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2022/07/04|899文字

 

<送検状況の概要>

令和4(2022)年6月30日、東京労働局が令和3年度の送検状況を取りまとめ公表しました。

令和3(2021)年4月から令和4(2022)年3月までの1年間に、東京労働局と管下の労働基準監督署(支署)では、81件(前年度比11件増)の司法事件を東京地方検察庁に送検しました。

送検した司法事件の違反事項をみると、労働安全衛生法が定める危険防止措置に関する違反が36件となっているなど、労働安全衛生法違反の事案が増加(前年度比9件増)しています。

また、労働基準法・最低賃金法では、賃金・退職金不払に関する違反や労働時間に関する違反等がみられました。

業種別でみると、建設業(17件)が最も多く、ついで清掃・と畜業(15件)となっています。

 

<違反事項の内容>

労働基準法・最低賃金法違反により送検したのは36件で、主な送検事項は、賃金・退職金不払に関する違反が14件、労働時間・休日に関する違反が5件、割増賃金不払に関する違反が3件でした。

労働安全衛生法違反により送検したのは45件で、主な送検事項は、高所からの墜落・転落や機械等への接触等についての危険防止措置に関する違反が36件(前年比17件増)のほか、労災隠しが2件でした。

 

<今後の対応について>

東京労働局と管下の労働基準監督署では、法違反を原因として重大な労働災害を発生させたものや、同種の法違反を繰り返し、遵法状況に悪影響を及ぼすもの等、重大・悪質な事案に対しては、引き続き、送検も含め厳正に対処していくとしています。

 

<解決社労士の視点から>

企業に遵法経営が求められるのは当然ですが、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの罰則に触れる行為は、犯罪として送検され、刑事裁判を経て刑の執行に至ることもあります。

「悪質な事案」と判断される基準としては、必ずしも金額の多寡ではなく、違法行為の反復・継続、あるいは報告の拒否、虚偽の報告といったことが重視されています。

なお、「労災かくし」というのは、一般に労働者死傷病報告を提出しないことをもって判断されます。

一連の労災保険関係の手続の中でも、特に漏れがないように注意しましょう。

 

2022/07/03|2,170文字

 

<出向の意味>

「出向」とは、他の企業の指揮監督下で労務を提供する形態の雇用契約です。

元々在籍している企業を「出向元(しゅっこうもと)」、実際に勤務している企業を「出向先(しゅっこうさき)」と言います。

出向元から見て、他の企業に出向することを「出出向(でしゅっこう)」と言います。

反対に、他の企業から受け入れている出向を「入出向(いりしゅっこう)」と言います。

また、籍を元の企業に置いたまま他の企業に出向する「在籍出向」と、元の企業の籍を失って他の企業に出向する「転籍出向」とがあります。

「在籍出向」では、出向元・出向先の両方との間で雇用契約が成立しています。2つの契約には矛盾が生じうるので、これを調整するため、一般には出向元と出向先の間で出向契約という契約が交わされます。

「転籍出向」では、出向元との雇用契約が解消され、出向先との雇用契約のみになります。元の企業に戻る可能性は、その企業のルールや慣行によります。

厄介なことに、これらすべてが一口に「出向」と呼ばれます。

しかも「出向」と言った場合に、どの「出向」を指しているかは企業によって異なります。

 

ここでは、最も一般的な在籍出向に限定して述べます。

 

<出向命令の根拠>

出向元が従業員に出向を命ずる根拠は、就業規則や労働条件通知書に記載されているのが一般です。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【人事異動】

第8条  会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。

2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。

3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

 

こうした規定が無ければ、出向命令はできないのですが、会社と従業員とが新たに合意して出向契約を交わすことは可能です。

 

<出向拒否の根拠>

労働契約法は、懲戒や解雇と同様に、権利の濫用にあたる場合には無効であることを規定しています。

 

【出向】

第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

 

ここで、「その他の事情」には、出向後の労働条件の説明、不利益変更の有無、出向命令を受けた従業員の個人的な事情などが含まれます。

先ほどのモデル就業規則第8条第3項と併せて読むと、次のような事情があれば、出向拒否をする正当な理由があるということになります。

 

【出向拒否の正当な理由】

1.業務上の必要が無い

2.他の不当な動機・目的をもって出向命令が行われた

3.出向後の労働条件の説明が無い

4.出向により賃金の減額など労働条件が不利益に変更される

5.個人や家庭の事情により出向に対応できない

 

<1.業務上の必要>

企業は、関連会社との人材交流、出向者の技術取得、現場経験、あるいは出向先での技術指導を行わせるなどの必要から、出向を命じます。

慣例として、ローテーションで出向命令が出されているようなケースでは、これに該当することが多いでしょう。

しかし、業務上の必要の判断は、一般には企業側に裁量権があります。

 

<2.他の不当な動機・目的>

社長の個人的な恨み、組合活動への報復、年次有給休暇の取得が多いなどの理由で出向命令が出された場合には、出向命令に正当な目的がありませんから、権利の濫用となり無効となります。

 

<3.4.出向後の労働条件>

出向後の労働条件について、対象者に個別あるいは説明会で具体的に説明する必要があります。

就業規則に詳細を定めてしまえば、対象者への説明はかなりの部分が省けます。

労働条件の不利益変更については、一般の場合と同様に、個別の同意を得るか就業規則の定めが必要となります。

ただし、著しい不利益変更であれば、本人の同意があっても、権利の濫用や公序良俗違反(民法第90条)とされ無効になることもあります。

 

<5.個人や家庭の事情>

たとえば、育児介護休業法には次の規定があります。

 

【労働者の配置に関する配慮】

第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

 

企業は、子の養育や家族の介護に大きな支障が出ないように配慮をすることが必要です。

そして、可能な措置を尽くしても、なお大きな支障が出るのであれば、出向を拒否されても仕方が無いことになります

この他、出向者本人の生活に大きな支障が出る場合、たとえば勤務そのものが困難であるとか、持病の治療が継続できなくなるなどの正当な理由があれば、出向を拒否することに正当な理由が認められます。

 

企業が出向命令を出すには根拠規定が必要なこと、出向者に対する説明と出向者からの聞き取りも必要なことを忘れないようにしましょう。

出向拒否があっても、就業規則の規定だけを見て懲戒や解雇を検討してはならないのです。

 

2022/07/02|1,924文字

 

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、重い職務専念義務が課されています。

ですから、ほとんどの場合はダブルワーク禁止です。

親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

民間企業では、会社が給与を支払っています。

その給与の財源は税金ではありません。

ですから、社員が自社の職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、厳しい態度を取る必然性はありません。

 

<ダブルワークの理由>

ダブルワークを希望する人の中には、今の収入では足りないので、より多くの収入を得るために別の仕事をしなければならないと言う人がいます。

こうした人たちは、会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと考えています。

しかし中には、別の仕事もしてみたい、家業を手伝いたい、別の分野で自分の能力を高めたい、将来の独立に向けて準備したいなど考えている人もいます。

働き方改革の流れで、政府は副業・兼業を推奨していますから、ダブルワークを希望する人は今後も増えるでしょうし、企業も対応を迫られています。

 

<ダブルワーク禁止の理由>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。

実際に、そうしたケースがあるのも事実です。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。

ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。

社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

平成31(2019)年3月に改定された時点で、モデル就業規則の規定は次のようになりました。

これを参考に、社内規定を調えてはいかがでしょうか。

 

【副業・兼業】

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

就業規則で「ダブルワーク禁止」としたり、社員に「ダブルワークしません」という念書を提出してもらったりした場合、これらは有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力がないということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて有効になるというわけではありません。

実際に有効とされるためには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

 

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

 

これらの条件は、労働契約法第15条・第16条によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、アルバイトなどの活動は、本来の入国目的とは異なるということで制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。

一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。

また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

留学生が国外退去処分になったり、会社が営業停止処分になっては困りますから。

 

2022/07/01|868文字

 

<受給期間の特例の新設>

失業手当(正しくは雇用保険の基本手当)の受給期間は、原則として、離職日の翌日から1年以内となっています。

令和4(2022)年7月1日から、事業を開始等した人が事業を行っている期間等は、最大3年間受給期間に参入しない特例が新設されています。

これによって、仮に事業を休廃業した場合でも、その後の再就職活動にあたって、基本手当を受給することが可能になりました。

 

<特例申請の要件>

特例を申請するためには、事業が次の5つの要件すべてを満たす必要があります。

 

・事業の実施期間が30日以上であること

・「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから起算して30日を経過した日が受給期間の末日以前であること

・その事業について、就業手当や再就職手当を受給していないこと

・その事業によっては自立することができないような事業ではないこと

・離職日の翌日以後に開始した事業であること

 

雇用保険に加入(資格取得)する人を雇い入れ、雇用保険適用事業の事業主となれば、自立することができる事業と認められます。

また、登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的な資料で、事業の開始、事業内容、事業所の実在が確認できる場合にも、自立することができる事業と認められます。

「離職日の翌日以後に開始した事業」には、離職日以前に事業を開始し、離職日の翌日以後にその事業に専念する場合を含みます。

 

<申請方法>

次の提出書類を、住居地を管轄するハローワークなど、受給資格決定を行ったハローワークに直接持参または郵送します。

 

・受給期間延長等申請書

・離職票-2または受給資格者証

・事業を開始等した事実と開始日を確認できる書類

 

<申請期間>

「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」の翌日から2か月以内に申請します。

ただし、就職手当または再就職手当を支給申請し、不支給となった場合には、この期間を超えても、これらの手当の支給申請日を特例の申請日として受給期間の特例を申請できます。

 

2022/06/30|1,311文字

 

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴をいつわることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。

しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。

しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。

これにならって、就業規則に採用取消や懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題はないのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。

しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。

会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。

どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。

たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。

むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。

怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。

もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。

こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。

その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。

やはり、再教育や人事異動を考えるべきでしょう。

 

2022/06/29|1,162文字

 

<社員紹介制度(リファラル採用)>

社員紹介制度は、自社の従業員から知人を紹介してもらい、採用活動の対象とするものです。

推薦・紹介を英語でreferralと言いますので、リファラル採用とも呼ばれます。

紹介者に対しては、謝礼の進呈や報奨金の支払が行われます。

企業にとっては、採用コストの削減や、応募条件を満たさない応募者への対応の回避などの点でメリットがあります。

 

<法的な規制>

社員紹介制度は、労働基準法に違反する場合があります。

 

【中間搾取の排除】

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

 

ここでいう法律とは、通達によると、職業安定法や船員職業安定法です。

また、業として利益を得るというのは、営利を目的として、同種の行為を反復継続することをいうものと解されています。

いわゆるピンハネを禁止する規定です。

この規定に違反した場合の罰則は、労働基準法上2番目に重い、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

ともすると、人身売買につながりうるとの配慮から、こうした重い罰則となっています。

もっとも、社員紹介制度をそこまで大々的に展開することは稀でしょうから、一般の企業で、労働基準法違反は起こり難いと思われます。

 

しかし、注意しなければならない法的規制として、職業安定法の次の規定があります。

 

【報酬の供与の禁止】

第四十条 労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

 

この中の第36条第2項は、従業員以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとする場合をいいますから、従業員を対象とする社員紹介制度は含まれません。

「賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合」と言っていますから、商品券など物品の進呈はいけません。

従業員が紹介により得られる報酬は、賃金として支払われる制度にすることが必要です。

 

<就業規則の規定>

紹介者には賃金が支払われるのですから、給与や賞与にプラスして支給される内容を就業規則に規定する必要があります。

基本給や本来の賞与額に比べて相当に高額であると、「業として利益を得る」ことになり、労働基準法第6条に違反する恐れが出てきます。

1回の紹介に対する謝礼の他、1人の従業員が紹介できる人数に制限を設ける必要もあるでしょう。

特定の従業員の知り合いが多数集まると、派閥形成のリスクもあります。

また、支給の時期については、紹介があったとき、紹介された人が採用されたとき、採用されて6か月など一定の期間定着したときなどが考えられます。

各時点で異なる金額を支給する制度も可能です。

 

2022/06/28|927文字

 

<労働者協同組合の必要性>

少子高齢化が進む中、子育て、介護、地域の活性化など幅広い分野での担い手が必要とされています。

これらの担い手が不足しており、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題に取り組むための新たな組織として労働者協同組合が創設されました。

 

<労働者協同組合法>

令和4(2022)年10月1日、労働者協同組合法が施行されます。

労働者協同組合法は、労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。

この法律は、労働者協同組合が、持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とし、次の3つを基本原理とすることを示しています。

・組合員が出資すること  

・その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること

・組合員が組合の行う事業に従事すること

 

<組合員の出資>

組合員は出資する必要があり、組合員自らが出資することにより、組合の資本形成を図ります。

これによって、組合員による自主的・自立的な事業経営を目指します。

 

<組合員の意見反映>

組合員には、1人1票の議決権と選挙権があり、事業・経営に組合員の意見が反映されます。

意見反映の方法を定款に定め、総会でその実施状況と結果を報告しなければなりません。

 

<組合員の従事>

組合員は原則として、組合の事業に従事する必要があります。

ただし、育児や介護など家庭の事情などで、一時的に働けない場合などには例外も認められています。

 

<労働者協同組合の主な特色>

労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能で、介護・福祉関連(訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域づくり関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)など地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。

ただし、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。

その設立には3人以上の発起人が必要です。

NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、行政庁による許認可等を必要とせず、法律に定めた要件を満たし、登記をすれば法人格が付与されます(準則主義)。

組合員は組合との間で労働契約を締結します。

出資配当は認められず、剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行われます。

そして、都道府県知事による監督を受けます。

 

2022/06/27|838文字

 

<休職中の社会保険料>

休職中で賃金の支払が無くても、通常通り社会保険料を納付しなければならず、会社と社会保険加入者(被保険者)とで折半します。

雇用保険の場合には、月々の賃金に対する一定割合として計算されますから、賃金の支払が無ければ保険料も発生しません。

しかし社会保険料は、標準報酬月額という基準額に対する一定割合として計算されますから、賃金が発生しなくても保険料が発生するのです。

 

<9月分からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、原則として、毎年4月から6月までの賃金支払実績から計算されます。

その年の4月から6月までの賃金支払実績が、その時の標準報酬月額の水準より高ければ、9月分の保険料は高くなった新しい標準報酬月額を基準に計算されます。

そして、9月分の社会保険料は、一般には10月支給分の賃金から控除されます。この時から、社会保険料が増えることになります。

ですから、7月以降に休職が始まった場合には、「休んでいるのに10月から社会保険料が増えた」という現象が生じます。

人手不足で残業代が増える一方、長時間労働で疲労が蓄積して病に倒れ入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

<昇給して5か月目からの増額>

社会保険料の基準となる標準報酬月額は、「標準報酬月額保険料額表」という表に定める基準で、2ランク以上アップすることになると、昇給の5か月目から社会保険料が増額されます。

たとえば、11月に支給された賃金から増えたとすると、11月から翌年1月までの賃金支払実績をもとに、2月からの新しい標準報酬月額が決定されます。

2月分の保険料は、3月に徴集されるのが一般ですから、11月から数えて5か月目に保険料が増額されることになります。

3月に休職が始まった場合には、3月に徴集される保険料から増額されますから「休職したら保険料が増えた」という感覚に陥ります。

昇進して忙しくなり責任も重くなって、体調を崩し入院したなどの場合には、このようなことが起こります。

 

2022/06/26|1,425文字

 

<労働時間・休憩時間の定義>

労働基準法には、休憩について次の規定があります。

 

【休憩】

第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

労働基準法の中に「労働時間」「休憩時間」の定義はありません。

このため、会社が独自の解釈で労務管理や賃金計算を行っている場合があります。

たとえば、業務で着用が決められている制服に着替える時間を労働時間から除いていたり、お弁当を食べながらの電話番を休憩時間として扱っていたりという違法な運用も見られます。

その結果、労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入れば、その違法性を指摘され、すぐに是正するよう求められます。

 

<通達の役割>

労働基準監督署が企業を指導するにあたって、「労働時間」「休憩時間」の定義があやふやであれば、企業側が納得できません。

そのため、法令解釈の基準として次のような通達が示されています。

 

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。〔平29.1.20 基発第3号〕 

 

休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱う。〔昭22.09.13発基第17号〕

 

これらの通達は公表されていますから、ネットで調べるなり、所轄の労働基準監督署に問い合わせるなりすれば、比較的容易に内容を知ることができます。

 

<判例の役割>

上の通達によっても、従業員が社外で市場調査の業務を行い、そのまま帰宅した場合には、どこまでが「使用者の指揮命令下にある時間」といえるのかが不明確です。

また、昼休みであっても、業務上の必要に応じて電話で呼び出せる状態では、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」とはいえないのかという疑問も生じます。

このため、会社が休憩時間として扱った時間を、従業員や退職者が労働時間であると判断し、会社を相手に未払い賃金の請求訴訟を提起するということが起こります。

会社は、訴訟代理人の弁護士を選任するでしょう。そして、依頼された弁護士は、事実関係、使える証拠、条文、通達、過去の裁判例などを確認します。

過去の判決などは、最高裁判所のホームページで参照することができます。

しかし、今回の事例にどの判例があてはまるのか、この判例の射程はどうなのか、会社が準備できる証拠によって主張できるのはどこまでかなど、難しい判断を迫られます。

 

<企業としての対応>

欲を言えば、社内に専門部署を置いて、法改正、新たな通達、新判例の情報を随時吸収し、社内の問題点を改善していきたいものです。

新たな判例が、いままでの判例や通達を覆すということもありますから、判例の研究には重点を置かなければなりません。

しかし、こうした体制が取れない場合には、労働問題に詳しい社会保険労務士を顧問に置いて、トラブルの発生を未然に防止に努め、万一トラブルが発生したら、労働事件に対応できる弁護士と連携させるというのが現実的でしょう。

社会保険労務士の中には、手続を専門として活動している先生もいます。

弁護士の中には、労働事件を扱わない先生もいます。

その先生の専門をよく確認したうえで選ぶと良いでしょう。

 

2022/06/25|944文字

 

<パワハラによる労災認定>

現在の「心理的負荷による精神障害の認定基準」には、「パワーハラスメント」の出来事が「心理的負荷評価表」に追加されています(令和2年5月29日付基発0529第1号通達)。

業務により精神障害を発病した可能性のある人に対しては、この基準が適用されて労災保険適用の有無が検討されます。

ですから、パワハラを受けたという思い込みが原因で精神障害を発病した場合には、「パワハラによる労災」が認定されないことになります。

 

<パワハラではない嫌がらせなどによる労災認定>

しかし、「心理的負荷による精神障害の認定基準」には、パワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行やいじめ、嫌がらせ等を評価する項目として次のような項目が掲げられています。

 

【強いストレスと評価される例】

 同僚等から、治療を要する程度の暴行等を受けた場合

 同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた場合

 

この基準に該当すれば、パワハラではないものの、やはり労災保険の適用対象となることもあるわけです。

 

<思い込みによる精神障害に対する会社の責任>

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、事業主に次のことも義務づけています。

・職場におけるパワハラの内容を明確化し労働者に周知・啓発すること

・相談窓口をあらかじめ定め労働者に周知すること

・相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

つまり、会社がこれらのことを怠っていたことによって、パワハラではないことをパワハラであると思い込み、思い悩んで精神障害を発病するに至ったのであれば、会社にも責任があるといえます。

会社が義務を怠ったことと、精神障害の発病との間に因果関係が認められるのであれば、会社が責任を問われることもあります。

 

<実務の視点から>

改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)によって、パワハラの定義が法定され、事業主の防止対策義務が明確化される前は、従業員が思い込みで精神障害を発病しても会社の責任が問われることは稀だったでしょう。

しかし法改正後の現在では、同様の事案についても、会社の責任が問題となるケースが増えています。

こうしたことからも、会社のパワハラ防止対策は積極的に取組む必要があるのです。

 

2022/06/24|1,678文字

 

<始末書を提出させる意味>

始末書の目的は、事実の報告、発生の原因分析、謝罪、具体的な再発防止策の提示です。

この中に謝罪が含まれないものは、単なる報告書あるいは顛末書ですから、上司の判断で部下に提出を求めることができます。

しかし、謝罪が含まれるものは始末書ですから、懲戒処分として提出を求めることになります。

これは上司の判断で行えるわけではなく、就業規則に譴責(けんせき)処分などの具体的な規定があって、懲戒処分の適正な手続に従い、会社の代表者が提出を命じることになります。

上司だけの判断で部下に始末書の提出を求めることは、職場での優越的な関係を背景として業務上必要相当な範囲を超えたことを行わせることになり、パワハラに該当するのが一般です。

 

<「いかなる処分もお受けします」の法的効力>

(懲戒)処分は、就業規則に具体的な規定があって、適正な手続に従い行われるものです。

どのような行為が対象となるのかが不明確な状態で懲戒処分が行われれば、客観的に合理的な理由を欠いているので、懲戒権の濫用となり無効となります。

このことは、労働契約法第15条に規定されています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、始末書に「いかなる処分もお受けします」と書いたところで、就業規則の規定を超える処分は無効となってしまうのですから、この記載も無効ということになります。

また、「相応の処分を受ける覚悟でおります」などの記載は、当たり前のことを書いたに過ぎませんから、書いても書かなくても効力に違いはありません。

 

<裁判での効果>

従業員が何度も就業規則違反を行い、何度も始末書を書かされ、ついには懲戒解雇となったとします。

これを不服として、解雇された人が訴訟を提起した場合には、会社から不当解雇ではないことの証拠資料を提出することになります。

実際には、会社が不当解雇ではないことの証拠を揃えておくことは大変で、顧問の社会保険労務士などと相談して、解雇の相当前から準備しておかなければなりません。

会社は証拠資料として、裁判所に始末書も提出することになります。

そこに「いかなる処分もお受けします」と書かれていたら、裁判官は会社に対して良い印象を持ちません。

懲戒権の濫用があるのではないかと疑ってしまいます。

そして、民事訴訟法には次の規定があります。

 

【自由心証主義】

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

日本の民事訴訟では、何が証拠となるかについて法令に網羅されているわけではなく、裁判所の自由な心証に委ねられているのです。

この自由心証主義によって、会社側から証拠として提出した始末書が、解雇された側に有利に働くことがあるわけです。

つまり法的効力の無い「いかなる処分もお受けします」の記載が、会社にとってマイナスとなりうるのですから、こうした言葉の入った始末書が提出されたら、再提出を求めるべきです。

 

<始末書は必要か>

さて、始末書は本当に必要でしょうか。

会社にとって役立つのは、事実の報告、発生の原因分析、具体的な再発防止策です。

特に再発防止に向けた具体的な取組は、大いに役立つでしょう。

謝罪の部分は、会社側つまり経営者、人事部門、上司の気が済む程度の効果しかありません。

しかも、そこに本心が書かれているとは限りません。

本人の反省の程度とは無関係です。

こうしてみると、上司から報告書の提出を求めた方が現実的ではないでしょうか。

裁判になっても、この報告書からルール違反の事実は認定できますし、裁判所の心証を害することもありません。

就業規則に始末書に関する規定があるのなら、その必要性を再検討することをお勧めします。

 

2022/06/23|1,262文字

 

<役員の立場>

役員と会社との関係については、会社法に次の規定があります。

 

【株式会社と役員等との関係】

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

そして、「委任に関する規定」は民法にあります。

 

【委任】

第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

 

ここで、当事者の一方は会社であり、相手方は役員です。

つまり、会社が役員に法律行為を委託し、役員が会社に承諾して効力が発生します。

「法律行為」というのは、権利の発生・変更・消滅を望む意思で行うことにより、その通りの効果を生じさせるものをいいます。

 

<兼務役員の立場>

役員として、会社との間で委任契約を締結したからといって、雇用契約を重ねて契約できなくなるわけではありません。

雇用契約についての基本的な規定は、民法にあります。

 

【雇用】

第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

会社との間で役員として契約し、同時に労働者としても契約している人のことを、兼務役員といいます。

会社からは、役員報酬と給与の両方が支給されます。

労働者としての立場では労働基準法などの保護を受ける一方で、役員としての立場では労働基準法などの保護が受けられず、会社法などに定められた重責を負うことになります。

兼務役員の行動が、役員としてのものか労働者としてのものか、明確に区分することが困難な場合も多々ありますが、会社は労働者として勤務している部分について、労働時間の適正な把握が義務付けられています。

つまり、この部分については、出勤簿が必要ということになります。

 

<名ばかり役員の立場>

役員として登記されているにもかかわらず、それに相応しい権限を与えられず、取締役会に出席することもないという「名ばかり役員」がいます。

こうした人は、100%労働者ですから、労働基準法などが適用されます。

つまり、出勤簿が必要です。

 

<健康保険と労働保険>

傷病手当金など健康保険の給付は、純然たる役員にも、兼務役員にも、名ばかり役員にも権利があります。

出勤簿が無い場合でも、別の資料から役員として、あるいは労働者としての活動があった日、休業した日は判りますから、手続をするのに困らないはずです。

純然たる役員には、労災保険も雇用保険も適用がありません。

兼務役員には、労働者の部分について、労災保険・雇用保険が適用されます。

兼務役員になったときは、ハローワークで手続が必要です。

給付が受けられるのは、労働者としての立場に基づく部分に限られます。

名ばかり役員は、労災保険も雇用保険も適用されます。

ただ困ったことに、会社は労働基準法や労働保険などの適用を排除し、不当に会社の負担を減らそうとしていることが多いものです。

名ばかり役員の立場を1日も早く解消するため、専門家へのご相談をお勧めします。

 

2022/06/22|820文字

 

<以前の三省合意>

文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意である「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の平成27(2015)年改正版では、インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義され、そこで取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならないとされていました。

 

<産学協議会の報告書>

これに対し、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(産学協議会)は、令和4(2022)年4月に公表した報告書で、インターンシップについて新たな定義を定め、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意に至ったとし、三省合意は早急な見直しの要望を受けていました。

 

<三省合意の改正>

これを踏まえ、令和4(2022)年6月13日、三省合意が改正されました。

令和6(2024)年度の大学卒業予定者、大学院修士課程の修了予定者より、就業体験要件(必ず就業体験を行う。インターンシップ実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる)や、実施期間要件(インターンシップの実施期間は、汎用的能力活用型では5日間以上、専門能力活用型では2週間以上)等一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能となります。

