごとの手続きは要りませんし、保険料は雇い主側の全額負担となります。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法第715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を追及される裁判も増えています。〔会社法第429条1項〕

 

2019.06.01. 解決社労士 柳田 恵一

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低額が、時間単価で定められています。〔最低賃金法〕

これは原則として都道府県単位で定められていて、政府は全国平均が1,000円以上となるように引き上げる方針です。

最低賃金は、毎年のように改定されています。改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

外国人であっても、日本国内で働いている労働者は、ごく一部の例外を除き、この最低賃金を守ることが必要です。

たとえ労働者が同意しても、基準より低い賃金は認められません。

法律によって、使用者は最低基準額で計算した賃金支払義務を負うことになります。

最低賃金法違反で書類送検された使用者のニュースは、ときどき報道されていますので、現に最低賃金に満たない賃金が支払われることもあるわけです。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

平均賃金は、世間相場とは関係なく、対象者の過去の賃金を基準として法令に従って計算されます。

また、複数回規律違反をしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払い方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法第24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。

これ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

また、年次有給休暇を取得すると賃金が減少する、残業代の一部がカットされる、残業代に上限が設けられるなども、全額払いの原則に違反します。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2019.05.31. 解決社労士 柳田 恵一

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。会社から多くの社員が葬式に参列しました。ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2019.05.30. 解決社労士 柳田 恵一

<揺れ動く判断基準>

従業員が不都合な行動に出た場合、それが就業規則に定められた禁止行為であったり、義務違反であったりして、個々の具体的な懲戒規定に当てはまるものであれば、懲戒処分を検討することになります。

しかし、人手不足の今、たとえ従業員の落ち度であっても、けん責処分、減給処分、出勤停止などすれば、気を悪くして退職してしまい、会社に大きな痛手となるかもしれません。

こうして、人手が余っているときには懲戒処分が多発し、人手不足の場合には多少のことに目をつぶるという企業の態度が見られることもあります。

一方で、従業員の方も、人手が余っているときには品行方正を保ち、人手不足のときには強い態度に出るということがあります。

 

<情状酌量の考え方>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

 

(懲戒の事由)

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

本来は懲戒解雇に該当するような行為があっても、平素の服務態度その他の情状によっては、減給や出勤停止にとどめることがあると規定しています。

ここでの「情状」は、あくまでも懲戒対象者個人の情状です。

また、重大な過失により会社に重大な損害を与えたが、ミスがあってはならない仕事を1人の従業員に任せていて、チェック体制が整っていなかったというような事情があった場合には、会社側にも落ち度があって、従業員だけに責任を負わせるわけにはいかないので、こうした事情を斟酌して情状酌量するということがあります。

 

<懲戒処分の有効性>

懲戒処分の有効性については、労働契約法に次の規定があります。

 

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

無効とされれば、懲戒処分から生じた従業員の損害は、慰謝料を含め会社に請求されることとなります。

裁判にでもなれば、従業員の会社に対する信頼や、世間からの評判は大いに低下することでしょう。

人手不足のときに懲戒処分の対象とせず見逃していた行為を、人手が足りているときに懲戒処分の対象としたなら、これは会社側の都合でそのようにしたわけであって、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」であることは否定されてしまいます。

人手不足のときに軽い懲戒処分、人手が足りているときに重い懲戒処分というのも同様です。

どちらも、その懲戒処分は無効になってしまいます。

 

<ご都合主義の排除>

その時々の社内事情により、懲戒処分の判断基準を変えてしまうことは危険です。

なぜなら、過去に許されていた行為が許されないと判断されたり、過去に軽い処分で済んでいた行為が重く処分されたりというのは、労働契約法第15条により無効になってしまうからです。

会社が「人手不足だから多少のことは大目に見る」という態度を取っていれば、従業員は足元を見てしまい、会社の規律は保たれなくなります。これでは労働生産性が低下してしまいます。

人手不足だからこそ、懲戒規定の運用は厳格にしなければなりません。

 

2019.05.29. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<慶弔休暇の性質>

慶弔休暇は、自分自身や近親者の慶事(結婚・出産)、近親者の弔事(葬式)の際に取得できる休暇のことです。これについては、労働基準法などに規定がありません。法定外の特別な休暇です。

そのため、慶弔休暇の内容については、各企業で自由に定められてきました。

しかし、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由について説明を求められうることになったわけです。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

 

<慶弔休暇に差を設ける合理的な理由>

会社に全く慶弔休暇の制度が無いとしても、これは違法ではありません。

あくまでも、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由に合理性があるかという形で問題とされるのです。

これは、働き方改革の一内容である同一労働同一賃金の視点からの規制です。

慶弔休暇の必要性については、所定労働日数が正社員など一般の労働者と同じであれば、パート・有期労働者であっても否定のしようがありません。

また、勤続年数や1日の所定労働時間、役職などによって、その必要性に違いが生ずることもほとんどありません。

ですから、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して、一律に一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

 

<企業の取るべき対応>

週所定労働日数が2~3日であれば、結婚式や葬式などが出勤日と重なる可能性は低いでしょう。それだけ、慶弔休暇を与える必要性も低くなります。

慶弔による休みが必要になった場合には、勤務日の振替で対応することを原則とし、対応し切れないときに慶弔休暇を与える制度にすることは、決して不合理ではありません。

これは、有期雇用・無期雇用による差別でもなく、1日の所定労働時間による差別でもありません。同一労働同一賃金の趣旨に反してはいないのです。

しかし、これを理由に、一部の従業員の慶弔休暇が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実態を把握するために従業員への聞き取り調査を行い、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.28. 解決社労士 柳田 恵一

<事業主の義務>

高年齢者雇用安定法第9条は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、事業主の高年齢者雇用確保措置について、次のように定めています。

 

第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ

二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

三 当該定年の定めの廃止

 

<定年年齢の変更>

定年年齢を65歳未満としている事業主が、高年齢者雇用確保措置として、定年年齢の変更を選択する場合には、定年年齢を65歳以上に引き上げるか、定年を廃止しなければなりません。

手続き的には、労働条件通知書の改定や、就業規則の変更、従業員への周知、所轄の労働基準監督署長への届出などが必要となります。

 

<継続雇用制度の導入>

現に雇用している高年齢者を、本人の希望によって、定年後も引き続き雇用する制度で、次のようなものがあります。

・再雇用制度 = 定年でいったん退職とし、新たに雇用契約を結ぶ制度

 一般には、労働条件の大幅な変更を伴います。

・勤務延長制度 = 定年で退職とせず、引き続き雇用する制度

 一般には、労働条件の大幅な変更を伴いません。

具体的な内容は、それぞれの会社の就業規則で定められますが、どちらの場合にも、退職金は定年年齢で支給されるのが普通です。

 

継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を対象とすることが必要です。希望者全員とは、定年後も引き続き働きたいと希望する人全員です。

とはいえ、就業規則に定める解雇・退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことについては客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられます。〔高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24 年厚生労働省告示第560号)〕

 

2019.05.27. 解決社労士 柳田 恵一

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

しかし、「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するという規定です。「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

 

<注意書きにも注意>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

面倒であれば、就業規則のプロフェッショナルである社会保険労務士にご用命ください。

 

2019.05.26. 解決社労士 柳田 恵一

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。

一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2019.05.25. 解決社労士 柳田 恵一

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続きへの非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

2019.05.24. 解決社労士 柳田 恵一

<通常の場合>

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています。〔労働契約法第17条第1項〕

期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

 

<長期勤続の場合>

また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条〕

ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。

 

<証明書の交付>

さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

これは、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条〕

明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。

たとえば、以下のような理由です。

・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため

・担当していた業務が終了・中止したため

・事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

 

2019.05.23. 解決社労士 柳田 恵一

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日ですが、今から対応が必要です。

なお、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<賞与支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに賞与を支給しているのであれば、賞与支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、賞与支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【賞与支払の一般的な理由】

会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待

 

これらの理由で賞与を支払っているのなら、正社員など通常の労働者に限定して賞与を支払っているのは不合理ですから、改めなければなりません。

なぜなら、会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待は、全従業員に共通ですから、一部の従業員に限定して賞与を支払うことは、客観的に合理的な説明がつかないのです。

もっとも、正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、「長期雇用への期待」という理由も合理性が認められます。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに賞与が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに賞与が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者だけが、半期に一度上司と面接して目標を設定し、この目標の達成度に応じて賞与が支給される。ただし、達成度が基準に達しないほど低ければ、職能等級が低下するなどによって、基本給も下がってしまうという待遇上の不利益が発生する。そして、新法対象者であるパート・有期労働者は、こうした仕組みの対象外であるから、時給が下がるようなことはない。

 

<企業の取るべき対応>

すでに賞与支給の理由が明確となっていて、一部の従業員だけに支給されているのであれば、その合理性を検討します。

客観的な合理性が無いのであれば、全従業員に同じ基準で賞与を支給することになります。

しかし、賞与の原資には限りがありますから、一部の従業員の賞与が減るのであれば不利益変更となります。個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実際には、賞与支給の趣旨があやふやなことも多いものです。

この場合には、顧問の社会保険労務士などと相談してうまく対応しましょう。

 

2019.05.22. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金倒産>

少し昔のことですが、企業が定年退職者の退職金を支払うことによって、倒産するという現象が生じました。

これは、第二次世界大戦直後の1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)に生まれた団塊の世代と呼ばれる人たちが、一斉に定年を迎えて退職することになり、企業が一度に多額の退職金を支払うことになったため、資金繰りができなくなって倒産したのでした。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の額)

第53条 退職金の額は、退職又は解雇の時の基本給の額に、勤続年数に応じて定めた下表の支給率を乗じた金額とする。

 

勤続年数

支給率

5年未満

1.0

5年~10年

3.0

10年~15年

5.0

15年~20年

7.0

20年~25年

10.0

25年~30年

15.0

35年~40年

20.0

40年~

25.0

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文によれば、たとえば勤続23年で退職する人の退職時の基本給の額が40万円であれば、40万円×支給率10.0=400万円というように、簡単に計算することができます。

しかし、同い年の人がたくさんいて、同時に定年退職すれば、同時に退職金の支払いが生じます。企業によっては、これに耐えられない場合もあるでしょう。

また、基本給30万円、役職手当8万円、資格手当2万円という給与であれば、総支給額は40万円でも、退職金を計算するときに、基本給30万円×支給率となります。

ところが、同じ総支給額40万円でも、40万円すべてが基本給なら、退職金を計算するときは、基本給40万円×支給率となります。

結局、その会社の社員の年齢分布や、給与体系などによって、会社の負担は大きく異なってくるわけです。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

本規程例では、退職金の額の算定は、退職又は解雇の時の基本給と勤続年数に応じて算出する例を示していますが、会社に対する功績の度合い等も考慮して決定する方法も考えられることから、各企業の実情に応じて決めてください。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして活用>

注意書きにあるように、「各企業の実情に応じて決めて」いれば安心です。

そのためには、規定を考えるときに、充分なシミュレーションをすることです。

現在の社員のうち、1年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、2年後に定年を迎える人たちの退職金合計額、3年後に定年を迎える人たちの退職金合計額…を計算します。また、新人の入社を想定して、その分も加えます。

こうして、毎年必要な退職金の額を計算してみて、自分の会社に無理の無い金額であればOKです。

退職金の方式は、基本給×支給率というものだけではありません。最近では、ポイントの積み上げ制を導入する会社も増えていますし、全く違うやり方もあります。是非「各企業の実情に応じて決めて」ください。

 

2019.05.21. 解決社労士 柳田 恵一

<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、わかりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

2019.05.20. 解決社労士 柳田 恵一

次の事項を理由に解雇することは、一部の例外を除き禁止されています。

 

・労働者の国籍、信条、社会的身分〔労働基準法第3条〕

・労働者の性別〔男女雇用機会均等法第6条〕

・労働者が労働基準監督機関に申告したこと〔労働基準法第104条〕

・女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと〔男女雇用機会均等法第9条〕

・個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたこと〔個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条〕

・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたこと

・労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたこと〔育児・介護休業法〕

・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等〔労働組合法第7条〕

・公益通報をしたこと〔公益通報者保護法第3条〕

 

ちょっと耳慣れない法律もありますが、すべては労働者を保護するための規定です。

中には、会社にとって不都合なことや、会社に逆らっているかのような内容もあります。

うっかり解雇を通告すれば、それは解雇権の濫用となって無効となるばかりではなく、慰謝料を含め未払い賃金など損害賠償請求の対象ともなりますので、くれぐれもご注意ください。

 

2019.05.19. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇の検討>

入社4年目の正社員が、ある時期から遅刻を繰り返すようになります。

上司が注意しても、ただただ謝るだけです。

定期健康診断の結果も正常ですし、同僚からの勧めもありメンタルクリニックで受診したのですが、正常の範囲内という診断でした。

それにしても全く仕事が手につかない様子です。

社長が直に面談してみたところ、個人的な悩みを抱えているとのことでしたが、具体的なことは何も話してもらえませんでした。

社長と上司が、就業規則を見ながら考え込んでしまいました。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(解雇)

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・働きぶりがあまりにもひどいこと

・普通に働けるようになるとは思えないこと

・社員としての役割を果たせないこと

この3つの条件を備えていたら、解雇もありうるということです。

ここでの解雇は、仕事での発揮能力の低下を理由とするものですから、懲戒解雇ではなくて普通解雇となります。

それにしても、「著しく」と言えるのか、「改善の見込みがない」のか、「職責を果たし得ない」のか、そのように断言できるのでしょうか。

 

<モデル就業規則の基本的な考え方>

厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の権利を侵害することが無いように、また違法な行為が行われないように配慮されて作られています。

特に解雇というのは、会社が労働者の権利を一方的に奪うことになりますから、慎重な規定になっているわけです。

しかし、会社がこの規定を根拠に解雇しようとして、裁判にでもなったなら、会社は「勤務状況が著しく不良」「改善の見込みがない」という証明をしなければ、勝ち目が無いでしょう。

 

<カスタマイズの方法>

こうした困ったことにならないようにするには、就業規則を次のように定めることです。

 

(解雇)

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

①  勤務状況が不良で、労働者としての職責を果たしていないとき。

 

会社としては、遅刻・欠勤・早退の事実を証明し、きちんと勤務できていないということだけ証明すれば良いのです。

このように言うと、簡単に解雇できそうですが、実際には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

会社としては、就業規則に最低限の条件だけを定めておき、余計な証明責任を負わないようにして、あとは実質的に見て、客観的で合理的な理由があるか、世間一般の感覚で考えてやむを得ないと言えるかを判断すれば良いのです。

むやみに解雇することはいけませんが、解雇のハードルを上げ過ぎて他の社員に迷惑がかかることがないように注意したいものです。

 

2019.05.18. 解決社労士 柳田 恵一

<突然の退職申し出>

入社2年目のエース社員から、社長に退職願が提出されました。

「今日は16日ですから、月末退職でOKですよね。」と何だかうれしそうです。聞けば大学の先輩を通じて、大手企業にスカウトされたとか。先月結婚したのも転職が決まったからだそうです。

社長としては、辞めてほしくないですし、せめてきちんと引き継ぎを終わらせてほしいです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職)

第50条 前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。 

①  退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して14日を経過したとき

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

よく見ると、退職を願い出て「会社が承認したとき」と書いてあります。では、会社が承認しなければ良いのでしょうか。

また、「14」には下線が引かれていますから、これを「100」に修正しても良いのでしょうか。

 

<注意書きに注意>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法(明治29年法律第89号)の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります(民法第627条第1項及び第2項)。

なお、月給者の場合、月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日が20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要があります(民法第627条第2項)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

特にここでは、労働基準法などではなく、民法の規定がポイントとなります。

 

<引き継ぎのポイント>

きちんと引き継ぎを完了させるには、次のようなことがポイントとなります。

・普段から退職や異動を想定して、短期間で引き継ぎを完了できるようにしておくこと

・退職にあたっては、引き継ぎを完了することが重要な業務であることを、就業規則にも明示しておくこと

・引き継ぎの拒否は、懲戒処分の対象となることを就業規則に規定すること

そして、年次有給休暇の取得を申し出たとしても、会社が時季変更権を行使できないような場合には、権利の濫用としてこれを拒否することが考えられます。ただ、円満に解決するには、年次有給休暇の買い取りも検討したいところです。

 

<突然辞められないためには>

これには地道な努力が求められます。つぎのようなことがポイントとなります。

・社員が自分の将来を思い描ける人事制度の構築(想定キャリアの明確化)

・経営理念の明確化と理解のための教育研修

・会社の魅力の抽出と社員へのアピール

・社員同士のコミュニケーションを密にし維持する仕組みづくり

 

2019.05.17. 解決社労士 柳田 恵一

<規制改革推進会議の動き>

令和元(2019)年5月10日、政府の規制改革推進会議が「働き方の多様化に資するルール整備について」を公表し、兼業・副業により複数の職場で働く人たちの労働時間管理について、現行制度の見直しを検討することを明らかにしました。

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図るために、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しましたが、大きな進捗が見られません。

この理由として、伝統的な日本の働き方に基づき、厳密な時間管理を求める旧来の労働法の制約が大きいのではないかと考えられています。

「働き方の多様化に資するルール整備について」では、改善の方向性が次のように示されています。

 

<副業・兼業の促進>

厚生労働省は、平成30(2018)年1月にモデル就業規則を改定し、届出により副業・兼業ができることを原則としました。

しかし、大半の企業は副業・兼業を原則禁止とする立場を変えていません。

 

