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2022/01/29|1,928文字

 

届出と違う経路で通勤災害https://youtu.be/ZySNmaO5sUg

 

<自転車通勤>

就業規則で自転車通勤を認めている会社は多いですし、自転車通勤に対して通勤手当を支給している会社もあります。

就業規則に規定は無いものの、自転車通勤を黙認している会社もあります。

特に都市部では、満員電車を避け運動不足の解消にもなるので、自転車通勤は増加傾向にあるようです。

最近では、新型コロナウイルスの新規感染者数が増えると、一時的に自転車通勤にする人もいます。

 

<従業員がケガをした場合>

従業員が自転車通勤中にケガをした場合には、ほとんどのケースで通勤災害として労災保険が適用されます。

この場合には、会社の人事担当者や顧問の社会保険労務士が手続をすることになります。

単独事故ではなく相手がいる場合、第三者行為災害となります。

すると、通常の労災保険の手続で作成する書類の他に、何種類か別の書類を作成する必要があります。

ケガをした本人から話を聞きながら書く部分が多く、事故の発生状況を示す図も添付します。

相手が自動車やバイクであれば、警察に報告して「交通事故証明書」の交付も受けておかなければなりません。

慣れていないと、全部で5~8時間かかるでしょう。

 

<従業員が加害者になった場合>

さらに大変なのは、従業員が加害者になってしまった場合です。

会社は事故の発生には関与していません。

しかし、民法715条の使用者責任が認められた場合には、事故を起こした従業員が負う損害賠償債務を会社が負担しなければなりません。

民法715条は、使用者が従業員を使用して利益を上げている以上、その使用によって生じたリスクも負担しなければならないという報償責任や、従業員を雇えば一定のリスクが発生することは覚悟しておいて対策をとっておかなければならないという危険責任等の趣旨に基づいています。

自転車通勤を認めている会社も黙認している会社も、こうした法的責任を問われることがあるので、従業員に対する安全教育は不可欠です。

道路交通法では、自転車利用のルールも厳しくなっていますので、ほんの一部を以下にご紹介します。

 

<逆走の禁止>

自転車は、道路(車道)の中央から左側部分の左端に寄って通行しなければなりません。〔道路交通法第17条〕

当たり前のように歩道を走行する自転車も多いのですが、自転車は車両の一種ですから、歩道と車道の区別がある道路では、車道を通行するのが原則です。〔道路交通法第17条〕

しかし、車道の右側を走行している自転車が、多数の自動車からクラクションを鳴らされても、自分に対するものだとは気づかないことも多いようです。

 

<歩行者の優先>

自転車が例外的に歩道を走行できる場合については、道路交通法で次のように規定されています。

 

【普通自転車の歩道通行】

第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。

一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。

二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。

三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき

2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。

(罰則 第二項については第百二十一条第一項第五号)

 

ここの罰則は、自転車が徐行しない場合や、歩行者の通行を妨げないようにする一時停止を怠った場合に適用されます。

2万円以下の罰金または科料です。

 

ベルを鳴らして歩行者にどいてもらうというのも法律違反です。

自転車は一種の車両ですから、歩行者を優先しなければなりません。

自転車に乗った高齢者から歩道で後ろからベルを鳴らされて、やれやれと思うこともあります。

しかも歩行者である私を追い抜けません。

少し気の毒な気もします。

2022/01/28|1,492文字

 

就業規則の変更に対する従業員の不満https://youtu.be/zDZ_wtCwGzY

 

<就業規則変更の手順>

就業規則変更の正しい手順は、

1.法改正や社内ルールなどの変更により就業規則変更の必要が発生

2.担当部署や社労士(社会保険労務士)が変更案を作成

3.社内での決裁

4.従業員への周知

5.労働者の意見書作成

6.労働基準監督署への変更届提出

という順番になります。

5.の意見書には、労働組合や労働者の過半数を代表する者の、就業規則変更についての意見を記入します。

変更後の就業規則が社内に周知され、多くの労働者の反応を把握してから意見書を書くようにしなければ、労働者を代表する立場で書くのは難しいでしょう。

ですから、上記の順番が正しいわけです。

 

<意見書の内容>

所轄の労働基準監督署長に就業規則の変更届を提出するには、上記5.の意見書を添付しなければなりません。

これが無いと、受け付けてもらえません。

ところが、「この変更は納得できません。私たちにとって不利になる変更です」「この変更は、労働基準法違反です」などの意見が書かれていても、問題なく受け付けてもらえます。

提出したときに押されるゴム印には、「受付」の文字があります。

「承認」「確認」「受理」ではなくて「受付」です。

これは、内容の審査までは行わず、形式を満たしているので受け付けましたということです。

つまり、意見書に労働者の切実な訴えが書かれていたとしても、これは全く考慮されないのです。

 

<従業員に不利な変更>

労働契約法には、次のような規定があります。

 

【就業規則による労働契約の内容の変更】

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 

つまり、就業規則の変更内容を従業員に知らせていて、不利益の程度や会社側の必要性など様々な事情を踏まえて合理的であれば、変更後の就業規則が有効だということです。

実際に不利益を受けた従業員や退職者が会社に対して民事訴訟を提起して、裁判所が「不合理」と判断したのでなければ無効にはなりません。

 

<法令違反の変更>

労働契約法第13条の定めにより、法令で定める基準に達しない労働条件を定める就業規則は、その部分については無効となります。

不思議ですが、法令違反の就業規則でも、労働基準監督署に持って行けば受け付けてもらえます。

労働基準監督署にしてみれば、たとえ法令違反の規定が含まれていたとしても、そこは無効になって法令の内容に修正されるわけですから、安心して受け付けることができるわけです。

こうして、実際に所轄労働基準監督署の立入調査(臨検監督)や訴訟などがなければ、就業規則の法令違反は指摘されないのが実情です。

 

<結論として>

このように、会社に都合よく就業規則を変更することは、かなり自由にできてしまうことは事実です。

明らかに不合理な不利益変更であるとか、法令違反であるとか、確信が持てる場合であれば、従業員や退職者から訴訟が提起されることもあるでしょう。

しかし、確信が持てない場合には、信頼できる社会保険労務士に相談してみることも考えましょう。

ちなみに、「就業規則を見せてもらえない」ということであれば、その就業規則は無効です。

この場合には、すべて法令通りということになりますし、法令に規定の無いことは何もルールが無いということになります。

2022/01/27|1,422文字

 

ブラック企業の疑いhttps://youtu.be/DJhI0-SwP9g

 

<ブラックとは何か>

ブラックとは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義できるでしょう。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。

倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック求人の実態>

労働条件が実態と異なる求人広告を「ブラック求人」といいます。

働き手を募る広告は、募集企業と求職者との社会関係の中で、その内容が正しく実態を示していることが道義的に求められています。

ところが、ハローワークの求人票を含め、このブラック求人についての苦情や相談は一向に減少しません。

それどころか、ブラック求人を出している企業の間では、ブラック求人を採用のための必要なテクニックであるという、誤った共通認識が生じています。

 

<ブラック求人への制裁>

実は、求人広告にウソを書いて出しても、これといって制裁が無いのです。

厚生労働省としても、監視や取締りの強化、ペナルティを設けるなどの有効な対策をとることができていません。

ハローワークの求人票ですら、民間の求人広告会社と同じく、利用者からクレームがあれば、掲載の依頼をした企業に釘を刺すだけです。

ですから、「ハローワークの出している求人だから」「○○新聞に載っている求人だから」ということで、そのまま信頼してはダメです。

たとえブラック求人であったとしても、労働契約の際に、正しい労働条件を示していればそれで良しというのが、当局の公式見解のようです。

ただ最近になって、悪質なものはハローワークが求人票を出さない仕組になってきています。

 

<ブラック求人を信じて採用された場合>

採用にあたって示された労働条件が実際と違っていたらいつでも退職できる、そして、働くために引っ越した労働者は14日以内に帰郷する場合、その旅費を使用者に請求できるという規定があります。〔労働基準法第15条〕

ですから、採用にあたって示された労働条件と、実際に働き始めてから判明した労働条件が違えば、退職を申し出る権利が労働者には保障されています。

ところが、求人広告と採用にあたって示された条件が違うことや、求人広告と実際に働き始めてから判明した労働条件が違うことは、労働基準法も想定していません。

結局こうした場合には、労働契約が有効ということになってしまいます。

 

<身を守るには>

仕事を探している皆さんは、なかなか仕事が見つからないと、条件を落としてでも就職しようとします。

ですから、良い条件の求人広告を見れば「ここに入社したい」と思います。

それでも、求人広告はあくまでも「広告」なのだということを忘れずに、実際の労働条件は採用面接のときに確認しましょう。

そして、「広告」と違っていたら、採用を辞退しましょう。

「なんか求人広告と違う気がするけど、まぁいいか」と妥協するのは、自己責任ということになります。

 

<もし採用されてしまったら>

ブラック求人を出すような企業は、他にもいろいろとブラックな面を持ち合わせていることが多いものです。

そういう企業で無理に働くようなことはせず、なるべく早く労働法に明るい弁護士や特定社会保険労務士にご相談いただくのが得策だと思います。

社内だけに目を向けて、「みんな頑張っているのに私が辞めてしまったら」とは考えずに、視野を広げて考えていただきたいです。

2022/01/26|1,550文字

 

労基署の再監督https://youtu.be/aI9FLfYKlVQ

 

<是正勧告書と指導票>

労働基準監督署が立入調査(臨検監督)に入り問題点が見つかると、その事業場に「是正勧告書」や「指導票」という書類を交付します。

「是正勧告書」は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの罰則に触れていると思われる事実が見つかったときに、その是正と報告を求める文書です。

「指導票」は、罰則には触れないと思われるものの、厚生労働省のガイドラインに沿っていないなど問題となる事実が見つかると、その改善と報告を求める文書です。

立入調査終了後に、その場で作成・交付されることが多いのですが、複雑な事案に関するものは、後日、交付されることもあります。

 

<是正勧告書の性質>

是正勧告は行政指導ですから、不服申立のようなことはできません。

本来であれば、是正勧告書を交付せず、いきなり逮捕・書類送検も可能なのです。

しかし、労働法の罰則に触れることが犯罪ではあっても、刑法犯とは異なり認知度が低いためにワンクッション置いて、是正の機会を与えているものと考えられます。

 

<是正勧告書への対応>

是正勧告書で指摘を受けた事実は、違法なものですから、基本的には直ちに是正しなければなりません。

是正報告書を交付されたなら、違法な部分を是正し、是正の内容を端的にまとめた「是正報告書」を作成します。

提出先は、立入調査を担当した労働基準監督官です。

是正勧告書には、提出期限が書かれています。

どうしても間に合いそうにない場合は、労働基準監督官に相談しましょう。

期限を過ぎてしまうと、督促状が届いてあたふたします。

督促状に示された提出期限を過ぎてしまうと、労働基準監督官の心証を害してしまいます。

また、是正勧告書に誤りが無いとは言い切れません。

立入検査に社会保険労務士などの専門家が立ち会わなかった場合には、会社側の説明が不適格であったために、労働基準監督官が勘違いすることもあります。

これについても、労働基準監督官に相談することをお勧めします。

 

<指導票の性質>

指導はまさに行政指導なのですが、是正勧告書で指摘された事項と異なり、指導票で指摘された事項は違法というわけではなく、直ちに是正が求められるという内容ではありません。

無理の無い範囲で是正し、時間を要する項目については、改善計画を提出することになります。

 

<指導票への対応>

指導票で指摘を受けた事実は、違法ではないものの改善を求められたわけですから、放置せず段階的に改善していかなければなりません。

指導票を交付されたなら、指摘された事項を改善し、あるいは改善計画を立て、その内容を端的にまとめた「改善報告書」を作成します。

指導票に示された事項には、直ちに改善するのが難しいものが含まれていることが多いものです。

具体的な計画を立て、確実にこなしていく道筋を示すことができれば、これを「改善報告書」にまとめ、立入調査を担当した労働基準監督官に提出することで、一応の決着を見ることになります。

この点、違法性を指摘された是正勧告書については、すべての事項について是正が完了しなければ、解放してもらえないのとは異なります。

 

<解決社労士の視点から>

店舗などが労働基準監督署の立入検査を受け、「是正勧告書」を受け取ったのに、これを恥として本部に報告せず、また「勧告に過ぎないから」という判断で放置するということもあります。

さらに督促状が届いても放置し、再度「是正勧告書」が交付されて、これもまた放置ということになると、さすがに逮捕・書類送検が行われても不思議ではありません。

こうしたことを想定して、各事業場の責任者や代行者には、労働基準監督署や年金事務所などの調査が予告・実施された場合には、会社への速やかな報告が必須である旨、きちんと説明しておく必要があるでしょう。

2022/01/25|1,735文字

 

労働基準法違反の労働契約https://youtu.be/5Q00e6yuGWo

 

<契約書には似た規定があるものの>

契約書の最後の方に「本契約書に定めのない事項、または本契約の履行にあたり疑義を生じた事項は、甲乙協議の上円満に解決をはかるものとする」という規定を見ることが多いですね。

しかし、契約書というのは、当事者間に紛争が発生した時にこそ、その解決の拠り所とするために作成されるものです。

なんでも話し合って円満に事が進むのならば、その当事者間に契約書は要りません。

それなのに、何か疑問に思うことがあれば話し合って解決しましょうという規定があるというのは矛盾しています。

 

<就業規則にも似たような規定が>

就業規則の最初の方に「この規則に定めのない事項については、労働基準法その他の法令の定めるところによる」という規定を見ることも多いです。

なるほど、こうすれば法改正があっても、就業規則を変更する必要が無くて便利なようにも見えます。

しかし、こうしておけば不都合が無いといえるのでしょうか。

 

<たとえば労働基準法で>

労働基準法第7条の公民権行使の保障について、たとえば投票に行っている時間の賃金が支払われるか否かは、通達により労使の取り決めによるとされています。

ということは、賃金の支払について決めておかないとトラブルになるでしょう。

これは労働基準法第68条の生理休暇も同様です。

休んだ日の賃金が支払われるのか支払われないのかは大問題です。

労働基準法第41条は、「監督もしくは管理の地位にある者」については、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しないとしています。

さて、適用されない人の休憩や休日はどうなるのでしょうか。

ご本人が自由に決めるのでしょうか。

取締役に近い従業員についての話ですから事は重大です。

 

<他の労働法でも>

高年齢者雇用安定法が改正されたとき、会社は定年を引き上げるか、定年をなくすか、あるいは継続雇用制度を導入するかの選択を迫られました。

これと同様に、育児・介護休業法には、会社の義務として、どちらか/どれか選んで措置を実施するという規定がいくつかあります。

こうした場合には「法令の定めるところによる」と言ってみても、何も決まっていないことになります。

会社がどうすべきかについて、選択肢を与えられる条文というのは、最近になってから出現しています。

昔は「法令の定めるところによる」としておけば問題なかったのですが、最近の法令では「会社が従業員と話し合って選んでください」という内容が出てきましたので、対応しきれなくなっているというわけです。

 

<そもそも法令に規定が無い場合>

懲戒処分ができる場合とは、どのような場合なのか、法令には規定がありません。

反対に、懲戒処分の限度や無効となる場合については、労働基準法や労働契約法に規定があります。

ということは、就業規則に具体的な規定を置かなければ、懲戒処分が適正にできないことになります。

特に男女雇用機会均等法は、セクハラの禁止とセクハラ行為者に対する懲戒処分などの規定を企業に義務づけていますが、その具体的な内容は各企業の実情に応じて定めることになっています。

「法令の定めるところによる」という規定だけではセクハラが野放しになってしまう恐れさえあります。

各企業ごとにきちんと規定を置かなければなりません。

またたとえば、「正社員」ということばに、法令上の定義はありません。

社内に正社員と正社員以外の従業員がいて、異なる処遇をしているのなら、それぞれの定義づけが必要です。

もし「無期労働契約の従業員が正社員である」としていたら、労働契約法第18条による有期労働契約の無期化により、正社員が増えていくことになります。

 

<解決社労士の視点から>

何もせず放置したことによって「何もしていないのに」退職者から訴えられたり、労働基準監督署から是正を求められたりというのは、珍しいことではありません。

それぞれの会社にとって、必要不可欠な内容が、その会社の就業規則にきちんと規定されているか、法改正によって変えるべきところは変わっているか、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士のチェックが必要でしょう。

そして、会社の状況の変化や法改正のことも考えると、定期的なチェックが必要ということになります。

2022/01/24|1,016文字

 

年次有給休暇が会社に勝手に使われたhttps://youtu.be/JgWobP3JbN4

 

<時季指定権と時季変更権>

同じ会社の同じ部署で、一度に多数の労働者が相談のうえ、同じ日を指定して年次有給休暇を取得しようとするのは権利の濫用です。

このように事業の正常な運営を妨げる場合には、会社は時季変更権を行使することができます。

 

【労働基準法第39条第5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

<権利の濫用>

出勤日当日の朝に、従業員が上司にメールで「休みます」と連絡し、後から「あれは有給休暇です」と言っても、多くの場合、会社は有給休暇の取得を拒否できます。

なぜなら、会社の時季変更権を侵害してしまうからです。

そもそも年次有給休暇などの権利を保障する労働基準法は、憲法に基づいて制定されました。

 

【日本国憲法第27条第2項:勤労条件の基準】

賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

そして憲法自身が、権利を濫用してはならないと定めています。

 

【日本国憲法第12条:権利濫用の禁止】

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

ここで、「公共の福祉」というのは、時季指定権と時季変更権のような対立する権利間の調整を意味します。

自分の権利の主張が、相手の権利を侵害する場合には、権利の濫用とされることがあるのです。

 

<権利の濫用とはいえない場合>

出勤日当日の朝に、従業員が上司に電話で「母が自宅で意識を失い救急車で病院に運ばれました。私も救急車に同乗して今病院にいます。有給休暇の取得ということにできませんか」と連絡した場合は、権利の濫用とはいえないでしょう。

従業員は有給休暇の取得にあたって、理由を述べる必要は無いのですが、みずから特別な理由を明らかにして申し出た場合には、会社も取得を認めるルールが必要でしょう。

たとえば、就業規則に「私傷病により勤務できない場合の欠勤、その他やむを得ない事情による欠勤は、申請によってこれを年次有給休暇に振り替えることを認める場合があります。振替は所定の用紙に記入するものとします」というような規定を置くと良いでしょう。

2022/01/23|1,488文字

 

男女平等https://youtu.be/gOe2ZdVhYRk

 

<女性活躍推進法の改正>

令和4(2022)年4月1日より、一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主に拡大されます。

常時雇用する労働者数101人以上300人以下の事業主は、施行日までに、行動計画の策定・届出及び情報公表のための準備を済ませておく必要があります。

自社だけでなく、子会社、関連会社、お取引先で新たに対応が必要となる場合には注意が必要です。

 

<一般事業主行動計画の策定・届出>

●ステップ1:自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析

・自社の女性の活躍に関する状況を、以下の基礎項目(必ず把握すべき項目)を用いて把握します。

・把握した状況から自社の課題を分析します。

 

【基礎項目】

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別)

・男女の平均継続勤務年数の差異(雇用契約形態別)

・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

・管理職に占める女性労働者の割合

 

●ステップ2:一般事業主行動計画の策定、社内周知、外部公表

・ステップ1を踏まえて、(a)計画期間、(b)1つ以上の数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定する。

・一般事業主行動計画を労働者に周知し外部へ公表する。

 

●ステップ3:一般事業主行動計画を策定した旨の届出

・一般事業主行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届け出る。

 

●ステップ4:取組の実施、効果の測定

・定期的に、数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況を点検・評価する。

 

<女性の活躍に関する情報公表>

自社の女性の活躍に関する状況について、以下の項目から1項目以上を選択し、求職者等が簡単に閲覧できるように情報を公表します。

 

【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別)

・男女別の採用における競争倍率(雇用契約形態別)

・労働者に占める女性労働者の割合(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・係長級にある者に占める女性労働者の割合

・管理職に占める女性労働者の割合

・役員に占める女性の割合

・男女別の職種又は雇用形態の転換実績(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・男女別の再雇用又は中途採用の実績

 

【職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備】

・男女の平均継続勤務年数の差異

・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

・男女別の育児休業取得率(雇用契約形態別)

・労働者の一月当たりの平均残業時間

・雇用管理雇用契約形態別分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間(雇用契約形態別、派遣労働者を含む)

・有給休暇取得率

・雇用管理雇用契約形態別分ごとの有給休暇取得率(雇用契約形態別)

 

<解決社労士の視点から>

常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、すでに次世代育成法の一般事業主行動計画の作成・提出義務を負っています。

これと、新たに義務となる女性活躍推進法の一般事業主行動計画とを混同し、すでに作成・届出済みであると勘違いすることもありえますので注意が必要です。

また、常時雇用する労働者数が301人以上の企業での、一般事業主行動計画の進捗率は4割程度という報道もあります。

上記ステップ1の【基礎項目】の年次推移などを踏まえ、なんとか達成できるレベルの計画を策定していただけたらと思います。

2022/01/22|692文字

 

就業規則の変更に対する従業員の不満https://youtu.be/zDZ_wtCwGzY

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

3つのうちのどれにあたるかによって、就業規則変更の可能性と必要性は異なります。

 

<職場のルール>

明らかに不合理とならない限り、会社の実情に合わせて自由に変えられるのが原則です。

たとえば、「従業員は、従業員同志およびお客様・お取引先に対して明るく元気に挨拶すること」という規定を新たに就業規則に定めるような場合です。

そして変更の必要性については、会社の判断に委ねられています。

ここは、会社の創業の精神や経営理念を反映した内容が十分に盛り込まれるところです。

 

<労働契約の共通部分>

労働者に不利な変更は「不利益変更」となり厳格な要件のもとで許されます。

しかし、不利とならない変更や有利となる変更は原則として自由です。

たとえば、深夜労働の賃金の割増率を25%から30%に引き上げるような変更です。

これも、変更の必要性は会社の判断に委ねられます。

人手不足や働き方改革で、従業員の処遇改善が必要になっており、各社とも対応が迫られている部分です。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

労働基準法などの労働法に改正があれば、少なくとも会社に影響のある範囲内で、就業規則を変更しなければなりません。

そして就業規則の変更は、労働基準監督署への届出が義務付けられていますから、法改正の情報が出たら早めの対応が必要となります。

ここの部分を変更していなくても、法律の規定が優先されますので、就業規則に古い部分が残っていれば、ただみっともないだけの物になってしまいます。

2022/01/21|577文字

 

会社に都合よく就業規則を変更するhttps://youtu.be/ZQooKnziL3U

 

<就業規則の内容>

就業規則には、次の3つの内容が織り込まれています。

・職場のルール

・労働契約の共通部分

・法令に定められた労働者の権利・義務

どの規定が3つのうちのどれにあてはまるのか、一見しただけではわかりません。

また、一つの条文に複数の内容が含まれていることもあります。

 

<職場のルール>

「就業規則」という名前の通り、働くにあたって労働者が職場で守るべきルールです。

 学校の校則は、学校で生徒が守るべきルールをまとめたものですが、これの会社版です。

ですから、会社ごとに会社の実情に合わせた内容となっています。

 

<労働契約の共通部分>

同じ会社の中でも、勤務地、業務内容、給与・時給などは、労働者ごとにバラバラです。

しかし、会社全体で見ると、正社員は正社員の、パートはパートの共通部分があります。

たとえば、出張したときの旅費や手当の定めは、これに当たります。

「正社員」というのは、法律用語ではありません。

ですから、「正社員」の定義も会社ごとに就業規則の中で定めておく必要があります。

 

<法令に定められた労働者の権利・義務>

会社は労働者に対して、法令に定められた労働者の権利や義務さらには各種制度について、重要なものを周知する義務を負っています。

これを個別に説明していたのでは手間がかかりますから、就業規則の内容に盛り込んで、就業規則の周知として行っています。

2022/01/20|1,435文字

 

証拠不足で懲戒解雇https://youtu.be/8BxtSpXabF4

 

<業務命令違反の性質>

厚生労働省のモデル就業規則最新版(令和3年4月版)には次の規定があります。

 

第10条:服務

労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

 

第66条第2項本文、第4号:懲戒の事由

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。(以下省略)

4 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。

 

労働契約では、会社の指示・命令に従って働くことが当然の内容となっていますので、正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わないのは、労働者の債務不履行となります。

これが繰り返されるのであれば、就業規則に規定が無かったとしても、少なくとも普通解雇の対象となります。

また場合によっては、懲戒解雇も有効となることがあります。

 

<業務命令違反認定のむずかしさ>

日本での職場マナーや日本語の特質により、会社からあやふやな業務命令が出されたり、これに対して労働者があやふやな回答をしたりということが多発します。

このため、紛争に発展し訴訟となった場合には、裁判所が「業務命令があったとはいえない」「業務命令を拒否したとはいえない」などと判断することも、決して珍しくはないのです。

 

<あやふやな業務命令の例>

次の事例は「業務命令・業務指示には該たらない」と裁判所が判断したものです。

・繰り返し土曜日出勤を要請していたのが、任意の協力を求めたものか、会社の業務命令か不明確なので、これを拒否することは業務命令違反とまではいえない。

・高等学校の校長が、副担任を務める教員に対し担任就任を打診したのは、明確な業務命令として担任の職を命じたとまでは認められない。

・調理の業務を行っている従業員に対し「残業削減のためメニューを減らしてもいい」と何度も注意したのは、メニューを減らす/減らさないが、従業員の選択に任されているので、業務指示には該たらない。

これらの場合、会社としては業務命令・業務指示をしたのだと主張しているのですが、裁判所がこの主張を退けているわけです。

 

<あやふやな回答の例>

一方で、次の事例は「業務命令拒否・業務指示拒否には該たらない」と裁判所が判断したものです。

・業務指示に対して「なぜ私がしないといけないんですか?」「就業規則のどこに書いてありますか?」と質問を返して業務に着手しなくても、指示に対する拒否とまではいえない。

会社としては、業務命令の拒否があったものと判断しているわけですが、裁判所は会社が疑問に応え説明すべきだったと判断しています。

 

<実務の視点から>

会社が従業員の業務命令違反を問題にするのは、懲戒や解雇を検討しているような場合が多いと考えられます。

対象従業員に対するイメージから、懲戒や解雇の結論が先行して、後付で理由を探るようでは、冷静な判断がむずかしくなってしまいます。

懲戒や解雇では、客観的に合理的な理由が存在すること、社会通念上相当であると認められることが有効要件となります。〔労働契約法第15条、第16条〕

「正当な理由なく業務命令に従わなかった」といえるためには、明確な業務命令があったこと、業務命令の内容が適法であり就業規則や個別の労働契約にも反していないこと、明確な業務命令拒否があったことなど、いくつもの事実が認定されなければなりません。

まずは、十分な指導を行いつつ、客観的な資料を残していることが前提といえるでしょう。

2022/01/19|1,265文字

 

賃金についての法規制https://youtu.be/X9e4g4Ae8NQ

 

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

(特例対象事業場では、1週44時間が基準となります)

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

 <割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。

ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25% + 25% = 50% 以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35% + 25% = 60% 以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

この割増賃金ですが、働き方改革の推進により残業手当が減ってしまう不都合を緩和するために、割増率を法定の率よりも高く設定する動きが見られます。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。

そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば 30% + 25% = 55% 以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50% + 25% = 75% 以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

働き方改革関連法により、中小企業でも令和5(2023)年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

2022/01/18|1,071文字

 

タイムカードを使う理由https://youtu.be/Fz05L3pgTOc

 

<解雇予告の規定>

労働基準法第20条に次の規定があります。

 

【解雇の予告】

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

<解雇予告手当>

会社が従業員を解雇しようとする場合に、少なくとも30日前には解雇する旨を通知しなくてはならないというものです(第1項)。

もし30日以上前に解雇予告をしなかった場合には、使用者は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務が生じます(第1項)。

 

<予告と手当の組み合わせ>

予告期間と解雇予告手当を組み合わせることもできます(第2項)。

たとえば、17日前に予告して平均賃金の13日分の解雇予告手当を支払うこともできます。

併せて30日になれば良いのです。

ただし、解雇予告の当日は24時間ありませんので、1日としてカウントできません。

今月30日をもって解雇という場合には、13日に予告すれば17日前の予告となります。

 

<解雇予告手当の支払い時期>

解雇予告手当は解雇の通知とともに支払います。

この手当は、給与ではなく支払うことによって効力が発生する特殊な手当なので、「次の給与と一緒に支払います」ということはできません。

もし給与と一緒に支払ったなら、支払ったその日に予告したものとして予告期間が計算されてしまいます。

解雇予告手当を給与振込口座に振り込んでから、解雇の通知をすれば良いでしょう。

 

<注意すること>

解雇予告を正しく行うということは、手続を正しく行うということです。

これによって、不当解雇が正当化されるわけではありません。

つまり、解雇予告をしたり解雇予告手当を支払ったりで、すべての解雇を有効に行えるということではありません。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

解雇予告手当を支払い解雇を通告して安心していると、解雇の無効を主張され、働いていないのに賃金を請求されるということもありますから注意しましょう。

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものを元に、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に掲げているものです。

抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

 