 

<類型の限定>

今回の改正で、インターンシップで得られた学生情報を採用活動開始後に活用できるとはいえ、その対象は限定されています。

学生のキャリア形成支援における産学協働の取組の4類型のうち、タイプ3とタイプ4の基準を満たしたものたけが対象となります。

 

参考:学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組の4類型

タイプ1 オープン・カンパニー

タイプ2 キャリア教育

タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ

タイプ4 高度専門型インターンシップ

 

2022/06/21|993文字

 

<性別による差別の禁止>

事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています。〔男女雇用機会均等法第5条〕

また、事業主は、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、労働者の性別を理由として差別的な取り扱いをしてはいけません。〔男女雇用機会均等法第6条〕

労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをすることも禁止されています(男女同一賃金の原則)。〔労働基準法第4条〕

 

<間接差別の禁止>

事業主が以下の措置を行うことは、実質的に一方の性に不利益となって、性別を理由とする差別となるおそれがあるため、合理的な理由がない限り、間接差別として禁止されています。〔男女雇用機会均等法第7条〕

・募集・採用にあたり身長、体重または体力を要件とすること

・コース別雇用管理における総合職の募集・採用にあたり転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること

・昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること

 

<セクシュアルハラスメント対策>

セクシュアルハラスメントとは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否・抵抗などしたことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)」及び「性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)」をいい、女性、男性ともに対策の対象となります。

事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置を講ずる義務があります。〔男女雇用機会均等法第11条〕

LGBTについての認識も高まっていますから、同性しかいない場所や同性間でのセクハラにも対応する必要があります。

 

<ポジティブ・アクション>

過去の女性労働者に対する取り扱いなどが原因で、職場に生じている男女間格差を解消する目的で、女性のみを対象としたり、女性を有利に取扱う措置については法違反とはなりません。〔男女雇用機会均等法第8条〕

また、このような格差の解消を目指して雇用管理の改善について企業が自主的かつ積極的に取り組みを行う場合、国が援助できる旨の規定が設けられています。〔男女雇用機会均等法第14条〕

 

<労働安全衛生法>

職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として、労働基準法の特別法である労働安全衛生法が定められています。

この法律は事業者に、仕事が原因で労働者が事故にあったり、病気になったりしないようにする義務を定めています。

一方、労働者に対しては、労働災害を防止するために必要な事項を守り、事業者が行う措置に協力するように定めています。

ただし、労働者がこれを行うのに必要な教育は、事業者が行わなければなりません。

 

<定期健康診断などの実施義務>

事業者は、労働者を雇い入れた際とその後年1回、医師による健康診断を行わなければなりません。

労働者はその健康診断を受ける必要があります。〔労働安全衛生法第66条〕

また最近では、仕事のストレスによるうつ病など、労働者のメンタルヘルスも大きな問題となっており、快適な職場環境形成のためには、事業者が、作業方法の改善や疲労回復のための措置だけでなく、メンタルヘルス対策を行うことも重要となっています。

 

<労働者災害補償保険法>

労働者が仕事や通勤によって病気やけがをした場合には、労災保険給付の対象になります。

労災保険給付を受けるためには、病院や労働基準監督署に、各種の請求書を提出する必要があります。

会社が被災労働者から災害の原因など必要な証明を求められたときは、速やかに証明をしなければなりません。

なお、仕事が原因の病気には、長期間にわたる長時間の業務による脳・心臓疾患や人の生命にかかわる事故への遭遇などを原因とする精神障害なども含まれますので、ご留意ください。

社会保険や雇用保険は、従業員一人ひとりについて、個人ごとに手続をしないと保険に加入しません。

しかし、労災保険は雇われると同時に保険に加入しますので、個人ごとの手続は要りませんし、保険料は雇い主側の全額負担となります。

 

<パワーハラスメント>

パワ―ハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を指します。

パワハラは内容によっては刑法などに触れる犯罪となります(名誉毀損罪、侮辱罪、暴行罪、傷害罪、強要罪など)。

また、会社には快適な職場環境を整える義務があることから、会社も責任を問われる場合があります。〔民法第715条〕

さらに、社長以下取締役が責任を追及される裁判も増えています。〔会社法第429条1項〕

 

2022/06/19|1,401文字

 

<金額についての規制>

使用者が支払わなければならない賃金の最低額が、時間単価で定められています。〔最低賃金法〕

これは原則として都道府県単位で定められていて、政府は全国平均が1,000円以上となるように引き上げる方針です。

最低賃金は、これを目指して毎年のように改定されています。

改定されれば、改定日当日に勤務した分の賃金から適用されます。

外国人であっても、日本国内で働いている労働者は、ごく一部の例外を除き、この最低賃金を守ることが必要です。

たとえ労働者が同意しても、基準より低い賃金は認められません。

法律によって、使用者は最低基準額で計算した賃金支払義務を負うことになります。

最低賃金法違反で書類送検された使用者のニュースは、ときどき報道されていますので、現に最低賃金に満たない賃金が支払われることもあるわけです。

 

<減給の制限>

労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。懲戒処分の一つです。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

平均賃金は、世間相場とは関係なく、対象者の過去の賃金を基準として法令に従って計算されます。

また、複数回規律違反をしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1が限度です。〔労働基準法第91条〕

なお「罰金」というのは、死刑や懲役と同様に、国家権力以外が科すことはできませんから、会社の中で設定することはできません。

 

<支払い方法の規制>

労働者を保護するため、賃金の全額が確実に労働者に渡るように、支払方法には、次の4つの原則が定められています。〔労働基準法第24条〕

 

<通貨払いの原則>

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物ではいけません。

ただし、労働組合のある会社で、労働協約により定めた場合には、通貨ではなく現物支給をすることができます。

また、労働者の同意を得た場合には、銀行振込み等の方法によることができます。

労働者から振込口座の指定があれば、銀行振り込みの同意があったものと考えられます。

 

<直接払いの原則>

賃金は労働者本人に払わなければなりません。

満18歳未満の未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。

 

<全額払いの原則>

賃金は全額支払われなければなりません。

「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。

これ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合に限り認められます。

また、年次有給休暇を取得すると賃金が減少する、残業代の一部がカットされる、残業代に上限が設けられるなども、全額払いの原則に違反します。

 

<毎月1回以上定期払いの原則>

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。

したがって「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められません。

また、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

2022/06/18|1,058文字

 

<遺族からの退職金請求>

あと2年で定年退職という社員が、急病で亡くなりました。

会社から多くの社員が葬式に参列しました。

ただ泣くばかりの奥様が気の毒でした。

後日、就業規則の規定に従い、奥様名義の銀行口座に退職金が振り込まれました。

それから半年後、亡くなった社員の息子さん2人が会社にやってきて、退職金を請求します。

会社としては、もう退職金は支払い済みと思っていたところ、奥様とは別の相続人2人があらわれたのです。

確かに、法定相続分は、奥様が半分、息子さんは4分の1ずつです。

彼らは、母親とは仲が悪く10年以上会っていないのだそうです。

それで、自分たちの取り分である退職金の4分の1ずつは、直接自分たちに支払えということなのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条 退職金は、支給事由の生じた日から  か月以内に、退職した労働者(死亡による退職の場合はその遺族)に対して支払う。

〔厚生労働省のモデル就業規則令和3年4月版〕

 

<注意書きを見ると>

厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

退職金の支払方法、支払時期については、各企業が実情に応じて定めることになります。

労働者が死亡した場合の退職金の支払については、別段の定めがない場合には遺産相続人に支払うものと解されます。

 

もっともよく使われているひな形なのですが、どうやら今回のようなケースには対応できていないようです。

ですから、専門家ではない人が、就業規則のひな形だけを頼りに自分の会社の就業規則を作ると、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうしてカスタマイズ>

こうした困ったことにならないようにするには、次のような規定にしておけば良いのです。

 

(退職金の支払方法及び支払時期)

第54条

2 死亡による退職のときの退職金を受ける遺族の範囲および順位は、次のとおりとします。

    ・配偶者(内縁関係にある者を含みます)

    ・子

    ・父母

    ・孫

    ・祖父母

    ・兄弟姉妹

3 同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分するものとします。

 

「就業規則の適用対象は社員だけだから、何かあったら、そこは話し合いで」という考え方は危険です。

特に、社員が退職した後のことや、ご家族にも影響のあることについては、慎重に規定の内容を吟味する必要があるのです。

 

2022/06/17|1,407文字

 

<揺れ動く判断基準>

従業員が不都合な行動に出た場合、それが就業規則に定められた禁止行為であったり、義務違反であったりして、個々の具体的な懲戒規定に当てはまるものであれば、懲戒処分を検討することになります。

しかし人手不足の折、たとえ従業員の落ち度であっても、けん責処分、減給処分、出勤停止などすれば、気を悪くして退職してしまい、会社に大きな痛手となるかもしれません。

こうして、人手が余っているときには懲戒処分が多発し、人手不足の場合には多少のことに目をつぶるという企業の態度が見られることもあります。

一方で、従業員の方も、人手が余っているときには品行方正を保ち、人手不足のときには強い態度に出るということがあります。

 

<情状酌量の考え方>

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(懲戒の事由)

第66条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

本来は懲戒解雇に該当するような行為があっても、平素の服務態度その他の情状によっては、減給や出勤停止にとどめることがあると規定しています。

ここでの「情状」は、あくまでも懲戒対象者個人の情状です。

また、重大な過失により会社に重大な損害を与えたが、ミスがあってはならない仕事を1人の従業員に任せていて、チェック体制が整っていなかったというような事情があった場合には、会社側にも落ち度があって、従業員だけに責任を負わせるわけにはいかないので、こうした事情を斟酌して情状酌量するということがあります。

 

<懲戒処分の有効性>

懲戒処分の有効性については、労働契約法に次の規定があります。

 

(懲戒)

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

無効とされれば、懲戒処分から生じた従業員の損害は、慰謝料を含め会社に請求されることとなります。

裁判にでもなれば、従業員の会社に対する信頼や、世間からの評判は大いに低下することでしょう。

人手不足のときに懲戒処分の対象とせず見逃していた行為を、人手が足りているときに懲戒処分の対象としたなら、これは会社側の都合でそのようにしたわけであって、「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」であることは否定されてしまいます。

人手不足のときに軽い懲戒処分、人手が足りているときに重い懲戒処分というのも同様です。

どちらも、その懲戒処分は無効になってしまいます。

 

<ご都合主義の排除>

その時々の社内事情により、懲戒処分の判断基準を変えてしまうことは危険です。

なぜなら、過去に許されていた行為が許されないと判断されたり、過去に軽い処分で済んでいた行為が重く処分されたりというのは、労働契約法第15条により無効になってしまうからです。

会社が「人手不足だから多少のことは大目に見る」という態度を取っていれば、従業員は足元を見てしまい、会社の規律は保たれなくなります。

これでは労働生産性が低下してしまいます。

人手不足だからこそ、懲戒規定の運用は厳格にしなければなりません。

 

2022/06/16|1,768文字

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、令和2(2020)年4月1日でした。

中小企業でも令和3(2021)年4月1日に施行済です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<慶弔休暇の性質>

慶弔休暇は、自分自身や近親者の慶事(結婚・出産)、近親者の弔事(葬式)の際に取得できる休暇のことです。

これについては、労働基準法などに規定がありません。

法定外の特別な休暇です。

そのため、慶弔休暇の内容については、各企業で自由に定められてきました。

しかし、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由について説明を求められうることになったわけです。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

 

<慶弔休暇に差を設ける合理的な理由>

会社に全く慶弔休暇の制度が無いとしても、これは違法ではありません。

あくまでも、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、その内容と理由に合理性があるかという形で問題とされるのです。

これは、働き方改革の一内容である同一労働同一賃金の視点からの規制です。

慶弔休暇の必要性については、所定労働日数が正社員など一般の労働者と同じであれば、パート・有期労働者であっても否定のしようがありません。

また、勤続年数や1日の所定労働時間、役職などによって、その必要性に違いが生ずることもほとんどありません。

ですから、正社員など一般の労働者のみに慶弔休暇を与えていたり、パート・有期労働者に対して、一律に一般の労働者よりも少ない日数の慶弔休暇を与えていたりすれば、合理的な理由を見出すのは困難でしょう。

 

<企業の取るべき対応>

週所定労働日数が2~3日であれば、結婚式や葬式などが出勤日と重なる可能性は低いでしょう。

それだけ、慶弔休暇を与える必要性も低くなります。

慶弔による休みが必要になった場合には、勤務日の振替で対応することを原則とし、対応し切れないときに慶弔休暇を与える制度にすることは、決して不合理ではありません。

これは、有期雇用・無期雇用による差別でもなく、1日の所定労働時間による差別でもありません。

同一労働同一賃金の趣旨に反してはいないのです。

しかし、これを理由に、一部の従業員の慶弔休暇が減るのであれば不利益変更となります。

この場合には、個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実態を把握するために従業員への聞き取り調査を行い、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2022/06/15|956文字

 

<退職者から賞与の請求>

勤続10年以上で円満退職した正社員から「賞与が振り込まれていない」という電話が入ります。

もう3か月も前に退職した方です。

この電話を受けた人事担当者は、頭の中がパニックです。

なにしろ、つい先日「退職金が振り込まれていました」という電話をくださったその退職者から、今度は賞与の催促です。

後日、その退職者の代理人弁護士から、賞与請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の請求も増えているようです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(賞与)

第48条 賞与は、原則として、下記の算定対象期間に在籍した労働者に対し、会社の業績等を勘案して下記の支給日に支給する。

ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

算定対象期間

支給日

    日から    日まで

    

    日から    日まで

    

 

この規定では「下記の算定対象期間に在籍した労働者」に支給するとなっています。

「算定対象期間の最終日に在籍した労働者」とは書いてありません。

これだと、算定対象期間の途中まで在籍していて、その後退職した労働者には、本当に支給しなくて良いのかが不明確です。

労働法の原理からすると、「疑わしきは労働者の有利に」ですから、会社は賞与の支払を拒めないように思われます。

就業規則に、賞与の支給対象者を一定の日(例えば、6月1日や12月1日、又は賞与支給日)に在籍した者とする規定を設けることで、期間の途中で退職等し、その日に在職しない者には支給しないこととすることも可能です。

ちょっとしたポイントですが、こうした規定を設けるか設けないかで大きな違いを生じてしまいます。

 

<ひな形はひな形>

ひな形はあくまでもひな形です。

就業規則のひな形に合わせて、会社を運営することなど殆ど不可能です。

当たり前のことですが、会社の実情を反映した就業規則でなければ使い物になりません。

ひな形を利用するのであれば、注意書きをすべて読み込んだうえで、上手にカスタマイズしましょう。

 

2022/06/14|1,441文字

 

<労働法での休日>

「休日」は、労働者が労働義務を負わない日のことをいいます。

労働法上は、カレンダーで日付の色が違う土日や祝日ではなく、就業規則や労働契約で定められた休日のことを「休日」と呼んでいます。

何も手続をしなくても、当然にお休みなのが「休日」です。

「休日」の中でも、労働基準法によって定められている「休日」を、特に「法定休日」と呼んでいます。

 

【労働基準法第35条:休日】

使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

そして、この法定休日とは別に、就業規則や労働契約にプラスアルファで設けた「休日」が「法定休日ではない所定休日」ということになります。

週休2日であれば、1日は「法定休日でもある所定休日」、もう1日は「法定休日ではない所定休日」です。

しかし、法定休日を明確に定めていない就業規則や労働契約もあります。

この場合には、週の初日を別に定めていなければ、日曜日から土曜日までの7日間にすべて出勤していれば、少なくとも、1日は法定休日となります。

 

<法定休日の労働>

「法定休日」は、法定の休日ですから原則として労働できません。

しかし、三六協定を交わせば、その限度で法定休日の労働も可能です。

三六協定の正式名称は「時間外労働休日労働に関する協定」ですが、ここでの「時間外労働」は法定時間外労働を指しますし、「休日労働」は法定休日労働を指します。

ですから、三六協定の範囲内で、法定休日労働も一応は可能ということになります。

 

<法定時間外労働の制限>

労働基準法によって、法定時間外労働には罰則付きで上限が設けられています。

 

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)

 

三六協定の締結により、臨時的な特別の事情があって、労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・法定休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・法定休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

ここで、「法定休日労働の時間と合わせて」というフレーズに注目してください。

三六協定で、月2回までは法定休日の出勤が許されたとしても、その勤務時間は法定時間外労働の時間と合算され、上限が設けられています。

こうして法定休日労働は、間接的に制限を受けることになるのです。

 

<法定休日ではない所定休日の労働>

週休2日制で、毎週土曜日と日曜日が所定休日の社員が、仕事の都合で止むを得ず土曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

土曜日が法定休日なら法定休日労働となりますし、日曜日が法定休日なら土曜日の労働は「法定休日ではない所定休日」の労働となります。

そして、「法定休日ではない所定休日」の労働であっても、一部の例外を除き週40時間を超える時間は、法定時間外労働として加算されます。

したがって、上記の法定時間外労働の制限にかかってくることになります。

 

<解決社労士の視点から>

働き方改革の一環で、平成31(2019)年 4月1日に労働基準法が改正され、休日出勤も三六協定を守っていれば大丈夫ということではなくなりました。

本腰を入れて、労働時間の削減に取り組まなければならない時代になったといえます。

 

2022/06/13|1,805文字

 

<パート・有期法への改正>

令和2(2020)年4月1日、パート法は、パート・有期法に改正されました。

中小企業でも令和3(2021)年4月1日に施行済です。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<退職金支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに退職金を支給しているのであれば、退職金支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱をすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、退職金支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【退職金支払の一般的な理由】

長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、人材の確保・定着を図るため。

 

正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、こうした理由で退職金を支給するのは合理性があります。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに退職金が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに退職金が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者には、賃金の後払い、長年の功労に対する報償として退職金を支給する。一方、新法対象者であるパート・有期労働者に対しては、退職金が無いことを前提として、退職金引当金に相当する額を賃金に上乗せして支給している。

そのため、職務の内容、職務の内容や配置の変更の範囲、その他の事情が同等であれば、無期・フルタイムの労働者よりも、新法対象者の方が賃金の時間単価が高い。

 

<企業の取るべき対応>

現在のところは裁判でも、「一般論として、長期雇用を前提とした無期契約労働者に対する福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るなどの目的をもって無期契約労働者に対しては退職金制度を設ける一方、本来的に短期雇用を前提とした有期契約労働者に対しては退職金制度を設けないという制度設計をすること自体が、人事政策上一概に不合理であるということはできない」とされています。

また、同一労働同一賃金ガイドラインには、退職金についての具体的な記述がありません。

ですから、賃金の時間単価の違いや、勤続年数の実態を踏まえ、正社員など無期・フルタイムの労働者のみに退職金制度を設けることの合理性を検討し、不合理な部分があれば修正する、そして、裁判例の動向を踏まえつつ定期的な修正を行っていくことになります。

しかし、退職金の原資には限りがありますから、一部の従業員の退職金が減るのであれば不利益変更となります。

この場合には、個別の同意を得るなどの確実な対応が必要となります。

長期的な展望に立ち、顧問の社会保険労務士などと相談しながらうまく対応しましょう。

 

2022/06/12|994文字

 

<採用内定の性格>

採用内定の法的性格は、それぞれの具体的な事情により異なりますが、採用内定通知のほかに労働契約締結のための意思表示をすることが予定されていない場合には、採用内定により始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められます。

 

始期付=働き始める時期が決まっていること

解約権=契約を無かったことにできる権利

留保付=効力を残して持ち続けること

始期付解約権留保付労働契約=すぐに働き始めるのではなくて、いつから働き始めるかが決められていて、しかも、場合によっては契約を無かったことにできる権利が残されたまま成立している労働契約

 

<内定取消>

採用内定取消は解雇に当たり、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効となります。〔労働契約法第16条〕

採用内定取消が有効とされるのは、原則的には、次の2つの条件を満たす場合に限られると考えられます。

・採用内定の取消事由が、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であること。具体的には、契約の前提となる条件や資格の要件を満たさないとき、健康状態の大幅な悪化、採否の判断に大きく影響する重要な経歴詐称、必要書類を提出しないなど手続への非協力的態度、その他の不適格事由などが考えられます。

・この事実を理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨と目的に照らして、客観的に合理的な理由によるものと認められ社会通念上相当として是認することができる場合であること。

 

<内定辞退>

内定辞退は学生・労働者側からの行為になります。

内定辞退の場合には、すでに労働契約は成立しているものの、民法の規定により「雇用の期間を定めなかった時はいつでも解約できる」とされているので、基本的には認められることになります。

ただし、労働契約を解約することはできても、一方的な解約が信義に反し不誠実な場合には、会社側から損害賠償の請求をすることも考えられます。

もっとも、損害と内定辞退の因果関係や損害額を立証することは難しく、立証できても大きな金額とはならないので、実際に損害賠償を求めた判例は見当たりません。

内定を辞退された採用担当者としては、恨み言の一つも言ってやりたくなりますが、ハラスメントを主張され、会社の評判が落ちてしまったら責任重大ですから、グッとこらえなければなりません。

 

2022/06/11|998文字

 

<「トラガール促進プロジェクト」サイト>

令和4(2022))年6月7日、国土交通省が、女性トラックドライバー(トラガール)の多様な働き方・キャリア形成等の魅力や企業のトラガール活躍推進方策を紹介する「トラガール促進プロジェクト」サイトを全面リニューアルしました。

運送業での人手不足解消や女性活躍推進といった政策を背景に、トラガールを目指す人やトラガールのさらなる活躍を目指す経営者等へ有益な情報を発信することを目的として、国土交通省が平成27(2015)年に開設しました。

この中の企業向け情報では、トラガール促進のメリットを次のように説明しています。

 

<企業イメージの向上>

女性が働けるほど安全管理や教育がしっかりしている企業として評価されます。

また、女性がトラックを運転していることで「対応がソフトで安心」「細かな気配りが嬉しい」など、企業のイメージ向上につながることもあります。

 

<コミュニケーションの円滑化>

従業員同士の会話が増え、社内の風通しがよくなります。

現場でのコミュニケーション能力が高い人が多く、女性を採用することで職場環境が整備され、若年層や中高年男性ドライバーも含め、職場全体の働きやすさが向上します。

 

<ドライバー不足の解消>

女性を育成することで女性の応募が増え、労働力不足の解消につながります。

また、女性ドライバーが働きやすい環境は若年層が求める職場環境にも通じているため、若年層採用にも効果があります。

 

<営業力の強化>

荷扱いやお客様を含めた取引先や周囲への対応が丁寧なため、荷主からの評判が良くなり、業績の向上に貢献が期待できます。

また、女性の視点からの新鮮な提案がなされることで、営業力の強化につながることもあります。

 

<解決社労士の視点から>

女性トラックドライバーとしての能力を備え、意欲に溢れている人でも、昭和時代には活躍の場が殆ど与えられて来なかったという実態があります。

いち早く、女性トラックドライバーの労働環境を整え、活躍の場を提供している企業では、有能な人材の確保に成功しています。

こうした動きは、バスやタクシーのドライバーでは先行して見られました。

建設業、土木業、引越業のように、まだまだこれから女性の活躍が期待される業種もあります。

男性従業員の比率が高い業種では、積極的に女性の採用に取組むことで、人材不足の予防・解消を狙ってはいかがでしょうか。

 

2022/06/10|671文字

 

<通常の場合>

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)で働く労働者について、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないとされています。〔労働契約法第17条第1項〕

期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。

 

<長期勤続の場合>

また、有期労働契約が3回以上更新されている場合や、1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、契約を更新しない場合、使用者は少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第1条〕

ただし、あらかじめその契約を更新しない旨が明示されている場合を除きます。

 

<証明書の交付>

さらに、使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

これは、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。〔有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第2条〕

明示すべき「雇止めの理由」は、契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。

たとえば、以下のような理由です。

・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため

・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため

・担当していた業務が終了・中止したため

・事業縮小のため

・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため

・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたことなど勤務不良のため

 

2022/06/09|1,717文字

 

<パート・有期法への改正>

パート法は、パート・有期法に改正されました。

施行日は、大企業では令和2(2020)年4月1日、中小企業では令和3(2021)年4月1日施行でした。

 

【正式名称】

パート法 = 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

パート・有期法 = 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

 

旧法では、フルタイム以外の労働者だけが対象です。

新法では、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者が対象となります。

 

区分

無期

有期

派遣

フルタイム

通常の労働者

新法対象者

新法対象者

フルタイム以外

新法対象者

新法対象者

新法対象者

 

ここで通常の労働者とは、定年以外に雇用期間が限定されない無期雇用で、フルタイム勤務の労働者ですから、「正社員」と呼ばれるのが一般です。

 

<事業主の説明義務>

新法には、事業主の説明義務が規定されています。

 

【パート・有期法第14条第2項】

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

 

説明は、事業主が新法対象者を雇い入れた後、本人から求められたときに行うことになります。

説明内容は、主に待遇の相違の内容とその理由です。

事実に反する嘘の説明はできませんし、不合理な説明もダメです。

理解しうる説明であることが必要ですが、必ずしも納得してもらうことまでは必要ありません。

 

<賞与支払の理由>

もし、正社員など一般の労働者のみに賞与を支給しているのであれば、賞与支払の有無と理由について説明が必要になります。

説明を求めたことに対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。〔パート・有期法第14条第3項〕

ですから、不快な思いをさせないように配慮する必要があります。

さて、賞与支払の一般的な理由としては、次のようなものが挙げられます。

 

【賞与支払の一般的な理由】

会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待

 

これらの理由で賞与を支払っているのなら、正社員など通常の労働者に限定して賞与を支払っているのは不合理ですから、改めなければなりません。

なぜなら、会社の利益の分配、功労報償、生活補償、従業員の意欲向上、長期雇用への期待は、全従業員に共通ですから、一部の従業員に限定して賞与を支払うことは、客観的に合理的な説明がつかないのです。

もっとも、正社員など通常の労働者以外は、すべて2~3年で退職しているという実態があれば、「長期雇用への期待」という理由も合理性が認められます。

しかし、多くの企業では、有期雇用労働者が契約の更新を繰り返して、相当長期にわたり働いているのではないでしょうか。

 