<割増賃金の問題>

この理由の一つとして、複数の事業場での労働時間を通算し、合計の労働時間に対して、法定時間外労働の割増賃金の支払いが求められることが考えられます。

その根拠は、昭和22(1947)年に定められた労働基準法第38条です。

実際には、主たる勤務先の使用者が副業・兼業先での労働時間を通算するのは困難であり、労働者の自己申告を前提としても、この困難は解消されません。

また、法定時間外労働は「後から結ばれた労働契約」で発生するという解釈に基づき、副業での使用者が割増賃金を支払うことになっています。

ところが、法定労働時間の趣旨は、同一の使用者が過度に時間外労働に依存することを防止することにあり、現在の解釈は適切ではない面もあります。

 

<労働者保護の観点>

副業・兼業について労働時間を通算するとなると、労働者が法定時間外労働への制約を避けるため届出を怠ったり、業務委託(請負・委任)など雇用類似の「非雇用型」へと逃避したりする可能性があります。

これでは、労働者を保護するための労働基準法などが適用されないなど、望ましくない現象が生じてしまいます。

 

<健康管理の観点>

EU諸国では、労働者の健康確保のための時間規制と割増賃金制度とを切り離していて、副業・兼業で労働時間を通算する場合にも、割増賃金制度を適用していません。労働者の健康管理に焦点をあてて労働時間管理を行おうとしています。

日本では、これまで割増賃金制度が長時間労働を抑制するものとして機能してきました。しかし、労働者が自ら選択する副業・兼業の場合には、割増賃金制度適用のために、異なる事業主間で労働時間を通算するという解釈は見直すことが適当ではないかと考えられます。

 

<規制改革推進会議の提言>

労働時間の把握・通算を行う趣旨・目的を再定義し、以下の対応を行うべきではないか。

 

①上記の解釈の根拠となる1948年の通達を改定し、労働時間の通算規定は同一事業主の範囲内でのみで適用し、自己の自由な選択に基づき働く労働者を雇用する、他の事業主には適用しないこと

②主たる事業主は健康確保のための労働時間把握に努めるものとすること

 

<提言の妥当性>

複数の事業場での労働時間を通算するというのは、決して現実的な話ではありません。

ほとんどの企業は、ダブルワークとなることを知っていながら採用した従業員について、他の事業場と連絡を取り合って労働時間を管理してはいません。

労働時間の通算についての労働基準法第38条を意識する企業は、ダブルワークとなる応募者を採用したがりませんから、応募者もダブルワークとなることを隠して採用されようとします。

また、働き方改革の観点から、健康管理を理由とする労働時間の管理や時間外労働の制限が導入されるようになってきました。

これらのことから、上記の提言は、極めて妥当だと思われます。

 

2019.05.16. 解決社労士 柳田 恵一

<説明が無い場合>

賞与の支給額を明細書で初めて知り、どうしてこの金額なのか分からないというのは小さな会社ほど多いようです。

そもそも賞与の金額は、社長が一人で思い悩んで決めたので、全員についてハッキリした説明などできないという場合もあります。

もらった社員は、前回に比べていくら増えた/減ったしか感じません。

会社の経費を、それも多額の経費を賞与に充てたのに、ちっとも感謝してもらえないなんて勿体ない話です。

 

<説明のある場合>

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の貢献度を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」とわかりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」とわかります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持ちになります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。

 

<具体的な計算方法>

「うちの会社は、そんなにキチンとやっていない」とあきらめる必要はないのです。

たとえ、社長が一人で考えて決めた支給額であっても、次の手順で計算できます。

 

賞与支給額の総額 ÷(支給対象者の基本給の合計額)= 支給月数

こうして、平均的な人事考課(考課係数=1)の場合の支給月数がわかります。

 

個人の賞与支給額 ÷(その人の基本給 × 支給月数)= 考課係数

これで、賞与から逆算したその人の考課係数がわかります。

 

結局、「あなたの今回の賞与は次の計算によって決まりました」と説明できるのです。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

 

社長や上司が各社員と面談して、この説明をして激励してはいかがでしょうか。

 

2019.05.15. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金カット>

会社の経営が思わしくなく、一時的に賃金カットを実施したくても、労働者の「自由な意思による同意」が無ければむずかしいのです。

社長が社員全員を集めて説明し、一人ひとり説得を試みたとしても、誰だって給料を減らされるのはイヤです。

ヘタをすると、どの会社でも通用する優秀な社員だけが退職していき、残ったメンバーでは…ということになりかねません。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる不都合なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(昇給)

第47条 昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年    日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。

2 顕著な業績が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず昇給を行うことがある。

3 昇給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

この条文は、次のことを言っています。

・毎年、定期昇給を行うが、特別な事情があれば行わないこともある。

・臨時昇給もありうる。

・昇給額については、個人ごとに決める。

結局、この規定は昇給についてのみ述べていて、賃下げについては述べていません。

 

<就業規則の変更による場合>

使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、その変更が、次のような事情に照らして合理的であることが必要です。〔労働契約法第10条〕

・労働者の受ける不利益の程度

・労働条件の変更の必要性

・変更後の就業規則の内容の相当性

・労働組合等との交渉の状況

実際に、これらの条件が充分にそろっていることを証明するというのは、使用者にとって大変むずかしいでしょう。

賃金は少し下がるけれど、福利厚生が大幅に充実するなど、労働者が同意して当然と言えるような事情があれば、むずかしくないこともありますが。

 

<2つの方法>

こうした困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、会社が経営不振に陥らないようにすることです。これは、当たり前のことですが、常にできることではありません。

もう1つは、就業規則の規定を「昇給」ではなくて、次のように「給与改定」としておくことです。

 

(給与改定)

第47条 給与改定は、毎年    日をもって行うものとする。

2 特別な事由が認められた労働者については、前項の規定にかかわらず臨時の給与改定を行うことがある。

3 昇降給額は、労働者の勤務成績等を考慮して各人ごとに決定する。

 

そして社員には、「会社の状況によっては賞与や給料が減ることもある。会社が儲かっている時は社員に還元するので、会社が苦しい時には耐えて欲しい」という説明をあらかじめしておくのです。

さらに、経営不振でもいきなり人件費削減ではなく、まずは役員報酬のカット、そして不採算部門の縮小、新人採用の停止など手を尽くしたうえで実施するという説明もしておけば、社員にはそれなりの覚悟ができますし、イザというとき納得も得られやすいものです。

社員には、こういう覚悟をもって仕事をしていただいた方が、生産性が向上するのではないでしょうか。

 

2019.05.14. 解決社労士 柳田 恵一

<常識と法律の食い違い>

入社したばかりのパート社員から、勤務先の店長あてに電話が入ります。

「すみません。また下の子が熱を出しちゃって…今日はお休みをいただきたいのですが」

これに対して、店長の返事はとても冷たいものです。

「今月3回目でしょ。保育園に通っているお子さんの病気で休んでばかりじゃ、あてにならないじゃないの。まだ入社して1か月だし、今月末まで試用期間だし、本採用はしませんから、来月からは来なくていいですよ」

というわけで、このパート社員は仕方なく退職します。

その半月後、パート社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。しかも、慰謝料まで請求されています。

店長としては、自分の中の常識に従ったのですが、その常識は法律とは違っていたのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

 

(育児・介護休業、子の看護休暇等) 

第27条 労働者のうち必要のある者は、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。

2 育児休業、介護休業等の取扱いについては、「育児・介護休業等に関する規則」で定める。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・誰でも必要に応じ、育児休業、介護休業、子の看護休暇などを利用できる。

・育児休業などについての就業規則は別に作る。

結局、このひな形は「育児・介護休業等に関する規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「育児・介護休業等に関する規則」を作らなければ、問題が発生しても仕方がないのです。

では、面倒だからこの規定を全部カットしても良いかというと、育児・介護休業法があるので、カットできないのです。

育児休業や介護休業は、法律が労働者に与えた権利ですから「うちの会社にはありません」ということでは、年次有給休暇と同様に違法になってしまいます。

 

<法律の規定では>

子の看護休暇とは、けがや病気の子の世話などを行う労働者に対し与えられる休暇です。会社には労働者に与える義務があります。〔育児・介護休業法第16条の2、3〕

小学校就学前の子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、1年度につき5日を限度として、子の看護休暇を取得することができます。対象となる子が2人以上の場合は10日です。

また、取得したことを理由とする不利益取り扱いは禁止されています。〔育児・介護休業法第10条、第16条の4〕

ということは、入社して1か月のパート社員が、小学校に入る前のお子さんが熱を出したことを理由に3回休んでも、契約の打ち切りなどできないというのが、労働法上の常識です。

ところが、店長は大事な法律の内容を知らずに、思わぬ事態を招いてしまったのです。

 

<2つの予防法>

こうした困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、会社の現状に合った「育児・介護休業等に関する規則」を作ることです。ひな形は会社の現状を踏まえたものではありませんから、少し手直ししただけでは危険です。やはり専門家の力が必要でしょう。

もう1つは、店長やマネージャーたちに、人事労務関係の法令について、きちんと教育をしておくことです。自主的に本でも読んで学ぶというのではなく、定期的な集合研修が必要でしょう。

これらは費用のかかることですが、そうだとしてもリスクマネジメントの費用ですし、むしろ幹部社員に対する投資です。会社を護るための投資なのです。

 

2019.05.13. 解決社労士 柳田 恵一

<適用事業所に該当しなくなったとき>

次に該当した場合、事業主が「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

(1)事業を廃止(解散)する場合

(2)事業を休止(休業)した場合

(3)他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合

(4)一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合

 

<手続きの方法>

事業主が「適用事業所全喪届」を日本年金機構へ提出します。

提出時期 =事実発生から5日以内

提出先 =郵送で事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)

提出方法 =電子申請、郵送、窓口持参

 

<添付書類>

1.原則 下記(1)、(2)のいずれか

(1)解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー

(破産手続廃止又は終結の記載がある閉鎖登記簿謄本のコピーでも可)

(2)雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー

 

2.1.の添付ができない場合

下記(3)~(6)のいずれか

(3)給与支払事務所等の廃止届のコピー

(4)合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税、消費税異動届のコピー

(5)休業等の確認ができる情報誌、新聞等のコピー

(6)その他、適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類

 

※ 電子申請の場合、上記1.2の添付書類は、画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)による添付データとして提出することができます。

 

<留意事項>

この届書に記入された情報(事業所名称、所在地、全喪年月日)は、適用の適正化の観点から、日本年金機構のホームページに掲示され、閲覧に供されることとなります。

適用事業所が不当に保険料を免れることがないよう、念のための措置でしょう。

 

2019.05.12. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし延長は無い)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと」などです。試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。長引けば、その新人の転職のチャンスも遠くなります。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集・選考・採用の精度は高めておかなければなりません。試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

人は見極めて採用し育てることが肝心なのです。

 

2019.05.11. 解決社労士 柳田 恵一

<退職金の請求>

長年働いて円満退職したパート社員の代理人弁護士から、退職金請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の退職金請求も増えているようです。

「いや、うちの会社は契約更新のたびに、きちんと雇用契約書でパート社員には退職金の支給が無いことを確認しています」と言っている会社が、実際に退職金を支払う結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(適用範囲)

第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・「この就業規則」が原則としてすべての従業員に適用される。

・パート社員の就業規則は別に作る。

・パート社員の就業規則に書いていないことは、パート社員を含め、すべての従業員に「この就業規則」が適用される。

結局、この規定は「この就業規則」とは別に「パート社員就業規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「この就業規則」に退職金の規定を置いて、別に「パート社員就業規則」を作らなければ、パート社員にも退職金の規定が適用されます。

たとえ、雇用契約書や雇い入れ通知書、労働条件通知書に「退職金は支給しません」とはっきり書いてあっても、労働者に有利なことは就業規則が優先的に適用されるのです。〔労働契約法第12条〕

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

 

なお、パートタイム労働者等について、規程の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、パートタイム労働者等に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、正社員用の就業規則とは別に「パート社員就業規則」を作ることです。しかし、これは就業規則を2つ作るのですから、骨の折れる作業です。

もう1つは、就業規則の中で、正社員とパート社員とで違う取り扱いをする部分に、そのことをきちんと書いておくことです。

たとえば「退職金は正社員のみに支給し、パート社員には支給しない。パート社員に退職金を支給しないことは、雇用契約書(雇い入れ通知書、労働条件通知書)にその旨明示する」という規定を、就業規則の退職金の規定のところに加えておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

 

2019.05.10. 解決社労士 柳田 恵一

<個別労働紛争と解決>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会による斡旋(あっせん)

 

<紛争調整委員会による斡旋の特徴>

上記の制度のうち、紛争調整委員会による斡旋には、次のような特長があります。

・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ手続きが迅速かつ簡便

・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当

・斡旋を受けるのは無料

・紛争当事者間で斡旋案に合意した場合は民法上の和解契約の効力

・非公開で紛争当事者のプライバシーは保護

・労働者の斡旋申請を理由に事業主が不利益取扱いをすることは禁止

 

<斡旋の対象となる紛争>

労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象となります。

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争 など

 

<斡旋の対象とならない紛争>

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判中または判決が出ているなど他の制度において取り扱われている紛争

・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争 など

 

2019.05.09. 解決社労士 柳田 恵一

<利子の下限利率>

社内預金の利率については、法定の最低限度(下限利率)が利率省令によって定められています。

そして、この下限利率は変動し得るものですから、下限利率が変動した場合の対応が必要となる場合があります。

下限利率が引き上げられた結果、社内預金の利率が下限利率を下回ってしまうときは、下限利率を定めた利率省令の施行日までに、少なくともその下限利率と同率以上に引き上げる必要があるのです。

反対に下限利率が引き下げられた場合に、社内預金の利率を引き下げるときには、原則として、改めて労使協定を締結し届出る必要があります。

なお、労使協定で社内預金の利率を下限利率によると定めている場合には、下限利率の引き下げに連動して社内預金の利率が変更されることとなりますが、この場合も、改めて労使協議の上、実勢を踏まえた適切な利率が設定されることが望ましいとされています。〔昭和52年1月7日基発4〕

 

<利子の計算方法>

利子の計算方法としては、利子は預け入れの月から付けること、10円未満の預金の端数には利子を付けなくてもよいこと、利子の計算で円未満の端数は切り捨ててよいことなどが定められています。〔利率省令第6条〕

したがって、年の途中から預け入れられたものについても、預け入れの月から年利に換算して利子を付けなければなりません。

ただし、月の16日以降に預け入れられた金額については、その月の利子を付けなくてもかまいませんし、払い戻しをした月については、その払い戻した金額についてその月の利子を付けなくてもかまいません。

 

2019.05.08. 解決社労士 柳田 恵一

<社内預金の趣旨>

労働契約に付随して、強制的に貯蓄金を管理する契約を行うことは禁止されています。

しかし、労働者が任意に貯蓄金の管理を使用者に委託する場合には、労使協定の締結・届出、貯蓄金管理規程の作成、利子をつけることなど一定の条件を満たすことにより、預金を受け入れる社内預金を行うことが認められています。〔労働基準法第18条〕

 社内預金は福利厚生の一環とされますが、預金された資金は事業の運転資金として活用することができます。 ただし、原資はあくまでも労働者の賃金です。

したがって、預金の安全性の確保が最も重要な課題であり、保全措置を講ずること、利子は利率の最低限度である下限利率以上とすること、預金者一人当たりの預金額の限度を定めることなどが義務付けられています。 

 

<預金の保全>

預金の保全については、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて一定の保全措置を講ずることとされています〔賃金の支払の確保等に関する法律第3条〕

その具体的内容は、賃確法施行規則第2条で以下のように定められ、労使協定でどの方法によるのかを明確にする必要があります。ただし、複数を併用することも差し支えありません。

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約を締結すること

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務の額に相当する額につき、預金を行う労働者を受益者とする信託契約を信託会社または信託業務を営む金融機関と締結すること

・労働者の事業主に対する預金の払戻しに係る債権を被担保債権とする質権または抵当権を設定すること

・預金保全委員会を設置し、かつ、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理することその他適当な措置を講ずること 

 

<預金保全委員会>

預金保全委員会の構成員の半数については、その事業主に使用されている労働者であって、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の推薦を受けたものとすることが必要です。

預金保全委員会には次に定める事項を行わせます。

・事業主から労働者の預金の管理に関する状況について報告を受け、必要に応じ、事業主に対して当該預金の管理につき意見を述べること

・労働者の預金の管理に関する苦情を処理すること

事業主は、3か月以内ごとに1回定期に、また預金保全委員会からの要求の都度、労働者の預金の管理に関する状況について預金保全委員会に対して書面により報告を行わなければなりません。

また事業主は、預金保全委員会の開催の都度遅滞なく、その議事の概要および預金保全委員会に報告した労働者の預金の管理に関する状況の概要を各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法によつて労働者に周知させることが義務づけられています。

さらに、預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存することが必要です。 

 

<保全措置を講じていない場合>

保全措置を講じていない事業主に対しては、労働基準監督署長が文書により保全措置を講ずべき旨の命令を出すことができます。〔賃確法第4条、施行規則第3条〕

また、保全措置が講じられていない事業場が倒産した場合の貯蓄金については、株式会社で会社更生法が適用される場合は、更生手続開始前6か月間の給料の総額に相当する額、またはその預り金の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権として優先的に扱われます。〔会社更生法第130条〕