<就業規則の規定>

「始業時刻や終業時刻は、タイムカード通りに認定しなければいけないのか」と問われれば、まず就業規則の規定を確認することになります。

タイムカード通りに認定することになる規定には、次のようなものが考えられます。

・勤務開始とともに打刻すること、勤務終了とともに打刻すること

・勤務時間の管理はタイムカードにて行う

必ずしもタイムカード通りに認定することにはならない規定には、次のようなものが考えられます。

・出社時に打刻すること、退社時に打刻すること

・勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること

・打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること

 

<「タイムカード通り」ではない場合の認定>

タイムカード通りに認定することにはならない就業規則の場合、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、「使用者自ら現認」によることができます。

ここで「使用者」は、労働基準法第10条に定義されている通り、事業主に限られるわけではありません。

判断基準として重要なのは、事業場内で行うことが義務付けられている準備行為・後片付けに必要な時間は労働時間に該当するということです。

また、業務遂行に必要な知識・技能の習得に必要な学習の時間であって、使用者の指示により行われるものは労働時間に該当します。

とはいえ、すべてを「使用者自ら現認」によることは不可能でしょうから、ガイドラインは「客観的な記録を基礎」として確認することも認めています。

この「客観的な記録」の代表がタイムカードの打刻なわけです。

就業規則の規定が、上に例として掲げた「出社時に打刻すること、退社時に打刻すること」であれば、始業終業時刻の認定が打刻された時刻と前後することもあるわけです。

しかし「勤務開始前に打刻すること、勤務終了後に打刻すること」「打刻後は速やかに業務を開始すること、業務終了後は速やかに打刻すること」という規定であれば、始業時刻は出社時の打刻以降であり、終業時刻は退社時の打刻以前であることが確かなわけです。

 

<雑談や小休憩の時間は労働時間か>

就業規則や個別の労働契約で定められた、始業時刻から終業時刻までは休憩時間を除き労働時間となるのが原則です。

労働義務があるからこそ、その場所に拘束されていると考えるのが、社会通念上相当だからです。

たとえば雑談について、会社が「情報交換やコミュニケーション深化のため必要」と認めたのであれば、これを労働時間としても良いわけです。

反対に「他人の業務を妨げる有害な行為」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

またたとえば小休憩について、「リフレッシュし生産性を維持するのに必要」と認めたのであれば、これも労働時間として構わないわけです。

反対に「小休憩はサボりだから許せない」と考えるなら、全社統一のルールとして禁止することも可能ではあります。

しかし、いずれの場合も、ルールを提示する前の行為について、労働時間から差し引くようなことは信義に反します。

 

<解決社労士の視点から>

始業終業時刻を厳密に認定しようとしても、人間の脳の中を探ることができない以上、限界があるのは明らかです。

ましてや、労働時間の厳格な管理となれば、さらに困難を極めます。

また、これを担う「使用者」は、会社にとって貴重な戦力ですから、労働時間の管理に精力を使い果たされたのでは、会社全体の生産性が低下してしまいます。

法令も「労働時間の適正な把握」を求めているのであって、「労働時間の完璧な把握」を求めているわけではありません。

結局、ガイドラインに沿って労働時間を把握し、記録し、保管するのが正しいことになります。

そして、労働者側に有利な方向で多少緩いのは、トラブル回避に必要な「車のハンドルの遊び」のようなものとして考えても良いでしょう。

2022/01/16|2,101文字

 

<LGBTの定義>

LGBTは、4つの性的少数者の頭文字をとったものです。

 

【LGBT】

L

レズビアン(Lesbian)

恋愛の対象が女性である女性
G ゲイ(Gay) 恋愛の対象が男性である男性
B バイセクシュアル(Bisexual) 恋愛の対象が男性・女性の両方である人
T トランスジェンダー(Transgender) 生まれた時の体に基づいて判別された性別と、本人が心の中で認識している性別とが異なる人

トランスジェンダーの中でも、出生上の性に分類されることに持続的な不快感を持ち、精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態にある人を、医学的に「性同一性障害」と呼んでいます。

 

すべての企業に、LGBTへの理解と具体的な取り組みが求められています。

また、この4つに分類されない性的少数者をQで表わし、LGBTQということも増えています。

 

<特別ではないLGBT>

電通総研が、平成27(2015)年に約7万人を対象に実施した調査で、7.6%がLGBTに該当すると回答したそうです。これは、約13人に1人の割合です。

しかし、「あなたはLGBTのどれかに当てはまりますか?」と尋ねられて、素直に「はい」と答える人は限られているでしょう。

実際には、より多くの人がLGBTに該当するのかもしれません。

LGBTは特別な存在ではないのです。

 つまり、お客様、従業員、お取引先にも、LGBTの方がいらっしゃる可能性は高いのです。

 企業は、性別や年齢によって、採用、教育、異動、待遇などの差別をしないように求められています。

これは、LGBTについても全く同じことが当てはまります。

 

<採用内定にあたって>

企業としては、LGBTQに該当するか否かに関わらず、優秀な人材を採用したいと考えているでしょう。

しかし、内定を受けた学生からLGBTQに該当することを明かされた企業が、戸惑いからか内定を取り消してしまうという事態も見られます。

こうした内定取消の多くは、不当なものであり無効とされるべきものですが、LGBTQの立場は弱く、学生側が諦めやすいものです。

また、内定を出してくれた企業を信じてLGBTQに該当することを打ち明けたのに、内定を取り消されたのですから一層ショックが大きいのです。

LGBTQに該当する人について、本当に内定を取り消さなければならない特殊な業種などであれば、内定取消事由として「学校を卒業できなかった場合」「重大な罪を犯した場合」などに加えて、「LGBTQに該当する場合」を書面で明示しておかなければなりません。

 

<従業員について>

性的少数者である従業員の多くは、誰にも相談できずに悩んでいます。

一方、周囲の従業員や上司は、それと知らずに接しています。

同性同士の雑談に傷つき体調を崩して休んでしまい、退職してしまうことすらあります。

企業は、LGBTQに該当する従業員がいることを想定して、誰でも自分らしく働ける環境を作らなければ、優秀な人材の確保がむずかしくなってしまいます。

トイレや健康診断、セクハラの定義など、企業に求められることは意外な項目にも及びます。

しかし、最初に取り組むべきことは、LGBTQに対する理解を深めるための社員研修だと思います。

もちろん、経営トップをはじめ、幹部社員は特に深い理解を求められます。

特定非営利活動法人「虹色ダイバーシティ」等の団体に講師の派遣を依頼できる場合もありますので、必要に応じて相談すると良いでしょう。

 

<就業規則の整備>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【その他あらゆるハラスメントの禁止】

第15条  第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 

上記のうち「第12条から前条まで」というのは、パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラなどを指します。

いずれにせよ、「性的指向・性自認に関する言動」という言葉が入っています。LGBTのうち、LGBは性的指向ですし、Tは性自認に関することです。

就業規則には、こうした規定が必須のものとなっていますし、LGBTQについて従業員の全員に理解できる内容となっている必要があります。

 大企業の従業員であれば、同性パートナーへの福利厚生の適用も期待が高まっていることでしょう。

結婚した時に支給される結婚祝い金や結婚休暇等を、同性間のパートナーについても適用する旨の規定が、就業規則に欲しいところです。

もちろん、お祝い事だけでなく、育児、介護等の特別休暇や結婚以外の慶弔見舞金の対象にすることも考えられます。

これらを運用するには、同性間の事実婚や同性パートナーとの同居を届け出る「パートナー届」のような制度も必要となります。

LGBTQ該当者の中からも優秀な人材を採用できるようになりますし、定着率も向上します。

また、LGBTQ該当者向けの商品やサービスの開発にも有利です。

何より、企業のイメージアップにつながります。

2022/01/15|1,459文字

 

シフト調整で社会保険未加入https://youtu.be/USoOj2jX-z8

 

<シフト減少の具体例>

年中無休の新規店舗で働き始めた。

月曜日と水曜日はダンスのレッスンがあり、この2日を除き1日7時間、週5日の勤務という約束だった。

ところが突然、会社からの指示があったということで、毎週火曜日が定休日になった。

週4日しか働けなくなり、社会保険も資格を失うことになった。

こうした変更は、「不利益変更」と言って法的に許されないのではないか。

 

<不利益変更禁止の原則>

「合理的理由がない限り、労働条件を一方的に不利益になるように変更できない」

これが、不利益変更禁止の原則です。

この原則に違反して労働条件の変更を通告しても、その変更は無効ですから労働条件は元のままということになります。

しかし、毎週火曜日は定休日ですから出勤できません。

これは、会社都合で働けないのですから、本来の賃金の6割以上の休業手当が支払われなければなりません。

 

<合理的理由がある場合>

不利益変更禁止の原則には、「合理的理由がない限り」という条件が付いています。

合理的理由があれば、労働条件の変更も無効になるとは限りません。

上記の例では、採用されるにあたって「月曜日と水曜日は必ずダンスのレッスンを受けたいので出勤できない」という説明をしていなかった。

そして最近になって、店長から「火曜日は店休日なので、月曜日か水曜日に働きませんか」と言われた。

ここで初めてダンスのレッスンの話を持ち出した。

このような事情があれば、合理的な理由は認められやすくなります。

また、会社全体で年次有給休暇の取得率を高める方針で、定休日を設けることにしたのであれば、これにも合理的な理由があったと認められやすいでしょう。

 

<トラブル防止のために>

基本的な労働条件については、「労働条件通知書」などの交付によって、使用者から労働者に通知されます。

これが行われないと、労働トラブル発生のリスクが大幅に上昇します。

言った/言わないの話になりますし、勘違いも増えるからです。

この「労働条件通知書」には、労使の合意内容が記載されるのですが、出勤日を「日、火、木、金、土曜日」と書くか、「週5日勤務(シフト制)」と書くかによって、大きな違いを生じます。上記の例のように、火曜日を定休日にした場合には、この違いが明らかになります。

また、働いている人たちの都合を考えれば、なるべく早い時期に、定休日を設ける理由を具体的に説明しておきたいところです。

できれば他店の動向から「開店5か月後には定休日を設けるかもしれない。この場合には、週1日シフトが減る可能性がある」など労働条件通知書に明示しておけば、トラブルを避けることができます。

ただ、いくら明確に説明しても「売上が落ちてきたから」「退職者が多く、求人広告への応募者が少ないから」というのでは、経営努力の問題とされ合理的な理由があるとは認められにくくなってしまいます。

定休日を設ける場合、いくつもの理由が重なった上でそうするのでしょうから、合理的な理由を中心に説明することが求められています。

 

<解決社労士の視点から>

最初に挙げた具体例では、定休日には仕事が無いということを前提条件として、解決策を探るのが一般です。

しかし、店舗の休業日であっても、清掃、POP作成・交換、レイアウトや棚割りの変更などの業務を行うことは可能ですし、むしろ休業日に行うことが望ましい業務もあると思われます。

ここまで深く踏み込んだうえで話し合いを行えば、たとえ理想的な結論にたどり着けなくても、納得のいく円満解決が期待できるのではないでしょうか。

2022/01/14|918文字

 

功績に応じた退職金https://youtu.be/ApLCDLgG450

 

<モデル就業規則では>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

【退職金の支給】

第52条 勤続  年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続  年未満の者には退職金を支給しない。また、第65条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。

2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

 

退職金制度は必ず設けなければならないものではありませんが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを就業規則に記載しなければなりません。

これを怠ると、労働基準法違反になります。

 

<慣行がある場合>

会社に就業規則が無い場合や、就業規則はあっても退職金についての規定が無い場合でも、一定の基準で計算された退職金が現に支給されているのであれば、退職者には退職金を受給する権利があるものと考えられます。

ただし、基準が不明確で、経営者に支給の有無や金額の判断が一任されているような場合には、退職者の方から会社に退職金の支払を求めるのは困難です。

あくまでも恩恵的なものであって、退職金の制度があるわけではないという説明ができるからです。

 

<会社の意向で特別に支給する場合>

もっとも、就業規則の規定や過去の例が無ければ退職金を支払えないわけではありません。

長年にわたり会社に多大な貢献をした人に特別に退職金を支給したり、事業縮小に伴い希望退職者を募る時に退職金の支給を条件としたりということがあります。

また、就業規則が規定する金額を上回る退職金が支給される場合もあります。

これらの特別扱いをする場合には、なぜ特別扱いをするのか、その具体的な理由を社内に明示するとともに、これらが前例となるわけではないことを、明確に説明しておく必要があります。

これを怠ると、慣例があるものと勘違いしたその後の退職者から、退職金の支払を求められてトラブルとなる可能性があるからです。

2022/01/13|1,405文字

 

管理監督者の残業手当https://youtu.be/v4V_qEG6RSc

 

<消えない誤解>

「部長や課長は管理監督者だから、労働基準法第41条によると残業手当や休日手当は付かないし、休憩時間も要らないわけで、タイムカードも要らないわけだ」

こんな誤解がいまだに解けないのは何故でしょう。

 

<魔法のことば>

「管理監督者」には2つの意味があります。

 

【2つある管理監督者の意味】

法 令

分 野

管理監督者の意味

労働基準法など

労働条件、労務管理 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者

労働安全衛生法など

メンタルヘルスを含む健康管理、安全、衛生 職場環境や部下の健康、労働安全、労働衛生に配慮すべき管理職

 

ネットでは「管理監督者」で、次のようなものが検索されます。

・労働基準法における 管理監督者の範囲の適正化のために – 厚生労働省

・しっかりマスター労働基準法 管理監督者編 – 東京労働局

・「管理監督者」 – 確かめよう労働条件 – 厚生労働省

・「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A – 厚生労働省

これらは、主に労働基準法の解釈に関することが書かれています。

 

ところが、「管理監督者研修」では、次のようなものが検索されます。

・心の健康づくりの研修のために (管理監督者編) – 人事院

・メンタルヘルス対策って、 具体的には何するの? – 愛知県

・管理監督者・職場リーダーのためのラインケアセミナー – 東京労働基準協会

これらの中で「管理監督者」は、労働基準法の規定とは無関係に、「管理職」という意味で使われています。

後ろに「研修」を加えただけで、「管理監督者」の意味が違ってくるのは面白いですね。

 

<使い分け>

「管理監督者」について規定しているのは、労働基準法第41条第2号の条文です。

 

【労働時間等に関する規定の適用除外】

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

この中の「監督若しくは管理の地位にある者」というのが、「管理監督者」の語源です。

 

一方、労働安全衛生法は、労働者の安全・衛生を管理する者として、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等について定めています。

しかし、職場における労働者の安全と健康について第一に責任を負っているのは事業者とされています。

労働安全衛生法には、次の規定があります。

 

【事業者等の責務】

第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

ここで、事業者とは誰かというと、会社であれば会社そのものです。

実際には、経営者の他、経営者から権限を与えられ責任を負わされる管理職が、事業者である会社の手足となって労働者の安全と健康の確保に努めるわけです。

 

こちらの方は、素直に「管理職」と表現するのが良いと思います。

 

結局、労働基準法第41条の厳しい条件を満たすような取締役に準ずる労働者に限定して「管理監督者」と呼び、その他の部長や課長などは「管理職」と呼んで混乱を避けるようにしてはいかがでしょうか。

2022/01/12|958文字

 

本当は怖い労働基準法の罰則https://youtu.be/McNtk-uBYBs

 

<健康診断の実施義務>

会社は一定の条件を満たした従業員について、雇入れ時の健康診断、定期健康診断、深夜業の健康診断などの実施義務を負っています。

そして、その結果は本人に通知する義務を負っていますし、結果を5年間保管する義務も負っています。

これを怠ると、会社が存続できなくなる程の大きな経済的ダメージが発生することもあります。

 

<罰則>

義務違反には50万円以下の罰金が科せられます。〔労働安全衛生法第120条〕

たとえば、健康診断の対象となる従業員が5人いたとして、会社が健康診断を全く実施していなかったとします。

実施していなければ、結果を本人に通知できませんし、結果を保管しておくこともできません。

実施義務違反と、通知義務違反と、保管義務違反で、1人当たり150万円の罰金です。

50万円 × 3 = 150万円 ということです。

5人なら 150万円 × 5 = 750万円 となります。

結果は5年間保管ですから、保管されていなければ、健康診断を実施していない証拠になってしまいます。

「個人別結果票をなくしました」と嘘をついても、ではどの健診機関で実施したのかと問い詰められれば、嘘がバレてしまいます。

結局、750万円 × 5回分 = 3,750万円 の罰金ということになります。

 

<損害賠償>

罰金3,750万円で済めば安いものです。

ある従業員が勤務中に脳血管障害で倒れて亡くなったとします。

本人は、健康診断を希望していなかったし、受けなくてラッキーだと納得していたとします。

しかし、遺族はどうでしょう。

配偶者や、親兄弟、お子さんたちは、会社に責任があると考えるでしょう。

となると、会社に対して民事訴訟を提起して損害賠償の請求をします。

会社は、自分たちに責任が無いことの証拠をどれだけ持っているでしょうか。

遺族の皆さんは、法定の健康診断を実施していたのか、その結果を元に必要な指導をしていたのかといったことを追究してきます。

会社としては、法律で定められた最低限のことすらしていなかったのですから全面降伏しかありません。

こうなると、3,750万円の罰金とは別に、1億円の損害賠償を求められたりします。

 一方、法定の健康診断なら、その費用は1人2万円です。

5人なら10万円、5年で50万円です。

これは1人の1回分の罰金と同額です。

2022/01/11|1,903文字

 

働き方改革と労働基準法との関係https://youtu.be/HTNnv1oQJvI

 

<働き方改革の定義>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、日本全体で質の高い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。

 

<企業にとっての働き方改革の目的>

政府としては、少子高齢化による労働力不足や消費の落ち込みを解消するために、何としても働き方改革を推進しなければなりません。

しかし、企業が働き方改革に取り組むのは、政府に協力することが目的ではありません。

求職者に「この会社で働きたい」と思わせること、従業員に「この会社で働き続けたい。貢献したい。自分が成長したい」と思わせること、従業員の家族をはじめ取引先や金融機関、そして何よりお客様に「この会社は良い会社だ」と思わせることが、本音の目的だと考えられます。

 

<働き方改革の手段>

上記の目的を果たすための具体的な手段としては、次のようなものが挙げられます。

 

【労働時間の正確な把握】

 社内で把握可能な勤務時間はもちろんのこと、社外での勤務時間や持ち帰り仕事の時間も、可能な限り正確に把握する必要があります。

 これは、すべての働き方改革の前提条件ですから、これを怠ると不平等や不公平が拡大して社員の不満が高まります。

 

【業務の削減】

 過去からの習慣で行っているだけの業務をやめる。経営者の満足のために行っているだけの業務をやめる。この2つでかなりの業務が削減されます。

 加えて、仕事のダブりをなくす、時間帯や手順を変える、取引先との取り決めを見直す、システム化、機械化、外注化、上司や先輩から部下や後輩へのノウハウ伝授など、できることは意外に多いものです。

 これも、すべての働き方改革の前提条件ですから、怠ると会社も従業員も無理を強いられて苦労することになります。

 

【残業時間の削減】

 業務が減れば、自然と残業時間は減っていきます。減らない従業員がいた場合には、その原因を究明して問題点を解消しなければなりません。特定の人に業務が偏っていたり、残業代が欲しくてあえて残業が増えるように立ちまわっていたりと、原因はさまざまです。

 業務が減るペースを上回って残業時間が減る場合には、サービス残業や持ち帰り仕事が発生している可能性があります。

 また、残業時間が減った分だけ、従業員の手取り額が減らないように、何らかの手当を支給する、賞与に上乗せするなどが必要です。収入が減って喜ぶ従業員はいません。

 

【年次有給休暇の取得率向上】

 平成31(2019)年4月以降は、企業側から積極的に年次有給休暇を取得させる義務も発生しています。

 業務の削減が進んでいれば、こうした法改正への対応も難しくはないでしょう。

 ただ、労働基準法が1年間で5日以上と定めたからといって、一律に5日の年次有給休暇を取得させ、それ以上の休暇を取れない雰囲気にしてしまうのは本末転倒です。

 毎年10月に最低賃金が改定されて、そのたびに時給が最低賃金ピッタリに上昇している状態と同じで、あまり喜べるものではありません。

 法改正によって強制される以上の年次有給休暇取得を奨励するのが、本当の働き方改革です。

 また、法改正は、企業に時季指定義務を課したのだという説明も見られます。しかし、年次有給休暇はあくまでも労働者の権利ですから、権利者である従業員の意向を十分に反映して取得日を決定する必要があります。

 

【フレックスタイム制】

 平成31(2019)年4月より、清算期間の上限が1か月から3か月に延長されたのですが、使用者から労働者に業務内容の指示はできても、出勤日や始業・終業時刻の指示はできないという大原則に変更はありません。

 業務に支障が出ないように、労働者同士で話し合って出勤日や勤務時間帯を決めたうえで、使用者に事前報告するというのが上手な運用の基本です。

 あくまでも、生活と仕事の両立を目指し、労働生産性を高めるための制度ですから、結果として残業時間が減少したり年次有給休暇の取得が減ったりはあっても、最初からそれを意図するというのは誤った運用になります。

 

<働かせ方改革にしないために>

会社の立場で、経営陣や人事部門が働き方改革を推進したつもりになっても、それが働き手の必要と欲求に反していれば、それは「働かせ方改革」になってしまいます。

これでは、働き方改革の目的は達せられません。

働き方改革の推進のためには、実施の前後に従業員の声を聞き、不満がないか不合理ではないかということを常にチェックする必要があるのです。

2022/01/10|1,087文字

 

<公益通報者保護制度>

「公益通報」は、日常用語では「内部通報」「内部告発」などと言われます。

法律上は、労働者が不正の目的でなく、通報対象事実が生じまたはまさに生じようとしている旨を、その労務提供先や労務提供先が定めた者、その通報対象事実について処分や勧告等の権限を有する行政機関等に通報することをいいます。〔公益通報者保護法第2条第1項〕

企業の不祥事は、内部からの通報をきっかけに明らかになることが多いものです。

こうした企業不祥事による国民の生命、身体、財産その他の利益への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として事業者による解雇等の不利益な取扱から保護されなければなりません。

事業者にとっても、通報に適切に対応し、リスクの早期把握や自浄作用の向上を図ることにより、企業価値と社会的信用を向上させることができます。

「公益通報者保護法」は、このような観点から、通報者が、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかというルールを明確にするものです。

 

<公益通報者保護法の改正>

公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)が、令和2(2020)6月12日に公布されました。

改正法は、令和4(2022)年6月1日に施行されます。

現在、施行に向け消費者庁を中心に準備が進められています。

 

<内部通報に適切に対応するための体制整備等>

改正法は事業者に対し、新たに公益通報対応業務従事者を定める義務(第11条第1項)、内部の労働者等からの公益通報に適切に対応する体制の整備、その他の必要な措置をとる義務(第11条第2項)を課しています。

ただし、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、努力義務となります(第11条第3項)。

ここで「常時使用する労働者」とは、常態として使用する労働者を指すことから、パート労働者も、繁忙期のみ一時的に雇い入れるような場合を除いて含まれます。

しかし、役員については、労働者ではないことから含まれません。

 

<グループ会社の場合>

改正法は、独立した法人格を有する事業者ごとに上記の義務を課していますので、グループ全体ではなく、関係会社ごとに通報窓口を整備する義務を果たす必要があります。

例えば、グループ全体としての体制整備の一環で、子会社の従業員が行う公益通報の窓口は親会社とされている場合もあると考えられます。

このように子会社が、自らの内部規程に定めたうえで、通報窓口を親会社に委託して設置し、従業員に周知しているなど、子会社として必要な対応をしている場合には、体制整備義務を果たしていると考えられています。

2022/01/09|1,442文字

 

統計調査などによっては、異なる意味で使用されることもありますが、基本的なものをまとめてみました。

 

<常用労働者>

次のうちいずれかに該当する労働者のこと。

(1) 期間を定めずに雇われている者。

(2)  1か月以上の期間を定めて雇われている者。

つまり、1か月未満の期間を定めて雇われている者は、常用労働者ではない。

 

<パートタイム労働者>

「常用労働者」のうち次のいずれかに該当する労働者のこと。

職場により基準が異なる。

(1) 1日の所定労働時間が一般の労働者よりも短い者。

(2) 1日の所定労働時間が一般の労働者と同じで1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者。

 

<一般の労働者>

「常用労働者」のうち「パートタイム労働者」を除いた労働者のこと。

原則として、正社員のように1日の所定労働時間が最も長く、1週の所定労働日数が最も多い者。

職場により基準が異なる。一般労働者とも言う。

 

<所定内労働時間数>

事業所の就業規則や労働契約で定められた、正規の始業時刻と終業時刻との間の実労働時間数のこと。休憩時間は差し引かれる。

所定労働時間とも言う。

統計資料では、労働者によって異なる場合に、最も多くの労働者に適用されるものを、その企業の所定内労働時間数としている。変形労働時間制が採用されている場合には、期間内の平均をその企業の所定内労働時間数としている。

 

<所定外労働時間数>

早出、残業、臨時の呼出、休日出勤等の実労働時間数のこと。

 

<総実労働時間数>

「所定内労働時間数」と「所定外労働時間数」の合計。

 

<変形労働時間制>

週40時間、1日8時間の労働時間の原則に対して、一定の期間内で例外を認める制度。

1年単位の変形労働時間制、1か月単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制がある。

 

<みなし労働時間制>

特定の事情により、労働時間の算定が困難であったり、通常と同じ算定方法が適切でなかったりする場合に、労使協定等により定めた時間を労働したものとみなす制度。

事業場外みなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制がある。

 

<事業場外みなし労働時間制>

営業社員など、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮・監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務を遂行する場合に、所定労働時間、または労使協定等により通常必要とされる時間を労働したものとみなす制度。

 

<専門業務型裁量労働制>

研究開発など、その業務の性質上その遂行の方法や時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難として法定されている業務に就かせた場合に、あらかじめ定めた時間労働したものとみなすことを労使協定により定める制度。

 

<企画業務型裁量労働制>

事業運営に関する企画、立案、調査、分析の業務を行うホワイトカラー労働者を対象として、労使委員会で決議した時間労働したものとみなす制度。

導入には、労使委員会で5分の4以上の多数による決議が必要であり、また、対象労働者本人の同意が必要。

 

<勤務間インターバル>

実際の終業時刻から次の始業時刻までの間隔。

これを一定時間以上空ける制度を、勤務間インターバル制度という。

 

<時間外労働>

法定労働時間(原則、1日8時間、1週40時間)を超えて労働させることをいう。

時間外労働の割増賃金も、法定労働時間を超える部分について発生する。

 

厄介なことに、法令の用語と統計での用語が異なったり意味が違っていたりします。

注意して使い分けましょう。

2022/01/08|486文字

 

特定個人情報保護委員会事務局により、個人番号(マイナンバー)・特定個人情報の基本ルールが4か条にまとめられています。

 

<取得・利用・提供のルール>

・個人番号の取得・利用・提供は、法令で決められた場合だけ。これ以外では、「取れない」「使えない」「渡せない」。

たとえ便利でも、会社がマイナンバーを社員番号として使用することはできません。

 

<保管・廃棄のルール>

・必要がある場合だけ保管。必要がなくなったら廃棄。

マイナンバーの記載された書類が、法定の保存期間を経過し保管の必要がなくなった場合には、できるだけ速やかに廃棄しなければなりません。

 

<委託のルール>

・委託先を「しっかり監督」再委託は「許諾が必要」

会社がマイナンバーの管理を専門業者に委託しても、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません。

また、委託先が再委託できるのは、最初の委託者の許諾を得た場合だけです。

 

<安全管理措置のルール>

・漏えいなどを起こさないために。

会社は、漏えい、滅失、毀損の防止その他の適切な管理のため、適切な安全管理措置を講じ、従業員に対しても適切な監督を行わなければなりません。

2022/01/07|1,256文字

 

<出産育児一時金>

昔は分娩費(ぶんべんひ)などと呼ばれていました。

出産育児一時金は、健康保険の加入者(被保険者)やその扶養家族(被扶養者)が出産した時に、協会けんぽなどの保険者に申請すると1児につき42万円が支給される一時金です。

また、「1児につき」ですから双子なら2倍、三つ子なら3倍の金額が支給されます。

ただし、産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合は40万8千円です(令和4年1月1日改定)。

この産科医療補償制度というのは医療機関等が加入する制度で、加入医療機関で制度対象となる出産をされ、万一、分娩時の何らかの理由により重度の脳性まひとなった場合、子どもとご家族の経済的負担を補償するものです。

 

<未婚の娘の出産>

平成14(2002)年10月以前は、被保険者の他には配偶者のみに「配偶者出産育児一時金」が支給されていましたが、法改正により被保険者の被扶養者が出産したとき「家族出産育児一時金」が支給されるようになりました。

こうして、扶養に入っていれば未婚の娘でも妹でも、支給されるようになったのです。

そもそも結婚するかどうかは、当事者の自由です。〔日本国憲法第24条〕

入籍していないと支給されないというのは平等権の侵害です。〔日本国憲法第14条第1項〕

少子化対策の流れの中で、やっと憲法の趣旨が届いた感じです。

 

 <支給の条件>

妊娠85日以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶であることが必要です。

ですから、会社で出産祝金の支給対象外となる場合であっても、出産育児一時金の支給対象となることがあります。

 