<正社員だけに賞与が支給される合理的な理由>

次のような制度であれば、正社員など通常の労働者だけに賞与が支給されるのは、合理的な理由があるということになります。

 

正社員など無期・フルタイムの労働者だけが、半期に一度上司と面接して目標を設定し、この目標の達成度に応じて賞与が支給される。

ただし、達成度が基準に達しないほど低ければ、職能等級が低下するなどによって、基本給も下がってしまうという待遇上の不利益が発生する。

そして、新法対象者であるパート・有期労働者は、こうした仕組みの対象外であるから、時給が下がるようなことはない。

 

<企業の取るべき対応>

すでに賞与支給の理由が明確となっていて、一部の従業員だけに支給されているのであれば、その合理性を検討します。

客観的な合理性が無いのであれば、全従業員に同じ基準で賞与を支給することになります。

しかし、賞与の原資には限りがありますから、一部の従業員の賞与が減るのであれば不利益変更となります。

個別の同意を得るなどの対応が必要となります。

実際には、賞与支給の趣旨があやふやなことも多いものです。

この場合には、顧問の社会保険労務士などと相談してうまく対応しましょう。

 

2022/06/08|1,422文字

 

<請負契約のメリット・デメリット>

大手企業でも、雇用契約を請負契約に切り替える動きが見られます。

請負契約の場合、働く人のメリットとしては、細かい指図を受けずに伸び伸びと自由に働けること、自分の自由な時間で働けること、成果に応じた報酬が得られることなどがあります。

こうしたメリットに着目して、社員が請負契約への切り替えに同意するわけです。

しかし、雇用ではありませんから、労働基準法を始めとする労働法の保護の対象外となりますし、社会保険や労働保険も基本的には対象外となります。

また、年次有給休暇や産休・育休などもありません。

こうしたデメリットは覚悟しておく必要があります。

この裏返しとして、請負契約にすれば、企業は社会保険料や労働保険料の負担が無くなりますし、使用者としての責任は免れることになります。

一方で、企業は細かい指示を出せなくなりますし、予定外の「残業」のようなことも命ずることはできなくなります。

 

<名ばかり業務委託契約>

企業と個人とが請負契約を交わす場合、一般には「業務委託契約」という名称が用いられます。

業務を委託する企業と、業務を行う人との契約関係が、実質的には雇用契約〔民法第623条〕なのに、契約書のタイトルが業務委託契約書となっていることもあります。

もちろん、労働審判や労働訴訟になれば、契約書のタイトルにかかわらず、その実態から雇用契約であると認定され、働き手は労働者としての権利が保障されることになります。

契約書の体裁だけを整えても、その通りの効果が認められるわけではないということです。

 

<労働基準監督署の介入>

ネット通販「アマゾン」の荷物の宅配について、ある運送会社と個人事業主であるドライバーとの間で業務委託契約が交わされていました。

ところが、労働基準監督署がこの運送会社に、労働基準法違反で是正勧告したことが報道されています。

是正勧告ですから、労働基準監督署が労働法違反だと判断し、運送会社に是正を求めたことになります。

運送会社からドライバーに対してルートを指定し、予定外の配達を急に指示し、制服の着用も求めていたという実態があります。

また、「事務管理料」を報酬から控除していましたが、これも給与からの控除とは異なり許されていないことです。

これらの実態から見て、業務委託契約(請負契約)ではないと判断され、労働基準監督署から労働法違反を指摘されたわけです。

 

<解決社労士の視点から>

物流業界では、宅配荷物の急増と人手不足を背景に、運送会社が個人ドライバーに宅配業務を委託する件数が急増しています。

運送会社と個人ドライバーとは、1日いくらという固定料金で宅配の業務委託契約を交わしていることが大半です。

しかし、その実態に照らして雇用契約と判断され、労働法違反を指摘されることが一般化すれば、物流業界全体で身動きが取れなくなる恐れさえあります。

最終的には、司法判断を待つことになりますが、今後の動向を注視せざるを得ません。

労働基準監督署(労働局)としては、目に余る事態と考えて対応したものと思われます。

これまでグレーゾーンで、同業他社のどこもが行っていたことに対して、一気に行政のメスが入って一網打尽ということがあります。

対応しきれない企業が業界から姿を消すことは、やむを得ないという考えでしょうけれど、業界全体が縮小すると国民の生活にも重大な影響が出てしまいます。

そこまでは、配慮していただけないのかもしれません。

 

2022/06/07|1,470文字

 

<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、分かりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者(現在の未成年者)を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。

そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。

この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)

第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

 

2022/06/06|573文字

 

次の事項を理由に解雇することは、一部の例外を除き禁止されています。

 

・労働者の国籍、信条、社会的身分〔労働基準法第3条〕

・労働者の性別〔男女雇用機会均等法第6条〕

・労働者が労働基準監督機関に申告したこと〔労働基準法第104条〕

・女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと〔男女雇用機会均等法第9条〕

・個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたこと〔個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条〕

・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたこと

・労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたこと〔育児・介護休業法〕

・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等〔労働組合法第7条〕

・公益通報をしたこと〔公益通報者保護法第3条〕

 

ちょっと耳慣れない法律もありますが、すべては労働者を保護するための規定です。

中には、会社にとって不都合なことや、会社に逆らっているかのような内容もあります。

うっかり解雇を通告すれば、それは解雇権の濫用となって無効となるばかりではなく、慰謝料を含め未払い賃金など損害賠償請求の対象ともなります。

 

2022/06/05|813文字

 

<説明が無い場合>

賞与の支給額を明細書で初めて知り、どうしてこの金額なのか分からないというのは小さな会社ほど多いようです。

そもそも賞与の金額は、社長が一人で思い悩んで決めたので、全員についてハッキリした説明などできないという場合もあります。

もらった社員は、前回に比べていくら増えた/減ったしか感じません。

会社の経費を、それも多額の経費を賞与に充てたのに、ちっとも感謝してもらえないなんて勿体ない話です。

 

<説明のある場合>

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の貢献度を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」と分かりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」と分かります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持になります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。

 

<具体的な計算方法>

「うちの会社は、そんなにキチンとやっていない」とあきらめる必要はないのです。

たとえ、社長が一人で考えて決めた支給額であっても、次の手順で計算できます。

 

賞与支給額の総額 ÷(支給対象者の基本給の合計額)= 支給月数

こうして、平均的な人事考課(考課係数=1)の場合の支給月数がわかります。

 

個人の賞与支給額 ÷(その人の基本給 × 支給月数)= 考課係数

これで、賞与から逆算したその人の考課係数がわかります。

 

結局、「あなたの今回の賞与は次の計算によって決まりました」と説明できるのです。

個人の賞与支給額 = その人の基本給 × 支給月数 × 考課係数

 

社長や上司が各社員と面談して、この説明をして激励してはいかがでしょうか。

 

2022/06/04|682文字

 

<適用事業所に該当しなくなったとき>

次に該当した場合、事業主が「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

(1)事業を廃止(解散)する場合

(2)事業を休止(休業)した場合

(3)他の事業所との合併により事業所が存続しなくなる場合

(4)一括適用により単独の適用事業所でなくなった場合

 

<手続の方法>

事業主が「適用事業所全喪届」を日本年金機構へ提出します。

提出時期 =事実発生から5日以内

提出先 =郵送で事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)

提出方法 =電子申請、郵送、窓口持参

 

<添付書類>

1.原則 下記(1)、(2)のいずれか

(1)解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー

(破産手続廃止又は終結の記載がある閉鎖登記簿謄本のコピーでも可)

(2)雇用保険適用事業所廃止届(事業主控)のコピー

 

2.1.の添付ができない場合

下記(3)~(6)のいずれか

(3)給与支払事務所等の廃止届のコピー

(4)合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税、消費税異動届のコピー

(5)休業等の確認ができる情報誌、新聞等のコピー

(6)その他、適用事業所に該当しなくなったことを確認できる書類

 

※ 電子申請の場合、上記1.2の添付書類は、画像ファイル(JPEG形式またはPDF形式)による添付データとして提出することができます。

 

<留意事項>

この届書に記入された情報(事業所名称、所在地、全喪年月日)は、適用の適正化の観点から、日本年金機構のホームページに掲示され、閲覧に供されることとなります。

適用事業所が不当に保険料を免れることがないよう、念のための措置でしょう。

 

2022/06/03|1,319文字

 

<休職制度>

休職とは、業務外での病気やケガなど、主に労働者側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労働基準法にも規定がありません。

つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。

なぜなら、長期の欠勤は労働契約の債務不履行ですから、契約の一般原則からすれば、債務不履行は正当な契約解除の理由となるのですが、休職制度は、就業規則などの取り決めで、すぐには労働契約の解除をせずに、復帰を期待して一定の期間様子を見るという恩恵的な制度だからです。

 

<法令の趣旨による制限>

休職期間満了の時点で、休職理由が消滅していないときには解雇、あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果を発生させる規定を置くことがあります。

この場合には、解雇予告期間の趣旨を踏まえ、休職期間は30日以上とすることが必要になるでしょう。〔労働基準法第20条第1項〕

 

<休職制度のあり方>

各企業が休職制度を自由に設計できるため、就業規則に規定する場合にも、会社に主導権のある規定、労使の合意を前提とする規定、条件を満たせば自動的に休職となる規定など、個性が見られます。

また、就業規則に休職の規定が無い場合もあります。

就業規則に休職の規定が無い場合、あるいは、そもそも就業規則が無い場合であっても、労働者に休職を命ずることができます。

休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。

こうして、休職制度の無い会社でも、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に規定を置くということも可能です。

ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならず解雇された労働者から、解雇の無効を主張される可能性があります。

 

<休職制度の存在理由>

休職制度を設けるのは会社の自由ということであれば、あえて休職制度を設けるのはなぜなのかということになります。

これは、労働契約法の次の規定と大きな関わりがあります。

 

【労働契約法第16条:解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

つまり、しばらく会社を休み、労働契約の債務不履行があったとしても、解雇をするには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められないのであれば、解雇権の濫用とされ解雇の通告が無効になるということです。

解雇となれば、会社は貴重な労働力を失い、労働者は生活の糧を失うのですから、これに合理性はあるのかということが問われます。

そこで、労働者側にそれなりの事情がある場合には、一定の期間猶予を与え、期限内に復帰できれば、労働契約は解除されないという制度を設けて、解雇権の濫用を防止しているというわけです。

こうしてみると、休職制度を設けることに大きな意義があることが分かります。

 

2022/06/02|1,642文字

 

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

 

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし延長は無い)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。

そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実はこのひな型には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

 

専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。

同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。

そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。

たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと」などです。

試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。

長引けば、その新人の転職のチャンスも遠のきます。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集・選考・採用の精度は高めておかなければなりません。

試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

人は見極めて採用し育てることが肝要なのです。

 

2022/06/01|1,271文字

 

<退職金の請求>

長年働いて円満退職したパート社員の代理人弁護士から、退職金請求の内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、実際の退職金請求も増えているようです。

「いや、うちの会社は契約更新のたびに、きちんと雇用契約書でパート社員には退職金の支給が無いことを確認しています」と言っている会社が、実際に退職金を支払う結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(適用範囲)

第2条 この規則は、    株式会社の労働者に適用する。

2 パートタイム労働者の就業に関する事項については、別に定めるところによる。

3 前項については、別に定める規則に定めのない事項は、この規則を適用する。

 

この条文は、次のことを言っています。

・「この就業規則」が原則としてすべての従業員に適用される。

・パート社員の就業規則は別に作る。

・パート社員の就業規則に書いていないことは、パート社員を含め、すべての従業員に「この就業規則」が適用される。

結局、この規定は「この就業規則」とは別に「パート社員就業規則」を作ることが前提となっているのです。

ですから、「この就業規則」に退職金の規定を置いて、別に「パート社員就業規則」を作らなければ、パート社員にも退職金の規定が適用されます。

たとえ、雇用契約書や雇い入れ通知書、労働条件通知書に「退職金は支給しません」とはっきり書いてあっても、労働者に有利なことは就業規則が優先的に適用されるのです。〔労働契約法第12条〕

 

<注意書き>

実は、このひな形には、次のような注意書きがあります。

 

なお、パートタイム労働者等について、規程の一部を適用除外とする場合や全面的に適用除外とする場合には、就業規則本体にその旨明記し、パートタイム労働者等に適用される規定を設けたり、別の就業規則を作成しなければなりません。

 

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。

その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つの方法があります。

1つは、正社員用の就業規則とは別に「パート社員就業規則」を作ることです。

しかし、これは就業規則を2つ作るのですから、骨の折れる作業です。

もう1つは、就業規則の中で、正社員とパート社員とで違う取り扱いをする部分に、そのことをきちんと書いておくことです。

たとえば「退職金は正社員のみに支給し、パート社員には支給しない。パート社員に退職金を支給しないことは、雇用契約書(雇い入れ通知書、労働条件通知書)にその旨明示する」という規定を、就業規則の退職金の規定のところに加えておけば良いのです。

たったこれだけのことで、会社が痛い目を見ることは避けられるでしょう。

こうした規定の仕方は、同一労働同一賃金への対応としてもお勧めできます。

 

2022/05/31|1,189文字

 

<身元保証とは>

身元保証というのは、労働者が企業に損害を与えた場合に、労働者本人以外の第三者にも賠償金支払の責任を負わせる契約です。

企業に大きな損害を与えやすい労働者といえば、権限の広い正社員が思い浮かびますから、多くの企業は正社員限定で身元保証を求めています。

しかし必要に応じて、契約社員、パート、アルバイトなど非正規社員に身元保証を求める企業もあります。

 

<身元保証人の適格性>

身元保証は、企業が損害の賠償を得られるようにするための契約ですから、安易に同居の親族を身元保証人にするのではなく、賠償責任を果たせるだけの資力・財産を備えた人物を選ばなければなりません。

一方で、身元保証人になることを依頼された場合には、親類だから、知り合いだからと安易に引き受けるのではなく、慎重に判断する必要があります。

 

<身元保証書の提出義務>

入社にあたって身元保証書の提出を求めることは、長年にわたって広く行われてきた企業一般の習慣です。

就業規則や労働条件通知書などに規定を置いて、身元保証書の提出を採用条件としたり、採用後に身元保証書を提出しないことを理由に採用取消としたりすることは、採用の時点でそのルールが知らされていれば違法ではありません。

しかし、採用の時点では説明が無かったにもかかわらず、採用後に身元保証書の提出を求められた場合であれば、提出しないことを理由に解雇を通告するのは不当解雇になると解されます。

 

<身元保証の法規制>

身元保証契約は連帯保証となっていることが多いため、身元保証人が多額の賠償金支払い義務を負ってしまうことがあります。

これを制限するため、身元保証契約が連帯保証となっている場合には、違約金および損害賠償の額についての限度額(極度額)を設けておかなければ、契約の効力が認められません。〔民法第465条の2第2項〕

 

<身元保証ニ関スル法律>

さらに、身元保証人の責任が予想外に過大にならないよう、「身元保証ニ関スル法律」によって、その責任が次のように軽減されています。

・期間を定めなければ3年間、期間を定めても最長5年間で終了

・契約は更新できるが最長5年間で終了

・労働者に業務上の不適任や不誠実な行動が見られて、身元保証人の責任が発生する恐れがあったときは、企業から身元保証人に対して直ちにその事実を通知しなければならない

・労働者の業務内容や勤務地の変更によって、身元保証人の責任が重くなる場合や労働者の監督が難しくなる場合は、企業から身元保証人に対して直ちにその事実を通知しなければならない

・身元保証人はこれらの通知を受けて、解約を解除できる

つまり、有効な身元保証契約が締結されても、いつの間にか効力を失っているということもあるわけです。

企業としては、身元保証契約を締結しても安心できるわけではなく、その有効性をチェックし続けなければならないことになります。
 

2022/05/30|888文字

 

<個別労働紛争と解決>

個別労働紛争というのは、労働関係に関する事項についての、個々の労働者と事業主との間の紛争のことです。

これを解決する最終手段としては、裁判制度があります。

しかし、これには多くの時間と費用がかかってしまいます。

また、感情的なしこりが残るものです。

そこで、職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局では、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供しています。

さらに、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、次の制度が用意されています。

・総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談

・都道府県労働局長による助言・指導

・紛争調整委員会による斡旋(あっせん)

 

<紛争調整委員会による斡旋の特徴>

上記の制度のうち、紛争調整委員会による斡旋には、次のような特長があります。

・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ手続が迅速かつ簡便

・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当

・斡旋を受けるのは無料

・紛争当事者間で斡旋案に合意した場合は民法上の和解契約の効力

・非公開で紛争当事者のプライバシーは保護

・労働者の斡旋申請を理由に事業主が不利益取扱をすることは禁止

 

<斡旋の対象となる紛争>

労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象となります。

・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争 など

 

<斡旋の対象とならない紛争>

・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・募集・採用に関する紛争

・裁判中または判決が出ているなど他の制度において取り扱われている紛争

・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争 など

 

2022/05/29|1,133文字

 

<年俸制と残業代>

プロ野球の選手なら年俸制で残業代の支払はありません。

しかし一般の労働者には、残業代をはじめとする割増賃金の支給が必要です。

労働基準法は、時間外労働と休日労働・深夜労働の割増賃金を定めていて、年俸制を例外としてはいません。

この割増賃金の支払を使用者に義務付ける理由は、法定労働時間と法定休日の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとすることにあります。

この趣旨は、どのような賃金体系であっても変わりがありません。

働き方改革関連による改正法により、労働時間の規制は、ますます厳しくなってきていますが、制限を超える違法残業であっても、割増賃金は支払わなければなりません。

 

<年俸制で割増賃金が割高になる原因>

年俸制における代表的な賃金の支払方法には、次の2つがあります。

・賞与無し=年俸額の12分の1を月例給与として支給する

・賞与有り=年俸額の一部を賞与支給時に支給する(例えば、年俸の16分の1を月例給与として支給し、年俸の16分の4を二分して6月と12月に賞与として支給する)

このうち、賞与有りの支払方法の場合には、賞与が割増賃金の算定基礎額に含まれるという通達があるのです。〔平成12年3月8日基収78〕

したがって、月例給与よりも高い「年俸の12分の1」を基準に割増賃金を計算することになりますから、ある意味、賞与の二重払いが発生するのです。

 

<書面による合意で合法に>

労使の合意で年俸に割増賃金を含むものとする場合についても、上記の通達が基準を示しています。

年俸がいくらで、その中に何時間分の残業代としていくら含まれているのか、書面をもって合意し、その12分の1を超える残業が発生した月には、その都度不足分の残業代を月々の給与と共に支払えばよいのです。

ただし、深夜労働や休日出勤の割増賃金は別計算となります。

 

ちなみに実際の通達は、次のように言っています。

「年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区分することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労基法37条に違反しないと解されるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労基法37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい」

 

2022/05/28|381文字

 

<業績給の考え方>

従業員の従事した仕事の業績で基本給を決める賃金制度です。

 

<業績給の長所>

・仕事の成果と基本給が連動し企業の業績が向上

・業績の範囲内で基本給を決められる

・従業員の勤労意欲が高まる

 

<業績給の短所>

・複雑な共同作業には対応できない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・従業員の過重労働に繋がる

・勤労意欲や業績の向上は短期的なものである

 

<最近では>

個人の業績だけを評価対象にすると、自主的な過重労働が発生する危険が高いので、個人だけでなく所属部署や企業全体の業績を基本給に反映させる動きがあります。

また、賞与を支給している企業では、業績を賞与に反映させ給与には反映させないのが主流です。

業績には運・不運もあるので、業績の給与・賞与への反映については、業界や会社の実情を踏まえ、社会保険労務士などの専門家と相談しながら決定していただきたいです。

 

2022/05/27|507文字

 

<職務給の考え方>

従業員の従事する職務で基本給を決める賃金制度です。

 

<職務給の長所>

・仕事内容と基本給が一致

・必要な人材を仕事に見合った給与で募集できる

・新しい職務を作り古い職務を廃止することで社内外の変化に対応できる

・職業能力向上のためのコストが生じない

 

<職務給の短所>

・企業内での職掌や職種を超えた人事異動が困難

・能力開発の動機付け(多能工化)ができない

・基本給が一定額以上上昇せず長期勤続を促す効果がない

・組織が硬直化し従業員の協調性が育たない

・制度の設計と維持にコストが掛かる

 

<最近では>

職務の細分化をやめ、職務範囲を拡大することによって短所を補う動きがあります。

また、働き方改革による事業再編の動きも盛んですし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより会社の業績が悪化し、一部の店舗が閉店した場合に、店長ではなくなった人材の給与が下がるというのも理解が得られなくなっています。

こうしたことから、職務給一本ではなく賃金体系の一部に取り入れるのが一般的になっています。

どの程度取り入れるのが適切かは、会社の実情を踏まえて、社会保険労務士などの専門家と相談しながら上手に決めていただきたいと思います。

 

2022/05/26|593文字

 

<職能給の考え方>

従業員の職務遂行能力で基本給を決める賃金制度です。

担当したことのある職務については、実際に発揮された能力が基準となります。

担当したことのない職務については、学歴、職歴、資格などで能力を推定することになります。

 

<職能給の長所>

・仕事と基本給が一致せず職掌・職種を超えた人事異動が容易

・従業員の能力開発を促し企業の長期的な発展に寄与

・保有能力が低下しない限り基本給は下がらず長期勤続を促す効果がある

・昇進と昇格を分離することによりポストが不足しても昇格が可能

 

<職能給の短所>

・仕事と基本給が一致しないことによる不満の発生

・ポストがなくても昇格できるので人件費が上昇

・既存の能力の陳腐化には対応できない

・職務遂行能力の定義次第ではその運用が年功的になる

 

<最近では>

これまでの能力の概念である「保有能力」が、仕事で発揮されている「発揮能力」に改められてきています。

また、会社の業績に著しく貢献している従業員の「行動特性」が分析され、各人の「行動特性」との類似性を評価指標に取り入れる動きもあります。

IT、DX、AI関連の能力が高く評価されています。

この分野の人材の不足により、外国人に人材を求める動きも盛んです。

しかし、これらの傾向は大手企業中心のものですから、中小企業では社会保険労務士などの専門家と相談しながら、自社に適合した賃金制度の導入が不可欠となっています。 

 

2022/05/25|527文字

 

賃金についての法規制https://youtu.be/X9e4g4Ae8NQ

 

<年齢給の考え方>

従業員の年齢、最終学歴の卒業年次、勤続年数といった属人的要素で基本給を決める賃金制度です。

 

<年齢給の長所>

・年齢という万人共通の基準は明確

・基本給の計算と管理が容易

・従業員のライフステージごとの最低生計費が保障される

・従業員に安心感を与え長期勤続を促進する効果がある

・仕事と賃金額が一致しなくても良いので配置転換が容易

 

<年齢給の短所>

・同じ仕事をしていても賃金が異なることがある

・違う仕事をしていても賃金が同じということがある

・従業員の働き振りや職業能力の向上と基本給は一致しない

・企業の業績と無関係に賃金コストが変動

・平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結

・若手従業員には不平不満が生じる

・日本独自の賃金制度であり国際性がない

 

<最近では>

年齢給は、縮小・廃止の傾向にあり、年齢給を維持する会社では若者の採用がむずかしくなっています。

また、非正規労働者を含めた労働者の生計費の確保のため、政府による最低賃金の引上げが毎年行われており、年齢給では賃金コストの上昇が著しくなっています。

年齢給を採用する場合、これを全面的に取り入れるのではなく、給与の一部に取り入れるのが得策ですし、実際にもこのように運用されている場合がほとんどです。

 

2022/05/24|1,280文字

 

<若者の退職理由>

若者の退職理由は、相変わらず人間関係や待遇への不満が高い比率を占めていますが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、自分の将来のキャリア形成についての不安が原因での退職が急増しています。

「このままこの会社で働き続けた場合、自分の能力開発・能力向上はどうなるのか、別の企業に転職して、より高い成長やキャリアアップを目指すのが得策ではないか」「そもそも今の仕事は自分に向いているのか、自分の能力・適性・関心に合った仕事で経験を積み、スキルを向上させたほうが、長期的なキャリア形成に有利ではないか」といったことで悩み、転職を考えるようになるのです。

この疑問に対して、上司や社内の相談窓口が適確に回答できれば、漠然とした悩みを理由とする転職をかなり防げるのですが、多くの会社では態勢が整っていないようです。

 

<キャリアコンサルタントの役割>

キャリアコンサルタントの資格を認定する日本キャリア開発協会(JCDA)は、キャリアコンサルタントの役割について、次のように説明しています。

 

「キャリアコンサルタント」とは、キャリアコンサルティングを行う専門家です。

キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいいます。

キャリアコンサルティングを通じて、自分の適性や能力、関心などに気づき、自己理解を深めるとともに、社会や企業内にある仕事について理解することにより、その中から自身に合った仕事を主体的に選択できるようになることが期待できます。

 

また、キャリアコンサルタント国家資格について、次のように説明しています。

 

「キャリアコンサルタント」は、平成28年4月より国家資格になりました。

キャリアコンサルタントは登録制の名称独占資格とされ、守秘義務・信用失墜行為の禁止義務が課されています。

キャリアコンサルタントでない人は「キャリアコンサルタント」やそれと紛らわしい名称を名乗れません。

 

平成28年といえば、2016年ですからまだ歴史が浅く、いわゆる難関資格とはなっていません。

 

<キャリアコンサルタントになるには>

とはいえ、資格の取得には、一定の知識と技能の習得が必要であり、資格の維持には、自己研鑽の継続が必要です。

 

キャリアコンサルタント国家資格は学科試験と実技試験の両方に合格し、キャリアコンサルタント名簿に登録することにより「キャリアコンサルタント」として名乗ることができます。

なお、学科試験は、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会と共同で、同一日に共通問題で行います。

その他、キャリアコンサルタントは5年ごとに更新を行い、最新の知識・技能を身につける必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

欲を言えば、すべての管理職がキャリアコンサルタントの登録を受け、いつでも部下からの相談に適確に対応できるようにしたいものです。

手始めに、人事部門のメンバーからキャリアコンサルタントを誕生させ、社内の相談窓口を担当させるところから始めてはいかがでしょうか。

 

2022/05/23|869文字

 