しかし、破産や民事再生の手続きを採った場合には、優先度の低い債権として扱われることになります。

 

2019.05.07. 解決社労士 柳田 恵一

<年俸制と残業代>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払いはありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としてはいません。

この割増賃金の支払いを使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

働き方改革関連法により、労働時間の規制は、ますます厳しくなってきていますが、制限を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<年俸制で割増賃金が割高になる原因>

年俸制における代表的な賃金の支払い方法には、次の2つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払い方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面による合意で合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい」

 

2019.05.06. 解決社労士 柳田 恵一

<業績給の考え方>

従業員の従事した仕事の業績で基本給を決める賃金制度です。

 

<業績給の長所>

・仕事の成果と基本給が連動し企業の業績が向上

・業績の範囲内で基本給を決められる

・従業員の勤労意欲が高まる

 

<業績給の短所>

・複雑な共同作業には対応できない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・従業員の過重労働に繋がる

・勤労意欲や業績の向上は短期的なものである

 

<最近では>

個人だけでなく、所属部署や企業全体の業績を、基本給に反映させる動きがあります。

また、賞与を支給している企業では、業績を賞与に反映させ給与には反映させないのが主流です。

業績には運・不運もあるので、業績の給与・賞与への反映については、社会保険労務士などの専門家と相談しながら決定していただきたいです。

 

2019.05.05. 解決社労士 柳田 恵一

<職務給の考え方>

従業員の従事する職務で基本給を決める賃金制度です。

 

<職務給の長所>

・仕事内容と基本給が一致

・必要な人材を仕事に見合った給与で募集できる

・新しい職務を作り古い職務を廃止することで社内外の変化に対応できる

・職業能力向上のためのコストが生じない

 

<職務給の短所>

・企業内での職掌や職種を超えた人事異動が困難

・能力開発の動機付け(多能工化)ができない

・基本給が一定額以上上昇せず長期勤続を促す効果がない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・制度の設計と維持にコストが掛かる

 

<最近では>

職務の細分化をやめ、職務範囲を拡大することによって、短所を補う動きがあります。

また、働き方改革による事業再編の動きも盛んですから、会社の業績により店舗が閉店した場合に、店長ではなくなった人材の給与が下がるというのも、理解が得られなくなっています。

こうしたことから、職務給一本ではなく賃金体系の一部に取り入れるのが一般的になっています。

どの程度取り入れるのが適切かは、社会保険労務士などの専門家と相談しながら上手に決めていただきたいと思います。

 

2019.05.04. 解決社労士 柳田 恵一

<職能給の考え方>

従業員の職務遂行能力で基本給を決める賃金制度です。

担当したことのある職務については、実際に発揮された能力が基準となります。

担当したことのない職務については、学歴、職歴、資格などで能力を推定することになります。

 

<職能給の長所>

・仕事と基本給が一致せず職掌・職種を超えた人事異動が容易

・従業員の能力開発を促し企業の長期的な発展に寄与

・保有能力が低下しない限り基本給は下がらず長期勤続を促す効果がある

・昇進と昇格を分離することによりポストが不足しても昇格が可能

 

<職能給の短所>

・仕事と基本給が一致しないことによる不満の発生

・ポストがなくても昇格できるので人件費が上昇

・既存の能力の陳腐化には対応できない

・職務遂行能力の定義次第ではその運用が年功的になる

 

<最近では>

これまでの能力の概念である「保有能力」を仕事で発揮されている「発揮能力」に改める動きが盛んです。

また、会社の業績に著しく貢献している従業員の「行動特性」が分析され、各人の「行動特性」との類似性を評価指標に取り入れる動きもあります。

AI関連の能力が高く評価されています。AI人材の不足により、外国人に人材を求める動きも盛んです。

しかし、これらの傾向は大手企業中心のものですから、中小企業では社会保険労務士などの専門家と相談しながら、自社に適合した賃金制度の導入が不可欠となっています。 

 

2019.05.03. 解決社労士 柳田 恵一

<年齢給の考え方>

従業員の年齢、最終学歴の卒業年次、勤続年数といった属人的要素で基本給を決める賃金制度です。

 

<年齢給の長所>

・年齢という万人共通の基準は明確

・基本給の計算と管理が容易

・従業員のライフステージごとの最低生計費が保障される

・従業員に安心感を与え長期勤続を促進する効果がある

・仕事と賃金額が一致しなくても良いので配置転換が容易

 

<年齢給の短所>

・同じ仕事をしていても賃金が異なることがある

・違う仕事をしていても賃金が同じということがある

・従業員の働き振りや職業能力の向上と基本給は一致しない

・企業の業績と無関係に賃金コストが変動

・平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結

・若手従業員には不平不満が生じる

・日本独自の賃金制度であり国際性がない

 

<最近では>

年齢給は、縮小・廃止の傾向にあり、年齢給を維持する会社では若者の採用がむずかしくなっています。

また、非正規労働者を含めた労働者の生計費の確保のため、政府による最低賃金の引上げが毎年行われており、年齢給では賃金コストの上昇が著しくなっています。

年齢給を採用する場合、これを全面的に取り入れるのではなく、給与の一部に取り入れるのが得策でしょう。

 

2019.05.02. 解決社労士 柳田 恵一

<賃金制度の決定>

賃金制度について、労働基準法による規制はありません。

賃金制度のあり方は、労使が対等の立場で話し合って決定するたてまえです。〔労働契約法第3条第1項〕

とはいえ、最低賃金法は守らなければなりませんし、働き方改革により同一労働同一賃金の制約はあります。

 

<年功序列型賃金>

年功序列型賃金の統一的な定義はありません。しかし一般的には、企業での勤続年数や従業員の年齢の上昇に従って、賃金(基本給)も上昇する仕組みです。

従業員の全員が新卒採用で、定年まで働き続けるという職場であれば、今もなお一定の合理性を保った制度だといえます。

しかし実態として、転職が盛んになっています。

従業員は今の会社で定年まで働こうと決意してはいないでしょうし、企業も定年まで働いてもらえると期待してはいません。

 

<非年功序列型賃金>

勤続年数や年齢に関係なく、担当している仕事の難易度や仕事上発揮した能力による成果を重視した賃金の決定の仕組みが、多く採用されるようになっています。

こうした賃金制度は、経費節減となり、従業員の意欲を刺激することを期待して採用されています。しかし、その具体的な内容は、企業の経営戦略や人事政策により異なることになります。

 

<賃金制度の種類>

賃金制度には、従業員の属人的要素(例えば、年齢、勤続年数など)で基本給を決める「年齢給」、従業員の能力で基本給を決める「職能給」、従業員が従事している仕事で基本給を決める「職務給」、従業員が行った仕事の「成果・業績」で基本給を決める業績給などがあります。

どの賃金制度にも長所と短所があります。

そこで実際には、自社の実態を踏まえ、これらの賃金制度を組み合わせることによって、最適な制度を構築することになります。

また、賃金制度は固定的であってはなりません。

社会の価値観の変化や市場環境に応じた変更は、すべての従業員にチャンスを与える意味でも必要不可欠です。

社内外の事情を具体的に把握・分析したうえで、採用する賃金制度を検討されるとよいでしょう。

 

2019.05.01. 解決社労士 柳田 恵一

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

※労働基準監督署による「監督」をわかりやすく「調査」と表示したところがあります。

 

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官には、事業場への臨検(立入調査)権限、帳簿・書類等の検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

これらの権限を行使して、工場や事業場等に監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、企画・設備等を検査します。

そして、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその是正を求めるほか、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止等の行政処分の実行を担っています。

なお、臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条、労働安全衛生法第120条、最低賃金法第41条など〕

さらに労働基準監督官には、警察官のような司法警察員としての職務権限があるため、重大なまたは悪質な法違反を犯した事業者等に対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法102条、労働安全衛生法92条、最低賃金法33条など〕

 

<その場で対応できない場合>

労働基準監督官は、事業場のありのままの現状を的確に把握することが重要であるため、原則として予告することなく事業場の監督を行っています。

したがって監督時には、事業場で労働基準監督官に対応すべき職務を担っている社員も、通常の自分の仕事をしている状況にあると思われます。

しかし、労働基準監督官が法律上の権限を基に監督していることを踏まえれば、できる限り時間をとって、これに対応することが適切です。

ただし来客があるなどで、どうしても時間が取れない場合もあると考えられます。

このような場合には、労働基準監督官に事情を十分に説明し、監督時間の短縮や監督日時の延期を要望すればよいと考えられます。

 

<その後の指導>

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

最近は、予め「□労働時間の適正な把握をすること(労働安全衛生法 第66条の8の3)」などの項目が印刷されていて、該当項目にチェックマークを付けるタイプのものも見られます。労働基準監督官の調査は、より細かく、より厳しくなっていますので、省力化のためにこのような工夫がされるようになったのでしょう。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。もちろん、ウソの「是正勧告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど「世間の動向に追い付いていないので改善した方がいいですよ」という指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、社会保険労務士が立ち会えば、労働基準監督署の監督官の方も、「話の通じる専門家がいる」ということで安心します。もちろん反対に、緊張されてしまうこともありますが。

社労士が立ち会えば「是正勧告書」「指導票」の内容も、厳しくならないものです。反対に、専門知識の無い方が、わかりにくい説明をしたために誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

 

<事前の予告がある場合>

立入調査は、必ずしも予告なしに行われるとは限りません。

もし、事前に調査の予告が入ったなら、その調査の意図を見抜いて準備しておけば、その後の会社の負担は大いに軽減されます。

ぜひ、充分な準備をしておきましょう。

下手な対応や下手な報告書の提出は、会社にとって命取りになることもあります。その場の勢いではなく、長期的視点に立っての対応をしたいものです。

 

2019.04.30. 解決社労士 柳田 恵一

<罰金の意味

駐車場の入口付近に「無断駐車は罰金2万円」などの表示を見かけることがあります。また「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方から、お話をうかがったこともあります。

しかし、罰金は死刑や懲役と同じく刑罰の一種です。刑罰権は国家に独占されていますから、国家権力ではない個人や会社が罰金を取るということは、相手が誰であれ法的に許されません。

ですから、駐車場の「罰金」も、社内の「罰金」のルールも無効です。

本当に徴収したら、詐欺罪、恐喝罪が成立したり、労働基準法違反となるでしょう。

場合によっては、「罰金」では済まされず懲役刑が科されるかも知れません。

もし社内ルールで「罰金」ということばを使っていたら、みっともないのですぐにやめましょう。

 

<労働法の定め>

就業規則ではなく内規だとしても、「罰金」は違約金の定めや損害賠償の予定の禁止に反して無効になります。〔労働基準法第16条〕

また、給与から差し引くことは、賃金の全額払いの原則に反することになります。〔労働基準法第24条第1項本文〕

結局、労働法上も実際に徴収することは認められません。

またたとえ、使用者が労働者の過失によってこうむった損害を回収したい場合であっても、実際に被った損害額のすべてについて、労働者に請求できるわけではありません。

なぜなら、その損害の発生について、使用者に全く責任がないというのは稀ですし、労働者を使用することによって利益を得ている分、その損失についてもある程度は負担するのが公平だからです。

完璧な人はいないのですから、労働者の過失によって損害が発生することも覚悟のうえで雇っているというのが、法律上の考え方なのです。

 

<使用者から労働者に請求できる損害賠償額>

まず、労働者に損害賠償義務があるかどうかは、労働者が通常求められる注意義務を尽くしたかどうかによります。

そして、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。

労働者の負担割合がどの程度となるかは、具体的な事情によります。

裁判になれば「事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は、労働者に対して賠償の請求ができる」という判断になります。

たとえば長時間労働が続いて疲れている労働者が、注意散漫になって事故を起こしたような場合には、長時間労働をさせた使用者に大きな落ち度があり、使用者側の負担割合が相当程度大きくなります。

 

<罰金を免れる方法>

「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方は、次のような話をしていました。

 

「遅刻しそうになったら喫茶店などで時間をつぶし、落ち着いてから会社の上司に電話をかける。朝から具合が悪く、出勤の途中で我慢できなくなったので病院に行きますと言って、年次有給休暇を使えばいい。たとえ休暇はダメだと言われて欠勤控除になっても、罰金1万円よりはマシです」

 

使用者側が違法なことをしていると、労働者側もこれに対抗しておかしなことをするようです。

これでは、会社と社員が共に成長するというのも「夢のまた夢」でしょう。

 

2019.04.29. 解決社労士 柳田 恵一

<調査の概要>

平成31(2019)年4月26日、厚生労働省が「ホームレスの実態に関する全国調査」の結果を公表しました。

この調査は、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」などに基づき、ホームレスの自立の支援等に関する施策の策定や実施に役立てるため、毎年1月に、各自治体の協力を得て行っているものです。

調査の対象となるホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」なので、調査方法は巡回による目視調査です。

なお、福島県の大熊町と双葉町は、震災の影響で調査の対象外となっています。

 

<ポイント>

同調査は、ポイントを次のように示しています。

 

1.ホームレスが確認された地方公共団体は、275市区町村であり、前年度と比べて25市区町村(▲9.1%)減少している。

2.確認されたホームレス数は、4,555人(男性4,253人、女性171人、不明131人)であり、前年度と比べて422人(▲8.5%)減少している。

3.ホームレス数が最も多かったのは東京都(1,126人)である。次いで多かったのは大阪府(1,064人)、神奈川県(899人)である。

 なお、東京都23区及び指定都市で全国のホームレス数の約4分の3を占めている。

4.ホームレスが確認された場所の割合は、前年度から大きな変化は見られなかった。

 (「都市公園」22.7%、「河川」30.3%、「道路」18.7%、「駅舎」5.2%、「その他施設」23.1%)

 

<ホームレス減少の原因>

この調査によると、少なくともこの5年間はホームレスが減少しています。

東京都が家の無い人(住所が無い人)の就労支援を強化したことや、人手不足の影響もあるでしょう。

中小企業でも、住所が無い人に積極的に住居を手配したうえで採用するという動きが見られます。

一億総活躍ですから、ホームレスがいない日本にしなければなりません。

 

2019.04.28. 解決社労士 柳田 恵一

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法第5条、第824条、第859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法第58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法第59条〕

口座振り込みの場合にも、本人名義の口座であることが必要です。

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

いずれにせよ、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や契約の更新について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

 

2019.04.27. 解決社労士 柳田 恵一

<懲戒権濫用法理>

就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒処分が無効とされます。

 

<懲戒規定の具体性>

つまり、懲戒処分について具体的な取り決めがあることと、ある労働者が何か不都合な行為をしたときに、それがその取り決めに明らかにあてはまるということが、懲戒処分の有効要件となります。

 

<具体性に欠ける場合>

たとえば「正当な理由なく無断欠勤が続いた場合」という規定では、何日続いたら懲戒の対象になるのか不明確ですから、具体的な日数を示しておかなければなりません。この規定の場合、欠勤によっていくらの損害を会社に与えたかではなく、欠勤そのものによる企業秩序の侵害を問題にしていると解釈されるからです。

また、「故意に会社の施設や物品を損壊したときは懲戒処分を行う」という規定では、壊した物の価値に応じて懲戒の種類を決めるという意図があるにせよ、譴責(けんせき)なのか出勤停止なのか、具体的な懲戒の種類を示しておかなければ、具体的な取り決めとはいえません。

 

<余計な形容詞が付いている場合>

むしろ、具体的な規定ということに捉われて、余計な形容詞を付けてしまい、使用者と労働者との間で解釈の争いが発生してしまうケースの方が多いのです。

たとえば「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」という規定では、使用者が「重要な経歴詐称」であることを証明しなければ、懲戒処分ができなくなってしまいます。

この場合「経歴を詐称して雇用されたとき」とだけ規定しておいて、使用者は「経歴の詐称」があったことだけを証明し、労働者の方から「懲戒処分に値するほどの重要な経歴詐称ではない」という証明をしなければ、懲戒処分を免れないようにしておいた方が現実的です。

特に懲戒規定については、余計な形容詞を付けないこと、争いになったときに証明責任を負うのは労使のどちらになるかということを意識して定める必要があるのです。

 

2019.04.26. 解決社労士 柳田 恵一

<内容についての法規制>

ハローワークの求人票や求人情報誌の求人広告には、求職者の知りたい情報が詳しく明確に記載されていることが重要です。

このため、求人の申込みや労働者の募集を行う際に書面や電子メールなどで明示すべき労働条件が、次のように定められています。〔職業安定法第5条の3〕

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

・労働契約の期間に関する事項

・就業の場所に関する事項

・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項

・賃金の額に関する事項

・健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項

なお、労働契約を締結する際に明示すべき労働条件と明示の方法についても法定されています。〔労働基準法第15条〕

また、労使当事者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています。〔労働契約法第4条〕

 

<委細面談>

ではなぜ、飲食店などの店頭に「アルバイト急募!委細(いさい)面談」というような、中身の全然わからないハリガミが貼ってあったりするのでしょうか?