<直接支払制度>

出産にかかる費用に出産育児一時金を充てることができるよう、協会けんぽなどの保険者から医療機関等に、直接支払う仕組み(直接支払制度)があります。

この場合、出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要がないので大変助かります。

もちろん、出産後に健康保険の加入者(被保険者)が直接受け取ることもできます。

 

<出産費貸付制度>

出産費用に充てるため、出産育児一時金の支給までの間、出産育児一時金の8割相当額を限度に資金を無利子で貸し付ける制度があります。

対象者は、出産育児一時金の支給が見込まれる方のうち、出産予定日まで1か月以内の方、または妊娠4か月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方です。

 

<資格喪失後の出産育児一時金>

退職などにより、健康保険の加入者(被保険者)でなくなった場合でも、資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上ある方が、資格喪失日から6か月以内に出産したときは、出産育児一時金が支給されます。

たとえば、健康保険に加入していた女性が退職して資格を喪失し、夫の扶養に入ってから出産した場合には、本人の出産育児一時金か、夫の家族出産育児一時金のどちらか一方を選んで支給を受けます。

ただし、健康保険の加入者(被保険者)の資格喪失後にその被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されません。

2022/01/06|1,331文字

 

モデル就業規則の性質と使い方https://youtu.be/5M0ROmDfCxk

 

<就業規則作成料金の相場>

社会保険労務士に就業規則の作成を依頼すると、本格的なオーダーメイドであれば相場は20万円前後です。

何に経費がかかるのかというと、経営者や人事部門の責任者と繰り返し行う打合せの時間、移動時間、就業規則をパソコンで作成する時間、これらすべての人件費です。

こうした業務を行えるのは、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法その他多数の労働法についての専門知識があり、法改正や通達の変更、裁判所の新判例や判例変更、社会情勢の変動などに即した知識の更新があって、トラブル対応の実戦経験を積んでいればこそのことです。

日頃の自己研鑽あっての高度に専門的な業務なので、人件費の時間単価が高額になるのです。

(もっとも、とりあえずの就業規則であれば1~2万円で出来てしまいます。急いで形式だけ調えたいというご依頼もありますので。)

 

<高い就業規則で元が取れるのか>

下手な就業規則はトラブルを招きます。

会社と退職者との間で争いが生じ、徹底的に争った場合には、時間、労力、人件費その他の経費、そして何より精神力の負担が大変です。

裁判になれば、会社の評判も落ちます。

退職者も出ますし、求人に対する応募者も来ませんから、人材不足となります。

会社の負担を減らすため、和解に持ち込むことができたとしても、3・6・12の法則があると言われるくらいです。

 

【解決金の相場3・6・12の法則】

賃金の3か月分 ― 退職者側に悪質性が認められる場合の解決金

賃金の6か月分 ― 会社と退職者のどちらが悪いともいえない場合の解決金

賃金の12か月分 ― 会社側に悪質性が認められる場合の解決金

 

こうしてみると、優れた就業規則でトラブルを防ぐことができるか、あるいは会社に悪質性が認められずに済むことが1回でもあれば、十分に元を取ることができます。

 

ネットに公開されている就業規則を手直ししたり、友人の会社の就業規則をコピーさせてもらったりでは、自社の実態に合った就業規則にはなりません。

この実態に合わない就業規則がトラブルの種となるのです。

 

<就業規則はいつ作るか>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【作成及び届出の義務:労働基準法第89条】

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(以下略)

 

これによると、従業員が9人までは就業規則の作成義務が無いことになります。

しかし、なるべく早く就業規則作りに取りかかることを強くお勧めします。

残念なことに、「そろそろ従業員の人数が2ケタになりそう」「労働基準監督署の監督が入って勧告を受けた」というタイミングで、就業規則の作成を依頼してくるお客様が多いのです。

 

会社を設立し、いつか従業員を雇入れる予定があるのなら、すぐに就業規則を作ることをお勧めします。

従業員が1人でもいれば、就業規則の変更にあたって、不利益変更という厄介な問題が出てきます。

しかし、適用対象者がいないのであれば変更は自由です。

思い立った時に変更をかけていけば、会社にぴったりの就業規則が完成してから従業員を雇入れるという理想的な形になります。

2022/01/05|1,532文字

 

働き方改革で増えた一斉休業https://youtu.be/j4heUaohaCc

 

<ノーワーク・ノーペイの原則>

「ノーワーク・ノーペイ」とは、「労働者の労務提供がなければ使用者は賃金を支払わなくてよい」という原則のことです。

これを直接規定した法令はありませんが、労働契約法には次の規定があります。

 

【労働契約の成立:労働契約法第6条

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

 

つまり労働契約は、労働者の労働に対して使用者が賃金を支払う約束だということです。

裏を返せば、労働者が労働しなければ使用者に賃金支払義務は無いのが原則です。

ただし、使用者側に何か落ち度があれば、賃金の全額または一部の支払義務が生ずることはあります。

 

使用者の都合で半日休みになったときの減給がどこまで許されるかは、「使用者の都合」の中身によって結論が分かれます。

 

<使用者に故意・過失がある場合>

使用者に故意・過失があって、労働者が働けない場合には、賃金全額を支払うという規定が民法にあります。

この場合には、減給できないことになります。

 

【債務者の危険負担等:民法第536条第2項】

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

 

この中の「債権者」というのは、労働の提供を受ける権利がある使用者のことをいいます。

「債務を履行」というのは、労働の提供をいいます。

「債務者」は、労働を提供する義務がある労働者のことです。

「反対給付」は、労働と引換えに受取るもの、つまり賃金を指します。

 

使用者に明らかな故意・過失がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・使用者が設備の法定点検を何度も怠っていたために、設備に欠陥を生じ営業時間の途中から営業できなくなった場合。

・お店のカギを開けられるのが使用者である店長のみであったのに、寝坊して大幅に遅刻したため、営業開始時間が遅くなった場合。

 

<使用者側に責任がある場合>

使用者に明らかな故意・過失が無くても、労働者には責任が無く、どちらかというと使用者側に原因がある場合には、使用者は労働者に対して平均賃金の6割以上を支払う義務があります。

この場合には、4割まで減給できることになります。

このことを定めたのが、労働基準法の次の規定です。

 

【休業手当:労働基準法第26条】

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

条文に使われている言葉は、民法第536条第2項も、労働基準法第26条も同じで、「責(せめ)に帰すべき事由」です。

しかし、その意味合いは、民法では故意・過失を指し、労働基準法では広く何らかの責任があることを指していると解釈されています。

 

使用者に明らかな故意・過失は無いものの、何らかの原因がある場合としては、次のようなものが想定されます。

・取引先の手配ミスによって材料が不足し製造ができない場合。

・景気が急速に悪化したため、新規学卒採用内定者を自宅待機させた場合。

 

<使用者側に全く責任が無い場合>

どう考えても、使用者に責任の無い理由で、労働者が働けない状態になったのなら、使用者は賃金を支払う義務がありません。

この例としては、次のようなものがあります。

 

・2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の被害・影響により、計画停電が実施されたとき。

・労働安全衛生法の規定による健康診断の結果に基づいて、労働者を休業させたとき。

2022/01/04|911文字

 

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<パワハラの定義>

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称パワハラ防止法)によれば、パワハラとは職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されるものをいいます。〔同法第30条の2第1項〕

 

<会社が加害者の味方となる理由>

まさに「優越的な関係」がポイントです。

加害者は、直接の被害者よりも、役職が上であったり、社歴が長かったり、知識・技能・経験・成績が優れていたり、会社での評価が高かったりします。

会社側の立場からすれば、加害者にはパワハラの問題はあるものの、気持ち良く働いて会社に貢献し続けて欲しいという思惑があります。

 

<会社が加害者の味方となる現象>

こうした思惑から、会社が次のような態度に出てしまうことがあります。

・加害者の言い分だけを聞いて事実の有無を判断する。

・直接の被害者に対し「パワハラは無かった」と説得する。

・直接の被害者を異動あるいは休職させる。

・直接の被害者に退職勧奨あるいは解雇する。

・加害者と被害者の双方に口止めする。

・すべてを無かったことにする。

 

<会社が加害者の味方となる弊害>

会社が上記のような対応をすれば、パワハラ防止どころかパワハラの助長となってしまいます。

直接の被害者が、会社に慰謝料を含め損害賠償請求訴訟を提起するとなれば、ついでに未払賃金などの請求もするでしょう。

裁判は公開されますから、会社の評判は落ち、従業員のモチベーションは低下します。

多数の退職者が出たり、入社を希望する人が激減したりと、人材の確保が難しくなります。

会社が味方したパワハラ加害者の行為も明らかにされますから、加害者とその家族は、元の生活を送れなくなります。

 

<解決社労士の視点から>

事実の確認が大前提ですが、直接の被害者や加害者の言動を見聞きした間接的な被害者からの聴き取りは必須です。

そして、就業規則に従い正しく加害者の懲戒処分、異動、退職勧奨などを行うことになります。

パワハラは絶対に許さないという態度を示すことによってこそ、会社を守ることができるのではないでしょうか。

2022/01/03|1,414文字

 

ミスが多い社員の解雇https://youtu.be/76BoK7FIawM

 

<モデル就業規則の規定>

能力不足を理由とする解雇に関して、厚生労働省労働基準局監督課が作成したモデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、次のように規定しています。

 

(解雇)第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

直感的には、能力不足を理由とする解雇は、厚生労働省の立場からも②の規定により認められていると読み取れます。

しかし、この規定をよく見ると、解雇の条件がクリアされるためには、会社側にもそれ相当の準備が必要であることに気づきます。

裏を返せば、事前の準備なく安易に解雇すればしっぺ返しを食らうということになります。

 

<著しく不良>

「勤務成績」「業務能率」という言葉に明確な定義があるわけでもなく、ましてや評価基準となると、客観的に統一されたものなどありません。

これらが「著しく不良」であることを、会社側が証明するのは困難です。

 

<向上の見込みがない>

向上の見込みがあるか、それともないか、これを見極めるには、会社側が様々な教育・研修を行ってみる必要があります。

上司が熱心に指導して、少しも成長しないので匙を投げたという場合であっても、上司の指導力不足を疑われたら、反論するのもむずかしいでしょう。

 

<他の職務にも転換できない>

他の部署で活躍できるか、それともできないか、これを見極めるには、異動させてみないと分からない点もあります。

しかし、すべての部署を経験させてから見極めるのは、余りにも非現実的です。

 

<就業に適さない>

これはもう、その会社で働くことが向いていない、あるいは、働くことそのものが向いていないと言っているに等しい表現です。

そのような人物であれば、最初から採用しませんから、この規定を根拠として解雇するのは現実的ではありません。

 

<別の攻め方>

そもそも、「勤務成績」「業務能率」「向上の見込み」や適性は、目に見えない抽象的なものです。

ですから、これらを根拠に解雇しても、不当解雇を主張され解雇を無効にされる恐れがあります。

むしろ、不都合な事実を多数突き付けて、⑧の「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき」を理由に解雇するのが現実的です。

 

【解雇理由となる不都合な事実の例】

ルール違反が多い。

勤務中の居眠りが多い。※ただし、会社には健康管理の責任があります。

勤務中に個人的な興味でスマホをいじる時間が長い。

仕事をしているふりをして時間をつぶしている。

時々勤務中に感情を爆発させ叫ぶことがある。

上司から注意しても詫びないし、反省の色を示さない。

上司の指示に従わない。

世間一般の常識から外れた行為が目立ち、その自覚が無い。

遅刻の回数が多く、1回あたりの遅刻が長時間。

以上について、口頭・文書での注意が繰り返されているが改善されない。

 

万一、裁判などになれば「いろいろありました」ではなく、いつどこで何があったのかという事実の記録が必要です。

つまり、解雇するにもそれ相当の証拠の蓄積が必要になるということです。

 

大前提として、解雇が無効とされないためには、就業規則に具体的な解雇理由の規定が置かれていることも必要です。

その意味で、解雇に関する規定は、具体的で詳細なものであることが求められるのです。

2022/01/02|1,596文字

 

本当は怖い労働基準法の罰則https://youtu.be/McNtk-uBYBs

 

<社員の声の重要性>

大企業や大手グループ企業は社員の声を聞くことに熱心で、このために社内に独自の仕組が構築されています。

これは、企業の成長や改善にとって、社内の事情を知っている社員の声が最も貴重な情報源だからです。

ましてや今は、働き方改革が推進されています。

これは国の方針ですから、軽視するわけにはいきません。 

たしかに、働き方改革の定義は必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ日本全体で良質な労働力を確保するための急速な改善」といえるでしょう。

今、働き方改革を誤った方向に進めている企業は、働き手の必要と欲求を無視して独善に走り、社員に背を向けられてしまっています。

こうした事態を招かないためにも、社員の声を聞くことが必要なのです。

 

<小さな会社では>

小さな会社の社長の多くは、社員の声を聞くことにあまり熱心ではありません。

なぜなら、社内のほとんどの事は社長自身が決定しているのですから、今さら社員の声など聞いてみても、それはそれとして、やはり自分が決めると考えているからでしょう。

しかし、中には「もっと社員の声を聞きたい」「社員が意見を言ってくれないと本当の改善ポイントが見えない」「会社の成長のために批判でも良いから考えを出してほしい」と思っている社長もいます。

これは、会社が大きく成長する兆候です。

 

<目的意識の重要性>

まず、何のために社員の声を集めるのか、社内に具体的な目的を明示しなければなりません。

ただ単に、「成長のため」「改善のため」と言ってみても、社員はこれを信用しません。

小さな会社では、多くの事を社長が決定しています。

ですから、会社の現状について問題点を指摘したり、何らかの改善提案をしたりすれば、それはそのまま社長批判にもなりうるのです。

「社長は社員に声を出させることで不満分子を見つけ出し、徹底的に叩こうとしているのではないか」「少しでも自分の方針に合わない社員を解雇したいのではないか」と、疑心暗鬼を生ずるのも無理のないことです。 

社員の声を集める目的を明確にするには、ただ漠然と会社についての意見を求めるのではなく、具体的なテーマを提示することが必要です。

たとえば、「経費削減についての意見が欲しい」よりも「コピー機の使い方について経費削減の視点から意見が欲しい」の方が、意見が出やすくなります。

「整理整頓について聞かせて欲しい」よりも「机やロッカーをはじめ、物品の置き場所について見直したいので、気付いたことを教えて欲しい」の方が、社員の声が集まりやすくなるわけです。

これは、目的が具体的で明確ですから、出した意見が変なことに悪用される恐れが無いからでしょう。

 

<声が上がったときの対応>

社員から声が上がったら、社長は速やかに対応しなければなりません。

まずは、意見を出してくれたことに対するお礼を述べ、ほめることは最低限必要なことです。

うっかり聞き流しになってしまったら、二度と意見は出てきません。

意見を馬鹿にしたり、ケチを付けたりしても、社員に対する裏切りになります。

とはいえ、社長自身が出てきた意見に対して、どのように対応して良いのか迷ってしまい、身動きが取れなくなることもあります。

こんなときは、出てきた意見を公表し、この意見に対して他の人の意見を聞くと良いでしょう。

他の人の意見が出にくければ、具体的にそれを実施する場合の経費や手間、時間について考えを出してもらうなど、前向きに取り組む姿勢を見せたいところです。

 

<記録を残す>

社員から上がった声の中には、今は無理でも、3年後、5年後に役立つものがあります。

少なくとも5年間は見直しができるように、記録を残しておく必要があります。

なにしろ社員からの声は、大変貴重なものなのですから。

2022/01/01|1,218文字

 

法改正により違法残業の範囲が広がっていますhttps://youtu.be/il6m-PyrFT4

 

<法改正の目的>

令和4(2022)年4月、改正個人情報保護法が全面施行されます。

今回の改正目的は「個人の権利利益の保護」、「技術革新の成果による保護と活用の強化」、「越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応」「AI・ビッグデータ時代への対応」などです。

この背景には、個人情報が多様に利活用される時代になり、リスク対応が急務になっていることがあります。

事業規模に関わらず、事業者が守るべき責務が拡大されました。

 

<短期保存データの開示等>

6か月以内に消去する短期保存データは、開示、利用停止等の対象外とされていましたが、これも対象に含まれるようになります。

しかし、これまで短期間で消去していた個人データを、開示請求等に応じるために保存する必要はありません。

ただ、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去することが努力義務とされます。

例外として、検索できるように作られた「個人情報データベース等」を構成する「保有個人データ」は開示請求の対象となりえます。

この場合でも、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある場合には、開示請求に応じる義務がありません。

 

<第三者提供記録の開示>

個人データの授受に関する第三者提供記録については、これまで本人が開示請求できるか否か明確な規定は無かったのですが、開示請求できることが明確に規定されました。

これによって本人は、提供元・提供先の双方に開示請求できることが明らかとされました。

 

<利用停止・消去請求権>

一部の法違反の場合に加えて、利用する必要がなくなった場合、重大な漏えい等が発生した場合、さらには本人の権利または正当な利益が害される恐れがある場合にも、本人から個人データの利用停止・消去等を請求できるようになります。

ここで「利用する必要がなくなった場合」とは、利用目的が達成されその目的との関係ではその個人データを保有する合理的な理由が無くなった場合、利用目的が達成されなかったものの前提となる事業自体が中止となった場合などをいいます。

求人に対する応募者のうち、採用されなかった者の情報について、合理的な期間を経過した後に、本人から利用停止を求めた場合などが含まれます。

 

<漏えい等報告・通知>

情報の漏えい等が発生し、個人の権利利益が害される恐れが大きい場合に、個人情報保護委員会への報告と、本人の通知は努力義務とされていましたが、これらが法的義務とされます。

例としては、従業員の健康診断結果、個人のクレジットカード番号、不正アクセスによる個人データの漏えいなどがあります。

また、個人情報保護委員会への報告は、事態を知って速やかに行う速報と、すべての報告事項が揃ってからの確報の2段階で行うことが求められます。

 

<解決社労士の視点から>

今回の法改正では、事業規模にかかわらず対応が求められます。

自社だけでなく、関連会社や取引先に対しても、適切な対応を促し確認することが必要でしょう。

2021/12/31|1,309文字

 

働き方改革と労働基準法との関係https://youtu.be/HTNnv1oQJvI

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、日本全体で質の良い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して労働生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、労働生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<忘れられている働き方改革の条件>

「働き方改革のせいで収入が減った。転職せざるを得ない」という声が聞かれます。

働き方改革は、「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により」行うもののはずです。

社員から、何らかの不満が出るような施策は誤っていることになります。

ところが、業務量を無視した残業時間の削減、業務の上司への押し付けが横行しています。

上司が名ばかり管理監督者であれば、残業手当も支給されません。

 

<社会保険労務士による働き方改革>

一つひとつの企業に寄り添った労務管理を提案し、「人を大切にする」企業づくりを一緒に行う。

それが、「人を大切にする」働き方改革の専門家、私たち社会保険労務士です。

 

社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づく国家資格者です。

・採用前から退職後まで、労働社会保険、労務管理、法令等遵守、就業規則と運用管理、トラブル対応などのサポート

・ひとつひとつの企業に寄り添った「適切な労務管理」の提案を通じて、「人を大切にする」働き方改革の導入・推進や人材確保に向けた支援などを幅広く行い、企業の成長・発展をバックアップ

 

具体的には、次のような業務に携わっています。

・就業規則の作成と法改正や市場動向に応じた改定

・三六協定書など労使協定書の適正な作成・届出・運用管理・賃金と評価制度の設計、運用管理

・社内研修の提案と実施(マナー、ハラスメント、メンタルヘルス等)

・仕事の両立支援(子育て、介護、病気の治療)

・高齢者の雇用継続支援、障害者の雇用

・労働条件審査(コンサルタント的な内部監査)

・労働者の社外相談窓口(パワハラ、セクハラ、人間関係、能力向上)

 

考え込むよりは、社会保険労務士に相談するのが近道です。

「聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥」と言うではないですか。

2021/12/30|1,075文字

 

社会保険労務士の顧問契約https://youtu.be/XcBLsc-tOiQ

 

<法令の規定>

社会保険労務士は、依頼に応じる義務があると言われます。

その根拠となっているのは、主に次の社会保険労務士法の規定です。

 

【依頼に応ずる義務】

第二十条 開業社会保険労務士は、正当な理由がある場合でなければ、依頼(紛争解決手続代理業務に関するものを除く。)を拒んではならない。

 

この条文は「開業社会保険労務士は、」から始まっています。

社会保険労務士として登録する場合、独立して開業する開業社会保険労務士の他に、企業などで勤務する勤務社会保険労務士などの形があります。

勤務社会保険労務士は、自分が働いている企業のために業務を行っているわけです。

他の会社や個人から、社会保険労務士としての業務を受けることがありません。

 

また、カッコ書きで「紛争解決手続代理業務に関するものを除く」と書かれています。

紛争解決手続代理業務を行えるのは、社会保険労務士の中でも研修を受け試験に合格して登録を受けた人だけです。

この人たちは「特定社会保険労務士」などと呼ばれています。

「特定社会保険労務士」は、社会保険労務士の業務にプラスアルファで紛争解決手続代理業務も行うことができるわけです。

決して、社会保険労務士の業務のうちの特定のものだけを行えるということではありません。

 

結局、依頼に応じる義務があるのは、開業社会保険労務士であって、その対象となる業務は、紛争解決手続代理業務に関するものを除くということになります。

 

<現実的な対応として>

開業社会保険労務士の業務は幅広いものです。

ですから、障害年金、企業の手続業務、助成金の申請、給与計算、就業規則の作成・改定、労使紛争の予防解決、教育・研修など、どれか1つ特定の分野に集中して専門的に行っている社会保険労務士事務所も多いのです。

また、業務経験を積んでいない新人の社会保険労務士もいます。

こうした所に、依頼があった場合に、依頼を拒めないとすると不都合があります。

依頼された社会保険労務士も困りますし、依頼した企業や個人が適切なサービスを受けられないということになりかねません。

そこで、社会保険労務士が自ら依頼を受けられないと判断した場合には、その分野に明るい、その業務経験を積んでいる社会保険労務士を紹介するようにしています。

多くの国家資格がある中、特に社会保険労務士は仲間意識が強いのではないでしょうか。

お互いにライバル視し足を引っ張り合うのではなく、強い協力関係が形成されていると感じられます。

こうしたことから、社会保険労務士への依頼を考えた場合には、どうぞお近くの社会保険労務士にお気軽にご連絡ください。

2021/12/29|980文字

 

判例の研究も大事https://youtu.be/gu3FuGCfc1A

 

<労働契約法の規定>

労働契約法には、安全配慮義務について次の規定があります。

 

(労働者の安全への配慮)

第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法は、最高裁判所の判決の理由中に示された判断を中心にまとめられた法律です。

 

<最高裁の判決>

上の規定の元となったのは、昭和50(1975)年2月25日の最高裁第三小法廷の判決です。

陸上自衛隊の隊員が、自衛隊内の車両整備工場で車両を整備していたところ、後退してきたトラックにひかれて死亡し、遺族が国に対して損害賠償を請求した事件です。

この判決は、「国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設、器具等の設置管理またはその遂行する公務の管理にあたって、国家公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきである」と述べています。

 

<安全配慮義務の根拠>

現在では、労働契約法が安全配慮義務の根拠となります。

しかし、労働契約法ができた平成19(2007)年よりも前から、安全配慮義務が認められてきました。

その根拠については、学者の間でも考えが分かれ定説というものがありませんでした。

それでも、簡単に説明すると次のようになるでしょう。

 

【安全配慮義務の説明】

労働契約の内容は、次のことが基本です。

・労働者は、労務の提供について債務者、賃金について債権者である。

・使用者は、労務の提供について債権者、賃金について債務者である。

債務者の立場から、それぞれ誠実に債務を履行するのは当然のことです。

 

これとは別に、信義則上、債権者は債務者がうまく債務を履行できるよう配慮する義務を負っています。

ここで、「信義則」というのは、民法第1条第2項に定められた「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」という原則のことです。

 

こうして債権者には、債務者に対する次のような配慮が求められます。

・使用者は、安全配慮義務などを負う。

・労働者は、例えば銀行支店の統廃合により、給与振込口座に変更が生じたら、会社に届出る義務を負う。

 

債権者としての義務に違反したときに、債権者が被る不利益は自ら負担することになりますし、債務者に与えた不利益については賠償責任を負うことになります。

2021/12/28|852文字 

 

シフト調整で社会保険未加入https://youtu.be/USoOj2jX-z8

 

中小企業でも任意特定適用事業所であれば、ここの従業員は大企業と同じ基準で社会保険に加入することになります。

 

<大企業での加入基準>

平成28(2016)年10月から、厚生年金保険と健康保険の適用対象者が拡大されました。

週20時間以上働く短時間労働者で、厚生年金保険の加入者(被保険者)数が常時501人以上の法人・個人・地方公共団体に属する適用事業所および国に属する全ての適用事業所で働く人も厚生年金保険等の適用対象となっています。

 

【平成28(2016)年10月から拡大された適用対象者】

勤務時間・勤務日数が、常時雇用者の4分の3未満で、以下の①~⑤すべてに該当する人

① 週の所定労働時間が20時間以上あること

② 雇用期間が1年以上見込まれること

③ 賃金の月額が8.8万円以上であること

④ 学生でないこと

⑤ 被保険者数が常時501人以上の企業に勤めていること

⑤の企業を特定適用事業所といいます。

 

<中小企業への基準適用>

平成29(2017)年4月からは、被保険者数が常時500人以下の企業であっても、労使合意に基づき申出をした企業では、上記の基準が適用されています。

 

【平成29(2017)年4月から拡大された基準適用企業】

次の同意を得たことを証する書類(同意書)を添付して、本店または主たる事業所の事業主から所轄の年金事務所に「任意特定適用事業所該当/不該当申出書」を提出した企業

 ・従業員の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合の同意

 ・こうした労働組合がないときはA、Bのいずれかの同意

A.従業員の過半数を代表する者の同意

B.従業員の2分の1以上の同意

このような手続をした企業を任意特定適用事業所といいます。

 

企業が新人を採用する際には、社会保険の加入について十分な説明を行うはずです。

しかし、加入基準が複雑になってきていますので、採用される側としても、「前に働いていた会社と同じ条件で働くのだから、社会保険には入らないのだろう」という先入観をもたずに、きちんと確認する必要があります。

2021/12/27|1,343文字

 

<健康診断の対象者>

企業は、常時使用する労働者に対し、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定が無くても、この実施義務を免れることはできません。

むしろ、健康診断に関する規定が漏れているわけですから、就業規則への補充が必要です。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

 

【健康診断の対象者の基準】

・期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

・1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

 

1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満の労働者であっても、2分の1以上であれば、健康診断を実施することが望ましいとされています。努力義務です。

 

<実施義務のある健康診断>

実施しなければならない健康診断は次のとおりです。

1.常時使用する労働者に対しては、雇入れの際に行う健康診断、及び1年に1回定期に行う健康診断。

2.深夜業に常時従事する労働者に対しては、その業務への配置替えの際に行う健康診断、及び6か月に1回定期に行う健康診断。

3.一定の有害な業務に常時従事する労働者に対しては、採用、及びその業務への配置替えの際と、その後に定期で行う特別の項目についての健康診断。

4.その他必要な健康診断。

 

<深夜勤務と健康診断>

上記のうち、2.が深夜勤務についての健康診断です。

この中の「常時従事」については、法令には明確な基準が示されていませんが、通達で「深夜業を含む業務に関しては、業務の常態として、深夜業を1週1回以上または1か月に4回以上行う業務」と示されています。〔昭和23年10月1日付基発第1456号〕

実施しなければ、1人につき50万円以下の罰金という罰則も、常時50人以上の労働者を使用していれば、所轄の労働基準監督署に健康診断結果報告書を提出しなければならないのも一般の定期健康診断と同じです。

22:00~翌朝5:00の勤務回数を適正に把握して、健康診断の実施漏れが発生しないように注意しましょう。

 

<自発的健康診断の結果の提出>

企業側の義務とは別に、深夜勤務をしている労働者から自発的な健康診断の結果の提出が、労働安全衛生法に制度として認められています。

(自発的健康診断の結果の提出)
第六十六条の二 午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間における業務(以下「深夜業」という。)に従事する労働者であつて、その深夜業の回数その他の事項が深夜業に従事する労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものは、厚生労働省令で定めるところにより、自ら受けた健康診断(前条第五項ただし書の規定による健康診断を除く。)の結果を証明する書面を事業者に提出することができる。

こちらについては、厚生労働省令が「6か月を平均して1か月当たり4回以上深夜業に従事した者」という基準を示しています。

2021/12/26|1,440文字

 

<働き方改革とは>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料を基に考えると「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、日本全体で質の良い労働力を確保するための変革」といえるでしょう。

 

社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ、肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下してきます。

しかし、休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。

 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし、生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、そして企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

 

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働の解消>

現在、大手企業を中心に最も進んでいる働き方改革といえば、残業時間を初めとする労働時間の削減でしょう。

労働時間の削減は、ひとつ一つの業務の必要性を見直すことが基本です。

過去からの習慣で行っている業務、得られる成果が経営陣の自己満足だけのような業務は最初に切り捨てられます。

これはこれで正しいのですが、労働者側の声として「働き方改革の影響で収入が減った。転職を考えている」というのがあります。

残業時間の減った正社員は、その分だけ残業手当が減り給与が減少します。

パート社員は時間給ですから、出勤日数や労働時間が減った分だけ収入が減ります。

会社側は、働き方改革で労働時間が減り、労働生産性が向上したということで喜んでいる一方、働き手の不満は膨らんでいるようです。

 