賃金についての法規制https://youtu.be/X9e4g4Ae8NQ

 

<賃金制度の決定>

賃金制度について、労働基準法による規制はありません。

賃金制度のあり方は、労使が対等の立場で話し合って決定する建前です。〔労働契約法第3条第1項〕

とはいえ、最低賃金法は守らなければなりませんし、働き方改革により同一労働同一賃金の制約はあります。

 

<年功序列型賃金>

年功序列型賃金の統一的な定義はありません。

しかし一般的には、企業での勤続年数や従業員の年齢の上昇に従って、賃金(基本給)も上昇する仕組みです。

従業員の全員が新卒採用で、定年まで働き続けるという職場であれば、今もなお一定の合理性を保った制度だといえます。

しかし実態として、転職が盛んになっています。

従業員は今の会社で定年まで働こうと決意してはいないでしょうし、企業も定年まで働いてもらえると期待してはいません。

終身雇用制度も、年功序列制度も崩壊しているわけです。

 

<非年功序列型賃金>

勤続年数や年齢に関係なく、担当している仕事の難易度や仕事上発揮した能力による成果を重視した賃金の決定の仕組みが、多く採用されるようになっています。

こうした賃金制度は、経費節減となり、従業員の意欲を刺激することを期待して採用されています。

しかし、その具体的な内容は、企業の経営戦略や人事政策により異なることになります。

 

<賃金制度の種類>

賃金制度には、従業員の属人的要素(例えば、年齢、勤続年数など)で基本給を決める「年齢給」、従業員の能力で基本給を決める「職能給」、従業員が従事している仕事で基本給を決める「職務給」、従業員が行った仕事の「成果・業績」で基本給を決める業績給などがあります。

どの賃金制度にも長所と短所があります。

そこで実際には、自社の実態を踏まえ、これらの賃金制度を組み合わせることによって、最適な制度を構築することになります。

また、賃金制度は固定的であってはなりません。

社会の価値観の変化や市場環境に応じた変更は、すべての従業員にチャンスを与える意味でも必要不可欠です。

社内外の事情を具体的に把握・分析したうえで、採用する賃金制度を検討されるとよいでしょう。

2022/05/22|1,613文字

 

<労働基準監督官の権限>

労働基準監督官には、事業場への臨検監督(立入調査)権限、帳簿・書類等の検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

これらの権限を行使して、工場や事業場等に監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、企画・設備等を検査します。

そして、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその是正を求めるほか、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止等の行政処分の実行を担っています。

なお、臨検監督(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条、労働安全衛生法第120条、最低賃金法第41条など〕

さらに労働基準監督官には、警察官のような司法警察員としての職務権限があるため、重大なまたは悪質な法違反を犯した事業者等に対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<その場で対応できない場合>

労働基準監督官は、事業場のありのままの現状を的確に把握することが重要であるため、原則として予告することなく事業場の監督を行っています。

したがって監督時には、事業場で労働基準監督官に対応すべき職務を担っている社員も、通常の自分の仕事をしている状況にあると思われます。

しかし、労働基準監督官が法律上の権限を基に監督していることを踏まえれば、できる限り時間をとって、これに対応することが適切です。

ただし来客があるなどで、どうしても時間が取れない場合もあると考えられます。

このような場合には、労働基準監督官に事情を十分に説明し、監督時間の短縮や監督日時の延期を要望すればよいと考えられます。

 

<その後の指導>

調査が入った後には、ほとんどの場合、会社が「是正勧告書」「指導票」という2種類の書類を受け取ることになります。

「是正勧告書」は、法律違反があるので、すぐに正しい形に改めなさいという趣旨です。

最近は、予め「□労働時間の適正な把握をすること(労働安全衛生法 第66条の8の3)」などの項目が印刷されていて、該当項目にチェックマークを付けるタイプのものも見られます。

労働基準監督官の調査は、より細かく、より厳しくなっていますので、省力化のためにこのような工夫がされるようになったのでしょう。

会社はこれに対応して、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署長に提出するのが一般です。

万一放置して、再び法律違反が見つかると、刑事事件として送検されることがあります。

もちろん、ウソの「是正報告書」を提出しても罰せられます。

「指導票」は、法律違反ではないけれど「ガイドラインに沿って改善した方がいいですよ」という指導の内容が書かれています。

調査が入ったとき、社会保険労務士が立ち会えば、労働基準監督署の監督官の方も、「話の通じる専門家がいる」ということで安心します。

もちろん反対に、緊張されてしまうこともありますが。

社労士が立ち会えば「是正勧告書」「指導票」の内容も、厳しくならないものです。

反対に、専門知識の無い方が、わかりにくい説明をしたために誤解され、法律違反を指摘されることもあります。

 

<事前の予告がある場合>

臨検監督(立入調査)は、必ずしも予告なしに行われるとは限りません。

もし、事前に調査の予告が入ったなら、その調査の意図を見抜いて準備しておけば、その後の会社の負担は大いに軽減されます。

ぜひ、充分な準備をしておきましょう。

下手な対応や下手な報告書の提出は、会社にとって命取りになることもあります。

その場の勢いではなく、長期的視点に立っての対応をしたいものです。

 

2022/05/21|1,604文字

 

<退職遺留の理由>

会社から退職話を持ちかける退職勧奨の対象者は、当然のことながら、能力的なミスマッチがあるなどの理由で、会社への貢献度が低い社員です。

これに対して、退職を申し出た社員に対して退職遺留を行うというのは、その対象者の会社への貢献度が高く、辞めて欲しくない人材だからです。

自ら退職を申し出る社員の中には、勤務を継続できないような突発的な事情が発生した人もいますが、他の会社でも通用する能力を備えていると自認している人は、キャリアアップを目指しての転職が多いものです。

終身雇用制度や年功序列制度が崩壊していますから、有能な人材の社外への流出は、そのリスクが年々高まっている状態です。

 

<退職の申し出が突然である理由>

通常、退職願の提出先は、就業規則で直属の上司が指定されています。

直属上司が、部下からの退職申し出を受けた時、突然のことで驚くことが多いものです。

部下が、上司に信頼を寄せていれば、退職願を準備する前に、転職についての相談をしていたはずです。

しかし、残念ながら、上司を信頼できなければ事前の相談はありません。

しかも、信頼できない上司の下で働くことも、それ自体が苦痛ですから、退職を決意する理由の一つになっていることでしょう。

 

<退職理由の説明と本音>

退職を申し出た社員に理由を尋ねると、優秀な人材は「介護の仕事をしたくなった」「事業を立ち上げることにした」など、異業種への転職を希望する旨の説明をすることが多いようです。

これは、同業種のライバル企業への転職が良く思われないこと、社内にある業種への転職であれば社内での異動での対応を打診されてしまうことなどに配慮してのことでしょう。

退職の数か月後に偶然会って近況を尋ねてみると、あるいは、社内で親しかった人からの情報で、現在は同業他社で勤務しているというのが大半です。

転職するにしても、スキルを磨き経験を積んだ業務に就くのは自然なことでしょう。

そして、本音の退職理由で最も多いのが人間関係です。

特に今の上司の下で勤務することに精神的な苦痛を感じていて、本人としては、これを理由に異動を申し出ることはできないので、転職を決意するということになります。

 

<退職遺留の方法と限界>

退職遺留の基本的なやり方としては、退職希望者本人の話を親身になって聞き、退職理由への対応として、退職以外の方法を提案するということになります。

しかし、本当の退職理由を聞き出せなければ、すべての提案が空振りになってしまいます。

ましてや、退職を決意する理由の一つとなっている上司から根掘り葉掘り聞かれたのでは、ますます退職の決意が固くなってしまいます。

むしろ、退職希望者が意欲的に働いていた時期の、元上司や元先輩に話を聞いてもらったほうが、本人も翻意しやすいでしょうし、退職遺留の成功率が高まるでしょう。

この場合には、退職希望者の上司がその上司の了解を得たうえで、元上司や元先輩に他言無用で協力を依頼することになります。

また、本音の退職理由が聞き出せたとしても、今の会社で働き続けたのでは解決できない問題のことも多いですから、ここにも退職遺留の限界があります。

さらに、辞めたいという気持は明確であるものの、その具体的な理由については、本人も良く分かっていないということがありますから厄介です。

 

<解決社労士の視点から>

一度退職を決意してしまった社員を翻意させるのは、決して容易なことではありません。

上司は部下との人間関係を良好に保ち、普段から本音を聴いておく必要があります。

このためには、パワハラに該当する言動を慎まなければなりませんし、指導する、あるいはアドバイスするという意識ではなく、傾聴の姿勢で、部下の話を最後まで良く聞くということが求められます。

こういう上司であれば、少なくとも勘違いや思い込みで退職を申し出るようなことは、ある程度、防ぐことができるでしょう。

2022/05/20|1,391文字

 

<罰金は国家が独占

最近はだいぶ減りましたが、今でも駐車場の入口付近に「無断駐車は罰金2万円」などの表示を見かけることがあります。

また「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方から、お話をうかがったこともあります。

しかし、罰金は死刑や懲役と同じく刑罰の一種です。

刑罰権は国家に独占されていますから、国家権力ではない個人や会社が罰金を取るということは、相手が誰であれ金額にかかわらず法的に許されません。

ですから、駐車場の「罰金」も、社内の「罰金」のルールも無効です。

本当に徴収したら、詐欺罪、恐喝罪が成立したり、労働基準法違反となるでしょう。

場合によっては、「罰金」では済まされず懲役刑が科されるかも知れません。

もし社内ルールで「罰金」ということばを使っていたら、みっともないのですぐにやめましょう。

 

<労働法の定め>

就業規則ではなく内規だとしても、「罰金」は違約金の定めや損害賠償の予定の禁止に反して無効になります。〔労働基準法第16条〕

また、給与から差し引くことは、賃金の全額払いの原則に反することになります。〔労働基準法第24条第1項本文〕

結局、労働法上も実際に徴収することは認められません。

またたとえ、使用者が労働者の過失によってこうむった損害を回収したい場合であっても、実際に被った損害額のすべてについて、労働者に請求できるわけではありません。

なぜなら、その損害の発生について、使用者に全く責任がないというのは稀ですし、労働者を使用することによって利益を得ている分、その損失についてもある程度は負担するのが公平だからです。

完璧な人はいないのですから、労働者の過失によって損害が発生することも覚悟のうえで雇っているというのが、法律の考え方なのです。

 

<使用者から労働者に請求できる損害賠償額>

まず、労働者に損害賠償義務があるかどうかは、労働者が通常求められる注意義務を尽くしたかどうかによります。

そして、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。

労働者の負担割合がどの程度となるかは、具体的な事情によります。

裁判になれば「事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は、労働者に対して賠償の請求ができる」という判断になります。

たとえば長時間労働が続いて疲れている労働者が、注意散漫になって事故を起こしたような場合には、長時間労働をさせた使用者に大きな落ち度があり、使用者側の負担割合が相当程度大きくなります。

 

<罰金を免れる方法>

ところで、「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方は、次のような話をしていました。

「遅刻しそうになったら喫茶店などで時間をつぶし、落ち着いてから会社の上司に電話をかける。朝から具合が悪く、出勤の途中で我慢できなくなったので病院に行きますと言って、年次有給休暇を使えばいい。たとえ休暇はダメだと言われて欠勤控除になっても、罰金1万円よりはマシです」

使用者側が違法なことをしていると、労働者側もこれに対抗しておかしなことをするようです。

これでは、会社と社員が共に成長するというのも「夢のまた夢」でしょう。

 

2022/05/19|865文字

 

令和4(2022)年4月1日をもって民法が改正され、年齢18歳をもって成年とすることになりました。

「未成年者」というのは、満18歳になる前の人をいいます。

 

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法第5条、第824条、第859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法第58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法第59条〕

口座振り込みの場合にも、本人名義の口座であることが必要です。

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

いずれにせよ、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や契約の更新について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

2022/05/18|876文字

 

<懲戒権濫用法理>

就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒処分の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒処分が無効とされます。

 

<懲戒規定の具体性>

つまり、懲戒処分について具体的な取り決めがあることと、ある労働者が何か不都合な行為をしたときに、それがその取り決めに明らかにあてはまるということが、懲戒処分の有効要件となります。

 

<具体性に欠ける場合>

たとえば「正当な理由なく無断欠勤が続いた場合」という規定では、何日続いたら懲戒の対象になるのか不明確ですから、具体的な日数などの基準を示しておかなければなりません。

このような規定の仕方の場合、欠勤によっていくらの損害を会社に与えたかではなく、欠勤そのものによる企業秩序の侵害を問題にしていると解釈されるからです。

また、「故意に会社の施設や物品を損壊したときは懲戒処分を行う」という規定では、壊した物の価値に応じて懲戒の種類を決めるという意図があるにせよ、譴責(けんせき)なのか出勤停止なのか、具体的な懲戒の種類を示しておかなければ、具体的な取り決めとはいえません。

 

<余計な形容詞が付いている場合>

むしろ、具体的な規定ということに捉われて、余計な形容詞を付けてしまい、使用者と労働者との間で解釈の争いが発生してしまうケースの方が多いのです。

たとえば「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」という規定では、使用者が「重要な経歴詐称」であることを証明しなければ、懲戒処分ができなくなってしまいます。

この場合「経歴を詐称して雇用されたとき」とだけ規定しておいて、使用者は「経歴の詐称」があったことだけを証明し、労働者の方から「懲戒処分に値するほどの重要な経歴詐称ではない」という証明をしなければ、懲戒処分を免れないようにしておいた方が現実的です。

特に懲戒規定については、余計な形容詞を付けないこと、争いになったときに証明責任を負うのは労使のどちらになるかということを意識して定める必要があるのです。

 

2022/05/17|782文字

 

<内容についての法規制>

ハローワークの求人票や求人情報誌の求人広告には、求職者の知りたい情報が詳しく明確に記載されていることが重要です。

不明確だと安心して応募することができません。

このため、求人の申込みや労働者の募集を行う際に書面や電子メールなどで明示すべき労働条件が、次のように定められています。〔職業安定法第5条の3〕

・労働者が従事すべき業務の内容に関する事項

・労働契約の期間に関する事項

・就業の場所に関する事項

・始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間及び休日に関する事項

・賃金の額に関する事項

・健康保険、厚生年金保険、労災保険(労働者災害補償保険)及び雇用保険の適用に関する事項

なお、労働契約を締結する際に明示すべき労働条件と明示の方法についても法定されています。〔労働基準法第15条〕

また、労使当事者は労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとされています。〔労働契約法第4条〕

 

<委細面談>

ではなぜ、飲食店などの店頭に「アルバイト急募!委細(いさい)面談」というような、中身の全然わからないハリガミが貼ってあったりするのでしょうか?

求人広告にいろいろな事項を明示する義務はあるものの、「できる限りやりましょう」という努力義務に過ぎないからです。

つまり、違反しても罰則はありません。

ですから倫理観を欠くブラック企業や、いちいち細かいことまで書くことを面倒に思う使用者は、書きたい範囲内で書いているというのが実態なのです。

ただ、採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、違反に対して30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

ということは、求職者としては求人広告は応募のキッカケに過ぎないのであって、採用面接の際に示された労働条件を詳細にチェックする必要があるということなのです。

 

2022/05/16|886文字

 

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法(労働基準法)が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2022/05/15|1,258文字

 

<周知>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

「社内に周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法第106条第1項〕

労使協定というと三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が有名です。〔労働基準法第36条〕

労働基準法には、他にも次のような労使協定があります。

特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。

しかし、協定を交わして周知せずに実施すると違法ですから注意しましょう。

 

・貯蓄金管理に関する協定〔第18条〕

・購買代金などの賃金控除に関する協定〔第24条〕

・1か月単位の変形労働時間制に関する協定〔第32条の2〕

・フレックスタイム制に関する協定〔第32条の3〕

・1年単位の変形労働時間制に関する協定〔第32条の4〕

・1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定〔第32条の5〕

・一斉休憩の適用除外に関する協定〔第34条〕

・月60時間超の時間外労働をさせた場合の代替休暇に関する協定〔第37条第3項〕

・事業場外労働に関する協定〔第38条の2〕

・裁量労働に関する協定〔第38条の3〕

・年次有給休暇の計画的付与に関する協定〔第39条〕

・年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定〔第39条〕

・時間単位の年次有給休暇に関する協定〔第39条〕

・企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容〔第38条の4〕

 

<周知の方法>

従業員に配付する、常時各作業場の見やすい場所に掲示・備え付ける、パソコンやスマホなどでいつでも見られるようにしておくなどの方法があります。

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

ですからたとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

また、労働基準法の中には、3つの施策のうちのどれかを労使の協議で選ぶという規定もあります。

ですから、「法定通り」と言ってみても、何も決まっていない恐れがあります。

 

<周知しない結果>

訴訟になれば、周知しない就業規則の効力は否定されます。

たとえ、労働基準監督署に届け出をしていなくても、周知した就業規則の効力は認められます。

もっとも、届け出も義務づけられていますので、怠ることはできません。

 

<個別周知義務>

令和4(2022)年4月1日の育児・介護休業法改正により、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する一定の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

これは、従来の周知義務が社内一般に向けて行えば足りたのとは異なり、対象者に個別に説明する義務がありますので注意が必要です。

 

2022/05/14|1,293文字

 

<ストレスの連鎖>

殺人事件や傷害事件が発生すると、警察は加害と被害の内容、両者間の因果関係を解明し、その一環として加害の動機を明らかにします。

しかし、動機となった「ストレス発散」のストレスの原因までは追究しません。

ひょっとしたら、加害者もまた誰かにいじめられていて、そのストレスを発散するために事件が起きたのかもしれません。

しかし、加害者の負っていたストレスまでは配慮しません。

ストレスとその発散は連鎖します。

こかで連鎖を止めないと、最後には弱者に大きな被害が生じます。

あくまでも例え話ですが、次のようなストレスとその発散の連鎖があったとします。

金融機関→社長→部長→課長→一般社員(弱者)

(上の連鎖の)課長→妻→息子→息子の同級生(弱者)

ある会社の社長が、金融機関から大きなストレスを与えられることで、社内では、ストレスのはけ口が、弱い一般社員に及びます。

これがパワハラです。

一方で、その会社の課長が、そのストレスを家庭に持ち込み、息子がそのストレスを学校に持ち込むとイジメの原因になります。

もしも、ここで部長がストレスに耐え、課長にぶつからなければ、ストレスの連鎖が止まることになります。

 

<ストレスチェックの目的>

ストレスチェックというのは、ストレスについての質問票に、労働者が選択肢の中から選ぶ形で回答を記入し、それを集計・分析することで、ストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。

労働者が50 人以上の事業所では、平成27(2015 )年12 月から毎年1回、この検査を労働者に対して実施することが義務付けられました。〔労働安全衛生法第66条の10〕

定期健康診断と同様に、契約期間が1年未満の労働者や、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は法的義務の対象外です。

労働者が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合には医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するのが目的です。

決して、ストレスに弱い労働者を発見して退職を勧奨したり、降格の根拠を見つけたりするためのものではありません。

むしろ、こうしたことが無いように、充分な配慮が求められています。

結局、ストレスチェックの目的はストレスがたまりやすい職場を発見し、これを改善することにあります。

 

<解決社労士の視点から>

すべては、コミュニケーションによる解決が可能だと思います。

上の「→」で結ばれた間に、ストレスの原因となったことについて、具体的な情報の伝達があればストレスの連鎖は止まります。

なぜ怒っているのか、不安なのか、その原因についての説明が大事です。

会社の中で、ストレス発散と思われるパワハラなどを本気で防ぎたいのであれば、コミュニケーションの仕組を見直すことが有効です。

「みんなで飲みに行って話し合えばわかりあえる」という昭和時代ではなくなりました。

あくまでも勤務時間帯に使える仕組を構築しましょう。

 

2022/05/13|904文字

 

<70歳以上になると>

社会保険のうち、厚生年金保険は70歳で脱退(資格喪失)となります。

一方、健康保険と労働保険(雇用保険・労災保険)は変更ありません。

 

<厚生年金保険>

厚生年金保険に加入する従業員が70歳になる頃、年金事務所から会社宛に郵便物が届きます。

これは、「厚生年金保険被保険者資格喪失届70歳以上被用者該当届」の用紙と、その説明書です。

70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と異なる厚生年金加入者(被保険者)である場合には、70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内に届を提出することになります。

平成31(2019)年4月から、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である場合には、届出が不要となりました。

なお、70歳になっても老齢年金の受給資格期間を満たせないで在職中の人は、申し出てその期間を満たすまで任意加入することができます。

保険料は原則として、本人が全額を負担しますが、事業主が同意すれば労使折半にすることもできます。

 

<健康保険>

「老人保健法」が改正され、75歳以上の高齢者を対象にした「後期高齢者医療制度」が平成20(2008)年度に導入されました。

後期高齢者医療制度には、75歳の誕生日に加入します。

ただし、身体障害者手帳などで3級以上か4級の一部の障害に該当する場合には、65歳以上74歳以下でも各医療保険制度(国保、健保、共済等)の後期高齢者医療保険へ申請して加入することができます。

つまり一般には、70歳になっても、今までの健康保険にそのまま加入していることになります。

 

<雇用保険>

平成29(2018)年1月1日に雇用保険の適用が拡大され、年齢の上限が事実上撤廃されています。

70歳以降も、高年齢継続被保険者として雇用保険の加入が続くことになります。

なお、平成31(2019)年4月1日時点で満64歳以上にあたる従業員の雇用保険料は、令和2(2020)年3月の分までは免除されていました。

 

<労災保険>

労災保険に年齢制限はありません。

ですから、一定の年齢に達したことによる手続はありません。

 

2022/05/12|1,172文字

 

<具体的な事例>

パートやアルバイトに仕事の指示を出し指導をしてきた課長が部長に昇進し、その下で働いていた正社員が課長に昇進します。

ところが、課長に昇進した正社員は、勤務中、毎日のように居眠りする姿を見られていて、失笑を買っていた人物でした。

自分たちと似たり寄ったりの仕事をしていたように見えた正社員が、居眠りをしていたのに自分たちの上に立つというのは、パートやアルバイトとしてはどうにも納得がいきません。

これを放置しておくと、パートやアルバイトが新課長を信頼できず、その指示・指導に素直に従わないことによって、生産性が大幅に低下してしまうかも知れません。

 

<立場による意識の違い>

時間給で働くパートやアルバイトは、どの時間を切り取っても一定の成果を上げるように意識して働いています。

ボーッとしていることは許されず、トイレに行くのにも遠慮して急いでいます。

ましてや、堂々と居眠りなどできません。

一方、月給制で働く正社員は、より長期的な視点で成果を出そうとします。

改善提案とその計画化・実行を求められるのは主に正社員ですし、結果を残さなければ、賞与の支給額や将来の出世にも影響します。

パートやアルバイトが仕事を終え帰宅した後も、正社員は急な残業を命じられて、多岐にわたる仕事をこなしているために、疲れがたまって居眠りが出るということもあるでしょう。

こうした立場の違いから、不信感が生まれるというのは、ごく自然なことなのです。

 

<納得のいく説明>

会社の中での正社員とパートやアルバイトの職務や責任の違い、そしてこれらを理由とする待遇の違いについては、きちんとした説明が必要です。

「働き方改革関連法」により、令和2(2020)年4月から、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差が禁止されることとなりました。

中小企業でも、令和3(2021)年4月から適用されています。

この法律に対応し、「正規」と「非正規」の不合理な待遇差を埋めていくことはもちろん、社内で理解できる説明が行われる必要があります。

これらを怠らなければ、労働者の間には公正に評価されているとの納得感が生じますし、納得感は労働者が働くモチベーション向上につながります。

また、求職者からは魅力ある職場と評価され、離職率の低下とあいまって、人材の確保につながります。

 

<解決社労士の視点から>

中には、正社員と非正規社員との間の待遇差を合理的に説明できない職場もあります。

どのように説明の仕方を工夫してみても、うまい説明が見つからないとすれば、それは不合理な待遇差の存在が疑われます。

不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」に対応できていないというのでは、これから先、人材の確保が困難となってしまいます。

社外の専門家に助力を求めるなどして、早急に課題を解決する必要があるでしょう。

 

2022/05/11|1,052文字

 

<法の規定>

労働基準法は、年次有給休暇の取得日について、次のように定めています。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」は、長期の連休をイメージしますが、「取得日」という意味です。

「労働者の請求する時季」なのだから、これから先の日付でも、過去の日付でも良さそうに思えます。

しかし、この条文の但し書きは、一定の場合には、使用者が別の日に年次有給休暇を与えることができると言っています。

過去の日を取得日に指定したのでは、使用者が取得日を変更できなくなってしまいます。

このことから、論理的に考えて、年次有給休暇の取得日の指定は、翌日以降の日でなければならないことになります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、次のような規定が置かれることがあります。

 

【欠勤の年次有給休暇への振替】

私傷病による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。

この申請は、所定の書式により上長に提出することによって行います。

 

私傷病など特定の原因による欠勤が発生した場合に、事後の申請で年次有給休暇に振り替えることを認めるわけです。

労働基準法は、労働者の権利について最低限の基準を定めているわけですから、労働者にとって労働基準法よりも有利な制度を設けることを禁止してはいませんので、こうした規定を置くことも可能です。

 

<フレックスタイム制での配慮>

フレックスタイム制を運用していると、仕事と生活の調整が容易ですから、年次有給休暇を取得するチャンスが訪れにくくなります。

なるべく残業時間が発生しないように勤務していたところ、清算期間の終了間際になってから、勤務の都合がつかず、清算期間の所定労働時間に満たない勤務しかできない期間が生じたら、事後的に年次有給休暇を取得できる仕組みにしてはいかがでしょうか。

反対に、業務が少ない時期だと思って、清算期間の途中にまとめて年次有給休暇を取得したところ、清算期間の終了間際になって、長時間の勤務が続くと、思わぬ残業が発生してしまいます。

この場合、使用者の方から、年次有給休暇の取得を取り消させるわけにはいきません。

しかし、労働者側から、これから先のために年次有給休暇を取っておきたいなどの希望で、年次有給休暇の取得を取り消せる仕組みも必要ではないでしょうか。

 

2022/05/10|1,325文字

 