実は、求人広告にいろいろな事項を明示する義務はあるものの、「できる限りやりましょう」という努力義務に過ぎないのです。

つまり、違反しても罰則はありません。

ですから倫理観を欠くブラック企業や、いちいち細かいことまで書くことを面倒に思う使用者は、書きたい範囲内で書いているというのが実態なのです。

ただ、採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

ということは、求職者としては求人広告は応募のキッカケに過ぎないのであって、採用面接の際に示された労働条件を詳細にチェックする必要があるということなのです。

 

2019.04.25. 解決社労士 柳田 恵一

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2019.04.24. 解決社労士 柳田 恵一

<周知>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「就業規則の周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法106条1項〕

労使協定というと三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が有名です。〔労働基準法36条〕

労働基準法には、他にも次のような労使協定があります。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、協定を交わして周知せずに実施すると違法ですから注意しましょう。

 

・貯蓄金管理に関する協定〔18条〕

・購買代金などの賃金控除に関する協定〔24条〕

・1か月単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の2〕

・フレックスタイム制に関する協定〔32条の3〕

・1年単位の変形労働時間制に関する協定〔32条の4〕

・1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定〔32条の5〕

・一斉休憩の適用除外に関する協定〔34条〕

・月60時間超の時間外労働をさせた場合の代替休暇に関する協定〔37条3項〕

・事業場外労働に関する協定〔38条の2〕

・裁量労働に関する協定〔38条の3〕

・年次有給休暇の計画的付与に関する協定〔39条〕

・年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定〔39条〕

・時間単位の年次有給休暇に関する協定〔39条〕

・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容〔38条の4〕

 

<周知の方法>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

また、労働基準法の中には、3つの施策のうちのどれかを労使の協議で選ぶという規定もあります。ですから、「法定通り」と言ってみても、何も決まっていない恐れがあります。

 

<周知しない結果>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

2019.04.23. 解決社労士 柳田 恵一

<ストレスの連鎖>

殺人事件や傷害事件が発生すると、警察は加害と被害の内容、両者間の因果関係を解明し、その一環として加害の動機を明らかにします。

しかし、動機となった「ストレス発散」のストレスの原因までは追究しません。

ひょっとしたら、加害者もまた誰かにいじめられていて、そのストレスを発散するために事件が起きたのかもしれません。

しかし、加害者の負っていたストレスまでは配慮しません。

ストレスとその発散は連鎖します。どこかで連鎖を止めないと、最後には弱者に大きな被害が生じます。

あくまでも例え話ですが、次のようなストレスとその発散の連鎖があったとします。

金融機関→社長→部長→課長→一般社員(弱者)

(上の連鎖の)課長→妻→息子→息子の同級生(弱者)

ある会社の社長が、金融機関から大きなストレスを与えられることで、社内では、ストレスのはけ口が、弱い一般社員に及びます。これがパワハラです。

一方で、その会社の課長が、そのストレスを家庭に持ち込み、息子がそのストレスを学校に持ち込むとイジメの原因になります。

もしも、ここで部長がストレスに耐え、課長にぶつからなければ、ストレスの連鎖が止まることになります。

 

<ストレスチェックの目的>

ストレスチェックというのは、ストレスについての質問票に、労働者が選択肢の中から選ぶ形で回答を記入し、それを集計・分析することで、ストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

労働者が50 人以上の事業所では、2015 年12 月から毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられました。〔労働安全衛生法66条の10〕

定期健康診断と同様に、契約期間が1年未満の労働者や、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は法的義務の対象外です。

労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合には医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するのが目的です。

決して、ストレスに弱い労働者を発見して退職を勧奨したり、降格の根拠を見つけたりするためのものではありません。むしろ、こうしたことが無いように、充分な配慮が求められています。

結局、ストレスチェックの目的はストレスがたまりやすい職場を発見し、これを改善することにあると思います。

 

<ストレスがたまりにくい職場>

すべては、コミュニケーションによる解決が可能だと思います。

上の「→」で結ばれた間に、ストレスの原因となったことについて、具体的な情報の伝達があればストレスの連鎖は止まります。

なぜ怒っているのか、不安なのか、その原因についての説明が大事です。

会社の中で、ストレス発散と思われるパワハラなどを本気で防ぎたいのであれば、コミュニケーションの仕組みを見直すことが有効です。

「みんなで飲みに行って話し合えばわかりあえる」という昭和時代ではなくなりました。あくまでも勤務時間帯に使える仕組みを構築しましょう。

 

2019.04.22. 解決社労士 柳田 恵一

<在職老齢年金>

働きながら老齢年金を受けることができます。これを在職老齢年金といいます。

厚生年金保険の適用される会社で勤務する70歳未満の人は、年金を受けていても若い人と同じ条件で厚生年金に加入します。

毎日新聞の報道によると、政府・与党は「在職老齢年金制度」廃止の検討に入ったそうです。

在職老齢年金制度により、支給されるはずの厚生年金が減額され、高齢者の就労意欲をそいでいる恐れがあるからです。

 

<60歳以上65歳未満の支給停止>(平成31(2019)年度の場合)

年金額の一部または全部が、支給停止されることがあります。

まず、1年間で受ける年金の合計額を12で割って「基本月額」を算出します。

つぎに、1年間の賃金と賞与の合計額を12で割って「総報酬月額相当額」を算出します。

この「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が28万円以下であれば、年金は全額支給されます。

28万円を超えるときは、「基本月額」が28万円以下か超えるか、「総報酬月額相当額」が47万円以下か超えるかの区分に従い、4つの計算式のどれかによって支給停止額が計算されます。

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が47万円以下>

支給停止額

=(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-28万円)×6

 

<「基本月額」が28万円以下で、「総報酬月額相当額」が47万円を超える>

支給停止額

=(「基本月額」+19万円)×6+(「総報酬月額相当額」-47万円)×12

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が47万円以下>

支給停止額

=「総報酬月額相当額」×6

 

<「基本月額」が28万円を超え、「総報酬月額相当額」が47万円を超える>

支給停止額

=282万円+(「総報酬月額相当額」-47万円)×12

 

<高年齢雇用継続給付を受ける場合の支給停止>

60歳以上65歳未満の人は、雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けることがあります。

この場合には、賃金額の0.18%~6%が支給停止されます。

 

<65歳以上の支給停止>(平成31(2019)年度の場合)

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が47万円以下であれば、年金は全額支給されます。

47万円を超えるときは、次の金額が支給停止となります。

(「基本月額」+「総報酬月額相当額」-47万円)×6

 

<加給年金額が加算されている場合>

加給年金額を除く老齢厚生年金が、全額支給停止される場合には、加入年金額も全額支給停止となります。

この他の場合には、加給年金額は全額支給されます。

 

2019.04.21. 解決社労士 柳田 恵一

<傷病手当金支給申請書>

傷病手当金支給申請書の提出先は、健康保険証に書いてある保険者です。

そして申請書の形式は、保険者が決めています。

たとえば、協会けんぽの申請書であれば、1セット4枚で、次の内容になっています。

1,2枚目 = 申請者情報、申請内容

3枚目 = 事業主の証明 ※事業主とは会社などのことです。

4枚目 = 療養担当者の意見書 ※療養担当者とは医師などのことです。

 

<記入する人>

1,2枚目の申請者情報、申請内容は、仕事を休んだ健康保険加入者(被保険者)自身または、被保険者が亡くなった場合は相続人が記入します。

会社の担当者が、ほとんど代筆してくれることもあります。

3枚目の事業主の証明は、会社の担当者や顧問の社会保険労務士が記入します。

4枚目の療養担当者の意見書は、担当医師が記入します。

 

医師が傷病手当金の書類を書いてくれなくて困るというのは、療養担当者の意見書の部分を書いてくれないということになります。

1,2枚目の書き方がわからないのであれば、保険者に確認することになります。

 

<事実を確認できない場合>

たとえば、ケガをしてすぐ医師の診察を受けず、自然に治るのを待っていたとします。

そして、1か月経ってから我慢できずに医師の治療を受けたとします。

この場合、医師が確認できるのは、ケガから1か月経ったときの状態です。

1か月前にケガをしたとき、どのような状態であったのかは確認できません。

ケガをした時点で働けない状態だったのか、その時は働ける状態だったのに2週間後にケガの状態が悪化して働けなくなったのか、それとも3日前から働けなくなったのか、診察していないので何とも言えません。

ケガをして1か月の間のことについては、医師が意見書を書けないのです。

 

<労務不能とは見ない場合>

病気やケガで仕事を休んだとしても、それは本人が大事をとって休んだに過ぎず、決して働けない状態ではなかったということがあります。

医師としては「大げさだなぁ」と感じています。

この場合、医師は病気やケガの存在を認め治療はするのですが、労務不能の証明はできないことになります。

 

<労働災害の場合>

傷病手当金は私傷病、つまりプライベートのケガや病気について支給されます。

業務災害や通勤災害については、健康保険ではなく労災保険が適用されます。

したがって、患者の説明から労働災害であることが明らかであれば、医師は傷病手当金の書類に記入することができません。

 

<事実に反する場合>

患者が医師に対して、「自分の言うとおりに書け」あるいは「会社からこう書いてもらいなさいと言われている」などと言っても、医師は自分の診断結果に忠実に記入する義務を負っていますから、これに従うことはできません。

 

2019.04.20.解決社労士

<過去最多の「人手不足」関連倒産>

平成31(2019)年4月5日、株式会社東京商工リサーチが「人手不足」関連倒産の調査結果を公表しました。

これによると、平成30年度(2018年4月~2019年3月)の「人手不足」関連倒産は400件(前年度比28.6%増、前年度311件)で、2013年度の調査開始以来、最多となりました。

 

以下、枠内は株式会社東京商工リサーチの公表内容です。

 

【「求人難」型が2.6倍増】

 2018年度の「人手不足」関連倒産400件の内訳は、代表者や幹部役員の死亡、病気入院、引退などによる「後継者難」型が269件(前年度比7.6%増、前年度250件)で最多。

 次いで、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型が76件(同162.0%増、同29件)、賃金等の人件費のコストアップから収益が悪化した「人件費高騰」型が30件(同114.2%増、同14件)、中核社員の独立、転職などで事業継続に支障が生じた「従業員退職」型が25件(同38.8%増、同18件)だった。事業承継が重要課題になるなか、「後継者難」型が全体の6割(構成比67.2%)を超え、さらに「求人難」型や「人件費高騰」型が押し上げた。

 

【産業別、サービス業他が最多105件】

 2018年度の産業別では、最多がサービス業他の105件(前年度比34.6%増、前年度78件)だった。内訳は、飲食業23件、老人福祉・介護事業12件、医療関係10件、人材派遣業9件、建築設計業などを含む土木建築サービス業7件など。

 このほか、建設業75件(同4.1%増、同72件)、製造業62件(同58.9%増、同39件)、卸売業59件(同43.9%増、同41件)、貨物自動車運送などの運輸業34件(同61.9%増、同21件)と続く。

 

 2018年度の地区別では、全国9地区のすべてで倒産が発生した。このうち、関東(125→173件)、九州(39→62件)、中部(34→43件)、近畿(33→39件)、東北(24→28件)、中国(18→19件)、北陸(3→5件)の7地区で前年度を上回った。一方、減少は北海道(21→18件)と四国(14→13件)の2地区だった。

 

 企業倒産が低水準をたどるなか、「人手不足」関連倒産の増勢ぶりが目を引く。特に、人手確保が困難で事業継続に支障が生じた「求人難」型と人件費のコストアップから収益悪化を招いた「人件費高騰」型の増加が際立つ。人手不足の早急な解消が難しい現状では、今後の企業倒産を押し上げる複合的な要因にもなっており、景気動向と併せてその推移が注目される。

 

<人手不足回避の正攻法>

人手不足を回避するには、地道な努力が必要です。

・経営者が従業員を大切に育てること。

・客観的な人事考課制度により、従業員の努力や成果に報いること。

・退職していく従業員を暖かく見送り、機会があれば再入社してもらえるようにしておくこと。

・働き方改革関連法などの法改正に注意し、違法状態の発生によって会社の評判が落ちないように心がけること。

 

2019.04.19.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<70歳以上になると>

社会保険のうち、厚生年金保険は70歳で脱退(資格喪失)となります。

一方、健康保険と労働保険(雇用保険・労災保険)は変更ありません。

 

<厚生年金保険>

厚生年金保険に加入する従業員が70歳になる頃、年金事務所から会社宛に郵便物が届きます。

これは、「厚生年金保険被保険者資格喪失届70歳以上被用者該当届」の用紙と、その説明書です。

70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と異なる厚生年金加入者(被保険者)である場合には、70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内に届を提出することになります。

平成31(2019)年4月から、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である場合には、届出が不要となりました。

なお、70歳になっても老齢年金の受給資格期間を満たせないで在職中の人は、申し出てその期間を満たすまで任意加入することができます。保険料は全額本人が負担しますが、事業主が同意すれば労使折半にすることもできます。

 

<健康保険>

「老人保健法」が改正され、75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」が平成20(2008)年度に導入されました。

後期高齢者医療制度には、75歳の誕生日に加入します。

ただし、身体障害者手帳などで3級以上か4級の一部の障害に該当する場合には、65歳以上74歳以下でも各医療保険制度(国保、健保、共済等)の後期高齢者医療保険へ申請して加入することができます。

つまり一般には、70歳になっても、今までの健康保険にそのまま加入していることになります。

 

<雇用保険>

平成29(2018)年1月1日に雇用保険の適用が拡大され、年齢の上限が事実上撤廃されています。

70歳以降も、高年齢継続被保険者として雇用保険の加入が続くことになります。

なお、平成31(2019)年4月1日時点で満64歳以上にあたる従業員の雇用保険料は、令和2(2020)年3月の分まで免除されています。

 

<労災保険>

労災保険に年齢制限はありません。

ですから、一定の年齢に達したことによる手続きはありません。

 

2019.04.18.解決社労士

<平成31年度の雇用関係助成金>

4月1日付で改正雇用保険法施行規則が施行され、新年度の雇用関係助成金が公表されています。

これに加えて、不正受給対策が強化されています。〔通達 平成31年3月29日職発0329第2号・雇均発0329第6号・開発0329第開発0329第58号〕

 

<不支給期間の延長と対象の拡大>

(1) 偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対して雇用関係助成金を支給しない期間を、過去3年以内から過去5年以内に延長する。

(2) 過去5年以内に偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等(偽りその他不正の行為に関与した者に限る)が、事業主または事業主団体もしくはその連合団体の役員等である場合は、当該事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、雇用関係助成金を支給しない。

(3) 過去5年以内に雇用調整助成金等の支給に関する手続きを代理して行う者(代理人等)または訓練を行った機関(訓練機関)が偽りの届出、報告、証明等を行い事業主または事業主団体もしくはその連合団体が雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとしたことがあり、当該代理人等または訓練機関が雇用関係助成金に関与している場合は、当該雇用関係助成金は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体に対しては、支給しない。

 

<返還命令等>

(1) 偽りその他不正の行為により雇用調整助成金等の支給を受けた事業主または事業主団体もしくはその連合団体がある場合には、都道府県労働局長は、その者に対して、支給した雇用調整助成金等の全部または一部を返還することを命ずることができ、また、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた雇用関係助成金については、当該返還を命ずる額の2割に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。

(2) (1)の場合において、代理人等または訓練機関が偽りの届出、報告、証明等をしたため雇用関係助成金が支給されたものであるときは、都道府県労働局長は、その代理人等または訓練機関に対し、その支給を受けた者と連帯して、雇用関係助成金の返還または納付を命ぜられた金額の納付をすることを命ずることができる。

 

<事業主名等の公表>

都道府県労働局長は、事業主または事業主団体もしくはその連合団体が偽りその他不正の行為により、雇用調整助成金等の支給を受け、または受けようとした場合等は、氏名並びに事業所の名称および所在地等を公表することができる。

 

<社会保険労務士が代理する場合>

『平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)』には、重ねて次の注意事項が記載されています。

社会保険労務士が事業主の申請を代わって行う場合、以下の事項に同意する必要があります。

このことから、不正受給が疑われる申請はお受けすることができません。

 

●支給のための審査に必要な事項の確認に協力すること

 ※ 不正受給に関与している疑いがある場合の事務所等への立ち入りを含みます

 

●不正受給に関与していた場合は、

①申請事業主が負担すべき一切の債務について、申請事業主と連帯し、請求があった場合、直ちに請求金を弁済すべき義務を負うこと

②事務所(又は法人)名等が公表されること

③不支給とした日又は支給を取り消した日から5年間(取り消した日から5年経過した場合であっても、請求金が納付されていない場合は、時効が完成している場合を除き、納付日まで)は、雇用関係助成金に係る社会保険労務士が行う提出代行、事務代理に基づく申請又は代理人が行う申請ができないこと

 

2019.04.17.解決社労士

<具体的な事例>

いままでパート・アルバイトに仕事の指示を出し指導をしてきた課長が部長に昇進し、その下で働いていた正社員が課長に昇進します。

ところが、課長に昇進した正社員は、勤務中、毎日のように居眠りする姿を見られていて、パート・アルバイトの失笑を買っていた人物でした。

自分たちと似たり寄ったりの仕事をしていたように見えた正社員が、居眠りをしていたのに自分たちの上に立つというのは、どうにも納得がいきません。

これを放置しておくと、パート・アルバイトが新課長を信頼できず、その指示・指導に素直に従わないことによって、生産性が大幅に低下してしまうかも知れません。

 

<立場による意識の違い>

時間給で働くパート・アルバイトは、どの時間を切り取っても一定の成果を上げるように意識して働いています。

ボーッとしていることは許されず、トイレに行くのにも遠慮して急いでいます。

ましてや、堂々と居眠りなどできません。

一方、月給制で働く正社員は、より長期的な視点で成果を出そうとします。改善を求められるのは主に正社員ですし、結果を残さなければ、賞与の支給額や将来の出世にも影響します。