<正しい働き方改革>

「残業時間が減ったから残業手当も減った。バンザイ!」というのは、飽くまでも会社側の考えです。

収入が減れば、社員のモチベーションは低下します。

生活レベルも低下して疲労回復も限定されてしまいます。

会社への帰属感は低下します。

「この会社が好きだけど、今の仕事が気に入っているけれど、転職しないと生活できない」という社員も増えてしまいます。

こうした状態では、労働生産性が低下します。

やる気が無くなり、不安が先行しますから当たり前のことです。

社員は人間ですから、収入が減ればやる気が無くなります。

残業時間が減ったのなら、今までの残業分を定額残業代として支給してはいかがでしょうか。

残業代を不当に削るための定額残業代ではなく、働き方改革が進んだことへの報奨としての定額残業代です。

パート社員についても時給のアップを考えましょう。

採用難の中、ただでさえ人材確保のために時給を高めに設定する必要があります。

「皆さんのご協力のおかげで働き方改革が進んでいます。これに報いるため時給の見直しを行います」というアナウンスをすると効果的です。

たしかに形式的には、会社の人件費は少しも削減されません。

しかし、社員の疲労は軽減され、やる気は大幅にアップします。

これが正しい働き方改革の姿なのです。

2021/12/25|860文字

 

<民法改正>

令和4(2022)年4月から、民法の改正により、成年年齢が20歳から18歳に引下げられます。

18歳・19歳も法律上は大人の扱いを受け、両親のような法定代理人の同意を得ずに、様々な契約を交わすことができるようになります。

この反面、法定代理人の同意を得ずに交わした契約であっても、未成年者取消権は使えなくなります。

このことから、社内の18歳・19歳の従業員が、悪質商法の被害者となりやすくなることが懸念されます。

会社としても、こうした従業員に対しては、注意喚起しておくことをお勧めします。

 

<成年になる日>

令和4(2022)年4月1日、一斉に成年になるのは、平成14(2002)年4月2日から平成16(2004)年4月1日までに生まれた人たちです。

平成16(2004)年4月2日以降に生まれた人は、18歳の誕生日の前日に成年に達することになります。

 

<成年になるとできること>

クレジットカードを作る、携帯電話の契約をする、アパートを借りる、ローンを組むなどの契約が一人でできます。

住む場所や進学先・就職先も自分の意思で決めることができます。

国家資格の取得、10年有効パスポートの取得、性別変更の審判を受けることなど、できるようになることが一気に増えます。

 

<20歳にならないとできないこと>

飲酒や喫煙は、健康面への配慮から20歳にならないとできません。

また、青少年保護などの観点から、公営ギャンブルや大型・中型自動車免許の取得も20歳からとなっています。

さらに、国民年金保険料の納付義務のように、制度設計上20歳からとされるものもあります。

 

<労働契約>

労働契約は口頭でも成立します。〔民法第623条、労働契約法第6条〕

契約成立により、雇主と労働者には互いに責任と権利が生じ、身勝手な解約はできません。

未成年の労働者の親権者などが、労働者にとって一方的に不利だと判断した場合に、法定代理人として解約できるに過ぎません。〔労働基準法第58条第2項〕

この未成年の基準も、20歳から18歳に引下げられることになります。

2021/12/24|1,999文字

 

<年次有給休暇の付与日数>

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

<出勤率の問題>

年次有給休暇の付与について、労働基準法に次の規定があります。

 

(年次有給休暇)第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

○2 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

法律上は、出勤率が八割以上なら【図表1】か【図表2】で定められた年次有給休暇が付与され、八割未満なら全く付与されないということになります。

 

この出勤率は、大雑把に言うと 出勤した日数 ÷ 出勤すべき日数 で計算されます。

しかし、シフト制で、しかもそのシフトの変更が激しい職場などでは、出勤すべき日数(全労働日)を確定するのが困難です。

 

また、出勤率が八割未満ということは、年次有給休暇をフルに取得したうえ、さらに欠勤も発生している状態だと考えられます。

何らかの事情があって、そうなってしまったのでしょう。

翌年度も、同じ事情があるのなら、少しは年次有給休暇を付与してあげたいというのが人情です。

 

<出勤率を計算しないで付与する方法>

【図表2】の年間所定労働日数の欄を、年間出勤日数に変え、数値をその八割に置き換えたのが次の【図表3】です。

 

【図表3】

年間出勤日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

173日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

135~172日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

96~134日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

58~95日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

38~57日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【図表3】は、【図表2】で出勤率八割をギリギリの日数でクリアした状態を想定して作ってあります。

ですから、実際の年間出勤日数だけをカウントし、面倒な出勤率を計算せずに、年次有給休暇を付与した場合には、労働者に少しだけ有利となり、労働基準法違反とはなりません。

具体的には、欠勤がほとんど無い場合に、1行上の日数が付与されることになります。

そして、出勤率が低くても、それなりの日数だけ年次有給休暇が付与されます。

 

この仕組みなら、積極的にシフトに入ろうとするでしょうし、なるべく欠勤しないように頑張れるのではないでしょうか。

2021/12/23|1,109文字

 

「管理監督者」という言葉が分かりにくい理由https://youtu.be/dlaHqUuVQ1Y

 

<不幸な「名ばかり管理監督者」>

残業手当、休日出勤手当といった時間外割増賃金を支給されない役職者が多数います。

その根拠とされるのが次の条文です。

 

【労働基準法第41条】

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

この「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するのはどのような人なのか、労働基準法の中には説明がありません。

会社の中で素人的にイメージされるのは、何となく「役職者」「管理職」でしょうか。

このように解釈すれば、新入社員であれ誰であれ、役職さえ付けて管理職扱いにすれば、残業手当などを支給しなくても構わないことになりますから、会社にとっては都合の良い解釈です。

小さな企業の中では、正社員の全員にリーダー、チーフ、班長など、手頃な役職名を付けて、割増賃金を支給しないという現象も見られました。

最近でも、「管理職」には残業手当を支給しないこととしている大企業や大手グループ企業について、その違法性を指摘するニュースが流れています。

 

実は、労働基準法の中には、「役職者」「管理職」という用語が1回も登場しません。

これひとつを取ってみても、「役職者」「管理職」を「監督若しくは管理の地位にある者」と解釈することには無理があります。

 

<「監督若しくは管理の地位にある者」の条件>

管理監督者と認められるためには、次の3つの条件が、すべて満たされていなければなりません。

 

【管理監督者の条件】

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること。つまり、大きな権限を与えられていて、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要が無い立場にあること。

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと。つまり、出退勤時間が自らの裁量に任されていること。遅刻や早退をしたら、給料や賞与が減らされるような立場では、管理監督者とはいえません。

・その地位にふさわしい待遇がなされていること。つまり、一般社員と比較して一段上の待遇がなされていること。部下が長時間労働をすると、あるいは高い評価を得ると、年収が逆転しうるのでは管理監督者とはいえません。

 

イメージとしては、あと一歩で取締役という立場にあり、強い権限を持っている人が本当の管理監督者です。

責任ばかりが重くて、権限が与えられていないような社員は、管理監督者であるはずがありません。

2021/12/22|1,422文字

 

パワハラの定義https://youtu.be/Mdh36sSuu2o

 

<男女平等>

かつての男尊女卑は否定され、憲法は平等権を保障しています。

 

日本国憲法第14条第1項:平等権

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

これを受けて、労働基準法は男女同一賃金の原則を定めています。

 

労働基準法第4条:男女同一賃金の原則

使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

さらに、男女雇用機会均等法は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」として、募集・採用における機会均等を保障し、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新について、性別による差別を禁止しています。

 

<LGBTQの保護>

しかし、上記の男女平等の考え方は、男性と女性を峻別し、両者の平等をいうものであって、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー等の性的マイノリティ(少数者)   の存在を十分に踏まえたものではありません。

そこで、性的マイノリティを保護する必要性について、社会的に認識されるようになってきました。

かつてはLGBTと言われていたのですが、これらに含まれない性的マイノリティの保護も必要であることから、LGBTに分類されないこうした人たちをQで表し、LGBTQと言うことが多くなってきました。

 

<SOGIによる差別の禁止>

ところが、性的マイノリティと性的マジョリティ(多数者)を分断して対応することにも、疑問が生じてしまいます。

全体の何%未満ならマイノリティなのか、そうした比率を把握できるのかという問題があります。

そこで、SOGIという言葉が使われるようになりました。

SOはセクシャルオリエンテーションの略で、恋愛の対象は、男女どちらか、両方か、いないかという性的指向を意味します。

GIはジェンダーアイデンティティーの略で、自分の心の中の性別は、男女どちらか、不明かという性自認を意味します。

SOGIによる差別の禁止は、性別や少数者・多数者という分断をせずに、すべての人が保護の対象となります。

 

<国の考え方>

令和3(2021)年2月には、性同一性障害特例法により男性から女性に変更した看護助手が、ソジハラで精神障害を発生したとされ労災認定を受けました。

ソジハラは、SOGIハラスメントの略で、性的指向・性自認に関するハラスメントです。

ソジハラの内容は、戸籍上も女性となったにも拘らず、職場で男性のような名前で呼ばれていたというものです。

これに先立ち、大企業では令和2(2020)年6月から義務化された職場におけるパワハラ防止措置の実施に伴い、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」が適用されています。

この中で、ソジハラがパワハラに該当すると明記されています。

 

<解決社労士の視点から>

押印廃止のように、政府の取組が民間に先行するものもあります。

ソジハラ対策もまた、これに含まれるでしょう。

社内で、SOGI、ソジハラについて周知できていない企業も多いのではないでしょうか。

思わぬことで、企業の責任が問われることにもなりかねません。

すべての企業で、SOGIハラスメント防止対策に取組んでいただきたいと思います。

2021/12/21|1,425文字

 

有期労働契約の打切り>

一般の正社員のように、契約期間を区切らず定年まで働く契約を無期労働契約といいます。

これに対して、パートやアルバイトなど契約期間を区切って更新を重ねていく契約を有期労働契約といいます。

有期労働契約で雇っている労働者を、期間満了時に契約の更新を行わずに終了させることを「雇止め(やといどめ)」といいます。

 

<法律の規定>

一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

ここで、「客観的に合理的な理由を欠き」というのは、労働契約法第1条に示された労働契約法の目的や全体の趣旨に反することをいうと考えられます。

 

労働契約法第1条(目的)

この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

 

また、「社会通念上相当である」というのは、裁判で認定された世間一般の常識に反していないことを指していると考えられます。

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「雇止めに関する法理」という理論を条文にしたものです。

ですから、雇止めがこの理論による有効要件を満たしていなければ、裁判では無効とされ、有期労働契約が自動的に更新されることになります。

 

<雇止めに関する法理>

雇止めは、次のような事情が多く認められるほど、有効と判断されやすくなります。

・業務内容や労働契約上の地位が臨時的なものであること。

・契約更新を期待させる制度や上司などの言動が無かったこと。

・契約更新回数が少ないこと、また、通算勤続期間が短いこと。

・他の労働者も契約更新されていないこと。

・雇止めに合理的な理由が認められること。

 

反対に、次のような事情があると、雇止めが無効であり労働契約が継続していると判断されやすくなります。

業務内容や労働契約上の地位が継続的なものであること。正社員と同様の働き方をしていること。

・就業規則に契約更新を期待させる内容や上司など一定の立場にある人から「長く働いて欲しい」「来年もよろしく」など契約更新を期待させる言葉があったこと。

・契約更新回数が多いこと、また、通算勤続期間が長いこと。

・同じ職場で、同様の契約をしている労働者の中に、契約を更新されている人がいること。

・雇い止めに客観的に合理的な理由が認められないこと(些細なことや上司の好き嫌いを理由に契約を更新しないなど)。

契約更新を期待させる事情があったり、契約を更新しない理由が不合理であったりする場合です。 

 

<注意ポイント>

契約期間の終了間際になってから雇止めの話を切り出したり、事前に充分な説明が無かったりすれば、それだけで「社会通念上相当でない」と判断されます。

雇止めをする事情が発生したときに、「あまり早く事情を説明したら勤務意欲を失うのではないか」と考えてためらってはいけません。

対象者は次の仕事を見つける必要がありますから、できるだけ早く納得のいく説明を聞きたいのです。

2121/12/20|1,831文字

 

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<月間所定労働日数を決めるときの端数>

就業規則に従って、カレンダーで年間の休日数を数え365日から引いて年間の労働日数を確定します。

うるう年と平年でも違いますし、同じ平年でも日曜日と祝日の重なる回数などによって変動があります。

そして、月間所定労働日数 = 年間の労働日数 ÷ 12 の計算式によって、月間所定労働日数を決めることが多いと思います。

このとき、22.51日、23.16日など、端数が出るのが通常です。

こうした場合に、切り上げると月給の時間単価は安くなり、切り捨てると高くなります。

今までの運用実績があるのなら、切り上げると厳密には不利益変更となりますので、切り捨てるのが無難です。

月間所定労働日数に小数点以下の端数があっても、給与計算には困らないのですが、一般には整数で決められています。

 

<平均所定?>

就業規則などに「平均所定労働日数」「平均月間所定労働日数」と書いてあるのを見ることがあります。

「予定」労働日数の「平均」を計算して、「所定」労働日数を決めるわけですから、「所定」の「平均」という言葉が出てくるのは不合理です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになったのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

2021/12/19|910文字

 

ケンカのケガと傷病手当金https://youtu.be/QGEngWbtIeM

 

<傷病手当金とは>

傷病手当金は、休業中に健康保険の加入者(被保険者)とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、私的な原因による病気やケガのために会社を休み、会社から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

被保険者は、給与天引きなどにより保険料を支払っている人です。

国民健康保険の被保険者は対象外です。

 

<支給の条件>

傷病手当金は、次の4つの条件をすべて満たしたときに支給されます。

・業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

 業務や通勤によるケガは労災保険で補償されますから対象外です。

・仕事に就くことができないこと

 医師の判断によります。大事をとって休業しても対象外です。

・連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

 最初の3日が、たまたま年次有給休暇でもOKです。

・休業した期間について給与の支払いがないこと

 給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

 

<支給される期間>

傷病手当金が支給される期間は、令和2(2020)年7月2日以降に支給が開始された場合は、支給開始から最長1年6か月です。

医師が労務不能を認めた日と、実際に休業した日が重なっている期間に限ります。

 

<支給される金額>

傷病手当金は、1日につき健康保険加入者(被保険者)の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されます。

標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。

標準報酬月額は、原則として4月から6月までの給与の総支給額を基準に、その年9月以降の保険料の計算基準となる月給です。

ここでの標準報酬月額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を用います。

法改正により、平成28(2016)年4月1日からこのようになりました。

 

<注意したいこと>

たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。

「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。

交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。

2021/12/18|773文字

 

<職場情報総合サイト>

厚生労働省が、平成30(2018)年9月に職場情報総合サイト「しょくばらぼ」を一般公開しました。

「しょくばらぼ」は、「若者雇用促進総合サイト」-「女性の活躍推進企業データベース」-「両立支援のひろば」の3サイトに掲載されている各企業の職場情報を収集し、転載しています。

また、各企業の各種認定・表彰の取得等の情報も掲載しています。

このように、職場情報をワンストップで閲覧できるようにし、横断的に検索・比較できるようにすることで、企業と働き手のよりよいマッチングの実現が期待できます。

職場環境の維持向上に努めている企業にとっては、アピールの場が新たに増えたことになります。

 

職場情報総合サイトしょくばらぼ:https://shokuba.mhlw.go.jp/index.html

 

【「しょくばらぼ」の特徴について】

1 主なコンテンツ・機能

  ・当サイトについて(掲載する職場情報、メリット、当サイト設立の背景)

  ・利用方法(使い方・ご利用の流れ、操作マニュアル)

  ・職場情報検索(企業名・条件からの検索機能、複数の企業の比較機能)

  ・CSV一括ダウンロード(職場情報の全件データのダウンロード機能)

 

2 掲載する主な職場情報

  ・採用状況に関する情報

  ・働き方に関する情報

  ・女性の活躍に関する情報

  ・育児・仕事の両立に関する情報

  ・能力開発に関する情報

  ・ハローワークインターネットサービスに掲載されている求人情報とのリンク

 

3 職場情報総合サイトの活用のメリット

  ■求職者

  ○ライフスタイルや希望条件にあった企業の選択

  ○事前に企業の就業実態を把握し、入社後のミスマッチを防止

  ■データ登録企業

  ○職場情報を開示することによる企業のPR

  ○職場改善への取組が評価されることによる優秀な人材の獲得

2021/12/17|1,493文字

 

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間単価を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間単価 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合はもちろん、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

このような会社に所轄の労働基準監督署が立入調査(臨検監督)に入った場合には、過去の勤務実績から、1週間あたりの出勤日数を基に年次有給休暇を付与するよう指導しているようです。

しかし、このような便法では、常に出勤率100%という扱いになりますし、出勤率80%以上であれば年次有給休暇が付与されるという法定の基準よりも、少なめの日数が付与されるなどの不合理があります。

たとえシフト制などで変動が大きい場合にも、基準となる所定労働時間、所定労働日数を決めておくことがトラブル防止のためにも必要でしょう。

2021/12/16|1,251文字

 

セクハラ対策の失敗https://youtu.be/T67U7qWeYx4

 

<懲戒処分の時効>

懲戒処分について、消滅時効期間を定める法令はありません。

会社の就業規則にも「○年以上経過した事実に対する懲戒処分は行わない」などの規定は無いでしょう。

ただ、懲戒処分は労働契約に付随するものですから、次に示す民法の基本原則が適用されます。

 

 【民法第1条:基本原則】

  私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

 

つまり、いくら会社に懲戒権があるからといって、ずいぶん前の事実について懲戒処分を行うことは、不誠実でもあり権利の濫用ともなりうるので許されません。

 

<懲戒と刑罰>

刑事訴訟法には、公訴時効についての規定があります。

犯罪が終わってから、一定期間を過ぎると検察官が公訴を提起できなくなります。

会社による懲戒処分は、国家権力による刑罰とは違いますが、その目的は共通しています。

 

【懲戒処分の目的】

・懲戒対象となった社員に反省を求め、その将来の言動を是正しようとすること。

・会社に損害を加えるなど不都合な行為があった場合に、会社がこれを放置せず懲戒処分や再教育を行う態度を示すことによって、他の社員が納得して働けるようにすること。

 

何が許され何が許されないのか社員一般に対して基準を示し、みんなが安心して就業できる職場環境を維持するためには、就業規則の懲戒規定が具体的でわかりやすいことが必要です。

そうでなければ、懲戒対象者が処分に納得せず、会社を逆恨みすることもあります。

これでは、懲戒処分の目的が果たされません。

社会保険労務士に報酬を支払ってでも、それぞれの会社にピッタリの就業規則を作る必要があることは、懲戒規定だけを考えても明らかです。

 

<実際の公訴時効期間>

セクハラについて見ると、現在の刑事訴訟法では次のように規定されています。

30年 ― 強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪

15年 ― 強制性交等罪

3年 ― 名誉毀損罪、暴行罪、過失致傷罪、脅迫罪

1年 ― 侮辱罪、軽犯罪法違反罪

しかも、一部の公訴時効期間は、平成16(2004)12月の刑事訴訟法改正により、延長されています(翌年1月1日施行)。

こうしてみると、被害者が亡くなったような重大なケースを除き、20年前のセクハラで懲戒処分を行うというのは、懲戒権の濫用となる可能性が高いでしょう。

 

<時代背景からすると>

日本でセクハラという言葉が使われるようになったのは1980年代半ばだとされています。

しかし、男女雇用機会均等法が改正され、性的嫌がらせへの会社の配慮についての規定が置かれたのが平成9(1997)年です。

20年前というと、行為者がセクハラについての社員教育を受けていなかった可能性が高く、また、就業規則にもセクハラに対する懲戒処分の規定が無かった可能性があります。

行為の当時、就業規則に規定が無かったのならば、後から新たに規定ができても、これを根拠に懲戒処分をすることはできません(不遡及の原則)。

2021/12/15|753文字

 

ケンカのケガと傷病手当金https://youtu.be/QGEngWbtIeM

 

<健康保険法等の改正>

治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得保障ができるよう「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」により健康保険法等が改正されます。

この改正により令和4(2022)年1月1日から、傷病手当金の支給期間が通算化されるようになります。

 

<通算化の意味>

傷病手当金の支給期間が、支給開始日から「通算して1年6か月」になります。

・同一のケガや病気に関する傷病手当金の支給期間が、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象になります。

・現在は、支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合、支給開始日から起算して1年6か月を経過後は、不支給となっています。

・法改正により、支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になります。

 

<改正法施行日>

この法改正は、令和4(2022)年1月1日から施行されます。

令和3(2021)年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金が対象となります。

言い換えれば、令和2(2020)年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金が対象ということになります。

 

<実務の視点から>

現状の制度では、傷病手当金を受給中の従業員について、支給開始日のみ記録して1年6か月後の支給終了日をチェックしておけば、手続漏れなどを気にしなくて済みました。

しかし法改正により、実際の受給期間を通算していき、通算1年6か月後をチェックする必要が生じたわけです。

もっとも、途中で傷病手当金の支給が途切れた従業員についてのみ、注意すれば足りるということになります。

2021/12/14|655文字

 

パワハラの理解と業務の円滑な遂行https://youtu.be/2MGzpEY4ojI

パワハラしやすい人https://youtu.be/9dnI-MD1zkQ

 

<加害者に対して>

パワハラというのは、意図して行うような例外を除き、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

被害者が退職した後も、加害者が嫌がらせを続ける場合があります。

しかし、この場合には、加害者が被害者に対して業務上必要な働きかけをするということがありませんので、人権侵害行為が単独で行われている状態です。

この人権侵害行為の多くは不法行為に当たり、被害者から加害者に対して損害賠償の請求が可能です。

さらに、この人権侵害行為が犯罪にあたる場合には、警察に被害を申し出て対応してもらうことになります。

ここで考えられる犯罪としては、刑法に規定されているものだけでも、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪、侮辱罪などが考えられます。

 

<加害者の勤務先に対して>

加害者の勤務先としても、社員が退職者に対して権利侵害行為を行っているという事実は重大な関心事です。

たとえ勤務と無関係に行われた行為であっても、社員が会社の利益や信用を低下させる行為を行った場合には、行為者に対して懲戒処分を行いうるのです。

警察沙汰になったり、裁判になったりすれば、会社にとって大きなダメージとなりますから、放置することはできません。

退職者としてではなく、一個人として会社に被害を受けていることの事実を伝えるのが良いでしょう。

このような場合に心細いのであれば、交渉事ではありませんので、社会保険労務士に付き添いを依頼することも可能です。

2021/12/12|855文字

 

最低賃金違反を主張できないhttps://youtu.be/1eoYYTCzCkM

 

<最低賃金の発効日>

最低賃金は、都道府県ごとに定められ、改定日にも多少の違いがあります。

たとえば、東京都の最低賃金(時間額)は、令和2(2020)年にコロナ禍によって改定が見送られたものの、例年10月1日をもって引き上げられます。

この日が発効日ですから、この日に勤務した分から最低賃金(時間額)を下回る時間給は違法になってしまいます。

日給でも月給でも、1時間あたりの賃金が最低賃金(時間額)を下回ってはいけません。

 

<雇用契約書を変更する必要性>

契約期間が最低賃金の改定前後にまたがる雇用契約書(労働契約書)であれば、その人の賃金時間額が最低賃金を下回っている場合に、改定日以降の期間について最低賃金以上の賃金に改定した内容で雇用契約書を交わし直す必要があります。

賃金という重要項目でもありますし、いつの分からの変更か明らかにする意味でも、また、最低賃金改定の説明をするチャンスでもあることから、修正して訂正印ではなくて、きちんと作り直して説明のうえ交付することをお勧めします。

 

<雇用契約書が複数ある場合の効力>

上記の場合、古い雇用契約書には、まだ契約期間が残っていて、新しい雇用契約書と期間がダブることになります。

そして古い雇用契約書も、その期間の雇用契約を明らかにする重要な文書ですから、回収するわけにもいきません。

雇用契約書を含め契約書には必ず作成年月日が記されています。

これは、契約内容が変更され新しい契約書が作成された場合には、作成年月日の新しいものが優先的に効力を持つという約束事があるからです。

ですから期間の重なった複数の雇用契約書があっても、最新のものが適用されるということで安心なのです。

雇用契約書の作成年月日を空欄にしたままではいけません。

きちんと契約書を完成させた日の日付を入れておきましょう。

 

最低賃金の引き上げに限らず、有期契約の無期化や、社会保険加入基準の変更などで、雇用契約の管理は少し複雑になってきています。

面倒に思えてきたらお近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

2021/12/12|1,540文字

 

ダブルワーク禁止https://youtu.be/SKw4MHjy9zc

 

<シフトゼロなら休業ゼロの疑問>

パートやアルバイトで、シフト制で勤務している労働者は、たとえば来月1か月は店舗が休業という場合、全くシフトに入らないことになります。

この場合、そもそも出勤予定日が無いのだから、1日も出勤しない状態であっても、休業は発生せず、したがって休業手当は不要であり、雇用調整助成金の対象にもならないという解釈があります。

実際、この解釈によって、大企業を含む多くの企業がシフト制の労働者に休業手当を支払わず、雇用調整助成金の手続も行わないという事実があって、この問題をマスコミが採り上げています。

 

<休業の定義>

休業とは、労働者による労務提供が行われない場合のうち、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、労働の意思を持っているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、または不可能となった場合をいいます。

そもそも労働者が労務を提供することができない場合や、労務を提供する意思が無い場合には、休業には該当しないことになります。

休業の定義の中で「労働契約に従って」というのが、大きなポイントとなります。

シフトが組まれるなどにより、出勤が予定されている日に休むのが休業ではなく、労働契約が予定している日に休むのが休業だということになります。

週3日シフトに入るという労働契約であったのに、1日しかシフトに入らないのであれば、2日の休業が発生することになるのです。

 

<労働契約の内容>

労働契約の内容は、労使の合意により決定されます(労働契約法第6条)し、労働契約は口頭で成立します(民法第623条)。

使用者が労働条件通知書の交付などによって労働条件を明示しないのは、労働基準法違反となり罰則も適用されうるのですが、この場合でも労働契約は成立しています。〔労働基準法第15条第1項、第120条第1号〕

つまり、使用者が明示義務を負っている労働条件の一部があやふやであったとしても、労働契約そのものは成立しているわけです。

ただ、シフトに殆ど入れない、全く入れないなどの場合に、休業が何日になるのかがあやふやになってしまいます。

 

<合理的意思解釈>

労働契約の締結にあたって、使用者は「退職者の穴を埋めてもらうのに、週3日程度働いてもらいたい。週2日では足りないし、週4日だと人手が余る」などと考えます。

一方、労働者も「月10万円は稼ぎたいので、週3日は働きたい。週2日だと足りないし、週4日だと家事ができない」などと考えます。

しかし、週何日あるいは月何日出勤するのか明確な合意が無いまま、なんとなく合意して労働契約が成立することがあります。

この場合でも、労働契約に従って休業の日数が決定されることになります。

その労働者の過去の労働日数の実績や、同様の「約束」で勤務している労働者の労働日数の実態などから、「労働契約の内容をこのように考えるのが合理的だ」というものを割り出して、これを基準とすることになります。

こうしたやり方を「合理的意思解釈」と呼び、民事裁判でも使われている手法です。

雇用調整助成金についても、シフト勤務で労働契約の内容の一部が不明確な場合には、過去の勤務実績を踏まえて、金額が確定されることになっています。

 

<解決社労士の視点から>

たとえば年次有給休暇の付与日数は、週所定労働日数(時間)によって法定されています。

労働契約の内容が不明確で確定し難い場合には、労働基準監督署が過去の勤務実績を基準に付与するよう指導しています。

しかし、入社の6か月後に付与される年次有給休暇とは異なり、休業手当の問題は入社後すぐにも発生しうるのです。

やはりシフト制といえども、1週あたりの労働日数、労働時間を明確に決めて明示しておくことが、トラブル防止のためにも必要でしょう。

2021/12/11|1,000文字

 

失業保険・失業手当と言わない理由https://youtu.be/wJBwioLTDQI

 

<「被」という漢字の意味>

「被」という漢字には、受け身の意味があります。

ここで「受け身」というのは、行動の主体からの動作・作用を受ける人を主人公にして話す話し方です。

 

AさんがBさんをほめた。

この事実をBさんから見ると、

BさんがAさんからほめられた。

となります。

 

英語の授業では受動態として習いましたし、漢文の授業では「る」「らる」という受け身の助動詞として習いました。

 

<社会保険で「被」が付くことば>

「被保険者」は、保険について受け身の人のことをいいます。

保険者は、保険を運用する人のことをいいます。

健康保険の保険者は、保険証に書かれています。

協会けんぽであったり、健康保険組合であったり…

国民健康保険では、市町村が保険者です。

そして、保険が適用され給付を受ける人が「被保険者」ということになります。

日常用語では「保険加入者」ですね。

 