<民法の適用>

労働契約も契約の一種ですから、原則として民法が適用されます。

この民法には、任意規定と強行規定が混在しています。

任意規定というのは、法令に規定があっても当事者がそれに反する意思表示をすれば、法令の規定よりも当事者の意思表示が優先されるものをいいます。

当事者が何も意思表示をしない場合でも、任意規定が適用されることによって、契約の内容が補充されることで法律関係が確定し、法的紛争が予防できるという利点があります。

強行規定というのは、法令の規定のうちで,当事者の意思にかかわりなく適用される規定をいいます。

当事者が強行規定とは別の意思表示をしても、それは無効とされ、自動的に強行規定の内容に修正されます。

その規定に弱者保護などの確固たる目的があれば、この目的に反する意思表示が無効とされることで、目的が確実に果たされることになります。

結局優先順位は、任意規定 < 契約など当事者の合意 < 強行規定 となります。

ただ、任意規定と強行規定の区分は、条文に明記されていないことが多いので、最高裁の判例などで確認しなければなりません。

判例が無ければ、学者の学説などを参考にして判断することになります。

結論として、従業員から承諾する旨の一筆をもらったとしても、強行規定に反する内容であれば、無効になってしまうということです。

 

<労働基準法の適用>

労働基準法には「労働者の保護」という確固たる目的があり、この目的を確実に果たすため、その規定は原則として強行規定です。

民法とダブって規定されている内容については、特別法である労働基準法が、一般法である民法に優先して適用されます。

ですから、労働基準法に反する内容について、従業員から一筆もらっても効力がありません。

 

<憲法の趣旨の適用>

憲法は国の最高法規です。〔日本国憲法第98条第1項〕

ですから、この憲法に反する法令などは効力がありません。

憲法は、基本的には国家に対する命令ですから、国民に直接適用されるわけではありませんが、その趣旨は、私人間(しじんかん)の契約にも効果が及ぶものと解されています。

そのため、職業選択の自由〔日本国憲法第22条第1項〕を侵害するような契約は、その効力を否定されます。

たとえば、一定の期間退職を禁止する、退職にあたって違約金の支払を必要とする、退職後にライバル企業に転職することを禁止するといったことは、職業選択の自由を侵害しますから、基本的には、たとえ従業員が合意しても、憲法の趣旨に反して無効となります。

会社としては、退職する従業員から念のため一筆もらっておいても、無効となることが大半なのです。

最高裁の判例でも、ライバル企業への転職の制限について、期間とエリアを限定し、しかも、十分な経済的代償措置を取った場合に限り、従業員の合意が有効だと判断しています。

 

<解決社労士の視点から>

労使関係では、たとえ従業員が合意していても、その合意が無効となってしまうケースは意外と多いものです。

「本人が同意すれば大丈夫」というのは、ありがちな素人考えです。

従業員から一筆もらう場合には、その心理的な効果に期待するのは良いのですが、少なくとも法的効力は確認したうえで行いましょう。

 

2022/05/09|758文字

 

<具体例>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

では、免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 タクシーの運転手や医師が免許を剥奪されても、事務や営業の仕事ならできるでしょう。

そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。

これは、罰則をもって使用者に義務付けられていることです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが明確になります。

タクシーの運転手として雇う、医師として雇うということが、明確に示されて雇用されたのなら、免許を失ったときに解雇するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえます。

 

法的に正しい形式を整えるということは、常識的に正しいというのとは違います。

人を雇っていて、つまらないことで足元をすくわれないように、専門家である社会保険労務士にご相談いただけたらと思います。

 

2022/05/08|1,507文字

 

<不満発生の原因>

従業員から就業規則の変更に対して不満が出るのは、形式面と実質面の問題が想定されます。

 

<変更手続>

就業規則変更の正しい手順は、次の順番になります。

 

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

 

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。

変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。

ですから、上記の順番が正しいわけです。

こうした手続を巡って、従業員から不満が出るのは、労働者の過半数を代表する者の選出手続が民主的ではなかったために無効であるとか、就業規則が社内に周知される前に労働者の意見書が作成されたというような場合です。

労働者の過半数代表者の選出手続が正しくなかった場合、その選出は無効となり、三六協定届の場合には協定そのものが無効とされます。

三六協定は届出が有効要件だからです。

しかし、就業規則の場合には、その職場の従業員への周知が有効要件です。

ですから、所轄の労働基準監督署長への届出のプロセスに不備があっても無効にはなりません。

会社が手続の不備を指摘された場合に、極論すれば「ご指摘ありがとうございます。次回から正しく行います」ということで済んでしまいます。

 

<不利益変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 ただ、この不利益は「平均値」や「総合計」ではなくて、個々の従業員にとって不利益かどうかの問題です。

「自分にとって不利益だ」という不満が出れば、会社はそうでないことを説明しなければなりません。

説明できないのであれば、不利益解消のための対応が必要になります。

 

<不満発生の防止のためには>

就業規則を変更する場合には、事前に社内で説明することと、変更案を周知して、労働組合や労働者の過半数代表者以外からも広く意見を求めておくことです。

こうすることによって、思わぬ見落としに気付くこともありますし、周知を徹底しトラブルを未然に防止することもできるのです。

 

<解決社労士の視点から>

人間は変化を嫌います。

変化の先に、どんな結果が待っているかが見えないからです。

たとえ、従業員の誰にとっても有利な変化であったとしても、変化そのものに対する不安から反対意見が出るのは当然です。

反対意見を減らすには、変化の期日からかなり前もって、情報提供を繰り返すことです。

これによって、従業員から様々な意見が出てくる中で、会社側が思わぬ失敗を回避することもできるでしょう。

 

2022/05/07|1,997文字

 

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。

週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。

ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

 

2022/05/06|1,738文字

 

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の必要性>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

こうしたことは、就業規則に定めておかなければなりません。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。

今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。

週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2022/05/05|1,486文字

 

<傷病手当金支給申請書>

傷病手当金支給申請書の提出先は、健康保険証に書いてある保険者です。

そして申請書の形式は、保険者が決めています。

たとえば、協会けんぽの申請書であれば、1セット4枚で、次の内容になっています。

1,2枚目 = 申請者情報、申請内容 ※私傷病で休んだ人の情報です。

3枚目 = 事業主の証明 ※事業主とは会社などのことです。

4枚目 = 療養担当者の意見書 ※療養担当者とは医師などのことです。

この4枚目の医師の記入欄が重要で、ここが空欄であれば「労務不能であったことの証明」ができないことになります。

 

<記入する人>

1,2枚目の申請者情報、申請内容は、仕事を休んだ健康保険加入者(被保険者)自身または、被保険者が亡くなった場合は相続人が記入します。

会社の担当者が、ほとんど代筆してくれることもあります。

つまり、必ずしも本人が記入しなくても良いことになります。

3枚目の事業主の証明は、会社の担当者や顧問の社会保険労務士が記入します。

「事業主」自身が記入しなくても、事業主の委託を受けた人が記入すれば良いわけです。

4枚目の療養担当者の意見書は、担当医師が記入します。

ここは、誰かが医師に代わって記入するわけにはいかず、どうしても医師に書いていただくことになります。

しかも医師としては、被保険者や事業主から言われるままに記入するわけにはいきません。

自身の診断に従って、記入しなければなりません。

そうでなければ、いくらでも不正受給ができてしまうことになります。

 

<事実を確認できない場合>

たとえば、ケガをしてすぐ医師の診察を受けず、自然に治るのを待っていたとします。

そして、1か月経ってから我慢できずに医師の治療を受けたとします。

この場合、医師が確認できるのは、ケガから1か月経ったときの状態です。

1か月前にケガをしたとき、どのような状態であったのかは確認できません。

ケガをした時点で働けない状態だったのか、その時は働ける状態だったのに2週間後にケガの状態が悪化して働けなくなったのか、それとも3日前から働けなくなったのか、診察していないので何とも言えません。

ケガをして1か月の間のことについては、医師がその間の状況を判断できなければ、事実が分からないので意見書を書けないのです。

 

<労務不能とは判断できない場合>

病気やケガで仕事を休んだとしても、それは本人が大事をとって休んだに過ぎず、決して働けない状態ではなかったということがあります。

この場合、医師は病気やケガの存在を認め治療はするのですが、労務不能の証明はできないことになります。

たとえ休業した被保険者から「休んでいたから、傷病手当金が欲しいから書いてください」と言われても書けません。

 

<労働災害の場合>

傷病手当金は私傷病、つまりプライベートのケガや病気について支給されます。

業務災害や通勤災害については、健康保険ではなく労災保険が適用されます。

したがって、患者の説明から労働災害であることが明らかであれば、医師は傷病手当金の書類に記入することができません。

この場合には、傷病手当金にこだわらず、労災保険の休業(補償)給付の手続を進めなければなりません。

 

<解決社労士の視点から>

以上のように、医師が傷病手当金の書類を書いてくれないという場合には、それなりの理由があるものです。

この理由については、医師から患者に説明があるはずなのですが、患者側で理解できないこともあります。

もし、従業員から相談があれば、会社から医師に対して「記入できない理由」を確認するくらいのことは、してもよろしいのではないでしょうか。

 

2022/05/04|1,609文字

 

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上

5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上

4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上

3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上

2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

週あたり

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月

1年

6月

2年

6月

3年

6月

4年

6月

5年

6月

6年

6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

<解決社労士の視点から>

結論として、所定労働日数というのは、時間外割増賃金、深夜労働割増賃金、法定休日割増賃金を計算する場合の時間単価や、年次有給休暇の付与日数など、法定の事項に対応するため基準となる日数を決めておくという、技術的な側面からの形式的な日数のことです。

これとは別に、実情に合わせた具体的な出勤日というものがあるわけです。

両者を一致させようとするのは、無理な場合が多いわけですから、全くの別物だと了解しておくのがお勧めです。

 

2022/05/03|1,397文字

 

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という取得日の指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いというのが原則です。

この原則について、かつての労働基準法には例外が規定されていませんでした。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日に新たに付与された日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことに配慮されています。

年次有給休暇の残日数が10日以上ということではありません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10

11

12

14

16

18

20

4日

7日

8日

9日

10

12

13

15

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10

11

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。

これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。

未確定ならば、必要に応じ専門家に相談して確定させてください。

 

2022/05/02|1,565文字

 

<労使協定>

労使協定とは、労働者と使用者との間で締結される書面による協定のことです。法令に「労使協定」という用語があるわけではなく一種の通称です。

そして、使用者と労使協定を交わす主体は、事業場により2通りに分かれます。

・労働者の過半数で組織する労働組合があるとき ― その労働組合

・労働組合が無いとき、あるいは、労働組合があっても労働者の過半数で組織されていないとき ― 労働者の過半数を代表する者

労働者の過半数を代表する者は、その事業場で使用者側の関与を受けず、民主的に選出されます。

 

<労使協定の効力>

労使協定の多くは、労働基準法などの最低基準を解除する効力や、罰則の適用を免除する効力を持っています。

労働協約のように、各従業員の労働契約を直接規律する効力は認められませんが、事業場の対象従業員との間で効力を持っています。

労使協定書の作成や届出は形式的なものですが、これを怠ると違法となり罰則が適用されうるのです。

労使協定が不要な会社は稀ですから、遵法経営のため、労使協定の作成、届出、遵守を怠ることはできません。

 

<三六(さぶろく)協定>

その事業場で、時間外労働(法定労働時間を超える早出、残業)や休日出勤(法定休日の出勤)が全く無い事業場を除き、これらについての三六協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

労使協定の中には、所轄の労働基準監督署長への届出を義務づけられたものがいくつかありますが、届出をしなくても罰則が適用されるだけで、効力そのものは発生するのが原則です。

しかし、唯一の例外として三六協定だけは届出をするまでは無効です。

しかも、届出をした日からの時間外労働などについてのみ有効とされ、日付を遡っての効力は認められません。

さらに、その有効期間は最長でも1年間ですから、更新を忘れてはなりません。

 

<賃金控除協定>

財形貯蓄の積立金などについて賃金からの控除を認めるものです。〔労働基準法第24条第1項〕

所得税や社会保険料など法定のものは、労使協定が無くても賃金から控除できますが、これ以外のものを賃金から控除する場合には、この協定が必要となります。

 

<休憩時間の一斉付与を免れるための労使協定>

休憩時間の一斉付与は、多くの事業で適用が除外されていますので、除外されていない事業について必要となります。〔労働基準法第34条第2項〕

運輸交通業、商業、金融広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署を除く事業で、休憩時間を従業員に一斉に付与しないのであれば、つまり時間をずらして休憩時間を与えるのであれば、この協定が必要となります。

 

<事業場外労働のみなし労働時間の労使協定>

事業場外で業務に従事した労働者について、労働時間を算定し難いときには、予め決められた労働時間だけ労働したものとみなすことができます。〔労働基準法第38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するのに、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、それがどれだけの時間であるかを労使協定で定め、労働基準監督署長に届け出る必要があります。〔労働基準法第38条の2第2項、第3項〕

 

<年次有給休暇の分割付与についての労使協定>

1年に5日分を限度として、時間単位の年次有給休暇の取得を可能にするものです。〔労働基準法第39条第4項〕

 

<解決社労士の視点から>

以上の他にも、労働基準法に規定されている労使協定は多数ありますし、育児・介護休業法や雇用保険法などにも労使協定についての規定が見られます。

労使協定書を作成、保管、届出しないというだけで、違法を指摘され罰則が適用されるというのは、つまらないことだと思います。

会社に必要な労使協定を再確認し、手続を確実にしたうえで、社内に周知し遵守することが大切です。

 

2022/05/01|3,924文字と長いです

 

【労働基準法第39条第1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

所定労働日数というのは、予め決めておいた出勤日の日数です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法には違反しません。

 

【労働基準法第39条第2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。

ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法第39条第3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。

一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

※1日未満の端数は切り捨てです。

 所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法第39条第4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。

一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。

年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

厳しい話です。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法第39条第6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。

一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法第39条第7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。

ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。

年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。

計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法第39条第8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。

業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2022/04/30|1,211文字

 

ブラック就業規則https://youtu.be/fUVYZrve4OU

 

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

1.従業員の労働条件の共通部分

2.職場の規律

3.法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。また、1つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<1.従業員の労働条件の共通部分>

「生理日の就業が困難な女子社員が休暇を申請した場合は、無給休暇とします」という規定がある場合、これは女子社員に共通の労働条件です。

有給にするか無給にするかは会社が決めて就業規則に規定します。

もっとも、生理休暇そのものは、労働基準法に定められた権利です。

また、「休暇をとる場合は、事前に所定用紙で上長経由会社に届け出て、許可を受けなければなりません」という規定がある場合、これは全社員に共通の労働条件です。

用紙で届け出るか、口頭か、ネットかなどは会社が決めます。

直接人事部門に届け出るのか、上長に届け出るのかも会社が決めます。

こうした従業員の労働条件の共通部分は、法令に違反しない限り、会社が自由に決めています。

 

<3.法令に定められた労働者の権利・義務>

年次有給休暇や残業など所定外労働に対する割増賃金は、労働基準法に定められた労働者の権利です。

ただ、労働基準法は最低限の基準を定めていますから、基準を上回る日数の年次有給休暇を付与し、基準を上回る割増率の残業手当を就業規則に定めることもできます。

ここは法令通りではなくても良いわけです。

使用者は、法令等の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを就業規則とは別に周知するのは大変ですし、法令の基準を上回る運用をする場合もありますから、まとめて就業規則に示しておくのが便利なのです。

もっとも、育児休業の対象者に対しては具体的な制度の内容、会社での手続を個別に説明し、育児休業を取得する/しないの意向を確認する必要がありますから、就業規則に示しておくだけでは足りません。

 

<社会保険や労災保険と就業規則>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の加入基準や運用は、法令に規定されています。

会社がこれとは異なる内容を定めても無効です。

また、労災保険は法令により従業員の全員が加入しますから、「臨時アルバイトは加入しない」などの規定を置いても無効です。

ただ、法令の内容とは別に、会社がプラスアルファの給付をするような福利厚生の制度を定めることは自由です。

「アルバイトでも、就業規則に定めれば社会保険に入れますか?労災保険はどうですか?」といった疑問を目にすることがあります。

しかし、就業規則の規定とは無関係に、法令の基準によって加入することになるわけです。

 

就業規則の各規定と労働基準法など法令との関係は、判別がむずかしいと思います。

就業規則の作成、変更、解釈について正確なところは、専門家である社会保険労務士にご相談ください。

2022/04/29|877文字

 

過去のことで懲戒処分https://youtu.be/ASOISkPfP5E

 

<懲戒処分の目的1>

社員を懲戒する目的の第一は、懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすることにあります。

ですから、本人が深く反省し二度と同じ過ちを犯すことはないと、他の社員全員が確信しているような例外的な場合には、この目的からの処分は不要だということになります。

 

<懲戒処分の目的2>

社員を懲戒する目的の第二は、会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置しないという態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすることにあります。

たとえば、明らかなパワハラやセクハラがあって、会社がその事実を知りながら放置しているようでは、社員が落ち着いて安心して働くことができません。

一般の道義感や正義感に反しますし、自分も被害者となる恐怖を感じるからです。

これでは、会社に対する不信感で一杯になってしまいます。

このとき、行為者に対して徹底的な再教育を実施することによって、他の社員全員が納得するのであれば、必ずしも懲戒処分を行う必要は無いでしょう。

 

<懲戒処分の目的3>

具体的でわかりやすい懲戒規定を設けることは、社員一般に対してやって良いこと/悪いことの基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持することを目的としています。

何をしたら処分を受けるのか、予め知っておくことにより、伸び伸びと業務を遂行することができるのです。

会社は具体的な定めの無いことで懲戒処分をすることは許されません。

この目的に限定して考えると、規定があるからといって必ず処分しなければならないわけではありません。

 

<懲戒処分を行わないことによる悪影響>

不都合な行為を行った社員に対して、懲戒処分が行われなかった場合に、納得できない社員がいるのであれば、その社員は会社に対して不信感を持つことになります。

こうした社員が多ければ多いほど、生産性や定着率が低下したり、会社の評判が落ちたりの悪影響が発生します。

懲戒処分を行わないのが寛容で良い会社というわけではありません。

正しく懲戒処分を行えるのが良い会社だということになります。

2022/04/28|1,247文字

 

<内規の意味>

「内規」を小学館のデジタル大辞泉で調べると「組織の内部に適用されるきまり」とあります。

しかし、就業規則も「組織の内部に適用されるきまり」であることから、内規と就業規則との区別が難しくなっています。

また、就業規則については、労働基準法に詳細な規定があることから、その効力や性質が明確です。

一方で、一口に「内規」と言っても性質は一律ではないため、効力についても統一的には把握できません。

 

<就業規則の一部となる場合>

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「身だしなみは、常に整えておかなければなりません。詳細は別に定める内規によります」

勤務にあたって身だしなみを整えておくことは、全社統一の要請であるものの、具体的な基準は本社、営業所、店舗などによって異なるため、それぞれの拠点で内規を定めて運用するわけです。

このように就業規則で概略を定め、内規に詳細を定めることにしてあれば、内規は就業規則と一体のものとして、就業規則と同等の効力を持ちます。

従業員の立場からすると、「これは内規に過ぎないから」と言って遵守することを拒めません。

 

<労使慣行となる場合>

会社の中で、一定の事実や行為が相当長期間にわたり反復され、労使双方がこれに特段の異議を述べないことがあります。

これも内規と呼ばれますが、その性質は労使慣行です。

就業規則や労働協約などに文書化されていなくても、規範として確立しているのであれば、就業規則の変更を怠っているだけですから、就業規則と同等の効力を持つといえるでしょう。

ただ、「相当長期間」が何年なのかは、労使双方からどの程度強く認識され尊重されているかによるので明確ではありません。

 

<一時的な基準となる場合>

会社が労働組合に宛てて発した文書や、社内の決裁文書は、一種のルールに見えることもありますが、一般には一時的な基準に過ぎないので、就業規則と同等の効力を持ちません。

就業規則に、次のような規定が置かれることがあります。

「賞与の額は、会社の業績及び正社員の勤務成績などを考慮して、次の計算式により各人ごとに決定する。基本給×支給月数×考課係数」

この場合、ある賞与について、支給月数が2か月と決定されたとしても、この「2か月」がその後の賞与支給額の基準となるわけではありません。

たとえ数回連続で「2か月」と決定されたとしても、ある意味偶然であって、ルールになったわけではありません。

 

<内規が独り歩きしないように>

会社としては、一時的な基準としての内規を作ったつもりなのに、いつの間にか労使慣行となり、就業規則と同等の効力を持つことがあります。

これを防ぐには、一定の事実や行為が反復されたときには、これを文書化して「会社が決定する」ということを明示することです。

また、一時的な基準についての文書を作成した場合には、その適用対象や期間を明示して、反復継続を予定していないことを明らかにしましょう。

こうしたことは、労使紛争を予防する小さな工夫といえるでしょう。

 

2022/04/27|1,189文字

 

<サイバー攻撃被害の増加>

サイバー攻撃とは、パソコンやスマホなどの情報端末に対して、ネットワークを通じてシステムを破壊し、データを盗み取り、改ざんするなどのことをいいます。

令和4(2022)年2月頃から、急速にサイバー攻撃被害のリスクが高まっています。

こうした情勢を踏まえ、経済産業省、総務省、警察庁、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターの連名で、「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について(注意喚起)」等が発出されています。

 

<悪質なランサムウェア>

ランサムウェアという悪質なマルウェアによるサイバー攻撃被害が国内外の様々な企業・団体等で続いています。

マルウェア(malware)というのは、malicious(マリシャス:悪意のある)とsoftware(ソフトウェア)を組み合わせた造語です。

コンピューターウイルスのように、情報端末に不利益をもたらす悪意のあるプログラムやソフトウェアを総称する言葉です。

ランサムウェアもマルウェアの一種で、端末をロックしたりファイルを暗号化したりして使用不能にしたうえで、この使用不能を解除するための身代金(ランサム)を要求するものです。

 

<エモテットの脅威>

特に急増しているのが、エモテットと呼ばれるマルウェアへの感染を狙う攻撃メールです。

知り合いのメールアドレスを使っていたり、こちらから送ったメールへの返信を装っていたりなど巧妙化が進み、警戒せずに開封してしまいそうなものが多くなっています。

また、情報端末だけでなく、ブロードバンドルータ、無線LANルータ、監視カメラ用機器類、コピー機をはじめとするネットワークに接続された機器・装置類がマルウェアに感染したことに起因する攻撃も増えています。

 

<危険な連休明け>

連休明けには、確認する電子メールの量が増え、1件1件のメールの偽装チェックなどが疎かになりがちです。

これによって、感染リスクの高まりが予想されますので、各企業は一段高い注意喚起をする必要があります。

用心のため、社内の情報端末や連休中に社外に持ち出していた情報端末は、ソフトウェアを最新のものにバージョンアップし、セキュリティソフト等でウイルススキャンを行ってから使用を開始することをお勧めします。

万一、怪しいメールや異常な事象を発見した場合の連絡経路や対応についても決めておき、社内に周知しておきましょう。

 

<解決社労士の視点から>

悪質な攻撃メールは、日本語に微妙な誤りを含んているものが多いことから、大半は外国人の仕業ではないかと思われます。

しかし、この「日本語の微妙な誤り」は少しずつ減ってきていますし、正当な業務メールでも日本語の誤りを含んでいることがありますから、言葉遣いだけで見分けることは困難となってきています。

このように巧妙化してきているわけですから、やはり対策を怠ることはできません。

2022/04/26|1,413文字

 

残業の削減方法https://youtu.be/4zoPGEeciCY

 

<基本の残業制限>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。

また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(1人1回あたり)に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

 

<従来からある違法残業>

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

三六協定についての適正な手続を怠ることによって、発生しやすくなる違法残業には次のようなものがあります。

 

1.三六協定の届出をせずに行う残業

2.三六協定届に署名した労働者代表の選出手続きが不適切であった場合の残業

3.三六協定の有効期限が切れた後の残業

4.三六協定で定めた上限時間を超える残業

 

ここでいう「残業」は、すべて1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えての残業を意味します。

上に示した違法残業のうち、1.~3.は形式的な不備によって発生します。

これが、従来型の違法残業の特徴です。

 

<新しい違法残業>

かつては、三六協定の適正な届出をして守っていれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、法律による上限が定められていなかったため、違法になることはありませんでした。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられています。

中小企業については、1年間の猶予が与えられていましたが、令和2(2020)年4月1日からは大企業と同様に適用されています。

たった1年間の猶予でしたから、対応しきれていない中小企業も多いため、労働基準監督署が重点的に立入調査(臨検監督)を行っています。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間)

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

このように、新型の違法残業は形式的な不備よりも、労働時間の管理を失敗することによって発生することが多くなります。

これが新型の違法残業の特徴です。

 

<適用猶予・除外の事業・業務>

実態を踏まえ、上限規制の適用が5年間猶予されるものとして、自動車運転の業務、建設事業、医師があります。

これらは、すぐには長時間労働を解消できないと見られるため、5年間だけ猶予が与えられています。

しかし、令和6(2024)年4月からは、災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。

なお、新技術・新商品等の研究開発業務では、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた場合には、時間外労働の上限規制が適用されません。

2022/04/25|1,759文字

 

就業環境が害されるとはhttps://youtu.be/OtO-FrffpKk

 

<悩みの理由>

社内にパワハラの常習犯がいても、どう注意したら良いのか悩んでしまう。

あるいは、注意しても加害者にパワハラの自覚が無い、加害者が納得しないということがあります。

これはその職場で、パワハラ防止対策が適正に行われていないことによって発生する悩みです。

注意しようとした人、あるいは注意した人の能力不足ではありません。

 

<パワハラ防止対策の基本>

パワハラの加害者に注意できる状態にするには、次のパワハラ防止対策が必要です。

 

① パワハラの定義を、その職場の全員が理解できることばで就業規則に示す。

② パワハラの禁止を、就業規則に定める。

③ パワハラに対する懲戒処分を、就業規則に定める。

④ 具体的事例を踏まえたパワハラ防止研修を定期的に実施する。

 

<① パワハラの定義を示す>

パワハラの定義が社内で明確になっていなければ、つまり、ある行為についてのパワハラ該当性が不明確であれば、「あなたの行為はパワハラだ」「いや違う」という意見の対立が生じてしまい解決の糸口すら見えません。