パート・アルバイトが仕事を終え帰宅した後も、正社員は残って多岐にわたる仕事をこなしているために、疲れがたまって居眠りが出るということもあるでしょう。

こうした意識の違いから、不信感が生まれるというのは、ごく自然なことなのです。

 

<納得のいく説明>

会社の中での正社員とパート・アルバイトの職務や責任の違い、そしてこれらを理由とする待遇の違いについては、きちんとした説明が必要です。

「働き方改革関連法」により、令和2(2020)年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されることとなります。

(ただし、中小企業は令和3(2021)年4月から適用です)

この法律に対応し、「正規」と「非正規」の不合理な待遇差を埋めていくことはもちろん、社内で理解できる説明が行われる必要があります。

これらを怠らなければ、労働者の間には公正に評価されているとの納得感が生じますし、納得感は労働者が働くモチベーション向上につながります。

また、求職者からは魅力ある職場と評価され、離職率の低下とあいまって、人材の確保につながります。

 

<説明できない場合>

なかには、正社員と非正規社員との間の待遇差を合理的に説明できない職場もあります。

どのように説明の仕方を工夫してみても、うまい説明が見つからないとすれば、それは不合理な待遇差の存在が疑われます。

不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」の施行までは、まだ1年近くありますが、今から不合理な実態の解消を進めておく必要があります。

 

2019.04.16.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

複雑な案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

平成31(2019)年4月12日、厚生労働省が、全国の市町村が運営する国民健康保険の財政状況と、後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況等を取りまとめ公表しました。

 

<国民健康保険の財政状況>

全国の市町村が運営する国民健康保険の財政状況(平成29年度分)は、次のように公表されました。

 

【主なポイント】

1.収支状況

① 単年度収入額 : 15 兆 3,559 億円(前年度比 2.2%(3,467 億円)減)

② 単年度支出額 : 15 兆 1,253 億円(前年度比 2.8%(4,289 億円)減)

③ 決算補填等目的の法定外一般会計繰入金を除いた場合の精算後単年度収支差引額

  450 億円の赤字(赤字額は前年度から 1,011 億円減少)

2.被保険者数 : 2,870 万人(前年度から 142 万人減)

3.国民健康保険料(税)収納率 : 92.45%(前年度から 0.53 ポイント上昇)

 

日本全体の人口減少を反映して、国民健康保険の加入者(被保険者)が減少しています。

これにより、収入額、支出額、赤字がいずれも減少しています。

病気は予防と早期の治療開始によって重症化を防ぐことができ、医療費の節減を図ることができます。

 

<後期高齢者医療制度の財政状況>

後期高齢者医療制度の実施主体である都道府県後期高齢者医療広域連合の平成29年度の財政状況等は、次のように公表されました。

 

【主なポイント】

・単年度収支(前年度国庫支出金等精算後)は180億円の黒字。

・前年度からの繰越金等を反映した収支は4,350億円の黒字。

・保険料収納率は、全国平均99.36%。

 

1.後期高齢者医療広域連合の財政状況

(1)収入・・・保険料収入(1兆1,917億円)は、被保険者数増等により対前年度比5.5%増となっている。また、国庫支出金、都道府県支出金、市町村負担金及び後期高齢者交付金は、保険給付費増により増加している。

(2)支出・・・保険給付費(14兆8,363億円)は、被保険者数増等により対前年度比4.1%増となっている。

(3)収支状況・・・単年度収入(経常収入)15兆1,891億円、単年度支出(経常支出)15兆2,248億円であり、単年度収支差引額(経常収支差)▲357億円、国庫支出金等精算後の単年度収支は180億円となっている。

単年度収支に前年度からの繰越金等を反映すると、収入合計15兆7,556億円、支出合計15兆3,206億円であり、収支差引合計は4,350億円となっている。

 

2.被保険者数等

(1)被保険者数は、平成29年度末現在1,722万人で、平成28年度末より2.6%(44万人)増となっている。

(2)保険料収納率は、平成29年度全国平均99.36%で、平成28年度より0.04%ポイント増となっている。

 

こちらは、日本全体の高齢化を反映して、後期高齢者医療保険の対象者が増加し、収入額、支出額も増加しています。

「黒字」という表示が見られますが、国庫からの支出(出所は税金)が無ければ、357億円の赤字だったことが示されています。

家族の見守りにより、早期の治療開始の他、投薬の管理をきちんとすること、ダブって薬をもらわないなどにより、医療費の節減を図ることができます。

 

2019.04.15.解決社労士

<変更点>

平成31(2019)年4月から、厚生年金保険の保険加入者(被保険者)が70歳に到達した際に提出する「厚生年金保険被保険者資格喪失届及び厚生年金保険70歳以上被用者該当届」の取扱いが一部変更となりました。

 

<要件に該当すれば届出が不要>

次の要件1と2の両方に該当する保険加入者(被保険者)について、事業主からの70歳到達届の提出が不要(届出省略)となります。

 

【届出省略の要件】

要件1:70歳到達日の前日以前から適用事業所に使用されていて、70歳到達日以降も引き続き同一の適用事業所に使用される被保険者

要件2:70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である被保険者

 

<70歳到達届の届出要否の確認例>

次の手順を参考に、標準報酬月額相当額を算出した上で、70歳到達届の届出要否をご確認ください。

 

○手順1:70歳到達日現在の報酬額に基づき、報酬月額を算出します。

  在職中に70歳に到達し、70歳到達以降も引き続き事業所に勤務する場合は、これまでの厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、新たに70歳以上被用者として取得(該当)することとなります。このため、70歳到達日時点の報酬に基づき、新たに報酬月額を算出します。

※報酬月額の算出方法は、被保険者の資格取得時における報酬月額の算出方法と同様です。

 

○手順2:報酬月額を「厚生年金保険料額表」に当てはめ、該当する標準報酬月額相当額を確認します。

例):報酬月額258,000円の場合「報酬月額250,000円以上~270,000円未満」欄に該当⇒標準報酬月額相当額「17等級260千円」

 

○手順3:70歳到達日の前日時点における標準報酬月額と比較し、70歳到達届の届出の要否を確認します。

手順2で確認した標準報酬月額相当額と、被保険者期間中に適用されていた直近の標準報酬月額が

・同額である場合⇒70歳到達届の提出は不要です(届出省略となります)。

・異なる金額である場合⇒報酬月額を記入した上で、70歳到達届を提出してください。

  

2019.04.14.解決社労士

 

<法の規定>

労働基準法は、年次有給休暇の取得日について、次のように定めています。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」は、長期の連休をイメージしますが、「取得日」という意味です。

「労働者の請求する時季」なのだから、これから先の日付でも、過去の日付でも良さそうに思えます。

しかし、この条文の但し書きは、一定の場合には、使用者が別の日に年次有給休暇を与えることができると言っています。

過去の日を取得日に指定したのでは、使用者が取得日を変更できなくなってしまいます。

このことから、論理的に考えて、年次有給休暇の取得日の指定は、翌日以降の日でなければならないことになります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、次のような規定が置かれることがあります。

 

【欠勤の年次有給休暇への振替】

私傷病による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。この申請は、所定の書式により上長に提出することによって行います。

 

私傷病など特定の原因による欠勤が発生した場合に、事後の申請で年次有給休暇に振り替えることを認めるわけです。

労働基準法は、労働者の権利について最低限の基準を定めているわけですから、労働者にとって労働基準法よりも有利な制度を設けることを禁止してはいませんから、こうした規定を置くことも可能です。

 

<フレックスタイム制での配慮>

フレックスタイム制を運用していると、仕事と生活の調整が容易ですから、年次有給休暇を取得するチャンスが捉えにくくなります。

なるべく残業時間が発生しないように勤務していたところ、清算期間の終了間際になってから、勤務の都合がつかず、清算期間の所定労働時間に満たない勤務しかできない期間が生じたら、事後的に年次有給休暇を取得できる仕組みにしてはいかがでしょうか。

反対に、業務が少ない時期だと思って、清算期間の途中にまとめて年次有給休暇を取得したところ、清算期間の終了間際になって、長時間の勤務が続くと、思わぬ残業が発生してしまいます。この場合、使用者の方から、年次有給休暇の取得を取り消させるわけにはいきません。しかし、労働者側から、これから先のために年次有給休暇を取っておきたいなどの希望で、年次有給休暇の取得を取り消せる仕組みも必要ではないでしょうか。

 

2019.04.13.解決社労士

平成31(2019)年4月09日、厚生労働省が民間企業における平成30(2018)年の「障害者雇用状況」集計結果を取りまとめ公表しました。

障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率、民間企業の場合は2.2%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。

今回の集計結果は、同法に基づき、毎年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものです。

 

【集計結果の主なポイント】

<民間企業>(法定雇用率2.2%)※法定雇用率は平成30年4月1日に改定

 ○雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。

  ・雇用障害者数は53万4,769.5人、対前年7.9%(3万8,974.5人)増加

  ・実雇用率2.05%、対前年比0.08ポイント上昇

 ○法定雇用率達成企業の割合は45.9%(対前縁比4.1ポイント減少)

 

以下、詳細についても、厚生労働省の報道発表資料を引用しておきます。

 

【雇用されている障害者の数、実雇用率、法定雇用率達成企業の割合】

・民間企業(45.5人以上規模の企業:法定雇用率2.2%)に雇用されている障害者の数は534,769.5人で、前年より7.9%(38,974.5人)増加し、15年連続で過去最高となった。

・雇用者のうち、身体障害者は346,208.0人(対前年比3.8%増)、知的障害者は121,166.5人(同7.9%増)、精神障害者は67,395.0人(同34.7%増)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。

・実雇用率は、7年連続で過去最高の2.05%(前年は1.97%)、法定雇用率達成企業の割合は45.9%(同50.0%)であった。

 

【企業規模別の状況】

・企業規模別にみると、雇用されている障害者の数は、45.5~50人未満規模企業で4,252.5人、50~100人未満規模企業で50,674.5人(前年は45,689.5人)、100~300人未満で106,521.5人(同99,028.0人)、300~500人未満で46,877.0人(同44,482.0人)、500~1,000人未満で62,408.0人(同58,912.0人)、1,000人以上で264,036.0人(同247,683.5人)と、全ての企業規模で前年より増加した。

・実雇用率は、45.5~50人未満規模企業で1.69%、50~100人未満で1.68%(前年は1.60%)、100~300人未満で1.91%(同1.81%)、300~500人未満で1.90%(同1.82%)、500~1,000人未満で2.05%(同1.97%)、1,000人以上で2.25%(同2.16%)となった。なお、民間企業全体の実雇用率2.05%(同1.97%)と比較すると、500~1,000人未満及び1,000人以上規模企業が実雇用率以上となっている。

・法定雇用率達成企業の割合は、45.5人~50人未満規模企業で34.0%、50~100人未満で45.4%(前年は46.5%)、100~300人未満で50.1%(同54.1%)、300~500人未満で40.1%(同45.8%)、500~1,000人未満で40.1%(同48.6%)、1,000人以上で47.8%(同62.0%)となり、全ての規模の区分で前年より減少した。

 

【産業別の状況】

・産業別にみると、雇用されている障害者の数は、全ての業種で前年よりも増加した。

・産業別の実雇用率では、「農、林、漁業」(2.40%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.23%)、「医療、福祉」(2.57%)が法定雇用率を上回っている。

 

【法定雇用率未達成企業の状況】

・平成30年の法定雇用率未達成企業は54,369社。そのうち、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、64.0.%と過半数を占めている。

・また、障害者を1人も雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)は31,439社であり、未達成企業に占める割合は、57.8%となっている。

 

【特例子会社の状況】

・平成30年6月1日現在で特例子会社の認定を受けている企業は486社(前年より22社増)で、雇用されている障害者の数は、32,518.0人であった。

・雇用者のうち、身体障害者は11,478.5人、知的障害者は16,211.0人、精神障害者は4,828.5人であった。

※特例子会社とは、親会社の実雇用率に算入できる、障害者の雇用に特別の配慮をした子会社のことをいいます。

 

2019.04.12.解決社労士

<民法の適用>

労働契約も契約の一種ですから、原則として民法が適用されます。

この民法には、任意規定と強行規定が混在していて、その区分は条文に明記されていないことが多いので、最高裁の判例などで確認しなければなりません。判例が無ければ、学者の学説などを参考にして判断することになります。

任意規定というのは、法令に規定があっても当事者がそれに反する意思表示をすれば、法令の規定よりも当事者の意思表示が優先されるものをいいます。当事者が何も意思表示をしない場合でも、任意規定が適用されることによって、契約の内容が補充されます。

強行規定というのは、法令の規定のうちで,当事者の意思にかかわりなく適用される規定をいいます。当事者が強行規定とは別の意思表示をしても、それは無効とされ、自動的に強行規定の内容に修正されます。

結局優先順位は、任意規定 < 契約など当事者の合意 < 強行規定 となります。

つまり、従業員から承諾する旨の一筆をもらったとしても、強行規定に反する内容であれば、無効になってしまうということです。

 

<労働基準法の適用>

労働基準法には「労働者の保護」という確固たる目的があり、この目的を確実に果たすため、その規定は原則として強行規定です。

民法とダブって規定されている内容については、特別法である労働基準法が、一般法である民法に優先して適用されます。

ですから、労働基準法に反する内容について、労働者から一筆もらっても効力がありません。

 

<憲法の趣旨の適用>

憲法は国の最高法規です。〔日本国憲法第98条第1項〕

ですから、この憲法に反する法令などは効力がありません。

憲法は、基本的には国家に対する命令ですから、国民に直接適用されるわけではありませんが、その趣旨は、私人間の契約にも効果が及ぶものと解されています。

そのため、職業選択の自由〔日本国憲法第22条第1項〕を侵害するような契約は、その効力を否定されます。

たとえば、一定の期間退職を禁止する、退職にあたって違約金の支払いを必要とする、退職後にライバル企業に転職することを禁止するといったことは、職業選択の自由を侵害しますから、基本的には、たとえ労働者が合意しても、憲法の趣旨に反して無効となります。

会社としては、退職する従業員から念のため一筆もらっておいても、無効となることが大半なのです。

最高裁の判例でも、ライバル企業への転職の制限について、期間とエリアを限定し、しかも、十分な経済的代償措置を取った場合に限り、労働者の合意が有効だと判断しています。

 

<合意の有効性>

労使関係では、たとえ労働者が合意していても、その合意が無効となってしまうケースは意外と多いものです。

「本人が同意すれば大丈夫」というのは、ありがちな素人考えです。

社員から一筆もらう場合には、よくよくその効力を確認したうえで行いましょう。

 

2019.04.11.解決社労士

<不満発生の原因>

従業員から就業規則の変更に対して不満が出るのは、形式面と実質面の問題が想定されます。

 

<変更手続き>

就業規則変更の正しい手順は、次の順番になります。

 

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

 

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

こうした手続きを巡って、従業員から不満が出るのは、労働者の過半数を代表する者の選出手続きが民主的ではなかったために無効であるとか、就業規則が社内に周知される前に労働者の意見書が作成されたというような場合です。

労働者の過半数代表者の選出手続きが正しくなかった場合、その選出は無効となり、三六協定届の場合には、協定そのものが無効とされます。三六協定は届出が有効要件だからです。しかし、就業規則の場合には、その職場の従業員への周知が有効要件です。ですから、所轄の労働基準監督署長への届出のプロセスに不備があっても無効にはなりません。

会社が手続きの不備を指摘された場合には、「ご指摘ありがとうございます。次回から正しく行います」ということで済んでしまいます。

 

<不利益変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

ただ、この不利益は「平均値」や「総合計」ではなくて、個々の従業員にとって不利益かどうかの問題です。

「自分にとって不利益だ」という不満が出れば、会社はそうでないことを説明しなければなりません。説明できないのであれば、不利益解消のための対応が必要になります。

 

<不満発生の防止のためには>

就業規則を変更する場合には、事前に社内で説明することと、変更案を周知して、労働組合や労働者の過半数代表者以外からも広く意見を求めておくことです。

こうすることによって、思わぬ見落としに気付くこともありますし、周知を徹底しトラブルを未然に防止することもできるのです。

 

2019.04.10.解決社労士

<具体例>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

では、免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 

タクシーの運転手や医師が免許を剥奪されても、事務や営業の仕事ならできるでしょう。そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。これは、罰則をもって使用者に義務付けられていることです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが明確になります。

タクシーの運転手として雇う、医師として雇うということが、明確に示されて雇用されたのなら、免許を失ったときに解雇するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえます。

 

法的に正しい形式を整えるということは、常識的に正しいというのとは違います。

人を雇っていて、つまらないことで足元をすくわれないように、専門家である社会保険労務士にご相談いただけたらと思います。

 

2019.04.09.解決社労士

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2019.04.08.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.07.解決社労士

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

週あたり

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.04.06.解決社労士

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

これが年次有給休暇についての、今回の労働基準法の改正内容です。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことに配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

10

11

12

14

16

18

20

4日

7日

8日

9日

10

12

13

15

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10

11

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

 

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。未確定ならば、必要に応じ専門家に相談して確定させてください。

 