「被扶養者」は、扶養について受け身の人のことをいいます。

扶養する人を、わざわざ「扶養者」ということは少ないでしょう。

誰かに扶養されている人のことを「被扶養者」といいます。

日常用語では「扶養家族」ですね。

特に被扶養者のうち配偶者を「被扶養配偶者」といいます。

国民年金では勤め人が第二号被保険者、その被扶養配偶者が第三号被保険者ということになっています。

 

<労働保険で「被」が付くことば>

雇用保険や労災保険でも、保険を適用される人が「被保険者」ということになります。

労災保険では、保険事故に遭った人のことを「被災者」といいます。

業務災害や通勤災害という災害に遭った人ということです。

 

<その他「被」が付くことば>

「被相続人」というのは亡くなった人です。

「相続人」は、相続する人、相続を受ける人のことですから、相続をされる側の人は亡くなった人ということになります。

 

「被害者」は害を受ける人です。相手は「加害者」です。

 

「被告人」は、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された人です。

「告訴された人」が語源ですが、その意味は「起訴された人」です。

告訴は、犯罪の被害者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めることですから、起訴とは意味が違っています。

なお「被告」は、民事裁判で訴えを提起された人のことを指しますから、犯罪者というわけではありません。

日常用語では、「被告人」と「被告」が混同されています。

テレビなどのニュースでも、正しく区別して表現されないことがあります。

2021/12/10|940文字

 

社会保険・労働保険https://youtu.be/Fdg9P4LgOtQ

 

<社会保険の加入基準>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上というのが原則の基準です。

ただし、大企業などで特定適用事業所となっている場合には、1週間の所定労働時間が20時間以上でも加入となりえます。

「勤務日数が少なくなった」というのが、一般の企業で1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3を下回ったという意味であれば、社会保険から脱退(資格喪失)することになります。

特定適用事業所の場合には、1週間の所定労働時間が20時間を下回ったのであれば、同様に社会保険から脱退(資格喪失)することになります。

 

<所定労働時間・日数>

「所定」とは「あらかじめ決められている」という意味です。

そして、所定労働時間や所定労働日数は、使用者と労働者との労働契約での合意によって決まります。

企業は「就業規則」か、個人ごとに交付する「労働条件通知書」などの書面で、労働者に所定労働時間や所定労働日数を示します。

 

<事実か契約か>

社会保険の加入基準は、事実としての勤務日数ではなく、所定労働日数が原則です。

ですから、病気や家庭の事情により、一時的に勤務日数が少なくなったに過ぎない場合には、所定労働日数は変更が無いと考えられます。

なぜなら、一時的な事情が解消すれば、元どおりの勤務をするようになると考えられるからです。

もし、長期にわたって勤務日数が少ないままであることが見込まれるのであれば、使用者と労働者とで話し合い、所定労働日数を変更する必要があります。

これをしないと、社会保険の加入だけでなく、年次有給休暇の付与日数や出勤率の計算が実態に合わなくなってしまいます。

 

<例外措置>

所定労働日数が原則だというのは例外があるからです。

使用者が労働者の社会保険加入を不当に避けるため、実際には加入基準を満たす勤務実態であるのに、所定労働時間を短く、所定労働日数を少なくして、労働条件通知書も嘘の内容にして交付しているような場合があります。

こうした場合には、勤務の実態に即して社会保険に加入(資格取得)することになっています。

2021/12/09|1,211文字

 

行政通達の性質https://youtu.be/AmfsgmOpY4s

 

<省令と通達の発出>

令和3(2021)年12月1日付で、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(厚生労働省令第188号)が出されました。

また、厚生労働省の施行通達「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(基発1201第1号)も発出されています。

主な改正内容は、次のとおりです。

 

<トイレの設置基準>

トイレは男女別に設けることが原則ですが、同時に就業する労働者が常時10人以内である少人数の事務所では、トイレを男女別にすることの例外として、独立個室型のトイレを設ければ良いことになりました。

ただしこれは、トイレを男女別に設置する原則の適用が困難な作業場における例外規定ですから、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合でも、可能な限り男女別に設置することが望ましいとされます。

また、既に男女別のトイレが設置されている場合に、トイレの一部を廃止し、または倉庫等他の用途に転用することは、趣旨を踏まえれば不適切な対応であり許容されません。

さらに、新たに作業場を設ける場合、その作業場で同時に就業する労働者の数が常時10人以内であっても、あらかじめ男女別のトイレを設置しておくことが望ましいとされます。

 

<独立個室型のトイレ>

男女別のトイレを設置したうえで、バリアフリートイレなど独立個室型のトイレを設置する場合は、男性用個室、男性用小便器および女性用個室をそれぞれ一定程度設置したものとして取り扱えるようになりました。

1個の独立個室型のトイレを男女が共用することに伴う風紀上の問題や心理的な負荷については、消臭や清潔の保持についてのマナー、サニタリーボックスの管理方法、盗撮等の犯罪行為の防止措置、異常事態発生時の措置(防犯ブザーの設置、管理者による外側からの緊急解錠等)など、トイレの使用や維持・管理に関するルール等について、衛生委員会等で調査審議、検討等を行ったうえで定めておくことが望ましいとされます。

これは、非常事態を想定した対応についても同様です。

 

<救急用具>

事業者が備えなければならない救急用具品目を定める規定は削除されました。

事業場で発生することが想定される労働災害等に応じ、応急手当に必要なものを備え付けることになります。

この場合、マスクやビニール手袋、手指洗浄薬等、負傷者などの手当の際の感染防止に必要な用具および材料も併せて備え付けておくことが望ましいとされます。

 

<照度の基準>

作業の区分が「一般的な事務作業」「付随的な事務作業」の2区分に変更されました。

ここで「一般的な事務作業」とは、改正前の「精密な作業」および「普通の作業」に該当する作業を、「付随的な事務作業」とは、改正前の「粗な作業」に該当する作業をいいます。

照度基準については、一般的な事務作業においては300ルクス以上、付随的な事務作業においては150ルクス以上です。

2021/12/08|1,195文字

 

パワハラの加害者に注意できる職場にするための準備https://youtu.be/_c02jzqD_Qs

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<加害者への責任追及>

パワハラについて社内に相談窓口があれば、その相談窓口に事実を伝えます。

もし相談窓口が無ければ、加害者の直属上司に事実を伝えます。

これによって期待される会社の対応は、加害者から被害者への謝罪を促すこと、就業規則の規定に沿った懲戒処分、加害者の人事異動などです。

しかし、会社の対応が無い場合や、不適切・不十分と感じられる場合には、加害者に対する損害賠償の請求が考えられます。

 

【民法第709条:不法行為による損害賠償】

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

少なくとも、精神的な損害を受けているでしょうから慰謝料の請求ができます。

この他、治療費や勤務できなかったことによる賃金の損失などが考えられます。

 

<会社への責任追及>

会社は従業員に対し、パワハラに走らないように指導すること、従業員がパワハラを受けずに勤務できる環境を整えることについて責任を負っています。

法的には、使用者責任と安全配慮義務です。

 

【民法第715条:使用者等の責任】

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。

3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 

【労働契約法第5条:労働者の安全への配慮】

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

労働契約法には、損害賠償のことが書かれていませんが、労働契約法第5条違反で従業員の権利が侵害されると、先に出てきた民法第709条によって損害賠償を請求できることになります。

 

<加害者への制裁>

ここまでの内容は、パワハラについて責任を負う人たちに損害賠償を請求するという民事上の話です。

これとは別に、法令によって加害者に制裁が加えられる場合があります。

 

パワハラは通常、次の2つが一体となって同時に行われるものです。

・業務上必要な叱責、指導、注意、教育、激励、称賛など

・業務上不要な人権侵害行為(犯罪行為、不法行為)

 

この人権侵害行為が犯罪にあたる場合には、警察に被害を申し出て対応してもらうこともできます。

パワハラに伴う犯罪としては、刑法に規定されているものだけでも、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪、侮辱罪などが考えられます。

 

加害者に制裁する権限は、国家権力に独占されています。

たとえパワハラで辛い思いをしても、加害者に直接仕返しするようなことは許されません。

その仕返しが犯罪となることもあります。

2021/12/07|967文字

 

こんな求人広告で大丈夫?https://youtu.be/kRYQfahG4Mg

 

<年齢制限は原則禁止>

労働者の募集と採用の際には、原則として年齢を不問としなければなりません。

これは、形式的に求人票や求人広告で「年齢不問」とすれば良いということではありません。

年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に不採用としたりすることは違法です。

また原則として、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。

 

【違法な求人条件の例】

・ハードな重労働について40歳以下で募集・若者向けの洋服の販売スタッフについて30歳以下で募集

・PC操作や夜間業務の多い職種について若い人限定で募集

・一定の経験が必要な指導業務について50歳以上で募集

 

<認められている例外>

合理的な理由により、例外的に年齢制限が許される場合があります。

例外的に年齢制限を行う場合は、法定の例外事由に該当する必要があります。

また、年齢の上限を定める場合には、求職者、職業紹介事業者等に対して、その理由を書面や電子媒体により提示することが義務づけられています。

ただし、年齢制限が65歳以上の場合には、対象外となっています。

〔高年齢者雇用安定法第20条第1項〕

 

例外となる場合(雇用対策法施行規則第1条の3第1項)

例外事由 1号 定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 2号 労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合
例外事由 3号 イ 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ロ 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、 期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
例外事由 3号 ハ 芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
例外事由 3号 ニ 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる者に限定して募集・採用する場合

 

これらの例外事由は、厳密に解釈されていますので、安易な拡張解釈は許されません。

しかし、年齢制限の必要を感じる理由を分析してみれば、例外事由に該当する場合も多いのではないでしょうか。

2021/12/06|1,141文字

 

会社から従業員に知らせる義務https://youtu.be/jXROFAMORWQ

 

<今回の育児・介護休業法改正の趣旨>

今回の改正は、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするためのものです。

◯令和4(2022)年4月1日施行

・育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け

・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

◯令和4(2022)年10月1日施行

・男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(出生時育児休業。(通称:産後パパ育休))

・育児休業の分割取得

◯令和5(2023)年4月1日施行

育児休業の取得の状況の公表の義務付け

 

<実務上の対応>

上記のように、3回に分けて施行されます。

令和4(2022)年のうちに、2回に分けて就業規則を変更していくことになるでしょう。

しかし、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認を、令和4年4月から唐突に始めると、あらぬ誤解を生むことになりかねません。

特に男性の育児休業取得実績が殆どない職場で、男性が育児休業の取得を打診されれば、あれこれ勘違いする恐れがあります。

かなり前もって、社員全体に対する事前の説明をしておく必要があります。

 

<個別の周知と意向確認の措置>

労働者から、本人または配偶者が妊娠または出産した旨等の申出があった場合に、その労働者に対して、育児休業制度等について周知するとともに、制度の利用意向を確認するための措置を実施する必要があります。

令和4(2022)年10月1日からは、出生時育児休業も含みます。

取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。

周知事項は、次の4項目です。

・育児休業・出生時育児休業に関する制度

・育児休業・出生時育児休業の申し出先

・育児休業給付に関すること

・労働者が育児休業・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取扱い

これらの個別周知および意向確認の措置は、面談または書面交付(郵送可)によって行います。

ただし、労働者が希望した場合には、FAXや電子メール等によって行うこともできます。

 

<妊娠・出産等の申出方法>

法令では、妊娠・出産等の申出方法を書面等に限定していないため、社内規程に特別な定めが無ければ口頭でも可能です。

事業主が申出方法を指定する場合は、予め明らかにしておく必要があります。

この場合、その方法については、申出を行う労働者にとって過重な負担を求めることにならないよう配慮しつつ、適切に定めることが求められます。

労働者が措置の適用を受けることを、抑制するような手続を定めることは認められません。

また、指定された方法によらない申出でも、必要な内容が伝わるものである限り、措置を実施する必要があります。

2021/12/05|1,872文字

 

賃金についての法規制https://youtu.be/X9e4g4Ae8NQ

 

<理論上許される場合>

「女性社員だけ昇給しない」と決めて昇給しないのであれば、一般には労働基準法違反です。

ただし、男女平等の人事考課により、合理的な昇給制度を適用した結果、偶然、女性社員だけが昇給しなかったというのは、適法ということになるでしょう。

また、社内で男性社員の賃金水準が女性社員に比べて低い場合に、格差を是正するための措置であれば、許される場合もあります。

理論上は、この通りです。

しかし、会社側が適法性を証明するのは容易ではありません。

また、例外的に適法性を証明できたとしても、その正当性は社内でも世間でも支持されないでしょう。

 

<法令の規定>

憲法の平等規定を受けて、労働基準法に男女同一賃金の原則規定があります。

 

 日本国憲法第14条第1項

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

 労働基準法第4条

使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

 

<裁判所の判断>

日本シェーリング事件の平成元年12月14日最高裁判決では、「賃上げは稼働率80%以上の者とする」旨の賃上げ協定の中の条項に関し、生理休暇、産休、育児時間による欠務を欠勤として算入するとの取扱がなされたことに対し、これらの欠務のため賃上げを得られず、また、旧賃金を基礎とした一時金の支給しか受けられなかった女性社員らが、会社に対し、賃金差額、債務不履行ないし不法行為により受けた損害の賠償を求め勝訴しています。

この判決は、賃上げ協定の中の条項が公序に反することを理由としています。

公序というのは、公の秩序です。

男女平等という公の秩序に反する条項は無効だということです。

 

民法第90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

<政府の方針>

平成22(2010)年8月31日には、厚生労働省が「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」を作成し公表しています。

ガイドラインの趣旨を、次のように説明しています。

 

男女雇用機会均等法などの法整備が進み、企業でも女性の活躍の場が広がっていますが、男女間賃金格差は先進諸外国と比べると依然、大きい状況にあります。また、多くの企業が男女間賃金格差を計算したこともないとの実態もあります。今回作成したガイドラインは、賃金や雇用管理の在り方を見直すための視点や、社員の活躍を促すための実態調査票といった支援ツールを盛り込んでいます。現実的な対応方策を示すことで、労使による自主的な見直しの取組を支援していきます。

 

ガイドラインのポイント

1.男女間格差の「見える化」を推進 男女での取扱いや賃金の差異が企業にあっても、それが見えていない場合もあると考えられる。男女間格差の実態把握をし、取組が必要との認識を促すため、実態調査票などの支援ツールを盛り込んだ。

2.賃金・雇用管理の見直しのための3つの視点

 

(1)賃金・雇用管理の制度面の見直し

 <具体的方策>

 ・ 賃金表の整備

 ・ 賃金決定、昇給・昇格の基準の公正性、明確性、透明性の確保

 ・ どのような属性の労働者にも不公平の生じないような生活手当の見直し

 ・ 人事評価基準の公正性、明確性、透明性の確保、評価結果のフィードバック

 ・ 出産・育児がハンデにならない評価制度の検討

 

(2)賃金・雇用管理の運用面の見直し

 <具体的方策>

 ・ 配置や職務の難易度、能力開発機会の与え方、評価で、男女で異なる取扱いをしていないかを現場レベルでチェック

 ・ コース別雇用管理の設定が合理的なものとなっているかを精査

 ・ コースごとの採用や配置は、先入観やこれまでの実績にとらわれず均等に実施

 

(3)ポジティブ・アクションの推進

 <具体的方策>

 ・ 女性に対する社内訓練・研修の積極的実施や、基準を満たす労働者のうち女性を優先して配置、昇進させる等のポジティブ・アクションの実施

 

<解決社労士の視点から>

現在は、働き方改革関連法の中で、同一労働同一賃金が求められています。

家庭の中で女性の果たす役割を固定的に捉え、これを前提として賃金を決定するというのは、同一労働同一賃金の考え方に反します。

すでに男女同一賃金は「当たり前のこと」として、次の段階に入っています。 

「女性社員だけ昇給しない」という事実は、それ自体が適法な場合であっても、社会の大きな流れには逆らっているわけですから、お客様を含めて世間から支持されるものではありません。

2021/12/04|1,349文字

 

<法改正のポイント>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが以前の労働基準法の規定内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うようになりました。

しかし、その対象者は限定されています。

 

<対象となる労働者>

年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者が対象です。

付与された日数が少ない労働者の場合には、自由に取得日を指定できる日数が少なくなってしまうことが配慮されています。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

 

この【図表】の中で、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である」のは、赤文字の部分です。

これをまとめると、次のようになります。

 

年次有給休暇の付与日数が10日以上のパターン

・週5日出勤の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間以上の従業員が勤続6月以上になった場合

・週4日出勤で週所定労働時間が30時間未満の従業員が勤続3年半以上になった場合

・週3日出勤の従業員が勤続5年半以上になった場合

 

ここで勤続期間は、最初の入社から通算しますから、パート社員などで期間を区切って契約する有期労働契約であっても、契約更新でリセットされません。

 

<使用者に求められること>

労働者が6か月間継続勤務したときに年次有給休暇が付与され、その後1年間勤務するごとに年次有給休暇が付与されるというのが労働基準法の定めです。

この基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

 

基準となるのは週所定労働日数と週所定労働時間です。

これが確定できないと、年次有給休暇の付与日数も決まりません。

未確定ならば、必要に応じ専門家に相談するなどして確定させてください。

2021/12/03|1,962文字

 

マイナスの給料って?https://youtu.be/1O5LDpm6hAs

 

<給与から控除(天引)できるもの>

給与から控除できるものとしては、次のものが挙げられます。

・法令に別段の定めがある場合(所得税法による所得税等の源泉徴収、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険徴収法による保険料の控除)

・労使協定(労働組合または労働者の過半数を代表する者と使用者との協定)によるもの

・欠勤控除(休んだ分を差し引く)

・減給処分(これは厳密には控除ではなく給与そのものの減少)

このうち欠勤控除だけで、給与の総支給額がマイナスになってしまう場合には、給与計算の方法が不合理だと考えられるので改める必要があるでしょう。

 

<欠勤控除>

遅刻・早退・欠勤によって労働時間が減少した分だけ、給与を減らすことをいいます。

時間給であれば、労働時間分の賃金を計算しますから欠勤控除は問題となりません。

主に月給制の場合に問題となります。

また、「完全月給制」のように欠勤控除をしない場合には問題となりません。

 

欠勤控除について、労働基準法その他の法令に規定はありません。

しかし一般に、労働者の労務の提供がない場合には、使用者は賃金を支払う義務がなく、労働者も賃金を請求できないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が認められています。

この原則は、労務の提供と賃金の支払いが対応するという労働契約の性質上、当然に認められているものです。〔労働契約法第6条〕

ですから、欠勤控除をすることは違法ではないのですが、計算方法について就業規則等に明記しておく必要はあります(絶対的必要記載事項)。

 

<欠勤控除の単価>

欠勤控除を算出する場合、まず単価である「時間給」を計算します。

月給を、1か月の所定労働時間で割った金額が「時間給」となります。

1日当たりの所定労働時間に、1か月平均の所定労働日数をかけるなどして、1か月の所定労働時間を計算します。

1か月の所定労働時間が計算できないのは、労働条件通知書の内容が決まっていないという状態です。

トラブル防止のためにも労使で合意して決めておきましょう。

 

<減額方式の場合>

月給から欠勤時間分の賃金を控除する計算方法です。

これは欠勤控除の考え方を、そのまま計算方法に反映させているので、多くの会社で用いられています。

しかし、31日ある月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を超える場合、1か月すべて欠勤すると給与がマイナスになるという不都合が生じることがあります。

このとき、対象者からマイナス分の給与を支払ってもらったり、翌月の給与から控除したりしている会社もあるようですが、明らかに不合理でしょう。

ですから、減額方式でマイナスになった場合にはゼロとして扱い、会社からの支払も労働者からの徴収もないこととするなど、規定に例外を設けるなどの工夫が必要です。

 

<加算方式の場合>

出勤した分の賃金を時間給で計算する方法です。

これなら給与がマイナスになることはありません。

しかし、28日しかない月など、その月の所定労働日数が1か月平均の所定労働日数を下回る場合、支給額が大幅に減ってしまいます。

減額方式よりも、明らかに不利になります。

 

<合理的な併用方式>

たとえば、減額方式と加算方式の両方で計算して、多い金額の方で給与を支給するなど、2つの方式を併用することによって、欠点を解消することができます。

 

<月間所定労働時間の変動>

なお、1か月の所定労働時間が、毎月の出勤日数や暦上の日数によって変動する会社もあるようです。

この場合には、欠勤控除の不合理が発生しにくくなります。

しかし、月給の時間単価が変動するというのでは、給与計算が複雑になりますし、同じ時間の残業手当が月によって変動するのなら、単価の安い月には仕事を溜めておいて、単価の高い月に集中して残業するという困った現象も起こりかねません。

年次有給休暇の取得も有利な月に集中しそうです。

毎月変動するのでは名ばかり「所定労働時間」になってしまいます。

月々の出社予定に基づく「予定労働時間」と、給与計算に用いる「所定労働時間」とを混同しているようにも見えます。

やはり、1か月の所定労働時間は一定にすべきでしょう。

 

<他の控除と欠勤控除が重なってマイナスの場合>

社会保険料など法定の項目を給与から控除することは法律上問題ありません。

しかし、欠勤控除をしたら給与が少額となり、ここから社会保険料を控除するとマイナスになってしまう場合、これでよいのか迷ってしまいます。

それでも、欠勤控除だけでマイナスになる場合とは違い、マイナス分を別途労働者に請求することは問題ありません。

こうした例外的な場合についてまで、就業規則に規定しておくことは稀でしょうから、マイナス分をどのように支払ってもらうかなど細かいことは、会社と労働者とで話し合って決めればよいでしょう。

2021/12/02|914文字

 

パワハラしやすい人https://youtu.be/9dnI-MD1zkQ

 

<リスク回避のため>

パワハラに走る人には特徴があります。

こうした特徴の現れている人に、部下や後輩を与えるとパワハラを誘発することになります。

リスク回避のためには、これらの特徴が消えるまで教育研修などを行い、人事異動を慎重にするなどの配慮が必要でしょう。

 

<善悪判断の自信過剰>

「自分は正しい」という思い込みが強いという特徴があります。

ニュースに接したとき、「誰が正しい、誰が悪い」ということを口にします。

自分の社内での手柄について、繰り返し話題にします。

グループ研修などを通じて、「常に自分が正しいわけではない」ことを理解させましょう。

 

<主体的な制裁意識>

「悪いことをした人に対しては、自分が制裁を加えるべきだ」と考える特徴があります。

社内で不都合なことをした人に対しては、直属上司が指導すべきですし、社内規定に従った懲戒が行われるべきです。

しかし、他部署の人に注意したり、街中で赤の他人に怒ったりするのは、この特徴の現われです。

組織論や懲戒が行われる場合の段取りについて、理解させる必要があります。

 

<原因の誤判断>

自分の行為から生じた不都合な結果について、他人の行為が原因であると考える特徴があります。

自分が会議室で花瓶を倒して割った場合には、「こんな所に花瓶を置いた人が悪い」と考えます。

他人が会議室で花瓶を倒して割った場合には、「不注意で花瓶を割った人が悪い」と考えます。

こうした考え方の矛盾と問題点について、本人に自覚させなければなりません。

 

<器が小さい>

人格的に未成熟で心に余裕が無いという特徴です。

他人の成功を喜べない、他人をほめることができない、人の好き嫌いが激しい、自分と家族を優先して考える、自分に利益が無いことには消極的、お金に細かい、他人を批判するが自分への批判は気にする、好意的なアドバイスを受け入れないなどの傾向が見られます。

これでは、部下や後輩がついてきませんから、イライラしてパワハラに走るのも当然でしょう。

この特徴は、家庭内の「しつけ」の現われでもあり、社内での教育研修で改善するのは大変かもしれません。

人事考課の評価項目に入れておき、自覚を促して、自ら改善していただくことも考えましょう。

2021/12/01|1,474文字

 

従業員から「解雇してほしい」と言われたらhttps://youtu.be/7zcxjG9_gxw

 

<問題社員かもしれない>

採用面接では人柄の良さを見せ、履歴書や職務経歴書によると経験やスキルは申し分の無いものだった。

そして、試用期間中は期待通りの働きぶりを見せ、皆「良い人材に来てもらえた」と喜んでいた。

ところが、試用期間が終わり本採用されると、様々な理由で遅刻が目立ち、体調不良を理由に早退も多い。

仕事のやり直しが多く、残業も長時間に及んでいる。

上司や同僚には「なかなか希望通りに年次有給休暇が取得できないですね」「◯◯さんは三六協定の限度を超えて残業していますね」など、批判するかのような発言が増えてきた。

 

<性悪説の社長>

うっかり問題社員を採用してしまったようだ。

遅刻や早退が多いけれど、会社に申し出た理由もどうせ嘘だろう。

そもそも履歴書や職務経歴書の内容も怪しいもんだ。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

私自らこの問題社員と面談して退職勧奨しよう。

 

こうした考えを持って面談すれば、「遅刻の本当の理由は何だ?」「体調不良で早退することが多いのだから治療に専念してはどうか?」「履歴書や職務経歴書の内容に誤りが無いか、これまでの勤務先に確認してみても良いか?」「この会社は自分に向いていないと思わないのか?」と詰問調になってしまいます。

そして、最後には「この会社を辞めて別の仕事をしてはどうか?」と退職勧奨することになります。

1回の面談で問題社員から退職の申し出があればともかく、面談を繰り返すうちに、内容がエスカレートしていくことが多いものです。

こうなると、思惑通り問題社員から退職願が出てきたとしても、やがて代理人弁護士から内容証明郵便が届いたりします。

退職の強要があったと主張され、未払賃金の支払や慰謝料など多額の金銭を請求されてしまいます。

 

<性善説の社長>

問題社員のレッテルを貼られてしまった者がいるようだ。

遅刻や早退が多いけれど、遠慮して会社に本当の理由を言えないのだろうか。

履歴書や職務経歴書の内容からすると、実力を発揮できていない。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

対応について人事部長と協議し、この社員の救済に乗り出そう。

 

こうした社長の方針に基づき、人事部長が本人と面談します。

「家庭の事情などで定時に出勤するのが難しいようなら、時差出勤を認めるので申し出てほしい」

「体調不良による早退が見られるが、通院などで必要があればフレックスタイム制の適用を考えたいので相談してほしい」

「過労を避けるため、勤務が安定するまで残業禁止とします」

「人事考課の結果を踏まえ、各部門の協力を得て、特別研修を実施することになった。これで、あなたは本来の力を発揮できるようになるだろう」

「末永く会社に貢献できるよう、是非とも頑張ってほしい」

会社からこのような対応を取られたら、本当の問題社員は、楽して残業代を稼げない、研修で努力を強いられサボれないなど思惑が外れてしまいます。

自ら会社を去っていくことでしょう。

名ばかり問題社員であれば、社長の期待に応えて戦力化される筈です。

 

<解決社労士の視点から>

性悪説で行けば、短期間で決着を見ることができますし、会社の負担は少なくて済むのかもしれません。

しかし、労働審判や訴訟など深みにはまってしまうリスクも高いのです。

その問題社員からの情報で、会社の評判も落ちることでしょう。

そして、対象者が問題社員ではなかった場合には、貴重な戦力を失うことになるのです。

性善説で行けば、会社の負担は大きいのですがリスクは抑えられます。

どちらの方針で行くか、長期的視点に立って判断していただけたらと思います。

2021/11/30|1,751文字

 

<再雇用後の賃金>

会社と労働者とで定年後も働き続けることの合意がなされる場合に、労働条件については、どうしても賃金ばかりが重視されがちです。

再雇用の実績が多い会社では、定年前の賃金のおよそ何パーセントという相場の形成があるでしょうから、賃金についての合意の形成は比較的容易かもしれません。

年金については、性別と生年月日によって支給開始の時期が異なりますし、60代前半と65歳以降とでは支給額が大きく異なります。

また、配偶者の生年月日によって、加給年金額や振替加算についても違いが出てきます。

これらを踏まえて、期間ごとの賃金変動まで合意しておくこともあります。

 

<年次有給休暇>

定年前は、毎年20日の年次有給休暇が付与される一方で、2年前に付与された年次有給休暇は時効消滅するという実態があると思われます。

しかしこれは、週5日勤務を前提としているわけです。

定年後の再雇用で、所定労働日数や所定労働時間が変われば、年次有給休暇の付与日数は変わるかもしれません。

変わるのであれば、これについても再雇用対象者に確認しておく必要があります。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表】のとおりです。週所定労働日数が4日で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日の欄が適用されます。

 

【図表】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

「勤続期間」は定年前と定年後を通算します。定年後の再雇用だからといって、定年前の年次有給休暇が自動的に消滅するわけではありません。

 

さて、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

これは労働基準法の改正によるものです。

年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、基準日から1年以内の期間に、年次有給休暇のうち5日については、その取得を確実にしなければなりません。

「年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者」という限定がありますので、この部分についても再雇用対象者にあらかじめ説明が必要でしょう。

 

<社会保険>

社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が常時雇用者(正社員など)の4分の3以上というのが原則の基準です。

ただし、大企業などで特定適用事業所となっている場合には、1週間の所定労働時間が20時間以上で加入となります。

 

この基準により社会保険に加入しない場合には、扶養家族(被扶養者)を含めて国民健康保険の保険料を支払うことになりますし、扶養している配偶者は国民年金保険料を支払うことになります。