パワハラ防止法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)での、パワハラの定義は必ずしも明確ではありません。

厚生労働省が、別途パワハラについて具体的な説明や類型を示していますが、高校生のアルバイトや高齢者がいる職場では、すべての年齢層に理解できる表現で定義を示しておく必要があります。

 

<② パワハラを禁止する>

就業規則でパワハラを禁止することにより、従業員一人ひとりの労働契約の内容に、パワハラの禁止が盛り込まれることになります。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第12条  職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

これは、パワハラの定義と禁止を1つの条文にまとめた例です。

これを参考にして、それぞれの職場に適した内容で定めると良いでしょう。

この条文も、改定されることがありますので、内容については、これからも吟味していくことが必要です。

 

<③ 懲戒処分の定めなど>

就業規則では、禁止と懲戒とが対を成します。

禁止だけで懲戒処分が規定されていなければ、禁止の実効性が保たれません。

禁止されていないことが、懲戒処分の対象にされるのは不合理です。

就業規則で禁止したからには、これに対応した懲戒処分の規定を置かなければなりません。

また、部下を持たせた時からパワハラに走る社員には、部下を持たせることが危険ですから、部下を持たせないようにする必要があります。

つまり、管理職に抜擢した社員がパワハラを行うようであれば、管理職として不適格なのですから、人事異動により管理職から外すなどの対応が必要です。

さらに、部下を持つ社員の人事考課基準には、パワハラをせずに部下を指導・育成しているか否かを含めておく必要もあります。

 

<④ パワハラ研修の定期的な実施>

就業規則の内容を含め、全社員にパワハラ研修を実施しなければなりません。

なぜなら、パワハラは上司から部下に対して行われるだけでなく、先輩から後輩に行われることもありますし、パワハラを受ける立場の従業員にも研修を実施しておかなければ、被害の申し出を躊躇することになるからです。

この研修は、最新事例を盛り込みながら、最低でも年1回は実施すべきでしょう。

 

<解決社労士の視点から>

パワハラによって利益を得る者はいません。

会社にとっては、生産性の低下、人材育成の遅れ、定着率の低下という損失が発生します。

時には、被害者のメンタルヘルス不調などにより、労働力の喪失や損害賠償責任を生じることもあります。

加害者が無自覚でパワハラ行為に及んでいた場合には、会社との関係で、ある意味被害者の立場にあるといえるでしょう。

そして、社内だけでなく、社会的な信頼を失うこともあります。

何より辛いのは、家族からの信頼を失うことです。

「パワハラの加害者にどう注意したら良いのか」という疑問が出る職場では、経営者が中心となって、積極的にパワハラ防止対策に取り組まなければなりません。

2022/04/24|1,563文字

 

<就業規則の内容>

企業の就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

 

・労働条件の共通部分

・職場の規律

・法令に定められた労働者の権利・義務

 

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<特定の従業員への手当支給>

たとえば、自由参加の社内行事でケガをした従業員が、公共の交通機関では通勤が困難で、家族が自家用車で送り迎えをするようになったとします。

このとき、会社が恩恵的に出勤1日につきいくらという手当を支給しても、就業規則には違反しません。

ただ、今後も時々発生しうることで、その会社の多数の従業員に共通する労働条件だと判断されるなら、就業規則に定めておくべきでしょう。

またたとえば、人事部門の従業員が社会保険労務士の資格をとって、業務に直接役立てている場合に、こうしたことがその会社にとって初めてのことであれば、就業規則に無い資格手当を支給しても就業規則には違反しません。

もし、こうした資格手当の制度を新たに設けたのであれば、その会社にとって多数の従業員に共通する労働条件となりますから、就業規則に定めるべきこととなります。

 

<就業規則の権利保障機能>

就業規則に「従業員が結婚したときは、祝金3万円を支給する」と規定されているのに、特定の従業員だけ手続をしても支給されないのは、就業規則違反となります。

これは、就業規則で定められた共通の労働条件のはずなのに、特定の従業員だけ対象外としているからです。

反対に、会社が特定の従業員に、就業規則には規定のないプラスアルファのことをしても、その従業員に対しては、就業規則違反が問題とはなりません。

就業規則は、それぞれの従業員に対して、最低限の権利を保障する機能を果たしているわけです。

 

<同一労働同一賃金>

日本の「同一労働同一賃金」は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同じ企業内で正規雇用労働者(正社員、無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

たとえば、就業規則に通勤手当の規定が無い会社で、正社員だけに通勤手当が支給されている場合には、同一労働同一賃金に反する可能性が高いといえます。

なぜなら、通勤手当は通勤にかかる費用をまかなうのが目的ですから、正社員とその他の従業員とでその必要性に差が無いからです。

それにもかかわらず、正社員だけに支給するのは、不平等であり不合理なわけです。

これに対して、正社員だけに転居を伴う人事異動があり、転居による住宅費の負担を考慮して、正社員だけに住宅手当を支給するのは、公平であり合理的であって同一労働同一賃金の考え方に反していないことになります。

この場合、住宅手当が就業規則に規定されていないのであれば、正社員のみに支給されていることではなく、正社員の労働条件の共通部分であるにもかかわらず、就業規則に定めて所轄の労働基準監督署長に届出をしていないことが労働基準法違反となります。

 

<同じ雇用形態でも>

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の待遇の公平・平等についての考え方です。

しかし、正規雇用労働者同士、非正規雇用労働者同士でも、一部の従業員だけに手当を支給すること、あるいは金額の異なる手当を支給することが、不公平・不平等となることもあります。

現に支給されている手当については、その手当支給の目的を再確認し、その目的に照らして不公平・不平等が発生していないかを確認し改善することが必要です。

この場合、不公平感・不平等感の有無について、従業員に聞き取り調査を行うことで、改善の方向性が見えてくると思います。

2022/04/23|1,273文字

 

<ポータブルスキルの測定>

厚生労働省は、ミドルシニア層のホワイトカラー職種を対象に、ポータブルスキルを測定し、それを活かせる職務や職位を提示する「ポータブルスキル見える化ツール」を開発し、提供しています。

ここで、ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても強みとして発揮できる持ち運び可能な能力をいいます(一般社団法人人材サービス産業協議会(JHR)が開発)。

平たく言えば「どこの会社に行っても通用する能力」です。

 

<ポータブルスキル見える化ツールの特徴>

ポータブルスキル見える化ツール(ホワイトカラーの職業能力診断ツール)は、令和元年度、令和2年度「職業能力診断ツール開発に向けた調査・研究事業」及び令和3年度「職業能力診断ツール活用促進等事業」により開発され、「job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」内に掲載中のものです。

このツールの主な特徴は、自分では気付かない強みを発見し、可能性を広げるサポートをする機能を備えている点です。

15分程度の入力で出てくる診断結果を基に、持ち味を活かせる職務や職位が確認できるため、キャリア形成やキャリアチェンジで強みを発揮することができるようになります。

さらに、このツールの提供に合わせて、国家資格者であるキャリアコンサルタントなどの支援者が、ホワイトカラー職種のミドルシニア層の求職者・相談者等に相談支援を行う際に、このツールを活用しやすくするためのマニュアルと映像教材も、厚生労働省ホームページに掲載されています。

 

<9つのポータブルスキル>

●仕事のし方

1.現状の把握 取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方

2.課題の設定 事業、商品、組織、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方

3.計画の立案 担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方

4.課題の遂行 スケジュール管理や各種調整、業務を進めるうえでの障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方

5.状況への対応 予期せぬ状況への対応や責任の取り方

●人との関わり方

6.社内対応 経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方

7.社外対応 顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成のし方

8.上司対応 上司への報告や課題に対する改善に関する意見の延べ方

9.部下マネジメント メンバーの動機付けや育成、持ち味を活かした業務の割り当てのし方

 

<解決社労士の視点から>

ポータブルスキル見える化ツールは、自己診断によって持ち味を測定し自己理解を深めるためのツールです。

会社が社員に実施させて、その結果から人事異動を考えるような使い方はできません。

これは、自分の本音に従って回答するからこそ、持ち味が測れるわけであって、会社が実施させるような場合には、自分の期待する結果に向けて本音を曲げて回答してしまうため、正しい結果が期待できないからです。

なお、専門技術や専門知識のような専門能力の測定には不向きですので、ここは注意が必要です。

2022/04/22|971文字

 

届出と違う経路で通勤災害https://youtu.be/ZySNmaO5sUg

 

<通勤手当の増額>

従業員が遠方に引っ越し通勤手当が増えると、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料にも反映されますから、会社の負担もかなり増えることがあります。

その引っ越しが、会社の業務都合ではなく個人的な事情によるものであれば、会社側としては釈然としないこともあります。

しかし、遠方への引っ越しを理由に解雇を通告するのは、一般に不当解雇となってしまいます。〔労働契約法第16条〕

 

<課税の問題>

もし、通勤費込みで基本給を決めておくことができれば、社会保険料や労働保険料について、従業員の引っ越しにより、会社の負担が増減することはありません。

しかし税法上は、一部の例外を除き通勤手当には課税されませんが、通勤手当込みの基本給にすると全体に課税されてしまいます。

 

<純粋な手取り額の減少>

それでは、基本給が20万円で、通勤手当が1万円、だから本来の給与部分は19万円(20万円 - 1万円)と決めておくのはどうでしょう。

遠方に引っ越して通勤手当が2万円になった場合には、基本給は20万円のままで、本来の給与部分は18万円(20万円 - 2万円)となります。

本人が受け取る基本給に変更はありません。

しかし、通勤手当は一般に実費を基準に支給されるものですから、自由に使える金額は本来の基本給が減った分だけ減少してしまいます。

 

<労働基準法と通勤手当>

労働基準法やその他の労働法に、「通勤費は雇い主が負担する」のような規定はありません。

多くの企業が通勤手当を支給していますから、これが当たり前になっているだけです。

ただそれだけに、通勤手当を支給しない企業が求人広告を出しても、魅力が感じられないということはあります。

しかし、就業規則や労働条件通知書に「通勤費は支給しない」と規定しておくことは、法的には問題がないのです。

 

<現実的な対応>

通勤費込みの基本給としたり、通勤手当を支給しなかったりすることは、給与計算のうえで会社の手間が減少します。

しかし、遠方への引っ越しをきっかけとして退職する人が出やすくなります。

それでも、「代わりの人」を簡単に採用できる職場であれば問題ないのかもしれません。

新人の採用や育成が難しい職場では、通勤手当に上限額を設けておき、会社の負担が予想外に増えることを防ぐというのが、現実的な対応ではないでしょうか。

2022/04/21|1,006文字

 

簡単ではない懲戒処分https://youtu.be/eAmGzzbHbas

 

<法律の規定>

減給処分を行う場合の限度については、労働基準法に次の規定があります。

 

【制裁規定の制限】

第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

 

つまり労働基準法は、減給処分について一定の制限を設けたうえで認めているわけです。

また、労働契約法には懲戒処分の有効性について次の規定があります。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

つまり、懲戒処分が有効であるためには、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められることが必要だと言っています。

しかし、そもそも「使用者が労働者を懲戒することができる場合」とは、どのような場合なのかについて、具体的な規定は見当たりません。

 

<最高裁の判断>

平成15(2003)年10月10日のフジ興産事件判決では、懲戒処分の根拠について次のように述べられています。

 

使用者は企業秩序を定立し維持する権限(企業秩序定立権)を有し、労働者は労働契約を締結したことによって企業秩序遵守義務を負うことから、使用者は労働者の企業秩序違反行為に対して制裁罰として懲戒を行うことができる。

 

そして、懲戒処分を行う場合の条件については、次のように述べられています。

 

使用者が労働者を懲戒するには、予め就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておかなければならない。使用者が懲戒できることを定めた就業規則が、法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容について、当該就業規則の適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていなければならない。

 

労働契約法第15条の「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、この条件を満たす場合をいうのでしょう。

判例を確認しないと解釈できない条文というのは不親切ですから、やがて条文の中に判例の内容を盛り込む改正が行われるものと期待されます。

しかし現状では、判例や裁判例を確認せずに、独断で解釈することは危険な状態だといえます。

2022/04/20|1,282文字

 

<キャンペーンの実施>

厚生労働省では、全国の大学生等を対象に、特に多くの新入学生がアルバイトを始める4月から7月までの間、労働条件の確認を促すことなどを目的としたキャンペーンを実施します。

過去の調査結果等でも、労働基準法で規定されている労働条件の明示がなかったと回答した学生が多かったことなどを踏まえ、学生向けに身近に必要な知識を得るためのクイズ形式のリーフレットの配布等による周知・啓発などを行うとともに、大学等での出張相談を行います。

 

<キャンペーンでの呼びかけ>

重点的に呼びかけが行われる事項は次の通りです。

 

(1)労働条件の明示(契約更新の基準など)

(2)シフト制労働者の適切な雇用管理(始業、就業、休憩、休日など)

(3)労働時間の適正な把握

(4)商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

(5)労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

 

<アルバイトの性質>

アルバイトというのは、日常用語であって法律用語ではありません。

どのような雇用形態をアルバイトと考えるかは、各企業が独自の基準で自由に決めています。

アルバイトといえども、法律上は正社員と同じく労働者であり、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法など、すべての労働法が当然に適用されます。

また、外国人のアルバイトであっても、日本国内で働く限り、日本の法律が適用されます。

会社が自由に決められるのは、こうした法令による規制が無い部分や、規制の範囲内に限られることになります。

 

<キャンペーンなどの影響>

昭和時代には「アルバイトだから」と言われれば、「一般の労働者とは違うのだろう」とあきらめる学生も多かったものです。

しかし、国が広報に努めたせいか、学生がネットで情報を得るようになったせいか、学生であっても働く限りは、労働法上の権利があるのだということが常識として定着しつつあります。

 

<企業としての再確認>

雇い主としての企業は、学生アルバイトについて、最低限、次のことを再確認しておく必要があります。

学生は、知らないふりをしていても、次のようなことを常識として認識しています。

 

・アルバイトを雇うときは、書面による労働条件の明示が必要です。

・学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定しましょう。

・アルバイトも労働時間を適正に把握する必要があります。

・アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。

・アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。

・アルバイトにも、業務中または通勤途上のケガについて労災保険が適用されます。

・週1日勤務のアルバイトでも、年次有給休暇が付与され、取得の権利が与えられています。

 

アルバイトを上手くだまして安く使うことはできません。

戦力化して将来正社員にすることを考えるのが得です。

経営者が昭和の考えを持ち続けている場合、学生はこれに反論せず上手に言い訳してひっそり退職していきます。

2022/04/19|1,414文字

 

年次有給休暇が会社に勝手に使われたhttps://youtu.be/JgWobP3JbN4

 

<なぜ2月なのか>

月間所定労働日数は、実際の勤務日数と比較して割増賃金や欠勤控除を行う基準となるものではありません。

給与計算にあたって、日数同士の比較をするのは不合理なのです。

月間所定労働日数は、残業や欠勤があった場合に、月給から時間単価を計算して、その金額を計算するために使っています。

2月はカレンダー上の日数が少ないですから、勤務日数が少なくなるのが自然です。

毎年2月の給与が減ってしまうのでは、月給制にした意味がありません。

実際の勤務日数に応じて給与を計算するのであれば、日給制の労働契約にすべきです。

 

<具体例>

たとえば、月間所定労働日数が22日の場合に、会社のルールに従って休みをとっていたら、ある月は24日出勤となり、また別の月は20日出勤となったとします。

このとき2日分の休日出勤手当が発生したり、2日分の欠勤控除が発生したりでは、月給が毎月変動してしまいます。

このような運用は、明らかに不合理です。

そもそも休日出勤や欠勤は、1週間を一区切りとして計算します。

ここに月間所定労働日数は出てきません。

月間所定労働日数は時間単価の計算に使うだけです。

結局、月間所定労働日数は給与計算をする人だけが意識していて、他の社員はカレンダーを見ながら会社のルールに従い出勤していれば、月給の変動は無いのが正常な姿です。

 

<一般的な所定労働日数>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

年次有給休暇など休暇の取得や欠勤の発生がありますので、実労働日数とは一致しません。

年間所定労働日数は、うるう年も平年と同じ日数とすることが多いようです。

月間所定労働日数は、大の月も小の月も同じ日数とすることが多いようです。

年間所定労働日数 ÷ 12 = 月間所定労働日数とするのが一般です。

このとき、分かりやすくするために、1日未満の端数は切り捨てることが多いようです。

 

<残業手当の計算>

月給を月間所定労働時間で割って時間単価を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間単価 × 1.25 などとして計算するのが一般です。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数 で計算されます。

会社によっては、年間所定労働時間 ÷ 12を基準に直接月間所定労働時間を定めています。

月によって、月間所定労働日数が変動すると、残業手当の時間単価が月によって変動するなどの不都合が発生しうるので、毎月同じ日数にするのが無難でしょう。

 

<所定労働日数が無いと>

月間所定労働日数を固定した日数に決めないまま給与計算をしている会社、あるいは外部に委託している会社は、社員のモチベーションを低下させている恐れがあります。

時間単価の低い期間は仕事を先送りにして、時間単価の高い期間に残業して業務をこなせば、手取り額が増えるという現象も発生します。

また、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負っています。

ところが、週単位あるいは年単位での所定労働日数が決まっていなければ、年次有給休暇の付与日数が確定できません。

月給制に限らず、シフト制などを理由に所定労働日数の決まっていない社員がいる会社では、年次有給休暇の付与について問題を抱えていることになります。

2022/04/18|1,251文字

 

降格の理由があやふやだとトラブルになりますhttps://youtu.be/oEsCKvbTNSw

 

<人事処分だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、就業規則の懲戒規定に基づき人事処分だけを行っている会社もあります。

人事処分を行う目的は、主に次の3つです。

 

・対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

・社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持すること

 

これらの目的が果たされれば十分と考えるわけです。

 

<人事異動だけの会社>

社員が不都合な行為を行った場合に、会社の裁量で人事異動だけを行っている会社もあります。

この場合の人事異動の目的は、適材適所によって会社全体の生産性を高めることにあります。

不都合な行為を行った社員を、責任が軽く重要度の低い仕事の担当に異動させ、その人の代わりに適任と思われる別の社員を任命します。

こうして、社内で業務が効率よく円滑に回るように調整するわけです。

 

<二重処罰の禁止>

憲法には、二重処罰の禁止について次の規定があります。

 

【日本国憲法第39条後段】

又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

人事処分も人事異動も、国家だけに権限のある刑罰とは違います。

しかし、その趣旨は、企業で行われる人事処分にも適用されるものと解され、二重処罰に当たる人事処分は、懲戒権の濫用とされ無効になることがあります。〔労働契約法第15条〕

 

<人事処分の種類>

モデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)には、懲戒の種類として、けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇があります。

しかし、第63条(懲戒の種類)の解説には、「懲戒処分の種類については、本条に掲げる処分の種類に限定されるものではありません。公序良俗に反しない範囲内で事業場ごと決めることも可能です」と書かれています。

実際に、職務級を下げる降格、役職を免ずる降職といった処分も行われています。これらは、日常用語では左遷と呼ばれ、人事異動の一種でもあります。

 

<人事異動と人事処分の併用>

左遷(降格・降職)は、人事異動でありながら、人事処分の性質も併せ持つことがあります。

このことからも明らかなように、人事異動と人事処分の両方を行うことは、1つの行為を2回処罰することにはならず、二重処罰の禁止の趣旨に反しません。

行為と処分とのバランスが取れていなければ、その有効性が争われることはありますが、人事異動と人事処分の両方を行うのが不当だというわけではありません。

 

<人事考課>

人事考課は、社員の能力や実績を評価し、待遇などに反映させる目的で行われます。

そして、人事異動と人事処分の理由となった行為が、評価の対象となることもあります。

つまり、人事異動、人事処分、人事考課での低評価の3つが重ねて行われることもあるわけです。

ただし、対象となった行為とこれらとのバランスが保たれるよう配慮する必要はあります。

2022/04/17|1,092文字

 

<年次有給休暇の付与基準>

年次有給休暇の付与について定める労働基準法第39条第2項の末尾には、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない」と書かれています。

全労働日に対する出勤日の割合は、出勤率と呼ばれ、これが8割未満であれば年次有給休暇を付与しなくても良いということです。

 

<出勤率が基準に満たない社員の状況>

出勤率が8割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに2割の欠勤が発生している状態だと考えられます。

時々遊びに行きたくなって、繰り返し仕事を休んでいたら、欠勤が2割を超えてしまったなどということは、そうそうあるものではないでしょう。

学生なら学業の都合で、主婦なら家族の都合で、やむを得ず欠勤を重ねてしまったというケースが多いのではないでしょうか。

 

<正しい出勤率の計算>

年次有給休暇の付与基準に使われる出勤率の計算は、実際には複雑です。

単純に考えると、出勤日数 ÷ 全労働日 ということになりますが、これには、休業しても出勤したものと取り扱う例外と、全労働日から除かれる例外があります。

 

【出勤したものと取り扱う日数】

(1)業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日

(2)産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日

(3)育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日

(4)年次有給休暇を取得した日

 

【全労働日から除外される日数】

(1)使用者の責に帰すべき事由によって休業した日

(2)正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が全くなされなかった日

(3)休日労働させた日

(4)法定外の休日等で就業規則等で休日とされる日等であって労働させた日

 

こうした例外をきちんと加味して出勤率を計算することは、意外と手間がかかるうえ間違えやすいものです。

 

<会社独自の制度として>

労働基準法は、「出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、(中略)有給休暇を与えることを要しない」と規定しているのであって、「与えてはならない」とは規定していません。

普通に出勤していれば、そうそう出勤率が8割を切ることはありません。

たまに見られるのは、週5日出勤で契約したアルバイトが、実際には週4日のシフトで働いていたような場合です。

こうした場合には、勤務の実態が変更するたびに、雇用契約書を交わし直すのが確実なのですが、実際にはできていないことがあります。

いろいろと手間を考えてみると、出勤率はノーチェックで8割以上あるものとして、年次有給休暇を付与することにも十分な合理性があるといえるでしょう。

 

2022/04/16|1,419文字

 

退職禁止?! https://youtu.be/TFVbVky3mzU

 

<会社の損害>

何度も求人広告を出して何十万円もの経費をかけ、採用面接でもそれ相当の人件費がかかり、やっと採用し大事に育ててきた新人から、あっさり「辞める」と言われたら、経営者や採用担当者は「金返せ!」という気持ちになります。

 

さて、この場合の「会社の損害」とは何でしょうか。

 

まず、求人広告にどれだけの経費をかけるかは、会社の判断によるのであって、応募者と相談して決めるわけではありません。

これは、採用面接などについても同じことがいえます。

応募があった時に、「採用します!」と即決ならば、ほとんど経費がかかりません。

もっとも、こんないい加減な採用はしないでしょう。

しかし、どれだけ手間暇をかけるかは、会社が判断します。

 

新人を育てるための経費も馬鹿になりません。

場合によっては、会社の費用負担で研修に参加させたり、免許を取らせたりと、至れり尽くせりのこともあるでしょう。

そうでなくても、上司や先輩が指導するのに人件費がかかったはずだと考えられます。

そうだとしても、これらは会社側の判断で行ったのであって、本人からたっての希望があって行ったというわけではないでしょう。

となれば、応募し採用された本人が認識できない損失についてまで、本人に費用を負担させることはできません。

 

制服も、会社のルールで使うことにしているわけですから、その経費を本人の負担にはできません。

 

こうしてみると、会社に何か特別な損害があったような場合でなければ、損害賠償の請求はできないだろうということは、しろうとにも判断のつくことです。

 

しかし、急に辞めたことにより、予定していた工事の人手が足りなくなり、工事ができなくなったとします。

この場合には、発注者の信用を失うだけでなく、業界全体に悪評が流れてしまうかもしれません。

こうなると、会社の損害は甚大です。

 

<労働基準法の規定>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

予定した仕事をしないというのは「労働契約の不履行」の一つですから、「入社から3年以内に退職すると300万円の罰金」などのルールは、労働基準法の禁止する賠償予定にあたるため違法となります。

しかし、「予定」するのではなく実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、退職した社員に損害賠償を請求することができます。

 

<損害賠償請求の裁判>

裁判で損害賠償を請求する場合には、訴えを起こした原告側が証明責任を負います。

当たり前です。

損害賠償を請求された被告が、損害を与えていない、あるいは、〇円以上の損害は与えていないという証明に成功しないと裁判で負けてしまうというのは常識外れです。

言いがかり的に訴訟を提起して、相手が証明できなければ勝てるというのでは、そうした行為が横行してしまいます。

 

さて、新人が辞めたことによって、会社に甚大な被害が及ぶということは稀でしょう。

しかし、ある程度の経済的な損失は発生します。

その損害額がいくらなのか、あるいは少なくともいくら以上なのか、計算できない場合には損害賠償の請求訴訟を提起しても敗訴してしまいます。

 

確信をもって客観的な損害額を算定できるような例外を除き、退職していく社員に損害賠償の話を持ち出すのは、単なる言いがかりになってしまう可能性が高いと考えられます。

2022/04/15|2,147文字

 

電車の遅れで遅刻https://youtu.be/uY2_I0yA2OU

 

<「許される」の意味>

使用者側からも、労働者側からも、「遅刻は何回まで許されるか」という質問を受けます。

この質問では「許されない」とは何かを想定し、それぞれについて回答する必要があります。

 

【遅刻について「許されない」の意味】

① 給与の欠勤控除を受ける。

② 懲戒処分を受ける。

③ 損害賠償の請求を受ける。

 

1回でも遅刻すれば、上司や先輩から注意を受けるでしょうから、これすら無くて許されるということは想定できません。

すると、上記の3つについて考えることになります。

 

<① 給与の欠勤控除を受ける>

欠勤控除について、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【欠勤等の扱い】

第43条  欠勤、遅刻、早退及び私用外出については、基本給から当該日数又は時間分の賃金を控除する。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令には規定がありません。

規定が無いということは、当然のように「常識として」欠勤控除をすることは許されません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払が対応するという労働契約の性質上、認められているものです。

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

就業規則に規定が無いまま欠勤控除はできません。

また、遅刻による欠勤の時間に相当する賃金を超えて欠勤控除をすることは、懲戒処分になりますから、懲戒処分としての適法性が問題となります。

 