2019.04.05.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

1.従業員の労働条件の共通部分

2.職場の規律

3.法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<1.従業員の労働条件の共通部分>

「生理日の就業が困難な女子社員が休暇を申請した場合は、無給休暇とします」という規定がある場合、これは女子社員に共通の労働条件です。有給にするか無給にするかは会社が決めて就業規則に規定します。もっとも、生理休暇そのものは、労働基準法に定められた権利です。

また、「休暇をとる場合は、事前に所定用紙で上長経由会社に届け出て、許可を受けなければなりません」という規定がある場合、これは全社員に共通の労働条件です。用紙で届け出るか、口頭か、ネットかなどは会社が決めます。直接人事部門に届け出るのか、上長に届け出るのかも会社が決めます。

こうした従業員の労働条件の共通部分は、法令に違反しない限り、会社が自由に決めています。

 

<3.法令に定められた労働者の権利・義務>

年次有給休暇や残業など所定外労働に対する割増賃金は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

ただ、労働基準法は最低限の基準を定めていますから、基準を上回る日数の年次有給休暇を付与し、基準を上回る割増率の残業手当を就業規則に定めることもできます。ここは法令通りではなくても良いわけです。

使用者は、法令等の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを就業規則とは別に周知するのは大変ですし、法令の基準を上回る運用をする場合もありますから、まとめて就業規則に示しておくのが便利なのです。

 

<社会保険や労災保険と就業規則>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の加入基準や運用は、法令に規定されています。会社がこれとは異なる内容を定めても無効です。

また、労災保険は法令により従業員の全員が加入しますから、「臨時アルバイトは加入しない」などの規定を置いても無効です。

ただ、法令の内容とは別に、会社がプラスアルファの給付をするような福利厚生の制度を定めることは自由です。

「アルバイトでも、就業規則に定めれば社会保険に入れますか?労災保険はどうですか?」といった疑問を目にすることがあります。しかし、就業規則の規定とは無関係に、法令の基準によって加入することになるわけです。

 

就業規則の各規定と労働基準法など法令との関係は、判別がむずかしいと思います。就業規則の作成、変更、解釈については、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

 

2019.04.03.解決社労士

<懲戒処分の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

ですから、本人が深く反省し二度と同じ過ちを犯すことはないと、他の社員全員が確信しているような例外的な場合には、この目的からの処分は不要だということになります。

 

<懲戒処分の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置しないという態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

このとき、行為者に対して徹底的な再教育を実施することによって、他の社員全員が納得するのであれば、必ずしも懲戒処分を行う必要は無いでしょう。

 

<懲戒処分の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対してやって良いこと悪いことの基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたら処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。会社は具体的な定めの無いことで懲戒処分をすることは許されません。

この目的に限定して考えると、規定があるからといって必ず処分しなければならないわけではありません。

 

<懲戒処分を行わないことによる悪影響>

不都合な行為を行った社員に対して、懲戒処分が行われなかった場合に、納得できない社員がいるのであれば、その社員は会社に対して不信感を持つことになります。

こうした社員が多ければ多いほど、生産性や定着率が低下したり、会社の評判が落ちたりの悪影響が発生します。

懲戒処分を行わないのが寛容で良い会社というわけではありません。

正しく懲戒処分を行えるのが良い会社だということになります。

 

2019.04.02.解決社労士

<内規の意味>

「内規」を小学館のデジタル大辞泉で調べると「組織の内部に適用されるきまり」とあります。

しかし、就業規則も「組織の内部に適用されるきまり」であることから、内規と就業規則との区別が難しくなっています。

また、就業規則については、労働基準法に詳細な規定があることから、その効力や性質が明確です。

一方で、一口に「内規」と言っても性質は一律ではないため、効力についても統一的に把握できません。

 

<就業規則の一部となる場合>

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「身だしなみは、常に整えておかなければなりません。詳細は別に定める内規によります」

勤務にあたって身だしなみを整えておくことは、全社統一の要請であるものの、具体的な基準は本社、営業所、店舗などによって異なるため、それぞれの拠点で内規を定めて運用するわけです。

このように就業規則で概略を定め、内規に詳細を定めることにしてあれば、内規は就業規則と一体のものとして、就業規則と同等の効力を持ちます。

従業員の立場からすると、「これは内規に過ぎないから」と言って遵守することを拒めません。

 

<労使慣行となる場合>

会社の中で、一定の事実や行為が相当長期間にわたり反復され、労使双方がこれに特段の異議を述べないことがあります。

これも内規と呼ばれますが、その性質は労使慣行です。

就業規則や労働協約などに文書化されていなくても、規範として確立しているのであれば、就業規則の変更を怠っているだけですから、就業規則と同等の効力を持つといえるでしょう。

ただ、「相当長期間」が何年なのかは、労使双方からどの程度強く認識され尊重されているかによるので明確ではありません。

 

<一時的な基準となる場合>

会社が労働組合に宛てて発した文書や、社内の決裁文書は、一種のルールに見えることもありますが、一般には一時的な基準に過ぎないので、就業規則と同等の効力を持ちません。

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「賞与の額は、会社の業績及び正社員の勤務成績などを考慮して、次の計算式により各人ごとに決定する。基本給×支給月数×考課係数」

この場合、ある賞与について、支給月数が2か月と決定されたとしても、この「2か月」がその後の賞与支給額の基準となるわけではありません。

たとえ数回連続で「2か月」と決定されたとしても、ある意味偶然であって、ルールになったわけではありません。

 

<内規が独り歩きしないように>

会社としては、一時的な基準としての内規を作ったつもりなのに、いつの間にか労使慣行となり、就業規則と同等の効力を持つことがあります。

これを防ぐには、一定の事実や行為が反復されたときには、これを文書化して「会社が決定する」ということを明示することです。

また、一時的な基準についての文書を作成した場合には、その適用対象や期間を明示して、反復継続を予定していないことを明示することです。

こうしたことは、労使紛争を予防する小さな工夫といえるでしょう。

 

2019.04.01.解決社労士

<基本の残業制限>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<従来からある違法残業>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

三六協定についての適正な手続きを怠ることによって、発生しやすくなる違法残業には次のようなものがあります。

 

1.三六協定の届出をせずに行う残業2.三六協定届に署名した労働者代表の選出手続きが不適切であった場合の残業

3.三六協定の有効期限が切れた後の残業

4.三六協定で定めた上限時間を超える残業

 

ここでいう「残業」は、すべて1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えての残業を意味します。

上に示した違法残業のうち、1.~3.は形式的な不備によって発生します。

これが、従来型の違法残業の特徴です。

 

<新しい違法残業>

これまでは、三六協定の適正な届出をしていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、法律による上限が定められていなかったため、違法になることはありませんでした。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられます。中小企業については、1年間の猶予が与えられ、令和2(2020)年4月1日からの適用となります。とはいえ、たった1年間の猶予ですから、今から急いで対応する必要があります。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

また、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

 

2019.03.31.解決社労士

<悩みの理由>

社内にパワハラの常習犯がいても、どう注意したら良いのか悩んでしまう。あるいは、注意しても加害者にパワハラの自覚が無い、加害者が納得しないということがあります。

これはその職場で、パワハラ防止対策が適正に行われていないことによって、発生する悩みです。注意しようとした人、あるいは注意した人の能力不足ではありません。

 

<パワハラ防止対策の基本>

パワハラの加害者に注意できる状態にするには、次のパワハラ防止対策が必要です。

 

① パワハラの定義を、その職場の全員が理解できることばで就業規則に示す。

② パワハラの禁止を、就業規則に定める。

③ パワハラに対する懲戒処分を、就業規則に定める。

④ 具体的事例を踏まえたパワハラ研修を定期的に実施する。

 

<① パワハラの定義を示す>

パワハラの定義が社内で明確になっていなければ、つまり、ある行為についてのパワハラ該当性が不明確であれば、「あなたの行為はパワハラだ」「いや違う」という意見の対立が生じてしまい、解決の糸口すら見えません。

たとえば、平成24(2012)年3月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が取りまとめた提言では、職場のパワーハラスメントの概念を以下のように整理しています。

 

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

 

こうした表現を、このまま使える職場もあるでしょう。

しかし、高校生のアルバイトや高齢者がいる職場では、すべての年齢層に理解できる表現で定義を示しておく必要があります。

 

<② パワハラを禁止する>

就業規則でパワハラを禁止することにより、従業員一人ひとりの労働契約の内容に、パワハラの禁止が盛り込まれることになります。

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これは、パワハラの定義と禁止を1つの条文にまとめた例です。これを参考にして、それぞれの職場に適した内容で定めると良いでしょう。

 

<③ 懲戒処分の定めなど>

就業規則では、禁止と懲戒とが対を成します。

禁止だけで懲戒処分が規定されていなければ、禁止の実効性が保たれません。

禁止されていないことが、懲戒処分の対象にされるのは不合理です。

就業規則で禁止したからには、これに対応した懲戒処分の規定を置かなければなりません。

また、部下を持たせた時からパワハラに走る社員には、部下を持たせることが危険ですから、部下を持たせないようにする必要があります。つまり、管理職に抜擢した社員がパワハラを行うようであれば、管理職として不適格なのですから、人事異動により管理職から外すなどの対応が必要です。

さらに、部下を持つ社員の人事考課基準には、パワハラをせずに部下を指導・育成しているか否かを含めておく必要もあります。

 

<④ パワハラ研修の定期的な実施>

就業規則の内容を含め、全社員にパワハラ研修を実施しなければなりません。

なぜなら、パワハラは上司から部下に対して行われるだけでなく、先輩から後輩に行われることもありますし、パワハラを受ける立場の従業員にも研修を実施しておかなければ、被害の申し出を躊躇することになるからです。

この研修は、最新事例を盛り込みながら、最低でも年1回は実施すべきでしょう。

 

<パワハラ防止の重要性>

パワハラによって利益を得る者はいません。

会社にとっては、生産性の低下、人材育成の遅れ、定着率の低下という損失が発生します。時には、被害者のメンタルヘルス不調などにより、労働力の喪失や損害賠償責任を生じることもあります。

加害者が無自覚でパワハラ行為に及んでいた場合には、会社との関係で、ある意味被害者の立場にあるといえるでしょう。そして、社内だけでなく、社会的な信頼を失うこともあります。何より辛いのは、家族からの信頼を失うことです。

「パワハラの加害者にどう注意したら良いのか」という疑問が出る職場では、経営者が中心となって、積極的にパワハラ防止対策に取り組まなければなりません。

 

2019.03.30.解決社労士

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<特定の従業員への手当支給>

たとえば、自由参加の社内行事でケガをした従業員が、公共の交通機関では通勤が困難で、家族が自家用車で送り迎えをするようになったとします。

このとき、会社が恩恵的に出勤1日につきいくらという手当を支給しても、就業規則には違反しません。

ただ、今後も時々発生しうることで、その会社の多数の従業員に共通する労働条件だと判断されるなら、就業規則に定めておくべきでしょう。

またたとえば、人事部門の従業員が社会保険労務士の資格をとって、業務に直接役立てている場合に、こうしたことがその会社にとって初めてのことであれば、就業規則にない資格手当を支給しても就業規則には違反しません。

もし、こうした資格手当の制度を新たに設けたのであれば、その会社にとって多数の従業員に共通する労働条件となりますから、就業規則に定めるべきこととなります。

 

<就業規則の権利保障機能>

就業規則に「従業員が結婚したときは、祝金3万円を支給する」と規定されているのに、特定の従業員だけ手続きをしても支給されないのは、就業規則違反となります。

これは、就業規則で定められた共通の労働条件のはずなのに、特定の従業員だけ対象外としているからです。

反対に、会社が特定の従業員に、就業規則には規定のないプラスアルファのことをしても、その従業員に対しては、就業規則違反が問題とはなりません。

就業規則は、それぞれの従業員に対して、最低限の権利を保障する機能を果たしているわけです。

 

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

たとえば、就業規則に通勤手当の規定が無い会社で、正社員だけに通勤手当が支給されている場合には、同一労働同一賃金に反する可能性が高いといえます。

なぜなら、通勤手当は通勤にかかる費用をまかなうのが目的ですから、正社員とその他の従業員とでその必要性に差が無いからです。

それにもかかわらず、正社員だけに支給するのは、不平等であり不合理なわけです。

これに対して、正社員だけに転居を伴う人事異動があり、転居による住宅費の負担を考慮して、正社員だけに住宅手当を支給するのは、公平であり合理的であって同一労働同一賃金の考え方に反していないことになります。

この場合、住宅手当が就業規則に規定されていないのであれば、正社員のみに支給されていることではなく、正社員の労働条件の共通部分であるにもかかわらず、就業規則に定めて所轄の労働基準監督署長に届出をしていないことが労働基準法違反となります。

 

<同じ雇用形態でも>

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇の公平・平等についての考え方です。

しかし、正規雇用労働者同士、非正規雇用労働者同士でも、一部の従業員だけに手当を支給すること、あるいは金額の異なる手当を支給することが、不公平・不平等となることもあります。

現に支給されている手当については、その手当支給の目的を再確認し、その目的に照らして不公平・不平等が発生していないかを確認し改善することが必要です。

この場合、不公平感・不平等感の有無について、従業員に聞き取り調査を行うことで、改善の方向性が見えてくると思います。

 

2019.03.29.解決社労士

<通勤手当の増額>

従業員が遠方に引っ越し通勤手当が増えると、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料にも反映されますから、会社の負担もかなり増えることがあります。

その引っ越しが、会社の業務都合ではなく個人的な事情によるものであれば、釈然としないこともあります。

しかし、遠方への引っ越しを理由に解雇を通告するのは、一般に不当解雇となってしまいます。〔労働契約法第16条〕

 

<課税の問題>

もし、通勤費込みで基本給を決めておくことができれば、社会保険料や労働保険料について、従業員の引っ越しにより、会社の負担が増減することはありません。

しかし税法上は、一部の例外を除き通勤手当には課税されませんが、通勤手当込みの基本給にすると全体に課税されてしまいます。

 

<純粋な手取り額の減少>

それでは、基本給が20万円で、通勤手当が1万円、だから本来の給与部分は19万円(20万円 - 1万円)と決めておくのはどうでしょう。

遠方に引っ越して通勤手当が2万円になった場合には、基本給は20万円のままで、本来の給与部分は18万円(20万円 - 2万円)となります。

本人が受け取る基本給に変更はありません。

しかし、通勤手当は一般に実費を基準に支給されるものですから、自由に使える金額は本来の基本給が減った分だけ減少してしまいます。

 

<労働基準法と通勤手当>

労働基準法やその他の労働法に、「通勤費は雇い主が負担する」のような規定はありません。

多くの企業が通勤手当を支給していますから、これが当たり前になっているだけです。

ただそれだけに、通勤手当を支給しない企業が求人広告を出しても、魅力が感じられないということはあります。

しかし、就業規則や労働条件通知書に「通勤費は支給しない」と規定しておくことは、法的には問題がないのです。

 

<現実的な対応>

通勤費込みの基本給としたり、通勤手当を支給しなかったりすることは、給与計算のうえで会社の手間が減少します。

しかし、遠方への引っ越しをきっかけとした退職者は出やすくなります。

それでも、「代わりの人」を簡単に採用できる職場であれば問題ないのかもしれません。

新人の採用や育成が難しい職場では、通勤手当に上限額を設けておき、会社の負担が予想外に増えることを防ぐというのが、現実的な対応ではないでしょうか。

 

2019.03.28.解決社労士

<法律の規定>

減給処分を行う場合の限度については、労働基準法に次の規定があります。

 

【制裁規定の制限】

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり労働基準法は、減給処分について一定の制限を設けたうえで認めているわけです。

また、労働契約法には懲戒処分の有効性について次の規定があります。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、懲戒処分が有効であるためには、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められることが必要だと言っています。

しかし、そもそも「使用者が労働者を懲戒することができる場合」とは、どのような場合なのかについて、具体的な規定は見当たりません。

 

<最高裁の判断>

平成15(2003)年10月10日のフジ興産事件判決では、懲戒処分の根拠について次のように述べられています。

 

使用者は企業秩序を定立し維持する権限(企業秩序定立権)を有し、労働者は労働契約を締結したことによって企業秩序遵守義務を負うことから、使用者は労働者の企業秩序違反行為に対して制裁罰として懲戒を行うことができる。

 

そして、懲戒処分を行う場合の条件については、次のように述べられています。

 

使用者が労働者を懲戒するには、予め就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておかなければならない。

使用者が懲戒できることを定めた就業規則が、法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容について、当該就業規則の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていなければならない。

 

労働契約法第15条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、この条件を満たす場合をいうのでしょう。

判例を確認しないと解釈できない条文というのは不親切ですから、やがて条文の中に判例の内容を盛り込む改正が行われるものと期待されます。

 

2019.03.27.解決社労士

<キャンペーンの実施>

厚生労働省では、昨年に引き続き全国の大学生等を対象に、特に多くの新入学生がアルバイトを始める4月から7月までの間、労働条件の確認を促すことなどを目的としたキャンペーンを実施します。

過去の調査結果等でも、労働基準法で規定されている労働条件の明示がなかったと回答した学生が多かったことなどを踏まえ、学生向けに身近に必要な知識を得るためのクイズ形式のリーフレットの配布等による周知・啓発などを行うとともに、大学等での出張相談を引き続き行います。

 

<キャンペーンでの呼びかけ>

重点的に呼びかけが行われる事項は次の通りです。

 

(1)労働条件の明示

(2)学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定

(3)労働時間の適正な把握

(4)商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

(5)労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

 