定年前の健康保険であれば、扶養家族の分の保険料は発生しなかったのに、国民健康保険に切り替わると、扶養家族扱いにはならず保険料が高くなることも多いでしょう。

また国民年金に切り替わると、扶養している配偶者についても「第三号被保険者」ではなくなりますので国民年金保険料がかかることになります。

 

社会保険料は高額ですから、社会保険の加入基準との関係で、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数を決める必要があります。

 

<雇用保険>

雇用保険の加入基準は、会社の規模にかかわらず1週間の所定労働時間が20時間以上となっています。

20時間を下回ると、安定した雇用関係に無いということで、雇用保険では「離職」という扱いになります。

なお、満64歳以上の労働者の雇用保険料についての免除制度は令和2(2020)年4月1日をもって廃止されました。

 

人手不足を背景として、定年後の再雇用が盛んになっています。これに伴うトラブルも増加しています。会社に長年貢献してきた従業員とのトラブルは、会社にとって大きな打撃となってしまいます。十分な話し合いをもって労働条件を決定するようお願いいたします。

<みなし規定の効果>

法令の中に「みなす」「推定する」という言葉が使われています。

日常会話の中では厳密に区別されませんが、条文の解釈としては大きな違いが出てきます。

「みなす」という表現が使われている規定は、「みなし規定」と呼ばれます。

ある事実があった場合に、一定の法的効果を認めるという規定です。

その事実さえあれば、自動的に法的効果が発生します。

「例外的な事情があって法的効果を否定したい」と考えて証拠を集めても、法的効果を否定することができません。

「推定する」という表現が使われている「推定規定」であれば、実際はその推定が不合理であることを証明して、法的効果の発生を阻止することができるのですが、「みなし規定」では覆すことができないのです。

 

<労働法とみなし規定>

労働法では、主に労働者を保護するために「みなし規定」が置かれています。

たとえば、労働基準法第38条第2項には次の規定があります。

 

坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。

 

つまり、賃金を計算するときには、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までのすべての時間を労働時間として計算しなければなりません。

たとえ、1日2時間の休憩時間を設けていたとしても、休憩が無かったものとして計算します。

日当を設定する場合には、1時間あたりの最低賃金に、このルールで計算した労働時間をかけ合わせて、最低賃金法違反にならないかチェックする必要があります。

 

また、年次有給休暇の付与基準である出勤率について、労働基準法第39条第8項は次の規定を置いています。

 

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

つまり、法律によって休業することが認められた日については、すべて出勤したものとみなして出勤率を計算することになります。

 

労働契約法にも、有期労働契約の無期転換(第18条第1項)と更新(第19条)に「みなす」という規定があります。

 

「常識的に見て」「実際には」などの理由で法的効果を否定できないところに、みなし規定の怖さがあります。

2021/11/28|2,024文字

 

<民法の規定>

正社員のように、期間を定めずに雇用した従業員については、「使用者がいつでも解雇できる」と民法が規定しています。

 

【民法第627条:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

一方で、パート社員など、期間を定めて雇用した従業員については、「やむを得ない事由があれば期間の途中でも解雇できる」と規定しています。

 

【民法第628条:やむを得ない事由による雇用の解除】

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

そして、雇用期間の満了とともに雇用契約を終了させることについては、特別な制約がありません。

ただ、雇用の期間が満了した後、従業員が引き続きその労働に従事する場合に、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、期間満了前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定されます。〔民法第629条第1項〕

 

<労働基準法の規定>

民法の特別法である労働基準法には、解雇予告の規定があり、使用者が従業員を解雇しようとする場合は、遅くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定しています。〔労働基準法第20条第1項本文〕

そして、解雇の禁止についていくつか規定しています。〔労働基準法第19条など〕

これだけであれば、解雇禁止にあたるケースを除き、解雇が困難である理由は見当たりません。

 

<司法判断による修正>

かつての日本企業では、年功序列の終身雇用制が採られていました。

年功序列であれば、若い時の給与・賞与は働きぶりに見合わないほど低く抑えられています。

それが、勤続年数が長くなるとともに、働きぶりに見合う収入となり、定年年齢が近づくと業務内容の割に高い収入となります。

つまり、若い頃のマイナスを、中高年になってから取り戻すという制度です。

退職金制度も年功序列なので、定年年齢まで勤め上げずに退職すると、給与・賞与だけでなく退職金の点でも不利になってしまいます。

そもそも、終身雇用制なのですから、企業は簡単には解雇しないというのが大前提となっています。

こうした企業で、若いうちの解雇は、人生設計を狂わせる大打撃となるわけですから簡単には許されません。

つまり、年功序列の終身雇用制の下での解雇は、余程の理由が無い限り、権利の濫用となって許されないというのが裁判所の判断として定着しました。〔日本国憲法第12条、民法第1条第3項〕

 

<労働契約法の成立>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です(平成20(2008)年3月1日施行)。

解雇など個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。

個別労働紛争というのは、労働組合が絡まない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。

そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を、条文の形にまとめたのが労働契約法です。

労働契約法は、解雇について次のように規定しています。

 

【労働契約法第16条:解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の解釈は、堂々巡りになりますが、過去の裁判例にあらわれた理論を参考に行われることになります。

したがって、年功序列の終身雇用制を前提とした理論も、かなり含まれてしまいます。

こうして、「解雇はむずかしい」と言われるようになっています。

 

<解決社労士の視点から>

年功序列や終身雇用制はすでに崩壊しているとも言われています。

今後、解雇の有効性が争われる裁判の中で、企業側が「自社は終身雇用を前提としない、年功序列ではない給与体系、退職金制度をとっているので、今回の解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」という主張を行っていけば、判例理論も緩やかに変更されて、「日本は解雇がむずかしい」というのも解消されていくのではないでしょうか。

労働市場や企業の実情の変化に合わせて解釈を変更できるように、労働契約法第16条の規定がやや抽象的な表現となったのだと考えることもできるでしょう。

2021/11/27|1,566文字

 

残業の削減方法https://youtu.be/4zoPGEeciCY

未払残業代の経済的リスクhttps://youtu.be/lf4nqYYECFs

 

<定額(固定)残業代>

定額(固定)残業代は、1か月の残業代を定額で支給するものです。

基本給に含めて支給する方式と、基本給とは別に定額残業手当として支給する方式があります。

残業時間を減らしても給与が減らないので、長時間労働の抑制になります。

会社にとっても、人件費が安定するので人件費の予算や計画が立てやすくなります。

 

<適法性>

かつては違法な運用が横行していたために、定額(固定)残業代そのものが悪であるかのように言われていました。

しかし、適法に運用する会社が増えてきており、必ずしも悪いものとは見られなくなりました。

ハローワークの求人票でも、正しく内容を明示すれば問題無いものとして扱われることが多くなっています。

適法な導入と運用の概要は次のとおりです。

まず、残業について1か月の基準時間を定めて、これに応じた定額の残業代を設定します。

基準時間を下回る時間しか残業が発生しない月も、定額の残業代は減額せずに支給します。

基準時間を上回る時間の残業が発生した月は、定額の残業代を上回る部分の残業代を給与に加えて支給します。

賞与でまとめて支給することはできません。

深夜労働や休日労働の割増賃金は、別計算で支給する方式をお勧めします。

たしかに、深夜労働や休日労働の分も定額(固定)にすることは、理論的には可能です。

しかし、計算や運用が難しくなりますし、人件費が割高になるのでお勧めできません。

多くの労働基準監督署でも、このように指導しています。

 

<具体的な計算方法>

定額(固定)残業代の設定に必要な計算はやや複雑ですから、Excelなど表計算ソフトを活用した方が良いと思います。

ここでは、1日8時間、1週40時間、1か月の勤務日数が22日で月給が設定されている場合を例にとります。

残業の基準時間が30時間で、基本給+定額残業手当=25万円にしたいときは、

定額残業手当=基本給÷(8時間×22日)×1.25×30時間なので、

25万円-基本給=基本給×37.5÷176

基本給×(37.5÷176+1)=25万円

基本給=25万円÷(37.5÷176+1)

これを計算すると、206,089円となります。

定額残業手当は、25万円-206,089円=43,911円です。

206,089円の基本給の場合、1か月の勤務時間が8時間×22日=176時間なら、

30時間分の残業手当は、(206,089円÷176時間)×30時間×1.25=43,911円で計算の正しいことが確認できます。

※ただし実際の給与計算では、円未満の端数処理のルールがありますから、上記のとおりにいかない部分もあります。

 

<その他の注意点>

このとき注意したいのは、最低賃金です。

計算結果の基本給が、最低賃金×176時間を下回ると最低賃金法違反となります。

上記の例では、206,089円÷176時間=1,170円ですから、1時間あたりの賃金が1,170円となり、現在どの都道府県でも最低賃金を上回ります。

しかし、基本給+定額残業手当=20万円の場合を想定すると、1時間あたりの賃金が936円となり、東京都や神奈川県などでは最低賃金を下回ってしまいます。

これでは最低賃金法違反となってしまいます。

なお、基本給に定額残業代を含めたいときは、上記の基本給+定額残業手当を基本給として設定すればOKです。

この場合でも、きちんと内訳を表示する必要がありますから、本来の基本給分がいくらで、定額の残業代が何時間分でいくらなのかを対象者に明示しましょう。

さらに、残業時間が基準時間を超える場合に、残業手当を別途支給するときの基準額も示す必要があります。

何も示さないと、定額残業代を含んだ基本給をベースに残業手当を計算することになってしまいます。

これでは、想定外に人件費が膨らんでしまうので注意しましょう。

2021/11/26|973文字

 

採用面接で聞けないことhttps://youtu.be/RMwaAg-3wYY

採用面接で病気のことを聞くhttps://youtu.be/Z46t58AAV_U

 

<公正な採用選考の基本>

採用選考に当たっては、応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力のみを基準として行うことが基本です。

この基本から外れた採用面接を行ってしまうと、応募者からの口コミで会社の評判が落ちてしまうこともあります。

しかし、質問したわけではないのに、応募者の方から自発的に話したことを聞き取るのは問題ありません。

 

<ハラスメント発言は厳禁>

パワハラ、セクハラ、マタハラなどの発言は、確実に避けなければなりません。

もちろん、まだ労使関係にない応募者と会社との間で、厳密な意味でのハラスメントは生じないでしょう。

しかし、応募者に対してハラスメント発言をしてしまえば、セクハラなどが横行する会社であるという印象を与えることになります。

それでも、面接担当者が自分の子供のことについて世間話をしたのに対して、応募者が興味を示して自分の子供について話したのなら、自発的に話したものとして聞き取っても良いでしょう。

 

<思想信条にかかわる事項>

宗教、支持政党、人生観、生活信条、尊敬する人物、購読新聞・雑誌・愛読書などに関することは、面接で聞いてはいけません。

しかし、「何か趣味はお持ちでしょうか」と世間話をするのは問題ありません。

「読書です」という回答に対して、「どんな本を読みますか?」と尋ねるのは不適切です。

それでも、「私はマンガばかり読んでいますよ」という世間話に対して、「夏目漱石の作品が好きです」という回答を得るのは問題ありません。

 

<応募者に責任のない事項>

応募者の努力で改善できないことを尋ねるのは人権侵害にあたります。

たとえば、本籍・出生地に関すること、家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)、生活環境・家庭環境などに関することも、面接で聞いてはいけません。

採用が決まってから、社会保険の手続などに必要な範囲内で申告させるようにしましょう。

それでも、面接担当者自身のことや他の従業員のことについて世間話をすると、質問したわけではないのに応募者が自分自身の話をしてくることがあります。

採用選考に当たっては、応募者の適性・能力のみを基準として行うことが基本ですが、その参考資料として応募者の自発的な発言を活用することも可能でしょう。

2021/11/25|1,389文字

 

<骨太方針2021>

令和3(2021)年6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針2021日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。

この中で、選択的週休3日制について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図るとしています(23ページ(5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実)。

このことから、政府が選択的週休3日制を推進していくことは間違いありません。

 

<選択的週休3日制>

選択的週休3日制は、希望する従業員のみ週休3日制(週4日勤務)とすることができる制度です。

全社的に週休3日制とするものではありません。

また非正規社員は、元々勤務日数が少ない場合が多いので、基本的には正社員を対象としたものとなります。

 

<制度設計>

一口に選択的週休3日制と言っても、具体的には様々なタイプの制度が考えられます。

・対象者について、全員とする、特定の部署に限定する、上位役職者を対象外とするなど

・目的について、育児・介護・ボランティア・兼業などに限定する、限定しない

・期間について、期間限定とする、無期限に行う

・3日目の所定休日について、全員一律とする、会社が指定する、対象者の希望によるなど

・1日の所定労働時間について、8時間勤務とする、10時間勤務(週40時間)とするなど

・給与について、減額しない、8割程度に減額するなど

他にも、週単位・月単位で週休3日制を選択できるか、週休2日制に戻れるかなど、制度の導入にあたっては数多くのことを検討する必要があります。

 

<導入目的>

骨太方針2021でこの制度について述べられているのが、「(5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実」という項の中であることから、制度の導入目的が働き方改革の推進であることは明らかです。

つまり、選択的週休3日制を多様な働き方の実現ととらえており、ワーク・ライフバランスを意識するものであると考えられます。

この趣旨からすれば、労働時間が減少しても給与が減額されない制度が理に適っていることになります。

一方で、政府の思惑とは別にコロナ禍の影響もあって、人件費削減を目的として選択的週休3日制を導入する企業もあるでしょう。

この趣旨からすれば、給与が減額される代わりに、労働時間が減少する制度とすることになります。

 

<育児を理由に利用する場合>

育児を理由に週休3日制を希望する従業員の中には、子供を保育園に預けている人もいます。

親が週休3日制となると、保育に欠ける度合いが低減するため、子供を保育園に預ける場合の優先順位が下がり、預かってもらえなくなる可能性があります。

認可保育園では、この傾向が強いため念の為確認が必要でしょう。

 

<解決社労士の視点から>

選択的週休3日制を導入しても、希望者が少なければ所期の目的が果たされません。

反対に、希望者が多すぎても業務の正常な運営が困難となってしまう可能性があります。

制度の導入にあたっては、案の段階で、アンケートや聞取り調査を行い、従業員のニーズに合っているか、希望者が何人程度出るかを探っておいたほうが安全です。

 

2021/11/24|902文字

 

整理解雇の有効要件https://youtu.be/CazrPD2pm8Q

 

<整理解雇とは>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法律上の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。

会社が解雇を通告し、その通告を受け入れた退職者が、退職後数か月経過してから専門家に相談したところ「不当解雇であり解雇は無効だった可能性がある」と言われて、会社に異議を申し立てるということもあります。

退職の時点では、「早く転職先を見つけよう」など前向きな気持ちになっていたところ、なかなか仕事が見つからず経済的な不安も大きくなって、「あの解雇はおかしいのではないか」という疑問も膨らむようです。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇の具体的な有効要件は、次の4つの要素が最高裁判決の中で示されています。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく総合的に判断されます。

まず、経営上の人員削減の必要性です。会社の財政状況に問題を抱えていて、新規採用などできない状態であることです。

これは法的な判断というよりは、経営上の判断ですから、一応の必要性が認められればクリアできる基準です。

次に、解雇回避努力の履行です。配置転換や希望退職者の募集などの実施です。

これはかなり大きなウエイトを占めています。解雇に踏み切らなくても事業が継続できるのであれば、解雇は回避しなければなりません。

さらに、解雇対象者の人選の合理性です。差別的な人選は許されません。

ここは、人選基準を具体的に示して労働者全体に説明しなければならないところです。

最後に、手続の相当性です。事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

説明や協議は、回数が多く期間が長ければ誠実さも認められやすくなります。

2021/11/23|748文字

 

被災者が労災保険の手続に協力しないhttps://youtu.be/Hq1ulb5Kk0s

 

<従業員が拒むケース>

労災保険の手続をすれば、被災者は無料で治療を受けたり、賃金の一部が補償されたりします。

ところが、「自分の不注意でケガをしたのだから会社に迷惑をかけたくない」あるいは「面倒くさい」などの理由で、手続に必要な書類の作成に協力しない従業員もいます。

 

<被災者の権利ではあるものの>

労災保険による補償を受けるのは被災した従業員の権利です。

権利というのは、原則として行使するかしないかが権利者の選択に任されています。

この原則からすると、被災者が権利を放棄している以上、何ら問題は無いようにも思われます。

しかし、使用者は労働者を労務に従事させることにより事業を営んでいるので、労働者の業務上のケガや病気については、本来、使用者が補償する責任を負っています。〔労働基準法第75条以降〕

ただ、労災保険による補償がある場合には、その範囲で責任が免除されます。〔労働基準法第84条第1項〕

ですから、被災者本人か労災手続を拒んでいる場合に手続を進めなければ、使用者には労働基準法上の補償責任が残ってしまいます。

ただし、これは業務上のケガや病気についての補償の場合であって、通勤災害については労働基準法上も使用者が責任を負いませんので当てはまりません。

 

<被災者を説得するために>

まず、手続を速やかに進めないと、労災隠しを疑われるなど会社が迷惑するという説明が必要でしょう。

また、労災手続をすることによって治療費がかからなくなること、手続をしない場合、健康保険が適用されないので、3割ではなく治療費の全額が自己負担となること、労災なのに健康保険証を呈示して治療を受ければ一種の保険詐欺になることも説明しましょう。

さらに休業補償がある場合には、1日あたりの具体的な金額を示して説明することも有効です。

2021/11/22|1,484文字

 

<こだわりの原因>

傷病手当金を受給できないケースであるにもかかわらず、従業員が受給を希望し、会社に協力を求めてくることがあります。

会社から「今回のあなたの場合には、傷病手当金を受給できないので、会社は手続に協力することができません」と伝えても納得せず、受給にこだわることがあります。

これには、次のような理由が考えられます。

・「傷病手当金支給申請書」の用紙を、ネットでダウンロードするなどして従業員自身で準備し、診察した医師に「療養担当者記入用」の「療養担当者が意見を記入するところ」を記入してもらった。記入してもらうのに文書料を負担しているので、これが無駄になるのは嫌だ。また、医師が記入してくれたのだから、傷病手当金をもらえるはずだと思う。

・健保協会に問い合わせたり、ネットで調べたりして、休業1日につきいくらの傷病手当金を受給できるかを確認し、自分の受給額を計算済である。

・会社が協力してくれないことについて、健保協会などの保険者や社会保険労務士などに相談したところ、「会社には協力する義務がある」という回答だった。

・休業中は無給なので、社会保険料や住民税を支払うために、なるべく早く傷病手当金を受給したいという焦りがある。

 

<傷病手当金を受給できない原因>

傷病手当金の受給には条件があるのですが、これを確認せず、条件を満たしていないのに手続を進めようとしていることがあります。

これには、次のような理由が考えられます。

・3日を超える休業をしていない。特に、医師が10日間の労務不能を証明したのに対し、本人が無理をして3日間しか仕事を休んでいないようなケースでは、実態としての3日間の休業が優先されるので受給できないことになる。

・私傷病ではなく、業務災害や通勤災害による傷病なので、健康保険の適用対象外である。

・医師の診断を受けずに自己判断で休業し、市販薬を使用しながら自宅療養し、回復とともに出勤を再開した。この場合、医師による労務不能の認定が受けられないので、傷病手当金の手続ができない。

 

<説明の失敗>

事実は「出勤のため自転車に乗っていたところ、雨上がりのマンホールの蓋で滑って転び足を骨折した」のだとしても、けがをした従業員が医師に対して「自転車に乗っていてころんだ」とだけ話せば、医師は私傷病だと判断するかもしれません。

この場合、「傷病手当金支給申請書」に記入するのは自然な流れです。

傷病手当金の受給を希望する従業員は、直属上司に相談するかもしれません。

その上司に知識が不足していれば、あやふやな説明に終始してしまうことになります。

この場合には、上司が詳しい人に相談せず自己流の説明をして失敗しているわけです。

また、健保組合や社会保険労務士に相談した場合でも、会社が手続に協力しない不満を述べるだけで、傷病の原因についての具体的な説明が無ければ、誤った回答が出される危険があります。

 

<会社からの正しい説明>

会社が従業員から傷病手当金の相談を受けたなら、社内外の専門家がご本人に聞き取りを行い、適確な説明をする必要があります。

特に、ご本人の勘違いで傷病手当金の手続を進めるつもりになっていた場合には、より一層丁寧な説明が必要となります。

 

<解決社労士の視点から>

従業員の勘違いに起因するものであっても、無駄な出費が発生した場合には、会社に対する不信感が発生することもあります。

健康保険の傷病手当金や高額療養費、労災保険の給付、育児・介護関連については、一定の頻度で発生しますから、社内での相談窓口を明確にしておくこと、最低限の知識は社内で共有することが必要です。

2021/11/21|946文字

 

<ダイバーシティ(Diversity)>

ダイバーシティは「人々の間の違い」「多様性」というのが本来の意味です。

日経連の定義は「異なる属性(性別、年齢、国籍など)や従来から企業内や日本社会において主流をなしてきたものと異なる発想や価値を認め、それらを活かすことで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し利益の拡大につなげようとする経営戦略。また、そのために、異なる属性、異なる発想や価値の活用をはかる人事システムの構築に向けて連続的かつ積極的に企業が取り組むこと」となっています。

私の理解では「色々な違いのある人々であっても、同じ職場に平等に受け入れ、一緒に働くからには組織の一員として平等に扱う」ということを、ダイバーシティと言っていると感じます。

平等の原理のあらわれであるという理解です。

 

<インクルージョン(Inclusion)>

インクルージョンは「包括」「包含」「一体性」というのが本来の意味です。

「組織内の誰にでもビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれに特有の経験やスキル、考え方が認められ、活用されていること」などと説明されています。

インクルージョンは、ダイバーシティをより発展させた新しい人材開発のあり方であるという説明も良く目にします。

私の理解では「色々な違いのある人々を、同じ職場に平等に受け入れた後は、一緒に働くのであっても、一人ひとりの個性が活かされ独自能力を最大限に発揮できるよう、個性に応じて公平に扱う」ということを、インクルージョンと言っていると感じます。

公平の原理のあらわれであるという理解です。

 

<平等と公平>

平等とは、人々の共通する属性に着目して同じ扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

公平とは、人々の異なった属性に着目して違いに応じたバランスの取れた扱いをすることにより、妥当な結論を導く考え方です。

平等な採用をして、公平な処遇をすることによって、一人ひとりが能力を最大限に発揮し企業と共に成長するのは、すばらしいことだと思います。

平等と公平は、共通する属性に着目するのか、異なる属性に着目するのかという点で、大きな違いがあります。

両者の調和を目指すのが公正です。

採用前から退職後まで、人事の仕事は公正であることが求められます。

2021/11/20|830文字

 

<勤続期間が短い場合>

最初から半年以内の契約期間で働く約束であったり、長く勤めてもらう予定だったとしても入社から半年以内に退職すると、法定の年次有給休暇は取得できません。〔労働基準法第39条第1項〕

ただし、雇用期間を半年にして契約した場合でも、契約が更新されて半年を超えて働き続ければ、原則として、法定の年次有給休暇が取得できるようになります。

さらに、会社の就業規則で入社と共に年次有給休暇を付与するような規定を置いていれば、半年を待たずに年次有給休暇を取得できます。

 

<休みがちだった場合>

就業規則や雇用契約で決まっている全労働日の8割以上出勤しなければ、法定の年次有給休暇は付与されません。〔同上〕

ただし、業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日、育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日、年次有給休暇を取得した日については、出勤したものとして計算します。

 

<出勤回数が少ない場合>

隔週1日の出勤というように、所定労働日数が年48日未満の雇用契約で働く場合にも、年次有給休暇は付与されません。〔労働基準法第39条第3項、厚生労働省令〕

あくまでも、所定労働日数が基準です。

1日の勤務時間が短くても、所定労働日数が多ければ年次有給休暇が付与されます。

 

<就業規則による修正>

会社の就業規則に、労働者に有利な規定があれば法律に優先して適用されます。

反対に、年次有給休暇についての規定が無かったり、法定の基準を下回る規定があったとしても、最低限、法定の年次有給休暇が付与されます。

 

<違法な運用>

勤続期間は、試用期間を設けた場合であっても、試用期間の初日から計算しなければなりません。

本採用になってから半年後に、年次有給休暇を付与するのでは違法です。

また、年次有給休暇を減らしたり付与しなかったりする懲戒処分は無効ですし、違法でもありますから、損害賠償と罰則の適用の両方が問題となります。

2021/11/19|990文字

 

<使い勝手の良さが向上>

令和3(2021)年9月21日からハローワークインターネットサービスの機能がさらに充実し、オンラインで受けられるサービスが広がっています。

令和2(2020)年1月6日には、新システムへの切り替えで、ハローワーク窓口、求職者、求人企業での混乱が見られました。

このため、ハローワークインターネットサービスがやや敬遠されていましたが、今回の機能充実はかなり使い勝手の良さをもたらしています。

 

<求職者向けの機能充実>

機能強化のポイントは次の3点です。

1.ハローワークに行かなくても、オンライン上で「求職者マイページ」を開設できるようになった。

2.ハローワーク利用者は、オンラインで職業紹介を受ける「オンラインハローワーク紹介」を利用できるようになった。

3.ハローワークインターネットサービスで探した求人に直接応募する「オンライン自主応募」ができるようになった。

ハローワークを利用して「求職者マイページ」を開設している人は、ハローワークからオンラインでお勧め求人の職業紹介を受けることができるようになりました。

普段ハローワークを利用していない人も、ハローワークインターネットサービスを利用して、自分自身で探して気に入った求人に直接応募することができるようになりました。

 

<求人企業向けの機能充実>

機能強化のポイントは次の3点です。

1.求人者マイページを通じて、オンラインで職業紹介を受ける「オンラインハローワーク紹介」が利用できるようになった。  

2.求職者がオンラインで応募した場合、応募書類の管理や採否入力が効率的になった。      

3.求職者からの応募を直接受けることができるようになった(オンライン自主応募)。

 

<企業がオンライン自主応募を受ける場合の注意点>

「オンライン自主応募」とは、ハローワークインターネットサービスに掲載された求人に、求職者がハローワークを介さずにマイページを通じて直接応募することをいいます。

ハローワークインターネットサービスのみの利用者も応募できるため、応募者層が広がるものと考えられます。

ただし、オンライン自主応募はハローワークの職業紹介ではないため、ハローワーク等の職業紹介を要件とする助成金の対象となりません。

オンライン自主応募を受け付ける場合は、令和3(2021)年9月21日以降に求人者マイページから変更が必要です。

2021/11/18|739文字

 

<スタートは法定手続から>

フレックスタイム制は、労働基準法の規定によって認められています。

この規定に定められた手続を省略して、形ばかりフレックスタイム制を導入しても、すべては違法であり無効となります。

そのポイントは次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者が決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。これを労働基準監督署長に提出する必要はありません。

 

<無効だとどうなるか>

上記の法定手続をせずに、残業時間を8時間分貯めると1日休むことができるというようなインチキな運用をしても無効です。

無効ということは、フレックスタイム制が無いものとして賃金の計算をしなければなりません。

間違って、フレックスタイム制のルールで賃金を計算して支払ってしまった場合には、不足する差額分を追加で支払わなければなりません。

たとえば、法定労働時間を超える8時間の残業に対しては、10時間分の賃金支払が必要です。

( 8時間 × 1.25 = 10時間 )

しかも、消滅時効の関係で最大3年分遡って精算することになります。

 

<違法だとどうなるか>

正しい手続でフレックスタイム制を導入した場合を含め、次のような違法な運用が見られます。

・残業手当を支払わない。

・残業時間が発生する月は年次有給休暇を取得させない。

・残業時間を翌月の労働時間に繰り越す。

・業務開始時刻や業務終了時刻を上司など使用者が指定してしまう。

・コアタイムではない時間帯に会議を設定し参加を義務づける。

・18歳未満のアルバイトにフレックスタイム制を適用してしまう。

違法だと、労働基準法の罰則に触れるため罰せられることがあります。

2021/11/17|1,141文字

 

<延滞金>

労働保険料を「納期限」(督促による指定期限)までに完納しないと、保険料とは別に「延滞金」を納付しなければなりません。

 

【労働保険の保険料の徴収等に関する法律】第28条(延滞金)

政府は、前条第一項の規定により労働保険料の納付を督促したときは、労働保険料の額に、納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの期間の日数に応じ、年十四・六パーセント(当該納期限の翌日から二月を経過する日までの期間については、年七・三パーセント)の割合を乗じて計算した延滞金を徴収する。ただし、労働保険料の額が千円未満であるときは、延滞金を徴収しない。

2 前項の場合において、労働保険料の額の一部につき納付があつたときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の額の計算の基礎となる労働保険料の額は、その納付のあつた労働保険料の額を控除した額とする。

3 延滞金の計算において、前二項の労働保険料の額に千円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

4 前三項の規定によつて計算した延滞金の額に百円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。

5 延滞金は、次の各号のいずれかに該当する場合には、徴収しない。ただし、第四号の場合には、その執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る。

一 督促状に指定した期限までに労働保険料その他この法律の規定による徴収金を完納したとき。

二 納付義務者の住所又は居所がわからないため、公示送達の方法によつて督促したとき。

三 延滞金の額が百円未満であるとき。

四 労働保険料について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき。

五 労働保険料を納付しないことについてやむを得ない理由があると認められるとき。

※令和3年は年8.8%(当該納期限の翌日から二月を経過する日までの期間については、年2.5%)となっています。

※「延滞金」は、税務申告上の経費になりません。

 