<② 懲戒処分を受ける>

モデル就業規則の最新版で、遅刻についての懲戒処分の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第64条  労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

② 正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。

 

2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第51条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③ 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

この規定によると、2つのパターンがあります。

・正当な理由なくしばしば遅刻をしたとき → けん責、減給、出勤停止

・正当な理由なく無断でしばしば遅刻し 回注意されても遅刻したとき → 懲戒解雇など

 

「無断で」「注意されても」なお遅刻すると、懲戒解雇もありうるということになります。

これは、別に次の規定があって、遅刻の事前申し出と承認を必要としているからです。

こうした規定により、事前申し出と承認を義務付けていなければ、「無断で」を理由に一層重い処分とすることはできません。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第18条  労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に    に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。

ただし、やむを得ない理由で事前に申し出ることができなかった場合は、事後に速やかに届出をし、承認を得なければならない。

 

さて、モデル就業規則第64条第1項第2号には、「しばしば」という言葉があります。

この意味は、会社ごとに運用で決めることになります。

すると「何回まで許されるか」については、「運用による」という回答になってしまいます。

 

また、ここの第2項第3号には「  回にわたって」という言葉があり、何回にするかは会社が決める形になっています。

こうした規定があれば、会社の無断遅刻が何回まで許されるかは、かなり具体的にわかります。

 

このように、懲戒処分を受けないという意味で「許される遅刻は何回までか」という質問に対しては、「会社の就業規則と運用による」という回答になります。

 

<③ 損害賠償の請求を受ける>

損害賠償については、労働基準法に次の規定があります。

 

【賠償予定の禁止】

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

ここで遅刻は「労働契約の不履行」になりますから、「遅刻すると1回につき3千円の罰金」などのルールは、賠償予定となって労働基準法に違反するため無効となります。

しかし、「予定」するのではなく、会社に実際に損害が発生して、会社が損害額を証明できるのであれば、遅刻した社員に損害賠償を請求することができます。

朝一番で予定していた大事な商談に遅刻して、商談相手が怒って帰り、その後お詫びしても許してもらえず、大きな仕事をライバル会社に取られてしまったという場合には、ある程度具体的な損害額が算定できるでしょう。

つまり、損害賠償責任については、遅刻の回数は問題ではないことになります。

 

こうしてみると、懲戒処分についての規定の中の「しばしば遅刻」「  回にわたって注意を受けても」という部分は、会社に与えた損害額や不注意の程度を基準にすることも、十分に客観的な合理性があるといえます。

2022/04/14|1,286文字

 

懲戒処分が許される根拠はなんなのかhttps://youtu.be/p7Ve-_KszFE

 

<懲戒規定が無ければ>

部下が不都合な行為で懲戒の対象とされた場合、これを理由に上司が懲戒の検討対象とされるには、就業規則に根拠規定が必要です。

この点、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)には、こうした場合を想定した規定がありません。

しかし企業によっては、就業規則に「職務を執行するに当たって、部下の指導監督に不行届きの事実があったとき」を懲戒の対象とする旨の規定を置いている場合があります。

そして、こうした規定の無い企業では、上司が直接懲戒規定に触れない限り、部下の指導監督が不足していたことを理由に、懲戒の対象にはできないことになります。

 

<懲戒規定があっても>

就業規則に、部下の指導監督不足を懲戒の対象とする旨の規定があったとしても、それだけで上司が当然に懲戒されることの正当性が導かれるわけではありません。

懲戒というのは、故意・過失によって企業に損害をもたらし、あるいは損害をもたらす危険を発生させた場合に可能となるものです。

ですから、部下の不都合な行為について、上司がこれを防止するために管理監督する具体的な義務・責任が無いのであれば、懲戒の対象とされるのは合理性が無いことになります。

たとえば部下が、休日や勤務時間外のプライベートな時間に、不都合な行為を行ったとしても、基本的には、上司の指導監督権限が及びませんので、原則として上司の責任を問えないことになります。

 

<上司が責任を負い懲戒の対象となりうる場合>

上司が管理監督の責務を果たさなかったから、部下が不都合な行為に及んでしまった、裏を返せば、上司が管理監督の責務を果たしていたなら、部下が不都合な行為に及ぶことは無かったといえる場合には、上司が責任を負い懲戒の対象となりうるわけです。

たとえば、上司が部下の就業規則違反行為や懲戒対象となる行為を黙認していて、注意指導を怠っていた場合には、これに該当します。

 

<時期的な相違の問題>

会社で何か不祥事があった場合には、それが発覚した時の代表取締役が引責辞任するということがあります。

これは、そうすることで世間一般の会社に対する非難をある程度かわすことができると考えて、政策的に行っているわけです。

しかし、会社との関係が委任契約である代表取締役と、会社との関係が労働契約である社員とを同じ理屈で律することはできません。

上司に該たる人は、労働者として労働法による保護を受けているわけです。

ですから、ある社員が就業規則違反を犯した時に、たまたま上司であった社員が連帯責任を負うというのは理由が無いわけです。

上司の管理監督責任が問われる場合であっても、いつの上司の責任なのかは確認が必要だということです。

 

<解決社労士の視点から>

社員が重い懲戒処分を受ける時に、その上司も自動的に懲戒の対象となるのが、ある程度慣行となっている企業もあります。

しかし、上司が連帯責任を負う、あるいは無過失責任を負うというのは、法的根拠がありません。

これは懲戒権の濫用であり、懲戒が無効ということになりますので、悪しき慣行は改める必要があります。

2022/04/13|1,625文字

 

情状に応じた懲戒https://youtu.be/memZVoQ7m1U

 

<しろうと考えでは>

職場で暴言を吐かれ、感情を抑えられずに相手に暴力を振るってしまった社員がいた場合には、他の社員たちから次のような意見が聞かれます。

・最初に暴言を吐いて仕掛けた方が悪い。暴言が無ければ、暴力も無かっただろう。

・あくまでも言葉のやり取りで済ませるべきで、最初に手を出した方が悪い。

・喧嘩両成敗ということもあり、どちらも同じように悪い。

あるいは、当事者の普段の様子を知っている社員からは、全く違った意見が出てくるかもしれません。

 

<パワハラに該当するか>

職場での暴言や暴力は、パワハラであると判断されるのが一般です。

パワハラは、次の2つが一体となって同時、あるいは時間的に前後して行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

暴言の中には、指導や教育などの意図が含まれていることでしょう。

しかし、普通の話し方ではなく「暴言」という形で表現してしまうと、それは相手の人権を侵害する行為になり、パワハラとなってしまうのです。

場合によっては、脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(刑法223条)、名誉毀損罪(刑法第230条)、侮辱罪(刑法第231条)に該当することもあります。

 

一方、暴言に対抗して暴力を振るうのは、その暴力の中に、業務上必要な要素が含まれていませんから、パワハラではなく単純に暴行罪(刑法第208条)が成立します。

相手にけがを負わせれば、傷害罪(刑法第204条)となります。

 

<正当防衛になるのか>

それでは、暴言に対抗しての暴力は正当防衛になるでしょうか。

刑事上は犯罪となる行為が、多くの場合、民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

刑事上の正当防衛は、刑法第36条第1項に規定があります。

 

【刑事上の正当防衛】

第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

 

暴言によって侵害される名誉権や人格権を防衛するために、暴力は必要が無いですから、「やむを得ず」という条件を満たしません。

ここでの「やむを得ず」は、日常用語の「やむを得ず」よりもハードルが高く、他に方法が無い場合に認められます。

 

民事上の正当防衛は、民法第720条第1項本文に規定があります。

 

【民事上の正当防衛】

第七百二十条  他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。

 

こちらでも、法的な意味での「やむを得ず」という条件がありますから、暴言を吐いた人でも、暴力を振るった人に対して、損害賠償の請求ができることになります。

 

<懲戒処分はどうするか>

会社の懲戒処分は刑罰ではありませんが、国法である刑法や民法の趣旨に反する懲戒は、客観的合理性や社会通念上の相当性が否定され、懲戒権の濫用となってしまうことがあります。〔労働契約法第15条〕

就業規則に具体的な懲戒規定があることを前提に、暴言を吐いた社員も、暴力を振るった社員も懲戒処分の対象とすべきです。

また、刑法上も暴力は暴言よりも重い罪ですから、一般には暴力の方が重い懲戒処分になります。

そして、懲戒規定には「情状酌量」についての定めが含まれているでしょう。

暴言を吐いた社員が、暴力を誘発する意図で行っていた場合や、何度も止めるように言われながら暴言を発し続けたような場合には、情状酌量の面から、暴言を吐いた社員は一段重い懲戒処分、暴力を振るった社員は一段軽い処分ということも考えられます。

懲戒処分とは別に、その立場でその仕事をこなすことに対する適性の判断から、人事異動も検討しなければなりませんし、人事考課への反映も忘れてはなりません。

 

懲戒処分については、刑法にも詳しい社会保険労務士へのご相談をお勧めします。

2022/04/12|2,073文字

 

フレックスタイム制と年次有給休暇https://youtu.be/FjX3Fs-tAjs

 

<労使協定の締結>

フレックスタイム制の導入に当たっては、労使協定の締結が必要です。

清算期間が1か月以内であれば、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要はありません。

しかし、平成31(2019)年4月1日付の法改正に応じて、清算期間を1か月を超え3か月以内とする場合には、所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

いずれの場合も、フレックスタイム制を導入するに当たっては、以下の事項を労使協定で定める必要があります。

1.対象となる労働者の範囲

2.清算期間

3.清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)

4.標準となる1日の労働時間

5.コアタイム(※任意)

6.フレキシブルタイム(※任意)

 

<1.対象となる労働者の範囲>

対象となる労働者の範囲は、各人ごと、課ごと、グループごと等様々な範囲が考えられます。

例えば「全従業員」、「企画部職員」としたり、「Aさん、Bさん、・・・」と することも構いません。

労使で十分話し合い、協定で対象となる労働者の範囲を明確にしてください。

人事異動があることを想定すると、労働者の個人名で範囲を指定するよりは、役職などで指定した方が便利です。

 

<2.清算期間>

清算期間とは、フレックスタイム制で労働者が労働すべき時間を定める期間のことです。

かつて上限は1か月でしたが、法改正によって上限が3か月となりました。

清算期間を定めるに当たっては、その長さに加えて、清算期間の起算日を定めてください。

起算日は、清算期間をカウントする場合の初日です。

 

法改正で清算期間の上限が最大3か月に延長されましたが、月ごとの繁閑差などの実態を踏まえ、対象者の範囲や清算期間を労使でよく話し合うことが重要です。

また、清算期間が1か月を超える場合でも、使用者は1か月ごとに実際に働いた労働時間を労働者に通知するなどの対応に努めてください。

フレックスタイム制の対象となる労働者は、自分でも労働時間の管理をしているはずですが、期間が長い場合には、期間を区切って集計した時間を、その労働者に通知してあげるのが親切です。

 

<3.清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)>

清算期間における総労働時間とは、所定労働時間のことです。

つまり、労働契約上、労働者が清算期間に労働すべき時間として定められた時間です。

フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間を定めることとなります。

清算期間における総労働時間を定めるに当たっては、法定労働時間の総枠の範囲内としなければなりません。

つまり、清算期間における総労働時間が、次の時間の範囲内であることが必要です。

1週間の法定労働時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7日

 

なお、特例措置対象事業場については、清算期間が1か月以内の場合には週平均44時間までとすることが可能ですが、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて労働させる場合には、36協定の締結・届出と、割増賃金の支払が必要です。〔労働基準法施行規則第25条の2第4項〕

 

労使協定では、1か月160時間というように各清算期間を通じて一律の時間を定める方法のほか、清算期間における所定労働日を定め、所定労働日1日当たり〇時間といった定め方をすることもできます。

 

<4.標準となる1日の労働時間>

標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間の長さを定めるものです。

清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。

フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、その日について、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱う必要があります。

実働時間ではないということで、労働時間の計算から除いてしまうと、実質的に年次有給休暇の権利をはく奪することになるからです。

 

<5.コアタイム(※任意)>

コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。

必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

設けない場合には、朝礼の実施などで不都合を生じることがあります。

反対に、コアタイムが長すぎると、フレックスタイム制のメリットが無くなりますので、注意が必要です。

なお、コアタイムを設けずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合にも、所定休日は予め定めておく必要があります。

所定休日が無いと、休日出勤(手当)の設定ができません。

 

<6.フレキシブルタイム(※任意)>

フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択によって労働時間を決定することができる時間帯のことです。

フレキシブルタイム中に勤務の中抜けをすることも可能です。

フレキシブルタイムも必ず設けなければならないものではありませんが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

2022/04/11|1,371文字

 

パワハラしやすい人https://youtu.be/9dnI-MD1zkQ

パワハラの6類型https://youtu.be/_I0MvwhXaPU

 

<事業主の防止対策>

事業主は、10段階に分けて考えると、以下の措置を講じる義務を負っています。

●パワーハラスメントが発生する前に

1.職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること

2.行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

3.相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

4.相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

●パワーハラスメントが発生してしまったら

5.事実関係を迅速かつ正確に確認すること

6.速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

7.事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと

8.再発防止に向けた措置を講ずること

●並行して行うこと

9.相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

10.相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

<体制の構築状況>

パワハラ防止対策が法定されてから、それほど長い期間が経過しているわけではありません。

パワーハラスメントが発生する前に整えておくべき体制が整わぬまま、問題が発生するということは十分に考えられます。

この場合に、改正法施行前に通用した対応をしてしまうと、思わぬ落とし穴に落ちてしまいます。

 

<法改正前に当たり前に行われていたこと>

かつては、パワハラ被害の申し出があったなら事実を確認し、事実の有無と内容に応じて、加害者に懲戒を行い異動するなど適切な措置を取ることで、会社の責任を果たすことができました。

これによっても回復されない損害については、別途、被害者や遺族から加害者・会社・取締役に損害賠償の請求が行われることはありました。

 

<法改正後の事情変更>

事業主はまず、労働者にパワハラの内容とパワハラを行ってはならないことの周知・啓発をしなければならないわけです。

ところが実際には、何がパワハラかを知らず、自分の行為がパワハラに該当することを知らぬまま、パワハラの加害者であると告発される従業員がいます。

この場合に、加害者の自己責任とはできなくなりました。

確かにパワハラ防止法は、「労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる前条第一項の措置に協力するように努めなければならない」としていますが、これは努める義務であり、努力義務に過ぎません。

一方で、パワハラ防止法が事業主に課しているパワハラ防止対策は法的義務ですから、労働者の努力義務を理由に、法的義務を免れることはできません。

加害者が、パワハラについての十分な知識を持ち合わせぬまま、行為に及んでしまったなら、会社の責任が重いということになります。

 

<解決社労士の視点から>

パワハラ防止対策が進まないうちに、パワハラの事実が発生したなら、少なくともその部門でのパワハラ教育を直ちに行う必要があります。

それでもなお、加害者がパワハラ行為を止めないのであれば、会社はその加害者に指導することができます。

こうした手順を意識せずに、法改正前の対応をとってしまうと、思わぬ痛手を被りますので注意しましょう。

2022/04/10|1,815文字

 

フレックスタイム制と年次有給休暇https://youtu.be/FjX3Fs-tAjs

 

<よくある誤解>

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

この意味が誤解されていると思います。

従業員の一人ひとりが、「気が向いた時に出勤して、帰りたくなったら帰る」のであれば仕事が回らなくなります。

使い物にならない制度を、労働基準法が定めるはずがありません。

 

<フレックスタイム制の公式説明>

フレックスタイム制については、厚生労働省が次のように説明しています。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

この一方で、次のような説明もあります。

 

フレックスタイム制は始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度ですが、使用者が労働時間の管理をしなくてもよいわけではありません。 実労働時間を把握して、適切な労働時間管理や賃金清算を行う必要があります。

 

<労働者という言葉の意味>

まず「使用者」の意味ですが、これについては労働基準法第10条に規定があります。

 

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

 

「すべての者をいう」ですから、社長1人ではありません。

この条文の「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。

「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

一方で、「労働者」というのも、労働者一人ひとりを指しているのではなく、使用者に対置される意味での労働者です。

つまり、社内の労働者全体であり、「労働者たち」という意味です。

 

この理解のもとで、ここまでに出てきた話の中の「労働者」を「労働者たち」に言い換えると、次のようになります。

 

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者たちが日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

 

フレックスタイム制のもとでは、あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者たちが自由に決定することができます。

 

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者たちの決定に委ねる旨を定める必要があります。

 

「労働者」と「労働者たち」とで何が違うかというと、「労働者」ならば一人ひとりの自由な考えということになるのに対して、「労働者たち」ということになると、仕事の効率を考え、仕事に支障が出ないように、協議のうえ日々の始業・終業時刻、労働時間を自分たちで決めるということです。

 

<働き方改革の面で>

使用者は、労働者一人ひとりに対して、出勤日や始業・終業時刻を指定することができません。

しかし、当然のことですが、仕事の指示を出すことはできます。

労働者側は、使用者側から指示された仕事を効率よく成し遂げるために、労働者同士で協議して出勤日や始業・終業時刻を決めることになります。

こう考えると、フレックスタイム制は、仕事の効率が向上する制度であることがわかります。

 

<不都合が感じられる原因>

フレックスタイム制ではなく、会社が各労働者のシフトを決定しているとします。

この場合に、一人ひとりのシフトは一種の個人情報だから、お互い秘密にしておくことという不思議なルールがあれば、業務の連携が取りにくくなります。

また、月末に翌月のシフト表が個人宛に配付されるものの、月の途中で頻繁に変更があるという場合には、さらに業務の連携がむずかしくなります。

これはフレックスタイム制で、各労働者のシフトやシフト変更を非公開にした場合にも同じ不都合が発生します。

フレックスタイム制だから不都合が発生するのではなく、勤務予定の情報共有が無いから不都合が発生すると考えられます。

フレックスタイム制を採り入れたら、情報共有を怠らないようにする必要があるのです。

2022/04/09|1,731文字

 

20年前のセクハラhttps://youtu.be/RUvCR_zh3h4

 

<セクハラとは>

セクハラに関する厚生労働省の説明は、次のようにむずかしいものです。

 

セクシュアルハラスメントの略で、

「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型)」

または

「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(環境型)」

をいいます。

 

これによると、労働者が「不利益を受けること」あるいは「悪影響が生じること」という実害の発生が、セクハラ成立の条件のようにも見えます。

しかし、企業としてはセクハラを未然に防止したいところです。

ですから、「不利益を受ける恐れ」や「悪影響が生じる恐れ」があれば、セクハラの成立を認めるべきでしょう。

そもそも「相手がセクハラと感じたらセクハラ」ということではありません。

客観的に見て「相手がセクハラと感じるような言動があればセクハラ」ということです。

 

<教育不足>

このように、セクハラの説明がむずかしいと、行為者に対して「あなたのしたことはセクハラです」と言ったところで納得されません。

これでは、反省を求めることもできません。

行為者の言い分を聞いているうちに、「あるいは被害を訴えている人の思い違いではないか」とさえ感じかねません。

これは、行為者も対応する人も、何がセクハラに当たるのかについて理解が不足しているからです。

会社がセクハラの定義を定め、具体的な事例を示しながら繰り返し研修を実施しなければ、理解は進まないでしょう。

こうした状態だと、セクハラを指摘された人は、「会社でセクハラだと言われた。俺はただ〇〇しただけなのに、おかしいよなぁ」などと社外で言いふらすかもしれません。

それが酒の席であったとしても、話を聞いた人は、「この人の会社はセクハラ対策をしていないんだな」と感じてしまいます。

 

<懲戒処分>

会社としては、セクハラの訴えがあり事実が確認されたなら、行為者に対する懲戒を考えざるを得ません。

まさか、被害者を異動させたり退職させたりというわけにはいきません。

そんなことをしたら、ネット社会の今、会社の評判は地に落ちてしまいます。

異動や退職を検討するなら、加害者の方でなければいけません。

さて、モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(セクシュアルハラスメントの禁止)

第13条 性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

もちろん、懲戒処分をするには、就業規則の懲戒規定が具体的に対象としている行為であることが条件となります。

就業規則に規定の無いことや、規定があっても理解されないことで懲戒処分をされたのでは、たまったものではありません。

こんなことをされた社員は、会社に対して慰謝料を含め損害賠償の請求をするのも当然です。

それだけに、就業規則の懲戒規定は、誰にでもわかるように具体的なものでなければなりません。

また、懲戒規定は禁止規定を前提にしています。

禁止規定の表現が抽象的であれば、別途、入社時と定期の研修会などが必要になります。

あるいは、従業員の誰が読んでも、どのような行為がセクハラになるのかが、わかる内容にしておかなければなりません。

 

<会社の義務>

結局のところ、会社としては次のことを怠っていれば、責任を果たしたことにはなりません。

 

・セクハラの定義を明らかにする。

・具体例を示し全従業員にセクハラについての教育を定期的に繰り返す。

・就業規則にセクハラの禁止を規定する。

・就業規則にセクハラの懲戒を規定する。

 

<結局セクハラとは>

ある行為があって、その様子をビデオ撮影したとします。

それを見た家族、恋人、友人が、性的な面で不快感を示すなら、それはセクハラです。

たとえ行為者が、自分自身の主観で納得できないとしても、その行為を見た第三者が不快に思うのであれば、セクハラの疑いは晴れないことになります。

我々が仕事をするうえで、人に接する場合、セクハラに限らず、その人の家族や友人が見たら不快に思うことは無いのかということを、常に意識して行動しなければなりません。

2022/04/08|979文字

 

評価パワハラhttps://youtu.be/g3H5GuReDvU

 

<現物支給>

現物支給とは、物品やサービスなど金銭以外の経済的利益で、賃金が支給されることをいいます。

賃金の一部を、会社の商品や割引券に換算して支給するような場合を指します。

通勤手当の代わりに、定期券を支給するのも現物支給です。

食事や栄養ドリンクも、賃金の代わりに支給されるのであれば現物支給になります。

 

<賃金支払の5原則>

賃金の支払については、労働基準法第24条に規定があり、この中に賃金支払の5原則が含まれています。

通貨払の原則、直接払の原則、全額払の原則、毎月1回以上払の原則、一定期日払の原則の5つです。

このうち通貨払の原則は、日本のお金で支払うという原則です。

 

<現物支給が許される場合>

法令や厚生労働省令によって、現物支給が許されている場合があります。

しかし、たとえば本人が希望して、退職金を銀行振出し小切手で受け取るような例外的なものに限られています。

この他、労働組合のある会社では、労働組合と会社とが現物支給についての労働協約を交わせば、その労働協約の適用を受ける労働者に限って、労働協約の範囲内での現物支給が許されます。

労働者の過半数を代表する者と会社との間で交わされる労使協定は、名称は似ていますが労働協約ではありません。

労働組合が無ければ労働協約は交わせませんから、現物支給もできないということになります。

 

<プラスアルファなら>

ただ労働基準法は、「賃金の代わりに」物品やサービスなどで支払うことを禁止しているのであって、「賃金とは別に」物品やサービスなどの経済的利益を提供することは禁止していません。

たとえば、一定の時刻を超えて残業している社員に、「賃金とは別に」夜食と栄養ドリンクを支給するような場合には、労働基準法違反にはなりません。

また、就業規則などで定められた賞与とは別に、会社の商品やサービスを社員に与えて親しんでもらうなども、労働基準法違反になりません。

会社の業績が悪いので、賞与支給額は減額するけれども、その減額分を会社の商品やサービスで支給するというのは現物支給となります。

しかし、賞与支給額が減額され、これとは別に、商品の不良在庫を全従業員に10万円分ずつ支給するというのであれば、現物支給とは言い難いでしょう。

ただし、ケースによっては、所得税法上の「現物給与」とされ課税対象となりうるので、こちらの確認が必要です。

2022/04/07|1,674文字

 

法改正により違法残業の範囲が広がっていますhttps://youtu.be/il6m-PyrFT4

 

<残業代未払い>

企業には残業代を支払う義務があり、サービス残業(サビ残)をさせることは違法になります。

中小企業の経営者の中には、「残業代を支払っていては経営が成り立たない」という言い訳をする人もいます。

大企業の役職者の中には、部下の残業代を100%支払っていては、業績の前年割れが発生し責任問題になるという言い訳をする人もいます。

しかし、企業が残業代を適切に支払っていない場合には、訴訟になることもあり、また、サービス残業をさせられた人による労働基準監督署への申告で行政指導を受ける危険もあります。

 

<経済的な損失のリスク>

残業代の未払いがあった場合には、労働者から裁判を起こされる可能性があります。

タイミングとしては、退職した後、しばらく経ってからということが多いものです。

本人はおとなしい性格で、とても裁判など起こしそうになかったのに、友人や親戚から「おかしい。訴えるべきだ」と強く主張されて、これに従うということがあります。

 

<付加金という制度>

未払い残業代だけ支払っても済まないことがあります。

裁判所は、本人から請求があり悪質性が認められる場合には、未払い残業代と同額の付加金の支払いを命じることがあります。

この制度によって、本来の残業代の2倍の金額を支払うことになります。

 

<不法行為責任>

残業代の未払いは、基本的に民法上の債務不履行責任の問題です。

また、労働時間の管理義務を怠ったことにより、残業代が支払われてこなかった場合には、民法上の不法行為責任が追及されることもあります。

未払い残業代請求権の消滅時効期間は3年間ですし、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間も基本的には3年間です。

残業代の未払いが認定された場合には、3年分の未払い残業代の支払いが命じられる可能性があります。

 

<証拠資料は労働者に有利>

会社を出た時刻を書いた手帳の記録、帰宅時刻を書いたノート、タイムカードに印字された時刻などが、出勤時刻・退出時刻の証拠として認められています。

手帳やノートの記録が裁判の証拠になるのは、少し不思議な気もします。

しかし本来は、使用者が労働時間を適正に把握し記録する義務を負っているわけですから、これを怠っていれば、基本的には労働者の言いなりになるしかないのです。

出勤してタイムカードを打刻した後、しばらく休憩して、定時から業務を始めるのはよくあることでしょう。

また、仕事を終えて、仲間同士で雑談してからタイムカードを打刻するということもあります。

タイムカードに記録された時刻と、実際の勤務時間とが違うということは当たり前に発生しています。

しかし、裁判になれば…

「あなたの会社では労働時間の管理・記録をどうしていますか?」

「タイムカードです」

「では、タイムカードの記録で労働時間を認定します」ということになります。

こうならないためには、就業規則の規定を工夫するなどの対策が必要です。

 