<アルバイトの性質>

アルバイトというのは、日常用語であって法律用語ではありません。

どのような雇用形態をアルバイトと考えるかは、各企業が独自の基準で自由に決めています。

アルバイトといえども、法律上は正社員と同じく労働者であり、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法など、すべての労働法が当然に適用されます。

また、外国人のアルバイトであっても、日本国内で働く限り、日本の法律が適用されます。

会社が自由に決められるのは、こうした法令による規制が無い部分や、規制の範囲内に限られることになります。

 

<キャンペーンなどの影響>

昭和時代には「アルバイトだから」と言われれば、「一般の労働者とは違うのだろう」とあきらめる学生も多かったものです。

しかし、国が広報に努めたせいか、学生がネットで情報を得るようになったせいか、学生であっても働く限りは、労働法上の権利があるのだということが常識として定着しつつあります。

 

<企業としての再確認>

雇い主としての企業は、学生アルバイトについて、最低限、次のことを再確認しておく必要があります。学生は、知らないふりをしていても、次のようなことを常識として認識しています。

 

・アルバイトを雇うときは、書面による労働条件の明示が必要です。

・学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう。

・アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります。

・アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。

・アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。

・アルバイトにも、業務中または通勤途上のケガについて労災保険が適用されます。

・週1日勤務のアルバイトでも、年次有給休暇が付与され、取得の権利が与えられています。

 

アルバイトを上手くだまして安く使うなどもっての外です。

戦力化して将来正社員にすることを考えるのが得です。

経営者が昭和の考えを持ち続けている場合、学生はこれに反論せず上手に言い訳してひっそり退職していきます。

人材不足の中、平成の次の時代を見据えた経営が必要となっています。

 

2019.03.26.解決社労士

<人事処分だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、就業規則の懲戒規定に基づき人事処分だけを行っている会社もあります。

人事処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

・対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

・社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持すること

 

これらの目的が果たされれば十分と考えるわけです。

 

<人事異動だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、会社の裁量で人事異動だけを行っている会社もあります。

この場合の人事異動の目的は、適材適所によって会社全体の生産性を高めることにあります。

不都合な行為を行った社員を、責任が軽く重要度の低い仕事の担当に異動させ、その人の代わりに適任と思われる別の社員を任命します。

こうして、社内で業務が効率よく円滑に回るように調整するわけです。

 

<二重処罰の禁止>

憲法には、二重処罰の禁止について次の規定があります。

 

【日本国憲法第39条後段】

又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

人事処分も人事異動も、国家だけに権限のある刑罰とは違います。

しかし、その趣旨は、企業で行われる人事処分にも適用されるものと解され、二重処罰に当たる人事処分は、懲戒権の濫用とされ無効になることがあります。〔労働契約法第15条〕

 

<人事処分の種類>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)には、懲戒の種類として、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇があります。

しかし、第63条(懲戒の種類)の解説には、「懲戒処分の種類については、本条に掲げる処分の種類に限定されるものではありません。公序良俗に反しない範囲内で事業場ごと決めることも可能です」と書かれています。

実際に、職務級を下げる降格、役職を免ずる降職といった処分も行われています。これらは、日常用語では左遷と呼ばれ、人事異動の一種でもあります。

 

<人事異動と人事処分の併用>

左遷(降格・降職)は、人事異動でありながら、人事処分の性質も併せ持つことがあります。

このことからも明らかなように、人事異動と人事処分の両方を行うことは、1つの行為を2回処罰することにはならず、二重処罰の禁止の趣旨に反しません。

行為と処分とのバランスが取れていなければ、その有効性が争われることはありますが、人事異動と人事処分の両方を行うのが不当だというわけではありません。

 

<人事考課>

人事考課は、社員の能力や実績を評価し、待遇などに反映させる目的で行われます。

そして、人事異動と人事処分の理由となった行為が、評価の対象となることもあります。

つまり、人事異動、人事処分、人事考課での低評価の3つが重ねて行われることもあるわけです。

ただし、対象となった行為とこれらとのバランスが保たれるよう配慮する必要はあります。

 

2019.03.25.解決社労士

平成31(2019)年3月19日、製品評価技術基盤機構(NITE)が、自転車事故についての注意を呼びかけ、安全のために知っておきたいポイントを示しています。

以下、概要について紹介します。

 

<資料の概要>

春は進学や通勤など生活環境(又はライフスタイル)の変化で自転車に乗り始める方が増えます。

特に4月から5月にかけて、自転車に関する製品事故が一年のうち最も多く発生しています。

発生状況を年代別に分けると、10代の事故が最も多く、次いで30代の事故が多く見られます。

通学や通勤などで自転車を使用する機会が増えるにつれ、手軽で便利な自転車の思わぬ事故が発生しています。

安全に自転車を使用するには、点検や整備など使用上留意すべきポイントがあるため、自転車の使用に関わる注意喚起を行います。

2013年度から2017年度の5年間にNITE(ナイト)に通知された製品事故情報では、自転車の事故は346件ありました。自転車の事故は人的被害(重傷、軽傷)に至る場合が多く、346件中252件(73%)を占めています。

自転車は手軽で便利な乗り物ですが、油断や慣れによる誤った使い方は大きな事故につながります。乗車前の点検や購入してから1カ月での初期点検など、自転車の状況を常に確認し、使い方に注意して事故を未然に防ぎましょう。

リコール製品による事故も発生しているため、リコール情報を確認してください。

 

<事故を防ぐためのポイント>

・路上の木の枝やごみ袋などは車輪に巻き込まれるおそれがあるため、注意して走行する。

・ハンドルに買い物袋や傘などをぶら下げない。

・自転車に乗車する前に、チェーンのたるみ、車輪やペダルの取り付けなどを確認する。

・スポーツ車などは車輪を速やかに脱着してタイヤ交換を容易にする機構(クイックレリー

・お手持ちの製品がリコール対象製品かどうか確認する。

 

<安全のためのポイント>

・乗車前に自転車に不備がないか確認することを習慣にする。

・自転車技士又は自転車安全整備士のいる店舗において、購入後1カ月を目安にねじのがたつき・ワイヤーの伸びなどがないかの初期点検や、新車以外においても定期点検を受ける。

・電柱やフェンスなどに衝突するなど外から大きな衝撃を受けた場合は、そのまま乗車せず、自転車を購入した店舗などで異常がないか点検を受ける。

 

従業員に自転車通勤を認めている会社、従業員が自転車で通勤していることを知っていて黙認している会社は、事故が発生した場合に100%従業員の自己責任とすることはできません。

通勤以外で事故が発生した場合にも、会社は貴重な労働力を、少なくとも一時的に失うことになりかねません。

是非、社内での広報と、自転車利用者への教育に努めてください。

 

2019.03.24.解決社労士

東京都府中市も、平成31(2019)年4月1日にパートナーシップ宣誓制度を開始します。

府中市では、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催等を契機として、一人一人が互いに人権を尊重し、多様性を認め合う共生社会の実現を目指し、「パートナーシップ宣誓制度」を実施するものです。

以下、平成31(2019)年3月21日に府中市の広報誌『広報ふちゅう』で発表された内容です。

 

<パートナーシップ>

互いを人生のパートナーとし、相互の協力により、継続的な共同生活を行い、又は継続的な共同生活を行うことを約した、一方又は双方が性的マイノリティ(典型的とされていない性自認や性的指向を持つ者をいいます。)である2人の者の関係のことをいいます。

パートナーシップ宣誓制度は、一方又は双方が性的マイノリティである2人の関係について、パートナーの関係にあることを証明する制度です。

 

<宣誓できる人>

次の条件をすべて満たすことが必要です。

・パートナーシップの関係にあること。

・成年であること。

・住所について、次のいずれかに該当すること。

1.宣誓をしようとする者の双方が府中市( 以下「市内」という。) の同一所在地に住所を有しており、同一世帯であること。

2.宣誓をしようとする者の一方が市内に住所を有し、他方が当該住所を自らの住所とすることを予定していること。

3.宣誓をしようとする者の双方が市内の同一所在地に住所を有することを予定していること。

・配偶者がいないこと。

・宣誓をする相手方以外の者とのパートナーシップがないこと。

・直系血族又は三親等内の傍系血族もしくは直系姻族の関係にないこと。

 

 なお、「直系血族又は三親等内の傍系血族もしくは直系姻族の関係」とは、次のような関係をいいます。

直系血族…祖父母、父母、子、孫等

三親等内の傍系血族…兄弟姉妹、伯父伯母、叔父叔母、甥姪

直系姻族…子の配偶者、配偶者の父母・祖父母等

 

<宣誓に必要なもの>

〇世帯全員の住民票の写し

1人1通ずつお持ちください。(3ヶ月以内に発行されたもの)

本籍地及び世帯主との続柄の表示は不要

同一世帯になっている場合は、2人分の情報が記載されたもの1通で可

(転入を予定している方)その事実が確認できる書類(売買契約書や賃貸借契約書等)を提出してください。なお、転入後速やかに「世帯全員の住民票の写し」を提出して下さい。

 

〇配偶者がいないことを証明する書類(戸籍抄本・独身証明書等)

1人1通ずつお持ちください。(3ヶ月以内に発行されたもの)

独身証明書や戸籍抄本は、本籍地の市町村で取得できます。

外国籍の方の場合は、配偶者がいないことを確認できる書面に日本語の翻訳を添えて提出(婚姻要件具備証明書等)

 

〇本人確認書類

個人番号カード、運転免許証、一般旅券、在留カード、官公署が発行した免許証、許可証又は資格証明書等(宣誓をしようとする者本人の顔写真が貼付されたもの)

 

<宣誓の流れ>

(1)電話またはメールで事前予約

事前に政策総務部政策課へ、電話またはメールで手続希望日等をご連絡ください。

申請の日時・必要書類などを調整・確認します。(宣誓希望日の7日前まで)

TEL:042-335-4010      

電話受付:月曜日から金曜日 午前8時30分から午後5時(祝休日・年末年始は除く。)

メール:kikaku04@city.fuchu.tokyo.jp

 

(2)書類提出

予約した日時に、必ずお二人そろってお越しください。

必要書類をご持参ください。

宣誓の受付:月~金 午前8時30分~午後5時(祝休日・年末年始は除く。)

受付場所:市役所1階市民相談室

 

(3)内容確認

提出された書類について、パートナーシップ宣誓の要件を満たしているか確認します。

書類に不備や不足等がある場合等は、宣誓日を延期させていただくことがあります。

 

(4)宣誓書受領証の交付

宣誓書の写しを添えて「パートナーシップ宣誓書受領証」を2部交付します。

 

2019.03.23.解決社労士

<年次有給休暇の付与基準>

年次有給休暇の付与について定める労働基準法第39条第2項の末尾には、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と書かれています。

全労働日に対する出勤日の割合は、出勤率と呼ばれ、これが8割未満であれば年次有給休暇を付与しなくても良いということです。

 

<出勤率が基準に満たない社員の状況>

出勤率が8割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに2割の欠勤が発生している状態だと考えられます。

時々遊びに行きたくなって、繰り返し仕事を休んでいたら、欠勤が2割を超えてしまったなどということは、そうそうあるものではないでしょう。

学生なら学業の都合で、主婦なら家族の都合で、やむを得ず欠勤を重ねてしまったというケースが多いのではないでしょうか。

 

<正しい出勤率の計算>

年次有給休暇の付与基準に使われる出勤率の計算は、実際には複雑です。

単純に考えると、出勤日数 ÷ 全労働日 ということになりますが、これには、休業しても出勤したものと取り扱う例外と、全労働日から除かれる例外があります。

 

【出勤したものと取り扱う日数】

(1)業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日

(2)産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日

(3)育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日

(4)年次有給休暇を取得した日

 

【全労働日から除外される日数】

(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日

(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日

(3)休日労働させた日

(4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日

 

こうした例外をきちんと加味して出勤率を計算することは、意外と手間がかかるうえ間違えやすいものです。

 

<会社独自の制度として>

労働基準法は、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない。」と規定しているのであって、「与えてはならない。」とは規定していません。

普通に出勤していれば、そうそう出勤率が8割を切ることはありません。

たまに見られるのは、週5日出勤で契約したアルバイトが、実際には週4日のシフトで働いていたような場合です。こうした場合には、勤務の実態が変更するたびに、雇用契約書を交わし直すのが確実なのですが、実際にはできていないことがあります。

いろいろと手間を考えてみると、出勤率はノーチェックで8割以上あるものとして、年次有給休暇を付与することにも十分な合理性があるといえるでしょう。

 

2019.03.22.解決社労士

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を原則として書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

1人につき30万円の損失で済むわけではなく、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も、取得した場合の給与計算の方法も不明です。月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。こうしたことから、労働条件を通知しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

平成31(2019)年4月からは、使用者に年次有給休暇を取得させる義務が課されます。これに全く対応できていない状態であれば、採用後に辞退されても仕方がないでしょう。

 

<通知義務のある法定事項>

通知義務のある事項は、次に示すように多岐にわたります。

 

【書面による通知義務がある事項】

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、現在でもパートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

【口頭による通知義務がある事項】

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

 

これらの事項は、労働条件通知書に漏れていても違法ではありません。

ただし、現在でもパートタイマー(短時間労働者)については、1.~3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<労働条件の事前公開>

応募者が採用面接後に辞退したくなる理由は、面接官の態度・対応への不満もありますが、主にシフトや仕事内容など労働条件が事前のイメージと違うというのが最も多いのです。

これは、求人広告の内容にすべてを盛り込むのが困難で、具体的なことよりも、良いイメージを抱かせようとする記述が多くなってしまうことが原因でしょう。

求人広告への応募を検討する場合、多くの求職者は、会社のホームページを参考にします。

求人広告に書ききれないことは、ここに詳しく具体的に示しておきましょう。

就業の場所は写真も添えることをお勧めします。

表彰制度があるのなら、表彰式の様子や表彰状も掲載しましょう。

「こんなものを載せたら応募者が減るのでは?」という心配は無用です。入社してから事実を知り、ショックを受けて突然退職されるよりは、応募前にすべてを知ったうえで採用面接を受けてもらう方が、会社の負担も減るというものです。

 

<教育の情報も忘れずに>

会社のホームページに求人情報を掲載するのであれば、「どの仕事を誰がどのように教えるのか」も具体的に明示しておきましょう。

応募者の過去の実務経験に頼ったり、自己啓発に任せたりというのでは、特に若者は応募してきません。

表示できる情報が無いのであれば、新たに仕組みを作ってでも掲載すべきです。

 

2019.03.21.解決社労士

<報道では>

家電量販店ノジマの社長が、子会社の社員の実名を挙げて「使い物にならない」などと責めた文書が子会社のイントラネットに昨年8月に掲載されたことが判明しました。

この社員は昨年末に退社しています。

ノジマは「社員教育の一環」としています。

 

<パワハラの構造>

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

行為者は、パワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時に行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<真実でも>

真実の指摘なら責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉毀損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、真実であろうとなかろうと名誉を毀損することは犯罪になるということです。

 

「仕事が遅い」「ミスが多い」「仕事をサボっている」という指摘を、人前で行ったなら、それは名誉棄損罪に該当するでしょう。

パワハラとして社内で懲戒の対象になるのはもちろん、刑事告訴の対象となりうるわけです。

 

この辺りのことが、就業規則で対応できていない会社もあります。

経営者に勘違いがあるのなら、社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

 

2019.03.20.解決社労士

<九州での導入>

国や地方自治体が進める公共工事の週休2日制が、平成31(2019)年度から九州全県で導入されることになりました。

導入が遅れていた福岡県で2月から、佐賀県で3月から導入されていて、熊本県でも4月から導入される予定です。

熊本県では、熊本地震からの復旧復興が優先されてきましたが、将来の担い手確保のためにも週休2日制の必要性が認識されたようです。

 

<工期長期化への対応>

国土交通省によれば、熊本県での試行が始まれば、全都道府県で週休2日工事が導入されることになります。

九州各県では、休日の増加で工期が長くなり、企業にとって現場事務所代などの経費増となることになります。

これに配慮し、4週間で6日以上の休日を確保して工事を終えた企業に対し、工事費の数%の増額補正などを行うそうです。

 

<建設業の特質>

悪天候の中では作業を進められないなどの理由から、休日を少なめに設定して工事の計画を立てることが常態化しています。

しかも、建設業の許認可の対象となる業種の大まかな分類でも、次の29種類があり、どれか1つの工程が滞ると、他の工程も遅れるという関係にあります。

 

1. 土木一式工事業

2. 建築一式工事業

3. 大工工事業

4. 左官工事業

5. とび・土工工事業

6. 石工事業

7. 屋根工事業

8. 電気工事業

9. 管工事業

10. タイル・レンガ工事業

11. 鋼構造物工事業

12. 鉄筋工事業

13. 舗装工事業

14. しゅんせつ工事業

15. 板金工事業

16. ガラス工事業

17. 塗装工事業

18. 防水工事業

19. 内装仕上工事業

20. 機械器具設置工事業

21. 熱絶縁工事業

22. 電気通信工事業

23. 造園工事業

24. さく井工事業

25. 建具工事業

26. 水道施設工事業

27. 消防施設工事業

28. 清掃施設工事業

29. 解体工事業 (平成28年6月1日新設)

 

こうしたことなどから、建設業の労働時間は全産業平均に比べて年間300時間以上長く、重大な労災事故も発生しやすく、人手不足も特に深刻化しています。

 