<滞納処分>

「滞納処分」とは、保険料を期限内に納付した事業主と納付しなかった事業主との負担の公平を図ることを目的に、保険料滞納事業主が自主的に納付しない場合、法的手続きにより滞納事業主の財産から強制的に保険料を徴収する「強制処分」です。

納付についての相談がない、納付の約束が守られないなど、納付の意思が認められない場合には、金融機関、取引先、法務局、市町村等に対して「財産調査」を行います。

この調査によって、金融機関や取引先が経営状態についての不安を感じることがあります。

 

<費用徴収>

事業主が労災保険料を滞納している期間中に業務災害や通勤災害が生じ、被災労働者等に労災保険給付を行った場合、事業主からその保険給付に要した費用の一部(最大40%)を保険料とは別に徴収することになっています。

通勤途上で従業員が事故に遭い、意識不明で病院に運ばれたようなケースで事実が明らかになるようです。

 

<助成金の不支給>

雇用に関する「各種助成金」は、労働保険の「雇用保険料」を財源として支給されます。

労働保険料が納付されていない事業主については、助成金の支給対象になりません。

 

<納入証明書>

「納入証明」は「保険料の未納がないことの証明」です。

労働保険料が完納されていないと、「入札参加資格」や「経営事項審査」等に必要な「労災・雇用保険料納入証明書」が交付されません。

 

<納付できないなら>

納期限までに納付できない事情がある場合は、早めに相談しましょう。

災害等により保険料が一時的に納付できない事業主のために、納付猶予制度があります。

都道府県労働局労働保険徴収室または最寄りの労働基準監督署に相談してください。

2021/11/16|1,146文字

 

<労使協定>

労使協定とは、労働者と使用者との間で締結される書面による協定のことです。

法令に「労使協定」という用語があるわけではなく一種の通称です。

そして、使用者と労使協定を交わす主体は、事業場により2通りに分かれます。

・労働者の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合

・労働組合が無いとき、あるいは、労働組合があっても労働者の過半数で組織されていないときは、労働者の過半数を代表する者

労働者の過半数を代表する者は、その事業場で民主的に選出されます。

 

<36(サブロク)協定>

その事業場で、時間外労働(法定労働時間を超える早出、残業)や休日出勤(法定休日の出勤)が全くない事業場を除き、これらについての労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

根拠規定が労働基準法第36条にあるので、36協定と呼ばれます。

労使協定の中には、所轄の労働基準監督署長への届出を義務づけられたものがいくつかありますが、届出をしなくても罰則が適用されるだけで、効力そのものは発生するのが原則です。

しかし、唯一の例外として36協定だけは届出をするまでは無効です。

しかも、届出をした日からの時間外労働などについてのみ有効とされ、日付をさかのぼっての効力は認められません。

さらに、有効期限が最長でも1年間なので、毎年届出が必要なため注意が必要です。

 

<24(ニイヨン)協定>

根拠規定が労働基準法第24条にあるので、24協定と呼ばれます。

労働組合がある会社では、むしろチェックオフ協定と呼ばれることが多いでしょう。

労働者の給与から労働組合費を控除して集め、労働組合に納入する制度をチェックオフといい、多くの労働組合で行われていますが、これはこの労使協定に基づいて行われているわけです。

賃金からは法令に基づき、労働者の同意を得ることなく、所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料が控除されています。〔労働基準法第24条第1項但書〕

これは源泉徴収ですが、労働者各個人が納付するより効率的で、確実に徴収できるためです。これに対し、組合費、寮費、昼食費など法定外のものを賃金から控除することは、賃金全額払の原則(労働基準法第24条第1項本文)に反することから、24協定の範囲内で許されます。〔労働基準法第24条第1項但書〕

24協定は、所轄の労働基準監督署長への届出義務がありませんし、有効期限を設ける必要もありません。

それだけに、紛失の危険があります。

万一、労働基準監督署の立入調査(臨検監督)が入ったときのために、保管場所だけはきちんと確認しておきましょう。

また、24協定についても、36協定や就業規則と同様に労働者への周知義務があります。〔労働基準法第106条第1項〕

まとめて周知することをお勧めします。

2021/11/15|976文字

 

 一人で残業https://youtu.be/JlOkgpkLnlo

 

<上司による管理>

上司は部下の仕事ぶりを管理しています。

しかし、部下が全員帰るまで、上司が会社に残っているというのも不合理です。

ある程度育った部下のことは信頼して、ひとりで残業させるというのも許されるでしょう。

しかし、部下だけで残業させておいてノーチェックというのも、上司としての職責を果たしていないことになります。

残業代が欲しくてただ残っているだけの部下に気付かないのではお話になりません。

 

<勝手に残業したのなら>

残業は、会社が社員に命じて行わせるものです。

具体的には、上司が業務上の必要から、部下に命じて行わせることになります。

少なくとも、部下が残業の必要性を上司に打診し、これを受けて上司が部下に命ずるという形でなければ、残業は発生しない性質のものです。

それなのに、部下が自己判断で勝手に会社に残って働いたのなら、上司が指導しなければなりません。

しかし、この場合でも最初の1回は残業代を支払わなければなりません。

なぜなら、会社側である上司の教育指導不足が原因だからです。

 

<残業命令があったとしても>

たしかに「明日の会議の資料を完成させてから上がるように」とは言ったものの、残業時間の長さの割に完成度が低いのであれば、上司から部下に具体的な事情を聴かなければなりません。

解らなかったり迷ったりで時間がかかったのであれば、上司も一緒に残業すべきだったのかもしれません。

能力不足が原因であれば、少なくとも会議資料の作成については、ひとりで残業させないようにする必要があるでしょう。

 

<ひとり残業を発生させない工夫を>

ひとりで残業するというのはモチベーションが下がりますし、たった一人のために光熱費をかけるというのも不合理です。

たとえ部下が残業の必要性を主張したとしても、ひとり残業になるのなら、上司はその部下を帰らせる勇気を持つべきです。

残業の必要性を申し出るタイミングが遅いのなら、仕事の進め方やスケジューリングについての指導が必要です。

仕事の合間に居眠りしたり、軽食をとったり、雑談したり、喫煙したり、仕事に関係ない資料を読んだり、個人的興味でパソコンをいじったり、スマホを操作したりの時間の総合計が長い一方で残業が発生している社員は、人件費の割に仕事が進んでいないことになります。

このような部下に対しては、上司の徹底的な指導が必要でしょう。

2021/11/14|1,066文字

 

会社が健康診断を受けさせないリスクhttps://youtu.be/T3ZIGmMDcCk

 

<採用時の健康診断>

企業は、常時使用する労働者を採用するときには、労働安全衛生法に定める基準により、健康診断を実施しなければなりません。

たとえ就業規則に規定が無くても、あるいは就業規則が無くても、この実施義務は免れることができません。

労働安全衛生法に定める対象者の基準は次の2つです。両方の基準を満たす人については、健康診断の実施義務があります。

・期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する人は6か月)以上引き続き使用(または使用を予定)されていること。

・1週間の所定労働時間が、その企業で同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること。

健康診断を行わなかった事業者に対する罰則は、1人1回罰金50万円ですが、健康診断をサボる労働者に対する罰則はありません。

そして、健康診断の実施義務は、事業規模に関係なく定められていますから、小さな会社が免除されることはないのです。

 

<法定されていることの恐ろしさ>

企業が健康診断の実施をサボったとしても、必ずしも罰則が適用されるわけではありません。

しかし、健康配慮義務違反ということになってしまいます。

他人にケガをさせた場合には、傷害罪や過失致死罪など刑法が適用されることがあります。

これとは別に、加害者は被害者から治療費や慰謝料などの損害賠償を請求されてしまいます。

企業が健康診断をせずにいたところ、労働者の一人が勤務中に病死したとします。

この場合に罰金を取られなかったとしても、遺族からは多額の損害賠償を請求されるでしょう。

企業としてやるべきことをやっていなかったのですから、責任は免れません。

しかも、健康診断の実施義務を果たしていなかったことは、簡単に証明されてしまいます。

 

<健康診断は企業にとっても安心材料>

労働者から「仕事が忙しくて血圧が上がった」「仕事のストレスで肝機能がおかしくなった」などの主張があっても、採用時の健康診断を正しく行っておけば、入社の時点から多少の異常は見られたことが容易に判明します

仕事が原因で健康を害したわけではないという証明もしやすくなります。

採用を決めてから、健康診断の結果が悪いことを理由に採用を取り消すのは、安易にできないことです。

むしろ、健康に配慮しながら働かせることになります。

この場合にも、健康診断の結果を踏まえて適正な対応をとったという主張をするには、結果を保管しておくことが役に立ちます。

なお、健康診断の個人別結果は、法定の保管期間が5年間と長いので注意しましょう。

2021/11/13|1,073文字

 

労働基準監督署の立入調査https://youtu.be/lNxUYDb6rFo

 

<労働局の指導>

厚生労働省は、違法な長時間労働を複数の事業場で行っていた社会的に影響力の大きい企業について、都道府県労働局長等から企業の経営幹部に対して、全社的な是正を図るよう指導を行った上で、その旨を公表することにしています。

令和3(2021)年11月1日、これに基づき東京労働局長が指導を実施し、その当日に内容が公表されています。

◯違法な長時間労働の実態

労働基準法第32条に違反し、かつ1か月当たり80時間を超える時間外・休日労働が複数の事業場で認められた

◯是正指導の状況

令和3(2021)年11月1日、東京労働局長から代表取締役社長に対し、違法な長時間労働について、代表取締役社長主導のもと、本社及びすべての傘下事業場における状況を再度点検し、速やかに全社的な改善措置を講ずるよう指導書を交付

◯早期是正に向けた当該企業の取組方針

長時間労働削減並びに法令遵守のため、本社主導で全社的な改善に取り組む

また、採用強化による必要人員の確保、機動的な社員配置を行うとともに、デジタル化の推進及びグループ会社を活用した業務効率化により、労働時間の削減を進める

 

<企業に対する指導・公表制度>

対象はあくまでも複数の事業場を有する大企業ですが、違法な長時間労働等が複数の事業場で認められた企業に対する指導・公表制度についても公表されています。

◯通常の場合

1.違法な長時間労働、2.過労死・過労自殺等で労災支給決定、3.これらと同程度に重大・悪質

1年間で2事業場に上記1.~3.があると、労働基準監督署長による企業幹部の呼出指導、ついで改善状況を確認するための全社的な立入調査が行われます。

ここで再び違反の実態が確認されると、労働局長による指導と企業名の公表が行われます。

◯特に重大・悪質な場合

1.月100時間超の違法な長時間労働、2.過労死・過労自殺で労災支給が決定され労基法32・40,35,36-6,37条違反あり

1年間で2事業場に上記2.が、あるいは上記1.と上記2.が2事業場で発生した場合には、即、労働局長による指導と企業名の公表が行われます。

 

労基法第32・40条違反 :時間外・休日労働協定(36協定)で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせている

労基法第35条違反 :36協定に定める休日労働の回数を超えて休日労働を行わせている

労基法第36条6項違反 :時間外・休日労働時間数が月100時間以上又は2~6月平均で80時間を超えている

労基法第37条違反 :時間外・休日労働を行わせているにもかかわらず、法定の割増賃金を支払っていない など

 

2021/11/12|1,361文字

 

<クイズに正解で有給チャンス>

昔、ある支店長が部下に、「クイズに正解しなければ有給休暇を取得させない」というメールを送ったという事件がありました。

この支店長は平成28(2016)年に複数の部下に対して「正解で有給チャンス」など、メールでクイズを出題していたそうです。

不正解の部下には、実際に年次有給休暇の取得を認めなかったとのことです。

  

<しろうと目線では>

なかなか年次有給休暇を取得できない職場で、「少しでも有給休暇を消化させよう」と考え、上司が部下全員にくじ引きやクイズで働きかけて、取得を促進するのは、働き方改革の観点からも良い工夫であるかのようにも見えます。

たとえ経営者や人事部門から「もっと有給休暇を取りなさい」と言われても、全社的にあるいは一部の部門で、なかなか取得できない雰囲気があるかも知れません。

こんなとき「当たりくじを引いたから」「クイズに正解したから」という理由で、堂々と年次有給休暇を取得できたなら、その社員は救われた気持になることでしょう。

 

<法的観点からは>

しかし年次有給休暇は、労働基準法第39条に定められた労働者の権利です。

権利というのは、行使するかしないかが権利者の自由に任されています。

もし「当たりくじを引いたら」「クイズに正解したら」賞品として必ず年次有給休暇を取得するというルールなら、強制的に権利を行使させられることになり、権利者の自由ではなくなってしまいます。

また「外れくじを引いたら」「クイズに不正解なら」年次有給休暇を取得できないというルールなら、会社の許可なく自由に取得できるはずの年次有給休暇が不当に制限されてしまいます。

年次有給休暇の取得促進という目的が正しくても、手段が正しくなければ、法的観点からは違法なこととして否定されることがあるのです。

 

<労働基準法が改正されて>

平成31(2019)41日からは、法改正により、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになりました。

権利を行使するかしないかが権利者の自由に任されていることの重大な例外です。

政府は、働き方改革の推進を権利の本来の性質に優先したことになります。

年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

具体的には、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

こうしたことは、多くの企業にとって不慣れですから、ともすると次の基準日の直前にまとめて年次有給休暇を取得させることになりかねません。

これでは業務に支障が出てしまいますので、計画的に対処することが必要になります。

そこで、労働基準法施行規則も改正され、企業は「年次有給休暇管理簿」の作成・運用・保管が義務づけられています。〔労働基準法施行規則第24条の7〕

働き方改革の継続的な推進による法改正に取り残されることがないよう、十分に注意しましょう。

2021/11/11|754文字

 

<出産手当金>

健康保険に入っている人が、出産のために仕事を休み普通に給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

まず、被保険者の出産であることが必要です。

被保険者とは保険料を負担している人で、扶養家族は対象外となります。

また、妊娠85日以上での出産であることが必要です。

流産や死産、人工妊娠中絶も含みます。

法律上は、4か月以上となっていますが、妊娠については1か月28日で計算しますし、3か月を1日でも超えれば4か月以上と考えますので、28 × 3 + 1 = 85 という計算により、実際の運用は妊娠85日以上で行われています。

さらに、給料の支払が無いか、出産手当金の金額より少ないことが条件です。

 

<支給金額>

1日あたりの支給額は次の計算式で示されます。

1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

数年前に法改正があって、このように「標準報酬月額を平均した額」になりました。

平成28(2016)年3月31日までの支給金額は、もっと簡単で、次の計算式で求められました。

1日あたりの金額 =(休んだ日の標準報酬月額)÷ 30日 × 2/3

前産後休業中に標準報酬月額が変わると、出産手当金の金額も変わってしまったわけです。

 

<解決社労士の視点から>

出産にあたってもらえる給付金には、「出産育児一時金」もあります。

こちらの方は、被保険者だけでなく扶養家族の出産にも支給されます。

扶養している妻だけでなく、扶養に入っている未婚の娘が出産した場合などにも支給されます。

少子化対策で、出産をめぐる健康保険の給付は法改正による充実が進んでいます。

「○○さんのときはこうだった」というのではなく、最新の情報を確認して手続を進めたいものです。

2021/11/10|1,553文字

 

<ある判決>

平成27(2015)年に長時間労働で過労死した服飾雑貨メーカーの男性の遺族が起こした訴訟で、東京地裁が令和3(2021)年10月28日、会社側に約1,100万円の損害賠償を命じる判決を出しました。

退勤後でも、メールの送信やパソコンのファイル更新の時刻が確認できれば、「業務時間」と判断できるという遺族側の主張を認めたものです。

しかし、このことから「退勤後のメールも労働時間に該当する」と短絡的に一般化できるわけではありません。

 

<労働時間の定義>

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

もっとも、これは法令に規定されているわけではなく、最高裁判所が判決の中で示したものですし、抽象的な表現に留まっていますので、具体的な事実に当てはめてみた場合には、判断に迷うことが多々あります。

会社の業務との関連性がある程度薄かったり、使用者の指揮命令関係から解放されていると断定できなかったりと、グレーゾーンにある時間帯が問題となります。

使用者側が「指揮命令下に置いていなかった」と主張し、労働者側が「指揮命令下に置かれていた」と主張して、意見が対立することもあるわけです。

 

<労働時間の把握義務>

使用者には労働時間を適正に把握する義務があります。〔労働安全衛生法第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の7の3〕

そして労働時間の適正な把握を行うためには、単に1日何時間働いたかを把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これをもとに何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

使用者が始業・終業時刻を確認し記録する方法としては、原則として、次のいずれかの方法によることが求められています。

・使用者が自ら現認し記録すること。

・タイムカード、ICカード、パソコン入力等の客観的な記録を基礎として確認し記録すること。

こうして把握された労働時間は、原則として使用者が労働者を指揮命令下に置いていた時間ということになります。

 

<裁判の証拠>

最初に掲げた判決の事件のように、遺族から「長時間労働で過労死した」という主張があった場合でも、使用者側が労働時間の客観的な記録を保管していれば、この証拠を法廷に提出して主張を退けることも可能になります。

しかし、実際の事件では、使用者側が法令に違反して労働時間の把握を怠っていたのです。

この場合、亡くなった労働者が何らかの記録を残していれば、あるいは遺族の証言があれば、それが法廷に提出され裁判の証拠となります。

タイムカードなどに比べれば、客観的な正確性は劣るかもしれませんが、こうした証拠がある以上、裁判所は判断を拒めません。

こうなると、使用者側はかなり不利な立場に立たされます。

 

<解決社労士の視点から>

もし、この会社がタイムカードで労働時間を適正に把握していたのなら、「退勤後のメールの送受信は、使用者の指揮命令によらず、労働者の個人的な判断で行っていたに過ぎず、会社はプライベートな時間の行動まで管理しきれなかった」という主張が可能だったかもしれません。

このように、会社が法定の義務を怠ったことにより、罰則が適用されることとは別に、民事訴訟で不利な立場に立たされることがあるのは、数多くの裁判例の示すところです。

「労働時間の客観的な把握」が法的な義務となったのは、平成31(2019)年4月からのことです。

働き方改革の一環で急速に進む法改正に取り残されないようにしましょう。

2021/11/09|1,308文字

 

<傷病手当金と労災保険>

傷病手当金は、健康保険に入っている人が、プライベートの生活が原因の病気やケガで仕事ができず給料がもらえないときに、申請によって支給される給付金です。

業務や通勤などが原因の病気やケガであれば、労災保険が適用されますから健康保険の給付は対象外となります。

この場合、健康保険の適用は無いのですが、もっと有利な労災保険の給付があります。

ですから、労災保険が適用されるかどうか微妙なケースであれば、所轄の労働基準監督署に確認するなどしてみて、対象外であれば傷病手当金の手続をするのが良いでしょう。

会社から下手に確認してヤブヘビになることを恐れるのであれば、社会保険労務士などに代わって確認してもらうことも考えましょう。

 

<もらえる条件>

まず、業務外の病気やケガで仕事ができない期間について医師の証明が必要です。

仕事ができないわけではないけれど、大事をとってお休みするというのは対象外となります。

反対に、医師による労務不能の証明があるのに本人が無理して勤務してしまうと、傷病手当金は減額あるいは不支給となるのが一般です。

また、4日以上連続して仕事を休んでいることが必要です。

最初の3日間を「待期期間」といって、ここに公休や有給休暇が含まれていてもかまいません。

さらに、給料の支払が無いか、傷病手当金の金額より少ないことが条件です。

医師が証明した期間と、実際に仕事を休んだ期間とで、重なる日について支給されます。

 

<支給金額>

次の計算式によって算出された金額が支給されます。

1日あたりの金額 =(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3

これは、平成28(2016)年4月1日から法改正によって変更になっています。

それまでは、次の計算式が使われていました。

1日あたりの金額=(休んだ日の標準報酬月額)÷30日×2/3

これだと、健康状態が悪くなって本来の仕事ができなくなり、たとえば正社員から賃金の安いパート社員になって、さらに病状が悪化して休業するようになったようなケースでは、低くなった標準報酬月額を基準とした傷病手当金が支給されることになります。

ケガの場合はともかく、徐々に病状が悪化して入院するような場合には、支払ってきた保険料に対して給付の金額が少なくなってしまいます。

無理をせず早めに入院したほうが、傷病手当金の金額が下がらずに済むというケースも考えられます。

 

<注意したいこと>

たとえば4日間の休業だと、もらえる傷病手当金は1日分です。

「傷病手当金支給申請書」に医師の証明を書いてもらうのに、3千円から1万円の文書料がかかります。

文書料には健康保険が適用されませんし、文書料をいくらにするかは病院の判断に任されています。

交通費などの経費や手間を考えると、申請を見送った方が良い場合もあるでしょう。

労災保険の手続きをしないのは、「労災かくし」となり違法となることもありますが、健康保険の給付を受けるかどうかは本人(被保険者)の自由です。

手続のための書類は、会社と本人と医師の3者が記入しますが、前提として本人の意思を確認して手続を進めたいものです。

2021/11/08|1,172文字

 

<みなし労働時間制が使われるケース>

出張や外回りの営業のように事業場外で行われる業務は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難になる場合が発生します。

こうした場合に労働時間を適正に算定するため、みなし労働時間制が利用されてきました。

 みなし労働時間の算定方法は次の要領です。

労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定するのが困難なときには、所定労働時間だけ労働したものとみなされます。〔労働基準法第38条の2第1項〕

ただし、その業務を遂行するため通常の場合、所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。〔労働基準法第38条の2第1項但書〕

この場合、業務の遂行に通常必要とされる時間は、会社と労働者代表などとの労使協定により定めることができます。〔労働基準法第38条の2第2項〕

 

<制度利用の注意点>

労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし労働時間が算定されます。

また、労働時間の算定が困難かどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより客観的に判断されます。

現在では、携帯電話などで随時指示が出されるケースが多く、こうした場合には原則として適用対象となりません。

ただし、携帯電話などを所持しているだけで、随時指示が出されているのでなければ、適用対象となることがあります。

 

<ガイドラインの改定>

旧「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、平成29(2017)120日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に改められました。

全体としては大きな変更がありません。

ただ、自己申告制で労働時間を把握する場合の取扱が、きわめて具体的になりました。

これは、社外での勤務が多いこと、営業手当や定額残業代を支給していることを理由に、適正な労働時間の把握を放棄している企業が目立ったからだと聞いています。

また、労働時間の適正な把握に関連するサービスの充実も背景にあると思われます。

ほんの一例ですが、SONYが提供しているクラウド型勤怠管理システムのAKASHIは、低コストでパソコン、iPad、スマートフォン、FeliCaカード、ネットワーク対応ICカードリーダーによる打刻ができますし、オフィスでも出先からでも打刻を行えます。

スマートフォンのGPS機能を使うことで、位置情報も記録できます。

こうしたサービスを利用することで、会社は適正な労働時間の把握という法的義務を果たすことができますし、まじめに勤務する外回り担当者と、そうでもない担当者との不公平も解消することができるでしょう。

2021/11/07|1,204文字

 

<リアル雑談>

オンラインではなく、直接顔を合わせて行う雑談を「リアル雑談」と呼ぶことにします。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、働き方改革の一環で、在宅勤務などのリモートワークが増えてきたため、リアル雑談が減ってしまいました。

オンライン雑談も可能なのですが、相手の様子が判らないので、簡単には声が掛けられません。

それでも、事実の伝達であればメールの方が確実で便利ですし、意思の伝達についても相手が内容を認識できますから、それほどの不自由は感じません。

 

<個別の雑談>

リアル雑談の利点は、何より相手の理解度や本心を探れることにあります。

たとえば「最近、〇〇の件については、××だと思うよ」と言ったのに対して、相手が「なるほど××ですね。気がつきませんでした」と答えたとします。

このときの、相手の顔色というかリアルな反応は、端末の画面では探りにくいものです。

返事があったのだから、おそらく内容を認識したとは思えるものの、どこまで理解したのか、本音で賛成しているのか反対しているのかは、リアル雑談のようには確信が持てません。

この話をさらに続けるべきか、やめるべきか、判断がつかないときには、ここで話を終了してしまいます。

リアル雑談であれば、相手の反応を見ながら説明を追加したり、話をふくらませたりもできます。

こうして理解と共感が深まり、これをベースとして新たな思考や発想も生まれてくるでしょう。

また、孤独感に苛まれて、メンタルヘルス不調に陥る人も出にくくなるわけです。

 

<雑談の集積>

特定の人とリアル雑談を繰り返すうちに、その人の興味の対象、思考の傾向、論理の流れなどを把握できるようになりますし、何をどう説明すれば理解してもらえるか、納得してもらえるかといったコツも分かってきます。

会議のメンバー間で、こうした関係が形成されれば、合意が得られやすくなりますし、結論の出ない会議のための会議は発生しにくくなります。

これはリアル雑談でも、必ずしも容易なことではないのですが、オンライン雑談では困難を極めます。

 

<人間関係の構築>

社内での信頼関係や人間関係は、業務の協力関係の中でも構築されますが、リアル雑談の効用も大きいと考えられます。

雑談をしないで業務だけで信頼関係を築くのは難しいものです。

営業マンは雑談力が重視されますし、会議の中にも雑談が持ち込まれるのは、雑談に大きな効果が認められているからでしょう。

また、信頼関係や人間関係を維持するには、コミュニケーションの継続と直近性が大事です。

「去る者は日々に疎し」という言葉が示すとおり、コミュニケーションを取ってから長い期間が経過してしまうと、人間関係が薄れる傾向にあります。

まれにオンライン雑談をする程度では、不安を感じる人も多いでしょう。

退職者の退職理由は、大半が人間関係であるとも言われます。

リアル雑談は、離職率の改善にも一役買っていることになります。

2021/11/06|1,047文字

 

<ブラックの意味>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で道義的に求められていることをせず自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)を指しているようです。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。

倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 ブラック企業は、企業と労働者が身を置く労使関係の中で、道義的に求められている労働法の順守、誠実な行動、常識的な対応ということに配慮せず、やりたいようにやってしまう企業です。

そもそも労働法の規定はどうなっているか、どうするのが誠実で常識的な行動なのか、これを積極的に知ろうとはしません。

必ずしも悪意をもっているとは限らず、面倒くさいから考えない、コンプライアンスなんて知らないという企業もあります。

 

<勘違いするポイント>

「自分の働いている会社はブラック企業ではないか」と勘違いする人も少なくはありません。

その理由として、次のようなことが挙げられます。

・正社員とその他の従業員とで通勤費の計算方法が異なる

・支給される通勤費に上限額が設けられている

・日曜日や祝日に出勤しても割増賃金が無い

・生理休暇を取った場合に無給となる

・父親の葬式で休んだら弔事休暇ではなく欠勤となった

・8時間勤務で休憩が50分

・退職金や賞与の支給が正社員に限定されている

・2年半勤務しても退職金が出なかった

・試用期間が3か月なのに10日間で解雇となった

どれもこれも就業規則に違反していない限り、必ずしも違法ではありません。

それでも、他の企業と比較して不利であったり、自分の中の常識に反していれば、「ブラック」と判断することもありうるのです。

ましてや、同一労働同一賃金が法定されてからは、正規職員と非正規職員との待遇差があってはならないという誤解も加わり、不満は膨らむばかりです。

 

<疑いを晴らすには>

法律の規定がどうなっていて、会社のルールがどうなっているのか、それはなぜなのか、ということについて社員教育が必要です。

会社が正しいことをしていても、会社を疑う社員がいるようでは、生産性が上がりませんし、社員も会社も成長しません。

そして、この教育は会社を疑っている社員に対しては、効果が期待できません。

少なくとも社外の講師による説明会など、客観性を確保した教育が必要となります。

それでも、社員の納得が得られない社内ルールがあったなら、それはその会社の社員の常識に反しているわけですから、見直しをお勧めします。

2021/11/05|1,040文字

 

<現代版の時差出勤>

東京都では「時差Biz」と称して時差出勤を推奨してきました。

通勤ラッシュ回避のために通勤時間をずらすもので、働き方改革のひとつと考えられます。

たしかに働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

東京都の特に区部では、満員電車の混雑緩和が社会の生産性向上のための重要な課題のひとつとなっています。

通勤時間をずらすことによって満員電車の混雑緩和を促進する「時差Biz」に、多くの会社で一斉に取り組めば、現在の満員電車での通勤による労働者の肉体的・精神的な負担が軽減され、生産性が向上することは明らかでしょう。

ここに来て、東京オリンピックに向けた準備やコロナ禍によって、期せずして時差出勤の動きも盛んとなりました。

この動きがコロナ終熄後も続くことが、働き方改革の観点からは望ましいわけです。

 

<労働者側のメリット>

生産性の向上というと、企業側のメリットばかりが強調されてしまいますが、空いた電車では満員電車とは違って、働き手にとっても時間の有効活用が可能です。

満員電車では、ただただ耐えるだけの時間となってしまいます。

しかし、空いた電車の中では、スマホで個人の趣味に取り組んだり、ニュースをチェックしたり、資格試験の勉強をしたりと、通勤時間の有効活用が可能となります。

それに、朝早く出勤して夕方は早く帰宅というパターンなら夕方の時間をプライベートに使えますし、遅め出勤なら朝の時間に趣味や家族のコミュニケーションを充実させることも可能です。

 

<会社で必要な手続>

時差出勤は、フレックスタイム制とは違って1日の労働時間(所定労働時間)の長さはそのままです。

早く出勤して早く帰るか、遅く出勤して遅く帰るかということです。

しかし、これを導入するには、会社の就業規則に新たな規定を設ける必要があります。

始業時刻と終業時刻は、就業規則に必ず定める絶対的必要記載事項です。〔労働基準法第89条〕

そのため、時差出勤の対象者や時差出勤での始業時刻と終業時刻のパターンは、就業規則に定めておく必要があります。

また、時差出勤の導入によって休憩時間も変更する必要があったり、一斉休憩の原則が維持できなくなるようであれば、就業規則にその旨を定めたり、一斉休憩の適用除外に関する労使協定の締結も必要となります。

2021/11/04|1,042文字

 

<会社業務に不可欠な報連相>

複数の人が協力して、一人では成し得ないことを達成するためには、意思の疎通が必要です。

これを可能にするのが報告・連絡・相談です。

ですから、会社の中で報連相が適切に行われれば、その会社の中では社員一人ひとりの能力を遥かに超えた成果が得られます。

反対に、報連相が無かったり、いい加減な報連相だったりでは、多くの人が集まり会社として活動することが意味をなさなくなります。

これはすでに世間一般の常識ともいえることです。

それにも関わらず、会社の中には報連相の下手な従業員がいます。

上司は部下の報連相を待っているだけで良いのでしょうか。

 

<上司の指導>

上司は、報連相の下手な部下に対して、次のような指導をします。

・必要な情報の範囲は、情報の送り手が決めるものではなく、受け手が決めるものだから、相手のニーズを考えて報連相を行うこと。

・相手に伝わったことがすべてなのだから、自分が伝えたつもりになってもダメで、相手の都合を考えタイミングを見計らって報連相を行うこと。

・結論を先に言うこと。

・事実と意見を明確に分けること。

こうした指導を受けても、その部下がプライベートで家族や友人から「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」を連発されているような部下であれば、改善は容易ではありません。

社内で要求される報連相は、プライベートでのそれを、質的にも量的にも遥かに上回っているからです。

 

<報連相は双方向のコミュニケーション>

上司が部下に対して、報連相の重要性と適切な方法について精一杯の説明をして、部下が適切な報連相をしてくれるのを待ってみるということも行われます。

しかし、報連相は一人では成り立たないコミュニケーションの一つです。

報告・連絡・相談のすべてに相手がいます。

この相手を想定して積極的に行うというのは、報連相の下手な部下にとって、習慣になるまではむずかしいことなのです。

ですから、上司から部下に対して、次のようなOJTを行うことが不可欠なのです。

・〇〇は終わりましたか?終わっていたら報告してください。

・〇〇の件、先方には連絡してありますか?先方の反応はどうですか?