<労働基準監督署の立入調査(臨検監督)>

労働基準監督署は、計画的に対象事業場を選定して調査を行います。

これに当たるのは、ある意味、運が悪いともいえます。

たとえ何か悪いことをしていなくても、経営者や担当者が調査に対応するわけですから、時間と労力の負担が発生します。

これとは別に、労働者からの申告をきっかけに行われる調査があります。

申告監督といいます。

労働基準法により、労働基準監督官は労働者の申告を受けることになっています。

現在勤務している従業員だけでなく、退職者からの申告があった場合にも、その真偽や具体的な内容を確認するために調査が行われます。

 

不思議と強気な経営者や役職者は多いものです。

そうでなければ務まらないのでしょうか。

こと残業代の未払いについては、あまりにもリスクが高すぎるように思います。

裁判は公開の法廷で行われますし、労働基準監督署が調査(監督)に入れば、残業代だけでなく、あらゆる角度から労働基準法違反の可能性を調査します。

コストを抑えて適法に経営することを考えるのが、結局のところは得だということを認識していただきたいです。

2022/04/06|906文字

 

パワハラの6類型https://youtu.be/_I0MvwhXaPU

 

<パワハラの構造>

パワハラは次の2つが一体となって同時に、あるいは時間的に前後して行われるものです。

 

【パワハラの2要素】

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

ほとんどの場合、行為者はパワハラをしてやろうと思っているわけではなく、会社の意向を受けて行った注意指導などが、無用な人権侵害を伴っているわけです。

 

<業務上不要な人権侵害行為>

業務上必要な行為と同時、あるいは前後して行われる「業務上不要な人権侵害行為」には、次のようなものがあります。

 

【無用な人権侵害】

・犯罪行為 = 暴行、傷害、脅迫、名誉毀損、侮辱、業務妨害など

・不法行為 = 暴言、不要なことや不可能なことの強制、隔離、仲間はずれ、無視、能力や経験に見合わない低レベルの仕事を命じる、仕事を与えない、私的なことに過度に立ち入るなど

 

刑事上は犯罪となる行為が、同時に民事上は不法行為にもなります。

つまり、刑罰の対象となるとともに、損害賠償の対象ともなります。

 

<真実でも>

正しい事実の指摘なら責められる理由は無いだろうというのは素人の考えです。

名誉毀損について、刑法は次のように規定しています。

 

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

つまり、生きている人のことについては、事実の有無にかかわらず名誉を毀損することは犯罪になるということです。

 

「仕事が遅い」「ミスが多い」「仕事をサボっている」という指摘を、人前で行ったなら、それは名誉棄損罪に該当するでしょう。

パワハラとして社内で懲戒の対象になるのはもちろん、刑事告訴の対象となりうるわけです。

損害賠償の対象となる民事責任の面では、 虚偽の事実ではなく、本当の事実である方が、名誉の侵害が深刻な場合もあります。

この辺りのことが、就業規則で対応できていない会社もあります。

就業規則での対応も、社員教育も速やかに行う必要があるでしょう。

2022/04/05|2,267文字

 

<休日>

労働基準法には、休日について次の規定があります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

つまり、日曜日から土曜日までの1週間で1日の休日を与えるか、4週間ごとに4日の休日を与えればよいということになります。

正社員、パート、アルバイトなどの区分にかかわらず、週6日勤務は違法ではありません。

 

<労働時間>

一方で、労働基準法には、労働時間について次の規定があります。

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

つまり、労働時間には上限があって、日曜日から土曜日までの1週間で40時間、1日について8時間が限界ということになります。

 

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

週6日勤務の場合でも、1日6時間の勤務であれば、週36時間の勤務になりますから適法です。

1日6時間40分であれば、6日間でちょうど40時間です。

また、週のうち5日は7時間勤務、1日は5時間勤務とすれば、週40時間の勤務になりますから、これも適法ということになります。

 

<特例事業場の例外>

事業場の規模が10人未満の、次の業種は、1週 44 時間、1日 8 時間となります。〔労働基準法第40条〕

この事業場を「特例事業場」といいます。

 

【特例事業場】

商業(卸小売業、理美容業など)

映画演劇業(映画の製作の事業を除く)

保健衛生業(診療所、歯科医院、社会福祉施設など)

接客娯楽業(旅館、飲食店など)

 

<職種による例外>

次の職種は、労働時間のほか、休憩、休日に関する労働基準法の規定は適用されません。

 

農業、畜産業、水産業従事者

管理監督者(イメージとしては取締役に近い仕事をしています)

機密の事務を取り扱う者(秘書など)

監視断続的労働、宿日直勤務を行う者で、労働基準監督署長の許可を受けた者

 

<三六(さぶろく)協定による例外>

労使の合意に基づく手続きによって、週40(44)時間を超える勤務を可能にしたり、例外的に週7日勤務する場合があるという取り決めをしたりすることができます。

労働基準法第36条第1項に規定があるので、三六協定と呼ばれます。

 

【労働基準法第36条第1項】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 

この法定の手続を取らずに残業させると、「違法残業」となります。

三六協定には最長でも1年間の有効期限があります。

期限切れの状態で残業が発生しても「違法残業」です。

もちろん、三六協定の上限を超える残業も違法です。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇の付与日数は、1週間の所定労働日数、1週間の所定労働時間、勤続年数によって決まります。

これを示す表には、週6日の欄が書かれていないこともありますが、週6日勤務の労働者には、週5日の欄が適用されます。

 

<就業規則にも注意>

パートやアルバイトに適用される就業規則に、「週5日までの勤務」という規定がある場合には、これによる制限を受けますから週6日勤務はできません。

会社として必要ならば、法定の手続を経て、就業規則を変更する必要があります。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、質の高い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

会社からの強制で週6日勤務にすることは、働き方改革とは逆の方向に進むことになります。

しかし、労働者側の都合で週6日勤務を希望し、会社がこれを認める形ならば働き方改革の推進になります。

子育て中で朝遅めの出勤、夕方早めの退勤の方が、都合が良いという人もいます。

家が近くて出勤が苦にならないとか、満員電車を避けて通勤したいとか、1日の勤務時間が短いパート・アルバイトなので勤務日数を増やしたいとか、様々なニーズに応えるのは働き方改革の流れに沿ったものとなります。

 

2022/04/04|879文字

 

×失業保険○雇用保険https://youtu.be/y9JHiGhCtmQ

 

離職により雇用保険の給付を受けていても、配偶者など健康保険加入者の扶養家族になれる場合があります。

 

<考え方の基本>

健康保険加入者(被保険者)の扶養家族(被扶養者)に認定されるには、主として、被保険者の収入によって生計を維持していることが必要です。

これは原則として、被扶養者になろうとする人(認定対象者)の生活費の半分以上を、被保険者の収入によってまかなっている状態をいいます。

この認定は、次の基準により保険者が行います。

保険者名は、健康保険証に印字されています。

 

<被扶養者の範囲>

1.被保険者と同居している必要がない者

・配偶者

・子、孫および兄弟姉妹

・父母、祖父母などの直系尊属

2.被保険者と同居していることが必要な者

・上記1.以外の3親等内の親族(伯叔父母、甥姪とその配偶者など)

・内縁関係の配偶者の父母および子(その配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)

※平成28(2016)年10月1日から、法改正により兄姉も弟妹と同じ扱いになりました。

 

<収入要件の原則>

年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ

同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満

別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

ここで「年間収入」とは、過去の収入のことではなく、被扶養者に当てはまる時点および認定された日以降の年間の収入額の見込みで考えます。

(給与所得等の収入がある場合、月額108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額3,611円以下であること。

また、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます。

 

<収入要件の例外>

収入が扶養者(被保険者)の収入の半分以上の場合であっても、扶養者(被保険者)の年間収入を上回らないときは、保険者がその世帯の生計の状況を総合的に判断して、扶養者(被保険者)がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認めるときは被扶養者となることがあります。

これを判断するのは保険者ですから、迷ったら保険者に確認しましょう。

2022/04/03|1,096文字

 

<生活保護>

「生活保護制度」は、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、併せてその自立を助長する制度です。

保護の種類は、次の8種類であり、要保護者の必要に応じて支給されます。

医療扶助と介護扶助を除き、金銭給付を原則としています。

 

生活扶助: 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの

教育扶助: 義務教育に伴って必要な教科書、その他の学用品等

住宅扶助: 住居の提供、家屋の補修費

医療扶助: 診察、薬剤又は治療材料、医学的処置、手術その他の治療等

介護扶助: 高齢者に対する居宅介護、福祉用具、住宅改修、施設介護等

出産扶助: 出産に必要な経費

生業扶助: 生業に必要な資金、器具、技能の修得費等

葬祭扶助: 葬祭に必要な経費

 

<生活保護を受ける条件>

生活保護を受けるためには、生活に困窮している人が、利用できる資産、働いて収入を得る能力、その他あらゆるものを活用することが前提となります。

ですから、資産調査などが行われます。

また、民法の定める扶養義務者の扶養が生活保護に優先されます。

それでもなお、最低限度の生活が維持できない場合に、保護を受けることができます。

具体的には、収入が厚生労働大臣の定める基準によって測定された最低生活費に満たないときに、その不足分について、保護を受けることとなります。

保護が必要な状態になった理由は、限定されていません。

なお、保護費の支給、その前提となる収入の認定、最低生活費の計算等は、世帯単位で行われます。

 

<保護の申請>

実際に生活保護を受けようとする場合には、保護の申請が必要となりますので、まずは最寄りの福祉事務所に相談します。

福祉事務所は、市・区部では市・区が、郡部では都道府県が設置しています。

郡部では、町村役場を経由して申請を行うこともできます。

 

<保護の要否の決定>

福祉事務所での相談を経て保護の申請をすると、保護が必要かどうかの判定のため、福祉事務所による資産調査や検診命令などが行われます。

その結果、保護が必要であると認められれば、福祉事務所長によって保護開始の決定がなされます。

なお、保護の要否の決定は、申請のあった日から原則として14日以内、遅くとも30日以内に行われます。

 

<受給者の義務>

生活保護を受給すると、生計状況を福祉事務所長に報告する義務などが生じ、福祉事務所長の指導や指示に従わなかったときは、保護が停止されたり、廃止されたりすることがあります。

また、資力がありながら生活保護を受給していた場合には、保護費の全部または一部を返還させられることがあります。

2022/04/02|880文字

 

失業保険・失業手当と言わない理由https://youtu.be/wJBwioLTDQI

 

<受給期間>

雇用保険の基本手当(昔の失業手当)を受けられる期間は、原則として退職などで離職した日の翌日から1年間です。

これを「受給期間」といいます。

基本手当は、受給期間中の失業している日について、所定給付日数を限度として支給されます。

例えば、雇用保険に入っていた勤続年数が、1年以上10年未満の自己都合退職者の所定給付日数は90日です。

原則として、1年間の受給期間中に90日分の基本手当が支給されることとなります。

このため、退職した後、ハローワークでの手続きが遅れた場合、所定給付日数分の基本手当がもらえなくなることがあります。

 

<期間の延長>

受給期間は、原則として1年間なのですが、出産や親族の介護、病気などにより退職し、すぐに転職できない状況で1年経った場合に、全く受給できないというのでは不合理です。

このため、本人の病気やケガ、妊娠、出産・育児、親族等の看護・介護等のために退職後引き続き30日以上職業に就くことができない状態の場合には、受給期間の満了日を最大3年間延長することができます。

 

<延長の方法>

延長の手続は、ハローワーク(公共職業安定所)で行います。

引き続き30日以上継続して職業に就くことができなくなった日の翌日以降、なるべく早く手続きをします。

遅れた場合でも、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請は可能です。

しかし、申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても基本手当の所定給付日数の全てを受給できない可能性があります。

手続きは「受給期間延長申請書」に「離職票」または「受給資格者証」を添付して、ハローワーク(公共職業安定所)に提出します。

ハローワークに行けない場合には、郵送や社会保険労務士に代行させて申請することもできます。

 

<定年退職者の特例>

60歳以上の定年等による退職者については、離職日の翌日から2か月以内に就職を希望しない期間(1年が限度)を申し出ることにより、その期間分が受給期間の1年に加算され、受給期間が延長されます。

この手続きは「受給期間延長申請書」と「離職票」を、ハローワークに提出することによって行います。

2022/04/01|1,539文字

 

<雇用保険制度の見直し>

(1)失業等給付に係る雇用保険料率については、年度前半(4月~9月)を2/1,000とし、年度後半(10月~令和5年3月)を6/1,000とする。※労使折半。労働保険料年度更新で、令和4年度の概算保険料は、年度前半と年度後半のそれぞれを計算して合算します。

労働保険年度更新の対象者https://youtu.be/_vs_sVdoYjI

(2)雇用保険二事業に係る雇用保険料率について、弾力条項の発動を停止し、3.5/1,000とする。※事業主のみ。

(3)雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、雇用機会が不足する地域における給付日数の延長、教育訓練支援給付金の暫定措置を令和6年度まで継続するとともに、コロナ禍に対応した給付日数の延長の特例について、緊急事態措置の終了日の1年後までを対象とする。

 

<女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定等の義務企業拡大>

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画策定・届出、情報公表等が常時雇用する労働者数301人以上の事業主に義務付けられているところ、令和4年4月1日より、101人以上300人以下の企業にも拡大される。

 

<職場におけるパワーハラスメント防止措置の中小企業事業主への義務化(労働施策総合推進法)>

中小企業でも、職場におけるパワーハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置を義務化する。

パワハラと指導との境界線https://youtu.be/E4xWgXqwo-E

 

<新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の適用期間の延長>

令和4年3月31日までとなっていた新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の適用期間を令和5年3月31日まで延長する。※妊娠中の女性労働者及び当該労働者を雇用する事業主が対象。

 

<不妊治療と仕事との両立に係る認定制度の創設>

不妊治療と仕事との両立しやすい環境整備に取り組む事業主を認定する「くるみんプラス」制度を新設する。

 

<育児休業制度等の個別の周知と意向確認、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務付け>

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度や申し出先等に関する事項の周知と休業の取得意向確認を個別に行う必要がある。

育児休業等の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主に研修の実施や相談窓口の設置等複数のうちから1つの措置を講じることを義務付ける。※全ての事業主。

育児休業の個別周知義務https://youtu.be/HQ3D0B_CxgQ

 

<有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和>

有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者であること」という要件を廃止する。

ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することを可能とする。

 

<労災保険の介護(補償)等給付額の改定>

介護を要する程度の区分に応じ、以下の額とする。

※()内は令和3年度の額

(1)常時介護を要する方

・最高限度額:月額171,650円(171,650円(改定なし))

・最低保障額:月額75,290円(73,090円)

(2)随時介護を要する方

・最高限度額:月額85,780円(85,780円(改定なし))

・最低保障額:月額37,600円(36,500円)  

 

<労災就学援護費の支給対象となる者の拡大>

労災就学援護費の支給対象者として、下記の者を追加することとする。

・公共職業能力開発施設に準ずる施設において実施する教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものとして厚生労働省労働基準局長が定めるものを受ける者

 

<労災保険の特別加入制度の対象拡大>

特別加入制度の対象として、下記の事業を追加することとする。

・あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師が行う事業  追加業種において、雇用によらない形で働く方

2022/03/31|919文字

 

×失業保険○雇用保険https://youtu.be/y9JHiGhCtmQ

 

<支援措置と条件>

雇用されていた人が退職などで離職した場合、雇用保険に加入していて一定の条件を満たせば、就職活動期間中に基本手当(昔の失業手当)を受けることができます。

しかし、雇用保険に加入していなかった場合、受給の条件を満たさない場合、雇用保険の受給が終わっても就職先が決まらない場合などでも、就職活動期間中の生活費を支援する制度があります。

具体的には、次のような支援措置がありますが、これらはすべて就労の意思・能力がある人が対象で、ハローワーク(公共職業安定所)に求職登録を行うことが必要となります。

 

<職業訓練受講給付金>

雇用保険を受給できない人に対し、ハローワークが無料の職業訓練を支援指示し、積極的に就職支援をする制度です。

このうち、一定の条件を満たす人には、職業訓練を受講している間、「職業訓練受講手当(月額10万円)」と「通所手当(通所経路に応じた所定の金額)」の2つの手当が職業訓練受講給付金として支給されます。

ただし、月ごとに支給申請を行って、支給要件を満たす必要があります。

また、この給付金に加えて、希望により「求職者支援資金融資」(労働金庫の融資制度)を利用することができます。

貸付の上限額は、同居または生計を一にする別居の配偶者等がいる人は月10万円、それ以外の人は月5万円です。融資に当たっては、労働金庫の審査があります。

 

<住居確保給付金>

住居を失っている人、またはその恐れのある人は、一定の条件を満たせば、原則3か月間、賃貸住宅の家賃のための「住居確保給付金」の支給を受けることができます。

一定の条件を満たすことにより、最長9か月までの延長が可能です。

 

<総合支援資金の貸付>

失業等により日常生活全般に困難を抱えている人は、一定の条件を満たせば、生活福祉資金貸付制度の「総合支援資金」として、生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費の貸付を受けることができます。

 

<臨時特例つなぎ資金の貸付>

住居の無い人が、離職者を支援するための公的な給付・貸付制度を申請していて、その給付・貸付までの生活に困窮している場合に、一定の条件を満たせば、「臨時特例つなぎ資金貸付」として、上限10万円の貸付を受けることができます。

2022/03/30|1,631文字

 

<医療ビッグデータ>

新薬や最先端医療など研究開発のために「医療ビッグデータ」が注目されています。

医療情報については、画像や数値など検査結果の活用が十分に進んでいない現状があります。

また医療情報は、医療機関ごとに保管されているだけで、医療情報を統一的に活用する仕組みがありませんでした。

こうした現状を打開すべく、「次世代医療基盤法」が平成30(2018)年5月に施行されました。

 

私たちが病気やケガなどで医療機関を受診したとき、診療の流れの中で、患者一人ひとりについて、診察・検査・治療などの幅広い医療情報が記録されます。

日本全国の医療機関全体では、膨大な量の医療情報が蓄積されていることになります。

こうした情報を統合し、集約したものが「医療ビッグデータ」です。

 

IT技術が進化し、ビッグデータの解析性能が向上したことを背景に、新しい治療法や新薬の開発など医療分野の様々な研究開発に医療ビッグデータを活用し、医療の向上に役立てようとする取組が世界的に進められています。

 

日本では、患者の医療情報について、画像や数値など検査結果などの利活用が十分に進んでいません。

また、受診した医療機関や加入している健康保険組合ごとに分散して保有されており、それらを集約した医療ビッグデータとして利活用する仕組みがありませんでした。

 

<次世代医療基盤法>

医療ビッグデータの土台となる患者一人ひとりの医療情報を、個々の医療機関から集め、医療分野の研究開発のために活用できるようにすることを目的として、次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)が平成29(2017)年5月12日に公布され、翌年5月11日に施行されました。

 

この法律では、「認定事業者」が、医療機関から患者の医療情報を収集します。

「認定事業者」とは、国が認定する信頼できる事業者です。

医療分野の研究開発や情報セキュリティ、医療情報の匿名加工などに精通しています。

 

「認定事業者」は、複数の施設から医療情報を収集し、暗号化して保管します。

そして、医療分野の研究開発の要望に応じて、必要な情報のみを研究機関や企業などに提供します。

患者の氏名や住所など特定の個人を識別することができる情報は提供されません。

 

このように私たち一人ひとりの情報が収集され活用されることで、効果のより高い治療法が分かったり、新薬がつくられたり、病気の早期発見や治療をサポートする機器が開発されたりするなど様々な成果につながり、私たちが将来より良い医療を受けられるようになることが期待されています

 

<医療ビッグデータの活用>

医療ビッグデータの活用は、私たちが将来受ける医療の向上につながると期待されています。

例えば、次のような医療が実現できるようになると期待されています。

1.患者一人ひとりに最適な医療を提供することが可能に

2.異なる診療科の情報を統合することで治療成績の向上が可能に

3.最先端の画像分析により病気の早期診断・早期治療を支援することが可能に

4.医薬品などの安全対策の向上が可能に

 

<個人の医療情報の提供>

認定事業者に対する医療情報の提供に協力できる医療機関では、患者が情報提供を望まない場合を除き、診察・検査・治療などの医療情報は認定事業者に提供されます。

病院やクリニックなどの医療機関では、患者が最初に受診した時に、医師や看護師などから医療情報の提供について書面による通知が行われます。

患者が16歳未満の場合や本人が判断できない状態の場合は、本人に加えて、保護者等にも通知が行われます。

この通知を受けていない人の医療情報は提供されません。

 

医療情報の提供を望まない場合は、いつでも提供の停止を求めることができます。

医療機関から認定事業者に情報が提供されるのは、書面による通知が行われてから必要な期間が経過した後です。

情報が認定事業者に提供された後でも、患者は、情報の削除を求めることができます。

2022/03/29|1,336文字

 

年次有給休暇はさかのぼって取得できるのかhttps://youtu.be/eCN6tB0p_7g

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則には、従業員が年次有給休暇を取得する場合の社内手続についての規定がありません。

しかし、一般には「14日前までに上長に年次有給休暇取得届を提出」などの規定が置かれます。

ある従業員が年次有給休暇を取得することによって、他の従業員のシフト調整が必要になることもありますし、同じ部署で複数の従業員が同じ日に年次有給休暇を指定すると、全員の希望を叶えられない場合もあるため、ある程度の期間は前もって取得日を指定してもらう必要があるからです。

したがって、こうした必要の範囲を超えて、たとえば「3か月前までに申出」といった規定を置くことは、従業員の年次有給休暇の取得を妨げることになり、労働基準法の趣旨に反してしまいます。

 

<法的な権利>

従業員には年次有給休暇の時季指定権がある一方で、会社側には時季変更権があります。

ですから、従業員が年次有給休暇の取得を申し出るにあたって、時季変更権の行使ができないような、たとえば当日の申出などは原則としてできません。

もっとも、この場合でも、一定の場合に会社側が時季変更権の行使を放棄するルールであれば、当日の申出も、日付を遡っての申出も可能ではあります。

結局、就業規則に「14日前までに上長に年次有給休暇取得届を提出」などの規定が置かれていても、労働者の権利としては、前日までに申し出れば良いということにはなります。

ただし、こうした場合には、会社側が時季変更権を行使するケースも多いと思われます。

 

<誠実な権利の行使>

年次有給休暇は、いうまでもなく労働基準法に規定された労働者の権利です。

だからといって、会社側の都合を無視して年次有給休暇を取得できるということではありません。

労働契約法第3条には次の規定があります。

 

【労働契約法第3条:労働契約の原則】

第4項 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

第5項 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

労働者が年次有給休暇を取得するにあたっても、会社側が年次有給休暇を取得させるにあたっても、信義に従い誠実に行うことが必要です。

また、労働者が年次有給休暇の権利を濫用するのもいけません。

権利を濫用し、信義に従い誠実に義務を履行しないのは、典型的な問題社員の態度です。

こうした態度を見せる従業員には、上記の労働契約法の趣旨を説明することをお勧めします。

 

<解決社労士の視点から>

やむを得ない事情があって、直前になってから年次有給休暇の取得を申し出ることもあるでしょう。

こうした場合には、できれば事前に「急に休むことでご迷惑をおかけします」といった挨拶を、上司や同僚にしておくことが社会人としてのマナーでしょう。

また、事前にお詫びしたからそれで良いということではなく、事後に「急なお休みをいただきご迷惑をおかけしました」といった挨拶も必要です。

職場の協調性を保つためには、これらのことが当然に求められるわけですが、中にはピンと来ない従業員もいるかもしれません。

そうした人には、上司から丁寧な説明をしておくことをお勧めします。

2022/03/28|1,739文字

 

未払残業代の経済的リスクhttps://youtu.be/lf4nqYYECFs

 

<定額(固定)残業代>

定額(固定)残業代は、1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

この点では、働き方改革の趣旨に沿った制度です。

会社にとっても、人件費が安定するので人件費の予算や計画が立てやすくなります。

 

<適法な導入と運用>

かつては違法な運用が横行していたために、定額(固定)残業代そのものが悪であるかのように言われていました。

しかし、適法に運用する会社が増えてきており、必ずしも悪いものとは見られなくなりました。

適法な導入と運用の概要は次のとおりです。

まず、残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめて支給することはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給する方式をお勧めします。

たしかに、深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。

しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

多くの労働基準監督署でも、このように指導しています。

 

<具体的な計算方法>

定額(固定)残業代の設定に必要な計算はやや複雑ですから、Excelなど表計算ソフトの活用をお勧めします。

ここでは、1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=25万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

25万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=25万円

基本給=25万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、206,089円となります。

定額残業手当は、25万円-206,089円=43,911円です。

206,089円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(206,089円÷176時間)×30時間×1.25=43,911円で計算の正しいことが確認できます。

※ただし実際の給与計算では、円未満の端数処理のルールがありますから、上記のとおりにいかない部分もあります。

 

<最低賃金に注意>

このとき注意したいのは、最低賃金です。

計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

上記の例では、206,089円÷176時間=1,170円ですから、1時間あたりの賃金が1,170円となり、現在どの都道府県でも最低賃金を上回ります。

しかし、基本給+定額残業手当=20万円の場合を想定すると、1時間あたりの賃金が936円となり、東京都や神奈川県などでは最低賃金を下回ってしまいます。

これでは最低賃金法違反となってしまいます。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。

この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのかを対象者に明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。

何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになってしまいます。

これでは、想定外に人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

 

<解決社労士の視点から>

定額残業代については、それが何時間分の残業代に当たるのか、どのように計算したのかを一人ひとりに説明し、定額残業代を上回る残業代は毎月精算することを説明し守っていれば、実質的な不都合が無いものと思われます。

しかし、賃金計算については、就業規則や給与規程への明示が必要ですし、さらに社内での周知が必要です。

こうした形式面での適法性を確保することも、忘れないようにしましょう。

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