<建設業の働き方改革>

時間外労働時間の上限規制は、建設業の場合には5年間猶予されます。

だからといって、これから5年近くの間、長時間労働を放置してはなりません。

このことについては、働き方改革の推進を指導している厚生労働省も注意を呼びかけています。

建設業では、この5年間の猶予期間中に、労働時間削減の手を尽くさなければ、5年後に工事を受注できなくなる事態も予想されます。

将来を見据えての働き方改革には、真剣に取り組んでいただきたいものです。

 

2019.03.19.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務には、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで対応しております。

<政省令公布>

平成31(2019)年3月15日、政府は特定技能の在留資格を創設し、外国人労働者受け入れを拡大する新制度の運用の詳細を定めた法務省令や政令を公布しました。

健康状態が良好であることを資格取得の要件とし、受け入れ先には日本人と同等以上の報酬とする雇用契約を結ばせることなどを定めました。

施行は新制度を盛り込んだ改正入管難民法と同じ4月1日となります。

これで外国人労働者の新制度に関する全ての法規定が整備された形となりました。

新制度は一定技能が必要な特定技能1号、熟練技能が必要な同2号の在留資格を創設しています。

1号は介護や農業など14業種、2号は建設と造船・舶用工業の2業種で受け入れることになっています。

 

<外国人と法令の適用>

労働基準法や最低賃金法、社会保険や労働保険に関する法律は、労働者の国籍とは関係なく、日本国内の事業所や現場で働く外国人にも適用されます。

日本人ではないことを理由に、年次有給休暇や産休・育休を取得させない、厚生年金や雇用保険に加入させない、労災の手続きをしないというのは明らかに違法です。

外国人であれば日本人よりも安い賃金で雇えそうだという期待とは裏腹に、法令の適用については日本人と同じですから、人件費の節減も思うようにはいきません。

それどころか、日本語が上手ではない外国人にも安全教育が必要ですし、就業規則などのルールも説明しなければなりません。危険個所には、日本語以外の注意書きを表示する必要があります。

こうしてみると、外国人を雇った場合、そのお世話をする日本人の人件費も馬鹿にならないように思えます。

そもそも国籍の違いを理由に待遇を差別したら、それだけで違法になってしまいます。〔労働基準法3条〕

 

<特定技能の在留資格の特例>

特定技能の在留資格では、受け入れ先に日本人と同等以上の報酬とすることを義務づけています。

これまでも、外国人を最低賃金法の定める最低額を下回る賃金で働かせ、刑事告発を受ける企業がありました。

特定技能の在留資格では、「日本人と同等以上の報酬」で雇うことが義務付けられていますから、最低賃金法の定める最低賃金を上回るだけでは条件を満たしません。

「日本人と同等以上の報酬」であることが立証できるためには、客観的な評価基準と適正な人事考課の運用も必要となります。

有能な外国人を採用するには、それ相当の準備が必要であること、また、低賃金で働かせることはできないという、正しい認識が広がっていくことを期待します。

 

2019.03.18.解決社労士

<会社の損害>

何度も求人広告を出して何十万円もの経費をかけ、採用面接でもそれ相当の人件費がかかり、やっと採用し大事に育ててきた新人から、あっさり「辞める」と言われたら、経営者や採用担当者は「金返せ!」という気持ちになります。

 

さて、この場合の「会社の損害」とは何でしょうか。

 

まず、求人広告にどれだけの経費をかけるかは、会社の判断によるのであって、応募者と相談して決めるわけではありません。

これは、採用面接などについても同じことがいえます。

応募があった時に、「採用します!」と即決ならば、ほとんど経費がかかりません。もっとも、こんないい加減な採用はしないでしょう。

しかし、どれだけ手間暇をかけるかは、会社が判断します。

 

新人を育てるための経費も馬鹿になりません。場合によっては、会社の費用負担で研修に参加させたり、免許を取らせたりと、至れり尽くせりのこともあるでしょう。そうでなくても、上司や先輩が指導するのに人件費がかかったはずだと考えられます。

そうだとしても、これらは会社側の判断で行ったのであって、本人からたっての希望があって行ったというわけではないでしょう。

となれば、応募し採用された本人が認識できない損失についてまで、本人に費用を負担させることはできません。

 

制服も、会社のルールで使うことにしているわけですから、その経費を本人の負担にはできません。

 

こうしてみると、会社に何か特別な損害があったような場合でなければ、損害賠償の請求はできないだろうということは、しろうとにも判断のつくことです。

 

しかし、急に辞めたことにより、予定していた工事の人手が足りなくなり、工事ができなくなったとします。この場合には、発注者の信用を失うだけでなく、業界全体に悪評が流れてしまうかもしれません。こうなると、会社の損害は甚大です。

 

<労働基準法の規定>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

予定した仕事をしないというのは「労働契約の不履行」の一つですから、「入社から3年以内に退職すると300万円の罰金」などのルールは、労働基準法の禁止する賠償予定にあたるため違法となります。

しかし、「予定」するのではなく実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、退職した社員に損害賠償を請求することができます。

 

<損害賠償請求の裁判>

裁判で損害賠償を請求する場合には、訴えを起こした原告側が証明責任を負います。

当たり前です。

損害賠償を請求された被告が、損害を与えていない、あるいは、〇円以上の損害は与えていないという証明に成功しないと裁判で負けてしまうというのは常識外れです。

言いがかり的に訴訟を提起して、相手が証明できなければ勝てるというのでは、そうした行為が横行してしまいます。

 

新人が辞めたことによって、会社に甚大な被害が及ぶということは稀でしょう。

しかし、ある程度の経済的な損失は発生します。

その損害額がいくらなのか、あるいは少なくともいくら以上なのか、計算できない場合には損害賠償の請求訴訟を提起しても敗訴してしまいます。

 

確信をもって客観的な損害額を算定できるような例外を除き、退職していく社員に損害賠償の話を持ち出すのは、単なる言いがかりになってしまう可能性が高いと考えられます。

 

2019.03.17.解決社労士

<報道向け発表>

毎月勤労統計調査で本来は全数調査すべきところを、一部抽出調査で行っていたことによる雇用保険等の追加給付について、厚生労働省から工程表が公表されていました。

平成31(2019)年3月12日、この工程表に基づく支払い開始について、厚生労働省が報道関係者に宛てて、現在受給している人の3月18日以降を支給対象期間とする給付については、改定後の給付額で支払いを開始することにしたと発表しました。

 

<失業手当について>

失業手当(雇用保険の基本手当)の場合、各認定日に認定される期間については、前回の認定日から今回の認定日の前日までの支給となります。

3月18日に認定日を迎える場合は、今回の認定日(3月18日)から次回認定日の前日までの給付について、次の認定日から再計算された金額での支給となります。

 

<お知らせが届かない可能性>

次の1.~4.に該当する人は、今後の追加給付にあたり、必要なお知らせが届かない可能性があります。

 

1. 2010年10月4日以前に氏名変更があった人

2. 住民票記載の住所と異なる場所に、一時的に滞在している人

3. 海外転出届を市町村に提出していることにより、住民票が除票されている人

4. 家族が雇用保険等を受給中または受給終了後に亡くなられた場合のご遺族

 

これらの状況に該当する可能性がある人については、「追加給付に係る住所情報等登録フォーム」が厚生労働省ホームページに開設されているため、このフォームを活用し、住所などの情報をご登録するよう呼びかけています。

 

<詐欺に注意!>

この件に関して、都道府県労働局、ハローワーク(公共職業安定所)、労働基準監督署、全国健康保険協会または日本年金機構から直接電話をかけたり、訪問をしたりすることはありませんので、これらをかたる電話・訪問があった場合はご注意ください。

また、これらをかたる郵便物にもご注意ください。

 

2019.03.16.解決社労士

<「許される」の意味>

使用者側からも、労働者側からも、「遅刻は何回まで許されるか」という質問を受けます。

この質問では「許されない」とは何かを想定し、それぞれについて回答する必要があります。

 

【遅刻について「許されない」の意味】

① 給与の欠勤控除を受ける。

② 懲戒処分を受ける。

③ 損害賠償の請求を受ける。

 

1回でも遅刻すれば、上司や先輩から注意を受けるでしょうから、これすら無くて許されるということは想定できません。

すると、上記の3つについて考えることになります。

 

<① 給与の欠勤控除を受ける>

欠勤控除について、モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

【欠勤等の扱い】

第43条  欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令には規定がありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

また、遅刻による欠勤の時間に相当する賃金を超えて欠勤控除をすることは、懲戒処分になりますから、懲戒処分としての適法性が問題となります。

 

<② 懲戒処分を受ける>

モデル就業規則の最新版で、遅刻についての懲戒処分の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第64条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

 

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

この規定によると、2つのパターンがあります。

・正当な理由なくしばしば遅刻をしたとき → けん責、減給、出勤停止

・正当な理由なく無断でしばしば遅刻し 回注意されても遅刻したとき → 懲戒解雇など

 

「無断で」「注意されても」なお遅刻すると、懲戒解雇もありうるということになります。

これは、別に次の規定があって、遅刻の事前申し出と承認を必要としているからです。

こうした規定により、事前申し出と承認を義務付けていなければ、「無断で」を理由に一層重い処分とすることはできません。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第18条  労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

さて、モデル就業規則第64条第1項第2号には、「しばしば」という言葉があります。

この意味は、会社ごとに運用で決めることになります。

すると「何回まで許されるか」については、「運用による」という回答になってしまいます。

 

また、ここの第2項第3号には「  回にわたって」という言葉があり、何回にするかは会社が決める形になっています。

こうした規定があれば、会社の無断遅刻が何回まで許されるかは、かなり具体的にわかります。

 

このように、懲戒処分を受けないという意味で「許される遅刻は何回までか」という質問に対しては、「会社の就業規則と運用による」という回答になります。

 

<③ 損害賠償の請求を受ける>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

ここで遅刻は「労働契約の不履行」になりますから、「遅刻すると1回につき3千円の罰金」などのルールは、賠償予定となって労働基準法に違反するため無効となります。

しかし、「予定」するのではなく、会社に実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、遅刻した社員に損害賠償を請求することができます。

朝一番で予定していた大事な商談に遅刻して、商談相手が怒って帰り、その後お詫びしても許してもらえず、大きな仕事をライバル会社に取られてしまったという場合には、ある程度具体的な損害額が算定できるでしょう。

つまり、損害賠償責任については、遅刻の回数は問題ではないことになります。

 

こうしてみると、懲戒処分についての規定の中の「しばしば遅刻」「  回にわたって注意を受けても」という部分は、会社に与えた損害額や不注意の程度を基準にすることも、十分に客観的な合理性があるといえます。

 

2019.03.15.解決社労士

<しろうとの意見>

職場で暴言を吐かれ、感情を抑えられずに相手に暴力を振るってしまった社員がいた場合には、他の社員たちから次のような意見が聞かれます。

・最初に暴言を吐いて仕掛けた方が悪い。暴言が無ければ、暴力も無かっただろう。

・あくまでも言葉のやり取りで済ませるべきで、最初に手を出した方が悪い。

・喧嘩両成敗ということもあり、どちらも同じように悪い。

あるいは、当事者の普段の様子を知っている社員からは、全く違った意見が出てくるかもしれません。

 

<パワハラに該当するか>

職場での暴言や暴力は、パワハラであると判断されるのが一般です。

パワハラは、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

暴言の中には、指導や教育などの意図が含まれていることでしょう。

しかし、普通の話し方ではなく「暴言」という形で表現してしまうと、それは相手の人権を侵害する行為になり、パワハラとなってしまうのです。

場合によっては、脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(刑法223条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)に該当することもあります。

 

一方、暴言に対抗して暴力を振るうのは、その暴力の中に、業務上必要な要素が含まれていませんから、パワハラではなく単純に暴行罪(刑法第208条)が成立します。

相手にけがを負わせれば、傷害罪(刑法204条)となります。

 

<正当防衛になるのか>

それでは、暴言に対抗しての暴力は正当防衛になるでしょうか。

刑事上は犯罪となる行為が、多くの場合、民事上は不法行為にもなります。つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

刑事上の正当防衛は、刑法第36条第1項に規定があります。

 

【刑事上の正当防衛】

第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

 

暴言によって侵害される名誉権や人格権を防衛するために、暴力は必要が無いですから、「やむを得ず」という条件を満たしません。

 

民事上の正当防衛は、民法第720条第1項本文に規定があります。

 

【民事上の正当防衛】

第七百二十条  他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。

 

こちらでも「やむを得ず」という条件がありますから、暴言を吐いた人でも、暴力を振るった人に対して、損害賠償の請求ができることになります。

 

<懲戒処分はどうするか>

会社の懲戒処分は刑罰ではありませんが、国法である刑法や民法の趣旨に反する懲戒は、客観的合理性や社会通念上の相当性が否定され、懲戒権の濫用となってしまうことがあります。〔労働契約法第15条〕

就業規則に具体的な懲戒規定があることを前提に、暴言を吐いた社員も、暴力を振るった社員も懲戒処分の対象とすべきです。

また、刑法上も暴力は暴言よりも重い罪ですから、一般には暴力の方が重い懲戒処分になります。

そして、懲戒規定には「情状酌量」についての定めが含まれているでしょう。

暴言を吐いた社員が、暴力を誘発する意図で行っていた場合や、何度も止めるように言われながら暴言を発し続けたような場合には、情状酌量の面から、暴言を吐いた社員は一段重い懲戒処分、暴力を振るった社員は一段軽い処分ということも考えられます。

懲戒処分とは別に、その立場でその仕事をこなすことに対する適性の判断から、人事異動も検討しなければなりませんし、人事考課への反映も忘れてはなりません。

 

懲戒処分については、刑法にも詳しい社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

 

2019.03.14.解決社労士

<残業代未払い>

企業には残業代を支払う義務があり、サービス残業(サビ残)をさせることは違法になります。

中小企業の経営者の中には、「残業代を支払っていては経営が成り立たない」という言い訳をする人もいます。

大企業の役職者の中には、部下の残業代を100%支払っていては、業績の前年割れが発生し責任問題になるという言い訳をする人もいます。

しかし、企業が残業代を適切に支払っていない場合には、訴訟になることもあり、また、労働基準監督署への申告で行政指導を受ける危険もあります。

 

<経済的な損失のリスク>

残業代の未払いがあった場合には、労働者から裁判を起こされる可能性があります。

タイミングとしては、退職してからしばらく経ってからということが多いものです。

本人はおとなしい性格で、とても裁判など起こしそうになかったのに、友人や親戚から「おかしい。訴えるべきだ」と強く主張されて、これに従うということがあります。

 

<付加金という制度>

未払い残業代だけ支払っても済まないことがあります。

裁判所は、本人から請求があり悪質性が認められる場合には、未払い残業代と同額の付加金の支払いを命じることがあります。

この制度によって、本来の残業代の2倍の金額を支払うことになります。

 

<不法行為責任>

残業代の未払いは、基本的に民法上の債務不履行責任の問題です。

しかし、労働時間の管理義務を怠ったことにより、残業代が支払われてこなかった場合には、民法上の不法行為責任が追及されることもあります。

未払い残業代請求権の消滅時効期間は2年間ですが、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間は3年間です。

残業代の未払いが不法行為と認定された場合には、3年分の未払い残業代の支払いが命じられる可能性があります。

 

<証拠資料は労働者に有利>

会社を出た時刻を書いた手帳の記録、帰宅時刻を書いたノート、タイムカードに印字された時刻などが、出勤時刻・退出時刻の証拠として認められています。

手帳やノートの記録が裁判の証拠になるのは、少し不思議な気もします。しかし本来、使用者が労働時間を適正に把握し記録する義務を負っているわけですから、これを怠っていれば、基本的には労働者の言いなりになるしかないのです。

出勤してタイムカードを打刻した後、しばらく休憩して、定時から業務を始めるのはよくあることでしょう。

また、仕事を終えて、仲間同士で雑談してからタイムカードを打刻するということもあります。

タイムカードに記録された時刻と、実際の勤務時間とが違うということは当たり前に発生しています。

しかし、裁判になれば「あなたの会社では労働時間の管理・記録をどうしていますか?」「タイムカードです」「では、タイムカードの記録で労働時間を認定します」ということになります。

こうならないためには、就業規則の規定を工夫するなどの対策が必要です。

 

<労働基準監督署の監督(調査)>

労働基準監督署は、計画的に対象事業場を選定して調査を行います。これに当たるのは、ある意味、運が悪いともいえます。たとえ何か悪いことをしていなくても、経営者や担当者が調査に対応するわけですから、時間と労力の負担が発生します。

これとは別に、労働者からの申告をきっかけに行われる調査があります。申告監督といいます。労働基準法により、労働基準監督官は労働者の申告を受けることになっています。現在勤務している従業員だけでなく、退職者からの申告があった場合にも、その真偽や具体的な内容を確認するために調査が行われます。

 

不思議と強気な経営者や役職者は多いものです。そうでなければ務まらないのでしょうか。

こと残業代の未払いについては、あまりにもリスクが高すぎるように思います。

裁判は公開の法廷で行われますし、労働基準監督署が調査(監督)に入れば、残業代だけでなく、あらゆる角度から労働基準法違反の可能性を調査します。

コストを抑えて適法に経営することを考えるのが、結局のところは得だということを認識していただきたいです。

 

2019.03.13.解決社労士