・まだ〇〇に着手できていないようですが、何か迷っていることがあれば相談してください。

こうした指導を繰り返されることによって、部下は言われる前に自分で考えて報連相を行う習慣が身に着きます。

「あいつは報連相ができないんだよなぁ」とボヤく上司もまた、ある意味コミュニケーションが苦手なのかもしれません。

2021/11/03|939文字

 

<社会保険の資格取得>

社会保険に加入すること、正確には被保険者となることを「資格取得」といいます。

社会保険が適用される会社に入社すると、その日に被保険者となって、当日から健康保険で治療が受けられるのが原則です。

入社日に資格取得するということです。

たとえ試用期間であっても、試用期間の初日から社会保険に加入します。

これを避けるためには、試用期間だけ所定の勤務日数や労働時間を短縮して、社会保険の加入基準以下で勤務してもらうことも可能ではあります。

しかし、試用期間をこうした条件にしてしまったのでは、採用を決定しても入社を辞退される可能性が高いのでお勧めできません。

 

  <社会保険の資格喪失>

社会保険から脱退すること、正確には被保険者ではなくなることを「資格喪失」といいます。

会社を辞めるとき、退職当日まで使っていた保険証が翌日には使えません。

退職日の翌日に資格喪失するということです。

 

  <同日得喪>

社会保険の「資格喪失」の日に、同じ社会保険の「資格取得」が行われることを、「同日得喪」といいます。

定年退職後に同じ会社で再雇用された場合には、賃金が低下することが多いでしょう。

同一労働同一賃金の考え方からすると、これは許されないようにも思われますが、最高裁判所も平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件判決で、ある程度の賃金低下を容認しています。

この場合に、賃金の低下を反映して保険料が安くなるのは、一般の随時改定の仕組みによると4か月も先ということになります。

そこで、60歳から64歳までの老齢厚生年金受給権者が再雇用となった場合などには、退職の翌月分から保険料を安くできるよう、特別に「同月得喪」という手続があります。

このとき、基礎年金番号は変わりませんが、保険証の番号は変わります。

かかりつけの病院には、「保険証の番号が変わりました」と申し出る必要があります。

ここで注意したいのは、保険料が下がるということは、傷病手当金の金額も下がるということです。

定年を機に、持病の入院治療を考えているような場合には、同日得喪を利用しない手もあります。

手続をするのは会社ですが、同日得喪をするかどうかは、このようなデメリットも本人に説明したうえで決めていただく必要があるでしょう。

2021/11/02|1,105文字

 

<法定三帳簿>

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等は、会社に備えておかなければならない重要な書類として「法定三帳簿」と呼ばれます。

会社は、1人でも雇えば、これらの書類を作らなければなりません。

「出勤簿等」と言っているのは、始業時刻・終業時刻を記した出勤簿に代えてタイムカードなど別の記録でもか構わないからです。

これらには、法律に定められた事項を記入し、3年間保管しておくことが義務づけられています。〔労働基準法第107条~第109条〕

これを怠っている会社は、「適法ではない」ということになります。

適法でなければ、従業員や退職者からの損害賠償を請求されやすくなりますし、助成金の受給が不正と認定されやすくなります。

 

<労働者名簿の項目>

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職・死亡年月日と理由・原因です。

人事異動があれば、ここに記録されます。

本籍やマイナンバーはこれらの項目に含まれていません。

 

<賃金台帳の項目>

労働者氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当の種類と額、控除項目と額です。

ここにもマイナンバーは含まれていません。

 

<出勤簿等の内容>

出勤簿やタイムカード、会社側で記録した始業・終業時刻の書類、残業命令書・報告書、労働者が記録した労働時間報告書などです。

残業は会社の命令によって行うものであり、労働者の勝手な判断で行うものではありません。

労働者が勝手に残業しても、残業手当は発生しないのが正しいのです。

これを明らかにしておくために、残業命令書が運用されている会社があります。

しかし、労働者が会社の指示によらず自主的に残業している場合でも、会社側が黙認していれば残業代の支払義務が生じます。

 

<この他に必要な書類>

法定三帳簿の他に、労働条件通知書、三六協定などの労使協定書、健康診断の結果など、労働法関連の書類だけでも、会社が作成や保管を義務づけられている書類は多数あります。

特に健康診断の結果は、保管期間が5年間です。

労働条件通知書を作成・交付しないのは、明らかに違法なのですが、知らない経営者が多いのも事実です。

どうやって労働条件を決めたら良いのか迷うなら、社会保険労務士に相談してでも決めなければなりません。

 

<マイナンバーは別管理で>

賃金台帳や労働者名簿などにマイナンバー(個人番号)を記載しておけば便利なように思われます。

しかし、マイナンバーは用途を具体的に限定して収集した個人情報ですから、他の目的で使用することがある帳簿に記載しておくことは、適正な管理とはいえません。

別に厳重に管理することが求められています。

2021/11/01|1,765文字

 

<人材育成は投資>

かつては新人教育に熱心だった企業が、即戦力を求めるあまり、人材育成を後回しにする風潮が見られます。

人材を労働力と捉え、教育をコストと考えてしまうと、人材育成は進みません。

しかし、人材育成をコストではなく、投資と捉え積極的に進めなければ、企業の明るい未来は描けません。

 

<事業内職業能力開発計画>

事業内職業能力開発計画は、企業の雇用する労働者の職業能力の開発と向上を、段階的かつ体系的に行うために事業主が作成する計画です。

この計画の作成は、職業能力開発促進法第11条に基づき、事業主の努力義務となっています。

これを受けて、雇用関係助成金の中に人材開発支援助成金が設けられています。

事業内職業能力開発計画の作成は、人材開発支援助成金の一部のコースにおいて支給要件となっています。

そして厚生労働省は、この計画作成の意義について次のように述べています。

 

計画の作成は、従業員の職業能力開発について、仕事の種類やレベル別に、「何を身につけたらよいか」「そのためにはどのような学習・訓練を受ければよいか」を整理することができます。

これらを明らかにして示すことで、企業の経営者や管理者と従業員が能力開発について共通の認識を持ち、目標に向かってこれを進める「道しるべ」となり、効果的な職業能力開発を行うことが可能になります。

さらに、従業員の自発的な学習・訓練の取組意欲が高まることも期待されます。

 

<キャリア形成支援の必要性>

厚生労働省は「事業内職業能力開発計画作成の手引き」を作成し公表しています。

この中の「キャリア形成支援の必要性」の項目では次のように述べています。

 

従来の人材育成は新入社員研修から始まる階層別研修など日本的雇用慣行に基づいて会社が主体となり実施してきました。しかし、経営の核となる人材に対しての選抜研修や従業員一人ひとりが目標を設定し自己啓発に取り組むといった仕組みが広がりつつあります。

特に多様な働き方が一般化したことにより、個人の自律的な能力開発も広がっています。

キャリア形成とは、「自らの職業生活設計に即して必要な職業訓練・教育訓練を受ける機会が確保され、必要な実務経験を積み重ね、実践的な職業能力を形成すること」と定義しています。

短くまとめると「長い職業生活を充実させるため、よく学び、仕事の経験を重ね広く通用する職業能力を身につけること」としています。

また、このような状況の下で会社は従業員のキャリア形成をどのように支援していけばよいのでしょうか。

従来のような従業員全員に対して一律的な能力開発を行おうとしても限界があります。

このため個人が主体的に行おうとするキャリア形成を側面から支援することが求められています。

実際にキャリア形成といわれてもとまどう人が多いのではないでしょうか。

個人主導となっても、何をすればいいのかわからないという人もいます。また、情報が無いため何があるのかわからない、あるいは業務の多忙さから取り組めないということもあります。

このため、キャリア形成を実施するための情報提供や休暇取得、勤務時間の配慮が求められます。このようなことを実施することで求める人材の確保にもつながります。

厳しい経営環境を乗り切れる人は、創造的で高度な専門能力を発揮できる能力を身につけている人といえます。このような人は主体的に自身の能力開発に取り組めますが、その能力を発揮する場面は主に職場です。

よりよい人材を確保するためにも、キャリア形成を支援する必要性があります。

 

会社主導の能力開発は、終身雇用・年功序列を前提とした他律的・一律的なものでした。

しかし、この前提が崩れ、職業能力開発の主導が会社から個人へと移りました。

個人主導の能力開発は、IT人材のような新しいタイプの人材の確保・育成に対応した自律的・多面的なものです。

とはいえ、キャリア形成を自己責任としていたのでは、人材育成の目的が果たせませんから、会社が積極的にキャリア形成を支援する必要があるということです。

 

<解決社労士の視点から>

社会の激しい変化に対応すべく、改めて人材育成の強化に乗り出す企業が増えると思います。

過去の研修の復活を検討するのではなく、従業員のキャリア形成の支援の観点から計画を進めていただけたらと思います。

2021/10/31|721文字

 

<高年齢雇用継続給付>

60歳から65歳になるまでの雇用保険加入者(被保険者)を対象とする、高年齢雇用継続給付という給付があります。

老齢基礎年金の支給が65歳からですので、期間限定の給付となっているわけです。

 60歳の時点と比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける高齢者に支給される給付です。

支給対象月に支払われた賃金の低下率に応じて、2か月ごとに最高で賃金の15%が支給されます。

高齢者の就業意欲を維持、喚起して、65歳までの雇用の継続を援助、促進することが目的とされています。

 

<給付を受ける条件>

雇用保険の加入者(被保険者)であって、60歳になったとき被保険者期間が5年以上であることが必要です。

ただし、失業手当(基本手当)を受給したことがある方は、受給後の期間だけで計算します。

また、60歳になったときに5年未満であっても、その後5年に達すれば、その時から対象者となります。

失業手当(基本手当)を受給した後、60歳以後に再就職した場合に給付を受けるには、再就職の前日までの期間で失業手当(基本手当)の支給残日数が100日以上あること、安定した職業に就くことによって雇用保険の被保険者となったことが必要です。

 

<受給手続> 

会社と対象者とで、協力して書類を準備します。

提出先は、会社所轄のハローワークです。

必要書類の中に、離職票によく似たものがあり、「60歳に達した日」の欄は誕生日の前日を記入します。〔年齢計算ニ関スル法律〕

誕生日と1日ずれているのが曲者で、対象者の方が書類を記入する際に、修正のうえ訂正印を捺してくださるという失敗がありがちです。

法律上の年齢は誕生日の前日に1歳増えるということを、予め説明しておきましょう。

2021/10/30|733文字

 

<道義に反する仕事>

その昔、「モンスター社員をうつ病にして会社を辞めさせる」というブログ記事を書いた社会保険労務士が処分を受けたことがありました。

我々社会保険労務士の職業倫理が問われた事件でしたし、都道府県の社会保険労務士会や連合会が対策を強化するきっかけともなりました。

社会保険労務士としては、むしろ次のような仕事に取り組むべきです。

・モンスター社員を入社させない採用の仕組づくり

・モンスター社員を発生させない仕組づくり

・モンスター社員を教育して戦力化する仕組づくり

採用したのは会社に責任があるわけですから、後からモンスター社員だと気付いて退職に追い込むというのは責任逃れです。

また、会社の中でモンスター社員になっていったのなら、会社の責任はもっと重いことになります。

 

<懲戒処分を受ける仕事>

・事実に反する内容を含む書類の作成・提出

・労働局でのあっせんなど、紛争解決手続代理で虚偽の主張をすること

・保険給付を不正に受給すること

・保険料を不正に免除してもらうこと

こうした仕事をすれば、社会保険労務士は業務の停止処分を受けます。

当然のことですが、このような仕事は受けることができません。

  

<その他お受けできない仕事>

会社に一時的な利益をもたらすだけで、継続的な成長を妨げる仕事も、社会保険労務士が受けるべきではないと考えています。

その場限りの一時しのぎでは、会社のためにも、まじめに働く社員のためにもなりません。

会社と社員が、共に成長できるよう取り組んでいきたいと思います。

この観点から、働き方改革に逆らうような人件費の削減、長時間労働の推進、休暇取得の妨害といったことはお受けできません。

まじめに売上を伸ばそうとする経営者のお手伝をさせていただきたいと思います。

2021/10/29|1,414文字

 

<組織づくりの基本原則>

経営戦略論には、組織を作る上で意識すべき「組織設計の5原則」があります。

組織体制の構築や組織のルール作りには、次の5原則が重要です。

 

1.専門化の原則

2.権限責任一致の原則

3.統制範囲の原則

4.命令統一性の原則

5.権限委譲の原則

 

<専門化の原則>

組織作りの基本原則の1つ目は、専門化の原則です。

特定の業務に集中するために分業することをいいます。

組織の中で仕事を分業し、決められた専門分野に特化することで、その分野の業務に習熟しスキルを向上させることが容易となるので、組織の生産性が上がるわけです。

また、個人の役割や求められる成果が明確となりますので、個人の評価も客観的なものとなり、責任感や達成感も高まります。

メンバーシップ型雇用では、社内で多様な業務の経験を積み、いわゆる「なんでも屋」の育成が行われてきました。

しかし、専門化の原則を踏まえれば、専門分野に特化したジョブ型雇用の方が適合することになります。

 

<権限責任一致の原則>

組織作りの基本原則の2つ目は、権限責任一致の原則です。

役割に与えられる権限の大きさは、職務や職責に相応でなければならないことをいいます。

職責を果たすための権限が不相応に小さい場合、期待に応えるための業務活動は困難です。

こうした社員は、人事考課で低い評価を与えられることになり、モチベーションも低下してしまいます。

反対に、職責に対して権限が大きすぎると職権濫用の危険性が高まります。

こうしたことから、権限と責任の大きさは同じにする必要があります。

 

<統制範囲の原則>

組織作りの基本原則の3つ目は、統制範囲の原則です。

1人の管理職が直接管理できる部下の人数には限界があることを踏まえて、階層管理体制を構築することをいいます。

1人の管理職が直接管理できる部下の人数は、5人から10人程度と言われており、これを超えると管理効率が低下します。

部下の人数が多すぎると、部下の工数管理が困難になり、ミスのカバーに回ることも難しくなるため、業務に支障が出やすくなります。

こうしたことが発生しないように、組織の階層管理体制を構築することが大切です。

 

<命令統一性の原則>

組織作りの基本原則の4つ目は、命令統一性の原則です。

指示や命令は特定の1人から受けられるように、命令系統を構築することをいいます。

組織の中で、複数の者から指示が出ると、現場は混乱しますから生産性が低下します。

組織内の上下関係で、常に特定の1人から指示・命令を受けるような命令系統を構築し、組織の秩序が維持できるようにしなければなりません。

 

<権限委譲の原則>

組織作りの基本原則の5つ目は、権限委譲の原則です。

定型化された業務の処理は、なるべく早い時期に部下に委譲し、上司は非定型業務に専念すべきことをいいます。

ただ任せれば良いという風潮は危険です。

業務の具体的な内容や目的を明確にし、担当者の自主性を尊重することが重要です。

これらを怠ると、成果が上がらず改善が図れませんし、担当者のスキルアップと責任感の維持も難しいでしょう。

 

<実務の視点から>

新組織が構築された時点では、基本原則が強く意識されていても、やがてはその意識が薄れていくものです。

ベクトル合わせのため、定期的な研修とチェックが必要です。

うまく行かなくなった場合に、組織体制が悪いと考えるのではなく、組織運営を正常化することを優先していただけたらと思います。

2021/10/28|662文字

 

<役員が雇用保険の対象者(被保険者)となる場合>

役員などが同時に部長、支店長、工場長など会社の従業員としての身分を兼ねている兼務役員の場合であって、就労実態や給料支払などの面からみて労働者としての性格が強く、雇用関係が明確に存在している場合には、例外的に雇用保険の対象者(被保険者)となります。

ハローワークで雇用保険の対象者(被保険者)とするときの手続には、就業規則、登記事項証明書、賃金台帳、などの提出が必要となります。

「働いている」という実態に変わりがなくても、一般の従業員から兼務役員になった場合には、ハローワークでの手続が必要になります。

兼務役員は、従業員としての身分の部分についてのみ、雇用保険の対象者となります。

そして保険料も、役員報酬の部分は含まれず、労働者としての賃金部分のみを基準に決定されます。

このことから、役員報酬と賃金とが明確に区別できる状態であることも必要です。

 

<雇用保険の対象者(被保険者)ではなくなる場合>

法人等の代表者(会長・代表取締役社長・代表社員など)は、雇用保険の対象者(被保険者)とはなりません。

また、法人等の役員(取締役・執行役員・監査役など)についても、原則として雇用保険の対象者(被保険者)となりません。

これらの人と会社との関係は、雇用ではなく委任だからです。

従来、兼務役員として雇用保険の対象者(被保険者)であった人が、就労実態や給料支払などの面からみて労働者としての性格が弱くなり、雇用関係が存在しているとはいえなくなった場合には、雇用保険の資格を喪失することになります。

2021/10/27|569文字

 

<賞与にかかる社会保険料>

年3回以下支給される賞与についても、健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。

会社が社会保険加入の社員へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届け出ます。

この届出内容により標準賞与額が決定され、これにより賞与の保険料額が決定されます。

なお、年4回以上支給される賞与は、賞与支払届の対象とはならず、報酬月額に加算され標準報酬月額の計算基準に含まれます。

 

<賞与の社会保険料の計算方法>

算定基礎届や月額変更届で使われる標準報酬月額保険料額表は使いません。

実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)の1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とします。

その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額が、社会保険料となります。

保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。

 

<賞与の社会保険料の上限額>

標準賞与額の上限は、健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年41日から翌日331日まで)です。

また、厚生年金保険は1か月150万円とされていますが、同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます。

ここに示した上限額は、法改正により変更となる場合がありますので、最新情報をご確認ください。

2021/10/26|935文字

 

<有期労働契約>

有期労働契約とは、1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約のことをいいます。

パート、アルバイト、契約社員、嘱託など会社での呼び名にかかわらず、契約期間の取り決めがあれば有期労働契約です。

正社員であっても、定年までという区切りはあるのですが、定年は契約期限とは考えられていません。

 

<最長期間>

有期労働契約の期間は、原則として3年が上限です。

ただし、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については上限が5年とされています。〔労働基準法第14条第1項〕

他にも特別法による例外があります。

労働契約の期間が短ければ、労働者の立場が不安定になります。

ところが、あまり長くても、労働者をその契約に拘束してしまうことになります。

労働者が安定して働けることと、長期間の契約で縛られないこととは相反する要請です。

有期労働契約の最長期間は、この2つの利益のバランスを考えて法定されているのです。

 

<無期労働契約への転換>

有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者からの申し込みにより、期間の定めのない無期労働契約に転換できるというルールがあります。〔労働契約法第18条〕

これには特例があり、高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者、定年後引き続き雇用される有期雇用労働者については、会社が労働局長に申請することによって、一定の期間については、無期転換申込権が発生しないことになります。〔専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法〕

さらに特殊な例外ですが、研究開発能力の強化と教育研究の活性化等の観点から、大学等や研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間が原則10年となっています。〔研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律〕

 

<解決社労士の視点から>

労働法は、労働者を保護するのが目的です。

しかし、労働契約の期間をどのように定めたら労働者の保護になるのかは、労働市場の情勢によって変化していきます。

度重なる法改正や通達、判例の変化の動向には注意を払う必要があるのです。

2021/10/25|1,494文字

 

<希望者への支援>

会社が従業員に対して、自己啓発の一環として資格取得を支援するというのは、以前から行われていますし、業務との関連性の強いものは、特に支援を強化しているのが一般です。

あくまでも任意ですから、勉強時間の確保は自己責任です。

ただ、試験の当日や直前に特別休暇が設けられていることはあります。

勉強や受験に必要な経費の一部を会社が負担する場合もありますが、合格を条件として支払われることもあります。

事前申告無しに、合格したら報奨金を請求できるという仕組のこともあります。

いずれの場合も、資格取得を目指すか否かが、完全に従業員の自由に任されているわけです。

 

<資格取得を命じた場合の支援>

業務上の必要から、会社に資格者を置きたい場合には、従業員に資格取得を命じることもあります。

この場合には、資格取得に必要な行為は業務に準ずるものですから、次のような支援が必要となります。

資格取得に必須とされる教材費、受講料、受験料は会社負担とするのが妥当です。

会社指定の講習に参加させる場合には、その受講料や交通費、参加している時間帯の賃金の支払が必要です。

資格取得のためにレポートなどの提出が必要な場合には、その作成に必要な時間の賃金支払も必要です。

受験までは、業務の配分を見直して、勤務時間に勉強できるようにしたり、残業しなくても済むようにしたりの配慮も求められます。

資格取得に成功したら、昇級・昇格するとか、資格手当や金一封を支給するといったインセンティブも必要です。

 

<パワハラとなる場合>

パワハラの6類型のうちの「過大な要求」となるのが典型的です。

個人の能力や経験に照らして、難易度が高すぎる資格の取得を求め、一定の期間内に取得できなければ不利益を課すというのは明らかに「過大な要求」です。

業務との関連性が薄い資格の取得を強要したり、勤務状況から見て明らかに勉強時間を確保できないのに資格取得を求めたりするのも「過大な要求」となります。

 

<資格ハラスメントと背景>

資格ハラスメント(シカハラ)とは、会社が従業員に資格取得を強要し不当な負担を負わせたり、資格を取得できない従業員に対して減給、降格、退職勧奨、解雇などの不利益な取扱いをしたりするハラスメントです。

企業は、長年にわたって終身雇用、年功序列を前提としたメンバーシップ型雇用を行ってきました。

そこでは、企業内で役立つ能力が重視され、勤続年数や経験が能力の指標として用いられてきました。

しかし近年では、客観的に評価できる能力や仕事の成果が重視されるようになり、ジョブ型雇用も行われるようになりました。

こうした中で、資格を重視し従業員の資格取得を推奨する企業が増えた一方で、資格取得を口実とするハラスメントも顕在化するようになったのです。

 

<悪質な資格ハラスメント>

その会社の業務に無関係で難易度の高い資格取得を命じ、会社としての支援を全く行わないばかりか、長時間の残業や休日出勤を行わなければこなしきれない業務を担当させ、すぐに資格取得できないと解雇に追い込むというブラック企業もあります。

これはもう、資格取得の失敗を口実とする明らかな不当解雇です。

 

<解決社労士の視点から>

シカハラも、セクハラ、パワハラ、マタハラなどと同様に、以前から存在していたものが強く認識されるようになったものです。

その本質は、不当な嫌がらせであり、不法行為や犯罪に該当することがあります。

この場合、従業員や退職者は、企業に対して損害賠償を請求することもあります。

世間で新たなハラスメントの認識が強まるにつれ、企業の賠償責任のリスクも高まっているといえます。

2021/10/24|734文字

 

<就業規則と労働契約(雇用契約)との優先順位> 

労働契約は、会社と各労働者との個別契約です。

一方、就業規則に定めてあることは、その就業規則が適用される労働者に共通するのが原則です。

そして、就業規則に定めきれない各労働者に特有のことは労働契約に定められます。

原則として、就業規則が労働契約に優先します。〔労働基準法第93条、労働契約法第12条〕

ところが、就業規則が優先という法律の規定は、労働契約が就業規則よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして就業規則に従うという内容になっています。

ですから、労働契約の中に就業規則よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結論として、就業規則と労働契約の規定のうち、その労働者にとって有利なものが有効となります。

 

<具体的な判断>

就業規則と労働契約を比べて、違いがある部分については労働者に有利な方が有効となるとはいえ、これが簡単ではないのです。

たとえば、午後1時から3時の間はお客様が少なくてお店が暇だとします。

就業規則には、休憩時間が1時間と書かれているけれども、店長がパートさんとの労働契約更新にあたって「これからは休憩を2時間にしましょう」と提案し、パートさんがこれに合意したらどうでしょう。

多くの方にとっては、拘束時間が変わらないのに収入が減るので不利になると考えられます。

ところが、自宅が職場の隣にあって「ラッキー!昼休みに洗濯が済ませられるわ」と喜ぶパートさんがいるかもしれません。

労働法全体の考え方からすると、休憩時間は長い方が労働者に有利と考えられています。

しかし、必ずしもそうではありませんから、ここは会社と労働者との話し合いで解決したいところです。

2021/10/23|1,132文字

 

ここでは、一般の事業(継続事業)について説明しています。

建設業などの一括有期事業は労災保険料の仕組が違います。

 

<労働保険の保険料>

雇用保険と労災保険の保険料は、合わせて労働保険の保険料として、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度を単位として計算されます。

その額は、雇用保険と労災保険のそれぞれについて、対象となる従業員に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を掛けて算定されます。

労災保険料は、全額会社負担ですから従業員は負担しません。

雇用保険料は、会社の方が従業員よりも多く負担します。

 

<保険料の計算で間違えやすいポイント>

保険料の基準となる賃金は、毎年4月1日から翌年3月31日までの保険年度中に賃金計算の締日があるものが対象となります。

勤務の期間や支払日ではなく締日が基準です。

最も間違えやすいのは、雇用保険の対象者、労災保険の対象者の確定です。

取締役は、どちらも対象外であることが多いのですが、労働者の立場を兼ね備えている場合には対象となるケースもあります。

この場合に、保険料の計算基礎となるのは、役員報酬を除く労働者としての賃金部分に限られます。

別の会社から出向してきている人は、働いている会社で労災保険料だけを負担します。

学生の場合、定時制や通信制の学校であれば雇用保険の対象になります。

他にも、雇用保険の保険料が免除される人がいたり、労災保険料の割引があったりと複雑です。

 

<年度更新とは>

労働保険では、翌年度の保険料を概算で納付し、年度末に賃金総額が確定してから精算するという方法がとられています。〔労働保険徴収法第15条・第17条〕

したがって会社は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続を同時に行うことになります。

これが「年度更新」の手続きです。

この年度更新の手続は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期されたことはありますが、原則として毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。〔労働保険徴収法第19条〕

保険料の支払期限も7月10日です。

この日までに納付しない場合には、会社あてに督促状が届きます。

督促状には、発送日から10日後が最終支払期限として表示されています。

この期限を過ぎてしまうと、7月10日にさかのぼって遅延利息が発生します。

また手続が遅れると、政府に保険料の額を決定され、さらに追徴金10%を課されることもあります。〔労働保険徴収法第21条・第25条〕

1年間の賃金が確定してから準備を始めると余裕が無くなりますので、最後の1か月の賃金を加えれば確定できるという状態にまで、先に準備しておくことをお勧めします。

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